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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(54)【発明の名称】通気性フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20220629BHJP
   B29C 55/06 20060101ALI20220629BHJP
   B29C 48/10 20190101ALI20220629BHJP
【FI】
C08J5/18 CES
B29C55/06
B29C48/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021538995
(86)(22)【出願日】2020-05-02
(85)【翻訳文提出日】2021-11-01
(86)【国際出願番号】 EP2020062225
(87)【国際公開番号】W WO2020225165
(87)【国際公開日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】102019111445.4
(32)【優先日】2019-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521100003
【氏名又は名称】アールケイダブリュー エスイー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】コプリン,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ベッカー,デニス
(72)【発明者】
【氏名】マイアー,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】アールト,トーマス
【テーマコード(参考)】
4F071
4F207
4F210
【Fターム(参考)】
4F071AA18
4F071AA20
4F071AB21
4F071AF08Y
4F071AF13Y
4F071AF15Y
4F071AF61Y
4F071AH19
4F071BB08
4F071BC01
4F071BC10
4F207AA08
4F207AA11
4F207AB11
4F207AG01
4F207AH63
4F207AR12
4F207AR17
4F207KA01
4F207KA17
4F207KA19
4F207KL88
4F207KM15
4F210AA08
4F210AA11
4F210AC03
4F210AG01
4F210AH63
4F210AR01
4F210AR06
4F210AR12
4F210AR20
4F210QA03
4F210QC02
4F210QG02
4F210QG18
4F210QM15
(57)【要約】
本発明は通気性フィルムに関する。フィルムの比落球衝撃抵抗は100mm毎グラムポリマー毎平方メートルを超える。フィルムの透湿性は少なくとも1000g/m2・24hrである。フィルムの機械方向の破断伸度は200%未満である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性フィルムであって、
前記フィルムの比落球落下高さは100mm毎グラムポリマー毎平方メートルを超え、前記フィルムの比ダート落下は19g毎グラムポリマー毎平方メートルを超え、又は、前記フィルムの比水柱高さは90mm毎グラムポリマー毎平方メートルを超え、
前記フィルムの透湿性は少なくとも1000g/m・24hrであり、
前記フィルムの機械方向の破断伸度は200%未満であることを特徴とする、通気性フィルム。
【請求項2】
前記フィルムの目付は、17g/m未満、好ましくは16g/m未満、特に15g/m未満であることを特徴とする、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記フィルムのメルトフローインデックスは、それぞれ190℃、5kgで、4g/10min未満、好ましくは3.7g/10min未満、特に3.4g/10min未満であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のフィルム。
【請求項4】
前記フィルムの機械方向の収縮は、4%未満、好ましくは3.5%未満、特に3%未満であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項5】
前記フィルムの充填材含有率は、20重量%を超え、好ましくは30重量%を超え、特に40重量%を超え、及び/又は90重量%未満、好ましくは80重量%未満、特に70重量%未満であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項6】
前記フィルムは、比較的密度が低いLLDPE成分を含み、この成分の密度は0.925g/cm未満、好ましくは0.920g/cm未満であり、及び/又はこの成分の密度は0.900g/cmを超え、好ましくは0.910g/cmを超え、
前記フィルムは、比較的密度が高いLLDPE成分を有し、この成分の密度は0.925g/cmを超え、好ましくは0.930g/cmを超え、及び/又はこの成分の密度は0.950g/cm未満、好ましくは0.945g/cm未満であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項7】
比較的密度が低い前記LLDPE成分の比率は、10重量%を超え、好ましくは20重量%を超え、特に30重量%を超え、及び/又は60重量%未満、好ましくは50重量%未満、特に40重量%未満であることを特徴とする、請求項6に記載のフィルム。
【請求項8】
比較的密度が高い前記LLDPE成分の比率は、2重量%を超え、好ましくは4重量%を超え、特に5重量%を超え、及び/又は12重量%未満、好ましくは10重量%未満、特に8重量%未満であることを特徴とする、請求項6又は7に記載のフィルム。
【請求項9】
前記フィルムは、ポリプロピレン成分を、好ましくは0.5重量%を超え、好ましくは1重量%を超え、特に2重量%を超え、及び/又は12重量%未満、好ましくは8重量%未満、特に6重量%未満の比率で含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項10】
前記フィルムの厚みは16μm未満、好ましくは14μm未満、特に12μm未満であり、及び/又は4μmを超え、好ましくは6μmを超え、特に8μmを超えることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項11】
通気性フィルムを製造するためのプロセスであって:
充填材と比較的密度が低いLLDPE成分と比較的密度が高いLLDPE成分とを含む組成物を製造するステップと、
前記組成物をインフレーション成形することによりフィルムを得るステップと、
前記フィルムを機械方向に延伸するステップと、
前記フィルムを少なくとも1個の温度制御されたローラ上を通過させることにより、復元収縮の傾向を低減するステップと、
を含むプロセス。
【請求項12】
前記フィルムは、280%超、好ましくは300%超、特に320%超、及び/又は400%未満、好ましくは375%未満、特に350%未満延伸されることを特徴とする、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記フィルムは、70℃を超える温度、好ましくは80℃を超える温度、特に90℃を超える温度、及び/又は120℃未満の温度、好ましくは110℃未満の温度、特に100℃未満の温度で延伸されることを特徴とする、請求項11又は12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記インフレーション成形のブローアップ比は、1:1.5を超え、好ましくは1:2.0を超え、特に1:2.5を超え、及び/又は1:4.5未満、好ましくは1:4.0未満、特に1:3.5未満であることを特徴とする、請求項11~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
請求項1~10のいずれか一項に記載の通気性フィルムの、オムツのバックシートとしての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気性フィルム、それを製造するためのプロセス、及びオムツのバックシートとしてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨てのオムツの外側は、排泄物の滲み出しを防ぐ不透液性のフィルムから形成されている。このフィルムによって形成される層は「バックシート」と呼ばれ、支持体(carrier)の反対側に配置されている。当初は非通気性のプラスチックフィルムが使用されていたが、既にかなり以前から、現在の通気性を有するフィルムが採用されている。液体を透過させずに水蒸気を透過させるこのようなフィルムを用いると、その通気性のお陰でオムツが自然に乾くため、着用中にほてりを感じることがなく、履き心地が格段に改善される。
【0003】
更に、通気性を有することはオムツかぶれの防止にもなる。水分を逃がすことでオムツ内側の環境が肌に優しいものになり、したがって皮膚の炎症が大幅に抑えられる。
【0004】
透湿性基材の使用は、早くも1964年に米国特許第3,156,242号に記載されており、ここでは微多孔性フィルムが使用されている。
【0005】
1975年の米国特許第3,881,489号には、2層の組合せを備える通気性基材が記載されている。その第1層は、貫通孔を有する空隙容積(empty volume)の小さい熱可塑性フィルムであり、第2層は空隙容積の大きい多孔性及び疎水性を有する薄い材料である。
【0006】
通気性基材がこのように発展したことにより、不透過性基材と比べると一定の改善が見られたが、その次に求められたのは、より効果的な透湿性を示すと同時に液体の滲み出しを有効に防ぐフィルムであった。
【0007】
1987年の欧州特許第0232060B1号には、無機充填材を導入した後にフィルムを延伸することによって通気性多孔性フィルムを製造するプロセスが記載されている。
【0008】
このような充填材を充填した(filled)通気性フィルムが多く開発されるようになってから、衛生分野において通気性を有する液密なフィルムを使用することへの要求が世界市場で高まり続けている。つまり、液密性及び高い透湿性を両立させることが要求されている。透湿性が不充分であった場合、ほてり、べたつき、肌に良くない製品となり、消費者に受け容れられないであろう。
【0009】
更に、最近のバックシートフィルムは、軟かさ(softness)、しなやかさ(suppleness)、パチパチという音がしにくいこと(low crackle)、及び理想的な布のような手触り(textile grip)等の特性を有していなければならない。
【0010】
使い捨てオムツの場合、物品表面に図柄が描かれていることが望ましい。消費者にとっては、白色度の高さが非常に重要であることが分かっている。黄色っぽい色や純白でない白色(off-white)は消費者に受け容れられない。白色度が高いと高品質に見えるため、これはオムツの売上を伸ばすためには欠かせない。したがって、バックシートフィルムには高い不透明性が求められる。
【0011】
フィルムが高い不透明性を有することに加えて、乳児用オムツのデザインは、基本的に、そのブランド及びサイズに特有の印刷された図柄が決まっている。以前は単純なエンドレス印刷された柄(repeat print)を基調とするものが多かったが、現在は、印刷される全ての要素がオムツの決まった位置に正確に配置される、見当合わせ印刷(registered print)が一般的である。オムツ加工機(diaper converter)が非常に速い速度で運転されると、見当精度に求められる要求が高くなる。その理由は、見当位置(register length)がずれると、バックシートと加工機との同期が失われ、その結果としてオムツの廃棄が必要になる可能性があるためである。
【0012】
近年、オムツのデザインが進化する速度も非常に速くなっている。そのため、オムツ内に存在する吸収体の厚みは薄さを増す一方であるが、これは特に、高吸収体の使用により実現することができた。この高吸収体は、粒子径の大きな粉体形態で用いられている。このような粒子径の大きい材料を使用していても尚、個々の粒子がフィルムを貫通することは有効に防止しなければならない。したがって、排泄物の滲み出しを有効に防ぐように、バックシートには高い耐貫通性が求められる。
【0013】
同様に、資源の節約及び持続可能性を理由に、フィルムの厚みは可能な限り薄くすることが必要であり、また、充填材が充填されたフィルムにおいて、ポリマーの比率は可能な限り低くすることが必要である。
【0014】
オムツの外側には、一般に、フィルムに布のような手触りを付与するために不織材料が適用されている。使用される不織布も同様に、資源の節約を理由に目付が低下し続けている。特にオムツの着用時にオムツを閉じる際に、オムツの後ろ身頃にある伸縮性を有するサイドパネル(elastic ear)を胴周りに沿って引き寄せると、横方向に大きな引張力が発生し、この力を通気性フィルム及び不織布から構成される貼合体に吸収させなければならない。不織布の目付が減れば、フィルムはより大きな力を吸収しなければならなくなる。従来のフィルムはそれに適していない。
【0015】
バックシートフィルムに求められる更なる要件は、極めて速い速度で動くオムツ製造機(加工機)でフィルムのウェブを処理する際に必要な最低限の引張強度を有することである。製造されるオムツの生産量は増加する一方である。数年前のオムツの生産速度は1分当たり600枚が一般的であったが、今日では1分当たり1000枚以上製造する工場が使用されている。ライン速度が上昇すると、フィルムに作用する力のピーク値がより高くなる。したがって、特に完成したオムツを折り畳む際、及びそれに続いてオムツから空気を押し出すために圧縮を行う際にフィルムに課される要求は非常に高くなる。
【0016】
これに加えて、最近のオムツのデザインの変化により、バックシートフィルムに高い応力集中が発生するようになった。例えば、米国特許第9216116B2号に記載されている、溝部(channel)を有する吸収性コアのデザインも、例えば米国特許第10022280B2号に記載されている、より厚みの薄い吸収体のデザインも、バックシートフィルムにかかる応力を増大させる。バックシートフィルムはまた、例えば、米国特許第8834437B2号に記載されているように、高吸収体の比率が増加してもこれに耐えなければならず、また、より可撓性及び弾性が高いオムツ構造も可能にしなければならない。
【0017】
独国特許第69719574T2号には、ポリオレフィンを30%~60%及び炭酸カルシウムを40%~80%含む微多孔性ポリマーフィルム形態にあるバックシートフィルムを有するオムツが記載されている。このフィルムの「b」値は約0~約0.5の間にあり、熱収縮率は2%未満である。下層はフィルムに貼合された不織材料の層を備える。
【0018】
欧州特許第3222406B1号には、微多孔性の出発フィルムウェブから充填材が充填されたフィルムのウェブを製造するためのプロセスが記載されている。微多孔性出発フィルムウェブは、一部が溶融状態になるように加熱される。これは、低融点ポリマー成分が溶融状態になり、少なくとも高融点ポリマー成分は溶融状態にならないことによるものである。この一部溶融したフィルムウェブを冷却されたローラニップを通過させることにより冷却が行われる。
【0019】
国際公開第2015/175593A1号には、充填材が充填されたポリエチレンをベースとする通気性フィルムが記載されている。このフィルムは、高比率のポリエチレンに加えて、高比率の炭酸カルシウム及び低比率のポリプロピレンも含む。このフィルムはキャストフィルム押出により製造される。当該明細書に記載されてるキャストフィルムは目付が比較的小さく、僅か15g/mである。
【0020】
キャストフィルム押出プロセスにより製造されるこの種のキャストフィルムは、目付が小さく通気性に優れるが、オムツの製造においては、速度が極めて速い現行の加工機の要求を満たせない。これらは加工機の高速化に付いていけていないため、特に歪んだり折り畳まれたりする際にオムツが高い衝撃応力を受ける。その結果として機械的損傷に至り、特にこの種のフィルムは機械方向と平行に破壊する。加工機の速度が比較的速いために、オムツからより多くの空気をより短い時間で押し出さなければならない場合、オムツはより過酷な圧縮を受け、バックシートの強度が不充分な場合は破裂に至る可能性がある。
【0021】
米国特許出願第2002/0143306A1号には、ポリエチレンをベースとする通気性フィルムが記載されている。これは、低密度ポリエチレン(LLDPE)及び超低密度ポリエチレン(ULDPE)を組み合わせることにより得られる。ULDPEの融点は非常に低いため、不織布と貼合する際に問題が発生する。その理由は、貼合には、通常、適用温度が約150℃であるホットメルト接着剤が使用されているためである。ポリエチレンの融点が低いほど、接着剤がバックシートフィルムを融かして穴を空けてしまうリスクが高くなる。米国特許出願公開第2002/0143306A1号によるフィルムは、更に機械方向の収縮も大きい。したがって、この種のフィルムは、見当精度の高い印刷には不向きである。
【0022】
更に、高吸収体粒子を高比率で含む薄肉化を続ける吸収性コアは、目付が比較的小さい従来のバックシートフィルムを用いた場合、漏れが発生し、したがってオムツの品質が低下する。例えば、液体をより速く且つより均一に分散させるための溝を備える新しいデザインの吸収性コアも同様に、従来の薄く目付の小さいバックシートフィルムではもはや耐えられない高い応力を受ける。
【0023】
上に述べたあらゆる要求のため、近年、通気性バックシートフィルムの目付は、その下限値である15~16g/mよりも減らせなくなっている。この目付であってさえも、従来のバックシートフィルムは、オムツの漏れに繋がり、オムツの品質に悪影響を与える問題を起こし続けている。それが高価格(premium)製品であった場合は特に、このことがオムツメーカーの評判を大きく損なう可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の目的は、上述の要求を満たす通気性フィルムを提供することにある。このフィルムは強靭であり、且つ高い見当精度で印刷できるであろう。更に、ホットメルト接着剤を使用して不織布を貼合するのに適しているであろう。このフィルムは、オムツの品質を向上すると共に、現在のオムツ製造プロセスの要求を満たすであろう。
【課題を解決するための手段】
【0025】
この目的は、本発明に従い、独立請求項に係る通気性フィルム、プロセス、及び使用により達成される。好ましい変形形態は従属請求項及び明細書から明らかである。
【0026】
本発明によるフィルムは、バックシートフィルムに関し知られていない特定の特徴の組合せを有する。この特定の特徴の組合せにより、最新の加工機を用いて高生産量でオムツを製造するために、目付の小さい薄いフィルムを採用することも可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明によるフィルムに関しては、弾力性(resilience)に関する指標として、落球衝撃法又はダート落下法又は水柱式測定法を採用することができる。
【0028】
落球衝撃法においては、球をフィルム上に落下させ、球を落下させる高さを変化させる。
【0029】
ダート落下法はASTM D1709に準拠して行われ、ダートの質量を変化させる。
【0030】
水柱式測定方法は、EDANA WSP 80.6に準拠して行う。圧力は10mbar毎分で上昇させる。試験液として蒸留水を使用する。試験面積を100cmとし、支持用の篩(supporting sieve)は使用しない。水柱高さ(water column)は「ミリメートル」単位で報告する。
【0031】
本発明によるフィルムには、以下に示す特徴I~IIIが組み合わせられている:
I.フィルムの比落球衝撃落下高さ(specific ball drop impact fall height)は100mm毎グラムポリマー毎平方メートルを超える、
又は
フィルムの比ダート落下(specific dart drop)は19g毎グラムポリマー毎平方メートルを超える、
又は
フィルムの比水柱高さ(specific water column)は90mm毎グラムポリマー毎平方メートルを超える。
【0032】
II.このフィルムはまた、透湿性が少なくとも1000g/m・24hrである。
【0033】
III.これらの特性に加えて、フィルムの機械方向の破断伸度は200%未満である。
【0034】
本発明の特徴の組合せは、薄く、目付が小さく、且つ高速の加工機を用いる非常に効率の高い製造プロセスにおけるオムツの製造に用いるためのあらゆる要求を満たすフィルムを提供する。
【0035】
本発明によるフィルムは従来のバックシートフィルムよりも機械特性がはるかに優れている。このような特性は、ポリマー含有量が極めて低いにも関わらず確保されている。
【0036】
更に、本発明によるフィルムは透湿性が高く、それにも関わらず、滲み出しを確実に防ぐことが保証されている。
【0037】
本発明は、充填材が充填された通気性フィルムに関する。これらは充填材を高含有率で含む。これは延伸プロセスにおいて空胞(vacuole)を生じさせる役割を果たし、ひいては通気性を確保する。延伸によって、微多孔性の小孔が確実に形成されるのみならず、フィルムが通気性を示すために小孔が確実に連通するように、充填材の比率を充分に高くしなくてはならない。小孔が相互に接続している微多孔性フィルムでなければ通気性が得られない。この通気性フィルムを製造する際、上記フィルムには、不活性材料が約60%という非常に高い比率で充填され、押出後、延伸プロセスに付される。フィラー含有率をこのように高くしなければ充分な通気性が確保されない。充填材含有率を高くすることは、資源の節約及び製造コストの削減にも役立つ。しかしながら、充填材含有率を高くすると、フィルムの強度に悪影響を及ぼす。その機械的安定性は、ほぼポリマー含有量のみに依存する。異なるフィルムの強度を比較する場合は、1平方メートル当たりのポリマー含有量を等しくして値を比較すると有利である。
【0038】
本発明によるフィルムの特性評価に用いられる落球衝撃法においては、直径19mm、重量25gの鋼球を、円形表面上に広げたフィルムの上に異なる高さから落下させる。球体を落下させる開口部の直径は76mmである。
【0039】
この試験による達成可能な落下高さは実質的にフィルムの目付に依存する。機械的安定性は実質的にフィルムのポリマー含有率に影響され、存在する無機充填材には影響されないので、落下高さ(ミリメートル単位)を1平方メートル当たりのポリマー含有量で除した比率を特性パラメータとして使用する。
【0040】
従来のバックシートフィルムとは異なり、本発明によるフィルムは、100mm毎グラムポリマー毎平方メートルを超える落下高さを達成する。比落下高さは、優先的には120mmを超え、好ましくは130mmを超え、特に140mmを超え、それぞれ、フィルム1平方メートル当たりのポリマー1グラム当たりの値である。
【0041】
或いは、本発明によるフィルムを特性評価するために、ASTM D 1709Aに準拠するダート落下法を用いることもできる。その結果として得られる値は、19g毎グラムポリマー毎平方メートルを超え、好ましくは20g毎グラムポリマー毎平方メートルを超え、特に21g毎グラムポリマー毎平方メートルを超える。
【0042】
本発明によるフィルムを特性評価する更なる方法は、EDANA WSP 80.6に準拠する比水柱法(specific water column method)である。水柱高さは、90mm毎グラムポリマー毎平方メートルを超え、好ましくは100mm毎グラムポリマー毎平方メートルを超え、特に110mm毎グラムポリマー毎平方メートルを超え、非常に好ましくは120mm毎グラムポリマー毎平方メートルを超える。
【0043】
フィルムの特性評価に関し、以下に落球法を一例として参照するが、2種の代替法であるダート落下法及び水柱法も包含されることを明記する。
【0044】
充填材含有率は、公知の測定方法、例えば、灰化により、既知の開始重量の試料を、ポリマーが熱分解するが、フィラーは熱分解しない温度に加熱することにより求めることができる。例えば、そのためには温度を560℃とすると有利であることが分かっている。次いで試料の重量を再び計測する。1平方メートル当たりのポリマー含有量は、開始重量及び最終重量の差から算出することができる。
【0045】
灰化の代替となり得るものがTGA測定であり、これは、加熱を行う間、試料の重量を連続的に測定するものである。この試験方法も同様に、ポリマー及び充填材を明確に区別することができ、フィルムのポリマー含有量を求めることが可能である。
【0046】
本発明に係るバックシートフィルムはこのように極めて高い弾力性を有するにも関わらず、更に上記フィルムは高い透湿性も有する。ASTM D6701-01に準拠して定められる透湿性は、1000g/m・24hrを超える。本発明に係るフィルムの透湿性は、優先的には2000g/m・24hrを超え、好ましくは3000g/m・24hrを超え、特に3500g/m・24hrを超える。このように目付が小さいにも関わらず強力な弾力性を有するフィルムがこのような高い透湿性を示すのは普通のことではない。
【0047】
更に、上に述べた2つの特性は、機械方向の破断伸度を200%未満とすることにより達成される。本発明の好ましい実施形態において、機械方向の破断伸度は、実際は170%未満、好ましくは150%未満、特に130%未満である。
【0048】
機械方向の残留(remaining)破断伸度は、通気性フィルムの延伸度合いのパラメータとして用いられる。機械方向の残留破断伸度が小さいほど、通気性フィルムの延伸度合いが高い。破断伸度はASTM D882に規定されている。例えば、25.4mm(1インチ)の試験片を切り抜き、適切な試験機のクランプで把持し、把持長を50.8mmとする。0.05ニュートンの予荷重(preliminary force)を印加し、次いで速度500mm/分で引張試験を実施する。フィルムの最終破断荷重(final breaking)を初期把持長で除した値がフィルムの破断伸度を表し、これをパーセントで報告する。本発明によるフィルムは、高い弾力性を有するにも関わらず、破断伸度が極めて低い。これは、フィルムが機械方向に顕著に延伸されたことを示している。フィルムが機械方向に顕著に延伸されることにより、フィルムに高い剛性が得られる。従来のフィルムで機械方向に顕著な延伸を行うと、オムツを加工機で折り畳む際及び/又はオムツを着用する際に従来のバックシートフィルムが損傷するような、深刻な交差方向の脆弱化が起こる。それとは異なり、本発明によるフィルムは、機械方向に顕著に延伸されているにも関わらず、落球衝撃試験における高い落下高さで示されるように、交差方向の応力に対し並外れた安定性を示す。
【0049】
フィルムが交差方向に脆弱化するため、従来の先行技術のフィルムは、通常、このような顕著な延伸に付すことはできず、交差方向に最低限の機械的安定性を確保するためには、その機械方向の破断伸度は、通常、250%を超える。こうした従来の比較的弱く延伸したフィルムは、高い見当精度で印刷できるように、且つ機械方向に過度に収縮しないように(そうしなければオムツの側縁部から漏れが発生することになるため)、印刷機及びオムツ加工機を非常に低いウェブ張力で通過させなければならない。一方、本発明によるフィルムは非常に顕著に延伸されており、機械方向に残されている残留伸度はごく僅かであるため、印刷機及びオムツ加工機を高速で通過させることができる。驚くべきことに、このフィルムはまた、機械方向に高度に延伸されているにも関わらず、交差方向の安定性が極めて高い。これが最も普通ではないことである。
【0050】
このような特徴の組合せ、即ち、落球衝撃法に準拠するポリマー1グラム当たりの弾力性が非常に高いことと、非常に高い透湿性及び低い機械方向の破断伸度とを兼ね備えるものは、従来のバックシートフィルムでは知られていなかった。現時点において、これらの要件を全て併せ持つフィルムは市場に存在しない。
【0051】
本発明によるフィルムを用いることにより、目付が小さく、並外れて薄いフィルムを製造することが初めて可能になった。これは、ポリマー使用量が少なく、非常に速度の速い加工機を用いる現在のオムツ製造プロセスでさえも、通気性を有する乳児用オムツを製造するのに最適である。
【0052】
この従来知られていなかった特徴の組合せは、フィルムの特定の組成及び目標に合ったポリマーの選択を、特定の製造プロセスと併用することにより、達成される。
【0053】
本発明によるフィルムのポリマー含有量は、フィルムが極めて安定な性質を有するにも関わらず、比較的低い。フィルムのポリマー成分の比率は55%未満、好ましくは50%未満、特に45%未満である。しかしながら、それでも尚、充分な安定性を確保するために、ポリマー含有率は25重量%を超え、好ましくは30重量%を超え、特に35重量%を超える。
【0054】
好ましい充填材として、粒子径が0.8~2μmであるCaCOを用いることが好ましい。延伸プロセスにおいて、フィルムの弾性ポリマー部分は引き伸ばされ、チョーク粒子(chalk particle)とポリマーマトリックスとの縁部に小孔が形成される。フィルムの充填材含有率は45%を超え、好ましくは50%を超え、特に55%を超える。固体含有率は75重量%未満、好ましくは70重量%未満、特に65重量%未満である。
【0055】
市販のフィルムの多くは強度が不充分である。これは、採用したポリマーに起因することが多い。ポリエチレンの流動特性はメルトインデックスMIを用いて表され、通常、190℃の温度で荷重を2.16又は5kgとする。比較的高いメルトインデックスは、本明細書においては、ポリマーの平均分子量が比較的低いことと相関関係がある。ポリマーのメルトインデックスが高いほど、溶融粘度が低いことも事実であり、これは、充填材を充分に分散させるため及び押出工場の生産量を増加させるために有利である。他方、高分子量、即ち、メルトインデックスの低いポリマーは、機械的安定性、特に引張強さ及び/又は靭性という観点で有利である。
【0056】
本発明によるフィルムは、メルトフローインデックスが、それぞれ190℃、5kgで4g/10min未満、好ましくは3.5g/10min未満、特に3.3g/10min未満である。このように低いメルトフローインデックスは、非常に強靭なフィルムに対応する(imitate)。
【0057】
本発明によるフィルムの製造には2種の異なる線状低密度ポリエチレン(LLDPE)成分が用いられる。これは、低密度のLLDPE成分を高密度のLLDPE成分と組み合わせることを含む。
【0058】
低密度LLDPE成分は、好ましくは、密度が0.925g/cm未満、特に0.920g/cm未満である。このLLDPE成分は、好ましくは10%超、特に20%超、好ましくは30%超の比で用いられる。この成分の比率は60重量%未満、好ましくは50重量%未満、特に40重量%未満である。
【0059】
この低密度の第1LLDPE成分は、比較的高密度の第2LLDPE成分と併用される。第2成分の密度は、好ましくは0.925g/cmを超え、好ましくは0.930g/cmを超える。この比較的高密度の第2LLDPE成分の比率は、優先的には2重量%を超え、好ましくは4重量%を超え、特に5重量%を超える。更に、この比較的高密度の第2LLDPE成分の比率は、優先的には12重量%未満、好ましくは10重量%未満、特に8重量%未満である。
【0060】
低密度の第1LLDPE成分は、好ましくはエチレン-1-ヘキセン共重合体である。
【0061】
少なくとも1種のLLDPE成分がメタロセン触媒を使用したものであると、特に有利であることが分かっている。好ましくは、低密度のLLDPE成分は、メタロセン触媒を使用して製造されたものである。
【0062】
ポリマー自体は、厳密に定まった融点を有するのではなく、溶融範囲を有するが、結晶の融点はポリマーの結晶領域に由来し得る。この結晶の融点は必ず非結晶性の構成要素の融点又は溶融範囲よりも高いものになる。溶融状態は、剪断モジュールがゼロになる傾向にある性状と表現される。ポリマーが結晶領域を有する場合、後者はより容易に検出することができる。剪断弾性率は、例えば、ISO 6721-1及び2に準拠して測定することができる。
【0063】
DSC(示唆走査熱量計)曲線のピークにより定まる融点は、低密度の第1LLDPE成分については114℃~122℃の間、好ましくは116℃~121℃の間にある。第2LLDPE成分の融点は120℃~128℃の間、好ましくは121℃~126℃の間にある。
【0064】
本発明に従い用いられるLLDPE成分は、優先的には、ISO 1133-1に準拠するメルトインデックスが、190℃、2.16kgで<2.5g/10min、好ましくは<1.5g/10min、特に<1.2g/10minである。
【0065】
低密度のLLDPE成分は、好ましくは、メルトフローインデックス(MFI)が、190℃、5kgで0.3g/10minを超え、好ましくは0.5g/10minを超え、特に0.8g/10minを超え、及び/又は190℃、5kgで4g/10min未満、好ましくは3g/10min未満、特に2g/10min未満である。
【0066】
比較的高密度のLLDPE成分は、好ましくは、メルトフローインデックス(MFI)が、190℃、5kgで0.3g/10minを超え、好ましくは0.5g/10minを超え、特に0.8g/10minを超え、及び/又は190℃、5kgで5g/10min未満、好ましくは4g/10min未満、特に3g/10min未満である。
【0067】
この2種のLLDPE成分の組合せのみが、本発明によるフィルムの特殊な特性を達成することを可能にする。低密度のLLDPE成分は、落球衝撃法において特に良好な値を付与し、したがって高い弾力性が得られる。しかしながら、この成分のみを使用すると不充分な通気性しか確保できないであろう。比較的密度の高いLLDPEを組み合わせることによってのみ、衝撃試験における良好な値及び充分に高い透湿性の両立が可能になる。比較的密度が高いLLDPEのみを使用した場合、透湿性の値は充分となるが、落球衝撃法による弾力性は不充分となり、したがってこのフィルムは、現在の生産量の高い製造機では使用できない。
【0068】
本発明の有利な一実施形態において、フィルムはポリプロピレン成分を含む。このポリプロピレン成分の比率は、好ましくは0.5重量%を超え、好ましくは1重量%を超え、特に2重量%を超える。この場合、ポリプロピレン成分は、好ましくは12重量%未満、好ましくは8重量%未満、特に6重量%の比率で存在する。
【0069】
この場合のポリプロピレン成分は、DSC曲線のピークとして定められた融点が、158℃~165℃の間、好ましくは160℃~164℃の間にある。ポリプロピレン成分のISO 1133-1に従う230℃、2.16kgにおけるメルトフローインデックスは、好ましくは4.0g/10min未満、特に3.0g/10min未満である。
【0070】
驚くべきことに、このポリプロピレン成分を2種のLLDPE成分を組み合わせて使用することにより、特に有利なフィルムが得られることが判明した。ポリプロピレン成分は、フィルムに求められる顕著な延伸の度合いを減らす効果がある。これは「タイガーストライプ(tiger striping)」を有効に防止する。タイガーストライプとは、延伸時に発生する、延伸がより大きい領域及びより小さい領域に形成される縞模様に付けられた名称である。実際、この縞模様の発生を防止するためには、フィルムをより十分に均質化させるようにフィルムをより強く延伸することが必要になるであろう。これを実施しないと、不均一に延伸された結果として生じる不均質性により、フィルムをバックシートとして使用した際に不均一に破断する可能性がある。
【0071】
驚くべきことに、比較的小さい比率で用いられるこのポリプロピレンが延伸パターンの均質化を助けることが見出された。驚くべきことに、2種のLLDPE成分と組み合わせて、目標に合わせたポリプロピレンを上に述べた範囲内で使用することによって、本発明によるフィルムの特性を最適化することが可能になることが見出された。
【0072】
本発明によるフィルムは、非常に小さい目付で極めて有利な特性を示す。フィルムの目付は18g/m未満、特に16g/m未満である。したがって、このフィルムまた、極めて薄い。最終フィルムの厚みは、好ましくは16μm未満、好ましくは14μm未満、特に12μm未満である。
【0073】
それでも尚、粒子径の大きな高吸収体粒子がフィルムを貫通できないように充分な厚みを確保するためには、フィルムの厚みは、好ましくは4μmを超え、好ましくは6μmを超え、特に8μmを超える。
【0074】
本発明によるフィルムは、非常に特殊な組成に非常に特殊な製造方式を組み合わせることにより達成される。本発明のフィルムの特性は、インフレーション成形を目標に合わせて用いることにより実現する。延伸の上流でインフレーション成形を行うことにより、特殊な組成に基づく本発明によるフィルムの特性を達成することが可能になる。
【0075】
驚くべきことに、上流でインフレーション成形を行うことにより、その後に続く延伸プロセスにおいて、フィルムを一層顕著な機械方向延伸に付すことが可能になることが見出された。上流でインフレーション成形プロセスを行うことにより、本発明によるフィルムには、交差方向にも充分な強度が付与され、したがって、フィルムが機械方向に顕著に延伸された場合も交差方向の強度が保持される。こうすることにより、機械方向の靭性が非常に高いフィルムが得られ、したがって、オムツ製造において加工機を非常に速い速度で運転することが可能になり、それと同時に、後の使用時にオムツのサイドパネルを引っ張った際にバックシートに発生し得るフィルムの裂け又は損傷を防ぐのに充分な交差方向の強度も得られる。
【0076】
フィルムウェブは微多孔性を得るために延伸プロセスに付される。本発明によれば、少なくとも1回の機械方向(MD)への延伸が実施される。交差方向(CD)への追加の延伸も実施することもできる。原理的にはリングローリングを行うことも可能であろう。フィルムの延伸は、フィルムを規定の方向に広げることと理解される。こうすることによりフィルムの厚みが低減される。フィルムは、例えば、1又は複数のローラを備える延伸ラインを用いて機械方向(MD)に延伸したものとすることができる。ローラは、好ましくは、異なる速度で運転される。
【0077】
本発明によれば、フィルムは、好ましくは200%超、特に好ましくは280%超、優先的には300%超、特に320%超延伸される。インフレーション成形後のフィルムの機械方向への延伸は、400%未満、好ましくは365%未満、特に350%未満で行われる。優先的には、延伸には、70℃を超える温度、好ましくは80℃を超える温度、特に90℃を超える温度が用いられる。機械方向延伸時の温度は、優先的には、120℃未満、好ましくは110℃未満、特に100℃未満である。
【0078】
フィルムを機械方向に延伸することにより、フィルムに応力が発生し、その結果として、再び加熱した場合、例えばオムツの製造時に、印刷プロセスにおいてインクを乾燥させるためにフィルムを再び加熱すると、又はそれ以外では貼合プロセスにおいて不織布と一緒に再び加熱すると、フィルムが元に戻る。印刷されたバックシートフィルムに要求される見当精度を実現するためには、この復元収縮(shrink back)する傾向を最小限に抑えなければならない。
【0079】
この元に戻る性質を、測定パラメータとしてMD熱収縮を用いて測定した。寸法10cm×10cmの正方形のフィルム試験片をフィルムから切り抜き、80℃の水浴に30秒間浸漬した後、冷水で急冷した。次いで再び計測を行い、フィルムの機械方向及び交差方向の長さの変化を求めた。例えば、フィルムが2mm短くなっていた場合、これは2%の熱収縮に相当する。
【0080】
本発明の特に有利な変形形態において、フィルムの機械方向の収縮は4%未満、好ましくは3.5%未満、特に3%未満である。このように収縮が小さいため、フィルムを問題なく処理するのに充分に安定した見当合わせが可能になる。
【0081】
MD熱収縮を抑制するために、延伸プロセス直後のフィルムを更に温度制御されたローラ上を通過させる。この熱処理プロセスに関しては、このプロセスステップにおいて、2~4個のローラ上でフィルムを延伸温度とポリマーの融点との間の温度に加熱すると有利であることが判明している。温度が過度に低いと、MD熱収縮の低減が不充分になるのみであり、一方、温度が過度に高いと、延伸プロセスで形成された小孔を溶融させて再び閉鎖させてしまうことになり、したがって、通気性を大幅に低下させる。熱処理プロセスは、温度を上昇することに加えて、温度制御されたローラにより速度を僅かに低下させることによって支援することができ、こうすることにより、延伸直後のフィルムが僅かに元に戻る。
【0082】
本発明によれば、上述の温度範囲で5%~20%戻すことが、収縮を最適化するのに有利であると判明している。熱処理プロセスを完了するために、延伸及び熱処理されたフィルムをその結果として得られた状態で固定するように、フィルムを1個又は複数個の冷却されたローラ上を通過させる。これらの冷却されたローラは好ましくは約30℃~60℃の間の温度範囲で運転される。
【0083】
本発明によるフィルムの特徴的な特性を決定する因子は上流のインフレーション成形である。これは、好ましくは、ブローアップ比を1:1.5超、好ましくは1:2.0超、特に1.2超とする。インフレーション成形のブローアップ比は、好ましくは1:4.5未満、好ましくは1:4.0未満、特に1:3.5未満である。
【0084】
本発明によれば、フィルムはオムツのバックシートとして用いられる。
【0085】
本発明はまた、通気性フィルム自体に加えて、フィルムを他の材料、例えば、不織布と組み合わせた変形形態も包含する。本発明によるフィルムは、単独のバックシートとして、又は不織布-フィルム貼合体としてのいずれかで用いることができる。フィルムは不織布と、例えば、接着剤を用いて接合することができる。不織布-フィルム貼合体は、サーマルボンドにより製造することもできる。この目的のために、フィルム及び/又は不織布を、2個の加熱されたローラを用いて、全体又は点状のいずれかの形で加熱することができる。例えば、エンボス加工ローラを、背面ローラとしての平滑なローラ、例えば、スチールローラと一緒に用いることができる。フィルム及び/又は不織布を高温及び高圧を用いて初期段階で溶融させることができる。こうすることにより、フィルム及び不織布を互いに接合することができる。不織布-フィルム貼合体は熱貼合により製造することもできる。これに加えて又はこれに替えて、不織布-フィルム貼合体は、超音波ラミネートを用いて、例えば、Hermann Ultraschall技術を用いて製造することもできる。
【0086】
生成した不織布-フィルム貼合体は、公知の様式で更なる処理に付すこともでき、これは機械方向の延伸及び/又は交差方向の延伸又は両方向への延伸も含んでいてもよい。単独のバックシートを更に処理することも可能である。
【0087】
更に本発明は、本発明によるフィルムを用いた吸収性物品も包含する。この吸収性物品は、好ましくはオムツ形態、特に乳児用オムツ形態にある。
【0088】
この吸収性物品は、一般に、吸収性コア、上層、及び下層を備える。本発明によるフィルムは、好ましくは下層に用いられる。
【0089】
本発明による吸収性物品において、本発明によるフィルムは、不織布に接合することができる。フィルム又はフィルム-不織布貼合体には、弾性サイドパネル、所謂前面及び/又は背面サイドパネルを設けることもできる。これらは、接着によりフィルムに結合しているか、又はサーマルボンドされているかのいずれであってもよい。吸収性物品の吸収性コアは、好ましくは、布帛(fabric)に内包された高吸収体を含む。ADL(取り込み-拡散(acquisition-distribution)層)を用いることもできる。これは例えば、米国特許出願第2005/0267429A1号に記載されている。
【0090】
吸収性コアには溝部が設けられていてもよい。吸収性物品は、バックシートに加えてトップシートも備える。トップシートは不織布を備えることができる。トップシートの少なくとも一部をバックシートに接合することができる。トップシートはバックシートに、例えば、ホットメルト接着剤で貼合することができる。
【0091】
以下に実施例1を参照しながら本発明を説明するが、本発明をこれに限定することを意図するものではない。
【実施例
【0092】
次に示す成分を本実施例1に使用する:
- 無機充填材としての炭酸カルシウムImerys Filmlink 400を55%
- ExxonMobilからのLLDPE Exceed(商標)XP 8318を36%
- DowDuPontからのLLDPE Dowlex(商標)SC2108 Gを6%
- BorealisからのPP Borpact(商標)BC918CFを3%。
【0093】
使用した充填材は、炭酸カルシウムの形態にある、好ましくは粒子径が0.8~2μmの無機充填材である。
【0094】
LLDPEであるExxon Exceed XP 8318は、比較的密度が低い第1LLDPE成分である。このLLDPEは、好ましくはメタロセン触媒を用いて製造されている。この場合、エチレン-1-ヘキセン共重合体を使用すると特に有利となることが判明している。このLLDPEは、ASTM D1505に準拠する密度が0.918g/cmであり、ASTM D1238に準拠するメルトフローインデックスが1.0g/10min(190℃/2.16kg)であり、ExxonMobil法に準拠するピーク溶融温度が121℃である。
【0095】
LLDPEであるDowlex(商標)SC2108 Gは、比較的密度が高い第2LLDPE成分である。密度は0.935g/cmである。ISO 1133に準拠するメルトフローレートは2.6g/10min(190℃、2.16kg)である。
【0096】
Borpact(商標)BC918CFは、密度が0.905g/cmである結晶化度の高いポリプロピレンである。ISO 1133に準拠するメルトフローレート(230℃/2.16kg)は3.0/10minである。ISO 3146に準拠する溶融温度(DSC)は166℃である。
【0097】
本発明のフィルムを製造するために、ポリマー構成成分を、無機充填材と一緒に、ポリマー構成成分の溶融温度よりもかなり高い温度に(例えば、200℃を超えて)加熱し、押出機、例えば、混錬押出機で一緒に溶融する。
【0098】
本発明によれば、続いてインフレーション成形を行う。インフレーションプロセスにより、空気が吹き込まれた袋状体(blown bubble)が形成される。形成された袋状フィルムを押し潰してスライスし、2枚のフィルムウェブとすることができ、それぞれを出発フィルムウェブとして使用することができる。
【0099】
インフレーション成形プロセスに用いるブローアップ比は1:2.9とする。
【0100】
フィルムの初期目付は46.2g/mである。
【0101】
これに続く一軸延伸プロセスにおいて、フィルムは機械方向に全体で330%延伸される。この全延伸倍率は、ローラ温度を95℃として実際は機械方向に350%延伸し、それに続く熱処理を106℃で行うことにより、熱処理ローラ上で6%復元収縮させた結果として得られたものである。
【0102】
その結果としてフィルムの目付は14g/mとなる。
【0103】
フィルムのポリマー含有量は6.3g/mである。
【0104】
本発明のフィルムは次に示す特性を有する:
- 落球衝撃による絶対落下高さ:900mm
- 落球衝撃による比落下高さ:142.8mm毎グラムポリマー
- 透湿性:4000g/m・24hr
- MD破断伸度:120%
- MD熱収縮:3%。
【0105】
本発明のフィルムは乳児用オムツに使用するのに特に有利な製品特性を示し、生産量の高い現在のオムツ製造工場で処理するための要求も満たしている。
【0106】
次に示す表において、上の実施例1に記載した本発明のフィルムを、例2~5に従う従来の市販の通気性バックシートフィルムと比較する。
【0107】
表を説明するために、以下に一例として落球落下高さのみについて言及する。
【0108】
最も低い値は例3のフィルムが示した値であり、比落球落下高さは僅か84.9mmである。例3は、フィルムを機械方向延伸(MDO延伸)に付さず、フィルムをMD/CDリングローリングのみで製造したフィルムに関するものである。更に、このフィルムは1種のLLDPE成分しか含まない。但し、このフィルムはPP成分を含む。
【0109】
例5によるフィルムも同様に1種のLLDPE成分及びPP成分のみを含む。但し、このフィルムは機械方向延伸(MDO延伸)を用いて製造したものであり、したがって、先の例と比較すると、87.7mmの落球落下高さを達成した。
【0110】
例4によるフィルムも同様に、機械方向延伸(MDO延伸)を用いて製造したものである。このフィルムはPP成分を含まないが、2種のLLDPE成分を用いて製造したため、落球落下高さは例5よりも高く、89.7mmであった。
【0111】
従来の市販のフィルムの中で、例2は最も良い値を示し、落球落下高さは95.4mmであった。このフィルムは機械方向延伸(MDO延伸)を用いて製造されたものであり、2種のLLDPE成分及び1種のPP成分を含む。
【0112】
これらの従来の市販のフィルムと比較すると、実施例1による本発明のフィルムははるかに優れた最高値を示し、落球落下高さは142.9mmと非常に高かった。この最高値は、僅か14g/mという各段に小さい目付にも関わらず達成されたものである。
【0113】
【表1】
【国際調査報告】