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特表2022-530588摩擦撹拌溶接において溶接ピンのスピード及び安定性を増加させるための装置及び方法
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  • 特表-摩擦撹拌溶接において溶接ピンのスピード及び安定性を増加させるための装置及び方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-30
(54)【発明の名称】摩擦撹拌溶接において溶接ピンのスピード及び安定性を増加させるための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/12 20060101AFI20220623BHJP
【FI】
B23K20/12 340
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021525581
(86)(22)【出願日】2020-09-11
(85)【翻訳文提出日】2021-07-08
(86)【国際出願番号】 DE2020000207
(87)【国際公開番号】W WO2021047706
(87)【国際公開日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】102019006413.5
(32)【優先日】2019-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】314014416
【氏名又は名称】グレンツェバッハ・マシーネンバウ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100125221
【弁理士】
【氏名又は名称】水田 愼一
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイグル,マルクス
【テーマコード(参考)】
4E167
【Fターム(参考)】
4E167BG01
4E167BG04
4E167BG34
(57)【要約】
摩擦撹拌溶接において溶接ピンのスピード及び安定性を増加させるための装置及び方法であって、以下のような装置特性を有する。a)ツールドライブ(1)は、ユニオンナット(4)を有する円錐状のツールドーム(3)のための保持フランジ(2)を備え、b)環状保持リング(12)は、ツールシュー(7)を有するピンシャンク(6)を取り囲み、前記ツールシュー(7)は、前記環状保持リング(12)の径に固定され、溶接継ぎ目を滑らかにするためのスムージング/コンパクティング表面(11)をピンチップ(10)の領域に有し、前記ピンシャンク(6)は、ツールシュー(7)の幅を有し、c)前記ピンチップ(10)は、該ピンチップ(10)から材料を排出するための搬送スクリュー(8)を取り囲む環状摩擦表面(9)を有し、前記搬送スクリュー(8)のねじ山は、前記ピンチップ(10)のねじ山と逆行している。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩擦撹拌溶接において溶接ピンのスピード及び安定性を増加させるための装置であって、
a)ツールドライブ(1)は、ユニオンナット(4)を有する円錐状のツールドーム(3)のための保持フランジ(2)を備え、
b)環状保持リング(12)は、ツールシュー(7)を有するピンシャンク(6)を取り囲み、前記ツールシュー(7)は、前記環状保持リング(12)の径に固定され、溶接継ぎ目を滑らかにするためのスムージング/コンパクティング表面(11)をピンチップ(10)の領域に有し、前記ピンシャンク(6)は、ツールシュー(7)の幅を有し、
c)前記ピンチップ(10)は、該ピンチップ(10)から材料を排出するための搬送スクリュー(8)を取り囲む環状摩擦表面(9)を有し、前記搬送スクリュー(8)のねじ山は、前記ピンチップ(10)のねじ山と逆行していることを特徴とする装置。
【請求項2】
接合される部材(5)の隣接端(19)領域に回転ローラアーム(17)の旋回を可能とするリフト装置(18)を側方に設けたことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記スムージング/コンパクティング表面(11)の径(14)の半分は、前記ピンシャンク(6)に隣接していることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記搬送スクリュー(8)は、前記スムージング/コンパクティング表面(11)から開始していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の装置。
【請求項5】
摩擦撹拌溶接において溶接ピンのスピード及び安定性を増加させるための方法であって、
ツールドライブ(1)は、円錐状のツールドーム(3)を備え、回転ローラアーム(17)のリフト装置(18)は、接合される部材(5)の隣接端(19)領域に設けられ、ツールシュー(7)は、溶接継ぎ目を滑らかにするためのスムージング/コンパクティング表面(11)と、ピンチップ(10)から材料を排出するための搬送スクリュー(8)を取り囲む環状摩擦表面(9)と、を有し、前記搬送スクリュー(8)のねじ山は、前記ピンチップ(10)のねじ山と逆行していることを特徴とする方法。
【請求項6】
前記環状摩擦表面(9)は、接合される部材(5)を摩擦により加熱して溶接操作スピードを増加させ、左側及び右側に生じた僅かなバリは、回転ローラ(16)により滑らかにされることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ピンシャンク(6)から前記スムージング/コンパクティング表面(11)の離脱端(13)までの距離は、進行の間に最適化されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
プログラムがコンピュータで実行される場合、請求項5乃至請求項7のいずれか一項に記載の方法ステップを実行するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラム。
【請求項9】
プログラムがコンピュータで実行される場合、請求項5乃至請求項7のいずれか一項に記載の方法を実行するためのコンピュータプログラムのプログラムコードを有する機械可読媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦撹拌溶接において溶接ピンのスピード及び安定性を増加させるための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
摩擦撹拌溶接では、摩擦により接合される材料の連結領域において、並進移動すると共に圧力が課される回転ツールとの間に摩擦熱が生ずる。このツールは、連結領域に沿って移動し、互いに接合される材料の継ぎ目内部において可塑化された材料を撹拌し、課された圧力は、可塑化された材料を圧縮する。溶接継ぎ目形成の最後に、ツールは連結領域から退避され、溶接継ぎ目は直ちに荷重を付加され得る。
【0003】
従来技術として、本出願人から出願されたDE 20 2018 001 178 U1を参照する。
【0004】
この文献は、摩擦撹拌溶接操作の間に溶接過程の中断を避ける、特に、摩擦ピンの破損を避けるための装置に関し、この装置は、以下のような特性を備える。
a)ウェッジ型ツールドーム(7)の長手側辺上において互いに120度ずつ角度を隔てて配置された少なくとも3つのストリップ様センサ(8)を備え、前記ツールドーム(7)は、ツール受入コーン(28)及び溶接シュー(11)により溶接ピン(19)をガイドし、前記センサ(8)は、力、圧力及び軌道を決定するように設計され、
b)前記ツール受入コーン(28)の下方領域に設けられ、前記溶接ピン(19)における軸力、トルク及び曲げモーメントを検出するためのセンサ(22)を受け入れるのに用いられるコーンくびれを備え、
c)前記溶接ピン(19)のための圧電垂直調整を備え、
d)前記溶接シュー(11)の領域に設けられ前記ピンチップ(12)の貫通領域における丸穴(27)に方向性効果を向けたレーザ測定センサ(10)と、前記レーザ測定センサ(10)の反対側に配置された空気伝送音センサ(3)と、溶接シュー温度センサと、を備え、
e)検出されたすべての測定値を受信、増幅及び送信するための回転アンテナを有するセンサシグナル増幅器(23)を備え、これら測定値は、固定アンテナ(16)により機械制御部に送信され、
f)可動二次コイル(24)及び固定一次コイル(25)から測定システムに電力を供給するための誘導電力供給システムを備える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、摩擦ピンの破損は、溶接アセンブリにおける材料の局所的変化、例えば、鋳込材料の場合には硬度変化の結果として、摩擦撹拌溶接のシステム操作の間に起こり得る。
【0006】
そこで、本発明は、摩擦撹拌溶接システムの経済的操作を保証するだけでなく、溶接スピードと溶接ツールの耐用年数とを増加させるという目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1でクレームされた装置の特性により達成される。
摩擦撹拌溶接において溶接ピンのスピード及び安定性を増加させるための装置であって、
ツールドライブ(1)は、ユニオンナット(4)を有する円錐状のツールドーム(3)のための保持フランジ(2)を備え、
環状保持リング(12)は、ツールシュー(7)を有するピンシャンク(6)を取り囲み、前記ツールシュー(7)は、前記環状保持リング(12)の径に固定され、溶接継ぎ目を滑らかにするためのスムージング/コンパクティング表面(11)をピンチップ(10)の領域に有し、前記ピンシャンク(6)は、ツールシュー(7)の幅を有し、
前記ピンチップ(10)は、該ピンチップ(10)から材料を排出するための搬送スクリュー(8)を取り囲む環状摩擦表面(9)を有し、前記搬送スクリュー(8)のねじ山は、前記ピンチップ(10)のねじ山と逆行し、接合される部材(5)の隣接端(19)領域に回転ローラアーム(17)の旋回を可能とするリフト装置(18)を側方に設け、前記スムージング/コンパクティング表面(11)の径(14)の半分は、前記ピンシャンク(6)に隣接し、前記搬送スクリュー(8)は、前記スムージング/コンパクティング表面(11)から開始している。
また、請求項5でクレームされた方法である。
摩擦撹拌溶接において溶接ピンのスピード及び安定性を増加させるための方法であって、
ツールドライブ(1)は、円錐状のツールドーム(3)を備え、回転ローラアーム(17)のリフト装置(18)は、接合される部材(5)の隣接端(19)領域に設けられ、ツールシュー(7)は、溶接継ぎ目を滑らかにするためのスムージング/コンパクティング表面(11)と、ピンチップ(10)から材料を排出するための搬送スクリュー(8)を取り囲む環状摩擦表面(9)と、を有し、前記搬送スクリュー(8)のねじ山は、前記ピンチップ(10)のねじ山と逆行し、前記環状摩擦表面(9)は、接合される部材(5)を摩擦により加熱して溶接操作スピードを増加させ、左側及び右側に生じた僅かなバリは、回転ローラ(16)により滑らかにされ、ピンシャンク(6)から前記スムージング/コンパクティング表面(11)の離脱端(13)までの距離は、進行の間に最適化され、プログラムがコンピュータで実行される場合、上記方法ステップを実行するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラム、プログラムがコンピュータで実行される場合、上記方法を実行するためのコンピュータプログラムのプログラムコードを有する機械可読媒体。
【0008】
本発明に係る装置及びそれによる方法は、以下でより詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係るツールシューの側面図。
図2】溶接シューのためのマウントの斜視図。
図3】ピンシャンク領域の詳細図。
図4】回転ローラ領域におけるランニングトラックの平面図。
図5】ピンシャンクの全体図。
図6】溶接操作の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、ツールシュー(7)の直接側面図を示す。
【0011】
円錐状のツールドーム(3)のための保持フランジ(2)は、ツールドライブ(1)により上方から駆動される。
【0012】
ツールシュー(7)は、ユニオンナット(4)を介してツールドーム(3)に固定されている。ラジアルねじが、この目的のために用いられてもよい。
【0013】
ツールシュー(7)は、溶接接合される部材(5)と直接に接触した状態でピンシャンク(6)と共に示されている。
【0014】
左側でツールドーム(3)のための保持フランジ(2)に固定されているのは、平行に走る2つの回転ローラ(16)(或いは対応するボール)のガイダンスを担う回転ローラアーム(17)のためのリフト装置(18)であり、リフト装置(18)の固定されたものが側面図で見られる。リフト装置(18)は、ピエゾ手段により制御され、回転ローラ(16)の高さ又は接触圧は、実際のプロセス力制御とは別に制御される必要がある。ここでは、回転ローラ(16)は、加熱ゾーン(15)(図6参照)内において接合される部材(5)を押圧し、過剰に高い圧力は、接合される部材(5)に回転ローラ(16)を押し付けるので、回転ローラ(16)の圧力は、生じたバリに適応され得る。
【0015】
図2は、溶接シューのためのマウントの斜視図を示す。
【0016】
溶接シューの環状保持リング(12)によりガイドされるピンシャンク(6)は、スムージング/コンパクティング表面(11)を経てツールシュー(7)を有する。
【0017】
ピンチップ(10)へと連なるピンシャンク(6)は、ピンチップ(10)の手前に反時計回りのねじ山を持ちプロセスゾーンへとドレナージ材料を継続的に搬送する搬送スクリュー(8)を有し、搬送スクリュー(8)は、下方領域においてスムージング/コンパクティング表面(11)の高さでリング型の環状摩擦表面(9)により覆われ、環状摩擦表面(9)は、接合される部材(5)を加熱するのに供する。ここでは、第2及び/又は回転している残りのショルダについて言及することもできる。搬送スクリュー(8)によりドレナージ材料を下方に搬送する結果、ピンシュー径(14)とピンシャンク(6)との間の環状ギャップは、上方へシールされる。ドレナージ材料とは、接合される部材(5)から溶接過程の間に剥がれてピン(6)上に蓄積される摩耗材料を指す用語である。
【0018】
図3は、ピンシャンク(6)領域の詳細図を示す。
【0019】
ここでは、接合される部材(5)に完全に浸漬したピンチップ(10)が見られ、接合される部材(5)に対して斜めに(通常、1.5から5度の角度で)ぶつかるツールシュー(7)のスムージング/コンパクティング表面(11)は、接合される部材(5)に対してスムージング/コンパクティング作用を発揮し、ピンシャンク(6)においては、摩耗材料を搬送するための搬送スクリュー(8)と、接合される部材(5)を加熱するための環状摩擦表面(9)とが、動作状態で見られる。
【0020】
機械構造を通して破線で図示された保持リング(12)は、図2で見られる。
【0021】
図1で見られた回転ローラ(16)を有する回転ローラアーム(17)は、ユニオンナット(4)と同様に、ツールシュー(7)の左側において断面で見られ、バリやムラ或いは継ぎ目端が、回転ローラ(16)のトラックにおいて符号20でアウトラインされている。
【0022】
ツールシュー(7)上の小さなスライド表面(11)は、ツールの低い接触圧及び速い溶接スピードという利点を与える。接触圧は、ツールに特異的で、そのため固定されている。小さい接触表面のために接触圧は高くなり、これは、溶接が所定の機械力でより迅速に実行可能であることを意味する。実際、これにより、(溶接シューの脇に沿った溶接継ぎ目とベース材料との間の遷移領域において)回転ローラ(16)により均される僅かなバリが生じる。
【0023】
図4は、接合される2つの部材(5)上の回転ローラ(16)領域におけるランニングトラックの平面図を示す。
【0024】
溶接継ぎ目端(20)及び継ぎ目表面(21)と共に、回転ローラアーム(17)の2つの部分が左側において上方から見られ、スムージング/コンパクティング表面(11)が、ピンシャンクを取り囲む径(14)と共に見られる。
【0025】
図5は、ピンシャンクの全体図を示す。
【0026】
中央で垂直に図示されたピンシャンク(6)において、下方領域にマウントされてスムージング/コンパクティング表面(11)を有するツールシュー(7)を隠された様式で破線により図示することで、環状摩擦表面(9)及び搬送スクリュー(9)が見られる。ピンチップ(10)も、同様に見られる。
【0027】
このような構成により、より速い溶接スピード及びツールのより長い耐用年数が達成される。とりわけ、内部摩擦を低減する搬送スクリュー(8)によるツールの自己発熱の減少の効果が大きい。
【0028】
図6は、溶接操作の平面図を示す。
【0029】
曲線(15)は、実際の溶接操作での加熱ゾーンを示し、図6における中央の破線(19)は、溶接接合される部材(5)の隣接端を示す。
【0030】
2つの回転ローラ(16)は、ムラ及び/又は溶接継ぎ目端(20)を滑らかにする。
【0031】
上方から見たときの溶接シュー(7)の境界線は、(7)により規定される。
【0032】
離脱端(13)を有するスムージング/コンパクティング表面(11)は、接合される部材(5)を加熱するための摩擦表面である表面(9)の半分を取り囲む。
【0033】
ピンチップ(10)を有するピンシャンク(6)は、溶接操作のハブとして見られる。包括的な制御オプションを含む溶接過程の制御は、特別なコンピュータプログラムを必要とする。
【符号の説明】
【0034】
1 ツールドライブ
2 ツールドーム(コーン)のための保持フランジ
3 ツールドーム(コーン)
4 ツールシューのためのユニオンナット
5 接合される部材
6 ピンシャンク
7 ツールシュー
8 摩耗材料を搬送するための搬送スクリュー(バリスクリューとも言う)
9 接合される部材を加熱するための環状摩擦表面
10 ピンチップ
11 スムージング/コンパクティング表面
12 溶接シューのための保持リング
13 離脱端
14 ピンシュー径
15 熱分布曲線
16 回転ローラ(又はボール)
17 回転ローラアーム
18 回転ローラアームのためのリフト装置
19 接合される部材の隣接端
20 バリ、ムラ、継ぎ目端
21 溶接継ぎ目、継ぎ目表面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】