(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-05
(54)【発明の名称】水産養殖用網を処理するための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
D06M 11/42 20060101AFI20220628BHJP
D06M 11/44 20060101ALI20220628BHJP
D06M 13/35 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
D06M11/42
D06M11/44
D06M13/35
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564141
(86)(22)【出願日】2020-04-30
(85)【翻訳文提出日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 IB2020054108
(87)【国際公開番号】W WO2020225674
(87)【国際公開日】2020-11-12
(32)【優先日】2019-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520061734
【氏名又は名称】アークサーダ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カポック,ポール
(72)【発明者】
【氏名】コールドウェル,ブリタニー
(72)【発明者】
【氏名】ファン・アーケン,ペーテル
(72)【発明者】
【氏名】パテル,ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジャナク,ケビン・イー
(72)【発明者】
【氏名】ジン,レホン
(72)【発明者】
【氏名】ヒンクル,ザック
(72)【発明者】
【氏名】マッケンダー,ジャスティン
【テーマコード(参考)】
4L031
4L033
【Fターム(参考)】
4L031AA20
4L031AB01
4L031AB21
4L031BA09
4L031DA12
4L033AA08
4L033AB01
4L033AB03
4L033AB09
4L033AC10
4L033BA55
4L033DA06
(57)【要約】
本発明は、海洋又は海底繊維材料を処理し、乾燥させ、その生物付着を抑制する方法を提供する。本発明はさらに、本発明の方法によって得られる、防汚性を有する海洋又は海底繊維材料、並びに海洋及び海底繊維材料の生物付着を抑制するための本発明による防汚配合物の使用を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海洋又は海底繊維材料を処理して生物付着を抑制する方法であって、以下の工程、すなわち、
(a) 該繊維材料を容器内で陰圧処理VACに供する工程、
(b) 該繊維材料を、1種以上の殺生物剤の微粉化粒子を含む防汚配合物と接触させる工程、
(c) 続いて前記陰圧VACを解除する工程
を含み、該繊維材料を乾燥させる工程をさらに含み、該乾燥工程は、
該繊維材料を約35℃~約120℃の温度で蒸気乾燥させるか、又は該繊維材料を約35℃~約120℃の温度の圧縮熱気で処理することを含む、方法。
【請求項2】
工程(c)が、さらに、前記陰圧VACを解除した後に前記繊維材料を陽圧処理PPに供する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1種以上の殺生物剤が、酸化銅(I)(Cu
2O)、銅2-ピリジンチオール-1-オキシド(銅ピリチオン、CuPT)、トラロピリル、4、5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(DCOIT)、エチレンビスジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、又はジエチルジチオカルバミン酸亜鉛から選択され、好ましくは前記1種以上の殺生物剤がCu
2O及びCuPTからなる群から選択され、より好ましくは前記殺生物剤がCu
2O及びCuPTである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記防汚配合物が、さらに、銅ジ(エチル4,4,4-トリフルオロアセト酢酸)(Cu(ETFAA)
2)及び/又は酸化亜鉛(ZnO)から選択される添加剤を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記微粒化粒子が、以下により特徴付けられる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
約0.01μm~約25μm、より好ましくは約0.1μm~約10μm、最も好ましくは約0.3μm~約8μmの平均粒径、及び/又は
約0.5μm~約1μm、好ましくは約0.7μm~約0.9μmのd50値を有するレーザー散乱粒径分布、及び/又は
約5μm未満、好ましくは約3μm未満、好ましくは約1.5μm未満のd90値を有するレーザー散乱粒径分布、及び/又は
約10.0μm未満、好ましくは約8μm未満、好ましくは約6.0μm未満、最も好ましくは約5.5μm未満のd99値を有するレーザー散乱粒径分布。
【請求項6】
前記防汚配合物中のCu
2Oの量が、約25重量%~約0.5重量%、好ましくは約20重量%~約5重量%、より好ましくは約15重量%~約10重量%、最も好ましくは約13重量%~約11重量%であり、及び/又は前記防汚配合物中のCu
2O(重量%)対CuPT(重量%)の比が、約100:1~約1:100、好ましくは約50:1~約1:1、最も好ましくは約20:1~約1:1である、請求項3~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記防汚配合物が前記容器から除去される工程(d)をさらに含み、及び/又は前記繊維材料がさらなる陰圧処理VACに供される工程(e)をさらに含み、及び/又は前記繊維材料が空気でパージされる工程(f)をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記乾燥工程の間に、前記繊維材料が陽圧処理PPに供され、続いて陰圧処理VACに供される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記乾燥工程が、工程(a)~(c)及び任意に工程(d)~(e)と同じ容器で実施される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記陰圧処理VACの間に加えられる圧力が、約101.325kPa未満、好ましくは約85kPa以下、より好ましくは約50kPa以下、最も好ましくは約30kPa以下であり、及び/又は前記陽圧処理PPの間に加えられる圧力が、約101.35kPaを超え、好ましくは約800kPaを超え、より好ましくは約875kPa~約1724kPaである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の方法によって得られる、防汚性を有する海洋又は海底繊維材料。
【請求項12】
海洋及び海底繊維材料の生物付着を抑制するための請求項1~10のいずれか一項に記載の方法における防汚配合物の使用であって、前記防汚配合物が1種以上の殺生物剤の微粉化粒子を含む、使用。
【請求項13】
(i) 前記微粒化粒子が、以下により特徴付けられ、
約0.01μm~約25μm、より好ましくは約0.1μm~約10μm、最も好ましくは約0.3μm~約8μmの平均粒径、及び/又は
約0.5μm~約1μm、好ましくは約0.7μm~約0.9μmのd50値を有するレーザー散乱粒径分布、及び/又は
約5μm未満、好ましくは約3μm未満、より好ましくは約1.5μm未満のd90値を有するレーザー散乱粒径分布、及び/又は
約10.0μm未満、好ましくは約8μm未満、より好ましくは約6.0μm未満、最も好ましくは約5.5μm未満のd99値を有するレーザー散乱粒径分布、及び/又は
(ii) 前記1種以上の殺生物剤が、酸化銅(I)(Cu
2O)、銅2-ピリジンチオール-1-オキシド(銅ピリチオン、CuPT)、トラロピリル、4、5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(DCOIT)、エチレンビスジチオカルバミン酸亜鉛(ジネブ)、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、又はジエチルジチオカルバミン酸亜鉛から選択され、及び/又は
(iii) 前記殺生物剤がCu
2O及びCuPTであり、前記防汚配合物中のCu
2Oの量が、約25重量%~約0.5重量%、好ましくは約20重量%~約5重量%、より好ましくは約15重量%~約10重量%、最も好ましくは約13重量%~約11重量%であり、及び/又は
(iv) 前記殺生物剤がCu
2O及びCuPTであり、前記防汚配合物中のCu
2O(重量%)対CuPT(重量%)の比が、約100:1~約1:1、好ましくは約50:1~約1:1、最も好ましくは約20:1~約1:1であり、及び/又は
(v) 前記防汚配合物は、さらに、銅ジ(エチル4,4,4-トリフルオロアセト酢酸)(Cu(ETFAA)
2)及び/又は亜鉛酸化物(ZnO)から選択される添加剤を含む、
請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記繊維材料が漁網である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法、又は請求項11に記載の繊維材料、又は請求項12又は13に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋水産養殖のための網の生物付着を抑制する方法、該方法の使用及び該方法によって処理された網に関する。
【背景技術】
【0002】
海水に浸かった表面は海洋生物で急速に覆われ、これは海洋生物付着又はしばしば生物付着と呼ばれる。海洋水産養殖に用いられる魚網は、ごく短時間で汚損を受け、網内の酸素レベルが低下するため、魚の成長に影響を及ぼすとともに、網からの魚の排泄物の分散を妨げることがよく知られている。このため、海洋水産養殖に用いられる魚網は、防汚塗料で覆われていることが多い。
【0003】
一般的な防汚処理方法では、網は浸漬被覆され、空気中又は加熱空気流中に吊るして乾燥される。典型的には、これらの魚網は大きく、直径50メートルを超えるものが多いので、典型的には束にして「防汚処理施設」に出荷される。次いで、これらの束をほどいて、網を塗料の大型の槽に浸したり、大型の槽から引っ張りだしたりする。浸漬処理が終了した後、浸漬槽から網を引き出して、液体を2~3時間程度滴下させて処理槽に戻し、乾燥に移行する前に「液がたれない」網を得る必要がある。多くの場合、浸漬槽及び滴下区域の周囲の作業環境は防汚薬品で汚染されており、これらの手動操作の間作業者は防汚薬品に暴露される。
【0004】
次に網を大型のサイロ又は屋外で吊り下げて乾燥させる。網の吊り下げは、典型的には、網が非常に湿っている間はクレーンで行われる。乾燥には典型的には数日を要する。ときには、網の上に熱い空気を吹きつけて乾燥処理を速めることもあるが、それでも乾燥には1日ほどかかる。
【0005】
上記の従来の浸漬及び乾燥処理によりこれらの大型の網に防汚塗料を施用する方法は、正味重量に比べて高い被覆重量を含むため、時間がかかり、費用がかかる。さらに、その浸漬処理によって得られる被膜は、不完全で不均一であることが多く、長い乾燥時間を必要とする。また、前記浸漬処理によって得られる被膜は、表面のみの被膜であり、これは水中ではより速く浸食され、その結果、浸漬処理によって得られる防汚被膜は、典型的には約3~6ヶ月間しか持続しない。
【0006】
JP5732639B1号は銅ピリチオン凝集体及びその使用に関するものである。
【0007】
JPH08319203A号は、漁網用防汚剤としてビス(ジメチルジチオカルバモイル)-エチレン-ビス-ジチオカルバミン酸亜鉛を開示する。
【0008】
Ashrafら、「Nano copper oxide incorporated polyethylene glycol hydrogel: An efficient antifouling coating for cage fishing net」、International Biodeterioration & Biodegradation、2016、115巻、39-48は、親水性ナノ酸化銅が配合されたポリエチレングリコールメタクリレートヒドロゲルを漁網材の防汚塗料として開示する。
【0009】
JP2006335757A号は、船舶及び漁網のための防汚塗料として有用な金属ピリチオン錯体化合物を含む水中汚れ防止剤を開示する。
【0010】
JP2000281942A号は、水性防汚塗料組成物、該組成物から形成された被膜、該組成物で被覆された漁網及び該組成物を用いる防汚方法を開示する。
【0011】
GB131345A号は、網を真空にかける漁網の褐色化方法を開示する。
【0012】
WO2013/025960A1号は、亜鉛ピリチオン及び銅化合物をポリマーマトリックスの存在下で反応させることによって形成される銅ピリチオンの粒子に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第5732639号公報
【特許文献2】特開平08-319203号公報
【特許文献3】特開2006-335757号公報
【特許文献4】特開2000-281942号公報
【特許文献5】英国特許出願公開第131345号明細書
【特許文献6】国際公開第2013/025960号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Ashrafら、「Nano copper oxide incorporated polyethylene glycol hydrogel: An efficient antifouling coating for cage fishing net」、International Biodeterioration & Biodegradation、2016、115巻、39-48
【発明の概要】
【0015】
本発明は、上記の浸漬処理の欠点を克服する、水域環境に存在する汚損生物に対する防汚活性を、大型漁網のような海洋及び海底繊維材料に与えるための方法を提供する。
【0016】
本発明者らは驚くべきことに、網材のより糸に浸透する防汚配合物で漁網を効率的に処理する方法を見出した。そのため、防汚配合物は、従来の浸漬方法と同様に単に表面に施したり、又は部分的にのみ若しくは不均一に網に浸透したりするのではなく、網の構造に均一に含浸される。本発明の方法によって得られるこの均一な防汚被膜は、従来の浸漬方法によって得られる防汚被膜よりも長期間持続する。さらなる利点として、本発明の方法は、まだ束になっている間(すなわち、網の束をほどかずに)網を処理し、囲まれた容器の中で処理することを可能にし、これは、先行技術の浸漬方法よりも大幅に時間を短縮し、工程の取り扱いもかなり少ない。それは、毒性であることがある防汚配合物と労働者との直接接触を減らす。
【0017】
別の利点として、本発明の方法により防汚配合物を施用すると、最終的な真空工程の間に、過剰量の塗料溶液のほとんどが除去され、滴りが有意に少ない、すなわち、いつでも乾燥できる「液がたれない」状態の処理網を得ることができるので、この方法は、防汚配合物の「液がたれない」網の施用を提供する。本発明の方法は、従来の浸漬処理で必要とされる2~3時間の滴下時間を回避する。
【0018】
本発明による方法は、使用において同様の性能を維持しながら、殺生物剤表面充填量の減少、及び従来の浸漬処理よりも処理後の防汚配合物の驚くほど改善されたマクロ及び/又はミクロ分布を提供する。必要な防汚配合物の量が少ないため、本発明の方法は、網の全体的な重量を軽くすることを可能にする。
【0019】
本発明はさらに、網を束の状態で乾燥させることを可能にする非常に効率的な乾燥方法を提供し、乾燥網を約1時間で得ることができる。この乾燥方法は、連続方法と同じ処理容器で行うこともできるし、別々の乾燥容器/チャンバーで操作することもできる。これは、商業的で大規模な用途に特に有利である。
【0020】
本発明は、海洋又は海底繊維材料を処理して乾燥させ、その生物付着を抑制する方法を提供する。本発明はさらに、本発明の方法によって得られる、防汚性を有する海洋又は海底繊維材料、並びに海洋及び海底繊維材料の生物付着を抑制するための本発明による防汚配合物の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明による防汚配合物の粒径分布プロファイルを示す。
【
図2】
図2は、海水への浸漬の2か月後の本発明の方法によって処理された網及び比較のための対照網の写真を示す。
【
図3】
図3は、海水への浸漬の4か月後の本発明の方法によって処理された網及び比較のための対照網の写真を示す。
【
図4】
図4は、海水への浸漬の6か月後の本発明の方法によって処理された網及び比較のための対照網の写真を示す。
【
図5-1】
図5-1は、網サンプル1についての光学画像、SEM画像、Cu分布図の解析データを示す。
【
図5-2】
図5-2は、網サンプル1についてのEDSライン走査結果の解析データを示す。
【
図6-1】
図6-1は、網サンプル2についての光学画像、SEM画像、Cu分布図の解析データを示す。
【
図6-2】
図6-2は、網サンプル2についてのEDSライン走査結果の解析データを示す。
【
図7-1】
図7-1は、網サンプル3についての光学画像、SEM画像、Cu分布図の解析データを示す。
【
図7-2】
図7-2は、網サンプル3についてのEDSライン走査結果の解析データを示す。
【
図8-1】
図8-1は、網サンプル4についての光学画像、SEM画像、Cu分布図の解析データを示す。
【
図8-2】
図8-2は、網サンプル4についてのEDSライン走査結果の解析データを示す。
【
図9-1】
図9-1は、網サンプル5についての光学画像、SEM画像、Cu分布図の解析データを示す。
【
図9-2】
図9-2は、網サンプル5についてのEDSライン走査結果の解析データを示す。
【
図10-1】
図10-1は、網サンプル6についての光学画像、SEM画像、Cu分布図の解析データを示す。
【
図10-2】
図10-2は、網サンプル6についてのEDSライン走査結果の解析データを示す。
【
図11-1】
図11-1は、網サンプル7についての光学画像、SEM画像、Cu分布図の解析データを示す。
【
図11-2】
図11-2は、網サンプル7についてのEDSライン走査結果の解析データを示す。
【
図12-1】
図12-1は、網サンプル8についての光学画像、SEM画像、Cu分布図の解析データを示す。
【
図12-2】
図12-2は、網サンプル8についてのEDSライン走査結果の解析データを示す。
【
図13-1】
図13-1は、網サンプル9についての光学画像、SEM画像、Cu分布図の解析データを示す。
【
図13-2】
図13-2は、網サンプル9についてのEDSライン走査結果の解析データを示す。
【
図14-1】
図14-1は、網サンプル10についての光学画像、SEM画像、Cu分布図の解析データを示す。
【
図14-2】
図14-2は、網サンプル10についてのEDSライン走査結果の解析データを示す。
【
図15-1】
図15-1は、網サンプル11についての光学画像、SEM画像、Cu分布図の解析データを示す。
【
図15-2】
図15-2は、網サンプル11についてのEDSライン走査結果の解析データを示す。
【
図16-1】
図16-1は、網サンプル12についての光学画像、SEM画像、Cu分布図の解析データを示す。
【
図16-2】
図16-2は、網サンプル12についてのEDSライン走査結果の解析データを示す。
【
図17】
図17は、本発明による繊維材料を乾燥させる時間の関数としての温度プロファイルを示す。
【
図18】
図18は、本発明による繊維材料を乾燥させる時間の関数としての圧力/真空プロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書で使用される略号は、次の通りである。
本明細書で使用される用語「陰圧」(「VAC」)は、大気圧より低い、すなわち、約101.325kPaより低い圧力を指す。
本明細書で使用される用語「陽圧」(「PP」)は、大気圧よりも高い圧力、すなわち、約101.325kPaよりも高い圧力を指す。
Cu2O - 酸化銅(I)、CAS番号1317-39-1
CuPT - 銅ピリチオン、銅2-ピリジンチオール-1-オキシド、例:CAS[154592-20-8]
Cu(ETFAA)2 - 銅ジ(エチル4,4,4-トリフルオロアセト酢酸)
DCOIT - 4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、CAS[64359-81-5]
Darvan #1(R):Vanderbilt Minerals,LLCによる分散剤、ポリナフタレンスルホン酸ナトリウム
アタパルジャイト粘土:含水ケイ酸マグネシウム-アルミニウム、CAS[012174-11-7]
Texanol(R) - 2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオルモノイズブチラート(butyrat)、CAS[25265-77-4]
Ethacryl(R) G - ポリカルボン酸エーテルの水溶液、高性能水性分散剤
トラロピリル - CAS[122454-29-9]
ジネブ-エチレンビスジチオカルバミン酸亜鉛 CAS[12122-67-7]
ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛 - CAS[137-30-4]
ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛 - CAS[14324-55-1]
【0023】
本発明は、(a)容器内で陰圧処理VACに繊維材料を供する工程、(b)該繊維材料を1種以上の殺生物剤の微粉化粒子を含む防汚配合物と接触させる工程、及び(c)その後に前記陰圧VACを解除する工程を含む、海洋又は海底繊維材料を処理して、その生物付着を抑制する方法を提供する。工程(a)は工程(b)の前に実施するか、同時に実施することができ、工程(b)は工程(a)の前に実施することができる。繊維材料は、糸、ロープ、網、織物、編み物、又は不織布等の、海洋又は海底の目的で使用されるあらゆる繊維材料の形態であることができる。好ましくは、繊維材料は魚網である。容器は、その目的に適する任意の容器、例えば、水平搭載用のステンレス圧力円筒、又は頂部搭載用のステンレス管産業用容器等であることができる。
【0024】
本発明の方法において、工程(a)における前記陰圧処理VACは、初期真空を適用することを含む。前記初期真空VACは、101.325kPa未満、好ましくは約85kPa以下、より好ましくは約50kPa以下、最も好ましくは約30kPa以下の減圧を適用することを含む。
【0025】
陰圧処理VACは、典型的には繊維材料から空気を除去するのに十分な時間適用される。
【0026】
続いて、工程(b)において、前記繊維材料を防汚配合物と接触させる。工程(b)で使用される防汚配合物は、1種以上の殺生物剤、例えば、銅及び亜鉛をベースとする殺生物剤並びに他の一般的に使用される防汚殺生物剤の微粉化粒子を含む。一実施形態において、1種以上の殺生物剤は、酸化銅(I)(Cu2O)、銅2-ピリジンチオール-1-オキシド(銅ピリチオン、CuPT)、トラロピリル、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(DCOIT)、エチレンビスジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、又はジエチルジチオカルバミン酸亜鉛から選択される。好ましい実施形態において、1種以上の殺生物剤は、酸化銅(I)(Cu2O)、銅2-ピリジンチオール-1-オキシド(銅ピリチオン、CuPT)、トラロピリル、4、5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン(DCOIT)、エチレンビスジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、及びジエチルジチオカルバミン酸亜鉛からなる群から選択される。より好ましい実施形態において、1種以上の殺生物剤はCu2O及びCuPTからなる群から選択される。最も好ましい実施形態において、殺生物剤はCu2O及びCuPTである。
【0027】
1種以上の殺生物剤の微粉末化粒子は、約0.01μm~約25μm、より好ましくは約0.1μm~約10μm、最も好ましくは約0.3μm~約8μmの平均粒径、及び/又は
約0.5μm~約1μm、好ましくは約0.7μm~約0.9μmのd50値を有するレーザー散乱粒径分布、及び/又は
約5μm未満、好ましくは約3μm未満、好ましくは約1.5μm未満のd90値を有するレーザー散乱粒径分布、及び/又は
約10.0μm未満、好ましくは約8μm未満、好ましくは約6.0μm未満、最も好ましくは約5.5μm未満のd99値を有するレーザー散乱粒径分布を有する。
【0028】
本発明の方法において、工程(b)の防汚配合物中のCu2Oの量は、約25重量%~約0.5重量%、好ましくは約20重量%~約5重量%、より好ましくは約15重量%~約10重量%、最も好ましくは約13重量%~約11重量%である。
【0029】
本発明の方法において、工程(b)の防汚配合物におけるCu2O(重量%)対CuPT(重量%)の比は、約100:1~約1:100、好ましくは約50:1~約1:1、最も好ましくは約20:1~約1:1である。本発明の方法において、前記防汚配合物は、さらに、銅ジ(エチル4,4,4-トリフルオロアセト酢酸(Cu(ETFAA)2)及び/又は酸化亜鉛(ZnO)から選択される添加剤を含むことができる。好ましくは、添加剤はZnOである。
【0030】
防汚配合物は、有利には液体の形態であり、好ましくは、水又は任意の他の適切な溶媒中の1種以上の殺生物剤の微粉化粒子の分散液の形態である。
【0031】
典型的には、接触工程(b)は、工程(a)と同じ圧力VAC下で実施され、すなわち、繊維材料を、例えば、容器に前記防汚配合物を充填することにより、真空を解除することなく防汚配合物と接触させる。真空が大気圧まで解除されると(工程c)、防汚配合物は繊維材料中に浸透する。
【0032】
この浸透は、陽圧をかけずに実施され得るが、さらなる浸透には追加の陽圧を加えてもよい。したがって、工程(c)は、さらに、前記陰圧VACを解除した後に、繊維材料を陽圧処理PPに供する工程を含むことができる。陽圧処理中に加えられる圧力は、一般に、約101.35kPaを超え、例えば、約800kPaを超え、又は約875kPa~約1724kPaである。正確な圧力値は、繊維材料サイズ及び前記材料の包装条件に依存し、当業者によって容易に適応させることができる。
【0033】
容器から工程(c)の圧力又は真空が解除された後、防汚配合物を容器から除去することができる(工程(d))。除去された防汚配合物は、貯蔵槽に戻されてもよい。防汚配合物を除去した後、繊維材料にさらに最終的な陰圧処理VAC(工程(e))を施してもよい。前記陰圧処理VACは、真空を適用することを含む。好ましくは、前記陰圧処理VACの間に加えられる圧力は、約101.325kPa未満、好ましくは約85kPa以下、より好ましくは約50kPa以下、最も好ましくは約30kPa以下である。これにより、繊維材料から液がしたたり落ちないことが保証され、したがって、許可されるならば、繊維材料を都合よく容器外に移すことができる。
【0034】
本発明の方法は、追加の工程(f)をさらに含んでもよく、ここで、繊維材料は、工程(e)の間に放出される追加の防汚配合物の収集を保証するために、空気でパージされる。
【0035】
本発明の方法は、さらに、前記繊維材料を乾燥させる工程を含むことができる。この工程は、別の容器で実施されてもよいが、前の工程と同じ容器で簡便に実施されてもよい。乾燥工程は、約35℃~約120℃で前記繊維材料を蒸気乾燥させるか、又は約35℃~約120℃の温度の圧縮熱気で繊維材料を処理することを含む。工程に従って前記繊維材料を処理する前に、容器を約35℃~約120℃の温度、すなわち、乾燥工程中に適用されるのと同じ温度まで予熱することが有益である場合がある。前記乾燥工程の間、前記繊維材料は、陽圧処理PPに供されて、前記繊維材料中に蒸気を押し込み、続いて陰圧処理VACが行われ、前記繊維材料から蒸気を抜き取ることができる。前記乾燥工程の間、陽圧処理PPを適用した後、陰圧処理VACを適用する工程は、前記繊維材料束内に熱運動を生じさせて急速乾燥を達成するために、1回又は2回、さらにはそれ以上繰り返してもよい。好ましくは、前記乾燥工程の間に、陽圧処理PPを適用し、続いて陰圧処理VACを適用する工程を2回繰り返す。
【0036】
乾燥中の陽圧処理PPの間に加えられる圧力は、一般に約101.35kPaを超え、例えば、約800kPaを超え、又は約875kPa~約1724kPaである。正確な圧力値は、繊維材料サイズ及び前記材料の包装条件に依存し、当業者によって容易に適応させることができる。
【0037】
乾燥中の前記圧力処理VACの間に加えられる圧力は、約101.325kPa未満、好ましくは約85kPa以下、より好ましくは約50kPa以下、最も好ましくは約30kPa以下の真空を加えることを含む。
【0038】
本発明による乾燥工程は、繊維材料の内側で急速に高温に到達することを可能にし、水蒸気を容器内の前記繊維材料(魚網束等)から速やかに除去できるようにするため、繊維材料の外側の凝縮物の量を最小にするという利点を提供する。また、本発明による乾燥工程の条件下で繊維材料を乾燥させることにより、前記材料は、触覚に対して外側は乾燥していながら内部はまだ湿潤していて、その色を維持する。
【0039】
本発明による乾燥工程は、繊維材料、例えば、漁網を束の形態で乾燥させても、迅速かつ効率的な乾燥を可能にし、商業的な大規模な用途に特に有利である。乾燥工程の時間は、繊維材料のサイズ及び特性によって異なる可能性があるが、「空気乾燥」よりもかなり速く、典型的には約3時間未満、より好ましくは約2時間未満、最も好ましくは約1時間未満である。
【0040】
本発明はさらに、本発明の方法によって得られる、防汚性を有する海洋又は海底繊維材料を提供する。この繊維材料は繊維中の均質な銅分布と、長期間の防汚活性を特徴とする。したがって、海洋及び海底での使用に特に適している。
【0041】
本発明はさらに、海洋及び海底繊維材料の生物付着を抑制するための、本明細書に定義される防汚配合物の使用を提供する。
【0042】
本発明はさらに、海洋及び海底繊維材料の生物付着を抑制するための、本発明の方法における本明細書に定義される防汚配合物の使用を提供する。
【実施例】
【0043】
<粒径の決定方法>
平均粒径及び粒径分布は、顕微鏡(SEM)、ふるい分け、沈降技術、コールターカウンター、レーザー回折法、又は透過法技術等の当業者に知られた従来の技術によって決定することができる。
【0044】
[実施例1:本発明による防汚配合物の調製]
【0045】
【0046】
このCu2O分散液を防汚配合物の調製に用いた。
【0047】
【0048】
表2の防汚配合物の粒径分布プロファルをレーザー散乱分析により決定した。得られた粒径分布プロファィル(全試料に対する粒子の累積%の関数としての粒径)を
図1に示す。
【0049】
そのプロファイルから粒径の中央値及び平均値を算出したところ、それぞれ約0.81196μm及び約0.98811μmであった。選択した累積%での粒径の値を表3に示す。d値、特に、d10、d50、及びd90は前記プロファイルから算出されており、与えられたd値より小さい粒径を有する、全試料の粒子のそれぞれ累積10%、50%及び90%を表す。表3からわかるように、得られた値はd10値0.4936μm、d50値0.8120μm、d90値1.4562μmである。
【0050】
【0051】
この防汚配合物を以下の実施例2及び3で使用した。
【0052】
[実施例2:魚網の比較]
本発明の方法により防汚配合物を魚網に施用する(「実験網」)実行可能性を、実施例1の防汚配合物への網(「対照網」)の単なる浸漬と比較した。この比較試験に用いた魚網は、一般に用いられているナイロン製の魚網であった。
【0053】
実験用の網として、約30cm×30cmのナイロン網の小切片を切断し、束に巻いた。束を、表2による、防汚配合物を充填したアルミパン中に置いた。次いで、パンを、取り付け具を備えた実験室規模の圧力容器に入れ、真空の引き込み及び圧力の印加の両方を可能にした。約0kPaの真空を30分間適用した。30分後、真空を解除し、流出させて防汚配合物を除去した。次に網を再び約0kPaの真空に30分間かけ、ナイロンに吸収されなかった防汚配合物を除去した。その後、圧力容器から網を取り出し、室温で一晩乾燥させてから巻きを解いた。
【0054】
対照網については、ナイロンネットの小切片を切断したが、巻かなかった。対照網を、実験網の処理に使用したものと同じ防汚配合物に浸漬し、乾燥させた。
【0055】
乾燥させた対照網及び乾燥させた実験網の両方を海(ウエストパームビーチフロリダ)の試験ラフトに置き、全期間6か月間について、2か月毎の付着物検査(2か月、4か月、6か月後の検査)により付着物に対する有効性を比較した。各処理の防汚配合物のピックアップの比較(実験網及び対照網)を表3にまとめた。
【0056】
【0057】
比較のために、実験網及び対照網の処理に使用されるが、防汚添加剤を含まない配合物に浸した網を、陰性対照(「陰性対照」)として使用した。
【0058】
図2~4は上記の実験結果を示し、海水に2、4、6か月浸漬後のそれぞれの網を示したものである。表4は、汚損された表面の%としての観察された汚損の程度の評価を示す。
【0059】
【0060】
表4から容易に導き出されるように、本発明の方法及び従来の浸漬法を介して防汚配合物を施用することにより、海中に浸漬した6か月後には、同等に清浄な網が達成される。
【0061】
[実施例3:魚網における防汚海洋塗料の浸透深度]
魚網への海洋防汚配合物の浸透深度を、2つの異なる適用方法及び2つの異なる防汚配合物について比較した。使用した2つの防汚配合物は、本発明の防汚配合物(「実験」)、すなわち、表2に従うもの、及び「競合者の」防汚配合物(「比較」)であった。「競合者の防汚配合物」は、典型的な市販の防汚配合物の代表であり、本発明の防汚配合物(「実験」)と非常に類似しており、同じ濃度の同じ活性剤を含有し、活性剤が微粉化形態でない点で主に本発明の防汚配合物と異なる。比較した2つの方法は、本発明の真空方法(vac、実験)及び従来の浸漬法(dip、比較)であった。
【0062】
【0063】
光学画像、SEM EDSマッピング及びライン走査結果に基づいて、各サンプルの防汚塗料の浸透深度を分析した。
【0064】
光学顕微鏡:漁網の糸を炭素テープで包み、断面を切断した。炭素テープを用いてほころびを避け、切断時の束状の糸の形状を維持した。
【0065】
元素分析:エネルギー分散分光法(EDS)による走査型電子顕微鏡(SEM)を元素組成の分析に用いた。断面の漁網糸をSEM金属スタブに取り付けた炭素テープに載せた。Au/Pdの20nm層をサンプル上にスパッタリングし、電子伝導率を増加させた。
【0066】
光学画像は各漁網サンプルの全断面上で撮影した。Cu元素分布上のEDSマッピング及びライン走査を120倍の倍率で行い、これは糸の外表面から中心に向かうCu濃度を図示する。EDS Cu分布図では、より高いCu濃度はマップ中のより明るいスポットによって示される。EDSライン走査結果では、より高いCu濃度は、ある距離でより高いCu計数により示される。これは、計数対外面からの距離のグラフにより示される。
【0067】
魚網塗料浸透深度/限界は、EDSマッピング及びライン走査の両方によって、糸の外表面からその中心に向かってのCu濃度の急激な減少によって示される。外側縁からの距離が増加するにつれて全体の計数強度が急に下がるグラフは、防汚塗料が魚網に浸透しなかったことを示す。全体の計数強度が、深さが増すのと相対的に同じに留まったグラフは、防汚塗料が浸透したことを示す。
【0068】
図5~
図16は、漁網サンプル番号1~12の各々について、光学画像、SEM画像、Cu分布図及びEDSライン走査結果の解析データを示したものである。表6は、サンプル1~12のそれぞれについて、防汚塗料浸透深度測定の結果をまとめたものである。
【0069】
【0070】
表6から容易に導き出されるように、本発明に従って処理されたサンプル(実験真空、試料番号1~3)のみが、防汚組成物によって完全かつ均質に浸透される。
【0071】
[実施例4:網の蒸気乾燥]
市販ナイロン網サンプルを幅1.2m、長さ6.1mの断片に6回切断した。これらの網断片を半分に折り畳み、円筒形の束に巻いた。束の長さは約0.66mであり、直径は約0.20mであった。実施例1の防汚配合物を調製し、以下の方法で使用した。
【0072】
網の束を次の真空/圧力/真空(VPV)処理に供した。すなわち、27.1kPaで5分間初期真空を加え、続いて容器に防汚配合物を導入した。束を実施例1に従った防汚配合物で処理した。真空を解除した後、1034kPaで15分間陽圧処理を施した。圧力を解除した後、残った防汚配合物を容器から除去し、17kPaで最終真空を30分間加えた。最終真空期間中の10分間隔後の重量変化に基づいて、30分の最終真空時間を決定した。各チャージの総処理時間は1時間未満であった。
【0073】
終了後、除去した防汚配合物を翌日の使用のため夜間保存した。防汚配合物から固形物を撹拌することなく、16時間後の貯蔵槽底部に固体の沈降がないこと、すなわち、溶液の外観及び安定性に不適合が認められないことに言及する。
【0074】
次に、真空及び蒸気の組み合わせを用いて、実験束を容器内で蒸気乾燥させた。実験束の蒸気乾燥中、実験中の容器内に3つの温度プローブを配置し、温度上昇速度を監視した。1つは束の中心(T3)内にあり、もう1つは束の表面(T4)の下2.54cmにあり、最後は容器の空いた空間(T2)に置いた。容器内の圧力も、圧力/真空伝達装置を用いて記録した。
【0075】
蒸気乾燥の前に、容器を55℃の温度まで蒸気で予熱した。その後、蒸気乾燥処理で真空/真空処理を2回繰り返した。時間の関数としての蒸気乾燥処理の得られた温度及び圧力プロファイルを、それぞれ
図17及び
図18に示す。
図17からわかるように、温度はわずか10分後に網の束全体で100℃近くに達した。
【0076】
蒸気乾燥処理では、集められた凝縮物の量は著しく少なく(1リットル未満)、表7に示すように、方法中に防汚配合物から除かれた殺生物剤の量は非常に少なかった。さらに、束の色は残り、網の外面は接触に対して非常に乾燥していた。有利には、総乾燥処理時間は1時間未満であった。
【0077】
【0078】
本発明による防汚配合物による実験束の防汚処理、及びそれに続く上記の蒸気乾燥の結果を、以下の表8の試験2及び4にまとめた。一方の束を対照束として用い、実験束と同様の方法で(すなわち、真空/圧力方法を用いて圧縮空気で)乾燥させたが、周囲温度下(すなわち、加熱なし)で乾燥させた。その束に関する結果を表8の試験6にまとめた。
【0079】
【0080】
一般に、実験結果は、十分な溶液の取り込み、網の束の外側から内側への均一な溶液の浸透、及び実験網の束の表面上の残留がほとんどないか全くないこと、すなわち、非常に少量の縮合物、及び処理終了後のしたたりがほとんどないか又はまったくないことを示す。蒸気乾燥の全体的な処理は速く、約1時間未満である。
【0081】
反復処理チャージを経た処理溶液は、防汚活物質含有率、粒度分布、粘度及び沈降速度等の有意な化学的及び物理的特性変化を示さなかった。
【0082】
さらに、実験網の束は網上で少量の凝縮物で均一な色を維持し、脆くはなく、束は、外側は接触に対し乾燥していたが、内部はまだ湿った状態であった。データは、容器内で蒸気乾燥を用いることにより、液体の大部分を除去でき、乾燥後に約25%の水分を残すことを明確に示す。
【国際調査報告】