(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-01
(54)【発明の名称】ヒータ無しのディスペンサー陰極を有した電気推進システム
(51)【国際特許分類】
B64G 1/40 20060101AFI20220624BHJP
H02M 3/28 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
B64G1/40 500
H02M3/28 H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559413
(86)(22)【出願日】2019-05-01
(85)【翻訳文提出日】2021-10-07
(86)【国際出願番号】 US2019030114
(87)【国際公開番号】W WO2020222836
(87)【国際公開日】2020-11-05
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】594203852
【氏名又は名称】エアロジェット ロケットダイン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】コーク,ブライアン エー.
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AS04
5H730BB23
5H730DD04
5H730DD41
5H730EE02
(57)【要約】
電子放電に点火し、電子放電を持続させる回路が、点火回路を備えている。点火回路は、高電圧変圧器と、該高電圧変圧器の一次側とDC供給源帰線との間に直列に接続されたスイッチと、を備えている。このスイッチは、駆動信号を受信するように構成されている。リセット回路が、高電圧変圧器の一次側と並列に接続されている。第1整流器が、高電圧変圧器の二次側と保磁子との間に直列に接続されている。変圧器の二次側の端子が、陰極に接続されている。また、電子放電に点火し、電子放電を持続させる回路は、持続回路を有しており、該持続回路は、陰極に接続された帰線を有する電流供給源と、該電流供給源と保磁子との間に直列に接続された第2整流器と、を備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
点火回路および持続回路を備え、
前記点火回路は、
高電圧変圧器と、
前記高電圧変圧器の一次側とDC供給源帰線との間に直列に接続され、駆動信号を受信するように構成されたスイッチと、
前記高電圧変圧器の一次側と並列に接続されたリセット回路と、
前記高電圧変圧器の二次側と保磁子との間に直列に接続された第1整流器と、
陰極に接続された前記高電圧変圧器の二次側の端子と、を有し、
前記持続回路は、
陰極に接続された帰線を有した電流供給源と、
前記電流供給源と前記保磁子との間に直列に接続された第2整流器と、を有する、電子放電に点火し、電子放電を持続させる回路。
【請求項2】
少なくとも1つの入力電力接続部に接続された複数の電源をさらに有し、前記少なくとも1つの入力電力接続部は、前記点火回路および前記持続回路の各々に入力電力を供給することを特徴とする請求項1に記載の回路。
【請求項3】
前記高電圧変圧器は、前記少なくとも1つの入力電力接続部を介してDC電源に接続された高比率変圧器であることを特徴とする請求項2に記載の回路。
【請求項4】
前記高比率変圧器は、1に対して少なくとも10の巻き線比を有することを特徴とする請求項3に記載の回路。
【請求項5】
前記巻き線比は、少なくとも100:1であることを特徴とする請求項4に記載の回路。
【請求項6】
前記巻き線比は、約60:1であることを特徴とする請求項4に記載の回路。
【請求項7】
前記回路は、出力キャパシタの不足によって特徴づけられることを特徴とする請求項1に記載の回路。
【請求項8】
前記リセット回路は、直線的に配置されたダイオードおよびツェナーダイオードであることを特徴とする請求項1に記載の回路。
【請求項9】
前記高電圧変圧器の一次側と前記DC供給源帰線スイッチとの間に直列に接続された前記スイッチは、コントローラによって制御されることを特徴とする請求項1に記載の回路。
【請求項10】
前記スイッチは、MOSFET(金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)であることを特徴とする請求項9に記載の回路。
【請求項11】
前記スイッチは、制御で閉じられ、前記DC供給源は、前記高電圧変圧器の二次側で高電圧を生成するように前記高電圧変圧器の一次側にわたって適用されることを特徴とする請求項1に記載の回路。
【請求項12】
前記電流供給源は、絶縁されたコンバータと、インダクタとを有することを特徴とする請求項1に記載の回路。
【請求項13】
前記電流供給源は、降圧に基づいたコンバータであることを特徴とする請求項12に記載の回路。
【請求項14】
前記持続回路は、前記絶縁されたコンバータのDC帰線に前記第2整流器の入力部を接続するDC負荷をさらに備えることを特徴とする請求項12に記載の回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、電気推進装置、より詳細には、ヒータ無しのディスペンサー陰極を利用した電気推進システムに関する。
【背景技術】
【0002】
宇宙に基づいた用途で利用される衛星および他の小型の電気ユニットは、一般に、ユニットの位置および向きの正確な制御を実現するために、搭載された推進システムを備えている。伝統的に、化学的推進が大量の推力を供給するので、上記システムは、化学的推進を利用した。しかし、化学的推進システムは、大きな推進薬質量、高温および高圧を必要とし、扱うのに潜在的に危険なまたは難しい推進剤を消費する。
【0003】
1つの代替的な推進システムは電気推進システムである。電気推進システムは、高い排気速度および燃料効率を有しており、一般に、3つのカテゴリー、つまり熱電的、静電気的および電磁気的に分割される。電気推進システムの中央部は、電子を生成する陰極を用いており、電子は、放電に点火するように用いられる。ガスの噴射と、高電圧破壊と、引き延ばされたアークを生成する機械的アクチュエータと、フューズワイヤの爆轟を含む複数の異なる方法は、真空で陰極放電に点火するように用いられることができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
1つの例示的な実施例では、電子放電に点火し、電子放電を持続させる回路が、高電圧変圧器と、高電圧変圧器の一次側とDC供給源帰線との間に直列に接続され、駆動信号を受信するように構成されたスイッチと、高電圧変圧器の一次側と並列に接続されたリセット回路と、高電圧変圧器の二次側と保磁子との間に直列に接続された第1整流器と、陰極に接続された高電圧変圧器の二次側の端子と、を有した点火回路、および陰極に接続された帰線を有した電流供給源と、電流供給源と保磁子との間に直列に接続された第2整流器と、を有した持続回路を備える。
【0005】
電子放電に点火し、電子放電を持続させる上述の回路の他の例は、少なくとも1つの入力電力接続部に接続された複数の電源をさらに有し、少なくとも1つの入力電力接続部は、点火回路および持続回路の各々に入力電力を供給する。
【0006】
電子放電に点火し、電子放電を持続させる上述の回路の他の例では、高電圧変圧器は、少なくとも1つの入力電力接続部を介してDC電源に接続された高比率変圧器である。
【0007】
電子放電に点火し、電子放電を持続させる上述の回路の他の例では、高比率変圧器は、1に対して少なくとも10の巻き線比を有する。
【0008】
電子放電に点火し、電子放電を持続させる上述の回路の他の例では、巻き線比は少なくとも100:1である。
【0009】
電子放電に点火し、電子放電を持続させる上述の回路の他の例では、巻き線比は約60:1である。
【0010】
電子放電に点火し、電子放電を持続させる上述の回路の他の例では、回路は、出力キャパシタの不足によって特徴づけられる。
【0011】
電子放電に点火し、電子放電を持続させる上述の回路の他の例では、リセット回路は、直線的に配置されたダイオードおよびツェナーダイオードである。
【0012】
電子放電に点火し、電子放電を持続させる上述の回路の他の例では、高電圧変圧器の一次側とDC供給源帰線スイッチとの間に直列に接続されたスイッチは、コントローラによって制御される。
【0013】
電子放電に点火し、電子放電を持続させる上述の回路の他の例では、スイッチは、MOSFET(金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)である。
【0014】
電子放電に点火し、電子放電を持続させる上述の回路の他の例では、スイッチは、制御で閉じられ、DC供給源は、変圧器の二次側で高電圧を生成するように変圧器の一次側にわたって適用される。
【0015】
電子放電に点火し、電子放電を持続させる上述の回路の他の例では、電流供給源は、絶縁されたコンバータと、インダクタとを有する。
【0016】
電子放電に点火し、電子放電を持続させる上述の回路の他の例では、電流供給源は、降圧に基づいたコンバータである。
【0017】
電子放電に点火し、電子放電を持続させる上述の回路の他の例では、持続回路は、絶縁されたコンバータのDC帰線に第2整流器の入力部を接続するDC負荷をさらに備える。
【0018】
本発明の上記または他の特徴部は、以下の明細書、図面から最も良く理解されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】衛星用の電気スラスタを概略的に示す図である。
【
図2】
図1の電気スラスタで用いるための点火回路を概略的に示す図である。
【
図3】例示的なコアリセット回路を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ディスペンサー陰極のインサートが熱電子を生成することができるようにするために、ディスペンサー陰極は、該ディスペンサー陰極を温めるヒータを利用する。熱電子は、陰極放電を形成するイオンおよび自由電子を生成するように、ディスペンサー陰極において低圧のガスと反応する。ヒータは、陰極の一部を取り囲み、貯蔵された電気エネルギを熱エネルギに変換する物理的な構成要素である。ヒータの存在により電気ユニットの重量が増加し、また、ユニットによって引き出された電気負荷が増加するが、最も重大なことは、ヒータは、信頼性にとって危険があり、製造するのが難しいことである。
【0021】
ディスペンサー陰極は、通常は、保磁子と呼ばれる他の電極で取り囲まれている。保磁子電極の主な機能は、他の通路が利用可能でないときに、電子を引きつける通路を提供することによって陰極放電を起動し動作を持続させることを容易にすることである。
【0022】
図1は、衛星または他の宇宙整形電気ユニット用の例示的な電気推進システム10を概略的に示している。電気推進システム10は、複数の電源30に接続された電力処理ユニット20を備えている。点火回路22が、電力処理ユニット20内にある。陰極に点火し、陰極を持続させる点火回路22は、2つの電力出力を生成するものであり、1つの電力出力は陰極42に供給され、他の電力出力は保磁子44に供給される。陰極42および保磁子44は、スラスタ40内に含まれている。スラスタ40は、ガス供給源50に流体的に接続されている。
【0023】
図1の例では、単一の点火回路22および単一のスラスタ50を有するように示されているが、点火回路22およびスラスタ50は、所定の宇宙整形電気ユニットに要求される任意の数の付加的なスラスタを提供するのに必要とされるように再現され得る。
【0024】
陰極に点火し、陰極を持続させる点火回路22は、電力処理ユニット20を介して電源30から電力を受け、陰極42および保磁子44に処理された電力を供給するように構成されている。スラスタ40がヒータ無し陰極42に点火し、この陰極42を作動させるために、2つの電気的な条件が、点火回路22の出力から要求される。第1に、イグナイタ44に供給される出力は、保磁子42において低圧のガスを破壊するのに十分に高い電圧でなければならない。第2に、陰極に点火し、陰極を持続させる点火回路22からの電流は、真空アークの損傷が生じないようにするのに十分に低い大きさに制限されなければならない。
【0025】
接地に基づいた試験システム(つまり、実験室条件での)では、これは、順々に付加的な1KΩの抵抗を用いて0.15Aと0.3Aとの間に制限された電流である1500Vの供給源を使用して実現されることができる。しかし、この条件を実現するためには、使用される回路が大型で高価なものである。さらに、衛星において実験室システムを正確に適合させることは、実際の建設で実行されるべき重量が過度に大きくなることを必要とし得る。
【0026】
より小型のパッケージにおいてこの条件を実現するために、電気推進システム10は、電源22から保磁子44および陰極42に個別の出力を供給する。
図1の参照を継続しながら、
図2は、電力処理ユニット20内のより詳細な点火回路22を概略的に示している。
【0027】
陰極に点火し、陰極を持続させる点火回路22は、処理電力入力部102を経由して電力入力部30に接続されており、一般に、2つの回路、つまり点火回路101および持続回路103に分割されることができる。入力部30から供給される電力の条件に基づいて、電力入力部102で受けられた電力は、電力処理回路20内の付加的な回路によって処理されるか、または電源30から入力部102に直接供給されることができる。入力部102で受けられると、電力は、高比率変圧器110と、コアリセット回路114と、絶縁されたコンバータ130と誘導子140とを有する電流供給源105と、に供給される。
【0028】
高比率変圧器110は、出力整流器120に正の出力を供給し、次に、出力整流器120は、電力出力部104を経由して保磁子44に正の出力を供給する。高比率変圧器110の負の出力は、陰極42に電力を出力する第2出力部106に供給される。高比率変圧器110は、出力キャパシタンスを省略し、エネルギを貯蔵すること無しに高比率変圧器110が高い電圧を供給できるようにする。いくつかの例では、高比率変圧器に要求される巻き線比は、10:1よりも大きい。
【0029】
一例では、コアリセット回路114が、直線的に配置されたダイオード204およびツェナーダイオード202である。この例は、
図3に示されている。コアリセット回路114は、変圧器110と並列に接続されており、コアリセット回路114の高電圧側は、変圧器110の高電圧入力部に接続されており、コアリセット回路114の低電圧側は、変圧器110の低電圧入力部に接続されている。コアリセット回路114の低電圧側は、変圧器110の非給電脚部に接続されている。また、変圧器110の非給電脚部は、スイッチ112に接続しており、該スイッチ112は、スイッチ112が閉じているときに中性点108に非給電脚部を接続し、スイッチが開いているときに変圧器を接続しないようにする。スイッチ112が閉じられているときには、コアリセット回路114のダイオード204は、コアリセット回路114を通る電流を遮断する。スイッチ112が開いているときには、コアリセット回路114のダイオード204は、コアリセット回路114を通る電流を磁化し、ツレナーダイオード202にわたる電圧降下が変圧器110に与えられ、変圧器110は、該変圧器110の束をリセット状態にするように電圧を主に供給する。
【0030】
動作中に、(電力処理ユニット20内に、または電気ユニットの何処かに含まれる)外部の制御回路は、スイッチ112にパルスを供給する。パルスは、電力入力部102から変圧器110の一次巻き線を横切ってバス電圧を効果的に接続し、変圧器110の二次巻き線に高電圧を生成する。スイッチ112のパルスがオフにされているときには、イグナイタ44へのケーブル配線における寄生容量並びに変圧器110およびスイッチ112の直列インピーダンスが、必要な高電圧を維持し、スイッチ112のサイクルの次までドループを伴う。変圧器のコアおよびターン数は、スイッチ112が閉じられている期間にコアの飽和を防止するように大きさが決定され、この大きさの決定は、周知の方法に従って実現されることができる。実用的な実施では、点火パルス列の間は、スイッチ112がオンのときに増加時間があり、スイッチのオフ時間中に電圧の減衰があるので、イグナイタ44へ供給される電圧が平らでない(つまり一定でない)。イグナイタに供給される結果的な電圧の一般的な形式は、DCパルスによってオフセットされた鋸歯パターンである。
【0031】
スイッチ112およびコアリセット回路114のパルスの間の期間は、変圧器110のコアに対する継続時間および電圧リセットを提供し、変圧器110をゼロの束に戻す。この構成では、電圧は、電流が陰極で検出されるまで無期限に高く維持されることができるか、または、パルスは、所定の電気スラスタ40の特定の必要性に基づいて、イグナイタ44にパルス列を生成するように周期的な群で出力されることができる。
【0032】
スイッチ112の継続時間におけるターンが一定に保持される場合には、点火電圧の大きさは、イグナイタ44への入力電圧に依存している。これを行うことにより、典型的な入力のために、50%まで、必要な点火電圧を変化させることができる。入力電圧によって生じる点火パルス電圧の変動性は、ある例では、点火電圧に基づいた点火パルス幅を形成することにより減少される。これは、従来のデジタルまたはアナログ制御システムによって実現される。
【0033】
放電が始まった後に保磁子44を通して陰極42へと電流を持続させるために、絶縁されたコンバータ130が、必要な電圧およびアンペア数を提供する。例によっては、絶縁されたコンバータ130は、0.15~0.3Aで20~400V程度を提供するように構成されることができ、およびプッシュプルコンバータまたは他の形式の切り換えモードコンバータとすることができる。代替的な例では、他の電流の大きさが、適切な尺度構成で同様の構成を用いて実現されることができる。
【0034】
陰極ヒータを全体的に省略するために、陰極42は自己加熱陰極である。自己加熱陰極は、受けられた電流の一部を熱エネルギに変換し、そして、該熱エネルギは、陰極の温度を上昇させる。連続的な電流が陰極42で受けられることを確実にするために、従って、自己加熱機能は、動作の全体にわたって維持され、インダクタ140は、絶縁されたコンバータ130の出力部を第2整流器122に接続する。第2整流器122は、陰極出力部106に接続され、図示した例ではダイオードである。
【0035】
陰極42の放電が、効果的なDC電圧レベルに電圧を設定し、一方、電流のフィードバックが、陰極42に供給される電流の大きさを制御するように使用される。電流供給源が、陰極42の点火の前にDC電流を提供する。これが実現されることを確実にするために、
図2の例示的な実施例は、DC負荷150を有している。DC負荷150は、切り換えられた抵抗、一連のツェナーダイオード、または放電供給源が予め充電されることができる同様の装置とされ得る。負荷150の電圧は、期待される放電よりも高いレベルに設定され、陰極放電が点火されるときに、電流が負荷150から陰極放電に自然に転換する。放電供給源および負荷がエネルギ全てを分流することを防止するために、放電および負荷150は、高電圧ダイオード122を介してイグナイタ44に接続されている。高圧ダイオード122は、点火パルスの最大限の大きさに耐えるような大きさとされている。
【0036】
上述の概念は、単独で、もしくは任意のまたは全ての他の上述の概念の組み合わせで用いられることができることがさらに理解される。本発明の実施例が開示されたが、当業者は、特定の修正が本発明の範囲内でなされ得ることを理解するであろう。この理由のため、以下の特許請求の範囲が本発明の範囲および内容を決定するために検討されるべきである。
【国際調査報告】