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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(54)【発明の名称】プロビタミンDへの照射方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 401/00 20060101AFI20220629BHJP
【FI】
C07C401/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021558990
(86)(22)【出願日】2020-05-11
(85)【翻訳文提出日】2021-10-01
(86)【国際出願番号】 IN2020050426
(87)【国際公開番号】W WO2020230159
(87)【国際公開日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】201921018751
(32)【優先日】2019-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519370625
【氏名又は名称】ファーメンタ バイオテク リミテッド
【氏名又は名称原語表記】FERMENTA BIOTECH LIMITED
【住所又は居所原語表記】A-1501,Thane One,‘DIL’Complex,Ghodbunder Road,Majiwada,Thane(West),Maharashtra 400610(IN)
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダトラ,アヌパーマ
(72)【発明者】
【氏名】ナグア,プラシャント
(72)【発明者】
【氏名】タモア,ジャグディシュ
(72)【発明者】
【氏名】トリヴィクラム,スリーナス
(72)【発明者】
【氏名】ワダバン,サチン
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC28
4H006AD15
4H006BA95
4H006BB14
4H006BB16
(57)【要約】
本発明は、7-デヒドロコレステロール(7-DHC)からビタミンD3を生産するための改善された方法、およびさらなる再使用のために未反応の7-DHCを回収するための単純な方法を開示する。本発明はさらに、ビタミンD3の単離および精製のための方法を記載する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビタミンD3を調製するための光化学的方法であって、
a)有機溶媒中、ステロール誘導体および触媒量の抗酸化剤と組み合わせた7-デヒドロステロールの混合物を、アルカリの存在下、20~85℃の温度範囲で加熱すること、
b)低圧水銀ランプを使用して10~85℃で該混合物に照射すること、および
c)該照射された混合物からビタミンD3を単離および精製すること
を含む方法。
【請求項2】
前記ステロール誘導体が、コレステロール、フィトステロール、ラノステロールなどからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程a)の前記有機溶媒が、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、メチル-tert-ブチルエーテル、メチルイソブチルケトンおよび石油エーテル(40~60℃および60~80℃)からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記7-デヒドロコレステロールが、ステロール誘導体とおよそ0.1:1~1:3の比で含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記抗酸化剤が、好ましくはブチル化ヒドロキシルトルエン、没食子酸プロピル、ブチル化ヒドロキシアニソールなどから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記抗酸化剤がブチル化ヒドロキシルトルエンである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記アルカリが、好ましくは2%~10%の水酸化ナトリウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記混合物に低圧水銀ランプによって10~85℃で30~300分間、好ましくは60~240分間、またはより好ましくは100~200分間照射して反応を実行する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ビタミンD3の単離および精製が、
a)反応塊を0~45℃に繰り返し冷却して未反応の7-DHCおよびステロール誘導体からなる固体を分離し、続いて濾液を真空下で濃縮する工程、
b)有機溶媒を添加し、続いて水性アルコールで洗浄し、真空下でのさらなる蒸留をして、残留物を得る工程、
c)有機溶媒を残留物に添加し、続いて-5℃~+35℃まで冷却して、ビタミンD3(5~10MIU)+7-デヒドロコレステロール+ステロール誘導体からなる固体を分離する工程、
d)該濾液を真空下40~45℃で蒸発させて、粗ビタミンD3(樹脂)を得る工程、および
e)粗ビタミンD3をそのエステルに変換し、続いて有機溶媒からけん化および結晶化することによって精製して、純粋なビタミンD3を得る工程
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
工程a)およびc)で得られた未反応の7-DHCおよびステロール誘導体からなる固体を回収して、後続のバッチで再使用する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ビタミンD3のエステルが、アセテート、プロピオネート、ブチレート、バレレート、2-ニトロベンゾエートまたは4-ニトロベンゾエートからなる群から選択され、より好ましくはブチレートである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記エステルのけん化が、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムまたは炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムナトリウムメトキシドまたはナトリウムエトキシドまたはカリウムブトキシドまたは水素化リチウムアルミニウムから選択される塩基を使用して行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
工程b)で使用される前記有機溶媒が、メチルtertブチルエーテル、石油エーテル(40~60℃および60~80℃)、n-ヘプタン、n-ヘキサン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、トルエンおよびキシレンからなる群から選択され、前記アルコールが、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールから選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
工程c)で使用される前記有機溶媒が、2-ブタノン、アセトン、メチル-イソブチルケトン、石油エーテル(40~60℃および60~80℃)、n-ヘプタンまたはn-ヘキサンからなる群から選択される。
【請求項15】
工程e)で使用される前記有機溶媒は、アセトン、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、ギ酸メチル、ギ酸エチルからなる群から選択されるケトンまたはエステルである。
【請求項16】
工程b)で得られた前記残留物を、シリカゲル/アルミナまたは2~10%水和アルミナ上で、トルエン:2-ブタノンを1:99、2:98、4:96および5:95の比で、またはジクロロメタン:メタノール99:1、98.:2、95:5、90:10で、または酢酸エチル:メタノール99:1、98:2、95:5および90:10で、カラムクロマトグラフィーによって精製して、純粋なビタミンD3/コレカルシフェロール結晶を単離する、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
a)約98~99.5%の間のD3、および
b)組成物中に存在するビタミンD3の少なくとも0.02%の濃度で、ルミステロールおよびタキステロールの一方または両方、
c)少なくとも0.05%の濃度でトランスビタミンD3
を含み、前記ビタミンD3が40MIUの効力要件を満たす、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、7-デヒドロコレステロール(7-DHC)からビタミンD3を生産するための改善された方法、およびさらなる再使用のために未反応の7-DHCを回収するための単純な方法に関する。本発明はさらに、ビタミンD3の単離および精製のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビタミンD3は、有機溶媒中で7-デヒドロコレステロールに紫外線を照射することにより生産されている。しかしながら、このような方法では、多くの有機溶媒への7-デヒドロコレステロールの溶解度が低く、そのため、紫外線を使用した7-デヒドロコレステロールへの効果的な照射が達成し難いという欠点があり、したがって、ビタミンDの工業生産のためにこのような方法をスケールアップするという課題がある。そのため、7-デヒドロコレステロールに照射するための媒体として様々な有機溶媒が研究されている。
【0003】
別の欠点は、出発物質(7-DHC)、一次生成物(プレビタミンD3)および副生成物が、同じUV波長範囲において異なる効率で吸収し、不活性で、場合によっては毒性でもあるルミステロールおよびタキステロールなどの光化学的副生成物の形成が有利であることである。したがって、比較的少なく7-DHCからD3へ変換した後に照射を中断する必要がある。未変換の7-DHCは、一次生成物(ビタミンD3)が精製されている間にリサイクルされる。
【0004】
さらに、ビタミンD2およびD3はまた、それらに対応するプレビタミン形成の平衡混合物への可逆的な熱異性化を示すので、溶液中で安定ではない。さらに、ビタミンD2およびD3は、酸素および光の存在下で分解されやすい。
【0005】
ビタミンD3の製造方法に関して利用可能な先行技術報告はほとんどなく、以下の通りである。
【0006】
特許文献1は、7-デヒドロコレステロールの照射生成物の処理方法を開示しており、該処理方法は、照射生成物をエタノールで処理して、未反応のプロビタミンの一部分を除去し、残留エタノールガムを得ることと、エタノールガムをメタノールに溶解することと、メタノール溶液からビタミンD3とプロビタミンの付加物を沈殿させることと、沈殿した付加物を溶液から分離することとを含む。
【0007】
特許文献2は、ビタミンD3を含有する混合物の生産方法であって、有機溶媒中の7-デヒドロコレステロール有機酸エステルの溶液に紫外線を照射して、プレビタミンD3有機酸エステルを含有する混合物を得、次いで、プレビタミンD3有機酸エステルを含有する混合物をけん化および加熱操作に供して、ビタミンD3を含有する混合物を得る、方法を開示している。
【0008】
特許文献3は、7-デヒドロステロールまたはその対応する誘導体からプレビタミンDまたはその誘導体を調製するための光化学的方法を開示しており、該方法は、7-デヒドロステロールまたはその誘導体にUV LED(複数可)を照射することを含む。
【0009】
特許文献4は、ビタミンD2またはビタミンD3を合成するために、プロビタミンであるエルゴステロール(E)または7-デヒドロコレステロール(7-DHC)に対して、266nmおよび355nmの2波長を交互にレーザー照射することを備えたYAGレーザーの使用を特徴とする、ビタミンDの合成方法を開示している。
【0010】
特許文献5は、7-デヒドロコレステロールからプレビタミンD3またはその誘導体を生産するための光化学的方法であって、
(a)流下膜式リアクタの7-デヒドロコレステロールにUV放射源で照射することであって、該UV放射源が、UV範囲のコロナ放電機構によって準単色的に発光するXeBrを含むエキシマまたはエキシプレックスエミッタを含む、照射すること、および
(b)プレビタミンD3またはその誘導体を回収すること
を含む、方法を開示している。
【0011】
特許文献6は、エルゴステロールもしくはそのジヒドロキシ誘導体を出発物質として使用してビタミンD2を生産する方法、または7-デヒドロコレステロールもしくはそのジヒドロキシ誘導体を出発物質として使用してビタミンD3を生産する方法であって、
(a)有機または無機塩基を含む溶液中の出発物質に紫外光を照射して、プレビタミンD2またはプレビタミンD3を含む生成物を得ること、および
(b)該生成物を加熱して、プレビタミンD2またはプレビタミンD3をビタミンD2またはビタミンD3に変換すること
を含む、方法を開示している。
【0012】
米国’946の教示は、ビタミンD2およびビタミンD3の変換率および純度の観点から不完全である。また一方で、非常に少ない有機塩基を用いた照射方法を実証しているものの、他の有機および無機塩基を用いた照射方法の適用性を提供することはできていない。
【0013】
上記に照らして、照射方法による生成物は組成が広く異なり、ビタミンD3の量は光化学的反応の程度および最終生成物の純度に依存することが明らかである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第3,176,029号明細書
【特許文献2】米国特許第3,661,939号明細書
【特許文献3】国際公開第2008128783A2号公報
【特許文献4】中国特許出願公開第1033993号公報
【特許文献5】米国特許第6,180,805号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第20170369436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、7-DHCからビタミンD3を生産するための改善された照射条件を提供すること、および反応塊から未反応の7-DHCを回収するための単純化された方法を提供することは、当技術分野で依然として必要とされており、これは保護が求められている本発明の目的となる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記に照らして、本発明は、ビタミンD3またはその誘導体を調製するための光化学的方法を提供し、該方法は、アルカリの存在下で、ステロール誘導体および抗酸化剤と組み合わせて7-デヒドロステロールに照射することを含む。
【0017】
したがって、ビタミンD3を調製するための光化学的方法であって、
a)有機溶媒中、触媒量の抗酸化剤およびアルカリの存在下で、ステロール誘導体と組み合わせた7-デヒドロコレステロールの混合物を、20~85℃の温度範囲で加熱すること、
b)低圧水銀ランプを使用して10~85℃で混合物に照射すること、および
c)照射された混合物からビタミンD3を単離および精製すること
を含む方法である。
別の態様では、本発明は、ビタミンD3の単離および精製のための方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
ここで、本発明を、その様々な態様がより完全に理解および認識され得るように、ある特定の好ましいおよび任意の実施形態に関連して詳細に説明する。
【0019】
したがって、本発明は、ビタミンD3またはその誘導体を調製するための光化学的方法を提供し、該方法は、エタノール中、抗酸化剤およびアルカリの存在下で、7-デヒドロコレステロールにその対応する誘導体と組み合わせて照射することを含む。
【0020】
本発明で使用される出発物質である7-デヒドロコレステロールの試料は、ニュージーランドから入手したウールグリースまたはチリから入手した魚油またはヨーロッパから入手した乳脂肪のいずれかから単離されたコレステロールから合成される。出発物質である7-デヒドロコレステロールの合成のために使用されるコレステロールは、ニュージーランドから入手したウールグリースから単離される。
【0021】
したがって、ビタミンD3を調製するための光化学的方法であって、
a)有機溶媒中、触媒量の抗酸化剤およびアルカリの存在下で、ステロール誘導体と組み合わせた7-デヒドロコレステロールの混合物を、20~85℃の温度範囲で加熱すること、
b)低圧水銀ランプを使用して10~85℃で混合物に照射すること、および
c)照射された混合物からビタミンD3を単離および精製すること
を含む方法である。
【0022】
ステロール誘導体は、コレステロール、フィトステロール、ラノステロールなどからなる群から選択される。7-デヒドロコレステロールは、およそ1:0.1~1:3の比でステロール誘導体と共に含まれる。
【0023】
工程a)の有機溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、メチル-tert-ブチルエーテル、メチルイソブチルケトンおよび石油エーテル(40~60℃および60~80℃)からなる群から選択され得る。
【0024】
ステロール誘導体の使用は、樹脂性反応塊からの未反応の7-DHCの固化を促進し、それによって後続のバッチにおける7-DHCの回収および再使用を単純化するためである。ステロール誘導体の使用はさらに、ビタミンD3の単離の煩わしさを少なくする。
【0025】
抗酸化剤は、好ましくはブチル化ヒドロキシルトルエン、没食子酸プロピル、ブチル化ヒドロキシアニソールなどから選択される。1つの好ましい抗酸化剤はブチル化ヒドロキシルトルエンである。
【0026】
アルカリは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムまたはアンモニアからなる群から選択される。1つの好ましい実施形態では、アルカリは、好ましくは2%~10%の水酸化ナトリウムである。
【0027】
反応塊に低圧水銀ランプを80~85℃で30~300分間、好ましくは60~240分間またはより好ましくは100~200分間照射して、反応を実行する。
【0028】
ビタミンD3の単離および精製は、
a)反応塊を0~45℃℃に繰り返し冷却して7-DHCおよびステロール誘導体からなる固体を分離し、続いて濾液を真空下で濃縮して濃縮塊を得る工程、
b)有機溶媒を工程a)の塊に添加し、続いて水性エタノールで洗浄し、真空下でのさらに蒸留して、残留物を得る工程、
c)有機溶媒を残留物に添加し、続いて-5℃~+35℃まで冷却して、ビタミンD3、7-デヒドロコレステロールおよびステロール誘導体からなる固体を分離する工程、
d)濾液を真空下、40~45℃で蒸発させて、粗ビタミンD3(樹脂)を得る工程、および
e)粗ビタミンD3をそのエステルに変換し、続いて有機溶媒からけん化および結晶化することによって精製して、純粋なビタミンD3を得る工程
を含む。
【0029】
工程b)で使用される有機溶媒は、メチルtertブチルエーテル、石油エーテル(40~60℃および60~80℃)、n-ヘプタン、n-ヘキサン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、トルエンおよびキシレンからなる群から選択される。
【0030】
工程c)において結晶化に使用される有機溶媒は、2-ブタノン、アセトン、メチル-イソブチルケトン、石油エーテル(40~6-℃および60~80℃)、n-ヘプタンまたはn-ヘキサンからなる群から選択される。
【0031】
本方法による工程a)およびc)で得られた固体を回収し、後続のバッチで再使用する。
【0032】
ビタミンD3のエステルは、アセテート、プロピオネート、ブチレート、バレレート、2-ニトロベンゾエートまたは4-ニトロベンゾエートからなる群から選択され、より好ましくはブチレートであり、粗生成物をそれぞれの酸または無水物で処理することによって調製することができる。
【0033】
エステルのけん化は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムブトキシドまたは水素化リチウムアルミニウムから選択される塩基を使用して行われる。
【0034】
工程e)におけるビタミンD3の結晶化に使用される有機溶媒は、アセトン、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、ギ酸メチル、ギ酸エチルからなる群から選択されるケトンまたはエステルである。
【0035】
代替の実施形態では、工程b)で得られた残留物を、1:99、2:98、4:96および5:95の比のトルエン:2-ブタノンで溶出することにより、シリカゲルまたは中性アルミナまたは2~10%の水を含むアルミナでのカラムクロマトグラフィーによって直接精製して、純粋なビタミンD3/コレカルシフェロール結晶を単離することができる。あるいは、ジクロロメタン:メタノール99:1、98:2、95:5、90:10または酢酸エチル:メタノール99:1、98:2、95:5および90:10で溶出することによって、純粋なビタミンD3/コレカルシフェロール結晶を得ることができる。
【0036】
さらに別の実施形態では、本発明は、
a)約98~99.5%のビタミンD3、および
b)組成物中に存在するビタミンD3の少なくとも0.02%の濃度で、ルミステロールおよびタキステロールの一方または両方、
c)少なくとも0.05%の濃度でトランスビタミンD3
を含む組成物を提供し、ビタミンD3は40MIUの効力要件を満たす。
【0037】
したがって、1つの好ましい実施形態では、エタノール中、7-デヒドロコレステロールは、およそ1:0.1~1:3の比のコレステロール、抗酸化剤として触媒量のブチル化ヒドロキシルトルエンおよび2~10%の水酸化ナトリウム水溶液と一緒に含まれ、反応塊は0~90℃の温度範囲で、好ましくは20~85℃またはより好ましくは75~85℃で加熱される。次いで、反応塊に低圧水銀ランプによって80~85℃で30~300分間、好ましくは60~240分間、またはより好ましくは100~200分間照射する。反応塊を-10~50℃、好ましくは15~30℃、最も好ましくは0~5℃にさらに冷却する。
【0038】
分離した固体を濾過する。これには7-デヒドロコレステロールおよび第1の産物であるコレステロールが含まれる。
【0039】
濾液を元の体積の5~50%、好ましくは10~40%、またはより好ましくは元の体積の10~20%に濃縮し、10~15℃に冷却し、分離した固体を濾過する。これには7-デヒドロコレステロールおよび第2の産物であるコレステロールが含まれる。
【0040】
濾液を再び真空下で濃縮し、メチルtertブチルエーテルを添加し、1:1のアルコールおよび水で洗浄し、さらに真空下で蒸留して残留物を得る(ここで、アルコールはメタノール、エタノールおよびイソプロパノールから選択される)。2-ブタノン(メチルエチルケトン)、メチルイソブチルケトン、ギ酸メチルまたはギ酸エチルから選択される有機溶媒を残留物に添加し、-5℃~+35℃の温度範囲で塊を冷却し、分離した固体を濾過する。これにはビタミンD3、7-デヒドロコレステロールおよび第3の産物であるコレステロールが含まれる。第1、第2および第3の産物で得られたこれらの固体を、後続のバッチでの照射のために再使用し、ビタミンD3を得る。
【0041】
次いで、濾液を真空下40~45℃で蒸発させ、粗ビタミンD3(樹脂)を分析し、結果は表1に示す通りである。
【0042】
代替の実施形態では、第1の産物(未反応の7-DHCおよびコレステロール)を除去した後、濾液を真空下で濃縮し、残留物をメチルtertブチルエーテルに溶解し、10×100mlの1:1エタノール水で洗浄し、真空下で蒸留する。残留物を、トルエン:メチルエチルケトン1:99、2:98、4:96および5:95を用いたシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製して、純粋なビタミンD3/コレカルシフェロール結晶を単離する。結果を表4に示す。
【0043】
別の好ましい実施形態では、エタノール中、7-デヒドロコレステロールは、およそ1:0.1~1:3の比のフィトステロール、抗酸化剤として触媒量のブチル化ヒドロキシルトルエンおよび2~10%の水酸化ナトリウム水溶液と一緒に含まれ、反応塊は0~90℃の温度範囲で、好ましくは20~85℃で加熱される。次いで、反応塊に低圧水銀ランプによって75~85℃で30~300分間、好ましくは60~240分間、またはより好ましくは100~200分間照射する。反応塊を、-10~50℃、好ましくは15~30℃、より好ましくは0~5℃に冷却する。分離した固体を濾過する。これには7-デヒドロコレステロールおよび第1の産物であるフィトステロールが含まれる。
【0044】
濾液を元の体積の5~50%、好ましくは10~40%、またはより好ましくは元の体積の10~20%に濃縮し、10~15℃に冷却し、分離した固体を濾過する。これには7-デヒドロコレステロールおよび第2の産物であるフィトステロールが含まれる。
【0045】
濾液を再び真空下で濃縮し、メチルtertブチルエーテルを添加し、1:1エタノール水で洗浄し、真空下で蒸留する。2-ブタノン(メチルエチルケトン)を残留物に添加し、(-5)~(-8)℃に冷却し、分離した固体を濾過する。これには、ビタミンD3、7-デヒドロコレステロールおよび第3の産物であるフィトステロールが含まれる。第1、第2および第3の産物で得られたこれらの固体を、後続のバッチでの照射のために再使用し、ビタミンD3を得る。
【0046】
次いで、濾液を真空下40~45℃で蒸発させ、粗ビタミンD3(樹脂)を分析し、結果は表2に示す通りである。
【0047】
さらに別の好ましい実施形態では、エタノール中、7-デヒドロコレステロールは、およそ1:0.1~1:3の比のラノステロール、抗酸化剤として触媒量のブチル化ヒドロキシルトルエンおよび2~10%の水酸化ナトリウム水溶液と一緒に含まれ、反応塊は0~90℃の温度範囲で、好ましくは20~85℃またはより好ましくは75~85℃で加熱される。次いで、反応塊に低圧水銀ランプによって80~85℃で30~300分間、好ましくは60~240分間、またはより好ましくは100~200分間照射する。反応塊を10~15℃に冷却する。
【0048】
分離した固体を濾過する。これには7-デヒドロコレステロールおよび第1の産物であるラノステロールが含まれる。
【0049】
濾液を元の体積の5~50%、好ましくは10~40%、またはより好ましくは元の体積の10~20%に濃縮し、10~15℃に冷却し、分離した固体を濾過する。これには7-デヒドロコレステロールおよび第2の産物であるラノステロールが含まれる。
【0050】
濾液を再び真空下で濃縮し、メチルtertブチルエーテルを添加し、1:1エタノール水で洗浄し、真空下で蒸留する。2-ブタノン(メチルエチルケトン)を残留物に添加し、(-5)~(-8)℃に冷却し、分離した固体を濾過する。これには、ビタミンD3、7-デヒドロコレステロールおよび第3の産物であるラノステロールが含まれる。第1、第2および第3の産物で得られたこれらの固体を、後続のバッチでの照射のために再使用し、ビタミンD3を得る。
【0051】
次いで、濾液を真空下40~45℃で蒸発させ、粗ビタミンD3(樹脂)を分析し、結果は表3に示す通りである。
【0052】
このようにして得られたビタミンD3(樹脂)は、アセテート、プロピオネート、ブチレート、バレレート、2-ニトロベンゾエートまたは4-ニトロベンゾエート、より好ましくはブチレートのようなそのエステルに変換することによって精製され、結晶化され、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムブトキシドまたは水素化リチウムアルミニウムから選択される塩基を使用して最終的にけん化され、最終的にアセトンから結晶化される。
あるいは、このようにして得られた粗ビタミンD3を、シリカゲルまたはアルミナまたは2~10%の水を含むアルミナを使用し、溶離液としてトルエン:2-ブタノンを使用するカラムクロマトグラフィーによって精製することができる。
【0053】
本発明は、例示のみを目的として提供される以下の例によって例示され、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例
【0054】
実施例1
96グラムの7-デヒドロコレステロール、90グラムのコレステロール、1グラムのブチル化ヒドロキシルトルエンおよび25mlの2%水酸化ナトリウム溶液を、75~85℃で1250mlのエタノールに溶解し、混合物を好ましくは80~85℃で180分間、低圧水銀ランプによって照射した。反応塊を25~30℃に冷却した。分離した固体を、7-デヒドロコレステロール(50~60%)+コレステロールを含有する第1の産物として濾過した。
【0055】
濾液を元の体積の20%に濃縮し、20~25℃に冷却し、分離した固体を、7-デヒドロコレステロール(15~20%)+コレステロールを含有する第2の産物として濾過した。
【0056】
濾液を再び真空下で濃縮した。2000mlのメチルtertブチルエーテルを添加し、2×50mlの1:1エタノール水で洗浄し、真空下で蒸留した。3000mlの2-ブタノン(メチルエチルケトン)を残留物に添加し、10℃に冷却し、分離した固体を、ビタミンD3(5-MIU)+20%7-デヒドロコレステロール+20%コレステロールを含有する第3の産物として濾過した。
【0057】
これらの第1、第2および第3の産物をすべて組み合わせ、後続のバッチで再使用する。
【0058】
次いで、濾液を真空下40~45℃で蒸発させ、表1に示すように粗ビタミンD(樹脂)を分析した。
【0059】
【表1】
【0060】
このように得られた粗樹脂は、以下のいずれかの方法により精製することができる:
【0061】
1.樹脂をアセテートまたはプロピオネートまたはブチレートまたはバレレートまたは2-ニトロベンゾエートまたは4-ニトロベンゾエート、より好ましくはブチレートのようなそのエステルに変換し、結晶化し、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムまたは炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムナトリウムメトキシドまたはナトリウムエトキシドまたはカリウムブトキシドまたは水素化リチウムアルミニウムのような塩基によって最終的にけん化し、最終的にアセトンから結晶化すること。
【0062】
2.シリカゲルまたはアルミナまたは2~10%の水を含むアルミナを使用し、溶離液としてトルエン:2-ブタノンを使用するカラムクロマトグラフィーによる粗樹脂の精製。
【0063】
実施例2
96グラムの7-デヒドロコレステロール、50グラムのフィトステロール、1グラムのブチル化ヒドロキシルトルエンおよび20mlの2%水酸化ナトリウム水溶液を、75~85℃で1000mlのエタノールに溶解し、混合物を80~85℃で30分間、低圧水銀ランプによって照射した。反応塊を35~40℃に冷却した。
【0064】
分離した固体を、7-デヒドロコレステロール(50~60%)+フィトステロールを含有する第1の産物として濾過した。
【0065】
濾液を元の体積の60%に濃縮し、25~30℃に冷却し、分離した固体を、7-デヒドロコレステロール(15~20%)+フィトステロールを含有する第2の産物として濾過した。
【0066】
濾液を再び真空下で濃縮した。2000mlのメチルtertブチルエーテルを添加し、2×50mlの1:1エタノール水で洗浄し、真空下で蒸留した。3000mlの2-ブタノンを残留物に添加し、(-5)~(-8)℃に冷却し、分離した固体を、ビタミンD3(5MIU)+7-デヒドロコレステロール(20%)+フィトステロール(20%)を含有する第3の産物として濾過した。これらの第1、第2および第3の産物をすべて組み合わせ、後続のバッチで再使用する。
【0067】
次いで、濾液を真空下40~45℃で蒸発させ、粗ビタミンD(樹脂)を分析した。結果は表2に示す通りである。
【0068】
【表2】
【0069】
粗樹脂を以下の方法のいずれかによって精製した:
【0070】
1.樹脂をアセテートまたはプロピオネートまたはブチレートまたはバレレートまたは2-ニトロベンゾエートまたは4-ニトロベンゾエート、より好ましくはブチレートのようなそのエステルに変換し、結晶化し、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムまたは炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムナトリウムメトキシドまたはナトリウムエトキシドまたはカリウムブトキシドまたは水素化リチウムアルミニウムのような塩基によって最終的にけん化し、最終的にアセトンから結晶化すること。
【0071】
2.シリカゲルまたはアルミナまたは2~10%の水を含むアルミナを使用し、溶離液としてトルエン:2-ブタノンを使用するカラムクロマトグラフィーによる粗樹脂の精製。
【0072】
実施例3
96グラムの7-デヒドロコレステロール、200グラムのラノステロール、1グラムのブチル化ヒドロキシルトルエンおよび1mlの2%水酸化ナトリウム水溶液を、75~85℃で6000mlのエタノールに溶解し、次いで、混合物を80~85℃で285分間、低圧水銀ランプによって照射した。反応塊を30~35℃に冷却した。
【0073】
分離した固体を、7-デヒドロコレステロール(50~60%)+ラノステロールを含有する第1の産物として濾過した。
【0074】
濾液を25~30℃に冷却した元の体積の50%まで濃縮し、分離した固体を、7-デヒドロコレステロール(15~20%)+ラノステロールを含有する第2の産物として濾過した。
【0075】
濾液を再び真空下で濃縮した。2000mlのメチルtertブチルエーテルを添加し、2×50mlの1:1エタノール水で洗浄し、真空下で蒸留した。3000mlの2-ブタノン(メチルエチルケトン)を残留物に添加し、15℃に冷却し、分離した固体を濾過して、ビタミンD3(15MIU)+20%7-デヒドロコレステロール+20%ラノステロールを含有する第3の産物を得た。これらの第1、第2および第3の産物をすべて組み合わせ、後続のバッチで再使用した。
【0076】
次いで、濾液を真空下40~45℃で蒸発させ、粗ビタミンD(樹脂)を分析した。結果は表3に示す通りである。
【0077】
【表3】
【0078】
粗樹脂を以下の方法のいずれかによって精製した:
【0079】
1.樹脂をアセテートまたはプロピオネートまたはブチレートまたはバレレートまたは2-ニトロベンゾエートまたは4-ニトロベンゾエート、より好ましくはブチレートのようなそのエステルに変換し、結晶化し、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムまたは炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムナトリウムメトキシドまたはナトリウムエトキシドまたはカリウムブトキシドまたは水素化リチウムアルミニウムのような塩基によって最終的にけん化し、最終的にアセトンから結晶化すること。
【0080】
2.シリカゲルまたはアルミナまたは2~10%の水を含むアルミナを使用し、溶離液としてトルエン:2-ブタノンを使用するカラムクロマトグラフィーによる粗樹脂の精製。
【0081】
実施例4:
96グラムの7-デヒドロコレステロール、104グラムのコレステロール、1グラムのブチル化ヒドロキシルトルエンおよび25mlの2%水酸化ナトリウム水溶液を、75~85℃で1250mlのエタノールに溶解し、次いで、混合物を好ましくは80~85℃で180分間、低圧水銀ランプによって照射した。反応塊を25~30℃に冷却した。
【0082】
分離した固体を、7-デヒドロコレステロール(50~60%)+コレステロールを含有する第1の産物として濾過した。
【0083】
濾液を元の体積の20%に濃縮し、20~25℃に冷却し、分離した固体を、7-デヒドロコレステロール(15~20%)+コレステロールを含有する第2の産物として濾過した。
【0084】
濾液を再び真空下で濃縮した。2000mlのメチルtertブチルエーテルを添加し、2×50mlの1:1エタノール水で洗浄し、真空下で蒸留した。3000mlの2-ブタノン(メチルエチルケトン)を残留物に添加し、10℃に冷却し、分離した固体を、ビタミンD(5-MIU)+20%7-デヒドロコレステロール+20%コレステロールを含有する第3の産物として濾過した。これらの第1、第2および第3の産物をすべて組み合わせ、後続のバッチで再使用した。
【0085】
次いで、濾液を真空下40~45℃で蒸発させた。
【0086】
残留物を、トルエン:メチルケトン1:99、2:98、4:96および5:95を用いたシリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製して、純粋なビタミンD/コレカルシフェロール結晶を単離した。
【0087】
ビタミンD3結晶のHPLC分析を以下の表4に示す。
【0088】
【表4】
【国際調査報告】