(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-29
(54)【発明の名称】レニウムキレート化MAG3オリゴヌクレオチドを調製するための新規の方法
(51)【国際特許分類】
C07F 13/00 20060101AFI20220622BHJP
【FI】
C07F13/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564464
(86)(22)【出願日】2020-04-28
(85)【翻訳文提出日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 EP2020061657
(87)【国際公開番号】W WO2020221705
(87)【国際公開日】2020-11-05
(32)【優先日】2019-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515129320
【氏名又は名称】ロシュ イノベーション センター コペンハーゲン エーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ファンダー エリク ダー
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン デニス ジュル
(72)【発明者】
【氏名】ホルンシュマイヤー ヨルグ
【テーマコード(参考)】
4H050
【Fターム(参考)】
4H050AA02
4H050AB20
4H050AC50
4H050AD15
4H050AD17
4H050BB23
4H050WA15
4H050WA27
4H050WA28
(57)【要約】
本発明は、式(III)の化合物及びレニウムキレート化MAG3オリゴヌクレオチドを調製するための新規の方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)式(I)の化合物:
[式中、RはH又はチオール保護基である]
を、溶媒中でレニウム錯体の前駆体と反応させて、式(II)の化合物:
を得るステップ、
b)N-ヒドロキシスクシンイミドをカップリング試薬とともに加えて、式(III)の化合物:
を得るステップ
を含み、
ここで、ステップa)及びb)はワンポット反応で行われる、
式(III)の化合物の調製方法。
【請求項2】
アミノオリゴヌクレオチドを塩基とともに加えて、式(IV)の化合物:
を得るステップc)をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップa)、b)、及びc)がワンポット反応で行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
レニウム錯体の前駆体が、ReOCl
3(PPh
3)
2、Re(NPh)Cl
3(PPh
3)
2、ReO
2(PPh
3)
2I、及びRe(NPh)Cl
3(PPh
3)
2からなる群より選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
レニウム錯体の前駆体がReOCl
3(PPh
3)
2である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
Rが、アセチル(Ac)、ベンゾイル(Bz)、ベンジル(Bn)、β-メトキシエトキシメチルエーテル(MEM)、ジメトキシトリチル(又はビス-(4-メトキシフェニル)フェニルメチル)(DMT)、トリメトキシトリチル(又はトリス-(4-メトキシフェニル)フェニルメチル)(TMT)、メトキシメチルエーテル(MOM)、メトキシトリチル[(4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル(MMT)、p-メトキシベンジルエーテル(PMB)、メチルチオメチルエーテル、ピバロイル(Piv)、テトラヒドロピラニル(THP)、テトラヒドロフラン(THF)、トリチル又はトリフェニルメチル(Tr)、シリルエーテル(例えば、トリメチルシリル(TMS)、tert-ブチルジメチルシリル(TBDMS)、トリ-イソ-プロピルシリルオキシメチル(TOM)及びトリイソプロピルシリル(TIPS)エーテル)、並びにメチルエーテル及びエトキシエチルエーテル(EE)からなる群より選択されるチオール保護基である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
Rが、アセチル(Ac)及びベンゾイル(Bz)からなる群より選択されるチオール保護基である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ステップa)の溶媒が、極性非プロトン性溶媒と極性プロトン性溶媒との混合物である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
DMF:MeOHが約1:1の体積比である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
塩基がステップa)でさらに用いられる、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
塩基がNaOMeである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
a)式(I)の化合物:
[式中、Rは、Hであるか、アセチル(Ac)及びベンゾイル(Bz)からなる群より選択されるチオール保護基である]
を、ReOCl
3(PPh
3)
2と、
体積比約1:1のDMF:MeOH中で反応させて、式(II)の化合物:
を得るステップ、
b)N-ヒドロキシスクシンイミドをEDC-HClとともに加えて、式(III)の化合物:
を得るステップ、
c)アミノオリゴヌクレオチドを塩基とともに加えて、式(IV)の化合物:
を得るステップ
を含み、
ここで、オリゴヌクレオチドが、少なくとも1つの2’糖修飾ヌクレオシド又はLNAヌクレオシドを含み、かつ、ステップa)、b)、及びc)がワンポット反応で行われる、
請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
オリゴヌクレオチドがアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
アンチセンスオリゴヌクレオチドが、少なくとも1つの2’糖修飾ヌクレオシド又はLNAヌクレオシドを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
カップリング試薬が、DCC(N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド)、DIC(N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド)、EDC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)、EDC-HCl(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド-HCl)、BOP、PyBOP((ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスファート)、PyBrOP(ブロモトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスファート)、TBTU(2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルアミニウムテトラフルオロボレート)、TSTU(N,N,N’,N’-テトラメチル-O-(N-スクシンイミジル)ウロニウムテトラフルオロボレート)、TNTU(O-(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート)、T3P(2,4,6-トリプロピル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリホスホリナン-2,4,6-トリオキシド)、HCTU(O-(6-クロロベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート)、TATU、HATU(N-[(ジメチルアミノ)-1H-1,2,3-トリアゾロ-[4,5-b]ピリジン-1-イルメチレン]-N-メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスファートN-オキシド)及びDMTMM(4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド)、CDI(1,1’-カルボニルジイミダゾール)であるカップリング試薬からなる群より選択される、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
カップリング試薬が、EDC-HCl(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド-HCl)である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前述の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レニウムキレート化したMAG3(メルカプトアセチルトリグリシン)並びにレニウムキレート化したMAG3オリゴヌクレオチドを調製するための新規の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レニウム(Re)及びテクネチウム(Tc)は、治療用核医学におけるレニウム放射性核種186Re及び188Re、並びに医療診断イメージングにおけるテクネチウム放射性核種99mTcの将来的な応用の理由から、核医学において大きな可能性を示している。186Re及び188Re放射性核種は両方ともγ及びβ-放出剤であるが、99mTc放射性核種はγ放出剤でしかない;それらは、医用画像及び治療にとって有利な核特性を示す。レニウム及びテクネチウムをベースとした放射性医薬品は、ヨーロッパ及び世界の他の地域の医療診断イメージング及び治療用核医学に広く適用されている。
【0003】
MAG3リガンドは、レニウム(Re)又はテクネチウム(technicium)(Tc)と安定した金属錯体を形成する、確立されたイメージングリガンドである。数例を挙げると、糖、siRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチドなどの多くの異なる生物活性分子がMAG3で官能化されている。結果として生じるRe又はTc錯体は、186Re又は188Reなどの放射性同位体が腫瘍又は腎機能の診断又は治療に用いられることから、放射性医薬品の分野で医学的に重要でありうる。しかしながら、放射性金属を生物学的に活性な分子に付着させるためには、依然として基礎研究が必要である。ほとんどのレニウム(V)をベースとした放射性医薬品は、安定性(生理学的条件における)又は選択性(細胞の標的化に関して、又は正確に定義された薬剤の調製に関して)を欠いており、それらの合成は依然として改善されていないままである。
【0004】
例えば、Alsbaieeらは、Tet Lett 2012, 53, 1645-1651(非特許文献1), International Journal of Pharmaceutics, 2002, 248, 173-182(非特許文献2)において、レニウムキレート化MAG3官能化ロゼットナノチューブの合成について記載している。P. Winnardらは、Nuclear Medicine & Biology, Vol. 24, pp. 425-432, 1997(非特許文献3)において、DNAのテクネチウム-99m標識のためのNHS-MAG3の2段階の調製及び使用について記載している。
【0005】
Alsbaiee及びWinnardは、レニウムキレート化MAG3オリゴヌクレオチドの合成については開示していない。
【0006】
本発明者らは、レニウムキレート化したMAG3及びレニウムキレート化したMAG3オリゴヌクレオチドの合成のための新規の方法を見いだした。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Alsbaieeら, Tet Lett 2012, 53, 1645-1651
【非特許文献2】Alsbaieeら, International Journal of Pharmaceutics, 2002, 248, 173-182
【非特許文献3】P. Winnardら, Nuclear Medicine & Biology, Vol. 24, pp. 425-432, 1997
【発明の概要】
【0008】
第1の態様では、本発明は、式(III)のレニウムキレート化MAG3化合物をワンポット反応で調製するための新規の方法に関する:
【0009】
第2の態様では、本発明は、式(IV)のレニウムキレート化MAG3オリゴヌクレオチド化合物を調製するための新規の方法に関する:
【0010】
第3の態様では、本発明は、式(III)又は式(IV)の化合物をワンポット反応で調製するための新規の方法に関する。
【0011】
本発明の他の態様は、以下により詳細に説明される。
【0012】
定義
「カップリング試薬」という用語は、カルボン酸と、アミン、アルコール、又はチオールなどとの2つの有機分子の共有結合を可能にする化合物を意味する。さらに本発明の文脈において、カップリング試薬は、カルボン酸がアミンにカップリングするカップリング反応を補助することができる化合物を意味する。カップリング試薬は、水溶性HCl塩として使用することができる。EDCは、他のカルボジイミドの例である。EDCの副産物は水溶性であり、水性ワークアップによって簡単に除去することができる。他のカップリング試薬の例は、DCC(N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド)、DIC(N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド)、EDC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)、EDC-HCl(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド-HCl)、BOP、PyBOP((ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスファート)、PyBrOP(ブロモトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスファート)、TBTU(2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルアミニウムテトラフルオロボレート)、TSTU(N,N,N’,N’-テトラメチル-O-(N-スクシンイミジル)ウロニウムテトラフルオロボレート)、TNTU(O-(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート)、T3P(2,4,6-トリプロピル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリホスホリナン-2,4,6-トリオキシド)、HCTU(O-(6-クロロベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート)、TATU、HATU(N-[(ジメチルアミノ)-1H-1,2,3-トリアゾロ-[4,5-b]ピリジン-1-イルメチレン]-N-メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスファートN-オキシド)、DMTMM(4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド)、CDI(1,1’-カルボニルジイミダゾール)などである。
【0013】
用語「アルキル」は、単独で又は組み合わせて、1から8個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基、特に1から6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基、より具体的には1から4個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基を意味する。直鎖及び分岐鎖C1-C8アルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、異性体ペンチル、異性体ヘキシル、異性体ヘプチル、及び異性体オクチル、特に、メチル、エチル、プロピル、ブチル、及びペンチルである。アルキルの特定の例は、メチル、エチル、及びプロピルである。
【0014】
用語「アミノ」は、単独で又は組み合わせて、第一級アミノ基(-NH2)、第二級アミノ基(-NH-)、又は第三級アミノ基(-N-)を意味する。
【0015】
「アミノオリゴヌクレオチド」という用語は、非芳香族NH2を含むオリゴヌクレオチドを意味する。NH2基は、例えば、オリゴヌクレオチドの3’又は5’末端に位置づけることができ、例えば、3’オリゴヌクレオチド-CH2CH2CH2CH2CH2CH2-NH2-5’である。
【0016】
「アミノ保護基」という用語は、アミノ基の保護基を意味する。アミンは、有機反応中にしばしば保護基を必要とする官能基である。t-ブトキシカルボニル(Boc、例えば、濃強酸(HCl又はCF3COOHなど)によって、又は>80℃に加熱することによって除去される)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz、例えば水素化分解によって除去される)、又は9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc、例えばピペリジンなどの塩基によって除去される)などのカルバメートは、一般的に用いられるアミン保護基である。例えば、一級、二級、及び複素環式アミンの有用な保護基:2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イルオキシカルボニル(Tempoc)を開発した、米国ペンシルバニア州ピッツバーグ大学のPeter Wipfとその同僚によって記載されているものなど、さまざまな脱保護条件で基を保護するための追加の選択肢を使用することができる。アセチル(Ac)基は、シトシンのN4及びアデニン核酸塩基のN6を保護するためのオリゴヌクレオチド合成において一般的であり、塩基、ほとんどの場合は、水性又はガス状のアンモニア又はメチルアミンで処理することによって除去することができる。Acは、脂肪族アミドから容易に除去するには、安定しすぎている。ベンゾイル(Bz)基もまた、シトシンのN4及びアデニン核酸塩基のN6を保護するためのオリゴヌクレオチド合成において一般的であり、塩基、ほとんどの場合は、水性又はガス状のアンモニア又はメチルアミンで処理することによって除去される。Bzは、脂肪族アミドから容易に除去するには、安定しすぎている。DMF又はiBuなどの一般的に用いられる他の適切なアミノ保護基もまた、当業者によって考慮されうる。
【0017】
用語「アリール」は、単独で又は組み合わせて、任意選択的に、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルケニルオキシ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニル、及びホルミルから独立して選択される1から3個の置換基で置換された、6から10個の炭素環原子を含む、一価芳香族炭素環式単環又は二環式環系を示す。アリールの例には、フェニル及びナフチル、特にフェニルが含まれる。
【0018】
「キレート」という用語は、リガンド(例えば、有機)を含む化合物が中心の金属原子に2点以上で結合するという事実を意味する。これは概して、多座(多重結合)リガンドと単一の中心原子との間の2つ以上の別個の配位結合の形成又は存在を包含する。これらのリガンドは、キラント、キレート剤、キレート化剤、又は金属イオン封鎖剤と呼ばれる。これは通常、イオン及び分子の金属イオンに対する結合の一種である。本発明による式(II)の化合物は、キレート又はキレート錯体の一例である。
【0019】
本発明のキレート剤部分は、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、及びリン原子からなる群から選択される任意の数の原子の組合せを含みうる。ある特定の実施態様では、キレート剤部分は、このような原子の3から5個の組合せを含む。幾つかの実施態様では、キレート剤は、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、及び/又はリン原子などの他の原子への配位を通じて、任意の数の原子価金属イオンにキレート化することができる。ある特定の実施態様では、キレート剤は、3から5価の金属イオンをキレート化することができる。任意の原子価の金属イオンが、本発明のキレート剤へのキレート化のために想定されている。これらの原子価金属イオンの例には、186Re、188Re、Tc-99m、Cu-60、Cu-61、Cu-62、In-111、Tl-201、Ga-67、及びGa-68が含まれるが、これらに限定されない。
【0020】
用語「ハロゲン」又は「ハロ」は、単独で又は組み合わせて、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素を意味し、特に、フッ素、塩素、又は臭素、より具体的にはフッ素を意味する。用語「ハロ」は、別の基と組み合わせて、少なくとも1つのハロゲン、特に、1つから5つのハロゲンで置換された、特に、1つから4つのハロゲン、すなわち、1つ、2つ、3つ、又は4つのハロゲンで置換された前記基の置換を意味する。
【0021】
「チオール」という用語は、-SH基を意味する。
【0022】
「チオール保護基」は、チオール基の保護基であり、ヒドロキシル基を保護するためにも用いられる。ヒドロキシル保護基の例は、アセチル(Ac)、ベンゾイル(Bz)、ベンジル(Bn)、β-メトキシエトキシメチルエーテル(MEM)、ジメトキシトリチル(又はビス-(4-メトキシフェニル)フェニルメチル)(DMT)、トリメトキシトリチル(又はトリス-(4-メトキシフェニル)フェニルメチル)(TMT)、メトキシメチルエーテル(MOM)、メトキシトリチル[(4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル(MMT)、p-メトキシベンジルエーテル(PMB)、メチルチオメチルエーテル、ピバロイル(Piv)、テトラヒドロピラニル(THP)、テトラヒドロフラン(THF)、トリチル又はトリフェニルメチル(Tr)、シリルエーテル(例えば、トリメチルシリル(TMS)、tert-ブチルジメチルシリル(TBDMS)、トリ-イソ-プロピルシリルオキシメチル(TOM)及びトリイソプロピルシリル(TIPS)エーテル)、メチルエーテル、及びエトキシエチルエーテル(EE)である。ヒドロキシル保護基の特定の例は、DMT及びTMT、特にDMTである。
【0023】
「LNAモノマー」という用語は、LNAヌクレオチドを指し、ヌクレオシドが本明細書で定義されるLNAヌクレオシドであるヌクレオチドを意味する。
【0024】
「ワンポット合成」という用語は、化学反応の効率を改善するための戦略を意味し、それにより、反応物は、中間の分離又は精製ステップなしに、たった1つの反応器内で連続的な化学反応に供される。長い分離プロセス及び中間化合物の精製を回避することにより、化学収率を高めつつ、時間及びリソースを節約することができることから、これは化学者にとって非常に望ましいことである。
【0025】
用語「薬学的に許容される塩」は、生物学的に又はそれ以外の点で望ましくないものではない、遊離塩基又は遊離酸の生物学的な有効性及び特性を保持する塩を指す。塩は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、特に塩酸、並びに、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸、N-アセチルシステインなどの有機酸と共に形成される。加えて、これらの塩は、無機塩基又は有機塩基を遊離酸に加えることによって調製することができる。無機塩基から誘導される塩には、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウムの塩が含まれるがこれらに限定されない。有機塩基から誘導される塩には、第一級、第二級、及び第三級アミン、天然に存在する置換アミンを含む置換アミン、環式アミン及び塩基性イオン交換樹脂、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、リジン、アルギニン、N-エチルピペリジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂の塩が含まれるが、これらに限定されない。本発明のオリゴヌクレオチドは、双性イオンの形態で存在することもありうる。特に、本発明の特に好ましい薬学的に許容される塩は、ナトリウム、リチウム、カリウム、及びトリアルキルアンモニウムの塩である。
【0026】
「レニウム錯体の前駆体」という用語は、式(I)の化合物をキレート化することができるレニウム原子を意味する。レニウム錯体の前駆体の例は、市販されているReOCl3(PPh3)2(オキソトリクロロビス(トリフェニルホスフィン)レニウム(V))である。他の例は、Re(NPh)Cl3(PPh3)2、ReO2(PPh3)2I、又はRe(NPh)Cl3(PPh3)2である。
【0027】
用語「保護基」は、単独で又は組み合わせて、化学反応が別の保護されていない反応性部位で選択的に行われうるように、多官能性化合物の反応性部位を選択的に遮断する基を意味する。保護基は、除去することができる。例示的な保護基は、アミノ保護基、カルボキシ保護基、又はヒドロキシ保護基である。
【0028】
「リン酸保護基」は、リン酸基の保護基である。リン酸保護基の例は、2-シアノエチル及びメチルである。リン酸保護基の特定の例は、2-シアノエチルである。
【0029】
本発明によるレニウム錯体は、Re(V)錯体である。
【0030】
本発明の出発物質又は化合物のうちの1つが、1つ以上の反応ステップの反応条件下で安定でないか、又は反応性である1つ以上の官能基を含む場合、適切な保護基(例えば、“Protectivegroups in Organic Chemistry” by T. W. Greene and P.g. M. Wuts, 3rd Ed., 1999, Wiley, New Yorkに記載されているもの)を、当該技術分野でよく知られている方法を適用する重要なステップの前に導入することができる。このような保護基は、文献に記載されている標準的な方法を用いて、合成の後の段階において除去することができる。保護基の例は、tert-ブトキシカルボニル(Boc)、9-フルオレニルメチルカルバメート(Fmoc)、2-トリメチルシリルエチルカルバメート(Teoc)、カルボベンジルオキシ(Cbz)、及びp-メトキシベンジルオキシカルボニル(Moz)である。
【0031】
本明細書に記載される化合物は、数個の不斉中心を含むことができ、光学的に純粋なエナンチオマー、例えばラセミ体などのエナンチオマーの混合物、ジアステレオ異性体の混合物、ジアステレオ異性体のラセミ体、又はジアステレオ異性体ラセミ体の混合物の形態で存在することができる。
【0032】
オリゴヌクレオチド
本明細書で用いられる「オリゴヌクレオチド」という用語は、2つ以上の共有結合したヌクレオシドを含む分子として当業者に一般に理解されるように定義される。このような共有結合したヌクレオシドはまた、核酸分子又はオリゴマーとも称されうる。オリゴヌクレオチドは、通常、固相化学合成と、その後の精製によって研究室内で作製される。オリゴヌクレオチドの配列に言及する場合には、共有結合したヌクレオチド又はヌクレオシドの核酸塩基部分の配列又は順序、若しくはその修飾が言及される。本発明のオリゴヌクレオチドは、人工のものであり、化学的に合成され、通常は精製又は単離される。本発明のオリゴヌクレオチドは、1つ以上の修飾ヌクレオシド又はヌクレオチドを含みうる。
【0033】
アンチセンスオリゴヌクレオチド
本明細書で用いられる「アンチセンスオリゴヌクレオチド」という用語は、標的核酸、特に標的核酸上の連続配列にハイブリダイズすることによって標的遺伝子の発現を調節することができるオリゴヌクレオチドとして定義される。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、本質的に二本鎖ではなく、したがってsiRNA又はshRNAではない。好ましくは、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは一本鎖である。本発明の単鎖オリゴヌクレオチドは、自己内又は自己間の相補性の程度がオリゴヌクレオチドの全長にわたって50%未満である限り、ヘアピン又は分子間二重構造(同じオリゴヌクレオチドの2つの分子間の二重鎖)を形成することができるものと理解される。
【0034】
糖修飾
本発明のオリゴマーは、修飾された糖部分、すなわち、DNA及びRNAに見られるリボース糖部分と比較して、糖部分が修飾された1つ以上のヌクレオシドを含みうる。
【0035】
リボース糖部分の修飾を有する数多くのヌクレオシドは、親和性及び/又はヌクレアーゼ耐性などのオリゴヌクレオチドのある特定の性質を改善することを主な目的として作製されてきた。
【0036】
このような修飾には、例えば、ヘキソース環(HNA)、又は典型的にはリボース環(LNA)上のC2炭素とC4炭素との間にビラジカル架橋を有する二環式環、又は典型的にはC2炭素とC3炭素との間の結合を欠く非結合リボース環(例えば、UNA)で置き換えることにより、リボース環構造が修飾されているものが含まれる。他の糖修飾ヌクレオシドには、例えば、ビシクロヘキソース核酸(国際公開第2011/017521号)又は三環式核酸(国際公開第2013/154798号)が含まれる。修飾ヌクレオシドにはまた、糖部分が例えばペプチド核酸(PNA)又はモルホリノ核酸の場合には、非糖部分で置き換えられているヌクレオシドが含まれる。
【0037】
糖修飾にはまた、リボース環上の置換基を、水素以外の基、又はDNA及びRNAヌクレオシド中に天然に存在する2’-OH基に変更することによってなされる修飾も含まれる。置換基は、例えば、2’、3’、4’、又は5’位に導入されうる。
【0038】
2’糖修飾ヌクレオシド
2’糖修飾ヌクレオシドは、2’位にH又は-OH以外の置換基を有するか(2’置換ヌクレオシド)、又は2’炭素とリボース環上の第2の炭素との間に架橋を形成することができる2’結合ビラジカルを含むヌクレオシド、例えばLNA(2’-4’ビラジカル架橋)ヌクレオシドである。
【0039】
実際、2’修飾ヌクレオシドの開発には多くの注目が集まっており、多くの2’修飾ヌクレオシドが、オリゴヌクレオチドに組み込まれる場合に有益な特性を有することが見出されている。例えば、2’修飾糖は、高められた結合親和性及び/又は増大されたヌクレアーゼ耐性をオリゴヌクレオチドにもたらすことができる。2’置換修飾ヌクレオシドの例は、2’-O-アルキル-RNA、2’-O-メチル-RNA、2’-アルコキシ-RNA、2’-O-メトキシエチル-RNA(MOE)、2’-アミノ-DNA、2’-フルオロ-RNA、及び2’-F-ANAヌクレオシドである。さらなる例については、例えば、Freier & Altmann; Nucl.Acid Res., 1997, 25, 4429-4443及びUhlmann; Curr.Opinion in Drug Development, 2000, 3(2), 293-213及びDeleavey and Damha, Chemistry and Biology 2012, 19, 937に見出すことができる。以下は、幾つかの2’置換修飾ヌクレオシドの例示である。
【0040】
本発明に関連して、2’修飾は、LNAのような2’架橋分子を含まない。
【0041】
ロックされた核酸ヌクレオシド(LNAヌクレオシド)
「LNAヌクレオシド」は、前記ヌクレオシドのリボース糖環のC2’及びC4’を結合するビラジカル結合(「2’-4’架橋」とも呼ばれる)を含む、2’-修飾ヌクレオシドであり、これはリボース環の立体配座を制限又は固定する。これらのヌクレオシドはまた、文献において、架橋核酸又は二環式核酸(BNA)とも称されている。リボースの立体配座の固定は、LNAが相補的RNA又はDNA分子のオリゴヌクレオチドに組み込まれる場合、ハイブリダイゼーションの親和性の向上(二重鎖の安定化)に関連している。これは、オリゴヌクレオチド/相補二重鎖の融解温度を測定することによって、日常的に決定することができる。
【0042】
非限定的な、例示的なLNAヌクレオシドは、国際公開第99/014226号、国際公開第00/66604号、国際公開第98/039352号、国際公開第2004/046160号、国際公開第00/047599号、国際公開第2007/134181号、国際公開第2010/077578号、国際公開第2010/036698号、国際公開第2007/090071号、国際公開第2009/006478号、国際公開第2011/156202号、国際公開第2008/154401号、国際公開第2009/067647号、国際公開第2008/150729号、Morita et al.、Bioorganic & Med.Chem.Lett.12, 73-76, Seth et al. J. Org. Chem.2010, Vol 75(5) pp. 1569-81、及びMitsuoka et al., Nucleic Acids Research 2009, 37(4), 1225-1238に開示されている。
【0043】
2’-4’架橋は、それぞれ式(A)及び式(B)に示されるように、リボース環の平面よりも下(β-D-構成)、又は環平面よりも上(α-L-構成)に配置されうる。
【0044】
特に明記されていない限り、LNAヌクレオシドはβ-D又はα-Lステレオアイソフォームでありうることが認識されよう。
【0045】
本発明のLNAヌクレオシドの特定の例がスキーム1に示されている(ここで、Bは上記定義されたとおりである)。
スキーム1
【0046】
特定のLNAヌクレオシドは、β-D-オキシ-LNA、6’-メチル-β-D-オキシLNA、例えば、(S)-6’-メチル-β-D-オキシ-LNA((S)-cET)、及びENAである。
【発明を実施するための形態】
【0047】
発明の詳細な説明
一態様では、本発明は、式(III)の化合物の調製方法に関し、該方法は、
a)式(I)の化合物:
[式中、RはH又はチオール保護基である]
を、溶媒中でレニウム錯体の前駆体と反応させて、式(II)の化合物:
を得るステップ、
b)N-ヒドロキシスクシンイミドをカップリング試薬とともに加えて、式(III)の化合物:
を得るステップ
を含み、
ここで、ステップa)及びb)は、ワンポット反応で行われる。
【0048】
本発明の方法の一実施態様では、アミノオリゴヌクレオチドを塩基とともに加えて、式(IV)の化合物を得る、さらなるステップc)が存在する:
【0049】
本発明の方法の一実施態様では、ステップa)及びb)は、ワンポット合成で行われる。一実施態様では、ステップa)、b)、及びc)は、ワンポット合成で行われる。
【0050】
本発明の方法の一実施態様では、レニウム錯体の前駆体は、ReOCl3(PPh3)2、Re(NPh)Cl3(PPh3)2、ReO2(PPh3)2I、及びRe(NPh)Cl3(PPh3)2からなる群より選択される。
【0051】
本発明の方法の一実施態様では、レニウム錯体の前駆体は、ReOCl3(PPh3)2である。
【0052】
本発明の方法の一実施態様では、RはHである。
【0053】
本発明の方法の一実施態様では、Rは、アセチル(Ac)、ベンゾイル(Bz)、ベンジル(Bn)、β-メトキシエトキシメチルエーテル(MEM)、ジメトキシトリチル(又は、ビス-(4-メトキシフェニル)フェニルメチル)(DMT)、トリメトキシトリチル(又は、トリス-(4-メトキシフェニル)フェニルメチル)(TMT)、メトキシメチルエーテル(MOM)、メトキシトリチル[(4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル(MMT)、p-メトキシベンジルエーテル(PMB)、メチルチオメチルエーテル、ピバロイル(Piv)、テトラヒドロピラニル(THP)、テトラヒドロフラン(THF)、トリチル又はトリフェニルメチル(Tr)、シリルエーテル(例えば、トリメチルシリル(TMS)、tert-ブチルジメチルシリル(TBDMS)、トリ-イソ-プロピルシリルオキシメチル(TOM)及びトリイソプロピルシリル(TIPS)エーテル)、並びにメチルエーテル及びエトキシエチルエーテル(EE)からなる群より選択されるチオール保護基である。
【0054】
本発明の方法の一実施態様では、Rは、アセチル(Ac)及びベンゾイル(Bz)からなる群より選択されるチオール保護基である。
【0055】
本発明の方法の一実施態様では、ステップa)の溶媒は、極性非プロトン性溶媒と極性プロトン性溶媒との混合物である。本発明の方法の一実施態様では、溶媒は、DMFとMeOHとの混合物である。本発明の方法の一実施態様では、溶媒は、DMFとMeOHとの体積比約1:1の混合物である。
【0056】
本発明の方法の一実施態様では、塩基がさらにステップa)で用いられる。本発明の方法の一実施態様では、塩基はNaOMeである。
【0057】
一実施態様では、本発明の方法は、
c)式(I)の化合物:
[式中、Rは、Hであるか、又はアセチル(Ac)及びベンゾイル(Bz),からなる群より選択されるチオール保護基である]
を、ReOCl
3(PPh
3)
2と、
体積比約1:1のDMF:MeOH中で反応させて、式(II)の化合物:
を得るステップ、
d)N-ヒドロキシスクシンイミドをEDC-HClとともに加えて、式(III)の化合物を得るステップ:
c)アミノオリゴヌクレオチドを塩基とともに加えて、式(IV)の化合物:
を得るステップ
を含み、
ここで、オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの2’糖修飾ヌクレオシド又はLNAヌクレオシドを含む。
【0058】
一実施態様では、本発明の方法で、オリゴヌクレオチドはアンチセンスオリゴヌクレオチドである。一実施態様では、本発明の方法で、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、本明細書に定義される2’糖修飾ヌクレオシド又はLNAヌクレオシドを含む。
【0059】
MAG3は、例えばSigma Aldrich又はABXなどの通常の供給業者から市販されている。式(I)の化合物は、例えば、シグマアルドリッチなどのさまざまな供給業者から保護されたNHS-MAG3アセチルとして市販されうる(Nature protocols 2007-4-21、Yi Wang et al.)。
【0060】
特に明記しない限り、すべての出発生成物、試薬、及び溶媒は市販されている。
【0061】
ステップb)では、溶媒が用いられる。それは、極性非プロトン性溶媒、極性プロトン性溶媒、又はそれらの混合物でありうる。
【0062】
極性非プロトン性溶媒の例は、DCM(ジクロロメタン)、N-メチルピロリドン、THF(テトラヒドロフラン)、ETOAc(酢酸エチル)、アセトン、DMF(ジメチルホルムアミド)、MeCN(アセトニトリル)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、及びPC(炭酸プロピレン)、又はそれらの混合物である。
【0063】
本発明の方法の一又はすべての実施態様では、極性非プロトン性溶媒はDMFである。
【0064】
極性プロトン性溶媒の例は、ギ酸、n-ブタノール、IPA(イソプロパノール)、EtOH(エタノール)、MeOH(メタノール)、AcOH(酢酸)、及び水、又はそれらの混合物である。
【0065】
本発明の方法の一又はすべての実施態様では、極性プロトン性溶媒はMeOHである。
【0066】
本発明の方法の一又はすべての実施態様では、溶媒は、極性非プロトン性溶媒と極性プロトン性溶媒との混合物、例えばDMF:MeOH、例えば、体積比約1:1のDMF:MeOHでありうる。
【0067】
ステップc)では、溶媒を使用することができる。一実施態様では、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩が用いられる。
【0068】
ステップb)のカップリング試薬は、DCC(N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド)、DIC(N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド)、EDC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)、EDC-HCl(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド-HCl)、BOP、PyBOP((ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスファート)、PyBrOP(ブロモトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスファート)、TBTU(2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルアミニウムテトラフルオロボレート)、TSTU(N,N,N’,N’-テトラメチル-O-(N-スクシンイミジル)ウロニウムテトラフルオロボレート)、TNTU(O-(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート)、T3P(2,4,6-トリプロピル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリホスホリナン-2,4,6-トリオキシド)、HCTU(O-(6-クロロベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート)、TATU、HATU(N-[(ジメチルアミノ)-1H-1,2,3-トリアゾロ-[4,5-b]ピリジン-1-イルメチレン]-N-メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスファートN-オキシド)及びDMTMM(4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド)、CDI(1,1’-カルボニルジイミダゾール)であるカップリング試薬からなる群より選択することができる。
【0069】
本発明の方法の一実施態様では、カップリング試薬は、EDC-HCl(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド-HCl)である。
【0070】
本発明の方法は、次の非限定的な実施態様で実施することができる:
【0071】
1.a)式(I)の化合物:
[式中、RはH又はチオール保護基である]
を、溶媒中でレニウム錯体の前駆体と反応させて、式(II)の化合物:
を得るステップ、
b)N-ヒドロキシスクシンイミドをカップリング試薬とともに加えて、式(III)の化合物:
を得るステップ
を含み、
ここで、ステップa)及びb)はワンポット反応で行われる、
式(III)の化合物の調製方法。
【0072】
2.アミノオリゴヌクレオチドを塩基とともに加えて、式(IV)の化合物:を得るステップc)をさらに含む、実施態様1に記載の方法。
【0073】
3.ステップa)、b)、及びc)がワンポット合成で行われる、実施態様2に記載の方法。
【0074】
4.レニウム錯体の前駆体が、ReOCl3(PPh3)2、Re(NPh)Cl3(PPh3)2、ReO2(PPh3)2I、及びRe(NPh)Cl3(PPh3)2からなる群より選択される、実施態様1から3のいずれかに記載の方法。
【0075】
5.レニウム錯体の前駆体がReOCl3(PPh3)2である、実施態様4に記載の方法。
【0076】
6.RがHである、実施態様1から5のいずれかに記載の方法。
【0077】
7.Rが、アセチル(Ac)、ベンゾイル(Bz)、ベンジル(Bn)、β-メトキシエトキシメチルエーテル(MEM)、ジメトキシトリチル(又は、ビス-(4-メトキシフェニル)フェニルメチル)(DMT)、トリメトキシトリチル(又は、トリス-(4-メトキシフェニル)フェニルメチル)(TMT)、メトキシメチルエーテル(MOM)、メトキシトリチル[(4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル(MMT)、p-メトキシベンジルエーテル(PMB)、メチルチオメチルエーテル、ピバロイル(Piv)、テトラヒドロピラニル(THP)、テトラヒドロフラン(THF)、トリチル又はトリフェニルメチル(Tr)、シリルエーテル(例えば、トリメチルシリル(TMS)、tert-ブチルジメチルシリル(TBDMS)、トリ-イソ-プロピルシリルオキシメチル(TOM)及びトリイソプロピルシリル(TIPS)エーテル)、並びにメチルエーテル及びエトキシエチルエーテル(EE)からなる群より選択されるチオール保護基である、実施態様1から5のいずれかに記載の方法。
【0078】
8.Rが、アセチル(Ac)及びベンゾイル(Bz)からなる群より選択されるチオール保護基である、実施態様6又は7に記載の方法。
【0079】
9.ステップa)の溶媒が、極性非プロトン性溶媒と極性プロトン性溶媒との混合物である、実施態様1から8のいずれかに記載の方法。
【0080】
10.DMF:MeOHが約1:1の体積比である、実施態様8に記載の方法。
【0081】
11.塩基がステップa)でさらに用いられる、実施態様1から10のいずれかに記載の方法。
【0082】
12.塩基がNaOMeである、実施態様11に記載の方法。
【0083】
13.a)式(I)の化合物:
[式中、Rは、アセチル(Ac)及びベンゾイル(Bz)からなる群より選択されるチオール保護基である]
を、ReOCl
3(PPh
3)
2と、
体積比約1:1のDMF:MeOH中で反応させて、式(II)の化合物:
を得るステップ、
b)N-ヒドロキシスクシンイミドをEDC-HClとともに加えて、式(III)の化合物:
を得るステップ、
c)アミノオリゴヌクレオチドを塩基とともに加えて、式(IV)の化合物:
を得るステップ
を含み、
ここで、オリゴヌクレオチドが、少なくとも1つの2’糖修飾ヌクレオシド又はLNAヌクレオシドを含み、かつ、ステップa)、b)、及びc)がワンポット反応で行われる、
実施態様1から12のいずれかに記載の方法。
【0084】
14.オリゴヌクレオチドがアンチセンスオリゴヌクレオチドである、実施態様1から13のいずれかに記載の方法。
【0085】
15.アンチセンスオリゴヌクレオチドが、少なくとも1つの2’糖修飾ヌクレオシド又はLNAヌクレオシドを含む、実施態様14に記載の方法。
【0086】
16.カップリング試薬が、DCC(N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド)、DIC(N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド)、EDC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)、EDC-HCl(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド-HCl)、BOP、PyBOP((ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスファート)、PyBrOP(ブロモトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスファート)、TBTU(2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルアミニウムテトラフルオロボレート)、TSTU(N,N,N’,N’-テトラメチル-O-(N-スクシンイミジル)ウロニウムテトラフルオロボレート)、TNTU(O-(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート)、T3P(2,4,6-トリプロピル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリホスホリナン-2,4,6-トリオキシド)、HCTU(O-(6-クロロベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート)、TATU、HATU(N-[(ジメチルアミノ)-1H-1,2,3-トリアゾロ-[4,5-b]ピリジン-1-イルメチレン]-N-メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスファートN-オキシド)及びDMTMM(4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド)、CDI(1,1’-カルボニルジイミダゾール)であるカップリング試薬からなる群より選択される、実施態様1から15のいずれかに記載の方法。
【0087】
17.カップリング試薬が、EDC-HCl(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド-HCl)である、実施態様16に記載の方法。
【実施例】
【0088】
【0089】
脱気した(N2及び/又はアルゴン)DMF:MeOH(2.5mL、比1:1)を、保護化したMag-3-COOH(10mg、27μmol)、ReOCl3(PPh3)2(45mg、54μmol)、及びNaOMe(29.4mg、554μmol)を含むフラスコに加えた。次に、得られた溶液を60分間撹拌した。その後、反応混合物を、N2の流れを使用して、約0.5mLの体積までエバポレートした。次に、N-ヒドロキシスクシンイミド(9.4mg、82μmol)及びEDC-HCl(6.3mg、33μmol)を加えて、得られた混合物を一晩撹拌したまま維持した。一晩反応させた後、混合物を0.5mLのDMSOで希釈し、15分間撹拌した。次に、アミノ修飾オリゴヌクレオチド(30mgを0.5mLのNaHCO3,pH=8.5に溶解)を加えた。所望のオリゴヌクレオチド化合物(すなわち、レニウムでキレート化したMag-3にコンジュゲートしたアミノオリゴヌクレオチド)を得るために、得られた混合物を一晩撹拌した。
【0090】
精製:オリゴヌクレオチドは、アセトン中、2%LiClO4の溶液を上記の反応混合物に加えることによって、ワンポット反応から沈殿させた。次に、フラスコを回転させ、遠心分離し、デカントした。次に、残っている残渣(沈殿したオリゴヌクレオチド)を水に溶解し、逆相HPLCによって精製した。
【国際調査報告】