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特表2022-531107ノカルディア・ルブラ細胞壁骨格の熱損傷の治療における用途
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  • 特表-ノカルディア・ルブラ細胞壁骨格の熱損傷の治療における用途 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(54)【発明の名称】ノカルディア・ルブラ細胞壁骨格の熱損傷の治療における用途
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/74 20150101AFI20220629BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20220629BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20220629BHJP
   A61K 9/02 20060101ALI20220629BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220629BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20220629BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20220629BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20220629BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20220629BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
A61K35/74 B
A61P17/02
A61K9/06
A61K9/02
A61K9/08
A61K9/107
A61K9/10
A61K9/14
A61K9/20
A61K9/70 401
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021562144
(86)(22)【出願日】2020-04-23
(85)【翻訳文提出日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 CN2020086355
(87)【国際公開番号】W WO2020216283
(87)【国際公開日】2020-10-29
(31)【優先権主張番号】201910333119.3
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521299927
【氏名又は名称】▲遼▼▲寧▼格瑞仕特生物制▲藥▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】盖 波
(72)【発明者】
【氏名】▲竇▼ 春▲艷▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲軼▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 国英
【テーマコード(参考)】
4C076
4C087
【Fターム(参考)】
4C076AA01
4C076AA06
4C076AA07
4C076AA09
4C076AA11
4C076AA14
4C076AA17
4C076AA22
4C076AA29
4C076AA36
4C076AA72
4C076BB01
4C076BB29
4C076BB31
4C076CC19
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC16
4C087MA16
4C087MA17
4C087MA22
4C087MA23
4C087MA28
4C087MA31
4C087MA35
4C087MA43
4C087MA52
4C087MA63
4C087NA14
4C087ZA89
(57)【要約】
ノカルディア・ルブラ細胞壁骨格の、熱損傷を治療する薬物の製造における用途を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノカルディア・ルブラ細胞壁骨格の、熱損傷を治療する薬物の製造における用途。
【請求項2】
前記熱損傷は、火傷、熱傷、化学熱傷から選択され、
好ましくは、前記熱損傷は、表皮層、真皮層、粘膜、皮下組織から選択される組織まで及び、
好ましくは、前記熱損傷は、I度、II度、III度から選択され、より好ましくは、深達性II度である請求項1に記載の用途。
【請求項3】
前記薬物は、膏剤、クリーム、エマルション、懸濁剤、ペースト、ゲル剤、ローション剤、チンキ剤、油剤、リニメント剤、粉剤、錠剤、坐剤、フィルム、パッチ、ドレッシング材から選択される剤形として製造される請求項1に記載の用途。
【請求項4】
単位投与量の前記薬物は1μg~1000μgのノカルディア・ルブラ細胞壁骨格を含み、好ましくは1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200μgのノカルディア・ルブラ細胞壁骨格を含む請求項1に記載の用途。
【請求項5】
前記ノカルディア・ルブラ細胞壁骨格は市販されているものである請求項1に記載の用途。
【請求項6】
前記ノカルディア・ルブラ細胞壁骨格は、
1)ノカルディア・ルブラを提供するステップと、
2)前記ノカルディア・ルブラを粉砕し、粉砕生成物を得るステップと、
3.1)必要に応じて、前記粉砕生成物に脂質除去操作を行うステップと、
3.2)必要に応じて、前記粉砕生成物に核酸除去操作を行うステップと、
3.3)必要に応じて、前記粉砕生成物にタンパク質除去操作を行うステップと、
3.4)ノカルディア・ルブラ細胞壁に由来する製品を得るステップと、
4)必要に応じて、個包装するステップと、
5)必要に応じて、前記ノカルディア・ルブラ細胞壁に由来する製品を凍結乾燥させるステップと、を含むか又はこれらのステップからなる方法で得られ、
そのうち、
ステップ3.1)、3.2)、3.3)は順序を入れ替えてもよく、同時に行ってもよく、ステップ4)とステップ5)は順序を入れ替えてもよく、同時に行ってもよく、
前記粉砕の平均粒径は10nm~1000nmであり、好ましくは10nm~800nmであり、より好ましくは10nm~500nmであり、
好ましくは、前記個包装とは容器に個包装することを指し、
好ましくは、前記容器は、ボトル、チューブ、バッグ、袋、プレート、アンプル、注射装置、アルミ箔包装材、ドレッシング材、カプセル、フィルムから選択される請求項1に記載の用途。
【請求項7】
熱損傷を治療する方法であって、
被験者に治療有効量のノカルディア・ルブラ細胞壁骨格を接触させるステップを含み、
前記ノカルディア・ルブラ細胞壁骨格は、膏剤、クリーム、エマルション、懸濁剤、ペースト、ゲル剤、ローション剤、チンキ剤、油剤、リニメント剤、粉剤、錠剤、坐剤、フィルム、パッチ、ドレッシング材から選択される剤形として製造され、
前記接触について、1日に2回投与するか、又は1日に1回投与するか、又は2日に1回投与するか、又は3日に1回投与するか、又は1週間に1回投与し、前記接触は2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間、17週間、18週間又はそれ以上持続し、
前記熱損傷は、火傷、熱傷、化学熱傷から選択され、
好ましくは、前記熱損傷は、表皮層、真皮層、粘膜、皮下組織から選択される組織まで及び、
好ましくは、前記熱損傷は、I度、II度、III度から選択され
最も好ましくは、深達性II度である方法。
【請求項8】
前記ノカルディア・ルブラ細胞壁骨格は市販されているノカルディア・ルブラ細胞壁骨格である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ノカルディア・ルブラ細胞壁骨格は、
1)ノカルディア・ルブラを提供するステップと、
2)前記ノカルディア・ルブラを粉砕し、粉砕生成物を得るステップと、
3.1)必要に応じて、前記粉砕生成物に脂質除去操作を行うステップと、
3.2)必要に応じて、前記粉砕生成物に核酸除去操作を行うステップと、
3.3)必要に応じて、前記粉砕生成物にタンパク質除去操作を行うステップと、
3.4)ノカルディア・ルブラ細胞壁に由来する製品を得るステップと、
4)必要に応じて、個包装するステップと、
5)必要に応じて、前記ノカルディア・ルブラ細胞壁に由来する製品を凍結乾燥させるステップと、を含むか又はこれらのステップからなる方法で得られ、
そのうち、
ステップ3.1)、3.2)、3.3)は、順序を入れ替えてもよく、同時に行ってもよく、ステップ4)とステップ5)は順序を入れ替えてもよく、
前記粉砕の平均粒径は10nm~1000nmであり、好ましくは10nm~800nmであり、より好ましくは10nm~500nmであり、
好ましくは、前記個包装とは容器に個包装することを指し、
好ましくは、前記容器は、ボトル、チューブ、バッグ、袋、プレート、アンプル、注射装置、アルミ箔包装材、ドレッシング材、カプセル、フィルムから選択される、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2019年4月25日に提出された特許出願(出願番号CN201910333119.3)の優先権を主張し、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、医学、微生物の分野、生物製薬の分野に関する。具体的には、本願は、ノカルディア・ルブラ細胞壁骨格の、熱損傷を治療する薬物の製造における用途に関する。
【背景技術】
【0003】
ノカルディア・ルブラ(Nocardia rubra)はノカルディアの1種である。ノカルディア・ルブラの菌体に対して発酵、細胞破砕、プロテアーゼ分解を行った後にノカルディア・ルブラ細胞壁骨格(以下Nr-CWS又はN-CWSと略称される)を製造することができる。
【0004】
ノカルディアは球状、棒状又は糸状の複数の形態を呈する。菌体は移動性がなく、一部の菌株は耐酸性が弱く、偏性好気である。一般的な寒天プレートで、3日間培養した後にコロニーが見られ、7~10日間培養した後にコロニーが隆起して、表面が綿毛状を呈する気生菌糸を形成する。異なる菌株のコロニーは黄、オレンジ又は赤である。DNA中のG+Cのモル含有量は60~72%である。多くのノカルディアは腐生菌であり、土壌中に存在する。
【0005】
従来技術において、ノカルディア・ルブラ細胞壁骨格は、例えば遼寧格瑞仕特生物制薬有限公司により製造された商品(商品名「納可佳」)のような市販品であってもよく、福建省山河薬業有限公司、福建広生堂薬業股フン有限公司、福建省微生物研究所などにより提供されたものでもよい。ノカルディア・ルブラ細胞壁骨格は、子宮頸部びらん、子宮頸癌前癌病変(CN101073583A)、抗ヒトパピローマウイルス(CN1935262A)、皮膚損傷(CN101209267A)、皮膚病変(湿疹、神経性皮膚炎、非特異性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、乾癬)(CN108938674A)、ニキビ(CN108295095A)、真菌感染、単純疱疹、帯状疱疹(CN1879661A)の治療に用いられている。
【0006】
創傷外科の分野において、熱損傷、特に火傷又は熱傷による創傷面に対して抗感染治療の原則を採用することが多い。皮膚熱損傷の癒合は複雑な生物学的過程であり、様々なサイトカイン、血管内皮細胞、線維芽細胞、角質細胞などの様々な要因の影響を受ける。
【0007】
ノカルディア・ルブラ細胞壁骨格の熱損傷の治療における作用は従来技術においてまだ報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】中国特許出願公開第101073583号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第1935262号明細書
【特許文献3】中国特許出願公開第101209267号明細書
【特許文献4】中国特許出願公開第108938674号明細書
【特許文献5】中国特許出願公開第108295095号明細書
【特許文献6】中国特許出願公開第1879661号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願のいくつかの実施形態では、ノカルディア・ルブラ細胞壁骨格の、熱損傷を治療する薬物又は医療装置の製造における用途を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
いくつかの実施形態では、熱損傷は、火傷、熱傷、化学熱傷から選択される要因により引き起こされる。
【0011】
いくつかの実施形態では、熱損傷は、表皮層、真皮層、粘膜、皮下組織まで及ぶことができる。
【0012】
いくつかの実施形態では、熱損傷の程度はI、II(深、浅)又はIII度損傷である。
【0013】
本願では、熱損傷の重症度は三度四分法によれば、I度、浅達性II度、深達性II度及びIII度に分けられる。
【0014】
I度:表皮のみを損傷し、局所的な発赤と腫れがある;
II度:真皮まで達し、水胞が局所的に現れる;
浅達性II度:表皮の発毛層及び真皮の乳頭層のみを損傷する;
深達性II度:真皮層を損傷し、皮膚付属器が残る;
III度:皮膚全層を損傷し、さらに皮下、筋肉、骨などまで達する。
【0015】
具体的な実施形態では、本願に係るノカルディア・ルブラ細胞壁骨格は、特に深達性II度の熱損傷を治療するために用いられる。
【0016】
いくつかの実施形態では、薬物又は医療装置は、損傷箇所に接触させることにより投与される。
【0017】
いくつかの実施形態では、薬物又は医療装置は、薬学的に許容できる担体を含む。当業者に知られている任意の適切な担体は、いずれも本願の技術的解決手段を実施するために用いることができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、薬物は、坐剤、膏剤、クリーム、エマルション、懸濁剤、ペースト、ゲル剤、ローション剤、チンキ剤、油剤、錠剤、エーロゾル剤、スプレー剤、リニメント剤、粉剤から選択される剤形に製造され、前記膏剤は、軟膏剤、硬膏剤、クリーム剤から選択される。
【0019】
いくつかの実施形態では、被験者に治療有効量のノカルディア・ルブラ細胞壁骨格を提供するステップを含む、熱損傷を治療する方法を提供する。
【0020】
いくつかの具体的な実施形態では、病巣の面積及び重症度の違いに応じて、薬物(又は医療装置)を用いて病巣に投与する。例えば、ノカルディア・ルブラ細胞壁骨格を含む薬物を塗布するか、又はノカルディア・ルブラ細胞壁骨格が浸漬されたパッチで病変部を覆うか、又はノカルディア・ルブラ細胞壁骨格を含む凍結乾燥粉末を病巣に直接投与するか、又はノカルディア・ルブラ細胞壁骨格を含む膏剤、ローション剤などを病巣に投与するが、これらに限定されない。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記薬物は、
-ノカルディア・ルブラ細胞壁骨格と、
-薬学的に許容できる担体と、を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、前記薬学的に許容できる担体は、充填剤、安定剤(例えばトレハロース、グリシン)、矯味剤(例えばキシリトール)、壊崩剤(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム)、接着剤(例えばゼラチン)、潤滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム)から選択されるが、これらに限定されない。
【0023】
いくつかの実施形態では、安定剤は、グリシン、リジン、アルギニン、ヒドロキシエチルデンプン、ヒドロキシメチルデンプン、トレハロース、デキストランから選択される1種又は組み合わせである。
【0024】
いくつかの実施形態では、矯味剤は、ショ糖、単糖、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ソルビトール、キシリトール、マンニトールから選択される1種又は組み合わせである。
【0025】
いくつかの実施形態では、接着剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒプロメロース、ゼラチンから選択される1種又は組み合わせである。
【0026】
いくつかの実施形態では、潤滑剤は、タルカムパウダー、ステアリン酸マグネシウム、微粉シリカゲルから選択される1種又は組み合わせである。
【0027】
いくつかの具体的な実施形態では、本願に適用される担体について、例えば、デキストラン、乳糖、微結晶セルロース、トレハロース、グリシン、キシリトール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エリスリトール、ゼラチン、ステアリン酸マグネシウム、噴射剤、保湿剤、溶剤、可溶化剤、乳化剤、酸化防止剤、pH調整剤、防腐剤も挙げられるが、これらに限定されない。具体的には、非限定的な例は、白色ワセリン、カルボマー、ヒプロメロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、キトサン、スクラルファートキトサン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ヒアルロン酸ナトリウム、ジメチルエーテル、テトラフルオロエタン、ヒドロフルオロアルカン、グリセリン、プロピレングリコール、脱イオン水、注射用水、蒸留水、エタノール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、p-アミノ安息香酸、アセトアミド、イソプロパノール、ツイーン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ステアリン酸、グリセロールモノステアレート、トリグリセロールモノステアレート、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ソルビタントリステアレート、ミリスチン酸イソプロピル、コレステロール、スクアレン、スクワラン、n-ブタノール、エチレングリコール、エタノール、プロピレングリコール、ポリグリセリンエステル、亜硫酸塩、システイン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、ソルビン酸カリウム、リン酸緩衝液、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、エチレンジアミン、ラウリルアミン、炭化水素ナトリウム、塩酸、パラベン、チメロサール、クロロクレゾール、クロロブタノール、安息香酸及びそのナトリウム塩をさらに含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容できる担体はデキストランである。
【0029】
いくつかの実施形態では、本願の薬物又は医療装置は、1日に1~3回投与されるか、又は1日に1回投与されるか、又は2日に1回投与される。患者の病巣の面積及び程度に応じて、毎回異なる投与量を採用し、一般的には1μg/単位投与量/1回~1000μg/単位投与量/1回でで使用する。具体的には、例えば1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200μg/単位投与量/1回、及び前述の任意の2つの数値の間の範囲で使用する。
【0030】
いくつかの実施形態では、投与周期は2日間~6ヶ月持続し、例えば、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間、17週間、18週間又はそれ以上、及び前述の任意の2つの数値の間の範囲で持続する。
【0031】
いくつかの実施形態では、前記ノカルディア・ルブラ細胞壁骨格は市販されているものである。
【0032】
別の実施形態では、前記ノカルディア・ルブラ細胞壁骨格は、
1)ノカルディア・ルブラを提供するステップと、
2)前記ノカルディア・ルブラを粉砕し、粉砕生成物を得るステップと、
3.1)必要に応じて、前記粉砕生成物に対して脂質を除去する操作を行うステップと、
3.2)必要に応じて、前記粉砕生成物に対して核酸を除去する操作を行うステップと、
3.3)必要に応じて、前記粉砕生成物に対してタンパク質を除去する操作を行うステップと、
3.4)ノカルディア・ルブラ細胞壁に由来する製品を得るステップと、
4)必要に応じて、前記ノカルディア・ルブラ細胞壁に由来する製品を凍結乾燥させるステップと、
5)必要に応じて、個包装するステップと、を含むか又はこれらのステップからなる方法で得られ、
そのうち、
ステップ3.1)、3.2)、3.3)は順序を入れ替えてもよく、同時に行ってもよく、
ステップ4)とステップ5)は順序を入れ替えてもよく、
前記粉砕の平均粒径は10nm~1000nmであり、好ましくは10nm~800nmであり、より好ましくは10nm~500nmであり、
好ましくは、前記個包装とは容器に個包装することを指し、
前記容器は、ボトル、チューブ、バッグ、袋、プレート、アンプル、注射装置、アルミ箔包装、ドレッシング材、カプセル、フィルムから選択される。
【0033】
ノカルディア・ルブラの粉砕の目的は、細胞内の物質を除去することであり、よって超音波破砕、リゾチームなどの技術を採用することができる。当業者はグラム陽性菌を破砕する既知の方法又は将来的な方法のどれを用いても、本開示の技術的解決手段に適するということを理解できる。
【0034】
当業者には活性成分(細胞壁及びその組成成分)の後続の応用(例えば外部塗布)に応じて、培養、破砕、分離、収集、不純物除去、個包装の具体的なパラメータ及び機器を調整することで、後続の応用に影響する要素が製造ステップに導入されないようにする能力がある。
【0035】
いくつかの実施形態では、有機溶剤を用いて破砕生成物中の脂質を除去する。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼを用いて破砕生成物中のDNA及びRNAを除去する。いくつかの実施形態では、加水分解酵素を用いて破砕生成物中のタンパク質を分解する。いくつかの実施形態では、界面活性剤を用いて破砕生成物中の細胞膜を除去する。
【0036】
いくつかの実施形態では、粉砕の平均粒径は10nm~1000nmであり、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190nm±10nm、及び上記任意の2つの数値の間の範囲であってもよい。粒径の測定方法は多数ある(例えば、胡松青ら、現代粒形測量技術、現代化工、2002年22:1)。
【0037】
いくつかの具体的な実施形態では、粉砕の平均粒径は10nm~800nmである。
【0038】
別の具体的な実施形態では、粉砕の平均粒径は10nm~500nmである。
【0039】
具体的な実施形態では、前記個包装はボトル/アンプルに個包装することを指す。使用する前に、ボトル/アンプルに溶剤(例えば滅菌水)を添加する。
【0040】
いくつかの具体的な実施形態では、被験者は、ヒト以外の動物であり、例えば農場の動物、愛玩動物、使役動物、観賞動物、生産動物である。
【0041】
具体的な実施形態では、被験者はヒトである。
【0042】
本願の文脈において、薬物又は医療装置における唯一の治療的活性成分はノカルディア・ルブラに由来する製品であり、特にノカルディア・ルブラの組成成分(例えば、タンパク質、核酸、脂質、細胞壁及びその組成成分、炭水化物、代謝物)を含む製品であり、具体的にはノカルディア・ルブラ細胞壁(より好ましくはノカルディア・ルブラ骨格又はその組成)を含む製品である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】マウスの深達性II度熱傷による創傷面の癒合状況:創傷面が破損した治療群の21日間の創傷面(図1A)、陽性群の21日間の創傷面(図1B)、創傷面が破損していない治療群の21日間の創傷面(図1C)、モデル群の21日間の創傷面(図1D)。
【発明を実施するための形態】
【0044】
ノカルディア・ルブラ細胞壁
本開示では、「ノカルディア・ルブラ細胞壁」は、完全な細胞壁として理解されてもよく、不完全な細胞壁(例えば、破砕された、又は部分的に分解された細胞壁)として理解されてもよい。本開示の教示の下で、当業者に理解されるように、所望の活性を示す成分はノカルディア・ルブラ細胞壁(例えば、細胞壁自体又はその組成)に由来する。したがって、臨床応用において完全な細胞壁、破砕された細胞壁、細胞壁の不完全分解生成物、細胞壁の組成成分、細胞壁の抽出物などの様々な形式を採用することを許可し、これらはいずれも本開示の範囲内に含まれる。
【0045】
細胞壁骨格
細胞壁本体構造を構成する組成成分であるが、細胞壁の架橋網状エンティティのみを示すとは理解することができず、当業者であれば、架橋網状エンティティに吸着され、結合され、担持された他の細胞壁成分を排除しないと理解することができる。
【0046】
単位投与量
本開示の薬物又は医療装置は、単位投与量(又は単位製剤)の形態に製造することができる。
【0047】
「任意」は、その後に説明される事項が発生する可能性があるが、必ずしも発生せず、状況に応じて決定する必要があることを意味する。例えば、「必要に応じて、個包装する」は、製品を個包装することを許可するが、必ずしも個包装する必要がないことを意味し、個包装するか否かは、技術的効果の達成に影響を与えない。
【0048】
「1つの」、「一」、「単一の」、「この」は、明確な説明がなければ、複数の形態を含む。
【0049】
以下、実施例を参照しながら本開示をさらに説明する。しかし、これらの実施例は、本開示の範囲を制限するものではない。具体的な条件を明記しない場合、従来の条件に応じて、原料サプライヤーが提案した条件に応じて操作する。出所が具体的に記載されていない試薬は、市販されている一般的な試薬である。
【0050】
当業者に特に理解されるように、以下の具体的な例には特定の市販されている細胞壁製品が採用されるが、技術的効果の達成は該特定の市販製品に限定されず、ノカルディア・ルブラに属する任意の種はいずれも適用される。
【0051】
実施例1、市販されているノカルディア・ルブラ細胞壁骨格
ノカルディア・ルブラ細胞壁骨格(商品名:「納可佳」)は遼寧格瑞仕特生物制薬有限公司から購入され、承認番号が国薬準字S20030009(2ml/アンプル、凍結乾燥粉末)であり、60μgの活性成分及び15mgのデキストラン40を含む。
【0052】
実施例2、ノカルディア・ルブラ細胞壁骨格の製造
1、公知の方法による菌体の培養と収集:細胞を粉砕する(例えば、超音波で破砕するが、それに限定されない)。例えば、CN101250490A又はCN101323865Aのように、本分野の任意の適切な公知の方法で菌体を破砕することも可能である。顕微鏡で粉砕の状況を検査し、各視野の可視菌が5個以下であるという基準に複数(10~30個)の視野が達していれば、合格する。
【0053】
2、核酸除去:破砕後の上澄液を遠心分離し、得られた沈殿物にDNA酵素及びRNA酵素を添加し、酵素サプライヤーが提案した操作に従って核酸を除去する。
【0054】
3、タンパク質除去:沈殿物に一般的なプロテアーゼ(例えばトリプシン)を添加し、酵素サプライヤーが提案した操作に従ってタンパク質を除去する。
【0055】
4、脂質除去:沈殿物に有機試薬(例えば、アセトン、エチルエーテル、エタノールの1種又は組み合わせであるが、これらに限定されない)を添加し、本分野の一般的な操作に従って脂質を除去する。
【0056】
5、細胞膜除去:沈殿物にTritonX-100を添加し、本分野の一般的な操作に従って、遠心分離して沈殿物を収集し、PBSで洗浄する。
【0057】
理解されるように、上記不純物を除去するステップの間で、当業者であれば、ステップを互換性のあるものにするために、順番を調整することができる。細胞壁ではない成分を除去した後、沈殿物を注射用水に再溶解し、使用に備える。必要に応じて、115℃で20~30分間滅菌し、細胞壁骨格の原液(主に細胞壁骨格及びその組成成分を含む)とすることができる。
【0058】
実施例3、医薬組成物又は医療装置の製造
1、実施例2で得られた生成物(活性成分が60μg~120μg、例えば60μg、70μg、80μg、90μg、100μg、110μg、120μgである)又は実施例1の市販製品をドレッシング材(例えば無菌ガーゼ)に塗布して、外用医療装置を製造する。
【0059】
2、或いは、実施例2で得られた生成物(活性成分が60μgである)を凍結乾燥粉末として製造し、病巣面に直接塗布する。
【0060】
3、或いは、本分野において公知のローション剤製造方法を採用してもよく、例えば、
ローション剤は、水及びエタノールを分散媒体とすることが多く、活性成分、電解質、等張性調節剤などを分散媒中に分散させて製造される。エマルジョン型ローション剤を貯蔵する場合に、油相と水相が分離する可能性があるが、振動して再分散させることができる。
【0061】
試験例.熱損傷の治療効果
1、材料
1.1薬物及び主な試薬
-試験薬物:外用するノカルディア・ルブラ細胞壁骨格(遼寧格瑞仕特生物科技有限公司、国薬準字S20030009、規格60μg/本、ロット番号201809004)、
-対照薬物:京万紅軟膏(天津達仁堂京万紅薬業有限公司、中国薬品承認番号Z20023137、規格30g/本、ロット番号215054)、
Veet脱毛クリーム(レキットベンキーザー(中国)有限公司)、
エチルエーテル(国薬集団化学試薬有限公司)。
【0062】
1.2実験動物
20匹のクリーングレードの昆明マウスであり、体重が26~35gであり、遼寧長生生物技術股フン有限公司により提供され、合格証番号が211002300051326である。
【0063】
2、実験方法
2.1実験設計
20匹の昆明マウスを、
1)モデル群、
2)創傷面が破損していない治療群(ノカルディア・ルブラ群)、
3)創傷面が破損した治療群(ノカルディア・ルブラ群)、
4)陽性対照群(対照薬物)の4群にランダムに分け、各群を5匹とした。
【0064】
2.2II度熱傷マウスモデルの製造
マウスを環境に適応させて1週間飼育した。マウスの背部皮膚に対してかみそりで毛を刈った後、脱毛クリームで脱毛し(範囲は約3cm×4cmである)、180s放置し、30~40℃の温水で脱毛領域を洗浄し、脱脂綿で拭いて乾燥させた。
【0065】
脱毛後のマウスを24h正常に飼育し、観察し、脱毛部位に腫れ、炎症及び破損などの異常な状況がないことを確定した。24hの後にエチルエーテルで麻酔し、操作台上に置き、75%のエタノールで実験領域の皮膚を消毒し、熱傷モデルの構築を行った。
【0066】
マウスを中間に1.2cmの孔を有する熱傷装置に置き、背部の脱毛された皮膚を孔の部位に合わせ、背部が露出した1.2cmの孔を75℃の恒温水中に置いて10s持続し、熱傷直径が約1.2cmの円形創傷面を作った。
【0067】
熱傷後のマウスをケージに分けて飼育し、創傷面を生理食塩水で処理し、かつ飼料及び蒸留水を与え、敷料が乾燥しクリーンであり、よく通風できるように保証した。三度四分法に従って、火/熱傷が深達性II度であると判定した。
【0068】
2.3群分け投与
熱傷後の24時間から投与を開始した。
【0069】
-モデル群において:毎日、各マウスの熱傷皮膚の創傷面に生理食塩水を塗布し、
-創傷面が破損していない治療群において:まず生理食塩水で創傷面を処理し、毎日、各マウスに1本のノカルディア・ルブラ細胞壁骨格を外部塗布し(0.25mlの生理食塩水をボトル内に注入し、凍結乾燥粉末を完全に溶解させ、3層の1.2cm×1.2cmのガーゼを完全に浸潤させ、創傷面に塗布した後、医療用脱感作テープで固定する)、
-創傷面が破損した治療群において、まず生理食塩水で創傷面を処理し、創傷面を破損させるように処理し、毎日、1本のノカルディア・ルブラ細胞壁骨格を外部塗布し(0.25mlの生理食塩水をボトル内に注入し、凍結乾燥粉末を完全に溶解させ、3層の1.2cm×1.2cmのガーゼを完全に浸潤させ、創傷面に塗布した後、医療用脱感作テープで固定する)、
-陽性対照群において:まず生理食塩水で創傷面を処理し、次に毎日、各マウスに京万紅軟膏を1回塗布した。
【0070】
それぞれ投与後1、3、7、11、15日目に創傷面の癒合状況を観察した。
【0071】
3、実験観察及び指標検出
3.1創傷面の癒合時間の測定
各群に対して、癒合時間を測定した。判定基準は、以下を含む。
【0072】
-癒合:熱傷箇所の痂皮が完全に脱落し、修復した後、組織の表面が新鮮で平坦であり、
-実質的な癒合:熱傷箇所の痂皮が断続的に脱落し、新生した組織の表面が平坦ではなく、かつ小さい範囲に少量の滲出物があるが、明らかな感染巣がなく、
-感染:痂皮の周囲に明らかな腫れがあり、痂皮の下に膿液又は潰瘍があった。
【0073】
3.2創傷面の癒合率
投与後3、7、11、15日目にマウスの創傷面の癒合状況を観察して記録し、創傷面が完全に上皮化し、滲出がなければ、創傷面が完全に癒合したと見なし、また創傷面に腫れ、感染などの状況があるか否かを観察した。各時点の創傷面の癒合率を算出した。写真中のスケールで、グラフィック処理ソフトウェアにより創傷面の直径を得て、創傷面の面積を算出した。
【0074】
創傷面の癒合率%=(元の創傷面の面積-癒合しない創傷面の面積)/元の創傷面の面積×100%。
【0075】
3.3統計方法
SPSS 17.0統計ソフトウェアを採用して分析し、各群の間に一元配置分散分析を用いて比較した。得られたデータを
【数1】
で表す。P<0.05は差が統計的に有意であることを示す。
【0076】
4、実験結果
4.1大まかな観察
全てのマウスはいずれも創傷面が癒合するまで生きていて、摂食、飲水、精神状態、活動などについて、いずれも明らかな差がなく、明らかな感染現象がなかった。
【0077】
4.2創傷面の癒合状況
4.2.1創傷面の癒合時間
マウスの創傷面が完全に癒合し、かつ組織の表面が平坦であることを癒合標準とした。モデル群に比べて、創傷面が破損した治療群及び陽性群の創傷面の癒合時間が短縮し、差が統計的に有意であり、P<0.05であった。創傷面が破損した治療群は、陽性群と比べて、癒合時間が陽性群の癒合時間よりわずかに短く、差が統計的に有意であり、P<0.05であった。
【0078】
【表1】
注:モデル群に比べて、*P<0.05である。
【0079】
4.2.2創傷面の癒合率
モデルを確立した後、24h経過した後に投与し始め、投与前の創傷面の面積を基準面積とし、それぞれ3、7、11、15日目に創傷面の面積を記録し、かつ癒合率を算出した。
【0080】
創傷面が破損した治療群は、モデル群と比べて、投与後7dに創傷面の癒合率がモデル群より明らかに高くなり始め、投与後11dに陽性群及び創傷面が破損していない治療群の癒合率もモデル群より高くなり始め、統計的に有意であり、P<0.05であった。創傷面が破損した治療群は、陽性群に比べて、投与後7dに創傷面の癒合率が陽性群より高くなり始め、かつ統計的に有意であり、P<0.05であった。
【0081】
【表2】
注:モデル群に比べて、*P<0.05である。
【0082】
4.2.3.創傷面の癒合状態(図1A図1D
創傷面が破損した治療群は、癒合する際に、創傷面に瘢痕増殖がなく、かつ滑らかであり、他の群は、いずれも異なる程度の瘢痕増殖が発生し、また、創傷面が破損した治療群の創傷面部位に毛髪が成長し始めた。
【0083】
具体的な理論に限定されないが、外用するノカルディア・ルブラ細胞壁骨格の主な成分は、一般的に、ムラミン酸、アラビノガラクタン、ムコペプチドなどを含み、体の免疫系に対して調節作用を有し、T細胞、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞の活性を強化し、サイトカインの生成を促進することができ、創傷の前期癒合、炎症反応の低下に対して積極的な作用を有すると考えられる。
【0084】
本願の創傷面が破損した治療群において、創傷面が癒合した後に瘢痕が基本的になく、他の群においていずれも異なる程度の瘢痕があった。また、創傷面が破損した治療群において創傷面に21日目に非常に多くの毛髪が成長しており、本願の組成物が創傷面を修復すると同時に皮膚毛包及び他の付属器に対しても非常に強い修復作用を有することを証明する。
【0085】
以上より、ノカルディア・ルブラ細胞壁骨格は、マウスの深達性II度熱傷の癒合過程において、癒合率を効果的に向上させ、癒合時間を短縮し、創傷面が癒合した後の瘢痕の形成を抑制することができるとともに、皮膚毛包及び他の付属器に対する修復効果が顕著である。
図1
【国際調査報告】