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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-05
(54)【発明の名称】分散集中型自動運転システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 9/50 20060101AFI20220628BHJP
   G06F 11/20 20060101ALI20220628BHJP
   B60W 50/023 20120101ALI20220628BHJP
【FI】
G06F9/50 150A
G06F11/20 620
B60W50/023
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564324
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(85)【翻訳文提出日】2021-10-27
(86)【国際出願番号】 CN2020086845
(87)【国際公開番号】W WO2020207504
(87)【国際公開日】2020-10-15
(31)【優先権主張番号】201910360926.4
(32)【優先日】2019-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521471280
【氏名又は名称】奥特酷智能科技(南京)有限公司
【氏名又は名称原語表記】AUTOCORE INTELLIGENT TECHNOLOGY (NANJING) CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 289, Building 12 No. 29, Buyue Road, Qiaolin Street, Pukou District Nanjing, Jiangsu 211800, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】張 ▲やん▼
(72)【発明者】
【氏名】陳 誠
(72)【発明者】
【氏名】劉 潔
【テーマコード(参考)】
3D241
5B034
【Fターム(参考)】
3D241BA62
3D241CD24
3D241CE04
3D241DB01Z
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DC33Z
5B034BB02
(57)【要約】
【課題】 分散集中型自動運転システムを提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明は、センサー処理モジュールと、パーセプションポジショニングモジュールと、認識対象物検出モジュールと、意思決定モジュール、プランニングモジュールと、車両制御モジュールとを備えた分散集中型自動運転システムを提供する。データドメイン及び制御フローを明確に区分け、各機能システムの実現についてモジュラー設計を実施し、各モジュールがコンピューティングプラットフォームの負荷に応じて対応するデータドメインのコントロールユニットにデプロイする。本発明は、異なるシナリオの異なるコンピューティングニーズについて、分散型設計を通じて、集中演算を異なるコンピューティングユニットモジュールに分散し、システムの安定性、効率及び並行性を大幅に向上することで、システムの全体的な性能向上を実現する。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散集中型自動運転システムであって、データドメイン及び制御フローを明確に区分け、各機能システムの実現についてモジュラー設計を実施し、各モジュールがコンピューティングプラットフォームの負荷に応じて対応するデータドメインのコントロールユニットにデプロイする分散集中型自動運転システムであって、分散集中型自動運転システムの実現は、次のステップ1~7を含み、
ステップ1:システムバスタイプに従って、機能モジュールを定義し、システム機能モジュールの記述は、拡張可能なマーク付け言語の形式を用い、各機能モジュールに対して、インターフェース、達成すべき性能指標、完了した機能、通信インターフェースとデータソース、及び機能の安全と優先順位を含んで定義や記述し、
前記機能モジュールは、センサー処理モジュールと、パーセプションポジショニングモジュールと、認識対象物検出モジュールと、意思決定モジュール、プランニングモジュールと、車両制御モジュールとを備え、センサー処理モジュールはライダー処理と、ビジョン処理と、超音波レーダーと、慣性計測ユニットと、GPSナビゲーションと、走行距離計とを備え、
ステップ2:データドメインを定義し、システム内のその他の機能モジュールの使用に提供するため、指定された機能モジュールの完了をサポートするためのデータソース種類とチャネル、及び機能モジュールのデータアウトプットを強調表示し、各機能モジュール間のデータフロー交換は対応するデータドメイン容量内でなければならず、データドメインの物理的なキャリア表現形式が物理的なバスインターフェースであり、
前記ライダー処理モジュールは、点群を出力するために用いられ、
前記認識対象物検出モジュールは、シナリオ検出、対象物検出、道路検出及び交通標識検出に用いられ、また点群、カメラ映像及び車両のグローバル位置を出力し、対象物の位置、道路ルール及び道路案内を出力するためにも用いられ、
前記パーセプションポジショニングモジュールは、点群、GPS緯度経度、IMU慣性計測ユニット、走行距離計及び高精度地図を入力し、車両のグローバル位置を出力するために用いられ、
前記意思決定モジュールは、道路案内、車両のグローバル位置、ダイナミックマップ、スタティックマップを入力し、運転行動の意思決定、車線ルール、ダイナミックマップ上の対象物の位置を出力するために用いられ、
前記プランニングモジュールは、利用可能なスペースと、車線プランニングと、交通プランニングと、経路プランニングと、経路追従とを備え、車両のグローバル位置、運転行動の意思決定、車線ルール、ダイナミックマップ上の対象物の位置及び道路案内を入力し、車両の追従可能経路を出力するために用いられ、
前記車両制御モジュールは、車両の追従可能な経路、車両の現在のセンサー制御状態を入力し、車両アクチュエータの制御コマンドを出力するために用いられ、
ステップ3:コントロール及びメッセージフローを定義し、クライアントサーバモデル又はメッセージパブリッシュ/サブスクライブモデルを用い、
ステップ4:コンピューティングユニットのマッピングで、データドメインの区分けを参照し、コンピューティング能力に対する要件、性能指標の評価を通じて、機能モジュールを選択した指定システムプラットフォームにマッピングし、現在使用可能なシステム全体のリソースにより、マッピングの意思決定を下し、
ステップ5:機能モジュールの実現で、モジュールの静的定義及びデータドメイン定義に従って、ハードウェア依存層、ハードウェア抽象化層及び独立ソフトウェア層に分けられ、機能モジュールの物理的実現形式は1つ以上のタスクとして表され、これらのタスクが独立又は1つの独立ソフトウェア層コンテナ内で協調して実行され、
ステップ6:スケジューリングシステムを設計し、スケジューリングシステムは、複数のコンピューティングタスクをこのコンピューティングユニットの独立ソフトウェア層に割り当て、コンピューティングユニット間のタスク割り当て及び協調は、各コンピューティングユニットに分散されたスケジューリングシステムがネゴシエートして完了し、
システムに複数のマスタスケジューリングユニット及びコンピューティングユニットが配置され、前記マスタスケジューリングユニットは、システムの全てのコンピューティングユニットのリソース情報を管理し、コンピューティングユニットのリソース及びコンピューティングタスク要求に従い、各コンピューティングユニット上のスケジューリングミドルウェアとネゴシエートし、コンピューティングタスクの割り当てを完了させ、前記コンピューティングユニットが異なるチップ、異なるハードウェアシステム上に分散され、分散型コンピューティングスケジューリングコラボレーションによって完成し、
前記コンピューティングタスク要求は、データ要求、性能要求及びリソース要求、自動運転システム応用を完成させる全てのセンサーコラボレーション、システムが実際に配置されるセンサー能力、コンピューティング能力、複数のコンピューティングプラットフォームが共存する場合の適応構成を含む、
分散集中型自動運転システム。
【請求項2】
前記コンピューティングユニットのリソース情報は、全ての予備マスタスケジューリングユニットにバックアップし、マスタスケジューリングユニットのいずれかが故障した際、他の予備マスタスケジューリングユニットに置き換えられ、分散集中型自動運転システム内の複数のコンピューティングユニットがコンピューティングクラスターを形成し、グクラスターのいずれかのユニットに問題がある場合、システムの冗長性設計を通じて状態が良好で、コンピューティング容量を有するその他のコンピューティングユニットは人間の介入なしに自動的に切り替えて置き換える冗長性設計ステップ7をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の分散集中型自動運転システム。
【請求項3】
分散集中型自動運転システムの冗長性は、コンピューティングユニットの物理的な冗長性又は機能モジュールのソフトウェアシステムコンテナの多重化を通じて実現し、分散集中型システムの動的拡張はコンピューティングリソース及びコンピューティングタスクを抽象的に定義し、システムのニーズに応じて対応するソフトウェアまたはハードウェアモジュールを追加して実現されることを特徴とする、請求項2に記載の分散集中型自動運転システム。
【請求項4】
冗長コンピューティングユニットは、本ユニットに故障があるかどうか、システムコンピューティングに参加できるかどうかをその他のユニットに知らせるためのアクティベーションステータス信号を生成し、アクティベーション信号状態分析の使用を介して、マスタスケジューリングユニットがシステムの各コンピューティングユニットにコンピューティングタスクを割り当てることができるかどうかを正確に知ることができることを特徴とする、請求項3に記載の分散集中型自動運転システム。
【請求項5】
前記ステップ1において、前記機能モジュールは、同じハードウェアシステムで実現するか、又は異なるハードウェアハードウェアに動的に移動して実行することを特徴とする、請求項1に記載の分散集中型自動運転システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動運転技術分野に関し、特に、分散集中型自動運転システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動運転車は、周辺環境を認識できるため、環境内において人間の介入なしに自ら運転することが可能である。自動運転システムは、パーセプションポジショニング、意思決定、プランニング及びコントロールを含む複雑なアルゴリズムにより実現される。自動運転システムの実現は、通常様々なタイプのセンサー、コントローラ及びコンピューティングシステムとの相互作用が必要である。これらの複雑な演算システム及び様々なサブシステムの相互作用を処理すると共に性能を保証し、データ転送コストを削減するため、通常集中演算方法が用いられている。集中処理方法は、様々な大量のデータの相互作用の単純化を図るが、実際の実現過程で往々にしてシステムの保守及び拡張が困難になり、かつシステムのコスト制御を可能とするロバスト性を実現することは困難であった。特に、コアチッププラットフォームの選択制限にも反映されている。
【0003】
集中演算方法の採用は、性能の保証及びデータ転送コストの削減が可能であるが、自動運転システムにかかわるセンサー及び入力データのタイプ及び種類が複雑で大量であるため、このようなシステムになるとシナリオグルチッププラットフォームへの要求が非常に高いだけでなく、実施過程でシステム内の主要なリスクノードと性能のボトルネックが非常に容易に形成されてしまう。かつ、システムの容量拡張の実現も難しい。
【0004】
分散集中型自動運転システムは、モジュラーソフト・ハードウェアのコンピューティングユニットを構築することにより、自動運転システムを論理演算に従って一連の配置可能、再構築可能で、実際のチップ及びハードウェアの能力に応じてデプロイできるモジュールに分解する。合理的な設計により、ソフトウェア及びハードウェアモジュール間の相互依存性を最小限に抑え、分散型システムの実現方法を運用することで、柔軟なスケーラビリティを実現し、システムソフト・ハードウェアの冗長性を実現しやすいことからシステムのロバスト性を確保する。在来の自動運転プラットフォームの集中型演算への依存を解決し、システム内の単一性能のボトルネック及び安定性のリスクポイントを排除し、分散型演算を介してシステムの冗長性設計及び便利なシステム能力の拡張を実現する。異なる自動運転応用のシナリオについてソフト・ハードウェアの実現及びデプロイメント方法をカスタマイズすることもできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、研究開発過程で蓄積された豊富な実務経験及び専門知識を踏まえ、さらに研究や革新化させることで、良好なデータドメインと制御フローの区分け及び情報の相互作用を通じて分散集中型自動運転システムの設計方法及び実現ルートを提案している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、データドメイン及び制御フローを明確に区分け、各機能システムの実現についてモジュラー設計を実施し、各モジュールがコンピューティングプラットフォームの負荷に応じて対応するデータドメインのコントロールユニットにデプロイできる分散集中型自動運転システムを提供する。
【0007】
本発明の分散集中型自動運転システムは、センサー処理モジュールと、パーセプションポジショニングモジュールと、認識対象物検出モジュールと、意思決定モジュール、プランニングモジュールと、車両制御モジュールとを備え、ここで、
センサー処理モジュールは、ライダー処理と、ビジョン処理と、超音波レーダーと、慣性計測ユニットと、GPSナビゲーションと、走行距離計とを備え、ライダー処理モジュールは点群を出力するために用いられ、
パーセプションポジショニングモジュールは、点群、GPS緯度経度、IMU慣性計測ユニット(加速度、角速度)、走行距離計及び高精度地図を入力し、車両のグローバル位置を出力するために用いられ、
認識対象物検出モジュールは、シナリオ検出、対象物検出、道路検出及び交通標識検出に用いられ、また点群、カメラ映像及び車両のグローバル位置を出力し、対象物の位置、道路ルール及び道路案内を出力するために用いられ、
プランニングモジュールは、利用可能なスペースと、車線プランニングと、交通プランニングと、経路プランニングと、経路追従とを備え、車両のグローバル位置、運転行動の意思決定、車線ルール、ダイナミックマップ上の対象物の位置及び道路案内を入力し、車両の追従可能経路を出力するために用いられ、
車両制御モジュールは、車両の追従可能な経路、車両の現在のセンサー制御状態を入力し、車両アクチュエータの制御コマンドを出力するために用いられる。
【0008】
具体的にシステム全体には、複数のマスタスケジューリングユニットが含まれ、マスタスケジューリングユニットのいずれかが故障した際、他の予備マスタスケジューリングユニットに置き換えられ、マスタスケジューリングユニットは、システムの全てのコンピューティングユニットのリソース情報を管理し、全ての予備マスタスケジューリングユニットにバックアップし、かつマスタスケジューリングユニットはコンピューティングユニットのリソース及びコンピューティングタスク要求(データ要求、性能要求及びリソース要求を含む)に従い、各コンピューティングユニット上のスケジューリングミドルウェアとネゴシエートし、コンピューティングタスクの割り当てを完了させる。コンピューティングユニットは、物理的に同じハードウェア又はチッププラットフォーム上にあるか、異なるチップ、異なるハードウェアシステム上に分散されていることもでき、分散型コンピューティングスケジューリングのコラボレーションによって完成する。自動運転システム応用を完成させる全てのセンサーコラボレーション、システムが実際に配置されるセンサー能力、コンピューティング能力、複数のコンピューティングプラットフォームが共存する場合の適応構成。
【0009】
具体的に分散型システムの冗長性は、コンピューティングユニットの物理的な冗長性又は機能モジュールのソフトウェアシステムコンテナの多重化を通じて実現することができる。分散集中型システムの動的拡張は、コンピューティングリソース及びコンピューティングタスクを抽象的に定義し、システムのニーズに応じて対応するソフトウェアまたはハードウェアモジュールを追加して実現される。
【0010】
具体的に冗長性設計では、分散型管理システムモジュールが本ユニットに故障があるかどうか、システムコンピューティングに参加できるかどうかをその他のユニットに知らせるためのアクティベーションステータス信号を生成し、アクティベーション信号状態分析の使用を介して、マスタスケジューリングユニットはシステムの各コンピューティングユニットにコンピューティングタスクを割り当てることができるかどうかを正確に知ることができる。
【0011】
本発明の分散集中型自動運転システムの実現ステップは、ステップ1~7を含む。すなわち、
ステップ1:機能モジュールの定義
システムバスタイプに従って、機能モジュールを定義する。機能モジュールは、同じハードウェアシステムで実現することも、異なるハードウェアハードウェアに動的に移動して実行することもできる。システム機能モジュールの記述は、標準XML(拡張可能なマーク付け言語)形式を用い、各機能モジュールインターフェースに対して、達成すべき性能指標、完了した機能、通信インターフェース及び依存データソースを含んで定義や記述する。モジュールの静的記述は、システムその他の部分に対するモジュールの依存関係を決定し、スケジューリングシステムの被スケジューリングユニットとして、その他のサブシステムと相互作用して指定されたシステム機能を完了する。機能モジュールの定義は、ソフトウェア機能及びハードウェア機能の2つの部分に分かれている。大部分のモジュール機能の実現は、ソフト・ハードウェアのコラボレーションによって完了する。
【0012】
ステップ2:データドメインの定義
データドメインは、データドメインは、データ入出力の観点からの機能モジュールの記述である。システム内のその他の機能モジュールの使用に提供するため、指定された機能モジュールの完了をサポートするためのデータソース種類とチャネル、及び機能モジュールのデータアウトプットを強調表示する。
【0013】
各機能モジュール間のデータフロー交換は、対応するデータドメイン容量内でなければならない。データドメインの物理的なキャリア表現形式は、CANバス、FlexRay、イーサネット等の物理的なバスインターフェースである。
【0014】
ステップ3:コントロール及びメッセージフローの定義
クライアントサーバモデル及びメッセージパブリッシュ/サブスクライブモデル。クライアントサーバモデルのコントロール及びメッセージフローには、明確な送信者と受信者があり、所定の状態シーケンスに従ってモジュール間の通信要件を完了し、パブリッシュ/サブスクライブモデルのコントロール及びメッセージフローはメッセージの送信者と受信者を指定する必要がなく、このようなメッセージに関心がありサブスクライブした全てのモジュールがパブリッシャーによって発行されたメッセージ又は制御コマンドを受信できる。
【0015】
ステップ4:コンピューティングユニットのマッピング
データドメインの区分けを参照し、コンピューティング能力に対する要件、性能指標の評価を通じて、機能モジュールを選択した指定システムプラットフォームにマッピングする。このようなコンピューティングユニットは、単一のSoC(システムオンチップ)、又は同じハードウェアPCB(プリント回路基板)上にある複数のSoCsセット、または複数のハードウェアにあるPCBセットの場合がある。このマッピングは、戦略又はシステム設計者の経験を踏まえ、現在使用可能なシステム全体のリソースにより、マッピングの意思決定を下すことができる。
【0016】
ステップ5:機能モジュールの実現
機能モジュールの実現は、モジュールの静的定義及びデータドメイン定義(入出力)に従って、ハードウェア依存層、ハードウェア抽象化層及び独立ソフトウェア層に分けられる。独立ソフトウェア層は、ハードウェア抽象化層の上にあり、具体的な(マッピング後の)コンピューティングユニットのハードウェアの形態から比較的独立したソフトウェア機能を実現し、データドメイン内の入力から出力への変換を完了し、ハードウェア依存層は主にプラットフォームソフトウェアとして使用し、異なるハードウェアの形態を開発する必要があり、機能モジュールのハードウェア依存層がコンピューティングユニットのマッピングと密接に関連し、独立ソフトウェア層とハードウェア抽象化層はコンピューティングユニットのマッピングから大きく独立する。
【0017】
機能モジュールの物理的実現形式は、1つ以上のタスクとして表され、これらのタスクが独立又は1つの独立ソフトウェア層コンテナContainer内で協調して実行される。
【0018】
ステップ6:スケジューリングシステムの設計
スケジューリングシステムは、複数のコンピューティングタスクをこのコンピューティングユニットの独立ソフトウェア層に割り当て、コンピューティングユニット間のタスク割り当て及び協調は、各コンピューティングユニットに分散されたスケジューリングシステムがネゴシエートして完了する。
【0019】
ステップ7:冗長性設計
分散集中型自動運転システム内の複数のコンピューティングユニットがコンピューティングクラスターを形成し、グクラスターのいずれかのユニットに問題がある場合、システムの冗長性設計を通じて状態が良好で、コンピューティング容量を有するその他のコンピューティングユニットは人間の介入なしに自動的に切り替えて置き換える。
【発明の効果】
【0020】
本発明の分散集中型自動運転システムは、異なるシナリオの異なるコンピューティングニーズについて、分散型設計を通じて、集中演算を異なるコンピューティングユニットモジュールに分散し、システムの安定性、効率及び並行性を大幅に向上することで、システムの全体的な性能向上を実現する。
【0021】
自動車システムの一部として、安全及び安定性が最も重要な要件であり、これも集中型自動運転システムの実現方法のリスクの在り方でもある。対照的に、分散集中型自動運転は、システムの各機能モジュールを区分け、異なる物理又は論理コンピューティングユニットに分散することで、単一ノードの障害のリスクを大幅に軽減し、比較的簡単かつ低コストでモジュールレベルの冗長性設計を実現できる。
【0022】
システムデプロイメント面における分散集中型システムの柔軟性により、トレースの制御が容易になり、物理的な配置の最適化を通じてノイズと干渉を最適化するという目的を達成できる。
【0023】
モジュラーの設計は、境界が明確に定義された各サブシステムを個別に開発、テスト及び集積させることができる。
【0024】
モジュラー設計は、同時にシステム仕様、容量のアップグレードに実現手段をもたらす。部分から全体への更新及び最適化を通じて、モジュールの交換からシステム能力のアップグレード及びカスタマイズに反映される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態におけるソフトウェア機能定義実現のブロック図である。
図2図1内の機能モジュールの実現例を示す図である。
図3】スケジューリングシステムの実現例を示す図である。
図4】システムコントロール及びメッセージフローの例を示す図である。
図5】コンピューティングユニットマッピングの例を示す図である。
図6】コンピューティングユニットの冗長性設計図である。
図7】機能モジュールの冗長性設計図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本実施形態の分散集中型自動運転システムにおいて、データドメイン及び制御フローを明確に区分け、各機能システムの実現についてモジュラー設計を実施し、各モジュールがコンピューティングプラットフォームの負荷に応じて対応するデータドメインのコントロールユニットにデプロイできる。
【0027】
図1に示すように、ソフトウェア機能モジュールの定義は、独立ソフトウェア層、ハードウェア抽象化層及びハードウェア依存層に分かれてデプロイメントを実現する。図2に示すように、各機能モジュールの実現は、現在既存の実現方法をそのまま採用できる。
【0028】
スケジューリングシステムの例を図3に示し、システム全体には、1つ以上のマスタスケジューリングユニットが含まれ、マスタスケジューリングユニットのいずれかが故障した際、他の予備マスタスケジューリングユニットに置き換えられ、マスタスケジューリングユニットは、システムの全てのコンピューティングユニットのリソース情報を管理し、全ての予備マスタスケジューリングユニットにバックアップし、かつマスタスケジューリングユニットはコンピューティングユニットのリソース及びコンピューティングタスク要求(データ要求、性能要求及びリソース要求を含む)に従い、各コンピューティングユニット上のスケジューリングミドルウェアとネゴシエートし、コンピューティングタスクの割り当てを完了させる。
【0029】
図4に示すように、機能モジュールは、次の6つの層に分かれる。
4.1 センサー処理モジュール(ライダー処理モジュールと、ビジョン処理と、超音波レーダーと、慣性計測ユニットと、GPSナビゲーションと、走行距離計とを備える)
4.2 パーセプションポジショニングモジュール
4.3 認識対象物検出モジュール(シナリオ検出、対象物検出、道路検出、交通標識検出等)
4.4 意思決定モジュール
4.5 プランニングモジュール(タスクプランニング、モーションプランニング)
4.6 車両制御モジュール。
【0030】
データドメインは、次のように分かれる。
ライダー処理モジュールで、点群を入力し;
パーセプションポジショニングモジュールで、点群、GPS緯度経度、IMU慣性計測ユニット(加速度、角速度)、走行距離計及び高精度地図を入力し、車両のグローバル位置を出力し;
認識対象物検出モジュールで、点群、カメラ映像、車両のグローバル位置を入力し、対象物の位置、道路ルール、道路案内を出力し;
意思決定モジュールで、道路案内、車両のグローバル位置、ダイナミックマップ、スタティックマップを入力し、運転行動の意思決定、車線ルール、ダイナミックマップ上の対象物の位置を出力し;
プランニングモジュールで、車両のグローバル位置、運転行動の意思決定、車線ルール、ダイナミックマップ上の対象物の位置、道路案内を入力し、車両の追従可能経路を出力し;
車両制御モジュールで、車両の追従可能経路、車両の現在のセンサー制御状態を入力し、車両アクチュエータの制御コマンドを出力する。
【0031】
上記モジュールのコントロール及びメッセージフローは、データドメイン記述フローによるものとし、図4にも示されている。
【0032】
コンピューティングユニットマッピングの例を図5に示す。機能モジュールからコンピューティングユニットへのマッピングは、機能モジュールのコンピューティングに対する要件に基づいている。機能モジュールの階層化実現により、このマッピングはさまざまな異種チッププラットフォームをよくサポートさせることができ、図5内の機能モジュールソフトウェア実現におけるハードウェア依存層による異なるチップのドライバを参照する。
【0033】
コンピューティングユニットの分散型システムの冗長性は、コンピューティングユニットの物理的な冗長性を通じて実現でき、例を図6に示し、機能モジュールのソフトウェアシステムコンテナの多重化を通じて実現することもでき、例を図7に示す。
【0034】
冗長性設計では、分散型管理システムモジュールが本ユニットに故障があるかどうか、システムコンピューティングに参加できるかどうかをその他のユニットに知らせるためのアクティベーションステータス信号を生成し、アクティベーション信号状態分析の使用を介して、マスタスケジューリングユニットはシステムの各コンピューティングユニットにコンピューティングタスクを割り当てることができるかどうかを正確に知ることができる。
【0035】
(実施例)
上記分散集中型自動運転システムの動作原理は、次の通りである。
【0036】
1.機能モジュールの定義
システム機能モジュールの記述は、標準XML(拡張可能なマーク付け言語)形式を用い、各機能モジュールインターフェースに対して、達成すべき性能指標、完了した機能、通信インターフェース、依存データソース、使用するシステムバスカテゴリを含んで定義する。モジュールの静的記述は、システムその他の部分に対するモジュールの依存関係を決定し、スケジューリングシステムの被スケジューリングユニットとして、その他のサブシステムと相互作用して指定されたシステム機能を完了する。機能モジュールの定義は、ソフトウェア機能及びハードウェア機能の2つの部分に分かれている。大部分のモジュール機能の実現は、ソフト・ハードウェアのコラボレーションによって完了する。
【0037】
2.データドメインの定義
データドメインは、データドメインは、データ入出力の観点からの機能モジュールの記述である。システム内のその他の機能モジュールの使用に提供するため、指定された機能モジュールの完了をサポートするためのデータソース種類とチャネル、及び機能モジュールのデータアウトプットを強調表示する。
【0038】
各機能モジュール間のデータフロー交換は、対応するデータドメイン容量内でなければならない。データドメインの物理的なキャリア表現形式は、CANバス、FlexRay、イーサネット等の物理的なバスインターフェースである。
【0039】
3.コントロール及びメッセージフローの定義
クライアントサーバモデル及びメッセージパブリッシュ/サブスクライブモデル。クライアントサーバモデルのコントロール及びメッセージフローには、明確な送信者と受信者があり、所定の状態シーケンスに従ってモジュール間の通信要件を完了し、パブリッシュ/サブスクライブモデルのコントロール及びメッセージフローはメッセージの送信者と受信者を指定する必要がなく、このようなメッセージに関心がありサブスクライブした全てのモジュールがパブリッシャーによって発行されたメッセージ又は制御コマンドを受信できる。
【0040】
4.コンピューティングユニットのマッピング
データドメインの区分けを参照し、コンピューティング能力に対する要件、性能指標の評価を通じて、選択した指定システムプラットフォームに機能モジュールをマッピングする。このようなコンピューティングユニットは、単一のSoC(システムオンチップ)、又は同じハードウェアPCB(プリント回路基板)上にある複数のSoCsセット、または複数のハードウェアにあるPCBセットの場合がある。このマッピングは、戦略又はシステム設計者の経験を踏まえ、現在使用可能なシステム全体のリソースにより、マッピングの意思決定を下すことができる。
【0041】
5.機能モジュールの実現
機能モジュールの実現は、モジュールの静的定義及びデータドメイン定義(入出力)に従って、ハードウェア依存層、ハードウェア抽象化層及び独立ソフトウェア層に分けられる。独立ソフトウェア層は、ハードウェア抽象化層の上にあり、具体的な(マッピング後の)コンピューティングユニットのハードウェアの形態から比較的独立したソフトウェア機能を実現し、データドメイン内の入力から出力への変換を完了し、ハードウェア依存層は主にプラットフォームソフトウェアとして使用し、異なるハードウェアの形態を開発する必要があり、機能モジュールのハードウェア依存層がコンピューティングユニットのマッピングと密接に関連し、独立ソフトウェア層とハードウェア抽象化層はコンピューティングユニットのマッピングから大きく独立する。
【0042】
機能モジュールの物理的実現形式は、1つ以上のタスクとして表され、これらのタスクが独立又は1つの独立ソフトウェア層コンテナContainer内で協調して実行される。
【0043】
6.スケジューリングシステムの設計
スケジューリングシステムは、複数のコンピューティングタスクをこのコンピューティングユニットの独立ソフトウェア層に割り当て、コンピューティングユニット間のタスク割り当て及び協調は、各コンピューティングユニットに分散されたスケジューリングシステムがネゴシエートして完了する。
【0044】
7.冗長性設計
分散集中型自動運転システム内の複数のコンピューティングユニットがコンピューティングクラスターを形成し、グクラスターのいずれかのユニットに問題がある場合、システムの冗長性設計を通じて状態が良好で、コンピューティング容量を有するその他のコンピューティングユニットは人間の介入なしに自動的に切り替えて置き換える。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、自動運転システムのために分散集中型の構想及び方法を提供し、具体的にこの技術的手段を実現する方法及びルートが非常に多く、上記は例示的な方法で提供される好ましい実施形態のみである。当業者であれば、本発明から逸脱することなく、多くの変更、改変及び置換を想到することができる。本発明を実践する過程で本明細書に記載の本発明の実施形態の様々な代替案を採用することができることを理解されたい。添付の特許請求の範囲は、本発明の範囲を規定することを意図しており、したがって、これらの特許請求の範囲及びこれらの均等物の範囲内の方法と構造を網羅する。本実施例で明確ではない各構成部分は、いずれも従来技術で実現することができる。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】