(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-05
(54)【発明の名称】皮膚疾患の治療のためのマキベリー抽出物
(51)【国際特許分類】
A61K 36/185 20060101AFI20220628BHJP
A61K 31/352 20060101ALI20220628BHJP
A61K 31/353 20060101ALI20220628BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20220628BHJP
A61K 9/28 20060101ALI20220628BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20220628BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20220628BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20220628BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220628BHJP
A61K 9/02 20060101ALI20220628BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20220628BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20220628BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220628BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20220628BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20220628BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220628BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220628BHJP
A61L 15/44 20060101ALI20220628BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20220628BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
A61K36/185
A61K31/352
A61K31/353
A61K9/20
A61K9/28
A61K9/14
A61K9/48
A61K9/12
A61K9/08
A61K9/02
A61K9/107
A61K9/16
A61P17/00
A61P17/06
A61P17/04
A61P29/00
A61P37/02
A61L15/44 100
A23L33/105
A23L2/00 F
A23L2/52 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021564541
(86)(22)【出願日】2020-05-04
(85)【翻訳文提出日】2021-12-22
(86)【国際出願番号】 EP2020062300
(87)【国際公開番号】W WO2020225202
(87)【国際公開日】2020-11-12
(32)【優先日】2019-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518367035
【氏名又は名称】アンクラム エクストラクト ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Anklam Extrakt GmbH
【住所又は居所原語表記】Johann-Friedrich-Bottger-Str. 4 D-17389 Anklam Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボンレンダー,ベルント
(72)【発明者】
【氏名】ラング,シュテファニー
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
4C076
4C081
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4B018MD08
4B018MD52
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF14
4B117LC04
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4B117LP01
4C076AA06
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4C081AA02
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4C086MA43
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZB07
4C086ZB11
4C088AB12
4C088AC05
4C088BA08
4C088CA08
4C088MA13
4C088MA17
4C088MA22
4C088MA35
4C088MA37
4C088MA41
4C088MA43
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4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZB07
4C088ZB11
(57)【要約】
【課題】本発明は、一般に、皮膚疾患の治療または予防に使用するための、天然主要活性成分であってもよいマキベリーに関する。
【解決手段】本明細書に開示される特定の実施形態は、特に、皮膚疾患、特にヒトの皮膚炎、アトピー性皮膚炎(神経皮膚炎)、日光皮膚炎、湿疹、手湿疹、扁平苔癬、エリテマトーデス、乾癬、蕁麻疹、かゆみ、疥癬、しみ、雀卵斑および乾燥/アトピー性皮膚の予防および治療に用いられる。特に、本発明は、上述の皮膚疾患または皮膚欠損の治療または予防に使用するための医薬または栄養補給剤の製造におけるマキベリー抽出物の使用に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚炎、アトピー性皮膚炎(神経皮膚炎)、日光皮膚炎、湿疹、手湿疹、扁平苔癬、エリテマトーデス、乾癬、疥癬、蕁麻疹の群から選択される炎症性皮膚状態の治療または予防に使用するための、マキベリー抽出物を含む医薬または栄養補給剤。
【請求項2】
かゆみの治療または予防に使用するための、マキベリー抽出物を含む医薬または栄養補給剤。
【請求項3】
前記マキベリー抽出物が主要活性成分である、請求項1または2に記載の使用のための医薬または栄養補給剤。
【請求項4】
前記マキベリー抽出物が、特に40:60(v/v)~60:40(v/v)、特に41:59(v/v)または50:50(v/v)の水/アルコール抽出剤によって得られる、請求項1~3のいずれか1項に記載の使用のための医薬または栄養補給剤。
【請求項5】
前記アルコール抽出剤が、エタノール、特に96%エタノールである、請求項4に記載の使用のための医薬または栄養補給剤。
【請求項6】
前記マキベリー抽出物が、最小限25%(w/w)のデルフィニジンと最小限35%(w/w)のアントシアニンとを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の使用のための医薬または栄養補給剤。
【請求項7】
前記マキベリー抽出物が、最小限25%(w/w)のデルフィニジンと最小限35%(w/w)のアントシアニンとを含み、前記抽出物が、
a)植物材料の粗抽出物を得るステップと、
b)前記粗抽出物を濾過するステップと、
c)前記粗抽出物を吸着剤と接触させ、前記吸着剤、特に樹脂に前記アントシアニンを吸着させるステップと、
d)前記吸着剤を洗浄するステップと、
e)前記吸着剤から前記アントシアニンを溶出して、アントシアニンが富化された組成物を得るステップと、
によって得られる、請求項1~6のいずれか1項に記載の使用のための医薬または栄養補給剤。
【請求項8】
ステップd.)で水を使用し、ステップe.)でエタノールを使用する、請求項7に記載の使用のための医薬または栄養補給剤。
【請求項9】
ステップa.)の植物材料が、果物および/またはベリーから選択される、請求項7に記載の使用のための医薬または栄養補給剤。
【請求項10】
ステップc.)からステップd.)までの前記吸着剤が、樹脂、特にポリマー樹脂またはポリスチレン樹脂である、請求項7に記載の使用のための医薬または栄養補給剤。
【請求項11】
適切な場合には、特に糖衣錠、錠剤、フィルムコーティング錠、粉末剤、カプセルまたは希釈液の形態での適切な担体物質、特に滴剤、ジュースまたはシロップ、軟膏、乳剤、粒状剤、粉末剤、点鼻スプレー、液体または固体の吸入製剤、圧迫包帯、創傷および歯肉の被覆、タンポナーデ、扁桃塗布液、うがい液、リンス液、注射剤、輸液、顆粒、腸溶錠、トローチ、懸濁液、湿布、点鼻薬、吸入剤、ローション、座剤、経腸栄養剤を含む製剤を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の使用のための医薬または栄養補給剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、皮膚疾患の治療または予防に使用するための、天然主要活性成分であってもよいマキベリーに関する。本明細書に開示される特定の実施形態は、特に、皮膚疾患、特にヒトの皮膚炎、アトピー性皮膚炎(神経皮膚炎)、日光皮膚炎、湿疹、手湿疹、扁平苔癬、エリテマトーデス、乾癬、蕁麻疹、かゆみ、疥癬、しみ、雀卵斑および乾燥/アトピー性皮膚の予防および治療に用いられる。特に、本発明は、上述の皮膚疾患または皮膚欠損の治療または予防に使用するための医薬または栄養補給剤の製造におけるマキベリー抽出物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの最大の器官として、皮膚は様々な生体機能を発揮する。たとえば皮膚は、寒さ、暑さ、放射線、化学物質の影響および病原体からの保護を提供する。皮膚がこのバリア機能を十分に発揮できなくなったとき、局所刺激や、さらには全身に影響を与える症状が生じる可能性がある。
【0003】
人体のバリア器官として、皮膚、主に表皮は、特に外部の影響にさらされる。このバリア機能は特に皮膚脂質によって維持される。スフィンゴ糖脂質、セラミド、ステロールおよびステロールエステル、脂肪酸、トリグリセリド、n-アルカンまたは様々な極性脂質などのこれらの表皮脂質は、角化プロセス中に放出される。
【0004】
皮膚の最適状態では、皮膚脂質と皮膚水分との間でバランスがとれている。このバランスは、透過性、水和性、弾性、再生能力または、環境の影響および様々な毒物に対する抵抗性などの皮膚の主要な特性を決める上で役割を果たしている。このように、皮膚脂質、特に表面脂質は極めて重要である。
【0005】
皮膚の外部脂質膜は、様々な脂質と、尿素、脂肪酸、無機塩および水などの汗腺の分泌物との大変複雑な組成を有するエマルションによって形成されている。油相の成分は、主として特にスクアレン、コレステロールおよびコレステロールエステル、ワックスエステル、トリグリセリドならびに遊離脂肪酸を含む皮脂腺からの分泌物である。
【0006】
マキベリーは、チリワインベリー(アリストテリア・チレンシス(Aristotelia chilensis))とも呼ばれ、チリおよびアルゼンチンに位置するパタゴニアの原生林にのみ生育する天然のベリーである。現在まで、産業栽培はほとんど行われておらず、このベリーの大部分は、依然として野生植物から採取されている。パタゴニア地域はアンデス山脈に近く、寒い夜、暑い昼および強烈な紫外線照射という極めて過酷な気候を示す。これらの条件は、マキベリーに特有のファイトケミカルプロファイルをもたらす。この果物は、その驚くべき健康促進効果と貴重な成分とで知られているため、深紫から黒のこの小さなベリーは、先住民のマプチェインディアンによって何世紀にもわたって摂取されてきた。今日では、マキベリーは、その優れた抗酸化作用によって、枸杞(クコ)およびアサイーに次いで「スーパーフルーツ」とみなされている。チリでは、このベリーはジャム、ジュース、アイスクリームおよびリキュールに用いられており、日常生活の一部である。
【0007】
果物や野菜に含まれるポリフェノールなどの天然化合物が広範囲の生物学的効果および薬理効果を有することを示唆する証拠が増えてきている。
【発明の概要】
【0008】
スキンケアの提供に加えて、皮膚疾患、特に、ヒトの皮膚炎、アトピー性皮膚炎(神経皮膚炎)、日光皮膚炎、湿疹、手湿疹、扁平苔癬、エリテマトーデス、乾癬、蕁麻疹、かゆみ、疥癬、しみ、雀卵斑および乾燥/アトピー性皮膚の治療に適した組成物、特に医薬または栄養補助食品を提供することが本発明の目的である。
【0009】
驚くべきことに、本発明者らは、本明細書に開示されたマキベリー抽出物が、皮膚の治癒および再生を促進し、皮膚炎、特に炎症性皮膚状態を防止することを見出した。
【0010】
したがって、対象者における炎症性皮膚状態の治療のための方法であって、それを必要とする対象者に、本明細書に記載のマキベリー抽出物の有効量を投与することを含む方法が本明細書に開示される。
【0011】
対象者は、皮膚欠損または皮膚疾患を患っていてもよく、またこのような欠損または疾患を受けやすいか、またはその素因を有していてもよい。以下の用語は、本発明による上述の疾患を規定する:
皮膚炎は、湿疹としても知られ、皮膚の炎症を引き起こす疾患群である。これらの疾患は、かゆみ、発赤および発疹を特徴とする。
【0012】
特にアトピー性皮膚炎(神経皮膚炎)は、遺伝的感受性と環境要因との間の相互作用によって生じる多因子性炎症性皮膚疾患である。
【0013】
日光皮膚炎はUV照射によって引き起こされ、局所炎症および一次性痛覚過敏を引き起こす。
【0014】
皮膚炎という用語は、アレルギー性接触皮膚炎、刺激性接触皮膚炎およびうっ滞性皮膚炎も意味する。
【0015】
扁平苔癬は、皮膚および粘膜を含む扁平上皮細胞層に影響を与える慢性炎症性疾患である。
【0016】
エリテマトーデスは、膠原病グループに由来する全身性自己免疫疾患である。SLE(全身性エリテマトーデス)の特別な特徴は、いわゆる蝶形紅斑である。いずれにせよ炎症が関与している。
【0017】
乾癬は、自然免疫細胞および獲得免疫細胞によって放出される炎症性メディエーターの過剰産生によってもたらされる疾患プロセスである。
【0018】
疥癬は、小児における感染に起因する3つの最も一般的な炎症性皮膚障害のうちの1つである。
【0019】
蕁麻疹は、6週間以上続く再発性のかゆみを伴う膨疹および/または血管浮腫の発症を特徴とする疾患と定義される。
【0020】
言及したすべての疾患および欠損は、Pschyrembel(たとえばhttps://www.pschyrembel.de/)で詳細に説明されている。
【0021】
マキベリー抽出物によって、疾患の治癒の割合または程度を高めてもよい。本抽出物または組成物によって、皮膚の治癒または再生を促進させてもよい。
【0022】
欠損または疾患は急性または慢性であってもよい。当業者は、治癒(損傷を受けたかまたは別様に欠損もしくは炎症を起こした皮膚の再建または皮膚の再生)が望ましいかまたは有益である、本明細書に開示された実施形態が関係する欠損および疾患の範囲を容易に認識するであろう。好ましい実施形態において、上述の欠損および疾患は、好ましくは、ヒトの皮膚炎、アトピー性皮膚炎(神経皮膚炎)、日光皮膚炎、湿疹、手湿疹、扁平苔癬、エリテマトーデス、乾癬、蕁麻疹、かゆみ、疥癬、しみ、雀卵斑および乾燥/アトピー性皮膚の群から選択される。
【0023】
したがって、特に、マキベリー抽出物の抗酸化的および抗炎症防御に関するアプローチは、皮膚の一次予防に重要であるが、一方でこのアプローチによってリスクを低下させ、欠損または疾患の治癒手順を改善させてもよい。さらに、マキベリー抽出物は、本実施例に示されるように、特にIL-8の媒介による特定の抗炎症作用を示すことが有利である。
【0024】
マキベリー抽出物は、原料(果物およびベリー)から得られるそれぞれの画分に基づいて、水/アルコールおよび他の溶媒によって得ることができる。このような方法は、最新技術において周知である。
【0025】
水/アルコール抽出剤は、40:60(v/v)~60:40(v/v)、特に41:59(v/v)、または50:50(v/v)の比率で用いられる。
【0026】
アルコールとして、特にエタノール、特に96%エタノール(v/v)が用いられる。
【0027】
好ましい実施形態において、マキベリー抽出物は、有効成分としてアントシアニン(糖を含む)、特にデルフィニジン配糖体(いわゆるデルフィニジン)で富化されている。特に、マキベリー抽出物は、デルフィニジン‐3‐サンブビオシド‐5‐グルコシド、デルフィニジン‐3,5‐ジグルコシド、デルフィニジン‐3‐サンブビオシドまたはデルフィニジン‐3‐グルコシドで富化されている。さらに、デルフィニジン‐3‐O‐ガラクトシド、デルフィニジン3‐O‐グルコシド、シアニジン‐3‐O‐ガラクトシド、デルフィニジン‐3‐O‐アラビノシド、シアニジン‐3‐O‐グルコシド、ペツニジン‐3‐O‐ガラクトシド、ペツニジン‐3‐O‐グルコシド、シアニジン‐3‐O‐アラビノシド、ペオニジン‐3‐O‐ガラクトシド、ペツニジン‐3‐O‐アラビノシド、マルビジン‐3‐O‐ガラクトシド、ペオニジン‐3‐O‐グルコシド、マルビジン‐3‐O‐グルコシド、ペオニジン‐3‐O‐アラビノース、マルビジン‐3‐O‐アラビノースは、マキベリー抽出物の好ましい化合物である。
【0028】
【0029】
【0030】
化学式1および表1は、いくつかのアントシアニジン(糖を含まない)を示している。
【0031】
好ましい実施形態において、マキベリー抽出物は、
a)植物材料の粗抽出物を得るステップと、
b)前記粗抽出物を濾過するステップと、
c)前記粗抽出物をポリスチレン樹脂に接触させ、前記樹脂に前記アントシアニンを吸着させるステップと、
d)前記樹脂を洗浄するステップと、
e)前記ポリスチレン樹脂から前記アントシアニンを溶出して、アントシアニンが富化された組成物を得るステップと、
によって得ることができる。
【0032】
したがって、本発明は、最小限25%(w/w)のデルフィニジンと最小限35%(w/w)の総アントシアニンとを含むように規格化されたマキベリー抽出物を指す。
【0033】
好ましい実施形態において、マキベリー抽出物は主要活性成分である。
【0034】
「主要活性成分」は、他の活性成分に加えて、本発明による組成物中に活性成分であるマキベリー抽出物が主要量で存在することを意味する。
【0035】
本明細書で使用される場合、用語「治療する」および「治療」または「予防する」および「予防」は、状態または症状を治療し、状態または疾患の形成を予防し、または別様に状態もしくは疾患または他のいかなる望ましくない症状の進展も予防し、妨ぎ、遅らせ、または回復させるためのありとあらゆる使用を意味する。したがって、用語「治療する」および「治療」または「予防する」および「予防」は、それらの最も広い意味とみなされる。たとえば、治療は、必ずしも対象者が完全回復まで治療されることを意味しない。
【0036】
本明細書で使用される場合、用語「対象者」は、ヒトおよび動物を含む。通常は、対象者はヒトまたは患者である。
【0037】
好ましくは、マキベリー抽出物は、1以上の薬学的に許容される担体または希釈剤をさらに含む医薬組成物として製剤化される。
【0038】
本発明のマキベリー抽出物を用いて製造される医療用医薬品は、好ましくは、非経口、局所、筋肉内、関節周囲、関節内、静脈内、腹腔内、皮下、または直腸投与に加えて、経口投与することができる。本発明は、本発明のマキベリー抽出物に、薬学的に適切で生理学的に許容される媒体と、任意選択でさらなる適切な有効成分、添加剤または補助物質とを加えて投与用薬剤の適切な剤形をもたらす機能を特徴とする医療用医薬品の製造プロセスに関する。適切な固体または液体のガレヌス剤形の調製品または製剤には、たとえば、粒状剤、粉末剤、糖衣錠、錠剤、(マイクロ)カプセル、座剤、シロップ、ジュース、懸濁液、乳剤、滴剤また注射液だけでなく、従来の補助物質の調製に用いられ、有効成分を遅延放出する調製物(たとえば賦形物質)、調製品の崩壊をもたらす薬剤、結合剤、コーティング剤、膨張剤、滑り促進剤または滑沢剤、風味改良剤、甘味料および可溶化剤などがある。補助物質として、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、ラクトース、マンニトールおよび他の糖、滑石粉、乳タンパク質、ゼラチン、デンプン、セルロースおよびその誘導体、動物および植物油、たとえばタラ肝油、ひまわり油、落花生油またはゴマ油、ポリエチレングリコール、ならびに溶媒、たとえば滅菌水および1価または多価アルコール、たとえばグリセリンなど、を挙げてもよい。
【0039】
マキベリー抽出物を医薬品の調製品に用いるとき、たとえば注射剤(乳化性、懸濁性、非水性など)または、使用前に乳化または懸濁させる固形注射剤、輸液、粉末剤、顆粒、錠剤、カプセル、腸溶錠、トローチ、内用液剤、懸濁液、乳剤、シロップ、外用液剤、湿布、点鼻薬、吸入剤、軟膏、ローション、座剤、経腸栄養剤などの、経口または非経口投与に有利に用いられる任意の剤形で投与してもよい。これは、病状に応じて、単独または組み合わせのいずれかで使用してもよい。これらは、製造用の薬理学的および薬学的に許容されるアジュバントを主要薬物に添加する従来の方法に従って調製してもよい。
【0040】
医療用医薬品は、好ましくは、各単位が、活性成分として規定量の本発明のマキベリー抽出物を含む投与単位で製造され投与される。錠剤、カプセル、糖衣錠または座剤などの固体の投与単位の場合は、この用量は1~1000mg、好ましくは50~300mgにすることができ、アンプル剤形の注射液の場合は、この用量は、0.3~300mg、好ましくは10~100mgにすることができる。
【0041】
体重50~100kg、たとえば70kgの成人患者の治療には、1日量の有効成分20~1000mg、好ましくは有効成分100~500mgが必要とされる。しかしながら、特定の条件下では、より高いまたはより低い1日量を投与することもできる。1日量の投与は、個々の投与単位剤形またはいくつかのより小さな投与単位剤形での一度だけの投与で、または規定の間隔での細分化した量の複数回の投与で行うことができる。
【0042】
以下に、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。しかしながら、これらの実施例は、本発明の保護の範囲を何ら限定するものではない。
【0043】
これらの実施例は、いくつかの図面も参照する。それらの凡例は下記に示す。
実施例
Delphinol(登録商標)(maquisupreme(登録商標)という商標名もある)は、Anklam Extrakt社(ドイツ)によってGMP条件下で製造される、マキベリーの高水溶性粉末状抽出物である。Delphinol(登録商標)は、最小限25%のデルフィニジンと最小限35%の総アントシアニンとを含むように規格化されている。
実施例1:
細胞のグルコース利用に対するDelphinol(登録商標)の効果。
【0044】
培養ケラチノサイト(HaCaT細胞;成人ヒト皮膚由来の異数性不死ケラチノサイト細胞株)を2-NBDG(2-[N-(7-ニトロベンゾ-2-オキサ-l,3-ジアゾール-4-イル)アミノ]-2-デオキシ-D-グルコースで標識し、Delphinol(登録商標)または陽性対照(ロシグリタゾン)で24時間処理した。蛍光を測定し、緑色物体の全積分強度によってデータを解析した。ロシグリタゾンの蛍光を100%のグルコース取り込みとみなし、グルコース取り込みを、(%グルコース取り込み)=100(T-B)/(P-B)(式中、T(処理)はDelphinol(登録商標)処理細胞の蛍光であり、B(基礎)は2-NBDG細胞の蛍光であり、P(陽性対照)は、ロシグリタゾンで処理した細胞の蛍光である)として算出する。その結果、Delphinol(登録商標)は、試験した最高濃度でケラチノサイトのグルコース取り込みを誘発した。したがって、Delphinol(登録商標)の摂取は、皮膚関連の細胞のグルコース取り込みを増加させ、それによって細胞に栄養を与え、細胞の生存能力を高め、さらに健康な皮膚の維持をもたらす(
図1)。
実施例2:
Delphinol(登録商標)は、強力なTRPV1アンタゴニスト作用を示す。
【0045】
培養293T-VR1をDelphinol(登録商標)とともにインキュベートし、次いでアゴニストカプサイシンで3時間刺激した。TRPV-1拮抗作用の陽性対照としてカプサゼピンを用いた。刺激の3時間後に生細胞イメージングによって細胞生存能力を測定した。その結果、より高い濃度でのDelphinol(登録商標)処理による、TRPV1受容体に対する強力なアゴニスト活性を反映する、カプサイシン処理細胞への高い生存能力が明らかとなった。TRPV1受容体(カプサイシン受容体)は熱感および疼痛感(侵害受容)を高めることが公知であり、また体温を感知し、制御することができる。TRPV1受容体の遮断は、皮膚の治療のための興味深いアプローチである。したがって、Delphinol(登録商標)は、敏感皮膚に対して抗かゆみ効果だけでなく抗疼痛効果を示す可能性がある(
図2)。
実施例3:
Delphinol(登録商標)は抗炎症作用を示す。
【0046】
Delphinol(登録商標)の存在下、初代正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)をIL-1β(細胞刺激)とともに24時間インキュベートした。細胞刺激の24時間後、炎症性サイトカインIL-6およびIL-8についてELISA法によって細胞培養上清を検査した。Delphinol(登録商標)は、10μg/mlおよび100μg/ml処理で、NFIDFにおけるIL-lβ誘発IL-6放出に対して阻害作用を示した。さらに、Delphinol(登録商標)は、NFIDFにおいて、用量依存的にIL-8放出の強い抑制を示した(
図3)。
実施例4:
Delphinol(登録商標)は、コラーゲン分解酵素MMP-1に対して阻害作用を示す
HaCaTケラチノサイトを培養し、Delphinol(登録商標)の存在下、PolyICで24時間刺激した。24時間後、細胞刺激上清を除去し、ELISAによってMMP-1濃度を調べた。Delphinol(登録商標)は、in vitroで、MMP-1酵素に対して強力かつ用量依存的な阻害作用を示した。したがって、Delphinol(登録商標)は、皮膚の弾力性の維持に関して潜在的に有益な効果を示す可能性がある(
図4)。
実施例5:
Delphinol(登録商標)は、チロシナーゼ活性に影響を及ぼし、in vitroでメラニン産生を低下させる
B16黒色腫細胞におけるチロシナーゼ活性を測定するために、細胞をDelphinol(登録商標)またはコウジ酸(陽性対照として)で72時間処理した。細胞の溶解後、上清をL-ドーパ(メラニン前駆体)とともに2時間インキュベートし、測光法を用いて485nmでチロシナーゼ活性を測定した。メラニン生成を調べるために、B16細胞をDelphinol(登録商標)で3日間処理し、次いで処理終了時にリン酸緩衝生理食塩水で洗浄し、NaOH含有10%DMSOに60℃で1時間溶解した。405nmでの光度測定によってメラニンを測定した。その結果、Delphinol(登録商標)は、用量依存的にチプロシナーゼ活性を阻害し、メラニン産生の減少を裏付けることができた。したがって、Delphinol(登録商標)は、しみまたは雀卵斑の治療に有用な可能性がある(
図5)。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】
図1は、Delphinol(登録商標)がケラチノサイトにおいてグルコース取り込みを促進することを示すグラフである。
【
図2】
図2は、Delphinol(登録商標)が敏感皮膚状態に有益な効果を示すグラフである。
【
図3】
図3は、Delphinol(登録商標)が線維芽細胞の免疫刺激に対して抗炎症作用を示すグラフである。
【
図4】
図4は、Delphinol(登録商標)がケラチノサイトにおいてコラーゲン繊維分解酵素MMP-1を強力に抑制することを示すグラフである。
【
図5】
図5は、Delphinol(登録商標)が用量依存的にチロシナーゼ活性を阻害し、in vitroでメラニン産生を低下させることを示すグラフである。
【手続補正書】
【提出日】2021-06-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿疹、手湿疹、扁平苔癬、エリテマトーデス、乾癬、疥癬、蕁麻疹の群から選択される炎症性皮膚状態の治療または予防に使用するため
の医薬または栄養補給剤
であって、
マキベリー抽出物を含み、
前記マキベリー抽出物が、最小限25%(w/w)のデルフィニジンと最小限35%(w/w)のアントシアニンとを含み、
前記抽出物が、
a)植物材料の粗抽出物を得るステップと、
b)前記粗抽出物を濾過するステップと、
c)前記粗抽出物を吸着剤と接触させ、前記吸着剤、特に樹脂に前記アントシアニンを吸着させるステップと、
d)前記吸着剤を洗浄するステップと、
e)前記吸着剤から前記アントシアニンを溶出して、アントシアニンが富化された組成物を得るステップとによって得られる、医薬または栄養補給剤。
【請求項2】
皮膚疾患の治療または予防に使用するため
の医薬または栄養補給剤
であって、前記皮膚疾患がかゆみである、マキベリー抽出物を含む医薬または栄養補給剤。
【請求項3】
前記マキベリー抽出物が、特に40:60(v/v)~60:40(v/v)、特に41:59(v/v)または50:50(v/v)の水/アルコール抽出剤によって得られる、請求項1
または2に記載の使用のための医薬または栄養補給剤。
【請求項4】
前記アルコール抽出剤が、エタノール、特に96%エタノールである、請求項
3に記載の使用のための医薬または栄養補給剤。
【請求項5】
ステップ
d)で水を使用し、ステップ
e)でエタノールを使用する、請求項
1に記載の使用のための医薬または栄養補給剤。
【請求項6】
ステップ
a)の植物材料が、果物および/またはベリーから選択される、請求項
1に記載の使用のための医薬または栄養補給剤。
【請求項7】
ステップ
c)からステップ
d)までの前記吸着剤が、樹脂、特にポリマー樹脂またはポリスチレン樹脂である、請求項
1に記載の使用のための医薬または栄養補給剤。
【請求項8】
適切な場合には、特に糖衣錠、錠剤、フィルムコーティング錠、粉末剤、カプセルまたは希釈液の形態での適切な担体物質、特に滴剤、ジュースまたはシロップ、軟膏、乳剤、粒状剤、粉末剤、点鼻スプレー、液体または固体の吸入製剤、圧迫包帯、創傷および歯肉の被覆、タンポナーデ、扁桃塗布液、うがい液、リンス液、注射剤、輸液、顆粒、腸溶錠、トローチ、懸濁液、湿布、点鼻薬、吸入剤、ローション、座剤、経腸栄養剤を含む製剤を含む、請求項1~
7のいずれか1項に記載の使用のための医薬または栄養補給剤。
【国際調査報告】