(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-01
(54)【発明の名称】特徴付けられた間葉系幹細胞増殖因子およびエクソソームを使用する歯周疾患の治療方法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/28 20150101AFI20220624BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20220624BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20220624BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20220624BHJP
A61K 38/18 20060101ALI20220624BHJP
【FI】
A61K35/28
A61P1/02
A61K9/107
A61K9/06
A61K38/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564403
(86)(22)【出願日】2020-04-29
(85)【翻訳文提出日】2021-10-28
(86)【国際出願番号】 US2020030476
(87)【国際公開番号】W WO2020223349
(87)【国際公開日】2020-11-05
(32)【優先日】2019-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520469516
【氏名又は名称】ダイレクト バイオロジクス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ペティネ,ケネス アレン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA17
4C076BB23
4C076CC29
4C084AA02
4C084BA44
4C084CA25
4C084DB52
4C084MA57
4C084NA14
4C084ZA671
4C084ZA672
4C084ZB111
4C084ZB112
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB63
4C087CA04
4C087CA06
4C087MA57
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA67
4C087ZB11
(57)【要約】
本発明は、歯周疾患の治療のための方法を記載する。本方法は、スクリーニングされたドナーからの特徴付けられた無細胞間葉系幹細胞(MSC)由来組成物を歯周組織に適用することを含み得る。本方法はまた、足場を歯周組織に送達することを含み得、足場は、特徴付けられた無細胞MSC由来組成物を局所的に送達する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における歯周疾患またはその症状を治療、阻害、低減、緩和、および/または予防する方法であって、治療有効量の間葉系幹細胞(MSC)エクソソーム調製物を対象に投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記MSCエクソソーム調製物が、歯周組織に直接投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記MSCエクソソーム調製物が、MSCから得られる増殖因子をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記MSCエクソソームが、注射、MSCエクソソーム担持生体適合性足場、生体適合性ヒドロゲル、局所クリームおよび/または軟膏を介して投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年4月29日に出願された米国仮特許出願第62/839,975号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
歯周炎は、歯の支持組織の慢性炎症性疾患である。この疾患は、特定の微生物または特定の微生物の群によって引き起こされ、これは、セメント質のコラーゲン繊維の病理学的断裂、増加したプロービング値形成、退縮、またはその両方を伴う歯周靭帯および歯槽骨の進行性の破壊、ならびに結合上皮の根尖移動をもたらす。
【0003】
これらの状態が時間とともに持続すると、それらは支持の欠如に起因して歯が失われるまで組織の破壊を継続させる。これは、患者の咀嚼、発声、および美観を冒す局所レベルでの波及だけでなく、生活の質を冒す他の病態にも関連する。
【0004】
この疾患は、その初期段階では成功裏に治療され得るが、不幸にも、診断は疾患が歯周靭帯を冒すときであり、大部分の患者は疾患が非常に進行したときに歯科治療を求め、口中の歯を保つ機会は極めて少ない。その結果、様々な治療の選択肢は、組織(歯槽骨、歯周靭帯、およびセメント質)の失われた健康を回復することに集中している。従来の治療は、衛生の強調、スケーリングおよびルートプレーニングの実施、抗生物質の提供、および時折、歯根表面にアクセスしてそれを適切に郭清するための歯肉剥離掻爬術の実施からなる。これらの行為は、疾患の急性期を停止させ、時折、相当量の新たな結合組織付着が回復する。しかしながら、歯周組織の複雑な構造の再生は達成されない。従来の治療は、欠損を充填し、失われた歯組織を置き換える天然および合成の材料に依存しているが、これらのアプローチは、生理学的なアーキテクチャおよび機能を有する組織の真の再生の代替とはならない。したがって、歯周疾患のための新たな治療が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
歯周疾患の治療に使用するための、間葉系幹細胞(MSC)エクソソーム組成物に関連する方法および組成物が開示される。
【0006】
一態様では、対象における歯周疾患を治療、阻害、低減、緩和、および/または予防する方法であって、治療有効量の間葉系幹細胞(MSC)エクソソーム調製物を対象に投与することを含む、方法が本明細書で開示される。
【0007】
先行態様のいずれかの方法であって、MSCエクソソーム調製物が、生体適合性足場(例えば、ヒドロゲルマトリックスなど)および/または局所クリームもしくは軟膏を介して投与される、方法もまた本明細書で開示される。
【0008】
一態様では、先行態様のいずれかの方法であって、MSCエクソソーム調製物が、MSCから得られる増殖因子(例えば、プロスタグランジンE2(PGE2)、トランスフォーミング増殖因子β1(TGF-β1)、肝細胞増殖因子(HGF)、ストロマ細胞由来因子1(SDF-1)、一酸化窒素、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ、インターロイキン4(IL-4)、IL-6、インターロイキン10(IL-10)、IL-1受容体アンタゴニストおよび可溶性TNF-α受容体、インスリン様増殖因子、線維芽細胞増殖因子(FGF)1~23(特に、FGF1およびFGF2)、骨形態形成タンパク質(BMP)1~15、上皮増殖因子(EGF)、トランスフォーミング増殖因子α(TGF-α)、マクロファージ刺激タンパク質(MSP)、血小板由来増殖因子(PLGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、インスリン、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、ならびに/またはホルモン(エストロゲンおよび甲状腺ホルモンを含む)など)をさらに含む、方法が本明細書で開示される。
【0009】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、いくつかの実施形態を例証し、説明と一緒に、開示される組成物および方法を例証する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】歯周組織再生に対するMSCの直接的および間接的な効果の模式図を示す。
【
図2】MSC培地からの細胞外小胞のナノ粒子トラッキング分析(NTA)を示す。NTAは、MSC培地からの細胞外小胞の、粒子のサイズおよび濃度を決定することができる。
【
図3】粒子のサイズおよび濃度を示す蛍光顕微鏡法によって評価されたエクソソームを示す。
【
図4】MSCがセメント質を再生することができることを示す。セメント質の長さを、MSCの投与の8および12週間後に測定した。
【
図5】未処置対照(対照-CM)と比較しての、幹細胞の投与後(PDLSC-CM)のラット歯周組織の炎症関連サイトカインの減少を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の化合物、組成物、物品、デバイス、および/または方法を開示および説明する前に、それらは、別段の特定がない限り、特定の合成方法または特定の組換えバイオテクノロジー方法に限定されず、または別段の特定がない限り、特定の試薬に限定されず、もちろん変動し得ることが理解される。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態の説明目的のためのみのものであり、限定することを意図するものではないこともまた理解される。
【0012】
定義
本明細書およびそれに続く特許請求の範囲において、いくつかの用語に言及し、それらは以下の意味を有すると定義される。
【0013】
「任意の」または「任意に」は、その後に記載される事象または状況が生じてもよくまたは生じなくてもよいこと、および、記載が、当該事象または状況が生じる場合および生じない場合を含むことを意味する。
【0014】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、別段の文脈による明らかな指示がない限り、複数の指示物を含む。したがって、例えば、「薬学的担体」への言及は、2つ以上のそのような担体の混合物を含む、など。
【0015】
範囲は、本明細書において、「約」1つの特定の値から、および/または「約」別の特定の値までとして表され得る。そのような範囲が表される場合、別の実施形態は、当該1つの特定の値から、および/または当該他の特定の値までを含む。同様に、値が、先行する「約」の使用によって近似値として表される場合、特定の値は別の実施形態を形成することが理解される。各々の範囲の終点は、他の終点との関係で、および、他の終点とは無関係に、の両方で意義を有することがさらに理解される。また、本明細書で開示されるいくつかの値が存在すること、各々の値がその値自体に加えて「約」その特定の値としても本明細書で開示されることが理解される。例えば、値「10」が開示される場合、「約10」もまた開示される。また、値が開示される場合、当業者によって適切に理解されるように、「その値以下」、「その値以上」および値間の可能な範囲もまた開示されることが理解される。例えば、値「10」が開示される場合、「10以下」ならびに「10以上」もまた開示される。また、本出願を通して、データはいくつかの異なる形式で提供されること、および、このデータは、終点および始点、ならびにデータ点の任意の組み合わせの範囲を表すことが理解される。例えば、特定のデータ点「10」および特定のデータ点15が開示される場合、10および15超、10および15以上、10および15未満、10および15以下、ならびに10および15に等しいが、10と15との間と同様に開示されるとみなされることが理解される。また、2つの特定の単位間の各単位もまた開示されることが理解される。例えば、10および15が開示される場合、11、12、13、および14もまた開示される。
【0016】
「対象」という用語は、霊長類(例えば、ヒト)、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウスなどを含むがこれらに限定されない、哺乳動物などの動物を含むと本明細書において定義される。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。
【0017】
対象への「投与」には、対象に薬剤を導入または送達する任意の経路が含まれる。投与は、経口、局所、静脈内、皮下、経皮(transcutaneous)、経皮(transdermal)、筋肉内、関節内、非経口、細動脈内、関節内、皮内、脳室内、頭蓋内、腹腔内、病巣内、鼻腔内、直腸内、膣内、吸入による、移植リザーバーを介する、非経口(例えば、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑膜内、胸骨内、髄腔内、腹腔内、肝内、病巣内、および頭蓋内注射または注入技術)などを含む任意の好適な経路によって実施され得る。「同時(concurrent)投与」、「併用投与」、「同時(simultaneous)投与」、または「同時に投与される」は、本明細書で使用される場合、化合物が同じ時点で、または本質的に互いに直後に投与されることを意味する。後者の場合、2つの化合物は、観察される結果が、化合物が同じ時点で投与されるときに達成される結果と区別不能なほど十分に近い時点で投与される。「全身投与」は、対象の身体の広範な領域(例えば、身体の50%超)に薬剤を導入または送達する経路を介して、例えば、循環系またはリンパ系への入口を通して、対象に薬剤を導入または送達することを指す。対照的に、「局所投与」は、投与点の領域または投与点にすぐ隣接する領域に薬剤を導入または送達し、治療的に有意な量では薬剤を全身的に導入しない経路を介して、対象に薬剤を導入または送達することを指す。例えば、局所投与される薬剤は、投与点に近い位置で容易に検出可能であるが、対象の身体の遠位部では検出不可能であるかまたは無視できる量で検出可能である。投与には、自己投与および別のものによる投与が含まれる。
【0018】
「生体適合性」は、一般に、レシピエントに対して一般的に無毒性であり、対象に対して重大な副作用を引き起こさない材料およびその任意の代謝物または分解産物を指す。
【0019】
「含む」は、組成物、方法などが、記載される要素を含むが、他の要素を排除しないことを意味することが意図される。組成物および方法を定義するために使用される場合、「本質的にからなる」は、記載される要素を含むが、その組み合わせに対する任意の本質的な重要性のある他の要素を排除することを意味する。したがって、本明細書で定義される、本質的に要素からなる組成物は、単離および精製方法、ならびに薬学的に許容される担体、例えば、リン酸緩衝生理食塩水、保存剤などからの微量混入物を排除しない。「からなる」は、微量より多い他の成分要素、および本発明の組成物を投与するための実質的な方法工程を排除することを意味する。これらの繋ぎ用語の各々によって定義される実施形態は、本発明の範囲内である。
【0020】
「対照」は、比較目的のために実験において使用される代替の対象または試料である。対照は、「正」または「負」であり得る。
【0021】
薬剤の「有効量」は、所望される効果を提供するために十分な薬剤の量を指す。「有効な」薬剤の量は、対象の年齢および一般的状態、特定の薬剤または複数の薬剤などの多くの要因に応じて対象によって変動する。したがって、定量化された「有効量」を特定することが常に可能であるわけではない。しかしながら、任意の対象症例における適切な「有効量」は、ルーチン実験を使用して当業者によって決定され得る。また、本明細書で使用される場合、別段の具体的記述がない限り、薬剤の「有効量」は、治療有効量および予防有効量の両方を包含する量も指し得る。治療効果を達成するために必要な薬剤の「有効量」は、対象の年齢、性別、および体重などの要因に従って変動し得る。投薬レジメンは、最適な治療応答を提供するように調整され得る。例えば、いくつかの分割用量を毎日投与してもよく、または用量を治療状況の緊急性による指示に応じて相対的に低下させてもよい。
【0022】
「減少」は、より小さな遺伝子発現、タンパク質産生、症状、疾患、組成、状態、または活性の量をもたらす任意の変化を指し得る。物質はまた、物質ありでの遺伝子産物の遺伝子アウトプットが、物質なしでの遺伝子産物のアウトプットと比較して少ないときに、遺伝子の遺伝子アウトプットを減少させると理解される。また、例えば、減少は、症状が以前に観察されたよりも少ないような障害の症状の変化であり得る。減少は、統計的に有意な量の状態、症状、活性、組成の任意の個別の、中央値の、または平均の減少であり得る。したがって、減少は、減少が統計的に有意である限り、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100%の減少であり得る。
【0023】
「阻害する」、「阻害している」、および「阻害」は、活性、応答、状態、疾患、または他の生物学的パラメータを減少させることを意味する。これには、活性、応答、状態、または疾患の完全な消失が含まれ得るが、これらに限定されない。これにはまた、例えば、天然または対照のレベルと比較しての、活性、応答、状態、または疾患の10%の低下が含まれ得る。したがって、低下は、天然または対照のレベルと比較しての、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100%、またはその間の任意の量の低下であり得る。
【0024】
「治療する」、「治療している」、「治療」、およびそれらの文法的変形は、本明細書で使用される場合、1つ以上の疾患もしくは状態の強度もしくは頻度、疾患、障害、損傷もしくは状態の症状、または疾患もしくは状態の根本原因を、部分的にまたは完全に、予防する、遅延させる、治癒する、治す、軽減する、和らげる、変化させる、救済する、緩和する、改善する、安定化する、鎮静する、および/または低減することを意図または目的とした組成物の投与を含む。本発明による治療は、予防的に(preventively)、予防的に(prophylactically)、一時緩和的にまたは救済的に適用され得る。予防的処置は、発症前に(例えば、がんの明らかな徴候の前に)、早期発症中に(例えば、がんの初期徴候および症状に際して)、またはがんの確立された発達後に対象に投与される。予防的投与は、感染の症状の発現前、1日または数日間から数年間行われ得る。
【0025】
「予防する」、「予防している」、「予防」という用語、およびそれらの文法的変形は、本明細書で使用される場合、部分的または完全に、疾患および/もしくは1つ以上のその付随症状の発症もしくは再発を遅延もしくは妨害するか、または対象が疾患を獲得もしくは再獲得することを妨げるか、または疾患もしくは1つ以上のその付随症状を獲得もしくは再獲得する対象のリスクを低減する方法を指す。
【0026】
「薬学的に許容される」構成要素は、生物学的にまたはその他で所望されないことがない構成要素を指し得、すなわち、構成要素は、重大な所望されない生物学的効果を引き起こすことなく、またはそれが含まれる製剤の他の構成要素のいずれとも有害な様式で相互作用することなく、本明細書に記載のように本発明の医薬製剤に組み込まれ、対象に投与され得る。ヒトへの投与に関して使用される場合、この用語は、一般に、成分が毒性および製造試験の必要とされる基準を満たしていること、または米国食品医薬品局によって作成されたInactive Ingredient Guideに含まれていることを意味する。
【0027】
「薬学的に許容される担体」(時折「担体」という)は、一般的に安全かつ無毒性である薬学的または治療的組成物の調製に有用な担体または賦形剤を意味し、獣医学および/またはヒトの薬学的または治療的使用に許容される担体を含む。「担体」または「薬学的に許容される担体」という用語には、リン酸緩衝生理食塩水、水、エマルション(油/水もしくは水/油エマルションなど)、および/または様々な種類の湿潤剤が含まれ得るが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、「担体」という用語は、限定されないが、任意の賦形剤、希釈剤、充填剤、塩、緩衝剤、安定剤、可溶化剤、脂質、安定剤、または医薬製剤における使用のために当技術分野でよく知られており、本明細書でさらに記載されるような他の材料を包含する。
【0028】
「薬理学的に活性な」誘導体またはアナログにおけるような、「薬理学的に活性な」(または単に「活性な」)は、親化合物と同じ種類の薬理学的活性をほぼ同等程度有する誘導体またはアナログ(例えば、塩、エステル、アミド、コンジュゲート、代謝物、異性体、フラグメントなど)を指し得る。
【0029】
「治療薬」は、有益な生物学的効果を有する任意の組成物を指す。有益な生物学的効果には、治療効果、例えば、障害または他の所望されない生理学的状態の治療、および予防効果、例えば、障害または他の所望されない生理学的状態(例えば、非免疫原性がん)の予防の両方が含まれる。この用語はまた、塩、エステル、アミド、プロエージェント、活性代謝物、異性体、フラグメント、アナログなどを含むがこれらに限定されない、本明細書で具体的に言及される有益な薬剤の薬学的に許容される、薬理学的に活性な誘導体を包含する。「治療薬」という用語が使用される場合、または特定の薬剤が具体的に特定される場合、この用語は、薬剤自体、ならびに薬学的に許容される、薬理学的に活性な塩、エステル、アミド、プロエージェント、コンジュゲート、活性代謝物、異性体、フラグメント、アナログなどを含むことが理解される。
【0030】
組成物(例えば、薬剤を含む組成物)の「治療有効量」または「治療有効用量」は、所望される治療結果を達成するために有効な量を指す。いくつかの実施形態では、所望される治療結果は、I型糖尿病の制御である。いくつかの実施形態では、所望される治療結果は、肥満の制御である。所与の治療薬の治療有効量は、典型的には、治療される障害または疾患の種類および重篤度、ならびに対象の年齢、性別、および体重などの要因との関係で変動する。この用語はまた、所望される治療効果、例えば疼痛(すなわち、侵害受容)緩和を促進するために有効な、治療薬の量、または治療薬の送達速度(例えば、経時的な量)を指し得る。正確な所望される治療効果は、治療される状態、対象の許容度、投与される薬剤および/または薬剤製剤(例えば、治療薬の効力、製剤中の薬剤の濃度など)、ならびに当業者によって理解される様々な他の要因に従って変動する。いくつかの場合では、所望される生物学的または医学的応答は、組成物の複数回投薬量の、対象への、数日、数週、または数年の期間にわたる投与後に達成される。
【0031】
本出願全体を通して、様々な刊行物が参照される。本出願が関係する技術の水準をより完全に説明するために、これらの刊行物の開示はそれらの全体が参照により本出願に組み込まれる。開示される参考文献はまた、その参考文献が依拠される文章において考察されるそれらに含まれる材料について、参照により本明細書に個別かつ具体的に組み込まれる。
【0032】
方法および組成物
開示される組成物を調製するために使用される構成要素、ならびに本明細書で開示される方法内で使用される組成物自体が開示される。これらおよび他の材料が本明細書で開示され、そして、これらの材料の組み合わせ、サブセット、相互作用、群などが開示される場合に、これらの化合物の様々な個別のおよび集合的な組み合わせおよび順列の各々の具体的な言及は明示的には開示されない場合があるが、各々が本明細書において具体的に企図および記載されることが理解される。例えば、本明細書において細胞外小胞単離産物(EVIP)と称される特定のMSCエクソソーム(増殖因子を含むかまたは含まない)が開示および考察され、EVIPを含むいくつかの分子に対してなされ得るいくつかの改変が考察される場合、別段の具体的指示がない限り、EVIPおよび可能な改変の各々およびすべての組み合わせおよび順列が、具体的に企図される。したがって、分子のクラスA、BおよびCならびに分子のクラスD、EおよびFが開示され、組み合わせ分子の例A-Dが開示される場合、たとえ各々が個別に記載されていなくても、各々は個別かつ集合的に企図され、このことは、組み合わせ、A-E、A-F、B-D、B-E、B-F、C-D、C-E、およびC-Fが開示されているとみなされることを意味する。同様に、これらの任意のサブセットまたは組み合わせもまた開示される。したがって、例えば、A-E、B-F、およびC-Eのサブグループが開示されているとみなされる。この概念は、開示される組成物を作製および使用する方法における工程を含むがこれらに限定されない、本出願のすべての態様に適用される。したがって、実施することができる様々な追加の工程が存在する場合、これらの追加の工程の各々が、開示される方法の任意の特定の実施形態または実施形態の組み合わせで実施され得ることが理解される。
【0033】
歯周疾患を治療する方法
本明細書における実施形態は、一般に、医学的処置に関し、より特定すると、歯周炎を治療、阻害、低減、減少、緩和、および/または予防するための方法に関する。
【0034】
間葉系幹細胞(MSC)は、多くの様々な特徴のために組織再生のレベルで大きな多用途性を有しており、歯周炎の中心的特徴である慢性炎症を調節することができる。MSCは、剥脱によってまたは病的状態において毎日失われる細胞の増殖、創傷治癒、および置き換えに関与する。様々な研究により、前臨床モデルおよび臨床モデルの両方において、注入後に、それがニューロン、肝臓および骨格筋における修復を誘導することが示されている。これらの質により、それは、組織工学および組織修復のための潜在的なツールとなっている。MSCの別の利点は、それが、骨髄、脂肪組織、皮膚、および口腔顔面領域の組織などの様々な成体組織供給源から得られ得ることである。
【0035】
無細胞由来治療は、再生医療において多くの有望性を示す。無細胞治療は、細胞を含まないが、細胞成分を有し、それで、治療自体は免疫学的応答を活性化しない。無細胞MSC由来エクソソームは、プロテオミクス解析およびリボ核酸(RNA)配列決定を有し得る一貫性のある産物を提供することができる。すべての増殖因子は同定および定量化され得る。すべてのマイクロおよびメッセンジャーRNAは特徴付けられ得る。
【0036】
MSCの適正なインビトロ操作は、患者への適用後の潜在的な治療上の利益を明らかにするための重要な課題である。MSC特異的マーカーの不在は、正および負の選択などの方法によって単離されるMSCの純度を制限し、このことは、治療有効性を高めるための特徴付けを必要とする。MSCは、その増殖培養特性、細胞表面マーカーの組み合わせ、および複数の間葉系組織系列に沿って分化する能力を含む、特定の基準セットによって特徴付けられる。一旦スクリーニングされたドナーからの遺伝子型および表現型によって十分に特徴付けられると、特徴付けられたMSCは患者に供給されることができる。
図3において見られるように、MSCは、歯周組織再生に対する直接的および間接的な効果を有する。本発明者らは、MSCの効果が、エクソソームおよび増殖因子からの間接的なシグナル伝達であることを経験から知っている。血管新生シグナル伝達は、これを制御する多くのシグナル伝達経路のうちの1つにすぎない。他の経路は、抗炎症、再生および過増殖阻害(腫瘍抑制)シグナル伝達である。
【0037】
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、歯周疾患を治療、阻害、低減、減少、緩和、および/または予防するための方法を記載し、この方法は、対象の口腔中の歯周組織(例えば、歯槽骨、歯周靭帯、およびセメント質など)ならびに/または歯周疾患の部位に、特徴付けられた無細胞間葉系幹細胞(MSC)由来組成物(本明細書において、組成物またはMSCセクレトーム組成物(MSC増殖因子、MSCエクソソーム、MSC抽出物、および/または細胞外小胞含有組成物を含むがこれらに限定されない)という)を適用することによって行われる。代替の実施形態では、MSCセクレトーム組成物は、スクリーニングされたドナーから遺伝子型決定および表現型決定される。いくつかの実施形態では、MSCセクレトーム組成物は、特定の状態に対する治療上の利益を示すとして同定される。代替の実施形態では、MSCセクレトーム組成物は、歯周疾患に対する治療上の利益を示すとして同定される。
【0038】
一態様では、対象における歯周組織(例えば、歯槽骨、歯周靭帯、およびセメント質など)を冒す歯周疾患またはその症状(例えば、疼痛、炎症、1本以上の歯の喪失、歯肉退縮、過敏、および/または腫脹など)を治療、阻害、低減、緩和、および/または予防する方法であって、治療有効量の間葉系幹細胞(MSC)セクレトーム組成物(MSC増殖因子、MSCエクソソーム、MSC抽出物、および/または細胞外小胞含有組成物を含むがこれらに限定されない)を対象に投与することを含む、方法が本明細書で開示される。
【0039】
MSCエクソソーム調製物は、歯周疾患を治療するMSCエクソソーム調製物の治療有効性を促進する追加の成分(増殖因子など)を含み得ることが理解され、本明細書において企図される。したがって、一態様では、対象における歯周疾患またはその症状(例えば、疼痛、炎症、1本以上の歯の喪失、歯肉退縮、過敏、および/または腫脹など)を、治療、阻害、低減、緩和、および/または予防する方法であって、治療有効量の間葉系幹細胞(MSC)セクレトーム組成物(MSC増殖因子、MSCエクソソーム、MSC抽出物、および/または細胞外小胞含有組成物を含むがこれらに限定されない)、MSCエクソソーム調製物(本明細書においてEVIPともいう)は、MSCから得られる増殖因子(例えば、プロスタグランジンE2(PGE2)、トランスフォーミング増殖因子β1(TGF-β1)、肝細胞増殖因子(HGF)、ストロマ細胞由来因子1(SDF-1)、一酸化窒素、インドール2,3-ジオキシゲナーゼ、インターロイキン4(IL-4)、IL-6、インターロイキン10(IL-10)、IL-1受容体アンタゴニストおよび可溶性TNF-α受容体、インスリン様増殖因子、線維芽細胞増殖因子(FGF)1~23(特に、FGF1およびFGF2)、骨形態形成タンパク質(BMP)1~15、上皮増殖因子(EGF)、トランスフォーミング増殖因子α(TGF-α)、マクロファージ刺激タンパク質(MSP)、血小板由来増殖因子(PLGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、インスリン、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、ならびに/またはホルモン(エストロゲンおよび甲状腺ホルモンを含む)など)をさらに含む、方法が本明細書で開示される。
【0040】
開示されるMSCエクソソーム治療は、歯周疾患を治癒しない場合があるが、それでもなお対照と比較して歯周疾患の重篤度を低減または阻害、低減、減少、および/または緩和し得ることが理解され、本明細書において企図される。一態様では、MSCエクソソーム調製物は、歯周疾患を治癒または修復するよりむしろ、歯周組織(例えば、歯槽骨、歯周靭帯、およびセメント質など)における歯周疾患の症状(例えば、疼痛、炎症、1本以上の歯の喪失、歯肉退縮、過敏、および/または腫脹など)を減少させる。したがって、一態様では、対象における歯周疾患に関連する歯周組織(例えば、歯槽骨、歯周靭帯、およびセメント質など)における疼痛、炎症、および/または腫脹を治療、阻害、低減、予防、および/または緩和する方法であって、本明細書で開示されるMSCエクソソーム調製物のいずれか(いくつかの場合では、MSC由来増殖因子を含む)を対象に投与することを含む、方法が本明細書で開示される。
【0041】
投与が、歯周組織(例えば、歯槽骨、歯周靭帯、およびセメント質など)に対して直接的であり得ることが理解され、本明細書において企図される。全体を通して記されるように、開示されるMSC由来エクソソームおよび/または増殖因子の投与は、当業者に知られている任意の方法であり得る。したがって、対象における歯周組織(例えば、歯槽骨、歯周靭帯、およびセメント質など)を冒す歯周疾患またはその症状(例えば、疼痛、炎症、1本以上の歯の喪失、歯肉退縮、過敏、および/または腫脹など)を治療、阻害、低減、緩和、および/または予防する方法であって、治療有効量の間葉系幹細胞(MSC)エクソソーム調製物を対象に投与することを含み、MSCエクソソームは、注射、MSCエクソソーム担持生体適合性足場、生体適合性ヒドロゲル、局所クリームおよび/または軟膏を介して投与される、方法が本明細書で開示される。組織工学の分野が進展するにつれて、新規の足場構造および再現可能な製造技術の必要性が最も重要になっている。ポリ乳酸(PLA)などの生分解性ポリマーの使用が普及しているが、これらのポリマーが処理される方法、および製造時に使用される添加剤が、足場の最終的な特性の適合化を可能にする。
【0042】
PLAおよびポリ乳酸-コ-グリコール酸(PLGA)などのポリヒドロキシル酸は、これらの材料が加水分解によってバルク分解し、組織内殖と適合するように制御可能な薬物放出および分解プロファイルを提供するので、組織工学手順のために広く使用されている。分子量、架橋および側鎖の慎重な使用によりテーラーメイドの特性を有する材料を製造することができ、これにより、それらは組織工学マトリックスにおける使用のために理想的になっている。さらに、ポリヒドロキシル酸材料はまた、分解性縫合糸、薬物送達デバイスおよび生分解性手術構成要素としてのインビボ使用の長い歴史を有している。
【0043】
既存の足場の種類には、高圧、CO2発泡足場、注射可能足場、および新規のカスタム足場が含まれる。これらは、増殖因子、材料の帯状化、およびプラズマ重合蒸着を使用してさらに改変され得る。足場は、疾患組織付近での歯周組織(例えば、歯槽骨、歯周靭帯、およびセメント質など)MSCの滞在期間を増強するが、これは、サイトカインの添加によって増大され得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、歯周疾患を治療するために、組成物は、疾患の部位に適用される。代替の実施形態では、疾患の部位は、創傷、病変、炎症組織、歯の露出、または歯肉の歯周疾患の任意の他の指標として現れる。いくつかの実施形態では、組成物の適用は、局所適用の形態である。代替の実施形態では、組成物の適用は、注射剤の形態である。
【0045】
いくつかの実施形態では、組成物は、MSC由来増殖因子、特徴付けられたMSC増殖因子および特徴付けられたMSCエクソソームからなる群から選択される特徴付けられたMSC調製物を含むエクソソーム粉末添加剤、分解から増殖因子を保護するコーティング、および組成物基材を含むように製剤化される。代替の実施形態では、増殖因子、エクソソームおよび細胞外マトリックスは、ヒトまたは動物のMSCおよび線維芽細胞様細胞からなる群から選択される細胞から得られる。いくつかの実施形態では、特徴付けられたMSC調製物は、正常高酸素培養条件下で培養された細胞および創傷治癒条件下で培養された細胞からなる群から選択される少なくとも1つのメンバーを含む。代替の実施形態では、高酸素培養条件は、血清補充を伴う約21%の酸素を含み、創傷治癒条件は、炎症性サイトカイン、血管新生因子、および低グルコースの存在下での約0.1%~約5%の酸素を含む。
【0046】
代替の実施形態では、組成物は、約0.00001~約20重量%、例えば、約0.01~約10重量%のMSC抽出物またはMSC増殖因子調製物を含む。いくつかの実施形態では、特徴付けられたMSC調製物は、特徴付けられたMSC馴化培地、または細胞培養拡大MSCからの特徴付けられたMSC溶解物のいずれかを含む。代替の実施形態では、組成物は、約0.01~約10重量%の、特徴付けられたMSCまたは特徴付けられたMSC系列細胞の増殖によって馴化された無細胞培地を含み、細胞は、正常高酸素培養条件下または創傷治癒条件下で培養される。代替の実施形態では、高酸素培養条件は、血清補充およびグルコースを伴う約21%±5%の酸素を含み、一方、創傷治癒条件は、炎症性サイトカイン、血管新生因子の存在下での約0.1%~約5%の酸素を含み、低グルコースを含む。いくつかの実施形態では、収集された増殖因子は、凍結保護オリゴ糖のコーティングによって分解から保護され、凍結乾燥の前にタンパク質溶液を含む。
【0047】
代替の実施形態では、特徴付けられたMSC馴化培地、特徴付けられたMSC溶解物、および特徴付けられたMSC由来産物またはそれらの組み合わせは、任意に、他の活性成分とともに、乳化ラノリンアルコール、ワックス、および油の混合物、またはワセリンもしくは鉱物油、第四級アンモニウム化合物、脂肪アルコール、および脂肪エステル軟化剤の混合物、または組成が実質的に同様のローションに溶解、混合、または懸濁される。いくつかの実施形態では、最終産物は、予め混合されているか、または使用の直前に混合され得る。いくつかの実施形態では、組成物の基材は、組成物の治療部分を疾患の部位に送達することができる任意の好適な基材であり得る。代替の実施形態では、基材は、ローション、クリーム、顔料、油、ゲル、ヒドロゲル、粉末、軟膏または膏薬を含む。代替の実施形態では、組成物の治療部分はまた、リポソーム、抗酸化剤、および多血小板フィブリンマトリックスであり得る追加の成分を含んでもよく、または薄膜ポリマーシートもしくは吸収性ポリ乳酸フィルムに適用されてもよい。いくつかの実施形態では、創傷治癒基材は、例えば、約1~約20重量%の湿潤剤、約0.1~約10重量%の増粘剤、および水を含む担体である。代替の実施形態では、担体は、約70~約99重量%の界面活性剤、および約0~約20重量%の脂肪を含む。いくつかの実施形態では、担体は、約80%~99.9%の増粘剤、約5~約15%の界面活性剤、約2~約15%の湿潤剤、約0~約80%の油、非常に少量(<2%)の保存剤、着色剤および/または香料、ならびに水を含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、組成物は、生理活性物質の組織浸透を改善するために浸透増強剤を含む。代替の実施形態では、浸透増強剤には、ジメチルスルホキシド(DMSO)、DMSO様化合物、エタノール性化合物、ピログルタミン酸エステルなどが含まれる。代替の実施形態では、組成物は、局所または注射適用を有する。いくつかの実施形態では、組成物は、有効性を増加させるために足場に予め負荷され得る。例として、足場は、歯周に直接適用され得る、包帯、フィルム、または他の包帯材であり得る。代替の実施形態では、組成物は、歯周組織中に直接注射され得る。組成物はまた、静脈内注射(IV)を介して投与され得る。
【0049】
当業者は、多数の設計構成が本発明のシステムの機能的利益を享受することが可能であり得ることを理解し得る。したがって、本発明の実施形態の多種多様な構成および配置を考慮し、本発明の範囲は、上記の実施形態によって狭められるのではなく、以下の特許請求の範囲の幅によって反映される。
【0050】
間葉系幹細胞
全体を通して記されるように、本明細書で開示される治療組成物は、間葉系幹細胞(MSC)に由来するエクソソームおよび/または増殖因子を利用し得る。骨髄、骨髄濃縮物、滑膜由来間葉系幹細胞(MSC)、または脂肪由来間質血管細胞群(SVF)、または臍帯、胎盤もしくは羊膜由来の様々な産後生成物、拡大MSC培養物内に含まれる既存の自己および同種のMSCが、現在、創傷、整形外科病理、および脊椎病理の治療に使用されているが、既存の治療は、多量のMSCセクレトーム(増殖因子、サイトカイン、ケモカイン、エクソソーム、細胞外小胞、および/または抽出物を含むがこれらに限定されない)を含まない。加えて、幹細胞を含む治療(注射可能治療を含む)は、加齢の防止、瘢痕、不均等な色素沈着の治療を助けることができるという当技術分野における証拠にもかかわらず、既存のスキン製品、例えば、クリーム、ローション、血清、メイクアップなど(皮膚の治療および強化を潜在的に助ける成分を含むが)、その他の局所製品は、表皮に浸透せず、より重要なことに、ヒトMSC、またはMSC由来増殖因子およびタンパク質を含まない。実際、本開示の前には、これらの適用のために使用することができる活性MSC増殖因子製品は開発されていない。したがって、一態様では、創傷、整形外科的障害、整形外科的損傷、眼科、脊髄損傷、または脊髄障害の治療における使用のためのMSCセクレトーム組成物(MSC増殖因子、MSCエクソソーム、MSC抽出物、および/または細胞外小胞含有組成物を含むがこれらに限定されない)が本明細書で開示され、当該治療組成物は、(i)間葉系幹細胞(MSC)由来調製物を含む増殖因子粉末添加剤、および(ii)薬学的に許容される担体を含む。
【0051】
上記のように、MSCは、筋細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、および骨芽細胞を含む多数の細胞型に分化する能力を有する多分化能性細胞である。典型的には、これらの細胞は、胎盤、臍帯血、脂肪組織、骨髄、または羊水(血管周囲組織を含む)中に見出され得る。本明細書で使用される場合、「MSC」は、多分化能性幹細胞、多分化能性間質細胞、間質血管細胞、周皮細胞、血管周囲細胞、間質細胞、多能性細胞、多分化能性細胞、脂肪由来線維芽細胞様細胞、脂肪由来間質血管細胞群、脂肪由来MSC、骨髄由来線維芽細胞様細胞、骨髄由来間質血管細胞群、骨髄由来MSC、組織由来線維芽細胞様細胞、成体幹細胞、成体間質細胞、角質細胞、および/またはメラノサイトを含むがこれらに限定されない、非最終分化細胞を指す。
【0052】
MSCは、その分化能に加えて、多くの様々なサイトカインおよび増殖因子の発現をもたらす免疫調節能力を有することが長く認識されている。本明細書で使用される場合、「MSC由来組成物」、「MSC調製物」または「MSCセクレトーム組成物」は、ヒトのMSC、線維芽細胞様細胞、ならびにウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、およびマウス由来のMSCを含むがこれらに限定されない非ヒト動物のMSCから得られる、MSCまたはMSC溶解物の、無細胞MSC増殖因子、MSCエクソソーム(定義上無細胞である)、細胞外小胞、または無細胞抽出物を含む組成物を指す。複数の実施形態では、MSCは、組成物が適用される患者に由来し得るか(自己)、または別の個体に由来し得る(同種)。MSCは、馴化培地を収集するために、もしくは溶解物のための細胞の量を増加させるために拡大された培養物であり得るか、または本開示の組成物への組み込み前に新鮮に使用され得る。
【0053】
MSCセクレトーム組成物(MSC増殖因子、MSCエクソソーム、MSC抽出物、および/または細胞外小胞含有組成物を含むがこれらに限定されない)は、約0.00001~約20重量%、例えば、約0.01~約10重量%の間葉系幹細胞(MSC)抽出物、MSCエクソソーム、またはMSC増殖因子調製物を含み得る。MSC調製物は、MSC馴化培地または細胞培養拡大MSCからのMSC溶解物のいずれかを含み得る。いくつかの実施形態では、組成物は、約0.01~約10重量%の、MSCまたはMSC系列細胞の増殖によって馴化された無細胞培地をさらに含み得、細胞は、正常高酸素培養条件下または人工創傷治癒条件下で培養される。
【0054】
本明細書で開示されるように、開示されるMSC添加剤(増殖因子セクレトーム組成物の凍結または粉末のいずれかの添加剤を含む)を産生するために使用されるMSCは、MSC増殖因子、セクレトーム、サイトカイン、ケモカイン、間葉系幹細胞タンパク質、ペプチド、グリコサミノグリカン、細胞外マトリックス(ECM)、プロテオグリカン、セクレトーム、およびエクソソームを産生するように選択的に刺激され得る。本明細書で使用される場合、MSC増殖因子には、限定されないが、プロスタグランジンE2(PGE2)、トランスフォーミング増殖因子β1(TGF-β1)、肝細胞増殖因子(HGF)、ストロマ細胞由来因子1(SDF-1)、一酸化窒素、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ、インターロイキン4(IL-4)、IL-6、インターロイキン10(IL-10)、IL-1受容体アンタゴニストおよび可溶性TNF-α受容体、インスリン様増殖因子、線維芽細胞増殖因子(FGF)1~23(特に、FGF1およびFGF2)、骨形成タンパク質(BMP)1~15、上皮増殖因子(EGF)、トランスフォーミング増殖因子α(TGF-α)、マクロファージ刺激タンパク質(MSP)、血小板由来増殖因子(PLGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、インスリン、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、ならびにホルモン(エストロゲンおよび甲状腺ホルモンを含む)が含まれる。
【0055】
一態様では、MSC調製物(例えば、MSCセクレトーム組成物など)は、標準的な高酸素培養条件(例えば、21%の酸素)下で培養されたMSCまたは人工創傷治癒条件(例えば、炎症性サイトカイン、血管新生因子、および低グルコースの存在下での0.1%~約5%の酸素など)下で培養されたMSCから得られる、MSC増殖因子、MSCエクソソーム、および/またはMSCの細胞抽出物もしくはMSC溶解物を含む。
【0056】
本明細書で開示されるように、人工創傷治癒条件は、通常、局所血液循環の破壊によって引き起こされる、栄養供給の低下および廃棄物除去の低下が存在する実際の創傷における増殖条件をシミュレートする。これは、新たな血管が作られ、血液循環が回復するまで、細胞にとって過酷な環境を作り出す。したがって、MSCを培養するために使用される人工創傷治癒条件は、以下の増殖条件、グルコース利用可能性の低下、酸素分圧の低下、pHの低下、および温度の上昇のうちの1つ以上を含み得る。
【0057】
一態様では、グルコース利用可能性は、正常対照と比較して低下され得る。グルコースを低下させるが、細胞を損傷しないように改変された培養培地は、0~50%のグルコース低下、より好ましくは、約5%~40%のグルコース低下であり得る。例えば、MSC人工創傷治癒培養条件は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50%のグルコース低下、例えば、約5%~約15%、約10%~約20%、約15%~約25%、約20%~約30%、または約25%~約35%のグルコース低下を含み得る。
【0058】
一態様では、酸素分圧は、低酸素条件までの酸素レベルに低下され得る。正常大気酸素はおよそ21%であり、いかなる低下も低酸素とみなされる。したがって、一態様では、MSCは、人工創傷治癒条件下で、0.0%~20.9%の酸素、約0.1%~約0.5%の酸素、約0.1%~約2.0%の酸素、約0.1%~約5.0%の酸素、約0.5%~5.0%、約1.0%~約10%の酸素、約5.0%~約10.0%の酸素、および約10.0%~約15.0%で培養され得る。好ましくは、MSC創傷治癒培養条件の間、酸素分圧は、約0.5%~20.5%の酸素、例えば、0、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.7、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、20、または20.5%の酸素などである。
【0059】
pHはまた、人工創傷治癒条件下で低下され得る。生理的pHは非常に厳密に維持されており、通常、中性pH=7.2±0.2(7.0~7.4)に非常に近い。しかしながら、創傷において、酸性環境はpH=6.2±0.2(すなわち、pH6.0~約6.4)を有し得る。したがって、人工創傷治癒培養条件下では、pHは、約6.0~約7.4、例えば、6.0~約6.4、約6.2~約6.4、約6.2~約6.6、約6.4~約6.6、約6.4~約6.8、または約6.6~約7.0、例えば、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、または7.4であり得る。
【0060】
人工創傷治癒培養条件下では、培養環境の温度は、創傷部位の温度上昇をシミュレートするように上昇され得る。生理的恒常性温度は37℃(98.6°F)で維持されている。わずかな上昇または低下は、細胞代謝に著しい変化を引き起こし得る。温度を37℃より高く約40℃(104°F)までの任意の温度まで上昇させることによって、「熱がある」環境を作り出すことができる。したがって、一態様では、MSCのための人工創傷治癒培養条件は、約35℃~約39℃、約35℃~約36℃、約36℃~約37℃、約37℃~約38℃、約38℃~約39℃、約39℃~約40℃を含み得る。一態様では、人工創傷治癒培養の温度は、35.0、35.1、35.2、35.3、36.4、35.5、35.6、35.7、35.8、35.9、36.0、36.1、36.2、36.3、36.4、36.5、36.6、36.7、36.8、36.9、37.0、37.1、37.2、37.3、37.4、37.5、37.6、37.7、37.8、37.9、38.0、38.1、38.2、38.3、38.4、38.5、38.6、38.7、38.8、38.9、39.0、39.1、39.2、39.3、39.4、39.5、39.6、39.7、39.8、39.9、または40.0℃であり得る。
【0061】
図2および
図3において示されるように、開示されるMSCセクレトーム組成物におけるエクソソームおよび細胞外小胞が産生されている。
【0062】
一態様では、MSCセクレトーム組成物(MSC増殖因子、MSCエクソソーム、MSC抽出物、および/または細胞外小胞含有組成物を含むがこれらに限定されない)は、増殖因子の分解を低下させるために保護コーティング(例えば、凍結保護オリゴ糖およびタンパク質溶液など)をさらに含み得る。保護コーティングは、ポリマーとして加工され得ることが理解され、本明細書において企図される。加えて、MSCセクレトーム組成物は、ポリマーで構成される生体適合性足場、生体適合性マトリックス(例えば、ヒドロゲルなど)、軟膏またはクリームによって送達され/その中に含浸され/その上で提供され得ることが理解され、本明細書において企図される。
【0063】
「ポリマー」は、その構造が小単位、モノマーの反復によって表され得る、天然または合成の比較的高分子量の有機化合物を指す。ポリマーの非限定的な例には、ポリエチレン、ゴム、セルロースが含まれる。合成ポリマーは、典型的には、モノマーの付加または縮合重合によって形成される。「共重合体」という用語は、2つ以上の異なる繰り返し単位(モノマー残基)から形成されるポリマーを指す。例として、限定されないが、共重合体は、交互共重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体、またはグラフト共重合体であり得る。特定の態様では、ブロック共重合体の様々なブロックセグメントは、それ自体が共重合体を含み得ることもまた企図される。「ポリマー」という用語は、天然ポリマー、合成ポリマー、ホモポリマー、ヘテロポリマーまたは共重合体、付加ポリマーなどを含むがこれらに限定されない、ポリマーのすべての形態を包含する。一態様では、ゲルマトリックスは、共重合体、ブロック共重合体、ジブロック共重合体、および/またはトリブロック共重合体を含み得る。
【0064】
一態様では、保護コーティング、生体適合性足場、生体適合性マトリックス(例えば、ヒドロゲルなど)、軟膏および/またはクリームは、生体適合性ポリマーを含み得る。一態様では、生体適合性ポリマーは、架橋され得る。そのようなポリマーはまた、経時的な分解に応じて、または組織微小環境中の因子に応答して、MSCセクレトーム組成物(MSC増殖因子、MSCエクソソーム、MSC抽出物、および/または細胞外小胞含有組成物を含むがこれらに限定されない)を組織中にゆっくりと放出するように作用し得る。本明細書で使用される場合、生体適合性ポリマーには、多糖類;親水性ポリペプチド;ポリ(アミノ酸)、例えば、ポリL-グルタミン酸(PGS)、ガンマ-ポリグルタミン酸、ポリ-L-アスパラギン酸、ポリ-L-セリン、またはポリ-L-リジン;ポリアルキレングリコールおよびポリアルキレンオキシド、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、およびポリ(エチレンオキシド)(PEO);ポリ(オキシエチル化ポリオール);ポリ(オレフィンアルコール);ポリビニルピロリドン);ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド);ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート);多糖類;ポリ(ヒドロキシ酸);ポリ(ビニルアルコール)、ポリヒドロキシ酸、例えば、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、およびポリ(乳酸-コ-グリコール酸);ポリヒドロキシアルカノエート、例えば、ポリ3-ヒドロキシブチレートまたはポリ4-ヒドロキシブチレート;ポリカプロラクトン;ポリ(オルトエステル);ポリ酸無水物;ポリ(ホスファゼン);ポリ(ラクチド-コ-カプロラクトン);ポリカーボネート、例えば、チロシンポリカーボネート;ポリアミド(合成および天然ポリアミドを含む)、ポリペプチドおよびポリ(アミノ酸);ポリエステルアミド;ポリエステル;ポリ(ジオキサン);ポリ(アルキレンアルキレート);疎水性ポリエーテル;ポリウレタン;ポリエーテルエステル;ポリアセタール;ポリシアノアクリレート;ポリアクリレート;ポリメチルメタクリレート;ポリシロキサン;ポリ(オキシエチレン)/ポリ(オキシプロピレン)共重合体;ポリケタール;ポリホスフェート;ポリヒドロキシバレラート;ポリアルキレンオキサレート;ポリアルキレンスクシネート;ポリ(マレイン酸)、ならびにそれらの共重合体が含まれるがこれらに限定されない。生体適合性ポリマーにはまた、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレフタレート、ポリビニルアルコール(PVA)、メタクリレートPVA(m-PVA)、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリビニルハライド、ポリビニルピロリドン、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタンおよびその共重合体、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、アクリル酸およびメタクリル酸エステルのポリマー、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、カルボキシエチルセルロース、セルローストリアセテート、硫酸セルロースナトリウム塩、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレンおよびポリビニルピロリドン、それらの誘導体、それらの直鎖および分岐共重合体ならびにブロック共重合体、ならびにそれらの混合物が含まれ得る。例示的な生分解性ポリマーには、ポリエステル、ポリ(オルトエステル)、ポリ(エチレンアミン)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシバレラート)、ポリ酸無水物、ポリ(アクリル酸)、ポリグリコリド、ポリ(ウレタン)、ポリカーボネート、ポリリン酸エステル、ポリホスプリアゼン(polyphospliazene)、それらの誘導体、それらの直鎖および分岐共重合体ならびにブロック共重合体、ならびにそれらの混合物が含まれる。
【0065】
いくつかの実施形態では、保護コーティング、生体適合性足場、生体適合性マトリックス(例えば、ヒドロゲルなど)、クリーム、および/または軟膏は、非還元性多糖類または二糖類、ならびにそれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない二糖類または多糖類などの炭水化物ポリマーならびに単糖類の炭水化物構成を含む。保護コーティング、生体適合性足場、生体適合性マトリックス(例えば、ヒドロゲルなど)、クリーム、および/または軟膏において使用され得る炭水化物の例には、グルコース、アルドース(D-アロース、D-アルトロース、D-マンノースなど)、グルコピラノース、ペンタヒドロキシヘキサナール、α-D-グルコピラノシル-D-グルコース、α-D-グルコピラノシルジヒドラート、β-D-グリコピラノシル単位のポリマー、β-D-フルクトフラノシルα-D-グルコピラノシド(無水/二水和物)、β-D-ガラクトピラノシル-D-グルコース、α-D-グルコピラノシル-α-D-グルコピラノシド(無水/二水和物)、ガラクトース、ペントース(リボース、キシロース、リキソース)、デキストロース、ドデカカーボンモノデカヒドラート、フルクトース、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、アガロース、D-ガラクトシル-β-(1-4)-アンヒドロ-L-ガラクトシル、セルロース、β-D-グリコピラノシル単位のポリマー、およびデンプン、ならびに多価アルコール、ポリアルコール、アルジトール、エリスリトール、グリシトール、グリセロール、キシリトール、およびソルビトールが含まれる。
【0066】
いくつかの実施形態では、保護コーティング、生体適合性足場、生体適合性マトリックス(例えば、ヒドロゲルなど)、クリーム、および/または軟膏は、生体適合性および/または生分解性ポリエステルまたはポリ酸無水物、例えば、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、およびポリ(乳酸-コ-グリコール酸)を含む。粒子は、以下のポリエステル:本明細書において「PGA」と称されるグリコール酸単位、ならびに本明細書において「PLA」と総称されるポリL-乳酸、ポリD-乳酸、ポリD,L-乳酸、ポリL-ラクチド、ポリD-ラクチド、およびポリD,L-ラクチド5などの乳酸単位、ならびに本明細書において「PCL」と総称されるポリ(e-カプロラクトン)などのカプロラクトン単位を含むホモポリマー;ならびに本明細書において「PLGA」と総称される乳酸:グリコール酸の比率によって特徴付けられる様々な形態のポリ(乳酸-コ-グリコール酸)およびポリ(ラクチド-コ-グリコリド)などの乳酸およびグリコール酸単位を含む共重合体;ならびにポリアクリレート、ならびにそれらの誘導体のうちの1つ以上を含み得る。例示的なポリマーにはまた、本明細書において「PEG化ポリマー」と総称される様々な形態のPLGA-PEGまたはPLA-PEG共重合体などのポリエチレングリコール(PEG)と前述のポリエステルとの共重合体が含まれる。特定の実施形態では、PEG領域は、ポリマーと共有結合して、切断可能なリンカーによる「PEG化ポリマー」を生じ得る。一態様では、ポリマーは、少なくとも60、65、70、75、80、85、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99パーセントのアセタールペンダント基を含む。
【0067】
本明細書で開示されるトリブロック共重合体は、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(ビニルピロリドン-コ-酢酸ビニル)、ポリメタクリレート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリカプロラクタム、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(乳酸-グリコール酸)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、セルロース誘導体、例えば、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのようなコアポリマーを含む。
【0068】
本明細書で開示される保護コーティング、生体適合性足場、生体適合性マトリックス(例えば、ヒドロゲルなど)、クリーム、および/または軟膏において使用され得るジブロック共重合体の例には、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ(ビニルピロリドン-コ-酢酸ビニル)、ポリメタクリレート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリカプロラクタム、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(乳酸-グリコール酸)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)などのポリマーが含まれる。
【0069】
一態様では、保護コーティング、生体適合性足場、生体適合性マトリックス(例えば、ヒドロゲルなど)、クリーム、および/または軟膏は含み(すなわち、カプセル化され、カプセル化された組成物は、担体としてまたはカプセル化材料として、レシチンまたは水添レシチンをさらに含み得る。本明細書で使用される場合、レシチンおよび/または水添レシチンコーティングには、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、およびホスファチジン酸を含むコーティングが含まれる。レシチンの供給源は、pnatまたは動物供給源であり得る。
【0070】
一態様では、MSC添加剤をカプセル化溶液中に入れることによって形成される保護コーティングを形成するために使用されるポリマー、単糖類、二糖類、または多糖類のいずれかは、保護コーティングを形成するために適切な濃度であり得る。例えば、ポリマー、単糖類、二糖類、または多糖類は、0.01mMと10.0Mとの間の濃度の任意の濃度、例えば、約0.01M~約0.1M、約0.1mM~約1.0M、約1.0M~約10.0Mであり得る。例示的な濃度には、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.4、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、225、250、275、300、325、350、375、400、450、500、600、700、800、900mM、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、3、4、5、6、7、8、9、10Mが含まれる。
【0071】
一態様では、創傷を治療する一つの方法は、MSCセクレトーム組成物(MSC増殖因子、MSCエクソソーム、MSC抽出物、および/または細胞外小胞含有組成物を含むがこれらに限定されない)の、皮下、筋肉内、静脈内、局所(例えば、軟膏、クリーム、および/または膏薬の使用を通じてなど)での投与を通じてであるが、また、MSCセクレトーム組成物での、ステント、スポンジ、マトリックス、足場、包帯、包帯材、縫合糸、グラフト、外科用ドレープ、外科用接着剤、および/またはステープルの含浸によってであることが理解され、本明細書において企図される。したがって、一態様では、治療有効量のMSCセクレトーム組成物を含む、薬用ステント、足場、スポンジ、マトリックス、接着包帯、創傷包帯材、グラフト、外科用ドレープ、縫合糸、軟膏、クリーム、または創傷接着剤が本明細書で開示される。上記のように、MSCセクレトーム組成物(MSC増殖因子、MSCエクソソーム、MSC抽出物、および/または細胞外小胞含有組成物を含むがこれらに限定されない)は、局所的に投与され得、顔、首、手、または身体の任意の他の所望される部分に適用され得る。接着包帯、創傷包帯材、グラフト、外科用ドレープ、縫合糸、足場、マトリックス、スポンジ、またはステントに適用される場合、MSCセクレトーム組成物は粉末として適用され得る。
【0072】
一態様では、本明細書で開示されるMSCセクレトーム組成物(MSC増殖因子、MSCエクソソーム、MSC抽出物、および/または細胞外小胞含有組成物を含むがこれらに限定されない)は、創傷治癒分野で典型的に見出される任意の既知の成分、例えば、油、ワックスもしくは他の標準的な脂肪物質、または従来のゲル化剤および/もしくは増粘剤;乳化剤;保湿剤;軟化剤;日焼け止め剤;セラミドなどの親水性または親油性活性薬剤;フリーラジカルに対抗するための薬剤;殺菌剤;封鎖剤;保存剤;塩基性化または酸性化剤;芳香剤;界面活性剤;充填剤;アロエまたは緑茶抽出物などの天然物または天然物の抽出物;ビタミン;あるいは着色材料を含み得る。粉末と組み合わされ得る他の成分には抗酸化剤が含まれ得、これは、様々な抗酸化剤から選択され得る。好適な抗酸化剤には、ビタミン、例えば、ビタミンC(L-アスコルベート、アスコルビン酸-2リン酸マグネシウム塩、パルミチン酸アスコルビル、アスコルビン酸テトラヘキシルデシル)、ビタミンE(トコトリエノール)、ビタミンA(レチノール、レチナール、レチノイン酸、プロビタミンAカロテノイド、例えば、β-カロテン)、N-アセチルグルコサミン、または他のグルコサミン誘導体が含まれる。他の成分には、少なくとも1つの必須脂肪酸、例えば、Ω-3、Ω-6、およびΩ-9多価不飽和脂肪酸、例えば、リノール酸(LA)、ガンマ-リノール酸(GLA)、アルファ-リノール酸(ALA)、ジホモ-y-リノレン酸(DGLA)、アラキドン酸(ARA)、ならびに他のものが含まれ得る。脂肪酸は、月見草油、カシス油、ボラージ油、またはGLA改変ベニバナ種子を含む様々な供給源に由来し得る。他の成分には、多血小板フィブリンマトリックス、ECM産生およびヒアルロン酸産生を支持するための少なくとも1つの成分、例えば、N-アセチルグルコサミンまたは他のグルコサミン誘導体、超低分子(ULMW)ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、またはケラチン硫酸が含まれ得る。
【0073】
本明細書で開示されるMSCセクレトーム組成物は、創傷治癒の若返り、増大、ならびに上皮、骨、靭帯、および腱組織の改善または回復を提供し得ることが理解され、本明細書において企図される。組成物はまた、歯周疾患の治療において注射剤として使用され得る。さらに、組成物の実施形態は、インスリン、インスリン様増殖因子、甲状腺ホルモン、線維芽細胞増殖因子、エストロゲン、レチノイン酸などのような追加の増殖因子またはホルモンを含めることを必要としない場合がある。いくつかの態様では、開示される幹細胞増殖因子組成物は、抗生物質、抗ニキビ剤、リポソーム、抗酸化剤、多血小板フィブリンマトリックス、鎮痛剤、抗炎症剤、ならびに追加の増殖因子、例えば、インスリン、インスリン様増殖因子、甲状腺ホルモン、線維芽細胞増殖因子、エストロゲン、レチノイン酸などを含むがこれらに限定されない追加の活性成分を含み得る。そのような追加の活性成分は、本明細書で開示される幹細胞増殖因子および細胞外小胞組成物、ならびにMSC馴化培地、MSC溶解物、およびMSC由来産物と混合され得、次いで乳化ラノリンアルコール、ワックス、および油の混合物、またはワセリンもしくは鉱物油、第四級アンモニウム化合物、脂肪アルコール、および脂肪エステル軟化剤の混合物、または組成が実質的に同様のローションに融解もしくは溶解、混合、または懸濁され得る。
【実施例】
【0074】
以下の実施例は、当業者に、本明細書において特許請求される化合物、組成物、物品、デバイスおよび/または方法が作製および評価される方法の完全な開示および説明を提供するように記述され、純粋に例示的であることが意図され、本開示を限定することは意図されない。数値(例えば、量、温度など)に関して正確さを確実にするように努力がなされているが、いくらかの誤差および偏差は考慮されるべきである。別段の指示がない限り、部は重量部であり、温度は℃または周囲温度であり、圧力は大気圧またはその付近である。
【0075】
歯周組織(セメント質)へのMSCの適用は、組織再生に対する直接的な効果を有した。MSCの投与の8~12週間後に、MSC処置組織は、対照と比較して、セメント質のおよそ50%の増加を示した(
図4)。加えて、MSCは、歯周組織における炎症性サイトカインTNF-α、IL-6、IL-1β、およびCOX-2の発現を低下させることができた。
【国際調査報告】