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特表2022-530834クラウドベースのシステム白内障治療データベースとアルゴリズムシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-01
(54)【発明の名称】クラウドベースのシステム白内障治療データベースとアルゴリズムシステム
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20220624BHJP
   A61B 34/20 20160101ALI20220624BHJP
【FI】
A61F9/007
A61B34/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021565004
(86)(22)【出願日】2020-04-30
(85)【翻訳文提出日】2021-12-27
(86)【国際出願番号】 US2020030823
(87)【国際公開番号】W WO2020227026
(87)【国際公開日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】62/842,850
(32)【優先日】2019-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/850,876
(32)【優先日】2019-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521478201
【氏名又は名称】レンサー インク
【氏名又は名称原語表記】Lensar, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】パットン, ダグラス
(57)【要約】
眼の疾患および損傷の治療のための適切な介入を選択する際の支援を提供するシステム、デバイス、および方法が提供される。本発明のシステムは、クラウドベースのプロセッシング、ならびに臨床データおよび患者固有のデータの保存を提供し、ローカルデバイスを使用して推奨される治療および予測される結果を施術者に提供することができる。システム、デバイス、および方法は、特定の個人の眼のインタラクティブな物理機械モデル(これは、眼の構造の機械的特性の測定値から導き出される)を生成することができる。物理機械モデルはインタラクティブであり、個人に最適化された治療計画を実装するために、眼への1つまたは複数の医学的介入の効果をエミュレートするために使用できる。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の眼の眼科手術の実施においてユーザーを支援するためのシステムであって、
入力/出力インターフェースに通信可能に接続され、ユーザーデバイスと通信するように構成されたユーザーインターフェースと、
患者データベース、臨床データベース、および処置データベースを含み、該入力/出力インターフェースに通信可能に接続されたデータベースと、
該入力/出力インターフェースと該データベースに通信可能に接続され、眼または眼の一部の物理機械モデルを提供するアルゴリズムを含むプロセッサと、
を含み、
該入力/出力インターフェース、該データベース、および該プロセッサのうちの少なくとも1つがクラウドベースである、システム。
【請求項2】
該入力/出力インターフェースは、計画モジュールを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
該入力/出力インターフェースは、治療モジュールを含む、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
該データベースが施術者データベースを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
該データベースが機器データベースを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
該プロセッサが、該臨床データベースからのデータを該患者データベースからのデータと相関させ、該入力/出力インターフェースを介して推奨する治療を提供するように構成された機械学習アルゴリズムを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
患者の眼科手術の実施においてユーザーを支援する方法であって、
データベースおよびプロセッサに通信可能に接続された入力/出力インターフェースの計画モジュールにアクセスするステップであって、該入力/出力インターフェースはアルゴリズム支援を含み、該データベースは、患者データベース、臨床データベース、および処置データベースを含んでいる、ステップと、
該入力/出力インターフェースを介して眼科手術での所望の結果を入力するステップと、
該プロセッサの機械学習アルゴリズムと、該患者データベース、臨床データベース、および処置データベースからのデータとを使用して、推奨される処置を決定するステップと、
該推奨される処置を該入力/出力インターフェースに送信するステップと、
を含み、
該入力/出力インターフェース、該データベース、および該プロセッサのうちの少なくとも1つがクラウドベースである、方法。
【請求項8】
眼または眼の一部の物理機械モデルを生成するステップを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
該所望の結果は、該ユーザーと該物理機械モデルとのインタラクションによって入力される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
該推奨される処置が、該物理機械モデルによって該ユーザーに伝えられる、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
該データベースが施術者データベースを含み、該推奨される処置が部分的に該施術者データベースからのデータによって決定される、請求項7から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
該データベースが機器データベースを含み、該推奨される処置が部分的に該機器データベースからのデータによって決定される、請求項7から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
該推奨される処置での予想される結果を該入力/出力インターフェースに送信するステップを含む、請求項7から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
該予想される結果に基づいて該推奨される処置に変更を入力して、変更された処置および変更された結果を生成するステップと、該予想される結果が受け入れられない場合に該変更された結果を該入力/出力インターフェースに送信するステップと、を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
患者の眼科手術の実施においてユーザーを支援する方法であって、
眼を物理的に特徴づけて、該眼の構造の少なくとも第1の密度および少なくとも第1の寸法を決定するステップと、
決定された密度と寸法を適用して、該眼の構造またはその解剖学的構造を表す物理機械モデルを導き出すステップと、
該ユーザーから、選択された眼科処置の選択を受け取るステップと、
該選択された眼科処置を該物理機械モデルに適用して、該選択された眼科処置を該眼の構造に適用することの効果を予測するステップと、
該眼の構造に適用されたときに該選択された眼科処置の予測される効果の表示を該ユーザーに提供するステップと、
を含み、
該物理機械モデルは、該眼またはその一部の解剖学的な機械的特性から導き出される、方法。
【請求項16】
該選択された眼科処置を該眼に適用するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
該予測される効果の表示は、該選択された処置による該機械的特性の変化の構造分析から導き出される、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
該予測される効果の表示は、該選択された処置の適用後の計算されたひずみまたは静的エネルギーの最小化から導き出され、該計算されたひずみまたは静的エネルギーは、該機械的特性から導き出される、請求項15から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
該予測される効果の表示は、該選択された処置の適用後の可撓性積層構造としての眼または眼の部分の分析から導き出される、請求項15から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
該物理機械モデルの生成に使用するための追加の眼科データを取得するステップを含み、該データは、角膜音響応答または超音波データ、トポグラフィーデータ、パキメトリーデータ、高さデータ、角膜厚データ、角膜曲率データ、波面データ、眼圧データ、末梢間質厚データ、患者の年齢、患者の性別、コンタクトレンズの使用期間、以前の外科的介入、以前の外科的介入への反応、および角膜の降伏点からなる群から選択される、請求項15から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
該選択された眼科処置を変更して、変更された眼科処置を生成するステップと、
該物理機械モデルを使用して、該変更された眼科処置を眼に適用した結果として生じる第2の予測される効果を予測するステップと、
を更に含む、請求項15から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
該眼の構造に対する該第2の予測される効果は変更された眼の構造を提供し、該変更された眼の構造の計算された物理的特性を利用して該変更された眼の構造を表す第2の物理機械モデルを生成するステップを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
フェムト秒レーザービームを眼に送達するためのフェムト秒レーザーと、
モデリングエンジンおよび患者データベースを含むモデリングシステムであって、該患者データベースが該眼の構造の決定された密度特性および該眼の構造の決定された寸法特性を受け取るように構成されている、モデリングシステムと、
選択された処置を含む入力をユーザーから受け取り、該モデリングシステムからの出力を表示するように構成されたグラフィックユーザーインターフェース(GUI)と、
を含み、
該モデリングシステムが、
該患者データベースによって受信された該眼の構造の該決定された密度特性、該患者データベースによって受信された該眼の構造の該決定された寸法特性、またはその両方に基づいて、該眼の構造の物理機械モデルの表示を導き出すことと、
該選択した処置を該GUIから受け取ることと、
該選択された処置を該物理機械モデルの表示に適用し、それによって該眼の構造に対する該選択された処置の予測された効果を導き出すことと、
該予測された効果の表示を該GUIに提供することと、を行なうようになされている、
レーザーシステム。
【請求項24】
水晶体超音波乳化吸引術システムを含む、請求項23に記載のレーザーシステム。
【請求項25】
該選択された処置が輪部弛緩切開である、請求項23または24に記載のシステム。
【請求項26】
該選択された処置が角膜の微小切開である、請求項23または24に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2019年5月21日に出願された米国仮特許出願第62/850,876号、および2019年5月3日に出願された米国仮特許出願第62/842,850号の利益を主張する。これらおよび他のすべての参照される材料は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。組み込まれるそれらにおける用語の定義または使用が本明細書における用語の定義に矛盾するか、または反する場合、本明細書における用語の定義によるものとする。
【0002】
本発明の分野は、コンピュータ支援手術、特に眼科手術である。
【背景技術】
【0003】
この背景技術においては、本発明の実施形態に関連し得る当技術分野の様々な態様を紹介することを意図している。したがって、ここでの記述は、本発明をよりよく理解するためのフレームワークを提供しており、先行技術の承認と見なされるべきではない。
【0004】
本明細書における見出しの使用は、記載の明確化を目的としており、決して限定するものではない。したがって、見出しの下に記載されているプロセスおよび開示は、さまざまな例を含む本明細書全体の文脈の中で読む必要がある。本明細書における見出しの使用は、本発明の保護の範囲を制限するものではない。
【0005】
現在、レーシック、PRK、水晶体除去、および人工水晶体配置などの眼への外科的介入の成功は、主に、個々の外科医の技能および経験、並びに、眼内の正常な変化と外科的合併症が明らかになるのに従って進行中の処置を適応させる能力にある。最適ではない結果や追加の「改良」処置の必要が、望まれるよりも高い割合で生じる。
【0006】
コンピュータベースのシステムは、施術者間の患者の追跡(トラッキング)および施術者間での協議を容易にすることによって患者の転帰を改善するために開発されてきた。例えば、Nawanaらによる米国特許第9,700,292号は、患者を最初の発症から診断、治療、回復、および転帰と追跡するコンピュータ化されたシステムを記載している。このシステムは、主に整形外科を対象としているが、保存されている患者データと施術者から提供された情報に基づいて、診断と治療に関する推奨事項を提供できる。これらの推奨事項は、履歴データに基づいている。そのため、予測される結果の精度は、保存されるデータの幅によって必然的に制限される。
【0007】
関連する過去の臨床データの欠如に対処するための1つのアプローチは、医学的介入の影響を正確に予測するのに十分に人の体の自然な働きをエミュレート(模倣)する現実的なモデルを提供することである。米国特許出願公開第US2003/0208190(Robertsら)は、角膜弁の作製の前後に行われた測定結果を評価して、眼の生体力学的モデルを生成し、その後、これを使用してアブレーションアルゴリズムと手術結果の予測を生成することを説明している。しかし、このアプローチでは、予測モデルを生成する前に、眼にある程度の外科的介入を行う必要がある。
【0008】
米国特許出願公開第US2011/0208172号(Youssefiら)は、レーザーアブレーション中に複数の場所で角膜の形状/厚さの継続的な測定を行い、所望の形状が達成でない場合に外科医に警告するシステムを記載している。外科医はそこでアブレーションを調整することができる。しかしながら、そのような方法は、そのような調整の効果の予測を提供するための外科医の個々の経験に依存している。本明細書で特定されるすべての刊行物は、個々の刊行物または特許出願が具体的かつ個別に示されて参照により組み込まれた場合と同程度に、参照により組み込まれる。組み込まれた文献における用語の定義または使用が、本明細書に提供されるその用語の定義と矛盾するかまたは反対である場合、本明細書における用語の定義が適用され、文献における用語の定義は適用されない。
【0009】
欧州特許EP1613253(Matthausら)は、入力された患者固有の情報を利用して、保存された多数の眼科治療計画の中から個々の患者に最も適したものを推奨するエキスパートシステムを記載している。外科医は、個々の経験と好みに基づいて、これらの治療計画の中から選択する。しかし、そのようなシステムは、結果を真に予測するものではない。
【0010】
米国特許出願公開第2007/0073905号(Robertsら)は、患者の以前の眼の処置結果を含む様々な特徴の術前測定と術中測定との間の保存された相関関係を利用して、患者からの同様の測定に基づいて眼科外科医に推奨を行うための訓練されたエキスパートシステムをそれぞれ記載している。しかし、このようなエキスパートシステムの結果は、利用可能なデータセットに大きく依存する。このようなシステムは、患者の測定値が保存されたデータセットに含まれる範囲外にある場合、その患者を適切に予測できない場合がある。
【0011】
最近、特定の機能的面をシミュレートすることができる身体の部分の数個の数理生体力学的モデル(numero biomechanical models)を生成する試みがなされてきた。例えば、国際特許出願公開第WO2019/072875号(Deleuら)は、骨および軟組織の測定に基づく足および足首のそのようなモデルの生成を記載している。このモデルを使用して、静止時および動的運動時での足と足首をエミュレートする。このエミュレーションから得られたデータは、整形外科医が適切な治療戦略を検討および決定する際の指針となるため、およびモデルに適用されるシミュレートされた治療の効果をエミュレートするために使用される。同様の数理生体力学的モデルが、心臓血管系の要素(例えば、Dahlらの国際特許出願公開第WO2018/108276およびSandersらの国際特許出願公開第WO2018/057529)、および脳の血管要素(例えば、Avisarの米国特許出願公開第US2018/0098814号)についても提案されている。
【0012】
米国特許第10,181,007号は、有限要素モデルを使用して、レーシック処置の最適化に使用するための角膜の「生体力学的」モデルを生成することを記載している。この方法は、個々の角膜と眼圧の測定値に基づいて有限要素モデルを導き出し、これらの測定値に基づいて角膜のさまざまな領域に透過性の値を割り当てる。これらの透過性の値は、眼圧の結果として角膜に出入りする流体の能力を表す。角膜の変化のシミュレーションは、これらの透過性の値を変更し、眼圧の影響下で変更された角膜構成の計算結果をもたらす。しかし、そのようなモデルで角膜の機械的特性の変化をモデル化するためにシグモイド関数を使用することは、解剖学的構造の一般的な特徴である物理的特性間の急勾配または突然の遷移に容易に対応することができない。Studerらの屈折矯正手術ジャーナル(Journal of Refractive Surgery)31(7):480-486 2015)は、いくつかの処置に対するこのアルゴリズム的アプローチの予測値の欠如を指摘している。これは、少なくとも部分的には、眼の特定の解剖学的特徴を説明できないことが原因であると考えられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、外科的眼科的介入の正確なエミュレーションに有用な、人間の眼の生体力学的なまたは物理機械的なモデルの必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の主題は、フェムト秒レーザーによる切開および/または例えば白内障の治療における自然水晶体除去のための水晶体超音波乳化吸引術を用いる手術を最適化する際に使用するためのクラウドベースの協調的コンピュータ支援治療方法のためのシステム、デバイス、および方法を提供する。そのようなシステムおよび方法は、眼の機械的特性および/または患者の眼の構造に基づく1つまたは複数の物理機械モデルを利用して、特定の患者に対する医学的介入の効果をモデル化する。このモデル化により、ユーザーが最適化された治療計画を作成し、その後の合併症の可能性を評価することができる。
【0015】
本発明の一実施形態は、患者の眼に対する眼科手術の実施においてユーザーを支援するためのシステムであり、これは、入力/出力インターフェース(例えば、ウェブページ)に通信可能に接続され、ユーザーデバイスと通信するように構成されたユーザーインターフェースと;患者データベース、臨床データベース、および処置データベースを含み、入力/出力インターフェースに通信可能に接続されたデータベースと;入力/出力インターフェースとデータベースに通信可能に接続されたプロセッサとを有する。プロセッサは、眼または眼の一部の物理機械モデルを提供するアルゴリズムを含み、入力/出力インターフェース、データベース、およびプロセッサのうちの少なくとも1つはクラウドベースとされる。
【0016】
いくつかの実施形態では、入力/出力インターフェースは、計画モジュールおよび/または治療モジュールを含む。データベースはまた、施術者データベースおよび/または機器データベースを含むことができる。プロセッサは、臨床データベースからのデータを患者データベースからのデータと相関させ、入力/出力インターフェースを介して推奨する治療を提供するように構成された機械学習アルゴリズムを含むことができる。好ましい実施形態では、入力/出力インターフェース、データベース、およびプロセッサはクラウドベースである。
【0017】
本発明の別の実施形態は、データベースおよびプロセッサに通信可能に接続された入力/出力インターフェース(例えば、ウェブページ)の計画モジュールにアクセスするステップであって、入力/出力インターフェースはアルゴリズム支援を含み、データベースは、患者データベース、臨床データベース、および処置データベースを含んでいる、ステップと;入力/出力インターフェースを介して眼科手術での所望の結果を入力するステップと;プロセッサの機械学習アルゴリズムと、患者データベース、臨床データベース、および処置データベースからのデータとを使用して、推奨される処置を決定するステップと;推奨される処置を入力/出力インターフェースに送信するステップとによって、患者の眼科手術の実施においてユーザーを支援する方法である。入力/出力インターフェース、データベース、およびプロセッサの少なくとも1つはクラウドベースである。いくつかの実施形態では、眼または眼の一部の物理機械モデルが、生成されて、所望の結果を入力するためおよび/または推奨される処置をユーザーに表示するために使用されるようにすることができる。データベースは、施術者データベースおよび/または機器データベースを含むことができ、推奨される処置は、部分的に施術者データベースおよび/または機器データベースからのデータによって決定することができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、推奨される処置での予想される結果が入力/出力インターフェースに送信される。この予想される結果が受け入れられる場合は、推奨される処置を入力/出力インターフェースの処理モジュールに送信することができる。予想される結果が受け入れられない場合は、推奨される処置の変更を入力して、変更された処置と変更された結果が生成される。変更された結果は入力/出力インターフェースに送信され、それが受け入れられる場合は、変更された処置を入力/出力インターフェースに送信することができる。
【0019】
本発明の一実施形態は、患者の眼科手術の実施においてユーザーを支援する方法であって、眼を物理的に特徴づけて眼の構造の少なくとも第1の密度および少なくとも第1の寸法を決定するステップと、決定された密度と寸法を適用して、眼の構造またはその解剖学的構造を表す物理機械モデルを導き出すステップと、ユーザーから、選択された眼科処置の選択を受け取るステップと、選択された眼科処置を物理機械モデルに適用して、選択された眼科処置を眼の構造に適用することの効果を予測するステップと、眼の構造に適用されたときに選択された眼科処置の予測される効果の表示をユーザー(例えば、外科医または医療技術者)に提供するステップと、を含む方法である。この表示は、1つ以上の表形式のデータ、3次元の表示、成功または満足のいく結果の確率、および代替処置の推奨のうちの少なくとも1つとすることができる。いくつかの実施形態では、この方法は、選択された処置を患者の眼に適用することを含む。適切な処置には、フェムト秒レーザー処置、YAGレーザー処置、水晶体超音波乳化吸引術、硝子体切除ブレードの適用、眼内吸引、眼内水晶体の配置、および角膜弁切開が含まれる。
【0020】
物理機械モデルは、眼の機械的特性から導き出される。機械的特性は、ヤング率、応力/ひずみ弾性率、ポアソン比、密度、硬度、延性、ならびに圧縮、引張、ねじれ、およびせん断下の眼構造の有限要素解析の結果のうちの1つまたは複数である。
【0021】
適用される処置の予測された効果の表示は、選択された処置による機械的特性の変化の構造分析から導き出すことができる。あるいは、予測される効果の表示は、選択された処置の適用後の計算されたひずみまたは静的エネルギーの最小化から導き出すことができ、計算されたひずみまたは静的エネルギーは上記機械的特性から導き出される。他の実施形態では、適用される処置の予測される効果の表示は、これらの組み合わせから導き出される。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態では、物理機械モデルを生成する際に使用するための追加のデータが収集され使用されて、物理機械モデルを生成することができる。適切なデータには、角膜音響応答または超音波データ、トポグラフィーデータ、パキメトリーデータ、高さデータ、角膜厚データ、角膜湾曲データ、波面データ、眼圧データ、末梢間質厚データ、患者の年齢、患者の性別、コンタクトレンズの使用時間、以前の外科的介入、以前の外科的介入への反応、および/または角膜の降伏点が含まれる。
【0023】
いくつかの実施形態では、選択された処置は調整されて、変更された処置を生成し、変更された処置を眼に適用することの効果を予測するために物理機械モデルが使用される。そのような調整は、(a)適用されるレーザーエネルギーの量、(b)切除または切開の侵入の深さ、および(c)眼に適用される切除または切開のパターン、のうちの1つまたは複数を含むことができる。いくつかの実施形態では、一連の候補となる処置が物理機械モデルに適用され最適な処置が特定される。
【0024】
いくつかの実施形態では、眼の構造に対する予測される効果が変更された眼の構造を提供し、この変更された眼の構造の計算された物理的特性を利用して、この変更された眼の構造を表す第2の物理機械モデルを生成することができる。この第2の物理機械モデルは、変更された眼の構造に対する追加の選択された処置の効果を評価するために利用できる。
【0025】
本発明の別の実施形態は、眼を物理的に特徴付けて、水晶体の構造の少なくとも第1の密度および少なくとも第1の寸法を決定するステップと、決定された密度と寸法を適用して水晶体の構造の第1の物理機械モデルを導き出すステップと、ユーザーに水晶体超音波乳化吸引術のセットを特定するステップと、セット内から選択された水晶体超音波乳化吸引術の選択をユーザーから受け取るステップと、第1の物理機械モデルを使用して、選択された水晶体超音波乳化吸引術を眼に適用することによる1つまたは複数の効果を予測するステップと、選択された水晶体超音波乳化吸引術を眼に適用するステップとによる、眼の水晶体の水晶体超音波乳化吸引術の方法である。第1の物理機械モデルは、水晶体の機械的特性から導き出される。そのような実施形態は、少なくとも第1の触覚を有する人工水晶体を提供し、物理機械モデルを使用して、水晶体超音波乳化吸引術によって少なくとも部分的に形成された空洞内での第1の触覚の好ましい位置を特定し、第1の触覚が好ましい位置に近づくように人工水晶体を空洞に配置する、追加のステップを含むことができる。いくつかの実施形態では、選択された水晶体超音波乳化吸引術の処置に続いて眼を再スキャンして、第2の密度および第2の寸法を決定する。次に、第1の物理機械モデルを第2の密度と第2の寸法を使用して変更し、第2の物理機械モデルを生成する。これは、次いで、水晶体超音波乳化吸引術(水晶体嚢の破裂など)または人工水晶体の位置決め(水晶体のそのような不正確な術後の位置)のいずれかの合併症の確率を決定するために使用される。
【0026】
本発明の概念の別の実施形態は、眼を物理的に特徴づけて、眼の構造の少なくとも第1の密度および少なくとも第1の寸法を決定するステップと、決定された密度と寸法を適用して、眼の構造の第1の物理機械モデルを導き出すステップと、フェムト秒レーザー処置のセットをユーザーに特定するステップと、セット内から選択されたフェムト秒レーザー処置の選択をユーザーから受け取るステップと、第1の物理機械モデルを使用して、選択したフェムト秒レーザー処置を眼に適用することによる効果を予測するステップと、選択したフェムト秒レーザー手術を眼に適用するステップと、それにより変更された密度と変更された寸法を決定するために眼を再特徴付けするステップと、変更された密度と変更された寸法を使用して第1の物理機械モデルを変更し、第2の物理機械モデルを生成するステップと、第2の物理機械モデルを使用して水晶体のセグメンテーションの量を決定するステップと、水晶体のセグメンテーションの量を利用して、好ましい水晶体超音波乳化吸引術を提案するステップとによる、眼のフェムト秒レーザー治療の方法である。
【0027】
本発明の別の実施形態は、フェムト秒レーザービームを眼に送達するように構成および操作可能とされたフェムト秒レーザーと、モデリングエンジンおよび/または患者データベースを有するモデリングシステムとを含む、レーザーシステムである。患者データベースは、眼の構造の密度特性と眼の構造の寸法特性を受け取るように構成されている。そのようなシステムは、ユーザーからの入力を受け取り、モデリングシステムからの出力を表示するように構成されたグラフィックユーザーインターフェース(GUI)を含むことができる。そのような入力には、選択された処置が含まれる。
【0028】
これらのシステムのいくつかの実施形態では、モデリングシステムは、患者データベースから受け取った眼の構造の密度特性、患者データベースから受け取った眼の構造の決定された寸法特性、またはその両方に基づく眼の構造の物理機械モデル表示を導き出するように構成される。このようなシステムは、GUIから選択された処置を受け取り、選択された処置を眼の構造の少なくとも一部の物理機械モデル表示に適用して、それによって眼の構造に対する選択された処置の予測される効果を導き出す。いくつかの実施形態では、モデリングシステムは、予測される効果の表示をGUIに提供する。
【0029】
そのようなシステムの実施形態では、システムは水晶体超音波乳化吸引術システムを含むことができる。これらのシステムの実施形態では、システムは、この「課題を解決するための手段」に記載されている方法、処置、または導出操作のうちの1つまたは複数を実行するように構成される。
【0030】
本発明の主題の様々な目的、特徴、態様および利点は、好ましい実施形態の以下の詳細な説明、ならびに(同様の数字が同様の構成要素を表す)添付の図面からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明に係るシステムのクラウドベースのアーキテクチャの例を概略的に示している。
【0032】
図2】本発明に係るシステムの例示的なモジュールを概略的に示している。
【0033】
図3】人間の眼の水晶体嚢内の水晶体の物理機械モデルの例示的な3次元表示である。網掛けは、構造内の機械的ひずみの程度を表す。矢印は、ひずみが方向付けられる方向を表す。
【0034】
図4】本発明に係るシステムにおける概略的ワークフローのフローチャートを示す。
【0035】
図5】変更前の物理機械モデルを生成するための本発明に係るシステムにおけるワークフローのフローチャートを示す。
【0036】
図6】変更後の物理機械モデルを生成するための本発明に係るシステムにおけるワークフローのフローチャートを提供する。
【0037】
図7】人間の眼の断面図を示す。
【0038】
図8】角膜および関連する構造の断面図を示す。
【0039】
図9】本発明における、眼の一部の層状モデルの概略図を示す。
【0040】
図10】本発明の例示的な統合システムの斜視図を示す。
【0041】
図11】システムワークフローおよび通信のフローチャートおよび概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下の説明は、本発明を理解するのに有用であり得る情報を含む。本明細書で提供される如何なる情報も、先行技術であることや特許請求されている発明に関連しているものであることを認めるものではなく、具体的または暗黙的に参照されている刊行物が先行技術であることを認めるものでもない。
【0043】
以下の議論を通して、サーバー、サービス、インターフェース、ポータル、プラットフォーム、またはコンピューティングデバイスから形成された他のシステムに関して多数の言及がなされるであろう。そのような用語の使用は、コンピュータ可読の有形の非一時的な媒体に格納されたソフトウェア命令を実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサを有する1つまたは複数のコンピューティングデバイスを表すことを理解されたい。例えば、サーバーは、説明される役割、責任、または機能を果たす態様のウェブサーバー、データベースサーバー、または他のタイプのコンピュータサーバーとして動作する1つまたは複数のコンピュータを含むことができる。
【0044】
本明細書で使用される場合、特に明記しない限り、「フェムト秒レーザー」、「フェムト秒レーザービーム」、「フェムト秒パルス」という用語、および同様のそのような用語は、パルス持続時間、したがってレーザービームのパルス長さ(パルス幅とも呼ばれる)を指すために使用され、パルス持続時間が約10ピコ秒(約10×10-12秒未満)から約1フェムト秒(fs)(1×10-15秒)までのすべてのレーザーおよびレーザービームを意味する。
【0045】
本明細書で使用される場合、特に明記しない限り、室温は約25℃である。同様に、標準の周囲温度と圧力は約25℃と約1気圧である。特に明記されていない限り、すべてのテスト、テスト結果、物理的特性、および粘度を含む温度依存、圧力依存、あるいはその両方である値は、標準の周囲温度と圧力で提供される。
【0046】
概括的には、本明細書で使用される「約」という用語および記号「~」は、特に明記しない限り、±10%の分散または範囲、記載された値の取得に関連する実験または機器のエラー、好ましくはこれらの大きい方を包含することを意味する。
【0047】
本明細書で使用される場合、特に明記しない限り、値の範囲、約「x」から約「y」までの範囲、および同様のそのような用語および定量化の列挙は、範囲内の別個の値を個別に参照するための単なる省略方法として機能する。したがって、それらには、その範囲内にある各アイテム、機能、値、量、または数量が含まれる。本明細書で使用される場合、特に明記しない限り、範囲内のすべての個々の点は、本明細書に組み込まれ、本明細書で個別に記載されているかのように、本明細書の一部である。
【0048】
本明細書で使用される場合、「少なくとも」、「より大きい」などの用語は、特に明記しない限り、「以上」も意味し、すなわち、そのような用語は、特に明記しない限り、より低い値を除外する。
【0049】
本発明の実施形態の主題またはそれに関連する、新規で画期的なプロセス、材料、性能、または他の有益な特徴および特性の根底にある理論を提供またはそれについて議論する必要がないことに留意されたい。それにもかかわらず、この分野の技術をさらに進歩させるために、本明細書では様々な理論が示されている。本明細書に記載されている理論は、特に明記されていない限り、特許請求の範囲に記載された発明に与えられる保護の範囲を限定、制限、または狭めるものではない。これらの理論は、本発明を利用するために必要とされないか、または実践されない場合がある。さらに、本発明は、本発明の方法、物品、材料、デバイス、およびシステムの実施形態の機能的特徴を説明するための、これまで知られていなかった新しい理論につながる可能性があることを理解されたい。そして、そのような後に造られる理論は、本発明に与えられる保護の範囲を制限するものではない。
【0050】
本明細書に記載のシステム、療法、プロセス、組成物、用途、および材料の様々な実施形態は、様々な他の分野、ならびに様々な他の活動、使用、および実施形態に使用することができる。さらに、これらの実施形態は、例えば、既存のシステム、療法、プロセス、組成物、用途、および材料とともに、また、将来開発される可能性のあるシステム、治療法、プロセス、組成物、用途、および材料とともに、そして、本明細書の教示に基づいて部分的に変更される可能性のあるシステム、療法、プロセス、組成物、用途、および材料とともに使用される可能性がある。さらに、本明細書に記載されている様々な実施形態および実施例は、全体的または部分的に、そして異なる様々な組み合わせで、互いに使用することができる。したがって、例えば、本明細書の様々な実施形態で提供される構成は、互いに使用することができる。例えば、A、A’およびBを有する実施形態の構成要素、ならびにA”、CおよびDを有する実施形態の構成要素は、様々な組み合わせ、例えば、A、C、DやA、A”、CおよびDなど互いに使用することができる。本発明に与えられる保護の範囲は、特定の実施形態、特定の実施形態で述べられたり示されたりする例、構成、または配置に限定されるべきではない。
【0051】
本発明のシステムおよび方法は、(例えば、フェムト秒レーザーを使用した)切開および水晶体の水晶体超音波乳化吸引術を含む眼科処置を支援するクラウドベースの対話型(インタラクティブ)ソフトウェアをユーザーに提供する。このアプリケーションの目的のために、フェムト秒レーザーおよび/またはフェムト秒レーザービームは、約10ピコ秒(10×10-12秒)以下、約1ピコ秒(10-12秒)以下、及び1フェムト秒(fs)(10-15秒)を含むパルス持続時間を有するレーザービームを意味する。このような処置には、人工眼内水晶体の挿入と配置が含まれる。このようなシステムおよびソフトウェアの実装には、眼または眼の一部の3次元物理機械モデルの使用を含めることができる。そのような(以下でより詳細に説明される)物理機械モデルは、眼の構造に対する提案されるまたは実際の変更(例えば、切開、水晶体の除去など)に応答して、そのような変更に対する予測または予測された応答をユーザーに提供することができる。
【0052】
以下においては、本発明の主題の多くの例示的な実施形態を提供する。各実施形態は、本発明の要素の単一の組み合わせを表すが、本発明の主題は、開示された要素のすべての可能な組み合わせを含むとみなされる。したがって、一実施形態が要素A、B、およびCを含み、第2の実施形態が要素BおよびDを含む場合、明示的に開示されていなくても、本発明の主題はまた、A、B、C、またはDの他の組み合わせを含み得るものである。
【0053】
本明細書に開示される本発明の代替要素または実施形態のグループ化は、限定として解釈されるべきではない。各グループエレメントは、個別に、またはグループの他のメンバーまたは本明細書に見られる他の要素と任意の組み合わせで参照および特許請求することができる。グループの1つ以上の要素は、利便性および/または特許性の理由から、グループに含めるか、グループから削除することができる。そのような包含または削除が発生した場合、本明細書は、変更されたグループを含み、したがって、添付の特許請求の範囲で使用されるすべてのマーカッシュグループの記載を満たすとみなされる。
【0054】
本発明のシステムの例が図1に示されている。そのようなシステム(100)は、施術者が情報を入力および受信するために利用するローカルインターフェース(110)を含むことができる。そのようなローカルインターフェースは、ウェブサイトなどのインターネットインターフェース(120)を介して、入力/出力インターフェース(130)へのアクセスを提供する情報ネットワーク(例えば、インターネット)に通信することができる。このような入力/出力インターフェースは、システムのデータストレージおよびプロセッシングの機能との通信を提供できる。本発明の好ましい実施形態では、入力/出力インターフェース(130)、プロセッシング(140)、およびデータストレージ(150)はクラウドベースであるが、これらのコンポーネントまたはその一部の1つまたは複数は、ユーザーに対してローカルであるシステムコンポーネントの中に具体化することができる。ストレージコンポーネントには、システムのプロセッシング(処理)機能で使用される1つ以上のデータベースを含めることができ、ユーザーは入力/出力インターフェースを介して直接アクセスできる。そのようなデータベースのクラウドベースのストレージは、そこに格納された情報の更新および追加をすべてのユーザーに対して許可する。システムのプロセッシングコンポーネントは、以下に詳述するように、ユーザーからの入力を受け取り、光学処理計画を決定する際の支援を提供し、眼および/または眼の構造のインタラクティブな物理機械モデルを生成するなどの、1つまたは複数のアルゴリズムを組み込むことができる。クラウドベースのプロセッシングを使用すると、すべてのユーザーに更新と改善が配布されることを理解しておく必要がある。
【0055】
本発明におけるインターネットインターフェースは、図2に示されるように、2つ以上のモジュールとして配置することができる。図示のインターネットインターフェース(200)では、3つの異なるモジュールが用意されている。計画モジュール(210)は、治療コースを計画するのに有用なインターフェースを施術者に提供する。計画モジュールは、直接またはアルゴリズム支援(215)を介して、データベース(220)にアクセスすることができる。データベースは、施術者および/またはアルゴリズムが支援するのに役立つ情報であるサブデータベースを含むことができる。典型的なサブデータベースには、患者固有の情報を含む情報データベース(225);病状/傷害、治療モード、転帰、(例えば、物理機械モデルの生成に使用するための)眼および眼の構造の物理的パラメータなどに関連する集約データを含む臨床データベース(230);専門的なトレーニング/スキル、さまざまな治療モードの経験、治療の好みなどの、施術者固有の情報を含む施術者データベース(235);さまざまな医療介入処置、投薬の効果などに関連する情報を含む処置データベース(240);および/またはさまざまな医療機器の使用と性能特性、さまざまな治療施設での機器の可用性などに関連する情報を含む機器データベース(245)が含まれる。
【0056】
使用中、施術者は、計画モジュールを利用して、特定の患者のための異なる治療オプションを探索し、および/または治療プロトコルを計画することができる。いくつかの実施形態では、施術者は、計画モジュールを使用して、(例えば、ラインコマンド、アイコンベースのナビゲーションなどによって)データベースからの情報に便利にかつ直接的にアクセスして、個々人の経験に基づいて治療プロトコルを決定することができる。好ましい実施形態では、施術者は、アルゴリズム支援(215)を利用して、最適な治療計画を決定することができる。このようなアルゴリズム支援には、施術者に眼(またはその一部)の3次元のインタラクティブな物理機械モデル(これは、試行治療を入力し、予想される結果を表示するのに使用することができる)を提供することが含まれる。あるいは、または追加的に、いくつかの実施形態では、施術者は、治療される状態または損傷に関する情報を支援アルゴリズムに提供することができ、支援アルゴリズムは、患者データベースおよび臨床データベースからのデータに機械学習アプローチを適用して、1つまたは複数の成功の可能性が高い治療計画の提案することができる。いくつかの実施形態では、支援アルゴリズムは、施術者データベースからの情報を利用して、施術者のスキルまたは好みに一致するように提案を調整することができ、同様に、機器データベースからの情報を利用して、施術者の場所で利用可能な機器および設備を利用するように提案を調整することができる。
【0057】
施術者が提案された治療計画に満足したら、それを、例えば、検索のために患者データベース(225)に格納することによって、インターネットインターフェースの治療モジュール(250)に転送することができる。治療モジュールは、例えば外科的処置中にガイダンスを提供するなど、治療の過程で施術者を支援するために使用することができる。いくつかの実施形態では、治療モジュールは、患者の解剖学的構造に基づくインタラクティブな物理機械モデルを使用して、実行されるのと同じように医療処置を実践するために施術者によって使用され得る。好ましい実施形態では、治療モジュールは、計画モジュール(210)によってアクセスされるデータベース(220)と類似、同一、または同じデータベースにアクセスすることができる。治療モジュールは、施術者にデータベース内の情報への直接アクセスを提供するか、またはアルゴリズム支援(255)を介してアクセスを提供することができる。好ましい実施形態では、アルゴリズム支援は、患者の眼(またはその一部)のインタラクティブな物理機械モデルを施術者に提供し、このモデルを使用して治療計画のステップを入力し、それらのステップの予測される結果を表示することができる。いくつかの実施形態では、それらは、治療中に患者の解剖学的構造に重ね合わされる拡張現実として提供することができる。いくつかの実施形態では、期待される結果からの逸脱は手術中に入力され、システムは変更処置を提案するために使用される。
【0058】
インターネットインターフェースはまた、トレーニングモジュール(260)を含むことができる。このようなトレーニングモジュールは、将来の施術者を教育する際に使用でき、現役の施術者にはスキルを更新または拡張するためのトレーニングを提供し、および/または施術者間の話し合いに使用できる。好ましい実施形態では、トレーニングモジュールは、計画モジュール(210)によってアクセスされるデータベース(220)と類似、同一、または同じデータベースにアクセスすることができる。トレーニングモジュールは、1つまたは複数の疾患/傷害状態を呈する典型的な眼の、保存され理想化された物理機械モデルを利用し、さまざまな介入の結果を表示できる。話し合い目的で使用される場合、1人または複数のコンサルティング施術者は、患者固有のデータおよび提案された治療計画に直接アクセスし、その後、主施術者にフィードバックを提供することができる。
【0059】
本発明のシステムおよび方法は、1つまたは複数のデータプロセッシングデバイス、1つまたは複数のデータ記憶デバイス、および1つまたは複数の対話型アルゴリズムを含む。これらは、有線ネットワークや、無線ネットワークや、データ/プロセッシングクラウドシステムを介して実装またはアクセスすることができる。これは、移植性およびある程度のデバイス独立性を有利に提供し、本発明のシステムおよび方法が、コンピューティングハードウェアへの最小限のローカル投資で広く実装されることを可能にする。クラウドベースのデータおよび/またはプロセッシングの使用は、データと更新されたソフトウェアの同時配布、およびシステム全体の患者データへのローカルアクセスも提供する。そのような患者データは、次に、システムのアルゴリズムによって利用されて、提案される治療プロトコルを生成し、および/または物理機械モデルを改善することができる。したがって、クラウドベースのシステムを介してシステム全体の患者データにアクセスすることで、眼の状態の診断と治療の精度を向上させることができる。
【0060】
本発明システムおよび方法は、ローカルインターフェースとして機能することができる広範なコンピューティングおよびディスプレイデバイスを利用および/または組み込むことができる。このようなデバイスには、スマートフォン、タブレットコンピュータ、ウェアラブルデバイス(スマートウォッチ、スマートグラスなど)、ラップトップコンピュータ、デスクトップ/タワーコンピュータなどの家庭用電化製品が含まれる。いくつかの実施形態では、デバイスは、両眼ヘッドアップディスプレイ、(例えば、水晶体超音波乳化吸引術用の)顕微鏡ヘッドアップディスプレイ、および手術室で使用するために収容および構成されたモニター/ディスプレイなどの、医療グレードの電子デバイスを含むことができる。このようなデバイスは、完全にコンピュータで生成された作業画像を提供することも、コンピュータで生成された画像を治療中の眼の取得画像に重ね合わせる拡張現実ディスプレイを提供することもできる。
【0061】
本発明の実施形態は、患者固有のデータ、眼疾患に関連する臨床データ、治療プロトコルおよび結果に関連する臨床データ、治療計画、ユーザ(例えば、医師)の好み、異なる光学的条件および/または治療方法を有する個々の施術者の経験、治療計画を選択するためのアルゴリズム、患者の眼(またはその一部)の物理機械モデルを生成するためのアルゴリズムなどの保存に使用できる1つまたは複数のデータベースを含む。そのようなデータベースの全部または一部をクラウドストレージに実装することができ、クラウドストレージにアクセスして、有線または無線のインターネット接続を介して(例えば、Webサイトまたは同様のインターフェースを介して)アップロードおよび/またはダウンロードすることができる。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態では、ユーザーにより入力された患者固有の特性および所望の結果に基づいて特定の患者の眼科外科手術を選択および/または最適化する際にユーザ(例えば医師)を支援するためにアルゴリズムを使用することができる。好ましい実施形態では、そのようなアルゴリズムは、機械学習によるものであり得、患者固有の特性および所望の結果を、保存された(眼の状態、年齢、性別、民族性、遺伝子マーカーの有無、基礎疾患、現在の投薬、以前の介入に関連する患者データを含み得る)臨床データや、適用された処置および/または技術や、観察された客観的および/または主観的な結果と相関させることができる。その他の入力には、医師の好み、さまざまな治療モードでの医師の経験またはトレーニングの範囲、およびさまざまな処置での医師の成功率が含まれる。このようなアルゴリズムのすべてまたは一部は、クラウドコンピューティングプラットフォームに実装できる。クラウドコンピューティングを使用すると、さまざまなプラットフォームでの実装が可能になるだけでなく、正確な機械学習を容易にする、より大きく多様なデータセットが提供される。
【0063】
治療最適化のための支援アルゴリズムを提供することに加えて、本発明のシステムおよび方法は、施術者(例えば、眼科医)が彼らの個々の好みを入力するためのインターフェースを提供できる。そのような好みの例には、すぐ行われる臨床設定で利用可能な特定のフェムト秒レーザーの利用、好ましい切開の深さおよび/または長さ、眼内レンズのブランドおよびモデルなどが含まれる。これらの設定は、例えば、Webベースのチェックリストを使用して入力できる。好ましい実施形態では、支援アルゴリズムは、これらの選好を提案された治療計画に組み込む。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態では、治療計画は、2つ以上のタイプの外科的介入を含むことができる。例えば、白内障の治療には、フェムト秒レーザーを使用して角膜を切開し、水晶体超音波乳化吸引術を使用して曇った水晶体を破壊および除去することが含まれる。そのような実施形態では、本発明に係るアルゴリズムは、ある処置の1つの外科的介入を、その処置の別の外科的介入よりも優先的に最適化するように指示することができる。例えば、重要な乱視を有するが他の合併症はない白内障の患者における治療において、角膜切開の配置とサイズを術後の乱視の程度を低減するために使用することができる。このような状況では、水晶体超音波乳化吸引術よりもフェムト秒レーザー切開部分の最適化を優先するようにアルゴリズムに指示することができる。あるいは、患者が特に問題のある白内障を患っている場合には、施術者は、最初のフェムト秒レーザー切開ステップよりも水晶体超音波乳化吸引術を最適化することを選択できる。処置における最適化のこのような重み付けは、個々の患者データに基づいて、アルゴリズムによって実行される。あるいは、そのような重み付けは、施術者によって決定および入力することができる。
【0065】
上記のように、本発明のシステムは、様々な眼の状態の治療における、様々なツールおよび技術を用いた、個々の施術者の経験を記録するデータベースを含むことができる。これらは、臨床データの入力および/または物理機械モデリングのシミュレーションの結果を治療最適化のアルゴリズムに補完または置換し、それによって最適化に実際の実践的な要素を導入するのに使用することができる。いくつかの実施形態では、施術者は、特定の施術者の経験の記録に選択的にアクセスすることができ、いくつかの実施形態では、話し合いのために1人または複数の選択された施術者にリアルタイムで連絡することができる。クラウドベースのシステムにこのような機能を実装すると、多数の人に効果的なコラボレーションとコミュニティのインタラクションをサポートすると一貫したインターフェースが有利に提供される。
【0066】
本発明の主題のデバイスおよび方法では、患者固有の情報を使用して、個人の眼の全部または一部の動的でインタラクティブな3次元モデルを生成する。本明細書においては、3次元モデルは、遠近法、陰影、色の手がかりを提供し、回転可能であり、または長さ、幅、および高さを示す他の視覚的手がかりを含む、コンピュータディスプレイ上に提供される2次元表示を包含することを意図する。この3次元モデルの構成は、少なくとも部分的に個人の眼に関連する物理パラメータの測定に基づいており、且つその機械的特性(剛性、弾性、密度、厚さなど)を反映している物理機械モデルである。いくつかの実施形態では、物理機械モデルは、患者の自然な、変化していない眼に基づいている。他の実施形態では、物理機械モデルは、患者の眼の物理的、機械的、および/または光学的特性に影響を与える医学的介入(例えば、レーシック、PRK、水晶体除去、人工水晶体配置、硝子体切除術、強膜バックルなど)を受けた眼に基づく。そのような実施形態では、改変された組織および/または人工デバイスの物理的特性を、物理機械モデルへの入力として含めることができる。他の実施形態では、動的な物理機械モデル(すなわち、ベースライン状態から変化した状態への遷移を示すもの)を使用し、医学的介入の前に行われた測定値および医学的介入から予想されるそれらの測定値への変更(すなわち、それぞれ、変更前および変更後)から得られた眼の物理機械モデルを使用して、眼またはその一部に対する医学的介入の予測される効果が生成されることを示すことができる。
【0067】
物理機械モデルは動的であり、対象の眼への変化を表すユーザ(例えば、医師)からの入力に応答することができる。そのような変化の例には、医学的介入、例えば、眼の特定の部分に加えられた切開、眼の部分の切除、眼の構造(例えば、白内障を有する水晶体)の除去または交替、眼への材料または物質の添加(例えば、組織移植片、人工水晶体など)および薬の投与(例えば、眼圧を変える薬)などが含まれる。このような入力を受け取ると、物理機械モデルが変更されて、ユーザーが入力した変更後の眼の全体または一部の構成を表す変更後の物理機械モデルが生成される。いくつかの実施形態では、入力された変更の効果の理解および解釈を容易にするために、変更前および変更後の構成の間の移行中に発生する動きおよび/または構成変更のアニマティックまたは他の動的表示を提供できる移行物理機械モデルが導き出される。いくつかの実施形態では、入力された変更の効果の理解および解釈を容易にするために、変更前および変更後の構成の間の重ねあわせを提供することができる。
【0068】
対象の眼の全部または一部の形状、向き、および/または構成の変化を表示することに加えて、物理機械モデルは、モデルの全部または一部に対する特定の結果または値を明示または強調するのに役立つ視覚的な手がかりを提供する、強化された物理機械モデルを提供することができる。例えば、色分けを使用して、表面トポグラフィの特性(例えば、切除後の角膜の特性)および/または強化されていない物理機械モデルでは容易に観察できない可能性のある機械的ひずみを強調することができる。図3は、人間の眼の水晶体嚢内の水晶体の物理機械モデルの例示的な3次元表示である。網掛けは構造内の機械的ひずみの程度を表し、矢印はひずみの方向を表す。同様に、眼の構造を通過する光の1つまたは複数の波長の屈折を示す光線追跡を使用して、人工水晶体の埋め込みの効果を評価するために最適な焦点が生じる場所を示すことができる。いくつかの実施形態では、そのような強化を組み合わせて、例えば、人工水晶体を受け入れている眼の角膜欠損を矯正するためのレーザーアブレーションの効果を評価するようにすることができる。
【0069】
本発明に係る物理機械モデルは、施術者が患者の眼に対する異なる介入および/または処置の結果を評価して、患者の個々の状態を最もよく対処する治療計画を作成するのに使用することができる。このように、物理機械モデルは特定の眼に加えられる介入の結果を反映する仮想モデルと組み合わせて施術者のトレーニングと経験を活用するツールを提供し、施術者が自由に使える技術とツールを使用し、最高度の親しみやすさと快適さを備えた効果的な治療計画を立てることを可能にする。このようなインタラクティブな物理機械モデルを使用して、他の方法では考慮されない使い慣れた治療モード(アブレーション、水晶体交換、投薬など)の組み合わせを利用する治療計画を作成することもできる。
【0070】
いくつかの実施形態では、初期の物理機械モデルを利用して、マルチステップ処置の1つのステップとして機能する最適な処置(例えば、水晶体除去の初期段階としてフェムト秒レーザーを使用する角膜への切開)を決定することができる。これに続いて、(例えば、最初の処置の結果としての)眼または眼の一部の機械的特性の変化を反映している第2の物理機械モデルを使用して、次のステップ(例えば、水晶体超音波乳化吸引術、眼内水晶体の配置など)の最適な処置を決定できる。いくつかの実施形態では、第2の物理機械モデルは、最初の物理機械モデルに対する第1の処置の計算された効果から導出された予測される機械的特性に基づく。他の実施形態では、最初の処置に続いて行われた測定によって決定された眼または眼の構造の機械的特性を使用して、そのような第2の物理機械モデルを導き出す。
【0071】
本発明のシステムの概括的なワークフローの例が図4に示されている。図示のように、そのようなシステムは、データベースを含むことができ、このデータベースは、以下に詳述するように、患者の眼について行われた測定や患者の病歴などから得られた患者固有のデータを格納することができる。このようなデータベースには、特定の介入および/または処置の記録された結果、および特定の亜集団の特性を含む、集団調査から得られた統計データを含めることもできる。患者固有のデータベース(および一部の実装では統計データベース)からの情報は、モデリングエンジンに提供される。モデリングエンジンは、このデータを利用して、患者固有のデータに基づいて、眼またはその一部の患者固有の数理物理機械モデルを生成する。例えば、モデリングエンジンは、基本的な機械的原理を眼の一部の測定値と既知の特性に適用して、曲率、表面トポグラフィ、完全性の喪失の確率などの特性を推定することができる。あるいは、モデリングエンジンは、眼の構造の計算されたおよび/または既知の特性とともに患者固有のデータを使用して、眼またはその一部のひずみエネルギーを計算し、次に、(許容範囲内の)異なる構成および/または寸法を繰り返し適用して、低ひずみエネルギーの構成を生成することができる。いくつかの実施形態では、そのようなアプローチを組み合わせることができる。いくつかの実施形態では、そのような数理モデルで計算されたものは、統計データから得られた情報と比較することができ、および/またはそれを使用して変更することができる。
【0072】
モデリングエンジンによって提供されるそのような数理モデルは、表示データとしてグラフィックエンジンに提供することができ、グラフィックエンジンは、ディスプレイに人間が知覚できる出力を提供する。好ましい実施形態では、この数理モデルは、3次元ディスプレイ、または(3次元モデルの)機能的2次元表示に適した出力の形式である。他の表示形式として、表形式の出力、文書または口頭での推奨事項、所望の結果の確率のグラフィックまたはカラーキー表示なども考慮される。
【0073】
図5に示されるように、いくつかの実施形態では、特定の患者の眼またはその一部の初期の変更前の数理モデルは、測定や履歴などから得られた患者固有のデータを使用してモデリングエンジンに生成され得る。これにより、グラフィックエンジンへの介入前に患者の眼を記述する表示データが提供され、グラフィックエンジンは、医療介入前に、人間が観察できる患者の眼またはその一部の表示を提供することができるディスプレイへの入力を提供する。これは、提案された医療処置の効果の「前後」のビューを提供する動的な物理機械モデルのベースラインまたは開始点として機能する。同様に、図6は、同様のプロセスのワークフローを示しており、グラフィックはディスプレイへの入力を提供することができ、次にディスプレイが医療介入後の患者の眼(またはその一部)の人間が観察可能な表示を提供することができる。これは、提案された医療処置の終点として、あるいは複雑な/多段階の医療処置の中間点の結果として役立つ可能性がある。
【0074】
図8に示されるように、いくつかの実施形態では、患者固有のデータの値を変更することになる1つまたは複数の提案される介入を入力することによって、特定の患者の眼またはその一部の変更後の数理モデルを生成することができる。いくつかの実施形態では、変更前の特定のデータに対するそのような介入の影響は、モデリングエンジンによって決定され、そのモデリングエンジンは、これらの修正された値を利用して変更後の数理モデルを導出する。他の実施形態では、変更前の特定のデータの値の修正は、データベース内に変更後の患者固有のデータセットを生成する別個の操作で実行される。この変更後の患者固有のデータセットは、モデリングエンジンからアクセス可能とされ、変更後の数理モデルを生成するために使用できる。変更前の数理モデルの生成と同様に、統計データセットからのデータを使用して最適なモデル生成方法を決定したり、グループの履歴データに基づいてモデルの変更後を変更したりできる。変更後の数理モデルが決定されると、グラフィックエンジンに提供される変更後を表すデータのセットが決定され、次にグラフィックエンジンが、提案された介入の変更後の結果を表す、人間が観察できる出力を(例えば、ディスプレイを介して)提供する。
【0075】
いくつかの実施形態では、数理モデルから導出された変更後の特定のデータをデータベースに入力することができる。次に、そのような変更後の特定のデータを、その後の提案された介入の効果を計算するための起点として使用することができ、これにより、第2の変更後の物理機械モデルが生成される。このような順次の(シークエンシャルな)アプローチを通して、多くの異なるステップを含む複雑な処置に対する最適な治療計画を導き出すことができる。例えば、最初の変更後モデルを使用して、角膜切開の最適なサイズと配置を決定でき、それに続く変更後モデルを使用して、白内障の治療における最適な眼内レンズの選択と配置を決定できる。
【0076】
物理機械モデルの生成は、治療される個々の眼の様々な特徴を含む患者固有のデータを特定の患者固有のデータベースに入力することを含むことができる。このようなデータには、角膜音響応答および/または超音波データ、トポグラフィーデータ、パキメトリー(pachymetric)データ、高さデータ、角膜厚データ、角膜曲率データ、波面データ、眼圧データ、末梢間質厚データ、患者の年齢、患者の性別、コンタクトレンズの使用期間、以前の外科的介入、および/または以前の外科的介入に対する反応などが含まれる。このようなデータは、角膜トポグラフィ、光コヒーレンストモグラフィー、波面分析、超音波、および/または患者へのインタビューで取得できる。
【0077】
この方法で収集されたデータは、眼または眼の構造の物理機械モデルを導出するために使用することができる様々な機械的特性を決定または推測するために使用することができる。このような機械的特性には、ヤング率、応力/ひずみ弾性率、ポアソン比、密度、硬度、延性、および/または圧縮、引張、ねじれ、せん断下での眼構造の有限要素解析の結果が含まれる。これらは、処置中にある程度変化する可能性がある温度によって変わることがありえる。
【0078】
そのような患者固有のデータは、任意の関連する眼の構造について取得および入力することができる。関連する眼の構造には、水晶体、水晶体嚢、帯状強膜、角膜、虹彩、上皮、繊毛および筋肉、房水を有する前眼房、硝子体房水を有する後眼房、提靱帯、瞳孔、シュレム管、線維柱帯、および/または網膜が含まれる。
【0079】
本発明の実施形態はまた、眼科治療を受けた患者の集団から得られたデータを含む統計データベースを含むことができる。このような統計データベースには、特定の母集団セグメント(年齢範囲、性別、民族性、特定の遺伝子マーカーの有無など)、眼の状態、適用された介入/治療、および結果に関連するデータを含めることができる。このような統計データベースには、特定の母集団セグメントの特性、適用された介入および/または治療、および結果の間の相関関係に関連する情報を含めることもできる。いくつかの実施形態では、そのようなデータおよび/または相関関係にアクセスして、変更後の物理機械モデルの特性を導き出すようにすることができる。このような統計データベースを使用すると、患者固有のデータベースには提供されていない値の統計的に適切な推定値を提供することにより、変更後の物理機械モデルの精度を向上させることができる。例えば、年齢、性別、過去の治療などの患者固有の要因を使用して、患者固有のデータベースには存在しない患者固有の値の統計的に適切な推定値を提供できる統計データベース内の母集団セグメントを画定できる。
【0080】
眼の1つまたは複数の部分に向けられた介入に関連する形状の変化は、眼の構造の機械的特性に基づいて曲率などの推定値を提供する1つまたは複数の機械モデルを使用して計算することができる。このような機械的特性は、データベースに保存されている個々のデータから導き出され、医学的介入によってそれらの特性が変更された後に再計算される。このような機械的特性の例には、構造の弾性の尺度を提供するヤング率(E)、および伸長力の方向の縦方向の伸長ひずみに対する横方向の収縮ひずみの比率であるポアソン比が含まれる。これらは、適切な測定結果から推定できる。例えば、(1-v2)P・-(1)E=2aK(a/h、v)w、ここで:
・Eはヤング率
・Pは押し込み力
・vはポアソン比
・wは押し込み(くぼみ)深さ
・aは圧子の半径
・hは組織の厚さ
・Kはアスペクト比a/hとポアソン比に依存する倍率、である。
くぼみの微小変形の仮定に基づいて解を得ることができる。眼のコンポーネントを変更すると、そのようなコンポーネントの機械的特性(ヤング率など)に影響を与えるパラメータが変更される可能性がある。例えば、レーザーアブレーションによる角膜の一部の厚さの変更は、その領域の組織の厚さに直接影響する。モデリングエンジンは、提案された医学的介入によって変更された眼の構造パラメータがそのような機械的特性に及ぼす影響を推定するために使用され、変更後の眼の物理機械モデルを生成するために眼内に力(眼圧など)を加えてそのような構造の構成への影響を推定することができる。同様に、特定の眼構造におけるそのような構成の変化が隣接するまたは結合された眼の構造に及ぼす影響を計算して、それを変更後の物理機械モデルで利用することができるようにすることができる。個々の眼またはその一部の変更前および変更後の物理機械モデルを組み合わせて、機械的推定に基づいて眼の動的な物理機械モデルを生成することができる。
【0081】
あるいは、患者固有のデータベースからの値が上述のように機械的関係から導き出される眼または眼の一部内に存在する力と眼または眼の一部の特徴との間の関係の数学的モデルを生成するモデリングエンジンに提供されるエネルギー最小化アプローチを、利用することができる。この数学的モデルは、数学的モデルの低エネルギー解または最小化エネルギー解を表すことができる3次元の物理機械モデルの生成に使用される一連の座標を提供する。いくつかの実施形態では、この数学的モデルは、眼または眼の特定の部分に全体として適用される。他の実施形態では、一連の数学的モデルが眼または眼の特定の部分のセグメントに適用されて、数学的モデルセットを生成し、このセットの各メンバーは、それぞれのセグメント内に存在する力とそのセグメントの特性との間の相関関係を提供する。そのような実施形態では、そのようなセグメント間のインタラクションを特徴付ける追加の統合モデルが導出される。
【0082】
モデリングエンジンは、記憶された物理的パラメータ(例えば、密度、厚さ、弾性、剛性など)と眼における加えられた及び/または固有の力との間の機械的関係に基づいて、物理機械モデルの表示のための座標を導出するために使用される表示データの1つまたは複数のセットをさらに出力することができる。このような機械的関係を適用して、構造内のひずみと応力の計算によって決定される物理機械モデルの最小静的エネルギー解を提供する座標のセットを表す表示データを生成できる。
【0083】
例えば、周知の機械的関係を使用して、保存された(ある個人からの測定の結果であり得る)物理的パラメータを、一般的な眼または眼の所望の部分のベースライン空間座標のセットを含む保存されたベースラインまたは一般的な物理機械モデルに適用することから生じる、ベースラインひずみまたは静的エネルギーを導出することができる。次に、モデリングエンジンは、静的エネルギー削減アルゴリズムを適用して、この変更されたベースライン物理機械モデルの空間座標を変更し、ベースライン静的エネルギーを削減または最小化する。このようなアルゴリズムは、例えば、眼または眼の構造の既知の特性によって制限されるさまざまな可能な次元のひずみまたは静的エネルギーを反復的に計算し、結果をランク付けすることができる。最終的な物理機械モデルは、この静的エネルギーが最小化されたときに(つまり、さらに変更を加えると計算された静的エネルギーまたはひずみが増加することになるときに)実現される。
【0084】
本発明の別の実施形態では、眼またはその一部(例えば、角膜)を、可撓性の積層構造としてモデル化することができる。そのような層状モデルは、互いに付着している2つ以上の層を含むことができ、層の1つの表面は、隣接する層の対応する表面と接触して連続的に付着する。そうすることで、層状の物理機械モデルは、厳格な機械的および/またはエネルギー的なアプローチよりも、自然に発生する解剖学的コンテキスト内での実際の眼および/または眼の構造をより完全に表すことができる。そのような層状モデルでは、隣接する層は、異なる厚さ、組成、および機械的特性を有することができ、また眼およびその異なる組織層の解剖学的構造を少なくとも部分的に複製するように選択および整えることができる。そのような層状の物理機械モデルは、例えば、角膜の物理機械モデル内で密度が変化する比較的厚くて柔軟な間質に付着する柔軟性のないボーマン層に付着した比較的薄くて柔軟な上皮層を提供することができ、これらの層のいずれかまたはすべての変更を説明することができる。
【0085】
そのような層状モデルの例が図9に示されており、この図は角膜の一部の例示的な層状モデルを示している。層状モデル(900)は、3つの層(910、920、930)を組み込んでおり、これらの層は、上皮層(910)、ボーマン層(920)、および間質(930)に対応する個々の機械的/物理的特性を有するものとしてモデル化されている。層状物理機械モデル(900)は、構造全体を、層(910)が層(920)に連続的に付着し、層(920)が層(930)に連続的に付着している可撓性の積層として扱うことによって生成される。
【0086】
角膜の様々な部分の基本的な機械的特性が利用可能であり(MastersonおよびAhearne, Experimental Eye Research, 177:122-129(2018); Lastら,Journal of Structural Biology, 167(1):19-24(2009)を参照)、そして患者固有のデータ(例えば、測定値、年齢、病歴など)に基づいてさらに改善することができる。結果として得られる眼またはその一部の層状モデルや、その応力(例えば眼圧)に対する反応、1つまたは複数の層の全体または一部の(例えば光切除による)厚さや(例えば架橋による)剛性の変化に対するその反応などに基づく物理機械モデルを、任意の適切な方法によって数理的に生成することができる。例えば、以前に記録されたデータを使用してトレーニングされた人工ニューラルネットワークを使用して、層状構造の予測物理機械モデルを生成できる。マルチ・コンティニュアム理論(Multi-continuum theory)が、柔軟な積層複合材料の挙動を予測するために適用されてきており、層状の物理機械モデルを生成するために同様の方法で適用することができる。ANSYS WorkbenchTMなどのツールが、合成層状複合材料の3次元CADモデルを提供するために使用されてきており、層状の物理機械モデルを生成するために適用することができる。
【0087】
本発明のいくつかの実施形態では、眼の一部のモデルを第1の方法によって生成することができ、結果として生じる部分は、第2の方法によってモデル化されるより大きな構造に組み込まれる。例えば、エネルギー最小化アプローチが角膜の一部に適切な結果を提供することがわかった場合、そのような部分を表す第1のモデルをその方法で生成することができる。そのような第1のモデルは、一度生成されると、異なる機械的特性を備えたさらなる層を組み込んだ角膜のより複雑な層状モデル内の層として組み込むことができる。このような組み合わせアプローチは、計算負荷を有利に減らすことができる。
【0088】
いくつかの実施形態では、モデリングエンジンは、単一の操作で得られた結果を提供することができる。他の実施形態では、低い静的エネルギー、適切な機械的推定、または適切な層状モデルの解が識別されるまで、一連の試行解を繰り返し適用することができる。眼またはその一部に対して単一の数学的モデルが導出される場合、表示データの単一のセットを使用することができる。例えば、個人の眼の水晶体のみをモデル化する必要がある場合、(表示データとして表される水晶体の形状を画定する)水晶体の一部に加えられる力とその水晶体の物理的特性との関係を説明するのに、単一の数学的モデルで十分でありえる。
【0089】
あるいは、より広範囲または複雑な構造の物理機械モデルが望まれる場合、その所望の構造のセグメントまたは部分の数学的モデルセットを使用して、指定された眼または眼のセグメントまたは部分のそれぞれの座標を導出することができる。したがって、一般的な眼または眼の部分の対応するベースライン物理機械モデルのセグメントに適用するように、既知の機械的関係をセグメントに関連する患者固有のデータに適用して、そのセグメントのベースライン静的エネルギー値を導き出すことができる。各セグメントの静的エネルギー最小化物理機械モデルからの空間座標を統合モデルに適用することによる眼全体またはその一部の統合静的エネルギーは、個々のセグメント間の空間関係を画定する。次に、個々のセグメントの空間座標を反復的に調整して、静的エネルギーを最小限に抑えた統合された物理機械モデルを生成することができる。いくつかの実施形態では、統合された物理機械モデルの静的エネルギーを最小化する前に、各セグメントの静的エネルギーを部分的にのみ最小化することが望ましい。
【0090】
本発明のいくつかの実施形態では、機械的推定モデル、エネルギー最小化、および/または層状モデルの結果を組み合わせて、眼の混合された物理機械モデルを提供することができる。このような組み合わせアプローチでは、機械的推定、エネルギー最小化、および/または層状モデルの結果に重み付けを適用して、最終的な物理機械モデルに対するそれぞれの相対的な寄与を調整できる。いくつかの実施形態では、変更前および変更後の機械的推定の物理機械モデルおよびエネルギー最小化の物理機械モデルの結果を、特定の患者の特徴と同様の特徴を有する患者と提案された医学的介入に対応する処置とから得られた統計データベースからのデータと比較することができる。機械的推定アプローチ、エネルギー最小化アプローチ、層状モデル、またはそれらの組み合わせアプローチのいずれかが個別的モデルよりも統計データベースのデータとより密接に一致していることをそのような比較が示す場合、最も良い一致を提供する物理機械モデリングアプローチを、特定の患者に対するエミュレーションおよび治療計画で優先的に利用することができる。
【0091】
本発明のいくつかの実施形態では、眼または眼部分の静的エネルギー最小化物理機械モデル、機械的推定モデル、および/または層状モデルは、統計データベースからのデータによってさらに変更することができる。このような変更は、物理機械モデルの生成前に患者の眼が不完全に特徴付けられている場合、および/または現象は記録されているが基本的なメカニズムの理解が不完全である場合に、より正確な結果を提供できる。例えば、統計データベースに、角膜リングの特定の構成の使用が、患者が属する特定の患者集団における角膜表面の予想よりも大きく平坦化に関連していることを示すデータが含まれている場合、角膜表面の3次元物理機械モデルを生成するために使用される空間座標は、これを反映するように調整できる。
【0092】
上述のように、モデリングエンジンの出力は、3次元の物理機械モデルの構成を表す空間座標のセットであり得る。このような空間座標はグラフィックエンジンに提供され、次いでグラフィックエンジンは3次元表示を生成する。ベースライン状態から提案された医学的介入の予測結果を示す動的物理機械モデルは、そのような空間座標の適切なセットに基づいて、動的なまたはアニメーション化された3次元表示として示すことができる。そのような3次元表示は、表面または表面のセットや、内部構造を明らかにするために一部が除去された3次元表示や、部分的に半透明または透明な構造や、断面として表示することができる。同様に、眼全体または眼の所望の部分の解が導き出されている間に、モデリングエンジンを使用して、その全体の一部の3次元表示を生成することができる。例えば、眼全体の物理機械モデルが生成されている間に、ユーザーは水晶体または角膜表面を表す物理機械モデルの一部のみを表示したい場合がある。だが、この表示される部分の特性は、眼全体またはその一部に関連するデータに対して実行された計算から導き出される。
【0093】
グラフィックエンジンは、任意の適切なディスプレイのための出力を提供することができる。上述のように、本明細書において、3次元ディスプレイは、従来の2次元コンピュータディスプレイを使用して3次元の性質を示す遠近法、陰影、色の手がかり、回転能力などを表示する画像を含むことができる。あるいは、グラフィックエンジンは、ホログラフィック、双眼ディスプレイ、バーチャルリアリティセット、またはその他の3次元ディスプレイテクノロジーのための出力を提供できる。本発明のいくつかの実施形態では、グラフィックエンジンの出力を、患者の眼の画像と組み合わせて拡張現実システムに組み込むことができる。いくつかの実施形態では、グラフィックエンジンは、治療の予測された結果の物理的表示を生成するために、3次元プリンターに出力を提供することができる。そのような物理的表示は、そのように表示された眼の組織またはその部分の特徴を表示するために、色、密度、および/または柔軟性の違いを含むことができる。このような3次元表示は、眼科手術の準備の補助および/または治療を受けている患者と施術者の両方のための教育的補助として特に価値があり得るものである。
【0094】
いくつかの実施形態では、グラフィックエンジンは、ユーザーにグラフィカルなフィードバックを提供するためには使用されない。そのような実施形態では、フィードバックは、結果の表形式の表現、または潜在的な肯定的および/または否定的な結果の要約文書の形で提供することができる。いくつかの実施形態では、そのような要約は、代替処置の推奨を含むことができる。さらに他の実施形態では、フィードバックは、表示的でない視覚的形態、例えば、肯定的または否定的な結果を示す色分けされたアイコンまたはディスプレイでユーザーに提供することができる。
【0095】
上述のように、本発明の物理機械モデルは、医療施術者が個人の罹患または異常な眼における様々な医学的介入の結果を決定することを可能にする対話型システムにおいて使用することができる。その目的のために、上述の物理機械的モデリングシステムを組み込んだエミュレーションシステムは、計画された介入に関連するデータを入力するためのメカニズムを含むことができる。このようなデータは、レーザーアブレーションパターン、PRK切開パターン、既知の水晶体超音波乳化吸引術プロセス、眼内レンズの特定のモデルなどの、特定の介入に関連するデータを含む治療データベースから取得できる。このような情報は、ユーザーによって選択され、変更後の物理機械モデルを生成するために眼の変更前の物理機械モデルに適用することができる。このような変更前および変更後の物理機械モデルは、眼に対して実行される1つまたは一連の提案された医療処置の効果を示す動的な物理機械モデルを生成するために組み合わせることができる。このような動的な物理機械モデルは、個々の医師のトレーニングと経験のみに依存する場合に比べて成功が高く期待できる個々の患者の治療方法を設計または計画するためのエミュレーションに使用できる。
【0096】
いくつかの実施形態では、計画された介入に関連するデータは、適切なインターフェースを介して、ユーザーが適切な介入ツールを選択し、変更前の物理機械モデルへ適用するといった動的な態様で、ユーザーによって入力され得る。例えば、いくつかの実施形態では、ユーザーは、マウスまたは同様のポインティングデバイスを使用して、コンピュータ画面に表示された患者の眼の変更前の物理機械モデルの角膜上にレーシック切除またはPRK切開のパターンを描き、次に変更後の物理機械モデルを生成する前に、指定された切除パラメータまたは切開の深さを入力することができる。あるいは、VR(バーチャルリアリティ)セットを着用しているユーザーは、センサーグローブまたは同様のデバイスを使用して、変更前の眼の物理機械モデルを含む仮想環境内の仮想ツールを仮想的に選択および操作できる。いくつかの実施形態では、センサーグローブは、物理的現実をより厳密にエミュレートするために、ハプティックフィードバックまたは他の触覚フィードバックデバイスを含むことができる。そのような実施形態では、眼の介入の効果の少なくともほぼリアルタイムのエミュレーションを提供するために、提案された介入が適用されたときに、一連の変更後の物理機械モデルを導き出して表示することができる。これは、エミュレートされた処置内での変更を可能にし、それは次に、より効率的かつ効果的な介入処置への展開につながる。
【0097】
眼の物理機械モデルを生成するための方法、および特定の患者の眼に対する医療処置の効果は、治療システムの一部として実施することができる。そのような治療システムは、上述のようなデータベース情報の記憶および検索のためのメモリ、ユーザーインターフェース、およびディスプレイを含むことができる。以下の説明を通じて、サーバー、サービス、インターフェース、ポータル、プラットフォーム、またはコンピューティングデバイスから形成されたその他のシステムに関して多数の参照が行われる。そのようなコンピューティングデバイスは、コンピュータで読み取り可能な有形の非一時的な媒体に格納されたソフトウェア命令を実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサを有するものとされる。例えば、そのようなシステムはサーバーに実装されて、記述された役割、責任、または機能を果たす、ウェブサーバー、データベースサーバー、または他のタイプのコンピュータサーバーとして動作する1つまたは複数のコンピュータを含むことができる。あるいは、そのようなシステムは、スタンドアロンデバイスとして実現することができる。いくつかの実施形態では、そのような治療システムは、眼の治療に使用されるデバイス(例えば、レーシックシステム)と通信するかまたはそれに接続することができ、処置中にガイダンスを提供するために使用することができる。

実施例
【0098】
眼の一部の物理機械モデルの生成およびその使用の一例では、施術者は、特定の患者の水晶体を取り囲む水晶体嚢を開くときに、その後の眼内レンズの位置決めを妨げる大きな損傷を引き起こすことなく、開くことを望む。眼の断面が図7に示されている。図示のように、水晶体を囲む水晶体嚢は、その形状と位置に影響を与える可能性のある眼のさまざまな構造に囲まれて接続されている。
【0099】
眼の様々な部分に関連する物理機械的データは、眼圧、密度、波面スキャンなどの個々の患者の眼の測定結果から導き出すことができ、または統計データを個別化する変更をそのような測定結果を使用して行うことができる。このようなデータは、例えば、患者固有のデータベースに保存できるルックアップテーブルを使用して表すことができる。この情報は、患者の変更前の眼または眼の構造の物理機械モデルを生成するために使用することができる。同様に、医学的介入の結果としてそのような値に加えられた変更は、同様の表形式で提供され、その後、変更後の眼または眼の構造の物理機械モデルを生成するために使用できる。このようなモデルを組み合わせて、患者の眼または眼の構造の動的な物理機械モデルを形成することができる。
【0100】
個々の患者の水晶体の物理機械的特徴の典型的なルックアップテーブルの例は、以下の通りである。
患者の眼のスキャンデータ 母平均 個人の水晶体の値

a.p=密度

(ScheimpflugTM水晶体濃度計;OculusPentacamTM

i. 周囲 1.070gm/cm 1.087gm/cm
ii. 中心 1.056gm/cm 1.081gm/cm
iii. 表面 1.072gm/cm 1.090gm/cm

b.直径(ScheimpflugTM水晶体濃度計;OculusPentacamTM
c.直径-横断 9.5mm 9.58mm
非点収差変動 0%mm 0.1%mm
d.直径-矢状 9.5mm 8.380mm
非点収差変動 0%mm 20%mm
e.厚さ(軸長) 4.000mm 4.178mm
((ScheimpflugTM水晶体濃度計;OculusPentacamTM))
f.前方IOP 16mm/hg 20mm/hg
(ApplamattonTM眼圧計;エアパフ)
g.表面形状データ CADモデル 実際のベクトル
(光コヒーレンストモグラフィー、X断面および3D画像)
ItraceTM収差計/トポグラファー、StratusOCTTM機器モデル3000
(Carl Zeiss Meditec)、超音波厚さ計、横方向、矢状方向または軸方向の長さ、
周囲、超音波からの中心)
h.表面硬度(ショア) SD48 SD50
(OCTピクセル単位密度に基づいて計算)
【0101】
個々の患者の水晶体嚢の物理機械的特徴の典型的なルックアップテーブルの例は、以下の通りである。

患者の眼球スキャンデータ 平均 個人の水晶体嚢バッグの値
a.p=密度

(ScheimpflugTM水晶体濃度計;OculusPentacamTM

i. 周囲長 1.125gm/cm 1.100gm/cm
ii. 中心トップ 1.100gm/cm 1.001gm/cm
iii. 中心底 1.172gm/cm 1.190gm/cm

b.直径(ScheimpflugTM水晶体濃度計; OculusPentacamTM
c.直径-横楕円 10.1mm 10.2mm
非点収差変動 0%mm 0.2%mm
d.直径-矢状楕円 9.3mm 8.780mm
非点収差変動 0%mm 10%mm
e.壁の厚さ 6.2um 5.2um
((ScheimpflugTM水晶体濃度計; OculusPentacamTM
f.前方IOP 16mm/hg 20mm/hg
(ApplamattonTM眼圧計;エアパフ)

g.形状 CADモデル 実際のベクトル
(光コヒーレンストモグラフィー、X断面および3D画像、ItraceTM
収差計/トポグラファー、StratusOCTTM機器モデル3000(Carl Zeiss Meditec)
、超音波厚さ計、横方向、矢状方向または軸方向の長さ、周囲、超音波からの中心)
【0102】
個々の患者の毛様小帯の物理機械的特徴の典型的なルックアップテーブルの例は、以下の通りである。

患者の眼球スキャンデータ 平均 個人の毛様小帯の値

a.p=密度
(ScheimpflugTM水晶体濃度計; OculusPentacamTM
内側 0.910gm/cm 0.887gm/cm
外周 1.000gm/cm 1.20gm/cm
b.直径(ScheimpflugTM水晶体濃度計; OculusPentacamTM, 超音波生体顕微鏡))
直径-横断 10.5mm 9.68mm
非点収差変動 0%mm 0.1%mm
直径-矢状方向 11.5mm 11.380mm
非点収差変動 0%mm 20%mm
c.厚さ 0.240mm 0.211mm
(ScheimpflugTM水晶体濃度計; OculusPentacamTM
d.前方IOP 16mm/hg 20mm/hg
(ApplamattonTM眼圧計;エアパフ)
e.形状 CADモデル 実際のベクトル
(光コヒーレンストモグラフィー、X断面および3D画像、ItraceTM
収差計/トポグラファー、StratusOCTTM機器モデル3000(Carl Zeiss Meditec)
、超音波厚さ計、横方向、矢状方向または軸方向の長さ、周囲、超音波からの中心)

f.表面硬度(ショア) SD48 SD50
(OCTピクセル単位密度に基づいて計算)
【0103】
上記のように、既知の機械的原理を使用して予測的3次元物理機械モデルを生成するために、既知の機械的原理がそのような患者固有の値に適用される。例えば、応力やひずみに対するヤング率を、記録された患者固有の値に基づいて、さまざまな眼の構造に対して推定することができる。正常な眼の構造には、水晶体、水晶体嚢、小帯強膜、角膜、虹彩、上皮、繊毛および関連する筋肉、水性眼房水を伴う前眼房、硝子体液を伴う後眼房、提靱帯、瞳孔、シュレム管、線維柱帯、結膜、角膜輪部、および網膜が含まれる。
【0104】
本発明の概念の方法および装置の適用は広範囲に及ぶ。例としては、角膜弁を切断する前に角膜切除のパターンと深さを決定するために、レーシックの結果を最適化する際の物理機械モデルの使用が含まれる。これは、角膜の本来の特性が、例えば、(剛性を高める)架橋(crosslinking)および/または以前のレーシックまたはPRK処置によって変更されている場合に特に当てはまる。眼の物理機械モデルは、ブレードを使用して従来行われていた切開が(ブレードよりもはるかに狭い切開を生成し、切開された構造に異なる機械的特性をもたらす)フェムト秒レーザーによって行われる処置にも適用できる。個人の角膜の物理機械モデルを使用して、角膜の硬さを変更し老眼の単眼視野の矯正の結果を改善する伝導角膜形成術(Conductive Keratoplasty(登録商標))におけるさまざまなRF強度、持続時間、およびターゲティングの結果を評価できる。個人の角膜と水晶体の物理機械モデルを使用して、水晶体超音波乳化吸引術の波形、時間、強度、および切開の配置を最適化できる。同様に、個人の眼の物理機械モデルを使用して、特に、患者が以前に角膜のレーシックまたはPRK(屈折矯正術)を受けたことがある場合、および/または眼球の形状を変える極端な近視または遠視がある場合に、人工水晶体の選択と配置を最適化して最適な視力結果を得ることができる。
【0105】
本発明の別の実施形態では、モデリングエンジンは、水晶体および/または角膜(白内障の除去/交換に関連するものを含む)の治療、および屈折治療(輪部弛緩切開、および角膜の微小切開など)を実施するためにフェムト秒レーザーシステムと通信している。フェムト秒レーザー、およびフェムト秒レーザービームは、これらの用語が本明細書で使用される場合、パルス持続時間が約10ピコ秒未満(約10×10-12秒未満)から約1フェムト秒fs(約1x10-15秒)までのすべてのレーザーおよびレーザービームを指す。
【0106】
本発明に係る統合システムの例が図10に示されている。図示のように、統合システム1000は、(いくつかの実施形態では、統合水晶体超音波乳化吸引システムを含むことができる)フェムト秒レーザー1001、第1のGUI1004、第2のGUI1003、およびモデリングエンジン1002を含む。第1のGUI1004および/または第2のGUI1003は、情報およびデータを受信および表示することができる。このような情報やデータの例には、制御情報、システムの操作に関する情報、ユーザーの選択、ユーザー入力、患者データ、モデリング情報、モデル化された情報、予測される効果、表示、データ、表、そしてモデリングエンジン1002から導出されたかまたは生成された表示、画像、情報、およびデータが含まれる。
【0107】
本発明のモデリングエンジンとレーザーシステムとの間の通信およびワークフローの例の図が図11に示されている。図示のように、(いくつかの実施形態では、統合水晶体超音波乳化吸引システムを含む)フェムト秒レーザーシステム1100、並びにモデリングエンジンおよび1つまたは複数の患者データベースを有するモデリングシステム1101があり、患者データベースは処置前および処置後の情報および/または統計データベースを含むことができ、各患者データベースはモデリングエンジンと通信している。モデリングシステム1101は、矢印1103および1104によって示されるように、フェムト秒レーザーと通信しており、いくつかの実施形態では、制御通信している。システム1100とシステム1101の内部およびそれらの間での通信とワークフローの例は、ワークフローチャート1102によって示されている。
【0108】
モデリングシステム1101の構成要素の少なくとも一部またはすべては、レーザーシステム1100と(例えば、共通のハウジング内に含まれて)一体にすることができる。いくつかの実施形態では、モデリングシステム1101の構成要素の少なくともいくつかまたはすべては、無線、ネットワーク、または有線通信システムによってレーザーシステム1100と通信しているスタンドアロンユニットに配置することができる。本発明のいくつかの実施形態では、モデリングシステム1101の構成要素の少なくともいくつかまたはすべてをクラウドに配置することができる。これらの構成の組み合わせおよびバリエーションもまた企図される。
【0109】
図1及び図2のワークフローチャートおよび実施例の物理機械モデル、ならびにこれらの組み合わせおよびバリエーションは、図10及び図11に示される実施形態で使用することができる。そのようなレーザーシステムの実施形態は、モデリングエンジンとの統合および通信を含む、レーザーシステムと部分的または完全に統合された水晶体超音波乳化吸引術システムを含むことができる。
【0110】
すでに記載されたもの以外のさらに多くの変更が、本発明から逸脱することなく、可能であることは当業者には明らかであるはずである。したがって、本発明の主題は、添付の特許請求の範囲の精神を除いて制限されるべきではない。さらに、明細書と特許請求の範囲の両方を解釈する際には、すべての用語は、文脈と一致するよう可能な限り広く解釈されるべきである。特に、「含む」という用語は、非排他的な方法で要素、コンポーネント、またはステップを指すものとして解釈されるべきであり、参照された要素、コンポーネント、またはステップは、明示的に参照されていない他の要素、コンポーネント、またはステップとともに存在するか、利用されるか、または組み合わされる可能性があると解釈されるべきである。特許請求の範囲が、A、B、C…Nからなるグループから選択されたものの少なくとも1つに言及している場合、それは、AとN、またはBとNなどではなく、このグループから1つの要素のみを必要とするものとして解釈する必要がある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】