(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-29
(54)【発明の名称】オートクレーブ処理されたセメント組成物
(51)【国際特許分類】
C04B 28/02 20060101AFI20220622BHJP
C04B 22/08 20060101ALI20220622BHJP
C04B 28/18 20060101ALI20220622BHJP
C04B 14/06 20060101ALI20220622BHJP
C04B 14/28 20060101ALI20220622BHJP
C04B 16/02 20060101ALI20220622BHJP
C04B 14/42 20060101ALI20220622BHJP
C04B 14/38 20060101ALI20220622BHJP
C04B 16/06 20060101ALI20220622BHJP
C04B 22/04 20060101ALI20220622BHJP
C04B 40/02 20060101ALI20220622BHJP
C04B 7/32 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B22/08 Z
C04B22/08 A
C04B28/18
C04B14/06 Z
C04B14/28
C04B16/02 Z
C04B14/42 Z
C04B14/38 A
C04B16/06 Z
C04B22/04
C04B40/02
C04B7/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021563653
(86)(22)【出願日】2020-04-29
(85)【翻訳文提出日】2021-10-26
(86)【国際出願番号】 EP2020061965
(87)【国際公開番号】W WO2020221835
(87)【国際公開日】2020-11-05
(32)【優先日】2019-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319006807
【氏名又は名称】イメルテック ソシエテ パル アクシオン サンプリフィエ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】エスピノサ ブルーノ
(72)【発明者】
【氏名】ニープマン ディルク
(72)【発明者】
【氏名】グロロー ジェローム
(72)【発明者】
【氏名】シャルパンティエ エリク
(72)【発明者】
【氏名】ブソー ジャン-ノエル
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112PA04
4G112PA10
4G112PA15
4G112PA17
4G112PA22
4G112PA24
4G112PB02
4G112PB05
4G112PB06
4G112PE06
(57)【要約】
オートクレーブ処理されたセメント製品におけるアルミン酸カルシウムセメントの使用、オートクレーブ処理されたセメント製品を形成するのに適したセメント質組成物、並びにセメント質組成物及びオートクレーブ処理されたセメント製品を作製するための方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント質組成物の全乾燥質量に基づいて、
約0.25質量%以上であって約50質量%未満のアルミン酸カルシウムセメント、例えば、約0.25質量%~約10質量%のアルミン酸カルシウムセメント、及び
約20質量%~約60質量%の1種又は複数の他の水硬結合剤
を含む、セメント質組成物。
【請求項2】
約0質量%~約80質量%、例えば、約15質量%~約80質量%の1種若しくは複数の粒状材料、及び/又は
約0質量%~約15質量%、例えば、約0.5質量%~約10質量%の1種若しくは複数の強化用繊維、及び/又は
約0質量%~約2質量%、例えば、約0.01質量%~約2質量%の1種若しくは複数の発泡剤、及び/又は
約0質量%~約10質量%、例えば、約0.5質量%~約8質量%の1種若しくは複数のトバモライト変性剤
をさらに含む、請求項1に記載のセメント質組成物。
【請求項3】
アルミン酸カルシウムセメントがCA
2を含み、CはCaOであり、AはAl
2O
3であり、例えばアルミン酸カルシウムセメントが、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて約40質量%~約70質量%のCA
2を含む、請求項1又は2に記載のセメント質組成物。
【請求項4】
アルミン酸カルシウムセメントがC
2ASを含み、CはCaOであり、AはAl
2O
3であり、SはSiO
2であり、例えばアルミン酸カルシウムセメントが、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて約15質量%~約45質量%のC
2ASを含む、請求項1~3のいずれかに記載のセメント質組成物。
【請求項5】
アルミン酸カルシウムセメントが、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて合計約80質量%以上のCA
2及びC
2ASを含む、請求項1~4のいずれかに記載のセメント質組成物。
【請求項6】
アルミン酸カルシウムセメントが、C、CA、CA
6、C
3A、C
4A
3$、C
12A
7、CAS
2、CS、C
2S、C
3S、C
3S
2、A
3S
2、C
4AF、及びC
2A
1-yF
yのうち1つ又は複数をさらに含み、CはCaOであり、AはAl
2O
3であり、SはSiO
2であり、$はSO
3であり、FはFe
2O
3であり、yは0~1、例えば0~0.7である、請求項1~5のいずれかに記載のセメント質組成物。
【請求項7】
1種又は複数の他の水硬結合剤が、ポルトランドセメント、フライアッシュ、ポゾランアッシュ、高炉スラグ、シリカ粉、シリカフューム、メタカオリン、石灰(例えば、消石灰を含む)、玄武岩、アルミノケイ酸塩、ポゾラン、又はそれらの組合せから選択される、請求項1~6のいずれかに記載のセメント質組成物。
【請求項8】
粒状材料が、石英、砂、石灰石、石こう、ケイ砂、又はそれらの組合せから選択される、請求項2~7のいずれかに記載のセメント質組成物。
【請求項9】
1種又は複数の強化用繊維が、セルロース繊維、セルロースパルプ、ガラス繊維、炭素繊維、ポリマー繊維、及びそれらの組合せから選択される、請求項2~8のいずれかに記載のセメント質組成物。
【請求項10】
1種又は複数の発泡剤が、アルミニウム、例えばアルミニウム粉末である、請求項2~9のいずれかに記載のセメント質組成物。
【請求項11】
オートクレーブ処理されたセメント製品、例えば繊維セメント板又はオートクレーブ処理された気泡コンクリート(AAC)を作製するための方法であって、請求項1~10のいずれかに記載のセメント質組成物をオートクレーブ処理するステップを含む、前記方法。
【請求項12】
オートクレーブ処理するステップの前に、セメント質組成物を養生するステップを含む、並びに/又は
オートクレーブ処理するステップの前及び/若しくは養生するステップの前に、セメント質組成物を水と混合するステップを含む、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の方法によって得られる、及び/又は得ることができる、オートクレーブ処理されたセメント製品、例えば繊維セメント板又はオートクレーブ処理された気泡コンクリート(AAC)。
【請求項14】
オートクレーブ処理されたセメント製品、例えば繊維セメント板又はオートクレーブ処理された気泡コンクリート(AAC)を作製するための、アルミン酸カルシウムセメントの使用。
【請求項15】
請求項1~10のいずれかに記載のセメント質組成物が、オートクレーブ処理されたセメント製品を作製するために使用される、請求項14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維セメント板及びオートクレーブ処理された気泡コンクリート(AAC)などのオートクレーブ処理されたセメント製品を作製するのに適した、アルミン酸カルシウムセメントを含むセメント質組成物に関する。本発明はさらに、オートクレーブ処理されたセメント製品を作製するための方法、及び前記方法によって得られる、及び/又は得ることができる、オートクレーブ処理されたセメント製品に関する。本発明はさらに、オートクレーブ処理されたセメント製品を作製するための、本明細書に記載されるアルミン酸カルシウムセメント及び/又はセメント質組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
セメント質組成物は、組成物を硬化し、ある特定の機械特性を改善するために、オートクレーブ処理することができる。オートクレーブ処理されたセメント製品の例として、繊維セメント板及びオートクレーブ処理された気泡コンクリート(AAC)が挙げられる。ポルトランドセメントは、典型的に、セメント質組成物におけるセメントとして使用される。また、石灰をオートクレーブ処理中に使用して、シリカと反応させることができる。しかし、ポルトランドセメント及び石灰は両方とも、水と非常に急速に反応するので、セメント質組成物に遅延剤を含有させる必要がある。したがって、例えば代替の若しくは改善されたオートクレーブ処理されたセメント製品を提供することができる、かつ/又はセメント質組成物が水と反応する速度を低減することができるオートクレーブ処理された製品を作製するのに適した代替の又は改善されたセメント質組成物を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様によれば、
約0.25質量%以上、約50質量%未満のアルミン酸カルシウムセメント、
約20質量%~約60質量%の1種又は複数の他の水硬結合剤
を含むセメント質組成物が提供される。
本発明の第1の態様の実施形態では、セメント質組成物は、
約0質量%~約80質量%の1種若しくは複数の粒状材料、及び/又は
約0質量%~約15質量%の1種若しくは複数の強化用繊維、及び/又は
約0質量%~約2質量%の1種若しくは複数の発泡剤、及び/又は
約0質量%~約10質量%の1種若しくは複数のトバモライト変性剤
をさらに含むことができる。
本発明の第2の態様によれば、オートクレーブ処理されたセメント製品を作製するための方法であって、その任意の実施形態を含む本発明の第1の態様によるセメント質組成物をオートクレーブ処理するステップを含む方法が提供される。ある特定の実施形態では、オートクレーブ処理されたセメント製品は、繊維セメント板又はオートクレーブ処理された気泡コンクリート(AAC)である。
【0004】
本発明の第3の態様によれば、その任意の実施形態を含む本発明の第2の態様の方法によって得られる、及び/又は得ることができる、オートクレーブ処理されたセメント製品が提供される。
本発明の第4の態様によれば、オートクレーブ処理されたセメント製品を作製するための、アルミン酸カルシウムセメントの使用が提供される。ある特定の実施形態では、その任意の実施形態を含む本発明の第1の態様によるセメント質組成物は、オートクレーブ処理されたセメント製品を作製するために使用される。
本発明の第5の態様によれば、本発明の第1の態様によるセメント質組成物を作製するための方法が提供される。
本発明の任意の態様のある特定の実施形態は、以下の利点、
・靱性の増大、
・湿潤及び乾燥寸法安定性の改善、
・炭酸化抵抗性の改善、
・吸水性の改善、
・良好な加工性、
・熱耐性の改善、
・組み込まれる繊維量の低減、
・室温での低い反応性、
・オートクレーブにおける良好な反応性、
・環境フットプリントの低減
のうち1つ又は複数を提供することができる。
本発明の記載される態様の任意の特定の1つ又は複数に関して提供される詳細、例及び優先度は、本明細書にさらに記載され、本発明のすべての態様に等しく適用される。本明細書に記載される実施形態、例及び優先度の任意の組合せは、そのあらゆる可能な変形形態で、本明細書において別段指定されない限り、又はそうでなければ文脈と明らかに矛盾しない限り、本発明によって包含される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図3】参照例1及び実施例3の結合強度パターンを示す図である。
【
図4】サンプルをすぐに、質量が安定化するまで50%RH、23℃の養生条件で維持した場合の、参照例1及び実施例1~3の質量減少%を示す図である。
【
図5】90%HR、20℃における湿潤養生の後、サンプルを質量が安定化するまで50%RH、23℃の養生条件で維持した場合の、参照例1及び実施例1~3の質量減少%を示す図である。
【
図6】参照例2及び実施例4~6の質量減少%を示す図である。
【
図7】参照例2及び実施例6の結合強度パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明は、オートクレーブ処理されたセメント製品を作製するためのアルミン酸カルシウムセメントの使用が、いくつもの利点を提供するという驚くべき知見に基づく。例えば、アルミン酸カルシウムセメントは、室温及びオートクレーブ温度の両方において有用な反応性を有する製品を提供する。すなわち、アルミン酸カルシウムセメントは、セメントが凝結する前に組成物を作用させるのに十分な時間を提供するために遅延剤を添加する必要が生じるほど急速ではないが、そのプロセスが不経済になるほど緩慢ではない反応性を提供する。これにより、オートクレーブ処理されたセメント製品を作製するために使用される組成物は、オートクレーブ処理される前に室温で良好な加工性を有することが可能になる。さらに、オートクレーブ処理されたセメント製品には、例えば、機械的強度、靱性、湿潤及び乾燥寸法安定性、炭酸化抵抗性、及び/又は吸水の改善などの有利な特性が提供される。
【0007】
アルミン酸カルシウムセメントは、オートクレーブ処理されたセメント製品を作製するのに適したセメント質組成物に組み込まれ得る。本明細書で使用される場合、用語「セメント質組成物」は、1種又は複数のセメントを含む組成物を指す。
セメント質組成物は、1種若しくは複数の水硬結合剤(アルミン酸カルシウムセメント以外)、1種若しくは複数の粒状材料、1種若しくは複数の強化用繊維、1種若しくは複数の発泡剤、1種若しくは複数のトバモライト変性剤、又はそれらの組合せをさらに含むことができる。セメント質組成物は、例えば、1種又は複数の粒状材料及び1種又は複数の強化用繊維の少なくとも1つを含むことができる。例えば、繊維セメント板は、1種又は複数の強化用繊維を含むことができる。例えば、オートクレーブ処理された気泡セメントは、1種又は複数の粒状材料を含むことができる。セメント質組成物は、例えば、乾燥組成物(約5質量%未満の水分、例えば約4質量%未満又は約3質量%未満又は約2質量%未満又は約1質量%未満又は約0.5質量%未満の水分、例えば約0質量%の水分を含む)であってもよい。含水量は、組成物を、その質量が変化しなくなるまで加熱して水分を蒸発させ、加熱前及び加熱後の質量の差を計算することによって測定される。
【0008】
アルミン酸カルシウムセメント
アルミン酸カルシウムセメントは、セメント質組成物中に、セメント質組成物の全乾燥質量に基づいて、約0.25質量%以上、約50質量%未満の量で存在する。セメント質組成物の全乾燥質量は、水を除くセメント質組成物中に存在するすべての材料の全質量を指す。例えば、アルミン酸カルシウムセメントは、セメント質組成物中に、セメント質組成物の全乾燥質量に基づいて、約0.5質量%以上又は約1質量%以上又は約1.5質量%以上又は約2質量%以上又は約2.5質量%以上又は約3質量%以上又は約3.5質量%以上又は約4質量%以上の量で存在することができる。例えば、アルミン酸カルシウムセメントは、セメント質組成物中に、セメント質組成物の全乾燥質量に基づいて、約45質量%以下又は約40質量%以下又は約35質量%以下又は約30質量%以下又は約25質量%以下又は約20質量%以下又は約15質量%以下又は約10質量%以下又は約9質量%以下又は約8質量%以下又は約7質量%以下又は約6.5質量%以下又は約6質量%以下又は約5.5質量%以下又は約5質量%以下の量で存在することができる。例えば、アルミン酸カルシウムセメントは、セメント質組成物中に、セメント質組成物の全乾燥質量に基づいて、約0.25質量%~約40質量%又は約0.25質量%~約20質量%又は約0.25質量%~約10質量%又は約0.25質量%~約8質量%又は約0.25質量%~約6質量%又は約0.25質量%~約5質量%又は約0.5質量%~約40質量%又は約0.5質量%~約20質量%又は約0.5質量%~約10質量%又は約0.5質量%~約8質量%又は約0.5質量%~約6質量%又は約0.5質量%~約5質量%又は約1質量%~約40質量%又は約1質量%~約20質量%又は約1.5質量%~約10質量%又は約1.5質量%~約8質量%又は約2質量%~約6質量%又は約2質量%~約5質量%の範囲の量で存在することができる。例えば、アルミン酸カルシウムセメントは、セメント質組成物中に、セメント質組成物の全乾燥質量に基づいて、約0.25質量%~約20質量%又は約0.5質量%~約10質量%又は約1質量%~約8質量%の範囲の量で存在することができる。
【0009】
用語「アルミン酸カルシウムセメント」は、CnAxを含む組成物を指し、ここで、CはCaOであり、AはAl2O3であり、nは1~12の整数であり、xは1~24の整数である。
ある特定の実施形態では、アルミン酸カルシウムセメントはCA2を含み、ここで、CはCaOであり、AはAl2O3である。ある特定の実施形態では、アルミン酸カルシウムセメントはC2ASを含み、ここで、CはCaOであり、AはAl2O3であり、SはSiO2である。ある特定の実施形態では、アルミン酸カルシウムセメントはCA2及びC2ASの両方を含む。
【0010】
ある特定の実施形態では、アルミン酸カルシウムセメントは、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、約10質量%以上のCA2を含む。例えば、アルミン酸カルシウムセメントは、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、約20質量%以上又は約30質量%以上又は約40質量%以上又は約45質量%以上又は約50質量%以上のCA2を含むことができる。例えば、アルミン酸カルシウムセメントは、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、約70質量%以下又は約65質量%以下又は約60質量%以下のCA2を含むことができる。例えば、アルミン酸カルシウムセメントは、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、約10質量%~約70質量%又は約20質量%~約70質量%又は約30質量%~約70質量%又は約40質量%~約70質量%又は約50質量%~約70質量%又は約50質量%~約60質量%のCA2を含むことができる。
【0011】
ある特定の実施形態では、アルミン酸カルシウムセメントは、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、約15質量%以上のC2ASを含む。例えば、アルミン酸カルシウムセメントは、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、約20質量%以上又は約25質量%以上のC2ASを含むことができる。例えば、アルミン酸カルシウムセメントは、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、約45質量%以下又は約40質量%以下又は約35質量%以下又は約30質量%以下のC2ASを含むことができる。例えば、アルミン酸カルシウムセメントは、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、約0質量%~約45質量%又は約5質量%~約45質量%又は約15質量%~約45質量%又は約20質量%~約35質量%又は約20質量%~約30質量%又は約20質量%~約25質量%又は約26質量%~約32質量%のC2ASを含むことができる。例えば、アルミン酸カルシウムセメントは、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、約15質量%~約45質量%又は約20質量%~約35質量%のC2ASを含むことができる。
【0012】
ある特定の実施形態では、アルミン酸カルシウムセメントは、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、合計約80質量%以上のCA2及びC2ASを含む。例えば、アルミン酸カルシウムセメントは、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、合計約85質量%以上又は約90質量%以上又は約95質量%以上のCA2及びC2ASを含むことができる。例えば、アルミン酸カルシウムセメントは、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、合計100質量%までのCA2及びC2ASを含むことができる。例えば、アルミン酸カルシウムセメントは、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、合計約99質量%以下又は約98質量%以下又は約95質量%以下のCA2及びC2ASを含むことができる。例えば、アルミン酸カルシウムセメントは、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、合計約80質量%~約100質量%又は約80質量%~約90質量%又は約85質量%~約98質量%又は約90質量%~約95質量%のCA2及びC2ASを含むことができる。
【0013】
アルミン酸カルシウムセメントにおけるCA2及びC2AS以外のCnAxの全量は、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、例えば、約20質量%以下であってもよい。例えば、アルミン酸カルシウムセメントにおける、CA2及びC2AS以外のCnAxの全量は、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、約15質量%以下又は約10質量%以下又は約5質量%以下又は約2質量%以下又は約1質量%以下であってもよい。例えば、アルミン酸カルシウムセメントにおける、CA2及びC2AS以外のCnAxの全量は、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、約0.5質量%以上又は約1質量%以上又は約2質量%以上又は約5質量%以上又は約10質量%以上であってもよい。例えば、アルミン酸カルシウムセメントにおける、CA2及びC2AS以外のCnAxの全量は、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、約0.5質量%~約20質量%又は約1質量%~約15質量%又は約2質量%~約10質量%の範囲であってもよい。
アルミン酸カルシウムセメントは、例えばC、CA、CA6、C3A、C4A3$、C12A7、CAS2、CS、C2S、C3S、C3S2、A3S2、C4AF、及びC2A1-yFyのうち1つ又は複数をさらに含むことができ、ここで、CはCaOであり、AはAl2O3であり、SはSiO2であり、$はSO3であり、FはFe2O3であり、yは0~1、例えば0~0.7である。例えば、アルミン酸カルシウムセメントは、CA、CA6及びC4A3$のうち1つ又は複数、例えばCA、CA6及びC4A3$のすべてをさらに含むことができる。例えば、アルミン酸カルシウムセメントは、C、C3A、C12A7、CA、CA6及びC4A3$のうち1つ又は複数、例えばC、C3A、C12A7、CA、CA6及びC4A3$のすべてをさらに含むことができる。
【0014】
アルミン酸カルシウムセメントは、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、例えば、約0.5質量%以上のCAを含むことができる。例えば、アルミン酸カルシウムセメントは、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、約1質量%以上又は約1.5質量%以上又は約2質量%以上又は約2.5質量%以上のCAを含むことができる。例えば、アルミン酸カルシウムセメントは、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、約6質量%以下又は約5.5質量%以下又は約5質量%以下又は約4.5質量%以下又は約4質量%以下又は約3.5質量%以下のCAを含むことができる。例えば、アルミン酸カルシウムセメントは、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、約0.5質量%~約6質量%又は約1.5質量%~約4.5質量%又は約2.5質量%~約3.5質量%のCAを含むことができる。
【0015】
アルミン酸カルシウムセメントは、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、例えば、約0.25質量%以上のCA6を含むことができる。例えば、アルミン酸カルシウムセメントは、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、約0.5質量%以上又は約1質量%以上又は約2質量%以上又は約5質量%以上のCA6を含むことができる。例えば、アルミン酸カルシウムセメントは、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、約15質量%以下又は約10質量%以下又は約5質量%以下のCA6を含むことができる。例えば、アルミン酸カルシウムセメントは、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、約0.25質量%~約15質量%又は約0.5質量%~約10質量%又は約1質量%~約15質量%のCA6を含むことができる。
【0016】
アルミン酸カルシウムセメントにおけるCA及びCA6の全量は、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、例えば、約20質量%以下であってもよい。例えば、アルミン酸カルシウムセメントにおけるCA及びCA6の全量は、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、例えば、約15質量%以下又は約10質量%以下又は約5質量%以下であってもよい。例えば、アルミン酸カルシウムセメントにおけるCA及びCA6の全量は、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、例えば、約0.5質量%以上又は約1質量%以上又は約2質量%以上であってもよい。例えば、アルミン酸カルシウムセメントにおけるCA及びCA6の全量は、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、例えば、0質量%~約20質量%又は約0.5質量%~約15質量%又は約1質量%~約10質量%であってもよい。
【0017】
アルミン酸カルシウムセメントは、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、例えば、約5質量%以上のC4AFを含むことができる。例えば、アルミン酸カルシウムセメントは、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、約10質量%以上のC4AFを含むことができる。アルミン酸カルシウムセメントは、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、例えば、約20質量%以下又は約15質量%以下のC4AFを含むことができる。例えば、アルミン酸カルシウムセメントは、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、約5質量%~約20質量%又は約10質量%~約15質量%のC4AFを含むことができる。
【0018】
アルミン酸カルシウムセメントは、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、例えば、約0.5質量%以上のC4A3$を含むことができる。例えば、アルミン酸カルシウムセメントは、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、約1質量%以上又は約2質量%以上又は約5質量%以上のC4A3$を含むことができる。例えば、アルミン酸カルシウムセメントは、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、約20質量%以下又は約15質量%以下又は約10質量%以下のC4A3$を含むことができる。例えば、アルミン酸カルシウムセメントは、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、約0.5質量%~約20質量%又は約0.5質量%~約15質量%又は約1質量%~約10質量%又は約0.5質量%~約12質量%のC4A3$を含むことができる。
アルミン酸カルシウムセメントにおけるC12A7及びCA及びC4A3$の全量は、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、例えば、約10質量%以下であってもよい。例えば、アルミン酸カルシウムセメントにおけるC12A7及びCA及びC4A3$の全量は、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、例えば、約8質量%以下又は約6質量%以下又は約5質量%以下であってもよい。例えば、アルミン酸カルシウムセメントにおけるC12A7及びCA及びC4A3$の全量は、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、例えば、約0.5質量%以上又は約1質量%以上又は約2質量%以上又は約3質量%以上であってもよい。例えば、アルミン酸カルシウムセメントにおけるC12A7及びCA及びC4A3$の全量は、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、例えば、約0.5質量%~約10質量%又は約1質量%~約8質量%の範囲であってもよい。
【0019】
アルミン酸カルシウムセメントにおけるC、C3A、C12A7、CA及びC4A3$の全量は、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、例えば、約10質量%以下であってもよい。例えば、アルミン酸カルシウムセメントにおけるC、C3A、C12A7、CA及びC4A3$の全量は、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、例えば、約8質量%以下又は約6質量%以下又は約5質量%以下であってもよい。例えば、アルミン酸カルシウムセメントにおけるC、C3A、C12A7、CA及びC4A3$の全量は、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、例えば、約0.5質量%以上又は約1質量%以上又は約2質量%以上又は約3質量%以上であってもよい。例えば、アルミン酸カルシウムセメントにおけるC、C3A、C12A7、CA及びC4A3$の全量は、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、例えば、約0.5質量%~約10質量%又は約1質量%~約8質量%の範囲であってもよい。
【0020】
アルミン酸カルシウムセメントは、例えば、Fe2O3、TiO2 SO3、及びMgOのうち1つ又は複数をさらに含むことができる。アルミン酸カルシウムセメントは、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、例えば、0質量%~約5質量%のFe2O3、TiO2 SO3、及びMgOのそれぞれ、例えば、約0質量%~約3質量%又は約0.5質量%~約2質量%のFe2O3、TiO2 SO3、及びMgOのそれぞれを含むことができる。
アルミン酸カルシウムセメントは、例えば、1種又は複数のアルカリ金属酸化物(R2O、ここでRはアルカリ金属であり、例えばNa2O及びK2Oである)をさらに含むことができる。アルミン酸カルシウムセメントは、例えば、0質量%~約2質量%の各アルカリ金属酸化物を含むことができる。例えば、アルミン酸カルシウムセメントは、約0.5質量%~約1.5質量%又は約0.5質量%~約1質量%の各アルカリ金属酸化物を含むことができる。
【0021】
アルミン酸カルシウムセメント中に存在するFe2O3、TiO2、SO3、MgO及びアルカリ化合物は、アルミン酸カルシウムの製造のために使用される原材料から生じる不純物である。
アルミン酸カルシウムセメントは、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、例えば、約40質量%~約70質量%のCA2、及び約10質量%~約40質量%のC2ASを含むことができる。
アルミン酸カルシウムセメントは、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、例えば、約40質量%~約70質量%のCA2、約10質量%~約40質量%のC2AS、約0.5質量%~約10質量%のCA、及び約0質量%~約5質量%のC4AFを含むことができる。
アルミン酸カルシウムセメントは、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、例えば、約50質量%~約70質量%のCA2、及び約15質量%~約35質量%のC2ASを含むことができる。
【0022】
アルミン酸カルシウムセメントは、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、例えば、約40質量%~約60質量%のCA2及び約15質量%~約40質量%のC2ASを含むことができる。
アルミン酸カルシウムセメントは、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、例えば、約40質量%~約60質量%のCA2、約15質量%~約40質量%のC2AS、約0.5質量%~約10質量%のCA、及び約0質量%~約5質量%のC4AFを含むことができる。
アルミン酸カルシウムセメントは、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、例えば、約50質量%~約60質量%のCA2及び約25質量%~約35質量%のC2ASを含むことができる。
アルミン酸カルシウムセメントは、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、例えば、約50質量%~約60質量%のCA2、約25質量%~約35質量%のC2AS、約0.5質量%~約5質量%のCA、約0質量%~約2質量%のC4AFを含むことができる。
【0023】
アルミン酸カルシウムセメントは、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、例えば、約50質量%~約60質量%のCA2、約25質量%~約35質量%のC2AS、約0.5質量%~約5質量%のCA、約0質量%~約2質量%のC4AF、及び約5質量%~約20質量%のさらなる結晶化相(例えば、約2質量%~約6質量%のC4A3$を含む)を含むことができる。
アルミン酸カルシウムセメントは、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、例えば、約55質量%のCA2、約29質量%のC2AS、約3質量%のCA、約1質量%のC4AF、及び約12質量%のさらなる結晶化(crysallized)相(例えば、約4質量%のC4A3$を含む)を含むことができる。
アルミン酸カルシウムセメントは、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、例えば、約61質量%のCA2、約22質量%のC2AS、合計約7質量%のCA、C12A7及びC4A3$、約0.1質量%未満のC3A、及び約0.1質量%未満のCを含むことができる。
アルミン酸カルシウムセメントにおける各結晶相の量は、リートベルト方法などの定量的X線回折によって決定することができる。
【0024】
アルミン酸カルシウムセメントは、例えば、非晶質相を含むことができる。アルミン酸カルシウムセメントにおける非晶質相の量は、例えば、約60質量%以下、例えば、約55質量%以下又は約50質量%以下又は約45質量%以下又は約35質量%以下又は約30質量%以下又は約25質量%以下又は約20質量%以下又は約15質量%以下又は約10質量%以下又は約5質量%以下であってもよい。例えば、アルミン酸カルシウムセメントにおける非晶質相の量は、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、約1質量%以上又は約2質量%以上又は約5質量%以上であってもよい。例えば、アルミン酸カルシウムは、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、約1質量%~約60質量%又は約1質量%~約40質量%又は約1質量%~約20質量%又は約2質量%~約10質量%の非晶質相を含むことができる。
アルミン酸カルシウムセメントは、例えば、粉末の形態であってもよい。本明細書で使用される場合、用語「粉末」は、粒子の少なくとも約98%が、レーザー回折分析によって、例えばMicrotrac X100粒径分析器を使用して測定される、約2μm~約170μmの範囲のサイズを有する、粒子材料を指す。
粉末は、例えば、標準NF-EN-196-6に従って測定される、2200cm2/g~4500cm2/gの間、例えば2900cm2/g~3900cm2/gの間の範囲のBlaine比表面積を有することができる。
【0025】
アルミン酸カルシウムセメントは、例えば、酸化カルシウム及び酸化アルミニウムを混合し、混合物を焼結することによって作製することができる。酸化カルシウム及び酸化アルミニウムは、例えば、ボールミル又は当業者に公知の任意の他のミルを使用して、例えば同時粉砕することができる。同時粉砕された材料は、その後、水を用いて造粒され得る(同時粉砕された材料における粒子を凝集させるため)。焼結は、例えば、約2時間~約10時間の範囲の期間にわたって、約1000℃以上、例えば、約1400℃以上の温度で生じ得る。焼結後、形成されたアルミン酸カルシウムは、所望の粒径分布を形成するためにさらに粉砕されてもよい。
【0026】
酸化カルシウム及び酸化アルミニウムは、例えば、粘土及び副産物を含む任意の適切な供給源から得ることができる。酸化カルシウムは、例えば、石灰石に含まれていてもよい。酸化カルシウムは、例えば、実質的に純粋な酸化カルシウム(すなわち、約5質量%以下の不純物、例えば、約3質量%以下の不純物、約2質量%以下の不純物、又は約1質量%以下の不純物を含む物酸化カルシウム)であってもよい。酸化アルミニウムは、例えば、ボーキサイトに含まれていてもよい。酸化アルミニウムは、例えば、実質的に純粋な酸化アルミニウム(すなわち、約5質量%以下の不純物、例えば、約3質量%以下の不純物、約2質量%以下の不純物、又は約1質量%以下の不純物を含む酸化アルミニウム)であってもよい。酸化カルシウムは、例えば、石灰石及び実質的に純粋な酸化カルシウムの組合せであってもよい。酸化アルミニウムは、例えば、ボーキサイト及び実質的に純粋な酸化アルミニウムの組合せであってもよい。酸化カルシウムは、例えば、石灰石であってもよく、酸化アルミニウムは、例えば、実質的に純粋な酸化アルミニウムであってもよい。酸化カルシウムは、例えば、実質的に純粋な酸化カルシウムであってもよく、酸化アルミニウムは、例えば、ボーキサイトであってもよい。組成物におけるある特定のCnAxの量は、例えば、ボーキサイト及び/又は石灰石と比較して、実質的に純粋な酸化カルシウム及び/又は酸化アルミニウムを使用することによって調整することができる。組成物における不純物(例えば、シリカ、酸化鉄、二酸化チタン、及びR2Oなどの金属酸化物)の量は、例えば、ボーキサイト及び/又は石灰石と比較して、実質的に純粋な酸化カルシウム及び/又は酸化アルミニウムを使用することによって低減することができる。
【0027】
さらなる水硬結合剤
セメント質組成物は、例えば、1種又は複数のさらなる水硬結合剤(アルミン酸カルシウムセメント以外)を含むことができる。本明細書で使用される場合、用語「水硬結合剤」は、硬化して他の材料を一緒に接着することができる接着性組成物を作製するように、水と反応する材料を指す。用語「水硬結合剤」には、室温で水及び水酸化カルシウムと化学的に反応して、凝結又は硬化して他の材料を一緒に接着する接着性組成物を形成するポゾラン材料が含まれる。
本明細書に記載されるセメント質組成物において使用されるその他の水硬結合剤には、例えば、石灰及び/又はケイ酸カルシウム(2CaO.SiO2)が含まれ得る。
【0028】
その他の水硬結合剤は、例えば、ポルトランドセメント、石灰(例えば、消石灰を含む)、フライアッシュ、ポゾランアッシュ、高炉スラグ、シリカ粉、シリカフューム、メタカオリン、玄武岩、アルミノケイ酸塩、ポゾラン、又はそれらの組合せから選択することができる。例えば、その他の水硬結合剤は、ポルトランドセメント、石灰、ケイ酸カルシウム、又はそれらの組合せから選択することができる。例えば、その他の水硬結合剤は、ポルトランドセメント、石灰、又はそれらの組合せから選択することができる。
セメント質組成物における他の水硬結合剤の全量は、セメント質組成物の全乾燥質量に基づいて、例えば、約20質量%~約60質量%の範囲であってもよい。例えば、セメント質組成物における他の水硬結合剤の全量は、セメント質組成物の全乾燥質量に基づいて、約30質量%~約50質量%又は約35質量%~約45質量%の範囲であってもよい。特定の範囲は、1種又は複数の他の水硬結合剤の全量を指す。
【0029】
セメント質組成物におけるポルトランドセメントの全量は、セメント質組成物の全乾燥質量に基づいて、例えば、約0質量%~約45質量%、例えば、約20質量%~約45質量%又は約30質量%~約45質量%の範囲であってもよい。
セメント質組成物における石灰の全量は、セメント質組成物の全乾燥質量に基づいて、例えば、約0質量%~約30質量%、例えば約10質量%~約30質量%又は約20質量%~約30質量%の範囲であってもよい。
セメント質組成物における石灰の量は、約0~約30質量%の範囲であってもよく、セメント質組成物におけるポルトランドセメントの量は、セメント質組成物の全乾燥質量に基づいて、約0~約45質量%の範囲であってもよい。
粒状材料
セメント質組成物は、例えば、1種又は複数の粒状材料を含むことができる。本明細書で使用される用語「粒状材料」は、顆粒(粒子又は粒子の凝集体)から作製された非結合材料を指し、ここで、顆粒の少なくとも約98%は、ふるいによって測定される約5mm未満の粒径を有する。
【0030】
粒状材料は、例えば、石英、砂、石灰石、石こう、ケイ砂、又はそれらの組合せから選択することができる。粒状材料は、例えば、石こうであってもよい。
セメント質組成物における粒状材料の全量は、セメント質組成物の全乾燥質量に基づいて、例えば、約0質量%~約80質量%の範囲であってもよい。例えば、セメント質組成物における粒状材料の全量は、セメント質組成物の全乾燥質量に基づいて、約0.5質量%~約80質量%又は約1質量%~約80質量%又は約5質量%~約80質量%又は約10質量%~約80質量%又は約15質量%~約80質量%又は約20質量%~約70質量%又は約25質量%~約70質量%又は約30質量%~約70質量%又は約40質量%~約70質量%又は約50質量%~約70質量%の範囲であってもよい。例えば、セメント質組成物における1種又は複数の粒状材料の全量は、セメント質組成物の全乾燥質量に基づいて、約15質量%~約80質量%又は約25質量%~約70質量%又は約40質量%~約70質量%の範囲であってもよい。
セメント質組成物におけるケイ砂の全量は、セメント質組成物の全乾燥質量に基づいて、例えば、約25質量%~約70質量%又は約30質量%~約70質量%又は約40質量%~約70質量%又は約50質量%~約70質量%の範囲であってもよい。
【0031】
強化用繊維
セメント質組成物は、例えば、1種又は複数の強化用繊維を含むことができる。本明細書で使用される用語「強化用繊維」は、強化用繊維を含まない同じ材料と比較して、材料の構造的完全性を改善する繊維を指す。
強化用繊維は、例えば、天然繊維、合成繊維(fibe)、又はそれらの組合せであってもよい。強化用繊維は、例えば、セルロース繊維、セルロースパルプ、ガラス繊維、炭素繊維、ポリマー繊維、又はそれらの組合せから選択することができる。ポリマー繊維は、ポリビニルアセテート繊維、ポリエチレン繊維、ポリビニルアルコール繊維、又はそれらの組合せから選択することができる。
【0032】
セメント質組成物における強化用繊維の全量は、セメント質組成物の全乾燥質量に基づいて、例えば、約0質量%~約15質量%の範囲であってもよい。例えば、セメント質組成物における強化用繊維の全量は、0質量%であってもよい。例えば、AACにおける、又はAACを作製するために使用されるセメント質組成物における強化用繊維の全量は、0質量%であってもよい。例えば、繊維セメント板における、又は繊維セメント板を作製するために使用されるセメント質組成物の全量は、少なくとも約0.5質量%又は少なくとも約1質量%であってもよい。例えば、セメント質組成物における強化用繊維(例えば、繊維セメント板を作製するために使用されるセメント質組成物)の全量は、セメント質組成物の全乾燥質量に基づいて、約0.5質量%~約15質量%又は約1質量%~約12質量%又は約1質量%~約10質量%又は約2質量%~約8質量%の範囲であってもよい。
【0033】
発泡剤
セメント質組成物は、例えば、1種又は複数の発泡剤を含むことができる。本明細書で使用される用語「発泡剤」は、細孔形成剤、又は組成物において化学反応を受けて製品に取り込まれる気泡を形成する材料を指す。
発泡剤は、例えば、アルミニウム粉末であってもよい。
セメント質組成物における発泡剤の全量は、セメント質組成物の全乾燥質量に基づいて、例えば、約0質量%~約2質量%の範囲であってもよい。例えば、セメント質組成物における発泡剤の全量は、0質量%であってもよい。例えば、繊維セメント板における、又は繊維セメント板を作製するために使用されるセメント質組成物における発泡剤の全量は、0質量%であってもよい。例えば、オートクレーブ処理された気泡コンクリート(AAC)における、又はオートクレーブ処理された気泡コンクリート(AACT)を作製するために使用されるセメント質組成物における発泡剤の全量は、少なくとも約0.01質量%又は少なくとも約0.05質量%又は少なくとも約0.1質量%であってもよい。例えば、セメント質組成物(例えば、オートクレーブ処理された気泡コンクリート(AAC)を作製するために使用されるセメント質組成物)における発泡剤の全量は、セメント質組成物の全乾燥質量に基づいて、約0.01質量%~約1.5質量%又は約0.01質量%~約1質量%又は約0.02質量%~約0.6質量%又は約0.04質量%~約0.5質量%の範囲であってもよい。
【0034】
トバモライト変性剤
セメント質組成物は、例えば、1種又は複数のトバモライト変性剤を含むことができる。用語「トバモライト変性剤」は、トバモライトの形成を促進するか、又はトバモライトの化学組成を変性する化合物を指す。
セメント質組成物は、セメント質組成物の全乾燥質量に基づいて、例えば、合計約0質量%~約10質量%のトバモライト変性剤を含むことができる。例えば、セメント質組成物は、0質量%のトバモライト変性剤を含むことができる。例えば、オートクレーブ処理された気泡セメント(AAC)、又はAACを作製するために使用されるセメント質組成物は、0質量%のトバモライト変性剤を含むことができる。例えば、繊維セメント板、又は繊維セメント板を作製するために使用されるセメント質組成物は、合計少なくとも約0.5質量%又は少なくとも約1質量%のトバモライト変性剤を含むことができる。例えば、セメント質組成物は、合計約0.5質量%~約10質量%又は約1質量%~約10質量%又は約1.5質量%~約8質量%又は約2質量%~約6質量%のトバモライト変性剤を含むことができる。
セメント質組成物は、アルミニウム供給源及び/又は硫酸塩供給源がセメント質組成物に添加される場合、例えば、1種又は複数のトバモライト変性剤を含むことができる。
【0035】
他の任意の添加剤
セメント質組成物は、例えば、1種又は複数のさらなる任意の添加剤を含むことができる。例えば、セメント質組成物は、組成物のpHに影響を及ぼす1種若しくは複数のさらなる任意の添加剤、1種若しくは複数の分散剤、1種若しくは複数の酸化防止剤、1種若しくは複数の粘度変性剤、1種若しくは複数の硬化剤、1種若しくは複数の促進剤、1種若しくは複数の遅延剤、1種若しくは複数の界面活性剤、1種もしくは複数の架橋剤、1種若しくは複数の増粘剤、1種若しくは複数の抗凝固剤、1種若しくは複数の凝集剤、及び/又は1種若しくは複数のレオロジー特性調節剤を含むことができる。
セメント質組成物における他の任意の添加剤の全量は、セメント質組成物の全乾燥質量に基づいて、例えば、約20質量%以下であってもよい。例えば、他の任意の添加剤の全量は、約15質量%以下又は約12質量%以下又は約10質量%以下又は約8質量%以下又は約7質量%以下又は約6質量%以下又は約5質量%以下であってもよい。例えば、セメント質組成物における他の任意の添加剤の全量は、約0.5質量%以上又は約1質量%以上であってもよい。例えば、セメント質組成物における他の任意の添加剤の全量は、0質量%~約20質量%又は約0.5質量%~約20質量%又は約1質量%~約15質量%又は約2質量%~約10質量%であってもよい。
1種又は複数のレオロジー特性調節剤の全量は、セメント質組成物の全乾燥質量に基づいて、例えば、約5質量%以下であってもよい。例えば、1種又は複数のレオロジー特性調節剤の全量は、0質量%であってもよい。例えば、1種又は複数のレオロジー特性調節剤の全量は、セメント質組成物の全乾燥質量に基づいて、約0.5質量%~約5質量%又は約1質量%~約4質量%であってもよい。
【0036】
例示的なセメント質組成物
セメント質組成物は、例えば、セメンテーション組成物の全乾燥質量に基づいて、
約1質量%~約10質量%のアルミン酸カルシウムセメント、及び
約20質量%~約50質量%の1種又は複数の他の水硬結合剤
を含むことができる。
セメント質組成物は、例えば、セメンテーション組成物の全乾燥質量に基づいて、
約1質量%~約10質量%のアルミン酸カルシウムセメント、
約20質量%~約50質量%の1種又は複数の他の水硬結合剤、及び
約0.5質量%~約15質量%の1種又は複数の強化用繊維
を含むことができる。
セメント質組成物は、例えば、セメンテーション組成物の全乾燥質量に基づいて、
約1質量%~約10質量%のアルミン酸カルシウムセメント、
約20質量%~約50質量%の1種又は複数の他の水硬結合剤、及び
約20質量%~約70質量%の1種又は複数の粒状材料
を含むことができる。
【0037】
セメント質組成物は、例えば、セメンテーション組成物の全乾燥質量に基づいて、
約1質量%~約10質量%のアルミン酸カルシウムセメント、
約20質量%~約40質量%の1種又は複数の他の水硬結合剤、及び
約1質量%~約10質量%の1種又は複数の強化用繊維
を含むことができる。
セメント質組成物は、例えば、セメンテーション組成物の全乾燥質量に基づいて、
約1質量%~約10質量%のアルミン酸カルシウムセメント、
約20質量%~約40質量%の1種又は複数の他の水硬結合剤、及び
約30質量%~約70質量%の1種又は複数の粒状材料
を含むことができる。
【0038】
セメント質組成物は、例えば、セメンテーション組成物の全乾燥質量に基づいて、
約1質量%~約10質量%のアルミン酸カルシウムセメント、
約25質量%~約35質量%の1種又は複数の他の水硬結合剤、及び
約1質量%~約10質量%の1種又は複数の強化用繊維
を含むことができる。
セメント質組成物は、例えば、セメンテーション組成物の全乾燥質量に基づいて、
約1質量%~約10質量%のアルミン酸カルシウムセメント、
約25質量%~約35質量%の1種又は複数の他の水硬結合剤、及び
約50質量%~約70質量%の1種又は複数の粒状材料
を含むことができる。
セメント質組成物は、例えば、セメンテーション組成物の全乾燥質量に基づいて、
約1質量%~約10質量%のアルミン酸カルシウムセメント、
約35質量%~約45質量%の1種又は複数の他の水硬結合剤、及び
約1質量%~約10質量%の1種又は複数の強化用繊維
を含むことができる。
【0039】
セメント質組成物は、例えば、セメンテーション組成物の全乾燥質量に基づいて、
約1質量%~約10質量%のアルミン酸カルシウムセメント、
約35質量%~約45質量%の1種又は複数の他の水硬結合剤、及び
約50質量%~約70質量%の1種又は複数の粒状材料
を含むことができる。
セメント質組成物は、例えば、セメンテーション組成物の全乾燥質量に基づいて、
約1質量%~約6質量%のアルミン酸カルシウムセメント、
約25質量%~約35質量%の1種又は複数の他の水硬結合剤、及び
約1質量%~約10質量%の1種又は複数の強化用繊維
を含むことができる。
セメント質組成物は、例えば、セメンテーション組成物の全乾燥質量に基づいて、
約1質量%~約6質量%のアルミン酸カルシウムセメント、
約35質量%~約45質量%の1種又は複数の他の水硬結合剤、及び
約1質量%~約10質量%の1種又は複数の強化用繊維
を含むことができる。
【0040】
セメント質組成物は、例えば、セメンテーション組成物の全乾燥質量に基づいて、
約1質量%~約6質量%のアルミン酸カルシウムセメント、
約25質量%~約35質量%の1種又は複数の他の水硬結合剤、及び
約55質量%~約65質量%の1種又は複数の粒状材料
を含むことができる。
セメント質組成物は、例えば、セメンテーション組成物の全乾燥質量に基づいて、
約1質量%~約6質量%のアルミン酸カルシウムセメント、
約35質量%~約45質量%の1種又は複数の他の水硬結合剤、及び
約45質量%~約55質量%の1種又は複数の粒状材料
を含むことができる。
セメント質組成物は、例えば、セメンテーション組成物の全乾燥質量に基づいて、
約1質量%~約10質量%のアルミン酸カルシウムセメント、
約25質量%~約35質量%の1種又は複数の他の水硬結合剤、
約50質量%~約70質量%の1種又は複数の粒状材料、及び
約2質量%~約15質量%の1種又は複数の強化用繊維
を含むことができる。
【0041】
セメント質組成物は、例えば、セメンテーション組成物の全乾燥質量に基づいて、
約1質量%~約10質量%のアルミン酸カルシウムセメント、
約35質量%~約45質量%の1種又は複数の他の水硬結合剤、
約40質量%~約70質量%の1種又は複数の粒状材料、及び
約2質量%~約15質量%の1種又は複数の強化用繊維
を含むことができる。
セメント質組成物は、例えば、セメンテーション組成物の全乾燥質量に基づいて、
約1質量%~約6質量%のアルミン酸カルシウムセメント、
約25質量%~約35質量%の1種又は複数の他の水硬結合剤、
約55質量%~約65質量%の1種又は複数の粒状材料、及び
約2質量%~約10質量%の1種又は複数の強化用繊維
を含むことができる。
セメント質組成物は、例えば、セメンテーション組成物の全乾燥質量に基づいて、
約1質量%~約6質量%のアルミン酸カルシウムセメント、
約35質量%~約45質量%の1種又は複数の他の水硬結合剤、
約45質量%~約55質量%の1種又は複数の粒状材料、及び
約2質量%~約10質量%の1種又は複数の強化用繊維
を含むことができる。
【0042】
セメント質組成物を作製するための方法
本明細書に記載されるセメント質組成物は、当業者に公知の任意の適切な方法によって作製することができる。この方法は、例えば、所望の量の各成分を測定し、任意の適切な混合装置を使用して成分を一緒に混合することを含むことができる。成分は、任意の順序で混合することができる。セメント成分(アルミン酸カルシウムセメント及び任意の他の水硬結合剤)は、例えば、すべてのその他の成分を混合した後に、セメント質組成物に混合することができる。成分は、例えば、乾燥形態で混合することができる。あるいは、成分の一部又はすべてが、水溶液又は懸濁液であってもよい。水は、任意の段階で混合物に添加することができる。
セメント質組成物は、例えば、乾燥組成物であってもよい。あるいは、セメント質組成物は、例えば、約40質量%以下の固体、例えば、約35質量%以下の固体又は約30質量%以下の固体、例えば、約10質量%~40質量%の固体の固体含量を有する水性スラリーであってもよい。
【0043】
オートクレーブ処理されたセメント製品及び方法
本明細書に記載されるセメント質組成物は、オートクレーブ処理されたセメント製品を作製するために使用するのに適している。本明細書で使用される場合、用語「オートクレーブ処理されたセメント製品」は、セメント質組成物がオートクレーブ処理を受ける場合に形成される製品を指し、オートクレーブ処理は、100℃~372℃の間の温度に、大気圧よりも高い(約101.325kPaよりも高い)圧力で加熱することを含む。例えば、本発明によるオートクレーブ処理されたセメント製品は、Hatscheckプロセスに従って、例えば米国特許出願公開第2018/0169895号によるHatscheck器械を使用して作製することができ、その文書の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
オートクレーブ処理期間は、例えば、約2時間~約2日であり得る。
セメント質組成物は、例えば、オートクレーブ処理を行う前に養生行うことができる。養生は、例えば、約18℃~約60℃の範囲の温度で行ってもよい。養生は、例えば、約18℃~約30℃の範囲の温度で行ってもよい。養生は、例えば、約4時間~約96時間、例えば約8時間~約72時間、例えば約12時間~約60時間、例えば約12時間~約20時間の範囲の期間で行ってもよい。
【0044】
オートクレーブ処理されたセメント製品は、例えば、繊維セメント板又はオートクレーブ処理された気泡コンクリート(AAC)であってもよい。
繊維セメント板は、セメント及び強化用繊維の組合せから形成された材料である。繊維セメント板は、粒状材料などの他の材料をさらに含むことができる。
オートクレーブ処理された気泡コンクリートは、セメント、粒状材料、及び組成物中に気泡を生じるための発泡剤を含むタイプのプレキャストコンクリートである。オートクレーブ処理された気泡コンクリートは、例えば、強化用繊維をさらに含むことができる。
オートクレーブ処理されたセメント製品は、例えば、約15MPa以下の破断(rapture)係数(MOR)を有することができる。例えば、オートクレーブ処理されたセメント製品は、約14MPa以下又は約13MPa以下又は約12MPa以下又は約11MPa以下又は約10MPa以下又は約9MPa以下又は約8MPa以下のMORを有することができる。例えば、オートクレーブ処理されたセメント製品は、約2MPa以上又は約3MPa以上又は約4MPa以上又は約5MPa以上のMORを有することができる。例えば、オートクレーブ処理されたセメント製品は、約2MPa~約15MPa又は約4MPa~約12MPa又は約5MPa~約10MPaの範囲のMORを有することができる。
【0045】
オートクレーブ処理されたセメント製品は、例えば、約8500Mpa以下の弾性係数(MOE)を有することができる。例えば、オートクレーブ処理されたセメント製品は、約8000MPa以下又は約7500MPa以下又は約7000MPa以下又は約6500MPa以下又は約6000MPa以下又は約5500MPa以下又は約5000MPa以下又は約4500MPa以下又は約4000MPa以下のMOEを有することができる。例えば、オートクレーブ処理されたセメント製品は、約1000MPa以上又は約1500MPa以上又は約2000MPa以上又は約2500MPa以上のMOEを有することができる。例えば、オートクレーブ処理されたセメント製品は、約1000MPa~約8500MPa又は約2000MPa~約6000MPa又は約3000MPa~約5000MPaの範囲のMOEを有することができる。
オートクレーブ処理されたセメント製品は、例えば、約2000J/m2以下の靭性を有することができる。例えば、オートクレーブ処理されたセメント製品は、約1800J/m2以下又は約1600J/m2以下又は約1500J/m2以下又は約1400J/m2以下又は約1200J/m2以下の靭性を有することができる。例えば、オートクレーブ処理されたセメント製品は、約500J/m2以上又は約600J/m2以上又は約800J/m2以上の靭性を有することができる。例えば、オートクレーブ処理されたセメント製品は、約500J/m2~約2000J/m2又は約600J/m2~約1800J/m2又は約800J/m2~約1600J/m2の範囲の靭性を有することができる。
【0046】
オートクレーブ処理されたセメント製品の機械特性は、ASTM C1185及びC1186に従って測定することができる。
オートクレーブ処理されたセメント製品は、例えば、約1.0g/cm3~約1.4g/cm3、例えば、約1.1g/cm3~約1.3g/cm3の範囲の密度を有することができる。
オートクレーブ処理されたセメント製品は、例えば、約20%以上の吸水能を有することができる。例えば、オートクレーブ処理されたセメント製品は、約25%以上又は約30%以上又は約35%以上又は約40%以上の吸水能を有することができる。例えば、オートクレーブ処理されたセメント製品は、約80%以下又は約70%以下又は約60%以下又は約50%以下の吸水能を有することができる。例えば、オートクレーブ処理されたセメント製品は、約20%~約80%又は約30%~約60%又は約40%~約50%の範囲の吸水能を有することができる。
【0047】
オートクレーブ処理されたセメント製品の吸水能は、ASTM C1186に従って、予備的な乾燥後に水に浸漬することによって測定することができる。
オートクレーブ処理されたセメント製品は、例えば、約0.2%以下の長さ変化を有することができる。例えば、オートクレーブ処理されたセメント製品は、約0.15%以下又は約0.1%以下又は約0.09%以下又は約0.08%以下又は約0.07%以下又は約0.06%以下の長さ変化を有することができる。例えば、オートクレーブ処理されたセメント製品は、約0.01%以上又は約0.02%以上の長さ変化を有することができる。例えば、オートクレーブ処理されたセメント製品は、約0.01%~約0.2%又は約0.02%~約0.1%の範囲の長さ変化を有することができる。
オートクレーブ処理されたセメント製品の長さ変化は、ASTM C1186などによって湿潤条件と乾燥条件とで比較することによって測定することができる。
【0048】
以下の付番された段落により、本発明の特定の実施形態を定義する。
1.セメント質組成物の全乾燥質量に基づいて、
約0.25質量%以上、約50質量%未満のアルミン酸カルシウムセメント、及び
約20質量%~約60質量%の1種又は複数の他の水硬結合剤
を含む、セメント質組成物。
2.セメント質組成物の全乾燥質量に基づいて、約0質量%~約80質量%の1種又は複数の粒状材料をさらに含む、段落1のセメント質組成物。
3.約0質量%~約15質量%の1種又は複数の強化用繊維をさらに含む、段落1又は2のセメント質組成物。
4.1種又は複数の発泡剤、例えば、約0質量%~約2質量%の1種又は複数の発泡剤をさらに含む、前述の任意の段落のセメント質組成物。
5.1種又は複数のトバモライト変性剤、例えば、約0質量%~約10質量%の1種又は複数のトバモライト変性剤をさらに含む、前述の任意の段落のセメント質組成物。
6.約0.25質量%~約20質量%のアルミン酸カルシウムセメントを含む、前述の任意の段落のセメント質組成物。
7.約1質量%~約10質量%のアルミン酸カルシウムセメントを含む、段落6のセメント質組成物。
【0049】
8.約0.5質量%~約8質量%のアルミン酸カルシウムセメントを含む、段落1~6のいずれかのセメント質組成物。
9.約2質量%~約5質量%のアルミン酸カルシウムセメントを含む、段落8のセメント質組成物。
10.アルミン酸カルシウムセメントがCA2を含み、CはCaOであり、AはAl2O3である、前述の任意の段落のセメント質組成物。
11.アルミン酸カルシウムセメントが、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて約40質量%~約70質量%のCA2を含む、前述の任意の段落のセメント質組成物。
12.アルミン酸カルシウムセメントがC2ASを含み、CはCaOであり、AはAl2O3であり、SはSiO2である、前述の任意の段落のセメント質組成物。
13.アルミン酸カルシウムセメントが、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて約0質量%~約45質量%のC2ASを含む、前述の任意の段落のセメント質組成物。
14.アルミン酸カルシウムセメントが、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて約15質量%~約45質量%のC2ASを含む、段落13のセメント質組成物。
15.アルミン酸カルシウムセメントが、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて、合計約80質量%以上のCA2及びC2ASを含む、前述の任意の段落のセメント質組成物。
【0050】
16.アルミン酸カルシウムセメントが、C、CA、CA6、C3A、C4A3$、C12A7、CAS2、CS、C2S、C3S、C3S2、A3S2、C4AF、及びC2A1-yFyのうち1つ又は複数をさらに含み、CはCaOであり、AはAl2O3であり、SはSiO2であり、$はSO3であり、FはFe2O3であり、yは0~1、例えば0~0.7である、前述の任意の段落のセメント質組成物。
17.アルミン酸カルシウムセメントが、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて約0.5質量%~約6質量%のCAを含む、前述の任意の段落のセメント質組成物。
18.アルミン酸カルシウムセメントが、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて約0.25質量%~約15質量%のCA6を含む、前述の任意の段落のセメント質組成物。
19.アルミン酸カルシウムセメントが、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて約5質量%~約20質量%のC4AFを含む、前述の任意の段落のセメント質組成物。
20.アルミン酸カルシウムセメントが、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて約0.5質量%~約20質量%のC4A3$を含む、前述の任意の段落のセメント質組成物。
【0051】
21.C12A7及びCA及びC4A3$の全量が、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて約10質量%以下である、前述の任意の段落のセメント質組成物。
22.C、C3A、C12A7、CA及びC4A3$の全量が、アルミン酸カルシウムセメントの全乾燥質量に基づいて約10質量%以下である、前述の任意の段落のセメント質組成物。
23.1種又は複数の他の水硬結合剤が、ポルトランドセメント、フライアッシュ、ポゾランアッシュ、高炉スラグ、シリカ粉、シリカフューム、メタカオリン、石灰(例えば、消石灰を含む)、玄武岩、アルミノケイ酸塩、ポゾラン、又はそれらの組合せから選択される、前述の任意の段落のセメント質組成物。
24.約20質量%~約60質量%の1種又は複数の他の水硬結合剤を含む、前述の任意の段落のセメント質組成物。
25.約20質量%~約40質量%又は約30質量%~約50質量%の1種又は複数の他の水硬結合剤を含む、前述の任意の段落のセメント質組成物。
26.粒状材料が、石英、砂、石灰石、石こう、ケイ砂、又はそれらの組合せから選択される、前述の任意の段落のセメント質組成物。
27.約15質量%~約80質量%の1種又は複数の粒状材料を含む、前述の任意の段落のセメント質組成物。
【0052】
28.約20質量%~約70質量%又は約20質量%~約50質量%又は約40質量%~約60質量%の1種又は複数の粒状材料を含む、前述の任意の段落のセメント質組成物。
29.1種又は複数の強化用繊維が、セルロース繊維、セルロースパルプ、ガラス繊維、炭素繊維、ポリマー繊維、及びそれらの組合せから選択される、前述の任意の段落のセメント質組成物。
30.ポリマー繊維が、ポリビニルアセテート繊維、ポリエチレン繊維、ポリビニルアルコール繊維、又はそれらの組合せから選択される、段落29のセメント質組成物。
31.約0質量%~約15質量%の1種又は複数の強化用繊維、例えば約1質量%~約10質量%の1種又は複数の強化用繊維を含む、前述の任意の段落のセメント質組成物。
32.1種又は複数の発泡剤が、アルミニウム、例えばアルミニウム粉末である、前述の任意の段落のセメント質組成物。
33.約0質量%~約2質量%の1種又は複数の発泡剤を含む、前述の任意の段落のセメント質組成物。
34.約0質量%~約5質量%の1種又は複数のレオロジー特性調節剤を含む、前述の任意の段落のセメント質組成物。
【0053】
35.トバモライト変性剤が、硫酸カルシウム及び水酸化アルミニウムから選択される、前述の任意の段落のセメント質組成物。
36.オートクレーブ処理されたセメント製品を作製するための方法であって、前述の任意の段落のセメント質組成物をオートクレーブ処理するステップを含む、方法。
37.オートクレーブ処理するステップの前に、セメント質組成物を養生するステップを含む、段落36の方法。
38.オートクレーブ処理するステップの前及び/又は養生するステップの前に、セメント質組成物を水と混合するステップを含む、段落36又は37の方法。
39.オートクレーブ処理されたセメント製品が、繊維セメント板又はオートクレーブ処理された気泡コンクリート(AAC)である、段落36~38のいずれかの方法。
40.段落36~39のいずれかの方法によって得られる、及び/又は得ることができる、オートクレーブ処理されたセメント製品。
41.オートクレーブ処理されたセメント製品を作製するための、アルミン酸カルシウムセメントの使用。
42.オートクレーブ処理されたセメント製品が、繊維セメント板又はオートクレーブ処理された気泡コンクリート(AAC)である、段落41の使用。
43.オートクレーブ処理されたセメント製品の靱性及び/又は寸法安定性及び/又は炭酸化抵抗性及び/又は吸水性を増大する、段落41又は42の使用。
44.段落1~35のいずれかのセメント質組成物が、オートクレーブ処理されたセメント製品を作製するために使用される、段落41~43のいずれかの使用。
【実施例】
【0054】
(実施例1)
本発明によるいくつかのセメント質組成物を作製し、それを使用してセメントシートを形成し、そのセメントシートを養生し、オートクレーブ処理した。また、アルミン酸カルシウムセメントを含まない参照組成物を使用して、繊維セメントシートを形成し、そのシートを養生し、オートクレーブ処理した。シートの機械特性、吸水性及び寸法安定性を、本明細書に記載される方法を使用して試験した。
本発明に従って作製されたシートのMORは、参照のMORと比較して低下した。
本発明に従って作製されたシートのMOEは、参照のMOEと比較して実質的に同じか、又は低下した。
本発明に従って作製されたシートの靱性は、参照の靱性と比較して実質的に同じか、又は低下した。
本発明に従って作製されたシートの吸水性は、参照の吸水性と比較して実質的に同じであった。
本発明に従って作製されたシートの長さ変化%は、参照の長さ変化%と比較して低下した。
【0055】
(実施例2)
サンプルの調製
成分の一覧
- ポルトランドセメント(OPC)は、CCB-CEMENTIRによって製造されたOPC 52.5N CEMIである。RIETVELD分析による化学分析及び鉱物学は、それぞれ表1及び表2に列挙される。
- アルミン酸カルシウムセメント(CAC)は、IMERYS ALUMINATESによって内部参照名PP290で開発され、製造された。化学分析及び主な鉱物相分析は、それぞれ表3及び表4に列挙される。
- 天然セルロース繊維ARBOCEL(登録商標)ZZ8/1は、J.RETTENMAIER & SOHNEによって生成される。
- シリカは、SIBELCOによって製造されたMillisil E400である。
- 石こうは、Saint Gobainによって製造されたDH11である。
- 凝集剤は、SNF Floegerによって製造された、アニオン性ポリアクリルアミドであるFloset NG130である(分子量30000、イオン度(iconicity)25%)。
- 消泡剤は、Peraminによって製造されたDefoam 50 PEである。
- 水は水道水である。
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
特に、セメント質組成物を、以下のプロトコールに従って調製した。
手すきシート(handsheet)を生成するために、特別な型を使用した。40×40×160(mm)のプラスチック型に、直径2mmの40~45個の孔を開ける。ベースメントの底部表面に、圧縮中の排水を改善するために、孔をつなぐ3つの平行な列で溝を付ける(
図1を参照されたい)。
100μmのサイズを有する40×160(mm×mm)サイズのフィルタ鋼ワイヤー布を、ベースメントの上部表面に置く。このフィルタは、圧縮中に固体材料が放出しないようにし、型からの最終的な脱離を助ける。最後に、15×40×160(mm×mm×mm)の較正済みメタルフォームを、圧縮前に湿潤混合物の上部に置く。実施例では、型の両端のキャビティだけを使用した(
図2を参照されたい)。
すべての乾燥ミックス設計物を別個に秤量し、次に、TURBULA(登録商標)3Dシェーカーミキサー中で15分間一緒にブレンドする。
【0061】
【0062】
これらの実施例では(表5)、乾燥ミックス中、同じ繊維含量で機械特性を比較するために、すべてのミックス設計物を、同じ(OPC+CACセメント)/セルロース繊維比で比較する。
次に、PERRIER惑星型標準セメントモルタルミキサー内に、水を直接添加する(0.5質量部の乾燥ミックスに対して1.24質量部の水)。ミックスの全質量は、1.74kgである。次に、最初の30秒間にわたって、混合し、停止し、ボウルをこそげる(scrapping)間に水を添加するステップと、7.5分間にわたって最終的に混合するステップの2つのステップで、混合物を8分間にわたって低速(140rpm)で撹拌する。
次に、湿潤混合物を1ステップで注ぐ。第1の層に、型の深さの半分まで打設されるように、湿潤混合物0.15kgを充填する。次に、鋼ワイヤー布の1層及び較正済みのメタルフォームの2層を、湿潤混合物の新しい打設層の上部に置く。次に、第1のフォームを型に貫入させることができるまで、最も上にあるフォームを手作業により圧縮する。
最大深さに達したら、貫入プロセスを、機械的プレス機を活用して行う。過剰の水を受容器に収集する。機械的圧縮は、10kN機械センサーを備えた3R製のRP50 SYNTRISけん引装置を用いて実施する。圧縮は、2mm/分の一定の変位速度で行う。圧縮機には、245×245×20mmの寸法の2つのメタルプレートが備えられている。
荷重変位曲線をモニタリングし、荷重値が、水の除去がより困難になり始める6kNの限界値に達したら、荷重プロセスを停止する。手すきシートは、圧縮後におよそ(approximatively)5~6mmの厚さを有する。
【0063】
次に、取扱い中にいかなる初期破壊も生じないように、オートクレーブ処理する前に最小の機械的強度を生じさせるために、蒸発を回避するための封止プラスチックバッグ内に包まれた手すきシートに対して、事前養生を、50℃、90%HRで5時間行った。
次に、手すきシートを、容器に入れるのに適したサイズを有する3つの切片に切断する。すべての切片について、次の段階の前に寸法及び質量を測定する。次に、175℃において9バールで操作される特別な装置内で、オートクレーブ処理を8時間行う。オートクレーブに少量の水を添加することにより、手すきシート自体からの蒸発を回避して、過剰の水から生じる飽和蒸気を保持する。手すきシートを、セラミックの支持ブラケットを用いて水から取り出す。
オートクレーブ処理期間の後、加熱を停止し、温度が室温(約25℃)に達するまで、サンプルをオートクレーブ内で維持した。質量及び寸法をモニタリングした。サンプルを封止したプラスチックバッグ内で維持した。次に、7日以内に機械的試験を実施した。
【0064】
鉱物学的分析
分析については、オートクレーブ処理した後に、XRDをミックス設計物に対して実施した。
XRDパターンを、Bruker D8 Advanceを用いて作製した。サンプル50mgに対してCu Ka線(1.5406Å)を用い、予備的に破砕し、RETSCH RM 200で30秒の間に2mnに製粉するようにプログラムした。
トバモライト、石英、Si-加藤石及びベーマイト含量を、バックグラウンドノイズを取り除く擬似フォークトフィッティングを使用し、X線回折パターンから評価した。非晶質含量も、ZnO粉末標準を使用して評価した。次に、ピーク下面積(area surface)を計算して、情報を任意の単位で提供した。選択されたピークは、他の相と重複しない参照ピークであった。
残りのCA2及びC2ASは、PP290の主成分であり、これも、CAC消費を検証するためにオートクレーブ処理中に同じ手順を用いて評価した。
【0065】
表6は、XRDによって提供された主な収集情報を示す。
【表6】
【0066】
ベーマイト及びSi-加藤石の線形増加は、CAC投入量の増大と共に現れることを認めることができた。トバモライト質量百分率は、PP290の添加と共に増大する。非晶質含量(オートクレーブ処理後に残るC-S-Hを含む)については、百分率は、PP290をミックス設計物に添加してすぐに低下する。石英は、参照物に対して消費量が少ないが、CAC投入量が増大されると、存在するケイ酸カルシウムが少なくなる(OPC/石英比)ことが思い出されるべきである。ひいては、C-S-Hからトバモライトへの変換に必要な石英は少なくて済む。
XRDパターンでは残りのCA2は検出されず、より高い投入量のPP290については、C2ASが残ることが認められた。
【0067】
さらに、少量のPP290の添加では、ピークの標準偏差によって表される通り、Al-トバモライトピークのわずかな広がりがあることが見出されたが、このことは、Al-トバモライトの合成に好都合となり得る(表7を参照されたい)。
【表7】
Si-加藤石におけるSi含量を、C
3AS
3xH
6(1-x)シリーズ(serie)のいくつかのSi置換加藤石のPASSAGLIAのデータを使用することによって評価した(「加藤石、C
3AS
3-C
3AH
6シリーズの新しい一員、かつ鉱物のハイドログロッシュラー(hydrogrossular)群についての新しい命名法」、PASSAGLIA E., Bull.Mineral., 107, pp605-608 (1984))。計算値は、x=18~22%の範囲である。
CAC及びそのCA
2相も、オートクレーブ処理において反応することが示される。
【0068】
機械特性
機械的試験は、数日の材齢の異なるサンプルの3点曲げをモニタリングすることからなり、それらのいくつかを、完全な破断破壊までモニタリングした。
曲げ特性については、荷重速度は、2mm/分の速度に達するような速度で維持する。
情報は、応力-変形曲線から抽出する。
曲げ特性
曲げ機械特性は、PP290の添加により変更される。結果を
図3に示す。実施例3は、より高い延性、破断なしのより長い変位能、及びなお重要な機械的強度を提供する。
疑似延性は、荷重変位曲線下面積を計算することによって評価することができる。より高いPP290含量を含む実施例3の向上は重要であり、2つの異なる試験の平均として、15%の向上をもたらす。
寸法変化及び吸水性
すべてのミックスの密度をオートクレーブ処理の直後に測定した。サンプルをすぐに、質量が安定化するまで50%RH、23℃の養生条件で維持した。水は、4日以内にかなり急速に失われる。実施例の質量減少を
図4に示す。
他のサンプルもすぐに、水と全く接触させることなく10~11日まで90%RH、20℃の養生条件で維持した。参照ミックスは、質量が増加し(2.4%)、より高い投入量のPP290(実施例3)では、質量がわずかに減少した。潜在的な質量増加は、残りのOPCのさらなる水和又は炭酸化の開始に起因し得る。
90%HR、20℃における湿潤養生の後、サンプルを質量が安定化するまで50%RH、23℃の養生条件で維持した。実施例の質量減少%を
図5に示す。
【0069】
最後に、50%RH、23℃ですぐに乾燥させたサンプルを、水との接触なしに90%RHに12日間、次に水中に3日間曝露して、乾燥-湿潤-水中の極限条件をシミュレーションした。
すべてのミックス設計物に関して有意な影響は認められず、サンプルの質量比の比較では類似の吸水レベルが認められた。
【表8】
この試験の吸水動態は、最初の1時間の水養生中に95%を超える水が捕捉される通り、非常に急速である。
サイズ寸法を、同じサンプルについて、異なる養生条件を用いてモニタリングした。連続養生条件(10~11日間は乾燥50%RH、次に12日間は湿潤90%RH、及び最後の3日間は水中)では、PP290を含まない参照ミックスは、より大きいサイズ変化を示す。すべての実施例が、より小さいサイズ変化を示し、より高いPP290含量を含む実施例3は、著しく小さい変化を示す。
【0070】
【表9】
連続養生(10~11日間は湿潤90%RH、次に21日間は乾燥50%RH中)では、実施例3はさらに、参照例1に対してサイズ変化が非常に小さいという利点を示す。
【表10】
【0071】
(実施例3)
石こうは、トバモライトの生成を触媒するために、三水和物アルミナの代替、又は三水和物アルミナとの同時添加において使用されることが多い。この新しい実施例では、石こうを含む以下の組成物を、実施例2と同じプロトコールに従って作製し、繊維セメントシートの特性を測定した。
以下の乾燥ミックスを調製した。
【0072】
【表11】
この実施例では、乾燥ミックス中、同じ繊維含量で機械特性を比較するために、すべてのミックス設計物を、同じ(OPC+CACセメント+石こう)/セルロース繊維比で比較する。結果として、CACの投入時に、より少ないケイ酸カルシウムが導入される。また石こう/セルロース繊維の比は、より高い投入量のPP290を含む実施例6を除き、すべてのミックス調製物において一定であった。
【0073】
鉱物学的分析
トバモライトに対する石こうの影響が確認されるが、驚くべきことに、ミックス設計物におけるOPCの減少で予測されたものよりも高いレベルであった。石こうは、オートクレーブ処理後に硬石こう及びベイサナイトに変換され、それらは水と接触させると、石こうに逆反応し得ることを認めることができた。
【表12】
【0074】
機械特性
寸法変化及び吸水性
実施例2と同じ調製及び養生手順をサンプルに適用した。
50%RH、23℃にすぐに維持したサンプルについて、水は、石こうを含まない系と同じく4~5日以内に急速に失われる(
図6を参照されたい)。
PP290の投入量が少ないと、吸水性は、完全な極限条件間の、完全飽和状態又は完全乾燥状態の間で低下する(表13を参照されたい)。
【表13】
【0075】
長さ変化について、20℃で水中に3日間の条件と、50%RH、23℃で5日間の条件の、2つの極限条件の間で比較した。PP290は、水中で水和後に硫酸カルシウムが生じる可能性に起因して、参照例2自体と比較して、より良好な膨張制御を可能にする。実施例6に見られるように、石こうの投入量が多いほど、膨張が多くなる。
【表14】
【0076】
曲げ特性
曲げ機械特性は、PP290の添加により変更される。結果を
図7に示す。実施例6は、より高い延性、破断なしのより長い変位能、及びなお重要な機械的強度を提供する。
疑似延性は、荷重変位曲線下面積を計算することによって評価することができる。より高いPP290含量を含む実施例6の向上は重要であり、2つの異なる試験の平均として、10%を超える向上をもたらす。
前述は、本発明のある特定の実施形態を、限定することなく広範に説明するものである。当業者に容易に明らかである通り、変更形態及び改変形態は、添付の特許請求の範囲において及びそれによって定義される本発明の範囲内にあることが企図される。
【国際調査報告】