(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-04
(54)【発明の名称】改良された改質プロセス
(51)【国際特許分類】
C10G 35/095 20060101AFI20220627BHJP
【FI】
C10G35/095
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021562357
(86)(22)【出願日】2020-04-21
(85)【翻訳文提出日】2021-12-06
(86)【国際出願番号】 IB2020053747
(87)【国際公開番号】W WO2020217163
(87)【国際公開日】2020-10-29
(32)【優先日】2019-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン、コン - ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ベーラズ、エマニュエル
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA02
4H129CA04
4H129DA12
4H129KA03
4H129KB03
4H129KB04
4H129KC16X
4H129KC16Y
4H129KC18X
4H129KD03Y
4H129KD06Y
4H129KD09X
4H129KD17X
4H129KD24X
4H129KD25X
4H129KD26X
4H129KD26Y
4H129KD44X
4H129NA27
(57)【要約】
芳香族炭化水素を製造するための改良された改質プロセスが開示される。本プロセスは、平行流構成で配置された2基の改質器を備え、第1の改質器は、C
8+炭化水素の改質油への改質に選択的な触媒を備える従来の改質器であり、第2の改質器は、C
7-炭化水素の改質油への改質に選択的な触媒を備える。ある特定の実施形態において、第1の改質器触媒は従来のアルミナ触媒を含み、第2の改質器触媒はZSM-5触媒を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主としてナフサ留分を含む炭化水素系原料を提供することと、
前記炭化水素系原料を、主としてC
8+炭化水素を含む第1の原料流と、主としてC
7-炭化水素を含む第2の原料流とに分離することと、
第1の改質油を形成するのに有効な第1の改質条件下、第1の原料流またはそのフラクションを、第1の改質触媒と、前記第1の改質触媒を備える第1の改質器において接触させることであって、前記第1の改質触媒は、主としてC
8+炭化水素の芳香族炭化水素への改質に選択的である、前記接触させることと、
第2の改質油を形成するのに有効な第2の改質条件下、第2の原料流またはそのフラクションを、第2の改質触媒と、前記第2の改質触媒を備える第2の改質器において接触させることであって、前記第2の改質触媒は、主としてC
7-炭化水素の芳香族炭化水素への改質に選択的であり、第1の改質器と平行流構成である、前記接触させることと、
任意選択で、第1の改質油またはそのフラクションを第2の改質油またはそのフラクションと一つにまとめることと
を含む、芳香族炭化水素を製造するための改質プロセス。
【請求項2】
主としてC
8+炭化水素の芳香族炭化水素への改質に選択的な第1の改質触媒を備える第1の改質器を備える接触改質プロセスの改変方法であって、
主としてナフサ留分を含む第1の改質器への炭化水素系原料を、主としてC
8+炭化水素を含む第1の原料流と、主としてC
7-炭化水素を含む第2の原料流とに分離することと、
前記接触改質プロセスに、主としてC
7-炭化水素の芳香族炭化水素への改質に選択的な第2の改質触媒を備える第2の改質器を第1の改質器と平行流構成で追加することと
を含み、
改変された接触改質プロセスが、
主としてナフサ留分を含む炭化水素系原料を提供することと、
前記炭化水素系原料を、主としてC
8+炭化水素を含む第1の原料流と、主としてC
7-炭化水素を含む第2の原料流とに分離することと、
第1の改質油を形成するのに有効な第1の改質条件下、第1の原料流またはそのフラクションを、第1の改質触媒と、前記第1の改質触媒を備える第1の改質器において接触させることであって、前記第1の改質触媒は、主としてC
8+炭化水素の芳香族炭化水素への改質に選択的である、前記接触させることと、
第2の改質油を形成するのに有効な第2の改質条件下、第2の原料流またはそのフラクションを、第2の改質触媒と、前記第2の改質触媒を備える第2の改質器中で接触させることであって、前記第2の改質触媒は、主としてC
7-炭化水素の芳香族炭化水素への改質に選択的である、前記接触させることと、
任意選択で、第1の改質油またはそのフラクションを第2の改質油またはそのフラクションと一つにまとめることと
を含む前記方法。
【請求項3】
前記第1の触媒と第2の触媒とが同一ではない、請求項1に記載のプロセスまたは請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記C
7-炭化水素留分が、C
7-炭化水素の芳香族炭化水素への改質に選択的な前記触媒に、直接的もしくは間接的に供給される、請求項1に記載のプロセスまたは請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記C
8+炭化水素留分が、C
8+炭化水素の芳香族炭化水素への改質に選択的な前記触媒に、直接的もしくは間接的に供給される、請求項1に記載のプロセスまたは請求項2に記載の方法。
【請求項6】
C
7-炭化水素の改質に選択的な前記触媒が、シリカのアルミナに対するモル比が、少なくとも200、もしくは少なくとも400、もしくは少なくとも500、もしくは少なくとも1000、もしくは少なくとも1500、もしくは少なくとも2000であり、結晶子サイズが10ミクロン未満であるゼオライトを含む、請求項1に記載のプロセスまたは請求項2に記載の方法。
【請求項7】
C
7-炭化水素の改質に選択的な前記触媒が、ZSM-5、ZSM-11、ZSM-12、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-35、ZSM-38、ZSM-48、MCM-22、SSZ-20、SSZ-25、SSZ-26、SSZ-32、SSZ-33、SSZ-35、SSZ-37、SSZ-42、SSZ-43、SSZ-44、SSZ-45、SSZ-47、SSZ-58、SSZ-74、SUZ-4、EU-1、NU-85、NU-87、NU-88、IM-5、TNU-9、ESR-10、TNU-10、もしくはそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載のプロセスまたは請求項2に記載の方法。
【請求項8】
C
7-炭化水素の改質に選択的な前記触媒が、ZSM-5、ZSM-11、ZSM-12、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-35、ZSM-38、ZSM-48、もしくはそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載のプロセスまたは請求項2に記載の方法。
【請求項9】
C
7-炭化水素の改質に選択的な前記触媒がZSM-5を含む、請求項1に記載のプロセスまたは請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記ZSM-5では、シリカのアルミナに対するモル比が、少なくとも200、もしくは少なくとも400、もしくは少なくとも500、もしくは少なくとも1000、もしくは少なくとも1500、もしくは少なくとも2000である、請求項9に記載のプロセスまたは方法。
【請求項11】
C
7-炭化水素の改質に選択的な前記触媒が、0.1重量%~5重量%、もしくは0.1重量%~2重量%、もしくは0.1重量%~1重量%、もしくは0.2重量%~0.6重量%の範囲の、第VIIIB族金属、あるいはニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、白金、またはそれらの組み合わせから選択される第VIIIB族金属、あるいはイリジウム、パラジウム、白金、またはそれらの組み合わせから選択される第VIIIB族金属、あるいは白金を含む第VIIIB族金属を含む、請求項1に記載のプロセスまたは請求項2に記載の方法。
【請求項12】
C
7-炭化水素の改質に選択的な前記触媒が、0.1重量%~5重量%、もしくは0.1重量%~2重量%、もしくは0.1重量%~1重量%、もしくは0.2重量%~0.6重量%の範囲の、白金以外の第VIIIB族金属、あるいはレニウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、ガリウム、インジウム、またはそれらの組み合わせから選択される金属、あるいはレニウムを含む金属を含む、請求項1に記載のプロセスまたは請求項2に記載の方法。
【請求項13】
C
8+炭化水素の改質に選択的な前記触媒が、非ゼオライトナフサ改質触媒、または第VIIIB族金属を含むアルミナ担持非ゼオライト触媒を含む、請求項1に記載のプロセスまたは請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記C
7-炭化水素の芳香族炭化水素への前記改質が、50~300psi、好ましくは60~200psi、より好ましくは70~150psiの範囲の圧力;800°F~1100°F、好ましくは850°F~980°Fの範囲の温度;0.1~3.0hr
-1、好ましくは0.5~2.5hr
-1、より好ましくは1.0~2.0hr
-1のLHSV;及び1:1~6:1、好ましくは1.5:1~3:1の範囲のH
2:HC(水素対炭化水素)モル比の条件を含む、請求項1に記載のプロセスまたは請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記C
8+炭化水素の芳香族炭化水素への前記改質が、100~500psi、好ましくは150~450psi、より好ましくは200~440psiの範囲の圧力;800°F~1100°F、好ましくは850°F~980°Fの範囲の温度;0.1~3.0hr
-1、好ましくは0.5~2.5hr
-1、より好ましくは1.0~2.0hr
-1のLHSV;1:1~7:1、好ましくは3:1~6:1の範囲のH
2:HC(水素対炭化水素)モル比の条件を含む、請求項1に記載のプロセスまたは請求項2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年4月21日出願の米国仮特許出願第62/836,717号の優先権の利益を主張し、上記出願の開示は、その全体が本明細書に援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、平行流構成の2基の改質器を備え、それぞれの改質器が特定の炭化水素選択性を有する触媒を利用する、芳香族炭化水素を製造するための改質プロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
接触改質は、ナフサ原料と呼ばれることが多い軽質炭化水素系原料をアップグレードするための基本的な石油精製プロセスである。かかる原料は主としてC6~C10炭化水素を含む。接触改質の製品としては、自動車燃料として有用な高オクタン価ガソリン;ベンゼン、トルエン、キシレン、及びエチルベンゼンなどの芳香族化合物;ならびに水素を挙げることができる。接触改質に通常関与する反応としては、ナフサ範囲の炭化水素の脱水素、脱水素環化、及び異性化が挙げられ、直鎖状及びわずかに分岐をもつアルカンの脱水素及び脱水素環化、ならびにシクロパラフィンの脱水素が芳香族化合物の生成をもたらす。脱アルキル化及び水素化分解は、いずれの生成する軽質炭化水素も全般的に商品価値が低いこと及び水素が消費されることから、改質プロセスにおいて一般に望ましくない反応である。
【0004】
石油精製業者及び芳香族化合物製造業者は、オクタン価及び/または芳香族化合物収率をより高めるため、ならびに増加を続ける水素需要を満たすための水素源としての両面での、接触ナフサ改質の改善の探求において多くの課題に直面している。例えば、従来の改質システムでは、一般的に接触改質を高温、低圧、及び/または低いH2:炭化水素比で行うことを必要とする、高オクタン価、芳香族化合物の高生産、及び水素の高生産の条件となるように改質器を運転する場合、従来の非晶性アルミナ触媒を使用した固定床半再生改質では、触媒寿命及び液体収率が急激に低下する。かかる条件下で、触媒寿命が短く、より頻繁に触媒再生を行うことが必要になると、運転効率及びH2生産が著しく低下する。その上、従来の触媒のC6及びC7パラフィンから芳香族化合物を生成する選択性が低いことは、一般的に芳香族化合物製造業者にとって経済的ではない。
【0005】
工業的改質プロセスには、多くの場合、白金もしくはパラジウムなどの第VIIIB族金属系の触媒、または第VIIIB族金属+第2の触媒金属系の触媒が含まれる。好適な金属としては、レニウム、スズ、タングステン、ゲルマニウム、コバルト、ニッケル、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、またはそれらの組み合わせが挙げられる。上記触媒金属(複数可)は、アルミナ、シリカ、またはシリカ-アルミナなどの担体上に分散させることができる。通常、塩素などのハロゲンも上記担体上に組み込まれる。第VIIIB族金属に加えて、他の改質触媒としてはアルミノケイ酸塩ゼオライト触媒が挙げられる。例えば、米国特許第3,761,389号、第3,756,942号、第3,760,024号、第4,927,525号、第8,882,992号、及び第9,115,041号を含む様々な特許が、様々な触媒を用いた炭化水素留分の改質及び芳香族化を開示する。ホウケイ酸塩及びシリコアルミノリン酸塩、層状結晶性クレー型フィロケイ酸塩、及び非晶性クレーを含む他の改質触媒も文献に記載されている。
【0006】
より価値の高い芳香族改質油を製造するために、1つ以上のプロセスステップでナフサ原料を改質するための様々なプロセスも、例えば、米国特許第3,415,737号、第3,770,614号、第3,950,241号、第4,181,599号、第4,190,519号、第8,882,992号、及び第9,115,041号を含む特許及び技術刊行物に記載されている。例えば、米国特許第4,627,909号、第4,443,326号、第4,764,267号、第5,073,250号、第5,169,813号、第5,171,691号、第5,182,012号、第5,358,631号、第5,376,259号、第5,407,558号、第8,882,992号、及び第9,115,041号を含む多くの特許が、ナフサ原料の改質の際の異なるプロセスステップにおいて異なる触媒を使用することも記載している。
【0007】
ナフサ改質触媒及びプロセスの進歩は工業的改質装置に利益をもたらしてきた一方で、芳香族化合物の収率及びプロセススループットを増加させ、水素生産を向上させ、価値の低い低分子量(C1~C4)生成物の形成を最小限に抑えるための、新規且つ改良された改質プロセス及び方法の開発に対する絶え間のないニーズが存在する。本発明は、かかる工業的なニーズ及び従来の改質プロセスの技術的限界に対する解決策を提供する。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、異なる選択性の触媒が使用される、平行流構成で配置された複数の改質器を利用することにより、改質プロセスにおいて全体的な芳香族化合物収率及びプロセススループットの向上を達成することができるとの発見に基づく。ナフサ改質プロセス原料全体を主としてC7-の原料流と主としてC8+の原料流に分割し、これらの中間流を適切な選択性を有する触媒を収納した別個の並列の改質器に送ることにより、本発明は、従来の改質プロセスと比較して収率が有利になり、スループットが向上する。
【0009】
芳香族炭化水素を製造するための本発明の改質プロセスは、主としてナフサ留分を含む炭化水素系原料を、主としてC8+炭化水素を含む第1の原料流と、主としてC7-炭化水素を含む第2の原料流とに分離する。続いて、第1の原料流またはそのフラクションは、第1の改質油を形成するのに有効な第1の改質条件下、第1の改質触媒を備える第1の改質器中で第1の改質触媒と接触する。第2の原料流またはそのフラクションは同様に、第2の改質油を形成するのに有効な第2の改質条件下、第2の改質触媒を備える並列する第2の改質器中で第2の改質触媒と接触する。第1の触媒は主としてC8+炭化水素の芳香族炭化水素への改質に選択的である一方、第2の触媒は主としてC7-炭化水素の芳香族炭化水素への改質に選択的である。第1及び第2の改質器は互いに平行流構成で配置され、中間原料流を別個に改質する。並列の改質器から生じる第1及び第2の芳香族改質油、またはそれらのフラクションをさらに一つにまとめ、製品及び/またはさらなる処理に向けた中間流を形成してもよい。
【0010】
本発明はまた、第2の改質器を既設のすなわち従来の改質器(複数可)と統合することによる、既存のすなわち従来の接触改質プロセスの改変方法にも関する。本方法は、概括的には、分離ステップを追加し、主としてナフサ留分を含む炭化水素系原料を、それぞれ、主としてC8+及びC7-炭化水素を含む第1及び第2の中間原料流へと分割することを含む。既設のすなわち従来の改質器(複数可)と平行流構成の第2の改質器を追加し、C7-炭化水素中間原料流を第2の改質器で芳香族改質油に改質し、同時にC8+炭化水素中間原料流を既設のすなわち従来の改質器(複数可)で芳香族改質油に改質する。本方法に由来する改変された改質器プロセスは、
主としてナフサ留分を含む炭化水素系原料を提供することと、
上記炭化水素系原料を、主としてC8+炭化水素を含む第1の原料流と、主としてC7-炭化水素を含む第2の原料流とに分離することと、
第1の芳香族改質油を形成するのに有効な第1の改質条件下、第1の原料流またはそのフラクションを、第1の改質触媒と、第1の改質触媒を備える第1の改質器において接触させることであって、第1の改質触媒は、主としてC8+炭化水素の芳香族炭化水素への改質に選択的である、接触させることと、
第2の改質油を形成するのに有効な第2の改質条件下、第2の原料流またはそのフラクションを、第2の改質触媒と、第2の改質触媒を備える第2の改質器において接触させることであって、第2の改質触媒は、主としてC7-炭化水素の芳香族炭化水素への改質に選択的である、接触させることと、
任意選択で、第1の改質油またはそのフラクションを第2の改質油またはそのフラクションと一つにまとめることと
を含む。
【0011】
図面は、本発明の実施形態に係る改質器プロセスの代表的な図を提示する。本発明の範囲は、かかる代表的な図に限定されず、本出願の特許請求の範囲によって規定されることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る改質プロセスの簡略化された概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書では、1つ以上の態様の例示的な実施形態を提示するが、開示するシステム、プロセス、及び/または方法は、任意の数の技法を使用して実施することができる。本開示は、本明細書で例示及び説明する例示的な設計及び実施形態を含む、本明細書で例示する例示的なまたは特定の実施形態、図面、及び技法に限定されず、それらの全ての範囲の均等物と共に、添付の特許請求の範囲内で改変することができる。
【0014】
別段の指示がない限り、以下の語、用語、及び定義がこの開示に適用される。ある用語が本開示で使用されるが、本明細書で具体的に定義されていない場合、IUPAC Compendium of Chemical Terminology,2nd ed.(1997)による定義を、該定義が本明細書に適用されるいずれの他の開示もしくは定義と矛盾しない、または該定義によって、該定義が適用されるいずれの特許請求の範囲も不明確もしくは実施不能になることがないとの条件で、適用することができる。本明細書に援用されるいずれの文書によって提示されるいずれの定義または使用法も、本明細書で提示される定義または使用法と矛盾する限りにおいて、本明細書で提示される定義または使用法が適用されると理解されるものとする。
【0015】
本明細書で開示される沸点温度は、別段の指示がない限り、ガスクロマトグラフィーによる石油留分の沸点範囲分布に関するASTM D-2887標準試験方法に基づく。中間沸点は、ASTM D-2887の擬似蒸留に基づく、50%(体積)留出温度として定義される。
【0016】
本明細書で開示される炭化水素の炭素数の値(すなわち、C5、C6、C7、C8、C9など)は、標準的なガスクロマトグラフィー法によって測定することができる。
【0017】
別段の明示がない限り、本明細書では、接触反応域(例えば、改質器)への供給速度は、触媒容積当り、時間当りの原料の体積として記載される。本明細書に開示される供給速度は、LHSVと略称される液時空間速度とも呼ばれる、時間の逆数(すなわち、hr-1)で記載される。
【0018】
本明細書では、C4-流は、分子当り4個以下の炭素原子を有する炭化水素を高い比率で含む。同様に、C5+流は、分子当り5個以上の炭素原子を有する炭化水素を高い比率で含む。同様の解釈が他の炭素数及び範囲にも適用される。すなわち、C7-流は、分子当り7個以下の炭素原子を有する炭化水素を高い比率で含む一方、C8+流は、分子当り8個以上の炭素原子を有する炭化水素を高い比率で含む。当業者であれば、石油精製プロセスにおける炭化水素流は一般に、蒸留プロセスを使用し、沸点範囲によって分離されることが認識されよう。したがって、C7-流には少量のC8やC9分子までも含まれる可能性がある。しかしながら、通常の蒸留は、C7-流の少なくとも約70体積%が分子当り7個以下の炭素原子を有する分子を含むように設計され且つ運転されることとなる。したがって、C7-流の少なくとも約70体積%、または80%、または90%以上がC7-沸点範囲で沸騰する。同様に、C7-流の少なくとも約70体積%、または80%、または90%以上が、C7-沸点範囲で沸騰する。
【0019】
「主としてナフサ留分」という用語は、一般に、主としてC6~C10留分、より詳細には(明示される場合には)、主としてC6~C9留分から構成される炭化水素組成物をいう。「主として」という用語は通常の意味、すなわち、当該組成物の中で最大(最も多い)の留分で使用される。ナフサはまた、C5及びC11~C12炭化水素などのより低いならびにより高い炭素数の分子を含む場合がある。
【0020】
「シリカ対アルミナ比」という用語は、酸化ケイ素(SiO2)の酸化アルミニウム(Al2O3)に対するモル比をいう。
【0021】
「モレキュラーシーブ」という用語は、均一なサイズの細孔、キャビティー、または格子間空間(interstitial spaces)であって、それらを通過するのに十分に小さい分子はそれらの中に吸着される一方で、より大きな分子は吸着されない上記細孔、キャビティー、または格子間空間を含む結晶性材料をいう。モレキュラーシーブの例としては、ゼオライト、ならびに、SAPO(シリコアルミノリン酸塩)、MeAPO(メタロアルミノリン酸塩)、AlPO4(アルミノリン酸塩)、及びELAPO(非金属置換アルミノリン酸塩ファミリー)を含む、但しこれらに限定されないゼオライト類似体などの非ゼオライトモレキュラーシーブが挙げられる。
【0022】
本開示で使用される場合、別段の明示がない限り、参照される元素の周期表は、Chemical Abstract Serviceによって出版された、the Handbook of Chemistry and Physics,72nd edition (1991-1992)中のCAS版である。
【0023】
「a」、「an」、及び「the」という用語は、複数の選択肢、例えば、少なくとも1種を含むことを意図する。例えば、「第VIIIB族金属」または「アルカリ金属」の開示は、別段の明示がない限り、第VIIIB族金属もしくはアルカリ金属の1種、あるいは2種以上の混合物または組み合わせを包含することを意図する。
【0024】
本プロセスでは、主としてナフサ沸点範囲留分を含む炭化水素系原料が、2基の(またはそれを超える)改質器が平行流構成で運転される改質プロセスにおいて処理される。上記炭化水素系原料は、主としてC8+炭化水素を含む第1の原料流と、主としてC7-炭化水素を含む第2の原料流とに分離され、それぞれの原料流はそれぞれの改質器に別個に送られる。代表的な構成では、第1の原料流は、第1の芳香族改質油を形成するのに有効な第1の改質条件下、主としてC8+炭化水素の芳香族炭化水素への改質に選択的である第1の改質触媒を備える第1の改質器に供給される一方、第2の原料流は、第2の芳香族改質油を形成するのに有効な第2の改質条件下、主としてC7-炭化水素の芳香族炭化水素への改質に選択的である第2の改質触媒を備える並列の第2の改質器に供給される。
【0025】
本発明はさらに、主としてC8+炭化水素の芳香族炭化水素への改質に選択的である触媒を利用する従来の改質システムを含む既存の改質プロセスの改変方法に関する。本方法は、概括的には、原料分離ステップ及び並列の第2の改質器を既設の改質器システムに追加することを含む。より詳細には、上記分離ステップは、第1の(従来の)改質器への上記炭化水素系(ナフサ)原料を、主としてC8+炭化水素を含む第1の原料流と、主としてC7-炭化水素を含む第2の原料流とに分離することを含む。既存の改質プロセスに追加される第2の改質器は、第1の改質器と平行流構成で追加され、第2の改質器は、主としてC7-炭化水素の芳香族炭化水素への改質に選択的である第2の改質触媒を備える。上記改変された接触改質プロセスは、
主としてナフサ留分を含む炭化水素系原料を提供することと、
上記炭化水素系原料を、主としてC8+炭化水素を含む第1の原料流と、主としてC7-炭化水素を含む第2の原料流とに分離することと、
第1の芳香族改質油を形成するのに有効な第1の改質条件下、第1の原料流またはそのフラクションを、第1の改質触媒と、第1の改質触媒を備える第1の改質器において接触させることであって、第1の改質触媒は、主としてC8+炭化水素の芳香族炭化水素への改質に選択的である、接触させることと、
第2の芳香族改質油を形成するのに有効な第2の改質条件下、第2の原料流またはそのフラクションを、第2の改質触媒と、第2の改質触媒を備える第2の改質器において接触させることであって、第2の改質触媒は、主としてC7-炭化水素の改質油への改質に選択的である、接触させることと、
任意選択で、第1の芳香族改質油またはそのフラクションを第2の芳香族改質油またはそのフラクションと一つにまとめることと
を含む。任意選択で、2種の原料流へと分離されていない上記炭化水素系(ナフサ)原料の一部をそれぞれ第1及び第2の原料流と混合し、次いでそれぞれ第1及び第2の改質器で改質してもよい。
【0026】
本発明は、部分的に、並列の改質器でのC7-炭化水素の選択的改質によって、全体的な改質プロセスの性能が向上し、既存の改質器プロセスの改変として特に有益であるという発見に基づいている。主としてC7-炭化水素に選択的である改質触媒を使用する第2の改質器を追加すること、ならびにナフサ原料全体をC7-及びC8+改質器原料へと分離することによって、それぞれの改質器をそれぞれの原料により適した条件下で運転し、所望の芳香族改質油製品を製造することが可能になる。
【0027】
本改質プロセスは、概括的には、低オクタン価パラフィン及びシクロパラフィンを高オクタン価製品に転化するための脱水素反応、脱水素環化反応、及び異性化反応に対して選択された条件で、且つそれらに対して選択された触媒を用いて運転される。芳香族化合物の収率が向上した製品及び/または多くのオクタンを含む製品が製造される。いくつかの実施形態において、本改質プロセスは、増加した正味のプラスの量の水素を生成させるための条件で、且つそのための1種以上の触媒を用いて運転することができる。
【0028】
本発明の改質プロセスは、分離された原料流を、並列で運転される少なくとも2基の改質器を通過させることを含む。一般に、各改質器は、それぞれが触媒を備え、且つ改質反応条件で運転される1基以上の改質反応容器であることを特徴とする。それぞれの改質器からの芳香族改質油生成物、またはそれらのフラクションを一つにまとめて、最終製品または中間製品を形成させてもよい。本プロセスの特定の必要性を満たすために、各改質器への原料もしくは各改質器からの生成物の温度を上昇または低下させてもよい。同様に、各改質器の圧力は、触媒及び運転上の必要性に応じて上昇または低下させてもよい。前述のように、上記2基の改質器は、それぞれが、主として、それぞれの改質器への原料と適切に調和する選択性を有する触媒を利用し、その結果使用される触媒は同一ではない。第2の改質器は通常、第1の改質器よりも低い圧力で運転される。第2の改質器を第1の改質器よりも低い圧力で運転することによって、芳香族化合物収率の増加、望ましくない水素化分解反応/脱アルキル化反応の最小化、水素生成の増加、及び全体的な改質システムスループットの増加を含む改善がなされる。既設の改質器(新たな並列構成において第1の改質器となる)に対するナフサ原料流の当初の速度が日量100,000バレルである、本発明に基づく想定状況を例にとる。このナフサ原料流が3:7の体積比でC7-原料流及びC8+原料流へと分離され、日量30,000バレルのC7-原料流と日量70,000バレルのC8+原料流が製造される。既設の改質器(ここでは、新たな並列構成の第1の改質器)は日量100,000バレルの原料の処理能力を備えていることから、この改質器での処理に、さらに日量30,000バレルのC8+原料流を追加することができる。この追加の日量30,000バレルのC8+原料流を製造するにためは、日量42,857バレルのナフ原料流を3:7の体積比でC7-原料流及びC8+原料流へと分離し、さらに日量12,857バレルのC7-原料流も生み出される。新たな並列構成では、今度は日量100,000バレルのC8+原料流が第1の(既設)改質器で改質され、日量42,857バレルのC7-原料流が第2の(新設)改質器で改質される。結果として、総処理能力は日量100,000バレルから142,857バレルのナフサ原料流に増加し、これは、日量42,857バレルの増加であり、42体積%超に相当する。
【0029】
本発明のプロセス及び方法は、炭化水素系(ナフサ)原料をC7-留分流及びC8+留分流へと分離することを含み、各流れは、間接的もしくは直接的に、及び/または部分的もしくは全体的に、それぞれ第1及び第2の改質器に供給される。第1及び第2の原料流のそれぞれは、好ましくは全体が直接的にそれぞれ第1及び第2の改質器に供給されるが、それぞれの原料流の一部が他のプロセス操作に振り向けられてもよいこと、及びこれらの原料流のそれぞれが中間処理に供され、その後上記改質器に供給されてもよいことが企図される。前述のように、2種の原料流に分離されていない炭化水素系(ナフサ)原料の一部を、それぞれ第1及び第2の原料流と混合し、次いで第1及び第2の改質器で改質してもよい。
【0030】
本発明の重要な態様は、従来の改質プロセスと平行流構成の、C7-炭化水素の改質に選択的な触媒を使用することから生じる利点を認識することである。ある特定の実施形態において、かかる触媒は、シリカのアルミナに対するモル比が、少なくとも200、または少なくとも400、または少なくとも500、または少なくとも1000、または少なくとも1500、または少なくとも2000であり、結晶子サイズが10ミクロン未満であるゼオライトを含んでいてもよい。C7-炭化水素の改質に選択的な代表的な触媒としては、ZSM-5、ZSM-11、ZSM-12、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-35、ZSM-38、ZSM-48、MCM-22、SSZ-20、SSZ-25、SSZ-26、SSZ-32、SSZ-33、SSZ-35、SSZ-37、SSZ-42、SSZ-43、SSZ-44、SSZ-45、SSZ-47、SSZ-58、SSZ-74、SUZ-4、EU-1、NU-85、NU-87、NU-88、IM-5、TNU-9、ESR-10、TNU-10、またはそれらの組み合わせが挙げられる。かかる触媒のより詳細なまたは好ましい代表例としては、ZSM-5、ZSM-11、ZSM-12、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-35、ZSM-38、ZSM-48、またはそれらの組み合わせが挙げられる。C7-炭化水素の改質に特に有用なまたは好ましい触媒は、ZSM-5、より詳細には、シリカのアルミナに対するモル比が、少なくとも200、または少なくとも400、または少なくとも500、または少なくとも1000、または少なくとも1500、または少なくとも2000であるZSM-5を含む。
【0031】
上記C7-炭化水素の改質に選択的な触媒(第2の改質器触媒)は、通常、0.1重量%~5重量%、もしくは0.1重量%~2重量%、もしくは0.1重量%~1重量%、もしくは0.2重量%~0.6重量%の範囲の、第VIIIB族金属、あるいはニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、白金、またはそれらの組み合わせから選択される第VIIIB族金属、あるいはイリジウム、パラジウム、白金、またはそれらの組み合わせから選択される第VIIIB族金属、あるいは白金を含む第VIIIB族金属を含む。通常、第2の改質器触媒は、白金と、任意選択で、0.1重量%~5重量%、もしくは0.1重量%~2重量%、もしくは0.1重量%~1重量%、もしくは0.2重量%~0.6重量%の範囲の、白金以外の第VIIIB族金属、あるいはレニウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、ガリウム、インジウム、またはそれらの組み合わせから選択される金属、あるいはレニウムを含む金属を含む。
【0032】
上記C7-炭化水素の改質に選択的な触媒(第2の改質器触媒)として好適な触媒のさらなる詳細は、例えば、米国特許第8,882,992号及び第9,115,041号、ならびにその他の特許及び刊行物で入手可能である。
【0033】
上記C8+炭化水素の改質に選択的な触媒は、一般に非ゼオライト系ナフサ改質触媒、または第VIIIB族金属を含むアルミナ担持非ゼオライト系触媒を含む。かかる触媒は、通常、工業的プロセス、例えば、プラットフォーマー及びレニフォーマーの触媒及びプロセスにおける改質触媒として使用される。
【0034】
VIIIB属金属の例としては白金が挙げられる。上記触媒は、レニウム、スズ、タングステン、ゲルマニウム、コバルト、ニッケル、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、またはそれらの組み合わせなどの促進剤をさらに含んでいてもよい。いくつかのかかる実施形態において、上記促進剤金属はレニウムまたはスズである。
【0035】
存在する場合、十分な促進剤金属は、通常、0.5:1~10:1、より好ましくは1:1~6:1、最も好ましくは2:1~5:1の促進剤対白金比となるように含まれる。従来の触媒のいくつかの例が、米国特許第3,631,216号、第3,415,737号、及び第4,511,746号に提示されている。
【0036】
上記触媒を、アルカリもしくはアルカリ土類の塩化物、フッ化物、ヨウ化物、または臭化物などのハロゲン源と混合することにより、ハロゲンを触媒中に組み込んでもよい。他のハロゲン源としては、ハロゲン化水素、例えば、塩化水素、及びハロゲン化アンモニウム、例えば、塩化アンモニウムなどの化合物が挙げられる。好ましいハロゲン源は塩素源である。上記触媒と混合されるハロゲン源の量は、触媒が約0.1~3重量%のハロゲン、より好ましくは約0.2~約1.5重量%のハロゲン、最も好ましくは0.5~1.5重量%のハロゲンを含むような量である必要がある。
【0037】
上記の金属は、アルミナ、シリカ、チタニア、マグネシア、ジルコニア、クロミア、トリア、ボリア、またはそれらの混合物などの耐火性無機酸化物;酸処理されていてもよい、合成により調製された、もしくは天然に存在するクレーまたはケイ酸塩;MgAl2O4、FeAl2O4、ZnAl2O4、CaAl2O4などのスピネル;シリコアルミノリン酸塩;及び1つ以上これらの群の材料の組み合わせなどの担体上に配置されてもよい。上記改質触媒の上記耐火性担体は、好ましくは無機酸化物、より好ましくはアルミナを含む。
【0038】
第1及び第2の改質器中の改質触媒は、反応帯域内の固定床として配置された、丸剤、錠剤、顆粒、破片、または種々の特殊な形状の形態で使用することができ、供給原料は、液相、蒸気相、または混合相で、上昇流、下降流、または放射状流のいずれで通過させてもよい。あるいは、上記改質触媒は、移動床または供給原料が微粉化触媒の乱流床を上向きに通過する流動固体プロセスで使用することができる。固定床システムまたは高密度相移動床システムは、触媒の摩滅が少ないこと及び他の運転上の利点による恩恵を受けることができる。固定床システムにおいて、原料は所望の反応温度に予熱され(任意且つ適宜の加熱手段によって)、次いで固定床の触媒を備える反応帯域中に送られる。この反応帯域は、反応器入口での所望の温度を維持するための適宜の手段を備えた1基のまたは複数基の別個の反応器であってよい。改質プロセスは通常吸熱反応を伴うことから、温度を維持する必要がある。
【0039】
上記主としてC8+炭化水素の改質に選択的な触媒を備える第1の改質器における改質条件は、少なくとも部分的に、使用する原料が高芳香族系、高パラフィン系、または高ナフテン系のいずれであるか、及び所望の芳香族改質油の生産に依存する。第1の改質器は、一般に、アップグレードされる原料流の分解を最小限に抑え、改質器触媒の有効な寿命を延長する条件で運転される。第1の改質器でアップグレードされるナフサ沸点範囲の原料は、約800°F~約1100°F、好ましくは850°F~980°Fの範囲の温度;約100psig~約500psig、好ましくは150~450psi、より好ましくは200~440psiの範囲の圧力;0.1~約3.0hr-1、好ましくは0.5~2.5hr-1、より好ましくは1.0~2.0hr-1の範囲の供給速度LHSV;及び、1:1~7:1、好ましくは3:1~6:1の範囲のH2:HC(水素対炭化水素)モル比を含む反応条件で第1の改質器触媒と接触する。いくつかの実施形態において、第1の改質器中の圧力は、約200psig~約400psigの範囲である。
【0040】
第2の改質器における反応条件は、この段階で使用される触媒の性能上の利点を効果的に利用するように指定される。一般に、第2の改質器は、第1の改質器よりも低い圧力及びH2:HC(水素対炭化水素)モル比で運転される。上記主としてC7-炭化水素の改質に選択的な触媒を備える第2の改質器における改質条件は、同様に、少なくとも部分的に、使用する原料が高芳香族系、高パラフィン系、または高ナフテン系のいずれであるか、及び所望の芳香族改質油の生産に依存する。第2の改質器は、一般に、アップグレードされる原料流の分解を最小限に抑え、改質器触媒の有効な寿命を延長する条件で運転される。第2の改質器でアップグレードされるナフサ沸点範囲の原料は、約800°F~約1100°F、好ましくは850°F~980°Fの範囲の温度;約50psig~約300psig、好ましくは60~200psi、より好ましくは70~150psiの範囲の圧力;約0.1~約3.0hr-1、好ましくは0.5~2.5hr-1、より好ましくは1.0~2.0hr-1の範囲の供給速度LHSV;1:1~6:1、好ましくは1.5:1~3:1の範囲のH2:HC(水素対炭化水素)モル比を含む反応条件で第2の改質器触媒と接触する。いくつかの実施形態において、第2の改質器中の圧力は、約60psig~約100psigの範囲である。
【0041】
図1は本発明に係る実施形態を示す。50°F~550°Fの範囲内で沸騰するナフサ沸点範囲留分5が、約0.5hr
-1~約6hr
-1のLHSVの範囲の供給速度で分離器10に供給される。分離器からの流出物11は、第1の改質器20に供給される、主としてC
8+の第1の原料流である。分離器からの流出物12は、第2の改質器30に供給される、主としてC
7-の第2の原料流である。第1の改質器20は、主としてC
8+炭化水素の芳香族炭化水素への改質に選択的な第1の触媒を備え、第2の改質器30は、主としてC
7-炭化水素の芳香族炭化水素への改質に選択的な第2の改質触媒を備える。改質器20及び30は、それぞれ、改質油21及び31を生成し、これらを一つにまとめて、まとめた製品改質油25を形成することができる。
【実施例】
【0042】
実施例1:
水素化精製した全沸点範囲ナフサ原料のAPI度は59.9であり、ASTM D-2887の擬似蒸留は表1に示す通りであった。上記原料は、GC分析によって測定して、0.0重量%のベンゼン、5.5重量%のトルエン、及び4.2重量%のC8芳香族化合物を含んでいた。
【0043】
実施例2:
実施例1の水素化精製した全沸点範囲ナフサ原料を、(A)トップカット及び(B)ボトムカットに蒸留した。
【0044】
(A)トップカットのAPI度は67.1であり、ASTM D-2887の擬似蒸留は表1に示す通りであった。上記トップカットは、GC分析によって測定して、0.0重量%のベンゼン、1.7重量%のトルエン、及び0.0重量%のC8芳香族化合物を含んでいた。上記トップカットは、実施例1の水素化精製した全沸点範囲ナフサ原料の30.7重量%に相当することが明らかになった。
【0045】
(B)ボトムカットのAPI度は56.9であり、ASTM D-2887の擬似蒸留は表1に示す通りであった。上記ボトムカットは、GC分析によって測定して、0.0重量%のベンゼン、7.2重量%のトルエン、及び7.0重量%のC
8芳香族化合物を含んでいた。上記ボトムカットは、実施例1の水素化精製した全沸点範囲ナフサ原料の69.3重量%に相当することが明らかになった。
【表1】
【0046】
実施例3:
触媒1:米国特許第8,882,992号の実施例2に記載される触媒。この触媒を実施例5において使用して、実施例1の水素化精製した全沸点範囲ナフサ原料を改質し、且つ実施例7において実施例2Bのボトムカット原料を改質した。
【0047】
実施例4:
触媒2:米国特許第8,882,992号の実施例3に記載される触媒。この触媒を実施例6において使用して、実施例2Bのトップカット原料を改質した。
【0048】
実施例5:
実施例1の水素化精製した全沸点範囲ナフサ原料を、実施例3の触媒1を使用した接触改質への原料として使用した。反応条件は、930°Fの温度、200psigの圧力、5:1の水素対炭化水素モル比、及び1.5hr-1のLHSVの供給速度を含んでいた。C5+収率は82.6重量%であった。流出炭化水素流は、GC分析によって測定して、4.5重量%のベンゼン、19.6重量%のトルエン、及び24.9重量%のC8芳香族化合物を含んでいた。全C6~C8芳香族化合物収率は49.0重量%であった。
【0049】
実施例6:
実施例2Aのトップカット原料を、実施例4の触媒2を使用した接触改質への原料として使用した。反応条件は、930°Fの温度、80psigの圧力、2:1の水素対炭化水素モル比、及び1.5hr-1のLHSVの供給速度を含んでいた。C5+収率は74.6重量%であった。流出炭化水素流は、GC分析によって測定して、14.4重量%のベンゼン、32.5重量%のトルエン、及び0.0重量%のC8芳香族化合物を含んでいた。全C6~C8芳香族化合物収率は46.9重量%であった。
【0050】
実施例7:
実施例2Bのボトムカット原料を、実施例3の触媒1を使用した接触改質への原料として使用した。反応条件は、930°Fの温度、200psigの圧力、5:1の水素対炭化水素モル比、及び1.5hr-1のLHSVの供給速度を含んでいた。C5+収率は82.9重量%であった。流出炭化水素流は、GC分析によって測定して、0.8重量%のベンゼン、16.6重量%のトルエン、及び36.6重量%のC8芳香族化合物を含んでいた。全C6~C8芳香族化合物収率は54.0重量%であった。
【0051】
実施例8:
実施例2に従って、実施例1の水素化精製した全沸点範囲ナフサ原料を(A)トップカット及び(B)ボトムカットへと蒸留した。上記トップカットは、実施例1の水素化精製した全沸点範囲ナフサ原料の30.7重量%に相当することが明らかになった。上記ボトムカットは、実施例1の水素化精製した全沸点範囲ナフサ原料の69.3重量%に相当することが明らかになった。
【0052】
これらの2種のカットを、それぞれ実施例6及び実施例7において接触改質の原料として使用した。本実施例においては、これら2種のカットからの生成物を、30.7重量%のトップカット原料(実施例2A)と69.3重量%のボトムカット原料(実施例2B)からなる原料混合物に相当する比率で混合し、この混合した生成物は、5.0重量%のベンゼン、21.5重量%のトルエン、及び51.8重量%のC8芳香族化合物を有することが明らかになり、この結果、全C6~C8芳香族化合物収率は51.8重量%となった。これらの収率は、水素化精製した全沸点範囲ナフサ原料全体を、トップカット及びボトムカットへの前蒸留を行うことなく改質し(実施例2、6、及び7)、全C6~C8芳香族化合物収率が49.0重量%であった実施例5において得られた収率よりも高かった。このことは、全生成物流中の芳香族化合物濃度の見地からの、実施例6及び実施例7を組み合わせることの実施例5に勝る利点を示している。
【0053】
実施例9:
実施例2に従って、実施例1の水素化精製した全沸点範囲ナフサ原料を(A)トップカット及び(B)ボトムカットへと蒸留した。上記トップカットは、実施例1の水素化精製した全沸点範囲ナフサ原料の30.7重量%に相当することが明らかになった。上記ボトムカットは、実施例1の水素化精製した全沸点範囲ナフサ原料の69.3重量%に相当することが明らかになった。
【0054】
これらの2種のカットを、それぞれ実施例6及び実施例7において接触改質の原料として使用した。本実施例においては、これら2種のカットからの生成物を、30.7重量%のトップカット原料(実施例2A)と69.3重量%のボトムカット原料(実施例2B)からなる原料混合物に相当する比率で混合し、この混合した生成物は、5.0重量%のベンゼン、21.5重量%のトルエン、及び51.8重量%のC8芳香族化合物を有することが明らかになり、この結果、全C6~C8芳香族化合物収率は51.8重量%となった。実施例8に示したように、これらの収率は、水素化精製した全沸点範囲ナフサ原料全体を、トップカット及びボトムカットへの前蒸留を行うことなく改質し(実施例2、6、及び7)、全C6~C8芳香族化合物収率が49.0重量%であった実施例5において得られた収率よりも高かった。
【0055】
さらに、実施例5、実施例6,及び実施例7の生成物の組成に従ってこれらの実施例の芳香族化合物の収量(バレル/日)をさらに比較するために、次の推測を行った。
【0056】
(1)ケース番号1:上記の実施例5において、日量100,000バレルの水素化精製した全沸点範囲ナフサ原料が改質されると仮定する。この場合、規定された体積の実施例3の触媒を備える既設の改質器が使用される。
【0057】
(2)この水素化精製した全沸点範囲ナフサ原料流(日量100,000バレル)を、実施例2で説明したように、トップカット(C7-原料流)とボトムカット(C8+原料流)とに、約3:7の体積比(実施例2の30.7:69.3の重量比に近い)で分離する場合、日量30,000バレルのC7-原料流(実施例2A)と日量70,000バレルのC8+原料流(実施例2B)となる。
【0058】
(3)同一量の同一触媒を備えた既設の改質器(上記のケース番号1を参照)は、日量100,000バレルの原料の処理能力があることから、この改質器でのC8+原料流の処理に対して、日量30,000バレルのC8+原料流を追加することができる。
【0059】
(4)この追加の日量30,000バレルのC8+原料流を製造するために、日量42,857バレルの水素化精製した全沸点範囲ナフサが、3:7の体積比でC7-原料流とC8+原料流とに分離され、さらに日量12,857バレルのC7-原料流を生み出す。
【0060】
(5)ケース番号2:このケースでは、実施例7に示すように、既設の改質器において、合計で日量100,000バレルのC8+原料流を改質する(上記のケース番号1における日量70,000バレルのC8+原料流に代えて)。
【0061】
(6)ケース番号3:このケースでは、合計で日量42,857バレルのC7-原料流が利用可能である。本発明に基づいて、実施例6に示すように、新たな改質器が追加され、このC7-原料流を改質する(上記のケース番号1における日量30,000バレルのC7-原料流に代えて)。
【0062】
(7)ケース番号4:ケース番号2とケース番号3とを組み合わせてケース番号4とすると、総処理能力が日量100,000バレル(ケース番号1)から日量142,857バレル(ケース番号4)の水素化精製した全沸点範囲ナフサ原料流に増加し、日量42,857バレル、または42.857体積%の増加になる。実施例5、6、及び7の生成物組成によれば、芳香族収量は、ケース番号1からケース番号4に変更すると、約1.8倍に増加する。この実施例(実施例9)は、実施例6と実施例7の組み合わせは、実施例5に対して、全生成物流中の芳香族濃度(重量%または体積%)の見地(実施例8)からだけでなく、芳香族化合物の生産速度(日量でのバレル)の見地(この実施例)からも有利であることを示している。
【0063】
本発明の1つ以上の実施形態の上述の説明は、主として例示説明を目的としており、添付の特許請求の範囲に記載される本発明の範囲内に入るであろう変形が可能であることが認識されよう。
【0064】
本発明の上述の説明において引用されたすべての特許及び刊行物は、参照により本明細書に援用される。
【国際調査報告】