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  • 特表-熱交換器管用スタビライザ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-29
(54)【発明の名称】熱交換器管用スタビライザ
(51)【国際特許分類】
   G21D 1/00 20060101AFI20220622BHJP
   F22B 1/16 20060101ALI20220622BHJP
【FI】
G21D1/00 S
F22B1/16 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564748
(86)(22)【出願日】2019-04-30
(85)【翻訳文提出日】2021-11-10
(86)【国際出願番号】 EP2019061101
(87)【国際公開番号】W WO2020221444
(87)【国際公開日】2020-11-05
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519462218
【氏名又は名称】フラマトム・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】ショーンハイト,ニコ
(72)【発明者】
【氏名】アラズ,ザフェール
(72)【発明者】
【氏名】カオ, ホン フック
(57)【要約】
本発明は、管板(34)、管板(34)に隣接する蒸気空間(36)、および正常動作中に一次原子炉冷却材を搬送するように設計されている多数の蒸気発生器管(4)を含む、加圧水型原子炉用の蒸気発生器(6)において、各蒸気発生器管(4)が、管板(34)に固定されている第1の管区分および蒸気空間(36)内に突出する第2の管区分を含み、蒸気発生器管(4)の少なくとも1つが第1の管区分内に挿入された封止プラグ(40)によって閉鎖されている、蒸気発生器(6)に関する。生産、設置、およびメンテナンスが容易であるような形で、このような閉鎖された蒸気発生器管(4)の破断リスクを最小限に抑えるために、本発明は、封止プラグ(40)に隣接するかまたは封止プラグの上方にある前記閉鎖された蒸気発生器管(4)内に挿入されている別個のスタビライザ(2)を提案しており、該スタビライザ(2)は、第1の管区分の内側に固定された挟持用区分(30)および第2の管区分に支えられている支持用区分(26)を伴う長い本体(8)を含み、該スタビライザ(2)はその本体を通っておよび/またはその本体(8)の周囲を流体が流れるのを可能にするように設計されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管板(34)、管板(34)に隣接する蒸気空間(36)、および正常動作中に一次原子炉冷却材を搬送するように設計されている多数の蒸気発生器管(4)を含む、加圧水型原子炉用の蒸気発生器(6)において、
各蒸気発生器管(4)が、管板(34)に固定されている第1の管区分および蒸気空間(36)内に突出する第2の管区分を含み、
蒸気発生器管(4)の少なくとも1つが、第1の管区分内に挿入された封止プラグ(40)によって閉鎖されている、
蒸気発生器(6)であって、
封止プラグ(40)に隣接するかまたは封止プラグ(40)上にある前記閉鎖された蒸気発生器管(4)内に挿入されている別個のスタビライザ(2)、
を特徴とし、
スタビライザ(2)が、第1の管区分の内側に固定された挟持用区分(30)および第2の管区分に支えられている支持用区分(26)を伴う長い本体(8)を含み、
スタビライザ(2)は、その本体(8)を通っておよび/またはその本体(8)の周囲を流体が流れるのを可能にするように設計されている、
蒸気発生器(6)。
【請求項2】
スタビライザ(2)が後端部区分(III)、前端部区分(I)、およびそれらの間の中間区分(II)を含み、挟持用区分(30)が後端部区分(III)内に配設されており、支持用区分(26)が前端部区分(I)内に配設されている、請求項1に記載の蒸気発生器(6)。
【請求項3】
本体(8)が、本質的に円筒形の形状を有する、請求項2に記載の蒸気発生器(6)。
【請求項4】
スタビライザ(2)が、中間区分(II)内に配設されたさらなる支持用区分(28)を含む、請求項2または3に記載の蒸気発生器(6)。
【請求項5】
前記さらなる支持用区分(28)が、第1の管区分内に配設されている、請求項4に記載の蒸気発生器(6)。
【請求項6】
挟持用区分(30)および支持用区分(26、28)が、本体(8)の残りの部分よりも大きい外径を有する、請求項2から5のいずれか一つに記載の蒸気発生器(6)。
【請求項7】
後端部区分(III)が、後端部開口部(18)を通ってアクセス可能な中央キャビティ(16)を含み、キャビティ(16)が、リング様の壁(20)により包囲されている、請求項2から6のいずれか一つに記載の蒸気発生器(6)。
【請求項8】
スタビライザ(2)が、キャビティ(16)の周りの壁(20)の一区分のロール拡管によって蒸気発生器管(4)に固定されている、請求項7に記載の蒸気発生器(6)。
【請求項9】
半径方向ボア(24)が、壁(20)を通ってキャビティ(16)から本体(8)と蒸気発生器管(4)の間の円形間隙まで到達し、流体バイパスを形成する、請求項7または8に記載の蒸気発生器(6)。
【請求項10】
スタビライザ(2)が、一体として形成されている、請求項1から9のいずれか一つに記載の蒸気発生器(6)。
【請求項11】
スタビライザ(2)が、合金で作られている、請求項10に記載の蒸気発生器(6)。
【請求項12】
封止プラグ(40)が、一次原子炉冷却材の流れ方向で見た場合に、スタビライザ(2)の上流側に配設されている、請求項1から11のいずれか一つに記載の蒸気発生器(6)。
【請求項13】
熱交換器、詳細には蒸気発生器の加熱または冷却管(50)のためのスタビライザ(2)において、加熱または冷却管(50)が、管板(34)内に固定された第1の管区分と管板(34)を超えて突出する第2の管区分とを含み、
スタビライザ(2)が、第1の管区分の内側に固定されるように設計された挟持用区分(30)および第2の管区分に支えられるように設計された支持用区分(26)を伴う長い本体(8)を含み、
スタビライザ(2)が意図された動作位置内に挿入された時点で、その本体(8)を通っておよび/またはその本体(8)の周囲を流体が流れるのを可能にするように設計されている、
スタビライザ(2)。
【請求項14】
各々管板(34)内に固定され管板(34)を超えて突出している多くの加熱または冷却管(50)を伴う熱交換器において、加熱または冷却管(50)の少なくとも1つが、挿入式の請求項13に記載のスタビライザ(2)によって安定化される、熱交換器。
【請求項15】
請求項13に記載のスタビライザ(2)が、加熱または冷却管(50)内に挿入され挟持され、その後加熱または冷却管(50)が、別個の封止プラグ(40)により閉鎖され封止される、熱交換器の加熱または冷却管(50)を安定化する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器、詳細には、加圧水型原子炉用の蒸気発生器、および熱交換器の加熱または冷却管、詳細には蒸気発生器管用の応分のスタビライザに関する。本発明は同様に、熱交換器の加熱または冷却管を安定化する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
加圧水型原子炉内の蒸気発生器は、通常、管板内に固定された多数の蒸気発生器(加熱)管を含む熱交換器である。正常動作中、各々の蒸気発生器管は、一次原子炉冷却材の流れを搬送する。米国特許第4800637号明細書または独国特許発明第102016122513号明細書によると、損傷した蒸気発生器管を封止プラグを用いて閉鎖/封止し、こうして一次原子炉冷却材の流れを他方の(無傷の)蒸気発生器管へと迂回させることは一般的なやり方である。しかしながら、このような閉鎖された蒸気発生器管はなお、管板上において破断/引裂し振り回されて、周囲の蒸気発生器管の損傷を発生させる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4800637号明細書
【特許文献2】独国特許発明第102016122513号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、単純だが信頼性の高い手段を用いて、摩耗表示があった場合に、蒸気発生器管またはより一般的に熱交換器管の破断のリスクを最小限に抑えることにある。破断の場合、応分の装置はなおも管配設の安定性を提供し、破断した管の振動から未破断の管を保護するものとする。解決法は、生産、設置、およびメンテナンスが容易でなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1によると、本発明は、管板、管板に隣接する蒸気空間、および正常動作中に一次原子炉冷却材を搬送するように設計されている多数の蒸気発生器管を含む、加圧水型原子炉用の蒸気発生器において、
各蒸気発生器管が、管板に固定されている第1の管区分および蒸気空間内に突出する第2の管区分を含み、
蒸気発生器管の少なくとも1つが、第1の管区分内に挿入された封止プラグによって閉鎖されている、
蒸気発生器であって、
封止プラグに隣接するかまたはこの封止プラグ上にある前記閉鎖された蒸気発生器管内に挿入されている別個のスタビライザ、
を特徴とし、
スタビライザが、第1の管区分の内側に固定された挟持用区分および第2の管区分に支えられている支持用区分を伴う長い本体を含み、
スタビライザは、その本体を通っておよび/またはその本体の周囲を流体が流れるのを可能にするように設計されている、
蒸気発生器を提案している。
【0006】
したがって、幾分か簡潔に述べると、本発明は、管板内の第1の管区分から管板上の第2の管区分まで達し、こうして特に破断した場合に第2の管区分を固定する長いスタビライザを提案している。
【0007】
スタビライザはプラグ様の形状を有し得るものの、蒸気発生器管を封止せず、破断の場合に一方の端部から他方の端部への二次原子炉冷却材の流入ひいては圧力平衡を可能にする。したがって、このような場合にスタビライザに対して軸方向に作用する力は比較的小さい。したがって、第1の管区分内のスタビライザの挟持は、比較的小さい力のみを目的として設計される必要があり、蒸気発生器管および周囲の管板に対する機械的応力は最小限に抑えられる。
【0008】
全体的概念および関連する利点のさらなる進歩が、従属請求項および後続する記述の主題である。
【0009】
好ましくは、スタビライザの本体は、本質的に円筒形の形状を有し、スタビライザは、後端部区分、前端部区分、およびそれらの間の中間区分を含み、挟持用区分は後端部区分内に配設されており、支持用区分は前端部区分内に配設されている。
【0010】
有利な一実施形態においては、スタビライザは、中間区分内に配設されたさらなる支持用区分を含み、前記さらなる支持用区分は、好ましくは第1の管区分内に配設されている。こうして、動作位置におけるさらなる安定性が得られる。
【0011】
好ましくは、挟持用区分および支持用区分は、本体の残りの部分よりも大きい外径を有する。
【0012】
好ましい実施形態において、後端部区分は、後端部開口部を通ってアクセス可能な中央キャビティを含み、ここでキャビティは、リング様の壁により包囲されている。
【0013】
好ましくは、スタビライザは、キャビティの周りの壁の一区分のロール拡管によって蒸気発生器管に固定されている。後端部開口部は、ロール拡管を行なうための対応するローリング工具のキャビティ内への挿入を容易にする。
【0014】
さらに1つの好ましい実施形態によると、半径方向ボアは、壁を通ってキャビティから本体と蒸気発生器管壁の間の円形間隙まで到達し、上述の圧力平衡を達成するための流体通路を形成する。
【0015】
好ましくは、スタビライザは、一体として、すなわち単一の部品として形成されている。詳細には、スタビライザは、例えば鋳造および/または切断および/またはドリル加工によって合金で作られていてよい。一体型設計には、溶接線および対応する検査および文書化手順が完全に回避されるという利点がある。
【0016】
溶接継手が回避されることによるさらなる利点は、溶接線の収縮に起因する歪みが回避され、したがって適用された製造プロセスによって高い寸法精度に到達することができる、ということにある。
【0017】
請求項13および14によると、該概念は、熱交換器管全般向けのスタビライザに一般化することが可能である。
【0018】
本発明の例示的実施形態および関連する利点が、添付の概略的図面を参照して後述される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係るスタビライザの長手方向断面図を示す。
図2図1に係るスタビライザの斜視図を示す。
図3図1および2に係るスタビライザが蒸気発生器管の1つの内部に設置されている、蒸気発生器管板および複数の蒸気発生器管の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
対応する要素には、図全体を通して同じ参照番号が付けられている。
【0021】
図1および2に係るスタビライザプラグ、または簡潔にスタビライザ2は、以下で図3に関連してさらに詳述される通り、蒸気発生器6の蒸気発生器管4内への挿入のために意図されている。より一般的には、蒸気発生器管4は、熱交換器の加熱または冷却管50の1つの例である。
【0022】
スタビライザ2は、好ましくは、金属材料、詳細にはインコネル690TTなどの合金で一体として(すなわち単一部品として)作られた本質的に円筒形の本体8を含む。長い本体8は長手方向軸10に沿って延在し、この軸との関係において本質的に軸対称である。本体8の外径は、以下で説明されるように、軸方向位置に沿って僅かに変動する。外径の最大値は、過度に力を加えること無くかつ半径方向の隙間も僅かしかまたは全く無い状態で、対応する蒸気発生器管4内にスタビライザ2を挿入できるような形で選択される。
【0023】
スタビライザ2は、前端部区分I、後端部区分III、およびその間の中間区分IIを含み、ここでこれらの用語は軸10に沿った挿入方向12に関係するものである。
【0024】
前端部区分Iは、対応する蒸気発生器管内への自動調心挿入を容易にするための扁平な円錐様の先端部14を含む。
【0025】
後端部区分IIIは、後部側から開口部18を通ってアクセスできる長手方向中央ボアまたは陥凹またはキャビティ16を含む。換言すると、後端部部分は、本質的に円筒形の内側空間すなわち前記キャビティ16を包囲するリング様の壁20を伴う中空シリンダを形成する。図1に示されているように、キャビティ16は、その前端部に向かう方向において次第に細くなってもよい。すなわち、中空空間またはキャビティ16の内径はこの方向に減少していてよく、ここで壁20の厚みは相応して増大する。キャビティ16は、その前端部に、蒸気発生器管4内/外へのスタビライザ2の挿入または取外しの間に使用される対応する工具を収容するためのネジ山付き円筒形部分22(内部ネジ山付き)を含むことができる。後端部において、リング様の壁20は、設置中に管エキスパンダツールを保持しかつ/またはその回転係止を提供するためのナット23または溝を含むことができる(以下参照)。
【0026】
さらに以下で説明される流体交換および圧力平衡を理由として、好ましくはキャビティ16の前端部にリング様の壁区分を通って半径方向ボア24が存在し、キャビティ16と外部環境とを流体連通させている。好ましくは、半径方向ボア24は、内側から外側へ両方向に延在する。異なる半径方向を向いた複数の半径方向ボアが存在する可能性がある。
【0027】
スタビライザ2の後端部区分IIIは上述の通り、好ましくは中空であり、中間区分IIおよび前端部区分Iは好ましくは中実である(すなわち、ボアまたは中空部分が無い)。
【0028】
大半の部分について、スタビライザ2の外径は、その長さ全体を通して同じ基本値を有する。この基本値は、対応する蒸気発生器管4の内径よりも幾分か小さい。しかしながら、長手方向(軸方向)に見て、本体8の外径が基本値よりも幾分か大きい区分またはゾーンがいくつか存在する。これらの区分は、多くの挟持用区分および/または支持用区分を構成し得る。以上で説明した通り、挟持用区分内の外径は、過度に力を加えること無くかつ半径方向のあそびまたは隙間が僅かしかない、または全く無い状態で、対応する蒸気発生器管4内にスタビライザ2を挿入できるような形で選択される。このようにして、挟持用区分による圧力嵌めが実現される。同じことは、支持用区分にもあてはまる可能性があり、こうして、同様に挟持用区分としても作用し得る。しかしながら、好ましくは、支持用区分の外径は、基本値と挟持用区分に結び付けられた値との間で選択される。
【0029】
好ましくは、異なる直径を有する区分またはゾーン間の遷移は、好ましくは中心軸10との関係において45°の角度で、先細りまたは傾斜している。したがって、本体8の外側輪郭内の鋭い段差または「飛越し」は回避され、対応する管内への挿入プロセス中に行き詰まるリスクは最小限に抑えられる。
【0030】
詳細には、前端部区分Iは、上述のタイプの安定化区分または支持用区分26を含み、これは好ましくは円錐様の先端部14の直後に位置設定される。さらに、中間区分II内部に位置設定された類似の支持用区分28が存在する。
【0031】
最後に、スタビライザ2の後端部区分III内部に、中央キャビティ16の後部部分の周りでリング様の壁20により好ましくは実現された固定用区分または挟持用区分30が存在していてよい。挿入方向12に見て、後端部区分III内の挟持用区分30は、半径方向ボア24の前で終結する。すなわち、半径方向ボア24のそれぞれの外側開口部32は、外径の(より小さい)基本値により特徴付けされる本体8の一区分内に位置設定されている。以下で説明するように、後端部区分IIIの挟持用区分30は、ロール拡管としても知られるローリングによって、対応する蒸気発生器管内に固定されるように意図されている。
【0032】
図3に目を向けて、ここでスタビライザ2の好ましい応用について説明する。図3は、蒸気発生器6、詳細には原子力発電所の加圧水型原子炉内の蒸気発生器の一部の長手方向断面図を示す。このような蒸気発生器6は、一次原子炉冷却回路と二次原子炉冷却回路の間の物質障壁および熱交換器として作用し、こうして、加圧された一次原子炉冷却材から二次原子炉冷却材へと熱を伝達し、二次原子炉冷却材を蒸発させる。しかしながら、本発明に係るスタビライザ2は、類似の構造を有する他の熱交換器にも好適である。
【0033】
画像区分は、動作中に、流体加熱媒体が通常は並流構成で中を流れる複数のいわゆる加熱管または蒸気発生器管4を示している。上述の原子力の文脈では、これは一次原子炉冷却材である。蒸気発生器管4は、管板34を通って導かれ、この管板34内で圧力封止された形で固定される。管板34は、動作中に、冷却媒体が中を流れる蒸気容器としても公知の封止されたエンクロージャの一部である。上述の原子力の文脈では、これは二次原子炉冷却材である。蒸気容器の蒸気空間36内に達する蒸気発生器管4の熱的接触に起因して、加熱媒体から冷却媒体へと熱が伝達され、これにより蒸気容器内部の冷却媒体を加熱し、通常は蒸発させる。
【0034】
図3の実施形態において、(ここでは図示されていない母管から来る)一次原子炉冷却材は、左側から蒸気発生器管4の中に入り、最初に管板34内の区分を通り右側へと、そして次に管板34右側の蒸気容器の蒸気空間36を通って流れる。当然のことながら、この配向は説明を目的とした例示的なものにすぎない。その後、蒸気発生器管4は、ここでは図示されていない別の管板を通って、または(ベンドの後)ここでは一部分のみが示されている同じ管板34の別の区分を通って、蒸気容器を離れる。管板34の左側を蒸気発生器6の一次側と呼び、右側を二次側と呼ぶことができる。図示された区分において、蒸気発生器管4は直線であり、互いに平行に配設され、恒常な内径を有する。
【0035】
通常は、多数の蒸気発生器管4が存在する。動作中、これらの管は個々に摩滅して、亀裂および/またはひび割れが出現し始める場合がある(例えば渦電流ベースの測定により早期段階で検出され得るいわゆる周方向表示)。通常、これらは管板34の直上で蒸気空間36内に位置する。最悪の場合には、それぞれの蒸気発生器管4は、亀裂の領域内において破断する可能性がある。これにより、二次原子炉冷却材内への一次原子炉冷却材の注入が導かれると思われる。この極めて望ましくない状況を回避するため、封止プラグ40を用いて、損傷した蒸気発生器管4をその入口で閉鎖/封止し、こうして一次原子炉冷却材の流れを他の(無傷の)蒸気発生器管4へと迂回させるのが、一般的なやり方である。
【0036】
このような封止プラグ40は、図3に、蒸気発生器管4内のその動作位置で示されている。より具体的には、封止プラグ40は、蒸気発生器6の一次側から問題の蒸気発生器管4の応分の入口開口部42内へ挿入され、こうして封止プラグ40は管板34内の蒸気発生器管4の入口領域内に位置設定されることになる。ロール拡管の方法により蒸気発生器管4内部に封止プラグを固定することによって、強い保持力および高レベルの防漏性が達成される。
【0037】
しかしながら、このような閉鎖された蒸気発生器管4はなお、管板34上において破断/引裂し振り回されて、周囲の蒸気発生器管4の損傷を発生させる可能性がある。これを回避するために、図3に示されているように損傷を受けた蒸気発生器管4内に上述のタイプのスタビライザ2が挿入される。
【0038】
スタビライザ2は、その動作位置において、一次原子炉冷却材の正常な流れ方向44で見た場合に、問題の蒸気発生器管4の内部の封止プラグ40の下流側に位置設定されている。より具体的には、挟持用区分30を伴うその後端部区分IIIおよび支持用区分28を伴う中間区分IIの一部または全部が管板34領域内に位置設定され(少なくとも支持用区分28は管板34内に配設される)、一方、支持用区分26を伴う前端部区分Iが蒸気発生器管4の蒸気空間36領域内に位置設定されるような形で、スタビライザ2は寸法決定され位置設定されている。したがって、管板34の僅かに上の最も重大な領域内における破断の場合、中断された蒸気発生器管4は、挿入されたスタビライザ2によってその初期位置に保持され固定される。当然のことながら、スタビライザ2は同様に、蒸気発生器管4のための支持体を提供することもでき、破断の前でさえ管の振動を減衰させ、これにより破断を防止するかまたは少なくとも遅延させることができる。
【0039】
蒸気発生器管内でのスタビライザ2の固定は、主として、後端部区分IIIの挟持用区分30によって達成される。支持用区分26、28は、主として周囲の蒸気発生器管4を支持するために意図されているが、固定力を提供する必要はない。固定目的で、後端部区分IIIのリング様の壁は、好ましくは(管内の封止プラグ14の固定と同様)ロール拡管の方法によって、設置プロセス中に蒸気発生器管4の管壁に対して半径方向外向きに押圧される(すなわち挟持される)。したがって、蒸気発生器管4に対するスタビライザ2の摩擦係止式連結が、後端部区分IIIのリング様の壁の半径方向での永久変形によって確立される。
【0040】
所与の最大挟持トルクに達するもののこれを超えることがないような形で、ロール拡管の方法のために使用される管エキスパンダツールのトルクを制御することによって、明確に定義された固定力を達成することが可能である。
【0041】
以上で説明した通り、支持用区分26、28もスタビライザ2の本体8の残りの部分も、蒸気発生器管4を完全に封止するように設計されていない。むしろ、管の破断または亀裂またはひび割れの場合、二次原子炉冷却材の流入物は蒸気発生器管4内へ[二次側から一次側へ(ここでは右から左へ)]残留する間隙を通りかつ半径方向ボア24を通ってキャビティ16および残留する空間内へ封止プラグ40に向かって流れる。こうして、スタビライザ2の一次側と二次側の間の圧力平衡が達成される。
【0042】
したがって、このような場合に軸方向でスタビライザ2に対し作用する力は、比較的小さい。したがって、後端部区分III内のスタビライザ2の挟持用区分30は、比較的小さい力のみを目的として設計される必要があり、蒸気発生器管4および周囲の管板34上の機械的応力は最小限に抑えられる。詳細には、ロール拡管中に確立される保持力を、封止プラグ40に関係する保持力に比べ著しく低く設定することが可能である。これによって同様に、必要な場合、スタビライザ2を損傷なく蒸気発生器管4から容易に取り外しできることになる。したがって、設置プロセスは可逆的である。
【0043】
設置中、スタビライザ2は、所望される組付け位置に達するまで問題の蒸気発生器管4内に押し込まれ、封止プラグ40用に蒸気発生器管4の一次側入口領域内に幾分かの空間を残す。その後、スタビライザ2は、上述のように挟持用区分30においてロール拡管により蒸気発生器管4内部に固定される。その後、封止プラグは、スタビライザ2まで上流へ蒸気発生器管4内に挿入される。最終的に、封止プラグ40はロール拡管によって固定され、封止される。有利には、スタビライザ2および封止プラグ40の両方の設置のために、同じ遠隔操作可能な工具セットを使用することができる。詳細には、封止プラグ40を設置するための既存の工具を、修正無しで、または僅かな修正を加えるだけで、スタビライザ2の設置のために使用することも可能である。設置プロセス全体は、高速でかつ効率良く実現可能である。
【0044】
スタビライザ2および周囲の要素の典型的寸法は、以下の通りに選択され得る。
・ スタビライザの全長:759mm
・ 管板内の部分の長さ:609mm
・ 蒸気空間内に突出する部分の長さ:150mm
・ 蒸気発生器管の内径:19.6mm
・ 本体の基本直径:18mm
・ 支持用区分内の直径:18.7mm
・ ロール拡管前の挟持用区分内の直径:19.2mm
・ ロール拡管後の挟持用区分内の直径:20mm
・ 支持用区分の長さ:10mm
・ 挟持用区分の長さ:20~30mm
・ ロール拡管後の抜去力:8.4kN
・ 管板の厚み:706mm
・ 封止プラグの長さ:96mm
【0045】
当然のことながら、これらは、1つの所与の蒸気発生器幾何形状に関する例示的値にすぎない。
【0046】
設置プロセスおよび好ましい応用について、原子炉の蒸気発生器に関連して説明してきたが、本発明に係るスタビライザは、事実上、蒸気発生器管、またはより一般的には一次流媒体が中を流れ管板内部に固定されている加熱または冷却管を含むあらゆる蒸気発生器、またはより一般的にはあらゆる熱交換器内で使用可能である。二次流媒体に関して蒸気発生器(蒸発器)として作用しない熱交換器の場合、「蒸気空間」なる用語は「二次流媒体空間」またはそれに類するものにより置換され得、一方「蒸気発生器管」なる用語は、「加熱または冷却管」または「熱交換器管」または「一次流媒体管」またはそれに類するもので置換されてよい。
【符号の説明】
【0047】
2 スタビライザ
4 蒸気発生器管
6 蒸気発生器
8 本体
10 軸
12 挿入方向
14 先端部
16 キャビティ
18 開口部
20 壁
22 円筒形部分
23 ナット
24 ボア
26 支持用区分
28 支持用区分
30 挟持用区分
32 開口部
34 管板
36 蒸気空間
40 封止プラグ
42 入口開口部
44 流れ方向
50 加熱または冷却管
I 前端部区分
II 中間区分
III 後端部区分

図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2022-01-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管板(34)、管板(34)に隣接する蒸気空間(36)、および正常動作中に一次原子炉冷却材を搬送するように設計されている多数の蒸気発生器管(4)を含む、加圧水型原子炉用の蒸気発生器(6)において、
各蒸気発生器管(4)が、管板(34)に固定されている第1の管区分および蒸気空間(36)内に突出する第2の管区分を含み、
蒸気発生器管(4)の少なくとも1つが第1の管区分内に挿入された封止プラグ(40)によって閉鎖されており、
別個のスタビライザ(2)が、封止プラグ(40)に隣接するかまたは封止プラグ(40)上にある前記閉鎖された蒸気発生器管(4)内に挿入されており、
スタビライザ(2)が、第1の管区分の内側に固定された挟持用区分(30)および第2の管区分に支えられている支持用区分(26)を伴う長い本体(8)を含み、
スタビライザ(2)は、その本体(8)を通っておよび/またはその本体(8)の周囲を流体が流れるのを可能にするように設計されており、
スタビライザ(2)が後端部区分(III)、前端部区分(I)、およびそれらの間の中間区分(II)を含み、挟持用区分(30)が後端部区分(III)内に配設されており、支持用区分(26)が前端部区分(I)内に配設され、後端部区分(III)が、後端部開口部(18)を通ってアクセス可能な中央キャビティ(16)を含み、キャビティ(16)が、リング様の壁(20)により包囲されている、
蒸気発生器であって、
半径方向ボア(24)が、壁(20)を通ってキャビティ(16)から本体(8)と蒸気発生器管(4)の間の円形間隙まで到達し、流体バイパスを形成することを特徴とする、
蒸気発生器(6)。
【請求項2】
本体(8)が、本質的に円筒形の形状を有する、請求項に記載の蒸気発生器(6)。
【請求項3】
スタビライザ(2)が、中間区分(II)内に配設されたさらなる支持用区分(28)を含む、請求項またはに記載の蒸気発生器(6)
【請求項4】
前記さらなる支持用区分(28)が、第1の管区分内に配設されている、請求項に記載の蒸気発生器(6)。
【請求項5】
挟持用区分(30)および支持用区分(26、28)が、本体(8)の残りの部分よりも大きい外径を有する、請求項からのいずれか一つに記載の蒸気発生器(6)。
【請求項6】
スタビライザ(2)が、キャビティ(16)の周りの壁(20)の一区分のロール拡管によって蒸気発生器管(4)に固定されている、請求項に記載の蒸気発生器(6)。
【請求項7】
スタビライザ(2)が、一体として形成されている、請求項1からのいずれか一つに記載の蒸気発生器(6)。
【請求項8】
スタビライザ(2)が、合金で作られている、請求項に記載の蒸気発生器(6)。
【請求項9】
封止プラグ(40)が、一次原子炉冷却材の流れ方向で見た場合に、スタビライザ(2)の上流側に配設されている、請求項1からのいずれか一つに記載の蒸気発生器(6)。
【請求項10】
各々管板(34)内に固定され管板(34)を超えて突出している多くの加熱または冷却管を伴う熱交換器において、加熱または冷却管(50)の少なくとも1つが、挿入式スタビライザ(2)によって安定化されており、
加熱または冷却管(50)が、管板(34)内に固定された第1の管区分と管板(34)を超えて突出する第2の管区分とを含み、
スタビライザ(2)が、第1の管区分の内側に固定された挟持用区分(30)および第2の管区分に支えられている支持用区分(26)を伴う長い本体(8)を含み、
スタビライザ(2)が、その本体(8)を通っておよび/またはその本体(8)の周囲を流体が流れるのを可能にするように設計されており、
スタビライザ(2)が、後端部区分(III)、前端部区分(I)、およびそれらの間の中間区分(II)を含み、挟持用区分(30)が後端部区分(III)内に配設されており、支持用区分(26)が前端部区分(I)内に配設されており、
後端部区分(III)が、後端部開口部(18)を通ってアクセス可能な中央キャビティ(16)を含み、キャビティ(16)が、リング様の壁(20)により包囲されている、
熱交換器であって、
半径方向ボア(24)が、壁(20)を通ってキャビティから本体(8)と加熱または冷却管(50)の間の円形間隙まで到達し、流体バイパスを形成することを特徴とする熱交換器。
【請求項11】
熱交換器が蒸気発生器である、請求項10に記載の熱交換器。
【請求項12】
熱交換器の加熱または冷却管(50)を安定化する方法において、加熱または冷却管(50)が、管板(34)内に固定された第1の管区分と管板(34)を超えて突出する第2の管区分とを含み、
スタビライザ(2)が、加熱または冷却管(50)内に挿入され、挟持され、このスタビライザ(2)が、第1の管区分の内側に固定された挟持用区分(30)、および第2の管区分に支えられている支持用区分(26)を伴う長い本体(8)を含み、
スタビライザ(2)は、その本体(8)を通っておよび/またはその本体(8)の周囲を流体が流れるのを可能にするように設計されており、
スタビライザ(2)が後端部区分(III)、前端部区分(I)、およびそれらの間の中間区分(II)を含み、挟持用区分(30)が後端部区分(III)内に配設されており、支持用区分(26)が前端部区分(I)内に配設されており、
後端部区分(III)が、後端部開口部(18)を通ってアクセス可能な中央キャビティ(16)を含み、キャビティ(16)が、リング様の壁(20)により包囲されており、および
半径方向ボア(24)が、壁(20)を通ってキャビティ(16)から本体(8)と加熱または冷却管(50)の間の円形間隙まで到達し、流体バイパスを形成し、
かつ、その後加熱または冷却管(50)が、別個の封止プラグ(40)により閉鎖され封止される、方法。
【請求項13】
熱交換器が蒸気発生器である、請求項12に記載の方法。
【国際調査報告】