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特表2022-530849ヒドロニウムイオン溶存水の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-04
(54)【発明の名称】ヒドロニウムイオン溶存水の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/68 20060101AFI20220627BHJP
   C25B 1/044 20210101ALI20220627BHJP
   C25B 15/023 20210101ALI20220627BHJP
   C02F 1/461 20060101ALI20220627BHJP
   B01F 21/00 20220101ALI20220627BHJP
   B01F 23/10 20220101ALI20220627BHJP
【FI】
C02F1/68 520B
C25B1/044
C25B15/023
C02F1/68 510C
C02F1/68 520N
C02F1/68 530F
C02F1/68 540C
C02F1/68 540E
C02F1/68 540Z
C02F1/461 A
B01F1/00 A
B01F3/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021556204
(86)(22)【出願日】2020-04-16
(85)【翻訳文提出日】2021-09-15
(86)【国際出願番号】 KR2020005122
(87)【国際公開番号】W WO2020218776
(87)【国際公開日】2020-10-29
(31)【優先権主張番号】10-2019-0046394
(32)【優先日】2019-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521425320
【氏名又は名称】リ、イン サン
【氏名又は名称原語表記】LEE, In Sang
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】リ、イン サン
【テーマコード(参考)】
4D061
4G035
4K021
【Fターム(参考)】
4D061DA01
4D061DB07
4D061EA02
4D061EB04
4D061ED12
4D061FA08
4D061FA09
4D061FA13
4D061FA20
4G035AA01
4G035AB01
4G035AE13
4K021AA01
4K021BA02
4K021BA17
4K021BB03
4K021BC07
4K021CA13
4K021DC05
4K021EA06
(57)【要約】
本発明は、(a)蒸留水を精製することによって脱イオン水を製造する段階;(b)水を電気分解することによってブラウンガスストリームを生成する段階;(c)前記ブラウンガスストリームに空気を混合することによって混合気体ストリームを形成する段階;(d)前記混合気体ストリームを前記脱イオン水に注入し、混合気体を溶存させることによってガス溶存水を製造する段階;及び(e)前記ガス溶存水を薄層クロマトグラフィーに注入し、薄層クロマトグラフィーの内部に備えられた固定相に通過させてろ過した後、分画することによって溶存ガスの濃度を調節する段階;を含むヒドロニウムイオン溶存水の製造方法を提供する。したがって、ヒドロニウムイオンが溶存された機能水を効果的に製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)蒸留水を精製することによって脱イオン水を製造する段階;
(b)水を電気分解することによってブラウンガスストリームを生成する段階;
(c)前記ブラウンガスストリームに空気を混合することによって混合気体ストリームを形成する段階;
(d)前記混合気体ストリームを前記脱イオン水に注入し、混合気体を溶存させることによってガス溶存水を製造する段階;及び
(e)前記ガス溶存水を薄層クロマトグラフィーに注入し、薄層クロマトグラフィーの内部に備えられた固定相に通過させてろ過した後、分画することによって溶存ガスの濃度を調節する段階;を含むヒドロニウムイオン溶存水の製造方法。
【請求項2】
前記(a)段階は、
前記蒸留水をイオン交換樹脂に通過させ、比抵抗が15MΩ・cm~18MΩ・cmになるように調節することを特徴とする、請求項1に記載のヒドロニウムイオン溶存水の製造方法。
【請求項3】
前記(b)段階は、
前記水に水酸化ナトリウムを0.01%(w/w)~0.05%(w/w)で添加し、100V~110Vの電圧及び10mA~20mAの電流を印加することによってブラウンガスストリームを生成することを特徴とする、請求項1に記載のヒドロニウムイオン溶存水の製造方法。
【請求項4】
前記(b)段階は、
前記ブラウンガスストリームをフィルターに通過させてろ過することを特徴とする、請求項1に記載のヒドロニウムイオン溶存水の製造方法。
【請求項5】
前記(c)段階は、
前記ブラウンガスストリームに対して空気を1:1~1:2の体積比(v/v)で混合し、ブラウンガスストリームの水素及び酸素の濃度を希釈させることを特徴とする、請求項1に記載のヒドロニウムイオン溶存水の製造方法。
【請求項6】
前記(d)段階は、
前記脱イオン水に前記混合気体ストリームを50psi~100psiの圧力で加圧して溶存させることを特徴とする、請求項1に記載のヒドロニウムイオン溶存水の製造方法。
【請求項7】
前記(d)段階は、
前記混合気体ストリームを前記脱イオン水に30分~2時間にわたって注入して溶存させることを特徴とする、請求項1に記載のヒドロニウムイオン溶存水の製造方法。
【請求項8】
前記(d)段階は、
前記混合気体ストリームを前記脱イオン水に注入し、ヒドロニウムイオン(H)を溶存させることを特徴とする、請求項1に記載のヒドロニウムイオン溶存水の製造方法。
【請求項9】
前記(e)段階は、
前記ガス溶存水を薄層クロマトグラフィーに注入し、前記薄層クロマトグラフィーの固定相は、マイクロポーラス高分子膜で無機物をろ過することを特徴とする、請求項1に記載のヒドロニウムイオン溶存水の製造方法。
【請求項10】
前記(e)段階は、
前記ガス溶存水を薄層クロマトグラフィーに注入してろ過した後、排出されるガス溶存水を分画し、
分画されたガス溶存水を圧力容器に注入し、ガス溶存水内の溶存ガスの濃度が2.5vol%~2.7vol%になるように調節することを特徴とする、請求項1に記載のヒドロニウムイオン溶存水の製造方法。
【請求項11】
(1)請求項1から請求項10のいずれか一つのヒドロニウムイオン溶存水の製造方法によってヒドロニウムイオン溶存水を製造する段階;
(2)前記ヒドロニウムイオン溶存水にシリカを添加することによって機能水を製造する段階;及び
(3)前記機能水を農作物に塗布する段階;を含むヒドロニウムイオン溶存水を用いた植物栽培方法。
【請求項12】
前記(2)段階は、
前記機能水にAl、CaO、NaO、KO、及びFeからなる群から選ばれるいずれか一つ以上をさらに添加することを特徴とする、請求項11に記載のヒドロニウムイオン溶存水を用いた植物栽培方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロニウムイオン溶存水に関し、より詳細には、蒸留水内に溶存されているヒドロニウムイオンを効果的に溶存させ、ヒドロニウムイオン溶存水を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、水は、地球上の全ての生命体が生命をつないでいくための絶対的な要素である。人間の身体の約70%は水で構成され、乳児の身体の約80%は水で構成されており、このうち、血液は約83%が水からなり、肺及び肝臓は約86%が水からなっている。
【0003】
したがって、水分が不足すると、老廃物及び毒素が身体内に溜まるため各種疾病を誘発するようになり、水は、人体内の老廃物の排出及び細胞栄養分の摂取を促進する絶対的な役割をする。
【0004】
一方、水は、その新しい物理的化学的性質が確認されながら、多様な溶媒としての使用可能性が増加しており、水素結合形成能力を有する両性物質として利用しようとする多様な試みがある。
【0005】
特に、生物学者等は、水が生物分子を設計する主要構成であることに注目し、水の物理的化学的特徴を応用しようとする試みを継続しており、細胞の電位を一定に維持したり変化させ、疾病を治療する陽性子伝達方法において、水を利用しようとする多様な研究を行っている。
【0006】
このような水の特性を用いる実施例として、大韓民国特許第10-1396283号公報は、ケーシング内に電解室が設置された電解槽が前記電解槽に付設された固定具によって設置基板に固定され、前記電解槽への電解質水溶液の供給及び前記電解槽で生成された電解生成物質の導出が配管群によって行われる電解水製造装置を開示する。
【0007】
前記電解水製造装置及びこれを用いた電解水製造過程は、水素イオンの濃度を制御・調節するという課題を解決することを目的とするが、水の新しい物理的化学的性質を利用することができる陽性子伝達過程を用いたケースは全くない実情にある。
【0008】
これと関連する先行技術文献として、大韓民国特許第10-1396283号公報の電解水製造装置(2014.05.16.公告)がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、水にヒドロニウム(H)イオンを効果的に溶存させ、陽性子の伝達による炎症、ウイルス増殖、及び癌の抑制などの生物学的物性と、漂白、消毒、界面活性などの物理化学的物性とを増加させたヒドロニウムイオン溶存水を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、(a)蒸留水を精製することによって脱イオン水を製造する段階;(b)水を電気分解することによってブラウンガスストリームを生成する段階;(c)前記ブラウンガスストリームに空気を混合することによって混合気体ストリームを形成する段階;(d)前記混合気体ストリームを前記脱イオン水に注入し、混合気体を溶存させることによってガス溶存水を製造する段階;及び(e)前記ガス溶存水を薄層クロマトグラフィーに注入し、薄層クロマトグラフィーの内部に備えられた固定相に通過させてろ過した後、分画することによって溶存ガスの濃度を調節する段階;を含むヒドロニウムイオン溶存水の製造方法を提供する。
【0011】
また、前記(a)段階は、前記蒸留水をイオン交換樹脂に通過させ、比抵抗が15MΩ・cm~18MΩ・cmになるように調節することができる。
【0012】
また、前記(b)段階は、前記水に水酸化ナトリウムを0.01%(w/w)~0.05%(w/w)で添加し、100V~110Vの電圧及び10mA~20mAの電流を印加することによってブラウンガスストリームを生成することができる。
【0013】
また、前記(b)段階は、前記ブラウンガスストリームをフィルターに通過させてろ過することができる。
【0014】
また、前記(c)段階は、前記ブラウンガスストリームに対して空気を1:1~1:2の体積比(v/v)で混合し、ブラウンガスストリームの水素及び酸素の濃度を希釈させることができる。
【0015】
また、前記(d)段階は、前記脱イオン水に前記混合気体ストリームを50psi~100psiの圧力で加圧することによって溶存させることができる。
【0016】
また、前記(d)段階は、前記脱イオン水に前記混合気体ストリームを30分~2時間にわたって注入することによって溶存させることができる。
【0017】
また、前記(d)段階は、前記脱イオン水に前記混合気体ストリームを注入することによってヒドロニウムイオン(H)を溶存させることができる。
【0018】
また、前記(e)段階は、前記ガス溶存水を薄層クロマトグラフィーに注入し、前記薄層クロマトグラフィーの固定相は、マイクロポーラス高分子膜で無機物をろ過することができる。
【0019】
また、前記(e)段階は、前記ガス溶存水を薄層クロマトグラフィーに注入してろ過した後、排出されるガス溶存水を分画し、分画されたガス溶存水を圧力容器に注入し、ガス溶存水内の溶存ガスの濃度が2.5vol%~2.7vol%になるように調節することができる。
【0020】
本発明の他の側面によると、本発明は、
(1)請求項1から請求項10のいずれか一つのヒドロニウムイオン溶存水の製造方法によってヒドロニウムイオン溶存水を製造する段階;
(2)前記ヒドロニウムイオン溶存水にシリカを添加することによって機能水を製造する段階;及び
(3)前記機能水を農作物に塗布する段階;を含むヒドロニウムイオン溶存水を用いた植物栽培方法を提供する。
【0021】
また、前記(2)段階は、前記機能水にAl、CaO、NaO、KO、及びFeからなる群から選ばれるいずれか一つ以上をさらに添加することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るヒドロニウムイオン溶存水の製造方法は、次のような効果を提供する。
【0023】
一つ目、ブラウンガスストリームを生成し、これを蒸留水に溶存させ、ヒドロニウムイオンが蒸留水に溶存された状態を一定に維持することができ、ヒドロニウムイオン溶存水を製造し、その生物学的及び物理化学的性質を効果的に利用することができる。
【0024】
二つ目、蒸留水に一定の圧力及び時間でブラウンガスストリームを注入し、蒸留水内でヒドロニウムイオン(H)を生成し、生成されたヒドロニウムイオンが水分子と結合できずに半永久的に共存するようにし、蒸留水の物性を変化させることによってヒドロニウムイオン溶存水を製造することができる。
【0025】
三つ目、蒸留水を精製することによって不純物を除去すると同時に、脱イオン水を製造する過程で溶存された酸素、窒素などを予め除去し、ブラウンガスストリームが容易に溶存されるようにし、ヒドロニウムイオン溶存水を大量に製造することができる。
【0026】
四つ目、酸素及び水素からなるブラウンガスが可燃性であり、溶存過程で爆発する危険性があるので、火が付かない臨界点で希釈し、蒸留水に溶存させることによってヒドロニウムイオン溶存水をより安全に製造することができる。
【0027】
五つ目、生物学的及び物理化学的性質に影響を及ぼす溶存酸素及び窒素、各種無機物、不純物を精製及びろ過過程で優先的に除去することによって、純粋なヒドロニウムイオンが示すことができる陽性子の伝達による炎症及びウイルスの抑制、漂白、消毒及び界面活性効果を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施例に係るヒドロニウムイオン溶存水の製造方法の工程フローチャートである。
図2】本発明の他の実施例に係るヒドロニウムイオン溶存水を用いた植物栽培方法のフローチャートである。
図3】本発明の実施例に係るヒドロニウムイオン溶存水の赤外線スペクトルを示したグラフである。
図4】本発明の実施例に係るヒドロニウムイオン溶存水のラマンスペクトルを示したグラフである。
図5】本発明の実施例に係るヒドロニウムイオン溶存水の製造方法において、混合気体の溶存時間による試料のラマンスペクトルを示したグラフである。
図6】本発明の実施例に係るヒドロニウムイオン溶存水の細胞活性効果を確認するために、多様な病症への適用前後の変化を示した写真である。
図7】本発明の実施例に係るヒドロニウムイオン溶存水の細胞活性効果を確認するために、アトピー症状への適用前後の変化を示した写真である。
図8】本発明の実施例に係るヒドロニウムイオン溶存水と共に培養したHela cellの走査電子顕微鏡写真である。
図9】本発明の他の実施例に係るヒドロニウムイオン溶存水を用いた植物栽培方法において、植物(Col-0)の生長過程を確認した写真である。
図10】本発明の他の実施例に係るヒドロニウムイオン溶存水を用いた植物栽培方法において、植物(phyB-9)の生長過程を確認した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る好適な実施例を詳細に説明する。
【0030】
本発明者等は、ヒドロニウムイオン(H)が水(HO)に溶存されると陽性子共有者として活動し、多様な生物学的及び物理化学的物性を示すことができることを確認し、ヒドロニウムイオンをより効果的に溶存させるために酸素及び水素からなるブラウンガスストリームを形成し、一定の時間にわたって圧力を加えながら連続的に蒸留水に溶存させる場合、ヒドロニウムイオンが蒸留水に生成されることを確認することによってヒドロニウムイオン溶存水を製造し、製造されたヒドロニウムイオン溶存水の生物学的及び物理化学的物性を確認した結果、本発明を完成した。
【0031】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0032】
本発明に係るヒドロニウムイオン溶存水の製造方法は、
(a)蒸留水を精製することによって脱イオン水を製造する段階;(b)水を電気分解することによってブラウンガスストリームを生成する段階;(c)前記ブラウンガスストリームに空気を混合することによって混合気体ストリームを形成する段階;(d)前記混合気体ストリームを前記脱イオン水に注入し、混合気体を溶存させることによってガス溶存水を製造する段階;及び(e)前記ガス溶存水を薄層クロマトグラフィーに注入し、薄層クロマトグラフィーの内部に備えられた固定相に通過させてろ過した後、分画することによって溶存ガスの濃度を調節する段階;を含む。
【0033】
図1は、本発明の実施例に係るヒドロニウムイオン溶存水の製造方法の工程フローチャートである。
【0034】
図1を参照すると、まず、蒸留水を精製することによって脱イオン水を製造する(S100)。
【0035】
水には、多様な無機塩及び不純物が含まれており、溶存された酸素及び窒素が多量に存在し、多量の陽イオン及び陰イオンが存在する場合、各イオンの間に化学結合が生成されるおそれがある。
【0036】
前記S100は、前記蒸留水をイオン交換樹脂に通過させ、比抵抗が15MΩ・cm~18MΩ・cmになるように調節することができる。
【0037】
蒸留水が前記比抵抗範囲で超純水に近くなるので、無機物、不純物及び溶存されたガスなどが除去され、ヒドロニウムイオンが溶存される場合、ヒドロニウムイオンが他の物質と結合又は反応しないようにし、蒸留水内にヒドロニウムイオンを多量に存在させることができる。
【0038】
比抵抗が前記範囲を超えて増加する場合は、脱イオン水製造工程の費用及び製造難易度が非常に増加するので効率的ではなく、比抵抗が前記範囲に及ばない場合は、残留する無機物、不純物又は溶存ガスなどが後述するヒドロニウムイオンと反応し、ヒドロニウムイオンの陽性子伝達効果を減少させるという問題がある。
【0039】
次に、水を電気分解することによってブラウンガスストリームを生成する(S200)。
【0040】
前記S200において前記水に水酸化ナトリウムを0.01%(w/w)~0.05%(w/w)で添加し、100V~110Vの電圧及び10mA~20mAの電流を印加することによってブラウンガスストリームを生成する。
【0041】
前記水酸化ナトリウムが前記範囲に及ばない場合は、電解質が生成されないため電気分解の効率が低下し、前記水酸化ナトリウムが前記範囲を超える場合は、不溶性塩が生成され、不純物を処理しなければならないという問題が発生し得る。
【0042】
ブラウンガスは、前記電圧及び電流の範囲で生成可能であり、その生産量に比べて全体の仕事(W)効率が高く、ブラウンガスが前記電流範囲で一定に連続して生成され、ブラウンガスストリームを形成できるので、大量生産に非常に有利になる。
【0043】
従来の電気分解による水素水の製造方法は、反応器内に隔壁又はパイプラインを備えており、マイナス極に水素を捕集し、プラス極に酸素を捕集しており、別途に水素気体を収得し、これを溶存させることによって水素水として利用している。
【0044】
本発明の実施例に係るブラウンガスストリームは、反応器内に電極を設置し、反応器の上部に別途の隔壁やパイプを備えておらず、蒸留水を直接電気分解することによって生成されるガスである。
【0045】
前記ブラウンガスストリームは、酸素及び水素が電気分解によって生成されると同時に、混合されることによってガス状で排出されたものである。
【0046】
前記ブラウンガスストリームは、フィルターに通過させてろ過することができる。
【0047】
前記ブラウンガスストリームの一部は、液滴が含まれた蒸気に形成できるので、前記ブラウンガスストリームをフィルターに通過させてろ過する場合、脱イオン水内にヒドロニウムイオンを生成するときに無機質又は不純物が混入することを効果的に防止することができる。
【0048】
前記電気分解過程で酸素と素ガスとを互いに分離せずに混合ガスとして収得し、これを脱イオン水に溶存させる場合、蒸留水内にヒドロニウムイオンの溶存量が効果的に増加し得る。また、電気分解時に生成された水素ガスと酸素ガスとを互いに分離して収得した後、酸素及び水素をそれぞれ水に投入する場合は、ヒドロニウムイオンが溶存されにくくなり、水に溶存させる過程の効率が非常に低下するという問題がある。
【0049】
次に、前記ブラウンガスストリームに空気を混合することによって混合気体ストリームを形成する(S300)。
【0050】
前記ブラウンガスを連続的に生成しながらストリームとして供給する場合は、水素及び酸素のみからなるブラウンガスは可燃性であるため取り扱いにくく、ブラウンガスのみを蒸留水に導入して溶存させる場合は、効率が低下するという問題がある。
【0051】
前記ブラウンガスストリームに対して空気を1:1~1:2の体積比(v/v)で混合し、ブラウンガスストリームの水素及び酸素の濃度を希釈させることができる。
【0052】
前記範囲でブラウンガスストリームを希釈することによって混合気体ストリームを形成する場合は、可燃性が減少し、ガスの加圧又は工程中における漏出による火事及び爆発を効果的に防止することができ、混合気体ストリームを安全に加圧しながら蒸留水に効果的に溶存させることができる。
【0053】
本発明の実施例において、前記ブラウンガスストリームと空気とを混合する段階は、防音及び防爆設備を備えたパイプラインに沿って行われることが好ましい。
【0054】
前記ブラウンガスストリームが空気と混合される場合、水素及び酸素が急激に拡散されることによって騒音を発生させ、爆発を起こす危険性があるが、防音及び防爆設備を備える場合は、S300を安全且つ効率的に行うことができる。
【0055】
次に、混合気体ストリームを脱イオン水に注入し、混合気体を溶存させることによってガス溶存水を製造する(S400)。
【0056】
前記混合気体を溶存させる過程は、ポンプを用いて加圧して行われる。
【0057】
前記脱イオン水には、前記混合気体ストリームを50psi~100psiの圧力で加圧して溶存させることができる。
【0058】
混合気体ストリームを前記範囲で加圧することによって、脱イオン水に混合気体を迅速且つ効率的に溶存させることができ、脱イオン水内の混合気体の溶存量を調節しやすくなる。
【0059】
混合気体ストリームが前記範囲に及ばない場合は、混合気体の溶存量が減少し、後述する段階で溶存ガスの濃度を調節しにくくなり、混合気体ストリームが前記範囲を超える場合は、圧力を調節しにくくなり、過度なエネルギーが消耗されるのに比べて、混合気体の脱イオン水に溶存される混合気体の量が制限されるため効果的ではない。
【0060】
前記混合気体ストリームは、前記脱イオン水に30分~2時間にわたって注入することによって溶存させることができる。
【0061】
混合気体ストリームを前記範囲内で注入する場合、前記脱イオン水内にヒドロニウムイオン(H)が生成可能になり、溶存量を大きく増加させることができる。
【0062】
前記混合気体の注入時間が前記範囲に及ばない場合は、ヒドロニウムイオンが脱イオン水内に存在することができなく、前記混合気体の注入時間が前記範囲を超える場合は、脱イオン水内に溶存されたヒドロニウムイオンの総量が追加増加しない。
【0063】
一方、水をそのまま電気分解し、電解還元水又は水素水は、水の物理化学的性質の変化を確認できる範囲の水素イオンの濃度、酸化還元電位又はpHなどの条件を具体的な実験過程を通じて確認しなければならないが、本発明の実施例によると、まず、ブラウンガスを生成し、これを前記加圧範囲及び注入時間範囲内に注入する過程を通じて物理化学的性質が変化した機能水を製造する場合は、注入される混合気体の圧力及び注入時間のみを確認することによって大量に生産できるという長所を有する。
【0064】
次に、前記ガス溶存水を薄層クロマトグラフィーに注入し、薄層クロマトグラフィーの内部に備えられた固定相に通過させてろ過した後、分画することによって溶存ガスの濃度を調節する(S500)。
【0065】
前記薄層クロマトグラフィーは、物質のろ過及び分離のために選択されたが、パイプラインに前記ガス溶存水が導入され、ヒドロニウムイオンを除いた無機塩類及びイオンを吸着して除去できる固定相を備えることができる装置であれば、薄層クロマトグラフィーに限定されない。
【0066】
本発明の実施例において、前記薄層クロマトグラフィーの固定相は、マイクロポーラス高分子膜で無機塩類をろ過することができる。
【0067】
前記薄層クロマトグラフィーは、ろ過されたガス溶存水を容易に分画することができ、本発明の実施例では、100ml、200ml及び500mlの単位で分画できるように調節することができる。
【0068】
前記分画過程によってガス溶存水の体積が減少する場合、溶存ガスの濃度の維持に非常に有利になる。
【0069】
本発明の他の側面によると、本発明に係るヒドロニウムイオン溶存水を用いた植物栽培方法は、
(1)ヒドロニウムイオン溶存水の製造方法によってヒドロニウムイオン溶存水を製造する段階;
(2)前記ヒドロニウムイオン溶存水にシリカを添加することによって機能水を製造する段階;及び
(3)前記機能水を農作物に塗布する段階;を含む。
【0070】
図2は、本発明の他の実施例に係るヒドロニウムイオン溶存水を用いた植物栽培方法のフローチャートである。
【0071】
図2を参照すると、まず、上述したヒドロニウムイオン溶存水の製造方法によってヒドロニウムイオン溶存水を製造する(S600)。
【0072】
次に、前記ヒドロニウムイオン溶存水にシリカを添加することによって機能水を製造する(S700)。
【0073】
前記シリカ(SiO)が添加される場合は、植物の生長に悪影響を及ぼす重金属を除去し、植物の生長初期の生長速度を非常に増加させることができる。
【0074】
前記シリカが添加される場合、特に食用作物で濃縮できる重金属を効果的に制御し、最終収獲時に重金属の含量を大きく減少できるという長所を有する。
【0075】
次に、前記機能水を農作物に塗布する(S800)。
【0076】
前記機能水を植物にスプレーなどを用いて噴射しながら液滴の形態で塗布する場合、葉の表面及び茎に直接的な消毒及びウイルス抑制効果が発現され、植物の生長に非常に有利になる。
【0077】
(発明を実施するための形態)
以下、本発明の理解を促進するために好適な実施例を提示するが、下記の実施例は、本発明を例示するものに過ぎなく、本発明の範囲が下記の実施例に限定されるのではない。
【0078】
実施例1.ヒドロニウムイオン溶存水の製造
【0079】
蒸留水を準備し、イオン交換樹脂を備えた脱イオン水製造装置(BiotechPurist、1L/min~1.5L/min)を用いて脱イオン水の比抵抗が18MΩ・cmになるように製造した。
【0080】
製造された脱イオン水は、密閉されたバッチ反応器(batch reactor)に供給した。
【0081】
上部に半球状のガス捕集部が備えられ、下部には電解電極が向かい合うように配置される反応器を準備し、反応器の内部には水1000mLに水酸化ナトリウム(NaOH)0.03gを添加することによって電解質を形成した後、水に浸った電極に連結された電源装置を作動させ、220Vの電圧で10mVの電流が流れるようにし、水を電気分解した。
【0082】
前記反応器の一側には水供給部が備えられ、一定時間が経過すると自動的に水が供給されるようにし、水の電気分解過程が連続的に行われるようにした。
【0083】
前記ガス捕集部で生成されるブラウンガスをポンプを通じて移送させながら前記ポンプの一側に備えられたエアポンプを共に作動させ、ブラウンガスと空気とが1:2の体積比で混合されるように調節した。
【0084】
前記ポンプ及びエアポンプは、ステンレススチールで備えられた防音ケースの内部に配置し、混合時に発生する騒音を減少させ、安全を維持した。
【0085】
前記混合気体は、圧力ポンプに送って加圧し、圧力ゲージを通じて50psiになるように調節しながら前記バッチ反応器に注入された脱イオン水に供給した。
【0086】
このとき、混合気体が脱イオン水に直接接触できるように供給パイプをバッチ反応器の下部中心まで延長し、前記供給パイプを介して脱イオン水に混合気体を注入させ、脱イオン水が曝気されながら混合気体が過量で溶存されるようにした。
【0087】
前記混合気体を連続的に供給することによってストリームを形成し、30分~2時間にわたって溶存させ、30分、1時間及び2時間に排出し、マイクロポーラス高分子膜(多孔直径10μm以下)が備えられた薄層クロマトグラフィーに通過させてろ過し、100ml、300ml及び500mlの単位で分画した後、圧力容器に注入し、大気圧よりやや高く維持し、溶存されたガスの含量を2.5vol%~2.7vol%に維持することによってヒドロニウムイオン溶存水を製造した。
【0088】
製造された溶存水を用途によって適用するときは、圧力容器を開放して使用した。
【0089】
実験例1.ヒドロニウムイオン溶存水の物性
【0090】
以下では、実施例1によって製造されたヒドロニウムイオン溶存水の物性を確認しようとした。
【0091】
ヒドロニウムイオンは、水分子に三つの水素結合で供与体結合を生成するものであって、酸素原子は疎水性を示し、ヒドロニウムイオン自体は両親媒性(amphiphile)を示すので、一般的な水の特性から逸脱し、ヒドロニウムイオン特有の物性を示すことができる。
【0092】
特に、水分子とヒドロニウムイオンが溶媒化物(solvate)を形成し、実質的に他の分子に陽性子伝達効果を示すことができ、陽性子伝達効果によって多様な物理化学的性質を示す。
【0093】
まず、消毒、漂白効果などを確認するために、商用の次亜塩素酸ナトリウム(Unichemical、12%)と比較して赤外線スペクトルを確認した。
【0094】
図3は、本発明の実施例に係るヒドロニウムイオン溶存水の赤外線スペクトルを示したグラフである。
【0095】
図3を参照すると、ヒドロニウムイオン溶存水は、漂白剤として使用される次亜塩素酸ナトリウム溶液と分子構造が95.62%類似しているので、漂白剤として使用可能であることを確認した。
【0096】
図4は、本発明の実施例に係るヒドロニウムイオン溶存水のラマンスペクトルを示したグラフである。
【0097】
図4を参照すると、ヒドロニウムイオン溶存水は、従来の電気分解によって製造された電解還元水では探すことができない578、3,636cm-1の位置で相対強度が増加し、ヒドロニウムイオン特有のO-Hシーザーリング、C-Hストレッチング、O-Hストレッチングを示すことを確認し、水分子と全く異なる構造を有して脱イオン水内に存在することを確認した。
【0098】
実験例2.ヒドロニウムイオン溶存水の製造による混合気体の溶存時間
【0099】
一方、実施例1によって製造されたヒドロニウムイオン溶存水で混合気体の溶存時間によるヒドロニウムイオンの総量の変化を確認するために、30分、1時間、2時間及び4時間の溶存後、試料をそれぞれ採取することによってラマンスペクトルを分析した。
【0100】
図5は、本発明の実施例に係るヒドロニウムイオン溶存水の製造方法において、混合気体の溶存時間による試料のラマンスペクトルを示したグラフである。
【0101】
図5を参照すると、2時間以上溶存させる場合は、相対強度が最も増加し、ヒドロニウムイオンが多量に存在することを確認し、4時間を超えて溶存させる場合は強度の相違点が確認されないので、2時間乃至4時間溶存させるときに、ヒドロニウムイオン溶存量を最適に増加できる溶存水を製造できることを確認した。
【0102】
実験例3.ヒドロニウムイオン溶存水の細胞活性効果
【0103】
ヒドロニウムイオン溶存水が持つ陽性子伝達効果によって細胞表面の電位を変化させる場合、細胞活性に効果があると予想され、多様な症状に適用した。
【0104】
図6は、本発明の実施例に係るヒドロニウムイオン溶存水の細胞活性効果を確認するために、多様な病症への適用前後の変化を示した写真である。
【0105】
図6を参照すると、図6の(A)は、皮膚湿疹にヒドロニウムイオン溶存水を毎日1回塗布し、1週間経過した後の皮膚表面の状態を示した写真である。
【0106】
(B)は、ルプス症状の皮膚表面にヒドロニウムイオン溶存水を毎日1回塗布し、1週間経過した後の皮膚表面を示したもので、(C)は、火傷皮膚表面にヒドロニウムイオン溶存水を毎日1回塗布し、1週間経過した後の皮膚表面を示したものである。
【0107】
図7は、本発明の実施例に係るヒドロニウムイオン溶存水の細胞活性効果を確認するために、アトピーへの適用前後の変化を示した写真である。
【0108】
図7を参照すると、特に適用時に掻痒症が消えていき、3日経過したときに赤い斑点が薄くなることを確認し、皮膚の再生過程において掻痒症が現れないので、アトピー症状の緩和に非常に効果的であることを確認した。
【0109】
各病症で炎症が消えていき、細胞活性が引き起こされ、傷の回復及び修復が早まることを確認し、細胞活性及び炎症抑制の効果があることを確認した。
【0110】
また、細胞炎症性疾患への適応症が大きいことを確認し、アトピー及び各種皮膚炎、喘息などの疾病に効果的であることを確認した。
【0111】
実験例4.癌細胞抑制能力
【0112】
陽性子伝達による細胞表面電位の変化が癌細胞の成長を抑制できるかどうかを確認するために、培養培地内に配置したHela cellにヒドロニウムイオン溶存水200ml及び500mlをさらに添加し、細胞増殖の有無を調査した。
【0113】
図8は、本発明の実施例に係るヒドロニウムイオン溶存水と共に培養したHela cellの走査電子顕微鏡写真である。
【0114】
図8を参照すると、対照群と比較したとき、1週間経過した後、追加の細胞増殖が感知されず、ヒドロニウムイオン溶存水の含量が増加することによって細胞の死滅又は分化の中断が加速されることを確認し、癌細胞抑制能も示すことができることを確認した。
【0115】
実験例5.植物の生育
【0116】
ヒドロニウムイオン溶存水が植物の生育に影響を及ぼすことを確認するために、実施例1に係るヒドロニウムイオン溶存水を発芽時期から対象植物に液滴で噴射しながら繰り返し塗布した。
【0117】
図9は、本発明の他の実施例に係るヒドロニウムイオン溶存水を用いた植物栽培方法において、植物(Col-0)の生長過程を確認した写真である。
【0118】
図9を参照すると、シロイヌナズナ野生型であるColumbia-0(Col-0)に一般水及びヒドロニウムイオン溶存水を塗布し、31日間の生長を比較した。
【0119】
開花時期が非常に遅れることもあり、植物体の大きさが非常に増大することを確認した。
【0120】
図10は、本発明の他の実施例に係るヒドロニウムイオン溶存水を用いた植物栽培方法において、植物(phyB-9)の生長過程を確認した写真である。
【0121】
図10を参照すると、速い生長で発生及び遺伝学実験に使用されるphyB-9赤色光受容体の突然変異を用いて水(左側)、ヒドロニウムイオン溶存水(右側)を塗布したことを比較したとき、生長が遥かに速く且つ優秀になることを確認した。
【0122】
したがって、本発明に係るヒドロニウムイオン溶存水の製造方法によると、ヒドロニウムイオン溶存水をより大量に製造できる最適な条件を確認することができ、水の物性を変化させ、陽性子伝達効果によって多様な物性を示すことができるので、消毒、漂白などの物理化学的性質のみならず、細胞活性増加などの生物学的効果も増大させることができる。
【0123】
本発明は、図面に示した実施例を参考にして説明したが、これは例示的なものに過ぎなく、本技術分野で通常の知識を有する者であれば、これから多様な変形及び均等な他の実施例が可能であるということを理解するだろう。よって、本発明の真の技術的保護範囲は、添付の特許請求の範囲の技術的思想によって定められるべきであろう。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】