(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-01
(54)【発明の名称】NET関連合併症を処置及び予防するための化合物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7024 20060101AFI20220624BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20220624BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20220624BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20220624BHJP
A61P 33/00 20060101ALI20220624BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20220624BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20220624BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220624BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20220624BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20220624BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20220624BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20220624BHJP
A61P 11/08 20060101ALI20220624BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20220624BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20220624BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20220624BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220624BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220624BHJP
A61P 19/06 20060101ALI20220624BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220624BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20220624BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220624BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
A61K31/7024
A61P31/04
A61P31/12
A61P31/10
A61P33/00
A61P1/18
A61P13/12
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A61P9/10 101
A61P9/00
A61P3/00
A61P11/00
A61P11/08
A61P7/04
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A61P19/02
A61P1/04
A61P29/00 101
A61P25/28
A61P19/06
A61P3/10
A61P25/14
A61K45/00
A61P43/00 111
A61P43/00 105
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021549884
(86)(22)【出願日】2019-02-25
(85)【翻訳文提出日】2021-08-25
(86)【国際出願番号】 AU2019050156
(87)【国際公開番号】W WO2020172698
(87)【国際公開日】2020-09-03
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501004316
【氏名又は名称】ジ・オーストラリアン・ナショナル・ユニヴァーシティ
(71)【出願人】
【識別番号】520211948
【氏名又は名称】グリフィス・ユニヴァーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】パリッシュ,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】オメーラ,コナー
(72)【発明者】
【氏名】クープランド,ルーシー
(72)【発明者】
【氏名】カー,ベンジャミン・ジュー・チャイ
(72)【発明者】
【氏名】コルドバッチェ,ファルザネ
(72)【発明者】
【氏名】ベゾス,アンナ
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,アンナ
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴンス,ロス
(72)【発明者】
【氏名】トレドウェル,グレゴリー・デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ,リー・アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ノックス,カレン
(72)【発明者】
【氏名】フォン・イツシュタイン,ローレンス・マーク
(72)【発明者】
【氏名】チャン,チー-ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ブリュストル,アン
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィス,デイヴィッド・アナク・サイモン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
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4C084ZC751
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4C086ZB21
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4C086ZB33
4C086ZB35
4C086ZC21
4C086ZC35
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、化学的安定性が高い化合物及び対象におけるNETの病理学的活性を阻害する方法に関する。具体的には、本発明は、化学的安定性が高い化合物、その使用並びにNETによって媒介される病気(例えば、敗血症、全身性免疫反応症候群(SIRS)及び虚血再灌流傷害(IRI)等)を阻害するか又は寛解させる方法に関する。より具体的には、本発明は、ポリアニオン性硫酸化セロビオシドであって、その還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシドの方法及び使用であって、この置換基の存在は、化学的安定性が高い分子を、NETによって媒介される病気の治療で有効であるこの分子の能力に影響を及ぼすことなくもたらす、方法及び使用に関する。例えば、本発明は、対象におけるNETによって媒介される様々な病気の治療における、β-O-メチルセロビオシドサルフェート(mCBS)又はその薬学的に許容される塩(例えば、mCBS.Na)の方法及び使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
NETによって媒介される病気の処置又は予防に使用するための化合物であって、この化合物が、ポリアニオン性硫酸化セロビオシドであって、その還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド又はその薬学的に許容される塩を含む、化合物。
【請求項2】
前記NETによって媒介される病気が、これに限定されないが、(a)例えば、敗血症(例えば、細菌、ウイルス、真菌、寄生生物、プリオンによって誘発される敗血症を含む)等の感染又は手術、外傷、出血、熱傷、急性膵炎及び急性腎傷害を含む非感染性誘発因子に対する全身性炎症反応、(b)例えば、粥状動脈硬化、血管の自然破裂、血管への外傷性損傷に起因する動脈の閉塞後の且つ心臓の及び移植に関連するIRIを含む局所組織レベルでの低酸素症又は例えば溺死、ガス曝露若しくは心肺停止に起因する呼吸停止後の且つ例えば急性呼吸促迫症候群、慢性閉塞性肺疾患及び薬剤介在組織傷害等の病気を含む全身レベルでの低酸素症、(c)止血又は血管閉塞、例えば循環器疾患又は慢性循環器疾患、例えば粥状動脈硬化、凝血及び血栓症(例えば、深部静脈血栓症)、(d)自己免疫疾患状態及び炎症疾患状態、例えば多発性硬化症、過剰炎症疾患状態、全身性エリテマトーデス、脊椎関節症、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、反応性関節炎、腸炎性関節炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、過敏性腸疾患、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、小血管の破壊及び炎症によって特徴付けられる抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎(AAV)、例えば多発性血管炎を伴う肉芽腫症、多発性血管炎及び顕微鏡的多発血管炎を伴う好酸球性肉芽腫症)、家族性地中海熱、筋萎縮性側索硬化症、シェーグレン症候群、早期関節炎、ウイルス性関節炎、乾癬、加齢に伴う臓器線維症、特発性肺線維症、若年性糖尿病(I型)、糖尿病(2型)、抗リン脂質抗体症候群及び様々な中枢神経系疾患、例えばハンチントン病を含む群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記NETによって媒介される病気が、敗血症、SIRS若しくはIRI又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する医学的状態若しくは疾患である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記還元末端において小さい非荷電置換基で改変されている硫酸化セロビオシドが、
【化1】
(式中、R1は、小さい非荷電グリコシド結合置換基であり、及びR2~R8は、それぞれ小さい非荷電O結合置換基又はサルフェート基である)
の全体構造を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
R1は、O又はS-(C
1~6)アルキルである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
R1は、メトキシ基又はエトキシ基である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
R2~R8は、それぞれO-サルフェート又はN-サルフェートから選択される、請求項4~6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
硫酸化β-O-メチルセロビオシド二糖である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
ナトリウムβ-O-メチルセロビオシドサルフェートである、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
NETによって媒介される病気を処置又は予防する方法であって、この方法が、ポリアニオン性硫酸化セロビオシドであって、その還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量を対象に投与することを含む、方法。
【請求項11】
前記NETによって媒介される病気が、これに限定されないが、(a)例えば、敗血症(細菌、ウイルス、真菌、寄生生物、プリオンによって誘発される敗血症を含む)等の感染又は手術、外傷、出血、熱傷、急性膵炎及び急性腎傷害を含む非感染性誘発因子に対する全身性炎症反応、(b)例えば、粥状動脈硬化、血管の自然破裂、血管への外傷性損傷に起因する動脈の閉塞後の且つ心臓の及び移植に関連するIRIを含む局所組織レベルでの低酸素症又は例えば溺死、ガス曝露若しくは心肺停止に起因する呼吸停止後の且つ例えば急性呼吸促迫症候群、慢性閉塞性肺疾患及び薬剤介在組織傷害等の病気を含む全身レベルでの低酸素症、(c)止血又は血管閉塞、例えば循環器疾患又は慢性循環器疾患、例えば粥状動脈硬化、凝血及び血栓症(例えば、深部静脈血栓症)、(d)自己免疫疾患状態及び炎症疾患状態、例えば多発性硬化症、過剰炎症疾患状態、全身性エリテマトーデス、脊椎関節症、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、反応性関節炎、腸炎性関節炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、過敏性腸疾患、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、小血管の破壊及び炎症によって特徴付けられる抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎(AAV)、例えば多発性血管炎を伴う肉芽腫症、多発性血管炎及び顕微鏡的多発血管炎を伴う好酸球性肉芽腫症)、家族性地中海熱、筋萎縮性側索硬化症、シェーグレン症候群、早期関節炎、ウイルス性関節炎、乾癬、加齢に伴う臓器線維症、特発性肺線維症、若年性糖尿病(I型)、糖尿病(2型)、抗リン脂質抗体症候群及び様々な中枢神経系疾患、例えばハンチントン病を含む群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
対象における敗血症、SIRS若しくはIRI又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する医学的状態若しくは疾患を処置又は予防する方法であって、この方法が、ポリアニオン性硫酸化セロビオシドであって、その還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項13】
前記敗血症、SIRS若しくはIRI又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する医学的状態若しくは疾患が、前記対象におけるNETによって媒介される病理によって引き起こされ、及び/又はそれによって媒介され、及び/又はそれを伴い、及び/又はそれと関連し、且つ前記方法が、前記対象における前記敗血症、SIRS又はIRIの状態又は疾患を処置又は予防するのに十分である、ポリアニオン性硫酸化セロビオシドであって、その還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量を前記対象に投与することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記医学的状態又は疾患が、前記対象におけるNETの放出によって引き起こされ、及び/又はそれによって媒介され、及び/又はそれを伴い、及び/又はそれと関連する、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシドの前記治療上有効な量が、前記対象におけるNETによって媒介される病理を減少させるか、最小限に抑えるか、又は阻害するのに十分である、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記治療上有効な量が、(i)対象の内皮に対して細胞毒性である、又は(ii)対象の内皮機能障害の一因となる、又は(iii)対象の血小板を活性化させることによって凝血を開始させる、又は(iv)対象において赤血球脆弱性及びその結果としての貧血を誘発する、NETを、減少させる、最小限に抑える又は阻害するのに十分である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
単回用量において、ポリアニオン性硫酸化セロビオシドであって、その還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量を投与することを含む、請求項11~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
複数回用量において、ポリアニオン性硫酸化セロビオシドであって、その還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量を投与することを含む、請求項11~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記処置される医学的状態又は疾患のための補助的処置として、抗炎症剤、抗生物質製剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤又は別の形態の医学的介入からなる群から選択される第2の活性剤を同時に又は付随して前記対象に投与することをさらに含む、請求項11~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記第2の活性剤が、1種又は複数の抗炎症剤を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
敗血症、SIRS若しくはIRI又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する医学的状態若しくは疾患を有するか又は有する疑いがある対象において敗血症、SIRS若しくはIRI又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する医学的状態若しくは疾患を処置することを含む、請求項11~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
敗血症、SIRS若しくはIRI又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する医学的状態若しくは疾患を発症するリスクがある対象において敗血症、SIRS若しくはIRI又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する医学的状態若しくは疾患を予防することを含む、請求項11~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
ポリアニオン性硫酸化セロビオシドであって、その還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド又はその薬学的に許容される塩を少なくとも含む、治療用組成物。
【請求項24】
ポリアニオン性硫酸化セロビオシドであって、その還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド又はその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体、添加剤及び/又は希釈剤とを少なくとも含む、医薬組成物。
【請求項25】
対象における敗血症、SIRS若しくはIRI又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する医学的状態若しくは疾患の処置又は予防のための薬物の製造のための、ポリアニオン性硫酸化セロビオシドであって、その還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量の使用。
【請求項26】
前記敗血症又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する医学的状態若しくは疾患が、前記対象におけるNETによって媒介される病理によって引き起こされ、及び/又はそれによって媒介され、及び/又はそれを伴い、及び/又はそれと関連する、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
前記敗血症、SIRS若しくはIRI又は医学的状態若しくは疾患が、前記対象におけるNETの放出によって引き起こされ、及び/又はそれによって媒介され、及び/又はそれを伴い、及び/又はそれと関連する、請求項25又は26に記載の使用。
【請求項28】
前記敗血症、SIRS若しくはIRI又は医学的状態若しくは疾患が、前記対象における炎症又は炎症反応後のNETの放出によって引き起こされ、及び/又はそれによって媒介され、及び/又はそれを伴い、及び/又はそれと関連する、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
前記NETが、前記対象の内皮に対して細胞毒性であり、及び/又は前記対象の内皮機能障害の一因となる、請求項25~28のいずれか一項に記載の使用。
【請求項30】
前記薬物が、前記対象におけるNETによって媒介される病理を減少させるか、最小限に抑えるか、又は阻害する、請求項24~28のいずれか一項に記載の使用。
【請求項31】
前記薬物が、前記対象における前記内皮に対する、NETによって媒介される病理を減少させるか、最小限に抑えるか、又は阻害する、請求項30に記載の使用。
【請求項32】
前記薬物が、前記対象への単回用量投与のために製剤化される、請求項25~30のいずれか一項に記載の使用。
【請求項33】
前記薬物が、前記対象への複数回用量投与のために製剤化される、請求項25~31のいずれか一項に記載の使用。
【請求項34】
前記薬物が、前記敗血症、SIRS若しくはIRI又は前記敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する前記医学的状態若しくは疾患のための補助的処置としての、抗炎症剤、抗生物質製剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤又は別の形態の医学的介入からなる群から選択される第2の活性剤の同時の又は付随する前記対象への投与のために製剤化される、請求項25~32のいずれか一項に記載の使用。
【請求項35】
前記第2の活性剤が、1種又は複数の抗炎症剤を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記薬物が、敗血症、SIRS若しくはIRI又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する医学的状態若しくは疾患を有するか又は有する疑いがある対象において敗血症、SIRS若しくはIRI又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する医学的状態若しくは疾患を処置するためのものである、請求項25~35のいずれか一項に記載の使用。
【請求項37】
前記薬物が、敗血症、SIRS若しくはIRI又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する医学的状態若しくは疾患を発症するリスクがある対象において敗血症、SIRS若しくはIRI又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する医学的状態若しくは疾患を処置するためのものである、請求項25~35のいずれか一項に記載の使用。
【請求項38】
対象における敗血症、SIRS若しくはIRI又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する医学的状態若しくは疾患の処置又は予防のための、ポリアニオン性硫酸化セロビオシドであって、その還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量の使用。
【請求項39】
前記敗血症、SIRS若しくはIRI又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する医学的状態若しくは疾患が、前記対象におけるNETによって媒介される病理によって引き起こされ、及び/又はそれによって媒介され、及び/又はそれを伴い、及び/又はそれと関連する、請求項39に記載の使用。
【請求項40】
前記敗血症、SIRS若しくはIRI又は医学的状態若しくは疾患が、前記対象におけるNETの放出によって引き起こされ、及び/又はそれによって媒介され、及び/又はそれを伴い、及び/又はそれと関連する、請求項38又は39に記載の使用。
【請求項41】
前記敗血症、SIRS若しくはIRI又は医学的状態若しくは疾患が、前記対象における炎症又は炎症反応後のNETの放出によって引き起こされ、及び/又はそれによって媒介され、及び/又はそれを伴い、及び/又はそれと関連する、請求項39に記載の使用。
【請求項42】
前記NETが、(i)対象の内皮に対して細胞毒性であるか、又は(ii)対象の内皮機能障害の一因となるか、又は(iii)対象の血小板を活性化させることによって凝血を開始させるか、又は(iv)対象において赤血球脆弱性及びその結果としての貧血を誘発する、請求項39~41のいずれか一項に記載の使用。
【請求項43】
ポリアニオン性硫酸化セロビオシドであって、その還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド若しくはその薬学的に許容される塩の治療上有効な量が、前記対象におけるNETによって媒介される病理を減少させるか、最小限に抑えるか、若しくは阻害するのに十分であり、及び/又は前記使用が、前記対象におけるNETによって媒介される病理を減少させるか、最小限に抑えるか、若しくは阻害する、請求項38~42のいずれか一項に記載の使用。
【請求項44】
前記治療上有効な量が、前記対象における前記内皮に対する、NETによって媒介される病理を減少させるか、最小限に抑えるか、若しくは阻害するのに十分であり、及び/又は前記使用が、前記対象における前記内皮に対する、NETによって媒介される病理を減少させるか、最小限に抑えるか、若しくは阻害する、請求項43に記載の使用。
【請求項45】
前記対象における前記敗血症、SIRS若しくはIRI又は前記敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する前記医学的状態若しくは疾患の処置又は予防のための、ポリアニオン性硫酸化セロビオシドであって、その還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量の単回用量の使用を含む、請求項38~44のいずれか一項に記載の使用。
【請求項46】
前記対象における前記敗血症、SIRS若しくはIRI又は前記敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する前記医学的状態若しくは疾患の処置又は予防のための、ポリアニオン性硫酸化セロビオシドであって、その還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量の複数回用量の使用を含む、請求項38~44のいずれか一項に記載の使用。
【請求項47】
ポリアニオン性硫酸化セロビオシドであって、その還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量と、前記敗血症、SIRS若しくはIRI又は前記敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する前記医学的状態若しくは疾患のための補助的処置としての、抗炎症剤、抗生物質製剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤又は別の形態の医学的介入からなる群から選択される第2の活性剤の量との使用を含む、請求項38~46のいずれか一項に記載の使用。
【請求項48】
前記第2の活性剤が、1種又は複数の抗炎症剤を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
敗血症、SIRS若しくはIRI又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する医学的状態若しくは疾患を有するか又は有する疑いがある患者において敗血症、SIRS若しくはIRI又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する医学的状態若しくは疾患を処置することを含む、請求項38~48のいずれか一項に記載の使用。
【請求項50】
敗血症、SIRS若しくはIRI又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する医学的状態若しくは疾患を発症するリスクがある患者において敗血症、SIRS若しくはIRI又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する医学的状態若しくは疾患を予防することを含む、請求項38~48のいずれか一項に記載の使用。
【請求項51】
前記処置が、敗血症、SIRS若しくはIRI又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する前記医学的状態若しくは前記疾患を寛解させることを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物、又は請求項10~21のいずれか一項に記載の方法、又は請求項23に記載の治療用、又は請求項24に記載の医薬組成物、又は請求項25~50のいずれか一項に記載の使用。
【請求項52】
前記処置が、敗血症、SIRS若しくはIRI又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する前記医学的状態若しくは前記疾患を阻害することを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物、又は請求項10~22のいずれか一項に記載の方法、又は請求項23に記載の治療用、又は請求項25に記載の医薬組成物、又は請求項25~50のいずれか一項に記載の使用。
【請求項53】
前記敗血症、SIRS又はIRIと関連する医学的状態又は疾患が、非敗血症性疾患状態、非SIRS疾患状態又は非IRI疾患状態である、請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物、又は請求項10~22のいずれか一項に記載の方法、又は請求項23に記載の治療用、又は請求項24に記載の医薬組成物、又は請求項25~50のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象における好中球細胞外トラップ(NET)の病理活性を阻害するための化合物及び方法に関する。特に、本発明は、NETによって媒介される病気(例えば、敗血症、全身性免疫反応症候群(SIRS)及び虚血再灌流傷害(IRI)等)を阻害するか又は寛解させるための化合物、使用及び方法に関する。より詳細には、本発明は、ポリアニオン性硫酸化セロビオシドの方法及び使用に関する。好ましくは、ポリアニオン性硫酸化セロビオシドは、その還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されており、この置換基の存在は、化学的安定性が高い分子を、NETによって媒介される病気の治療で有効であるこの分子の能力に影響を及ぼすことなくもたらす。例えば、本発明は、対象におけるNETによって媒介される様々な病気の治療における、セロビオシドサルフェート(CBS)、β-O-メチルセロビオシドサルフェート(mCBS)又はそれらの薬学的に許容される塩の方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
好中球は、病原体クリアランス、免疫調節及び疾患病理における中心的な役割を有する、自然免疫顆粒球(最も豊富に存在する白血球)である。好中球は、食作用、活性酸素種(ROS)の生成及び好中球顆粒に由来する抗微生物分子の放出(脱顆粒)等の機構によって、感染性因子を排除する。
【0003】
好中球はまた、顆粒由来の抗微生物ペプチドにより修飾されたクロマチン線維と好中球エラスターゼ(NE)、カテプシンG及びミエロペルオキシダーゼ(MPO)等の酵素との網状構造を押し出す。これらの押し出された構造体は、好中球細胞外トラップ(NET)と呼ばれる。
【0004】
NETの目的は、抗菌性構成成分のその高い局所濃度を使用して、病原体を無害にすることである。したがって、NETは、侵襲生物を固定化して死滅させる重要な戦略を果たす。NET足場は、15~17nmの直径を有する蜘蛛の巣様クロマチン線維からなり、DNA及びヒストンは、主要なNET構成物質となる。
【0005】
NETは、その抗微生物特性に加え、病原及び潜在的に有害なタンパク質体の蔓延を予防する物理的障壁として働く。例えば、NETへの顆粒タンパク質の吸収により、プロテアーゼのような潜在的に有害なタンパク質が炎症部位に隣接する組織において傷害を誘発する恐れのある傷害部から、これらの潜在的に有害なタンパク質が拡散しないようにすることができる。
【0006】
NET形成及び放出は、以下の2つの状況において発生すると考えられている:
a.脱凝縮したクロマチン及び顆粒含有物を細胞外空間に放出することを特徴とする、活性な細胞死の個別形態である、NETオーシス。NETオーシスの間に、核膜及び顆粒膜は溶解し、核含有物は、細胞質に脱凝縮する。この後に、顆粒タンパク質により修飾されたクロマチンの原形細胞質の破裂、及び細胞外空間への放出が続く。
b.ミトコンドリアDNA放出が細胞死と明らかに関連しない、無傷好中球からのDNA/セリンプロテアーゼ押出機構。
【0007】
NETオーシスは、炎症誘発性サイトカイン(TNF-α、IL-8)、血小板、活性化された内皮細胞(EC)、一酸化窒素、尿酸一ナトリウムの結晶及び様々な自己抗体を含めた微生物キュー及び内因性危険シグナルに反応して主に誘発される。通常、この過程は、急性炎症又は慢性炎症、及び自己免疫疾患の間の、過度な組織傷害を予防するように厳密に調節される。
【0008】
NET形成は、疾患に対処するための有益な戦略をもたらす自然免疫応答に不可欠であるが、NETはまた、低酸素症又は無菌性炎症等の、様々な感染性及び非感染性病理状態の中心において主に現れる。この点で、NETは、その構築物及び性質のために、感受性の高い個体において、様々な感染症及び非感染症、炎症、組織傷害、並びに自己免疫を促進することができる免疫エフェクター及び炎症誘発性役割を有する分子の、推定される源である。NETが過剰量で形成される場合、NETは、内皮及び下層組織に有害となり得る。このような傷害は、多くの場合、内因性ヌクレアーゼと微生物由来ヌクレアーゼの両方によるNET分解に起因する。NETが分解すると、NETは、微生物に対してだけではなく、宿主の上皮細胞及び内皮細胞に対しても細胞傷害性となるヒストンを放出する。
【0009】
NETは、例えばの話であって単なる例示に過ぎないが、感染(細菌、ウイルス及び寄生虫を含む)に対する過剰炎症反応、敗血症の間、子癇前症、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸を有する患者の結腸粘膜を含む又はこれらと関連する、並びに熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)(マラリア)に感染している子供におけるIgG抗核二本鎖DNA抗体の生成;機能的な実質器官組織が線維化組織により置き換えられて、これによって器官の機能が著しく減退し得る線維症、輸血関連急性肺傷害、深部静脈血栓及びがんと関連する、様々な医学的状態に直接、関与している。
【0010】
近代の抗生物質の臨床的使用があるにも関わらず、NETと関連する病気の無効な処置のために、罹患率及び致死率のレベルは高いままである。したがって、好中球の有益な効果を妨害することなく、NETの過度なレベルの傷害作用を中和する薬物が差し迫って必要とされている。
【0011】
現在まで、NETにより誘発される病気の処置を提供する化合物が不足している。本発明は、複数の疾患におけるNETの役割を背景とし、その認識の高まりを受けて開発された。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、本明細書に記載されている、ある種の抗NETポリアニオン性化合物が、動物の血循環中のNETと静電的に相互作用して、NETの細胞変性特性を中和するという知見に基づいている。このようなポリアニオン性分子と生存動物の血液循環中のNETとの複合体形成により、NETの細胞毒性活性を少なくとも寛解させる手段がもたらされる。
【0013】
特に、本発明者は、ある種の硫酸化二糖類がNETの病理作用の中和に有効であるということを特定した。例えば、その還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシドは、NET関連合併症の非常に有効な処置を実現することが可能な、化学的に安定なポリアニオンをもたらす(例えば、患者における、敗血症、SIRS及びIRI、並びにそのような状態を少なくとも寛解させる)。
【0014】
その還元末端において小さな非荷電置換基で改変されている、結果として生じた化学的安定性を有する硫酸化セロビオシドの使用は、Net関連合併症に罹患している患者を処置する、及び/又はリスクにある患者においてNET関連合併症が起こるのを予防する分野において、新規な一般的施用原理を表すか、又は提供する。
【0015】
本発明の第1の態様では、対象における少なくともNET関連合併症の処置又は予防に使用するための化合物であって、ポリアニオン性硫酸化セロビオシド、若しくはその還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド、又はその薬学的に許容される塩を含む化合物が提供される。
【0016】
好ましくは、ポリアニオン性硫酸化セロビオシドが改変されている場合、それは、望ましくは、ポリアニオン性硫酸化セロビオシドの還元末端において、小さい非荷電グリコシド結合置換基を有する。これにより、その還元末端において硫酸化されている同じポリアニオンに比べると、ポリアニオンの化学的安定性が改善される。
【0017】
本発明の化合物は、治療上有効な量又は薬学的に有効な量で提供されると、NET関連合併症を寛解、処置又は予防するための手段を提供する。
【0018】
本発明の実施形態では、改変されたポリアニオン性硫酸化セロビオシドは、以下の一般構造:
【化1】
(式中、
R1は、サルフェート基、又は小さい非荷電グリコシド結合置換基、例えばO-又はS-(C
1~6)アルキルであり、
R2~R8は、(i)小さい非荷電O結合置換基又は(ii)サルフェート基からそれぞれ選択される)を有する。
【0019】
好ましくは、R1は、O-又はS-(C1~6)アルキルである。R1が、O-又はS-(C1~6)アルキルである場合、この置換基により、R1にサルフェート基を有する同じポリアニオンに比べて、ポリアニオンの化学的安定性が好ましくは改善される。
【0020】
好ましくは、R2~R8は、それぞれ、(a)非改変ヒドロキシル基、又は(b)サルフェート基から選択される。
【0021】
より好ましくは、R1は、メトキシ基又はエトキシ基であり、R2~R8は、それぞれサルフェート基である。
【0022】
望ましくは、このクラスの化合物は、高い正味の負電荷を有し、即ちポリアニオンである。
【0023】
この小さい非荷電グリコシド置換基(R1)のアノマー配置は、α位又はβ位のいずれかであり得る。好ましくは、この小さい非荷電置換基は、β配置である。
【0024】
本発明の非常に好ましい形態では、本化合物は、CBS、mCBS又はそれらの薬学的に許容される塩であり、該化合物がmCBSである場合、この化合物は、望ましくは、硫酸化β-O-メチルセロビオシド二糖である。実例として、この化合物がmCBSである場合、この化合物は、望ましくは、β-O-メチルセロビオシドサルフェートのナトリウム塩、即ちナトリウムβ-O-メチルセロビオシドサルフェート(mCBS.Na)である。
【0025】
mCBSは、CBSと比べて非常に安定しており、高濃度で良好に耐容性があるので、好ましい。
【0026】
本発明の第2の態様では、対象における、NETを伴う、医学的状態、病気又は疾患を処置(治療的又は予防的のどちらか一方)する方法であって、対象にポリアニオン性硫酸化セロビオシド、若しくはその還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド、又はその薬学的に許容される塩の治療的又は薬学的に有効な量を投与するステップを含む方法が提供される。
【0027】
本発明の第3の態様では、対象における、NET蓄積を寛解させる方法であって、対象にポリアニオン性硫酸化セロビオシド、若しくはその還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド、又はその薬学的に許容される塩の治療的又は薬学的に有効な量を投与するステップを含む方法が提供される。
【0028】
本発明の第2又は第3の態様の実施形態では、選択された化合物は、好ましくは、還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシドである。より好ましくは、小さい非荷電グリコシド結合置換基により、その還元末端において硫酸化されている同じポリアニオンに比べると、ポリアニオンの化学的安定性が改善されている。特に、本化合物がmCBSである場合、この化合物は、硫酸化β-O-メチルセロビオシド二糖、又はβ-O-メチルセロビオシドサルフェートのナトリウム塩、即ちmCBS.Naである。
【0029】
例えば、本発明の第2又は第3の態様の実施形態では、本方法は、例えば、敗血症、SIRS若しくはIRI等のNET関連合併症と関連する状態又は病気を処置又は予防するために使用される。
【0030】
本発明の第2又は第3の態様に係る特定の例示的実施形態では、この特定された方法は、抗炎症剤、抗生物質製剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤及び/又は対象が患っているか若しくは患うリスクがある1種若しくは複数の状態を処置する任意の他の形態の医薬組成物の1つ又は複数から選択される第2の活性剤、化合物又は組成物の治療上有効な量又は薬学的に有効な量を、この改変されている硫酸化セロビオシドと一緒に又はこの硫酸化セロビオシドに付随(concomitantly)して対象に投与するステップをさらに含み得る。
【0031】
この実施形態によれば、第2の活性剤、化合物又は組成物は、NETに関連する合併症(例えば、敗血症、SIRS若しくはIRI)及び/又はそのような合併症と関連する医学的状態若しくは疾患を対象とする処置に対して補助的処置を提供する。好ましくは、第2の活性剤、化合物又は組成物は、1種又は複数の抗炎症剤を含む。
【0032】
好ましくは、第2の活性剤は、本発明の化合物によって処置される医学的病気に関連するか又はこの医学的病気と異なる、患者が患っている疾患の医学的介入の手段を提示し、前記第2の活性剤は、この患者に補助的処置を提供する。
【0033】
本発明の第4の態様では、対象における、NET細胞毒性と関連する医学的状態若しくは疾患を処置又は予防する方法であって、対象にポリアニオン性硫酸化セロビオシド、若しくはその還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド、又はその薬学的に許容される塩の治療的又は薬学的に有効な量を投与するステップを含む方法が提供される。
【0034】
本発明の第4の態様の実施形態では、選択された化合物は、好ましくは、還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシドである。より好ましくは、小さい非荷電グリコシド結合置換基により、その還元末端において硫酸化されている同じポリアニオンに比べると、ポリアニオンの化学的安定性が改善されている。特に、本化合物がmCBSである場合、この化合物は、硫酸化β-O-メチルセロビオシド二糖、又はβ-O-メチルセロビオシドサルフェートのナトリウム塩、即ちmCBS.Naである。
【0035】
本発明の第4の態様の1つの好ましい例では、本方法は、(i)対象における内皮に対して細胞傷害性となる、且つ/又は(ii)対象における内皮機能障害の一因となるNETを中和するために使用される。
【0036】
加えて又は代わりに、本方法を使用して、対象における感染、炎症若しくは低酸素症又はあらゆる感染、炎症若しくは低酸素症の反応後の対象におけるNETの放出であるか、それによって引き起こされるか、又はそれによって媒介される敗血症性状態若しくはSIRS状態、又はIRI、又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する疾患を処置する。
【0037】
本発明の第5の態様では、NET関連合併症の処置での使用のための治療用組成物又は医薬組成物であって、ポリアニオン性硫酸化セロビオシド、若しくはその還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド、又はその薬学的に許容される塩を少なくとも含む治療用組成物又は医薬組成物が提供される。
【0038】
本発明の第5の態様の実施形態では、選択された化合物は、好ましくは、還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシドである。より好ましくは、小さい非荷電グリコシド結合置換基により、その還元末端において硫酸化されている同じポリアニオンに比べると、ポリアニオンの化学的安定性が改善されている。特に、本化合物がmCBSである場合、この化合物は、硫酸化β-O-メチルセロビオシド二糖、又はβ-O-メチルセロビオシドサルフェートのナトリウム塩、即ちmCBS.Naである。
【0039】
好ましくは、この化合物は、治療用組成物又は医薬組成物中に治療上有効な量又は薬学的に有効な量で存在する。この組成物は、治療上許容されるか又は薬学的に許容される担体、添加剤及び/又は希釈剤も含み得る。この治療又は医薬での化合物は、中性遊離塩基形態又は塩形態のいずれかである。好ましくは、このポリアニオン性硫酸化セロビオシド化合物は、mCBSであるか、又はより具体的にはβ-O-メチルセロビオシドサルフェートのナトリウム塩である。
【0040】
本発明の第5の態様に係る特定の例示的実施形態では、この特定された組成物は、抗炎症剤、抗生物質製剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤及び/又は対象が患っている1種若しくは複数の状態を処置する任意の他の形態の治療用化合物若しくは医薬化合物の1つ又は複数から選択される第2の活性剤、化合物又は組成物も含み得る。
【0041】
この実施形態によれば、第2の活性剤、化合物又は組成物は、望ましくは、敗血症、SIRS若しくはIRIの補助的治療又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する医学的状態若しくは疾患のための補助的治療を提供する。好ましくは、第2の活性剤、化合物又は組成物は、1種又は複数の抗炎症剤を含む。
【0042】
本発明の第6の態様では、NETを伴う医学的状態、病気又は疾患を処置するための薬物の製造における、ポリアニオン性硫酸化セロビオシド、若しくはその還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド、又はその薬学的に許容される塩の治療用有効な量又は薬学的に有効な量の使用が提供される。
【0043】
本発明の第6の態様の実施形態では、選択された化合物は、好ましくは、還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシドである。より好ましくは、小さい非荷電グリコシド結合置換基により、その還元末端において硫酸化されている同じポリアニオンに比べると、ポリアニオンの化学的安定性が改善されている。特に、本化合物がmCBSである場合、この化合物は、硫酸化β-O-メチルセロビオシド二糖、又はβ-O-メチルセロビオシドサルフェートのナトリウム塩、即ちmCBS.Naである。
【0044】
例えば、本発明の第6の態様のある実施形態では、対象における敗血症、SIRS若しくはIRI又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する医学的状態若しくは疾患の処置又は予防のための薬物の製造における、ポリアニオン性硫酸化セロビオシド、若しくはその還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド、又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量又は薬学的に有効な量の使用が提供される。好ましくは、この改変されている硫酸化セロビオシドは、mCBSであるか、又はより具体的にはmCBSの薬学的に許容される塩(例えば、mCBS.Na)である。
【0045】
そのような使用の一実施形態では、この薬物は、対象における敗血症若しくはSIRS又は敗血症若しくはSIRSと関連する医学的状態若しくは疾患を処置するためのものであり、前記処置により、前記敗血症若しくはSIRS又は前記敗血症若しくはSIRSと関連する前記状態若しくは疾患が寛解されるか又は阻害される。
【0046】
そのような使用の別の実施形態では、この薬物は、対象におけるIRI又はIRIと関連する医学的状態若しくは疾患を処置するためのものであり、前記処置により、前記IRI又は前記傷害と関連する前記状態若しくは疾患が寛解されるか又は阻害される。
【0047】
そのような使用のさらに別の実施形態では、この薬物を使用して、(i)対象の内皮に対して細胞毒性であるか、又は(ii)対象の内皮機能障害の一因となるか、又は(iii)対象の血小板を活性化させることによって凝血を開始させるか、又は(iv)対象において赤血球脆弱性及びその結果としての貧血を誘発するNETを中和する。
【0048】
さらに別の実施形態では、製造された薬物は、第2の活性剤、化合物又は組成物の治療上有効な量又は薬学的に有効な量も含み得る。この実施形態によれば、第2の活性剤、化合物又は組成物は、NETを伴う医学的状態、病気又は疾患を処置するための補助的治療を提供する。望ましくは、第2の活性剤、化合物又は組成物は、敗血症、SIRS若しくはIRIの処置のための補助的治療又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する医学的状態若しくは疾患のための補助的治療を提供する。好ましくは、第2の活性剤は、抗炎症剤、抗生物質製剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤及び/又は対象が患っている1種若しくは複数の状態を処置する任意の他の形態の治療用化合物若しくは医薬化合物の1つ又は複数から選択される。より好ましくは、第2の活性剤、化合物又は組成物は、1種又は複数の抗炎症剤を含む。
【0049】
本発明の方法のいずれかにおいて、改変されている硫酸化セロビオシド化合物を使用する場合、この化合物を、製剤の単回用量において、それを必要とする対象に投与し得るか、又はこの投与のために製剤化し得る。特定の代替実施形態では、この改変されている硫酸化セロビオシド化合物を、複数回用量製剤として、それを必要とする対象に投与するか、又はこの投与のために製剤化する。
【0050】
追加の目的、利点及び新規の特徴は、下記の説明に記載されるか、又は図面及び下記に続くいくつかの非限定的な実施形態の詳細な説明の考察により当業者に明らかになるであろう。
【0051】
本開示は、下記の図面を参照して、好ましい実施形態の下記の説明で詳細を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図2】ヒストンにより媒介される病理を阻害する際に、ヘパリンと同程度に強力となるためのポリアニオンの最小限の構造上の要件である。a、硫酸化二糖、mCBS及び硫酸化三糖、MTSは、HMEC-1に対するヒストンにより媒介される細胞毒性を阻害する際にヘパリンと同程度に有効である一方、硫酸化単糖、グルコースペル-O-サルフェート及びメチルβ-グルコシドペル-O-サルフェートは、阻害活性をほとんど又はまったく示さないことを示す阻害曲線である。b、ヒストンにより誘発される赤血球の脆弱性の阻害を検討すると得られた類似結果。データは、平均±s.e.mである。(n=3、生物学的反復)
【
図3】ヒストンは、SPAにより完全に阻害される過程である、赤血球凝集を促進して赤血球変形能を低下させる。ヒト赤血球(RBC)を、mCBS(200μgml
-1)と共に又はこれを使用しないで、単独(「生理食塩水」コントロール)で、又はヒストン(400μgml
-1)の存在下で、37℃で1時間、インキュベートした。a、凝集化RBCと正常な(非凝集化)RBCとを区別するため、前方(FSC)散乱パラメータ及び側方(SSC)散乱パラメータ及び適切なゲート戦略に基づいたフローサイトメトリーにより測定されたRBC凝集の割合。b、(a)において図示された3種の処置後の、低倍率及び高倍率でのRBC凝集レベルを図示する、走査電子顕微鏡写真。c、mCBS及びMTSによる、ヒストンにより媒介されるRBC凝集の濃度依存的阻害であり、この場合、RBC凝集は、ヒストンの非存在下でのRBCと比較したRBC自家蛍光の増加倍率として、フローサイトメトリーによって計算される。この増加倍率の値はまた、各凝集物におけるRBCの数の推定値をもたらす。d、RBC変形能を測定する人工脾臓におけるRBCの保持。RBCを、1時間、ヒストンの濃度を向上させてインキュベートし、人工脾臓に通過させる前に、使用される最も高い濃度(400μgml
-1)で、mCBS又はMTS(100及び200μgml
-1)のどちらか一方と共にやはりインキュベートした。データは、平均±s.e.mである。(n=3、生物学的反復)
***P<0.001、
****P<0.0001(Dunnettの多重比較検定による一元配置分散分析)。
【
図4】SPAは、ヒストンにより誘発される血小板凝集及び脱顆粒を阻害する。a、分離した血小板のヒストンにより誘発される凝集。b、ヒストン(HIS)(150μg/mL)により誘発される血小板凝集のSPAによる阻害。c、ATP放出によって測定される、全血中の血小板のヒストンにより誘発される脱顆粒。点線は、トロンビンにより活性化された血小板からのATP放出である。d、ヒストンにより誘発される血小板脱顆粒のSPAによる阻害。(a、b)におけるデータは、平均±s.e.m(n=3、生物学的反復)。(c、d)におけるデータは、3つの実験の1つの代表例である。
【
図5】ヒストンは、SPAによりブロックされるプロセスである、脂質二重層を破壊して細胞内Ca
2+流動を誘発する。a、ヒストン(HIS)(1μm)に単独(n=47)で、又はSPAであるCBS(n=52)若しくはMTS(n=40)(10μM)の存在下で曝露した人工脂質二重層の寿命。コントロール二重層(n=125)は、RγR1イオンチャネルタンパク質を含んだ(n=生物学的反復)。データは、平均±s.e.mである。ノンパラメトリックKruskal-Wallis検定を使用してP値を算出した。b.ヒストンを添加(100μgml
-1)して1分後のCa
2+流動HMEC-1を示す、Ca
2+感受性色素Indo-1を使用する代表的なフローサイトメトリープロット。c.HMEC-1による、ヒストンによって誘発されるCa
2+流動に及ぼすCBS及びMTS(100μgml
-1)の効果の時間経過。2回の個別の実験の1つ及び2回の生物学的反復の平均値からの(c)におけるデータ。
【
図6】SPAは、インビボで、ヒストンにより誘発される組織傷害、血小板減少症、貧血及びDVTを阻害する。a、ヒストン(50mgkg
-1)のI.V.注射の10分間前に、SPA用量(表示されている)をi.p.注射したマウス(n=5~28/群)の肝臓(アラニンアミノトランスフェラーゼ、ALT)、腎臓(クレアチニン、Crea)及び一般組織(乳酸デヒドロゲナーゼ、LDH)傷害を評価するために、ヒストンの4時間後にマウスの血液を採取した。データは、n=5~28匹のマウス/処置で、10回の個別の実験からプールしたデータ。b、上記のとおり処置されたが、1回のSPA投与量(100mgkg
-1)を受けたマウス(n=5/群)の循環血小板及びRBC及び脾臓ヘモグロビン(Hb)を評価するため、ヒストンの10分後に、マウスの血液及び脾臓を採取した。c、ヒストンにより誘発されたDVTのマウスモデル(n=7~10マウス/群)に及ぼすCBS及びMTSの影響。データは、平均±s.e.m。
*P≦0.05、
**P<0.01、
***P<0.001、
****P<0.0001(Dunnettの多重比較検定による一元配置分散分析)。
【
図7】SPAは、細胞外ヒストンに伴う様々な病理を阻害する。a、盲腸のライゲーション及び穿刺(CLP)が施され、生理食塩水(コントロール)、CBS又はMTSの投与受けたラット(n=8/群)の生存率。ログランク(Mantel-Cox)検定を使用してP値を得た。b、ALT及びクレアチニンの血中レベルにより測定される、CLPラットにおける腎臓及び肝臓の傷害。c、左心室(LV)における虚血区域(IZ)を有するラットにおける、心臓IRIに及ぼすCBS及びMTS(n=6~12/群)の作用であり、微小血管閉塞(MVO)及び梗塞領域が測定される。d、マウス(n=3~5/群)におけるIRIの皮膚弁モデルに及ぼすmCBS及びMTSの作用であり、代表的な写真が示されている。
図6と同様の(b~d)の統計分析。
【
図8】HMEC-1増殖は、ヒストン細胞毒性の決定及びこの細胞毒性の阻害剤の両方の検出のための、非常に感度の高いアッセイである。a、サブコンフェルトHMEC-1単層を3時間、濃度を向上したヒストンに曝露させて、次に、
3H-チミジンを加え、次の24時間にわたり、HMEC-1増殖を
3H-チミジン取込みによって測定し、HMEC-1増殖が、高度に濃度依存的に、ヒストンによって阻害された。b、SPAであるmCBS及びMTS(100μgml
-1)は、HMEC-1単層に及ぼすヒストン(400μgml
-1)の抗増殖作用を完全に中和した。データは、平均±s.e.mである。(n=3、生物学的反復)
****P<0.0001(Dunnettの多重比較検定による一元配置分散分析)。
【
図9】敗血症の患者に由来する血清は、内皮細胞に対して毒性であり、作用は、DNアーゼI、抗ヒストン抗体及びSPAにより中和される。a、APACHE IIスコアとHMEC-1に及ぼす敗血症患者(n=20の患者)の血清の抗増殖作用との相関関係(スピアマンのr値)。b、APACHE IIスコアと敗血症患者の血清の細胞外DNA含有物との相関関係。c、敗血症患者5に由来する血清の抗増殖作用に及ぼす、ヒストン3(αH3)及びヒストン4(αH4)(n=4、生物学的反復/処置)に対するDNアーゼI又はpAbの効果(赤丸、パネルa)。d、SPAであるmCBS及びMTSが敗血症患者の血清(SS)(n=10患者)の抗増殖性影響を中和する能力。
図6と同様の統計分析。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明は、対象におけるNETによって媒介される病気(例えば、敗血症、SIRS又はIRI)の処置又は予防における、化学的安定性が高い、改変されている硫酸化セロビオシド化合物の使用を対象とする。そのような化合物により、対象におけるNETの細胞毒性効果を寛解させ得るか、又は阻害し得るか、又は予防し得る。
【0054】
便宜のために、下記のセクションは、本明細書で使用される用語の様々な意味を全体的に概説する。この議論後、本発明を例示する一般的な例示的実施形態を開示し、続いて本発明の様々な例示的実施形態の特性のより具体的な例示を提供する具体例を開示する。
【0055】
概要
本明細書で説明されている本発明は、本明細書で説明されている本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、具体的に説明されているもの以外に変形及び改変される余地があることを当業者は認識するであろう。本発明は、全てのそのような変形形態及び改変形態を含む。本発明はまた、個々に又はまとめて、本明細書で言及されるか又は示される全てのステップ、特徴、組成物及び構成要素と、前記ステップ又は特徴の任意の及び全ての組み合わせ又は任意の2つ以上とを含む。機能的に均等な製品、物質の組成及び方法は、明らかに、本明細書で説明されている本発明の範囲内である。
【0056】
上記参照又は下記参照のいずれかで本明細書で引用されている全ての刊行物、参考文献、文献、特許及び特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれ、これは、これらの刊行物、参考文献、文献、特許及び特許出願が本文の一部として読まれるべきであり且つ見なされるべきであることを意味する。本文で引用されている任意の刊行物、参考文献、文献、特許及び特許出願を本文中で繰り返さないのは、単に簡潔さのためである。しかしながら、本明細書で言及されている刊行物、参考文献、文献、特許及び特許出願は、これらの刊行物で報告されており且つ本発明に関連して使用される可能性があるプロトコル、試薬及び生成物を説明及び開示するために引用されている。本明細書のいかなるものも、先行発明により又はあらゆる他の理由により、本発明がそのような開示に先行する権利がないことを認めるものと解釈すべきではない。これらの文献の日付に関する全ての記載又は内容に関する表示は、本出願人らが入手可能な情報に基づくものであり、これらの文献の日付又は内容の正確さに関していかなる承認も構成しない。
【0057】
本明細書で言及されているか又は参照により本明細書に組み込まれる任意の文献で言及されている任意の製品のあらゆる製造業者の指示書、説明書、製品仕様書及び製品シートは、参照により本明細書に組み込まれ、且つ本発明の実施で用いられ得る。
【0058】
本明細書で使用される選択された用語の定義は、本発明の要約及び本発明の詳細な説明内に見出され得、且つ全体を通して適用される。別途定義しない限り、本明細書で使用される全ての他の科学用語及び技術用語は、本発明が属する技術分野における当業者に一般に理解されるのと同じ意味を有する。当該技術分野における用語の使用法と、本明細書に記載されているこの用語の定義との間に明らかな矛盾が存在する場合、本明細書内に記載されている定義が優先されるものとする。
【0059】
定義
作業実施例又は別途指示されている場合を除いて、本明細書で使用されている成分又は反応条件の量を表す全ての数字は、全ての場合において用語「約」により修飾されていると理解すべきである。例えば、用語「約」は、百分率と関連して使用される場合、±10%を意味し得る。
【0060】
別途文脈が必要としない限り又は本明細書が明確に反対のことを述べない限り、単数の整数、ステップ又は要素として本明細書で列挙されている本発明の整数、ステップ又は要素は、列挙された整数、ステップ又は要素の単数形及び複数形の両方を明確に包含する。本明細書全体を通して、別途述べない限り又は別途文脈が必要としない限り、単一のステップ、組成物若しくは物質、ステップの群又は物質の組成物の群への言及は、1つ及び複数(即ち1つ以上)の又はこれらのステップ、組成物若しくは物質、ステップの群又は物質の組成物の群を包含すると見なすものとする。従って、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」は、別途文脈が明確に指示しない限り、複数の言及を含む。そのため、例えば、「硫酸化セロビオシドであって、その還元末端で小さい非荷電置換基で改変されている硫酸化セロビオシド又はその薬学的に許容される塩」への言及は、複数のそのような改変されている硫酸化セロビオシド化合物又は複数のその塩及び同類のものを含む。
【0061】
本明細書及び特許請求の範囲の全体を通して、別途文脈が必要としない限り、単語「含む(comprise)」又は「含む(comprises)」若しくは「含んでいる」等のバリエーションは、述べられているステップ、若しくは要素、若しくは整数又はステップ、若しくは要素、若しくは整数の群の包含を暗示するが、あらゆる他のステップ、若しくは要素、若しくは整数又はステップ、若しくは要素、若しくは整数の群の排除を暗示しないと理解されるであろう。
【0062】
本明細書で使用される場合、用語「包含している」並びに「包含する」及び「包含される」等のバリエーションも限定的ではないと理解されるであろう。
【0063】
本出願では、「又は」の使用は、別途述べない限り「及び/又は」を意味する。
【0064】
本明細書で説明されている本発明は、1つ又は複数の範囲の値(例えば、サイズ、変位及び電界強度等)を含み得る。値の範囲は、この範囲を定義する値等のこの範囲内の全ての値と、この範囲の境界を定義する値に直接隣接する値と同一の又は実質的に同一の結果を導く、この範囲に隣接する値とを含むと理解されるであろう。例えば、関連分野の当業者は、範囲の上限又は下限の10%変動が完全に適切であり得、且つ本発明に包含されることを理解するであろう。より具体的には、範囲の上限又は下限の変動は、5%であるか、又は当該技術分野で一般的に認識されているようにいずれかがより大きい。
【0065】
本明細書で使用する場合、用語「NET」とは、ヌクレオソームとタンパク質、例えば、抗微生物活性を有するタンパク質との細胞外複合体を指す。ヌクレオソームは、好中球、肥満細胞、好酸球、単球又は白血球に由来し得る。
【0066】
本明細書で使用する場合、言い回し「NET関連合併症」は、特に限定なしに、NETが関連する
a.感染(細菌、ウイルス、真菌、寄生性感染を含む)、敗血症(細菌、ウイルス、真菌、寄生生物、プリオンによって誘発される敗血症を含む);又は非感染性全身性炎症反応症候群、手術、外傷、出血、熱傷、急性膵炎、子癇前症及び急性腎傷害を含めた非感染性誘発因子に対する全身性炎症反応
b.例えば、粥状動脈硬化、血管の自然破裂、血管への外傷性傷害に起因する動脈の閉塞後の且つ心臓の及び移植と関連するIRIを含む局所組織レベルでの低酸素症;又は例えば溺死、ガス曝露若しくは心肺停止に起因する呼吸停止後の、且つ例えば急性呼吸促迫症候群、人工呼吸器関連肺傷害、慢性閉塞性肺疾患及び薬剤介在組織傷害等の病気を含む全身レベルでの低酸素症
c.粥状動脈硬化、凝血及び血栓症(例えば、深部静脈血栓症)等の、例えば循環器疾患又は慢性循環器疾患等の止血(haemostasis)又は血管閉塞;輸血関連急性肺傷害(TRALI)
d.機能的な実質器官組織が線維化組織によって置き換えられて、これによって、肺線維症、特発性肺線維症等の器官の機能が著しく減退する恐れのある線維症
e.自己免疫疾患状態及び炎症疾患状態(例えば、多発性硬化症、腫瘍関連炎症、過剰炎症疾患状態、全身性エリテマトーデス、脊椎関節症、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、反応性関節炎、腸炎性関節炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、嚢胞性線維症(CF)、喘息、糸球体腎炎、慢性肺疾患、クローン病、過敏性腸疾患、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、小血管の破壊及び炎症によって特徴付けられる抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎(AAV)(多発性血管炎を伴う肉芽腫症、多発性血管炎及び顕微鏡的多発血管炎を伴う好酸球性肉芽腫症等)、家族性地中海熱、筋萎縮性側索硬化症、がん、シェーグレン症候群、早期関節炎、ウイルス性関節炎、乾癬、加齢に伴う臓器線維症、特発性肺線維症、若年性糖尿病(I型)、糖尿病(2型)、抗リン脂質抗体症候群等)
f.ハンチントン病等の様々な中枢神経系疾患
g.痛風等のサイトカイン及びケモカインにより誘発された分解
を意味する。
【0067】
上で引用した状態は、NETオーシスの向上と関連し、したがって、NETは、これらの障害の処置を標的とすることができる。
【0068】
本明細書で使用する場合、用語「病気」、「状態」又は「疾患」(互換的に使用される)は、NETの放出と関連する医学的合併症を意味する。
【0069】
本明細書で使用される場合、用語「敗血症」は、その意味において、標準的な医学参考文献で特徴付けられており、及び/又は当業者に既知である敗血症の疾患又は状態の全てのステージを含む。例えば、敗血症は、重度の敗血症、急性及び慢性の敗血症並びに敗血症性ショックを含む。用語「敗血症」は、本明細書で使用される場合、感染と関連するエピソードも含む。本明細書で使用される用語「SIRS」(全身性免疫反応症候群)は、感染と関連しないエピソード(例えば、外傷、熱傷、膵炎、臓器移植、手術、癌の治療レジーム後の腫瘍溶解、周産期合併症及び同種移植片の免疫抑制予防)を含む。
【0070】
本明細書で使用される場合、用語「敗血症若しくはSIRSと関連する医学的状態」又は「敗血症若しくはSIRSと関連する疾患」は、それらの意味において、標準的な医学参考文献で特徴付けられており、及び/又は当業者に既知である敗血症又はSIRSの疾患又は状態の任意の又は全てのステージと直接的に又は間接的に関連するか、それに由来するか、それによって引き起こされるか又はそれを伴う全ての徴候及び症状を含む。例えば、敗血症又はSIRSと関連する医学的状態又は疾患として、感染の有無にかかわらず対象において現れる場合がある対象における敗血症又はSIRSの疾患又は状態の任意の又は全てのステージと関連するか、それに由来するか、それによって引き起こされるか又はそれを伴う下記の徴候又は症状の1つ又は複数が挙げられる:動脈性低血圧、代謝性アシドーシス、全身性血管抵抗減少、心拍数増加(頻脈)、呼吸速度増加(頻呼吸)、全体炎症若しくは全身性炎症、白血球数上昇若しくは白血球減少(白血球増加症又は白血球減少症)、血液中のNETの増加、臓器機能不全、例えば急性臓器機能不全、循環系の機能不全、多臓器不全症候群、播種性血管内凝固(DIC)、1種若しくは複数の臓器の微小血管系中でのフィブリンの沈着、発熱、錯乱、肺炎、肺炎を伴う咳、腎感染、腎感染を伴う排尿時痛及び/又は敗血症性ショック。
【0071】
本明細書で使用される場合、用語「低減する」、「低減した」、「低減」、「減少する」又は「阻害する」は、全て統計的に有意な量の減少を意味するために概して使用される。しかしながら、疑念を回避するために、「低減した」、「低減」若しくは「減少する」又は「阻害する」は、例えば、薬剤の非存在下で基準レベルと比較して少なくとも10%の減少を意味し、例えば少なくとも約20%、又は少なくとも約30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%、又は少なくとも約60%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約80%の減少を意味する。
【0072】
本明細書で使用される場合、用語「改善する」、「増加した」、「増加する」若しくは「増強する」又は「活性化する」は、全て統計的に有意な量の増加を概して意味するように使用され、あらゆる疑念を回避するために、用語「改善する」、「増加した」、「増加する」若しくは「増強する」又は「活性化する」は、例えば、薬剤の非存在下で基準レベルと比較して少なくとも10%の増加を意味し、例えば少なくとも約20%、若しくは少なくとも約30%、若しくは少なくとも約40%、若しくは少なくとも約50%)、若しくは少なくとも約60%、若しくは少なくとも約70%、若しくは少なくとも約80%の増加又は少なくとも約2倍、若しくは少なくとも約3倍、若しくは少なくとも約4倍、若しくは少なくとも約5倍、若しくは少なくとも約10倍の増加又は基準レベルと比較して2倍~10倍以上の任意の増加を意味する。
【0073】
本明細書で使用される場合、用語「投与する」、「投与した」及び「投与すること」は、所望の効果が生じるように、所望の部位での組成物の少なくとも部分的な局在化をもたらす方法又は経路による、この組成物の対象への配置を指す。本明細書で説明されている化合物又は組成物を、当該技術分野で既知の任意の適切な経路により投与し得、この経路として経口経路又は非経口経路が挙げられるが、これらに限定されず、例えば静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、経皮投与、気道(エアロゾル)投与、肺投与、経鼻投与、直腸投与並びに局所(例えば、頬側及び舌下)投与が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、本化合物は、ポリアニオン性硫酸化セロビオシドであって、その還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド又はその薬学的に許容される塩である。好ましくは、このポリアニオン性硫酸化セロビオシドの還元末端に存在する小さい非荷電グリコシド結合置換基は、還元末端で硫酸化されている同一のポリアニオンと比べてポリアニオンの化学的安定性を改善する。上記化合物が治療用組成物又は治療用組成物等の組成物中に存在する場合、この化合物は、非経口投与のために調製されるか、又は標的部位への送達を可能にする別の他の方法のために調製される。いくつかの例示的な投与形態として、注射、注入、点滴、吸入又は経口摂取が挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
本明細書で使用される場合、用語「注射」は、下記を含むが、これらに限定されない:静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、脳室内、関節内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節腔内、嚢下、くも膜下、脊髄内、脳脊髄内及び胸骨内の注射及び注入。好ましい実施形態では、本組成物を静脈内注入又は静脈内注射により投与する。
【0075】
本明細書で使用される場合、本明細書で列挙されている状態又は疾患のいずれかに関する限り、本発明に関連して、用語「処置する」、「処置」、「処置すること」及び同類のものは、そのような状態又は疾患と関連する少なくとも1種の症状又は合併症の進行、悪化(aggravatio)、悪化(deterioration)、進行、予想される進行又は重症度を軽減するか、緩和するか、寛解させるか、阻害するか、減速させるか、反転させるか又は停止させることを意味する。ある実施形態では、状態又は疾患の症状は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%又は少なくとも50%緩和される。
【0076】
本明細書で使用される場合、語句「有効量」、「治療上有効な量」又は「有効用量」(本明細書では互換的に使用される)は、これらの意味において、本発明の化合物又は組成物の、所望の効果が生じるのに十分であるが、非毒性である量を含む。必要とされる化合物又は組成物の正確な量は、所望の効果、処置する種、対象の年齢及び全身状態、処置する状態の重症度、投与する薬剤、投与様式及び同類のもの等の因子に応じて対象毎に異なるであろう。そのため、正確な「有効量」を指定することは、不可能である。しかしながら、任意の所与の場合に関して、適切な有効量(用量)を、日常的な実験のみを使用して当業者により決定し得る。一般に、治療上有効な量は、対象の病歴、年齢、状態、性別及び対象の医学的状態の重症度及び種類並びに他の薬学的に活性な薬剤の投与により変化し得る。
【0077】
本明細書で使用される場合、治療用途又は医薬用途での化合物及び組成物の使用への言及は、ヒト用途及び非ヒト(例えば、獣医)用途にも同様に適用可能であることが理解されるであろう。従って、別途指示されている場合を除いて、「患者」、「対象」又は「個体」(本明細書では互換的に使用される)への言及は、ヒト又は非ヒト(例えば、社会的に重要な、経済的に又は研究上重要なあらゆる種の個体)を意味することが理解され、この個体として下記が挙げられるが、これらに限定されない:哺乳類、鳥類、ウサギ類、ヒツジ、ウシ、ウマ、ブタ、ネコ、イヌ、霊長類及び齧歯類の種。より好ましくは、患者、対象又は個体は、哺乳類の種に属する動物である。この哺乳類の種は、望ましくは、ヒト若しくは非ヒトの霊長類であるか、又はコンパニオン動物(例えば、家畜化されたイヌ、ネコ、ウマ、サル、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ウシ若しくはブタ)である。特に好ましい一例では、患者、対象又は個体は、ヒトである。
【0078】
本明細書で使用される選択された用語の定義は、本発明の詳細な説明中に見出され得、且つ全体を通して適用される。別途定義しない限り、本明細書で使用される全ての他の科学用語及び技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。
【0079】
本発明の例示的実施形態
下記の本発明の詳細な説明は、本発明を例示する目的のためにのみ含まれており、上記に記載されているような本発明の広範な説明への限定として決して理解されるべきではない。
【0080】
1.本発明の化合物
本発明の第1の態様では、NETによって媒介される合併症の処置での使用のための化合物であって、ポリアニオン性硫酸化セロビオシド、若しくはその還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド、又はその薬学的に許容される塩を含む化合物が提供される。この置換基は、同一のポリアニオンであるが、還元末端で硫酸化されているポリアニオンと比べて、分子に高い化学的安定性を付与する。好ましくは、このクラスの化合物は、高い正味の負電荷を有するはずである。
【0081】
本発明の化合物は、NETによって媒介される合併症(例えば、敗血症又は虚血再灌流傷害)を、予防的(即ち医療処置に対する予防的前処置として)又はこの状態若しくは疾患が発生した後の処置中の治療的の両方で寛解させ得る。
【0082】
本発明の実施形態では、改変されたポリアニオン性硫酸化セロビオシドは、以下の一般構造:
【化2】
(式中、
R1は、サルフェート基、又は小さい非荷電グリコシド結合置換基、例えばO-又はS-(C
1~6)アルキルであり、
R2~R8は、(i)小さい非荷電O結合置換基又は(ii)サルフェート基からそれぞれ選択される)を有する。
【0083】
好ましくは、R1は、O-又はS-(C1~6)アルキルである。R1が、O-又はS-(C1~6)アルキルである場合、選択された置換基により、R1にサルフェート基を有する同じポリアニオンに比べて、ポリアニオンの化学的安定性が好ましくは改善される。
【0084】
好ましくは、R2~R8は、それぞれ(a)非改変ヒドロキシル基、又は(b)サルフェート基から選択される。
【0085】
より好ましくは、R1は、メトキシ基又はエトキシ基であり、及びR2~R8は、それぞれサルフェート基である。
【0086】
望ましくは、この化合物のクラスは、高い正味の負電荷を有し、即ちポリアニオンである。
【0087】
この小さい非荷電グリコシド置換基(R1)のアノマー配置は、α位又はβ位のいずれかであり得る。好ましくは、この小さい非荷電置換基は、β配置である。
【0088】
本発明の非常に好ましい形態では、本化合物は、硫酸化β-O-メチルセロビオシド二糖であるβ-O-メチルセロビオシドサルフェート又はその薬学的に許容される塩である。実例として、この化合物は、β-O-メチルセロビオシドサルフェートのナトリウム塩である。
【0089】
mCBSは、CBSと比べて非常に安定しており、高用量で良好に耐容性である。
【0090】
ポリアニオン性硫酸化セロビオシドの還元末端に存在する小さい非荷電グリコシド結合置換基は、還元末端で硫酸化されている同一のポリアニオンと比べてポリアニオンの化学的安定性を改善する。
【0091】
化学的安定性は、本明細書で使用される場合、本発明の化合物の、変化(具体的には自然環境中での分解又は空気、熱、光、圧力若しくは他の自然条件に曝露された際の分解又は内部反応に起因する分解)に抵抗する傾向を表す。
【0092】
本発明の化合物は、予想される使用条件又は通常の環境条件下での少なくとも1ヶ月の貯蔵後、還元末端で硫酸化されている同一のポリアニオンと比べて有意に分解していない場合に「安定」である。
【0093】
本発明の化合物は、予想される使用条件又は通常の環境条件下での少なくとも1ヶ月の貯蔵後に3個以上のサルフェート基が失われている場合、有意に分解されているであろう。好ましくは、本発明の化合物は、予想される使用条件又は通常の環境条件下での少なくとも1ヶ月の貯蔵後に2個のサルフェート基が失われている場合、有意に分解されているであろう。最も好ましくは、本発明の化合物は、予想される使用条件又は通常の環境条件下での少なくとも1ヶ月の貯蔵後に1個のサルフェート基が失われている場合、有意に分解されているであろう。
【0094】
好ましくは、本発明の化合物は、pH7.5に緩衝化されたリン酸塩製剤中に保存され且つ2~8℃で保存された場合、少なくとも2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、13ヶ月、14ヶ月、15ヶ月、16ヶ月、17ヶ月、18ヶ月、19ヶ月、20ヶ月、21ヶ月、22ヶ月、23ヶ月又は24ヶ月にわたり化学的に安定である。より好ましくは、pH7.5に緩衝化されたリン酸塩製剤中で保存され且つ約2~8℃で保存されている化合物では、6ヶ月~2年の期間にわたり安定性が測定される。
【0095】
本明細書で使用される場合、語句「薬学的に許容される塩」は、健全な医学的判断の範囲内において、過度の毒性、刺激、アレルギー反応及び同類のものを伴うことなくヒト及び下級動物の組織との接触での使用に適しており、且つ合理的な利益/リスク比に見合う塩を含む。
【0096】
薬学的に許容される塩は、当該技術分野で公知である。この塩として、例えば、無機酸(例えば、塩酸若しくはリン酸)又は有機酸(例えば、クエン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸及び同類のもの)に由来する酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基で形成されている)が挙げられる。同様に、タンパク質の遊離カルボキシル基で形成された塩も、無機塩基(例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム若しくは第二鉄の水酸化物)又は有機塩基(例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカイン及び同類のもの)に由来し得る。
【0097】
本発明の好ましい形態では、本発明の改変されている硫酸化セロビオシドは、薬学的に許容される塩として存在する。実例として、この化合物は、β-O-メチルセロビオシドサルフェートのナトリウム塩であり、即ちナトリウムβ-O-メチルセロビオシドサルフェート(mCBS.Na)である。
【0098】
本発明の方法又は組成物で使用される、改変されている硫酸化セロビオシド化合物又はその薬学的に許容される塩は、当業者に既知の方法により調製され得る。例えば、硫酸化化合物であって、その還元末端において非荷電置換基で改変されている硫酸化化合物を調製する方法は、全体が参照により本明細書に組み込まれるKatrin C Probst and Hans Peter Wessel,2001,J.Carbohydrate Chemistry,20(7&8):549-560で概して説明されている。
【0099】
2.処置方法
本発明の化合物、及び前記化合物を含む治療用組成物又は医薬組成物は、NETの病理的な活性を寛解又は予防することができるので、本発明は、本発明の第2の態様として、NET関連合併症を処置又は予防する方法であって、対象にポリアニオン性硫酸化セロビオシド若しくはその還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド、又はその薬学的に許容される塩の治療的又は薬学的に有効な量を投与するステップを含む方法を提供する。
【0100】
更に、本発明の第3の態様では、対象における、NET蓄積を寛解させる方法であって、対象にポリアニオン性硫酸化セロビオシド若しくはその還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド、又はその薬学的に許容される塩の治療的又は薬学的に有効な量を投与するステップを含む方法が提供される。
【0101】
本発明の第2及び第3の態様の実施形態では、選択された化合物は、好ましくは、還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシドである。より好ましくは、小さい非荷電グリコシド結合置換基により、その還元末端において硫酸化されている同じポリアニオンに比べると、ポリアニオンの化学的安定性が改善されている。特に、本化合物がmCBSである場合、この化合物は、硫酸化β-O-メチルセロビオシド二糖、又はβ-O-メチルセロビオシドサルフェートのナトリウム塩、即ちmCBS.Naである。
【0102】
本発明の第2及び第3の態様により記載される本発明は、NETの形成及びこれに由来する生じた毒性によって引き起こされる、様々な異なるNETの病気を処置すること、寛解させること又は予防することを企図する。本発明のこれらの態様によれば、個々の方法は、対象における、NET関連合併症の処置又は予防に使用することができる。
【0103】
通常、NET関連状態は、NETオーシスの増大に起因することができ、したがって、NETは、対象におけるその正常な病態生理学的レベルに一致する基底濃度又は基底量までNETのレベル又は活性を改変する(好ましくは、低下させる)ことによって、これらの障害の処置を標的とすることができる。
【0104】
NET活性化因子の最大の群は、病原性グラム陽性菌及びグラム陰性菌のリポタイコ酸及びLPS、並びに原核生物タンパク質の分解生成物である。NETを誘発する細菌の一部の例は、例示として、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、連鎖球菌(Streptococcus sp.)、緑膿菌(P.aeruginosa)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、マンヘミア・ヘモリチカ(Mannheimia haemolytica)、アグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンス(Aggregatibacter actinomycetemcomitans)、淋菌(Neisseria gonorhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、エルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、レプトスピラ属種(Leptospira species)、インフルエンザ菌(H.Influenzae)、肺炎桿菌(K.pneumoniae)、L.モノサイトゲネス(L.Monocytogenes)、結核菌(M.tuberculosis)及びフレキシネル赤痢菌(S.flexneri)を含む。NET活性化はまた、真菌感染(例は、例示として、A.ニデュランス(A.nidulans)、A.フミガツス(A.fumigatus)等のアスペルギルス属種(Aspergillus spp.)、及びC.アルビカンス(C.albicans)等のカンジダ属種(Candida spp.)を含む);原生動物の寄生虫感染(例は、例示として、(L.アマゾネンシス(L.amazonensis)又はその表面リポホスホグリカン、糞線虫(Strongyloides stercoralis)、アイメリア・ボビス(Eimeria bovis)、リーシュマニア属種(Leishmania species)、トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)を含む);又はウイルス感染(例は、例示として、HIV/SIV、ハンターンウイルス呼吸系発疹ウイルス(RSV)、インフルエンザウイルスを含む)から起こり得る。これらの病因活性化因子は、例にとして提示されているに過ぎず、NET活性化因子となる生物の規定リストを構成(consistute)するものではない。当業者は、生物のNET活性化能を認識している。
【0105】
上に列挙したもの等の生物による感染により引き起こされる反応は、一般に、炎症経路の活性化を引き起こす炎症反応であるが、自己免疫応答、肺疾患、血栓症又は他の微生物活性等の他の反応もまた、NET活性化の結果として現れ得る。Net活性化はまた、非感染性全身性炎症反応症候群、手術、外傷、出血、熱傷及び腎臓傷害を含めた非感染性誘発因子;局所組織レベル又は全身性レベルでの低酸素症;止血又は血管閉塞;機能的な実質器官組織が線維化組織により置き換えられた線維症;自己免疫疾患状態及び炎症疾患、様々な中枢神経系疾患、並びにサイトカイン及びケモカイン誘発性分解から生じる。
【0106】
本発明の第2又は第3の態様のある実施形態では、それぞれの方法は、本発明の化合物と同時に又はこの化合物に付随して、対象が罹患しているか又は罹患する可能性がある医学的状態のための補助的処置を提供する、本発明の化合物と異なる第2の治療薬(例えば、抗炎症剤、抗生物質製剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤又は他の形態の医学的介入)を対象に投与することをさらに含み得る。
【0107】
好ましくは、本発明のこれらの態様の一例として、それぞれの方法は、対象における敗血症若しくはSIRS又は敗血症若しくはSIRSと関連する医学的状態若しくは疾患を処置又は予防する手段を提供する。
【0108】
本発明のこれらの態様の別の例として、それぞれの方法は、対象におけるIRI又はIRIと関連する医学的状態若しくは疾患を処置又は予防する手段を提供する。
【0109】
好ましくは、この方法は、二次的な状態を処置するために医師が他の薬物を投与することを可能にするためにこの状態又は疾患状態を十分に寛解させる。そのため、本発明は、患者におけるNET関連の合併症を寛解させる目的で、ポリアニオン性硫酸化セロビオシドであって、その還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量を対象に投与することも含む。
【0110】
本発明の第2又は第3の態様に係る特定の例示的実施形態では、この特定された方法は、抗炎症剤、抗生物質製剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤及び/又は対象が患っているか若しくは患うリスクがある1種若しくは複数の状態を処置する任意の他の形態の医薬組成物の1つ又は複数から選択される第2の活性剤、化合物又は組成物の治療上有効な量又は薬学的に有効な量を、この改変されている硫酸化セロビオシドと一緒に又はこの硫酸化セロビオシドに付随して対象に投与するステップをさらに含み得る。
【0111】
この実施形態によれば、第2の活性剤、化合物又は組成物は、NET関連の合併症(例えば、敗血症、SIRS若しくはIRI)及び/又はそのような合併症と関連する医学的状態若しくは疾患を対象とする処置に対して補助的処置を提供する。好ましくは、第2の活性剤、化合物又は組成物は、1種又は複数の抗炎症剤を含む。
【0112】
好ましくは、第2の活性剤は、本発明の化合物によって処置される医学的病気に関連するか又はこの医学的病気と異なる、患者が患っている疾患の医学的介入の手段を提示し、前記第2の活性剤は、この患者に補助的処置を提供する。
【0113】
本明細書で開示されている本発明の治療用及組成物及び/又は医薬組成物を治療的又は予防的に投与し得る。治療用途では、化合物及び組成物を、NET関連の合併症又はヒストン関連の合併症と関連する病気を既に罹患している患者に、この症状を治癒するか又は少なくとも部分的に停止させるのに十分な量で投与する。この化合物又は組成物を、単回用量において又は処置レジーム(例えば、複数回用量処置レジーム)の一部として、この患者を効果的に処置するのに十分な量の活性化合物で提供すべきである。予防的用途では、本発明の化合物及び組成物を、NET関連の合併症と関連する病気を発症するリスクがある対象に、この病気の症状及び/又は合併症を少なくとも部分的に停止させるのに十分な量で投与する。
【0114】
本発明の第4の態様では、対象におけるNETによって媒介される病理と関連する医学的状態、病気又は疾患を処置又は予防する方法であって、ポリアニオン性硫酸化セロビオシド、若しくはその還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド、又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量又は薬学的に有効な量を対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0115】
本発明の第4の態様の実施形態では、選択された化合物は、好ましくは、還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシドである。より好ましくは、小さい非荷電グリコシド結合置換基により、その還元末端において硫酸化されている同じポリアニオンに比べると、ポリアニオンの化学的安定性が改善されている。特に、本化合物がmCBSである場合、この化合物は、硫酸化β-O-メチルセロビオシド二糖、又はβ-O-メチルセロビオシドサルフェートのナトリウム塩、即ちmCBS.Naである。
【0116】
好ましい一例では、この方法を使用して、(i)対象の内皮に対して細胞毒性であるか、又は(ii)対象の内皮機能障害の一因となるか、又は(iii)対象の血小板を活性化させることによって凝血を開始させるか、又は(iv)対象において赤血球脆弱性及びその結果としての貧血を誘発するNETを処置する。
【0117】
上記の同定された生物のうちの1つ又は複数によって引き起こされる感染のタイプに罹患している患者は、その血液中に存在するNETのレベルが上昇している。
【0118】
本発明の第2、第3又は第4の態様の実施形態では、NETの細胞毒性活性を阻害することによる、対象における、NETと関連する敗血症を処置(治療的又は予防的のどちらか一方)する方法であって、対象にその還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド又はその薬学的に許容される塩の治療的又は薬学的に有効な量を投与するステップを含む方法が提供される。好ましくは、ポリアニオン性硫酸化セロビオシドの還元末端に存在する小さい非荷電グリコシド結合置換基により、その還元末端において硫酸化されている同じポリアニオンに比べると、ポリアニオンの化学的安定性が改善されている。より好ましくは、改変されている硫酸化セロビオシドは、mCBSであるか、又はより詳細には、mCBS.Naなどのその薬学的に許容される塩である。
【0119】
本明細書において実証されるとおり、本発明の化合物、特にmCBSは、NETの毒性作用をブロックし、それにより敗血症の処置として有用である。
【0120】
したがって、本発明の化合物、及び前記化合物を含む治療用組成物又は医薬組成物は、前処置(医療処置の場合における)と敗血症が起こった後の処置の両方を含めた、敗血症におけるNETタンパク質の細胞毒性活性を寛解させる手段を提供する。
【0121】
本明細書で説明されているあらゆる態様、実施形態又は例に係る本発明の非常に好ましい例示的形態では、本発明の化合物を使用して、後に論じる病気又は状態の1つ又は複数を処置又は予防する。
【0122】
A.敗血症
敗血症(敗血症性ショックを含む)とは、動脈性低血圧、代謝性アシドーシス、全身性血管抵抗減少、頻呼吸及び臓器機能不全を特徴とする、感染に対する全身反応のことである。敗血症(敗血症性ショックを含む)は、サイトカインネットワーク、白血球並びに補体及び凝固線維素溶解系を含む多くの宿主防御機構の活性化と関連し且つこの活性化によって媒介される、感染に対する全身炎症反応でもある。様々な臓器の微小血管系中に線維素が広範に沈着した播種性血管内凝固(DIC)は、敗血症の初期症状の場合がある。DICは、多臓器不全症候群の発症において重要なメディエータであり、敗血症性ショックの患者の予後不良の一因となる。
【0123】
敗血症を引き起こす免疫学的反応は、炎症及び凝固経路の広範な活性化を引き起こす全身性炎症反応である。これは、循環器系の機能障害に進行する場合があり、たとえ最適な処置を受けても多臓器不全症候群を引き起こし、最終的に死に至る場合がある。
【0124】
敗血症の症状は、基礎となる感染プロセスに関連することが多く、未処置まま放置すると、重度の敗血症(急性臓器機能不全を伴う敗血症)又は敗血症性ショック(難治性の動脈性低血圧を伴う敗血症)として現れる可能性がある。全身性炎症反応症候群の基準(例えば、全身の炎症、発熱、白血球数の上昇(白血球増多症)並びに心拍数の上昇(頻脈)及び呼吸速度の上昇(頻呼))の2つ以上が感染の証拠なく満たされる場合、患者は、全身に影響を及ぼす敗血症性炎症状態である「SIRS」と単に診断される場合がある。
【0125】
敗血症の多くの患者は、24~48時間にわたる急速な衰弱を示す。敗血症の効果的な処置のために迅速な処置が不可欠である。残念ながら、感染のタイプの診断には、数日を要する場合がある病原体を同定するための微生物学的分析が必要である。従って、病原体を除去するための治療(例えば、抗生物質治療)は、病原体のタイプ及び種を知ることなく且つ感染の程度を知る手段がない状態で開始されなければならない。本発明は、そのような方法を提供する。
【0126】
敗血症に罹患している患者は、血液中に存在するNETのレベルが上昇している。NETは、敗血症の病理の重要なメディエータとして示唆されている。
【0127】
本発明の第2、第3又は第4の態様の実施形態では、NETの細胞毒性活性を阻害することによる、対象における、NETと関連する敗血症を処置(治療的又は予防的のどちらか一方)する方法であって、対象にポリアニオン性硫酸化セロビオシド若しくはその還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド、又はその薬学的に許容される塩の治療的又は薬学的に有効な量を投与するステップを含む方法が提供される。
【0128】
この実施形態によれば、選択された化合物は、好ましくは、還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシドである。より好ましくは、小さい非荷電グリコシド結合置換基により、その還元末端において硫酸化されている同じポリアニオンに比べると、ポリアニオンの化学的安定性が改善されている。特に、本化合物がmCBSである場合、この化合物は、硫酸化β-O-メチルセロビオシド二糖、又はβ-O-メチルセロビオシドサルフェートのナトリウム塩、即ちmCBS.Naである。
【0129】
本明細書で実証されているように、本発明の化合物(特にmCBS)は、NETの毒性効果をブロックし、それにより敗血症の処置として有用である。
【0130】
そのため、本発明の化合物及び前記化合物を含む治療用組成物又は医薬組成物は、(医療処置の場合における)前処置と敗血症が発症した後の処置との両方を含む、敗血症におけるNETの細胞毒性活性を寛解させる手段を提供する。
【0131】
B.非感染性SIRS
非感染性の全身炎症性反応症候群(SIRS)は、全身に影響を及ぼす炎症状態である。非感染性SIRSは、非感染性の侵襲に対する身体の反応である。SIRSの定義は、非感染性SIRSを「炎症性」の反応と称するが、非感染性SIRSは、実際には炎症誘発性成分及び抗炎症性成分を有する。
【0132】
SIRSは、全身の炎症、臓器機能障害及び臓器不全に関連する重篤な状態である。SIRSは、サイトカインストームのサブセットであり、様々なサイトカインの異常な調節が存在する。SIRSは、敗血症とも密接に関係しており、この敗血症では、患者は、SIRSの基準を満たしており、且つ感染が疑われるか又は感染が証明されている。非感染性SIRSの原因として、例えば外傷、手術、外傷性出血、熱傷及び急性膵炎が実例として挙げられる。
【0133】
本発明の第2、第3又は第4の態様のある実施形態では、NETの細胞毒性活性を阻害することにより、対象におけるNET関連の非感染性SIRSを(予防的又は治療的に)処置する方法であって、ポリアニオン性硫酸化セロビオシドであって、その還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量又は薬学的に有効な量を対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0134】
この実施形態によれば、選択された化合物は、好ましくは、還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシドである。より好ましくは、小さい非荷電グリコシド結合置換基により、その還元末端において硫酸化されている同じポリアニオンに比べると、ポリアニオンの化学的安定性が改善されている。特に、本化合物がmCBSである場合、この化合物は、硫酸化β-O-メチルセロビオシド二糖、又はβ-O-メチルセロビオシドサルフェートのナトリウム塩、即ちmCBS.Naである。
【0135】
本明細書で実証されているように、本発明の化合物(特にmCBS)は、NETの毒性効果をブロックし、それにより非感染性SIRSの処置として有用である。
【0136】
そのため、本発明の化合物及び前記化合物を含む治療用組成物又は医薬組成物は、(医療処置の場合における)前処置と非感染性SIRSが発症した後の処置との両方を含む、非感染性SIRSにおけるNETの細胞毒性活性を寛解させる手段を提供する。
【0137】
B.1 外傷
身体外傷とは、重篤で身体が変わる身体的損傷(例えば、四肢の粉砕又は切断)のことである。
【0138】
鈍力外傷は、鈍器から又は鈍器により加えられる衝撃又は他の力によって引き起こされる身体外傷の一種であり、貫通性外傷は、物体が皮膚又は組織を貫く身体外傷の一種である。外傷は、事故等の無計画なもの又は手術の場合の計画的なものの両方としても説明され得る。両方とも軽度~重度の組織損傷、出血及び/又はショックを特徴とし得、両方ともSIRSを引き起こす可能性があるが、その後の感染及び敗血症のリスクも著しく高める。
【0139】
NETは、感染の非存在下において、外傷又は重度の細胞ストレス後に放出される。外傷を受けている患者は、血液中に存在するNETのレベルが上昇している可能性がある。NETは、外傷の病理の重要なメディエータとして示唆されている。
【0140】
本発明の第2、第3又は第4の態様のある実施形態では、NETの細胞毒性活性を阻害することにより、対象におけるNET関連の外傷を(予防的又は治療的に)処置する方法であって、ポリアニオン性硫酸化セロビオシド、若しくはその還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド、又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量又は薬学的に有効な量を対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0141】
この実施形態によれば、選択された化合物は、好ましくは、還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシドである。より好ましくは、小さい非荷電グリコシド結合置換基により、その還元末端において硫酸化されている同じポリアニオンに比べると、ポリアニオンの化学的安定性が改善されている。特に、本化合物がmCBSである場合、この化合物は、硫酸化β-O-メチルセロビオシド二糖、又はβ-O-メチルセロビオシドサルフェートのナトリウム塩、即ちmCBS.Naである。
【0142】
mCBS等の化合物は、NETの毒性効果をブロックし得、そのため外傷患者での処置として有用である。
【0143】
そのため、本発明の化合物及び前記化合物を含む治療用組成物又は医薬組成物は、(医療処置の場合における)前処置と外傷性傷害が生じた後の処置との両方を含む、外傷におけるNETの細胞毒性活性を寛解させる手段を提供する。
【0144】
B.2.手術
手術は、身体の機能若しくは外観の改善に役立つために又はときにいくつかの他の理由のために、疾患又は傷害等の病的状態を調査及び/又は処置するために患者に手術的な手技又は機器技術を使用する。本発明は、下記でさらに定義されるように、手術に起因する外傷に対処し得る。
【0145】
本発明の第2、第3又は第4の態様のある実施形態では、NETの細胞毒性活性を阻害することにより、対象におけるNET関連の外科的外傷を(予防的又は治療的に)処置する方法であって、ポリアニオン性硫酸化セロビオシド、若しくはその還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド、又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量又は薬学的に有効な量を対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0146】
この実施形態によれば、選択された化合物は、好ましくは、還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシドである。より好ましくは、小さい非荷電グリコシド結合置換基により、その還元末端において硫酸化されている同じポリアニオンに比べると、ポリアニオンの化学的安定性が改善されている。特に、本化合物がmCBSである場合、この化合物は、硫酸化β-O-メチルセロビオシド二糖、又はβ-O-メチルセロビオシドサルフェートのナトリウム塩、即ちmCBS.Naである。
【0147】
概して、処置は、患者の組織の切除又は以前から持続する傷の縫合を伴う場合に手術と見なされる。必ずしもこの範疇に該当しない他の処置(例えば、血管形成術又は内視鏡検査)も、一般的な外科的処置又は外科的設定(例えば、無菌環境、麻酔、無菌条件、典型的な手術器具及び縫合又はステープリングの使用)を伴う場合に手術と見なされる場合がある。手術の全ての形態は、侵襲的処置と見なされるが、いわゆる非侵襲的手術は、通常、対象となる構造を貫通しない切除(例えば、角膜のレーザー焼灼術)又は放射線外科的処置(例えば、腫瘍の照射)を指す。
【0148】
本発明の化合物及び前記化合物を含む治療用組成物又は医薬組成物は、NETの細胞毒性活性を寛解させ得ることから、本発明は、(医療処置の場合における)前処置と外科的傷害が生じた後の処置との両方を含む、外科的外傷での使用のための処置を提供する。
【0149】
B.3.外傷性出血
外傷性出血は、傷害の広範にわたる国際的影響の大半を占めており、死亡の大部分の原因となり、負傷者に大きい罹患率をもたらす。病院前救護の差異にもかかわらず、外傷性出血の急性期管理は、世界中で類似しており、十分に受け入れられる公表されたガイドラインに従う。重傷の患者のケアは、蘇生段階、手術段階及び救命治療段階の4つの多くの場合に重複するセグメントとして起こる。出血の診断及びコントロールは、外傷ケアの全ての段階で高い優先度であるべきであり、出血性ショックの状態である患者で特に重要である。出血コントロールの初期の試みは、直接圧迫、圧迫包帯又は止血帯による、目に見える重度の出血源の直接コントロール;長骨及び骨盤の骨折の安定化;並びに患者の保温を含む。蘇生段階では、温めた静脈内輸液、出血の外科的コントロール前の低血圧蘇生並びに血液及び血液製剤の適切な注入が行われる。手術段階では、出血及び任意の他の傷害の外科的コントロール並びに追加の輸血が行われる。最後に、救命治療段階では、術後のサポート及び組織潅流が提供される)。
【0150】
本発明の化合物及び前記化合物を含む治療用組成物又は医薬組成物は、NETの細胞毒性活性を寛解させ得ることから、本発明は、(医療処置の場合における)前処置と外傷性出血が生じた後の処置との両方を含む、外傷性出血での使用のための処置を提供する。
【0151】
B.4.熱傷
熱傷は、熱、寒さ、電気、化学物質、摩擦又は放射線によって引き起こされる傷害であり得る。第1度熱傷は、通常、発赤(紅斑)、白斑及び受傷部位での軽度の痛みに限定される。この熱傷は、通常、表皮中にのみ広がる。第2度熱傷は、透明な液体でさらに満たされ、皮膚の表面に水膨れができ、且つ神経関与のレベルに応じて多少の痛みを伴う可能性がある。第2度熱傷は、表皮(真皮乳頭層)に及ぶが、深い真皮層(真皮網状層)にも及ぶ場合がある。第3度熱傷は、皮膚の炭化をさらに有し、硬くて革のような焼痂が生じる。焼痂とは、身体の影響を受けていない部分から分離している痂皮のことである。多くの場合、紫色の液体も存在する。このタイプの熱傷は、火傷した領域中では神経末端が破壊されていることから痛みを伴わないことが多い。深刻な熱傷(特に身体の広範な領域を覆う場合)は、死をもたらす可能性があり、(例えば、煙の吸入による)肺への熱傷のあらゆる兆候は、医療的緊急事態である。
【0152】
皮膚の下にある組織(例えば、筋肉又は骨)を傷つける熱傷は、第4度熱傷に分類されることがある。この熱傷は、下記のさらなる3段階に分けられる:皮膚が取り返しのつかないほど失われる第4度熱傷、筋肉が取り返しのつかないほど失われる第5度熱傷及び骨が炭化している第6度熱傷。
【0153】
様々な熱傷がNETレベルの上昇につながり、その結果、毒性と関連している。このNET毒性が存在する限り、本発明は、本発明の医薬組成物を使用してこの毒性を低減し、それにより患者側の不快感を低減又は緩和し、さらにより高用量の治療を可能にしようとする。
【0154】
熱傷に罹患している患者は、血液中に存在するNETのレベルが上昇している可能性がある。NETは、熱傷の病理の重要なメディエータとして示唆されている。
【0155】
本発明の第2又は第3の態様のある実施形態では、対象への熱傷によって引き起こされるヒストンによって誘発される細胞毒性を寛解させる方法であって、ポリアニオン性硫酸化セロビオシド、若しくはその還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド、又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量又は薬学的に有効な量を対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0156】
この実施形態によれば、選択された化合物は、好ましくは、還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシドである。より好ましくは、小さい非荷電グリコシド結合置換基により、その還元末端において硫酸化されている同じポリアニオンに比べると、ポリアニオンの化学的安定性が改善されている。特に、本化合物がmCBSである場合、この化合物は、硫酸化β-O-メチルセロビオシド二糖、又はβ-O-メチルセロビオシドサルフェートのナトリウム塩、即ちmCBS.Naである。
【0157】
mCBS等の化合物は、NETの毒性効果をブロックし得、そのため熱傷患者での処置として有用である。
【0158】
そのため、本発明の化合物及び前記化合物を含む治療用組成物又は医薬組成物は、対象の熱傷におけるNETの細胞毒性活性を寛解させる手段を提供する。
【0159】
B.5.急性膵炎
急性膵炎は、無菌性炎症及び腺房細胞死(例えば壊死及びアポトーシス)による膵臓の急速に発症する炎症を特徴とする。
【0160】
急性膵炎は、その重症度に応じて、重度の合併症を有する可能性があり、処置にもかかわらず高い死亡率を有する可能性がある。軽症例では、保存的処置又は腹腔鏡検査による処置が成功することが多いが、重症例では、疾患プロセスを抑制するために侵襲的手術(多くの場合に複数の介入)が必要である。
【0161】
急性膵炎に罹患している患者は、血液中に存在するNETのレベルが上昇している可能性がある。NETは、急性膵炎の病理の重要なメディエータとして示唆されている。
【0162】
本発明の第2、第3又は第4の態様のある実施形態では、NETの細胞毒性活性を阻害することにより、対象におけるNET関連の急性膵炎を(予防的又は治療的に)処置する方法であって、ポリアニオン性硫酸化セロビオシド、若しくはその還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド、又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量又は薬学的に有効な量を対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0163】
この実施形態によれば、選択された化合物は、好ましくは、還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシドである。より好ましくは、小さい非荷電グリコシド結合置換基により、その還元末端において硫酸化されている同じポリアニオンに比べると、ポリアニオンの化学的安定性が改善されている。特に、本化合物がmCBSである場合、この化合物は、硫酸化β-O-メチルセロビオシド二糖、又はβ-O-メチルセロビオシドサルフェートのナトリウム塩、即ちmCBS.Naである。
【0164】
mCBS等の化合物は、NETの毒性効果をブロックし得、そのため急性膵炎患者での処置として有用である。
【0165】
そのため、本発明の化合物及び前記化合物を含む治療用組成物又は医薬組成物は、(医療処置の場合における)前処置と急性膵炎が発症した後の処置との両方を含む、急性膵炎におけるNETの細胞毒性活性を寛解させる手段を提供する。
【0166】
C.虚血再灌流傷害
虚血再灌流傷害(例えば、移植関連の虚血再灌流傷害)及び薬剤介在組織傷害は、微生物の非存在下で起こるプロセスである無菌性炎症を生じる。
【0167】
虚血とは、組織への血液供給が制限され、細胞の代謝に必要な酸素が欠乏することである。長期にわたる虚血(60分以上)では、ATP代謝の分解産物としてヒポキサンチンが形成される。酵素キサンチンデヒドロゲナーゼは、酸素のより高い利用可能性の結果として、キサンチンオキシダーゼに変換される。この酸化により、分子酸素が、反応性がより高いスーパーオキシド及びヒドロキシルラジカルに変換される。キサンチンオキシダーゼは、尿酸も産生し、この尿酸は、酸化促進剤と、ペルオキシニトライト等の反応種の捕捉剤との両方として作用する場合がある。再灌流中に生成された過剰な一酸化窒素は、スーパーオキシドと反応して強力な反応種ペルオキシナイトライトを生成する。そのようなラジカル及び活性酸素種は、細胞膜脂質、タンパク質及びグリコサミノグリカンを攻撃し、さらなる損傷を与える。このラジカル及び活性酸素種は、酸化還元シグナル伝達により特定の生物学的プロセスを開始する場合もある。
【0168】
再灌流傷害は、損傷した組織の炎症反応に部分的に起因する損傷を指す。新たに戻る血液により、この領域に運ばれた白血球は、インターロイキン等の炎症性因子のホストを放出し、組織損傷に反応してフリーラジカルも放出する。血流の回復により細胞内に酸素が再導入され、細胞のタンパク質、DNA及び原形質膜が損傷を受ける。その結果、細胞膜への損傷がさらなるフリーラジカルの放出を引き起こす可能性がある。そのような反応種は、酸化還元シグナル伝達で間接的に作用してアポトーシスを活性化する。白血球も小さい毛細血管中に蓄積し、この毛細血管を閉塞させ、より多くの虚血を引き起こす。
【0169】
再灌流傷害は、脳卒中及び脳外傷に関与する脳の虚血性カスケードにも関与する。虚血及び再灌流傷害の発作の繰り返しも、褥瘡及び糖尿病性足部潰瘍等の慢性創傷の形成及び治癒不全につながる要因であると考えられている。連続的な圧力は、血液供給を制限して虚血を引き起こし、再灌流中に炎症が生じる。このプロセスが繰り返されるうちに、最終的に創傷が生じるのに十分な損傷を組織が受ける。
【0170】
NETレベルは、肝臓、腎臓、肺及び脳の傷害を伴う動物の虚血再灌流モデルにおいて上昇しており、これは、無菌性炎症の調節におけるNETの重要な役割を示唆する。
【0171】
NETは、肝臓だけでなく、直接的毒性又は炎症促進効果を介して急性腎傷害又は虚血性脳卒中も媒介する。NETの形成および活性の阻害は、組織損傷の治療戦略を提示する。
【0172】
虚血再灌流傷害(例えば、移植関連の虚血再灌流傷害)及び薬剤介在組織傷害に罹患している患者は、血液中に存在するNETのレベルが上昇している。NETは、虚血/再灌流及び薬剤介在組織傷害の病理の重要なメディエータとして示唆されている。
【0173】
本発明の第2、第3又は第4の態様のある実施形態では、NETの細胞毒性活性を阻害することにより、対象におけるNET関連のIRI及び/又は薬剤介在組織傷害を(予防的又は治療的に)処置する方法であって、ポリアニオン性硫酸化セロビオシド、若しくはその還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド、又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量又は薬学的に有効な量を対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0174】
この実施形態によれば、選択された化合物は、好ましくは、還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシドである。より好ましくは、小さい非荷電グリコシド結合置換基により、その還元末端において硫酸化されている同じポリアニオンに比べると、ポリアニオンの化学的安定性が改善されている。特に、本化合物がmCBSである場合、この化合物は、硫酸化β-O-メチルセロビオシド二糖、又はβ-O-メチルセロビオシドサルフェートのナトリウム塩、即ちmCBS.Naである。
【0175】
mCBS等の化合物は、NETの毒性効果をブロックし得、そのため虚血/再灌流及び薬剤介在組織傷害の患者での処置として有用である。
【0176】
そのため、本発明の化合物及び前記化合物を含む治療用組成物又は医薬組成物は、(医療処置の場合における)前処置と虚血/再灌流及び薬剤介在組織傷害が発症した後の処置との両方を含む、虚血/再灌流及び薬剤介在組織傷害におけるNETの細胞毒性活性を寛解させる手段を提供する。
【0177】
D.凝血及び血栓症
凝血は、血液が血餅を形成する生物学的プロセスである。正確な調節機構により、出血(bleeding)(出血(haemorrhage))又は閉塞性凝固(血栓症)のリスクの増加をもたらす異常な凝血が防止される。
【0178】
凝血及び又は血栓症に罹患している患者は、血液中に存在するNETのレベルが上昇している。NETは、凝血及び又は血栓症の病理の重要なメディエータとして示唆されている。
【0179】
本発明の第2又は第3の態様のある実施形態では、NETの細胞毒性活性を阻害することにより、対象における凝血及び血栓症を処置する方法であって、ポリアニオン性硫酸化セロビオシド、若しくはその還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド、又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量又は薬学的に有効な量を対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0180】
この実施形態によれば、選択された化合物は、好ましくは、還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシドである。より好ましくは、小さい非荷電グリコシド結合置換基により、その還元末端において硫酸化されている同じポリアニオンに比べると、ポリアニオンの化学的安定性が改善されている。特に、本化合物がmCBSである場合、この化合物は、硫酸化β-O-メチルセロビオシド二糖、又はβ-O-メチルセロビオシドサルフェートのナトリウム塩、即ちmCBS.Naである。
【0181】
mCBS等の化合物は、NETの毒性効果をブロックし得、そのため凝血及び又は血栓症の患者での処置として有用である。
【0182】
そのため、本発明の化合物及び前記化合物を含む治療用組成物又は医薬組成物は、(医療処置の場合における)前処置と凝血又は血栓症が発症した後の処置との両方を含む、凝血及び又は血栓症におけるNETの細胞毒性活性を寛解させる手段を提供する。
【0183】
E.自己免疫/炎症性疾患
本発明は、多発性硬化症、脊椎関節症、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、反応性関節炎、腸炎性関節炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、過敏性腸疾患、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、家族性地中海熱、筋萎縮性側索硬化症、シェーグレン症候群、早期関節炎、ウイルス性関節炎又は乾癬等の様々な自己免疫及び/又は炎症性疾患状態の処置を企図する。これらの疾患の診断及び処置は、文献に十分に記述されている。
【0184】
自己免疫及び/又は炎症性疾患に罹患している患者は、血液中に存在するNETのレベルが上昇している。NETは、自己免疫及び/又は炎症性疾患の病理の重要なメディエータとして示唆されている。
【0185】
本発明の第2又は第3の態様のある実施形態では、NETの細胞毒性活性を阻害することにより、対象における自己免疫及び/又は炎症性疾患を処置する方法であって、ポリアニオン性硫酸化セロビオシド、若しくはその還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド、又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量又は薬学的に有効な量を対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0186】
この実施形態によれば、選択された化合物は、好ましくは、還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシドである。より好ましくは、小さい非荷電グリコシド結合置換基により、その還元末端において硫酸化されている同じポリアニオンに比べると、ポリアニオンの化学的安定性が改善されている。特に、本化合物がmCBSである場合、この化合物は、硫酸化β-O-メチルセロビオシド二糖、又はβ-O-メチルセロビオシドサルフェートのナトリウム塩、即ちmCBS.Naである。
【0187】
mCBS等の化合物は、NETの毒性効果をブロックし得、そのため自己免疫及び/又は炎症性疾患の患者での処置として有用である。
【0188】
そのため、本発明の化合物及び前記化合物を含む治療用組成物又は医薬組成物は、(医療処置の場合における)前処置と自己免疫及び/又は炎症性疾患が発症した後の処置との両方を含む、自己免疫及び/又は炎症性疾患におけるNETの細胞毒性活性を寛解させる手段を提供する。
【0189】
F.急性呼吸促迫症候群
呼吸促迫症候群(RDS)又は成人呼吸促迫症候群(IRDSとは対照的)としても既知である急性呼吸促迫症候群(ARDS)とは、肺への様々な形態の傷害に対する重篤な反応のことである。これは、透過性肺水腫の増加をもたらす最も重要な障害である。
【0190】
ARDSは、様々な直接的侵襲及び間接的侵襲によって引き起こされる。ARDSは、炎症、低酸素血症を引き起こし且つ多臓器不全を引き起こすことが多い炎症性メディエータの全身放出を伴うガス交換の障害につながる肺実質の炎症を特徴とする。この状態は、生命を脅かし、多くの場合に致死的であり、通常、人工呼吸器及び集中治療室への入院を必要とする。重症度が低い形態は、輸血関連急性肺傷害(TRALI)等の急性肺傷害(ALI)と呼ばれている。
【0191】
ARDSは、傷害又は急性疾病の発作の24~48時間以内に発症する可能性がある。そのような場合、患者は、通常、息切れ、頻呼吸及び根本的原因(即ちショック)に関連する症状を呈する。マラリア等の長期にわたる疾病がARDSの引き金になる可能性もある。次いで、ARDSは、特に急性感染の発症後しばらくしてから発症する場合がある。
【0192】
ARDSに罹患している患者は、血液中に存在するNETのレベルが上昇している可能性がある。NETは、ARDSの病理の重要なメディエータとして示唆されている。
【0193】
本発明の第2、第3又は第4の態様のある実施形態では、NETの細胞毒性活性を阻害することにより、対象におけるNET関連の急性呼吸促迫症候群を(予防的又は治療的に)処置する方法であって、ポリアニオン性硫酸化セロビオシド、若しくはその還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド、又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量又は薬学的に有効な量を対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0194】
この実施形態によれば、選択された化合物は、好ましくは、還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシドである。より好ましくは、小さい非荷電グリコシド結合置換基により、その還元末端において硫酸化されている同じポリアニオンに比べると、ポリアニオンの化学的安定性が改善されている。特に、本化合物がmCBSである場合、この化合物は、硫酸化β-O-メチルセロビオシド二糖、又はβ-O-メチルセロビオシドサルフェートのナトリウム塩、即ちmCBS.Naである。
【0195】
mCBS等の化合物は、NETの毒性効果をブロックし得、そのためARDSの患者での処置として有用である。
【0196】
そのため、本発明の化合物及び前記化合物を含む治療用組成物又は医薬組成物は、(医療処置の場合における)前処置とARDSが発症した後の処置との両方を含む、ARDSにおけるNETの細胞毒性活性を寛解させる手段を提供する。
【0197】
G.心血管疾患
心血管疾患は、心臓又は血管(動脈及び静脈)に関与する疾患のクラスを指す。この用語は、技術的には、心血管系に影響を及ぼすあらゆる疾患を指すが、通常、粥状動脈硬化(動脈疾患)に関連するものを指すために使用される。これらの状態は、原因、機序及び処置が類似している。
【0198】
心血管疾患の処置は、各患者における疾患の特定の形態に依存するが、効果的な処置は、上記で論じた予防的な生活様式の変化を常に含む。血圧を下げる薬物、アスピリン及びスタチン系コレステロール降下薬等の薬物が有用な場合がある。状況によっては、手術又は血管形成術により、損傷した血管を再開するか、修復するか又は置き換えることが正当化される場合がある。
【0199】
心血管疾患の様々な形態として、下記が挙げられる:動脈瘤、狭心症、不整脈、粥状動脈硬化、心筋症、脳血管疾患、先天性心疾患、うっ血性心不全、心筋炎、弁疾患、冠動脈疾患、拡張型心筋症、拡張機能障害、心内膜炎、高血圧(high blood pressure)(高血圧(hypertension))、肥大型心筋症、僧帽弁逸脱、心筋梗塞及び静脈血栓塞栓。
【0200】
NET関連の心血管疾患に罹患している患者は、血液中に存在するNETのレベルが上昇しており、これはNET関連の心血管疾患の病理の重要なメディエータとして示唆されている。
【0201】
本発明の第2、第3又は第4の態様のある実施形態では、NETの細胞毒性活性を阻害することにより、対象におけるNET関連の心血管疾患を(予防的又は治療的に)処置する方法であって、ポリアニオン性硫酸化セロビオシド、若しくはその還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド、又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量又は薬学的に有効な量を対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0202】
この実施形態によれば、選択された化合物は、好ましくは、還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシドである。より好ましくは、小さい非荷電グリコシド結合置換基により、その還元末端において硫酸化されている同じポリアニオンに比べると、ポリアニオンの化学的安定性が改善されている。特に、本化合物がmCBSである場合、この化合物は、硫酸化β-O-メチルセロビオシド二糖、又はβ-O-メチルセロビオシドサルフェートのナトリウム塩、即ちmCBS.Naである。
【0203】
mCBS等の化合物は、NETの毒性作用をブロックすることができ、それにより、NET関連の循環器疾患の患者における処置として有用である。
【0204】
したがって、本発明の化合物、及び前記化合物を含む治療用組成物又は医薬組成物は、前処置(医療処置の場合における)とNETと関連する循環器疾患が起こった後の処置の両方を含めた、NET関連の循環器疾患におけるNETタンパク質の細胞毒性活性を寛解させる手段を提供する。
【0205】
H.線維症
線維症に罹患している患者は、その血液中に存在するNETのレベルが上昇している。NETは、線維症病理の重要なメディエータとして示唆されている。
【0206】
本発明の第2又は第3の態様の実施形態では、対象における、NETによって誘発される細胞毒性が引き起こす線維症を寛解させる方法であって、対象にポリアニオン性硫酸化セロビオシド若しくはその還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド、又はその薬学的に許容される塩の治療的又は薬学的に有効な量を投与するステップを含む方法が提供される。
【0207】
この実施形態によれば、選択された化合物は、好ましくは、還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシドである。より好ましくは、小さい非荷電グリコシド結合置換基により、その還元末端において硫酸化されている同じポリアニオンに比べると、ポリアニオンの化学的安定性が改善されている。特に、本化合物がmCBSである場合、この化合物は、硫酸化β-O-メチルセロビオシド二糖、又はβ-O-メチルセロビオシドサルフェートのナトリウム塩、即ちmCBS.Naである。
【0208】
mCBS等の化合物は、NETの毒性作用をブロックすることができ、それにより、線維症の患者における処置として有用である。
【0209】
したがって、本発明の化合物、及び前記化合物を含む治療用組成物又は医薬組成物は、前処置(医療処置の場合における)と線維症が起こった後の処置の両方を含めた、対象における線維症のNETの細胞毒性活性を寛解させる手段を提供する。
【0210】
I.糖尿病
糖尿病に罹患している患者は、その血液中に存在するNETのレベルが上昇し得る。NETは、糖尿病病理の重要なメディエータとして示唆されている。
【0211】
本発明は、糖尿病におけるNET関連の合併症(例えば、炎症及び創傷治癒の遅延)を処置する方法を提供する。この方法は、1型糖尿病、1.5型糖尿病又は2型糖尿病と診断を受けた対象に、本発明の少なくとも1種の化合物の治療上有効な量を投与することを含む。
【0212】
本発明の第2又は第3の態様の実施形態では、対象における糖尿病を寛解させる方法であって、ポリアニオン性硫酸化セロビオシド、若しくはその還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド、又はその薬学的に許容される塩の治療的又は薬学的に有効な量を対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0213】
この実施形態によれば、選択された化合物は、好ましくは、還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシドである。より好ましくは、小さい非荷電グリコシド結合置換基により、その還元末端において硫酸化されている同じポリアニオンに比べると、ポリアニオンの化学的安定性が改善されている。特に、本化合物がmCBSである場合、この化合物は、硫酸化β-O-メチルセロビオシド二糖、又はβ-O-メチルセロビオシドサルフェートのナトリウム塩、即ちmCBS.Naである。
【0214】
mCBS等の化合物は、NETの毒性効果をブロックし得、そのため糖尿病患者での処置として有用である。
【0215】
特定の実施形態では、NETが関与している糖尿病の症状は、炎症である。炎症の減少を理学的検査及び炎症マーカーの存在の減少によりモニタリングし得る。
【0216】
特定の実施形態では、糖尿病を処置する方法であって、糖尿病を処置するために使用される薬剤と、本発明の少なくとも1種の化合物との治療上有効な量の投与を含む方法が提供される。糖尿病を処置するために使用される薬剤は、インスリンであり得るか、又は下記から選択される別の薬剤であり得る:ビグアナイド、メトホルミン(Glucophage)、液状メトホルミン(Riomet)、徐放メトホルミン(Glucophage XR、Fortamet、Glumetza)、スルホニル尿素、グリメピリド(Amaryl)、グリブリド(Diabeta、Micronase)、グリピジド(Glucotrol、Glucotrol XL)、微粒子化グリブリド(Glynase)、メグリチニド(Meglitinides)、レパグリニド(Prandin)、D-フェニルアラニン誘導体、ナテグリニド(Starlix)、チアゾリジンジオン、ピオグリタゾン(TZDs)、ピオグリタゾン、(Actos)、DPP-4阻害剤、シタグリプチン(Januvia)、サキサグリプチン(Onglyza)、リナグリプチン(Tradjenta)、アルファ-グルコシダーゼ、アカルボース(Precose)、ミグリトール(Glyset)、胆汁酸捕捉剤、コレセベラム(Welchol)、ピオグリタゾン及びメトホルミン(Actoplus Met)、グリブリド及びメトホルミン(Glucovance)、グリピジド及びメトホルミン(Metaglip)、シタグリプチン及びメトホルミン(Janumet)、サキサグリプチン及びメトホルミン(kombiglyze)、レパグリニド及びメトホルミン(Prandimet)並びにピオグリタゾン及びグリメピリド(Duetact)。
【0217】
そのため、本発明の化合物及び前記化合物を含む治療用組成物又は医薬組成物は、対象の糖尿病におけるNETの細胞毒性活性を寛解させる手段を提供する。従って、本発明は、(医療処置の場合における)前処置と糖尿病が発症した後の処置との両方を含む、対象における糖尿病の処置を提供する。
【0218】
J.化学療法、放射線療法及びサイトカイン療法の毒性
様々な形態の癌治療(例えば、化学療法、放射線及びサイトカイン)は、癌患者において毒性を伴い、ときに重篤である。この毒性がヒストンの細胞外作用により少なくとも部分的に引き起こされる限り、本発明は、本発明の医薬組成物を使用してこの毒性を低減し、それにより患者側の不快感を低減又は緩和し、さらにより高用量の治療を可能にしようとする。
【0219】
様々な形態の癌治療(例えば、化学療法、放射線及びサイトカイン療法)の副作用を罹患している患者は、血液中に存在するNETのレベルが上昇している可能性がある。NETは、この副作用の重要なメディエータとして示唆されている。
【0220】
本発明の第2又は第3の態様のある実施形態では、NETの細胞毒性活性を阻害することにより、対象における様々な形態の癌治療(例えば、化学療法、放射線及びサイトカイン療法)の副作用を寛解させる方法であって、ポリアニオン性硫酸化セロビオシド、若しくはその還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド、又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量又は薬学的に有効な量を対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0221】
この実施形態によれば、選択された化合物は、好ましくは、還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシドである。より好ましくは、小さい非荷電グリコシド結合置換基により、その還元末端において硫酸化されている同じポリアニオンに比べると、ポリアニオンの化学的安定性が改善されている。特に、本化合物がmCBSである場合、この化合物は、硫酸化β-O-メチルセロビオシド二糖、又はβ-O-メチルセロビオシドサルフェートのナトリウム塩、即ちmCBS.Naである。
【0222】
mCBS等の化合物は、NETの毒性効果をブロックし得、そのため様々な形態の癌治療(例えば、化学療法、放射線及びサイトカイン療法)の副作用の処置として有用である。
【0223】
本発明の非常に好ましい形態では、様々な形態の癌治療(例えば、化学療法、放射線及びサイトカイン療法)を受けている患者における、そのような治療の副作用の処置で使用される化合物は、化合物β-O-メチルセロビオシドサルフェート又はその薬学的に許容される塩である。例えば、この方法で使用される化合物は、ナトリウムβ-O-メチルセロビオシドサルフェートである。
【0224】
そのため、本発明の化合物及び前記化合物を含む治療用組成物又は医薬組成物は、(医療処置の場合における)前処置と、様々な形態の癌治療(例えば、化学療法、放射線及びサイトカイン療法)を行った後の処置との両方を含む、これらの治療の副作用におけるNETの細胞毒性活性を寛解させる手段を提供する。
【0225】
K.創傷治癒
同様に提供されるのは、創傷治癒での使用のための方法である。本明細書で使用される場合、「創傷治癒」は、皮膚(又は別の臓器-組織)が傷害後に自己を修復する複雑なプロセスを指す。創傷治癒の古典的なモデルは、下記の3つ又は4つの連続した(さらに重複している)時期に分けられる:(1)血餅が止血した場合の止血、(2)炎症、(3)増殖、及び(4)再構築。皮膚が傷害を受けると、損傷を修復するために、一連の複雑な生化学的事象が、密接に組織化されたカスケードで起こる。炎症期中、白血球により、細菌及び細胞残屑が貪食されて創傷から除去される。血小板由来の成長因子(血小板のアルファ顆粒中に貯蔵されている)が創傷中に放出され、増殖期中に細胞の遊走及び分裂を引き起こす。増殖期は、血管新生、コラーゲン沈着、肉芽組織形成、上皮化及び創傷収縮を特徴とする。新たな血管が形成され、線維芽細胞が成長し、コラーゲン及びフィブロネクチンが排泄されることにより新たな仮の細胞外マトリックス(ECM)が形成される。同時に、表皮の再上皮化が起こり、上皮細胞が増殖して創傷床の上を「這い」、新たな組織のカバーを生成する。
【0226】
創傷治癒の困難さに悩まされている患者は、血液中に存在するNETのレベルが上昇している可能性がある。NETは、創傷治癒の病理の重要なメディエータとして示唆されている。
【0227】
本発明の第2又は第3の態様のある実施形態では、対象の創傷治癒中に生じるヒストン誘発細胞毒性を寛解させる方法であって、ポリアニオン性硫酸化セロビオシド、若しくはその還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド、又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量又は薬学的に有効な量を対象に投与するステップを含む方法が提供される。
【0228】
この実施形態によれば、選択された化合物は、好ましくは、還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシドである。より好ましくは、小さい非荷電グリコシド結合置換基により、その還元末端において硫酸化されている同じポリアニオンに比べると、ポリアニオンの化学的安定性が改善されている。特に、本化合物がmCBSである場合、この化合物は、硫酸化β-O-メチルセロビオシド二糖、又はβ-O-メチルセロビオシドサルフェートのナトリウム塩、即ちmCBS.Naである。
【0229】
mCBS等の化合物は、NETの毒性作用をブロックすることができ、それにより、創傷治癒の困難さに悩まされる患者における処置として有用である。
【0230】
そのため、本発明の化合物及び前記化合物を含む治療用組成物又は医薬組成物は、対象の創傷の処置におけるNETの細胞毒性活性を寛解させる手段を提供する。
【0231】
L.中枢神経系疾患
中枢神経系疾患に罹患している患者は、その血液中に存在するNETのレベルが上昇し得る。NETは、中枢神経系疾患の病理の重要なメディエータとして示唆されている。例えば、ハンチントン病は、ポリグルタミンの反復伸長によって引き起こされる常染色体優性の神経変性障害であり、ハンチントンタンパク質中のポリグルタミントラック(polyglutamine track)が伸長される。
【0232】
本発明の第2又は第3の態様の実施形態では、対象における、NETにより誘発される中枢神経系疾患を寛解させる方法であって、対象にポリアニオン性硫酸化セロビオシド若しくはその還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド、又はその薬学的に許容される塩の治療的又は薬学的に有効な量を投与するステップを含む方法が提供される。
【0233】
この実施形態によれば、選択された化合物は、好ましくは、還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシドである。より好ましくは、小さい非荷電グリコシド結合置換基により、その還元末端において硫酸化されている同じポリアニオンに比べると、ポリアニオンの化学的安定性が改善されている。特に、本化合物がmCBSである場合、この化合物は、硫酸化β-O-メチルセロビオシド二糖、又はβ-O-メチルセロビオシドサルフェートのナトリウム塩、即ちmCBS.Naである。
【0234】
mCBS等の化合物は、NETの毒性効果をブロックし得、そのため中枢神経系疾患での処置として有用である。
【0235】
そのため、本発明の化合物及び前記化合物を含む治療用組成物又は医薬組成物は、(医療処置の場合における)前処置と中枢神経系疾患が発症した後の処置との両方を含む、対象の中枢神経系疾患におけるNETの細胞毒性活性を寛解させる手段を提供する。
【0236】
3.治療形態及び医薬形態
本発明の第5の態様では、NET関連の合併症の処置での使用のための治療用組成物又は医薬組成物であって、ポリアニオン性硫酸化セロビオシドであって、その還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド又はその治療上許容されるか若しくは薬学的に許容される塩を少なくとも含む治療用組成物又は医薬組成物が提供される。好ましくは、この組成物は、治療上許容されるか又は薬学的に許容される担体、添加剤及び/又は希釈剤を含む。この治療又は医薬での化合物は、中性遊離塩基形態であり得るか又は塩形態であり得る。好ましくは、この化合物は、β-O-メチルセロビオシドサルフェートのナトリウム塩である。
【0237】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される」又は「治療上許容される」は、合理的な利益/リスク比に見合っており、過度の毒性、刺激、アレルギー反応又は他の問題若しくは合併症を伴わず、健全な医学的判断の範囲内でヒト及び動物の組織との接触での使用に適している化合物、物質、組成物及び/又は剤形を指す。
【0238】
投与可能な組成物を調製する方法は、当業者に明らかであり、例えば、全体が参照により本明細書に組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Science,15th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.でより詳細に説明されている。
【0239】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される担体」、又は「薬学的に許容される添加剤」、又は「薬学的に許容される希釈剤」、「治療上許容される担体」、又は「治療上許容される添加剤」、又は「治療上許容される希釈剤」は、ある臓器又は身体の部分から別の臓器又は身体の部分への対象化合物の担持又は輸送に関与する物質、組成物又はビヒクル(例えば、液体又は固体の充填剤、希釈剤、添加剤、製造補助剤(例えば、潤滑剤、タルクマグネシウム、カルシウム、若しくはステアリン酸亜鉛、若しくはステアリン酸)又は溶媒カプセル化物質)を意味する。各担体、希釈剤及び添加剤は、製剤の他の成分と適合し且つ患者に有害ではないという意味で「許容される」ものでなければならない。これは、生物学的に又は他の方法で望ましくないものではない物質であり、即ち、この物質は、許容されない生物学的効果を引き起こすことなく又はこれが含まれる組成物の成分の任意の1つ又は複数と有害な方法で相互作用することなく、活性剤と共に個体に提供され得る。薬学的に許容される担体、希釈剤及び添加剤として機能し得る物質のいくつかの例として下記が挙げられるが、これらに限定されない:(1)糖類、例えばラクトース、グルコース及びスクロース;(2)デンプン類、例えばトウモロコシデンプン及びジャガイモデンプン;(3)セルロース及びその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、微結晶セルロース及び酢酸セルロース;(4)トラガント末;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム及びタルク;(8)添加剤、例えばココアバター及び座薬ワックス;(9)油、例えばピーナッツ油、綿実油、紅花油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及び大豆油;(10)グリコール類、例えばプロピレングリコール;(11)ポリオール類、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコール(PEG);(12)エステル類、例えばオレイン酸エチル及びラウリン酸エチル;(13)寒天;(14)緩衝剤、例えば水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;(15)アルギン酸;(16)パイロジェンフリー水;(17)等張生理食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)pH緩衝溶液;(21)ポリエステル類、ポリカーボネート類及び/又はポリ無水物;(22)増量剤、例えばポリペプチド及びアミノ酸;(23)血清成分、例えば血清アルブミン、HDL及びLDL;(22)C2~C12アルコール、例えばエタノール;並びに(23)医薬製剤で用いられる他の非毒性の適合性物質。製剤中に湿潤剤、結合剤、充填剤、潤滑剤、着色剤、崩壊剤、放出剤、コーティング剤、甘味料、着香料、芳香剤、保存料、水、塩溶液、アルコール、抗酸化剤、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン及び同類のものも存在し得る。「添加剤」、「担体」、「希釈剤」及び「薬学的に許容される単体」又は同類のもの等の用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0240】
治療上許容されるか又は薬学的に許容される担体、添加剤又は希釈剤の例は、下記である:脱塩水又は蒸留水;生理食塩水;植物ベースの油、例えばピーナッツ油、紅花油、オリーブ油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油、例えばピーナッツ油、紅花油、オリーブ油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油、落花生油又はヤシ油;シリコーン油、例えばポリシロキサン類、例えばメチルポリシロキサン、フェニルポリシロキサン及びメチルフェニルポリシロキサン;揮発性シリコーン;鉱油、例えば流動パラフィン、軟パラフィン又はスクアラン;セルロース誘導体、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム又はヒドロキシプロピルメチルセルロース;低級アルカノール類、例えばエタノール又はイソプロパノール;低級アラルカノール類(lower aralkanols);低級ポリアルキレングリコール類又は低級アルキレングリコール類、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール又はグリセリン;脂肪酸エステル類、例えばパルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル又はオレイン酸エチル;ポリビニルピロリドン;寒天;カラギーナン;トラガントガム又はアカシアゴム並びにワセリン。典型的には、担体は、組成物の10重量%~99.9重量%を形成するであろう。
【0241】
本明細書で説明されている組成物は、医薬組成物中に従来見出される他の補助成分を、この補助成分の技術的に確立された使用レベルでさらに含み得る。そのため、例えば、この組成物は、追加の適合性の薬学的に活性な物質(例えば、鎮痒薬、収斂薬、局所麻酔薬又は抗炎症剤)を含み得る。しかしながら、そのような物質は、添加された場合、本明細書で説明されている組成物の成分の生物学的活性を過度に妨げるべきではない。
【0242】
下記で詳細に説明するように、本明細書で説明されている治療上許容されるか又は薬学的に許容される組成物は、固体又は液体の形態での投与のために特に製剤化され得、下記に適合したものが挙げられる:(1)経口投与、例えば水薬(水性若しくは非水性の溶液若しくは懸濁液)、ロゼンジ、糖衣錠、カプセル、丸薬、錠剤(例えば、頬側吸収、舌下吸収及び全身吸収を目標とするもの)、ボーラス、粉末、顆粒、舌への塗布のためのペースト;(2)例えば、滅菌溶液若しくは滅菌懸濁液又は徐放性製剤として、例えば皮下注射、筋肉内注射、静脈内注射又は硬膜外による非経口投与;(3)例えば、(脳中の)実質内投与、髄腔内投与、心室内投与若しくは肝内投与による、処置を必要とする臓器への直接注射;(4)例えば、皮膚に適用されるクリーム、ローション、ジェル、軟膏又は放出制御されたパッチ若しくはスプレーとしての局所適用;(5)吸入(例えば経鼻吸入若しくは経口吸入)による投与に適したエアロゾル形態;(6)例えば、ペッサリー、クリーム、座薬若しくは泡沫剤としての膣内用又は直腸内用;(7)舌下;(8)点眼薬としての眼用;(9)経皮用;(10)経粘膜用;又は(11)経鼻用。
【0243】
一実施形態では、本発明の組成物を非経口注射(例えば、皮下注射、筋肉内注射若しくは静脈内注射)等の注射により投与するか、又は例えば(脳中の)実質内投与、髄腔内投与、心室内投与若しくは肝内投与により組織及び臓器に局所投与する。
【0244】
注射に適した医薬組成物として、滅菌の水溶液(水溶性)又は分散液及び滅菌注射用溶液又は滅菌注射用分散液の即時調製のための滅菌粉末が挙げられる。理想的には、この組成物は、製造及び貯蔵の条件下で安定であり、微生物(例えば細菌及び真菌)の夾雑作用に対してこの組成物を安定化させるための保存料を含み得る。
【0245】
上記で列挙した成分の1つ又は組み合わせと共に、適切な溶媒に必要な量の本発明の医薬組成物を組み込み、必要に応じて続いて滅菌ろ過することにより、滅菌注射用溶液を調製し得る。実例として、単回用量を等張NaCl溶液1mlに溶解させ、液体1000mlに添加し得るか、又は提案されている注入部位で注射し得る(例えば、“Remington’s Pharmaceutical Sciences”15th Edition,pages 1035-1038及び1570-1580を参照されたい)。
【0246】
注射溶液の場合、担体は、下記を含む溶媒又は分散媒体であり得る:例えば、水、リンゲル液、等張生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール(例えば1,2プロピレングリコール)及び液体ポリエチレングリコール並びに同類のもの)、これらの適切な混合物並びに植物油。
【0247】
例えば、レシチン等のコーティングを使用して、分散系の場合には必要な粒径の維持により且つ界面活性を使用して、適切な流動性を維持し得る。微生物の作用の予防を、様々な抗菌剤及び又は抗真菌剤を含むことにより達成し得る。適切な薬剤は、当業者に公知であり、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ベンジルアルコール、アスコルビン酸、チオメロサール(thiomerosal)及び同類のものが挙げられる。多くの場合、本組成物が等張剤を含むことが好ましい場合があり、例えば糖類、多価アルコール類、例えばマンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムを含むことが好ましい場合がある。注射用組成物の持続的吸収を、吸収を遅延させる薬剤(例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチン)をこの組成物に含めることによりもたらし得る。
【0248】
第2の実施形態では、本発明の組成物を例えば不活性希釈剤又は吸収可能な食用担体と共に経口投与する。経口治療的投与のために、この医薬組成物を添加剤と組み合わせ、摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウエハース及び同類なものの形態で使用し得る。
【0249】
経口使用に適した担体、希釈剤、添加剤、アジュバントの一部の例として、ピーナッツ油、液体パラフィン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アカシアガム、トラガカントゴム、ブドウ糖、ショ糖、ソルビトール、マンニトール、ゼラチン及びレシチンが挙げられる。加えて、これらの経口製剤は、適切な着香料及び着色料を含み得る。
【0250】
カプセル形態で使用する場合、このカプセルは、崩壊を遅延させる化合物(例えば、モノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリル)でコーティングされ得る。同様に、錠剤、トローチ、丸剤、カプセル及び同類のものは、下記を含み得る:結合剤、例えばトラガカントゴム、アカシア、コーンスターチ若しくはゼラチン;添加剤、例えばリン酸二カルシウム;追加の崩壊剤、例えばコーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸及び同類のもの;潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム;並びに甘味料、例えばショ糖、ラクトース若しくはサッカリン又は着香料、例えばペパーミント、冬緑油若しくはサクランボ香料(cherry flavouring)。
【0251】
投与単位形態がカプセルである場合、このカプセルは、上記のタイプの物質に加えて、液体担体を含み得る。様々な他の物質は、コーティングとして存在し得るか、又は他の方法でこの投与単位の物理的形状を修飾するために存在し得る。例えば、錠剤、丸剤又はカプセルをシェラック、糖又は両方でコーティングし得る。
【0252】
経口投与のための液体形態(例えばシロップ又はエリキシル)は、上記の薬剤に加えて、液体担体、甘味料(例えばショ糖)、保存料(例えばメチルパラベン及びプロピルパラベン)、色素並びに香料(例えば、サクランボフレーバー又はオレンジフレーバー)を含み得る。適切な液体担体として下記が挙げられる:水、油、例えば、オリーブ油、ピーナッツ油、ゴマ油、ヒマワリ油、紅花油、落花生油、ヤシ油、液体パラフィン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、グリセロール、脂肪アルコール類、トリグリセリド類又はこれらの混合物。
【0253】
経口投与のための懸濁液は、分散剤及び/又は懸濁剤をさらに含み得る。適切な懸濁剤として、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース、ポリ-ビニル-ピロリドン、アルギン酸ナトリウム又はアセチルアルコールが挙げられる。適切な分散剤として下記が挙げられる:レシチン、ステアリン酸等の脂肪酸のポリオキシエチレンエステル、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート若しくはジオレエート、ステアレート又はラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート若しくはジオレエート、ステアレート又はラルレート及び同類のもの。経口投与のための乳濁液は、1種又は複数の乳化剤をさらに含み得る。適切な乳化剤として、上記で例示したような分散剤又は天然ガム、例えばグアーガム、アカシアガム若しくはトラガカントゴムが挙げられる。
【0254】
第3の例示的な実施形態では、本発明の組成物をエアロゾルの形態において又は吸入投与により対象の気道に直接投与する。エアロゾルとしての使用のために、本発明の薬学的に許容される組成物の溶液又は懸濁液を適切な噴霧剤(例えば、プロパン、ブタン又はイソブタンのような炭化水素噴霧剤)及び従来のアジュバントと一緒に加圧エアロゾル容器に充填し得る。そのような組成物を(例えば、ネブライザ又はアトマイザ中での)非加圧形態でも投与し得る。
【0255】
気道への送達のためのエアロゾルは、当該技術分野で既知である:例えば、Adjei,A.and Garren,J.Pharm.Res.,1:565-569(1990);Zanen,P.and Lamm,J-W.J.Int.J.Pharm.,114:111-115(1995);Gonda,I.“Aerosols for delivery of therapeutic an diagnostic agents to the respiratory tract,”in Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,6:273-313(1990);Anderson et al.,Am.Rev.Respir.Dis.,140:1317-1324(1989))を参照されたい。
【0256】
第4の例示的な実施形態では、本組成物をリポソームの形態で投与し得る。リポソームは、一般に、リン脂質又は他の脂質物質に由来し、水性媒体中に分散している単層状又は多層状の水和液晶で形成されている。リポソームを形成し得る、非毒性で生理的に許容されて代謝可能なあらゆる脂質を使用し得る。リポソーム形態の組成物は、安定剤、保存料、添加剤及び同類のものを含み得る。好ましい脂質は、リン脂質及びホスファチジルコリン(レシチン)であり、両方とも天然及び合成である。リポソームを形成するための方法は、当該技術分野で既知であり、これに関して、Prescott,Ed.,Methods in Cell Biology,Volume XIV,Academic Press,New York,N.Y.(1976),p.33 et seq.(この内容は、参照により本明細書に組み込まれる)が具体的に参照される。
【0257】
加えて、本明細書で説明されている任意の態様、実施形態又は例に係る本発明の治療的又は薬学的に許容される組成物を徐放性調製物及び徐放性製剤に組込み得る。そのような治療用組成物又は医薬組成物は、酸の加水分解を最小限に抑えるために、適切な緩衝剤をさらに含み得る。適切な緩衝剤は、当業者に公知であり、リン酸塩、クエン酸塩、炭酸塩及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0258】
本発明の化合物を「プロドラッグ」の形態で投与し得る。プロドラッグとは、インビボで活性型に変換される不活性型の化合物のことである。適切なプロドラッグとして、活性型の化合物のエステル類、ホスホン酸エステル類等が挙げられる。
【0259】
加えて、本発明の組成物を患者に移植し得るか、又は薬物送達システムを使用して注射し得る。コーティングされた送達デバイスも有用であり得る。例えば、Urquhart,et al.(1984),Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.24:199-236;Lewis,ed.“Controlled Release of Pesticides and Pharmaceuticals”(Plenum Press,New York,1981);米国特許第3,773,919号明細書;同第6,747,014号明細書;及び同第353,270,960号明細書を参照されたい。
【0260】
特定の実施形態では、例えば創傷の処置のプロセスで使用されるデバイス又は包帯を使用して、本組成物を送達する。
【0261】
任意の特定の対象のための、本明細書で開示されている医薬組成物の治療上有効な量は、様々な因子に依存し、この因子として下記が挙げられる:この医薬組成物の毒性及び治療効果;病気の重症度;患者の年齢、体重、全体的な健康、性別及び食事;投与時間;投与経路;この組成物の捕捉率;処置の持続期間;医学で公知の他の関連因子と一緒に、処置と組み合わせて又は同時に使用される薬物。
【0262】
毒性及び治療上の有効性を、例えばLD50(母集団の50%に対する致死量)及びED50(母集団の50%において治療上有効な用量)を決定するための、細胞培養又は実験動物における標準的な薬学的手順により決定し得る。毒性と治療効果との間の用量比は、治療指数であり、比LD50/ED50で表され得る。大きい治療指数を示す組成物が好ましい。
【0263】
本明細書で説明されている細胞培養アッセイ及び動物モデルから得られたデータを、ヒトでの使用のための治療上有効な投与量の範囲の策定で使用し得る。そのような化合物の投与量は、好ましくは、ほとんど又は全く毒性がないED50を含む循環濃度の範囲内である。この投与量は、用いられる投与形態及び利用される投与経路に応じて、この範囲内で変動し得る。
【0264】
剤形を生成するために担体物質と組み合わされ得る、本明細書で説明されている本発明の化合物の量は、概して、治療効果を生じるこの化合物の量であるであろう。一般に、100%の内、この量は、約0.1%~99%の化合物の範囲であり、好ましくは約5%~約70%の範囲であり、最も好ましくは10%~約30%の範囲であるであろう。
【0265】
投与量は、医師により決定され得、且つ必要に応じて処置の観察された効果に適合するように調整され得る。実例のみとして、組成物を、薬学的に許容される組成物が下記の用量で投与されるように投与し得る:1μg/kg~150mg/kg、1μg/kg~100mg/kg、1μg/kg~50mg/kg、1μg/kg~20mg/kg、1μg/kg~10mg/kg、1μg/kg~1mg/kg、100μg/kg~100mg/kg、100μg/kg~50mg/kg、100μg/kg~20mg/kg、100μg/kg~10mg/kg、100μg/kg~1mg/kg、1mg/kg~100mg/kg、1mg/kg~50mg/kg、1mg/kg~20mg/kg、1mg/kg~10mg/kg、10mg/kg~100mg/kg、10mg/kg~50mg/kg又は10mg/kg~20mg/kg。ここで示された範囲は、全ての中間範囲を含むことを理解すべきであり、例えば範囲1mg/kg~10mg/kgは、1mg/kg~2mg/kg、1mg/kg~3mg/kg、1mg/kg~4mg/kg、1mg/kg~5mg/kg、1mg/kg~6mg/kg、1mg/kg~7mg/kg、1mg/kg~8mg/kg、1mg/kg~9mg/kg、2mg/kg~10mg/kg、3mg/kg~10mg/kg、4mg/kg~10mg/kg、5mg/kg~10mg/kg、6mg/kg~10mg/kg、7mg/kg~10mg/kg、8mg/kg~10mg/kg、9mg/kg~10mg/kg等を含む。上記で示されたものの中間の範囲(例えば、範囲1mg/kg~10mg/kgでは、2mg/kg~8mg/kg、3mg/kg~7mg/kg、4mg/kg~6mg/kg等の用量範囲)も、本明細書で説明されている方法及び組成物の範囲内であることをさらに理解すべきである。
【0266】
本発明の化合物がmCBS又はmCBS.Naである場合、投与量は、10~800μg/mlであり得る。好ましくは、この投与量は、50~500μg/mlの範囲である。より好ましくは、この投与量は、ヒト対象に投与される場合、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790又は800μg/mlである。
【0267】
本発明の特定の例では、改変されている硫酸化セロビオシド化合物の有効量を単回用量で投与する。特定の例では、この用量を繰り返し投与する。即ち、処置レジメンは、疾患の重症度及びタイプ、患者の全体的な健康状態及び年齢並びに処置する医師が考慮すべき様々な他の条件に応じて変わるであろう。処置の持続時間及び頻度に関して、熟練した臨床医は、典型的には、対象をモニタリングして、処置が治療上の有益性をいつ提供するかを決定し、且つ投与量を増減させるかどうか、投与頻度を増減させるかどうか、処置を中断するかどうか、処置を再開するかどうか又は処置レジメンに他の変更を行うかどうかを決定する。
【0268】
本明細書で説明されている任意の態様、実施形態又は例に係る本発明の治療用組成物又は薬学的に許容される組成物は、単回のボーラス投与で投与され得るか又は複数回の用量若しくは処置で投与され得、且つ少量の治療用組成物が長期間にわたり持続的に投与される「持続的」治療により適用され得る。
【0269】
複数回投与が処置(持続的治療を含む)で使用される場合、治療用組成物又は医薬組成物を、いくつかの臨床的因子(例えば、この治療用組成物又は医薬組成物で使用される改変されている硫酸化セロビオシド化合物に対する対象の感受性)に応じて1週間に1回~毎日で変化し得る投与スケジュールにより投与するであろう。そのようなレジームで投与する所望の用量を一度に単回用量として送達し得るか、又は部分用量(例えば、2~4回の部分用量)に分割して、ある期間にわたり(例えば、1日中を通して適切な間隔又は他の適切なスケジュールで)投与し得る。そのような部分用量を単位剤形として投与し得る。
【0270】
いくつかの実施形態では、投与は、慢性的であり、例えば数週間又は数ヶ月の期間にわたり1日1回又は複数回の用量である。投与スケジュールに例は、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月若しくは6ヶ月又はより長い期間にわたり1日1回、1日2回、1日3回又は1日4回以上の投与である。
【0271】
所望の用量を、連続的注入を使用するか又は放出制御製剤による送達を使用して投与し得る。この場合、各部分用量に含まれる医薬組成物は、1日当たりの総投与量を達成するために相応に少なくなければならない。
【0272】
また、投与量単位を、例えば数日の期間にわたる医薬組成物の持続放出をもたらす従来の徐放性製剤を使用して、数日にわたる送達のためにも配合し得る。徐放性製剤は、当該技術分野で公知であり、例えば本明細書で説明されている薬剤により使用され得る、ある部位への薬剤の送達に特に有用である。この実施形態では、この投与量単位は、1日当たりの用量の対応する倍数を含む。
【0273】
4.併用レジーム
本発明の第5の態様に係る特定の例示的な実施形態では、特定された組成物は、抗炎症剤、抗生物質製剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤及び/又は対象が患っている1種若しくは複数の状態を処置する任意の他の形態の治療用化合物若しくは医薬化合物の1つ又は複数から選択される第2の活性剤、化合物又は組成物を含む場合がある。この実施形態によれば、第2の活性剤、化合物又は組成物は、望ましくは、敗血症、SIRS及びIRI又は敗血症、SIRS及びIRIと関連する医学的状態若しくは疾患のための補助的治療を提供する。好ましくは、第2の活性剤、化合物又は組成物は、1種又は複数の抗炎症剤を含む。
【0274】
治療上の利点を併用レジメンにより実現できる場合がある。本発明の特定の実施形態では、説明されている方法は、予防的に送達される際、患者が有しているか、又は罹患しているか、又は有する若しくは罹患するリスクがある敗血症、SIRS及びIRI又は敗血症、SIRS及びIRIと関連する医学的状態若しくは疾患のための補助的処置である第2の活性剤を本発明の処置と同時に又は付随して対象に投与するステップをさらに含み得る。
【0275】
第2の活性剤として、抗炎症剤、抗生物質製剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤又は本発明の化合物と異なる他の形態の医学的介入が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0276】
実例として、本方法又は本処置が、対象におけるNETによって媒介される病理を伴う敗血症性疾患状態又は非敗血症性疾患状態を処置するか又は寛解させることに向けられている場合、この方法は、NETによって媒介される病理を伴う医学的状態のための補助処置を提供する第2の抗炎症剤、抗生物質製剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤又は本発明の化合物と異なる他の形態の医学的介入を同時に又は付随して対象に投与することも含み得る。
【0277】
一例では、第2の活性剤は、敗血症、SIRS若しくはIRI又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する医学的状態若しくは疾患(例えば、対象におけるNETによって媒介される病理を伴う敗血症、SIRS若しくはIRI又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する医学的状態若しくは疾患)のための補助的処置又は補助的予防を提供する。
【0278】
別の例では、第2の活性剤は、NET細胞毒性を伴う医学的状態のための補助的処置又は補助的予防を提供する。
【0279】
実例として、本処置方法が、対象におけるNETによって媒介される病理を伴う敗血症、SIRS又はIRIを関連する敗血症性疾患状態又は非敗血症性疾患状態を処置するか又は寛解させることに向けられている場合、この方法は、NETによって媒介される病理を伴う医学的状態のための補助処置を提供する第2の抗炎症剤、抗生物質製剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤又は本発明の化合物と異なる他の形態の医学的介入を同時に又は付随して対象に投与することも含み得る。
【0280】
いくつかの例では、投与される追加の薬剤は、抗炎症剤であり、例えばステロイド、副腎皮質ステロイド、COX-2阻害剤、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、アスピリン又はこれらの任意の組み合わせである。より具体的には、投与される追加の薬剤は、下記からなる群から選択される抗炎症剤であり得る:アルクロフェナク;プロピオン酸アルクロメタゾン;アルゲストンアセトニド(Algestone Acetonide);アルファアミラーゼ;アムシナファル(Amcinafal);アムシナフィド(Amcinafide);アンフェナクナトリウム;塩酸アミプリロース;アナキンラ;アニロラク;アニトラザフェン;アパゾン;バルサラジド二ナトリウム;ベンダザック;ベノキサプロフェン;塩酸ベンジダミン;ブロメライン;ブロペラモール;ブデソニド;カプロフェン;シクロプロフェン;ジンタゾン;クリプロフェン;プロピオン酸クロベタゾール;酪酸クロベタゾン;クロピラク;プロピオン酸クロチカソン(Cloticasone Propionate);酢酸コルメタソン;コルトドキソン;デフラザコート;デソニド;デスオキシメタゾン;ジプロピオン酸デキサメタゾン;ジクロフェナクカリウム;ジクロフェナクナトリウム;酢酸ジフロラゾン;ジフルミドンナトリウム;ジフルニサル;ジフルプレドナート;ジフタロン、ジメチルスルホキシド;ドロシノニド;エンドリソン;エンリモマブ;エノリカムナトリウム;エピリゾール;エトドラク;エトフェナメート;フェルビナク;フェナモル(Fenamole);フェンブフェン;フェンクロフェナク;フェンクロラク;フェンドサル;フェンピパロン;フェンチアザク;フラザロン;フルアザコート;フルフェナム酸;フルミゾール;酢酸フルニソリド;フルニキシン;フルニキシンメグルミン;フルコルチンブチル;酢酸フルオロメトロン;フルクアゾン(Fluquazone);フルルビプロフェン;フルレトフェン;プロピオン酸フルチカソン;フラプロフェン;フロブフェン;ハルシノニド;プロピオン酸ハロベタゾール;酢酸ハロプレドン;イブフェナク;イブプロフェン;イブプロフェンアルミニウム;イブプロフェンピコノール;イロニダップ;インドメタシン;インドメタシンナトリウム;インドプロフェン;インドキソール(Indoxole);イントラゾル(Intrazole);酢酸イソフルプレドン;イソキセパック;イソキシカム;ケトプロフェン;塩酸ロフェミゾール;ロモキシカム(Lomoxicam);エタボン酸ロテプレドノール;メクロフェナム酸ナトリウム;メクロフェナム酸;二酪酸メクロリゾン(Meclorisone Dibutyrate);メフェナム酸;メサラミン;メセクラゾン;メチルプレドニゾロンスレプタネート;モルニフルメート;ナブメトン;ナプロキセン;ナプロキセンナトリウム;ナプロキソル(Naproxol);ニマゾン;オルサラジンナトリウム;オルゴテイン;オルパノキシン;オキサプロジン;オキシフェンブタゾン;塩酸パラニリン;ペントサンポリスルフェートナトリウム;フェンブタゾンナトリウムグリセレート;ピルフェニドン;ピロキシカム;桂皮酸ピロキシカム;ピロキシカムオラミン;ピプロフェン;プレドナゼート(Prednazate);プリフェロン;プロドリック酸;プロクアゾン;プロキサゾール;クエン酸プロキサゾール;リメキソロン;ロマザリト;サルコレックス(Salcolex);サルナセジン;サルサラート;サルシレート(Salycilate);塩化サンギナリウム;セクラゾン;セルメタシン;スドキシカム;スリンダク;スプロフェン;タルメタシン;タルニフルメート;タロサレート;テブフェロン;テニダップ;テニダップナトリウム;テノキシカム;テシカム;テシミド;テトリダミン;チオピナク;チキソコルトールピバレート;トルメチン;トルメチンナトリウム;トリクロニド;トリフルミデート(Triflumidate);ジドメタシン;グルココルチコイド;ゾメピラックナトリウム;及びこれらの組み合わせ。
【0281】
いくつかの例では、投与される追加の薬剤は、抗生物質製剤であり、例えばカナマイシン、アクチノマイシンD、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ミトラマイシン、アミノグリコシド、アンサマイシン、カルバセフェム、カルバペネム、セファロスポリン、糖ペプチド、リンコサミド、マクロライド、モノバクタム、ペニシリン、ポリペプチド、キノロン、スルホンアミド及び/又はテトラサイクリンである。
【0282】
いくつかの例では、投与される追加の薬剤は、抗ウイルス剤であり、例えば非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤、ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(例えば、ヌクレオシド類似体)、プロテアーゼ阻害剤及び/又はヌクレオチド類似体逆転写酵素阻害剤である。
【0283】
いくつかの例では、投与される追加の薬剤は、抗真菌剤であり、例えばイミダゾール、トリアゾール、チアゾール、アリルアミン及び/又はエキノキャンディン化合物である。
【0284】
いくつかの例では、投与される追加の薬物は、糖尿病を処置するための薬剤である。そのような薬剤として、糖尿病の処置のための及び又は抗高血糖活性を有するための、当該技術分野で既知の薬物が挙げられ、例えば下記が挙げられる:ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)の阻害剤(例えば、アログリプチン、リナグリプチン、サキサグリプチン、シタグリプチン、ビルダグリプチン及びベルベリン)、ビグアナイド(例えば、メトホルミン、ブホルミン及びフェンホルミン)、ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPAR)モジュレータ、例えばチアゾリジンジオン(TZD)(例えば、ピオグリタゾン、リボグリタゾン、ロシグリタゾン及びトログリタゾン)、デュアルPPARアゴニスト(例えば、アレグリタザル、ムラグリタザル及びテサグリタザル)、スルホニル尿素(例えば、アセトヘキサミド、カルブタミド、クロルプロパミド、グリクラジド、トルブタミド、トラザミド、グリベンクラミド(グリブリド)、グリピジド、グリキドン、グリクロピラミド及びグリメピリド)、メグリチニド(「グリニド」)(例えば、ナテグリニド、レパグリニド及びミチグリニド)、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)及び類似体(例えば、エキセンジン-4、エキセナチド、リラグルチド、アルビグルチド)、インスリン及びインスリン類似体(例えば、インスリンリスプロ、インスリンアスパルト、インスリングルリジン、インスリングラルギン、インスリンデテミル、エクスベラ及びNPHインスリン)、アルファ-グルコシダーゼ阻害剤(例えば、アカルボース、ミグリトール及びボグリボース)、アミリン類似体(例えばプラムリンチド)、ナトリウム依存性グルコース共輸送体T2(SGLT T2)阻害剤(例えば、ダパグリフロジン、レモグリフロジン及びセルウグリフロジン)並びに他のもの(例えば、ベンフルオレックス及びトルレスタット)。
【0285】
説明されている任意の態様、実施形態又は例に係る組成物は、敗血症、SIRS若しくはIRI又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する疾患若しくは状態の処置のための併用治療アプローチの一部として投与され得ることを当業者は認識するであろう。併用治療では、各薬剤を同時に投与し得るか又は任意の順序で逐次投与し得る。逐次投与する場合、各成分を同一経路で投与することが好ましい場合がある。
【0286】
2種の薬剤が別々に適用されるいくつかの例では、両方の薬剤が、有利に組み合わされた効果を依然として発揮し得るように、各送達の時間の間に有意な期間が失効しなかったことが概して保証されるであろう。そのような例では、両方の治療法が互いに約12~24時間以内、より好ましくは互いに約6~12時間以内に概して投与されることが企図され、約12時間のみの遅延時間が最も好ましいが、いくつかの状況では処置のための時間を大いに延ばすことが望ましい場合があり、それぞれの投与間に数日(2、3、4、5、6又は7)~数週間(1、2、3、4、5、6、7又は8)経過する。また、薬剤の複数回の投与が望ましいであろうことも考えられる。
【0287】
本発明の組成物と第2の活性剤とを別々の組成物で投与する場合、投与経路は、異なり得る。例えば、本発明の組成物を、当該技術分野で既知の任意の適切な経路(例えば、限定されないが、経口経路又は非経口経路、例えば、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、経皮投与、気道(エアロゾル)投与、肺投与、経鼻投与、直腸投与並びに局所(例えば、頬側及び舌下)投与)で投与し、第2の薬学的に活性な薬剤を別の経路(例えば、前記薬学的に活性な薬剤の投与のために当該技術分野で一般に使用される経路)で投与する。非限定的な例では、本発明の組成物を注射により投与し得、第2の活性剤を経口投与し得る。
【0288】
5.薬物の製造
本発明の第6の態様では、NETを伴う医学的状態、病気又は疾患を処置するための薬物の製造における、ポリアニオン性硫酸化セロビオシド、若しくはその還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド、又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量又は薬学的に有効な量の使用が提供される。
【0289】
好ましくは、本発明のこの態様では、選択された化合物は、還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシドである。より好ましくは、小さい非荷電グリコシド結合置換基により、その還元末端において硫酸化されている同じポリアニオンに比べると、ポリアニオンの化学的安定性が改善されている。特に、本化合物がmCBSである場合、この化合物は、硫酸化β-O-メチルセロビオシド二糖、又はβ-O-メチルセロビオシドサルフェートのナトリウム塩、即ちmCBS.Naである。
【0290】
例えば、本発明の第6の態様のある実施形態では、対象における敗血症、SIRS若しくはIRI又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する医学的状態若しくは疾患の処置又は予防のための薬物の製造における、ポリアニオン性硫酸化セロビオシド、若しくはその還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド、又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量又は薬学的に有効な量の使用が提供される。好ましくは、この改変されている硫酸化セロビオシドは、mCBSであるか、又はより具体的にはmCBSの薬学的に許容される塩(例えば、mCBS.Na)である。
【0291】
そのような使用の一実施形態では、この薬物は、対象における敗血症若しくはSIRSを処置するためのものであるか、又は対象における敗血症若しくはSIRSと関連する医学的状態若しくは疾患を処置するためのものであり、前記処置は、前記敗血症若しくはSIRS又は前記敗血症若しくはSIRSと関連する前記状態若しくは疾患を寛解させるか又は阻害する。
【0292】
そのような使用の別の実施形態では、この薬物は、対象におけるIRIを処置するためのものであるか、又は対象におけるIRIと関連する医学的状態若しくは疾患を処置するためのものであり、前記処置は、前記IRI又は前記傷害と関連する前記状態若しくは疾患を寛解させるか又は阻害する。
【0293】
そのような使用のさらに別の実施形態では、この薬物を使用して、(i)対象の内皮に対して細胞毒性であるか、又は(ii)対象の内皮機能障害の一因となるか、又は(iii)対象の血小板を活性化させることによって凝血を開始させるか、又は(iv)対象において赤血球脆弱性及びその結果としての貧血を誘発するNETを中和する。
【0294】
さらに別の実施形態では、製造された薬物は、第2の活性剤、化合物又は組成物の治療上有効な量又は薬学的に有効な量も含み得る。この実施形態によれば、第2の活性剤、化合物又は組成物は、NETを伴う医学的状態、病気又は疾患を処置するための補助的治療を提供する。望ましくは、第2の活性剤、化合物又は組成物は、敗血症、SIRS若しくはIRI又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する医学的状態若しくは疾患の処置のための補助的治療を提供する。好ましくは、第2の活性剤は、抗炎症剤、抗生物質製剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤及び/又は対象が患っている1種若しくは複数の状態を処置する任意の他の形態の治療用化合物若しくは医薬化合物の1つ又は複数から選択される。より好ましくは、第2の活性剤、化合物又は組成物は、1種又は複数の抗炎症剤を含む。
【0295】
本発明の方法のいずれかで、改変されている硫酸化セロビオシド化合物を使用する場合、この化合物を、単回用量の製剤において、それを必要とする対象に投与し得るか、又はそれを必要とする対象への投与のために製剤化し得る。特定の代替実施形態では、この改変されている硫酸化セロビオシド化合物を、複数回用量の製剤として、それを必要とする対象に投与するか、又はそれを必要とする対象への投与のために製剤化する。
【0296】
好ましくは、対象への投与ために、本治療用組成物又は医薬組成物は、薬学的に許容される組成物として提供される。この形態の場合、(1)この組成物は、1種又は複数の薬学的に許容される担体(添加剤(additive))、及び/又は希釈剤、及び/又は添加剤(excipient)と一緒に薬学的に製剤化され、(2)この組成物中の改変されている硫酸化セロビオシド化合物は、中性又は塩の形態で製剤化され得る。
【実施例】
【0297】
本発明を下記の非限定的な実施例でさらに説明し、この実施例は、例証のみを目的として提供され、本明細書全体を通して本明細書の開示の一般性を制限すると解釈すべきではない。
【0298】
[実施例1:mCBS・Naの調製方法]
β-O-メチルセロビオシドを、Jon K Fairweather et al.,2004,Aust.J.Chem.,57:197-205により説明されているように調製する。
【0299】
β-O-メチルセロビオシドサルフェート(mCBS)化合物及びナトリウムβ-O-メチルセロビオシドサルフェート(mCBS.Na)化合物を、Katrin C Probst and Hans Peter Wessel,2001,J.Carbohydrate Chemistry,20(7&8):549-560(この開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)により説明されているように調製した。
【0300】
β-O-メチルセロビオシドサルフェート(mCBS)を下記の概要に従って調製した。
【化3】
【0301】
工程1:α-D-セロビオース1(116g、338mmol)及び氷酢酸(1.6L)の混合物に、室温で臭化アセチル(300mL、500.0g、4065mmol、12.0当量)を添加した。得られたクリーム状の混合物を、この反応混合物が、反応の完了を示す透明な溶液に変わるまで、45~55分にわたり60℃で加熱した。
【0302】
この熱い溶液を、割れた氷(4kg)が入っているビーカ(10L)に慎重に注ぐ。この混合物を、白色固体が沈殿するまで撹拌する(約10分)。冷水の別の一部(1L)を添加し、10分にわたり撹拌し続ける。
【0303】
焼結漏斗でろ別し、固体を冷水で洗浄した(700mL×3回)。得られた漏斗中の固体をDCM(1L)に溶解させ、この漏斗をDCMで洗浄した(300mL×2回)。まとめたDCM層をブライン(1.5L)で洗浄し、DCM(0.5L)で逆抽出した。最終DCM層をNa2SO4で乾燥させ、ろ過し、2時間以内に<35℃において減圧下で濃縮して、次のグリコシル化に直接使用する目的の臭化物2(172.5g、74.3%収率)を得た。
【0304】
工程2:per-O-アセチル化セロビオシルブロミド2(171g、250mmol)、無水DCM(800mL)、無水MeOH(800mL)、活性化3Aモレキュラーシーブ(70g)の混合物に炭酸銀(Ag2CO3、75g、275mmol、1.1当量)を添加した。得られた混合物を16時間にわたり光の非存在下で撹拌した。この混合物をシリカのプラグに通して精製し、EtOAcで溶出した。集めた画分を濃縮して褐色固体として粗生成物を得、この粗生成物を次の工程に直接使用した。化合物3のRf=0.28(EtOAc-ヘキサン、1:1)。
【0305】
工程3:工程2で得られた粗生成物及び無水MeOH(1L)の混合物に室温でNaの小片(1.72g、0.3当量、75mmol)を添加した。その後まもなく、溶液から白色固体が沈殿し始めた。得られた混合物を一晩撹拌して、脱アセチル化を確実に完了させた。最終懸濁液をろ別し、MeOHで洗浄した(300mL×2回)。白色固体を集め、一晩にわたり真空下で乾燥させて、最終セロビオシド4(72.5g、2段階で81.4%)を得た。
【化4】
工程4の合成及び精製の手順:
【0306】
工程4 化合物4(84.0g、236mmol)、SO3.TMA(367.4g、2.64mol、11.2当量)、無水DMF(3140mL)及び無水DCE(767mL)の混合物をAr下で3回脱気し、2時間にわたり80~90℃で加熱した。(反応のモニタリング:10分にわたる加熱後、クリーム状の混合物が透明な溶液に変化した。30分後、この溶液は再び濁った。50分後、フラスコの表面上に、凝集した固体を観察した)。冷却後、得られた混合物を低温室(-5℃)に移し、一晩沈降させて溶媒から固体を完全に凝集させた。化合物4から5への完全な変換を1H-NMRで確認した。この溶液を排水管にデカントする。粗固体をろ別し、DCMで2~3回洗浄した。得られた固体を脱イオン水に溶解させ、イオン交換カラム[DOWEX 50W×8のNa形態:樹脂(H+形態)3kgをガラス製重力カラムに予め充填し、1MのNaOH(-6L)の溶出により再生し、脱イオン水(-12L)で中和した]に直接かけた。集めた画分を濃縮し、ガラス状固体として最終的な硫酸化セロビオシド6(232.1g、92.0%)を得た。
【0307】
[実施例2~6:CBS、mCBS及びMTSの比較]
以下の検討では、本発明者は、3種のSPA、即ちセロビオースペル-O-サルフェート(CBS)、メチルβ-セロビオシドペル-O-サルフェート(mCBS)及びマルトトリオースペル-O-サルフェート(MTS)(
図1中の構造)を試験した。実施例2~6に使用した方法を以下に説明する。
【0308】
以下の実施例(2~6)に関する方法及び物質
ヘパリン(ブタ粘膜-PM)は、Sigma-Aldrichから購入した。
【0309】
ヒト対象。すべてのヒトと関連する研究は、ACT Health Human Research Ethics Committeeにより承認を得た。インビトロでの研究のための赤血球及び血小板の供給源として、健康な成人ドナーを使用した。APACHE II致死スコア≧12(Knaus,W.A.,Draper,E.A.,Wagner,D.P.& Zimmerman,J.E.APACHE II:a severity of disease classification system.Crit care med 13, 818-829(1985))を有する承諾患者を、Canberra Hospital Intensive Care Unitに到着時にICUに入院させて、敗血症の診断を本発明者らの検討に含めた。
【0310】
敗血症は以下の診断基準に基づき診断した(Mayr,F.B.,Yende,S.& Angus,D.C.Epidemiology of severe sepsis.Virulence 5,4-11 (2014);及びBone,R.C.et al.Definitions for sepsis and organ failure and guidelines for the use of innovative therapies in sepsis.The ACCP/SCCM Consensus Conference Committee.American College of Chest Physicians/Society of Critical Care Medicine.Chest 101,1644-1655(1992)):
a.以下のうちの少なくとも2つ:
i.多呼吸>24bpm又は血液ガスPCO2<32mmHg
ii.白血球数(WCC)は、<4,000細胞/mm3又は>12,000細胞/mm3のどちらか一方
iii.心拍数(HR)>100bpm
iv.温度(発熱)>38.0℃又は(低体温)<36.0℃。
b.特定された全身性炎症反応症候群(SIRS)に別の理由がない。
c.血液培養陽性、胸部x線又は他のイメージングに肺炎の兆候を含めた敗血症の証拠
d.末端臓器機能障害の証拠:腎不全、肝機能障害、グラスゴーコーマスコア(他の原因に起因しない)又は血清乳酸の変化。
e.強心剤支持を必要とする難治性低血圧
【0311】
動物。動物実験はすべて、Australian National University Animal Experimentation Ethics Committeeにより承認を受けた。病原体を含まない雄及び雌のC57BL/6マウス(6~8週齢)、雄のBALB/cマウス(5~6週齢)及び雄のWistarラット(体重は250~350gの間)を、Australian Phenomics Facility at the Australian National Universityから得た。
【0312】
細胞株及び細胞培養物条件。O型血液の群を有し、したがって、ヒト血清中に抗血液群抗体との反応性のないヒト毛細血管内皮細胞-1(HMEC-1)は、ATCCにより供給され、10%の熱-不活性化ウシ胎児血清(FCS)、2mMのL-グルタミン、100IUml-1のペニシリン、100μgml-1ストレプトマイシン、10ngml-1のEGF及び1μgml-1のヒドロコルチゾンを補給したMCDB131培地中で培養した。細胞を5%CO2及び周囲O2中、37℃でインキュベートし、MycoAlertアッセイキット(Lonza)を使用してマイコプラズマを繰り返し検査した。
【0313】
ヒストンにより媒介された細胞毒性アッセイ。仔ウシ胸腺ヒストン(Sigma-Aldrich)の細胞毒性を決定するため、様々な濃度(100~800μgml
-1)のヒストンを、96ウェルプレート中のHMEC-1又はHUVEC(1×10
6ml
-1)の懸濁液に加え、37℃で1時間、インキュベートした。次に、死滅細胞を検出するためヨウ化プロピジウム(PI;2.5μgml
-1)(ThermoFisher Scientific)と共に、及び生存細胞を検出するためカルセイン-AM(0.04μM)(ThermoFisher Scientific)と共に、細胞を37℃で5分間、インキュベートし、ゲーティング戦略を使用するフローサイトメトリーにより、死滅細胞及び生存細胞の割合を決定した。阻害アッセイでは、HMEC-1を、様々な濃度の化合物(12.5~400μgml
-1)の存在下、37℃で1時間、ヒストン(400μgml
-1)と共にインキュベートした後、PI及びカルセイン-AMを添加した。次いで、各化合物濃度におけるHMEC-1細胞毒性を、式:
【数1】
に基づいて決定し、次いで、各ポリアニオンのIC50値を、Prismソフトウェア(Graphpad Software)を使用する最良適合線(非線形回帰解析)に基づいて決定した。すべてのアッセイにおいて、実験変動を相殺するための標準品としてMTS(IC50 30μgml
-1)を含ませ、データを、各アッセイにおいて、30μgml
-1であるIC50を有するMTSに適応させた。
【0314】
脂質二重層アッセイ。既に説明されているように(Rebbeck,R.T.et al.The beta(1a)subunit of the skeletal DHPR binds to skeletal RyR1 and activates the channel via its 35-residue C-terminal tail.Biophys J 100,922-930,(2011).)調製し、150mM又は250mMのKCl(pH約5.5)溶液に対称的に分離した人工脂質二重層である。二重層にヒストン(1μM、15.2μgml-1)を単独で添加したか、又は約20℃での10μMのCBS(3.5μgml-1)又は10μMのMTS(5.1μgml-1)と一緒の0.5~3時間のインキュベーション後に添加した。ヒストンの添加後、この二重層が破れるか又は実験が終了するまで、電流を連続的に記録した。
【0315】
内皮細胞におけるカルシウム流動研究。RPMI-1640培地中のHMEC-1(2×107ml-1)を60分にわたり37℃でIndo-1 AM(5μM)(ThermoFisher)と共にインキュベートした。(Tellam,R.L.&Parish,C.R.The effect of sulfated polysaccharides on the free intracellular calcium ion concentration of lymphocytes.Biochim Biophys Acta 930,55-64(1987)、及びWeston,S.A.,Tellam,R.L.&Parish,C.R.Dextran sulfate induces changes in the free intracellular calcium ion concentration of a subpopulation of immature thymocytes.Immunol Cell Biol 69,369-376,(1991))。5%のFCSが補充されたRPMI-1640培地による3回の洗浄後、細胞を、10mMのHEPESが補充された氷冷HEPES緩衝生理食塩水(NaCl 8gl-1、KCl 0.4gl-1、CaCl2 0.2gl-1、MgCl2.6H2O 0.2gl-1、D-グルコース 1.8gl-1、pH7.4)に4×106ml-1で再懸濁させた。この細胞懸濁液を氷上で保持し、3時間以内に使用した。フローサイトメトリーを使用して、細胞内Ca2+流動をモニタリングした。細胞を予め平衡化し、加熱水浴に接続された外部シース(external sheath)を使用して、分析中に37℃で維持した。(FSC/SSC光散乱に基づく)細胞残屑及び塊状の細胞の排除後、新規の化合物の存在下/非存在下でのヒストン添加前2分にわたり、基底Ca2+レベルをモニタリングした。一定の流速(約300事象/秒)でヒストン添加の1、4及び10分後にCa2+レベルを測定した。Ca2+流動をCa2+非結合Indo-1に対するCa2+結合Indo-1の幾何平均蛍光強度(GMFI)の比率の増加として決定した。
【0316】
インビトロでの赤血球の顕微鏡観察、凝集、脆弱性及び変形能のアッセイ。ヒト赤血球のヒストンによって媒介される凝集及び様々な化合物によるこの凝集の阻害を、本発明者らにより既に報告されているように(Kordbacheh,F.,O’Meara,C.H.,Coupland,L.A.,Lelliott,P.M.&Parish,C.R.Extracellular histones induce erythrocyte fragility and anemia.Blood 130,2884-2888,(2017))、前方及び側方散乱パラメータ又は赤血球自己蛍光のいずれかに基づくフローサイトメトリーと、以前に説明されているような(Yabas,M.et al.Mice deficient in the putative phospholipid flippase ATP11C exhibit altered erythrocyte shape,anemia,and reduced erythrocyte life span.J Biol Chem 289,19531-19537,doi:10.1074/jbc.C114.570267(2014))走査型電子顕微鏡とにより検出した。同様に、阻害剤の存在下又は非存在下でヒストンによって誘発される赤血球の脆弱性を、彼らが最近開発した(Kordbacheh,F.,O’Meara,C.H.,Coupland,L.A.,Lelliott,P.M.&Parish,C.R.Extracellular histones induce erythrocyte fragility and anemia.Blood 130,2884-2888,(2017))せん断ストレスアッセイを使用して定量した。最後に、ヒストンの存在下での赤血球の変形能の低下及びこのプロセスへの阻害剤の効果を、人工ヒト脾臓を通る赤血球の通過を測定することにより評価した(Kordbacheh, F.,O’Meara,C.H.,Coupland,L.A.,Lelliott,P. M.&Parish,C.R.Extracellular histones induce erythrocyte fragility and anemia.Blood 130,2884-2888,(2017);およびDeplaine,G.et al.The sensing of poorly deformable red blood cells by the human spleen can be mimicked in vitro.Blood 117,e88-95,(2011))。
【0317】
インビトロでの血小板の凝集及び脱顆粒のアッセイ。凝集研究のために、室温での2段階遠心分離(20分にわたる200×g、次いで15分にわたる血小板リッチの血漿800×g)により、クエン酸Naバキュテナ中に採取したヒト全血から血小板を単離し、血小板ペレットを、カルシウム及びマグネシウムを含むハンクス平衡塩類溶液に再懸濁させ、ヒストンを添加し、示したそれぞれの濃度において化合物の存在下/非存在下でインキュベートした。血小板の特徴的なlog FSC対log SSC識別を使用するフローサイトメトリーにより、ヒストンへの15分間の曝露後の血小板凝集の程度に関してサンプルを評価し、log FSCの幾何平均の増加は血小板凝集を示す。
【0318】
血小板活性化アッセイのために、クエン酸Naバキュテナ中に採取した全血を、Chrono-Lume試薬(Chrono-Log Corp)を用いたChrono-Log Model 700の発光モードを使用して、血小板の脱顆粒をモニタリングした。インサイチュでスターラーバーにより、予め温めた血液(420μl)に生理食塩水(300μl)を添加した。次いで、Chromo-Lume試薬(100μl)を添加し、2分にわたりインキュベートした後、水で希釈したヒストン±化合物を、示した濃度において180μlの総量で添加した。結果を、ヒストン+生理食塩水コントロールの割合として算出したATP放出として表した。
【0319】
インビボでのヒストン毒性アッセイ。BALB/c雌マウス(5~6週齢)(C57BL/6マウスと比べて、この若い年齢で、ヒストンによって誘発される貧血を起こし易く且つIV注射し易い)に、示した濃度での試験化合物のi.p.注射の10分後にリン酸緩衝生理食塩水中のヒストン(50mgkg-1)をi.v.注射した。ヒストン注射の10分後に眼窩後出血(retro-orbital bleed)をガラスパスツールピペットで実施し、採取した血液を酸性クエン酸デキストロース(ACD)に添加し、この10分血液サンプルを、ADVIA 2120i Hematology Analyzerを使用して血小板及び赤血球の含有量に関する血液分析にかけた。ヒストン注射の10分後に脾臓も摘出し、ヘモグロビンアッセイキット(Sigma-Aldrich)を使用して脾臓ヘモグロビン含有量を定量した。4時間血液サンプルの場合、雄C57/BL/6マウス(6~8週齢)に、上記のように試験化合物及びヒストンを注射し、その後の生化学的試験のために血漿を単離して凍結保存し、肝臓損傷のマーカー(アラニンアミノトランスフェラーゼ、ALT)、腎臓損傷のマーカー(クレアチニン、Crea)及び一般組織損傷のマーカー(乳酸デヒドロゲナーゼ、LDH)を、Department of Pathology,The Canberra Hospitalにより測定した。
【0320】
マウス深部静脈血栓症(DVT)モデル。使用する手順は大部分が既に説明されている通りである(Brill,A.et al.Neutrophil extracellular traps promote deep vein thrombosis in mice.J Thromb Haemost 10,136-144,(2012))。簡潔に説明すると、8週齢の雄C57BL/6マウスに麻酔して開腹切開を行い、腸を体外から出し、次いで腹部大動脈からの緩やかな分離後、腎静脈直下の下大静脈(IVC)を約10%の開存性まで結紮し、全ての関連するIVC支流を結紮した。腹膜及び皮膚を閉じ、その後、全てのマウスに尾静脈を介してヒストン(10mgkg-1)又は等量の生理食塩水をi.v.注射し、続いて5分後に試験化合物(50mgkg-1)又は生理食塩水をi.v.注射した。マウスを48時間にわたりモニタリングし、その後、再び麻酔して再び開き、IVC狭窄の遠位で発症していた任意の血栓を、分析のために取り出した。偽手術するコントロール動物を開腹手術し、IVCを90%結紮したが、この結紮をIVCの閉塞直後に除去した。
【0321】
敗血症に関するラット盲腸結紮及び穿刺(CLP)アッセイ。CLPアッセイを、既に説明されているように(Hubbard,W.J.et al.Cecal ligation and puncture.Shock 24 Suppl 1,52-57(2005))雄のWistarラットで実施した。生理食塩水に溶解させた試験化合物(50mgkg-1)又は等量の生理食塩水のみ(コントロールコホート)を、CLPの5分前且つ20時間での実験停止まで術後5、10及び15時間にi.p.投与した。偽CLPラットに同一の手順を行ったが、盲腸を結紮していないか又は穿刺しておらず、このラットに、上記と同じ時間に生理食塩水を投与した。実験期間の終了時(20時間)又は病的状態が倫理上安楽死を必要とした場合、ラットを麻酔し、後のDepartment of Pathology,The Canberra Hospitalによる肝臓(ALT)及び腎臓(クレアチニン)の機能の分析のために、心臓穿刺によりEDTA中に採血した。生理食塩水で処理したコントロールCLP動物の血液サンプル内では(EDTAの存在にもかかわらず)血餅が形成される傾向があるため、全ての動物からの血漿サンプルの分析は成功しなかった。
【0322】
ラット心臓虚血再灌流傷害モデル。使用する方法は、既に公開されている手順の組み合わせに基づく(Takada,Y.,Hashimoto,M.,Kasahara,J.,Aihara,K.&Fukunaga,K.Cytoprotective effect of sodium orthovanadate on ischemia/reperfusion-induced injury in the rat heart involves Akt activation and inhibition of fodrin breakdown and apoptosis.J Pharmacol Exp Ther 311,1249-1255,(2004)、及びHale,S.L.,Dae,M.W.&Kloner,R.A.Hypothermia during reperfusion limits ’no-reflow’ injury in a rabbit model of acute myocardial infarction.Cardiovasc Res 59,715-722(2003))。雄のWistarラットをイソフルレンで麻酔し、気管切開術により挿管し、1ml 150g-1の一回換気量及び65回の呼吸 分-1の呼吸数で人工呼吸した。酸素補給を約30%のFiO2で供給した。左心室を可視化し得るように、左半開胸術を実施した。左冠動脈叢(LCA)を、30分にわたる再灌流前に30分にわたり非侵襲的スネアを使用して閉塞させた。虚血を心筋充血により確認した。試験化合物(30mgkg-1)又は等量(200μl)の生理食塩水を、再潅流フェーズのためのスネアの開放の5分前に、左心室の内腔(吸引で確認)に注射した。
【0323】
再潅流(30分)の終了時、左心室の内腔にチオフラビンS(体重の1ml 200g-1)を緩やかに注射して、虚血ゾーン(IZ)内の微小血管閉塞(MVO)の領域を定義した。このIZ領域を、非侵襲的スネアの再閉塞と、CD-6800(Unisonics)超音波処理器を使用する超音波処理による、溶液内に分散された左心室への青色微粒子(Unisperse Blue,BASF)の注入とにより決定した。次いで、心臓を胸部から切除し、等張生理食塩水ですすぎ、心室間線に対して直角において非侵襲的スネアの遠位で2mm切片を切り取った。この方法は、秤量し且つ紫外線(MVOの領域)下及び明るい光(IZ領域)下で撮影した(Sony Handycam(登録商標),Zeiss 60倍光学ズーム)4枚の心筋切片を作製した後、塩化テトラゾリウム(TTC)中でインキュベートして、壊死心筋の領域を決定した。Planimetry(Image J,Freeware)を使用して、IZ、MVO及び壊死の領域を定量した。
【0324】
ラット虚血再灌流組織弁モデル。用いる手順は大部分が既に説明されている方法に基づく(Bone,R.C.et al.Definitions for sepsis and organ failure and guidelines for the use of innovative therapies in sepsis.The ACCP/SCCM Consensus Conference Committee.American College of Chest Physicians/Society of Critical Care Medicine.Chest 0,1644-1655(1992))。簡潔に説明すると、雄のWistarラットに麻酔し、局所的に脱毛し、3cm×6cmの筋膜弁を、血管茎を無傷のままにして摘出した。下腹壁動脈をクランプし、下の組織からの酸素拡散を防ぐために、この弁の下に細かいゴムシートを置き、この弁を所定の位置に再縫合した。この弁に血流が戻ることを可能にするために、適用の10時間後にクランプを除去した。試験化合物(50mgkg-1)又は生理食塩水を、クランプ適用の5分前及びこのクランプの除去の5分後にi.p.投与した。ラットを、術後24時間及び48時間でこのラットに追加の化合物又は生理食塩水をi.p.投与している72時間の合計実験期間にわたりモニタリングした。「コントロールクランプなし」ラットは、摘出して再縫合前にゴムを下に置いた組織弁を有したが、血管はクランプされておらず、他のラットと同じ時点で生理食塩水を投与した。実験期間の終了時、この弁の生存率を黒色の壊死領域又は発赤領域対ピンク色の生存領域の割合で決定した。エリザベスカラーの適用及び沈降剤としての鎮痛の使用にもかかわらず、少数のラットを、その弁の自己共食いを繰り返す際に早期に安楽死させなければならなかった。
【0325】
患者の血清中のDNAの定量。ICU到着時にAPACHE IIスコア>12を有する同意をした患者からの血液を静脈アクセスラインから血清分離管に採取し、この管を2300×gで10分間、遠心分離し、血清を採取して、-80℃で保管した。DNA含有量を定量するため、敗血症患者に由来する血清(5μl)を、96ウェルフラットボトム培養プレート中で95μlの5μM Sytox Greenと共に37℃で10分間、インキュベートした。次に、蛍光強度を504nmで設定した励起及び523nmでの発光で、蛍光プレートリーダー(Tecan Infinite M200 Pro)で測定した。
【0326】
内皮細胞に関する敗血症患者の血清の細胞毒性の検出及び分析。インビトロでの内皮細胞の場合の敗血症患者の細胞毒性活性を測定するため、HMEC-1を培地中、2.5×104ウェル-1において96ウェルプレートに播種し、37℃、5% CO2中、48時間、37℃で成長させた後に、DNアーゼI(10μgml-1)、抗ヒトヒストン3及びヒストン4ウサギpAb(200μgml-1)(BioVision)又は試験化合物(200μgml-1)の存在下/非存在下で、50μlの患者血清を添加し、3時間、インキュベートした。次に、20μlのHMEC-1培地中、各培養物のウェルに3H-チミジン(0.5μCi、MP Biomedical)を加え、更に24時間、インキュベートした。インキュベート期間の終わりに、プレートに3回の凍結/解凍サイクル(-70℃で30分間、次に、37±0.5℃で30分間)を施した後、採取して3H-チミジン取込みを測定した。フィルターメイト196ハーベスター(Packard Bioscience)を使用して、細胞培養物をガラス繊維フィルター(EasyTab(商標)-C Self Aligning Filters;Packard Bioscience)に採取した。フィルターを80℃で乾燥し、Omnifilterプレート(Perkin Elmer)に置き、次に、20μlのMicroscint-Oシンチレーション流体(Perkin Elmer)を各ウェルに加え、このプレートをTopSeal-A粘着フィルム(Perkin Elmer)で密封した。3H-チミジン取込みをTopCount NXT(商標)マイクロプレートシンチレーション及び発光量カウンター(Packard Bioscience)を使用して測定した。結果を患者の血清に曝露していないHMEC-1の増殖の割合として表した。
【0327】
統計解析。Prismソフトウェア(Graphpad Software)を使用して、統計学的試験を行い、グラフを生成し、使用した試験の詳細は図の説明文に含まれている。
【0328】
mCBSの生物学的作用のインビトロでの証拠
以下の実施例2~6は、遊離ヒストン及びNETの中和に、mCBSの生物学的効果のインビトロでの証拠を提示している。
【0329】
[実施例2:mCBSはヒストン毒性から内皮細胞を、及びヒストンにより誘発される脆弱性及び凝集から赤血球を保護する]
【0330】
CBS、mCBS及びMTS(まとめて、小さなポリアニオン又はSPAと呼ぶ)の各々は、内皮細胞(
図2a)に対するヒストン細胞毒性又は赤血球(RBC)脆弱性(
図2b)の誘発を測定した場合、かなり活性が低い硫酸化単糖とは異なり、ヘパリンに類似したヒストン阻害活性を有する。
【0331】
この実施例は、mCBS及びMTSが赤血球凝集を促進し、赤血球変形能を低下させるかどうかを検討するものである。フローサイトメトリーFSC及びSSCに基づくと、ヒストンは、かなり効率的に赤血球を凝集させ、この効果は、mCBSによって完全に阻害され(
図3a)、結果は、EMを走査することによって確認した(
図3b)。本発明者らはまた、赤血球の自家蛍光を使用して、ヒストンにより誘発された凝集物に存在する赤血球の数を定量した。高いヒストン濃度(400μgml
-1)では、約35個の赤血球/凝集物が存在したが、mCBS及びMTSは、濃度依存的に凝集を防止し、MTSは、mCBSよりも約2倍有効であった(
図3c)。最後に、赤血球凝集(<50μgml
-1)を誘発しないヒストン濃度に曝露させた赤血球(
図3d)は、人工脾臓への通過をかなり低下させることを示し、このアッセイは、赤血球変形能/剛性を測定するものである(Deplaine,G.et al.The sensing of poorly deformable red blood cells by the human spleen can be mimicked in vitro.Blood 117,e88-95(2011))。しかし、mCBS及びMTSの添加により、赤血球が人工脾臓を通過する能力が完全に回復され(
図3d)、SPA、及びヒストンにより媒介される凝集及び漸弱性からの赤血球の保護は、ヒストンにより誘発される剛性を防止することを示している。
【0332】
[実施例3:SPAは、ヒストンによって血小板の活性化を阻害する]
ヒストンは血小板の活性化を誘発することが知られており、したがってSPAがこの過程を阻害する能力を検討し、単離して洗浄したヒト血小板をヒストンと共にインキュベートし、血小板凝集をフローサイトメトリーにより測定した。更に、ATP放出は、血小板の脱顆粒により、全血のヒストンへの曝露後に測定した。血小板凝集と脱顆粒との両方が、ヒストン濃度に依存しており(
図4a、c)、2つのアッセイ間での血小板のヒストン感受性の差異は、ヒストンにやはり結合するATP放出アッセイにおける血漿タンパク質及び赤血球の存在に起因した。ヒストンにより誘発される血小板凝集は、CBS、mCBS及びMTSにより完全に阻害され、MTSが、最も活性であった(
図4b)。陰性コントロールとして含まれる非硫酸化CBは、非阻害性であった(
図4b)。同様の結果が、ヒストンに誘発されるATP放出の場合に得られた(
図4d)。したがって、CBS、mCBS及びMTSは、ヒストンの血小板活性特性の阻害に有効である。
【0333】
[実施例4:SPAは、脂質二重層の破壊を防止する]
次に、本発明者らは、どのようにしてヒストンがその細胞毒性を媒介し、その結果として、SPAがどのようにして、ヒストンによって媒介される傷害から細胞を保護するかを調べた。ヒストンは、脂質二重層と相互作用し、これを傷害(Kleine,T.J.,Lewis,P.N.&Lewis,S.A.Histone-induced damage of a mammalian epithelium: the role of protein and membrane structure.Am J Physiol 273,C1925-1936(1997))し、細胞透過性タンパク質として作用する(Rosenbluh,J.et al.Translocation of histone proteins across lipid bilayers and Mycoplasma membranes.J Mol Biol 345, 387-400 (2005))。したがって、本発明者らは、ヒストンが、脂質二重層を直接、破壊することによってその細胞毒性を媒介するかどうかを検討した。この可能性を検討するため、人工脂質二重層を調製し、この二重層を横切る電流の変化により、ヒストン破断に対するこの人工脂質二重層の感受性を検出した。脂質二重層は寿命が有限であり、通常、30~120分である(Rebbeck,R.T.et al.The beta(1a) subunit of the skeletal DHPR binds to skeletal RyR1 and activates the channel via its 35-residue C-terminal tail.Biophys J 100, 922-930 (2011))。本発明者らの実験では、リアノジン受容体1(RyR1)イオンチャネルタンパク質を含むコントロール脂質二重層は、平均寿命が46±4分を有し、ヒストン(1μM)の添加により、この寿命が5.7±1.2分まで顕著に縮まった(
図3a)。実際には、47個の二重層の13個(28%)がヒストン添加の0.3~0.5分以内に壊れたのに対して、125個のコントロール二重層の2個のみ(1.6%)が同じ期間で破裂し、より高いヒストン濃度(≧50μM)により、ほとんどの二重層が急速に破裂した(図示しない)。二重層は、CBS又はMTSが存在する場合にはヒストンにより破裂し難く、二重層の平均寿命は、CBS及びMTSの場合にはそれぞれ、18±4分及び36±5分まで有意に向上した(
図5a)。更に、MTSによる二重層の寿命は、コントロール寿命とは有意に違いがなかった。同様に、ヒストン単独の場合と比べると(28%)、速やかな二重層の破裂の出現率は、CBSの場合、52個の二重層の3個(5.8%)までに、及びMTSの場合、40個の二重層の1個(2.5%)までに低下した。
【0334】
以前の研究により、ヒストンが、細胞中で非選択的なCa
2+チャネル及び形質膜の脱分極を誘発することができることが実証された。これらの知見は、ヒストンが細胞表面のリン脂質と直接相互作用して、膜の完全性を乱すという概念を更に支持する。CBS、mCBS及びMTSが、ヒストンによって誘発されるCa
2+流動から細胞を保護するかどうかを調べるために、HMEC-1にCa
2+感受性色素Indo-1を負荷し、CBS又はMTSの存在下又は非存在下においてヒストンをチャレンジし、フローサイトメトリーによりCa
2+取込みを測定した(
図5b)。ヒストンは、高い細胞内Ca
2+レベルを示す細胞の集団において約8倍を超える向上を誘発し、この反応は、ヒストン添加の1~3分後に定常に達する。MTSの存在により、Ca
2+反応が完全になくなり、CBSはこの反応を実質的に阻害した(
図5c)。まとめると、本発明者らの知見は、ヒストンが細胞の脂質二重層を直接破壊することにより細胞膜に傷害を与え、SPAであるCBS、mCBS及びMTSは、ヒストンのこの望ましくない性質を中和することを示す。
【0335】
[実施例5:インビボでのヒストンと関連する病理に及ぼすCBS、mCBS及びMTSの効果]
本発明者は、次に、CBS、mCBS及びMTSが、ヒストンが媒介する病理をインビボで阻害する能力を評価した。ヒストンをマウスに静脈内注射すると、血液循環するALT、LDH及びクレアチニンレベルによって測定すると、肝臓障害、全身性組織傷害及び腎不全を伴う敗血症様症候群をもたらす。CBS、mCBS及びMTSの投与により、動物は、これらの組織特異的病理の各々から濃度依存的に保護され、MTSが最も強力であり、CBS及びmCBSは、等しく活性であり、硫酸化されていないCBは、不活性である(
図6a)。全身性ヒストンはまた、mCBS及びMTS処置によって予防される血小板減少症及び貧血を誘発する(
図6b)。CBS、mCBS及びMTSがヒストンの局所的な血管作用に影響を及ぼすかどうかを検討するため、ヒストンにより媒介されるDVTのモデル(Brill,A.et al.von Willebrand factor-mediated platelet adhesion is critical for deep vein thrombosis in mouse models.Blood 117,1400-1407(2011))を確立し、これは、CBS及びMTSの両方によってほとんど完全に阻害されることが明らかになり(
図6c)、遊離ヒストンにより媒介される全身性病理と局所病理の両方が、CBS、mCBS及びMTSによる阻害に適していることと一致した。
【0336】
本発明者らは、次に、敗血症のラット盲腸結紮穿刺(CLP)モデルにおいて、CBS、mCBS及びMTSの有効性を検討した。CBS処置群では致死はなく、PBSコントロールと比べると、効果は非常に顕著であり、MTS群においてわずか1匹の死亡しか起こらず、これは、有意性に近かった(
図7a)。重要なことに、広範囲にわたる肝臓及び腎臓の損傷を示す、未処置群において検出された高いALT及びクレアチニンレベルは、CBS処置動物には観察されなかったが、MTS処置群では、部分的にしか低下しなかった(
図7b)。この知見は、インビトロ及びインビボでのMTSは、一貫して、mCBS/CBSよりもDNA不含細胞外ヒストンの強力な中和因子であったので、いくらか矛盾している。
【0337】
この矛盾を更に検討するため、ラット虚血再灌流傷害(IRI)モデルにおいて、CBS及びMTSの有効性を試験し、これまでの検討は、心臓のIRIは、非常にNET依存的であることを実証している(Savchenko,A.S.et al.VWF-mediated leukocyte recruitment with chromatin decondensation by PAD4 increases myocardial ischemia/reperfusion injury in mice.Blood 123, 141-148,(2014);及びGe,L.et al.Neutrophil extracellular traps in ischemia-reperfusion injury-induced myocardial no-reflow: therapeutic potential of DNase-based reperfusion strategy.Am J Physiol Heart Circ Physiol 308,H500-509,(2015))。留意すべきことに、このモデルでは、MTSは完全に無効であった一方、CBS処置により、毛細血管閉塞の領域及び虚血領域の心筋壊死が50%とかなり低下した(
図7c)。この予期しない知見は、mCBSが一貫して且つ顕著に皮膚弁の生存可能領域を増大させるラット皮膚弁IRIモデルでは大いに確認されたが、MTS処置による結果は、かなりばらつきがあった(
図7d)。
【0338】
[実施例6:敗血症患者の血清における、CBS、mCBS及びMTSがNETを阻害する能力の比較]
上で議論したインビボ効力のデータに基づいて、本発明者らは、mCBS/CBSは、DNA不含ヒストン及びNET関連ヒストンの両方によって媒介される病理を阻害する一方、MTSは、DNA不含ヒストンの傷害効果を優先的に阻害するという仮説を立てた。この解釈に対する支持は、APACHE IIスコアと高度に相関するレベルにおいて、
3H-チミジン取込み(
図8a、b)によって測定されるHMEC-1増殖を阻害することを本発明者らが発見した敗血症患者に由来する血清を使用して得られた(
図9a)。この相関関係は、APACHE IIスコアと血液循環DNAレベルとの間に観察されたものよりも強力であった(
図9b)。患者5に由来する阻害性の高い血清の更なる分析により、この細胞毒性活性は、DNアーゼIに感度が高く、やはりまたヒストン3及び4に特異的なポリクローナル抗体によって完全に阻害されることが明らかになった(
図9c)。このようなデータは、NETが敗血症患者の血清の抗増殖作用を媒介することと一致する。最後に、本発明者らは、CBSが、10名のほとんど阻害性の敗血症患者の血清の抗増殖活性をかなり無効化する一方、MTSは無効化しないことを見出した(
図9d)。したがって、これらの結果は、MTSが遊離ヒストン阻害剤となること、及びmCBS/CBSは、DNA不含ヒストン及びNET関連ヒストンの両方により媒介される病理を阻害することと完全に一致する。
【手続補正書】
【提出日】2021-08-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
NETによって媒介される病気の処置又は予防における化合物の使用であって、前記化合物が、その還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド、又はその薬学的に許容される塩を含む、使用。
【請求項2】
前記NETによって媒介される病気が、以下に限定されないが、(a)例えば、敗血症(細菌、ウイルス、真菌、寄生生物、プリオンによって誘発される敗血症を含む)等の感染、又は手術、外傷、出血、熱傷、急性膵炎及び急性腎傷害を含む非感染性誘発因子に対する全身性炎症反応、
(b)例えば、粥状動脈硬化、血管の自然破裂、血管への外傷性傷害に起因する動脈の閉塞後の且つ心臓の及び移植と関連するIRIを含む局所組織レベルでの低酸素症、又は例えば溺死、ガス曝露若しくは心肺停止に起因する呼吸停止後の、且つ例えば急性呼吸促迫症候群、慢性閉塞性肺疾患及び薬剤介在組織傷害等の病気を含む全身レベルでの低酸素症、
(c)粥状動脈硬化、凝血及び血栓症(例えば、深部静脈血栓症)等の、例えば循環器疾患又は慢性循環器疾患等の止血又は血管閉塞、
(d)自己免疫疾患状態及び炎症疾患状態、例えば多発性硬化症、過剰炎症疾患状態、全身性エリテマトーデス、脊椎関節症、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、反応性関節炎、腸炎性関節炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、過敏性腸疾患、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、小血管の破壊及び炎症によって特徴付けられる、抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎(AAV)(多発性血管炎を伴う肉芽腫症、多発性血管炎及び顕微鏡的多発血管炎を伴う好酸球性肉芽腫症など)、家族性地中海熱、筋萎縮性側索硬化症、シェーグレン症候群、早期関節炎、ウイルス性関節炎、乾癬、加齢に伴う臓器線維症、特発性肺線維症、若年性糖尿病(I型)、糖尿病(2型)、抗リン脂質抗体症候群及び様々な中枢神経系疾患(ハンチントン病など)を含む群から選択されるか、又は前記NETによって媒介される病気が、敗血症、SIRS若しくはIRI又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する医学的状態又は疾患である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記その還元末端において小さな非荷電置換基で改変されている硫酸化セロビオシドが、
【化1】
(式中、
R1は、小さい非荷電グリコシド結合置換基であり、又はR1は、O-又はS-(C
1~6)アルキルであり、又はR1は、メトキシ基又はエトキシ基であり、
R2~R8は、小さい非荷電O結合置換基又はサルフェート基からそれぞれ独立して選択されるか、又はR2~R8は、それぞれ、サルフェート基である)
である一般構造を有するか、又は
前記化合物が、硫酸化β-O-メチルセロビオシド二糖であるか、又は
前記化合物が、ナトリウムβ-O-メチルセロビオシドサルフェートである、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
NETによって媒介される病気を処置若しくは予防する、あるいは敗血症、SIRS若しくはIRI又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する医学的状態又は疾患を処置又は予防する方法であって、対象に、その還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量を投与することを含む方法。
【請求項5】
前記NETによって媒介される病気が、以下に限定されないが、(a)例えば、敗血症(細菌、ウイルス、真菌、寄生生物、プリオンによって誘発される敗血症を含む)等の感染、又は手術、外傷、出血、熱傷、急性膵炎及び急性腎傷害を含む非感染性誘発因子に対する全身性炎症反応、(b)例えば、粥状動脈硬化、血管の自然破裂、血管への外傷性傷害に起因する動脈の閉塞後の且つ心臓の及び移植と関連するIRIを含む局所組織レベルでの低酸素症、又は例えば溺死、ガス曝露若しくは心肺停止に起因する呼吸停止後の、且つ例えば急性呼吸促迫症候群、慢性閉塞性肺疾患及び薬剤介在組織傷害等の病気を含む全身レベルでの低酸素症、(c)粥状動脈硬化、凝血及び血栓症(例えば、深部静脈血栓症)等の、例えば循環器疾患又は慢性循環器疾患等の止血又は血管閉塞、(d)自己免疫疾患状態及び炎症疾患状態、例えば多発性硬化症、過剰炎症疾患状態、全身性エリテマトーデス、脊椎関節症、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、反応性関節炎、腸炎性関節炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、過敏性腸疾患、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、小血管の破壊及び炎症によって特徴付けられる、抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎(AAV)(多発性血管炎を伴う肉芽腫症、多発性血管炎及び顕微鏡的多発血管炎を伴う好酸球性肉芽腫症など)、家族性地中海熱、筋萎縮性側索硬化症、シェーグレン症候群、早期関節炎、ウイルス性関節炎、乾癬、加齢に伴う臓器線維症、特発性肺線維症、若年性糖尿病(I型)、糖尿病(2型)、抗リン脂質抗体症候群及び様々な中枢神経系疾患(ハンチントン病など)を含む群から選択されるか、又は前記敗血症、SIRS若しくはIRI又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する医学的状態若しくは疾患が、対象におけるNETによって媒介される病理によって引き起こされ、及び/又はそれによって媒介され、及び/又はそれを伴い、及び/又はそれと関連し、且つ前記方法が、対象における前記敗血症、SIRS若しくはIRIの状態又は疾患を処置又は予防するのに十分である、その還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量を対象に投与することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
a)前記医学的状態又は疾患が、対象におけるNETの放出によって引き起こされる、及び/又はそれによって媒介される、及び/又はそれを伴い、及び/又はそれと関連する、及び/又は
b)前記改変されたポリアニオン性硫酸化セロビオシドの前記治療上有効な量が、対象におけるNETによって媒介される病理を減少させるか、最小限に抑えるか、若しくは阻害するのに十分である、及び/又は
c)前記治療上有効な量が、(i)対象の内皮に対して細胞毒性である、又は(ii)対象における内皮機能障害の一因となる、又は(iii)対象における血小板を活性化させることによって凝血を開始させる、又は(iv)対象において赤血球脆弱性及びその結果としての貧血を誘発するNETを減少させるか、最小限に抑えるか又は阻害するのに十分である、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
a)単回用量において、その還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド又は前記その薬学的に許容される塩の前記治療上有効な量を投与すること、又は
b)多回用量において、その還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド又は前記その薬学的に許容される塩の前記治療上有効な量を投与すること、又は
c)前記処置される医学的状態又は疾患のための補助的処置として、抗炎症剤、抗生物質製剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤又は別の形態の医学的介入からなる群から選択される第2の活性剤を同時に又は共時的に前記対象に投与すること
を含み、及び/又は
前記第2の活性剤が、1種又は複数の抗炎症剤を含む、請求項4~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
敗血症、SIRS若しくはIRI又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する医学的状態若しくは疾患を有する、又はそれらを有することが疑われる、又はそれらを発症するリスクにある対象における、敗血症、SIRS若しくはIRI又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する医学的状態若しくは疾患を処置又は予防することを含む、請求項4~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
NETによって媒介される病気の処置又は予防のための、
a)その還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド又はその薬学的に許容される塩を少なくとも含む治療用組成物、又は
b)その還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド又はその薬学的に許容される塩、並びに薬学的に許容される担体、添加剤及び/又は希釈剤を少なくとも含む医薬組成物
の使用。
【請求項10】
対象における敗血症、SIRS若しくはIRI又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する医学的状態若しくは疾患を処置又は予防するための薬物の製造のための、その還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量の使用。
【請求項11】
前記敗血症、SIRS若しくはIRI又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する医学的状態若しくは疾患が、
a)前記対象におけるNETによって媒介される病理、及び/又は
b)前記対象におけるNETの放出、及び/又は
c)前記対象における炎症又は炎症反応後のNETの放出
によって引き起こされる、及び/又はそれらによって媒介される、及び/又はそれらを伴う、及び/又はそれらと関連する、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
a)前記NETが、前記対象における内皮に対して細胞傷害性となる、且つ/又は前記対象における内皮機能障害の一因となる、及び/又は
b)前記薬物が、前記対象における、NETによって媒介される病理を減少させるか、最小限に抑えるか、若しくは阻害する、及び/又は
c)前記薬物が、前記対象における前記内皮に対してNETによって媒介される病理を減少させるか、最小限に抑えるか、若しくは阻害する、請求項10又は11に記載の使用。
【請求項13】
前記薬物が、
a) 前記対象への単回用量投与のために製剤化されている、又は
b) 前記対象への多回用量投与のために製剤化されている、又は
c) 前記敗血症、SIRS若しくはIRI又は前記敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する前記医学的状態若しくは疾患のための補助的処置としての、抗炎症剤、抗生物質製剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤又は別の形態の医学的介入からなる群から選択されるか、又は1種若しくは複数の抗炎症剤を含む、第2の活性剤の同時の又は付随する前記対象への投与のために製剤化されている、請求項10~12のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
前記薬物が、敗血症、SIRS若しくはIRI又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する医学的状態若しくは疾患を有するか又は有する疑いがある対象において、又はそれらを発症するリスクにある対象において、敗血症、SIRS若しくはIRI又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する医学的状態若しくは疾患を処置又は予防するためのものである、請求項10~13のいずれか1項に記載の使用。
【請求項15】
対象における敗血症、SIRS若しくはIRI又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する医学的状態若しくは疾患の処置又は予防のための、その還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド又はその薬学的に許容される塩の治療上有効な量の使用。
【請求項16】
前記敗血症、SIRS若しくはIRI又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する医学的状態若しくは疾患が、
a)前記対象におけるNETによって媒介される病理、及び/又は
b)前記対象におけるNETの放出、及び/又は
c)前記対象における炎症又は炎症反応後のNETの放出
によって引き起こされる、及び/又はそれらによって媒介される、及び/又はそれらを伴う、及び/又はそれらと関連し、
場合により更に、前記NETが、(i)対象における内皮に対して細胞毒性である、又は(ii)対象における内皮機能障害の一因となる、又は(iii)対象における血小板を活性化させることによって凝血を開始させる、又は(iv)対象において赤血球脆弱性及びその結果としての貧血を誘発する、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
その還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド若しくは前記その薬学的に許容される塩の前記治療上有効な量が、前記対象におけるNETによって媒介される病理を減少させるか、最小限に抑えるか、若しくは阻害するのに十分であり、且つ/又は前記使用が、前記対象におけるNETによって媒介される病理を減少させるか、最小限に抑えるか、若しくは阻害する、及び/又は前記使用が、前記対象における内皮に対してNETによって媒介される病理を減少させるか、最小限に抑えるか、若しくは阻害する、請求項15又は16に記載の使用。
【請求項18】
前記使用が、
a)前記対象における前記敗血症、SIRS若しくはIRI又は前記敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する前記医学的状態若しくは疾患の前記処置又は予防における、その還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド又は前記その薬学的に許容される塩の前記治療上有効な量の単回用量の使用、又は
b)前記対象における前記敗血症、SIRS若しくはIRI又は前記敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する前記医学的状態若しくは疾患の前記処置又は予防における、その還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド又は前記その薬学的に許容される塩の前記治療上有効な量の多回用量の使用、又は
c)その還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド又は前記その薬学的に許容される塩の前記治療上有効な量、及び前記敗血症、SIRS若しくはIRI又は前記敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する前記医学的状態若しくは疾患のための補助的処置としての、抗炎症剤、抗生物質製剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤又は別の形態の医学的介入からなる群から選択されるか、又は1種若しくは複数の抗炎症剤を含む、第2の活性剤の量の使用を含む、請求項15~17のいずれか1項に記載の使用。
【請求項19】
敗血症、SIRS若しくはIRI又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する医学的状態若しくは疾患を有する、又はそれらを有することが疑われる、又はそれらを発症するリスクにある対象における、敗血症、SIRS若しくはIRI又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する医学的状態若しくは疾患を処置又は予防することを含む、請求項15~18のいずれか1項に記載の使用。
【請求項20】
前記処置が、敗血症、SIRS若しくはIRI又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する医学的状態若しくは疾患を寛解させるか、又は阻害することを含む、又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する前記医学的状態若しくは疾患が、非敗血症状態、SIRS疾患状態又はIRI疾患状態である、請求項1~3、9~19のいずれか1項に記載の使用、又は請求項4~8のいずれか1項に記載の方法。
【手続補正書】
【提出日】2022-02-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
NETによって媒介される病気の処置又は予防
のための医薬組成物であって
、その還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシド、又はその薬学的に許容される塩を含む、
医薬組成物。
【請求項2】
前記NETによって媒介される病気が
、(a)敗血症(細菌、ウイルス、真菌、寄生生物、プリオンによって誘発される敗血症を含む)
を含む感染、又は手術、外傷、出血、熱傷、急性膵炎及び急性腎傷害を含む非感染性誘発因子に対する全身性炎症反応、
(b)粥状動脈硬化、血管の自然破裂、血管への外傷性傷害に起因する動脈の閉塞後の且つ心臓の及び移植と関連するIRIを含む局所組織レベルでの低酸素症、又は溺死、ガス曝露若しくは心肺停止に起因する呼吸停止後の、且つ急性呼吸促迫症候群、慢性閉塞性肺疾患及び薬剤介在組織傷害を含む全身レベルでの低酸素症、
(c)粥状動脈硬化、凝血及び血栓症(深部静脈血栓症
を含む)
を含む、循環器疾患又は慢性循環器疾患等の止血又は血管閉塞、
(d)自己免疫疾患状態及び炎症疾患状態、多発性硬化症、過剰炎症疾患状態、全身性エリテマトーデス、脊椎関節症、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、反応性関節炎、腸炎性関節炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、過敏性腸疾患、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、小血管の破壊及び炎症によって特徴付けられる、抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎(AAV)(多発性血管炎を伴う肉芽腫症、多発性血管炎及び顕微鏡的多発血管炎を伴う好酸球性肉芽腫症
を含む)、家族性地中海熱、筋萎縮性側索硬化症、シェーグレン症候群、早期関節炎、ウイルス性関節炎、乾癬、加齢に伴う臓器線維症、特発性肺線維症、若年性糖尿病(I型)、糖尿病(2型)、抗リン脂質抗体症候群及び様々な中枢神経系疾患(ハンチントン病
を含む)を含む群から選択されるか、又は
前記NETによって媒介される病気が、敗血症、SIRS若しくはIRI又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する医学的状態
若しくは疾患
、又は非敗血症性疾患状態、非SIRS疾患状態若しくは非IRI疾患状態である、請求項1に記載の
医薬組成物。
【請求項3】
前記その還元末端において小さな非荷電置換基で改変されている硫酸化セロビオシドが、
【化1】
(式中、
R1は、小さい非荷電グリコシド結合置換基であり、又はR1は、O-
(C
1~6
)アルキル又はS-(C
1~6)アルキルであり
、
R2~R8は、小さい非荷電O結合置換基又はサルフェート基からそれぞれ独立して選択されるか、又はR2~R8は、それぞれ、サルフェート基である)
である一般構造を有する
、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
R1は、メトキシ基又はエトキシ基である、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記その還元末端において小さな非荷電置換基で改変されている硫酸化セロビオシドが、硫酸化β-O-メチルセロビオシド二糖であるか、又はナトリウムβ-O-メチルセロビオシドサルフェートである、請求項1~4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
a)対象におけるNETによって媒介される病理を減少させるか、最小限に抑えるか、若しくは阻害する
効果がある、及び/又は
b)(i)対象の内皮に対して細胞毒性である、又は(ii)対象における内皮機能障害の一因となる、又は(iii)対象における血小板を活性化させることによって凝血を開始させる、又は(iv)対象において赤血球脆弱性及びその結果としての貧血を誘発するNETを減少させるか、最小限に抑えるか又は阻害する
効果がある、請求項
1~5のいずれか1項に記載の
医薬組成物。
【請求項7】
a)
対象への単回
投与用に製剤化されているか、又は
b)
対象への多回
投与用に製剤化されているか、又は
c)前記処置される医学的状態又は疾患のための補助的処置として、抗炎症剤、抗生物質製剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤又は別の形態の医学的介入からなる群から選択される第2の活性剤を同時に又は共時的
に対象に投与する
ために製剤化されており、及び/又は前記第2の活性剤が、1種又は複数の抗炎症剤を含む、請求項
1~6のいずれか1項に記載の
医薬組成物。
【請求項8】
敗血症、SIRS若しくはIRI又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する医学的状態若しくは疾患を有する、又はそれらを有することが疑われる、又はそれらを発症するリスクにある対象における、敗血症、SIRS若しくはIRI又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する医学的状態若しくは疾患を処置又は予防する
ための、請求項
1~7のいずれか1項に記載の
医薬組成物。
【請求項9】
前記敗血症、SIRS若しくはIRI又は敗血症、SIRS若しくはIRIと関連する医学的状態若しくは疾患が、
a)前記対象におけるNETによって媒介される病理、及び/又は
b)前記対象におけるNETの放出、及び/又は
c)前記対象における炎症又は炎症反応後のNETの放出
によって引き起こされる、及び/又はそれらによって媒介される、及び/又はそれらを伴う、及び/又はそれらと関連する、請求項
8に記載の
医薬組成物。
【請求項10】
a)前記NETが、前記対象における内皮に対して細胞傷害性となる、且つ/又は前記対象における内皮機能障害の一因となる、及び/又は
b)前記薬物が、前記対象における、NETによって媒介される病理を減少させるか、最小限に抑えるか、若しくは阻害する、及び/又は
c)前記薬物が、前記対象における前記内皮に対してNETによって媒介される病理を減少させるか、最小限に抑えるか、若しくは阻害する、請求項
8又は9に記載の
医薬組成物。
【請求項11】
前記NETが、(i)対象における内皮に対して細胞毒性である、又は(ii)対象における内皮機能障害の一因となる、又は(iii)対象における血小板を活性化させることによって凝血を開始させる、又は(iv)対象において赤血球脆弱性及びその結果としての貧血を誘発する、請求項
1~10のいずれか1項に記載の
医薬組成物。
【請求項12】
前記その還元末端において小さい非荷電グリコシド結合置換基で改変されているポリアニオン性硫酸化セロビオシドの水性溶液を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
緩衝系を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
リン酸緩衝系を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
初期pH7.5を呈する量の緩衝系で製剤化されている、請求項1~14のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【国際調査報告】