(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-29
(54)【発明の名称】偽の心静止検出の識別
(51)【国際特許分類】
A61B 5/346 20210101AFI20220622BHJP
【FI】
A61B5/346
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564732
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(85)【翻訳文提出日】2021-11-01
(86)【国際出願番号】 US2020024581
(87)【国際公開番号】W WO2020222941
(87)【国際公開日】2020-11-05
(32)【優先日】2019-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507020152
【氏名又は名称】メドトロニック,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100119781
【氏名又は名称】中村 彰吾
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ヤ ジアン
(72)【発明者】
【氏名】レイランド,ジェリー・ディー
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127BB05
4C127CC01
4C127EE08
4C127GG02
4C127GG05
4C127GG07
4C127GG16
4C127LL08
(57)【要約】
本開示は、複数の偽の心静止検出基準のうちの少なくとも1つが満たされているかどうかを判定することを含む、心臓電位図における心静止の偽検出を識別するための技術を対象とする。いくつかの例では、複数の偽の心静止検出基準は、心臓電位図における心臓脱分極を検出するための減少した振幅閾値を含む第1の偽の心静止検出基準と、心臓電位図における減衰ノイズを検出するための第2の偽の心静止検出基準とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療システムであって、
患者の心臓電位図を感知するように構成された複数の電極と、
処理回路と、を備え、前記処理回路が、
前記心臓電位図に基づいて心静止(asystole)検出基準が満たされていることを判定することと、
前記心静止検出が満たされているという前記判定に基づいて、前記心臓電位図信号に基づいて、複数の偽の心静止検出基準が満たされているかどうかを判定することと、
前記複数の偽の心静止検出基準のうちの少なくとも1つが満たされているという判定に基づいて、前記患者の心静止エピソードの表示を差し控えることと、を行うように構成され、
前記複数の偽の心静止検出基準が、
前記心臓電位図における心臓脱分極を検出するための減少した振幅閾値を含む第1の偽の心静止検出基準と、
前記心臓電位図における減衰(decaying)ノイズを検出するための第2の偽の心静止検出基準と、を含む、医療システム。
【請求項2】
前記処理回路が、ある時間間隔中に前記心臓電位図において心臓脱分極を識別しないことに基づいて、前記心静止検出基準が満たされていることを判定するように構成された、請求項1に記載の医療システム。
【請求項3】
前記第1の偽の心静止検出基準が満たされていることを判定するために、前記処理回路が、
前記時間間隔中に前記減少した振幅閾値を前記心臓電位図と比較することと、
前記比較に基づいて、前記時間間隔中に心臓脱分極の閾値数が前記心臓電位図において識別されることを判定することと、を行うように構成された、請求項2に記載の医療システム。
【請求項4】
前記処理回路が、
前記時間間隔に先行する前記心臓電位図において発生している1つ以上の心臓脱分極を識別することと、
前記1つ以上の識別された心臓脱分極の各々の振幅を判定することと、
前記1つ以上の識別された心臓脱分極の前記判定された振幅に基づいて、前記減少した振幅閾値を判定することと、を行うように構成された、請求項2または3に記載の医療システム。
【請求項5】
前記1つ以上の識別された心臓脱分極が、複数の識別された心臓脱分極を含み、前記処理回路が、
前記複数の識別された心臓脱分極の各々の前記振幅に基づいて、代表的な振幅を判定することと、
前記代表的な振幅の所定の部分として、前記減少した振幅閾値を判定することと、を行うように構成された、請求項4に記載の医療システム。
【請求項6】
前記第2の偽の心静止検出基準が満たされていることを判定するために、前記処理回路が、
前記時間間隔の少なくとも一部の間の前記心臓電位図の曲線下面積の値を計算することと、
前記曲線下面積の値が曲線下面積の閾値を満たしていることを判定することと、を行うように構成された、請求項2または3に記載の医療システム。
【請求項7】
前記第2の偽の心静止検出基準が満たされていることを判定するために、前記処理回路が、
前記時間間隔の少なくとも一部の間の前記心臓電位図の差動信号を判定することと、
前記差動信号の複数のサンプルの各々について、前記サンプルの符号が正であるか負であるかを判定することと、
前記符号のうちの1つを有するサンプルの量が共通符号閾値を満たしていることを判定することと、を行うように構成された、請求項2または3に記載の医療システム。
【請求項8】
前記複数の偽の心静止検出基準が、第3の偽の心静止検出基準をさらに含み、前記第3の偽の心静止検出基準が満たされていることを判定するために、前記処理回路が、
前記時間間隔に先行する前記心臓電位図において発生している複数の心臓脱分極を識別することと、
前記複数の識別された心臓脱分極の各々の振幅を判定することと、
前記振幅の変動性を判定することと、
前記変動性が変動性閾値を満たしていることを判定することと、を行うように構成された、請求項2または3に記載の医療システム。
【請求項9】
前記振幅の前記変動性を判定するために、前記処理回路が、
前記複数の振幅の最大振幅を判定することと、
前記複数の振幅の代表的な振幅を判定することと、
前記代表的な振幅に対する前記最大振幅の比較のメトリック(metric)を判定することと、を行うように構成された、請求項8に記載の医療システム。
【請求項10】
前記複数の偽の心静止検出基準が、第3の偽の心静止検出基準をさらに含み、前記第3の偽の心静止検出基準が満たされていることを判定するために、前記処理回路が、
前記時間間隔に先行する前記心臓電位図において発生している複数の心臓脱分極を識別することと、
前記複数の心臓脱分極のうちの隣接するものの間の1つ以上の間隔を判定することと、
前記判定された間隔に基づいて、前記時間間隔内の1つ以上の予想される心臓脱分極ウィンドウおよび1つ以上の予想される脱分極間ウィンドウを識別することと、
前記1つ以上の心臓脱分極ウィンドウの第1のエネルギーおよび前記1つ以上の脱分極間ウィンドウの第2のエネルギーを判定することと、
前記第2のエネルギーに対する前記第1のエネルギーの比較のメトリックを判定することと、
前記比較のメトリックが閾値を満たしていることを判定することと、を行うように構成された、請求項2または3に記載の医療システム。
【請求項11】
前記処理回路が、
ある期間内の前記心静止検出基準の充足のインスタンスのカウントを判定することと、
前記カウントが少なくとも1つの心静止カウント基準を満たしているかどうかを判定することと、を行うように構成され、
前記処理回路は、前記カウントが少なくとも1つの心静止カウント基準を満たしていることを判定することに基づいて、前記複数の偽の心静止検出基準が満たされているかどうかを判定するように構成された、請求項1に記載の医療システム。
【請求項12】
前記複数の電極が皮下移植用に構成され、前記心臓電位図が皮下心臓電位図を含む、上記請求項のいずれかに記載の医療システム。
【請求項13】
前記複数の電極が血管外移植用に構成され、前記心臓電位図が血管外心臓電位図を含む、上記請求項のいずれかに記載の医療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、医療システム、より具体的には、心臓電位図に基づいて心静止を検出するように構成された医療システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一部のタイプの医療デバイスは、患者の心臓の電気的活動を監視するために、患者の心臓電位図(EGM)を監視する場合がある。心臓EGMは、電極を介して感知される電気信号である。いくつかの例では、医療デバイスは、心臓EGMを監視して、徐脈、頻脈、細動、または心静止(例えば、洞停止または房室ブロックによって引き起こされる)などの1つ以上のタイプの不整脈を検出する。
【発明の概要】
【0003】
心臓EGMは、心臓の電気的活動を表す信号に加えて、ノイズを含み得る。さらに、心臓EGM内の心臓の電気的活動を表す信号の振幅は、例えば、心臓組織に対する電極の動きのために、時間とともに変動し得る。ノイズおよび信号振幅の変動は、心臓EGMを使用した、心静止などの不整脈の検出を混乱させることがある。
【0004】
概して、本開示は、心臓電位図における心静止の偽検出を識別するための技術を対象とする。この技術は、心臓EGMを分析して、複数の偽の心静止検出基準のうちの少なくとも1つが満たされているかどうかを判定することを含む。いくつかの例では、医療デバイスシステムの処理回路は、心静止検出基準が満たされることに応答してこの分析を実行し、分析に基づいて、患者が心静止を経験したという表示を(例えば、臨床医または他のユーザに)提供するかまたは差し控えるかを判定し得る。このようにして、本開示の技術は、真の心静止の識別における精度を改善し、その結果、患者の状態のより良い評価を有利に可能にし得る。
【0005】
一例では、医療システムは、患者の心臓電位図を感知するように構成された複数の電極と、処理回路とを備える。処理回路は、心臓電位図に基づいて心静止検出基準が満たされていることを判定することと、心静止検出が満たされているという判定に基づいて、心臓電位図信号に基づいて、複数の偽の心静止検出基準が満たされているかどうかを判定することと、を行うように構成される。処理回路は、複数の偽の心静止検出基準のうちの少なくとも1つが満たされているという判定に基づいて、患者の心静止エピソードの表示を差し控えるようにさらに構成される。複数の偽の心静止検出基準は、心臓電位図における心臓脱分極を検出するための減少した振幅閾値を含む第1の偽の心静止検出基準と、心臓電位図における減衰ノイズを検出するための第2の偽の心静止検出基準とを含む。
【0006】
別の例では、方法は、医療システムの複数の電極を介して患者の心臓電位図を感知することと、医療システムの処理回路によって、心臓電位図に基づいて心静止検出基準が満たされていることを判定することと、を含む。この方法は、心静止検出が満たされているという判定に基づいて、処理回路によって、心臓電位図信号に基づいて複数の偽の心静止検出基準のうちの少なくとも1つが満たされていることを判定することと、処理回路によって、複数の偽の心静止検出基準のうちの少なくとも1つが満たされているという判定に基づいて、患者の心静止エピソードの表示を差し控えることと、をさらに含む。複数の偽の心静止検出基準は、心臓電位図における心臓脱分極を検出するための減少した振幅閾値を含む第1の偽の心静止検出基準と、心臓電位図における減衰ノイズを検出するための第2の偽の心静止検出基準とを含む。
【0007】
別の例では、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、医療システムの処理回路によって実行されたとき、処理回路に、医療システムの複数の電極を介して感知された心臓電位図に基づいて心静止検出基準が満たされていることを判定させるプログラム命令を備える。心静止検出が満たされているという判定に基づいて、プログラム命令は、処理回路に、心臓電位図信号に基づいて複数の偽の心静止検出基準が満たされているかどうかを判定させ、複数の偽の心静止検出基準のうちの少なくとも1つが満たされているという判定に基づいて、患者の心静止エピソードの表示を差し控えさせる。複数の偽の心静止検出基準は、心臓電位図における心臓脱分極を検出するための減少した振幅閾値を含む第1の偽の心静止検出基準と、心臓電位図における減衰ノイズを検出するための第2の偽の心静止検出基準とを含む。
【0008】
この概要は、本開示に記載されている主題の大要を提供することを意図している。添付の図面および以下の説明の中で詳細に説明されているシステム、デバイス、および方法の排他的または包括的な説明を提供することを意図するものではない。本開示の1つ以上の例のさらなる詳細は、添付の図面および以下の説明に記載されている。他の特徴、目的、および利点は、説明および図面から、ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】患者と連携した例示的な医療システムの環境を示す。
【
図2】
図1の医療システムの移植可能医療デバイス(IMD)の例示的な構成を示す機能ブロック図。
【
図3】
図1および
図2のIMDの例示的な構成を示す概念的な側面図。
【
図4】
図1の外部デバイスの例示的な構成を示す機能ブロック図。
【
図5】
図1~
図4のIMDおよび外部デバイスに結合され得る、アクセスポイントと、ネットワークと、サーバなどの外部コンピューティングデバイスと、1つ以上の他のコンピューティングデバイスと、を含む、例示的なシステムを示すブロック図。
【
図6】複数の偽の心静止検出基準が満たされているかどうかに基づいて、心静止エピソードの識別が偽であるかどうかを判定するための例示的な動作を示す流れ図。
【
図7】識別された心静止エピソードに関連する心臓EGM、および心臓EGMに基づいて例示的な偽の心静止検出基準が満たされているかどうかを判定するための例示的な技術を示すグラフ。
【
図8】脱分極検出のための減少した振幅閾値を含む例示的な偽の心静止基準が満たされているかどうかを判定するための例示的な動作を示す流れ図。
【
図10】減衰ノイズを含む心臓EGM、および心臓EGMに基づいて例示的な偽の心静止検出基準が満たされているかどうかを判定するための例示的な技術を示すグラフ。
【
図11】減衰ノイズを検出するための例示的な偽の心静止基準が満たされているかどうかを判定するための例示的な動作を示す流れ図。
【
図12】減衰ノイズを含む心臓EGMの差動信号、および心臓EGMに基づいて例示的な偽の心静止検出基準が満たされているかどうかを判定するための例示的な技術を示すグラフ。
【
図13】減衰ノイズを検出するための例示的な偽の心静止基準が満たされているかどうかを判定するための別の例示的な動作を示す流れ図。
【
図14】識別された心静止エピソードに関連する心臓EGM、および心臓EGMに基づいて別の例示的な偽の心静止検出基準が満たされているかどうかを判定するための例示的な技術を示すグラフ。
【
図15】例示的な偽の心静止基準が満たされているかどうかを判定するための別の例示的な動作を示す流れ図。
【
図16】識別された心静止エピソードに関連する心臓EGM、および心臓EGMに基づいて別の例示的な偽の心静止検出基準が満たされているかどうかを判定するための例示的な技術を示すグラフ。
【
図17】例示的な偽の心静止基準が満たされているかどうかを判定するための別の例示的な動作を示す流れ図。
【
図18A】別の例示的な医療システムを用いた患者の正面図を示す概念図。
【
図18C】
図18Aの例示的な医療システムを用いた患者の横断面図を示す概念図。 同様の参照文字は、説明および図全体にわたって同様の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
様々なタイプの医療デバイスが心臓EGMを感知する。心臓EGMを感知するいくつかの医療デバイスは、例えば、患者の皮膚上の様々な場所など、患者の外部部分と接触して配置された複数の電極を使用して、非侵襲的である。これらの非侵襲的プロセスにおいて心臓EGMを監視するために使用される電極は、例として接着剤、ストラップ、ベルト、またはベストを使用して患者に取り付けられ、心電計、ホルターモニター、または他の電子デバイスなどの監視デバイスに電気的に結合され得る。電極は、患者の心臓または他の心臓組織の電気的活動に関連する電気信号を感知し、これらの感知された電気信号を電子デバイスに提供して、電気信号をさらに処理および/または表示するように構成される。非侵襲的デバイスおよび方法は、一時的に、例えば、医師の診察予約中などの臨床通院中、または例えば、所定の期間の間、例えば、1日(24時間)の間、もしくは数日間、患者を監視するために利用され得る。
【0011】
心臓EGMを非侵襲的に感知および監視するために使用できる外部デバイスには、パッチ、時計、ネックレスなど、患者の皮膚に接触するように構成された電極を備えたウェアラブルデバイスが含まれる。心臓EGMを感知するように構成されたウェアラブル生理学的モニターの一例は、アイルランドのダブリンのMedtronic plcから入手可能なSEEQ(商標)モバイル心臓遠隔測定システムである。このような外部デバイスは、通常の日常活動中の患者の比較的長期の監視を容易にし得、収集したデータをMedtronic Carelink(商標)ネットワークなどのネットワークサービスに定期的に送信する場合がある。
【0012】
移植可能医療デバイス(IMD)も、心臓EGMを感知および監視する。心臓EGMを感知するためにIMDによって使用される電極は、典型的には、IMDのハウジングと統合され、および/または1つ以上の細長いリードを介してIMDに結合される。心臓EGMを監視するIMDの例には、血管内または血管外リードに結合され得るペースメーカーおよび移植可能心臓除細動器、ならびにリードレスであり得る、心臓内に移植するように構成されたハウジングを備えたペースメーカーが含まれる。心臓内移植用に構成されたペースメーカーの例は、Medtronic plcから入手可能なMicra(商標)経カテーテルペーシングシステムである。治療を提供しない一部のIMD、例えば、移植可能患者モニターは、心臓EGMを感知する。このようなIMDの一例は、Medtronic plcから入手可能なReveal LINQ(商標)挿入可能心臓モニターであり、皮下に挿入することができる。このようなIMDは、通常の日常活動中の患者の比較的長期の監視を容易にし得、収集したデータをMedtronic Carelink(商標)ネットワークなどのネットワークサービスに定期的に送信する場合がある。
【0013】
どの1つ以上のタイプのデバイスが使用されるかに関係なく、アーティファクトと呼ばれることがあるノイズ信号が心臓EGMに現れる場合がある。ノイズ信号の持続時間は、心臓の心周期の通常の時間枠の一部に及ぶ場合があり、または複数の心周期が発生したと予想され得る時間スパンに及ぶ場合がある。このようなノイズ信号は、皮膚、皮下、または血管外電極を使用して心臓EGMを感知するとき、例えば、電極のうちの少なくとも1つと、電極が位置する組織との間の接触が、電極と組織との相対運動により一時的に変化するため、より一般的であり得る。いくつかの例では、ノイズ信号は、心臓EGMのベースラインドリフトとして現れ、定常状態のベースラインに向かって減衰する部分を含み得る。
【0014】
感知された心臓EGMにノイズ信号が存在すると、脱分極、例えば、R波を検出するための回路が、ノイズ信号を脱分極として誤って検出することがある。ノイズ信号は、その後の脱分極よりも振幅がはるかに大きくなることがあるため、および場合によっては、高振幅ノイズにより、回路によって使用される調整可能な感知閾値が、真の脱分極の振幅よりも大きいレベルに調整されることがあるため、ノイズ信号により、次いで、回路がその後のいくつかの脱分極を感知できなくなることもある。さらに、感知された心臓EGM内の心臓信号、例えば、脱分極の振幅は、例えば、呼吸のために、時間とともに変動し得る。このような心臓信号の振幅変動も、皮膚、皮下、または血管外電極を使用して感知される心臓EGMにおいてより一般的であり得る。心臓信号の振幅の変動はまた、脱分極が一時的に感知閾値を下回るようにさせ、その結果、脱分極が検出されないことがある。
【0015】
これらのタイプの不適切な脱分極の感知は、監視されている患者に関して発生する実際の心臓活動の不適切な分析につながり得る。例えば、これらのタイプの不適切な脱分極の感知は、心静止など、実際には患者に発生していない心臓イベントの偽陽性の表示を潜在的に引き起こすことがある。そのような偽陽性の表示は、治療の提供、および/または監視されている患者のケアを担当する医療関係者への誤った警告の送信を含む、患者の状態の誤った評価につながる可能性がある。心臓EGMのローパスフィルタリングは、これらのタイプのノイズ信号および振幅変動が、心臓信号の周波数に近いかそれもより低い周波数で発生することがあるため、一般にこれらの問題の解決に役立たない。
【0016】
本開示による医療システムは、例えば、ノイズ信号および心臓信号の振幅変動の存在を検出することによって、心臓EGMにおける心静止の偽検出を識別するための技術を実装する。いくつかの例では、システムの処理回路は、識別された心静止エピソードに関連する心臓EGMを分析して、複数の偽の心静止検出基準のうちの1つ以上が満たされているかどうかを判定する。偽の心静止検出基準の各々は、心臓EGMにおけるノイズおよび/または振幅変動の1つ以上のインジケータを検出するように構成され得る。
【0017】
いくつかの例では、医療システムの処理回路は、心静止検出基準が満たされることに応答してこの分析を実行し、分析に基づいて、患者が心静止を経験したという表示を(例えば、臨床医または他のユーザに)提供するかまたは差し控えるかを判定し得る。処理回路は、心静止の検出に応答して実質的にリアルタイムで、または心静止として識別されたエピソードの心臓EGMデータのその後のレビュー中に、本開示の技術を実行することができる。いずれの場合も、処理回路は、心静止エピソードを検出した医療デバイスの処理回路、および/または医療デバイスからエピソードデータを検索したローカルもしくはリモートコンピューティングデバイスなどの別のデバイスの処理回路を含み得る。このようにして、本開示の技術は、真の心静止の識別における精度を改善し、その結果、患者の状態のより良い評価を有利に可能にし得る。
【0018】
図1は、本開示の1つ以上の技術による、患者4と連携した例示的な医療システム2の環境を示す。例示的な技術は、外部デバイス12および
図1に示されていない他のデバイスのうちの少なくとも1つと無線通信することができるIMD10とともに使用することができる。いくつかの例では、IMD10は、患者4の胸腔の外側に(例えば、
図1に示される胸部の場所の皮下に)移植される。IMD10は、患者4の心臓のレベルの近くまたはすぐ下の胸骨の近く、例えば、少なくとも部分的に心臓のシルエット内に位置付けることができる。IMD10は、複数の電極(
図1には示されていない)を含み、複数の電極を介して心臓EGMを感知するように構成される。いくつかの例では、IMD10はLINQ(商標)ICMの形態を取る。
【0019】
外部デバイス12は、ユーザが見ることができるディスプレイと、外部デバイス12への入力を提供するためのインターフェース(すなわち、ユーザ入力機構)とを備えたコンピューティングデバイスであり得る。いくつかの例では、外部デバイス12は、ノートブックコンピュータ、タブレットコンピュータ、ワークステーション、1つ以上のサーバ、携帯電話、携帯情報端末、またはコンピューティングデバイスがIMD10と相互作用することを可能にするアプリケーションを実行し得る別のコンピューティングデバイスであり得る。
【0020】
外部デバイス12は、無線通信を介して、IMD10、および任意選択で、別のコンピューティングデバイス(
図1には示されていない)と通信するように構成される。外部デバイス12は、例えば、近距離通信技術(例えば、誘導結合、NFC、または10~20cm未満の範囲で動作可能な他の通信技術)、および遠距離通信技術(例えば、802.11もしくはBluetooth(登録商標)仕様セット、または近距離通信技術よりも広い範囲で動作可能な他の通信技術による無線周波数(RF)遠隔測定)を介して通信することができる。
【0021】
外部デバイス12を使用して、IMD10の動作パラメータを構成することができる。外部デバイス12は、IMD10からデータを検索するために使用され得る。検索されたデータには、IMD10によって測定された生理学的パラメータの値、IMD10によって検出された不整脈またはその他の病気のエピソードの表示、およびIMD10によって記録された生理学的信号が含まれる場合がある。例えば、外部デバイス12は、心静止または別の病気のエピソードがセグメント中に発生したとIMD10が判定するために、IMD10によって記録された心臓EGMセグメントを検索することができる。
図5に関して以下でより詳細に論じられるように、1つ以上のリモートコンピューティングデバイスは、例えば、ネットワークを介して、IMD10をプログラムしおよび/またはIMD10からデータを検索するために、外部デバイス12と同様の方法でIMD10と相互作用し得る。
【0022】
医療システム2の、例えば、IMD10、外部デバイス12、および/または1つ以上の他のコンピューティングデバイスの処理回路は、本開示の心静止の偽検出を識別するための例示的な技術を実行するように構成され得る。いくつかの例では、医療システム2の処理回路は、IMD10によって感知され、かつ識別された心静止エピソードに関連する心臓EGMを分析して、複数の偽の心静止検出基準のうちの1つ以上が満たされているかどうかを判定する。偽の心静止検出基準の各々は、心臓EGMにおけるノイズおよび/または振幅変動の1つ以上のインジケータを検出するように構成され得る。心臓EGMを感知するIMD10が挿入可能心臓モニターを備える例の文脈において説明されているが、心臓EGMを感知するように構成された任意のタイプの1つ以上の移植可能または外部デバイスを含む例示的なシステムは、本開示の技術を実装するように構成され得る。
【0023】
図2は、本明細書に記載の1つ以上の技術による、
図1のIMD10の例示的な構成を示す機能ブロック図である。図示の例では、IMD10は、電極16Aおよび16B(総称して「電極16」)、アンテナ26、処理回路50、感知回路52、通信回路54、記憶デバイス56、スイッチング回路58、ならびにセンサ62を含む。図示の例は2つの電極16を含むが、いくつかの例では、3つ以上の電極16を含むかまたはそれに結合されたIMDが本開示の技術を実装することができる。
【0024】
処理回路50は、固定機能回路および/またはプログラム可能な処理回路を含み得る。処理回路50は、マイクロプロセッサ、コントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または同等のディスクリートもしくはアナログ論理回路のうちのいずれか1つ以上を含み得る。いくつかの例では、処理回路50は、1つ以上のマイクロプロセッサ、1つ以上のコントローラ、1つ以上のDSP、1つ以上のASIC、または1つ以上のFPGAの任意の組み合わせなどの複数の構成要素、ならびに他のディスクリートまたは集積論理回路を含み得る。本明細書の処理回路50に帰属する機能は、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、またはそれらの任意の組み合わせとして具体化することができる。
【0025】
感知回路52は、例えば、処理回路50によって制御されるように、心臓EGMを感知するために使用される電極16および感知ベクトルと呼ばれる極性を選択するために、スイッチング回路58を介して電極16に選択的に結合され得る。感知回路52は、心臓の電気的活動の監視を容易にするために、例えば、心臓EGMを生成するために、電極16からの信号を感知することができる。感知回路52はまた、例として、1つ以上の加速度計、圧力センサ、および/または光学センサを含み得るセンサ62からの信号を監視することができる。いくつかの例では、感知回路52は、電極16および/またはセンサ62から受信した信号をフィルタリングおよび増幅するための1つ以上のフィルタおよび増幅器を含み得る。
【0026】
感知回路52および/または処理回路50は、心臓EGM振幅が感知閾値を超えたときに心臓脱分極(例えば、P波またはR波)を検出するように構成され得る。いくつかの例では、感知閾値は、当技術分野で知られている様々な自動感知閾値調整技術のいずれかを使用して、時間とともに自動的に調整可能である。例えば、心臓脱分極の検出に応答して、その後の心臓脱分極を検出するための感知閾値は、ある期間にわたって初期値から減衰することがある。感知回路52および/または処理回路50は、検出された心臓脱分極の振幅に基づいて初期値を判定することができる。調整可能な感知閾値の初期値および減衰は、その後の脱分極が予想されないときに検出された心臓脱分極の直後に感知閾値が比較的より高くなり、心臓脱分極の発生の可能性がより高くなるにつれて時間とともに比較的より低い値に減衰するように構成され得る。心臓脱分極検出のために、感知回路52は、いくつかの例では、整流器、フィルタ、増幅器、比較器、および/またはアナログ-デジタル変換器を含み得る。
【0027】
いくつかの例では、感知回路52は、心臓脱分極の感知に応答して、処理回路50に表示を出力することができる。このようにして、処理回路50は、それぞれの心腔における検出されたR波およびP波の発生に対応する検出された心臓脱分極インジケータを受信することができる。処理回路50は、検出されたR波およびP波の表示を使用して、心拍数を判定し、頻脈性不整脈および心静止などの不整脈を検出することができる。
【0028】
処理回路50は、心臓電位図が心静止検出基準を満たしていることを判定することに基づいて、心静止エピソードを検出することができる。心静止検出基準は、閾値期間の間、心臓脱分極がないことであり得る。そのような例では、処理回路50は、感知回路52から別の心臓脱分極表示を受信することなく、心臓脱分極の検出から所定の時間間隔に到達することに基づいて、心臓EGMが心静止検出基準を満たしていることを判定することができる。
【0029】
感知回路52はまた、分析のために、例えば、心臓リズム弁別において使用するために、および/または本開示の技術に従って1つ以上の偽の心静止検出基準が満たされているかどうかを判定するための分析のために、処理回路50に1つ以上のデジタル化された心臓EGM信号を提供し得る。いくつかの例では、心静止検出基準の充足に基づいて、処理回路50は、疑わしい心静止に対応するデジタル化された心臓EGMのセグメントをエピソードデータとして記憶デバイス56に記憶し得る。デジタル化された心臓EGMセグメントは、感知回路52が脱分極の検出を示さなかった期間、ならびに脱分極が検出されたこの期間の前および/または後の期間にわたる心臓EGMのサンプルを含み得る。IMD10の処理回路50、および/またはIMD10からエピソードデータを検索する別のデバイスの処理回路は、心臓EGMセグメントを分析して、本開示の技術に従って1つ以上の偽の心静止検出基準が満たされているかどうかを判定することができる。
【0030】
通信回路54は、外部デバイス12、別のネットワーク化されたコンピューティングデバイス、または別のIMDもしくはセンサなどの別のデバイスと通信するための任意の適切なハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。処理回路50の制御下で、通信回路54は、内部または外部アンテナ、例えば、アンテナ26の助けを借りて、外部デバイス12または別のデバイスからダウンリンク遠隔測定を受信し、ならびにそれらにアップリンク遠隔測定を送信することができる。さらに、処理回路50は、外部デバイス(例えば、外部デバイス12)およびMedtronic CareLink(登録商標)ネットワークなどのコンピュータネットワークを介して、ネットワーク化されたコンピューティングデバイスと通信することができる。アンテナ26および通信回路54は、誘導結合、電磁結合、近距離通信(NFC)、無線周波数(RF)通信、Bluetooth、WiFi、または他の専有もしくは非専有の無線通信方式を介して信号を送信および/または受信するように構成され得る。
【0031】
いくつかの例では、記憶デバイス56は、処理回路50によって実行されたとき、IMD10および処理回路50に、本明細書のIMD10および処理回路50に帰属する様々な機能を実行させるコンピュータ可読命令を含む。記憶デバイス56は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読出し専用メモリ(ROM)、不揮発性RAM(NVRAM)、電気的消去可能なプログラム可能ROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、または他のいずれかのデジタル媒体など、任意の揮発性、不揮発性、磁気的、光学的、または電気的媒体を含み得る。記憶デバイス56は、例として、IMD10の1つ以上の動作パラメータのプログラム値、および/または通信回路54を使用して別のデバイスに送信するためにIMD10によって収集されたデータを記憶することができる。記憶デバイス56によって記憶され、通信回路54によって1つ以上の他のデバイスに送信されるデータは、疑わしい心静止のエピソードデータ、および/または疑わしい心静止が1つ以上の偽の心静止検出基準を満たしたという表示を含み得る。
【0032】
図3は、
図1および
図2のIMD10の例示的な構成を示す概念的な側面図である。
図3に示される例では、IMD10は、ハウジング15および絶縁カバー76を有する、リードレスの皮下に移植可能な監視デバイスを含み得る。電極16Aおよび電極16Bは、カバー76の外面上に形成または配置され得る。
図2に関して上で説明された回路50~62は、カバー76の内面上に、またはハウジング15内に形成または配置され得る。図示の例では、アンテナ26は、カバー76の内面上に形成または配置されているが、いくつかの例では、外面上に形成または配置され得る。いくつかの例では、絶縁カバー76は、ハウジング15およびカバー76がアンテナ26および回路50~62を囲み、アンテナおよび回路を体液などの流体から保護するように、開放ハウジング15上に位置付けられ得る。
【0033】
アンテナ26または回路50~62のうちの1つ以上は、フリップチップ技術を使用することなどによって、絶縁カバー76の内側上に形成され得る。絶縁カバー76は、ハウジング15上で裏返すことができる。裏返されてハウジング15上に配置されると、絶縁カバー76の内側上に形成されたIMD10の構成要素は、ハウジング15によって画定されるギャップ78内に位置付けられ得る。電極16は、絶縁カバー76を介して形成された1つ以上のビア(図示せず)を介してスイッチング回路58に電気的に接続され得る。絶縁カバー76は、サファイア(すなわち、コランダム)、ガラス、パリレン、および/または他の任意の適切な絶縁材料で形成することができる。ハウジング15は、チタンまたは他の任意の適切な材料(例えば、生体適合性材料)から形成することができる。電極16は、ステンレス鋼、チタン、白金、イリジウム、またはそれらの合金のいずれかから形成することができる。さらに、電極16は、窒化チタンまたはフラクタル窒化チタンなどの材料でコーティングすることができるが、そのような電極に他の適切な材料およびコーティングを使用することができる。
【0034】
図4は、外部デバイス12の構成要素の例示的な構成を示すブロック図である。
図4の例では、外部デバイス12は、処理回路80、通信回路82、記憶デバイス84、およびユーザインターフェース86を含む。
【0035】
処理回路80は、機能を実装するように構成され、および/または外部デバイス12内で実行するための命令を処理するように構成された1つ以上のプロセッサを含み得る。例えば、処理回路80は、記憶デバイス84に記憶された命令を処理することが可能であり得る。処理回路80は、例えば、マイクロプロセッサ、DSP、ASIC、FPGA、または同等のディスクリートもしくは集積論理回路、または前述のデバイスもしくは回路のいずれかの組み合わせを含み得る。したがって、処理回路80は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはそれらの任意の組み合わせであるかどうかにかかわらず、本明細書で処理回路80に帰属する機能を実行するための任意の適切な構造を含み得る。
【0036】
通信回路82は、IMD10などの別のデバイスと通信するための任意の適切なハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。処理回路80の制御下で、通信回路82は、IMD10または別のデバイスからダウンリンク遠隔測定を受信し、ならびにそれらにアップリンク遠隔測定を送信することができる。通信回路82は、誘導結合、電磁結合、NFC、RF通信、Bluetooth、WiFi、または他の専有または非専有の無線通信方式を介して信号を送信または受信するように構成され得る。通信回路82はまた、様々な形態の有線および/もしくは無線通信ならびに/またはネットワークプロトコルのいずれかを介してIMD10以外のデバイスと通信するように構成され得る。
【0037】
記憶デバイス84は、動作中に外部デバイス12内に情報を記憶するように構成され得る。記憶デバイス84は、コンピュータ可読記憶媒体またはコンピュータ可読記憶デバイスを含み得る。いくつかの例では、記憶デバイス84は、短期メモリまたは長期メモリのうちの1つ以上を含む。記憶デバイス84は、例えば、RAM、DRAM、SRAM、磁気ディスク、光ディスク、フラッシュメモリ、またはEPROMもしくはEEPROMの形態を含み得る。いくつかの例では、記憶デバイス84は、処理回路80による実行のための命令を示すデータを記憶するために使用される。記憶デバイス84は、プログラム実行中に情報を一時的に記憶するために、外部デバイス12上で実行されるソフトウェアまたはアプリケーションによって使用され得る。
【0038】
外部デバイス12とIMD10との間で交換されるデータは、動作パラメータを含み得る。外部デバイス12は、コンピュータ可読命令を含むデータを送信することができ、コンピュータ可読命令は、IMD10によって実装されたとき、IMD10を制御して、1つ以上の動作パラメータを変更し、および/または収集されたデータをエクスポートすることができる。例えば、処理回路80は、収集されたデータ(例えば、心静止エピソードデータ)を外部デバイス12にエクスポートするようにIMD10に要求する命令をIMD10に送信することができる。次に、外部デバイス12は、収集されたデータをIMD10から受信し、収集されたデータを記憶デバイス84に記憶することができる。処理回路80は、IMD10から受信された心臓EGMを分析するために、例えば、心静止および偽の心静止基準が満たされているかどうかを判定するために、本明細書に記載の技術のいずれかを実装することができる。
【0039】
臨床医または患者4などのユーザは、ユーザインターフェース86を介して外部デバイス12と相互作用することができる。ユーザインターフェース86は、液晶ディスプレイ(LDC)または発光ダイオード(LED)ディスプレイまたは他のタイプのスクリーンなどのディスプレイ(図示せず)を含み、処理回路80は、このディスプレイを用いて、IMD10に関連する情報、例えば、心臓EGM、不整脈エピソードの検出の表示、および1つ以上の偽の心静止検出基準が満たされたという判定の表示を提示することができる。さらに、ユーザインターフェース86は、ユーザからの入力を受信するように構成された入力機構を含み得る。入力機構は、例えば、ボタン、キーパッド(例えば、英数字キーパッド)、周辺ポインティングデバイス、タッチスクリーン、またはユーザが外部デバイス12の処理回路80によって提示されるユーザインターフェースをナビゲートして、入力を提供することを可能にする別の入力機構のうちのいずれか1つ以上を含み得る。他の例では、ユーザインターフェース86はまた、可聴通知、指示、もしくは他の音をユーザに提供するため、ユーザから音声コマンドを受信するため、またはその両方のためのオーディオ回路を含む。
【0040】
図5は、本明細書に記載の1つ以上の技術に従って、ネットワーク92を介してIMD10および外部デバイス12に結合され得る、アクセスポイント90と、ネットワーク92と、サーバ94などの外部コンピューティングデバイスと、1つ以上の他のコンピューティングデバイス100A~100N(総称して「コンピューティングデバイス100」)と、を含む、例示的なシステムを示すブロック図である。この例では、IMD10は、通信回路54を使用して、第1の無線接続を介して外部デバイス12と通信し、第2の無線接続を介してアクセスポイント90と通信することができる。
図5の例では、アクセスポイント90と、外部デバイス12と、サーバ94と、コンピューティングデバイス100とは相互接続されており、ネットワーク92を介して互いに通信することができる。
【0041】
アクセスポイント90は、電話ダイヤルアップ、デジタル加入者回線(DSL)、またはケーブルモデム接続などの様々な接続のいずれかを介してネットワーク92に接続するデバイスを含むことができる。他の例では、アクセスポイント90は、有線または無線接続を含む、異なる形態の接続を介してネットワーク92に結合され得る。いくつかの例では、アクセスポイント90は、患者と同じ場所に位置し得るタブレットまたはスマートフォンなどのユーザデバイスであり得る。IMD10は、心静止エピソードデータ、および1つ以上の偽の心静止検出基準が満たされているという表示などのデータをアクセスポイント90に送信するように構成され得る。次に、アクセスポイント90は、ネットワーク92を介して、検索されたデータをサーバ94に通信することができる。
【0042】
場合によっては、サーバ94は、IMD10および/または外部デバイス12から収集されたデータのための安全な記憶サイトを提供するように構成され得る。場合によっては、サーバ94は、コンピューティングデバイス100を介して、臨床医などの訓練された専門家による閲覧のために、ウェブページまたは他の文書内のデータを集めることができる。
図5の図示されたシステムの1つ以上の態様は、Medtronic CareLink(登録商標)ネットワークによって提供されるものと同様であり得る一般的なネットワーク技術および機能を用いて実装され得る。
【0043】
いくつかの例では、コンピューティングデバイス100のうちの1つ以上は、臨床医とともに位置するタブレットまたは他のスマートデバイスであってもよく、これによって、臨床医は、IMD10をプログラムし、それから警告を受信し、および/またはそれに問い合わせることができる。例えば、臨床医は、患者4が臨床通院の合間にいるときなど、コンピューティングデバイス100を介して、IMD10によって収集されたデータにアクセスして、病状の状態をチェックすることができる。いくつかの例では、臨床医は、IMD10、外部デバイス12、サーバ94、もしくはそれらの任意の組み合わせによって判定された患者の健康状態に基づくか、または臨床医に知られている他の患者データに基づくなどして、コンピューティングデバイス100によって実行されるアプリケーションに、患者4に対する医学的介入の指示を入力することができる。次に、デバイス100は、医学的介入の指示を、患者4または患者4の介護者とともに位置する別のコンピューティングデバイス100に送信することができる。例えば、医学的介入のそのような指示は、薬物の投与量、タイミング、もしくは選択を変更するための指示、臨床医による診察をスケジュールするための指示、または医療処置を求めるための指示を含み得る。さらなる例では、コンピューティングデバイス100は、患者4の病状の状態に基づいて患者4への警告を生成することができ、これにより、患者4が、医学的介入の指示を受ける前に積極的に医療処置を求めることを可能にし得る。このようにして、患者4は、必要に応じて、自身の医学的状態に対処するために行動を起こす権限を与えられ、これは、患者4の臨床転帰を改善するのに役立ち得る。
【0044】
図5に示される例では、サーバ94は、例えば、IMD10から検索されたデータを記憶するための記憶デバイス96、および処理回路98を含む。
図5には示されていないが、コンピューティングデバイス100も、同様に、記憶デバイスおよび処理回路を含んでもよい。処理回路98は、機能を実装し、および/またはサーバ94内で実行するための命令を処理するように構成された1つ以上のプロセッサを含み得る。例えば、処理回路98は、記憶デバイス96に記憶された命令を処理することが可能であり得る。処理回路98は、例えば、マイクロプロセッサ、DSP、ASIC、FPGA、または同等のディスクリートもしくは集積論理回路、または前述のデバイスもしくは回路のいずれかの組み合わせを含み得る。したがって、処理回路98は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはそれらの任意の組み合わせであるかどうかにかかわらず、本明細書で処理回路98に帰属する機能を実行するための任意の適切な構造を含み得る。サーバ94の処理回路98、および/またはコンピューティングデバイス100の処理回路は、IMD10から受信した心臓EGMを分析するために、例えば、心静止および偽の心静止基準が満たされているかどうかを判定するために、本明細書に記載の技術のいずれかを実装することができる。
【0045】
記憶デバイス96は、コンピュータ可読記憶媒体またはコンピュータ可読記憶デバイスを含み得る。いくつかの例では、記憶デバイス96は、短期メモリまたは長期メモリのうちの1つ以上を含む。記憶デバイス96は、例えば、RAM、DRAM、SRAM、磁気ディスク、光ディスク、フラッシュメモリ、またはEPROMもしくはEEPROMの形態を含み得る。いくつかの例では、記憶デバイス96は、処理回路98による実行のための命令を示すデータを記憶するために使用される。
【0046】
図6は、複数の偽の心静止検出基準が満たされているかどうかに基づいて、心静止エピソードの識別が偽であるかどうかを判定するための例示的な動作を示す流れ図である。
図6の図示の例によれば、IMD10の処理回路50は、IMD10の感知回路52によって感知された心臓EGMに基づいて、少なくとも1つの心静止検出基準が満たされていることを判定する(120)。例えば、
図2に関してより詳細に論じられるように、処理回路50は、感知回路52が心臓EGM内で心臓脱分極、例えば、R波を識別してから、閾値時間間隔、例えば、2~3秒が経過したと判定し得る。
【0047】
心静止検出基準が満たされていることを判定することに基づいて、処理回路50は、複数の偽の心静止検出基準のうちの1つ以上が満たされているかどうかを判定する。図示の例では、処理回路50は、心静止検出カウント基準を含む偽の心静止検出基準が満たされているかどうかを判定する(122)。例えば、処理回路50は、心静止検出基準の直近の充足から遡って所定の期間内に、心静止検出基準が少なくとも閾値回数、例えば、過去30日以内に少なくとも2回満たされたかどうかを判定することができる。別の例として、処理回路は、ある期間にわたって、閾値レートで、例えば、30日当たり1回の心静止のレートで心静止検出基準が満たされたかどうかを判定することができる。期間は、移植から、または移植以外の期間開始時間、例えば、移植後の一定の日数、週数、もしくは月数に、またはIMD10の電源投入時のリセットもしくは他のリセット時に開始する期間から、IMD10がアクティブであった全時間であり得る。
【0048】
心静止検出カウント基準が満たされていないことを判定することに基づいて(122のいいえ)、
図6の例示的な動作は終了する(124)。心静止検出カウント基準が満たされていることを判定することに基づいて(122のはい)、処理回路50は、他の偽の心静止検出基準のうちの1つ以上が満たされているかどうかの判定に進む。このような心静止検出カウント基準の実装は、心静止を頻繁に検出するデバイスでは心静止の偽検出が発生する傾向があり、心静止を頻繁に検出しないデバイスでは発生しない傾向があるという観察に基づく。
図6の例示的な動作におけるように、他の偽の心静止検出基準を適用する前に心静止検出カウント基準の充足を要求することで、偽の心静止検出基準によって、疑わしい心静止を誤って偽として分類することを回避することができる。
【0049】
ノイズ信号は、心臓EGMにおいて、例えば、IMD10または患者4の状態の変化に基づいて、断続的にまたは様々な頻度で発生することがある。その結果、心静止検出の頻度がより少ない期間よりも心静止検出がより頻繁である(EGM内にノイズがあり得ることを示す)期間の間に、所与の心静止検出が偽である(例えば、ノイズによって引き起こされる)可能性がより高い場合がある。本明細書に記載の偽の心静止検出基準を使用して、疑わしい心静止エピソードの心臓EGMの評価を選択的にアクティブ化および非アクティブ化するために心静止検出カウント基準を実装することによって、心静止の最近の頻度と、したがって、直近の心静止エピソードが偽である可能性とに応じて、心静止検出の感度対特異性に対して様々な強調を達成することができる。
【0050】
心静止の頻度が閾値を下回り、したがって、心静止カウント基準が満たされない期間中、処理回路50は、偽の心静止検出基準を使用して、疑わしい心静止エピソードの心臓EGMの評価をアクティブ化せず、それにより、心静止検出の感度を維持し得る。心静止の頻度が閾値を上回り、したがって、心静止カウント基準が満たされない期間中、処理回路50は、偽の心静止検出基準を使用して、疑わしい心静止エピソードの心臓EGMの評価をアクティブ化し、それにより、心静止検出の特異性を改善し得る。したがって、偽の心静止検出基準を使用して、疑わしい心静止エピソードの心臓EGMの評価を選択的に(例えば、断続的に)アクティブ化および非アクティブ化することにより、心臓EGMの現在の状態、例えば、心臓EGM内のノイズの度合いに、感度と特異性との間の所望の均衡を提供することができる。
【0051】
図示の例では、心静止検出カウント基準が満たされているという判定に基づいて(122のはい)、処理回路50は、減少した振幅閾値を使用して、心静止検出基準振幅閾値を使用して脱分極が検出されなかった心臓EGMの時間間隔内に脱分極の閾値数が検出されるかどうかの判定に進む(126)。減少した振幅閾値基準における脱分極が満たされていることに基づいて(126のはい)、処理回路50は、疑わしい心静止エピソードが偽の心静止であることを判定することができる(128)。減少した振幅閾値基準における脱分極が満たされていないことに基づいて(126のいいえ)、処理回路50は、別の偽の心静止検出基準を検討することに進むことができる。
【0052】
図示の例では、減少した振幅閾値基準における脱分極が満たされていないという判定に基づいて(126のいいえ)、処理回路50は、満たされている心静止検出基準に関連する心臓EGMが、減衰ノイズ基準も満たしているかどうかを判定することに進む(130)。減衰ノイズ基準が満たされていることに基づいて(130のはい)、処理回路50は、疑わしい心静止エピソードが偽の心静止であることを判定することができる(128)。減衰ノイズ基準が満たされていないことに基づいて(130のいいえ)、処理回路50は、別の偽の心静止検出基準を検討することに進むことができる。
【0053】
図示の例では、減衰ノイズ基準が満たされていないという判定に基づいて(130のいいえ)、処理回路50は、疑わしい心静止エピソードに関連する心臓EGMが、先行する脱分極変動性基準を満たしているかどうかを判定することに進む(132)。先行する脱分極変動性基準が満たされていることに基づいて(132のはい)、処理回路50は、疑わしい心静止エピソードが偽の心静止であることを判定することができる(128)。先行する脱分極変動性基準が満たされていないことに基づいて(132のいいえ)、処理回路50は、別の偽の心静止検出基準を検討することに進むことができる。
【0054】
図示の例では、先行する脱分極変動性基準が満たされていないという判定に基づいて(132のいいえ)、処理回路50は、疑わしい心静止エピソードに関連する心臓EGMがエネルギーパターン基準を満たすかどうかを判定することに進む(134)。エネルギーパターン基準が満たされていることに基づいて(134のはい)、処理回路50は、疑わしい心静止エピソードが偽の心静止であることを判定することができる(128)。エネルギー基準が満たされていないことに基づいて(134のいいえ)、
図6の例示的な動作は終了する(124)。
【0055】
例えば、偽の心静止検出基準のいずれも満たされていないことによる、または偽の心静止検出基準の不十分な数もしくは組み合わせが満たされていることによる、
図6の例示的な動作の終了に基づいて(124)、処理回路50は、疑わしい心静止エピソードを真の心静止エピソードとして分類することができる。心静止エピソードが真として分類されることに基づいて、処理回路50は、統計の計算、患者の状態の判定、または他のデバイスへの真のエピソードデータの送信などのさらなる動作において心静止エピソードを使用することができる。疑わしい心静止エピソードが偽の心静止であることを判定することに基づいて(128)、処理回路50は、例えば、さらなる偽の心静止検出を回避するためにIMD10の動作変更をユーザが検討するために、偽エピソードの統計を計算し、偽エピソードデータを他のデバイスに送信するなどのさらなる動作において偽の心静止エピソードを使用することができる。
【0056】
図6に示す動作の順序および流れは一例である。本開示による他の例では、より多いもしくはより少ない偽の心静止検出基準が検討され得るか、偽の心静止検出基準が異なる順序で検討され得るか、または疑わしい心静止エピソードが偽であったという判定のために、異なる数もしくは組み合わせの偽の心静止検出基準の充足が必要とされ得る。さらに、いくつかの例では、処理回路は、例えば、外部デバイス12またはコンピューティングデバイス100を介して、ユーザによって指示されるように、
図6の方法、または本明細書に記載の技術のいずれかを実行しても実行しなくてもよい。例えば、患者、臨床医、または他のユーザは、リモートで(例えば、Wi-Fiもしくはセルラサービスを使用して)またはローカルで(例えば、患者の携帯電話上に提供されるアプリケーションを使用して、もしくは医療デバイスプログラマを使用して)、偽の心静止検出を識別するための機能をオンまたはオフにしてもよい。
【0057】
さらに、IMD10およびIMD10の処理回路50が、例示的な動作の部分の各々を実行する例の文脈において説明されているが、
図6の例示的な動作、ならびに
図7~
図17に関して本明細書に記載された例示的な動作は、医療システムのいずれか1つ以上のデバイスの任意の処理回路、例えば、IMD10の処理回路50、外部デバイス12の処理回路80、サーバ94の処理回路98、またはコンピューティングデバイス100の処理回路のうちの1つ以上の任意の組み合わせによって実行され得る。いくつかの例では、IMD10の処理回路50は、心静止検出基準が満たされているかどうかを判定し、疑わしい心静止エピソードのエピソードデータを別のデバイスに提供することができる。そのような例では、他のデバイス、例えば、外部デバイス12、サーバ94、またはコンピューティングデバイス100の処理回路は、1つ以上の偽の心静止検出基準をエピソードデータに適用することができる。
【0058】
図7は、心静止であると疑われる識別されたエピソードに関連する心臓EGM148、および心臓EGM148に基づいて例示的な偽の心静止検出基準が満たされているかどうかを判定するための例示的な技術を示すグラフである。いくつかの例では、心臓EGM148は、電極16を介してIMD10の感知回路52によって感知される心臓EGMのデジタル化されたセグメントであり、1つ以上の心静止検出基準を心臓EGMに適用する処理回路50によって識別される疑わしい心静止エピソードに対応する。
【0059】
図7は、例えば、心臓EGM148を、本明細書に記載されるように自動的に調整可能であり得る振幅閾値と比較することによって、IMD10によって識別される心臓脱分極150A~150H(この例ではR波)を示している。
図7はまた、心静止間隔152を示している。心静止間隔152は、IMD10によって識別される隣接する脱分極150Fと150Gとの間の時間間隔を表す。本明細書で説明するように、処理回路50は、心静止間隔152が所定の閾値時間量に達したときに心静止検出基準が満たされたと判定していることがある。心静止検出基準の充足に基づいて、処理回路50は、心静止間隔152の前後の期間、および記憶デバイス52における脱分極150A~150Hの検出(例えば、タイミング)の表示を含む、心臓EGM148を記憶していることがある。
【0060】
図6の項目126を参照して説明したように、1つの偽の心静止検出基準は、減少した振幅閾値154を使用して、心静止間隔152の間に心臓EGM148内で脱分極の閾値数が検出されるかどうかを判定することを含み得る。
図7に示される例では、処理回路50は、心臓EGM148を減少した振幅閾値154と比較することによって、間隔152の間に脱分極150I~150Kを検出する。減少した振幅閾値基準を満たすために必要とされる閾値154を使用して間隔152の間に検出された脱分極の閾値数は、2つまたは3つの検出された脱分極を含む1以上の任意の整数であり得る。
【0061】
いくつかの例では、処理回路50は、心静止間隔152に先行する所定数の脱分極150A~150Fの振幅に基づいて、減少した振幅閾値154を判定する。いくつかの例では、処理回路50は、心臓EGM148の差動信号のゼロ交差に対応するサンプルにおいて心臓EGM148の振幅を判定することによって、脱分極150A~150Fの振幅を判定する。いくつかの例では、処理回路50は、脱分極150A~150Fの振幅の代表値、例えば、振幅の中央値または平均を判定し、減少した振幅閾値154を、代表的な振幅の所定の部分、例えば、分数またはパーセンテージであると判定する。例として、所定の部分は、1/10、1/8、1/5、1/3、または1/2であり得る。いくつかの例では、6つの先行する脱分極を含む、2つから8つの先行する脱分極など、任意の数の先行する脱分極を使用して、閾値154を判定することができる。
【0062】
一例では、6つの先行するR波の振幅の中央値が80マイクロボルト(μV)である場合、振幅の中央値の1/8の減少した振幅閾値154は10μVになるであろう。そのような例では、処理回路50は、間隔152の間に心臓EGM148に15μVの信号が存在する場合、偽の心静止検出基準が満たされたことを判定するであろう。心静止間隔152の間に減少した振幅閾値154を適用することはまた、15μVのP波を有する房室ブロックを不明瞭にすることがある。しかしながら、心静止検出カウント基準(
図6の122)の充足に基づいてこの偽の心静止検出基準を適用すること、および比較的高いR波振幅を有する心臓EGMによってこの偽の心静止検出基準が満たされる確率が低いことは、エピソードの誤った分類の可能性を低減する。
【0063】
図8は、例えば、
図6の項目126に対応する、脱分極検出のための減少した振幅閾値を含む例示的な偽の心静止基準が満たされているかどうかを判定するための例示的な動作を示す流れ図である。
図8の例示的な動作は、
図7に示される心臓EGM148および他のデータを参照して説明される。
【0064】
図8の図示の例によれば、IMD10の処理回路50は、心静止間隔152に先行する脱分極150の所定の数「N」、例えば、心静止間隔の前の直近のN個の脱分極を識別する(160)。処理回路50は、N個の先行する脱分極150の振幅を判定する(162)。処理回路50は、N個の先行する脱分極150の振幅に基づいて、例えば、N個の先行する脱分極150の判定された振幅の中央値または他の代表値の所定の分数または他の部分に基づいて、減少した振幅閾値154を判定する(164)。
【0065】
処理回路50は、減少した振幅閾値154を、心静止間隔152内の心臓EGM148、例えば、心静止間隔全体内または心静止間隔の一部内の心臓EGM148の部分と比較する(166)。処理回路50は、比較に基づいて、例えば、心臓EGM148が心静止間隔内の減少した振幅閾値154以上であることに基づいて、脱分極150の閾値数が心静止間隔152内で識別されるかどうかを判定する(168)。例として、脱分極の閾値数は、1つ、2つ、または3つの脱分極であり得る。脱分極の閾値数を検出することに基づいて(168のはい)、処理回路50は、疑わしい心静止エピソードが偽の心静止であることを判定することができる(128)。脱分極の閾値数を検出しないことに基づいて(168のいいえ)、処理回路50は、
図6のブロック130を参照して説明される減衰ノイズ基準などの別の偽の心静止検出基準の適用に進むことができる(170)。
【0066】
図9は、減衰ノイズを含む心臓EGM181を示すグラフである。心臓EGM181は、疑わしい心静止エピソードのエピソードデータとして含まれるデジタル化された心臓EGMセグメントであり得る。
【0067】
ブラケット182によって概して示される時間スパンにわたって、心臓EGM181は、比較的一貫した時間間隔で繰り返される、いくらか一貫したピークのパターンおよび振幅の変動を含む。ブラケット183によって概して示される時間スパン中、心臓EGM181は、ブラケット182によって示される時間スパン中に以前に提供された一貫したパターンを提供し続けるのではなく、代わりに、ブラケット182によって示される時間スパン中に心臓EGM181において提供されるピークのいずれよりもはるかに大きい振幅および持続時間を有する大きい振幅スパイク184を提供する。
【0068】
振幅スパイク184に続いて、かつブラケット185によって概して示される時間スパン中に、心臓EGM181は、ブラケット182によって示される時間スパンにわたって測定された場合、これらの同じパラメータと比較して、信号の振幅のより大きい変動を含み、より多くの負のピークおよび/またはより低い全体的な平均もしくは中央値の振幅値を含み得る。偽の心静止検出基準のいくつかの例では、処理回路50は、振幅スパイク184および/または振幅スパイク184に続くブラケット185によって示される時間スパン中に示される変動を分析して、心臓EGM181のこれらの部分がノイズ信号、例えば、減衰ノイズを表すかどうかを判定することができる。
【0069】
図10は、減衰ノイズを含む心臓EGM191、および心臓EGMに基づいて例示的な偽の心静止検出基準が満たされているかどうかを判定するための例示的な技術を示すグラフである。心臓EGM191は、例えば、心静止検出基準が満たされたと判定するIMD10の処理回路50に基づいて、疑わしい心静止エピソードのエピソードデータとしてIMD10によって含まれるデジタル化された心臓EGMセグメントであり得る。
【0070】
図10に示されるように、心臓EGM191は、「0」(ゼロ)秒として示される時間に続く心臓EGM191の部分に振幅スパイク202を含む。例えば、
図10の例における検出ウィンドウ194および196によって例示的に表されるような一組の検出ウィンドウを使用して、処理回路50は、心臓EGM191の1つ以上の部分を分析して、心臓EGM191が振幅スパイク202または他の減衰ノイズなどのノイズ信号を含むかどうかを判定することができる。
【0071】
様々な例では、ノイズ信号が存在するかどうかを判定するために心臓EGM191を分析することは、検出ウィンドウ194および196を設定するための基礎としてサンプル時間192を判定することを含む。いくつかの例では、サンプル時間192を判定することは、サンプル時間を、脱分極203、例えば、R波が心臓EGM191内で検出された時間に等しく設定することを含む。脱分極203は、いくつかの例では、心静止間隔152(
図7)に先行する直近の脱分極であり得る。
【0072】
処理回路50がサンプル時間192を選択すると、処理回路50は、ベースラインウィンドウ194を設定して、ベースラインウィンドウが、サンプル時間192から、サンプル時間192より前のある時間量の間延びる時間スパン195を含むようにすることができる。時間スパン195の幅は、特定の時間スパンに限定されず、いくつかの例では、0.5~5秒の範囲内の時間スパンであり得る。
図10の例では、ベースラインウィンドウ194は、サンプル時間192から延び、約1秒の例示的な時間スパン195を含み、サンプル時間192から、サンプル時間192より最大1秒前の時間にわたる心臓EGM191の部分を含むように延びる。
【0073】
様々な例では、処理回路50は、サンプル時間192およびベースラインウィンドウ194に基づいてベースライン振幅値199を判定する。処理回路50は、ベースラインウィンドウ194内にある心臓EGM191のサンプルの振幅を判定し、これらの判定された振幅値に基づいてベースライン振幅199を判定することによって、ベースライン振幅199の値を計算することができる。いくつかの例では、ベースライン振幅199の値は、ベースラインウィンドウ194中の心臓EGM191の振幅値の平均または中央値であり得る。
【0074】
処理回路50はまた、サンプル時間192から、サンプル時間192に続くある時間量の間延びる時間スパン197を含むように、測定ウィンドウ196を設定する。時間スパン197は、特定の持続時間に限定されず、いくつかの例では、0.5~5秒の範囲内であり得る。
図10の例では、時間スパンは、サンプル時間192から、サンプル時間192より最大1秒後の時間にわたる心臓EGM191の部分を含む、約1秒の持続時間である。様々な例では、測定ウィンドウ196の時間スパン197の幅は、ベースラインウィンドウ194に設定された時間スパン195の幅と等しいか、または異なる。脱分極203が心静止間隔152に先行する直近の脱分極である例では、測定ウィンドウ196は、心静止間隔の少なくとも一部分を含む。
【0075】
処理回路50は、測定ウィンドウ196内の心臓EGM191のサンプルの振幅値を判定することができる。処理回路50は、測定ウィンドウ196内のこれらのサンプリングされた振幅値、およびベースラインウィンドウ194に基づいて判定されたベースライン振幅値199に基づいて、心臓EGM191の部分の曲線下面積の値を判定することができる。
【0076】
例えば、処理回路50は、測定ウィンドウ196内にある心臓EGM191の振幅値とベースライン振幅値199との間の差値のセットを判定することができる。いくつかの例では、処理回路50は、測定ウィンドウ196内にあり、かつベースライン振幅値199を超える心臓EGM191の部分の下に含まれる領域198を計算することによって、曲線下面積の値を判定する。曲線下面積の値の計算は、この面積を計算するための特定の技術に限定されず、当業者によって理解されるように、曲線下面積を計算するための任意の技術を含み得る。曲線下面積の値が領域198について計算されると、処理回路50は、曲線下面積の値をノイズ信号閾値と比較することができる。いくつかの例では、曲線下面積の値がノイズ信号閾値を超えるかまたはそれに等しい場合、処理回路50は、ノイズ信号が心臓EGM191内で検出され、偽の心静止検出基準が満たされていることを判定する。
【0077】
図10の例では、直近の先行する脱分極203から、ベースラインウィンドウ194は時間的に遡って延び、測定ウィンドウ196は時間的に順方向に延びるが、処理回路50は、ベースラインウィンドウ194および測定ウィンドウ196を、脱分極203に対する他の時間関係で設定することができる。例えば、処理回路50は、ベースラインウィンドウ194を、脱分極203から時間的に順方向に延びるように設定し、測定ウィンドウ196を、ベースラインウィンドウ194の終わりから時間的に順方向に延びるように設定することができる。そのような例では、ベースラインウィンドウ194は、ブランキング期間と呼ばれる、脱分極203の検出後の期間に対応し得、その間、IMD10は、後続の脱分極を検出することを防止される。そのような例では、測定ウィンドウ196は、例えば、振幅スパイク202の予想される持続時間を捕捉するために、ベースラインウィンドウ194よりも長い持続時間を有することができる。いくつかの例では、ベースラインウィンドウ194および測定ウィンドウ196は、連続または隣接する必要はない。
【0078】
一般に、P波は、ベースライン振幅の上方および下方において比較的より狭くおよび/またはより均一に分布しているため、曲線下面積の測定値がより小さくなり、その後、ノイズ信号が減衰し、例えば、指数関数的に減衰する。その結果、曲線下面積の測定は、真の心静止中に発生するP波と、偽の心静止の検出をもたらした減衰ノイズとを効果的に区別し得る。
【0079】
図11は、減衰ノイズを検出するための例示的な偽の心静止基準が満たされているかどうかを判定するための例示的な動作を示す流れ図であり、例えば、
図6の項目130に対応する。
図11の例示的な動作は、
図7に示される心臓EGM148および他のデータ、ならびに
図10に示される心臓EGM191および他のデータを参照して説明される。
【0080】
図11の例によれば、処理回路50は、心静止間隔152に先行する最後の脱分極203を識別する(220)。処理回路50はさらに、最後の脱分極203の時間に基づいてベースラインウィンドウ194および測定ウィンドウ196を設定する(222)。処理回路50は、例えば、ベースラインウィンドウ194内の振幅の平均または中央値として、ベースラインウィンドウ194内の心臓EGM191の振幅に基づいてベースライン振幅199を判定する(224)。
【0081】
処理回路50はさらに、ベースライン振幅199に対して、測定ウィンドウ196内の心臓EGM191の部分の曲線下面積の測定値を判定する(226)。例えば、処理回路50は、測定ウィンドウ196内の心臓EGM191のサンプルの振幅とベースライン振幅199との間の差の合計に基づいて、曲線下面積の測定値を判定することができる。曲線下面積の測定のための任意の既知の技術を採用することができる。
【0082】
処理回路50は、曲線下面積の測定値が閾値を満たしているかどうか、例えば、閾値以上であるかどうかを判定する(228)。曲線下面積の測定値が閾値を満たしていることに基づいて(228のはい)、処理回路50は、疑わしい心静止エピソードが偽の心静止であることを判定することができる(128)。曲線下面積の測定値が閾値を満たしていないことに基づいて(228のいいえ)、処理回路50は、
図6のブロック132を参照して説明されるような先行する脱分極変動性基準などの別の偽の心静止検出基準の適用に進むことができる(170)。
【0083】
図12は、減衰ノイズを含む心臓EGMの差動信号241、および心臓EGMに基づいて例示的な偽の心静止検出基準が満たされているかどうかを判定するための例示的な技術を示すグラフである。IMD10の処理回路50は、例えば、処理回路50が心静止検出基準が満たされたと判定することに基づいて、疑わしい心静止エピソードのエピソードデータとしてIMD10によって含まれるデジタル化された心臓EGMセグメントに基づいて差動信号241を判定することができる。いくつかの例では、処理回路50は、心臓EGMの対応するサンプル「y」の振幅値を取り、その振幅値からサンプル「y-n」における心臓EGMの振幅値を差し引くことによって、差動信号241の各サンプル「y」の値を判定し、ここで、nは、サンプルの所定の数である。
【0084】
図12に示すように、差動信号241の値のいくつかは、「ゼロ」値ライン237を下回り、差動信号241内の信号値のいくつかは、「ゼロ」値ライン237を下回る。
図10に示されるような振幅スパイク202などの心臓EGM内のノイズ信号は、差動信号241内のスパイク242などの1つ以上のスパイクを有する差動信号と、それに続くゼロ値ライン237への差動信号241の漸進的な戻りとをもたらし得る。
【0085】
処理回路50は、心臓EGM内の他の脱分極243のR波などのイベントの検出に基づいて、測定ウィンドウ246を設定することができる。図示の例では、時間スパン245は、脱分極243の検出時に開始する。
図12の例では、時間スパン245は、0.5秒の期間にわたって延びる。時間スパン245に含まれる期間は、特定の時間スパンに限定されず、いくつかの例では、0.2~1秒の範囲であり得る。いくつかの例では、時間スパン245は、ブランキング期間と呼ばれる、脱分極243の検出後の期間に対応し得、その間、IMD10は、後続の脱分極を検出することを防止される。
【0086】
測定ウィンドウ246は、垂直の破線247によって示される、時間スパン245の満了時に開始し、時間スパン248にわたって延び、時間スパン248の満了において終了する。
図12の例では、時間スパン248は、1.5秒の期間にわたって延びる。時間スパン248に含まれる期間は、特定の時間スパンに限定されず、いくつかの例では、1~5秒の範囲であり得る。
【0087】
処理回路50は、測定ウィンドウ246内の差動信号241のサンプルについて、符号、すなわち、ゼロライン237より上では正、ゼロライン237より下では負、またはゼロライン上を判定する。処理回路50は、符号のうちの1つ以上のカウントを判定し、カウントが閾値を満たしているかどうか、例えば、閾値に等しいか、それを超えるか、またはそれを下回るかを判定する。カウントは、検討されるサンプルの総数のパーセンテージまたは分数の形式を取ることができる。概して、減衰ノイズが心臓EGM内に存在する場合、測定ウィンドウ246内の差動信号241の符号は不均衡になり、例えば、
図12の例ではより多くの符号が負である。いくつかの例では、負の符号をカウントまたは定量化することができるが、他の例は、正のサンプル値の数、非負のサンプル値の数(例えば、ゼロサンプル値+正のサンプル値のカウント)または非正のサンプル値の数(例えば、ゼロサンプル値+負のサンプル値のカウント)をカウントまたは定量化することを含むことができる。
【0088】
減衰ノイズの存在を検出するために最後の脱分極に続く測定ウィンドウ内の差動信号の符号の不均衡を使用することは、減衰ノイズを検出するために曲線下面積を計算することよりも簡単なIMD10の処理回路50の計算を伴い得る。さらに、真の心静止中の心静止間隔中に発生するP波または熱雑音は、(心静止間隔中に発生する)測定ウィンドウ内の差動信号の符号の実質的に等しい分布を有するが、指数関数的または他の減衰ノイズは、コメント、例えば、負の符号付きのサンプルのうちの70%超を有する場合がある。
【0089】
図13は、減衰ノイズを検出するための例示的な偽の心静止基準が満たされているかどうかを判定するための別の例示的な動作を示す流れ図である。
図13の例示的な動作は、
図12に示される心臓差動信号241および他のデータを参照して説明される。
【0090】
図13の例によれば、処理回路50は、心静止間隔、例えば、
図7の心静止間隔152に先行する最後の脱分極243を識別する(260)。処理回路はさらに、最後の脱分極後の期間245を開始する測定ウィンドウ246を設定し(262)、測定ウィンドウ246内の差動信号241を判定する(264)。処理回路50はさらに、測定ウィンドウ246内の差動信号241のサンプルの符号を判定し、符号のうちの少なくとも1つについて、その符号を有するサンプルの数をカウントするかまたは他の方法で定量化する(266)。
【0091】
処理回路50は、符号のうちの1つのカウントが共通符号閾値を満たしているかどうか、例えば、閾値以上であるかどうかを判定する(268)。共通符号閾値が満たされていることに基づいて(268のはい)、処理回路50は、疑わしい心静止エピソードが偽の心静止であることを判定することができる(128)。共通符号閾値が満たされていないことに基づいて(268のいいえ)、処理回路50は、
図6のブロック132を参照して説明されるような先行する脱分極変動性基準などの別の偽の心静止検出基準の適用に進むことができる(270)。
【0092】
図14は、識別された心静止エピソードに関連する心臓EGM290、および心臓EGMに基づいて別の例示的な偽の心静止検出基準が満たされているかどうかを判定するための例示的な技術を示すグラフである。心臓EGM290は、例えば、IMD10の処理回路50が心静止検出基準が満たされたと判定することに基づいて、疑わしい心静止エピソードのエピソードデータとしてIMD10によって含まれるデジタル化された心臓EGMセグメントであり得る。
【0093】
図14は、例えば、心臓EGM290を、本明細書に記載されるように自動的に調整可能であり得る振幅閾値と比較することによって、IMD10によって識別される心臓脱分極292A~292G(この例ではR波)を示している。
図14はまた、心静止間隔294を示している。心静止間隔294は、IMD10によって識別される(時間的に)隣接する脱分極292Fと292Gとの間の時間間隔を表す。本明細書で説明するように、処理回路50は、心静止間隔294が所定の閾値時間量に達したときに心静止検出基準が満たされたと判定していることがある。心静止検出基準の充足に基づいて、処理回路は、心静止間隔294の前後の期間、および記憶デバイス52における脱分極292A~292G(総称して「脱分極292」)の検出(例えば、タイミング)の表示を含む、心臓EGM290を記憶していることがある。
【0094】
図6の項目132を参照して説明したように、1つの偽の心静止検出基準は、心静止間隔294に先行するN個の脱分極292の変動性が変動性閾値を満たしているかどうかを判定することを含み得る。心静止間隔294に先行する脱分極の数「N」は、1よりも大きい任意の整数、4、6、または8などであり得る。N個の脱分極292は、心静止間隔294に先行する最後の脱分極292Fを含み得るが、必須ではない。例えば、処理回路50は、心静止間隔292に先行する6つの脱分極292A~292Fの変動性を判定することができる。
【0095】
変動性は、脱分極292の振幅または他の特性の変動性であり得る。処理回路50は、先行する脱分極292の変動性を判定するために、複数の値の変動性を測定するかまたは他の方法で特徴付けるための任意の既知の技術を使用することができる。いくつかの例では、処理回路50は、例えば、先行する脱分極の最大振幅と中央値振幅との間の差を比較、例えば、判定する。そのような例では、処理回路50は、この差または他の比較が、所定の閾値を満たす、例えば、超えるかどうかを判定することができる。
【0096】
電気ノイズは、偽の心静止検出を引き起こす可能性がある。いくつかの例では、電気ノイズのために誤って検出された心静止エピソードの心臓EGMは、40μV~2000μVの範囲のランダムなピークが追加された平らな線のように見える。真の心臓EGMは、数秒内にR波の振幅のこのような広い範囲を含まない可能性が高い。先行する脱分極の変動性、例えば、最大値と中央値の差は、電気ノイズによって引き起こされる偽の心静止検出に非常に敏感で、固有であり得る。真の心静止検出の直前に電気ノイズが偶然に発生した場合、そのような基準は真の心静止検出を誤って拒否することがあるが、この合流は、特に心静止検出頻度が心静止カウント検出閾値(
図6の122)を下回るIMDでは、発生する可能性が低い。
【0097】
図15は、例示的な偽の心静止基準が満たされているかどうかを判定するための別の例示的な動作を示す流れ図である。
図15の例示的な動作は、
図14に示される心臓EGM290および他のデータを参照して説明される。
【0098】
図15の例によれば、処理回路50は、心静止間隔294に先行するN個の脱分極292を識別する(300)。処理回路50は、N個の先行する脱分極292の変動性を判定する。例えば、処理回路50は、N個の先行する脱分極292の振幅を判定し、N個の先行する脱分極292の最大振幅を判定し、N個の先行する脱分極292の振幅の代表値、例えば、振幅の中央値または平均を判定し得る(302)。処理回路50はさらに、差または比率など、最大振幅と代表的な振幅との間の比較のメトリックを判定する(304)。
【0099】
処理回路50は、比較のメトリックが閾値を満たしているかどうか、例えば、閾値以上であるかどうかを判定する(306)。比較のメトリックが閾値を満たしていることに基づいて(306のはい)、処理回路50は、疑わしい心静止エピソードが偽の心静止であることを判定することができる(128)。比較のメトリックが閾値を満たしていないことに基づいて(306のいいえ)、処理回路50は、
図6のブロック134を参照して説明されるようなエネルギーパターン基準などの別の偽の心静止検出基準の適用に進むことができる(308)。
【0100】
図16は、識別された心静止エピソードに関連する心臓EGM320、および心臓EGMに基づいて別の例示的な偽の心静止検出基準が満たされているかどうかを判定するための例示的な技術を示すグラフである。心臓EGM320は、例えば、IMD10の処理回路50が心静止検出基準が満たされたと判定することに基づいて、疑わしい心静止エピソードのエピソードデータとしてIMD10によって含まれるデジタル化された心臓EGMセグメントであり得る。
【0101】
図16は、例えば、心臓EGM320を、本明細書に記載されるように自動的に調整可能であり得る振幅閾値と比較することによって、IMD10によって識別される心臓脱分極322A~322E(この例ではR波)を示している。
図16はまた、心静止間隔323を示している。心静止間隔323は、IMD10によって識別される隣接する脱分極322Dと322Eとの間の時間間隔を表す。本明細書で説明するように、処理回路50は、心静止間隔323が所定の閾値時間量に達したときに心静止検出基準が満たされたと判定していることがある。心静止検出基準の充足に基づいて、処理回路50は、心静止間隔323の前後の期間、および記憶デバイス52における脱分極322A~322E(総称して「脱分極322」)の検出(例えば、タイミング)の表示を含む、心臓EGM320を記憶していることがある。
【0102】
図6の項目134を参照して説明したように、1つの偽の心静止検出基準は、心静止間隔323の間の心臓EGM320のエネルギーパターンを評価することを含み得る。医師が心臓EGM320などの心臓EGMのグラフィック表現をレビューして、疑わしい心静止が真であるか偽であるかを判定するとき、医師は、心静止間隔323の前のR-R間隔を測定または評価し、先行するR-R間隔と同じペースまたは同相である、例えば、先行するR-R間隔と同様のR-R間隔を有する心静止間隔323内に、目に見える小さいピークがあるかどうかを判定することができる。このようなパターンは、心静止の検出が偽であり、例えば、R波振幅の低下によって引き起こされたことを医師に示していることがある。対照的に、先行するR-R間隔と位相がずれている心静止間隔323内の小さいピークは、房室ブロックによって引き起こされる真の心静止の間のP波であることがある。
【0103】
いくつかの例では、処理回路50は、心静止間隔323に先行するN個の脱分極322、例えば、心静止間隔323に先行する最後の脱分極322Dを含むN個の連続した脱分極322を識別する。N個の先行する脱分極322に基づいて、処理回路50は、間隔324Aおよび324B(総称して「脱分極間間隔324」)を含む、先行する脱分極322間のN-1個の間隔を判定することができる。Nは、7または13など、任意の整数であり得る。心静止間隔323内で、処理回路50は、脱分極間間隔324に基づいて、予想される脱分極ウィンドウ326A~326C(総称して「予想される脱分極ウィンドウ326」)と、予想される脱分極間ウィンドウ328A~328C(総称して「予想される脱分極間ウィンドウ328」)とを設定する。
図16の例には各タイプのウィンドウの3つが示されているが、他の例は、各タイプのウィンドウをより多くもしくはより少なく採用し、および/または2つのタイプのウィンドウに対して異なる数のウィンドウを採用し得る。
【0104】
いくつかの例では、処理回路50は、脱分極間間隔324の中央値または他の代表値を判定する。処理回路50は、脱分極間間隔324の代表値に基づいて、心静止間隔323内にウィンドウ326および328を設定することができる。例えば、処理回路50は、予想される脱分極ウィンドウ326の各々を、最後の先行する脱分極322Dの後の代表的な間隔の様々な整数倍である時間において生じさせるように、例えば、中心に置くように設定することができる。そのような一例では、処理回路50は、予想される脱分極ウィンドウ326Aを脱分極322Dの後の代表的な間隔になるように設定し、予想される脱分極ウィンドウ326Bを脱分極322Dの後の代表的な間隔の2倍になるように設定し、予想される脱分極ウィンドウ326Cを脱分極322Dの後の代表的な間隔の3倍になるように設定することができる。処理回路50は、予想される脱分極間ウィンドウ328の各々を、最後の先行する脱分極322Dの後の代表的な間隔の様々な非整数倍、例えば、分数倍である時間において生じさせるように、例えば、中心に置くように設定することができる。そのような一例では、処理回路50は、予想される脱分極間ウィンドウ328Aを脱分極322Dの後の代表的な間隔の1/2になるように設定し、予想される脱分極間ウィンドウ328Bを脱分極322Dの後の代表的な間隔の1と1/2倍になるように設定し、予想される脱分極間ウィンドウ328Cを脱分極322Dの後の代表的な間隔の2と1/2倍になるように設定することができる。ウィンドウ326および328の幅は、所定の部分、例えば、分数もしくはパーセンテージ、または代表的な間隔として設定することができ、所定の部分は、ウィンドウ326とウィンドウ328との間と同じであるかまたは異なり得る。
【0105】
処理回路50は、予想される脱分極ウィンドウ326の第1のエネルギー値と、予想される脱分極間ウィンドウ328の第2のエネルギー値とを判定する。いくつかの例では、処理回路50は、ウィンドウ326およびウィンドウ328の各々のエネルギー値を判定し、次いで、ウィンドウ326のエネルギー値の第1の平均、中央値、または他の代表的なエネルギー値、およびウィンドウ328のエネルギー値の第2の代表的なエネルギー値を判定する。処理回路50は、ウィンドウ内の信号のエネルギーを判定するための任意の既知の技術を採用することができる。いくつかの例では、ウィンドウ326および328の各々のエネルギー値として、処理回路50は、ウィンドウ内の心臓EGM320の最大振幅と心臓EGM320の最小振幅との間の差、比率、または他の比較のメトリックを判定する。
【0106】
処理回路50はさらに、予想される脱分極ウィンドウ326の第1の代表的なエネルギー値と、予想される脱分極間ウィンドウ328の第2の代表的なエネルギー値との間の差、比率、または他の比較のメトリックを判定する。処理回路50は、比較のメトリックが閾値を満たしているかどうか、例えば、閾値以上であるかどうかを判定する。第2のエネルギーレベルと比較して比較的高い第1の代表的なエネルギー値は、心静止間隔323の前のリズムと同相である心静止間隔323内の低い振幅脱分極、例えばR波の存在と、疑わしい心静止が偽の心静止検出であったことを示し得る。
【0107】
図17は、例示的な偽の心静止基準が満たされているかどうかを判定するための別の例示的な動作を示す流れ図である。
図17の例示的な動作は、
図16に示される心臓EGM320および他のデータを参照して説明される。
【0108】
図17の例によれば、処理回路50は、心静止間隔323に先行するN個の脱分極322を識別する(340)。処理回路50は、N個の先行する脱分極322の間の間隔324を判定する(342)。処理回路50はさらに、間隔324に基づいて、例えば、間隔124の平均または中央値のそれぞれ整数倍および非整数倍に基づいて、心静止間隔323内の予想される脱分極ウィンドウ326および予想される脱分極間ウィンドウ328を設定する(344)。
【0109】
処理回路50は、予想される脱分極ウィンドウ326および予想される脱分極間ウィンドウ328のそれぞれのエネルギー値、例えば、各ウィンドウ内の心臓EGM320の最大振幅と最小振幅との間の差を判定する(346)。処理回路50はさらに、ウィンドウ326のエネルギーとウィンドウ328のエネルギーとの間の比較のメトリックを判定する(348)。例えば、処理回路50は、ウィンドウ326のエネルギーの平均とウィンドウ328のエネルギーの平均との間の差を判定することができる。
【0110】
処理回路50は、比較のメトリックが閾値を満たしているかどうか、例えば、閾値以上であるかどうかを判定する(350)。比較のメトリックが閾値を満たしていることに基づいて(350のはい)、処理回路50は、疑わしい心静止エピソードが偽の心静止であることを判定することができる(128)。比較のメトリックが閾値を満たしていないことに基づいて(350のいいえ)、処理回路50は、別の偽の心静止検出基準の適用に進むことができるか、または適用する別の偽の心静止検出基準がない場合、
図17および
図6の動作は終了することができる(124)。
【0111】
図18A~
図18Cは、患者408内に移植された別の例示的な医療システム410の概念図である。
図1Aは、患者408内に移植された医療システム410の正面図である。
図1Bは、患者408内に移植された医療システム410の側面図である。
図1Cは、患者408内に移植された医療デバイスシステム410の横断面図である。
【0112】
いくつかの例では、医療システム410は、患者408内に移植された血管外移植可能心臓除細動器(EV-ICD)システムである。医療システム410は、IMD412を含み、これは、図示の例では、IMD412が胸郭の上の患者408の左側に位置付けられ得るように、患者408の左中腋窩に皮下または筋肉下に移植される。他のいくつかの例では、IMD412は、胸部の場所または腹部の場所など、患者408の他の皮下の場所に移植され得る。IMD412は、IMD412の構成要素を保護する気密シールを形成し得るハウジング420を含む。いくつかの例では、IMD412のハウジング420は、チタンなどの導電性材料から、またはハウジング電極として機能し得る導電性および非導電性材料の組み合わせから形成され得る。IMD412はまた、リード422とハウジング内に含まれる電子部品との間の電気接続を行う電気フィードスルーを含むコネクタアセンブリ(コネクタブロックまたはヘッダとも呼ばれる)を含み得る。
【0113】
IMD412は、心臓EGM感知、心静止検出、およびIMD10に関して本明細書に記載される他の機能を提供し得、ハウジング420は、そのような機能を提供する回路50~62およびアンテナ26(
図2および
図3)を収容し得る。ハウジング420はまた、患者408に送達するために、心臓ペーシングおよび抗頻脈性不整脈ショックなどの治療用電気信号を生成するように構成された治療送達回路を収容することができる。システム410は、IMD10およびシステム2に関して本明細書で説明されるように、IMD412とともに機能し得る外部デバイス12を含み得る。
【0114】
図示の例では、IMD412は、少なくとも1つの移植可能心臓リード422に接続されている。リード422は、IMD412に接続されるように構成されたコネクタ(図示せず)を含む近位端と、電極432A、432B、434A、および434Bを含む遠位部分とを有する細長いリード本体を含む。リード422は、IMD412から患者408の胴体の中心に向かって胸郭の上の皮下に延びる。胴体の中心近くの場所において、リード422は、胸骨424の下/下方で胸腔内を上位に曲がるか、または曲がって延びる。したがって、リード422は、胸郭または胸骨424と心臓418との間の標的部位などの胸骨下空間内に少なくとも部分的に移植することができる。そのような1つの構成では、リード422の近位部分は、IMD12から胸骨24に向かって皮下に延びるように構成され得、リード22の遠位部分は、前縦隔426において胸骨424の下または下方で上位に延びるように構成され得る(
図1C)。
【0115】
例えば、リード422は、前縦隔426内の胸骨424の下/下方で胸腔内を上位に延びることができる。前縦隔426は、後方が心膜416によって、側方が胸膜428によって、および前方が胸骨424によって境界付けられていると見なすことができる。いくつかの例では、前縦隔426の前壁はまた、胸横筋および1つ以上の肋軟骨によって形成され得る。前縦隔426は、ある量の疎性結合組織(疎性組織など)、いくつかのリンパ管、リンパ腺、胸骨下筋組織(例えば、横胸筋)、および小血管または血管枝を含む。一例では、リード422の遠位部分は、実質的に、前縦隔426の疎性結合組織および/または胸骨下筋組織内に移植され得る。そのような例では、リード422の遠位部分は、心臓418の心膜416から物理的に隔離され得る。実質的に前縦隔426内に移植されたリードは、胸骨下リード、またはより一般的には、血管外リードの例である。
【0116】
リード422の遠位部分は、本明細書では、実質的に前縦隔426内に移植されるものとして記載されている。したがって、リード422の遠位部分の一部は、前縦隔426(例えば、遠位部分の近位端)から延びることができるが、遠位部分の多くは、前縦隔426内に位置付けられ得る。他の実施形態では、リード422の遠位部分は、心臓418の心膜416または他の部分の周りにありそれに隣接するが、それに取り付けられず、かつ胸骨424または胸郭の上ではないギャップ、組織、または他の解剖学的特徴を含む、他の非血管の心膜外の場所に胸腔内に移植され得る。リード422は、胸骨および/または胸郭と体腔との間の下面によって画定される「胸骨下空間」内のどこにでも移植することができるが、ただし、心臓418の心膜416または他の部分を含まない。胸骨下空間は、代替として、当業者に知られているように、「胸骨後空間」または「縦隔」または「胸骨下」という用語で呼ばれることがあり、前縦隔426を含む。胸骨下空間は、Baudoin、Y.P.ら、「The superior epigastric artery does not pass through Larrey’s space (trigonum sternocostale).」、Surg. Radiol. Anat.25.3-4(2003):259-62と題されたものにラレーの空間として記載されている解剖学的領域も含む場合がある。言い換えれば、リード422の遠位部分は、心臓418の外面の周りの領域内に移植され得るが、心臓418には取り付けられない。例えば、リード422の遠位部分は、心膜416から物理的に隔離され得る。
【0117】
リード422は、IMD412に接続されるように構成されたコネクタ430を含む近位端と、1つ以上の電極を含む遠位部分とを有する絶縁性リード本体を含み得る。
図18Aに示されるように、リード422の1つ以上の電極は、電極432A、432B、434A、および434Bを含み得るが、他の例では、リード422は、より多いまたはより少ない電極を含み得る。リード422はまた、リード本体内に導電性経路を形成し、電気コネクタと電極のそれぞれのものとを相互接続する1つ以上の導体を含む。
【0118】
電極432A、432Bは、除細動電極(個別にまたは総称して「除細動電極432」)であり得る。電極432は、本明細書では「除細動電極432」と呼ばれ得るが、電極432は、電気的除細動ショックなどの他のタイプの抗頻脈性不整脈ショックを送達するように構成され得る。除細動電極432は、
図18A~
図18Cでは明確にするためにコイル電極として描かれているが、除細動電極432は、他の例では他の構成であり得ることが理解されるべきである。除細動電極432は、リード422の遠位部分に位置することができ、リード422の遠位部分は、胸骨424の下の血管外に移植されるように構成されたリード422の部分である。
【0119】
リード422は、治療ベクトルが実質的に心臓418の心室を横切るように、胸骨424の下のまたはそれに沿った標的部位に移植され得る。いくつかの例では、治療ベクトル(例えば、抗頻脈性不整脈ショックを送達するためのショックベクトル)は、除細動電極432と、IMD412によってまたはIMD412上に形成されたハウジング電極との間にあり得る。治療ベクトルは、一例では、除細動電極432上の点(例えば、除細動電極432のうちの1つの中心)からIMD412のハウジング電極上の点まで延びるラインと見なすことができる。したがって、除細動電極432(およびその中のリード422の遠位部分)が心臓418を横切って延びる領域の量を増やすことが有利であり得る。したがって、リード422は、
図18Aに示されるように、湾曲した遠位部分を画定するように構成され得る。いくつかの例では、リード22の湾曲した遠位部分は、IMD412による心臓418へのペーシング、感知、および/または除細動の有効性および/または効率を改善するのに役立ち得る。
【0120】
電極434A、434Bは、リード422の遠位部分に位置するペース/感知電極(個別にまたは総称して「ペース/感知電極434」)であり得る。電極434は、それらが概してペーシングパルスの送達および/または心臓電気信号の感知における使用のために構成されるので、本明細書ではペース/感知電極と呼ばれる。場合によっては、電極434は、ペーシング機能のみ、感知機能のみ、またはペーシング機能と感知機能の両方を提供することができる。
図18Aおよび
図18Bに示される例では、ペース/感知電極434は、除細動電極432Bによって互いに分離されている。しかしながら、他の例では、ペース/感知電極434は、両方とも除細動電極432Bの遠位にあり得、または両方とも除細動電極432Bの近位にあり得る。リード422がより多いまたはより少ない電極432、434を含む例では、そのような電極は、リード422上の他の場所に位置付けられ得る。
【0121】
図18Aの例では、リード422の遠位部分は、2つの「C」字形の曲線を含む蛇行形状であり、これらは一緒になって、ギリシャ文字のイプシロン「ε」に類似し得る。除細動電極432はそれぞれ、リード本体遠位部分の2つのそれぞれのC字形部分のうちの1つによって運ばれる。2つのC字形の曲線は、リード本体の中心軸から離れる同じ方向に延びるかまたは曲がる。いくつかの例では、ペース/感知電極434は、リード422の真っ直ぐな近位部分の中心軸とほぼ整列し得る。そのような例では、除細動電極432の中点は、ペース/感知電極434から横方向にオフセットされる。リード422の湾曲した、蛇行した、起伏のある、またはジグザグの遠位部分によって運ばれる1つ以上の除細動電極および1つ以上のペース/感知電極434を含む心血管外リードの他の例も、本明細書に記載の技術を使用して実装することができる。いくつかの例では、リード422の遠位部分は真っ直ぐであり得る(例えば、真っ直ぐまたはほぼ真っ直ぐ)。
【0122】
電極432、434が蛇行形状の描写された山および谷にあるようにリード422を配備することにより、好ましい感知または治療ベクトルへのアクセスを提供することができる。ペース/感知電極434が心臓418により近くなるように蛇行形状のリードを配向することは、ペース/感知電極434が心臓418からより離れて配向された場合よりも、心臓信号のより良い電気的感知および/またはより低いペーシング捕捉閾値を提供し得る。リード422の遠位部分の蛇行または他の形状は、軸方向の力が加えられたときに隣接する組織に対する抵抗を提供する形状の結果として、患者408への固定を向上させていることがある。成形された遠位部分の別の利点は、電極432、434が、より真っ直ぐな遠位部分を有するリードに対して、心臓418のより短い長さにわたるより大きい表面積にアクセスできることである。
【0123】
いくつかの例では、リード422の細長いリード本体は、リード本体内で、近位リード端におけるコネクタから、リード422の遠位部分に沿って位置する電極432、434まで延びる1つ以上の細長い導電体(図示せず)を含み得る。リード422のリード本体内に含まれる1つ以上の細長い導電体は、電極432、434のそれぞれのものと係合することができる。導体は、コネクタアセンブリ内の接続を介して、IMD412の治療送達回路および感知回路52などの回路に電気的に結合することができる。導電体は、治療送達回路から電極432、434のうちの1つ以上に治療を送り、感知された心臓EGMを電極432、434のうちの1つ以上からIMD412内の感知回路52に送信する。
【0124】
概して、IMD412は、IMD412のペース/感知電極434および/またはハウジング電極の組み合わせを含む1つ以上の感知ベクトルなどを介して、心臓EGMを感知することができる。いくつかの例では、IMD412は、除細動電極432の一方もしくは両方、および/または除細動電極432のうちの1つ、およびペース/感知電極434のうちの1つ、またはIMD412のハウジング電極を含む感知ベクトルを使用して、心臓EGMを感知することができる。IMD412および/または外部デバイス12の処理回路を含む医療システム410は、例えば、血管外電極432、434を介して感知された心臓EGMに基づいて、心静止検出および偽の心静止検出基準が満たされているかどうかを判定するための本明細書に記載の技術のいずれかを実行することができる。血管外電極を介して感知された心臓EGMは、例えば、皮下電極に関して本明細書に記載されるのと同様の方法で、組織との接触および/または心臓に対する配向の変化に起因するノイズを含み得る。一般に、電極が心筋に直接固定されていない場合、運動、例えば呼吸運動は、脱分極振幅および他のノイズの変動性を引き起こす可能性があり、これが偽の心静止検出につながることがある。本明細書に記載の技術は、皮下電極、皮膚電極、胸骨下電極、血管外電極、筋肉内電極、または患者の任意の組織に位置付けられた(または接触している)任意の電極を介して感知される心臓EGMで実装することができる。
【0125】
本開示に記載される技術は、少なくとも部分的に、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはそれらの任意の組み合わせで実装され得る。例えば、本技術の様々な態様は、医師もしくは患者プログラマ、刺激装置、または他のデバイスなどの外部デバイス内に具現化された、1つ以上のマイクロプロセッサ、DSP、ASIC、FPGA、または任意の他の同等の集積もしくはディスクリート論理QRS回路、ならびにそのような構成要素の任意の組み合わせ内で実装され得る。「プロセッサ」または「処理回路」という用語は、概して、単独の、もしくは他の論理回路と組み合わせた前述の論理回路のいずれか、または、単独の、もしくは他のデジタルもしくはアナログ回路と組み合わせた任意の他の同等の回路を指し得る。
【0126】
ソフトウェアで実装された態様については、本開示に記載されたシステムおよびデバイスに帰属する機能の少なくとも一部は、RAM、DRAM、SRAM、磁気ディスク、光ディスク、フラッシュメモリ、またはEPROMもしくはEEPROMの形態などのコンピュータ可読記憶媒体上の命令として具体化され得る。命令は、本開示に記載の機能の1つ以上の態様をサポートするために実行され得る。
【0127】
さらなる項目は以下のように記載される。
【0128】
項目1.方法であって、
医療システムの複数の電極を介して患者の心臓電位図を感知することと、医療システムの処理回路によって、心臓電位図に基づいて心静止検出基準が満たされていることを判定することと、心静止検出が満たされているという判定に基づいて、処理回路によって、心臓電位図信号に基づいて、複数の偽の心静止検出基準のうちの少なくとも1つが満たされていることを判定することと、
処理回路によって、複数の偽心静止検出基準のうちの少なくとも1つが満たされているという判定に基づいて、患者の心静止エピソードの表示を差し控えることと、を含み、複数の偽の心静止検出基準が、
心臓電位図における心臓脱分極を検出するための減少した振幅閾値を含む第1の偽の心静止検出基準と、
心臓電位図における減衰ノイズを検出するための第2の偽の心静止検出基準と、を含む、方法。
【0129】
項目2.心静止検出基準が満たされていることを判定することが、ある時間間隔中に心臓電位図において心臓脱分極を識別しないことに基づいて、心静止検出基準が満たされていることを判定することを含む、項目1の方法。
【0130】
項目3.第1の偽の心静止検出基準が満たされていることを判定することが、時間間隔中に減少した振幅閾値を心臓電位図と比較することと、比較に基づいて、時間間隔中に心臓脱分極の閾値数が心臓電位図において識別されることを判定することと、を含む、項目1または2の方法。
【0131】
項目4.処理回路によって、時間間隔に先行する心臓電位図において発生している1つ以上の心臓脱分極を識別することと、1つ以上の識別された心臓脱分極の各々の振幅を判定することと、1つ以上の識別された心臓脱分極の判定された振幅に基づいて、減少した振幅閾値を判定することと、をさらに含む、上記項目のいずれか1つの方法。
【0132】
項目5.1つ以上の識別された心臓脱分極が、複数の識別された心臓脱分極を含み、減少した振幅閾値を判定することが、複数の識別された心臓脱分極の各々の振幅に基づいて、代表的な振幅を判定することと、
代表的な振幅の所定の部分として、減少した振幅閾値を判定することと、を含む、項目4の方法。
【0133】
項目6.第2の偽の心静止検出基準が満たされていることを判定することが、時間間隔の少なくとも一部の間の心臓電位図の曲線下面積の値を計算することと、曲線下面積の値が曲線下面積の閾値を満たしていることを判定することと、を含む、項目1、2、3、または4の方法。
【0134】
項目7.第2の偽の心静止検出基準が満たされていることを判定することが、
時間間隔の少なくとも一部の間の心臓電位図の差動信号を判定することと、差動信号の複数のサンプルの各々について、サンプルの符号が正であるか負であるかを判定することと、符号のうちの1つを有するサンプルの量が共通符号閾値を満たしていることを判定することと、を含む、項目1、2、3、または4の方法。
【0135】
項目8.複数の偽の心静止検出基準が、第3の偽の心静止検出基準をさらに含み、第3の偽の心静止検出基準が満たされていることを判定することが、時間間隔に先行する心臓電位図において発生している複数の心臓脱分極を識別することと、複数の識別された心臓脱分極の各々の振幅を判定することと、振幅の変動性を判定することと、変動性が変動性閾値を満たしていることを判定することと、を含む、項目1、2、3、または4の方法。
【0136】
項目8.振幅の変動性を判定することが、複数の振幅の最大振幅を判定することと、複数の振幅の代表的な振幅を判定することと、代表的な振幅に対する最大振幅の比較のメトリックを判定することと、を含む、項目8の方法。
【0137】
項目9.複数の偽の心静止検出基準が、第3の偽の心静止検出基準をさらに含み、第3の偽の心静止検出基準が満たされていることを判定することが、
時間間隔に先行する心臓電位図において発生している複数の心臓脱分極を識別することと、複数の心臓脱分極のうちの隣接するものの間の1つ以上の間隔を判定することと、判定された間隔に基づいて、時間間隔内の1つ以上の予想される心臓脱分極ウィンドウおよび1つ以上の予想される脱分極間ウィンドウを識別することと、1つ以上の心臓脱分極ウィンドウの第1のエネルギーおよび1つ以上の脱分極間ウィンドウの第2のエネルギーを判定することと、第2のエネルギーに対する第1のエネルギーの比較のメトリックを判定することと、比較のメトリックが閾値を満たしていることを判定することと、を含む、項目1、2、3、または4の方法。
【0138】
項目10.処理回路によって、ある期間内の心静止検出基準の充足のインスタンスのカウントを判定することと、カウントが少なくとも1つの心静止カウント基準を満たしているかどうかを判定することと、をさらに含み、複数の偽の心静止検出基準が満たされているかどうかを判定することは、カウントが少なくとも1つの心静止カウント基準を満たしていることを判定することに基づいて、複数の偽の心静止検出基準が満たされているかどうかを判定することを含む、項目1、2、3、または4の方法。
【0139】
項目11.複数の電極が皮下に移植され、心臓電位図を感知することが、複数の皮下に移植された電極を介して心臓電位図を感知することを含む、請求項14の方法。
【0140】
項目12.複数の電極が血管外に移植され、心臓電位図を感知することが、複数の血管外に移植された電極を介して心臓電位図を感知することを含む、項目1、2、3、または4の方法。
【0141】
項目13.プログラム命令を備える非一時的なコンピュータ可読記憶媒体であって、プログラム命令が、医療システムの処理回路によって実行されたとき、処理回路に、医療システムの複数の電極を介して感知される心臓電位図に基づいて心静止検出基準が満たされていることを判定することと、心静止検出が満たされているという判定に基づいて、心臓電位図信号に基づいて、複数の偽の心静止検出基準が満たされているかどうかを判定することと、複数の偽の心静止検出基準のうちの少なくとも1つが満たされているという判定に基づいて、患者の心静止エピソードの表示を差し控えることと、を行わせ、複数の偽の心静止検出基準が、心臓電位図における心臓脱分極を検出するための減少した振幅閾値を含む第1の偽の心静止検出基準と、心臓電位図における減衰ノイズを検出するための第2の偽の心静止検出基準と、を含む、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【0142】
さらに、いくつかの態様では、本明細書に記載される機能は、専用のハードウェアおよび/またはソフトウェアモジュール内で提供され得る。モジュールまたはユニットとしての異なる特徴の描写は、異なる機能的側面を強調するよう意図されており、必ずしもかかるモジュールまたはユニットが別個のハードウェアまたはソフトウェア構成要素によって実現されなければならないことを意味するとは限らない。むしろ、1つ以上のモジュールまたはユニットと関連付けられた機能は、別個のハードウェアまたはソフトウェア構成要素によって実行されてもよく、または共通のもしくは別個のハードウェアもしくはソフトウェア構成要素内に統合されてもよい。また、本技術は、1つ以上の回路または論理要素で完全に実装されてもよい。本開示の技術は、IMD、外部プログラマ、IMDと外部プログラマの組み合わせ、IMDおよび/または外部プログラマ内に存在する、集積回路(IC)もしくはICのセット、および/またはディスクリート電気回路を含む、多種多様なデバイスまたは装置において実装されてもよい。
【国際調査報告】