IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司の特許一覧

特表2022-530744二次電池、その製造方法及び当該二次電池を備える装置
<>
  • 特表-二次電池、その製造方法及び当該二次電池を備える装置 図1
  • 特表-二次電池、その製造方法及び当該二次電池を備える装置 図2
  • 特表-二次電池、その製造方法及び当該二次電池を備える装置 図3
  • 特表-二次電池、その製造方法及び当該二次電池を備える装置 図4
  • 特表-二次電池、その製造方法及び当該二次電池を備える装置 図5
  • 特表-二次電池、その製造方法及び当該二次電池を備える装置 図6
  • 特表-二次電池、その製造方法及び当該二次電池を備える装置 図7
  • 特表-二次電池、その製造方法及び当該二次電池を備える装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-01
(54)【発明の名称】二次電池、その製造方法及び当該二次電池を備える装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/133 20100101AFI20220624BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20220624BHJP
   H01M 4/1393 20100101ALI20220624BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20220624BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20220624BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20220624BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20220624BHJP
   H01M 10/0525 20100101ALI20220624BHJP
【FI】
H01M4/133
H01M4/131
H01M4/1393
H01M4/505
H01M4/587
H01M4/36 C
H01M4/525
H01M10/0525
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021558703
(86)(22)【出願日】2020-04-30
(85)【翻訳文提出日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 CN2020088255
(87)【国際公開番号】W WO2021217576
(87)【国際公開日】2021-11-04
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】▲馬▼ 建▲軍▼
(72)【発明者】
【氏名】沈 睿
(72)【発明者】
【氏名】何 立兵
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ03
5H029AJ05
5H029AK03
5H029AK18
5H029AL07
5H029AL18
5H029AM03
5H029AM06
5H029AM11
5H029BJ02
5H029BJ12
5H029BJ14
5H029CJ22
5H029HJ00
5H029HJ02
5H029HJ04
5H029HJ05
5H029HJ08
5H029HJ15
5H029HJ20
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA17
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA29
5H050CB08
5H050CB29
5H050FA02
5H050FA17
5H050FA18
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA08
5H050HA15
5H050HA17
(57)【要約】
本願は、二次電池、その製造方法及び当該二次電池を備える装置に関する。具体的に、本願の二次電池において、負極フィルム層は、第1の負極フィルム層及び第2の負極フィルム層を含み、前記第1の負極フィルム層は、負極集電体の少なくとも一つの表面に設置され、且つ第1の負極活性材料を含み、前記第2の負極フィルム層は、第1の負極フィルム層に設置され、且つ第2の負極活性材料を含み、前記第1の負極活性材料は天然黒鉛を含み、且つ、前記第1の負極活性材料は、6mΩ・cm≦A≦12mΩ・cmを満たし、前記第2の負極活性材料は人造黒鉛を含み、且つ、前記第2の負極活性材料は、13mΩ・cm≦B≦20mΩ・cmを満たし、ここで、Aは、8Mpa圧力下で測定された第1の負極活性材料の粉末抵抗率であり、Bは、8Mpa圧力下で測定された第2の負極活性材料の粉末抵抗率である。当該二次電池は、比較的に高いエネルギー密度を有する前提下で、良好な動力学的性能及び比較的に長いサイクル寿命を両立させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池であって、
負極集電体と負極フィルム層とを備える負極シートを含み、
前記負極フィルム層は、第1の負極フィルム層及び第2の負極フィルム層を含み、前記第1の負極フィルム層は、前記負極集電体の少なくとも一つの表面に設置され、且つ第1の負極活性材料を含み、前記第2の負極フィルム層は、第1の負極フィルム層に設置され、且つ第2の負極活性材料を含み、
前記第1の負極活性材料は天然黒鉛を含み、且つ、前記第1の負極活性材料は、6mΩ・cm≦A≦12mΩ・cmを満たし、
前記第2の負極活性材料は人造黒鉛を含み、且つ、前記第2の負極活性材料は、13mΩ・cm≦B≦20mΩ・cmを満たし、
Aは、8Mpa圧力下で測定された第1の負極活性材料の粉末抵抗率であり、
Bは、8Mpa圧力下で測定された第2の負極活性材料の粉末抵抗率である、
二次電池。
【請求項2】
8mΩ・cm≦A≦11mΩ・cm、及び/又は、14mΩ・cm≦B≦18mΩ・cmである、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
1.4≦B/A≦3であり、好ましくは、1.5≦B/A≦2.0である、請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記第1の負極活性材料における前記天然黒鉛の質量比は、≧50%であり、好ましくは、80%~100%であること、及び/又は、
前記第2の負極活性材料における前記人造黒鉛の質量比は、≧80%であり、好ましくは、90%~100%である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項5】
前記第1の負極活性材料の粒径分布(Dv90-Dv10)/Dv50は、前記第2の負極活性材料の粒径分布(Dv90-Dv10)/Dv50より小さい、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項6】
前記第1の負極活性材料の粒径分布は、1.0≦(Dv90-Dv10)/Dv50≦1.5であり、好ましくは、1.0≦(Dv90-Dv10)/Dv50≦1.3であること、及び/又は、
前記第2の負極活性材料の粒径分布は、1.0≦(Dv90-Dv10)/Dv50≦2であり、好ましくは、1.2≦(Dv90-Dv10)/Dv50≦1.7である、ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項7】
前記第1の負極活性材料の体積平均粒径Dv50は、前記第2の負極活性材料の体積平均粒径Dv50より大きい、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項8】
前記第1の負極活性材料の体積平均粒径Dv50は、15μm~19μmであり、好ましくは、16μm~18μmであること、及び/又は、
前記第2の負極活性材料の体積平均粒径Dv50は、14μm~18μmであり、好ましくは、15μm~17μmである、ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項9】
前記第1の負極活性材料は、下記(1)~(4)のうちの一つ又は複数をさらに満たす請求項1乃至8のいずれか一項に記載の二次電池。
(1)50000Nの作用力での前記第1の負極活性材料の粉体圧密度は、1.85g/cm~2.1g/cmであり、好ましくは、1.9g/cm~2.0g/cmである。
(2)前記第1の負極活性材料の黒鉛化度は、95%~98%であり、好ましくは、96%~97%である。
(3)前記第1の負極活性材料の形状は、球状及び略球状のうちの一種類又は複数種類である。
(4)前記第1の負極活性材料は、表面の少なくとも一部に非晶質炭素被覆層を有すること。
【請求項10】
前記第2の負極活性材料は、下記(1)~(4)のうちの一つ又は複数をさらに満たす請求項1乃至9のいずれか一項に記載の二次電池。
(1)50000Nの作用力での前記第2の負極活性材料の粉体圧密度は、1.7g/cm~1.9g/cmであり、好ましくは、1.8g/cm~1.9g/cmである。
(2)前記第2の負極活性材料の黒鉛化度は、90%~95%であり、好ましくは、91%~93%である。
(3)前記第2の負極活性材料の形状は、ブロック状及びシート状のうちの一種類又は複数種類である。
(4)前記第2の負極活性材料は、表面に非晶質炭素被覆層を有さない。
【請求項11】
前記二次電池は、下記(1)~(3)のうちの一つ又は複数をさらに満たす請求項1乃至10のいずれか一項に記載の二次電池。
(1)前記負極フィルム層の厚さは、≧50μmであり、好ましくは、60μm~75μmである。
(2)前記負極フィルム層の面密度は、9mg/cm~14mg/cmであり、好ましくは、11mg/cm~13mg/cmである。
(3)前記第1の負極フィルム層と前記第2の負極フィルム層との厚さ比は、1:1.01~1:1.1であり、好ましくは、1:1.02~1:1.06である。
【請求項12】
前記負極フィルム層から二つの同じ面積の円形状の領域を任意に取って、それぞれ第1の領域及び第2の領域とし、前記第1の領域と前記第2の領域との中心間距離が20cmである場合、前記第1の領域の電極シートの電気抵抗R11と前記第2の領域の電極シートの電気抵抗R12とは、R11-R12の絶対値が3mΩ・cm以下であり、好ましくは、R11-R12の絶対値が1mΩ・cm以下である、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項13】
前記二次電池は、正極シートを含み、
前記正極シートは、正極集電体と、正極集電体の少なくとも一つの表面に設置され且つ正極活性材料を含む正極フィルム層と、を含み、前記正極活性材料は、リチウム遷移金属酸化物、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びそのそれぞれの改質化合物のうちの一種類又は複数種類を含み、
好ましくは、前記正極活性材料は、式1で表されるリチウム遷移金属酸化物及びその改質化合物のうちの一種類又は複数種類を含み、
LiNiCo (式1)
前記式1において、0.8≦a≦1.2、0.5≦b<1、0<c<1、0<d<1、1≦e≦2、0≦f≦1であり、Mは、Mn、Al、Zr、Zn、Cu、Cr、Mg、Fe、V、Ti及びBから選択される一種類又は複数種類であり、Aは、N、F、S及びClから選択される一種類又は複数種類である、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項14】
二次電池の製造方法であって、
1)負極集電体の少なくとも一つの表面に、第1の負極活性材料を含む第1の負極フィルム層を形成する工程と、
2)前記第1の負極フィルム層に、第2の負極活性材料を含む第2の負極フィルム層を形成する工程と
によって、前記二次電池の負極シートを製造することを含み、
前記第1の負極活性材料は天然黒鉛を含み、且つ、前記第1の負極活性材料は、6mΩ・cm≦A≦12mΩ・cmを満たし、
前記第2の負極活性材料は人造黒鉛を含み、且つ、前記第2の負極活性材料は、13mΩ・cm≦B≦20mΩ・cmを満たし、
Aは、8Mpa圧力下で測定された第1の負極活性材料の粉末抵抗率であり、
Bは、8Mpa圧力下で測定された第2の負極活性材料の粉末抵抗率である、
二次電池の製造方法。
【請求項15】
請求項1乃至13のいずれか一項に記載の二次電池又は請求項14に記載の二次電池の製造方法で製造された二次電池を備える装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電気化学の技術分野に属し、より具体的には、二次電池及び当該二次電池を備える装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、重量が軽く、汚染がなく、メモリ効果がないなどの顕著な特徴を有するため、各種の家電製品及び電動車両に広く応用される。
【0003】
新エネルギー業界の発展に伴い、人々は二次電池に対してより高い使用ニーズを提起している。二次電池が高いエネルギー密度を有した上で、他の電気化学的性能を両立させることは、依然として二次電池分野の重要な課題である。
【0004】
これに鑑みて、クライアントの使用ニーズを満たすために、様々な性能を両立できる二次電池を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願は、背景技術に存在する技術的課題に鑑み、二次電池が高いエネルギー密度を有した上で、良好な動力学的性能及び比較的に長いサイクル寿命を同時に両立させることを目的として、二次電池及びそれを備える装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記発明の目的を達成するために、本願の第1の態様は、二次電池を提供し、当該二次電池は、負極シートを含み、前記負極シートは、負極集電体及び負極フィルム層を含み、前記負極フィルム層は、第1の負極フィルム層及び第2の負極フィルム層を含み、前記第1の負極フィルム層は、負極集電体の少なくとも一つの表面に設置され、且つ第1の負極活性材料を含み、前記第2の負極フィルム層は、第1の負極フィルム層に設置され、且つ第2の負極活性材料を含み、前記第1の負極活性材料は天然黒鉛を含み、且つ、前記第1の負極活性材料は、6mΩ・cm≦A≦12mΩ・cmを満たし、前記第2の負極活性材料は人造黒鉛を含み、且つ、前記第2の負極活性材料は、13mΩ・cm≦B≦20mΩ・cmを満たし、Aは、8Mpa圧力下で測定された第1の負極活性材料の粉末抵抗率であり、Bは、8Mpa圧力下で測定された第2の負極活性材料の粉末抵抗率である。
【0007】
本願の第2の態様は、二次電池の製造方法を提供し、当該製造方法は、
1)負極集電体の少なくとも一つの表面に、第1の負極活性材料を含む第1の負極フィルム層を形成する工程と、
2)前記第1の負極フィルム層に、第2の負極活性材料を含む第2の負極フィルム層を形成する工程と
によって、前記二次電池の負極シートを製造することを含み、
前記第1の負極活性材料は天然黒鉛を含み、且つ、前記第1の負極活性材料は、6mΩ・cm≦A≦12mΩ・cmを満たし、
前記第2の負極活性材料は人造黒鉛を含み、且つ、前記第2の負極活性材料は、13mΩ・cm≦B≦20mΩ・cmを満たし、
Aは、8Mpa圧力下で測定された第1の負極活性材料の粉末抵抗率であり、
Bは、8Mpa圧力下で測定された第2の負極活性材料の粉末抵抗率である。
【0008】
本願の第3の態様は、本願の第1の態様に記載の二次電池又は本願の第2の態様に記載の方法に従って製造された二次電池を備える装置を提供する。
【0009】
本願は、従来技術に対して、少なくとも以下の有益な効果を含む。
本願の二次電池において、負極シートは第1の負極フィルム層及び第2の負極フィルム層を含み、且つ各負極フィルム層は特定の負極活性材料を選択し、上下層の合理的な設計により、本願の二次電池は、比較的に高いエネルギー密度を有する前提で、良好な動力学的性能及び比較的に長いサイクル寿命を同時に両立させる。本願の装置は、上記二次電池を備えるため、少なくとも前記二次電池と同じ利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本願の二次電池の一実施形態の模式図である。
図2】本願の二次電池における負極シートの一実施形態の模式図である。
図3】本願の二次電池における負極シートの他の実施形態の模式図である。
図4】本願の二次電池の一実施形態の分解模式図である。
図5】電池モジュールの一実施形態の模式図である。
図6】電池パックの一実施形態の模式図である。
図7図6の分解図である。
図8】本願の二次電池を電源とする装置の一実施形態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、具体的な実施形態を参照しながら、本願をさらに説明する。理解されるように、これらの具体的な実施形態は本願を説明するためのものに過ぎず、本願の範囲を限定するものではない。
【0012】
簡潔にするために、本明細書はいくつかの数値範囲のみを具体的に開示した。しかしながら、任意の下限は任意の上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができ、任意の下限は他の下限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができ、同様に任意の上限は任意の他の上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができる。また、各単独で開示された点又は単一の数値自体は下限又は上限として任意の他の点又は単一の数値と組み合わせるか又は他の下限又は上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができる。
【0013】
本明細書の説明において、説明すべきこととして、特に説明しない限り、「以上」、「以下」は本数を含み、「一種類又は複数種類」における「複数種類」の意味は二種類及び二種類以上である。
【0014】
特に説明しない限り、本願に使用される用語は当業者に一般的に理解される周知の意味を有する。特に説明しない限り、本願に言及された各パラメータの数値は本分野の一般的な様々な測定方法で測定することができる(例えば、本願の実施例に示された方法に応じて測定することができる)。
【0015】
二次電池
本願の第1の様態は、二次電池を提供する。当該二次電池は、正極シート、負極シート及び電解質を備えている。電池の充放電過程において、活性イオンは、正極シートと負極シートとの間で往復して挿入及び脱離する。電解質は、正極シートと負極シートとの間でイオンを伝導する役割を果たす。
【0016】
[負極シート]
本願の二次電池において、前記負極シートは、負極集電体及び負極フィルム層を含み、前記負極フィルム層は、第1の負極フィルム層及び第2の負極フィルム層を含み、前記第1の負極フィルム層は、負極集電体の少なくとも一つの表面に設置され、且つ第1の負極活性材料を含み、前記第2の負極フィルム層は、第1の負極フィルム層に設置され、且つ第2の負極活性材料を含み、前記第1の負極活性材料は天然黒鉛を含み、且つ、前記第1の負極活性材料は、6mΩ・cm≦A≦12mΩ・cmを満たし、前記第2の負極活性材料は人造黒鉛を含み、且つ、前記第2の負極活性材料は、13mΩ・cm≦B≦20mΩ・cmを満たし、Aは、8Mpa圧力下で測定された第1の負極活性材料の粉末抵抗率であり、Bは、8Mpa圧力下で測定された第2の負極活性材料の粉末抵抗率である。
【0017】
本発明者らは、第1の負極活性材料が天然黒鉛を含み、第2の負極活性材料が人造黒鉛を含み、且つ、第1の負極活性材料及び第2の負極活性材料が特定範囲内の粉末抵抗率を有する場合、負極フィルム層における上下フィルム層の活性部位が合理的にマッチングされるため、電池の動力学的性能の改善に有利であり、同時に、上下フィルム材料の特定な設計は、さらに、勾配孔隙分布を形成することができ、電解液の浸潤性能を効果的に改善し、活性イオンの液相伝導を向上させることができるため、電池のサイクル寿命を向上させることができることを見出した。
【0018】
いくつかの好ましい実施形態において、前記第1の負極活性材料は、8mΩ・cm≦A≦11mΩ・cmを満たす。
【0019】
いくつかの好ましい実施形態において、前記第2の負極活性材料は、14mΩ・cm≦B≦18mΩ・cmを満たす。
【0020】
本発明者らは、大量の研究により、本願の負極フィルム層が上記設計を満たした上で、さらに、下記パラメータのうちの一つ又は複数を選択可能に満たすと、電池の性能をさらに改善することができることを見出した。
【0021】
いくつかの好ましい実施形態において、1.4≦B/A≦3であり、より好ましくは、1.5≦B/A≦2.0である。B/Aが所定の範囲内に制御される場合、上下層の負極活性材料の勾配電気抵抗がより良好にマッチングされるため、正極から脱離された活性イオンが底部の負極活性材料粒子の内部に迅速かつ整然と拡散し、電池のサイクル過程でのリチウム析出のリスクを減少させ、分極を低下させ、これにより、電池のサイクル性能及び安全性能をさらに改善させることができる。
【0022】
いくつかの好ましい実施形態において、前記第1の負極活性材料の粒径分布(Dv90-Dv10)/Dv50は、前記第2の負極活性材料の粒径分布(Dv90-Dv10)/Dv50より小さい。
【0023】
いくつかの好ましい実施形態において、前記第1の負極活性材料の粒径分布は、1.0≦(Dv90-Dv10)/Dv50≦1.5であってもよく、1.0≦(Dv90-Dv10)/Dv50≦1.3であることがより好ましい。
【0024】
いくつかの好ましい実施形態において、前記第2の負極活性材料の粒径分布は、1.0≦(Dv90-Dv10)/Dv50≦2であってもよく、1.2≦(Dv90-Dv10)/Dv50≦1.7であることがより好ましい。
【0025】
第1の負極活性材料の粒径分布が第2の負極活性材料の粒径分布より小さい場合、上下層の負極活性材料における微粉末の含有量が良好にマッチングされ、一方で、異なる粒子の内部での活性イオンの拡散速度を効果的に調節して、挿入・脱離するイオンの応力が均一になるようにし、電池のサイクル過程での電極シートの膨張を低減させることで、電池のサイクル性能をさらに改善させ、他方で、活性イオンの拡散経路を効果的に調節して、電極シートでの活性イオンの迅速な拡散に有利であるため、電池の動力学的性能をさらに改善させる。また、上下層の負極活性材料の粒径分布が所定範囲内にあると、負極フィルム層の圧密度の向上にも有利であるため、電池のエネルギー密度をさらに向上させる。
【0026】
いくつかの好ましい実施形態において、前記第1の負極活性材料の体積平均粒径Dv50は、15μm~19μmであってもよく、16μm~18μmであることがより好ましい。
【0027】
いくつかの好ましい実施形態において、前記第2の負極活性材料の体積平均粒径Dv50は、14μm~18μmであってもよく、15μm~17μmであることがより好ましい。
【0028】
第1の負極活性材料及び/又は第2の負極活性材料の体積平均粒径Dv50が所定範囲内にある場合、上、下層の負極活性材料の粉末抵抗率を本願の所定範囲に制御するのに役に立つため、電池の動力学的性能をさらに向上させる。
【0029】
いくつかの好ましい実施形態において、前記第1の負極活性材料の体積平均粒径Dv50は、前記第2の負極活性材料の体積平均粒径Dv50より大きい。
【0030】
第1の負極活性材料の体積平均粒径Dv50が前記第2の負極活性材料の体積平均粒径Dv50より大きい場合、上下層の活性材料の容量差を減少し、電池のサイクル過程でのリチウム析出のリスクを低減できるため、電池のサイクル性能をさらに向上させることができる。
【0031】
いくつかの好ましい実施形態において、50000Nの作用力での前記第1の負極活性材料の粉体圧密度は、1.85g/cm~2.1g/cmであってもよく、1.9g/cm~2.0g/cmであることがより好ましい。
【0032】
いくつかの好ましい実施形態において、50000Nの作用力での前記第2の負極活性材料の粉体圧密度は、1.7g/cm~1.9g/cmであってもよく、1.8g/cm~1.9g/cmであることがより好ましい。
【0033】
本発明者らは、研究により、上、下層の負極活性材料がさらに50000Nの作用力での粉体圧密度が所定範囲内にあることを満たす場合、上、下層の負極活性材料の粉末抵抗率を本願の所定の範囲内に制御するのに役に立ち、それと同時に、上、下層の黒鉛材料の粉体の圧密が合理的にマッチングされ、電極シートが勾配孔隙を形成して、活性イオンの液相伝導の抵抗を小さくし、電池の動力学的性能をさらに向上させるのに有利であることを見出した。
【0034】
いくつかの好ましい実施形態において、前記第1の負極活性材料の黒鉛化度は、95%~98%であってもよく、96%~97%であることがより好ましい。
【0035】
いくつかの好ましい実施形態において、前記第2の負極活性材料の黒鉛化度は、90%~95%であってもよく、91%~93%であることがより好ましい。
【0036】
本発明者らは、研究により、上、下層の負極活性材料がさらに黒鉛化度が所定範囲内にあることを満たす場合、上、下層の負極活性材料の粉末抵抗率を本願の所定の範囲内に制御するのに役に立ち、それと同時に、上、下層の黒鉛材料の結晶構造が合理的にマッチングされ、充放電サイクル過程での活性イオンの固相拡散速度を効果的に向上させ、電池の充放電サイクル過程での副反応を低下させるため、電池の動力学的性能及びサイクル性能をさらに改善したことを見出した。
【0037】
いくつかの好ましい実施形態において、前記第1の負極活性材料の形状は、球状及び略球状のうちの一種類又は複数種類であってもよい。この時、第1の負極活性材料の異方性を効果的に改善することができるため、電池の電気化学的膨張及び電極シートの加工性能をさらに改善することができる。
【0038】
いくつかの好ましい実施形態において、前記第2の負極活性材料の形状は、ブロック状及びシート状のうちの一種類又は複数種類であってもよい。この時、第2の負極活性材料の粒子間の隙間を効果的に改善することができ、ブロック状及びシート状の構造は、粒子間に「架橋」効果をもたらしやすく、電解液がリチウムイオンの輸送に浸潤されるのに役に立つため、電池の動力学的性能をさらに改善することができる。
【0039】
いくつかの好ましい実施形態において、前記第1の負極活性材料は、表面の少なくとも一部に非晶質炭素被覆層を有する。
【0040】
いくつかの好ましい実施形態において、前記第2の負極活性材料は、表面に非晶質炭素被覆層を有しない。
【0041】
いくつかの好ましい実施形態において、前記第1の負極活性材料における前記天然黒鉛の質量比は、≧50%であり、より好ましくは、80%~100%である。
【0042】
いくつかの好ましい実施形態において、前記第2の負極活性材料における前記人造黒鉛の質量比は、≧80%であり、より好ましくは、90%~100%である。
【0043】
本願において、負極活性材料の粉末抵抗率は、本分野の周知の意味を有し、本分野の既知の方法で測定することができる。例えば、4プローブ法を利用することができ、詳細はGB/T 30835-2014を参照して、ST2722-SZ粉末電気抵抗測定器を使用して測定することができる。一定量の測定対象サンプル粉末を秤量して、専用の金型に入れ、測定圧力を設定して、異なる圧力下での粉末抵抗率を取得する。本願において、測定圧力を8Mpaに設定することができる。
【0044】
本願において、材料のDv10、Dv50、Dv90はいずれも本分野で周知の意味を有し、本分野で既知の方法で測定することができる。例えば、レーザー回折粒度分布測定装置(例えばMastersizer 3000)を用いて、粒度分布レーザー回折法(具体的にはGB/T 19077-2016を参照することができる)に基づいて測定して得られる。ここで、Dv10は、材料の累積体積百分率が10%に達する場合に対応する粒径であり、Dv50は、材料の累積体積百分率が50%に達する場合に対応する粒径であり、即ち、体積分布の中間位置の粒径であり、Dv90は、材料の累積体積百分率が90%に達する場合に対応する粒径である。
【0045】
本願において、材料の粉体圧密度は周知の意味を有し、本分野の既知の方法で測定することができる。例えば、GB/T 24533-2009を参照して、電子圧力測定機(例えばUTM7305)を用いて測定することができる。一定量の粉末を圧密専用金型に入れ、異なる圧力を設定し、機器で異なる圧力下での粉末の厚さを読み出すことができ、異なる圧力下での圧密度を算出することができる。本願において、圧力を50000Nに設定する。
【0046】
本願において、材料の黒鉛化度は本分野で周知の意味を有し、本分野で既知の方法で測定することができる。例えば、黒鉛化度は、X線回折装置(例えばBruker D8 Discover)を用いて測定することができ、測定はJIS K 0131-1996、JB/T 4220-2011を参照し、d002の大きさを測定した後、公式G=(0.344-d002)/(0.344-0.3354)×100%に基づいて黒鉛化度を算出することができるが、ここで、d002は、ナノメートル(nm)で表される材料結晶構造における層間隔である。
【0047】
本願において、材料の形状は本分野で周知の意味を有し、本分野で既知の方法で測定することができる。例えば、材料を導電性接着剤に貼り付け、走査型電子顕微鏡(例えばZEISS Sigma300)を用いて、粒子の形状を測定する。測定は、JY/T010-1996を参照することができる。
【0048】
なお、上記負極活性材料に対する様々なパラメータ測定は、塗布前にサンプリングして測定してもよく、冷間プレス後の負極フィルム層からサンプリングして測定してもよい。
【0049】
上記測定サンプルが冷間プレスされた後の負極フィルム層からサンプリングされるものである場合、例として、以下のステップに従ってサンプリングすることができる。
(1)まず、冷間プレス後の負極フィルム層を任意に選択し、第2の負極活性材料をサンプリングし(スクレーパで粉末をこすり落としてサンプリングしてもよい)、スクレーパの深さは第1の負極フィルム層と第2の負極フィルム層との境界領域を超えない。
(2)次に、第1の負極活性材料をサンプリングするが、負極フィルム層の冷間プレス過程において、第1の負極フィルム層と第2の負極フィルム層との間の境界領域に相互溶融層が存在する可能性があり(即ち、相互溶融層に第1の活性材料及び第2の活性材料が同時に存在する)、測定の正確性のために、第1の負極活性材料をサンプリングする時に、まず相互溶融層をこすり落とした後、第1の負極活性材料の粉末をこすり落としてサンプリングすることができる。
(3)上記の収集された第1の負極活性材料及び第2の負極活性材料をそれぞれ脱イオン水に入れ、且つ第1の負極活性材料及び第2の負極活性材料を吸引濾過し、乾燥し、さらに乾燥した後の各負極活性材料を一定の温度及び時間で焼結し(例えば400℃,2h)、接着剤及び導電性炭素を除去すれば、第1の負極活性材料及び第2の負極活性材料の測定サンプルが得られる。
【0050】
上記サンプリング過程において、光学顕微鏡又は走査型電子顕微鏡で第1の負極フィルム層と第2の負極フィルム層との間の境界領域の位置を補助的に判断することができる。
【0051】
本願で使用される天然黒鉛及び人造黒鉛は、いずれも商業的に入手可能なものである。
【0052】
本願の好ましい実施形態において、前記負極フィルム層の厚さは、≧50μmであり、好ましくは、60μm~75μmである。なお、前記負極フィルム層の厚さとは、負極フィルム層の総厚さ(即ち、第1の負極フィルム層と第2の負極フィルム層との厚さの合計)を指す。
【0053】
本願の好ましい実施形態において、前記負極フィルム層の面密度は、9mg/cm~14mg/cmであり、より好ましくは、11mg/cm~13mg/cmである。なお、前記負極フィルム層の面密度とは、負極フィルム層全体の面密度(即ち、第1の負極フィルム層と第2の負極フィルム層との面密度の合計)を指す。
【0054】
本願の好ましい実施形態において、前記第1の負極フィルム層と前記第2の負極フィルム層との厚さの比は、1:1.01~1:1.1であり、より好ましくは、1:1.02~1:1.06である。
【0055】
上、下層の厚さが所定の範囲内にある場合、上下層に勾配孔隙分布を形成するのに役に立ち、正極から脱離された活性イオンの負極フィルム層の表面での液相伝導抵抗を減少させ、イオンが表層に堆積されてリチウム析出を引き起こすという問題を引き起こさず、それと同時に、フィルム層での活性イオンの均一な拡散は分極を減少させるのに役に立ち、電池の動力学的性能及びサイクル性能をさらに向上させる。
【0056】
本願の好ましい実施形態において、前記負極シートから二つの同じ面積の円形状の領域を任意に取って、第1の領域及び第2の領域としてそれぞれ記し、前記第1の領域と前記第2の領域との中心間距離が20cmである場合、前記第1の領域の電極シートの電気抵抗R11と前記第2の領域の電極シートの電気抵抗R12とは、R11-R12の絶対値が3mΩ・cm以下であり、より好ましくは、R11-R12の絶対値が1mΩ・cm以下である。
【0057】
負極シート上の任意の二つの面積が同じで中心間距離が20cmである円形状の領域の間の電気抵抗の差は比較的に小さく、これは、負極シートの電気抵抗の変動が小さいことを示し、即ち、負極フィルム層における第1の材料及び第2の材料の分散の均一性が比較的に良好であることを示す。負極シートにおける各位置での圧密度、サイクル安定性及び電解液の分布の均一性はいずれも向上され、これにより、負極シートにおける異なる位置での活性イオン輸送性能及び電子伝導性能が基本的に同じレベルになるため、負極シートの各位置での容量発揮、サイクル及び貯蔵寿命、並びに動力学的性能がいずれも向上される。負極シートの全体的な一貫性は良好であり、二次電池のエネルギー密度、高温性能及び低温倍率性能をさらに向上させることができる。
【0058】
負極シートの電極シートの電気抵抗は本分野で周知の意味を有し、本分野で既知の方法で測定することができる。例えば、BER1300多機能電極シート電気抵抗測定器を使用して測定を行うことができる。まず、負極シートを一定のサイズ(直径が40mmである小さなウェーハ)の測定対象サンプルに切断する。測定対象サンプルを二つのプローブの間に配置し、測定結果を記録する。測定結果の正確性を確保するために、複数群(例えば5群)の測定対象サンプルを同時に取り、複数群の測定対象サンプルの平均値を計算して測定結果とする。
【0059】
本願において、負極フィルム層の厚さはマイクロメータで測定して得ることができ、例えば、型番がMitutoyo293-100であり、精度が0.1μmであるマイクロメータで測定して得ることができる。
【0060】
本願において、第1の負極フィルム層及び第2の負極フィルム層のそれぞれの厚さは、走査型電子顕微鏡(例えばSigma300型)を用いて測定することができる。サンプルの製造は以下の通りである。まず、負極シートを一定のサイズの測定対象サンプル(例えば2cm×2cm)に切断し、パラフィンにより負極シートをサンプル台に固定する。次に、サンプル台をサンプル棚に入れてロックして固定し、アルゴンイオン断面研磨装置(例えばIB-19500CP)の電源及び真空排気(例えば10-4Pa)をオンにし、アルゴンガス流量(例えば0.15MPa)及び電圧(例えば8KV)と研磨時間(例えば2時間)とを設定し、サンプル台を揺動モードに調整して研磨を開始する。サンプル測定は、JY/T010-1996を参照することができる。測定結果の正確性を確保するために、測定対象サンプルから複数(例えば10個)の異なる領域をランダムに選択して走査測定を行い、且つ一定の拡大倍率(例えば500倍)で、スケール測定領域における第1の負極フィルム層及び第2の負極フィルム層のそれぞれの厚さを読み取り、複数の測定領域の測定結果の平均値を第1の負極フィルム層及び第2の負極フィルム層の厚さの平均値とする。
【0061】
本願において、負極フィルム層の面密度は本分野で周知の意味を有し、本分野で既知の方法で測定することができる。例えば、片面が塗布され且つ冷間プレスされた後の負極シート(両面が塗布された負極シートである場合、まずそのうちの一面の負極フィルム層を拭いてもよい)を取り、面積がS1の小さなウェハに打ち抜き、その重量を秤量し、M1と記録する。次に上記秤量後の負極シートの負極フィルム層を拭き取り、負極集電体の重量を秤量し、M0と記録し、負極フィルム層の面密度=(負極シートの重量M1-負極集電体の重量M0)/S1である。測定結果の正確性を確保するために、複数群(例えば10群)の測定対象サンプルを測定し、且つ平均値を計算して測定結果としてもよい。
【0062】
負極フィルム層の圧密度は本分野の周知の意味を有し、本分野の既知の方法で測定することができる。例えば、まず、上記測定方法に応じて負極フィルム層の面密度及び厚さを取得すると、負極フィルム層の圧密度=負極フィルム層の面密度/負極フィルム層の厚さである。
【0063】
本願において、前記第1の負極フィルム層及び/又は前記第2の負極フィルム層は、一般的に、負極活性材料と、選択可能な接着剤、選択可能な導電剤及び他の選択可能な助剤と、を含む。
【0064】
例として、導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの一種類又は複数種類を含んでもよい。
【0065】
例として、接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水性アクリル樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)及びポリビニルブチラール(PVB)のうちの一種類又は複数種類を含んでもよい。
【0066】
例として、他の選択可能な助剤は、増粘及び分散剤(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウムCMC-Na)、PTCサーミスタ材料などを含んでもよい。
【0067】
本願において、前記第1の負極活性材料及び/又は前記第2の負極活性材料は、本願の前述の所定の黒鉛材料を使用する以外にも、さらに、一定量の他の一般的な負極活性材料、例えば、ソフトカーボン、ハードカーボン、シリコン系材料、スズ系材料、チタン酸リチウムのうちの一種類又は複数種類を選択的に添加することができる。前記シリコン系材料は、単体シリコン、シリコン酸化物、シリコン炭素複合体、シリコン合金のうちの一種類又は複数種類から選択することができる。前記スズ系材料は、単体スズ、スズ酸化物、スズ合金のうちの一種類又は複数種類から選択することができる。これらの材料は、商業的に入手することができる。当業者は、実際の使用環境に応じて適切に選択することができる。
【0068】
本願の二次電池において、前記負極集電体は、一般的な金属箔又は複合集電体(金属材料を高分子基材上に設置して複合集電体を形成してもよい)を使用することができる。例として、負極集電体は、銅箔を使用することができる。
【0069】
理解できるように、負極集電体は自身の厚さ方向で対向する二つの表面を有し、負極フィルム層は、負極集電体の二つの対向する表面のうちのいずれか一つ又は両方に積層設置されてもよい。
【0070】
図2は、本願の負極シート10の一実施形態の模式図を示す。負極シート10は、負極集電体101と、負極集電体の両面にそれぞれ設けられた第1の負極フィルム層103と、第1の負極フィルム層103上に設けられた第2の負極フィルム層102とで構成されている。
【0071】
図3は、本願の負極シート10の他の実施形態の模式図を示す。負極シート10は、負極集電体101と、負極集電体の一つの表面に設けられた第1の負極フィルム層103と、第1の負極フィルム層103上に設けられた第2の負極フィルム層102とで構成されている。
【0072】
なお、本願に係る各負極フィルム層のパラメータ(例えば、フィルム層の厚さ、面密度など)は、いずれも片面のフィルム層のパラメータの範囲を指す。負極フィルム層が負極集電体の二つの表面に同時に設置される場合、そのうちのいずれか一つの表面上のフィルム層のパラメータが本願を満たすと、本願の保護範囲内にあると考えられる。また、本願に記載のフィルム層の厚さ、面密度などの範囲は、いずれも冷間圧密により圧密された後に電池を組み立てるのに用いられるフィルム層のパラメータを指す。
【0073】
[正極シート]
本願の二次電池において、前記正極シートは、正極集電体と、正極集電体の少なくとも一つの表面に設置され、且つ正極活性材料を含む正極フィルム層と、を含む。
【0074】
理解できるように、正極集電体は、自身の厚さ方向で対向する二つの表面を有し、正極フィルム層は、正極集電体の二つの対向する表面のうちのいずれか一つ又は両方に積層設置されてもよい。
【0075】
本願の二次電池において、前記正極集電体は、一般的な金属箔又は複合集電体(金属材料を高分子基材上に設置して複合集電体を形成してもよい)を使用することができる。例として、正極集電体はアルミニウム箔を使用することができる。
【0076】
本願の二次電池において、前記正極活性材料は、リチウム遷移金属酸化物、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びそのそれぞれの改質化合物のうちの一種類又は複数種類を含むことができる。リチウム遷移金属酸化物は、例えば、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物及びそれらの改質化合物のうちの一種類又は複数種類を含むがこれらに限定されない。オリビン構造のリチウム含有リン酸塩は、例えば、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウムと炭素の複合材料、リン酸マンガンリチウム、リン酸マンガンリチウムと炭素の複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素の複合材料及びその改質化合物のうちの一種類又は複数種類を含むがこれらに限定されない。本願はこれらの材料に限定されず、さらに、他の二次電池正極活性材料として使用可能な従来の周知の材料を使用することができる。
【0077】
いくつかの好ましい実施形態において、電池のエネルギー密度をさらに向上させるために、正極活性材料は、式1で表されるリチウム遷移金属酸化物及びその改質化合物のうちの一種類又は複数種類を含むことができる。
LiNiCo (式1)
前記式1において、0.8≦a≦1.2、0.5≦b<1、0<c<1、0<d<1、1≦e≦2、0≦f≦1であり、Mは、Mn、Al、Zr、Zn、Cu、Cr、Mg、Fe、V、Ti及びBから選択される一種類又は複数種類であり、Aは、N、F、S及びClから選択される一種類又は複数種類である。
【0078】
本願において、上記各材料の改質化合物は、材料にドーピング改質及び/又は表面被覆改質を行うことができる。
【0079】
本願の二次電池における,前記正極フィルム層は、選択的に、接着剤及び/又は導電剤をさらに含む。
【0080】
例として、正極フィルム層に用いられる接着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のうちの一種類又は複数種類を含むことができる。
【0081】
例として、正極フィルム層に用いられる導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの一種類又は複数種類を含むことができる。
【0082】
[電解質]
電解質は、正極シートと負極シートとの間でイオンを伝導する役割を果たす。本願は、電解質の種類を具体的に限定せず、需要に応じて選択することができる。例えば、電解質は、固体電解質及び液体電解質(即ち電解液)のうちの少なくとも一種類から選択される。
【0083】
いくつかの実施形態において、電解質は電解液を使用する。電解液は、電解質塩及び溶媒を含む。
【0084】
いくつかの実施形態において、電解質塩は、LiPF(ヘキサフルオロリン酸リチウム)、LiBF(テトラフルオロホウ酸リチウム)、LiClO(過塩素酸リチウム)、LiAsF(ヘキサフルオロヒ酸リチウム)、LiFSI(ジフルオロスルホニルイミドリチウム)、LiTFSI(ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム)、LiTFS(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム)、LiDFOB(ジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウム)、LiBOB(ジシュウ酸ホウ酸リチウム)、LiPO(ジフルオロリン酸リチウム)、LiDFOP(ジフルオロジシュウ酸リン酸リチウム)及びLiTFOP(テトラフルオロシュウ酸リン酸リチウム)のうちの一種類又は複数種類から選択される。
【0085】
いくつかの実施形態において、溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ブチレンカーボネート(BC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ギ酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル(PA)、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、酪酸メチル(MB)、酪酸エチル(EB)、1,4-ブチロラクトン(GBL)、スルホラン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)、メチルエチルケトン(EMS)及びジエチルスルホン(ESE)のうちの一種類又は複数種類から選択される。
【0086】
いくつかの実施形態において、電解液は、選択的に、添加剤をさらに含むことができる。例えば、添加剤は、負極成膜添加剤を含んでもよく、正極成膜添加剤を含んでもよく、さらに、電池のいくつかの性能を改善できる添加剤、例えば電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温性能を改善する添加剤、電池の低温性能を改善する添加剤などであってもよい。
【0087】
[セパレータ]
電解液を使用する二次電池、及び一部の固体電解質を使用する二次電池において、セパレータをさらに含む。セパレータは、正極シートと負極シートとの間に設置され、隔離の役割を果たす。本願は、セパレータの種類を特に限定せず、任意の周知の良好な化学的安定性及び機械的安定性を有する多孔質構造セパレータを選択することができる。いくつかの実施形態において、セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデンのうちの一種類又は複数種類から選択することができる。セパレータは、単層フィルムであってもよく、多層複合フィルムであってもよい。セパレータが多層複合フィルムである場合、各層の材料は同じであってもよく異なってもよい。
【0088】
いくつかの実施形態において、正極シート、負極シート及びセパレータは、巻回プロセス又は積層プロセスにより、電極アセンブリに製造されることができる。
【0089】
いくつかの実施形態において、二次電池は外装を含むことができる。この外装は、上記電極アセンブリ及び電解質を密封するのに用いられる。
【0090】
いくつかの実施形態において、二次電池の外装は、硬質ケースであってもよく、例えば、硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、鋼ケースなどであってもよい。二次電池の外装は、例えば袋状ソフトパックのようなソフトパックであってもよい。ソフトパックの材質は、プラスチックであってもよく、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)などのうちの一種類又は複数種類であってもよい。
【0091】
本願は、前記二次電池の形状を特に限定せず、円筒形、四角形又は他の任意の形状であってもよい。図1には、一例として四角形構造の二次電池5が示されている。
【0092】
いくつかの実施形態において、図4を参照すると、外装は、ハウジング51及びカバープレート53を含んでもよい。ここで、ハウジング51は、底板と底板上に接続された側板とを含んでもよく、底板と側板とは囲んで収容室を形成する。ハウジング51は、収容室に連通された開口を有し、カバープレート53は、前記開口をカバーすることで、前記収容室を密封する。正極シート、負極シート及びセパレータは、巻回プロセス又は積層プロセスにより電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は、前記収容室に封入される。電解液は、電極アセンブリ52内を浸潤する。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の個数は、一つ又は複数であってよく、実際の需要に応じて調節することができる。
【0093】
いくつかの実施形態において、二次電池は、電池モジュールに組み立てられることができ、電池モジュールに含まれる二次電池の個数は、複数であってもよく、具体的な個数は、電池モジュールの適用及び容量によって調節することができる。
【0094】
図5は、一例としての電池モジュール4である。図5を参照すると、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の長手方向に沿って順次配列して設置されてもよい。当然のことながら、他の任意の方式で配列することもできる。さらに、当該複数の二次電池5を締結具で固定してもよい。
【0095】
選択可能に、電池モジュール4は、さらに、収容空間を有するハウジングを含むことができ、複数の二次電池5は、当該収容空間に収容される。
【0096】
いくつかの実施形態において、上記電池モジュールは、さらに、電池パックに組み立てられることができ、電池パックに含まれる電池モジュールの個数は、電池パックの適応及び容量に応じて調整することができる。
【0097】
図6及び図7は、一例としての電池パック1である。図6及び図7を参照すると、電池パック1は、電池ボックスと電池ボックス内に設置された複数の電池モジュール4とを含むことができる。電池ボックスは、上部ボックス本体2及び下部ボックス本体3を含み、上部ボックス本体2は下部ボックス本体3をカバーすることができ、且つ電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成する。複数の電池モジュール4は、任意の方式で電池ケース内に配置されてもよい。
二次電池の製造方法
【0098】
本願の第2の態様において、二次電池の製造方法を提供し、当該製造方法は、
1)負極集電体の少なくとも一つの表面に、第1の負極活性材料を含む第1の負極フィルム層を形成する工程と、
2)前記第1の負極フィルム層に、第2の負極活性材料を含む第2の負極フィルム層を形成する工程と
によって、前記二次電池の負極シートを製造することを含み、
前記第1の負極活性材料は天然黒鉛を含み、且つ、前記第1の負極活性材料は、6mΩ・cm≦A≦12mΩ・cmを満たし、
前記第2の負極活性材料は人造黒鉛を含み、且つ、前記第2の負極活性材料は、13mΩ・cm≦B≦20mΩ・cmを満たし、
Aは、8Mpa圧力下で測定された第1の負極活性材料の粉末抵抗率であり、
Bは、8Mpa圧力下で測定された第2の負極活性材料の粉末抵抗率である。
【0099】
二次電池の製造過程において、負極シートの第1の負極活性材料組成と第2の負極活性材料組成とそのそれぞれの粉末抵抗率とを制御及び調整することにより、負極フィルム層における活性部位を適切な範囲内に維持することができるため、電池の動力学的性能の改善に有利であると同時に、上下層材料の特定な設計により、勾配孔隙分布も形成し、電解液の浸潤性能を効果的に改善し、活性イオンの液相伝導を向上することができるため、電池のサイクル寿命を向上することができる。
【0100】
本願の二次電池の製造方法において、第1の負極活性材料スラリー及び第2の負極活性材料スラリーを一回で同時に塗布してもよく、二回に分けて塗布してもよい。
【0101】
いくつかの好ましい実施形態において、第1の負極活性材料スラリー及び第2の負極活性材料スラリーを一回で同時に塗布する。一回で同時に塗布すると、上下負極フィルム層の間の接着性をよりよくすることができ、電池のサイクル性能をさらに改善するのに役に立つ。
【0102】
負極シートの製造方法以外に、本願の二次電池の構造及び製造方法自体は周知である。
【0103】
例として、本願の二次電池の構造及び製造方法は、以下の通りである。
まず、本分野の常用の方法で、電池の正極シートを製造する。本願は、正極シートで用いられる正極活性材料を限定しない。一般的に、上記正極活性材料において、導電剤(例えばカーボンブラックなどの炭素材料)、接着剤(例えばPVDF)などを添加する必要がある。必要に応じて、他の添加剤、例えばPTCサーミスタ電気抵抗材料などを添加してもよい。通常、これらの材料を混合した後に溶媒(例えばNMP)で分散させ、均一に撹拌した後に正極集電体に塗布し、乾燥させた後に、冷間プレスなどの工程を経て、正極シートが得られる。正極集電体として、アルミニウム箔などの金属箔又は多孔質金属板などの材料を用いることができる。通常、正極シートを製造する時に、集電体の一部に正極フィルム層を形成せず、集電体の一部を正極リード部として残す。当然のことながら、リード部は、後で追加されたものであってもよい。
次に、前述の方法で本願の負極シートを準備する(負極シートとする)。
最後に、正極シート、セパレータ、負極シートを順次積層して、セパレータが正極シートと負極シートとの間に位置して隔離の役割を果たすようにし、次に、巻回(又は積層)プロセスにより電極アセンブリを得る。電極アセンブリを外装に入れ、乾燥した後に電解液を注入し、真空封止、静置、化成、整形などの工程を経て、二次電池が得られる。
装置
【0104】
本願の第3の態様は、装置を提供する。当該装置は、本願の第1の態様に係る二次電池又は本願の第2の態様に係る方法により製造された二次電池を含む。前記二次電池は、装置の電源として用いられてもよく、前記装置のエネルギー貯蔵ユニットとして用いられてもよい。本願の装置は、本願に係る二次電池を使用するため、少なくとも前記二次電池と同じ利点を有する。
【0105】
前記装置は、携帯機器(例えば、携帯電話、ノートパソコンなど)、電動車両(例えば、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカート、電動トラックなど)、電気列車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システムなどであってもよいが、これらに限定されない。
【0106】
前記装置は、その使用ニーズに応じて、二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択することができる。
【0107】
図8は、一例としての装置である。当該装置は、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車などである。当該装置は、二次電池に対する高倍率及び高エネルギー密度の需要を満たすために、電池パック又は電池モジュールを使用することができる。
【0108】
他の例としての装置は、携帯電話、タブレットコンピュータ、ノートパソコンなどであってもよい。当該装置は、一般的に薄型化が要求されるため、二次電池を電源として使用することができる。
【0109】
以下、実施例を参照しながら本願の有益な効果をさらに説明する。
【実施例
【0110】
以下、本願の発明目的、技術的解決手段及び有益な技術的効果をより明確にするために、実施例と組み合わせて本願をさらに詳細に説明する。しかしながら、理解すべきことは、本願の実施例は本願を説明するためのものに過ぎず、本願を限定するものではなく、且つ本願の実施例は明細書に示された実施例に限定されるものではない。実施例において具体的な実験条件又は操作条件が記載されていない場合、一般的な条件に応じて製造されるか、又は材料供給業者が推薦する条件に応じて製造される。
【0111】
一.二次電池の製造
実施例1
1)正極シートの製造
リチウムニッケルコバルトマンガン三元活物質 LiNi0.8Co0.1Mn0.1(NCM811)と、導電性カーボンブラック Super-Pと、接着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを94:3:3の重量比でN-メチルピロリドン溶媒で十分に撹拌して均一に混合した後、スラリーをアルミニウム箔基材に塗布し、乾燥、冷間プレス、ストリップ分割、切断などの工程を経て、正極シートを得る。ここで、正極フィルム層の面密度は17.5mg/cmであり、圧密度は3.4g/cmである。
【0112】
2)負極シートの製造
第1のステップにおいて、負極スラリー1を製造する。第1の負極活性材料としての天然黒鉛と、接着剤としてのSBRと、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)と、導電性カーボンブラック(Super P)とを秤量して、96.2:1.8:1.2:0.8の重量比で、脱イオン水とともに、一定の順序で撹拌タンクに添加し混合して、負極スラリー1を製造する。ここで、8Mpa圧力下で測定された天然黒鉛の粉末抵抗率は、6.1mΩ・cmである。
【0113】
第2のステップにおいて、負極スラリー2を製造する。第2の負極活性材料としての人造黒鉛材料、接着剤としてのSBR、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)と、導電性カーボンブラック(Super P)を秤量して、96.2:1.8:1.2:0.8の重量比で、脱イオン水とともに、一定の順序で撹拌タンクに添加し混合して、第1の負極スラリー2を製造する。ここで、8Mpa圧力下で測定された人造黒鉛の粉末抵抗率は、16.1mΩ・cmである。
【0114】
第3のステップにおいて、ダブルキャビティ塗布装置により、負極スラリー1と負極スラリー2とを同時に押し出す。負極スラリー1を負極集電体に塗布して第1の負極フィルム層を形成し、負極スラリー2を第1の負極フィルム層に塗布して第2の負極フィルム層を形成する。第1の負極フィルム層と第2の負極フィルム層との質量比は、1:1である。負極フィルム層の面密度は、11.5mg/cmである。負極フィルム層の圧密度は、1.65g/cmである。
【0115】
第4のステップにおいて、塗布された湿潤フィルムをオーブンで異なる温度範囲で焼成して乾燥電極シートを取得し、さらに冷間プレスしによって必要な負極フィルム層を取得し、さらに、ストリップ分割、切断などの工程を経て、負極シートを得る。
【0116】
3)セパレータ
セパレータとして、PE(ポリエチレン)フィルムを選択する。
【0117】
4)電解液の調製
エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)を1:1:1の体積比で混合し、次に、十分に乾燥したリチウム塩 LiPFを1mol/Lの比率で混合有機溶媒に溶解して、電解液を調製する。
【0118】
5)電池の製造
上記正極シート、セパレータ、負極シートを順次積層し、巻回して電極アセンブリを取得し、電極アセンブリを外装に入れ、上記電解液を注入し、封止、静置、化成、老化などの工程を経た後、二次電池を得る。
【0119】
実施例2~22及び比較例1~4の二次電池は、実施例1の二次電池の製造方法と類似しているが、電池シートの構成及び製品パラメータを調整しており、異なる製品パラメータの詳細は表1乃至表2を参照することができる。
【0120】
二.性能パラメータの測定方法
負極活性材料の各パラメータ及び電池構造の各パラメータの測定方法は、本明細書の前述の内容を参照できる。二次電池の性能測定方法は、以下の通りである。
【0121】
1)電池の動力学的性能測定(室温リチウム析出性能)
25℃の環境で、各実施例及び比較例の電池に対して充放電測定を行い、放電カットオフ電圧が2.8Vになるまで、1.0C(即ち、1h内に理論容量を完全に放出する電流値)の放電電流で定電流放電を行う。次に、充電カットオフ電圧が4.2Vになるまで、1.0Cの充電電流で定電流充電し、続いて、電流が0.05Cになるまで定電圧充電し、この時に電池は満充電状態である。満充電の電池を5min静置した後、1.0Cの放電電流で放電カットオフ電圧になるまで定電流放電し、この時の放電容量は電池の1.0Cでの実際の容量であり、C0と記す。次に、電池をxC0でカットオフ電圧の上限になるまで定電流充電し、さらに電流が0.05C0になるまで定電圧充電し、5min静置し、電池を解体して界面のリチウム析出状況を観察する。負極の表面にリチウムが析出していない場合、負極の表面にリチウムが析出されるまで、充電倍率を増大させて再び測定を行う。負極の表面にリチウムが析出しない最大充電倍率を記録し、電池の動力学的性能を特徴付けるのに用いられる。
【0122】
2)電池の高温サイクル性能の測定
60℃の環境で、1回目の充電及び放電を行い、充電カットオフ電圧が4.2Vになるまで、1.0C(即ち、1h内に理論容量を完全に放出する電流値)の充電電流で定電流及び定電圧充電を行い、その後、放電カットオフ電圧が2.8Vになるまで、1.0Cの放電電流で定電流放電を行う。これが一つの充放電サイクルであり、今回の放電容量が1回目サイクルの放電容量である。次に、連続的な充電及び放電のサイクルを行って、毎回サイクルの放電容量値を記録し、N回目サイクルの容量保持率=(N回目サイクルの放電容量/1回目サイクルの放電容量)×100%に基づいて、毎回サイクルの容量保持率を計算する。サイクル容量保持率が80%まで低下すると、電池のサイクル回数を記録する。
【0123】
三.各実施例、比較例の測定結果
上記方法に応じて各実施例及び比較例の電池をそれぞれ製造し、且つ各性能パラメータを測定すると、結果は以下の表1及び表2に示すようになる。
【0124】
まず、表1における実施例1~10及び比較例1~4のデータから分かるように、第1の負極活性材料における天然黒鉛が6mΩ・cm≦A≦12mΩ・cmを満たすと同時に第2の負極活性材料における人造黒鉛が13mΩ・cm≦B≦20mΩ・cmを満たす場合のみに、二次電池は高いサイクル性能及び優れた急速充電性能(動力学的性能)を同時に有する。8mΩ・cm≦A≦11mΩ・cm、且つ、14mΩ・cm≦B≦18mΩ・cmである場合、二次電池の総合性能が最適である。特に、1.5≦B/A≦2.0である場合、二次電池の表現がより好ましい。
【0125】
また、表2における実施例11~18及び実施例19~22の比較から分かるように、負極活性材料の粒径分布(Dv90-Dv10)/Dv50が電池の性能に対する影響が比較的に大きい。6mΩ・cm≦A≦12mΩ・cm、且つ、13mΩ・cm≦B≦20mΩ・cmである前提で、第1の負極活性材料の粒径分布(Dv90-Dv10)/Dv50は、第2の負極活性材料の粒径分布(Dv90-Dv10)/Dv50より小さいことが好ましく、そうでない場合、サイクル性能及び動力学的性能が相対的に悪い(実施例20、21)。表2のデータから分かるように、第1の負極活性材料の粒径分布が1.0≦(Dv90-Dv10)/Dv50≦1.5であり、好ましくは、1.0≦(Dv90-Dv10)/Dv50≦1.3であり、及び/又は、第2の負極活性材料の粒径分布が1.0≦(Dv90-Dv10)/Dv50≦2であり、好ましくは、1.2<(Dv90-Dv10)/Dv50≦1.7である場合、電池の総合性能が良好である。
【0126】
表1、表2のデータから分かるように、二次電池が比較的に高いエネルギー密度を有する前提で、良好な動力学的性能及び比較的に長いサイクル寿命を同時に両立させるために、二次電池は、6mΩ・cm≦A≦12mΩ・cm及び13mΩ・cm≦B≦20mΩ・cmを満たさなければならない。
【0127】
さらに補足説明すべきことは、上記明細書の開示及び指導に基づいて、本願が属する分野の当業者はさらに上記実施形態に対して適切な変更及び修正を行うことができる。したがって、本願は、以上に開示され説明された具体的な実施形態に限定されるものではなく、本願に対するいくつかの修正及び変更も本願の請求範囲の保護範囲内に含まれる。また、本明細書においていくつかの特定の用語を使用するが、これらの用語は説明を容易にするためのものであり、本願を何ら限定するものではない。
【符号の説明】
【0128】
1 電池パック
2 上部ボックス本体
3 下部ボックス本体
4 電池モジュール
5 二次電池
51 ハウジング
52 電極アセンブリ
53 カバープレート
10 負極シート
101 負極集電体
102 第2の負極フィルム層
103 第1の負極フィルム層。
【0129】
【表1】
【0130】
【表2】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】