(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-01
(54)【発明の名称】フラボノイドポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物、その調製方法、医薬組成物および使用
(51)【国際特許分類】
A61K 47/69 20170101AFI20220624BHJP
A61K 31/12 20060101ALI20220624BHJP
A61K 31/05 20060101ALI20220624BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20220624BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20220624BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220624BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20220624BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220624BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220624BHJP
A61P 39/06 20060101ALI20220624BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220624BHJP
A61P 5/00 20060101ALI20220624BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20220624BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20220624BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20220624BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220624BHJP
A61P 19/10 20060101ALI20220624BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20220624BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20220624BHJP
A61K 31/353 20060101ALI20220624BHJP
A61K 31/352 20060101ALI20220624BHJP
A61K 31/343 20060101ALI20220624BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20220624BHJP
A61K 9/02 20060101ALI20220624BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220624BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20220624BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20220624BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20220624BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20220624BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20220624BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20220624BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20220624BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20220624BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20220624BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20220624BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
A61K47/69
A61K31/12
A61K31/05
A61P31/04
A61P31/12
A61P29/00
A61P37/08
A61P37/02
A61P35/00
A61P39/06
A61P43/00 107
A61P5/00
A61P9/12
A61P3/06
A61P9/10 101
A61P25/28
A61P19/10
A61P1/16
A61P31/14
A61K31/353
A61K31/352
A61K31/343
A61K9/06
A61K9/02
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/12
A61K9/14
A61K9/16
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/70 401
A61K47/24
A61K47/44
A61K47/14
A61K47/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560466
(86)(22)【出願日】2020-04-08
(85)【翻訳文提出日】2021-10-05
(86)【国際出願番号】 CN2020083837
(87)【国際公開番号】W WO2020207417
(87)【国際公開日】2020-10-15
(31)【優先権主張番号】201910278955.6
(32)【優先日】2019-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521442176
【氏名又は名称】北京五和博澳薬業股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BEIJING WEHAND-BIO PHARMACEUTICAL CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No. 30 Tianfu Street Daxing Biomedical Industrial Base, Zhongguancun Science Park Beijing 102600 China
(71)【出願人】
【識別番号】521439268
【氏名又は名称】中国医学科学院薬物研究所
【氏名又は名称原語表記】INSTITUTE OF MATERIA MEDICA, CHINESE ACADEMY OF MEDICAL SCIENCE & PEKING UNION MEDICAL COLLEGE
【住所又は居所原語表記】No. 1 Xian Nong Tan Street, Xicheng District Beijing 100050 China
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】特許業務法人ナガトアンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】劉玉玲
(72)【発明者】
【氏名】廖恒鋒
(72)【発明者】
【氏名】高越
(72)【発明者】
【氏名】董武軍
(72)【発明者】
【氏名】劉志華
(72)【発明者】
【氏名】王邦源
(72)【発明者】
【氏名】張運
(72)【発明者】
【氏名】馮遇
(72)【発明者】
【氏名】周君卓
(72)【発明者】
【氏名】劉▲ロ▼
(72)【発明者】
【氏名】葉軍
(72)【発明者】
【氏名】楊艶芳
(72)【発明者】
【氏名】夏学軍
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA03
4C076AA06
4C076AA09
4C076AA11
4C076AA16
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4C206ZB35
4C206ZC01
4C206ZC33
4C206ZC41
(57)【要約】
フラボノイドポリフェノール系薬剤-リン脂質複合体を中間体とすることに基づくフラボノイドポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物であり、フラボノイドポリフェノール系薬剤-リン脂質複合体、油相、乳化剤および乳化助剤を含み、前記フラボノイドポリフェノール系薬剤は、バイカレイン、プロアントシアニジン、ケルセチン、クルクミン、およびレスベラトロールから選ばれる1種または複数種を含む。前記自己乳化組成物は、安定性が良く、薬剤負荷が高く、バイオアベイラビリティが高い等の有益な効果を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラボノイドポリフェノール系薬剤-リン脂質複合体、油相、乳化剤および乳化助剤を含み、前記フラボノイドポリフェノール系薬剤は、バイカレイン、プロアントシアニジン、ケルセチン、クルクミン、およびレスベラトロールから選ばれる1種または複数種を含み、
好ましくは、前記フラボノイドポリフェノール系薬剤は、バイカレイン、プロアントシアニジン、ケルセチン、クルクミン、およびレスベラトロール以外の他のフラボノイドポリフェノール系薬剤を含んでもよく、前記他のフラボノイドポリフェノール系薬剤は、ウォゴニン、フェルラ酸、カテキン、マグノロール、ホノキオール、アピゲニン、ヘスペレチン、ロテノン、イソババカルコン、オーロイシジン、デルフィニジン、ギンクゲチンから選ばれる1種または複数種であり、
好ましくは、前記フラボノイドポリフェノール系薬剤は、バイカレイン、プロアントシアニジン、ケルセチン、クルクミン、またはレスベラトロールであり、
好ましくは、前記フラボノイドポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物の薬剤負荷は10~110mg/gであり、10~100mg/gであることが好ましく、
好ましくは、前記フラボノイドポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物の粒径は10~1000nmである、ことを特徴とするフラボノイドポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物。
【請求項2】
前記フラボノイドポリフェノール系薬剤-リン脂質複合体において、フラボノイドポリフェノール系薬剤とリン脂質との質量比は1:1~1:15であり、1:1~1:8であることが好ましい、ことを特徴とする請求項1に記載のフラボノイドポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物。
【請求項3】
前記リン脂質は、天然リン脂質、合成リン脂質材料から選ばれる1種または複数種であり、
好ましくは、前記天然リン脂質は、大豆リン脂質および卵黄リン脂質から選ばれる1種または複数種を含み、
好ましくは、前記合成リン脂質は、ホスホグリセリド、スフィンゴミエリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、グリセロリン脂質酸、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルコリンから選ばれる1種または複数種を含み、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、グリセロリン脂質酸から選ばれる1種または複数種であることが好ましい、ことを特徴とする請求項1または2に記載のフラボノイドポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物。
【請求項4】
前記油相は、植物油、植物油誘導体から選ばれる1種または複数種であり、
好ましくは、前記植物油は、大豆油、トウモロコシ油、オリーブ油、ヤシ油、落花生油、ツバキ油、ヒマシ油から選ばれる1種または複数種を含み、
好ましくは、前記植物油誘導体は、オレイン酸ソルビタン、オレイン酸グリセリル、リノール酸グリセリル、オレイン酸ポリエチレングリコールグリセリル、モノリノール酸グリセリル、オレイン酸エチル、リノール酸エチル、C8/C10モノグリセリド、ヤシ油C8/C10ジグリセリド、ヤシ油C8/C10トリグリセリド、カプリル酸トリグリセリド、カプリル酸ジグリセリド、カプリル酸モノグリセリド、カプリン酸モノグリセリド、カプリン酸ジグリセリド、カプリン酸トリグリセリド、カプリル酸/カプリン酸モノグリセリド、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、ミリスチン酸イソプロピル、リノール酸ポリエチレングリコールグリセリル、ラウリン酸ポリエチレングリコールグリセリル、モノカプリル酸プロピレングリコールから選ばれる1種または複数種を含み、
好ましくは、前記油相は、大豆油、ヒマシ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルから選ばれる1種または複数種である、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のフラボノイドポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物。
【請求項5】
前記乳化剤は、カプリル酸カプリン酸ポリエチレングリコールグリセリル、ポリエチレングリコール、ツイーン、スパン80、オレイン酸ポリエチレングリコールグリセリル、リノール酸ポリエチレングリコールグリセリル、リン脂質、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルから選ばれる1種または複数種であり、
カプリル酸カプリン酸ポリエチレングリコールグリセリル、ツイーン80、ツイーン85、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、オレイン酸ポリエチレングリコールグリセリルのうちの1種または複数種であることが好ましい、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のフラボノイドポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物。
【請求項6】
前記乳化助剤は、エタノール、プロピレングリコール、プロピレンカーボネート、エチレングリコールモノエチルエーテル、グリセロールフルフラール、ジメチルイソソルビド、モノカプリル酸プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコール、グリセリン、カプリル酸カプリン酸ポリエチレングリコールグリセリル、ベンジルアルコールから選ばれる1種または複数種であり、
ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコール400、エタノール、モノカプリル酸プロピレングリコールのうちの1種または複数種であることが好ましい、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のフラボノイドポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物。
【請求項7】
油相と乳化剤と乳化助剤との3者の総質量比を100%として計算すると、油相は10%~50%(好ましくは、20%~40%)であり、乳化剤は30%~60%(好ましくは、40%~60%)であり、乳化助剤は20%~60%(好ましくは、30%~50%)である、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のフラボノイドポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物。
【請求項8】
(1)フラボノイドポリフェノール系薬剤-リン脂質複合体の調製:フラボノイドポリフェノール系薬剤およびリン脂質を有機溶剤に溶解させ、複合反応を経た後、有機溶剤を除去し、乾燥して取得することであって、
好ましくは、前記有機溶剤は、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、メタノール、アセトン、エタノール、無水エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、エチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジオキサン、ブタノン、石油エーテル、ヘキサン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、DMSO、DMFから選ばれる1種または複数種であり、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、シクロヘキサン、DMSO、DMFのうちの1種または複数種であることが好ましいステップと、
(2)フラボノイドポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物の調製:ステップ(1)で得られたフラボノイドポリフェノール系薬剤-リン脂質複合体と、油相、乳化剤および乳化助剤とを任意の順序で十分に混合させることであって、
好ましくは、ステップ(1)で得られたフラボノイドポリフェノール系薬剤-リン脂質複合体と、油相、乳化剤および乳化助剤とを直接十分に混合させ、
または、まず、油相、乳化剤および乳化助剤を均一に混合させてブランクの自己乳化濃縮液を調製し、その後、ステップ(1)で得られたフラボノイドポリフェノール系薬剤-リン脂質複合体を調製されたブランクの自己乳化濃縮液に加え、十分に混合させ、
または、ステップ(1)で得られたフラボノイドポリフェノール系薬剤-リン脂質複合体を、油相、乳化剤、または乳化助剤のうちのいずれかに溶解してから、別の2種の成分を加えて十分に混合させるステップと、
を含む、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のフラボノイドポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物の調製方法。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載のフラボノイドポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物と、任意に医薬的に許容される補助材料とを含み、
好ましくは、医薬組成物の剤形は、経口製剤、注射製剤、経皮投与製剤、粘膜投与製剤、経肺吸入投与製剤、または腸管投与製剤を含み、
好ましくは、医薬組成物の剤形は、点滴剤、オーラル液体、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、練薬、フィルム剤、ゲル剤、散剤、乳剤、滴下ピル、坐剤、エアゾール剤、スプレー剤、粉末エアゾール剤、貼付剤、接着プラスター、液剤、軟膏剤、またはクリーム剤を含む、ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか1項に記載のフラボノイドポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物または請求項9に記載の医薬組成物の、抗菌、抗ウイルス、抗炎症、アレルギー反応の抑制、免疫調節、抗腫瘍、酸化防止、抗老化、紫外線照射防止、ホルモン欠乏の治療、抗高血圧、血中脂質の低減、抗アテローム性動脈硬化症、抗老人性認知症、手足口病の治療、抗骨粗鬆症、または肝臓保護用の薬剤の調製における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラボノイドポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物、その調製方法、医薬組成物および使用に関し、医薬分野に属する。
【背景技術】
【0002】
フラボノイドポリフェノール系化合物は、現在、一般的に以下の3種類に分けられる。(1)小分子のフェノール酸類物質であって、例えば、サリチル酸、桂皮酸、パラヒドロキシ桂皮酸コーヒー酸、フェルラ酸、クロロゲン酸等である。(2)タンニンであって、ポリフェノールのポリマーであり、縮合タンニンおよび加水分解タンニンに分けられ、前者は、フラバノール類物質がC4~C6またはC4~C8結合により連結された異なる重合度のポリフェノールであり、プロアントシアニジンとも呼ばれ、後者は、没食子酸またはエラグ酸とグルコース等の糖類におけるヒドロキシ基とがエステル化して形成される。(3)ポリヒドロキシフラボン類であって、1種は、植物色素の1つのアントシアニン(アントシアンの配糖体である)であり、他種は、狭義のフラボンおよびその配糖体であり、アグリコンは、フラボン、フラボノール、フラバノン、フラバノノール、イソフラボン、イソフラバノン、カルコン、オーロン、フラバン、アントシアン、ビフラボン、フラボノイドを含む(非特許文献1参照)。
【0003】
研究により、フラボノイドポリフェノール系薬剤は、多方面の薬理作用を持ち、例えば、抗腫瘍、血液凝固抑制、抗菌、ホルモン調節、酸化防止、抗老化、抗アテローム性動脈硬化症、抗感染、抗骨粗鬆症、抗ウイルス、抗微生物、血中脂質調節および血糖降下等の多方面で良好な効果を持つことが分かった。
【0004】
理化学的性質の制限により、フラボノイドポリフェノール系薬剤の経口製剤はバイオアベイラビリティが悪く、経口治療の効果が良くない。そのため、製剤学的技術により経口投与の血中濃度(Cmax)および血中暴露量(AUC)を高めることは、重要な臨床的な意義を有する。
【0005】
自己乳化型ドラッグデリバリーシステム(SEDDS)は、油相、乳化剤および乳化助剤で形成された均一な混合物であり、薬剤の担持およびデリバリーツールとして使用でき、経口投与後に、胃腸管の蠕動および胃腸液の水性媒体環境で、迅速に自己乳化して水中油型乳化滴を形成することができる。
【0006】
王至秦らは、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルを油相とし、ポリオキシエチレン40ヒマシ油を乳化剤とし、1,2-プロピレングリコールを乳化助剤とし、プロアントシアニジン原料薬が担持された自己マイクロエマルジョンを調製し、3者の質量比が1:3:1である場合、乳化が速く、薬剤負荷(drug loading)が10%であり、配合比でポリオキシエチレン40ヒマシ油、1,2-プロピレングリコールおよびトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルを秤量し、37℃にて水浴で撹拌して均一に混合し、更に処方量のプロアントシアニジンを加えて混合して溶解させ、37℃にて1hのバランスを取ってプロアントシアニジンの自己マイクロエマルジョンを取得し、水で100倍に希釈した後、平均粒径が(63.6±0.7)nmであることを報告した(非特許文献2参照)。
【0007】
張偉玲らは、オレイン酸ポリエチレングリコールグリセリルを油相とし、ポリオキシエチレン35ヒマシ油を乳化剤とし、ジエチレングリコールモノエチルエーテルを乳化助剤とし、3者の割合が27.0:55.6:17.4(w:w:w)であり、過剰のケルセチン原料薬と油相、乳化剤および乳化助剤とを60℃の恒温水浴に置いて磁気攪拌し、ケルセチンの過飽和溶液を調製し、室温で24h振とうしてバランスを取った後、4000r/minで10min遠心し、上清を取ると、ケルセチン原料薬が担持された自己マイクロエマルジョンを取得し、最大薬量が67.87mg/gであり、水で50倍に希釈した後、平均粒径が25.26nmであることを報告した(非特許文献3参照)。
【0008】
李沢民らは、中鎖脂肪酸(MCT)を油相とし、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(Cremophor RH40)を乳化剤とし、ポリエチレングリコール-400(PEG-400)を乳化助剤とし、3者の割合がMCT:PEG-400:Cremophor RH40=2:2:6(w/w)であり、過剰のクルクミン原料薬と油相、乳化剤および乳化助剤とを均一に混合し、5min旋回させた後、37℃にて遮光下で48h揺らし、サンプルを取り出して12000r/minで10min遠心し、上清を精密に取ると、クルクミン原料薬が担持された自己マイクロエマルジョンを調製し、その溶解度を著しく向上させ、最大薬剤負荷が55.30mg/gであり、水で100倍に希釈した後、平均粒径が11.8nmであることを報告した(非特許文献4参照)。
【0009】
曹▲ロ▼らは、トリアセチンを油相とし、Cremophor ELおよびCremophor RH40を乳化剤とし、イソプロパノールを乳化助剤とし、割合がトリアセチン:Cremophor EL:Cremophor RH40:イソプロパノール=22:27:13.5:37.8(w/w)であり、37℃の水浴条件で、磁気攪拌して均一に混合させ、ブランクの自己マイクロエマルジョンを取得し、適量のレスベラトロールをブランクの自己マイクロエマルジョンに入れ、超音波で溶解させると、レスベラトロール自己マイクロエマルジョンを取得することができ、薬剤負荷が45mg/gであり、水で100倍に希釈した後、平均粒径が15nmであることを報告した(非特許文献5参照)。
【0010】
文献2~5に記載の方法でプロアントシアニジン、ケルセチン、クルクミン、およびレスベラトロールの自己マイクロエマルジョンをそれぞれ調製し、それらを4℃および室温でそれぞれ5日間、1ヶ月および2ヶ月放置し、外観性状の変化を観察し、それらの物理安定性を考察した結果、文献2~5の処方で調製されたフラボノイドポリフェノール系薬剤の自己マイクロエマルジョン混合物には、いずれも顕著な安定性欠陥が存在し、4℃で放置した後、半固体を形成したり析出したりしやすく、室温でしばらく放置すると薬剤析出が発生することが分かった。
【0011】
また、柯学らは、Migly-col812/Maisine35-1(1:1)を油相とし、CremphorEL35/Labrasol(2:1)を乳化剤とし、Transcutol Pを乳化助剤とし、処方でブランクのSMEDDSを調製し、過剰のバイカレインを加え、37℃の水浴で撹拌して溶解させ、24h後に取り出し、12000r・min-1で15min高速遠心し、上清を吸い出すと、バイカレイン原料薬が担持された自己マイクロエマルジョンを調製し、最大薬剤負荷が(18.1±1.11)mg/gであり、それを精製水で100倍に希釈した後、3min以内で安定して均一なマイクロエマルションを形成し、形成されたマイクロエマルションの粒径が27.2±0.56nmであり、バイカレイン原料薬(強制経口投与)と比べ、バイカレインの自己マイクロエマルジョンをラットに経口投与したCmaxが3.1倍に上昇し、相対的なバイオアベイラビリティ(AUC)が3.77倍に増加することを報告した(非特許文献6参照)。
【0012】
Wenli Liuらは、Caprylic capric triglyceride(ODO、25%)を油相とし、Cremophor RH40(53.57%)を乳化剤とし、Transcutol P(21.43%)を乳化助剤とし、過剰のバイカレイン原料薬と油相、乳化剤および乳化助剤とを37℃の条件で48h撹拌し、更に混合物を12000rpmで20min遠心し、上清を取り、最終的にバイカレイン原料薬が担持された自己マイクロエマルジョンを調製し、最大薬剤負荷が(32.02)mg/gであり、被水後の乳化粒径が27.54nmであり、バイカレイン原料薬の懸濁液(0.5%のカルボキシメチルセルロースナトリウム溶液に分散されている)と比べ、バイカレインの自己マイクロエマルジョンをラットに経口投与したCmaxが1.6倍に上昇し、相対的なバイオアベイラビリティ(AUC)が2.01倍に増加することを報告した(非特許文献7参照)。
【0013】
非特許文献6および非特許文献7で調製された自己マイクロエマルジョンは、いずれもバイカレインの経口バイオアベイラビリティを著しく向上させるが、検証実験により、依然として以下のような欠陥が存在することが分かった。
【0014】
(1)調製されたバイカレインの自己マイクロエマルジョン混合物は、4℃で放置した後、半固体を形成したり析出したりしやすく、室温で1ヶ月放置すると薬剤析出が発生する。
【0015】
(2)所定の油相、乳化剤、乳化助剤の条件で、バイカレインの薬剤負荷は更に向上しにくく、臨床治療投与量の薬剤負荷に対する要求を満たすことができない。
【0016】
(3)バイカレイン原料薬と比べ、CmaxおよびAUCの増加幅が限られている。
【0017】
また、劉昌順らは、バイカリン(BG)、バイカリンリン脂質複合体(BGPC)、バイカリンが直接担持された自己マイクロエマルジョン投与システム(BG-SMEDDS)、バイカリン-リン脂質複合体を中間体とする自己マイクロエマルジョン投与システム(BGPC-SMEDDS)の、ラット体内での薬物動態学を比較した結果、BGと比べ、BGPC、BG-SMEDDS、BGPC-SMEDDSの血漿濃度がいずれも増加し、CmaxがそれぞれBGの3.89、11.01および6.70倍であり、AUC0→24hがそれぞれBGの2.46倍、2.86倍および2.38倍であり、即ち、Cmaxは、バイカリンの自己マイクロエマルジョン>バイカリン-リン脂質複合体の自己マイクロエマルジョン>バイカリン-リン脂質複合体であり、AUC0→24hは、バイカリンの自己マイクロエマルジョン>バイカリン-リン脂質複合体>バイカリン-リン脂質複合体の自己マイクロエマルジョンであることが分かった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】ポリフェノール系化学成分の腸管でのバイオトランスフォーメーションについての研究の進展[C].中華漢方医薬学会の漢方薬化学部の第8回の学術年会、2013
【非特許文献2】漢方薬、2013、35(12):2749~2752
【非特許文献3】山東大学学報、2016、54(3):41~49
【非特許文献4】成都医学院学報、2017、12(2):155~59
【非特許文献5】曹▲ロ▼.レスベラトロールの研究調製[D].河北:河北医科大学、2014
【非特許文献6】中国新薬雑誌、2010、19(5):371~395
【非特許文献7】Fitoterapia、2012、83:1532~1539
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
理想的な薬剤積載自己乳化組成物は、以下の条件を満たさなければならない。(1)冷蔵または室温の条件で長期間貯蔵されても、外観が均一な清澄な透明液体であり、分層が発生してはならない。(2)冷蔵または室温の条件で長期間貯蔵されても、外観が均一な清澄な透明液体であり、凝固または沈殿が発生してはならず、使用前の「薬剤混合物を加熱して融解する」という処理を回避し、薬剤の分解を減少する。(3)自己乳化の効率が高く、胃腸環境を模擬して一定量の水を加えて希釈すると、迅速に自己乳化してナノスケールの乳化滴を形成することができる。(4)自己乳化混合物を直接経口投与した後、胃腸で自発的に乳化して形成された乳化滴は、ナノスケール(1~1000nm)でなければならず、ミクロンスケール(>1μm)であってはならない。
【0020】
薬剤積載SEDDSに対し、異なる薬剤によって、理化学的性質が異なることから、薬剤負荷および安定性も異なる。且つ、油相、乳化剤、乳化助剤、および割合の変化によって、いずれも薬剤負荷および自己乳化の効率に影響を及ぼし、更にその粘膜浸透性およびバイオアベイラビリティに影響を及ぼすが、このような影響は、一定の規律がないことが多い。
【0021】
本発明者は、フラボノイドポリフェノール系の薬剤製剤を鋭意検討した結果、リン脂質と、バイカレイン、プロアントシアニジン、ケルセチン、クルクミン、およびレスベラトロールから選ばれたフラボノイドポリフェノール系薬剤とでフラボノイドポリフェノール系薬剤-リン脂質複合体を調製し、これを中間体として調製された自己乳化システムは、安定性が良く、薬剤負荷が高く、バイオアベイラビリティが高い等の有益な効果を持つことを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0022】
これに鑑み、態様1において、本発明は、
フラボノイドポリフェノール系薬剤-リン脂質複合体、油相、乳化剤および乳化助剤を含み、前記フラボノイドポリフェノール系薬剤は、バイカレイン、プロアントシアニジン、ケルセチン、クルクミン、およびレスベラトロールから選ばれる1種または複数種を含み、
好ましくは、前記フラボノイドポリフェノール系薬剤は、バイカレイン、プロアントシアニジン、ケルセチン、クルクミン、およびレスベラトロール以外の他のフラボノイドポリフェノール系薬剤を含んでもよく、前記他のフラボノイドポリフェノール系薬剤は、ウォゴニン、フェルラ酸、カテキン、マグノロール、ホノキオール、アピゲニン、ヘスペレチン、ロテノン、イソババカルコン、オーロイシジン、デルフィニジン、ギンクゲチンから選ばれる1種または複数種であり、
好ましくは、前記フラボノイドポリフェノール系薬剤は、バイカレイン、プロアントシアニジン、ケルセチン、クルクミン、またはレスベラトロールであり、
好ましくは、前記フラボノイドポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物の薬剤負荷は10~110mg/gであり、10~100mg/gであることが好ましく、
好ましくは、前記フラボノイドポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物の粒径は10~1000nmであることを特徴とするフラボノイドポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物を提供する。
【0023】
好ましくは、前記フラボノイドポリフェノール系薬剤-リン脂質複合体において、フラボノイドポリフェノール系薬剤とリン脂質との質量比(w/w)は1:1~1:15であり、1:1~1:8であることが好ましい。
【0024】
前記フラボノイドポリフェノール系薬剤-リン脂質複合体は、フラボノイドポリフェノール系薬剤とリン脂質材料とで複合され、好ましくは、前記フラボノイドポリフェノール系薬剤-リン脂質複合体の薬剤複合率は80%以上である。
【0025】
好ましくは、前記フラボノイドポリフェノール系薬剤は、漢方薬から抽出されたフラボノイドポリフェノール系薬剤抽出物および/または化学的に合成されたフラボノイドポリフェノール系薬剤である。
【0026】
好ましくは、前記バイカレインは、人工的に合成されたバイカレインであってもよいし、植物から抽出されたバイカレイン含有量が50%以上の有効成分であってもよいし、植物から抽出されて変換または再結晶により調製された生成物であってもよい。
【0027】
好ましくは、前記リン脂質は、天然リン脂質、合成リン脂質材料から選ばれる1種または複数種であり、
好ましくは、前記天然リン脂質は、大豆リン脂質および卵黄リン脂質から選ばれる1種または複数種を含み、
好ましくは、前記合成リン脂質は、ホスホグリセリド、スフィンゴミエリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、グリセロリン脂質酸、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルコリンから選ばれる1種または複数種を含み、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、グリセロリン脂質酸から選ばれる1種または複数種であることが好ましい。
【0028】
好ましくは、前記油相は、植物油、植物油誘導体から選ばれる1種または複数種であり、
好ましくは、前記植物油は、大豆油、トウモロコシ油、オリーブ油、ヤシ油、落花生油、ツバキ油、ヒマシ油から選ばれる1種または複数種を含み、
好ましくは、前記植物油誘導体は、オレイン酸ソルビタン、オレイン酸グリセリル、リノール酸グリセリル、オレイン酸ポリエチレングリコールグリセリル(labrafil(登録商標)1944cs)、モノリノール酸グリセリル(Maisine35-1)、オレイン酸エチル、リノール酸エチル、C8/C10モノグリセリド、ヤシ油C8/C10ジグリセリド、ヤシ油C8/C10トリグリセリド、カプリル酸トリグリセリド、カプリル酸ジグリセリド、カプリル酸モノグリセリド、カプリン酸モノグリセリド、カプリン酸ジグリセリド、カプリン酸トリグリセリド、カプリル酸/カプリン酸モノグリセリド、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、ミリスチン酸イソプロピル、リノール酸ポリエチレングリコールグリセリル(Labrafil(登録商標)M2125CS)、ラウリン酸ポリエチレングリコールグリセリル(Gelucire)、モノカプリル酸プロピレングリコール(Capryol 90)から選ばれる1種または複数種を含み、
好ましくは、前記油相は、大豆油、ヒマシ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルから選ばれる1種または複数種である。
【0029】
好ましくは、前記乳化剤は、カプリル酸カプリン酸ポリエチレングリコールグリセリル(labrasolまたはlabraosol)、ポリエチレングリコール(PEG-200、PEG-400、PEG-600、PEG-800(PEGの後の数字は、平均分子量を表す)を含む)、ツイーン(ツイーン20、ツイーン21、ツイーン40、ツイーン60、ツイーン61、ツイーン80、ツイーン81、ツイーン85を含み、ツイーン80、ツイーン60、ツイーン20であることが好ましい)、スパン80(span 80)、オレイン酸ポリエチレングリコールグリセリル(labrafil(登録商標)1944cs)、リノール酸ポリエチレングリコールグリセリル(Labrafil(登録商標)M2125CS)、リン脂質、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(X-100)から選ばれる1種または複数種であり、カプリル酸カプリン酸ポリエチレングリコールグリセリル(labrasolまたはlabraosol)、ツイーン80、ツイーン85、Triton X-100、labrafil(登録商標)1944csのうちの1種または複数種であることが好ましい。
【0030】
好ましくは、前記乳化助剤は、エタノール、プロピレングリコール、プロピレンカーボネート、エチレングリコールモノエチルエーテル、グリセロールフルフラール、ジメチルイソソルビド、モノカプリル酸プロピレングリコール(Capryol 90)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(transcutol HPまたはtranscutol P)、ポリエチレングリコール(PEG-200、PEG-400、PEG-600、PEG-800(PEGの後の数字は、平均分子量を表す)を含む)、グリセリン、カプリル酸カプリン酸ポリエチレングリコールグリセリル(labraosol)、ベンジルアルコールから選ばれる1種または複数種であり、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(transcutol HPまたはtranscutol P)、ポリエチレングリコール400(PEG-400)、エタノール、モノカプリル酸プロピレングリコール(Capryol 90)のうちの1種または複数種であることが好ましい。
【0031】
好ましくは、油相と乳化剤と乳化助剤との3者の総質量比を100%として計算すると、油相は10%~50%(好ましくは、20%~40%)であり、乳化剤は30%~60%(好ましくは、40%~60%)であり、乳化助剤は20%~60%(好ましくは、30%~50%)である。
【0032】
態様2において、
(1)フラボノイドポリフェノール系薬剤-リン脂質複合体の調製:フラボノイドポリフェノール系薬剤およびリン脂質材料を有機溶剤に溶解させ、複合反応を経た後、有機溶剤を除去し、乾燥して取得することであって、
好ましくは、前記有機溶剤は、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、メタノール、アセトン、エタノール、無水エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、エチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジオキサン、ブタノン、石油エーテル、ヘキサン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、DMSO、DMFから選ばれる少なくとも1種または複数種であり、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、シクロヘキサン、DMSO、DMFのうちの1種または複数種であることが好ましいステップと、
(2)フラボノイドポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物の調製:ステップ(1)で得られたフラボノイドポリフェノール系薬剤-リン脂質複合体と、油相、乳化剤および乳化助剤とを任意の順序で十分に混合させることであって、
例えば、ステップ(1)で得られたフラボノイドポリフェノール系薬剤-リン脂質複合体と、油相、乳化剤および乳化助剤とを直接十分に混合させてもよいし、
または、まず、油相、乳化剤および乳化助剤を均一に混合させてブランクの自己乳化濃縮液を調製し、その後、ステップ(1)で得られたフラボノイドポリフェノール系薬剤-リン脂質複合体を調製されたブランクの自己乳化濃縮液に加え、十分に混合させてもよいし、
または、ステップ(1)で得られたフラボノイドポリフェノール系薬剤-リン脂質複合体を、油相、乳化剤、または乳化助剤のうちのいずれかに溶解してから、別の2種の成分を加えて十分に混合させてもよいステップと、
を含むことを特徴とする上記フラボノイドポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物の調製方法を提供する。
【0033】
態様3において、上記フラボノイドポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物および任意に医薬的に許容される補助材料を含み、
好ましくは、医薬組成物の剤形は、経口製剤、注射製剤、経皮投与製剤、粘膜投与製剤、経肺吸入投与製剤、または腸管投与製剤を含み、
好ましくは、医薬組成物の剤形は、点滴剤(drop)、オーラル液体(oral liquid)、錠剤、カプセル剤(軟カプセル剤、硬カプセル剤を含む)、顆粒剤、練薬(electuary)、フィルム剤、ゲル剤、散剤、乳剤、滴下ピル(dripping pill)、坐剤、エアゾール剤、スプレー剤、粉末エアゾール剤、貼付剤、接着プラスター(adhesive plasters)、液剤、軟膏剤、またはクリーム剤を含むことを特徴とする医薬組成物を提供する。
【0034】
医薬的に許容される補助材料は、医薬製剤分野における任意の通常の補助材料であってもよい。特定の補助材料の選択は、特定の患者を治療するための投与方式または疾患のタイプおよび状態に依存する。例えば、医薬的に許容される補助材料として薬学分野における通常の希釈剤、担体、充填剤、粘着剤、湿潤剤、崩壊剤、吸収促進剤、界面活性剤、吸着担体および潤滑剤を含んでもよい。必要な場合、医薬組成物に香料、防腐剤および甘味料を加えてもよい。
【0035】
態様4において、本発明は、上記フラボノイドポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物または上記医薬組成物の、抗菌、抗ウイルス、抗炎症、アレルギー反応の抑制、免疫調節、抗腫瘍、酸化防止、抗老化、紫外線照射防止、ホルモン欠乏の治療、抗高血圧、血中脂質の低減、抗アテローム性動脈硬化症、抗老人性認知症、手足口病の治療、抗骨粗鬆症、または肝臓保護用の薬剤の調製における使用を提供する。
【発明の効果】
【0036】
本発明のフラボノイドポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物は、安定性が良く、薬剤負荷が高く、バイオアベイラビリティが高いという有益な効果を持つ。
【0037】
本発明のフラボノイドポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物は、外観性状が均一な液体であり、薬剤負荷が100mg/g以上(Wフラボノイドポリフェノール系薬剤/W組成物)に達することができる。
【0038】
本発明のフラボノイドポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物は、良好な自己乳化能力を有し、10~1000倍の水を加えて希釈した後、迅速に乳化して粒径10~1000nmの乳化滴を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】試験例2における被験グループA、B、Cのラットの血漿中のバイカリン濃度-時間曲線図である。
【
図2】試験例2における被験グループA、B、Cのラットの血漿中のバイカレイン濃度-時間曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。ここで説明する具体的な実施形態は、本発明を例示的に説明するためのものに過ぎず、本発明を限定するものではないことが理解されるべきである。
【0041】
以下の実施例1~5において、高速液体クロマトグラフィー(HPLC法)を採用してフラボノイドポリフェノール系薬剤-リン脂質複合体におけるフラボノイドポリフェノール系薬剤とリン脂質との複合率を測定する。
【0042】
HPLCクロマトグラフィー条件:
カラム:Agilent ZORBAX SB C18カラム(250mm×4.6mm、5μm)、
移動相:0.05%のリン酸-メタノール(35:65、v/v)、
流速:1.0mL/min、
カラム温度:25℃(常温)、
インジェクション量:10μL
検出波長:275nm。
【0043】
測定方法:24mgのフラボノイドポリフェノール系薬剤の参照物質を精密に秤量し、10mlのメスフラスコに入れ、無水エタノールを加えて溶解させて定容し、1mlを精密に移し取って100mlのメスフラスコに入れ、無水エタノールを加えて濃度24μg/mlの溶液に希釈し、参照物質溶液とする。135mgのフラボノイドポリフェノール系薬剤-リン脂質複合体を精密に秤量し、50mlのメスフラスコに入れ、無水エタノールで溶解させて目盛りまで希釈し、振り混ぜる。1mlを精密に秤量し、25mlのメスフラスコに入れ、無水エタノールを加えて溶解させて目盛りまで希釈し、振り混ぜて供試液Aとする。135mgのフラボノイドポリフェノール系薬剤-リン脂質複合体を精密に秤量し、50mlのメスフラスコに入れ、n-ヘキサンを加えて溶解させて定容し、振り混ぜ、0.45umの有機膜で濾過する。1mlの後続の濾液(subsequent filtrate)を精密に移し取って25mlのメスフラスコに入れ、窒素パージにより溶剤を除去し、無水エタノールを加えて溶解させて目盛りまで希釈し、振り混ぜて供試液Bとする。参照液、供試液Aおよび供試液Bをそれぞれ10μl精密に秤量し、上記HPLC方法に従って測定し、クロマトグラムを記録し、ピーク面積に基づいて外部標準法でフラボノイドポリフェノール系薬剤-リン脂質複合体の含有量を計算し、それぞれW総およびW複合と記す。
【0044】
【0045】
実施例1:異なる薬剤脂質比(バイカレイン原料薬と大豆リン脂質との質量比)でバイカレイン-リン脂質複合体を調製した
【0046】
表1の薬剤脂質比でバイカレイン原料薬および大豆リン脂質を精密に秤量し、1000mlの回転蒸発瓶に入れ、適量のテトラヒドロフランを加えて混合させて振り混ぜ、バイカレイン原料薬とリン脂質とが完全に溶解して複合溶液が清澄になってから、15~30min放置し、ロータリーエバポレーターに置き、40℃で溶剤を揮散した。回転蒸発瓶内の物体が発泡してハニカム状になった後、1~2h回転蒸発し続け、調製が終了した後、乾燥ボックスに入れて3d乾燥してから、バイカレイン-リン脂質複合体固体を軽く掻き取り、乾燥ボックス内に入れて保存して使用に備えた。
【0047】
【0048】
実施例2:異なる有機溶剤でバイカレイン-リン脂質複合体を調製した
【0049】
実施例1と同じ方法を採用し、違いは以下のとおりであった。バイカレイン原料薬と大豆リン脂質との質量比(w/w)1:3.5で配合し、それぞれ酢酸エチル、メタノール、アセトン、エタノール、無水エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、エチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジオキサン、ブタノン、石油エーテル、ヘキサン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、DMSO、DMFを反応溶剤として用い、バイカレイン-リン脂質複合体を調製し、複合率を考察した。
【0050】
その結果、上記有機溶剤を反応溶剤として用いた場合、得られた全てのバイカレイン-リン脂質複合体の複合率がいずれも80%より大きいことが分かった。
【0051】
実施例3:異なるリン脂質でバイカレイン-リン脂質複合体を調製した
【0052】
実施例1と同じ方法を採用し、違いは以下のとおりであった。バイカレイン原料薬とリン脂質との質量比(w/w)1:3.5で配合し、それぞれ卵黄リン脂質、または大豆リン脂質等のような天然リン脂質、またはホスホグリセリド、スフィンゴミエリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、グリセロリン脂質酸、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、またはジミリストイルホスファチジルコリンのような合成リン脂質を脂質材料として用い、バイカレイン-リン脂質複合体を調製し、複合率をそれぞれ考察した。
【0053】
その結果、上記リン脂質で調製された全てのバイカレイン-リン脂質複合体の複合率がいずれも80%以上であることが分かった。
【0054】
実施例4:異なる源のバイカレイン原料薬でバイカレイン-リン脂質複合体を調製した
【0055】
実施例1と同じ方法を採用し、違いは以下のとおりであった。バイカレイン原料薬と大豆リン脂質との質量比(w/w)1:3.5で配合し、前記バイカレイン原料薬として、化学的に合成されたバイカレイン、または漢方薬から抽出されたバイカレイン抽出物(バイカレイン含有量≧50%)をそれぞれ用いて一連のバイカレイン-リン脂質複合体を調製した。複合率を考察した。
【0056】
該実施例で使用された合成バイカレインは、南京沢郎バイオテクノロジー有限公司から購入された。
【0057】
該実施例で使用されたバイカレイン抽出物は、以下の方法で調製された。オウゴン粉末を20メッシュの篩にかけ、5倍量の水を加え、38℃で24h酵素分解し、恒量になるまで乾燥してオウゴン酵素分解粉末を取得し、更に10倍量の異なる濃度のエタノール(10%、30%、50%、70%、100%)をそれぞれ加え、超音波出力70%で3回抽出し、毎回20minとし、濾過した。濾液を減圧蒸留して恒量になるまで乾燥し、異なる含有量のバイカレイン抽出物を取得した。
【0058】
その結果、全てのバイカレイン/リン脂質の複合率はいずれも80%以上であった。
【0059】
実施例5:異なるフラボノイドポリフェノール系薬剤-リン脂質複合体を調製した
【0060】
実施例1と同じ方法を採用し、違いは以下のとおりであった。プロアントシアニジン、ケルセチン、クルクミン、レスベラトロールのそれぞれと大豆リン脂質との質量比(w/w)1:3.5で配合し、一連のフラボノイドポリフェノール系薬剤-リン脂質複合体を調製した。その結果、薬剤複合率がいずれも90%以上であることが分かり、表2に示すとおりであった。
【0061】
【0062】
以下の実施例、比較例および試験例において、
1、得られたフラボノイドポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物の乳化粒径は、以下のような方法で測定される。
ピペットマンで200μlのフラボノイドポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物を移し取り、20mlの蒸留水(37℃の水浴、ゆっくりと撹拌する)にゆっくりと入れ、フラボノイドポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物の乳化時間を記録し、乳化後の溶液を取ってレーザー粒度計でその粒径を直接測定する。
2、得られたフラボノイドポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物の薬剤負荷は、以下のような方法で測定される。
0.5gのフラボノイドポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物を精密に秤量して10mlのメスフラスコに入れ、無水エタノールで溶解させて目盛りまで希釈し、振り混ぜる。1mlを精密に秤量し、50mlのメスフラスコに入れ、95%のエタノール(0.02%のVCを含む)を加えて溶解させて目盛りまで希釈し、振り混ぜて供試品溶液とする。また、30mgのフラボノイドポリフェノール系薬剤原料薬を精密に秤量し、25mlのメスフラスコに入れ、無水エタノールを加えて溶解させて定容し、1mlを精密に移し取って50mlのメスフラスコに入れ、95%のエタノール(0.02%のVCを含む)を加えて濃度24μg/mlの溶液に希釈し、参照物質溶液とする。供試品溶液および参照物質溶液をそれぞれ10μl精密に秤量して液体クロマトグラフに注入して分離分析を行い、カラムがAgilent ZORBAX SB C18カラム(250mm×4.6mm、5μm)であり、移動相が0.05%のリン酸-メタノール(35:65、v/v)であり、流速が1.0mL/minであり、カラム温度が25℃であり、検出波長が275nmであった。クロマトグラムを記録し、ピーク面積に基づいて外部標準法でフラボノイドポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物の薬剤負荷を計算する。
【0063】
実施例6:フラボノイドポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物に使用される油相、乳化剤、乳化助剤及び3者の割合の選別
【0064】
a、バイカレインの自己乳化組成物の予備的な調製
(1)バイカレインと大豆リン脂質との質量比(w/w)1:3.5で配合し、テトラヒドロフランを反応溶剤とし、複合反応を経た後、有機溶剤を除去し、乾燥してバイカレイン-リン脂質複合体を取得した。
(2)オレイン酸エチルを油相とし、カプリル酸カプリン酸ポリエチレングリコールグリセリル(labraosol)を乳化剤とし、transcutol HPを乳化助剤とした。2:5:3の割合で、油相、乳化剤および乳化助剤を精密に秤量して適当な容器内に入れ、均一に混合させ、ブランクの自己乳化濃縮液を取得した。
(3)適量(ブランクの自己乳化濃縮液の重量の30%)のステップ(1)のバイカレイン-リン脂質複合体を秤量し、ステップ(2)のブランクの自己乳化濃縮液に入れ、空気浴振動器に置き、温度を25℃とし、回転数を210rpmとした。バイカレイン-リン脂質複合体が完全に溶解した後、バイカレインの自己乳化組成物を取得した。
【0065】
その結果、調製されたバイカレインの自己乳化組成物が均一な溶液であり、2min以内で完全に乳化でき、且つ、粒径が10~1000nmの範囲内にあることが分かった。
【0066】
b、異なる乳化剤でバイカレインの自己乳化組成物を調製した
上記a、と同じ方法でバイカレインの自己乳化組成物を調製し、違いは以下のとおりであった。labrasolの代わりに、PEG-400、ツイーン80、ツイーン60、ツイーン20、ツイーン85、Span 80、オレイン酸ポリエチレングリコールグリセリル(labrafil(登録商標)1944cs)、リノール酸ポリエチレングリコールグリセリル(Labrafil(登録商標)M2125CS)、リン脂質、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(Triton X-100)のうちの1種、またはカプリル酸カプリン酸ポリエチレングリコールグリセリルとツイーン80との組み合わせ、またはカプリル酸カプリン酸ポリエチレングリコールグリセリルとPEG-400との組み合わせ、またはカプリル酸カプリン酸ポリエチレングリコールグリセリルとポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルとの組み合わせ、またはカプリル酸カプリン酸ポリエチレングリコールグリセリルとリン脂質との組み合わせ、またはツイーン80とPEG-400との組み合わせ、またはツイーン80とポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルとの組み合わせ、またはツイーン80とリン脂質との組み合わせを乳化剤とし、バイカレインの自己乳化組成物を調製した。
【0067】
その結果、調製されたバイカレインの自己乳化組成物が均一な溶液であり、2min以内で完全に乳化でき、且つ、粒径が10~1000nmの範囲内にあることが分かった。
【0068】
c、異なる乳化助剤でバイカレインの自己乳化組成物を調製した
上記a、と同じ方法でバイカレインの自己乳化組成物を調製し、違いは以下のとおりであった。transcutol HPの代わりに、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレンカーボネート、エチレングリコールモノエチルエーテル、グリセロールフルフラール、ジメチルイソソルビド、transcutol P、PEG400、グリセリン、labraosol、ベンジルアルコールのうちの1種、またはtranscutol HPとエタノールとの組み合わせ、またはtranscutol HPとプロピレングリコールとの組み合わせ、またはtranscutol HPとPEG400との組み合わせ、またはtranscutol HPとグリセリンとの組み合わせ、またはtranscutol HPとエチレングリコールモノエチルエーテルとの組み合わせ、またはlabraosolとエタノールとの組み合わせ、またはlabraosolとプロピレングリコールとの組み合わせ、またはlabraosolとPEG400との組み合わせ、またはlabraosolとグリセリンとの組み合わせを乳化助剤とし、ツイーン80を乳化剤とし、バイカレインの自己乳化組成物を調製した。
【0069】
その結果、調製されたバイカレインの自己乳化組成物が均一な溶液であり、2min以内で完全に乳化でき、且つ、粒径が10~1000nmの範囲内にあることが分かった。
【0070】
d、異なる油相でバイカレインの自己乳化組成物を調製した
上記と同じ方法でバイカレインの自己乳化組成物を調製し、違いは以下のとおりであった。オレイン酸エチルの代わりに、大豆油、トウモロコシ油、オリーブ油、ヤシ油、落花生油、ツバキ油、ヒマシ油、オレイン酸ソルビタン、オレイン酸グリセリル、リノール酸グリセリル、オレイン酸ポリエチレングリコールグリセリル(labrafil(登録商標)1944cs)、Maisine35-1、リノール酸エチル、C8/C10モノグリセリド、ヤシ油C8/C10ジグリセリド、ヤシ油C8/C10トリグリセリド、カプリル酸トリグリセリド、カプリル酸ジグリセリド、カプリル酸モノグリセリド、カプリン酸モノグリセリド、カプリン酸ジグリセリド、カプリン酸トリグリセリド、カプリル酸/カプリン酸モノグリセリド、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、ミリスチン酸イソプロピル、リノール酸ポリエチレングリコールグリセリル(Labrafil(登録商標)M2125CS)、Gelucire、Capryol 90のうちの1種、またはオレイン酸エチルとトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルとの組み合わせ、またはオレイン酸エチルとミリスチン酸イソプロピルとの組み合わせ、またはオレイン酸エチルと大豆油との組み合わせ、またはリノール酸ポリエチレングリコールグリセリルとリノール酸エチルとの組み合わせ、またはリノール酸ポリエチレングリコールグリセリルとオリーブ油との組み合わせ、またはリノール酸ポリエチレングリコールグリセリルとカプリル酸モノグリセリドとの組み合わせを油相とし、ツイーン80を乳化剤とし、バイカレインの自己乳化組成物を調製した。
【0071】
その結果、調製されたバイカレインの自己乳化組成物が均一な溶液であり、2min以内で完全に乳化でき、且つ、粒径が10~1000nmの範囲内にあることが分かった。
【0072】
e、油相、乳化剤、乳化助剤の異なる割合でバイカレインの自己乳化組成物を調製した
(1)バイカレインと大豆リン脂質との質量比(w/w)1:3.5で配合し、テトラヒドロフランを反応溶剤とし、複合反応を経た後、有機溶剤を除去し、乾燥してバイカレイン-リン脂質複合体を取得した。
【0073】
(2)オレイン酸エチルを油相とし、ツイーン80を乳化剤とし、transcutol HPを乳化助剤とした。3者の組成質量比の総和を100%として計算すると、油相:乳化剤:乳化助剤=10%:60%:30%、または20%:50%:30%、または20%:40%:40%の割合で、油相、乳化剤および乳化助剤を精密に秤量して適当な容器内に入れ、均一に混合させてブランクの自己乳化濃縮液を取得した。
【0074】
(3)適量(ブランクの自己乳化濃縮液重量の30%)のステップ(1)のバイカレイン-リン脂質複合体を秤量してステップ(2)のブランクの自己乳化濃縮液に入れ、且つ、空気浴振動器に置き、温度を25℃とし、回転数を210rpmとした。バイカレイン-リン脂質複合体が完全に溶解した後、バイカレインの自己乳化組成物を取得した。
【0075】
その結果、調製されたバイカレインの自己乳化組成物が均一な溶液であり、2min以内で完全に乳化でき、且つ、粒径が10~1000nmの範囲内にあることが分かった。
【0076】
実施例7:フラボノイドポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物の薬剤負荷についての考察
【0077】
(1)フラボノイドポリフェノール系薬剤(バイカレイン、プロアントシアニジン、ケルセチン、クルクミン、レスベラトロール)と大豆リン脂質との質量比(w/w)1:3.5で配合し、テトラヒドロフランを反応溶剤とし、複合反応を経た後、有機溶剤を除去し、乾燥してバイカレイン-リン脂質複合体、プロアントシアニジン-リン脂質複合体、ケルセチン-リン脂質複合体、クルクミン-リン脂質複合体、レスベラトロール-リン脂質複合体をそれぞれ調製した。
【0078】
(2)オレイン酸エチルを油相とし、labraosolを乳化剤とし、transcutol HPを乳化助剤とした。2:5:3の割合で油相、乳化剤および乳化助剤を精密に秤量して適当な容器内に入れ、均一に混合させてブランクの自己乳化濃縮液を取得した。
【0079】
(3)適量のステップ(1)のバイカレイン-リン脂質複合体、プロアントシアニジン-リン脂質複合体、ケルセチン-リン脂質複合体、クルクミン-リン脂質複合体、レスベラトロール-リン脂質複合体を秤量し、それぞれ5gの油相(オレイン酸エチル)またはステップ(2)で得られたブランクの自己乳化濃縮液に入れ、37℃に加熱し、撹拌または剪断し、各リン脂質複合体をそれぞれ十分に混合させて溶解させ、室温で24h放置し、薬剤が析出したか否かを観察し、薬剤の析出がなかった場合、適量の各リン脂質複合体をそれぞれ加え、薬剤が析出したまで同様に操作し、上清を12000r/minで20min遠心した。その後、上清を取り、前記HPLC法で上記各フラボノイドポリフェノール系薬剤-リン脂質複合体の油相およびブランクの自己乳化濃縮液における飽和溶解度を測定した。
【0080】
試験の結果により、バイカレイン-リン脂質複合体は、バイカレインの油中の飽和溶解度を0.3mg/gから60mg/g以上に増加させ、バイカレインのブランクの自己乳化濃縮液中の飽和溶解度(即ち、バイカレインの自己乳化組成物の薬剤負荷)を20mg/gから100mg/g以上に増加させることができることが分かった。
【0081】
プロアントシアニジン、ケルセチン、クルクミン、レスベラトロールのリン脂質複合体は、それぞれの原料薬の油中の飽和溶解度が60mg/g以上に達し、ブランクの自己乳化濃縮液中の飽和溶解度が100mg/g以上に達することが分かった。
【0082】
以上の試験により、本発明のフラボノイドポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物の薬剤負荷が高いことが分かった。
【0083】
実施例8:バイカレイン-リン脂質複合体を中間体として異なる油相でバイカレインの自己乳化組成物を調製した
【0084】
(1)バイカレインと大豆リン脂質との質量比(w/w)1:3.5で配合し、テトラヒドロフランを反応溶剤とし、複合反応を経た後、有機溶剤を除去し、乾燥してバイカレイン-リン脂質複合体を取得した。
【0085】
(2)labrosolを乳化剤とし、transcutol HPを乳化助剤とし、以下の表3に示す異なる油相を用い、2:5:3の割合で油相、乳化剤および乳化助剤を精密に秤量して適当な容器内に入れ、均一に混合させてブランクの自己乳化濃縮液を取得した。
【0086】
(3)適量のステップ(1)のバイカレイン-リン脂質複合体(薬剤負荷50mg/gで配合した)を秤量してステップ(2)のブランクの自己乳化濃縮液に入れ、且つ、空気浴振動器に置き、温度を25℃とし、回転数を210rpmとした。バイカレイン-リン脂質複合体が完全に溶解した後、バイカレインの自己乳化組成物を取得するとともに、その薬剤負荷および乳化粒径を測定し、結果を表3に示した。
【0087】
【0088】
実施例9:バイカレイン-リン脂質複合体を中間体として異なる乳化剤でバイカレインの自己乳化組成物を調製した
【0089】
(1)バイカレインと大豆リン脂質との質量比(w/w)1:3.5で配合し、テトラヒドロフランを反応溶剤とし、複合反応を経た後、有機溶剤を除去し、乾燥してバイカレイン-リン脂質複合体を取得した。
【0090】
(2)オレイン酸エチルを油相とし、transcutol HPを乳化助剤とし、以下の表4に示す異なる乳化剤を用い、2:5:3の割合で油相、乳化剤および乳化助剤を精密に秤量して適当な容器内に入れ、均一に混合させてブランクの自己乳化濃縮液を取得した。
【0091】
(3)適量(薬剤負荷50mg/gで配合した)のステップ(1)のバイカレイン-リン脂質複合体を秤量してステップ(2)のブランクの自己乳化濃縮液に入れ、且つ、空気浴振動器に置き、温度を25℃とし、回転数を210rpmとした。バイカレイン-リン脂質複合体が完全に溶解した後、バイカレインの自己乳化組成物を取得するとともに、その薬剤負荷および乳化粒径を測定し、結果を表4に示した。
【0092】
【0093】
実施例10:バイカレイン-リン脂質複合体を中間体として異なる乳化助剤でバイカレインの自己乳化組成物を調製した
【0094】
(1)バイカレインと大豆リン脂質との質量比(w/w)1:3.5で配合し、テトラヒドロフランを反応溶剤とし、複合反応を経た後、有機溶剤を除去し、乾燥してバイカレイン-リン脂質複合体を取得した。
【0095】
(2)オレイン酸エチルを油相とし、labrosolを乳化剤とし、以下の表5に示す異なる乳化助剤を用い、2:5:3の割合で油相、乳化剤および乳化助剤を精密に秤量して適当な容器内に入れ、均一に混合させてブランクの自己乳化濃縮液を取得した。
【0096】
(3)適量(薬剤負荷50mg/gで配合した)のステップ(1)のバイカレイン-リン脂質複合体を秤量してステップ(2)のブランクの自己乳化濃縮液に入れ、且つ、空気浴振動器に置き、温度を25℃とし、回転数を210rpmとした。バイカレイン-リン脂質複合体が完全に溶解した後、バイカレインの自己乳化組成物を取得するとともに、その薬剤負荷および乳化粒径を測定し、結果を表5に示した。
【0097】
【0098】
実施例11:バイカレイン-リン脂質複合体を中間体として油相:乳化剤:乳化助剤の異なる割合でバイカレインの自己乳化組成物を調製した
【0099】
(1)バイカレインと大豆リン脂質との質量比(w/w)1:3.5で配合し、テトラヒドロフランを反応溶剤とし、複合反応を経た後、有機溶剤を除去し、乾燥してバイカレイン-リン脂質複合体を取得した。
【0100】
(2)オレイン酸エチルを油相とし、labrosolを乳化剤とし、transcutol HPを乳化助剤とし、以下の表6に示す油相:乳化剤:乳化助剤の異なる割合で、油相、乳化剤および乳化助剤を精密に秤量して適当な容器内に入れ、均一に混合させてブランクの自己乳化濃縮液を取得した。
【0101】
(3)適量(薬剤負荷50mg/gで配合した)のステップ(1)のバイカレイン-リン脂質複合体を秤量してステップ(2)のブランクの自己乳化濃縮液に入れ、且つ、空気浴振動器に置き、温度を25℃とし、回転数を210rpmとした。バイカレイン-リン脂質複合体が完全に溶解した後、バイカレインの自己乳化組成物を取得するとともに、その薬剤負荷および乳化粒径を測定し、結果を表6に示した。
【0102】
【0103】
実施例12:バイカレイン-リン脂質複合体を中間体として異なる薬剤負荷のバイカレインの自己乳化組成物を調製した
【0104】
(1)バイカレインと大豆リン脂質との質量比(w/w)1:3.5で配合し、テトラヒドロフランを反応溶剤とし、複合反応を経た後、有機溶剤を除去し、乾燥してバイカレイン-リン脂質複合体を取得した。
【0105】
(2)オレイン酸エチルを油相とし、labrosolを乳化剤とし、transcutol HPを乳化助剤とし、2:5:3の割合で、油相、乳化剤および乳化助剤を精密に秤量して適当な容器内に入れ、均一に混合させてブランクの自己乳化濃縮液を取得した。
【0106】
(3)異なる質量のステップ(1)のバイカレイン-リン脂質複合体を秤量してステップ(2)のブランクの自己乳化濃縮液に入れ、且つ、空気浴振動器に置き、温度を25℃とし、回転数を210rpmとした。バイカレイン-リン脂質複合体が完全に溶解した後、異なる薬剤負荷のバイカレインの自己乳化組成物を取得するとともに、その薬剤負荷および乳化粒径を測定し、結果を表7に示した。
【0107】
【0108】
実施例13:異なる薬剤脂質比のバイカレイン-リン脂質複合体を中間体としてバイカレインの自己乳化組成物を調製した
【0109】
(1)オレイン酸エチルを油相とし、labrosolを乳化剤とし、transcutol HPを乳化助剤とし、2:5:3の割合で、油相、乳化剤および乳化助剤を精密に秤量して適当な容器内に入れ、均一に混合させてブランクの自己乳化濃縮液を取得した。
【0110】
(2)実施例1で得られた一連のバイカレイン-リン脂質複合体(薬剤負荷100mg/gで配合した)を秤量してステップ(1)のブランクの自己乳化濃縮液に入れ、且つ、空気浴振動器に置き、温度を25℃とし、回転数を210rpmとした。バイカレイン-リン脂質複合体が完全に溶解した後、バイカレインの自己乳化組成物を取得するとともに、その薬剤負荷および乳化粒径を測定し、結果を表8に示した。
【0111】
【0112】
実施例14:異なるフラボノイドポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物を調製した
【0113】
(1)オレイン酸エチルを油相とし、labrosolを乳化剤とし、transcutol HPを乳化助剤とし、2:5:3の割合で、油相、乳化剤および乳化助剤を精密に秤量して適当な容器内に入れ、均一に混合させてブランクの自己乳化濃縮液を取得した。
【0114】
(2)表2における一連のフラボノイドポリフェノール系薬剤-リン脂質複合体(組成物SEDDS-31、SEDDS-32、SEDDS-33、SEDDS-34を調製し、リン脂質複合体を薬剤負荷20mg/gで配合し、組成物SEDDS-35、SEDDS-36、SEDDS-37、SEDDS-38を調製し、リン脂質複合体を薬剤負荷100mg/gで配合した)を秤量してステップ(1)のブランクの自己乳化濃縮液に入れ、且つ、空気浴振動器に置き、温度を25℃とし、回転数を210rpmとした。フラボノイドポリフェノール系薬剤-リン脂質複合体が完全に溶解した後、フラボノイドポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物を取得するとともに、その薬剤負荷および乳化粒径を測定し、異なる薬剤負荷および異なる粒径のフラボノイドポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物を取得し、結果を表9に示した。
【0115】
【0116】
実施例6~実施例14の結果から分かるように、本発明のフラボノイドポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物はいずれも迅速に乳化してナノスケールの乳化滴を形成することができる。実施例7~実施例12では、異なる薬剤負荷のフラボノイドポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物を調製し、必要に応じて、本発明のフラボノイドポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物の薬剤負荷は100mg/g以上に達する。
【0117】
試験例1:本発明のバイカレインの自己乳化組成物、文献2~7のフラボノイドポリフェノール系自己マイクロエマルジョン、および比較例1の自己乳化組成物の物理安定性についての考察
【0118】
(1)比較例1:バイカレイン原料薬が担持されたバイカレインの自己乳化組成物の調製
【0119】
オレイン酸エチルを油相とし、ツイーン80を乳化剤とし、transcutol HPを乳化助剤とした。2:5:3の割合で、油相、乳化剤および乳化助剤を精密に秤量して適当な容器内に入れ、均一に混合させてブランクの自己乳化濃縮液を取得し、更にバイカレイン原料薬を秤量してブランクの自己乳化濃縮液に入れ、且つ、空気浴振動器に置き、温度を25℃とし、回転数を210rpmとし、24h振とうし、12000rpmで15min遠心し、上清を取ると、前記バイカレイン原料薬が担持されたバイカレインの自己乳化組成物を調製した。
【0120】
(2)比較例2:シリマリンリン脂質複合体の自己乳化組成物の調製
【0121】
文献『劉琳▲ショウ▼.シリマリンおよびそのリン脂質複合体の自己マイクロエマルジョン化カプセルの研究.[D].瀋陽、瀋陽薬科大学、2007』の方法に従い、アセトンを反応溶剤とし、シリマリンと大豆リン脂質との質量比が1:1であり、55℃にて加熱還流し、減圧下で液体体積に濃縮した後、迅速にn-ヘキサンに入れ、黄色の沈殿物を取得し、上層の液体が黄白色のエマルジョンであり、減圧下で濾過し、n-ヘキサンで沈殿を洗浄し、真空乾燥ボックスに置いて室温で乾燥し、黄白色の固体生成物であるシリマリンリン脂質複合体を取得した。70gのシリマリンリン脂質複合体を秤量し、250gのオレイン酸エチルとMCTとの混合物(1:1)を加え、旋回混合させて溶解させ、200gのCremophor ELおよび50gのTranscutolを加え、37℃の水浴で緩撹拌すると取得できた。
【0122】
(3)文献2~7に記載の処方および調製方法(本願の背景技術に記載されているように)に従い、プロアントシアニジン自己マイクロエマルジョンYZ-1、ケルセチン自己マイクロエマルジョンYZ-2、クルクミン自己マイクロエマルジョンYZ-3、レスベラトロール自己マイクロエマルジョンYZ-4、バイカレイン自己マイクロエマルジョンYZ-5、およびバイカレイン自己マイクロエマルジョンYZ-6をそれぞれ調製した。
【0123】
(4)YZ-1、YZ-2、YZ-3、YZ-4、YZ-5、YZ-6、比較例1の自己乳化組成物、比較例2のシリマリン自己乳化組成物、本発明に係る実施例で調製されたバイカレインの自己乳化組成物、プロアントシアニジン自己乳化組成物、ケルセチン自己乳化組成物、クルクミン自己乳化組成物、およびレスベラトロール自己乳化組成物を、4℃および室温でそれぞれ5日、1ヶ月および2ヶ月放置し、外観性状の変化を観察し、物理安定性を考察し、関連結果を表10に示した。
【0124】
【0125】
その結果、文献2~7、比較例1および比較例2で調製された一連のフラボノイドポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物は、4℃で放置した後、半固体を形成したり析出したりしやすく、室温で1~2ヶ月放置すると、薬剤析出が発生し、安定性が悪いことが分かった。
【0126】
本発明のフラボノイドポリフェノール系薬剤-リン脂質複合体を担体とするフラボノイドポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物は、4℃および室温で2ヶ月放置した後、外観性状が依然として清澄で透明であり、安定性が高かった。
【0127】
試験例2:血漿薬物動態学の研究
【0128】
(1)バイカレイン-リン脂質複合体を中間体とするバイカレインの自己乳化組成物を調製した
【0129】
1)バイカレインと大豆リン脂質との質量比(w/w)1:3.5で配合し、テトラヒドロフランを反応溶剤とし、複合反応を経た後、有機溶剤を除去し、乾燥してバイカレイン-リン脂質複合体を取得した。2)オレイン酸エチルを油相とし、ツイーン80を乳化剤とし、transcutol HPを乳化助剤とし、2:5:3の割合で、油相、乳化剤および乳化助剤を精密に秤量して適当な容器内に入れ、均一に混合させてブランクの自己乳化濃縮液を取得した。3)適量のステップ1)のバイカレイン-リン脂質複合体を秤量してステップ2)のブランクの自己乳化濃縮液に入れ、且つ、空気浴振動器に置き、温度を25℃とし、回転数を210rpmとした。バイカレイン-リン脂質複合体が完全に溶解した後、バイカレインの自己乳化組成物を取得した。該組成物を100倍の水で希釈した後、1min以内で完全に乳化し、その粒径が10nmであり、薬剤負荷が20mg/gであると測定した。
【0130】
(2)試験のグループ分け
【0131】
被験グループA:上記(1)で調製された本発明のバイカレイン-リン脂質複合体を中間体とするバイカレインの自己乳化組成物(以下、BAPC-SMEDDSと記す)を投与した
【0132】
被験グループB:比較例1におけるバイカレイン原料薬が担持されたバイカレインの自己乳化組成物(以下、OBA-SMEDDSと記す)を投与した
【0133】
被験グループC:バイカレイン原料薬(以下、BAと記す)を投与した
【0134】
(3)試験動物
Sprague-Dawleyラット、オス、200g。試験前に、ラットを1週間飼育し、試験前の夜に絶食させ、断水せず、実験中に自由飲水させた。
【0135】
(4)投与形態および投与量
15匹のラットを、ランダムに3グループ(それぞれ被験グループA、被験グループB、被験グループC)に分け、グループ毎に5匹とした。40mg/kgの投与量で強制経口投与(2~3ml)し、それぞれ投与してからの5、15、30、45、60、75minおよび3、6、8、10、12、24h後に眼窩後静脈叢から0.3mL採血し、予めヘパリンされた1.5mLのコニカル遠心チューブに入れ、4000r/minで15min遠心し、上層の血漿を吸い取り、-80℃の冷蔵庫に置いて保存し、測定前に常温で放置して解凍した。
【0136】
(5)血中濃度の測定
血漿サンプルの処理:100μLの血漿を取り、1.5mLのコニカル遠心チューブに入れ、10μLのアスコルビン酸(200mg/mL)、20μLの内部標準溶液(500ng/ml)を加え、また、300μLのメタノールを加え、60s旋回混合させ、12000r/minで10min遠心した後、上清を吸い出し、遠心管に入れ、遠心して濃縮し、溶剤を揮散し(40℃)、また、200μLのメタノール:水(80:20)を加えて溶解させ、30s旋回した後、12000r/minで5min遠心し、20μLの上清を取ってインジェクションし、所定の下記クロマトグラフィー条件で血中濃度(液相クロマトグラフィー-質量分析)を測定した。
【0137】
HPLCクロマトグラフィー条件は以下のとおりであった。
カラム:Agilent ZORBAX SB C18カラム(250mm×4.6mm、5μm)
流速:1.0mL/min
インジェクションボリューム:20μL
カラム温度:25℃
移動相(グラジエント溶出は表11を参照する):溶出剤がアセトニトリル-0.1%のギ酸であった。
【0138】
【0139】
質量分析条件は以下のとおりであった。
イオン源:エレクトロスプレイイオン源(ESI)であり、正イオン方式で検出し、多イオン反応モニタリングモード(MRM)であった。
他のパラメータ:ネブライザキットの圧力が40psiであり、乾燥ガスの流速が9L/minであり、乾燥ガスの温度が350℃であり、キャピラリ電圧が4000Vであり、分流比が1:2であった。
定量用のMRM検出イオン対:
バイカリン[M+H]+447.0→271.1
バイカレイン[M+H]+271.1→122.8
6-ヒドロキシ黄銅[M+H]+239.0→137.0
【0140】
(6)試験結果
6.1バイカレインを体内に経口投与した後、腸管上皮細胞および肝臓組織で速やかにバイカリンに代謝され、血漿中のバイカリン濃度-時間曲線および関連する薬物動態パラメータは、
図1および表12に示すとおりであった。
【0141】
その結果、本発明のバイカレイン-リン脂質複合体を中間体とするバイカレインの自己乳化組成物のCmaxは、バイカレイン原料薬およびバイカレイン原料薬が担持されたバイカレインの自己乳化組成物と比べ、それぞれ7.7倍および1.9倍上昇し、AUC(0-t)は、それぞれ4.5倍および1.3倍上昇したことが分かった。血漿中のバイカリン濃度で計算されたBAPC-SMEDDSおよびOBA-SMEDDS(バイカレイン原料薬に対して)の相対的なバイオアベイラビリティは、それぞれ448.7%および342.5%であった。
【0142】
【0143】
6.2血漿中のバイカレイン濃度-時間曲線および関連する薬物動態パラメータは、
図2および表13に示すように、本発明のバイカレイン-リン脂質複合体を中間体とするバイカレインの自己乳化組成物のCmaxは、バイカレイン原料薬およびバイカレイン原料薬が担持されたバイカレインの自己乳化組成物と比べ、それぞれ4.6倍および1.9倍上昇し、AUC(0-t)は、それぞれ3.7倍および1.2倍上昇した。血漿中のバイカレイン濃度で計算されたBAPC-SMEDDSおよびOBA-SMEDDS(バイカレイン原料薬に対して)の相対的なバイオアベイラビリティは、それぞれ374.4%および302.3%であった。
【0144】
【手続補正書】
【提出日】2022-06-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフェノール系薬剤-リン脂質複合体、油相、乳化剤および乳化助剤を含み、前
記ポリフェノール系薬剤は、バイカレイ
ンであり、
前記ポリフェノール系薬剤-リン脂質複合体において、ポリフェノール系薬剤とリン脂質との質量比は1:1~1:8であり、
前記油相は、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルから選ばれる1種または複数種であり、
前記乳化剤は、カプリル酸カプリン酸ポリエチレングリコールグリセリル、ツイーン80、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルから選ばれる1種または複数種であり、
前記乳化助剤は、モノカプリル酸プロピレングリコールおよび/またはジエチレングリコールモノエチルエーテルから選ばれ、
油相と乳化剤と乳化助剤との3者の総質量比を100%として計算すると、油相は20%~40%であり、乳化剤は40%~60%であり、乳化助剤は30%~50%である、ことを特徴とするポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物。
【請求項2】
前記油相は、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルから選ばれる1種または複数種である、ことを特徴とする請求項1に記載のポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物。
【請求項3】
前記ポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物の薬剤負荷は10~110mg/gで
ある、ことを特徴とする請求項1または2に記載のポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物。
【請求項4】
前記ポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物の薬剤負荷は10~100mg/gである、ことを特徴とする請求項3に記載のポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物。
【請求項5】
前記ポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物の粒径は10~1000nmである、ことを特徴とする
請求項1または2に記載のポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物。
【請求項6】
前記リン脂質は、天然リン脂質、合成リン脂質材料から選ばれる1種または複数種であり、
前記天然リン脂質は、大豆リン脂質および卵黄リン脂質から選ばれる1種または複数種を含み、
前記合成リン脂質は、ホスホグリセリド、スフィンゴミエリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、グリセロリン脂質酸、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルコリンから選ばれる1種または複数種を
含む、ことを特徴とする請求項1または2に記載のポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物。
【請求項7】
前記合成リン脂質は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、グリセロリン脂質酸から選ばれる1種または複数種であ
る、ことを特徴とする請求項
6に記載
のポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物。
【請求項8】
(1
)ポリフェノール系薬剤-リン脂質複合体の調製
:ポリフェノール系薬剤およびリン脂質を有機溶剤に溶解させ、複合反応を経た後、有機溶剤を除去し、乾燥して取得す
るステップと、
(2
)ポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物の調製:ステップ(1)で得られ
たポリフェノール系薬剤-リン脂質複合体と、油相、乳化剤および乳化助剤とを任意の順序で十分に混合させ
るステップと、
を含む、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載
のポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物の調製方法。
【請求項9】
ステップ(1)において、前記有機溶剤は、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、メタノール、アセトン、エタノール、無水エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、エチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジオキサン、ブタノン、石油エーテル、ヘキサン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、DMSO、DMFから選ばれる1種または複数種である、ことを特徴とする請求項8に記載の調製方法。
【請求項10】
ステップ(1)において、前記有機溶剤は、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、シクロヘキサン、DMSO、DMFのうちの1種または複数種である、ことを特徴とする請求項9に記載の調製方法。
【請求項11】
ステップ(2)において、ステップ(1)で得られたポリフェノール系薬剤-リン脂質複合体と、油相、乳化剤および乳化助剤とを直接十分に混合させる、ことを特徴とする請求項8に記載の調製方法。
【請求項12】
まず、油相、乳化剤および乳化助剤を均一に混合させてブランクの自己乳化濃縮液を調製し、その後、ステップ(1)で得られたポリフェノール系薬剤-リン脂質複合体を調製されたブランクの自己乳化濃縮液に加え、十分に混合させる、ことを特徴とする請求項8に記載の調製方法。
【請求項13】
ステップ(1)で得られたポリフェノール系薬剤-リン脂質複合体を、油相、乳化剤、または乳化助剤のうちのいずれかに溶解してから、別の2種の成分を加えて十分に混合させる、ことを特徴とする請求項8に記載の調製方法。
【請求項14】
請求項1~7のいずれか1項に記載
のポリフェノール系薬剤の自己乳化組成物と、任意に医薬的に許容される補助材料とを
含む、ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項15】
前記医薬組成物の剤形は、経口製剤、注射製剤、経皮投与製剤、粘膜投与製剤、経肺吸入投与製剤、または腸管投与製剤を
含む、ことを特徴とする請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記医薬組成物の剤形は、点滴剤、オーラル液体、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、練薬、フィルム剤、ゲル剤、散剤、乳剤、滴下ピル、坐剤、エアゾール剤、スプレー剤、粉末エアゾール剤、貼付剤、接着プラスター、液剤、軟膏剤、またはクリーム剤を含む、ことを特徴とする
請求項14に記載の医薬組成物。
【国際調査報告】