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特表2022-531096ポリアミド粉末の粒子及び粉末凝集方法におけるその使用
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  • 特表-ポリアミド粉末の粒子及び粉末凝集方法におけるその使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(54)【発明の名称】ポリアミド粉末の粒子及び粉末凝集方法におけるその使用
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/314 20170101AFI20220629BHJP
   B29C 64/135 20170101ALI20220629BHJP
   B29C 64/357 20170101ALI20220629BHJP
【FI】
B29C64/314
B29C64/135
B29C64/357
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021561961
(86)(22)【出願日】2020-04-16
(85)【翻訳文提出日】2021-12-14
(86)【国際出願番号】 FR2020000130
(87)【国際公開番号】W WO2020212662
(87)【国際公開日】2020-10-22
(31)【優先権主張番号】1904205
(32)【優先日】2019-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カマージュ,ジョフロワ
(72)【発明者】
【氏名】ルメートル,アルノー
(72)【発明者】
【氏名】ソアル・ラトゥール,エミリー-マリー
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AA29
4F213AB11
4F213AC04
4F213AR06
4F213AR12
4F213AR17
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL23
4F213WL26
4F213WL96
(57)【要約】
本発明は、ポリアミド(PA)粉末のシード粒子であって、
- D50が15~60μmの範囲内にあるポリアミドコア、及び
- ポリアミドシェル
からなり、シェルが、それぞれコアの溶液中の固有の粘度及び溶融温度よりも高い溶液中の固有粘度及び溶融温度を有することを特徴とするシード粒子に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド(PA)粉末のシード粒子であって、
- 体積中央直径D50が15~60μmの範囲内にあるポリアミドコア、及び
- ポリアミドシェル
からなり、
前記シェルが、前記コアの溶液中での固有粘度及び溶融温度よりもそれぞれ高い溶液中での固有粘度及び溶融温度を有することを特徴とする、
シード粒子。
【請求項2】
前記粒子の前記シェル及び前記コアが、PA4、PA6、PA8、PA11、PA12、PA6/12、PA6.12、PA6.13、PA6.10、PA6.6及びPA10.10からなる群より選択されるポリアミドでできている、請求項1に記載の粒子。
【請求項3】
前記粒子の前記シェル及び前記コアが以下の同じ性質のものである、請求項1又は2に記載の粒子。
- PA6でできたシェル及びコア、又は
- PA12でできたシェル及びコア、又は
- PA6/12でできたシェル及びコア。
【請求項4】
前記粒子の前記シェル及び前記コアが以下の異なる性質を有する、請求項1又は2に記載の粒子。
- PA6でできたシェルと、PA8、PA11、PA12、PA6/12、PA6.12、PA6.10、PA10.10から選択されるコア、又は
- PA12でできたシェルと、PA6/12、PA6.12から選択されるコア、又は
- PA6/12でできたシェルと、PA11、PA12、PA6.12、PA10.10、PA6.10から選択されるコア。
【請求項5】
前記シェルが、1.20~1.50、好ましくは1.35~1.45の範囲内の溶液中の固有粘度を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項6】
前記シェルが、180℃を超える、好ましくは183℃~185℃の範囲内である溶融温度(Tm1)を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項7】
前記シェルが、アニオン重合によって得られることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項8】
前記シェルが、前記粒子のコア周囲でのポリアミドの溶解及び析出によって得られることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項9】
17~90μmの範囲内にある体積中央直径D50を有することを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項10】
溶媒中の溶液中でのアニオン重合により請求項1~7のいずれか一項に記載の粉末粒子を製造する方法であって、触媒、活性化剤、N,N’-アルキレンビスアミドから選択される少なくとも1種のアミド、及びPA4、PA6、PA8、PA11、PA12、PA6/12、PA6.12、PA6.13、PA6.10、PA6.6及びPA10.10からなる群から選択される粒子のコアのための有機充填剤の存在下で、2-ピロリドン、カプロラクタム、ラウリルラクタム、2-アザシクロノナノン、又はそれらの混合物からシェルを重合させることを含む方法。
【請求項11】
前記N,N’-アルキレンビスアミドがEBS及びEBOから選択されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記N,N’-アルキレンビスアミドに加えて、オレアミド、N-ステアラミド、イソステアラミド及びエルカミドから選択されるさらなるアミドが存在することを特徴とする、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記シェルのポリアミドをアルコールをベースとする溶媒に溶解した後、前記粒子の前記コア周囲に前記シェルのポリアミドを析出させることにより、請求項1~6、8及び9のいずれか一項に記載の粉末粒子を製造する方法。
【請求項14】
前記溶解が加圧下及び/又は加熱によって行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記溶解が、前記粒子の前記コアの存在下で前記溶媒中の懸濁液中で行われる、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記析出が、温度の低下及び/又は溶媒の抽出によって行われる、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
複合体、基材塗料、転写紙における、又は化粧品組成物の製造のための請求項1~9のいずれか一項に記載の粉末の使用。
【請求項18】
レーザー光線、赤外線放射又はUV放射から選択される放射線によってもたらされる溶融によって前記粉末を凝集させて、物体を製造するための請求項1~9のいずれか一項に記載の粉末の使用。
【請求項19】
3D物体の表面上の凝集粉末の集塊の現象を減少させるための3D印刷プロセスにおける請求項1~9のいずれか一項に記載の粉末の使用。
【請求項20】
請求項1~9のいずれか一項に記載のポリアミド粉末の凝集により物体を製造するための方法であって、その間に、
a. 粉末の薄層(層1)を、前記粉末の結晶化温度(Tc)と溶融温度(Tm)との間にある温度まで加熱したチャンバー内に維持した水平板上に堆積させ、
b. レーザー又は電磁エネルギーの入力が、製造しようとする物体に対応する幾何学的形状に従って前記粉末層(層1)の様々な箇所で溶融することによる前記粒子の凝集を引き起こし、
c. 前記水平板を1つの粉末層の厚さに対応する値だけ下げ、次に新しい粉末層(層2)を堆積させ、
d. 前記レーザー又は電磁エネルギーの入力が、製造しようとする物体のこの新しい薄片に対応する幾何学的形状に従って前記粉末層(層2)を溶融させることによって前記粒子の凝集を引き起こし、
e. 前記物体が構築されるまで前の工程を繰り返し、
f. 前記チャンバー内に粉末で縁取りされた物体が得られ、
g. 完全な冷却後、前記物体を前記粉末から分離し、該粉末は別の操作のために再利用することができる、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド粉末のシード粒子に関し、層ごとに溶融することにより、洗浄しやすい三次元物体を製造するための粉末の凝集方法におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド粉末を凝集させるための技術は、特に自動車、船舶、航空、航空宇宙、医療(人口装具、聴覚系等)、繊維、衣料、ファッション、装飾、電子ハウジング、電話通信、ホームオートメーション、コンピューティング及び照明分野における試作品及び模型等の三次元物体を製造するために使用される。また、この技術により、従来の成形技術では実現不可能な、微細で複雑な形状を達成することも可能になる。
【0003】
溶融による粉末の凝集(以下、「焼結」)は、例えば、レーザー光線(レーザー焼結)、赤外線放射、UV放射、又は三次元物体を製造するために粉末層を層ごとに溶融することを可能にする電磁放射線の任意の発生源のような放射線によってもたらされる。
【0004】
レーザー焼結の場合、ポリアミド粉末の薄層がポリアミド粉末の結晶化温度Tcと溶融温度Tmとの間にある温度まで加熱されたチャンバー内に維持された水平板上に積層される。レーザーにより、レーザーの通過後、ゆっくりと結晶化する層内の様々な箇所の粉末粒子を、例えば、記憶装置内に3D物体の形状を記憶させ、2D薄片の形態でこの形状を再現するコンピュータを使用して、物体に対応する幾何学的形状に融合させることが可能になる。続いて、水平板は、粉末層の厚さに対応する値(例えば、0.05~2mmの間であり、一般には0.1mm程度)だけ下げられ、次いで、新しい粉末層が積層され、レーザーは、物体に対応する幾何学的形状に従って、ゆっくり結晶化するこの新しい層に対応する幾何学的形状に従って粉末粒子を融合等させることを可能にする。この手順は、物体全体が製造されるまで繰り返される。チャンバー内に粉末で縁取りされた物体を得る。したがって、凝集しなかった部分は粉末状態のままであった。完全に冷却した後、物体を粉末から分離し、粉末を別の操作に再利用することができる。
【0005】
機器内の粉末の温度が粉末の溶融温度(Tm)に近すぎると、部品の周囲に固化(「ケーキ化」現象)が起こり、これは最終的な物体の良好な輪郭を示す代わりに、物体の表面のある場所に望ましくない粉末の凝集体として現れる。したがって、「ラン(run)」とも呼ばれる造形の終了時には、部品に付着したままであった粉末を除去するために、それらを使用する前に部品の洗浄を行う必要がある。この洗浄は、一般に、造形された3D部品のある種の微細及び/又は脆弱な要素の劣化につながるおそれのあるサンドブラスト処理によって行われる。
【0006】
現在、この問題を解決するために、部品を洗浄する以外の技術は知られていない。今日では、3D機器の全てのユーザーにとって、部品の洗浄の容易さ及び時間が、全体的な製造コストにおける2つの重大な要因となっている。ポリアミド粉末の特定の場合、ある種のグレードは洗浄するのに特に時間がかかる。さらに、複雑で微細な形状を持つ部品の製造が、まさに3D造形によってもたらされる利点であるにもかかわらず、ある種の幾何学的形状は、洗浄のために利用することができない。
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、ポリアミドコア周囲に高いモル質量及び高い溶融温度を有するポリアミドシェルから形成されたコア/シェル型のポリアミド粉末のシード粒子が、これらの粉末からの付加製造法(3D印刷という用語で知られている)によって得られた物体を洗浄することを容易にし、かつ/又はそのための時間を短縮するという、予想外の実証から生じる。有利には、本発明者らはまた、これらのポリアミド粉末が容易にリサイクル可能であることを実証した。
【0008】
したがって、本発明の主題は、
- 体積中央直径D50が15~60μmの範囲内にあるポリアミドのコア、及び
- ポリアミドシェル
からなり、シェルが、コアのものと同等かそれ以上である溶液中の固有粘度及び溶融温度を有すること特徴とする、ポリアミド(PA)粉末のシード粒子である。
【0009】
本発明はまた、溶媒中の溶液中でのアニオン重合により、上で規定されるポリアミド粉末粒子を製造する方法であって、触媒、活性化剤、及び粒子のコアを形成するPA4、PA6、PA8、PA11、PA12、PA6/12、PA6.12、PA6.13、PA6.10、PA6.6及びPA10.10からなる群から選択されるシードの周りのN,N’-アルキレンビスアミドから選択される少なくとも1つのアミド存在下での2-ピロリドン(ラクタム4)、カプロラクタム(ラクタム6)、2-アザシクロノナノン(ラクタム8)、ラウリルラクタム(ラクタム12)又はそれらの混合物からのシェルの重合を含む方法に関する。
【0010】
本発明はまた、アルコールをベースとする溶媒にシェルのポリアミドを溶解した後、粒子のコア周囲にシェルのポリアミドを析出させることによる、本発明による粉末粒子を製造する方法に関する。
【0011】
本発明はまた、複合材料、基材塗料、転写紙における、又は化粧品組成物を製造するための、上で定義されたポリアミド粉末の使用に関する。
【0012】
本発明はまた、レーザー光線、赤外線放射又はUV放射から選択される放射線によってもたらされる溶融によって前記粉末を凝集させて、物体を製造するための上で定義されたポリアミド粉末の使用に関する。
【0013】
また、本発明は、物体の表面における粉末の凝集現象を低減するための付加製造プロセスにおける上で定義されたポリアミド粉末の使用に関する。
【0014】
本発明はまた、上で定義されたポリアミド粉末の凝集により物体を製造するための方法に関連し、その間に、
a. 粉末の薄層(層1)を、該粉末の結晶化温度(Tc)と溶融温度(Tm)との間にある温度まで加熱したチャンバー内に維持した水平板上に堆積させ、
b. レーザー又は電磁エネルギーの入力が、製造しようとする物体に対応する幾何学的形状に従って粉末層(層1)の様々な箇所で溶融することによって粒子の凝集を引き起こし、
c. 次いで水平板を1つの粉末層の厚さに対応する値だけ下げ、次に新しい粉末層(層2)を堆積させ、
d. レーザー又は電磁エネルギーの入力が、製造しようとする物体のこの新しい薄片に対応する幾何学的形状に従って粉末層(層2)を溶融させることによって粒子の凝集を引き起こし、
e. 物体が構築されるまで前の工程を繰り返し、
f. チャンバー内に粉末で縁取りされた物体が得られ、
g. 完全な冷却後、物体を粉末から分離し、該粉末は別の操作のために再利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
定義
本発明の意味において、「3D印刷」又は「付加製造法」という用語は、層ごとの粉末の添加又は凝集による部品の大量生産のための任意の方法を意味すると理解される。本発明の意味において、「3D印刷」又は「付加製造法」という用語は、吸収剤を用いる選択的焼結技術、特に「高速焼結」(HSS)及び「マルチジェット融合」(MJF)という名称で知られている技術を意味すると理解される。
【0016】
本明細書において、「焼結」という用語は、放射線の種類にかかわらず、これらの全ての方法を含む。以下の文章において、たとえ、通常、選択的レーザー焼結方法に言及されているとしても、この方法について書かれているものは、もちろん他の製造方法についても有効である。
【0017】
以下の実施例をはじめとする本発明の説明において、「体積中央直径」とも呼ばれる、粉末のD50は、調べた母集団を正確に2で割る粒径の値に対応する。D50は、規格ISO 9276 1~6部:「Representation of results of particle size analysis」に従って、又は規格ISO 13319に従って測定することができる。好ましくは、規格ISO 13319:2007に従う。本説明では、Beckman Coulterからのマルチサイザー3コールターカウンター粒子サイザーを用いて、粉末の粒径分布を求め、そこからD50を推定する。
【0018】
(特にポリアミド、粉末又は焼結により製造された部品の)溶液中の固有粘度は、規格ISO 307:2007に従って、溶液の総重量に対するm-クレゾール溶液中の0.5重量%の濃度で、20℃の温度で、Ubbelohde粘度計を用いて測定する。
【0019】
ポリアミドの熱特性の分析は、規格ISO 11357-3「Plastics - Differential Scannning Calorimetry (DSC)3部:Determination of temperature and enthalpy of melting and crystallization」に従ってDSCにより行われる。本発明により具体的に関係する温度は、第1の加熱溶融温度及び融解エンタルピー(Tm1、ΔHf1)、及び結晶化温度(Tc)である。好ましくは、高い融解エンタルピーにより、付加製造プロセスにより製造される部品のより良い幾何学的精細度を得ることが可能となる。
【0020】
「ケーキング」という用語は、最終物体の良好な精細度を有する代わりに、物体の表面上の特定の位置における望ましくない粉末凝集体の存在で現れる粉末の凝集現象を意味すると理解される。この現象は、機器内の変換温度が粉末の溶融温度(Tm)に近すぎるときに観測される。
【0021】
ポリアミド粉末粒子
本発明の主題は、ポリアミドからなるシェルとポリアミドからなるコアとからなるシードポリアミド(PA)粉末であり、コア及びシェルは同一種のポリアミドであるが、重量平均モル質量(Mw)が異なるか、又は異なる種類のポリアミドであるかのいずれかである。
【0022】
一実施形態によると、ポリアミド(PA)は脂肪族ポリアミド又は脂肪族コポリアミドである。
【0023】
好ましくは、シェル及びコアは、PA4、PA6、PA8、PA11、PA12、PA6/12、PA6.12、PA6.13、PA6.10、PA6.6及びPA10.10からなる群から選択されるポリアミドでできている。
【0024】
好ましくは、本発明による粒子のシェル及びコアは、以下のとおりである。
- PA6でできたシェル及びコア、又は
- PA12でできたシェル及びコア、又は
- PA6/12でできたシェル及びコア。
【0025】
同様に、好ましくは、シェル及びコアは、異なる種類のポリアミドである。好ましくは、本発明による粒子のシェル及びコアは、以下のとおりである。
- PA6からできたシェルと、PA8、PA11、PA12、PA6/12、PA6.12、PA6.10、PA10.10から選択されるコア、又は
- PA12からできたシェルと、PA6/12、PA6.12から選択されるコア、又は
- PA6/12からできたシェルと、PA11、PA12、PA6.12、PA10.10、PA6.10から選択されるコア。
【0026】
好ましくは、コアは、15~60μmの間の体積中央直径(x)を有する。実施形態によれば、コアは、15~20μmの間、又は20~25μmの間、又は25~30μmの間、又は30μmの間、又は30~35μmの間、又は35~40μmの間、又は40~45μmの間、又は45~50μmの間、又は50~55μmの間、又は55~60μmの間の体積中央直径(x)を有する。
【0027】
好ましくは、シェルは1~15μmの間の厚さ(y)を有する。
【0028】
好ましくは、本発明による粉末粒子は、17~90μmの間、より好ましくは35~55μmの間の体積中央直径(x+2*y)を有する。
【0029】
好ましくは、シェルは180℃を超える、好ましくは183℃~185℃の範囲内である溶融温度を有する。
【0030】
好ましくは、シェルは1.20~1.50の間、好ましくは1.35~1.45の間の固有粘度を有する。
【0031】
好ましくは、コアは140℃を超える、好ましくは175℃~180℃の間の溶融温度を有する。
【0032】
好ましくは、コアは0.30~1.30の間、好ましくは0.75~1.05の間の固有粘度を有する。
【0033】
好ましくは、本発明による粉末粒子は180℃を超える溶融温度を有する。
【0034】
好ましくは、本発明による粉末粒子は、1.20~1.35の間の固有粘度を有する。
【0035】
有利には、本発明によるポリアミド粉末は、付加製造プロセスによって造形された物体を洗浄することを容易にし、その時間を短縮する。同様に、有利には、本発明によるポリアミド粉末は、非常に微細な幾何学的形状を有する物体を洗浄する場合、破損のリスクを減少させる。
【0036】
ポリアミド粉末粒子の製造方法
本発明の一実施形態において、本発明による粉末粒子は、アルコールをベースとする溶媒にシェルのポリアミドを溶解し、次いで粒子のコア周囲にシェルのポリアミドを析出させることによって調製される。溶解は、好ましくは、加圧下及び/又は加熱下で実施される。同様に好ましくは、溶解は、前記溶媒中の懸濁液中の粒子のコアの存在下で実施される。好ましくは、析出は、温度の低下及び/又は溶媒の抽出によって実施される。
【0037】
本発明の主題はまた、溶媒中の溶液中でのアニオン重合によって粉末を製造するための方法である。
【0038】
<A.重合の成分>
- モノマー
好ましくは、重合は、PA4、PA6、PA8、PA11、PA12、PA6/12、PA6.12、PA6.13、PA6.10、PA6.6及びPA10.10の粉末の粒子であるシード(又は有機充填剤)、触媒、活性化剤及びN,N’-アルキレンビスアミドから選択される少なくとも1種のアミドの存在下で、ラウリルラクタム(ラクタム12)、カプロラクタム(ラクタム6)、2-ピロリドン(ラクタム4)、若しくは2-アザシクロノナノン(ラクタム8)モノマー、又はそれらの混合物の存在下で、該ラクタム又は混合物の溶媒中の溶液中で実施する。
【0039】
- 溶媒
用いる溶媒はモノマーを溶解させるが、重合中に形成されるポリマー粒子を溶解させない。有利には、溶媒は、120~170℃の間、好ましくは140~170℃の間の沸点範囲を有するパラフィン系炭化水素留分である。
【0040】
重合温度においてモノマーで溶媒を過飽和させることができる。さまざまな手段によって、溶媒をモノマーで過飽和させることが可能である。これらの手段の1つは、開始温度を超える温度で溶媒をモノマーで飽和させ、次に開始温度まで温度を下げることからなり得る。別の手段は、開始温度で溶媒をモノマーで実質的に飽和させ、次いで、依然としてこの温度で、好ましくは12~22個の炭素原子を含有する第1級アミド、例えば、オレアミド、N-ステアラミド、エルカミド、イソステアラミド、又はN,N’-アルキレンビスアミド(これらの例は下に示される)を添加することからなり得る。
【0041】
モノマーで飽和しない溶媒で重合を行うことも可能である。この場合、反応媒体は開始温度で過飽和から遠い濃度で溶媒に溶けたモノマーを含む。
【0042】
- 触媒
好ましくは、ラクタムのアニオン重合のための通常の触媒から選択される触媒が使用される。これはラクタムと反応した後、ラクタマート(lactamate)を生じるのに十分な強さの塩基である。複数の触媒の組み合わせが可能である。非限定的な例としては、水素化ナトリウム、水素化カリウム、ナトリウム、ナトリウムメトキシド及び/又はナトリウムエトキシドを挙げることができる。導入される触媒の量は、一般にモノマー100mol当たり0.5~3molの間で変化する。
【0043】
- 活性化剤
重合をもたらし、及び/又は促進する役割を有する、活性化剤も加えることが好ましい。活性化剤は、ラクタム-N-カルボキシアニリド、(モノ)イソシアネート、ポリイソシアネート、カルボジイミド、シアナミド、アシルラクタム及びアシルカルバメート、トリアジン、尿素、N-置換イミド、エステル及び三塩化リンから選択される。また、活性化剤は、任意に、複数の活性化剤の混合物であってもよい。活性化剤はまた、インサイチュで、例えば、アシルラクタムを得るためのアルキルイソシアネートとラクタムとの反応によって形成されることもできる。
【0044】
好ましくは、触媒/活性化剤のモル比は0.2~2の間であり、好ましくは0.8~1.2の間である。
【0045】
- アミド
好ましくは、少なくとも1種のアミドも加えられ、これらの1種は常にN,N’-アルキレンビスアミドである。N,N’-アルキレンビスアミドの導入量は一般に、モノマー100mol当たり0.001~4mol、好ましくは0.075~2mol程度である。特に推奨されているN,N’-アルキレンビスアミドの中で、脂肪酸のN,N’-アルキレンビスアミドが挙げられ、さらに良好には、以下が挙げられる。
- 式C1735-C(=O)-NH-CHCH-NH-C(=O)-C1735のN,N’-エチレンビスステアラミド(EBSと略される)、及び
- 式C1733-C(=O)-NH-CHCH-NH-C(=O)-C1733のN,N’-エチレンビスオレアミド(EBOと略される)、
- N,N’-アルキレンビスパルミタミド、N,N’-アルキレンビスガドレアミド、N,N’-アルキレンビスセトレアミド、及びN,N’-アルキレンビスエルカミド。
【0046】
EBS及び/又はEBOの使用が好ましい。
【0047】
好ましくは12~22個の炭素原子を含む第1級アミドを加えることも可能である。このアミドは、オレアミド、N-ステアラミド、イソステアラミド、エルカミドから選択されるのが好ましい。
【0048】
- 有機充填剤
有機充填剤に関しては、これは、好ましくはホモポリアミド又はコポリアミド粉末、好ましくはPA4、PA6、PA8、PA11、PA12、PA6/12、PA6.12、PA6.13、PA6.10、PA6.6及びPA10.10に関することが好ましい。例として、Arkema製のOrgasol(R)粉末、Arkema製のRilsan(R)微粉末、Evonik製のVestosint(R)粉末、Chemopharma製のMICROPAN(R)粉末等が挙げられる。
【0049】
ポリアミド粉末は微細に分割されるのが好ましい。
【0050】
有機充填剤の量及び該充填剤の直径により、重合の終了時に得られた最終粒子の大きさを所望の方向(小粒子又は大粒子)に誘導することが可能になる。
【0051】
- 他の充填剤又は添加剤
また、当業者に周知のあらゆる種類の充填剤(色素、染料、カーボンブラック、カーボンナノチューブ等)又は添加剤(抗酸化剤、抗UV剤、可塑剤等)を反応媒体に添加することも可能である。ただし、これらの化合物の全てが完全に乾燥し、反応媒体に関して不活性であることを条件とする。
【0052】
<B.重合>
アニオン性ラクタム開環重合は連続的に、又は好ましくはバッチ式に行われる。溶媒をバッチで導入した後、モノマー、任意にN,N’-アルキレンビスアミド、充填剤、触媒及び活性化剤を同時に又は連続的に導入する。まず溶媒及びモノマーを導入し、次に、例えば、共沸蒸留を使用して微量の水分を全て除去した後、媒体が一旦無水になれば触媒を加えることが推奨される。充填剤は、例えば、モノマーの導入後に導入することができる。凝固又は重合制御の喪失を避けるため、活性化剤を一度にではなく、徐々に導入するか、又はある導入速度で導入することが有利であり得る。
【0053】
この重合は、大気圧又はそれよりやや高い気圧(高温溶媒の分圧)で、かつ、20℃~溶媒の沸点の間の温度で実施される。ラクタムの開始温度及び重合温度は、一般に70~150℃の間、好ましくは80~130℃の間である。有利には、ラクタムの重合温度は120℃未満で70℃超である。
【0054】
%で表した[反応媒体に導入された有機充填剤/モノマー]重量比は、0.001%~65%の間、好ましくは0.005%~45%の間であり、さらにより優先的には0.01%~30%の間であり、有利には0.05%~20%の間である。
【0055】
重合終了時に得られるシード粉末は、予め反応媒体に導入したモノマーの溶媒に不溶であることが好ましい。
【0056】
ポリアミド粉末粒子の使用
好ましくは、本発明によるポリアミド粉末は、放射線を用いた溶融又は焼結方法による粉末の凝集により物体を製造する方法に使用される。放射線は、当業者に周知の任意の放射線から選択することができる。放射線の例としては、レーザー光線(レーザー焼結)、赤外線放射、UV放射、又は三次元物体を製造するために粉末層を層ごとに溶融することを可能にする電磁放射線源のいずれかを挙げることができる。
【0057】
使用される装置は、当業者に周知の任意の焼結装置であることができる。一例として、EOS、3D Systems、Aspect、Trump Precision Machinery、Hewlett Packard、Sinterit、Sintratec、Sharebot、FormLabs、Sonda Sys、Farsoon、Prodways、Ricoh、Wematter3D、VoxelJet、Xaar等によって販売されている焼結装置を挙げることができる。焼結装置の一例として、EOS GmbH製のEOSINT P396及びFormiga P100を挙げることができる。
【0058】
本発明による粉末の凝集により製造される物体は、好ましくは3D物体である。好ましくは、この物体は、試作品、部品模型(「ラピッド・プロトタイピング」)、自動車、船舶、航空、航空宇宙、医療(人口装具、聴覚系等)用の小規模シリーズの完成部品(「ラピッド・マニュファクチャリング」)、繊維、衣料、ファッション及び装飾分野、電子機器用のハウジング、電話通信、ホームオートメーション、コンピューティング、照明、スポーツ、及び工具の分野から選択される。
【0059】
有利には、3D印刷プロセスにおける本発明によるポリアミド粉末の使用は、3D物体の表面での粉末の凝集現象を減少させることを可能にする。付加製造法における本発明による粉末の使用は、この技術によって得られる物体の洗浄を容易にし、及び/又はその時間を短縮させることが可能になるので、特に有利である。
【0060】
付加製造法における本発明による粉末の利用は、単独で又は混合物中で複数回リサイクルすることができるので、特に有利である。具体的には、変換されなかった粉末は、スクリーニングによって回収することができ、スクリーンはしたがって、3D部品を保持し、粉末を通すことができる。好ましくは、本発明による粉末は、少なくとも3回、好ましくは少なくとも5回、より好ましくは少なくとも10回リサイクルすることができる。
【0061】
好ましくは、各造形サイクル、又は「ラン」において、リサイクル粉末の含有率は、各ランで機器に使用される粉末の総重量に対して、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%である。言い換えれば、100%の新鮮な粉末を使用する第1ランを除き、各後続のランは、各ランで機器に使用する粉末の総重量に対して、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%の焼結されなかった先行ランからの粉末を再利用する。
【0062】
使用する前に、当業者に周知の任意の洗浄技術を用いて、物体を容易に洗浄することができる。例えば、サンドブラスターを用いて物体を洗浄することができる。
【0063】
本発明の非限定的な実施例を以下に挙げる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1】選択的レーザー焼結(SLS)方法によって造形された4つの部品を示しており、それぞれが異なるサイズの10個の穴を有している。サンドブラストを行わない圧縮空気ブロワを用いて、部品の洗浄特性を調べた。10のスコアは、閉鎖されていない穴の数に応じて与えられる。上の最初の部品は0/10のスコアを有する。上から2番目の部品は6/10のスコアを有する。上から3番目の部品は、8/10のスコアを有する。上から4番目の部品は10/10のスコアを有する。
【実施例
【0065】
本発明者らは、付加製造プロセスによって製造された3D物体の表面上の特定の位置の粉末凝集の存在で現れる粉末の凝集現象(ケーキング)を調べた。
【0066】
<1.本発明によるポリアミド粉末の調製>
1.1.PA12シードPA12粉末の調製
窒素下に維持した反応器に溶媒2800mlを仕込んだ後、716gのラクタム12、8.2gのEBS、203gのOrgasol(R)2002 ES3 Nat3(PA12粉末)を順次仕込む。350rpmで撹拌を開始した後、混合物を110℃まで徐々に加熱し、続いて360mlの溶媒を真空下で蒸留し、存在する可能性のある微量の水分を共沸で同伴させる。
【0067】
大気圧に戻した後、アニオン性触媒、2.9gの水素化ナトリウム(油中純度60%)を窒素下で急速に導入し、撹拌を400rpmまで上昇させ、窒素下で105℃で30分間撹拌する。
【0068】
次のプログラムに従って、選択した活性化剤、すなわちステアリルイソシアネート(溶媒で12.2gを189.6gにした)を反応媒体に連続的に注入するために、小型の計量ポンプを使用する。
- 11g/時のイソシアネート溶液を180分間、
- 45g/時のイソシアネート溶液を210分間。
【0069】
同時に、注入中に温度を105℃で360分間維持した後、30分間で130℃に上げ、イソシアネートの導入が終了した後、この温度で3時間維持する。
【0070】
重合の終了時には、ポリアミド粉末は合成溶媒中に分散している。反応器を空にすることができるように、反応媒体を80℃に冷却する。固液分離後、ポリアミド粉末を溶媒の乾燥のために75℃のオーブンに入れる。
【0071】
<1.2.粉末の性質>
1.2.1測定方法
D50はISO規格 13319に従って測定する。
【0072】
固有粘度は、ISO規格 307:2007に従い、20℃の温度で、溶液の総重量に対するメタクレゾール溶液中の0.5重量%の濃度で測定する。
【0073】
溶融温度及び融解エンタルピーは、ISO規格 11357-3「Plastics - Differential Scanning Calorimetry (DSC)3部:Determination of temperature and enthalpy of melting and crystallization」に従い、DSCにより測定する。
【0074】
1.2.2.結果
得られたコア/シェル型ポリアミド粉末粒子は、43.1μmの体積中央直径、1.27の固有粘度、184℃の溶融温度及び115J/gの融解エンタルピーを有する。
【0075】
コアは、30μmの体積中央直径D50、1.02の固有粘度及び177℃の溶融温度を有する。
【0076】
シェルは、6.5μmの厚さ、合成パラメータは1.40の固有粘度及び184℃の溶融温度を目指して選択した。
【0077】
[2.比較例]
[2.1.比較例1:PA12粉末(PA2200、EOSで販売されている製品)]
PA2200粉末粒子は、52.7μmの体積中央直径、1.00の固有粘度、186℃の溶融温度、125J/gの融解エンタルピーを有する。
【0078】
[2.2.比較例2:シリカシードPA12粉末]
特許FR2867190の実施例2に記載のPA12粉末粒子は、凝集体を含まない51μmの体積中央直径、1.12の固有粘度、184℃の溶融温度、118J/gの融解エンタルピーを有する。
【0079】
[3.粉末の凝集の評価]
3.1.手順
溶融による粉末の凝集現象を評価するために、特にケーキングに敏感な異なるサイズの10個の穴を有する部品を、本発明による粉末粒子並びに比較例1及び2による粉末粒子を用いた選択的レーザー焼結(SLS)方法により造形した。
【0080】
サンドブラストを行わない圧縮空気ブロワを用いて、部品の洗浄特性を調べた。部品内の閉鎖されていない穴の数が多いほど、洗浄が容易である。10のスコアは、閉鎖されていない穴の数に応じて与えられ。図1は、異なるサイズの10個の穴を持つ部品と、閉鎖されていない穴の数に応じて与えられ得るスコアの例を示す。10/10のスコアは、洗浄が最も容易であり、逆に0/10のスコアは、強く凝集し、洗浄が最も困難な粉末(洗浄時間が長くなり、場合によっては造形された3D部品の特定の微細及び/又は脆弱な要素の劣化につながる可能性がある)に与えられる。
【0081】
3.2.変換条件
本試験に使用するレーザー条件はPA12粉末(PA2200)に推奨される条件である。
【0082】
【表1】
【0083】
3.3.結果
レーザー焼結(LS)機器で同じ操作条件において
- 本発明による粉末は、10個中8個の穴が閉鎖されていないため、8/10のスコアを得、
- PA2200粉末(比較例1)は、10個中7個の穴が閉鎖されていないため、7/10のスコアを得、
- シリカシードPA12粉末(比較例2)は、洗浄中に部品の穴が閉鎖されるため、0/10のスコアを得た。
【0084】
その結果、本発明による粉末は、従来のポリアミド粉末と比較して、望ましくない粉末凝集体の形成を生じにくい。これは、本発明による粉末は、製造された物体の表面上でより少ない粉末凝集体を形成するという事実と結びついている。したがって、物体は従来の粉末から製造された物体より良好な最終精細度を有し、洗浄が容易である。
図1
【国際調査報告】