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特表2022-530983高完全性衛星測位のためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-05
(54)【発明の名称】高完全性衛星測位のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/05 20100101AFI20220628BHJP
   G01S 19/43 20100101ALI20220628BHJP
【FI】
G01S19/05
G01S19/43
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564794
(86)(22)【出願日】2020-05-01
(85)【翻訳文提出日】2021-12-22
(86)【国際出願番号】 US2020031137
(87)【国際公開番号】W WO2020223684
(87)【国際公開日】2020-11-05
(31)【優先権主張番号】62/841,380
(32)【優先日】2019-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521475749
【氏名又は名称】スウィフト ナヴィゲーション,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Swift Navigation,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】カルカナグ,セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ノーブル,ファーガス,マクファーソン
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062AA04
5J062BB01
5J062CC07
5J062DD24
5J062EE02
5J062EE04
(57)【要約】
高い完全性をもつ受信機位置を推定するためのシステムは、基準局のセットに関連付けられた基準局観測値のセットを受信することと、所定のイベントを検出することと、所定のイベントの影響を緩和することとを行うように構成された基準局観測モニタと、補正値を生成するように構成されたモデル化エンジンと、補正値を検証するように構成された信頼性エンジンとを備えるリモート・サーバと、少なくとも1つの衛星コンスタレーションに対応するグローバル・ナビゲーション衛星のセットから、衛星観測値のセットを受信することと、所定のイベントを検出することと、所定のイベントの影響を緩和することとを行うように構成された観測モニタと、衛星観測値のセットのキャリア位相アンビギュイティを決定するように構成されたキャリア位相決定モジュールと、受信機の位置を推定するように構成された位置フィルタとを備える測位エンジンとを含むことができる。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信機位置を決定するためのシステムであって、
・○■基準局の第1のセットに関連付けられた基準局観測値の第1のセットと、基準局の第2のセットに関連付けられた基準局観測値の第2のセットとを受信することと、
■基準局観測値の前記第1のセット、および基準局観測値の前記第2のセット中の所定のイベントを検出することと、
■前記所定のイベントが検出されたとき、前記所定のイベントの影響を緩和することと
を行うように構成された基準局観測モニタと、
○基準局観測値の前記第1のセットに基づいて、補正値を生成するように構成されたモデル化エンジンと、
○基準局観測値の前記第2のセットに基づいて、前記モデル化エンジンによって生成された前記補正値を検証するように構成された信頼性エンジンと
を備えるリモート・サーバと、
・受信機と並置されたコンピューティング・システム上で実行する測位エンジンであって、前記測位エンジンは、
○少なくとも1つの衛星コンスタレーションに対応するグローバル・ナビゲーション衛星のセットから、衛星観測値のセットを受信するように構成された観測モニタと、
○衛星観測値の前記セットと、前記検証された補正値とに基づいて、実数値キャリア位相アンビギュイティ推定値を決定するように構成された浮動フィルタと、
○前記実数値キャリア位相アンビギュイティ推定値を、整数値キャリア位相アンビギュイティに固定するように構成された整数固定モジュールであって、ここにおいて、前記整数値キャリア位相アンビギュイティが、マルチステップ・プロセスにおいて検証される、整数固定モジュールと、
○前記それぞれの整数値キャリア位相アンビギュイティが取り除かれた前記衛星観測値に基づいて、前記受信機の位置を推定するように構成された位置フィルタであって、ここにおいて、前記推定位置の完全性リスクおよび保護レベルが、前記マルチステップ・プロセスの検証ステップに依存する、位置フィルタと
を備える、測位エンジンと
を備え、
ここにおいて、前記測位エンジンが、衛星観測値の前記セット中の所定のイベントを検出し、衛星観測値の前記セット中の前記所定のイベントが検出されたとき、衛星観測値の前記セット中の前記所定のイベントの影響を緩和するように構成された、
システム。
【請求項2】
前記信頼性エンジンは、
・前記補正値を使用して、基準局観測値の前記第2のセットを補正することと、
・基準局観測値の前記補正された第2のセットの残差を決定することと、
・前記残差がしきい値よりも小さいとき、前記補正値を検証することと
によって前記補正値を検証するように構成された、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記測位エンジンが、差キャリア位相測定値を使用して、前記受信機の速度を推定するように構成された速度フィルタをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記位置フィルタおよび前記速度フィルタのうちの少なくとも1つが、アドバンスト受信機アドバンスト完全性モニタリング(ARAIM)アルゴリズムを使用して、前記推定位置の前記保護レベルおよび前記速度を決定するようにさらに構成された、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記ARAIMアルゴリズムは、前記それぞれの整数値キャリア位相アンビギュイティが取り除かれた前記衛星観測値からのキャリア位相測定値に基づいて、前記保護レベルを決定する、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記マルチステップ・プロセスが、第1の検証ステップ、第2の検証ステップ、および第3の検証ステップを備えるスリー・ステップ・プロセスに対応する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
・前記第1の検証ステップの前に、前記推定位置の前記完全性リスクおよび前記保護レベルが指定されず、
・前記第1の検証ステップの後に、および前記第2の検証ステップの前に、前記完全性リスクが、せいぜい10-4/時であり、前記保護レベルが、せいぜい2メートル(m)であり、
・前記第2の検証ステップの後に、および前記第3の検証ステップの前に、前記完全性リスクが、せいぜい10-6/時であり、前記保護レベルが、せいぜい2mであり、
・前記第3の検証ステップの後に、前記完全性リスクが、せいぜい10-7/時であり、前記保護レベルが、せいぜい3mである、
請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
慣性ナビゲーション・システム(INS)からの入力に基づいて、前記受信機のデッド・レコニング位置を決定するように構成されたデッド・レコニング・モジュールであって、ここにおいて、グローバル・ナビゲーション衛星の前記セットのうちの1つまたは複数の衛星に対応する1つまたは複数の信号が受信されないとき、前記推定位置が、前記デッド・レコニング位置に対応する、デッド・レコニング・モジュールをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
グローバル・ナビゲーション衛星システム(GNSS)受信機の位置を決定するための方法であって、前記方法は、
・リモート・サーバにおいて、
○基準局の第1のセットに関連付けられた基準局観測値の第1のセットを受信することと、
○所定のイベントの第1のセットを検出することと、
○所定のイベントの前記第1のセットのうちの少なくとも1つの所定のイベントが検出されたとき、前記検出された所定のイベントの影響を緩和することと、
○基準局観測値の前記第1のセットに基づいて、大気モデルを生成することと、
○前記大気モデルに基づいて、補正値を決定することと、
○基準局の第2のセットに関連付けられた基準局観測値の第2のセットを使用して、前記補正値を検証することと、
・前記GNSS受信機と並置されたコンピューティング・システムにおいて、
○前記リモート・サーバから、前記検証された補正値を受信することと、
○少なくとも1つの衛星コンスタレーションに対応するグローバル・ナビゲーション衛星のセットから、衛星観測値のセットを受信することと、
○前記検証された補正値に部分的に基づいて、衛星観測値の前記セットについてキャリア位相アンビギュイティを解消することと、
○マルチステップ検証プロセスを使用して、前記キャリア位相アンビギュイティを検証することと、
○所定のイベントの第2のセットを検出することと、
○所定のイベントの前記第2のセットのうちの少なくとも1つの所定のイベントが検出されたとき、所定のイベントの前記第2のセットのうちの前記検出された所定のイベントの影響を緩和することと、
○前記検証されたキャリア位相アンビギュイティに基づいて、前記GNSS受信機の位置を推定することであって、ここにおいて、前記推定位置の完全性リスクおよび保護レベルは、前記マルチステップ検証プロセスのどのステップが、前記キャリア位相アンビギュイティを検証するために使用されるかに依存する、前記GNSS受信機の位置を推定することと
を備える、方法。
【請求項10】
前記補正値を検証することは、
・前記補正値を使用して、基準局観測値の前記第2のセットを補正することと、
・補正された衛星観測値の前記セットについて残差を決定することと、
・前記残差が、補正検証しきい値を下回るとき、前記補正値を検証することと
を備える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記大気モデルを生成することが、
・PPPフィルタを使用して、基準局の前記第1のセットのうちの各基準局に関連付けられた大気遅延を推定することと、
・前記大気モデルを生成するために、各基準局に関連付けられた前記大気遅延の間を補間することと
を備える、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記マルチステップ検証プロセスは、
・第1の検証ステップであって、ここにおいて、前記キャリア位相アンビギュイティが、同時に検証される、第1の検証ステップと、
・前記第1の検証ステップの後の第2の検証ステップであって、ここにおいて、グローバル・ナビゲーション衛星の前記セットのうちの衛星の第1のサブセットに対応するキャリア位相アンビギュイティの第1のサブセットが、同時に検証され、グローバル・ナビゲーション衛星の前記セットのうちの衛星の第2のサブセットに対応するキャリア位相アンビギュイティの第2のサブセットが、同時に検証される、第2の検証ステップと、
・前記第2の検証ステップの後の第3の検証ステップであって、ここにおいて、前記第2の検証ステップが、少なくとも2回繰り返される、第3の検証ステップと
を備える、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
衛星の前記第1のサブセットが、第1の衛星コンスタレーションに対応し、衛星の前記第2のサブセットが、前記第1の衛星コンスタレーションとは異なる第2の衛星コンスタレーションに対応する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記GNSS受信機の前記位置の前記完全性リスクおよび前記保護レベルは、
・前記キャリア位相アンビギュイティが、前記マルチステップ・プロセスの第1の検証ステップに検証されたとき、それぞれ、せいぜい毎時10-4および2m、
・前記キャリア位相アンビギュイティが、前記マルチステップ・プロセスの第2の検証ステップに検証されたとき、それぞれ、せいぜい毎時10-6および2m、ならびに
・前記キャリア位相アンビギュイティが、前記マルチステップ・プロセスの第3の検証ステップに検証されたとき、それぞれ、せいぜい毎時10-7および3m
である、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記キャリア位相アンビギュイティを解消することが、
・カルマン・フィルタを使用して、実数値位相アンビギュイティを決定することと、
・LAMBDAアルゴリズムまたはMLAMBDAアルゴリズムのうちの少なくとも1つを使用して、前記実数値位相アンビギュイティを無相関化することを備える整数値位相アンビギュイティに、前記実数値位相アンビギュイティを固定することと
を備える、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
・所定のイベントの前記第1のセットが、環境懸念イベント、ネットワーク懸念イベント、せいぜい1cm/sの衛星時計ドリフト、データ異常の問題、誤ったブロードキャスト・エフェメリス、コンスタレーション障害、基準局マルチパス、および基準局サイクル・スリップのうちの少なくとも1つに対応し、
・所定のイベントの前記第2のセットが、コード・キャリア非コヒーレンシ、衛星時計ステップ誤差、1cm/sよりも大きい衛星時計ドリフト、擬似距離マルチパス、キャリア位相マルチパス、キャリア位相サイクル・スリップ、非見通し線トラッキング、誤った捕捉、ガリレオ2進数オフセット・キャリア・セカンド・ピーク・トラッキング、およびスプーフィングのうちの少なくとも1つに対応する、
請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記GNSS受信機の前記位置を推定することとは無関係に、時間差分キャリア位相測定値を使用して、前記GNSS受信機の速度を推定することをさらに備える、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
前記推定位置の前記保護レベルおよび前記速度の保護レベルのうちの少なくとも1つは、前記それぞれの整数値キャリア位相アンビギュイティが取り除かれた前記衛星観測値からのキャリア位相アンビギュイティを使用して、アドバンスト受信機アドバンスト完全性モニタリング(ARAIM)アルゴリズムを使用して決定される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記推定位置および前記速度のうちの少なくとも1つに基づいて、車両を自動的に動作させることをさらに備え、ここにおいて、前記GNSS受信機が、前記車両に結合された、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
・グローバル・ナビゲーション衛星の前記セットのうちの1つまたは複数の衛星に対応する衛星観測値が、利用不可能であるとき、慣性ナビゲーション・システムに関連付けられたデータに基づいて、デッド・レコニングを使用して、前記GNSS受信機の前記位置を決定することと、
・前記慣性ナビゲーション・システムに関連付けられた前記データに基づいて決定された第1のデッド・レコニング位置を、第2の慣性ナビゲーション・システムに関連付けられたデータに基づいて決定された第2のデッド・レコニング位置と比較することによって、デッド・レコニングを使用して決定された前記位置を検証することと
をさらに備える、請求項9に記載の方法。
【請求項21】
リアルタイム・キネマティック衛星測位のための方法であって、
・モバイル受信機において、第1のナビゲーション衛星から第1のナビゲーション衛星キャリア信号を受信することと、第2のナビゲーション衛星から第2のナビゲーション衛星キャリア信号を受信することと、第3のナビゲーション衛星から第3のナビゲーション衛星キャリア信号を受信することと、第4のナビゲーション衛星から第4のナビゲーション衛星キャリア信号を受信することと、
・前記モバイル受信機において、基準局から第1、第2、第3、および第4の位相補正信号を受信することと、
・前記モバイル受信機において、擬似距離および位相の二重差分測定値から、整数位相アンビギュイティのセットを計算することであって、ここにおいて、整数位相アンビギュイティの前記セットを計算することが、カルマン・フィルタを使用して、整数位相アンビギュイティ仮説の第1のセットを生成することと、整数位相アンビギュイティ仮説の前記第1のセットに対して仮説検定を実施することとを備え、ここにおいて、整数位相アンビギュイティ仮説の前記第1のセットを生成することが、ビアマンソーントン・フィルタによって生成された平均値および共分散と、LAMBDAアルゴリズムおよびMLAMBDAアルゴリズムのうちの少なくとも1つとを使用して、整数位相アンビギュイティ仮説の前記第1のセットを生成することを備え、ここにおいて、整数位相アンビギュイティ仮説の前記第1のセットを生成することが、位相変化および擬似距離を、基線ベクトルを含まない整数アンビギュイティに関係付ける測定式から、整数位相アンビギュイティ仮説の前記第1のセットを生成することを備え、ここにおいて、整数位相アンビギュイティ仮説の前記第1のセットを生成することが、動的遷移モデルを用いないで整数位相アンビギュイティ仮説の前記第1のセットを生成することを備える、整数位相アンビギュイティのセットを計算することと、
・前記モバイル受信機において、整数位相アンビギュイティの前記セットと、擬似距離および位相の前記二重差分測定値とから前記モバイル受信機の位置を計算することと
を備える、方法。
【請求項22】
請求項2~8に記載の前記コンポーネントのうちのいずれか1つ、または請求項10~20に記載の前記ステップのうちのいずれか1つをさらに備える、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
モバイル受信機のための衛星測位補正値を生成するためのシステムであって、
基準ソースの第1のセットから、測位コード・データおよびキャリア位相データのうちの少なくとも1つを受信する、グローバル補正モジュールであって、ここにおいて、基準ソースの前記第1のセットからの前記測位コード・データおよびキャリア位相データが、基準ソースの前記第1のセットにおける衛星の第1のセットからの衛星信号の受信から生じ、ここにおいて、前記グローバル補正モジュールが、グローバル事前補正値のセットを生成する、グローバル補正モジュールと、
基準ソースの第2のセットから、測位コード・データおよびキャリア位相データのうちの少なくとも1つを受信することであって、ここにおいて、基準ソースの前記第2のセットからの前記測位コード・データおよびキャリア位相データが、基準ソースの前記第2のセットにおける衛星の第2のセットからの衛星信号の受信から生じる、測位コード・データおよびキャリア位相データのうちの少なくとも1つを受信することと、
前記モバイル受信機と、衛星の前記第2のセットの各々との間の見通し線についての貫通角度に、静的補正値を適用することと、
ローカル事前補正値のセットを生成することと
を行うローカル補正モジュールと、
グローバル事前補正値の前記セットと、ローカル事前補正値の前記セットと、前記静的補正値とに基づいて、前記モバイル受信機のための測位補正値を生成する補正値生成器と
を備える、システム。
【請求項24】
請求項2~8に記載の前記コンポーネントのうちのいずれか1つ、または請求項10~20に記載の前記ステップのうちのいずれか1つをさらに備える、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
グローバル・ナビゲーション衛星システム(GNSS)受信機の低減外れ値衛星測位のための方法であって、
前記GNSS受信機において、衛星測位観測値のセットを受信することと、
衛星測位観測値の前記セットから、第1の受信機位置推定値を生成することと、
衛星測位観測値の前記セットおよび前記第1の受信機位置推定値から、事後観測残差値のセットを生成することと、
事後観測残差値の前記セットに基づいて、ハイブリッド技法を使用して、統計的外れ値として、前記衛星測位観測値のサブセットを識別することと、
前記統計的外れ値の影響を緩和することと、
前記統計的外れ値の前記影響を緩和した後に、前記第1の受信機位置推定値よりも高い精度を有する第2の受信機位置推定値を生成することであって、ここにおいて、前記より高い精度が、前記統計的外れ値の前記影響を緩和することの結果である、第2の受信機位置推定値を生成することと
を備える、方法。
【請求項26】
請求項2~8に記載の前記コンポーネントのうちのいずれか1つ、または請求項10~20に記載の前記ステップのうちのいずれか1つをさらに備える、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
グローバル・ナビゲーション衛星システム(GNSS)受信機の位置を決定するための方法であって、前記方法が、
・グローバル・ナビゲーション衛星のセットから、衛星観測値のセットを受信することと、
・衛星観測値の前記セットについてキャリア位相アンビギュイティを解消することと、
・マルチステップ検証プロセスを使用して、前記キャリア位相アンビギュイティを検証することと、
・所定のイベントを検出することと、
・前記所定のイベントを検出したことに応答して、前記検出された所定のイベントの影響を緩和することと、
・前記検証されたキャリア位相アンビギュイティに基づいて、前記GNSS受信機の位置を推定することであって、ここにおいて、前記推定位置の完全性リスクおよび保護レベルは、前記マルチステップ検証プロセスのどのステップが、前記キャリア位相アンビギュイティを検証するために使用されるかに依存する、前記GNSS受信機の位置を推定することと
を備える、方法。
【請求項28】
・基準局の第1のセットにおいて記録された衛星観測値のセットに基づいて、GNSS補正値のセットを生成することと、
・基準局の第2のセットにおいて記録された衛星観測値の第2のセットに対して、前記GNSS補正値を検証することとをさらに備える、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
基準局の前記第1および第2のセットが別個である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記完全性リスクが、せいぜい10-7/時である、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記所定のイベントが、コード・キャリア非コヒーレンシ、衛星時計ステップ誤差、1cm/sよりも大きい衛星時計ドリフト、擬似距離マルチパス、キャリア位相マルチパス、キャリア位相サイクル・スリップ、非見通し線トラッキング、誤った捕捉、ガリレオ2進数オフセット・キャリア・セカンド・ピーク・トラッキング、またはスプーフィングのうちの少なくとも1つに対応する、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記マルチステップ検証プロセスが、第1の検証ステップを備え、ここにおいて、前記キャリア位相アンビギュイティが、同時に検証される、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記マルチステップ検証プロセスが、第1の衛星コンスタレーションに関連付けられた衛星観測値の整数キャリア位相アンビギュイティ、および第2の衛星コンスタレーションに関連付けられた衛星観測値の整数キャリア位相アンビギュイティを検証することを備える第2の検証ステップを備える、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
時間差分キャリア位相測定値を使用して、前記GNSS受信機の速度を推定することをさらに備える、請求項27に記載の方法。
【請求項35】
前記キャリア位相アンビギュイティ解消のためのリスクを決定することをさらに備え、ここにおいて、前記リスクが、不正確なキャリア位相アンビギュイティ解消についての確率に対する上限に対応する、請求項27に記載の方法。
【請求項36】
前記キャリア位相アンビギュイティ解消についての最大リスクが、モンテ・カルロ・シミュレーションを使用して決定される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
グローバル・ナビゲーション衛星システム(GNSS)受信機の位置を決定するための方法であって、前記方法が、
・基準局の第1のセットに関連付けられた基準局観測値の第1のセットを受信することと、
・所定のイベントについて基準局観測値の前記第1のセットを監視することと、
・前記所定のイベントを検出したことに応答して、基準局観測値の前記第1のセット中の前記検出された所定のイベントの影響を緩和することによって、基準局観測値の所定イベント緩和セットを生成することと、
・基準局観測値の前記所定イベント緩和セットに基づいて、補正値を決定することと、
・基準局の第2のセットに関連付けられた基準局観測値の第2のセットを使用して、前記補正値を検証することと、
・グローバル・ナビゲーション衛星のセットから、衛星観測値のセットを受信することと、
・前記検証された補正値に部分的に基づいて、衛星観測値の前記セットについてキャリア位相アンビギュイティを解消することと、
・前記キャリア位相アンビギュイティに基づいて、前記GNSS受信機の位置を推定することと
を備える、方法。
【請求項38】
前記推定位置が、せいぜい毎時10-4の完全性リスクを備える、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記所定のイベントが、環境懸念イベント、ネットワーク懸念イベント、せいぜい1cm/sの衛星時計ドリフト、データ異常の問題、誤ったブロードキャスト・エフェメリス、コンスタレーション障害、基準局マルチパス、または基準局サイクル・スリップのうちの少なくとも1つに対応する、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記補正値を検証することは、
・前記補正値を使用して、基準局観測値の前記第2のセットを補正することと、
・補正された衛星観測値の前記セットについて残差を決定することと、
・前記残差が、補正検証しきい値を下回るとき、前記補正値を検証することと
を備える、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記補正値を決定することが、
・フィルタを使用して、基準局の前記第1のセットのうちの各基準局に関連付けられた遅延を推定することと、
・大気モデルを生成するために、各基準局に関連付けられた前記遅延の間を補間することと
によってモデルを生成することを備える、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
前記フィルタが、精密点測位フィルタを備える、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記キャリア位相アンビギュイティを解消することが、第1の衛星コンスタレーションに関連付けられた衛星観測値の整数キャリア位相アンビギュイティ、および第2の衛星コンスタレーションに関連付けられた衛星観測値の整数キャリア位相アンビギュイティを検証することを備える、請求項37に記載の方法。
【請求項44】
・前記第1の衛星コンスタレーションに関連付けられた衛星観測値の前記整数キャリア位相アンビギュイティを検証することが、前記補正値を直接適用することを備え、
・前記第2の衛星コンスタレーションに関連付けられた衛星観測値の前記整数キャリア位相アンビギュイティを検証することが、残差領域オフセットをもつ前記補正値を適用することを備える、
請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記残差領域オフセットが、基準局観測値の前記第2のセットに前記補正値を適用することに基づいて推定される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記所定のイベントについて基準局観測値の前記第1のセットを監視することが、スケールド残差技法、分散しきい値技法、またはハイブリッド技法のうちの1つを使用して、外れ値について基準局観測値の前記第1のセットを監視することを備える、請求項37に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、この参照によりその全体が組み込まれる、2019年5月1日に出願された、米国仮出願第62/841,380号の利益を主張する。
【0002】
本出願は、それらの各々が、この参照によりその全体が組み込まれる、2020年3月12日に出願された、米国特許出願第16/817,196号、2019年10月1日に出願された、米国特許出願第16/589,932号、および2020年1月21日に出願された、米国特許出願第16/748,517号に関連する。
【0003】
本発明は、一般に衛星測位分野に関し、より詳細には、高完全性衛星測位のための新しく有用なシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0004】
グローバル衛星ナビゲーション・システム(GNSS)ベース衛星測位システムは、地球上の物体の位置を正確に知ることを必要とする無数のアプリケーションにとって重要である。それの地上波ベース無線ナビゲーション祖先と同様に、衛星測位は、当初、人間ナビゲータへのナビゲーション・エイドとして使用された。自動化が進むにつれて、衛星測位入力と機械制御出力との間のリンクは、より短くより直接的になった。残念ながら、GNSS測位システムの精度は、現代の機械自動化アプリケーションの要求と常に歩調を合わせたとは限らない。さらに、誤差が高コスト(たとえば、人命の損失)であるアプリケーションは、高い精度だけでなく、高い完全性と、関係するが別個の概念(後のセクションにおいてさらに詳細に論じられる)と、現在のGNSS測位の別の制限とを必要とする。それゆえ、衛星測位分野では、高完全性衛星測位のためのシステムおよび方法を作り出す必要がある。本発明は、そのような新しく有用なシステムおよび方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】発明実施形態のシステムの図表現である。
図2】発明実施形態のシステムの測位エンジンの図表現である。
図3】発明実施形態のシステムの補正値処理エンジンの図表現である。
図4】発明実施形態のシステムの補正値処理エンジンのモデル化エンジンの図表現である。
図5】発明実施形態のシステムの補正値処理エンジンの信頼性エンジンの図表現である。
図6】デッド・レコニング位置を検証することの例の概略表現である。
図7】システムを使用する例示的な方法の概略表現である。
図8】好ましい実施形態の方法のチャート図である。
図9】好ましい実施形態の方法の変換の例示的な図である。
図10】電離層影響モデル化の例示的な表現である。
図11】GNSS影響補間の例示的な表現である。
図12】リモート・コンピューティング・システムとローカル・コンピューティング・システムとの間の随意の分割をもつ、複数グローバルおよびローカル懸念イベント検出、検証、および補正のためのシステムの例である。
図13】デッド・レコニング・モジュールの例の概略表現である。
図14】デッド・レコニング位置を決定するための例示的なフロー・パスの概略表現である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明の発明実施形態の以下の説明は、これらの発明実施形態に本発明を限定するものではなく、そうではなく、当業者が本発明を製作および使用することを可能にするものである。
【0007】
1.概要
図1A図1B、および図1C中に示されているように、システムは、好ましくは、測位エンジンおよび補正値処理エンジンを含む。システムは、随意に、1つまたは複数のGNSS受信機、基準局、および/または任意の好適なコンポーネントを含むことができる。測位エンジンは、観測モジュール、外れ値検出器、キャリア位相決定モジュール、検証モジュール、位置モジュール、速度モジュール、デッド・レコニング・モジュール、高速再収束モジュール、および/または任意の好適なモジュールのうちの1つまたは複数を含むことができる。補正値処理エンジンは、基準観測モニタ、補正データ・モニタ、メタデータ・モニタ、モデル化エンジン、および/または任意の好適なモジュールのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0008】
図7中に示されているように、方法は、基準局観測値を受信することと、基準局観測値に基づいて補正値を決定することと、衛星観測値を受信することと、衛星観測値および補正値に基づいてキャリア位相アンビギュイティを解消することと、キャリア位相測定値に基づいてGNSS受信機の位置を推定することとを含むことができる。方法は、随意に、補正値を検証すること、所定のイベントを検出すること、所定のイベントを緩和すること、整数アンビギュイティを検証すること、キャリア位相測定値から整数アンビギュイティを取り除くこと、推定位置に基づいて外部システムを動作させること、および/または任意の好適なステップを含むことができる。
【0009】
システムおよび/または方法の実施形態は、たとえば、(たとえば、無人航空機(UAV)、無人航空システム(UAS)、自動運転車、農業機器、ロボティクス、鉄道輸送/トランジット・システムなどのための)自律車両誘導、GPS/GNSS調査、測量システムにおいて使用され得、および/または任意の好適な運用のために使用され得る。特定の例では、システム(および/またはコンポーネント)は、車両(たとえば、UAV、UAS、車、トラックなど)、ロボット、鉄道車両、ユーザ・デバイス(たとえば、セル・フォン、モバイル・アプリケーション)、農業、ロボティクス、および/または任意の好適なシステムなど、任意の好適な外部システムに結合され得る。追加として、GNSS受信機は、オープン・ソース・ソフトウェア・ファームウェアを利用するように設計され、それらが、エンド・ユーザ・アプリケーションの特定の需要に容易にカスタマイズされることを可能にし、システム統合を容易にし、ホスト・システム・オーバーヘッドを低減し得るが、GNSS受信機は、任意の好適な様式で設計され得る。
【0010】
1.1 GNSS精度および完全性
GNSS測位システムにおける精度は、システムの位置データ出力中の起こり得る誤差に関する統計情報を提供するシステムの特性である。たとえば、標準的なGNSS受信機は、1メートルとして、~68%の信頼度レベル(換言すれば、正規分布について1標準偏差)、言い換えると、時間の68%の精度を指定し得、システムによる位置出力は、真位置の1メートル以内にある。別の例として、高精度リアルタイム・キネマティック(RTK)GNSS受信機は、3cmの(95%の信頼区間または正規分布について2標準偏差にある)精度を提供し得る。これにより、高精度システムは、単に、(事後測定されたものとして)大部分の時間で低い位置誤差を達成するシステムである。
【0011】
精度と同様に、完全性も位置誤差に基づくが、完全性は、(事後誤差計算とは対照的に)リアルタイムまたはほぼリアルタイムの誤差推定の概念を含む。このリアルタイム誤差推定に基づいて、完全性を用いる測位システムは、測位誤差がおそらく誤差しきい値を超えるとき、警報を提供することができる。広いレベルにおいて、測位システムの完全性は、以下のパラメータ、すなわち、位置誤差(PE)、完全性リスク、保護レベル(PL)、警報リミット(AL)、および警報を出すべき時間(TTA)を使用して記述され得る。リアルタイムまたはほぼリアルタイムの誤差推定は、「ナビゲーション中に使用されるのに十分に速い」所定の推定時間(たとえば、100ms、1s、2s、3s、4s、5s、10s、20s、30s、45s、60s、90s、120s、180s、240s、300s、600sなど)内で、および/または任意の好適なタイミングで行われ得る。
【0012】
位置誤差は、推定位置の誤差である(たとえば、推定位置が真位置から1m離れている場合、位置誤差は1mである)。前記のように、GNSS受信機が、単独でリアルタイムで位置誤差を知ることは可能でない(たとえば、受信機は、時間誤差の95%が、精度特徴づけのおかげで1m未満であることを知り得るが、受信機は、所与の位置推定値が、真位置から厳密に0.5m離れていると単独で決定することができず、それができる場合、それは、誤差を単に減じることになり、完全な精度を生じる)。誤差は、「位置誤差」に関して論じられたが、完全性は、概して、測位システムによって推定された任意のパラメータ(たとえば、受信機の水平位置の誤差、受信機の垂直位置の誤差、受信機から1つまたは複数の衛星までの擬似距離の誤差、速度の誤差など)に関して実施され得ることに留意されたい。
【0013】
完全性リスクは、(精度が、より一般的にはシステムの特徴づけであるので)完全性の特徴づけである。完全性は、ナビゲーション・システムによって供給された情報の正当性に置かれ得る信頼の測度であり得る。完全性リスクは、概して、位置誤差が、何らかの時間期間にわたって(たとえば、現在時刻、秒、分、時、日、動作持続時間などにおいて)何らかのしきい値(警報リミット)を超える確率として指定される。ターゲット完全性リスク(TIR)は、保護レベル(たとえば、警報または緩和しきい値)を生成するために使用される完全性リスク目標である。いくつかの変形態では、完全性リスクは、構成コンポーネント、すなわち、所定のイベントのセットからの1つまたは複数の所定のイベントが(たとえば、時間期間の間に)起こる確率、中間データ完全性リスク(たとえば、位置を推定するために使用される、擬似距離、キャリア位相、実数値キャリア位相、整数値キャリア位相など、中間データが、時間期間にわたってしきい値を超える確率、時間期間中に中間データの誤差がある確率、中間データが、不正確な値への固定など、変換する確率など)、および/または任意の好適な確率に分離される(たとえば、それらから決定される)ことがある。推定位置完全性リスク(および/または中間データ完全性リスク)は、別個の確率のうちの1つまたは複数を完全性リスクに関係付ける(たとえば、経験的に決定された、適合パラメータに基づく、モンテ・カルロ・シミュレーションに基づくなど)式および/またはモデルに基づく、別個の確率のうちの1つまたは複数の和、別個の確率のうちの1つまたは複数の積、別個の確率のうちの最大確率、最小確率、別個の確率のうちの1つまたは複数の平均であり、ならびに/あるいは別個の確率のうちの1つまたは複数から別様に決定され得る。完全性リスク(たとえば、推定位置完全性リスク、中間データ完全性リスク)は、重み付けされたまたは重み付けされていない別個の確率を使用して決定され得る。しかしながら、完全性リスクは、別様に定義され得る。
【0014】
保護レベルは、ターゲット完全性リスクに基づいて計算された位置誤差に対する統計的上限であり、リアルタイム位置誤差推定のための機構として働く。代替的に述べると、保護レベルは、所与のTIRを満たすことが(任意の時点において)保証された推定位置誤差、またはP{PE>PL}≦TIRである。所与の位置推定値について、保護レベルは、実際の位置誤差が保護レベルよりも大きい確率が、ターゲット完全性リスクよりも小さくなるように計算される。GNSS受信機が、より多くのデータを受信し、および/またはより多くの時間を計算することに費やすにつれて、保護レベルは、しばしば減少する(換言すれば、受信機が位置に関してより確実になるとき、依然としてTIRを満たす位置誤差範囲は減少する)ことに留意されたい。しかしながら、保護レベルは、別様に定義され得る。
【0015】
警報リミットは、保護レベルのためのしきい値である。例示的例では、位置推定値は、位置推定値のための保護レベルが10mを上回るとき、信頼できないと見なされ得る(この場合、10mが警報リミットである)。関連して、警報を出すべき時間(TTA)は、警報リミットを上回る保護レベルと、(たとえば、位置推定値が信頼できないことを指定する)警報の生成との間で経過し得る時間の最大量である。しかしながら、警報リミットは、別様に定義され得る。
【0016】
これらのパラメータは、完全性を記述するための規格であるが、それらのうちの多くが、異なるやり方で指定され得ることは注目に値する。たとえば、位置誤差推定値は、1つまたは複数のセット位置誤差における完全性リスクの上限であり得る。一般的に、衛星測位内での完全性の概念は、位置誤差を推定することと、相応に応答することとを伴う。しかしながら、完全性は、別様に記述され得る。
【0017】
前述のように、高完全性測位は、GNSS誤差が高いコストを生じ得るアプリケーションにとって重要である。高完全性測位が重要である1つのそのようなアプリケーションは、自律車両(AV)誘導におけるものである。残念ながら、旧来の高完全性GNSSシステム(たとえば、10mの周りの保護レベルをもたらすGNSS受信機)は、AV誘導のためのユーティリティにおいて大幅に限界があり、これらのシステムは、たいていのAVにおいて使用するためにコストがかかりすぎるだけではなく、AV誘導に必要な警報リミット(たとえば、3m)は、旧来のシステム保護レベルによって達成可能なものよりも実質的に低い。その上、航空機のための旧来のシステム保護レベルは、AVが取り組む必要があるビジーで混雑した都市環境とは異なり、オープンスカイ状態の下で計算され、それゆえ、商業グレードの受信機によって悪化される擬似距離マルチパス誤差に対処する必要がない。追加として、旧来のシステムの動作環境は、検証の速度を上げるために、仮定を簡略化すること(たとえば、単一フォールト仮定、サブ・メートル脅威を無視すること)を活用し、これは、技術の企図された使用事例のうちのいくつかにおいてなされ得ない。
【0018】
本開示のシステムおよび方法は、商用アプリケーションのためのGNSS測位の有効使用を可能にする新規の高完全性測位を対象とする。
【0019】
1.2 旧来のGNSS、PPP、およびRTKの簡単な概要
クイック・リフレッシャーとして、旧来の衛星測位システム(たとえば、標準的なGNSS)は、衛星が受信機から遠く、衛星によって送信された信号が遅延されるので、擬似ランダム2値シーケンスの(受信機における)ローカル・コピーを、同じシーケンスの衛星が送信したコピーと整合させることを試みることによって動く。衛星が送信したコピーと一致するようにシーケンスのローカル・コピーを遅延させることによって、信号が衛星から受信機まで進むのに要する時間が見つけられ得、時間は、衛星と受信機との間の距離を計算するために使用され得る。複数の衛星(一般的に、4つ以上)についてこのプロセスを実施することによって、衛星に対する受信機の位置が見つけられ得、位置は、特定の地理座標系(たとえば、緯度、経度、および高度)における位置を見つけるために使用され得る。典型的なGNSSシステムは、測位においてせいぜい2mの精度を達成することができるにすぎない。
【0020】
多くのアプリケーション(たとえば、人間を運ぶ自律車両/ドローン/農業機器、GPS/GNSS調査、測量のための誘導)の場合、このレベルの精度は、ひどく不十分である。それに応じて、2つの位置補正アルゴリズム、すなわち、精密点測位(PPP)およびリアルタイム・キネマティック(RTK)が開発された。
【0021】
衛星によってブロードキャストされた測位コードを単独で使用する代わりに、PPPおよびRTKは、位置を決定するために衛星信号キャリア位相の利用をも行う。はるかに高い精度が、キャリア位相データを使用して可能になるが、GNSS受信機(換言すれば、位置がそれについて計算されるべきである受信機)の位置を正確に決定することは、誤差のいくつかの潜在源を考慮することを必要とする。さらに、キャリア位相測定値はあいまいであり、キャリア信号は均一であるので、位相測定値のみを使用して、φの位相シフトと2πN+φとを区別することは可能でないことがあり、ここで、Nは整数である。たとえば、πラジアンの位相シフトと3πラジアン(または-π、5πなど)の位相シフトとの間の差を決定することは困難であり得る。
【0022】
PPPは、GNSS受信機位相中に存在する誤差およびコード測定値を明示的にモデル化することによって、この問題を解決することを試みる。いくつかの誤差は、グローバルまたはほぼグローバル(たとえば、衛星軌道および時計誤差)であり、これらの誤差について、PPPは、一般的に、高度に正確な測定値をもつ補正データを使用する。しかしながら、ローカル誤差(換言すれば、GNSS受信機ロケーションに実質的に依存する誤差)の場合、PPPは、極めて粗いモデル化が可能であるのみである。幸いにも、多くのローカル誤差は、時間的にゆっくり変化し、結果的に、PPPは、単一の受信機のみを用いて高い精度を達成することができるが、ローカル誤差を正確に決定するには長い収束時間を必要とし得る。用語が本出願において使用されるとき、「グローバル誤差」は、領域内の複数の基準局にわたって実質的に変動しない誤差を指し、「ローカル誤差」は、(誤差が基準局に特定であるので、および/または誤差が領域内の位置にわたって実質的に変動するので)複数の基準局にわたって実質的に変動する誤差を指す。この誤差は測位に関係するので、そのような誤差は、「全地球測位誤差」および「ローカル測位誤差」と呼ばれることもある。
【0023】
RTKは、(正確に知られているロケーションをもつ)GNSS基準局の使用によって、PPPに存在するモデル化の大多数を回避し、基準局がGNSS受信機に対してローカルであるので、基準局信号とGNSS受信機信号の差分を取ることは、大幅に低減された誤差を生じ得る。その結果として、RTK解は、PPP解よりもはるかにすばやく(およびPPPによって必要とされる高精度グローバル補正値データを用いないで)収束することができる。しかしながら、RTK解は、GNSS受信機の近くの基地局の存在を必要とする。
【0024】
1.3 利点
技術の変形形態は、いくつかの利点および/または優位性を授けることができる。
【0025】
第1に、技術の変形態は、GNSS受信機および/または外部システムのための高精度測位を達成することができる。特定の例では、キャリア位相測定値を使用すること、および/または整数アンビギュイティを決定することは、(モバイル受信機のセンチメートルまたはより良い測位を達成することなど)GNSS受信機位置が決定され得る精度を増加させることができる。特定の例では、このレベルの精度測位は、受信機ダイナミクスの機能であり、航空グレードのGNSS受信機およびアンテナと比較して異なるレベルの擬似距離誤差を受ける適応トラッキング・プロファイルを有する、商業グレードのGNSS受信機およびアンテナを用いて達成され得る。
【0026】
第2に、技術の変形態は、高精度GNSS受信機および/または外部システム位置推定を可能にすることができる。関連する変形態では、推定位置の完全性は、擬似距離マルチパス誤差とは(ほぼ)無関係であり得る。特定の例では、擬似距離測定値をもつまたはもたないキャリア位相アンビギュイティ(たとえば、整数値キャリア位相アンビギュイティ)を使用して位置を推定することは、高い精度を可能にし、および/または推定位置のマルチパス誤差に対する依存を低減することができる。
【0027】
第3に、技術の変形態は、推定されたGNSS受信機および/または外部システム位置の高い完全性(たとえば、低い完全性リスク、小さい保護レベルなど)を可能にすることができる。特定の例では、高完全性推定位置は、(たとえば、即座のまたは即時の完全性影響をもつ脅威を検出する)測位エンジンと、(たとえば、秒または分程度のゆっくりとした完全性影響をもつ脅威を検出する)補正値処理エンジンとの間で所定イベント検出を分布させること、サブ・メートル脅威を検出すること、整数値キャリア位相アンビギュイティのための複数の検証レベルを有すること、脅威モデル内の複数のコンスタレーションからの信号を使用すること、補正値を決定するための基準局観測値の第1のセットと、補正値を検証するための基準局観測値の第2のセットとを使用することによって可能にされ、および/または別様に可能にされ得る。
【0028】
第4に、技術の変形態は、すばやくGNSS受信機および/または外部システム位置を推定することができる。特定の例では、システムおよび/または方法は、30s(たとえば、5s、10s、15s、20sなど)以内に第1のTIRを、(たとえば、10s、20s、30s、45s、60s、75s、90s以内になど、スタートアップから、第1のTIRを達成した後になど)90s以内に第2のTIRを、(たとえば、10s、20s、30s、45s、60s、75s、90s、120s、150s、180s、200s、215s、250s、270s、300sなど、スタートアップから、第1のTIRを達成した後に、第2のTIRを達成した後になど)300s以内に第3のTIRを達成することができる。しかしながら、技術は、任意の他の好適な時間フレーム以内にGNSS受信機および/または外部システム位置を推定および検証することができる。
【0029】
第5に、技術の変形態は、衛星信号がない(たとえば、衛星信号検出が、ハードウェア問題、障害物などにより中断された)場合に、受信機測位がしきい値完全性に決定されることを可能にすることができる。特定の例では、1つまたは複数のセンサー(たとえば、慣性ナビゲーション・システム(INS))が、1つまたは複数の衛星信号が受信されないとき、GNSS受信機および/または外部システム位置を推定するために使用され得る。この特定の例では、異なるINSを使用して決定されたデッド・レコニング位置が、デッド・レコニング位置がしきい値完全性を満たすことを保証するために、互いに対して検証され得る。
【0030】
しかしながら、技術の変形態は、任意の他の好適な利点および/または優位性を授けることができる。
【0031】
2.システム
図1A図1B、および図1C中に示されているように、システム1000は、コンピューティング・システム1300を含む。コンピューティング・システムは、測位エンジン1100および補正値処理エンジン1500を含むことができる。システム1000は、随意に、1つまたは複数のGNSS受信機1200、基準局1600、センサー1700、および/または任意の好適なコンポーネントを含むことができる。
【0032】
システムは、モバイル受信機および/または外部システムの位置を推定するように機能する。推定位置は、好ましくは、高い精度を有するが、任意の好適な精度を有してもよい。たとえば、推定位置は、せいぜい10メートル(たとえば、1mm、5mm、1cm、3cm、5cm、10cm、20cm、30cm、50cm、60cm、75cm、1m、1.5m、2m、3m、5m、7.5mなど)の(たとえば、50%の信頼度、68%の信頼度、95%の信頼度、99.7%の信頼度などをもつ)精度を有してもよい。推定位置は、好ましくは、高い完全性(たとえば、低いターゲット完全性リスク、小さい保護レベルなど)を有するが、任意の好適な完全性を有してもよい。たとえば、推定位置(および/または速度)は、せいぜい10-3/時、10-4/時、10-5/時、10-6/時、10-7/時、10-8/時、および/または10-9/時など、約10-2/時よりも小さいターゲット完全性リスクを有してもよい。第2の例では、推定位置は、せいぜい5m、3m、2m、1m、75cm、50cm、40cm、30cm、25cm、20cm、10cm、5cm、3cm、1cm、5mm、および/または1mmなど、約10メートルよりも小さい保護レベルを有してもよい。
【0033】
システムは、追加または代替として、1つまたは複数の所定のイベント(たとえば、懸念イベント、脅威、フォールトなど)が、所与の時間期間以内に起こる確率、および/または確率分布を決定するように機能することができる。所定のイベントは、推定位置の精度、完全性、利用可能性を減少させ、および/または別様に推定位置に影響を及ぼすイベントに対応することができる。所定のイベントは、(たとえば、実数値または整数値キャリア位相の決定、デッド・レコニング位置決定、補正値、外れ値検出、衛星観測値の受信、基準局観測値の受信、補正値の受信などに影響を及ぼすことによって)推定位置に直接影響を及ぼし、および/または推定位置に間接的に影響を及ぼすことがある。
【0034】
特定の例では、所定のイベントは、高ダイナミック・イベント、低ダイナミック・イベント、データリンク脅威、および/または他のイベントを含むことができる。
【0035】
高ダイナミック・イベントの例は、擬似距離マルチパス、キャリア位相マルチパス、キャリア位相サイクル・スリップ、RF干渉、非見通し線(NLOS)トラッキング、誤った捕捉、ガリレオ2進数オフセット・キャリア変調(BOC)セカンド・ピーク・トラッキング、スプーフィングなど、ローカルな所定のイベント、コード・キャリア非コヒーレンシ、衛星時計ステップ誤差、1cm/sよりも大きい衛星時計ドリフト誤差、GPSイービル波形、衛星観測値の損失、誤ったナビゲーション・メッセージなど、衛星および/または衛星コンスタレーション所定イベント(たとえば、衛星懸念イベント)、ならびに/あるいは他の高ダイナミック・イベントを含む。
【0036】
低ダイナミック・イベントの例は、せいぜい1cm/sの電離層勾配、対流圏勾配、電離層シンチレーション、大気イベントなど、環境所定イベント、基準局擬似経路マルチパス、基準局RF干渉、基準局サイクル・スリップ、基準局観測値損失、基準局観測値破損など、ネットワーク所定イベント、衛星観測値の損失、誤ったナビゲーション・メッセージ、せいぜい約1cm/sの衛星時計ドリフト誤差、データ異常の問題、誤ったブロードキャスト・エフェメリス、誤ったブロードキャスト・クロック、コンスタレーション障害など、低ダイナミック衛星および/または衛星コンスタレーション所定イベント、不正確な基準局座標、不正確な地球回転パラメータ、不正確な太陽/月エフェメリス、不正確な海洋ローディング・パラメータ、不正確な衛星姿勢モデル、不正確な衛星位相中心オフセット、不正確な衛星位相中心変動、不正確なうるう秒など、メタデータ所定イベント、ならびに/あるいは他の低ダイナミック・イベントを含む。
【0037】
データリンク脅威の例は、補正メッセージ破損、破損メッセージ損失、補正メッセージ・スプーフィング、および/または他のデータ送信脅威を含むことができる。
【0038】
変形態では、高ダイナミック・イベントは、高ダイナミック・イベントが、位置を推定するために処理および/または使用されるとすぐに(たとえば、数秒、数ミリ秒、数ナノ秒程度で、衛星信号処理と同時に)推定位置の完全性に影響を及ぼすことがあるイベント(たとえば、脅威、フォールトなど)であり得る。関連する変形態では、低ダイナミック・イベントは、脅威時間期間以内に推定位置の完全性に影響を及ぼすことがあるイベント(たとえば、脅威、フォールトなど)であり得る。脅威時間期間は、(たとえば、1s、5s、10s、12s、20s、30s、40s、50s、60s、90s、120s、180s、240s、300s、600sなど)あらかじめ決定され、イベントに基づき、完全性(たとえば、前の推定位置完全性、ターゲット完全性、アプリケーションが必要とする完全性など)に基づき、データ送信ラグに基づき得、および/または任意の好適な時間期間であり得る。関連する変形態では、データリンク脅威は、コンピューティング・システムの間でデータを送信および/または受信することに基づくイベントであり得る。
【0039】
所定のイベントが起こる確率(および/または所定のイベントの影響)は、発見的に、経験的に、コンピュータ・シミュレーションおよび/またはモデル(たとえば、モンテ・カルロ・シミュレーション、直接シミュレーションなど)に基づいて決定され、ならびに/あるいは別様に決定され得る。各所定のイベントについての確率は、好ましくは、他の所定のイベントの確率とは無関係である。しかしながら、2つまたはそれ以上の所定のイベントの確率は、互いに依存することがある。変形態では、所定のイベントの確率は、(たとえば、位置推定値について、中間データ、部分的に変換されたデータについてなど)TIRを推定(および/または決定)するために使用され得る。特定の例では、TIRは、各所定のイベントの積から決定され、所定のイベントを誤検出する確率、ならびに推定位置および/または中間データに対する所定のイベントの影響によってスケーリングされ得る。しかしながら、TIRは、任意の好適な様式で決定され得る。
【0040】
コンピューティング・システム1300は、好ましくは、基準局、GNSS受信機、および/またはセンサーからのデータを処理するように機能する。コンピューティング・システムは、データをアグリゲートすること(たとえば、複数のモバイル受信機をトラッキングすること、衛星観測値とセンサー・データを統合することなど)、(たとえば、外部システムに取り付けられたGNSS受信機から決定された位置データに基づいて、外部システムに指示を提供する)システム制御、(たとえば、限られたメモリまたは処理能力によりオフロードされたGNSS受信機のための計算、受信機位置決定などを実施する)位置計算、補正計算(たとえば、時計誤差を補正するなどのためのローカルおよび/またはグローバル補正データ、大気補正値など)を含む複数の目的のために、このデータを処理し、(たとえば、衛星観測値中の、基準局観測値中の、データリンクにおけるなど)所定のイベントを検出し、(たとえば、所定のイベントを含む観測値を取り除くことによって、所定のイベントを含む観測値をスケーリングすることによってなど)所定のイベントの影響を緩和し得、ならびに/あるいはコンピューティング・システムは、任意の好適な様式でデータを処理することができる。コンピューティング・システムは、追加または代替として、基準局観測値に基づいて、基準局を管理するか、またはGNSS受信機のための仮想基準局を生成し得る。コンピューティング・システムは、追加または代替として、GNSS受信機が直接インターネット接続されていない場合、GNSS受信機へのインターネット・ゲートウェイとして働き得る。コンピューティング・システムは、ローカル(たとえば、GNSS受信機に対する、外部システムに対する、センサーに対する、基準局に対する、インターネット接続された汎用コンピュータ、プロセッサなど)であり、リモート(たとえば、中央処理サーバ、クラウド、サーバなど)であり、分散され(たとえば、1つまたは複数のローカルおよびリモート・システムの間で分割され)、および/または任意の好適な様式で構成され得る。
【0041】
好ましい実施形態では、コンピューティング・システムは、ローカル・コンピューティング・システムとリモート・コンピューティング・システム(たとえば、サーバ・システム)との間で分散される。特定の例では、ローカル・コンピューティング・システムは、測位エンジンを含むことができ、リモート・コンピューティング・システムは、補正値処理エンジンを含むことができる。しかしながら、ローカル・コンピューティング・システムは、測位エンジンと補正値処理エンジンの両方を含むことができ、サーバは、位置エンジンと補正値処理エンジンの両方を含むことができ、サーバは、測位エンジンを含むことができ、ローカル・コンピューティング・システムは、補正値処理エンジンを含むことができ、ならびに/あるいは測位エンジンおよび/または補正値処理エンジンは、サーバとローカル・コンピューティング・システムとの間で分散され得る。しかしながら、コンピューティング・システムは、任意の好適なコンポーネントおよび/またはモジュールを含むことができる。
【0042】
測位エンジン1100は、GNSS受信機1200および/またはGNSS受信機に結合された外部システムの位置を推定するように機能する。測位エンジン1110は、好ましくは、推定位置(たとえば、位置データ)を生成するために、GNSS受信機1200(または他のGNSSデータ・ソース)からの衛星観測値(たとえば、観測データ)、および補正値処理エンジン1500からの補正値(たとえば、補正値データ)を入力として取る。しかしながら、測位エンジンは、追加または代替として、センサー・データ、所定のイベント情報(たとえば、所定のイベントの検出、所定のイベントの緩和、所定のイベントの確率など)、基準局観測値、他のGNSS受信機からの衛星観測値、および/あるいは任意のデータまたは情報入力を取ることができる。測位エンジンは、好ましくは、推定位置および推定位置の完全性(たとえば、保護リミット、完全性リスクなど)を出力する。しかしながら、測位エンジンは、追加または代替として、デッド・レコニング位置、センサ・バイアス、所定のイベント(たとえば、検出、識別、緩和など)、および/または任意の好適なデータを出力することができる。測位エンジンは、好ましくは、GNSS受信機、補正値処理エンジン、およびセンサーに通信可能に結合されるが、追加または代替として、基準局および/または任意の好適なコンポーネントに通信可能に結合され得る。
【0043】
位置エンジンは、好ましくは、補正値処理エンジンから受信されたデータ(たとえば、補正値、補正信頼性、所定のイベント検出など)に対して誤り検出を実施する。誤り検出は、好ましくは、(CRC-16、CRC-32、CRC-64、Adler-32など)巡回冗長検査(CRC)に基づく。しかしながら、誤り検出は、セキュア・ハッシュ・アルゴリズム(SHA)、暗号ハッシュ関数、ハッシュベース・メッセージ認証コード(HMAC)、フレッチャーのチェックサム、水平パリティ・チェック、サム補数、ファジー・チェックサム、フィンガープリント関数、ランダム化関数、および/または任意の好適な誤差検出方式に基づき得る。
【0044】
いくつかの変形態では、補正値処理エンジンから受信された補正値は、タイムアウト期間が経過した後、無効(および/または場合によっては利用不可能)にされ得る(および新しい補正値は、タイムアウト期間内に受信されない)。タイムアウト期間は、所定の持続時間(たとえば、1、2、5、10、20、30、40、50、60、90、120、180、300、600秒など)であり、ランダムまたは擬似ランダム持続時間であり、補正値の信頼性に基づき、補正値の予測された変化に基づき、GNSS受信機(たとえば、位置、速度、加速度、受信機バイアスなど)に基づき、外部システム(たとえば、必要とされる位置完全性のレベル、必要とされる位置精度のレベル、位置、速度、加速度など)に基づき、アプリケーションに基づき、測位エンジン(たとえば、補正値の不正確さに適応するための測位エンジンの能力)に基づき、および/または任意の好適なコンポーネントに基づき得る。しかしながら、任意の好適なタイムアウト期間が使用され得る。
【0045】
特定の例では、測位エンジン(および/または測位エンジンのコンポーネント)は、この参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2020年3月12日に出願された、「SYSTEMS AND METHODS FOR REAL TIME KINEMATIC SATELLITE POSITIONING」と題する、米国特許出願第16/817,196号に記載されている任意の好適な方法および/または方法のステップを実施することができる。
【0046】
図2中に示されているように、測位エンジン1100は、観測モジュール1110(たとえば、観測モニタ)、キャリア位相決定モジュール1115、高速再収束モジュール1140、外れ値検出器1150(たとえば、サイクル・スリップ検出器)、位置モジュール1160(たとえば、固定小数点整数位置フィルタ)、速度モジュール1170(たとえば、速度フィルタ)、およびデッド・レコニング・モジュール1180のうちの1つまたは複数を含む。しかしながら、1つまたは複数のモジュールは、互いと統合され得、および/または測位エンジンは、任意の好適なモジュールを含むことができる。
【0047】
図2中に示されている相互接続は、非限定的な例としてのものであり、測位エンジン1100のコンポーネントは、任意の様式で結合され得ることに留意されたい。
【0048】
観測モジュール1110は、GNSS受信機1200からの衛星観測値(たとえば、観測値データ)を入力として取り、潜在的な所定のイベントおよび/または外れ値(たとえば、擬似距離および/またはキャリア位相の大きい誤差)についてそれらを検査するように機能する。しかしながら、観測モジュールは、追加または代替として、基準局観測値、補正値、センサー・データ、および/または所定のイベントについての任意の好適なデータを検査することができる。観測モジュールは、好ましくは、高ダイナミック所定イベントを検出するように構成されるが、データリンク所定イベント、低ダイナミック所定イベント、および/または任意の所定のイベントを検出するように構成され得る。潜在的な所定のイベントは、観測値をもつ検出された問題を含み得、観測値は、たとえば、あまりに急速に変化するか、またはしきい値を超える。
【0049】
観測モジュールは、追加または代替として、所定のイベントの影響を緩和し、および/または所定のイベントについての(たとえば、外れ値検出器、キャリア位相決定モジュールなどによって適用されるべき)緩和を送信することができ、これは、推定位置(および/または位置の推定の中間データ)に対する所定のイベント発生の影響を低減するように機能する。第1の特定の例では、所定のイベントが、衛星観測値のうちで検出されたとき、所定のイベントをもつ衛星観測値が、衛星観測値から取り除かれ得る。第2の特定の例では、所定のイベントが、衛星観測値のうちで検出されたとき、衛星観測値は、所定のイベントの影響を減少させ、および/または取り除くようにスケーリングされ得る。第3の特定の例では、所定のイベントが、衛星観測値のうちで検出されたとき、追加の衛星観測値が、所定のイベントの影響を緩和するために収集および/または送信され得る。第4の特定の例では、所定のイベントが検出されたとき、関連付けられた衛星観測値が、(たとえば、補間、2次センサー、他のコンスタレーションなどから決定された補正値に基づいて)補正され得る。しかしながら、任意の好適な緩和ストラテジーが、所定のイベントの影響を緩和するために使用され得る。
【0050】
観測モジュールは、好ましくは、速度モジュールおよびキャリア位相決定モジュールに通信可能に結合されるが、外れ値検出器、高速再収束モジュール、デッド・レコニング・モジュール、補正値処理エンジン、センサー、および/または任意の好適なモジュールに通信可能に結合され得る。特定の例では、観測モジュール1110は、キャリア位相決定モジュール(たとえば、浮動位置フィルタ1120)に擬似距離およびキャリア位相データを提供し、速度モジュール1170にキャリア位相データを提供する。
【0051】
キャリア位相決定モジュールは、好ましくは、衛星観測値がGNSS受信機によって受信される前に通過した不確定な数の波長から生じたキャリア位相におけるアンビギュイティを解消するように機能する。キャリア位相決定モジュールは、好ましくは、観測モジュール、補正値処理エンジン、および位置モジュールに通信可能に結合される。しかしながら、キャリア位相決定モジュールは、センサー、GNSS受信機、外れ値検出器、デッド・レコニング・モジュール、高速再収束モジュール、および/または任意の好適なコンポーネントに通信可能に結合され得る。キャリア位相決定モジュールは、好ましくは、速度モジュールに通信可能に結合されないが、キャリア位相決定モジュールは、速度モジュールに通信可能に結合され得る。特定の例では、キャリア位相アンビギュイティを解消することは、実数値キャリア位相アンビギュイティを決定することと、整数値キャリア位相アンビギュイティを決定することと、整数値キャリア位相アンビギュイティを検定することと、固定推定器を生成することとを含むことができる。しかしながら、キャリア位相アンビギュイティは、任意の好適な様式で解消され得る。
【0052】
変形態では、キャリア位相決定モジュールは、浮動フィルタ1120(たとえば、浮動位置フィルタ)、および整数固定モジュール1130(たとえば、整数アンビギュイティ・レゾルバ)を含むことができる。しかしながら、キャリア位相決定モジュールは、任意の好適なコンポーネントを含むことができる。
【0053】
浮動フィルタ1120は、位置推定において使用されるべき、各衛星についてのキャリア位相アンビギュイティ(たとえば、実数値キャリア位相アンビギュイティ)に対する浮動解を生成するように機能する。浮動フィルタへの入力は、補正値(たとえば、しきい値よりも大きい信頼性をもつ補正値)、衛星観測値(たとえば、擬似距離、キャリア位相、所定イベント緩和衛星観測値、生衛星観測値など)、衛星観測値の線形結合、センサー・データ、および/または任意の好適なデータを含むことができる。浮動フィルタからの出力は、好ましくは、実数値キャリア位相アンビギュイティであるが、浮動フィルタは、擬似距離または任意の好適な情報を出力することができる。浮動フィルタは、最小2乗パラメータ推定、再帰的最小2乗パラメータ推定、カルマン・フィルタ、拡張カルマン・フィルタ、アンセンテッド・カルマン・フィルタ、粒子フィルタ、および/または実数値キャリア位相アンビギュイティを生成するための任意の好適な方法を使用して、実数値キャリア位相アンビギュイティを決定することができる。
【0054】
特定の例では、単一の衛星/受信機ペアの場合、受信機におけるキャリア位相測定は、以下、すなわち、
【0055】
のようにモデル化され得、ここで、λは、衛星信号の波長であり、rは、受信機から衛星までの距離であり、Iは、電離層アドバンスであり、Tは、対流圏遅延であり、fは、衛星信号の周波数であり、δtは、受信機時計バイアスであり、δtは、衛星時計バイアスであり、Nは、整数キャリア位相アンビギュイティであり、εφは、ノイズ項である。
【0056】
浮動フィルタ1120は、好ましくは、浮動アンビギュイティ値(換言すれば、整数値に制約されない整数キャリア位相アンビギュイティへの解)を生成するために、補正値処理エンジン1500からの補正値データとともに、GNSS受信機1200からのキャリア位相データおよび擬似距離データを使用する。補正値データは、好ましくは、(たとえば、差分を取ることまたは任意の他の技法を介して)電離層の存在、対流圏、衛星時計バイアス項、および/またはキャリア位相測定値中の他の信号を低減するために使用される。追加または代替として、浮動フィルタ1120は、任意の様式で浮動アンビギュイティ値を生成し得る。浮動フィルタ1120はまた、擬似距離およびキャリア位相データから位置および速度推定値を生成し得る。
【0057】
いくつかの場合には、浮動フィルタ1120は、(たとえば、センサーによって供給された)慣性データを使用して、実数値キャリア位相アンビギュイティ(たとえば、浮動アンビギュイティ値)を改良し得る。
【0058】
整数固定モジュール1130(たとえば、整数アンビギュイティ・レゾルバ)は、実数値キャリア位相アンビギュイティから整数値キャリア位相アンビギュイティを生成するように機能する。整数固定モジュール1130は、任意の様式(たとえば、整数丸め、整数ブートストラッピング、整数最小2乗など)で整数値キャリア位相アンビギュイティを生成し得る。整数固定モジュールへの入力は、好ましくは、(たとえば、浮動フィルタからの)実数値キャリア位相であるが、擬似距離、キャリア位相、補正値、センサー・データ、前の推定位置および/または整数値キャリア位相アンビギュイティ、ならびに/あるいは任意の好適な情報を含むことができる。整数固定モジュールからの出力は、好ましくは、整数値キャリア位相アンビギュイティ値であるが、任意の好適な情報を含むことができる。いくつかの変形態では、整数値キャリア位相アンビギュイティを生成することは、(実数値)キャリア位相アンビギュイティを無相関化することを含むことができる。キャリア位相アンビギュイティは、LAMBDA方法、MLAMBDA方法、LLL低減アルゴリズム、ホワイトニング変換、カラーリング変換、無相関化変換、および/あるいは任意の好適な無相関化または低減アルゴリズムを使用して無相関化され得る。
【0059】
システムは、随意に、整数値キャリア位相アンビギュイティが、受け入れられるべきであり、および/またはしきい値品質を達成したかどうかを決定するように機能する、整数固定モジュール1130によって生成された整数値キャリア位相アンビギュイティを検証するように機能する、検証モジュール1135を含むことができる。代替的に、整数値キャリア位相アンビギュイティは、整数固定モジュール1130または任意の他の好適なモジュールによって検証され得る。整数値キャリア位相アンビギュイティ検証は、任意の様式(たとえば、比試験、f比試験、距離試験、プロジェクタ試験など)で実施され得る。
【0060】
1つの変形形態では、検証モジュールは、マルチステップ・プロセスにおいて整数値キャリア位相アンビギュイティを検証する。マルチステップ・プロセスの各ステップは、好ましくは、整数値キャリア位相アンビギュイティの増加された信頼性(たとえば、検証された整数値キャリア位相アンビギュイティを使用して計算された推定位置の完全性)に対応するが、追加または代替として、異なる完全性レベル、検証性能レベル、および/または別の完全性メトリックに関連付けられ得る。マルチステップ検証プロセスの各ステップは、整数値キャリア位相アンビギュイティを検証(および/または決定)するために必要とされる時間の量、推定位置の完全性(たとえば、TIR、保護レベルなど)、整数値キャリア位相アンビギュイティが正しい確率、および/または任意の好適な品質に対応することができる。各ステップ(および/またはステップの数)は、衛星観測値(たとえば、衛星観測値の数、衛星コンスタレーションの数、各衛星コンスタレーションに対応する衛星の数、衛星観測値の品質、衛星観測値中の所定のイベントなど)、実数値キャリア位相アンビギュイティ、擬似距離、外部システム、推定位置のアプリケーション、推定位置の完全性(および/またはターゲット完全性)、検証を達成するために必要とされる時間の量、センサー(たとえば、センサー・タイプ、センサー番号、センサー・データなど)、ならびに/あるいは任意の好適なパラメータに依存してもよい。ステップの数(および/または使用すべきステップ)は、動作コンテキスト(たとえば、所与の動作コンテキストのための完全性レベル)、利用可能な入力データ、利用可能な検証時間の量に基づいて選択され、および/または別様に決定され得る。代替的に、すべてのステップは、常に実施され得る。先行するステップは、好ましくは、常に後続のステップの前に実施されるが、1つまたは複数のステップは、スキップされるか、または異なる順序で実施され得る。
【0061】
マルチステップ・プロセスは、少なくとも3つのステップ(たとえば、3つのステップ、4つのステップ、5つのステップ、10個のステップなど)を含むことができるが、追加または代替として、2つのステップおよび/または任意の好適な数のステップを含むことができる。
【0062】
第1の例示的例では、第1の検証ステップに検証されなかった整数値キャリア位相アンビギュイティは、TIR≧10-4/時など、低完全性(たとえば、生命非安全完全性)推定位置に対応することがある。この例示的例では、第1の検証ステップに検証されたが、第2の検証レベルに検証されなかった整数値キャリア位相アンビギュイティは、推定位置≦10-4/時の完全性リスク、および≦2mの保護レベルに対応することがある。この例示的例では、第2の検証ステップに検証されたが、第3の検証ステップに検証されなかった整数値キャリア位相アンビギュイティは、推定位置≦10-6/時の完全性リスク、および≦2mの保護レベルに対応することがある。この例示的例では、第3の検証ステップに検証された整数値キャリア位相アンビギュイティは、推定位置≦10-7/時の完全性リスク、および≦3mの保護レベルに対応することがある。しかしながら、推定位置の完全性リスクおよび/または保護レベルは、各検証ステップにおいて、整数値キャリア位相アンビギュイティについて任意の好適な値(それぞれ、≦10-2/時、≦10-3/時、≦10-4/時、≦10-5/時、≦10-6/時、≦10-7/時、≦10-8/時、≦10-9/時、≧10-2/時、≧10-3/時、≧10-4/時、≧10-5/時、≧10-6/時、≧10-7/時など、および/または0.1m、0.2m、0.5m、1m、2m、3m、5m、10m、20m、40mなど)であり得る。各ステップに関連付けられた完全性リスクおよび/または保護レベルは、シミュレーション(たとえば、モンテ・カルロ・シミュレーション)を使用して、履歴データ(たとえば、パターン・マッチング)、ヒューリスティック、ニューラル・ネットワークに基づいて決定され、および/または別様に決定され得る。
【0063】
第2の例示的例では、第1の検証ステップに検証されなかった整数値キャリア位相アンビギュイティは、スタートアップから直ちに(たとえば、<1s、<2s、<5s、<10s以内になど)出力され得る。この例示的例では、第1の検証ステップに検証されたが、第2の検証レベルに検証されなかった整数値キャリア位相アンビギュイティは、測位エンジンのスタートアップから30s以内に生成され得る。この例示的例では、第2の検証ステップに検証されたが、第3の検証ステップに検証されなかった整数値キャリア位相アンビギュイティは、測位エンジンのスタートアップから90s以内に生成され得る。この例示的例では、第3の検証ステップに検証された整数値キャリア位相アンビギュイティは、測位エンジンのスタートアップから300s以内に生成され得る。しかしながら、各検証ステップにおける整数値キャリア位相アンビギュイティは、(たとえば、測位エンジンの開始に対して、測位エンジンの連続動作に対して、前の検証ステップに対してなど)任意の好適な時間の量に対応してもよい。
【0064】
第3の例示的例では、検証モジュールは、第1のステップにおいて、同時に少なくとも2つの衛星コンスタレーション(たとえば、GPSおよびガリレオ、GPSおよびGLONASS、GPSおよびBDS、ガリレオおよびGLONASS、ガリレオおよびBDS、GLONASSおよびBDSなど)について整数アンビギュイティを検証し得る。第1のステップにおいて、検証モジュールは、好ましくは、衛星観測値の各々に同じ補正値を適用するが、領域オフセット変更補正値、(たとえば、衛星コンスタレーションに基づく)各衛星についての異なる補正値、および/または任意の好適な補正値を適用し得る。第2のステップにおいて、検証モジュールは、第2の衛星コンスタレーションに対応するものとは無関係に、第1の衛星コンスタレーションに対応する衛星観測値を(並列にまたは順次)検証し得る。計算されたアンビギュイティが、第1のステップのものに対応する(たとえば、一致する)場合、信頼度は増加される。異なる衛星コンスタレーションについてのこれらの検証は、同じまたは異なる補正値(たとえば、特定の衛星コンスタレーションが残差領域オフセットによって変更され得る、衛星観測値に対する補正値)を使用して実施され得ることに留意されたい。同様に、各コンスタレーション(たとえば、連続する時間期間、連続するエポック、同じ時間期間、同じエポックなどに対応する衛星観測値)について、2つなど、1つまたは複数の追加の連続する検証を繰り返す第3のステップは、計算された整数アンビギュイティ値の信頼度をさらに増加させ得る。しかしながら、第1、第2、および/または第3のステップにおいて、(たとえば、単一の衛星コンスタレーションからの各衛星についての衛星観測値について、整数値キャリア位相値を検証する、単一の衛星コンスタレーションに対応する衛星の第1のサブセットおよび衛星の第2のサブセットについての衛星観測値について、整数値キャリア位相値を検証する、複数の衛星コンスタレーションからの各衛星についての衛星観測値について、整数値キャリア位相値を検証するなど)3つまたはそれ以上の衛星コンスタレーション、1つまたは複数の衛星コンスタレーション内の衛星のサブセットに対応する整数値キャリア位相アンビギュイティ、ならびに/あるいは任意の好適な衛星観測値が、検証され、および/または任意の好適な回数検証され得る。
【0065】
各ステップにおいて、検証が失敗した(たとえば、アンビギュイティが、それぞれの基準アンビギュイティに一致しなかった)とき、下にある観測値は、位置を決定するために使用される観測値のセットから取り除かれ得、位置決定が再開され得、(たとえば、無効なステップまたは関連付けられた完全性レベルに関連付けられた)いくらかの外部システム機能が、選択的に非アクティブにされ得、および/または他の緩和アクションが取られ得る。
【0066】
複数の衛星コンスタレーションが使用される場合、独立した補正値データを生成する能力は、整数固定モジュールが、整数アンビギュイティについて2つの独立した解を解くことを可能にし得、これは、高完全性測位を提供する能力を増加させることができる。
【0067】
特定の例では、検証モジュールは、この参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2020年3月12日に出願された、「SYSTEMS AND METHODS FOR REAL TIME KINEMATIC SATELLITE POSITIONING」と題する、米国特許出願第16/817,196号に記載されている仮説検定(および関連するステップ)を実施することによって、衛星観測値および/またはそれらのサブセットを検証する(たとえば、マルチステップ検証の1つまたは複数のステップ)ことができる。
【0068】
しかしながら、シングルステップ検証プロセスが使用され得る。
【0069】
整数値キャリア位相アンビギュイティは、好ましくは、整数値キャリア位相アンビギュイティが少なくとも1つの検証ステップに検証された後に、位置推定のために位置モジュール1160に送信されるが、整数値キャリア位相アンビギュイティは、整数値キャリア位相アンビギュイティ検証の前または間に、任意の他の好適な時間において、位置推定のために位置モジュール1160におよび/または任意の他の好適なエンドポイントに送信され得る。
【0070】
高速再収束モジュール1140は、(たとえば、慣性測定ユニット(IMU)によって提供された)慣性データ、および/または他の非GNSSソースド・データ(たとえば、ホイール・オドメーター・データ、視覚オドメトリ・データ、画像データ、レーダー/ライダー測距データ)に基づいて、短いGNSSサービス中断の場合にロバストネスを提供するように機能する。たとえば、高速再収束モジュール1140は、前に推定された値、およびGNSSサービス中断中にキャプチャされた慣性/他のデータに基づいて、推定されたキャリア位相アンビギュイティ(たとえば、実数値キャリア位相アンビギュイティ、整数値キャリア位相アンビギュイティなど)をキャリア位相決定モジュール1115に提供し得る。一実装形態では、高速再収束モジュール1140は、有効なGNSSメッセージの再開の後に、GNSSデータの差分を取り、差を、慣性および/または他のデータを使用して計算された位置の変化の推定値と比較し、この比較から、(現在の整数アンビギュイティの推定値をもたらすために、より古い整数アンビギュイティ推定値に追加され得る)整数アンビギュイティ変化の高速推定値を計算し得る。この推定値は、次いで、検証された測位データを再確立するプロセスの速度を上げることができる。しかしながら、システムは、場合によっては、GNSSサービス再開の後に、キャリア位相整数アンビギュイティに対してすばやく再収束することができる。
【0071】
外れ値検出器1150は、外れ値、(マルチパス誤差、サイクル・スリップなど)所定のイベント、および/またはデータ内の誤った測定値(たとえば、衛星観測値、センサー・データ、基準局観測値、補正値など)を検出するように機能する。外れ値検出器は、好ましくは、速度モジュール、位置モジュール、センサー、および観測モジュールに通信可能に結合されるが、補正値処理エンジン、キャリア位相決定フィルタ、高速再収束モジュール、デッド・レコニング・モジュール、および/または任意の好適なモジュールに通信可能に結合され得る。外れ値検出器への入力は、センサー・データ、衛星観測値、補正値、前の推定位置および/または速度、基準局観測値、ならびに/あるいは任意の好適なデータまたは情報を含むことができる。外れ値検出器からの出力は、(たとえば、所定のイベントの存在を識別する、所定のイベントのタイプを識別するなど)所定のイベントの識別、所定のイベントについての緩和、緩和された衛星観測値(たとえば、所定のイベント、外れ値、および/または誤った測定値を考慮し、および/または取り除くように補正された衛星観測値)、ならびに/あるいは任意の好適なデータまたは情報を含むことができる。外れ値および/または所定のイベントの影響を緩和することは、衛星観測値のセットから1つまたは複数の衛星観測値を取り除くこと、所定のイベントをもつ衛星観測値を、所定のイベントをもたない衛星観測値とは異なって重み付けすること、衛星観測値から所定のイベントを取り除くために補正値を適用すること、および/または任意の好適なステップを含むことができる。
【0072】
変形態では、外れ値検出器は、この参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2020年1月21日に出願された、「SYSTEMS AND METHODS FOR REDUCED-OUTLIER SATELLITE POSITIONING」と題する、米国特許出願第16/748,517号に開示されている方法および/または方法のステップを実施することができる。しかしながら、外れ値検出器は、任意の好適な様式で機能することができる。
【0073】
特定の例では、外れ値検出器は、キャリア位相観測値中の潜在的サイクル・スリップ(換言すれば、衛星の信号に対する受信機の連続位相ロックの不連続性)を検出するように機能する、サイクル・スリップ検出器1155を含むことができる。サイクル・スリップ検出器1155は、好ましくは、キャリア位相観測値の線形結合を調べることによって(たとえば、位相測定残差を計算し、それらの残差を全位相サイクルの整数倍と比較することによって)サイクル・スリップを検出するが、追加または代替として、(たとえば、キャリア位相アンビギュイティが急速に変化するが、慣性データが、サイクル・スリップを示し得る急速な移動を示さないとき)サイクル・スリップを検出するために、センサー・データ(たとえば、慣性データ)を利用し得る。サイクル・スリップが、所与の観測値中で検出されたとき、サイクル・スリップ検出器1155は、好ましくは、その観測値を廃棄する(それを位置計算のために利用不可能にする)。代替的に、サイクル・スリップ検出器1155は、任意の様式でサイクル・スリップ検出に応答(たとえば、位置計算において観測値をより少なく重み付けする、観測値中のサイクル・スリップを補正することを試みるなど)し得る。
【0074】
位置モジュール1160は、GNSS受信機1200について位置推定値を計算するように機能する。位置推定値は、好ましくは、アンビギュイティが取り除かれたキャリア位相アンビギュイティ(たとえば、整数値または実数値)に基づいて決定されるが、追加または代替として、センサー・データ(たとえば、IMUデータ、INSデータなど)、実数値キャリア位相アンビギュイティ、擬似距離、(たとえば、整数固定モジュール1130によって計算された)整数値キャリア位相アンビギュイティ、および/または任意の好適なデータに基づいて決定され得る。変形態では、この位置推定値は、50cmよりも小さい、3シグマなど、(たとえば、補正値処理エンジンの)補正精度に依存する精度を有することができるが、代替的に、任意の他の好適な精度を有してもよい。これは、キャリア位相測定値が、擬似距離測定値よりもはるかに正確(たとえば、100倍より正確)であり、センチメートル・レベルを下回るノイズを有するので、可能である。位置モジュールは、センサー、デッド・レコニング・モジュール、外れ値検出器、キャリア位相決定モジュール、観測モジュール、高速再収束モジュール、補正値処理エンジン、および/または任意の好適なコンポーネントに通信可能に結合され得る。位置モジュールは、好ましくは、速度モジュールに通信可能に結合されないが、速度モジュールに通信可能に結合され得る。
【0075】
位置モジュールは、追加または代替として、推定位置について完全性(たとえば、完全性リスク、保護レベルまたは数学的に類似の誤差推定値など)を計算することができる。位置モジュール1160は、好ましくは、保護レベル生成(およびフォールト検出)を実施するために、アドバンスト受信機アドバンスト完全性モニタリング(ARAIM)アルゴリズムの変更された形態を利用する。ARAIM技法は、単一のエポックにおいて実施された重み付けされた最小2乗推定値に基づく。旧来、ARAIM技法は、擬似距離計算を使用して実施されるが、位置モジュール1160は、好ましくは、入力としてキャリア位相測定値のみを取る、ARAIMアルゴリズムの変更された形態を利用する。位置モジュールは、このアルゴリズムを使用して、コード・キャリア非コヒーレンシ、衛星時計ステップ誤差、および衛星時計ドリフトなど、所定のイベントを緩和し得る。しかしながら、位置モジュールは、推定位置の完全性を計算するために、および/または所定のイベントの影響を緩和するために、受信機アドバンスト完全性モニタリング(RAIM)アルゴリズム、航空機アドバンスト完全性モニタリング(AAIM)、複数解分離(MSS)アルゴリズム、相対受信機アドバンスト完全性モニタリング(RRAIM)、拡張受信機アドバンスト完全性モニタリング(ERAIM)、および/または任意の好適なアルゴリズムを利用することができる。
【0076】
特定の例では、位置モジュール1160は、推定位置上の擬似距離マルチパスおよび/または推定位置の完全性など、いくらかの所定のイベントの影響を限定する、キャリア位相観測データのみに基づいて(擬似距離観測データに基づかずに)、推定位置(および関連付けられた保護レベル)を計算する。
【0077】
変形態では、位置モジュールは、追加または代替として、外部システムの推定位置を決定するために、GNSS受信機の推定位置に対して任意の好適な変換(たとえば、回転、スケーリング、トランスレーション、反射、投影など)を実施することができる。
【0078】
随意の速度モジュール1170は、GNSS受信機1200(および/または外部システム)の速度を推定するように、および追加として、推定速度について完全性(たとえば、TIR、保護レベルまたは数学的に類似の誤差推定値など)を計算するように機能する。代替的に、車両速度は、位置モジュールによって出力された位置の時系列から決定されるか、慣性センサー測定値から決定されるか、または別様に決定され得る。速度モジュール1170は、好ましくは、時間差分キャリア位相測定値を使用して速度を推定するが、任意の様式で、ドップラー・シフト・データ、センサー・データ、擬似距離、(たとえば、2つまたはそれ以上の時点および/またはエポックにおいて位置モジュールによって推定された)ディファレンシャル推定位置、および/または推定速度を使用することができる。速度モジュールは、好ましくは、観測モジュールからキャリア位相データを受信するが、キャリア位相決定モジュール、高速再収束モジュールから、および/または任意の好適なモジュールから、キャリア位相データ(たとえば、実数値キャリア位相アンビギュイティ、整数値キャリア位相アンビギュイティなど)を受信することができる。速度モジュールは、好ましくは、観測モジュールおよび外れ値検出モジュールに通信可能に結合されるが、追加または代替として、キャリア位相決定モジュール、デッド・レコニング・モジュール、位置モジュール、補正値処理エンジンに、および/または任意の好適なモジュールに通信可能に結合され得る。
【0079】
推定速度は、(たとえば、エポックの間の)相対速度、瞬時速度、平均速度、瞬時スピード、相対スピード、平均スピード、および/または任意の好適な速度であり得る。
【0080】
いくつかの変形態では、推定速度は、トラック角度(たとえば、GNSS受信機および/または外部システムの動きの方向)を推定するために使用され得る。特定の例では、トラック角度は、三角法関係を使用して、推定速度の水平成分に基づいて推定され得る。しかしながら、トラック角度は、任意の好適な様式で決定され得る。
【0081】
位置モジュール1160と同様に、速度モジュール1170は、好ましくは、推定速度完全性(たとえば、TIR、保護レベルなど)の生成(およびフォールト検出)を実施するために、アドバンスト受信機アドバンスト完全性モニタリング(ARAIM)アルゴリズムの変更された形態を利用する。旧来、ARAIM技法は、擬似距離計算を使用して実施されるが、速度モジュール1170は、好ましくは、(たとえば、位置モジュール1160に類似して、またはそれとは異なって)入力としてキャリア位相測定値のみを取る、ARAIMアルゴリズムの変更された形態を利用する。速度モジュール1170は、このアルゴリズムを使用して、コード・キャリア非コヒーレンシ、衛星時計ステップ誤差、衛星時計ドリフト、ジャンプ、加速、および/または他の衛星懸念イベントなど、所定のイベントを緩和し得る。しかしながら、速度モジュールは、推定速度の完全性を計算するために、および/または所定のイベントの影響を緩和するために、受信機アドバンスト完全性モニタリング(RAIM)アルゴリズム、航空機アドバンスト完全性モニタリング(AAIM)、複数解分離(MSS)アルゴリズム、相対受信機アドバンスト完全性モニタリング(RRAIM)、拡張受信機アドバンスト完全性モニタリング(ERAIM)、および/または任意の好適なアルゴリズムを利用することができる。
【0082】
いくつかの変形態では、速度モジュール1170は、電離層バイアス・モニタを含み得、しきい値を超える電離層バイアスが、所与の衛星について検出されたとき、その衛星は、速度解生成から除外され得る。代替的に、速度モジュール1170は、位置モジュール1160と、補正値処理エンジンと、および/または任意の他の好適なシステムと電離層バイアス・モニタを共有することができる。速度モジュール1170の電離層バイアス・モニタは、任意の様式で電離層状態を監視し得、たとえば、モニタは、二重周波数キャリア位相測定値の線形結合を使用して、電離層遅延の変化を測定し得る。たとえば、衛星からの信号中の測定された電離層遅延が、何らかのしきい値よりも急速に変化した(または何らかのしきい値を越えた)とき、その信号からのいくつかの測定値は、除外され得る。しきい値は、所定のしきい値(たとえば、1つ、2つ、5つ、10個、20個、30個、50個、100個、1000個などのエポック、1s、5s、10s、20s、50s、100s、200s、300s、600sなど、時間期間にわたる、約0.5%、1%、5%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、75%、80%、90%、100%などよりも大きい変化)であり、推定速度に依存し、衛星観測値(たとえば、衛星コンスタレーション、衛星の数、衛星周波数および/または周波数結合など)に依存し、アプリケーションに依存し、外部システムに依存し、推定位置に依存し、推定速度の完全性に依存し、および/または任意の好適なしきい値であり得る。
【0083】
デッド・レコニング・モジュール1180は、(たとえば、保護レベルが警報リミットを超えた、1つまたは複数の衛星観測値が利用可能でない、データリンク脅威が起こった、補正値データがタイムアウトしたなどのために)位置および/または速度データが利用不可能であるとき、位置データが、所定の完全性または信頼度しきい値を下回ったとき、デッド・レコニングナビゲーション解を提供するように機能し、および/または別様に使用される。デッド・レコニング・モジュール1180は、センサー・データ(たとえば、IMUデータ)、(たとえば、所定の完全性レベルを有する)最新の知られている位置、および/または任意の好適なデータ(たとえば、前の推定位置および速度に基づく外挿)を使用して、(たとえば、位置モジュールおよび/または速度モジュールによって推定された)GNSS推定位置および/または速度の代わりまたはそれへの補足として、デッド・レコニング位置および/または速度を提供し得る。特定の例では、デッド・レコニング位置(および/または速度)は、位置モジュール(および/または速度モジュール)が、推定位置(および/または速度)を収束させ、および/または決定することができないとき、推定位置(および/または速度)として使用され得る。位置モジュール(および/または速度モジュール)は、たとえば、整数値キャリア位相アンビギュイティが(たとえば、所定の完全性レベルに)検証されないとき、1つまたは複数の衛星観測値が(たとえば、GNSS受信機アウテージ、障害物など)利用可能でないとき、1つまたは複数の基準局観測値が利用不可能であるとき、所定のイベントが検出されたとき、データリンクがタイムアウトしたとき、ユーザ入力に基づいて、および/あるいは任意の好適な時間において、推定位置(および/または速度)を収束させ、および/または決定することができないことがある。
【0084】
デッド・レコニング・モジュールは、位置モジュール、速度モジュール、外れ値検出器、高速再収束モジュール、観測モジュール、キャリア位相決定モジュール、センサー、補正値処理エンジン、および/または任意の好適なコンポーネントに通信可能に結合され得る。
【0085】
デッド・レコニング位置および/または速度は、好ましくは検証されるが、検証されなくてもよい。デッド・レコニング位置および/または速度は、好ましくは、2つまたはそれ以上の独立したセンサーから決定された、デッド・レコニング位置および/または速度を比較することによって検証される。特定の例では、図6A中に示されているように、検証されたデッド・レコニング位置および/または速度は、好ましくは、第1のセンサーからのデータに基づいて決定されたデッド・レコニング位置および/または速度と、第2のセンサーによって決定されたデッド・レコニング位置および/または速度との間の重複位置および/または速度を画定する、位置および/または速度である。第2の特定の例では、図6B中に示されているように、検証されたデッド・レコニング位置および/または速度は、好ましくは、第1のセンサーからのデータに基づいて決定されたデッド・レコニング位置および/または速度、ならびに第2のセンサーによって決定されたデッド・レコニング位置および/または速度を画定する、位置および/または速度である。しかしながら、検証されたデッド・レコニング位置および/または速度は、デッド・レコニング位置および/または速度のうちのすべてを画定する(たとえば、それらを囲む、それらを包含する、それらのリミットに一致するなど)重複領域、位置および/または速度であり得、ならびに/あるいは任意の好適な位置および/または速度が使用され得る。しかしながら、デッド・レコニング位置および/または速度は、モデル化、衛星観測値(たとえば、衛星観測値のセットまたはサブセットが利用可能であるとき、それらの衛星観測値からの推定位置および/または速度は、デッド・レコニング位置および/または速度を検証するために使用され得る)に基づいて、補助センサー(たとえば、ライダー、レーダー、超音波センサー、カメラなど)に基づいて、(たとえば、他の外部システムが存在するとき)他のシステムとの通信に基づいて、基準局観測値に基づいて、ならびに/あるいは任意の好適な様式で検証され得る。
【0086】
デッド・レコニング・モジュールは、追加または代替として、1つまたは複数のセンサーのバイアスを推定および/または決定するように機能することができる。バイアスは、好ましくは、デッド・レコニング位置および/または速度を、衛星観測値に基づいて決定された(たとえば、位置モジュールおよび/または速度モジュールによって決定された)推定位置および/または速度と比較することに基づいて決定される。しかしながら、バイアスは、較正、センサーのモデル化、補助センサーによって決定され、および/または別様に決定され得る。
【0087】
変形態では、図13中に示されているように、デッド・レコニング・モジュールは、融合モジュール1183、デッド・レコニング・モニタ1185、および/またはデッド・レコニング完全性モニタ1187のうちの1つまたは複数を含むことができる。しかしながら、デッド・レコニング・モジュールは、任意の好適なモジュールを含むことができる。
【0088】
融合モジュールは、(たとえば、GNSS信号が利用可能でないとき、GNSS信号が利用可能なときなど)受信機位置、および/または推定位置の完全性を推定するように機能する。融合モジュールへの入力は、センサー・データ(たとえば、加速度計データ、ジャイロスコープ・データ、検証されたセンサー・データ、タイムスタンプなど)、推定GNSS位置(たとえば、最新の利用可能なGNSS位置、直近のGNSS位置など)、推定GNSS位置完全性(たとえば、保護レベル、TIRなど)、推定GNSS速度(たとえば、最新の利用可能なGNSS速度、直近のGNSS速度など)、推定GNSS速度完全性(たとえば、保護レベル、TIRなど)、GNSS共分散行列(たとえば、GNSS位置共分散、GNSS速度共分散など)、および/または他の入力を含むことができる。融合モジュールからの出力は、推定融合位置(たとえば、絶対推定位置、最新の利用可能なGNSS位置、最新の利用可能な位置推定値などに対するなどの相対推定位置など)、推定融合速度(たとえば、絶対推定速度、最新の利用可能なGNSS速度、最新の利用可能な速度推定値などに対するなどの相対推定速度など)、融合共分散(たとえば、推定位置共分散、推定速度共分散など)、更新された完全性(たとえば、推定融合位置および/または推定融合速度について推定された、保護レベル、TIRなど)、ならびに/あるいは他の出力を含むことができる。融合モジュールは、整合アルゴリズム(たとえば、吊下げ式慣性ナビゲーション・システム(SINS))、ゼロ速度更新(ZUPT)アルゴリズム、等速更新(CUPT)、ステップワイズ・アルゴリズム、ゼロ角速度更新(ZARU)アルゴリズム、ヒューリスティック・ヘッディング・リダクション、地球磁性ヨー方法、カルマン・フィルタ、拡張カルマン・フィルタ、粒子フィルタ、および/または任意のアルゴリズムのうちの1つまたは複数を使用して、出力を決定することができる。
【0089】
デッド・レコニング・モジュールは、1つの融合モジュール、複数の融合モジュール(たとえば、センサーごとに1つの融合モジュール、センサーごとに2つ以上の融合モジュール、センサーごとに1つ未満の融合モジュールなど)、および/または任意の好適な数の融合モジュールを含むことができる。
【0090】
2つ以上の融合モジュールを含む変形態では、融合モジュールは、好ましくは、独立している(たとえば、異なるデータ入力上で動作する、独立したデータ出力を生成する、異なるアルゴリズムを使用するなどである)が、依存し(たとえば、同じ入力上で動作する、同じ入力のサブセットおよび異なる入力のサブセットを含む、同じアルゴリズムを使用するなどであり)得る。特定の例では、デッド・レコニング・モジュールは、2つの融合モジュールを含むことができる。第1の融合モジュールは、(たとえば、第1のセンサーに関連付けられた)センサー・データの第1のサブセットからのセンサー・データ、および(たとえば、第1の衛星コンスタレーションに関連付けられた、衛星の特定のサブセットに関連付けられたなど)衛星信号の第1のサブセットに基づいて決定された推定位置を受信することができる。第2の融合モジュールは、(たとえば、第1のセンサーとは無関係の第2のセンサー、センサー示度の別個のサブセットなどからの)センサー・データの第2のサブセット、および(たとえば、第2の衛星コンスタレーションに関連付けられた、衛星の別個のサブセットに関連付けられたなど)衛星信号の第2のサブセットに基づいて決定された推定位置を受信することができる。しかしながら、融合モジュールは、データの任意の好適なセットまたはサブセットを使用することができる。
【0091】
デッド・レコニング・モニタは、推定融合データ(たとえば、融合モジュールからのなど、推定融合位置、推定融合速度、推定融合共分散、推定融合完全性など)中の所定のイベント(たとえば、フォールト)を検出するように機能する。デッド・レコニング・モニタは、好ましくは、少なくとも2つの融合モジュールから推定融合データ(たとえば、独立した推定融合データの2つのセット)を受信するが、追加または代替として、(たとえば、1つまたは複数の時点における)単一の融合モジュールからの推定融合データ、推定GNSS位置(たとえば、最新の利用可能なGNSS位置、履歴GNSS位置、検証されていないGNSS位置など)、推定GNSS速度(たとえば、最新の利用可能なGNSS速度、履歴GNSS速度、検証されていないGNSS速度など)、GNSS完全性(たとえば、最新の利用可能なGNSS位置および/または速度完全性、履歴GNSS完全性など)、ならびに/あるいは任意の好適な入力を受信することができる。デッド・レコニング・モニタは、デッド・レコニング位置の状態に関係する1つまたは複数のフラグ(たとえば、使用または不使用、安全または安全でないなど)を送信(たとえば、出力)することができるが、(たとえば、推定デッド・レコニング位置の、推定デッド・レコニング速度のなど)達成可能な完全性、誤差(たとえば、標準偏差、分散など)、信頼区間、および/または任意の好適な出力を送信することができる。出力は、対話多重モデル(IMM)フィルタ、粒子フィルタ、拡張カルマン・フィルタを使用し、1つまたは複数の入力をしきい値と比較し、および/または任意の好適な技法を使用して生成され得る。しかしながら、デッド・レコニング・モニタは、追加または代替として、所定のイベントを識別し、所定のイベントの影響を緩和し、および/または任意の好適なステップを実施することができる。
【0092】
特定の例では、デッド・レコニング・モニタは、推定融合データの第1のセットを、推定融合データの第2のセットと比較することができる。融合データの2つのセットの間の重複(たとえば、位置重複、速度重複など)が、しきい値よりも大きいかまたはそれに等しいとき、デッド・レコニング・モニタは、使用フラグを出力することができる。2つのセットの間の重複が、しきい値よりも小さい(またはそれに等しい)とき、デッド・レコニング・フィルタは、不使用フラグを出力することができる。しかしながら、デッド・レコニング・モニタは、任意の様式で出力を生成することができる。
【0093】
デッド・レコニング完全性モニタは、デッド・レコニング位置(および/または速度)の完全性を決定(たとえば、推定、計算など)するように機能する。デッド・レコニング完全性モニタは、(たとえば、単一の融合モジュールからの、複数の融合モジュールからのなど)推定融合データ、推定GNSS位置(たとえば、最新の利用可能なGNSS位置、履歴GNSS位置、検証されていないGNSS位置など)、推定GNSS速度(たとえば、最新の利用可能なGNSS速度、履歴GNSS速度、検証されていないGNSS速度など)、GNSS完全性(たとえば、最新の利用可能なGNSS位置および/または速度完全性、履歴GNSS完全性など)、デッド・レコニング・モニタからの1つまたは複数の出力(たとえば、フラグ、不確実性、達成可能な完全性など)、ならびに/あるいは任意の好適な入力を受信することができる。デッド・レコニング完全性モニタは、好ましくは、デッド・レコニング位置および/または速度の完全性(たとえば、水平保護レベル、垂直保護レベル、TIR、警報リミットなど)を(たとえば、入力に基づいて)決定するが、任意の好適な出力を決定してもよい。デッド・レコニング位置の完全性は、デッド・レコニング位置および/または速度(たとえば、推定融合位置、推定融合速度など)の間の重複、推定融合データ(たとえば、より高い完全性をもつ推定融合データ、より低い完全性をもつ推定融合データなど)に基づいて、たとえば、この参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Philippe Brocard、「Integrity monitoring for mobile users in urban environment」、信号および画像処理、INP DE TOULOUSE、2016、英語に記載されている「列車制御およびETCのための測位プラットフォーム定義」および/または「ハイブリダイズされた解の完全性を監視すること」について記載されているように、たとえば図6Aおよび図6B中に示されているように、ならびに/あるいは任意の好適な様式で決定され得る。
【0094】
GNSS受信機1200は、1つまたは複数の(好ましくは、少なくとも4つであるが、代替的に任意の数の)測位衛星から送信された信号に対応する衛星観測値のセットを受信するように機能する。衛星は、好ましくは、少なくとも2つの衛星コンスタレーション(たとえば、GPS、BDS、GLONASS、ガリレオ)に対応するが、1つの衛星コンスタレーションに対応してもよい。これらの衛星観測値(たとえば、各衛星についての、擬似距離、キャリア位相、ドップラー測定値、C/M0測定値など)は、好ましくは、(前のセクションにおいて説明されたように)受信機1200の推定位置を得るために、測位エンジン1100によって処理される。GNSS受信機1200は、追加または代替として、補正値生成において使用されるべきデータを補正値処理エンジンに送信し得る。
【0095】
GNSS受信機1200は、好ましくは、導電性材料(たとえば、金属)で作成されたアンテナに結合される。アンテナは、追加または代替として、アンテナのプロパティを変更するために、または機械的支持を提供するために、誘電体材料を含み得る。
【0096】
アンテナは、様々なアンテナ・タイプ、たとえば、(矩形および平面逆Fを含む)パッチ・アンテナ、反射器アンテナ、(ダイポール・アンテナを含む)ワイヤ・アンテナ、ボウタイ・アンテナ、開口アンテナ、ループインダクタ・アンテナ、およびフラクタル・アンテナであり得る。アンテナは、追加として、1つまたは複数のタイプのアンテナを含むことができ、アンテナのタイプは、任意の好適な変動を含むことができる。アンテナ構造は、静的であることも、動的(たとえば、アンテナの状態に応じて電気的に接続または隔離され得る複数のセクションを含むワイヤ・アンテナ)であることもある。アンテナは、等方性または異方性放射パターンを有し得る(換言すれば、アンテナは指向性であり得る)。アンテナが、指向性である場合、それらの放射パターンは、動的に変更可能であり得、たとえば、実質的に一方向において放射線を発するアンテナは、放射線の方向を変えるように回転され得る。
【0097】
GNSS受信機1200が、多重アンテナに結合する場合、アンテナ・カプラは、スプリッタを使用してそれらの間で電力を分割し得、追加または代替として、アンテナ・カプラは、多重アンテナの間で選択するためのスイッチを含み得るか、またはアンテナ・カプラは、任意の好適な様式でアンテナに結合し得る。
【0098】
GNSS受信機1200は、処理のために、アンテナ・デジタル・ベースバンド信号で受信された信号を変換する、フロントエンド・モジュールを含み得る。フロントエンド・モジュールは、好ましくは、高いサンプル・レートにおいて動作することが可能なアナログデジタル変換器(たとえば、Maxim MAX2769)を含む。フロントエンド・モジュールは、好ましくは、L1 GPS、GLONASS、ガリレオ、およびSBAS信号帯域を受信することが可能である。フロントエンド・モジュールは、追加または代替として、追加の帯域(たとえば、L2 GPS)を受信することが可能であり得るか、または受信機1200は、異なる帯域のための複数のフロントエンド・モジュールを含み得る。
【0099】
GNSS受信機1200は、追加として、衛星信号トラッキングおよび捕捉を実施するように機能する、衛星信号管理モジュールを含み得る。衛星信号管理モジュールは、追加または代替として、持続波ノイズ・ヌリングを実施するためのプログラマブル・デジタル・ノッチ・フィルタを含み得る。衛星信号管理モジュールは、好ましくは、トラッキング・ループおよび捕捉アルゴリズムを実装するためにマイクロコントローラによって使用され得る、フレキシブルでフルにプログラム可能な相関器を含む。
【0100】
特定の例では、GNSS受信機は、少なくとも3つの衛星コンスタレーション(たとえば、GPS、ガリレオ、BDS、GLONASSなど)について衛星観測値を測定することができる。しかしながら、GNSS受信機は、1つまたは2つの衛星コンスタレーションについて衛星観測値を測定してもよい。この特定の例では、GNSS受信機は、好ましくは、同時に少なくとも3つの衛星コンスタレーションについて衛星観測値を受信するが、順次および/または任意の順序で衛星観測値を受信することができる。この特定の例では、GNSS受信機は、好ましくは、衛星コンスタレーションのうちの1つまたは複数について少なくとも2つの周波数(たとえば、L1、L2、L5、E1、E5a、E5b、E6など)を受信するが、各衛星コンスタレーションについて単一の周波数を受信してもよい。この特定の例では、GNSS受信機は、好ましくは、少なくとも24個の衛星をトラッキングすることが可能であるが、任意の数の衛星をトラッキングしてもよい。この特定の例では、GNSS受信機は、好ましくは、未解消の擬似距離コード・アンビギュイティを検出(および識別)する。この特定の例では、GNSS受信機は、好ましくは、未解消の半サイクル・キャリア位相アンビギュイティを検出(および識別)する。この特定の例では、GNSS受信機は、好ましくは、対象とする周波数帯域においてしきい値(たとば、1dB、5dB、10dB、30dB、50dB)を超えるRF干渉を検出(および識別)する。この特定の例では、GNSS受信機は、好ましくは、(たとえば、衛星観測値について、補正値についてなど)スプーフィング試みを検出(および識別)する。この特定の例では、GNSS受信機における未確認のサイクル・スリップの確率は、好ましくは、(たとえば、オープン・スカイ状態において)せいぜい約10-1毎時である。この特定の例では、10mよりも大きいGNSS受信機擬似距離測定値誤差の確率は、(たとえば、オープン・スカイ環境において)1/時/衛星よりも小さい。各衛星観測値は、好ましくは、(たとえば、異なる衛星に対応する衛星観測値とは)無関係である。たとえば、所与の衛星からの衛星観測値を観測することに失敗することは、別の衛星における所定のイベントをトリガすべきではない。この特定の例では、GNSS信号アウテージの後のキャリア位相のためのGNSS受信機再捕捉時間は、好ましくは、GPS L1 C/A信号の場合、せいぜい6秒である。この特定の例では、GNSS信号アウテージの後のキャリア位相のためのGNSS受信機再捕捉時間は、好ましくは、GPS L2C信号の場合、せいぜい2秒である。この特定の例では、GNSS信号アウテージの後のキャリア位相のためのGNSS受信機再捕捉時間は、好ましくは、ガリレオE1信号の場合、せいぜい2秒である。この特定の例では、GNSS信号アウテージの後のキャリア位相のためのGNSS受信機再捕捉時間は、好ましくは、ガリレオE5b信号の場合、せいぜい2秒である。この特定の例では、GNSS信号アウテージの後の擬似距離のGNSS受信機再捕捉時間は、好ましくは、GPS L1 C/A信号の場合、せいぜい1秒である。この特定の例では、GNSS信号アウテージの後の擬似距離のGNSS受信機再捕捉時間は、好ましくは、GPS L2C信号の場合、せいぜい1秒である。この特定の例では、GNSS信号アウテージの後の擬似距離のGNSS受信機再捕捉時間は、好ましくは、ガリレオE1信号の場合、せいぜい1秒である。この特定の例では、GNSS信号アウテージの後の擬似距離のGNSS受信機再捕捉時間は、好ましくは、ガリレオE5b信号の場合、せいぜい1秒である。この特定の例では、GNSS受信機は、好ましくは、(たとえば、オープン・スカイ状態において)0.005サイクルのせいぜい1シグマ・キャリア位相測定値ノイズをもつキャリア位相を測定する。
【0101】
しかしながら、GNSS受信機は、任意の仕様を満たし、および/または任意の好適な衛星観測値を測定することができる。
【0102】
補正値処理エンジン1500は、測位エンジン1100(および/またはGNSS受信機1200)によって使用されるべき補正値(たとえば、補正データ)を生成するように機能する。補正値は、好ましくは、推定位置および/または速度の精度および/または完全性を改善するために使用される。補正値は、PPP補正値、RTK補正値、衛星ベース・オーグメンテーション・システム(SBAS)補正値、または任意の他のタイプの補正値の形態を取り得る。補正値は、(たとえば、GNSS受信機によって測定された)衛星観測値を補正するために、(たとえば、キャリア位相決定モジュールによる)キャリア位相決定を容易にするために、(たとえば、外れ値検出器における)外れ値の検出を容易にするために、所定のイベントの決定を容易にするために、および/または任意の好適な様式で使用され得る。
【0103】
特定の例では、補正値処理エンジン(および/または補正値処理エンジンのコンポーネント)は、この参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2019年10月1日に出願された、「SYSTEMS AND METHODS FOR DISTRIBUTED DENSE NETWORK PROCESSING OF SATELLITE POSITIONING DATA」と題する、米国特許出願第16/589,932号に記載されている、システムおよび/またはそれのコンポーネントを含み、ならびに/あるいは方法および/またはそれのステップを実施することができる。
【0104】
補正値処理エンジンは、追加または代替として、補正値の信頼性を決定するように機能することができる。信頼性は、好ましくは、補正値が、高完全性推定位置および/または速度が決定されることを可能にする(たとえば、測位エンジンを可能にする)ことができることを保証する。しかしながら、信頼性は、任意の好適な様式で使用され得る。信頼性は、好ましくは、補正値を生成するために使用されるデータ・ソース(たとえば、補正値基準局など、基準局)からの、データ・ソース(たとえば、信頼性基準局など、基準局)の別個(たとえば、非重複、非同一など)のセットに基づいて決定される。しかしながら、信頼性および補正値は、同じおよび/または任意の好適なデータ・ソースに基づいて生成され得る。
【0105】
信頼性は、フラグ(たとえば、使用または不使用)、(たとえば、推定位置の、推定速度の、実数値キャリア位相の、整数値キャリア位相のなど)達成可能な完全性、誤差(たとえば、標準偏差、分散など)、信頼区間、および/または任意の好適な形式であり得る。
【0106】
補正値処理エンジンは、好ましくは、測位エンジンに、および基準局に通信可能に結合されるが、GNSS受信機、外部システム、センサーに、および/または任意の好適なコンポーネントに通信可能に結合され得る。
【0107】
発明実施形態の一実装形態において、補正値処理エンジン1500は、(PPPにおけるように)高品質グローバル基準局の小さいセットからのみ、または(RTKにおけるように)GNSS受信機/基準局ペアにおけるデータを比較することのみによって補正値を生成することを試みるのではなく、基準局1600(および/または他の基準ソース)からデータを収集し、補正値を生成するために直接このデータを適用する代わりに(またはそれに加えて)、(測位エンジン1100によって利用可能な形式で補正値データを生成するために使用され得る)1つまたは複数の補正モデルを生成するためにデータを使用する。
【0108】
このようにして動作することによって、補正値処理エンジン1500は、PPPの長い収束時間問題をほとんど受けない補正値(たとえば、補正値のセット)を提供し得、解複雑さは、(解複雑さが、少なくとも、可能なペアの数、換言すれば、O(N)とともにスケーリングするRTKとは異なり)直接、基準局の数Nとともにスケーリングする(実際、多くの現在の解は、O(N)とともにスケーリングするか、またはより悪い)。
【0109】
さらに、いくつかの実施形態では、補正値処理エンジン1500は、補正値の空間補間および/またはキャッシングが、旧来のRTKを用いるよりも概括的に実施されることを可能にする。(擬似基準局とも呼ばれる)仮想基準局は、一般的に、リアルタイムでのRTK補正値データの補間を伴う(および前に論じられたように、誤差補正は、少なくともO(N)とともに複雑さがスケーリングする)。対照的に、補正値処理エンジン1500における補間は、グローバルおよび/またはローカル補正モデルの特定の態様に限定され得、誤差および/または所定のイベントに対するさらなるロバストネスを提供し、誤差および/または所定のイベント原因に関するより良い洞察を提供する。特定の例では、特定の態様は、領域(たとえば、特定のローカリティ)、特定の衛星観測データ(たとえば、擬似距離、キャリア位相など)、特定の衛星コンスタレーション、大気モデル、および/またはグローバル補正値の任意の好適な態様を含むことができる。さらに、リアルタイム補正値データを必要とするRTKとは異なり、補正値処理エンジン1500は、データが限定されたとき(たとえば、基準局が利用不可能になったとき)でも、モデル・パラメータをキャッシュするか、または別様に保持し得る。しかしながら、補正値処理エンジンは、RTK補正値処理エンジンと同様の様式で動作(たとえば、基準局の間のリアルタイム補間を実施する、リアルタイム補正値データを生成するなど)し得る。
【0110】
補正値処理エンジン1500は、追加または代替として、オーグメンテッド衛星システム(たとえば、WAAS、EGNOS、SDCM、MSAS、QZSS-SBAS、GAGAN、BDABASなど)、補助センサー、ネットワーク情報、アルマナック情報に基づいて、および/または任意の様式で補正値データを生成し得ることに留意されたい。
【0111】
一実装形態では、図3中に示されているように、補正値処理エンジン1500は、基準局観測モニタ1510(基準観測モニタ)、補正データ・モニタ1512、モデル化エンジン1520、および信頼性エンジン1530(たとえば、完全性エンジン)のうちの少なくとも1つを含む。図3中に示されている相互接続は、非限定的な例としてのものであり、補正値処理エンジン1500のコンポーネントは、任意の様式で結合され得、および/または補正値処理エンジンは、任意の好適なコンポーネントを含み得ることに留意されたい。
【0112】
基準局観測モニタ1510は、潜在的な所定のイベントについて、基準局(および/または他の基準ソース)からの基準局観測値を検査するように機能する。たとえば、基準局観測モニタ1510は、基準局マルチパス誤差(たとえば、基準局のセットのうちの基準局1600からの、約10cm、20cm、50cm、1m、2m、5m、10m、20m、50mなどよりも大きい擬似距離誤差)、基準局干渉誤差、基準局サイクル・スリップ誤差、基準局観測データ破損、および/または基準局データに関連する任意の他の所定のイベントを検出するように機能し得る。
【0113】
基準局観測モニタは、好ましくは、モデル化エンジンおよび/または信頼性エンジンに通信可能に結合されるが、追加または代替として、補正データ・モニタ、測位エンジン、および/または任意の好適なコンポーネントに結合され得る。
【0114】
基準局観測モニタは、追加または代替として、基準局観測値中の所定のイベントの影響を緩和することができる。基準局観測値中の所定のイベントの影響を緩和することは、所定のイベントに関連付けられた基準局観測値(および/または関連データ)を取り除くこと、(たとえば、所定のイベントに基づいて)基準局観測値をスケーリングすること、所定のイベントを補正すること、および/または任意の好適な緩和ステップを含むことができる。
【0115】
基準局観測モニタは、好ましくは、基準局1600からの基準局観測値(たとえば、擬似距離、キャリア位相など)を入力として取るが、追加または代替として、基準局1600、センサー、衛星、ネットワーク、データベース、GNSS受信機、および/または他の基準ソースからの任意のデータを入力として取り得る。各基準局についてのロケーションは、好ましくは、補正値処理エンジンに知られているが、ロケーションは、補正値処理エンジンに提供され、および/またはそれに知られていなくてもよい。
【0116】
特定の例では、補正値処理エンジンは、2つの基準局観測モニタ1510および1511を含むことができる。基準局観測モニタ1510は、補正値を生成するためにモデル化エンジン1520に受け渡される基準局データに対して、観測モニタリングを実施するように機能する。対照的に、基準局観測モニタ1511は、(モデル化エンジン1520によって生成された補正値を検証するために)信頼性エンジン1530によって使用される基準局データに対して観測モニタリングを実施する。基準局観測モニタ1510および1511は、好ましくは、同等に機能するが、追加または代替として、異なって機能し得る(たとえば、所定のイベントのための異なるしきい値、異なる所定イベント・モニタリングなど)。基準局観測モニタ1510および1511は、基準ソースの任意のセットを使用し得る。たとえば、基準局観測モニタ1510および1511は、データ・ソースとして基準局1600の非重複セットを使用し得る(したがって、モデル化エンジン1520によって生成された補正値は、信頼性検査を実施するために使用される基準局に依存しない)。第2の例では、基準局観測モニタ1511は、基準局観測モニタ1510によって使用される基準局1600のセットの独立したサブセットを使用し得る。しかしながら、基準局観測モニタ1511および1510によって参照される基準局1600は、重複しており、他方のサブセットであり、独立したセットであり、および/または別様に関連してもよい。類似的に、これらの基準ソースは、衛星の任意のセットから衛星情報を受信し得る。しかしながら、2つの基準局観測モニタは、同じ基準局、重複基準局(たとえば、共通の基準局のサブセット)、および/または任意の好適な基準局から基準局観測値を受信し得る。
【0117】
しかしながら、単一の基準局観測モニタが、基準局観測値の1つまたは複数のセットを監視するために使用され得、基準局観測値の1つまたは複数のセットが、モニタリングなしに使用され得、および/または任意の好適な基準局観測モニタリングが実施され得る。
【0118】
基準局観測モニタは、観測モニタ1110と同じまたは異なる様式で動作することができる。
【0119】
補正データ・モニタ1512は、潜在的な所定のイベントについて、1つまたは複数の衛星(たとえば、基準局とは無関係の入力)に関する入力(たとえば、グローバル・データ)を検査するように機能する。たとえば、補正データ・モニタは、グローバル時計データ、衛星軌道データ、衛星コード・バイアス、衛星位相バイアス、および/または特定の基準局1600にひも付けされていない他のデータを入力として取り得る。グローバル・データは、衛星エフェメリス、ネットワーク情報、データベース情報、アルマナック情報、衛星トラッキング、基準局、GNSS受信機、および/または任意の好適なソースから決定され得る。補正データ・モニタ1512によって検出可能な例示的な所定のイベントは、衛星軌道誤差、衛星時計誤差、および/または任意の好適な所定のイベントを含む。補正データ・モニタ1512は、好ましくは、補正値生成のためにモデル化エンジン1520にそのようなグローバル補正値データを提供する。補正値データ・モニタは、グローバル・データ中の所定のイベントの影響を緩和することができる。たとえば、補正値データ・モニタは、1つまたは複数の衛星(たとえば、所定のイベントに関連付けられた衛星)に対応する基準局観測値を廃棄することができ、1つまたは複数の基準局観測値を廃棄するようにモデル化エンジンに命令することができ、(たとえば、入力ソースから)入力を再収集することができ、所定のイベントを補正する(および/またはそれのための補正値を決定する)ことができ、ならびに/あるいは任意の好適な緩和を実施することができる。いくつかの変形態では、補正データ・モニタは、所定のイベントを検出するために、メッセージ・フィールド範囲試験(MFRT)および/または任意の関連する試験を実施することができる。関連する変形態では、補正値データ・モニタは、新しい衛星観測値が、アルマナック・データおよび/または前の観測値に矛盾しないことを保証することができる。しかしながら、補正データ・モニタは、任意の好適な様式で機能してもよい。
【0120】
グローバル・データ(および/または所定イベント緩和グローバル)は、無期限に、所定の時間の量(たとえば、1時間、2時間、4時間、8時間、24時間、48時間、72時間、1週間、1カ月間、1年間など)の間、衛星が(たとえば、基準局の、GNSS受信機のなど)見える所にある限り、および/または任意の好適な時間の量の間、有効(たとえば、モデル化エンジンによって使用可能)であり得る。
【0121】
補正データ・モニタは、好ましくは、モデル化エンジンに通信可能に結合されるが、追加または代替として、基準局観測モニタ、信頼性エンジン、測位エンジン、および/または任意の好適なコンポーネントに結合され得る。
【0122】
変形態では、補正値処理エンジンは、メタデータを受信するように機能するメタデータ・モニタを含むことができる。メタデータは、好ましくは、補正値を決定する際にモデル化エンジンによって使用されるが、補正値を検証し、所定のイベントを検出するために使用され、および/または任意の好適な様式で使用され得る。メタデータは、基準局、衛星、衛星コンスタレーション、GNSS受信機、グローバル・メタデータ、ローカル・メタデータ、および/または任意の好適なソースに関連付けられ得る。特定の例では、メタデータは、基準局座標、地球回転パラメータ、太陽/月エフェメリス、海洋ローディング・パラメータ、衛星姿勢モデル、衛星位相中心オフセット、衛星位相中心変動、うるう秒、アンテナ・タイプ、受信機タイプ、および/または任意の好適なデータのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0123】
メタデータ・モニタは、追加または代替として、メタデータを検証するように機能することができる。メタデータは、現在のメタデータを前のメタデータ(たとえば、アルマナック、前の観測値など)と比較することによって、(たとえば、CRCを使用して)メタデータ・ソースを検証することによって、および/または任意の様式で検証され得る。
【0124】
メタデータ・モニタは、好ましくは、モデル化エンジンに通信可能に結合されるが、追加または代替として、基準局観測モニタ、補正データ・モニタ、信頼性エンジン、測位エンジン、および/または任意の好適なコンポーネントに結合され得る。
【0125】
モデル化エンジン1520は、GNSS受信機1200の位置および/または速度を推定するために測位エンジン1100によって使用可能な補正値データを生成するように機能する。モデル化エンジンは、好ましくは、基準局データ(たとえば、基準局1600からの擬似距離およびキャリア位相)、グローバル補正値データ(たとえば、衛星時計バイアス、衛星軌道など)、および/またはメタデータ(たとえば、基準局位置、海洋潮汐ローディング、アンテナ・タイプ、受信機タイプなど)から補正値を生成するが、追加または代替として、センサー・データ、(たとえば、GNSS受信機において検出された)衛星観測値、および/または任意の入力データを使用して補正値を生成し得る。
【0126】
モデル化エンジンは、基準局観測モニタ、補正データ・モニタ、メタデータ・モニタ、信頼性エンジン、測位エンジン、および/または任意の好適なコンポーネントに通信可能に結合され得る。
【0127】
発明実施形態の一実装形態では、モデル化エンジン1520は、図4中に示されているように、PPPフィルタ1521のセット、大気モデラ1522、および補正値生成器1523を含む。しかしながら、モデル化エンジン1520は、別様に構築され得る。
【0128】
PPPフィルタ1521は、基準局観測値を取り入れ、基準局1600について大気遅延を推定する。この実装形態では、各PPPフィルタは、好ましくは、基準局のセットのうちの単一の基準局1600に関連付けられた大気遅延を推定し、代替的に、各PPPフィルタ1521は、任意の数の基準局1600に対応し得る。基準局のセットは、好ましくは、地理的領域(たとえば、1000mi、1*10mi、1*10mi、1*10mi、5*10mi、1*10mi、3*10mi、4*10mi、2*10miなど、ほぼ100miと2*10miとの間の、州、国、大陸、郡、教区、都市、エリアなど)に対応する。しかしながら、基準局のセットは、任意の好適なロケーションに対応してもよい。
【0129】
大気モデラ1522は、基準局1600のセットによってカバーされた地理的領域にわたる大気遅延のモデルを生成する。大気モデラ1522は、好ましくは、大気影響(たとえば、対流圏影響、電離層影響など)のローカル(たとえば、基準局独立であるが、位置依存性の)モデルを生成するために、PPPフィルタ1521によって計算された大気遅延を補間する。たとえば、大気モデラ1522は、(各々が知られている位置を有する)個々の参照ロケーションに対応する対流圏影響モデルのセットを、規則正しく離間したグリッドに変換し得る。追加または代替として、大気モデラ1522は、任意の様式で(たとえば、個別のグリッドではなく大気影響の連続補間モデルを作り出すことによって、グリッド・パターン以外の個別のポイントの何らかの他の配置を使用して、適合された大気モデルを生成することによって、ニューラル・ネットワークを使用して、式のセットに基づいてなど)機能し得る。任意の補間技法、たとえば、(補間ポイントにおける不確実性を予測することもできる)クリギングなどのガウス過程、エルミート補間変位補間有理数補間、スプライン補間、多項式補間、線形補間、区分定数補間、および/または任意の補間技法が使用され得ることに留意されたい。大気モデル(たとえば、ローカル位置依存モデル)は、(それが個々の基準ソースに対応する複数のモデルの出力をまとめるので)「ユニファイド位置ベース・モデル」と呼ばれることがある。
【0130】
補正値生成器1523は、大気モデルと、他の補正値データ(たとえば、衛星時計バイアスなどのグローバル補正データ、メタデータなど)とに基づいて補正値(たとえば、正確な補正値)を生成する。補正値生成器1523は、大気モデラ1522によって生成された大気モデルから、測位エンジン1100によって使用可能な補正値を生成するように機能する。補正値生成器1523は、追加または代替として、位置データを補正するために、任意の様式で補正データを送るかまたは使用し得る(たとえば、補正値生成器1523は、推定位置および/または速度を入力として取り、測位エンジンによって実装されるべき、測位補正値など、補正値ではなく、補正された位置データを生成し得る)。補正値生成器1523は、好ましくは、追加として、生成された補正値の推定不確実性を生成する(旧来のPPP/RTK解は、これを行うことが可能ではない)。生成された補正値の推定不確実性は、入力パラメータ(たとえば、誤り伝搬、入力パラメータの不確実性に基づくモンテ・カルロ・シミュレーションなど)の(たとえば、所与の)不確実性に基づいて、(たとえば、履歴データから)経験的に、シミュレーションを使用して、発見的に決定されるか、計算されるか、または別様に決定され得る。
【0131】
補正値生成器1523によって生成された補正値は、好ましくは、衛星軌道および時計誤差の影響、衛星コードおよび位相バイアス、大気影響(たとえば、電離層遅延、電離層遅延の変化率、天頂対流圏遅延などの対流圏遅延など)を補正する補正値を含むが、追加または代替として、誤差の任意のセットのための補正値を含み得る。いくつかの変形態では、補正値(たとえば、所与の衛星コンスタレーションに関連付けられた補正値、所与の衛星に関連付けられた補正値など)は、たとえば、補正値に関連付けられた残差領域オフセットを送信することによって、領域オフセットを含む(たとえば、それらについて補正される)ことがある。
【0132】
信頼性エンジン1530は、モデル化エンジン1520によって生成された補正値の信頼性(たとえば、補正値の完全性)を検証するように機能する。1530はまた、測位において使用するための補正値を送信するかまたは別様に準備し得る。信頼性エンジンは、随意に、(たとえば、完全性問題が検出された場合)ローカル・システムが補正値の所与のセットを使用するのを妨げることができるフラグ(たとえば、衛星フラグ、大気フラグ、見通し線フラグなど)を発行することができる。信頼性エンジン1530は、好ましくは、図3中に示されているように、独立した基準局(および/または基準局観測値)に基づいて補正値を検証する。しかしながら、信頼性エンジンは、共通基準局(たとえば、基準局観測値)および/または任意の好適なデータ・ソースに基づいて、補正値を検証することができる。
【0133】
発明実施形態の一実装形態では、信頼性エンジン1530は、図5中に示されているように、残差コンピュータ1531(たとえば、残差計算モジュール)、補正残差モニタ1532、および速度バイアス・モニタ1533を含む。しかしながら、信頼性エンジンは、モジュールの任意の他の好適なセットを含むことができる。
【0134】
この実装形態では、残差コンピュータ1531は、信頼性基準局観測値に補正値を適用することから、残差値を計算する。しかしながら、残差コンピュータは、直接、補正された信頼性基準局観測値を比較し、および/または任意の好適な様式で信頼性基準局観測値を補正してもよい。
【0135】
補正残差モニタ1532は、残差(および/または他の補正信頼性基準局観測値)を、1つまたは複数のしきい値と比較することができる。補正残差モニタは、好ましくは、リアルタイムで動作するが、オフラインで、ほぼリアルタイムで、遅延をもって、および/または任意の好適なタイミングで動作してもよい。しきい値は、異なるタイプの懸念イベントまたは故障モードに固有であるか、グローバルしきい値であるか、または任意の他の好適なしきい値であり得る。しきい値は、経験的に決定され、モデル化(たとえば、モンテ・カルロ・モデル化)を使用し、ニューラル・ネットワークを使用し、人工知能を使用し、あらかじめ決定され、一定(たとえば、補正値の1%、2%、5%、10%、20%、25%、33%、50%、75%など)であり、手動で決定され、規制的に決定され、完全性限界であり、および/または任意の好適な様式で決定され得る。特定の例では、モンテ・カルロ・シミュレーションは、推定位置に対する、実数値キャリア位相決定に対する、整数値キャリア位相を固定することに対する、推定速度に対する、および/または別のパラメータに対する、補正値(および潜在的に関連付けられた補正値誤差)の影響を決定するために使用され得る。しきい値は、モンテ・カルロ・モデル化からの結果に基づいて設定されるか、または別様に決定され得る。
【0136】
しきい値は、(たとえば、補正値が、高精度推定位置、整数値キャリア位相アンビギュイティ決定、中間データ生成などを可能にすることができるしきい値を残差が満たすときの)完全性限界、完全性限界が達成され得ることの信頼度(たとえば、補正値が、高精度推定位置、整数値キャリア位相アンビギュイティ決定、中間データ生成などを可能にすることができることの信頼度)、および/または任意の好適な結果に関連付けられ得る。残差が、しきい値よりも小さいかまたはそれに等しいとき、補正値は、測位エンジンに送信され、および/またはそれによって使用され得る(たとえば、補正値の信頼性は、補正値が、使用するのに安全であり、ターゲット完全性をもつ推定位置および/または速度を生成することなどを示すことができる)。残差がしきい値よりも大きいとき、補正値の信頼性は、補正値が使用されるべきでないことを示し、補正値が、ターゲット完全性を超える完全性をもつ位置(および/または速度)を推定するために使用され得ることを示し、および/または任意の好適な様式で使用され得る。しかしながら、補正値は、残差がしきい値を超えたとき、測位エンジンに送信されないことがあり、および/または残差は、任意の好適な様式で使用され得る。
【0137】
1つの変形形態では、個々の残差は、しきい値と比較される。第2の変形形態では、残差は、衛星周波数および/または信号の1つまたは複数の線形結合に対する完全性限界と比較される。この第2の変形形態は、随意に、障害が、衛星補正値によるものであるのか、大気補正値によるものであるのかを決定することができる。線形結合は、2つの周波数線形結合(たとえば、Melbourne-Wubbena結合など、L1、L2、L3、L4、L5、E1、E2、E5a、E5b、E5AltBOC、E6、G1、G3などの任意の2つの周波数衛星信号の線形結合など)、3つの周波数線形結合(たとえば、Hatch-Melbourne-Wubbena結合など、任意の3つの周波数衛星信号の線形結合)、4つの周波数線形結合、n周波数線形結合(たとえば、ここで、nは整数である)、マルチシステム結合など、異なる衛星(および/または衛星コンスタレーション)からの衛星信号の線形結合、ジオメトリフリー結合、ワイドレーン結合、ナローレーン結合、電離層フリー結合、ならびに/あるいは任意の好適な線形結合に対応することができる。第2の変形形態の特定の例では、線形結合は、非分散性(たとえば、衛星時計、衛星軌道、対流圏影響など)をなくし、および/またはGNSS信号に対する分散性コンポーネント(たとえば、電離層影響、大気影響など)を増幅(または隔離)する、線形結合(たとえば、2周波数ジオメトリフリー線形結合、3周波数ジオメトリフリー線形結合など、ジオメトリフリー線形結合)に対応することができる。この特定の例では、いくつかの周波数からの係数および/または残差観測値がしきい値を超えたとき、補正残差モニタは、誤差を大気誤差と分類するフラグを出力することができる。第2の変形形態の第2の特定の例では、線形結合は、分散性をなくし、および/またはGNSS信号に対する非分散性コンポーネントを増幅(または隔離)する、線形結合(たとえば、2周波数電離層フリー線形結合、3周波数電離層フリー線形結合など、電離層フリー線形結合)に対応することができる。この特定の例では、いくつかの周波数からの係数および/または残差観測値がしきい値を超えたとき、補正残差モニタは、誤差を衛星誤差と分類するフラグを出力することができる。第3の変形形態では、補正残差モニタは、残差、ならびに随意に衛星周波数および/または信号を取り込み、所定のフラグのセットのうちの各々についてフラグ分類または確率を出力する、訓練済み分類器を含むことができる。しかしながら、残差は、別様にしきい値と比較され得る。
【0138】
速度バイアス・モニタ1533は、(たとえば、速度推定に影響を及ぼし得るドリフトを検出するために)時間にわたる残差変化をしきい値と比較する。変形態では、速度バイアス・モニタ1533は、速度推定に影響を及ぼす異常ドリフトを検出することができる。しきい値は、経験的に決定され、モデル化(たとえば、モンテ・カルロ・モデル化)を使用し、ニューラル・ネットワークを使用し、人工知能を使用し、あらかじめ決定され、一定(たとえば、時間にわたる補正値変化の1%、2%、5%、10%、20%、25%、33%、50%、75%など)であり、および/または任意の好適な様式で決定され得る。残差の変化がしきい値よりも小さいとき、補正値は、速度エンジンに送信され、および/またはそれによって使用され得る(たとえば、補正値の信頼性は、補正値が、使用するのに安全であり、ターゲット完全性をもつ推定速度を生成することなどを示すことができる)。残差の変化がしきい値よりも大きいとき、補正値の信頼性は、補正値が使用されるべきでないことを示し、補正値が、ターゲット完全性を超える完全性をもつ速度を推定するために使用され得ることを示し、および/または任意の好適な様式で使用され得る。しかしながら、補正値は、残差がしきい値を超えたとき、速度エンジンに送信されないことがあり、および/または残差は、任意の好適な様式で使用され得る。
【0139】
信頼性エンジン1530は、追加として、高完全性測位を計算するために測位エンジン1100によって必要とされる情報(たとえば、衛星の障害確率、コンスタレーションの障害確率など)を提供する、衛星脅威モデル・プロバイダ1534を含み得る。衛星脅威モデル・プロバイダは、随意に、サード・パーティ(たとえば、製造業者バックエンドなど)に脅威の確率および/または大きさを提供することができる。衛星脅威モデル・プロバイダ1534の出力は、好ましくは、補正残差とは無関係であるが、補正残差に依存し得る。衛星脅威モデル・プロバイダは、データベース、APIエンドポイント、または他のデータ・ソースであり得る。衛星脅威モデル・プロバイダのデータは、(たとえば、履歴データから)経験的に、シミュレーションを使用して、発見的に決定されるか、計算されるか、または別様に決定され得る。
【0140】
最後に、信頼性エンジン1530は、追加として、領域残差補正値生成を実施し得る。前述のように、いくつかの実装形態では、システム1000は、高完全性測位を提供するために、複数の衛星コンスタレーションに対応するデータを利用し得る。これらの実装形態では、信頼性エンジン1530は、(たとえば、異なる衛星コンスタレーションに対応する、異なる個々の衛星および/または衛星のサブセットに対応するなど)補正値データの複数のセットを送り得る。補正データのこれらのセットは、好ましくは、互いとは無関係であるが、互いに依存してもよい。概して補正値の場合と同様に、それらは、(たとえば、重複する、非重複の)基準局の任意のセットからのデータを使用して生成され得る。
【0141】
信頼性エンジン1530は、補正値の複数のセットをそっくりそのまま送信し得るが、信頼性エンジン1530は、追加または代替として、補正値の1次セットを、次いで補正値の「残差」2次セットを送信し得る(たとえば、補正値の1次セットは、そっくりそのまま送信され、2次セットは、補正値の1次セットに対する変更として送信される)。これは、GNSS受信機に送信されることが必要とされる情報の全体的な量を低減することができる。
【0142】
基準局1600は、補正値を生成するために使用される基準局観測値(たとえば、1つまたは複数の衛星に対応する、1つまたは複数の衛星コンスタレーションに対応するなど、擬似距離および/またはキャリア位相データ)を提供するように機能する。基準局1600は、好ましくは、高い精度まで知られているロケーションを有する。基準局ロケーションは、好ましくは、衛星信号を受信するために使用されるアンテナのロケーションであるが、任意の好適なロケーションであり得る。基準局ロケーションは、高い精度を生じる任意の様式で決定され得、たとえば、基準局ロケーションは、垂直および水平基準点にある基準局の周りに設定された受信機の数によって決定され得る。基準局1600は、好ましくは、ロケーションが固定されるが、それらは、追加または代替として、モバイルであり得ることに留意されたい。局位置は、好ましくは、移動された基準局が基準局観測値を提供することを再開する前に、高い精度に再決定され、追加または代替として、基準局は、ロケーション再決定の前に基準局観測値を提供し得る(たとえば、姿勢推定において使用するために、代替的に、データは、提供されるが、使用されないことがある)。固定基準局1600は、時間にわたって、それら自体の位置を適度に高い精度に「自己測量」し得ることに留意されたい。
【0143】
基準局1600は、好ましくは、インターネットを介して、複数の衛星信号についての位相および擬似距離データ、ならびに基準局1600のロケーションを提供するが、追加または代替として、任意の他の好適な方法(たとえば、セルラー無線モデムによる送信)によってデータを提供し得る。基準局データは、好ましくは、システム1000にとって直接利用可能にされるが、追加または代替として、システム1000にとって利用可能にされる前に処理またはアグリゲートされ得る。
【0144】
基準局1600は、好ましくは、1つまたは複数の衛星受信機を有し、それらの受信機に基づいて補正値を生成する。基準局によって使用される衛星受信機の数および品質(またはアンテナ・タイプ/サイズ/ロケーションのような他のファクタ)が、基準局データの精度を決定し得る。基準局1600(または基準局データの他のソース、たとえば、複数の基準局からの補正データを作り出す基準ソース)は、基準局品質(たとえば、補正値の精度)、および/またはローカリティによって順序付けられるかまたはグループ化され得る(たとえば、補正値が特定のGNSS受信機について望まれる場合、基準局は、その受信機までの距離によって順序付けられるかまたはグループ化され得る)。
【0145】
特定の変形態では、システムは、基準局の複数のセットを含むことができる。たとえば、基準局の第1のセット(たとえば、補正値基準局)に対応する基準局観測値は、補正値を生成するために使用され得る。基準局の第2のセット(たとえば、信頼性基準局)に対応する基準局観測値は、補正値を検証し、および/または補正値の信頼性を決定するために使用され得る。基準局の第1のセットは、好ましくは、(たとえば、都市、郡、教区、州、国、国のクラスタ、大陸など、領域をカバーおよび/またはスパンする)領域基準局である。基準局の第1のセットのうちの基準局は、約1mi、5mi、10mi、20mi、30mi、50mi、100mi、150mi、200mi、300mi、500mi、1000mi、2000miだけ分離され、および/または任意の好適な分離を有し得る。基準局の第2のセットは、好ましくは、ローカル基準局(たとえば、GNSS受信機の0.1mi、0.5mi、1mi、2mi、3mi、5mi、10mi、20mi、50miなど以内の基準局)である。しかしながら、基準局の第1および第2のセットは、任意の好適なエリア中に位置決めされた任意の好適な基準局を含むことができる。
【0146】
1つまたは複数のセンサー1700を含むシステムの特定の変形態では、センサーは、好ましくは、センサー・データ(たとえば、補助データ、検証データ、バックアップデータ、補足データなど)を測定(たとえば、提供)するように機能する。センサー・データは、位置推定、速度推定、補正値生成、補正値検証、(たとえば、整数値キャリア位相アンビギュイティを推定する)キャリア位相決定、および/または任意の好適なプロセスを支援する(たとえば、速度を上げる、補正する、改良するなどの)ために、測位エンジンおよび/または補正値処理エンジンによって使用され得る。特定の例では、センサー・データは、衛星観測値が(たとえば、ビルの谷間において、掲示板などの障害物、気象などによってなど)受信されないとき、受信機位置を推定するために使用され得る。しかしながら、センサー・データは、任意の好適な時間において、任意の好適な様式で使用され得る。センサーは、好ましくは、コンピューティング・システムと通信しているが、GNSS受信機、1つまたは複数の基準局と、および/または任意の好適なコンポーネントと通信していてもよい。センサーは、外部システムに搭載され、モバイル受信機に統合され(たとえば、同じ外部システムに搭載され、異なる外部システムに搭載され)、および/またはモバイル受信機とは別個であるか、あるいはモバイル受信機に別様に関連付けられ得る。センサー・データは、好ましくは、外部システムについてのものであるが、追加または代替として、モバイル受信機または任意の他の好適なセンサー基準についてのものであり得る。センサー・データは、慣性データ(たとえば、速度、加速度)、オドメトリ、ポーズ(たとえば、位置、向き)、マッピング・データ(たとえば、画像、ポイント・クラウド)、温度、圧力、周囲光、および/または任意の他の好適なデータを含むことができる。センサーは、慣性モーメント・ユニット(IMU)、慣性ナビゲーション・システム(INS)、加速度計、ジャイロスコープ、磁力計、オドメーター(たとえば、視覚オドメトリ、ホイール・オドメトリなど)のうちの1つまたは複数を含むことができ、および/または、任意の好適なセンサーが含まれ得る。
【0147】
特定の例では、システムは、複数のINS(たとえば、2つ、3つ、5つ、10個などのINSセンサー)を含むことができる。複数のうちの各INSは、好ましくは、(たとえば、デッド・レコニングを使用して)位置および/または速度の独立した推定値を生成する。しかしながら、INSのうちの2つまたはそれ以上は、位置および/または速度の依存する推定値を生成することができる。独立したデッド・レコニング位置および/または速度は、デッド・レコニング位置を検証するために使用され得る。特定の変形態では、デッド・レコニング位置(および/または速度)推定値は、個々のINS位置(および/または速度)推定値の間の重複領域を囲む位置(および/または速度)範囲であり得る。第2の特定の変形態では、デッド・レコニング位置(および/または速度)推定値は、個々のINS位置(および/または速度)推定値からの重複位置(および/または速度)範囲であり得る。しかしながら、デッド・レコニング位置および/または速度は、任意の好適な様式で決定され得る。
【0148】
システムおよび使用方法の特定の例
例示的例では、図12中に示されているように、GNSS受信機の位置を推定するためのシステムは、基準局の第1のセットに関連付けられた基準局観測値の第1のセットと、基準局の第2のセットに関連付けられた基準局観測値の第2のセットとを受信することと、基準局観測値の第1のセット、および基準局観測値の第2のセット中の所定のイベントを検出することと、所定のイベントが検出されたとき、所定のイベントの影響を緩和することとを行うように構成された基準局観測モニタと、基準局観測値の第1のセットに基づいて、補正値を生成するように構成されたモデル化エンジンと、基準局観測値の第2のセットに基づいて、モデル化エンジンによって生成された補正値の信頼性を決定するように構成された信頼性エンジンとを含むことができるリモート・サーバを含むことができる。システムは、追加または代替として、受信機と並置されたコンピューティング・システム上で実行する測位エンジンを含むことができる。測位エンジンは、少なくとも1つの衛星コンスタレーションに対応するグローバル・ナビゲーション衛星のセットから、衛星観測値のセットを受信することと、衛星観測値のセット中の所定のイベントを検出することと、衛星観測値のセット中の所定のイベントが検出されたとき、衛星観測値のセット中の所定のイベントの影響を緩和することとを行うように構成された観測モニタと、衛星観測値のセットと、所定のしきい値よりも大きい信頼性を有する補正値とに基づいて、実数値キャリア位相アンビギュイティ推定値を決定するように構成された浮動フィルタと、実数値キャリア位相アンビギュイティ推定値を、整数値キャリア位相アンビギュイティに固定するように構成された整数アンビギュイティ・レゾルバであって、ここにおいて、整数値キャリア位相アンビギュイティが、マルチステップ・プロセスにおいて検証される、整数アンビギュイティ・レゾルバと、受信機の位置を推定するように構成された位置フィルタであって、ここにおいて、推定位置の完全性リスクおよび保護レベルが、マルチステップ・プロセスの検証ステップに依存する、位置フィルタとを含むことができる。
【0149】
第1の変形形態では、(たとえば、位置を使用する)外部システムは、所与の機能性に必要とされる完全性リスクおよび/または保護レベルを指定し、ここにおいて、システムによって出力された位置は、整数値キャリア位相アンビギュイティが、指定された完全性リスクおよび/または保護レベルに検証されなかった場合、使用されない(たとえば、補助測位システムが代わりに使用される)。代替的に、機能性は、整数値キャリア位相アンビギュイティが、指定された完全性リスクおよび/または保護レベルに検証されなかったとき、使用可能にされない。第2の変形態では、外部システムの使用可能にされた機能性および/または動作状態は、瞬間または履歴位置の完全性リスクおよび/あるいは保護レベルに基づいて調整される。例示的例では、通知提示トリガリング距離(たとえば、近接警報のための近接距離)は、完全性リスクおよび/または保護レベルの関数であり得る(たとえば、完全性リスクが増加するとき、増加される)。
【0150】
特定の例では、(たとえば、システムを使用して、任意の好適なシステムを使用して)グローバル・ナビゲーション衛星システム(GNSS)受信機の位置を決定するための方法は、リモート・サーバにおいて、(たとえば、基準局の第1のセットに関連付けられた)基準局観測値の第1のセットを受信することと、所定のイベントの第1のセットを検出することと、所定のイベントの第1のセットのうちの少なくとも1つの所定のイベントが検出されたとき、検出された所定のイベントの影響を緩和することと、基準局観測値の第1のセットに基づいて、大気モデルを生成することと、大気モデルに基づいて、補正値を決定することと、(たとえば、基準局の第2のセットに関連付けられた)基準局観測値の第2のセットを使用して、補正値を検証することとを含むことができる。方法は、追加または代替として、GNSS受信機と並置されたコンピューティング・システムにおいて、リモート・サーバから、検証された補正値を受信することと、少なくとも1つの衛星コンスタレーションに対応するグローバル・ナビゲーション衛星のセットから、衛星観測値のセットを受信することと、所定のイベントの第2のセットを検出することと、所定のイベントの第2のセットのうちの少なくとも1つの所定のイベントが検出されたとき、所定のイベントの第2のセットのうちの検出された所定のイベントの影響を緩和することと、検証された補正値に部分的に基づいて、衛星観測値のセットについてキャリア位相アンビギュイティを解消することと、マルチステップ検証プロセスを使用して、キャリア位相アンビギュイティを検証することと、検証されたキャリア位相アンビギュイティに基づいて、GNSS受信機の位置を推定することであって、ここにおいて、推定位置の完全性リスクおよび保護レベルは、マルチステップ検証プロセスのどのステップが、キャリア位相アンビギュイティを検証するために使用されるかに依存する、GNSS受信機の位置を推定することとを含むことができる。この特定の例では、補正値を検証することは、補正値を使用して、基準局観測値の第2のセットを補正することと、補正された衛星観測値のセットについて残差を決定することと、残差が、補正検証しきい値を下回るとき、補正値を検証することとを含むことができる。この特定の例では、大気モデルを生成することは、PPPフィルタを使用して、基準局の第1のセットのうちの各基準局に関連付けられた大気遅延を推定することと、大気モデルを生成するために、各基準局に関連付けられた大気遅延の間を(たとえば、クリギングを使用して)補間することとを含むことができる。この特定の例では、マルチステップ検証プロセスは、第1の検証ステップであって、ここにおいて、キャリア位相アンビギュイティが、同時に検証される、第1の検証ステップと、第1の検証ステップの後の第2の検証ステップであって、ここにおいて、グローバル・ナビゲーション衛星のセットのうちの衛星の第1のサブセットに対応するキャリア位相アンビギュイティの第1のサブセットが、同時に検証され、グローバル・ナビゲーション衛星のセットのうちの衛星の第2のサブセットに対応するキャリア位相アンビギュイティの第2のサブセットが、同時に検証される、第2の検証ステップと、第2の検証ステップの後の第3の検証ステップであって、ここにおいて、第2の検証ステップが、少なくとも2回繰り返される、第3の検証ステップとを含むことができる。この特定の例では、衛星の第1のサブセットは、第1の衛星コンスタレーションに対応することができ、衛星の第2のサブセットは、第1の衛星コンスタレーションとは異なる第2の衛星コンスタレーションに対応することができる。しかしながら、衛星の第1および第2のセットは、同じ衛星コンスタレーションのサブセット、衛星結合の組合せ、および/または任意の好適な衛星に対応してもよい。この特定の例では、GNSS受信機の位置の完全性リスクおよび保護レベルは、キャリア位相アンビギュイティが、マルチステップ・プロセスの第1の検証ステップに検証されたとき、それぞれ、せいぜい毎時10-4および2m、キャリア位相アンビギュイティが、マルチステップ・プロセスの第2の検証ステップに検証されたとき、それぞれ、せいぜい毎時10-6および2m、ならびにキャリア位相アンビギュイティが、マルチステップ・プロセスの第3の検証ステップに検証されたとき、それぞれ、せいぜい毎時10-7および3mであり得る。この特定の例では、キャリア位相アンビギュイティを解消することは、カルマン・フィルタを使用して、実数値位相アンビギュイティを決定することと、LAMBDAアルゴリズムまたはMLAMBDAアルゴリズムのうちの少なくとも1つを使用して、実数値位相アンビギュイティを無相関化することを含む整数値位相アンビギュイティに、実数値位相アンビギュイティを固定することとを含むことができる。この特定の例では、所定のイベントの第1のセットは、高ダイナミック・イベント(たとえば、環境懸念イベント、ネットワーク懸念イベント、せいぜい1cm/sの衛星時計ドリフト、データ異常の問題、誤ったブロードキャスト・エフェメリス、コンスタレーション障害、基準局マルチパス、および基準局サイクル・スリップのうちの少なくとも1つ)に対応することができ、所定のイベントの第2のセットは、低ダイナミック・イベント(たとえば、コード・キャリア非コヒーレンシ、衛星時計ステップ誤差、1cm/sよりも大きい衛星時計ドリフト、擬似距離マルチパス、キャリア位相マルチパス、キャリア位相サイクル・スリップ、非見通し線トラッキング、誤った捕捉、ガリレオ2進数オフセット・キャリア・セカンド・ピーク・トラッキング、およびスプーフィングのうちの少なくとも1つ)に対応することができる。この特定の例は、GNSS受信機の位置を推定することとは無関係に、時間差分キャリア位相測定値を使用して、GNSS受信機の速度を推定することをさらに含むことができる。この特定の例では、推定位置の保護レベルおよび速度の保護レベルのうちの少なくとも1つは、キャリア位相アンビギュイティのみを使用して、アドバンスト受信機アドバンスト完全性モニタリング(ARAIM)アルゴリズムを使用して決定され得る。この特定の例は、推定位置および速度のうちの少なくとも1つに基づいて、車両を自動的に動作させることを含むことができ、ここにおいて、GNSS受信機は、車両に結合される。この特定の例は、グローバル・ナビゲーション衛星のセットのうちの1つまたは複数の衛星に対応する衛星観測値が、利用不可能であるとき、慣性ナビゲーション・システムに関連付けられたデータに基づいて、デッド・レコニングを使用して、GNSS受信機の位置を決定することと、慣性ナビゲーション・システムに関連付けられたデータに基づいて決定された第1のデッド・レコニング位置を、第2の慣性ナビゲーション・システムに関連付けられたデータに基づいて決定された第2のデッド・レコニング位置と比較することによって、デッド・レコニングを使用して決定された位置を検証することとを含むことができる。
【0151】
方法は、好ましくは、システムによって実装されるが、追加または代替として、衛星観測値に基づいてGNSS受信機および/または外部システムの位置および/または速度を推定するための任意のシステムによって実装され得る。
【0152】
しかしながら、システムは、任意の好適なコンポーネントを含むことができる。
【0153】
しかしながら、方法は、任意の好適なステップおよび/またはサブステップを含むことができる。
【0154】
RTK衛星測位のためのシステムおよび方法の特定の例
図8中に示されているように、リアルタイム・キネマティック(RTK)衛星測位のための方法200の特定の例は、モバイル受信機において、ナビゲーション衛星キャリア信号を受信することS210と、基準局から位相補正信号を受信することS220と、整数位相アンビギュイティを計算することS230と、受信機位置を計算することS240とを含む。
【0155】
ステップS210は、ナビゲーション衛星キャリア信号を受信することを含む。ステップS210は、受信機位置を計算するために(ステップS220において受信された)位相補正信号とともに使用され得る、位相測定値および擬似距離測定値をモバイル受信機に提供するように機能する。ナビゲーション受信機キャリア信号は、好ましくは、L1周波数(1575.42MHz)において受信されるが、追加または代替として、L2周波数(1227.60MHz)または任意の他の好適な周波数において受信され得る。ステップS210において受信されるナビゲーション衛星キャリア信号は、GPS信号、GLONASS信号、ガリレオ信号、SBAS信号および/または衛星によって送信される任意の他の好適なナビゲーション信号を含み得る。
【0156】
ステップS210は、好ましくは、RFアンテナにおいて(RF信号である)ナビゲーション衛星キャリア信号を受信することと、信号をデジタル・ベースバンド信号に変換することとを含む。このデジタル・ベースバンド信号は、好ましくは、ステップS210による2つのタスク、すなわち、(標準的なGNSS飛行時間技法を使用して)受信機から衛星までの擬似距離を計算することと、キャリア信号の相対位相を測定することとのために使用される。
【0157】
ステップS210は、好ましくは、複数の衛星について実施される。複数の衛星からの擬似距離および位相データの使用は、後のセクションにおいて説明されるように、より正確な測位を提供することができる。
【0158】
受信機キャリア信号が、L1周波数とL2周波数の両方において受信された場合、ステップS210は、ビート信号を作り出すために、各衛星についてL1周波数信号とL2周波数信号を組み合わせることを含み得る。得られた信号(換言すれば、ビート信号)は、L1信号またはL2信号のいずれかよりも著しく低い中心周波数(~347.82MHz)を有し、これは、所与のプリオールについて、可能な整数アンビギュイティ値のより小さいセットを可能にする(たとえば、L1信号について|N|≦10の場合、例示的なビート信号について|N|≦2)。得られた信号は、追加または代替として、他の望ましいプロパティ(たとえば、電離層誤差の低減)を所有し得る。
【0159】
好ましい実施形態の変形形態では、方法200は、ステップS211、すなわち、受信機からリモート・コンピュータ(たとえば、基準局にあるコンピュータ、クラウド・コンピューティング・サーバ)にキャリア信号データ(たとえば、擬似距離および/または位相データ)を送信することを含む。この変形形態では、ステップS220~S240は、追加として、リモート・コンピュータ上で実施され得る。
【0160】
ステップS220は、基準局から位相補正値(または位相観測値)信号を受信することを含む。ステップS220は、所与の衛星信号について、モバイル受信機のロケーションを決定するために使用される位相補正情報を受信するように機能する。ステップS220は、好ましくは、ステップS210において受信された各衛星信号について位相補正情報を受信することを含むが、追加または代替として、ステップS210において受信された衛星信号のサブセットのみについて位相補正情報を受信することを含み得る。
【0161】
ステップS220が、ステップS210における衛星信号のサブセットのみについて位相補正情報を受信することを含む場合、ステップS220は、位相補正情報がそれについて受信されない、衛星信号のサブセットのうちのいずれかについて位相補正情報を推定することを含み得る。
【0162】
ステップS220は、少なくとも1つの基準局から位相補正情報を受信することを含むが、追加の基準局から位相補正情報を受信することをも含み得る。
【0163】
ステップS220は、1つの基準局からいくつかの衛星について位相補正情報を受信し、別の基準局から他の衛星について位相補正情報を受信することを含み得る。追加または代替として、ステップS220は、単一の衛星信号について複数の基準局から位相補正情報を受信することを含み得る。
【0164】
ステップS220は、好ましくは、UHF無線を介して(たとえば、915MHzにおいて)位相補正信号を受信することを含むが、追加または代替として、任意の好適な通信媒体(たとえば、インターネット接続、セルラー接続)を介して位相補正信号を受信することを含み得る。
【0165】
位相補正信号は、好ましくは、(基準局において測定された)キャリア信号位相、および基準局ロケーション情報(またはロケーションにリンクされた他の識別情報)を含む。位相補正信号は、追加として、基準局からの擬似距離データ、測位コード・データ、または任意の他の適切なデータを含み得る。
【0166】
位相補正信号は、好ましくは、RTCMv3メッセージとしてフォーマットされるが、追加または代替として、任意の好適な規格または方法に従ってフォーマットされ得る。位相補正信号を送信するために使用される基準局は、専用のRTK基準局、連続動作基準局(CORS)、(仮想基準局解を含む)ネットワークRTK解、または任意の他の好適な基準局を含み得る。
【0167】
ステップS230は、整数位相アンビギュイティを計算することを含む。ステップS230は、基準局において受信された衛星キャリア信号と、モバイル受信機において受信された衛星キャリア信号との間の位相の絶対差分の決定を可能にするように機能し、これは、基準局に対するモバイル受信機の位置が計算されることを可能にする。
【0168】
整数位相アンビギュイティは、好ましくは、擬似距離および相対位相の二重差分測定値を使用して計算される。二重差分測定値は、好ましくは、受信機と基準値の差について値の差を取ることによって計算される。たとえば、2つの衛星(衛星1および2)についての擬似距離および位相の二重差分測定値は、
ρ12=(ρmr-ρrefi=1-(ρmr-ρrefi=2
φ12=(φmr-φrefi=1-(φmr-φrefi=2
とモデル化され得、ここで、iは、衛星インデックスであり、ρmr、φmrは、モバイル受信機における擬似距離および位相測定値であり、ρref、φrefは、基準局における擬似距離および位相測定値である。
【0169】
より詳細には、ベクトルbだけ分離されたモバイル受信機および基準局について、擬似距離ρおよび位相φのための二重差分式は、
【0170】
と書かれ得、ここで、eは、衛星nへの単位見通し線ベクトルであり、ερは、ノイズを表し、λは、キャリア信号の波長であり、Nは、整数位相アンビギュイティである。二重差分測定値の使用は、衛星時計誤差、受信機時計誤差、および何らかの大気誤差の打消しを可能にする。
【0171】
ステップS230は、好ましくは、2つのサブステップ、すなわち、仮説のセットを生成することS231と、仮説のセットに対して仮説検定を実施することS232とを含む。追加または代替として、S230は、任意の数またはタイプのステップを使用して、整数位相アンビギュイティNを計算することを含み得る。
【0172】
ステップS231は、Nについて可能な値のセットをもたらし、ならびにそのセットに対して反復改良を実施するように機能する。ステップS231は、好ましくは、カルマン・フィルタ・プロセスを使用して、Nについて可能な値のセットをもたらすことを含む。
【0173】
カルマン・フィルタは、一連の雑音の多い測定値に基づいて線形動的システムの状態を推定する、再帰的フィルタである。一般的な形式では、測定式は、
=H+v
として現れ、ここで、zは、時間(またはステップ)iにおける測定値であり、xは、真状態であり、vは、(ゼロ平均、および知られている共分散をもつ)観測値ノイズであり、Hは、観測空間に真状態空間をマッピングする観測モデルである。カルマン・フィルタ・モデルは、さらに、
=Fi-1+w
よって与えられる異なる時間における状態の間に関係があると仮定し、ここで、wは、(同じくゼロ平均、および知られている共分散をもつ)プロセス・ノイズであり、Fは、時間i-1における真状態を時間iにおける真状態にマッピングする遷移モデルである。
【0174】
特に、ステップS231は、好ましくは、ビアマンソーントン・フィルタとして知られているあるタイプのカルマン・フィルタを使用して、Nについて可能な値のセットをもたらすことを含み、追加または代替として、ステップS231は、Nについて可能な値をもたらすために、任意の好適なプロセスを使用し得る。
【0175】
以下の式、すなわち、
【0176】
で開始し、
・共分散Σをもつ正規分布ランダム変数x上で動作する任意の行列Aについて、ランダム変数y=Axは、共分散AΣAを有し、
・行列Aについて、ベクトルx∈Ker[A]がそれについてプロパティ0=Axを有する部分空間Ker[A]があり、
行列Qは、0=QDEおよびこの行列が、第2の式、すなわち、
【0177】
を形成するために適用され得るように構築され得ることに留意されたい。
【0178】
この式は、位相変化および擬似距離を、(基線ベクトルbを含まない)Nに直接関連させる。この式は、対応する動的遷移モデルを用いないステップS231のカルマン・フィルタの測定式として使用され得る。(カルマン・フィルタにかけられた基線を計算することを試みる代わりに)Nの値を直接計算することは、Nが一定であり、動的遷移モデルが必要とされないので、基線状態がフィルタから取り除かれることを可能にする。動的遷移モデルのための要件を取り除くことは、解を計算するために必要とされる時間および/またはメモリを実質的に低減することができ、追加として、ダイナミック・モデルにおいて起こり得る誤差は、Nの推定値の誤差として言い抜けされ得ない。
【0179】
を計算することは、DE中に含まれている見通し線ベクトルの知識を必要とする。ステップS231は、好ましくは、(前の計算において直接計算されなかったが、位相測定のセットおよびNについての推定値を使用して見つけられ得る)bの推定値から、見通し線ベクトルを計算することを含む。bの推定値は、好ましくは、ステップS240におけるように見つけられるが、追加または代替として、任意の好適な方法によって見つけられ得る。追加または代替として、ステップS231は、基準局データから、または任意の他の好適な様式で見通し線ベクトルを計算することを含み得る。
【0180】
見通し線ベクトルの特定のセットについて、Qは、好ましくは、それの行が、DEの左零空間またはKer[DE]のための基礎を形成する行列を生成することによって計算される。この生成は、好ましくは、QR分解を介して行われるが、追加または代替として、特異値分解または任意の他の好適な方法を使用して実施され得る。
【0181】
これらの式から、仮説のセットが生成され得る。アンビギュイティ・ベクトルNに起因する測定値は、正規分布であり、以下の式、すなわち、
【0182】
によって与えられる平均値を有することが予想される。対応する共分散は、ステップS231のカルマン・フィルタの結果から決定され、(測定モデルから直接導出された共分散と比較して)可能性がある仮説のセットを低減する。この情報から、仮説のセットの分布が見つけられ得る。
【0183】
理想的には、特定の信頼区間内のすべての仮説が検定される。この区間内に含まれている仮説(以下、検定セットと呼ばれる)の数は、N分布についての共分散に依存する。Nは、モバイル受信機の位置を決定するために、いくつかの衛星について計算される必要があるので、検定される必要がある仮説の総セットは、各衛星の関連付けられたN値についての共分散と、衛星の数の両方に依存する。
【0184】
仮説は、好ましくは、共分散行列によって定義された楕円体によって(特定の信頼区間について)画定される。共分散行列によって定義された楕円体は、しばしば、非常に細長く、時間および計算集約的仮説生成プロセスを生じる。このプロセスを実施するために必要とされる時間および計算リソースを低減するために、ステップS231は、図9中に示されているように、仮説探索空間に対して無相関化再パラメータ化を実施することを含み得る。この再パラメータ化を実施することは、細長い楕円体が近似回転楕円面に変換されるように、仮説空間を変換し、この変換は、仮説が実質的により容易に識別されることを可能にする。仮説は、次いで、元の座標空間に戻されるように逆変換(元の再パラメータ化の逆)によって変換され得る。
【0185】
ステップS231は、好ましくは、モバイル受信機上のメモリ・リミットに従って、検定セットについて仮説を生成することを含む。たとえば、受信機が、仮説を記憶するために64kBのメモリを採用し、8つの衛星について初期仮説を記憶することが、70kBを必要とする(7つの衛星について初期仮説を格納することが、50kBのみを必要とする)場合、ステップS231は、7つの衛星について初期仮説のセットを生成することと、次いで、7つの衛星についての初期仮説のうちの十分なものがなくされた後、第8の衛星について仮説を追加することとを含み得る。S231は、追加または代替として、メモリが、少なくとも4つの衛星について何らかのしきい値信頼度レベルにおいて検定セットを格納することができないほどに現在の共分散が大きい場合、仮説を生成する前に、カルマン・フィルタの推定値の共分散が縮小するのを待つことを含み得る。
【0186】
ステップS231は、好ましくは、ステップS232が初めて実施される前に実施されるが、ステップS231は、検定される仮説のセットを変更するために、任意の好適な時間に再び実施され得る。たとえば、仮説の各セットについての確率は、ステップS232によって改良されるので、仮説は、ステップS231によって検定セットに追加されるか、またはそれから減じられ得る。たとえば、ステップS231が、検定セットAをもたらし、後で、新しい衛星を含んでいる検定セットBを追加する場合、新しい検定セットは、AおよびBのカルテシアン/外積を取ることによって生成され得、ここで、確率は、
【0187】
を介して初期化され、ここで、分母は、セットBにおける仮説の数であり、P(A)は、ステップS232において生成されたAの確率である。ステップS232は、(ステップS232が、好ましくは、絶対確率の反対の相対確率をトラッキングするので)P(A,B)=P(A)を介して確率を初期化することを含み得る。ステップS231が、衛星をドロップすることを含む場合(たとえば、衛星が、もはやトラッキングされ得ない場合)、これは、まだセットにあるすべての仮説にわたってP(A)=ΣB∈BP(A,B)を介して仮説を周辺化することによって考慮され得る。ステップS232は、好ましくは、ログ空間における確率をトラッキングすることを含み、l=ln[p]について、
【0188】
である。ステップS232は、好ましくは、確率またはログ確率空間においてテイラー級数を介して
【0189】
の対数項を近似することを含み、追加または代替として、対数項は、指数項が、1と比較して極めて小さいことがあるので、0と推定され得る。この近似は、計算時間および/またはメモリを低減することを生じ得る。
【0190】
ステップS232は、Nの実効値に対応する仮説を識別するために、ステップS231によって生成された改良されたセットの仮説を検定するように機能する。ステップS231は、好ましくは、カルマン・フィルタによって生成された平均値および共分散を使用して、LAMBDAまたはMLAMBDAアルゴリズムを使用して仮説を生成することを含むが、追加または代替として、Nの任意の他の平均値または共分散推定値を使用して、あるいは任意の好適なアルゴリズムに従って仮説を生成することを含み得る。ステップS232は、好ましくは、観測値yが与えられると、仮説hについて以下のベイジアン更新式、すなわち、
ln[P(h)]=l(h)=li-1(h)+ln[P(y|h)]-η
の変形形態を使用して仮説を検定することを含み、ここで、
【0191】
である。この式において使用されるべき変数は、好ましくは、以下の定義、すなわち、
【0192】
に従って定義され、ここで、rは、平均値および共分散を用いて分布される。
【0193】
観測値y=rおよび仮説h=Nについて、前仮説更新式は、
【0194】
と書かれ得、ここで、kは、正規分布におけるスケーリング・ファクタである。
【0195】
ステップS232は、好ましくは、最良の2つの仮説の確率の間の比が、設定されたしきい値に達するまで、上記の仮説試験を実行することを含み、追加または代替として、ステップS232は、任意の他の好適な状態(たとえば、時間)に基づいて、仮説試験を停止することを含み得る。
【0196】
ステップS232は、追加または代替として、
【0197】
によって与えられる仮説の関連付けられた擬似尤度が、何らかの設定しきい値よりも小さい場合、さらなる検定から仮説をドロップすることを含み得、尤度比試験は、スピードおよび数値安定性について単精度で実施され得る。追加または代替として、ステップS232は、可能性が低い仮説を取り除くために、任意の他の好適なメトリックを使用することを含み得、たとえば、何らかのしきい値を下回る(最良の仮説に対する)確率比をもつ仮説を取り除く。
【0198】
ステップS232は、好ましくは、仮説Nごとに1回とは対照的に、観測値ステップごとに1回のみΣおよびrを計算することを含み、追加または代替として、ステップS232は、任意の好適な時間にこれらを計算することを含み得る。
【0199】
ステップS240は、受信機位置を計算することを含む。ステップS240は、ステップS230において計算されたNについての値に基づいて、モバイル受信機の位置を計算するように機能する。Nが決定された後、モバイル受信機についての基線ベクトルbが、ステップS240によってNについての値および位相/擬似距離測定値から決定され、これは、基準局に対するモバイル受信機の位置を与える。基準局のロケーションが知られている場合、ステップS240は、(基準局座標にbを適用することによって)モバイル受信機の絶対位置を計算することを含み得る。
【0200】
ステップS240は、追加として、受信機位置データを送信または記憶することを含み得る。たとえば、ステップS240は、UHF無線、インターネット、または任意の他の好適な手段を介して受信機から外部コンピュータに受信機位置データを送信することを含み得る。
【0201】
方法200のすべてのステップは、好ましくは、モバイル受信機上で実施されるが、追加または代替として、任意のステップまたはステップのセットは、リモート・プラットフォーム(たとえば、モバイル受信機がインターネット・アクセスを有する場合、クラウド・コンピューティング・サーバ)上で実施され得る。
【0202】
衛星測位補正値を生成するためのシステムおよび方法の特定の例
衛星測位データの分散高密度ネットワーク処理のためのシステムは、グローバル補正モジュール、複数のローカル補正モジュール、および補正値生成器を含む。システムは、追加として、1つまたは複数の補間器を含み得る。たとえば、グローバル補正モジュールからのデータは、ローカル補正モジュールを初期化するために使用され得、ローカル補正モジュールを介して補正値生成器に受け渡され得、補正値生成器に直接受け渡され得、および/または任意の他の様式でシステムによって利用され得る。
【0203】
システムは、モバイルGNSS(グローバル・ナビゲーション衛星システム)受信機、または位置/速度/タイミング・データ補正がそれについて望まれる任意の他のGNSS受信機によって使用されるべき補正データを生成するように機能する。そのような受信機(これ以降、モバイル受信機と呼ばれる)は、任意の衛星ナビゲーション・システム、たとえば、GPS、GLONASS、ガリレオ、およびBeidou上で動作し得る。補正データは、好ましくは、GNSS解精度を改善するために使用され、PPP補正値、RTK補正値、または(補正値生成器に関するセクションにおいて論じられる)任意の他のタイプの補正値の形態を取り得る。
【0204】
補正値データの形態の柔軟性は、旧来の位置補正システムに対する、システムの固有で特徴的な態様である。(PPPにおけるように)高品質グローバル基準局の小さいセットからのみ、または(RTKにおけるように)モバイル受信機/基準局ペアのデータを比較することによって、補正値を生成することを試みるのではなく、システムは、基準局(および/または他の基準ソース)からデータを収集し、接続を生成するために直接このデータを適用する代わりに(またはそれに加えて)、データは、(グローバル補正モジュールにおける)グローバル補正モデルと、(ローカル補正モジュールにおける)いくつかのローカル補正モデルの両方を生成するために使用される。次いで、これらのモデルの出力は、任意の形態で補正データを生成するために出力を使用することができる、補正値生成器に受け渡される。さらに、補正値生成器は、補正能力(たとえば、受信機が、RTK/PPP補正値を処理することができるかどうか)、および個々の基地局のロケーションにかかわらず、モバイル受信機に高品質補正値を提供するために、補正値データをキャッシュし、および/または(補間器を用いて)空間的に補間し得る。
【0205】
このようにして動作することによって、システムは、PPPの長い収束時間問題をほとんど受けない(PPP受信機の場合に使用可能な)補正値のセットを提供し得、解複雑さは、(解複雑さが、少なくとも、可能なペアの数、換言すれば、NとともにスケーリングするRTKとは異なり)直接、基準局の数Nとともにスケーリングする(実際、多くの現在の解は、Nとともにスケーリングするか、またはより悪い)。さらに、補正値は、好ましくは、(特定の基準局ペアではなく)任意の数の単一の基準局に依存し得るローカル補正モデルを使用して計算されるので、補正値は、基地局の損失に対して実質的によりロバストになる。
【0206】
さらに、システムのフレキシブルな性質は、(空間補間およびキャッシングなど)いくつかの機能が、RTKの場合に可能であろうよりもはるかに概括的に実施されることを可能にし、(「擬似基準局」とも呼ばれる)「仮想基準局」の概念が、RTK内で知られているが、仮想基準局は、一般的に、リアルタイムでのRTK補正値データの補間を伴う(および前に論じられたように、誤差補正は、Nとともに複雑さがスケーリングする)。対照的に、システムにおける補間は、グローバルおよび/またはローカル補正モデルの特定の態様に限定され得、誤差に対するさらなるロバストネスを提供し、誤差原因に関するより良い洞察を提供する。さらに、リアルタイム補正値データを必要とするRTKとは異なり、モデルベース・システムは、データが限定されたとき(たとえば、基準局が突然利用不可能になったとき)でも、モデル・パラメータをキャッシュするか、または別様に保持し得る。
【0207】
システムは、好ましくは、ネットワーク化された分散コンピューティング・システムの一部としてソフトウェアで実装されるが、追加または代替として、任意の様式で実装され得る。
【0208】
グローバル補正モジュールは、1つまたは複数のグローバル補正モデルを維持するように機能する。グローバル補正モデルは、好ましくは、2つの機能、すなわち、グローバル誤差(換言すれば、空間において実質的に変動しないGNSS測位の誤差)を補正することと、ローカル誤差推定値(ここで、ローカル誤差は、空間において、またはGNSS受信機ごとに実質的に変動する誤差を指す)を誤差検査/シードすることとを達成する。ここでのシードすることとは、さらなる改良のための開始点として、粗い推定値を提供することを指すことに留意されたい。
【0209】
グローバル補正モジュールは、好ましくは、基準局およびモバイル受信機からの生データ(たとえば、キャリア位相データ、擬似距離データ、基準局ロケーションなど)を入力として取るが、追加または代替として、基準局および/またはモバイル受信機からの処理されたデータ(たとえば、測位コード・データ)、あるいは任意の他のソースからのデータ(たとえば、インターネット上のPPPグローバル補正値データ・ソース、製造業者または他のソースからの特定の衛星または受信機タイプのための較正データ、衛星軌道データ、衛星時計データ)を取り入れ得る。
【0210】
基準局は、好ましくは、1つまたは複数の衛星受信機を有し、それらの受信機に基づいて補正値を生成する。基準局によって使用される衛星受信機の数および品質(またはアンテナ・タイプ/サイズ/ロケーションのような他のファクタ)が、基準局データの精度を決定し得る。基準局(または基準局データの他のソース、たとえば、複数の基準局からの補正データを作り出す基準ソース)は、基準局品質(たとえば、補正値の精度)、および/またはローカリティによって順序付けられるかまたはグループ化され得る(たとえば、補正値が特定のモバイル受信機について望まれる場合、基準局は、その受信機までの距離によって順序付けられるかまたはグループ化され得る)。
【0211】
グローバル補正モジュールは、好ましくは、GNSSナビゲーションに対するグローバル・パラメータの影響を明示的にモデル化する。これらのパラメータは、好ましくは、衛星時計誤差、衛星軌道誤差、衛星ハードウェア・バイアス、衛星アンテナ位相ワインドアップ、位相中心オフセット(PCO)、および位相中心変動(PCV)(これらのうちのすべては、衛星ごとにあるが、概して空間的に変動しない)、固結泥土タイド、固結泥土ポール・タイド、海洋潮流ローディング(これらは、空間的および時間的に変動するが、予測可能な様式でである)、ならびに電離層および対流圏影響の粗いグローバル・モデル(この場合、グローバル・モデルは、それらだけでは、電離層および対流圏影響をモデル化するほど十分に正確でないことがあるが、それらは、後の改良のための開始点を提供する)を含む。追加または代替として、グローバル補正モジュールは、モバイル受信機または基準局によって受信されたGNSS信号に対する任意のパラメータの影響をモデル化し得る。グローバル補正モジュールは、好ましくは、追加として、少なくともいくつかのグローバル・パラメータについて不確実性推定値を維持し、追加または代替として、グローバル補正モジュールは、不確実性推定値を維持しないことがある。
【0212】
グローバル・モデルを生成/更新する際に使用される受信機について、グローバル補正モジュールは、追加または代替として、それらの受信機に固有の影響、たとえば、受信機時計誤差、受信機ハードウェア・バイアス、および受信機アンテナ位相ワインドアップ/PCO/PCV(これらは、所与の受信機に固有であるが、ロケーションに直接依存しない)をモデル化し得ることに留意されたい。
【0213】
複数のローカル補正モジュールは、ローカル補正モデルを維持するように機能する。ローカル補正モデルは、好ましくは、GNSS信号に対する影響の空間的にローカルな分散を、ならびに特定の受信機/基準局に固有である影響を補正する。
【0214】
ローカル補正モジュールは、好ましくは、単一の基準局に対応する(およびそれからデータを受信する)。いくつかの実施形態では、ローカル補正モジュールは、各基準ソースまたは局について存在し、したがって、各ローカル補正モジュールは、一意の基準ソースから入力を取る。追加または代替として、ローカル補正モジュールは、任意の様式で基準局に対応し、および/またはそれに結合し得、たとえば、ローカル補正モジュールは、特定の空間領域内のいくつかの基準局をモデル化するために使用され得る。追加または代替として、システムは、モバイル受信機に対応する1つまたは複数のローカル補正モジュールを含み得る。
【0215】
ローカル補正モジュールは、好ましくは、対応する基準局/モバイル受信機からの生データ(たとえば、キャリア位相データ、測位コード・データ、基準局ロケーション、擬似距離、ナビゲーション・データ、メッセージ・データなど)を入力として取るが、追加または代替として、基準局および/またはモバイル受信機からの処理されたデータ(たとえば、ブロードキャスト・エフェメリスおよびアルマナック)、あるいは任意の他のソースからのデータを取り入れ得る。ローカル補正モジュールは、好ましくは、追加として、(たとえば、新しい基準局についてローカル補正モデルを初期化するために、および/またはローカル誤差のグローバル・コンポーネントを補償するために)グローバル補正モジュールからデータを取る。追加または代替として、ローカル補正モジュールは、任意のソースからデータを取り得る(たとえば、ローカル補正モジュールは、基準データのみを取り入れ得、グローバル補正モジュールの出力を取り入れないことがある)。
【0216】
ローカル補正モジュールは、好ましくは、GNSSナビゲーションに対するローカル・パラメータの影響を明示的にモデル化する。これらのパラメータは、好ましくは、対流圏および電離層影響(これらは、基準局に直接依存しないが、空間的に/時間的に変動する)、受信機時計誤差、受信機ハードウェア・バイアス、受信機アンテナ位相ワインドアップ/PCO/PCV(これらは、所与の受信機/アンテナに固有であるが、ロケーションに直接依存しない)、キャリア位相アンビギュイティ、および他の位置誤差(これは、場合によっては明示的にモデル化されない影響をカバーする)を含む。追加または代替として、ローカル補正モジュールは、モバイル受信機または基準局によって受信されたGNSS信号に対する任意のパラメータの影響をモデル化し得る。グローバル補正モジュールと同様に、ローカル補正モジュールは、追加または代替として、パラメータ不確実性推定値を維持/トラッキングし得る。
【0217】
特に、ローカル補正モジュールは、好ましくは、受信機位置に応じて対流圏および電離層影響をモデル化する。
【0218】
電離層影響は、モデル化することが困難であり得る。電離層影響のGNSS信号に対する影響を、受信機ハードウェア・バイアスのものから区別することは困難であるが、電離層影響は、受信機ハードウェア・バイアスよりも時間的にすばやく変動する傾向がある。したがって、ローカル補正モジュールは、これらの影響の組合せの変化率に基づいて、電離層影響とハードウェア・バイアスの影響とを分離することを試み得る。さらに、電離層影響は、位置のみに基づくのでなく、GNSS信号が電離層を通して取る経路にも基づいて、著しく(および容易に予測可能な様式でではなく)変動する。したがって、電離層影響のモデルは、これらのファクタの各々を考慮に入れる必要があり得る。発明実施形態の一実装形態では、ローカル補正モジュールは、図10A中に示されているように、位置(たとえば、貫通点、ここで、受信機と衛星との間の見通し線は、大気層と交差する)と、(たとえば、信号経路についての類似物としての)貫通角度の両方に応じて、GNSSソースごとに(たとえば、衛星ごとに)電離層影響をモデル化する。電離層影響はまた、周波数に対してモデル化され得る。さらに、電離層は、好ましくは、1つまたは複数の薄いシェルとしてモデル化されるが、電離層は、追加または代替として、任意の様式でモデル化され得る。同様に、電離層影響は、任意の様式でモデル化され得、位置および角度に応じて電離層影響をモデル化することとは対照的に、電離層影響は、図10B中に示されているように、電離層モデルの各シェルについての貫通位置のセットに基づいてモデル化され得る。
【0219】
対照的に、対流圏影響は、実質的に、(たいていの衛星周波数について)周波数の変種ではなく、さらに、対流圏影響は角度に依存するが、それらは、一般的に、予測可能な様式でそのようにする。したがって、ローカル補正モデルは、好ましくは、(1/cosθにほぼ対応する、ここで、θは垂直からの角度である)角度についての静的補正値をもつ位置(たとえば、貫通点)のみに基づいて、対流圏影響をモデル化する。追加または代替として、対流圏影響は、任意の様式でモデル化され得る。
【0220】
グローバル補正モジュールおよびローカル補正モジュールのモデルは、好ましくは、弱く結合される、すなわち、モデルにおける変化は、いずれの場合も互いに伝搬するが、減衰された様式においてである(これは、補正精度がブレーク・ダウンすることを引き起こす不良データまたは基準局損失がない、変化する状態に対する反応を可能にする)。追加または代替として、モデルは、任意の様式で結合される(またはまったく結合されない)ことがある。
【0221】
グローバル補正モジュールおよびローカル補正モジュールのモデルは、好ましくは、カルマン・フィルタまたはガウス過程を介して維持/更新されるが、追加または代替として、任意の様式で維持/更新され得る。
【0222】
グローバル補正モジュールおよびローカル補正モジュールは、基準ソースの任意のセットを使用し得る。たとえば、ローカル補正モジュールは、グローバル補正モジュールによって使用される基準ソースの厳密なサブセット(たとえば、モバイル受信機の範囲しきい値内の基準ソースのサブセット)を使用し得るか、またはグローバル補正モジュールは、ローカル補正モジュールによって使用される基準ソースの厳密なサブセット(たとえば、最も高い精度をもつローカル基準ソースのサブセット)を使用し得る。第2の例として、ローカル補正モジュールおよびグローバル補正モジュールは、重複基準ソースを使用し得る(しかし、いずれのセットも、他方のサブセットではない)。第3の例として、ローカル補正モジュールおよびグローバル補正モジュールは、基準ソースの非重複セットを使用し得る(換言すれば、それらは、基準ソースを共有しない)。同様に、これらの基準ソースは、衛星の任意のセットから衛星情報を受信し得る。
【0223】
グローバル補正モジュールおよびローカル補正モジュールの出力は、「事前補正値」と呼ばれることがあり、補正データを生成するために補正値生成器によって使用可能な任意の形態で生成され得る。グローバル補正モジュールによって生成された事前補正値は、「グローバル事前補正値」と呼ばれることがあり、ローカル補正モジュールによって生成された事前補正値は、「ローカル事前補正値」と呼ばれることがある。
【0224】
発明実施形態の変形形態では、グローバル補正モジュールは、いくつかの基準局ペアについてキャリア位相アンビギュイティを計算する、差分アンビギュイティ・フィクサー(DAF)111を含む。この差分アンビギュイティ・フィクサーは、たとえば、より急速にグローバルおよびローカル・モデルにおいて新しい基準局を初期化するのを助けるために使用され得る。代替的に、DAF111は、グローバル補正モジュールとは無関係であり得る。
【0225】
補間器は、システムの変形影響を空間的に補間するように機能する。特に、補間器は、好ましくは、ローカル対流圏および電離層影響の基準局ごとのモデルを、ローカル対流圏および電離層影響のローカル(基準局とは無関係であるが、位置に依存する)モデルに変換するように機能する。たとえば、補間器は、(各々が知られている位置を有する)個々の参照ロケーションに対応する対流圏影響モデルのセットを、規則正しく離間したグリッドに変換し得る。追加または代替として、補間器は、任意の様式で(たとえば、個別のグリッドではなく対流圏/電離層影響の連続補間モデルを作り出すことによって、または図11中に示されているように、グリッド・パターン以外の個別のポイントの何らかの他の配置を使用してなど)機能し得る。任意の補間技法が使用され得、たとえば、クリギングが使用され得る(この技法は、補間ポイントにおいて不確実性を予測することも行うという利点を有する)ことに留意されたい。一般的に、ローカル位置依存モデルは、(それが個々の基準ソースに対応する複数のモデルの出力をまとめるので)「ユニファイド位置ベース・モデル」と呼ばれることがある。
【0226】
補間器は、追加または代替として、電離層影響とハードウェア・バイアスの影響とを分離するように機能し得、たとえば、ローカル補正モジュールは、電離層推定値とハードウェア・バイアス推定値の両方(随意に、これらの推定値の間の相関を特徴づける項を含む)を補間器に出力し、これらの推定値から、統一された(空間的に異なる)電離層モデルをデータに適合させることを試み得る(その後、各基準ソースについてのハードウェア・バイアス推定値は改良され得る)。たとえば、各ローカル補正モジュール(LCM)は、電離層補正値I(x,y,z)およびハードウェア・バイアス補正値Hを出力し得る。ローカル補正モジュールにおいて、これらの補正値は、不適切に分離され得る、たとえば、I=I(ideal)+Δ,H=H(ideal)-Δであるが、電離層推定値は、同じモデルに適合するべきであるので、補間器は、電離層補正値とハードウェア・バイアス補正値の両方の推定値を改良するために、複数の基準ソースからの測定値を使用することができる。
【0227】
補正値生成器は、モバイル受信機によって使用されるべき補正値を生成するように機能する。補正値生成器は、好ましくは、モバイル受信機によって使用可能な形式で、モバイル受信機のためのグローバル補正モジュールおよびローカル補正モジュールの出力に基づいて、補正値を生成する。たとえば、モバイル受信機が、PPP補正値を受け入れることができる場合、補正値生成器は、PPP補正値の形態で補正値を送り得る(とはいえ、真のPPP補正値とは対照的に、補正値生成器によって生成された補正値は、受信機位置推定値または別の空間項に依存し得る)。追加または代替として、補正値生成器は、(たとえば、仮想基準局の)RTK補正値の形態で、または任意の他の形式(たとえば、ローカル・モデルの一部である何らかのローカル係数)で補正値を送り得る。ローカルおよびグローバル補正値は、任意の順序で起こり得る(および同期であることも非同期であることもある)ことに留意されたい。補正値生成器は、追加または代替として、位置データを補正するために、任意の様式で補正データを送るかまたは使用し得る(たとえば、補正値生成器は、位置データを入力として取り、たとえば、モバイル受信機によって実装されるべき、測位補正値ではなく、補正された位置データを生成し得る)。
【0228】
補正値生成器は、好ましくは、モデル出力をキャッシュし、このキャッシュを使用して補正値を生成する。したがって、何らかのリアルタイム・データがない場合に、キャッシュされたデータは置換され得る(旧来のRTKでは可能ではない)。追加または代替として、新しいパラメータは、時間内の予測された変動に基づいて推定される(たとえば、キャッシュされた値から予測される)ことがあり、または補正値生成器は、キャッシュされたおよび/または予測された出力に依拠しないことがある。
【0229】
補正値生成器は、追加または代替として、入力パラメータの不確実性が与えられると、生成された補正値の推定不確実性を計算し得る(旧来のPPP/RTK解は、これを行うことが可能ではない)。
【0230】
衛星測位データの分散高密度ネットワーク処理のための方法は、基準局のセットからデータを受信することと、グローバルGNSS補正モデルを更新することと、ローカルGNSS補正モデルのセットを更新することと、GNSS補正値を生成することとを含む。
【0231】
方法は、好ましくは、システムに実質的に類似した様式で機能する。
【0232】
基準局のセットからデータを受信することは、システムにおいて説明されたものに実質的に類似して、グローバルおよびローカルGNSS補正モデルを更新するために使用される入力データを受信するように機能する。
【0233】
グローバルGNSS補正モデルを更新することは、グローバル補正モジュールのものに実質的に類似してグローバル補正モデルを更新するように機能し、このモデルは、好ましくは、2つの機能、すなわち、グローバル誤差(換言すれば、空間において実質的に変動しないGNSS測位の誤差)を補正することと、ローカル誤差推定値を誤差検査/シードすることとを達成する。更新は、好ましくは、システム説明において説明されたように実施される。
【0234】
ローカルGNSS補正モデルのセットを更新することは、ローカル補正モジュールのものに実質的に類似してローカル補正モデルを更新するように機能し、これらのモデルは、好ましくは、GNSS信号に対する影響の空間的にローカルな分散を、ならびに特定の受信機/基準局に固有である影響を補正する。更新は、好ましくは、システム説明において説明されたように実施される。
【0235】
GNSS補正値を生成することは、モバイル受信機によって使用されるべきグローバルおよびローカル補正モデルから補正値を生成するように機能する。GNSS補正値を生成することは、好ましくは、補正値生成器に関するセクションにおいて説明されたように補正値を生成することを含み、追加または代替として、この生成プロセスの一部として、(補間器に関するセクションにおいて説明されたように)補間を実施することを含み得る。同様に、モデル出力をキャッシュすることと、このキャッシュから補正値を生成することとを含み得る。したがって、何らかのリアルタイム・データがない場合に、キャッシュされたデータは置換され得る(これは、旧来のRTKでは可能ではない)。
【0236】
方法は、好ましくは、システムによって実装されるが、追加または代替として、衛星位置データの分散高密度ネットワーク処理のための任意のシステムによって実装され得る。
【0237】
低減外れ値衛星測位のためのシステムおよび方法の特定の例
S240の位置推定値は、好ましくは、S210において受信された観測値に基づいて、任意の数の予測および更新ステップによって計算される。たとえば、S210は、異なる時間に観測値を受信することを含み得、S240は、それらの観測値のうちのすべておよび前の位置推定値を使用して、位置推定値を生成することを含み得る。代替的に、S240は、観測値のサブセットのみから位置推定値を生成することを含み得る。
【0238】
S250は、外れ値が低減された第2の受信機位置推定値を生成することを含む。S250は、第1の受信機位置推定値における誤った観測値(換言すれば、統計的外れ値として検出可能な誤った観測値)の影響を検出し、精度を高めるように位置推定値を変更する(より高いパフォーマンスを特徴とする第2の受信機位置推定値を生成する)ように機能する。
【0239】
測定外れ値を取り除くかまたは重み付けするための技法は、従来技術(ならびに残差に基づく解または測定品質の分析)において存在するが、S250は、既存の技法よりも効率的に外れ値の影響を緩和し得る特定の技法を含む。たとえば、一度に単一の外れ値について緩和するための技法が存在するが、S250の技法は、並列に複数の外れ値について識別および/または緩和することに役立ち得る。
【0240】
S250は、好ましくは、3つの以下の技法(スケールド残差技法、分散しきい値技法、およびハイブリッド技法)のうちの1つを使用して、外れ値観測値を検出する。外れ値観測値を検出した後、S250は、好ましくは、S240におけるのと同様の様式で第2の位置推定値を生成するが、任意の外れ値観測値を除外することを含む。追加または代替として、S250は、第1の位置推定値に対する更新として、否定的分散をもつ新しい観測値(検出された外れ値観測値の影響を取り除くように働く新しい観測値)を追加することによって、または任意の他の様式で第2の位置推定値を生成することを含み得る。これらは、S250が位置推定値に対する外れ値の影響をどのように緩和し得るかの2つの例であるが、S250は、追加または代替として、任意の様式(たとえば、外れ値観測値よりも強く、非外れ値観測値を重み付けすること)でこれを達成し得る。
【0241】
スケールド残差技法
発明実施形態の第1の実装形態では、S250は、このセクションにおいて説明されるスケールド残差技法を使用して、外れ値が低減された第2の受信機位置推定値を生成することを含む。「スケールド残差技法」という用語は、本明細書で説明される技法を正確に指すためにここで造り出されたことに留意されたい(他の技法との名前のいかなる類似性も、純粋に偶然の一致によるものである)。
【0242】
スケールド残差技法では、S250は、好ましくは、衛星データ観測値について事後残差値を計算することを含む。すなわち、観測値z、および(S220において計算された)事後状態推定値
【0243】
について、S250は、好ましくは、これ以降、(測定適合後残差と呼ばれることがある)事後観測残差と呼ばれる残差、すなわち、
【0244】
を計算することを含む。事後観測残差から、S250は、好ましくは、事後観測残差共分散、すなわち、
【0245】
を計算することを含み、ここで、Rは、nの共分散であり、Pk|kは、更新された状態共分散である。
【0246】
事後観測残差共分散から、事後観測残差ベクトルの分散は、
【0247】
と計算され得、ここで、DOFは自由度である。vはSzと書かれ得、ここで、Sは、DOFと等価なトレースを有する行列であることに留意されたい。これから、
【0248】
と言える。
【0249】
最後に、この分散は、残差
【0250】
を(たとえば、残差をそれらの関連付けられた標準偏差で、またはそれらの関連付けられた分散で除算することによって)スケーリングするために使用され得る。次いで、スケーリングされた残差は、しきい値ウィンドウ(たとえば、平均値からのプラスまたはマイナス3標準偏差に対応するもの)と比較され、しきい値ウィンドウ外にある観測値は、外れ値観測値としてフラグを付けられる。
【0251】
次いで、第2の受信機位置状態が、前に説明されたように観測値の低減されたセットから生成される。
【0252】
分散しきい値技法
発明実施形態の第2の実装形態では、S250は、このセクションにおいて説明される分散しきい値技法を使用して、外れ値が低減された第2の受信機位置推定値を生成することを含む。「分散しきい値技法」という用語は、本明細書で説明される技法を正確に指すためにここで造り出されたことに留意されたい(他の技法との名前のいかなる類似性も、純粋に偶然の一致によるものである)。
【0253】
分散しきい値技法では、事後残差、事後残差共分散、および事後残差分散が、スケールド残差技法におけるように計算される。しかしながら、この技法では、事後残差分散は直接調べられる。1つまたは複数の事後残差分散が、しきい値範囲の外にある場合、これは、外れ値が観測データ中に存在し得るというしるしである。
【0254】
この技法では、S250は、好ましくは、観測値のセットを取り除くことと、事後残差分散を再計算することとを含む。事後残差分散がしきい値レベルを下回った場合、アルゴリズムはここで停止し得るが、アルゴリズムは、代替的に、観測値の異なるセットを取り除くことを試み得る(それらのうちの少なくとも1つまたは複数がしきい値レベルを下回るまで、以下同様である)。代替的に述べると、アルゴリズムは、しきい値範囲の外の事後残差分散の数がしきい値数よりも小さくなるまで、続き得る。
【0255】
代替的に、この技法では、S250は、いくつかのセット低減観測値(換言すれば、観測値の全セットの異なるサブセット)について事後残差分散を計算することと、最も低い分散をもつ低減セットを選定することとを含み得る。
【0256】
この技法は、特に、差分測定値について有用であり得る。差分測定値は、相関しており、これにより、異なる観測値に対応する1つの観測値破損残差において外れ値を生じる可能性が高い。
【0257】
次いで、第2の受信機位置状態が、前に説明されたように観測値の低減されたセットから生成される。
【0258】
ハイブリッド技法
発明実施形態の第3の実装形態では、S250は、このセクションにおいて説明されるハイブリッド技法を使用して、外れ値が低減された第2の受信機位置推定値を生成することを含む。「ハイブリッド技法」という用語は、本明細書で説明される技法を正確に指すためにここで造り出されたことに留意されたい(他の技法との名前のいかなる類似性も、純粋に偶然の一致によるものである)。
【0259】
ハイブリッド技法では、事後残差、事後残差共分散、および事後残差分散が、スケールド残差技法におけるように計算される。次いで、事後残差分散は調べられる。1つまたは複数の事後残差分散が、しきい値(注:これは、分散しきい値技法において述べられたものとは異なるしきい値であり得る)を上回る場合、S250は、分散しきい値技法を使用して外れ値を検出することを含むが、そうではない場合、S250は、スケールド分散技法を使用して外れ値を検出することを含む。追加または代替として、S250は、しきい値を上回る事後残差分散の数、および/またはそれらの規模に基づく任意の様式で、分散しきい値技法とスケールド分散技法との間で選択することを含み得る。
【0260】
次いで、第2の受信機位置状態が、前に説明されたように観測値の低減されたセットから生成される。
【0261】
これらの技法のうちの3つすべては、好ましくは、連続変数として位相アンビギュイティを扱うが、S250は、追加または代替として、位相アンビギュイティを整数に制約することを試み得る。たとえば、S250は、(たとえば、第2の位置推定値を計算した後に)位相測定残差を計算することと、それらの残差を全位相サイクルの整数倍(たとえば、2πn)と比較することとを含み得る。残差が近い場合、これは、誤った観測値ではなく、サイクル・スリップを示し得る。
【0262】
発明実施形態の一実装形態では、S250は、潜在的サイクル・スリップを検出することと、(たとえば、単一の整数サイクル・スリップ値のみが、残差の値の周りの分散の知られているウィンドウ内に含まれていることを検証することによって)サイクル・スリップの値が、確実に選定され得ることを検証することと、(たとえば、サイクル・スリップ値が、残差値の分散のウィンドウ内にあることを検証することによって)残差に対してサイクル・スリップ値を検定することとを含む。ここで説明される分散の2つのウィンドウは別個であり得る(たとえば、一方が他方よりも小さいことがある)ことに留意されたい。S250は、次いで、サイクル・スリップを補正することを含み得る。
【0263】
方法200が、1つまたは複数のソース(たとえば、衛星、基地局)からのデータを誤りと識別した場合、方法200は、前記ソースが「不健康」であり得るというフラグを付けるかまたは別様に通知を提供することを含み得ることに留意されたい。さらに、方法200は、これらのソースからの観測値を放念するかまたは別様に重み付けし得る。
【0264】
方法200は、好ましくは、システム100によって実装されるが、追加または代替として、衛星位置データの処理のための任意のシステムによって実装され得る。
【0265】
好ましい実施形態の方法、およびそれらの変形形態は、コンピュータ可読命令を記憶するコンピュータ可読媒体を受けるように構成された機械として少なくとも部分的に具現および/または実装され得る。命令は、好ましくは、高完全性衛星測位のためのシステムと好ましくは統合されたコンピュータ実行可能コンポーネントによって実行される。コンピュータ可読媒体は、RAM、ROM、フラッシュ・メモリ、EEPROM、光学デバイス(CDまたはDVD)、ハード・ドライブ、フロッピー・ドライブ、あるいは任意の好適なデバイスなど、任意の好適なコンピュータ可読媒体上に記憶され得る。コンピュータ実行可能コンポーネントは、好ましくは、汎用または特定用途向けプロセッサであるが、任意の好適な専用ハードウェアまたはハードウェア/ファームウェア組合せデバイスが、代替または追加として、命令を実行することができる。
【0266】
当業者が、前の詳細な説明から、ならびに図および特許請求の範囲から認識するように、改変および変更が、以下の特許請求の範囲において定義されている本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の好ましい実施形態に対してなされ得る。
図1-1】
図1-2】
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【国際調査報告】