(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-04
(54)【発明の名称】リシン誘導体を効率的に導入するアミノアシル-tRNAシンテターゼ
(51)【国際特許分類】
C12N 15/52 20060101AFI20220627BHJP
C12N 9/00 20060101ALI20220627BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220627BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220627BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220627BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220627BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220627BHJP
【FI】
C12N15/52 Z
C12N9/00 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021565005
(86)(22)【出願日】2020-04-30
(85)【翻訳文提出日】2021-12-27
(86)【国際出願番号】 CN2020088506
(87)【国際公開番号】W WO2020221365
(87)【国際公開日】2020-11-05
(31)【優先権主張番号】201910364788.7
(32)【優先日】2019-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521478223
【氏名又は名称】スーヂョウ クンペン バイオテック カンパニー, リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SUZHOU KUNPENG BIOTECH CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】3F,Zhongshi Building,168 Yuanfeng Road,Yushan Town,Kunshan,Suzhou,Jiangsu 215300,China
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】リウ,フイリン
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ソン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ゼンシャン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ウェイ
【テーマコード(参考)】
4B050
4B065
【Fターム(参考)】
4B050CC04
4B050DD02
4B050EE03
4B050EE04
4B050LL05
4B065AA01Y
4B065AA26X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BA25
4B065BB19
4B065BB29
4B065BB37
4B065BC03
4B065BC09
4B065BC26
4B065CA27
4B065CA60
(57)【要約】
本発明は、野生型アミノアシル-tRNAシンテターゼのアミノ酸配列に対応する位置102位、128~140および159~179のアミノ酸残基からなる群から選択される一つまたは複数の部位で欠失される、突然変異型リシル-tRNAシンテターゼを提供する。野生型リシル-tRNAシンテターゼと比較して、本発明の突然変異型リシル-tRNAシンテターゼは、高い活性、高い発現量および高い溶解性を有し、非天然アミノ酸の挿入量および非天然アミノ酸を含む標的タンパク質の発現量を有意に増加させることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノアシル-tRNAシンテターゼの突然変異タンパク質であって、
前記突然変異タンパク質は、野生型アミノアシル-tRNAシンテターゼのアミノ酸配列に対応する位置102、128~140および159~179のアミノ酸残基からなる群から選択される一つまたは複数の部位で欠失されることを特徴とする、前記突然変異タンパク質。
【請求項2】
野生型アミノアシル-tRNAシンテターゼのアミノ酸配列の少なくとも以下のアミノ酸残基を切り離し、
(a)位置102のアミノ酸残基、
(b)位置X乃至Yのアミノ酸残基、ここで、Xは、128~132の間の正の整数であり、Yは、133~140の間の正の整数であり、および/または
(c)位置A乃至Bのアミノ酸残基、ここで、Aは、159~164の間の正の整数であり、Bは、165~179の間の正の整数であることを特徴とする
請求項1に記載の突然変異タンパク質。
【請求項3】
SEQ ID NO.:4に示されるような配列に対応する突然変異型アミノアシル-tRNAシンテターゼにおいて、前記突然変異タンパク質には、位置29のヒスチジン(H)、位置76のアスパラギン酸(D)、位置89のセリン(S)、位置91のアスパラギン(N)、位置96のアルギニン(R)、位置121のセリン(S)、位置129のアスパラギン(N)、位置145のセリン(S)、位置148のアラニン(A)、位置274のロイシン(L)、位置313のシステイン(C)、位置349のフェニルアラニン(F)、またはその組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸突然変異がさらに存在することを特徴とする
請求項1に記載の突然変異タンパク質。
【請求項4】
SEQ ID NO.:3~6のいずれか一つに示されるようなアミノ酸配列を有することを特徴とする
請求項1に記載の突然変異タンパク質。
【請求項5】
請求項4に記載のポリヌクレオチドを含むことを特徴とする、ベクター。
【請求項6】
請求項5に記載のベクターを含むか、またはそのゲノムには、請求項4に記載のポリヌクレオチドが組込まれるか、または請求項1に記載の突然変異タンパク質が発現されることを特徴とする、前記宿主細胞。
【請求項7】
(a)請求項1に記載の突然変異タンパク質、
(b)前記突然変異タンパク質の存在下で所定の修飾アミノ酸に結合できる人工tRNA、および任意選択で
(c)標的タンパク質をコードする、前記人工tRNAによって識別されるコドンを含む第1の核酸配列を含むことを特徴とする
請求項6に記載の宿主細胞。
【請求項8】
下記(1)および(2)を含み、
(1)第1の発現カセット、前記第1の発現カセットは、標的タンパク質をコードする第1のコード配列を含み、前記第1のコード配列は、所定の修飾アミノ酸を導入するためのコドンを含み、前記コドンは、UAG(アンバー)、UAA(オーカー)、またはUGA(オパール)であり、および
(2)第2の発現カセット、前記第2の発現カセットは、アミノアシル-tRNAシンテターゼをコードする第2のコード配列を含み、ここで、前記アミノアシル-tRNAシンテターゼは、請求項1に記載の突然変異タンパク質であり、
また、前記システムは、第3の発現カセットをさらに含み、前記第3の発現カセットは、人工tRNAをコードする第3のコード配列を含み、ここで、前記人工tRNAは、前記コドンに対応するアンチコドンを含み、
また、前記アミノアシル-tRNAシンテターゼは、前記人工tRNAを特異的に触媒して、「人工tRNA-Xa」複合体を形成し、ここで、Xaは、アミノアシル基形態の前記所定の修飾アミノ酸であることを特徴とする、プラスミドシステム。
【請求項9】
(a)容器、および(b)前記容器内に位置する請求項1に記載の突然変異タンパク質、または請求項4に記載のポリヌクレオチド、または請求項5に記載のベクター、または請求項8に記載のプラスミドシステムを含むことを特徴とする、キット。
【請求項10】
請求項1に記載の突然変異タンパク質、または請求項6に記載の宿主細胞、または請求項8に記載のプラスミドシステム、または請求項9に記載のキットの用途であって、
非天然アミノ酸を標的タンパク質に混入ために、または非天然アミノ酸を含む標的タンパク質を調製するために使用されることを特徴とする、前記用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオテクノロジーの分野に関し、具体的には、リシン誘導体を効率的に導入するアミノアシル-tRNAシンテターゼに関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質の所望の位置のアミノ酸残基を通常のタンパク質合成に関する20種類以外のアミノ酸(非天然アミノ酸)で置き換えることによって得られる非天然アミノ酸組込み型タンパク質(全タンパク質)は、タンパク質の構造および機能を解析するための効果的な手段となることができる。様々な生物種に由来するアミノアシル-tRNAシンテターゼ(aaRS)/tRNAペアを使用して、30種類以上の全タンパク質を合成した。最も長い歴史を持ち、かつ様々な有用な非天然アミノ酸の導入に適用されるシステムは、チロシル-tRNAシンテターゼ(TyrRS)突然変異体と琥珀阻害遺伝子化tRNATyrペアである。当該方法に関する限り、重要なのは、その直交関係であり、即ち、真正細菌、および古細菌、真核生物の二つのグループのaaRSは、それぞれのグループでtRNAアミノ基をアシル化するが、他のグループのtRNAアミノ基をアシル化することはできない。
【0003】
一方、メタノサルシナマゼイ(Methanosarcina mazei)に由来するピロリシル-tRNAシンテターゼ(PylRS)と琥珀阻害遺伝子tRNAPylは、大腸菌細胞において直交性を有するaaRS/tRNAペアとして機能する。ピロリシン(Pyrrolysine)は、側鎖にかさばるメチルピロリン部分を有するリシン誘導体である。野生型PylRSは、大腸菌内のtRNAPylにNε-Boc-L-リシンを結合させることができる。しかし、LysRSはリシンを厳密に識別するため、今まで、様々なサイズや形状の官能基を有するリシン誘導体部位をタンパク質に特異的に導入することは困難である。
【0004】
従って、当技術分野では、野生型リシル-tRNAシンテターゼを改変し、リシン誘導体をタンパク質に効率的に導入するアミノアシル-tRNAシンテターゼを開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、リシン誘導体をタンパク質に効率的に導入するアミノアシル-tRNAシンテターゼおよび方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、アミノアシル-tRNAシンテターゼの突然変異タンパク質を提供し、前記突然変異タンパク質は、野生型アミノアシル-tRNAシンテターゼのアミノ酸配列に対応する位置10位、128~140および159~179のアミノ酸残基からなる群から選択される一つまたは複数の部位で欠失される。
【0007】
別の好ましい例において、前記複数は、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個および34個を含む。
【0008】
別の好ましい例において、前記位置128~140は、位置128、位置129、位置130、位置131、位置132、位置133、位置134、位置135、位置136、位置137、位置138、位置139および位置140を含む。
【0009】
別の好ましい例において、前記位置159~179は、位置159、位置160、位置161、位置162、位置163、位置164、位置165、位置166、位置167、位置168、位置169、位置170、位置171、位置172、位置173、位置174、位置175、位置176、位置177、位置178、位置179および位置180を含む。
【0010】
別の好ましい例において、前記突然変異タンパク質は、野生型アミノアシル-tRNAシンテターゼのアミノ酸配列の少なくとも以下のアミノ酸残基を切り離し、
(a)位置102のアミノ酸残基、
(b)位置X乃至Yのアミノ酸残基、ここで、Xは、128~132の間の正の整数であり、Yは、133~140の間の正の整数であり、および/または
(c)位置A乃至Bのアミノ酸残基、ここで、Aは、159~164の間の正の整数であり、Bは、165~179の間の正の整数である。
別の好ましい例において、前記Xは、128、129、130、131または132のような128~132の間の正の整数である。
別の好ましい例において、前記Xは、128である。
別の好ましい例において、Yは、133、134、135、136、137、138、139または140等の133~140の間の正の整数である。
別の好ましい例において、前記Yは、140である。
別の好ましい例において、前記Aは、159、160、161、162、163または164のような159~164の間の正の整数である。
別の好ましい例において、前記Aは、159である。
【0011】
別の好ましい例において、前記Bは、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178または164のような165~179の間の正の整数である。
別の好ましい例において、前記Bは、179である。
【0012】
別の好ましい例において、前記野生型アミノアシル-tRNAシンテターゼは、メタン生成古細菌のメタノサルシナマゼイ(Methanosarcina mazei)、メタノサルシナバーケリ(Methanosarcina barkeri)またはメタノサルシナアセチボランス(Methanosarcina acetivorans)に由来する。
別の好ましい例において、前記野生型アミノアシル-tRNAシンテターゼのアミノ酸配列は、SEQ ID NO.:1または2に示されるようである。
別の好ましい例において、前記欠失されたアミノ酸残基の番号は、SEQ ID NO.:1または2に基づく。
別の好ましい例において、前記突然変異タンパク質は、短縮されたアミノアシル-tRNAシンテターゼである。
【0013】
別の好ましい例において、前記突然変異タンパク質のアミノ酸配列の長さは、SEQ ID NO.:1または2に示される配列の長さの少なくとも90%、好ましくは92%~99%である。
【0014】
別の好ましい例において、前記突然変異タンパク質(短縮形態)は、SEQ ID NO.:1または2に存在する対応する長さのペプチドフラグメントと少なくとも90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する。
【0015】
別の好ましい例において、前記突然変異タンパク質は、野生型アミノアシル-tRNAシンテターゼのアミノ酸配列の少なくとも位置128~140および位置159~179アミノ酸残基を短縮する。
【0016】
別の好ましい例において、前記突然変異タンパク質は、野生型アミノアシル-tRNAシンテターゼのアミノ酸配列の少なくとも位置10位、128~140および159~179のアミノ酸残基を短縮する。
別の好ましい例において、前記突然変異タンパク質のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.:3に示されるようである。
別の好ましい例において、前記突然変異タンパク質のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.:4に示されるようである。
【0017】
別の好ましい例において、SEQ ID NO.:4に示されるような配列に対応する突然変異型アミノアシル-tRNAシンテターゼにおいて、前記突然変異タンパク質には、位置29のヒスチジン(H)、位置76のアスパラギン酸(D)、位置89のセリン(S)、位置91のアスパラギン(N)、位置96のアルギニン(R)、位置121のセリン(S)、位置129のアスパラギン(N)、位置145のセリン(S)、位置148のアラニン(A)、位置274のロイシン(L)、位置313のシステイン(C)、位置349のフェニルアラニン(F)、またはその組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸突然変異がさらに存在する。
別の好ましい例において、前記突然変異部位のアミノ酸番号は、SEQ ID NO.:4に基づく。
【0018】
別の好ましい例において、前記突然変異タンパク質は、SEQ ID NO.:4に示されるような配列の突然変異型アミノアシル-tRNAシンテターゼであり、また、SEQ ID NO.:4に示される配列に基づいて、位置29のヒスチジン(H)、位置76のアスパラギン酸(D)、位置89のセリン(S)、位置91のアスパラギン(N)、位置96のアルギニン(R)、位置121のセリン(S)、位置129のアスパラギン(N)、位置145のセリン(S)、位置148のアラニン(A)、位置274のロイシン(L)、位置313のシステイン(C)、位置349のフェニルアラニン(F)、またはその組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸突然変異がさらに存在する。
別の好ましい例において、前記位置29のヒスチジン(H)は、チロシン(Y)に突然変異し、および/または
前記位置76のアスパラギン酸(D)は、グリシン(G)に突然変異し、および/または
前記位置89のセリン(S)は、グリシン(G)に突然変異し、および/または
前記位置91のアスパラギン(N)は、スレオニン(T)に突然変異し、および/または
前記位置96のアルギニン(R)は、リシン(K)に突然変異し、および/または
前記位置121のセリン(S)は、プロリン(P)に突然変異し、および/または
前記位置129のアスパラギン(N)は、アスパラギン酸(D)に突然変異し、および/または
前記位置145のセリン(S)は、プロリン(P)に突然変異し、および/または
前記位置148のアラニン(A)は、スレオニン(T)に突然変異し、および/または
前記位置274のロイシン(L)は、アラニン(A)に突然変異し、および/または
前記位置313のシステイン(C)は、セリン(S)に突然変異し、および/または
前記位置349のフェニルアラニン(F)は、チロシン(Y)に突然変異する。
【0019】
別の好ましい例において、SEQ ID NO.:4に示されるような配列に対応する突然変異型アミノアシル-tRNAシンテターゼにおける前記突然変異タンパク質の突然変異は、H29Y、D76G、S89G、N91T、R96K、S121P、N129D、S145P、A148T、L274A、C313S、F349Y、またはその組み合わせからなる群から選択される。
【0020】
別の好ましい例において、SEQ ID NO.:4に示されるような配列に対応する突然変異型アミノアシル-tRNAシンテターゼにおいて、前記突然変異タンパク質には、H29Y、D76G、S89G、N91T、R96K、S121P、N129D、S145PおよびA148Tからなる群から選択される突然変異がさらに存在する。
【0021】
別の好ましい例において、SEQ ID NO.:4に示されるような配列に対応する突然変異型アミノアシル-tRNAシンテターゼにおいて、前記突然変異タンパク質には、L274A、C313SおよびF349Yからなる群から選択される突然変異がさらに存在する。
別の好ましい例において、前記突然変異タンパク質のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.:5または6に示されるようである。
【0022】
別の好ましい例において、前記欠失および突然変異を除いて、前記突然変異タンパク質の残りのアミノ酸は、SEQ ID NO.:1またはSEQ ID NO.:2に示されるような配列と同じであるか、または基本的に同じである。
【0023】
別の好ましい例において、前記基本的に同じことは、多くても50個(好ましくは1~20個、より好ましくは1~10個である)のアミノ酸が異なるということであり、ここで、前記違いは、アミノ酸の置換、欠失または追加を含み、かつ前記突然変異タンパク質は、依然としてアミノアシル-tRNAシンテターゼの活性を有する。
【0024】
別の好ましい例において、SEQ ID NO.1またはSEQ ID NO.:2と比較して、前記突然変異タンパク質のアミノ酸配列は、少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、より好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%、99%以上の配列相同性を有する。
【0025】
別の好ましい例において、前記突然変異タンパク質は、SEQ ID NO.:1またはSEQ ID NO.:2に示される野生型アミノアシル-tRNAシンテターゼの突然変異によって形成される。
別の好ましい例において、前記突然変異タンパク質は、以下の群から選択される。
(1)アミノ酸配列がSEQ ID NO.:3~6のいずれか一つに示されるようなポリペプチド、または
【0026】
(2)SEQ ID NO.:3~6のいずれか一つに示されるアミノ酸配列を一つまたは複数、好ましくは1~20個、より好ましくは1~15個、より好ましくは1~10個、より好ましくは1~8個、より好ましくは1~3個、最も好ましくは1個のアミノ酸残基の置換、欠失または追加によって形成され、(1)に記載のポリペプチド機能を有する、SEQ ID NO.:3~6のいずれか一つに示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドに派生されるポリペプチド。
【0027】
別の好ましい例において、前記突然変異タンパク質のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.:3~6のいずれか一つに示されるようである。
別の好ましい例において、前記突然変異タンパク質は、非天然タンパク質である。
別の好ましい例において、前記突然変異タンパク質は、所定の修飾アミノ酸を標的タンパク質に導入するために使用される。
別の好ましい例において、前記突然変異タンパク質は、以下の一つまたは複数の特徴を有する。
(a)野生型アミノアシル-tRNAシンテターゼと比較して、大きな官能基を有する所定の修飾アミノ酸を標的タンパク質に導入することができ、
(b)標的タンパク質の発現量が高く、および
(c)突然変異タンパクにおける配列の長さが短く、容易に発現され、発現量が高い。
【0028】
本発明の第2の態様は、単離されたポリヌクレオチドを提供し、前記ポリヌクレオチドは、本発明の第1の態様に記載の突然変異タンパク質をコードする。
別の好ましい例において、前記ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO.:3~6のいずれか一つに示される様なポリペプチドをコードする。
【0029】
別の好ましい例において、前記ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO.:4に示されるようなポリペプチドをコードし、ヌクレオチド配列は、SEQ ID NO.:9に示されるようである。
別の好ましい例において、前記ポリヌクレオチドは、DNA配列、RNA配列、またはその組み合わせを含む。
【0030】
別の好ましい例において、突然変異型アミノアシル-tRNAシンテターゼにおける前記ポリヌクレオチドのORFの側面には、シグナルペプチド、分泌ペプチド、タグ配列(例えば、6His)、またはその組み合わせからなる群から選択される補助要素をさらに含まれる。
本発明の第3の態様は、ベクターを提供し、前記ベクターは、本発明の第2の態様に記載されるようなポリヌクレオチドを含む。
別の好ましい例において、前記ベクターは、発現ベクター、シャトルベクター、組込み型ベクターを含む。
別の好ましい例において、前記ベクターは、pET、pCW、pUC、pPIC9k、pMA5、またはその組み合わせからなる群から選択される。
別の好ましい例において、前記ベクターは、pEvolベクターおよび/またはpBADベクターである。
別の好ましい例において、前記ベクターは、本発明の第1の態様に記載の突然変異タンパク質を発現するために使用される。
【0031】
本発明の第4の態様は、宿主細胞を提供し、前記宿主細胞は、本発明の第3の態様に記載のベクターを含むか、またはそのゲノムには、本発明の第2の態様に記載のポリヌクレオチドが組込まれるか、または本発明の第1の態様に記載の突然変異タンパク質が発現される。
別の好ましい例において、前記宿主細胞は、原核細胞、真核細胞、またはその組み合わせからなる群から選択される。
別の好ましい例において、前記宿主細胞は、酵母細胞、植物細胞または動物細胞(例えば、哺乳動物細胞)のような真核細胞である。
別の好ましい例において、前記宿主細胞は、大腸菌のような原核細胞である。
別の好ましい例において、前記宿主細胞は、大腸菌Top10、またはBL21である。
別の好ましい例において、前記宿主細胞は、
(a)本発明の第1の態様に記載の突然変異タンパク質、
(b)前記突然変異タンパク質の存在下で所定の修飾アミノ酸に結合できる人工tRNA、および任意選択で
(c)標的タンパク質をコードする、前記人工tRNAによって識別されるコドンを含む第1の核酸配列を含む。
別の好ましい例において、前記宿主細胞は、
(d)前記所定の修飾アミノ酸をさらに含む。
別の好ましい例において、前記第1の核酸配列は、所定の修飾アミノ酸を導入するための位置に前記人工tRNAによって識別されるコドンを含む。
別の好ましい例において、前記所定の修飾アミノ酸は、前記突然変異タンパク質の基質である。
別の好ましい例において、前記所定の修飾アミノ酸は、修飾基を有するリシンである。
【0032】
別の好ましい例において、前記修飾アミノ酸は、アルキニルオキシカルボニルリシン誘導体、tert―ブトキシカルボニル(BOC)-リシン誘導体、脂肪アシル化リシン誘導体、またはその組み合わせからなる群から選択される。
別の好ましい例において、前記アルキニルオキシカルボニルリシンの構造は、以下の式Iに示されるようであり、
【化1】
ここで、nは、0~8である。
別の好ましい例において、前記人工tRNAは、阻害遺伝子tRNA、好ましくはアンバー抑制型tRNAである。
別の好ましい例において、前記人工tRNAのコード核酸配列は、SEQ ID NO.:7に示されるようである。
【0033】
GGAAACCTGATCATGTAGATCGAATGGACTCTAAATCCGTTCAGCCGGGTTAGATTCCCGGGGTTTCCGCCA(SEQ ID NO.:7)
【0034】
別の好ましい例において、前記人工tRNAによって識別されるコドンは、UAG(アンバー)、UAA(オーカー)、またはUGA(オパール),好ましくはアンバーのコドンである。
【0035】
別の好ましい例において、前記突然変異タンパク質は、前記人工tRNAを特異的に触媒して、「人工tRNA-Xa」複合体を形成し、ここで、Xaは、アミノアシル基形態の前記所定の修飾アミノ酸である。
別の好ましい例において、前記宿主細胞は、原核細胞または真核細胞,好ましくは大腸菌である。
【0036】
別の好ましい例において、前記標的タンパク質は、インスリン、ヒトインスリン前駆体タンパク質、インスリンリスプロの前駆体タンパク質、インスリングラルギンの前駆体タンパク質、副甲状腺ホルモン、コルチレリン、カルシトニン、ビバリルジン、グルカゴン様ペプチドおよびその誘導体であるエクセナチドとリラグルチド、ソマグルチド、ジコノチド、セモレリン、ソマレリン、セクレチン、テデュグルチド、ヒルジン、成長ホルモン、成長因子、成長ホルモン放出因子、コルチコトロピン、放出因子、デセレリン、デスモプレシン、エクシトニン、グルカゴン、ロイプロリド、黄体形成ホルモン放出ホルモン、ソマトスタチン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン、トリプトレリン、血管作用性腸ペプチド、インターフェロン、副甲状腺ホルモン、BH3ペプチド、アミロイドーシスペプチド、または上記ペプチドのフラグメント、またはその組み合わせからなる群から選択される。
【0037】
本発明の第5の態様は、発現システムを提供し、前記発現システムは、
(a)本発明の第1の態様に記載の突然変異タンパク質、
(b)前記突然変異タンパク質の存在下で所定の修飾アミノ酸に結合できる人工tRNA、および任意選択で
(c)標的タンパク質をコードする、前記人工tRNAによって識別されるコドンを含む第1の核酸配列を含む。
別の好ましい例において、前記第1の核酸配列は、所定の修飾アミノ酸を導入するための位置に前記人工tRNAによって識別されるコドンを含む。
別の好ましい例において、前記発現システムは、
(d)前記所定の修飾アミノ酸をさらに含む。
別の好ましい例において、前記所定の修飾アミノ酸は、修飾基を有するリシンである。
【0038】
別の好ましい例において、前記修飾アミノ酸は、アルキニルオキシカルボニルリシン誘導体、tert―ブトキシカルボニル(BOC)-リシン誘導体、脂肪アシル化リシン誘導体、またはその組み合わせからなる群から選択される。
別の好ましい例において、前記アルキニルオキシカルボニルリシンの構造は、以下の式Iに示されるようであり、
【化2】
ここで、nは、0~8である。
別の好ましい例において、前記人工tRNAは、阻害遺伝子tRNA、好ましくはアンバー抑制型tRNAである。
別の好ましい例において、前記人工tRNAの核酸配列は、SEQ ID NO.:7に示されるようである。
【0039】
別の好ましい例において、前記人工tRNAによって識別されるコドンは、UAG(アンバー)、UAA(オーカー)、またはUGA(オパール)、好ましくはアンバーのコドンである。
別の好ましい例において、前記発現システムは、細胞または細胞抽出液である。
【0040】
別の好ましい例において、前記発現システムは、所定の修飾アミノ酸を標的タンパク質に導入するために、または非天然アミノ酸を含む標的タンパク質を調製するために使用される。
【0041】
本発明の第6の態様は、プラスミドシステムを提供し、前記プラスミドシステムは、下記(1)および(2)を含み、
(1)第1の発現カセット、前記第1の発現カセットは、標的タンパク質をコードする第1のコード配列を含み、前記第1のコード配列は、所定の修飾アミノ酸を導入するためのコドンを含み、前記コドンは、UAG(アンバー)、UAA(オーカー)、またはUGA(オパール)であり、および
【0042】
(2)第2の発現カセット、前記第2の発現カセットは、アミノアシル-tRNAシンテターゼをコードする第2のコード配列を含み、ここで、前記アミノアシル-tRNAシンテターゼは、本発明の第1の態様に記載の突然変異タンパク質であり、
【0043】
また、前記システムは、第3の発現カセットをさらに含み、前記第3の発現カセットは、人工tRNAをコードする第3のコード配列を含み、ここで、前記人工tRNAは、前記コドンに対応するアンチコドンを含み、
【0044】
また、前記アミノアシル-tRNAシンテターゼは、前記人工tRNAを特異的に触媒して、「人工tRNA-Xa」複合体を形成し、ここで、Xaは、アミノアシル基形態の前記所定の修飾アミノ酸である。
別の好ましい例において、前記プラスミドシステムは、単一のプラスミドシステムまたは複数のプラスミドシステムである。
別の好ましい例において、前記複数のプラスミドシステムは、ダブルプラスミドシステム、3プラスミドシステムおよび4プラスミドシステムを含む。
別の好ましい例において、前記コドンは、UAG(アンバー)またはUGA(オパール)である。
別の好ましい例において、前記コドンは、mRNAまたはDNA上のアミノ酸に対応する3塩基ヌクレオチド配列を含む。
別の好ましい例において、前記所定の修飾アミノ酸は、修飾基を有するリシンである。
【0045】
別の好ましい例において、前記修飾アミノ酸は、アルキニルオキシカルボニルリシン誘導体、tert―ブトキシカルボニル(BOC)-リシン誘導体、脂肪アシル化リシン誘導体、またはその組み合わせからなる群から選択される。
別の好ましい例において、前記第1の発現カセット、第2の発現カセットおよび第3の発現カセットは、それぞれ異なるプラスミドに位置する。
【0046】
別の好ましい例において、前記第1の発現カセット、第2の発現カセットおよび第3の発現カセットのうちの任意の二つまたは三つは、同じプラスミドに位置する。
【0047】
別の好ましい例において、前記プラスミドは、pBAD/gIII ABC、pBAD/His ABC、pET28a、pETDuet-1、またはpEvol-pBpFベクターからなる群から選択される発現ベクターである。
【0048】
別の好ましい例において、前記プラスミドは、耐性遺伝子、タグ配列、リプレッサー遺伝子(araC)、プロモーター遺伝子(araBAD)、またはその組み合わせをさらに含む。
【0049】
別の好ましい例において、前記耐性遺伝子は、アンピシリン耐性遺伝子(AmpR)、クロラムフェニコール耐性遺伝子(CmR)、カナマイシン耐性遺伝子(KanaR)、テトラサイクリン耐性遺伝子(TetR)、またはその組み合わせからなる群から選択される。
別の好ましい例において、前記プラスミドシステムは、ダブルプラスミドシステムである。
【0050】
別の好ましい例において、前記第1の発現カセットは、第1のプラスミドに位置し、前記第2の発現カセットは、第2のプラスミドに位置し、前記第3の発現カセットは、第1のプラスミドまたは第2のプラスミドに位置する。
別の好ましい例において、前記第3の発現カセットは、第2のプラスミドに位置する。
【0051】
別の好ましい例において、前記第1のプラスミドは、pBAD-His ABC、pBAD/His ABC、pET28a、pETDuet-1からなる群から選択される発現ベクターである。
【0052】
別の好ましい例において、前記第1のプラスミドは、耐性遺伝子、タグ配列、リプレッサー遺伝子(araC)、プロモーター遺伝子(araBAD)、またはその組み合わせをさらに含む。
別の好ましい例において、前記第2のプラスミドは、pEvol-pBpFベクターである。
【0053】
別の好ましい例において、前記第2のプラスミドは、耐性遺伝子、タグ配列、リプレッサー遺伝子(araC)、プロモーター遺伝子(araBAD)、またはその組み合わせをさらに含む。
別の好ましい例において、プラスミド中の前記第1の発現カセット、第2の発現カセットおよび第3の発現カセットの位置については、いかなる制限はない。
【0054】
別の好ましい例において、前記第1の発現カセット、第2の発現カセットおよび第3の発現カセットのうちの任意の二つまたは三つを一つに組み合わせることができる。
【0055】
別の好ましい例において、前記第1の発現カセット、第2の発現カセットおよび第3の発現カセットのうちの任意の二つの間には、接続配列(例えば、IRES、P2A、T2A等)によって接続されることができる。
【0056】
別の好ましい例において、前記第1の発現カセット、第2の発現カセットおよび/または第3の発現カセットは、プロモーターを含むことができるか、プロモーターを含まないことができる。
【0057】
別の好ましい例において、前記第1の発現カセット、第2の発現カセットおよび/または第3の発現カセットは、一つまたは複数のプロモーターをさらに含み、前記プロモーターは、前記第1のコード配列、前記第2のコード配列、前記第3のコード配列、エンハンサー、転写終結シグナル、ポリアデニル化配列、複製起点、選択性マーカー、核酸制限部位、および/または相同組換え部位に操作可能に連結される。
別の好ましい例において、前記第1の発現カセットは、第1のプロモーターを含み、好ましくは、前記第1のプロモーターは、誘導性プロモーターである。
【0058】
別の好ましい例において、前記第1のプロモーターは、アラビノースプロモーター(araBAD)、ラクトースプロモーター(Plac)、pLacUV5プロモーター、pTacプロモーター、またはその組み合わせからなる群から選択される。
【0059】
別の好ましい例において、前記第1の発現カセットは、5’から-3’までに順次的にプロモーター(例えば、araBAD)、リボソーム結合部位RBS、前記第1のコード配列、ターミネーターまたはタグ配列を含む。
【0060】
別の好ましい例において、前記第2の発現カセットは、第2のプロモーターをさらに含み、好ましくは、前記第2のプロモーターは、誘導性プロモーターである。
【0061】
別の好ましい例において、前記第2のプロモーターは、アラビノースプロモーター(araBAD)、glnSプロモーター、proKプロモーター、またはその組み合わせからなる群から選択される。
【0062】
別の好ましい例において、前記第2の発現カセットは、5’から-3’までに順次的にプロモーター(例えば、araBADまたはglnS)、リボソーム結合部位RBS、前記第2のコード配列和ターミネーター(rrnBまたはglnS T)を含む。
【0063】
別の好ましい例において、前記第3の発現カセットは、第3のプロモーターをさらに含み、好ましくは、前記第3のプロモーターは、構成的プロモーターである。
別の好ましい例において、前記第3のプロモーターは、逆転写プロモーターproKである。
【0064】
別の好ましい例において、前記第3の発現カセットは、5’から-3’までに順次的にプロモーター(如proK)、リボソーム結合部位RBS、第3のコード配列、和ターミネーターまたはタグ配列を含む。
【0065】
本発明の第7の態様は、宿主細胞または細胞抽出液を提供し、前記宿主細胞または細胞抽出液は、本発明の第5の態様に記載の発現システム、または本発明の第6の態様に記載のプラスミドシステムを含む。
別の好ましい例において、前記宿主細胞は、大腸菌、枯草菌、酵母細胞、昆虫細胞、哺乳動物細胞、またはその組み合わせからなる群から選択される。
【0066】
別の好ましい例において、前記細胞抽出液は、大腸菌、枯草菌、酵母細胞、昆虫細胞、哺乳動物細胞、またはその組み合わせからなる群から選択される細胞に由来する。
【0067】
本発明の第8の態様は、
(1)本発明の第4の態様に記載の宿主細胞、または本発明の第5の態様に記載の発現システム、または本発明の第6の態様に記載のプラスミドシステムを提供する段階と、および
【0068】
(2)非天然アミノ酸の存在下で、前記宿主細胞、発現システムまたはプラスミドシステムを使用して標的タンパク質を発現させる段階とを含む、非天然アミノ酸を標的タンパク質に導入さするための、または非天然アミノ酸を含む標的タンパク質を調製するための方法を提供する。
【0069】
別の好ましい例において、前記標的タンパク質は、ヒトインスリン前駆体タンパク質、インスリンリスプロの前駆体タンパク質、インスリングラルギンの前駆体タンパク質、副甲状腺ホルモン、コルチレリン、カルシトニン、ビバリルジン、グルカゴン様ペプチドおよびその誘導体であるエクセナチドとリラグルチド、ジコノチド、セモレリン、ソマレリン、セクレチン、テデュグルチド、ヒルジン、成長ホルモン、成長因子、成長ホルモン放出因子、コルチコトロピン、放出因子、デセレリン、デスモプレシン、エクシトニン、グルカゴン、ロイプロリド、黄体形成ホルモン放出ホルモン、ソマトスタチン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン、トリプトレリン、血管作用性腸ペプチド、インターフェロン、副甲状腺ホルモン、BH3ペプチド、アミロイドーシスペプチド、または上記ペプチドのフラグメント、またはその組み合わせからなる群から選択される。
別の好ましい例において、前記非天然アミノ酸は、修飾基を有するリシンである。
【0070】
別の好ましい例において、前記非天然アミノ酸は、アルキニルオキシカルボニルリシン誘導体、tert―ブトキシカルボニル(BOC)-リシン誘導体、脂肪アシル化リシン誘導体、またはその組み合わせからなる群から選択される。
【0071】
別の好ましい例において、前記方法は、
(1)本発明の第7の態様に記載の宿主細胞または細胞抽出液を提供する段階と、および
(2)非天然アミノ酸の存在下で、前記細胞または細胞抽出液を培養することにより、前記本発明の第1の態様に記載の突然変異タンパク質および人工tRNAペアを介して前記リシン誘導体を前記標的タンパク質に導入する段階とを含む。
【0072】
本発明の第9の態様は、キットを提供し、前記キットは、(a)容器、および(b)前記容器内に位置する本発明の第1の態様に記載の突然変異タンパク質、または本発明の第2の態様に記載のポリヌクレオチド、または本発明の第3の態様に記載のベクター、または本発明の第5の態様に記載の発現システム、または本発明の第6の態様に記載のプラスミドシステムを含む。
別の好ましい例において、前記キットは、細胞抽出液をさらに含む。
別の好ましい例において、前記プラスミドシステムは、複数のプラスミドシステムであり、前記各プラスミドは、同じまたは異なる容器内に位置する。
【0073】
本発明の第10の態様は、
(a)本発明の第1の態様に記載の突然変異タンパク質、
(b)前記突然変異タンパク質の存在下で所定の修飾アミノ酸に結合できる人工tRNA、および
(c)前記所定の修飾アミノ酸を含む、翻訳システムを提供する。
本発明の第11の態様は、非天然アミノ酸を標的タンパク質に混入したり、非天然アミノ酸を含む標的タンパク質を調製したりするために使用される、本発明の第1の態様に記載の突然変異タンパク質、または本発明の第4の態様に記載の宿主細胞、または本発明の第6の態様に記載のプラスミドシステム、または本発明の第9の態様に記載のキットの用途を提供する。
【0074】
本発明の第12の態様は、(i)本発明の第4の態様に記載の宿主細胞を培養して、前記突然変異タンパク質を発現する段階を含む、本発明の第1の態様に記載の突然変異タンパク質を生成するための方法を提供する。
本発明の第13の態様は、酵素製剤を提供し、前記酵素製剤は、本発明の第1の態様に記載の突然変異タンパク質を含む。
別の好ましい例において、前記医薬製剤の剤形は、凍結乾燥製剤、液体製剤、またはその組み合わせを含む。
【発明の効果】
【0075】
本発明の範囲内で、本発明の上記の各技術的特徴と以下(例えば、実施)に具体的に説明される各技術的特徴との間を、互いに組み合わせることにより、新しいまたは好ましい技術的解決策を構成することができることに理解されたい。スペースに限りがあるため、ここでは繰り返さない。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【
図1】pEvol-suppylRs-pylTのプラスミドマップを示す。
【
図2】pEvol-IPYEpylRs-pylTのプラスミドマップを示す。
【
図3】pEvol-optpylRs-pylTのプラスミドマップを示す。
【
図4】pEvol-IPYEpylRs(L274A、C313S、F349Y)-pylTのプラスミドマップを示す。
【
図5】pBAD-araBAD[A1-u4-u5-TEV-R-MiniINS]-glnS[IPYEpylRs]-proK[pylT]のプラスミドマップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0077】
本発明者らは、広範囲にわたる詳細な研究と大量のスクリーニングの後、予想外に突然変異型リシル-tRNAシンテターゼを得た。野生型リシル-tRNAシンテターゼと比較して、本発明の突然変異型リシル-tRNAシンテターゼは、高い活性、高い発現量および高い溶解性を有し、非天然アミノ酸の挿入量および非天然アミノ酸を含む標的タンパク質の発現量を有意に増加させることができる。さらに、本発明の突然変異型リシル-tRNAシンテターゼは、標的タンパク質の安定性を向上させて、容易に破壊されないようにすることができる。これに基づいて、本発明者らは本発明を完成させた。
【0078】
用語
本開示を理解しやすくするために、まず特定の用語を定義する。本発明で使用されるように、本明細書で特に明記されない限り、以下の各用語は、以下に示される意味を有するべきである。発明の全体で他の定義を説明する。
【0079】
「約」という用語は、当業者によって決定される特定の値または構成された許容可能な誤差範囲内の値または構成を指すことができ、これは、値または構成がどのように測量または測定されるかに部分的に依存する。例えば、本明細書に使用されるように、「約100」という表現は、99~101の間のすべての値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4等)を含む。
【0080】
本明細書に使用されるように、「含有」または「包括(含む)」という用語は、開放式、半閉鎖式および閉鎖式であり得る。言い換えれば、前記用語も、「基本的にからなる」、または「からなる」を含む。
【0081】
配列同一性(または相同性)は、所定の比較ウィンドウ(参照ヌクレオチド配列またはタンパク質の長さの50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%であり得る)に沿って二つの整列した配列を比較し、同じ残基が現れる位置の数を決定することによって決定される。一般に、これは、パーセンテージで表す。ヌクレオチド配列の配列同一性の測定は、当業者によく知られている方法である。
本明細書において、「アミノアシル-tRNAシンテターゼ」と「リシル-tRNAシンテターゼ」とは、交換可能に使用される。
【0082】
野生型リシル-tRNAシンテターゼ
本明細書に使用されるように、「野生型リシル-tRNAシンテターゼ」とは、人工的に修飾されていない天然に存在するアミノアシル-tRNAシンテターゼを指し、そのヌクレオチドは、ゲノムシーケンシング、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)等の遺伝子工学技術によって得られることができ、そのアミノ酸配列は、ヌクレオチド配列によって推定されることができる。前記野生型リシル-tRNAシンテターゼの供給源は、特に限定されなく、好ましい供給源は、メタン生成古細菌のメタノサル・シナマゼイ(Methanosarcina mazei)、メタノサル・シナバーケリ(Methanosarcina barkeri)およびメタノサル・シナアセチボランス(Methanosarcina acetivorans)等であり得るが、これらに限定されない。
本発明の好ましい例において、前記野生型リシル-tRNAシンテターゼのアミノ酸配列は、SEQ ID NO.:1に示されるようである。
【0083】
MDKKPLNTLISATGLWMSRTGTIHKIKHHEVSRSKIYIEMACGDHLVVNNSRSSRTARALRHHKYRKTCKRCRVSDEDLNKFLTKANEDQTSVKVKVVSAPTRTKKAMPKSVARAPKPLENTEAAQAQPSGSKFSPAIPVSTQESVSVPASVSTSISSISTGATASALVKGNTNPITSMSAPVQASAPALTKSQTDRLEVLLNPKDEISLNSGKPFRELESELLSRRKKDLQQIYAEERENYLGKLEREITRFFVDRGFLEIKSPILIPLEYIERMGIDNDTELSKQIFRVDKNFCLRPMLAPNLYNYLRKLDRALPDPIKIFEIGPCYRKESDGKEHLEEFTMLNFCQMGSGCTRENLESIITDFLNHLGIDFKIVGDSCMVYGDTLDVMHGDLELSSAVVGPIPLDREWGIDKPWIGAGFGLERLLKVKHDFKNIKRAARSESYYNGISTNL(SEQ ID NO.:1)
本発明の好ましい例において、前記野生型リシル-tRNAシンテターゼのアミノ酸配列は、SEQ ID NO.:2に示されるようである。
【0084】
MDKKPLNTLISATGLWMSRTGTIHKIKHHEVSRSKIYIEMACGDHLVVNNSRSSRTARALRHHKYRKTCKRCRVSDEDLNKFLTKANEDQTSVKVKVVSAPTRTKKAMPKSVARAPKPLENTEAAQAQPSGSKFSPAIPVSTQESVSVPASVSTSISSISTGATASALVKGNTNPITSMSAPVQASAPALTKSQTDRLEVLLNPKDEISLNSGKPFRELESELLSRRKKDLQQIYAEERENYLGKLEREITRFFVDRGFLEIKSPILIPLEYIERMGIDNDTELSKQIFRVDKNFCLRPMLAPNLYNYLRKLDRALPDPIKIFEIGPCYRKESDGKEHLEEFTMLNFCQMGSGCTRENLESIITDFLNHLGIDFKIVGDSCMVYGDTLDVMHGDLELSSAVVGPIPLDREWGIDKPWIGAGFGLERLLKVKHDFKNIKRAARSGSYYNGISTNL(SEQ ID NO.:
【0085】
2)突然変異型リシル-tRNAシンテターゼ
本明細書に使用されるように、「突然変異タンパク質」、「本発明の突然変異タンパク質」、「本発明の突然変異のアミノアシル-tRNAシンテターゼ」、「突然変異型リシル-tRNAシンテターゼ」、「突然変異体酵素」、「アミノアシル-tRNAシンテターゼ的突然変異体」という用語は、交換可能に使用され、すべて天然に存在しない突然変異のアミノアシル-tRNAシンテターゼを指し、前記突然変異のアミノアシル-tRNAシンテターゼは、SEQ ID NO.:1またはSEQ ID NO.:2に示されるポリペプチドに対して人工的に改変されたタンパク質である。具体的には、前記突然変異のアミノアシル-tRNAシンテターゼは、本発明の第1の態様に記載されるようである。
【0086】
本発明の突然変異型リシル-tRNAシンテターゼにおけるアミノ酸番号は、野生型リシル-tRNAシンテターゼ(好ましくは、SEQ ID NO.:1またはSEQ ID NO.:2)に基づくことを理解されたい。具体的な突然変異タンパク質がSEQ ID NO.:1またはSEQ ID NO.:2に示される配列と80%またはそれ以上の相同性を有する場合、突然変異タンパク質のアミノ酸番号は、SEQ ID NO.:1またはSEQ ID NO.:2のアミノ酸番号と比較して誤って配置される可能性があり、例えば、アミノ酸のN末端またはC末端に1~5の位置を移し、当技術分野における従来の配列比較技術を使用し、当業者は、そのような移しが合理的な範囲内にあることを一般に理解することができ、80%(例えば、90%、95%、98%)の相同性を有する、同じまたは類似なグリコシルトランスフェラーゼ活性を有する突然変異タンパク質は、アミノ酸番号の位置移しのために本発明の突然変異タンパク質の範囲から除外されるべきではない。
【0087】
本発明の突然変異タンパク質は、合成タンパク質または組換えタンパク質であり、即ち、化学的に合成された生成物であるか、または組換え技術を使用して原核宿主または真核宿主(例えば、細菌、酵母、植物)から生成されることができる。組換え生産方法で使用される宿主に応じて、本発明の突然変異タンパク質は、グリコシル化されていても、または非グリコシル化されていなくてもよい。本発明の突然変異タンパク質は、開始のメチオニン残基を含み得るか、または含まないことができる。
【0088】
本発明は、前記突然変異タンパク質のフラグメント、誘導体および類似体を含む。本明細書に使用されるように、「フラグメント」、「誘導体」および「類似体」という用語は、前記突然変異タンパク質と同じ生物学的機能または活性を実質的に保持するタンパク質を指す。
【0089】
本発明の突然変異タンパク質フラグメント、誘導体または類似体は、(i)一つまたは複数の保存的または非保存的アミノ酸残基(好ましくは、保存的アミノ酸残基)が置換された突然変異タンパク質、そのような置換アミノ酸残基は、遺伝暗号によってコードされている場合とされていない場合があり、または(ii)一つまたは複数のアミノ酸残基に置換基を有する突然変異タンパク質、または(iii)成熟した突然変異タンパク質と別の化合物(例えば、ポリエチレングリコールなどの突然変異タンパク質の半減期を延長する化合物)との融合によって形成された突然変異タンパク質、または(iv)追加されたアミノ酸配列がこの突然変異タンパク質配列に融合することによって形成された突然変異タンパク質(例えば、リーダー配列または分泌配列またはこの突然変異タンパク質を精製するための配列またはプロタンパク質配列、または抗原IgGフラグメントによって形成された融合タンパク質)であり得る。本明細書の教示によれば、これらのフラグメント、誘導体および類似体は、当業者の範囲内にある。本発明において、保存的置換されたアミノ酸は、好ましくは、表Iによるアミノ酸置換によって生成される。
【表1】
【0090】
PylRSのアミノ酸基質の識別は、触媒的に活性な機能ドメインの三次元構造に関連し、野生型PylRSで活性化できるリシン誘導体のサイズは限られており、大きな官能基を有するリシン誘導体は、タンパク質に導入されることはできず、従って、PylRS部位を突然変異させることにより、基質への結合の立体障害、または突然変異アミノ酸と基質アミノ酸または主鎖部分との相互作用を回避し、効果を向上させる。
好ましくは、前記突然変異タンパク質は、SEQ ID NO.:3~6のいずれか一つに示されるようである。
【0091】
MDKKPLNTLISATGLWMSRTGTIHKIKHHEVSRSKIYIEMACGDHLVVNNSRSSRTARALRHHKYRKTCKRCRVSDEDLNKFLTKANEDQTSVKVKVVSAPRTKKAMPKSVARAPKPLENTEAAQASTQESVSVPASVSTSISSSAPVQASAPALTKSQTDRLEVLLNPKDEISLNSGKPFRELESELLSRRKKDLQQIYAEERENYLGKLEREITRFFVDRGFLEIKSPILIPLEYIERMGIDNDTELSKQIFRVDKNFCLRPMLAPNLYNYLRKLDRALPDPIKIFEIGPCYRKESDGKEHLEEFTMLNFCQMGSGCTRENLESIITDFLNHLGIDFKIVGDSCMVYGDTLDVMHGDLELSSAVVGPIPLDREWGIDKPWIGAGFGLERLLKVKHDFKNIKRAARSESYYNGISTNL(SEQ ID NO.:3)
【0092】
MDKKPLDVLISATGLWMSRTGTLHKIKHHEISRSKIYIEMACGDHLVVNNSRSCRPARAFRYHKYRKTCKRCRVSDEDINNFLTRSTESKNSVKVRVVSEPKVKKAMPKSVSRAPKPLENSVSAKASTNTSRSVPSPAKSTPNSSVPASASAPALTKSQTDRLEVLLNPKDEISLNSGKPFRELESELLSRRKKDLQQIYAEERENYLGKLEREITRFFVDRGFLEIKSPILIPLEYIERMGIDNDTELSKQIFRVDKNFCLRPMLAPNLYNYLRKLDRALPDPIKIFEIGPCYRKESDGKEHLEEFTMLNFCQMGSGCTRENLESIITDFLNHLGIDFKIVGDSCMVFGDTLDVMHGDLELSSAVVGPIPLDREWGIDKPWIGAGFGLERLLKVKHDFKNIKRAARSESYYNGISTNL(SEQ ID NO.:4)
【0093】
MDKKPLDVLISATGLWMSRTGTLHKIKHYEISRSKIYIEMACGDHLVVNNSRSCRPARAFRYHKYRKTCKRCRVSGEDINNFLTRSTEGKTSVKVKVVSEPKVKKAMPKSVSRAPKPLENPVSAKASTDTSRSVPSPAKSTPNSPVPTSASAPALTKSQTDRLEVLLNPKDEISLNSGKPFRELESELLSRRKKDLQQIYAEERENYLGKLEREITRFFVDRGFLEIKSPILIPLEYIERMGIDNDTELSKQIFRVDKNFCLRPMLAPNLYNYLRKLDRALPDPIKIFEIGPCYRKESDGKEHLEEFTMLNFCQMGSGCTRENLESIITDFLNHLGIDFKIVGDSCMVFGDTLDVMHGDLELSSAVVGPIPLDREWGIDKPWIGAGFGLERLLKVKHDFKNIKRAARSESYYNGISTNL(SEQ ID NO.:5)
【0094】
MDKKPLDVLISATGLWMSRTGTLHKIKHHEISRSKIYIEMACGDHLVVNNSRSCRPARAFRYHKYRKTCKRCRVSDEDINNFLTRSTESKNSVKVRVVSEPKVKKAMPKSVSRAPKPLENSVSAKASTNTSRSVPSPAKSTPNSSVPASASAPALTKSQTDRLEVLLNPKDEISLNSGKPFRELESELLSRRKKDLQQIYAEERENYLGKLEREITRFFVDRGFLEIKSPILIPLEYIERMGIDNDTELSKQIFRVDKNFCLRPMLAPNLYNYARKLDRALPDPIKIFEIGPCYRKESDGKEHLEEFTMLNFSQMGSGCTRENLESIITDFLNHLGIDFKIVGDSCMVYGDTLDVMHGDLELSSAVVGPIPLDREWGIDKPWIGAGFGLERLLKVKHDFKNIKRAARSESYYNGISTNL(SEQ ID NO.:6)
【0095】
SEQ ID NO.:1またはSEQ ID NO.:2に示される配列と比較して、本発明の突然変異タンパク質は、一般に高い相同性(一致性)を有し、好ましくは、前記突然変異タンパク質は、SEQ ID NO:1または2に存在する対応する長さのペプチドフラグメントと少なくとも90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する。
【0096】
さらに、本発明の突然変異タンパク質をさらに修飾することができる。修飾(通常は一次構造を変更しない)形態は、アセチル化またはカルボキシル化等、インビボまたはインビトロでの突然変異タンパク質の化学的派生形態を含む。修飾は、例えば、それらが突然変異タンパク質の合成およびプロセシング中、またはさらなるプロセシング段階中にグリコシル化修飾によって生成される突然変異タンパク質等の、グリコシル化をさらに含む。このような修飾は、突然変異タンパク質をグリコシル化された酵素(例えば、哺乳動物のグリコシラーゼまたはデグリコシラーゼ)に曝露することによって達成できる。修飾形態は、リン酸化アミノ酸残基(例えば、リン酸チロシン、リン酸セリン、リン酸スレオニン)を有する配列をさらに含む。修飾されることにより、その抗タンパク質の加水分解性能を向上させるか、または溶解性能を最適化する突然変異タンパク質をさらに含む。
【0097】
「本発明の突然変異タンパク質をコードするポリヌクレオチド」という用語は、本発明の突然変異型リシル-tRNAシンテターゼをコードするポリヌクレオチドを含み得るか、追加のコード配列および/または非コード配列を含み得るポリヌクレオチドであり得る。
【0098】
本発明は、本発明と同じアミノ酸配列を有するポリペプチドまたは突然変異タンパク質のフラグメント、類似体および誘導体をコードする、上記ポリヌクレオチドの変異体に関する。これらのヌクレオチド変異体は、置換変異体、欠失変異体および插入変異体を含む。当技術分野にしれれているように、対立遺伝子変異体は、ポリヌクレオチドの代替形態であり、一つまたは複数のヌクレオチドの置換、欠失または插入であり得るが、それがコードする突然変異タンパク質の機能を実質的に変化させない。
【0099】
本発明は、上記配列とハイブリダイズし、かつ二つの配列の間には少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%の相同性を有するポリヌクレオチドにさらに関する。本発明は、厳密な条件(またはストリンジェントな条件)下で本発明の前記ポリヌクレオチドとハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドに特に関する。本発明において、「厳密な条件」とは、(1)0.2×SSC、0.1%SDS、および60℃等のより低いイオン強度およびより高い温度下でのハイブリダイゼーションおよび溶出、または(2)ハイブリダイズする場合に、50%(v/v)のホルムアミド、0.1%の子牛血清/0.1%フィコール(Ficoll)、42℃等の、変性剤の添加、または(3)二つの配列の間の相同性が少なくとも90%以上、より好ましくは95%以上である場合にのみハイブリダイゼーションが起こる。
【0100】
本発明の突然変異タンパク質およびポリヌクレオチドは、好ましくは、単離された形態で提供され、より好ましくは、均一に精製される。
【0101】
本発明のポリヌクレオチドの全長配列は、一般に、PCR増幅法、組換え法または人工合成法によって得られることができる。PCR増幅法の場合、本発明に開示される関連ヌクレオチド配列、特に開放式リーディングフレーム配列に従って設計することができ、市販のcDNAライブラリーまたは当業者に知られている従来の方法によって調製されたcDNAライブラリーをテンプレートとして、増幅して関連配列を得る。配列が長い場合、常に二つまたは複数のPCR増幅を実行してから、各増幅されたフラグメントを正しい順序でつなぎ合わせる必要があることがよくある。
【0102】
関連する配列を得られたら、組換え法を使用して、関連する配列を大量に得ることができる。これは、通常、それをベクターにクローニングし、細胞に移し、次に従来の方法によって増殖した宿主細胞から関連する配列を単離することによって行われる。
【0103】
さらに、特にフラグメントの長さが短い場合には、人工合成法を使用して関連する配列を合成することもできる。通常、まず複数の小さなフラグメントを合成し、次に連結して非常に長い配列のフラグメントを得る。
【0104】
現在、化学合成によって、本発明のタンパク質(またはそのフラグメント、またはその誘導体)をコードするDNA配列を完全に得ることができる。次に、当該DNA配列を当技術分野に知られている様々な既存のDNA分子(またはベクター等)および細胞に導入することができる。さらに、化学合成を介して突然変異を本発明のタンパク質配列に導入することができる。
【0105】
PCR技術を使用してDNA/RNAを増幅する方法は、好ましくは、本発明のポリヌクレオチドを得るために使用される。特にライブラリーから全長のcDNAを得ることが困難である場合に、好ましくはRACE法(RACE-cDNA末端休息増幅法)を使用されることができ、PCRに使用されるプライマーは、本明細書に開示される本発明の配列情報に従って適切に選択されることができ、従来の方法によって合成されることができる。ゲル電気泳動等の従来の方法で増幅されたDNA/RNAフラグメントを分離および精製することができる。
【0106】
発現ベクター
本明細書に使用されるように、「構築体」または「ベクター」という用語は、一般に、それが連結されている標的タンパク質のコード配列を輸送することができる核酸を指す。ベクターの一つのタイプは、「プラスミド」であり、追加のDNAセグメントを連結できる環状二本鎖DNA環を指す。
【0107】
ベクターは、タンパク質発現を提供するために適切な宿主細胞に形質転換またはトランスフェクトすることができる。当該プロセスは、タンパク質の標的核酸配列をコードするベクターの発現を提供する条件下で、発現ベクターで形質転換された宿主細胞を培養すること、および任意選択で発現されたタンパク質を回収することを含み得る。
【0108】
ベクターは、例えば、複製起点、標的核酸配列を発現するために任意選択で使用されるプロモーター、およびプロモーターの任意選択の調節因子を備えたプラスミドまたはウイルスベクターであり得る。細菌プラスミドの場合、ベクターは、カナマイシン耐性遺伝子等の一つまたは複数の選択可能なマーカー遺伝子を含み得る。
【0109】
本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含むベクター、および本発明のベクターまたは本発明の融合タンパク質コード配列を使用して遺伝子工学によって作成された宿主細胞、および組換え技術を介して本発明の前記ポリペプチドを生成する方法にも関する。
【0110】
従来の組換えDNA技術を通じて、本発明のポリヌクレオチド配列を使用して、組換え突然変異タンパク質を発現または精製することができる。一般的には、
(1)本発明の突然変異タンパク質をコードする本発明のポリヌクレオチド(または変異体)を使用するか、または当該ポリヌクレオチドを含む組換え発現ベクターを使用して、適切な宿主細胞を形質転換または形質導入する段階と、
(2)適切な培地で宿主細胞を培養する段階と、
(3)培地または細胞からタンパク質を分離および精製する段階とを含む。
【0111】
本発明において、突然変異タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、組換え発現ベクターに挿入されることができる。「組換え発現ベクター」という用語は、当技術分野で知られている細菌プラスミド、ファージ、酵母プラスミド、植物細胞ウイルス、アデノウイルス等の哺乳動物細胞ウイルス、レトロウイルスまたは他のベクターを指す。宿主体内で複製および安定化できる限り、任意のプラスミドおよびベクターを使用することができる。発現ベクターの重要な特徴は、通常、複製起点、プロモーター、マーカー遺伝子および翻訳制御要素を含む。
【0112】
当業者に周知の方法はを使用して、本発明の突然変異タンパク質をコードするDNA配列および適切な転写/翻訳制御シグナルを含む発現ベクターを構築することができる。これらの方法は、インビトロ組換えDNA技術、DNA合成技術、インビボ組換え技術等を含む。前記DNA配列は、発現ベクター内の適切なプロモーターに効果的に接続して、mRNA合成をガイドすることができる。これらのプロモーターの代表的な例としては、大腸菌のlacまたはtrpプロモーター、λファージPLプロモーター、真核プロモーター包括CMV最初期プロモーター、HSVチミジンキナーゼプロモーター、初期および後期SV40プロモーター、レトロウイルスのLTRsおよび原核生物または真核生物の細胞またはウイルスにおける遺伝子発現を抑制できる他のいくつかの既知のプロモーターを含む。発現ベクターは、翻訳開始のためのリボソーム結合部位および転写ターミネーターを含む。
【0113】
さらに、発現ベクターは、好ましくは、真核細胞培養用のジヒドロ葉酸レダクターゼ、ネオマイシン耐性および緑色蛍光タンパク質(GFP)、または大腸菌用のテトラサイクリンまたはアンピシリン耐性等の形質転換宿主細胞を選択するための表現型特性を提供する、一つまたは複数の選択可能なマーカー遺伝子を含む。
【0114】
上記の適切なDNA配列および適切なプロモーターまたは制御配列を含むベクターを使用して、タンパク質を発現できるように適切な宿主細胞を形質転換することができる。
【0115】
宿主細胞は、細菌細胞等の原核細胞、または酵母細胞等の下等真核細胞、または哺乳動物細胞等の高等真核細胞であり得る。代表的な例としては、大腸菌、ストレプトマイセス、サルモネラチフィムリウムの細菌細胞、酵母や植物細胞等の真菌細胞(ジンセン細胞等)がある。
【0116】
本発明のポリヌクレオチドが高等真核細胞で発現される場合、ベクターにエンハンサー配列が挿入されると、転写が増強される。エンハンサーは、DNAのシス作用因子であり、通常、約10~300個の塩基対であり、プロモーターに作用して遺伝子の転写を増強する。引用できる例としては、複製開始点の後側にある100~270個の塩基対のSV40エンハンサー、複製開始点の後側にあるポリオーマエンハンサーおよびアデノウイルスエンハンサー等を含む。
当業者は、適切なベクター、プロモーター、エンハンサーおよび宿主細胞を選択する方法を知っている。
【0117】
組換えDNAによる宿主細胞の形質転換は、当業者に周知の従来の技術によって実施することができる。宿主が大腸菌等の原核生物である場合、指数関数的成長期の後にDNAを吸収できるコンピテント細胞を取得することができ、CaCl2法で処理し、使用される段階は当技術分野でよく知られている。別の方法は、MgCl2を使用することである。必要に応じて、形質転換は、エレクトロポレーション法によって行われる。宿主が真核生物である場合、リン酸カルシウム共沈法、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、リポソーム包装等のDNAトランスフェクション法を選択することができる。
【0118】
得られた形質転換体を従来の方法で培養し、本発明の遺伝子がコードするポリペプチドを発現させることができる。使用される宿主細胞に応じて、培養に使用される培地は、様々な従来の培地から選択することができる。宿主細胞の増殖に適した条件下で培養を実施する。宿主細胞が適切な細胞密度まで増殖した後、適切な方法(例えば、温度変換または化学的誘導)によって選択されたプロモーターを誘導し、細胞を一定期間培養する。
【0119】
上記の方法における組換えポリペプチドは、細胞内または細胞膜上で発現され得るか、または細胞外に分泌され得る。必要に応じて、物理的、化学的およびその他の特性を使用して、様々な分離方法で組換えタンパク質を分離および生成することができる。これらの方法は、当業者によく知られている。これらの方法の例としては、従来の再生処理、タンパク質沈殿剤による処理(塩析法)、遠心分離、浸透圧滅菌、超処理、超遠心分離、分子ふるいクロマトグラフィー(ゲルろ過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および他の様々な液体クロマトグラフィー技術ならびにこれらの方法の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
「操作可能に連結」という用語は、転写および発現される標的遺伝子が、発現される当技術分野における従来の方法でその制御配列に連結されることを指す。
【0120】
プラスミドシステム
本発明は、本発明の第6の態様に記載されるようなプラスミドシステムを提供する。具体的には、前記プラスミドシステムは、下記(1)および(2)を含み、
(1)第1の発現カセット、前記第1の発現カセットは、標的タンパク質をコードする第1のコード配列を含み、前記第1のコード配列は、所定の修飾アミノ酸を導入するためのコドンを含み、前記コドンは、UAG(アンバー)、UAA(オーカー)、またはUGA(オパール)であり、および
【0121】
(2)第2の発現カセット、前記第2の発現カセットは、アミノアシル-tRNAシンテターゼをコードする第2のコード配列を含み、ここで、前記アミノアシル-tRNAシンテターゼは、本発明の第1の態様に記載の突然変異タンパク質であり、
【0122】
また、前記システムは、第3の発現カセットをさらに含み、前記第3の発現カセットは、人工tRNAをコードする第3のコード配列を含み、ここで、前記人工tRNAは、前記コドンに対応するアンチコドンを含み、
【0123】
また、前記アミノアシル-tRNAシンテターゼは、前記人工tRNAを特異的に触媒して、「人工tRNA-Xa」複合体を形成し、ここで、Xaは、アミノアシル基形態の前記所定の修飾アミノ酸である。
別の好ましい例において、前記プラスミドシステムは、単一のプラスミドシステムまたは複数のプラスミドシステムである。
別の好ましい例において、前記複数のプラスミドシステムは、ダブルプラスミドシステム、3プラスミドシステムおよび4プラスミドシステムを含む。
別の好ましい例において、前記第1の発現カセット、第2の発現カセットおよび第3の発現カセットは、それぞれ異なるプラスミドに位置する。
【0124】
別の好ましい例において、前記第1の発現カセット、第2の発現カセットおよび第3の発現カセットのうちの任意の二つまたは三つは、同じプラスミドに位置する。
【0125】
別の好ましい例において、前記プラスミドは、:pBAD/gIII ABC、pBAD/His ABC、pET28a、pETDuet-1、またはpEvol-pBpFベクターからなる群から選択される発現ベクターである。
【0126】
別の好ましい例において、前記プラスミドは、耐性遺伝子、タグ配列、リプレッサー遺伝子(araC)、プロモーター遺伝子(araBAD)、またはその組み合わせをさらに含む。
【0127】
別の好ましい例において、前記耐性遺伝子は、アンピシリン耐性遺伝子(AmpR)、クロラムフェニコール耐性遺伝子(CmR)、カナマイシン耐性遺伝子(KanaR)、テトラサイクリン耐性遺伝子(TetR)、またはその組み合わせからなる群から選択される。
別の好ましい例において、前記プロモーターglnSのDNA配列は、SEQ ID NO.:10に示されるようである。
【0128】
TTTTAAAAAACTAACAGTTGTCAGCCTGTCCCGCTTTAATATCATACGCCGTTATACGTTGTTTACGCTTTG(SEQ ID NO.:10)
別の好ましい例において、前記ターミネーターglnS TのDNA配列は、SEQ ID NO.:11に示されるようである。
CAAACAATCCAAAACGCCGCGTTCAGCGGCGTTTTTTCTGCTTTT(SEQ ID NO.:11)
別の好ましい例において、前記プロモーターproKのDNA配列は、SEQ ID NO.:12に示されるようである。
【0129】
TGTGCTTCTCAAATGCCTGAGGCCAGTTTGCTCAGGCTCTCCCCGTGGAGGTAATAATTGACGATATGATCAGTGCACGGCTAACTAAGCGGCCTGCTGACTTTCTCGCCGATCAAAAGGCATTTTGCTATTAAGGGATTGACGAGGGCGT(SEQ ID NO.:12)
別の好ましい例において、前記ターミネーターproK TのDNA配列は、SEQ ID NO.:13に示されるようである。
AATTCGAAAAGCCTGCTCAACGAGCAGGCTTTTTTGCATG(SEQ ID NO.:13)
【0130】
従来技術と比較して、本発明は主に以下の利点を有する。
大量のスクリーニングおよび改変の後、本発明は、野生型アミノアシル-tRNAシンテターゼ(例えば、SEQ ID NO.:1または2)に対応する位置10、128~140および159~179のアミノ酸残基が欠失され、得られた切り離した突然変異型アミノアシル-tRNAシンテターゼ(例えば、SEQ ID NO.:3)は、大きな官能基を有するリシン誘導体をタンパク質に導入できるだけでなく、また、酵素活性が有意に向上させ、発現量が高く、溶解性が良好であり、非天然アミノ酸の挿入量および非天然アミノ酸を含む標的タンパク質の発現量を有意に増加させることができることを初めて発見した。
さらに、本発明の突然変異型リシル-tRNAシンテターゼは、標的タンパク質の安定性を向上させて、容易に破壊されないようにすることができる。
【0131】
本発明は、切り離した突然変異型アミノアシル-tRNAシンテターゼの他の部位を突然変異して、得られた突然変異タンパク質(例えば、SEQ ID NO.:4~6)は、非天然アミノ酸の挿入量、非天然アミノ酸を含む標的タンパク質の量および/または標的タンパク質の安定性をさらに向上させることができる。
【0132】
以下、本発明は、具体的実施と併せてされに説明される。これらの実施は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。以下の実施において、具体的条件を示さない実験方法は、通常、例えば、Sambrookら、分子クローニング:実験マニュアル(New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989)に記載される条件等の従来の条件、またはメーカーによって提案された条件に従う。特に明記されない限り、パーセンテージおよび部数は、重量パーセンテージおよび重量部数で計算される。
特に明記されない限り、本発明の実施の試薬および材料は、すべて市販の製品である。
【0133】
実施例1.突然変異体の構築
野生型リシル-tRNAシンテターゼpylRsのアミノ酸配列1(SEQ ID NO.:1)に従って、大腸菌のコドン優先度に従って、pylRsのDNA配列(SEQ ID NO.:8)を合成し、発現ベクタープラスミドpEvol-pBpF(NTCC会社から購入し、クロラムフェニコール耐性)のaraBADプロモーター下流のSpeI-SalI部位にクローン化し、ここで、SpeI制限部位は、PCR法によって増加され、SalI部位は、ベクター自体によって所有される。発現ベクタープラスミドpEvol-pBpFの元のグルタミンプロモーターglnSを保持する。発現ベクタープラスミドpEvol-pBpFのproKプロモーターの下流に、PCR法により非天然tRNA(pylT)のDNA配列(SEQ ID NO.:7)を挿入する。
【0134】
GGAAACCTGATCATGTAGATCGAATGGACTCTAAATCCGTTCAGCCGGGTTAGATTCCCGGGGTTTCCGCCA(SEQ ID NO.:7)
【0135】
pylRsのDNA配列(SEQ ID NO.:8)1365bp
ATGGATAAGAAACCGCTGAATACTCTGATTTCTGCAACTGGTCTGTGGATGAGCCGTACCGGCACCATCCACAAGATCAAACACCACGAGGTTTCCCGTAGCAAAATCTACATCGAAATGGCGTGCGGTGACCACCTGGTGGTAAACAACTCCCGTTCTTCTCGTACTGCACGTGCTCTGCGCCACCACAAGTACCGTAAGACCTGCAAGCGCTGTCGCGTGTCTGATGAAGACCTGAACAAATTCCTGACTAAAGCGAACGAAGATCAGACTTCTGTGAAGGTGAAAGTTGTTTCTGCCCCAACCCGCACCAAGAAAGCGATGCCGAAGTCCGTTGCACGCGCTCCGAAACCGCTGGAGAACACCGAAGCCGCACAGGCCCAGCCGTCTGGTTCTAAGTTTTCTCCGGCAATCCCGGTTTCTACTCAGGAGTCTGTGTCTGTGCCAGCTTCTGTTAGCACTTCTATTTCCTCTATCAGCACTGGTGCGACTGCGTCCGCTCTGGTAAAAGGTAACACTAACCCGATCACCAGCATGTCTGCTCCGGTTCAGGCTTCTGCACCGGCACTGACTAAAAGCCAGACTGACCGTCTGGAGGTTCTGCTGAACCCGAAAGATGAAATCAGCCTGAACTCTGGCAAACCGTTCCGTGAACTGGAATCCGAACTGCTGTCTCGTCGTAAGAAAGACCTGCAACAAATCTATGCTGAAGAGCGTGAAAACTACCTGGGTAAACTGGAACGTGAAATCACCCGTTTCTTTGTGGACCGTGGTTTCCTGGAAATCAAGTCTCCGATCCTGATCCCGCTGGAATACATCGAGCGCATGGGTATTGATAACGACACCGAACTGTCCAAGCAGATTTTCCGTGTGGACAAGAACTTCTGCCTGCGTCCGATGCTGGCACCGAACCTGTACAATTACCTGCGTAAACTGGATCGTGCACTGCCGGACCCGATCAAAATCTTTGAAATCGGTCCATGCTATCGTAAGGAGAGCGACGGTAAAGAACACCTGGAAGAGTTCACTATGCTGAACTTTTGTCAGATGGGTTCTGGCTGCACCCGTGAAAATCTGGAATCTATCATCACCGACTTCCTGAACCACCTGGGCATTGACTTCAAAATCGTTGGTGATTCCTGCATGGTTTACGGTGACACTCTGGACGTTATGCATGGTGATCTGGAACTGAGCAGCGCTGTTGTGGGTCCGATTCCGCTGGATCGTGAATGGGGTATCGATAAACCGTGGATTGGTGCTGGCTTCGGTCTGGAACGTCTGCTGAAAGTTAAGCACGACTTTAAGAACATCAAACGTGCTGCGCGTTCCGAGTCCTATTACAACGGCATTAGCACTAACCTGTAA(SEQ ID NO.:8)
【0136】
限制性エンドヌクレアーゼSpeIおよびSalIでクローニングベクターから配列を切り出し、同時にSpeIおよびSalIでプラスミドpEvol-pylRs-pylTを切り出し(標的DNAフラグメントは、そのうちの4.3kbの大きいフラグメントである)、核酸電気泳動で分離し、アガロースゲルDNA回収キットで抽出し、T4 DNA Ligaseで連結し、大型E.coli Top10コンピテント細胞を化学法(CaCl2法)で形質転換し、前記形質転換された細胞をクロラムフェニコールを含むLB寒天培地(10g/L酵母ペプトン、5g/L酵母エキス粉末、10g/LNaCl、1.5%寒天)で37℃で一晩培養する。単一の生きたコロニーを選択し、クロラムフェニコールを含む液体LB培地(10g/L酵母ペプトン、5g/L酵母エキス粉末、10g/LNaCl)で37℃、220rpmで一晩培養する。少量のプラスミド抽出キットでプラスミドを抽出し、当該プラスミドは、pEvol-pylRs-pylTと名付けられる。
【0137】
野生型リシル-tRNAシンテターゼpylRsのアミノ酸配列(SEQ ID NO.:1)に従って、元の3セグメントの配列(即ち、102T、128Q~140V、159I~179M、合計35のアミノ酸)をノックアウトする。シンテターゼsuppylRsのアミノ酸配列(SEQ ID NO.:3)が得られ、当該プラスミドは、pEvol-suppylRs-pylTと名付けられ、プラスミドマップは、
図1を参照する。
【0138】
野生型リシル-tRNAシンテターゼpylRsのアミノ酸配列(SEQ ID NO.:1)に従って、第1~184のアミノ酸の全体を、別の149個のアミノ酸に置き換え、ここで、同様に、野生型リシル-tRNAシンテターゼpylRsをノックアウトした上記プラスミドpEvol-suppylRs-pylTの3フラグメントのアミノ酸配列(即ち、102T、128Q~140V、159I~179M、合計35個のアミノ酸)をノックアウトする。シンテターゼIPYEpylRsのアミノ酸配列(SEQ ID NO.:4)が得られ、大腸菌のコドン優先度に従って、IPYEpylRsのDNA配列(SEQ ID NO.:9)を合成する。当該プラスミドは、pEvol-IPYEpylRs-pylTと名付けられ、プラスミドマップは、
図2を参照する。
【0139】
IPYEpylRsのDNA配列(SEQ ID NO.:9)1260bp
ATGGATAAGAAGCCACTGGATGTTCTGATTTCCGCTACTGGTCTGTGGATGTCTCGCACTGGTACTCTGCACAAGATCAAACACCACGAAATCTCTCGCTCCAAGATCTACATTGAAATGGCTTGTGGTGATCACCTGGTTGTTAACAACTCCCGCTCTTGTCGCCCGGCTCGTGCGTTTCGCTATCACAAATATCGTAAAACCTGCAAACGCTGCCGCGTGAGCGATGAGGATATTAACAACTTCCTGACTCGCTCCACCGAGAGCAAGAACTCTGTGAAAGTTCGCGTAGTTTCTGAACCGAAAGTTAAGAAAGCTATGCCGAAGTCTGTTAGCCGTGCTCCGAAACCGCTGGAGAACTCTGTGTCCGCGAAAGCGAGCACCAACACCAGCCGTTCTGTTCCGTCTCCAGCGAAATCTACTCCGAACTCTAGCGTGCCAGCTTCCGCTTCTGCACCGGCACTGACTAAAAGCCAGACTGACCGTCTGGAGGTTCTGCTGAACCCGAAAGATGAAATCAGCCTGAACTCTGGCAAACCGTTCCGTGAACTGGAATCCGAACTGCTGTCTCGTCGTAAGAAAGACCTGCAACAAATCTATGCTGAAGAGCGTGAAAACTACCTGGGTAAACTGGAACGTGAAATCACCCGTTTCTTTGTGGACCGTGGTTTCCTGGAAATCAAGTCTCCGATCCTGATCCCGCTGGAATACATCGAGCGCATGGGTATTGATAACGACACCGAACTGTCCAAGCAGATTTTCCGTGTGGACAAGAACTTCTGCCTGCGTCCGATGCTGGCACCGAACCTGTACAATTACCTGCGTAAACTGGATCGTGCACTGCCGGACCCGATCAAAATCTTTGAAATCGGTCCATGCTATCGTAAGGAGAGCGACGGTAAAGAACACCTGGAAGAGTTCACTATGCTGAACTTTTGTCAGATGGGTTCTGGCTGCACCCGTGAAAATCTGGAATCTATCATCACCGACTTCCTGAACCACCTGGGCATTGACTTCAAAATCGTTGGTGATTCCTGCATGGTTTTCGGTGACACTCTGGACGTTATGCATGGTGATCTGGAACTGAGCAGCGCTGTTGTGGGTCCGATTCCGCTGGATCGTGAATGGGGTATCGATAAACCGTGGATTGGTGCTGGCTTCGGTCTGGAACGTCTGCTGAAAGTTAAGCACGACTTTAAGAACATCAAACGTGCTGCGCGTTCCGAGTCCTATTACAACGGCATTAGCACTAACCTGTAA(SEQ ID NO.:9)
【0140】
突然変異型リシル-tRNAシンテターゼIPYEpylRsのアミノ酸配列(SEQ ID NO.:4)に従って、突然変異H29Y、D76G、D89G、N91T、R96K、D121P、N129D、S145P、A148Tを導入し、SEQ ID NO.:5に示されるようなアミノ酸配列の突然変異型リシル-tRNAシンテターゼoptpylRsを得る。当該プラスミドは、pEvol-optpylRs-pylTと名付けられ、プラスミドマップは、
図3を参照する。
【0141】
突然変異型リシル-tRNAシンテターゼIPYEpylRsのアミノ酸配列(SEQ ID NO.:4)に従って、突然変異L274A、C313S、F349Yを導入し、SEQ ID NO.:6に示されるようなアミノ酸配列の突然変異型リシル-tRNAシンテターゼIPYEpylRs(L274A、C313S、F349Y)を得る。当該プラスミドは、pEvol-IPYEpylRs(L274A、C313S、F349Y)-pylTと名付けられ、プラスミドマップは、
図4を参照する。
【0142】
実施例2.単一プラスミド突然変異体発現株の構築
突然変異型リシル-tRNAシンテターゼIPYEpylRsのアミノ酸配列(SEQ ID NO.:4)に従って、非天然tRNA(pylT)のDNA配列(SEQ ID NO.:7)に従って、pEvol-pBpFベクターのグルタミンプロモーターglnSとプロモーターproKおよびその対応するターミネーターに由来するDNA配列(SEQ ID NO.:10~13)に従って、大腸菌のコドン優先度に従って、glnS[pylRs]-proK[pylT]のDNA配列(SEQ ID NO.:14)を合成し、プラスミドpBAD-A1-u4-u5-TEV-R-MiniINS(プラスミドは、当社が構築し、カナ耐性)、ターミネーターrrnB下流のAvrII-XbaI部位にクローンし,ここで、AvrIIおよびXbaI制限部位は、PCR法によって増加される。
【0143】
glnS[pylRs]-proK[pylT]のDNA配列:(SEQ ID NO.:14)
TTTTAAAAAACTAACAGTTGTCAGCCTGTCCCGCTTTAATATCATACGCCGTTATACGTTGTTTACGCTTTGAGGAATCCCATATGGATAAGAAACCGCTGAATACTCTGATTTCTGCAACTGGTCTGTGGATGAGCCGTACCGGCACCATCCACAAGATCAAACACCACGAGGTTTCCCGTAGCAAAATCTACATCGAAATGGCGTGCGGTGACCACCTGGTGGTAAACAACTCCCGTTCTTCTCGTACTGCACGTGCTCTGCGCCACCACAAGTACCGTAAGACCTGCAAGCGCTGTCGCGTGTCTGATGAAGACCTGAACAAATTCCTGACTAAAGCGAACGAAGATCAGACTTCTGTGAAGGTGAAAGTTGTTTCTGCCCCAACCCGCACCAAGAAAGCGATGCCGAAGTCCGTTGCACGCGCTCCGAAACCGCTGGAGAACACCGAAGCCGCACAGGCCCAGCCGTCTGGTTCTAAGTTTTCTCCGGCAATCCCGGTTTCTACTCAGGAGTCTGTGTCTGTGCCAGCTTCTGTTAGCACTTCTATTTCCTCTATCAGCACTGGTGCGACTGCGTCCGCTCTGGTAAAAGGTAACACTAACCCGATCACCAGCATGTCTGCTCCGGTTCAGGCTTCTGCACCGGCACTGACTAAAAGCCAGACTGACCGTCTGGAGGTTCTGCTGAACCCGAAAGATGAAATCAGCCTGAACTCTGGCAAACCGTTCCGTGAACTGGAATCCGAACTGCTGTCTCGTCGTAAGAAAGACCTGCAACAAATCTATGCTGAAGAGCGTGAAAACTACCTGGGTAAACTGGAACGTGAAATCACCCGTTTCTTTGTGGACCGTGGTTTCCTGGAAATCAAGTCTCCGATCCTGATCCCGCTGGAATACATCGAGCGCATGGGTATTGATAACGACACCGAACTGTCCAAGCAGATTTTCCGTGTGGACAAGAACTTCTGCCTGCGTCCGATGCTGGCACCGAACCTGTACAATTACCTGCGTAAACTGGATCGTGCACTGCCGGACCCGATCAAAATCTTTGAAATCGGTCCATGCTATCGTAAGGAGAGCGACGGTAAAGAACACCTGGAAGAGTTCACTATGCTGAACTTTTGTCAGATGGGTTCTGGCTGCACCCGTGAAAATCTGGAATCTATCATCACCGACTTCCTGAACCACCTGGGCATTGACTTCAAAATCGTTGGTGATTCCTGCATGGTTTACGGTGACACTCTGGACGTTATGCATGGTGATCTGGAACTGAGCAGCGCTGTTGTGGGTCCGATTCCGCTGGATCGTGAATGGGGTATCGATAAACCGTGGATTGGTGCTGGCTTCGGTCTGGAACGTCTGCTGAAAGTTAAGCACGACTTTAAGAACATCAAACGTGCTGCGCGTTCCGAGTCCTATTACAACGGCATTAGCACTAACCTGTAAGTCGACCAAACAATCCAAAACGCCGCGTTCAGCGGCGTTTTTTCTGCTTTTGCGGCCGCTGTGCTTCTCAAATGCCTGAGGCCAGTTTGCTCAGGCTCTCCCCGTGGAGGTAATAATTGACGATATGATCAGTGCACGGCTAACTAAGCGGCCTGCTGACTTTCTCGCCGATCAAAAGGCATTTTGCTATTAAGGGATTGACGAGGGCGTATCTGCGCAGTAAGATGCGCCCCGCATTGGAAACCTGATCATGTAGATCGAATGGACTCTAAATCCGTTCAGCCGGGTTAGATTCCCGGGGTTTCCGCCAAATTCGAAAAGCCTGCTCAACGAGCAGGCTTTTTTGCATG(SEQ ID NO.:14)
【0144】
限制性エンドヌクレアーゼAvrIIおよびXbaIでクローニングベクターpUC57-glnS[pylRs]-proK[pylT]からSEQ ID NO.:14に示される配列を切り出し、同時に、AvrIIおよびXbaIでプラスミドpBAD-A1-u4-u5-TEV-R-MiniINSを切り出し、核酸電気泳動で分離し、アガロースゲルDNA回収キットで抽出し、T4 DNA Ligaseで連結し、化学法(CaCl
2法)でE.coli Top10コンピテント細胞に形質転換し、カナマイシンを含むLB寒天培地(10g/L酵母ペプトン、5g/L酵母エキス粉末、10g/LNaCl、1.5%寒天)で前記形質転換された細胞を37℃で一晩培養する。単一の生きたコロニーを選択し、カナマイシンを含む液体LB培地(10g/L酵母ペプトン、5g/L酵母エキス粉末、10g/LNaCl)で37℃、220rpmで一晩培養する。最終濃度が20%であるグリセロールを加えて菌株を保存する。少量のプラスミド抽出キットでプラスミドを抽出し、得られた野生型リシル-tRNAシンテターゼを含むプラスミドは、pBAD-araBAD[A1-u4-u5-TEV-R-MiniINS]-glnS[IPYEpylRs]-proK[pylT]と名付けられる。プラスミドマップは、
図5を参照する。
【0145】
実施例3.ダブルプラスミド発現株の構築およびtert―ブトキシカルボニル(Boc)修飾融合タンパク質の高密度発現
プラスミドpEvol-pylRs-pylT、プラスミドpEvol-suppylRs-pylT、プラスミドpEvol-IPYEpylRs-pylT、プラスミドpEvol-optpylRs-pylTおよびプラスミドpEvol-IPYEpylRs(L274A、C313S、F349Y)-pylTは、それぞれインスリン融合タンパク質発現ベクターpBAD-INS(プラスミドは、当社が構築し、カナ耐性)と化学法(CaCl2法)でE.coli Top10コンピテント細胞(コンピテント細胞は、Thermo会社から購入する)に共形質転換され、25μg/mLカナマイシンおよび17μg/mLクロラムフェニコールを含むLB寒天培地(10g/L酵母ペプトン、5g/L酵母エキス粉末、10g/LNaCl、1.5%寒天)で前記形質転換された細胞を37℃で一晩培養する。単一の生きたコロニーを選択し、25μg/mLカナマイシンおよび17μg/mLクロラムフェニコールを含む液体LB培地(10g/L酵母ペプトン、5g/L酵母エキス粉末、10g/LNaCl)で37℃、220rpmで一晩培養する。最終濃度が20%であるグリセロールを加えて菌株を保存する。
【0146】
各菌株を液体LB培地に接種して37℃、220rpmで一晩培養し、タンク発酵培地(12g/L酵母ペプトン、24g/L酵母エキス粉末、4mL/Lグリセロール、12.8g/Lリン酸水素二ナトリウム、3g/Lリン酸二水素カリウム、0.3‰消泡剤)に1%(v/v)を接種し、35(±3)℃、200~1000rpm、空気流量2~6L/分の条件下で培養する。3~10時間培養した後、グリセロールおよび酵母ペプトンを含む補助培地を段階的に供給し、発酵が終了するまで続ける。OD600が25~80に達するまで培養した際に、最終濃度が0.25%であるL-araおよび最終濃度が5mMであるBoc-Lysを加えて誘導する。OD600が180~220に達するまでに培養を続け、タンクから放出する。次に遠心分離(5000rpm、30分、25℃)によって収集される。SDS-ポリアクリルアミド電気泳動を使用して、各菌株の全細胞におけるBoc修飾リシンを含む融合タンパク質の発現状況を検出する。
【0147】
融合タンパク質は、不溶性の「封入体」形態で発現される。封入体を放出するために、高圧ホモジナイザーで大腸菌細胞を破壊する。10000gでの遠心分離法で核酸、細胞破片および可溶性タンパク質を除去する。純水で融合タンパク質を含む封入体を洗浄し、得られた封入体沈殿物をフォールディングの原材料として使用する。
異なる突然変異酵素の融合タンパク質の発現量は、次の表に示される。
【表2】
【0148】
融合タンパク質をリフォールディングするために、封入体を2~10mMのメルカプトエタノールを含むpH 10.5の7.5M尿素溶液に溶解して、溶解後総タンパク質の濃度が10~25mg/mLになるようにする。サンプルを5~10倍に希釈し、4~8℃、pHが10.5~11.7である条件下で、従来のフォールディングを16~30時間行う。18~25℃下で、pH値を8.0~9.5に維持し、トリプシンおよびカルボキシペプチダーゼBで融合タンパク質を10~20時間酵素加水分解し、次に0.45M硫酸アンモニウムを加えて酵素加水分解反応を停止させる。逆相HPLC分析の結果は、当該酵素加水分解の段階の収率が90%より高いことを示す。トリプシンおよびカルボキシペプチダーゼBで酵素加水分解後に得られたインスリン類似体は、BOC-リシンインスリンと名付けられる。Boc-リシンインスリンは、上記条件下で酵素加水分解されない。膜ろ過でサンプルを清澄化し、0.45mM硫酸アンモニウムを緩衝液として使用し、疎水性クロマトグラフィーで初めて精製したところ、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動の純度は、90%に達する。また、得られたBoc-ヒトインスリンをMALDI-TOF質量分析により分析したところ、その分子量が理論5907.7Daと一致しているという結果が検出された。疎水性クロマトグラフィーで溶出してサンプルを収集し、塩酸を加えてBoc-ヒトインスリン脱保護反応を行い。水酸化ナトリウム溶液を加えてpHを2.8~3.2に制御して、反応を停止させ、2段階の高圧逆相クロマトグラフィーをさらに行ったところ、組換えヒトインスリンの収率は、85%を超える。
異なる突然変異酵素の組換えヒトインスリンの発現量は、次の表に示される。
【表3】
【0149】
結果は、本発明の突然変異酵素を使用してBoc-リシンを含む標的タンパク質を調製することは、非天然アミノ酸の挿入量および非天然アミノ酸を含む標的タンパク質の量を有意に増加させることができることを示す。
【0150】
実施例4.ダブルプラスミド発現株の構築およびブチニルオキシカルボニル基修飾融合タンパク質の高密度発現
プラスミドpEvol-pylRs-pylT、プラスミドpEvol-IPYEpylRs-pylT、プラスミドpEvol-optpylRs-pylTおよびプラスミドpEvol-IPYEpylRs(L274A、C313S、F349Y)-pylTは、それぞれインスリン融合タンパク質発現ベクターpBAD-INS(プラスミドは、当社が構築し、カナ耐性)と化学法(CaCl2法)で大きいE.coli Top10コンピテント細胞(コンピテント細胞は、Thermo会社から購入する)に共形質転換され、25μg/mLカナマイシンおよび17μg/mLクロラムフェニコールを含むLB寒天培地(10g/L酵母ペプトン、5g/L酵母エキス粉末、10g/LNaCl、1.5%寒天)で前記形質転換された細胞を37℃で一晩培養する。単一の生きたコロニーを選択し、25μg/mLカナマイシンおよび17μg/mLクロラムフェニコールを含む液体LB培地(10g/L酵母ペプトン、5g/L酵母エキス粉末、10g/LNaCl)で37℃、220rpmで一晩培養する。最終濃度が20%であるグリセロールを加えて菌株を保存する。
【0151】
各菌株を液体LB培地に接種して37℃、220rpmで一晩培養し、タンク発酵培地(12g/L酵母ペプトン、24g/L酵母エキス粉末、4mL/Lグリセロール、12.8g/Lリン酸水素二ナトリウム、3g/Lリン酸二水素カリウム、0.3‰消泡剤)に1%(v/v)を接種し、35(±3)℃、200~1000rpm、空気流量2~6L/分の条件下で培養する。3~10時間培養した後、グリセロールおよび酵母ペプトンを含む補助培地を段階的に供給し、発酵が終了するまで続ける。OD
600が25~80に達するまで培養した際に、最終濃度が0.25%であるL-araおよび最終濃度が5mMであるブチニルオキシカルボニル-Lysを加えて誘導する。OD
600が180~220に達するまでに培養を続け、タンクから放出する。次に遠心分離(5000rpm、30分、25℃)によって収集される。SDS-ポリアクリルアミド電気泳動を使用して、各菌株の全細胞におけるブチニルオキシカルボニル基修飾リシンを含む融合タンパク質の発現状況を検出する。
【表4】
【0152】
融合タンパク質は、不溶性の「封入体」形態で発現される。封入体を放出するために、高圧ホモジナイザーで大腸菌細胞を破壊する。10000gでの遠心分離法で核酸、細胞破片および溶解性タンパク質を除去する。純水で融合タンパク質を含む封入体を洗滌し、得られた封入体沈殿物をフォールディングの原材料として使用する。融合タンパク質をリフォールディングするために、封入体を2~10mMのメルカプトエタノールを含むpH 10.5の7.5M尿素溶液に溶解して、溶解後総タンパク質の濃度が10~25mg/mLになるようにする。サンプルを5~10倍に希釈し、4~8℃、pHが10.5~11.7である条件下で、従来のフォールディングを16~30時間行う。18~25℃下で、pH値を8.0~9.5に維持し、トリプシンおよびカルボキシペプチダーゼBで融合タンパク質を10~20時間酵素加水分解し、次に0.45M硫酸アンモニウムを加えて酵素加水分解を停止させる。逆相HPLC分析の結果は、当該酵素加水分解の段階の収率は、90%より高いことを示す。トリプシンおよびカルボキシペプチダーゼBで酵素加水分解後に得られたインスリン類似体は、ブチニルオキシカルボニル-リシンインスリンと名付けられる。ブチニルオキシカルボニル-リシンインスリンは、上記条件下で酵素加水分解されない。膜ろ過でサンプルを清澄化し、0.45mM硫酸アンモニウムを緩衝液として使用し、疎水性クロマトグラフィーで初めて精製したところ、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動の純度は、90%に達する。また、得られたブチニルオキシカルボニル-ヒトインスリンをMALDI-TOF質量分析により、その分子量が理論分子量5907.7Daと一致しているという結果が検出された。
【表5】
【0153】
結果は、本発明の突然変異酵素を使用してブチニルオキシカルボニル基修飾を含む標的タンパク質を調製することは、非天然アミノ酸の挿入量および非天然アミノ酸を含む標的タンパク質の量を有意に増加させることができることを示す。
【0154】
本発明で言及されたすべての文書は、あたかも各文書が個別に参照として引用されたかのように、本出願における参照として引用される。さらに、本発明の上記の教示内容を読んだ後、当業者は本発明に様々な変更または修正を加えることができ、これらの同等の形態も、本出願の添付の請求範囲によって定義される範囲に含まれる。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2021-12-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノアシル-tRNAシンテターゼの突然変異タンパク質であって、
前記突然変異タンパク質は、野生型アミノアシル-tRNAシンテターゼのアミノ酸配列に対応する位置102、128~140および159~179のアミノ酸残基からなる群から選択される一つまたは複数の部位で欠失されることを特徴とする、前記突然変異タンパク質。
【請求項2】
野生型アミノアシル-tRNAシンテターゼのアミノ酸配列の少なくとも以下のアミノ酸残基を切り離し、
(a)位置102のアミノ酸残基、
(b)位置X乃至Yのアミノ酸残基、ここで、Xは、128~132の間の正の整数であり、Yは、133~140の間の正の整数であり、および/または
(c)位置A乃至Bのアミノ酸残基、ここで、Aは、159~164の間の正の整数であり、Bは、165~179の間の正の整数であることを特徴とする
請求項1に記載の突然変異タンパク質。
【請求項3】
SEQ ID NO.:4に示されるような配列に対応する突然変異型アミノアシル-tRNAシンテターゼにおいて、前記突然変異タンパク質には、位置29のヒスチジン(H)、位置76のアスパラギン酸(D)、位置89のセリン(S)、位置91のアスパラギン(N)、位置96のアルギニン(R)、位置121のセリン(S)、位置129のアスパラギン(N)、位置145のセリン(S)、位置148のアラニン(A)、位置274のロイシン(L)、位置313のシステイン(C)、位置349のフェニルアラニン(F)、またはその組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸突然変異がさらに存在することを特徴とする
請求項1に記載の突然変異タンパク質。
【請求項4】
SEQ ID NO.:3~6のいずれか一つに示されるようなアミノ酸配列を有することを特徴とする
請求項1に記載の突然変異タンパク質。
【請求項5】
請求項1に記載の突然変異タンパク質をコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項6】
請求項
5に記載のポリヌクレオチドを含むことを特徴とする、ベクター。
【請求項7】
請求項
6に記載のベクターを含むか、またはそのゲノムには、請求項
5に記載のポリヌクレオチドが組込まれるか、または請求項1に記載の突然変異タンパク質が発現されることを特徴とする、前記宿主細胞。
【請求項8】
(a)請求項1に記載の突然変異タンパク質、
(b)前記突然変異タンパク質の存在下で所定の修飾アミノ酸に結合できる人工tRNA、および任意選択で
(c)標的タンパク質をコードする、前記人工tRNAによって識別されるコドンを含む第1の核酸配列を含むことを特徴とする
請求項
7に記載の宿主細胞。
【請求項9】
下記(1)および(2)を含み、
(1)第1の発現カセット、前記第1の発現カセットは、標的タンパク質をコードする第1のコード配列を含み、前記第1のコード配列は、所定の修飾アミノ酸を導入するためのコドンを含み、前記コドンは、UAG(アンバー)、UAA(オーカー)、またはUGA(オパール)であり、および
(2)第2の発現カセット、前記第2の発現カセットは、アミノアシル-tRNAシンテターゼをコードする第2のコード配列を含み、ここで、前記アミノアシル-tRNAシンテターゼは、請求項1に記載の突然変異タンパク質であり、
また、前記システムは、第3の発現カセットをさらに含み、前記第3の発現カセットは、人工tRNAをコードする第3のコード配列を含み、ここで、前記人工tRNAは、前記コドンに対応するアンチコドンを含み、
また、前記アミノアシル-tRNAシンテターゼは、前記人工tRNAを特異的に触媒して、「人工tRNA-Xa」複合体を形成し、ここで、Xaは、アミノアシル基形態の前記所定の修飾アミノ酸であることを特徴とする、プラスミドシステム。
【請求項10】
(a)容器、および(b)前記容器内に位置する請求項1に記載の突然変異タンパク質、または請求項
5に記載のポリヌクレオチド、または請求項
6に記載のベクター、または請求項
9に記載のプラスミドシステムを含むことを特徴とする、キット。
【請求項11】
請求項1に記載の突然変異タンパク質、または請求項
7に記載の宿主細胞、または請求項
9に記載のプラスミドシステム、または請求項
10に記載のキットの用途であって、
非天然アミノ酸を標的タンパク質に混入ために、または非天然アミノ酸を含む標的タンパク質を調製するために使用されることを特徴とする、前記用途。
【国際調査報告】