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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-01
(54)【発明の名称】医療デバイス用電子モジュール
(51)【国際特許分類】
   A61M 13/00 20060101AFI20220624BHJP
   A61M 15/00 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
A61M13/00
A61M15/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021563611
(86)(22)【出願日】2020-05-01
(85)【翻訳文提出日】2021-10-26
(86)【国際出願番号】 EP2020062207
(87)【国際公開番号】W WO2020221925
(87)【国際公開日】2020-11-05
(31)【優先権主張番号】1906143.1
(32)【優先日】2019-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】512297125
【氏名又は名称】ノートン (ウォーターフォード) リミテッド
【住所又は居所原語表記】Unit 301 IDA, Industrial Park, Cork Road, Waterford, Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロッシュ,ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】カルデロン オリべラス,エンリケ
(57)【要約】
吸入器のような医療デバイス用の電子モジュールが開示され、当該電子モジュールは、プリント回路基板と、バッテリが電子モジュールに接続されており、かつ、電子モジュールが機械的衝撃にさらされたとき、バッテリへのエネルギー伝達及び/又はバッテリからのエネルギー伝達を減衰するように構成されたダンパと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入器のような医療デバイス用の電子モジュールであって、
前記電子モジュールは、
プリント回路基板と、
バッテリが前記電子モジュールに接続されており、かつ、前記電子モジュールが機械的衝撃にさらされるとき、当該バッテリへのエネルギー伝達、及び/又は、当該バッテリからのエネルギー伝達を減衰させるように構成されたダンパと、を備える、
電子モジュール。
【請求項2】
吸入器のような医療デバイス用の電子モジュールであって、前記医療デバイスは、薬剤を備え、
前記電子モジュールは、
プリント回路基板と、
バッテリと、を備え、
前記電子モジュールは、前記薬剤の、前記プリント回路基板および前記バッテリとの交通を防止するように構成されている、
電子モジュール。
【請求項3】
前記プリント回路基板に接続されたバッテリをさらに備える、
請求項1に記載の電子モジュール。
【請求項4】
前記バッテリは、1つまたは複数のコネクタによって、前記プリント回路基板に機械的にかつ電子的に接続されている、
請求項2または3に記載の電子モジュール。
【請求項5】
吸入器のような医療デバイス用の電子モジュールであって、
前記電子モジュールは、
プリント回路基板と、
1つまたは複数のコネクタによって、前記電子モジュールに機械的かつ電子的に接続されるバッテリと、を備え、
前記コネクタは、前記電子モジュールが機械的衝撃にさらされるとき、前記バッテリへのエネルギー伝達、及び/又は、前記バッテリからのエネルギー伝達を減衰させるように構成されている、
電子モジュール。
【請求項6】
前記電子モジュールが機械的衝撃にさらされるとき、前記バッテリへのエネルギー伝達、及び/又は、前記バッテリからのエネルギー伝達を減衰させるように構成されたダンパを、さらに備える、
請求項2、請求項5、または、請求項2に従属する請求項4に記載の電子モジュール。
【請求項7】
前記ダンパは、減衰の少なくとも一部を提供するように構成された基材材料を備える、
請求項1または6に記載の電子モジュール。
【請求項8】
前記基材材料は、発泡材料である、
請求項7に記載の電子モジュール。
【請求項9】
前記基材は、ゴム、ポリウレタン、シリコーン、ネオプレン、ポリエチレン‐酢酸ビニル、または、低密度ポリエチレンのようなポリエチレンを備える、
請求項7または8に記載の電子モジュール。
【請求項10】
前記基材は、0.1mmから10mmの厚みであり、好ましくは0.1mmから3mmまたは0.1mmから5mmの厚みである、
請求項7~9のいずれか1項に記載の電子モジュール。
【請求項11】
前記基材は、0.1KPa~200KPaの間の、好ましくは1KPa~80KPaの間の、より好ましくは5KPa~70KPaの間の25%圧縮力撓みを有する、
請求項7~10のいずれか1項に記載の電子モジュール。
【請求項12】
前記基材は、前記バッテリの面に付着している、
請求項7~11のいずれか1項に記載の電子モジュール。
【請求項13】
各コネクタの一部分は前記バッテリに取り付けられ、各コネクタの別の部分は前記プリント回路基板に取り付けられている、
請求項4、請求項5、または、請求項4または5に従属する請求項6~12のいずれか1項に記載の電子モジュール。
【請求項14】
少なくとも2つのコネクタは、前記バッテリに、当該バッテリの異なる側または両側に取り付けられている、
請求項13に記載の電子モジュール。
【請求項15】
前記1または複数のコネクタはタブに接続されている、
請求項4、5、13、または、14、または、請求項4または請求項5に従属する請求項6~12のいずれか1項に記載の電子モジュール。
【請求項16】
前記ダンパは前記バッテリに取り付けられている、
請求項1、6~12、または、請求項1、6~12のうちの1項に従属する請求項13~15のいずれか1項に記載の電子モジュール。
【請求項17】
前記プリント回路基板は、医療デバイスの面に取り外し可能に取り付けられるように構成されたキャップに取り付けられている、
請求項1~16のいずれか1項に記載の電子モジュール。
【請求項18】
前記プリント回路基板は、1または複数のヒートステーク、好ましくは2つのヒートステークによって前記キャップに取り付けられている、
請求項17に記載の電子モジュール。
【請求項19】
前記基材は、当該基材が付けられる前記バッテリの前記面の全領域を覆わず、好ましくは、前記基材は、当該基材が付けられる前記バッテリの前記面の95%~40%を覆う、
請求項7~12のいずれか1項、または、請求項7~12のうちの1項に従属する請求項13~18のいずれか1項に記載の電子モジュール。
【請求項20】
前記バッテリの前記面への前記基材の付着は、前記1または複数のヒートステークとは反対の方向にオフセットされている、
請求項18に従属する請求項19に記載の電子モジュール。
【請求項21】
前記バッテリコネクタ及び/又は前記ダンパは、存在するとき、前記基材を面に位置決めするように構成されており、それによって前記基材が前記面に対して圧縮減衰を提供できるようになっている、
請求項4または5、または、請求項4または請求項5に従属する請求項6~20のいずれか1項に記載の電子モジュール。
【請求項22】
前記面は、吸入器のような医療デバイスの面であるか、または、前記キャップが存在するとき当該キャップの前記面である、
請求項21に記載の電子モジュール。
【請求項23】
前記電子モジュールが医療デバイスに取り付けられているとき、前記基材と前記面との間の距離が5mm未満である、
請求項21または22に記載の電子モジュール。
【請求項24】
前記基材は、前記電子モジュールが医療デバイスに取り付けられているときに前記面に対して負荷されるように構成されている、
請求項21または22に記載の電子モジュール。
【請求項25】
前記基材は、前記電子モジュールが医療デバイスに取り付けられているときに当該基材を圧縮するために、負荷されるように構成されており、好ましくは、前記基材は、95%~5%まで圧縮されるように構成されている、
請求項21、22または24に記載の電子モジュール。
【請求項26】
前記基材は、前記電子モジュールが医療デバイスに取り付けられているとき、前記面に対して負荷されると、0N~100Nの力、好ましくは1N~15Nの力、より好ましくは2N~10Nの力を加えるように構成されている、
請求項21、22、24、または、25に記載の電子モジュール。
【請求項27】
前記薬剤の、前記プリント回路基板および前記バッテリとの交通を防止するように構成されたガスケット、メンブレンまたはフィルタをさらに備える、
請求項2に記載の電子モジュール。
【請求項28】
請求項1~27のいずれか1項に記載の電子モジュールを備える吸入器。
【請求項29】
医療デバイス用の請求項1~27のいずれか1項に記載の電子モジュールを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸入器または薬送達デバイスのような医療デバイスにおける使用のための電子モジュール、当該電子モジュールを含む医療デバイス、および、当該電子モジュールを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
呼吸器系薬送達デバイスのような医薬送達デバイスにおいて直面する共通の問題は、使用されるデバイスにかかわらず、どのように患者のアドヒアランスおよびコンプライアンスを監視するかである。
【0003】
アドヒアランスは、患者が、例えば1日に処方された回数の用量を服用しているといった、処方箋ラベルに従っていることを取り扱う。処方箋が毎日2回の用量を要求し、患者が1日2回の用量を服用している場合、100%のアドヒアランスと考えられる。患者が1日1回の用量しか服用していない場合、たった50%のアドヒアランスである。後者の場合、患者は当該患者の医師によって処方された治療を受けていない。
【0004】
一方で、コンプライアンスは、患者が薬送達デバイスをどのように使用しているかに関する。効果的な治療のために推奨される方法で使用されている場合、100%のコンプライアンスである。しかしながら、適切に使用されていない場合、100%未満のコンプライアンスである。吸入器の、例えば、ドライパウダー吸入器の使用は特定の方法での吸入を伴う;例えば、吸入は、1用量の薬剤全部を引き込めるほど十分に長く、かつ、十分にしっかりしている必要があり得る。例えば、小児および高齢者といった患者の場合、完全なコンプライアンスのための要件を満たすことは難しいかもしれない。しかしながら、100%のコンプライアンスを達成できないことは、処方された薬剤の有効性を低下させ得る。医者が薬剤を処方するとき、治療の効き目は、患者がデバイスを適切にかつ各日に適切な回数使用することに完全に依存する。患者は、そうすることができないなら、コンディションの改善を感じられない虞がある。患者のアドヒアランス/コンプライアンスを確かめる手段がなく、改善が見られない患者に直面すると、医者は、より強い用量を処方し、または、より強い薬剤を処方するしかないであろう。時として、これは患者を危険にさらすかもしれない。医師が、患者が処方された薬を実際に得ていることを確認する何らかの方法を有するなら、これは避けることができるであろう。
【0005】
吸入器またはプッファー(手動作動式吸入器)は、肺を経由して体内に薬剤を送達するために用いられる医薬送達デバイスの例である。それらは、例えば喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療に用いることができる。吸入器のタイプは、定量吸入器(MDI)、ドライパウダー吸入器(DPI)、複数用量パウダー吸入器(MDPI)、および、噴霧吸入器(ネブライザイザー)を含む。
【0006】
電子部品(-プリント回路基板(PCB)、プロセッサ、センサ(例えば、圧力センサ)、バッテリ、トランスミッタ、キャパシタなど-)を備える電子モジュールは、ドライパウダー薬剤とともに動作する吸入器のような医療デバイスの規制を遵守する観点から、薬送達デバイスとともに使用するのに適したものとなるように特別に開発されており、また、患者のアドヒアランスおよびコンプライアンスが監視される方法を開発するためにデバイス中に組み込まれている。
【0007】
任意の薬送達デバイスへの電子機器の導入は、耐久性、電気-機械的統合、静電効果、抽出可能な揮発性物質および浸出性物質、および、薬送達性能といったいくらかの技術的課題を導入し得る。電子機器を薬送達デバイスに組み込むときの1つの課題は、デバイスが適切な耐久性を有し、頑丈であり、機械的衝撃に対して耐性を有することを確実にすることである;薬送達デバイスに組み込まれた電子機器が、デバイスが落下する結果として損傷せず、及び/又は、断続的にまたは永久的に動作不能にならないことが重要であることが、わかっている。パウダーベースの薬送達デバイスに電子機器を導入することの特有の課題は、電子機器および関連する部品が、用いられているパウダーと適合しているが、それらの意図している機能を実施するために必要な特性を依然として有することを確実にすることである。採用されている電子機器が、パウダーを劣化させたり、変質させたり、または静電効果を有したりするいかなる方法でも、パウダーと不利に相互作用しないことを確実にすることが重要である。
【0008】
電子部品を含む吸入器のような薬送達デバイスは、落下し、機械的衝撃にさらされたときに、損傷し、故障し、または断続的な電力問題を経験し得ることが、落下試験によって見出された。薬送達デバイスの内部の部品に対する損傷は、その損傷がデバイスの最終的な故障につながり得るだけでなく、故障が起こる前に、粒子状物質の生成につながり得るので、望ましくない。薬送達デバイス内で遊離した粒子状物質は、薬の送達に伴い患者によって受容(例えば、吸入または摂取)され得る。電子モジュールに組み込まれるあらゆる新しい材料は、エンドユースに対する適合性を確実にし、必要な健康及び安全要件が満たされることを確実にするために慎重に考慮されなければならない。例えば、それらが毒物学の観点から安全でなければならない。
【0009】
本開示は、医療デバイスへの電子機器の導入によって提起される技術的課題のうちの1つまたは複数を、少なくともある程度まで軽減することを目的とする。
【発明の概要】
【0010】
発明の第1態様では、吸入器のような医療デバイス用の電子モジュールが提供され、電子モジュールは、プリント回路基板と、バッテリが電子モジュールに接続されており、かつ、電子モジュールが機械的衝撃にさらされるときに、バッテリへのエネルギー伝達、及び/又は、バッテリからのエネルギー伝達を減衰させるように構成されたダンパと、を備える。
【0011】
電子モジュールは、例えばモジュール(または電子モジュールを備える医療デバイス)が、例えば高いとこから落とされ、面に力をもって衝突/激突すると、機械的衝撃にさらされるかもしれない。十分な力の衝突は、電子モジュール全体(および電子モジュールを含む医療デバイス全体)に振動を誘発し得うるもので、衝突点において、ある程度の変形をもたらし得る。衝突で、電子モジュール(および、該モジュールが医療デバイスの一部である場合、当該電子モジュールを含む医療デバイス)の運動エネルギーは、何らかの振動および変形の結果として、熱および音エネルギーに変換され得る。
【0012】
バッテリへのエネルギー伝達、及び/又は、バッテリからのエネルギー伝達を減衰(すなわち、低減)させると、突然の衝突から生じ得るバッテリの振動を低減する。バッテリの動き及び/又は振動(しばしば、バッテリをデバイスの内部に保持するバッテリホルダの柔軟性によって拡大される)は:それに取り付けられたプリント回路基板を損傷させて、プリント回路基板を誤った状態にし、かつ、バッテリを消耗させ;プリント回路基板をデバイスの一部に保持する固定具またはヒートステークに損傷および故障をもたらし;および、バッテリをプリント回路基板またはデバイスの他の部分に保持するバッテリホルダをプリント回路基板から剥離させることが分かった。本明細書で用いられる「プリント回路基板」は、任意の形態のプリント回路基板に関し、かつ、任意のプリント回路基板アセンブリ(PCBA)を包含する。第1態様による電子モジュールは、前述の問題を軽減し、吸入器のような医療デバイス用の現在知られている電子モジュールから顕著に発展している。減衰の少なくとも一部は、電子モジュールが機械的衝撃にさらされたときに生じ得るバッテリからの運動エネルギーの吸収を通じて提供されてよく、それによって、バッテリから、プリント回路基板または電子モジュールの任意の他の部品へのエネルギー伝達を低減する。
【0013】
ここで、第1態様の好ましくかつ任意の特徴が以下で説明される。
【0014】
電子モジュールは、プリント回路基板に取り付けられたバッテリを備えてよい。バッテリは、1つまたは複数のコネクタによって、プリント回路基板に取り付けられてよい。好ましくは、バッテリは、2つのコネクタを用いてプリント回路基板に取り付けられてよい。1つまたは複数のコネクタは、バッテリをプリント回路基板に固定的に(着脱不能に)取り付けてよい。各コネクタの一部分がバッテリに取り付けられて、各コネクタの別の部分がプリント回路基板に取り付けられてよい。2つ以上のコネクタが設けられる場合、好ましくは、少なくとも2つのコネクタが、バッテリの異なる側において、または、両側においてバッテリに取り付けられる。1つまたは複数のコネクタは、バッテリとプリント回路基板との間に、電子的接続及び/又は機械的接続を提供するように構成されてよい。1つまたは複数のコネクタは、タブまたはワイヤでよいが、好ましくはタブである。
【0015】
1つまたは複数のコネクタを用いてプリント回路基板上の電気端子にバッテリを堅固に保持することは、バッテリを端子から一時的に離す振動をもたらす機械的衝撃にモジュールがさらされたときに生じ得る電力断続を低減することが分かった。バッテリをプリント回路基板に保持するコネクタは一般的に回避されるであろう、といのも、コネクタ-プリント回路基板接続がバッテリの質量により接続点にてプリント回路基板に望ましくないストレスを与え、キャパシタのようなプリント回路基板上の部品の故障につながると考えられるからである。しかしながら、本明細書に記載されているダンパを有する1つまたは複数のコネクタ(例えばタブ)を用いて、バッテリをプリント回路基板に取り付けることは、デバイスが機械的衝撃にさらされた場合に(従来のバッテリホルダ/ハウジングを用いるのとは対照的に)、電力の断続を有利に低減することが分かった。
【0016】
ダンパは、バッテリ及び/又は1つまたは複数のタブに取り付けられてよい。
【0017】
ダンパは、減衰の少なくとも一部を提供するように構成された基材を備えてよい。基材は、層でよい。基材は、バッテリコネクタの面に接着剤によって付けられてよい。任意で、接着剤の材料はアクリルである。毒物学の観点から安全である任意の他のタイプの接着剤が用いられてよい。
【0018】
接着剤のような粘着性材料は、時に薬送達デバイス、特にパウダーベースの薬を送達するための薬送達デバイスにおいて、漂遊薬剤(例えばパウダー)及び/又は抽出可能な揮発性成分として硬化中および硬化後に放出され得る成分の可能性のある接着ゆえに回避されるべきであるが、本明細書に開示されるように接着剤を用いることは基材の材料をバッテリコネクタに取り付ける安全かつ有効な方法であることが分かった。
【0019】
好ましくは、プリント回路基板が、医療デバイスの面に取り外し可能に取り付けられるように構成されたキャップまたはカバーに取り付けられてよい。キャップは、面に取り外し可能に取り付けられたときに、電子モジュールの1つまたは複数の他の部品を完全にまたは部分的に覆ってよい(若しくは、デバイスのハウジングとともに囲んでよい)。キャップは、面に取り外し可能に取り付けられたときに、面と組み合わせて、電子モジュールの他の部品を完全にまたは部分的に覆ってよく、それによって、医療デバイスが落下した場合に、電子モジュールの他の部品が面に直接接触するリスクを低減する。
【0020】
キャップは、圧力センサ、インジケータ(LED、アラームなど)、温度センサなどの医療デバイス内の電子部品と電子モジュールとの間の機械的及び/又は電子的接続を可能にするように構成されてよい。
【0021】
プリント回路基板は、1つまたは複数のヒートステーク、好ましくは2つのヒートステークによってカバーまたはキャップに取り付けられてよい。1つまたは複数のヒートステークは、プリント回路基板をカバーまたはキャップに取り付けるために、プリント回路基板を貫通し、カバーまたはキャップの中に入ってよい(またはカバーまたはキャップと一体化されてよい)。カバーまたはキャップが存在しない場合、1つまたは複数のヒートステークは、医療デバイスの面、例えば吸入器の内面または外面、例えば吸入器の出口または入口にて、プリント回路基板を取り付けるように構成されてよい。
【0022】
締結具(例えば、ネジ、リベット等)を用いてプリント回路基板をキャップに固定すると落下試験に失敗する可能性がある、というのも、形成された接続が剛性を有し、許容できないからであり、すなわち、プリント回路基板が締結具のみを用いてキャップに取り付けられる場合、吸入器の動作及び/又は性能は悪影響を受け得るからである。プリント回路基板をキャップに固定するために締結具を用いることはまた、製造コスト及び/又は製造時間を増加させ得る。ヒートステークは、プリント回路基板をキャップまたは医療デバイスの面に固定するときに部分的に変形するように構成されてよく、それによって、締まり嵌めを形成してプリント回路基板をキャップまたは面に接続する。ヒートステークは、PCB及び/又はキャップからの機械的エネルギーを減衰または完全に吸収することを可能にする程度の柔軟性を有するように構成される。従って、ヒートステークの使用は、電子モジュールの耐久性を改善する。2つのヒートステークが好ましい。というのも、2つを設けることはプリント回路基板とキャップとの間に強い接続を与え、その一方で、ヒートステークが撓み、PCB及び/又はキャップから機械的エネルギーを吸収することを可能にするからである。プリント回路基板をキャップまたは医療デバイスの面に固定するためにヒートステークを使用することにより、製造コスト及び/又は製造時間を低減し得る。
【0023】
基材は、それが付けられるバッテリの面の全領域を覆わないように構成されてよく、好ましくは、基材は、それが付けられるバッテリの面の95%~40%の間、より好ましくは50%~80%、最も好ましくは80%を覆う。バッテリの面上の基材は、好ましくは1つまたは複数のヒートステークと反対の方向にオフセットされる。例えば、基材は、バッテリの面上の真の/完全な中心から離れ、かつ、ヒートステークの一般的な方向から離れる方向にオフセットされるように、バッテリに付けられてよい。
【0024】
本発明者らは、本願明細書に開示されたデバイスを開発する際、デバイスのコンパクト性ゆえに、加熱によってヒートステークを変形させるプロセスは、基材がバッテリの面と同じ大きさに寸法決めされる場合に、ヒートステークの近くに位置する付けられた基材を劣化させたり、溶融させたりさえすることを見出した。基材の変質または溶融は、基材の性能、寿命に悪影響を及ぼし、例えば、毒物学的観点から未知のまたは予測不可能な安全特性(例えば、抽出可能/浸出可能特性)をもたらすかもしれない。本明細書に記載されるように、基材をオフセットさせ、より小さくすることは、ダンパとして効果的に作用しながら、この問題を回避することがわかった。
【0025】
バッテリコネクタ及び/又はダンパは、基材を面に位置決めするように構成されてよく、それによって、基材が面に対して圧縮減衰を提供することができる(例えば、バッテリへの及び/又はバッテリからのエネルギー伝達を減衰させる)。面は、吸入器のような医療デバイスの面でよく、または、カバーまたはキャップがある場合、カバーまたはキャップの面でもよい。
【0026】
この場合の圧縮減衰とは、基材が面に対して押し付けられて圧縮され、バッテリへの及び/又はバッテリからの伝達される機械的エネルギーを吸収する場合であってよく、それによって、機械的エネルギーが、プリント回路基板、バッテリコネクタ、及び、設けられ得る任意のセンサまたはインジケータといった電子モジュールの他の部分に伝達されることを防止する。
【0027】
基材と面との間に間隔があってよく、電子モジュールが医療デバイスに取り付けられると、前記間隔は5mm未満でよく、好ましくは、その間隔は2mm未満である。基材が、代替的に、電子モジュールが医療デバイスに取り付けられるときに面に対して負荷されるように、すなわち、ダンパの基材が、電子モジュールが医療デバイスに取り付けられるときに面に接触する(および、任意で面に対して押圧してよい)ように配置される。好ましくは、基材が圧縮状態で面に対して負荷されてよい。
【0028】
このようにして基材が面に対して負荷されるように電子モジュールを構成することは、電子モジュールの部品に追加の組立力を加える。増加した組立力は、特に電子モジュールのロバスト性および耐落下性を改善しようとする場合、一般的に回避されるべきであるが、本明細書に開示さている方法で基材を面に対して負荷することは重大な悪影響を及ぼさないが、落下抵抗を改善することがわかった;電子モジュールが機械的衝撃にさらされたとき、基材が面に対して作用することで、電子モジュールの部品が中立点(無負荷時にあるであろう位置)を超えて撓むのを減少させる。1つまたは複数のヒートステークが存在する場合、面に対して負荷された基材は、プリント回路基板を介してヒートステークに圧縮力を加え、(電子モジュールが機械的衝撃にさらされたときのように)負荷にさらされたとき、ヒートステークがその中立点を越えて撓むのを好都合に減衰させ得る。したがって、本明細書に記載された方法で基材を面に対して負荷することは、デバイスが落下する結果としての損傷及び/又は故障の可能性を低減することがわかった。
【0029】
基材は、電子モジュールが医療デバイスに取り付けられたときに基材を圧縮するように面に対して負荷されてよい。好ましくは、基材(医療デバイスに取り付けられた場合)が95%~5%、さらに好ましくは50%未満、より好ましくは25%未満、さらにより好ましくは10%未満にまで圧縮され、ここで、例えば、95%の圧縮は圧縮下の基材の体積が大気条件下で圧縮されていない場合の体積の95%であることを意味する。
【0030】
一旦、電子モジュールが医療デバイスに取り付けられると、基材は、0N~100Nの力(組立力)を面に加えてよく、好ましくは0N~20N、より好ましくは1N~15N、最も好ましくは2N~10Nの力である。
【0031】
基材と面との間の力が高すぎると、基材を塑性変形させるリスクがあることがわかっており、これは、過剰な組立力を避けるべき1つの理由である。基材の材料特性(例えば、材料強度)は、基材が面に対して負荷されたときの塑性変形を回避するように考慮されるべきである。基材の塑性変形-特に基材が発泡体である場合-は、基材が非線形減衰挙動を示すため、その減衰能に悪影響を及ぼすことが分かった。
【0032】
基材は、0.1KPa~200KPaの間の、好ましくは1KPa~100KPaの間の、より好ましくは1KPa~80KPaの間の、さらにより好ましくは5KPa~70KPaの間の、25%圧縮力撓みを有してよい。
【0033】
圧縮力撓みは、多孔性の製品(例えば、発泡材料)の強度の尺度である。25%圧縮力撓みは、材料をその厚さの25%まで圧縮するために必要な力、すなわち、材料が25%の圧縮で作用する力の量に関する。材料の圧縮力撓みは、任意の適切な方法、例えばASTM D3574(test c)規格またはISO3386規格に記載されている方法を用いて決定されてよい。
【0034】
基材は、0.1mm~10mmの厚さでよく、好ましくは0.1mm~3mmまたは0.1mm~5mmの厚さである。
【0035】
基材の材料は、発泡材料でよい。基材は、ゴム、ポリウレタン、シリコーン、ネオプレン、ポリエチレン‐酢酸ビニル、または、低密度ポリエチレンのようなポリエチレンを備えよい。基材は、前述の材料の任意の組合せで形成された2つ以上の層(例えば、2層、3層、4層、5層、7層、8層、9層、10層などの複数層)を含んでよい。
【0036】
電子モジュールは、(医療デバイスが薬剤、例えば、パウダー薬剤を含む場合)、デバイス内に保持された薬剤の、プリント回路基板およびバッテリとの交通を防止するように構成されてよい。電子モジュールは、薬剤の、プリント回路基板およびバッテリとの交通を防止するように構成されたガスケット、メンブレン、またはフィルタをさらに備えてよい。
【0037】
発明の第2態様では、吸入器のような医療デバイス用の電子モジュールが提供され、当該電子モジュールは、プリント回路基板と、1つまたは複数のコネクタによってプリント回路基板に機械的かつ電子的に接続されたバッテリとを備え、コネクタは、電子モジュールが機械的衝撃にさらされたとき、バッテリへのエネルギー伝達及び/又はバッテリからのエネルギー伝達を減衰させるように構成される。
【0038】
バッテリへのエネルギー伝達、及び/又は、バッテリからのエネルギー伝達を減衰させること、および、1つまたは複数のコネクタを用いることの利点は、第1態様に関連して上述されている。
【0039】
発明の第3態様では、吸入器のような医療デバイス用の電子モジュールが提供され、医療デバイスは薬剤を備え、電子モジュールは、プリント回路基板およびバッテリを備え、電子モジュールは、医療デバイス内の薬剤の、プリント回路基板およびバッテリとの交通を防止するように構成されている。
【0040】
医療デバイス内の薬剤から電子モジュールを隔離することは、有利には、薬剤(例えば、粉末)がプリント回路基板およびバッテリと交通し(すなわち、物理的に接触し)、かつ、不利に相互作用することを防止する。
【0041】
電子モジュールは、薬剤の、プリント回路基板およびバッテリとの交通を防止するように構成されたガスケット、メンブレン、またはフィルタをさらに備えてよい。
【0042】
発明の第4態様では、第1、第2、または第3態様のような電子モジュールを備える医療デバイスが提供される。医療デバイスは、薬送達デバイス、血糖モニタ、血中酸素モニタ、血圧モニタ、および注射ペンなどの携帯型医療デバイスでよい。好ましくは、医療デバイスは、吸入器のような薬送達デバイスである。
【0043】
第1態様に関連して記載された任意のかつ好ましい特徴のいずれもが、同等の効果を得るために、第2、第3、および第4態様の任意のかつ好ましい特徴とみなし得る。
【0044】
発明の第5態様では、本明細書に記載されるような電子モジュールを製造する方法が提供され、当該方法は、プリント回路基板を準備するステップと、バッテリが電子モジュールに接続され、かつ、電子モジュールが機械的衝撃にさらされるとき、バッテリへのエネルギー伝達、及び/又は、バッテリからのエネルギー伝達を減衰させるように構成されたダンパを準備するステップと、を備える。
【0045】
発明の第6態様では、吸入器のような医療デバイス用の本明細書に記載されるような電子モジュールを製造する方法が提供され、当該デバイスは、薬剤を含み、当該方法は、プリント回路基板およびバッテリを提供するステップと、薬剤の、プリント回路基板およびバッテリとの交通を防止するように電子モジュールを構成するステップとを備える。
【0046】
発明の第7態様では、吸入器のような医療デバイス用の本明細書に記載されるような電子モジュールを製造する方法が提供され、当該方法は、プリント回路基板と、1つまたは複数のコネクタによって電子モジュールに機械的かつ電子的に接続されるバッテリとを準備するステップを備え、コネクタは、電子モジュールが機械的衝撃にさらされたときに、バッテリへのエネルギー伝達、及び/又は、バッテリからのエネルギー伝達を減衰させるように構成される。
【0047】
第1態様に関連して説明された任意のかつ好ましい特徴のいずれもが、同等の効果を得るために、第5、第6、および第7態様の任意のかつ好ましい特徴とみなし得る。
上記および他の態様の発明は、添付の図面を参照して、単なる例として以下で記載される:
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1図1は、電子モジュール付きの例示の吸入器の部分分解図を示す。
図2図2は、構成部品を斜め下から視た例示の電子モジュールの部分分解図を示す。
図3図3は、構成部品を斜め上から視た例示の電子モジュールの部分分解図を示す。
図4図4は、例示の電子モジュールが取り付けられた例示の吸入器の断面図を示す。
図5図5は、ヒートステークからオフセットされたダンパを備える例示の電子モジュールを示す。
【発明の詳細な説明】
【0049】
呼吸器系薬送達システムにおいて使用するための例示的な電子機器モジュールの詳細な説明が、吸入デバイスにおける使用と関連付けてなされる。本明細書に記載される例示の電子モジュールの用途は、吸入器だけに限定されず、例えば、類似のまたは同等の効果を有する任意の携帯型医療デバイス(呼吸器系薬送達システムを含む)において用いられてよいことが理解されるであろう。携帯型医療デバイスの例示列挙は、吸入器、血糖モニタ、血中酸素モニタ、血圧モニタ、注射ペンなどを含む。
【0050】
図1は、吸入器100の部分分解図を示す。ハウジング190は、上側ハウジング140を備え、当該上側ハウジング140は、下側ハウジング150に整合(インターフェース)してよい。上側ハウジング140および下側ハウジング150は、互いに取外可能にまたは取り外しできないように取り付けられてよく、それによってシール125を形成する。吸入器100は、電子モジュール105を含んでもよい。電子モジュール105は、上側ハウジング140と整合するキャップ110(例えば、電子モジュールキャップ)を含んでよい。キャップ110および上側ハウジング140は、互いに取外可能にまたは取り外しできないように取り付けられてよく、それによってポイント127でシールを形成する。キャップ110が上側ハウジング140に取り付けられると、側壁221、頂内面220、および、上側ハウジング140の頂部とがエアスペースを規定する。このエアスペースは、吸入器100内に備えられた送達される任意の薬/薬剤が入ることができない(すなわち、流体または固体微粒子の交通がない)ように構成されてよいが、この要件は必須ではない。
【0051】
電子モジュール105のキャップ110は、プリント回路基板(PCB)118を収容してよく、当該PCB118は、ノッチ119を規定する縁117を有してよい。PCB118は、図2および図5に示されるように、本明細書でさらに説明されるように、複数のヒートステーク212、214を介してキャップ110に取り付けられてよい。ヒートステーク212、214は、キャップ110内にPCB118を保持するように構成されてよい。スライダ116は、実質的にキャップ110内に収容されており、マウスピースカバー130の動作に基づいてPCB118を起動(作動)させるように(アクティブにするように)構成されてよい。例えば、スライダ116は、マウスピースカバー130が開かれてマウスピースを露出させるとき、キャップ110内を軸方向に動いて、PCB118上のスイッチ222(図2および図3に示される)を起動させてよい。
【0052】
スライダ116がキャップ110内にスライド可能に取り付けられる場合、スライダ116の第1(例えば、上側)部分がノッチ119を通って突出してよい。スライダ116の第2(下側)部分は、オリフィス146の1つを通って突出し、かつ、上側ハウジング140内に延在してよい。2つ以上のオリフィス146が設けられて、上側ハウジング140及び/又はキャップ110が、それらが互いに取り付けられる方法に影響を及ぼすことなく、軸周りに180度回転されることを可能にしてよい。本明細書でさらに説明されるとおり、電子モジュール105内のスライダスプリング(例えば、図1図2、および図3に示されるスライダスプリング260)は、スライダ116を下方向に付勢してよい、すなわち、スライダを下側ハウジング150に向けて押してよい。ゆえに、スライダスプリングは、上側ハウジング140内のスライダ116の端を、ヨーク(図示されていない)の頂面との接触を維持しかつ継続的にこれに寄りかるようにしてよい。したがって、スライダ116は、マウスピースカバー130が開位置と閉位置との間で動かされるとき、同じ軸に沿ってヨークと共に軸方向に動いてよい。スライダは、吸入器のヨークの動きを電子モジュールのスイッチ222へ伝達してよい。吸入器のヨークの運きは、典型的な吸入器の動作(操作)と関連してよく、例えば、ヨークは、吸入器のマウスピースカバー130の開閉と関連して動いてよい。ゆえに、スライダスプリングは、マウスピースカバー130が閉位置にあるとき、上側ハウジング140内のスライダ116の端が、上側ハウジング140内のヨークの頂面との接触を維持し、連続的にこれに当接することをもたらしてよく、マウスピースカバー130が開位置にあるとき、スライダがヨークから外れることをもたらしてよい。ここで、スライダは、電子モジュールを、ユーザによく知られている動作(操作)に効果的に組み込ませてよく、吸入器の全体的な電気機械的統合を改善する。すなわち、電子モジュールの起動(アクティブ化)は、ユーザが吸入器を操作する際にユーザに対して透過的でよい(ユーザにわかりやすいようにしてよい)。キャップ110は、電子モジュールと一体化されたLEDの近傍に配置されるように構成された実質的に透明な部分111を備えてよく、それによって、LEDが吸入器の動作をユーザに示すために用いられてよく、例えば、LEDはカバー130が開位置にあることに起因して、または、1または複数回の用量の薬剤が吸入器から投与されたときに、電子モジュールの起動(アクティブ化)を示すために用いられてよい。
【0053】
PCB118をキャップ110に固定するヒートステーク212、214は、キャップ110と一体的に形成されてよい。図2は、一体的に形成された2つのヒートステーク212、214を示すが、キャップ110は2つのヒートステークのみを備えることに限定されず、より多くの、例えば、3、4、5、6、7、8、9、10個等の複数のヒートステークを備えてよい。ヒートステーク212、214は、キャップ110の頂内面220から突出するまたは延在してよい。キャップ110は、2つのタイプのヒートステークを備えてよい。ヒートステーク212は、円形の断面形状を有してよいが、これに限定されず、任意の他の断面、例えば、正方形、三角形などを有してよい。ヒートステーク212は、標準的なヒートステークの直径よりも小さい直径を有してよい。すなわち、ヒートステーク212の直径は、吸入器100がPCB118上に余りに多くのスペースを占めることなく落下試験に合格するように選択されてよい。好ましくは、ヒートステーク212は、1.4mm未満の直径を有してよい。PCB118は、図2および図3に示されるように、複数の開口224、226を有してよい。1つまたは複数の開口(例えば、開口226)は、PCB118がキャップ110内に取り付けられるときに、ヒートステーク212が開口226を介してPCB118を通って突出するように適合され得るように、ヒートステーク212に対応してよい。
【0054】
ヒートステーク214は、例えばリブ形状の断面のような、非円形の断面を有してよい。ノッチ224は、例えば、ステーク214の位置に対応してよい。PCB118は、PCB118がキャップ110内に取り付けられたときに、ヒートステーク214がノッチ224を介してPCB118を通って突出するように適合され得るように、ノッチ224を規定してよい。ヒートステーク212およびヒートステーク214のそれぞれは、キャップ110の頂内面220とは反対側の末端を規定してよい。ヒートステーク212およびヒートステーク214の各々の末端は、所定の温度にまで加熱されると部分的に変形するように構成されてよい。部分的に変形されると、ヒートステーク212、214の末端は実質的にドームまたは半球(例えば、1/2球)の形状を取ってよい。部分的に変形したヒートステーク212、214は、PCB118をキャップ110に固定してよく、その際にテンションで負荷されてよい。(図5に示すような)追加のヒートステーク216が設けられてもよい。ヒートステーク216は、キャップ110と一体化されてもよく、PCB118がキャップ110内に取り付けられたとき、PCBの開口を介してPCB118を通って突出するが、ヒートステーク212、214に関連して上述したように変形されなくてよい。
【0055】
PCB118は、プロセッサおよびトランスミッタ(図示されない)をさらに含んでよい。電子モジュール105は、(例えば、吸入器の平衡化に続いて)吸入器の製造の終盤頃に吸入器100の上側ハウジング140に設置されてよい。電子モジュール105を吸入器100の製造の終盤頃に上側ハウジング140に設置することは、吸入器100の平衡化がPCB118上の敏感な電子機器を損傷し得るので、有利であろう。平衡化は、吸入器100に薬剤を充填し、吸入器100を所定の温度および湿度で、吸入器100の最終包装前に、期間(例えば、4週間)保管することを含んでよい。吸入器100の上側ハウジング140に電子モジュール105を設置することにより、製造施設の無菌のクリーンな充填エリアで電子部品を組み立てることを回避する。
【0056】
バッテリ230(例えば、コインセルなど)は、バッテリ230がPCB118との接触を維持するように、タブ240、242を介してPCB118に取り付けられてよい。タブ240、242の各々は、バッテリ230に取り付け可能に構成された第1部分240a、242aと、PCB118に取り付け可能に構成された第2部分240b、242bとを含んでよく、それによって、PCB118をバッテリ230に取り付ける。第1部分240aは、バッテリ230の一側230aに隣接する実質的に平坦な長方形の面(タブ/ストリップ部分)を備えてよく、第1部分242aは、バッテリ230の他側230bに隣接する実質的に平坦な長方形の面を備える。タブ240は、タブ242が取り付けられるバッテリ230の側230bとは反対側のバッテリ230の側230aに取り付けられてよい。第2部分240b、242bは、第1部分240a、240bに対して実質的に直角であり、そして、平坦な長方形の面(タブ/ストリップ部分)を備え、当該面は、第1部分に対して、小さい寸法-好ましくは図2および図3に示されるように小さい幅-であってもよいが、これは必須ではない。PCB118は、図2および図3に示されるように、複数の開口229を有してよい。バッテリ230がPCB118の隣に持ち込まれたときに、第2部分240b、242bが開口229を介してPCB118を通って突出するように適合され得るように、複数の開口229が第2部分240b、242bに対応してよい。例えば、タブ240b、242bはバッテリ230がPCB118の隣に持ち込まれたときに、PCB118によって規定された開口229を通って延在してよい。タブ240b、242bは可撓性を有してよく、それにより、タブがゆがんで開口229と係合し、バッテリ230がPCB118に取り外し可能に取り付けられてよい。タブ240、242は電気接続が機械的接続に加えてPCB118とバッテリ230との間に形成され得るように構成されてよく、タブはバッテリ230上の端子とPCB118上の電気接点との間に電気接続を提供する。
【0057】
第1部分240a、242aおよび第2部分240b、242bは、任意の適切な手段(例えば、スポット溶接または接着剤)によって、バッテリ230の面に取り付けられてよい。一旦、第2部分240b、242bが開口229を通って突出した後に、突出部分が、タブ240、242(したがって、バッテリ230)をPCB118に固定するために、適所で(所定の位置で)、曲げられ、溶接され、または、はんだ付けされてよい。あるいは、バッテリ230が図2および図3のタブ240、242に示されるのと同様の方法で、1つまたは複数のタブによって取り付けられてよい。例えば、2つ、3つ、4つ、5つなどの複数のタブ240,242があってよく、当該タブは、バッテリのいずれかの側230a、230bに、PCB118上でそれらを受け入れるための対応する数の開口229を用いて取り付けられよい。
【0058】
PCB118の1つまたは複数の部品は、マウスピースカバー130の位置に基づいて選択的に起動(アクティブに)されてよい。例えば、スイッチ222の起動(アクティブ化)(例えば、光センサ、加速度計、またはホール効果センサなどの他の何らかのスイッチング手段の起動)は、プロセッサ及び/又はトランスミッタをオフ状態(または電力節約スリープモード)からオン状態(またはアクティブモード)に立ち上げてよい。逆に、スイッチ222の非アクティブ化は、プロセッサ及び/又はトランスミッタをオン状態(またはアクティブモード)からオフ状態または低電力モードに移行させてよい。
【0059】
ダンパ101は、バッテリ230(図1図5に示される)に取り付けられてよく、バッテリ230がPCB118に取り付けられたとき、かつ、電子モジュールが外部の機械的衝撃にさらされたとき、バッテリ230への及び/又はバッテリ230からのエネルギー伝達を減衰させてよい。ダンパ101は、接着剤によってバッテリ230に取り付けられた発泡基材層でよい。代替で(または追加で)、同様のダンパが、電子モジュールの任意の他の部品に取り付けられてよい。発泡基材層をバッテリホルダに固定するための、吸入器のような医療デバイスに用いられるのに適した接着剤は、アクリル系接着剤でよいが、毒物学の観点から安全な任意の他の適切な接着剤でもよい。電子モジュール105のキャップ110が吸入器の上側ハウジング140に取り付けられたときに、発泡基材層が上側ハウジング140の面に対して負荷されるように、すなわち、発泡体基材を圧縮するように発泡基材層が上側ハウジング140の面に対して押されるように、キャップ110、バッテリ230、PCB118、及び/又はヒートステーク212、214が、ダンパ101の発泡基材層を位置決めするために電子モジュール105内で構成(形成、及び/又は、位置決め)されてよい。ダンパが効果的であるために発泡基材が上側ハウジング140の面に対して負荷されることは、好ましいが、必須ではなく、すなわち、発泡基材層と上側ハウジング140の面との間に隙間があってもよく、この隙間は3mm未満でよい。発泡基材と上側ハウジング140の面との間には、製造公差ゆえに隙間が生じることがある。
【0060】
吸入器100が落下し、電子モジュール105の部品が機械的衝撃にさらされると、PCB118をキャップ110に取り付けているヒートステーク212、214はPCB118およびそれに取り付けられた部品のある程度の動きを可能にし、衝撃から生じ得る故障または悪影響を軽減する。PCB118の動きはヒートステーク212、214の弾性変形から、及び/又は、ヒートステーク212、214に対してのPCB118の動きから生じる。
【0061】
ダンパ101の発泡基材層は、圧縮減衰(すなわち、上側ハウジング140の面に対する発泡基材層の圧縮)によって、バッテリ230への及び/又はバッテリ230からのエネルギー伝達を減衰させ、電子モジュール105が機械的衝撃にさらされたときにバッテリ230が過度に振動することを防止する。ダンパ101はバッテリ230への、及び/又は、バッテリ230からの伝達されたエネルギーを低減させ、したがって、ヒートステーク212、214、およびPCB118へのエネルギー伝達を低減し、それにより、ヒートステーク212、214が故障し、または損傷したり、PCB118が誤った状態に移行したり、バッテリ230を消耗させたり、及び/又は、PCB118またはデバイスの他の部分を保持するタブがバッテリ230から剥がれたりするリスクを低減する。
【0062】
ダンパ101の発泡基材層は円盤状であり、それが取り付けられるバッテリ230の面よりもサイズが小さく、バッテリ230は直径20mmのコインセルバッテリであり、発泡基材層は直径16mm(すなわち、直径が20%小さい)を有する。発泡基材層は、図5に示すように、バッテリ230の面上に、その中心位置からオフセットされるように、位置決めされてよい。発泡基板層は、電子モジュール105の製造プロセスの最終段階において、ヒートステーク212、214が変形/溶融されてPCB118をキャップ110に固定する際に、発泡基材層が熱分解しないように、ヒートステーク212、214から離れるように、バッテリ230の面上でオフセットされる。
【0063】
図1図5に示されるダンパ101の発泡基材層は、厚さ3.2mmであり、約10 KPaの25%圧縮撓みを有するエチレン‐酢酸ビニル(EVA)独立気泡フォームからなる。発泡基材層101は、約0.2gであり、揮発性抽出物として、1.672mcg/gのアセトアルデヒド、5.012mcg/gのメタノール、4.254mcg/gの1‐ブタノール、および、57.882mcg/gの2‐エチルヘキサノールを備える。
【0064】
毒物学的観点から安全である限り、所望の減衰特性を有する他の適切な基材層、例えば、ポリウレタン、シリコーン、ネオプレン、または低密度ポリエチレンなどのポリエチレンを備える発泡体が用いられてよい。発泡基材層は、ISO10993に準拠したもの、例えば、Vancive(商標)Medical TechnologiesによるMED5634単層コート発泡体でよい。
【0065】
ガスケット、メンブレン(例えば、ゴムメンブレン)、フィルタ等(図には示されていない)が、ハウジング190と電子モジュール105内のPCB118およびバッテリ230との間の交通(連通)を回避するために、オリフィス146を覆うように任意に用いられてよく、それによって、ハウジング190内の薬剤が電子モジュール105の電子部品と交通/相互作用することを防止する。上述のように薬剤がモジュールの電子部品と交通するのを防止する手段は、スライダ116が本明細書で記載されているように動作することを可能にするように構成される。上述したような、薬剤の、モジュールの電子部品との交通を防止する任意の手段は、電子モジュール105に存在するあらゆるセンサの機能を妨げないように構成されてよい。
【0066】
PCB118は、患者の吸入に関する情報をプロセッサ(図示せず)に提供することができるセンサ(図示せず)を含んでよい。センサは、MEMSまたはNEMS圧力センサ(例えば、気圧センサ、差圧センサなど)といった圧力センサでよい。センサは、例えば圧力変化及び/又は圧力差を用いて、情報を提供してよい。センサは、プロセッサに、瞬間的な圧力測定値及び/又は時間に渡って集計された圧力測定値を提供してよい。プロセッサは、当該情報を用いて、吸入器内の空気流路を通じた患者の吸入に関連する空気流量を割り出してよい。プロセッサはまた、当該情報を用いて、空気流の方向を割り出してよい。すなわち、吸入器内の空気流路を通じた空気圧の負の変化は、患者がマウスピースから吸入したことを示し得るものであり、空気流路を通じた空気圧の正の変化は、患者がマウスピース内へ吐出したことを示し得る。
【0067】
電子モジュール105は、Bluetoothチップセット(例えば、Bluetooth Low Energyチップセット)などの無線通信回路をさらに含んでよい。したがって、電子モジュール105は圧力測定値を外部デバイス(例えば、スマートフォン)に提供してよく、外部デバイスは圧力測定データに対して追加の計算を実行してよく、ユーザにフィードバックを提供してよく、及び/又は、同様のことを提供してよい。電子モジュール105は、制御回路を含んでよく、当該制御回路は、例えば、通信回路の一部でよい。
【0068】
スイッチ222及び/又はセンサから受信した情報または信号に基づいて、電子モジュール105は、マウスピースカバー130が開いているか閉じているかどうか、および、受信した圧力測定値が閾値を超えるか、または特定の圧力範囲内にあるかどうかを判定してよく、これは、ユーザによって吸入された薬剤が所定のレベルまたは処方されたレベルに達したかどうかを示し得る。圧力測定閾値及び/又は範囲は、電子モジュール105のメモリに格納されてよい。所定の閾値または範囲が満たされると、電子モジュール105は吸入器100の状態を割り出し、吸入器100の状態を示す信号を生成してよい。
【0069】
電子モジュール105は、センサによって収集されたデータ(例えば、圧力測定値)及び/又はプロセッサによって生成されたデータ(例えば、空気流量)を格納するためのメモリ(図示せず)を含んでよい。格納されたデータは、プロセッサによってアクセスされ、無線通信回路を介して、スマートフォンのような外部デバイスと無線で通信されてよい。メモリは、取り外し不能なメモリ及び/又は取り外し可能なメモリでよい。取り外し不能なメモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、ハードディスク、または任意の他のタイプのメモリ格納デバイスを含んでよい。取り外し可能なメモリは、加入者識別モジュール(SIM)カード、メモリスティック、セキュアデジタル(SD)メモリカードなどを含んでよい。電子モジュール105は、例えばサーバまたはスマートフォンなどにある、吸入器100内に物理的に位置されていないメモリから情報にアクセスし、当該メモリにデータを格納してよい。
【0070】
電子モジュール105のプロセッサは、マイクロコントローラ、プログラマブルロジックデバイス(PLD)、マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または任意の適切な処理デバイス、コントローラ、または制御回路を備えてよい。プロセッサは、内部メモリを備えてよい。
【0071】
電子モジュール105のプロセッサは、バッテリ230から電力を受けてよく、電子モジュール105内の他の部品に対して電力を分配及び/又は制御するように構成されてよい。バッテリ230は、電子モジュール105に電力供給するための任意の適切なデバイスでよい。バッテリ230は、電子モジュール105のPCB、センサ、メモリ、及び/又はトランシーバのうちの1つまたは複数に直接接続されてよい。
【0072】
本発明に係る電子モジュールおよび方法は、医療デバイスで使用するための従来の電子モジュールおよびその製造方法から顕著に発展している。本明細書に開示された電子モジュールは、落下したときの損傷または故障に対する改善されたロバスト性および耐久性を提供する。当業者は、本明細に開示された電子モジュールおよび方法が限定ではなく例として教示していることを理解するであろう。したがって、上記の説明に含まれる、または添付の図面に示される事項は例示的なものとして解釈されるべきであり、限定的な意味で解釈されるべきではない。以下の特許請求の範囲は、本明細書に記載されるすべての一般的および具体的なの特徴、ならびに、言語の問題として、その間に入ると言われ得る、本電子デバイスおよび方法の範囲のすべての陳述を包含することが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】