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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-05
(54)【発明の名称】ゲル化マメ科タンパク質
(51)【国際特許分類】
   A23J 3/14 20060101AFI20220628BHJP
   A23J 1/14 20060101ALI20220628BHJP
   A23L 13/00 20160101ALI20220628BHJP
   A23L 17/00 20160101ALI20220628BHJP
   A61K 36/48 20060101ALI20220628BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20220628BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20220628BHJP
【FI】
A23J3/14
A23J1/14
A23L13/00 A
A23L17/00 A
A61K36/48
A61K9/16
A61P3/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564680
(86)(22)【出願日】2020-04-29
(85)【翻訳文提出日】2021-10-29
(86)【国際出願番号】 FR2020050726
(87)【国際公開番号】W WO2020221978
(87)【国際公開日】2020-11-05
(31)【優先権主張番号】1904521
(32)【優先日】2019-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591169401
【氏名又は名称】ロケット フレール
【氏名又は名称原語表記】ROQUETTE FRERES
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】ラロシュ、クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】カルモン、ルシル
【テーマコード(参考)】
4B042
4C076
4C088
【Fターム(参考)】
4B042AC05
4B042AD36
4B042AK10
4B042AP02
4B042AP17
4C076AA09
4C076AA31
4C076BB01
4C076CC21
4C076FF67
4C076GG03
4C076GG09
4C088AB59
4C088AC04
4C088CA05
4C088CA12
4C088MA41
4C088MA52
4C088NA05
4C088NA07
4C088ZC21
(57)【要約】
【解決手段】本発明は、中性pHでの改善されたゲル強度を有するマメ科植物タンパク質組成物、及びその製造方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マメ科植物タンパク質組成物であって、特にエンドウマメ、ウチワマメ、及びファバマメから選択され、試験Aによる前記タンパク質組成物のゲル強度が200Pa超であることを特徴とする、マメ科植物タンパク質組成物。
【請求項2】
前記マメ科植物タンパク質組成物が、マメ科植物タンパク質単離物である、請求項1に記載のタンパク質組成物。
【請求項3】
前記マメ科植物がエンドウマメ植物である、請求項1又は2に記載のタンパク質組成物。
【請求項4】
固形分の総重量に対して、固形分の80重量%超、好ましくは85重量%超、更により好ましくは90重量%超のタンパク質含有量を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のタンパク質組成物。
【請求項5】
20マイクロメートル未満、好ましくは15マイクロメートル未満、更により好ましくは10マイクロメートル未満の粒径D90を有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のタンパク質組成物。
【請求項6】
試験Bによる、30~65%、例えば、33~62%、特に38~60%の範囲の溶解度を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のタンパク質組成物。
【請求項7】
請求項1~6に記載のタンパク質組成物の製造方法であって、
1)好ましくはエンドウマメ、ウチワマメ、ファバマメから選択されるマメ科植物種子を準備する工程と、
2)前記種子を粉砕し、水性懸濁液を生成する工程と、
3)遠心力を用いて不溶性画分を分離する工程と、
4)55℃+/-2℃~65℃+/-2℃、好ましくは60℃+/-2℃の温度で、3.5分~4.5分、好ましくは4分間、等電pHで加熱することによって、前記タンパク質を凝固させる工程と、
5)凝固した前記タンパク質フロックを遠心分離により回収する工程と、
6)pHを6+/-0.5~9+/-0.5の値に調整する工程と、
7)任意選択的に、熱処理する工程と、
8)凝固した前記タンパク質フロックを乾燥させる工程と、
9)ジェットミルを使用して凝固した前記タンパク質フロックを粉砕し、乾燥させて、20マイクロメートル未満、好ましくは15マイクロメートル未満、更により好ましくは10マイクロメートル未満の粒径D90を得るようにする工程と、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項8】
工程7における前記熱処理が、100℃+/-2℃~160℃+/-2℃、0.01秒~3秒、好ましくは1~2秒のプロトコルからなり、直後に冷却されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程8における前記乾燥が、霧化、好ましくは多重効果霧化によって実施されることを特徴とする、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
工程9における前記粉砕が、反対側のジェットミルを使用して実施されることを特徴とする、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
試験Aによる前記タンパク質組成物のゲル強度が、工程8において乾燥された前記タンパク質フロックのゲル強度の少なくとも150%であることを特徴とする、請求項7~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
食品又は医薬製品における、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項13】
前記食品又は医薬製品が、4~9、例えば5~8.5、特に6~8又は約7のpHを有する、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記製品が肉又は魚代替物であることを特徴とする、請求項12又は13に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物性タンパク質、特にマメ科植物タンパク質単離物、更に特にエンドウマメタンパク質単離物の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの1日当たりのタンパク質必要量は、食物摂取量のうちの12~20%である。これらのタンパク質は、動物由来の製品(肉、魚、卵、乳製品)によっても、植物由来の食品(穀物、マメ科植物、海藻)によっても得られる。
【0003】
しかしながら、先進国では、タンパク質摂取は主に動物由来のタンパク質によりなされる。しかし、数多くの研究により、動物由来のタンパク質を過剰摂取し、植物性タンパク質の摂取が不足することは、がん及び心血管疾患を増加させる原因の1つであることが示されている。
【0004】
更に、動物性タンパク質は、特に乳又は卵からのタンパク質に関してアレルゲン性の点、及び集約農業の有害な影響に関連して環境上の点の両方で、多くの欠点を有する。
【0005】
したがって、有益な栄養特性及び機能特性を有するが、動物由来の化合物の欠点は有さない、植物由来の化合物に対し、製造業者からの需要が高まっている。
【0006】
大豆は、動物性タンパク質に代わる主要な植物である。しかしながら、大豆の使用は、特定の欠点を呈する。大豆種子の起源は、大半の場合、遺伝子組み換え農産物(GMO)由来ではなく、そのタンパク質の産生は、溶媒を使用する脱油工程を介して進行する。
【0007】
1970年代以来、特に欧州、主にフランスでは、特にエンドウマメを含む豆類植物は、動物及びヒトの食物消費のための動物タンパク質に対する代替的なタンパク質資源として劇的に発展を遂げている。エンドウマメは約27重量%のタンパク質を含有する。用語「エンドウマメ」は、本明細書においてその最も広く許容される使用法により考慮され、特に、その品種の通常の使用目的(ヒトの食品、動物用飼料及び/又は他の用途)に関わらず、「丸エンドウマメ」の全ての野生品種、並びに「丸エンドウマメ」及び「しわのあるエンドウマメ」の全ての変異品種を含む。これらの種子は、非GMOであり、溶媒を使用する脱油工程を必要としない。
【0008】
エンドウマメタンパク質、主にエンドウマメグロブリンは、長年にわたって工業的に抽出及び利用されてきた。エンドウマメタンパク質を抽出するための方法の一例として、欧州特許第1400537号に言及することができる。このプロセスでは、エンドウ粉を得るために、種子を水の非存在下で粉砕して(「乾式製粉」と呼ばれるプロセス)。次いで、この粉を水に懸濁させて、タンパク質を抽出する。マメ科植物タンパク質を抽出するための他の方法も、米国特許第4060203(A)号、仏特許2889416(A1)号、及び国際公開第2011/124862(A1)号に記載されている。日本特許第55-131351(A)号は、微粒子の形態の粗挽き粉が水溶液中で作製され、酸性pHに上記水溶液を調整することによってタンパク質画分が沈殿する、大豆タンパク質単離物の製造を記載している。次いで、沈殿したタンパク質溶液は、大豆タンパク質単離物を形成するために、熱処理される前に中和され、任意選択的に霧化される。
【0009】
しかしながら、マメ科植物タンパク質、特にエンドウマメタンパク質は、大豆のゲル化特性に著しく劣るゲル化特性を有する。「Accessing gelling ability of vegetable proteins using rheological and fluorescence techniques(流動学的蛍光法を用いる野菜タンパク質のゲル化評価)」(Bastistaaら、International Journal of Biological Macromolecules 36(2005)135~143,2005)に示されるように、エンドウマメ及びウチワマメタンパク質は、大豆タンパク質よりもゲル化が低いとして提示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、ゲル化力又はゲル強度の改善を呈する、マメ科植物タンパク質、特にマメ科植物タンパク質単離物、更に特にエンドウマメタンパク質単離物を得ることが有利である。これらのマメ科植物タンパク質は、食品又は医薬製品に組み込まれ得る。これらの生成物は、4~9の範囲の非常に変化し易いpH値を有し得る。しかしながら、肉又は魚代替物などの多くの用途では、これらのタンパク質は、「中性pH」、すなわち約6~約8の範囲のpHで使用される。例として、かかるタンパク質が、ゲル化後に他の質感のタンパク質を共に接着させるのに有用である肉又は魚代替物を挙げることができる。したがって、改善された機能特性として、中性pHでのより高いゲル強度を示す新規なマメ科植物タンパク質を提供できることは、特に有益である。
【0011】
タンパク質単離物及び濃縮物粒子のサイズを低減し、その結果得られた組成物の機能特性を研究する試みは、既に行われている。例えば、Sunら、(Reduction of particle size based on superfine grinding:Effects on structure,rheological and gelling properties of whey protein concentrate(超微細研削に基づく粒径の減少:ホエイタンパク質濃縮物の構造、レオロジー、及びゲル化特性への影響))、Journal of Food Engineering、第186巻、2016、69~76頁)は、ナノボールミルを使用した乳清タンパク質濃縮物の粉砕を記載している。粒径、様々なpH値におけるゲル強度、赤外技術を用いた着色及び構造を含む、タンパク質の様々な特性が研究されている。ゲル強度に関しては、粉砕前のタンパク質と比較して、粉砕は、酸性pH(4.5)でより高いゲル強度を有し、中性(6.5)及び塩基性(8.5)pHでより低いゲル強度を有する、タンパク質を含有するタンパク質組成物をもたらす。
【0012】
Hayakawaら、(Microparticulation by Jet Mill Grinding of Protein Powders and Effects on Hydrophobicity(タンパク質粉末のジェットミル粉砕による極微粒子化及び疎水性に及ぼす影響))、Journal of Food Science,第58巻5号、1993、1026~1029頁)は、ジェットミルを使用した、カゼイン及び卵白型タンパク質並びに大豆繊維の極微粒子化を記載している。この物品は、マメ科植物タンパク質を記載していない。タンパク質のゲル強度の向上も記載していない。
【0013】
Liuら、(Ball-milling changed the physicochemical properties of SPI and its cold-set gels(ボールミル粉砕によるSPI及びその冷間硬化ゲルの物理化学的特性の変更))、Journal of Food Engineering、第195巻、2017、158~165頁)は、粒径(80μmの平均サイズ)をわずかに減少させるために、遊星BM及びミキサーミルMM400などのボールミルの大豆タンパク質単離物への使用を記載している。しかしながら、酸性条件下(グルコ-δ-ラクトンの存在下)でのこの単離物のゲル強度が、ミキサーミルMM400などのミルを使用して粉砕することによって増加させることができるときでも、この増加は非常に低いままである(最大で約30%の増加)。更に、遊星BMなどのミルを用いた粉砕では、観察されたゲル強度に差がなかった。更に、この刊行物は、中性pHで使用されるタンパク質のゲル強度を調査していない。
【0014】
発明の概要
【0015】
本発明の第1の態様によると、マメ科植物タンパク質組成物であって、特にエンドウマメ、ウチワマメ、及びファバマメから選択されるマメ科植物が提案され、試験Aによるタンパク質組成物のゲル強度が、200Pa超、好ましくは250Pa超、更により好ましくは300Pa超、最も好ましくは350Pa超であることを特徴とする、マメ科植物タンパク質組成物である。好ましくは、マメ科植物タンパク質組成物は、マメ科植物タンパク質単離物であり、より好ましくはエンドウマメタンパク質単離物である。
【0016】
別の態様によると、本発明によるタンパク質組成物の製造方法が提示され、該方法は、以下の工程を含むことを特徴とする:
1)好ましくはエンドウマメ、ウチワマメ、及びファバマメから選択されるマメ科植物種子を準備する工程、
2)種子を粉砕し、水性懸濁液を生成する工程、
3)遠心力を用いて不溶性画分を分離する工程、
4)55℃+/-2℃~65℃+/-2℃、好ましくは60℃+/-2℃の温度で、3.5分~4.5分、好ましくは4分間、等電pHで加熱することによって、タンパク質を凝固させる工程、
5)凝固したタンパク質フロックを遠心分離により回収する工程、
6)pHを6+/-0.5~9+/-0.5の値に調整する工程、
7)任意選択的に、熱処理工程、
8)凝固したタンパク質フロックを乾燥させる工程、
9)ジェットミルを使用して凝固したタンパク質フロックを粉砕し、乾燥させて、20マイクロメートル未満、好ましくは15マイクロメートル未満、更により好ましくは10マイクロメートル未満の粒径D90を得る工程。
【0017】
本発明の最後の態様によれば、本発明によるマメ科植物タンパク質組成物、好ましくはエンドウマメ、ウチワマメ、及びファバマメから選択されるマメ科植物タンパク質単離物、更により好ましくは、エンドウマメタンパク質単離物の、食品又は医薬製品における工業用途、特に動物用飼料及びヒトの食品用途が提案される。
【0018】
本発明は、以下の実施例によって更に良好に理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の第1の態様によれば、マメ科植物タンパク質組成物であって、特にエンドウマメ、ウチワマメ、及びファバマメから選択されるマメ科植物が提案され、試験Aによるタンパク質組成物のゲル強度が、200Pa超、好ましくは250Pa超、更により好ましくは300Pa超、最も好ましくは350Pa超であることを特徴とする、マメ科植物タンパク質組成物である。マメ科植物は、最も好ましくはエンドウマメである。例として、試験Aによるタンパク質組成物のゲル強度は、450Pa未満、例えば、400Pa未満であり得る。好ましくは、マメ科植物タンパク質組成物は、マメ科植物タンパク質単離物であり、より好ましくはエンドウマメタンパク質単離物である。
【0020】
用語「タンパク質組成物」は、抽出及び精製によって得られる組成物を意味するものとして本特許出願において理解されるべきであり、この組成物は、ペプチド結合を介して一緒に連結されたアミノ酸残基の配列からなる1つ以上のポリペプチド鎖から形成されるタンパク質高分子を意味するものとして理解されるべきである。エンドウマメタンパク質の特定の文脈において、本発明は、より詳細には、グロブリン(エンドウマメタンパク質の約50~60%)に関する。エンドウマメグロブリンは、主にレグミン、ビシリン及びコンビシリンの3種類のサブファミリーに分類される。
【0021】
「マメ科の植物」又は「マメ科植物」は、本出願において、マメ目の双子葉植物の科を意味することが理解されるであろう。マメ科は、種の数がラン科及びキク科に次いで3番目に多い顕花植物科である。マメ科には約765属、19,500種超が含まれる。大豆、インゲンマメ、エンドウマメ、ヒヨコマメ、ファバマメ、ナンキンマメ、栽培レンズマメ、栽培アルファルファ、各種クローバ、ソラマメ、イナゴマメ、カンゾウ、及びウチワマメなどの、いくつかのマメ科植物は、重要な作物植物である。
【0022】
用語「ゲル化力」は、ゲル又はネットワークを形成するためのタンパク質組成物の能力から成り、粘度を増加させ、液体状態と固体状態との間の物質の状態を生成する機能特性を意味する。用語「ゲル強度」も使用されてもよい。ゲル化力を定量化するために、このネットワークを生成し、その強度を評価する必要がある。この定量を行うために、本発明では、試験Aを使用し、以下それについて説明する。
【0023】
1)固形分15%+/-2%及びpH7で、水中で試験したタンパク質組成物の60℃+/-2℃での可溶化
2)60℃+/-2℃で5分間撹拌
3)20℃+/-2℃までの冷却、及び350rpmで24時間撹拌
4)同心円筒を備える制御された応力レオメータを用いた懸濁の実施
5)以下の温度プロファイルを適用することによる弾性率G’及び粘性弾性率G”の測定:
a.フェーズ1:20℃+/-2℃での安定化、及び20℃+/-2℃の温度から80℃+/-2℃の温度への10分間の加熱後のパラメータG’1の測定、
b.フェーズ2:80℃+/-2℃の温度で110分間安定化、
c.フェーズ3:80℃+/-2℃の温度から20℃+/-2℃の温度まで30分間冷却、及び20℃+/-2℃での安定化後のG’2の測定、
6)G’2-G’1に等しいゲル化力の計算。
【0024】
好ましい方法では、制御応力レオメータは、同心円筒型のスピンドルを有するモデルDHR2(TA,Instruments)及びMCR301(Anton Paar)から選択される。これらはペルチェ効果に基づく温度調節システムを備えている。高温での蒸発の問題を回避するために、液体パラフィンを試料の上に添加する。
【0025】
本発明の目的のために、「レオメータ」は、流体又はゲルのレオロジーに関する測定値を得るための試験用機械である。レオメータは、試料に力を印加する。一般的に、特徴的な小さな寸法(ロータの非常に小さい機械的慣性)に関して、レオメータは、印加力に応答する、液体、ゲル、懸濁液、ペーストなどの機械的特性の基本調査を可能にする。
【0026】
いわゆる「制御応力」モデルは、正弦波応力(振動モード)の印加によって、特に時間(又は角速度ω)及び温度に依存する物質の固有粘弾性値を判定することができる。具体的には、このタイプのレオメータは、複素弾性率Gへのアクセスを提供し、それ自体が弾性部の弾性率G’又は粘性部の弾性率G”へのアクセスを提供する。
【0027】
最初の3つの工程は、後続の測定を最大限に活用することができる正確な条件を使用して、タンパク質を水に再懸濁させることから成る。
【0028】
選択される水は、好ましくは逆浸透水であるが、飲料水も使用され得る。
【0029】
その温度は、初期の再懸濁中は60℃+/-2℃(第1及び第2の工程)、次いで、測定前の24時間可溶化及び冷却後は20℃+/-2℃である(第3工程)。一般に、特に指示がない限り、本明細書において温度が与えられる場合、温度は、常に+/-2℃の変動、例えば20℃+/-2℃又は80℃+/-2℃の変動を含む。
【0030】
定義された量のタンパク質を水に添加して、15%+/-2%の固形分を含有する懸濁液を得る。これを行うために、当業者に周知のビーカ及び撹拌棒などの装置が使用される。50mLの量を、室温で350rpmで少なくとも10時間撹拌する。一般に、特に指示がない限り、本明細書に与えられる固形分の含有量は、常に、+/-2%の変動、例えば15%+/-2%の変動を含む。pHは、先行技術において周知のように、pHメータ及び酸塩基試薬を使用して7+/-0.5に調整される。
【0031】
第4工程は、レオメータに試料を導入することと、蒸発を制限するために、試料を薄い油層で被覆することと、から成る。
【0032】
次に、第5の工程中、次の温度プロトコルが適用される:a.フェーズ1:20℃+/-2℃の温度から80℃+/-2℃の温度まで10分間加熱;b.フェーズ2:80℃+/-2℃の温度で110分間安定化;c.フェーズ3:80℃+/-2℃の温度から20℃+/-2℃の温度まで30分間冷却。
【0033】
パラメータG’の測定は、このプロトコル中に連続的に実行され、記録される。
【0034】
試験Aの第6及び最後の工程は、記録を活用することから成る。2つの値を抽出する。G’1=20℃+/-2℃での安定化後のフェーズ1の開始時のG’の値、及びG’2=20℃+/-2℃での安定化後のフェーズ3の終了時のG’の値。
【0035】
ゲル化力は、G’2-G’1に等しい。
【0036】
好ましくは、本発明によるマメ科植物タンパク質組成物は、固形分の総重量に対して、固形分の80重量%超、好ましくは85重量%超、更により好ましくは90重量%超のタンパク質含有量を有する。
【0037】
タンパク質含有量は、当業者に周知の任意の技術によって測定される。好ましくは、全窒素を(組成物の総乾燥重量に対する窒素の重量百分率として)アッセイし、結果に6.25の係数を掛ける。植物タンパク質の分野におけるこの周知の方法論は、タンパク質が平均で16%窒素を含有するという観察に基づく。当業者に周知の任意の乾燥物アッセイ法も使用することができる。
【0038】
更により好ましくは、タンパク質組成物は、20マイクロメートル未満、好ましくは15マイクロメートル未満、更により好ましくは10マイクロメートル未満の粒径D90を有する。
【0039】
本発明において、用語「D90」は、タンパク質組成物の粒子の総量のそれぞれ90%及び10%を含む2つの集団に数で分離する粒径(マイクロメートル)を意味する。
【0040】
このD90測定を行うために、レーザー粒径分析器が好ましくは使用され、更により好ましくはMalvern製のMastersizer2000が使用される。使用するパラメータは以下のとおりである。液体経路での使用、エタノール中分散液、屈折率:1.52;吸収指数:0.1;超音波処理の使用はない。
【0041】
好ましくは、本発明によるタンパク質組成物は、中性pHで高い溶解度を有する。本発明によると、試験Bは、タンパク質組成物の溶解度を定量化するために使用される。この試験Bは、以下の工程からなる。
【0042】
150gの蒸留水を磁気撹拌棒で撹拌しながら20℃+/-2℃で400mLのビーカに入れて、試験するマメ科植物のタンパク質試料を正確に5g添加する。必要に応じて、0.1N NaOH又は0.1N HClでpHを7に調整する。水を添加して、200gの水を構成する。混合を1000rpmで30分間行って、3000gで15分間遠心分離する。25gの上澄みを回収し、予め乾燥させて風袋を計量した結晶皿に入れる。結晶皿を103℃+/-2℃のオーブンに1時間置く。次いで、結晶皿を乾燥器(乾燥剤を含む)内に置いて、周囲温度に冷却し、秤量する。
【0043】
溶解度は、可溶性乾燥物の含有量に相当し、試料の重量に対する重量%として表される。溶解度は、以下の式で計算される:
【0044】
【数1】
[式中、
P=試料の重量(g)=5g
m1=乾燥後の結晶皿の重量(g)
m2=空の結晶皿の重量(g)
P1=収集した試料の重量(g)=25g]
【0045】
有利には、試験Bによる本発明のタンパク質組成物の溶解度は、30~65%、例えば、33~62%、特に38~60%の範囲である。
【0046】
本発明の更なる利点は、溶解性を維持しつつ、エンドウマメタンパク質のゲル化特性を改善することが可能であることである。しかしながら、これらの特性は、十分に両立し得ないように思われる。例えば、タンパク質分解によりタンパク質の溶解度を上昇させることにより、そのゲル化特性が失われる。いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、このことは、一般にタンパク質ゲルを形成するために、タンパク質が凝集後にネットワークを形成する必要があるという事実によって説明される。したがって、ゲル化タンパク質は、再溶解した後であっても、比較的大きいサイズであるため、通常は溶解度の低下を示す。しかしながら、本発明により、2つの特性を両立させることが可能になる。
【0047】
別の態様によると、本発明によるマメ科植物タンパク質組成物の製造方法が提示され、該方法は以下の工程を含むことを特徴とする。
1)好ましくはエンドウマメ、ウチワマメ、及びファバマメから選択されるマメ科植物種子を準備する工程、
2)種子を粉砕し、水性懸濁液を生成する工程、
3)遠心力を用いて不溶性画分を分離する工程、
4)55℃+/-2℃~65℃+/-2℃、好ましくは60℃+/-2℃の温度で、3.5分~4.5分、好ましくは4分間、等電pHで加熱することによって、タンパク質を凝固させる工程、
5)凝固したタンパク質フロックを遠心分離により回収する工程、
6)pHを6+/-0.5~9+/-0.5の値に調整する工程、
7)任意選択的に、熱処理工程、
8)凝固したタンパク質フロックを乾燥させる工程、
9)ジェットミルを使用して凝固したタンパク質フロックを粉砕して、20マイクロメートル未満、好ましくは15マイクロメートル未満、更により好ましくは10マイクロメートル未満の粒径D90を得る工程。
【0048】
したがって、この方法は、好ましくはエンドウマメ、ウチワマメ、及びファバマメから選択されるマメ科植物種子を準備する工程1)から開始される。
【0049】
選択されたマメ科植物がエンドウマメである場合、工程1)で使用されるエンドウマメは、例えば、特に洗浄(石、死んだ虫、土壌残渣などの望ましくない粒子の除去)、又は更には、周知の「殻取り」工程によるエンドウマメの外部繊維(外部セルロース外皮)の除去などの、当業者にとって周知の工程を予め経ていてもよい。
【0050】
乾燥加熱(又は焙煎)又は湿潤漂白などの感覚刺激的特性を改善するための処理も可能である。漂白の場合、温度は、好ましくは70℃+/-2℃~90℃+/-2℃であり、pHは8+/-0.5~10+/-0.5、好ましくは9+/-0.5に調整される。これらの条件は、2~4分、好ましくは3分間維持される。
【0051】
本発明による方法は、種子を粉砕し、水性懸濁液を生成する工程2)を含む。種子が既に水の存在下にある場合、水は保持されるが、新しく取り換えられてもよく、種子は直接粉砕される。種子が乾燥している場合、粗挽き粉が最初に生成され、次いで水に懸濁される。
【0052】
粉砕は、ボールミル、コニカルミル、螺旋ミル、ジェットミル、又はロータ/ロータシステムなどの、当業者に既知の任意の種類の好適な技術によって実行される。
【0053】
粉砕中、水は、懸濁液の重量に対して、固形分(SC)の15重量%~25重量%、好ましくはSCの20重量%の粉砕されたエンドウマメの水性懸濁液を生成するように、粉砕開始時、粉砕中、又は粉砕終了時に連続的又は不連続的に添加されてもよい。
【0054】
粉砕終了時に、pHを確認することができる。好ましくは、工程2の終了時の粉砕されたエンドウマメの水性懸濁液のpHは、5.5+/-0.5~10+/-0.5に調整され、例えば、調整されたpHは6+/-0.5~9+/-0.5である。あるいは、pHは、8+/-0.5~10+/-0.5の間で調整されたpH、例えば、pH9に調整されたpHである。pHは、酸及び/又は塩基、例えば水酸化ナトリウム又は塩酸を添加することによって調整することができる。
【0055】
次に、本発明による方法は、遠心力を用いて不溶性画分を分離する工程3)から成る。これらの画分は、主にデンプン及び「内部繊維」と呼ばれる多糖類から成る。したがって、上澄みに溶解できるタンパク質が濃縮される。
【0056】
本発明による方法は、55℃+/-2℃~65℃+/-2℃、好ましくは60℃+/-2℃の温度で、3.5分~4.5分、好ましくは4分間、等電pHで加熱することによって、タンパク質を凝固させる工程4)を含む。ここでの目的は、工程3)の上澄みの他の成分から対象のエンドウマメタンパク質を分離することである。このような方法の例は、例えば、出願人の欧州特許第1400537号の段落127~段落143に記載されている。時間/温度プロトコルを適切に制御することは必須である。以下の実施例のセクションに示されるように、これらのパラメータは、本発明によるゲル化タンパク質組成物を製造するために最も重要である。
【0057】
以下の工程5)は、凝固したタンパク質フロックを遠心分離により回収することから成る。よって、濃縮タンパク質を有する固体画分は、濃縮糖及び塩を有する液体画分から分離される。
【0058】
工程6)では、フロックは水に再懸濁され、そのpHは6+/-0.5~9+/-0.5の値に調整される。固形分含有量は、懸濁液の重量に対して、10重量%~20重量%、好ましくは15重量%の固形分に調整される。pHは、任意の酸性及び塩基性試薬を使用して調整される。アスコルビン酸、クエン酸、水酸化カリウム、及び水酸化ナトリウムの使用が好ましい。
【0059】
タンパク質の微生物学的性質を確保することを目的とした熱処理から成る任意選択的な工程7)を実施することが可能である。この熱処理はまた、タンパク質組成物を官能化するために使用されてもよい。したがって、100℃+/-2℃~160℃+/-2℃で、0.01秒~3秒、好ましくは1~2秒の従来のプロトコルを用いて実行され、直後に冷却が続く。
【0060】
工程8)では、固形分の重量に対して、80重量%超、好ましくは90重量%超の固形分含有量に達するように、凝固したタンパク質フロックが乾燥させられる。この目的のために、当業者に周知の任意の技術、例えば、凍結乾燥又は霧化を使用することができる。霧化は、好ましい技術、特に多重効果霧化である。
【0061】
固形分含有量は、当業者に公知の任意の方法によって測定される。好ましくは、「乾燥」方法が使用される。それは、既知の重量の試料の既知の量を加熱することによって蒸発した水の量を測定することで構成される。試料を最初に秤量し、g中の質量m1を測定し、試料塊が安定化するまで試料を加熱チャンバ内に配置することによって水を蒸発させ、水を完全に蒸発させ(好ましくは、温度は大気圧下105℃である)、最終試料を秤量し、g中の質量m2を測定する。固形分含有量は、以下の計算によって得られる。(m2/m1)100
【0062】
最後の工程9)は、本発明によるタンパク質組成物の製造に不可欠な、先行する工程4)と同様である。この工程は、凝固して乾燥したタンパク質フロックを粉砕して、20マイクロメートル未満、好ましくは15マイクロメートル未満、更により好ましくは10マイクロメートル未満の粒径D90を得ることから成る。本発明の方法のこの工程では、ジェットミルが使用される。しかしながら、対向ジェットミル、更により好ましくはNetzsch CGS10ミルを使用することが好ましい。このタイプのミルは、衝突の発生によってサイズの減少をもたらし、高速ガスジェットによって加速された粒子が、衝撃を介して分解される。
【0063】
本発明の有益な方法では、試験Aによるタンパク質組成物のゲル強度は、工程8において乾燥したタンパク質フロックのゲル強度の少なくとも150%、有利には少なくとも200%、例えば少なくとも300%である。試験Aによるタンパク質組成物のゲル強度は、例えば、工程8において乾燥したタンパク質フロックのゲル強度の最大600%であってもよい。
【0064】
上述したように、本発明の利点の1つは、タンパク質溶解度が粉砕工程中に維持され得ることである。有利には、試験Bによるタンパク質組成物の溶解度は、工程8における乾燥タンパク質フロックの溶解度の少なくとも75%であり、有利には少なくとも90%である。
【0065】
本発明の利点は、本発明のタンパク質組成物が、試験Aの条件下で、様々なpH値、特に中性pHでより高いゲル強度を有し得ることである。本発明によるタンパク質組成物の使用は、任意の種類の食品又は医薬製品において有利である。食品又は医薬製品は、4~9、例えば5~8.5、特に6~8、又は約7の範囲のpHを有し得る。
【0066】
本発明の最後の態様によれば、本発明によるマメ科植物タンパク質組成物、好ましくはエンドウマメ、ウチワマメ、及びファバマメから選択されるマメ科植物タンパク質単離物、更により好ましくはエンドウマメタンパク質単離物の工業的用途、特に、動物及びヒトの食品用途が提案される。
【0067】
向上したゲル化力により、本発明によるタンパク質組成物は、野菜ヨーグルト又は肉類似体などの食品用途に特に適している。特に、肉又は魚代替物に使用されてもよい。特に、結合剤として、例えば、肉又は魚代替物の製造に有用な結合剤として使用されてもよい。したがって、本発明の別の態様は、本発明のタンパク質組成物を含む肉又は魚代替物である。
【0068】
本発明は、以下の非限定的実施例によって更に良好に理解されるであろう。
【実施例
【0069】
実施例1:本発明によるマメ科植物タンパク質組成物の製造
【0070】
ハンマーミルを用いて外側の繊維を殻取りした後、エンドウマメの種子を粉砕して粗挽き粉を製造する。次いで、この粗挽き粉を、室温で30分間、pH6.5で、この懸濁液の重量に対して固形分の25重量%の最終濃度となるまで水に浸漬する。次に、固形分の25重量%の粗挽き粉懸濁液を一連のハイドロサイクロンに導入し、これをタンパク質、内部繊維(パルプ)、及び可溶性物質の混合物からなる軽質相と、デンプンを含有する重質相とからなる重質相とに分離する。次いで、ハイドロサイクロンの出口における軽質相は、この懸濁液の重量に対して10.7%の固形分含有量に調整される。内部繊維の分離は、WESTFALIA型の遠心分離機での処理によって行われる。デカンタ型遠心分離機の出口の軽質相は、タンパク質と可溶性物質との混合物を含有し、一方、重質相はエンドウマメの繊維を含有する。
遠心分離機の出口の軽質相をpH4.6に調整し、この溶液を60℃で4分間加熱することにより、タンパク質をその等電点で凝固させる。タンパク質の凝固後、タンパク質フロックが得られる。このタンパク質フロックを、飲料水中の懸濁液の重量に対して固形分15.1%で再懸濁させる。懸濁液のpHは、水酸化カリウムで7の値に調整される。最後に、130℃で0.4秒間熱処理を行い、続いてフラッシュ冷却する。懸濁液は、最後に、空気入口の温度180℃、及び空気出口の温度80℃のNIRO MSD多重効果アトマイザ内で最終的に霧化される。得られた粉末は固形分の総重量に対して92.3%の固形分を含有し、そのうち85.5%はタンパク質であった。この粉末は、「本発明による組成物のためのベース」と称する。
次いで、この粉末を、対向ジェットミルNetzsch CGS10を使用して粉砕し、7.3マイクロメートルの粒径D90を有する粉末を生成した。
得られた粉末状タンパク質組成物は、「本発明による微紛化タンパク質組成物」と称する。
【0071】
実施例2:凝固中のタンパク質組成物の加熱プロトコルの影響を実証することを目的とした比較例
【0072】
この実施例は、本発明によるタンパク質組成物の機能性に対する凝固プロトコルの影響を示すことを目的とする。
【0073】
ハンマーミルを用いて外側の繊維を殻取りした後、エンドウマメの種子を粉砕して粗挽き粉を製造する。次いで、この粗挽き粉を、室温で30分間、pH6.5で、この懸濁液の重量に対して固形分の25.1重量%の最終濃度となるまで水に浸漬する。次に、固形分の25重量%の粗挽き粉懸濁液を一連のハイドロサイクロンに導入し、これをタンパク質、内部繊維(パルプ)、及び可溶性物質の混合物からなる軽質相と、デンプンを含有する重質相とからなる重質相とに分離する。次いで、ハイドロサイクロンの出口における軽質相は、この懸濁液の重量に対して11.2%の固形分含有量に調整される。内部繊維の分離は、WESTFALIA型の遠心分離機での処理によって行われる。デカンタ型遠心分離機の出口の軽質相は、タンパク質と可溶性物質との混合物を含有し、一方、重質相はエンドウマメの繊維を含有する。
遠心分離機の出口の軽質相をpH4.6に調整し、この溶液を70℃で4分間加熱することにより、タンパク質をその等電点で凝固させる。タンパク質の凝固後、タンパク質フロックが得られる。このタンパク質フロックを、飲料水中の懸濁液の重量に対して固形分14.9%で再懸濁させる。懸濁液のpHは、水酸化カリウムで7の値に調整される。最後に、130℃で0.4秒間熱処理を行い、続いてフラッシュ冷却する。懸濁液は、最後に、空気入口の温度180℃、及び空気出口の温度80℃のNIRO MSD多重効果アトマイザ内で最終的に霧化される。得られた粉末は固形分の総重量に対して91.9%の固形分を含有し、そのうち84.9%はタンパク質であった。この粉末は、「比較タンパク質組成物1のベース」と称する。
次いで、この粉末を、対向ジェットミルNetzsch CGS10を使用して粉砕し、8.2マイクロメートルの粒径D90を有する粉末を生成した。
得られた粉末状タンパク質組成物は、「比較用微粉化タンパク質組成物1」と称する。
【0074】
実施例3:実施例1及び2で得られた様々なタンパク質組成物の比較
【0075】
前述の試験A、並びに固形分含有量及びタンパク質含有量も、タンパク質組成物を比較するために使用される。
【0076】
【表1】
【0077】
上記の表1は、ゲル化力を最大化するために、凝固温度プロトコルと、10マイクロメートル未満の粒径D90までの粒径の減少との間の相乗効果が明らかに非常に重要であることを示す。本発明による微紛化タンパク質組成物のゲル化力は、本発明によるタンパク質組成物のベース、タンパク質組成物1号の比較用ベース、及び比較用微粉化タンパク質組成物1号のゲル化力よりも約4倍高い。
【0078】
実施例4:本発明によるマメ科植物タンパク質組成物の製造
ハンマーミルを用いて外側の繊維を殻取りした後、エンドウマメの種子を粉砕して粗挽き粉を製造する。次いで、この粗挽き粉を、室温で30分間、pH6.5で、この懸濁液の重量に対して固形分の25重量%の最終濃度となるまで水に浸漬する。次に、固形分の25重量%の粗挽き粉懸濁液を一連のハイドロサイクロンに導入し、これをタンパク質、内部繊維(パルプ)、及び可溶性物質の混合物からなる軽質相と、デンプンを含有する重質相とからなる重質相とに分離する。次いで、ハイドロサイクロンの出口における軽質相は、この懸濁液の重量に対して10%の固形分含有量に調整される。内部繊維の分離は、WESTFALIA型の遠心分離機での処理によって行われる。デカンタ型遠心分離機の出口の軽質相は、タンパク質と可溶性物質との混合物を含有し、一方、重質相はエンドウマメの繊維を含有する。
遠心分離機の出口の軽質相をpH5.0に調整し、この溶液を60℃で4分間加熱することにより、タンパク質をその等電点で凝固させる。タンパク質の凝固後、タンパク質フロックが得られる。このタンパク質フロックを、飲料水中の懸濁液の重量に対して18%の固形分再懸濁させる。懸濁液のpHは、水酸化ナトリウムで7の値に調整される。最後に、130℃で0.4秒間熱処理を行い、続いてフラッシュ冷却する。懸濁液は、最後に、空気入口の温度180℃、及び空気出口の温度80℃のNIRO MSD多重効果アトマイザ内で最終的に霧化される。得られた粉末は固形分の総重量に対して93.2%の固形分を含有し、そのうち80.7%はタンパク質であった。この粉末は、「本発明による組成物のベース2」と称する。
次いで、この粉末を、対向ジェットミルNetzsch CGS10を使用して2つの異なる時間にわたって粉砕し、16.9マイクロメートルの粒径D90を有する第1の粉末及び7.9マイクロメートルの粒径D90を有する第2の粉末を製造した。得られた粉末状タンパク質組成物は、それぞれ「本発明による微紛化タンパク質組成物2」及び「本発明による微紛化タンパク質組成物3」と称する。
前述の試験A及びB、並びに固形分含有量及びタンパク質含有量も、タンパク質組成物を比較するために使用される。
【0079】
【表2】
上記の表2は、ゲル化力を最大化することが可能であることを再度示している。本発明による微紛化タンパク質組成物のゲル化力は、2倍以上高い。更に、タンパク質溶解度を維持することも可能である。
【国際調査報告】