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特表2022-530753シリコーンゴム組成物及びエラストマー材料用のプライマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-01
(54)【発明の名称】シリコーンゴム組成物及びエラストマー材料用のプライマー
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/12 20060101AFI20220624BHJP
   C08L 83/07 20060101ALI20220624BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20220624BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
C08L83/12
C08L83/07
C08L83/05
C08K3/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560900
(86)(22)【出願日】2020-04-28
(85)【翻訳文提出日】2021-10-13
(86)【国際出願番号】 US2020030179
(87)【国際公開番号】W WO2020223182
(87)【国際公開日】2020-11-05
(31)【優先権主張番号】62/839,838
(32)【優先日】2019-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴァネセク、ロマン
(72)【発明者】
【氏名】バイエル、パトリック
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CP04Y
4J002CP14X
4J002CP18W
4J002DJ016
4J002FD016
4J002GB00
4J002GM00
4J002GQ00
(57)【要約】
【解決手段】 シリコーンポリエーテル、補強性充填剤、1つ以上のポリジオルガノシロキサンポリマー、及び担体を含む、プライマー組成物、並びにその調製と使用を記載する。プライマー組成物は、特に付加(ヒドロシリル化)硬化シリコーンエラストマーであるシリコーンエラストマーとの使用、その調製、及びシリコーンエラストマー組成物の事前硬化させたシリコーンエラストマー材料基材への接着を改善するプロセスのために特に設計されている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)シリコーンポリエーテル、
B)補強性充填剤、
C)25℃で1000~500,000mPa・sの粘度を有し、1分子中に少なくとも1つのアルケニル基又はアルキル基を含有する1つ以上のポリジオルガノシロキサンポリマー、及び
D)担体、
を含む、プライマー組成物。
【請求項2】
成分(A)が、ABA又はAB型シリコーンポリエーテルを含む、請求項1に記載のプライマー組成物。
【請求項3】
成分(A)が、式
H-(O(CH-O-(CH-Si(CH-O[Si(CH-O]-Si(CH-(CH-O-((CH-O)H[式中、d及びeが整数である]
のABA型シリコーンポリエーテルである、請求項1又は2に記載のプライマー組成物。
【請求項4】
成分(B)が、微粉化ヒュームドシリカ及び/又は微粉化沈降性シリカ及び/又はシリコーン樹脂などである、請求項1~3のいずれか一項に記載のプライマー組成物。
【請求項5】
成分(C)が、ジメチルビニル末端ポリジメチルシロキサンである、請求項1~4のいずれか一項に記載のプライマー組成物。
【請求項6】
成分(D)が、3~20個のケイ素原子を含有する短鎖シロキサンである、請求項1~5のいずれか一項に記載のプライマー組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のプライマー組成物であって、
A)前記組成物の固形分含有量の0.05wt%~10wt%の量のシリコーンポリエーテル、
B)前記組成物の固形分含有量の5.0~40wt%の量の補強性充填剤、及び、
C)前記組成物の固形分含有量の40~90wt%の量の25℃で1000~500,000mPa・sの粘度を有し、1分子中に少なくとも1つのアルケニル基又はアルキニル基を含有する1つ以上のポリジオルガノシロキサンポリマー、を含み、前記組成物の固形分含有量は、担体(D)を除いた前記組成物の含有量であり、
担体(D)は、前記組成物の固形分含有量100重量部当たり、20~150重量部、あるいは70~150重量部の量である、プライマー組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のプライマー組成物であって、
A)全組成物の0.05wt%~4wt%の量のシリコーンポリエーテル、
B)全組成物の2.0~20wt%の量の補強性充填剤、
C)全組成物の15~45wt%の量の25℃で1000~500,000mPa・sの粘度を有し、1分子中に少なくとも1つのアルケニル基又はアルキニル基を含有する1つ以上のポリジオルガノシロキサンポリマー、及び、
D)全組成物の50wt%~80wt%の範囲の担体、を含む、プライマー組成物。
【請求項9】
担体(D)中に成分(A)、(B)、及び(C)を均一に溶解又は混合することを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のプライマー組成物の調製方法。
【請求項10】
前記プライマー組成物が、一緒に混合された後、更なる担体で希釈される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
事前硬化させたシリコーンエラストマー基材へのシリコーンエラストマーの接着を改善する方法であって、請求項1~8のいずれか一項に記載のプライマー組成物をシリコーンエラストマー基材に適用し、任意で前記プライマー組成物を風乾又はベーキングして、前記基材を被覆する均一なプライマーフィルムを形成し、前記プライマーで被覆された前記基材にヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物を適用して複合体を得て、前記複合体を硬化させて、シリコーンエラストマー基材に接着結合したシリコーンエラストマーを得るようにすることを含む、方法。
【請求項12】
前記基材が、過酸化物硬化させたシリコーンエラストマー組成物及び/又はヒドロシリル化硬化性の硬化させたシリコーンエラストマー組成物から調製される、請求項11に記載の事前硬化させたシリコーンエラストマー基材へのシリコーンエラストマーの接着を改善する方法。
【請求項13】
前記ヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物を、射出成形、現場打ちプロセス、封入成形、プレス成形、ディスペンサー成形、押出成形、トランスファー成形、プレス加硫、遠心鋳造、カレンダー加工、ビーズ塗布、3Dプリンティング、又はブロー成形によって前記プライマー処理された基材上に適用する、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記ヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物が、海中断熱材を適用するための現場打ちプロセスを使用して、前記プライマー処理された基材上に適用される、請求項11、12又は13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~8に記載のプライマーを用いて、一緒に接着又はオーバーモールドされた複数のシリコーンエラストマー物品であるシリコーンエラストマー複合体。
【請求項16】
前記複合体が、海中断熱、高電圧下の電気絶縁、3Dプリンティング、レンズ、自動車用途及び/又は消費者用途に使用される、請求項15に記載のシリコーンエラストマー複合体。
【請求項17】
前記複合体が海中断熱複合体である、請求項15又は16に記載のシリコーンゴム複合体。
【請求項18】
前記海中断熱複合体が、配管坑口、クリスマスツリー、スプールピース、マニホールド、ライザー、パイプライン、ジャンパー、PLET、PLEM、カップリングカバー、ドッグハウス及び/又はパイプフィールドジョイントのうちの1つ以上の断熱に使用される、請求項17に記載のシリコーンゴム複合体。
【請求項19】
シリコーンシール又はガスケットを備えたハウジング、プラグ及びコネクタ、様々なセンサの部品、膜、ダイアフラム、気候調節通気部品、マスク、ゴーグル、チュービング及びバルブカテーテル、オストミー用器具、呼吸用器具、栄養補給器具、コンタクトレンズ、補聴器、矯正具、プロテーゼ、シャワーヘッド、ベーカリーウェア、スパチュラ、家電製品、靴、フットウェア、スポーツ及びレジャー用物品、ダイビング用マスク、フェイスマスク、おしゃぶり、白物家電のシール及び表面、携帯電話のカバーシール、携帯電話の付属品、精密電子機器、電気スイッチ及びスイッチカバー、腕時計及びリストバンド及び/又はウェアラブル電子デバイスの接着に適した、請求項15又は16に記載のシリコーンゴム複合体。
【請求項20】
海中断熱、シリコーンシール又はガスケットを備えたハウジング、プラグ及びコネクタ、様々なセンサの部品、膜、ダイアフラム、気候調節通気部品、マスク、ゴーグル、チュービング及びバルブカテーテル、オストミー用器具、呼吸用器具、栄養補給器具、コンタクトレンズ、補聴器、矯正具、プロテーゼ、シャワーヘッド、ベーカリーウェア、スパチュラ、家電製品、靴、フットウェア、スポーツ及びレジャー用物品、ダイビング用マスク、フェイスマスク、おしゃぶり、白物家電のシール及び表面、携帯電話のカバーシール、携帯電話の付属品、精密電子機器、電気スイッチ及びスイッチカバー、腕時計及びリストバンド及び/又はウェアラブル電子デバイスの接着に選択される、あるいはそれらのために選択される複合体の製造における、請求項1~8に記載のプライマー組成物の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プライマー組成物及びその調製と使用を特定する。プライマー組成物は、シリコーンエラストマー(しばしば「シリコーンゴム」と呼ばれる)、特に付加(ヒドロシリル化)硬化シリコーンエラストマーと共に使用するために、その調製、及びシリコーンエラストマー組成物の事前硬化させたシリコーンエラストマー材料基材への接着を改善するプロセスのために特に設計されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
シリコーンエラストマーは、多くの用途においてそれらを他のエラストマーより好ましいものにする特性、例えば、広い温度範囲にわたる熱安定性などを有する。シリコーンエラストマー/シリコーンエラストマーのオーバーモールドが望まれるいくつかの用途、例えば、海中断熱、高電圧下の電気絶縁、3Dプリンティング、レンズ及び消費者用途では、事前形成されたシリコーンエラストマー材料と未硬化のシリコーンエラストマー組成物との間にそれらが硬化するときに強力な結合を生じさせる必要がある。シリコーンエラストマー基材への適切な結合が直接得られない場合、好適なプライマーで基材表面を前処理することにより結合強度を改善することができる。
【0003】
例えば、海中の石油及びガスの生産設備の断熱に、シリコーンエラストマー断熱材料が使用されている。例えば、海中の油井及びガス井が1500m以上の深さに位置するような海中の多くの場所では、パイプライン及び坑口装置は、氷点よりもわずか数度高いだけ(例えば、約4~5℃)の海水に曝される。断熱されていない場合、高温下で生成された生産設備内の炭化水素流体は周囲の海水によって冷却され、流体の温度が海水の温度に近づくと、それにより、パイプライン中に水和物及びパラフィンワックスが形成され、そのため炭化水素の流れが制限され、更にはパイプライン内の閉塞を引き起こす。
【0004】
この環境下で良好に作動するためには、断熱材は、低い熱伝導率を有し、可撓性及び耐衝撃性などの許容可能な機械的特性を示し、設置が経済的でなければならず、好ましくは高温の水性環境に耐性でなければならない。
【0005】
25℃で最大約500,000mPa・sの粘度を有するオルガノポリシロキサンポリマーを用いて作製された液状シリコーンゴム(LSR)系材料が海中での断熱のために利用されてきたが、その物理的特性に明らかな影響を受けずに広い温度変動に耐える能力を有し、長期間にわたる紫外線、また、オゾン、油、塩、水などによっても実質的に影響を受けないという上記に勝る利点を有する。
【0006】
更に、事前硬化させたLSR組成物の粘度が比較的低いことから、パイプ、坑口及びクリスマスツリーなどの海中設備の周囲に組成物を適用することは困難であり、LSR断熱材料は、連続成形(現場打ち)プロセスを用いて、断熱の目的のために海中設備の物品に適用される。このようなプロセスでは、物品の周囲の断熱体の第1セクションの位置に金型/枠を配置し、次いで液体シリコーンゴムをポンプ注入して、所定の硬度に硬化させ、そして金型/枠を除去する。その後、このプロセスを第2セクションで繰り返し、したがって、海中設備の物品の全ての断熱を完了するために必要な多くのセクションで繰り返す。しかしながら、このような連続的なプロセスは、隣接するLSR/LSR(シリコーンエラストマー/シリコーンエラストマー)の界面を有する多くの接合部を生じる。
【0007】
概ね、このような断熱用途に使用されるLSRには過剰なケイ素結合水素基(Si-H基)が含まれて、硬化後に十分な割合の未反応のSi-H基が第1セクションの硬化界面で利用可能であり、続いて硬化させる第2セクションの界面の不飽和基と相互作用して2つのセクションが界面で所望の架橋密度に完全に硬化することから、このような界面は海中および上記の他のすべての用途の両方において互いに接着すると期待される。同じことを第2セクションの硬化させた境界面と未硬化の第3セクションとの間で繰り返し、海中の物品が完全に断熱され、隣接するセクションがマトリックス全体に沿った凝集破壊事象に対して十分に強く互いに接着するまで、後続のセクション毎に所定の位置で順に硬化させる。
【0008】
しかしながら、シリコーンゴム断熱体は優れた断熱特性を提供するが、隣接するセクションの隣接する境界面の間の接着/結合は、特に、極端な温度及び環境条件に耐えることを考えると、目的のためには不十分である場合が多いことが認められている。
【0009】
液体シリコーンゴムを基材に接着するために、これまでに様々なプライマーが提案されてきた。プライマーの効率は、基材と基材に接着する組成物の化学的性質及び表面特性の両方、すなわち、隣接する断熱材セクションの隣接する界面の性質、接着するシリコーンゴムの架橋系及び粘度に依存する。様々なプライマーが提案されてきたが、大部分は、テトラアルコキシシラン、エポキシトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、及び/又はメタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどの有機官能性アルコキシシラン、又はそのような有機官能性アルコキシシランの部分加水分解生成物、SiH官能性中間体、金属アルコキシド、及び/又は、例えばしばしば適切な溶媒と一緒にされたチタン酸エステルなどの金属キレートの2つ以上の組み合わせである。これらは、使用直前に一緒に混合される一部型又は複数部型組成物として提供される。
【0010】
例としては、
(i)チタンアルコキシドとアルキルポリシリケート又はその部分加水分解生成物、
(ii)テトラアルキルチタネート、少なくとも1つのオルトケイ酸アルキル及び炭化水素溶媒、
(iii)テトラアルキルチタネート、例えばオルトケイ酸テトラエチルなどのオルガニルオキシシラン、及び有機溶媒、
(iv)例えばメタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなどのアミノ官能基又はアミド官能基を含有しないシラン、金属エステル、好ましくは無機酸、及び有機溶媒、
(v)テトラアルコキシシラン、及び/又はその部分加水分解生成物、金属塩、アルコキシド、又はキレート、及び/又はその部分加水分解生成物、シリコーン樹脂、及び溶媒が挙げられる。
【0011】
海中断熱システムを記載した国際公開第2018/234783号では、2つの異なるプライマーが利用された。このシステムでは、基材、例えば金属パイプの周囲にシリコーンエラストマー断熱体の二重層が設けられた。シリコーンエラストマーの金属基材への接着には第1プライマーが使用され、一方、シリコーンゴムの基層上にシリコーンゴムの第2層をオーバーモールドして接着させるためには第2プライマーが利用された。説明ではプライマーが同じであってもよいとしているが、実施例ではそれらは異なり、シリコーンエラストマー/シリコーンエラストマーの界面のプライマーは、
a)3~15個のケイ素原子、あるいは3~10個のケイ素原子を有する直鎖ポリジアルキルシロキサン、
b)RSi-(OR4-n[式中、nが0、1又は2であり、好ましくはnが0又は1であり、Rがヒドロカルビル基などの非加水分解性のケイ素結合有機基であり、各Rが同じであってもよく異なってもよい1~6個の炭素原子を有するアルコキシ基である]、
c)一般式Ti[OR[式中、各Rが同じであっても異なってもよい1~10個の炭素原子を含有する直鎖又は分枝の一価の一級、二級又は三級脂肪族炭化水素基を表す]のチタン酸エステル、
d)RSi-(OR4-n
[式中、nが0、1又は2であり、好ましくはnが0又は1であり、Rが上記のとおりであり、各Rが同じであってもよく異なってもよい1~6個の炭素原子を有するアルコキシ基、又はアルコキシ基が1~6個の炭素原子を有しアルキレン鎖が1~6個の炭素原子を有するアルコキシアルキレン基である]から構成される。
【0012】
産業環境において適用が容易であり、シリコーンエラストマーとシリコーンエラストマーの層の強い接着を提供するプライマーに対する必要性が産業界には依然として存在する。
【0013】
本開示では、プライマー組成物を提供する。該プライマー組成物は、
A)シリコーンポリエーテル、
B)補強性充填剤、
C)25℃で1000~500,000mPa・sの粘度を有し、1分子中に少なくとも1つのアルケニル基又はアルキニル基を含有する1つ以上のポリジオルガノシロキサンポリマー、
D)担体、を含む。
【0014】
従来のプライマーは、一般的に、プライマー中に適用した後に水分で加水分解されて、縮合反応を起こして、このようなプライマーとの接着性を向上させるアルコキシシランなどの接着特性を強化するために化学的に反応する成分を含有し、したがって、プライマーはまた一般に、チタン及び/又はジルコニウム系縮合触媒である縮合触媒を通常は含有して、この加水分解/縮合反応を促進させることが理解される。したがって、本明細書に記載するプライマーは、湿度に曝されたときにも実質的に反応しない完全に異なる配合物であることに留意する。
【0015】
本明細書に記載のプライマーの成分Aは、例えばシロキサンとポリエーテル(すなわち、ポリオキシアルキレン)のブロックの組み合わせを含むコポリマーなどのシリコーンポリエーテルである。
【0016】
シリコーンポリエーテルの各シリコーン部分は、式(I):
SiO(4-a)/2 (I)
[式中、各Rは独立して、脂肪族ヒドロカルビル基、芳香族ヒドロカルビル基、又はオルガニル基(すなわち、官能基の種類にかかわらず、炭素原子において1つの自由原子価を有する、任意の有機置換基)から選択される]の複数の単位を有するポリジオルガノシロキサン鎖である。飽和脂肪族ヒドロカルビルとしては、メチル、エチル、プロピル、ペンチル、オクチル、ウンデシル、及びオクタデシルなどのアルキル基、並びにシクロヘキシルなどのシクロアルキル基が例示されるが、それらに限定されない。不飽和脂肪族ヒドロカルビルとしては、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、シクロヘキセニル、及びヘキセニルなどのアルケニル基、並びにアルキニル基が例示されるが、それらに限定されない。芳香族炭化水素基としては、フェニル、トリル、キシリル、ベンジル、スチリル、及び2-フェニルエチルが例示されるが、それらに限定されない。オルガニル基としては、クロロメチル、及び3-クロロプロピルなどのハロゲン化アルキル基、アミノ基、アミド基、イミノ基、イミド基などの窒素含有基、ポリオキシアルキレン基、カルボニル基、アルコキシ基、及びヒドロキシル基などの酸素含有基が例示されるが、それらに限定されない。更なるオルガニル基としては、硫黄含有基、リン含有基、及び/又はホウ素含有基が挙げられる。本ポリエーテルにおいて、各Rは、概ね、脂肪族ヒドロカルビル、芳香族ヒドロカルビルから独立して選択される。下付き文字「a」は、0、1、2又は3であってもよいが、一般的には主に2又は3である。
【0017】
上述の(I)中のシロキシ単位は、Rが有機基、典型的にはメチル基であるとき、短縮(略記)表記、すなわち、「M」、「D」、「T」、及び「Q」で記述することができる(シリコーンの命名法についての更なる教示は、Walter Noll,Chemistry and Technology of Silicones,dated 1962,Chapter I,page 1-9を参照)。M単位は、式中、a=3であるシロキシ単位、すなわち、RSiO1/2に相当し、D単位は、式中、a=2であるシロキシ単位、すなわち、RSiO2/2に相当し、T単位は、式中、a=1であるシロキシ単位、すなわち、RSiO3/2に相当し、Q単位は、式中、a=0であるシロキシ単位、すなわち、SiO4/2に相当する。したがって、上の(I)中のaが2である場合、シロキシ単位はD単位であり、aが3である場合、シロキシ単位はT単位である。一般に、シリコーンポリエーテルにおいて、シリコーンブロックは、T単位を介した分岐を有するD単位の鎖を含む。ポリジオルガノシロキサンポリマー(i)上の典型的なR基の例としては、主にアルケニル、アルキル、及び/又はアリール基、あるいは1~6個の炭素を有するアルキル基、あるいはメチル基が挙げられる。基は、ペンダント位置(D又はTシロキシ単位上)であってもよく、又は末端(Mシロキシ単位上)であってもよい。
【0018】
このようなコポリマーのポリエーテル部分は、整数の平均式(-C2n-O-)[式中、nが両端値を含む2~4の整数であり、yが≧4、すなわち少なくとも4である]で表されるオキシアルキレンの繰り返し単位を含む。更に、オキシアルキレン単位は、ポリオキシアルキレン全体にわたって必ずしも同一である必要はなく、単位ごとに異なっていてもよい。ポリオキシアルキレンは、例えば、オキシエチレン単位(-C-O-)、オキシプロピレン単位(-C-O-)、若しくはオキシブチレン単位(-C-O-)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。好ましくは、ポリオキシアルキレンポリマー主鎖は、本質的に、オキシエチレン単位又はオキシプロピレン単位からなる。他のポリオキシアルキレンとしては、例えば、構造、
-[-R-O-(-R-O-)-Pn-CR -Pn-O-(-R-O-)q1-R]-
[式中、Pnは、1,4-フェニレン基、各Rは、同じ又は異なり、2~8個の炭素原子を有する、二価炭化水素基であり、各Rは、同じ又は異なり、エチレン基又はプロピレン基であり、各Rは、同じ又は異なり、水素原子又はメチル基であり、下付文字h及びq1の各々は、3~30の範囲の正の整数である]の単位を含んでもよい。
【0019】
シリコーンポリエーテル中のポリエーテル鎖の1つの好ましい型は、式(-C2n-O-)[式中、nが両端値を含む2~4の整数である]のオキシアルキレンの繰り返し単位を含むポリオキシアルキレンポリマーである。
【0020】
概して、各ポリオキシアルキレンブロックZの末端は、二価の有機基によりシロキサンブロックに結合している。この結合は、ブロックシリコーンポリエーテルコポリマーの調製に用いられる反応によって定まる。Zの末端の二価の有機基は、2~30個の炭素を含有する二価の炭化水素及び2~30個の炭素を含有する二価の有機官能性炭化水素から独立して選択される。このような二価の炭化水素基の代表的な非限定的な例としては、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン等が挙げられる。このような二価の有機官能性炭化水素基の代表的な非限定的な例としては、アクリレート及びメタクリレートが挙げられる。1つの代替例では、二価の炭化水素基としては、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン又はオクチレン、あるいはエチレン、プロピレン、ブチレンが挙げられる。
【0021】
シリコーンポリエーテルは任意の型であってもよく、例えば、シリコーンポリエーテルは、シロキサン単位とポリオキシアルキレンの有機単位のブロックが繰り返してコポリマーを形成する(AB)n型のシリコーンポリエーテルであってもよいが、本発明ではM末端基を有し、それは以下のように表される。
M(DZ
式中、M及びDは上に定義され、各Zはポリオキシアルキレンポリマー鎖のブロックであり、zは≧2であり、MはMeOHSiO1/2末端基である。あるいは、シリコーンポリエーテルは、MDZDM型[式中、MがMeOHSiO1/2である]のABA型シリコーンポリエーテルであってもよく、又は、例えば、
H-(O(CH-O-(CH-Si(CH-O[Si(CH-O]-Si(CH-(CH-O-((CH-O)
[式中、d及びeは整数である]のようなヒドロキシ末端ZDZシリコーンポリエーテルであってもよい。
【0022】
あるいは、コポリマーは、主に直鎖であるポリオルガノシロキサンがペンダントとなる有機ブロックを有するコポリマーの構造の骨格を提供してレーキの形状を形成した「レーキ型」コポリマーの形状をとってもよく、それは以下のように示される。
MD
式中のMは上に定義され、Dは式(RSiO2/2の単位を表し、Dは式(R)(Z)SiO2/2の単位を表し、式中、Zは一価のポリエーテルブロックを表し、Rは上記のとおりである。
【0023】
1つの代替例では、コポリマーが上記のABA又は(AB)型コポリマーである場合、dは1、2又は3であり、レーキコポリマーの場合dはゼロ、1、2又は3、あるいはゼロ又は1、あるいはゼロである。
【0024】
ABA又は(AB)n型のシリコーンポリエーテルブロックコポリマーの粘度は、好ましくは、Brookfield(登録商標)回転粘度計を使用してスピンドル(LV-4)を用いポリマーの粘度に応じて速度を調節して、25℃で1000mPa・s~200,000mPa・sであり、ここで全ての粘度測定値は、特に明示されない限り、25℃で測定した。
【0025】
コポリマーがレーキコポリマーである場合、有機成分Zは、式(-C2n-O-)[式中、nが両端値を含む2~4の整数である]のオキシアルキレン単位の繰り返しを含むポリエーテル含有置換基であることが好ましい。ポリエーテル含有置換基は、Zについて前述したように、二価の有機基によってポリマー主鎖中のケイ素原子と結合し得、末端-OH基又はアルコキシ基を有し、ここで、アルコキシ基は1~6個の炭素原子を有し、あるいは-OH基又はメトキシ基若しくはエトキシ基、あるいは-OH基を有する。一般的に、このようなレーキコポリマー中のポリエーテル側鎖は、側鎖1つあたり2~150のアルキレンオキシド単位を含有する。
【0026】
本明細書のプライマー組成物は、固形分含有量の重量%(wt%)、すなわち、担体(D)を除いて、つまり、(A)、(B)、(C)及び存在する場合は全ての添加剤のプライマーの成分の重量%、及び/又は存在する担体(D)を含めた組成物の全含有量の重量%(wt%)として記載される。各例において、全ての成分を一緒に合計すると、組成物は100wt%になる。
シリコーンポリエーテル(A)は、組成物の固形分含有量の0.05wt%~10wt%、あるいは、組成物の固形分含有量の0.05wt%~7.5wt%、あるいは、組成物の固形分含有量の0.1wt%~5.0%wt%の量で存在する。したがって、例えば、シリコーンポリエーテルは全組成物中に、全組成物の0.05wt%~4wt%、あるいは、全組成物の0.05wt%~2.5wt%、あるいは、全組成物の0.1wt%~2.5wt%の量で存在する。
【0027】
組成物の成分(B)は、微粉化ヒュームドシリカ及び/又は微粉化沈降性シリカ及び/又は適切なシリコーン樹脂などの補強性充填剤である。
【0028】
微粉化された形態のシリカが、好ましい補強性充填剤(B)である。沈降性シリカヒュームドシリカ及び/又はコロイダルシリカが、一般的に少なくとも50m/g(ISO9277:2010に従ったBET法)というそれらの比較的高い表面積から特に好ましい。一般的には、50~450m/g(ISO9277:2010に従ったBET法)、あるいは50~300m/g(ISO9277:2010に従ったBET法)の表面積を有する充填剤を使用する。これらの種類のシリカはすべて市販されている。
【0029】
補強性充填剤(B)がもともと親水性である場合(例えば、未処理のシリカ充填剤)、一般的にはそれを処理剤で処理してそれを疎水性にする。これらの表面改質された補強性充填剤(B)は凝集せず、表面処理により充填剤がポリジオルガノシロキサンポリマー(C)によって容易に湿潤することから、以下に記載のポリジオルガノシロキサンポリマー(C)に均質に組み込むことができる。
【0030】
一般に、補強性充填剤(B)は、加工中のオルガノシロキサン組成物のクレーピングを防ぐために適用可能な当技術分野で開示されている任意の低分子量有機ケイ素化合物で表面処理される。例えば、充填剤を疎水性にして、取り扱いを容易にし、他の成分との均質な混合物を得ることができるオルガノシラン、ポリジオルガノシロキサン、又はヘキサアルキルジシラザンなどのオルガノシラザン、短鎖シロキサンジオール、脂肪酸又はステアリン酸エステルなどの脂肪酸エステルである。具体的な例としては、限定されるものではないが、シラノール末端トリフルオロプロピルメチルシロキサン、シラノール末端ビニルメチル(ViMe)シロキサン、テトラメチルジ(トリフルオロプロピル)ジシラザン、テトラメチルジビニルジシラザン、シラノール末端MePhシロキサン、各分子中にジオルガノシロキサンの2~20個の繰り返し単位を含有する液状ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサン、ヘキサオルガノジシロキサン、ヘキサオルガノジシラザンが挙げられる。加工助剤として、少量の水を、シリカ処理剤と共に添加してもよい。
【0031】
表面処理は、組成物中に導入する前に、又はin situで(すなわち、本明細書の組成物の他の成分の少なくとも一部の存在下で充填剤が完全に処理されるまで、これらの成分を一緒に室温で混合することによって)行うことができる。一般的には、未処理の補強性充填剤(B)を、ポリジオルガノシロキサンポリマー(C)の存在下、in situで処理剤で処理し、それにより、後で他の成分と混合することができるシリコーンゴムのベース材料を調製する。
【0032】
補強性充填剤は、組成物の固形分含有量の5.0wt%~40%、あるいは、組成物の固形分含有量の7.5~35wt%、あるいは、組成物の固形分含有量の重量%に基づいて、10.0~35wt%である。このことから、本明細書のプライマー組成物中の補強性充填剤(B)、例えば微粉化シリカ及び/又はシリコーン樹脂の量は、したがって、例えば、全組成物の2.0~20wt%、あるいは、全組成物の2.5~15wt%である。場合によっては、補強性充填剤の量は、全組成物の重量に基づいて5.0~15wt%であってもよい。
【0033】
成分(C)は、1分子中に少なくともアルケニル及び/又は少なくとも1つのアルキニル基、あるいは1分子中に少なくとも2つのアルケニル基及び/又はアルキニル基、あるいは1分子中に少なくとも2つのアルケニル基を含有する25℃で1000~500,000mPa・sの粘度を有する1つ以上のポリジオルガノシロキサンポリマーである。シリコーンポリエーテル(A)中のシロキサン鎖と同様に、ポリジオルガノシロキサンポリマー(C)は、式(I):
SiO(4-a)/2 (I)
[式中、各Rは独立して、脂肪族ヒドロカルビル基、芳香族ヒドロカルビル基、又はオルガニル基(すなわち、官能基の種類にかかわらず、炭素原子において1つの自由原子価を有する、任意の有機置換基)から選択される]の複数の単位を有する。飽和脂肪族ヒドロカルビルとしては、メチル、エチル、プロピル、ペンチル、オクチル、ウンデシル、及びオクタデシルなどのアルキル基、並びにシクロヘキシルなどのシクロアルキル基が例示されるが、それらに限定されない。不飽和脂肪族ヒドロカルビルとしては、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、シクロヘキセニル、及びヘキセニルなどのアルケニル基、並びにアルキニル基が例示されるが、それらに限定されない。芳香族炭化水素基としては、フェニル、トリル、キシリル、ベンジル、スチリル、及び2-フェニルエチルが例示されるが、それらに限定されない。オルガニル基としては、クロロメチル、及び3-クロロプロピルなどのハロゲン化アルキル基、アミノ基、アミド基、イミノ基、イミド基などの窒素含有基、ポリオキシアルキレン基、カルボニル基、アルコキシ基、及びヒドロキシル基などの酸素含有基が例示されるが、それらに限定されない。更なるオルガニル基としては、硫黄含有基、リン含有基、及び/又はホウ素含有基が挙げられる。下付き文字「a」は、0、1、2又は3であってもよいが、一般的には主に2又は3である。
【0034】
ポリジオルガノシロキサンポリマー(C)上の一般的な基の例としては、主にアルケニル基、アルキル基、及び/又はアリール基が挙げられる。基は、ペンダント位置(D又はTシロキシ単位上)であってもよく、又は末端(Mシロキシ単位上)であってもよい。したがって、ポリジオルガノシロキサンポリマー(C)における好適なアルケニル基は、ビニル、イソプロペニル、アリル、及び5-ヘキセニルなど一般に2~10個の炭素原子を含有する。
【0035】
一般に、アルケニル基以外のポリジオルガノシロキサンポリマー(C)に結合したケイ素結合有機基は、典型的には1~10個の炭素原子を含有する一価飽和炭化水素基、及び典型的には6~12個の炭素原子を含有する一価芳香族炭化水素基から選択され、それらは、非置換であるか、又は、本発明の組成物の硬化を妨げることのないハロゲン原子などの基によって置換される。ケイ素結合有機基の好ましい種は、例えば、メチル、エチル、及びプロピルなどのアルキル基、並びにフェニルなどのアリール基である。
【0036】
ポリジオルガノシロキサンポリマー(C)の分子構造は、一般的に直鎖状であるが、(前述のように)分子内のT単位の存在によってある程度の分岐が存在していてもよい。
【0037】
ポリジオルガノシロキサンポリマー(C)の粘度は、25℃で少なくとも1000mPa・sでなければならない。ポリジオルガノシロキサンポリマー(C)の粘度の上限は、25℃で最大500,000mPa・sの粘度に制限される。
【0038】
一般に、成分(C)の1分子中に少なくとも2つのケイ素結合アルケニル基を含有するその又はそれぞれのポリジオルガノシロキサンは、25℃で1000mPa・s~150,000mPa・s、あるいは25℃で1000mPa・s~125,000mPa・s、あるいは25℃で1000mPa・s~50,000mPa・sの粘度を有する。上のそれぞれの場合において、粘度は、粘度範囲のBrookfield(登録商標)RV又はLVの範囲から最も適切なスピンドルを用いて、ASTM D1084 Method Bのカップ/スピンドル法に従って測定される。
【0039】
ポリジオルガノシロキサンポリマー(C)は、例えばアルケニル及び/又はアルキニル基を含有するポリジメチルシロキサン、アルキルメチルポリシロキサン、アルキルアリールポリシロキサン、又はそれらのコポリマーから選択され、任意の好適な末端基を有し、例えば、それらは各ポリマーが分子中に少なくとも2つのアルケニル基を含有するという条件で、トリアルキル末端、アルケニルジアルキル末端であってもよく、又は、任意の他の好適な末端基の組み合わせで終端されてもよい。あるいは、ポリジオルガノシロキサンは部分的にフッ素化されていてもよく、例えば、トリフルオロアルキル、例えば、トリフルオロプロピル基及び/又はペルフルオロアルキル基を含んでもよい。したがって、ポリジオルガノシロキサンポリマー(C)は、例えば、ジメチルビニル末端ポリジメチルシロキサン、ジメチルビニルシロキシ末端ジメチルメチルフェニルシロキサン、トリアルキル末端ジメチルメチルビニルポリシロキサン、又はジアルキルビニル末端ジメチルメチルビニルポリシロキサンコポリマーである。
【0040】
例えば、2つの末端にアルケニル基を含有するポリジオルガノシロキサンポリマー(C)は、一般式(II)で表される:
R’R’’R’’’SiO-(R’’R’’’SiO)-SiR’’’R’’R’(II)
【0041】
式(II)において、各R’は、一般的には2~10個の炭素原子を含有するアルケニル基又はアルキニル基である。アルケニル基としては、ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、アルケニル化シクロヘキシル基、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、又は同様の直鎖及び分岐アルケニル基、並びにアルケニル化芳香族環構造が挙げられるが、これらに限定されない。アルキニル基は、これらに限定されるものではないが、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、アルキニル化シクロヘキシル基、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニル、又は同様の直鎖及び分岐アルケニル基、及びアルケニル化芳香族環構造から選択される。
【0042】
R’’はエチレン性不飽和を含有せず、各R’’は同一でも、異なってもよく、典型的には1~10の炭素原子を含有する一価飽和炭化水素基及び典型的に6~12の炭素原子を含有する一価芳香族炭化水素基から個別に選択される。R”は、非置換でもよく、又は、本発明の組成物の硬化を妨げることのない1つ以上の基(ハロゲン原子など)によって置換されていてもよい。R’’’は、R’又はR’’である。
【0043】
25℃で1000~500,000mPa・sの粘度を有し、1分子中に少なくとも1つのアルケニル基又はアルキニル基を含有する1つ以上のポリジオルガノシロキサンポリマー(C)は、組成物の固形分含有量の40~90wt%、あるいは、組成物の固形分含有量の45~85wt%、あるいは組成物の固形分含有量の50~85wt%の量で存在する。したがって、オルガノポリシロキサンポリマー(C)は、典型的には、全組成物の15~45wt%、あるいは、全組成物の15~40wt%、あるいは、全組成物の15~35wt%の量で存在するジメチルビニル末端ポリジメチルシロキサンである。
【0044】
組成物の成分Dは好適な担体であり、すなわち、例えば、成分A、B、及びCを含有する組成物の粘度を低下させて、スプレー、ローラ、ブラシ、ナイフコーターなどを用いた適用などの好適な方法によって、低粘度の液体の形態で基材への適用を可能にする適切な希釈剤であり、又は、特定の状況では、基材をプライマーの浴に浸漬することによってコーティングしてもよい。この目的のために好適な任意の担体を使用することができる。担体は、任意で揮発性であってもよく、それにより、成分Dは、適用後に少なくとも部分的に蒸発することができる。担体としては、シロキサン骨格中に3~20個のケイ素原子、あるいはシロキサン骨格中に3~10個のケイ素原子、あるいは、シロキサン骨格中に3~6個のケイ素原子を含有する短鎖シロキサンが挙げられ、それは直鎖、分岐又は環状であってもよいが、直鎖の短鎖シロキサンが好ましい。このようなシロキサンはいずれも、室温又はその近辺で蒸発するようなVOC化合物でないことが好ましい。担体はまた、適切な有機担体であってもよく、それは適切であると判断される場合に、適用後の部分的な蒸発が可能であるように揮発性である。例としては、トルエン、キシレン、及び類似の芳香族炭化水素系溶剤、n-ヘキサン、リグロイン、ケロシン、ミネラルスピリット、及び類似の脂肪族炭化水素系溶剤、シクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、及び類似の脂環式炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、及び類似のアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、及び類似のケトン系溶剤、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、及び類似のエーテル系溶剤、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、及び他の炭酸エステル系溶剤、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソブチル、及び他の酢酸エステル、マロン酸エステル、コハク酸エステル、グルタル酸エステル、アジピン酸エステル、フタル酸エステル、及び他のエステル系溶剤が挙げられる。
【0045】
プライマーの固形分含有量は、それを使用する用途に好適な任意の量で担体によって希釈することができる。例えば、組成物の固形分(すなわち、(A)+(B)+(C)+添加剤)100重量部当たり、担体(D)は20~150重量部、あるいは70~150重量部である。したがって、例えば、担体はプライマー中に、全組成物の50wt%~80wt%、あるいは全組成物の55wt%~75wt%の量で存在する。
【0046】
上述したように、任意で、プライマーは、1つ以上の追加の成分、例えば、1つ以上のオルガノハイドロジェンポリシロキサン又はヒドロシリル化触媒を含んでもよい(但し、これにより硬化の発生が促進されるため、両方を一緒にはしない)。必要に応じてプライマーに含めることができるオルガノハイドロジェンポリシロキサンの例としては、例えば、
(a)トリメチルシロキシ末端メチルハイドロジェンポリシロキサン、
(b)トリメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサン、
(c)ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサンのコポリマー、
(d)ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサンの環状コポリマー、
(e)(CHHSiO1/2単位、(CHSiO1/2単位、及びSiO4/2単位からなるコポリマー及び/又はシリコーン樹脂、
(f)(CHHSiO1/2単位及びSiO4/2単位からなるコポリマー及び/又はシリコーン樹脂、
(g)(CHHSiO1/2単位、SiO4/2単位、及び(CSiO1/2単位からなるコポリマー及び/又はシリコーン樹脂、並びにメチルがフェニル基又は他のアルキル基で置換された代替物からなるコポリマー及び/又はシリコーン樹脂が挙げられる。
【0047】
あるいは、オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、充填剤、例えば上記の1つで処理されたシリカであってもよい。SiH化合物について以下でより詳細に説明する。
【0048】
プライマー中の添加剤として使用することができるヒドロシリル化触媒は、下に記載するヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物を硬化させるために使用できる任意の適切なヒドロシリル化触媒である。特に、白金金属(白金、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、及びパラジウム)のうちの1つ、又は1つ以上のそのような金属の化合物である。白金及び白金化合物が、ヒドロシリル化反応におけるこれらの触媒の活性水準の高さから、好ましい。必要に応じて、以下に示すヒドロシリル化触媒のいずれかをプライマーに導入することができる。
【0049】
したがって、プライマーは、
A)組成物の固形分含有量の0.05wt%~10wt%、あるいは組成物の固形分含有量の0.05wt%~7.5wt%、あるいは組成物の固形分含有量の0.1%~5.0wt%の量のシリコーンポリエーテル、
B)組成物の固形分含有量の重量%に基づいて5.0~40wt%、あるいは7.5~35wt%、あるいは10.0~35wt%の量の補強性充填剤、
C)組成物の固形分含有量の40~90wt%、あるいは組成物の固形分含有量の45~85wt%、あるいは組成物の固形分含有量の50~85wt%の量の25℃で1000~500,000mPa・sの粘度を有し、1分子中に少なくとも1つのアルケニル基又はアルキニル基を含有する1つ以上のポリジオルガノシロキサンポリマーを含み、ここで、組成物の固形分含有量は、担体(D)を含まず、すなわち、(A)、(B)、(C)及び存在する場合はすべての添加剤の組成物含有量であり、
担体(D)は、組成物の固形分100重量部当たり20~150重量部、あるいは70~150重量部の量で存在する。組成物の固形分含有量は、担体(D)を除いた組成物の成分、すなわち、(A)、(B)、(C)及び存在する場合はすべての添加剤のすべての組み合わせであり、wt%での組成物の固形分含有量は合計100wt%である。
【0050】
したがって、例として、担体を組成物全体に含める場合、全組成物は以下の通りである;-
A)組成物の0.05wt%~4wt%、あるいは組成物の0.05wt%~2.5wt%、あるいは組成物の0.1wt%~2.5wt%の量のシリコーンポリエーテル、
B)組成物の重量に基づいて2.0~20wt%、あるいは2.5~15wt%、あるいは5.0~15wt%の量の補強性充填剤、
C)組成物の15~45wt%、あるいは全組成物の15~40wt%、あるいは組成物の15~35wt%の量の25℃で1000~500,000mPa・sの粘度を有し、1分子中に少なくとも1つのアルケニル基又はアルキニル基を含有する1つ以上のポリジオルガノシロキサンポリマーと、
D)組成物の50wt%~80wt%、あるいは55wt%~75wt%の範囲の担体。
全組成物は、上記だけ又は追加の添加剤を合わせたすべての組み合わせであり、全組成物は、成分(D)の含有量を含めて合計100%である。
【0051】
前述のように、長年にわたり、基材に対するシリコーンエラストマーの接着性を向上させるために使用されるプライマーは、一般的に、「反応性化学プロセス」に依存し、例えば、アルコキシシランであり、それは、水分で加水分解される必要があり、その後、縮合反応して必要に応じてチタン又はジルコニウム系化合物などの縮合触媒の使用によって加速されるそのようなプロセスに関与する。本発明者らのプライマーの組成物は、架橋を誘発する触媒又は硬化剤が存在せず、硬化性のシリコーンエラストマー組成物を適用する前にはそれ自体では反応が発生しないため、非反応性であると考えられる。
【0052】
シリコーン材料のための従来技術のほとんどのプライマーは、風乾して揮発性担体を蒸発させ、及び/又は加硫/縮合するために、例えば少なくとも20又は30分の時間を必要とするが、本明細書に記載のプライマーの成分が一般的に互いに反応しないとすると、担体が揮発性である場合にはいくらかの乾燥時間という短い時間が必要ではあるが、プライマーの適用の直後に硬化性シリコーンゴム組成物を本発明のプライマー上に適用することができる。
【0053】
上述のプライマー組成物の調製は任意の適切な方法で、例えば、適切な混合ユニット中で、組成物中に存在する成分(A)、(B)、(C)及び任意のすべての成分を担体(D)中で均一に混合することによって行われる。初期の混合物は、完全な組成物、又は更なる担体(D)の添加によって希釈される濃縮物又はマスターバッチの形態のいずれであってもよい。
【0054】
これから、本発明のプライマー組成物を基材に適用することによって、基材へのシリコーンゴムの接着性を向上させる方法もまた提供する。好ましいことに、プライマーを適用する前に、例えばコロナ処理、プラズマ処理、火炎処理、紫外線照射などの方法で硬化した基材に何の前処理又は洗浄工程を行う必要はない。プライマー組成物は任意の適切な既知の方法を使用して適用することができ、例えば、プライマー組成物の粘度に応じて、プライマーをスプレー、ロール、ブラシ、ナイフコーターなどで適用してもよく、又は基材を、ある特定の状況では、プライマーの浴に浸漬してコーティングしてもよい。一般に、適用直後に、基材を被覆する均一なプライマーフィルムが得られる。しかしながら、シリコーンエラストマー組成物を適用する前に、必要に応じて、プライマーを、例えば2~10分間、基材表面上で一定時間、室温で風乾してもよい。あるいは、必要と判断される場合、プライマーでコーティングされた基材を加熱して乾燥プロセスを加速させてもよい。基材上のプライマーコーティングは、一般的には厚さ0.01~3mm、あるいは厚さ0.01~2mmの範囲である。基材を被覆する均一なプライマーフィルムが形成された後、硬化性シリコーンエラストマー組成物を必要な形態で適用し、その後に硬化させて、元のシリコーンゴム基材とそれに適用された硬化性組成物との間の接着結合を有するオーバーモールド複合体を得る。ヒドロシリル化硬化性エラストマー組成物を、本プライマーが予め適用されたヒドロシリル化で硬化させた基材上にオーバーモールドすることができ、その後に硬化させたオーバーモールド層は、予め硬化させた基材に確実に接着されたままであると思われる。
【0055】
シリコーンエラストマー基材は、過酸化物架橋又はヒドロシリル化(付加)架橋シリコーンエラストマー組成物を硬化させることによって、又は同様にフルオロシリコーンエラストマー組成物を硬化させることによって調製される。概ね、このような組成物はまた、本明細書に記載される充填剤及び/又は適切な硬化パッケージを含有する。基材は、任意の好適なオルガノシロキサンホモポリマー、コポリマー又はこれらのポリマーの混合物を含む組成物から硬化され、ここで繰り返し単位は、例えば、ジメチルシロキサン、メチルビニルシロキサン、メチルフェニルシロキサン、フェニルビニルシロキサン、3,3,3-トリフルオロプロピルメチルシロキサン、3,3,3-トリフルオロプロピルビニルシロキサン及び/又は3,3,3-トリフルオロプロピルフェニルシロキサンのうちの1つ以上である。
【0056】
本明細書に記載の基材組成物は、下に記載されるヒドロシリル化硬化パッケージ、又は過酸化物触媒又は異なる種類の過酸化物触媒の混合物で硬化させることができる。
【0057】
過酸化物触媒は、シリコーン及び/又はフルオロシリコーンエラストマー組成物を硬化させるために使用される公知の任意の市販の過酸化物であってもよい。使用される有機過酸化物の量は、硬化プロセスの性質、使用される有機過酸化物、及び使用される組成物によって決定される。一般に、本明細書に記載される組成物中で使用される過酸化物触媒の量は、組成物の重量に基づいて、各場合において、0.2~3wt%、あるいは0.2~2wt%である。
【0058】
好適な有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルペルオキシド及び2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、ジターシャリーブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ビス(t-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキシン、2,4-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジ-t-ブチルペルオキシド及び2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサンなどの置換又は非置換ジアルキル-、アルキルアロイル-、ジアロイル-ペルオキシドが挙げられる。基材組成物が過酸化物で硬化される場合、当該組成物は、下に記載するように、1分子中に少なくとも2個、あるいは少なくとも3個のSi-H基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを更に含む。
【0059】
プライマー処理されたシリコーンエラストマー基材への適用に使用されるヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物は、
(i)上記のプライマー組成物中の成分Cなどの1つ以上のポリジオルガノシロキサンポリマーと、
(ii)ヒドロシリル化硬化パッケージと共に、一般的にはプライマー組成物中の成分Bなどのシリカ補強性充填剤である補強性充填剤とを含む。
ヒドロシリル化硬化パッケージは、1分子中に少なくとも2個、あるいは少なくとも3個のSi-H基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(iii)、ヒドロシリル化触媒(iv)、及び任意で硬化抑制剤(v)を含有する。
【0060】
プライマー処理されたシリコーンエラストマー基材への適用に使用されるヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物は、以下の形態のヒドロシリル化触媒パッケージを用いて硬化される;
(iii)1分子中に少なくとも2個、あるいは少なくとも3個のSi-H基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(iv)ヒドロシリル化触媒と、任意で
(v)硬化抑制剤。
【0061】
(iii)オルガノハイドロジェンポリシロキサン
プライマー処理されたシリコーンエラストマー基材への適用に使用されるヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物のオルガノハイドロジェンポリシロキサン(iii)は、下記の成分(iv)によって触媒されるポリマー(i)中のアルケニル基と、成分(iii)中のケイ素結合水素原子の付加/ヒドロシリル化反応により、ポリマー(i)を硬化させる架橋剤として機能する。
【0062】
通常、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(iii)は3個以上のケイ素結合水素原子を含有し、それにより、その水素原子がポリマー(i)中の不飽和のアルケニル又はアルキニル基と反応して、それらとネットワーク構造を形成して組成物を硬化させることができる。あるいは、ポリマー(i)が1分子中に2個より多いアルケニル又はアルキニル基を有する場合、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(iii)の一部又は全ては1分子中に2個のケイ素結合水素原子を有していてもよい。
【0063】
オルガノハイドロジェンポリシロキサン(iii)の分子構造は具体的には限定されるものではなく、直鎖であっても、一部に分岐を有する直鎖であっても、環状であっても、又はシリコーン樹脂系であってもよい。この成分の分子量は特には制限されないが、粘度は一般的に、ポリマー(i)との良好な混和性を得るために、ASTM D1084 Method Bのカップ/スピンドル法で、粘度範囲に最も適切なBrookfield(登録商標)RV又はLVの範囲のスピンドルを使用して、25℃で0.001~50Pa.sである。
【0064】
プライマー処理されたシリコーンエラストマー基材への適用に使用されるヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物のオルガノハイドロジェンポリシロキサン(iii)は、一般的に、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(iii)中のケイ素結合水素原子の総数のポリマー(i)中のアルケニル/アルキニル基の総数に対するモル比が0.5:1~20:1になる量で加えられる。この比が0.5:1未満であるときは、十分に硬化した組成物が得られない。この比が20:1より大きい場合、加熱されたときに、硬化した組成物の硬度が増加する傾向がある。
【0065】
オルガノハイドロジェンポリシロキサン(iii)の例としては、限定されるものではないが、以下が挙げられる;
(a)トリメチルシロキシ末端メチルハイドロジェンポリシロキサン、
(b)トリメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサン、
(c)ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサンのコポリマー、
(d)ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサンの環状コポリマー、
(e)(CHHSiO1/2単位、(CHSiO1/2単位、及びSiO4/2単位からなるコポリマー及び/又はシリコーン樹脂、
(f)(CHHSiO1/2単位及びSiO4/2単位からなるコポリマー及び/又はシリコーン樹脂、
(g)(CHHSiO1/2単位、SiO4/2単位及び(CSiO1/2単位からなるコポリマー及び/又はシリコーン樹脂、並びにメチルがフェニル基又は他のアルキル基によって置換されたその代替物。
あるいは、成分(iii)は、充填剤、例えば上の1つで処理されたシリカであってもよい。
【0066】
プライマー処理されたシリコーンエラストマー基材への適用に使用されるヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物のオルガノハイドロジェンポリシロキサン(iii)のケイ素結合水素(Si-H)含有量は、ASTM E168に従って定量的赤外線分析を使用して決定される。本発明において、ケイ素結合水素のアルケニル(ビニル)及び/又はアルキニルに対する比は、ヒドロシリル化硬化プロセスに依存する場合に重要である。一般に、これは、組成物中のアルケニル基の総wt%、例えば、ビニル[V]と、組成物注のケイ素結合水素[H]の総wt%を計算することによって決定され、ここで、水素の分子量を1、ビニルの分子量を27として、ビニルに対するケイ素結合水素のモル比は27[H]/[V]である。
【0067】
(iv)ヒドロシリル化触媒
存在する場合、プライマー処理されたシリコーンエラストマー基材への適用に使用されるヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物のヒドロシリル化触媒(iv)は、好ましくは、白金金属(白金、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、及びパラジウム)の1つ、又はそのような金属の1つ以上の化合物である。白金及び白金化合物が、ヒドロシリル化反応におけるこれらの触媒の活性水準の高さから、好ましい。
【0068】
好ましいヒドロシリル化触媒(iv)の例としては、白金黒、様々な固体担体上の白金、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、及びオレフィンなどのエチレン性不飽和化合物やエチレン性不飽和のケイ素結合炭化水素基を含有するオルガノシロキサンと塩化白金酸との錯体が挙げられるが、これらに限定されない。触媒(iv)は、白金金属、担体、例えばシリカゲル又は粉末化木炭に堆積させた白金族金属、又は白金金属の化合物若しくは錯体である。
【0069】
好適な白金系触媒の例としては、
(i)米国特許第3,419,593号に記載されている、エチレン性不飽和炭化水素基を含有するオルガノシロキサンとの塩化白金酸の錯体;
(ii)六水和物形態又は無水形態のいずれかの塩化白金酸;
(iii)塩化白金酸をジビニルテトラメチルジシロキサンなどの脂肪族不飽和有機ケイ素化合物と反応させることを含む方法によって得られる白金含有触媒;
(iv)(COD)Pt(SiMeCl(式中、「COD」は1,5-シクロオクタジエンである)などの米国特許第6,605,734号に記載されているアルケン-白金-シリル錯体;及び/又は
(v)一般的には溶媒中に、例えばトルエンを使用して約1wt%の白金を含有する白金とジビニルテトラメチルジシロキサンの錯体であるKarstedt触媒が挙げられる。これらは、米国特許第3,715,334号及び同第3,814,730号に記載されている。
【0070】
プライマー処理されたシリコーンエラストマー基材への適用に使用されるヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物のヒドロシリル化触媒(iv)は、全組成物中に触媒量、すなわち、付加/ヒドロシリル化反応を触媒し、所望の条件下で組成物をエラストマー材料に硬化させるために十分な量又は分量で存在する。様々な濃度のヒドロシリル化触媒(iv)を使用して、反応速度及び硬化速度を調整することができる。ヒドロシリル化触媒(iv)の触媒量は、概ね、組成物のポリマー(i)と充填剤(ii)の重量に基づいた百万部あたりの白金金属の重量部(ppm)で、0.01ppm~10,000ppm、あるいは0.01~5000ppm、あるいは0.01~3,000ppm、あるいは0.01~1,000ppmである。特定の実施形態において、触媒の触媒量は、組成物の重量に基づいて、0.01~1,000ppm、あるいは0.01~750ppm、あるいは0.01~500ppm、あるいは0.01~100ppmの範囲の金属である。範囲は、指定されたように、触媒内の金属含有量のみ、又は触媒全体(その配位子を含む)に関連し得るが、典型的には、これらの範囲は、触媒内の金属含有量のみに関連する。触媒は、単一種として、又は2種以上の異なる種の混合物として添加してよい。一般的に、触媒パッケージが提供される形態/濃度に依存して、存在する触媒の量は組成物の0.001~3.0wt%の範囲である。
【0071】
上記のようにプライマー処理されたシリコーンエラストマー基材に適用するために使用されるヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物が、付加/ヒドロシリル化反応成分(v)によって硬化される場合、抑制剤を使用して組成物の硬化を阻害してもよい。これらの抑制剤(v)は、触媒の活性を遅延又は抑制することによって、貯蔵中の早期硬化を防止するために、及び/又は、ヒドロシリル化硬化性組成物の作業時間又はポットライフをより長くために使用される。白金金属系触媒などのヒドロシリル化触媒(iv)の抑制剤(v)は当分野では公知であり、ヒドラジン、トリアゾール、ホスフィン、メルカプタン、有機窒素化合物、アセチレンアルコール、シリル化アセチレンアルコール、マレエート、フマレート、エチレン性又は芳香族不飽和アミド、エチレン性不飽和イソシアネート、オレフィン性シロキサン、不飽和炭化水素のモノエステル及びジエステル、共役エンイン、ヒドロペルオキシド、ニトリル、及びジアジリジンが挙げられる。
【0072】
白金触媒(iv)などのヒドロシリル化触媒の既知の抑制剤(v)の一群としては、米国特許第3,445,420号に開示されているアセチレン化合物が挙げられる。2-メチル-3-ブチン-2-オールなどのアセチレンアルコールは、25℃で白金含有触媒の活性を抑制する抑制剤の好ましい一群を構成する。一般に、これらの抑制剤を含有する組成物は、実用的な速度で硬化させるためには、70℃以上の温度に加熱する必要がある。
【0073】
アセチレンアルコール及びそれらの誘導体の例としては、1-エチニル-1-シクロヘキサノール(ETCH)、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3-ブチン-1-オール、3-ブチン-2-オール、プロパルギルアルコール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、1-エチニルシクロペンタノール、1-フェニル-2-プロピノール、3-メチル-1-ペンテン-4-イン-3-オール、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0074】
存在する場合、いくつかの例では、触媒(iv)金属のモル当たり1モルの抑制剤と同程度の低濃度の抑制剤により、十分な貯蔵安定性及び硬化速度が得られる。他の例では、触媒(iv)金属のモル当たり最大500モルの抑制剤という抑制剤濃度が必要である。プライマー処理されたシリコーンエラストマー基材への適用に使用される所与のヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物中の所与の抑制剤(v)の最適濃度は、通常の実験によって容易に決定される。選択された抑制剤が商業的に提供される/利用可能である濃度及び形態に応じて、組成物中に存在する場合、抑制剤は一般的に、組成物の0.0125~10wt%の量で存在する。上記の混合物もまた使用され得る。
【0075】
一般に、プライマー処理されたシリコーンエラストマー基材への適用に使用されるヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物は、以下で更に論じるように、硬化前にオルガノハイドロジェンポリシロキサン(iii)と触媒(iv)を分離するために、しばしばA部及びB部と呼ばれる2部で保存される。このような2部型組成物は、使用の直前の容易に混合できるように構成され、一般に、A部:B部の重量比は15:1~1:1である。
【0076】
更なる任意の成分
その目的の用途に応じて、追加の任意の成分をシリコーンエラストマー組成物中に存在させてもよい。このような任意の成分の例としては、導電性及び熱伝導性充填剤、非電導性充填剤、ポットライフ延長剤、難燃剤、潤滑剤、非補強性充填剤、顔料着色剤、鎖延長剤、離型剤、UV光安定剤、殺菌剤、湿潤剤、熱安定剤、圧縮永久歪改善添加剤、並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0077】
シリコーンゴム組成物は、粘度及び用途などに応じて、射出成形、封入成形、プレス成形、ディスペンサー成形、押出成形、トランスファー成形、プレス加硫、遠心鋳造、カレンダー加工、ビーズ塗布、3Dプリンティング、又はブロー成形によってプライマー処理された基材上に適用される。
【0078】
シリコーンゴム組成物の硬化は、使用する硬化パッケージの種類によって必要に応じて行われる。通常、ヒドロシリル化硬化系の硬化には、例えば、約80℃~150℃の高温の使用が好ましいが、例えば、海中用のシリコーンゴム組成物などの本明細書のプライマーが好適ないくつかの用途では、室温~80℃、あるいは室温すなわち約23~25℃~約50℃のようなさらにより低い温度が硬化プロセスに使用される。
【0079】
本プライマーは、シリコーンエラストマー/シリコーンエラストマーのオーバーモールドが望まれる用途、例えば、海中断熱、高電圧下の電気絶縁、3Dプリンティング、レンズ、自動車用途及び消費者用途など、すなわち、事前形成されたシリコーンエラストマー材料と未硬化のヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物との間にそれらが硬化するときに強力な接着を生じさせる必要がある場合に適する。オーバーモールドは、似たようなシリコーンエラストマー、すなわち、同じ又は非常に類似した未硬化の組成物を有するそれらを含むが、本明細書のプライマーの1つの特に重要な用途は、異なる特性、例えば、異なるショアA硬度、異なる色、異なる光学的透過性、又は組み合わせることが有益な物理的特性における他の違いを有するシリコーンエラストマー材料の接着を助けることである。したがって、上述のようなプライマーは、シリコーンシール又はガスケットを有する自動車用途のハウジング、プラグ及びコネクタ、様々なセンサの部品、膜、ダイアフラム、気候調節通気部品などの物品の複合部品の接着に適する。複合部品としてはまた、マスク、ゴーグル、チュービング及びバルブカテーテル、オストミー用器具、呼吸用器具、栄養補給器具、コンタクトレンズ、補聴器、矯正具、プロテーゼなどの器具が挙げられる。異なる物理的特性を(硬化したときに)有する2つのシリコーン層を必要とする他の複合部品としては、シャワーヘッド、ベーカリーウェア、スパチュラ、家電製品、靴、フットウェア、スポーツ及びレジャー用物品、ダイビング用マスク、フェイスマスク、おしゃぶり及び他のベビー用物品、食事用補助具、白物家電及び他のキッチン用物品のシール及び表面などが挙げられる。電子用途としては、携帯電話のカバーシール、携帯電話の付属品、精密電子機器、電気スイッチ及びスイッチカバー、腕時計及びリストバンド、ウェアラブル電子デバイスなどのシリコーンエラストマー複合体が挙げられる。
【0080】
海中断熱材の場合、シリコーンエラストマー材料は、使用される全ての断熱材が、油井から出る場合によっては150℃以上に達する炭化水素流体の極端な温度によって、その熱的又は機械的特性に悪影響を受けることなく、これらの極端な温度に耐えることができなければならないことから特に適している。断熱材は、天候や海中に広がる気象条件による水面下の乱流の影響を受ける可能性があるため海面直下から約50mの深さまでの範囲で海水の腐食性に耐性でなければならない。したがって、いくつかの例では、使用されるシリコーンエラストマー組成物は、ミクロスフェア、あるいはガラス微小球、特にホウケイ酸ガラス微小球などのシンタクチック媒体を含んでいてもよい。
【0081】
一般的に、海中の用途では、断熱材の連続成形(現場打ち)に使用されるため、基材に接着されるシリコーンエラストマー組成物は、硬化前の基材と同じ又は非常に類似した組成を有する。海中断熱材料に使用されるヒドロシリル化硬化性シリコーンエラストマー組成物の粘度が比較的低いことから、連続成形(現場打ち)プロセスを使用して、それは断熱の目的のために海中設備の物品に適用される。このようなプロセスでは、物品の周囲の断熱材の第1セクションの位置に金型/枠を配置し、次いで液体シリコーンゴムをポンプ注入して、所定の硬度に硬化させ、そして金型/枠を除去する。その後、このプロセスを第2セクションで繰り返し、したがって、海中設備の物品の全ての断熱を完了するために必要な多くのセクションで繰り返す。しかしながら、このような連続的なプロセスは、隣接するシリコーンエラストマー/シリコーンエラストマーの界面を有する複数の接合部を生じ、シリコーンエラストマー断熱材は優れた断熱性を提供する一方で、隣接するセクションの隣接する界面間の接着/結合は、特に、極端な温度及び環境条件に耐えることを考えると、目的のためには不十分な場合が多いことが認められている。前述のプライマーの使用により、予め硬化させたシリコーンエラストマー材料と、それに隣接して現場打ちされた硬化シリコーンエラストマー材料との間の界面における接着性が向上することを見出した。
【0082】
上述のプライマーは、例としては、ライザー管を含む配管、坑口、クリスマスツリー、スプールピース、マニホールド、ライザー、例えばパイプライン、ジャンパー、パイプライン末端の終端(PLET)、パイプライン終端マニホールド(PLEM)、カップリングカバー、ドッグハウス(すなわち、一般的には、鋼鉄製の側面で通常はドリルの制御部に近いアクセスドアを有するオイルリグのフロアに近い部屋)などの配管作業に使用することができる。それらは概ね、リグフロアと同じ高さであるが、海中断熱材の複数の接合部間の接着を保証するために、シリコーンエラストマー材料(LSR)のさらなるセクションを導入して硬化させる前に上記のプライマーを事前に硬化させたシリコーンエラストマー材料の表面に適用することによって、現場打ちプロセス(cast in place process)を使用して、リグおよび/またはパイプフィールドジョイントを支持するメインの下部構造から片持ち梁の形で延び出させることができる。
【0083】
組成物及び組成物の構成成分、エラストマー、及び方法を示す以下の実施例は、本発明を例示するものであり、本発明を限定するものではない。
【実施例
【0084】
以下の実施例において、以下の実施例と表で使用される成分を下に列記する。
DOWSIL(商標)3-6060 Prime Coat Primer-ダウ・シリコンズ社(Michigan,USA)製のシリコーン用の市販のプライマー;
シリコーンポリエーテル-は、ジメチル(プロピル(ポリ(EO))ヒドロキシ)シロキシ末端ジメチルシロキサンポリマーであり、その構造は、
H-(O(CH-O-(CH-Si(CH-O[Si(CH-O]-Si(CH-(CH-O-((CH-O)Hであり、
その粘度は、25℃で320mPa・sである;
処理済みヒュームドシリカは、ヘキサメチルジシラザン(HMDZ)で処理されたヒュームドシリカである;
ビニルポリマーは、25℃で2000mPa・sの粘度を有するジメチルビニル末端ポリジメチルシロキサンである;
Si-Hポリマーは、25℃で5mPa・sの粘度を有し、0.76wt%のSi-Hを有するトリメチル末端ジメチルメチルハイドロジェンシロキサンである。
【0085】
比較例1を除いて、表1に示される組成物は、本明細書の開示に従うものではなく、すべて比較プライマー組成物である。比較例1は、何の種類のプライマーも使用しない比較参照例である。
【表1】
【0086】
本明細書の開示の3つの実施例の組成物を下の表2に示す。
【表2】
【0087】
比較プライマーを試験するために、これらを、限定されてはいないが特に海中断熱用途用に設計された室温加硫型の2部型ヒドロシリル化硬化組成物である市販の海中断熱材DOWSiL(商標)XTI-1003 RTVシリコーンゴム断熱材と組み合わせて使用した。
【0088】
100部のDOWSiL(商標)XTI-1003ベースを、10部のDOWSiL(商標)XTI-1003硬化剤と均質に混合して、真空デシケータ内で脱気した。次いで、現場打ちプロセスを使用して、得られた混合物を上部開放型の成形型(300×300mm)に流し入れて、厚さ5mmの層にした。この材料を実験室で室温で24h静置して硬化させた。24h後、実験用プライマーを、硬化させた表面上にブラシで適用した。視覚的に制御して表面を良好にプライマーで被覆した。使用した実験用プライマーを10分間乾燥させた後、プライマーでコーティングされた最初の成形分を、同じ5mm厚の新たに混合したDOWSiL(商標)XTI-1003 RTVシリコーンゴム断熱材でオーバーモールドした。次いで、オーバーモールドされた組み合わせを更に24h静置して、DOWSiL(商標)XTI-1003 RTVシリコーンゴム断熱材の第2の成形分を、同じ実験室条件下で室温で硬化させた。
【0089】
180°剥離試験法を使用して、それぞれの実施例に使用したプライマーで補助して一緒に接着させた2層のオーバーモールド試料の間の剥離力を決定した。第2の成形材料を完全に硬化させた後、30mm幅のストリップを試験のために切り取った。以下のパラメータを使用して、Hegewald&Peschke製のUninersalprufmachine H10TMC 900 Watt機で試験した;
試験速度 100mm/分、
ロードセル 100kN、
試験長さ 最小50mm。
【0090】
試験した比較プライマーの試験結果を下の表3に示し、本開示の実施例の試験結果を下の表4に示す。
【表3】
【表4】
【0091】
上の比較例及び実施例の比較から、いくつかの結論を導くことができる。実施例の剥離力の結果は、表1の比較プライマーのいずれかと組み合わせて使用した場合よりも有意に優れていることが分かる。より具体的には、比較例3と実施例1との比較から、プライマーによって強化される接着用組成物中にはポリエーテルが必要であり、ポリエーテルを含まない場合、接着の結果は不十分であった(比較例3)。同様に、比較例5と実施例1との比較から、プライマーが良好な接着力を生じるためにはシリカが必要であることもまた認められた。さらに、比較例4は、剥離試験から、ポリエーテルとシリカの両方が存在しない場合に接着性が不十分であることを示している。Si-Hポリマーの導入によって接着力は向上するが、驚くべきことに、実施例1と2との比較から、プライマー組成物中にSi-Hポリマーが存在しない場合に、より良好な剥離試験性能の結果が得られることを見出した(それが存在する場合の結果は、依然として表1の全ての比較例よりもはるかに優れていたが)。実施例3から、シリコーンポリエーテル及びシリカの量を増加させても、実施例の結果は改善されないことが示された。最後に、比較例7及び8は、担体とポリエーテルの組み合わせでは剥離試験の結果が不十分であり、プライマーとして機能せず、また、比較例8におけるシリコーンポリエーテルのみの使用は全く機能しなかったことを示している。

【手続補正書】
【提出日】2021-11-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)シリコーンポリエーテル、
B)補強性充填剤、
C)25℃で1000~500,000mPa・sの粘度を有し、1分子中に少なくとも1つのアルケニル基又はアルキル基を含有する1つ以上のポリジオルガノシロキサンポリマー、及び
D)担体、
を含む、プライマー組成物。
【請求項2】
成分(A)が、ABA又はAB型シリコーンポリエーテルを含む、請求項1に記載のプライマー組成物。
【請求項3】
成分(A)が、式
H-(O(CH-O-(CH-Si(CH-O[Si(CH-O]-Si(CH-(CH-O-((CH-O)H[式中、d及びeが整数である]
のABA型シリコーンポリエーテルである、請求項1又は2に記載のプライマー組成物。
【請求項4】
成分(B)が、微粉化ヒュームドシリカ及び/又は微粉化沈降性シリカ及び/又はシリコーン樹脂である、及び/又は成分(C)が、ジメチルビニル末端ポリジメチルシロキサンである、及び/又は成分(D)が、3~20個のケイ素原子を含有する短鎖シロキサンである、請求項1~3のいずれか一項に記載のプライマー組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のプライマー組成物であって、
A)前記組成物の固形分含有量の0.05wt%~10wt%の量のシリコーンポリエーテル、
B)前記組成物の固形分含有量の5.0~40wt%の量の補強性充填剤、及び、
C)前記組成物の固形分含有量の40~90wt%の量の25℃で1000~500,000mPa・sの粘度を有し、1分子中に少なくとも1つのアルケニル基又はアルキニル基を含有する1つ以上のポリジオルガノシロキサンポリマー、を含み、前記組成物の固形分含有量は、担体(D)を除いた前記組成物の含有量であり、
担体(D)は、前記組成物の固形分含有量100重量部当たり、20~150重量部、あるいは70~150重量部の量である、プライマー組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のプライマー組成物であって、
A)全組成物の0.05wt%~4wt%の量のシリコーンポリエーテル、
B)全組成物の2.0~20wt%の量の補強性充填剤、
C)全組成物の15~45wt%の量の25℃で1000~500,000mPa・sの粘度を有し、1分子中に少なくとも1つのアルケニル基又はアルキニル基を含有する1つ以上のポリジオルガノシロキサンポリマー、及び、
D)全組成物の50wt%~80wt%の範囲の担体、を含む、プライマー組成物。
【請求項7】
担体(D)中に成分(A)、(B)、及び(C)を均一に溶解又は混合することを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のプライマー組成物の調製方法。
【請求項8】
前記プライマー組成物が、一緒に混合された後、更なる担体で希釈される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
事前硬化させたシリコーンエラストマー基材へのシリコーンエラストマーの接着を改善する方法であって、請求項1~6のいずれか一項に記載のプライマー組成物をシリコーンエラストマー基材に適用し、任意で前記プライマー組成物を風乾又はベーキングして、前記基材を被覆する均一なプライマーフィルムを形成し、前記プライマーで被覆された前記基材にヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物を適用して複合体を得て、前記複合体を硬化させて、シリコーンエラストマー基材に接着結合したシリコーンエラストマーを得るようにすることを含む、方法。
【請求項10】
前記基材が、過酸化物硬化させたシリコーンエラストマー組成物及び/又はヒドロシリル化硬化性の硬化させたシリコーンエラストマー組成物から調製される、請求項9に記載の事前硬化させたシリコーンエラストマー基材へのシリコーンエラストマーの接着を改善する方法。
【請求項11】
前記ヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物を、射出成形、現場打ちプロセス、封入成形、プレス成形、ディスペンサー成形、押出成形、トランスファー成形、プレス加硫、遠心鋳造、カレンダー加工、ビーズ塗布、3Dプリンティング、又はブロー成形によって前記プライマー処理された基材上に適用する、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記ヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物が、海中断熱材を適用するための現場打ちプロセスを使用して、前記プライマー処理された基材上に適用される、請求項9、10又は11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~6に記載のプライマーを用いて、一緒に接着又はオーバーモールドされた複数のシリコーンエラストマー物品であるシリコーンエラストマー複合体。
【請求項14】
前記複合体が、海中断熱、高電圧下の電気絶縁、3Dプリンティング、レンズ、自動車用途及び/又は消費者用途に使用される、請求項13に記載のシリコーンエラストマー複合体。
【請求項15】
海中断熱、シリコーンシール又はガスケットを備えたハウジング、プラグ及びコネクタ、様々なセンサの部品、膜、ダイアフラム、気候調節通気部品、マスク、ゴーグル、チュービング及びバルブカテーテル、オストミー用器具、呼吸用器具、栄養補給器具、コンタクトレンズ、補聴器、矯正具、プロテーゼ、シャワーヘッド、ベーカリーウェア、スパチュラ、家電製品、靴、フットウェア、スポーツ及びレジャー用物品、ダイビング用マスク、フェイスマスク、おしゃぶり、白物家電のシール及び表面、携帯電話のカバーシール、携帯電話の付属品、精密電子機器、電気スイッチ及びスイッチカバー、腕時計及びリストバンド及び/又はウェアラブル電子デバイスの接着に選択される、あるいはそれらのために選択される複合体の製造における、請求項1~6に記載のプライマー組成物の使用。

【国際調査報告】