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特表2022-531065可溶性CD52の免疫抑制性グリコフォーム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(54)【発明の名称】可溶性CD52の免疫抑制性グリコフォーム
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20220629BHJP
   C07K 1/18 20060101ALI20220629BHJP
   C07K 1/22 20060101ALI20220629BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20220629BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20220629BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20220629BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20220629BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220629BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220629BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220629BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220629BHJP
   A61K 38/04 20060101ALI20220629BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220629BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220629BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220629BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220629BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220629BHJP
   A61K 38/28 20060101ALI20220629BHJP
   A61K 35/16 20150101ALI20220629BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220629BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20220629BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20220629BHJP
【FI】
C07K19/00
C07K1/18
C07K1/22
C07K7/06
C07K7/08
C07K14/705
C12P21/02 C
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K38/04
A61P29/00
A61P31/04
A61P3/10
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P37/06
A61K38/28
A61K35/16
A61P43/00 121
A61K39/00 H
C12N15/62 Z ZNA
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021553101
(86)(22)【出願日】2019-03-07
(85)【翻訳文提出日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 AU2019050197
(87)【国際公開番号】W WO2020176921
(87)【国際公開日】2020-09-10
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514120690
【氏名又は名称】ザ ウォルター アンド イライザ ホール インスティテュート オブ メディカル リサーチ
(71)【出願人】
【識別番号】514114910
【氏名又は名称】マッコーリー ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ハリスン レオナルド チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】バンダラ-サンチェス エスター
(72)【発明者】
【氏名】ゴダード-ボーガー イーサン デヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】パッカー ニコル ハナ
(72)【発明者】
【氏名】マンスール シャティリ アブドゥールラフマン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA93X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA18
4C084BA23
4C084BA44
4C084CA18
4C084CA25
4C084DB34
4C084DC50
4C084MA55
4C084MA63
4C084NA14
4C084ZA96
4C084ZB08
4C084ZB11
4C084ZB15
4C084ZB35
4C084ZC35
4C085AA35
4C085GG01
4C085GG04
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB35
4C087DA15
4C087MA55
4C087MA63
4C087NA05
4C087ZA96
4C087ZB08
4C087ZB11
4C087ZB15
4C087ZB35
4C087ZC35
4C087ZC75
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA16
4H045BA17
4H045BA18
4H045BA19
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045EA20
4H045EA22
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、糖タンパク質CD52およびその融合タンパク質に関し、CD52糖タンパク質は、α-2,3-シアリル化N-グリカン、O-グリコシル化、および約5~約6のpIを有する。本開示はさらに、これらのタンパク質の調製および精製、ならびに、エフェクターT細胞機能および/または免疫応答の抑制における、例えば、エフェクターT細胞機能によって媒介される疾患または状態の処置における、それらの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i) 1つまたは複数の多分岐型N結合型α-2,3-シアリル化グリカン、好ましくは四分岐型N結合型α-2,3-シアリル化グリカン;および
(ii) 約5~約6の等電点(pI)
を含む、可溶性CD52糖タンパク質。
【請求項2】
(i) 1つまたは複数の多分岐型N結合型α-2,3-シアリル化グリカン、好ましくは四分岐型N結合型α-2,3-シアリル化グリカンを含み;かつ
(ii) N結合型バイセクティングGlcNAc構造体を含まない
、可溶性CD52糖タンパク質。
【請求項3】
(i) 1つまたは複数のN結合型α-2,3-シアリル化グリカンを含み;
(ii) 1つまたは複数のO-グリカンを含み;かつ
(iii) N結合型バイセクティングGlcNAc構造体を含まない
、可溶性CD52糖タンパク質。
【請求項4】
(i) 1つまたは複数のN結合型α-2,3-シアリル化グリカン;
(ii) 1つまたは複数のO-グリカン;および
(iii) 約5~約6のpI
を含む、可溶性CD52糖タンパク質。
【請求項5】
1つまたは複数のO-グリカンをさらに含む、請求項1または2のいずれか一項記載の可溶性CD52糖タンパク質。
【請求項6】
多分岐型N結合型α-2,3-シアリル化グリカンが、三分岐型または四分岐型のN結合型α-2,3-シアリル化グリカンである、請求項1、2および5のいずれか一項記載の可溶性CD52糖タンパク質。
【請求項7】
多分岐型N結合型α-2,3-シアリル化グリカンが、四分岐型N結合型α-2,3-シアリル化グリカンである、請求項6記載の可溶性CD52糖タンパク質。
【請求項8】
N-グリカンがポリLacNAc伸長を有する、前記請求項のいずれか一項記載の可溶性CD52糖タンパク質。
【請求項9】
O-グリカンが一シアリル化O-グリカンまたは二シアリル化O-グリカンである、請求項3~5のいずれか一項記載の可溶性CD52糖タンパク質。
【請求項10】
O-グリカンが二シアリル化O-グリカンである、請求項3~5および9のいずれか一項記載の可溶性CD52糖タンパク質。
【請求項11】
前記糖タンパク質が、
N結合型グリコシル化に適した少なくとも1つのアミノ酸を含むアミノ酸配列、および
SEQ ID NO: 3、4、5、6または7で特定されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つまたは複数と少なくとも60%同一のアミノ酸配列
を有する、前記請求項のいずれか一項記載の可溶性CD52糖タンパク質。
【請求項12】
前記糖タンパク質が、
N結合型グリコシル化に適した少なくとも1つのアミノ酸を含むアミノ酸配列、および
SEQ ID NO: 3、4、5、6または7で特定されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つまたは複数と少なくとも80%同一のアミノ酸配列
を有する、前記請求項のいずれか一項記載の可溶性CD52糖タンパク質。
【請求項13】
前記糖タンパク質が、
N結合型グリコシル化に適した少なくとも1つのアミノ酸を含むアミノ酸配列、および
SEQ ID NO: 3、4、5、6または7で特定されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つまたは複数と少なくとも90%同一のアミノ酸配列
を有する、前記請求項のいずれか一項記載の可溶性CD52糖タンパク質。
【請求項14】
前記糖タンパク質が、
N結合型グリコシル化に適した少なくとも1つのアミノ酸を含むアミノ酸配列、および
SEQ ID NO: 3、4、5、6または7で特定されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つまたは複数と少なくとも95%同一のアミノ酸配列
を有する、前記請求項のいずれか一項記載の可溶性CD52糖タンパク質。
【請求項15】
前記糖タンパク質が、SEQ ID NO: 3、4、5、6または7で特定されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有する、前記請求項記載の可溶性CD52糖タンパク質。
【請求項16】
ヒトのものである、前記請求項のいずれか一項記載の可溶性CD52糖タンパク質。
【請求項17】
前記糖タンパク質が、SEQ ID NO: 3で特定されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有する、前記請求項のいずれか一項記載の可溶性CD52糖タンパク質。
【請求項18】
N-グリカンがアスパラギン(N)残基3へ結合されている、請求項17記載の可溶性CD52糖タンパク質。
【請求項19】
前記糖タンパク質が、SEQ ID NO: 3で特定されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有し、1つまたは複数のO-グリカンが、セリン(S)残基12、セリン残基(S)10および/またはトレオニン(T)残基8へ結合されている、請求項9または10記載の可溶性CD52糖タンパク質。
【請求項20】
前記糖タンパク質が、SEQ ID NO: 3で特定されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有し、O-グリカンが、セリン(S)残基12および/またはセリン残基(S)10へ結合されている、請求項10記載の可溶性CD52糖タンパク質。
【請求項21】
1つまたは複数のN-グリカンが、
からなる群より選択される、前記請求項のいずれか一項記載の可溶性CD52糖タンパク質。
【請求項22】
1つまたは複数のN-グリカンが、
からなる群より選択される、前記請求項のいずれか一項記載の可溶性CD52糖タンパク質。
【請求項23】
1つまたは複数のN-グリカンが、
からなる群より選択される、前記請求項のいずれか一項記載の可溶性CD52糖タンパク質。
【請求項24】
1つまたは複数のO-グリカンが、
からなる群より選択される、請求項3、4、5、9、10、19および20のいずれか一項記載の可溶性CD52糖タンパク質。
【請求項25】
1つまたは複数のO-グリカンが、
からなる群より選択される、請求項24記載の可溶性CD52糖タンパク質。
【請求項26】
第2のタンパク質とコンジュゲートされた前記請求項のいずれか一項記載の可溶性CD52糖タンパク質を含む融合タンパク質。
【請求項27】
第2のタンパク質が、抗体断片、好ましくはFcまたはIgG1 Fcである、請求項26記載の融合タンパク質。
【請求項28】
第2のタンパク質が精製タグである、請求項26記載の融合タンパク質。
【請求項29】
精製タグが、Hisタグ、T7タグ、FLAGタグ、Sタグ、HAタグ、c-Mycタグ、DHFR、キチン結合ドメイン、カルモジュリン結合ドメイン、セルロース結合ドメインおよびStrep 2タグからなる群より選択される、請求項28記載の融合タンパク質。
【請求項30】
約5~約6の等電点(pI)を有する、請求項26~28のいずれか一項記載の融合タンパク質。
【請求項31】
請求項1~25のいずれか一項記載の可溶性CD52糖タンパク質または請求項26~30のいずれか一項記載の融合タンパク質および血清を含む、組成物。
【請求項32】
請求項1~25のいずれか一項記載の可溶性CD52糖タンパク質または請求項26~30のいずれか一項記載の融合タンパク質、ならびにインスリンおよび/または自己抗原を含む、組成物。
【請求項33】
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質を含む組成物であって、該組成物のCD52糖タンパク質が、
(i) 野生型可溶性CD52糖タンパク質と比べて増加した量のα-2,3-シアリル化N-グリカン;
(ii) 野生型可溶性CD52糖タンパク質と比べて増加した量の三分岐型および四分岐型のN-グリカン;ならびに/または
(iii) 野生型可溶性CD52糖タンパク質と比べて増加した量のO-グリコシル化
を含み、
野生型可溶性CD52糖タンパク質がヒト脾臓由来のCD52である、
組成物。
【請求項34】
前記組成物のCD52糖タンパク質が、(i)、(ii) および(iii) のうちのいずれか2つを含む、請求項33記載の組成物。
【請求項35】
前記組成物のCD52糖タンパク質が、野生型可溶性CD52糖タンパク質と比べて減少した量のN結合型バイセクティングGlcNAcグリカンをさらに含む、請求項33または34記載の組成物。
【請求項36】
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質を含む組成物であって、該組成物のCD52糖タンパク質が、
(i) 野生型可溶性CD52糖タンパク質と比べて増加した量のα-2,3-シアリル化N-グリカン;
(ii) 野生型可溶性CD52糖タンパク質と比べて増加した量の四分岐型N-グリカン;および/または
(iii) 野生型可溶性CD52糖タンパク質と比べて増加した量の二シアリル化O-グリコシル化
を含み、
野生型可溶性CD52糖タンパク質がヒト脾臓由来のCD52である、
組成物。
【請求項37】
前記組成物のCD52糖タンパク質が、(i)、(ii) および(iii) のうちのいずれか2つを含む、請求項36記載の組成物。
【請求項38】
前記組成物のCD52糖タンパク質が、野生型可溶性CD52糖タンパク質と比べて減少した量のN結合型バイセクティングGlcNAcグリカンをさらに含む、請求項36または37記載の組成物。
【請求項39】
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質が、約5~約6の等電点(pI)を有する、請求項33~38のいずれか一項記載の組成物。
【請求項40】
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分が、
N結合型グリコシル化に適した少なくとも1つのアミノ酸を含むアミノ酸配列、および
SEQ ID NO: 3、4、5、6または7で特定されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つまたは複数と少なくとも60%同一のアミノ酸配列
を有する、請求項33~39のいずれか一項記載の組成物。
【請求項41】
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分が、
N結合型グリコシル化に適した少なくとも1つのアミノ酸を含むアミノ酸配列、および
SEQ ID NO: 3、4、5、6または7で特定されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つまたは複数と少なくとも80%同一のアミノ酸配列
を有する、請求項33~40のいずれか一項記載の組成物。
【請求項42】
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分が、
N結合型グリコシル化に適した少なくとも1つのアミノ酸を含むアミノ酸配列、および
SEQ ID NO: 3、4、5、6または7で特定されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つまたは複数と少なくとも90%同一のアミノ酸配列
を有する、請求項33~41のいずれか一項記載の組成物。
【請求項43】
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分が、
N結合型グリコシル化に適した少なくとも1つのアミノ酸を含むアミノ酸配列、および
SEQ ID NO: 3、4、5、6または7で特定されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つまたは複数と少なくとも95%同一のアミノ酸配列
を有する、請求項33~42のいずれか一項記載の組成物。
【請求項44】
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分が、SEQ ID NO: 3、4、5、6または7で特定されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有する、請求項33~43のいずれか一項記載の組成物。
【請求項45】
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分がヒトのものである、請求項33~44のいずれか一項記載の組成物。
【請求項46】
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分が、SEQ ID NO: 3で特定されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有する、請求項33~45のいずれか一項記載の組成物。
【請求項47】
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分のN-グリカンが、アスパラギン(N)残基3へ結合されている、請求項46記載の組成物。
【請求項48】
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分が、SEQ ID NO: 3で特定されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有し、かつ、セリン(S)残基12、セリン残基(S)10および/またはトレオニン(T)残基8へ結合された1つまたは複数のO-グリカンを含む、請求項46または47記載の組成物。
【請求項49】
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分が、SEQ ID NO: 3で特定されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有し、かつ、セリン(S)残基12および/またはセリン残基(S)へ結合された1つまたは複数のO-グリカンを含む、請求項48記載の組成物。
【請求項50】
複数のCD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分のN-グリカンが、約60~約70% 三シアリル化および四シアリル化されている、請求項33~49のいずれか一項記載の組成物。
【請求項51】
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分のN-グリカンが、約55~約65% α-2,3-シアリル化されている、請求項33~50のいずれか一項記載の組成物。
【請求項52】
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分が、野生型可溶性CD52糖タンパク質と比べて増加した量の、
からなる群より選択されるN-グリカンを有する、請求項33~51のいずれか一項記載の組成物。
【請求項53】
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分が、野生型可溶性CD52糖タンパク質と比べて増加した量の、
からなる群より選択されるN-グリカンを有する、請求項33~52のいずれか一項記載の組成物。
【請求項54】
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分が、野生型可溶性CD52糖タンパク質と比べて増加した量の、
からなる群より選択されるN-グリカンを有する、請求項33~53のいずれか一項記載の組成物。
【請求項55】
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分が、約15~約20% O-グリコシル化されている、請求項33~54のいずれか一項記載の組成物。
【請求項56】
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分が、野生型可溶性CD52糖タンパク質と比べて増加した量の、
からなる群より選択されるO-グリカンを有する、請求項33~55のいずれか一項記載の組成物。
【請求項57】
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分が、野生型可溶性CD52糖タンパク質と比べて増加した量の、
からなる群より選択されるO-グリカンを有する、請求項56記載の組成物。
【請求項58】
複数のCD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分が、SEQ ID NO: 3と少なくとも60%同一であるアミノ酸配列を有する複数のCD52糖タンパク質を含み、野生型CD52糖タンパク質と比較して増加した量の、そのペプチド中のアスパラギン(N3)残基へ結合されたN結合型グリカンをさらに含む、請求項40~57に記載の組成物。
【請求項59】
複数のCD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分が、SEQ ID NO: 3と少なくとも60%同一であるアミノ酸配列を有する複数のCD52糖タンパク質を含み、野生型CD52と比較して増加した量の、Ser (S) 12、Ser (S) 10および/またはThr (T) 8でのO-グリコシル化をさらに含む、請求項40~58に記載の組成物。
【請求項60】
インスリンをさらに含む、請求項33~59に記載の組成物。
【請求項61】
自己抗原をさらに含む、請求項33~60に記載の組成物。
【請求項62】
血清をさらに含む、請求項33~61に記載の組成物。
【請求項63】
前記タンパク質が、グリコシル化が可能な宿主細胞における発現によって調製される、前記請求項のいずれか一項記載のCD52糖タンパク質、融合タンパク質または組成物。
【請求項64】
宿主細胞が哺乳動物細胞、好ましくはヒト細胞である、請求項63記載のCD52糖タンパク質、融合タンパク質または組成物。
【請求項65】
宿主細胞がExpi 293またはHEK 293である、請求項63または64記載のCD52糖タンパク質、CD52糖タンパク質を含む融合タンパク質、または組成物。
【請求項66】
α-2,3-シアリル化の少なくともいくつかが酵素的に付加されている、前記請求項のいずれか一項記載のCD52糖タンパク質、CD52糖タンパク質を含む融合タンパク質、または組成物。
【請求項67】
α-2,3-シアリル化の少なくともいくつかが1つまたは複数のシアリルトランスフェラーゼによって付加されている、請求項66記載のCD52糖タンパク質、CD52糖タンパク質を含む融合タンパク質、または組成物。
【請求項68】
α-2,3-シアリル化の少なくともいくつかがファミリーGT-42の1つまたは複数のシアリルトランスフェラーゼによって付加されている、請求項66または67記載のCD52糖タンパク質、CD52糖タンパク質を含む融合タンパク質、または組成物。
【請求項69】
α-2,3-シアリル化の少なくともいくつかが、Cst-IIおよびCst-Iの群より選択されるシアリルトランスフェラーゼによって付加されている、請求項66~68のいずれか一項のCD52糖タンパク質、CD52糖タンパク質を含む融合タンパク質、または組成物。
【請求項70】
以下の工程を含む、請求項1~62のいずれか一項記載のCD52糖タンパク質、CD52糖タンパク質を含む融合タンパク質、または組成物の調製のための方法:
(i) 哺乳動物細胞培養物において、タグ配列へ結合された、CD52糖タンパク質またはCD52糖タンパク質融合タンパク質のアミノ酸配列を発現させる工程;
(ii) 該タグ配列から産生されるペプチドに対して親和性を有する樹脂および好適な溶出剤を使用するアフィニティークロマトグラフィーによって、CD52糖タンパク質またはCD52糖タンパク質融合タンパク質を単離する工程。
【請求項71】
細胞培養物がExpi 293またはHEK 293細胞を含む、請求項70記載の方法。
【請求項72】
タグ配列がstrep-tag IIであり、樹脂がStreptactin樹脂である、請求項70または71記載の方法。
【請求項73】
溶出剤がデスチオビオチンである、請求項70~72のいずれか一項記載の方法。
【請求項74】
以下による、約5~約6のpIを有する活性CD52糖タンパク質および/またはそれらの融合タンパク質のフラクションの調製のための方法:
(i) 請求項33~62のいずれか一項記載のタンパク質または請求項63~73のいずれか一項に従って調製されたタンパク質を含有する組成物に対して陰イオン交換クロマトグラフィーを行い、該タンパク質をそれらの等電点(pI)に基づいて分離する工程;
(ii) 溶出されたフラクションを収集する工程;および
(iii) 約5~約6のpIを有するフラクションを選択する工程。
【請求項75】
エフェクターT細胞機能および/または免疫応答を抑制する方法であって、その必要がある対象への治療有効量の請求項1~69のいずれか一項記載のCD52糖タンパク質、融合タンパク質または組成物の投与を含む、方法。
【請求項76】
エフェクターT細胞機能および/または免疫応答を抑制する方法であって、その必要がある対象への、請求項70~74のいずれか一項記載の方法によって調製された治療有効量のCD52糖タンパク質、融合タンパク質または組成物の投与を含む、方法。
【請求項77】
抑制される免疫応答が、自己抗原に対する免疫応答である、請求項75または76記載の方法。
【請求項78】
その必要がある対象における、エフェクターT細胞機能によって媒介される疾患もしくは状態、炎症または敗血症を処置または予防する方法であって、治療有効量の請求項1~69のいずれか一項記載の1つまたは複数のCD52タンパク質または融合タンパク質または組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項79】
その必要がある対象における、エフェクターT細胞機能によって媒介される疾患もしくは状態、炎症または敗血症を処置または予防する方法であって、方法が、請求項70~74のいずれか一項に従って調製された治療有効量の1つまたは複数のCD52糖タンパク質、CD52糖タンパク質を含む融合タンパク質、もしくは組成物、またはそれらのフラクションを投与する工程を含む、方法。
【請求項80】
エフェクターT細胞機能によって媒介される疾患が、自己免疫疾患、例えば、I型糖尿病または関節リウマチである、請求項78または79記載の方法。
【請求項81】
エフェクターT細胞機能によって媒介される状態が、同種移植片拒絶または移植片対宿主反応である、請求項78または79記載の方法。
【請求項82】
粘膜投与または経皮投与を含む、請求項75~81のいずれか一項記載の方法。
【請求項83】
治療における使用のための、請求項1~69のいずれか一項記載のCD52糖タンパク質、融合タンパク質または組成物。
【請求項84】
エフェクターT細胞機能および/または免疫応答を抑制するための、請求項1~69のいずれか一項記載のCD52糖タンパク質、融合タンパク質または組成物。
【請求項85】
エフェクターT細胞機能によって媒介される疾患もしくは状態、炎症または敗血症を処置または予防するための、請求項1~69のいずれか一項記載のCD52糖タンパク質、融合タンパク質または組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本開示は、CD52糖タンパク質、特に可溶性CD52糖タンパク質、およびそれらの融合タンパク質、ならびにエフェクターT細胞機能および/または免疫応答の抑制における、およびエフェクターT細胞機能によって媒介される疾患または状態の処置における、CD52糖タンパク質およびそれらの融合タンパク質の使用に関する。本開示はさらに、CD52糖タンパク質および融合タンパク質の調製および精製に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ヒト可溶性CD52は、わずか12個のアミノ酸から構成されている糖タンパク質である。他の哺乳動物において類似体がある。可溶性CD52は、活性化T細胞の表面から放出され、先ず、炎症性損傷関連分子パターン(DAMP)タンパク質、高移動度群ボックス1(HMGB1)を隔離し、続いて阻害性シアル酸結合免疫グロブリン様レクチン-10(Siglec-10)に結合することによって、免疫抑制を開始する。
【0003】
CD52糖タンパク質は、N結合型および/またはO結合型グリコシル化によって修飾されている。この結合および関連する活性を担うCD52のグリコシル化プロファイルはまだ解明されていない。
【0004】
質量分光(MS)分析は、ヒト白血球CD52上のN-グリカンが、コアα-1,6フコシル化、豊富なポリLacNAc伸長および可変のシアリル化を含有する多分岐型複合体を伴って、広範囲な不均一性を示すことを示した。1つまたは複数のCD52 N-グリカンが生物活性のために必要であることが公知であるが、1つまたは複数の活性CD52 N-グリカンの構造は完全には解明されていない。さらに、O-グリコシル化に適した6つの潜在的なアミノ酸部位があるにもかかわらず、CD52のO-グリコシル化は分析されていない。
【0005】
生物活性CD52グリコフォームを決定する必要がある。生物活性CD52グリコフォームまたはより優れた生物活性を有するグリコフォームの一群の同定は、改善された効能、効率、および/または効果のより多くの一貫性を有する、免疫抑制剤の開発を可能にし得る。
【発明の概要】
【0006】
本発明者らは、エフェクターT細胞機能および/または免疫応答を抑制する可溶性CD52糖タンパク質のグリコフォームを同定した。
【0007】
第1局面において、本発明は1つまたは複数の可溶性CD52糖タンパク質を提供し、1つまたは複数の可溶性CD52糖タンパク質は以下を含む:
(i) 1つまたは複数の多分岐型N結合型α-2,3-シアリル化グリカン、好ましくは四分岐型N結合型α-2,3-シアリル化グリカン;および
(ii) 約5~約6の等電点(pI)。
【0008】
任意で、可溶性CD52糖タンパク質はさらに、1つまたは複数のO-グリカン、好ましくは1つまたは複数のO-グリカン、好ましくは二シアリル化O-グリカンを含み、かつ/あるいはN-グリカン上のバイセクティングGlcNAc構造体を含まない。
【0009】
代替的第1局面において、本発明は1つまたは複数の可溶性CD52糖タンパク質を提供し、1つまたは複数の可溶性CD52糖タンパク質は、
(i) 1つまたは複数の多分岐型N結合型α-2,3-シアリル化グリカン、好ましくは四分岐型N結合型α-2,3-シアリル化グリカンを含み;かつ
(ii) N結合型バイセクティングGlcNAc構造体を含まない。
【0010】
任意で、可溶性CD52糖タンパク質は、1つまたは複数のO-グリカン、好ましくは1つまたは複数のO-グリカン、好ましくは二シアリル化O-グリカン、および/あるいは約5~約6のpIをさらに含む。
【0011】
代替的第1局面において、本発明は1つまたは複数の可溶性CD52糖タンパク質を提供し、1つまたは複数の可溶性CD52糖タンパク質は、
(iii) 1つまたは複数のN結合型α-2,3-シアリル化グリカンを含み;
(iv) 1つまたは複数のO-グリカン、好ましくは1つまたは複数の二シアリル化O-グリカンを含み;かつ
(v) N結合型バイセクティングGlcNAc構造体を含まない。
【0012】
任意で、可溶性CD52糖タンパク質は、1つまたは複数の多分岐型シアリル化N-グリカン、好ましくは四分岐型シアリル化N-グリカン、および/あるいは約5~約6のpIをさらに含む。
【0013】
代替的第1局面において、本発明は1つまたは複数の可溶性CD52糖タンパク質を提供し、1つまたは複数の可溶性CD52糖タンパク質は以下を含む:
(iii) 1つまたは複数のN結合型α-2,3-シアリル化グリカン;
(iv) 1つまたは複数のO-グリカン、好ましくは1つまたは複数の二シアリル化O-グリカン;および
(v) 約5~約6のpI。
【0014】
任意で、可溶性CD52糖タンパク質はさらに、1つまたは複数の多分岐型シアリル化N-グリカン、好ましくは四分岐型シアリル化N-グリカンを含み、かつ/あるいはN結合型バイセクティングGlcNAc構造体を含まない。
【0015】
さらなる代替的第1局面において、本発明は1つまたは複数の可溶性CD52糖タンパク質を提供し、1つまたは複数の可溶性CD52糖タンパク質は以下を含む:
(i) 1つまたは複数の多分岐型N結合型α-2,3-シアリル化グリカン;および
(ii) 1つまたは複数の二シアリル化O-グリカン。
【0016】
任意で、この局面はまた、約5~約6のpIを有しかつ/またはN結合型バイセクティングGlcNAc構造体を有さない。
【0017】
本発明の全ての態様の可溶性CD52糖タンパク質は、任意で、N結合型グリコシル化に適した少なくとも1つのアミノ酸を含むアミノ酸配列、および以下:
のうちのいずれか1つまたは複数と少なくとも60%同一のアミノ酸配列を有する。
【0018】
任意で、可溶性CD52糖タンパク質は、SEQ ID NO: 3、4、5、6または7で特定されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つまたは複数と少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する。あるいは、可溶性CD52糖タンパク質は、SEQ ID NO: 3、4、5、6または7で特定されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つまたは複数と同一であるアミノ酸配列を有する。
【0019】
任意で、可溶性CD52糖タンパク質はヒトのものである。
【0020】
N結合型グリコシル化に適したアミノ酸は、Asn-X-Ser/Thr(即ちN-X-S/T)シークオンの一部であるアスパラギン残基、即ち、セリンまたはトレオニンのいずれかから1アミノ酸離れたアスパラギンであることが多い。Xはプロリン以外の任意のアミノ酸であり得る。N-X-S/Tシークオンが存在する場合、N-X-S/Tシークオンに含まれないペプチド上のアミノ酸は、別のアミノ酸で置き換えることができる。アミノ酸を、電荷、サイズ、疎水性などの生化学的特性が類似した別のアミノ酸で置き換えることが好ましい。
【0021】
従って、いくつかの態様において、可溶性CD52糖タンパク質は、N-X-S/Tシークオンを有し、SEQ ID NO: 3、4、5、6または7で特定されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つまたは複数と少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一である。
【0022】
任意で、可溶性CD52糖タンパク質は、SEQ ID NO: 3と少なくとも60%同一であるアミノ酸配列を有し、N結合型グリカンは、そのペプチド中のアスパラギン残基(即ち、Asn3;N3)へ結合されている。
【0023】
任意で、N結合型α-2,3-シアリル化グリカンは、多分岐型シアリル化N-グリカン、二分岐型、三分岐型もしくは四分岐型のシアリル化N-グリカン、または三分岐型もしくは四分岐型のシアリル化N-グリカンである。四分岐型シアリル化N-グリカンが好ましい。任意で、多分岐型α-2,3-シアリル化N-グリカンは、ポリLacNAc伸長を有する。
【0024】
本発明の全ての態様において、本発明のCD52糖タンパク質中の1つまたは複数のN-グリカンは、任意で、
からなる群より選択される。
【0025】
本明細書全体にわたるこれらおよび同様の構造体中において、N-グリカンは、波線で示された結合を通じてペプチドへ結合されている。さらに、括弧の上のグリカン残基は、描写された構造体上に示されるような残基の総数まで、括弧の下の一番上の残基のいずれかを通じてまたは括弧の上の他の残基を通じて、括弧の下のグリカンに接続されている。
【0026】
本発明のCD52糖タンパク質中の1つまたは複数のN-グリカンは、任意で、
からなる群より選択される。
【0027】
本発明のCD52糖タンパク質中の1つまたは複数のN-グリカンは、任意で、
からなる群より選択される。
【0028】
本発明の全ての態様において、O-グリコシル化は、任意でシアリル化されており、好ましくは一シアリル化および/または二シアリル化されている。任意で、可溶性CD52糖タンパク質は、SEQ ID NO: 3と少なくとも60%同一であるアミノ酸配列を有し、ペプチドは、Ser (S) 12、Ser (S) 10および/またはThr (T) 8でO-グリコシル化されており、好ましくは、O-グリコシル化は、Thr (T) 8で一シアリル化されており、またはSer (S) 12および/もしくはSer (S) 10で二シアリル化されている。
【0029】
本発明のCD52糖タンパク質中の1つまたは複数のO-グリカンは、任意で、
からなる群より選択される。
【0030】
第2局面において、本発明は、第2のタンパク質と融合された、本発明の第1または代替的第1局面(またはそれらの態様)に従う可溶性CD52糖タンパク質を含む融合タンパク質を提供する。任意で、第2のタンパク質は、抗体断片、好ましくはFcまたはIgG1 Fcを含む。任意で、第2のタンパク質は精製タグを含む。精製タグは、任意で、Hisタグ、T7タグ、FLAGタグ、Sタグ、HAタグ、c-Mycタグ、DHFR、キチン結合ドメイン、カルモジュリン結合ドメイン、セルロース結合ドメインおよびStrep 2タグからなる群より選択される。Strep 2タグが好ましい。
【0031】
いくつかの態様において、融合タンパク質は、上記に記載されるような抗体断片および精製タグの両方を有する第2のタンパク質を含む。
【0032】
融合タンパク質は、任意で、約5~約6の等電点(pI)を有する。
【0033】
本発明の第1および第2局面の代替において、本発明は、血清と、本発明の第1、代替的第1または第2局面(またはそれらの態様のいずれか)に従う可溶性CD52糖タンパク質または融合タンパク質とを含む、組成物を提供する。
【0034】
本発明の第1および第2局面の別の代替において、本発明は、インスリンおよび/または自己抗原と、本発明の第1、代替的第1または第2局面(またはそれらの態様のいずれか)に従う可溶性CD52糖タンパク質または融合タンパク質とを含む、組成物を提供する。
【0035】
第3局面において、本発明は、複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質を含む組成物を提供し、組成物のCD52糖タンパク質は、
(i) 野生型可溶性CD52糖タンパク質と比べて増加した量のα-2,3-シアリル化N-グリカン;
(ii) 野生型可溶性CD52糖タンパク質と比べて増加した量の三分岐型および四分岐型のN-グリカン;および/または
(iii) 野生型可溶性CD52糖タンパク質と比べて増加した量のO-グリコシル化
を含み、
野生型可溶性CD52糖タンパク質はヒト脾臓由来のCD52である。
【0036】
代替的第3局面において、本発明は、複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質を含む組成物を提供し、組成物のCD52糖タンパク質は、
(i) 野生型可溶性CD52糖タンパク質と比べて増加した量のα-2,3-シアリル化N-グリカン;
(ii) 野生型可溶性CD52糖タンパク質と比べて増加した量の四分岐型N-グリカン;および/または
(iii) 野生型可溶性CD52糖タンパク質と比べて増加した量の二シアリル化O-グリコシル化
を含む。
【0037】
任意で、本発明の第3および代替的第3局面の組成物の複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質はまた、約5~約6のpIおよび/または野生型可溶性CD52糖タンパク質と比べて減少した量のN結合型バイセクティングGlcNAcグリカンを有する。
【0038】
本発明の第3および代替的第3局面についての可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分のアミノ酸配列は、任意で、本発明の第1および代替的第1局面(またはそれらの態様のいずれか)について記載される通りである。
【0039】
本発明の第3および代替的第3局面の一態様において、複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分のN-グリカンは、約60~約70% 三シアリル化および四シアリル化されており、かつ/または、約55~約65% α-2,3-シアリル化されている。
【0040】
本発明の第3および代替的第3局面の別の態様において、複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分は、野生型可溶性CD52糖タンパク質と比べて増加した量の、
からなる群より選択されるN-グリカンを有する。
【0041】
本発明の第3および代替的第3局面の態様において、複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分は、野生型可溶性CD52糖タンパク質と比べて増加した量の、
からなる群より選択されるN-グリカンを有する。
【0042】
本発明の第3および代替的第3局面の態様において、複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分は、約15~約20% O-グリコシル化されている。
【0043】
本発明の第3および代替的第3局面の別の態様において、複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分は、野生型可溶性CD52糖タンパク質と比べて増加した量の、
からなる群より選択されるO-グリカンを有する。
【0044】
本発明の第3および代替的第3局面の態様において、複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分は、SEQ ID NO: 3と少なくとも60%同一であるアミノ酸配列を有する複数のCD52糖タンパク質を含む。この態様において、複数の発現されたCD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分は、任意で、野生型CD52糖タンパク質と比較して増加した量の、そのペプチド中のアスパラギン残基(即ち、Asn3;N3)へ結合されたN結合型グリカンを有する。代わりに、または加えて、複数のCD52糖タンパク質は、任意で、野生型CD52と比較して増加した量の、Ser (S) 12および/またはThr (T) 8でのO-グリコシル化を有する。
【0045】
いくつかの態様において、本発明の第3態様の組成物は、インスリン、自己抗原および/または血清をさらに含む。
【0046】
第4局面において、本発明は、本発明の第1、第2もしくは第3局面またはそれらの代替(またはそれらの態様のいずれか)に従うCD52糖タンパク質、CD52糖タンパク質を含む融合タンパク質、または組成物を提供し、タンパク質は、グリコシル化が可能な宿主細胞における発現によって調製される。任意で、宿主細胞は、哺乳動物細胞、例えばヒト細胞である。任意で、宿主細胞はExpi 293またはHEK 293である。
【0047】
代替的第4局面において、本発明は、本発明の第1、第2もしくは第3局面またはそれらの代替(またはそれらの態様のいずれか)に従うCD52糖タンパク質、CD52糖タンパク質を含む融合タンパク質、または組成物を提供し、α-2,3-シアリル化の少なくともいくつかは、任意で、Cst-IIおよびCst-Iからなる群より好ましくは選択される、ファミリーGT-42のシアリルトランスフェラーゼなどの、1つまたは複数のシアリルトランスフェラーゼによって、酵素的に付加されている。
【0048】
本発明の第1、第2もしくは第3局面またはそれらの代替(またはそれらの態様のいずれか)に従うCD52糖タンパク質、CD52糖タンパク質を含む融合タンパク質、または組成物は、任意で、単離または精製される。本発明の第5~第11局面(またはそれらの態様のいずれか)の方法または使用におけるCD52糖タンパク質、CD52糖タンパク質を含む融合タンパク質、または組成物もまた、任意で、単離または精製される。
【0049】
第5局面において、本発明は、本発明の第1、第2または第3局面(またはそれらの態様のいずれか)に従うCD52糖タンパク質、CD52糖タンパク質を含む融合タンパク質、または複数のCD52糖タンパク質を調製する方法を提供し、方法は以下を含む:
(i) 哺乳動物細胞培養物(例えば、Expi 293またはHEK 293)において、タグ配列へ結合された、CD52糖タンパク質またはCD52糖タンパク質融合タンパク質のアミノ酸配列を発現させる工程;
(ii) タグ配列から産生されるペプチドに対して親和性を有する樹脂および好適な溶出剤を使用するアフィニティークロマトグラフィーによって、CD52糖タンパク質またはCD52糖タンパク質融合タンパク質を単離する工程。
【0050】
任意で、タグ配列はstrep-tag IIであり、樹脂はStreptactin樹脂である。代替的なタグ配列もまた当業者に公知である。溶出剤は、任意で、デスチオビオチンである。
【0051】
本発明の第6局面において、約5~約6のpIを有する活性CD52糖タンパク質および/またはそれらの融合タンパク質のフラクションは、以下によって調製する:
(i) 本発明の第3もしくは代替的第3局面(またはそれらの態様のいずれか)に従うタンパク質または本発明の第4もしくは第5局面(またはそれらの態様のいずれか)に従って調製されたタンパク質を含有する組成物に対して陰イオン交換クロマトグラフィーを行い、該タンパク質をそれらの等電点(pI)に基づいて分離する工程;
(ii) 溶出されたフラクションを収集する工程;および
(iii) 約5~約6のpIを有するフラクションを選択する工程。
【0052】
第7局面において、本発明は、エフェクターT細胞機能および/または免疫応答を抑制する方法であって、その必要がある対象への、
本発明の第1、第2または第3局面(またはそれらの態様のいずれか)に従うCD52糖タンパク質、CD52糖タンパク質を含む融合タンパク質、または組成物;または
本発明の第4、第5もしくは第6局面またはそれらの代替(またはそれらの態様のいずれか)に従って調製されたCD52糖タンパク質、CD52糖タンパク質を含む融合タンパク質、もしくは組成物、またはそれらのフラクション
の投与を含む、方法を提供する。
【0053】
任意で、抑制される免疫応答は、自己抗原に対する免疫応答である。
【0054】
第8局面において、本発明は、その必要がある対象における、
エフェクターT細胞機能によって媒介される疾患もしくは状態、
炎症、または
敗血症
を処置または予防する方法を提供し、方法は、治療有効量の、
本発明の第1、第2もしくは第3局面またはそれらの代替(またはそれらの態様のいずれか)に従う1つまたは複数のCD52タンパク質またはその融合タンパク質または組成物;または
本発明の第4、第5もしくは第6局面またはそれらの代替(またはそれらの態様のいずれか)に従って調製された1つまたは複数のCD52糖タンパク質、CD52糖タンパク質を含む融合タンパク質、もしくは組成物、またはそれらのフラクション
を投与する工程を含む。
【0055】
態様において、方法は粘膜投与または経皮投与を含む。
【0056】
第9局面において、本発明は、
エフェクターT細胞機能を抑制するための、
自己抗原に対する免疫応答などの免疫応答を軽減するための、あるいは
エフェクターT細胞機能によって媒介される疾患もしくは状態、
炎症、または
敗血症
を処置または予防するための、
本発明の第1、第2または第3局面(またはそれらの態様のいずれか)に従うCD52糖タンパク質、CD52糖タンパク質を含む融合タンパク質、または組成物;または
本発明の第4、第5もしくは第6局面またはそれらの代替(またはそれらの態様のいずれか)に従って調製されたCD52糖タンパク質、CD52糖タンパク質を含む融合タンパク質、もしくは組成物、またはそれらのフラクション
の使用を提供する。
【0057】
任意で、抑制される免疫応答は、自己抗原に対する免疫応答である。
【0058】
第10局面において、本発明は、
エフェクターT細胞機能および/または免疫応答を抑制するための、あるいは、
エフェクターT細胞機能によって媒介される疾患もしくは状態、
炎症、または
敗血症
の処置または予防のための、医薬の製造における、
本発明の第1、第2または第3局面(またはそれらの態様のいずれか)に従うCD52糖タンパク質、CD52糖タンパク質を含む融合タンパク質、または組成物;または
本発明の第4、第5もしくは第6局面またはそれらの代替(またはそれらの態様のいずれか)に従って調製されたCD52糖タンパク質、CD52糖タンパク質を含む融合タンパク質、もしくは組成物、またはそれらのフラクション
の使用を提供する。
【0059】
任意で、抑制される免疫応答は、自己抗原に対する免疫応答である。
【0060】
第11局面において、本発明は、治療における使用のための、
本発明の第1、第2または第3局面(またはそれらの態様のいずれか)に従うCD52糖タンパク質、CD52糖タンパク質を含む融合タンパク質、または組成物;または
本発明の第4、第5もしくは第6局面またはそれらの代替(またはそれらの態様のいずれか)に従って調製されたCD52糖タンパク質、CD52糖タンパク質を含む融合タンパク質、もしくは組成物、またはそれらのフラクション
を提供する。
【0061】
本発明の第11局面の態様において、治療は、
エフェクターT細胞機能を抑制すること、
自己抗原に対する免疫応答などの免疫応答を軽減すること、あるいは、
エフェクターT細胞機能によって媒介される疾患もしくは状態、
炎症;または
敗血症
を処置または予防すること
を含む。
【0062】
任意で、抑制される免疫応答は、自己抗原に対する免疫応答である。
【0063】
本発明の第8、第9、第10および第11局面において、エフェクターT細胞機能によって媒介される疾患は、任意で、自己免疫疾患、例えば、I型糖尿病または関節リウマチである。任意で、エフェクターT細胞機能によって媒介される状態は、同種移植片拒絶または移植片対宿主反応である。
【0064】
本明細書において使用される場合、文脈上別段の必要がある場合を除いて、用語「含む(comprise)」、ならびに「含む(comprising)」、「含む(comprises)」および「含んだ(comprised)」などの用語の変形物は、さらなる添加物、成分、整数または段階を除外するようには意図されない。
【0065】
本発明のさらなる局面および前述の段落中に記載される局面のさらなる態様は、例として与えられる下記の説明から、添付の図面を参照して、明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1】ヒト脾臓CD52のグリコシル化分析。(A) ヒト脾臓組織から精製されたCD52からの放出されたN-グリカンの要約されたMSプロファイル。(B) ヒト脾臓CD52から放出されたO結合型グリカンの分布。
図2】組換えヒトIgG FcおよびCD52の比較によるN-グリコプロファイリング。(A) 破傷風トキソイドと共の5日間インキュベーション後のヒトPBMCの増殖(3Hチミジン取り込み)。ヒストグラムは、異なる濃度のタンパク質の存在下での、ウイズインアッセイトリプリケートの平均値± SDを示す。Fc成分を第Xa因子でCD52-Fcから切断した。(B) Fc (I) およびCD52 (II) から放出されたN-グリカンの要約されたMSプロファイル;後者のバリアントは、通常のFc N-グリコシル化部位中へ点突然変異(A297N)を導入することによって作製した。(C) 第Xa因子処理CD52をCampath-H1-HRP抗体でのウエスタンブロッティングによって分析した。
図3】異なる免疫抑制活性を有する2つの組換えヒトCD52-Fcバリアント(IおよびII)の比較。(A) 200μL/ウェル中のヒトPBMC (2 x 106)からのELISpotアッセイによって測定されたIFN-g産生。サンプルを、CD52-Fcの2つの異なる調製物(CD52 IまたはCD52 II;5、25、および50μg/ml)の存在下において抗原無しでまたは破傷風トキソイドと共にインキュベートした。(B) 切断CD52 IおよびCD52 IIから放出されたN結合型グリカン。各N-グリカンクラスの存在度は、全てのN-グリカンについて観察された全てのEICの合計と比べての、そのクラス中の全てのグリカンについて測定された全てのEICの合計である。(C) CD52 IおよびCD52 II中において観察されたシアロ-グリカン異性体の多孔質黒鉛化炭素(PGC) LCベース分離を実証する、m/z 1140.42- (GlcNAc5Man3Gal2NeuAc1)のEIC。(D) α-2,3シアル酸認識レクチンMAL-1へのCD52-Fc IおよびCD52-Fc II (5および20μg/ml)の結合。(E) ガラクトースとα2-6、α2-3および/またはα2-8結合されているシアル酸で再構成されたCD52-Fcの活性を示すELISpotアッセイ。パネル (A)、(D) および (E) 中のデータポイントは、3つの独立した反復実験の平均値± SEMとしてプロットされている。(B) および(C) 中のデータは平均値± SDである(n = 3)。群平均値間の有意差を検定するために、スチューデントt検定を使用した。
図4】陰イオン交換クロマトグラフィーによる分画後のCD52-Fc。(A) MonoQ-GLカラムにおける陰イオン交換クロマトグラフィーは、組換えヒトCD52-Fcを、一連のpIを示す陰イオン性グリコフォームの勾配へ分画した(図8)。(B)組換えヒトCD52-Fcフラクション(F29~F53; 5μg/ml)の存在下で抗原無しでまたは抗CD3/CD28抗体Dynabeadと共にインキュベートされた200μL/ウェル中2 x 106 PBMCでのIFN-g ELISpotアッセイ。
図5】活性monoQ活性フラクションのシアリック結合分析。(A) α-2,3特異的シアリダーゼの活性を確認するための連続α-2,3シアリダーゼ処理後の、三分岐型α-2,3-シアリル化N-グリカンを有することが公知の、ウシフェチュインの二シアリル化N-グリカンm/z 1111.42のEIC。EICはシアル酸残基の各々の除去を評価する。(B) α-2,3特異的シアリダーゼでの処理前および後の、活性CD52フラクションF48およびF49について観察された全てのN-グリカンの要約されたMS。(C) 特に関心対象の後期溶出MonoQフラクションの免疫抑制生物活性、α-2,3シアリル化の程度、およびバイセクティングGlcNアシル化の要約。(D) 免疫抑制CD52フラクション(F48/F49)の高分解能インタクト質量分析。
図6】組換えヒトCD52のO-グリコシル化のマッピング。(A) 脱-N-グリコシル化後にタンパク質レベルで測定されたCD52 I、CD52 IIおよび選択されたMonoQフラクション(F31およびF46~F51)のN-およびO-グリカン占有率。(B) 活性フラクションm/z 665.22- (GalNAc1GlcNAc1Gal2NeuAc2)およびm/z 1040.41- (GalNAc1GlcNAc1Gal2NeuAc1)からのO-グリコシル化異性体のPGC分解。(C) 上述のO-グリカンの両方についてのペプチド骨格断片およびアミノ酸部位を診断するイオンを示す、EThcD-MS/MSベースの部位位置決め分析。
図7A】インタクトペプチドレベルでのCD52 IおよびCD52 IIの分析。三シアリル化(GlcNAc5Man3Gal3NeuAc3Fucose1)または2つのアウターフコースを有する二シアリル化(GlcNAc5Man3Gal3NeuAc2Fucose3)としてのデコンボリューション化5871.99 (amu) CD52グリコフォームの理論的同位体分布。棒グラフは、異なる量のこれらの2つのグリカンが存在する場合に生成される理論的同位体包絡線を示している。実験的同位体分布値は、二シアリル化された質量異性体よりもむしろ90~100% 三シアリル化構造体の集団を示唆している。
図7B】インタクトペプチドレベルでのCD52 IおよびCD52 IIの分析。CD52 I (桃色)およびCD52 II (緑色)の高分解能インタクト質量分析。
図8】等電点電気泳動(IEF)ゲル中において分解されたCD52-Fcフラクション。MonoQフラクション(F29~54)中のCD52-Fc融合タンパク質を示すコロイド状クーマシーブルーゲル。フラクションは、等電点(pI)値の漸減を示した。
図9】MonoQフラクション(F30およびF47~50)の高分解能インタクト質量分析。(A) シアル酸分子の非存在を示すCD52-Fc融合タンパク質から切断されたCD52の不活性MonoQ F30フラクションのインタクト質量分析。(B) MonoQ分画は、シアル酸量ならびに分岐鎖数(number of antennae)に従って、CD52シアリル化構造体を分離することができた。フラクションF47~50の中で、免疫抑制活性F48およびF49フラクションは、大きなシアリル化構造体を含有した。
図10】活性MonoQフラクションは用量依存的に抑制する。(A) および (B) 抗原無しでまたは抗CD3/CD28抗体Dynabeadと共にIP5培地中においてインキュベートされたヒトPBMC (2 x 105)からのELISpotアッセイによって測定されたIFN-γ産生。(A) 活性Mono-Qフラクション(F48~49)は用量依存的に抑制した(0.3125、0.625、1.25、2.5、および5μg/ml)。(B) 隣接するフラクション(不活性;F46、F47、F50およびF51)は、添加されたタンパク質の増加(5、10、20および40μg/ml)にもかかわらず抑制しない。パネルAおよびB中のデータポイントは、3つの独立した反復の平均値± SEMとしてプロットされている。
【発明を実施するための形態】
【0067】
配列表の説明
SEQ ID NO: 1 ヒトCD52 mRNA転写物(NCBI参照配列: NM_001803.2)
SEQ ID NO: 2 ヒトCD52のアミノ酸配列
SEQ ID NO: 3 ヒトCD52の12アミノ酸可溶性ペプチド
SEQ ID NO: 4 オルソロガスなサル可溶性CD52ペプチド
SEQ 10 NO: 5 オルソロガスなマウス可溶性CD52ペプチド
SEQ ID NO: 6 オルソロガスなラット可溶性CD52ペプチド
SEQ ID NO: 7 オルソロガスなイヌ可溶性CD52ペプチド
【0068】
態様の詳細な説明
全般的な技術および定義
特に他に規定されない限り、本明細書において使用される技術用語および科学用語は全て、(例えば、糖質化学、細胞培養、分子遺伝学、免疫学、免疫組織化学、タンパク質化学、プロテオミクス、グライコミクス、および生化学)の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有するとみなされるものとする。
【0069】
別段の定めが無い限り、本発明で使用される組換えタンパク質、細胞培養、および免疫学的技術は、当業者に周知の標準手順である。
【0070】
「および/または」、例えば「Xおよび/またはY」という用語は、「XおよびY」または「XまたはY」のいずれかを意味すると理解されるものであり、両方の意味またはいずれかの意味に明確な裏付けを提供するとみなされるものとする。
【0071】
本明細書において使用される場合、「約」という用語は、反対の記載が無い限り、指定された値の+/-20%、より好ましくは+/-10%、より好ましくは+/-5%を意味する。不確かさを回避するために、指定された値の前の「約」という用語は、指定されたまさにその値自体もまた包含すると解釈されるべきである(例えば、「約10」は、まさしく10も包含する)。
【0072】
本明細書において使用される場合、文脈上別段の必要がある場合を除いて、用語「含む(comprise)」、ならびに「含む(comprising)」、「含む(comprises)」および「含んだ(comprised)」などの用語の変形物は、他の添加物、成分、整数または段階を除外するようには意図されない。
【0073】
本明細書において使用される場合、「免疫応答」という用語は、当技術分野における通常の意味を有し、体液性免疫および細胞性免疫の両方を含む。免疫応答は、T細胞活性化、B細胞活性化、ナチュラルキラー細胞活性化、抗原提示細胞(例えば、B細胞、DC、単球、および/またはマクロファージ)の活性化、サイトカイン産生、ケモカイン産生、特異的細胞表面マーカーの発現、特に、共刺激分子の発現のうちの1つまたは複数によって媒介され得る。好ましい態様において、本発明の方法を用いて抑制される免疫応答は、少なくとも、エフェクターT細胞の機能であり、この細胞型の生存、活性、および/または増殖を低減させることによる。別の好ましい態様において、本発明の方法を用いて抑制される免疫応答は、単球、マクロファージ、または樹状細胞のうちの少なくとも1つまたは複数の機能であり、これらの細胞型のうちの1つまたは複数の生存、活性、および/または増殖を低減させることによる。さらに好ましい態様において、免疫応答は、自己抗原などの抗原に対する寛容性を誘導する程度まで抑制される。
【0074】
本明細書において使用される場合、「寛容性」という用語は、ある対象が普通は反応する特定の抗原または抗原群に対して免疫不応答性である状態を意味する。免疫寛容性は、免疫反応を抑制する条件下で達成され、単に免疫応答がないことではない。
【0075】
本明細書において使用される場合、「処置すること」、「処置する」、または「処置」という用語は、疾患の少なくとも1つの症状を軽減するか、またはなくすのに十分である治療有効量の作用物質を投与することを含む。
【0076】
本明細書において使用される場合、「予防すること」、「予防する」、または「予防」という用語は、疾患の少なくとも1つの症状の発現を予防するのに十分である治療有効量の作用物質を投与することを含む。
【0077】
本明細書において使用される場合、「抑制すること」という用語は、任意の定量化できる量だけ低減させることを含む。
【0078】
本明細書において使用される場合、「対象」という用語は、動物、例えば、哺乳動物を意味する。好ましい態様において、対象は、哺乳動物、例えばヒトである。他の好ましい態様は、ウマ、ウシ、ヒツジ、およびヤギなどの家畜動物、ならびにイヌおよびネコなどの伴侶動物を含む。
【0079】
本明細書において使用される場合、「宿主」という用語は、任意の手段によって、可溶性CD52が単離され得るか、または可溶性CD52が産生され得る、任意の生物を意味する。宿主は、生物全体であってよく、またはそれに由来する細胞であってもよい。宿主は、動物、例えば哺乳動物であってよい。好ましい態様において、宿主は、哺乳動物、例えばヒトである。他の好ましい宿主には、マウス、ラット、サル、ハムスター、モルモット、ウサギ、および可溶性CD52が単離され得るか、または可溶性CD52が産生され得る適切な宿主として役立ち得る任意の動物または細胞が含まれる。
【0080】
本明細書において使用される場合、用語「融合タンパク質」またはその変形物は、広義には、任意の期間の間、別のタンパク質へ共有結合的に結合または連結されているタンパク質を指す。
【0081】
当業者が認識するように、略語「Fuc」はフコースを指し、「Man」はマンノースを指し、「Gal」はガラクトースを指し、「GalNAc」はN-アセチルガラクトサミンを指し、「GlcNAc」はN-アセチルグルコサミンを指し、「Neu5Ac」はN-アセチルノイラミン酸を指す。
【0082】
特に明記しない限り、用語「可溶性CD52糖タンパク質」、「可溶性CD52」、「可溶性糖タンパク質」およびそれらの変形物は、本明細書において交換可能に使用される。
【0083】
可溶性CD52グリコフォーム
本開示は、エフェクターT細胞機能および/または免疫応答を抑制することにおける生物活性を有する可溶性CD52糖タンパク質断片のグリコフォームを初めて記載する。
【0084】
CD52は、リンパ球を枯渇させるために治療的に使用される補体結合CAMPATHモノクローナル抗体の標的として当初は認識された、大半のリンパ系細胞上に存在する表面グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー型糖タンパク質である。ヒトCD52遺伝子のmRNA転写物はSEQ ID NO: 1に示しており、翻訳されたアミノ酸配列はSEQ ID NO: 2に示している。
【0085】
SEQ ID NO:1の配列は以下である。
【0086】
SEQ ID NO:2の配列は以下である。
【0087】
GPIアンカーによってつなぎ留められた成熟CD52は、わずか12個のアミノ酸およびアスパラギン(N)に結合した末端糖質を含む。
【0088】
膜アンカー型CD52は、(例えば酵素的に)切断されて、アミノ酸配列
を含む可溶性ペプチド断片を放出し得る。本明細書において開示する可溶性CD52糖タンパク質は、SEQ ID NO: 3のアミノ酸配列と少なくとも60%同一、または他の公知のオルソロガスなCD52可溶性断片配列のアミノ酸配列と少なくとも60%同一のアミノ酸配列を含み得る。したがって、可溶性CD52ペプチド断片のオルソロガス配列は、本開示に包含される。このような配列には、サル配列
、マウス配列
、ラット配列
、イヌ配列
、ならびに公知のCD52ポリペプチド配列およびCD52ポリヌクレオチド配列から容易に同定可能である他のオルソロガス配列が含まれるがそれらに限定されるわけではない。
【0089】
現在のところ、CD52ペプチドはグリカンの提示のための足場として機能すると考えられている。従って、必要なN-グリカンおよびO-グリカン結合のためのアミノ酸が残っている限り、配列の変動が機能を失わせることはないと予想される。
【0090】
本明細書において開示するアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列のいずれかに対する同一性の割合は、当技術分野において公知の方法によって決定され得る。例えば、アミノ酸配列およびポリヌクレオチド配列は、手動で、またはBLAST (Basic Local Alignment Search Tool)および他のものなどのアルゴリズム(当業者によって理解されるように、具体的な配列比較それぞれに適切なパラメーターを選択することができる)を使用するコンピューターベースの配列比較および同定ツールを用いることによって、比較することができる。本明細書において開示する糖タンパク質のペプチド部分のアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 3、4、5、6、または7で特定されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つまたは複数と少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%同一、または少なくとも99%同一であり得る。例えば、本明細書において開示する糖タンパク質のペプチド部分のアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 3、4、5、6、または7で特定されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つと100%同一であり得る。
【0091】
単離された可溶性CD52糖タンパク質は、本発明の薬学的組成物を作製するのに使用され得る。「単離された」という用語は、本明細書において、薬学的組成物に利用するのに適した形態で存在するように可溶性CD52糖タンパク質を単離することを定義するために使用される。したがって、本明細書において開示する糖タンパク質は、その糖タンパク質を薬学的組成物として後で製剤化するのに必要とされる程度まで、宿主細胞または流体もしくは発現系の他の成分から単離される。したがって、単離された糖タンパク質は、糖タンパク質の薬学的効果を妨げる可能性がある宿主細胞の他の成分(例えば、タンパク質)を実質的に含まない形態で提供される。したがって、単離された糖タンパク質は、天然では糖タンパク質が結合している物質、例えば、他の糖タンパク質、ポリペプチド、または核酸(天然の環境、またはインビトロもしくはインビボで実施される組換えDNA技術によって調製がなされる場合は糖タンパク質が調製される環境(例えば細胞培養物)において、糖タンパク質と一緒に存在する)を含まなくてよいか、または実質的に含まなくてよい。
【0092】
可溶性糖タンパク質は、当技術分野において公知の方法によって、宿主細胞または流体もしくは発現系から単離することができる。
【0093】
本明細書において、「可溶性」という用語は、細胞膜に結合していないペプチドまたは糖タンパク質を定義するのに使用される。可溶性ペプチドまたは可溶性糖タンパク質は、任意の親水性溶媒または流体、例えば、水、PBSまたは体液中で自由に動くことができてよい。例えば、可溶性ペプチドまたは可溶性糖タンパク質は、血液中を循環することができてよい。
【0094】
CD52のグリコフォーム
CD52ペプチド断片は糖質部分でグリコシル化される。
【0095】
CD52糖タンパク質上に存在する糖質部分は、Schroter et al. (1999)およびJensen et al. (2012)に記載されるもののような、公知の方法によって同定することができる。このような糖質部分は、CD52を発現する任意の宿主細胞、特にCD4+T細胞もしくはCD8+T細胞などのリンパ球、単球、または精子細胞もしくは精巣上体管細胞などの生殖器細胞中に存在するCD52糖タンパク質から同定され得る。従って、糖質部分の正確な構造は、質量分析法(例えば、マトリックス支援レーザー脱離イオン化-飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF MS))、PGC-LC-ESI (エレクトロスプレーイオン化) -MS/MS質量分析法、Mono-Q陰イオン交換クロマトグラフィー、高pH陰イオン交換クロマトグラフィー(HPAEC-PAD)、メチル化分析、エンド-β-ガラクトシターゼ消化、および他の方法などの方法を適用することによって決定することができる。
【0096】
N-グリカンは、ペプチド-N4-(N-アセチル-β-D-グルコサミニル)アスパラギンアミダーゼF(フラボバクテリウム・メニンゴセプチカム(Flavobacterium meningosepticum)由来の「PNGアーゼF」、大腸菌(Escherichia coli)由来の組換え体;Rocheなどの商業的供給業者から入手可能)などの公知の切断酵素を用いて、CD52糖タンパク質から分離され得る。N-グリカンは、逆相クロマトグラフィーなどの公知のクロマトグラフィー法を用いて、CD52ペプチド骨格へ依然として結合されている状態でさらに特性を決定するために単離することができる。N-グリカンは、1つまたは複数の二分岐型、三分岐型、または四分岐型の単糖配列構造を含んでよく、これらは末端にシアル酸が付加されていてもよい。例えば、糖質は、1つまたは複数の四分岐型の単糖配列構造を含んでよい。配列中の糖は、互いに対して分枝状または非分枝状であってよい。糖は、タンパク質Asnの近位にあるGlcNAcへ結合されたフコースを含み得る。従って、糖質は、コアフコシル化されていてもよい。糖は、1つまたは複数のN-アセチルラクトサミン(LacNAc; GlcNAc-β1-4 Gal)リピートを含んでよい。従って、糖は、ポリラクトサミン単位を含んでよい。さらに、O-グリカンは、末端にシアル酸が付加されていてもよい、1つまたは複数のコア1および2構造を含み得る。例えば、コア構造2は1つまたは2つの末端シアル酸を含有してもよい。
【0097】
従って、グリカンは、1つまたは複数のシアル酸を含んでよい。1つまたは複数のシアル酸は、グリカンの任意の部分(通常は末端)に位置してよく、α2,3またはα2-6シアル酸であり得る。本発明のCD52糖タンパク質はα2,3シアリル化されていることが好ましい。1つまたは複数のシアル酸は、N-アセチルグルコサミンとβ1-4結合したガラクトースに結合していてもよい。
【0098】
CD52の異なるグリコフォームの生物活性
本開示は、CD52の全てのグリコフォームが同じレベルの免疫抑制生物活性を有するわけではないことを実証する。
【0099】
ヒト脾臓由来のCD52およびヒトCD52の組換え形態は、複合型コアフコシル化、豊富なシアリル化およびLacNAc伸長を示すN-グリカンを有する。異なる宿主細胞から作製された2つの組換えCD52-Fcバリアントの特異的生物活性に差異があることが分かった。CD52-Fc融合タンパク質のより生物活性が高いバリアント中のCD52は、α-2,3シアル酸結合を有する四シアリル化N-グリカン構造が豊富であった。対照的に、より生物活性が低いCD52-Fc中のCD52は、シアリル化構造のより低い存在度を示した。Mono Q陰イオン交換クロマトグラフィーを使用して、CD52-Fcを陰イオン性グリコフォームの勾配へ分離し、これらは明らかに異なる免疫抑制活性を示した。生物活性グリコフォームは、豊富なN結合型の三シアリル化および四シアリル化グリカン(60~70%)、高レベルのα-2,3シアリル化(58%)、およびバイセクティングGlcNアシル化の非存在をユニークに示した。さらに、最も陰イオン性の三シアリル化および四シアリル化グリカンは、コアタイプ2二シアリル化O-グリカンのユニークな存在度(15~20%)を有した。
【0100】
グリカンベースの分析アプローチおよびグリコペプチドベースの分析アプローチの両方を、CD52グリコシル化をCD52生物活性と相関させるために使用した。グリカンアプローチは、放出されたグリカン異性体およびアイソバリック構造体を分離するための高分解能のPGCカラムに依存した。それは、特定のグリカン構造特徴の断片イオンを提供するためにネガティブモードイオン化と共に使用された(Jensen et al.、Harvey et al.)。グリコペプチドベースのアプローチは、Fcグリカンによる干渉が無いことの保証を伴って、ペプチド骨格へ直接結合されたCD52グリカンの分析を可能にした。この2つのアプローチは互いを大いに裏付け、報告された構造の信頼性を高めた。実際に、陰イオン交換クロマトグラフィーによるCD52-Fcグリコフォーム分離後に同様の結果が得られた。
【0101】
生物活性CD52-Fcは高存在度のα-2,3シアル酸結合を特徴とし、α-2,3シアル酸結合の除去は活性を消失させ、α-2,3シアル酸での再シアリル化はCD52-Fcの生物活性を復活させた。
【0102】
CD52 O-グリコシル化に関して、本開示はヒト脾臓CD52上のO-グリカンを初めて特徴付けた。さらに、生物活性組換えCD52は、低存在度(4%)のO-グリカン、主に、SEQ ID 3のSer 12およびThr 8上に、1つまたは2つのシアル酸残基を有するコアタイプ2 O-グリカンを含有することが分かった。CD52ペプチドのN-およびO-グリコシル化部位の近接に起因して、低度のO-グリコシル化は、嵩高いN-グリカンによる立体障害が原因であり得る可能性がある。
【0103】
生物活性CD52-Fcグリコフォーム中のO-グリコシル化の劇的な濃縮が同定された。SEQ ID:3上のSer 12で、コアタイプ2二シアリル化O-グリカンが、CD52-Fcの非活性フラクションにおける4%と比較して、20%で観察された。これは、CD52の生物活性におけるN-およびO-グリコシル化の両方の役割を強く示唆している。
【0104】
本開示はまた、フコシル化O-グリカンが脾臓CD52の生物活性のために必要とされないことを示す。
【0105】
本開示において行われた別の顕著な観察は、CD52生物活性とN結合型バイセクティングGlcNアシル化との間の逆相関であった。
【0106】
組換えヒトCD52-Fc中のCD52は、ポリLacNAc伸長の程度(これは天然形態においてより大きかった)を除いて、N-およびO-グリコシル化に関して、ヒト脾臓から精製された天然に存在するCD52に類似した。生物活性CD52は、シアリル化構造体およびポリLacNAcのより高い存在度によって特徴付けられた。
【0107】
ヒトCD52の細胞外タンパク質部分に連結することが公知である多くの天然に存在するグリカン部分の複雑な性質、およびさまざまなグリコシル化パターンに起因し得るこれらの構造体の多くの変形が原因で、本明細書に開示されるCD52糖タンパク質の厳密な性質は変化し得ることが理解されるであろう。上述したように、特定のグリカン部分を正確に同定する方法が利用可能である。さらに、さまざまなグリコシル化条件下でCD52を発現させることによって、CD52の可溶性ペプチド断片にいくつかの異なるグリカン部分を付加することができる。例えば、本明細書において開示する可溶性糖タンパク質は、宿主リンパ球細胞、単球、または宿主生殖器細胞(例えば精子細胞もしくは精巣上体管細胞)または精液において発現され得るか、かつ/またはこれらから単離され得、したがって、様々な糖質基を結果として含み得る。ヒト精液中に存在する可溶性CD52は、Daudi B細胞などのリンパ球から放出される可溶性CD52と同様に、T細胞機能および/または免疫応答を抑制することができることが、以前示された(WO 2013/071355)。可溶性糖タンパク質上に代替形態の糖質を提供するために、異なるグリコシル化条件を提供する代替の宿主細胞を可溶性CD52の発現用に選択してよい。
【0108】
グリカンは、グリカン部分を自身に結合させることができるペプチド中の任意の1つまたは複数のアミノ酸へ結合され得る。例えば、グリカンは、1つまたは複数のアスパラギン(N結合型)、セリンおよびトレオニン(O結合型)、ならびにまた、アミノ酸配列中に存在する場合、チロシン、ヒドロキシリジン、ヒドロキシプロリン、ホスホセリンもしくはトリプトファンまたはその他の残基へ結合され得る。
【0109】
本開示はまた、本明細書において開示する糖タンパク質の変種、変異体、生物学的に活性な断片、改変物、類似体、および/または誘導体も提供する。このような化合物は、本明細書において開示する方法のいずれかを含む方法を用いて、本明細書において開示するポリペプチドの構造および/または機能を再現する化合物をスクリーニングすることによって同定することができる。
【0110】
可溶性CD52の機能
本明細書において開示する糖タンパク質は、好ましくは、リンパ球(T細胞など)および単球を含む免疫細胞の活性(「機能」)を抑制することができる。例えば、本明細書において開示する糖タンパク質は、エフェクターT細胞、単球、マクロファージ、および樹状細胞の機能のうちの1つまたは複数を抑制することができる。エフェクターT細胞、単球、マクロファージ、および樹状細胞、ならびにそれらの機能は、当業者に公知であると考えられる。
【0111】
T細胞は、当技術分野において公知の1種または複数種のT細胞マーカーのいずれかの存在に基づいて容易に同定することができる。本明細書において開示する糖タンパク質は、抗原チャレンジに応答したT細胞増殖を低減させることができるか、かつ/または(IFN-γ、IL-2、IL-10、IL-17、G-CSF、TNF-α、および活性化T細胞によって分泌されることが公知である他のサイトカインのうちの任意の1種または複数種の産生などの)T細胞サイトカイン産生を低減させることができる。例えば、可溶性CD52は、T細胞によるIFN-γ産生を低減させることができる。
【0112】
別の例において、可溶性CD52は、単球、マクロファージ、および樹状細胞によるIL-1β分泌を低減させることができる。
【0113】
したがって、本明細書において開示する糖タンパク質は、宿主の免疫応答を軽減することができる。本発明者らは、本明細書において開示する糖タンパク質が、任意の抗原を用いたチャレンジに応答したエフェクターT細胞の機能を低下させることができることを示した。抑制機能は、チャレンジで使用される個々の抗原に依存しない。したがって、本明細書において開示する糖タンパク質は、任意の抗原に対する免疫応答を軽減することができる。1つの例において、抗原は自己抗原である。
【0114】
(限定されるわけではないが)本明細書の例において説明するもののような、T細胞機能および/または免疫応答の抑制を測定する任意の公知の方法を使用することができる。したがって、これらの方法は、エフェクターT細胞、単球、マクロファージ、および樹状細胞のうちの1つもしくは複数の増殖に対する、ならびに/またはIFN-γ、IL-2、IL-10、IL-17、G-CSF、TNF-α、および活性化されたT細胞、単球、マクロファージ、もしくは樹状細胞によって分泌されることが公知である他のサイトカインのうちの任意の1種または複数種の産生に対する、本明細書において開示する糖タンパク質の影響を測定することを含み得る。
【0115】
融合タンパク質
本明細書において開示するCD52糖タンパク質のペプチド部分は、例えば、融合タンパク質として第2のタンパク質に結合していてもよい。第2のタンパク質は、糖タンパク質の安定性および/もしくは溶解性を増大させること、組換え法による糖タンパク質の作製プロセスをより良くすること、または糖タンパク質の治療的効果を高めることができる任意のタンパク質であってよい。したがって、第2のタンパク質は、本明細書において開示する糖タンパク質の半減期を延長させることができ得る。
【0116】
第2のタンパク質は、任意の適切な長さのものでよい。1つの態様において、第2のタンパク質は、比較的短くてよい。例えば、第2のタンパク質は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、またはそれより多いアミノ酸のいずれかからなってよい。第2のタンパク質は、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、または少なくとも10個のアミノ酸を含んでよい。また、第2のタンパク質は、10個より多いアミノ酸を含んでもよい。例えば、第2のタンパク質は、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、または少なくとも50個のアミノ酸を含んでよい。
【0117】
1つの例において、第2のタンパク質は抗体断片である。適切な抗体断片には、免疫系を活性化することができる任意の抗体断片が含まれる。抗体断片は、結晶性断片(Fc)領域(単一のポリペプチドであり得る)またはFc領域に由来するいずれか1つもしくは複数の重鎖定常ドメイン(例えば、CHドメイン2、3、および/もしくは4)であってよい。1つの例において、第2のタンパク質はFc断片である。1つの例において、第2のタンパク質は免疫グロブリンG1 (IgG1) Fc断片である。
【0118】
別の例において、第2のタンパク質は、精製タグであってよい。精製タグの多くの例が公知であり、(非限定的に)Hisタグ、T7タグ、FLAGタグ、Sタグ、HAタグ、c-Mycタグ、DHFR、キチン結合ドメイン、カルモジュリン結合ドメイン、セルロース結合ドメイン、およびStrep2タグ(Strep-Tactin、すなわち特に人工的に作製されたストレプトアビジンに結合する8個のアミノ酸をコードする精製タグ(Schmidt and Skerra, 2007))などが含まれる。1つの例において、第2のタンパク質はStrep 2タグである。
【0119】
第2のタンパク質は、発現されたタンパク質の可溶性を高め得る。このようなタンパク質には、(非限定的に)NusA、チオレドキシン、低分子ユビキチン様修飾因子(SUMO)、ユビキチン、および当技術分野において公知であるその他のものが含まれる。
【0120】
第2のタンパク質は、精製方法を向上させるだけでなく、発現されたタンパク質の可溶性を高め得る。このようなタンパク質には、(非限定的に)GST、MBP、T7遺伝子10、および当技術分野において公知であるその他のものが含まれる。
【0121】
精製タグは、産生後に融合タンパク質から任意で除去されてもよい。融合タンパク質から精製タグを除去する適切な方法は、使用される個々の精製タグによって変わると考えられる。一般に、このような方法は当技術分野において公知である。
【0122】
本明細書において開示する融合タンパク質は、前述の任意の第2のタンパク質のうちの1つまたは複数を任意の組合せで含んでよい。したがって、融合タンパク質は、(Fcなどの)抗体断片および(Strep2タグなどの)精製タグを含んでよい。
【0123】
グリコシド結合の形成を触媒する酵素
グリコシド結合の形成を触媒する酵素としては、当業者に明らかであろう他の選択肢の中でもグリコシルトランスフェラーゼが挙げられる。
【0124】
グリコシルトランスフェラーゼ(GT)は、グリコシドを形成するためにグリコシド結合の形成を触媒する酵素である。グリコシルトランスフェラーゼは、グリコシルドナーとしてヌクレオチドリン酸糖を使用し、求核基(通常はアルコール)へのグリコシル基転移を触媒する。グリコシル転移の生成物はO-、N-、S-、またはC-グリコシドであり得;グリコシドは、単糖類、オリゴ糖類、または多糖類の一部であり得る。
【0125】
グリコシルトランスフェラーゼは様々なドナー基質を利用することができる。糖モノまたはジホスホヌクレオチドはルロワールドナーと呼ばれることがあり;対応する酵素はルロワールグリコシルトランスフェラーゼと呼ばれる。
【0126】
グリコシルトランスフェラーゼはアミノ酸配列類似性に基づいてファミリーに分類され得る。ファミリーのメンバーは、配列が関連しているタンパク質を含んでいるため、典型的に同じメカニズムおよびフォールドを共有する。
【0127】
本明細書に開示されるCD52糖タンパク質を含む可溶性CD52糖タンパク質または融合タンパク質は、1つまたは複数の酵素の作用によってα-2,3-シアリル化が濃縮され得る。例えば、これらの酵素は、グリコシルトランスフェラーゼ、グリコシンターゼおよびグリコシドヒドロラーゼ(逆方向に作用するように条件付けられる場合)を含む群より選択され得る。従って、CD52糖タンパク質は、グリコシルトランスフェラーゼ(例えば、GT-42酵素Cst-IIまたはCst-I)の作用によってα-2,3-シアリル化が濃縮され得る。
【0128】
組成物
本開示は、可溶性CD52糖タンパク質および融合タンパク質のうちのいずれか1つまたは複数、ならびに薬学的に許容される賦形剤を含む、薬学的組成物を提供する。
【0129】
薬学的に許容される担体には、哺乳動物および少なくとも好ましくはヒトなどの動物への投与に使用するのに適した担体が含まれる。1つの例において、「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、規制機関(例えば、米国FDA、欧州EMEAまたはオーストラリアTGA)によって医薬品における使用について承認されているか、あるいは、動物、より具体的にはヒトで使用するために薬局方(例えば、米国薬局方、欧州薬局方もしくは日本薬局方)または他の一般的に認識されている薬局方に収載されている賦形剤を意味する。
【0130】
本明細書において開示する組成物は、エフェクターT細胞機能および/または免疫応答を抑制することが公知である追加の治療剤をさらに含んでよい。
【0131】
別の態様において、組成物は自己抗原をさらに含む。本発明の組成物において有用な自己抗原の例としては、表1に列挙されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0132】
(表1)ヒト自己免疫障害に関連付けられている自己抗体によって認識される、組換え自己抗原または精製された自己抗原
【0133】
処置方法
可溶性CD52糖タンパク質および/または融合タンパク質は、エフェクターT細胞機能、炎症または敗血症を抑制するために使用され得る。従って、本明細書に記載される可溶性CD52糖タンパク質、融合タンパク質、組成物およびフラクションは、エフェクターT細胞によって媒介される任意の疾患もしくは状態、炎症性疾患もしくは障害および敗血症を処置するために使用され得る。
【0134】
1つの例において、エフェクターT細胞によって媒介される疾患または状態は、自己免疫疾患、同種移植拒絶、移植片対宿主反応、またはアレルギー性疾患であってよい。「自己免疫疾患」という用語は、身体が自身の組織の何らかの成分に対する免疫原性(すなわち免疫系)応答を引き起こす、任意の疾患を意味する。自己免疫疾患は、主に1つの器官が影響を受けるもの(例えば、溶血性貧血および抗免疫甲状腺炎)および自己免疫疾患プロセスが多数の組織を通って拡散される疾患(例えば全身性エリテマトーデス)に分類することができる。自己免疫疾患は、(限定されるわけではないが)、インスリン依存性糖尿病(または1型糖尿病)、インスリン自己免疫症候群、関節リウマチ、乾癬性関節炎、慢性ライム関節炎、狼瘡、多発性硬化症、クローン病、潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患、セリアック病、自己免疫性甲状腺疾患、自己免疫性心筋炎、自己免疫性肝炎、天疱瘡、抗尿細管基底膜疾患(anti-tubular basement membrane disease)(腎臓)、家族性拡張型心筋症、グッドパスチャー症候群、シェーグレン症候群、重症筋無力症、多内分泌腺不全、白斑、末梢神経障害、自己免疫性多発性内分泌腺症候群I型、急性糸球体腎炎、成人発症型の特発性副甲状腺機能低下症(AOIH)、全頭脱毛症、橋本甲状腺炎、グレーブス病、アジソン病、慢性ベリリウム症候群、強直性脊椎炎、若年性皮膚筋炎、多発性軟骨炎、強皮症、限局性腸炎、遠位回腸炎、肉芽腫性腸炎、限局性回腸炎、および末端回腸炎、筋萎縮性側索硬化症、自己免疫性再生不良性貧血、自己免疫性溶血性貧血、ベーチェット病、セリアック病、慢性活動性肝炎、CREST症候群、皮膚筋炎、拡張型心筋症、好酸球増多筋痛症候群、後天性表皮水疱症(EBA)、巨細胞性動脈炎、グッドパスチャー症候群、ギラン・バレー症候群、ヘモクロマトーシス、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、特発性IgA腎症、インスリン自己免疫性症候群、若年性関節リウマチ、ランバート・イートン症候群、線状IgA皮膚症、心筋炎、ナルコレプシー、壊死性血管炎、新生児狼瘡症候群(NLE)、ネフローゼ症候群、類天疱瘡、天疱瘡、多発性筋炎、原発性硬化性胆管炎、乾癬、急速進行性糸球体腎炎(RPGN)、ライター症候群、スティッフマン症候群、炎症性腸疾患、変形性関節症、ならびに甲状腺炎などのうちのいずれか一つまたは複数であってもよい。1つの例において、自己免疫疾患は1型糖尿病である。別の例において、自己免疫疾患は多発性硬化症または関節リウマチである。別の例において、状態は、同種移植拒絶または移植片対宿主反応である。したがって、本明細書において開示する方法は、本発明の可溶性CD52糖タンパク質、融合タンパク質、組成物および/またはフラクションのうちのいずれか1つまたは複数を移植レシピエントに投与する段階を含んでよい。
【0135】
アレルギー性疾患は、(限定されるわけではないが)、食物アレルギー、空中浮遊物質に対するアレルギー(airborne allergy)、チリダニアレルギー、ネコアレルギー、もしくはハチ毒アレルギー、または他のアレルギーのうちのいずれか一つまたは複数であってもよい。
【0136】
炎症は、物理的作用物質、化学的作用物質、または生物学的作用物質が原因で生じる損傷または異常な刺激に対する応答として起こり得る。炎症反応は、局所的反応および結果として生じる形態的な変化、感染性生物などの有害な物質の破壊または除去、ならびに修復および治癒につながる応答を含み得る。
【0137】
炎症は、炎症性障害において起こる。「炎症性」という用語は、障害に関して使用される場合、不適切であるか、または通常の様式では消散しない炎症によって引き起こされるか、そのような炎症に起因するか、またはそのような炎症をもたらす、病理学的プロセスを意味する。炎症性障害は、全身性であるか、または特定の組織もしくは器官に局在していてもよい。炎症は、多くの障害(そのうちのいくつかは自己免疫疾患である)で起こることが公知であり、これらの障害には、限定されるわけではないが次のものが含まれる:全身炎症反応(SIRS);アルツハイマー病(ならびに次のものを含む、関連する状態および症状:慢性の神経炎症、膠細胞活性化(glial activation);小膠細胞の増加;老人斑形成);筋萎縮性側索硬化症(ALS)、関節炎(ならびに限定されるわけではないが、次のものを含む、関連する状態および症状:急性関節炎症、抗原誘発関節炎、慢性リンパ球性甲状腺炎に関連する関節炎、コラーゲン誘発関節炎、若年性関節炎、関節リウマチ、変形性関節症、予後(prognosis)関節炎および連鎖球菌誘発関節炎、脊椎関節症、および痛風関節炎)、喘息(ならびに次のものを含む、関連する状態および症状:気管支喘息;慢性閉塞性気道疾患、慢性閉塞性肺疾患、若年性喘息および職業性喘息);循環器系疾患(ならびに次のものを含む、関連する状態および症状:アテローム性動脈硬化症、自己免疫性心筋炎、慢性心臓低酸素症、うっ血性心不全、冠動脈疾患、心筋症、および心臓細胞機能障害(大動脈平滑筋細胞活性化、心臓細胞アポトーシス、および心臓細胞機能の免疫調節を含む);糖尿病(ならびに次のものを含む、関連する状態:自己免疫性糖尿病、インスリン依存性(1型)糖尿病、糖尿病性歯周炎、糖尿病性網膜症、および糖尿病性腎症);胃腸炎症(ならびに次のものを含む、関係する状態および症状:セリアック病、関連する骨減少症、慢性大腸炎、クローン病、炎症性腸疾患、および潰瘍性大腸炎);胃潰瘍;ウイルス肝炎および他のタイプの肝炎などの肝臓炎症、コレステロール胆石、ならびに肝線維症;HIV感染症(ならびに次のものを含む、関連する状態:変性反応、神経変性反応、およびHIV関連ホジキン病);川崎病(ならびに次のものを含む、関連する疾患および状態:皮膚粘膜リンパ節症候群、頸部リンパ節腫脹、冠動脈病変、浮腫、発熱、白血球増加、軽度の貧血、皮膚の剥離、発疹、結膜発赤、血小板増加);腎症(ならびに次のものを含む、関連する疾患および状態:糖尿病性腎症、末期腎疾患、急性および慢性の糸球体腎炎、急性および慢性の間質性腎炎、ループス腎炎、グッドパスチャー症候群、血液透析生存、ならびに腎臓の虚血性再灌流傷害);神経変性疾患または神経病理学的状態(ならびに次のものを含む、関連する疾患および状態:急性神経変性、加齢および神経変性疾患におけるIL-1の誘導、IL-1に誘導された視床下部神経細胞の可塑性および慢性のストレス応答性亢進、脊髄症);眼疾患(ならびに次のものを含む、関連する疾患および状態:糖尿病性網膜症、グレーブス眼症、角膜潰瘍を含む角膜の損傷または感染に関連する炎症、およびブドウ膜炎)、骨粗しょう症(ならびに次のものを含む、関連する疾患および状態:歯槽骨、大腿骨、橈骨、椎骨、または手根骨の骨量減少または骨折発生、閉経後の骨量減少、骨折発生、または骨量減少の速度);中耳炎(成人または小児科); 膵炎または膵臓細葉炎(pancreatic acinitis);歯周病(ならびに成人型、早期発症型、および糖尿病性を含む、関連する疾患および状態);肺疾患(慢性肺疾患、慢性副鼻腔炎、ヒアリン膜症、SIDSにおける低酸素症および肺疾患を含む);冠動脈または他の血管移植片の再狭窄;リウマチ(関節リウマチ、リウマチ性アショフ体、リウマチ性疾患、およびリウマチ性心筋炎を含む);慢性リンパ球性甲状腺炎を含む甲状腺炎;尿路感染症(慢性前立腺炎、慢性骨盤痛症候群、および尿石症を含む);免疫学的障害(自己免疫疾患、例えば、円形脱毛症、自己免疫性心筋炎、グレーブス病、グレーブス眼症、硬化性苔癬、多発性硬化症、乾癬、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、甲状腺疾患(例えば、甲状腺腫およびリンパ腫性甲状腺腫(橋本甲状腺炎、リンパ節様甲状腺腫))を含む);肺損傷(急性出血性肺損傷、グッドパスチャー症候群、急性虚血性再灌流)、職業的および環境的な汚染物質によって引き起こされる心筋機能障害(例えば、有毒油症候群珪肺症に対する易罹患性)、放射線外傷、および創傷治癒反応の効率(例えば、火傷または熱傷、慢性創傷、外科的創傷、および脊髄損傷)、敗血症、急性期反応(例えば発熱応答)、全身性炎症反応、急性呼吸困難反応、急性全身性炎症反応、創傷治癒、癒着、免疫炎症反応、神経内分泌反応、熱発生および熱耐性、急性期反応、ストレス応答、疾患感受性、反復動作によるストレス、テニス肘、ならびに疼痛管理および疼痛反応。
【0138】
ここで、以下の非限定的な実施例を参照して本発明を説明する。
【実施例
【0139】
実験手順
ヒト血液および脾臓ドナー
ヒト血液バフィーコート(Australian Red Cross Blood Service、Melbourne、VIC、Australia)、またはWEHIおよびMelbourne Health Human Ethics Committeesによる承認後にVolunteer Blood Donor Registry of The Walter and Eliza Hall Institute of Medical Research (WEHI)を通じてインフォームド・コンセントが得られた匿名の健康なボランティアの血液から、細胞を単離した。末梢血単核細胞(PBMC)をFicoll/Hypaque (Amersham Pharmacia、Uppsala、Sweden)において単離し、リン酸緩衝食塩水(PBS)中において洗浄し、5%プール熱失活ヒト血清(PHS; Australian Red Cross、Melbourne、Australia)、100 mM非必須アミノ酸、2 mMグルタミンおよび50μM 2-メルカプトエタノールを含有するIMDM培地(IP5培地)中に再懸濁した。
【0140】
死体臓器ドナーからの健康なヒト脾臓を、近親者の書面によるインフォームド・コンセントを得た上で、心拍数のある脳死ドナーから、Australian Islet Transplant ConsortiumおよびDonate Lifeの訓練を受けたコーディネーターから得た。全ての研究はWEHI Human Research Ethics Committee (Project 05/12)によって承認された。
【0141】
ヒト脾臓からの天然CD52の精製
凍結ヒト脾臓組織(10 mg)を3体積の水でホモジナイズした。ホモジネートをメタノールおよびクロロホルム(それぞれ、11:5.4体積)と混合した。サンプルを30分間撹拌し、1時間静置した。上(水)相を収集し、蒸発させ、透析し、凍結乾燥した。NHS-活性化Sepharose 4 Fast Flow樹脂を、RTで3時間、0.5 mLのPBS中の1 mgの精製抗CD52抗体と共にインキュベートした。混合物を4℃で一晩インキュベートし、1 Mエタノールアミンでクエンチした。Bio-Rad 10-mL Poly-Prepカラムをパッキングのために使用し、樹脂を5 mLのPBS、5 mLのpH 11.5ジエチルアミン、および5 mLのPBS /0.02%アジ化ナトリウムの連続処理で洗浄した。カラムを使用前に5 mLのPBS/0.02%アジ化ナトリウム中において4℃で保存した。脾臓抽出物をPBS中2%デオキシコール酸ナトリウム2mLで可溶化し、次いでパッキングされたカラムへ添加し、0.5%デオキシコール酸ナトリウムを含有する5 mLのPBSで洗浄した。サンプルを、0.5%デオキシコール酸ナトリウムを含有する500μlの溶出緩衝液(50 mMジエチルアミン、500 mM NaCl、pH 11.5)で6回溶出した。溶出液を収集し、50μlのHCl (0.1M)で中和し、PBSおよび水に対して透析した。
【0142】
CD52組換えタンパク質
ヒトCD52-Fc組換えタンパク質;CD52-Fc I (Expi293)、CD5-Fc II (HEK293)およびCD52-Fc III (Expi293)を、記載されたように産生した(Bandala-Sanchez et al. (2013))。ヒトIgG1 Fcへ連結されたシグナルペプチド配列を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で構築し、次いで消化し、FreeStyle HEK293FおよびExpi293細胞のトランスフェクションのためにFTGWレンチウイルスベクターまたはpCAGGSベクター中へライゲートした。構築物は、フレキシブルGGSGGリンカー、精製のためのstrep-tag II配列(Schmidt et al.)、およびシグナルペプチドとFc分子との間の第Xa因子プロテアーゼについての切断部位を含んだ。組換えタンパク質をStreptactin樹脂上でのアフィニティークロマトグラフィーによって培地から精製し、2.5 mMデスチオビオチンで溶出した(Bandala-Sanchez et al. (2013))。
【0143】
3H-チミジン組み込みアッセイ
IP5培地中のPBMC(2 × 105細胞/ウェル)を、総体積200μLで、破傷風トキソイド(10ライアンズフロキュレーション単位(Lyons flocculating unit)/ml)、および様々な濃度のCD52-Fcまたは対照Fcタンパク質有りまたは無しで、96-ウェル丸底プレート中において5% (X/X) CO2中37℃で最長3日間インキュベートした。いくつかのウェル中において、3H-チミジン(1μCi)を添加し、16時間後に、細胞を収集し、DNA中の放射能をシンチレーションカウンティングによって測定した。
【0144】
ELISpotアッセイ
PBMC(2 x 105細胞/ウェル)を、4℃で、予め結合された抗IFN-γモノクローナル抗体(1μg/mL)を含有するMerck Millipore (Bayswater、Australia)製の96-ウェルELISpotプレート(PVDF MultiScreen)のトリプリケートウェル中の200μLのIP5培地中において培養した。PBMCを、CD52-Fc I、CD5-Fc IIおよびCD52-Fc III (5、25および50μg/mL)と一緒にウェルへ添加された破傷風トキソイド(10 Lfu/mL)と共にインキュベートした。24時間後、細胞を洗浄によって除去し、IFN-γスポットを、ビオチン化抗IFN-γ抗体(1μg/mL)、続いてストレプトアビジン-アルカリホスファターゼおよびBCIP/NBT発色試薬(Resolving Images、Melbourne、Australia)と共のインキュベーションによって発色させた。
【0145】
レクチンELISA
96-ウェル平底プレートを、4℃で一晩、20μg/mLのイヌエンジュ(Maackia amurensis)レクチン(MAL-I)でコーティングし、その後、1時間、200μlの1% BSAでブロックした。PBSで洗浄した後、CD52-Fc (20μg/mL)を添加し、RTで1時間インキュベートし、PBSで2回洗浄した。PBSで洗浄した後、CD52に対するHRPコンジュゲート化抗体の1:1000希釈物50μl(Campath H1; 1μg/mL)を添加し、RTで1時間インキュベートした。50μlのTMB基質を添加し、発色を50μlの0.5 M H2SO4の添加によって停止させた。吸光度を、Multiskan Ascent 354マイクロプレート光度計(Thermo Labsystems、San Francisco、Calif.)において450 nmで測定した。
【0146】
組換えCD52-Fcタンパク質の脱シアリル化および再シアリル化
組換えCD52-Fcタンパク質の脱シアリル化および再シアリル化を、PaulsonおよびRogersの方法の改変によって行った。簡潔には、CD52-Fc (500μg/各々)を、全種類のシアル酸を除去するために37℃で3時間、クロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringens)V型シアリダーゼ(50 mU/mL)と共にインキュベートした。サンプルを次いでプロテインG-セファロースカラムに通し、これをPBSで2回洗浄し、その後、結合されたタンパク質を1 M Tris-HCl、pH 8.0中へ0.1 Mグリシン-HCl、pH 2.8で溶出し、続いてPBSに対して透析した。シアル酸の除去を確認するために、MAL-Iレクチンへの結合を行った。Expi293細胞からのCD52-Fcを、次いで、37℃で3時間、0.46 mM~0.90 mM CMP-N-アセチルノイラミン酸ナトリウム塩(Carbosynth、Compton Berkshire、United Kingdom)の存在下で、2つのシアリルトランスフェラーゼ、PdST6GalI(これは、基礎をなすガラクトースとα-2,6結合しているシアル酸残基を復元する)またはCstII(これは、ガラクトースとα-2,3結合しているシアル酸残基を復元する)のうちのいずれかと共にインキュベートした。異なる結合(α-2,3またはα-2,6)を有する異なるCD52-Fc (III) タンパク質をプロテインG-セファロースカラムに通し、PBSで2回洗浄し、1 M Tris-HCl、pH 8.0中へ0.1 Mグリシン-HCl、pH 2.8で溶出し、続いてPBSに対して透析した。サンプルを凍結乾燥し、200μg/mLでPBS中に再懸濁し、-20℃で保存した。
【0147】
Fc断片除去
CD52-Fc組換えタンパク質フラクション(50~200μg)を、総体積1 mLの切断緩衝液(20 mM Tris-Hcl、pH 8、100 mM NaCl、2 mM CaCl2)中において、4μLの第Xa因子プロテアーゼ(ウシ血漿から精製、New England Biolabs、United States)と共にインキュベートした。サンプルをRTで一晩インキュベートした。サンプルをRTで1時間プロテインG-セファロースビーズと3回混合し、10,000 rpmで15分間遠心分離した。Fc断片除去を、抗ヒトIgG(ヤギにおいて産生されたFc特異的;Sigma、United States)および抗CD52(ウサギ)抗体(Santa Cruz Biotechnology、United States)を使用してウェスタンブロットによって確認した。
【0148】
質量分析のためのN結合型およびO結合型グリカン放出
Mono Q分画および全(非分画)組換えCD52-FcをPVDF膜上にドットブロッティングし、その後、37℃で2.5 U N-グリコシダーゼF(PNGアーゼF、エリザベスキンギア・ミリコラ(Elizabethkingia miricola)、Roche)と共の一晩インキュベーション、続いての50℃で3時間のNaBH4還元(1 M NaBH4、50mM KOH)によって、N-グリカンを放出させた。50℃で0.5 M NaBH4、50mM KOHを使用する一晩の還元的β-脱離によって、O-グリカンをその後放出させた。放出および還元されたN-およびO-グリカンを、以前に記載されたようにLC-MS/MS前に徹底的に脱塩した(Jensen et al.)。Fcが除去されている可溶性CD52はPVDFに付着しないため、N-およびO-グリカン放出前に溶液中に保持された。
【0149】
放出されたグリカンの質量分析およびデータ解析
Dionex Ultimate 3000 LC (Thermo Scientific)を用いて4μl/分の一定流速で操作される多孔質黒鉛化炭素(PGC)液体クロマトグラフィー(LC)カラム(5μm粒度、180μm内径 x 10 cmカラム長;Hypercarb KAPPAキャピラリーカラム、Thermo Scientific)を使用することによって、グリカンの分離を行った。LTQ Velos Pro質量分析計(Thermo Scientific)を使用する液体クロマトグラフィー-エレクトロスプレイイオン化タンデム質量分析(LC-ESI-MS/MS)を用いて、分離されたグリカンをオンラインで検出した。PGCカラムを10 mM重炭酸アンモニウム(Sigma Aldrich)で平衡化し、サンプルを75分間にわたって10 mM重炭酸アンモニウム中0~70% (v/v) アセトニトリルの勾配において分離した。ESIキャピラリー電圧を3.2 kVに設定した。フルオートゲインコントロールを80,000に設定した。MS1フルスキャンをm/z 600~2000で行った。全てのグリカン質量スペクトルをネガティブイオンモードで得た。LTQ質量分析計を、0.2 Daの質量精度のためにチューンミックス(PierceTM ESIネガティブイオンズ、Thermo Scientific)で較正した。35正規化衝突エネルギーを使用することによって各フルスキャンにおいて5つの最も豊富な前駆イオンに対してCID-MS/MSを行った。可能な単糖類組成は、グリカン前駆イオンの分子質量(Cooper et al.)に基づいてGlycoMod (Expasy、http://web.expasy.org/glycomod/)から提供された。MS/MSスペクトルの解析をThermo Xcalibur Qualブラウザーソフトウェアで行った。CID-MS/MSスペクトル中のB/Y-およびC/Z-グリカン断片、ならびに報告されたような(Everest-Dass et al.)コアフコシル化などについての診断フラグメントイオン368に基づいて、可能性のあるグリカン構造を同定した。0.2 Daの質量許容差が前駆イオンおよび生成イオンの両方について許容された。同定されたグリカンの相対存在度を、グリカン前駆イオンの抽出イオンクロマトグラムの曲線下面積(AUC)を使用してMSシグナル強度からの総ピーク面積のパーセンテージとして決定した(Harvey et al.)。
【0150】
CD52ペプチド上のN-およびO-グリカンのプロファイリング
Fcを有さないMonoQ分画および未分画CD52グリコフォームを、C18 micro-SPEステージチップ(Merck-Millipore)において脱塩した。溶出を90% (v/v) アセトニトリル(ACN)で行い、サンプルを乾燥させ、0.1% (v/v) ギ酸(FA)中に再溶解した。脱塩されたCD52グリコペプチドを、四重極-飛行時間型(Q-TOF) 6538質量分析計(Agilent technologies)-HPLC (Agilent 1260 infinity)を使用してポジティブイオン極性モードでESI-LC-MSによって分析した。並列実験において、CD52のいくつかのサンプルからN-グリカンを除去して(結果として生じるAsn->Asp変換を伴う、即ち、+1 Da)高度に不均質かつアニオン性のCD52グリコペプチドのより良いイオン化を可能にするために、N-グリコシダーゼFを使用した。脱アミド化およびO-グリコシル化CD52グリコフォームのAUCを比較することによって、N-およびO-グリカン占有率を決定した。サンプル(およそ500 ng)をC8カラム(Protecol C8、3μm粒度、300 A細孔径、300 nm内径 10 cm長、SGE analytical science)上へ注入した。0.1% (v/v) FAから始めて30分間にわたる60% (v/v) ACN 0.1% (v/v) FAへの直線的上昇を伴う、HPLC勾配を作った。カラムを次いで10分間99% ACN (v/v) で洗浄し、その後、さらに10分間0.1% FAで再平衡化した。以下のMS設定を伴う200 Vの最適化フラグメンター正電位で、流速を4μL/分に設定した:m/z範囲400~2500、窒素乾燥ガス流速300℃で8 L/分、ネブライザー圧は10 psiであり、キャピラリー正電位は4.3 kVであり、スキマー電位は65 Vであった。典型的に0.2ppmより良い質量精度に達するために、質量分析計をチューンミックス(Agilent technologies)で較正した。MassHunterワークステーションvB.06 (Agilent technologies)を、結果として得られたスペクトルの解析およびデコンボリューションのために使用した。正確な分子質量に基づいてデコンボリューション化CD52ペプチドへのグリコフォームの帰属をガイドするために、PGC-LC-MS/MS分析からの以前に決定されたグリカンを使用した。
【0151】
Mono Qカラム分画
CD52-Fc IIIを5 mL 50 mM Tris-HCl、pH 8.3中へ希釈し、Mono Qカラム(Mono Q 5/50 GL、GE Life Sciences)へ適用した。カラムを10カラム体積の50 mM Tris-HCl、pH 8.3で洗浄し、次いで、0.5 mLフラクション中において50カラム体積の50 mM Tris-HCl、500 mM NaCl、pH 8.3で溶出した。フラクションを次いで収集し、等電点電気泳動(IEF)によって分析した。
【0152】
IEF
Novex pH 3-10 IEFゲルをpI決定のために使用した。CD52-Fcフラクションをサンプル緩衝液と共にロードし、100 Vで2時間、次いで250 Vで1時間泳動させ、最後に、電圧を30分間500Vへ増大させた。電気泳動後、ゲルを清潔な容器へ注意深く移し、RTにて1時間20%トリクロロ酢酸(TCA)で洗浄および固定し、蒸留水でリンスし、RTにて2時間コロイド状クーマシーブルーで染色し、蒸留水で徹底的に脱染した。
【0153】
連続シアリダーゼ処理
Fc切断CD52から放出されたN-グリカン(およそ2μg)を、α-2-3特異的シアリダーゼ(1 mU、Merck)および広域(α-2-3,6,8シアリダーゼ反応性)シアリダーゼコレラ菌(V. cholera)(1 mU、Sigma Aldrich)で処理した。両方の反応を、37℃で3時間、50mMリン酸ナトリウム反応緩衝液中において行った。脱シアリル化CD52 N-グリカンを乾燥し、下流のMS分析のために水中に可溶化した。フェチュインを成功したシアル酸除去についての陽性対照として使用し、何故ならば、切断CD52と同様に、このモデル糖タンパク質は多分岐型シアリル化N-グリカンを有するためである。
【0154】
CD52ペプチド上のO-グリカン部位位置決めのためのEThcD断片化
分画されたCD52グリコフォームを、O-グリカン部位位置決め分析の前にPNGアーゼFで処理した。「インタクトなCD52上のN-およびO-グリカンのプロファイリング」において言及された同じLC勾配を用いて、しかしナノフロー(250 nL/分)で、ポジティブモードにおいて、Orbitrap Fusion(商標)Tribrid(商標)質量分析計へ接続されたDionex 3500RS nanoUHPLCを使用して、CD52ペプチドを分析した。以下のMS設定を使用した:スプレー電圧2.3 kV、120k Orbitrap分解能、スキャン範囲m/z 550~1,500、1マイクロスキャンでAGCターゲット400,000。HCD-MS/MSは40% nCEを使用した。グリコペプチドについて診断オキソニウムイオンを含有する断片スペクトルを生じさせた前駆体、即ち、m/z 204.08671、138.05451および366.13961を、第2のEThcD (nCE 15%)断片化について選択した。全ての断片スペクトルの解析を、以下のパラメーターを用いてByonic (v2.16.11、Protein Metrics Inc)の助けを借りてThermo Xcalibur Qualブラウザーソフトウェアを使用して行った:前駆体質量許容差6 ppm、断片質量許容差1 Daおよび10 ppm;それぞれ、ETD断片形成中の可能性のあるプロトン移動およびMS/MS分解能を説明するため;インタクト質量分析において以前に見られた、脱アミド化(可変)および2つのコアタイプ2 O-グリカン。
【0155】
データは平均値±標準偏差(SD)として表される。群間の差の有意性を、Prismソフトウェア(GraphPad Software)を用いてt-検定によって決定した。p < 0.05を有意性閾値として全体にわたって使用した。
【0156】
実施例1:ヒト脾臓由来CD52のN-およびO-グリコシル化の分析
ヒトCD52の天然グリコシル化を特徴付けるために、ヒト脾臓からのCD52を精製した。放出されたN-およびO-グリカンの包括的な分析を多孔質黒鉛化炭素によって行った(PGC)-ESI-MS/MS (図1A、B)。豊富なポリLacNAc伸長を有する多分岐型シアリル化N-グリカンとして表される、高いN-グリコシル化不均一性が確認された(図1A)。同様のN-グリカンが、天然に存在するヒトCD52について以前報告された(Treumann et al.)。O-グリコシル化プロファイルは、コアタイプ1およびコアタイプ2シアリル化構造と特徴付けられ、主に(66%)二シアリル化コアタイプ2 O-グリカンであった(図1B)。このグリカン不均一性は、CD52の特定の生物活性グリコフォームが存在することを示唆している。そのような不均一性がヒトCD52の組換え形態において反映されるかどうかを決定するために、さらなる実験を行った(実施例2~7を参照されたい)。
【0157】
実施例2:Fc担体タンパク質を有する異なる宿主細胞から産生された組換えCD52に対するN-グリコシル化の影響の評価
ヒトCD52を、記載されたようにIgG1 Fc断片とコンジュゲートされた組換え融合タンパク質として操作した(Bandala-Sanchez et al. (2013))。この研究のために作製された2つの組換えヒトCD52-Fcバッチは、以前観察された免疫抑制生物活性を再現した(図2A)。しかし、FcはN297で単一のN結合型グリコシル化部位を有し(図2B (i))、これは、組換えCD52-FcのN-グリコシル化の影響の特徴付けおよび評価において考慮されなければならなかった。これには2つの方法で対処した:i) Fc N-グリカンからの干渉無しに放出グリカンレベルでCD52 N-グリコシル化プロファイルの分析を可能にする、FcがN297A突然変異を含有したヒトCD52-Fcの組換え形態を分析することによって(図2B (ii))、および2) CD52についての特異的抗体を使用するウェスタンブロットによって示されたように、CD52-Fc構築物中に適切に組み込まれた切断部位の第Xa因子タンパク質分解によるCD52-FcからのFc成分の除去によって(図2C)。
【0158】
実施例3:組換えCD52グリコフォームの生物活性の評価
組換えCD52-Fcの特異的生物活性はバッチごとに異なることがわかった。従って、より高いおよびより低い免疫抑制活性を示すことが示された異なる宿主細胞から作製された2つのCD52-Fcバリアント間のシアリル化の影響を比較し、これらは、本明細書において、それぞれ、CD52-Fc I(Expi293細胞由来)およびCD52-Fc II(HEK 293細胞由来)と呼ばれる(図3A)。
【0159】
N-グリカンをPNGアーゼFでの溶液中処理によって放出させ、その後、PGC-ESI-MS/MSによって分析した(Jensen et al.)。切断CD52 I上のN-グリカンは、CD52 IIと比較して、二分岐型、三分岐型および四分岐型のシアリル化グリカンのより大きな相対存在度を有した(図3B)。さらに、CD52 Iは、LacNAc部分を恐らく含有するシアリル化構造体の有意により高い相対存在度を示した(図3B)。分岐鎖数だけでなく、それらのシアリル化度も2つの組換えCD52グリコフォーム間で異なった:四シアリル化N-グリカンは、CD52 II (4.9±1.3)と比較してCD52 I (6.9±0.9%)中において有意により豊富であった(p < 0.05)。対照的に、CD52 IIは、非シアリル化二分岐型構造体およびバイセクティング構造体の有意により大きな存在度を示した(それぞれ、19%および2%と比較して30%および5%) (図3B)。
【0160】
Fcの除去後、組換えCD52 IおよびCD52 IIを、次いで、C8-LC-ESI-MSを使用する高分解能インタクトペプチド分析へ供した。両方のタンパク質が、放出されたグリカンのそれと同様のN-グリコシル化プロファイルを示した。高m/z範囲においてさえ使用されるQ-TOF機器の高分解能は、ルイス型構造(アンテナ型フコシル化)を有するN-グリカンの検索を含む、非常に細長いシアリル化分岐型構造の同定を可能にした。組換えCD52の両方のバリアントの実験的同位体分布は、90%三シアリル化(非ルイスフコシル化)CD52グリコフォームの理論的同位体分布と一致し、これは、組換えCD52の主なグリコフォームはルイス型フコシル化を有さないことを示す(図7A)。生物活性がより高いCD52 Iは、より高レベルの多分岐型シアリル化および可能なLacNAc伸長構造を示した(図7B)。
【0161】
実施例4:CD52グリコフォームについてのα-2,3シアリル化N-グリカンの重要性の評価
α-2,3シアリル化を示すCD52 N-グリカンはSiglec-10へ優先的に結合する。組換えCD52-Fcの2つのバリアント(CD52-Fc IおよびCD52-Fc II)間のシアル酸結合の差異を同定するために、PGC-LC-MS/MSグリカン分析およびイヌエンジュ-1 (MAL-I)レクチンブロッティングを使用した。MAL-Iは、α-2,3シアリル化を示す複合糖質の公知の優先的認識を有する。シアログリカンについてのPGCの高分離能にもかかわらず、この技術は、非常に大きな多分岐型のシアリル化グリカンを分解することが困難であるが、より一般的な二分岐型および三分岐型のN-グリカンについてはα-2,3シアリル化とα-2,6シアリル化とを容易に識別することができる。いくつかの豊富な二分岐型α-2,3シアログリカンがCD52 I上において観察された。1つのシアリル化グリカン、m/z 1140.42- (GlcNAc5Man3Gal2NeuAc1)について、α-2,3シアル酸グリカン異性体のみがCD52 I上において観察された。他方で、より生物活性が低いCD52 IIは、α-2,3およびα-2,6シアロ-N-グリカンの両方を有した(図3C)。2つの組換えCD52バリアント間のこの示差的なシアリル結合提示は、MAL-Iレクチン結合によって支持され、これはより生物活性が高いCD52-Fc Iについてより高かった(図3D)。MAL-Iレクチンは、α-2,3シアル酸結合型の三シアリル化N-グリカンおよび四シアリル化N-グリカンへの結合を好む(Wang and Cummings)。CD52-Fcの生物活性についてのα-2,3シアリル化の重要性が並列実験で確認され、ここで、シアリダーゼ処理および再シアリル化CD52-Fcの免疫抑制活性を、元の組換えバリアントと比べて決定した。シアリダーゼでのCD52-Fcの処理はその免疫抑制活性を完全に消失させ、これは、α-2,6シアリル化ではなく、α-2,3での再シアリル化で改善に復活した(図3E)。全体的に、これらの知見は、CD52-Fcの生物活性は、結合されたFcではなく、CD52上に見られるα-2,3結合型四シアリル化N-グリカンの存在と関連することを示している。
【0162】
実施例5:陰イオン交換クロマトグラフィーによる活性CD52グリコフォームの分解
最も生物活性が高い形態を同定することを目的として、シアリル化度に基づいて組換えCD52-Fcバリアントを分離するために、陰イオン交換クロマトグラフィーをMonoQカラムにおいて行った(図4A)。収集されたフラクション中のCD52-Fcのシアリル化度の増加(等電点[pI]の低下)を、等電点電気泳動(IEF)(図8)および質量分析によって確認した。フラクション46~51(F46~F51)からの放出されたN-グリカンは、インタクトグリコペプチド分析(図9)からも示されたように、シアル酸含有量の漸増、およびより高い分岐鎖数を含有する構造(表2)を明らかにした。フラクション30からの放出されたインタクトなグリカンの分析は、様々なGlcNAcおよびGalキャップ構造ならびにシアル酸部分の完全な非存在を明らかにした(表2および図9)。顕著なことに、5~6の範囲内のpIを有する2つのフラクションF48およびF49のみが、有意な免疫抑制活性を示した(図4B)。隣接するフラクションは、より高いタンパク質濃度、例えば20および40μg/mlであってさえ、生物活性ではなかった(図10)。これらの後期溶出する、ユニークに生物活性のフラクション(F48~49)は、三シアリル化および四シアリル化グリカンが高濃縮されており(60~70%)、これは、シアリル化がCD52の生物活性に強く影響することをさらに確認する。
【0163】
実施例6:活性CD52 MonoQフラクション中のα-2,3シアリル化の評価
質量分析によって大きな多シアリル化N-グリカンのシアリル化結合を決定することは困難である。従って、活性MonoQフラクションおよび隣接する非活性MonoQフラクションのシアル酸結合の差異を、α-2,3特異的シアリダーゼ処理によって調べた。α-2,3シアリダーゼの結合特異的活性を対照タンパク質としてのウシフェチュインにおいて確認し、これは、公知の二分岐型シアリル化グリカンm/z 1111.52-からのα-2,3結合シアル酸残基の特異的除去を実証した(図5A)。CD52の活性フラクションのα-2,3シアリダーゼ処理から生じたグリカン生成物を、PGC-LC-MS/MSによって決定した(図5B (i) および(ii))。活性MonoQフラクション(F48/F49)は、隣接する初期(F46、F47)および後期(F50、F51)溶出フラクション(それぞれ、51%および25%)と比較してより高い割合のα-2,3シアル酸(58%)、ならびに隣接する非活性フラクションよりも少ないバイセクティング構造体(それぞれ4%および5%と比較して、1%)を有した(図5C)。最後に、インタクトペプチドレベルでの最も活性なCD52フラクションのプロファイルは、三分岐型および四分岐型のシアリル化構造体の優位性を支持した(図5D)。
【0164】
実施例7:CD52のO-グリカンの評価
最初に、インタクトペプチドレベルでの脱-N-グリコシル化CD52のO-グリコシル化分析は、組換えCD52の両方のバリアント(CD52 IおよびCD52 II)が非常に低い(4%) O-グリカン占有率(図6A)を有することを明らかにし、CD52活性化についてのO-グリコシル化の関連性に疑問を呈した。非脱アミド化シグネチャーはCD52 IおよびIIの両方のスペクトル中に存在せず、これは、CD52ペプチドは完全にN-グリコシル化されていたことを示している(黒色記号、図6A)。ヒト脾臓CD52と同様に、組換えCD52タンパク質は、1つまたは2つのシアル酸残基(それぞれ、灰色および橙色記号で示される;図6A)を有する主にコアタイプ2 O-グリカンを含有することが分かった。シアリル化コアタイプ1 O-グリカンも、非常に低い存在度(<0.5%)であったが同定された。興味深いことに、CD52の最も陰イオン性かつ生物活性であるMonoQ CD52フラクション(F48およびF49)は、かなりより高いO-グリカン占有率を有した(非活性フラクション中の4%と比較して、15~20%)。生物活性フラクション(F48およびF49)の抽出イオンクロマトグラム(EIC)は、最も豊富なO-グリカン構造体m/z 665.22-(GalNAc1GlcNAc1Gal2NeuAc2)についてのシアロ異性体の非存在を示し、しかしm/z 1040.41-(GalNAc1GlcNAc1Gal2NeuAc)については示さなかった(図6B)。最後に、O-グリカン部位位置決めを、電子移動/高エネルギー衝突解離(EThcD)によって決定し、これは、二シアリル化O-グリカンはSer12、および、診断イオンの欠如に起因して恐らくSer10へコンジュゲートされ、一方、一シアリル化O-グリカンはThr8においてのみ見られたという結論を支持する、cおよびzイオンを提供した(図6C)。
【0165】
(表2)陰イオンクロマトグラフィーによって分離された組換えヒトCD52フラクションのシアル酸含有量および分岐鎖分布。
(A) (上部パネル)シアル酸残基の総数、および(B) (下部パネル) PGC-LC-MS/MSを使用してCD52フラクション(F30、F46、F47、F49、F50およびF51)において同定された分岐鎖分布。
【0166】
本明細書中に開示および定義される本発明は、言及されたかまたは文書もしくは図面から明らかな個々の特徴のうちの2つ以上の全ての代替的な組み合わせにまで及ぶことが理解されるだろう。これらの異なる組み合わせの全てが本発明の様々な代替的な局面を構成する。
【0167】
参考文献
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
【配列表】
2022531065000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-02-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i) 1つまたは複数の多分岐型N結合型α-2,3-シアリル化グリカン、好ましくは四分岐型N結合型α-2,3-シアリル化グリカン;および
(ii) 約5~約6の等電点(pI)
を含む可溶性CD52糖タンパク質であって、該1つまたは複数のN-グリカンが、
からなる群より選択される、可溶性CD52糖タンパク質
【請求項2】
(i) 1つまたは複数の多分岐型N結合型α-2,3-シアリル化グリカン、好ましくは四分岐型N結合型α-2,3-シアリル化グリカンを含み;かつ
(ii) N結合型バイセクティングGlcNAc構造体を含まない
、可溶性CD52糖タンパク質であって、該1つまたは複数のN-グリカンが、
からなる群より選択される、可溶性CD52糖タンパク質
【請求項3】
(i) 1つまたは複数のN結合型α-2,3-シアリル化グリカンを含み;
(ii) 1つまたは複数のO-グリカンを含み;かつ
(iii) N結合型バイセクティングGlcNAc構造体を含まない
、可溶性CD52糖タンパク質であって、該1つまたは複数のN-グリカンが、
からなる群より選択される、可溶性CD52糖タンパク質
【請求項4】
(i) 1つまたは複数のN結合型α-2,3-シアリル化グリカン;
(ii) 1つまたは複数のO-グリカン;および
(iii) 約5~約6のpI
を含む、可溶性CD52糖タンパク質であって、該1つまたは複数のN-グリカンが、
からなる群より選択される、可溶性CD52糖タンパク質
【請求項5】
1つまたは複数のN-グリカンが、
からなる群より選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の可溶性CD52糖タンパク質。
【請求項6】
1つまたは複数のN-グリカンが、
からなる群より選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の可溶性CD52糖タンパク質。
【請求項7】
1つまたは複数のO-グリカンをさらに含む、請求項1または2のいずれか一項記載の可溶性CD52糖タンパク質。
【請求項8】
O-グリカンが一シアリル化O-グリカンまたは二シアリル化O-グリカンである、請求項3、4および7のいずれか一項記載の可溶性CD52糖タンパク質。
【請求項9】
前記糖タンパク質が、
N結合型グリコシル化に適した少なくとも1つのアミノ酸を含むアミノ酸配列、および
SEQ ID NO: 3、4、5、6または7で特定されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つまたは複数と少なくとも90%同一のアミノ酸配列
を有する、請求項1~8のいずれか一項記載の可溶性CD52糖タンパク質。
【請求項10】
前記糖タンパク質が、
N結合型グリコシル化に適した少なくとも1つのアミノ酸を含むアミノ酸配列、および
SEQ ID NO: 3、4、5、6または7で特定されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つまたは複数と少なくとも95%同一のアミノ酸配列
を有する、請求項1~8のいずれか一項記載の可溶性CD52糖タンパク質。
【請求項11】
ヒトのものである、請求項1~10のいずれか一項記載の可溶性CD52糖タンパク質。
【請求項12】
N-グリカンがアスパラギン(N)残基3へ結合されている、請求項11記載の可溶性CD52糖タンパク質。
【請求項13】
前記糖タンパク質が、SEQ ID NO: 3で特定されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有し、1つまたは複数のO-グリカンが、セリン(S)残基12、セリン残基(S)10および/またはトレオニン(T)残基8へ結合されている、請求項8記載の可溶性CD52糖タンパク質。
【請求項14】
前記糖タンパク質が、SEQ ID NO: 3で特定されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有し、O-グリカンが、セリン(S)残基12および/またはセリン残基(S)10へ結合されている、請求項8記載の可溶性CD52糖タンパク質。
【請求項15】
第2のタンパク質とコンジュゲートされた請求項1~14のいずれか一項記載の可溶性CD52糖タンパク質を含む融合タンパク質。
【請求項16】
第2のタンパク質が、抗体断片、好ましくはFcまたはIgG1 Fcである、請求項15記載の融合タンパク質。
【請求項17】
約5~約6の等電点(pI)を有する、請求項15または16記載の融合タンパク質。
【請求項18】
請求項1~14のいずれか一項記載の可溶性CD52糖タンパク質または請求項1517のいずれか一項記載の融合タンパク質および血清を含む、組成物。
【請求項19】
請求項1~14のいずれか一項記載の可溶性CD52糖タンパク質または請求項1517のいずれか一項記載の融合タンパク質、ならびにインスリンおよび/または自己抗原を含む、組成物。
【請求項20】
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質を含む組成物であって、該組成物のCD52糖タンパク質が、
(i) 野生型可溶性CD52糖タンパク質と比べて増加した量のα-2,3-シアリル化N-グリカン;
(ii) 野生型可溶性CD52糖タンパク質と比べて増加した量の三分岐型および四分岐型のN-グリカン;ならびに/または
(iii) 野生型可溶性CD52糖タンパク質と比べて増加した量のO-グリコシル化
を含み、
野生型可溶性CD52糖タンパク質がヒト脾臓由来のCD52である、
組成物。
【請求項21】
前記組成物のCD52糖タンパク質が、野生型可溶性CD52糖タンパク質と比べて減少した量のN結合型バイセクティングGlcNAcグリカンをさらに含む、請求項20記載の組成物。
【請求項22】
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質を含む組成物であって、該組成物のCD52糖タンパク質が、
(i) 野生型可溶性CD52糖タンパク質と比べて増加した量のα-2,3-シアリル化N-グリカン;
(ii) 野生型可溶性CD52糖タンパク質と比べて増加した量の四分岐型N-グリカン;および/または
(iii) 野生型可溶性CD52糖タンパク質と比べて増加した量の二シアリル化O-グリコシル化
を含み、
野生型可溶性CD52糖タンパク質がヒト脾臓由来のCD52である、
組成物。
【請求項23】
前記組成物のCD52糖タンパク質が、野生型可溶性CD52糖タンパク質と比べて減少した量のN結合型バイセクティングGlcNAcグリカンをさらに含む、請求項22記載の組成物。
【請求項24】
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質が、約5~約6の等電点(pI)を有する、請求項2023のいずれか一項記載の組成物。
【請求項25】
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分が、
N結合型グリコシル化に適した少なくとも1つのアミノ酸を含むアミノ酸配列、および
SEQ ID NO: 3、4、5、6または7で特定されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つまたは複数と少なくとも90%同一のアミノ酸配列
を有する、請求項2024のいずれか一項記載の組成物。
【請求項26】
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分が、
N結合型グリコシル化に適した少なくとも1つのアミノ酸を含むアミノ酸配列、および
SEQ ID NO: 3、4、5、6または7で特定されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つまたは複数と少なくとも95%同一のアミノ酸配列
を有する、請求項2024のいずれか一項記載の組成物。
【請求項27】
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分がヒトのものである、請求項2026のいずれか一項記載の組成物。
【請求項28】
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分のN-グリカンが、アスパラギン(N)残基3へ結合されている、請求項27記載の組成物。
【請求項29】
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分が、SEQ ID NO: 3で特定されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有し、かつ、セリン(S)残基12、セリン残基(S)10および/またはトレオニン(T)残基8へ結合された1つまたは複数のO-グリカンを含む、請求項28記載の組成物。
【請求項30】
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分が、SEQ ID NO: 3で特定されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有し、かつ、セリン(S)残基12および/またはセリン残基(S)へ結合された1つまたは複数のO-グリカンを含む、請求項29記載の組成物。
【請求項31】
複数のCD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分のN-グリカンが、約60~約70% 三シアリル化および四シアリル化されている、請求項2030のいずれか一項記載の組成物。
【請求項32】
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分のN-グリカンが、約55~約65% α-2,3-シアリル化されている、請求項2031のいずれか一項記載の組成物。
【請求項33】
α-2,3-シアリル化の少なくともいくつかが酵素的に付加されている、請求項1~32のいずれか一項記載のCD52糖タンパク質、CD52糖タンパク質を含む融合タンパク質、または組成物。
【請求項34】
α-2,3-シアリル化の少なくともいくつかが1つまたは複数のシアリルトランスフェラーゼによって付加されている、請求項33記載のCD52糖タンパク質、CD52糖タンパク質を含む融合タンパク質、または組成物。
【請求項35】
α-2,3-シアリル化の少なくともいくつかがファミリーGT-42の1つまたは複数のシアリルトランスフェラーゼによって付加されている、請求項33または34記載のCD52糖タンパク質、CD52糖タンパク質を含む融合タンパク質、または組成物。
【請求項36】
α-2,3-シアリル化の少なくともいくつかが、Cst-IIおよびCst-Iの群より選択されるシアリルトランスフェラーゼによって付加されている、請求項3335のいずれか一項記載のCD52糖タンパク質、CD52糖タンパク質を含む融合タンパク質、または組成物。
【請求項37】
以下による、約5~約6のpIを有する活性CD52糖タンパク質および/またはそれらの融合タンパク質のフラクションの調製のための方法:
(i) 請求項2032のいずれか一項記載のタンパク質を含有する組成物に対して陰イオン交換クロマトグラフィーを行い、該タンパク質をそれらの等電点(pI)に基づいて分離する工程;
(ii) 溶出されたフラクションを収集する工程;および
(iii) 約5~約6のpIを有するフラクションを選択する工程。
【請求項38】
治療有効量の請求項1~36のいずれか一項記載のCD52糖タンパク質、融合タンパク質または組成物を含む、エフェクターT細胞機能および/または免疫応答を抑制するための薬学的組成物
【請求項39】
抑制される免疫応答が、自己抗原に対する免疫応答である、請求項38記載の薬学的組成物
【請求項40】
治療有効量の請求項1~36のいずれか一項記載の1つまたは複数のCD52タンパク質または融合タンパク質または組成物を含む、その必要がある対象における、エフェクターT細胞機能によって媒介される疾患もしくは状態、炎症または敗血症を処置または予防するための薬学的組成物
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0065
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0065】
[本発明1001]
(i) 1つまたは複数の多分岐型N結合型α-2,3-シアリル化グリカン、好ましくは四分岐型N結合型α-2,3-シアリル化グリカン;および
(ii) 約5~約6の等電点(pI)
を含む、可溶性CD52糖タンパク質。
[本発明1002]
(i) 1つまたは複数の多分岐型N結合型α-2,3-シアリル化グリカン、好ましくは四分岐型N結合型α-2,3-シアリル化グリカンを含み;かつ
(ii) N結合型バイセクティングGlcNAc構造体を含まない
、可溶性CD52糖タンパク質。
[本発明1003]
(i) 1つまたは複数のN結合型α-2,3-シアリル化グリカンを含み;
(ii) 1つまたは複数のO-グリカンを含み;かつ
(iii) N結合型バイセクティングGlcNAc構造体を含まない
、可溶性CD52糖タンパク質。
[本発明1004]
(i) 1つまたは複数のN結合型α-2,3-シアリル化グリカン;
(ii) 1つまたは複数のO-グリカン;および
(iii) 約5~約6のpI
を含む、可溶性CD52糖タンパク質。
[本発明1005]
1つまたは複数のO-グリカンをさらに含む、本発明1001または1002のいずれかの可溶性CD52糖タンパク質。
[本発明1006]
多分岐型N結合型α-2,3-シアリル化グリカンが、三分岐型または四分岐型のN結合型α-2,3-シアリル化グリカンである、本発明1001、1002および1005のいずれかの可溶性CD52糖タンパク質。
[本発明1007]
多分岐型N結合型α-2,3-シアリル化グリカンが、四分岐型N結合型α-2,3-シアリル化グリカンである、本発明1006の可溶性CD52糖タンパク質。
[本発明1008]
N-グリカンがポリLacNAc伸長を有する、前記本発明のいずれかの可溶性CD52糖タンパク質。
[本発明1009]
O-グリカンが一シアリル化O-グリカンまたは二シアリル化O-グリカンである、本発明1003~1005のいずれかの可溶性CD52糖タンパク質。
[本発明1010]
O-グリカンが二シアリル化O-グリカンである、本発明1003~1005および1009のいずれかの可溶性CD52糖タンパク質。
[本発明1011]
前記糖タンパク質が、
N結合型グリコシル化に適した少なくとも1つのアミノ酸を含むアミノ酸配列、および
SEQ ID NO: 3、4、5、6または7で特定されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つまたは複数と少なくとも60%同一のアミノ酸配列
を有する、前記本発明のいずれかの可溶性CD52糖タンパク質。
[本発明1012]
前記糖タンパク質が、
N結合型グリコシル化に適した少なくとも1つのアミノ酸を含むアミノ酸配列、および
SEQ ID NO: 3、4、5、6または7で特定されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つまたは複数と少なくとも80%同一のアミノ酸配列
を有する、前記本発明のいずれかの可溶性CD52糖タンパク質。
[本発明1013]
前記糖タンパク質が、
N結合型グリコシル化に適した少なくとも1つのアミノ酸を含むアミノ酸配列、および
SEQ ID NO: 3、4、5、6または7で特定されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つまたは複数と少なくとも90%同一のアミノ酸配列
を有する、前記本発明のいずれかの可溶性CD52糖タンパク質。
[本発明1014]
前記糖タンパク質が、
N結合型グリコシル化に適した少なくとも1つのアミノ酸を含むアミノ酸配列、および
SEQ ID NO: 3、4、5、6または7で特定されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つまたは複数と少なくとも95%同一のアミノ酸配列
を有する、前記本発明のいずれかの可溶性CD52糖タンパク質。
[本発明1015]
前記糖タンパク質が、SEQ ID NO: 3、4、5、6または7で特定されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有する、前記本発明の可溶性CD52糖タンパク質。
[本発明1016]
ヒトのものである、前記本発明のいずれかの可溶性CD52糖タンパク質。
[本発明1017]
前記糖タンパク質が、SEQ ID NO: 3で特定されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有する、前記本発明のいずれかの可溶性CD52糖タンパク質。
[本発明1018]
N-グリカンがアスパラギン(N)残基3へ結合されている、本発明1017の可溶性CD52糖タンパク質。
[本発明1019]
前記糖タンパク質が、SEQ ID NO: 3で特定されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有し、1つまたは複数のO-グリカンが、セリン(S)残基12、セリン残基(S)10および/またはトレオニン(T)残基8へ結合されている、本発明1009または1010の可溶性CD52糖タンパク質。
[本発明1020]
前記糖タンパク質が、SEQ ID NO: 3で特定されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有し、O-グリカンが、セリン(S)残基12および/またはセリン残基(S)10へ結合されている、本発明1010の可溶性CD52糖タンパク質。
[本発明1021]
1つまたは複数のN-グリカンが、
からなる群より選択される、前記本発明のいずれかの可溶性CD52糖タンパク質。
[本発明1022]
1つまたは複数のN-グリカンが、
からなる群より選択される、前記本発明のいずれかの可溶性CD52糖タンパク質。
[本発明1023]
1つまたは複数のN-グリカンが、
からなる群より選択される、前記本発明のいずれかの可溶性CD52糖タンパク質。
[本発明1024]
1つまたは複数のO-グリカンが、
からなる群より選択される、本発明1003、1004、1005、1009、1010、1019および1020のいずれかの可溶性CD52糖タンパク質。
[本発明1025]
1つまたは複数のO-グリカンが、
からなる群より選択される、本発明1024の可溶性CD52糖タンパク質。
[本発明1026]
第2のタンパク質とコンジュゲートされた前記本発明のいずれかの可溶性CD52糖タンパク質を含む融合タンパク質。
[本発明1027]
第2のタンパク質が、抗体断片、好ましくはFcまたはIgG1 Fcである、本発明1026の融合タンパク質。
[本発明1028]
第2のタンパク質が精製タグである、本発明1026の融合タンパク質。
[本発明1029]
精製タグが、Hisタグ、T7タグ、FLAGタグ、Sタグ、HAタグ、c-Mycタグ、DHFR、キチン結合ドメイン、カルモジュリン結合ドメイン、セルロース結合ドメインおよびStrep 2タグからなる群より選択される、本発明1028の融合タンパク質。
[本発明1030]
約5~約6の等電点(pI)を有する、本発明1026~1028のいずれかの融合タンパク質。
[本発明1031]
本発明1001~1025のいずれかの可溶性CD52糖タンパク質または本発明1026~1030のいずれかの融合タンパク質および血清を含む、組成物。
[本発明1032]
本発明1001~1025のいずれかの可溶性CD52糖タンパク質または本発明1026~1030のいずれかの融合タンパク質、ならびにインスリンおよび/または自己抗原を含む、組成物。
[本発明1033]
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質を含む組成物であって、該組成物のCD52糖タンパク質が、
(i) 野生型可溶性CD52糖タンパク質と比べて増加した量のα-2,3-シアリル化N-グリカン;
(ii) 野生型可溶性CD52糖タンパク質と比べて増加した量の三分岐型および四分岐型のN-グリカン;ならびに/または
(iii) 野生型可溶性CD52糖タンパク質と比べて増加した量のO-グリコシル化
を含み、
野生型可溶性CD52糖タンパク質がヒト脾臓由来のCD52である、
組成物。
[本発明1034]
前記組成物のCD52糖タンパク質が、(i)、(ii) および(iii) のうちのいずれか2つを含む、本発明1033の組成物。
[本発明1035]
前記組成物のCD52糖タンパク質が、野生型可溶性CD52糖タンパク質と比べて減少した量のN結合型バイセクティングGlcNAcグリカンをさらに含む、本発明1033または1034の組成物。
[本発明1036]
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質を含む組成物であって、該組成物のCD52糖タンパク質が、
(i) 野生型可溶性CD52糖タンパク質と比べて増加した量のα-2,3-シアリル化N-グリカン;
(ii) 野生型可溶性CD52糖タンパク質と比べて増加した量の四分岐型N-グリカン;および/または
(iii) 野生型可溶性CD52糖タンパク質と比べて増加した量の二シアリル化O-グリコシル化
を含み、
野生型可溶性CD52糖タンパク質がヒト脾臓由来のCD52である、
組成物。
[本発明1037]
前記組成物のCD52糖タンパク質が、(i)、(ii) および(iii) のうちのいずれか2つを含む、本発明1036の組成物。
[本発明1038]
前記組成物のCD52糖タンパク質が、野生型可溶性CD52糖タンパク質と比べて減少した量のN結合型バイセクティングGlcNAcグリカンをさらに含む、本発明1036または1037の組成物。
[本発明1039]
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質が、約5~約6の等電点(pI)を有する、本発明1033~1038のいずれかの組成物。
[本発明1040]
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分が、
N結合型グリコシル化に適した少なくとも1つのアミノ酸を含むアミノ酸配列、および
SEQ ID NO: 3、4、5、6または7で特定されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つまたは複数と少なくとも60%同一のアミノ酸配列
を有する、本発明1033~1039のいずれかの組成物。
[本発明1041]
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分が、
N結合型グリコシル化に適した少なくとも1つのアミノ酸を含むアミノ酸配列、および
SEQ ID NO: 3、4、5、6または7で特定されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つまたは複数と少なくとも80%同一のアミノ酸配列
を有する、本発明1033~1040のいずれかの組成物。
[本発明1042]
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分が、
N結合型グリコシル化に適した少なくとも1つのアミノ酸を含むアミノ酸配列、および
SEQ ID NO: 3、4、5、6または7で特定されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つまたは複数と少なくとも90%同一のアミノ酸配列
を有する、本発明1033~1041のいずれかの組成物。
[本発明1043]
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分が、
N結合型グリコシル化に適した少なくとも1つのアミノ酸を含むアミノ酸配列、および
SEQ ID NO: 3、4、5、6または7で特定されるアミノ酸配列のうちのいずれか1つまたは複数と少なくとも95%同一のアミノ酸配列
を有する、本発明1033~1042のいずれかの組成物。
[本発明1044]
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分が、SEQ ID NO: 3、4、5、6または7で特定されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有する、本発明1033~1043のいずれかの組成物。
[本発明1045]
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分がヒトのものである、本発明1033~1044のいずれかの組成物。
[本発明1046]
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分が、SEQ ID NO: 3で特定されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有する、本発明1033~1045のいずれかの組成物。
[本発明1047]
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分のN-グリカンが、アスパラギン(N)残基3へ結合されている、本発明1046の組成物。
[本発明1048]
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分が、SEQ ID NO: 3で特定されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有し、かつ、セリン(S)残基12、セリン残基(S)10および/またはトレオニン(T)残基8へ結合された1つまたは複数のO-グリカンを含む、本発明1046または1047の組成物。
[本発明1049]
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分が、SEQ ID NO: 3で特定されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有し、かつ、セリン(S)残基12および/またはセリン残基(S)へ結合された1つまたは複数のO-グリカンを含む、本発明1048の組成物。
[本発明1050]
複数のCD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分のN-グリカンが、約60~約70% 三シアリル化および四シアリル化されている、本発明1033~1049のいずれかの組成物。
[本発明1051]
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分のN-グリカンが、約55~約65% α-2,3-シアリル化されている、本発明1033~1050のいずれかの組成物。
[本発明1052]
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分が、野生型可溶性CD52糖タンパク質と比べて増加した量の、
からなる群より選択されるN-グリカンを有する、本発明1033~1051のいずれかの組成物。
[本発明1053]
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分が、野生型可溶性CD52糖タンパク質と比べて増加した量の、
からなる群より選択されるN-グリカンを有する、本発明1033~1052のいずれかの組成物。
[本発明1054]
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分が、野生型可溶性CD52糖タンパク質と比べて増加した量の、
からなる群より選択されるN-グリカンを有する、本発明1033~1053のいずれかの組成物。
[本発明1055]
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分が、約15~約20% O-グリコシル化されている、本発明1033~1054のいずれかの組成物。
[本発明1056]
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分が、野生型可溶性CD52糖タンパク質と比べて増加した量の、
からなる群より選択されるO-グリカンを有する、本発明1033~1055のいずれかの組成物。
[本発明1057]
複数の可溶性CD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分が、野生型可溶性CD52糖タンパク質と比べて増加した量の、
からなる群より選択されるO-グリカンを有する、本発明1056の組成物。
[本発明1058]
複数のCD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分が、SEQ ID NO: 3と少なくとも60%同一であるアミノ酸配列を有する複数のCD52糖タンパク質を含み、野生型CD52糖タンパク質と比較して増加した量の、そのペプチド中のアスパラギン(N3)残基へ結合されたN結合型グリカンをさらに含む、本発明1040~1057の組成物。
[本発明1059]
複数のCD52糖タンパク質またはそれらの融合タンパク質のCD52糖タンパク質部分が、SEQ ID NO: 3と少なくとも60%同一であるアミノ酸配列を有する複数のCD52糖タンパク質を含み、野生型CD52と比較して増加した量の、Ser (S) 12、Ser (S) 10および/またはThr (T) 8でのO-グリコシル化をさらに含む、本発明1040~1058の組成物。
[本発明1060]
インスリンをさらに含む、本発明1033~1059の組成物。
[本発明1061]
自己抗原をさらに含む、本発明1033~1060の組成物。
[本発明1062]
血清をさらに含む、本発明1033~1061の組成物。
[本発明1063]
前記タンパク質が、グリコシル化が可能な宿主細胞における発現によって調製される、前記本発明のいずれかのCD52糖タンパク質、融合タンパク質または組成物。
[本発明1064]
宿主細胞が哺乳動物細胞、好ましくはヒト細胞である、本発明1063のCD52糖タンパク質、融合タンパク質または組成物。
[本発明1065]
宿主細胞がExpi 293またはHEK 293である、本発明1063または1064のCD52糖タンパク質、CD52糖タンパク質を含む融合タンパク質、または組成物。
[本発明1066]
α-2,3-シアリル化の少なくともいくつかが酵素的に付加されている、前記本発明のいずれかのCD52糖タンパク質、CD52糖タンパク質を含む融合タンパク質、または組成物。
[本発明1067]
α-2,3-シアリル化の少なくともいくつかが1つまたは複数のシアリルトランスフェラーゼによって付加されている、本発明1066のCD52糖タンパク質、CD52糖タンパク質を含む融合タンパク質、または組成物。
[本発明1068]
α-2,3-シアリル化の少なくともいくつかがファミリーGT-42の1つまたは複数のシアリルトランスフェラーゼによって付加されている、本発明1066または1067のCD52糖タンパク質、CD52糖タンパク質を含む融合タンパク質、または組成物。
[本発明1069]
α-2,3-シアリル化の少なくともいくつかが、Cst-IIおよびCst-Iの群より選択されるシアリルトランスフェラーゼによって付加されている、本発明1066~1068のいずれかのCD52糖タンパク質、CD52糖タンパク質を含む融合タンパク質、または組成物。
[本発明1070]
以下の工程を含む、本発明1001~1062のいずれかのCD52糖タンパク質、CD52糖タンパク質を含む融合タンパク質、または組成物の調製のための方法:
(i) 哺乳動物細胞培養物において、タグ配列へ結合された、CD52糖タンパク質またはCD52糖タンパク質融合タンパク質のアミノ酸配列を発現させる工程;
(ii) 該タグ配列から産生されるペプチドに対して親和性を有する樹脂および好適な溶出剤を使用するアフィニティークロマトグラフィーによって、CD52糖タンパク質またはCD52糖タンパク質融合タンパク質を単離する工程。
[本発明1071]
細胞培養物がExpi 293またはHEK 293細胞を含む、本発明1070の方法。
[本発明1072]
タグ配列がstrep-tag IIであり、樹脂がStreptactin樹脂である、本発明1070または1071の方法。
[本発明1073]
溶出剤がデスチオビオチンである、本発明1070~1072のいずれかの方法。
[本発明1074]
以下による、約5~約6のpIを有する活性CD52糖タンパク質および/またはそれらの融合タンパク質のフラクションの調製のための方法:
(i) 本発明1033~1062のいずれかのタンパク質または本発明1063~1073のいずれかに従って調製されたタンパク質を含有する組成物に対して陰イオン交換クロマトグラフィーを行い、該タンパク質をそれらの等電点(pI)に基づいて分離する工程;
(ii) 溶出されたフラクションを収集する工程;および
(iii) 約5~約6のpIを有するフラクションを選択する工程。
[本発明1075]
エフェクターT細胞機能および/または免疫応答を抑制する方法であって、その必要がある対象への治療有効量の本発明1001~1069のいずれかのCD52糖タンパク質、融合タンパク質または組成物の投与を含む、方法。
[本発明1076]
エフェクターT細胞機能および/または免疫応答を抑制する方法であって、その必要がある対象への、本発明1070~1074のいずれかの方法によって調製された治療有効量のCD52糖タンパク質、融合タンパク質または組成物の投与を含む、方法。
[本発明1077]
抑制される免疫応答が、自己抗原に対する免疫応答である、本発明1075または1076の方法。
[本発明1078]
その必要がある対象における、エフェクターT細胞機能によって媒介される疾患もしくは状態、炎症または敗血症を処置または予防する方法であって、治療有効量の本発明1001~1069のいずれかの1つまたは複数のCD52タンパク質または融合タンパク質または組成物を投与する工程を含む、方法。
[本発明1079]
その必要がある対象における、エフェクターT細胞機能によって媒介される疾患もしくは状態、炎症または敗血症を処置または予防する方法であって、方法が、本発明1070~1074のいずれかに従って調製された治療有効量の1つまたは複数のCD52糖タンパク質、CD52糖タンパク質を含む融合タンパク質、もしくは組成物、またはそれらのフラクションを投与する工程を含む、方法。
[本発明1080]
エフェクターT細胞機能によって媒介される疾患が、自己免疫疾患、例えば、I型糖尿病または関節リウマチである、本発明1078または1079の方法。
[本発明1081]
エフェクターT細胞機能によって媒介される状態が、同種移植片拒絶または移植片対宿主反応である、本発明1078または1079の方法。
[本発明1082]
粘膜投与または経皮投与を含む、本発明1075~1081のいずれかの方法。
[本発明1083]
治療における使用のための、本発明1001~1069のいずれかのCD52糖タンパク質、融合タンパク質または組成物。
[本発明1084]
エフェクターT細胞機能および/または免疫応答を抑制するための、本発明1001~1069のいずれかのCD52糖タンパク質、融合タンパク質または組成物。
[本発明1085]
エフェクターT細胞機能によって媒介される疾患もしくは状態、炎症または敗血症を処置または予防するための、本発明1001~1069のいずれかのCD52糖タンパク質、融合タンパク質または組成物。
本発明のさらなる局面および前述の段落中に記載される局面のさらなる態様は、例として与えられる下記の説明から、添付の図面を参照して、明らかとなるであろう。
【国際調査報告】