(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-30
(54)【発明の名称】アルツハイマー病(AD)の介入のための断食模倣食(FMD)
(51)【国際特許分類】
A61K 47/26 20060101AFI20220623BHJP
A23L 33/20 20160101ALI20220623BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220623BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20220623BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20220623BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20220623BHJP
【FI】
A61K47/26
A23L33/20
A61P25/28
A61P3/02
A61K47/42
A61K47/44
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564848
(86)(22)【出願日】2020-04-30
(85)【翻訳文提出日】2021-12-22
(86)【国際出願番号】 US2020030793
(87)【国際公開番号】W WO2020223522
(87)【国際公開日】2020-11-05
(32)【優先日】2019-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592048844
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ サザン カリフォルニア
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロンゴ、ヴァルター ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ、ミン
(72)【発明者】
【氏名】ランガン、プリヤ
【テーマコード(参考)】
4B018
4C076
【Fターム(参考)】
4B018MD10
4B018MD20
4B018MD27
4B018ME14
4C076BB01
4C076CC01
4C076CC40
4C076DD66
4C076EE41
4C076EE51
(57)【要約】
アルツハイマー病に関連する症状を有する対象を同定するステップを含む、アルツハイマー病関連症状を処置する方法。次に、第1の期間にわたって前記対象に断食模倣食(FMD)が投与される。アミロイド斑の形成及び/又はタウタンパク質レベルの上昇並びに神経炎症を処置する方法もまた提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)アルツハイマー病に関連する症状を有する対象を同定すること、及び
b)第1の期間にわたって前記対象に断食模倣食(FMD)を投与すること
を含む、アルツハイマー病を処置する方法。
【請求項2】
前記アルツハイマー病に関連する症状がアミロイド斑の形成である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルツハイマー病に関連する症状が前記対象におけるタウタンパク質レベルの上昇である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記断食模倣食が2週間~12週間ごとに4日間~10日間の期間にわたって投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ステップb)が所定の間隔で複数回繰り返される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ステップb)が1週間~6カ月の間隔で繰り返される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ステップb)の繰り返しの間に前記対象に通常食が投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記FMDが体重1ポンド当たり4.5~7kcal(又は体重1キログラム当たり10~16kcal)を提供する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記FMDが、1日目に、30グラム未満の糖、28グラム未満のタンパク質、20~30グラムの一価不飽和脂肪、6~10グラムの多価不飽和脂肪、及び2~12グラムの飽和脂肪を提供する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記FMDが、2日目~5日目に、20グラム未満の糖、18グラム未満のタンパク質、10~15グラムの一価不飽和脂肪、3~5グラムの多価不飽和脂肪、及び1~6グラムの飽和脂肪を提供する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記FMDが推奨される1日栄養量(Daily Value)(DV)の25%を超える微量栄養素をさらに提供する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記FMDの1日だけの投与が、月の毎週、1週間当たり1日以上の頻度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記FMDが毎週2日間の期間にわたって対象の通常食を置換することになる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記FMDが体重1ポンド当たり3~5キロカロリーを提供する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記1日目のFMD食が、30グラム未満の糖、28グラム未満のタンパク質、20~30グラムの一価不飽和脂肪、6~10グラムの多価不飽和脂肪、及び2~12グラムの飽和脂肪を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記2日目のFMD食が、20グラム未満の糖、18グラム未満のタンパク質、10~15グラムの一価不飽和脂肪、3~5グラムの多価不飽和脂肪、及び1~6グラムの飽和脂肪を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記断食模倣食を投与するステップが、カロリー、食品、及び栄養についての詳細情報(specification)並びに前記断食模倣食の投与スケジュールを提供する食餌パッケージを投与することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
a)アミロイド斑の形成及び/又はタウタンパク質レベルの上昇を有する対象を同定すること、
b)第1の期間にわたって前記対象に断食模倣食(FMD)を投与すること、及び
c)ステップb)を所定の間隔で複数回繰り返すこと
を含む、アミロイド斑の形成及び/又はタウタンパク質レベルの上昇を処置する方法。
【請求項19】
前記断食模倣食が2週間~12週間ごとに4日間~10日間の期間にわたって投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ステップb)が1週間~6カ月の間隔で繰り返される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
ステップb)の繰り返しの間に前記対象に通常食が投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記FMDが体重1ポンド当たり4.5~7kcal(又は体重1キログラム当たり10~16kcal)を提供する、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記FMDが、1日目に、30グラム未満の糖、28グラム未満のタンパク質、20~30グラムの一価不飽和脂肪、6~10グラムの多価不飽和脂肪、及び2~12グラムの飽和脂肪を提供し、
前記FMDが、2日目~5日目及び存在するなら追加の日(any additional days)に、20グラム未満の糖、18グラム未満のタンパク質、10~15グラムの一価不飽和脂肪、3~5グラムの多価不飽和脂肪、及び1~6グラムの飽和脂肪を提供する、
請求項18に記載の方法。
【請求項24】
a)神経炎症を有する対象を同定すること、
b)第1の期間にわたって前記対象に断食模倣食(FMD)を投与すること、及び
c)ステップb)を所定の間隔で複数回繰り返すこと
を含む、神経炎症を処置する方法。
【請求項25】
前記断食模倣食が2週間~12週間ごとに4日間~10日間の期間にわたって投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ステップb)が1週間~6カ月の間隔で繰り返される、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
ステップb)の繰り返しの間に前記対象に通常食が投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記FMDが体重1ポンド当たり4.5~7kcal(又は体重1キログラム当たり10~16kcal)を提供する、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記FMDが、1日目に、30グラム未満の糖、28グラム未満のタンパク質、20~30グラムの一価不飽和脂肪、6~10グラムの多価不飽和脂肪、及び2~12グラムの飽和脂肪を提供し、
前記FMDが、2日目~5日目及び存在するなら追加の日に、20グラム未満の糖、18グラム未満のタンパク質、10~15グラムの一価不飽和脂肪、3~5グラムの多価不飽和脂肪、及び1~6グラムの飽和脂肪を提供する、
請求項24に記載の方法。
【請求項30】
a)軽度認知障害(MCI)を有する対象を同定すること、及び
b)第1の期間にわたって前記対象に断食模倣食を投与すること
を含む、MCIを処置する方法。
【請求項31】
前記断食模倣食が2週間~12週間ごとに4日間~10日間の期間にわたって投与される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
ステップb)が1週間~6カ月の間隔で繰り返される、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
ステップb)の繰り返しの間に前記対象に通常食が投与される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記FMDが体重1ポンド当たり4.5~7kcal(又は体重1キログラム当たり10~16kcal)を提供する、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記FMDが、1日目に、30グラム未満の糖、28グラム未満のタンパク質、20~30グラムの一価不飽和脂肪、6~10グラムの多価不飽和脂肪、及び2~12グラムの飽和脂肪を提供し、
前記FMDが、2日目~5日目及び存在するなら追加の日に、20グラム未満の糖、18グラム未満のタンパク質、10~15グラムの一価不飽和脂肪、3~5グラムの多価不飽和脂肪、及び1~6グラムの飽和脂肪を提供する、
請求項30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年4月30日に出願された米国仮特許出願第62/840,762号の優先権の利益を主張し、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府の支援による研究又は開発に関する陳述
本発明は、米国国立衛生研究所/国立老化研究所による助成番号AG055369の政府援助の下でなされたものである。米国政府は本発明に関して一定の権利を有する。
【0003】
技術分野
少なくとも1つの態様において、アルツハイマー病関連症状を低減し、認知能力の改善を促進する方法が提供される。
【背景技術】
【0004】
アルツハイマー病(AD)は、前頭皮質及び海馬に最も顕著に蓄積する、過剰なアミロイドβ(Aβ)及びタウタンパク質の産生の障害として分子的に特徴付けられる
1。遺伝子導入マウスモデルはADを研究するために長い間使用されてきており、ヒトの症状を忠実に模倣してはいないが、それらはAβ及び高度リン酸化タウタンパク質の進行及び病理学を理解するために有用であった
2。断食模倣食(FMD)の好ましい影響は、認知の改善(
図1)及び成体神経新生の増加からも明らかなように、老化野生型マウスにおいて以前に実証された
3。マウス及びヒトにおいて、FMDはまた、AD(alz.org)の発症のリスクを増大させる疾患症状である、糖尿病、心血管疾患、及び高血圧に関連するバイオマーカーの低減を引き起こす
3、4。本願発明者らは、タンパク質制限サイクル(PRC)を構成するFMDは、家族性アルツハイマー病の3×Tg-ADマウスモデルにおいて、認知機能低下及びタウ症状の進行を遅延させ得ることを以前に示した
5。
【0005】
AD関連症状の低減を意図して設計された食事介入は存在していない。アルツハイマー病(AD)に関し、2種類のFDA承認済の医薬品(すなわち、コリンエステラーゼ阻害剤及びメマンチン)が存在している。コリンエステラーゼ阻害剤は、ドネペジル、ガランタミン、及びリバスチグミンを含み、主要な神経伝達物質を分解する過程を遅らせる。メマンチンは、学習及び記憶に関与する脳内の重要な神経伝達物質であるグルタミン酸の活性を制御する。(http://www.alz.org/research/science/alzheimers_disease_treatments.asp#how)。これらの薬剤は症状を治療するが、これらは原因疾患を治療しない。さらに、これらの薬剤は、患者のみが利用可能であり、予防薬ではない。
【0006】
したがって、アルツハイマー病に関連した症状を処置するための改善された方法が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
少なくとも1つの態様において、新たに開発された断食模倣食(FMD)のサイクルは、海馬におけるアミロイド負荷及び高度リン酸化タウタンパク質レベルの低下、並びに認知機能の改善により示されるようなAD関連症状に対する有益な効果を有し得る栄養制限の集中的且つ簡便な形態として機能する。
【0008】
別の態様において、アルツハイマー病関連症状を処置する方法が提供される。この方法は、アルツハイマー病に関連する症状を有する対象を同定するステップを含む。断食模倣食(FMD)は、第1の期間にわたって対象に投与される。
【0009】
別の態様において、アミロイド斑の形成及び/又はタウタンパク質レベルの上昇を処置する方法が提供される。この方法は、アミロイド斑の形成及び/又はタウタンパク質レベルの上昇を有する対象を同定するステップを含む。断食模倣食は、第1の期間にわたって対象に投与される。通常、断食模倣食を投与するステップは、所定の間隔で複数回繰り返される。
【0010】
他の態様において、神経炎症を処置する方法が提供される。この方法は、神経炎症を有する対象を同定するステップを含む。断食模倣食は、第1の期間にわたって対象に投与される。通常、断食模倣食を投与するステップは、所定の間隔で複数回繰り返される。
【0011】
他の態様において、軽度認知障害(MCI)を処置する方法が提供される。この方法は、MCIを有する対象を同定するステップを含む。断食模倣食は、第1の期間にわたって対象に投与される。通常、断食模倣食を投与するステップは、所定の間隔で複数回繰り返される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】周期的FMDサイクルは、老化野生型マウスにおいて運動協調性、海馬依存的学習、並びに短期記憶及び長期記憶を改善する。グラフはBrandhorst et al.
3から編集された。
図1Aは、23カ月でのロータロッド機能最高スコアを示す図である。1群当たりn=18。
【
図1B】各コホートについての直線回帰としてのロータロッド機能(破線)を示す図である。1群当たりn=18。
【
図1C】23カ月での自発的交替行動(SAB)を示す図である。1群当たりn=11。
【
図1D】新規物体認識課題における23カ月での認知指数を示す図である
【
図1E】既知物体と新規物体(新規、斜線のバー)の探索時間の比較を示す図である。1群当たりn=8。
【
図1F】23カ月でのバーンズ迷路におけるエラー回数を示す図である。1群当たりn=7~12。
【
図1G】23カ月でのバーンズ迷路における偏差を示す図である。1群当たりn=7~12。
【
図1H】23カ月でのバーンズ迷路における潜時を示す図である。1群当たりn=7~12。
【
図1I】23カ月でのバーンズ迷路における成功率を示す図である。1群当たりn=7~12。
【
図1J】逃避箱を設置するために用いられた対照戦略。全てのデータは平均±SEMで表される。
【
図1K】逃避箱を設置するために用いられたFMD-RF戦略。全てのデータは平均±SEMで表される。
【
図2A】メスの3×Tg-ADマウスに15カ月間投与された隔週のFMDサイクルは、18.5カ月齢でのAD関連症状のレベルを低減する。
図2Aは、対照食(左)又はFMD食(右)の18.5カ月齢のメスの3×Tg-ADマウスにおける海馬台のアミロイド負荷を示す図である。
【
図2B】アミロイド負荷(%)の定量的測定を示す図である。
【
図3A】オスの3×Tg-ADマウスに15カ月間投与された隔週のFMDサイクルは、18.5カ月齢でのAD関連症状のレベルを低減する。
図3Aは、対照コホート及びFMDコホートの18.5カ月齢のオスの3×Tg-ADマウスの海馬における高度リン酸化タウ総数の定量的測定を示す図である。
【
図3B-1】対照食コホートの18.5カ月齢のオスの3×Tg-ADマウスの海馬における高度リン酸化タウ数のIHCに基づく可視化を示す図である。
【
図3B-2】FMD食コホートの18.5カ月齢のオスの3×Tg-ADマウスの海馬における高度リン酸化タウ数のIHCに基づく可視化を示す図である。
【
図4A】海馬における細胞増殖の増加に見られるように、メスの3×Tg-ADマウスに15カ月間投与された隔週のFMDサイクルは神経新生を促進する。
図4Aは、対照食コホート及びFMD食コホートについて、海馬切片当たりのBrdU
+細胞の定量的測定を示す図である。
【
図4B】1カ月齢の野生型仔マウス(陽性対照)、対照食コホートの18.5カ月齢のメスの3×Tg-ADマウス(中央)、又はFMDコホートの18.5カ月齢のメスの3×Tg-ADマウス(右)の海馬におけるBrdU
+細胞のIHCに基づく可視化を示す図である。
【
図5】隔週のFMDサイクルは、3×Tg-ADマウスにおける海馬依存的作業短期記憶を改善する。メスの3×Tg-ADマウスについて、試験の中間時点(10.5カ月)での自発的交替行動(SAB)を示す図である。1群当たりn=9~14。
【
図6A】FMDサイクルはE4FADメスマウスにおいてAβ斑を低減する。
図6Aは、対照食中又は約4カ月間の隔週のFMDサイクル後の7.5カ月齢のE4FADメスマウスの海馬台におけるAβ斑のDAB免疫組織化学を示す図である。
【
図6B】対照食中又は約4カ月間の隔週のFMDサイクル後の7.5カ月齢のE4FADメスマウス海馬台CAIにおける海馬台Aβ斑負荷(%)を示す図である。(1群当たりn=18)。
【
図7A】隔週のFMDサイクルは、老化3×Tgマウスにおけるミクログリア数を介して神経炎症を仲介する。
図7Aは、18.5カ月齢のメスのC57BL/6 野生型マウス、3×Tg 対照マウス、及び3×Tg FMDマウスの海馬切片におけるCD11b-irミクログリアを示す代表的な画像を示す図である(上段)。
【
図7B】C57BL/6 野生型群、3×Tg 対照群、及び3×Tg FMD群の海馬CA1と海馬台の複合脳領域におけるCD11b-ir細胞の総数の定量化を示す図である(下段左;1群当たりn=5~7個体)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
現在のところ発明者らに知られている発明の実施の最良の形態を構成する、本発明の現在の好ましい組成物、実施形態、及び方法の詳細について説明する。図面は必ずしも縮尺どおりではない。しかしながら、開示された実施形態は、種々の形態及び代替的形態において具体化され得る発明の単なる例示であることが理解されるであろう。したがって、本明細書に開示される具体的詳細は限定するものとして解釈されるものではなく、単に本発明の任意の態様についての代表的な基礎として、及び/又は本発明をさまざまに使用するための当業者への開示についての代表的な基礎として解釈される。
【0014】
実施例、又は他で明示的に示されている場合を除き、反応及び/又は使用の材料の量又は条件を示す本明細書中の全ての数量は、本発明の最も広い範囲を記載する際に「約」との語により修飾されると理解されることになる。規定される数値限定内の実施が一般に好ましい。また、特段の記載がない限り、パセーント、「部」、及び割合の値は重量基準であり、頭字語又はその他の略語は、同じ略語の本明細書における以降の全ての使用に適用され、最初に定義された略語の通常の文法的変形に準用され、且つ、特段の記載がない限り、特性の測定は、同じ特性についての以前に参照された又は後で参照する同様の技術により決定される。
【0015】
特定の構成要素及び/又は条件は当然ながら変化し得るので、本発明は、以下に記載される特定の実施形態及び方法に限定されないことも理解される。さらに、本明細書で使用される専門用語は、本発明の特定の実施形態を記載する目的でのみ使用され、いかなる方法によっても限定することを意図していない。
【0016】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈で明示的に示さない限り、複数の指示対象も含むこともまた注意すべきである。例えば、単数形の構成要素は複数の構成要素を含むことを意図する。
【0017】
「含む(comprising)」との用語は、「含む(including)」、「有する(having)」、又は「特徴付けられる(characterized by)」と同義である。これらの用語は、両立的(inclusive)且つ非限定型(open-ended)であり、付加的な、記載されていない要素又は方法ステップを排除するものではない。
【0018】
「からなる(consisting of)」との語句は、請求項で特定されていないいずれの要素、ステップ、又は成分も排除する。この語句が、請求項の前文(preamble)の直後ではなく請求項の本文節中に記載されている場合、その節に記載されている要素のみが限定され、その他の要素は請求項全体から排除されない。
【0019】
「から本質的になる(consisting essentially of)」との語句は、特定の材料又はステップ、及びこれに加えて特許請求される主題の基本的かつ新規な特徴に実質的な影響を及ぼさない材料又はステップに請求項の範囲を限定する。
【0020】
「含む(comprising)」、「からなる」、及び「から本質的になる」との用語に関し、本明細書でこれら3種類のうちのいずれかが使用される場合、現在開示され特許請求されている主題はその他の2種類の用語のいずれかの使用も含み得る。
【0021】
整数の範囲は全ての介在する整数を明示的に含むこともまた理解されるべきである。例えば、1~10の整数範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10を明示的に含む。同様に、1~100の範囲は、1、2、3、4....97、98、99、100を含む。
【0022】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈で明示的に示さない限り、複数の指示対象も含むこともまた注意すべきである。例えば、単数形の構成要素は複数の構成要素を含むことを意図する。
【0023】
本明細書で使用される場合、「約」との用語は、当該量又は値が、指定された特定の値又はその近傍の何らかの値であってもよいことを意味する。通常、ある値を表す「約」との用語は、その値の±5%以内の範囲を表すことを意図している。一つの例として、「約100」との語句は、100±5の範囲、すなわち、95~105の範囲を表す。通常、「約」との用語が使用される場合、本発明による同様の結果又は効果が、示された値の±5%の範囲内で得られることが期待され得る。
【0024】
本明細書で使用される場合、「及び/又は」との用語は、このような群の要素の全部又は1つのみが存在していてもよいことを意味する。例えば、「A及び/又はB」は、「Aのみ若しくはBのみ、又はAとBの両方」を意味することになる。「Aのみ」の場合、この用語はBが存在しない可能性、すなわち、「Bではなく、Aのみ」も含んでいる。
【0025】
整数の範囲は全ての介在する整数を明示的に含むこともまた理解されるべきである。例えば、1~10の整数範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10を明示的に含む。同様に、1~100の範囲は、1、2、3、4....97、98、99、100を含む。同様に、任意の範囲が指示される場合、10で割った上限と下限の間の差の増加量である介在する数が代替的な上限値及び下限値と解釈され得る。例えば、範囲が1.1~2.1である場合、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、及び2.0を上限値又は下限値として選択し得る。本明細書に記載される具体例において、食餌組成物、食餌成分、及び任意の実験条件は、有効数字3桁に丸めた値の50%増又は50%減で実施され得る。改良食餌組成物において、食餌成分及び任意の実験条件は、実施例で得られた値の有効数字3桁に丸めた値の30%増又は30%減で実施され得る。その他の食餌組成物において、食餌成分及び任意の実験条件は、実施例で得られた値の有効数字3桁に丸めた値の10%増又は10%減で実施され得る。
【0026】
本明細書に記載される例において、食餌組成物、食餌成分、及び任意の実験条件は、実施例で得られた値の有効数字2桁に丸めた、又は有効数字2桁以下を切り捨てた値の50%増又は50%減で実施され得る。改良例において、食餌組成物、食餌成分、及び任意の実験条件は、実施例で得られた値の有効数字2桁に丸めた、又は有効数字2桁以下を切り捨てた値の30%増又は30%減で実施され得る。その他の改良例において、食餌組成物、食餌成分、及び任意の実験条件は、実施例で得られた値の有効数字2桁に丸めた、又は有効数字2桁以下を切り捨てた値の10%増又は10%減で実施され得る。
【0027】
「1又は複数の」との用語は「少なくとも1つの」を意味し、「少なくとも1つの」との用語は「1又は複数の」を意味する。「1又は複数の」及び「少なくとも1つの」との用語は、部分集合として「複数の」を含む。
【0028】
改良例において、所与の量「未満」又は所与の量「以下」は、下限値の例として、2桁の有効数字に丸められた所与の量の1%である値を含む。例えば、「28g未満」との語句は、0.28g~28gの範囲を含む。
【0029】
改良例において、所与の量「より大きい」又は所与の量「以上」は、上限値の例として、2桁の有効数字に丸められた所与の量の10倍である値を含む。例えば、「28g超」との語句は、28g~280gの範囲を含む。
【0030】
対象が、医学的な症状又は特性を「有している」と特徴付けられる場合、「有している」は、その対象がその医学的な症状又は医学的特性と診断されていることを意味する。
【0031】
本願を通して、出版物が参照される場合、それら出版物の開示は、本発明が属する最先端を十分に説明するため、その全体が参照により本願に取り込まれる。
【0032】
略語
「Aβ」はアミロイドβを意味する。
「CTRL」は対照を意味する。
「FMD」は断食模倣食を意味する。
「PET」はポジトロン放出断層撮影を意味する。
「PR」はタンパク質制限を意味する。
「RF」は再摂食(refeeding)を意味する。
「WT」は野生型を意味する。
【0033】
「対象」との用語は、霊長類(特に高等霊長類)、ヒツジ、イヌ、げっ歯類(例えば、マウス又はラット)、モルモット、ヤギ、ブタ、ネコ、ウサギ、及びウシなどの全ての哺乳類を含む、ヒト又は動物を指す。
【0034】
「断食模倣食(FMD)」との用語は、これは典型的には、対象が完全には飢えないようにしつつ断食が模倣されるように、いくらかの栄養成分と共に対象にその通常のカロリー摂取量の50%以下を与えることによる、断食の効果を模倣する食餌を意味する。しばしば、断食模倣食は「断食模倣強化食」と呼ばれることもある。本発明の文脈において有用な断食模倣強化食の例、並びにIGF-1及びIGFBP1などのマーカーに対するこれらの食餌の影響をモニタリングするための方法は、その開示全体が参照により本開示に組み込まれる、2014年5月9日に出願された米国特許出願番号14/273,946、2014年9月26日に出願された米国特許出願番号14/497,752、2010年10月22日に出願された米国特許出願番号12/910,508、2012年10月26日に出願された米国特許出願番号13/643,673、2013年7月29日に出願された米国特許出願番号13/982,307、2013年10月22日に出願された米国特許出願番号14/060,494、2014年2月12日に出願された米国特許出願番号14/178,953、2014年7月1日に出願された米国特許出願番号14/320,996、2015年3月27日に出願された米国特許出願番号14/671,622に記載されている。米国特許出願番号14/060,494及び米国特許出願番号14/178,953に記載されている断食模倣食は、本発明において特に有用であることが見出される。FMD食のさらなる例は、その開示全体が参照により本開示に組み込まれる、米国特許出願第15/148,251号、国際公開WO2011/050302、及び国際公開WO2011/050302に見出される。カルフォルニア州、ビバリーヒルズのL-Nutra社から販売されているPROLON(登録商標)断食模倣食は、本明細書の方法及び食餌パッケージにおいて有用な断食模倣食の別の例である。PROLON(登録商標)断食模倣食は、脂肪の減少を促進し、血糖、炎症、及びコレステロールを低減し得る高脂肪低カロリー間欠的断食食である。特に有用な断食模倣食プロトコル及び食餌パッケージは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2018/0228198号に見いだされる。
【0035】
アルツハイマー病(及び本明細書に記載されるその他の医学的症状)を処置するための特に有用な食餌は、野菜スープ、ブイヨン、バー、オリーブ、クラッカー、ハーブティーの形態で、1日当たり、約43~47%の炭水化物カロリー、約44~46%の脂肪カロリー、及び約9~11%のタンパク質カロリーを提供する。特定の栄養補助剤(例えば、オリーブ油、ヤシ油、藻類油、ナッツ、カフェイン、及びココア)の添加により、他のFMDと比較して、実質的に1日のカロリーが増える(例えば、300~500kcal増える)。この食餌は、神経保護特性、抗炎症特性、及び抗酸化特性が付加され得る。
【0036】
本発明は、少なくとも1つの実施形態において、通常はアルツハイマー病に関連している症状を処置する方法を提供することにより、先行技術の1又は複数の課題を解決する。この方法は、アルツハイマー病に関連する症状を有する対象を同定するステップを含む。例えば、そのような症状の例としては、アミロイド斑(例えば、Aβ斑)の形成、及び(例えば、血液中又は脳組織中の)タウタンパク質の存在が挙げられる。(Johnson KA,Minoshima S,Bohnen NI,et al.Appropriate use criteria for amyloid PET:A report of the Amyloid Imaging Task Force,the Society of Nuclear Medicine and Molecular Imaging,and the Alzheimer’s Association.Alzheimer’s&Dementia 2013;9:e1-e16.Grundman M,Johnson KA,Lu M,et al.Effect of Amyloid Imaging on the Diagnosis and Management of Patients with Cognitive Decline: Impact of Appropriate Use Criteria.Dement Geriatr Cogn Disord.2016;41(1-2):80-92.doi:10.1159/000441139.Epub 2016 Jan 8)。本明細書に記載される方法は、これらの症状が同定される場合、対象がアルツハイマー病であろうがなかろうがこれらの症状を処置し得ることは理解されるべきである。アミロイド斑の存在は、アミロイドPET走査により測定され得る。タウタンパク質は、タウタンパク質又はその断片についての抗体アッセイにより測定され得る。タウA断片及びタウC断片についての抗体アッセイが開発されている。(Two novel blood-based biomarker candidates measuring degradation of tau are associated with dementia:A prospective study;J.S.Neergaard et al.April 11,2018;https://doi.org/10.1371/journal.pone.0194802)。アルツハイマー病の診断の有無にかかわらず、タウタンパク質が高レベルである可視化されたアミロイド斑形成を有する患者は、本明細書に記載されるFMDプロトコルから利益を得ることができる。有利なことに、FMDプロトコルの実施により、顕著なアルツハイマー病の発症を遅らせることができる。
【0037】
断食模倣食(FMD)は、第1の期間にわたって対象に投与される。通常、FMDの投与は、所定の間隔で複数回繰り返される。改良例において、FMDは1週間~6カ月の間隔で繰り返される。いくつかの変形例において、FMDのサイクルの間に通常食が投与される。この文脈において、通常食は、対象の体重を維持するのに十分なカロリー摂取量の食餌である。改良例において、通常のカロリー摂取量は、対象に1500~2500kcal、1800~2300kcal、又は1800~2000kcalを提供する。
【0038】
FMDは、第1の期間にわたって対象に投与される。いくつかの変形例では、第1の期間は、好ましい順に、3日間以上、5日間以上、6日間以上、又は7日間以上である。さらに、第1の期間は、好ましい順に、20日間以下、15日間以下、10日間以下、又は8日間以下である。改良例において、第1の期間は、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、又は10日間である。別の改良例において、第1の期間は3日間~10日間である。別の改良例において、第1の期間は4日間~8日間である。本明細書に記載される方法のいくつかの変形例において、断食模倣強化食は第1の間隔で繰り返される。改良例において、FMDは2週間~12週間ごとに投与される。例えば、断食模倣強化食は、3カ月~1年、又はそれ以上(例えば、1~5年)であり得る、対象の処置期間の間に、1カ月に1回開始され得る。
【0039】
いくつかの変形例では、本明細書に記載される方法のそれぞれについての断食模倣食は、好ましい順に、対象の通常のカロリー摂取量の50%以下、40%以下、30%以下、又は100%以下を提供する。改良例において、断食模倣食は、好ましい順に、対象の通常のカロリー摂取量の5%以上、10%以上、又は20%以上を提供する。対象の通常のカロリー摂取量は、対象が自己の体重を維持するために消費するkcalの数である。対象の通常のカロリー摂取量は、対象を問診することによって、又は対象の体重を考慮することによって見積もることができる。大まかな指針として、対象の通常のカロリー摂取量は、男性で1日当たり平均2600kcal、女性で1日当たり平均1850kcalである。ある例において、断食模倣食は、1日当たり700~1200kcalを対象に提供する。特に有用な改良例においては、断食模倣食は、平均的体重の男性の対象に1日当たり約1100kcalを、平均的体重の女性の対象に1日当たり約900kcalを提供する。いくつかの改良例において、断食模倣食は、好ましい順に、1日当たり約1500kcal以下、1日当たり約1400kcal以下、1日当たり約1300kcal以下、1日当たり約1200kcal以下、1日当たり約1100kcal以下、1日当たり約1000kcal以下、1日当たり約900kcal以下、1日当たり約800kcal以下、1日当たり約700kcal以下、1日当たり約600kcal以下、1日当たり約500kcal以下、又は1日当たり約2500kcal以下を提供する。いくつかの他の改良例において、断食模倣食は、好ましい順に、1日当たり約0kcal以上、1日当たり約10kcal以上、1日当たり約100kcal以上、1日当たり約200kcal以上、1日当たり約300kcal以上、1日当たり約400kcal以上、又は1日当たり約500kcal以上を提供する。
【0040】
ある変形例において、断食模倣強化食は、最初の日(1日目)に対象1ポンド当たり4.5~7キロカロリーを提供し、次いで、断食模倣食の2日目~最終日に1日につき対象1ポンド当たり3~5キロカロリーを提供する。断食模倣強化食のサイクルの後、第2の食餌が、第2の所定期間にわたって対象に投与される。ある改良例においては、断食模倣強化食の後(例えば、直後)の10日間~26日間の第2の期間にわたって、第2の食餌は、対象の通常のカロリー消費量からの差が20パーセント以内である全体的カロリー消費量を提供する。
【0041】
FMDについての消費量指針は、カロリー、主要栄養素、及び微量栄養素に関する栄養成分表(Nutrition Facts)を含む。カロリーは使用者の体重に準じて消費される。総カロリー消費量は、1日目に1ポンド当たり4.5~7キロカロリー(又は1キログラム当たり10~16キロカロリー)、及び2日目~5日目及び存在するなら残りの日(any remaining days)に1ポンド当たり3~5キロカロリー(又は1キログラム当たり7~11キロカロリー)である。上記実施形態の変形例において、断食模倣食は、1日目に40グラム未満の糖(例えば、1グラム~40グラムの糖)を、2日目~5日目及び存在するなら残りの日に30グラム未満の糖(例えば、1グラム~30グラムの糖)を、1日目に28グラム未満のタンパク質(例えば、1グラム~40グラムのタンパク質)を、2日目~5日目及び存在するなら残りの日に18グラム未満のタンパク質(例えば、1グラム~18グラムのタンパク質)を、1日目に高カロリー消費量に達するため(すなわち、所定の高カロリー消費量に達するため)に20~100グラム又は20~30グラムの一価不飽和脂肪又はそれより多い一価不飽和脂肪を、1日目に高カロリー消費量に達するために6~30グラム又は6~10グラムの多価不飽和脂肪又はそれより多い多価不飽和脂肪を、1日目に高カロリー消費量に達するために2~12グラムの飽和脂肪又はそれより多い飽和脂肪を、断食模倣食の2日目~5日目及び存在するなら残りの日に高カロリー消費量に達するために10~50グラム又は10~15グラムの一価不飽和脂肪又はそれより多い一価不飽和脂肪を、2日目~5日目及び存在するなら残りの日に高カロリー消費量に達するために3~15グラム又は3~5グラムの多価不飽和脂肪又はそれより多い多価不飽和脂肪を、2日目~5日目及び存在するなら残りの日に所望のカロリー消費量に達するために1~12グラム又は1~6グラムの飽和脂肪又はそれより多い飽和脂肪を、並びに各日及び存在するなら残りの日に微量栄養素組成物を提供する。微量栄養素組成物の詳細は以下に記載される。通常のカロリー摂取量まで達し得る上記に記載の高カロリー消費量に達するために、等量の上記脂肪及び本明細書に記載の野菜由来炭化水素供給源(野菜スープ及び野菜チップ)が使用され得る。50%制限量~通常量の範囲のカロリーを有するFMDは効果的であることが期待されるが、本出願に記載される50%以上制限された食餌と比較すると効果が低い。
【0042】
変形例において、断食模倣食は、好ましい順に、1日目に、40グラム未満の糖、30グラム未満の糖、20グラム未満の糖、及び15グラム未満の糖、並びに、好ましい順に、1日目に、10グラムより多い糖、5グラムより多い糖、1グラムより多い糖、及び0グラムより多い糖を提供する。改良例において、断食模倣食は、好ましい順に、2日目~5日目及び存在するなら残りの日に、30グラム未満の糖、25グラム未満の糖、20グラム未満の糖、又は15グラム未満の糖、並びに好ましい順に、2日目~5日目及び存在するなら残りの日に、10グラムより多い糖、5グラムより多い糖、3グラムより多い糖、又は0グラムより多い糖を提供する。
【0043】
他の改良例において、断食模倣食は、好ましい順に、1日目に、28グラム未満のタンパク質、25グラム未満のタンパク質、20グラム未満のタンパク質、又は15グラム未満のタンパク質、並びに、好ましい順に、1日目に、10グラムより多いタンパク質、5グラムより多いタンパク質、3グラムより多いタンパク質、又は0グラムより多いタンパク質を提供する。さらに他の改良例において、断食模倣食は、好ましい順に、2日目~5日目及び存在するなら残りの日に、18グラム未満のタンパク質、15グラム未満のタンパク質、12グラム未満のタンパク質、又は10グラム未満のタンパク質、並びに、好ましい順に、2日目~5日目及び存在するなら残りの日に、8グラムより多いタンパク質、5グラムより多いタンパク質、2グラムより多いタンパク質、又は0グラムより多いタンパク質を提供する。一価不飽和脂肪、多価不飽和脂肪、又は一価不飽和脂肪の量は、各食餌日に関する上記と同様であり得る。微量栄養素組成物の詳細は上記に記載される。
【0044】
上記に記載の実施形態の別の変形例において、断食模倣食は、各食餌日に体重1キログラム当たり8~10kcalを提供する。この変形例において、断食模倣食は、各食餌日に30グラム未満の糖(例えば、1グラム~30グラムの糖)、各食餌日に18グラム未満のタンパク質(例えば、1グラム~18グラムのタンパク質)、各食餌日に9~15グラムの一価不飽和脂肪、並びに各食餌日に2.5~4.5グラムの多価不飽和脂肪及び各食餌日に1~5.5グラムの飽和脂肪を提供する。
【0045】
上記に実施形態のさらに別の変形例において、断食模倣食は、各食餌日に体重1キログラム当たり5~8kcalを提供する。この変形例において、断食模倣食は、各食餌日に20グラム未満の糖、各食餌日に12グラム未満のタンパク質、各食餌日に6.5~10グラムの一価不飽和脂肪、各食餌日に2.5~4.5グラムの多価不飽和脂肪、及び各食餌日に1.5~4グラムの飽和脂肪を提供する。
【0046】
上記の実施形態のさらに別の変形例において、断食模倣食は、各食餌日に体重1キログラム当たり0~3kcalを提供する。この変形例において、断食模倣食は、各食餌日に5グラム未満の糖、各食餌日に3グラム未満のタンパク質、各食餌日に2.5グラム未満の一価不飽和脂肪、各食餌日に1グラム未満の多価不飽和脂肪、及び各食餌日に1グラム未満の飽和脂肪を提供する。
【0047】
断食模倣食は、実質的には任意の脂肪供給源を含み得るが、一価不飽和脂肪供給源及び多価不飽和脂肪供給源を含む、不飽和脂肪を多く含む供給源が特に有用である。一価不飽和食物供給源としては、これらに限定されないが、ピーナッツバター、オリーブ、ナッツ(例えば、アーモンド、ピーカン、クルミ、ピスタチオ、カシュー、マカダミア)、アボカド、種子(例えば、ゴマ)、オイル(例えば、オリーブ、ゴマ、ピーナッツ、キャノーラ)などが挙げられる。多価不飽和食物供給源の適切な例としては、これらに限定されないが、クルミ、種子(例えば、カボチャ、ヒマワリ)、アマニ、魚(例えば、サケ、マグロ、サバ)、オイル(例えば、ベニバナ、ダイズ、トウモロコシ)が挙げられる。第1の食餌はまた、野菜抽出物、ミネラル、オメガ-3/6必須脂肪、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される構成要素を含む。ある改良例において、そのような野菜抽出物は、野菜の推奨される1日分量の5日分相当量を提供する。野菜抽出物の適切な供給源としては、これらに限定されないが、チンゲン菜、ケール、レタス、アスパラガス、ニンジン、ニホンカボチャ、アルファルファ、グリーンピース、トマト、キャベツ、カリフラワー、ビーツが挙げられる。オメガ-3/6必須脂肪の適切な供給源としては、サケ、マグロ、サバ、アミキリ、及びメカジキなどの魚が挙げられる。
【0048】
変形例において、断食模倣食は、以下の微量栄養素(95%以上が非動物性)を含む:1日当たり5,000IUを超えるビタミンA(1日目~最終日)、1日当たり60~240mgのビタミンC(1日目~最終日)、1日当たり400~800mgのカルシウム(1日目~最終日)、1日当たり7.2~14.4mgの鉄(1日目~最終日)、1日当たり200~400mgのマグネシウム(1日目~最終日)、1日当たり1~2mgの銅(1日目~最終日)、1日当たり1~2mgのマンガン(1日目~最終日)、1日当たり3.5~7mcgのセレン(1日目~最終日)、1日当たり2~4mgのビタミンB1(1日目~最終日)、1日当たり2~4mgのビタミンB2(1日目~最終日)、1日当たり20~30mgのビタミンB3(1日目~最終日)、1日当たり1~1.5mgのビタミンB5(1日目~最終日)、1日当たり2~4mgのビタミンB6(1日目~最終日)、1日当たり240~480mcgのビタミンB9(1日目~最終日)、1日当たり600~1000IUのビタミンD(1日目~最終日)、1日当たり14~30mgのビタミンE(1日目~最終日)、1日当たり80mcgを超えるビタミンK(1日目~最終日)、16~25mcgのビタミンB12が全5日間の期間の間に提供され、600mgのドコサヘキサエン酸(DHA、海藻由来)が全5日間の期間の間に提供される。FMED食は、大部分(すなわち、50重量%超)が、ケール、カシュー、黄ピーマン、タマネギ、レモン汁、酵母、及びターメリック、キノコ、ニンジン、オリーブオイル、ビート汁、ホウレンソウ、トマト、コラード、イラクサ、タイム、塩、コショウ、ビタミンB12(シアノコバラミン)、ビーツ、ニホンカボチャ、コラード、トマト、オレガノ、トマトジュース、オレンジジュース、セロリ、ロメインレタス、ホウレンソウ、クミン、オレンジの皮、クエン酸、ナツメグ、クローブ、及びこれらの組み合わせを含む天然供給源由来である、高い微量栄養素含有量を提供する。改良例において、FMDは、推奨される1日栄養量(Daily Value)(DV)の25%を超える微量栄養素を提供する。これらの微量栄養素は上記の微量栄養素組成物において提供される。
【0049】
いくつかの変形例では、第2の食餌が第2の期間にわたって対象に投与される。第2の食餌は、対象の通常のカロリー消費量からの差が10パーセント以内である全体的カロリー消費量を提供する。本発明は第2の期間に著しく限定されるものではないが、第2の期間は、7日間から6カ月間、又はそれ以上であり得る。通常、第2の食餌は、断食模倣強化食に続いて、25日間から26日間、又はそれ以上の間、投与され得る。いくつかの改良例において、第2の食餌は、好ましい順に、1日当たり2500kcal以下、1日当たり2400kcal以下、1日当たり2300kcal以下、1日当たり2200kcal以下、1日当たり2100kcal以下、1日当たり2000kcal以下、1日当たり1900kcal以下、1日当たり1800kcal以下、1日当たり1700kcal以下、1日当たり1600kcal以下、又は1日当たり1500kcal以下を提供する。いくつかの他の改良例において、第2の食餌は、好ましい順に、1日当たり1200kcal以上、1日当たり1300kcal以上、1日当たり1400kcal以上、1日当たり1500kcal以上、1日当たり1600kcal以上、1日当たり1700kcal以上、又は1日当たり1800kcal以上を提供する。
【0050】
別の実施形態において、上記のFMDを投与するための食餌パッケージが提供される。通常、前記食餌パッケージは、上記のFMDの(例えば、1日目~20日目用の)一日用配分食を提供することになる。したがって、FMDを投与するステップは、食餌パッケージを投与することを含み得る。変形例において、食餌には、上記の方法及び投与スケジュールに応じた上記のカロリー、食品、及び栄養についての詳細情報(specification)が含まれる。例えば、食餌パッケージは、所与の期間にわたって対象に投与される第1の食餌のための配分食の第一のセットを投与スケジュールと共に含む。第1の食餌は、1日目に40グラム未満の糖を、2日目~5日目及び存在するなら残りの日に30グラム未満の糖を、1日目に28グラム未満のタンパク質を、2日目~5日目及び存在するなら残りの日に18グラム未満のタンパク質を、1日目に高カロリー摂取量に達するために20~100グラム又は20~30グラムの一価不飽和脂肪又はそれより多い一価不飽和脂肪を、1日目に高カロリー摂取量に達するために6~30グラム又は6~10グラムの多価不飽和脂肪又はそれより多い多価不飽和脂肪を、1日目に高カロリー摂取量に達するために2~12グラムの飽和脂肪又はそれより多い飽和脂肪を、2日目~5日目及び存在するなら残りの日に高カロリー摂取量に達するために10~50グラム又は10~15グラムの一価不飽和脂肪又はそれより多い一価不飽和脂肪を、2日目~5日目及び存在するなら残りの日に高カロリー摂取量に達するために3~15グラム又は3~5グラムの多価不飽和脂肪又はそれより多い多価不飽和脂肪を、2日目~5日目又は存在するなら残りの日に所望の高摂取量に達するために1~30グラム又は又は1~6グラムの飽和脂肪又はそれより多い飽和脂肪を、並びに各日及び存在するなら残りの日に微量栄養素組成物を提供する。改良例において、食餌パッケージはまた、本明細書の方法に応じた断食模倣食を投与するための説明書、及び特に、膵臓β細胞再生及び体細胞リプログラミングを促進するために対象に食餌パッケージを投与するための説明書を投与スケジュールを含む説明書と共に含む。通常のカロリー摂取量まで達し得る上記に記載の高カロリー消費量に達するために、等量の上記脂肪及び等量の本明細書に記載の野菜由来炭化水素供給源(野菜スープ及び野菜チップ)が使用され得る。50%制限量~通常量の範囲のカロリーを有するFMDは効果的であることが期待されるが、本出願に記載される50%以上制限された食餌と比較すると効果が低い。
【0051】
変形例において、食餌パッケージの断食模倣食は、各食餌日に体重1キログラム当たり8~25kcal又は8~10kcalを、各食餌日に30グラム未満の糖を、各食餌日に18グラム未満のタンパク質を、並びに各食餌日に9~30グラム又は9~15グラムの一価不飽和脂肪を、各食餌日に2.5~9グラム又は2.5~4.5グラムの多価不飽和脂肪を、及び各食餌日に1~10グラム又は1~5.5グラムの飽和脂肪を提供する。別の変形例において、食餌パッケージの断食模倣食は、各食餌日に体重1キログラム当たり5~8kcalを、各食餌日に20グラム未満の糖を、各食餌日に12グラム未満のタンパク質を、並びに各食餌日に6.5~10グラムの一価不飽和脂肪を、各食餌日に2.5~4.5グラムの多価不飽和脂肪を、及び各食餌日に1.5~4グラムの飽和脂肪を提供する。さらに別の変形例において、食餌パッケージの断食模倣食は、各食餌日に体重1キログラム当たり0~3kcalを、各食餌日に5グラム未満の糖を、各食餌日に3グラム未満のタンパク質を、並びに各食餌日に2.5グラム未満の一価不飽和脂肪を、各食餌日に1グラム未満の多価不飽和脂肪を、及び各食餌日に1グラム未満の飽和脂肪を提供する。
【0052】
配分食の第一のセットはまた、1日目~5日目に1日当たり400~800mgのカルシウム、1日目~5日目に1日当たり7.2~14.4mgの鉄、1日目~5日目に1日当たり200~400mgのマグネシウム、1日目~5日目に1日当たり1~2mgの銅、1日目~5日目に1日当たり1~2mgのマンガン、1日目~5日目に1日当たり3.5~7mcgのセレンを提供し得る。改良例において、配分食の第一のセットは、1日目~5日目に1日当たり2~4mgのビタミンB1、1日目~5日目に1日当たり2~4mgのビタミンB2、1日目~5日目に1日当たり20~30mgのビタミンB3、1日目~5日目に1日当たり1~1.5mgのビタミンB5、1日目~5日目に1日当たり2~4mgのビタミンB6、1日目~5日目に1日当たり240~480mcgのビタミンB9、1日目~5日目に1日当たり600~1000IUのビタミンD、1日目~5日目に1日当たり14~30mgのビタミンE、1日目~5日目に1日当たり80mcgを超えるビタミンKを提供し、16~25mcgのビタミンB12が所定の期間の間に提供される。他の改良例において、配分食の第一のセットは、所定の期間の間に600mgのドコサヘキサエン酸(DHA、海藻由来)を提供する。改良例において、配分食の第一のセットはまた、ビタミンAを900~1600IUの量で、アスコルビン酸を10~20mgの量で、炭酸カルシウムを60~100mgの量で、フマル酸第一鉄を3~6mgの量で、コレカルシフェロールを0.001~0.005mgの量で、酢酸dl-α-トコフェロールを3~7mgの量で、フィトナジオンを0.1~0.04の量で、硝酸チアミンを0.15~0.5mgの量で、リボフラビンを0.2~0.6mgの量で、及びナイアシンアミドを3~7mgの量で有する構成成分を提供する。改良例において、配分食の第一のセットはまた、パントテン酸カルシウムを1.5~4.0mgの量で、ピリドキシン塩酸塩を0.3~0.7mgの量で、ビオチンを0.01~0.02mgの量で、葉酸を0.07~0.14mgの量で、シアノコバラミンを0.001~0.002mgの量で、クロミウムピコリネートを0.014~0.022mgの量で、硫酸銅を0.18~0.32mgの量で、ヨウ化カリウムを0.03~0.045mgの量で、酸化マグネシウムを20~32mgの量で、硫酸マンガンを0.3~0.7mg、モリブデン酸ナトリウムを0.014~0.023mgの量で、セレン酸ナトリウムを0.014~0.023mgの量で、及び酸化亜鉛を3~5mgの量で有する構成成分を提供する。
【0053】
別の実施形態において、神経炎症を処置する方法が提供される。この方法は、神経炎症を有する対象を同定するステップを含む。断食模倣食が第1の期間にわたって前記対象に投与される。通常、断食模倣食を投与するステップは、所定の間隔で複数回繰り返される。変形例において、断食模倣食を投与するステップは、上記の食餌パッケージを用いて達成され得る。断食模倣食、断食模倣食の繰り返し、第2の食餌、及び断食模倣食のスケジュール管理(例えば、第1の期間、第2の期間など)の詳細、並びに第2の食餌は上記と同様である。
【0054】
別の実施形態では、軽度認知障害(MCI)を処置する方法が提供される。この方法は、MCI、特に健忘性MCIを有する対象を同定するステップを含む。断食模倣食は、上記の第1の期間にわたって対象に投与される。健忘性MCI、特に健忘性MCIを有する対象は、同じ年齢の対象に対して、通常よりも多くの記憶問題を有する。しかしながら、MCI(及び特に健忘性MCI)を有する対象の症状は、アルツハイマー病を有する人々の症状ほど重篤ではない。MCIは、思考試験、記憶試験、及び言語試験により診断され得る。通常、断食模倣食を投与するステップは、所定の間隔で複数回繰り返される。断食模倣食、断食模倣食の繰り返し、第2の食餌、及び断食模倣食のスケジュール管理(例えば、第1の期間、第2の期間など)の詳細、並びに第2の食餌は上記と同様である。
【実施例】
【0055】
以下の実施例は本発明の種々の実施形態を説明するものである。当業者は、本発明の趣旨及び請求項の範囲の範囲内にある多くの変形例を認識するであろう。
【0056】
実験的マウスFMDは、低カロリー消費量の期間の間に高栄養を可能にする成分を同定する栄養スクリーニングに基づく5。前記FMD食は、それぞれこの順序で給餌した、1日目の食餌及び2日目~4日目(オス)又は2~5日目(メス)の食餌と称される2つの異なる構成部分からなる。1日目の食餌は2.47kcal/gを含み、2日目~4日目又は2日目~5日目の食餌は全ての給餌日において同一であり、1.63kcal/gを含む。2週間ごとの摂食量が随意摂食の対照群の平均摂食量(約4g)と同様になるようにして、1日目の食餌及び2日目~4日目/5日目の食餌をFMDコホートに供給した。4%PRの食餌は、3.87kcal/gを含む低カゼインベースのタンパク質の食餌であり、4%PRコホートのオスマウス及びメスマウスに連続7日間給餌された。マウスは、FMD及び4%PRの投与計画の各日において供給された食餌を全て消費し、食餌嫌悪の徴候を示さなかった。食餌の供給の前に、残留餌の摂取及び食糞を避けるため、マウスを新たなケージに移した。実験は、別のADマウスモデルである、LaDu研究所により開発されたE4FAD-Tgマウスモデル6を用いた。このモデルは、晩期発症型の疾患を模倣するように設計され、アポリポタンパク質発現(APOE)により制御され、(5種類のFSD関連変異を発現する)5×FADマウスをヒトapoEの4種類のアイソフォームを発現するマウスと交配することにより作成された6。APOE4対立遺伝子を有するマウスは、APOE3対立遺伝子又はAPOE2対立遺伝子を有するマウスと比較して、ADを発症するリスクが最も高い7。
【0057】
オス及びメスの3×Tg-ADマウスにおいて、FMDの投与は若齢期(3.5カ月)に開始され、老齢期(約18.5カ月)に終了した。AB症状がメスのE4FADマウスの海馬領域及び皮質領域に広範囲に影響した場合、FMDの投与は若齢期(3カ月)に開始し、中年期(約7カ月)に終了した。今日までに集められているデータは、これらの食餌投与計画は、AD関連症状のレベルを低下させ、認知行動を改善し、神経炎症を低減させ、海馬の神経新生のレベルを増加させるということである。
【0058】
実施例は、3×Tg-ADモデルに初期段階に投与され、且つ長期間にわたって投与された場合に、FMD製剤が、AD関連症状を低減させ、認知機能を改善し、海馬の神経新生を増加させることができることを示す(
図2~5)。さらに、
図6は、約4カ月間の隔週のFMDサイクルの後、FMD製剤がE4FAD-TgマウスモデルにおけるAD関連症状を低減し得ることを示す。
図7は、毎週のFMDサイクルが、老化3×Tgマウスにおけるミクログリアの数を仲介し、次に、神経炎症を低減させることを示す。
【0059】
図1A~
図1Kは、周期的FMDサイクルは、老化野生型マウスにおいて、運動協調性、海馬依存的学習、並びに短期記憶及び長期記憶を改善することを実証する。グラフはBrandhorst et al.
3から編集された。
図1Aは、23カ月でのロータロッド機能最高スコアを示す(1群当たりn=18)。ロータロッド機能試験は、回転ロッドがそこに載せられたマウスによる運動活性を強制する、マウスの機能試験である。
図1Bは、各コホートについての直線回帰としてのロータロッド機能(破線)を示す(1群当たりn=18)。自発的交替行動(SAB)スコアに取り込まれた迷路中での固有の交替により、Y迷路試験を用いて短期作業記憶を評価する。高いSABスコアを示すマウスは、短期作業記憶の改善を示す傾向がある。
図1Cは、23カ月でのSABを示す(1群当たりn=11)。新規物体認識(NOR)試験を用いて短期空間記憶を評価する。
図1Dは、新規物体認識課題における23カ月での認知指数を示す。
図1Eは、既知物体と新規物体(新規、斜線のバー)の探索時間の比較を示す(1群当たりn=8)。バーンズ迷路行動試験を用いて長期空間記憶を評価する。
図1F~
図1Iは、23カ月でのバーンズ迷路における、エラー回数(F)、偏差(G)、潜時(H)、及び成功率(I)を示す(1群当たりn=7~12)。
図1Jは逃避箱を設置するために用いられた対照戦略を示し、
図1Kは逃避箱を設置するために用いられたFMD-RF戦略を示す。
【0060】
図2A及び
図2Bは、メスの3×Tg-ADマウスに15カ月間投与された隔週のFMDサイクルが、18.5カ月齢でのAD関連症状のレベルを低減することを示す。
図2Aは、対照食(左)又はFMD食(右)の18.5カ月齢のメスの3×Tg-ADマウスにおける海馬台のアミロイド負荷を示す。
図2Bは、海馬台のアミロイド負荷(%)の定量的測定を示す。
【0061】
図3A及び
図3Bは、オスの3×Tg-ADマウスに15カ月間投与された隔週のFMDサイクルが18.5カ月齢でのAD関連症状のレベルを低減することを実証する。
図3Aは、対照食コホート及びFMDコホートの18.5カ月齢のオスの3×Tg-ADマウスの海馬における高度リン酸化タウ総数の定量的測定を示す。(B)対照食コホート及びFMDコホートの18.5カ月齢のオスの3×Tg-ADマウスの海馬における高度リン酸化タウ数のIHCに基づく可視化を示す。
【0062】
図4A及び4Bは、海馬における細胞増殖の増加に見られるように、メスの3×Tg-ADマウスに15カ月間投与された隔週のFMDサイクルが神経新生を促進することを実証する。(A)対照食コホート及びFMDコホートについて、海馬切片当たりのBrdU
+細胞の定量的測定を示す。(B)1カ月齢の野生型仔マウス(陽性対照)、対照コホートの18.5カ月齢のメスの3×Tg-ADマウス(中央)、又はFMDコホートの18.5カ月齢のメスの3×Tg-ADマウス(右)の海馬におけるBrdU
+細胞のIHCに基づく可視化を示す。
【0063】
図5は、隔週のFMDサイクルが3×Tg-ADマウスにおける海馬依存的作業短期記憶を改善することを実証する。図は、メスの3×Tg-ADマウスについて、試験の中間時点(10.5カ月)での自発的交替行動(SAB)を示す。1群当たりn=9~14。
【0064】
図6A及び
図6Bは、FMDサイクルがE4FADメスマウス(Youmansらにより開発された、APPにおける変異及びヒトApoE対立遺伝子のノックインを発現するADマウスモデル
5)においてAβ斑及びトリトン可溶性オリゴマーAβを低減する。(A)対照食中又は約4カ月間の隔週のFMDサイクル後の7.5カ月齢のE4FADメスマウスの海馬台におけるAβ斑のDAB免疫組織化学。(B)対照食中又は約4カ月間の隔週のFMDサイクル後の7.5カ月齢のE4FADメスマウスの皮質における海馬台Aβ斑負荷(%)(1群当たりn=18)。
【0065】
図7A~
図7Bは、隔週のFMDサイクルが老化3×Tgマウスにおけるミクログリア数を介して神経炎症を低減することを実証する。
図7Aは、18.5カ月齢のメスのC57BL/6 野生型マウス、3×Tg 対照マウス、及び3×Tg FMDマウスの海馬切片におけるCD11b-irミクログリアを示す代表的な画像を示す(上段)。
図7は、C57BL/6 野生型群、3×Tg 対照群、及び3×Tg FMD群の海馬CA1と海馬台の複合脳領域におけるCD11b-ir細胞の総数の定量化を示す(下段左;1群当たりn=5~7個体)。
【0066】
例示的な実施形態が上記で記載されているが、これらの実施形態が本発明の全ての可能な形態を記載することが意図されるものではない。逆に、本明細書で用いられる語は限定のためではなく説明のための語であり、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく種々の変更が為されてもよいことが理解される。さらに、様々な実施のための形態の特徴は、本発明のさらなる実施形態を形成するために組み合わされてもよい。
【0067】
参考文献
1. Bloom, G. S. (2014, April). Amyloid-β and Tau. JAMA Neurology JAMA Neurol, 71(4). 505-508.
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【0068】
刊行物
1. P. Rangan, F. Lobo, G. Navarrete, M. Wei, V.D. Longo. The effects of a protein-restricted dietary intervention on a triple transgenic mouse model of Alzheimer’s disease. Cell Symposia: Neuro-Immune Axis: Reciprocal Regulation in Development, Health, and Disease, Sitges, Spain, Sept. 17-19th, 2017.
2. TITLE Manuscript Number: THELANCETNEUROLOGY-D-16-00304
3. Choi IY, Piccio L, Childress P, Bollman B, Ghosh A, Brandhorst S, Suarez J, Michalsen A, Cross AH, Morgan TE, Wei M, Paul F, Bock M, Longo VD. A Diet Mimicking Fasting Promotes Regeneration and Reduces Autoimmunity and Multiple Sclerosis Symptoms. Cell reports. 2016;15(10):2136-46. doi: 10.1016/j.celrep.2016.05.009. PubMed PMID: 27239035; PMCID: PMC4899145.
4. Brandhorst S, Choi IY, Wei M, Cheng CW, Sedrakyan S, Navarrete G, Dubeau L, Yap LP, Park R, Vinciguerra M, Di Biase S, Mirzaei H, Mirisola MG, Childress P, Ji L, Groshen S, Penna F, Odetti P, Perin L, Conti PS, Ikeno Y, Kennedy BK, Cohen P, Morgan TE, Dorff TB, Longo VD. A Periodic Diet that Mimics Fasting Promotes Multi-System Regeneration, Enhanced Cognitive Performance, and Healthspan. Cell Metab. 2015;22(1):86-99. doi: 10.1016/j.cmet.2015.05.012. PubMed PMID: 26094889; PMCID: PMC4509734.
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7. Parrella E, Maxim T, Maialetti F, Zhang L, Wan J, Wei M, Cohen P, Fontana L, Longo VD. Protein restriction cycles reduce IGF-1 and phosphorylated Tau, and improve behavioral performance in an Alzheimer's disease mouse model. Aging Cell. 2013;12(2):257-68. doi: 10.1111/acel.12049. PubMed PMID: 23362919; PMCID: 3982836.
8. Parrella E, Longo VD. Insulin/IGF-I and related signaling pathways regulate aging in nondividing cells: from yeast to the mammalian brain. ScientificWorldJournal. 2010;10:161-77. doi: 10.1100/tsw.2010.8. PubMed PMID: 20098959.
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【国際調査報告】