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特表2022-531001抗BCMA抗体コンジュゲート、そのコンジュゲートを含む組成物ならびにそのコンジュゲートの製造および使用方法
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  • 特表-抗BCMA抗体コンジュゲート、そのコンジュゲートを含む組成物ならびにそのコンジュゲートの製造および使用方法 図1
  • 特表-抗BCMA抗体コンジュゲート、そのコンジュゲートを含む組成物ならびにそのコンジュゲートの製造および使用方法 図2
  • 特表-抗BCMA抗体コンジュゲート、そのコンジュゲートを含む組成物ならびにそのコンジュゲートの製造および使用方法 図3
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  • 特表-抗BCMA抗体コンジュゲート、そのコンジュゲートを含む組成物ならびにそのコンジュゲートの製造および使用方法 図6
  • 特表-抗BCMA抗体コンジュゲート、そのコンジュゲートを含む組成物ならびにそのコンジュゲートの製造および使用方法 図7
  • 特表-抗BCMA抗体コンジュゲート、そのコンジュゲートを含む組成物ならびにそのコンジュゲートの製造および使用方法 図8
  • 特表-抗BCMA抗体コンジュゲート、そのコンジュゲートを含む組成物ならびにそのコンジュゲートの製造および使用方法 図9
  • 特表-抗BCMA抗体コンジュゲート、そのコンジュゲートを含む組成物ならびにそのコンジュゲートの製造および使用方法 図10
  • 特表-抗BCMA抗体コンジュゲート、そのコンジュゲートを含む組成物ならびにそのコンジュゲートの製造および使用方法 図11
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-05
(54)【発明の名称】抗BCMA抗体コンジュゲート、そのコンジュゲートを含む組成物ならびにそのコンジュゲートの製造および使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20220628BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220628BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20220628BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220628BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20220628BHJP
   A61K 31/537 20060101ALI20220628BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220628BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220628BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20220628BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20220628BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20220628BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K9/19
A61K9/08
A61K47/68
A61K31/537
A61P35/00
A61P35/02
A61P7/00
C12N15/13
C12P21/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021565053
(86)(22)【出願日】2020-05-01
(85)【翻訳文提出日】2021-12-28
(86)【国際出願番号】 US2020031067
(87)【国際公開番号】W WO2020227110
(87)【国際公開日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】62/843,226
(32)【優先日】2019-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】508027464
【氏名又は名称】セルジーン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】CELGENE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(74)【代理人】
【識別番号】100221523
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 渉
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(72)【発明者】
【氏名】リー,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】スタッフォード,ライアン
(72)【発明者】
【氏名】ヤム,アリス
(72)【発明者】
【氏名】リィ,シャオファン
(72)【発明者】
【氏名】ユー,アビゲイル
(72)【発明者】
【氏名】ガカル,アマンディープ
【テーマコード(参考)】
4B064
4C076
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA12
4B064CA19
4B064DA01
4C076AA95
4C076CC14
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085AA26
4C085BB33
4C085BB34
4C085BB35
4C085BB36
4C085BB37
4C085BB41
4C085BB43
4C085BB44
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB22
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA44
4C086NA05
4C086NA13
4C086ZA51
4C086ZB26
4C086ZB27
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA51
4H045BA57
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA10
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書は、BCMA(BCMA)およびそのアイソフォームおよびホモログに対して結合特異性を有する抗体コンジュゲート、ならびに該抗体コンジュゲートを含む組成物(例えば、医薬組成物)に関する。抗体コンジュゲートおよび組成物を製造する方法ならびに抗体コンジュゲートおよび組成物を使用する方法(例えば、治療方法および診断方法)もまた提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】

[ここで、
nは1~4であり;
抗体は、配列番号:13のV領域および配列番号:14のV領域を含んでおり;
抗体は、EUナンバリングスキームによる部位HC-F404およびHC-Y180の各々にて置換しているp-アジドメチル-フェニルアラニン残基を更に含んでおり;および
上記式の括弧内の各構造は、p-アジドメチル-フェニルアラニン残基の内の1つにて抗体と結合している]
に記載の抗体コンジュゲート。
【請求項2】
nが1である、請求項1記載の抗体コンジュゲート。
【請求項3】
nが2である、請求項1記載の抗体コンジュゲート。
【請求項4】
nが3である、請求項1記載の抗体コンジュゲート。
【請求項5】
nが4である、請求項1記載の抗体コンジュゲート。
【請求項6】
少なくとも1つの定常領域ドメインを更に含む、請求項1~5いずれか一項記載の抗体コンジュゲート。
【請求項7】
定常領域が、配列番号:19および20、または両方から選択された配列を含む、請求項6記載の抗体コンジュゲート。
【請求項8】
抗体が、モノクローナル抗体である、請求項1~7いずれか一項記載の抗体コンジュゲート。
【請求項9】
抗体が、IgA、IgD、IgE、IgGまたはIgMである、請求項1~8いずれか一項記載の抗体コンジュゲート。
【請求項10】
抗体が、ヒト化またはヒト抗体である、請求項1~9いずれか一項記載の抗体コンジュゲート。
【請求項11】
抗体が、グリコシル化されていない、請求項1~10いずれか一項記載の抗体コンジュゲート。
【請求項12】
抗体が、抗体フラグメントである、請求項1~11いずれか一項記載の抗体コンジュゲート。
【請求項13】
抗体フラグメントが、Fvフラグメント、Fabフラグメント、F(ab')フラグメント、Fab'フラグメント、scFv(sFv)フラグメントおよびscFv-Fcフラグメントから選択される、請求項12記載の抗体コンジュゲート。
【請求項14】
抗体が、scFvフラグメントである、請求項13記載の抗体コンジュゲート。
【請求項15】
抗体が、scFv-Fcフラグメントである、請求項13記載の抗体コンジュゲート。
【請求項16】
抗体が、カニクイザルBCMA受容体と特異的に結合する、請求項1~15いずれか一項記載の抗体コンジュゲート。
【請求項17】
抗体が、マウスBCMA受容体と特異的に結合する、請求項1~16いずれか一項記載の抗体コンジュゲート。
【請求項18】
請求項1~17いずれか一項記載の抗体コンジュゲートおよび該抗体コンジュゲートを使用するための指示書を含む、キット。
【請求項19】
抗体コンジュゲートが、凍結乾燥されている、請求項18記載のキット。
【請求項20】
凍結乾燥された抗体を溶解させるための液体を更に含む、請求項19記載のキット。
【請求項21】
請求項1~17いずれか一項記載の抗体コンジュゲートおよび医薬的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項22】
有効量の請求項1~17いずれか一項記載の抗体コンジュゲートまたは請求項21の医薬組成物を、対象に投与することを特徴とする、治療または予防が必要な対象において疾患または症状を治療または予防する方法。
【請求項23】
有効量の請求項1~17いずれか一項記載の抗体コンジュゲートまたは請求項21の医薬組成物を、対象に投与することを含む、診断が必要な対象において疾患または症状を診断する方法。
【請求項24】
疾患または症状が、癌である、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
疾患または症状が、白血病である、請求項22~24いずれか一項記載の方法。
【請求項26】
疾患または症状が、リンパ腫である、請求項22~25いずれか一項記載の方法。
【請求項27】
疾患または症状が、多発性骨髄腫である、請求項22~24いずれか一項記載の方法。
【請求項28】
多発性骨髄腫が、国際病期分類または改訂版国際病期分類によるステージIである、請求項27記載の方法。
【請求項29】
多発性骨髄腫が、国際病期分類または改訂版国際病期分類によるステージIIである、請求項27記載の方法。
【請求項30】
多発性骨髄腫が、国際病期分類または改訂版国際病期分類によるステージIIIである、請求項27記載の方法。
【請求項31】
多発性骨髄腫が、新たに診断された多発性骨髄腫である、請求項27記載の方法。
【請求項32】
多発性骨髄腫が、再発性または難治性の多発性骨髄腫である、請求項27記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2019年5月3日に提出した米国仮出願番号第62/843,226号の権利を主張するものであって、出典明示によりその全てが本明細書に組み込まれる。
【0002】
(電子技術経路を介して提出した配列表)
本明細書と共に提出した、2020年4月28日に作成された30,207バイトのサイズのファイル名「14247-525-228_SEQ_LISTING.txt」に関する配列表を引用することにより、その全てが本明細書に組み込まれる。
【0003】
発明の分野
本明細書では、B細胞成熟抗原(BCMA)に対して結合特異性を有する抗体コンジュゲート、該抗体コンジュゲートを含む組成物(医薬組成物を含む)、該コンジュゲートの製造方法ならびに該コンジュゲートおよび組成物を治療に使用する方法を提供する。コンジュゲートおよび組成物は、細胞増殖および癌の治療および予防の方法、細胞増殖および癌の検出の方法、および細胞増殖および癌の診断の方法に有用である。また、コンジュゲートおよび組成物は、自己免疫疾患および感染症の治療、予防、検出および診断の方法に有用である。
【0004】
背景技術
B細胞成熟抗原(BCMA)は、B細胞活性化因子を認識する腫瘍壊死因子(TNF)受容体スーパーファミリーの一員である。ヒトでは、このタンパク質は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー17(TNFRSF17)遺伝子によってコードされており、成熟したBリンパ球において優先的に発現している。
【0005】
BCMAは、B細胞の成熟および形質細胞への分化の制御において重要な役割を果たしている。BCMAは、BAFF受容体(BAFF-R)および膜貫通型活性化因子およびカルシウム調節因子およびシクロフィリンリガンド相互作用因子(TACI)と密接な関係にある。BCMA、BAFF-RおよびTACIは、異なる発生段階でB細胞の生存を促進するIII型膜貫通タンパク質であるが、BCMAは、例えば、形質細胞や分化した形質細胞などのB細胞系列細胞でのみ独占的に発現する(Avery et al. (2003) J. Clin. Invest. 112(2):286-297; O'onnor et al. (2004) J. Exp. Med. 199(1):91-98)。形質細胞の分化中に選択的に誘導され、同時に分化した細胞においてBAFF-Rの欠失がおこる(Darce et al. (2007) J. Immunol. 178(9):5612-5622)。BCMAの発現は、正常な形質細胞および形質芽細胞の生存をサポートしているようであるが、ナイーブB細胞および殆どのメモリーB細胞には典型的に存在しない。従って、BCMAは、全体的なB細胞のホメオスタシスには必要ないようであるが、骨髄中での長期生存型の形質細胞の最適な生存には必要である(O’Connor et al. (2004) supra; Xu, S. and K.P. Lam (2001) Mol. Cell. Biol. 21(12):4067-4074)。
【0006】
多発性骨髄腫では、BCMAは悪性形質細胞において普遍的かつ広範囲に高レベルで発現することが示されている;しかし、形質細胞を除く正常なヒト組織においては、通常検出されない。BCMAは、多発性骨髄腫の細胞株において細胞表面の受容体として選択的に発現していることから、多発性骨髄腫の治療薬の標的となる可能性がある。また、BCMAの発現は、白血病およびリンパ腫にも関連している。そのため、BCMAを標的とする改善された方法および/またはBCMAの活性を調節するための改善された方法が求められている。BCMAが形質細胞に特異的に発現し、かつ非がん組織では発現が低いことをから、BCMAを発現または過剰発現する細胞および組織を特異的に標的化することが出来る改良された治療薬が必要とされている。かかる疾患の治療または診断のために、BCMAに対する抗体コンジュゲートを使用して、BCMAを発現している標的細胞に治療用または診断用のペイロード部分を送達することができる。
【0007】
要約
本明細書では、B細胞成熟抗原(BCMA)と選択的に結合する抗体コンジュゲートを提供する。この抗体コンジュゲートは、BCMAに結合する抗体が、1つ以上のペイロード部分に結合しているものである。抗体は、リンカーを介してペイロードに連結されている。BCMA抗体は、有用なペイロード部位および有用なリンカーとしても、本明細書に詳細に記載されている。
【0008】
別の態様では、抗体コンジュゲートを含む組成物が提供される。いくつかの実施形態では、組成物は医薬組成物である。いずれの適切な医薬組成物を使用してもよい。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、非経口投与用の組成物である。さらなる態様では、本明細書で提供されるのは、抗体コンジュゲートまたは医薬組成物を含むキットである。
【0009】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、抗BCMA抗体コンジュゲートを使用する方法である。いくつかの実施形態では、方法は、BCMAを発現している標的細胞または組織に1つまたは複数のペイロード部位を送達する方法である。いくつかの実施形態では、方法とは治療方法である。いくつかの実施形態では、方法とは診断方法である。いくつかの実施形態では、方法とは分析方法である。いくつかの実施形態では、抗体コンジュゲートは、疾患または症状を治療するために使用される。いくつかの態様では、疾患または症状は、癌、自己免疫疾患および感染症から選択される。
【0010】
いくつかの実施態様では、抗体コンジュゲートは、ヒトBCMAを結合する。いくつかの実施態様では、抗体コンジュゲートは、ヒトBCMAのホモログも結合する。いくつかの態様では、抗体コンジュゲートは、カニクイザルおよび/またはマウスBCMAとも結合する。
【0011】
特定の実施形態において、本明細書で提供されるものは、下記式:
【化1】
(式中、
nは1~4であり;抗体は、配列番号:13のV領域および配列番号:14のV領域を含んでおり;抗体は、EUナンバリングスキームによる部位HC-F404およびHC-Y180の各々で置換されたp-アジドメチル-フェニルアラニンの残基を含む重鎖定常領域をさらに含んでおり;および、式中の括弧内の各構造は、p-アジドメチル-フェニルアラニン残基の1つで抗体に結合している)の抗体コンジュゲートである。他の実施形態では、抗体は、(i)配列番号:5または6を含むCDR1;配列番号:7または8を含むCDR2;配列番号:9を含むCDR3を含んでいるV領域;および(ii)配列番号:10を含むCDR1;配列番号:11を含むCDR2;および、配列番号:12を含むCDR3を含んでいるVを含む。より具体的な実施形態では、抗体コンジュゲートの、nは1、2、3または4である。特定の実施形態では、抗体コンジュゲートは、少なくとも1つの定常領域ドメインをさらに含む。例えば、特定の実施形態では、抗体コンジュゲートは、例えば、ヒト定常領域ドメインを含む。さらに他の特定の実施形態では、抗体コンジュゲートは、ヒトIgG1重鎖定常領域、ヒトIgG1カッパ軽鎖領域またはヒトIgG1重鎖定常領域およびヒトIgG1カッパ軽鎖領域を含む定常領域ドメインを含む。抗体コンジュゲートのより具体的な実施形態では、定常領域は、配列番号:19および20から選択される配列、または配列番号:19および配列番号:20の両方を含む。他の実施形態では、抗体コンジュゲートは、配列番号:15のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。例えば、抗体コンジュゲートは、配列番号:15のアミノ酸配列を含む重鎖を含んでいてもよく、ここでEUのナンバリングによるHC-F404およびHC-Y180に対応するアミノ酸の各々が、p-アジドメチル-フェニルアラニン残基に置換されている。他の実施形態では、抗体コンジュゲートは、配列番号:17のアミノ酸配列を含む軽鎖を含んでいる。さらに他の実施形態では、抗体コンジュゲートは、配列番号:15のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号:17のアミノ酸配列を含む軽鎖を含んでいる。例えば、抗体コンジュゲートは、配列番号:15のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号:17のアミノ酸配列を含む軽鎖を含んでいてもよく、ここでEUのナンバリングによる重鎖(HC)-F404およびHC-Y180に対応するアミノ酸の各々が、p-アジドメチル-フェニルアラニン残基に置換されている。
【0012】
本明細書で提供される抗体コンジュゲートのいずれかの特定の実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体である。本明細書で提供される抗体コンジュゲートのいずれかの特定の実施形態では、抗体は、IgA、IgD、IgE、IgGまたはIgMである。本明細書で提供される抗体コンジュゲートのいずれかの特定の実施形態では、抗体は、ヒト化抗体またはヒト抗体である。本明細書で提供される抗体コンジュゲートのいずれかの特定の実施形態では、抗体はグリコシル化されていない(aglycosylated)。本明細書で提供されるいずれかの抗体コンジュゲートの特定の実施形態では、抗体は、抗体フラグメント、例えば、Fvフラグメント、Fabフラグメント、F(ab')フラグメント、Fab'フラグメント、scFv(sFv)フラグメントまたはscFv-Fcフラグメントである。本明細書で提供される抗体コンジュゲートのいずれかの特定の実施形態では、抗体は、ヒトBCMAおよびカニクイザルBCMAと特異的に結合する。本明細書で提供される抗体コンジュゲートのいずれかの特定の実施形態では、抗体は、ヒトBCMAおよびマウスBCMAに特異的に結合する。
【0013】
さらに本明細書では、本明細書で提供されるいずれかの抗体コンジュゲートおよび抗体コンジュゲートの使用説明書を含むキットを提供する。特定の実施形態では、抗体コンジュゲートは、凍結乾燥されている。別の特定の実施形態では、キットは、凍結乾燥された抗体を溶解するための液体をさらに含む。
【0014】
本明細書ではさらに、本明細書で提供される抗体コンジュゲートのいずれかと、医薬的に許容される担体を含む医薬組成物が提供される。
【0015】
さらに、本明細書では、本明細書で提供される抗体コンジュゲートのいずれかの有効量、または本明細書で提供される抗体コンジュゲートのいずれかの医薬組成物を、対象に投与することを含む、それを必要とする対象の疾患または症状を治療または予防する方法が提供される。特定の実施形態では、疾患または症状は、癌である。特定の実施形態では、疾患または症状は、白血病またはリンパ腫である。特定の実施形態では、疾患または症状は、多発性骨髄腫である。特定の実施形態では、多発性骨髄腫は、国際ステージ分類システムまたは改訂国際ステージ分類システムによれば、ステージI、ステージIIまたはステージIIIである。特定の実施形態では、多発性骨髄腫は、新たに診断された多発性骨髄腫である。他の実施形態では、多発性骨髄腫は、再発性または難治性の多発性骨髄腫である。
【0016】
さらに、本明細書では、本明細書で提供される抗体コンジュゲートのいずれかの有効量を対象に投与することを含む、それを必要とする対象の疾患または症状を診断する方法を提供する。特定の実施形態では、疾患または症状は、癌である。特定の実施形態では、疾患または症状は、白血病またはリンパ腫である。特定の実施形態では、疾患または症状は、多発性骨髄腫である。特定の実施形態では、多発性骨髄腫は、国際ステージ分類システムまたは改訂国際ステージ分類システムによれば、ステージI、ステージIIまたはステージIIIである。特定の実施形態では、多発性骨髄腫は、新たに診断された多発性骨髄腫である。他の実施形態では、前記多発性骨髄腫は、再発性または難治性の多発性骨髄腫である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、CDR-H1のKabatおよびChothiaのナンバリングシステムの比較を示したものである。Martin A.C.R.(2010)から引用する:Protein Sequence and Structure Analysis of Antibody Variable Domains. In R. Kontermann & S. Duebel (Eds.), Antibody Engineering vol. 2 (pp.33-51). Springer-Verlag, Berlin Heidelberg.
図2図2は、本明細書に開示されている異なるBCMA抗体-薬剤コンジュゲートを単回投与した後の、ARP-1多発性骨髄腫腫瘍を移植したマウスの体重変化を示すグラフである。
図3図3Aおよび3Bは、本明細書に開示される通りの異なるBCMA抗体-薬剤コンジュゲートを単回投与した後の、ARP-1多発性骨髄腫腫瘍を移植したマウスにおける腫瘍増殖曲線および腫瘍サイズを示すグラフである。
図4図4は、本明細書に開示されている通りの異なるBCMA抗体-薬剤コンジュゲートを単回投与した後の、MM.1S多発性骨髄腫細胞を移植したマウスの体重変化を示すグラフである。
図5図5は、本明細書に開示されている通りの異なるBCMA抗体-薬剤コンジュゲートを単回投与した後の、MM.1S多発性骨髄腫細胞を移植したマウスにおけるカプラン・マイヤー生存プロットを示すグラフである。
図6図6は、本明細書に開示されているBCMA抗体-薬剤コンジュゲート、ダラツムマブ、ベルケイドまたはそれらの異なる組み合わせを単回投与した後の、MM.1S多発性骨髄腫細胞を移植したマウスにおけるカプラン・マイヤー生存プロットを示すグラフである。
図7図7A~7Cは、本明細書に開示されている通りのBCMA抗体-薬剤コンジュゲートを、ダラツムマブまたはベルケイドのいずれかと一緒に単回投与した後の、MM.1S多発性骨髄腫細胞を移植したマウスにおける生存プロットを示すグラフである。
図8図8Aおよび図8Bは、本明細書に開示されている通りの異なる濃度のBCMA抗体-薬剤コンジュゲートを単回投与した後の、MM.1S多発性骨髄腫細胞を移植したマウスのカプラン・マイヤー生存プロットを示すグラフである。
図9図9は、本明細書に開示されているような異なる用量のBCMA抗体-薬剤コンジュゲートを単回投与した後の、ARP-1多発性骨髄腫腫瘍を移植したマウスの体重変化を示すグラフである。
図10図10Aおよび10Bは、本明細書に開示されている通りの異なる用量のBCMA抗体-薬剤コンジュゲートを単回投与した後の、ARP-1多発性骨髄腫腫瘍を移植したマウスにおける腫瘍増殖曲線および腫瘍サイズを示すグラフである。
図11図11は、PBS、ヒト、マウスおよびカニクイザル血漿中のコンジュゲート4に関する平均DARの経時変化を示すグラフである。
図12図12は、ヒトBCMA、BAFF-RおよびTACI受容体を発現する細胞に対する、コンジュゲート4およびコンジュゲート1の細胞結合を示すグラフである。
【発明の詳細な説明】
【0018】
定義
特に規定されていない限り、本明細書で使用されている全ての技術用語、表記およびその他の科学用語は、本発明が関連する技術分野の当業者によって一般的に理解されている意味を持つことを意図している。場合により、一般的に理解されている意味を持つ用語は、明確化のために、および/または直ぐに参照できるように本明細書で定義されており、前記定義を本明細書に含めることは、必ずしも当技術分野で一般的に理解されている意味との違いを表すものと解釈されるべきではない。本明細書に記載または参照されている技術および手法は、一般的に十分理解されており、当業者が従来方法を用いて一般的に用いている方法であり、例えば、Green & Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual 4th ed. (2012), Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY; Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sonsなどに記載される、一般的に利用されている分子クローニング方法である。市販のキットおよび試薬を使用する場合は、別段の記載が無い限り、メーカーが定めたプロトコルおよび条件に従って行う。
【0019】
本明細書において使用される通り、単数形の冠詞には、別段の明確な記載が無い限り複数形の対応も包含される。
【0020】
「約」という用語は、指定された値とその値の上下の範囲を示し、かつ包含する。特定の実施形態では、用語「約」は、指定された値±10%、±5%または±1%を示す。特定の実施形態では、「約」という用語は、指定された値±1の標準偏差を示す。
【0021】
「その組み合わせ」という用語には、その用語が指し示す要素のあらゆる組み合わせが含まれる。例えば、「αがAの場合、αはDではなく、αはSではなく、またはαはSではなく、またはそれらの組み合わせ」という文章には、αがAの場合、以下のような組み合わせが含まれる:(1)αはDではない;(2)αはSではない;(3)αはSではない;(4)αはDではない;αはSではなく、かつαはSではない;(5)αはDではなく、かつαはSではない;(6)αはDではなく、かつαはSではない;および(7)αはSではなく、かつαはSではない。
【0022】
「BCMA」および「B細胞成熟抗原」という用語は、本明細書において互換的に使用される。BCMAは、BCM、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー17(「TNFRSF17」)、CD269、TNFRSF13AおよびTNF受容体スーパーファミリーメンバー17などの同義語でも知られている。別段の記載が無い限り、細胞によって自然に発現されるか、あるいはBCMAまたはBCMA遺伝子をトランスフェクトした細胞によって発現される、ヒトBCMAのあらゆるバリアント、アイソフォームおよび種のホモログが含まれる。BCMAタンパク質には、例えば、ヒトBCMAアイソフォーム1(配列番号:1)およびヒトBCMAアイソフォーム2(配列番号:2)が含まれる。いくつかの実施形態では、BCMAタンパク質は、カニクイザルBCMA(配列番号:3)を含む。いくつかの実施形態では、BCMAタンパク質は、マウスBCMA(配列番号:4)を含む。
【0023】
「免疫グロブリン」という用語は、一般的に、2対のポリペプチド鎖:1対の軽(L)鎖および1対の重(H)鎖を含んでいる構造的に関連するタンパク質の分類を指す。「インタクトな免疫グロブリン」では、これらの4本の鎖は全てジスルフィド結合により相互に連結されている。免疫グロブリンの構造は十分特徴付けられている。例えば、Paul, Fundamental Immunology 7th ed., Ch. 5 (2013) Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, PA.を参照されたい。簡単に説明すると、各重鎖は、通常、重鎖可変領域(VまたはVH)および重鎖定常領域(CまたはCH)を含んでいる。重鎖定常領域は、通常、C1(またはCH1)、C2(またはCH2)およびC3(またはCH3)と略記される3つのドメインを含む。各軽鎖は、通常、軽鎖可変領域(VまたはVL)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、通常、CまたはCLと略記される1つのドメインを含む。
【0024】
「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子の一種であり、本明細書ではその最も広い意味で使用される。抗体は、具体的には、インタクトな抗体(例えば、インタクトな免疫グロブリン)および抗体フラグメントを含む。抗体は、少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む。抗原結合ドメインの一例は、V-V二量体によって形成される抗原結合ドメインである。「BCMA抗体」、「抗BCMA抗体」、「BCMA Ab」、「BCMA特異的抗体」、「抗BCMA Ab」、「BCMA抗体」、「抗-BCMA抗体」、「BCMA Ab」、「BCMA-特異的抗体」もしくは「抗-BCMA Ab」、またはこれらの「BCMA」が「TNFSF17」で置換されているあらゆるフレーズの反復は、本明細書に記載されているように、BCMAに特異的に結合する抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、BCMAの細胞外ドメインに結合する。
【0025】
領域およびV領域は、より保存性の高い領域に挟まれた超可変領域(HVR)(「相補性決定領域」(CDR)とも呼ばれる)にさらに細分化され得る。この保存性の高い領域をフレームワーク領域(FR)と呼ぶ。各VおよびVは、通常、3つのCDRと4つのFRを含んでおり、N末端からC末端に向かって以下の順序で配置されている:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4。CDRは、抗原の結合に関与し、抗体の抗原特異性および結合親和性に影響を与える。Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest 5th ed. (1991) Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MDに記載されており、参照によりその全体が組み込まれる。
【0026】
脊椎動物種由来の任意の軽鎖は、定常ドメインの配列に基づいて、カッパおよびラムダと呼ばれる2つのタイプのいずれかに割り当てることができる。
【0027】
任意の脊椎動物種由来の重鎖は、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMである5つの異なるクラス(または、アイソタイプ)の内の1つに割り当てることができる。これらのクラスは、それぞれα、δ、ε、γ、μとも呼ばれる。IgGおよびIgAのクラスは、配列および機能の違いにより、さらにサブクラスに分けられる。ヒトには、以下のサブクラスが存在する:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2。
【0028】
CDRのアミノ酸配列境界は、例えば、前掲(「Kabat」ナンバリングスキーム);Al-Lazikani et al., 1997, J. Mol. Biol., 273:927-948 (「Chothia」ナンバリングスキーム);MacCallum et al., 1996, J. Mol. Biol. 262:732-745 (「Contact」 ナンバリングスキーム);Lefranc et al., Dev. Comp. Immunol., 2003, 27:55-77 (「IMGT」 ナンバリングスキーム);およびHonegge and Plueckthun, J. Mol. Biol., 2001, 309:657-70 (「AHo」ナンバリングスキーム)(これらの各々は、出典明示によりその全てが組み込まれる)などに記載された多くの既知のナンバリングスキームいずれかを用いて、当業者により決定され得る。
【0029】
表1は、KabatおよびChothiaスキームにより同定される通りのCDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3の位置を示す。CDR-H1については、残基のナンバリングは、KabatおよびChothiaのナンバリングスキームの双方を用いて提供される。
【表1】
【0030】
特段の記載のない限り、本明細書において特定のCDRの同定に使用されるナンバリングスキームは、Kabat/Chothiaのナンバリングスキームである。これらの2つのナンバリングスキームに包含される残基が異なる場合(例えば、CDR-H1および/またはCDR-H2)、ナンバリングスキームは、KabatまたはChothiaのいずれかとして特定される。便宜上、本明細書において、CDR-H3を、KabatまたはChothiaのいずれかとして呼ぶことがある。しかし、これは、存在していない配列の差異を示唆することを意図したものではなく、当業者であれば、配列を調べることにより、配列が同一または相違するかを容易に確認することができる。
【0031】
CDRは、例えば、www.bioinf.org.uk/abs/abnum/で入手可能でき、またAbhinandan and Martin, Immunology, 2008, 45:3832-3839に記載されている(参照によりその全体が組み込まれる)ようなAbnumなどの抗体のナンバリングソフトウェアを使用して割り当てることができる。
【0032】
「EUナンバリングスキーム」は、一般に、抗体重鎖定常領域の残基を参照する際に使用される(例えば、Kabatらの前掲の文献で報告されている)。別段の記載がない限り、EUナンバリングスキームは、本明細書に記載される抗体重鎖定常領域の残基を示すために使用される。
【0033】
「抗体フラグメント」とは、インタクトな抗体の抗原結合領域または可変領域など、インタクトな抗体の一部を構成するものである。抗体フラグメントには、例えば、Fvフラグメント、Fabフラグメント、F(ab')フラグメント、Fab'フラグメント、scFv(sFv)フラグメントおよびscFv-Fcフラグメントが含まれる。
【0034】
「Fv」フラグメントは、1つの重鎖可変ドメインおよび1つの軽鎖可変ドメインの非共有結合した二量体を含む。
【0035】
「Fab」フラグメントは、重鎖および軽鎖可変ドメインに加えて、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第1定常ドメイン(CH1)を含む。Fabフラグメントは、例えば、組換え方法および完全長抗体のパパイン消化によって作成され得る。
【0036】
「F(ab')」フラグメントは、ジスルフィド結合によってヒンジ領域付近で結合された2つのFab'フラグメントを含む。F(ab')フラグメントは、例えば、組換え方法またはインタクトな抗体のペプシン消化によって得ることができる。F(ab')フラグメントは、例えば、β-メルカプトエタノールで処理することにより、解離させることができる。
【0037】
「一本鎖Fv」または「sFv」または「scFv」抗体フラグメントは、単一のポリペプチド鎖にVHドメインおよびVLドメインを含んでいる。VおよびVは、一般的にペプチドリンカーによって連結されている(Plueckthun A. (1994)を参照)。いくつかの実施形態では、リンカーは配列番号:26である。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号:27である。大腸菌由来の抗体(Rosenberg M. & Moore G.P. (Eds.), The Pharmacology of Monoclonal Antibodies vol.113 (pp.269-315). Springer-Verlag, New Yorkにおいて、これらは参照によりその全体が組み込まれる。
【0038】
「scFv-Fc」フラグメントは、Fcドメインに結合したscFvを含む。例えば、Fcドメインは、scFvのC末端に結合していてもよい。Fcドメインは、scFvの可変ドメインの向き(すなわち、V-VまたはV-V)に応じて、VまたはVに後続してもよい。当技術分野で知られているか、または本明細書に記載されている任意の適切なFcドメインを使用することができる。いくつかの場合では、Fcドメインは、IgG1 Fcドメインを含む。いくつかの実施形態では、IgG1 Fcドメインは、配列番号:19またはその一部を含む。配列番号:19は、ヒトIgG1定常領域のC1、C2およびC3の配列を提供する。
【0039】
「モノクローナル抗体」とは、実質的に同質の抗体集団から得られる抗体を指す。実質的に同質の抗体集団とは、モノクローナル抗体の製造中に通常生じ得るバリアントを除いて、実質的に類似する同一エピトープに結合する抗体を含んでいる。このようなバリアントは、通常、僅かな量しか存在しない。モノクローナル抗体は、通常、複数の抗体から単一の抗体を選択することを含む方法によって得られる。選択方法とは、複数のクローン、例えば、ハイブリドーマクローン、ファージクローン、酵母クローン、細菌クローンまたは組換えDNAクローンのプールの中から固有のクローンを選択することである。選択された抗体は、例えば、標的に対する親和性の向上(「親和性成熟」)、抗体のヒト化、細胞培養における生産性の向上および/または対象者における免疫原性の低下のために、さらに改変することができる。
【0040】
「キメラ抗体」とは、重鎖および/または軽鎖の一部が特定の供給源または種に由来するが、その重鎖および/または軽鎖の残りの部分が異なる供給源または種に由来する抗体をいう。
【0041】
非ヒト抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト抗体に由来する最小限の配列を含むキメラ抗体である。ヒト化抗体は、一般に、1つ以上のCDRの残基が非ヒト抗体(ドナー抗体)の1つ以上のCDRの残基で置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ドナー抗体は、任意の適切な非ヒト抗体、例えば、所望の特異性、親和性または生物学的効果を有するマウス、ラット、ウサギ、ニワトリまたはヒト以外の霊長類の抗体であることが可能である。いくつかの例では、レシピエント抗体の選択されたフレームワーク領域残基が、ドナー抗体の対応するフレームワーク領域残基で置き換えられている。また、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体のいずれにも存在しない残基を含んでいてもよい。このような修飾は、抗体の機能をさらに向上させるために行われてもよい。詳細については、Jones et al., Nature, 1986, 321:522-525; Riechmann et al., Nature, 1988, 332:323-329;および Presta, Curr. Op. Struct. Biol., 1992, 2:593-596に記載されており、これらの各文献は、その全体が参照により組み込まれる。
【0042】
「ヒト抗体」とは、ヒトまたはヒトの細胞が産生する抗体に対応するアミノ酸配列を有するもの、またはヒトの抗体レパートリーまたはヒトの抗体コード化配列を利用する非ヒト由来の抗体(例えば、ヒト由来の起源から入手したもの、または新規に設計したもの)を指す。ヒト抗体とは、特にヒト化抗体を除外する。
【0043】
「単離された抗体」とは、その自然環境の構成要素から分離および/または回収された抗体である。自然環境の成分には、酵素、ホルモンおよび他のタンパク質性または非タンパク質性の物質が含まれ得る。いくつかの実施形態では、単離された抗体は、例えば、スピニングカップシーケンサーを使用して、N末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度にまで精製される。いくつかの実施形態では、単離された抗体は、還元条件または非還元条件下でのゲル電気泳動(例えば、SDS-PAGE)によって均質に精製され、クマシーブルーまたは銀染色によって検出される。単離された抗体には、抗体の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、組換え細胞内においてin situ抗体が含まれる。いくつかの態様では、単離された抗体は、少なくとも1つの精製工程により調製される。
【0044】
いくつかの実施形態では、単離された抗体は、少なくとも80重量%、85重量%、90重量%、95重量%または99重量%まで精製される。いくつかの実施形態では、単離された抗体は、少なくとも80体積%、85体積%、90体積%、95体積%または99体積%まで精製される。いくつかの実施形態では、単離された抗体は、少なくとも85重量%、90重量%、95重量%、98重量%、99重量%~100重量%を含む溶液として提供される。いくつかの実施形態では、単離された抗体は、少なくとも85体積%、90体積%、95体積%、98体積%、99体積%~100体積%を含んでいる溶液として提供される。
【0045】
「親和性」とは、ある分子(例えば、抗体)の1つの結合部位と、その結合相手(例えば、抗原)との間の非共有結合の全体の強さを意味する。別段の記載がない限り、本明細書において「結合親和性」とは、結合ペア(例えば、抗体および抗原)のメンバー間の1:1の相互作用を反映した固有の結合親和性を意味する。分子XのパートナーYに対する親和性は、解離定数(K)で表すことができる。親和性は、本明細書に記載されているものを含め、当技術分野で知られている一般的な方法で測定することができる。親和性は、例えば、Biacore(登録商標)装置などの表面プラズモン共鳴(SPR)技術を用いて測定することができる。いくつかの実施形態では、親和性は25℃で決定される。
【0046】
抗体の標的分子への結合に関して、特定の抗原(例えば、ポリペプチド標的)または特定の抗原上のエピトープに対して「特異的な結合」、「特異的に結合する」、「に対して特異的」、「選択的に結合する」および「に対して選択的」という用語は、非特異的または非選択的な相互作用とは測定可能範囲で異なる結合を意味する。特異的な結合は、例えば、ある分子の結合を対照分子の結合と比較して決定することにより測定することができる。また、特異的な結合は、標的上の抗体結合部位を模倣した対照分子との競合により決定することもできる。その場合、抗体の標的への結合が、対照分子により競合的に阻害される場合に、特異的な結合が示される。
【0047】
本明細書で使用される用語「k」または「kd」(sec-1)は、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度定数を意味する。この値は、koff値とも呼ばれる。
【0048】
用語「k」または「ka」(M-1×sec-1)という用語は、本明細書で使用される場合、特定の抗体-抗原相互作用の会合速度定数を指す。この値は、kon値とも呼ばれる。
【0049】
用語「K」(「Kd」または「KD」、MまたはnMとも示される)は、本明細書で使用される場合、特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数を意味する。K=kd/kaである。Kの値は、通常、タンパク質分子の半分が、リガンドに結合する平衡状態のリガンドの濃度に等しい大きさである。
【0050】
本明細書で使用する「K」または「K」(M-1)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の会合平衡定数を意味する。K=k/kである。
【0051】
「親和性成熟」抗体とは、変更を有さない親抗体と比較して、その抗原に対する抗体の親和性の向上をもたらす1つまたは複数のCDRまたはFRにおける1つまたは複数の変更を有するものである。一実施形態では、親和性成熟抗体は、標的抗原に対してナノモルまたはピコモルの親和性を有する。親和性成熟抗体は、当技術分野で知られている様々な方法を用いて製造することができる。例えば、Marksら(Bio/Technology, 1992, 10:779-783、参照によりその全体が組み込まれる)は、VおよびVドメインシャッフリングによる親和性成熟について述べている。CDRおよび/またはフレームワーク残基のランダム変異誘発は、例えば、Barbasら(Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.、1994、91:3809-3813);Schierら、Gene, 1995, 169:147-155;Yeltonら、J. Immunol., 1995, 155:1994-2004:Jacksonら、J. Immunol., 1995, 154:3310-33199;およびHawkinsら、J. Mol. Biol., 1992, 226:889-896に記載されており、これらの各々は、その全体が参照により組み込まれる。
【0052】
本明細書で2つ以上の抗体が文脈で使用される場合、「競合する」または「交差競合する」という用語は、2つ以上の抗体が抗原(例えば、BCMA)への結合について競合することを示す。1つの例示的なアッセイでは、BCMAをプレートにコーティングし、第1の抗体を結合させた後、第2の標識抗体を加える。第1の抗体の存在により、第2の抗体の結合が減少する場合、抗体は競合している。別の例示的なアッセイでは、第1の抗体をプレートにコーティングし、抗原を結合させた後、第2の抗体を加える。「競合する」という用語には、1つの抗体が別の抗体の結合を減少させるが、抗体を逆の順序で添加したときに競合が観察されない抗体の組み合わせもまた含まれる。しかし、いくつかの実施形態では、第1および第2の抗体は、それらが加えられる順序に拘わらず、互いの結合を阻害する。いくつかの実施形態では、1つの抗体は、別の抗体のその抗原への結合を、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%減少させる。
【0053】
用語「エピトープ」とは、抗体に特異的に結合することができる抗原の一部を意味する。エピトープは、多くの場合、表面にアクセス可能なアミノ酸残基および/または糖の側鎖を含んでおり、特定の3次元構造特性および特定の電荷特性を有し得る。高次構造のエピトープと非高次構造のエピトープは、変性溶媒の存在下では、前者への結合は失われるが、後者への結合は失われないという点で区別される。エピトープは、結合に直接関与するアミノ酸残基と、結合に直接関与しないその他のアミノ酸残基から構成されている。抗体が結合するエピトープは、例えば、異なる点変異を有するBCMAのバリアント(変異体)に対する抗体結合を試験するなどのエピトープ決定のための既知の技術を用いて決定することができる。
【0054】
ポリペプチド配列と参照配列との間の%「同一性」は、最大の%配列同一性を達成するために配列を並べて、必要に応じてギャップを導入した後の参照配列中のアミノ酸残基と同一であるポリペプチド配列中のアミノ酸残基の割合として定義される。アミノ酸配列の%同一性を決定するためのアライメントは、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、MEGALIGN(DNASTAR)、CLUSTALW、CLUSTAL OMEGAまたはMUSCLEソフトウェアのような一般的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して、当業者の技術範囲内である様々な方法で行うことができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む配列を並べるための適切なパラメータを決定することができる。
【0055】
「保存的置換」または「保存的アミノ酸置換」とは、あるアミノ酸を化学的または機能的に類似したアミノ酸で置換することを言う。類似のアミノ酸を提供する保存的置換表は、当技術分野でよく知られている。このような置換を有するポリペプチド配列は、「保存的に改変されたバリアント」として知られている。例として、表2~4に示されるアミノ酸グループは、いくつかの実施形態では、互いに保存的置換とみなされる。
【0056】
【表2】
【0057】
表3. 互いに保存的置換として見なされるアミノ酸の別の選択されるグループ
【表3】
【0058】
表4. 互いに保存的置換として見なされるアミノ酸の更なる選択されるグループ
【表4】
【0059】
追加の保存的置換は,例えば,Creighton, Proteins: Structures and Molecular Properties 2nd ed. (1993) W H. Freeman Co, New York, NY に記載されている。親抗体のアミノ酸残基を1つ以上保存的に置換して生成された抗体は、「保存的に改変されたバリアント」と呼ばれる。
【0060】
「アミノ酸」という用語は、20種類の一般的な天然に存在するアミノ酸を指す。天然に存在するアミノ酸としては、アラニン(Ala;A)、アルギニン(Arg;R)、アスパラギン(Asn;N)、アスパラギン酸(Asp;D)、システイン(Cys;C)、グルタミン酸(Glu;E)、グルタミン(Gln;Q)、グリシン(Gly;G)、ヒスチジン(His; H)、イソロイシン(Ile;I)、ロイシン(Leu;L)、リジン(Lys;K)、メチオニン(Met;M)、フェニルアラニン(Phe;F)、プロリン(Pro;P)、セリン(Ser;S)、スレオニン(Thr;T)、トリプトファン(Trp;W)、チロシン(Tyr;Y)、バリン(Val;V)などが挙げられる。
【0061】
天然にコードされたアミノ酸は、当業者に知られているタンパク質生成アミノ酸である。それらには、20種類の一般的なアミノ酸(アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン)と、余り一般的でないピロリジンおよびセレノシステインが含まれる。天然にコードされたアミノ酸には、プレニル化アミノ酸、イソプレニル化アミノ酸、ミリソイル化アミノ酸、パルミトイル化アミノ酸、N結合型グリコシル化アミノ酸、O結合型グリコシル化アミノ酸、リン酸化アミノ酸およびアシル化アミノ酸など、22種類の天然に存在するアミノ酸の翻訳後のバリアントが含まれる。
【0062】
「非天然アミノ酸」という用語は、タンパク質を構成するアミノ酸ではないアミノ酸、またはその翻訳後修飾されたバリアントを指す。特に、この用語は、20種類の一般的なアミノ酸、ピロリジンまたはセレノシステインのいずれでもないアミノ酸、またはそれらの翻訳後修飾されたバリアントを指す。
【0063】
「コンジュゲート」または「抗体コンジュゲート」という用語は、1つまたは複数のペイロード部位に連結された抗体を意味する。抗体は、本明細書に記載されたあらゆる抗体であり得る。ペイロードとは、本明細書に記載のあらゆるペイロードであり得る。抗体は、共有結合を介してペイロードに直接連結することができるか、または抗体はリンカーを介して間接的にペイロードに連結することができる。通常、リンカーは、抗体に共有結合し、ペイロードにも共有結合している。「抗体-薬剤コンジュゲート」または「ADC」という用語は、少なくとも1つのペイロードが薬剤などの治療用部分であるコンジュゲートを意味する。
【0064】
「ペイロード」という用語は、抗体にコンジュゲートすることができる分子部分を指す。特定の実施形態では、ペイロードは、治療剤部分および標識部分からなる群から選択される。
【0065】
「リンカー」という用語は、少なくとも2つの共有結合を形成することができる分子部分を指す。典型的には、リンカーは、抗体に少なくとも1つの共有結合を形成することができ、ペイロードと少なくとも別の共有結合を形成することができる。特定の実施形態では、リンカーは、抗体に対して2つ以上の共有結合を形成することができる。特定の実施形態では、リンカーは、ペイロードに1つ以上の共有結合を形成することができるか、または2つ以上のペイロードに共有結合を形成することができる。リンカーが、抗体もしくはペイロード、またはその両方に結合を形成した後の残りの構造、即ち1つ以上の共有結合が形成された後のリンカーの残基も、本明細書において依然として「リンカー」と呼ばれ得る。「リンカー前駆体」という用語は、抗体もしくはペイロード、またはその両方と共有結合を形成することができる1つまたは複数の反応性基を有するリンカーを意味する。いくつかの実施形態では、リンカーは、開裂可能なリンカーである。例えば、開裂可能なリンカーは、人工的に作成されたものであっても、そうでなくてもよい。生物学的に有害な機能を放出する場合もある。いくつかの実施形態では、リンカーは、非開裂性リンカーである。例えば、非開裂性リンカーは、抗体の分解時に放出されるものであり得る。
【0066】
任意の疾患または障害の「治療」または「処置」は、特定の実施形態では、対象者に存在する疾患または障害を改善することを意味する。別の実施形態では、「治療する」または「治療」は、対象者が識別できない可能性のある、少なくとも1つの物理的パラメータを改善することを含む。さらに別の実施形態では、「治療」または「処置」は、物理的に(例えば、識別可能な症状の安定化)または生理学的に(例えば、物理的パラメータの安定化)、またはその両方で、疾患または障害を調節することを含む。さらに別の実施形態では、「治療」または「処置」とは、疾患または障害の発症を遅らせるか、または予防することを含む。
【0067】
本明細書で使用される「治療上有効な量」または「有効量」という用語は、対象に投与された場合に、疾患または障害を治療するのに有効な抗体または組成物の量を意味する。いくつかの実施形態では、治療上有効な量または有効量は、対象に投与された場合に、疾患または疾患の進行を予防または改善するか、または症状の改善をもたらすのに有効な抗体または組成物の量を指す。
【0068】
本明細書で使用されるように、用語「増殖を阻害する」(例えば、腫瘍細胞などの細胞を指す)は、BCMA抗体と接触したときに、BCMA抗体と接触していない同じ細胞の増殖と比較して、細胞の増殖(例えば、腫瘍細胞の成長)の測定可能な減少を含むことが意図される。いくつかの実施形態では、増殖は、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、99%または100%阻害され得る。細胞増殖の減少とは、様々なメカニズム(例えば、抗体の内在化、アポトーシス、ネクローシスおよび/またはエフェクター機能媒介活性を含むが、これらに限定されない)により起こり得る。
【0069】
本明細書で使用されるように、用語「対象」は、哺乳類の対象を意味する。対象の例には、ヒト、サル、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ラクダ、アビ、ヤギおよびヒツジが含まれるが、これらに限定するものではない。特定の実施形態では、対象はヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、本明細書で提供される抗体を用いて治療または診断することができる疾患を有する。一部の実施形態では、疾患は、白血病、リンパ腫または多発性骨髄腫、形質細胞性樹状細胞腫瘍、B細胞系悪性腫瘍、形質細胞新生物、びまん性大B細胞リンパ腫(DLBCL)、低悪性度B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、形質細胞性リンパ腫または濾胞性リンパ腫である。
【0070】
本明細書で例示されているいくつかの化学構造では、特定の置換基、化学基および原子は、その特定の置換基、化学基および原子を介して結合している原子を示すために、結合または結合と交差する曲線/波線(例えば、
【化2】
)により描かれている。例えば、以下:
【化3】
に限定するものではないが、いくつかの構造では、この曲線/波線は、示された化合物が結合しているコンジュゲートまたはリンカーペイロード構造のバックボーンの原子を示している。いくつかの構造では、例えば、
【化4】
に限定するものではないが、この曲線/波線は、抗体または抗体フラグメントの原子だけでなく、示された化合物が結合しているコンジュゲートまたはリンカー-ペイロード構造のバックボーンの原子も示している。
【0071】
「部位特異的」という用語は、ポリペプチド内の所定の配列位置におけるポリペプチドの修飾を意味する。この修飾は、ポリペプチドの1つの予測可能な残基であり、殆ど変化しないか、または全く変化しない。特定の実施形態では、改変されたアミノ酸が、その配列位置に、例えば、組換え的に、または合成的に導入される。同様に、部位をポリペプチドの特定の配列位置の残基に「部位特異的」に連結することができる。ポリペプチドは、1つ以上の部位特異的改変を含むことができる。
【0072】
2.コンジュゲート
本明細書では、BCMAに対する抗体のコンジュゲートを提供する。このコンジュゲートは、リンカーを介してペイロードに共有結合したBCMAに対する抗体を含む。ある実施形態では、抗体は1つのペイロードに連結されている。さらなる実施形態では、抗体は2つ以上のペイロードに連結されている。特定の実施形態では、抗体は、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、またはそれ以上のペイロードに連結されている。
【0073】
本明細書で提供されるコンジュゲートでは、抗体は、任意の種由来のものであり得る。特定の実施形態では、BCMAは、脊椎動物のBCMAである。特定の実施形態では、BCMAは、哺乳類BCMAである。特定の実施形態では、BCMAはヒトBCMAである。特定の実施形態では、BCMAはマウスBCMAである。特定の実施形態では、BCMAはカニクイザルBCMAである。
【0074】
抗体は、通常、複数のポリペプチド鎖を含むタンパク質である。特定の実施形態では、抗体は、2つの同一の軽(L)鎖および2つの同一の重(H)鎖を含むヘテロテトラマーである。各軽鎖は、1つの共有結合のジスルフィド結合によって重鎖に連結することができる。各重鎖は、1つまたは複数の共有結合ジスルフィド結合によって他の重鎖に連結することができる。各重鎖および各軽鎖は、1つまたは複数の鎖内ジスルフィド結合を有することもできる。当業者に知られているように、各重鎖は、通常、可変ドメイン(V)およびそれに続く多数の定常ドメインを含む。各軽鎖は、通常、一端に可変ドメイン(V)および定常ドメインを含む。当業者に知られているように、抗体は典型的にはその標的分子、すなわち抗原に対して選択的な親和性を有する。
【0075】
本明細書で提供される抗体は、当業者に知られている任意の抗体形態を有することができる。それらは完全長であっても、フラグメントであってもよい。全長抗体の例には、IgA、IgA1、IgA2、IgD、IgE、IgG、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgMなどがある。例示的なフラグメントには、Fv、Fab、Fc、scFv、scFv-Fcなどが挙げられる。
【0076】
特定の実施形態では、コンジュゲートの抗体は、本明細書に記載されたCDR配列のうち6つを含む。特定の実施形態では、コンジュゲートの抗体は、本明細書に記載の重鎖可変ドメイン(V)を含んでいる。特定の実施形態では、コンジュゲートの抗体は、本明細書に記載の軽鎖可変ドメイン(V)を含む。特定の実施形態では、コンジュゲートの抗体は、本明細書に記載の重鎖可変ドメイン(V)および本明細書に記載の軽鎖可変ドメイン(V)を含む。特定の実施形態では、コンジュゲートの抗体は、本明細書に記載の重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインのペア(V-Vペア)を含む。
【0077】
特定の実施形態では、抗体コンジュゲートは、1つまたは複数の反応性基を含む抗体を含む抗体から形成され得る。特定の実施形態では、抗体コンジュゲートは、すべての天然にコードされたアミノ酸を含む抗体から形成することができる。当業者であれば、いくつかの天然にコードされたアミノ酸が、ペイロードまたはリンカーにコンジュゲートできる反応性基を含むことを認識するであろう。これらの反応性基には、システイン側鎖、リジン側鎖およびアミノ末端基が含まれる。これらの実施形態では、抗体コンジュゲートは、抗体の反応性基の残基に結合したペイロードまたはリンカーを含むことができる。これらの実施形態では、ペイロード前駆体またはリンカー前駆体は、抗体反応性基と結合を形成することができる反応性基を含む。代表的な反応性基としては、マレイミド基、活性化炭酸塩(p-ニトロフェニルエステルを含むが、これに限定されない)、活性化エステル(N-ヒドロキシスクシンイミド、p-ニトロフェニルエステルおよびアルデヒドを含むが、これに限定されない)が挙げられる。特に有用な反応性基としては、システインおよびリジンの側鎖に結合を形成するためのマレイミドやスクシンイミド、例えばN-ヒドロキシスクシンイミドなどが挙げられる。さらなる反応性基については、以下の項および例で説明する。
【0078】
さらなる実施形態では、抗体は、本明細書に記載されているような反応性基を有する1つ以上の改変アミノ酸を含む。通常、改変アミノ酸は、天然にコードされたアミノ酸ではない。これらの改変アミノ酸は、リンカー前駆体またはペイロード前駆体に共有結合を形成するのに有用な反応性基を含むことができる。当業者であれば、反応性基を用いて、ポリペプチドを、改変アミノ酸に共有結合を形成することができる任意の分子実体に連結することができる。したがって、本明細書では、リンカーを介して直接的または間接的にペイロードに連結された改変アミノ酸残基を含む抗体を含むコンジュゲートが提供される。改変アミノ酸の例は、以下のセクションに記載されている。一般に、修飾アミノ酸は、相補的な反応性基を有するリンカーまたはペイロードと結合を形成することができる反応性基を有する。
【0079】
特定の実施形態では、非天然アミノ酸は、抗体のポリペプチド鎖の選択された位置に配置される。これらの位置は、非天然アミノ酸で置換するための最適な部位を提供するものとして特定される。各部位は、抗体を作成するために、最適な構造、機能および/または方法を有する非天然アミノ酸を担持することができる。
【0080】
特定の実施形態では、部位特異的な位置で置換することにより、安定した抗体を得ることができる。安定性は、当業者には明らかなあらゆる技術により測定することができる。
【0081】
ある実施形態では、部位特異的な位置で置換することにより、最適な機能的特性を有する抗体を得ることができる。例えば、部位特異的な非天然アミノ酸を含まない抗体と比較して、標的抗原に対する結合親和性が殆ど失われないか、または全く失われない抗体を得ることができる。特定の実施形態では、抗体は、部位特異的非天然アミノ酸を含まない抗体と比較して、結合性の向上を示し得る。
【0082】
特定の実施形態では、部位特異的な位置で置換することにより、有利に製造できる抗体を得ることができる。例えば、特定の実施形態では、抗体は、後述するその合成方法において有利な特性を示す。特定の実施形態では、抗体は、部位特異的な非天然アミノ酸を含まない抗体と比較して、製造における収率低下を殆ど示さないか、または全く示さないことが可能である。特定の実施形態では、抗体は、部位特異的非天然アミノ酸を含まない抗体と比較して、製造における収率の増加を示すことができる。特定の実施形態では、抗体は、部位特異的非天然アミノ酸を含まない抗体と比較して、tRNA抑制効果の低下を殆ど示さないか、または全く示さないことが可能である。特定の実施形態では、抗体は、部位特異的非天然アミノ酸を含まない抗体と比較して、製造中にtRNA抑制の増強を示すことができる。
【0083】
特定の実施形態では、部位特異的な位置で置換することにより、有利な溶解性を示す抗体を得ることができる。特定の実施形態では、抗体は、部位特異的非天然アミノ酸を含まない抗体と比較して、溶解性の低下を殆ど示さないか、または全く示さないことが可能である。特定の実施形態では、抗体は、部位特異的非天然アミノ酸を含まない抗体と比較して、増強された溶解性を示すことができる。
【0084】
特定の実施形態では、部位特異的な位置で置換することにより、有利な発現を示す抗体を得ることができる。特定の実施形態では、抗体は、部位特異的非天然アミノ酸を含まない抗体と比較して、発現の低下を殆ど示さないか、または全く示さないことが可能である。特定の実施形態では、抗体は、部位特異的非天然アミノ酸を含まない抗体と比較して、発現の増強を示すことができる。
【0085】
特定の実施形態では、部位特異的な位置で置換することにより、有利なフォールディングを有する抗体を得ることができる。特定の実施形態では、抗体は、部位特異的非天然アミノ酸を含まない抗体と比較して、適切なフォールディングの損失を、殆ど示さないか、または全く示さないことが可能である。特定の実施形態では、抗体は、部位特異的非天然アミノ酸を含まない抗体と比較して、増強されたフォールディングを示すことができる。
【0086】
特定の実施形態では、部位特異的な位置で置換することにより、有利なコンジュゲーションが可能な抗体を得ることができる。以下に説明するように、いくつかの非天然アミノ酸は、直接またはリンカーを介して、抗体を第2の薬剤にコンジュゲーションすることが出来る側鎖または官能基を有する。特定の実施形態では、抗体は、別の位置に同じまたは別の非天然アミノ酸を持たない抗体と比較して、増強されたコンジュゲーション効率を示すことができる。特定の実施形態では、抗体は、別の位置に同じまたは他の非天然アミノ酸を持たない抗体と比較して、増強されたコンジュゲーション効率を示すことができる。特定の実施形態では、抗体は、他の位置に同じまたは他の非天然アミノ酸を持たない抗体と比較して、増強されたコンジュゲーション特異性を示すことができる。
【0087】
1つまたは複数の非天然アミノ酸は、抗体の少なくとも1つのポリペプチド鎖の選択された部位特異的位置に配置されている。ポリペプチド鎖は、軽鎖のいずれか、または重鎖のいずれかを含む、限定されない抗体のあらゆるポリペプチド鎖であり得る。また、部位特異的な位置は、任意の可変ドメインおよび任意の定常ドメインを含む、抗体の任意のドメイン内に存在し得る。
【0088】
特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、部位特異的な位置に1つの非天然アミノ酸を含んでいる。特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、部位特異的位置に2つの非天然アミノ酸を含んでいる。特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、部位特異的位置に3つの非天然アミノ酸を含んでいる。特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、部位特異的位置に3つ以上の非天然アミノ酸を含んでいる。
【0089】
特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、KabatまたはChothiaまたはEUナンバリングスキームによるHC-F404およびHC-Y180の位置に各々非天然アミノ酸を含むか、またはその翻訳後修飾されたバリアントを含む。これらの名称において、HCは重鎖残基を示し、LCは軽鎖残基を示す。当業者であれば、非天然アミノ酸が、抗体のアミノ酸配列中のHC-F404およびHC-Y180の残基に対して置き換わることを認識するであろう。特定の実施形態では、非天然アミノ酸は、本明細書の式(30)の残基である。
【0090】
3.コンジュゲート基およびその残基
コンジュゲート基は、本明細書に記載のペイロードを、本明細書に記載の抗体などの第2の化合物にコンジュゲートすることを可能にする。特定の実施形態では、コンジュゲート基は、本明細書においてRと示される。コンジュゲート基は、当業者に知られている任意の適切な反応メカニズムを介して反応することができる。特定の実施形態では、コンジュゲート基は、本明細書に詳細に記載されているように[3+2]アルキン-アジド環化付加反応、逆電子要請型ディールスアルダー反応、チオール-求電子反応またはカルボニル-オキシアミン反応を介して反応する。特定の実施形態では、コンジュゲート基は、アルキン、例えば歪みアルキンを含む。特定の実施形態では、コンジュゲート基は:
【化5】

である。追加のコンジュゲート基は、例えば、米国特許公開第2014/0356385号明細書、米国特許公開第2013/0189287号明細書、米国特許公開第2013/0251783号明細書、米国特許第8,703,936号明細書、米国特許第9,145,361号明細書、米国特許第9,222,940号明細書および米国特許第8,431,558号明細書などに記載されている。
【0091】
コンジュゲーション後、コンジュゲート基の2価の残基が形成され、第2の化合物の残基に結合する。2価の残基の構造は、コンジュゲートを形成するために用いたコンジュゲート反応の種類によって決定される。
【0092】
[3+2]アルキン-アジド環化付加反応によってコンジュゲートが形成される場合の特定の実施形態では、コンジュゲート基の2価の残基は、トリアゾール環またはトリアゾール環を含む縮合環状基を含む。歪促進型[3+2]アルキン-アジド環化付加反応(SPAAC)によってコンジュゲートが形成される場合の特定の実施形態では、コンジュゲート基の2価の残基は、
【化6】
である。
【0093】
一実施形態では、本明細書で提供されるものは、式101a~105bのいずれかのコンジュゲートであり、ここでCOMPは、抗BCMA抗体の残基を示し、PAYはペイロード部分を示す:
【化7】
【0094】
前記実施形態のいずれかにおいて、コンジュゲートは、n個のPAY基を含んでおり、nは1~8の整数である。いくつかの実施態様において、nは2である。いくつかの実施態様において、nは3である。いくつかの実施態様において、nは4である。いくつかの実施態様において、nは5である。いくつかの実施態様において、nは6である。いくつかの実施態様において、nは7である。いくつかの実施態様において、nは8である。
【0095】
特定の実施形態において、本明細書で提供されるのは、COMPが、下記の式(30)による非天然アミノ酸の残基を示す、式105a~105bのいずれかの抗BCMAコンジュゲートである。特定の実施形態において、本明細書で提供されるものは、COMPが、EUナンバリングシステムによる重鎖位置404で、以下の式(30)の非天然アミノ酸の残基を示す、式105a~105bのいずれかに記載の抗BCMAコンジュゲートである。特定の実施形態において、本明細書で提供されるものは、COMPが、EUナンバリングシステムによる重鎖位置180にて、下記の式(30)の非天然アミノ酸残基が存在する、式105a~105bのいずれかによる抗BCMAコンジュゲートである。
【化8】
【0096】
当業者であれば、アミノ酸、例えば式(30)が、残基としてポリペプチドおよび抗体に組み込まれていることは認識されるであろう。例えば、式(30)の残基は、以下の式:
【化9】

のように存在し得る。
【0097】
更なる改変(例えば、-Nにて)もまた、本明細書における用語である残基の範囲に包含される。
【0098】
実施形態において、本明細書で提供されるものは、式105c~105d(式中、COMPは、抗BCMA抗体の残基であり、PAYは、ペイロード基を示す)いずれかに記載のコンジュゲートである:
【化10】
【0099】
前述の実施形態のいずれかにおいて、コンジュゲートは、n個のPAY部位を含み、nは1~8の整数である。いくつかの実施形態では、nは2であり、いくつかの実施形態では、nは3であり、いくつかの実施形態では、nは4であり、いくつかの実施形態では、nは5であり、いくつかの実施形態では、nは6であり、いくつかの実施形態では、nは7であり、いくつかの実施形態では、nは8である。
【0100】
特定の実施形態において、本明細書で提供されるものは、COMPが以下の式(30)による非天然アミノ酸の残基を示す、式105c~105dのいずれかの抗BCMAコンジュゲートである。特定の実施形態において、本明細書で提供されるものは、COMPが、EUナンバリングシステムによる重鎖位置404において、以下の式(30)に関する非天然アミノ酸の残基を示す式105c~105dのいずれかの抗BCMAコンジュゲートである。特定の実施形態において、本明細書で提供されるのは、COMPが、EUナンバリングシステムによる重鎖位置180において、下記の式(30)に関する非天然アミノ酸の残基を示す式105c~105dのいずれかの抗BCMAコンジュゲートである。
【化11】
【0101】
当業者であれば、アミノ酸、例えば式(30)が、残基としてポリペプチドおよび抗体に組み込まれていることは認識するであろう。例えば、式(30)の残基は、以下の式:
【化12】
に関するものである。
【0102】
例えば-Nでの更なる改変も、本明細書の残基という用語の中に包含されている。
【0103】
特定の実施形態において、本明細書で提供されるものは、コンジュゲートM:
【化13】
(式中、nは1から6の整数である)の構造を有する抗BCMAコンジュゲートである。いくつかの実施態様において、nは1~4までの整数である。いくつかの実施形態では、nは2である。例えば、特定の実施形態では、抗BCMAコンジュゲートは、以下の構造:
【化14】
を有する。
【0104】
いくつかの実施態様において、nは4である。例えば、特定の実施形態では、抗BCMAコンジュゲートは、以下の構造:
【化15】
を有する。
【0105】
抗BCMAコンジュゲートが、コンジュゲートMの構造を有する前記実施形態のいずれかにおいて、括弧付きの構造は、KabatまたはEUのナンバリングスキームによる部位HC-F404およびHC-Y180で、抗体の1つまたは複数の非天然アミノ酸に共有結合することができる。特定の実施形態では、各非天然アミノ酸は、式(30)の残基である。
【0106】
一実施形態では、抗BCMAコンジュゲートは、コンジュゲート4であり、以下の構造:
【化16】
(式中、
抗体は、配列番号:15に示される重鎖配列および配列番号:17に示される軽鎖配列を含んでおり;
抗体は、EUのナンバリングによる部位HC-F404およびHC-Y180の各々で置換されているp-アジドメチル-フェニルアラニンの残基をさらに含んでおり;および
式の括弧内の各構造は、1つのp-アジドメチル-フェニルアラニン残基にて抗体に結合している)
を有する。
【0107】
一実施形態では、抗BCMAコンジュゲートは、コンジュゲート4であり、ここで最も多い種類は:
【化17】
(式中、
抗体は、配列番号:15に示される重鎖配列および配列番号:17に示される軽鎖配列を含んでおり;
抗体は、EUのナンバリングスキームによる部位HC-F404およびHC-Y180の各々で置換されているp-アジドメチル-フェニルアラニンの残基をさらに含んでおり;および
式の括弧内の各構造は、p-アジドメチル-フェニルアラニン残基の1つにて抗体に結合している)
である。
【0108】
一実施形態では、抗BCMAコンジュゲートは、コンジュゲート4であり、ここで最も多い種類は:
【化18】
(式中、
抗体は、配列番号:15に示される重鎖配列および配列番号:17に示される軽鎖配列を含んでおり;
抗体は、EUのナンバリングスキームによる部位HC-F404およびHC-Y180の各々で置換されているp-アジドメチル-フェニルアラニンの残基をさらに含んでおり;および
式の括弧内の各構造は、p-アジドメチル-フェニルアラニン残基の1つにて抗体に結合している)
である。
【0109】
一実施形態では、抗BCMAコンジュゲートは、コンジュゲート4であり、ここで最も多い種類は:
【化19】
(式中、
抗体は、配列番号:15に示される重鎖配列および配列番号:17に示される軽鎖配列を含み;
抗体は、EUのナンバリングスキームによる部位HC-F404およびHC-Y180の各々で置換されているp-アジドメチル-フェニルアラニンの残基をさらに含んでおり;および
式の括弧内の各構造は、p-アジドメチル-フェニルアラニン残基の1つにて抗体に結合している)
である。
【0110】
4.抗体の特異性
コンジュゲートは、ヒトBCMAに選択的に結合する抗体を含んでいる。いくつかの態様では、抗体は、ヒトBCMA(human BCMA)の細胞外ドメインに選択的に結合する。
【0111】
いくつかの実施形態では、抗体は、ヒトBCMAのホモログに結合する。いくつかの態様では、抗体は、サル、マウス、イヌ、ネコ、ラット、ウシ、ウマ、ヤギおよびヒツジから選択される種のヒトBCMAのホモログに結合する。いくつかの態様では、ホモログはカニクイザルのホモログである。いくつかの態様では、ホモログはマウスまたはネズミのホモログである。
【0112】
いくつかの実施形態では、抗体は、軽鎖を含む。いくつかの態様では、軽鎖は、カッパ軽鎖である。いくつかの態様では、軽鎖はラムダ軽鎖である。特定の実施形態では、カッパ軽鎖は、配列番号:20に示されるアミノ酸配列を含む定常領域を含む。
【0113】
いくつかの実施形態では、抗体は、重鎖を含む。いくつかの態様では、重鎖はIgAである。いくつかの態様では、重鎖はIgDである。いくつかの態様では、重鎖はIgEである。いくつかの態様では、重鎖はIgGである。いくつかの態様では、重鎖はIgMである。いくつかの態様では、重鎖はIgG1である。いくつかの態様では、重鎖はIgG2である。いくつかの態様では、重鎖はIgG3である。いくつかの態様では、重鎖はIgG4である。いくつかの態様では、重鎖はIgA1である。いくつかの態様では、重鎖はIgA2である。
【0114】
いくつかの実施形態では、抗体は、抗体フラグメントである。いくつかの態様では、抗体フラグメントは、Fvフラグメントである。いくつかの態様では、抗体フラグメントは、Fabフラグメントである。いくつかの態様では、抗体フラグメントは、F(ab')フラグメントである。いくつかの態様では、抗体フラグメントは、Fab'フラグメントである。いくつかの態様では、抗体フラグメントは、scFv(sFv)フラグメントである。いくつかの態様では、抗体フラグメントはscFv-Fcフラグメントである。
【0115】
いくつかの実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、ポリクローナル抗体である。
【0116】
いくつかの実施形態では、抗体は、キメラ抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト抗体である。
【0117】
いくつかの実施形態では、抗体は、親和性成熟抗体である。いくつかの態様では、抗体は、本開示で提供される例示の配列から得られる親和性成熟抗体である。
【0118】
本明細書で提供される抗体コンジュゲートは、がんを含む様々な疾患および症状の治療に有用である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体コンジュゲートは、固形腫瘍の癌の治療に有用であり得る。例えば、本明細書で提供される抗体コンジュゲートは、結腸直腸癌の治療に有用であり得る。
【0119】
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号:13に示されるV配列を、含む、構成される、または本質的に含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号:14に示されるV配列を、含む、構成される、または本質的を含む。いくつかの態様では、V配列は、配列番号:13のいずれか1つを、含む、構成される、または本質的を含むV配列であり、V配列は、配列番号:14のいずれか1つを、含む、構成される、または本質的に含むV配列である。特定の実施形態では、抗体は、配列番号:15に示される重鎖配列を、含む、構成される、または本質的を含む。特定の実施形態では、重鎖配列、例えば、配列番号:15に示される重鎖配列は、さらにN末端のメチオニンを含む。特定の実施形態では、そのような重鎖配列は、配列番号:16に示されるヌクレオチド配列によってコードされている。特定の実施形態では、抗体は、配列番号:17に示される軽鎖配列を、含む、構成される、または本質的を含む。特定の実施形態では、軽鎖配列、例えば、配列番号:17に示される軽鎖配列は、N末端メチオニンを追加的に含む。特定の実施形態では、そのような軽鎖配列は、配列番号:18に示されるヌクレオチド配列によってコードされる。
【0120】
いくつかの実施形態では、抗体は、以下の表5:
【表5】

に示されるCDRのうち6つを含む。特定の実施形態では、Chothia CDRが選択される。特定の実施形態では、Kabat CDRが選択される。
【0121】
いくつかの実施形態では、抗体は、以下の3つを含んでいる:配列番号:5および6のうちの1つを含んでいるCDR-H1;配列番号:7および8のうちの1つを含んでいるCDR-H2;配列番号:9を含んでいるCDR-H3;ならびに以下の1つ、2つまたは3つの全てを含んでいる:配列番号:10を含んでいるCDR-L1;配列番号:11を含んでいるCDR-L2;および配列番号:12を含んでいるCDR-L3。特定の実施形態では、CDRは、Chothiaに従う。特定の実施形態では、CDRは、Kabatに従う。
【0122】
5.生殖細胞系
いくつかの実施形態では、BCMAに特異的に結合する抗体は、特定の生殖細胞系遺伝子によってコードされる可変領域、またはそのバリアントを含んでいる抗体である。本明細書で提供される抗体の例は、重鎖可変領域生殖細胞系遺伝子VH1-18、VH3-33、VH2-5、VH2-70およびVH4-30-4またはそのバリアント;ならびに軽鎖可変領域生殖細胞系遺伝子Vκ1-5、Vκ3-11、Vκ2-20、Vκ1-33およびVκ1-16またはそのバリアントによってコードされる可変領域を含んでいる。
【0123】
当業者であれば、本明細書で提供されるCDR配列を、生殖細胞系遺伝子またはそのバリアントによってコードされる可変領域と組み合わせた場合も有用であることを認識するであろう。特に、本明細書で提供されるCDR配列は、上述した可変領域の生殖細胞系遺伝子と構造的に類似している可変領域の生殖細胞系遺伝子またはそのバリアントによってコードされる可変領域と組み合わせた場合に有用であり得る。例えば、いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるCDR-H配列を、V1、V2、V3またはV4ファミリーから選択される可変領域の生殖細胞系遺伝子またはそのバリアントによってコードされる可変領域と組み合わせてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるCDR-L配列は、Vκ1、Vκ2またはVκ3から選択される可変領域生殖細胞系遺伝子によってコードされる可変領域またはまたはそのバリアントと組み合わされてもよい。
【0124】
6.グリコシル化バリアント
特定の実施形態では、抗体は、それがグリコシル化される程度を増加、減少または排除するように変更されてもよい。ポリペプチドのグリコシル化は、典型的には、「N結合型」または「O結合型」のいずれかである。
【0125】
「N結合型」グリコシル化とは、アスパラギン残基の側鎖に炭水化物部分を結合させることである。トリペプチド配列のアスパラギン-X-セリンおよびアスパラギン-X-スレオニン(Xは、プロリンを除く任意のアミノ酸)は、炭水化物部分をアスパラギン側鎖に酵素的に結合させるための認識配列である。したがって、ポリペプチド中にこれらのトリペプチド配列のいずれかが存在すると、グリコシル化部位の可能性が生じる。
【0126】
「O結合型」グリコシル化とは、N-アセチルガラクトサミン、ガラクトースまたはキシロースのいずれかの糖の1つが、ヒドロキシアミノ酸(最も一般的には、セリンまたはスレオニンであるが、5-ヒドロキシプロリンまたは5-ヒドロキシリジンも使用できる)に結合することをいう。
【0127】
抗体へのN結合型グリコシル化部位の追加または削除は、上述のトリペプチド配列の1つ以上が構築されるか、または削除されるようにアミノ酸配列を変更することによって達成され得る。O結合型グリコシル化部位の追加または削除は、抗体の配列中または配列への(場合によっては)1つまたは複数のセリンまたはスレオニン残基の追加、削除または置換によって達成され得る。
【0128】
7.Fcバリアント
特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体のFc領域にアミノ酸改変を導入して、Fc領域のバリアントを生成してもよい。特定の実施形態では、Fc領域のバリアントは、すべてではないが一部のエフェクター機能を有する。このような抗体は、例えば、インビボでの抗体の半減期が重要であるにもかかわらず、特定のエフェクター機能が不要または有害であるような用途において有用である。エフェクター機能の例としては、補体依存性細胞傷害(CDC)および抗体特異的補体媒介性細胞傷害(ADCC)が挙げられる。エフェクター機能が変化した様々な置換あるいは置換または欠失が当技術分野で知られている。
【0129】
いくつかの実施形態では、Fcは、少なくとも1つのC3配列において1つ以上の改変を含む。いくつかの実施形態では、Fcは、少なくとも1つのC2配列において1つ以上の改変を含む。例えば、Fcは、以下からなる群から選択される1つ以上の改変を含むことができる:V262E、V262D、V262K、V262R、V262S、V264S、V303RおよびV305R。いくつかの実施形態では、Fcは単一のポリペプチドである。いくつかの実施形態では、Fcは複数のペプチド、例えば、2つのポリペプチドである。Fc領域における改変の例示的は、例えば、2017年6月14日に出願された国際特許出願第PCT/US2017/037545号に記載されている。
【0130】
CDCおよび/またはADCC活性の変化は、インビトロおよび/またはインビボのアッセイを用いて確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを実施して、FcγR結合を測定することができる。ADCCを媒介する一次細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現しているのに対し、単球はFcγRI、FcγRII、FcγRIIIを発現している。造血細胞におけるFcRの発現については、Ravetch and Kinet, Ann. Rev. Immunol., 1991, 9:457-492にまとめられており、その全体が参照として組み込まれている。
【0131】
目的とする分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号および第5,821,337号;Hellstrom et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 1986, 83:7059-7063; Hellstrom et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 1985, 82:1499-1502;およびBruggemann et al., J. Exp. Med., 1987, 166:1351-1361であり;これらの各々は、その全体が参照により組み込まれる。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。また、Clynes et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 1998, 95:652-656に開示されているような動物モデルを用いて、対象となる分子のADCC活性をインビボで評価することも可能である。
【0132】
抗体がC1qと結合できない事、即ちCDC活性の欠失を確認するために、C1q結合アッセイを実施することもできる。C1q結合アッセイの例としては、WO2006/029879およびWO2005/100402に記載されており、これらの各々は、その全体が参照により組み込まれる。
【0133】
補体活性化アッセイには、例えば、Gazzano-Santoro et al., J. Immunol. Methods, 1996, 202:163-171; Cragg et al., Blood, 2003, 101:1045-1052;および Cragg and Glennie, Blood, 2004, 103:2738-2743に記載されているものがあり、これらの各々は、その全体が参照により組み込まれる。
【0134】
FcRn結合およびインビボのクリアランス(半減期決定)はまた、例えば、Petkova et al., Intl. Immunol., 2006, 18:1759-1769 (参照によりその全てを組み込む)に記載の方法を用いて測定することもできる。
【0135】
8.改変アミノ酸
抗体コンジュゲートが、改変アミノ酸を含む場合、改変アミノ酸とは、当業者が適切と考えるあらゆる改変アミノ酸であり得る。特定の実施形態では、改変アミノ酸は、p-アジド-メチル-L-フェニルアラニン(p-メチルアジドフェニルアラニンとも呼ばれる)である。特定の実施形態では、非天然アミノ酸は、化合物(30):
【化20】
またはその塩である。かかる非天然アミノ酸は、塩の形態で存在していてもよい。p-アジド-メチル-L-フェニルアラニン残基のアジド部分がコンジュゲート基と反応して、本明細書に記載されている特定のコンジュゲートを製造するために使用される歪促進型[3+2]アルキン-アジド環化付加反応によって形成される縮合環基のトリアゾールを形成することは、当業者であれば理解できるであろう。
【0136】
9.抗体コンジュゲートの製造
9.1.抗原調製物
抗体の単離に用いるBCMAタンパク質は、インタクトなBCMAまたはBCMAのフラグメントであってもよい。インタクトなBCMAタンパク質またはBCMAのフラグメントは、単離されたタンパク質または細胞によって発現されたタンパク質の形態であってもよい。抗体の生成に有用なBCMAの別の形態は、当業者には明らかであろう。
【0137】
9.2.モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は、例えば、KohlerらのNature, 1975, 256:495-497(その全体が、参照により組み込まれる)により最初に記載されたハイブリドーマ法および/または組換えDNA法(例えば、その全体が参照により組み込まれる米国特許第4,816,567号を参照)を用いて得ることができる。またモノクローナル抗体は、例えば、ファージまたは酵母系ライブラリを用いて得ることもできる。例えば、米国特許第8,258,082号および第8,691,730号を参照されたい(これらの各々は、その全体が参照により組み込まれる)。
【0138】
ハイブリドーマ法では、マウスまたは他の適切な宿主動物を免疫して、免疫に使用したタンパク質に特異的に結合する抗体を、産生するか、または産生する能力のあるリンパ球により誘起する。あるいは、リンパ球をインビトロで免疫してもよい。次いで、リンパ球を、ポリエチレングリコールなどの適切な融合剤を用いて骨髄腫細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成させる。Goding J.W., Monoclonal Antibodies: Principles and Practice 3rd ed. (1986) Academic Press, San Diego, CAを参照されたい(出典明示により全て本明細書に組み込む)。
【0139】
ハイブリドーマ細胞は、融合していない親の骨髄腫細胞の成長または生存を阻害する1つ以上の物質を含む適切な培養液中に播種され、増殖させる。例えば、親の骨髄腫細胞が、酵素ヒポキサンチン/グアニン/ホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)が欠失している場合、ハイブリドーマ用の培養液は、通常、ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジン(HAT培地)を含んでおり、これらの物質はHGPRT欠乏細胞の増殖を阻止する。
【0140】
有用な骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による安定した高レベルの抗体産生をサポートし、HAT培地の有無などの培地条件に感受性が高い細胞である。これらの中で、好ましい骨髄腫細胞株は、マウス腫瘍MOP-21およびMC-11由来の細胞株(Salk Institute Cell Distribution Center, San Diego, CAから入手可能)、SP-2またはX63-Ag8-653細胞(the American Type Culture Collection, Rockville, MDから入手可能)などのマウス骨髄腫細胞株である。ヒトのモノクローナル抗体を作製するために、ヒト骨髄腫細胞株およびマウス-ヒトのヘテロ骨髄腫細胞株も記載されている。例えば、Kozbor, J. Immunol., 1984, 133:3001を参照されたい;その全体が参照により組み込まれる。
【0141】
所望の特異性、親和性および/または生物学的に活性な抗体を産生するハイブリドーマ細胞を同定した後、選択されたクローンを限界希釈法によってサブクローン化し、標準的な方法で増殖させることができる(上掲のGodingを参照のこと)。本目的に適した培地としては、例えば、D-MEM培地またはRPMI-1640培地などが挙げられる。さらに、ハイブリドーマ細胞は、動物の腹水腫瘍としてインビボで増殖されてもよい。
【0142】
モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を用いて(例えば、モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いて)、容易に単離および配列決定することができる。このように、ハイブリドーマ細胞は、所望の特性を有する抗体をコードするDNAの有用な供給源となり得る。一旦単離されたDNAは、発現ベクターに入れられ、細菌(例えば、大腸菌)、酵母(例えば、SaccharomycesまたはPichia sp.)、COS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞または別の方法では抗体を産生しない骨髄腫細胞などの宿主細胞にトランスフェクトされ、モノクローナル抗体を産生することができる。
【0143】
9.3.ヒト化抗体
ヒト化抗体は、非ヒトモノクローナル抗体の構造部分の大部分または全てを、対応するヒト抗体の配列で置き換えることにより作成することができる。その結果、抗原特異的可変領域(CDR)のみがヒト以外の配列で構成されたハイブリッド分子が生成される。ヒト化抗体を得る方法としては、例えば、Winter and Milstein, Nature, 1991, 349:293-299; Rader et al., Proc. Nat. Acad. Sci. U.S.A., 1998, 95:8910-8915; Steinberger et al., J. Biol. Chem., 2000, 275:36073-36078; Queen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 1989, 86:10029-10033;および米国特許第5,585,089号、同第5,693,761号、同第5,693,762号および同第6,180,370号;これらの各々は、その全体が参照により組み込まれる。
【0144】
9.4.ヒト抗体
ヒト抗体は、例えばトランスジェニック動物(例えば、ヒト化マウス)を使用するなど、当技術分野で知られている様々な技術によって作成することができる。例えば、Jakobovits et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 1993, 90:2551; Jakobovits et al., Nature, 1993, 362:255-258; Bruggermann et al., Year in Immuno., 1993, 7:33;および米国特許第5,591,669号、同第5,589,369号および同第5,545,807号;および米国特許第5,591,669号、第5,589,369号および第5,545,807号を参照されたい;これらの各々は、その全体が参照により組み込まれる。ヒト抗体はまた、ファージディスプレイライブラリから得ることもできる(例えば、Hoogenboom et al., J. Mol. Biol., 1991, 227:381-388; Marks et al., J. Mol. Biol., 1991, 222:581-597;ならびに米国特許第5,565,332号および米国特許第5,573,905号;これらの各々は、その全体が参照により組み込まれる)。ヒト抗体はまた、インビトロで活性化されたB細胞によって生成されてもよい(例えば、米国特許第5,567,610号および第5,229,275号;各々その全体が参照により組み込まれる)。ヒト抗体はまた、酵母系ライブラリーから得ることもできる(例えば、米国特許第8,691,730号を参照のこと;その全体が参照により組み込まれる)。
【0145】
9.5.コンジュゲーション
抗体コンジュゲートは、標準的な技術によって製造することができる。特定の実施形態では、抗体とペイロードの結合を形成するのに適した条件下で、抗体をペイロード前駆体と接触させて、抗体-ペイロードのコンジュゲートを形成させる。ある実施形態では、抗体を、抗体とリンカーの結合を形成するのに適した条件下で、リンカー前駆体と接触させる。得られた抗体-リンカーを、抗体-リンカーとペイロードの結合を形成させるのに適した条件下でペイロード前駆体と接触させて、抗体-リンカー-ペイロードのコンジュゲートを形成させる。特定の実施形態では、ペイロード前駆体を、ペイロードとリンカーの結合を形成するのに適した条件下で、リンカー前駆体と接触させる。得られたペイロード-リンカーを、ペイロード-リンカーと抗体の結合を形成させるのに適した条件下で、抗体と接触させて、抗体-リンカー-ペイロードのコンジュゲートを形成させる。抗体コンジュゲートを調製するのに適したリンカーは、本明細書に開示されており、結合のための例示的な条件は、以下の実施例に記載されている。
【0146】
いくつかの実施態様において、抗BCMAコンジュゲートは、本明細書に開示された抗BCMA抗体を、構造(M):
【化21】
を有するリンカー前駆体と接触させることにより製造できる。
【0147】
そのようなリンカー前駆体は、標準的な技術によって調製するか、または商業的な供給源から入手することができる;例えば、WO2019/055931、WO2019/055909、WO2017/132617およびWO2017/132615(各々全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0148】
本明細書に開示されたコンジュゲーション反応から得たコンジュゲートは、抗体に結合した1つ以上の薬剤(例えば、PAY部位)の送達を伴うコンジュゲートの混合物となる可能性があることが理解されるであろう。個々のコンジュゲートは、例えば、質量分析法によって混合物中で同定され、当技術分野で知られているそのような方法、例えばHPLC、疎水性相互作用クロマトグラフィーによって分離されてもよい。特定の実施形態では、コンジュゲートの混合物は、優勢なコンジュゲートの種類を含む。特定の実施形態では、単一薬剤/抗体比(DAR)値を有する均質なコンジュゲートを、例えば電気泳動またはクロマトグラフィーにより、コンジュゲート混合物から分離してもよい。
【0149】
DARは、コンジュゲートあたり1~8単位の範囲であってもよい。また、nに関するDARの定量的な分布を決定してもよい。いくつかの例では、nが特定値である均質なコンジュゲートの分離、精製および特性評価は、電気泳動などの手段により実施されてもよい。
【0150】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるコンジュゲートのDARは、1~8の範囲である。特定の実施形態では、本明細書で提供されるコンジュゲートのDARは、約2~約6;約3~約5の範囲である。
【0151】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるコンジュゲートのDARは約1である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるコンジュゲートのDARは約2である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるコンジュゲートのDARは約2.5である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるコンジュゲートのDARは約3であり、いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるコンジュゲートのDARは約3.5である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるコンジュゲートのDARは、約4である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるコンジュゲートのDARは、約3.0、約3.1、約3.2、約3.3、約3.4、約3.5、約3.6、約3.7、約3.8または約3.9である。一部の実施形態では、本明細書で提供されるコンジュゲートのDARは約5である。一部の実施形態では、本明細書で提供されるコンジュゲートのDARは約6である。一部の実施形態では、本明細書で提供されるコンジュゲートのDARは約7である。一部の実施形態では、本明細書で提供されるコンジュゲートのDARは、約8である。
【0152】
いくつかの好ましい実施形態では、本明細書で提供されるコンジュゲートのDARは約4である。
【0153】
10.ベクター、宿主細胞および組み換え方法
実施形態は、抗BCMA抗体をコードする単離された核酸、該核酸を含むベクターおよび宿主細胞、ならびに該抗体の産生のための組換え技術の提供にも関する。
【0154】
抗体の組換え体産生のためには、それをコードする核酸を単離し、さらなるクローニング(すなわち、DNAの増幅)または発現のために複製可能なベクターに挿入してもよい。いくつかの態様では、核酸は、例えば、米国特許第5,204,244号(その全体が参照により組み込まれる)に記載されているように、相同組換えによって作成されてもよい。
【0155】
多くの異なるベクターは当技術分野で知られている。ベクター成分は、一般に、これらに限定しないが、以下:シグナル配列、複製起点、1つ以上のマーカー遺伝子、エンハンサー要素、プロモーターおよび転写終結配列(例えば、米国特許第5,534,615号に記載されており、その全体が参照により組み込まれる)の1つ以上を含む。
【0156】
適切な宿主細胞の例示を以下に提供する。これらの宿主細胞に限定することを意味しない。
【0157】
好適な宿主細胞は、任意の原核生物(例えば、細菌)、下等真核生物(例えば、酵母)または高等真核生物(例えば、哺乳類)の細胞を含んでいる。適切な原核生物には、グラム陰性またはグラム陽性生物などの真正細菌、例えば、Escherichia (E. coli)、Enterobacter、Erwinia、Klebsiella、Proteus、Salmonella(S. typhimurium)、Serratia (S. marcescans)、Shigella、Bacilli(B. subtilisおよびB. licheniformis)、Pseudomonas(P. aeruginosa)およびStreptomycesなどの腸内細菌が挙げられる。有用な大腸菌クローニング宿主の一つは、大腸菌294であるが、大腸菌B、大腸菌X1776および大腸菌W3110などのその他の菌株も適している。
【0158】
原核生物に加えて、糸状菌または酵母などの真核微生物も、抗BCMA抗体をコードするベクターのクローニング宿主または発現宿主として好適である。サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)または一般的なパン酵母は、一般的に使用される下等真核生物の宿主微生物である。しかし、その他の多くの属、種および株も利用可能であり、また有用である。例えば、Spodoptera frugiperda(例えば、SF9)、Schizosaccharomyces pombe、Kluyveromyces (K. lactis、K. fragilis、K. bulgaricus K. wickeramii、K. waltii、K. drosophilarum、K. thermotoleransおよびK. marxianus)、Yarrowia、Pichia pastoris、Candida (C. albicans)、Trichoderma reesia、Neurospora crassa、Schwanniomyces (S. occidentalis)および糸状菌(filamentous fungi)、例えばPenicillium、Tolypocladium、Aspergillus(A. nidulans、A. niger)などが挙げられる。
【0159】
有用な哺乳類宿主細胞としては、COS-7細胞、HEK293細胞;ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞;チャイニーズハムスター卵巣(CHO);マウスのセルトリ細胞株;アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76)などが挙げられる。
【0160】
本発明の抗BCMA抗体の作製に用いる宿主細胞は、様々な培地で培養することができる。宿主細胞の培養には、例えば、Ham's F10、Minimal Essential Medium(MEM)、RPMI-1640、Dulbecco's Modified Eagle's Medium(DMEM)などの市販の培地が適している。さらに、Ham et al., Meth. Enz., 1979, 58:44;Barnes et al., Anal. Biochem., 1980, 102:255;および米国特許第4,767,704号、同第4,657,866号、同第4,927,762号、同第4,560,655号および同第5,122,469号またはWO90/03430およびWO87/00195に記載されているいずれの培地も好適である。前述の各文献は、その全体が参照により組み込まれる。
【0161】
これらの培地いずれかに、ホルモンおよび/または他の成長因子(例えば、インスリン、トランスフェリンまたは上皮成長因子)、塩類(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウムおよびリン酸塩)、緩衝剤(HEPESなど)、ヌクレオチド(アデノシンおよびチミジンなど)、抗生物質、微量元素(マイクロモル範囲の最終濃度で通常存在する無機化合物として定義される)およびグルコースまたは同等のエネルギー源を、必要に応じて補充してもよい。また、その他の必要なサプリメントも、当業者には既知の適切な濃度で含めてもよい。
【0162】
温度、pHなどの培養条件は、発現のために選択された宿主細胞において以前から用いられており、当業者には明らかであろう。
【0163】
組換え技術を用いる場合、抗体を、ペリプラズムに細胞内で産生するか、または培地に直接分泌させることができる。抗体が細胞内で産生される場合、最初の工程として、宿主細胞または溶解した断片のいずれかである粒子状の破片を、例えば、遠心分離または限外濾過によって除去する。例えば、Carterら(Bio/Technology, 1992, 10:163-167)は、大腸菌のペリプラズムに分泌される抗体を単離するための手順を記載している。簡単に言えば、細胞ペーストを、酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTAおよびフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)の存在下で、約30分かけて解凍する。細胞破砕物は、遠心分離によって除去することができる。
【0164】
いくつかの実施形態では、抗体は無細胞系で産生される。いくつかの態様では、無細胞系は、Yin et al., mAbs, 2012, 4:217-225(参照によりその全体が組み込まれる)に記載されているインビトロ転写および翻訳システムである。いくつかの態様では、無細胞系は、真核細胞または原核細胞からの無細胞抽出物を利用する。いくつかの態様では、原核細胞は大腸菌である。抗体の無細胞発現系は、例えば、抗体が不溶性の凝集体として細胞内に蓄積する場合またはペリプラズム発現による収率が低い場合などに有用である。無細胞系で産生された抗体は、細胞の供給源に依ってはグリコシル化されていない可能性がある。
【0165】
抗体が培地中に分泌される場合、そのような発現系からの上清は、通常、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えばAmicon(登録商標)またはMillipore(登録商標)またはPellcon(登録商標)の限外濾過装置を用いて最初に濃縮される。また、タンパク質分解を抑制するためにPMSFなどのプロテアーゼ阻害剤を、前記のいずれかの工程に含めてもよく、付随する汚染物質の増殖を防ぐために抗生物質を含めてもよい。
【0166】
細胞から調製した抗体組成物は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析およびアフィニティークロマトグラフィーなどを用いて精製することができ、アフィニティークロマトグラフィーは特に有用な精製技術である。アフィニティーリガンドとしてのプロテインAの適合性は、抗体に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインの種およびアイソタイプに依って変わる。プロテインAは、ヒトのγ1、γ2、またはγ4重鎖に基づく抗体を精製するために使用することができる(Lindmark et al., J. Immunol. Meth., 1983, 62:1-13, 参照によりその全体が組み込まれる)。プロテインGは、全てのマウスのアイソタイプおよびヒトのγ3に対して有用である(Guss et al., EMBO J., 1986, 5:1567-1575;参照によりその全体が組み込まれる)。
【0167】
親和性リガンドを結合させるマトリックスは、殆どの場合はアガロースであるが、その他のマトリックスも利用可能である。コントロールポアガラスまたはポリ(スチレンジビニル)ベンゼンなどの物理的に安定したマトリックスにより、アガロースで達成できるよりも速い流速および短い処理時間が可能となる。抗体がCH3ドメインを含む場合、BakerBond ABX(登録商標)樹脂は、精製に有用である。
【0168】
タンパク質精製のための他の技術、例えば、イオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカでのクロマトグラフィー、ヘパリンSepharose(登録商標)でのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGEおよび硫酸アンモニウム沈殿なども利用可能であり、当業者はこれを用いることができる。
【0169】
任意の事前精製工程(複数可)の後に、目的の抗体および夾雑物質を含む混合物を、約2.5~約4.5の間のpHの溶出バッファーを用いた低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーにかけることができ、これは一般的に低塩濃度(例えば、約0~約0.25Mの塩)で行われる。
【0170】
11.医薬組成物および投与方法
本明細書で提供される抗体コンジュゲートは、当技術分野で利用可能な方法および本明細書で開示されている方法を用いて、医薬組成物に配合することができる。本明細書で提供される抗体コンジュゲートのいずれも、適切な医薬組成物にて提供され、適切な投与経路で投与することができる。
【0171】
本明細書で提供される方法は、本明細書で提供される少なくとも1つの抗体コンジュゲートと、1つまたは複数の適合する医薬的に許容される担体を含む医薬組成物を投与することを包含する。本文脈において、用語「医薬的に許容される」とは、連邦政府または州政府の規制機関によって承認されているか、または動物、特にヒトに使用するために米国薬局方または他の一般に認められた薬局方に記載されていることを意味する。「担体」という用語は、治療薬が投与される希釈剤、アジュバント(例えば、フロイントアジュバント(完全および不完全))、賦形剤またはビヒクルを含む。このような医薬用担体は、水および油などの無菌液体であり、石油、動物、植物または合成由来の油、例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱物油、ゴマ油などが挙げられる。水は、医薬組成物を静脈内に投与する際の担体として使用することができる。生理食塩水、ブドウ糖およびグリセロールの水溶液も、特に注射剤の場合には、液体担体として用い得る。適切な医薬担体の例は、Martin, E.W., Remington's Pharmaceutical Sciencesに記載されている。
【0172】
臨床において、本明細書で提供される医薬組成物または抗体コンジュゲートは、当技術分野で知られている任意の経路で投与することができる。例示的な投与経路には、吸入、動脈内、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、鼻腔内、非経口、肺および皮下の経路が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物または抗体コンジュゲートは、非経口的に投与される。
【0173】
非経口投与用の組成物は、エマルジョンまたは無菌溶液であることができる。非経口用組成物は、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油および注射用有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)を含むことができる。これらの組成物は、湿潤剤、等張化剤、乳化剤、分散剤および安定化剤を含むこともできる。滅菌は、抗菌フィルターの使用、放射線照射または加熱などのいくつかの方法で実施することができる。非経口組成物は、使用時に滅菌水または任意の他の注射用滅菌媒体に溶解することができる滅菌固体組成物の形態で調製することもできる。
【0174】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、医薬組成物または単一単位の投与形態である。本明細書で提供される医薬組成物および単一単位の投与形態は、1つまたは複数の予防的または治療的抗体コンジュゲートの予防的または治療的に有効な量を含む。
【0175】
医薬組成物は、1つまたは複数の医薬賦形剤を含んでもよい。任意の適切な医薬賦形剤を使用することができ、当業者であれば適切な医薬賦形剤を選択することができる。適当な賦形剤の非限定的な例としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、モルト、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどが挙げられる。特定の賦形剤が医薬組成物または投与形態に導入するために適しているかどうかは、当技術分野では既知の様々な要因、例えば、以下に限定しないが対象に投与される方法および対象に投与される方法に依存する。組成物または単回投与形態は、必要に応じて、少量の湿潤剤、乳化剤またはpH緩衝剤を含むことも可能である。従って、以下に示す医薬用の賦形剤は、例示を目的としたものであって、賦形剤を限定するものではない。その他の医薬用賦形剤としては、例えば、the Handbook of Pharmaceutical Excipients, Rowe et al. (Eds.) 6th Ed. (2009)に記載されている;参照によりその全体が組み込まれる。
【0176】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は消泡剤を含む。任意の適切な消泡剤を使用することができる。いくつかの態様では、消泡剤は、アルコール、エーテル、油、ワックス、シリコーン、界面活性剤およびそれらの組み合わせから選択される。いくつかの形態では、消泡剤は、鉱油、植物油、エチレンビスステアリン酸アミド、パラフィンワックス、エステルワックス、脂肪アルコールワックス、長鎖脂肪アルコール、脂肪酸石鹸、脂肪酸エステル、シリコングリコール、フルオロシリコーン、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール共重合体、ポリジメチルシロキサン-二酸化ケイ素、エーテル、オクチルアルコール、カプリルアルコール、トリオレイン酸ソルビタン、エチルアルコール、2-エチル-ヘキサノール、ジメチコン、オレイルアルコール、シメチコンおよびこれらの組み合わせから選択される。
【0177】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は共溶媒を含む。共溶媒の例としては、エタノール、ポリ(エチレン)グリコール、ブチレングリコール、ジメチルアセトアミド、グリセリンおよびプロピレングリコールが挙げられる。
【0178】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は緩衝剤を含む。緩衝剤の例としては、酢酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、水酸化物、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、グリシン、メチオニン、グアーガムおよびグルタミン酸一ナトリウムが挙げられる。
【0179】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、担体または増量剤を含む。担体または充填剤の例としては、ラクトース、マルトデキストリン、マンニトール、ソルビトール、キトサン、ステアリン酸、キサンタンガムおよびグアーガムが挙げられる。
【0180】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、界面活性剤を含む。界面活性剤の例としては、d-αトコフェロール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、ドクサートナトリウム、ベヘン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、ラウリン酸、マクロゴール15ヒドロキシステアレート、ミリスチルアルコール、リン脂質、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシルグリセリド、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタンエステルおよびビタミンEポリエチレングリコールコハク酸塩が挙げられる。
【0181】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、凝固防止剤を含む。凝固防止剤の例としては、リン酸カルシウム(三塩基性)、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよび酸化マグネシウムが挙げられる。
【0182】
医薬組成物に使用できる他の賦形剤としては、例えば、アルブミン、酸化防止剤、抗菌剤、抗真菌剤、生体吸収性ポリマー、キレート剤、徐放性剤、希釈剤、分散剤、溶解促進剤、乳化剤、ゲル化剤、軟膏基剤、浸透促進剤、保存剤、可溶化剤、溶媒、安定化剤、糖類などが挙げられる。これらの各剤の具体例は、例えば、the Handbook of Pharmaceutical Excipients, Rowe et al. (Eds.) 6th Ed. (2009), The Pharmaceutical Pressに記載されており、参照によりその全体が組み込まれる。
【0183】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、溶媒を含む。いくつかの態様では、溶媒は、無菌等張食塩水またはデキストロース溶液などの食塩水である。いくつかの態様では、溶媒は注射用の水である。
【0184】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、微粒子またはナノ粒子などの粒子状の形態である。マイクロ粒子およびナノ粒子は、ポリマーまたは脂質などの任意の適切な材料から形成されてもよい。いくつかの態様では、マイクロ粒子またはナノ粒子は、ミセル、リポソームまたはポリマーソームである。
【0185】
いくつかの実施形態では、水がいくつかの抗体の分解を促進する可能性があるため、本明細書ではさらに、抗体コンジュゲートを含む無水の医薬組成物および投与形態が提供される。
【0186】
本明細書で提供される無水医薬組成物および投与形態は、無水または低水分含有成分および低水分または低湿度条件を用いて調製することができる。ラクトースと、第1級または第2級アミンを含む少なくとも1つの有効成分を含む医薬組成物および投与形態は、製造、包装および/または保存中に水分および/または湿度と実質的に接触することが予想される場合は、無水であり得る。
【0187】
無水医薬組成物は、その無水の性質が維持されるように調製および保存することができる。したがって、無水組成物は、水への曝露を防止することが知られている材料を用いて包装して、適切な処方箋キットに含めることができる。適切な包装の例としては、密封されたホイル、プラスチック、単位用量容器(例えば、バイアル)、ブリスターパックおよびストリップパックが挙げられるが、これらに限定されない。
【0188】
本明細書で提供されるラクトース不含組成物は、当該技術分野でよく知られており、例えば、米国薬局方(USP)SP(XXI)/NF(XVI)に記載されている賦形剤を含むことができる。一般に、ラクトース不含の組成物は、活性成分、結合剤/充填剤および潤滑剤を、医薬的に適合した医薬的に許容される量にて含有する。例示的なラクトース不含の剤形は、活性成分、微結晶性セルロース、予備ゼラチン化デンプンおよびステアリン酸マグネシウムを含む。
【0189】
また、抗体または抗体-コンジュゲートが分解する速度を低下させる1つ以上の賦形剤を含む医薬組成物および投与形態も提供される。本明細書において「安定剤」と言われる賦形剤には、アスコルビン酸などの抗酸化剤、pH緩衝剤または塩緩衝剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0190】
11.1.非経口用投与形態
特定の実施形態では、非経口投与形態が提供される。非経口投与剤は、皮下投与、静脈内投与(ボーラス注射を含む)、筋肉内投与、動脈内投与などの様々な経路で対象に投与することができる。非経口投与剤は、通常、夾雑物質に対する対象者の自然防御機能を通過するため、対象に投与する前に無菌状態にするか、または滅菌し得る。非経口投与形態の例としては、注射可能な溶液、医薬的に許容される注射用ビヒクルに溶解または懸濁可能な乾燥製品、注射可能な懸濁液および乳濁液が挙げられるが、これらに限定されない。
【0191】
非経口投与形態を提供するために使用することができる適切なビヒクルは、当業者によく知られている。例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:注射用水USP;水性ビヒクル、例えば、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロースおよび塩化ナトリウム注射液および乳酸リンゲル注射液など(但し、これらに限定するものではない);水混和性ビヒクル、例えば、エチルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなど(但し、これらに限定するものではない);および非水性ビヒクル、例えば、コーン油、綿実油、ピーナッツ油、ごま油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピルおよび安息香酸ベンジルなど(但し、これらに限定するものではない)。
【0192】
本明細書に開示されている1つ以上の抗体の溶解度を増加させる賦形剤も、非経口投与形態に組み込むことができる。
【0193】
11.2.投与量および単位投与形態
ヒトの治療においては、医師は、予防的または治癒的な治療に応じて、また治療を受ける対象に固有の年齢、体重、症状およびその他の要因に応じて、最も適切と思われる用法用量を決定する。
【0194】
特定の実施形態では、本明細書で提供される組成物は、医薬組成物または単一単位の投与形態である。本明細書で提供される医薬組成物および単一単位投与形態は、1つまたは複数の予防用または治療用抗体の予防上または治療上有効な量を含む。
【0195】
障害またはその1つ以上の症状の予防または治療に有効な抗体コンジュゲートまたは組成物の量は、疾患または症状の性質および重症度、ならびに抗体が投与される経路によって異なる。また、頻度および投与量は、投与される特定の治療法(治療薬または予防薬など)、障害、疾患および症状の重症度、投与経路、さらに対象の年齢、体格、体重、反応性、過去の病歴などの対象者ごとの固有の要因によって変化すると考えられる。有効量は、インビトロまたは動物モデル試験系から得られた用量反応曲線から外挿してもよい。
【0196】
特定の実施形態では、組成物の用量の例は、対象またはサンプル重量1キログラムあたりの抗体のミリグラムまたはマイクログラム量(例えば、1キログラムあたり約10マイクログラム~1キログラムあたり約50ミリグラム、1キログラムあたり約100マイクログラム~1キログラムあたり約25ミリグラム、または1キログラムあたり約100マイクログラム~1キログラムあたり約10ミリグラム)を含む。特定の実施形態では、対象における障害またはその1つ以上の症状を、予防、治療、管理または改善するために投与される本明細書で提供される抗体コンジュゲートの重量に基づいた投与量は、対象の体重の0.1mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、10mg/kgまたは15mg/kg以上である。別の実施形態では、対象における障害またはその1つ以上の症状を、予防、治療、管理または改善するために投与される本明細書で提供される組成物または組成物の投与量は、0.1mg~200mg、0.1mg~100mg、0.1mg~50mg、0.1mg~25mg、0.1mg~20mg、0.1mg~15mg、0.1mg~10mg、0.1mg~7.5mg、0.1mg~5mg、0.1~2.5mg、0.25mg~20mg、0.25mg~15mg、0.25mg~12mg、0.25mg~10mg、0.25mg~7.5mg、0.25mg~5mg、0.25mg~2.5mg、0.5mg~20mg、0.5mg~15mg、0.5mg~12mg、0.5~10mg、0.5mg~7.5mg、0.5mg~5mg、0.5mg~2.5mg、1mg~20mg、1mg~15mg、1mg~12mg、1mg~10mg、1mg~7.5mg、1mg~5mgまたは1mg~2.5mgである。
【0197】
投与量は、例えば、1回、2回、3回または週1回などの適切なスケジュールに従って投与することができる。当業者であれば明らかなように、場合によっては、本明細書で開示されている範囲外の抗体コンジュゲートの投与量を使用する必要があるかもしれない。さらに、臨床医および治療担当医は、対象の反応に合わせて、治療を中断、調整または終了する方法とタイミングを理解していることに留意されたい。
【0198】
当業者であれば容易に理解されようが、異なる疾患および症状には異なる治療有効量を適用することができる。同様に、そのような障害を、予防、管理、治療または改善するのに十分な量であるが、本明細書で提供される抗体に関連する副作用を引き起こさない量または軽減するのに十分な量も、本明細書に記載された投与量および投与頻度のスケジュールに包含される。さらに、対象が本明細書で提供される組成物の複数の投与量を投与される場合、すべての投与量が同じである必要はない。例えば、対象に投与される用量は、組成物の予防効果または治療効果を向上させるために増加させてもよいし、特定の対象者が経験している1つまたは複数の副作用を軽減するために減少させてもよい。
【0199】
特定の実施形態では、治療または予防は、本明細書で提供される抗体コンジュゲートまたは組成物の1回または複数回の負荷用量に続いて、1回または複数回の維持用量で開始できる。
【0200】
特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体コンジュゲートまたは組成物の用量は、対象の血液または血清中の抗体の定常状態の濃度を達成するために投与することができる。定常濃度は、当業者が利用可能な技術による測定によって決定することができ、または身長、体重、年齢などの対象の身体的特徴に基づいて決定することができる。
【0201】
特定の実施形態では、同じ組成物の投与を繰り返してもよく、投与は少なくとも1日、2日、3日、5日、10日、15日、30日、45日、2ヶ月、75日、3ヶ月または6ヶ月で区切ってもよい。他の実施形態では、同じ予防剤または治療剤の投与が繰り返されてもよく、投与は少なくとも1日、2日、3日、5日、10日、15日、30日、45日、2ヶ月、75日、3ヶ月または6ヶ月で区切られてもよい。
【0202】
11.3.併用治療および製剤
特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体コンジュゲートのいずれかを、本明細書で開示される1つ以上の化学療法剤と組み合わせて含む組成物、治療用製剤および治療または使用方法、ならびにそのような組み合わせを必要とする対象者に投与することを含む治療方法が提供される。化学療法剤の例としては、ベンダムスチン(TREANDA(登録商標), Cephalon)、ベネトクラクス(VENCLEXTA(登録商標), Abbvie, Genentech)、デノスマブ(XGEVA(登録商標), Amgen; PROLIA(登録商標), Amgen)、カーフィルゾミブ(KYPROLIS(登録商標), Amgen)、イキサゾミブ(NINLARO(登録商標), Takeda)、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標), Genentech/OSI Pharm.)、ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標), Millennium Pharm.)、フルベストラント(FASLODEX(登録商標), AstraZeneca)、スーテント(SU11248, Pfizer)、レトロゾール(FEMARA(登録商標), Novartis)、メシル酸イマチニブ(GLEEVEC(登録商標), Novartis)、PTK787/ZK 222584 (Novartis)、オキサリプラチン(Eloxatin(登録商標), Sanofi)、5-FU(5-フルオロウラシル)、ロイコボリン、ラパマイシン(Sirolimus, RAPAMUNE(登録商標), Wyeth)、ラパチニブ(TYKERB(登録商標), GSK572016, Glaxo Smith Kline)、ロナファルニブ(SCH 66336)、ソラフェニブ(Sorafenib)(BAY43-9006, Bayer Labs)およびゲフィチニブ(Gefitinib)(IRESSA(登録商標), AstraZeneca)、AG1478、AG1571(SU 5271; Sugen)、チオテパおよびCYTOXAN(登録商標)シクロホスファミドなどのアルキル化剤;ブスルファン、インプレスルファン、ピポンスルファンなどのアルキルスルホン酸塩;ベンゾドパ、カルボコン、メトレドパおよびウレドパなどのアジリジン類;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミドおよびトリエチルメラミン(triethylomelamine)などのエチレンイミン類またはメチルメラミン類;アセトゲニン類(特に、ブラタシンおよびブラタシノン);カンプトテシン(合成アナログのトポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(合成アナログのアドゼレシン、カルゼレシンおよびビゼレシンを含む);クリプトフィシン類(特にクリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体であるKW-2189およびCB1-TM1を含む);エレウテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン;スポンジスタチン;クロラムブチル、クロマファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスターなど窒素ガスマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチンおよびラニムヌスティンなどのニトロソウレア;エンジイン系抗生物質[例えば、カリケアマイシン、特にウンシアラマイシン、カリケアマイシンガンマルおよびカリケアマイシンオメガール(Angew Chem. Intl.Ed. Engl.(1994)33:183-186);ダイネマイシンAを含むダイネマイシン;クロドロネートなどのビスホスホネート;エスペラマイシン;ならびにネオカルジノスタチン発色団および関連発色タンパク質エンジイン抗生物質発色団]、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、アドリアマイシン(ADRIAMYCIN(登録商標))(ドキソルビシン)、モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシンおよびデオキシドキソルビシン)、エピルビシン、エゾルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン類、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、プロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメックス、ジノスタチン、ゾルビシンなどの抗生物質;メトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU)などの代謝拮抗薬;デノプテリン、メトトレキサート、プラジエノライドB、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸類似物質;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアムニプリン、チオグアニンなどのプリン系薬剤;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジンなどのピリミジン系薬剤;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン類;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎薬;フォリン酸などの葉酸補充剤;アセグラトン;アルドホスファミドグルコシド;アミノレブリン酸;エニルラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジコン;エルフォルミチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン;メイタンシンなどのメイタンシノイド類およびアンサマイトシン類;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖類複合体(JHS Natural Products, Eugene, Oreg.);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特に、T-2トキシン、ベラキュリンA、ロリジンAおよびアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド(例えば、TAXOL(登録商標)(パクリタキセル;Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, N.J.)、ABRAXANE(登録商標)(クレモホール不含)、パクリタキセルのアルブミン安定化ナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners, Schaumberg, Ill.)、TAXOTERE(登録商標)(ドキセタキセル;Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France);クロランブシル;GEMZAR(登録商標)(ゲムシタビン);6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチンおよびカルボプラチンなどの白金製剤;ビンブラスチン;エトポシド(VP-16):イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;NAVELBINE(登録商標)(ビノレルビン);ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;カペシタビン(XELODA(登録商標));イバンドロネート;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド;ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、誘導体などが挙げられる。
【0203】
特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体コンジュゲートのいずれかを1つ以上のPD-1またはPD-L1阻害剤と組み合わせて含む組成物、治療用製剤および治療または使用方法、ならびにそのような組み合わせを必要とする対象者に投与することを含む治療方法が提供される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のPD-1またはPD-L1阻害剤は、PD-1またはPD-L1経路の低分子ブロッカーを含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のPD-1またはPD-L1阻害剤は、PD-1またはPD-L1の活性を阻害する抗体を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のPD-1またはPD-L1阻害剤は、以下からなる群から選択される:CA-170、BMS-8、BMS-202、BMS-936558、CK-301およびAUNP12。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のPD-1またはPD-L1阻害剤は、以下からなる群から選択される:アベルマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、AMP-224(GlaxoSmithKline)、MEDI0680/AMP-514(AstraZeneca)、PDR001(Novartis)、セミプリマブ、TSR-042(Tesaro, GlaxoSmithKline)、ティズリズマブ/BGB-A317(Beigene)、CK-301(Checkpoint Therapeutics)、BMS-936559(Bristol-Meyers Squibb)、セミプリマブ(Regeneron)、カムリズマブ、シンティリマブ、トリパリマブ、ジェノリムズマブおよびA167(Sichuan Kelun-Biotech Biopharmaceutical)。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のPD-1またはPD-L1阻害剤は、以下からなる群から選択される:MGA012(Incyte/MacroGenics)、PF-06801591(Pfizer/Merck KGaA)、LY3300054(Eli Lilly)、FAZ053(Novartis)、PD-11(Novartis)、CX-072(CytomX)、BGB-A333(Beigene)、BI 754091(Boehringer Ingelheim)、JNJ-63723283(Johnson and Johnson/Jannsen)、AGEN2034(Agenus)、CA-327(Curis)、CX-188(CytomX)、STI-A1110(Servier)、JTX-4014(Jounce)、AM0001(Armo Biosciences, Eli Lilly)、CBT-502(CBT Pharmaceuticals)、FS118(F-Star/Merck KGaA)、XmAb20717(Xencor)、XmAb23104(Xencor)、AB122(Arcus Biosciences)、KY1003(Kymab)、RXI-762(RXi)。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のPD-1またはPD-L1阻害剤は、以下からなる群から選択される:PRS-332(Pieris Pharmaceuticals)、ALPN-202(Alpine Immune Science)、TSR-075(Tesaro/Anaptys Bio)、MCLA-145(Merus)、MGD013(Macrogenics)、MGD019(Macrogenics)、RO7121661(Hoffman-La Roche)、LY3415244(Eli Lilly)。いくつかの実施形態では、1以上のPD-1またはPD-L1阻害剤は、例えば、WO2016/077397、WO2018/156777および2018年5月23日に出願された国際出願番号PCT/US2013/034213に記載されている抗PD1単一特異性または二重特異性抗体から選択される。
【0204】
特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体コンジュゲートのいずれかを1つ以上のLAG3阻害剤と組み合わせて含む組成物、治療用製剤および治療または使用方法、ならびにそのような組み合わせを、それを必要とする対象に投与することを含む治療方法が提供される。いくつかの実施形態では、LAG3阻害剤は、LAG3経路の低分子ブロッカーを含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のLAG3阻害剤は、LAG3の活性を阻害する抗体を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のLAG3阻害剤は、以下からなる群から選択される:IMP321(Eftilagimod alpha, Immutep)、リラチリマブ(Brisol-Myers Squibb)、LAG525(Novartis)、MK4280(Merck)、BI754111(Boehringer Ingelheim)、REGN3767(Regeneron/Sanofi)、Sym022(Symphogen)およびTSR-033(Tesaro/GSK)。
【0205】
特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体コンジュゲートのいずれかを1つ以上のTIM3阻害剤と組み合わせて含む組成物、治療用製剤および治療または使用の方法、ならびにそのような組み合わせを、それを必要とする対象者に投与することを含む治療方法が提供される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のTIM3阻害剤は、TIM3経路の低分子ブロッカーを含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のTIM3阻害剤は、TIM3活性を阻害する抗体を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のTIM3阻害剤は、以下からなる群から選択される:TSR-022(Tesaro)、LY3321367(Eli Lilly)、Symph023(Symphogen)およびMBG453(Novartis)。
【0206】
特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体コンジュゲートのいずれかを1つ以上のCD73阻害剤と組み合わせて含む組成物、治療用製剤および治療または使用の方法、ならびにそのような組み合わせを、それを必要とする対象者に投与することを含む治療方法が提供される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のCD73阻害剤は、CD73経路の低分子ブロッカーを含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のCD73阻害剤は、CD73の活性を阻害する抗体を含む。一部の実施形態では、1つまたは複数のCD73阻害剤は、以下からなる群から選択される:MEDI9447(Medimmune)、AB680(Arcus)およびBMS-986179(Bristol-Myers Squibb)。
【0207】
特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体コンジュゲートのいずれかを1つ以上のCD39阻害剤と組み合わせて含む組成物、治療用製剤および治療または使用の方法、ならびにそのような組み合わせを、それを必要とする対象者に投与することを含む治療方法が提供される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のCD39阻害剤は、CD39経路の低分子ブロッカーを含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のCD39阻害剤は、CD39活性を阻害する抗体を含む。一部の実施形態では、1つまたは複数のCD39阻害剤は、以下からなる群から選択される:CPI-444(Corvus)、PBF-509(Pablobio, Novartis)、MK-3814(Merck)およびAZD4635(AstraZeneca)。
【0208】
特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体コンジュゲートは、VELCADE(登録商標)(ボルテゾミブ)、KYPROLIS(登録商標)(カーフィルゾミブ)、NINLARO(登録商標)(イキサゾミブ)と組み合わせて投与される。特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体コンジュゲートは、FARYDAK(登録商標)(パノビノスタット)と組み合わせて投与される。特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体コンジュゲートは、DARZALEX(登録商標)(ダラツムマブ)と組み合わせて投与される。本明細書で提供される抗体コンジュゲートは、EMPLICITI(登録商標)(エロツズマブ)と組み合わせて投与される。特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体コンジュゲートは、AREDIA(登録商標)(pamidronate)またはZOMETA(登録商標)(ゾレンドロン酸)と組み合わせて投与される。特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体コンジュゲートは、XGEVA(登録商標)(デノスマブ)またはPROLIA(登録商標)(デノスマブ)と組み合わせて投与される。
【0209】
特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体コンジュゲートは、ガンマセクレターゼ阻害剤(GSI)、例えば、アバガセスタット(BMS-708163; Bristol-Myers Squib)、MK-0752(Merck & Co.)、R04929097(Roche)、セマガセスタット(LY-450139; Eli Lilly & Co.)、DAPT(N-[N-(3,5-ジフルオロフェニルアセチル-L-アラニル)]-S-フェニルグリシン t-ブチルエステル)、L685,458、化合物E((s,s)-2-(3,5-ジフルオロフェニル)-アセチルアミノ 1-N-(1-メチル-2-オキソ-5-フェニル-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[e][1,4]ジアゼピン-3-イル)-プロピオンアミド)、DBZ(ジベンザゼピン)、JLK6(7-アミノ-4-クロロ-3-メトキシイソクマリン)または[11-エンド]-N-(5,6,7,8,9,10-ヘキサヒドロ-6,9-メタノベンゾ[9][8]アヌレン-11-イル)-チオフェン-2-スルホンアミドと組み合わせて投与される。
【0210】
本明細書に開示された抗体コンジュゲートと組み合わせて投与される薬剤は、抗体コンジュゲートの投与の直前、同時または直後に投与することができる。特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体コンジュゲートは、第1の投与スケジュールで投与され、1つ以上の第2の薬剤は、各々の投与スケジュールで投与される。本開示の目的上、そのような投与レジメンは、抗体コンジュゲートが、追加の治療的活性成分と「組み合わせて」投与されることが考えられる。実施形態には、本明細書に開示されている抗体コンジュゲートが、本明細書に開示されている1つ以上の化学療法剤、PD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤と一緒に製剤化されている医薬組成物が含まれる。
【0211】
12.治療用適用
治療目的の場合、本発明の抗体コンジュゲートは、当分野においてよく知られており、また上述した医薬的に許容される投与形態で、哺乳動物(一般にはヒト)に投与される。例えば、本発明の抗体コンジュゲートは、ボーラスとして静脈内に投与するか、一定期間にわたり持続的に点滴するか、あるいは筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、腔内、髄腔内または腫瘍内に投与することができる。また、全身的な治療効果だけでなく、局所的な治療効果を発揮するためには、腫瘍周辺、病巣内または病変部近傍の経路により投与することも好ましい。腹腔内経路は、例えば、卵巣腫瘍の治療に特に有用である。
【0212】
本明細書で提供される抗体コンジュゲートは、BCMAが関与するあらゆる疾患または症状の治療に有用である。いくつかの実施形態では、疾患または症状は、BCMAの過剰発現によって診断され得る疾患または症状である。いくつかの実施形態では、疾患または症状とは、抗BCMA抗体による治療から利益を得ることができる疾患または症状である。いくつかの実施形態では、疾患または症状は、癌である。いくつかの実施形態では、疾患または症状は、白血病、リンパ腫または多発性骨髄腫である。
【0213】
任意の適切な癌を、本明細書で提供される抗体コンジュゲートを用いて治療することができる。適切な癌の例としては、例えば、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、副腎皮質癌、肛門癌、虫垂癌、星細胞腫、基底細胞癌、脳腫瘍、胆管癌、膀胱癌、骨癌、乳癌、気管支腫瘍、原発不明癌、心臓腫瘍、頸癌、脊索腫、結腸癌、大腸癌、頭蓋咽頭腫、管状癌、胚性腫瘍、子宮内膜癌、上衣腫、食道癌、嗅神経芽細胞腫、維性組織球腫、ユーイング肉腫、眼癌、胚細胞腫瘍、胆嚢癌、胃癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質性腫瘍、妊娠性絨毛疾患、神経膠腫、頭頸部癌、肝細胞癌、組織球症、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、眼内黒色腫、膵島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓癌、ランゲルハンス細胞組織球症、喉頭癌、口唇および口腔癌、肝臓癌、非浸潤性小葉癌、肺癌、マクログロブリン血症、悪性線維性組織球腫、黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、原発不明転移性扁平頸癌、NUT遺伝子関与正中線路癌、口腔癌、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫、菌状息肉症、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性新生物、鼻腔/副鼻腔癌、上咽頭癌、神経芽腫、非小細胞肺癌、中咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、乳頭腫症、傍神経節腫、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、胸膜肺胞腫、原発性中枢神経系リンパ腫、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌、腎盂尿管癌、網膜芽細胞腫、ラブドイド腫瘍、唾液腺癌、セザリー症候群、皮膚癌、小細胞肺癌、小腸癌、軟部組織癌などの小腸癌、軟部組織肉腫、脊髄腫瘍、胃癌、T細胞リンパ腫、テラトイド腫瘍、精巣癌、咽頭癌、胸腺腫および胸腺癌、甲状腺癌、尿道癌、子宮癌、膣癌、外陰癌およびウィルムス腫瘍が挙げられる。
【0214】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体コンジュゲートにより治療される疾患は、胃癌、大腸癌、腎細胞癌、子宮頸癌、非小細胞肺癌、卵巣癌、子宮癌、子宮内膜癌、前立腺癌、乳癌、頭頸部癌、脳腫瘍、肝癌、膵臓癌、中皮腫および/または上皮由来の癌である。特定の実施形態では、疾患は大腸癌である。いくつかの実施形態では、疾患は卵巣癌である。いくつかの実施形態では、疾患は乳癌である。いくつかの実施形態では、疾患は肺癌である。いくつかの実施形態では、疾患は頭頸部癌である。いくつかの実施形態では、疾患は、腎細胞癌である。いくつかの実施形態では、疾患は脳腫瘍である。いくつかの実施形態では、疾患は子宮内膜癌である。
【0215】
特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体コンジュゲートで治療される疾患は、多発性骨髄腫である。特定の実施形態では、前記多発性骨髄腫は、国際病期分類または改訂国際病期分類によるステージI、ステージIIまたはステージIIIである。特定の実施形態では、前記多発性骨髄腫は、新たに診断された多発性骨髄腫である。他の実施形態では、前記多発性骨髄腫は、再発性または難治性の多発性骨髄腫である。
【0216】
国際病期分類(ISS)では、多発性骨髄腫の病期は以下の通りである:ステージI:血清β2ミクログロブリンが3.5mg/L未満かつ血清アルブミンが3.5g/dL以上、ステージII:ステージIまたはステージIIIではない、ステージIII:血清β2ミクログロブリンが5.5mg/L以上。改訂国際病期分類(R-ISS)では、多発性骨髄腫の病期は以下の通りである;ステージI:ISSステージIおよび蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)による標準リスクの染色体異常(即ち、ハイリスクではない)および血清乳酸脱水素酵素(LDH)値が正常の上限以下;ステージII:R-ISSステージIまたはIIIではない;ステージIII:ISSステージIIIで、FISHによる高リスクの染色体異常(例えば、del(17p)および/または転座t(4;14)および/または転座t(14;16)の存在)または血清LDH値が正常上限値を超える。
【0217】
多発性骨髄腫は、Durie-Salmonシステムを使用してステージを分類することもできる。このシステムでは、多発性骨髄腫はステージI、IIまたはIII(1、2、または3)に分類される。各ステージは、腎機能への影響の有無により、さらにAまたはBに分類され、Bに分類された場合は、腎機能が著しく低下していることを意味する。ステージI:患者に症状は無いが、癌が腎機能に影響を及ぼしている場合は、ステージに拘わらず予後が悪くなる可能性がある。ステージIに特徴的な要素は、以下の通りである:赤血球数が、正常範囲内であるか、または僅かに少ない;血液中のカルシウム量が正常である;血液中または尿中のM蛋白質の量が少ない;M蛋白質が、IgGでは5g/dL未満、IgAでは3g/dL未満;尿中の軽鎖が4g/24h未満である;および/またはX線検査で骨の損傷がないか、または1つの骨病変しか認められない。ステージII:ステージIIでは、体内に多くのがん細胞が存在しており、腎機能に影響が出ている場合は、ステージに関わらず予後が悪化する。ステージIIの基準は、ステージIにもステージIIIにも当てはまらないものと定義されている。ステージIII:ステージIIIでは、体内に多くのがん細胞が存在している。このステージに特徴的な要素は以下の通りである:ヘモグロビンが、8.5g/dL未満の貧血;高カルシウム血症;進行した骨損傷(3つ以上の骨病変);血中または尿中の高濃度のM蛋白;および/またはM蛋白がIgGでは7g/dLよりも高く、IgAでは5g/dLよりも高く、尿中軽鎖では12g/24hよりも高い。
【0218】
13.診断用途
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体コンジュゲートは、診断用途に使用される。例えば、抗BCMA抗体コンジュゲートは、BCMAタンパク質に関するアッセイにおいて有用であり得る。いくつかの態様において、抗体コンジュゲートは、様々な細胞および組織におけるBCMAの発現を検出するために使用され得る。これらのアッセイは、例えば、癌などの疾患の診断および/または予後を決定する際に有用であり得る。
【0219】
診断および予後診断の用途では、抗体コンジュゲートを検出可能な部位で標識することができる。検出可能な成分としては、放射性同位元素、蛍光標識、酵素基質標識などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。別の実施形態では、抗BCMA抗体コンジュゲートを標識する必要はなく、抗体コンジュゲートの存在は、抗BCMA抗体コンジュゲートに特異的に結合する標識抗体を用いて検出することができる。
【0220】
14.アフィニティー精製用試薬
本明細書で提供される抗体コンジュゲートは、アフィニティー精製剤として使用することができる。このプロセスにおいて、抗体コンジュゲートは、当該技術分野において周知の方法を用いて、樹脂または濾紙などの固相に固定化されてもよい。固定化された抗体コンジュゲートを、精製すべきBCMAタンパク質(または、その断片)を含む試料と接触させた後、固定化抗体に結合しているBCMAタンパク質以外の試料中の物質を、実質的にすべて除去する適切な溶媒を用いて支持体を洗浄する。最後に、支持体を、別の適切な溶媒、例えば、抗体からBCMAタンパク質を溶出するグリシンバッファー(pH5.0など)で洗浄する。
【0221】
15.キット
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗BCMA抗体コンジュゲートは、キットの形態、即ち、その方法を行うための指示書と共に所定量の試薬がパッケージに組み合わせた形態で提供される。いくつかの実施形態では、方法とは、診断アッセイである。他の実施形態では、その方法は、治療方法である。
【0222】
いくつかの実施形態では、キットは、抗BCMA抗体コンジュゲートを溶解させるための溶媒をさらに含んでいる。いくつかの実施形態では、抗BCMA抗体コンジュゲートは、医薬組成物の形態で提供される。
【実施例
【0223】
実施例1
抗BCMA抗体の生成
ファージディスプレイを使用して、最初のヒト抗体のリード物質2190-B01および2213-A06を発見した。抗体Fabライブラリーを、改変した市販p3ファージミドベクター(Antibody Design Labs)においてコドン最適化されたトラスツズマブFab配列を用いて構築した。簡単に説明すると、ファージミドベクターを、C末端のp3融合タンパク質としてFab重鎖を発現するように改変し、制御領域(開始コドン、制限酵素部位、ペリプラズムリーダー配列)を、Fabディスプレーレベルに合わせて最適化した。ライブラリーは、重鎖の相補性決定領域(CDR)を標的とする変異導入プライマーを用いた標準的なオーバーラップエクステンションPCR法を用いて構築した(Heckman and Pease, Nat. Protoc., 2007, 2:924-932を参照されたい)。ライブラリーは、M13-K07に感染したSS320大腸菌細胞のエレクトロポレーションにより導入した。ライブラリーの選択は、標準的なファージディスプレイプロトコルを用いて行った(Rajan & Sidhu, Methods Enzymol., 2012, 502:3-23; Marks & Bradbury, Methods Mol Biol., 2004, 248:161-76を参照されたい)。複数回の選抜工程後、Fab重鎖プールを、無細胞発現ベクターに移し、His6およびFLAGタグ付きIgG1として発現させた。
【0224】
リボソームディスプレイ選抜
リボソームディスプレイを使用して、最初のヒト抗体リード物質2137-A05および2137-C07を発見した。またリボソームディスプレイを用いて、2137-C07、2137-A05、2190-B01および2213-A06を親和成熟させ、特に改良型の誘導体2265を生成させた。
【0225】
抗体Fabライブラリーは、相補性決定領域(CDR)を標的とする変異導入プライマーを用いた標準的なオーバーラップエクステンションPCR法を用いて構築した(Heckman & Pease, 上掲)。新規抗体の選択は、標準的なリボソームディスプレイプロトコルを用いて行った(Hanes & Plueckthun, Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 1997, 94:4937-4942を参照されたい)。具体的には、Fabを基にしたリボソームディスプレイ選抜は、公開されているプロトコルに従って実施した(Stafford et al., 2014, Protein Eng. Des. Sel. 27:97-109; Dreier and Plueckthun, 2011, Methods Mol Biol 687:283-306を参照されたい)。複数回の選抜後、RT-PCRの情報から得たDNAを、標準的な分子生物工学技術を用いて、無細胞発現のために最適化されたベクターにクローン化した(Yin et al., 2012, mAbs 4:217-225を参照されたい)。全ての構築体は、スクリーニング中の精製および試験を効率化するために、HIS-およびFLAG-タグを付けた。
【0226】
抗体の例を、表6に示す。抗体4は、本明細書において「抗体2265-F02」とも示される。
【表6】
【0227】
実施例2
抗体の一次スクリーニング
抗体バリアントの一次ELISAスクリーニング
選抜ワークフローで生成した抗体バリアントのライブラリーを大腸菌に形質転換し、抗生物質(カナマイシン)を添加したアガープレートで培養した。個々のコロニーを、液体ブロス(TB+抗生物質カナマイシン)中で培養し、ローリングサークル増幅法(RCA)によるDNA増幅のテンプレートとした。次いで、バリアントを、記載の通りに、無細胞タンパク質合成反応で発現させた(Yin et al., mAbs, 2012, 4:217-225を参照されたい)。簡単に言うと、無細胞抽出物を、50μMのヨードアセトアミドを用いてRT(20℃)で30分間処理し、無細胞成分(Cai et al., Biotechnol Prg, 2015, 3:823-831を参照)、目的のHCバリアントの10%(v/v)RCA DNAテンプレート(約10μg/mLのDNA)および2.5μg/mLのトラスツズマブLCを含むプレミックスに加えた。60μLの細胞不含(CF)反応物を、シェーカー(650rpm)上にて30℃で12時間、96ウェルプレート中でインキュベートした。400~1500のコロニーを、様々な選択キャンペーンの予測される変動に応じてスクリーニングした。合成後、各反応を1:200に希釈し、ELISAによりヒトまたはカニクイザルのBCMA-Fcタンパク質との結合を試験した。BCMA-Fc(R&D Systems, Minneapolis, MN)を、0.1M 炭酸水素塩(pH8.9)を用いて384ウェルのMaxisorpプレートにコーティングし、PBST中の1%BSAでブロッキングした。1:200希釈したCF反応から得た抗体を、プレート上でインキュベートして洗浄し、HRP標識抗ヒトFab抗体((Jackson ImmunoResearch, West Grove, PA)およびPierce Pico Supersignal ELISA基質(ThermoFisher Scientific)を用いて検出した。
【0228】
ハイスループット細胞バインディング
小規模(60μL)の無細胞反応で作製した抗体の細胞結合を、迅速に評価するために、ハイスループットの一次スクリーニングを行った。このスクリーニングでは、U底96ウェルプレート(Greiner Cat #650201)または平底384ウェルプレート(Greiner Cat #781201)に、4成分を等量ずつ合わせて、最終的に100μL/ウェルとした。これらの成分は以下のものである:1) BCMA発現NCI-H929細胞をアッセイバッファー(1xPBS+0.2%BSA,無菌ろ過)で希釈し、最終濃度500,000個/ウェルにしたもの;2)BCMA陰性MOLT-4細胞をCellTrace Oregon Green (Invitrogen Cat #34555)で染色し、アッセイバッファーで希釈し、最終濃度500,000個/ウェルにしたもの;3)目的の抗体を産生する無細胞反応物をアッセイバッファーで1:50に希釈したもの;および4)二次抗ヒト抗体(AlexaFluor 647 AffiniPure F(ab')2 ロバ抗ヒトIgG,Fc特異性;Jackson ImmunoResearch Cat#709-606-098)をアッセイバッファーで1:100に希釈したもの。その後、プレートを氷上で1時間インキュベートした。細胞を、5分間、1500×gで回転させてペレット化し、アッセイバッファーに再度懸濁した。その後、FACS装置(BD Biosciences FACSCanto IIまたはBD Biosciences LSR II)を用いて、再懸濁した細胞に対してハイスループットのフローサイトメトリーを行い、FlowJoソフトウェアを用いてデータを解析した。抗体結合は、NCIH929 BCMA陽性細胞の二次抗体シグナル(目的の抗体との結合によるものと推定される)とMOLT-4 BCMA陰性細胞のシグナルとの比率により評価した。
【0229】
実施例3
抗体の二次スクリーニング
IgGの調製
初回スクリーニングで得られたトップリード物質を培養し、メーカーの指示書に従ってQiaprep 96 Turbo miniprep kit (Qiagen)を用いてミニプレップした。7.5μg/mLのミニプレップしたHC DNAと2.5μg/mLのトラスツズマブLCを4mLの無細胞反応に加え、30℃、650rpmで一晩12時間インキュベートした。清澄化した無細胞反応から得た発現したバリアントを、半自動化高スループットのバッチ精製法を用いてIMAC精製により精製した。簡単に言うと、精製は96ウェルプレートの形式で行い、50μL/ウェルのIMAC樹脂(Ni Sepharose High Performance, GE Healthcare)を、IMAC結合バッファー(50mM Tris(pH8.0), 300mM NaCl、10mM イミダゾール)で平衡化し、1mLの無細胞反応物と15分間インキュベートした後、IMAC結合バッファーで2回洗浄した。その後、200μLのIMAC溶出バッファー(50mM Tris, pH8.0,300mM NaCl,500mM イミダゾール)を用いてHisタグ付き抗体バリアントを溶出し、96ウェルのZebaプレート(7 kD MWCO, Thermofisher)を用いてPBSにバッファーを交換した。精製された抗体を、Labchip GXII (Perkin Elmer)を用いて、メーカーの指示に従いハーセプチンの標準曲線に対してハイスループットキャピラリー電気泳動で定量した。
【0230】
scFvsの調製
ドメインとVドメインの間にリンカー配列を有するVまたはVのいずれかの配向で単鎖抗体を作製する。一般的に、scFvのリンカーは、(GGGGS)n(配列番号:28)の繰り返しにより構成されており、n=3、4、5または6であり、各々15、20、25または30残基のリンカーとなる。無細胞で発現させる場合は、N末端にMetを付加するが、哺乳類で発現させる場合はリーダーペプチドを付加する。scFvのC末端には、生体内での半減期を延ばすためにFc配列を付加できるが、scFvをそのまま使用することも可能である。scFvとFcの間には、任意のリンカー配列を組み込むことができる。scFv-Fcリンカー配列の例は、AAGSDQEPKSS(配列番号:27)である。精製およびアッセイ発色を行い得るように、C末端のアフィニティタグを適宜追加することができる。アフィニティタグの例は、C-末端FlagHisタグGSGDYKDDDDKGSGHHHHHH(配列番号:25)である。停止コドンは、通常、配列の最後に挿入される。scFvの例は、N末端のMet残基、Vドメイン、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号:26)リンカー、Vドメイン、AAGSDQEPKSS(配列番号:27)リンカー、Fcドメイン、FlagHisタグおよび停止コドンを含み得る。
【0231】
示差走査蛍光定量法
タンパク質サーマルシフトアッセイは、アッセイ対象のタンパク質と環境感受性の高い色素(SYPRO Orange, Life Technologies社 Cat #S-6650)を、リン酸バッファー(PBS)中で混合し、制御下で熱変性を与えながら混合物の蛍光をリアルタイムでモニターすることにより行った。0.2~2mg/mLのタンパク質溶液を、SYPRO Orangeの1:500のPBS希釈溶液と、1:1の体積比で混合した(SYPRO Orangeのストック色素はDMSO中で5000倍)。タンパク質-染料混合物の10μLアリコートを、384ウェルマイクロプレート(Bio-Rad Cat #MSP-3852)に4回に分けて分注し、光学的に透明なシールフィルム(Bio-Rad Cat #MSB-1001)でプレートを封止し、384ウェルプレートのリアルタイムサーモサイクラー(Bio-Rad CFX384 Real Time System)に入れた。タンパク質と色素の混合物を、25℃~95℃まで、1サイクルあたり0.1℃刻みで加熱して(1分あたり約1.5℃)、各温度で3秒間の平衡化を行った後、蛍光測定を行った。実験の最後に、Bio-Rad CFX managerソフトウェアを用いて、転移融解温度(TM1およびTM2)を決定した。TM1は、Fcドメインの融解温度を表す。TM2は、Fabドメインの融解温度を表す。
【0232】
バイオコア(Biacore)オフレートおよび反応速度分析
抗Fabまたは抗Fcポリクローナル抗体を、アミンカップリング化学反応(Amine Coupling Kit, GE Life Sciences)を用いてCM5チップ(GE Life Sciences)に固定化した。固定化工程は、1xHBS-EP+バッファー(GE Life Sciences;10x Stockを使用前に希釈した)で25μL/minの流量にて行った。NHS(0.05M)およびEDC(0.2M)の混合液を用いて、センサー表面を7分間活性化した。抗Fab抗体または抗Fc抗体を、7分間、10mM酢酸ナトリウム(pH4.5)中に25μg/mlの濃度で、4つのフローセル全てに注入した。エタノールアミン(1M,pH8.5)を7分間注入し、残存する活性化基をブロックした。各フローセルに、平均12,000応答単位(RU)の捕捉抗体を固定した。
【0233】
オフレートおよび反応速度結合実験は、1xHBS-EP+バッファーを用いて25℃で行った。テスト抗体およびコントロール抗体を、フローセル2、3および4で、10μL/分の流速で12秒間、5~10μg/mLの濃度で抗Fabまたは抗Fc表面に注入し、その後同じ流速で30秒間バッファー洗浄を行った。抗体サンプルの反応速度特性評価は、1~100nMの範囲の抗原濃度と、0nMの抗原を1回注入して行った(例えば、100、50、25、6.25、1.56および0nMなど)。リガンド(抗体)を、抗Fabまたは抗Fc表面で捕捉した後、分析物(各々ヒトBCMA-Fc、cyno BCMA-FcまたはヒトBCMA;R&D Systems,custom protein production, Sigma Aldrich)を、180秒間結合させ、その後50μL/minの流速で600秒間の解離相を行った。各リガンド捕捉サイクルと分析物の結合サイクルの間に、10mMグリシン(pH2.0)を、30μL/分で30秒間2回注入することで再生を行い、その後30秒間のバッファー洗浄工程を行った。
【0234】
データは、Biacore T200 Evaluationソフトウェアを用いて、1-1 Langmuir結合モデルを用いてフィットさせた。K(親和性、nM)は、会合相と解離相のフィットから算出した速度定数の比として決定した。
【0235】
細胞株および細胞培養条件
NCI-H929、U266B1、MOLT-4およびARP-1は、ATCCおよびKeats Lab(Tgen, Phoenix, AZ)から入手した。293T-cynoBCMAおよび293T-ratBCMA組換え細胞は、293T細胞をカニクイザルまたはラットのBCMAのcDNA配列を含むプラスミドによりトランスフェクトして、細胞表面にカニクイザルBCMAまたはラットBCMAが最も安定して発現しているものを選択することによって得た。NCI-H929、U266B1、MOLT-4細胞は、20%熱不活化ウシ胎児血清(Hyclone;Thermo Scientific;Waltham,MA9)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Cellgro-Mediatech;Manassas,VA)および2mmol/L-glutamax(Life Technology;Carlsbad,CA)を加えたRPMI-1640(Cellgro-Mediatech;Manassas,VA)にて維持した。293T-cynoBCMAおよび293T-ratBCMA細胞は、10%熱不活化ウシ胎児血清(Hyclone; Thermo Scientific; Waltham, MA)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Cellgro-Mediatech; Manassas, VA)および2mmol/L-glutamaxを添加したハムのF-12-高グルコースDMEM(50-50)(Cellgro-Mediatech; Manassas, VA)で維持した。
【0236】
細胞結合実験
二次スクリーニングで十分量のタンパク質として精製されたバリアントを、蛍光活性化細胞選別(FACS)の細胞結合アッセイにて試験した。BCMA陽性のNCI-H929細胞、293T-cynoBCMA細胞およびBCMA陰性の293T細胞を、FACS結合剤のスクリーニングに使用した。293T細胞は、BCMAのシェーディングを防ぐため、細胞結合の24時間前に1μMのDAPTで処理した。BioMekFX (Beckman Coulter)を用いて、約100~200nMの抗体濃度から開始した抗BCMAバリアントの6~12点希釈溶液を、各ウェルに分注した。その後、細胞を、氷上で1時間インキュベートし、FACSバッファーで洗浄し、BioMekFX(Beckman Coulter)を用いて分注した2.5μg/ml Alexa647コンジュゲートヤギ抗ヒトIgGを含む50mLのFACSバッファーと共に氷上で1時間インキュベートした。その後、細胞を、FACSバッファーで2回洗浄し、2%パラホルムアルデヒド(PFA)を含む200mLのPBSで10分間固定した後、蛍光検出を行った。サンプルは、Beckton Dickinson LSRII FACSを用いて取得した。BCMA抗体結合の幾何学的平均蛍光強度は、FlowJo(登録商標) software (Tree Star, Inc)を用いて分析した。
【0237】
細胞生存解析
BCMA陽性細胞に対する殺細胞アッセイにおいて、二次抗体に結合させた薬剤により、抗体の内在化を評価した。BCMA陽性細胞株ARP-1およびU266B1を用いて、内在化リード物質のスクリーニングを行った。細胞は、カルシウムおよびマグネシウムを含まないダルベッコリン酸バッファー生理食塩水(DPBS)で2回洗浄し、Accutase(登録商標)(Innovative Cell Technologies; San Diego, CA)で回収し、Vi-CELL Cell Viability Analyzer(Beckman Coulter, Brea, CA)で計測した。アッセイ当日は、25マイクロリットルの容量で合計12,500個の細胞を384ウェル平底白色ポリスチレンプレート(Greiner Bio-One, Monroe, NC)に播種した。リード抗体を、細胞培養液に4倍の開始濃度で配合し、MultiScreenHTS 96-Well Filter Plates(Millipore; Billerica, MA)でろ過した。連続希釈した抗体(100nMから開始した1:3の連続希釈)(12.5μL)を、処理ウェルに加え、次にコンジュゲートP(切断可能なリンカーを介したヘミアステルリン)またはコンジュゲートM(非切断可能なリンカーを介したメイタンシノイド)により結合した抗ヒトナノボディ(12.5μL)を、20nMの固定最終濃度で各ウェルに加えた。アッセイプレートは、COインキュベーター内において37℃で72時間培養した後、アッセイを行った。細胞生存率の測定には、Cell Titer-Glo(登録商標) 試薬(Promega Corp.Madison, WI)を、各ウェルに各々30μL加えて、製品の説明書に従ってプレートを処理した。ENVISION(登録商標)プレートリーダー(Perkin-Elmer; Waltham, MA)を用いて相対的な発光を測定した。対照として未処理の細胞を用い、相対的な発光の測定値を%生存率に変換した。データは、GraphPad Prism (GraphPad v 5.0, Software; San Diego, CA)を用いて、log(阻害剤) vs. 応答、可変傾斜、4-パラメーターフィットを用いた非線形回帰分析にフィッティングさせた。データは、相対的な細胞生存率(ATP含量)% vs 抗体の投与量で表した。
【0238】
実施例4
例示した抗-BCMA抗体の特徴
表7Aおよび7Bは、最初のリード物質および親和成熟後のリボソームおよびファージディスプレイから得た抗体を用いた結果を示す。
【表7】
【0239】
実施例5
抗体-薬剤コンジュゲーションおよびDAR比率の決定
抗体-薬剤コンジュゲーションは、Zimmerman ES, et al. 2014, Bioconjugate Chem., 25 (2), pp 351-361に記載されている。簡単に言うと、精製した抗BCMA抗体バリアントを、細胞毒性薬剤にコンジュゲートさせる。ストック薬剤を、DMSOに溶解し、最終濃度を5mMとする。この化合物を、PBSで1mMに希釈した後、最終薬剤濃度が100μMとなるように、精製したタンパク質のサンプルに加えた。混合物を、RT(20℃)で17時間インキュベートした。反応サンプルを、製剤バッファーで平衡化したZebaプレート(Thermo Scientific)の7000MWCO樹脂に通すことで、取り込まれなかった薬剤を除去した。その後、濾液を、MUSTANG(登録商標) Qプレート(Pall Corp.)に通してエンドトキシンを除去した。
【0240】
精製の後、精製抗体または抗体-薬剤コンジュゲートのサンプルは、同じProtein Express LabChip(Caliper Life Sciences # 760499)により行ったHERCEPTIN(登録商標)の質量標準と比較することにより、Caliper GXIIシステムで定量された。サンプルは、Protein Express Reagent Kit(Caliper Life Sciences # 760328)に記載されているように分析のために調製したが、サンプル(サンプルバッファー+50mM NEMと混合)をCaliperシステムで分析する前に、65℃で10分間加熱した以外は、Protein Express Reagent Kitに記載されている通りに製造した。
【0241】
抗体-薬剤コンジュゲートを、10mM TCEP(Pierce)において37℃で10分間還元した。還元したサンプルに、30uLのTA30(30%アセトニトリル、70%0.1%トリフルオロ酢酸)を加えた。20mgのsuper-DHB(Sigma, part No. 50862)を、TA50(50%アセトニトリル, 50%の0.1% トリフルオロ酢酸)に溶解し、サンプルマトリックスを作成する。次に、TA30の0.5uLのサンプルを、TA50の0.8uLのsuper-DHBマトリックスに加えて、MALDIサンプルプレートに結合させる。スペクトルは、Bruker Autoflex Speed MALDI装置で以下の初期設定により得た:質量範囲7000~70000Da;サンプルレートおよびデジタイザーの設定は0.05、0.1、0.5、1、2;リアルタイムスムージングはHighに設定し、ベースラインオフセットは調整しなかった。高電圧をオンにし、イオン源1を20kVに調整した。200nsのパルスイオン抽出、偏向時のマトリクス抑制および最大6000Daまで抑制する。ピーク検出アルゴリズムは、S/N比20のセントロイド、ピーク幅は150m/z、高さは80%、ベースラインはTopHatを控除する。スムージングアルゴリズムはSavtzkyGolay法であり、幅は10m/z、サイクルは10であった。全サンプルについての薬剤-抗体比(DAR)は、各コンジュゲートのデコンボリューション後の質量スペクトルの曲線下面積の加重平均として実測した。
【0242】
実施例6
インビトロの血漿安定性
この例では、ヒト、カニクイザルおよびマウスの血漿中におけるコンジュゲート4のインビトロ安定性を評価した。リンカー-反応性基(warhead)の安定性は、アフィニティー捕捉抗体を用いたLC/MS系のアッセイによって測定された。ADC(50μL、100μg/mL)を、PBSまたはヒト、カニクイザルまたはマウスの血漿(リチウムヘパリン)サンプルと異なる時間(0、2、24、72、168、336、504時間)インキュベートした。サンプルを、所定の時間ごとに取り出して、ビオチン-(Fab)ヤギ抗-ヒトIgG,Fcγフラグメント特異的抗体(Jackson Immnoresearch, cat# 109-066-098) (PBS、カニクイザル(cyno)およびマウス血漿サンプル)であるか、またはビオチン化ヒトBCMA ECD(human plasma sample)をコーティングしたStreptavidin Mag Sepharose Beads (GE Healthcare, Cat# 28-9857-99,)に加えた(10ug/サンプル)。血漿サンプルおよびビーズの混合物を、ゆっくりと回転させながら、室温で2時間インキュベートした。その後、ビーズを1mLのHBS-Eバッファーで3回洗浄し、その後1mLの水で2回洗浄した。捕捉したADCの溶出は、25μLの1%ギ酸溶液を、室温で5分間加えて行った。放出された抗体をビーズから除去し、15μLの1M Tris-HCl(pH9.0)で中和した。
【0243】
プルダウンADCのDARは、バイナリーSLポンプを備えたAgilent 1200シリーズHPLCシステムに連結されたAgilent 6520A Accurate Mass Q-TOF MSにより得た。追加のクロマトグラフィーのトレースは、Agilent DADにより278および214nmで得た。プルダウン法のローディングを、サンプルの全量(40μL)が、Agilent Advance Bio Desalting HPLCカートリッジ(2.1×12.50 mm)に、80℃で0.4mL/分で注入されるように最適化した。LC-MSのための標準的な移動相を用いた:A:0.1%ギ酸/水、B:0.1%ギ酸/アセトニトリル。10%Bタンパク質で1分間の脱塩を行った後、65~80%Bにて1.5~4.5分間で、カートリッジからタンパク質が溶出した。各注入の間に洗浄評価を行うことにより、キャリーオーバーを防止した。
【0244】
全てのスペクトルを、MassHunter Qualitative(B.06.00)(Agilent)を用いた単一のTICピークから抽出して、組み合わせた。スペクトルは、MassHunter QualitativeのMaximum Entropyアルゴリズムを用いてデコンボリューションし、観測された中性種の質量から同一性を確認した。デコンボリューションは、完全なアセンブリ抗体に由来するイオンに限定して、140,000~160,000Daの質量範囲を、1.0 Daの質量ステップでサーチした。
【0245】
DAR Calculator B.1.0 (Agilent Technologies)によりピーク領域を割り当てた。自動ピークピッキングが失敗した場合は、手動でピークを規定した。得られたピーク表をExcelワークシートにエクスポートし、必要に応じてDAR値を再度割り当てた。薬剤リンカーの分解が観察された場合には、生成物に残存している薬剤のみを活性とみなした。例えば、完全な薬剤リンカーが1つで、リンカーのみの抗体(二剤式の製品から分解されたもの)は、一剤式の製品と同等とみなした。全体のDAR値は、デコンボリュートしたピーク面積の加重平均として算出した。複数サンプルの全体的なDAR値を平均化した。
【0246】
血漿安定性の結果の例示は、コンジュゲート4に対して図11に示されている。
【0247】
実施例7
ARP-1多発性骨髄腫におけるBCMA ADCバリアントの用量応答関係の評価
皮下ARP-1多発性骨髄腫腫瘍におけるコンジュゲート4(表8に記載)の有効性を比較する試験を行った。
【表8】
【0248】
本明細書に記載の抗体のF404部位のパラアジド-メチル-フェニルアラニン(pAMF)に、リンカーのペイロードをコンジュゲートすることにより、抗BCMA ADCを生成した。コンジュゲート1は、GSK2857916(GSK, Trudel et al., 2018, Lancet Oncol. 19:1641-1653; Trudel et al., 2019, Blood Cancer Journal 9:37)のサロゲートADCであり、マレイミド-カプロイルモノメチルアウリスタチンF(mc-MMAF)リンカー-反応性基を、抗BCMA抗体J6M0に結合させることによって生成した。J6M0抗体は、CHO細胞株であるCHOEBNALT(Icosagen)を用いて作製し、ProAにより精製した。mc-MMAFリンカー-反応性基とJ6M0を結合させて、コンジュゲート1を作製した。GSK2857916とは異なり、コンジュゲート1は、Fc-γRIII相互作用を増強する可能性のある非フコシル化抗体を使用していない。
【0249】
9週齢の雌の重症複合免疫不全(SCID)Beigeマウスを、イソフルランで麻酔し、1×10個のヒトARP-1MM細胞とマトリゲルを1:1で混合したものを右後脇腹に皮下移植した。平均腫瘍サイズが約150mm(移植後15日目に相当)になった時点で無作為化と治療開始を行った。処置群の概要は表9のとおりである。全ての試験物質を、10mMクエン酸(pH6.0)、10%スクロース中で配合した。体重および腫瘍サイズを、週に1~2回モニタリングした。試験の主要エンドポイントは、ビヒクルコントロールグループの平均腫瘍サイズが1,500mmを超えた時点とした。
【表9】
【0250】
体重および腫瘍サイズは、Dunnettの多重比較検定を用いた一元的分散分析(ANOVA)により分析した。5%未満の確率(p<0.05)を統計的に有意とみなした。
【0251】
この試験では、確立されたARP-1腫瘍を有する動物を、0.1~8mg/kgまたは2mg/kgの範囲の4つの用量レベルのコンジュゲート4で1回処理した。全ての試験物質は十分に容認され、体重減少に基づいて毒性を示すものはなかった(図2)。
【0252】
ARP-1腫瘍増殖に対する治療の効果は、図3Aおよび図3Bに示されており、両方の薬剤について、活性の増加と用量との間に正の相関があることを示している。BCMA ADCバリアントはいずれも、2つの低用量(0.1および0.5mg)では、ビヒクルコントロールと同様に殆ど活性がなかったが、2mg/kgでは中程度の活性が観察された(図3A)。コンジュゲート4の最高用量である8mg/kgでは、腫瘍退縮へと至り、治療約10日後に腫瘍の再増殖が観察された(図3A)。
【0253】
この研究の結果は、このモデルにおいて、コンジュゲート4の活性は、コンジュゲート1と比較して、統計的に差がなかったことを示している。
【0254】
実施例8
播種性MM.1Sの多発性骨髄腫モデルにおけるBCMAおよびADCバリアントのコンジュゲート4および5の用量応答関係の評価
NSGマウスの播種性MM.1Sモデルにおけるコンジュゲート4の有効性を評価する試験を行った。
【0255】
8~9週齢の雌のNOD重症複合免疫不全(SCID)γ(NSG)マウスに、5×10個の多発性骨髄腫MM.1S細胞を、尾静脈に接種した。体重による無作為化を行い、腫瘍接種後7日目から治療を開始した。処置群の概要は、表10のとおりである。全ての治験薬は、10mMクエン酸(pH6.0)、10%スクロース中で処方した。グループ1~10(n=6/グループ)を、20%以上の体重減少、および嗜眠、後肢麻痺または瀕死状態を含む臨床的徴候を特徴とする生存エンドポイントについてモニタリングした。グループ11~20(n=3/グループ)では、腫瘍細胞の接種後28日目に骨髄を採取して、腫瘍担持を分析した。全グループにおいて、体重は1~2週間に1回モニタリングした。
【表10】
【0256】
骨髄中のhCD138陽性(hCD138+)細胞の検出により、腫瘍の担持を評価して、定量化した。マウスの大腿骨および脛骨から採取した骨髄細胞をプールし、製造元プロトコルに従い、Alexa Fluor 647マウス抗ヒトCD138クローンMI15(BD Biosciences # 562097)を用いて、ヒトCD138+の発現を評価した。CD138は、骨髄中のMMおよび形質細胞に対する特異的な表面抗原である(Chilosi M et.Al. Mod. Pathol. Off. J. U. S. Can. Acad. Pathol. Inc (1999):12, 1101-1106)。直接免疫蛍光フローサイトメトリー分析は、LSRIIフローサイトメーターおよびFACS Divaソフトウェアを用いて行った。データは、Flowjo(Tree Star, Inc., Ashland, OR)を用いて分析した。
【0257】
試験期間中および試験終了時の平均生存率、生存遅延および腫瘍担持を、Dunnettの多重比較検定を用いた一元配置分散分析(ANOVA)を用いて分析した。5%未満の確率(p<0.05)は、統計的に有意であると考えられた。
【0258】
この研究では、接種後7日目に、確立されたMM.1S腫瘍を有する動物を、0.02~2.5mg/kgの範囲の4つの用量レベルのコンジュゲート4または0.5mg/kgのサロゲートコンジュゲート1を用いて1回処理した。
【0259】
図4は、全ての処置群が最小限の体重減少(~5%の体重減少)を誘発し、かつ良好な忍容性を示している。ビヒクルコントロール動物の体重減少は30日目に始まり、その後、進行性の体重減少(20%以上になるまで)が、後肢麻痺、毛球症および嗜眠を含む臨床徴候の発現と同時に起こった。生存曲線を図5に示した。ビヒクル群の平均生存日数は、34.2日であった。0.1mg/kgで約43日目、2.5mg/kgで約77日目まで、コンジュゲート4の投与量の増加に伴い、平均生存日数の直線的な増加が観察された(図5)。0.1mg/kg以上の全ての用量は、ビヒクルコントロールと比較して生存率を有意に増加させた(図3)。
【0260】
本研究の結果は、播種性MM.1Sモデルにおけるコンジュゲート4は、腫瘍担持の軽減および生存期間の延長において、同等用量のコンジュゲート1よりも有意に効果的であることを示している。
【0261】
実施例9
NSGマウスの播種性MM.1SモデルにおけるMM SOCのベルケイド(Velcade)およびダラツムマブまたはダラザレックス(DARZALEX)/ダラツムマブとの組み合わせにおけるコンジュゲート4の有効性評価
NSGマウスの播種性MM.1Sモデルにおいて、コンジュゲート4とMM標準治療(SOC)薬であるベルケイドおよびダラツムマブとの併用の有効性を評価する試験を実施した。
9~12週齢の雌のNOD重症複合免疫不全(SCID)γ(NSG)マウスに、5×10個の多発性骨髄腫MM.1S細胞を、尾静脈に接種した。体重による無作為化を行い、腫瘍接種後7日目から治療を開始した。処置群の概要は、表11の通りである。Sutro社の全ての治験薬は、10mMクエン酸pH6.0、10%スクロース中で処方された。臨床グレードのダラツムマブおよびベルケイド(Pharmaceutical Buyers International)は、製造者の推奨に従って処方した。試験物質は、腹腔内(IP)または静脈内(IV)に注射した。体重を週に1~2回測定した。試験のエンドポイントは、生存であり、20%を超える体重減少、および嗜眠、後肢麻痺または瀕死状態を含む臨床症状を特徴とする。
【0262】
【表11】
【0263】
平均生存日数(日)は、Dunnettの多重比較検定とSidakの多重比較検定を各々用いた一元配置分散分析(ANOVA)により、処理群対ビヒクルまたは関連処理群の効果を相互に比較するために分析された。5%未満の確率(p<0.05)を有意とした。
【0264】
この試験では、接種後7日目に、確立したMM.1S腫瘍を担持する動物に、0.25mg/kgのコンジュゲート4(単回投与)、3mg/kgのダラツムマブ(単回投与)、10mg/kgのダラツムマブ(単回投与)、0.8mg/kgのベルケイド(q7dx2)または0.25mg/kgのコンジュゲート4、および各用量のダラツムマブもしくはベルケイドの組み合わせを投与した。さらに、10mg/kgのコンジュゲート4の高用量を単回投与した。
【0265】
図6から、全ての処置が最初に最小限の体重減少(~5%の体重減少)を誘発し、良好な忍容性であったことが示された。このモデルで予想されるように、ビヒクルコントロール動物の体重減少は、約24日目に始まり、その後、進行性の体重減少(20%以上になるまで)と同時に、後肢麻痺、逆毛および嗜癖などの臨床症状が観察された。図7A~7Cは、0.25mg/kgのコンジュゲート4とMM SOC治療薬を、単剤または併用として処置した場合のカプラン・マイヤー生存曲線である。ビヒクルグループの平均生存日数は、30.6日であった(図7A-7C)。0.25mg/kgのコンジュゲート4または0.8mg/kgのベルケイドを単剤で処置すると、ビヒクル対照と比較して、平均生存期間が有意に長くなった(各々、50.2日および40.6日)(図7A)。コンジュゲート4およびベルケイドの併用投与では、平均生存日数が61.2日となる相加効果を示し、いずれの単剤投与と比べても有意差があることが明らかになった。一方、3または10mg/kgのダラツムマブ単剤投与は、ビヒクルコントロールと比較して生存期間に有意な影響を及ぼさなかった(図7A図7Bおよび図7C)。しかし、いずれかの用量のコンジュゲート4+ダラツムマブでは、単剤単独と比較して、平均生存期間が有意に延長された(各々、71.6日および75.6日)(図7Bおよび図7C)。ダラツムマブ単剤の有効性が無いことから、コンジュゲート4との併用による相乗効果が示唆される。
【0266】
図8Aは、より高用量のコンジュゲート4を10mg/kgで投与した場合のカプラン・マイヤー生存曲線を示す。10mg/kgのコンジュゲート4で処置された動物の平均生存日数は、89.4日であり、ビヒクルコントロールまたは0.25mg/kgのコンジュゲート4と比較して有意に延長した(図8B)。
【0267】
本試験の結果から、コンジュゲート4をベルケイドまたはダラツムマブと併用することにより、コンジュゲート4またはMM SOC単剤と比較して、有効性が有意に増強されることが示された。なお、NSGマウスはNK細胞を持たないため、このモデルで観察されたダラツムマブによる併用効果は、NKに依存しない機能に起因する可能性がある(Phipps C et al., 2015, Ther. Adv. Hem. 63:120-127)。さらに、10mg/kgコンジュゲート4による処置は、ビヒクルまたは0.25mg/kgコンジュゲート4と比較して、生存期間を顕著に延長した。
【0268】
実施例10
皮下ARP-1腫瘍における様々な抗BCMA抗体を用いたBCMA ADCバリアントの効果の評価
この実施例は、皮下ARP-1においてBCMA ADCバリアントの活性を評価するものである。
10週齢の雌SCID beigeマウスをイソフルランで麻酔し、8×10個のヒトARP-1 MM細胞とマトリゲルの1:1混合物を右後脇腹に皮下移植した。平均腫瘍サイズが、約150mmになった時点(移植後14日目)で無作為化と処置開始(処置後0日目)を行った。試験薬および処置群の概要は、表12の通りである。全ての試験物質は、10mMクエン酸(pH6.0)、10%スクロース中で処方された。体重および腫瘍サイズは、少なくとも1~2回/週でモニタリングした。試験の主要エンドポイントは、ビヒクルコントロールグループの平均腫瘍サイズが1,200mmを超えた時点であった。
【表12】
【0269】
腫瘍サイズは、Dunnettの多重比較検定による一元配置分散分析(ANOVA)を用いて分析した。5%未満の確率(p<0.05)を統計的に有意とみなした。
【0270】
この試験では、確立されたARP-1腫瘍を担持する動物に、異なる抗BCMA抗体およびコンジュゲート1を有するBCMA ADCバリアントを、3mg/kgで1回処置した。全ての試験物質は、忍容性が高く、20%より高い体重減少として規定される実質的な毒性は示さなかった。
【0271】
14日目の腫瘍サイズ(ビヒクルの対照腫瘍の平均が、1,200mmを超えたとき)の統計解析は、全ての処置群が対照と比較して有意な効果があることを示した。また、p値からコンジュゲート4(~70%TGI、p<0.001)が有効であることも確認された。継続的なモニタリングにより、コンジュゲート4は高効力であることが示された。コンジュゲート1が最も強力であり、17日目まで腫瘍の退縮と静止を誘導した。
【0272】
実施例11
高用量コンジュゲート4に対する皮下ARP-1多発性骨髄腫腫瘍の応答の評価
より高用量のコンジュゲート4に対する皮下ARP-1多発性骨髄腫腫瘍の応答を評価するための試験を行った。
9週齢の雌の重症複合免疫不全(SCID)Beigeマウスをイソフルランで麻酔し、1×10個のヒトARP-1 MM細胞とマトリゲルを1:1で混合したものを右後脇腹に皮下移植した。無作為化および処置開始(処置後0日目)は、平均腫瘍サイズが約150mmになった時点(移植後14日目)で開始した。処置群は表13に概要を示した。Sutro社の全ての治験薬は、10mMクエン酸(pH6.0)、10%スクロース中で処方された。体重および腫瘍サイズは、週に1~2回モニタリングした。試験の主要エンドポイントは、ビヒクルコントロールグループの平均腫瘍サイズが1,500mmを超えた時点とした。
【0273】
【表13】
【0274】
体重および腫瘍サイズは、Dunnettの多重比較検定を用いた一元的分散分析(ANOVA)により分析した。5%未満の確率(p<0.05)を統計的に有意とみなした。
【0275】
この試験では、確立されたARP-1腫瘍を担持する動物を、5~20mg/kgの範囲の4つの用量レベルのコンジュゲート4または5mg/kgのコンジュゲート1により1回処理した。全ての試験化合物は、良好な忍容性を示し、体重減少を基準とした毒性を示したものはなかった(図9)。しかし、試験の進捗と共に、残りの全ての処置群で体重の増加が観察され、5mg/kgのコンジュゲート1で処置した動物で最も体重の変化が見られた。体重の継続的な増加、および一部の動物で認められた腹部の膨張は、このモデルにおいて一般的に観察される内部ARP-1腫瘍の形成を示唆するものであった。この理由から、この試験は52日目に終了した。
【0276】
ARP-1腫瘍増殖に対するBCMA ADCコンジュゲート4およびコンジュゲート1の治療効果は、図10Aおよび10Bに示される。コンジュゲート4の投与量を、増加させると、直線的な用量反応関係を示す効力増加が観察された(図10A)。ビヒクルグループの平均腫瘍サイズが、試験のエンドポイント(>1,500mm)に達した11日目の腫瘍サイズを分析したところ、コンジュゲート4は、10mg/kgで開始したビヒクル対照と比較して有意な有効性を示した(図10B)。10mg/kg以上のコンジュゲート4および5mg/kgのコンジュゲート1は、腫瘍の退縮を誘導した。8匹の動物のうち4匹の腫瘍の再増殖は、10mg/kgのコンジュゲート4のグループでは約11日目から見られ、一方でより高用量のコンジュゲート4または5mg/kgのコンジュゲート1では増殖抑制が52日目まで維持された(図10Aおよび図10B)。
【0277】
この試験の結果は、15mg/kgを超える用量のコンジュゲート4により、処置後50日を超える期間、腫瘍退縮および増殖抑制期間の延長が誘発されたことを示している。
【0278】
実施例12
受容体の交差反応性分析
本実施例では、コンジュゲート4が、遺伝子組み換え型安定性293T細胞上のヒトBCMA、BAFF-RおよびTACI受容体と交差反応性の結合および認識に関する可能性を評価する。結果から、コンジュゲート4が、遺伝子組み換え型293T細胞上でBMCAに特異的に結合するが、BAFF-RまたはTACIには結合しないことが実証された。コントロールは、コンジュゲート1である。
【0279】
BCMA、B細胞活性化因子受容体(BAFF-R、TNFRSF13Cとも呼ばれる)および膜貫通型活性化因子およびカルシウム調節因子およびシクロフィリンリガンド相互作用因子(TACI、TNFRSF13Bとも呼ばれる)は、TNF(腫瘍壊死因子)リガンド、B細胞活性化因子(BAFF、BLySとも呼ばれる)および増殖誘導リガンド(APRIL)に対する発現プロファイルおよび親和性が異なる相同性関連性III型膜貫通受容体であり、B細胞の生存および成熟を促進する(Hengeveld and Kerstan, 2015, Blood Cancer Journal 2015 Feb 27; 5: e282)。
【0280】
293T細胞を、ATCC(American Type Culture Collection)から入手して、ヒトBCMA、BAFF-RおよびTACIをコードするプラスミドを、Lipofectamine LTX試薬と共にPLUS試薬(ThermoFisher Scientific)を用いてトランスフェクトした。安定型細胞株でのヒトBCMA、BAFF-RおよびTACIの発現は、市販の抗体(BioLegend)、抗BCMA(クローン19F2)、BAFF-R(クローン11C1)およびTACI(クローン1A1)を用いて確認した。
【0281】
ヒトBCMAを安定的に発現する遺伝子組み換え型293T細胞は、高レベルのBCMA発現を維持するために、細胞結合試験の前に、セクレターゼ阻害剤である1M DAPT(Santa Cruz Biotechnology)で一晩処理した。BCMA、BAFF-RおよびTACIを安定的に発現する親および遺伝子組み換え型293T細胞を回収し、洗浄し、FACSバッファー(1%ウシ血清アルブミンおよび0.05%v/vアジ化ナトリウムを含むDPBSバッファー)に再懸濁した。細胞を96ウェルプレートに播種し(1ウェルあたり100K)、Absとインキュベートした。67nMの抗ヒトBCMA ADCを、氷上で1時間インキュベートした。ADCの結合は、フィコエリスリン標識抗ヒトFc Ab(Jackson ImmunoResearch, West Grove, PA)を用いて、氷上で1時間後に検出した。細胞を、BD FACS Cantoシステムを用いて分析した。FACSデータは、Flowjoソフトウェアを用いて分析し、細胞結合ヒストグラムを作成した。
【0282】
飽和濃度(67nM)で試験したコンジュゲート4およびコンジュゲート1のサロゲートベンチマークADCの両方は、ヒトBCMAを発現する293T細胞に特異的な結合を示したが、BAFF-RおよびTACIは示さなかった(図12)。これらの結果から、コンジュゲート4は、BCMAに特異的に結合し、BAFF-RとTACIには結合しないことが示された。
【0283】
実施例13
遊離薬剤分解生成物に対するADCのインビトロ細胞毒性
本実施例では、異なる多発性骨髄腫細胞株のパネルに対して、コンジュゲート4およびコンジュゲート1(マレイミドカプロイルモノメチルウリスタチンF)と、各々の遊離薬剤分解生成物の相対的な殺細胞活性を比較した。
【0284】
ADCおよびその各遊離薬剤分解生成物の細胞毒性効果を、2つの別々の実験において、腫瘍細胞増殖アッセイで評価した。96ウェル平底半面積プレートに1ウェルあたり2万個の細胞を播種し、細胞培養液中の細胞に、ADCまたは遊離薬剤分解生成物を12.5nM~0.049nM(2倍希釈)まで添加し(各実験について、n=3繰り返す)、遊離薬剤分解生成物を2μM~0.03nM(4倍希釈)まで添加して開始した。細胞を、COインキュベーターを用いて37℃で3日間培養した。細胞生存率の測定のために、Cell Titer-Glo(登録商標)試薬(Promega Corp, Madison, W)を加えて、製造者のプロトコルに従ってプレートを処理して値を読み取った。ENVISION(登録商標)プレートリーダー(Perkin-Elmer;Waltham, MA)を用いて相対的な発光を測定した。コントロールとして未処理の細胞を用いて、相対的な発光の測定値を、%生存率に変換した。データは、GraphPad Prism統計ソフトを用いて、log(阻害剤) vs 応答、可変傾斜、4-パラメーターフィット方程式を用いた非線形回帰分析にフィッティングさせた。データは、ADCの投与量(nM)に対する未処理のコントロール細胞に対する相対的な生存率(%)で表し、エラーバーは3回の標準偏差(SD)を示した。
【0285】
2つの独立した実験において、コンジュゲート4(表14)は、BCMA陽性の3つのMM細胞株(NCI-H929、OPM2およびU266B1)(表14)に対して、EC50値が0.8~1.8nMの範囲で、同様の強力な活性を示した。これに対し、J6M0-mcMMAFをベンチマークとしたADCであるコンジュゲート1(表14)は、EC50値(0.2~0.9nM)により、僅かに高い殺細胞効力を示したが、コンジュゲート4と同程度の%範囲の殺細胞であった。両ADCは、BCMA陰性のK562細胞株に対しては活性を示さない。
【0286】
遊離薬剤化合物としてのコンジュゲート4の活性な分解生成物である4-1および4-2(表14)は、BCMA陰性のK562細胞株を含む3つのBCMA陽性MM細胞株全てに対して、コンジュゲート4よりもはるかに弱い活性を示した。さらに、遊離薬剤化合物としてのコンジュゲート1の活性な分解生成物である1-1(表14)もまた、4つの細胞株全てに対してコンジュゲート4に比べて弱い殺細胞活性を示した。
【0287】
これらの実験から得られたデータは、抗BCMA ADCコンジュゲート4が、放出された分解生成物よりもより強力であることを示しており、このことは、コンジュゲート4の細胞毒性は、主にMM細胞におけるBCMAの標的化および内在化に起因することを示唆している。
【0288】
【表14】
【0289】
実施例14
多発性骨髄腫細胞株とGFPコントロールとのインビトロ細胞毒性比較
本実施例では、3つのBCMA陽性MM細胞株(NCI-H929、U266B1およびOPM-2)および1つのBCMA陰性細胞株(K562)において、DAR4での各抗GFP陰性コントロールコンジュゲート20と比較した、コンジュゲート4の殺細胞活性を評価した。
【0290】
この試験の陰性コントロールADCとして、抗GFP IgGを細胞不含(CF)産生抗体を作製した。この抗体を、抗GFP重鎖上の同じY180およびF404部位で同じ薬剤リンカーとコンジュゲートさせて(コンジュゲートMを参照のこと)、コンジュゲート20を得た。
【0291】
コンジュゲート4および各抗GFP陰性コントロールADCであるコンジュゲート20の細胞毒性効果を、2つの別々の実験において、腫瘍細胞増殖アッセイで評価した。その両試験の結果、3つ全てのBCMA陽性MM細胞株(NCI-H929、OPM-2およびU266B1)に対して、コンジュゲート4は、0.7~2.0nMの範囲のEC50値で、強力な殺細胞活性を示した(表15)。BCMA陰性のK562細胞株では、コンジュゲート4による細胞死は観察されなかった。一方、抗GFPコンジュゲート20の陰性コントロールADCは、試験した4つの細胞株のいずれに対しても何ら殺細胞活性を示さなかった。これらの試験結果から、BCMA陽性MM細胞株において、BCMA標的化によるADC取り込みにより、コンジュゲート4のインビトロの細胞死効果が発揮されることが示唆された。
【表15】
【0292】
実施例15
コンジュゲートの殺細胞活性の特異性
本実施例では、BCMAを発現する多発性骨髄腫細胞に対するコンジュゲート4の特異的な殺細胞活性を評価する。
過剰量の非コンジュゲート抗BCMA抗体である2265-F02および組換えヒトBCMA細胞外ドメイン(ECD)タンパク質(カタログ310-16, PeproTech, NJ, USA)の非存在下または存在下でのADC(コンジュゲート4、コンジュゲート1)の細胞毒性効果を、腫瘍細胞増殖アッセイで評価した。96ウェルの平底半面プレートに1ウェルあたり2万個の細胞を播種した。2μM濃度(ADC最高濃度の100倍過剰)の組換えヒトBCMA ECDタンパク質を、細胞に添加する前にADCと室温で1時間プレインキュベートさせ、ADC上のBCMA結合部位をブロッキングした。非コンジュゲート抗BCMA抗体である2265-F02を、室温で1時間、500nMの濃度(ADC最高濃度の25倍過剰)にて細胞に添加した。その後、ADCの2倍の連続希釈液を、開始濃度20nM、最終濃度0.078nMでウェルに添加した。細胞は、COインキュベーター内にて37℃で3日間培養した。細胞生存率の測定には、Cell Titer-Glo(登録商標) 試薬(Promega Corp, Madison, WI)を加え、メーカーのプロトコルに従ってプレートを処理して計測した。ENVISION(登録商標)プレートリーダー(Perkin-Elmer; Waltham, MA)を用いて相対的な発光を測定した。コントロールとして未処理の細胞を用いて、相対的な発光の測定値を%生存率に変換した。データ(2回の平均値)は、GraphPad Prism統計ソフトウェアを用いて、log(阻害剤) vs 応答、可変傾斜、4-パラメーターフィット方程式を用いた非線形回帰分析にフィッティングさせた。データは、未処理のコントロールウェルに対する細胞生存率の%として、ADCの用量をナノモル(nM)でプロットし、エラーバーは2回の標準偏差(SD)を示す。
【0293】
コンジュゲート4およびコンジュゲート1のサロゲートベンチマークADC(表16)は、試験した4つのBCMA陽性MM細胞株全てに対して強力な殺細胞活性を示し(表16)、EC50値は、0.4~3.3nMの範囲であった(表16)。過剰量のコンジュゲートしていない抗BCMA Abである2265-F02または組換えヒトBCMA ECDタンパク質の存在下では、BCMA陽性の4つの細胞株全てにおいて、コンジュゲート4またはコンジュゲート1の細胞死は観察されなかった。この試験データは、コンジュゲート4のインビトロ殺細胞効果がBCMAに特異的であることを示している。
【0294】
表16:異なる細胞株に対する殺細胞EC50およびスパンのまとめ
【表16】
【0295】
実施例16
インビトロの細胞結合および細胞殺傷:多発性骨髄腫細胞株
本実施例では、BCMAを発現している多発性骨髄腫(MM)細胞株の大規模パネルにおいて、コンジュゲート4およびコンジュゲート1(マレイミドカプロイルモノメチルアウリスタチンF)のインビトロでの細胞結合および細胞殺傷力を比較している。この試験では、コンジュゲート4は、サロゲートベンチマークADCと比較して、より優れた細胞結合および同様の強力な細胞殺傷を示した。
【0296】
NCI-H929、U266B1、RPMI-8226、MM.1S、MC/CARおよびK-562細胞を、ATCC(American Type Culture Collection, Manassas, VA, USA)から入手した。OPM-2細胞を、The Leibniz Institute DSMZ (German Collection of Microorganisms and Cell Cultures GmbH, Braunschweig, Germany)から入手した。ARP-1細胞は、Jonathan J. Keats博士の研究室(the Translational Genomics Research Institute (Phoenix, Arizona, USA))より寄贈された。全ての細胞株は、20%熱不活性化子ウシ血清(Thermo Scientific, Grand Island, NY)、2mM グルタマックス(glutamax)(Thermo Scientific, Grand Island, NY)および1x ペニシリン/ストレプトマイシン(Corning, Corning, NY)を含むRPMI高グルコース培地(Corning, Corning, NY)中で維持された。
【0297】
腫瘍細胞を回収して、洗浄し、FACSバッファー(1%ウシ血清アルブミンおよび0.05%v/vアジ化ナトリウムを含むDPBSバッファー)に再懸濁した。2.5μgのヒトFc Block(BD Biosciences, cat 564220)と共に、室温で10分間プレインキュベートしたMM細胞を、96ウェルプレートに播種し(1ウェルあたり100~200K)、抗体(66.7nMから3倍の連続希釈液で滴定)と、1時間氷上でインキュベートした。抗体の結合は、氷上で1時間、フィコエリスリン標識抗ヒトFc Ab(Jackson ImmunoResearch, West Grove, PA)を用いて検出した。細胞を、BD FACS Cantoシステムを用いて分析した。蛍光活性化細胞選別(FACS)データを、Flowjoソフトウェアを用いて分析し、平均蛍光強度(MFI)を算出し(n=3回繰り返す)、GraphPad Prismソフトウェアを用いてデータ(平均MFI+/-平均の標準誤差[SEM] vs 抗体のnM)を作成した。
【0298】
コンジュゲート4である2265-F02(コンジュゲート4の陰性の非コンジュゲート抗体バージョンとして)およびコンジュゲート1のサロゲートベンチマークADCの細胞毒性効果を、腫瘍細胞増殖アッセイで評価した。
【0299】
コンジュゲート4およびその非コンジュゲート抗体バージョンである2265-F02の両方は、6つのMM細胞株(NCI-H929、ARP-1、OPM-2、U266B1、MM.1SおよびRPMI-8226)に対して、Kが0.9~3.9nMの範囲で、同様に高い親和性結合を示した。これに比べ、コンジュゲート1のmcMMAFサロゲートベンチマークADCは、より弱い結合を示した。2265-F02の結合曲線は、66.7nMで飽和しなかった。試験した3つ全てのAbsは、BCMA陰性骨髄腫MC/CAR細胞に有意な結合を示さなかった(表17)。この結果から、F404/Y180部位上の薬剤-リンカーのコンジュゲーションは、抗BCMA抗体の結合に影響を与えず、コンジュゲート4のADCは、BCMA発現MM細胞株に対して高親和性の結合を示すことが判った。
【0300】
BCMAを発現する6つのMM細胞株の内の5つの細胞株において、コンジュゲート4とコンジュゲート1の両サロゲートベンチマークADCは、同様の強力な殺細胞活性を示した。細胞殺傷力EC50は、コンジュゲート4のADCでは0.70~2.1、コンジュゲート1のサロゲートベンチマークADCでは0.29~1.4nMの範囲であった(表18)。BCMA低発現RPMI-8226 MM細胞株では、両ADCともに低い殺細胞活性が認められた。この結果から、コンジュゲート4は、複数のMM細胞株に対して強力な細胞殺傷能力を示すことが判った。
【0301】
コンジュゲート4は、BCMA発現MM細胞株に高い親和性で結合し、BCMAを発現している6つのMM細胞株の内の5つの細胞株において、コンジュゲート1のサロゲートベンチマークADCと同様の強力な殺細胞活性を示した。
【0302】
【表17】
【表18】
【0303】
実施例17
インビトロの細胞結合および細胞殺傷:種の交差反応活性
本実施例では、ヒト、カニクイザル、ラットまたはマウスのBCMAを過剰発現させた安定型293T細胞における、コンジュゲート4およびコンジュゲート1(マレイミドカプロイルモノメチルアウリスタチンF)のサロゲートベンチマークADCのインビトロの細胞結合力および細胞殺傷力を比較した。
【0304】
293T細胞を、ATCC(American Type Culture Collection)から購入し、Lipofectamine LTX試薬と共にPLUS試薬(ThermoFisher Scientific)を用いて、ヒト、カニクイザルまたはラットのBCMAをコードするプラスミドによりトランスフェクトした。293T-マウスBCMA細胞は、FUGENE HD試薬(Promega)を用いてマウスBCMA(Invivogen)をコードするプラスミドでHEK293T細胞にトランスフェクトすることにより作製した。
【0305】
ヒト、カニクイザルまたはラットのBCMAを、安定的に発現する遺伝子組み換え293T細胞を、細胞結合試験の前に、γ-セクレターゼ阻害剤である1μM DAPT(Santa Cruz Biotechnology)により一晩処理し、高レベルのBCMA発現を維持させた。細胞を回収して洗浄し、FACSバッファー(1%ウシ血清アルブミンおよび0.05%v/vアジ化ナトリウムを含むDPBSバッファー)に再懸濁した。細胞を、96ウェルプレートに播種し(1ウェルあたり100K)、氷上で1時間、Abs(200nMから2倍の連続希釈物で滴定)と共にインキュベートした。Abの結合は、氷上で1時間、フィコエリスリン標識抗ヒトFc Ab(Jackson ImmunoResearch, West Grove, PA)を用いて検出した。細胞を、BD FACS Cantoシステムを用いて分析した。
【0306】
293T-マウスBCMA細胞を回収して洗浄し、FACSバッファー(1%ウシ血清アルブミンおよび0.05%v/vアジ化ナトリウムを含むDPBSバッファー)に懸濁した。細胞を96ウェルプレートに播種し(1ウェルあたり100k)、氷上で1時間、抗体(200nMからハーフlog連続希釈)とインキュベートした。細胞を洗浄した後、氷上で1時間、フィコエリスリン標識抗ヒトFc二次抗体(Jackson ImmunoResearch, West Grove, PA)を用いて抗体結合を検出した。細胞を、BD LSR-Fortessa X-20フローサイトメトリーシステムを用いて分析した。FACSデータを、Flowjoソフトウェアを用いて分析し、幾何学的蛍光強度(gMFI)を算出し(n=3回繰り返す)、GraphPad Prismソフトウェアを用いてデータ(geo.Mean MFI+/-SEM vs. log nM Ab)を作製した。
【0307】
SP8919 ADCおよびJ6M0-mcMMAFサロゲートベンチマークADCの細胞毒性効果を、腫瘍細胞増殖アッセイで評価した。96ウェル平底半面積プレートに1ウェルあたり500個の細胞を、一晩かけてプレーティングし、翌日、ADCを、20nM(2倍希釈)から開始して細胞培養液中の細胞に添加した(n=3回繰り返す)。細胞を、COインキュベーターにて37℃で5日間培養した。細胞生存率の測定には、Cell Titer-Glo(登録商標)試薬(Promega Corp, Madison, WI)を加え、製造者のプロトコルに従ってプレートを処理し、値を計測した。ENVISION(登録商標)プレートリーダー(Perkin-Elmer; Waltham, MA)を用いて相対的な発光を測定した。コントロールとして未処理の細胞を用いて、相対的な発光の測定値を、%生存率に変換した。データは、GraphPad Prism統計ソフトウェアを用いて、log(阻害剤) vs 応答、可変傾斜、4-パラメーターフィット方程式を用いた非線形回帰分析にフィッティングさせた。データは、ADCの投与量に対する相対的な細胞生存率(%)として表した(平均+/-SEM)。
【0308】
コンジュゲート4およびその非コンジュゲートAbバージョンである2265-F02 Y180/F404は、共にヒトおよびカニクイザルのBCMAを過剰発現させた293T細胞に対して同様に高い親和性の結合を示したが、親の293T細胞、またはラットBCMAまたはマウスBCMAを安定にトランスフェクトして発現させた細胞には結合しなかった。ヒトおよびカニクイザルのBCMAを発現する293T細胞へのKd結合は、1.4~2.8nMの範囲であった(表19)。これに対して、コンジュゲート1のサロゲートベンチマークADCは、Kd値が7.1~8.6nMの範囲にて僅かに弱い結合活性を示した(表19)。この結果は、F404/Y180部位でのリンカーペイロードのコンジュゲートは、コンジュゲートされていないAbコントロールと比較して、抗BCMAコンジュゲート4の結合には影響を与えず、コンジュゲート4は、ヒトおよびカニクイザルのBCMAに結合するが、ラットまたはマウスのBCMAには結合しないことを示している。
【0309】
陽性種の交差反応性の細胞結合の結果に基づいて、ヒトまたはカニクイザルの霊長類BCMAを発現する293T細胞において、コンジュゲート4およびコンジュゲート1のサロゲートベンチマークADCの殺細胞活性を比較した。コンジュゲート4およびコンジュゲート1のサロゲートベンチマークADCは共に、親の293T細胞ではなく、ヒトおよびカニクイザルの霊長類BCMAを発現する安定的にトランスフェクトされた293T細胞に対して、同等の殺細胞活性を示した。結果は、コンジュゲート4が、コンジュゲート1のサロゲートベンチマークADCと同様のカニクイザルBMCA結合反応性を有することを示しており、この事は殺細胞アッセイによって確認された。
【0310】
全体として、この試験の結果から、コンジュゲート1およびコンジュゲート4は、ヒトおよびカニクイザルの霊長類BCMAを過剰発現させた293T細胞に対して、特異的な細胞結合認識および殺細胞感受性を示したが、ラットおよびマウスのBCMAには結合しなかったことが示された。この事は、コンジュゲート1のサロゲートベンチマークADCと同様に、コンジュゲート4もまた、カニクイザルで毒性評価について試験できることを示唆している。
【0311】
【表19】
【0312】
実施例18
BAFFおよびAPRILリガンドへのBCMA結合のADCブロッキング
この実施例では、リガンドBAFF(B細胞活性化因子)およびAPRIL(増殖誘導リガンド)に対するBCMA受容体の結合を遮断する際に、コンジュゲート4のADCおよびコンジュゲート1のサロゲートベンチマークADCを比較している。
【0313】
BCMAは、リガンドであるBAFFおよびAPRILに結合して、骨髄形質細胞および形質芽細胞の生存、ならびにMM細胞の増殖および生存を媒介する(Tai et al., 2014, Blood 123(20):3128-38))。J6M0 Abは、BCMAを発現しているMM細胞を標的とするADCであることに加えて、別の治療作用機序としてBAFFおよびAPRILの結合を阻害することが報告されている(Tai et al., 前掲)。
【0314】
組換えヒトBCMA ECDタンパク質(Acro Biosystems)を、96ウェルNunc MaxiSorpプレートにおいて、炭酸塩/炭酸水素塩(pH9.6)バッファー(Sigma-Aldrich)中に0.5μg/mlで、4℃で一晩コーティングした。以下の全ての手順を、すべて室温で行った。プレートをPBSTバッファー(DPBS+0.05% Tween-20)で洗浄し、ELISAブロッキングバッファー(DPBS+1% BSA)で1時間ブロッキングした。Absとリガンドを、ELISA希釈用バッファー(DPBS+0.5%BSA+0.05%Tween-20)で希釈し、最終濃度200nMから開始して1:1の体積比で混合した。試験用Absについては、組換えリガンドであるBAFFまたはAPRILの最終濃度が、各々1ng/mlおよび10ng/mlとなるように2倍に連続希釈した。Abとリガンドの混合物を、ヒトBCMAを被覆したプレートに添加し、2時間結合させた。プレートを洗浄し、ストレプトアビジン結合HRP Ab(Jackson ImmunoResearch)を、ELISA希釈用バッファーで1,000倍に希釈してプレートに加え、暗所で1時間反応させた。プレートを洗浄し、TMB基質(SureBlue Reserve, KPL)を暗所で20分間添加して反応させた。基質の反応を、同量の1Mリン酸でクエンチし、プレートをM5 SpectraMaxプレートリーダー(Molecular Devices)にて450nmで計測した。OD値をプロットし、GraphPad Prismソフトウェアを使用して、Hillスロープ曲線(対数変換)を用いて1部位に特異的な結合を作成し、IC50値を決定した(平均±SEM、n=2)。
【0315】
コンジュゲート4のADCおよびコンジュゲート1のサロゲートベンチマークADCの両方は、ELISAによるリコンビナントBCMAへのBAFF(表20)およびAPRIL(表21)リガンド結合の両方をブロックするのに同等の活性を示し、IC50値は、6.8~8.9nMの範囲であった。抗Her2抗体トラスツマブを、アッセイの陰性コントロールとして加えたところ、BCMAへのBAFFおよびAPRILの結合はブロックされなかった。
【0316】
この結果から、BCMAに対するBAFFおよびAPRILリガンドの結合の両方を、コンジュゲート4ADCが阻害することが示され、コンジュゲート4ADCは、MM細胞の増殖を潜在的に減少させるというコンジュゲート1と同じ追加の作用機序を共有している可能性を示唆している。
【0317】
【表20】
【表21】
【0318】
実施例19
コンジュゲート4の化学特性
コンジュゲート4は、抗体と薬剤-リンカーとのコンジュゲートである。コンジュゲート4は、グリコシル化されていない抗B細胞成熟抗原(抗BCMA)ヒト化IgG1抗体-薬剤コンジュゲート(ADC)であって、EUナンバリングによる公称位置180および404(実際の位置186および410)の非天然アミノ酸(nnAA)パラアジドメチル-L-フェニルアラニン(pAMF)残基を、20-メチル-1-(3-メチル-3,9-ジヒドロ-8Hジベンゾ[b,f][1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]アゾシン-8-イル)-1,5,21-トリオキソ-8,11,14,17-テトラオキソ-4,20-ジベンザペンタコサン-25-オイル(脱アセチル)メイタンシノイド薬剤-リンカーに共有結合によりコンジュゲートされた抗BCMA IgG1ヒト化抗体(アグリコシル化2265-F02)を含む。ADCであるコンジュゲート4は、薬剤:抗体比(DAR)が4の単一で優勢なコンジュゲートされた種類(2つのレジオ異性体の~1:1の混合物として存在)である。コンジュゲート4の分子量は、約151kDaである。本明細書に記載した方法を用いて調製したコンジュゲート4の試料は、本明細書に記載の方法で測定および計算したところ、3.9~4のDARを示した(例えば、実施例6を参照されたい)。
【0319】
コンジュゲート4のジスルフィド結合は、以下の通りである:鎖間(LC1):Cys24-Cys89;Cys135-Cys195、鎖間(HC1):Cys23-Cys97;Cys150-Cys206;Cys267-Cys327;Cys373-Cys431、鎖間(HC2):Cys23-Cys97;Cys150-Cys206;Cys267-Cys327;Cys373-Cys431、鎖間(LC2):Cys24-Cys89;Cys135-Cys195、Intra-LC1-HC-1:Cys215-Cys226、Intra-LC2-HC-2:Cys215-Cys226、Intra-HC-HC-Hinge-1:Cys232-Cys232、Intra-HC-HC-Hinge-2:Cys235-Cys235。
【0320】
実施例20:配列
表22は、本明細書において引用される配列を示す。
【表22】
【表23】
【表24】
【表25】
【表26】
【表27】
【0321】
均等物
上記の開示は、独立した有用性を持つ複数の異なる発明を包含する場合がある。これらの発明の各々は、その好ましい形態(複数可)にて開示されているが、様々な変形が可能であるため、本明細書に開示および図示されたそれらの特異的な実施形態は、限定的な意味として理解されるべきでない。本発明の主題は、本明細書に開示された様々な要素、特徴、機能および/または特性の全ての新規および自明でない組み合わせ、およびサブコンビネーションを含むものである。以下の特許請求の範囲は、特に、新規かつ自明でないと考えられる特定の組み合わせおよびサブコンビネーションを意図している。特徴、機能、要素、および/または特性の他の組み合わせおよびサブコンビネーションにおいて具体化された発明は、本願、本願の優先権主張出願または関連出願の権利を求め得る。このような請求は、異なる発明または同じ発明を対象としているかどうか、および元の請求と比較して範囲が広いか、狭いか、同等か、または異なるかに拘わらず、本開示の発明の主題に含まれるものと見なされる。
【0322】
本明細書または図に記載された任意の実施形態から、1またはそれ以上の特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書または図に記載された任意の他の実施形態の1つまたはそれ以上の特徴と組み合わせることができる。
【0323】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願は、あたかも個々の刊行物または特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているものとして、参照により本明細書に組み込まれる。前述の発明は、理解を明確にする目的で、図示および実施例により、ある程度詳細に説明されているが、添付の特許請求の範囲の精神または範囲から逸脱することなく、特定の変更および修正がなされ得ることは、本発明の教示に照らして当業者には容易に明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
2022531001000001.app
【国際調査報告】