(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-05
(54)【発明の名称】4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンの合成方法
(51)【国際特許分類】
C07D 407/04 20060101AFI20220628BHJP
H01M 10/0567 20100101ALN20220628BHJP
【FI】
C07D407/04
H01M10/0567
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021513778
(86)(22)【出願日】2019-12-23
(85)【翻訳文提出日】2021-03-10
(86)【国際出願番号】 CN2019127304
(87)【国際公開番号】W WO2020224268
(87)【国際公開日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】201910367828.3
(32)【優先日】2019-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518289830
【氏名又は名称】石家庄▲聖▼泰化工有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100130993
【氏名又は名称】小原 弘揮
(72)【発明者】
【氏名】▲閻▼彩▲橋▼
(72)【発明者】
【氏名】葛建民
(72)【発明者】
【氏名】王▲軍▼
(72)【発明者】
【氏名】▲はお▼俊
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼民
(72)【発明者】
【氏名】武利斌
(72)【発明者】
【氏名】侯▲栄▼雪
【テーマコード(参考)】
4C063
5H029
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB01
4C063CC81
4C063DD81
4C063EE10
5H029AJ05
5H029AK01
(57)【要約】
本発明に係る4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンの合成方法は電池用電解液添加剤の技術分野に属する。アルゴンガス雰囲気下でイミダゾール、テトラヒドロフランを反応器に加え、冷却し-5~5℃まで降温し、ホスゲンを滴下し始め、0.5~1時間かけて滴下が終了し、その後-8~-15℃の温度で、前記混合物をエリスリトールのテトラヒドロフラン溶液に滴下し、1~1.5時間かけて滴下が終了し、保温しながら0.5~2時間撹拌し、真空で溶剤を除去し、残留物を得た。残留物をジクロロメタンに溶解させ、冷水で洗浄し、乾燥後濃縮し4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンの粗生成物を得、粗生成物を精製し、精製された4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンを得た。本発明に用いられる原材料が安価で入手しやすく、合成方法が簡単で操作しやすく、エネルギー消費量が低く、反応時間が短く、反応条件が温和で安定しており、製品の収率が高く、94%以上に達することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルゴンガス雰囲気下でイミダゾール、テトラヒドロフランを反応器に加え、冷却し-5~5℃まで降温し、ホスゲンを滴下し始め、0.5~1時間かけて滴下が終了し、0.5~1時間撹拌し、ろ過し、1,1’-カルボニルジイミダゾールを含むろ液を得た後、-8~-15℃の温度で、前記ろ液をエリスリトールのテトラヒドロフラン溶液に滴下し、1~1.5時間かけて滴下が終了し、保温しながら0.5~2時間撹拌し、真空で溶剤を除去し、残留物を得、残留物をジクロロメタンに溶解させ、冷水で洗浄し、乾燥後濃縮し4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンの粗生成物を得、粗生成物を精製し、精製された4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンを得たことを特徴とする、4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンの合成方法。
【請求項2】
ホスゲンと、イミダゾールと、エリスリトールとのモル比が1:(3~6):(0.45~0.8)であることを特徴とする、請求項1に記載の4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンの合成方法。
【請求項3】
エリスリトールがテトラヒドロフラン溶液に1g/4~4.5mlであることを特徴とする、請求項1に記載の4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンの合成方法。
【請求項4】
冷水で2~3回洗浄することを特徴とする、請求項1に記載の4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンの合成方法。
【請求項5】
乾燥は無水硫酸ナトリウム及び/又は酸化カルシウムで乾燥することを特徴とする、請求項1に記載の4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンの合成方法。
【請求項6】
濃縮し真空度を0.08~0.10MPaに制御し、温度50~60℃で1.5~2時間濃縮することを特徴とする、請求項1に記載の4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンの合成方法。
【請求項7】
精製はアセトンで再結晶することを特徴とする、請求項1に記載の4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンの合成方法。
【請求項8】
真空で溶剤を除去する場合、真空度が0.08~0.09Mpaに制御され、真空処理時間が30~40minであることを特徴とする、請求項1に記載の4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンの合成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電池用電解液添加剤の技術分野に属し、4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンを電池用電解液添加剤として用いることに関し、詳しくは、4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンの合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池の性能が改善されており、その適用範囲が広くなっていくが、その安全性問題及びサイクル性能はある程度リチウムイオン電池の発展を制約している。特に現在盛んになっている電気自動車用動力リチウムイオン電池は、安全性能、急速充電性能、バッテリー寿命が全て各研究機関によって検討されている焦点問題であり、これらの問題を解決するキーポイントは電池そのものを出発点とすることにある。リチウムイオン電池の安全性及びサイクル安定性に影響する要素が多く、主として内因と外因の2つに分けられる。内因は主として、正負極アクティブ材料の安定性、電解液自体の特性及び電極材料との適合性、セパレータ材料の安定性等に関わり、外因は主として電池の不正確な使用及び使用過程で現れた濫用現象等である。研究から分かるように、電解液添加剤の導入は非常に効果的な方法であり、電解液自体の特性を改善できるだけでなく、電解液と電極材料との適合性を向上することもでき、それに、僅かな量を添加すれば明らかな効果がある。電極材料を改質することでリチウムイオン電池のサイクル安定性をさらに向上することができる。
【0003】
近年、新規な多機能リチウムイオン電池用電解液添加剤が多数現れている。研究が行われた結果、CAS番号が24690-44-6である4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンは、電解液添加剤としてリチウムイオン電池の正・負極材料の構造の安定性及び熱安定性を効果的に改善できることが判明した。また、4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンは高電圧、極高温・低温条件で全て優れたサイクル及び安全性能を表現し、リチウムイオン電池性能の向上に大きな促進効果を有する。しかし、従来の4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンの合成プロセスは成熟しておらず、合成過程で通常、原材料が高価であり、プロセスが複雑であり、製品の収率及び純度が低い等の問題があり、かつ現在4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンの合成プロセスにおいて、一般的に高温で反応を行うべきであると考えられている。例えば、60~130℃等で、12時間以上反応する場合、収率は88~90%程度に達することができるが、反応温度が高く、反応が安定せず、反応時間が長すぎて生産効率に影響する。このため、4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンの合成方法の研究は極めて大きな現実的な意義を有する。
【発明の概要】
【0004】
本発明は上記技術的課題を解決するために、4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンの合成方法を提供する。本発明に係る合成方法は簡単であり、原材料が安価で入手しやすく、エネルギー消費量が低く、反応条件が温和で安定しており、収率が高い。
【0005】
本発明はその目的を実現するために、以下の技術的手段を用いる。
【0006】
アルゴンガス雰囲気下でイミダゾール、テトラヒドロフランを反応器に加え、冷却し-5~5℃まで降温し、ホスゲンを滴下し始め、0.5~1時間かけて滴下が終了し、0.5~1時間撹拌し、ろ過し、1,1’-カルボニルジイミダゾールを含むろ液を得た後、-8~-15℃の温度で、前記ろ液をエリスリトールのテトラヒドロフラン溶液に滴下し、1~1.5時間かけて滴下が終了し、保温しながら0.5~2時間撹拌し、真空で溶剤を除去し、残留物を得、残留物をジクロロメタンに溶解させ、冷水で洗浄し、乾燥後濃縮し4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンの粗生成物を得、粗生成物を精製し、精製された4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンを得た4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンの合成方法。
【0007】
ホスゲンと、イミダゾールと、エリスリトールとのモル比が1:(3~6):(0.45~0.8)である。
【0008】
エリスリトールがテトラヒドロフラン溶液に1g/4~4.5mlである。即ち、4~4.5mlのテトラヒドロフラン溶液にエリスリトール1gを含有する。
【0009】
冷水で2~3回洗浄する。
【0010】
乾燥は無水硫酸ナトリウム及び/又は酸化カルシウムで乾燥する。
【0011】
濃縮し真空度を0.08~0.10MPaに制御し、温度50~60℃で1.5~2時間濃縮する。
【0012】
精製はアセトンで再結晶する。
【0013】
真空で溶剤を除去する場合、真空度が0.08~0.09Mpaに制御され、真空処理時間が30~40minである。
【0014】
本発明の効果としては、本発明に用いられる原材料が安価で入手しやすく、合成方法が簡単で操作しやすく、エネルギー消費量が低く、反応時間が短く、反応条件が温和で安定しており、製品の収率が高く、94%以上に達することができる。
【0015】
本願は低温反応を用い、従来高温反応が必要であると考えられている局面を打ち破り、4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンを合成する新しい方法を開発した。当業者は4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンを製造する場合、高温での長期間反応が反応の進行を促進し、4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンの合成に寄与し、低温の場合、反応の進行に影響し、反応速度を遅くし、収率が低く、その上4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンを合成できなくなると考えている。発明者は長期間検討し、ホスゲン、イミダゾール、エリスリトールを原料として用いて4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンを製造することで、低温、短時間の反応合成を実現し、収率も94%以上に達することができることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は定格容量が950mAhであるLP063450ARタイプのプリズム型リチウムイオン電池のサイクル性能図である。
【
図2】
図2は本発明の4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンを添加した定格容量が950mAhであるLP063450ARタイプのプリズム型リチウムイオン電池のサイクル性能図である。
【
図3】
図3は本発明で製造された4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンのマススペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に具体的実施例に基づき本発明をさらに説明する。
一、具体的実施例
【0018】
実施例1
アルゴンガス雰囲気下で4.0molのイミダゾール、125mlのテトラヒドロフランを四つ口フラスコに入れ、冷却し0℃まで降温し、1.0molのホスゲンを滴下し始め、0.5時間かけて滴下が終了し、0.5時間撹拌し、ろ過し、1,1’-カルボニルジイミダゾールを含むろ液を得た。その後、-10℃の温度で、前記ろ液をエリスリトール0.5molを含むテトラヒドロフラン(250ml)溶液に滴下し、1.5時間かけて滴下が終了し、保温しながら1時間撹拌し、真空で溶剤を除去し、残留物を得た。残留物をジクロロメタンに溶解させ、冷水で2回洗浄した。20gの無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、濃縮し4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンの粗生成物を得た。粗生成物を再結晶し、82.20gの4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンの純品(収率94.4%)を得た。
得られた4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンを集め、測定した結果、密度は1.6075g/cm3であり、沸点は535.33℃(760mmHg)であり、HPLCにより検出された純度は99.87%であった。
【0019】
実施例2
アルゴンガス雰囲気下で3.0molのイミダゾール、62mlのテトラヒドロフランを四つ口フラスコに入れ、冷却し-2℃まで降温し、1.0molのホスゲンを滴下し始め、0.6時間かけて滴下が終了し、0.6時間撹拌し、ろ過し、1,1’-カルボニルジイミダゾールを含むろ液を得た。その後、-8℃の温度で、前記ろ液をエリスリトール0.45molを含むテトラヒドロフラン(220ml)溶液に滴下し、1時間かけて滴下が終了し、保温しながら1.5時間撹拌し、真空で溶剤を除去し、残留物を得た。残留物をジクロロメタンに溶解させ、冷水で2回洗浄した。20gの無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、濃縮し4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンの粗生成物を得た。粗生成物を再結晶し、74.4gの4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンの純品(収率94.96%)を得た。
得られた4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンを集め、測定した結果、密度は1.6083g/cm3であり、沸点は535.38℃(760mmHg)であり、HPLCにより検出された純度は99.89%であった。
【0020】
実施例3
アルゴンガス雰囲気下で5.0molのイミダゾール、204mlのテトラヒドロフランを四つ口フラスコに入れ、冷却し-5℃まで降温し、1.0molのホスゲンを滴下し始め、0.8時間かけて滴下が終了し、0.8時間撹拌し、ろ過し、1,1’-カルボニルジイミダゾールを含むろ液を得た。その後、-12℃の温度で、前記ろ液をエリスリトール0.7molを含むテトラヒドロフラン(384ml)溶液に滴下し、1.2時間かけて滴下が終了し、保温しながら0.8時間撹拌し、真空で溶剤を除去し、残留物を得た。残留物をジクロロメタンに溶解させ、冷水で2回洗浄した。20gの無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、濃縮し4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンの粗生成物を得た。粗生成物を再結晶し、82.95gの4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンの純品(収率95.29%)を得た。
得られた4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンを集め、測定した結果、密度は1.6078g/cm3であり、沸点は535.47℃(760mmHg)であり、HPLCにより検出された純度は99.91%であった。
【0021】
実施例4
アルゴンガス雰囲気下で6.0molのイミダゾール、164mlのテトラヒドロフランを四つ口フラスコに入れ、冷却し5℃まで降温し、1.0molのホスゲンを滴下し始め、1時間かけて滴下が終了し、1時間撹拌し、ろ過し、1,1’-カルボニルジイミダゾールを含むろ液を得た。その後、-15℃の温度で、前記ろ液をエリスリトール0.6molを含むテトラヒドロフラン(307ml)溶液に滴下し、1.5時間かけて滴下が終了し、保温しながら2時間撹拌し、真空で溶剤を除去し、残留物を得た。残留物をジクロロメタンに溶解させ、冷水で2回洗浄した。20gの無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、濃縮し4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンの粗生成物を得た。粗生成物を再結晶し、83.4gの4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンの純品(収率95.8%)を得た。
得られた4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンを集め、測定した結果、密度は1.609g/cm3であり、沸点は535.71℃(760mmHg)であり、HPLCにより検出された純度は99.85%であった。
【0022】
実施例5
アルゴンガス雰囲気下で4.0molのイミダゾール、136mlのテトラヒドロフランを四つ口フラスコに入れ、冷却し3℃まで降温し、1.0molのホスゲンを滴下し始め、0.7時間かけて滴下が終了し、0.7時間撹拌し、ろ過し、1,1’-カルボニルジイミダゾールを含むろ液を得た。その後、-13℃の温度で、前記ろ液をエリスリトール0.8molを含むテトラヒドロフラン(420ml)溶液に滴下し、1.3時間かけて滴下が終了し、保温しながら0.5時間撹拌し、真空で溶剤を除去し、残留物を得た。残留物をジクロロメタンに溶解させ、冷水で2回洗浄した。20gの無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、濃縮し4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンの粗生成物を得た。粗生成物を再結晶し、83.74gの4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンの純品(収率96.2%)を得た。
得られた4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンを集め、測定した結果、密度は1.6087g/cm3であり、沸点は535.64℃(760mmHg)であり、HPLCにより検出された純度は99.86%であった。
【0023】
実施例6
アルゴンガス雰囲気下で4.0molのイミダゾール、125mlのテトラヒドロフランを四つ口フラスコに入れ、冷却し-3℃まで降温し、1.0molのホスゲンを滴下し始め、0.9時間かけて滴下が終了し、0.9時間撹拌し、ろ過し、1,1’-カルボニルジイミダゾールを含むろ液を得た。その後、-9℃の温度で、前記ろ液をエリスリトール0.5molを含むテトラヒドロフラン(268ml)溶液に滴下し、1.4時間かけて滴下が終了し、保温しながら1.8時間撹拌し、真空で溶剤を除去し、残留物を得た。残留物をジクロロメタンに溶解させ、冷水で2回洗浄した。20gの無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、濃縮し4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンの粗生成物を得た。粗生成物を再結晶し、84gの4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンの純品(収率96.5%)を得た。
得られた4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンを集め、測定した結果、密度は1.6073g/cm3であり、沸点は535.38℃(760mmHg)であり、HPLCにより検出された純度は99.86%であった。
【0024】
実施例7
アルゴンガス雰囲気下で4.0molのイミダゾール、125mlのテトラヒドロフランを四つ口フラスコに入れ、冷却し-1℃まで降温し、1.0molのホスゲンを滴下し始め、0.6時間かけて滴下が終了し、0.6時間撹拌し、ろ過し、1,1’-カルボニルジイミダゾールを含むろ液を得た。その後、-11℃の温度で、前記ろ液をエリスリトール0.45molを含むテトラヒドロフラン(240ml)溶液に滴下し、1.2時間かけて滴下が終了し、保温しながら1.2時間撹拌し、真空で溶剤を除去し、残留物を得た。残留物をジクロロメタンに溶解させ、冷水で2回洗浄した。20gの無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、濃縮し4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンの粗生成物を得た。粗生成物を再結晶し、76.23gの4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンの純品(収率97.3%)を得た。
得られた4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンを集め、質量分析検出を行い、
図3及び
図4を参照してそのマススペクトルを検出した。測定した結果、密度は1.6088g/cm3であり、沸点は535.68℃(760mmHg)であり、HPLCにより検出された純度は99.84%であった。
【0025】
二、試験性能
1、高温性能の検討
実験で検討使用されるリチウムイオン電池はBYD社製の定格容量が950mAhであるLP063450ARタイプのプリズム型リチウムイオン電池である。電池をそれぞれ25℃及び5℃で1C倍率(950mA)で充放電サイクル試験を行い、定電流定電圧充電システム(CC-CV)及び定電流放電システムを用い、充放電電圧範囲は3.0~4.5Vである。まず1Cの定電流で4.5Vになるまで充電してから、4.5Vの定電圧で電流が20mA以下になるまで充電した後、1Cの定電流で終止電圧が3.0Vになるまで放電する。このようにサ繰り返して充放電を500回行い、サイクルデータの採取はLAND-2001T型電池測定システムで行われる。
【0026】
図1を参照する。300サイクル経過後、25℃で充放電を繰り返した電池は容量保持率が88.8%であり、65℃で電池の容量が73.1%に過ぎず、容量が急速に減衰した。前記BYD社製の定格容量が950mAhであるLP063450ARタイプのプリズム型リチウムイオン電池は、65℃でのサイクル安定性が25℃でのサイクル安定性よりも劣っていることが分かった。
図1から、電池は65℃で放電容量が電池の定格容量よりも高いことがさらに判明した。これは、高温時に電解質の粘度が低減し、リチウムイオンの移動速度が向上し、アクティブリチウムの利用率が高くなり、リチウム電池が高い充放電容量を示しているためである。
【0027】
本発明で製造された4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンは電池の高温性能を向上する機能を有することを検証するために、BYD社製の定格容量が950mAhであるLP063450ARタイプのプリズム型リチウムイオン電池を試験対象として、当該電池の電解液に電解液の質量が2%である4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンを加え、上記同じ操作を繰り返して、電池の高温サイクル性能を検出した。
【0028】
図2を参照する。300サイクル経過後、本発明の4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンを添加した電池は65℃で電池の容量が87.6%であり、500サイクル後65℃で電池の容量が75.2%である。本発明の4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンを添加していない電池は500サイクル後65℃で電池の容量が59%であり、寿命が終わった。本発明で製造された4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンは高電圧、高温での電池のサイクル性能を向上できることが判明した。
【0029】
2、低温性能の検討
LiFePO4リチウムイオン電池を検討対象として、そのサイズが12cm×7cm×0.8cmであり、単独の電池定格容量が10Ahであり、動作電圧が3.3~4.2Vであり、ケースがアルミニウムプラスチックフィルムである。低温試験を行った。25℃を低温試験基準点とし、25℃から-20℃まで、5℃ごとに温度検査点となり、温度変化速度が30min/5℃であり、それぞれの温度で24時間放置してから、前記温度における性能試験を行うことができる。試験結果を表1に示す。
【0030】
表1 温度の放電容量(0.5C)に対する影響
【表1】
【0031】
以上の表1から分かるように、温度が低いほど、容量が大きく減衰する。本実験検討対象は低温サイクル性能が悪いという問題があることを示している。
【0032】
本発明で製造された4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンは電池の低温性能を向上する機能を有することを検証するために、上記同じLiFePO4リチウムイオン電池を検討対象として、当該電池の電解液に電解液の質量が2%である4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンを加え、上記同じ操作を繰り返して、電池の低温サイクル性能を検出した。結果を表2に示す。
【0033】
表2 温度の放電容量(0.5C)に対する影響
【表2】
【0034】
表2から分かるように、本発明の4,4’-ビ-1,3-ジオキソラン-2,2’-ジオンを加えた後、電池の低温サイクル性能を改善することができる。
【国際調査報告】