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特表2022-530615嚥下可能な薬物送達デバイスを使用する腸管の組織への送達のための凝固因子調製物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-30
(54)【発明の名称】嚥下可能な薬物送達デバイスを使用する腸管の組織への送達のための凝固因子調製物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/37 20060101AFI20220623BHJP
   A61K 38/36 20060101ALI20220623BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20220623BHJP
   A61K 9/00 20060101ALI20220623BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20220623BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20220623BHJP
【FI】
A61K38/37
A61K38/36
A61P7/04
A61K9/00
A61K47/60
A61K47/64
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021562389
(86)(22)【出願日】2020-05-01
(85)【翻訳文提出日】2021-12-17
(86)【国際出願番号】 US2020031197
(87)【国際公開番号】W WO2020227162
(87)【国際公開日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】62/843,221
(32)【優先日】2019-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/845,209
(32)【優先日】2019-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514002891
【氏名又は名称】ラニ セラピューティクス, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イムラン,ミール エー.
(72)【発明者】
【氏名】アンサロニ,サラ
(72)【発明者】
【氏名】コルポル,ラディカ
(72)【発明者】
【氏名】ハリス,ジョエル
(72)【発明者】
【氏名】ハシム,ミール
(72)【発明者】
【氏名】ガラパティ,アヌシャ
(72)【発明者】
【氏名】ダサリ,アンヴェシュ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA51
4C076BB05
4C076CC14
4C076CC41
4C076EE59
4C076FF68
4C084AA03
4C084BA37
4C084BA44
4C084DC10
4C084DC14
4C084DC15
4C084MA02
4C084MA05
4C084MA34
4C084MA52
4C084NA05
4C084NA10
4C084ZA531
4C084ZA532
4C084ZC752
(57)【要約】
実施形態は、凝固因子(CF)、例えば、PEG化および他の形態の安定化FVIIIを含む第VIII因子(FVIII)などの治療薬(TA)をGI管内に送達するためのデバイス、調製物、および方法を提供する。多くの実施形態は、TAを腸壁(IW)に送達するためのカプセルなどの嚥下可能なデバイスを提供する。実施形態はまた、カプセル内に含まれ、カプセルからIWおよび/または周囲組織(ST)に前進し、分解して、TAを血流に放出して治療効果(例えば、凝固の改善)を生じるように構成されたTA調製物をも提供する。調製物は、調製物がカプセルに含まれる第1の構成と、調製物がカプセルから出てIWまたはST(例えば、腹膜腔)に前進する第2の構成と、を有する送達手段に動作可能に結合されることができる。実施形態は、凝固障害(例えば、血友病)の治療のためのCFの送達に特に有用であり、そのようなCFは、GI管内で吸収性が低く、および/または分解される。
【選択図】図28A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の凝固障害の治療のための治療用調製物であって、前記治療用調製物は、前記患者の体重1kg当たり75IUを超える投与量の安定化形態の第VIII因子(FVIII)を含み、前記患者の腸壁を通した前記患者の腹膜腔への挿入のために構成されており、前記治療用調製物は、前記FVIIIを血流に放出する、治療用調製物。
【請求項2】
前記安定化第VIII因子は、PEG化第VIII因子を含む、請求項1に記載の治療用調製物。
【請求項3】
前記PEG化第VIII因子は、75IU/kg体重~400IU/kg体重の範囲で前記治療用調製物中に存在する、請求項2に記載の治療用調製物。
【請求項4】
前記PEG化第VIII因子は、150IU/kg体重~300IU/kg体重の範囲で前記治療用調製物中に存在する、請求項2に記載の治療用調製物。
【請求項5】
前記治療用調製物は、固体組織貫通部材に含まれ、前記固体組織貫通部材は、前記組織貫通部材への力の付与により、腸壁を貫通するように構成されている、請求項1に記載の治療用調製物。
【請求項6】
6~10時間の範囲のTmaxを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の治療用調製物。
【請求項7】
約2.4IU/ml~4.0IU/mlの範囲のCmaxを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の治療用調製物。
【請求項8】
60(IU*h)/mL~70(IU*h)/mLの範囲の曲線下面積(AUC)を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の治療用調製物。
【請求項9】
1:4~1:8の範囲の、上昇曲線部分と下降曲線部分との比率を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の治療用調製物。
【請求項10】
前記安定化FVIIIは、フォンヴィレブランド因子と化学的に複合体化されたFVIIIを含む、請求項1に記載の治療用調製物。
【請求項11】
前記安定化FVIIIは、Fc融合によって修飾されたFVIIを含む、請求項1に記載の治療用調製物。
【請求項12】
患者の凝固障害を治療するための方法であって、前記方法は、
75IU/kg体重を超える投与量で安定化第VIII因子(FVIII)を提供することと、
前記FVIIIを前記患者の腸壁を通して、前記患者の腹膜腔に送達することと、を含み、
前記FVIIIは、血流に放出されて、前記凝固障害を治療する、方法。
【請求項13】
前記安定化第VIII因子は、固形組織貫通部材として提供され、前記安定化第VIII因子を前記患者の腸壁を通して送達することは、デバイスの経口摂取後に、前記組織貫通部材が前記デバイスから送達されるように、前記固形組織貫通部材を、前記組織貫通部材への力の付与により、前記患者の腸壁を貫通させることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記血流への前記FVIIIの前記放出は、T1/2、Tmax、Cmax、曲線下面積(AUC)、バイオアベイラビリティ、または上昇曲線部分と下降曲線部分との比率からなる群から選択される少なくとも1つの薬物動態パラメータを特徴とする血漿濃度-時間曲線を生成する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記安定化第VIII因子は、PEG化第VIII因子を含む、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記PEG化第VIII因子は、75IU/kg体重~400IU/kg体重の範囲で治療用調製物中に存在する、請求項15に記載の調製物。
【請求項17】
前記PEG化第VIII因子は、150IU/kg体重~300IU/kg体重の範囲で治療用調製物中に存在する、請求項15に記載の調製物。
【請求項18】
前記Tmaxは、6~10時間の範囲にある、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記Cmaxは、約2.4IU/ml~4.0IU/mlの範囲にある、請求項15または18に記載の方法。
【請求項20】
前記曲線下面積(AUC)は、60(IU*h)/mL~70(IU*h)/mLの範囲にある、請求項15、18、または19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年5月3日に出願された米国仮特許出願第62/843,221号および2019年5月8日に出願された同第62/845,209号に対する優先権およびその利益を主張し、これらは両方とも、あらゆる目的のために、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明の実施形態は、経口送達可能な薬物および他の治療薬製剤、ならびに小腸の壁または周囲組織などのGI管の内腔の壁にそれらの製剤を送達するための嚥下可能な薬物送達デバイスに関する。より具体的には、本発明の実施形態は、凝固障害の治療のための経口送達可能な薬物製剤に関する。さらにより具体的には、本発明の実施形態は、凝固第VII、VIII、IXおよびX因子としての凝固タンパク質を含む、特に安定化形態の第VIII因子を含む、血友病およびフォンヴィレブランド病の治療のための経口送達可能な固形薬物製剤に関する。
【0003】
過去10年間で、例えば、様々な凝固障害を含む様々な疾患の治療のための新薬の開発が増えている。残念ながら、経口投与できないため、多くの場合、用途が限られている。これは、胃の炎症および出血を含む合併症を伴う経口耐性の低下、胃の中の薬物化合物の分解(breakdown)/分解(degradation)、および薬物の吸収が不十分、遅い、または不安定であることを含む、いくつかの理由によるものである。静脈内および筋肉内送達などの従来の代替的な薬物送達方法には、痛み、および針刺しによる感染のリスク、滅菌技術の使用の要件、ならびに患者のIVラインを長期間維持するための要件および関連するリスクを含む、いくつかの多くの欠点がある。埋め込み型薬物送達ポンプなどの他の薬物送達アプローチが採用されているが、これらのアプローチでは、デバイスの半永久的な埋め込みが必要であり、IV送達の限界の多くを依然として有する可能性がある。したがって、薬物および他の治療薬の送達のための改善されたおよび/または代替の方法へのニーズが存在する。
【0004】
人間集団にはいくつかの遺伝性出血性疾患が存在し、治療せずに放置すると致命的となる可能性がある。これらには、最も一般的であり、患者の末梢血中の凝固因子のレベルの低下によって引き起こされる血友病AおよびBが含まれる。それらにはまた、第VII因子欠乏症とスチュアート・プロワー因子欠乏症とも呼ばれる第X因子欠乏症、および第VIII因子に結合するフォンヴィレブランド因子の欠乏によって引き起こされるフォンヴィレブランド病も含まれる。血友病の最も一般的な形態である血友病Aは、第VIII因子(FVIII)の欠乏によって引き起こされる。血友病Bは、第IX因子(F IX)の合成の低下、または活性が低下した欠陥のある第IX因子の合成によって引き起こされる。血友病治療の現在の形態は、欠損または欠陥のある凝固因子を、FVIIIまたはFIXなどの組換えまたは血漿由来の凝固因子で補充することを含む。通常、これらの因子は、大抵、静脈内に注射される。
【0005】
しかしながら、血友病治療の現在の形態には多くの問題および欠点がある。特に、いくつかの患者は、補充凝固因子に対する抗体を作り、それらの有効性を低下させ、以下で議論されるように深刻な合併症を引き起こす可能性がある。他の問題には、注射を受けるために医院/診療所に来る必要があること、および静脈への注射を非常にゆっくりと行う必要があることが含まれる。また、凝固因子は大抵、末梢静脈注射を介して投与されるため、静脈が小さい人または子どもは、静脈を見つけるのが難しく、容易に崩壊する可能性があるため、注射を受けるのに苦労する可能性がある。この問題は、より頻繁な注射を必要とする子どもの場合に特に問題になる可能性がある。また、注射自体が出血を引き起こす可能性がある。
【0006】
多くの患者は、様々な凝固因子の投与を受けることに応答して、凝固因子の作用を阻害するか、またはさもなければ妨害する抗体(「阻害剤」または「阻害剤抗体」として知られている)を作る。第VIII因子に対する阻害剤抗体の発生は、血友病A患者の管理における深刻な合併症である。阻害剤抗体は、第VIII因子の治療的注入に反応して、血友病A患者の約20%で発生する。これは、投与された第VIII因子または他の凝固因子の高用量によるものである。阻害剤を発生させる血友病Aの未治療の患者では、阻害剤は大抵、治療から1年以内に発生する。さらに、第VIII因子を不活性化する自己抗体は、以前は正常な第VIII因子レベルの人で時折発生する。阻害剤の力価が十分に低い場合、潜在的な合併症はあるが、第VIII因子の用量を増やすことによって患者を管理することができる。ただし、阻害剤の力価が非常に高いため、第VIII因子の用量を増やすことによって圧倒できない場合がよくある。これらの抗体の力価を排除または低減するための治療法は利用可能であるが、費用がかかり(例えば、患者1人当たり年間100万ドル程度)、時間がかかり、凝固因子の定期的な静脈内投与が必要である。また、これらの治療は、患者の約4分の3でしか機能しない。
【0007】
第VIII因子補充療法の他の投与経路は過去に調査されてきたが、それらはあまり成功していない。皮下(SC)投与は、一度に投与することができる活性薬剤の量によって制限され、これらの因子の治療レベルに達することはできない。また、それは、プロテアーゼを介した分解に対するこれらの因子の感受性によっても制限される。別の懸念は、IVと比較してSC経路の免疫原性が増加することであり、これは、IV注射経路と比較して抑制抗体の増加またはより迅速な産生をもたらし得る。したがって、必要なのは、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、および第X因子などの凝固因子を、注射を必要とせずに送達するための、および阻害剤抗体の発生または凝固因子に対する他の免疫原性反応を引き起こさない方法で、そのように送達するための組成物および方法である。
【0008】
関連する事例のリスト。本明細書は、あらゆる目的のために、以下の特許出願および特許、すなわち、2017年11月7日に出願された「Clotting Factor Preparations For Delivery Into Tissue Of The Intestinal Tract Using A Swallowable Drug Delivery Device」と題する米国特許仮出願第62/582,857号、2018年11月7日に出願された「Clotting Factor Preparations For Delivery Into Tissue Of The Intestinal Tract Using A Swallowable Drug Delivery Device」と題する米国特許出願第16/183,573号、2018年12月31日に出願された「Therapeutic Agent Preparations And Methods For Drug Delivery Into A Lumen Of The Intestinal Tract Using A Swallowable Drug Delivery Device」と題する米国仮出願第62/786,831号、2019年3月13日に出願された「Therapeutic Agent Preparations And Methods For Drug Delivery Into A Lumen Of The Intestinal Tract Using A Swallowable Drug Delivery Device」と題する米国仮出願第62/818,053号、2019年3月18日に出願された「Therapeutic Agent Preparations And Methods For Drug Delivery Into A Lumen Of The Intestinal Tract Using A Swallowable Drug Delivery Device」と題する米国仮出願第62/820,174号、2016年9月8日に出願された「PCSK9 Antibody Preparations For Delivery Into A Lumen Of The Intestinal Tract Using A Swallowable Drug Delivery Device」と題する米国特許出願第15/260,260号、2011年6月30日に出願された「Therapeutic Agent Preparations for Delivery Into a Lumen of The Intestinal Tract Using a Swallowable Drug Delivery Device」と題する米国仮特許出願第61/571,642号、2011年6月29日に出願された「Device,System and Method for the Oral Delivery of Therapeutic Compounds」と題する米国仮特許出願第61/571,641号、2010年12月23日に出願された「Swallowable Drug Delivery Device and Methods of Drug Delivery」と題する米国特許出願第12/978,233号、2010年12月23日に出願された「Therapeutic Agent Preparations for Delivery Into a Lumen of The Intestinal Tract Using a Swallowable Drug Delivery Device」と題する米国特許出願第12/978,164号、2010年12月23日、「Swallowable Drug Delivery Device and Method of Delivery」と題する米国特許出願第12/978,301号、2012年6月25日に出願された「Device,System And Methods For The Oral Delivery Of Therapeutic Compounds」と題する米国特許出願第13/532,589、「Therapeutic Agent Preparations Comprising Insulin for Delivery into a Lumen of the Intestinal Tract using a Swallowable Drug Delivery Device」と題するUS特許第8,809,269、2014年5月15日に出願された「Pharmaceutical Compositions And Methods For Fabrication Of Solid Masses Comprising Polypeptides And/Or Proteins」と題する米国仮特許出願第61/993,907号、2015年5月1日に出願された「Pharmaceutical Compounds And Methods For Fabrication Of Solid Masses Comprising Polypeptides And/Or Proteins」と題する米国仮特許出願第62/156,105、2015年5月8日に出願された「Anti-Interleukin Antibody Preparations For Delivery Into A Lumen Of The Intestinal Tract Using A Swallowable Drug Delivery Device」と題する米国仮特許出願第62/159,134号、2015年9月8日に出願された「PCSK9 Antibody Preparations For Delivery Into A Lumen Of The Intestinal Tract Using A Swallowable Drug Delivery Device」と題する米国仮出願第62/215,586号を、参照によりその全体を援用する。
【発明の概要】
【0009】
一態様では、本発明は、患者の凝固障害の治療のための治療用調製物を提供し、調製物は、患者の75IU/kg体重を超える投与量で固体の安定化形態の第VIII因子(FVIII)を含む。調製物は、通常、先細りまたは尖った端部などの組織貫通特徴を備えており、患者の腸への経口送達および患者の腸壁を通って患者の腹膜腔への固体形態での挿入のために構成されている。腹膜腔に入った後、調製物は、腹膜腔の漿膜液中で分解されて、安定化形態のFVIIIを血流に放出し、治療上有効なFVIIIの血漿濃度を生成する。予期せぬことに、安定化FVIII、通常PEG化FVIIIの少なくとも75IU/kg体重閾値レベルの投与量の腹腔内(IP)送達が、安定化FVIIIの一般的に使用される投与量の血管内(IV)送達によって達成されるものと少なくとも同等、場合によっては、それよりも優れた治療結果を提供することが見出された。
【0010】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、「第VIII因子」は、特に第VIIIA因子を含む、第VIII因子のすべての生物学的に活性な形態を指す。便宜上、第VIII因子のすべての生物学的に活性な形態は、本明細書では「第VIII因子」またはFVIIIと呼ばれる。
【0011】
本発明の治療用調製物の特定の実施形態では、安定化第VIII因子は、PEG化第VIII因子を含み得る。さらなる実施形態では、PEG化第VIII因子は、75IU/kg体重~400IU/kg体重の範囲で治療用調製物中に存在し得、しばしば、100IU/kg体重~350IU/kg体重の範囲であり、しばしば、150IU/kg体重~300IU/kg体重の範囲である。通常、必ずしもそうではないが、調製物は、固体組織貫通部材として成形されており、固体組織貫通部材は、組織貫通部材への力の付与により、腸壁の内面に対しておよび腹膜腔内に、組織貫通端部または固体調製物の特徴と係合する方向に、腸壁を貫通するように構成されている。
【0012】
本発明の治療用調製物は、患者に腹腔内送達されると、8~10時間の範囲のTmax、約2.5IU/ml~3.5IU/mlの範囲のCmax、60(IU*h)/mL~70(IU*h)/mLの範囲の曲線下面積(AUC)、および1:4~1:8の範囲の上昇曲線部分と下降曲線部分との比率うちの1つ以上を含む、いくつかの標的エンドポイントのうちの1つ以上を達成することができる。
【0013】
本発明の治療用調製物中に存在する安定化形態のFVIIIは、通常、PEG化FVIIIを含むが(以下により詳細に記載されるように)、他の例では、安定化FVIIIは、フォンヴィレブランド因子と化学的に複合体化され得、および/またはFc融合によって、任意選択で、PEG化形態のFVIIIの代わりに、またはそれに加えて、修飾され得、例えば、2つ以上の形態の安定化および/または非安定化FVIIIを組み合わせて、混合組成物にし得る。
【0014】
別の態様では、本発明は、患者の凝固障害を治療するための方法を提供する。方法は、通常、安定化第VIII因子(FVIII)、通常、必ずしもそうではないが固体組織貫通部材として形成されたPEG化FVIIIを提供することを含み、これは、本発明の調製物に関して上記の形態のいずれかであり得る。固形組織貫通部材は、通常、食道、胃、および幽門への早期貫通および安定化FVIIIの分解の両方を防止する保護された形で経口摂取した後、組織貫通部材が腹膜腔内に送達されるような組織貫通部材への力の付与により、患者の腸壁を通って、患者の腹膜腔に貫通させられる。腹膜腔に入った後、調製物は通常、漿膜液に溶解して、75IU/kg体重を超える安定化FVIIIの治療上有効な投与量を血流に放出して、凝固障害を治療する。
【0015】
特定の例では、FVIIIは、血流に放出されて、T1/2(排出半減期)、Cmax(血中の薬物の最高濃度)、Tmax(Cmaxに達するまでの時間)、曲線下面積(AUC-薬物への曝露の尺度)、バイオアベイラビリティ、または上昇曲線部分と下降曲線部分との比率からなる群から選択される少なくとも1つの薬物動態パラメータを特徴とする血漿濃度-時間曲線を生成する。Tmaxは通常、8~10時間の範囲であり、Cmaxは、約2.5IU/ml~3.5IU/mlの範囲であり得、曲線下面積(AUC)は、60(IU*h)/mL~70(IU*h)/mLの範囲であり得、および上昇曲線部分と下降曲線部分との比は、1:4~1:8の範囲であり得る。
【0016】
好ましい安定化第FVIII形態および濃度には、75IU/kg体重~400IU/kg体重の範囲の濃度のPEG化第VIII因子、および150IU/kg体重~300IU/kg体重の範囲の濃度のPEG化第VIII因子が含まれる。
【0017】
本発明の実施形態は、薬物および他の治療薬を体内の様々な場所に送達するためのデバイス、システム、キット、および方法を提供する。多くの実施形態は、消化(GI)管および腹膜腔などの周囲組織内に、凝固タンパク質などの薬物、および他の治療薬を送達するための嚥下可能なデバイスを提供する。本発明の特定の実施形態は、凝固タンパク質および他の治療薬を、小腸の壁および/または周囲組織(例えば、腹膜壁または腹膜腔)ならびに胃の壁に送達するための、カプセルなどの嚥下可能なデバイスを提供する。そのような凝固タンパク質(CP)は、第VII、VIII、IX、Xおよびフォンヴィレブランド因子のうちの1つ以上を含む様々な凝固因子(別名凝固因子(clotting factor))を含むことができる。本発明の実施形態は、GI管内で、吸収性が低く、耐性が低く、および/または分解される凝固タンパク質および他の治療薬の経口送達に特に有用である。また、本発明の実施形態は、以前は血管内注射によってのみ送達することができた血友病および他の凝固障害の治療のための凝固因子および他の凝固タンパク質の経口送達に特に有用である。さらに、本発明の実施形態は、凝固因子の効力を破壊または低下させる阻害剤抗体の産生を最小限に抑えるか、または全く産生せずに、第VIII因子などの凝固因子を送達するために特に有用である。その上さらに、本発明の実施形態は、凝固因子および他の凝固タンパク質を、腸壁および腹膜腔に送達して、腹腔壁(複数可)および/またはリンパ組織を通過する間の生物活性の損失を低減して血流に迅速に取り込むために特に有用である。
【0018】
一態様では、本発明は、血友病Aなどの凝固障害の治療のための、治療有効用量の少なくとも1つの凝固因子を含む、小腸の壁および/または周囲組織(例えば、腹膜腔)または腸管の他の場所への送達のための治療薬調製物を提供する。凝固因子は、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、フォンヴィレブランド因子などのうちの少なくとも1つを、それぞれの類似体および誘導体および断片とともに、含み得る。調製物は、嚥下可能なカプセル(または同様のデバイス)の実施形態に含まれ、カプセルから腸壁または周囲組織(例えば、腹膜壁および/または腹膜腔)に送達されて、腸壁内または腹膜腔などの周囲組織からの凝固因子(CF)の用量を放出するための、形状および材料の粘稠度を有し得る。そのような形状は、様々なダーツ状、または針状の形状、または他の同様の構造などの尖った端部を有するものを含む、様々な組織貫通構造に対応し得る。腹膜腔に送達される調製物の実施形態では、針または他の尖った端部は、望ましくは、針の形の非対称性によって偏向されることなく、腸壁を通って腹膜腔に貫通することができるように、真っ直ぐまたは対称の垂直点またはダーツ形状を有する。調製物は、固体、液体、もしくは粉末の形態、またはそれらの組み合わせであり得る。好ましくは、CFを含む調製物は、調製物が、長期間貯蔵されること、ならびに(例えば、針形状などの組織貫通形状に)成形され、腸壁ならびに/または腹膜腔および/もしくは腹膜壁などの周囲組織にそれを挿入するために調製物に対して及ぼされる、機械的力または他の力を有することを可能にする固体形態である。様々な実施形態によれば、凝固因子は、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子およびフォンヴィレブランド因子のうちの1つ以上を含む凝固因子、ならびに/または当技術分野で知られているそれらの機能的変異体(例えば、類似体および誘導体)から選択され得、そのような変異体は、凝固因子の特徴的な特性を保持する。
【0019】
特定の実施形態では、本発明は、薬物の循環半減期(T1/2としても記載される)を増加させるために、安定化形態の第VIII因子(または他の凝固因子)を含む、凝固障害の治療のための治療用調製物を提供する。安定化は、以下のアプローチ、すなわち、i)第VIII因子(または他の凝固因子)を安定剤と化学的複合体化することか、またはii)第VIII因子を含む治療用調製物に、安定化賦形剤としても本明細書に記載されている安定剤を含む賦形剤を含ませることのうちの一方または両方によって達成することができる。化学的複合体形成法および薬の例には、PEG化(FVIII分子がPEG分子と複合体化される)またはFc融合を介するものが含まれ、これらは両方とも本明細書でより詳細に説明される。安定化賦形剤の例には、ヘパリンおよびFTP、フォンヴィレブランド因子、アルブミンおよびカルシウムなどのプロテアーゼ阻害剤が含まれる。使用において、安定化形態の第VIII因子の送達は、薬物の投与量および投与頻度のうちの一方または両方を有利に減少させる。
【0020】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の嚥下可能なカプセルの1つ以上の実施形態を使用して、治療有効量の凝固因子(例えば、第VIII因子)を含む調製物を患者に経口投与して、それによって、凝固障害を治療することを含む、血友病または他の凝固障害を治療するための方法を提供する。特定の実施形態では、本発明は、i)第VII因子欠乏症、阻害剤による先天性血友病、後天性血友病、またはグランツマン血小板無力症、ii)血友病Aの治療のための治療量の第VIII因子、iii)血友病Bの治療のための治療量の第IX因子、iv)第X因子欠乏症の治療のための治療量の第X因子、v)フォンヴィレブランド病の治療のための治療量のフォンヴィレブランド因子のうちの1つ以上の経口送達のための方法を提供する。また、以下でより詳細に説明する特定の実施形態では、嚥下可能なカプセルは、パイエル板のない小腸のセクションに凝固因子調製物を送達するように構成することができる。小腸の所望のセクションへのそのような標的化された送達は、IgGなどの一般的な抗体および凝固因子に対する特異的阻害剤抗体の、抑制されるかまたは最小限に抑えられる産生を含む、凝固因子に対する抑制された免疫応答をもたらす。使用において、このアプローチの実施形態は、送達された凝固因子に対する改善された長期耐性および有効性の利点を提供し、次に、阻害剤抗体を排除するための高価な治療を必要とせずに、患者の凝固障害のより良い長期制御を提供する。
【0021】
本発明はまた、血友病または他の凝固障害を有する患者を選択することと、本明細書に記載の嚥下可能なカプセルの1つ以上の実施形態を使用して、治療有効量の凝固因子または他の凝固タンパク質を患者に投与することと、を含む、凝固障害を治療するための方法をも提供する。次いで、凝固時間(例えば、プロトロンビン時間または全血凝固時間(WBCT))を、治療の有効性を決定するために当技術分野で知られている方法を使用して、測定および監視することができる。次いで、その情報を使用して、投与量(例えば、増加または減少)および/または投与レジメン(例えば、投与された凝固因子の投与頻度)の調整をすることができる。代替または追加の実施形態では、本明細書に記載の凝固因子の固体形態は、他の嚥下可能なデバイスによっても送達され得る。
【0022】
他の態様において、本発明は、カプセル、アクチュエータ、および凝固タンパク質または凝固因子調製物(例えば、1つ以上の凝固因子を含む調製物)などの治療薬調製物の実施形態を含む薬物送達デバイスを嚥下することを含む、小腸の壁および/または腹膜壁および腹膜腔などの周囲組織に治療薬を送達するための方法を提供する。アクチュエータは、pHなどの小腸の条件に応答して、小腸の壁および/または腹膜の壁などの周囲組織への治療薬調製物の送達を作動させる。特定の実施形態では、アクチュエータは、小腸の選択されたpHによって分解されるカプセル上の解放要素またはコーティングを含むことができる。要素またはコーティングは、分解されると、例えば、治療薬調製物を含み、バルーンの拡張時に、貫通し、腸壁に前進するように構成されている1つ以上の組織貫通部材に動作可能に結合されている1つ以上のバルーンの拡張によって、1つ以上の送達手段によって、治療薬調製物の送達を開始する。特定の実施形態では、バルーンまたは他の前進手段は、組織貫通部材(複数可)を腸壁を通して腹膜腔内に前進させ、そこでそれが保持されるように構成されている。組織貫通部材が腸壁または腹膜腔等の周囲組織に位置付けされると、それらは、分解して、治療薬を血流に放出する。組織貫通部材が腹膜腔内に位置付けられ、保持される特定の実施形態では、治療薬調製物を含む組織貫通部材(複数可)は、腹膜腔内の組織液によって分解されるように構成されている。
【0023】
関連する実施形態では、本発明は、凝固因子調製物又は他の治療用調製物、および送達の1つ以上の薬物動態パラメータを達成することができる、腸壁または周囲組織への送達のための関連する方法を提供する。そのようなパラメータは、例えば、絶対バイオアベイラビリティ(Fとも呼ばれ、パーセントで表される)、Tmax、T1/2、Cmax、および曲線下面積(またはAUC)のうちの1つ以上を含み得る。絶対的「バイオアベイラビリティは、静脈内(IV)用量に対する、体循環に到達する製剤からの薬物の量であり、IV用量は、100%生物学的に利用可能であると想定されている。Tmaxは、治療薬(例えば、凝固因子)が血流中のその最大濃度であるCmaxに到達する期間であり、T1/2は、血流(または体内の他の場所)中の治療薬の濃度がCmaxに到達した後、元のCmax値の半分に到達するのに必要な期間である。治療薬調製物は、小腸の壁、または腹膜壁または腹膜腔などの周囲の組織に、直接送達されるため、Tmaxは、治療薬が、体内へ、筋肉内または皮下注射などによる非血管注射される場合の、対応するTmaxより速い(例えば、短い)。様々な実施形態では、本発明の1つ以上の実施形態(嚥下可能なデバイスの実施形態など)を使用して、腸壁への、凝固因子または他の治療薬を含む治療用調製物の挿入によって達成されるTmaxは、治療薬の非血管注射の使用により達成されるTmaxの80%、50%、30%、20%またはさらには10%であり得る。本明細書で使用される場合、「約」という用語は、一般に、数値の記載された値の5%以内を指すが、いくつかの場合では、より大きくまたはより小さくなり得る。治療薬が第VIII因子などの凝固因子を含む特定の実施形態では、Tmaxは、約5~13時間の範囲であり得る。例えば、ESPEROCTの場合、Tmaxは、約5.4~9時間の範囲であり得、特定の実施形態は、約7.2時間である。他のPEG化FVIIIの場合、Tmaxは、約7.8~13時間の範囲であり得、特定の実施形態は、約10.4時間である。抗体、例えば、IgGの場合、Tmaxは、約24時間であり得、T1/2は、約40.7~128時間の範囲であり得、特定の値は、約87.7時間である。
【0024】
薬物によって、T1/2は、5~50時間の範囲であり得る。PEG化第VIII因子、または安定化された(例えば、PEGなどの安定剤と化学的に複合体化され(例えば、結合または連結され)ていることによって)他の形態の第VIII因子を含む特定の実施形態では、T1/2は、約15.7~27.1時間の範囲であり得る。ESPEROCTの場合、T1/2は、16.3~27.1の範囲であり得、特定の実施形態は、21.7であり、他のPEG化FVIIIの場合、11.25~18.75時間であり得、特定の実施形態は15時間である。さらに他の範囲および特定の値は、企図される。第VIII因子がフォンヴィレブランド因子と複合体化されている実施形態では、T1/2のさらに大きな値が企図される。
【0025】
治療用調製物が、PEG化または他の安定化形態の第VIII因子を含む様々な形態の第VIII因子などの凝固因子を含むものを含む特定の実施形態では、治療薬の絶対バイオアベイラビリティは、約11~60%の範囲であり得る。PEG化FVIIIの場合、バイオアベイラビリティは、約11~60%の範囲であり得る。さらに他の値も企図される。カルシウム、フォンヴィレブランド因子、ヘパリン、ジイソプロピルフルオロリン酸(DFP)、または他のプロテアーゼ阻害剤などの安定化賦形剤を使用する実施形態では、第VIII因子が腹膜壁を通過して血管系に入る間に安定化されるため、さらに高いレベルのバイオアベイラビリティが企図される。
【0026】
また、関連する実施形態では、治療用調製物、および小腸の壁または周囲組織へのそれらの送達のための関連する方法は、CmaxまたはTmaxを基準点として有する選択された形状を有する治療薬の血漿/血液濃度対時間プロファイル(血漿濃度-時間プロファイルまたは血漿濃度-時間曲線とも呼ばれる)を生成するように構成され得る。例えば、血漿濃度対時間プロファイルは、上昇部分および下降部分を有し得、上昇部分の間に治療薬の送達前濃度からCmaxレベルに移行するのにかかる時間(上昇時間として知られる)と、下降部分の間にCmaxレベルから送達前濃度に戻るまでにかかる時間(下降時間として知られる)との選択された比率を有する。様々な実施形態では、上昇部分と下降部分との比率は、約1対20、1対10、および1対5の範囲であり得る。安定化形態の第VIII因子(例えば、PEG化による)を含む治療用調製物の特定の実施形態では、プロファイルにおける上昇時間と下降時間との比率は、約1対5(例えば、ADYNOVATEの場合)および約1対11(例えば、ESPEROCTの場合)であり得る。IgGなどの抗体を含む治療用調製物の特定の実施形態では、プロファイルにおける上昇時間と下降時間との比率は、約1対9であり得る。
【0027】
別の態様では、本発明は、薬物または他の治療薬調製物を、小腸もしくは大腸の壁または消化管の他の器官に送達するための嚥下可能なデバイスを提供する。デバイスは、嚥下して、消化管を通過するようにサイズ設定されたカプセル、カプセルの長手方向軸を小腸の長手方向軸に整列させるためのカプセル内に位置付けられた展開可能なアライナ、治療薬を腸壁に送達するための送達機構、およびアライナまたは送達機構のうちの少なくとも1つを展開するための展開部材を含む。カプセル壁は、GI管内の液体との接触によって分解可能であるが、外側のコーティングまたは層も含み得、これは、小腸で見られるより高いpHでのみ分解し、カプセルが小腸に到達し、その時点でコーティングの分解によって薬物送達が開始される前に、下にあるカプセル壁が胃内で分解することから保護するのに役立つ。使用において、そのような材料は、小腸などの腸管の選択された部分における治療薬の標的化送達を可能にする。好適な外側コーティングは、アクリル酸(EVONIK industriesから入手可能なEUDRAGITを含む特定の例)、メタクリル酸、およびアクリル酸エチルの様々な共重合体などの様々な腸溶コーティングを含むことができる。特定の実施形態では、外側コーティングは、小腸の上部(例えば、十二指腸)または中央部分(空腸)に見られるpHで分解するように構成され得、したがって、治療薬調製物は、そのそれぞれの部分に送達され、マクロファージおよび他の免疫関連細胞を生成する集合リンパ小節であるパイエル板を含む小腸(回腸)の下部を回避する。十二指腸または空腸のpHで分解するそのようなコーティングの例には、EUDRAGITが含まれ得る。パイエル板のない小腸のある場所に治療薬を送達することにより、第VIII因子に対する阻害剤抗体などの、特定の治療薬に対する様々な抗体の生成を含むその後の免疫応答が抑制されるか、またはさもなければ最小限に抑えられる。したがって、使用において、小腸の上部、中部、または他の選択部分への治療薬のそのような制御された配置または送達は、特定の治療薬(例えば、第VIII因子または他の凝固因子)に対する患者の免疫応答を抑制することができ、その結果、静脈内または皮下注射を介して送達されるものに対して、経口的に送達される所与の治療薬の用量に対する有効性および耐性が増加する。
【0028】
カプセルの別の実施形態は、少なくとも1つのガイドチューブ、少なくとも1つのガイドチューブ内に位置付けられた1つ以上の組織貫通部材、送達部材、および作動機構を含む。組織貫通部材は、通常、中空針または他の同様の構造を含み、腸壁に選択可能な深さを貫通するための内腔および組織貫通端部を有する。様々な実施形態では、デバイスは、企図された追加の数を伴う第2および第3の組織貫通部材を含むことができる。各組織貫通部材は、同じまたは異なる薬物を含むことができる。複数の組織貫通部材を有する好ましい実施形態では、組織貫通部材は、薬物の送達中にカプセルを腸壁に固定するように、カプセルの周囲に対称的に分布させることができる。いくつかの実施形態では、組織貫通部材(例えば、組織貫通端部)の全部または一部分は、薬物調製物自体から製造することができる。これらの実施形態および関連する実施形態では、薬物調製物は、腸壁に貫通して保持されるように構成された針、ダーツ状または他の細長い構造(棘の有無にかかわらず)を有することができる。
【0029】
組織貫通部材は、小腸(または他のGI内腔)内で分解するように、様々な生分解性材料から製造することができ、したがって、この成分が腸壁に保持されるようになった場合に、組織貫通部材を腸壁から取り外すためのフェイルセーフ機構を提供することができる。そのような生分解性材料は、ポリ(グリコリド-コ-ラクチド)(PGLA)、ポリ乳酸-コ-グリコール酸(PLGA)、マルトースまたは他の糖、ポリエチレン、ポリエチレンオキシドまたは当技術分野で知られている他の生分解性ポリマーのうちの1つ以上に対応し得る。さらに、これらの実施形態および関連する実施形態では、カプセルの選択可能な部分は、デバイス全体が制御可能に小さな断片に分解することを可能にするために、そのような生分解性材料から製造することができる。そのような実施形態は、GI管を通るデバイスの通過および排泄を容易にする。特定の実施形態では、カプセルは、制御可能に分解して、選択可能なサイズおよび形状の断片を生成して、GI管の通過を容易にする生分解性材料のシームを含むことができる。シームは、プレストレスを与えるか、穿孔するか、またはその他の方法で処理して、分解を加速することができる。生分解性シームを使用して、GI管内の嚥下可能なデバイスの制御された分解を引き起こすという概念はまた、嚥下可能なカメラなどの他の嚥下可能なデバイスにも適用することができ、GI管の通過を容易にし、デバイスがGI管に詰まる可能性を低減する。
【0030】
送達部材は、薬物を、カプセルから組織貫通部材の内腔を通って腸壁に前進させるように構成されている。通常、送達部材の少なくとも一部分は、組織貫通部材の内腔内で前進可能である。送達部材は、送達部材内腔内に適合するようにサイズ設定されたピストンまたは同様の構造を有することができる。送達部材の遠位端(組織内に前進する端部)は、組織貫通部材の内腔内で薬物を前進させ、また内腔とのシールを形成するプランジャ要素を有することができる。プランジャ要素は、一体型であるか、または送達部材に取り付けられ得る。好ましくは、送達部材は、一定の、または計量された用量の薬物を腸壁に送達するように、針の内腔内で一定距離を移動するように構成されている。これは、送達部材の直径(例えば、直径を遠位に先細りにすることができる)、組織貫通部材の直径(その遠位端で狭くすることができる)の選択、止め具の使用、および/または作動機構のうちの1つ以上によって達成することができる。薬物から製造された組織貫通部材(例えば、薬物ダーツ)を有するデバイスの実施形態について、送達部材は、ダーツをカプセルから組織内に前進させるように適合されている。
【0031】
送達部材および組織貫通部材は、液体、半液体、もしくは固体形態の薬物、または3つすべての送達のために構成することができる。固体形態の薬物には、粉末またはペレットの両方が含まれ得る。半液体には、スラリーまたはペーストが含まれ得る。薬物は、カプセルの空洞内に、または液体または半液体の場合は密閉されたリザーバ内に含まれ得る。いくつかの実施形態では、カプセルは、第1の、第2の、または第3の薬物(またはそれを超える)を含むことができる。そのような薬物は、組織貫通部材の内腔(固体または粉末の場合)内に、またはカプセル本体内の別個のリザーバに含まれ得る。
【0032】
作動機構は、組織貫通部材または送達部材の少なくとも1つに結合されることができる。作動機構は、組織貫通部材を腸壁内に選択可能な距離だけ前進させるだけでなく、送達部材を前進させて薬物を送達し、次いで組織貫通部材を腸壁から引き抜くように構成されている。様々な実施形態では、作動機構は、解放要素によって解放されるように構成されている、予め組み込まれているばね機構を含むことができる。好適なばねは、コイル(円錐形状のばねを含む)および板ばねの両方を含み得、他のばね構造もまた企図される。特定の実施形態では、ばねは、円錐形状に成形され、ばねの圧縮長さが、ほぼ、いくつかのコイル(例えば、2つまたは3つ)または1つのコイルのみの厚さである点までにさえも圧縮された状態に、ばねの長さを縮小することができる。
【0033】
特定の実施形態では、作動機構は、ばねと、第1の運動変換器と、第2の運動変換器、およびトラック部材と、を含む。解放要素は、ばねに結合されており、解放要素の分解がばねを解放するように、ばねを圧縮状態に保持する。第1の運動変換器は、ばねの運動を変換して、組織貫通要素を組織に出し入れするように構成されている。第2の運動変換器は、ばねの運動を変換して、送達部材を組織貫通部材の内腔に前進させるように構成されている。運動変換器は、ばねによって押され、変換器の経路をガイドするのに役立つロッドまたは他のトラック部材に沿って進む。それらは、組織貫通部材および/または送達部材と(直接的または間接的に)係合して、所望の運動を生成する。それらは、ばねの長手方向軸に沿った運動を組織貫通部材および/または送達部材の直交運動に変換するように構成されていることが望ましいが、他の方向への変換も企図される。運動変換器は、くさび形状、台形形状、または湾曲した形状を有することができ、他の形状も企図される。特定の実施形態では、第1の運動変換器は、台形形状を有し、スロットを含むことができ、スロットは、スロット内を進む組織貫通部材上のピンと係合する。スロットは、台形形状を有することができ、台形形状は、変換器の全体的な形状を反映するか、またはそうでなければ対応し、台形の上り坂部分の間に組織貫通部材を押し、次いで下り坂部分の間にそれを引き戻すのに役立つ。一変形形態では、運動変換器のうちの一方または両方は、カムまたはカム状デバイスを含むことができ、これは、ばねによって回転し、組織貫通部材および/または送達部材と係合する。
【0034】
他の変形形態では、作動機構はまた、ソレノイドまたは圧電デバイスなどの電気機械装置/機構を含むことができる。一実施形態では、圧電デバイスは、非展開状態および展開状態を有する成形された圧電素子を含むことができる。この素子は、電圧の印加時に展開状態になり、電圧の除去時に非展開状態に戻るように構成され得る。この実施形態および関連する実施形態は、組織貫通部材を前進させること、次いでそれを引き抜くことの両方を行うように、作動機構の往復運動を可能にする。
【0035】
解放要素は、作動機構または作動機構に結合されたばねのうちの少なくとも1つに結合されている。特定の実施形態では、解放要素は、ばねを圧縮状態に保持するように、カプセル内に位置付けられたばねに結合されている。解放要素の分解は、ばねを解放して、作動機構を作動させる。多くの実施形態では、解放要素は、pHなどの小腸または大腸における化学的条件にさらされると分解するように構成された材料を含む。通常、解放要素は、小腸において選択されたpH、例えば、約7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、8.0以上にさらされると分解するように構成されている。しかしながら、それはまた、小腸の他の条件、例えば、浸透圧、小腸内容物の液体含有量、内容物の粘度、植物相、圧縮力、様々な胆汁酸塩の存在および/または濃度などに応答して分解するように構成することもできる。特定の実施形態では、解放要素は、食事(例えば、脂肪またはタンパク質を多く含む食事)の摂取後に生じるものなど、小腸内の流体中の特定の化学的条件に応答して分解するように構成することができる。
【0036】
小腸(またはGI管の他の場所)の1つ以上の条件(例えば、pH、モル浸透圧濃度、胆汁酸塩の存在等)からの解放要素の生分解は、解放要素の材料、それらの材料の架橋の量、ならびに解放要素の厚さおよび他の寸法の選択によって、達成することができる。架橋の量がより少ないか、または寸法がより薄いと、分解の速度が速くなる可能性があり、その逆も同様である。解放要素に好適な材料は、小腸内のより高いpHまたは他の条件にさらされると分解するように構成されている様々な腸管材料などの生分解性材料を含むことができる。腸管材料は、1つ以上のポリマーと共重合するか、またはそうでなければ混合して、生分解に加えて、いくつかの特定の材料特性を得ることができる。このような特性には、剛性、強度、柔軟性、および硬度が含まれるが、これらに限定されない。
【0037】
特定の実施形態では、解放要素は、フィルムまたはプラグを含むことができ、これは、ガイドチューブに適合するか、またはそうでなければそれを閉塞し、ガイドチューブ内に組織貫通部材を保持する。これらの実施形態および関連する実施形態では、組織貫通部材は、解放要素が十分に分解されると、組織貫通部材を解放し、次いで組織貫通部材がガイドチューブから飛び出して腸壁に貫通するように、ばね式作動機構に結合されている。他の実施形態では、解放要素は、組織貫通要素を所定の位置に保持するラッチとして機能するように成形することができる。これらの実施形態および関連する実施形態では、解放要素は、カプセルの外部または内部に位置特定され得る。内部の実施形態では、カプセルおよびガイドチューブは、腸液のカプセル内部への貫通を可能にして、解放要素の分解を可能にするように構成されている。
【0038】
いくつかの実施形態では、作動機構は、pHまたは他の化学センサなどのセンサによって作動させることができ、センサは、小腸内のカプセルの存在を検出し、作動機構(または機構を作動させるための、作動機構に結合された電子制御装置)に信号を送る。pHセンサの実施形態は、電極ベースのセンサ、または小腸内のpHまたは他の化学的条件にさらされると収縮または拡張するポリマーなどの機械ベースのセンサを含み得る。関連する実施形態では、拡張可能/収縮可能センサはまた、センサの拡張または収縮からの機械的運動を使用することによって、作動機構自体を含むことができる。
【0039】
デバイスが小腸(またはGI管の他の場所)にあることを検出するための別の実施形態によれば、センサは、カプセルが腸管の特定の場所内で受けている蠕動収縮の数を検出するためのひずみゲージまたは他の圧力/力センサを含むことができる。これらの実施形態では、カプセルは、蠕動収縮中に小腸によって把持されるように、望ましくはサイズ設定される。GI管内の異なる場所は、蠕動収縮の異なる数を有する。小腸は、1分あたり12~9回の収縮を有し、頻度は、腸の長さとともに減少する。したがって、1つ以上の実施形態によれば、蠕動収縮の数の検出を使用して、カプセルが小腸にあるかどうかだけでなく、腸内の相対的な場所も判定することができる。
【0040】
内部で作動された薬物送達の代替または補足として、いくつかの実施形態では、ユーザは、作動機構を外部から作動させて、RF(無線周波数)、磁気、または当技術分野で知られている他の無線信号手段によって薬物を送達し得る。これらの実施形態および関連する実施形態では、ユーザは、信号手段を含むだけでなく、デバイスが小腸またはGI管の他の場所にあるときにユーザに通知するための手段も含むハンドヘルドデバイス(例えば、ハンドヘルドRFデバイス)を使用することができる。後者の実施形態は、デバイスが小腸または他の場所にあるときにユーザに信号を送るために(例えば、センサからの入力を信号で送ることによって)、嚥下可能なデバイスにRF伝送機を含めることによって実装することができる。同じハンドヘルドデバイスは、作動機構が作動され、選択された薬物(複数可)が送達されたときにユーザにアラートするように構成することもできる。このようにして、ユーザには、薬物が送達されたことの確認が提供される。別のアプローチでは、外部音響センサを使用して、作動される作動機構に固有の音を検出することによって、例えば、組織貫通部材に動作可能に結合されたピストンおよびシリンダ機構を含むチャンバを使用する実施形態の場合に発生し得る1つ以上の固有周波数音を検出することによって、作動機構が作動したときを検出することができる。前述のアプローチのうちの1つ以上は、ユーザが、他の適切な薬物/治療薬を服用するだけでなく、他の関連する決定(例えば、糖尿病患者が食事をするかどうか、どの食品を食べるべきか)を下すことを可能にする。ハンドヘルドデバイスはまた、嚥下可能なデバイスに信号を送信して、作動機構を無効にし、したがって、薬物の送達を阻止、遅延、または加速するように構成することができる。使用において、そのような実施形態は、ユーザが介入して、他の症状および/または患者の行動(例えば、食事をすること、就寝することを決定すること、他の薬を服用すること、運動など)に基づいて、薬物の送達を阻止、遅延、または加速することを可能にする。
【0041】
ユーザはまた、カプセルを嚥下した後、選択された期間に作動機構を外部から作動させ得る。期間は、ユーザのGI管を通って小腸などの管内の特定の場所に移動する食品の通常の通過時間または通過時間の範囲に相関させることができる。外部作動は、無線制御手段(例えば、RF通信デバイスを使用)、磁気手段(例えば、ユーザが外部磁気で作動させる嚥下可能なデバイスに組み込まれた小型磁気スイッチまたは始動装置の使用による)または音響手段(例えば、超音波伝送装置および嚥下可能なデバイスに組み込まれた音響受信および/またはスイッチを介する)を含む任意の数の手段によって行うことができる。
【0042】
本発明の別の態様は、本明細書に記載された嚥下可能なデバイスの実施形態を使用して、小腸の壁(腹膜壁または腹膜腔などの周囲組織を含む)または腸管の他の壁への送達のための様々な凝固因子などの治療薬調製物を提供する。調製物は、治療上有効な用量の凝固因子または他の凝固タンパク質などの少なくとも1つの治療薬を含む。また、それは、固体、液体、または両方の組み合わせを含み得、1つ以上の医薬賦形剤を含むことができる。調製物は、嚥下可能なカプセルの実施形態に含まれ、カプセルから腸壁、腹膜、腹膜腔壁、または他の周囲組織に送達され、腸壁、または腹膜または腹膜腔などの周囲組織内で分解し、治療薬の用量を放出するための、形状および材料の粘稠度を有する。特定の実施形態では、調製物は、凝固因子または他の治療薬が臓側腹膜および/または壁側腹膜の漿膜に沿って分散されるように、腹膜または腹膜腔の流体内で分解するように構成されている。調製物はまた、小腸の壁、または腹膜(例えば、臓側腹膜)および腹膜腔などの周囲組織、または他の体の内腔における調製物の分解の速度を上昇させるか、またはそうでなければ制御するように、選択可能な表面積対体積比を有し得る。様々な実施形態では、調製物は、調製物がカプセルに含まれる第1の構成および調製物がカプセルから出て小腸の壁および/腹膜に前進する第2の構成を有する解放要素または作動機構などのアクチュエータに結合されるように構成することができる。調製物中の薬物または他の治療剤の用量は、従来の経口送達方法に必要とされる用量から漸減することができ、それにより、薬物からの潜在的な副作用を低減することができる。
【0043】
通常、必ずしもそうではないが、調製物は、カプセルから出て小腸の壁および/または腹膜(例えば、例えば、臓側腹膜)に前進するように構成されている中空針などの組織貫通部材の内腔に含まれるように成形およびそうでなければ構成されている。また、調製物自体は、小腸の壁および/もしくは腹膜、または腸管の他の内腔に前進するように構成された組織貫通部材を含み得る。組織貫通部材のそのような構成は、例えば、針、ダーツ、および他の同様の形状を含む、尖った先端を有する様々な形状を含み得る。特定の実施形態では、組織貫通部材は、尖った端部を有する様々な細長い形状を含む。それはまた、三角形、尖った端を有する正方形、尖った端を有する円錐形状、または尖った端を有する半球形状などの、尖った端を有する様々な等角形状を含み得る。
【0044】
本発明の別の態様は、嚥下可能な薬物送達デバイスの実施形態を使用して、薬物および治療薬のGI管の壁への送達のための方法を提供する。そのような方法は、治療有効量の様々な薬物および他の治療薬の送達に使用することができる。これらには、凝固因子、抗体、成長ホルモン、副甲状腺ホルモン、インスリン、インターフェロン、および他の同様の化合物など、さもなければ、胃の化学的分解のために注射が必要となるいくつかの高分子ペプチドおよびタンパク質が含まれる。本発明の実施形態によって送達され得る好適な薬物および他の治療薬には、様々な凝固因子(例えば、VIII因子)、抗体(TNF阻害クラスの抗体)、化学療法剤(例えば、インターフェロン)、抗生物質、抗ウイルス剤、インスリンおよび関連化合物、グルカゴン様ペプチド(例えば、GLP-1、エキセナチド)、副甲状腺ホルモン、成長ホルモン(例えば、IGFおよび他の成長因子)、抗発作剤、免疫抑制剤、および様々な抗マラリア剤などの抗寄生虫剤が含まれる。特定の薬物の投与量は、患者の体重、年齢、状態、または他のパラメータに応じて漸増することができる。
【0045】
本発明の様々な方法の実施形態では、薬物嚥下可能な薬物送達デバイスの実施形態は、複数の状態の治療または特定の状態の治療のために複数の薬物(例えば、HIV/AIDSの治療のためのプロテアーゼ阻害剤の混合物)を送達するために使用することができる。使用において、そのような実施形態は、患者が、特定の状態または複数の状態のために複数の薬剤を服用しなければならない必要性を放棄することを可能にする。また、そのような実施形態は、2つ以上の薬物のレジメンが、ほぼ同時に、小腸、およびそれにより血流に送達および吸収されることを確実にするための手段を提供する。化学組成、分子量などの相違により、薬物は、異なる速度で腸から腸壁を通して吸収され得、異なる薬物動態分布曲線が得られる。本発明の実施形態は、所望の薬物混合物をほぼ同時に腸壁に注射することによってこの問題に取り組む。これは次に、選択された薬物の混合物の薬物動態パラメータを(例えば、時間的に5%以内で実質的に同期することにより)改善し(例えば、異なる薬物に対して同様のT1/2を達成することによって)、それにより、薬物の選択された混合物の有効性を改善する。
【0046】
別の態様では、本発明の様々な実施形態は、哺乳動物の体内に、生物学的活性を有する凝固因子または抗体などの薬物を含む固体形状の塊を含む医薬組成物を提供し、凝固因子(または他の凝固タンパク質)の生物学的活性の少なくとも一部は、粉末などの前駆体材料から成形された塊の形成後、維持される。凝固因子の場合、生物学的活性は、1つ以上の凝固因子の活性化を促進すること(例えば、第VIII因子の場合のような第X因子活性化の促進)を含む凝固プロセスの促進または加速に対応し得る。抗体の場合、生物学的活性は、抗原への結合親和性に対応し得る。生物学的活性は、凝固因子の構造的完全性(例えば、任意の官能基の切断を有さない)または他の凝固タンパク質または他の薬物形成後(例えば、生物活性アッセイを化学アッセイに相関させることによる)に相関し得、それにより、組成レベルで、凝固因子または他の凝固タンパク質の選択されたパーセンテージ(例えば、重量ベースで)は、前駆体材料のものと比較して、形成後に維持される。通常、形状は、圧縮プロセス(例えば、圧縮成形)によって形成されるが、非圧縮成形または3D印刷などの他のプロセスも企図される。薬物は、ペプチド、凝固因子または他の凝固タンパク質、免疫グロブリンまたは他のタンパク質に対応し得、成形された塊中の薬物の生物学的活性は、圧縮前の生物学的活性の少なくとも70%、より好ましくは、圧縮前の生物学的活性の少なくとも90%、さらにより好ましくは、少なくとも95%である。これらの数値はまた、前駆体材料中のものと比較した成形された塊中に残っている薬物の重量パーセンテージにも対応し得る(例えば、生物学的活性アッセイを上記のように重量組成の化学アッセイと相関させることによって)。これらの実施形態および関連する実施形態では、成形された塊は、約1.00および1.15mg/mm、およびより好ましい実施形態では、1.02および1.06mg/mmの範囲の密度を有することができる。形状は、通常、ペレット形状を含むが、また、錠剤、円錐形状、円筒形状、立方体、球体、または他の同様の形状も有し得る。次いで、通常、ペレットまたは他の形態の成形された塊は、本明細書に記載の組織貫通部材の実施形態に挿入される。
【0047】
本発明の実施形態はまた、免疫グロブリン、凝固因子、または他の凝固タンパク質を含む成形された固体塊を形成するための方法も提供し、成形された塊は、前駆体材料の成形によって形成され、成形された塊中のペプチド、凝固因子、または他の凝固タンパク質の生物学的活性(例えば、抗原結合親和性、特異性など)の少なくとも一部分は、形成後も保持される。多くの実施形態では、成形することは、前駆体材料の圧縮によって行われ、タンパク質またはポリペプチドの生物学的活性の分解を最小限に抑えるように圧縮力が選択される。非圧縮成形および3D印刷など、他の成形方法も企図される。通常、前駆体材料は、薬物および1つ以上の賦形剤を含む粉末混合物を含む。前駆体材料はまた、液体、スラリー、またはペーストも含み得る。賦形剤は、潤滑剤、結合剤、増量剤などのうちの少なくとも1つを含み得る。成形された塊は、錠剤、マイクロ錠剤、ピル、またはスラグ形状の形態であり得る。1つ以上の実施形態によれば、形成プロセスの実施形態を使用して生成される成形された塊は、タンパク質またはペプチドの最小レベルの生物活性に相関する(成形された塊を処方するために使用される粉末の)密度または粒子粒径などの別の特性を有することができる。また、その相関する特性は、ロット間だけでなく、所与のロットの成形された塊内の選択された範囲内で一貫して維持され得る。本明細書に記載の固形塊の実施形態は、治療される状態のための任意の適切な投与の経路を介して投与される任意の適切な薬物送達システムと組み合わせて使用されるように構成することができる。そのような投与の経路には、経口、舌下、非経口、静脈内、筋肉内、経皮、心室内、心臓内、または頭蓋内が含まれ得るが、これらに限定されない。例えば、一実施形態によれば、凝固因子含有マイクロタブレット(例えば、第VII因子、第VIII因子などを含むマイクロタブレット)は経口摂取され、小腸に送達され、凝固因子は、小腸の壁に送達され、続いて腹膜および腹膜腔に入り、錠剤(複数可)は、溶解して、凝固因子を放出する。別の実施形態では、マイクロタブレットを注射するか、またはそうでなければ皮下(例えば、筋肉内)に配置し、マイクロタブレットは、溶解して、凝固因子または他の凝固タンパク質を血流に放出することができる。
【0048】
以下の番号付けされた項目は、本明細書に記載の本発明の他の実施例、態様、および実施形態を説明している。
【0049】
1.患者の凝固障害の治療のための治療用調製物であって、調製物は、固体形態で、100IU/kg体重投与量の安定化形態の第VIII因子(FVIII)または第VIII因子類似体(FVIIIA)を含み、調製物は、固体組織貫通部材として成形されており、固体組織貫通部材は、組織貫通部材への力の付与により、患者の腸壁を貫通し、経口摂取後に患者の腹膜腔に挿入されるように構成されており、組織貫通部材は、挿入後、腹膜腔内に保持され、腹膜腔の漿液中で分解されて、安定化形態のFVIIIまたはFVIIIAを血流に放出し、T1/2、Tmax、曲線下面積(AUC)、バイオアベイラビリティ、または上昇曲線部分と下降曲線部分との比率からなる群から選択される少なくとも1つの薬物動態パラメータを特徴とする血漿濃度-時間曲線を生成する、治療用調製物。
【0050】
2.T1/2は、約14~18.75時間の範囲である、項目0に記載の調製物。
【0051】
3.T1/2は、約14~16時間の範囲である、項目2に記載の調製物。
【0052】
4.T1/2は、約15時間である、項目3に記載の調製物。
【0053】
5.T1/2は、約16.25~27.13時間の範囲である、項目1に記載の調製物。
【0054】
6.T1/2は、約21~22時間の範囲である、項目5に記載の調製物。
【0055】
7.T1/2は、約21.7時間である、項目6に記載に記載の調製物。
【0056】
8.Tmaxは、約10~11時間の範囲である、項目1に記載の調製物。
【0057】
9.Tmaxは、約10.4時間である、項目8に記載の調製物。
【0058】
10.AUCは、約11~39(IU*h)/mLの範囲である、項目1に記載の調製物。
【0059】
11.AUCは、約20(IU*h)/mLである、項目10に記載の調製物。
【0060】
12.AUCは、約17~60(IU*h)/mLの範囲である、項目1に記載の調製物。
【0061】
13.AUCは、約20(IU*h)/mLである、項目12に記載の調製物。
【0062】
14.曲線の上昇部分と下降部分との比率は、約1:5である、項目1に記載の調製物。
【0063】
15.曲線の上昇部分と下降部分との比率は、約1:11である、項目1に記載の調製物。
【0064】
16.安定化形態のFVIIIまたはFVIIIAは、化学的に修飾されている、項目1に記載の調製物。
【0065】
17.安定化形態のFVIIIまたはFVIIIAは、PEG化によって修飾されている、項目16に記載の調製物。
【0066】
18.安定化形態のFVIIIまたはFVIIIAは、フォンヴィレブランド因子と化学的に複合体化されている、項目16に記載の調製物。
【0067】
19.安定化形態のFVIIIまたはFVIIIAは、Fc融合によって修飾されている、項目16に記載の調製物。
【0068】
20.安定化賦形剤をさらに含む、項目1に記載の調製物。
【0069】
21.安定化賦形剤は、カルシウム、フォンヴィレブランド因子(VWF)、ヘパリン、アルブミン、DFPのうちの少なくとも1つを含む、項目20に記載の調製物。
【0070】
22.安定化賦形剤は、第VIII因子の投与量と1:1のモル比で存在するフォンヴィレブランド因子を含む、項目20に記載の調製物。
【0071】
23.抗凝集剤をさらに含む、項目1に記載の調製物。
【0072】
24.放出されたFVIIIまたはFVIIIAに対する阻害剤抗体の産生は、FVIIIまたはFVIIIA分子の凝集の減少のため、最小限に抑えられる、項目23に記載の調製物。
【0073】
25.バイオアベイラビリティ、AUC、またはCmaxのうちの少なくとも1つは、FVIIIまたはFVIIIA分子の凝集の減少のため、増加する、項目23に記載の調製物。
【0074】
26.薬物動態パラメータのうちの少なくとも1つは、少なくとも約10%増加する、項目25に記載の調製物。
【0075】
27.抗凝集剤は、アルギニン、グルタミン酸、ロイシン、トレハロース、またはプルロニック(登録商標)F68のうちの少なくとも1つを含む、項目23に記載の調製物。
【0076】
28.抗凝集剤は、トレハロースを含み、抗凝集物とFVIIIまたはFVIIIAとの重量比は、約1:25~25:1の範囲である、項目27に記載の調製物。
【0077】
29.抗凝集剤は、アルギニン、グルタミン酸、ロイシンを含み、抗凝集物とFVIIIまたはFVIIIAとの重量比は、約1:15~15:1の範囲である、項目23に記載の調製物。
【0078】
30.抗凝集剤は、プルロニックF68を含み、抗凝集物とFVIIIまたはFVIIIAとの重量比は、約1:5の範囲にある、項目23に記載の調製物。
【0079】
31.調製物は、腹膜壁のFVIIIまたはFVIIIAに対する透過性を増強するように構成された薬を含む、項目1に記載の調製物。
【0080】
32.透過性増強剤は、ヒアルロニダーゼである、項目32に記載の調製物。
【0081】
33.ヒアルロニダーゼとFVIIIまたはFVIIIAとの重量比は、約1:50~50:1の範囲である、項目32に記載の調製物。
【0082】
34.透過性増強剤は、患者のリンパ組織へのFVIIIまたはFVIIIAの取り込みを増強する、項目32に記載の調製物。
【0083】
35.バイオアベイラビリティ、AUC、またはCmaxのうちの少なくとも1つは、腹膜壁の透過性の増加のため、増加する、項目32に記載の調製物。
【0084】
36.薬物動態パラメータのうちの少なくとも1つは、約8~12%の範囲で増加する、項目35に記載の調製物。
【0085】
37.薬物動態パラメータのうちの少なくとも1つは、少なくとも約10%増加する、項目36に記載の調製物。
【0086】
38.FVIIIまたはFVIIIAは、組換え修飾されたFVIIIまたはFVIIIAである、項目1に記載の調製物。
【0087】
39.組換え修飾されたFVIIIまたはFVIIIAは、野生型バージョンのFVIIIから修飾されている、項目38に記載の調製物。
【0088】
40.組換え修飾されたFVIIIまたはFVIIIAは、FVIIIまたはFVIIIA分子のBドメインにおける欠失を含む、項目38に記載の調製物。
【0089】
41.安定化形態のFVIIIまたはFVIIIAは、Fc融合を介して修飾されている、項目1に記載の調製物。
【0090】
42.組織貫通部材は、尖った端部を有するシャフトとして構造化されている、項目1に記載の調製物。
【0091】
43.組織貫通部材は、ダーツ状または針状の構造を有する、項目42に記載の調製物。
【0092】
44.力は、機械的力である、項目1に記載の調製物。
【0093】
45.患者の凝固障害の治療のための治療用調製物であって、調製物は、固体形態の凝固因子を含み、調製物は、組織貫通部材として成形され、組織貫通部材の表面の少なくとも一部分は、凝固促進コーティングを含み、組織貫通部材は、組織貫通部材への力の付与により、患者の腸壁を貫通し、経口摂取後に患者の腹膜腔に挿入されるように構成されており、凝固促進コーティングは、溶解して、組織貫通の部位での出血を低減または防止し、組織貫通部材は、腹膜腔内に保持され、腹膜腔の漿膜液中で分解されて、凝固因子を血流中に放出して、凝固障害を治療する、治療用調製物。
【0094】
46.凝固促進コーティングは、凝固因子を含む、項目45に記載の調製物。
【0095】
47.組織貫通部材は、尖った端部を有するシャフトとして構造化されている、項目45に記載の調製物。
【0096】
48.凝固因子は、第VIII因子または第VIII因子類似体を含む、項目45に記載の調製物。
【0097】
49.患者の凝固障害を治療するための方法であって、当該方法は、固体形態で、100IU/kg体重投与量の安定化形態の第VIII因子(FVIII)または第VIII因子類似体(FVIIIA)であって、固体投与量のFVIIIまたはFVIIIAは、組織貫通部材として成形されたものを提供することと、組織貫通部材が腹膜腔内に送達されるような組織貫通部材への力の付与により、経口摂取後、固体投与量のFVIIIまたはFVIIIAを、腸壁を通して腹膜腔内に貫通させることと、治療有効量のFVIIIまたはFVIIIAを腹膜腔内の固体投与量CFから血流に放出して、凝固障害を治療することと、を含み、FVIIIまたはFVIIIAの血流への放出は、T1/2、Tmax、Cmax、曲線下面積(AUC)、バイオアベイラビリティ、または上昇曲線部分と下降曲線部分との比率からなる群から選択される少なくとも1つの薬物動態パラメータを特徴とする血漿濃度-時間曲線を生成する、方法。
【0098】
50.T1/2は、約14~18.75時間の範囲である、項目49に記載の方法。
【0099】
51.T1/2は、約14~16時間の範囲である、項目50に記載の方法。
【0100】
52.T1/2は、約15時間である、項目51に記載の方法。
【0101】
53.T1/2は、約16.25~27.125時間の範囲である、項目49に記載の方法。
【0102】
54.T1/2は、約21~22時間の範囲である、項目53に記載の方法。
【0103】
55.T1/2は、約21.7時間である、項目54に記載の方法。
【0104】
56Tmaxは、約10~11時間の範囲である、項目49の方法。
【0105】
57.Tmaxは、約10.4時間である、項目56に記載の方法。
【0106】
58.AUCは、約11~39(IU*h)/mLの範囲である、項目49に記載の方法。
【0107】
59.AUCは、約20(IU*h)/mLである、項目58に記載の方法。
【0108】
60.AUCは、約17~60(IU*h)/mLの範囲である、項目49に記載の方法。
【0109】
61.AUCは、約20(IU*h)/mLである、項目60に記載の方法。
【0110】
62.曲線の上昇部分と下降部分との比率は、約1:5である、項目49に記載の方法。
【0111】
63.曲線の上昇部分と下降部分との比率は、約1:11である、項目49に記載の方法。
【0112】
64.安定化形態のFVIIIまたはFVIIIAは、化学的に修飾されている、項目49に記載の方法。
【0113】
65.安定化形態のFVIIIまたはFVIIIAは、PEG化によって修飾されている、項目64に記載の方法。
【0114】
66.安定化形態のFVIIIまたはFVIIIAは、フォンヴィレブランド因子と化学的に複合体化されている、項目49に記載の方法。
【0115】
67.安定化形態のFVIIIまたはFVIIIAは、Fc融合によって修飾されている、項目49に記載の方法。
【0116】
68.AUCは、約20(IU*h)/mLである、項目49に記載の方法。
【0117】
69.曲線の上昇部分と下降部分との比率は、約1:5である、項目49に記載の方法。
【0118】
70.曲線の上昇部分と下降部分との比率は、約1:11である、項目49に記載の方法。
【0119】
71.安定化形態のFVIIIまたはFVIIIAは、化学的に修飾されている、第49項の方法。
【0120】
72.安定化形態のFVIIIまたはFVIIIAは、PEG化によって修飾されている、項目71に記載の方法。
【0121】
73.安定化形態のFVIIIまたはFVIIIAは、フォンヴィレブランド因子と化学的に複合体化されている、第71項の方法。
【0122】
74.安定化形態のFVIIIまたはFVIIIAは、Fc融合によって修飾されている、第71項の方法。
【0123】
75.治療有効量のFVIIIまたはFVIIIAは、腹膜腔の漿膜液中の固体投与量のFVIIIまたはFVIIIAの分解によって、血流中に放出される、項目49に記載の方法。
【0124】
76.組織貫通部材は、腹膜腔の漿膜液中の組織貫通部材の分解の速度を高めるように構成された分解特徴を含む、項目49に記載の方法。
【0125】
77.周囲組織は、腹膜壁または腹膜腔である、項目49に記載の方法。
【0126】
78.周囲組織は、腹膜腔であり、方法は、FVIIIまたはFVIIIAを腹膜腔から血流に放出することをさらに含む、項目49に記載の方法。
【0127】
79.患者の凝固時間を監視することをさらに含む、項目49に記載の方法。
【0128】
80.患者の監視された凝固時間に対する後続の固体形態の投与量応答におけるFVIIIまたはFVIIIAの用量を調整することをさらに含む、項目79に記載の方法。
【0129】
82.凝固時間試験は、プロトロンビン時間試験を使用して、監視される、項目80に記載の方法。
【0130】
84.患者の凝固時間が閾値レベルを下回ったときに、経口摂取された凝固因子の用量を減少させることをさらに含む、項目79に記載の方法。
【0131】
85.閾値レベルは、約25~30秒の範囲である、項目84に記載の方法。
【0132】
86.小腸の一セクションに固形投与量凝固因子を送達することをさらに含み、送達された凝固因子に対する患者の免疫応答は、低下する、項目49に記載の方法。
【0133】
87.小腸の当該セクションは、パイエル板のない区画を含む、項目86に記載の方法。
【0134】
88.放出されたFVIIIまたはFVIIIAに対する阻害剤抗体の産生は、最小限に抑えられるか、または排除される、項目86に記載の方法。
【0135】
89.小腸の当該セクションは、十二指腸または空腸である、項目86に記載の方法。
【0136】
90.凝固因子に対する患者阻害剤抗体の血清力価は、凝固因子の、患者の血流への放出に応答して、約10%以下までしか増加しない、項目86に記載の方法。
【0137】
91.インターロイキン-7の血清力価は、凝固因子の、患者の血流への放出に応答して、約10%以下までしか増加しない、項目86に記載の方法。
【0138】
92.凝固因子に対する患者の免疫応答は、筋肉内注射または皮下注射による凝固因子の送達と比較して、低下する、項目49に記載の方法。
【0139】
93.凝固因子に対する患者の免疫応答は、筋肉内注射または皮下注射と比較して、約2倍~30倍の範囲の量だけ低下する、項目92に記載の方法。
【0140】
94.調製物は、抗凝集剤を含む、項目49に記載の方法。
【0141】
95.放出されたFVIIIまたはFVIIIAに対する阻害剤抗体の産生は、FVIIIまたはFVIIIA分子の凝集の減少のため、最小限に抑えられる、項目94に記載の方法。
【0142】
96.バイオアベイラビリティ、AUC、またはCmaxのうちの少なくとも1つは、FVIIIまたはF分子の凝集の減少のため、増加する、項目94に記載の方法。
【0143】
97.薬物動態パラメータのうちの少なくとも1つは、少なくとも約10%増加する、項目96に記載の方法。
【0144】
98.抗凝集剤は、アルギニン、グルタミン酸、ロイシン、トレハロース、またはプルロニックF68のうちの少なくとも1つを含む、項目96に記載の方法。
【0145】
99.調製物は、腹膜壁のFVIIIまたはFVIIIAに対する透過性を増強するように構成された薬を含む、項目49に記載の方法。
【0146】
100.透過性増強剤は、ヒアルロニダーゼである、項目99に記載の方法。
【0147】
101.透過性増強剤は、患者のリンパ組織へのFVIIIまたはFVIIIAの取り込みを増強する、項目99に記載の方法。
【0148】
102.バイオアベイラビリティ、AUC、またはCmaxのうちの少なくとも1つは、腹膜壁の透過性の増加のため、増加する、項目99に記載の方法。
【0149】
103.薬物動態パラメータのうちの少なくとも1つは、少なくとも約10%増加する、項目102に記載の方法。
【0150】
104.薬物動態パラメータのうちの少なくとも1つは、約8~12%の範囲で増加する、項目103に記載の方法。
【0151】
本発明のこれらの実施形態および他の実施形態ならびに態様のさらなる詳細は、添付の図面を参照して、以下により完全に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0152】
図1A】嚥下可能な薬物送達デバイスの一実施形態を示す側面図である。
図1B】嚥下可能な薬物送達デバイスを含むシステムの一実施形態を示す側面図である。
図1C】嚥下可能な薬物送達デバイスおよび使用説明書のセットを含むキットの一実施形態を示す側面図である。
図1D】薬物リザーバを含む嚥下可能な薬物送達デバイスの一実施形態を示す側面図である。
図2】組織貫通部材を組織に前進させるためのばね式作動機構を有する嚥下可能な薬物送達デバイスの一実施形態を例解する側面図である。
図3】第1の運動変換器を有するばね式作動機構を有する嚥下可能な薬物送達デバイスの一実施形態を例解する側面図である。
図4】第1および第2の運動変換器を有するばね式作動機構を有する嚥下可能な薬物送達デバイスの一実施形態を例解する側面図である。
図5】第1および第2の運動変換器と組織貫通部材および送達部材との係合を例解する斜視図である。
図6】単一の組織貫通部材と、組織貫通部材を前進させるための作動機構とを有する嚥下可能な薬物送達デバイスの一実施形態を例解する断面図である。
図7A】複数の組織貫通部材と、組織貫通部材を前進させるための作動機構とを有する嚥下可能な薬物送達デバイスの一実施形態を例解する断面図である。
図7B】薬剤を送達部位に送達し、送達中にデバイスを腸壁に固定するための、図7Aの実施形態の組織貫通部材の展開を例解する断面図である。
図8A】小腸における薬物送達デバイスの位置付け、および薬物を送達するための組織貫通部材の展開を例解する側面図であり、図8Aは、解放要素が無傷である、組織貫通部材の展開前の小腸内のデバイスを示す。
図8B図8Bは、解放要素が分解され、組織貫通要素が展開された、小腸内のデバイスを示す。
図8C図8Cは、組織貫通要素が引っ込められ、薬物が送達された、小腸内のデバイスを示す。
図9A】GI管内でカプセルの制御された分解を引き起こすように位置付けられた生分解性シームを有するカプセルを含む嚥下可能な薬物送達デバイスの位置実施形態を示す。
図9B】GI管でより小さな断片に分解された後の図9Aの実施形態を示す。
図10】カプセルの生分解を促進するための細孔および/または穿孔を含む生分解性シームを有するカプセルの一実施形態を示す。
図11】GI管内でのデバイスの通過、および薬物を送達するためのデバイスの動作を含む、嚥下可能な薬物送達デバイスの一実施形態の使用を例解する側面図である。
図11A】凝固因子または他の薬物を血流中に放出するための、組織貫通部材の、小腸の壁を通した腹膜腔内への送達を例解する側面図である。
図11B】凝固因子または他の薬物を血流中に放出するための、組織貫通部材の、小腸の壁を通した腹膜腔内への送達を例解する側面図である。
図11C】凝固因子または他の薬物を血流中に放出するための、組織貫通部材の、小腸の壁を通した腹膜腔内への送達を例解する側面図である。
図11D】凝固因子または他の薬物を血流中に放出するための、組織貫通部材の、小腸の壁を通した腹膜腔内への送達を例解する側面図である。
図11E】凝固因子または他の薬物を血流中に放出するための、組織貫通部材の、小腸の壁を通した腹膜腔内への送達を例解する側面図である。
図12A-12B】pH感受性生分解性コーティングでコーティングされたキャップおよび本体を含む、嚥下可能な薬物送達デバイスのためのカプセルの一実施形態を例解する側面図であり、図12Aは、組み立てられていない状態のカプセルを示し、図12Bは、組み立てられた状態を示す。
図13A】展開バルーン、アライナバルーン、送達バルーン、および各種接続チューブを含む、展開されたマルチバルーンアセンブリの実施形態を例解し、図13Aは、展開バルーンのシングルドーム構成のためのアセンブリの一実施形態を示す。
図13B図13Bは、展開バルーンのデュアルドーム構成のためのアセンブリの一実施形態を示す。
図13C】アライナバルーンを含む本明細書に記載のバルーンの1つ以上の実施形態に使用することができる入れ子になったバルーン構成の実施形態を例解する斜視図である。
図14A】多重区画展開バルーンの実施形態を例解する側面図であり、図14Aは、分離弁が閉塞された非膨張状態のバルーンを示す。
図14B図14Bは、弁が開口され、化学反応物が混合されたバルーンを示す。
図14C図14Cは、膨張状態のバルーンを示す。
図15A】複数のバルーンアセンブリの折り畳みのための方法を例解する側面図であり、各図の折り畳み構成は、展開バルーンのシングルドーム構成およびデュアルドーム構成の両方に適用される。
図15B】複数のバルーンアセンブリの折り畳みのための方法を例解する側面図であり、各図の折り畳み構成は、展開バルーンのシングルドーム構成およびデュアルドーム構成の両方に適用される。
図15C】複数のバルーンアセンブリの折り畳みのための方法を例解する側面図であり、各図の折り畳み構成は、展開バルーンのシングルドーム構成およびデュアルドーム構成の両方に適用されるが、図15Cは、デュアルドーム構成に特有の折り畳みステップに関する。
図15D】複数のバルーンアセンブリの折り畳みのための方法を例解する側面図であり、各図の折り畳み構成は、展開バルーンのシングルドーム構成およびデュアルドーム構成の両方に適用されるが、図15Dは、デュアルドーム構成に特有の最終折り畳みステップに関する。
図15E】複数のバルーンアセンブリの折り畳みのための方法を例解する側面図であり、各図の折り畳み構成は、展開バルーンのシングルドーム構成およびデュアルドーム構成の両方に適用されるが、図15Eは、シングルドーム構成に特有の折り畳みステップに関する。
図15F】複数のバルーンアセンブリの折り畳みのための方法を例解する側面図であり、各図の折り畳み構成は、展開バルーンのシングルドーム構成およびデュアルドーム構成の両方に適用されるが、図15Fおよび15Gは、シングルドーム構成に特有の最終折り畳みステップに関する直交図である。
図15G】複数のバルーンアセンブリの折り畳みのための方法を例解する側面図であり、各図の折り畳み構成は、展開バルーンのシングルドーム構成およびデュアルドーム構成の両方に適用されるが、図15Fおよび15Gは、シングルドーム構成に特有の最終折り畳みステップに関する直交図である。
図16A】取り付けられた送達アセンブリを備えた最終的に折り畳まれたマルチバルーンアセンブリの実施形態を例解する直交図である。
図16B】取り付けられた送達アセンブリを備えた最終的に折り畳まれたマルチバルーンアセンブリの実施形態を例解する直交図である。
図17A】カプセルに挿入された最終的に折り畳まれたマルチバルーンアセンブリの実施形態を例解する直交透視図である。
図17B】カプセルに挿入された最終的に折り畳まれたマルチバルーンアセンブリの実施形態を例解する直交透視図である。
図18A】組織貫通部材の一実施形態の側面図である。
図18B】組織保持特徴の配置を例解する組織貫通部材の一実施形態の底面図である。
図18C】トロカール先端および逆テーパーシャフトを有する組織貫通部材の一実施形態の側面図である。
図18D】別個の薬物含有セクションを有する組織貫通部材の一実施形態の側面図である。
図18E-18F】成形された薬物含有セクションを有する組織貫通部材の一実施形態のアセンブリを示す側面図である。図18Eは、組み立て前の組織貫通部材および成形された薬物セクションを示し、図18Fは、組み立て後を示す。
図18G】組織液中の組織貫通部材の分解および/または溶解を増強するための分解/溶解特徴を有する組織貫通部材の実施形態を例解し、図18Gは、組織貫通部材を部分的または完全に通り抜ける1つ以上の開口の形態の分解/溶解特徴を例解する斜視図である。
図18H】組織貫通部材の表面上のもう1つの溝またはチャネルの形態の分解/溶解特徴を例解する側面図であり、図18Hはまた、組織貫通部材が貫通する組織部位での出血を迅速に溶解および防止または低減するように、その表面の少なくとも一部分に凝固因子のコーティングが配置された組織貫通部材の実施形態も例解する。
図18I】組織貫通部材の表面上のもう1つの溝またはチャネルの形態の分解/溶解特徴を例解する断面図である。
図19】送達アセンブリの実施形態を組み立てるために使用される構成要素およびステップの各種の図を提供する。
図20A】腸壁に薬剤を送達するための嚥下可能なデバイスの動作の方法を例解する各種の図を提供する。
図20B】腸壁に薬剤を送達するための嚥下可能なデバイスの動作の方法を例解する各種の図を提供する。
図20C】腸壁に薬剤を送達するための嚥下可能なデバイスの動作の方法を例解する各種の図を提供する。
図20D】腸壁に薬剤を送達するための嚥下可能なデバイスの動作の方法を例解する各種の図を提供する。
図20E】腸壁に薬剤を送達するための嚥下可能なデバイスの動作の方法を例解する各種の図を提供する。
図20F】腸壁に薬剤を送達するための嚥下可能なデバイスの動作の方法を例解する各種の図を提供する。
図20G】腸壁に薬剤を送達するための嚥下可能なデバイスの動作の方法を例解する各種の図を提供する。
図20H】腸壁に薬剤を送達するための嚥下可能なデバイスの動作の方法を例解する各種の図を提供する。
図20I】腸壁に薬剤を送達するための嚥下可能なデバイスの動作の方法を例解する各種の図を提供する。
図21】本明細書に記載の嚥下可能なカプセルの実施形態を使用した、治療薬の送達のための、薬物動態パラメータおよび血漿濃度-時間曲線(血漿濃度-時間プロファイルまたは血漿濃度-時間曲線とも呼ばれる)の形状を例解する、血漿濃度-時間のグラフである。
図22】本明細書に記載の嚥下可能なデバイスの実施形態を使用した、PEG化FVIII(100IU/kg体重)の送達のための予測血漿濃度-時間プロファイルである。
図23】本明細書に記載の嚥下可能なカプセルの実施形態を使用した、ESPEROCT(100IU/kg体重)の送達のための予測血漿濃度-時間プロファイルである。
図24A】嚥下可能なカプセルの実施形態により毎日(図24B)および従来の手段を使用した注射により毎月(図24A)送達されるアリロクマブの予測血漿濃度-時間プロファイルである。
図24B】嚥下可能なカプセルの実施形態により毎日(図24B)および従来の手段を使用した注射により毎月(図24A)送達されるアリロクマブの予測血漿濃度-時間プロファイルである。
図25A】30IU/kg体重の投与量でのIV送達によって達成された、FVIII活性対時間と比較した、150IU/kg体重および300IU/kg体重の投与量でのPEG化FVIIIの腹腔内(IP)送達についての、FVIII活性対時間のプロットである。
図25B図25Aの丸で囲んだ領域の拡大図である。
図26A】0日目で300IU/kg(図26A)、10日目で150IU/kg(図26B)の投与量でのIP送達についての、および5日目で30IU/kg(図26C)の投与量でのIV送達についての、PEG化FVIII濃度およびPEG化FVIII活性対時間のプロットである。
図26B】0日目で300IU/kg(図26A)、10日目で150IU/kg(図26B)の投与量でのIP送達についての、および5日目で30IU/kg(図26C)の投与量でのIV送達についての、PEG化FVIII濃度およびPEG化FVIII活性対時間のプロットである。
図26C】0日目で300IU/kg(図26A)、10日目で150IU/kg(図26B)の投与量でのIP送達についての、および5日目で30IU/kg(図26C)の投与量でのIV送達についての、PEG化FVIII濃度およびPEG化FVIII活性対時間のプロットである。
図27A】150IU/kgおよび300IU/kgの投与量でのIP送達についての、および30IU/kgの投与量でのIV送達経路についての、PEG化FVIII濃度対時間のプロットである。
図27B図27Aの丸で囲んだ領域の拡大図である。
図28A】150IU/kgおよび300IU/kgの投与量でのPEG化FVIIIのIP送達についての、および30IU/kgの投与量でのIV送達経路についての、全血凝固時間(WBCT)対時間のプロットである。
図28B図28Aの丸で囲んだ領域の拡大図である。
図29】150IU/kgおよび300IU/kgのIP投与量でのPEG化FVIIIのIP送達についての、および30IU/kgの投与量でのIV送達経路についての、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)対時間のプロットである。
図30A】150IU/kgおよび300IU/kgのIP投与量での、および30IU/kgの投与量でのIV送達経路についての活性化部分トロンボプラスチン時間(PD)およびPEG化FVIII活性(PK)のPD-PKプロットである。
図30B】150IU/kgおよび300IU/kgのIP投与量での、および30IU/kgの投与量でのIV送達経路についての活性化部分トロンボプラスチン時間(PD)およびPEG化FVIII活性(PK)のPD-PKプロットである。
図30C】150IU/kgおよび300IU/kgのIP投与量での、および30IU/kgの投与量でのIV送達経路についての活性化部分トロンボプラスチン時間(PD)およびPEG化FVIII活性(PK)のPD-PKプロットである。
図31】免疫原性のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0153】
本発明の実施形態は、体内の様々な場所に薬剤を送達するためのデバイス、システム、および方法、ならびに薬剤を含む治療用組成物を提供する。本明細書で使用される場合、「薬剤」という用語は、もう1つの薬物または他の治療薬、ならびに1つ以上の医薬賦形剤を含むことができる任意の形態の医薬調製物を指す。多くの実施形態は、小腸の壁内を含むGI管内に薬剤を送達するための嚥下可能なデバイスを提供する。特定の実施形態は、凝固障害の治療のための凝固因子などの薬剤を、小腸および/もしくは腹膜および/もしくは腹膜腔または他のGI器官の壁に送達するためのカプセルなどの嚥下可能なデバイスを提供する。本明細書で使用される場合、「GI管」は、食道、胃、小腸、大腸、および肛門を指し、「腸管」は、小腸および大腸を指す。また、本明細書で使用される場合、「腹膜」という用語は、臓側腹膜および壁側腹膜のうちの一方または両方を指し、腹膜壁という用語と交換可能である。さらに、本明細書で使用される場合、腹膜腔という用語は、壁側腹膜と臓側腹膜との間の空間を指す。また、本明細書で使用される場合、「約」という用語は、パラメータ、変数、寸法など(例えば、T1/2、max、Cmaxなどの薬物動態パラメータ)の所与の記載された数値の10%以内、より好ましくは、必然的ではあるが、5%以内を意味する。
【0154】
ここで図1~11を参照すると、小腸の壁および/または腹膜壁もしくは腹膜腔などの腸管内の送達部位DSへの薬剤100の送達のためのデバイス10の実施形態は、少なくとも1つのガイドチューブ30、少なくとも1つのガイドチューブ内に位置付けられたか、またはそうでなければ前進可能な1つ以上の組織貫通部材40、送達部材50、作動機構60、および解放要素70を含むカプセル20を含む。本明細書では調製物100としても記載される薬剤100は、通常、少なくとも1つの薬物または治療薬101を含み、当技術分野で知られている1つ以上の医薬賦形剤を含み得る。集合的に、送達部材50および機構60のうちの1つ以上は、腸管の壁への薬剤100の送達のための手段を含み得る。本明細書で企図される他の送達手段は、1つ以上の拡張可能なバルーン(例えば、送達バルーン172)または本明細書に記載される他の拡張可能なデバイス/部材を含む。
【0155】
デバイス10は、液体、半液体、もしくは固体形態の薬剤100、または3つすべての送達のために構成することができる。固体形態の薬物/調製物100は、粉末およびペレットの両方を含み得る。半液体形態は、スラリーまたはペーストを含み得る。形態がどうであれ、調製物100は、望ましくは、薬剤が、デバイスから出て腸壁(またはGI管内の他の内腔壁)に前進し、次いで腸壁で分解して、様々な実施形態では、血友病または本明細書に記載の他の凝固障害の治療のための1つ以上の凝固因子に対応し得る、薬物または他の治療薬101を放出することが可能である形状および材料の粘稠度を有する。例えば、血友病Aの治療のための第VIII因子および血友病Bの治療のための第IX因子である。調製物の材料の粘稠度は、(体液中の)調製物の硬度、多孔性、および溶解性のうち少なくとも1つならびに腸壁を通って腹膜腔内に貫通するための組織貫通端部を有する形状を含み得る。材料の粘稠度は、以下、すなわち、i)調製物を作るために使用される圧縮力、ii)当技術分野で知られている1つ以上の医薬崩壊剤の使用、iii)他の医薬賦形剤の使用、iv)調製物(例えば、微粉粒子)の粒径および分布、v)当技術分野で知られている微粉化および他の粒子形成方法の使用のうちの1つ以上によって達成することができる。調製物100に好適な形状は、円筒形状、立方体状、長方形状、円錐形状、球形状、半球形状、およびそれらの組み合わせを含むことができる。また、形状は、調製物100の特定の表面積および体積、ならびにそれにより2つの間の比率を定義するように選択することができる。次に、表面積と体積との比率を使用して、GI管内の腸または他の内腔壁内の選択された分解の速度を達成することができる。より大きな比率(例えば、単位体積あたりのより大きな表面積)を使用して、より速い分解の速度を達成することができ、逆もまた同様である。特定の実施形態では、表面積対体積比は、約1:1~100:1の範囲であり得、特定の実施形態は、2:1、5:1、20:1、25:1、50:1、および75:1である(約5%以内である)。調製物/薬剤100は、通常、組織貫通部材40の内腔44内に事前に詰められるが、カプセル20の内部24内の別の場所に、または液体または半液体の場合には、密閉型リザーバ27内の別の場所に含まれ得る。薬剤は、内腔に適合するように事前に成形するか、または例えば粉末の形態で詰めることができる。通常、デバイス10は、薬剤100の一部として単一の薬物101を送達するように構成されるであろう。しかしながら、いくつかの実施形態では、デバイス10は、単一または複数の薬剤100に調合することができる第1の第2の薬物、または第3の薬物を含む複数の薬物101の送達のために構成することができる。複数の薬剤/薬物を有する実施形態について、薬剤は、別個の組織貫通部材40内、またはカプセル20内の別個の区画またはリザーバ27内に含まれ得る。別の実施形態では、第1の薬物101を含む第1の用量102の薬剤100を、貫通部材(複数可)40に詰めることができ、第2の用量103の薬剤100(同じまたは異なる薬物101を含む)を、図1Bの実施形態に示されるようなカプセルの表面25にコーティングすることができる。薬剤の2つの用量102および103における薬物101は、同じであっても異なってもよい。このようにして、同じまたは異なる薬物の二峰性の薬物動態学的放出を達成することができる。第2の用量103の薬剤100は、それが小腸で放出されることを確実にし、薬剤100の時間放出も達成するために、腸溶コーティング104を有することができる。腸溶コーティング104は、本明細書に記載されているか、または当技術分野で知られている1つ以上の腸溶コーティングを含むことができる。
【0156】
小腸の壁および/もしくは腹膜壁またはGI管内の他の場所への薬剤100の送達のためのシステム11は、選択された状態または複数の状態の治療のための1つ以上の薬剤100を含むデバイス10を含み得る。いくつかの実施形態では、システムは、図1Bの実施形態に示されるように、デバイス10と通信するための、本明細書に記載されるハンドヘルドデバイス13を含み得る。システム11はまた、図1Cの実施形態に示されるように、パッケージ12にパッケージされた、システム11および使用説明書15のセットを含むキット14としても構成され得る。説明書は、食事の摂取、または血中グルコース、コレステロールなどの生理学的測定などの1つ以上のイベントに関してデバイス10をいつ服用するかを患者に示すことができる。そのような実施形態では、キット14は、治療される状態に応じて、選択された投与期間、例えば、1日、1週間、または複数週間の薬剤100のレジメンを含む複数のデバイス10を含むことができる。
【0157】
カプセル20は、嚥下して、腸管を通過するようにサイズ設定される。サイズは、送達される薬物の量、ならびに患者の体重および成人か小児かの用途に応じて調整することもできる。カプセル20は、ガイドチューブ30のためのサイズの1つ以上の開口26を有する内部容積24および外面25を含む。デバイス10の他の構成要素(例えば、作動機構など)に加えて、内部容積は、1つ以上の区画またはリザーバ27を含むことができる。カプセル20の1つ以上の部分は、好ましい実施形態ではPLGAを含むことができる様々な生分解性ポリマーを含む、当技術分野で知られている様々な生体適合性ポリマーから製造することができる。他の好適な生分解性材料には、本明細書に記載の様々な腸溶性材料、ならびにラクチド、グリコリド、乳酸、グリコール酸、パラジオキサノン、カプロラクトン、トリメチレンカーボネート、カプロラクトン、それらの混合物および共重合体が含まれる。本明細書でさらに詳細に説明されるように、様々な実施形態では、カプセル20は、腸管をより容易に通過するより小さな断片23に制御可能に分解するように、生分解性材料のシーム22を含むことができる。さらに、様々な実施形態では、カプセルは、透視法、超音波または他の医療画像診断法を使用してデバイスの位置特定のための様々な放射線不透過性またはエコー源性材料を含むことができる。特定の実施形態では、カプセルの全部または一部分は、図1Aおよび1Bの実施形態に示されるように、放射線不透過性/エコー源性マーカー20mを含むことができる。使用において、そのような材料は、GI管内のデバイス10の位置特定を可能にするだけでなく、GI管を通るデバイスの通過時間の判定も可能にする。
【0158】
好ましい実施形態では、組織貫通部材40は、小腸の壁および/もしくは腹膜壁またはGI管内の他の場所などの組織への部材40の前進を案内および支持するのに役立つガイドチューブ30内に位置付けられる。組織貫通部材40は、通常、中空針または他の同様の構造を含み、腸壁IWに選択可能な深さを貫通するための内腔44および組織貫通端部45を有する。部材40はまた、本明細書に記載の運動変換器90との係合のためのピン41を含み得る。貫通の深さは、部材40の長さ、本明細書に記載の運動変換器90の構成、ならびに一実施形態では、本明細書に記載のピン41に対応し得る部材40上の止め具またはフランジ40sの配置によって制御することができる。薬剤100は、通常、内腔44を介して組織に送達される。多くの実施形態では、内腔44には、送達部材50または他の前進手段を使用して内腔から出て前進する(例えば、部材40の折り畳み可能な実施形態に付与される力によって)所望の薬剤100が事前に詰められている。別の方法として、薬剤100は、カプセル20内の別の場所/区画から内腔44に前進することができる。いくつかの実施形態では、組織貫通部材40の全部または一部分は、薬剤100自体(例えば、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、または他の凝固タンパク質などの凝固因子)から製造することができる。これらの実施形態および関連する実施形態では、薬剤は、挿入後、腸壁(例えば、小腸の壁)または腹膜壁または腹膜腔などの周囲組織に貫通して保持されるように構成された、尖った端部を備える針もしくはダーツ状の構造(棘の有無にかかわらず)または細長い構造を有することができる。ダーツは、薬剤、用量、および腸壁への所望の貫通の深さに応じて、サイズおよび形状を決定することができる。薬剤100は、製薬分野で知られている様々な圧縮成形方法を使用して、ダーツ、ペレット、または他の形状に形成することができる。
【0159】
様々な実施形態では、デバイス10は、図7Aおよび7Bの実施形態に示されるように、第2の42組織貫通部材および第3の43組織貫通部材40を含むことができ、数の追加が企図される。各組織貫通部材40は、同じまたは異なる薬剤100を送達するために使用することができる。好ましい実施形態では、組織貫通部材40は、薬剤100の送達中にカプセルを腸壁IWに固定するように、カプセル20の周囲21の周りに実質的に対称的に分布させることができる。そのような方式でカプセル20を固定することは、薬剤の送達中に発生する蠕動収縮によってカプセルが変位または移動する可能性を低減する。特定の実施形態では、固定力の量は、小腸の蠕動収縮中に付与される通常の力に調整することができる。固定することは、湾曲または弓形の形状を有するように組織貫通部材40のいくつかまたはすべてを構成することによってさらに容易にすることができる。
【0160】
送達部材50は、薬剤100を組織貫通部材内腔44を通って腸壁IWに前進させるように構成されている。それにより、送達部材50の少なくとも一部分は、組織貫通部材内腔44内で前進可能であり、それにより、部材50は、送達部材内腔44内に適合するように構成されたサイズおよび形状(例えば、ピストン状の形状)を有する。
【0161】
いくつかの実施形態では、送達部材の遠位端50d(組織内に前進する端部)は、組織貫通部材内腔44内で薬剤を前進させ、また内腔とのシールを形成するプランジャ要素51を有することができる。プランジャ要素51は、一体型であるか、または送達部材50に取り付けられ得る。好ましくは、送達部材50は、一定の、または計量された用量の薬物を腸壁IWに送達するように、針の内腔44内で一定距離を移動するように構成されている。これは、送達部材の直径(例えば、直径を遠位にテーパー状にすることができる)、組織貫通部材の直径(その遠位端で狭くすることができる)の選択、止め具の使用、および/または作動機構のうちの1つ以上によって達成することができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、部材50のストロークまたは移動距離は、GI管内の1つ以上の感知された条件などの様々な要因に応答して、その場で調整することができる。その場の調整は、作動機構60の電気機械的実施形態に結合された論理リソース29(制御装置29cを含む)の使用によって達成することができる。これにより、可変用量の薬剤、および/または薬剤が腸壁に注射される距離の変動が可能になる。
【0162】
作動機構60は、組織貫通部材40または送達部材50のうちの少なくとも1つに結合することができる。作動機構は、組織貫通部材40を腸壁IW内に選択可能な距離だけ前進させるとともに、送達部材を前進させて薬剤100を送達し、次いで組織貫通部材を腸壁から引き抜くように構成されている。様々な実施形態では、作動機構60は、解放要素70によって解放されるように構成されているばね式機構を含むことができる。好適なばね80は、コイル(円錐形状のばねを含む)および板ばねの両方を含み得、他のばね構造もまた企図される。特定の実施形態では、ばね80は、実質的に円錐形状に成形され、ばねの圧縮長さが、ほぼ、いくつかのコイル(例えば、2つまたは3つ)または1つのコイルのみの厚さである点までにさえも圧縮された状態で、ばねの長さを縮小することができる。
【0163】
特定の実施形態では、作動機構60は、図2、4、および8A~8Cの実施形態に示されるように、ばね80、第1の運動変換器90および第2の運動変換器94、ならびにトラック部材98を含むことができる。解放要素70は、ばね80に結合されて、解放要素の分解がばねを解放するように、ばねを圧縮状態に保持する。ばね80は、ラッチまたは他の接続要素81によって解放要素70に結合され得る。第1の運動変換器90は、ばね80の運動を変換して、腸壁または他の組織の内外に組織貫通部材40を前進および後退させるように構成されている。第2の運動変換器94は、ばね80の運動を変換して、送達部材50を組織貫通部材内腔44に前進させるように構成されている。運動変換器90および94は、ばねによって押され、変換器90のトラック部材内腔99に適合するロッドまたは他のトラック部材98に沿って進む。トラック部材98は、変換器90の経路を案内するのに役立つ。変換器90および94は、組織貫通部材40および/または送達部材50と(直接的または間接的に)係合して、所望の運動を生成する。それらは、ばね80の長手方向軸に沿った動きを組織貫通部材40および/または送達部材50の直交運動に変換するように構成された形状および他の特徴を有するが、他の方向への変換も企図される。運動変換器は、くさび形状、台形形状、または湾曲した形状を有することができ、他の形状も企図される。特定の実施形態では、第1の運動変換器90は、台形形状90tを有し、図2、3、および4の実施形態に示されるように、スロット93を含むことができ、スロットは、スロット内を進む組織貫通部材上のピン41と係合する。スロット93はまた、変換器90の全体的な形状を反映するか、またはそうでなければそれに対応する台形の形状93tを有することができる。スロット93は、台形の上り坂部分91の間に組織貫通部材40を押し、次いで下り坂部分92の間にそれを引き戻すのに役立つ。一変形形態では、運動変換器90および94のうちの一方または両方は、カムまたはカム状のデバイス(図示せず)を含むことができる。カムは、組織貫通および/または送達部材40および50と係合するように、ばね80によって回転させることができる。運動変換器90および94を含む、機構60のうちの1つ以上の構成要素(ならびにデバイス10の他の構成要素)は、選択された量の小型化がカプセル10内に収まることを可能にするために、当技術分野で知られている様々なMEMSベースの方法を使用して製造することができる。また、本明細書に記載されているように、それらは、当技術分野で知られている様々な生分解性材料から形成することができる。
【0164】
他の変形形態では、作動機構60はまた、電気機械デバイス/ソレノイドまたは圧電デバイスなどの機構を含むことができる。一実施形態では、機構60で使用される圧電デバイスは、非展開状態および展開状態を有する成形された圧電素子を含むことができる。この素子は、電圧の印加時に展開状態になり、電圧の除去または電圧の他の変化時に非展開状態に戻るように構成することができる。この実施形態および関連する実施形態は、組織貫通部材を前進させること、次いでそれを引き抜くことの両方を行うように、作動機構60の往復運動を可能にする。圧電素子の電圧は、電池、またはカプセル周囲の小腸の蠕動収縮によるカプセル20の圧縮から生じるような機械的変形によって電圧を生成する圧電ベースのエネルギー変換器を使用して、生成することができる。圧電ベースのエネルギー変換器の詳細な説明は、米国特許出願第12/556,524号に記載されており、すべての目的のために参照により本明細書に完全に組み込まれる。一実施形態では、組織貫通部材40の展開は、実際には、圧電素子に電圧を生成するための機械的エネルギーを提供する小腸の蠕動収縮からトリガすることができる。
【0165】
解放要素70は、通常、作動機構60および/または作動機構に結合されたばねに結合されているが、他の構成も企図される。好ましい実施形態では、解放要素70は、図2の実施形態に示されるように、ばねを圧縮状態85に保持するように、カプセル20内に位置付けられたばね80に結合されている。解放要素70の分解は、ばね80を解放して、作動機構60を作動させる。したがって、解放要素70は、このように、アクチュエータ70aとして機能することができる(アクチュエータ70aはまた、ばね80および機構60の他の要素を含み得る)。以下でさらに説明するように、解放要素70およびアクチュエータ70aは、治療薬調製物100がカプセル20内に含まれる第1の構成と、治療薬調製物がカプセルから小腸の壁および/または腹膜壁もしくは腹膜腔または腸管の他の内腔壁に前進する第2の構成と、を有する。
【0166】
多くの実施形態では、解放要素70は、pHなどの小腸または大腸における化学的条件にさらされると分解するように構成された材料を含む。通常、解放要素70は、小腸において選択されたpH、例えば、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、8.0以上にさらされると分解するように構成されている。解放要素はまた、例えば、7.0~7.5などの特定の範囲のpH内で分解するように構成することができる。特定の実施形態では、解放要素70が分解するpH(本明細書では分解pHとして定義される)は、選択されたpHに対応する小腸内の場所で薬物を放出するように送達される特定の薬物に対して選択され得る。さらに、複数の薬剤100を有するデバイス10の実施形態について、デバイスは、第1のpHで分解するように構成された第1の解放要素70(第1の薬物を送達するための作動機構に結合された)、および第2のpHで分解するように構成された第2の解放要素70(第2の薬物を送達するための作動機構に結合された)を含むことができる(様々な数の薬物に対して追加の数の解放要素が企図される)。
【0167】
解放要素70はまた、小腸(または他のGI場所)の他の条件に応答して分解するように構成することができる。特定の実施形態では、解放要素70は、食事(例えば、脂肪、デンプン、またはタンパク質を含む食事)の摂取後に生じるものなど、小腸内の流体中の特定の化学的条件に応答して分解するように構成することができる。このようにして、薬剤100の放出は、食事の消化と実質的に同期させるか、さもなければタイミングを合わせることができる。
【0168】
解放要素70の生分解のために様々なアプローチが企図される。特定の実施形態では、小腸(またはGI管の他の場所)の1つ以上の条件からの解放要素70の生分解は、以下のアプローチ、すなわち、i)解放要素の材料の選択、ii)それらの材料の架橋の量、ならびにiii)解放要素の厚さおよび他の寸法のうちの1つ以上によって達成することができる。架橋の量がより少ないか、または寸法がより薄いと、分解の速度が速くなる可能性があり、その逆も同様である。解放要素に好適な材料は、腸内のより高いpHにさらされると分解するように構成されている様々な腸管材料などの生分解性材料を含むことができる。好適な腸溶性材料には、以下、すなわち、酢酸フタル酸セルロース、酢酸トリメリテートセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、酢酸フタル酸ポリビニル、カルボキシメチルエチルセルロース、共重合メタクリル酸/メタクリル酸メチルエステル、ならびに当技術分野で知られている他の腸溶材料が含まれるが、これらに限定されない。選択された腸管材料は、1つ以上の他のポリマーと共重合するか、またはそうでなければ組み合わせて、生分解に加えて、いくつかの他の特定の材料特性を得ることができる。このような特性には、剛性、強度、柔軟性、および硬度が含まれるが、これらに限定されない。
【0169】
代替の実施形態では、解放要素70は、ガイドチューブ30に適合するか、またはそうでなければそれを閉塞し、ガイドチューブ内に組織貫通部材40を保持するフィルムまたはプラグ70pを含むことができる。これらの実施形態および関連する実施形態では、組織貫通部材40は、解放要素が十分に分解されると、組織貫通部材を解放し、次いで組織貫通部材がガイドチューブから飛び出して、腸壁に貫通するように、ばね式作動機構に結合されている。さらに他の実施形態では、解放要素70は、組織貫通部材40を所定の位置に保持するラッチとして機能するように成形することができる。これらの実施形態および関連する実施形態では、解放要素は、カプセル20の外部または内部に位置特定され得る。後者の場合、カプセル20および/またはガイドチューブ30は、腸液のカプセル内部への貫通を可能にして、解放要素の分解を可能にするように構成することができる。
【0170】
いくつかの実施形態では、作動機構60は、小腸内のカプセルの存在を検出するpHセンサ68または他の化学センサなどのセンサ67によって作動することができる。次いで、センサ67は、作動機構60、または機構を作動させるための、作動機構60に結合された電子制御装置29cに信号を送信することができる。pHセンサ68の実施形態は、電極ベースのセンサを含み得るか、またはそれは、小腸内の選択されたpHまたは他の化学的条件にさらされると収縮または拡張するポリマーなどの機械ベースのセンサであり得る。関連する実施形態では、拡張可能/収縮可能センサ67はまた、センサの拡張または収縮からの機械的運動を使用することによって、作動機構60自体を含むことができる。
【0171】
デバイスが小腸(またはGI管の他の場所)にあることを検出するための別の実施形態によれば、センサ67は、カプセル20が腸管の特定の場所内で受けている蠕動収縮の数を検出するためのひずみゲージなどの圧力/力センサを含むことができる。そのような実施形態では、カプセル20は、蠕動収縮中に小腸によって把持されるように、望ましくはサイズ設定される。GI管内の異なる場所は、蠕動収縮の異なる数を有する。小腸は、1分あたり12~9回の収縮を有し、頻度は、腸の長さとともに減少する。したがって、1つ以上の実施形態によれば、蠕動収縮の数の検出を使用して、カプセル20が小腸にあるかどうかだけでなく、腸内の相対的な場所も判定することができる。使用において、これらの実施形態および関連する実施形態は、小腸の特定の位置での薬剤100の放出を可能にする。
【0172】
内部で作動された薬物送達の代替または補足として(例えば、解放要素および/またはセンサを使用して)、いくつかの実施形態では、ユーザは、作動機構60を外部から作動させて、RF、磁気、または当技術分野で知られている他の無線信号手段によって薬剤100を送達し得る。これらの実施形態および関連する実施形態では、ユーザは、図1Bの実施形態に示されるようなハンドヘルド通信デバイス13(例えば、携帯電話などのハンドヘルドRFデバイス)を使用して、デバイス10からの受信信号17を送信することができる。そのような実施形態では、嚥下可能なデバイスは、RFトランシーバチップまたは他の同様の通信デバイス/回路などの伝送機28を含み得る。ハンドヘルドデバイス13は、信号手段を含むだけでなく、デバイス10が小腸またはGI管の他の場所にあるときにユーザに通知するための手段も含み得る。後者の実施形態は、デバイスが小腸または他の場所にあるときを検出することを信号で送り、それをユーザに信号を送るために(例えば、センサからの入力を信号を送ることによって)、伝送機28に結合された論理リソース29(例えば、プロセッサ29)を使用して実装することができる。論理リソース29は、プロセスの1つ以上の側面を制御するための制御装置29c(ハードウェアまたはソフトウェアのいずれか)を含み得る。同じハンドヘルドデバイスはまた、作動機構60が作動され、選択された薬剤100が送達されたときにユーザに警告するように構成することもできる(例えば、プロセッサ29および伝送機28を使用して)。このようにして、ユーザには、薬剤100が送達されたことの確認が提供される。これは、ユーザが、他の適切な薬物/治療薬を服用するだけでなく、他の関連する決定(例えば、糖尿病患者が食事をするかどうか、どの食品を食べるべきか)を下すことを可能にする。ハンドヘルドデバイスはまた、嚥下可能なデバイス10に信号を送信して、作動機構60を無効にし、したがって、薬剤100の送達を阻止遅延、または加速するように構成することができる。使用において、そのような実施形態は、他の症状および/または患者の行動(例えば、食事を食べること、睡眠することを決定すること、運動など)に基づいて、薬剤の送達を阻止、遅延、または加速するためにユーザが介入することを可能にする。ユーザはまた、カプセルを嚥下した後、選択された期間に作動機構60を外部から作動させ得る。期間は、ユーザのGI管を通って小腸などの管内の特定の場所に移動する食品の通常の通過時間または通過時間の範囲に相関させることができる。
【0173】
特定の実施形態では、カプセル20は、図10Aおよび10Bの実施形態に示されるように、制御可能に分解して、GI管の通過を容易にするための選択可能なサイズおよび形状のカプセル断片23を生成する、生分解性材料のシーム22を含むことができる。シーム22はまた、図10の実施形態に示されるように、生分解を加速するために、シームへの流体の貫通のための細孔または他の開口部22pを含むことができる。シーム22の生分解を加速するための他の手段は、図10の実施形態にも示されているように、シームにプレストレスを与えること、および/またはシームに穿孔22fを含めることを含むことができる。さらに他の実施形態では、シーム22は、超音波エネルギー、例えば高周波超音波(HIFU)の吸収によって容易に分解される、材料で構築する、および/または構造を有することができ、カプセルが、外部から、または内視鏡で(または他の低侵襲法)施された超音波を使用して、より小さな断片に分解されることを可能にする。
【0174】
シーム22に好適な材料は、PGLA、グリコール酸などの本明細書に記載の1つ以上の生分解性材料を含むことができる。シーム22は、成形、ホットメルト接合などのポリマー技術で知られている様々な接合方法を使用して、カプセル本体20に取り付けることができる。さらに、同じく生分解性材料から製造されるカプセル20の実施形態について、シーム22のより速い生分解は、以下、すなわち、i)より速い生分解性材料からシームを製造すること、ii)シームにプレストレスを与えること、またはiii)シームに穴を開けることのうちの1つ以上によって達成することができる。生分解性シーム22を使用して、GI管内の嚥下可能なデバイスの制御された分解を引き起こすという概念はまた、嚥下可能なカメラ(または他の嚥下可能な撮像デバイス)などの他の嚥下可能なデバイスにも適用することができ、GI管の通過を容易にし、そのようなデバイスがGI管に詰まる可能性を低減する。したがって、生分解性シーム22の実施形態は、嚥下可能な画像デバイスおよび他の嚥下可能なデバイスに適合させることができる。
【0175】
本発明の別の態様は、嚥下可能な薬物送達デバイス10の1つ以上の実施形態を使用して、薬物および他の治療薬(薬剤100の形態で)のGI管の壁への送達のための方法を提供する。次に、そのような方法の例示的な実施形態について説明する。薬物送達の記載された実施形態は、小腸SIで起こる。しかしながら、これは例示的なものであり、本発明の実施形態は、胃および大腸を含むGI管内のいくつかの場所に薬物を送達するために使用することができることを理解されたい。考察を容易にするために、嚥下可能な薬物送達デバイス10は、本明細書ではカプセル10と呼ばれることがある。上記のように、様々な実施形態では、デバイス10は、デバイス10および使用説明書のセット15を含む密封パッケージ12内にキット11としてパッケージされ得る。患者がハンドヘルドデバイス13を使用している場合、患者は、手動で、または説明書15またはパッケージ12に位置するバーコード18(または他の識別表示18)を介して、デバイス13にデータを入力するように指示され得る。バーコードが使用される場合、患者は、デバイス13上のバーコードリーダー19を使用してバーコードをスキャンする。パッケージ12を開封し、説明書15を読み、任意の必要なデータを入力した後、患者は、嚥下可能な薬物送達デバイス10の実施形態を嚥下する。薬物に応じて、患者は、食事(前、最中、または後)または生理学的測定と併せてデバイス10を服用し得る。カプセル20は、GI管を通過するようにサイズ設定され、図11の実施形態に示されるように、蠕動作用を通して患者の胃Sを通って小腸SIに移動する。小腸に入ると、解放要素70は、小腸の塩基性pH(または小腸に特有の他の化学的または物理的条件)によって分解されて、本発明の1つ以上の実施形態に従って、作動機構60を作動させ、薬剤100を小腸SIの壁に送達する。中空針または他の中空組織貫通部材40を含む実施形態について、薬物送達は、作動機構60を使用することによって達成されて、部材40を腸壁IWの粘膜内に、選択された距離だけ前進させ、次いで薬物は、送達部材50の前進によって、針内腔44を通って注射される。送達部材50は、引き抜かれ、次いで部材40は、カプセルの本体内に引き戻され(例えば、ばねの反動によって)、腸壁から取り外される。複数の針を有するデバイス10の実施形態について、第2または第3の針42、43を使用して、同じ薬物または別個の薬物101の追加の用量を送達することもできる。針または他の組織貫通部材40の前進は、実質的に同時にまたは連続して行うことができる。複数の針を使用する好ましい実施形態では、薬物送達中に小腸にデバイス10を固定するために、針の前進を実質的に同時に行うことができる。ここで図11A~Eを参照すると、薬物101が凝固因子CFを含むものを含む多くの実施形態では、作動機構50を含むデバイス10は、腸壁IWおよび腹膜壁または腹膜P、例えば、臓側腹膜PVを通して腹膜腔PCへ、針または他の組織貫通部材40を前進させるように構成されている。そこに入ると、針は、腹膜腔PC内の漿膜および他の液体によって分解され、凝固因子CFを、漿膜および他の腹膜腔液に、次いで、凝固因子CFまたは他の薬物101の、臓側および壁側腹膜の血管系を含む腹膜の血管系への拡散によって血流に、放出する。これらの実施形態および関連する実施形態では、腹膜腔PCへの組織貫通部材140の位置決めは、部材140を対称の尖った先端145を有するように構成すること、ならびに腸壁IWと臓側腹膜PVを通過し、腹膜腔PCに到達する部材140を推進するための増加した圧力を生成するように反応物の量を増加させることによって、容易にすることができる。それらはまた、バルーン160内の反応物165の量を増加させて、増加した量のガス169を生成し、次に、部材140を腹膜腔内に推進するためのガス圧のために増加させることによって、容易にされ得る。組織貫通部材140の腹膜腔PCへの送達のために構成されたデバイス10の様々な実施形態では、反応物165の重量による量(例えば、重炭酸カリウム、重炭酸ナトリウムなど)は、腸壁IWにのみ部材140を位置付けるためのものを超える、10~30%の範囲で増加させることができる。
【0176】
薬物送達後、デバイス10は、次いで、大腸LIを含む腸管を通過し、最終的に排泄される。生分解性シーム22または他の生分解性部分を有するカプセル20の実施形態について、カプセルは、図9Aおよび9Bの実施形態に示されるように、腸管内でより小さな断片に分解されて、腸管の通過および腸管からの排泄を容易にする。生分解性組織貫通針/部材40を有する特定の実施形態では、針が腸壁に詰まった場合、針は、生分解して、カプセル20を壁から放出させる。
【0177】
センサ67を含むデバイス10の実施形態について、機構60の作動は、作動機構60および/または作動機構に結合されたプロセッサ29または制御装置29cに信号を送信するセンサによって達成することができる。外部作動機能を含むデバイス10の実施形態について、ユーザは、カプセルを嚥下した後、選択された期間に作動機構60を外部から作動させ得る。期間は、ユーザのGI管を通って小腸などの管内の特定の場所に移動する食品の通常の通過時間または通過時間の範囲に相関させることができる。
【0178】
上記の方法のうちの1つ以上の実施形態は、様々な疾患および状態を治療するための、治療有効量の様々な薬物および他の治療薬101を含む調製物100の送達のために使用することができる。これらには、例えば、本明細書に記載の様々な凝固因子を含み、いくつかの高分子ペプチドおよびタンパク質が含まれ、さもなければ、胃の化学的分解のために注射が必要となる。特定の薬物の投与量は、患者の体重、年齢、または他のパラメータに応じて漸増することができる。また、本発明の1つ以上の実施形態によって送達されたときに、所望の効果または治療効果を達成するための薬物101(例えば、血中グルコース調節のためのインスリン)の用量は、薬物(例えば、胃で消化され、小腸の壁から吸収される嚥下可能な錠剤)が従来の経口送達によって送達された場合に必要な量よりも少なくなり得る。これは、胃の中の酸および他の消化液による薬の分解がないという事実、ならびに薬の一部分だけではなく、すべてが小腸の壁および/または腹膜壁(または腸管、例えば、大腸、胃などの他の内腔)に送達されるという事実のためである。薬物101に応じて、調製物100で送達される用量102は、所望の治療効果(例えば、血中グルコース調節、発作調節など)を達成するために、従来の経口送達(例えば、錠剤)によって送達される用量の100~5%の範囲であり得、さらに少ない量が企図される。特定の用量減少は、特定の薬物、従来の経口法のGI管で発生する分解の量、本明細書に記載の嚥下可能なカプセルの実施形態を使用する投与の頻度対投与、治療される状態、および患者の体重、年齢、状態に基づいて漸増することができる。いくつかの薬剤(腸管での分解の既知のレベルを有する)の場合、標準的な減量を採用することができる(例えば、10~20%)。分解および吸収不良の傾向がより強い薬剤の場合、より大量の減量を使用することができる。このようにして、摂取用量が低下するため、デバイス10によって送達される特定の薬物または複数の薬物の潜在的な毒性および他の副作用(例えば、胃のけいれん、過敏性腸、出血など)を低減することができる。これにより次に、患者の副作用の重症度および発生率の両方が低下するため、患者コンプライアンスが向上する。薬物101の減量を採用する実施形態の追加の利点には、患者が薬物耐性(より高い用量を必要とする)を発達させる可能性の減少、および抗生物質の場合、患者が耐性菌株を発達させる可能性の減少が含まれる。また、胃バイパス手術、および小腸の断片が除去された、またはその作用(例えば、消化)の長さが効果的に短縮された他の処置を受けている患者に対して、他のレベルの減量を達成することができる。
【0179】
単一の薬物の送達に加えて、嚥下可能な薬物送達デバイス10の実施形態およびそれらの使用の方法を使用して、複数の状態の治療または特定の状態の治療のために複数の薬物(例えば、HIV/AIDS治療のためのプロテアーゼ阻害剤)を送達することができる。使用において、そのような実施形態は、患者が、特定の状態または複数の状態のために複数の薬剤を服用しなければならない必要性を放棄することを可能にする。また、それらは、2つ以上の薬物のレジメンが、ほぼ同時に、小腸、したがって血流に送達および吸収されることを容易にするための手段を提供する。化学組成、分子量などの相違により、薬物は、異なる速度で腸壁から吸収され得、異なる薬物動態分布曲線が得られる。本発明の実施形態は、所望の薬物混合物を実質的に同時に注射することによってこの問題に取り組む。これにより次に、薬物動態、したがって、選択された薬物混合物の有効性が向上する。さらに、複数の薬を服用する必要性をなくすことは、認知能力または身体能力が低下した患者を含む、1つ以上の長期的な慢性状態を患っている患者にとって特に有益である。
【0180】
様々な用途において、上記の方法の実施形態を使用して、薬物および治療薬101を含む調製物100を送達して、いくつかの病状および疾患の治療を提供することができる。本発明の実施形態で治療することができる病状および疾患には、がん、ホルモン状態(例えば、甲状腺機能低下症/甲状腺機能亢進症、成長ホルモン状態)、骨粗鬆症、高血圧、高コレステロールおよび高トリグリセリド、糖尿病および他のグルコース調節障害、感染症(局所性または全身性、例えば敗血症)、てんかんおよび他の発作障害、骨粗鬆症、冠状動脈性不整脈(心房および心室の両方)、冠状動脈虚血性貧血または他の同様の状態が含まれ得るが、これらに限定されない。さらに他の状態および疾患もまた企図される。
【0181】
多くの実施形態では、特定の疾患または状態の治療は、凝固因子または他の凝固タンパク質または他の治療薬を注射する必要(または、坐剤などの他の非経口形態の送達)なしに実施することができるが、代わりに、小腸の壁および/もしくは腹膜壁またはGI管の他の部分に送達される治療薬(複数可)のみに依存する。同様に、患者は、薬物または他の治療薬の従来の経口形態をとる必要はないが、また、嚥下可能なカプセルの実施形態を使用して、小腸の壁および/または腹膜壁への送達のみに依存する。他の実施形態では、小腸の壁および/または腹膜壁に送達される治療薬(複数可)は、薬(複数可)の注射された用量と併せて送達することができる。例えば、患者は、嚥下可能なカプセルの実施形態を使用して治療剤の1日用量を服用し得るが、数日ごとに、または患者の状態がそれを必要とする場合(例えば、高血糖)にのみ注射された用量を服用する必要がある。同じことが、伝統的に経口形態で送達される治療薬にも当てはまる(例えば、患者は、嚥下可能なカプセルを服用し、必要に応じて従来の経口形態の薬を服用することができる)。そのような実施形態で送達される投与量(例えば、嚥下されたおよび注射された用量)は、必要に応じて漸増することができる(例えば、標準的な用量反応曲線および他の薬物動態学的方法を使用して、適切な投与量を決定することができることを使用して)。また、従来の経口手段によって送達することができる治療薬を使用する実施形態について、嚥下可能なカプセルの実施形態を使用して送達される用量は、薬の分解が、胃または腸管の他の部分内でほとんどまたはまったくないため、薬の経口送達に通常与えられる投与量よりも漸減することができる(ここでもまた、標準的な用量反応曲線および他の薬物動態学的方法を適用することができる)。
【0182】
次に、様々な疾患および状態の治療のための1つ以上の薬物または他の治療薬101を含む調製物100の様々な実施形態が、投与量を参照して説明される。特定の治療薬およびそれぞれの投与量を含むこれらの実施形態は、例示的なものであり、調製物100は、デバイス10の様々な実施形態を使用した、腸管内の内腔壁(例えば、小腸壁)への送達のために構成されている、本明細書に記載のいくつかの他の治療薬(および当技術分野で知られているもの)を含むことができることを理解されたい。投与量は、記載されているものよりも大きくても小さくてもよく、本明細書に記載されているか、または当技術分野で知られている1つ以上の方法を使用して調整することができる。
【0183】
実施形態のあるグループでは、治療薬調製物100は、1つ以上の成長障害の治療、ならびに創傷治癒のための治療有効用量の成長ホルモンを含み得る。一実施形態では、調製物100は、約0.1~4mgの範囲の治療有効量の成長ホルモンを含むことができ、特定の範囲は、0.1~1、1~4、1~2、および2~4mgであり、さらに大きな範囲が企図されている。特定の用量は、以下の要因、すなわち、i)治療される特定の状態およびその重症度(例えば、血友病A、フォンヴィレブランド障害など)、ii)患者の体重、iii)患者の年齢、およびiv)投与量の頻度(例えば、毎日か1日2回)のうちの1つ以上に基づいて漸増することができる。
【0184】
既知の薬物送達システムの薬物送達組成物および構成要素は、本明細書に記載の本発明のいくつかの実施形態での使用のために、採用および/または改変され得る。例えば、薬物パッチを用いる皮膚表面を介する薬物の送達するために使用されるマイクロニードルおよび他の微細構造は、改変され、本明細書に記載のカプセル内に含まれ、代わりに、薬物調製物を、小腸の壁などの消化管の内腔壁に送達するために使用され得る。好適なポリマーマイクロニードル構造は、MicroCor(商標)マイクロ送達システム技術など、カリフォルニア州のCoriumから市販されていることがある。薬物製剤または成分を含む、MicroCor(商標)パッチ送達システムの他の成分もまた、本明細書に記載のカプセルに組み込むことができる。代替的に、ポリマーまたは他の薬物送達マトリックスと、選択された薬物および他の薬物調製成分との組み合わせを処方して、望ましい薬物放出特徴を有する所望の形状(本明細書に記載の放出可能な組織貫通形状など)を生成するための様々なプロバイダが市販されている。そのようなプロバイダは、例えば、Corium、ミネソタ州のSurModics、シンガポールのBioSensors Internationalなどを含み得る。
【0185】
本明細書に記載の治療用組成物の様々な実施形態の1つの利点および特徴は、嚥下可能なカプセルまたは他の嚥下可能なデバイス、凝固因子(例えば、第VIII因子)または他の生物学的(例えば、ペプチドまたはタンパク質)に封入または他の方法で含まれ、薬物ペイロードは、胃腸(GI)管内のペプチダーゼおよびプロテアーゼの作用により、分解および/または加水分解から保護される。これらの酵素は、生体システム全体に遍在している。GI管は、特にプロテアーゼが豊富で、その機能は、食事中の複合タンパク質およびペプチドをより小さなセグメントに分解し、アミノ酸を放出して、アミノ酸が腸から吸収されることである。本明細書に記載の組成物は、これらのGIプロテアーゼの作用から治療用ペプチド、凝固因子、またはタンパク質を保護し、ペプチドまたはタンパク質のペイロードを腸の壁に直接送達するように設計されている。GIプロテアーゼの作用からタンパク質またはペプチドのペイロードを保護するのに役立つ、本明細書に記載の組成物の様々な実施形態には2つの特性がある。第一に、特定の実施形態では、展開エンジンおよび機械を含むカプセルシェルは、胃の低pHでの溶解を防止するカプセルの外面上のpH感受性コーティングにより、十二指腸および十二指腸下の腸セグメントに到達するまで溶解しない。第二に、特定の実施形態では、中空ポリマーマイクロスピア(例えば、ポリエチレン、ポリエチレンオキシド、マルトース、シリコーンなど)は、実際の治療用ペプチドまたはタンパク質を含み、ポリマーマイクロスピアは、外側のカプセルシェルが溶解するとすぐに、腸の筋肉に貫通するように設計されており、マイクロスピア自体は、腸の筋肉壁でゆっくりと溶解して、薬物ペイロードを放出する。したがって、ペプチド、凝固因子、または他のタンパク質のペイロードは、GIプロテアーゼの作用にさらされないため、GI管でのタンパク質分解による分解を受けない。これは、次に、上記のアプローチのうちの一方または両方が使用されず、ペプチドまたはタンパク質がGIプロテアーゼに曝露された場合に予想されるものと比較して、治療用ペプチドまたはタンパク質の高いバイオアベイラビリティに寄与する。特に、分子上の特定の受容体または他の標的領域に結合する化合物を含む組成物の実施形態については、そのようなアプローチは、化合物の結合親和性および特異性を保持し、それが所望の受容体に結合することを可能にする。
【0186】
本発明の実施形態によって提供される凝固因子または他の凝固タンパク質は、様々な凝固障害を治療するために特に有用である。治療され得る特定の凝固障害には、血友病AおよびBならびにフォンヴィレブランド病が含まれる。そのような実施形態は、静脈内、皮下または筋肉内注射と比較して有利である特定の薬物動態学的特性を備える凝固因子および他の凝固タンパク質の送達をもたらす。それらはまた、以下の利点、すなわち、より高い治療可能比、アレルギー反応(例えば、アナフィラキシーショック、筋肉痛、ならびに神経認知および眼科イベントを含む)の発生率の低下、ならびに免疫原性および/または免疫原性反応の低下(皮下および/または筋肉内注射と比較して)を含む利点のうちの1つ以上を提供する投与量の使用も可能にする。一実施形態では、アレルギー反応の発生率の低下は、標準的な注射(例えば、筋肉内、静脈内など)か、従来の化合物の経口送達による、凝固因子または他の凝固タンパク質を投与された患者集団のそのような発生率の比較によって判定し、次いで、その低下を使用して、凝固因子(例えば、第VIII因子)または他の凝固タンパク質のうちの1つ以上の患者集団におけるアレルギー反応の既知の発生率の予測される低下をモデル化することができる。
【0187】
第VIII因子投与量の実施形態
1つ以上の実施形態によれば、嚥下可能なカプセルの1つ以上の実施形態を使用して投与される凝固因子または他の凝固タンパク質の投与量は、必ずしもそうではないが、大抵、治療有効量である。本明細書で使用される場合、「治療有効量」という句は、所与の凝固障害の凝固の1つ以上の臨床的測定値(プロトロンビン時間などの凝固時間)の検出可能な改善、またはii)血友病(AまたはB)またはフォンヴィレブランド病などの凝固障害の症状を抑制、予防、軽減、または遅延させる凝固因子または他の凝固タンパク質の用量をもたらす凝固因子(例えば、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子)または他の凝固タンパク質の用量を意味する。様々な実施形態によれば、本発明の実施形態によって送達される治療有効量の凝固因子(例えば、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、および第X因子)は、約1000~10,000IUの範囲にあり得、特定の実施形態は、1400、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、50000、6000、7000、7500、8000、9000、9100、および9500IUである。薬物の投与量が重量によって判定される実施形態について、治療有効量の凝固因子は、約0.1~10mgの範囲であり得、特定の実施形態は、約1.5~10mg、1~5mg、1~3mgであり、約0.03~1.73mg、約0.02~1.15mg、および約0.34~約1mgであり、他の範囲も企図される。特定の用量を選択することができ、送達される特定の凝固因子(例えば、第VII因子、第VIII因子など)、治療される状態、臨床背景(例えば、予防か急性出血)、患者の体重、年齢、および性別のうちの1つ以上に応じて。表1は、様々な臨床設定において、それぞれ第VIII因子および第IX因子による血友病AおよびBの治療のための、患者体重1kg当たりのIUでの例示的な投与量を列挙している。これらおよび他の凝固障害ならびに他の状態(例えば、脳出血)に対する他の投与量は、本明細書でより詳細に記載されている。
【表1】
【0188】
様々な実施形態によれば、特定の凝固因子(表1に記載されるものなど)の投与量は、プロトロンビン時間または全血凝固時間などの凝固時間測定値に基づいて漸増(すなわち、調整)することができる。したがって、例えば、患者がより長い凝固時間を示す場合、凝固因子の用量を増加させることができ、より短い凝固時間の場合、用量を減少させることができる。このようにして、本発明の実施形態によって送達される凝固因子の投与量は、治療の過程にわたって所与の患者に対して最適化され、凝固時間を含む、血液の凝固/凝固特性に影響を及ぼし得る成長、食事、および他の薬物療法などの状態を説明することができる。特定の実施形態では、患者は、特定の凝固因子(例えば、第VIII因子)の異なる用量を有する嚥下可能なカプセルのインベントリを提供され、次いで、凝固時間測定値に基づいてインベントリから、使用する用量を選択し得る。特定の実施形態では、患者は、凝固時間または関連する測定値に基づいて(嚥下可能なカプセルの発明者から)、凝固因子の特定の用量を選択するための表または他の情報を提供され得る。いくつかの実施形態によれば、表または他の情報は、携帯電話、タブレット、または他の計算デバイスのうちの1つ以上のメモリまたは論理リソース、ならびにクラウドに電子的に記憶され得る。
【0189】
関連する実施形態または追加の実施形態では、プロトロンビン時間または他の凝固時間測定値を使用して、所与の患者および凝固障害に最適な凝固因子の供給源を選択することができる。例えば、第VIII因子の場合、プロトロンビン時間を使用して、血漿由来の第VIII因子か本明細書に記載の遺伝子組換え第VIII因子分子かを、どちらが、凝固時間を通常の生理学的範囲、例えば25~30秒に収束し維持するかに基づいて、選択することができる。
【0190】
小腸または他のGI内腔壁への組織貫通部材の貫通から、局所出血を低減または防止するための実施形態。
【0191】
様々な実施形態では、組織貫通部材40、140は、小腸および/または腹膜への組織貫通部材の挿入に起因する任意の出血のありそうもない可能性を低減するように特に構成することができる。ここで図18Hを参照すると、特定の実施形態では、これは、急速溶解層または凝固因子101(例えば、第VIII因子)のコーティング101cを、組織貫通部材140の表面140sの全部または一部の上に置くことによって達成することができ、凝固因子は、組織貫通部材が入る組織部位(例えば、小腸、腹膜など)で直ちに放出される。これは、凝固因子が、その部位で凝固を迅速に開始し、その部位または近くの部位での任意の出血を防止または最小限に抑えることを可能にする。追加のまたは代替の実施形態では、当技術分野で知られている1つ以上の急速止血剤(以下に記載)も、それ自体で、または組織貫通部材140によって送達される凝固因子(複数可)(例えば、凝固第VIII因子)と組み合わせて、組織貫通部材(TPM)140の表面コーティング101cに使用することもできる。ここで図15G、20H、および20Iを参照すると、さらに他の追加のまたは代替の実施形態では、もう1つの凝固因子101(例えば、第VIII因子)は、バルーンが、TPM140(s)を、小腸(SI)の組織、または他の場所(例えば、腹膜壁など)に挿入するように拡張する場合、面172fは、小腸の壁(または他のGI内腔壁)と接触して、凝固因子または急速止血剤などの凝固因子を備えるTPMのエントリーポイントコーティングするように、送達バルーン172の全部または一部分にコーティングされる。望ましくは、凝固因子101のコーティング101cは、バルーン172の面172fの中央部分に位置付けられ、またはそれらの場所で最大量の活性成分または厚さを有する。追加のまたは代替の実施形態では、展開バルーン130のサイズおよび圧力はまた、凝固因子の量が小腸壁の密着結合を含む内皮表面にわずかに貫通することができるように構成することもできる。このように、凝固因子は、小腸壁内に存在して、組織貫通部材の貫通から凝固を即座に開始する。追加のまたは代替の実施形態では、TPM140または送達バルーン172のいずれかにコーティングされた凝固因子は、医術で知られている急速止血剤(RHA)を含み得る。これらのRHAは、TPM140によって送達される凝固因子(患者が不足している)に加えて、それ自体でTPM140またはバルーン130上にコーティングされ得る。このようなRHAには、1つ以上の因子濃縮剤、粘膜付着剤、または凝固促進剤が含まれ得る。このようなRHAのより完全なリストおよび説明は、Khoshmohabat et al.:Overview of Agents Used for Emergency Hemostasis.Trauma Mon.2016 Feb 6;21(1)、に見い出すことができ、これは、すべての目的のために参照により完全に本明細書に組み込まれる。
【0192】
凝固因子および他の凝固タンパク質の、腸壁または腸管の他の場所への送達の利点。
使用において、上記または状態のうちの1つ以上の治療のための、凝固因子または他の凝固タンパク質の、腸の壁および/または腹膜壁ならびに隣接組織(例えば、腹膜壁または腹膜腔)または腸管の他の標的部位、例えば、大腸への送達を提供する本発明の実施形態は、注射された形態の凝固因子(例えば、因子VII、VIII、IXおよびX)に対していくつかの利点を提供する。このような利点は、i)より高い治療可能比、ii)治療範囲または治療域内でのCFのより一貫した維持、iii)アナフィラキシーショックまたは他のアレルギー反応(注射部位を含む)、注射部位の挫傷および出血、鼻咽頭炎、上気道感染症、インフルエンザ、腰痛筋肉痛、神経認知イベント、および眼科イベントのうちの1つ以上を含む副作用の発生率および重症度の低下、ならびに本明細書に記載の阻害性抗体の発生を含む、免疫原性および/または免疫原性反応の低下を含むことができるが、これらに限定されない。これらの利点は、以下、すなわち、i)本発明の実施形態によって送達されるはるかに少ない用量、ii)用量が、毎週または毎月に対して毎日の結果として送達される、およびiii)用量が血管内に対して経口に送達されるという事実のうちの1つ以上によるものである。
【0193】
多くの実施形態では、本発明の実施形態によって経口的に送達される凝固因子または他の凝固タンパク質の投与量の治療可能比は、注射によって(例えば、静脈内、筋肉内、または皮下などに、毎週、隔週、または毎月)送達される第VIII因子などの凝固因子の治療可能比よりも有意に増加させることができる。様々な実施形態では、「有意に」という用語は、2倍以上、例えば、7倍~30倍以上の量の治療可能比の増加に対応する。注射されたときに(例えば、静脈内、筋肉内、または皮下など)一週間に通常2~3日ごとの用量で送達される因子VII、VIII、IX、またはXなどの凝固因子について、治療可能比(例えば、毒性用量/有効用量)は、本発明によって提供される嚥下可能なデバイスを使用して毎日の経口用量で送達される場合、3倍~7倍の範囲で増加させることができ、一方、凝固因子の毎月の注射された用量の場合、治療可能比は、本発明の実施形態による毎日の経口用量で送達される場合、30倍増加させることができる。さらに、凝固因子(または他の凝固タンパク質)の経口投与が1日に複数回与えられる場合、増加を得ることができる。同様の改善(例えば、2倍、3倍、30倍またはそれ以上)は、免疫原性/免疫応答(筋肉内および/または皮下注射に対して)、アレルギー反応、および他の副作用のうちの1つ以上の発生率に見ることができる。免疫原性/免疫応答は、凝固因子または他の凝固タンパク質の臨床効果を中和またはさもなければ低下させる、投与された凝固タンパク質/凝固因子に対する抗体(例えば、阻害剤抗体)の本体による産生である。アレルギー反応の発生率および重症度が2倍から30倍減少するのは、抗体が、免疫系を鈍感にする傾向がある週単位またはそれよりも頻度の低い期間に対して、1日量で与えられるためである(アレルギー反応の程度は、当技術分野で知られている方法を使用して判定することができ、当技術分野で知られている1つ以上のインビトロ試験と相関させ得る)。同様に、第VIII因子などの1つ以上の凝固因子に対する阻害剤抗体の産生を含む免疫原性の低下の程度は、2~30倍以上も低下する可能性がある。これは、3つの要因、すなわち、1)用量が、皮下および/または筋肉内(そのような反応を悪化させる傾向がある)に送達されない、2)用量が、注射された用量が毎週、隔週、毎月などのいずれで送達されるかに応じて、はるかにより少ない量で、例えば、7倍~30倍で送達される、および3)上記のように、凝固因子(または他の凝固タンパク質)の用量が小腸の上部に送達され、パイエル板ならびにその後の免疫細胞および他の免疫応答の産生を回避することによるものである。所与の凝固因子(例えば、第VIII因子など)に対する免疫応答の量は、例えば、送達された凝固因子(例えば、第VIII因子)または他の凝固タンパク質)に対する生成された抗体(例えば、阻害剤抗体)の産生、および/または患者自身の抗体(例えば、阻害剤抗体)によって中和される投与された凝固因子のパーセンテージを測定するための当技術分野で知られているもう1つの免疫学的分析方法を使用して定量化することができる。これらの実施形態および関連する実施形態では、凝固因子(または他の凝固タンパク質)の投与量および投与レジメンは、患者において最小の免疫応答をもたらすように構成することができ、最小とは、患者自身の抗体によって中和される送達された凝固因子(または他の凝固タンパク質)の10%未満、より好ましくは5%未満を意味する。
【0194】
他の実施形態では、投与された凝固因子(または他の凝固タンパク質)に対する免疫応答および/またはアレルギー応答は、2または3日ごと、隔週、または毎月の静脈内用量に対して、毎日経口用量で投与された場合の所与の凝固因子(例えば、第VIII因子)に対する抗体の血清力価の差を測定することによって定量化することができる。これらの実施形態および関連する実施形態では、凝固因子(または他の凝固タンパク質)の投与量および投与レジメンは、患者において最小の免疫応答をもたらすように構成することができ、最小とは、投与された凝固因子(例えば、第VIII因子)に対する患者自身の抗体(例えば、阻害剤抗体)の血清濃度の10%未満の増加、より好ましくは5%未満の増加を意味する。
【0195】
関連するアプローチでは、サイトカイン(例えば、インターロイキン7などのインターロイキン)および/または白血球の血清力価を、所与の凝固因子の用量および投与について測定することができる。これらの実施形態および関連する実施形態では、凝固因子または他の凝固タンパク質の投与量および投与レジメンは、患者において最小の免疫応答をもたらすように構成することができ、最小とは、患者の白血球および/または特定のサイトカイン(例えば、インターロイキン7)のうちの1つ以上の血清濃度の10%未満の増加、より好ましくは5%未満の増加を意味する。関連する実施形態では、免疫応答は、白血球の差異の変化(例えば、アレルギー反応で発生する好酸球または好塩基球の%の増加)を使用することによって定量化することができる。これらの実施形態および関連する実施形態では、凝固因子または他の凝固タンパク質の投与量および投与レジメンは、患者において最小の免疫応答をもたらすように構成することができ、最小とは、患者の総白血球数中の特定の種類の白血球(例えば、好酸球)のパーセンテージの10%未満の変化を意味する。
【0196】
従来の注射手段による(例えば、静脈内、筋肉内、または皮下注射による)用量間のより長い間隔(例えば、2または3日ごと、隔週、または毎月の用量)に対して、毎日の用量で様々な凝固因子または他の凝固タンパク質の用量を送達することによって達成されるもう1つの利点は、特定の凝固因子または他の凝固タンパク質に対する患者血漿濃度プロファイルの変動の減少であり、これにより、時間とともにはるかに滑らかな血漿濃度が得られる。付録1でより詳細に説明されている薬物動態モデルを使用して、隔週送達期間(図24A)と隔週投与量から漸減された1日用量(図24A)でのアリロクマブの送達について血漿濃度曲線を作成した。図から分かるように、曲線の毎日の変動の量は、本発明の実施形態によって経口的に送達されたアリロクマブの場合、はるかに少ない。また、付録2に詳細に示され、説明されている式を使用して、これらの抗体の各々について「%定常状態変動」として知られる値を計算した。値は、所与の薬物の血漿濃度の日内変動の量を反映している。以下の表2に示されるように、特定の抗体の血漿濃度における定常状態変動の計算された量は、抗体が、皮下注射に対して、本発明の実施形態によって1日用量で送達される場合に有意に減少した(66.3%~0.39%)。その結果、アリロクマブの定常状態変動が約170分の1に減少した。モデルはまた、2つの抗インターロイキン抗体であるセクキヌマブおよびブロダルマブ(あらゆる目的のために参照により完全に組み込まれている米国特許出願第15/150,379に記載されている)の定常血漿変動の減少を示すためにも使用されており、結果は、表3に示されている。これらの場合、定常変動の減少は、171倍~216倍であった。したがって、モデルは、薬物が、皮下注射を使用して隔週または毎月に対して、本発明の実施形態を使用して1日用量で与えられる場合、所与の薬物(例えば、凝固因子)の定常血漿濃度の170~216%の減少を一貫して示す。そのようなモデルを使用して、同様の絶対値(例えば、0.12~0.39%)および%定常状態変動の減少が、本明細書に記載の様々な凝固因子について期待される。このような減少の利点には、以下、すなわち、有害事象のリスクの減少、アレルギー反応および免疫原性の減少(例えば、第VIII因子などの特定の凝固因子に対する阻害剤抗体の発生率および産生の減少)、ならびに、患者が所与の凝固因子の治療範囲内にとどまる期間がより長くなるため、凝固因子が、血友病などの目的の凝固障害をより適切かつ一貫して治療することを可能にすることのうちの1つ以上が含まれる。定常状態変動の減少はまた、阻害剤抗体の数の減少など、特定の凝固因子に対する患者の免疫応答の減少を定量化するためにも使用され得る。そのような減少は、比例的(例えば、正比例、部分的に比例など)であるか、または一次または二次比例の形態であり得る。
【表2】
【表3】
【0197】
第VIII因子を含む治療用組成物の実施形態
上記のように、本発明の様々な実施形態は、血友病Aまたは血友病Bなどの凝固障害の治療のための第VIII因子などの凝固因子を含む治療用組成物を提供する。
【0198】
次に、第VIII因子化合物について簡単な説明を提示する。第VIII因子(本明細書ではFVIIIまたはFVIIIとも呼ばれる)は、凝固シグナル伝達カスケードを増幅する糖タンパク質であり、損傷時に適時に凝固することを可能にする。FVIIIをコードする遺伝子は、X染色体Xq28{Thompson,2003#37}の長腕に位置し、26個のエクソンで構成されており、これらは、様々なサイズのイントロンによって挿入されている。FVIIIは、19アミノ酸長のシグナルペプチドおよび2332アミノ酸配列として合成される。それは、主に肝臓によって産生される。腎臓、脾臓、リンパ球は、少量のFVIIIを産生する。チャイニーズハムスター卵巣細胞、ベビーハムスター腎臓細胞、またはヒトFVIIIcDNAで遺伝子組換えされたヒト胎児腎臓細胞を使用して現在産生されているFVIIIを発現させることができる培養ヒト細胞株はない。
【0199】
FVIII分子は、3つの異なる種類のドメイン、すなわち、互いに相同であり、触媒活性に必須であるA1、A2、およびA3ドメイン、種間で大きく変動し、高度にグリコシル化されているが、タンパク質の凝固促進活性に必須ではないBドメイン{Kaufman,1997 #36}、および他の凝固因子(FIXおよびFX)およびリン脂質との結合に関与するC1、C2ドメインで構成されている。
【0200】
FVIIIは、小胞体(ER)内のリボソーム上のmRNAから産生され、シグナルペプチドは、次いで、ER内腔で切断され、タンパク質は、マンノース残基に富むオリゴ糖でBドメイン上でグリコシル化される。Bip(免疫グロブリン結合タンパク質)、カルネキシン、カルレティキュリンを含むERシャペロンへの付着も内腔で起こり、Bipは、FVIII凝集体を細胞質ゾルに輸送して分解する。Bドメインの削除は、おそらくBipへの結合が阻害されるため、FVIIIの分泌を増加させる。別のシャペロンであるERGC-53は、Bipがタンパク質から解離した後のゴルジへのFVIII移行に関与している。ERGC-53は、Bドメインのマンノース残基に結合する。ゴルジでは、FVIIIは、さらにグリコシル化、ジスルフィド結合の形成、および折り畳みを経る。2つのペプチド結合がBドメイン内で切断されるため、結果として生じる分泌タンパク質は、重鎖と軽鎖によって形成されるヘテロダイマーである。血友病患者におけるいくつかのミスセンス変異は、ERからの分解のための細胞質ゾルへのタンパク質の輸送の増加のため、およびゴルジ分解の増加のため、FVIIIの分泌の減少を引き起こす。
【0201】
循環FVIIIは、Bドメインで発生するフォンヴィレブランド因子(VWF)との結合によって安定化される。循環FVIIIの半減期は、正常な被験者では約18時間である。血友病被験者における組換えFVIIIの半減期は、血液型およびVWFレベルに応じて、10~20時間の範囲に及ぶ。FVIIIの最大活性は、1~2時間の静脈内投与後に検出可能である。FVIIIは、肝臓のマルチリガンドエンドサイトーシス受容体である低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質(LRP)への結合を介して循環から除去される{Saenko,1999 #39}。
【0202】
調製物100を含む、本発明の実施形態で使用される第VIII因子は、通常、ヒト第VIII因子を含み、天然に存在する形態または組換え形態であり得る。前者には、ヒト血漿に由来する第VIII因子が含まれる。後者には、野生型の活性と比較して同じまたはより高い生物学的活性を有するが、1つ以上のアミノ酸の挿入、欠失、または置換によって野生型第VIII因子とは異なる野生型第VII因子の変異体が含まれる。
【0203】
本発明の実施形態によって送達される第VIII因子の種類
本発明の様々な実施形態は、いくつかの異なる種類の利用可能な第VIII因子補充療法の送達を企図している。1つ目は、血漿由来の濃縮第VIII因子である。通常、このような血漿由来の第VIII因子は、プールされたヒト血漿から抽出され、病原体(例えば、ALPHANATEおよびHUMATE-P)による汚染を最小限に抑えるために精製される。2つ目は、完全長のヒト第VIII因子タンパク質(例えば、HELIXATE(登録商標)、KOGENATE(登録商標)、RECOMBINATE(登録商標)、およびADVATE(登録商標))をもたらす、組換えDNA技術から哺乳動物細胞株で産生された組換えヒト第VIII因子である。3つ目は、野生型バージョンから修飾された組換えヒト第VIII因子であり、最も一般的な修飾は、Bドメイン欠失(例えば、REFACTO、AFSTYLA、およびNOVOEIGHT)である。最後に、いくつかの生成物には、野生型もしくは組換え型、またはいずれかの類似体のいずれかの第VIII因子が含まれており、これは、T1/2としても知られている、循環における半減期を増加させるように修飾されている。このような修飾の例には、PEG化およびFc融合が含まれる。PEG化は、PEG(ポリエチレングリコール)鎖の、薬物または他の治療薬への共有結合である。PEGは、無毒でもあり、および生体適合性でもある。PEGのこれらの材料特性および他の材料特性により、PEGは、第VIII因子または他の凝固因子などの不安定なバイオ治療法を含む不安定な薬物分子の循環半減期を増加させるのによく適している。特に、PEGポリマーの親水性は、水分子の結合が、PEG化された薬物の表面に水層を形成することを可能にする。これにより、バイオ医薬品の流体力学半径が増加し、腎クリアランスが妨げられ、減少する。加えて、PEG化は、タンパク質分解、オプソニン化タンパク質の結合、およびRESのようなクリアランス受容体または細胞表面との相互作用に対する立体障害を提供する。FVIIIなどの治療用タンパク質を含む脂質粒子のPEG化は、タンパク質に共有結合することで重要な機能を変更するリスクなしに、粒子にPEGの保護的な有益な効果を与える代替オプションである。粒子自体の中で、FVIIIは、内腔にカプセル化されるか、または脂質二重層に挿入される。タンパク質は、インビボで粒子から放出され、VWFとの結合などの必要な分子間相互作用に関与することができる。次に、上記の種類の第VIII因子の簡単な説明を提示する。
【0204】
本発明の実施形態による安定化第VIII因子送達の実施形態
特定の実施形態では、本発明は、薬物の循環半減期、およびそれによりそのAUC、ならびにバイオアベイラビリティのうちのもう1つを増加させるように、安定化形態の第VIII因子(または他の凝固因子)を含む、凝固障害の治療のための治療用調製物を提供する。安定化は、以下のアプローチ、すなわち、i)所与の種類の第VIII因子(例えば、野生または組換え)を安定剤と化学的複合体化すること、またはii)第VIII因子を含む治療用調製物100に、安定剤を含む賦形剤を含ませることのうちの一方または両方によって達成することができる。化学的複合体化法および薬剤の例には、FVIII分子がPEG分子と複合体化されるPEG化)またはFc融合によるものが含まれ、これらは両方とも本明細書でより詳細に説明されている。例えば、フォンヴィレブランド因子、または1つ以上のヒドロゲルを含む、化学的複合体化のための他の安定剤も考慮され得る。
【0205】
様々な実施形態では、安定剤/賦形剤は、治療用調製物101の処方中に第VIII因子生成物と不均一に混合され得る。代替的に、それは、コーティングとして施すこともできる。安定化賦形剤の例には、カルシウム、フォンヴィレブランド因子、アルブミン、およびヘパリンおよびDFP(ジイソプロピルフルオロリン酸)などの非キレートプロテアーゼ阻害剤が含まれる。特定の実施形態では、第VIII因子を備える調製物101に含まれる安定化賦形剤は、ヘパリン、DFP、およびカルシウムの組み合わせを含み得る。フォンヴィレブランド因子(VWF)の場合、特定の実施形態では、それは、特定の第VIII因子と約1:1の比率で混合され得、それにより、TPM140の第VIII因子の大部分は、VWFに迅速に結合して、腸壁および/または腹膜壁を通過する際のFVIIIの安定性を保護するFVIII:VWF複合体を形成する。カルシウムの場合、それは、薬物セクション142が組織(例えば、小腸の壁または腹膜壁もしくは腹膜腔)に溶解しており、腹膜壁を通して門脈または他の血管系に移動する場合、血液中に通常見られるカルシウム濃度、例えば8.6~10.3mg/dlを含む液体に囲まれるように、十分な量のこの化学物質を含むことが望ましい。mm範囲のTPM140のサイズが小さく、通常それに含まれる第VIII因子の量が少ない(1~3mg)ことを考えると、この目標を達成するためにTPM140内で含まれるカルシウムの量は、特定の実施形態において1、0.5、および0.254mgを含む、2mg未満になり得る。使用において、安定化形態の第VIII因子の送達は、必要な投与量および薬物の投与の頻度のうちの一方または両方を減少させる。また、第VIII因子の患者の血漿濃度が長期間にわたって望ましい治療範囲内に維持されるため、出血の発生率も低下する。
【0206】
抗凝集剤を含む第VIII因子調製物の実施形態。
【0207】
様々な実施形態では、安定剤/賦形剤は、インビボで、および/またはFVIIIもしくはFVIIIA治療用調製物を製造するために使用される凍結乾燥または他の製造プロセス中に、FVIIIまたはFVIIIA分子の凝集を低減または排除するように構成された薬を含み得る。そのような調製物は、これから説明されるいくつかの利点を持つ。組換え第VIII因子(rFVIII)は、血友病Aの治療を受けている患者の25~30%で免疫原性を発症する可能性を有する。免疫原性の主な原因は、製造プロセス中またはインビボのいずれかの、凝集体の形成である。したがって、本発明の実施形態は、FVIII、FVIIIA調製物101を作成するため、および/または薬物部分142(マイクロタブレットとも呼ばれる)を作成するために使用される、製造(凍結乾燥)プロセス中の圧縮応力および他の力または反応による凝集から、第VIII因子タンパク質を保護することができるFVIII、FVIIIA(または本明細書に記載の他の凝固因子)薬を含む治療薬に含めることを企図する。調製物101に賦形剤として含めることができるそのような抗凝集剤の例には、アルギニン(正に帯電した)、グルタミン酸(負に帯電した)、およびロイシン(非極性)などのアミノ酸が含まれる。このような薬は、タンパク質間相互作用および製剤中の成分間の追加の水素結合相互作用を防止することにより、凍結乾燥および貯蔵中にrFVIIIを安定化させることができる。抗凝集剤の別の例には、非イオン性界面活性剤であるプルロニックF-68が含まれる。特に、プルロニックF-68は、凍結乾燥およびマイクロタブレット化プロセス(薬物セクション142および/またはTPM14を圧縮、またはそうでなければ形成するために使用されるプロセス)中の応力からFVIIIを保護するように機能する。
【0208】
透過性増強剤を含む第VIII因子調製物の実施形態。
【0209】
FVIIIのサイズが大きいことを考慮すると、膜透過性、特に漿膜または他の腹膜の透過性は、デバイス10およびカプセル20の実施形態による腹膜腔内送達中のリンパ系へのタンパク質取り込みを増強する上で重要な役割を果たし得る。したがって、本発明の実施形態は、腹膜を通過するFVIIIの取り込みを促進するために、治療用調製物101および/または薬物部分142への膜透過性増強剤の添加を企図する。そのような透過性増強剤の一例には、ヒアルロニダーゼが含まれる。この化合物は、TPM140および/または薬物部分142の溶解/生分解によって形成されたFVIIIまたはFVIIIAの溶液が、それが分解するときに腹膜のより広い領域全体に広がることを可能にする。ヒアルロン酸はまた、空腸内に注射/送達された形態のFVIII、FVIIIA、または他の凝固因子調製物101の拡散能力およびバイオアベイラビリティを増強する。これは、次に、そのように送達されたFVIII、FVIIIA、またはその他の凝固因子のCmax、バイオアベイラビリティ、およびAUCのうちのもう1つの改善をもたらす。例えば、ヒアルロニダーゼの添加により、FVIIIの取り込みがさらに10%増加すると、Cmax、およびPEG化FVIIIに対して以前に定義されたAUCは、比例して増加する。この増加は、PEG化FVIIIのバイオアベイラビリティの8~12%の増加に反映される。以下の表4は、本明細書に記載の様々な安定剤、抗凝集剤、および透過性増強剤についての、薬物部分142/調製物101における賦形剤に対する、FVIIIまたはFVIIIA分子(または本明細書に記載の他の凝固因子)の例示的な重量比を提供する。
【表4】
【0210】
ADVATE(抗血友病因子(組換え)(rAHF)、Shire Corporationから入手可能)は、遺伝子操作されたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株によって合成されるが、血漿またはアルブミンを含まない、2,332個のアミノ酸からなる精製糖タンパク質である。ADVATEの産生に採用されるCHO細胞株は、RECOMBINATEの生合成に使用されるものに由来する。ADVATEは、その生化学的および物理化学的特性、ならびにその非臨床的なインビボ薬理作用に関して、RECOMBINATEに匹敵することが示されている。CHO細胞によって合成されたrAHFは、凝固に対して、ヒト抗血友病因子(hAHF)と同じ生物学的効果を有する。構造的に、組換えタンパク質は、ヒト抗血友病因子に見られるのと同様の不均一な重鎖と軽鎖の組み合わせを有する。ADVATEは、静脈内注射用の無菌の非発熱性粉末として処方されている。フォンヴィレブランド因子(VWF)は、第VIII因子と共発現し、培養でそれを安定させるのに役立つ。最終生成物には、1IUのrAHF当たり2ng以下のVWFが含まれる。ADVATEの比活性は、タンパク質1ミリグラム当たり4000~10000国際単位である。予防には、体重1kg当たり20~40IUの第VIII因子を1日おきに(週に3~4回)使用することができる。
【0211】
PEG化FVIII
ADYNOVATE(登録商標)PEG化FVIII(Shire Corporationから入手可能)は、1つ以上のポリエチレングリコール分子(MW20kDa)と共有結合した組換え完全長ヒト凝固第VIII因子(分子量(MW280kDa)の2,332個のアミノ酸)である。
【0212】
ESPEROCT
NovoNordiskから入手可能であるESPEROCT(登録商標)は、40kDaのポリエチレングリコール(PEG)分子の化学名称と結合したヒト凝固第VIII因子(FVIII)の組換え類似体である。ESPEROCTの正式な化学名は、ツロクトコグアルファペゴル(N8-GPと短縮)であり、ツロクトコグアルファのPEG化バージョンである。それは、2019年2月にFDAによって承認された。N8-GPは、血友病Aのすべての年齢の成人および子どもに、出血発症の頻度を減らすための日常的な予防、出血症状のオンデマンド治療および制御、および出血の周術期管理に使用するための適応を備えている。基本的に、N8-GPは、組換えヒト凝固第VIII因子(rFVIII)であるツロクトコグアルファと同一であり、天然に存在するBドメインのN末端から10アミノ酸、C末端から11アミノ酸をコードする配列から作られた切断されたBドメインを有する。ツロクトコグアルファは、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞で、任意のヒトまたは動物由来の物質の添加を伴わずに産生される[11]。分泌中、いくつかのrFVIII分子は、アミノ酸720の重鎖(HC)のC末端で切断され、この位置にC末端に結合するモノクローナル抗体は、精製プロセスで使用され、インタクトなrFVIIIの単離が可能になる。それは、Novo Nordiskによって開発され、2013年10月16日に米国FDAによって承認された。ただし、ツロクトコグアルファとN8-GPの本質的な相違は、一般的なツロクトコグアルファrFVIII構造の切断されたBドメインの特定のO-グリカンへの40kDaポリエチレングリコール(PEG)基の特定の結合である。一般的なツロクトコグアルファrFVIII構造へのこの修飾は、N8-GPのインビボ半減期を延長し、血友病A患者の第VIII因子補充療法のための延長された半減期第VIII因子分子に変換する。N8-GPは、重度の血友病Aの人に、成人および青年では、4日ごと、または子どもでは3~4日ごと(週2回)に1回の注射という固定投与レジメンによる効果的な定期予防を提供するように示されている。さらに、N8-GPは、効果的な予防法を提供し、1.18の低い平均年間出血率(ABR)を維持した。さらに、N8-GPはまた、出血発症の治療および管理、ならびに出血の周術期管理に有効であることもわかった。臨床試験および年齢層全体で、N8-GPは、忍容性が高いことが示され、安全性の懸念は確認されなかった。N8-GPの全体的な安全性プロファイルは、他の長時間作用型FVIII生成物で報告されているものと同様である。
【0213】
ALPHANATE
ALPHANATE(登録商標)(Grifols Biologics,Inc.から入手可能)は、プールされたヒト血漿から精製されたフォンヴィレブランド因子と複合体化した第VIII因子の無菌の凍結乾燥濃縮物である。抽出されたタンパク質は、無菌性およびウイルス量最小化を確実にするための、いくつかのプロセスおよび化学処理にかけられる。両方の因子の凝固促進活性は、国際単位(IU)で報告されている。最終生成物は、ヒトアルブミンの添加によって安定化される。この生成物に含まれる第VIII因子の1IUは、1mlの新鮮ヒト血漿の第VIII因子活性とほぼ同等である。生成物の比活性は、タンパク質1mg当たり少なくとも5IUである。血友病A患者の予防のために、IUでの投与量および注入の頻度は、経験豊富な医師によってケースバイケースで決定される。薬物動態プロファイルは、重度の血友病Aの成人患者12人で評価され、平均半減期は、注入後10分で17.9±9.6時間、96.7±14.5%であった。注入後10分での回復も、注入された1IUFVIII/kg体重当たり2.4±0.4IUFVIII上昇/dL血漿として決定された。
【0214】
ELOCTATE
ELOCTATE(登録商標)は、Biogen Corporationから入手可能である。ELOCTATEの有効成分は、Bドメイ欠失組換え第VIII因子、Fc融合タンパク質(BDD-rFVIIIFc)である。BDD-rFVIIIFcは、ヒト免疫グロブリンG1(IgG1)Fcドメイン配列に共有結合したヒト凝固第VIII因子のBドメイン欠失類似体からなる組換えタンパク質である。分子の第VIII因子部分は、90kDaの重鎖および80kDaの軽鎖(内因性の第VIII因子と同様)を有し、これらは、中央のBドメインからの14個(908個中)のアミノ酸によって結合されている。FVIII部分は、内因性の第VIII因子に匹敵する翻訳後修飾を有する。分子のFcドメインには、IgG1のヒンジ、CH2、およびCH3領域が含まれている。BDD-rFVIIIFcには、見掛けの分子量が220kDaの1890個のアミノ酸が含まれている。発現したタンパク質の大部分は、2本鎖分子に切断されるが、ただし、ELOCTATEには、最大39%の1本鎖の未処理形態も含まれ得る。両方の分子は、同等の第VIII因子活性を有することが示されている。タンパク質は、ヒト胎児腎臓細胞株によって産生され、細胞培養培地から精製される。ELOCTATEは、再構成およびIV注射用の滅菌水を含む、滅菌された非発熱性の凍結乾燥粉末として提供される。それは、異なる力価で入手可能である。日常的な予防のために、4日ごとに50IU/kgが推奨される。用量は、患者の反応に基づいて調整する必要があり、投与は、3~5日間隔で25~65IU/kgの範囲である。
【0215】
HUMATE-P
HUMATE(登録商標)-P(CLS Behringから入手可能)は、血友病AおよびVW疾患の患者の治療のための、第VIII因子(FVIII)およびフォンヴィレブランド因子(VWF)の精製された無菌の凍結乾燥濃縮物である。HUMATE-Pは、プールされたヒト血漿の寒冷不溶性画分から精製される。VWFまたはFVIIIの1国際単位(IU)は、1.0mLの新鮮プールヒト血漿中のVWFまたはFVIIIの活性量にほぼ等しい。個々の患者のPKに応じて、投与は、6、8、または12時間ごとに繰り返され得る。
【0216】
HELIXATE FSおよびKOGENATE FS
HELIXATE(登録商標)FS(CLS Behringから入手可能)およびKOGENATE(登録商標)FS(Bayer Corporationから入手可能)は、完全長のヒト第VIII因子をベビーハムスターの腎臓細胞に導入することによって製造される。次いで、得られた第VIII因子タンパク質は、精製され、動物性タンパク質は含まれていない。この生成物の生物活性は、血漿由来のヒト第VIII因子と同じである。有効成分は、HELIXATE FSおよびKOGENATE FSの両方で同一であり、これは、両方のAPIが、Bayerによって産生され、HELIXATE FSが、CLS Behringによって、2社間の合意に基づいて配布されているためである。両方の薬物の推奨される予防投与レジメンは、成人では週に3回25IU/kg、子どもでは1日おきに25IU/kgである。
【0217】
RECOMBINATE
RECOMBINATE(登録商標)(Baxter Healthcare Corporationから入手可能)は、ヒト第VIII因子およびフォンヴィレブランド因子(VWF)を共発現するように遺伝子操作されたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株によって合成された糖タンパク質である。CHO細胞株は、組換え第VIII因子(rFVIII)を、細胞培養培地に分泌する。VWFと複合体化した第VIII因子は、一連のクロマトグラフィーカラムを利用して、培地から精製される。CHO細胞によって産生された合成rFVIIIは、ヒト第VIII因子と同じ生物学的効果を有する。構造的に、タンパク質は、ヒトの第VIII因子に見られるのと同様の重鎖と軽鎖の組み合わせを有する。RECOMBINATEは、静脈内注射用の濃縮組換え第VIII因子の無菌、非発熱性、凍結乾燥粉末製剤として処方されている。この製剤の1国際単位(IU)は、約1.5μgの第VIII因子タンパク質を含む。最終生成物には、1IUのrFVIII当たり2ng以下の組換えVWF(rVWF)が含まれ、これは、フォンヴィレブランド病の患者に臨床的に関連する効果はない。生成物には、防腐剤は含まれていない。この生成物の1IUは、患者のベースラインが1%未満であると仮定すると、患者のベースラインの2倍の第VIII因子ピーク活性を引き起こす。したがって、患者のX%のFVIII活性を高めるには、IU用量は、約(X*kg)/2である必要がある。69人の患者を対象としたPK研究では、RECOMBINATEの循環平均半減期は、14.6±4.9時間であった(n=67)。RECOMBINATEで観察された実際のベースライン回復は、123.9±47.7IU/dL(n=23)であり、RECOMBINATEでの実際の回復と期待される回復との計算された比率は、121.2±48.9%であった。
【0218】
本発明の実施形態を介した第VIII因子生成物の送達。
本明細書に記載されるように、嚥下可能なデバイス10および治療用調製物100を含む本発明の様々な実施形態は、様々な凝固障害の治療のための第VIII因子補充療法の経口送達に適合させることができる。一実施形態によれば、デバイス10の実施形態を使用する第VIII因子の経口送達のための予想される予防的投与レジメンは、経口で1日当たり1錠に対応し、1錠当たりのIUの量は、医薬品有効成分の製造業者の推奨に基づいて計算される。他の実施形態は、より多い頻度の(例えば、1日2回)またはより少ない頻度の(2、3、5、7、または他の日数ごとに1回)送達を企図する。特定の種類の第VIII因子のより具体的な投与レジメンを以下に説明する。
【0219】
特定の種類の第VIII因子の投与レジメン
HELIXATE(登録商標)FSおよびKOGENATE(登録商標)FSは、週に3回(約2日ごと)25IU/kgの推奨用量を有する。これらの化合物の場合、70kgの成人の総用量は、2日ごとに1750IUであり、経口デバイス10/カプセル20の実施形態で経口送達した場合は、1日当たり875IUになる。HELIXATE FSおよびKOGENATE FSは両方とも、タンパク質1mg当たり4000IUの比活性を有しているため、1日用量の875IUは、約0.22mgの第VIII因子になり、これは、1日当たり、単一の経口カプセル20によって簡単に送達される。ELOCTATEは、4日ごとに、50IU/kgの用量で投与される。したがって、正常体重の成人の総用量である70kgは、4日ごとに3500IUであり、これは、カプセル20の実施形態で経口送達された場合、1日当たり1カプセル当たり約875IUに相当する。ELOCTATEの比活性は、タンパク質1mg当たり4000~10020IUであるため、0.22~0.00mgの1日用量範囲を単一の経口カプセルで投与することができる。AFSTYLAおよびPEG化FVIIIの推奨用量は、2日または3日ごとに約20~50IU/kgである。
【0220】
次いで、70kgの成人の範囲は、2/3日ごとに1400~3500IUであり、これは、投与が2日ごとに生じる場合は、1日当たり約700~1750IU、または投与が3日ごとに生じる場合は、1日当たり約467~1167IUに相当する。したがって、これらの投与量は、デバイス10の実施形態で経口送達された場合、(患者および有効成分に応じて)467~1750IUの間の1日用量に対応する。第VIII因子の7400~16000IU/mgの比活性を有するAFSTYLAの場合、0.03~0.24mgの用量範囲が、1日1つの経口デバイスによって送達される。最後に、2700~8000IU/mgの比活性を有するPEG化FVIIIの場合、単一カプセル20によって経口投与される1日用量範囲は、0.06~0.65mgである。これらの用量はすべて、特定の投与の経路(例えば、IV注射に対して腹膜腔内への送達)のバイオアベイラビリティの低下を説明するために、調整、例えば、増加(例えば、2倍、3倍、4倍など)することができる。用量が2倍、3倍などの場合でも、第VIII因子の治療用量を投与するには、単一のデバイス毎日の経口デバイス10/カプセル20で十分である。
【0221】
いくつかの第VIII因子生成物(例えば、ADVATE(登録商標)、REFACTO(登録商標)、NOVOEIGHT(登録商標))の場合、1ミリグラムの第VIII因子タンパク質の比活性は、処方情報に報告されており、所望の治療効果(例えば、凝固の改善、凝固時間の短縮など)を達成するために、デバイス10の実施形態を使用して投与される薬物の重量(mgなど)の計算が容易になる。例えば、ADVATEの推奨投与レジメンは、1日おきに20~40IU/kgである。70kgの成人の場合、これは、1日おきに1400~2800IU、1日当たり700~1400IUになる。ADVATEの比活性は、タンパク質(例えば、第VIII因子)1mg当たり4000~10,000IUであるため、mgでの薬物の治療範囲は、0.07~0.14mgの範囲(IUでの用量および10,000IU/mgの最高因子活性を考慮すると)または0.175~0.35mgの範囲(IUでの用量および4000IU/mgの最低因子活性を考慮すると)である。これらの用量は、1日当たり、単一の経口デバイス10/カプセル20によって投与することができる。40~225IU/kg、したがって70kgの成人の場合は280~15750IUの毎日の投与レジメンを有するREFACTOの同様の計算は、因子活性が9110IU/mgおよび0.02~1.15mgである場合、因子活性が13700IU/mgの場合、0.03~1.73mgの毎日用量範囲になる。1日当たり1カプセルは、これらの治療範囲を送達することができる。NOVOEIGHTは、8340IU/mgの比因子活性、および1日おきに20~60IU/kgの投与レジメンを有しており、最低用量および最高用量を単一の範囲で組み合わせた子どもおよび大人の予防的投与範囲全体を考慮している。成人の場合、1つ以上の実施形態によれば、NOVOEIGHTの毎日の低用量は、2800IU/日である(例えば、70kgの患者×2×20IU/kgを仮定すると)および高用量の8400IU/日(70kg X 2 X 60IU/kgを仮定すると)。ミリグラムに換算すると、カプセル20の実施形態または本発明の実施形態によって企図される他の経口送達手段を使用して経口送達される場合、用量範囲は、1日当たり約0.34~約1mgである。デバイス10およびカプセル20の様々な実施形態は、そのような用量を含む針または他の形態の組織貫通部材40、140を製造することによって、前述の用量の第VIII因子生成物のいずれかを送達するように容易に構成することができる。特に、単一の針または他の形態の組織貫通部材40または140は、これらの用量のいずれかを含むように構成することができる。
【0222】
第VIII因子および他の凝固因子の投与の調整を説明する実施形態
様々な実施形態では、第VIII因子または本明細書に記載の任意の凝固因子の所与の供給源またはバッチの効力(IU/mgとして表される)の変化について調整をなすことができる。したがって、例えば、効力の増加(例えば、第VIII因子または他の凝固因子の1mg当たりのIUの増加)の場合、1カプセル当たりのmgを減少させることができ、その結果、必要なカプセルの数が減少する。また、IV注入によって送達される場合の薬物のバイオアベイラビリティに対する、経口デバイス10の実施形態による経口投与の経路を介して送達される所与の凝固因子のバイオアベイラビリティの減少を、投与量に考慮することができる。特に、小腸壁、腹膜または腹膜腔のうちの1つ以上などのGI管内の特定の場所に送達される経口デバイス10内の凝固因子のそのような低下したバイオアベイラビリティを考慮することができる。例えば、経口デバイス10の実施形態による腹膜腔への第VIII因子(または本明細書に記載の他の凝固因子)の送達の場合、バイオアベイラビリティは、IV注入された第VIII因子のバイオアベイラビリティの約50%であり得る。あらゆる目的のために参照により本明細書に完全に組み込まれる「Intravascular of VWF and Factor VIII following Intraperitoneal Injection and differences from Intravenous and Subcutaneous Injection in Mice.」Q.Shi.et.al.,Hemophilia(2012),18,639-646を参照。したがって、1カプセル当たりの薬物のmg、または服用したカプセルの数に関して、記載された第VIII因子の投与量のいずれかは、バイオアベイラビリティの他の減少と比較して、2倍、または別の量だけ増加し得る。
【0223】
第VII因子を含む治療用組成物の実施形態
上記のように、本発明の様々な実施形態は、先天性および後天性血友病などの様々な凝固障害の治療のための第VII因子などの凝固因子を含む治療用組成物を提供する。したがって、第VII因子化合物について簡単な説明を提示する。第VII因子(EC 3.4.21.21、血液凝固第VII因子、活性化血液凝固第VIIa因子として記載、以前はプロコンバーチンとして知られていた)は、凝固カスケードで血液を凝固させるタンパク質の1つである。第VII因子は、第VII因子欠乏症の血友病患者、および第VIII因子を含む凝固因子のうちの1つ以上に対する阻害剤抗体を発現する患者の補充療法として使用される。また、それは、外傷患者の出血を制御するため、および脳出血の治療のために適応外使用されている。それは、セリンプロテアーゼクラスの酵素であり、肝細胞によって産生され、循環系に排泄される。排泄された糖タンパク質は、約50kDaの質量の406個のアミノ酸の一本鎖であり、タンパク質分解的切断および他の機構によって活性型に変換される。第IXa因子、第Xa因子、第XIIa因子、またはトロンビンを含むいくつかの因子が、第VII因子のタンパク質分解的切断につながる可能性がある。38~60個のアミノ酸配列のタンパク質分解後、FVIIは、活性型またはFVIIaを含む、ジスルフィド結合によって接続された2つの鎖に変換される。軽鎖(152aa)には、上皮細胞成長因子および非常識なリン脂質結合のためのドメインと、カルシウムイオンに結合するカルボキシル化グルタミン酸残基が含まれ、重鎖(254aa)には、第IX因子および第X因子の、それらの活性型への活性化を触媒するセリンプロテアーゼ活性が含まれている。
【0224】
本明細書で使用される場合、「第VII因子」という用語は、切断されていないFVII(チモーゲン)および第VIIa因子として知られる活性型第VII因子の両方を含む。また、第VII因子の様々な実施形態は、ヒト野生型ヒト第VII因子の1-406ポリペプチド配列を含むポリペプチド(米国特許第4,784,950号に開示されている)、または別の種(例えば、ウシ、ブタ、イヌ、ネズミ)に由来するFVIIに対応し得る。本発明の実施形態によって企図および送達されるFVIIの他の形態は、存在し得る第VII因子の天然の対立遺伝子変異、ならびに任意の形態もしくは程度のグリコシル化または他の翻訳後修飾を含み得る。「第VII因子」という用語はまた、野生型の活性と比較して同じまたはより高い生物学的活性を有する第VII因子の変異体を含み、これらの特定の変異体は、挿入、欠失または置換1つ以上のアミノ酸によって野生型第VIIa因子とは異なるポリペプチドを含む。「第VII因子の生物学的活性」という用語は、例えば活性化血小板の表面上にトロンビンを生成する能力を含む。
【0225】
阻害剤を用いた血友病患者の出血発症の治療のための第VIIa因子の典型的な用量は、止血が達成されるまで2~6時間ごとに繰り返される90μg/kgである。13.3~22μg/kgの用量は、FVII補充療法に使用され、20~160μg/kgの用量は、外傷および脳内出血患者に使用される。残念ながら、第VIIA因子は、2~4時間の短い半減期を有し、頻繁なIV注射が必要である。第VIIA因子の半減期を延長するために、静脈内注射の代替として皮下注射が調査されているが、皮下注射による第VII因子のバイオアベイラビリティは、わずか21~30%である。この低いバイオアベイラビリティを考えると、皮下注射は、第VII因子の投与の非常に効率的または実用的な経路ではない。したがって、嚥下可能な送達デバイス10の実施形態による第VII因子または第VIIa因子の送達は、バイオアベイラビリティの増加および1日の間に複数回の注入の必要性の低減または排除を含むいくつかの明確な利点を提示する。後者の因子は、病院へ出かけることまたは在宅点滴の必要性を排除することにより、患者の生活の質の大幅な改善を提供する。
【0226】
本発明の実施形態を介した第VII因子生成物の送達。
【0227】
一実施形態によれば、デバイス10の実施形態を使用する第VII因子の経口送達のための予想される予防的投与レジメンは、経口で1日当たり1錠に対応し、1錠当たりのIUの量は、医薬品有効成分の製造業者の推奨に基づいて計算される。他の実施形態は、より多い頻度の(例えば、1日2回)またはより少ない頻度の(2、3、5、7、または他の日数ごとに1回)送達を企図する。デバイス10の実施形態によって送達され得る第VII因子の特定の投与量は、約10~90μg/kgの範囲であり得、後天性血友病の患者については、2~3時間ごとに70~90μg/kg、先天性第VII因子欠乏症の患者については、4~6時間ごとに15~30μg/kg、阻害剤を有する先天性血友病AまたはBの患者については、2時間ごとに90μg/kg、またはグランツマンの血小板無力症の患者については、2~4時間ごとに90μg/kgの特定の用量範囲である。止血が達成される(例えば、出血が停止する、および/または著しく減少する)まで、前述する状態の投与量が出血発症中に投与される。阻害剤を有する先天性血友病AまたはBの患者の場合、止血が達成された後、以前の投与によって達成された止血プラグを維持するために、90μg/kgの用量を3~6時間ごとに投与し得る。前述の投与量をIUの単位名称でアクティブな単位に変換することも、考慮することができる。
【0228】
本発明の実施形態によって送達される第VII因子の種類
本発明の実施形態によって、治療用調製物100を含むいくつかの種類の第VII因子を使用送達し得る。様々な実施形態では、治療用調製物100に含まれる第VII因子の種類は、通常、ヒト第VII因子または第VIIa因子を含み、天然に存在する形態または組換え形態であり得る。前者には、ヒト血漿に由来する第VII因子または第VIIa因子が含まれる。後者は、野生型の活性と比較して同じまたはより高い生物学的活性を有するが、挿入、欠失、または置換1つ以上のアミノ酸によって野生型第VII因子または第VIIa因子とは異なる野生型第VII因子または第VIIa因子の変異体を含む。本発明の実施形態によって使用され得る第VII因子の特定の商業的種類には、以下に記載されるNOVOSEVEN(登録商標)、NOVOSEVENRT(登録商標)、およびARYOSEVEN(登録商標)が含まれるが、これらに限定されない。これらの形態および他の形態の第VII因子は、様々な方法で、例えば、ヒト血漿からの非凍結沈降分画から、または細胞からもしくはトランスジェニック動物からの遺伝子工学によって取得/産生することができる。特定の実施形態によれば、ヒト第VII因子は、このタンパク質を産生するように遺伝子操作された、非ヒトトランスジェニック哺乳動物の乳汁中で産生される。好ましくは、それは、トランスジェニックウサギまたはヤギの乳汁である。乳腺による第VII因子の分泌は、トランスジェニック哺乳動物の乳汁への分泌を可能にし、第VII因子組織依存的な発現の制御を伴う。そのような制御方法は、当技術分野でよく知られている。発現制御は、動物の特定の組織へのタンパク質の発現を可能にする配列を使用して実行される。これらには、プロモータ配列WAP、β-カゼイン、β-ラクトグロブリン、およびシグナルペプチド配列が含まれる。特に、トランスジェニック動物の乳汁からの目的のタンパク質の抽出プロセスは、特許である欧州特許EP0264166に記載されている。
【0229】
NOVOSEVENおよびNOVOSEVEN RT
1つ以上の実施形態によれば、デバイス10の実施形態によって送達される第VII因子の種類は、血友病患者の制御不能な出血についてFDAの承認を受けた、組換え型のヒト第VIIa因子(NovoNordisk Corporationから入手可能)であるNOVOSEVEN(登録商標)に対応し得る。それはまた、NovoNordiskからも入手可能なNOVOSEVEN(登録商標)RTとして知られるNOVOSEVENの変異体にも対応し得る。特に、NOVOSEVENRTは、室温で製造されており、それが、冷蔵せずに貯蔵されることを可能にする。関連するまたは追加の実施形態では、それは、AryogenPharmedから入手可能なARYOSEVEN(登録商標)などの第VIIa因子のバイオシミラに対応し得る。
【0230】
NOVOSEVENの概要の要約が提供され、この概要はまた、NOVOSEVENRT(登録商標)にも適用される。NOVOSEVENは、406個のアミノ酸残基(MW 50Kダルトン)からなるビタミンK依存性糖タンパク質である。組換え型であるが、NOVOSEVENは、構造的にヒト血漿由来の第VIIa因子に類似している。血友病対先天性第VII因子欠乏症の治療のための投与を比較すると、NOVOSEVENの薬物動態プロファイルは、異なる。NOVOSEVENの処方情報でNovoNordiskによって報告された臨床研究によると、NOVOSEVENの単回投与薬物動態(17.5、35、および70μg/kg)は、血友病AまたはBの15人の被験者で用量に比例した挙動を示した。定常状態での中央値(メディアン)見掛け分布容積は、103mL/kg(範囲78~139)であった。中央値(メディアン)クリアランスは、33mL/kg/hr(範囲27~49)であった。平均滞留時間は、3.0時間(範囲2.4~3.3)であり、T1/2は、2.3時間(範囲1.7~2.7)であった。中央値(メディアン)インビボ血漿回収は、44%(30~71%)であった。第VII因子欠乏症の治療に関する臨床試験では、体重1kg当たり15および30μgの用量でのNOVOSEVENの単回投与薬物動態は、用量依存性パラメータ、すなわち、全身クリアランス(70.8~79.1mL/hr×kg)、定常状態での分布の容積(280~290mL/kg)、平均滞留時間(3.75~3.80hr)、および半減期(2.82~3.11hr)に関して使用された2つの用量の間に大きな相違を示さなかった。平均インビボ血漿回収率は、約20%(18.9%~22.2%)であった。
【0231】
NOVOSEVENおよびNOVOSEVENRTの投与レジメン
後天性血友病および先天性第VII因子欠乏症の患者に対するNOVOSEVENおよびNOVOSEVENRTの投与レジメンについて、各凝固障害の理論的根拠とともに説明する。これらのレジメンは、NOVOSEVENおよびNOVOSEVENRTの両方に適用される。血友病患者の治療のためのNOVOSEVENまたはNOVOSEVENRTの推奨用量は、止血が達成されるまで2~3時間ごとに繰り返される患者体重1kg当たり70~90μgの範囲にある。したがって、70kgの患者の場合、必要な用量は、2~3時間ごとに4.9~6.3mgのNOVOSEVEN rFVIIaである。腹膜腔内送達によるFVIIのバイオアベイラビリティが約50%であることを考慮すると、70kgの患者の平均投与は、2~3時間ごとに9.8~12.6mgの範囲にある。約3mg~9mgの間の薬物を運ぶように構成されたカプセル20の実施形態では、これは、2~3時間ごとに約1~3カプセルになる。
【0232】
先天性第VII因子欠乏症の患者の場合、NOVOSEVENまたはNOVOSEVENRTの推奨用量は、4時間ごとに15~30μg/kg体重である。したがって、70kgの患者の場合、薬物の必要用量は、4時間ごとに1.05~2.10mgの範囲にある。腹膜腔内送達による第VII因子のバイオアベイラビリティの低下(50%)を考慮すると、NOVOSEVENまたはNOVOSEVENRTの必要用量は、4時間ごとに約2.10~4.20mgである。約1mg~4mgの間の薬物を運ぶように構成されたカプセル20の実施形態では、これは、4時間ごとに約1~2カプセルになる。
【0233】
第IX因子を含む治療用組成物の実施形態
本明細書で論じられるように、本発明の様々な実施形態は、先天性および後天性血友病などの様々な凝固障害の治療のための第IX因子などの凝固因子を含む治療用組成物を提供する。したがって、第IX因子化合物について簡単な説明を提示する。凝固第IX因子(FIX)は、凝固カスケードの重要な要素であり、損傷に対する止血反応の原因物質である。それは、肝臓で、57,000の分子量の一本鎖糖タンパク質として合成される。FIXの欠乏は、血友病Bにつながる。FIXは、内因性凝固経路の活性化第IX因子(FIXa)によって活性化される。第VIIIc因子と組み合わせたFIXaは、第X因子(FX)をXaに活性化することによって凝固カスケードを促進し、その結果、プロトロンビンのトロンビンへの変換が生じ、フィブリン血餅の形成を引き起こす。FIXの活性化は、2つのステップで構成され、最初に、内部ペプチド結合が切断され、その結果、ジスルフィド結合(複数可)によって架橋された2本鎖中間体の形成が生じる。次に、重鎖のアミノ末端領域の第2の特異的ペプチド結合が切断され、活性化第IX因子(FIXa)を形成する。FIX療法は、血友病に苦しむ患者の止血を一時的に回復させることが示されている。現在市場で入手可能ないくつかのFIX代替生成物および治療法がある。それらには、以下、すなわち、Alphanine SD、Alprolin、Bebulin、Bebulin VH、Benefix、Idelvion、Ixinity、Immunine、Mononine、Profilnine SD、Proplex、およびRixubisが含まれる。上記の種類の第IX因子のうちの5つの簡単な説明を以下に提示する。
【0234】
Mononine(CSL Behring)
Mononine(登録商標)は、CLS Behringから入手可能な第IX因子のヒト由来の形態である。それは、イムノアフィニティークロマトグラフィを使用して、外来の血漿由来のタンパク質から精製される。具体的には、FIXに対するマウスモノクローナル抗体は、FIXを捕捉および抽出するための親和性リガンドとして使用される。Mononineは、静脈内に注入される。Mononine中のFIXの投与量は、患者の体重および所望のFIX(IU/dL)に依存する。Mononineの1ml製剤は、100IU(各IUは、1つの活性FIXを表す)のFIX、マンニトール、ポリソルベート80、ヒスチジン、水酸化ナトリウム、および/または塩酸で構成されている。
【0235】
血友病Bの治療にMononineを使用することについてBehringが実施した2つの臨床研究(患者、n=81)があり、Mononineの処方情報で報告されている(http://labeling.cslbehring.com/pi/us/mononine/en/mononine-prescribing-information.pdfを参照)研究は、Mononineの安全性および有効性の両方を評価した。血友病B患者への、様々であるがかなりの量の他の肝臓依存性血液凝固タンパク質(例えば、第II因子、第VII因子、および第X因子)を含んだFIX複合体濃縮物の注入は、注入されたIU/kg体重当たり約0.57~1.1IU/dL上昇の範囲に及ぶFIX回復をもたらし、第IX因子の血漿半減期は、約23時間~31時間の範囲に及んだ。5人の患者(6%)が副作用を報告した。36人の被験者に投与された用量は、71~161IU/kgの範囲に及んだ。平均回復は、Mononineの用量が増加するにつれて減少する傾向があった。すなわち、75~95IU/kgを超える用量で1.09±0.52K(n=38)、95~115IU/kgを超える用量で0.98±0.45K(n=21)、115~135IU/kgを超える用量で0.70±0.38K(n=2)、135~155IU/kgを超える用量で0.67K(n=1)、155IU/kgを超える用量で0.73±0.34K(n=5)。これらの高用量を受けた36人の被験者のうち、Mononineとの関係の可能性がある有害な経験を報告したのは1人(2.8%)のみであった(「集中の困難」、被験者は回復した)。いかなる患者についても、血栓形成性の合併症は観察または報告されていなかった。ごく一部の患者が過敏性反応を示した。アナフィラキシーを含む。他の反応には、頭痛、吐き気、発熱、悪寒、紅潮、嘔吐、うずき、倦怠感、およびじんましんが含まれるが、これらに限定されない。投与レジメンは、小手術および/または大手術を受けた患者の止血中のFIXレベルに依存する。Mononineの薬物動態(PK)および薬力学(PD)データは、報告されていない。
【0236】
Idelvion(CSL Behring)
CLS Behringから入手可能であるIdelvionは、組換えアルブミンと融合した組換え型第IX因子である。この融合型の薬物は、Idelvionの第IX因子の半減期を、血漿由来のFIXの半減期の数倍に増加させる。例えば、75IU/kg Idelvionの単回投与の場合、T1/2は、104時間であると判定された。Cmaxは、82IU/dLであると判定されたが、クリアランス(Cl)率は、0.84mL/h/kgであった。平均分布容積(Vss)は、1.20dL/kgであると決定された。全体として、IdelvionのPKパラメータは、単回投与と反復投与との間で比較した場合に類似していた。日常的な予防の場合、患者(>12歳)の投与量は、7日ごとに約25~40IU/kg体重である。出血エピソードの制御および予防のための投与量は、患者の状態だけでなく、様々なパラメータ(例えば、体重、所望のFIX上昇)に依存する。
【0237】
Rixubis(Baxter pharmaceuticals)
Rixubis(登録商標)(BAX326としても知られている)は、成人および子どもの血友病の治療に使用される、Baxter Pharmaceuticalsから入手可能な組換え型凝固第IX因子である。BAX326は、浮遊培養で組換えチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞クローンを使用して開発された。そのアミノ酸配列は、Ala-148対立遺伝子型pdFIX(Immunine)のものと同一であり、その構造的および機能的特徴も同様である。FIXを分泌するCHO細胞株は、アフィニティークロマトグラフィによって精製される。Rixubisの比活性は、タンパク質1ミリグラム当たり200IUを超えると判定された。Rixubisの製剤は、L-ヒスチジン、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、マンニトール、スクロース、およびポリソルベート80で構成されている。投与後、Rixubisは、FIXの血漿レベルを上昇させ、(インビトロトロンボプラスチン時間)aPTTを低下させることにより、血友病患者の凝固障害を一時的に修正する。平均Cmaxは、0.95IU/dLであると判定されたが、平均クリアランス率(Cl)は、6.0mL/kg/hrであった。平均見掛けの分布容積(Vss)は、178.6mL/kgであった。半減期は、25.4時間と測定された。上記のPKデータは、Rixubisの反復投与に関するものである。12歳を超える患者の推奨用量は、0.7IUの血漿(正常の0.7%)である。
【0238】
AlphaNine SD(Alpha Therapeutic Corporation)
凝固第IX因子(ヒト)であるAlphaNine(登録商標)SDは、ヒト血漿に由来する第IX因子の精製された、溶媒界面活性剤で処理された、ウイルス濾過された調製物である。それは、最低150IUの第IX因子/mgタンパク質を含み、第VII因子(プロコンバーチン)、第II因子(プロトロンビン)、および第X因子(スチュアートプロワー因子)は、検出限界未満(IU第IX因子当たり、0.04未満の第VII因子単位、0.05未満の第II因子単位、および0.05未満の第X因子単位)である。AlphaNine SDは、静脈内投与のみを目的とした無菌の凍結乾燥調製物である。各バイアルは、単回投与容器である。AlphaNine SDは、国際単位(IU)で表される第IX因子効力でラベル付けされている。AlphaNine SD調製物には、0.04単位のヘパリン、0.2mgのデキストロース、1.0μgのポリソルベート80、および0.10μgのトリ-n-ブチルホスフェート/第IX因子のIUが含まれている。防腐剤は含まれていない。AlphaNine SDは、総タンパク質1mg当たり150IU以上の第IX因子活性を含む第IX因子の精製された調製物である。AlphaNine SDには、非治療レベルの第II因子、第VII因子、および第X因子が含まれている。
【0239】
BeneFIX(Pfizer)
BeneFIX(登録商標)、すなわち凝固第IX因子(組換え)は、組換えDNA技術によって産生された精製タンパク質である。生成物は、静脈内注射用に再構成されることを目的とした、無菌の非発熱性の凍結乾燥粉末調製物として処方されている。それは、国際単位(IU)で表される、ラベル付けされた量の第IX因子活性を含む使い捨てバイアルで入手可能である。各バイアルには、名目上250、500、1000、2000、または3000IUの組換え凝固因子IXが含まれている。効力(IU)は、第IX因子濃縮物の世界保健機関(WHO)国際基準でインビトロ一凝固一段法を使用して判定される。1IUは、プールされた正常なヒト血漿1mLに存在する第IX因子活性の量である。凍結乾燥された薬物生成物の再構成後、賦形剤の濃度は、塩化ナトリウム、L-ヒスチジン、0.8%スクロース、グリシン、およびポリソルベート80である。BeneFIXの比活性は、タンパク質1ミリグラム当たり200IU以上である。それは、Ala148対立遺伝子型のヒト第IX因子と同一である一次アミノ酸配列を有し、内因性第IX因子と同様の構造的および機能的特徴を有する。BeneFIXは、広範囲に特徴づけられる、遺伝子操作されたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株によって産生される。CHO細胞株は、組換え第IX因子を、定義された細胞培養培地に分泌し、組換え第IX因子は、クロマトグラフィ精製プロセスによって精製される。
【0240】
特定の種類の第IX因子の投与レジメン
第IX因子の標準的な投与レジメンは、次の式、体重(kg)×第IX因子の血漿濃度の所望の増加(例、%またはIU/dL血漿)×第IX因子の実際の増加の逆数(IU/kg体重当たりのIU/dL血漿)を使用して計算され得る。第IX因子欠乏症患者の毎日の予防的治療の場合、Mononineの推奨される投与レジメンは、24時間ごとに20~30IU/kgである。したがって、70kgの成人の場合、これは、1400~2100IUになる。また、Mononineの第IX因子の比活性は、約190IU/mgであるため。70kgの人の範囲に必要な第IX因子の重量は、1日当たり約7mg~10.6mgである。カプセル20を含む経口送達デバイス10の実施形態は、カプセルに含まれる組織貫通部材140の数に応じて、1錠剤当たり3~9mgの治療薬(例えば、凝固因子)を送達するように構成され得る。約3mgの薬物を含むカプセル20の実施形態を使用すると、これは、1日当たり約3~4カプセルになり、1錠剤当たり4mgの場合、それは、1日当たり2~3カプセルになる。様々な実施形態では、所望の送達用量は、第IX因子の第1の用量(例えば、5mg)を送達するように構成された第1のカプセルによって達成され得、第2のカプセルは、第2の用量(例えば、2mg)を送達するように構成され得る。複数のデバイス10sのそのような実施形態は、第IX因子または本明細書に記載の他の凝固因子の送達のための毎日の投薬レジメンとして構成され得る。上記の計算は、市販の形態の第IX因子の効力(例えば、IU/mg)に基づいている。第VIII因子について前述したように、静脈内注射に対する腹膜腔内投与のバイオアベイラビリティ薬物の低下を考慮するように調整をなすことができる。
【0241】
Rixubisなどのいくつかの組換え型の第IX因子は、週に2回、40~60IU/kg体重(例えば、70kgの被験者、2800IU~4200IU)の投与量で投与される。Rixubisの比活性は、200IU/mg(投与量、0.25mg/kg)と報告されている。したがって、これは、隔週で14mg~21mgの第IX因子タンパク質になる。3~7mgの用量範囲を有するデバイス10の実施形態を使用すると、これは、週に2回、約2~7カプセルになる。毎日を含む他の投与スケジュールも企図される。したがって、例えば、1カプセル当たり3mgの用量および1週間当たり21mgの場合、患者は、1日当たり1カプセルを服用し得る。3mgのカプセルおよび1週間当たり42mgの場合、これは、1日当たり2カプセルになる。
【0242】
長時間作用型のIdelvionまたはAlprolix(55~84IU/mgの比活性を有する)の場合、薬物の投与は、それほど頻繁ではない。75IU/kg/week(70kgの患者の場合、約70mg/week)の初期用量が推奨され、徐々に100IU/kg(70kgの患者の場合は約100mg/weekになる)に増やすことができる。AlphaNineの場合、70kgの患者の投与量は、2800IU(70kgの患者、18.6mg/weekのAlphaNine)になる。同様の投与量は、BeneFIXなどの他のFIXに複製される。例えば、Benefix(FIX)療法(2000IU)を受けている70kgの人は、10mgのタンパク質を必要とする。投与レジメンは、患者の予防に依存する。Pfizerは、処方情報で、日常的な予防のために、BeneFIXが週2回、72.5IU/kgの投与量で投与され、これは、約0.36mg/kgの患者の体重になると報告している。70kgの患者の場合、これは、約25mg/weekまたは50mg/weekの用量になる。(複数の組織貫通部材を使用して)8~9mgの薬物を有するカプセルの場合、これは、週に2回約3カプセル、または毎日投与される場合は、1日当たり約1カプセルになる。
【0243】
第VIII因子について前述したように、第IX因子生成物の投与量の調整は、腹膜腔内に送達された場合の上記の市販形態のいずれかにおける第IX因子のバイオアベイラビリティの低下を考慮するように、容易になすことができる。
【0244】
第X因子を含む治療用組成物の実施形態
上記のように、本発明の様々な実施形態は、先天性および後天性血友病などの様々な凝固障害の治療のための第X因子を含む治療用組成物を提供する。したがって、ここで、第X因子化合物について簡単な説明を提示する。第X因子(EC 3.4.21.6)は、凝固カスケードに関与するセリンプロテアーゼである。それは、肝臓で合成されるビタミンK依存性タンパク質である。FX遺伝子(F10)は、22kbの長さで、F7遺伝子の2.8kb下流の13q34-terに位置している。コード配列は、他のビタミンK依存性タンパク質と相同であり、8つのエクソンに分割され、その各々が、タンパク質内の特定のドメインをコードし、エクソン1は、シグナルペプチドをコードし、エクソン2は、プロペプチドおよびγ-カルボキシグルタミン酸(Gla)ドメインをコードし、エクソン3は、芳香族アミノ酸スタックドメインをコードし、エクソン4および5は各々、表皮成長因子様領域をコードし、エクソン6は、活性化ドメインをコードし、エクソン7および8は、触媒ドメインをコードする。成熟二本鎖型のFXは、ジスルフィド結合によって結合された、139個のアミノ酸の軽鎖および重鎖で構成されている。軽鎖には、Glaドメインおよび2つの表皮成長因子ドメインが含まれており、重鎖には、触媒セリンプロテアーゼドメインが含まれている。完全な59kDaの二本鎖タンパク質は、10μg/mlの濃度で血漿中を循環する。
【0245】
活性型第X因子(FXaとして知られている)は、チモーゲンが重鎖で切断され、His236、Asp228、およびSer379触媒部位を含む52残基の活性化ペプチドを放出するときに産生される触媒セリンプロテアーゼである。活性化は、リン脂質表面のカルシウムイオンとの組織因子:FVIIa複合体を介する外因性経路を通して起こる。内因性経路活性化は、リン脂質表面のカルシウムイオンの存在下でセリンプロテアーゼFIXaおよびその補因子FVIIIaを通して起こる。第Xa因子は、プロトロンビンの最も重要な活性化因子であり、プロトロンビンを切断して、FVa、Ca++、およびリン脂質との複合体にトロンビンを生成する。FXaは、FVおよびFVIIIを活性化することもできる(Brown DL 2008)。FXaは、アンチトロンビンとの複合体を形成することによって阻害され、複合体は、循環から急速に除去される。
【0246】
第X因子欠乏症は、常染色体劣性であり、世界中の一般人口の500000人に1人~1000000人に1人に影響を及ぼす。欠乏症には2つの分類された種類があり、FXタンパク質のレベルおよび活性の両方が低下する種類I、およびタンパク質のレベルは影響を受けないが、活性が低下する種類IIである。症状は、機能的なFX循環レベルに応じて、軽度から中等度、および重度まである幅広い範囲の重症度にある。
【0247】
FX欠乏症の現在の治療法は、ヒト血漿から抽出された複合体による補充療法である。様々な量で他の凝固因子と複合体化したFXを含む市販の生成物には、Factor X P(CSL Behring)およびCoagadex(BDI Pharma)が含まれる。次に、これらの化合物の各々の説明を、投与レジメンおよび理論的根拠とともに説明する。
【0248】
Coagadex
Coagadex(登録商標)は、BDI Pharmaによって製造されている。Coagadexには、約100IU/mLの凝固第X因子、および次の不活性成分、すなわち塩化物、リン酸塩、クエン酸塩、ショ糖、およびナトリウムが含まれている。Coagadexの比活性は、通常、タンパク質1mg当たり80~137IUである。治療の用量および期間は、第X因子欠乏症の重症度、出血の場所および程度、ならびに患者の臨床状態に依存する。第X因子レベルの所望のインビボピーク増加を達成するための用量は、次の式、用量(IU)=体重(kg)×所望の第X因子上昇(IU/dL)×0.7を使用して計算され得る。したがって、70kgの患者の場合、投与される第X因子の投与量は、1960IUであると判定され、所望の第X因子の上昇は、約40%であると推定されている。10~40%の第X因子の血漿レベルは、止血効果があると説明されている。24~40時間の半減期に基づくと、継続的な治療が必要な場合は、通常、24時間ごとの第X因子の投与で十分である。
【0249】
上記の推定に基づいて、1960IUの第X因子タンパク質の量は、14.3mgであると判定され、凝固因子Xの比活性は、137IU第X因子/mgタンパク質であると考えられている。腹膜腔内送達のバイオアベイラビリティがIV投与に対して約50%であることを考慮すると(腹膜腔内送達の投与量を2倍にする必要がある)、70kgの患者に必要な投与量は、24時間ごとに約28.6mgになる。体重50kgの患者の場合、用量は、約20mgであり、体重80kgの患者の場合、用量は、33mgである。この20~33mgの用量範囲を考えると、カプセル当たり約4~9mgの間の薬物を有する(例えば、2から3つの組織貫通部材140に含まれる)デバイス10/カプセル20の実施形態の場合。これは、24時間ごとに約2~8カプセルになる。
【0250】
Factor X P(Behring)
Factor X P(登録商標)は、CLS Behringによって製造され、約600~1200IUヒト凝固因子Xを含む注射用溶液の粉末および溶媒として生じる。製剤はまた、血友病の治療の重要な凝固因子である600IUのヒト凝固因子IXも含む。第X因子の比活性は、4~60IU第X因子/mgタンパク質および3~38IU第X因子/mgタンパク質の間で異なる。治療の用量および期間は、第X因子欠乏症の重症度、出血の場所および程度、ならびに患者の臨床状態に依存する。第X因子の必要用量の計算は、体重1kg当たり1単位FXが、血漿第X因子活性を、通常の活性の約1.5%上昇させるという経験的発見に基づいている。必要な投与量は、次の式、投与量(IU)=体重[kg]×所望の第X因子上昇[%またはIU/dl]×0.7を使用して判定される。したがって、70kgの患者の場合、投与される第X因子の投与量は、1960IUであると判定され、所望の第X因子の上昇は、約40%であると推定されている。10~40%の第X因子の血漿レベルは、止血効果があると説明されている。24~40時間の第X因子の半減期に基づくと、継続的な治療が必要な場合は、通常、24時間ごとのFXの投与で十分である。上記の推定に基づいて、1960IUの第X因子タンパク質の量は、32.6mgであると判定され、凝固因子Xの比活性は、60IU第X因子/mgタンパク質であると考えられている。IV投与に対して腹膜腔内送達のバイオアベイラビリティが約50%であることを考慮すると、70kgの患者に必要な投与量は、24~40時間ごとに約65.2mgの薬物になる。1カプセル当たり約5~9mgの薬物を有するデバイス10/カプセル20の実施形態の場合、これは、24~40時間ごとに約7カプセルになる。
【0251】
本明細書に記載の凝固因子または他の凝固タンパク質の生物学的同等物の実施形態
本発明の様々な実施形態はまた、本明細書に記載の凝固因子(例えば、第VII因子、第VIIa VIII因子、第IX因子、および第X因子を含む)ならびにそれらの類似体および誘導体とは異なるが、それでもなお、特定の凝固因子(例えば、第VIII因子)の生物活性の10%以内、より好ましくは5%以内、さらにより好ましくは2%以内である同じまたは同等のレベルの生物活性(例えば、凝固機能)を有する、アミノ酸配列を有するタンパク質を含む凝固または他のタンパク質の組成および使用を企図する。第VII因子および第VIIa因子の適切な類似体、ならびにそれらを作製するための方法には、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願第12/354,509号に記載されているものが含まれる。第VIII因子の適切な類似体およびそれらを作製するための方法には、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,112,950号に記載されているものが含まれる。第IX因子の適切な類似体およびそれらを作製するための方法には、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願第12/302,167に記載されているものが含まれる。第X因子の適切な類似体およびそれらを作製するための方法には、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,905,846号に記載されているものが含まれる。そのような変異体類似体凝固因子は、親凝固タンパク質(例えば、第VIII因子)のアミノ酸配列と比較した場合、アミノ酸(例えば、ロイシンかリジンなど)の1つ以上の追加、削除、または置換を含み得るが、それでもなお、凝固カスケードで機能する変異体の能力に関して、記載された凝固タンパク質のそれと本質的に同等である生物学的活性(例えば、凝固機能)を示す。特定の実施形態では、変異体は、第VIII因子分子のBドメインにおける欠失を含み得る。変異体はまた、Fc融合またはPEG化を介した第VIII因子分子の修飾を含み得、そのような変異は、選択された第VIII因子分子の循環半減期を増加させるために選択される。同様のアプローチを使用して、第VII因子、第IX因子、および第X因子のうちの1つ以上の循環半減期を増加させ得る。
【0252】
腸壁または周囲の組織への凝固因子または他の凝固タンパク質の送達のための薬物動態学的測定基準。
腸壁(例えば、小腸)または周囲組織(例えば、腹膜組織)に1つ以上の凝固因子(例えば、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子など)または他の凝固タンパク質を送達する本発明の実施形態はまた、1つ以上の薬物動態測定基準に関する利点も提供する。この点に関して、注目すべき薬物動態測定基準には、投与後の薬物のピーク血漿濃度であるCmax、Cmaxに到達するための時間であるTmax、および薬物の血漿濃度が、Cmaxに到達した後にCmax値の半分に到達するのに必要な時間である、T1/2が含まれる。これらの測定基準は、当技術分野で知られている標準的な薬物動態測定技術を使用して測定することができる。例えば、1つのアプローチ、血漿サンプルは、嚥下可能なデバイスの使用によるか、または非血管注射によるか、いずれかによる凝固因子または他の凝固タンパク質または他の治療薬組成物の投与の開始およびその後の設定された時間間隔(例えば、1分、5分、1/2時間、1時間など)で採取され得る。次いで、血漿中の薬物の濃度を、GC-Mass Spec、LC-Mass Spec、HPLC、または凝固因子などの特定の薬物に適合させることができる様々なELISA(酵素結合免疫吸着測定法)などの1つ以上の適切な分析方法を使用して測定することができる。また、様々な活性アッセイを使用して、薬物濃度(薬物動態)を品質測定し、また薬物の薬力学を測定することもできる。プロトロンビン時間などの凝固時間測定を含む凝固因子のそのようなアッセイの1つのグループ。次いで、血漿サンプルからの測定値を使用して、濃度(生物活性を通して直接導き出されるおよび/または間接的に導き出される)対時間曲線(本明細書では濃度プロファイルとも呼ばれる)を作成することができる。濃度曲線のピークは、Cmaxに対応し、これが発生する時間は、Tmaxに対応する。濃度は、Cmaxに達した後、最大値(すなわちCmax)の半分に到達する、曲線の時間は、T1/2に対応し、この値はまた、薬物の排出半減期としても知られている。Cmaxの判定のための開始時間は、非血管注射の場合に注射が行われる時間、および嚥下可能なデバイスの実施形態が1つ以上の組織貫通部材(薬物を含む)を小腸または消化管の他の場所(例えば、大腸)に前進させる時点に基づき得る。後者の場合、この時間は、外部制御信号(例えば、RF信号)に応答して、組織貫通部材を腸壁に展開する嚥下可能なデバイスの遠隔制御された実施形態を含む1つ以上の手段を使用して、または組織貫通部材が展開されたときに体外で検出可能なRFまたは他の信号を送信する嚥下可能なデバイスの実施形態について、判定することができる。超音波または透視を含む1つ以上の医用画像診断法など、小腸への組織貫通部材の展開の検出のための他の手段が企図される。これらの研究のいずれかにおいて、適切な動物モデル、例えば、イヌ、ブタ、ラットなどを使用して、ヒトの薬物動態学的応答をモデル化することができる。
【0253】
したがって、様々な実施形態は、凝固因子(例えば、第VII因子、第VIII因子、第IX因子または第X因子)または他の凝固タンパク質または他の治療薬を含む治療組成物100(本明細書では調製物とも呼ばれる)を提供する。組成物は、経口摂取後の腸壁への挿入に適合されており、挿入時に、組成物は、凝固因子または他の凝固タンパク質を腸壁から血流に放出して、血管外注射された用量の凝固因子または他の凝固タンパク質よりも速く、Cmaxに到達する、すなわち、血管外に注射された用量の凝固因子または他の凝固タンパク質よりも短い期間(例えば、より小さいTmax)で、挿入された形態の凝固因子または他の凝固タンパク質のCmaxに到達する。腸壁に送達される組成物中の凝固因子または他の凝固タンパク質の用量、および血管外注射によって送達される用量は、これらの結果を達成するために比較可能であり得るが、そうである必要はないことに留意されたい。様々な実施形態では、組成物は、血管外に注射された用量の凝固因子のtmaxの約80%、または50%、または30%、または20%、または10%である、(例えば、腸壁または周囲組織(例えば、小腸の壁)からの血流への凝固因子の放出によって)凝固因子または他の凝固タンパク質のTmaxを達成するように構成されている。そのような血管外に注射された用量の凝固因子は、例えば、皮下注射または筋肉内注射であり得る。特定の実施形態では、腸壁または周囲組織への挿入によって凝固因子または他の凝固タンパク質を送達することによって達成されるCmaxは、凝固因子または他の凝固タンパク質が、腸壁に挿入されることなく、例えば、ピルまたは凝固因子または他の凝固タンパク質の他の慣習的な経口形態によって、経口的に送達されるときに達成されるCmaxよりも、5、10、20、30、40、50、60、70、80、または100倍さえも大きいなど、実質的に大きい。いくつかの実施形態では、凝固因子(または他の凝固タンパク質)組成物は、約1日~60日の範囲の期間を含み得る凝固因子(または他の凝固タンパク質)の長期放出を生成するように構成されており、特定の実施形態は、6~12時間、6~24時間、12~24時間、12~36時間、1~2日、1~3日、1~5日、1~10日、1~20日、2日、3日、5日、7日、10日、15日、20日、30日、40日、45日、50日、60日である。また、組成物は、選択可能なT1/2での凝固因子(または他の凝固タンパク質)の長期放出を生成するように構成することができる。例えば、選択可能なT1/2は、6、または9、または12、または15、または18、24、36,48、または60時間であり得る。
【0254】
体重、年齢、状態、服用している他の薬物などの要因に応じて、特定の患者に適した凝固因子(または他の凝固タンパク質)の任意の用量を使用し得る。例えば、投与される、凝固因子(例えば、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、または第X因子)または他の凝固タンパク質の用量は、約1~10mgの範囲に及び得、特定の範囲は、1~5、1~4、2~4、2~5、および2~3mgであり、個々の用量は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、および10mgである。皮下投与された場合、凝固因子は通常、約130時間の血流中のTmaxを有する。したがって、本明細書に記載の治療用凝固因子(例えば、第VIII因子)組成物で投与される場合、凝固因子のTmaxは、皮下注射した場合の凝固因子のTmaxの、例えば、約80%、または50%、または30%、または20%、または10%に短縮される。
【0255】
様々な実施形態はまた、経口摂取後の腸壁および/または腹壁への挿入に適合した凝固因子(または他の凝固タンパク質)組成物を提供し、挿入時に、組成物は、凝固因子(または他の凝固タンパク質)を、腸壁または周囲の組織(例えば、腹膜組織)から血流中に放出して、腸壁に挿入されない凝固因子(または他の凝固タンパク質)の経口摂取用量のT1/2よりも大きいT1/2を達成する。例えば、腸壁に挿入された用量のT1/2は、腸壁に挿入されない用量よりも100、または50、または10、または5倍大きい場合がある。
【0256】
1つ以上の実施形態によれば、凝固因子(または他の凝固タンパク質)は、小腸の壁または腹膜壁などの腸壁で分解するように構成された固体形態の組成物などの固体形態であり得る。また、1つ以上の実施形態によれば、固体形態組成物は、尖った先端などの組織貫通特徴を含み得る。特定の実施形態によれば、固体形態凝固因子(例えば、第VIII因子)組成物は、針またはダーツなどの尖った先端を有するシャフトの形態であり得、組成物が腸壁または腹膜壁に貫通して挿入されることを可能にする。凝固因子(または他の凝固タンパク質)は、少なくとも1つの生分解性材料を含み得、および/またはPLGAなどの生分解性ポリマーまたはマルトースなどの糖を含む少なくとも1つの医薬賦形剤を含み得る。他の実施形態では、凝固因子(または他の凝固タンパク質)は、組織貫通部材の実施形態に包まれているか、さもなければ製造されている半固体または液体の形態であり得る。
【0257】
本明細書に記載の凝固因子(または他の凝固タンパク質))組成物の様々な実施形態は、嚥下可能なカプセルで経口送達されるように適合させることができる。特定の実施形態では、そのような嚥下可能なカプセルは、第1の構成および第2の構成を有する機構に動作可能に結合されるように適合され得、凝固因子(または他の凝固タンパク質)組成物は、第1の構成では、カプセル内に含まれ、第2の構成では、カプセルから出て腸壁および/または周囲組織(例えば、腹膜組織)に前進する。そのような動作可能に結合された機構は、拡張可能部材、拡張可能なバルーン、弁、組織貫通部材、拡張可能なバルーンに結合された弁、または拡張可能なバルーンに結合された組織貫通部材のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0258】
いくつかの実施形態では、凝固因子(例えば、第VII因子、VIII因子、IXまたはX因子)または他の凝固タンパク質は、組織貫通部材の内腔内に送達されるように構成され得、および/または凝固因子(または他の凝固タンパク質)組成物は、腸壁に前進可能な組織貫通部材として成形され得る。組織貫通部材は、腸壁内に完全に含まれるようにサイズ設定され得、および/または腸壁を貫通するための組織貫通特徴を含み得、および/または腸壁内に組織貫通部材を保持するための保持特徴を含み得る。保持特徴は、例えば、棘を含み得る。いくつかの実施形態では、組織貫通部材は、組織貫通部材の表面への力(例えば、機械的力)の付与により、腸壁または周囲の組織(例えば、腹膜組織)に前進するように構成されている。望ましくは、組織貫通部材は、機械的または他の力(例えば、電磁力)の付与により腸壁および/または貫通部材の表面に完全に前進するのに十分な剛性および/またはコラム強さを有する。様々な実施形態では、組織貫通部材のコラム強さ/剛性は、約1~20ポンド、7~20ポンド、または8~12ポンドの範囲に及び得、個々の実施形態は、7、8、9、10、および11ポンドである。コラム強さは、組織貫通部材の材料選択および直径のうちの1つ以上の選択によって達成することができる。多くの実施形態では、組織貫通部材は、拡張時に力を付与する拡張可能なバルーンまたは他の拡張可能な部材に動作可能に結合されるように構成されている。いくつかの実施形態では、組織貫通部材は、力を付与する構造(例えば、ばね、シャフトなど、または拡張可能なデバイス)に直接結合されるように構成されている。これらの実施形態および関連する実施形態では、組織貫通部材は、力の方向が変化したときに力を付与する構造から分離するように構成されている。
【0259】
本発明の様々な態様はまた、上記のものに加えて、薬剤100の送達のための嚥下可能な送達デバイスの他の実施形態も提供する。1つ以上のそのような実施形態によれば、嚥下可能送達デバイスは、薬剤100を含む1つ以上の組織貫通部材を小腸などの腸の壁に送達するのに使用するための、1つ以上の拡張可能なバルーンまたは他の拡張可能デバイスを含むことができる。ここで図12~20を参照すると、消化(GI)管内の送達部位DSへの薬剤100の送達のためのデバイス110の別の実施形態は、嚥下されて、腸管を通過するようにサイズ設定されたカプセル120、展開部材130、薬剤100を含む1つ以上の組織貫通部材140、展開可能なアライナ160、および送達機構170を含むことができる。いくつかの実施形態では、薬剤100(本明細書では調製物100とも呼ばれる)は、それ自体、組織貫通部材140を含み得る。展開可能なアライナ160は、カプセル内に位置付けられ、カプセルを小腸などの腸と整列させるように構成されている。通常、これには、カプセルの長手方向軸を腸の長手方向軸に整列させる必要があるが、他の整列も企図される。送達機構170は、薬剤100を腸壁に(および、いくつかの実施形態では、腹膜に)送達するために構成されており、通常、拡張可能なバルーンまたは拡張可能部材などの送達部材172を含む。展開部材130は、アライナ160または送達機構170のうちの少なくとも1つを展開するように構成されている。本明細書でさらに説明するように、カプセル壁の全部または一部分は、GI管内の液体との接触によって分解可能であり、それらの液体がデバイス110による薬剤100の送達をトリガすることを可能にする。本明細書で使用される場合、「GI管」は、食道、胃、小腸、大腸、および肛門を指し、「腸管」は、小腸および大腸を指す。本発明の様々な実施形態は、腸管およびGI管全体の両方への薬剤100の送達のために構成および配置することができる。
【0260】
組織貫通部材140を含むデバイス110は、液体、半液体、もしくは固体形態の薬剤100(例えば、本明細書に記載の1つ以上の凝固因子)、または3つすべての組み合わせの送達のために構成することができる。形態がどうであれ、薬剤100は、望ましくは、薬剤が、デバイス110から出て腸壁(小腸または大腸)またはGI管内の他の内腔壁に前進し、次いで腸壁または周囲組織(例えば、腹膜または他の腹膜腔)内で分解して、薬物または他の治療薬101を壁または周囲組織、そして血流内に放出することが可能である材料粘稠度を有する。薬剤100の材料粘稠度は、(小腸の壁または腹膜腔に見られるものなどの体液、例えば、漿膜液中の)調製物の硬度、多孔性、および溶解度のうちの1つ以上を含むことができる。薬剤100の材料稠度は、以下、すなわち、i)製剤を作るために使用される圧縮力、ii)当技術分野で知られている1つ以上の医薬崩壊剤の使用、iii)他の医薬賦形剤の使用、iv)製剤(例えば、微粉化粒子)の粒子サイズおよび分布、ならびにv)当技術分野で知られている微粉化および他の粒子形成方法の使用のうちの1つ以上を選択して使用することで実現することができる。
【0261】
カプセル120は、嚥下して、腸管を通過するようなサイズである。サイズは、送達される薬物の量、ならびに患者の体重および成人か小児かの用途に応じて調整することもできる。通常は、カプセルは、ビタミンと同様の湾曲した端を有する管状の形状を有する。これらの実施形態および関連する実施形態では、カプセルの長さ120Lは、企図された他の寸法を伴う、0.5~2インチの範囲にあり得、直径120Dは、0.1~0.5インチの範囲にあり得る。カプセル120は、内部空間または内部容積124vを規定する外面125および内面124を有するカプセル壁121wを含む。いくつかの実施形態では、カプセル壁121wは、組織貫通部材140の外側への前進のためにサイズ設定された1つ以上の開口126を含むことができる。デバイス110の他の構成要素(例えば、拡張可能な部材など)に加えて、内部容積は、1つ以上の区画またはリザーバ127を含むことができる。
【0262】
カプセルは、製薬分野で知られている様々な生分解性ゼラチン材料から製造することができるが、また、胃での分解(酸などによる)からキャップを保護し、次いで、小腸または腸管の他の領域で見られるより高いpHで分解するように構成された様々な腸溶コーティング120cを含むこともできる。様々な実施形態では、カプセル120は、複数の部分から形成され得、その1つ以上が生分解性であり得る。多くの実施形態では、カプセル120は、本体部分120p”(ここでは本体120p”)およびキャップ部分120p’(ここではキャップ120p)などの2つの部分120pから形成され得、キャップは、例えば、本体の上または下(他の配置も企図される)をスライドすることによって本体に適合する。キャップ120p’などの1つの部分は、第1のpH(例えば、pH5.5)を超えて分解するように構成された第1のコーティング120c’を含み得、本体120p”などの第2の部分は、第2のより高いpH(例えば、6.5)を超えて分解するように構成された第2のコーティング120c”を含み得る。カプセル120の内部124の面および外部125の面の両方は、コーティング120C’および120c”でコーティングされているので、カプセルのいずれかの部分は、選択されたpHを有する流体と接触するまで実質的に保存される。本体120p”の場合、これは、本体120p”の構造的完全性が、バルーン172を本体部分内に保持するために維持され、バルーン130が拡張するまで展開しないことを可能にする。コーティング120C’および120c”は、商標EUDRAGITでEvonik Industriesによって製造されたものなどの様々なメタクリレートおよびエチルアクリレートベースのコーティングを含むことができる。カプセル120のこれらの構成および他の二重コーティング構成は、カプセル120の一方の部分の機構が、カプセルの他方の部分の機構の前に作動されることを可能にする。これは、腸液が、最初に、より低いpHコーティングが分解した部分に入り、次いで、そのような液体に反応するトリガ(分解可能な弁など)を作動させるという事実によるものである。使用において、カプセル120のそのような二重コーティングの実施形態は、小腸の特定の場所(またはGI管の他の場所)への標的化薬物送達、ならびに送達プロセスにおける改善された確実性を提供する。これは、アライナ160などの特定の構成要素の展開が、小腸(例えば、十二指腸)の上部領域で開始するように構成することができ、カプセルが、薬物の(例えば、腸壁への)最適な送達のために、腸内で整列され、ならびにカプセルがまだ小腸または他の選択された場所にある間に腸壁への薬物送達を達成するために、他の構成要素の展開/作動のための十分な時間を提供することを可能にするという事実のためである。
【0263】
上で考察されたように、カプセル120の1つ以上の部分は、好ましい実施形態ではセルロース、ゼラチン材料、およびPLGAを含むことができる様々な生分解性ポリマーを含む、当技術分野で知られている様々な生体適合性ポリマーから製造することができる。他の好適な生分解性材料には、本明細書に記載の様々な腸溶性材料、ならびにラクチド、グリコリド、乳酸、グリコール酸、パラジオキサノン、カプロラクトン、トリメチレンカーボネート、カプロラクトン、それらの混合物および共重合体が含まれる。
【0264】
様々な実施形態では、カプセルの壁120wは、GI管内の液体、例えば小腸内の液体との接触によって分解可能であるように構成されている。好ましい実施形態では、カプセル壁は、胃を通過する間無傷のままであるが、次いで、小腸で分解されるように構成されている。1つ以上の実施形態では、これは、カプセル壁120w上の外側コーティングまたは外側層120cの使用によって達成することができ、これは、小腸に見られるより高いpHでのみ分解し、下にあるカプセル壁を、カプセルが小腸に到達する(その時点で、薬物送達プロセスは、本明細書に記載されているようにコーティングの分解によって開始される)前に、胃内での分解から保護するのに役立つ。使用において、そのようなコーティングは、例えば、小腸の壁内を含む小腸などの腸管の選択された部分における治療薬の標的化送達を可能にする。
【0265】
カプセル20と同様に、様々な実施形態では、カプセル120は、透視、超音波、MRIなどの当技術分野で知られている1つ以上の医用画像モダリティを使用して、デバイスの位置特定のための様々な放射線不透過性、エコー源性、または他の材料を含むことができる。そのような材料は、1つ以上の医用画像モダリティを使用して、腸管内のカプセルの視覚的インジケータを容易に提供するように、カプセル上に別個のバンドまたは他の形状で配置することができる。それらはまた、医師が、カプセルが展開されているかどうかを識別することを可能にするように構成され得る。例えば、一実施形態によれば、バルーンまたは他の拡張可能な部材が拡張するとき、マーカーが引き裂かれ、撮像下で、もはや識別不可能であり、および/または撮像時に異なる形状を有するように、マーカーは、カプセルの中心領域の周りに配置することができる。
【0266】
本明細書でさらに考察されるように、多くの実施形態では、展開部材130、送達部材172、または展開可能なアライナ160のうちの1つ以上は、カプセル120内に適合するように成形およびサイズ設定される拡張可能なバルーンに対応し得る。したがって、考察を容易にするために、展開部材130、送達部材172、および展開可能なアライナ160は、バルーン130、160、および172と呼ばれるが、しかしながら、様々な拡張可能デバイスを含む他のデバイスはまた、これらの要素のために企図され、例えば、様々な形状記憶デバイス(例えば、形状記憶生分解性ポリマースパイアから作られた拡張可能なバスケット)、拡張可能な圧電デバイス、および/またはカプセル120の内部容積124vに対応する拡張された形状およびサイズを有する化学的に拡張可能なデバイスを含み得ることを理解されたい。
【0267】
バルーン130、160、および172のうちの1つ以上は、医療機器分野で知られている様々なポリマーを含み得る。好ましい実施形態では、そのようなポリマーは、低密度PE(LDPE)、線状低密度PE(LLDPE)、中密度PE(MDPE)、および高密度PE(HDPE)、ならびに当技術分野で知られているポリエチレンの他の形態に対応し得る1つ以上の種類のポリエチレン(PE)を含み得る。ポリエチレンを使用するもう1つの実施形態では、材料は、当技術分野で知られているポリマー照射方法を使用して架橋され得る。特定の実施形態では、放射線ベースの架橋を使用して、バルーン材料のコンプライアンスを低下させることにより、バルーンの膨張した直径および形状を制御することができる。放射線の量は、特定の量の架橋を達成して、次に所与のバルーンに対して特定の量のコンプライアンスを生成するように選択することができ、例えば、増加した照射を使用して、より硬く、コンプライアンスの低いバルーン材料を生成することができる。他の好適なポリマーには、PET(ポリエチレンテレフタレート)、シリコーン、およびポリウレタンが含まれ得る。様々な実施形態では、バルーン130、160、および172はまた、医師が、バルーンの位置および物理的状態(例えば、非膨張した、膨張した、または穿刺を確認することを可能にするために、硫酸バリウムなどの当技術分野で知られている様々な放射線不透過性材料を含み得る。バルーン130、160、および172は、バルーンカテーテル技術で知られている様々なバルーンブロー方法(例えば、モールドブロー成形、フリーブロー成形など)を使用して、カプセル120の内部容積124vにほぼ対応する形状およびサイズを有するように製造することができる。様々な実施形態では、バルーン130、160、および172のうちの1つ以上および様々な接続特徴(例えば、接続チューブ)は、単一の型から形成される単一の構造を有することができる。そのような単一構造を採用する実施形態は、デバイス110の1つ以上の構成要素間でより少ない接合を行う必要があるので、製造可能性および確実性が改善されるという利点を提供する。
【0268】
バルーン130、160、および172に好適な形状は、テーパー状または湾曲した端部を有する様々な円筒形状(ホットドッグを含むそのような形状の例)を含む。いくつかの実施形態では、バルーン130、160、および172のうちの1つ以上の膨張したサイズ(例えば、直径)は、カプセルを膨張力から離すために(例えば、フープ応力により)カプセル120よりも大きい場合がある。他の関連する実施形態では、バルーン130、160、および172のうちの1つ以上の膨張したサイズは、膨張したときに、i)カプセル120が、カプセルの周りの小腸の収縮を引き起こす蠕動収縮を誘発するために、小腸の壁と十分に接触し、および/またはii)小腸のひだは可能にするために目立たなくされるようなものであり得る。これらの結果の両方は、カプセルおよび/または送達バルーン172の選択された領域にわたって組織貫通部材40を送達するために、カプセル/バルーン表面と腸壁との間の改善された接触を可能にする。望ましくは、バルーン130、160、および172の壁は薄く、約0.005~0.0001インチの範囲、より好ましくは約0.005~0.0001の範囲の壁厚を有することができ、特定の実施形態は、約0.004、0.003、0.002、0.001、および0.0005である。)さらに、様々な実施形態では、バルーン130、160、または172のうちの1つ以上は、図13Cの実施形態に示されるように、膨張チャンバ160ICおよび延長されたフィンガー160EFを有する入れ子になったバルーン構成を有することができる。膨張チャンバ160ICを接続する接続チューブ163は、ガス168の通過のみを可能にするように狭くすることができ、一方、バルーン130の2つの半分を結合する接続チューブ36は、水の通過を可能にするためにより大きくすることができる。
【0269】
上に示したように、アライナ160は、通常、拡張可能なバルーンを含み、考察を容易にするために、ここでは、アライナバルーン160またはバルーン160と呼ばれる。バルーン160は、上記の材料および方法を使用して製造することができる。非拡張状態および拡張状態(展開状態とも呼ばれる)を有する。その拡張または展開状態では、バルーン160は、カプセル120上の小腸SIの蠕動収縮によって及ぼされる力が、カプセル120の長手方向軸120LAを小腸SIの長手方向軸LAIと平行に整列させるのに役立つように、カプセル120の長さを延長する。これは次に、組織貫通部材140のシャフトを腸壁IWの表面と垂直に整列させて、組織貫通部材140の腸壁IWへの貫通を増強および最適化するのに役立つ。小腸内でカプセル120を整列させることに役立つことに加えて、アライナ160はまた、送達バルーンおよび/または機構がカプセルによって妨げられないように、送達バルーン172の拡張の前に送達機構170をカプセル120から押し出すように構成されている。使用において、アライナ160のこの押し出し機能は、薬物送達が起こり得る前にカプセルの特定の部分(例えば、送達機構を覆っている部分)が分解されるのを待つ必要がないので、治療薬の送達の確実性を改善する。
【0270】
バルーン160は、ポリマーチューブ、またはバルーン160および130を結合するためのチューブ163ならびにバルーン160およびバルーン172を結合するためのチューブ164を含み得る他の流体カップリング162によって、バルーン130および172を含むデバイス110の1つ以上の構成要素に流体的に結合され得る。チューブ163は、バルーン160が、バルーン130からの圧力(例えば、バルーン130内の化学反応物の混合物により生成された圧力)によって拡張/膨張することを可能にし、および/またはそうでなければバルーン130と160との間の液体の通過が、バルーン130および160のうちの一方または両方の拡張のための化学反応を生成するガスを開始することを可能にするように構成されている。チューブ164は、バルーン160によるバルーン172の膨張を可能にするように、バルーン160を172に接続する。多くの実施形態では、チューブ164は、バルーン160によるバルーン172の膨張を制御するように、選択された圧力で開放するように構成されている制御弁155を含むか、または制御弁155に結合されている。したがって、チューブ164は、弁に接続する近位部分164pと、弁からつながる遠位部分164dとを含み得る。通常、近位部分および遠位部分164pおよび164dは、以下に説明されるように、弁ハウジング158に接続されている。
【0271】
弁155は、弁ハウジング158のチャンバ158c内に配置される(代替的に、チューブ164内に直接配置され得る)材料157の三角形または他の形状のセクション156を含み得る。セクション157は、ガスのチューブ164および/または弁室158cの通過を可能にするために、選択された圧力で機械的に分解する(例えば、引き裂かれる、剪断される、層間剥離するなど)ように構成されている。弁155に好適な材料157は、蜜蝋または他の形態の蝋、および選択可能なシール力/破裂圧力を有する医療分野で知られている様々な接着剤を含むことができる。弁取付具158は、通常、チャンバ158cの壁を一緒に密封するか、またはさもなければチャンバを通る流体の通過を妨害するために、材料157のセクション156が配置される(図13Bの実施形態に示されるように)薄い円筒形状の区画(生分解性材料から作られる)を含む。弁155の解放圧力は、セクション156のサイズおよび形状のうちの1つ以上の選択、ならびに材料157の選択(例えば、接着強度、剪断強度などの特性についての)によって制御することができる。使用において、制御弁155は、バルーン172が膨張する前にバルーン160が完全に、またはそうでなければ実質的に膨張するように、バルーン160および172の連続的な膨張を可能にする。これは、次に、組織貫通部材140の展開がカプセル120によって妨げられないように、バルーン172が拡張する前に、バルーン160が、残りの送達機構170とともにバルーン172を、カプセル120から(通常、本体部分120p’から)押し出すことを可能にする。使用において、そのようなアプローチは、組織貫通部材140の腸壁IWへの貫通の確実性を、部材の腸壁IWへの前進が、カプセル壁120wによって妨害されていないため、所望の貫通深さを達成すること、およびカプセル120に含まれるより多くの貫通部材140を送達することの両方の観点から改善する。
【0272】
上記のように、アライナバルーン160の膨張した長さ160lは、カプセル120を、腸の蠕動収縮から小腸の横軸と整列させるようになるのに十分である。アライナ160の好適な膨張した長さ160lは、アライナ160の膨張前のカプセル120の長さ120lの約1/2~2倍の間の範囲を含むことができる。アライナバルーン160に好適な形状は、ホットドッグのような形状などの様々な細長い形状を含むことができる。特定の実施形態では、バルーン160は、第1のセクション160’および第2のセクション160”を含むことができ、第1のセクション160’の拡張は、カプセル120から送達機構170を前進させるように構成されている(通常、第2のセクション160”は、送達バルーン172を膨張させるために使用される。これらの実施形態および関連する実施形態では、第1および第2のセクション160’および160”は、望遠鏡型膨張を有するように構成することができ、第1のセクション160’は、最初に膨張して、機構170をカプセルから(通常、本体部分120p’から)押し出し、第2のセクション160”は、送達部材172を膨張させるために膨張する。これは、第1のセクション160’が第2のセクション160”よりも小さい直径および体積を有するように構成し、第1のセクション160’が最初に膨張し(体積が小さいため)、第2のセクション160”が第1のセクション160’が実質的に膨張するまで膨張しないようにすることによって達成することができる。一実施形態では、これは、セクション160’で最小圧力に達するまでセクション160”へのガスの通過を許可しない、セクション160’および160”を接続する制御弁155(上記)の使用によって容易にすることができる。いくつかの実施形態では、アライナバルーンは、展開するバルーンからの水または他の液体との混合時に反応する化学反応物を含むことができる。
【0273】
多くの実施形態では、展開部材130は、展開バルーン130として知られる拡張可能なバルーンを含む。様々な実施形態では、展開バルーン130は、ガスの使用、例えば、化学物質からのガス169の生成によって、アライナバルーン160の展開/拡張を容易にするように構成されている。ガスは、酸166(例えば、クエン酸)および塩基166(例えば、重炭酸カリウム、重炭酸ナトリウムなど)などの固体化学反応物165の反応によって生成され得、これらは、次いで、水または他の水性液体168と混合される。反応物の量は、化学量論的方法を使用して選択され、バルーン130、160、および72のうちの1つ以上において選択された圧力を生成することができる。反応物165および液体は、バルーン130および160に別々に貯蔵され得、次いで、小腸のpH条件などのトリガイベントに応答して一緒にされ得る。反応物165および液体168は、いずれかのバルーンに貯蔵することができるが、好ましい実施形態では、液体168は、バルーン130に貯蔵され、反応物165は、バルーン160に貯蔵される。液体168を通過させて反応および/または結果として生じるガス169を開始することを可能にするために、バルーン130は、通常、以下に記載の分解性弁150などの分離手段150も含むコネクタチューブ163によってアライナバルーン160に結合され得る。バルーン130が液体を含む実施形態について、チューブ163は、バルーン130からバルーン60への十分な水を通過させて、バルーン160を膨張させ、その上、バルーン172を膨張させるための所望の量のガスを生成することを可能にするのに十分な直径を有する。また、バルーン130が液体を含む場合、バルーン130およびチューブ163のうちの一方または両方は、以下、すなわちi)露出したバルーン130上の小腸の蠕動収縮によってバルーン130に付与された圧縮力、およびii)毛細管現象によるチューブ163を介した液体の吸い上げの1つ以上によってバルーン160への液体の通過を可能にするように構成されている。
【0274】
チューブ163は、通常、弁が分解するまで、バルーン130の内容物(例えば、水158)をバルーン160の内容物(例えば、反応物165)から分離する、分解可能な分離弁または他の分離手段150を含む。弁150は、液体の水によって分解可能である、マルトースなどの材料から製造することができ、その結果、弁は、消化管内の様々な液体とともに水に曝露されると開放する。それはまた、メタクリレートベースのコーティングなどの腸液に見られるより高いpHに反応して分解可能な材料から作られ得る。弁は、望ましくは、バルーン130の上に突出する、および/または、そうでなければ、キャップ120p’が分解したときに、弁150がカプセルに入る腸液に曝露されるように十分に露出している、チューブ163上の場所に位置付けられる。様々な実施形態では、弁150は、バルーン130の表面上に位置するか、またはその上に突出するように位置付けることができ(図16Aおよび16Bの実施形態に示されるように)、それにより、キャップ120p’が分解すると、腸液に明らかに曝露される。本発明の様々な実施形態は、分離弁150のいくつかの構造、例えば、ビーム状構造(弁が、チューブ163および/または接続セクション136を押し下げる、ビームを含む)、またはカラータイプ構造(弁が、チューブ163および/または接続セクション136の上にあるカラーを含む)を提供する。さらに他の弁構造もまた企図される。
【0275】
バルーン130(または他の拡張可能な展開デバイス130)は、展開状態および非展開状態を有する。展開状態では、展開バルーン130は、カプセルの端部の形状に対応する、ドーム形状130dを有することができる。球状、管状など、展開されたバルーン130の他の形状130sも企図される。反応物165は、通常、少なくとも2つの反応物166および167、例えば、クエン酸などの酸および重炭酸ナトリウムなどの塩基を含む。他の酸、例えば、酢酸、および塩基、例えば、水酸化ナトリウムを含む他の反応物165も企図される。弁または他の分離手段150が開放すると、反応物は、液体中で混合し、アライナバルーン160または他の拡張可能な部材を拡張させる二酸化炭素などのガスを生成する。
【0276】
図13Bに示される代替の実施形態では、展開バルーン130は、実際には、チューブ36または他の接続手段136(例えば、接続セクション)によって接続された第1および第2のバルーン130’および130”を含むことができる。接続チューブ136は、通常、上記のような液体、および/または小腸に見られる塩基性pHなどの特定のpH(例えば、5.5または6.5)を有する液体によって分解可能である、分離弁150を含む。2つのバルーン130’および130”は、各々、ハーフドーム形状130hsを有することができ、それらが、拡張状態にあるときに、カプセルの端部が適合することを可能にする。一方のバルーンは、化学反応物165(例えば、重炭酸ナトリウム、クエン酸など)を含むことができ、他方は、液体水168を含むことができ、それにより、弁が分解すると、2つの成分が混合してガスを形成し、一方または両方のバルーン130’および130”、そして次に、アライナバルーン160を膨張させる。腹膜腔内への治療薬の送達のために構成されたデバイス10の実施形態の場合、追加量の反応物を、バルーン130’または130”に追加して、発生する圧力を増加させることができる。
【0277】
さらに別の代替の実施形態では、バルーン130は、複数の区画130cを有するように形成されるまたは他の構造化されるマルチ区画バルーン130mcを含むことができる。通常、区画130cは、図14Aの実施形態に示されるように、分離弁150または他の分離手段150によって分離される、少なくとも第1および第2の区画134および135を含む。多くの実施形態では、区画134および135は、それらの間に少なくとも小さな接続セクション136を有し、これは、分離弁150が通常、配置される場所である。図14Aの実施形態に示されるように、液体168、通常、水は、第1の区画134内に配置され得、1つ以上の反応物165(通常、固体であるが液体も使用され得る)は、第2の区画135に配置され得る。弁150が開放されると(例えば、小腸内の流体によって引き起こされる分解によって)、液体168は、区画135に入る(もしくはその逆、またはその両方)、反応物165は、液体と混合し、二酸化炭素などのガス169を生成し、バルーン130を拡張し、次に、これを使用して、バルーン160および172のうちの1つ以上を拡張することができる。
【0278】
反応物165は、通常、少なくとも第1および第2の反応物、166および167、例えば、クエン酸などの酸、および重炭酸ナトリウムまたは重炭酸カリウムなどの塩基を含む。本明細書で考察されるように、様々な実施形態では、それらは、バルーン130(区画134および135、または半分の130’および130”を含む)およびバルーン160のうちの1つ以上に配置され得る。不活性ガス副生成物を生成する酸および塩基の他の組み合わせを含む追加の反応物もまた企図される。クエン酸および重炭酸ナトリウムまたは重炭酸カリウムを使用する実施形態について、2つの反応物間(例えば、クエン酸対重炭酸カリウム)の比は、約1:1~約1:4の範囲であり得、特定の比は、約1:3である。望ましくは、固体反応物165は、吸収された水をほとんどまたは全く有しない。したがって、重炭酸ナトリウムまたは重炭酸カリウムなどの反応物の内の1つ以上は、バルーン130内に配置される前に(例えば、真空乾燥によって)予備乾燥され得る。他の酸、例えば、酢酸、および塩基を含む他の反応物165もまた企図される。反応物の組み合わせを含む特定の反応物165の量は、特定の化学反応の既知の化学量論式、ならびにバルーンの膨張した体積および理想気体の法則(例えば、PV=nRT)を使用して特定の圧力を生成するように選択することができる。特定の実施形態では、反応物の量を選択して、バルーン130、160、および172のうちの1つ以上を選択した圧力を生成して、i)腸壁への特定の貫通深さを達成することと、ii)バルーン130、160、および172のうちの1つ以上の特定の直径を生成することと、iii)腸壁IWに対して選択された量の力を及ぼすことと、を行うことができる。特定の実施形態では、反応物(例えば、クエン酸および重炭酸カリウム)の量および比率を選択して、バルーン130、160、および172のうちの1つ以上で10~15psiの範囲の圧力を達成することができ、より小さいおよびより大きい圧力が企図される。この場合も、これらの圧力を達成するための反応物の量および比率は、既知の化学量論式を使用して決定することができる。
【0279】
化学反応物165を使用してガス169を生成する本発明の様々な実施形態では、化学反応物は、単独で、または展開バルーン130と組み合わせて、アライナバルーン160、および送達バルーン172を含む送達機構170のうちの一方または両方を展開するための展開エンジン180を含むことができる。展開エンジン180はまた、2つの展開バルーン130および130”(図13Bに示されるようなデュアルドーム構成)、または図14Aに示されるようなマルチ区画バルーン130mcを使用する実施形態を含み得る。展開エンジン180の他の形態もまた、拡張可能な圧電材料(電圧の印加によって拡張する)、ばね、および他の形状記憶材料、ならびに様々な熱拡張性材料の使用など、本発明の様々な実施形態によって企図される。
【0280】
拡張可能なバルーン130、160、および172のうちの1つ以上はまた、通常、膨張後にバルーンを収縮させるのに役立つ収縮弁159を含む。収縮弁159は、特定のバルーン内のガスを逃がすための開口部またはチャネルを作成するように、小腸内の流体および/またはバルーンの区画のうちの1つ内の液体への曝露時に分解するように構成されている、生分解性材料を含むことができる。望ましくは、収縮弁159は、弁150よりも遅い速度で分解するように構成されて、収縮弁が分解する前に、バルーン130、160、および172の膨張に十分な時間を与える。区画化されたバルーン130の様々な実施形態では、収縮弁159は、図14Aの実施形態に示されるように、バルーンの端部131上に位置付けられた分解性セクション139に対応することができる。この実施形態および関連する実施形態では、分解性セクション139が液体への曝露により分解すると、バルーン壁132は、引き裂けるか、またはさもなければばらばらになり、急速な収縮の高い保証を提供する。複数の分解性セクション139は、バルーン壁132内の様々な場所に配置することができる。
【0281】
バルーン172の様々な実施形態では、収縮弁159は、図13Bの実施形態に示されるように、送達バルーン172の端部172e(アライナバルーンに結合される端部の反対側)に取り付けられたチューブ弁173に対応し得る。チューブ弁173は、小腸内の流体などの流体に曝露されると分解するマルトースまたは他の糖などの材料173mで、選択された場所173lで閉塞される内腔を有する中空チューブ173tを含む。チューブ173t内の閉塞材料173mの位置173lは、閉塞材料が、溶解して、弁173を開放する前に、送達バルーン172が、膨張し、組織貫通部材40を腸壁IWに送達するのに十分な時間を提供するように選択される。通常、これは、チューブ173tの端部173eに近いが、液体が、材料173mに到達する前に液体がチューブ内腔に吸い上げられなければならない時間を与えるほどではない。1つ以上の実施形態によれば、収縮弁173が開放すると、それは、送達バルーン172だけでなく、アライナバルーン160および展開バルーン130も収縮させるのに役立つが、なぜなら、多くの実施形態では、3つすべてが流体的に接続されているためである(アライナバルーンは、送達バルーン172に流体的に接続されており、展開バルーン130は、アライナバルーンに流体的に接続されている)。収縮弁173の開放は、収縮弁が小腸内の液体に良好に曝露されるように、アライナバルーン160の膨張によってカプセル120から押し出される送達バルーン172の端部172eに収縮弁を配置することによって容易にすることができる。同様のチューブ収縮弁173はまた、アライナバルーン160および展開バルーン130のうちの一方または両方に位置付けることができる。これらの後者の2つの場合において、チューブ弁内の閉塞材料は、送達バルーン172の膨張および組織貫通部材140の腸壁への前進のために十分な時間を与えるために、ある期間にわたって分解するように構成され得る。
【0282】
さらに、確実な収縮のさらなるバックアップとして、バルーン(例えば、バルーン130、160、172)が完全に膨張したときに、バルーンが接触し、穿刺要素182によって穿刺されるように、1つ以上の穿刺要素182をカプセルの内面124に取り付けることができる。穿刺要素182は、尖った先端を有する表面124からの短い突起を含むことができる。バルーン収縮のための手段の別の代替実施形態または追加の実施形態では、組織貫通部材140のうちの1つ以上は、バルーン172の172wの壁に直接結合され得、かつ、それらが取り外されるときにバルーンから引き離され、そのプロセスで、バルーン壁を引き裂くように構成され得る。
【0283】
次に、組織貫通部材140について考察する。1つ以上の実施形態では、組織貫通部材140は、様々な薬物および他の治療薬101、1つ以上の医薬賦形剤(例えば、崩壊剤、安定剤など)、ならびに1つ以上の生分解性ポリマーから製造することができる。貫通部材に所望の構造的特性および材料特性(例えば、腸壁への挿入のためのコラム強さ、または薬物の放出の制御のための多孔性および親水性)を与えるために選択される後者の材料。ここで図18A~18Fを参照すると、多くの実施形態では、貫通部材140は、図18Aの実施形態に示されるように、腸壁の組織を容易に貫通するように、シャフト144および針先端145または他の尖った先端145を有するように形成され得る。好ましい実施形態では、先端145は、図18Cの実施形態に示されるようなトロカール形状を有する。先端145は、先端の硬度および組織貫通特性を増加させる、スクロースまたは他の糖などの様々な分解性材料(先端の本体内またはコーティングとして)を含み得る。貫通部材140は、腸壁または周囲組織(例えば、腹膜壁または腹膜腔)に配置されると、壁組織内の間質液および/または腹膜腔内の漿膜液によって分解され、その結果、薬物または他の治療薬101は、それらの流体に溶解し、血流に吸収される。組織貫通部材が腹膜腔内に配置される実施形態の場合、組織貫通部材は、腔内の漿膜液を含む腔内の流体によって分解され、そこで、凝固因子または他の治療薬は、次いで、臓側および壁側腹膜壁を横切って血流に輸送されように構成されている。組織貫通部材140のサイズ、形状、および化学組成のうちの1つ以上を選択して、数秒、数分、またはさらに数時間で薬物101の溶解および吸収を可能にすることができる。溶解速度は、医薬品技術分野で知られている様々な崩壊剤を使用することを含む、様々な手段を通じて制御することができる。崩壊剤の例には、デンプングリコール酸ナトリウムなどの様々なデンプン、およびカルボキシメチルセルロースなどの様々な架橋ポリマーが含まれるが、これらに限定されない。崩壊剤の選択は、小腸の壁および/または腹膜もしくは腹膜腔内の液体および環境に合わせて具体的に調整することができる。特定の実施形態では、組織貫通部材140は、凝固因子または他の治療薬101の血流への放出を増強するために、漿膜液および腹膜腔PC内の他の流体における組織貫通部材140の分解および/または溶解を加速するか、またはそうでなければ増強するように構成された分解または溶解特徴147(本明細書では特徴147)を含み得る。特定の実施形態では、特徴147は、図18Gに示されるように、組織貫通部材140を部分的またはすべての他の方法で通過する開口または穴148に対応し得る。穴または開口149は、組織液(例えば、漿膜液)の部材140の内部140iへの侵入を可能にする。特徴147はまた、図18Hおよび18Iに示されるように、部材140の表面140s上の1つ以上のチャネルまたは溝149にも対応し得る。チャネルまたは溝149は、組織液との接触に利用可能な部材140の表面積を増強し、したがって、組織貫通部材の溶解および/または分解の速度を増強する。追加のまたは関連する実施形態では、開口148または溝149を含む特徴147は、機械的弱点(例えば、溝149の場合の継ぎ目)として機能して、組織貫通部材が、腹膜腔PC内に配置されたときに、組織貫通部材140に本体によって付加された機械的力によって、容易に小さな断片に分解または破壊されることを可能にするように位置付けられ、および構成されている。そのような力は、内臓器官(例えば、腸)の移動からの力、ならびに腹部の筋肉組織の収縮または呼吸からの腹壁の移動からの力のうちの1つ以上を含み得る。使用において、そのような分解特徴147は、組織液との接触のための表面積を増強することによって、および、貫通部材が、組織液との接触のためのさらに大きな表面積を有する、より小さな断片に容易に分解されることを可能にすることによって、組織貫通部材の溶解および/または分解の速度を増強する。望ましくは、必ずしもそうではないが、1つ以上の特徴147は、部材140が患者の体から付与された力によって分解されることを可能にする一方で、さらに、組織貫通部材が、尖った先端145の反対側の組織貫通部材の端部140eに付与される機械的力によって、カプセル20から前進するのに十分なコラム強さを有することを可能にするように位置付けられ、およびそうでなければ構成されている。そのような力は、送達部材50または作動機構60の構成要素によって付加される。様々な実施形態では、1つ以上の分解/溶解特徴147を有する組織貫通部材140のそのようなコラム強度は、0.1~1ポンドの範囲であり得る。
【0284】
組織貫通部材140はまた、通常、前進後に腸壁IWまたは腹膜の組織内に貫通部材を保持するための棘またはフックなどの1つ以上の組織保持特徴143を含む。保持特徴143は、図18Aおよび18Bの実施形態に示されるように、対称的に、またはそうでなければ部材シャフト144の周りおよびそれに沿って分布される2つ以上の棘などの組織保持を強化するための様々なパターン143pに配置され得る。さらに、多くの実施形態では、貫通部材はまた、送達機構170上の結合構成要素への取り付けのための凹部または他の嵌合特徴146を含む。
【0285】
組織貫通部材140は、望ましくは、プラットフォーム175(または送達機構170の他の構成要素)に取り外し可能に結合されるように構成され、その結果、組織貫通部材140の腸壁への前進後、貫通部材は、バルーンから取り外される。取り外し可能性は、i)プラットフォーム175の開口部174と部材シャフト144との間の快適性または適合、ii)貫通部材140上の組織保持特徴143の構成および配置、およびiii)シャフト144の腸壁への貫通の深さを含む様々な手段によって実装することができる。これらの因子の1つ以上を使用して、貫通部材140は、バルーン(バルーンが収縮するか、またはさもなければ腸壁から引き戻されるときに、保持特徴143が貫通部材140を組織内に保持する)、および/または小腸の蠕動収縮によってカプセル120に及ぼされる力の結果として、取り外されるように構成されている。
【0286】
特定の実施形態では、腸壁IWにおける組織貫通部材140の取り外し可能性および保持は、組織貫通部材シャフト144を、図18Cの実施形態に示すように、逆テーパー144tを有するように構成することによって強化することができる。シャフト144上のテーパー144tは、シャフトへの腸壁からの蠕動収縮力の付与が、シャフトを内側に押し込む(例えば、内側に圧迫する)結果となるように構成されている。これは、横方向に付与された蠕動力PFの、シャフトテーパー144tによる、シャフトを腸壁内に内側に押し込むように作用する直交力OFへの変換によるものである。使用において、そのような逆テーパーシャフト構成は、バルーン172の収縮時にプラットフォーム175(または送達機構170の他の構成要素)から取り外されるように、腸壁内に組織貫通部材140を保持するのに役立つ。追加の実施形態では、逆テーパーシャフトを有する組織貫通部材140はまた、一旦挿入された腸壁IW内の組織貫通部材の保持をさらに強化するために、1つ以上の保持特徴143を含み得る。
【0287】
上記のように、様々な実施形態では、組織貫通部材140は、いくつかの薬物および他の治療薬101から製造することができる。また、1つ以上の実施形態によれば、組織貫通部材は、完全に薬物101(例えば、第VIII因子などの凝固因子など)から製造され得るか、または他の構成成分、例えば、様々な医薬賦形剤(例えば、結合剤、防腐剤、崩壊剤など)、所望の機械的性質を与えるポリマーなども有し得る。さらに、様々な実施形態では、1つ以上の組織貫通部材140は、他の組織貫通部材と同じまたはそれとは異なる薬物101(または他の治療薬)を運ぶことができる。前者の構成は、より多くの量の特定の薬物101(例えば、特定の凝固因子)の送達を可能にし、後者は、2つ以上の異なる薬物をほぼ同時に腸壁に送達することを可能にして、複数の薬物の実質的な同時送達を必要とする薬物治療レジメンを容易にする。複数の送達アセンブリ178(例えば、バルーン172の各面に2つ、1つ)を有するデバイス110の実施形態では、第1のアセンブリ178’は、第1の薬物101を有する組織貫通部材を運ぶことができ、第2のアセンブリ178”は、第2の薬物101を有する組織貫通部材を運ぶことができる。
【0288】
通常、組織貫通部材140によって運ばれる薬物または他の治療薬101は、生分解性材料105と混合されて、組織貫通部材140を形成する。材料105は、PGLA、セルロースなどの1つ以上の生分解性ポリマー、およびマルトースなどの糖または本明細書に記載もしくは当技術分野で知られている他の生分解性材料を含み得る。そのような実施形態では、貫通部材140は、薬物101と生分解性材料105との実質的に不均一な混合物を含み得る。代替的に、組織貫通部材140は、図18Dの実施形態に示されるように、生分解性材料105から実質的に形成された部分141と、治療薬101(例えば、第VIII因子または他の凝固因子CF)から形成された、または治療薬101を含む別個のセクション142とを含み得る。1つ以上の実施形態では、セクション142は、薬物101を含む、ペレット、スラグ、シリンダ、または他の成形されたセクション142sに対応し得る。成形されたセクション142sは、図18Eおよび18Fの実施形態に示されるように、別個のセクションとして事前に形成され得、次いで、組織貫通部材140内の空洞142cに挿入される。代替的に、セクション142sは、薬物調製物100を空洞142cに添加することによって形成することができる。実施形態では、薬物調製物100が空洞142cに添加される場合、調製物は、空洞142cに注入されるか、または注射される粉末、液体、またはゲルとして添加され得る。成形されたセクション142sは、それ自体で薬物101、または薬物101ならびに1つ以上の結合剤、防腐剤、崩壊物、および他の賦形剤を含む薬物調製物から形成され得る。好適な結合剤には、ポリエチレングリコール(PEG)および当技術分野で知られている他の結合剤が含まれる。様々な実施形態では、PEGまたは他の結合剤は、セクション142sの約10~90重量パーセントの範囲を含み得、好ましい実施形態は、約25~90重量パーセントのインスリン調製物である。組織貫通部材140の結合剤に使用され得る他の賦形剤には、例えば、PLA、PLGA、PGLA、シクロデキストリン、セルロース、メチルセルロース、マルトース、デキストリン、スクロース、およびPGA、ならびにそれらの組み合わせが含まれ得る。セクション142の賦形剤の重量パーセントに関するさらなる情報は、表5で見られ得る。考察を容易にするために、セクション142は、表ではペレットと呼ばれるが、表5のデータはまた、本明細書に記載のセクション142の他の実施形態にも適用可能である。
【0289】
様々な実施形態では、組織貫通部材140の重量は、より大きなおよびより小さな重量が企図される、約10~15mgの範囲に及び得る。マルトースから製造された組織貫通部材140の実施形態について、重量は、約11~14mgの範囲に及び得る。様々な実施形態では、薬物101および所望の送達用量に応じて、部材140中の薬物の重量パーセントは、約0.1~約15%の範囲に及び得る。例示的な実施形態では、これらの重量パーセントは、マルトースまたはPLGAから製造された部材140の実施形態に対応するが、部材140の製造に使用される生分解性材料105、例えば、ポリエチレン、ポリエチレンオキシド(PEO)、および他の同様の材料のいずれにも適用可能である。部材140中の薬物または他の治療薬101の重量パーセントは、所望の用量に応じて調整することができ、薬物の構造的および化学量論的安定性を提供し、また、血液または身体の他の組織内の薬物の所望の濃度プロファイルを達成することもできる。当技術分野で知られている様々な安定性試験およびモデル(例えば、アレニウスの式を使用して)および/または薬物の化学的分解の既知の速度を使用して、重量パーセント範囲の特定の調整を行うことができる。表5は、組織貫通部材140によって送達され得るインスリンおよびいくつかの他の薬物の用量および重量パーセント範囲を列挙している。いくつかの場合には、表5には、範囲および用量の単一値が列挙されている。これらの値は、例示的なものであり、特許請求の範囲を含む本明細書に挙げられた他の値も考慮されることを理解されたい。さらに、本発明の実施形態はまた、例えば、±1、±5、±10、±25、およびさらにより大きな変化量を含む、これらの値の前後の変化量も考慮する。そのような変化量は、特定の値または値の範囲を主張する実施形態の範囲内にあるとみなされる。表5はまた、様々な薬物および他の治療薬のセクション142における薬物の重量パーセントも列挙している。この場合も、セクション142は、任意のいくつかの形状を有することができるが、議論を容易にするためにペレットと呼ばれる。また、いくつかの実施形態によれば、表5に列挙された量の薬物は、組織貫通部材140全体に分散され得、セクション142に含まれる必要はない。
【表5】
【0290】
組織貫通部材140は、当技術分野で知られている1つ以上のポリマーおよび医薬品製造技術を使用して製造することができる。例えば、薬物101(生分解性材料105の有無にかかわらず)は、固体形態であり得、次いで、成形、圧縮、または他の同様の方法を使用して、組織貫通部材140の形状に形成され得、1つ以上の結合剤が添加される。3D印刷および関連する製造方法の使用も企図される。代替的に、薬物101および/または薬物調製物100は、固体または液体形態であり得、次いで、液体形態の生分解性材料105に添加され、混合物は、次いで、成形、またはポリマー技術で知られている他の形成方法を使用して貫通部材140に形成される。いくつかの実施形態では、組織貫通部材は、腸壁(または腹膜腔などの周囲組織)においてより遅い分解速度を有する外層またはコーティング、次いで、血流への薬物放出の速度を遅くするために、組織貫通の内側本体を有し得る。様々な実施形態では、外側のコーティングまたは層は、内側のコアの速度よりも10、25、50、100、200、500、または1000%遅い生分解速度を有し得る。使用において、組織貫通部材140のよりゆっくりと分解する外側コーティングのそのような実施形態は、薬物101の放出の遅延を可能にする。そのような実施形態は、例えば、様々な凝固因子およびインスリンの場合、長期間にわたって治療レベルの薬物を維持することが望ましい状況に特に有用である。
【0291】
望ましくは、薬物または他の治療薬101、および分解性材料105を含む組織貫通部材140の実施形態は、様々なペプチドおよび凝固タンパク質を含むタンパク質などの薬物を含む薬物のいかなる実質的な熱分解も生じない温度で形成される。これは、室温硬化ポリマーと、当技術分野で知られている室温成形および溶媒蒸発技術を使用することによって達成することができる。特定の実施形態では、組織貫通部材内の熱分解される薬物または他の治療薬の量は、望ましくは約10重量%未満、より好ましくは5%未満、さらにより好ましくは1%未満である。特定の薬物の熱分解温度(複数可)は、既知であるか、または当技術分野で知られている方法を使用して判定することができ、次いで、この温度を使用して、特定のポリマー処理方法(例えば、成形、硬化、溶媒蒸発方法など)を選択および調整して、温度および関連する薬物の熱分解レベルを最小限に抑えることができる。
【0292】
送達機構170について説明する。通常、機構は、図16Aおよび16Bの実施形態に示されるように、送達バルーン172に取り付けられている送達アセンブリ178(組織貫通部材140を含む)を含む。送達バルーンの膨張は、組織貫通部材140を壁に挿入するように、送達アセンブリ172をカプセルから外向きに腸壁IWに係合させるための機械的力を提供する。様々な実施形態では、送達バルーン172は、関節式アコーディオン状の本体172bによって接続された2つの比較的平坦な面172fを備える細長い形状を有することができる。平坦面172fは、バルーン172の拡張時に腸壁(IW)を押して、組織貫通部材(TPM)140を腸壁に挿入するように構成することができる。TPM140(それ自体で、または以下に記載の送達アセンブリ178の一部として)は、TPM140を含む薬物の腸壁IWの両側への挿入を可能にするために、バルーン172の一方の面または両方の面172fに位置付けることができる。バルーン172の面172fは、各面にTPM140を含むいくつかの薬物の配置を可能にするのに十分な表面積を有し得る。また、本明細書に記載されるように、凝固の治療のための凝固因子CF(例えば、第VIII因子)の送達のためのデバイス10の実施形態の場合、面172fの全部または部分は、TPM(複数可)が入るIWの部位に、圧力によって凝固因子を適用し、その部位での出血を防止または軽減するために、凝固因子のコーティング101cまたは他の急速止血剤を有し得る。
【0293】
ここで図19を参照して、ここで、送達アセンブリ178のアセンブリについて説明する。第1のステップ300において、1つ以上の組織貫通部材140は、支持プラットフォーム175(プラットフォーム175としても知られている)に対応し得る生分解性前進構造175に取り外し可能に結合され得る。好ましい実施形態では、プラットフォーム175は、ステップ300に示されるように、組織貫通部材140(また部材140とも称する)の挿入のための1つ以上の開口部174を含む。開口部174は、バルーン172の拡張の前にプラットフォーム175内の部材140の挿入および保持を可能にする一方で、部材の腸壁への貫通時にプラットフォームからの部材の取り外しを可能にするようにサイズ設定される。次いで、支持プラットフォーム175は、ステップ301に示されるように、運搬構造176内に位置付けることができる。運搬構造176は、空洞または開口部176cを画定する側壁176sおよび底壁176bを有する、ウェル構造176に対応し得る。プラットフォーム175は、望ましくは、接着剤または当技術分野で知られている他の接合方法を使用して、底壁176bの内面に取り付けられている。ウェル構造176は、様々なポリマー材料を含むことができ、ポリマー加工技術で知られている真空成形技術を使用して形成することができる。多くの実施形態では、開口部176oは、ステップ302に示されるように、保護フィルム177で覆われ得る。保護フィルム177は、以下に説明するように、組織貫通部材140がフィルムを貫通することを可能にしながら、組織貫通部材140を湿度および酸化から保護するための障壁として機能するように選択された特性を有する。フィルム177は、小腸で生分解性である、および/または消化管を不活性に通過するように望ましくは構成されている、様々な水および/または酸素不透過性ポリマーを含むことができる。それはまた、所与の物質、例えば、酸素、水蒸気などに対する不透過性のために選択された特定の層を有する多層構造を有し得る。使用において、保護フィルム177を採用する実施形態は、組織貫通部材140における治療薬101の保存期間、そしてひいては、デバイス110の保持期間を増加させるのに役立つ。集合的に、組織貫通部材140が取り付けられた支持プラットフォーム175、ウェル構造176、およびフィルム177は、送達アセンブリ178を含むことができる。組織貫通部材40または他の薬物送達手段内に含まれる1つ以上の薬物または治療薬101を有する送達アセンブリ178は、事前に製造され、貯蔵され、その後、後日、デバイス110の製造に使用され得る。アセンブリ178の保持期間は、密封されたアセンブリ178の空洞176cを窒素などの不活性ガスで満たすことによってさらに延長することができる。
【0294】
次に、図16Aおよび16Bに戻って参照すると、アセンブリ178は、バルーン172の一方の面または両方の面172f上に位置付けることができる。好ましい実施形態では、アセンブリ178は、バルーン172の拡張時に腸壁IWの両側に、実質的に等しい力の分布を提供するように、両方の面172fに位置付けられている(図16Aに示されるように)。アセンブリ178は、接着剤またはポリマー技術で知られている他の接合方法を使用して、面172fに取り付けられ得る。バルーン172の拡張時に、TPM140は、フィルム177を貫通し、腸壁IWに入り、保持要素143および/またはTPM140の他の保持特徴(例えば、逆テーパーシャフト144t)によって腸壁に保持され、バルーン172の収縮時にプラットフォーム175から取り外される。
【0295】
様々な実施形態では、バルーン130、160、および172のうちの1つ以上は、カプセルの内部容積124v内の空間を節約するために、折り畳まれた、巻き付けられた、または他の所望の構成でカプセル120内に詰めることができる。折り畳みは、予め形成された折り目、または医療用バルーン技術で知られている他の折り畳み特徴もしくは方法を使用して行うことができる。特定の実施形態では、バルーン130、160、および172は、選択された配向に折り畳まれて、以下、すなわち、i)空間を節約すること、ii)特定の展開されたバルーンの所望の配向を生成すること、およびiii)バルーン拡張の所望のシーケンスを容易にすることのうちの1つ以上を達成することができる。図15A~15Fに示される実施形態は、折り畳みの方法および様々な折り畳み配置の実施形態を例解する。しかしながら、この折り畳み配置および結果として生じるバルーン配向は、例示的なものであり、他のものも使用し得ることを理解されたい。この実施形態および関連する実施形態では、折り畳みは、手動で、自動化された機械によって、または両方の組み合わせによって行うことができる。また、多くの実施形態では、折り畳みは、図13Aおよび13Bの実施形態に示されるような、バルーン130、160、170、弁室158、および各種接続チューブ162を含む単一のマルチバルーンアセンブリ7(ここではアセンブリ7)を使用することによって容易にすることができる。図13Aは、バルーン130の単一のドーム構造を有するアセンブリ7の実施形態を示し、図13Bは、バルーン130のデュアルバルーン/ドーム構成を有するアセンブリ7の実施形態を示す。アセンブリ7は、様々な真空成形、およびポリマー加工技術で知られている他の関連する方法を使用して、所望の形状に真空成形されているポリマー薄膜を使用して製造することができる。好適なポリマー膜には、約0.003~約0.010インチの範囲の厚さを有するポリエチレン膜が含まれ、特定の実施形態は、0.005インチである。好ましい実施形態では、アセンブリは、アセンブリの1つ以上の構成要素(例えば、バルーン130、160など)を結合する必要性を排除するように、単一構造を有するように製造される。しかしながら、アセンブリ7が、複数の部分(例えば、半分)または構成要素(例えば、バルーン)から製造されることも企図され、それらは次いで、ポリマー/医療機器技術で知られている様々な接合方法を使用して接合される。
【0296】
ここで図15A~15F、16A~16B、および17A~17Bを参照すると、第1の折り畳みステップ210において、バルーン160は、弁取付具158上に折り重なり、バルーン172は、そのプロセスにおいて弁取付具158の反対側にひっくり返される(図15Aを参照)。次いで、ステップ211において、バルーン172は、バルーン160と弁158との折り畳まれた組み合わせに対して直角に折り畳まれる(図15Bを参照)。次いで、バルーン130のデュアルドーム実施形態のステップ212において、バルーン130の2つの半分130’および130”が互いに折り畳まれ、弁150が露出したままである(図15Cを参照、バルーン130のシングルドーム実施形態については、それ自体の上に折り重なる、図15Eを参照)。最終折り畳みステップ213は、折り畳まれたバルーン130が弁取付具158およびバルーン160の反対側に180°にわたって折り畳まれることによって行われ、図15Eに示されるデュアルドーム構成のための最終折り畳みアセンブリ8、および図15Eおよび15Fに示すシングルドーム構成の最終折り畳みアセンブリ8’を生成することができる。次いで、1つ以上の送達アセンブリ178が、ステップ214でアセンブリ8(通常、バルーン72の2つの面72f)に取り付けられて、最終アセンブリ9(図16Aおよび16Bの実施形態に示される)を生成し、次いでカプセル120に挿入される。挿入ステップ215の後、アセンブリ9が挿入されたデバイス110の最終的に組み立てられたバージョンが図17Aおよび17Bに示されている。
【0297】
ここで図20A~20Iを参照して、デバイス110を使用して、小腸または大腸の壁、腹膜または腹膜腔などのGI管内の部位に、凝固因子(例えば、第VIII因子)やその他の凝固タンパク質などの薬剤101を送達する方法についての説明を提供する。ステップおよびそれらの順序は、例示的なものであり、他のステップおよび順序もまた企図されることを理解されたい。デバイス110が小腸SIに入った後、図20Bのステップ400に示されるように、キャップコーティング120C’は、上部小腸の塩基性pHによって分解され、キャップ120p’の分解を引き起こす。次いで、弁150は、図20Cのステップ401に示されるように、小腸内の流体に曝露され、弁が分解し始める。次いで、ステップ402において、バルーン130は、図20Dに示されるように(ガス169の生成のため)拡張する。次いで、ステップ403において、バルーン160のセクション160’は、図20Eに示されるように、拡張し始めて、アセンブリ178をカプセル本体から押し出し始める。次いで、ステップ404において、図20Fに示すように、バルーン160のセクション160’および160”は、完全に拡張して、アセンブリ178をカプセル本体から完全に押し出し、カプセル横軸120ALを小腸の横軸LAIと整列させるのに役立つように、カプセルの長さ120lを延ばす。この間、弁155は、バルーン60内の圧力の上昇により機能不全し始めている(バルーンが完全に拡張し、ガス169が行く他の場所がないという事実のために)。次いで、ステップ405において、弁155は、完全に開き、バルーン172を拡張させ、次いで、バルーン172は、図20Gに示すように、完全に露出したアセンブリ178(本体120p’’から完全に押し出された)を径方向外向きに腸壁IWに押し込む。次いで、ステップ406において、バルーン172は、図20Hに示されるように、腸壁IW内に組織貫通部材を前進させるために拡張し続ける。次いで、ステップ407において、バルーン172は、(バルーン160および130とともに)収縮して引き戻され、組織貫通部材を腸壁IWに保持したままにする。また、カプセルの本体部分120p”は、デバイス110の他の生分解性部分とともに(コーティング120c”の分解のために)完全に分解される。分解されなかった任意の部分は、消化による蠕動収縮によって小腸を通って遠位に運ばれ、最終的に排泄される。
【0298】
ここで図21~23を参照すると、様々な実施形態では、治療用調製物、および小腸の壁または周囲組織へのそれらの送達のための関連付けられた方法は、Cmax205またはTmax206または他の薬物動態値を基準点207として有する選択された形状203を有する、治療薬の血漿/血液濃度対時間プロファイル200を生成するように構成することができる。例えば、図21に例解されるように、所与の薬物の血漿濃度対時間プロファイル200は、上昇部分210および下降部分220を有し得、上昇部分210と下降部分220との時間長の選択された比率を有する。特定の実施形態では、これは、上昇部分(上昇時間208とも呼ばれる)の間に、治療薬の送達前濃度204からCmaxレベル205に移行するのにかかる時間208(この時間は、Tmax時間206に対応する)と、下降部分210の間に、Cmaxレベル205から送達前濃度204に戻るのにかかる時間209(下降時間209とも呼ばれる)との比率である。様々な実施形態では、上昇時間208と下降時間209との比率は、約1対20、1対10、および1対5の範囲であり得る。PEG化形態の第VIII因子を含む治療用調製物の特定の実施形態では、プロファイル200における上昇時間と下降時間との比率は、約1対11であり得る(Tmaxが10.4時間であり、曲線の下降部分の最後の点(FVIIIのゼロレベルに近いがそれを超えると想定)が60時間で生じることを示す、図22を参照、および、Tmaxが7.2時間であり、曲線の下降部分の最後の点が84時間で生じることを示す、図23を参照)。さらに他の比率が企図される。ADVATEまたは他の非複合体/非抱合型の第VIII因子または他の凝固因子など、より短い半減期の凝固因子調製物を含む治療用調製物の実施形態の場合、上昇時間と下降時間との比率は、治療薬が分解されるか、またはさもなければ体からより早く除去されるため、より少ないと期待される。
【0299】
付録/実施例
本発明の様々な実施形態は、以下の実施例および付録を参照してさらに例解される。これらの実施例および付録は、例解のみを目的として提示されており、本発明は、本明細書の情報または詳細に限定されるべきではないことを理解されたい。
【0300】
実施例1:本明細書に記載の嚥下可能なデバイスの実施形態を使用した、ヒトにおける第VIII因子の送達のインビボモデリング
【0301】
薬物動態モデルは、第VIII因子のヒト血漿濃度対時間曲線(血漿-時間曲線または血漿濃度プロファイルとも記載される)、および本明細書に記載の嚥下可能なデバイスの実施形態を使用した、PEG化FVIIIおよびESPEROCTの空腸内送達の、Tmax、T1/2、曲線化面積(AUC)および絶対的バイオアベイラビリティ(F、パーセントとして表される)を含むがこれらに限定されない様々な薬物動態パラメータを決定するために開発された。モデルは、各薬物について、送達される用量を100IU/kg体重と想定した。数値結果は、一般的にはPEG化FVIII(例えば、ADYNOVATE)について、および特にESPEROCTについて、それぞれ表6および表7に示されている。バイオアベイラビリティを除いて、各パラメータの範囲は、公称値の±25%と想定され、より狭い範囲は±10である。血漿濃度-時間曲線は、PEG化FVIII、および特にESPEROCTについて、それぞれ図22および23に示されている。各曲線に示されている±25%の範囲は、点線の形式である。
【表6】
【表7】
【0302】
実施例2:PEG化FVIIIの送達に関するインビボイヌ研究
目的:研究の目的は、覚醒している血友病犬における第VIII因子分子の腹膜送達を実証することと、ならびに、本明細書に記載の嚥下可能なカプセルの実施形態および/または変形例を介して第VIII因子を腹膜腔内に送達するための概念研究として、腹膜における送達のバイオアベイラビリティを評価することであった。PEG化FVIIIは、第VIII因子分子のクラスの代表として使用された。
【0303】
材料および方法
血友病A犬(アイリッシュセッター)に、PEG化FVIIIを、静脈内(IV)および腹膜腔内(IP)の両方で投与した。研究は、投与量、送達の時間(日)、および送達の種類(IP対IV)によって異なる3つのパート(パート1、パート2、パート3)に分けられた。投与量は、kgが、体重のkgを指すことを理解した上で、この実施例に関してIU/kgで表される。
【0304】
パート1では、犬は、0日目にIPルートで300IU/kg(IP初回用量)の投与を受けた。パート2では、犬は、5日目にIV経路で30IU/kg(IV2回目用量)の投与を受けた。パート3では、犬は、10日目にIPルートで150IU/kg(IP3回目用量)の投与を受けた。これらの投与量、時間、および送達のモードは、任意の阻害剤抗体が発現する前のIP経路の薬物動態が何であるかを確認し、用量反応データを導き出すことができるかどうかを確認するために選択された。様々なテストを使用して、薬物動態(PK)、薬力学(PD)、および各送達の経路の免疫原性を評価し、これには、各々の特定のパラメータ(Tmax、Cmax、AUCなど)の判定が含まれる。使用したテストは、以下の表8にまとめられている。
【表8】
【0305】
結果
3つのパートの血漿PEG化FVIII濃度レベル(第VIII因子の抗体-抗原ELISAに由来)および/または活性レベル(例えば、第VIII因子の生物活性)を時間に対してプロットし、図25A、25B、26A~C、27A、および27Bに示す。
【0306】
図25Aは、3つのパートのFVIII活性対時間のプロットである。図25Bは、図25Aの円で囲まれた領域の拡大図である。図26A~26Cは、3つのパートについてのPEG化FVIII活性と比較したPEG化FVIII濃度のプロットである。図27Aは、FVIII濃度のプロットである。図27Bは、図27Aの円で囲まれた領域の拡大図である。これらのプロットおよびデータのさらなる分析に基づいて、結果として得られる薬物動態パラメータのリストを以下の表9に示す。
【表9】
【0307】
図28Aは、30IU/kgの投与量でのIV送達経路と比較した、150IU/kg体重(単位は体重に関するものであると理解され、本明細書ではIU/kgとも呼ばれる)および300IU/kgの投与量でのPEG化FVIIIのIP送達の全血凝固対時間のプロットである。また、正常な凝固を提供し、自然出血からの保護を提供すると考えられる凝固時間のレベルも示されている。図28Bは、図28Aの円で囲まれた領域の拡大図である。プロットは、PEG化FVIIIの両方の投与量でのIP送達が、IV投与量によって達成されたものよりはるかに長い36時間増加した期間の正常化された凝固障害(凝固)の期間を提供したことを示している。
【0308】
図29は、150IU/kgおよび300IU/kgの投与量でのPEG化FVIIIのIP送達、および30IU//kgの投与量での送達のIV経路についてのaPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)対時間のプロットである。また、正常なイヌ血漿および第VIII因子欠乏血漿のaPTTも示されている。プロットは、IP送達が72時間以上凝固効果を生み出すことができたことを例解している。対照的に、IV用量は、一過性の凝固効果しか生じなかった。
【0309】
図のプロットから明らかなように、PEG化FVIIIのIP初回用量により、PD応答と一致するロバストなPK曲線が得られた。最大72時間、PEG化FVIII活性のレベルが持続した。
【0310】
ヒトFVIIIに曝露された血友病Aイヌは、FVIIIに対する阻害剤(抗FVIII抗体)を急速に発現し、イヌFVIIIを中和することもできる。プロットおよび図のデータは、PEG化FVIIIの活性を低下させる阻害剤の存在が、IP初回用量に関してはありそうになかったことを示している。IP初回用量の1/10で5日目に送達されたIV2回目用量の場合(IP初回用量で300IU/kg IPに対してIV2回目用量で30IU/kg)、IP初回用量と比較して、FVIII活性の1/20未満が発生した。免疫原性データは、阻害剤が、5日後に発現し、数日以内に1ベセスダ単位(1BU、正常血漿中のFVIII活性の50%を中和する阻害量を表す)より大きい阻害レベルを超えたことを示した。IV2回目用量でのFVIII活性の低下は、少なくとも部分的には阻害剤によるものと思われた。IP初回用量(300IU/kg)の半分である10日目に送達されたIP3回目用量(150IU/kg IP)は、IP初回用量と比較して1/20のFVIIIレベルをもたらし、10日目までに1BUよりも大きい阻害(50%よりも大きい阻害を示す)の影響を受けた。
【0311】
図30A~30Cは、300IU/kgおよび150IU/kgのIP投与量での、および30IU/kgの投与量での送達のIV経路についての、aPTT(PD評価)およびPEG化FVIII活性(PK評価)のPD-PKプロットである。プロットは、PEG化FVIIIの腹膜腔内送達の薬力学的効果および薬物動態学的効果の優れた相関関係があったことを例解している。
【0312】
以下の図28Aおよび表10の両方のデータは、150IU/kgおよび300IU/kgの両方のPEG化FVIIIのIP投与量が、長時間の凝固障害を正常化し、300IU/kg投与量が、30IU/kgのIV投与量の2倍を超える期間の凝固障害を持続したことを示している。
【表10】
【0313】
結論:研究の結果は、IV送達と比較して、IP送達を介したPEG化第VIII因子の送達について同等または改善された結果を示した。特に、送達のIP経路は、IV経路よりも長い期間凝固時間を短縮することが示された。また、血漿中のFVIII活性および濃度レベルも、同様の傾向を有することを示した。さらに、PEG化FVIIIのIP送達は、持続的な活性を示し、第VIII因子活性は、血友病A凝固障害の正常化に非常に効果的であることに加えて、血漿中で最大72時間検出され、付随する凝固障害は、最大36時間正常化された。時間(36時間に実施された凝固検査に基づく。ただし、凝固検査は、48時間または72時間には実施されなかったが、血漿中には最大72時間かなりのFVIIIがさらに検出可能であった)。詳細なPK-PD分析に基づいて、PEG化FVIIIのIP送達の推定バイオアベイラビリティは高く(33~100%)、2つのPK(薬物動態)パラメータおよび3つのPD(薬力学)パラメータの追跡に基づいて、ならびにFVIIIレベルを約50%(1ベセスダ単位)以上減少させた阻害剤を考慮して(7日目以降の図31に示すように)、優れたPK-PD相関があった。したがって、検出されたFVIIIレベルは、抗薬物抗体の発現により、初回用量の送達後に、おそらく減少した。
【0314】
この研究の結果に基づいて、一般に非経口的に送達される分子は、良好なバイオアベイラビリティで腹膜腔内に首尾よく送達され得ることが期待される(例えば、少なくともPEG化FVIIIのサイズまでの分子)。
【0315】
付録1 アリロクマブ血清濃度対時間のモデリング
以下の仮定および/またはデータは、従来の皮下注射または他の注射方法に対する嚥下可能なカプセルの実施形態によって送達されるアリロクマブ血清濃度対時間のモデリングに使用された。
【0316】
皮下投与スケジュールは、毎週150mg、SC(皮下)、2週間ごとであり、これは、本発明の実施形態を使用して、1日当たり約21.4mgの毎日の投与スケジュールに対応する。
【0317】
モノクローナル抗体は、Regeneron/Sanofiから入手した。それは、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)を標的にして、低比重リポタンパク質(LDL)を低下させる。
【0318】
薬物動態パラメータは、Lunven,C.,Paehler,T.,Poitiers,F.,et al.によるCardiovascular Therapeutics,2014,32:297.301「A randomized study of the relative pharmacokinetics,pharmacodynamics,and safety of Alirocumab,a fully human monoclonal antibody to PCSK9,after single subcutaneous administration at three different injection sites in healthy subjects.」というタイトルの論文から得られた。
【0319】
kaは報告されていなかったが、Tmaxが4.3日になるように0.5日-1が選択された。
【0320】
研究では、3つの異なる注射部位のPKパラメータが報告され、3つすべてが同等であることがわかった。この単一のシミュレーションでは、使用されたパラメータは、3つの平均であった。
【0321】
本発明の実施形態を使用してシミュレーションされた毎日の投与について定常状態に達すると、薬物濃度は、10.06mg/L~20.05mg/Lの範囲に及び、平均15.06mg/Lをもたらした。
【0322】
本発明の実施形態を使用する場合、私の従来の注射手段(例えば、皮下、筋肉内など)を与えられた場合の隔週の用量150mgにほぼ対応した約10.5mgの用量での毎日の投与。従来の注射手段を使用した隔週投与の薬物動態プロファイルを図24Aに示す。比較してと、嚥下可能なカプセルの実施形態を使用した毎日の投与の薬物動態プロファイルが図24Bに示されている。2つの薬物動態プロファイルから分かるように、毎日の投薬は、所望の目標定常状態レベルへの上昇中、および定常状態レベルが達成されたときの両方で、薬物濃度の毎日の摂動を大幅に減少させた。特に定常状態に達すると、アリロクマブの濃度は、15.41mg/L~15.47mg/Lの範囲に及び、平均定常状態濃度は、15.44mg/Lであり、2週間ごとの皮下注射の15.06値を上回った。薬物濃度のこのより低い日差変動は、有害事象および抗薬物抗体形成を防止し得、より高いトラフ濃度は、アリロクマブの生物学的活性が維持されることを確実にする。
【0323】
付録2:アリロクマブ血清濃度の定常状態変動の計算に使用されるモデルおよび計算。
定常状態の変動率は、患者の薬物(複数可)の血漿/血清濃度に経時的にどの程度の変動があるかの指標を提供する測定基準である。複数の理由から、定常状態変動を最小限に抑えることが望ましい。第一に、薬理活性に必要な濃度よりも高い薬物濃度は、有害事象を引き起こす可能性がより高くなる。第VIII因子または他の凝固因子の原因については、そのような有害事象には、凝固事実の生化学的効果を阻害またはそうでなければ低減する抗薬物抗体産生の発現が含まれる。薬物に対する抗薬物抗体を発現する患者は、その薬物にもはや反応しなくなり、別のレジメンに置かれる必要がある。他方、薬理活性に必要とされるよりも低い薬物濃度もまた望まれない。これらの期間中に薬理活性がない可能性がより高くなり、したがって薬効が低下する。標的となる障害を効果的に治療するためには、一定の安定したレベルの薬理活性を維持することが理想的である。
【表11】
【0324】
表11に示す抗体の定常状態変動%について計算した。値は、付録1に記載されている既存の薬物動態シミュレーションを使用して判定された。定常状態変動%を計算するために使用される特定の式を以下に示す。
【数1】
【0325】
上記の式は、ピーク定常状態濃度(Css,peak)とトラフ定常状態濃度(Css,trough)との相違を計算し、平均定常状態濃度(Css,avg)で割って、平均定常状態薬物濃度に対する血清薬物濃度の変化率を算出する。定常状態変動は、1回の投与期間で血清薬物濃度がどの程度変化すると予想することができるかについての定量的尺度として役立つ。
【0326】
データから、本発明の実施形態を使用する毎日の投与は、皮下投薬よりもはるかに低い、同じ薬物の定常状態変動を可能にすることは明らかである。より頻度が低く、より強度の低い有害事象、および薬理活性の維持という期待される利益に加えて、本発明の実施形態を使用する小腸への注射を介する投与は、皮下投薬で起こり得る注射部位反応を回避する。
【0327】
結論
本発明の様々な実施形態の前述の説明は、例示および説明の目的で提示されてきた。本発明を、開示される正確な形態に限定することを意図するものではない。多くの修正、変形、および改良は、当技術分野の熟練した開業医には明らかであろう。例えば、デバイスおよび治療用調製物(例えば、組織貫通部材の形態)の実施形態は、様々な小児および新生児の用途ならびに様々な獣医用途に合わせてサイズ設定およびそうでなければ適合させることができる(例えば、治療用調製物に合わせて投与量を調整する)。また、当業者は、本明細書に記載の特定のデバイスおよび方法の多数の同等物を、日常的な実験のみを使用して、認識し、または確認することができる。例えば、第VIII因子およびPEG化第VIII因子などの凝固因子の場合、類似体および誘導体を含む開示された凝固因子との生物学的同等物が具体的に企図される。そのような同等物は、本発明の範囲内であるとみなされ、以下の添付の特許請求の範囲の対象である。
【0328】
一実施形態からの要素、特徴、または行為は、本発明の範囲内で多数の追加の実施形態を形成するために、他の実施形態からの1つ以上の要素、特性、または行為と容易に再結合または置換することができる。さらに、他の要素と組み合わせられるものとして示されているか、または説明されている要素は、様々な実施形態では、独立した要素として存在することができる。さらに、本発明の実施形態はまた、要素、特性、化学物質、治療薬、特徴、値、ステップなどがどこで肯定的に列挙されていても、要素、特性、化学物質、治療薬、特徴、値、またはステップの除外または否定的な列挙を企図する。したがって、本発明の範囲は、記載された実施形態の詳細に限定されず、代わりに、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9A-9B】
図10
図11
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図12A-12B】
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図14C
図15A
図15B
図15C
図15D
図15E
図15F
図15G
図16A
図16B
図17A
図17B
図18A
図18B
図18C
図18D
図18E
図18F
図18G
図18H
図18I
図19
図20A
図20B
図20C
図20D
図20E
図20F
図20G
図20H
図20I
図21
図22
図23
図24A
図24B
図25A
図25B
図26A
図26B
図26C
図27A
図27B
図28A
図28B
図29
図30A
図30B
図30C
図31
【国際調査報告】