(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-30
(54)【発明の名称】短縮センス鎖を有する二本鎖核酸阻害剤分子
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20220623BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20220623BHJP
A61K 31/7115 20060101ALI20220623BHJP
A61K 31/7125 20060101ALI20220623BHJP
A61K 31/712 20060101ALI20220623BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220623BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220623BHJP
【FI】
C12N15/113 Z
A61K31/713
A61K31/7115
A61K31/7125
A61K31/712
A61P43/00 105
A61P43/00 111
A61K48/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564975
(86)(22)【出願日】2020-04-29
(85)【翻訳文提出日】2021-11-02
(86)【国際出願番号】 US2020030398
(87)【国際公開番号】W WO2020226960
(87)【国際公開日】2020-11-12
(32)【優先日】2019-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521359667
【氏名又は名称】ディセルナ ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100183379
【氏名又は名称】藤代 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン ボブ デール
(72)【発明者】
【氏名】ワン ウェイミン
(72)【発明者】
【氏名】ナゼフ ネイム
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084MA17
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB211
4C084ZC411
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZB21
4C086ZC41
(57)【要約】
本明細書では、ステムループ構造をもつ短縮センス鎖、及びアンチセンス鎖を有する二本鎖核酸阻害剤分子が提供される。標的遺伝子発現を低減するための方法及び組成物、ならびに対象となる疾患を治療するための方法及び組成物も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
15~43ヌクレオチドを含み、且つ第1の領域(R1)及び第2の領域(R2)を有するセンス鎖と、
18~35ヌクレオチドならびに5’及び3’末端を含むアンチセンス鎖であって、前記3’末端に6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを有し、前記センス鎖と別個の鎖である前記アンチセンス鎖と、
前記センス鎖の前記第1の領域及び前記アンチセンス鎖によって形成される第1の二重鎖(D1)であって、長さが8~29塩基対である前記第1の二重鎖と
を含み、
前記センス鎖の前記第2の領域が、第1の小領域(S1)、第2の小領域(S2)、及び前記第1及び第2の小領域を結合する一本鎖ループを含み、前記第1及び第2の小領域が第2の二重鎖(D2)を形成し、
前記第2の二重鎖は、長さが6塩基対であり、且つT
mを上昇させるヌクレオチドを含まないか、または、長さが1~5塩基対であり、且つ少なくとも1つのT
mを上昇させるヌクレオチドを含む、
二本鎖核酸阻害剤分子。
【請求項2】
a)前記センス鎖が15~30ヌクレオチドを有し、前記アンチセンス鎖が20ヌクレオチド、及び前記3’末端に前記6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを有し、前記第1の二重鎖の長さが10~14塩基対であるか、
b)前記センス鎖が16~31ヌクレオチドを有し、前記アンチセンス鎖が21ヌクレオチド、及び前記3’末端に前記6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを有し、前記第1の二重鎖の長さが11~15塩基対であるか、
c)前記センス鎖が17~32ヌクレオチドを有し、前記アンチセンス鎖が22ヌクレオチド、及び前記3’末端に前記6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを有し、前記第1の二重鎖の長さが12~16塩基対であるか、
d)前記センス鎖が18~33ヌクレオチドを有し、前記アンチセンス鎖が23ヌクレオチド、及び前記3’末端に前記6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを有し、前記第1の二重鎖の長さが13~17塩基対であるか、
e)前記センス鎖が19~34ヌクレオチドを有し、前記アンチセンス鎖が24ヌクレオチド、及び前記3’末端に前記6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを有し、前記第1の二重鎖の長さが14~18塩基対であるか、
f)前記センス鎖が20~35ヌクレオチドを有し、前記アンチセンス鎖が25ヌクレオチド、及び前記3’末端に前記6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを有し、前記第1の二重鎖の長さが15~19塩基対であるか、
g)前記センス鎖が21~36ヌクレオチドを有し、前記アンチセンス鎖が26ヌクレオチド、及び前記3’末端に前記6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを有し、前記第1の二重鎖の長さが16~20塩基対であるか、
h)前記センス鎖が22~37ヌクレオチドを有し、前記アンチセンス鎖が27ヌクレオチド、及び前記3’末端に前記6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを有し、前記第1の二重鎖の長さが17~21塩基対であるか、
i)前記センス鎖が23~38ヌクレオチドを有し、前記アンチセンス鎖が28ヌクレオチド、及び前記3’末端に前記6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを有し、前記第1の二重鎖の長さが18~22塩基対であるか、
j)前記センス鎖が24~39ヌクレオチドを有し、前記アンチセンス鎖が29ヌクレオチド、及び前記3’末端に前記6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを有し、前記第1の二重鎖の長さが19~23塩基対であるか、
k)前記センス鎖が25~40ヌクレオチドを有し、前記アンチセンス鎖が30ヌクレオチド、及び前記3’末端に前記6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを有し、前記第1の二重鎖の長さが20~24塩基対であるか、
l)前記センス鎖が26~41ヌクレオチドを有し、前記アンチセンス鎖が31ヌクレオチド、及び前記3’末端に前記6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを有し、前記第1の二重鎖の長さが21~25塩基対であるか、
m)前記センス鎖が27~42ヌクレオチドを有し、前記アンチセンス鎖が32ヌクレオチド、及び前記3’末端に前記6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを有し、前記第1の二重鎖の長さが22~26塩基対であるか、または
n)前記センス鎖が28~43ヌクレオチドを有し、前記アンチセンス鎖が33ヌクレオチド、及び前記3’末端に前記6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを有し、前記第1の二重鎖の長さが23~27塩基対である、
請求項1に記載の二本鎖核酸阻害剤分子。
【請求項3】
前記アンチセンス鎖が20~24、21~23、または22ヌクレオチドを有する、請求項1または2に記載の二本鎖核酸阻害剤分子。
【請求項4】
前記アンチセンス鎖の前記3’末端が7~9ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の二本鎖核酸阻害剤分子。
【請求項5】
前記第1の二重鎖の長さが12~16塩基対である、請求項1~4のいずれか1項に記載の二本鎖核酸阻害剤分子。
【請求項6】
前記ループがテトラループまたはトリループである、請求項1~5のいずれか1項に記載の二本鎖核酸阻害剤分子。
【請求項7】
前記アンチセンス鎖中の少なくとも1つのヌクレオチドが2’-Fで修飾され、前記アンチセンス鎖中の前記2’-Fで修飾された前記少なくとも1つのヌクレオチドが、ホスホジエステル結合以外のリン含有ヌクレオチド間結合に隣接している、請求項1~6のいずれか1項に記載の二本鎖核酸阻害剤分子。
【請求項8】
前記アンチセンス鎖のヌクレオチド14が2’-Fで修飾され、ホスホジエステル結合以外のリン含有ヌクレオチド間結合によって前記アンチセンス鎖のヌクレオチド13及び15に結合し、及び/または前記アンチセンス鎖のヌクレオチド2が2’-Fで修飾され、ホスホジエステル結合以外のリン含有ヌクレオチド間結合によって前記アンチセンス鎖のヌクレオチド1及び3に結合している、請求項1~7のいずれか1項に記載の二本鎖核酸阻害剤分子。
【請求項9】
前記アンチセンス鎖が、ホスホジエステル結合以外のリン含有ヌクレオチド間結合に隣接する2’-Fで修飾された少なくとも2つのヌクレオチドを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の二本鎖核酸阻害剤分子。
【請求項10】
前記リン含有ヌクレオチド間結合がホスホロチオアート結合である、請求項7~9のいずれか1項に記載の二本鎖核酸阻害剤分子。
【請求項11】
前記センス鎖の領域1が少なくとも1つのT
mを上昇させるヌクレオチドを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の二本鎖核酸阻害剤分子。
【請求項12】
前記センス鎖のヌクレオチド1がT
mを上昇させるヌクレオチドである、請求項1~11のいずれか1項に記載の二本鎖核酸阻害剤分子。
【請求項13】
前記センス鎖の領域1が最大3つのT
mを上昇させるヌクレオチドを含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の二本鎖核酸阻害剤分子。
【請求項14】
前記アンチセンス鎖のヌクレオチド6と塩基対を形成する前記センス鎖の領域1中のヌクレオチドがT
mを上昇させるヌクレオチドであり、且つ/または前記アンチセンス鎖のヌクレオチド5と塩基対を形成する前記センス鎖の領域1中のヌクレオチドがT
mを上昇させるヌクレオチドである、請求項1~13のいずれか1項に記載の二本鎖核酸阻害剤分子。
【請求項15】
前記アンチセンス鎖のヌクレオチド1~4と塩基対を形成する前記センス鎖の領域1中のヌクレオチドのいずれもがT
mを上昇させるヌクレオチドではない、請求項1~14のいずれか1項に記載の二本鎖核酸阻害剤分子。
【請求項16】
前記第2の二重鎖の長さが1~3塩基対であり、前記第2の二重鎖が少なくとも1つのT
mを上昇させるヌクレオチドを含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の二本鎖核酸阻害剤分子。
【請求項17】
前記第2の二重鎖が2~10個のT
mを上昇させるヌクレオチドを含み、且つ前記第2の二重鎖の長さが1~5塩基対であるか、または前記第2の二本鎖が2~6個のT
mを上昇させるヌクレオチドを含み、且つ前記第2の二本鎖の長さが1~3塩基対である、請求項1~16のいずれか1項に記載の二本鎖核酸阻害剤分子。
【請求項18】
前記センス鎖の長さが16~33ヌクレオチドであり、前記アンチセンス鎖の長さが21~23ヌクレオチドであり、前記第1の二重鎖の長さが12~17塩基対であり、前記第2の二重鎖の長さが1~3塩基対であり、前記第2の二重鎖が少なくとも1つのT
mを上昇させるヌクレオチドを含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の二本鎖核酸阻害剤分子。
【請求項19】
前記センス鎖の前記第1の領域の長さが12~16ヌクレオチドであり、前記センス鎖の前記第2の領域の長さが5~10ヌクレオチドであり、
前記センス鎖の前記第1の領域と前記アンチセンスによって形成される前記第1の二重鎖の長さが12~16塩基対であり、
前記センス鎖の前記第2の領域の前記第1及び第2の核酸によって形成される前記第2の二重鎖の長さが、3塩基対、2塩基対、または1塩基対であり、前記第2の二重鎖が少なくとも1つのT
mを上昇させるヌクレオチドを含み、
前記アンチセンス鎖は、長さが22ヌクレオチドであり、その3’末端に6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを有する、請求項1~18のいずれか1項に記載の二本鎖核酸阻害剤分子。
【請求項20】
前記センス鎖の前記第2の領域の長さが5または6ヌクレオチドであり、前記第2の二重鎖の長さが1塩基対である、請求項19に記載の二本鎖核酸阻害剤分子。
【請求項21】
前記第2の二重鎖が少なくとも2つのT
mを上昇させるヌクレオチドを含む、請求項1~20のいずれか1項に記載の二本鎖核酸阻害剤分子。
【請求項22】
前記テトラループが、UNCG、GNRA、CUUG、A/UGNN、GGUG、RNYA、もしくはAGNNから選択されるRNAテトラループ、またはd(GNAB)、d(CNNG)、もしくはd(TNCG)から選択されるDNAテトラループである、請求項1~21のいずれか1項に記載の二本鎖核酸阻害剤分子。
【請求項23】
前記テトラループが配列GAAAを有する、請求項1~22のいずれか1項に記載の二本鎖核酸阻害剤分子。
【請求項24】
前記トリループが配列GAAを有する、請求項1~23のいずれか1項に記載の二本鎖核酸阻害剤分子。
【請求項25】
前記T
mを上昇させるヌクレオチドが、二環式ヌクレオチド、三環式ヌクレオチド、Gクランプ及びその類似体、ヘキシトールヌクレオチド、及び修飾ヌクレオチドからなる群より選択され、前記修飾ヌクレオチドは、糖部分の2’炭素において2’-Fまたは2’-OMeで修飾されていない、請求項1~24のいずれか1項に記載の二本鎖核酸阻害剤分子。
【請求項26】
前記修飾ヌクレオチドが、5-ブロモ-ウラシル、5-ヨード-ウラシル、5-プロピニル修飾ピリミジン、2-アミノアデニン、2-チオウリジン、5Me-チオウリジン、またはシュードウリジンである、請求項1~25のいずれか1項に記載の二本鎖核酸阻害剤分子。
【請求項27】
前記T
mを上昇させるヌクレオチドが二環式ヌクレオチドである、請求項1~26のいずれか1項に記載の二本鎖核酸阻害剤分子。
【請求項28】
前記二環式ヌクレオチドが、フラノシルである第1の環と、前記フラノシルの2’炭素と4’炭素を連結して第2の環を形成する架橋とを含む、請求項27に記載の二本鎖核酸阻害剤分子。
【請求項29】
前記フラノシルの2’炭素と4’炭素を連結する前記架橋が、
a)例えば、4’-CH
2-NH-O-2’(BNA
NCとしても知られる)または4’-CH
2-N(CH
3)-O-2’(BNA
NC[NMe]としても知られる)を含む、4’-CH
2-O-N(R)-2’及び4’-CH
2-N(R)-O-2’(式中、RはH、C
1~C
12アルキル、または保護基である)と、
b)4’-CH
2-2’、4’-(CH
2)
2-2’、4’-(CH
2)
3-2’、4’-(CH
2)-O-2’(LNAとしても知られる)、4’-(CH
2)-S-2’、4’-(CH
2)
2-O-2’(ENAとしても知られる)、4’-CH(CH
3)-O-2’(cEtとしても知られる)、及び4’-CH(CH
2OCH
3)-O-2’(cMOEとしても知られる)、ならびにそれらの類似体と、
c)4’-C(CH
3)(CH
3)-O-2’及びその類似体と、
d)4’-CH
2-N(OCH
3)-2’及びその類似体と、
e)4’-CH
2-O-N(CH
3)-2’及びその類似体と、
f)4’-CH
2-C(H)(CH
3)-2’及びその類似体と、
g)4’-CH
2-C(=CH
2)-2’及びその類似体と
からなる群より選択される、請求項28に記載の二本鎖核酸阻害剤分子。
【請求項30】
前記テトラループまたはトリループが、少なくとも1つのリガンドコンジュゲートヌクレオチドを含む、請求項1~29のいずれか1項に記載の二本鎖核酸阻害剤分子。
【請求項31】
前記テトラループが2つ、3つ、または4つのリガンドコンジュゲートヌクレオチドを含むか、または前記トリループが2つまたは3つのコンジュゲートヌクレオチドを含む、請求項30に記載の二本鎖核酸阻害剤分子。
【請求項32】
前記リガンドがGalNAcである、請求項30または31に記載の二本鎖核酸阻害剤分子。
【請求項33】
前記GalNAcが糖部分の2’位において前記ヌクレオチドにコンジュゲートしている、請求項32に記載の二本鎖核酸阻害剤分子。
【請求項34】
前記センス鎖及び/または前記アンチセンス鎖の5’末端に5’-リン酸模倣物をさらに含む、請求項1~33のいずれか1項に記載の二本鎖核酸阻害剤分子。
【請求項35】
前記二本鎖核酸阻害剤分子が脂質ナノ粒子を用いて製剤化される、請求項1~34のいずれか1項に記載の二本鎖核酸阻害剤分子。
【請求項36】
前記脂質ナノ粒子がコア脂質及びエンベロープ脂質を含み、前記コア脂質が第1のカチオン性脂質及び第1のペグ化脂質を含み、前記エンベロープ脂質が、第2のカチオン性脂質、中性脂質、ステロール、及び第2のペグ化脂質を含む、請求項35に記載の二本鎖核酸阻害剤分子。
【請求項37】
前記第1のカチオン性脂質がDL-048であり、前記第1のペグ化脂質がDSG-MPEGであり、前記第2のカチオン性脂質がDL-103であり、前記中性脂質がDSPCであり、前記ステロールがコレステロールであり、前記第2のペグ化脂質がDSPE-MPEGである、請求項36に記載の二本鎖核酸阻害剤分子。
【請求項38】
治療有効量の請求項1~37のいずれか1項に記載の二本鎖核酸阻害剤分子及び賦形剤を含む組成物。
【請求項39】
前記組成物が医薬組成物であり、前記賦形剤が薬学的に許容される賦形剤である、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
対象における標的遺伝子発現の低減方法であって、請求項1~39のいずれか1項に記載の二本鎖核酸阻害剤分子または組成物を、標的遺伝子発現の低減を必要とする対象に、前記標的遺伝子発現を低減するのに十分な量で投与することを含む、前記方法。
【請求項41】
前記標的遺伝子が、構造遺伝子、ハウスキーピング遺伝子、転写因子をコードする遺伝子、運動性因子をコードする遺伝子、細胞周期因子をコードする遺伝子、細胞周期阻害因子をコードする遺伝子、酵素をコードする遺伝子、成長因子をコードする遺伝子、サイトカインをコードする遺伝子、または腫瘍抑制因子をコードする遺伝子である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記投与することが、静脈内投与、筋肉内投与、または皮下投与を含む、請求項40または41に記載の方法。
【請求項43】
前記対象がヒトである、請求項40~42のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年5月3日出願の米国仮特許出願第62/842,908号の優先権を主張する。この段落で参照する前記関連出願は、その全体が本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
オリゴヌクレオチドは、ヌクレオチドの高分子配列(RNA、DNA、及びそれらの類似体)である。核酸阻害剤分子は、細胞内RNAレベルを調節するオリゴヌクレオチドであり、がん、ウイルス感染症、及び遺伝性障害の治療において早い時期から有望であることが実証されている。核酸阻害剤分子は、RNA干渉(RNAi)を含む多様な一連の機序を介してRNA発現を調節することができる。
【0003】
RNAiは、二本鎖RNA分子(dsRNA)が、当該dsRNAに相補的な配列を有する標的遺伝子発現を阻害する、ほとんどの真核生物に見られる保存された経路である。一般的なRNAi経路において、より長いdsRNAはダイサー酵素によって低分子干渉RNA(「siRNA」)と呼ばれるより短いRNA二重鎖に切断される。上記siRNAは、ダイサー、トランス活性化応答RNA結合タンパク質(TRBP)、及びアルゴノート2(「Ago2」)と結合して、RNA誘導サイレンシング複合体(「RISC」)と呼ばれることもある複合体を形成することが明らかになっている。Ago2は、siRNAのアンチセンス鎖(ガイド鎖とも呼ばれる)を使用して標的mRNA切断の配列特異性を誘導し、標的mRNAを切断する、エンドヌクレアーゼである。
【0004】
様々な二本鎖RNAi阻害剤分子構造が長年にわたって開発されてきた。例えば、RNAi阻害剤分子に関する初期の研究では、天然のsiRNAを模倣する二本鎖核酸分子であって、各鎖のサイズが19~25ヌクレオチドであり、1~5ヌクレオチドである少なくとも1つの3’オーバーハングを有する上記二本鎖核酸分子に焦点が当てられていた(例えば、米国特許第8,372,968号)。その後、より長い二本鎖RNAi阻害剤分子であって、インビボでダイサー酵素によってプロセシングされて活性RNAi阻害剤分子となる、上記二本鎖RNAi阻害剤分子が開発された(例えば、米国特許第8,883,996号を参照のこと)。その後の研究により、伸長二本鎖核酸阻害剤分子であって、少なくとも一方の鎖の少なくとも一端が、上記分子の二本鎖標的指向性領域を超えて伸長し、上記鎖の一方が、熱力学的に安定化させるテトラループ構造を含む構造を含む、上記分子が開発された(例えば、米国特許第8,513,207号、米国特許第8,927,705号、WO2010/033225、及びWO2016/100401を参照されたく、これらのそれぞれは、本記述をもって、その全体が援用される)。
【0005】
特定の例において、化学的に修飾したヌクレオチドを核酸阻害剤分子中に導入し、インビボ投与後に置かれる条件などの特定の条件下で所望される場合がある特性を導入してきた。かかる化学的に修飾されたヌクレオチドとしては、例えば、上記オリゴヌクレオチドの構造を分解するもしくは活性に干渉するヌクレアーゼまたは他の酵素に対して安定化するように、細胞による上記オリゴヌクレオチドの取り込みを増加させるように、あるいは上記オリゴヌクレオチドの薬物動態特性を改善するように設計された上記ヌクレオチドが挙げられる。
【0006】
しかしながら、新たな二本鎖核酸阻害剤分子構造を開発する、及び/またはかかる核酸阻害剤分子に所望の特性を付与するために化学的に修飾したヌクレオチドを組み込むという願望については、上記構造及び/または化学的に修飾したヌクレオチドが上記核酸阻害剤分子の活性に与える可能性があるいずれかの悪影響を最小限に抑制する(例えば、標的遺伝子ノックダウンの効力または持続時間の何らかの低下を最小限に抑制する)という競合する願望とのバランスをとらなければならない。
【発明の概要】
【0007】
本出願は、ステムループ構造をもつセンス鎖、及び別個のアンチセンス鎖を有する二本鎖核酸阻害剤分子であって、上記センス鎖の長さがその5’末端において短縮されており、その結果、上記アンチセンス鎖の3’末端により長い一本鎖オーバーハングが生じる、上記二本鎖核酸阻害剤分子に関する。本二本鎖核酸阻害剤分子は、1)センス鎖(S)の第1の領域(R1)とアンチセンス鎖(AS)との間の第1の二重鎖(D1);2)上記ステムループ構造のステムに相当するセンス鎖の第2の領域(R2)における第2の二重鎖(D2);3)R2の第1の小領域(S1)及び第2の小領域(S2)を連結するループを含む。
図1A~Dを参照されたい。さらに、上記ステムループ構造は一般的に、テトラループまたはトリループを含み、センス鎖の5’または3’末端に位置する。驚くべきことに、センス鎖の5’末端を、本二本鎖核酸阻害剤分子の効力を低下させることなく、実質的に短縮させることができることが見出された。例えば、例1~4を参照されたい。
【0008】
さらに、米国仮出願第62/657,428号及び第62/778,759号において既に示されているように、テトラループまたはトリループを含む二本鎖核酸阻害剤分子のステム二重鎖(D2)中にTmを上昇させるヌクレオチド(例えば、二環式ヌクレオチド)を導入することにより、部分的に、インビボ標的mRNAノックダウンの持続時間の延長によって証明されているように、本二本鎖核酸阻害剤分子の安定性が向上する可能性がある。本明細書では、本明細書に開示の二本鎖核酸阻害剤分子の短縮センス鎖の第1の領域(R1)中に、例えばヌクレオチド1、7、8、9、または10の1つ以上に、追加のTmを上昇させるヌクレオチドを組み込むことによって、上記短縮センス鎖核酸阻害剤分子の安定性が向上する可能性があることがさらに開示される。例えば、例2及び3を参照されたい。
【0009】
一態様は、
15~43ヌクレオチドを含み、且つ第1の領域(R1)及び第2の領域(R2)を有するセンス鎖と、
18~35ヌクレオチドならびに5’及び3’末端を含むアンチセンス鎖であって、上記3’末端に6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを有し、上記センス鎖と別個の鎖である上記アンチセンス鎖と、
センス鎖の第1の領域及びアンチセンス鎖によって形成される第1の二重鎖(D1)であって、長さが8~29塩基対である上記第1の二重鎖と
を含み、
センス鎖の第2の領域が、第1の小領域(S1)、第2の小領域(S2)、及び第1の小領域と第2の小領域を結合する一本鎖ループを含み、第1及び第2の小領域が第2の二重鎖(D2)を形成し、
第2の二重鎖は、長さが6塩基対であり、且つTmを上昇させるヌクレオチドを含まないか、または、長さが1~5塩基対であり、且つ少なくとも1つのTmを上昇させるヌクレオチドを含む、
二本鎖核酸阻害剤分子に関する。
【0010】
本二本鎖核酸阻害剤分子の特定の実施形態において、上記センス鎖は15~30ヌクレオチドを有し、上記アンチセンス鎖は、上記3’末端の6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを含む20ヌクレオチドを有し、第1の二重鎖の長さは10~14塩基対である。
【0011】
本二本鎖核酸阻害剤分子の特定の実施形態において、上記センス鎖は16~31ヌクレオチドを有し、上記アンチセンス鎖は、上記3’末端の6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを含む21ヌクレオチドを有し、第1の二重鎖の長さは11~15塩基対である。
【0012】
本二本鎖核酸阻害剤分子の特定の実施形態において、上記センス鎖は17~32ヌクレオチドを有し、上記アンチセンス鎖は、上記3’末端の6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを含む22ヌクレオチドを有し、第1の二重鎖の長さは12~16塩基対である。
【0013】
本二本鎖核酸阻害剤分子の特定の実施形態において、上記センス鎖は18~33ヌクレオチドを有し、上記アンチセンス鎖は、上記3’末端の6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを含む23ヌクレオチドを有し、第1の二重鎖の長さは13~17塩基対である。
【0014】
本二本鎖核酸阻害剤分子の特定の実施形態において、上記センス鎖は19~34ヌクレオチドを有し、上記アンチセンス鎖は、上記3’末端の6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを含む24ヌクレオチドを有し、第1の二重鎖の長さは14~18塩基対である。
【0015】
本二本鎖核酸阻害剤分子の特定の実施形態において、上記センス鎖は20~35ヌクレオチドを有し、上記アンチセンス鎖は、上記3’末端の6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを含む25ヌクレオチドを有し、第1の二重鎖の長さは15~19塩基対である。
【0016】
本二本鎖核酸阻害剤分子の特定の実施形態において、上記センス鎖は21~36ヌクレオチドを有し、上記アンチセンス鎖は、上記3’末端の6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを含む26ヌクレオチドを有し、第1の二重鎖の長さは16~20塩基対である。
【0017】
本二本鎖核酸阻害剤分子の特定の実施形態において、上記センス鎖は22~37ヌクレオチドを有し、上記アンチセンス鎖は、上記3’末端の6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを含む27ヌクレオチドを有し、第1の二重鎖の長さは17~21塩基対である。
【0018】
本二本鎖核酸阻害剤分子の特定の実施形態において、上記センス鎖は23~38ヌクレオチドを有し、上記アンチセンス鎖は、上記3’末端の6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを含む28ヌクレオチドを有し、第1の二重鎖の長さは18~22塩基対である。
【0019】
本二本鎖核酸阻害剤分子の特定の実施形態において、上記センス鎖は24~39ヌクレオチドを有し、上記アンチセンス鎖は、上記3’末端の6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを含む29ヌクレオチドを有し、第1の二重鎖の長さは19~23塩基対である。
【0020】
本二本鎖核酸阻害剤分子の特定の実施形態において、上記センス鎖は25~40ヌクレオチドを有し、上記アンチセンス鎖は、上記3’末端の6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを含む30ヌクレオチドを有し、第1の二重鎖の長さは20~24塩基対である。
【0021】
本二本鎖核酸阻害剤分子の特定の実施形態において、上記センス鎖は26~41ヌクレオチドを有し、上記アンチセンス鎖は、上記3’末端の6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを含む31ヌクレオチドを有し、第1の二重鎖の長さは21~25塩基対である。
【0022】
本二本鎖核酸阻害剤分子の特定の実施形態において、上記センス鎖は27~42ヌクレオチドを有し、上記アンチセンス鎖は、上記3’末端の6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを含む32ヌクレオチドを有し、第1の二重鎖の長さは22~26塩基対である。
【0023】
本二本鎖核酸阻害剤分子の特定の実施形態において、上記センス鎖は28~43ヌクレオチドを有し、上記アンチセンス鎖は、上記3’末端の6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを含む33ヌクレオチドを有し、第1の二重鎖の長さは23~27塩基対である。
【0024】
特定の実施形態において、上記アンチセンス鎖は、20~24、21~23、または22ヌクレオチドを有する。特定の実施形態において、上記アンチセンス鎖は、その3’末端に7~9ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを有する。
【0025】
特定の実施形態において、第1の二重鎖(D1)の長さは12~16塩基対である。
【0026】
特定の実施形態において、上記ループはテトラループまたはトリループである。
【0027】
特定の実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子は、
21~32ヌクレオチドを含み、且つ第1の領域(R1)及び第2の領域(R2)を有するセンス鎖と、
22ヌクレオチドならびに5’及び3’末端を含むアンチセンス鎖であって、上記3’末端に6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを有し、上記センス鎖と別個の鎖である上記アンチセンス鎖と、
上記センス鎖の第1の領域及び上記アンチセンス鎖によって形成される第1の二重鎖(D1)であって、長さが12~16塩基対である上記第1の二重鎖と
を含み、
上記センス鎖の第2の領域は、第1の小領域(S1)、第2の小領域(S2)、及び第1の小領域と第2の小領域を結合する一本鎖トリループまたはテトラループを含み、第1及び第2の小領域は第2の二重鎖(D2)を形成し、
第2の二重鎖は、長さが6塩基対であり、且つTmを上昇させるヌクレオチドを含まないか、または、長さが3~5塩基対であり、且つ少なくとも1つのTmを上昇させるヌクレオチドを含む。
【0028】
特定の実施形態において、上記アンチセンス鎖中の少なくとも1つのヌクレオチドは2’-Fで修飾され、両側がホスホジエステル結合以外のリン含有ヌクレオチド間結合に隣接している。特定の実施形態において、上記アンチセンス鎖は、ホスホジエステル結合以外のリン含有ヌクレオチド間結合に隣接する2’-Fで修飾された少なくとも2つのヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、上記アンチセンス鎖のヌクレオチド14は2’-Fで修飾され、ホスホジエステル結合以外のリン含有ヌクレオチド間結合によって上記アンチセンス鎖のヌクレオチド13及び15に結合している。特定の実施形態において、上記アンチセンス鎖のヌクレオチド2は2’-Fで修飾され、ホスホジエステル結合以外のリン含有ヌクレオチド間結合によって上記アンチセンス鎖のヌクレオチド1及び3に結合している。特定の実施形態において、上記アンチセンス鎖のヌクレオチド2及び14は2’-Fで修飾され、両側がホスホジエステル結合以外のリン含有ヌクレオチド間結合に隣接している。特定の実施形態において、上記リン含有ヌクレオチド間結合はホスホロチオアート結合である。
【0029】
特定の実施形態において、上記センス鎖の領域1は少なくとも1つのTmを上昇させるヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、センス鎖のヌクレオチド1は二環式ヌクレオチドである。特定の実施形態において、センス鎖の領域1は最大3つのTmを上昇させるヌクレオチドを含む。
【0030】
特定の実施形態において、上記アンチセンス鎖のヌクレオチド6と塩基対を形成する上記センス鎖の領域1中のヌクレオチドはTmを上昇させるヌクレオチドであり、且つ/またはアンチセンス鎖のヌクレオチド5と塩基対を形成するセンス鎖の領域1中のヌクレオチドはTmを上昇させるヌクレオチドである。特定の実施形態において、アンチセンス鎖のヌクレオチド1~4と塩基対を形成するセンス鎖の領域1中のヌクレオチドのいずれもがTmを上昇させるヌクレオチドではない。
【0031】
特定の実施形態において、第2の二重鎖は、長さが1~3塩基対であり、少なくとも1つのTmを上昇させるヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、第2の二重鎖は2~10個のTmを上昇させるヌクレオチドを含み、且つ第2の二重鎖の長さは1~5塩基対であるか、または第2の二本鎖は2~6個のTmを上昇させるヌクレオチドを含み、且つ第2の二重鎖の長さは1~3塩基対である。
【0032】
本二本鎖核酸阻害剤分子の特定の実施形態において、上記センス鎖の長さは16~33ヌクレオチドであり、上記アンチセンス鎖の長さは21~23ヌクレオチドであり、第1の二重鎖の長さは12~17塩基対であり、第2の二重鎖は、長さが1~3塩基対であり、少なくとも1つのTmを上昇させるヌクレオチドを含む。
【0033】
二本鎖核酸阻害剤分子の特定の実施形態において、上記センス鎖の第1の領域の長さは12~16ヌクレオチドであり、センス鎖の第2の領域は、長さが5~10ヌクレオチドであり、トリループまたはテトラループを含み、
センス鎖の第1の領域とアンチセンスによって形成される第1の二重鎖の長さは12~16塩基対であり、
センス鎖の第2の領域の第1及び第2の小領域によって形成される第2の二重鎖は、長さが、3塩基対、2塩基対、または1塩基対であり、少なくとも1つのTmを上昇させるヌクレオチドを含み、
上記アンチセンス鎖の長さは、3’末端の6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを含む22ヌクレオチドである。
【0034】
特定の実施形態において、上記センス鎖の第2の領域の長さは5または6ヌクレオチドであり、第2の二重鎖(D2)は、長さが1塩基対であり、少なくとも1つのTmを上昇させるヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、第2の二重鎖(D2)は、少なくとも2つのTmを上昇させるヌクレオチドを含む。
【0035】
特定の実施形態において、上記ループはテトラループであり、上記テトラループは、UNCG、GNRA、CUUG、A/UGNN、GGUG、RNYA、AGNNから選択されるRNAテトラループ、またはd(GNAB)、d(CNNG)、もしくはd(TNCG)から選択されるDNAテトラループである。特定の実施形態において、上記テトラループは配列GAAAを有する。
【0036】
特定の実施形態において、上記ループはトリループである。特定の実施形態において、上記トリループは配列GAAを有する。
【0037】
本明細書に記載の二本鎖核酸阻害剤分子の特定の実施形態において、上記Tmを上昇させるヌクレオチドは、二環式ヌクレオチド、三環式ヌクレオチド、Gクランプ及びその類似体、ヘキシトールヌクレオチド、及び修飾ヌクレオチドからなる群より選択され、上記修飾ヌクレオチドは、糖部分の2’炭素において2’-Fまたは2’-OMeで修飾されていない。特定の実施形態において、上記修飾ヌクレオチドは、5-ブロモ-ウラシル、5-ヨード-ウラシル、5-プロピニル修飾ピリミジン、2-アミノアデニン、2-チオウリジン、5Me-チオウリジン、またはシュードウリジンである。
【0038】
特定の実施形態において、上記少なくとも1つの二環式ヌクレオチドは、フラノシルである第1の環と、上記フラノシルの2’炭素と4’炭素を連結して第2の環を形成する架橋とを含む。
【0039】
特定の実施形態において、上記フラノシルの2’炭素と4’炭素を連結する上記架橋は、
a)例えば、4’-CH2-NH-O-2’(BNANCとしても知られる)または4’-CH2-N(CH3)-O-2’(BNANC[NMe]としても知られる)を含む、4’-CH2-O-N(R)-2’及び4’-CH2-N(R)-O-2’(式中、RはH、C1~C12アルキル、または保護基である)と、
b)4’-CH2-2’、4’-(CH2)2-2’、4’-(CH2)3-2’、4’-(CH2)-O-2’(LNAとしても知られる)、4’-(CH2)-S-2’、4’-(CH2)2-O-2’(ENAとしても知られる)、4’-CH(CH3)-O-2’(cEtとしても知られる)、及び4’-CH(CH2OCH3)-O-2’(cMOEとしても知られる)、ならびにそれらの類似体と、
c)4’-C(CH3)(CH3)-O-2’及びその類似体と、
d)4’-CH2-N(OCH3)-2’及びその類似体と、
e)4’-CH2-O-N(CH3)-2’及びその類似体と、
f)4’-CH2-C(H)(CH3)-2’及びその類似体と、
g)4’-CH2-C(=CH2)-2’及びその類似体と
からなる群より選択される。
【0040】
特定の実施形態において、上記テトラループまたはトリループは、少なくとも1つのリガンドコンジュゲートヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、上記テトラループが、2つ、3つ、もしくは4つのリガンドコンジュゲートヌクレオチドを含むか、または上記トリループが2つもしくは3つのコンジュゲートヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、上記リガンドはGalNAcである。特定の実施形態において、上記GalNAcは糖部分の2’位において上記ヌクレオチドにコンジュゲートしている。
【0041】
特定の実施形態において、上記二本鎖核酸阻害剤は、センス鎖及び/またはアンチセンス鎖の5’末端に5’-リン酸模倣物をさらに含む。
【0042】
特定の実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子は脂質ナノ粒子と共に製剤化される。特定の実施形態において、上記脂質ナノ粒子はコア脂質及びエンベロープ脂質を含み、上記コア脂質は第1のカチオン性脂質及び第1のペグ化脂質を含み、上記エンベロープ脂質は、第2のカチオン性脂質、中性脂質、ステロール、及び第2のペグ化脂質を含む。特定の実施形態において、第1のカチオン性脂質はDL-048であり、第1のペグ化脂質はDSG-MPEGであり、第2のカチオン性脂質はDL-103であり、上記中性脂質はDSPCであり、上記ステロールはコレステロールであり、第2のペグ化脂質はDSPE-MPEGである。
【0043】
別の態様は、治療有効量の、本明細書に記載の短縮センス鎖二本鎖核酸阻害剤分子及び賦形剤を含む組成物に関する。特定の実施形態において、上記組成物は医薬組成物であり、上記賦形剤は薬学的に許容される賦形剤である。
【0044】
別の態様は、対象における標的遺伝子発現の低減方法であって、本二本鎖核酸阻害剤分子または組成物を、それを必要とする対象に、上記標的遺伝子発現を低減するのに十分な量で投与することを含む、上記方法に関する。特定の実施形態において、上記標的遺伝子は、構造遺伝子、ハウスキーピング遺伝子、転写因子をコードする遺伝子、運動性因子をコードする遺伝子、細胞周期因子をコードする遺伝子、細胞周期阻害因子をコードする遺伝子、酵素をコードする遺伝子、成長因子をコードする遺伝子、サイトカインをコードする遺伝子、または腫瘍抑制因子をコードする遺伝子である。特定の実施形態において、投与ステップは、静脈内投与、筋肉内投与、または皮下投与を含む。特定の実施形態において、上記対象はヒトである。
【0045】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、特定の実施形態を示し、書面による説明と共に、本明細書に開示の組成物及び方法の特定の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1A】アンチセンス鎖(「AS」)及びセンス鎖(「S」)を有する例示的な二本鎖核酸阻害剤分子であって、上記センス鎖がステムループ構造を含み、上記ループがトリループである上記二本鎖核酸阻害剤分子の概略図である。この図に示すように、上記AS鎖及びS鎖は別個の鎖であり、それぞれが5’端及び3’端を有する。
【
図1B】
図1Aと同様の例示的な概略図である。この図では、センス鎖は、アンチセンス鎖(AS)と二重鎖を形成する第1の領域(R1)と、第1の小領域(S1)と第2の小領域(S2)を結合するループ(L)を含む第2の領域(R2)とにさらに分割され、S1とS2とは互いに十分に相補的であり、その結果、本明細書で「ステム」または「ステム二重鎖」とも呼ばれる二重鎖を形成する。
【
図1C】
図1A及び1Bと同様の例示的な概略図であり、本核酸阻害剤分子における第1の二重鎖(D1)及び第2の二重鎖(D2)を示している。第1の二重鎖(D1)は、センス鎖の第1の領域(R1)とアンチセンス鎖(AS)との間に形成される。第二の二重鎖(D2)または「ステム」は、センス鎖の第二領域(R2)の第一の小領域(S1)と第二の小領域(S2)との間に形成される。
【
図1D】第2の二重鎖(D2)が
図1Cに示す第2の二重鎖よりも短く、6個のT
mを上昇させるヌクレオチド(斜線の円)を含む、例示的な二本鎖核酸阻害剤分子の概略図である。
【
図2A】例1で議論する目的の遺伝子配列を標的とし、且つ短縮センス鎖を含まない、例示的な対照二本鎖核酸阻害剤分子(「構築物1」)の構造を示す概略図である。構築物1のセンス鎖は29ヌクレオチドを含む。構築物1のアンチセンス鎖の3’末端は、2ヌクレオチドのオーバーハングを含む。
【
図2B】例1で議論する目的の遺伝子配列を標的とする、例示的な二本鎖核酸阻害剤分子(「構築物2」)の構造を示す概略図である。構築物2のセンス鎖は25ヌクレオチドを含む。構築物2のアンチセンス鎖の3’末端は、6ヌクレオチドのオーバーハングを含む。
【
図2C】例1で議論する目的の遺伝子配列を標的とする、例示的な二本鎖核酸阻害剤分子(「構築物3」)の構造を示す概略図である。構築物3のセンス鎖は24ヌクレオチドを含む。構築物3のアンチセンス鎖の3’末端は7ヌクレオチドのオーバーハングを含む。
【
図2D】例1で議論する目的の遺伝子配列を標的とする、例示的な二本鎖核酸阻害剤分子(「構築物4」)の構造を示す概略図である。構築物4のセンス鎖は23ヌクレオチドを含む。構築物4のアンチセンス鎖の3’末端は8ヌクレオチドのオーバーハングを含む。
【
図2E】例1で議論する目的の遺伝子配列を標的とする、例示的な二本鎖核酸阻害剤分子(「構築物5」)の構造を示す概略図である。構築物5のセンス鎖は22ヌクレオチドを含む。構築物5のアンチセンス鎖の3’末端は9ヌクレオチドのオーバーハングを含む。
【
図2F】例1で議論する目的の遺伝子配列を標的とする、例示的な二本鎖核酸阻害剤分子(「構築物6」)の構造を示す概略図である。構築物6のセンス鎖は21ヌクレオチドを含む。構築物6のアンチセンス鎖の3’末端は10ヌクレオチドのオーバーハングを含む。
【
図2G】例1で議論する目的の遺伝子配列を標的とする、例示的な二本鎖核酸阻害剤分子(「構築物7」)の構造を示す概略図である。構築物7のセンス鎖は20ヌクレオチドを含む。構築物7のアンチセンス鎖の3’末端は11ヌクレオチドのオーバーハングを含む。
【
図2H】例1で議論する目的の遺伝子配列を標的とする、例示的な二本鎖核酸阻害剤分子(「構築物8」)の構造を示す概略図である。構築物8のセンス鎖は19ヌクレオチドを含む。構築物8のアンチセンス鎖の3’末端は12ヌクレオチドのオーバーハングを含む。
【
図3】例1に記載するように構築物1(
図2Aを参照)及び構築物2~8(
図2B~Hを参照)をCD-1マウスに投与した4日後に残留する標的遺伝子mRNAの割合を示す図である。アンチセンス鎖中にそれぞれ6及び7ヌクレオチドの3’末端オーバーハングを有する構築物2ならびに構築物3は、アンチセンス鎖中に2ヌクレオチドの3’末端オーバーハングを有する構築物1と比較して、遺伝子ノックダウンの効力を維持していた。アンチセンス鎖中にそれぞれ8及び9ヌクレオチドの3’末端オーバーハングを有する構築物4ならびに5は、対照のPBSと比較して、標的mRNAの発現を低減した。アンチセンス鎖中にそれぞれ10、11、及び12ヌクレオチドの3’末端オーバーハングを含む構築物6~8は、標的mRNAの発現を有意に低減しなかった。
【
図4A】例2で議論する目的の遺伝子配列を標的とし、短縮センス鎖を含まない、例示的な対照二本鎖核酸阻害剤分子(「構築物1」)の構造を示す概略図である。構築物1のセンス鎖は29ヌクレオチドを含む。構築物1のアンチセンス鎖の3’末端は2ヌクレオチドのオーバーハングを含む。
【
図4B】例2で議論する目的の遺伝子配列を標的とする、例示的な二本鎖核酸阻害剤分子(「構築物9」)の構造を示す概略図である。構築物9のセンス鎖は、ヌクレオチド1のLNAを含む、25ヌクレオチドを含む。構築物9のアンチセンス鎖の3’末端は6ヌクレオチドのオーバーハングを含む。
【
図4C】例2で議論する目的の遺伝子配列を標的とする、例示的な二本鎖核酸阻害剤分子(「構築物10」)の構造を示す概略図である。構築物10のセンス鎖は、ヌクレオチド1のLNAを含む、24ヌクレオチドを含む。構築物10のアンチセンス鎖の3’末端は7ヌクレオチドのオーバーハングを含む。
【
図4D】例2で議論する目的の遺伝子配列を標的とする、例示的な二本鎖核酸阻害剤分子(「構築物11」)の構造を示す概略図である。構築物11のセンス鎖は、ヌクレオチド1のLNAを含む、23ヌクレオチドを含む。構築物11のアンチセンス鎖の3’末端は8ヌクレオチドのオーバーハングを含む。
【
図4E】例2で議論する目的の遺伝子配列を標的とする、例示的な二本鎖核酸阻害剤分子(「構築物12」)の構造を示す概略図である。構築物12のセンス鎖は、ヌクレオチド1のLNAを含む、22ヌクレオチドを含む。構築物12のアンチセンス鎖の3’末端は9ヌクレオチドのオーバーハングを含む。
【
図4F】例2で議論する目的の遺伝子配列を標的とする、例示的な二本鎖核酸阻害剤分子(「構築物13」)の構造を示す概略図である。構築物13のセンス鎖は、ヌクレオチド1のLNAを含む、21ヌクレオチドを含む。構築物13のアンチセンス鎖の3’末端は10ヌクレオチドのオーバーハングを含む。
【
図4G】例2で議論する目的の遺伝子配列を標的とする、例示的な二本鎖核酸阻害剤分子(「構築物14」)の構造を示す概略図である。構築物14のセンス鎖は、ヌクレオチド1のLNAを含む、20ヌクレオチドを含む。構築物14のアンチセンス鎖の3’末端は11ヌクレオチドのオーバーハングを含む。
【
図4H】例2で議論する目的の遺伝子配列を標的とする、例示的な二本鎖核酸阻害剤分子(「構築物15」)の構造を示す概略図である。構築物15のセンス鎖は、ヌクレオチド1のLNAを含む、19ヌクレオチドを含む。構築物15のアンチセンス鎖の3’末端は12ヌクレオチドのオーバーハングを含む。
【
図5】例2に記載するように構築物1(
図4Aを参照)及び構築物9~15(
図4B~Hを参照)をCD-1マウスに投与した4日後に残留する標的遺伝子mRNAの割合を示す図である。センス鎖の5’末端にLNAを有し、アンチセンス鎖中にそれぞれ6~9ヌクレオチドの3’末端オーバーハングを有する構築物9~12は、構築物1と比較して、遺伝子ノックダウンの効力を維持していた。センス鎖の5’末端にLNAを、且つアンチセンス鎖中に10ヌクレオチドの3’末端オーバーハングを有する構築物13は、対照のPBSと比較して、標的mRNAの発現を低減した。センス鎖の5’末端にLNAを、且つアンチセンス鎖中にそれぞれ11及び12ヌクレオチドの3’末端オーバーハングを含む構築物14ならびに15は、標的mRNAの発現を有意に低減しなかった。
【
図6A】例3で議論する目的の遺伝子配列を標的とし、短縮センス鎖を含まない、例示的な対照二本鎖核酸阻害剤分子(「構築物1」)の構造を示す概略図である。構築物1のセンス鎖は29ヌクレオチドを含む。構築物1のアンチセンス鎖の3’末端は2ヌクレオチドのオーバーハングを含む。
【
図6B】例3で議論する目的の遺伝子配列を標的とする、例示的な二本鎖核酸阻害剤分子(「構築物4」)の構造を示す概略図である。構築物4のセンス鎖は23ヌクレオチドを含む。構築物4のアンチセンス鎖の3’末端は8ヌクレオチドのオーバーハングを含む。
【
図6C】例3で議論する目的の遺伝子配列を標的とする、例示的な二本鎖核酸阻害剤分子(「構築物16」)の構造を示す概略図である。構築物16のセンス鎖は、ヌクレオチド1及び9のLNAを含む、23ヌクレオチドを含む。構築物16のアンチセンス鎖の3’末端は8ヌクレオチドのオーバーハングを含む。
【
図6D】例3で議論する目的の遺伝子配列を標的とする、例示的な二本鎖核酸阻害剤分子(「構築物5」)の構造を示す概略図である。構築物5のセンス鎖は22ヌクレオチドを含む。構築物5のアンチセンス鎖の3’末端は9ヌクレオチドのオーバーハングを含む。
【
図6E】例3で議論する目的の遺伝子配列を標的とする、例示的な二本鎖核酸阻害剤分子(「構築物17」)の構造を示す概略図である。構築物17のセンス鎖は、ヌクレオチド1及び8のLNAを含む、22ヌクレオチドを含む。構築物17のアンチセンス鎖の3’末端は9ヌクレオチドのオーバーハングを含む。
【
図6F】例3で議論する目的の遺伝子配列を標的とする、例示的な二本鎖核酸阻害剤分子(「構築物6」)の構造を示す概略図である。構築物6のセンス鎖は21ヌクレオチドを含む。構築物6のアンチセンス鎖の3’末端は10ヌクレオチドのオーバーハングを含む。
【
図6G】例3で議論する目的の遺伝子配列を標的とする、例示的な二本鎖核酸阻害剤分子(「構築物18」)の構造を示す概略図である。構築物18のセンス鎖は、ヌクレオチド1及び7のLNAを含む、21ヌクレオチドを含む。構築物18のアンチセンス鎖の3’末端は10ヌクレオチドのオーバーハングを含む。
【
図7】例3に記載するように構築物1(
図6Aを参照)ならびに構築物4~6及び16~18(
図6B~Gを参照)をCD-1マウスに投与した4日後に、残留する標的遺伝子mRNAの割合を示す図である。センス鎖のヌクレオチド1ならびにヌクレオチド9、8、及び7にそれぞれLNAを有すると同時に、アンチセンス鎖中にそれぞれ8、9、及び10ヌクレオチドの3’末端オーバーハングを有する構築物16、17、ならびに18は、標的遺伝子発現を50%超低減した。構築物16~18の遺伝子ノックダウンの効力は、センス鎖の第1の領域にLNAをもたない構築物4~6と比較して低下した。
【
図8】例2及び3に記載するように構築物1(
図2Aを参照)ならびに構築物11~13(
図4D~Fを参照)及び16~18(
図6C、6E、及び6Gを参照)をCD-1マウスに投与した4日後に、残留する標的遺伝子mRNAの割合を示す図である。センス鎖のヌクレオチド1ならびにヌクレオチド9、8、及び7にそれぞれLNAを有すると同時に、アンチセンス鎖の3’末端にそれぞれ8、9、及び10ヌクレオチドのオーバーハングを有する構築物16、17、ならびに18は、センス鎖のヌクレオチド1に単一のLNAを有する構築物11~13と比較して、遺伝子ノックダウンの効力を維持した。構築物18(アンチセンス鎖の3’末端に10ヌクレオチドのオーバーハング)は、センス鎖のヌクレオチド7に追加のLNAをもつこと以外は構築物13と同一であるが、構築物13と比較して標的遺伝子発現を低減した。
【
図9A】例4で議論する目的の遺伝子配列を標的とする、例示的な二本鎖核酸阻害剤分子(「構築物4」)の構造を示す概略図である。構築物4のセンス鎖は23ヌクレオチドを含み、センス鎖の第1の領域中にLNAは存在しない。構築物4のアンチセンス鎖の3’末端は8ヌクレオチドのオーバーハングを含む。
【
図9B】例4で議論する目的の遺伝子配列を標的とする、例示的な二本鎖核酸阻害剤分子(「構築物16」)の構造を示す概略図である。構築物16のセンス鎖は、ヌクレオチド1及び9のLNAを含む、23ヌクレオチドを含む。構築物16のアンチセンス鎖の3’末端は8ヌクレオチドのオーバーハングを含む。
【
図9C】例4で議論する目的の遺伝子配列を標的とする、例示的な二本鎖核酸阻害剤分子(「構築物19」)の構造を示す概略図である。構築物19のセンス鎖は、ヌクレオチド1、9、及び10のLNAを含む、23ヌクレオチドを含む。構築物19のアンチセンス鎖の3’末端は8ヌクレオチドのオーバーハングを含む。
【
図9D】例4で議論する目的の遺伝子配列を標的とする、例示的な二本鎖核酸阻害剤分子(「構築物22」)の構造を示す概略図である。構築物22のセンス鎖は、ヌクレオチド1、9、10、12、及び13のLNAを含む、23ヌクレオチドを含む。構築物22のアンチセンス鎖の3’末端は8ヌクレオチドのオーバーハングを含む。
【
図9E】例4で議論する目的の遺伝子配列を標的とする、例示的な二本鎖核酸阻害剤分子(「構築物5」)の構造を示す概略図である。構築物5のセンス鎖は22ヌクレオチドを含み、センス鎖の第1の領域中にはいずれのLNAも含まれない。構築物5のアンチセンス鎖の3’末端は9ヌクレオチドのオーバーハングを含む。
【
図9F】例4で議論する目的の遺伝子配列を標的とする、例示的な二本鎖核酸阻害剤分子(「構築物17」)の構造を示す概略図である。構築物17のセンス鎖は、ヌクレオチド1及び8のLNAを含む、22ヌクレオチドを含む。構築物17のアンチセンス鎖の3’末端は9ヌクレオチドのオーバーハングを含む。
【
図9G】例4で議論する目的の遺伝子配列を標的とする、例示的な二本鎖核酸阻害剤分子(「構築物20」)の構造を示す概略図である。構築物20のセンス鎖は、ヌクレオチド1、8、及び9のLNAを含む、22ヌクレオチドを含む。構築物20のアンチセンス鎖の3’末端は9ヌクレオチドのオーバーハングを含む。
【
図9H】例4で議論する目的の遺伝子配列を標的とする、例示的な二本鎖核酸阻害剤分子(「構築物23」)の構造を示す概略図である。構築物23のセンス鎖は、ヌクレオチド1、8、9、11、及び12のLNAを含む、22ヌクレオチドを含む。構築物23のアンチセンス鎖の3’末端は9ヌクレオチドのオーバーハングを含む。
【
図9I】例4で議論する目的の遺伝子配列を標的とする、例示的な二本鎖核酸阻害剤分子(「構築物6」)の構造を示す概略図である。構築物6のセンス鎖は21ヌクレオチドを含む。構築物6のアンチセンス鎖の3’末端は10ヌクレオチドのオーバーハングを含む。
【
図9J】例4で議論する目的の遺伝子配列を標的とする、例示的な二本鎖核酸阻害剤分子(「構築物18」)の構造を示す概略図である。構築物18のセンス鎖は、ヌクレオチド1及び7のLNAを含む、21ヌクレオチドを含む。構築物18のアンチセンス鎖の3’末端は10ヌクレオチドのオーバーハングを含む。
【
図9K】例4で議論する目的の遺伝子配列を標的とする、例示的な二本鎖核酸阻害剤分子(「構築物21」)の構造を示す概略図である。構築物21のセンス鎖は、ヌクレオチド1、7、及び8のLNAを含む、21ヌクレオチドを含む。構築物21のアンチセンス鎖の3’末端は10ヌクレオチドのオーバーハングを含む。
【
図9L】例4で議論する目的の遺伝子配列を標的とする、例示的な二本鎖核酸阻害剤分子(「構築物24」)の構造を示す概略図である。構築物24のセンス鎖は、ヌクレオチド1、7、8、10、及び11のLNAを含む、21ヌクレオチドを含む。構築物24のアンチセンス鎖の3’末端は10ヌクレオチドのオーバーハングを含む。
【
図10】例4に記載するように構築物1(
図2Aを参照)ならびに構築物4~6(
図9A、9E、及び9Iを参照)及び16~24(
図9B~D、9F~H、及び9J~Lを参照)をCD-1マウスに投与した4日後に、残留する標的遺伝子mRNAの割合を示す図である。センス鎖の第1の領域に少なくとも1つのLNAを有する構築物16~24は、構築物4~6と比較して遺伝子ノックダウンの向上を示し、構築物4~6はセンス鎖中にいずれのLNAももっていない。センス鎖のヌクレオチド1、9、及び10のLNAを有する構築物19は、全長センス鎖を有し、アンチセンス鎖の3’末端に2ヌクレオチドのオーバーハングをもつ構築物1と同程度の効力があった。しかしながら、センス鎖の第1の領域中のヌクレオチド1、及びアンチセンス鎖のヌクレオチド2及び3と塩基対を形成するヌクレオチドを含む、4つのさらなる位置のLNAを有する構築物22~24は、センス鎖の第1の領域中のヌクレオチド1、及び1つまたは2つのさらなる位置のLNAを有する構築物16~21ほどには効力がなかった。
【
図11】本二本鎖核酸阻害剤分子を製剤化するために使用することができる脂質ナノ粒子(LNP)の非限定的な一実施形態を示す図である。上記LNPとしては、以下のコア脂質、すなわち、DL-048(カチオン性脂質)及びDSG-mPEG(ペグ化脂質)、ならびに以下のエンベロープ脂質、すなわち、DL-103(カチオン性脂質)、DSPC、コレステロール、及びDSPE-mPEG(ペグ化脂質)が挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0047】
用語の定義
本開示をより容易に理解するために、特定の用語を最初に以下に定義する。以下の用語及びその他の用語のさらなる定義が本明細書中に記載されている場合もある。以下に記載される用語の定義が、援用される出願または特許における定義と矛盾する場合には、本出願に記載の定義を使用して当該用語の意味を理解する必要がある。
【0048】
本明細書及び添付の特許請求の範囲では、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈による明らかな別段の指示がない限り、複数の指示物を含む。したがって、例えば、「1つの方法(a method)」への言及は、1つ以上の方法、及び/または本明細書に記載のタイプのステップ、及び/または本開示などを読んだ際に当業者であれば明らかになるであろうステップを含む。
【0049】
投与する:本明細書では、組成物を対象に「投与する」とは、該組成物を該対象に与える、塗布する、または接触させることを意味する。投与は、例えば、局所、経口、皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内、髄腔内、及び皮内を含む、多くの経路のいずれかによって実施することができる。
【0050】
アシル:本明細書では、用語「アシル」とは、アルキルカルボニル、シクロアルキルカルボニル、及びアリールカルボニル部分をいう。
【0051】
アルコキシ:本明細書では、用語「アルコキシ」とは、酸素原子を介して分子の部分に結合したアルキル基をいう。
【0052】
アルケニル:本明細書では、用語「アルケニル」とは、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有し、約2~約20個の範囲の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖ヒドロカルビル基をいう。「置換アルケニル」とは、1つ以上の置換基をさらに有するアルケニル基をいう。本明細書では、「低級アルケニル」とは、2~約6個の炭素原子を有するアルケニル部分をいう。
【0053】
アルキル:本明細書では、用語「アルキル」とは、1~約20個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖ヒドロカルビル基をいう。アルキルが本明細書に記載される場合は常に、「C1~C6アルキル」などの数値範囲は、アルキル基が、1つの炭素原子、2つの炭素原子、3つの炭素原子等のみを含み、最大で6個の炭素原子を含む場合があることを意味するが、用語「アルキル」は、炭素原子の数値範囲が指定されていない場合も含む。例えば、用語「アルキル」とは、C1~C10の下位範囲(例えば、C1~C6)を指す場合もある。「置換アルキル」とは、置換基を有するアルキル部分をいう。本明細書では、「低級アルキル」とは、1~約6個の炭素原子を有するアルキル部分をいう。
【0054】
アルキニル:本明細書では、用語「アルキニル」とは、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有し、約2~約20個の範囲の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖ヒドロカルビル基をいう「置換アルキニル」とは、1つ以上の置換基をさらに有するアルキニル基をいう。本明細書では、「低級アルキニル」とは、約2~約6個の炭素原子を有するアルキニル部分をいう。
【0055】
アンチセンス鎖:二本鎖核酸阻害剤分子は2本のオリゴヌクレオチド鎖、すなわち、アンチセンス鎖及びセンス鎖を含む。上記アンチセンス鎖またはその領域は、標的核酸の対応する領域に、部分的に、実質的に、または完全に相補的である。さらに、本二本鎖核酸阻害剤分子のアンチセンス鎖またはその領域は、該二本鎖核酸阻害剤分子のセンス鎖またはその領域に、部分的に、実質的に、または完全に相補的である。特定の実施形態において、アンチセンス鎖はまた、標的核酸配列に非相補的であるヌクレオチドを含んでいてもよい。上記非相補的ヌクレオチドは、上記相補的配列のいずれかの側にあってもよく、または上記相補的配列の両側にあってもよい。アンチセンス鎖もしくはその領域が、センス鎖もしくはその領域に部分的にまたは実質的に相補的である特定の実施形態において、上記非相補的ヌクレオチドは、相補性の1つ以上の領域(例えば、1つ以上のミスマッチ)の間に位置していてもよい。二本鎖核酸阻害剤分子のアンチセンス鎖はガイド鎖とも呼ばれる。上記アンチセンス鎖中のヌクレオチドの位置は、例えば、当該アンチセンス鎖中の各ヌクレオチドに対して、第1のヌクレオチドが「ヌクレオチド1」または「G1」として識別され、第2のヌクレオチドが「ヌクレオチド2」または「G2」として識別され、第3のヌクレオチドが「ヌクレオチド3」または「G3」として識別され、以後同様となるように、上記アンチセンス鎖の5’末端から開始してヌクレオチドを数えることによって識別することができる。
【0056】
おおよそ:本明細書では、対象となる1つ以上の値に適用される、用語「おおよそ」または「約」とは、記載された指示値に類似する値をいう。特定の実施形態において、用語「およそ」または「約」とは、別段の明示がない限り、または文脈から別段の意味が明確でない限り、記載された指示値の両方向に(より大きいまたはより小さい)、25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはそれ未満に入る範囲の値をいう(かかる数値が可能な値の100%を超える場合を除く)。
【0057】
アリール:本明細書では、用語「アリール」とは、約5~約19個の範囲の炭素原子を有する芳香族単環式または多環式基をいう。「置換アリール」とは、1つ以上の置換基をさらに有するアリール基をいう。
【0058】
二環式ヌクレオチド:本明細書では、用語「二環式ヌクレオチド」とは、二環式糖部分を含むヌクレオチドをいう。
【0059】
二環式糖部分:本明細書では、用語「二環式糖部分」とは、4~7員環(フラノシルを含む、但しこれに限定されない)であって、該4~7員環の2つの原子を連結して第2の環を形成し、その結果二環式構造を生じる架橋を含む修飾糖部分をいう。通常、上記4~7員環は糖である。いくつかの実施形態において、上記4~7員環はフラノシルである。特定の実施形態において、上記架橋は、上記フラノシルの2’炭素と4’炭素とを連結する。
【0060】
相補的な:本明細書では、用語「相補的な」とは、2つのヌクレオチド(例えば、2つの対合する核酸上の、または単一の核酸鎖の対合する領域上の)の間の構造上の関係であって、上記2つのヌクレオチドが互いに塩基対を形成することが可能である上記関係をいう。例えば、一方の核酸のプリンヌクレオチドであって、対合する核酸のピリミジンヌクレオチドに相補的な上記プリンヌクレオチドは、上記ピリミジンヌクレオチドと、互いに水素結合を形成することによって塩基対を形成することができる。いくつかの実施形態において、相補的なヌクレオチドは、ワトソン・クリック様式で、または安定な二重鎖を形成することができるいずれかの他の様式で塩基対を形成することができる。「完全に相補的な」または100%の相補性とは、第1のオリゴヌクレオチド鎖または第1のオリゴヌクレオチド鎖のセグメントの各ヌクレオチドモノマーが、第2のオリゴヌクレオチド鎖または第2のオリゴヌクレオチド鎖のセグメントの各ヌクレオチドモノマーと塩基対を形成することができる状況をいう。100%未満の相補性とは、2つのオリゴヌクレオチド鎖(または2つのオリゴヌクレオチド鎖の2つのセグメント)のヌクレオチドモノマーの一部、但しすべてではない、が互いに塩基対を形成することができる状況をいう。「実質的な相補性」とは、互いの90%以上の相補性を示す2つのオリゴヌクレオチド鎖(または2つのオリゴヌクレオチド鎖のセグメント)をいう。「十分に相補的な」とは、標的mRNAによってコードされるタンパク質の量を低減させるような、標的mRNAと核酸阻害剤分子との間の相補性をいう。
【0061】
相補鎖:本明細書では、用語「相補鎖」とは、他の鎖に対して部分的に、実質的に、または完全に相補的である二本鎖核酸阻害剤分子の鎖をいう。
【0062】
シクロアルキル:本明細書では、用語「シクロアルキル」とは、3~12個の炭素、例えば、3~8個の炭素、例えば3~6個の炭素を含む環状(すなわち、環含有)炭化水素基をいう。「置換シクロアルキ」とは、1つ以上の置換基をさらに有するシクロアルキル基をいう。
【0063】
デオキシリボフラノシル:本明細書では、用語「デオキシリボフラノシル」とは、以下、すなわち、
に示す、天然由来のDNA中に存在し、2’炭素に水素基を有するフラノシルをいう。
【0064】
デオキシリボヌクレオチド:本明細書では、用語「デオキシリボヌクレオチド」とは、当該糖部分の2’位に水素基を有する天然ヌクレオチド(本明細書で定義される)または修飾ヌクレオチド(本明細書で定義される)をいう。
【0065】
dsRNAi阻害剤分子:本明細書では、用語「dsRNAi阻害剤分子」とは、センス鎖(パッセンジャー)及びアンチセンス鎖(ガイド)を有する二本鎖核酸阻害剤分子であって、標的mRNAの切断において、上記アンチセンス鎖または上記アンチセンス鎖の一部がアルゴノート2(Ago2)エンドヌクレアーゼによって使用される上記二本鎖核酸阻害剤分子をいう。
【0066】
二重鎖:本明細書では、核酸(例えば、オリゴヌクレオチド)に関する用語「二重鎖」とは、ヌクレオチドの2つの逆平行の配列の相補的塩基対合によって形成される構造をいう。
【0067】
賦形剤:本明細書では、用語「賦形剤」とは、例えば、所望の形状保持性もしくは安定化効果を付与するまたはそれらに寄与ように組成物に添加してもよい、治療効果をもたない物質をいう。
【0068】
フラノシル:本明細書では、用語「フラノシル」とは、4つの炭素原子及び1つの酸素原子を有する5員環を含む構造をいう。
【0069】
ハロ:本明細書では、用語「ハロ」及び「ハロゲン」は同義であり、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素から選択される原子をいう。
【0070】
ヘテロ環:本明細書では、用語「ヘテロ環」または「ヘテロ環式」とは、環構造の一部として1つ以上のヘテロ原子(例えば、N、O、Sなど)を含み、且つ3~14個の範囲の炭素原子を有する非芳香族環式(すなわち、環含有)基をいう。「置換ヘテロ環式」または「置換ヘテロ環」とは、1つ以上の置換基をさらに有するヘテロ環式基をいう。
【0071】
特定の実施形態において:本明細書では、用語「特定の実施形態において」とは、文脈が明らかに別段の指示をしない限り、本開示のすべての態様の実施形態をいう。
【0072】
ヌクレオチド間結合基:本明細書では、用語「ヌクレオチド間結合基」または「ヌクレオチド間結合」とは、2つのヌクレオシド部分を共有結合で結合することができる化学基をいう。一般的には、上記化学基は、ホスホまたはホスファイト基を含むリン含有結合基である。ホスホ結合基とは、ホスホジエステル結合、ホスホロジチオアート結合、ホスホロチオアート結合、ホスホトリエステル結合、チオノアルキルホスホナート結合、チオノアルキルホスホトリエステル結合、ホスホルアミダイト結合、ホスホナート結合、及び/またはボラノホスファート結合を含むことを意味する。多くのリン含有結合が、例えば、米国特許第3,687,808号、第4,469,863号、第4,476,301号、第5,023,243号、第5,177,196号、第5,188,897号、第5,264,423号、第5,276,019号、第5,278,302号、第5,286,717号、第5,321,131号、第5,399,676号、第5,405,939号、第5,453,496号、第5,455,233号、第5,466,677号、第5,476,925号、第5,519,126号、第5,536,821号、第5,541,306号、第5,550,111号、第5,563,253号、第5,571,799号、第5,587,361号、第5,194,599号、第5,565,555号、第5,527,899号、第5,721,218号、第5,672,697号、及び第5,625,050号に開示されるように、当技術分野で周知である。他の実施形態において、上記オリゴヌクレオチドは、シロキサン骨格;スルフィド、スルホキシド、及びスルホン骨格;ホルムアセチル及びチオホルムアセチル骨格;メチレンホルムアセチル及びチオホルムアセチル骨格;リボアセチル骨格;アルケン含有骨格;スルファマート骨格;メチレンイミノ及びメチレンヒドラジノ骨格;スルホナート及びスルホンアミド骨格;ならびにアミド骨格を有するものを含む、但しこれらに限定されない、短鎖アルキルもしくはシクロアルキルヌクレオチド間結合、混合ヘテロ原子及びアルキルもしくはシクロアルキルヌクレオチド間結合、または1つ以上の短鎖ヘテロ原子もしくはヘテロ環式ヌクレオチド間結合などの、リン原子を含まない1つ以上のヌクレオチド間結合を含む。非リン含有結合は、例えば、米国特許第5,034,506号、第5,166,315号、第5,185,444号、第5,214,134号、第5,216,141号、第5,235,033号、第5,264,562号、第5,264,564号、第5,405,938号、第5,434,257号、第5,466,677号、第5,470,967号、第5,489,677号、第5,541,307号、第5,561,225号、第5,596,086号、第5,602,240号、第5,610,289号、第5,602,240号、第5,608,046号、第5,610,289号、第5,618,704号、第5,623,070号、第5,663,312号、第5,633,360号、第5,677,437号、第5,792,608号、第5,646,269、及び第5,677,439号に開示されるように、当技術分野で周知である。
【0073】
ループ:本明細書では、用語「ループ」とは、一本鎖核酸によって形成される構造であって、該構造中で、特定の一本鎖ヌクレオチド領域に隣接する相補的領域が、上記相補的領域間の上記一本鎖ヌクレオチド領域が二重鎖形成またはワトソン・クリック塩基対合から排除される形態でハイブリダイズする、上記構造をいう。ループは、任意の長さの一本鎖ヌクレオチド領域である。ループの例としては、ヘアピン及びテトラループなどの構造中に存在する不対ヌクレオチドが挙げられる。
【0074】
融解温度:本明細書では、用語「融解温度」または「Tm」とは、二重鎖核酸の2本の鎖が分離する温度を意味する。Tmは、二重鎖の安定性または相補的な核酸の2本の鎖もしくはその一部の結合親和性の尺度としてよく使用される。Tmは、UVスペクトルを使用して測定し、ハイブリダイゼーションの形成及び分解(融解)を判定することができる。ハイブリダイゼーション中に発生する塩基スタッキングは、UV吸収の低下(淡色効果)を伴う。結果として、UV吸収の低下はより高いTmを示す。
【0075】
修飾核酸塩基:本明細書では、用語「修飾核酸塩基」とは、天然の核酸塩基またはユニバーサル核酸塩基ではない任意の核酸塩基をいう。好適な修飾核酸塩基としては、ジアミノプリン及びその誘導体、アルキル化プリンまたはピリミジン、アシル化プリンまたはピリミジン、チオール化プリンまたはピリミジンなどが挙げられる。他の好適な修飾核酸塩基としては、プリン及びピリミジンの類似体が挙げられる。好適な類似体としては、1-メチルアデニン、2-メチルアデニン、N6-メチルアデニン、N6-イソペンチルアデニン、2-メチルチオ-N6-イソペンチルアデニン、N,N-ジメチルアデニン、8-ブロモアデニン、2-チオシトシン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、5-エチルシトシン、4-アセチルシトシン、1-メチルグアニン、2-メチルグアニン、7-メチルグアニン、2,2-ジメチルグアニン、8-ブロモグアニン、8-クロログアニン、8-アミノグアニン、8-メチルグアニン、8-チオグアニン、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、5-エチルウラシル、5-プロピルウラシル、5-メトキシウラシル、5-ヒドロキシメチルウラシル、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5-(メチルアミノメチル)ウラシル、5-(カルボキシメチルアミノメチル)ウラシル、2-チオウラシル、5-メチル-2-チオウラシル、5-(2-ブロモビニル)ウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、シュードウラシル、1-メチルシュードウラシル、クエオシン、ヒポキサンチン、キサンチン、2-アミノプリン、6-ヒドロキシアミノプリン、ニトロピロリル、ニトロインドリル、及びジフルオロトリル、6-チオプリン及び2,6-ジアミノプリンニトロピロリル、ニトロインドリル及びジフルオロトリルが挙げられるが、これらに限定はされない。一般的には、核酸塩基としては窒素塩基を含む。特定の実施形態において、上記核酸塩基は窒素原子を含まない。例えば、米国特許出願公開第20080274642号を参照されたい。
【0076】
修飾ヌクレオシド:本明細書では、用語「修飾ヌクレオシド」とは、リン酸基または修飾リン酸基(本明細書で定義される)に結合しておらず、修飾核酸塩基(本明細書で定義される)、ユニバーサル核酸塩基(本明細書で定義される)、または修飾糖部分(本明細書で定義される)の1つ以上を含む糖(例えば、デオキシリボースもしくはリボースまたはそれらの類似体)とN-グリコシド結合しているヘテロ環式窒素塩基をいう。上記修飾核酸塩基またはユニバーサル核酸塩基(本明細書では塩基類似体とも呼ばれる)は、一般にヌクレオシド糖部分の1’位に位置し、1’位のアデニン、グアニン、シトシン、チミン、及びウラシル以外の核酸塩基をいう。特定の実施形態において、上記修飾核酸塩基またはユニバーサル核酸塩基は窒素塩基である。特定の実施形態において、上記修飾核酸塩基またはユニバーサル核酸塩基は窒素原子を含まない。例えば、米国特許出願公開第20080274462号を参照されたい。特定の実施形態において、上記修飾ヌクレオチドは、核酸塩基を含まない(無塩基)。本開示の文脈における好適な上記修飾核酸塩基もしくはユニバーサル核酸塩基または修飾糖は本明細書に記載されている。
【0077】
修飾ヌクレオチド:本明細書では、用語「修飾ヌクレオチド」とは、ホスファート基または修飾ホスファート基(本明細書で定義される)に結合しており、且つ修飾核酸塩基(本明細書で定義される)、ユニバーサル核酸塩基(本明細書で定義される)、または修飾糖部分(本明細書で定義される)の1つ以上を含有する糖(例えば、リボースもしくはデオキシリボースまたはその類似体)とN-グリコシル結合しているヘテロ環式窒素塩基をいう。上記修飾核酸塩基またはユニバーサル核酸塩基(本明細書では塩基類似体とも呼ばれる)は、一般にヌクレオシド糖部分の1’位に位置し、1’位におけるアデニン、グアニン、シトシン、チミン、及びウラシル以外の核酸塩基をいう。特定の実施形態において、上記修飾核酸塩基またはユニバーサル核酸塩基は窒素含有塩基である。特定の実施形態において、上記修飾核酸塩基は窒素原子を含有しない。例えば、米国特許出願公開第20080274462号を参照のこと。特定の実施形態において、上記修飾ヌクレオチドは核酸塩基を含有しない(無塩基)。本開示の文脈における好適な修飾核酸塩基もしくはユニバーサル核酸塩基、修飾糖部分、または修飾ホスファート基は本明細書に記載される。
【0078】
修飾ホスファート基:本明細書では、用語「修飾ホスファート基」とは、天然ヌクレオチド中には存在しないホスファート基の修飾をいい、リン原子を含むホスファート模倣物を含む、本明細書に記載の天然に存在しないホスファート模倣物及びホスファートを含まないアニオン性ホスファート模倣物(例えば、アセタート)を含む。修飾ホスファート基はまた、本明細書に記載の、例えば、ホスホロチオアートを含むリン含有ヌクレオチド間結合基及び非リン含有結合基の両方を含む、天然に存在しないヌクレオチド間結合基を含む。
【0079】
修飾糖部分:本明細書では、「修飾糖部分」とは、置換糖部分(本明細書で定義される)または糖類似体(本明細書で定義される)をいう。
【0080】
天然核酸塩基:本明細書では、用語「天然核酸塩基」とは、RNA及びDNAの、5種の主要な天然に存在するヘテロ環式核酸塩基、すなわち、プリン塩基:アデニン(A)及びグアニン(G)、ならびにピリミジン塩基:チミン(T)、シトシン(C)、及びウラシル(U)をいう。
【0081】
天然ヌクレオシド:本明細書では、用語「天然ヌクレオシド」とは、ホスファート基に結合していない天然糖部分(本明細書で定義される)とN-グリコシド結合している天然核酸塩基(本明細書で定義される)をいう。
【0082】
天然ヌクレオチド:本明細書では、用語「天然ヌクレオチド」とは、ホスファート基に結合している天然糖部分(本明細書で定義される)とN-グリコシド結合している天然核酸塩基(本明細書で定義される)をいう。
【0083】
天然糖部分:本明細書では、用語「天然糖部分」とは、リボフラノシル(本明細書で定義される)またはデオキシリボフラノシル(本明細書で定義される)をいう。
【0084】
核酸阻害剤分子:本明細書では、用語「核酸阻害剤分子」とは、標的遺伝子発現を低減または除去するオリゴヌクレオチド分子をいい、上記オリゴヌクレオチド分子は、標的遺伝子mRNAの配列を特異的に標的とする領域を含有する。通常、本核酸阻害剤分子の標的化領域は、該核酸阻害剤分子の作用が特定の標的遺伝子に対して指向するように、上記標的遺伝子mRNA上の配列に十分に相補的である配列を含む。上記核酸阻害剤分子は、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、及び/または修飾ヌクレオチドを含んでいてもよい。上記標的遺伝子は、任意の目的の遺伝子であってよい。
【0085】
核酸塩基:本明細書では、用語「核酸塩基」とは、天然核酸塩基(本明細書で定義される)、修飾核酸塩基(本明細書で定義される)、またはユニバーサル核酸塩基(本明細書で定義される)をいう。
【0086】
ヌクレオシド:本明細書では、用語「ヌクレオシド」とは、天然ヌクレオシド(本明細書で定義される)または修飾ヌクレオシド(本明細書で定義される)をいう。
【0087】
ヌクレオチド:本明細書では、用語「ヌクレオチド」とは、天然ヌクレオチド(本明細書で定義される)または修飾ヌクレオチド(本明細書で定義される)をいう。
【0088】
オーバーハング:本明細書では、用語「オーバーハング」とは、二本鎖核酸阻害剤分子のいずれかの鎖のいずれかの末端にある末端非塩基対合ヌクレオチド(複数可)をいう。特定の実施形態において、上記オーバーハングは、第1の鎖もしくは第1の領域が二重鎖を形成する相補鎖の末端を越えて伸長する1つの鎖または領域から生じる。塩基対の水素結合を介して二重鎖を形成することができる2つのオリゴヌクレオチド領域の一方または両方が、2つのポリヌクレオチドもしくは領域により共有される相補性の5’末端及び/または3’末端を越えて伸長する3’末端ならびに/あるいは5’末端を有していてもよい。上記二重鎖の3’末端及び/または5’末端を越えて伸長する一本鎖領域がオーバーハングと呼ばれる。
【0089】
医薬組成物:本明細書では、用語「医薬組成物」は、薬理学的有効量の二本鎖核酸阻害剤分子及び薬学的に許容される賦形剤(本明細書で定義される)を含む。
【0090】
薬学的に許容される賦形剤:本明細書では、用語「薬学的に許容される賦形剤」とは、該賦形剤が、合理的な利益/リスク比に見合う、過度の有害な副作用(例えば、毒性、刺激、及びアレルギー反応)のないヒト及び/または動物での使用に適するものであることを意味する。
【0091】
ホスファート模倣物:本明細書では、用語「ホスファート模倣物」とは、ホスファート基の静電特性及び立体特性を模倣するオリゴヌクレオチドの5’末端の化学部分をいう。オリゴヌクレオチドの5’末端に結合することができる多くのホスファート模倣物が開発されている(例えば、米国特許第8,927,513号;Prakash et al. Nucleic Acids Res., 2015,43(6):2993-3011を参照のこと)。通常、これらの5’-ホスファート模倣物は、ホスファターゼ耐性結合を含む。好適なホスファート模倣物としては、国際公開第WO2018/045317号(本記述をもってその全体が援用される)に記載される5’-ホスホナート、例えば、5’-メチレンホスホナート(5’-MP)及び5’-(E)-ビニルホスホナート(5’-VP)、ならびにオリゴヌクレオチドの5’末端ヌクレオチドの糖部分(例えば、リボースもしくはデオキシリボースまたはその類似体)の4’炭素に結合している4’-ホスファート類似体、例えば、4’-オキシメチルホスホナート、4’-チオメチルホスホナート、または4’-アミノメチルホスホナート、が挙げられる。特定の実施形態において、上記4’-オキシメチルホスホナートは式-O-CH2-PO(OH)2または-O-CH2-PO(OR)2で表され、式中、Rは独立に、H、CH3、アルキル基、または保護基から選択される。特定の実施形態において、上記アルキル基はCH2CH3である。より一般的には、Rは独立に、H、CH3、またはCH2CH3から選択される。オリゴヌクレオチドの5’末端に対する他の修飾が開発されている(例えば、WO2011/133871を参照のこと)。
【0092】
保護基:本明細書では、用語「保護基」とは、所望の反応の特定の条件下で官能基を可逆的に非反応性にする基としての、従来の化学的意味で使用される。上記所望の反応後に保護基を除去し、保護された官能基を脱保護することができる。全ての保護基は、合成される分子が実質的な率で分解することのない条件下で除去可能でなければならない。
【0093】
低減する(reduce(s)):本明細書では、用語「低減する(reduce)」または「低減する(reduces)」とは、当技術分野で一般に認められているその意味を有する。核酸阻害剤分子に関しては、上記用語は一般に、遺伝子の発現、1種以上のタンパク質もしくはタンパク質サブユニットをコードするRNA分子または同等のRNA分子のレベル、あるいは1種以上のタンパク質もしくはタンパク質サブユニットの活性の低減であって、上記核酸阻害剤分子の非存在下で観測される上記発現、レベル、または活性を下回る該発現、レベル、または活性への上記低減をいう。
【0094】
リボフラノシル:本明細書では、用語「リボフラノシル」とは、以下、すなわち、
に示すような、天然由来のRNA中に存在し、且つ2’炭素にヒドロキシル基を有するフラノシルをいう。
【0095】
リボヌクレオチド:本明細書では、用語「リボヌクレオチド」とは、糖部分の2’位にヒドロキシル基を有する天然ヌクレオチド(本明細書で定義される)または修飾ヌクレオチド(本明細書で定義される)をいう。
【0096】
センス鎖:二本鎖核酸阻害剤分子は、2本のオリゴヌクレオチド鎖、すなわち、アンチセンス鎖及びセンス鎖を含む。センス鎖またはその領域は、本二本鎖核酸阻害剤分子のアンチセンス鎖またはその領域に部分的に、実質的に、または完全に相補的である。特定の実施形態において、センス鎖はまた、アンチセンス鎖に対して非相補的であるヌクレオチドを含有していてもよい。上記非相補的ヌクレオチドは、上記相補的配列のいずれかの側にあっても、上記相補的配列の両側にあってもよい。センス鎖またはその領域がアンチセンス鎖もしくはその領域に部分的にまたは実質的に相補的である特定の実施形態において、上記非相補的ヌクレオチドは、相補性の1つ以上の領域の間に配置されていてもよい(例えば、1つ以上のミスマッチ)。センス鎖はパッセンジャー鎖とも呼ばれる。センス鎖中のヌクレオチドの位置は、例えば、第1のヌクレオチドが「ヌクレオチド1」または「P1」として識別され、第2のヌクレオチドが「ヌクレオチド2」または「P2」として識別され、第3のヌクレオチドが「ヌクレオチド3」または「P3」として識別され、以後同様となるように、センス鎖の5’末端から開始してヌクレオチドを数えることによって識別することができる。
【0097】
対象:本明細書では、用語「対象」とは、マウス、ウサギ、及びヒトを含む任意の哺乳動物を意味する。一実施形態において、上記対象はヒトである。用語「個体」または「患者」は「対象」と同義であることが意図される。
【0098】
置換基または置換された:本明細書では、用語「置換基」または「置換された」とは、所与の構造中の水素ラジカルの置換基のラジカルによる置換をいう。任意の所与の構造における複数の位置を複数の置換基で置換することができる場合、当該置換基は、別段の指示がない限り、いずれの位置でも、同一であってもまたは異なっていてもよい。本明細書では、用語「置換された」とは、有機化合物と適合性のある全ての許容される置換基を包含することが企図される。上記許容される置換基としては、非環式及び環式の、分枝状及び非分枝状の、炭素環式及びヘテロ環式の、芳香族及び非芳香族の有機化合物の置換基が挙げられる。本開示は、有機化合物の許容される置換基によって限定されることを何ら意図するものではない。
【0099】
置換糖部分:本明細書では、「置換糖部分」は、1つ以上の修飾を含むフラノシルを含む。通常、上記修飾は、糖の2’、3’、4’、または5’炭素位で行われる。特定の実施形態において、上記置換糖部分は、当該フラノシルの2’炭素を4炭素と連結する架橋を含む二環式糖部分である。
【0100】
糖類似体:本明細書では、用語「糖類似体」とは、フラノシルを含まず且つヌクレオチドの天然に存在する糖部分を置換することができる構造であって、その結果、得られるヌクレオチドが、(1)オリゴヌクレオチド中に組み込まれること、及び(2)相補的ヌクレオチドにハイブリダイズすることが可能である上記構造をいう。かかる構造は通常、異なる数の原子を含む環(例えば、4、6、もしくは7員環)などの、フラノシルに対する比較的単純な変化;フラノシルの酸素の非酸素原子(例えば、炭素、硫黄、もしくは窒素)による置換、または上記原子数の変化及び上記酸素の置換の両方を含む。かかる構造はまた、置換糖部分に関して記載した置換に対応する置換を含んでいてもよい。糖類似体はまた、より複雑な糖代替物(例えば、非環系のペプチド核酸)も包含する。糖類似体としては、モルホリノ、シクロヘキセニル、及びシクロヘキシトールが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0101】
糖部分:本明細書では、用語「糖部分」とは、ヌクレオチドまたはヌクレオシドの天然糖部分または修飾糖部分をいう。
【0102】
標的部位:本明細書では、用語「標的部位」、「標的配列」、「標的核酸」、「標的領域」、「標的遺伝子」は同義で使用され、例えば、RNAi阻害剤分子であって、当該標的配列に対して、部分的に、実質的に、もしくは完全に、または十分に相補的である配列を、そのガイド/アンチセンス領域内に含む上記RNAi阻害剤分子によって媒介される切断の「標的とされる」RNAまたはDNA配列をいう。
【0103】
テトラループ:本明細書では、用語「テトラループ」とは、隣接するワトソン・クリック型でハイブリダイズした(Watson-Crick hybridized)ヌクレオチドの安定性に寄与する安定な2次構造を形成するループ(一本鎖領域)をいう。理論に制限されるものではないが、テトラループは、スタッキング相互作用により、隣接するワトソン・クリック塩基対を安定化することができる。さらに、テトラループ中のヌクレオチド間の相互作用としては、非ワトソン・クリック塩基対合、スタッキング相互作用、水素結合、及び接触相互作用が挙げられるが(Cheong et al., Nature 1990;346(6285):680-2;Heus and Pardi, Science 1991;253(5016):191-4)、これらに限定はされない。テトラループは隣接する二重鎖の融解温度(Tm)を上昇させ、上記融点はランダムな塩基で構成される単純なモデルループ配列から予想されるよりも高い。例えば、テトラループによって、少なくとも2塩基対の長さの二重鎖を含むヘアピンの10mMのNaHPO4中での融解温度が、少なくとも50℃、少なくとも55℃、少なくとも56℃、少なくとも58℃、少なくとも60℃、少なくとも65℃、または少なくとも75℃になる場合がある。テトラループは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、及びそれらの組み合わせを含んでいてもよい。特定の実施形態において、テトラループは4ヌクレオチドからなる。特定の実施形態において、テトラループは5ヌクレオチドからなる。
【0104】
RNAテトラループの例としては、UNCGファミリーのテトラループ(例えば、UUCG)、GNRAファミリーのテトラループ(例えば、GAAA)、及びCUUGテトラループを含むCUYGファミリーのテトラループが挙げられる。(Woese et al.,PNAS,1990,87(21):8467-71、Antao et al.,Nucleic Acids Res.1991,19(21):5901-5)。RNAテトラループの他の例としては、GANC、A/UGNN、及びUUUMテトラループファミリー(Thapar et al., Wiley Interdiscip Rev RNA, 2014, 5(1):1-28)ならびにGGUG、RNYA、及びAGNNテトラループファミリー(Bottaro et al., Biophys J., 2017, 113:257-67)が挙げられる。DNAテトラループの例としては、d(GNNA)ファミリーのテトラループ(例えば、d(GTTA))、d(GNRA)ファミリーのテトラループ、d(GNAB)ファミリーのテトラループ、d(CNNG)ファミリーのテトラループ、及びd(TNCG)ファミリーのテトラループ(例えば、d(TTCG))が挙げられる。(Nakano et al. Biochemistry, 2002, 41(48):14281-14292. Shinji et al., Nippon Kagakkai Koen Yokoshu, 2000, 78(2):731)。
【0105】
トリループ:本明細書では、用語「トリループ」とは、隣接するワトソン・クリック型でハイブリダイズしたヌクレオチドの安定性に寄与し、且つ3ヌクレオチドからなる安定な2次構造を形成するループ(一本鎖領域)をいう。理論に制限されるものではないが、トリループを、当該トリループ内のヌクレオチドの非ワトソン・クリック塩基対合及び塩基スタッキング相互作用により安定化することができる。(Yoshizawa et al., Biochemistry 1997;36, 4761-4767)。トリループはまた、隣接する二重鎖の融解温度(Tm)を上昇させることもでき、上記融点はランダムな塩基で構成される単純なモデルループ配列から予想されるよりも高い。トリループは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、及びそれらの組み合わせを含有していてもよい。トリループの例としては、GNAファミリーのトリループ(例えば、GAA、GTA、GCA、及びGGA)が挙げられる(Yoshizawa 1997)。
【0106】
治療的有効量:本明細書では、「治療有効量」または「薬理学的有効量」とは、意図する薬理学的な、治療上の、または予防上の結果を生み出すのに有効な二本鎖核酸阻害剤分子の量をいう。
【0107】
Tmを上昇させるヌクレオチド:本明細書では、用語「Tmを上昇させるヌクレオチド」とは、該Tmを上昇させるヌクレオチドを含まないオリゴヌクレオチド二重鎖と比較して、オリゴヌクレオチド二重鎖の融解温度(Tm)を上昇させるヌクレオチドをいう。Tmを上昇させるヌクレオチドとしては、二環式ヌクレオチド、三環式ヌクレオチド、Gクランプ及びその類似体、ならびにヘキシトールヌクレオチドが挙げられるが、これらに限定はされない。修飾糖部分または修飾核酸塩基を有する特定の修飾ヌクレオチドを使用して、オリゴヌクレオチド二重鎖のTmを上昇させることもできる。本明細書では、用語「Tmを上昇させるヌクレオチド」は、糖部分の2’位が2’-OMeまたは2’-Fで修飾されているヌクレオチドを特に除外する。
【0108】
ユニバーサル核酸塩基:本明細書では、「ユニバーサル核酸塩基」とは、天然由来の核酸中に通常存在する複数の塩基と対合することができ、したがって、二重鎖中のかかる天然由来の塩基と置換することができる塩基をいう。上記塩基は、上記天然由来の塩基のそれぞれと対合することが可能である必要はない。例えば、特定の塩基は、プリンとのみもしくは選択的に、またはピリミジンとのみまたは選択的に対合する。上記ユニバーサル核酸塩基は、ワトソン・クリック相互作用または非ワトソン・クリック相互作用(例えば、フーグスティーン相互作用)を介して水素結合を形成することにより、塩基対合することができる。代表的なユニバーサル核酸塩基としては、イノシン及びその誘導体が挙げられる。
【0109】
詳細な説明
本出願は、ステムループ構造をもつセンス鎖、及びアンチセンス鎖を有する二本鎖核酸阻害剤分子であって、センス鎖の長さが、その5’末端において短縮されており、その結果、アンチセンス鎖の3’末端により長い一本鎖オーバーハングが生じる、上記二本鎖核酸阻害剤分子を提供する。実施例に示すように、短縮センス鎖を有する二本鎖核酸阻害剤分子を使用して、インビボでの標的遺伝子mRNAの発現を低減することができる。センス鎖の領域1(R1)中の特定の位置にTmを上昇させるヌクレオチドを導入すること、及び/またはアンチセンス鎖中に修飾したヌクレオチド間結合を導入することによって、短縮センス鎖を有する二本鎖核酸阻害剤分子を安定化するのに役立てることができる。このようにして、効力を低下させることなく、センス鎖を短縮することができる。より短いセンス鎖を使用することにより、時間及びコストの両方が低下し、製造プロセスにおける利点が得られる。センス鎖の長さを低減することにより、投薬においても利点が得られる。これは、二本鎖核酸阻害剤分子の分子量が低下することに起因して、モル基準でより多くの上記阻害剤分子を投与することが可能になるためである。
【0110】
疾患の治療方法及び疾患の治療のための組成物を含む、インビトロもしくインビボで標的遺伝子のレベルまたは発現を低減するための、短縮センス鎖を有する上記二本鎖核酸阻害剤分子の使用方法、ならびに、本二本鎖核酸阻害剤分子を含む組成物も提供される。
【0111】
二本鎖核酸阻害剤分子
本出願は、ステムループ構造をもつ短縮センス鎖、及びアンチセンス鎖を有する二本鎖核酸阻害剤分子であって、上記センス鎖及びアンチセンス鎖が、それぞれ5’末端及び3’末端を有する別個の鎖であり、したがって、連続したオリゴヌクレオチドを形成しない、上記二本鎖核酸阻害剤分子を開示する。典型的なステム/ループ含有二本鎖核酸阻害剤分子を
図1Aに示し、センス鎖(「S」)及びアンチセンス鎖(「AS」)を強調表示している。
【0112】
センス鎖は、
図1B及び1Cに示すように、アンチセンス鎖(AS)と第1の二重鎖(D1)を形成する第1の領域(R1)と、第1の小領域(S1)と第2の小領域(S2)を結合するループ(L)を含む第2の領域(R2)とにさらに分割することができる。S1及びS2は互いに十分に相補的であり、ステムまたはステム二重鎖とも呼ばれる第2の二重鎖(D2)を形成する。例えば、
図1C及びIDを参照されたい。特定の実施形態において、上記ループはテトラループであり、特定の実施形態において、上記ループはトリループである。特定の実施形態において、本二本鎖核酸分子はdsRNAi阻害剤分子である。特定の実施形態において、上記二本鎖核酸分子は、センス鎖のR1またはD2中に、1つ以上のT
mを上昇させるヌクレオチドを含む。通常、上記T
mを上昇させるヌクレオチドは二環式ヌクレオチドである。但し、本明細書に記載のすべての二本鎖核酸阻害剤分子において、任意の本明細書で定義されるT
mを上昇させるヌクレオチドを、上記二環式ヌクレオチドに代えて使用することができる。
【0113】
本二本鎖核酸阻害剤分子の特定の実施形態において、センス鎖は、ループを含むステム二重鎖(D2)を含み、長さが15~43ヌクレオチドである。特定の実施形態において、上記ステム二重鎖は、長さが1~6塩基対である。特定の実施形態において、上記ステム二重鎖は、長さが1~3塩基対であり、少なくとも1つのTmを上昇させるヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、上記ステム二重鎖は、3~6塩基対の長さである。特定の実施形態において、アンチセンス鎖は、長さが18~33ヌクレオチドであり、3’末端に6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを有する。特定の実施形態において、上記ループの長さは3~20ヌクレオチドである。特定の実施形態において、上記ループの長さは3~8ヌクレオチドである。通常、上記ループはテトラループまたはトリループである。特定の実施形態において、ステム二重鎖(D2)とループを含む上記センス鎖の延長部分は、当該の鎖の3’末端上に存在する。特定の他の実施形態において、ステム(D2)及びループを含むセンス鎖の上記延長部分は、当該の鎖の5’末端上に存在する。
【0114】
特定の実施形態において、センス鎖は、ステム二重鎖(D2)及びテトラループまたはトリループを含み、長さが15~43ヌクレオチドであり、アンチセンス鎖は、長さが18~33ヌクレオチドであり、3’末端に6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを有する。特定の実施形態において、アンチセンス鎖は、長さが18~25ヌクレオチドであり、3’末端に6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを有する。特定の実施形態において、センス鎖の長さは15~30ヌクレオチドである。特定の実施形態において、センス鎖の長さは16~31ヌクレオチドである。特定の実施形態において、センス鎖の長さは17~32ヌクレオチドである。特定の実施形態において、センス鎖の長さは18~33ヌクレオチドである。特定の実施形態において、センス鎖の長さは19~34ヌクレオチドである。特定の実施形態において、センス鎖の長さは20~35ヌクレオチドである。特定の実施形態において、センス鎖の長さは21~36ヌクレオチドである。特定の実施形態において、センス鎖の長さは22~37ヌクレオチドである。特定の実施形態において、センス鎖の長さは23~38ヌクレオチドである。特定の実施形態において、センス鎖の長さは24~39ヌクレオチドである。特定の実施形態において、センス鎖の長さは25~40ヌクレオチドである。特定の実施形態において、センス鎖の長さは26~41ヌクレオチドである。特定の実施形態において、センス鎖の長さは27~42ヌクレオチドである。特定の実施形態において、センス鎖の長さは28~43ヌクレオチドである。
【0115】
特定の実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子は、センス鎖及びアンチセンス鎖を含み、上記センス鎖及びアンチセンス鎖は別個の鎖であり、8~29塩基対の第1の二重鎖(D1)を形成し、センス鎖は、第2の二重鎖(D2)及びテトラループまたはトリループを含み、長さが15~43ヌクレオチドであり、アンチセンス鎖は、長さが18~35ヌクレオチドであり、3’末端に6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを有する。特定の実施形態において、センス鎖の長さは、15~26、19~26、15~24、または19~24ヌクレオチドである。特定の実施形態において、センス鎖の長さは15~25ヌクレオチドである。特定の実施形態において、センス鎖の長さは19~25ヌクレオチドである。特定の実施形態において、センス鎖の長さは15~23ヌクレオチドである。特定の実施形態において、センス鎖の長さは21~23ヌクレオチドである。特定の実施形態において、センス鎖の長さは15ヌクレオチドである。特定の実施形態において、センス鎖の長さは16ヌクレオチドである。特定の実施形態において、センス鎖の長さは17ヌクレオチドである。特定の実施形態において、センス鎖の長さは18ヌクレオチドである。特定の実施形態において、センス鎖の長さは19ヌクレオチドである。特定の実施形態において、センス鎖の長さは20ヌクレオチドである。特定の実施形態において、センス鎖の長さは21ヌクレオチドである。特定の実施形態において、センス鎖の長さは22ヌクレオチドである。特定の実施形態において、センス鎖の長さは23ヌクレオチドである。特定の実施形態において、センス鎖の長さは24ヌクレオチドである。特定の実施形態において、センス鎖の長さは24ヌクレオチドである。特定の実施形態において、センス鎖の長さは25ヌクレオチドである。特定の実施形態において、センス鎖の長さは26ヌクレオチドである。
【0116】
特定の実施形態において、第1の二重鎖の長さは8~29塩基対である。特定の実施形態において、第1の二重鎖の長さは10~25塩基対である。特定の実施形態において、第1の二重鎖の長さは8~12塩基対である。特定の実施形態において、第1の二重鎖の長さは9~13塩基対である。特定の実施形態において、第1の二重鎖の長さは10~14塩基対である。特定の実施形態において、第1の二重鎖の長さは11~15塩基対である。特定の実施形態において、第1の二重鎖の長さは12~16塩基対である。特定の実施形態において、第1の二重鎖の長さは13~17塩基対である。特定の実施形態において、第1の二重鎖の長さは14~18塩基対である。特定の実施形態において、第1の二重鎖の長さは15~19塩基対である。特定の実施形態において、第1の二重鎖の長さは16~20塩基対である。特定の実施形態において、第1の二重鎖の長さは17~21塩基対である。特定の実施形態において、第1の二重鎖の長さは18~22塩基対である。特定の実施形態において、第1の二重鎖の長さは19~23塩基対である。特定の実施形態において、第1の二重鎖の長さは20~24塩基対である。特定の実施形態において、第1の二重鎖の長さは21~25塩基対である。特定の実施形態において、第1の二重鎖の長さは22~26塩基対である。特定の実施形態において、第1の二重鎖の長さは23~27塩基対である。特定の実施形態において、第1の二重鎖の長さは24~28塩基対である。特定の実施形態において、第1の二重鎖の長さは25~29塩基対である。
【0117】
特定の実施形態において、第1の二重鎖の長さは8塩基対である。特定の実施形態において、第1の二重鎖の長さは9塩基対である。特定の実施形態において、第1の二重鎖の長さは10塩基対である。特定の実施形態において、第1の二重鎖の長さは11塩基対である。特定の実施形態において、第1の二重鎖の長さは12塩基対である。特定の実施形態において、第1の二重鎖の長さは13塩基対である。特定の実施形態において、第1の二重鎖の長さは14塩基対である。特定の実施形態において、第1の二重鎖の長さは15塩基対である。特定の実施形態において、第1の二重鎖の長さは16塩基対である。特定の実施形態において、第1の二重鎖の長さは17塩基対である。特定の実施形態において、第1の二重鎖の長さは18塩基対である。特定の実施形態において、第1の二重鎖の長さは19塩基対である。特定の実施形態において、第1の二重鎖の長さは20塩基対である。第1の二重鎖の長さはまた、8~18塩基対の範囲内の任意の2つの数字を選択することによって決定される範囲の塩基対(例えば、8~12、12~14、12~15、13~14、13~15等)であってもよい。
【0118】
特定の実施形態において、第2の二重鎖(D2)の長さは1~6塩基対である。特定の実施形態において、第2の二重鎖の長さは1~3塩基対であり、少なくとも1つのTmを上昇させるヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、D2の長さは1塩基対であり、少なくとも1つのTmを上昇させるヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、D2の長さは2塩基対であり、少なくとも1つのTmを上昇させるヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、D2の長さは3塩基対であり、少なくとも1つのTmを上昇させるヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、D2の長さは4塩基対である。特定の実施形態において、D2の長さは5塩基対である。特定の実施形態において、D2の長さは6塩基対である。
【0119】
上記アンチセンス鎖の3’末端は、少なくとも3ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを有する。特定の実施形態において、アンチセンス鎖の3’末端は、少なくとも6ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを有する。特定の実施形態において、アンチセンス鎖は、その3’末端に6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを有する。特定の実施形態において、アンチセンス鎖は、その3’末端に6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを有する。特定の実施形態において、アンチセンス鎖の3’末端における一本鎖オーバーハングは、6ヌクレオチドからなる。特定の実施形態において、アンチセンス鎖の3’末端における一本鎖オーバーハングは、7ヌクレオチドからなる。特定の実施形態において、アンチセンス鎖の3’末端における一本鎖オーバーハングは、8ヌクレオチドからなる。特定の実施形態において、アンチセンス鎖の3’末端の一本鎖オーバーハングは9ヌクレオチドからなる。特定の実施形態において、アンチセンス鎖の3’末端における一本鎖オーバーハングは、10ヌクレオチドからなる。
【0120】
特定の実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子は、センス鎖及びアンチセンス鎖を含み、上記センス鎖及びアンチセンス鎖は別個の鎖であり、12~16塩基対の第1の二重鎖(D1)を形成し、センス鎖は、第2の二重鎖(D2)及びテトラループまたはトリループを含み、長さが17~32ヌクレオチドであり、アンチセンス鎖は、長さが18~25ヌクレオチドであり、3’末端に6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを有する。特定の実施形態において、センス鎖の長さは28~32ヌクレオチドであり、第2の二重鎖(D2)は、長さが6塩基対であり、Tmを上昇させるヌクレオチドを含まない。特定の実施形態において、センス鎖の長さは18~25ヌクレオチドであり、第2の二重鎖(D2)は、長さが1~5塩基対であり、少なくとも1つのTmを上昇させるヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、D2の長さは1塩基対である。特定の実施形態において、D2の長さは2塩基対である。特定の実施形態において、D2の長さは3塩基対である。特定の実施形態において、D2の長さは4塩基対である。特定の実施形態において、D2の長さは5塩基対である。特定の実施形態において、D2の長さは6塩基対である。
【0121】
特定の実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子は、センス鎖及びアンチセンス鎖を含み、上記センス鎖及びアンチセンス鎖は別個の鎖であり、12~16塩基対の第1の二重鎖(D1)を形成し、センス鎖は、12~16ヌクレオチドの第1の領域(R1)及び第1の小領域(S1)と第2の小領域(S2)を結合するテトラループまたはトリループを含む5~16ヌクレオチドの第2の領域(R2)を有し、S1及びS2のそれぞれは、長さが1~6ヌクレオチドであり、互いに十分に相補的であって第2の二重鎖(D2)を形成し、上記アンチセンス鎖は、長さが20~23ヌクレオチドであり、その3’末端に6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを有する。特定の実施形態において、R2の長さは5~16ヌクレオチドである。特定の実施形態において、R2の長さは6~16ヌクレオチドである。特定の実施形態において、R2の長さは5ヌクレオチドである。特定の実施形態において、R2の長さは6ヌクレオチドである。特定の実施形態において、R2の長さは7ヌクレオチドである。特定の実施形態において、R2の長さは8ヌクレオチドである。特定の実施形態において、R2の長さは9ヌクレオチドである。特定の実施形態において、R2の長さは10ヌクレオチドである。特定の実施形態において、R2の長さは11ヌクレオチドである。特定の実施形態において、R2の長さは12ヌクレオチドである。特定の実施形態において、R2の長さは13ヌクレオチドである。特定の実施形態において、R2は14ヌクレオチドである。特定の実施形態において、R2の長さは15ヌクレオチドである。特定の実施形態において、R2の長さは16ヌクレオチドである。特定の実施形態において、S1及びS2のそれぞれの長さは1~6ヌクレオチドである。特定の実施形態において、S1及びS2のそれぞれの長さは1~3ヌクレオチドである。特定の実施形態において、S1とS2のそれぞれの長さは3~6ヌクレオチドである。特定の実施形態において、S1及びS2のそれぞれの長さは3~5ヌクレオチドである。特定の実施形態において、S1及びS2のそれぞれの長さは1ヌクレオチドである。特定の実施形態において、S1及びS2のそれぞれの長さは2ヌクレオチドである。特定の実施形態において、S1及びS2のそれぞれの長さは3ヌクレオチドである。特定の実施形態において、S1及びS2のそれぞれの長さは4ヌクレオチドである。特定の実施形態において、S1及びS2のそれぞれの長さは5ヌクレオチドである。特定の実施形態において、S1及びS2のそれぞれの長さは6ヌクレオチドである。
【0122】
特定の実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子は、センス鎖及びアンチセンス鎖を含み、上記センス鎖及びアンチセンス鎖は別個の鎖であり、12~16塩基対の第1の二重鎖(D1)を形成し、センス鎖は、長さが16~33ヌクレオチドであり、12~16ヌクレオチドの第1の領域(R1)及び第1の小領域(S1)と第2の小領域(S2)を結合するテトラループまたはトリループを含む5~10ヌクレオチドの第2の領域(R2)を有し、S1及びS2のそれぞれは、長さが1~3ヌクレオチドであり、1~3塩基対の第2の二重鎖(D2)を形成し、アンチセンス鎖は、長さが21~23ヌクレオチドであり、その3’末端に6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを有する。特定の実施形態において、アンチセンス鎖の長さは22ヌクレオチドである。特定の実施形態において、第2の二重鎖(D2)中の少なくとも1つのヌクレオチドはTmを上昇させるヌクレオチドである。特定の実施形態において、第2の二重鎖(D2)中の各ヌクレオチドは、Tmを上昇させるヌクレオチドである。
【0123】
特定の実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子は、センス鎖及びアンチセンス鎖を含み、上記センス鎖及びアンチセンス鎖は別個の鎖であり、12~16塩基対の第1の二重鎖(D1)を形成し、センス鎖は、12~16ヌクレオチドの第1の領域(R1)及び第1の小領域(S1)と第2の小領域(S2)を結合するテトラループを含む6~10ヌクレオチドの第2の領域(R2)を有し、S1及びS2のそれぞれは、長さが1~3ヌクレオチドであり、1~3塩基対の第2の二重鎖(D2)を形成し、アンチセンス鎖の長さは、その3’末端の6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを含む22ヌクレオチドである。特定の実施形態において、第2の二重鎖(D2)中の少なくとも1つのヌクレオチドはTmを上昇させるヌクレオチドである。特定の実施形態において、第2の二重鎖(D2)中の各ヌクレオチドはTmを上昇させるヌクレオチドである。特定の実施形態において、第1の二重鎖は12塩基対を有する。特定の実施形態において、第1の二重鎖は14塩基対を有する。特定の実施形態において、第1の二重鎖は16塩基対を有する。
【0124】
特定の実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子は、センス鎖及びアンチセンス鎖を含み、上記センス鎖及びアンチセンス鎖は別個の鎖であり、12~16塩基対の第1の二重鎖(D1)を形成し、センス鎖は、12~16ヌクレオチドの第1の領域(R1)及び第1の小領域(S1)と第2の小領域(S2)を結合するトリループを含む5~9ヌクレオチドの第2の領域(R2)を有し、S1及びS2のそれぞれは、長さが1~3ヌクレオチドであり、1~3塩基対の第2の二重鎖(D2)を形成し、アンチセンス鎖は、長さが22ヌクレオチドであり、その3’末端に6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを有する。特定の実施形態において、第2の二重鎖(D2)中の少なくとも1つのヌクレオチドはTmを上昇させるヌクレオチドである。特定の実施形態において、第2の二重鎖(D2)中の各ヌクレオチドはTmを上昇させるヌクレオチドである。特定の実施形態において、第1の二重鎖は12塩基対を有する。特定の実施形態において、第1の二重鎖は14塩基対を有する。特定の実施形態において、第1の二重鎖は16塩基対を有する。
【0125】
本二本鎖核酸阻害剤分子の特定の実施形態において、センス鎖は21~25ヌクレオチドを有し;アンチセンス鎖は、3’末端に6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを含む22ヌクレオチドを有し、5’末端ヌクレオチドは、任意選択でリン酸模倣物を含み;第1の二重鎖の長さは12~16塩基対であり;センス鎖の第2の領域はトリループを含み、第2の二重鎖は、長さが3塩基対であり、少なくとも1つのTmを上昇させるヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、第2の二重鎖中のいずれのヌクレオチドも、LNAなどのTmを上昇させるヌクレオチドである。
【0126】
本二本鎖核酸阻害剤分子の特定の実施形態において、センス鎖は22~26ヌクレオチドを有し;アンチセンス鎖は、3’末端に6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを含む22ヌクレオチドを有し、アンチセンス鎖の5’末端ヌクレオチドは、任意選択でリン酸模倣物を含み;第1の二重鎖の長さは12~16塩基対であり;センス鎖の第2の領域はテトラループを含み、第2の二重鎖は、長さが3塩基対であり、少なくとも1つのTmを上昇させるヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、第2の二重鎖中のいずれのヌクレオチドも、LNAなどのTmを上昇させるヌクレオチドである。
【0127】
本二本鎖核酸阻害剤分子の特定の実施形態において、センス鎖は21~31ヌクレオチドを有し;アンチセンス鎖は、3’末端に6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを含む22ヌクレオチドを有し、アンチセンス鎖の5’末端ヌクレオチドは、任意選択でリン酸模倣物を含み;第1の二重鎖の長さは12~16塩基対であり;センス鎖の第2の領域はトリループを含み、第2の二重鎖は、長さが3~5塩基対であり、且つ少なくとも1つのTmを上昇させるヌクレオチドを含むか、または長さが6塩基対であり、且つTmを上昇させるヌクレオチドを含まない。特定の実施形態において、第2の二重鎖は、長さが3塩基対であり、第2の二重鎖のいずれのヌクレオチドも、LNAなどのTmを上昇させるヌクレオチドである。
【0128】
本二本鎖核酸阻害剤分子の特定の実施形態において、センス鎖は22~32ヌクレオチドを有し;アンチセンス鎖は、3’末端に6~10ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを含む22ヌクレオチドを有し、上記アンチセンス鎖の5’末端ヌクレオチドは、任意選択でリン酸模倣物を含み;第1の二重鎖の長さは12~16塩基対であり;センス鎖の第2の領域はテトラループを含み、第2の二重鎖は、長さが3~5塩基対であり、且つ少なくとも1つのTmを上昇させるヌクレオチドを含むか、または長さが6塩基対であり、且つTmを上昇させるヌクレオチドを含まない。特定の実施形態において、第2の二重鎖は、長さが3塩基対であり、第2の二重鎖のいずれのヌクレオチドも、LNAなどのTmを上昇させるヌクレオチドである。
【0129】
特定の実施形態において、上記テトラループは、以下の配列、すなわち、UNCG(例えば、UUCG、UCCG、UACG、もしくはUGCG)、GNRA(例えば、GAAA、GGAA、GAGA、GCAA、もしくはGUAA)、CUYG(例えばCUUG)、GANC、A/UGNN(例えばUGAA)、及びUUUM、GGUG、RNYA(例えばAACA)、及びAGNN(例えば、AGUA、AGAA、もしくはAGGG)、GGAG、UUUG、CAAC、CUUGU、GACAA、またはGAAGA(但し、Nは任意の核酸塩基であり、Rはプリンであり、Yはピリミジンであり、MはAまたはCである)の1つを有する。特定の実施形態において、上記テトラループは、UNCG、GNRA、またはCUUGから選択されるRNAテトラループである。特定の実施形態において、上記テトラループは配列GNRAを有する。特定の実施形態において、上記テトラループは配列GAAAを有する。特定の実施形態において、上記トリループは配列GNAを有する。特定の実施形態において、上記トリループは配列GAAを有する。
【0130】
本明細書に記載の二本鎖核酸阻害剤分子の特定の実施形態において、第2の二重鎖(D2)はTmを上昇させるヌクレオチドを含まない。特定の実施形態において、第2の二重鎖は、2~12個のTmを上昇させるヌクレオチドを含み、長さが1~6塩基対である。特定の実施形態において、D2は2~6個のTmを上昇させるヌクレオチドを含み、長さが1~3塩基対である。特定の実施形態において、D2は2~10個のTmを上昇させるヌクレオチドを含み、長さが3~5塩基対である。特定の実施形態において、D2は2~8個のTmを上昇させるヌクレオチドを含み、長さが3~4塩基対である。特定の実施形態において、D2は6個のTmを上昇させるヌクレオチドを含み、長さが3塩基対である。特定の実施形態において、D2は4つのTmを上昇させるヌクレオチドを含み、長さが2塩基対である。特定の実施形態において、D2は2つのTmを上昇させるヌクレオチドを含み、長さが1塩基対である。特定の実施形態において、D2中の各ヌクレオチドはTmを上昇させるヌクレオチドである。特定の実施形態において、D2は、3つの不対のTmを上昇させるヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、D2は、2つの不対のTmを上昇させるヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、D2は、1つの不対のTmを上昇させるヌクレオチドを含む。
【0131】
特定の実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子は、センス鎖の第1の領域(R1)またはアンチセンス鎖中に、如何なるTmを上昇させるヌクレオチドも含まない。特定の実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子は、第2の二重鎖(D2)の外側に如何なるTmを上昇させるヌクレオチドも含まない。特定の実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子は、センス鎖の第1の領域(R1)中に少なくとも1つのTmを上昇させるヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、センス鎖のヌクレオチド1(P1)はTmを上昇させるヌクレオチドである。特定の実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子のセンス鎖は、ヌクレオチド1にTmを上昇させるヌクレオチドを含み、且つセンス鎖の第1の領域(R1)中に2つのさらなるTmを上昇させるヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子のセンス鎖は、ヌクレオチド1にTmを上昇させるヌクレオチドを含み、且つセンス鎖の第1の領域(R1)中に3つのさらなるTmを上昇させるヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子のセンス鎖は、ヌクレオチド1にTmを上昇させるヌクレオチドを含み、且つセンス鎖の第1の領域(R1)中に4つのさらなるTmを上昇させるヌクレオチドを含む。本二本鎖核酸阻害剤分子の特定の実施形態において、アンチセンス鎖のヌクレオチド6(G6)と塩基対合するセンス鎖の第1の領域(R1)中のヌクレオチドは、Tmを上昇させるヌクレオチドである。特定の実施形態において、アンチセンス鎖のヌクレオチド5(G5)と塩基対合するセンス鎖の第1の領域(R1)中のヌクレオチドは、Tmを上昇させるヌクレオチドである。特定の実施形態において、アンチセンス鎖のヌクレオチド6及びヌクレオチド5と塩基対合するセンス鎖の第1の領域(R1)中のヌクレオチドは、Tmを上昇させるヌクレオチドである。特定の実施形態において、アンチセンス鎖のヌクレオチド1~4(G1~4)と塩基対合するセンス鎖の第1の領域(R1)中のヌクレオチドはいずれも、Tmを上昇させるヌクレオチドではない。
【0132】
本明細書に記載の二本鎖核酸阻害剤分子において、上記Tmを上昇させるヌクレオチドは、本明細書に記載の、またはその他の当技術分野において利用可能な二環式ヌクレオチドのいずれかであってよい。特定の実施形態において、本二本鎖核酸分子は、少なくとも2つの二環式ヌクレオチドを含み、それぞれの二環式ヌクレオチドは同一である。特定の実施形態において、上記二本鎖核酸分子は、少なくとも2つの異なる二環式ヌクレオチドを含む。
【0133】
本明細書に記載の二本鎖核酸阻害剤分子の特定の実施形態において、少なくとも1つの二環式ヌクレオチドは二環式糖部分を含み、上記二環式糖部分は、置換フラノシルであって、該フラノシルの2’炭素及び4’炭素を連結する架橋を含む上記置換フラノシルである。
【0134】
本明細書に記載の二本鎖核酸阻害剤分子の特定の実施形態において、上記少なくとも1つの二環式ヌクレオチドは、本明細書に記載の式I、II、III、IV、Va、またはVbの構造を有する。特定の実施形態において、上記少なくとも1つの二環式ヌクレオチドは式Iの構造を有する。特定の実施形態において、上記少なくとも1つの二環式ヌクレオチドは式IIの構造を有する。特定の実施形態において、上記少なくとも1つの二環式ヌクレオチドは式IIIの構造を有する。特定の実施形態において、上記少なくとも1つの二環式ヌクレオチドは式IVの構造を有する。特定の実施形態において、上記少なくとも1つの二環式ヌクレオチドは式Vaの構造を有する。特定の実施形態において、上記少なくとも1つの二環式ヌクレオチドは式Vbの構造を有する。
【0135】
特定の実施形態において、上記少なくとも1つの二環式ヌクレオチドは、本明細書に記載の式Ia、Ib、Ic、Id、Ie、またはIfの1種以上の構造を有する。特定の実施形態において、上記少なくとも1つの二環式ヌクレオチドは、本明細書に記載の式IIa、IIb、IIc、またはIIdの1種以上の構造を有する。特定の実施形態において、上記少なくとも1つの二環式ヌクレオチドは、本明細書に記載の式IIIa及び/またはIllbの構造を有する。特定の実施形態において、上記少なくとも1つの二環式ヌクレオチドは、本明細書に記載の式IVa及び/またはIVbの構造を有する。
【0136】
特定の実施形態において、第2の二重鎖(D2)及び/またはセンス鎖の第1の領域(R1)中の少なくとも1つの二環式ヌクレオチド(BN)は、以下、すなわち、(a)メチレンオキシBN、(b)エチレンオキシBN、(c)アミノオキシBN、(d)オキシアミノBN、(e)メチル(メチレンオキシ)BN(拘束エチルまたはcETとしても知られる)、(f)メチレンチオBN、(g)メチレンアミノBN、(h)メチル炭素環式BN、及び(i)プロピレン炭素環式BNの1種以上である。一実施形態において、上記少なくとも1つのBNは、(a)メチレンオキシBNまたは(d)オキシアミノBN(但し、R2はCH3である)。一実施形態において、上記少なくとも1つのBNは上記オキシアミノBN(d)である(但し、R2はCH3である)。
【0137】
本明細書に開示される二本鎖核酸阻害剤分子の特定の実施形態において、上記アンチセンス鎖中の少なくとも1つのヌクレオチドは2’-Fで修飾されている。特定の実施形態において、アンチセンス鎖中の少なくとも1つのヌクレオチドは、2’-Fで修飾され、上記2’-F修飾ヌクレオチドは、ホスホジエステル結合以外の2つのリン含有ヌクレオチド間結合に隣接している。特定の実施形態において、アンチセンス鎖中の少なくとも2つのヌクレオチドは2’-Fで修飾され、上記少なくとも2つの2’-F修飾ヌクレオチドはそれぞれ、ホスホジエステル結合以外の2つのリン含有ヌクレオチド間結合に隣接している。特定の実施形態において、アンチセンス鎖中の少なくとも3つのヌクレオチドは2’-Fで修飾されており、上記少なくとも3つの2’-F修飾ヌクレオチドはそれぞれ、ホスホジエステル結合以外の2つのリン含有ヌクレオチド間結合に隣接している。特定の実施形態において、アンチセンス鎖中の少なくとも4つのヌクレオチドは2’-Fで修飾され、上記少なくとも4つの2’-F修飾ヌクレオチドはそれぞれ、ホスホジエステル結合以外の2つのリン含有ヌクレオチド間結合に隣接している。特定の実施形態において、2’-Fで修飾されたアンチセンス鎖中のいずれのヌクレオチドも、ホスホロチオアート結合などのホスホジエステル結合以外の2つのリン含有ヌクレオチド間結合に隣接している。
【0138】
特定の実施形態において、上記アンチセンス鎖のヌクレオチド2(G2)は2’-Fで修飾されており、ホスホジエステル結合以外のリン含有ヌクレオチド間結合によってアンチセンス鎖のヌクレオチド1(G1)及びヌクレオチド3(G3)に結合している。特定の実施形態において、アンチセンス鎖のヌクレオチド7(G7)は2’-Fで修飾されており、ホスホジエステル結合以外のリン含有ヌクレオチド間結合によってアンチセンス鎖のヌクレオチド6(G6)及びヌクレオチド8(G8)に結合している。特定の実施形態において、アンチセンス鎖のヌクレオチド10(G10)は2’-Fで修飾されており、ホスホジエステル結合以外のリン含有ヌクレオチド間結合によってアンチセンス鎖のヌクレオチド9(G9)及びヌクレオチド11(G11)に結合している。特定の実施形態において、アンチセンス鎖のヌクレオチド14(G14)は2’-Fで修飾されており、ホスホジエステル結合以外のリン含有ヌクレオチド間結合によってアンチセンス鎖のヌクレオチド13(G13)及びヌクレオチド15(G15)に結合している。特定の実施形態において、G2、G7、G10、及びG14の1つ以上が2’-Fで修飾されており、ホスホジエステル結合以外のリン含有ヌクレオチド間結合に隣接している。特定の実施形態において、G2及びG14は2’-Fで修飾され、ホスホジエステル結合以外のリン含有ヌクレオチド間結合に隣接している。特定の実施形態において、上記リン含有ヌクレオチド間結合はホスホロチオアート結合である。
【0139】
特定の実施形態において、センス鎖中の少なくとも1つのヌクレオチドは、ホスホジエステル結合以外のリン含有ヌクレオチド間結合に隣接している。特定の実施形態において、センス鎖のヌクレオチド1及び2は、ホスホジエステル結合以外のヌクレオチド間結合によって連結されている。特定の実施形態において、上記リン含有ヌクレオチド間結合はホスホロチオアート結合である。
【0140】
Tmを上昇させるヌクレオチド
本明細書に開示される二本鎖核酸阻害剤分子は、センス鎖の第1の領域(R1)及び/またはセンス鎖中に存在するステムループ構造のステム部分(D2)に1つ以上のTmを上昇させるヌクレオチドを含んでいてもよい。
【0141】
Tmを上昇させるヌクレオチドとしては、二環式ヌクレオチド、三環式ヌクレオチド、Gクランプ及びそれらの類似体、ヘキシトールヌクレオチド、または修飾ヌクレオチドが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0142】
二環式ヌクレオチド
二環式ヌクレオチドは通常、4~7員環(フラノシルを含む、但しこれに限定されない)であって、該4~7員環の2つの原子を連結して第2の環を形成し、その結果二環式構造を生じる架橋を含む上記4~7員環をもつ糖部分を有する。かかる二環式ヌクレオチドは、二環式核酸及びロック核酸に対して、それぞれBNA及びLNAを含むさまざまな名称を有する。二環式ヌクレオチドの合成及びそれらの核酸化合物中への組み込みも、例えば、Singh et al., Chem. Commun., 1998, 4, 455-456;Koshkin et al., Tetrahedron, 1998, 54, 3607-3630;Wahlestedt et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 2000, 97, 5633-5638;Kumar et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 1998, 8, 2219-2222;Singh et al., J. Org. Chem., 1998, 63, 10035-10039;米国特許第7,427,672号、第7,053,207号、第6,794,499号、第6,770,748号、第6,268,490号、及び第6,794,499号、ならびに米国出願公開20040219565、20040014959、20030207841、20040192918、20030224377、20040143114、及び20030082807(これらのそれぞれは、その全体が本明細書に援用される)を含む文献に報告されている。
【0143】
上記Tmを上昇させるヌクレオチドは、二環式糖部分を含む二環式ヌクレオチドであってよい。特定の実施形態において、上記二環式糖部分は、4~7員の第1の環、及び上記糖部分の第1の環の任意の2つの原子を連結して第2の環を形成するノース型糖立体配座を形成する架橋を含む。特定の実施形態において、上記架橋は、第1の環の2’炭素及び4’炭素を連結して第2の環を形成する。
【0144】
通常、上記架橋は2~8個の原子を含む。特定の実施形態において、上記架橋は3個の原子を含む。特定の実施形態において、上記架橋は4個の原子を含む。特定の実施形態において、上記架橋は5個の原子を含む。特定の実施形態において、上記架橋は6個の原子を含む。特定の実施形態において、上記架橋は7個の原子を含む。特定の実施形態において、上記架橋は8個の原子を含む。特定の実施形態において、上記架橋は8個を超える原子を含む。
【0145】
特定の実施形態において、上記二環式糖部分は、置換フラノシルであって、該フラノシルの2’炭素及び4’炭素を連結して第2の環を形成する架橋を含む上記置換フラノシルである。特定の実施形態において、上記二環式ヌクレオチドは、式I:
式I
(式中、Bは核酸塩基であり、
Gは、H、OH、NH
2、C
1~C
6アルキル、C
2~C
6アルケニル、C
2~C
6アルキニル、置換C
1~C
6アルキル、置換C
2~C
6アルケニル、置換C
2~C
6アルキニル、アシル、置換アシル、置換アミド、チオール、または置換チオであり、
Xは、O、S、またはNR
1であり、但し、R
1は、H、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6アルコキシ、フェニル、またはピレニルであり、
W
a及びW
bはそれぞれ独立に、H、OH、ヒドロキシル保護基、リン部分、または式Iで表されるヌクレオチドを別のヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドに結合するヌクレオチド間結合基であり、W
aまたはW
bの少なくとも一方は、式Iで表されるヌクレオチドをオリゴヌクレオチドに結合するヌクレオチド間結合基である)
の構造を有する。
【0146】
式Iの特定の実施形態において、GはHであり、XはNR1であり、但し、R1はフェニルまたはピレニルである。式Iの特定の実施形態において、GはHであり、XはSである。
【0147】
式Iの特定の実施形態において、GはHであり、XはOである。
式Ia
【0148】
式Iの特定の実施形態において、GはHであり、XはNR
1であり、但し、R
1は、H、CH
3、またはOCH
3である。
式Ib
【0149】
式Iの特定の実施形態において、GはOHまたはNH2であり、XはOである。
【0150】
式Iの特定の実施形態において、GはOHであり、XはOである。
式Ic
【0151】
式Iの特定の実施形態において、GはNH
2であり、XはOである。
式Id
【0152】
式Iの特定の実施形態において、GはCH
3またはCH
2OCH
3であり、XはOである。式Iの特定の実施形態において、GはCH
3であり、XはOである。
式Ie
【0153】
式Iの特定の実施形態において、GはCH
2OCH
3であり、XはOである。
式If
【0154】
式Iの特定の実施形態において、上記二環式ヌクレオチドは、式II:
式II
(式中、Bは核酸塩基であり、
Q
1はCH
2またはOであり
Xは、CH
2、O、S、またはNR
1であり、但し、R
1は、H、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6アルコキシ、フェニル、またはピレニルであり、
Q
1がOである場合は、XはCH
2であり、
Q
1がCH
2である場合は、Xは、CH
2、O、S、またはNR
1であり、但し、R
1は、H、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6アルコキシ、フェニル、またはピレニルであり、
W
a及びW
bはそれぞれ独立に、H、OH、ヒドロキシル保護基、リン部分、または式IIで表されるヌクレオチドを別のヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドに結合するヌクレオチド間結合基であり、W
aまたはW
bの少なくとも一方は、式IIで表されるヌクレオチドをオリゴヌクレオチドに結合するヌクレオチド間結合基である)
の構造を有する。
【0155】
式IIの特定の実施形態において、Q
1はOであり、XはCH
2である。
式IIa
【0156】
式IIの特定の実施形態において、Q
1はCH
2であり、XはOである。
式IIb
【0157】
式IIの特定の実施形態において、Q
1はCH
2であり、XはNR
1であり、但し、R
1は、H、CH
3、またはOCH
3である。
式IIc
【0158】
式IIの特定の実施形態において、Q
1はCH
2であり、XはNHである。
式IId
【0159】
特定の実施形態において、上記二環式ヌクレオチドは、式III:
式III
(式中、Bは核酸塩基であり、
Q
2はOまたはNR
1であり、但し、R
1は、H、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6アルコキシ、フェニル、またはピレニルであり、
Xは、CH
2、O、S、またはNR
1であり、但し、R
1は、H、C
1~C
6アルキル、C
1~C
6アルコキシ、フェニル、またはピレニルであり、
Q
2がOである場合は、XはNR
1であり、
Q
2がNR
1である場合は、XはOまたはSであり、
W
a及びW
bはそれぞれ独立に、H、OH、ヒドロキシル保護基、リン部分、または式IIIで表されるヌクレオチドを別のヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドに結合するヌクレオチド間結合基であり、W
aまたはW
bの少なくとも一方は、式IIIで表されるヌクレオチドをオリゴヌクレオチドに結合するヌクレオチド間結合基である)
の構造を有する。
【0160】
式IIIの特定の実施形態において、Q2はOであり、XはNR1である。式IIIの特定の実施形態において、Q2はOであり、XはNR1であり、但し、R1は、C1~C6アルキルである。式IIIの特定の実施形態において、Q2はOであり、XはNR1であり、R1はHまたはCH3である。
【0161】
式IIIの特定の実施形態において、Q
2はOであり、XはNR
1であり、R
1はCH
3である。
式IIIa
【0162】
式IIIの特定の実施形態において、Q2はNR1であり、XはOである。式IIIの特定の実施形態において、Q2はNR1であり、R1はC1~C6アルキルであり、XはOである。
【0163】
式IIIの特定の実施形態において、Q
2はNCH
3であり、XはOである。
式IIIb
【0164】
特定の実施形態において、上記二環式ヌクレオチドは式IV:
式IV
(式中、Bは核酸塩基であり、
P
1及びP
3はCH
2であり、P
2はCH
2またはOであり、P
4はOであり、
W
a及びW
bはそれぞれ独立に、H、OH、ヒドロキシル保護基、リン部分、または式IVで表されるヌクレオチドを別のヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドに結合するヌクレオチド間結合基であり、W
aまたはW
bの少なくとも一方は、式IVで表されるヌクレオチドをオリゴヌクレオチドに結合するヌクレオチド間結合基である)
の構造を有する。
【0165】
式IVの特定の実施形態において、P
1、P
2、及びP
3はCH
2であり、P
4はOである。
式IVa
【0166】
式IVの特定の実施形態において、P
1及びP
3はCH
2であり、P
2はOであり、P
4はOである。
式IVb
【0167】
特定の実施形態において、上記二環式ヌクレオチドは、式VaまたはVb:
(式中、Bは核酸塩基であり、
r
1、r
2、r
3、及びr
4はそれぞれ独立に、H、ハロゲン、C
1~C
12アルキル、置換C
1~C
12アルキル、C
2~C
12アルケニル、置換C
2~C
12アルケニル、C
2~C
12アルキニル、置換C
2~C
12アルキニル、C
1~C
12アルコキシ、置換C
1~C
12アルコキシ、OT
1、ST
1、SOT
1、SO
2T
1、NT
1T
2、N
3、CN、C(=O)OT
1、C(=O)NT
1T
2、C(=O)T
1、O─C(=O)NT
1T2、N(H)C(=NH)NT
1T
2、N(H)C(=O)NT
1T
2、もしくはN(H)C(=S)NT
1T
2であり、但し、T
1及びT
2のそれぞれは独立に、H、C
1~C
6アルキル、もしくは置換C
1~C
16アルキルであるか、または
r
1及びr
2もしくはr
3及びr
4は互いに結合して=C(r
5)(r
6)となり、但し、r
5及びr
6はそれぞれ独立に、H、ハロゲン、C
1~C
12アルキル、もしくは置換C
1~C
12アルキルであり、
W
a及びW
bはそれぞれ独立に、H、OH、ヒドロキシル保護基、リン部分、または式Vで表されるヌクレオチドを別のヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドに結合するヌクレオチド間結合基であり、W
aまたはW
bの少なくとも一方は、式Vで表されるヌクレオチドをオリゴヌクレオチドに結合するヌクレオチド間結合基である)
の構造を有する。
【0168】
特定の実施形態において、上記二環式糖部分は、置換フラノシルであって、該フラノシルの2’炭素及び4’炭素を連結して第2の環を形成する架橋を含む上記置換フラノシルであり、フラノシルの2’炭素及び4’炭素を連結する上記架橋としては、
a)例えば、4’-CH2-NH-O-2’(BNANCとしても知られる)、4’-CH2-N(CH3)-O-2’(BNANC[NMe]としても知られる)を含む、4’-CH2-O-N(R)-2’及び4’-CH2-N(R)-O-2’(式中、Rは、H、C1~C12アルキル、または保護基である)(本記述をもってその全体が援用される米国特許第7,427,672号に記載される)、
b)4’-CH2-2’、4’-(CH2)2-2’、4’-(CH2)3-2’、4’-(CH2)-O-2’(LNAとしても知られる)、4’-(CH2)-S-2’、4’-(CH2)2-O-2’(ENAとしても知られる)、4’-CH(CH3)-O-2’(cEtとしても知られる)、及び4’-CH(CH2OCH3)-O-2’(cMOEとしても知られる)、ならびにそれらの類似体(本記述をもってその全体が援用される米国特許第7,399,845号に記載される)、
c)4’-C(CH3)(CH3)-O-2’及びその類似体(本記述をもってその全体が援用される米国特許第8,278,283号に記載される)、
d)4’-CH2-N(OCH3)-2’及びその類似体(本記述をもってその全体が援用される米国特許第8,278,425号に記載される)、
e)4’-CH2-O-N(CH3)-2’及びその類似体(本記述をもってその全体が援用される米国特許公開第2004/0171570号に記載される)、
f)4’-CH2-C(H)(CH3)-2’及びその類似体(本記述をもってその全体が援用されるChattopadhyaya et al., J. Org. Chem., 2009, 74, 118-34に記載される)、ならびに
g)4’-CH2-C(=CH2)-2’及びその類似体(本記述をもってその全体が援用される米国特許第8,278,426号に記載される)
が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0169】
特定の実施形態において、上記二環式ヌクレオチド(BN)は、以下、すなわち、(a)メチレンオキシBN、(b)エチレンオキシBN、(c)アミノオキシBN、d)オキシアミノBN、(e)メチル(メチレンオキシ)BN(拘束エチルまたはcETとしても知られる)、(f)メチレンチオBN、(g)メチレンアミノBN、(h)メチル炭素環式BN、及び(i)プロピレン炭素環式BN(以下に示す)の1種以上である。
【0170】
上記(a)~(i)の二環式ヌクレオチドにおいて、Bは核酸塩基であり、R2はHまたはCH3であり、Wa及びWbはそれぞれ独立に、H、OH、ヒドロキシル保護基、リン部分、または上記二環式ヌクレオチドを別のヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチドに結合するヌクレオチド間結合基であり、WaまたはWbの少なくとも一方は、上記二環式ヌクレオチドをオリゴヌクレオチドに結合するヌクレオチド間結合基である。
【0171】
上記オキシアミノBN(d)の一実施形態において、R
2は以下のようにCH
3である(BNA
NC[NMe]としても知られる)。
【0172】
特定の実施形態において、二環式糖部分及びかかる二環式糖部分を組み込む二環式ヌクレオチドはさらに、異性体の立体配置によって規定される。特定の実施形態において、上記二環式糖部分または二環式ヌクレオチドはα-L立体配置をとっている。特定の実施形態において、上記二環式糖部分または二環式ヌクレオチドはβ-D立体配置をとっている。例えば、特定の実施形態において、上記二環式糖部分または二環式ヌクレオチドは、α-L立体配置(α-L LNA)において2’O、4’-C-メチレン架橋(2’-O-CH2-4’)を含む。特定の実施形態において、上記二環式糖部分または二環式ヌクレオチドはR立体配置をとっている。特定の実施形態において、上記二環式糖部分または二環式ヌクレオチドはS立体配置をとっている。例えば、特定の実施形態において、上記二環式糖部分または二環式ヌクレオチドは、S立体配置の4’-CH(CH3)-O-2’架橋(すなわちcEt)を含む。
【0173】
三環式ヌクレオチド
特定の実施形態において、上記Tmを上昇させるヌクレオチドは三環式ヌクレオチドであってよい。三環式ヌクレオチドの合成及びそれらの核酸化合物中への組み込みも、例えば、Steffens et al., J. Am. Chem. Soc. 1997;119:11548-11549;Steffens et al., J. Org. Chem. 1999;121(14):3249-3255;Renneberg et al., J. Am. Chem. Soc. 2002;124:5993-6002;Ittig et al., Nucleic Acids Res. 2004;32(1):346-353;Scheidegger et al., Chemistry 2006;12:8014-8023;Ivanova et al., Oligonucleotides 2007;17:54-65(これらのそれぞれは、本記述をもってその全体が援用される)を含む文献に報告されている。
【0174】
特定の実施形態において、上記三環式ヌクレオチドは、例えば、Leumann CJ, Bioorg. Med. Chem. 2002;10:841-854ならびに米国出願公開2015/0259681及び2018/0162897(これらはそれぞれ、本記述をもって援用される)において議論されているように、3’炭素中心と5’炭素中心が、シクロプロパン環に融合したエチレンによって連結されているトリシクロヌクレオチド(トリシクロDNAとも呼ばれる)である。特定の実施形態において、上記三環式ヌクレオチドは、例えば、米国出願公開2015/0112055(本記述をもって援用される)で議論されているように、置換フラノシル環であって、該フラノシルの2’炭素と4’炭素を連結して第2の環を形成する架橋を含む上記置換フラノシル環、及び上記フラノシルの2’炭素と4’炭素を連結する上記架橋のメチレン基に5’炭素を連結する基から生じる第3の縮合環を含む。
【0175】
他のTmを上昇させるヌクレオチド
二環式及び三環式ヌクレオチドに加えて、他のTmを上昇させるヌクレオチドを、本明細書に記載の核酸阻害剤分子に使用することができる。例えば、特定の実施形態において、Tmを上昇させるヌクレオチドは、Gクランプ、グアニジンGクランプ、もしくはそれらの類似体(Wilds et al., Chem, 2002;114:123及びWilds et al., Chim Acta 2003;114:123)、ヘキシトールヌクレオチド(Herdewijn, Chem. Biodiversity 2010;7:1-59)、または修飾ヌクレオチドである。上記修飾ヌクレオチドは、例えば、5-ブロモ-ウラシル、5-ヨード-ウラシル、5-プロピニル修飾ピリミジン、もしくは2-アミノアデニン(2,6-ジアミノプリンとも呼ばれる)(Deleavey et al., Chem. & Biol.2012;19:937-54)、または2-チオウリジン、5Me-チオウリジン、及びシュードウリジンを含む、本明細書に記載の修飾核酸塩基を有していてもよい。上記修飾ヌクレオチドは、上記Tmを上昇させるヌクレオチドが、糖部分の2’炭素において、2’-Fまたは2’-OMeで修飾されていないことを除いて、例えば、米国特許第8,975,389号(本記述をもって援用される)に記載されるか、または本明細書に記載される修飾糖部分を有していてもよい。
【0176】
特定の実施形態において、上記Tmを上昇させるヌクレオチドは二環式ヌクレオチドである。特定の実施形態において、Tmを上昇させるヌクレオチドは三環式ヌクレオチドである。特定の実施形態において、Tmを上昇させるヌクレオチドは、Gクランプ、グアニジンGクランプ、またはそれらの類似体である。特定の実施形態において、Tmを上昇させるヌクレオチドはヘキシトールヌクレオチドである。特定の実施形態において、Tmを上昇させるヌクレオチドは二環式または三環式ヌクレオチドである。特定の実施形態において、Tmを上昇させるヌクレオチドは、二環式ヌクレオチド、三環式ヌクレオチド、またはGクランプ、グアニジンGクランプもしくはそれらの類似体である。特定の実施形態において、Tmを上昇させるヌクレオチドは、二環式ヌクレオチド、三環式ヌクレオチド、Gクランプ、グアニジンGクランプ、もしくはそれらの類似体、またはヘキシトールヌクレオチドである。
【0177】
特定の実施形態において、上記Tmを上昇させるヌクレオチドは、1つの該ヌクレオチドの取り込み当り当該核酸阻害剤分子のTmを少なくとも2℃上昇させる。特定の実施形態において、Tmを上昇させるヌクレオチドは、1つの該ヌクレオチドの取り込み当り当該核酸阻害剤分子のTmを少なくとも3℃上昇させる。特定の実施形態において、Tmを上昇させるヌクレオチドは、1つの該ヌクレオチドの取り込み当り当該核酸阻害剤分子のTmを少なくとも4℃上昇させる。特定の実施形態において、Tmを上昇させるヌクレオチドは、1つの該ヌクレオチドの取り込み当り当該核酸阻害剤分子のTmを少なくとも5℃上昇させる。
【0178】
他の修飾
本明細書に記載の二本鎖核酸阻害剤分子は、第2の二重鎖(D2)及び/またはセンス鎖の第1の領域(R1)中の少なくとも1つのTmを上昇させるヌクレオチドに加えて、他のヌクレオチド修飾を含んでいてもよい。一般的には、本二本鎖核酸阻害剤分子の複数のヌクレオチドが、ヌクレアーゼに対する耐性または免疫原性の低下などの上記分子の種々の特性を改善するために修飾される。例えば、Bramsen et al. (2009), Nucleic Acids Res., 37, 2867-2881を参照されたい。多くのヌクレオチド修飾が、オリゴヌクレオチド分野で、特に核酸阻害剤分子に関して使用されてきた。かかる修飾は、糖部分、ホスホジエステル結合、及び核酸塩基を含む当該ヌクレオチドの任意の部分に対して行うことができる。ヌクレオチド修飾の一般的な例としては、2’-F、2’-O-メチル(「2’-OMe」または「2’-OCH3」、及び2’-O-メトキシエチル(「2’-MOE」または「2’-OCH2CH2OCH3」)が挙げられるが、これらに限定はされない。本明細書に記載されるように、修飾は、5’炭素などの、ヌクレオチドの糖部分の他の部分で行うこともできる。
【0179】
特定の実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子はまた、当技術分野で公知であり、且つ本明細書に記載されるように、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、及びウラシル以外の1種以上の修飾核酸塩基を1’位に含むことができる。特定の実施形態において、上記修飾核酸塩基またはユニバーサル核酸塩基は窒素塩基である。特定の実施形態において、上記修飾核酸塩基は窒素原子を含まない。例えば、米国特許出願公開第20080274462号を参照されたい。特定の実施形態において、上記修飾ヌクレオチドは核酸塩基を含まない(無塩基)。修飾核酸塩基の一般的な例は5’-メチルシトシンである。
【0180】
RNA及びDNAの天然に存在するヌクレオチド間結合は、3’から5’へのホスホジエステル結合である。修飾ホスホジエステル結合は、当技術分野において公知であり、且つ本明細書に記載される、リン原子を含有するヌクレオチド間結合及びリン原子を含有しないヌクレオチド間結合を含む、天然に存在しないヌクレオチド間結合基を含む。通常は、本二本鎖核酸阻害剤分子は、本明細書に記載される1つ以上のリン含有ヌクレオチド間結合基を含む。他の実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子の上記ヌクレオチド間結合基の1つ以上は、本明細書に記載の非リン含有結合である。特定の実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子は、1つ以上のリン含有ヌクレオチド間結合基及び1つ以上の非リン含有ヌクレオチド間結合基を含む。
【0181】
特定の実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子は、少なくとも1つのホスホロチオアートヌクレオチド間連結基を含む。特定の実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子は、12個未満、例えば10個未満のホスホロチオアートヌクレオチド間連結基を含む。特定の実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子は5~11個のホスホロチオアートヌクレオチド間連結基「PS」を含む。特定の実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子は5つのPSを含む。特定の実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子は7個のPSを含む。特定の実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子は9個のPSを含む。特定の実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子は11個のPSを含む。特定の実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子は、センス鎖中に1つのPSを含む。特定の実施形態において、2’-Fで修飾された各ヌクレオチドは、2つのPSに隣接している。特定の実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子は、アンチセンス鎖中に2つのPSを含む。特定の実施形態において、アンチセンス鎖は4つのPSを含む。特定の実施形態において、アンチセンス鎖は6個のPSを含む。特定の実施形態において、アンチセンス鎖は8個のPSを含む。特定の実施形態において、アンチセンス鎖は10個のPSを含む。
【0182】
本二本鎖核酸阻害剤分子のセンス鎖及び/またはアンチセンス鎖の5’末端は、ヒドロキシルまたはホスファート基などの天然の置換基を含んでいてもよい。特定の実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子のセンス鎖及び/またはアンチセンス鎖の5’末端にヒドロキシル基が結合している。特定の実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子のセンス鎖及び/またはアンチセンス鎖の5’末端にホスファート基が結合している。通常は、上記ホスファートは、オリゴヌクレオチド合成の前にモノマーに添加される。他の実施形態において、5’リン酸化は、核酸阻害剤分子が細胞質ゾルに導入された後に、例えば細胞質ゾルClp1キナーゼによって自然に行われる。いくつかの実施形態において、5’末端ホスファートは、5’-モノホスファート[(HO)2(O)P-O-5’]、5’-ジホスファート[(HO)2(O)P-O-P(HO)(O)-O-5’]、または5’-トリホスファート[(HO)2(O)P-O-(HO)(O)P-O-P(HO)(O)-O-5’]などのホスファート基である。
【0183】
本二本鎖核酸阻害剤分子のセンス鎖及び/またはアンチセンス鎖の5’末端も修飾されていてよい。例えば、いくつかの実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子のセンス鎖及び/またはアンチセンス鎖の5’末端は、ホスホルアミダート[(HO)2(O)P-NH-5’、(HO)(NH2)(O)P-O-5’]に結合している。特定の実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子のセンス鎖及び/またはアンチセンス鎖の5’末端は、ホスファート模倣物に結合している。好適なホスファート模倣物としては、5’-メチレンホスホナート(5’-MP)、5’-(E)-ビニルホスホナート(5’-VP)などの5’-ホスホナートが挙げられる。Lima et al., Cell, 2012, 150-883-94;WO2014/130607。他の好適なホスファート模倣物としては、国際公開第WO2018/045317号(本記述をもってその全体が援用される)に記載の、オリゴヌクレオチドの5’末端ヌクレオチドの糖部分(例えば、リボースもしくはデオキシリボースまたはそれらの類似体)の4’炭素に結合している4-ホスファート類似体が挙げられる。例えば、いくつかの実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子のセンス鎖及び/またはアンチセンス鎖の5’末端は、オキシメチルホスホナートに結合しており、上記オキシメチル基の酸素原子は、上記糖部分またはその類似体の4’炭素に結合している。他の実施形態において、上記ホスファート類似体は、チオメチルホスホナートまたはアミノメチルホスホナートであり、チオメチル基の硫黄原子またはアミノメチル基の窒素原子は、上記糖部分またはその類似体の4’炭素に結合している。
【0184】
特定の実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子は1つ以上のデオキシリボヌクレオチドを含む。通常は、本二本鎖核酸阻害剤分子が含むデオキシリボヌクレオチドは5つ未満である。特定の実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子は1つ以上のリボヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子の全てのヌクレオチドがリボヌクレオチドである。
【0185】
特定の実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子のステム(第2の二重鎖またはD2)外の1つ以上のヌクレオチドは、本明細書に記載の、二環式または三環式ヌクレオチド中に存在する修飾環構造を含む、但しこれらに限定されない、修飾環構造を有する糖部分、及び非ロック核酸(「UNA」)を含む(例えば、Snead et al. (2013), Molecular Therapy-Nucleic Acids, 2,e103(doi:10.1038/mtna.2013.36)を参照のこと)。
【0186】
特定の実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子の1つまたは2つのヌクレオチドは、グルタチオン感受性部分で可逆的に修飾されている。一般的には、上記グルタチオン感受性部分は、糖部分の2’炭素に位置し、スルホニル基を含む。特定の実施形態において、上記グルタチオン感受性部分は、例えば、国際公開第WO2018/045317号(本記述をもってその全体が援用される)に記載されるホスホラミダイトオリゴヌクレオチド合成法と適合性がある。特定の実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子の3つ以上のヌクレオチドは、グルタチオン感受性部分で可逆的に修飾されている。特定の実施形態において、上記ヌクレオチドのほとんどがグルタチオン感受性部分で可逆的に修飾されている。特定の実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子の全てまたは実質的に全てのヌクレオチドが、グルタチオン感受性部分で可逆的に修飾されている。
【0187】
上記少なくとも1つのグルタチオン感受性部分は通常、本二本鎖核酸阻害剤分子のセンス鎖またはアンチセンス鎖の5’末端または3’末端ヌクレオチドに位置する。しかし、上記少なくとも1つのグルタチオン感受性部分は、本二本鎖核酸阻害剤分子中の任意の目的のヌクレオチドに位置していてもよい。
【0188】
特定の実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子は完全に修飾されており、センス鎖及びアンチセンス鎖のいずれのヌクレオチドも修飾されており、通常は、いずれのヌクレオチドも糖部分の2’位で修飾されている。特定の実施形態において、完全に修飾された核酸阻害剤分子は可逆的な修飾を含まない。いくつかの実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子のセンス鎖の少なくとも1個、例えば、少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個、40個、41個、42個、または43個のヌクレオチドが修飾されている。いくつかの実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子のアンチセンス鎖の少なくとも1個、例えば、少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、または33個のヌクレオチドが修飾されている。
【0189】
特定の実施形態において、上記完全に修飾された核酸阻害剤分子は、1種以上の可逆的なグルタチオン感受性部分で修飾されている。特定の実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子の実質的に全てのヌクレオチドが修飾されている。特定の実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子のヌクレオチドの半分以上が、可逆的な修飾以外の化学修飾で修飾されている。特定の実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子の、可逆的な修飾以外の化学修飾で修飾されているヌクレオチドは半分未満である。修飾は、本核酸阻害剤分子上において群で行われていてもよく、または異なる修飾ヌクレオチドを点在させてもよい。
【0190】
本二本鎖核酸阻害剤分子の特定の実施形態において、1つから全てのヌクレオチドが2’炭素で修飾されている。特定の実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子は、2’-F、2’-OMe、及び/または2’-MOEで部分的にまたは完全に修飾されている。本二本鎖核酸阻害剤分子の特定の実施形態において、1つから全てのリン原子が修飾されており、且つ1つから全てのヌクレオチドが、糖部分の2’炭素で修飾されている。
【0191】
本二本鎖核酸阻害剤分子の特定の実施形態において、センス鎖及びアンチセンス鎖上のいずれのヌクレオチドも、糖部分の2’炭素で修飾されている。本二本鎖核酸阻害剤分子の特定の実施形態において、センス鎖及びアンチセンス鎖上のいずれのヌクレオチドも、センス鎖の第2の領域(R2)中のヌクレオチドを除いて、糖部分の2’炭素で2’-Fまたは2’-OMeによって修飾されている。本二本鎖核酸阻害剤分子の特定の実施形態において、センス鎖及びアンチセンス鎖のいずれのヌクレオチドも、上記Tmを上昇させるヌクレオチドを除いて、糖部分の2’炭素で2’-Fまたは2’-OMeによって修飾されている。本二本鎖核酸阻害剤分子の特定の実施形態において、センス鎖及びアンチセンス鎖のいずれのヌクレオチドも、上記Tmを上昇させるヌクレオチド及びGalNAcなどの糖リガンド部分にコンジュゲートしたループ領域中のヌクレオチドを除いて、糖部分の2’炭素で2’-Fまたは2’-OMeによって修飾されている。
【0192】
標的遺伝子発現の低減方法
本明細書に記載の二本鎖核酸阻害剤分子は、任意の目的の標的遺伝子の標的mRNA発現の低減方法に使用することができる。一般的に、mRNA発現の低減方法は、本明細書に記載の二本鎖核酸阻害剤分子を、試料またはそれを必要とする対象に、標的遺伝子mRNAの発現を低減するのに十分な量で投与することを含む。上記方法は、インビトロまたはインビボで実施することができる。
【0193】
標的RNAのレベルまたは活性は、当技術分野で現在公知の、または後に開発される好適な方法により測定することができる。標的RNA及び/または標的遺伝子の「発現」を測定するために使用される方法は、当該標的遺伝子及びそのコードされるRNAの性質に依存する場合があることを理解することができる。例えば、標的RNA配列がタンパク質をコードする場合、用語「発現」とは、標的遺伝子(ゲノムまたは外因性起源のいずれか)に由来するタンパク質または標的RNA/転写物を指す場合がある。かかる場合には、標的RNAの発現は、上記標的RNA/転写物の量を直接測定することにより、または上記標的RNA/転写物によりコードされるタンパク質の量を測定することによって測定することができる。タンパク質は、タンパク質アッセイにおいて、例えば、染色もしくは免疫ブロッティングにより、または当該タンパク質が、測定することができる反応を触媒する場合、反応速度を測定することによって測定することができる。全てのかかる方法は当技術分野で公知であり、使用することができる。標的RNAレベルが測定されることになる場合、RNAレベルを検出するための当技術分野で認められている方法を使用することができる(例えば、RT-PCR、ノーザンブロッティングなど)。上記の測定は、細胞、細胞抽出物、組織、組織抽出物、または他の好適な原物質に対して実施することができる。
【0194】
上記標的遺伝子は、ヒト標的遺伝子などの任意の哺乳動物由来の標的遺伝子であってよい。本方法によれば、任意の標的遺伝子を発現停止させることができる。特定の実施形態において、標的遺伝子は、慢性肝疾患または慢性腎疾患に関連し、例えば、AGXT、GRHPR、HOGA1、HAO1、SERPINA1、またはLDHAを含む。特定の実施形態において、標的遺伝子はウイルス感染症に関連し、例えば、HBV遺伝子またはHCV遺伝子を含む。特定の実施形態において、標的遺伝子は心血管疾患に関連し、例えば、APOC3またはPCSK9を含む。特定の実施形態において、標的遺伝子はアルコール代謝及び肝機能に関連し、例えば、ALDH2を含む。
【0195】
その他の例示的な標的遺伝子としては、KRAS、第VII因子、Eg5、PCSK9、TPX2、apoB、SAA1、TTR、PDGFベータ遺伝子、Erb-B遺伝子、Src遺伝子、CRK遺伝子、GRB2遺伝子、RAS遺伝子、MEKK遺伝子、JNK遺伝子、RAF遺伝子、Erk1/2遺伝子、PCNA(p21)遺伝子、MYB遺伝子、JUN遺伝子、FOS遺伝子、BCL-2遺伝子、サイクリンD遺伝子、VEGF遺伝子、EGFR遺伝子、サイクリンA遺伝子、サイクリンE遺伝子、WNT-1遺伝子、ベータカテニン遺伝子、c-MET遺伝子、PKC遺伝子、NFKB遺伝子、STAT3遺伝子、サバイビン遺伝子、Her2/Neu遺伝子、トポイソメラーゼI遺伝子、トポイソメラーゼIIアルファ遺伝子、p73遺伝子、p21(WAF1/CIP1)遺伝子、p27(KIP1)遺伝子、PPM1D遺伝子、RAS遺伝子、カベオリンI遺伝子、MIB I遺伝子、MTAI遺伝子、M68遺伝子、腫瘍抑制遺伝子の変異、p53腫瘍抑制遺伝子、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0196】
医薬組成物
本開示は、治療有効量の本明細書に記載の二本鎖核酸阻害剤分子及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0197】
これらの医薬組成物は、従来の滅菌技法によって滅菌しても、または滅菌ろ過してもよい。得られた水溶液は、そのままでの使用向けに包装しても、または凍結乾燥してもよく、凍結乾燥製剤は投与前に滅菌水性賦形剤と混合される。製剤のpHは通常、3~11、より好ましくは、5~9または6~8、最も好ましくは、7~8、例えば、7~7.5となる。
【0198】
本開示の医薬組成物は、治療上の使用に適用される。従って、本開示の一態様は、疾患または疾病に罹患しているヒトを含む、但しこれに限定されない対象に、治療有効量の本開示の医薬組成物を投与することによって、上記対象を治療するために使用することができる医薬組成物を提供する。特定の実施形態において、上記疾患または疾病は本明細書に記載のがんである。
【0199】
特定の実施形態において、本開示は、治療有効量の、それを必要とする対象の治療用の本明細書に記載の医薬組成物の使用を特徴とする。特定の実施形態において、上記対象は本明細書に記載のがんを有する。
【0200】
薬学的に許容される賦形剤
本開示において有用な上記薬学的に許容される賦形剤は通常は従来のものである。Remington’s Pharmaceutical Sciences, by E. W. Martin, Mack Publishing Co., Easton,PA, 15th Edition (1975)は、1種以上の治療用組成物の薬学的な送達に好適な組成物及び製剤について記載する。薬学的に許容される賦形剤として機能することができる材料のいくつかの例としては、ラクトース、グルコース、及びスクロースなどの糖;トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプンなどのデンプン;セルロースならびにナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、及び酢酸セルロースなどのセルロースの誘導体;麦芽;ゼラチン;カカオバター及び坐剤用ワックスなどの賦形剤;落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、及び大豆油などの油;水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;(等張性生理学的食塩水;リンガー溶液);エチルアルコール;pH緩衝液;グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどのポリオール;ならびに医薬製剤に使用される、他の非毒性の適合性のある物質が挙げられる。
【0201】
剤形
本医薬組成物は、通常の慣行に従って選択することができる、任意の意図される投与経路向けに、従来の賦形剤と共に製剤化することができる。
【0202】
一実施形態において、本医薬組成物は、本明細書に記載の二本鎖核酸阻害剤分子を含み、例えば、皮下注射、筋肉内注射、静脈内注射、または硬膜外注射による非経口投与に適する。通常、本開示の本医薬組成物は、非経口投与用に液体形態で製剤化される。
【0203】
非経口投与に適する剤形は通常、例として、滅菌水溶液、生理学的食塩水、プロピレングリコールなどの低分子量アルコール、ポリエチレングリコール、植物油、ゼラチン、オレイン酸エチルなどの脂肪酸エステルなどを含む、非経口投与に適する1種以上のビヒクルを含む。非経口製剤は、糖、アルコール、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、当該製剤を意図される被投与者の血液と等張にする溶質、または懸濁剤もしくは増粘剤を含んでいてもよい。例えば、界面活性剤を使用することにより、妥当な流動性を維持することができる。本二本鎖核酸阻害剤を含む液体製剤を凍結乾燥して保存し、後に無菌注射用溶液で再構成した上で使用することができる。
【0204】
本医薬組成物はまた、周知の技法を使用して、局所もしくは経皮投与、経直腸もしくは経膣投与、眼内投与、鼻腔内投与、口腔内投与、または舌下投与を含む他の投与経路向けに製剤化することもできる。
【0205】
送達助剤
本明細書に記載の二本鎖核酸阻害剤分子を、例えば、米国特許第6,815,432号、第6,586,410号、第6,858,225号、第7,811,602号、第7,244,448号、及び第8,158,601号に開示されるものなどのリポソーム及び脂質;米国特許第6,835,393号、第7,374,778号、第7,737,108号、第7,718,193号、第8,137,695号、ならびに米国特許出願公開第2011/0143434号、第2011/0129921号、第2011/0123636号、第2011/0143435号、第2011/0142951号、第2012/0021514号、第2011/0281934号、第2011/0286957号、及び第2008/0152661号に開示されるものなどのポリマー材料;取り込み、分布、または吸収を支援するためのカプシド、カプソイド、もしくは受容体標的化分子を含む、他の分子、分子構造、または化合物の混合物と混合する、上記でカプセル化する、上記とコンジュゲートさせる、あるいは他の方法で会合させてもよい。
【0206】
特定の実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子は、脂質ナノ粒子(LNP)中で製剤化される。脂質-核酸ナノ粒子は、通常複合体を形成させるために脂質を核酸と混合すると自発的に形成される。所望の粒度分布によっては、得られたナノ粒子混合物を任意選択で、例えば、LIPEX(登録商標)押出機(Northern Lipids, Inc)などのバレル加熱型押出機を使用して、ポリカーボナート膜(例えば、100nmのカットオフ)を通して押し出してもよい。治療上の使用向けの脂質ナノ粒子を調製するには、当該ナノ粒子を形成させるために使用した溶媒(例えばエタノール)を除去すること及び/または緩衝液を交換することが望ましい場合があり、これは、例えば、透析またはタンジェンシャルフローろ過により実現することができる。核酸干渉分子を含む脂質ナノ粒子の製造方法は、例えば、米国特許出願公開第2015/0374842号及び第2014/0107178号に開示されるように、当技術分野で公知である。
【0207】
特定の実施形態において、上記LNPは、カチオン性リポソーム及びペグ化脂質を含むコア脂質成分を含む。上記LNPは、カチオン性脂質、構造脂質もしくは中性脂質、ステロール、ペグ化脂質、またはそれらの混合物などの、1種以上のエンベロープ脂質をさらに含んでいてもよい。
【0208】
LNPに使用されるカチオン性脂質は、例えば、米国特許出願公開第2015/0374842号及び第2014/0107178号で議論されるように、当技術分野で公知である。通常、上記カチオン性脂質は、生理学的pHにおいて正味の正電荷を有する脂質である。特定の実施形態において、上記カチオン性リポソームは、DODMA、DOTMA、DL-048、またはDL-103である。特定の実施形態において、上記構造脂質または中性脂質は、DSPC、DPPC、またはDOPCである。特定の実施形態において、上記ステロールはコレステロールである。特定の実施形態において、上記ペグ化脂質は、DMPE-PEG、DSPE-PEG、DSG-PEG、DMPE-PEG2K、DSPE-PEG2K、DSG-PEG2K、またはDSG-mPEGである。一実施形態において、上記カチオン性脂質はDL-048であり、上記ペグ化脂質はDSG-mPEGであり、上記1種以上のエンベロープ脂質は、DL-103、DSPC、コレステロール、及びDSPE-mPEGである。例えば、本二本鎖核酸阻害剤分子を製剤化するために使用することができるLNPの非限定的な一実施形態を示す
図11を参照されたい。
【0209】
特定の実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子は、目的の組織への上記オリゴヌクレオチドの送達を誘導するリガンドに共有結合でコンジュゲートされる。多くのかかるリガンドが探索されている。例えば、Winkler, Ther. Deliv. 4(7): 791-809 (2013)を参照されたい。例えば、本二本鎖核酸阻害剤分子を1つ以上の糖リガンド部分(例えば、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc))にコンジュゲートさせて、上記オリゴヌクレオチドの肝臓への取り込みを誘導してもよい。例えば、米国特許第5,994,517号、米国特許第5,574,142号、WO2016/100401を参照されたい。特定の実施形態において、上記1つ以上のリガンドは、本二本鎖核酸阻害剤分子のテトラループまたはトリループ中の1つ以上のヌクレオチドにコンジュゲートされる。
【0210】
特定の実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子は、上記テトラループ中の2~4個の糖リガンド部分、または上記トリループ中の2つまたは3つの糖リガンド部分にコンジュゲートしている。一実施形態において、テトラループ中のヌクレオチドの2つが糖リガンド部分にコンジュゲートしている。一実施形態において、テトラループ中のヌクレオチドの3つが糖リガンド部分にコンジュゲートしている。別の実施形態において、テトラループ中の4つヌクレオチドが糖リガンド部分にコンジュゲートしている。一実施形態において、上記トリループ中のヌクレオチドの2つが糖部分にコンジュゲートしている。一実施形態において、トリループ中のヌクレオチドの3つが糖部分にコンジュゲートしている。特定の実施形態において、上記糖リガンド部分はGalNAcである。使用することができる他のリガンドとしては、マンノース-6-リン酸、コレステロール、葉酸、トランスフェリン、及びガラクトースが挙げられるが、これらに限定はされない(他の具体的な例示的リガンドについては、例えば、WO2012/089352を参照されたい)。
【0211】
上記リガンドは、それが目的の組織へのオリゴヌクレオチドの送達を誘導することが可能な限り、ヌクレオチドの任意の部分にコンジュゲートすることができる。特定の実施形態において、リガンド(例えば、GalNAc)は、糖部分の2’位のヌクレオチドにコンジュゲートされる。
【0212】
投与/治療方法
一実施形態は、治療有効量の本明細書に記載の二本鎖核酸阻害剤分子を含む医薬組成物を対象に投与することを含む、障害の治療方法に関する。
【0213】
特定の実施形態において、本明細書に開示の医薬組成物は、増殖性、炎症性、自己免疫性、神経性、眼性、呼吸性、代謝性、皮膚病学的、聴覚性、肝臓、腎臓、もしくは感染性疾患に関連する症状の治療または予防に有用である可能性がある。一実施形態は、治療有効量の本明細書に記載の二本鎖核酸阻害剤分子を含む医薬組成物を対象に投与することを含む、増殖性、炎症性、自己免疫性、神経性、眼性、呼吸性、代謝性、皮膚病学的、聴覚性、肝臓、腎臓、または感染性疾患の治療方法に関する。
【0214】
特定の実施形態において、上記障害は、希少疾患、慢性肝疾患、慢性腎疾患、心血管疾患、またはウイルス感染性疾患である。特定の実施形態において、上記障害は、原発性高シュウ酸尿症(PH1、PH2、もしくはPH3)または特発性高シュウ酸尿症を含む高シュウ酸尿症である。特定の実施形態において、上記障害は慢性腎障害(CKD)である。特定の実施形態において、上記障害はピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体欠損症である。特定の実施形態において、上記障害はα1アンチトリプシン(A1AT)欠乏症である。
【0215】
特定の実施形態において、上記障害はがんである。かかるがんの非限定的な例としては、胆管癌、膀胱癌、移行上皮癌、尿路上皮癌、脳癌、神経膠腫、星状細胞腫、乳癌、化生性癌、子宮頸癌、子宮頸部扁平上皮癌、直腸癌、大腸癌、結腸癌、遺伝性非ポリポーシス大腸癌、大腸腺癌、消化管間質腫瘍(GIST)、子宮内膜癌、子宮内膜間質肉腫、食道癌、食道扁平上皮癌、食道腺癌、眼メラノーマ、ブドウ膜メラノーマ、胆嚢癌、胆嚢腺癌、腎細胞癌、淡明細胞型腎細胞癌、移行上皮癌、尿路上皮癌、ウイルムス腫瘍、白血病、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、肝臓癌(liver cancer)、肝臓癌(liver carcinoma)、肝臓癌(hepatoma)、肝細胞癌、胆管細胞癌、肝芽腫、肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、中皮腫、B細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、前駆Tリンパ芽球性リンパ腫/白血病、末梢T細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、上咽頭癌(NPC)、神経芽腫、口腔咽頭癌、口腔扁平上皮癌、骨肉腫、卵巣癌、膵癌、膵管腺癌、偽乳頭状新生物、腺房細胞癌、前立腺癌、前立腺腺癌、皮膚癌、メラノーマ、悪性メラノーマ、皮膚メラノーマ、小腸癌、胃癌(stomach cancer)、胃癌(gastric carcinoma)、消化管間質腫瘍(GIST)、子宮癌、または子宮肉腫が挙げられる。一般的には、本開示は、治療有効量の本明細書に記載の医薬組成物を投与することによる、肝臓癌(liver cancer)、肝臓癌(liver carcinoma)、肝臓癌(hepatoma)、肝細胞癌、胆管細胞癌、及び肝芽腫の治療方法を特徴とする。
【0216】
いくつかの実施形態において、本開示は、標的遺伝子の発現を低減するのに十分な量の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、対象における標的遺伝子の発現の低減方法であって、上記医薬組成物が、本明細書に記載の二本鎖核酸阻害剤分子及び同じく本明細書に記載される薬学的に許容される賦形剤を含む、上記方法を提供する。
【0217】
投薬及びスケジュール
一般的には、本二本鎖核酸阻害剤分子は非経口投与される(例えば、静脈内投与、筋肉内投与、または皮下投与を介して)。他の実施形態において、上記医薬組成物は局所投与または全身投与を介して送達される。但し、本明細書に開示の医薬組成物はまた、例えば、口腔内投与、舌下投与、経直腸投与、経膣東洋、尿道内投与、局所投与、眼内投与、鼻腔内投与、及び/または耳内投与を含む、当技術分野で公知の任意の方法により投与されてもよく、この投与は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、水性懸濁液剤、ゲル剤、噴霧剤、坐剤、軟膏(salve)、軟膏(ointment)などを含んでいてもよい。
【0218】
特定の実施形態において、本二本鎖核酸阻害剤分子は、1日当たり被投与者の体重キログラム当たり20マイクログラム~10ミリグラム、キログラム当たり100マイクログラム~5ミリグラム、キログラム当たり0.25ミリグラム~5.0ミリグラム、またはキログラム当たり0.5~3.0ミリグラムの投薬量で投与される。通常は、本二本鎖核酸阻害剤分子は、1日当たり被投与者の体重キログラム当たり約0.25~2.0ミリグラムの投薬量で投与される。
【0219】
本開示の医薬組成物は、毎日または間欠的に投与されてもよい。例えば、本二本鎖核酸阻害剤分子の間欠投与は、週に1~6日、月に1~6日、週に1回、隔週に1回、月に1回、隔月に1回、3ヶ月毎に1回、または年に1回もしくは2回の投与であってもよく、あるいは年に、月に、週に、もしくは日に複数回の投与に分けられてもよい。いくつかの実施形態において、間欠投与は、最初に二本鎖核酸阻害剤分子の投与があり、それに続いて、最大1週間、最大1ヶ月間、最大2ヶ月間、最大3ヶ月間、もしくは最大6ヶ月間以上の投与がない休止期間のサイクルでの投与を意味する場合があり、または間欠投与は、隔日、隔週、隔月、もしくは隔年での投与を意味する場合がある。
【0220】
本二本鎖核酸阻害剤分子の上記治療有効量は、投与経路ならびに対象の身長及び体重などの患者の身体的特徴、疾患の進行または浸透の程度、対象の年齢、健康状態、ならびに性別に依存する場合があり、これらの及び他の要因に応じ、必要次第で調整することができる。
【実施例】
【0221】
例1:短縮センス鎖を含む二本鎖核酸阻害剤分子のインビボ効力
種々の長さのセンス鎖を含む二本鎖核酸阻害剤分子の、標的遺伝子mRNAの発現を低減する効力を評価した。例1で使用した8種の被験核酸阻害剤分子(構築物1~8)を
図2A~Hに示す。被験核酸阻害剤分子中の他のいずれのヌクレオチドも、GalNAcに結合している上記ループ中のヌクレオチド及び上記二環式ヌクレオチドを除いて、糖部分の2’位で、2’-Fまたは2’-OMeのいずれかによって修飾されている。構築物1は、短縮センス鎖を含まない対照分子を表す。構築物1において、センス鎖の長さは29ヌクレオチドであり、アンチセンス鎖の3’末端は2ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを含む。構築物2~8は、構築物1と、センス鎖の長さが異なり、その結果アンチセンス鎖の3’末端に一本鎖オーバーハングが生じる点で異なっていた。加えて、構築物2~8は、アンチセンス鎖上に、2’-F修飾ヌクレオチドであるヌクレオチド14(G14)に隣接するさらに2つのPS結合を含んでいた。
図2A~Hの核酸阻害剤分子を以下の表にまとめる。
表1
図1の被験核酸阻害剤
【0222】
構築物2~8は、アンチセンス鎖上のG14に隣接する追加の2つのPS結合及び短縮センス鎖長を除いて、構築物1と同一である。同様に、構築物2~8は、センス鎖の長さが異なることを除いて、互いに同一である。
【0223】
CD-1雌マウスをそれぞれ4頭のマウスの試験群に分け、その群に割り当てられた0.5mg/kgの被験核酸阻害剤分子を投与した。加えて、4頭の対照CD-1マウスにプラセボ(PBS)を投与した。投与は皮下で単回投与であり、投与の4日後にマウスを屠殺した。薬力学的検討を実施し、2つの4mmパンチ生検を得ることによって肝臓組織を採取し、Invitrogen(商標)RNAlater(商標)溶液(Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA)中に保存し、後にmRNA分析を実施した。TissueLyser II(Qiagen, Valencia, CA)を使用し、QIAzol(登録商標)溶解試薬中で組織試料を均質化した。次いで、MagMAX Technologyを使用し、製造元の使用説明書(Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA)に従ってRNAを精製した。大容量cDNA逆転写キット(Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA)を使用してcDNAを調製した。標的配列のプライマーを使用して、CFX384リアルタイムPCR検出システム(Bio-Rad Laboratories, Inc., Hercules, CA)上でPCRを実施した。
【0224】
短縮センス鎖を有する被検核酸阻害剤分子(構築物2~8)を、対照核酸阻害剤分子(構築物1)、ならびにPBS対照と比較した。
図3に示すように、短縮センス鎖を含む被検核酸阻害剤分子は、センス鎖の長さが減少するにつれて、mRNA発現が比較的なだらかに減少した。構築物2、3、及び4は、それぞれ長さが25、24、及び23ヌクレオチドのセンス鎖を含み、それぞれ6、7、及び8ヌクレオチドの3’アンチセンスオーバーハングを有するが、PBSとの対比で少なくとも約0.5mg/kgのED
50を維持した。構築物2~6では、効力は、アンチセンス鎖の一本鎖3’オーバーハングの長さに逆比例した。それぞれ6及び7ヌクレオチドの3’アンチセンスオーバーハングを有する構築物2ならびに3は、それぞれ8及び9ヌクレオチドの3’アンチセンスオーバーハングを有する構築物4ならびに5よりも、より強力な標的遺伝子mRNAノックダウンを示した。
【0225】
例2:短縮パッセンジャー鎖及び5’末端二環式ヌクレオチドを含む二本鎖核酸阻害剤分子のインビボ効力
種々の長さのセンス鎖及び該センス鎖の5’末端の二環式ヌクレオチド(すなわち、センス鎖のヌクレオチド1)を含む二本鎖核酸阻害剤分子の、標的遺伝子mRNAの発現を低減する効力を評価した。例2(構築物1及び9~15)で使用された8種の被験核酸阻害剤分子を
図4A~Hに示す。上記被験核酸阻害剤分子中の他のいずれのヌクレオチドも、GalNAcにコンジュゲートしているループ中のヌクレオチド及び上記二環式ヌクレオチドを除いて、糖部分の2’位で2’-Fまたは2’-OMeのいずれかによって修飾されている。上記被験核酸阻害剤分子は、以下の点、すなわち、(1)センス鎖の長さ;(2)アンチセンス鎖上の2’-F修飾ヌクレオチド14(G14)に隣接する2つのPS結合の存在;及び(3)センス鎖の5’末端のヌクレオチド1(P1)における二環式ヌクレオチド(LNA)の存在において、対照核酸阻害剤分子と異なっていた。
図4A~H中の核酸阻害剤分子を以下の表にまとめる。
表2
図4の被験核酸阻害剤
【0226】
構築物9~15は、センス鎖のP1における上記二環式ヌクレオチドを除いて、それぞれ構築物2~8と同一であった。同様に、構築物9~15は、センス鎖の長さが異なることを除いて、互いに同一である。
【0227】
CD-1雌マウスをそれぞれ4頭のマウスの試験群に分け、例1に上記した手順を実施し、各マウスに、その群に割り当てられた0.5mg/kgの被験核酸阻害剤分子を投与し、肝臓組織試料を分析した。
【0228】
短縮センス鎖、及び該センス鎖のP1の二環式ヌクレオチドを有する被検核酸阻害剤分子(構築物9~15)を、29ヌクレオチドのセンス鎖及びアンチセンス鎖の3’末端における2ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを有する対照核酸分子(構築物1)、ならびにPBS対照と比較した。
図5に示すように、短縮センス鎖及び該センス鎖の5’末端の二環式ヌクレオチドを含む被検核酸阻害剤分子は、センス鎖の長さが21ヌクレオチドに短縮された(アンチセンス鎖の3’末端に10ヌクレオチドのオーバーハング)場合でも、強力な標的遺伝子mRNAノックダウンを維持した。
図5を参照されたい。それぞれ20及び19ヌクレオチドのセンス鎖を有する構築物14と15(アンチセンス鎖の3’末端にそれぞれ11及び12のオーバーハング)にはほとんどまたはまったく活性がなかった。
図5。とりわけ、構築物13はPBSとの対比で少なくとも約0.5mg/kgのED
50を維持した一方で、センス鎖の5’末端の二環式ヌクレオチドを除いて構築物13と同一である構築物6は活性がなかった。
図3及び5を参照されたい。
【0229】
例3:センス鎖のR1に2つの二環式ヌクレオチドを有する短縮センス鎖を含む二本鎖核酸阻害剤分子のインビボ効力
短縮センス鎖及び該センス鎖の第1の領域(R1)中に2つの二環式ヌクレオチドを含む二本鎖核酸阻害剤分子の、標的遺伝子mRNAの発現を低減する効力を評価した。実施例3で使用した7種の被験核酸阻害剤分子(構築物1、4~6、及び16~18)を
図6A~Gに示す。上記被検核酸阻害剤分子中のいずれの他のヌクレオチドも、GalNAcにコンジュゲートしているループ中のヌクレオチド及び上記二環式ヌクレオチドを除いて、糖部分の2’位で2’-Fまたは2’-OMeのいずれかによって修飾されている。上記被験核酸阻害剤分子は、以下の点、すなわち、(1)センス鎖の長さ;(2)アンチセンス鎖上の2’-F修飾ヌクレオチドであるヌクレオチド14(G14)に隣接する2つのPS結合の存在;及び(3)センス鎖の5’末端の第1の二環式ヌクレオチド(LNA)及びセンス鎖の当初のヌクレオチド15(P15)における第2の二環式ヌクレオチド(構築物16、17、及び18に関して、それぞれ位置P9、P8、及びP7)において、対照核酸阻害剤分子と異なっていた。構築物16~18のすべてにおいて、センス鎖の第2の二環式ヌクレオチドは、アンチセンス鎖のヌクレオチド6(G6)と塩基対合する。
図6A~G中の核酸阻害剤分子を以下の表にまとめる。
表3
図6の被験核酸阻害剤
【0230】
構築物16、17、及び18は、センス鎖のヌクレオチド1ならびにセンス鎖のヌクレオチド9、8、及び7の二環式ヌクレオチドを除いて、それぞれ構築物4、5、及び6と同一である。同様に、構築物16、17、及び18は、センス鎖の長さが異なることを除いて互いに同一である。
【0231】
CD-1雌マウスをそれぞれ4頭のマウスの試験群に分け、例1に上記した手順を実施し、各マウスに、その群に割り当てられた0.5mg/kgの被験核酸阻害剤分子を投与し、肝臓組織を分析した。
【0232】
短縮センス鎖ならびにセンス鎖のP1及びP9、P8、またはP7の1ヶ所の二環式ヌクレオチドを有する被検核酸阻害剤分子(構築物16~18)を、センス鎖の領域1(R1)中にいずれの二環式ヌクレオチドももたない、対応する被検核酸分子(構築物4~6)ならびにPBS対照と比較した。
図7に示すように、短縮センス鎖ならびにセンス鎖のP1及びP9、P8、またはP7の1ヶ所の二環式ヌクレオチドを含む被検核酸分子は、センス鎖の領域1(R1)中にいずれの二環式ヌクレオチドももたない、それぞれの相当する被検核酸阻害剤分子と比較して、mRNAノックダウン活性の向上を示した。例えば、アンチセンス鎖の3’末端の10ヌクレオチドのオーバーハングならびにセンス鎖のP1及びP7の二環式ヌクレオチドを有する構築物18は、強力なmRNAノックダウン活性を示した一方、10ヌクレオチドの3’アンチセンスオーバーハングは同様に有するが、センス鎖の領域1(R1)中に二環式ヌクレオチドをもたない構築物6は活性がなかった。
図7(それぞれ構築物4及び5と比較した構築物16及び17も参照のこと)。
【0233】
例2の被験核酸阻害剤分子を例3の被験核酸阻害剤分子と比較した。構築物11~13はそれぞれセンス鎖のP1に単一の二環式ヌクレオチドを含み、これらを、センス鎖の第1の領域(R1)中のP9、P8、またはP7に追加の二環式ヌクレオチド有することを除いて構築物11~13と同一である、対応する構築物16~18と比較した。
図8に示すように、構築物11~13及び構築物16~18の6種すべてが、PBS対照と比較して有意なmRNAノックダウン活性を示した。構築物16及び構築物17のそれぞれP9ならびにP8に二環式ヌクレオチドを追加したことによって、対応する構築物11及び12と比較して効力が低下したように見えたが、構築物18(アンチセンス鎖の3’末端に10ヌクレオチドのオーバーハング)の効力は、対応する構築物13と比較して増加した。
図8を参照されたい。
【0234】
例4:短縮パッセンジャー鎖及びセンス鎖のR1中の複数の二環式ヌクレオチドを含む二本鎖核酸阻害剤分子のインビボ効力
短縮センス鎖、及び該センス鎖の第1の領域(R1)中の複数の二環式ヌクレオチドを含む二本鎖核酸阻害剤分子の、標的遺伝子mRNAの発現を低減する効力を評価した。例4(構築物4~6及び16~24)で使用した12種の被験核酸阻害剤分子を
図9A~Lに示す。GalNAcにコンジュゲートしているループ中のヌクレオチド及び上記二環式ヌクレオチドを除いて、上記被検核酸阻害剤分子のいずれの他のヌクレオチドも、糖部分の2’-位で2’-Fまたは2’-OMeのいずれかによって修飾されている。上記被検核酸阻害剤分子は、以下の点、すなわち、(1)センス鎖の長さ;(2)センス鎖の5’末端ならびにセンス鎖の当初の位置(P15)(構築物16、17、及び18について、それぞれP9、P8、及びP7)における二環式ヌクレオチド(LNA)の存在;ならびに(3)センス鎖の第1の領域(R1)における1つまたは3つの追加の二環式ヌクレオチドの存在において互いに異なっていた。
図9A~L中の核酸阻害剤分子を次の表にまとめる。
表4
図9の被験核酸阻害剤
【0235】
構築物4、16、19、及び22は、センス鎖の第1の領域(R1)中の5’末端及び種々の位置に二環式ヌクレオチドが存在することを除いて同一であり(すべてがアンチセンス鎖の3’末端に8ヌクレオチドのオーバーハングを有する)、これは、構築物5、17、20、及び23(すべてがアンチセンス鎖の3’末端に9ヌクレオチドのオーバーハングを有する)、ならびに構築物6、18、21、及び24(すべてがアンチセンス鎖の3’末端に10ヌクレオチドのオーバーハングを有する)がそうであるのと同様である。
【0236】
CD-1雌マウスをそれぞれ4頭のマウスの試験群に分け、例1に上記した手順を実施し、各マウスに、その群に割り当てられた0.5mg/kgの被験核酸阻害剤分子を投与し、肝臓組織を分析した。
【0237】
図10に示すように、短縮センス鎖を有する被検核酸阻害剤分子において、センス鎖のP1に二環式ヌクレオチドが、ならびに当初のヌクレオチド15(P15)(すなわち、構築物16~18について、それぞれP9、P8、及びP7)に単一の二環式ヌクレオチドが存在することにより、センス鎖の第1の領域(R1)中にいずれの二環式ヌクレオチドももたない相当する被検核酸阻害剤分子よりも(構築物4~6に対する構築物16~18で)、標的遺伝子mRNAノックダウン活性が向上した。さらに、当初のP15位に隣接する追加の二環式ヌクレオチドが存在し、センス鎖の第1の領域(R1)中の二環式ヌクレオチドが合計3つになることによっても、センス鎖の第1の領域中にいずれの二環式ヌクレオチドもたない相当する試験核酸阻害剤分子に対して(構築物4~6に対する構築物19~21で)、標的遺伝子mRNAノックダウンが向上した。
図10を参照されたい。但し、当初のP18及びP19(構築物22についてはP12及びP13、構築物23についてはP11及びP12、構築物24についてはP10及びP11)に2つの二環式ヌクレオチドを追加することにより、センス鎖の第1の領域(R1)に2つの二環式ヌクレオチド(構築物16~18)またはセンス鎖の第1の領域(R1)に3つの二環式ヌクレオチド(構築物19~21)のいずれかを有する被検核酸阻害剤分子と比較して、標的遺伝子mRNAの発現が実質的に低下した。理論に拘束されることを望むものではないが、T
mを上昇させるヌクレオチドがアンチセンス鎖の5’末端に近接することにより、標的遺伝子mRNAノックダウンに悪影響が及ぶ可能性があることが推定される。
【国際調査報告】