(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-04
(54)【発明の名称】リサイクル方法
(51)【国際特許分類】
C08J 11/08 20060101AFI20220627BHJP
D06B 3/10 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
C08J11/08 ZAB
D06B3/10 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021563116
(86)(22)【出願日】2020-05-01
(85)【翻訳文提出日】2021-11-15
(86)【国際出願番号】 EP2020062221
(87)【国際公開番号】W WO2020221932
(87)【国際公開日】2020-11-05
(32)【優先日】2019-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521462174
【氏名又は名称】ウォーン アゲイン テクノロジーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】WORN AGAIN TECHNOLOGIES LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】ウォーカー アダム
(72)【発明者】
【氏名】リード ジョシュア イー. エス.
(72)【発明者】
【氏名】ハウル ラウリ
【テーマコード(参考)】
3B154
4F401
【Fターム(参考)】
3B154AA02
3B154AA07
3B154AA12
3B154AB19
3B154AB20
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4F401AA02
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4F401EA90
4F401FA01Z
4F401FA07Z
4F401FA20Z
(57)【要約】
本発明は、供給原料からセルロースを分離する方法であって、
a)セルロースを第1の溶媒系で湿潤させて、湿潤セルロースを形成するステップ;
b)湿潤セルロースを第2の溶媒系と接触させて混合物を形成するステップ;
c)混合物を第1の温度に第1の期間維持するステップ;
d)混合物を第2の温度に第2の期間維持してセルロースを溶解させるステップ;及び
e)溶解したセルロースを含有する第1及び第2の溶媒系を取り出すステップ
を含む方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給原料からセルロースを分離する方法であって、
a)前記セルロースを第1の溶媒系で湿潤させて、湿潤セルロースを形成するステップ;
b)前記湿潤セルロースを第2の溶媒系と接触させて、混合物を形成するステップ;
c)前記混合物を第1の温度に第1の期間維持するステップ;
d)前記混合物を第2の温度に第2の期間維持して、前記セルロースを溶解させるステップ;及び
e)前記溶解したセルロースを含有する前記第1及び第2の溶媒系を取り出すステップ
を含む、前記方法。
【請求項2】
供給原料からポリエステルを分離するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
供給原料からポリエステルを分離するステップが、前記供給原料からセルロースを分離するステップに先行する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ポリエステルが、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレンアジペート、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、及び/又はこれらの2若しくは3以上の組合せを含む、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
ポリエステルがポリエチレンテレフタレートを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
供給原料から染料及び/又は不純物を溶解させて除去するステップをさらに含む、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
第1及び第2の溶媒系からセルロースを回収するステップf)をさらに含む、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
供給原料が織物及び/又は布地を含む、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
セルロースが、混合物の約0.1重量%~約20重量%の量で前記混合物中に存在する、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
第1の溶媒系がアミド、任意に環状アミド、任意に1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンを含む、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
第1の溶媒系が、混合物の約1重量%~約50重量%の量で前記混合物中に存在する、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
第2の溶媒系が、酸と塩基とを含むイオン液体を含み、任意に前記イオン液体がプロトン性である、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
塩基が少なくとも12の水性pK
aを有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
塩基が1又は2以上の窒素含有官能基を含み、任意に前記1又は2以上の窒素含有官能基がアミン基、イミン基、及び/又はアミジン基から選択される、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
塩基がグアニジン及び/又はグアニジン誘導体、任意に1,1,3,3-テトラメチルグアニジンを含む、請求項12~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
酸が一般式RCOOHのカルボン酸を含み、Rは、置換されていてもよいヒドロカルビル基である、請求項12~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
置換されていてもよいヒドロカルビル基が、1~8個の炭素原子を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
酸が酢酸を含む、請求項12~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
イオン液体が、1,1,3,3-テトラメチルグアニジニウムアセテート;1,1,3,3-テトラメチルグアニジニウムプロピオネート;1,1,2,3,3-ペンタメチルグアニジニウムアセテート;1,1,2,3,3-ペンタメチルグアニジニウムプロピオネート;1,2-ジメチル-5,6-ジヒドロ-4H-ピリミジニウムアセテート;1,2-ジメチル-5,6-ジヒドロ-4H-ピリミジニウムプロピオネート;1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エニウムアセテート;1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エニウムプロピオネート;1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エニウムアセテート;及び/又は1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エニウムプロピオネートのうちの1又は2以上を含む、請求項12~18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
塩基がイオン液体中に酸の量を超える量で存在する、請求項12~19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
塩基が約40モル%~約80モル%の量でイオン液体中に存在する、請求項12~20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
酸が約20モル%~約60モル%の量でイオン液体中に存在する、請求項12~21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
第1の温度が第2の温度よりも高い、請求項1~22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
第1の温度が約70℃~約120℃の範囲である、請求項1~23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
第2の温度が約20℃~約75℃の範囲である、請求項1~24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
混合物が水を実質的に含まない、請求項1~25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
「実質的に含まない」とは、水が(存在するとしても)、混合物の
a)4重量%未満;
b)3重量%未満;
c)2重量%未満;又は
d)1重量%未満
の量で存在することを意味する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
環状尿素と、カルボン酸及び置換されていてもよいグアニジンを含むイオン液体とを含む溶媒系を使用して、供給原料からポリエステルとセルロースを分離する方法。
【請求項29】
置換されていてもよいグアニジンが、カルボン酸の量を超える量でイオン液体中に存在する、請求項28に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給原料からセルロースを分離する方法に関する。特に、供給原料は、排他的ではないが、布地及び/又は織物を含む。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは、様々な産業で使用されてきた用途の広い材料である。しかし、プラスチックの需要は高く、絶えず増大していることに加えて、典型的には生物分解性が低いため、大量のプラスチック廃棄物に繋がってきた。この廃棄物は通常、処分が難しく、最終的には埋め立てられることが多い。前記プラスチック廃棄物を新しい生産材料へと変換するためのリサイクル方法が開発されてきたが、プラスチックのリサイクルに関するいくつかの問題が依然として存在する。
【0003】
プラスチックは特に織物産業で普及しており、定期的に取り換える傾向のある衣類に広く使用されている。これが、結果として相当量の廃棄物を創出しており、前記廃棄物はリサイクルされることが望ましい。織物は、典型的には80%を超える量のポリエステルと綿(すなわち、セルロース)を含み、両方とも環境に重大な影響を及ぼす。特に、綿の生産には、多量の水と、人工肥料及び殺虫剤の使用を必要とする。綿の望ましい特性のため、世界的な需要は増加の一途をたどっている。
【0004】
セルロースは、セルロース中に存在する分子間水素結合のために水又は従来の有機溶媒には不溶である。したがって、セルロース系繊維は、典型的には毒性の高い二硫化炭素を使用して水酸化ナトリウム水溶液に可溶のキサントゲン酸セルロースを形成するビスコース法によって生成される。繊維を製造するための代替的な方法は、N-メチルモルホリンN-オキシド(NMMO,N-methylmorpholine N-oxide)を使用して14wt%以下のセルロースを直接溶解させるリヨセル法である。安定化添加剤を使用して副反応を防止する必要がある。どちらの方法も、重大な経済的及び環境的問題があり、したがって、セルロースを溶解させるためのより効率的で環境に優しい方法が必要とされている。
【0005】
最近では、イオン液体(IL,ionic liquid)がセルロースの溶解に使用されるようになっている。イオン液体は、融点が100℃未満の溶融塩であると典型的には定義され、その熱的及び化学的安定性、不燃性、並びに他の溶媒系と混合する能力のために、特に興味深いものである。
【0006】
国際公開第03/029329号は、溶融イオン液体からのセルロースの溶解及び再生の初期の例である。
【0007】
Hermanutz et al.(Macromol. Symp. 2008, 262, 23-27)は、セルロースの溶解のための1-エチル-3-メチル-イミダゾリウムアセテート(EMIMアセテート,1-ethyl-3-methyl-imidazolium acetate)の使用を記載する。
【0008】
国際公開第2007/076979号は、プロトン性溶媒、例えば水、メタノール及びエタノールを含む、セルロース用の溶液系を記載する。
【0009】
国際公開第2007/057235号は、セルロースと、溶媒としてアニオン及びカチオンを含有するイオン液体とを含有する溶液を記載する。
【0010】
国際公開第2008/043837号は、セルロースを溶解させるための1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU,1,8-diazabicyclo[5.4.0]undec-7-ene)に由来するイオン液体の使用を記載する。
【0011】
国際公開第2014/162062号は、リグノセルロース系材料を溶解させるためのジアザビシクロノネン(DBN,diazabicyclononene)ベースのイオン液体の使用を記載する。
【0012】
中国特許出願公開第106146877号明細書は、イオン液体を使用して廃棄物織物を回収する方法を記載する。方法は、破砕によって廃棄物織物を前処理した後に、前処理された廃棄物織物、イオン液体及び水を真空条件下で混合して、セルロースを含有する液体を得ることを伴う。
【0013】
米国特許出願公開第2016/369456号明細書及び国際公開第2017/019802号は、セルロース含有供給原料を処理してセルロース分子を単離する方法を記載する。方法は、セルロース含有供給原料を少なくとも1つの前処理段階に供して、セルロース含有処理済み固体を生成すること;及びセルロース含有処理済み固体をパルプ化剤で処理して、単離されたセルロース分子を生成することを伴う。
【0014】
国際公開第2018/138416号は、カチオン性1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エニウム[TBDH]+部分を含むイオン液体にパルプを溶解させることによるセルロース繊維又はフィルムの作製を記載する。
【0015】
国際公開第2018/115584号は、材料を超強塩基ベースのイオン液体の第1の部分と混合して、セルロースの第1の部分を溶解させ、第1のセルロース溶液とポリエステルを含む第1の残留物とを形成するステップ、第1のセルロース溶液からポリエステルを含む第1の残留物を除去するステップ、及び第1のセルロース溶液を1又は2以上のさらなる処理ステップに送るステップを含む、材料からセルロースとポリエステルを分離する方法を記載する。
【0016】
米国特許第1771460号明細書は、0℃未満の温度でグアニジンにセルロースを溶解させることを記載する。
【0017】
英国特許出願公開第2560726号明細書は、少なくとも2種のポリマーを含む基質からポリマーを抽出する方法を記載する。方法は、i)基質を、第1の濃度で添加剤を含む第1の溶媒系と組み合わせて、第1のポリマーを溶解させ、第1の混合物を形成するステップ;ii)第1の混合物から第1の溶媒系と第1のポリマーを分離して、第1の基質残留物を生成するステップ;iii)第1の溶媒系から第1のポリマーを分離するステップ;iv)第1の溶媒系中の添加剤の濃度を第2の濃度に改変して、第2の溶媒系を形成するステップ;v)第2の溶媒系を第1の基質残留物と組み合わせて、第2のポリマーを溶解させ、第2の混合物を形成するステップ;及びvi)第2の溶媒系から第2のポリマーを分離するステップを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】国際公開第03/029329号
【特許文献2】国際公開第2007/076979号
【特許文献3】国際公開第2007/057235号
【特許文献4】国際公開第2008/043837号
【特許文献5】国際公開第2014/162062号
【特許文献6】中国特許出願公開第106146877号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2016/369456号明細書
【特許文献8】国際公開第2017/019802号
【特許文献9】国際公開第2018/138416号
【特許文献10】国際公開第2018/115584号
【特許文献11】米国特許第1771460号明細書
【特許文献12】英国特許出願公開第2560726号明細書
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Hermanutz et. al(Macromol. Symp. 2008, 262, 23-27)
【発明の概要】
【0020】
しかし、引用した先行技術は、ほとんどがセルロースを溶解させリサイクルする方法へのイオン液体の組み入れについて論じていない。エネルギー効率が高く、費用効果が高く、刺激性で危険な化学試薬の使用を回避する、供給原料からセルロースをリサイクルするための単純で改善された方法が依然として必要とされている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の第1の態様によると、供給原料からセルロースを分離する方法であって、
a)セルロースを第1の溶媒系で湿潤させて、湿潤セルロースを形成するステップ;
b)前記湿潤セルロースを第2の溶媒系と接触させて、混合物を形成するステップ;
c)前記混合物を第1の温度に第1の期間維持するステップ;
d)前記混合物を第2の温度に第2の期間維持して、前記セルロースを溶解させるステップ;及び
e)前記溶解したセルロースを含有する前記第1及び第2の溶媒系を取り出す(removing)ステップ
を含む方法が提供される。
【0022】
本発明の発明者らは、驚くべきことに、上記の方法の一連のステップ、及び前記ステップが行われる正確な順序が、セルロースを溶解しリサイクルするための効果的な方法をもたらし、それが先行技術に記載の方法よりも優れていることを見出した。これは、本発明の方法が、費用効果が高く、無害な溶媒を使用し、穏やかなプロセス条件を有するためである。
【0023】
驚くべきことに、第1と第2の溶媒系の組合せが、セルロースの効果的な溶解にとって重要であることが見出されている。驚くべきことに、混合物を第1の温度に第1の期間維持し、続いて第2の温度に第2の期間維持することが重要であることも見出されている。これにより、これまでよりも遙かに短い期間でセルロースの溶解が可能となる。
【0024】
方法は、供給原料からポリエステルを分離するステップをさらに含んでもよい。本発明者の特許出願に係る国際公開第2014/045062号及び国際公開第2016/012755号は、供給原料からポリエステルを溶解させ抽出する方法を開示し、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。前述の出願に開示された方法の副生成物は湿潤セルロースであり、これは、本発明の方法のステップa)に対応し得る。
【0025】
好ましくは、供給原料からポリエステルを分離するステップは、供給原料からセルロースを分離するステップに先行する。
【0026】
本発明の発明者らは、驚くべきことに、第2の溶媒系がポリエステルを不必要に破壊することがわかったため、湿潤セルロースを第2の溶媒系と接触させるステップの前に供給原料からポリエステルを分離することが重要であることを見出した。
【0027】
供給原料は、セルロースを含む。セルロースは、綿の形態で提供されてもよく、すなわち、供給原料は、綿を含んでもよい。供給原料はまた、ポリエステル及び他の不純物を含んでもよく、他の不純物は、他のポリマー、染料及び/又は水を含んでもよい。したがって、供給原料は、セルロースと他の不純物とを含んでもよい。
【0028】
供給原料は、セルロースを含む任意の物品、好ましくはリサイクルすべき物品を含んでもよい。供給原料は、織物及び/又は布地を含んでもよい。
【0029】
方法は、第1及び第2の溶媒系からセルロースを回収するステップf)をさらに含んでもよい。方法の最後に、セルロースを沈殿させるための逆溶媒の導入によってセルロースを「再生」及び/又は回収してもよい。このセルロースは、さらなる後処理、例えば洗浄を加えて、純粋なセルロース生成物としてもよい。
【0030】
逆溶媒は、酸を含んでもよい。酸は、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、安息香酸、及び/又はこれらの2若しくは3以上の組合せを含んでもよい。酸は、酢酸及び/又はプロピオン酸を含んでもよい。
【0031】
本発明の混合物は、湿潤セルロース(第1の溶媒系で湿潤させた)と、第2の溶媒系とを含むものであると定義される。
【0032】
混合物中に存在してもよいセルロースの量は、前記セルロースの重合度に依存する。セルロースは、混合物の約0.1重量%~約20重量%、好ましくは約1重量%~約18重量%、より好ましくは約5重量%~約17重量%、最も好ましくは約12重量%~約15重量%の量で混合物中に存在してもよい。
【0033】
第1の溶媒系は、アミドを含んでもよい。アミドは、直鎖状アミド、環状アミド、又は直鎖状及び環状アミドの両方を含んでもよい。好ましくは、第1の溶媒系は、環状アミドを含む。環状アミドは、環状尿素を含んでもよい。
【0034】
環状アミドは、一般式I:
【0035】
【0036】
(式中、R1及びR2は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はアルコキシ基からそれぞれ独立して選択され;R3~R12は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はアルコキシ基からそれぞれ独立して選択され;a~eのそれぞれは炭素原子であり、a-b-c-d-eの直鎖状鎖の全長は、2~5個の炭素の範囲である)
による化合物を含んでもよい。
【0037】
a-b-c-d-eの直鎖状鎖の全長は多くの場合、2~4個の炭素の範囲である。好ましくは、a-b-c-d-eの直鎖状鎖の全長は、2~3個の炭素の範囲であり、より好ましくは、a-b-c-d-eの直鎖状鎖の全長は、2個の炭素である。非限定例として、5員環では、aとbが任意に存在し、c、d及びeが任意に存在しない可能性がある。a~eのそれぞれは可能性のある置換基に関して同等であり、識別子a~e及びR3~R12は、先に定義した通りの置換基の選択肢での各環炭素の独立した置換を可能とする。したがって、環全体のサイズは、5員(2個の炭素、例えばa及びbが存在し、c、d及びeが存在しない)、6員(3個の炭素、例えばa~cが存在し、d及びeが存在しない)、7員(4個の炭素、例えばa~dが存在し、eが存在しない)、又は8員(a~eの全てが存在する)でもよい。ただし、好ましくは、環は、5又は6員、より好ましくは5員である。
【0038】
R3~R12は、アルキル、好ましくは短鎖アルキル、例えばメチル、エチル又はn-プロピルであってもよい。好ましくは、各炭素は、1つの置換基のみを有し、そのため、各炭素上で、R基の1つはHである。非限定例として、R3は水素であってもよく、R4は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール及びアルコキシ基から選択されてもよい。同様のパターンが、bに関してR5とR6で、cに関してR7とR8で、dに関してR9とR10で、eに関してR11とR12で見出されてもよい。
【0039】
好ましくは、a~eのうちの1又は2以上が、関連するR基をHとして有し、そのため、環炭素原子の全てが置換されているわけではない。非限定例として、R3及び/又はR4は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール及びアルコキシから選択されてもよいが、R5~R12の他のものは、Hであってもよい。一部又は全ての炭素原子上に1つの置換基(R≠H)のみを有すること、及び/又は一部の炭素原子上にのみ置換基を有することで、溶解度が維持されることが保証される。
【0040】
環状アミドは、N-メチル-2-ピロリジノン、N-エチル-2-ピロリジノン、N-アセチル-2-ピロリジノン、δ-バレロラクタム;ε-カプロラクタム、N-メチル-ε-カプロラクタム、N-アセチル-ε-カプロラクタム、N-フェニル-2-ピロリジノン、N-ベンジル-2-ピロリジノン、1,3-ジメチルテトラヒドロ-2-ピリミドン、1,3-ジエチルテトラヒドロ-2-ピリミドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、及び/又はこれらの2若しくは3以上の組合せを含んでもよい。
【0041】
好ましくは、第1の溶媒系は、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI,1,3-dimethyl-2-imidazolidinone)を含む。
【0042】
第1の溶媒系は、混合物の約1%重量~約50重量%、好ましくは約2重量%~約45重量%、より好ましくは約3重量%~約40重量%、尚より好ましくは約5重量%~約35重量%、最も好ましくは約10重量%~約30重量%の量で混合物中に存在してもよい。この範囲は、セルロースの溶解に最適であることが見出されている。混合物中の第1の溶媒系は、混合物の約50重量%、好ましくは約40重量%の量を超えないことが好ましい。これより多量の第1の溶媒系を使用すると、セルロースは溶解できない。
【0043】
混合物中に存在する第1の溶媒系の量は、供給原料の形態に依存する。非限定例として、供給原料は、布地の細断された繊維を含んでもよい。供給原料は、布地の材料見本を含んでもよい。前者の例は、後者の例よりも第1の溶媒系を多量に含むことになる。
【0044】
第2の溶媒系は、イオン液体を含んでもよい。好ましくは、イオン液体は、酸と塩基とを含む。
【0045】
好ましくは、イオン液体は、プロトン性である。プロトン性のイオン液体は通常、合成が比較的容易なため、非プロトン性のイオン液体よりも遙かに低コストで調製することができる。
【0046】
塩基は、少なくとも12の水性pKaを有してもよい。
【0047】
塩基は、1又は2以上の窒素含有官能基を含んでもよい。
【0048】
1又は2以上の窒素含有官能基は、アミン基、イミン基、及び/又はアミジン基、すなわち、一般式RC(=NR)NR2を有するものから選択されてもよい。
【0049】
好ましくは、塩基は、複数のアミン基を含む。塩基は、複数のアミン基のうちの少なくとも1つに対してβ-水素を含んでもよい。
【0050】
塩基は、グアニジン及び/又はグアニジン誘導体を含んでもよい。グアニジンは、2つのアミン官能基と1つのイミン官能基を持つ強塩基である。
【0051】
グアニジン及び/又はグアニジン誘導体は、置換されていてもよい。
【0052】
グアニジン及び/又はグアニジン誘導体は、1又は2以上のアルキル及び/又はアリール置換基で置換されていてもよい。
【0053】
塩基は、テトラメチルグアニジン、テトラメチルグアニジンの誘導体、ペンタメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジンの誘導体、テトラエチルグアニジン、テトラエチルグアニジンの誘導体、ペンタエチルグアニジン、ペンタエチルグアニジンの誘導体、及び/又はこれらの2若しくは3以上の組合せを含んでもよい。
【0054】
塩基は、1又は2以上の置換グアニジンを含んでもよく、1又は2以上の置換グアニジンは、それぞれ独立して4又は5つのアルキル置換基を含み、各アルキル置換基は、メチル、エチル、モノアルキルホルムアミジン、ジアルキルホルムアミジン及びトリアルキルホルムアミジンから独立して選択され、アルキルホルムアミジンは、メチル、エチル、プロピル又はイソプロピルにより置換されている。
【0055】
好ましくは、塩基は、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(TMG,1,1,3,3-tetramethylguanidine)を含む。
【0056】
塩基は、1又は2以上のアミジン基を含んでもよい。
【0057】
例えば、塩基は、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN,1,5-diazabicyclo[4.3.0]non-5-ene)、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(MTBD,1,5,7-triazabicyclo[4.4.0]dec-5-ene)、及び/又は1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)を含んでもよい。
【0058】
酸は、一般式RCOOHのカルボン酸を含んでもよく、Rは、置換されていてもよいヒドロカルビル基である。
【0059】
置換されていてもよいヒドロカルビル基は、1~8個の炭素原子を含んでもよい。置換されていてもよいヒドロカルビル基が、少なくとも1個の炭素を含むことが好ましい。理論によって拘束されることを望むものではないが、カルボキシレートに対する(すなわち、カルボキシレート基に隣接する炭素上の)β-Hが、イオン液体の所望の溶解特性を提供するのに重要であると考えられる。
【0060】
酸は、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、安息香酸、及び/又はこれらの2若しくは3以上の組合せを含んでもよい。好ましくは、酸は、酢酸(OAc,acetic acid)及び/又はプロピオン酸を含む。より好ましくは、酸は、酢酸(OAc)を含む。
【0061】
具体的な非限定例として、イオン液体は、1,1,3,3-テトラメチルグアニジニウムアセテート;1,1,3,3-テトラメチルグアニジニウムプロピオネート;1,1,2,3,3-ペンタメチルグアニジニウムアセテート;1,1,2,3,3-ペンタメチルグアニジニウムプロピオネート;1,2-ジメチル-5,6-ジヒドロ-4H-ピリミジニウムアセテート;1,2-ジメチル-5,6-ジヒドロ-4H-ピリミジニウムプロピオネート;1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エニウムアセテート;1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エニウムプロピオネート;1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エニウムアセテート;及び/又は1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エニウムプロピオネートのうちの1又は2以上を含んでもよい。
【0062】
イオン液体は、化学量論的過剰量の塩基を含んでもよい。換言すれば、塩基は、酸の量を超える量でイオン液体中に存在してもよい。本発明の発明者らは、驚くべきことに、酸と比較して過剰量の塩基を含むイオン液体を含む溶媒は、酸と塩基の化学量論的混合物を含む溶媒よりも効果的なセルロース溶解溶媒であることを見出した。理論によって拘束されることを望むものではないが、これは、化学量論的過剰量の塩基を含むイオン液体の水素結合塩基性の増加による可能性が高い。
【0063】
塩基は、約40モル%~約80モル%、好ましくは約45モル%~約75モル%、より好ましくは約50モル%~約70モル%、尚より好ましくは約52モル%~約68モル%、最も好ましくは約55モル%~約65モル%の量でイオン液体中に存在してもよい。イオン液体中の塩基は、約80モル%の量を超えないことが好ましい。これより多量の塩基を使用すると、セルロースは溶解できない。
【0064】
酸は、約20モル%~約60モル%、好ましくは約25モル%~約55モル%、より好ましくは約30モル%~約50モル%、尚より好ましくは約32モル%~約48モル%、最も好ましくは約35モル%~約45モル%の量でイオン液体中に存在してもよい。
【0065】
本発明の発明者らは、驚くべきことに、1,1,3,3-テトラメチルグアニジンと酢酸とを含むイオン液体、すなわち、1,1,3,3-テトラメチルグアニジニウムアセテートと、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンとの混合物が、セルロースの溶解に特に効果的であることを見出した。混合物は、セルロースを選択的に溶解させ、供給原料中に存在し得る他のポリマー、例えばポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン及びナイロンを溶解しないことが見出されている。
【0066】
理論によって拘束されることを望むものではないが、効果的なセルロース溶解のためには2段階プロセスが必要であると考えられる。混合物は、膨潤、分解及び均質化を可能とするために第1の温度に第1の期間維持される。次いで、混合物は第2の温度に第2の期間維持され、その間にセルロースが溶解される。
【0067】
第1の温度は、第2の温度とは異なってもよい。好ましくは、第1の温度は第2の温度よりも高い。
【0068】
第1の温度は、約70℃~約120℃、好ましくは約80℃~約120℃、より好ましくは約90℃~約120℃、尚より好ましくは約100℃~約120℃、最も好ましくは約100℃~約110℃の範囲であってもよい。第1の温度は120℃を超えないことが好ましい。
【0069】
第2の温度は、セルロースの分子量に依存する。第2の温度は、約20℃~約75℃、好ましくは約20℃~約70℃、より好ましくは約20℃~約60℃、最も好ましくは約20℃~約50℃の範囲であってもよい。
【0070】
第1の期間は、第2の期間とほぼ同じであってもよい。第1の期間は、第2の期間とは異なってもよい。第1の期間は、第2の期間より長くてもよい。第1の期間は、第2の期間より短くてもよい。
【0071】
第1の期間は、約0.1時間~約24時間、好ましくは約0.1時間~約12時間、より好ましくは約0.1時間~約6時間、尚より好ましくは約0.1時間~約4時間、さらに尚より好ましくは約0.1時間~約1時間、さらにより好ましくは約0.2時間~約1時間、最も好ましくは約0.2時間~約0.5時間の範囲であってもよい。
【0072】
第2の期間は、約0.1時間~約24時間、好ましくは約0.1時間~約12時間、より好ましくは約0.1時間~約6時間、最も好ましくは約0.1時間~約3時間の範囲であってもよい。
【0073】
混合物は、実質的に水を含まなくてもよい。本発明の発明者らは、供給原料中、又は第1若しくは第2の溶媒系中の水の存在が、第1及び第2の温度に著しく影響し、結果としてセルロースを溶解させるプロセスの能力に著しく影響することを見出した。理論によって拘束されることを望むものではないが、これは、水は、イオン液体とセルロースとの間の水素結合ネットワークを破壊するため、セルロースの沈殿にとって逆溶媒となるためである。したがって、混合物中の水の量を制限することが好ましい。
【0074】
「実質的に含まない」とは、水が(存在するとしても)、混合物の約4重量%未満、好ましくは約3重量%未満、より好ましくは約2重量%未満、最も好ましくは約1重量%未満の量で存在することを、好ましくは意味する。水が約4重量%を超える量で存在する場合、セルロースは、本発明の混合物に溶解できないことが見出されている。
【0075】
本発明の第2の態様によると、供給原料からポリエステルとセルロースを分離する方法であって、
i.ポリエステルを溶解させ抽出するステップ;及び
ii.本発明に従いセルロースを分離するステップ
を含む方法が提供される。
【0076】
本発明者の特許出願に係る国際公開第2014/045062号及び国際公開第2016/012755号は、供給原料からポリエステルを溶解させ抽出する方法を開示し、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。前述の出願に開示された方法の副生成物は湿潤セルロースであり、これは、本発明の方法のステップa)に対応し得る。
【0077】
方法は、供給原料から染料を溶解させ除去するステップをさらに含んでもよい。方法は、供給原料から不純物を溶解させ除去するステップをさらに含んでもよい。方法は、供給原料から染料及び不純物を溶解させ除去するステップをさらに含んでもよい。
【0078】
ポリエステルは、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレンアジペート、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、及び/又はこれらの2若しくは3以上の組合せを含んでもよい。好ましくは、ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートを含む。
【0079】
本発明の第3の態様によると、環状尿素と、カルボン酸及び置換されていてもよいグアニジンを含むイオン液体とを含む溶媒系を使用して、供給原料からポリエステルとセルロースを分離する方法が提供される。
【0080】
置換されていてもよいグアニジンは、カルボン酸の量を超える量でイオン液体中に存在してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
下記の実施例及び図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【
図1】
図1は、混合物中のDMIのwt%、及びイオン液体中の酸:塩基の比によって溶解セルロースのwt%がどのように変化するかを示す。
【実施例】
【0082】
粗く刻んだ使用済み綿(PCC,Post-Consumer Cotton)シート7.5gを、大過剰量のDMI中110℃で1~2時間加熱した。余分なDMIを除去し、布地のDMI保持量を、その質量の2.7倍であると計算した。別の容器で、TMGA(60:40モル比のTMG:アセテート)を調製し、110℃で高温に保った。系中の全DMIを考慮し、30gの追加のDMIを湿潤織物に添加して、溶液中の最終のDMIwt%を20重量%に、綿濃度を5重量%にした。高温のイオン液体溶液をその容器からDMIと湿潤織物とを含有する容器に移し、オーバーヘッドスターラと標準的なインペラでの撹拌を開始した。溶媒中での布地の混合は良好であり、強い渦が見える間、全ての布地がインペラによって円を描くようにフラスコの周囲を「移動」させられていた。20分以内に、布地は溶媒中で完全に均質化され、高温での「ドロドロ」の未溶解段階となった。撹拌せずに室温まで1時間冷却した後、透明で粘性の溶液が形成された。
[比較例A]
【0083】
TMGA(60:40モル比のTMG:アセテート)とDMIの溶液を作製し、最低RPM速度でオーバーヘッドスターラを用い、110℃で撹拌した。15分の反応と温度平衡の後、粗く刻んだPCCを添加して、20重量%のDMIと5重量%のPCCを含有する最終溶液を作製した。約40分後、混合物は、布地が膨潤し、溶媒に分散した状態に到達したことが観察された。冷却すると、粘度が急速に上昇し、バルク溶液はより透明になったが、溶液中には依然としてかなりの未溶解綿が存在していた。溶液を110℃に再加熱し、より高いRPMで約20分間撹拌した。室温まで冷却すると、未溶解綿片が依然として存在し、溶液は完全に透明ではなく、ごくわずかに不透明であった。
【0084】
この比較例は、湿潤セルロースを第2の溶媒系と接触させる前に、まずセルロースを第1の溶媒系で湿潤させて、湿潤セルロースを形成することの重要性を実証している。この体系的な方法により、セルロースを完全に溶解させることが可能となる。
【実施例】
【0085】
図1は、混合物中のDMIの重量%、及びイオン液体中の酸:塩基の比を変更すると、混合物中の溶解セルロースの重量%にどのような影響があるかを示す。
【0086】
綿と溶媒の混合物を80℃に一晩加熱し、続いて室温に冷却した。セルロース飽和限界(混合物中の溶解セルロースの最大重量%)を、溶液が不透明であるとき、混濁しているとき、又は未溶解繊維が依然として存在しているときに判定した。
【0087】
図1に示すように、記載したような条件では、溶解セルロースの重量%は、55:45~60:40モル%の[TMGH]:[OAc]及び20~30重量%のDMIの付近でピークに達することが見出された。これにより、最大7.5重量%のPCCが溶解した。
【0088】
驚くべきことに、50:50モル%の[TMGH]:[OAc]を含有する混合物は、過剰量のTMGを使用したものと比較して、わずかに少ないPCC(最大5重量%)を溶解することが見出された。他方、過剰量のOAc(すなわち、45:55モル%の[TMGH]:[OAc])は、セルロースの溶解の発生を妨げた。
【0089】
70:30モル%の[TMGH]:[OAc]を超える組成では、セルロース溶解能力が低下することが見出された。80:20モル%の[TMGH]:[OAc]を含有する混合物は、最大2.5重量%のPCCしか溶解せず、90:10モル%の[TMGH]:[OAc]を含有する混合物は、セルロースを全く溶解させることができなかった。
【0090】
図1は、混合物中の第1の溶媒系(この場合、DMI)の重量%を変化させた場合の混合物中の溶解セルロースの重量%に対する影響も示す。
【0091】
図からわかるように、0~10重量%のDMIの範囲では、混合物は、最大5重量%のセルロースしか溶解できない。ほとんどのセルロース(7.5重量%以下)は、DMIが10~30重量%の範囲の場合に溶解させることができる。これは、DMIの値が30重量%を超えると減少し、DMIの値が40重量%を超えると著しく減少する。DMIが60重量%を超える量で存在する混合物にはセルロースは溶解できないことが見出された。
【実施例】
【0092】
表1は、セルロースの試料が異なる比の[TMGH]:[OAc]、異なる重量%のDMI、及び異なる第1の温度で溶解したか否かを示す。表中の比は、[TMGH]:[OAc]の比に関するものである。バツ印は、試料が溶解したことを示す。
【0093】
【0094】
表からわかるように、0~40重量%のDMIで、第1の温度が110℃の場合、セルロースは、50:50及び60:40の[TMGH]:[OAc]の両方の混合物に溶解できる。しかし、第1の温度が80℃の場合、50:50混合物中のセルロース試料はいずれも溶解できなかった。他方、0~30重量%のDMIと共に60:40の[TMGH]:[OAc]を含む混合物は、セルロースを溶解することができた。
【0095】
これは、過剰量のTMGHを含む混合物が、化学量論量のTMGH及びOAcを含むものよりも良好に機能することをさらに実証するものである。
【実施例】
【0096】
一定範囲のDMI組成(混合物の0~40重量%)及びイオン液体中の2種の[TMGH]:[OAc]比(50:50及び60:40)を使用して、第2の温度及び第2の期間に対する影響を実証した。2.5重量%及び5重量%のPCCを使用し、結果を表2及び3に要約した。全ての場合において、第1の温度は110℃であった。「部分」という語は、混合物がほぼ透明であったが、捕捉された繊維/綿片をいくらか含んでいた、又は完全には透明ではなかったことを示す。
【0097】
【0098】
【0099】
表からわかるように、第2の期間は、50:50の[TMGH]:[OAc]混合物と比較して、60:40の[TMGH]:[OAc]混合物ではかなり短い。したがって、セルロースが化学量論的過剰量のTMGHとの混合物にはより迅速に溶解できることは明らかである。
【0100】
さらに、60:40の[TMGH]:[OAc]混合物は一般に、50:50の[TMGH]:[OAc]混合物よりも高い第2の温度でセルロースを溶解するため、第1の温度からの温度低下が少なくて済む。温度低下が少ないほどエネルギーの節約に有利である。
【国際調査報告】