(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(54)【発明の名称】組換えポリクローナルタンパク質およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20220629BHJP
C40B 40/10 20060101ALI20220629BHJP
C07K 16/08 20060101ALI20220629BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220629BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220629BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220629BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220629BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220629BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20220629BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220629BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20220629BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20220629BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
C12N15/13
C40B40/10
C07K16/08
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 D
A61P37/04
A61P31/04
A61P31/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021562342
(86)(22)【出願日】2020-04-30
(85)【翻訳文提出日】2021-10-20
(86)【国際出願番号】 US2020030878
(87)【国際公開番号】W WO2020223573
(87)【国際公開日】2020-11-05
(32)【優先日】2019-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519331109
【氏名又は名称】ギガジェン,インコーポレイティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン, デイビッド スコット
(72)【発明者】
【氏名】アドラー, アダム シュルツ
(72)【発明者】
【氏名】ミズラヒ, レナ アヴィヴァ
(72)【発明者】
【氏名】リム, ユン ワーン
(72)【発明者】
【氏名】アセンシオ, マイケル
(72)【発明者】
【氏名】キーティング, シェイラ
(72)【発明者】
【氏名】リオン, レネ
(72)【発明者】
【氏名】リオン, ジャクソン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA13
4B065AA91X
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC15
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C085AA13
4C085BA14
4C085BA18
4C085BA89
4C085CC05
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA42
4H045DA76
4H045EA29
4H045FA74
(57)【要約】
哺乳動物の形質細胞および形質芽細胞に由来する組換えポリクローナルタンパク質(RPP)を含む組成物が、本明細書で提供される。RPPを使用する方法も提供される。RPPは組換え体であり、これらの配列は、末梢血形質細胞または形質芽細胞に由来する。末梢血形質細胞または形質芽細胞は、例えば、ドナーに投与されたワクチンによって動員され、末梢血形質細胞または形質芽細胞は、他の末梢血細胞から特異的に分離される。末梢血細胞は、任意の哺乳動物、例えば、マウス、ラット、ヒト、サル、ウマ、またはウシに由来し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原に特異的に結合する組換えポリクローナルタンパク質(RPP)のライブラリーであって、
a.前記抗原が、b型Haemophilius influenzaeの多糖であり、前記ライブラリーが、配列番号33981~47174の配列から選択される重鎖CDR3および軽鎖CDR3の配列の同族対をそれぞれ有する、少なくとも100~6597個のRPPを含むか、または
b.前記抗原が、b型Haemophilius influenzaeの多糖であり、前記ライブラリーが、配列番号47175~64340の配列から選択される重鎖CDR3および軽鎖CDR3の配列の同族対をそれぞれ有する、少なくとも100~8583個のRPPを含むか、または
c.前記抗原が、b型Haemophilius influenzaeの多糖であり、前記ライブラリーが、配列番号64341~80252の配列から選択される重鎖CDR3および軽鎖CDR3の配列の同族対をそれぞれ有する、少なくとも100~7956個のRPPを含むか、または
d.前記抗原が、b型Haemophilius influenzaeの多糖であり、前記ライブラリーが、配列番号80253~100626の配列から選択される重鎖CDR3および軽鎖CDR3の配列の同族対をそれぞれ有する、少なくとも100~10187個のRPPを含むか、または
e.前記抗原が、肺炎球菌の多糖であり、前記ライブラリーが、配列番号1~21074の配列から選択される重鎖CDR3および軽鎖CDR3の配列の同族対をそれぞれ有する、少なくとも100~10537個のRPPを含むか、または
f.前記抗原が、B型肝炎ウイルス抗原であり、前記ライブラリーが、配列番号100627~103860の配列から選択される重鎖CDR3および軽鎖CDR3の配列の同族対をそれぞれ有する、少なくとも100~1617個のRPPを含むか、または
g.前記抗原が、B型肝炎ウイルス抗原であり、前記ライブラリーが、配列番号103861~106380の配列から選択される重鎖CDR3および軽鎖CDR3の配列の同族対をそれぞれ有する、少なくとも100~1260個のRPPを含むか、または
h.前記抗原が、ヒト胸腺細胞を含み、前記ライブラリーが、配列番号106381~12015の配列から選択される重鎖CDR3および軽鎖CDR3の配列の同族対をそれぞれ有する、少なくとも100~6889個のRPPを含む、RPPライブラリー。
【請求項2】
各RPPが、scFvである、請求項1に記載のRPPライブラリー。
【請求項3】
各RPPが、全長抗体である、請求項1に記載のRPPライブラリー。
【請求項4】
各RPPが、全長抗体であり、CHO細胞において産生される、請求項1に記載のRPPライブラリー。
【請求項5】
各RPPが、前記抗原を注射された少なくとも1体のドナーからの形質細胞または形質芽細胞に由来する配列を使用して組換えで産生される、請求項1から4のいずれか一項に記載のRPPライブラリー。
【請求項6】
各RPPが、前記抗原を注射された少なくとも1体のドナーからの形質細胞または形質芽細胞に由来する配列を使用して組換えで産生され、前記RPPライブラリーの活性が、前記抗原に対する前記ドナーの血清力価活性を少なくとも10倍超える、請求項1から4のいずれか一項に記載のRPPライブラリー。
【請求項7】
前記活性が、in vitro病原体中和アッセイまたは抗原に対するin vitro結合アッセイまたはin vivo有効性アッセイによって測定される、請求項6に記載のRPPライブラリー。
【請求項8】
前記ドナーが、ヒトである、請求項5から7のいずれか一項に記載のRPPライブラリー。
【請求項9】
少なくとも100個、少なくとも1000個、少なくとも10,000個または少なくとも100,000個のRPPを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のRPPライブラリー。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のRPPライブラリーおよび薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項11】
必要な対象を処置する方法であって、請求項1から9のいずれか一項に記載のRPPライブラリーまたは請求項10に記載の医薬組成物の有効量を前記対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項12】
前記対象が、免疫不全、がん、アルツハイマー病、ウイルス感染症、細菌感染症を有するか、または実質臓器もしくは細胞の移植術を受けている、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1から9のいずれか一項に記載のRPPライブラリーまたは請求項10に記載の医薬組成物の有効量を対象に投与するステップを含む方法。
【請求項14】
1つまたは複数の薬剤の投与をさらに含む、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
各ポリヌクレオチドが、請求項1から9のいずれか一項に記載のRPPライブラリーの1つのメンバーをコードする、複数の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項16】
各ベクターが、請求項1から9のいずれか一項に記載のRPPライブラリーの1つのメンバーをコードするポリヌクレオチドを含む、複数の単離されたベクター。
【請求項17】
発現ベクターである、請求項16に記載の複数の単離されたベクター。
【請求項18】
請求項15に記載の複数の単離されたポリヌクレオチドまたは請求項16もしくは請求項17に記載の複数の単離されたベクターを含む複数の単離された宿主細胞。
【請求項19】
請求項1から9のいずれか一項に記載のRPPライブラリーを産生する方法であって、請求項18に記載の単離された宿主細胞を、前記RPPライブラリーの発現のための条件下でインキュベートするステップと、前記RPPを単離するステップとを含む、方法。
【請求項20】
前記RPPが、全長抗体であり、前記単離された宿主細胞が、CHO細胞である、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.関連出願への相互参照
本出願は、その内容全体が全ての目的で参照により組み込まれる、2019年4月30日に出願した米国仮出願第62/841,097号に基づく利益および優先権を主張する。
2.配列表
【0002】
本出願は、EFS-Web経由で提出した120158の配列に関する配列表を含み、この配列表は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2020年4月30日に作成した前記ASCIIコピーは、GGN035WOsequencelisting.txtという名であり、サイズは30.3MBである。
3.分野
【0003】
例えば、ワクチンを含む抗原に対する結合特異性を有する、組換えポリクローナル抗体タンパク質、組換え高度免疫グロブリン、または単に組換え高度免疫とも呼ばれる組換えポリクローナルタンパク質(RPP)、ならびに医薬組成物を含めた、そのようなRPPを含むライブラリーおよび組成物が、本明細書で提供される。RPPを作製する方法、ならびにRPPを、例えば治療目的で使用する方法も、提供される。
【背景技術】
【0004】
4.背景
アクティブワクチンの広範囲に及ぶ使用によって、予防可能な感染性疾患の発生率は大いに低減されているが、ワクチンに誘導される免疫応答が低いかまたはないことによるワクチンの失敗は、依然として重要な問題である。年配者または先天的な体液性免疫不全を有する個体を含むある特定の集団は、特に感染症のリスクを有しており、これらの弱まった免疫系によって、ワクチン抗原に対する適切な免疫応答の誘導が妨げられる。(D'Acremont et al., 2006; Jilkova et al., 2009;Weinberger et al., 2010;Langley et al., 2011;Cramer et al., 2016;Bader, 2007;Goldacker et al., 2007;van Assen et al., 2010)。プアレスポンダー(poor responder)は、非常に高い感染リスクを被っており、高い割合で入院することになるか、抗生物質または抗ウイルス療法を必要とするか、または長期にわたる病気または死がもたらされる。これらの患者は、失敗したワクチンモダリティに対する代案として、防御免疫をもたらすことになる抗体補充療法から利益を得るであろう。
【0005】
受動免疫(McDonagh, 1966)によって、アクティブワクチンに対して応答しない免疫不全の個体に対する代替の防御戦略がもたらされる。例えば、静脈内免疫グロブリン(IVIg)は、数千人のヒトドナーの血漿に由来する広域スペクトルポリクローナル抗体療法である。IVIgは、体液性免疫不全を有する患者に対する抗体補充療法として使用される(Lucas et al., 2010;Resnick et al., 2012)。しかし、IVIgは、多くの一般的な病原体を対象とする抗体について低力価しか有さず、免疫不全患者において、かなりの罹患率および死亡率をもたらす(Orange et al., 2010)。抗病原体力価を増加させるために、いくつかのグループが、高度免疫と呼ばれることが多い、高力価血漿由来抗体を開発している(Bozzo & Jorquera, 2017)。高度免疫は、一般的に、B型肝炎ウイルスに対して高力価を有するHyperHEP B(Grifols)などのアクティブワクチンの投与のすぐ後に、ドナーの血漿から導出される。
【0006】
最近アクティブワクチンを投与されたドナーから導出された高度免疫は、受動免疫に対する優れた選択肢であるが、そのような製品を商業的にスケールアップすることが課題である(Kreil et al., 2012)。重要なのは、ワクチン接種されることを快諾し、血漿を繰り返し提供する強力なレスポンダーを特定することが困難である場合があることである。したがって、高度免疫製造ロットは、必然的に、異なるドナーセットから導出され、ロット間のばらつきをもたらす。抗病原体力価は、2から3倍程度の低さから(Schampera et al., 2017)50倍程度の高さまで(Kreil et al., 2012)、高度免疫によってかなり変化する。したがって、一部の場合、医師は、単に、より高用量のIVIgを投与する場合がある(Polilli et al., 2012)。医師および患者は、大規模での製造がより容易である、より一貫した、より高力価の高度免疫から利益を得ることになるであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
5.概要
例えば、ワクチンを含む抗原に対する結合特異性を有する、RPP(組換えポリクローナル抗体タンパク質、組換え高度免疫グロブリン、または組換え高度免疫とも呼ばれる組換えポリクローナルタンパク質)の新規ライブラリー、および例えば、ヒト治療薬としての、そのようなRPPを使用する方法が、本明細書で提供される。RPPは組換え体であり、これらの配列は、末梢血形質細胞または形質芽細胞(plasmablast)に由来する。末梢血形質細胞または形質芽細胞は、例えば、ドナーに投与されたワクチンによって動員され、末梢血形質細胞または形質芽細胞は、他の末梢血細胞から特異的に分離される。末梢血細胞は、任意の哺乳動物、例えば、マウス、ラット、ヒト、サル、ウマ、またはウシに由来し得る。
【0008】
RPPは、抗原に特異的に結合する。例としては、以下に限定されないが、b型Haemophilius influenzaeの多糖、肺炎球菌の多糖、B型肝炎ウイルス抗原、またはヒト胸腺細胞が挙げられる。一部のRPP組成物は、例えば、ウイルスに由来するタンパク質抗原を含むワクチンによって動員される形質細胞または形質芽細胞に由来する。一部の実施形態では、ワクチンは、哺乳動物の細胞、例えば、免疫細胞またはがん細胞である。他の実施形態では、ワクチンは、死滅したかまたは不活性化された病原体、例えば、細菌またはウイルスである。他の実施形態では、ワクチンは、細菌の多糖類である。一部の実施形態では、ワクチンは、感染性疾患に対する予防のために米国食品医薬品局によって承認された媒介物である。全ての実施形態では、ワクチンは、末梢血において形質細胞または形質芽細胞を動員するか、または形質細胞または形質芽細胞を末梢血において動員させる。
【0009】
RPPライブラリーは、RPP、例えば、抗体の混合物を含み、ポリクローナル抗体と称され得る。抗体の混合物は、10、100、1,000、10,000、100,000または100,000を超える別個の抗体配列を含み得る。一部の実施形態では、ライブラリーは、本明細書に開示される同族の重鎖CDR3および軽鎖CDR3配列を有するRPPを含む。
【0010】
一部の実施形態では、抗体は、キメラである。一部の実施形態では、抗体は、ヒト化されている。一部の実施形態では、抗体は、ヒト抗体である。一部の実施形態では、RPPは、抗体断片の混合物を含む。一部の実施形態では、RPPは、単鎖可変断片(scFv)の混合物を含む。一部の実施形態では、RPPは、全長抗体を含む。一部の実施形態では、抗体は、IgG、IgA、またはIgMである。
【0011】
本明細書で提供されるRPPは、ワクチンを含む抗原に対する結合に関連する様々な生物学的効果を誘導することができる。一部の実施形態では、本明細書で提供されるRPPは、ウイルスの細胞への結合を妨げ、そこで、ウイルスの細胞への侵入を妨げる。一部の実施形態では、提供されるRPPは、細菌の細胞表面に結合し、免疫系による細菌の溶解を可能にする。一部の実施形態では、RPPは、病態に関連する細胞を排除するために、患者の細胞の細胞表面に結合する。一部の実施形態では、RPPは、自己免疫疾患または移植における移植片対宿主病に関連するT細胞を排除するために、T細胞の表面に結合する。
【0012】
本明細書で提供されるRPPをコードする単離されたポリヌクレオチドおよびそれらの部分も提供される。一部の態様では、本発明は、本明細書で提供されるRPPをコードするポリヌクレオチドの混合物を提供する。他の態様では、本発明は、単離されたポリヌクレオチドを含むベクターの混合物を提供する。他の態様では、本発明は、ポリヌクレオチドまたはベクターの混合物を含む宿主細胞クローンの混合物を提供する。
【0013】
本明細書で提供されるポリヌクレオチド、ベクターまたは宿主細胞を使用してRPPを産生する方法も提供される。本発明の一部の態様は、RPPを産生する方法であって、ポリヌクレオチドベクターのライブラリーを使用して、宿主細胞において抗体を発現させるステップと、RPPを単離するステップとを含む方法に関する。
【0014】
【0015】
RPPと薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物も提供される。
【0016】
本明細書で提供されるRPPを使用する方法、例えば、必要な対象における疾患または状態を処置または防止する方法であって、本明細書で提供されるRPPのまたはそのようなRPPを含む医薬組成物の有効量を対象に投与するステップを含む方法も提供される。一部の態様では、疾患または状態は、がんまたはアルツハイマー病である。一部の態様では、疾患または状態は、ウイルスまたは細菌感染症である。一部の態様では、方法は、1つまたは複数の追加の治療剤を投与するステップをさらに含む。一部の態様では、追加の治療剤は、免疫刺激剤または抑制剤である。一部の態様では、RPPを使用して、移植状況下で、異種移植片対宿主または宿主対異種移植片の応答をモジュレートする。一部の態様では、RPPを使用して、移植状況下で、ウイルス疾患をモジュレートする。
【0017】
一部の実施形態では、RPPは、対象に投与された場合に、感染性疾患に対する予防薬として十分な量である。一部の実施形態では、RPPは、感染症と精力的に闘っている個体において、感染症をクリアするのに十分な量である。
【0018】
またさらなる態様では、本発明は、組換え抗体のライブラリーを生成するための方法であって、哺乳動物のドナーに、B型肝炎ウイルス(HBV)に関する抗原を注射するステップと、ドナーの形質細胞または形質芽細胞を単離するステップと、形質細胞または形質芽細胞から組換え抗体のライブラリーを生成するステップとを含み、組換え抗体のライブラリーの活性が、抗原に対する前記ドナーの血清中活性力価を少なくとも10倍超える方法を提供する。哺乳動物のドナーは、2以上の個体を含んでもよい。一実施形態では、哺乳動物のドナーは、ヒト、マウス、ヒト化マウス、ラット、ヒト化ラット、ウマ、またはウシであってもよい。本発明の方法は、少なくとも100個の組換え抗体、例えば、少なくとも1,000個の組換え抗体、例えば少なくとも10,000個の組換え抗体を生成することができる。一実施形態では、本発明の方法は、少なくとも100,000個の組換え抗体を生成することができる。
【0019】
本発明の方法に関連して、活性力価は、in vitro病原体中和アッセイによって測定され得る。あるいは、活性力価は、抗原に対するin vitro結合アッセイによって測定され得る。一実施形態では、活性力価は、in vivo有効性アッセイによって測定され得る。
【0020】
一実施形態では、本発明の方法は、複数の第1の線状ポリヌクレオチドを得るステップであって、第1の線状ポリヌクレオチドはそれぞれ、単一の形質細胞または形質芽細胞からの同族対に由来する重鎖可変ドメインをコードする第1の配列;および同族対に由来する軽鎖可変ドメインをコードする第2の配列;および第1の配列と第2の配列を連結し、制限部位を含む第3の配列を含む、ステップと、第1のポリヌクレオチドに作動可能に連結していない第2の線状ポリヌクレオチドを得るステップであって、第2の線状ポリヌクレオチドは、第1のポリヌクレオチドの一部に対して相同な第4の配列を含む、ステップと、複数の第1のポリヌクレオチドのそれぞれを第2のポリヌクレオチドと環状化させて、組換え抗体のライブラリーをコードするポリヌクレオチドのライブラリーを生成するステップであって、環状化が、Gibson Assemblyによってもたらされる、ステップと、組換え抗体をコードするポリヌクレオチドのライブラリーを含む哺乳動物細胞において、組換え抗体のライブラリーを発現させ、それによって、組換え抗体のライブラリーを生成するステップとをさらに含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
6.図面の簡単な説明
【
図1】
図1は、ワクチンを投与された哺乳動物の宿主から単離した末梢血形質細胞または形質芽細胞において発現された転写物に由来するポリヌクレオチドのライブラリーを生成する方法の概要である。
【0022】
【
図2】
図2は、溶解ミックスと溶解された細胞から核酸標的を捕捉する固体支持体を含む物理的容器内に形質細胞または形質芽細胞をカプセル化する方法の概要である。
【0023】
【
図3】
図3は、固体支持体に付着した核酸標的で標的特異的プライマーをカプセル化する方法の概要である。
【0024】
【
図4】
図4は、相補的領域を用いて個々の標的核酸を増幅する方法を示す。
【0025】
【
図5】
図5は、相補的領域を用いて増幅された個々の標的核酸をを示す。
【0026】
【
図6】
図6は、別々の増幅させた核酸標的を単一の融合核酸構築物に融合させる方法の概要である。
【0027】
【
図7】
図7は、融合核酸構築物から環化遺伝子発現構築物を生成する方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
7.詳細な説明
7.1.定義
本明細書中で別段の定義がない限り、本発明に関連して使用される科学および専門用語は、当業者により一般に理解されている意味を有するものとする。さらに、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、単数形の用語は、複数形のものを含むものとし、複数形の用語は、単数形のものを含むものとする。一般に、本明細書に記載の細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学ならびにタンパク質および核酸化学およびハイブリダイゼーションに関連して使用される命名法、ならびに本明細書に記載の細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学ならびにタンパク質および核酸化学およびハイブリダイゼーションの技術は、当技術分野において周知の、一般に使用されているものである。本発明の方法および技術は、別段の指示がない限り、一般に、当技術分野において周知の従来の方法に従って、ならびに本明細書の至る所で言及され、論じられる様々な一般およびより特異的な参考文献に記載されているように、行われる。例えば、Sambrook et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2d ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)およびAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates (1992)、およびHarlow and Lane Antibodies: A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1990)を参照されたく、これらの参考文献は、参照により本明細書に組み込まれる。酵素反応および精製技術は、当技術分野において一般に遂行されているように、または本明細書に記載されるように、製造業者の仕様書に従って行われる。本明細書に記載の分析化学、合成有機化学、医化学および薬化学に関連して使用される用語法、ならびに本明細書に記載の分析化学、合成有機化学、医化学および薬化学の実験手順および技術は、当技術分野において周知の、一般に使用されているものである。化学合成、化学分析、薬学的調製、製剤および送達、ならびに患者の処置には、標準的な技術を使用することができる。
【0029】
下記の用語は、別段の指示がない限り、下記の意味を有すると解されるものとする:
【0030】
用語「免疫グロブリン」は、1対の軽(L)鎖および1対の重(H)鎖である、2対のポリペプチド鎖を一般に含む、構造的に関連しているタンパク質のクラスを指す。「無傷免疫グロブリン」では、これらの4本の鎖全てがジスルフィド結合により相互接続されている。免疫グロブリンの構造は、十分に特徴付けられている。例えば、Paul, Fundamental Immunology 7th ed., Ch. 5 (2013) Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, PAを参照されたい。手短に述べると、各重鎖は、重鎖可変領域(VH)および重鎖定常領域(CH)を概して含む。重鎖定常領域は、CH1、CH2およびCH3と略記される、3つのドメインを概して含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)および軽鎖定常領域を概して含む。軽鎖定常領域は、CLと略記される、1つのドメインを概して含む。
【0031】
用語「組換えポリクローナルタンパク質」(RPP)は、抗原またはエピトープ(1つまたは複数)に特異的に結合する2つ以上の抗原結合ドメインを含むタンパク質を指す。一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、天然に存在する抗体のものと同様の特異性および親和性で抗原またはエピトープに結合する。一部の実施形態では、RPPは、抗体を含む。一部の実施形態では、RPPは、抗体からなる。一部の実施形態では、RPPは、抗体から本質的になる。一部の実施形態では、RPPは、代替足場を含む。一部の実施形態では、RPPは、代替足場からなる。一部の実施形態では、RPPは、代替足場から本質的になる。一部の実施形態では、RPPは、抗体断片を含む。一部の実施形態では、RPPは、抗体断片からなる。一部の実施形態では、RPPは、抗体断片から本質的になる。
【0032】
用語「抗体」は、本明細書ではその最も広い意味で使用され、抗原またはエピトープと特異的に結合する1つまたは複数の抗原結合ドメインを含むある特定のタイプの免疫グロブリン分子を含む。抗体は、具体的には、無傷抗体(例えば、無傷免疫グロブリン)、抗体断片、および多重特異性抗体を含む。抗原結合ドメインの一例は、VH-VL二量体により形成される抗原結合ドメインである。抗体は、1つのタイプのRPPを含む。
【0033】
用語「代替足場」は、抗原またはエピトープと特異的に結合する1つまたは複数の抗原結合ドメインを生成するように1つまたは複数の領域を多様化することができる分子を指す。一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、天然に存在する抗体のものと同様の特異性および親和性で、抗原またはエピトープに結合する。例示的な代替足場としては、フィブロネクチンに由来するもの(例えば、Adnectins(商標))、β-サンドイッチに由来するもの(例えば、iMab)、リポカリンに由来するもの(例えば、Anticalins(登録商標))、EETI-II/AGRPに由来するもの、BPTI/LACI-D1/ITI-D2に由来するもの(例えば、クニッツドメイン)、チオレドキシンペプチドアプタマーに由来するもの、プロテインAに由来するもの(例えば、Affibody(登録商標))、アンキリンリピートに由来するもの(例えば、DARPin)、ガンマ-B-クリスタリン/ユビキチンに由来するもの(例えば、アフィリン)、CTLD3に由来するもの(例えば、テトラネクチン)、フィノマーに由来するもの、および(LDLR-A分子)に由来するもの(例えば、アビマー)が挙げられる。代替足場のさらなる情報は、Binz et al., Nat. Biotechnol., 2005 23:1257-1268;Skerra, Current Opin. in Biotech., 2007 18:295-304;およびSilacci et al., J. Biol. Chem., 2014, 289:14392-14398において提供されており、これらの参考文献の各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。代替足場は、1つのタイプのRPPを含む。
【0034】
用語「抗原結合ドメイン」は、抗原またはエピトープと特異的に結合することができる抗体の部分を意味する。
【0035】
用語「全長抗体」、「無傷抗体」、および「全抗体」は、天然に存在する抗体構造と実質的に同様の構造を有する抗体であって、Fc領域を含む重鎖を有する抗体を指すために、本明細書では同義的に使用される。
【0036】
用語「Fc領域」は、天然に存在する抗体では、Fc受容体とおよび補体系のある特定のタンパク質と相互作用する、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を意味する。様々な免疫グロブリンのFc領域およびそこに含有されているグリコシル化部位の構造は、当技術分野において公知である。その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Schroeder and Cavacini, J. Allergy Clin. Immunol., 2010, 125:S41-52を参照されたい。Fc領域は、天然に存在するFc領域であってもよく、または本開示の他の箇所に記載されるように改変されたFc領域であってもよい。
【0037】
VHおよびVL領域は、より保存される領域が散在する、超可変性の領域(「相補性決定領域(CDR)」とも呼ばれる「超可変領域(HVR)」)にさらに細分することができる。より保存される領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。VHおよびVL各々は、3つのCDRと4つのFRを一般に含み、これらは次の順序で配置されている(N末端からC末端へ):FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4。CDRは、抗原結合に関与し、抗体の抗原特異性および結合親和性に影響を及ぼす。その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest 5th ed. (1991) Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MDを参照されたい。
【0038】
いずれの脊椎動物種からの軽鎖も、その定常ドメインの配列に基づいて、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる、2つのタイプの一方に指定され得る。
【0039】
いずれの脊椎動物種からの重鎖も、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMという5つの異なるクラス(またはアイソタイプ)のうちの1つに指定され得る。これらのクラスは、それぞれ、α、δ、ε、γおよびμとも表記される。IgGおよびIgAクラスは、配列および機能の違いに基づいてサブクラスにさらに分けられる。ヒトは、次のサブクラスを発現する:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2。
【0040】
CDRのアミノ酸配列境界を、当業者は、いくつかの公知番号付けスキームのいずれかを使用して決定することができ、そのような番号付けスキームには、Kabat et al.、上掲(「Kabat」番号付けスキーム);Al-Lazikani et al., 1997, J. Mol. Biol., 273:927-948(「Chothia」番号付けスキーム);MacCallum et al., 1996, J. Mol. Biol. 262:732-745(「Contact」番号付けスキーム);Lefranc et al., Dev. Comp. Immunol., 2003, 27:55-77(「IMGT」番号付けスキーム);およびHonegge and Pluckthun, J. Mol. Biol., 2001, 309:657-70(「AHo」番号付けスキーム)により記載されたものが含まれ、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0041】
表1は、KabatおよびChothiaスキームにより同定されたCDR1-L(VLのCDR1)、CDR2-L(VLのCDR2)、CDR3-L(VLのCDR3)、CDR1-H(VHのCDR1)、CDR2-H(VHのCDR2)およびCDR3-H(VHのCDR3)の位置を提供するものである。CDR1-Hについては、Kabat番号付けスキームとChothia番号付けスキームの両方を使用して残基番号付けが提供されている。
【0042】
CDRは、例えば、www.bioinf.org.uk/abs/abnum/で入手可能であり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Abhinandan and Martin, Immunology, 2008, 45:3832-3839に記載されている、Abnumなどの、抗体番号付けソフトウェアを使用して指定され得る。
【表1】
【0043】
「EU番号付けスキーム」は、一般に、抗体重鎖定常領域中の残基(例えば、Kabat et al.、上掲で報告されているような)に言及する際に使用される。
【0044】
「抗体断片」は、無傷抗体の一部分、例えば、無傷抗体の抗原結合または可変領域を含む。抗体断片は、例えば、Fv断片、Fab断片、F(ab’)2断片、Fab’断片、scFv(sFv)断片、およびscFv-Fc断片を含む。
【0045】
「Fv」断片は、1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインの非共有結合で連結された二量体を含む。
【0046】
「Fab」断片は、重鎖および軽鎖可変ドメインに加えて、軽鎖の定常ドメイン、および重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)を含む。Fab断片は、例えば、組換え法により、または全長抗体のパパイン消化により、調製することができる。
【0047】
「F(ab’)2」断片は、ジスルフィド結合により連結された、ヒンジ領域付近にある、2つのFab’断片を含有する。F(ab’)2断片は、例えば、組換え法により、または無傷抗体のペプシン消化により、調製することができる。F(ab’)断片は、例えばβ-メルカプトエタノールでの処置により、解離させることができる。
【0048】
「単鎖Fv」または「sFv」または「scFv」抗体断片は、単一ポリペプチド鎖内にVHドメインおよびVLドメインを含む。VHおよびVLは、一般に、ペプチドリンカーにより連結されている。Pluckthun A. (1994)を参照されたい。一部の実施形態では、リンカーは、(GGGGS)n(配列番号5)である。一部の実施形態では、n=1、2、3、4、5または6。その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Antibodies from Escherichia coli. In Rosenberg M. & Moore G.P. (Eds.), The Pharmacology of Monoclonal Antibodies vol. 113 (pp. 269-315). Springer-Verlag, New Yorkを参照されたい。
【0049】
「ScFv-Fc」断片は、Fcドメインに結合しているscFvを含む。例えば、Fcドメインは、scFvのC末端に結合していることがある。scFv内の可変ドメインの配向に依存するVHまたはVL(すなわち、VH-VLまたはVL-VH)の後に、Fcドメインが続くことがある。当技術分野において公知のまたは本明細書に記載の任意の好適なFcドメインを使用することができる。一部の場合には、Fcドメインは、IgG4 Fcドメインを含む。
【0050】
用語「単一ドメイン抗体」は、抗体の1つの可変ドメインが、他の可変ドメインが存在しない抗原と特異的に結合する、分子を指す。単一ドメイン抗体およびその断片は、Arabi Ghahroudi et al., FEBS Letters, 1998, 414:521-526およびMuyldermans et al., Trends in Biochem.Sci., 2001, 26:230-245に記載されており、これらの参考文献の各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0051】
「単一特異性RPP」は、単一のエピトープと特異的に結合する結合部位を含むRPPである。単一特異性RPPの例は、二価だが、各抗原結合ドメインにおける同じエピトープを認識する、天然に存在するIgG分子である。結合特性は、あらゆる好適な結合価で存在し得る。
【0052】
「多特異性RPP」は、2つ以上のエピトープと非特異的に結合する結合部位を含むRPPである。多特異性RPPの例は、肺炎球菌細菌の異なる血清型に結合する抗体の混合物である。
【0053】
用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団からの抗体を指す。実質的に均一な抗体の集団は、モノクローナル抗体の産生中に通常生じ得るバリアントを除いて、実質的に同様であるおよび同じエピトープに結合する抗体を含む。そのようなバリアントは、一般に、ほんの少量でのみ存在する。モノクローナル抗体は、概して、複数の抗体からの単一の抗体の選択を含むプロセスにより得られる。例えば、選択プロセスは、ハイブリドーマクローン、ファージクローン、酵母クローン、細菌クローンまたは他の組換えDNAクローンのプールなどの、複数のクローンからのユニーククローンの選択であり得る。選択された抗体をさらに改造して、例えば、標的に対する親和性を向上させること(「親和性成熟」)、抗体をヒト化すること、細胞培養におけるその産生を改善すること、および/または対象におけるその免疫原性を低下させることができる。
【0054】
用語「ポリクローナル抗体」は、少なくとも2つのモノクローナル抗体の混合物を指す。ポリクローナル抗体は、単一特異性であっても多特異性であってもよい。
【0055】
用語「キメラ抗体」は、重鎖および/または軽鎖の一部分が特定の供給源または種に由来するが、その重鎖および/または軽鎖の残部が異なる供給源または種に由来する、抗体を指す。
【0056】
非ヒト抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト抗体に由来する最小配列を含有するキメラ抗体である。一般に、ヒト化抗体は、1つまたは複数のCDRからの残基が非ヒト抗体(ドナー抗体)の1つまたは複数のCDRからの残基により置換されている、ヒト抗体(レシピエント抗体)である。ドナー抗体は、所望の特異性、親和性または生物学的効果を有するマウス、ラット、ウサギ、ニワトリまたは非ヒト霊長類抗体などの、任意の好適な非ヒト抗体であり得る。一部の事例では、レシピエント抗体の選択されたフレームワーク領域残基は、ドナー抗体からの対応するフレームワーク領域残基により置換されている。ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見られない残基も含み得る。そのような改変は、抗体機能をさらに洗練するために行われ得る。さらなる詳細については、Jones et al., Nature, 1986, 321:522-525;Riechmann et al., Nature, 1988, 332:323-329;およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol., 1992, 2:593-596を参照されたく、これらの参考文献の各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0057】
「ヒト抗体」は、ヒトもしくはヒト細胞により産生される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列、またはヒト抗体レパートリーもしくはヒト抗体をコードしている配列(例えば、ヒト供給源から得られたもしくは新規に設計された)を利用する非ヒト供給源に由来するアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する、抗体である。ヒト抗体は、具体的にはヒト化抗体を含まない。
【0058】
「単離されたRPP」または「単離された核酸」は、その天然環境の成分から分離および/または回収された、RPPまたは核酸である。天然環境の成分は、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性物質を含み得る。一部の実施形態では、単離されたRPPは、例えばスピニングカップシークエネーターの使用により、N末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るために十分な程度に精製される。一部の実施形態では、単離されたRPPは、クーマシーブルーまたは銀染色剤による検出を用いる還元または非還元条件下でのゲル電気泳動(例えば、SDS-PAGE)により、均一になるまで精製される。単離されたRPPは、RPPの天然環境の少なくとも1つの成分が存在しないので、組換え細胞内の元位置のRPPを含む。一部の態様では、単離されたRPPまたは単離された核酸は、少なくとも1つの精製ステップにより調製される。一部の実施形態では、単離されたRPPまたは単離された核酸は、少なくとも80重量%、85重量%、90重量%、95重量%または99重量%に精製される。一部の実施形態では、単離されたRPPまたは単離された核酸は、少なくとも80体積%、85体積%、90体積%、95体積%または99体積%に精製される。一部の実施形態では、単離されたRPPまたは単離された核酸は、少なくとも85重量%、90重量%、95重量%、98重量%、99重量%~100重量%RPPまたは核酸を含む溶液として提供される。一部の実施形態では、単離されたRPPまたは単離された核酸は、少なくとも85体積%、90体積%、95体積%、98体積%、99体積%~100体積%RPPまたは核酸を含む溶液として提供される。
【0059】
「親和性」は、分子(例えば、RPP)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原またはエピトープ)との非共有結合性相互作用の総計の強度を指す。別段の指示がない限り、本明細書で使用される場合、「親和性」は、結合対のメンバー(例えば、RPPおよび抗原またはエピトープ)間の1:1相互作用を表す、固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性を、解離平衡定数(KD)により表すことができる。解離平衡定数に寄与する動態成分は、より詳細に下記で説明される。親和性は、本明細書に記載のものを含む、当技術分野で公知の一般的な方法により測定することができる。例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)技術(例えば、BIACORE(登録商標))またはバイオレイヤー干渉法(例えば、FORTEBIO(登録商標))を使用して、親和性を判定することができる。
【0060】
標的分子とのRPPの結合に関して、特定の抗原(例えば、ポリペプチド標的)または特定の抗原上のエピトープ「に結合する」、「に特異的に結合すること」、「と特異的に結合する」、「に対して特異的」、「に選択的に結合する」、および「に対して選択的」という用語は、非特異的または非選択的相互作用(例えば、非標的分子との)とは明らかに異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、標的分子との結合を測定し、それを非標的分子との結合と比較することにより、測定することができる。特異的結合は、標的分子上の認識されるエピトープを模倣する対照分子との競合により判定することもできる。その場合、特異的結合は、RPPの標的分子との結合が対照分子により競合的に阻害される場合に示される。
【0061】
用語「kd」(秒-1)は、本明細書で使用される場合、特定のABP-抗原相互作用の解離速度定数を指す。この値は、koff値とも呼ばれる。
【0062】
用語「ka」(M-1×秒-1)は、本明細書で使用される場合、特定のABP-抗原相互作用の会合速度定数を指す。この値は、kon値とも呼ばれる。
【0063】
用語「KD」(M)は、本明細書で使用される場合、特定のABP-抗原相互作用の解離平衡定数を指す。KD=kd/ka。
【0064】
用語「KA」(M-1)は、本明細書で使用される場合、特定のABP-抗原相互作用の会合平衡定数を指す。KA=ka/kd。
【0065】
「イムノコンジュゲート」は、1つまたは複数の異種分子とコンジュゲートしているRPPである。
【0066】
「エフェクター機能」は、抗体のFc領域により媒介される生物活性を指し、これらの活性は、抗体アイソタイプによって異なり得る。抗体エフェクター機能の例としては、補体依存性細胞傷害(CDC)を活性化するためのC1q結合、抗体依存性細胞傷害(ADCC)および抗体依存性細胞ファゴサイトーシス(ADCP)を活性化するためのFc受容体結合が挙げられる。
【0067】
2つまたはそれより多くのRPPに関連して本明細書で使用される場合、「と競合する」または「と交差競合する」という用語は、2つまたはそれより多くのRPPが、抗原(例えば、肺炎球菌の多糖)との結合について競合することを示す。1つの例示的アッセイでは、肺炎球菌の多糖で表面を被覆し、それを第1の肺炎球菌の多糖RPPと接触させ、その後、第2の肺炎球菌の多糖RPPを添加する。別の例示的アッセイでは、第1の肺炎球菌の多糖RPPで表面を被覆し、それを肺炎球菌の多糖と接触させ、次いで、第2の肺炎球菌の多糖RPPを添加する。第1の肺炎球菌の多糖RPPの存在が、どちらかのアッセイにおいて第2の肺炎球菌の多糖RPPの結合を低減させる場合には、これらのRPPは競合する。「と競合する」という用語は、1つのRPPが別のRPPの結合を低減させるが、逆の順序でRPPが添加されたときには競合が観察されない、RPPの組合せも含む。しかし、一部の実施形態では、第1および第2のRPPは、それらが添加される順序に関係なく、互いの結合を阻害する。一部の実施形態では、1つのRPPは、別のRPPのその抗原への結合を少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%低減させる。当業者は、競合アッセイで使用される抗体の濃度を肺炎球菌の多糖に対するRPPの親和性およびRPPの結合価に基づいて選択することができる。この定義に記載のアッセイは、説明のためのものであり、当業者は、任意の好適なアッセイを利用して、抗体が互いに競合するかどうかを判定することができる。好適なアッセイは、Cox et al., "Immunoassay Methods," in Assay Guidance Manual [Internet], Updated December 24, 2014 (www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK92434/; accessed September 29, 2015);Silman et al., Cytometry, 2001, 44:30-37;およびFinco et al., J. Pharm. Biomed. Anal., 2011, 54:351-358に記載されており、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0068】
用語「エピトープ」は、RPPと特異的に結合する抗原の部分を意味する。エピトープは、多くの場合、表面露出アミノ酸残基および/または糖側鎖からなり、特異的三次元構造特性はもちろん特異的電荷特性も有し得る。立体構造エピトープと非立体構造エピトープは、前者の立体構造エピトープとの結合が変性溶媒の存在下で失われることがあるが、後者の非立体構造エピトープとの結合がそうではないことで、区別される。エピトープは、結合に直接関与するアミノ酸残基と、結合に直接関与しない他のアミノ酸残基とを含み得る。RPPが結合するエピトープは、例えば、肺炎球菌の多糖血清型とのRPP結合の試験などの、公知のエピトープ決定技術を使用して、決定することができる。
【0069】
ポリペプチド配列と参照配列との「同一性」パーセントは、配列をアラインさせ、最大配列同一性パーセントを達成するために必要に応じてギャップを導入した後、参照配列中のアミノ酸残基と同一であるポリペプチド配列中のアミノ酸残基のパーセンテージと定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定するためのアラインメントは、当技術分野における技能の範囲内である様々な方法で、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、MEGALIGN(DNASTAR)、CLUSTALW、CLUSTAL OMEGAまたはMUSCLEソフトウェアなどの公開されているコンピュータソフトウェアを使用して、達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列をアラインさせるための適切なパラメーターを決定することができる。
【0070】
「保存的置換」または「保存的アミノ酸置換」は、あるアミノ酸の化学的にまたは機能的に類似したアミノ酸での置換を指す。類似したアミノ酸をもたらす保存的置換表は、当技術分野において周知である。例として、表2~4で提供されるアミノ酸の群は、一部の実施形態では、互いに保存的置換とみなされる。
【表2-1】
【表2-2】
【表3】
【表4】
【0071】
追加の保存的置換は、例えば、Creighton, Proteins: Structures and Molecular Properties 2nd ed. (1993) W. H. Freeman & Co., New York, NYにおいて見つけることができる。親RPP中のアミノ酸残基の1つまたは複数の保存的置換を行うことにより生成されるRPPは、「保存的に改変されたバリアント」と呼ばれる。
【0072】
用語「処置すること」(およびその語尾変化形、例えば「処置する」または「処置」)は、必要な対象における疾患または状態の自然な経過を変更する目的での臨床的介入を指す。処置は、発病予防のために行われることもあり、臨床病理学的検査の過程で行われることもある。処置の望ましい効果としては、疾患の発生もしくは再発を防止すること、症状を軽減すること、疾患の任意の直接的もしくは間接的病理学的帰結を和らげること、転移を防止すること、疾患進行速度を低下させること、病状を改善または緩和すること、および寛解、または予後改善が挙げられる。
【0073】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」または「有効量」という用語は、対象に投与されたときに疾患または障害を処置するのに有効である、本明細書で提供されるRPPまたは医薬組成物の量を指す。
【0074】
本明細書で使用される場合、用語「対象」は、哺乳動物対象を意味する。例示的な対象としては、ヒト、サル、イヌ、ネコ、マウス、ラット、雌ウシ、ウマ、ラクダ、ヤギ、ウサギおよびヒツジが挙げられる。ある特定の実施形態では、対象は、ヒトである。一部の実施形態では、対象は、本明細書で提供されるRPPで処置することができる疾患または状態を有する。一部の態様では、疾患または状態は、がんである。一部の態様では、疾患または状態は、ウイルス感染症である。
【0075】
用語「添付文書」は、治療用または診断用製品(例えば、キット)の市販のパッケージ内に通例含まれている使用説明書であって、そのような治療用または診断用製品の使用に関する適応症、使用法、投薬量、投与、併用療法、禁忌および/または警告についての情報を含む説明書を指すために使用される。
【0076】
用語「細胞傷害剤」は、本明細書で使用される場合、細胞の機能を阻害もしくは防止するおよび/または細胞死もしくは破壊を引き起こす物質を指す。
【0077】
「化学療法剤」は、がんの処置に有用な化学化合物を指す。化学療法剤は、がんの成長を促進することができるホルモンの効果を調節、低下、遮断または阻害するように作用する、「抗ホルモン剤」または「内分泌療法薬」を含む。
【0078】
用語「細胞増殖抑制剤」は、in vitroまたはin vivoのどちらかで細胞の成長を抑止する、化合物または組成物を指す。一部の実施形態では、細胞増殖抑制剤は、S期の細胞のパーセンテージを低下させる薬剤である。一部の実施形態では、細胞増殖抑制剤は、S期の細胞のパーセンテージを少なくとも約20%、少なくとも約40%、少なくとも約60%、または少なくとも約80%低下させる。
【0079】
用語「腫瘍」は、あらゆる新生物細胞成長および増殖を悪性であるか良性であるかを問わずに指し、ならびにあらゆる前がん性およびがん性細胞および組織を指す。用語「がん」、「がん性の」、「がん増殖性障害」、「増殖性障害」、および「腫瘍」は、本明細書で言及される場合、相互排他的ではない。用語「細胞増殖性障害」および「増殖性障害」は、ある程度の異常細胞増殖を伴う障害を指す。一部の実施形態では、細胞増殖性障害は、がんである。
【0080】
用語「医薬組成物」は、含有する活性成分の生物活性が対象の処置に有効であることを可能にするような形態である調製物であって、対象にとって許容できないほど毒性である追加の成分を含有しない調製物を指す。
【0081】
用語「モジュレートする」および「モジュレーション」は、述べられている可変要素を低減させることもしくは阻害することまたは、代替的に、活性化することもしくは増加させることを指す。
【0082】
用語「増加させる」および「活性化する」は、述べられている可変要素の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍またはそれより大きな増加を指す。
【0083】
用語「低下させる」および「阻害する」は、述べられている可変要素の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%の、2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1、20分の1、50分の1、100分の1への、またはそれより大きな減少を指す。
【0084】
用語「作動させる」は、受容体の活性化に関連する生物学的応答を誘導するための受容体シグナル伝達の活性化を指す。「アゴニスト」は、受容体と結合してそれを作動させる実在である。
【0085】
用語「拮抗する」は、受容体の活性化に関連する生物学的応答を阻害するための受容体シグナル伝達の阻害を指す。「アンタゴニスト」は、受容体と結合してそれに拮抗する実在である。
【0086】
用語「エフェクターT細胞」は、ヘルパーT(すなわち、CD4+)細胞、および細胞傷害性(すなわち、CD8+)T細胞を含む。CD4+エフェクターT細胞は、B細胞の形質細胞およびメモリーB細胞への成熟、ならびに細胞傷害性T細胞およびマクロファージの活性化を含む、いくつかの免疫学的プロセスの発生に寄与する。CD8+エフェクターT細胞は、ウイスル感染細胞および腫瘍細胞を破壊する。エフェクターT細胞に関するさらなる情報については、その全体が参照により本明細書に組み込まれるSeder and Ahmed, Nature Immunol., 2003, 4:835-842を参照されたい。
【0087】
用語「調節性T細胞」は、例えばエフェクターT細胞を抑制することにより、免疫学的寛容を調節する細胞を含む。一部の態様では、調節性T細胞は、CD4+CD25+Foxp3+表現型を有する。一部の態様では、調節性T細胞は、CD8+CD25+表現型を有する。調節性T細胞に関するさらなる情報については、その全体が参照により本明細書に組み込まれるNocentini et al., Br. J. Pharmacol., 2012, 165:2089-2099を参照されたい。
【0088】
用語「樹状細胞」は、ナイーブT細胞を活性化することができ、B細胞の成長および分化を刺激することができる、プロフェッショナル抗原提示細胞を指す。
【0089】
用語「形質細胞」は、多量の抗体を分泌する白血球細胞を指す。これらは、血漿およびリンパ系によって輸送される。B細胞(例えば、胚中心ナイーブB細胞またはメモリーB細胞のいずれか)は、形質細胞に分化し、前駆体B細胞の受容体を厳密にモデル化した抗体分子を産生する。一旦、血中およびリンパ中に放出されると、これらの抗体分子は、標的抗原(生体異物)に結合し、その中和または破壊を開始する。最後まで分化した形質細胞は、比較的少ない表面抗原を発現し、CD19およびCD20などの一般的な汎B細胞マーカーを発現しない。代わりに、形質細胞は、CD138、CD78、およびインターロイキン6受容体のさらなる発現によって、フローサイトメトリーによって同定される。ヒトでは、CD27は形質細胞では優れたマーカーであり、ナイーブB細胞はCD27-であり、メモリーB細胞はCD27+であり、形質細胞はCD27++である。表面抗原CD138(シンデカン-1)は、高レベルで発現される。別の重要な表面抗原は、CD319(SLAMF7)である。この抗原は、正常なヒト形質細胞で高レベルで発現される。この抗原は、多発性骨髄腫における悪性形質細胞でも発現される。ex vivoで急速に消失するCD138と比較して、CD319の発現はかなり安定している。
【0090】
用語「形質芽細胞」は、抗原による刺激を受けると、メモリーB細胞などの活性化B細胞から分化する、末梢血中の抗体分泌細胞を指す。形質細胞系列のものと考えられる最も未熟な血液細胞が形質芽細胞である。形質芽細胞は、B細胞より多いが、形質細胞より少ない抗体を分泌する。形質芽細胞は急速に分裂し、依然として、抗原を内在化させ、抗原をT細胞に対して提示することが可能である。細胞は、この状態で数日間留まり、次いで、死滅するかまたは成熟した、十分に分化した形質細胞に変更不能に分化する。成熟B細胞の形質細胞への分化は、転写因子Blimp-1/PRDM1およびIRF4に依存する。
【0091】
用語「メモリーB細胞」は、一次感染後の胚中心内で形成されるB細胞亜型を指し、再感染の場合に加速され、かつより強力な抗体媒介性免疫応答(二次免疫応答としても公知)を生じる際に重要である。メモリーB細胞は、それらの特異的抗原によって活性化されるまで、抗体を分泌しない。
【0092】
用語「ナイーブB細胞」は、抗原に曝露されていないB細胞を指す。一旦抗原に曝露されると、ナイーブB細胞は、元々結合した抗原に対して特異的な抗体を分泌するメモリーB細胞かまたは形質細胞のいずれかになる。形質細胞は、循環血液中で長く持続せず、これは、非常に長期間持続するメモリー細胞と対照的である。
【0093】
用語「力価」は、特定のエピトープまたは抗原を認識する抗体を、生物がどの程度の量を産生するかの尺度を指し、依然として陽性の結果を与える最大希釈(連続希釈において)の逆数として表現される。酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)は、抗体価を決定する一般的手段である。
【0094】
用語「末梢血」は、末梢血管を通って移動する血液を指す。末梢血は、概して、静脈穿刺によって(放血とも呼ばれる)、または少量に対しては針で指を刺すことによって得られる。
【0095】
用語「ワクチン」は、媒介物であって、身体の免疫系を刺激し、その媒介物を脅威として認識し、それを破壊し、さらに将来遭遇する可能性のあるその媒介物に関連する微生物のいずれかをさらに認識および破壊する、媒介物を指す。ワクチンという用語は、特定の疾患に対して活性な獲得免疫をもたらす生物学的調製物を指し得る。ワクチンは、疾患を引き起こす微生物に似た媒介物を含有することが多く、微生物の弱毒化形態もしくは死滅形態、その毒素、またはその表面タンパク質のうちの1つから作製されることが多い。ワクチンは、予防的であってもよく(例:天然のまたは「野生の」病原体による将来の感染の影響を防止または改善すること)、または治療的であってもよい(例えば、がんに対するワクチンが研究されている)。より一般的には、ワクチンという用語は、免疫応答を誘導する任意の媒介物を指し得る。例えば、がん細胞を使用して、ある特定のがん抗原に対して個体にワクチン接種することができる。いくつかのワクチンは、化学物質、熱、または放射線により破壊された、不活性化されたが、以前は有毒であった微生物を含有する。例としては、ポリオワクチン、A型肝炎ワクチン、狂犬病ワクチンおよびいくつかのインフルエンザワクチンが挙げられる。いくつかのワクチンは、生きた、弱毒化された微生物を含有する。これらの多くは、それらの有毒な特性を無効にするか、または密接に関連するが危険性の低い生物を使用する条件下で培養され、広範な免疫応答を生じる、活性なウイルスである。最も弱毒化されたワクチンはウイルスのものであるが、実際は、いくつかは細菌のものである。例としては、ウイルス性疾患である黄熱病、はしか、流行性耳下腺炎、および風疹、ならびに細菌性疾患である腸チフスが挙げられる。CalmetteおよびGuerinによって開発された生のMycobacterium tuberculosisワクチンは、伝染性の株から作製されないが、ワクチンに対する免疫応答を誘発するために使用される、有毒な方法で改変された「BCG」と呼ばれる株を含有する。Yersinia pestis EV株を含有する生の弱毒化ワクチンは、伝染病の免疫化のために使用される。弱毒化ワクチンは、いくつかの利点および不利な点を有する。弱毒化ワクチンは、概して、より持続性の高い免疫学的応答を惹起し、健康な成人にとって好ましい種類である。しかし、弱毒化ワクチンは、免疫無防備状態の個体において使用するのに安全でない場合があり、ごく稀に、悪性形態に変異し、疾患を引き起こす。トキソイドワクチンは、微生物よりも病気を引き起こす不活性化毒素化合物から作製される。トキソイドベースのワクチンの例としては、破傷風およびジフテリアが挙げられる。トキソイドワクチンは、その有効性について公知である。全てのトキソイドが微生物に対するものではなく、例えば、Crotalus atroxのトキソイドを使用してガラガラヘビの咬傷に対してイヌにワクチン接種する。タンパク質サブユニットワクチンでは、免疫系に不活性化または弱毒化微生物(「全媒介物(whole-agent)」のワクチンを構成することになる)を導入するよりもむしろ、その断片が免疫応答を引き起こし得る。例としては、ウイルスの表面タンパク質のみから構成されるB型肝炎ウイルスに対するサブユニットワクチン(以前は、慢性的に感染した患者の血清から抽出されたが、現在は、ウイルス遺伝子の酵母への組換えによって産生される)または食用藻類ワクチン、ウイルスの主要キャプシドタンパク質から構成されるヒトパピローマウイルス(HPV)に対するウイルス様粒子(VLP)ワクチン、ならびにインフルエンザウイルスのヘマグルチニンおよびノイラミニダーゼサブユニットが挙げられる。コンジュゲートワクチンとしては、ある特定の細菌は、免疫原性の乏しい多糖外被を有する。これらの外被をタンパク質(例えば、毒素)に連結することによって、免疫系は、それがタンパク質抗原であるかのように、多糖を認識させられ得る。この手法をB型Haemophilus influenzaeワクチンにおいて使用する。樹状細胞ワクチンは、抗原を体内の白血球細胞に提示し、それによって免疫反応を刺激するために、樹状細胞を抗原と組み合わせる。これらのワクチンは、脳腫瘍の処置に関していくつかの陽性の予備調査結果を示し、悪性黒色腫においても試験されている。組換えベクターワクチンでは、1種の微生物の生理と別の微生物のDNAを組み合わせることによって、複雑な感染プロセスを有する疾患に対して免疫をもたらし得る。例は、コンゴのエボラ出血熱と闘うために2018年に使用されている、Merckに対して認可されたRVSV-ZEBOVワクチンである。媒介物のDNAから作出された、代替の、DNAワクチン接種と呼ばれるワクチン接種に対する実験的手法が開発中である。提唱された機序は、ウイルスまたは細菌のDNAのヒトまたは動物の細胞への挿入である(および発現であり、電気穿孔の使用によって増強され、免疫系の認識を誘発する)。発現されたタンパク質を認識する免疫系のいくつかの細胞は、これらのタンパク質およびこれらを発現する細胞に対する攻撃を開始する。これらの細胞は非常に長時間生存するため、これらのタンパク質を正常に発現する病原体は、より後の時間でも遭遇し、免疫系によって即座に攻撃されることになる。DNAワクチンの1つの可能な利点は、これらが産生および保存するのが非常に容易であるということである。ワクチンは一価(monovalent)(単価(univalent)とも呼ばれる)であっても多価(multivalent)(多価(polyvalent)とも呼ばれる)であってもよい。一価(monovalent)のワクチンは、単一の抗原または単一の微生物を免疫化するように設計される。多価(multivalent)または多価(polyvalent)のワクチンは、同じ微生物の2種もしくはそれより多い株に対して、または2種またはそれより多い微生物を免疫化するように設計される。多価(multivalent)のワクチンの価数は、ギリシャ語またはラテン語の接頭辞で示されてもよい(例えば、四価(tetravalent)または四価(quadrivalent))。ある特定の場合、単価(monovalent)のワクチンは、強力な免疫応答を迅速に発症するのに好ましい場合がある。
【0096】
用語「高度免疫」は、これが、特異的な生物または抗原に対して高力価の抗体を有するドナーの血漿から調製されることを除いて、静脈内免疫グロブリン(IVIg)に類似するポリクローナル抗体調製物を指す。高度免疫という用語は、「高度免疫ガンマグロブリン」および「高度免疫グロブリン」という用語と交換可能に使用されることが多い。それに対して高度免疫グロブリンを利用することができるいくつかの媒介物として、B型肝炎、狂犬病、破傷風毒素、水痘帯状疱疹などが挙げられる。高度免疫グロブリンの投与によって、媒介物に対する患者の「受動」免疫がもたらされる。これは、「能動」免疫をもたらすワクチンと対照的である。しかし、ワクチンがこの目的を達成するのにはるかに長い時間かかる一方で、高度免疫グロブリンは、即時的で「受動的な」短期間の免疫をもたらす。
【0097】
用語「in vivo」は、「生体内で」と解釈され、様々な生物学的実体の効果が、組織抽出物または死んだ生物とは対照的に、生きた生物または細胞全体、通常は、ヒトを含む動物、および植物に関して試験される科学的研究を指す。これは、in vitroで(「試験管内で」)、すなわち、試験管、ペトリ皿等を使用して実験室環境で行われる実験と混同されるべきではない。in vivoでの調査の例としては、細菌感染の効果を精製した細菌毒素の効果と比較することによる疾患の病因;一般的には、非抗生物質、抗ウイルス薬、および新薬の開発;ならびに新たな手術手順が挙げられる。結論として、動物の試験および臨床試験は、in vivoでの調査の主要なエレメントである。in vivoでの検査は、これが、生きた対象に関する実験の全体的効果を観察するのにより好適であるため、in vitroよりも用いられる頻度が高い。
【0098】
用語「活性」は、抗原、ワクチン、タンパク質、エピトープ、細胞、細菌、またはウイルスに対するRPPまたは抗体の定量的測定を指す。活性は、in vivoまたはin vitroでの方法を使用して評定することができる。
【0099】
用語「組換え体」は、生細胞内の組換えDNAの発現から生じるタンパク質を指す。組換えDNAは、DNAの少なくとも2つの別々のセグメントの組合せによって作出された1つのDNAに対する一般名である。
【0100】
用語「in vitro」は、「試験管内で」と解釈され、それらの正常な生物学的状況の外側で、微生物、細胞、または生体分子に関して実施される科学的研究を指す。口語的に呼ばれる「試験管実験」、生物学におけるこれらの研究およびその学問分野の下位区分は、伝統的に、試験管、フラスコ、ペトリ皿、およびマイクロタイタープレートなどの実験器具内で行われる。それらの通常の生物学的環境から単離された生物の成分を使用して行われる研究によって、生物全体に関して行われ得るよりもより詳細であるかまたはより簡便な分析が可能になるが、しかし、in vitro実験から得られる結果は、生物全体に関する効果を完全にも正確にも予測できない場合がある。in vitroでの実験とは対照的に、in vivoでの研究は、ヒトを含む動物、および植物全体で行われるものである。
【0101】
用語「中和」は、ウイルスがそれらの標的細胞に侵入するために使用するそれらの部位を遮断する特異的抗体の能力を指す。中和抗体の効果は、これらがこの抗原に対する特異性を欠く場合には、過剰に抗体が産生された場合であっても無視することができる場合がある。特異的抗体の産生は、次の曝露時のより迅速な応答のために学習され得る。同一源の媒介物の低減または破壊は部分的であっても完全であってもよく、それを他の細胞に対してもはや感染性でも病原性でもなくすることが可能である。
【0102】
ポリペプチド(例えば、抗体)の「バリアント」は、天然ポリペプチド配列と比べて1つまたは複数のアミノ酸残基がアミノ酸配列に挿入されている、アミノ酸配列から欠失している、および/またはアミノ酸配列に置換されている、アミノ酸配列を含み、天然ポリペプチドと本質的に同じ生物活性を保持する。ポリペプチドの生物活性は、当技術分野における標準的技術を使用して測定することができる(例えば、バリアントが抗体である場合、その活性を本明細書に記載の結合アッセイにより試験することができる)。本発明のバリアントは、断片、アナログ、組換えポリペプチド、合成ポリペプチド、および/または融合タンパク質を含む。
【0103】
ポリペプチドの「誘導体」は、例えば、別の化学的部分、例えばポリエチレングリコール、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン)など、とのコンジュゲーション、リン酸化、およびグリコシル化によって、化学的に改変されているポリペプチド(例えば、抗体)である。別段の指示がない限り、用語「抗体」は、2本の全長重鎖と2本の全長軽鎖とを含む抗体に加えて、その誘導体、バリアント、断片および突然変異タンパク質を含み、これらの例は、下に記載される。
【0104】
ヌクレオチド配列は、調節配列がヌクレオチド配列の発現(例えば、発現のレベル、タイミングまたは位置)に影響を与える場合、調節配列に「作動可能に連結」されている。「調節配列」は、それが作動可能に連結されている核酸の発現(例えば、発現のレベル、タイミングまたは位置)に影響を与える、核酸である。調節配列は、例えば、調節される核酸に直接その効果を発揮することができ、または1つもしくは複数の分子(例えば、調節配列および/もしくは核酸と結合するポリペプチド)の作用によってその効果を発揮することができる。調節配列の例としては、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)が挙げられる。調節配列のさらなる例は、例えば、Goeddel, 1990, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CAおよびBaron et al., 1995, Nucleic Acids Res. 23:3605-06に記載されている。
【0105】
「宿主細胞」は、核酸、例えば本発明の核酸を発現させるために使用することができる細胞である。宿主細胞は、原核生物、例えば、E.coliであってもよく、または真核生物、例えば、単細胞真核生物(例えば、酵母もしくは他の真菌)、植物細胞(例えば、タバコもしくはトマト植物細胞)、動物細胞(例えば、ヒト細胞、サル細胞、ハムスター細胞、ラット細胞、マウス細胞、もしくは昆虫細胞)もしくはハイブリドーマであってもよい。宿主細胞の例としては、CS-9細胞、サル腎細胞のCOS-7系(ATCC CRL 1651)(Gluzman et al., 1981, Cell 23:175を参照されたい)、L細胞、C127細胞、3T3細胞(ATCC CCL 163)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞もしくはそれらの派生株、例えば、Veggie CHOおよび無血清培地で成長する関連細胞系(Rasmussen et al., 1998, Cytotechnology 28:31を参照されたい)、HeLa細胞、BHK(ATCC CRL 10)細胞系、アフリカミドリザル腎細胞系CV1に由来するCV1/EBNA細胞系(ATCC CCL 70)(McMahan et al., 1991, EMBO J. 10:2821を参照されたい)、ヒト胎児由来腎細胞、例えば、293、293 EBNAもしくはMSR 293、ヒト上皮A431細胞、ヒトColo205細胞、他の形質転換霊長類細胞系、正常二倍体細胞、一次組織、一次外植片のin vitro培養から誘導される細胞株、HL-60、U937、HakまたはJurkat細胞が挙げられる。典型的には、宿主細胞は、ポリペプチドをコードする核酸で形質転換することができるまたはそのような核酸をトランスフェクトすることができる培養細胞であり、したがって、そのような核酸は、宿主細胞において発現され得る。
【0106】
句「組換え宿主細胞」は、発現させるべき核酸で形質転換されたまたはそのような核酸がトランスフェクトされた宿主細胞を示すために使用され得る。宿主細胞は、核酸を含むが、調節配列が宿主細胞に導入され、その結果、調節配列が核酸と作動可能に連結されない限り、その核酸を所望のレベルで発現しない細胞でもあり得る。用語宿主細胞が特定の対象細胞だけでなく、そのような細胞の子孫または潜在的な子孫も指すことは、理解されよう。例えば突然変異または環境の影響によって、ある特定の改変が後の世代で生じる可能性があるため、そのような子孫は、実際には親細胞と同一でない可能性があるが、それでもやはり、本明細書で使用されるこの用語の範囲内に含まれる。
7.2.他の解釈規定
【0107】
本明細書で述べられている範囲は、述べられている集団を含む、範囲内の値の全てについての簡略表記であると解される。例えば、1~50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49および50からなる群からの任意の数、数の組合せまたは部分的範囲を含むと解される。
【0108】
別段の指示がない限り、1つまたは複数の立体中心を有する化合物への言及は、その化合物の各々の立体異性体、およびその化合物の立体異性体の全ての組合せを意図している。
7.3.RPPおよびRPPライブラリー
【0109】
本明細書に記載のRPPライブラリーの各メンバーは、抗原に特異的に結合するポリペプチドであり、例えば、抗体または抗体断片である。一部の実施形態では、RPPは、本明細書に開示される重鎖および軽鎖CDR3配列の同族対を含む。一部の実施形態では、RPPは、scFvである。一部の実施形態では、RPPは、全長抗体である。
【0110】
一部の実施形態では、RPPは、抗体断片である。Fab断片は、VL、VH、CLおよびCH1ドメインを有する、一価断片であり;F(ab’)2断片は、ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結された2つのFab断片を有する二価断片であり;Fd断片は、VHおよびCH1ドメインを有し;Fv断片は、抗体の単一アームのVLおよびVHドメインを有し;dAb断片は、VHドメイン、VLドメイン、またはVHまたはVLドメインの抗原結合性断片を有する(米国特許第6,846,634号、同第6,696,245号、米国特許出願公開第05/0202512号、同第04/0202995号、同第04/0038291号、同第04/0009507号、同第03/0039958号、Ward et al., Nature 341:544-546, 1989)。
【0111】
天然に存在する免疫グロブリン鎖は、相補性決定領域またはCDRとも呼ばれる、3つの超可変領域によって結合された比較的保存されるフレームワーク領域(FR)の同じ一般構造を示す。軽鎖および重鎖両方が、N末端からC末端へ、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4を含む。各ドメインへのアミノ酸の割り当ては、Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed., US Dept. of Health and Human Services, PHS, NIH, NIH Publication no.91-3242, 1991におけるKabat et al.の定義に従う。
【0112】
「完全ヒト抗体」とも呼ばれる、「ヒト抗体」という用語は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する1つまたは複数の可変および定常領域を有する全ての抗体を含む。一実施形態では、可変および定常ドメインの全ては、ヒト免疫グロブリン配列(完全ヒト抗体)に由来する。これらの抗体は、ヒト重鎖および/または軽鎖コード遺伝子に由来する抗体を発現するように遺伝子改変されるマウスの目的の抗原での免疫化による方法を含む、様々な方法で調製することができ、これらの方法の例は、下に記載される。
【0113】
ヒト化抗体は、1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失および/または付加の点で非ヒト種に由来する抗体の配列とは異なる配列を有し、したがって、ヒト化抗体は、それがヒト対象に投与されたとき、非ヒト種抗体と比較して、免疫応答を誘導する可能性が低く、および/またはさほど激しくない免疫応答を誘導する。一実施形態では、非ヒト種抗体の重鎖および/または軽鎖のフレームワークおよび定常ドメイン内のある特定のアミノ酸を、ヒト化抗体を産生するように突然変異させる。別の実施形態では、ヒト抗体からの定常領域を非ヒト種の可変ドメインに融合させる。別の実施形態では、非ヒト抗体の1つまたは複数のCDR配列内の1つまたは複数のアミノ酸残基を、それがヒト対象に投与されたとき、非ヒト抗体の推定免疫原性を低下させるように変化させ、変化させるアミノ酸残基は、抗体のその抗原との免疫特異的結合にとって重要でないか、または加えられるアミノ酸配列に対する変化は、保存的変化であり、したがって、ヒト化抗体の抗原との結合は、非ヒト抗体の抗原との結合よりも有意に悪いものでない。ヒト化抗体を作製する方法の例は、米国特許第6,054,297号、同第5,886,152号および同第5,877,293号において見つけることができる。
【0114】
抗体の断片またはアナログを、当業者は、本明細書の教示に従って、および当技術分野において周知の技術を使用して、容易に調製することができる。断片またはアナログの好ましいアミノおよびカルボキシ末端は、機能的ドメインの境界付近に存在する。構造ドメインおよび機能的ドメインは、ヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列データを公的または私設配列データベースと比較することにより、同定することができる。コンピュータによる比較方法を使用して、構造および/または機能が分かっている他のタンパク質中に存在する配列モチーフまたは予測タンパク質立体構造ドメインを同定することができる。折り重なって公知の三次元構造になるタンパク質配列を同定する方法も公知である。例えば、Bowie et al., 1991, Science 253:164を参照されたい。
【0115】
RPPは、いずれの合成タンパク質または遺伝子操作されたタンパク質であってもよい。例えば、抗体断片は、軽鎖可変領域からなる単離された断片;重鎖および軽鎖の可変領域からなる「Fv」断片;軽鎖および重鎖可変領域がペプチドリンカーにより接続されている、組換え単鎖ポリペプチド分子(scFvタンパク質)を含む。
【0116】
抗体断片のもう1つの形態は、抗体の1つまたは複数の相補性決定領域(CDR)を含むペプチドである。CDR(「最小認識単位」または「超可変領域」とも呼ばれる)を分子に共有結合であるいは非共有結合で組み込んで、その分子を抗原結合タンパク質にすることができる。CDRは、目的のCDRをコードするポリヌクレオチドを構築することにより得ることができる。そのようなポリヌクレオチドは、例えば、抗体産生細胞のmRNAを鋳型として使用して、ポリメラーゼ連鎖反応を使用して可変領域を合成することにより、調製される(例えば、Larrick et al., Methods: A Companion to Methods in Enzymology 2:106, 1991;Courtenay Luck, "Genetic Manipulation of Monoclonal Antibodies," in Monoclonal Antibodies: Production, Engineering and Clinical Application, Ritter et al. (eds.), page 166 (Cambridge University Press 1995);およびWard et al., "Genetic Manipulation and Expression of Antibodies," in Monoclonal Antibodies: Principles and Applications, Birch et al., (eds.), page 137 (Wiley Liss, Inc. 1995)を参照されたい)。
【0117】
RPPの可変領域ドメインは、いずれの天然に存在する可変ドメインまたはその操作されたバージョンであってもよい。操作されたバージョンとは、組換えDNA操作技術を使用して作出された可変領域ドメインを意味する。そのような操作されたバージョンは、例えば、特定の抗体可変領域から、特定の抗体のアミノ酸配列におけるまたはそのようなアミノ酸配列への、挿入、欠失または変化により、作出されたものを含む。特定の例としては、第1の抗体からの少なくとも1つのCDRおよび必要に応じて1つまたは複数のフレームワークアミノ酸と、第2の抗体からの可変領域ドメインの残部とを含有する、操作された可変領域ドメインを含む。
【0118】
可変領域ドメインを、少なくとも1つの他の抗体またはその断片のC末端側のアミノ酸に共有結合させることができる。したがって、例えば、可変領域ドメインに存在するVHドメインを、免疫グロブリンCH1ドメインまたはその断片に連結させることができる。同様に、VLドメインをCKドメインまたはその断片に連結させることができる。このように、例えば、抗体は、抗原結合性ドメインが、会合VHおよびVLドメインを含有し、これらのドメインのC末端がCH1およびCKドメインにそれぞれ共有結合で連結されている、Fab断片であり得る。CH1ドメインをさらなるアミノ酸で伸長させて、例えば、Fab’断片に見られるようなヒンジ領域もしくはヒンジ領域ドメインの一部分を得ることができ、または抗体CH2およびCH3ドメインなどのさらなるドメインを得ることができる。
【0119】
本明細書に記載されるように、RPPは、本明細書に開示される重鎖および軽鎖CDR3配列の同族対を含む。例えば、CDRを、既知抗体フレームワーク領域(IgG1、IgG2など)に組み込むことができ、または好適なビヒクルとコンジュゲートさせてその半減期を拡張することができる。好適なビヒクルとしては、Fc、ポリエチレングリコール(PEG)、アルブミン、トランスフェリンおよびこれらに類するものが挙げられるが、それらに限定されない。これらおよび他の好適なビヒクルは、当技術分野において公知である。そのようなコンジュゲートCDRペプチドは、単量体形態、二量体形態、三量体形態または他の形態であり得る。一実施形態では、1つまたは複数の水溶性ポリマーが、結合剤の1カ所または複数ヶ所の特定の位置に、例えばアミノ末端に、結合される。
【0120】
ある特定の実施形態では、RPPにおける抗体は、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、またはポリプロピレングリコールを含むがこれらに限定されない、結合している1つまたは複数の水溶性ポリマーを含む。例えば、米国特許第4,640,835号、同第4,496,689号、同第4,301,144号、同第4,670,417号、同第4,791,192号および同第4,179,337号を参照されたい。ある特定の実施形態では、誘導体結合剤は、モノメトキシ-ポリエチレングリコール、デキストラン、セルロース、もしくは他の炭水化物に基づくポリマー、ポリ-(N-ビニルピロリドン)-ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)およびポリビニルアルコールのうちの1つまたは複数、ならびにこのようなポリマーの混合物を含む。ある特定の実施形態では、1つまたは複数の水溶性ポリマーは、1つまたは複数の側鎖にランダムに結合される。ある特定の実施形態では、PEGは、抗体などの結合剤の治療能を向上させるように作用することができる。ある特定のそのような方法は、例えば、あらゆる目的でこれにより参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,133,426号において論じられている。
【0121】
RPPは、例えば、天然に存在する免疫グロブリンの構造を有し得る。「免疫グロブリン」は、四量体分子である。天然に存在する免疫グロブリンでは、各四量体は、ポリペプチド鎖の2つの同一な対から構成され、それぞれの対は、1つの「軽」鎖(約25kDa)と1つの「重」鎖(約50~70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、主に抗原認識を担う約100から110またはそれより多いアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分は、主にエフェクター機能を担う定常領域を定義する。ヒト軽鎖は、カッパ軽鎖とラムダ軽鎖として分類される。重鎖は、ミュー、デルタ、ガンマ、アルファ、またはイプシロンとして分類され、抗体のアイソタイプをそれぞれ、IgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEとして定義する。軽鎖および重鎖内では、可変領域および定常領域が約12個またはそれより多いアミノ酸の「J」領域によって接合し、重鎖は約10個またはそれより多いアミノ酸の「D」領域も含む。一般に、Fundamental Immunology Ch. 7(Paul, W., ed., 2nd ed. Raven Press, N.Y.(1989))(参照により全ての目的でその全体が組み込まれる)を参照されたい。各軽鎖/重鎖の対の可変領域は、無傷免疫グロブリンが2つの結合部位を有するように、抗体結合部位を形成する。
【0122】
様々なRPPは、疾患標的の様々なドメインに結合し、異なる作用機序によって作用することができる。とりわけ本明細書で示されるように、ドメイン領域は、別段に示されていなければ、群を含むように設計される。例えば、アミノ酸4~12は、9個のアミノ酸:位置4、および12のアミノ酸、ならびに配列中に介在する7個のアミノ酸を指す。他の例としては、病原体のその標的細胞への結合、すなわち中和活性を阻害する抗原結合タンパク質が挙げられる。抗原結合タンパク質は、本発明における使用を見出すために、標的細胞への結合を完全に阻害することを必要としない。
【0123】
本明細書に記載のRPPは、FC領域、例えば、二量体Fcポリペプチドを含んでもよい。1つの好適なFcポリペプチドは、PCT出願WO93/10151(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されており、ヒトIgG1抗体のFc領域の未変性C末端に対するN末端ヒンジ領域から伸長する一本鎖ポリペプチドである。別の有用なFcポリペプチドは、米国特許第5,457,035号およびBaum et al., 1994, EMBO J. 13:3992-4001に記載されるFcムテインである。このムテインのアミノ酸配列は、アミノ酸19がLeuからAlaに変化し、アミノ酸20がLeuからGluに変化し、かつアミノ酸22がGlyからAlaに変化したことを除いて、WO93/10151において示された未変性Fc配列のものと同一である。ムテインは、Fc受容体に対する親和性の低下を示す。
【0124】
本発明のRPPの抗原結合性断片は、従来の技法によって産生することができる。このような断片の例としては、FabおよびF(ab’)2断片が挙げられるがこれらに限定されない。遺伝子操作技法によって産生される抗体断片および誘導体も企図される。
【0125】
追加の実施形態としては、キメラ抗体、例えば、非ヒト(例えば、マウス)モノクローナル抗体のヒト化バージョンが挙げられる。このようなヒト化抗体は、公知の技法によって調製することができ、抗体がヒトに投与された場合に、免疫原性の低下という利点をもたらす。一実施形態では、ヒト化抗体は、マウス抗体の可変ドメイン(またはその抗原結合部位の全てもしくは一部)およびヒト抗体に由来する定常ドメインを含む。あるいは、ヒト化抗体断片は、マウス抗体の抗原結合部位およびヒト抗体に由来する可変ドメイン断片(抗原結合部位を欠如する)を含んでもよい。キメラおよびさらに操作された抗体の産生のための手順は、Riechmann et al., 1988, Nature 332:323、Liu et al., 1987, Proc. Nat. Acad. Sci. USA 84:3439、Larrick et al., 1989, Bio/Technology 7:934、およびWinter et al., 1993, TIPS 14:139に記載されたものを含む。一実施形態では、キメラ抗体は、CDR移植抗体である。抗体をヒト化するための技法は、例えば、米国特許第5,869,619号、同第5,225,539号、同第5,821,337号、同第5,859,205号、同第6,881,557号、Padlan et al., 1995, FASEB J. 9:133-39、およびTamura et al., 2000, J. Immunol. 164:1432-41において議論されている。
【0126】
手順は、非ヒト動物において、ヒト抗体または部分的ヒト抗体を生成するために開発されてきた。例えば、様々な手段によって1つまたは複数の内因性免疫グロブリン遺伝子が不活性化されたマウスが調製されている。ヒト免疫グロブリン遺伝子がマウスに導入され、不活性化されたマウス遺伝子を置き換える。動物において産生された抗体を、動物に導入されたヒト遺伝子物質によってコードされたヒト免疫グロブリンポリペプチド鎖に組み込む。一実施形態では、トランスジェニックマウスなどの非ヒト動物は、ワクチン抗原を対象とする抗体が動物において生成されるように、ワクチンで免疫化される。
【0127】
ヒトまたは部分的ヒト抗体の産生のための技法およびその産生のためのトランスジェニック動物の使用の例は、米国特許第5,814,318号、同第5,569,825号、および同第5,545,806号、Davis et al., 2003, Production of human antibodies from transgenic mice in Lo, ed. Antibody Engineering: Methods and Protocols, Humana Press, NJ:191-200、Kellermann et al., 2002, Curr Opin Biotechnol. 13:593-97、Russel et al., 2000, Infect Immun. 68:1820-26、Gallo et al., 2000, Eur J Immun. 30:534-40、Davis et al., 1999, Cancer Metastasis Rev. 18:421-25、Green, 1999, J Immunol Methods. 231:11-23、Jakobovits, 1998, Advanced Drug Delivery Reviews 31:33-42、Green et al., 1998, J Exp Med. 188:483-95、Jakobovits A, 1998, Exp. Opin. Invest. Drugs. 7:607-14、Tsuda et al., 1997, Genomics. 42:413-21、Mendez et al., 1997, Nat Genet. 15:146-56、Jakobovits, 1994, Curr Biol. 4:761-63、Arbones et al., 1994, Immunity. 1:247-60、Green et al., 1994, Nat Genet. 7:13-21、Jakobovits et al., 1993, Nature. 362:255-58、Jakobovits et al., 1993, Proc Natl Acad Sci U S A 90:2551-55、Chen, J., M. Trounstine, F. W. Alt, F. Young, C. Kurahara, J. Loring, D. Huszar. Inter'l Immunol. 5(1993): 647-656、Choi et al., 1993, Nature Genetics 4: 117-23、Fishwild et al., 1996, Nature Biotech. 14: 845-51、Harding et al., 1995, Annals of the New York Academy of Sciences、Lonberg et al., 1994, Nature 368: 856-59、Lonberg, 1994, Transgenic Approaches to Human Monoclonal Antibodies in Handbook of Experimental Pharmacology 113: 49-101、Lonberg et al., 1995, Internal Review of Immunology 13: 65-93、Neuberger, 1996, Nature Biotechnology 14: 826、Taylor et al., 1992, Nucleic Acids Res. 20: 6287-95、Taylor et al., 1994, Inter'l Immunol. 6: 579-91、Tomizuka et al., 1997, Nature Genetics 16: 133-43、Tomizuka et al., 2000, Pro. Nat'lAcad. Sci. USA 97: 722-27、Tuaillon et al., 1993, Pro.Nat'lAcad.Sci. USA 90: 3720-24、およびTuaillon et al., 1994, J.Immunol. 152: 2912-20に記載される。
【0128】
本発明のRPP(例えば、抗体、抗体断片、および抗体誘導体)は、当技術分野で公知のいずれかの定常領域を含んでもよい。軽鎖定常領域は、例えば、カッパまたはラムダ型軽鎖定常領域、例えば、ヒトカッパまたはラムダ型軽鎖定常領域であってもよい。重鎖定常領域は、例えば、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、またはミュー型重鎖定常領域、例えば、ヒトアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、またはミュー型重鎖定常領域であってもよい。一実施形態では、軽鎖または重鎖定常領域は、天然に存在する定常領域の断片、誘導体、バリアント、またはムテインである。
【0129】
目的の抗体からの様々なサブクラスまたはアイソタイプの抗体を誘導するための技法、すなわちサブクラススイッチングが公知である。よって、IgG抗体は、例えば、IgM抗体に由来してもよく、逆もまた同様である。このような技法は、所与の抗体(親抗体)の抗原結合特性を有する新たな抗体の調製を可能にするが、親抗体のものと異なる抗体のアイソタイプまたはサブクラスと関連する生物学的特性も示す。組換えDNA技法が用いられてもよい。特定の抗体ポリペプチドをコードするクローニングされたDNA、例えば、所望のアイソタイプの抗体の定常ドメインをコードするDNAは、このような手順で用いることができる。Lantto et al., 2002, Methods Mol. Biol. 178:303-16も参照されたい。
【0130】
単鎖抗体(scFv)は、重鎖および軽鎖可変ドメイン(Fv領域)断片をアミノ酸架橋(短いペプチドリンカー、例えば、アミノ酸残基の合成配列)によって連結し、単一のポリペプチド鎖を得ることによって形成することができる。このような単鎖Fv(scFv)は、2つの可変ドメインポリペプチド(VLおよびVH)をコードするDNA間に、ペプチドリンカーをコードするDNAを融合させることによって調製されている。得られたポリペプチドは、2つの可変ドメイン間の柔軟なリンカーの長さに応じて、それら自体において折り返し、抗原結合モノマーを形成することができるか、または多量体(例えば、二量体、三量体、または四量体)を形成することができる(Kortt et al., 1997, Prot. Eng. 10:423;Kortt et al., 2001, Biomol. Eng. 18:95-108、Bird et al., 1988, Science 242:423-26およびHuston et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-83)。様々なVLおよびVHを含むポリペプチドを組み合わせることによって、様々なエピトープと結合する多量体scFvを形成することができる(Kriangkum et al., 2001, Biomol. Eng. 18:31-40)。単鎖抗体の産生のために開発された技法としては、米国特許第4,946,778号、Bird, 1988, Science 242:423;Huston et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879;Ward et al., 1989, Nature 334:544;de Graaf et al., 2002, Methods Mol Biol. 178:379-87に記載のものが挙げられる。
【0131】
ある特定の態様では、本発明は、発現ベクターをコードする抗体のライブラリーから生成されるRPPを含む。RPPは、10、100、1,000、10,000、または100,000を超える別個の抗体配列を含む。ある特定の態様では、RPPは、単一の形質細胞または形質芽細胞によってコードされる抗体配列を用いて組換えで操作された哺乳動物細胞から生成される。ある特定の態様では、RPPは、これらが様々な抗原結合特性を有する抗体を含むという点で多価である。一部の実施形態では、RPPは、標的抗原における複数のエピトープに結合する。一部の実施形態では、RPPは、複数の抗原に結合する。
7.4.RPPのCDR3配列
【0132】
本明細書に記載の方法を使用して生成される12種のRPPの各メンバーを含むCDR3H(重鎖免疫グロブリン)およびCDR3L(軽鎖免疫グロブリン)ポリペプチド配列が配列表に提供される。配列のまとめが表5に提供される。配列は、本出願とともに提出された配列表に見つけることができる。免疫原としてヒト胸腺細胞またはヒトT細胞を使用して本明細書で提供されるRPPは、ヒトV(D)J抗体配列を完全に発現するヒト化マウスから生成される。本明細書で提供されるRPPは、肺炎球菌の多糖、A型インフルエンザウイルス抗原、B型肝炎ウイルス抗原、またはB型Haemophilus influenzaeの多糖を使用して、ワクチン接種されたヒトドナーから生成される。RPPは、1,141から10,537個の間の固有の抗体を含む。
【表5】
【0133】
オリゴペプチドまたはポリペプチドは、本明細書で提供されるCDRの少なくとも1つに対して、少なくとも75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を有する場合、本発明の範囲内にある。
【0134】
7.5.核酸
【0135】
一態様では、本発明は、単離された核酸分子を提供する。核酸は、例えば、RPPの全てまたは一部、例えば、本開示の抗体の一方もしくは両方の鎖、またはその断片、誘導体、突然変異タンパク質、もしくはバリアントをコードするポリヌクレオチド、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを同定、分析、突然変異または増幅するためのハイブリダイゼーションプローブ、PCRプライマーまたはシークエンシングプライマーとしての使用に十分なポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドの発現を阻害するためのアンチセンス核酸、および前述のものの相補配列を含む。核酸は、いずれの長さであってもよい。核酸は、例えば、長さ5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100、125、150、175、200、250、300、350、400、450、500、750、1,000、1,500、3,000、5,000ヌクレオチドもしくはそれを超える長さであってもよく、および/または1つもしくは複数の追加の配列、例えば調節配列を含むこともあり、および/またはより大きい核酸、例えばベクターの一部であってもよい。核酸は、一本鎖状または二本鎖状であり得、RNAおよび/またはDNAヌクレオチド、ならびにそれらの人工バリアント(例えば、ペプチド核酸)を含むこともある。
【0136】
抗体ポリペプチド(例えば、重鎖もしくは軽鎖、可変ドメインのみ、CDRのみ、または全長)をコードする核酸は、ワクチンで免疫化されたマウスのB細胞から単離することができる。核酸は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの従来の手順により単離することができる。
【0137】
重鎖および軽鎖可変領域の可変領域に由来するCDR3のポリペプチド配列が本明細書で示される。遺伝コードの縮重に起因して、本明細書で開示されるポリペプチド配列の各々が、多数の他の核酸配列によりコードされることは、当業者には理解されるであろう。本発明は、本発明の各々のRPPをコードする各々の縮重ヌクレオチド配列を提供する。
【0138】
核酸をハイブリダイズさせるための方法は、当技術分野において周知である。例えば、Curr. Prot. in Mol. Biol., John Wiley & Sons, N.Y. (1989), 6.3.1-6.3.6を参照されたい。本明細書で定義される場合、中等度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、5×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)、0.5%のSDS、1.0mM EDTA(pH8.0)を含有する予洗溶液、約50%のホルムアミド、6×SCCのハイブリダイゼーション緩衝剤、および55℃のハイブリダイゼーション温度(または他の同様のハイブリダイゼーション溶液、例えば約50%のホルムアミドを含有するもの、と42℃のハイブリダイゼーション温度);ならびに0.5×SSC、0.1%のSDS中、60℃の洗浄条件を使用する。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、6×SSC中、45℃でハイブリダイズし、その後、0.1×SSC、0.2%のSDS中、68℃で1回または複数回洗浄する。さらに、当業者は、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを増加または減少させるように、その結果、互いと少なくとも65、70、75、80、85、90、95、98、または99%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸が、概して、互いにハイブリダイズした状態を維持するように、ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄条件を操作することができる。ハイブリダイゼーション条件の選択に影響を与える基本パラメーター、および好適な条件を考案するためのガイダンスは、例えば、Sambrook, Fritsch, and Maniatis (1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., chapters 9 and 11;およびCurr. Prot. in Mol. Biol. 1995, Ausubel et al., eds., John Wiley & Sons, Inc., sections 2.10 and 6.3-6.4)により示されており、これらのことを、当業者は、例えばDNAの長さおよび/または塩基組成に基づいて容易に決定することができる。
【0139】
突然変異により核酸に変化を導入し、それによって、核酸がコードするポリペプチド(例えば、RPP)のアミノ酸配列の変化をもたらすことができる。当技術分野において公知の任意の技術を使用して突然変異を導入することができる。一実施形態では、例えば部位特異的突然変異誘発プロトコールを使用して、1つまたは複数の特定のアミノ酸残基を変化させる。別の実施形態では、例えばランダム突然変異誘発プロトコールを使用して、1つまたは複数のランダムに選択された残基を変化させる。どのように行ったとしても、突然変異型ポリペプチドを発現させ、所望の特性(例えば、ウイルスとの結合)についてスクリーニングすることができる。
【0140】
別の態様では、本発明は、本発明の核酸配列の検出のためのプライマーまたはハイブリダイゼーションプローブとしての使用に好適である核酸分子を提供する。本発明の核酸分子は、本発明の全長ポリペプチドをコードする核酸配列の一部分、例えば、プローブもしくはプライマーとして使用することができる断片、または本発明のポリペプチドの活性部分(例えば、ウイルス結合部分)をコードする断片のみを含むこともある。
【0141】
本発明の核酸の配列に基づくプローブを使用して、本発明のポリペプチドをコードする核酸または類似の核酸、例えば転写物を検出することができる。プローブは、標識基、例えば、放射性同位体、蛍光化合物、酵素、または酵素補因子を含むことができる。そのようなプローブを使用して、ポリペプチドを発現する細胞を同定することができる。
【0142】
別の態様では、本発明は、形質芽細胞および形質細胞に由来する抗体タンパク質のライブラリーをコードする核酸のライブラリーを提供する。これらの核酸のライブラリーは、形質芽細胞および形質細胞を単一細胞反応容器中に単離することによって生成され、ここで、これらは溶解され、抗体特異的核酸は、例えば、ビーズなどの固体支持体上で精製または捕捉される。本発明は、並行して、数百万個の単一細胞から転写物の捕捉を実施するための方法を提供する。転写物の捕捉後に、重鎖および軽鎖免疫グロブリンをコードする核酸を増幅し、次に、前記核酸を、重鎖免疫グロブリンと軽鎖免疫グロブリンの両方をコードする融合構築物のライブラリーに関連付ける。そのようなライブラリーでは、インプット形質芽細胞および形質細胞において元々見られるように、重鎖免疫グロブリンと軽鎖免疫グロブリンの自然の対合が維持される。このような方法は、融合した重鎖免疫グロブリンと軽鎖免疫グロブリンの核酸について得られたライブラリーが、数百万個の単一細胞に関して自然に対合した配列を含むように、数百万個の単一細胞において並行して実施される。そのような方法は他の箇所(Adler et al., Mabs 9, 1282-1996, 2017)に記載されている。
7.6.ベクターおよび発現ベクター
【0143】
本発明は、本発明のポリペプチドまたはその一部分をコードする核酸を含むベクターを提供する。ベクターの例としては、プラスミド、ウイルスベクター、非エピソーム哺乳動物ベクター、および発現ベクター、例えば組換え発現ベクターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0144】
本発明の別の態様では、本発明の核酸分子およびポリヌクレオチドを含有する発現ベクターも提供され、そのようなベクターで形質転換された宿主細胞、およびポリペプチドを産生する方法も提供される。用語「発現ベクター」は、ポリヌクレオチド配列からポリペプチドを発現させるためのプラスミド、ファージ、ウイルスまたはベクターを指す。ポリペプチドの発現のためのベクターは、ベクター増殖のためにおよびクローニングされた挿入断片の発現のために必要な配列を最小限で含有する。発現ベクターは、(1)遺伝子発現において調節的役割を果たす遺伝子エレメント(単数または複数)、例えば、プロモーターまたはエンハンサーと、(2)mRNAに転写され、タンパク質に翻訳される、ポリペプチドおよびタンパク質をコードする配列と、(3)適切な転写開始および終結配列との集合体を含む、転写単位を含む。これらの配列は、選択マーカーをさらに含むこともある。宿主細胞における発現に好適なベクターは、容易に入手可能であり、核酸分子は、標準的な組換えDNA技術を使用してベクターに挿入される。そのようなベクターは、特定の組織において機能するプロモーター、および標的ヒトまたは動物細胞におけるポリペプチドの発現のためのウイルスベクターを含むことができる。
【0145】
本発明の組換え発現ベクターは、本発明の核酸を、宿主細胞における核酸の発現に好適な形態で含むことができる。組換え発現ベクターは、発現に使用される宿主細胞に基づいて選択される1つまたは複数の調節配列であって、発現される核酸配列に作動可能に連結されている配列を含む。調節配列は、多くのタイプの宿主細胞においてヌクレオチド配列の構成的発現を指令するもの(例えば、SV40初期遺伝子エンハンサー、ラウス肉腫ウイルスプロモーターおよびサイトメガロウイルスプロモーター)、ある特定の宿主細胞においてのみヌクレオチド配列の発現を指令するもの(例えば、組織特異的調節配列、Voss et al., 1986, Trends Biochem. Sci. 11:287、Maniatis et al., 1987, Science 236:1237を参照されたく、これらは、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる)、および特定の処置または条件に応答してヌクレオチド配列の誘導性発現を指令するもの(例えば、哺乳動物細胞におけるメタロチオネイン(metallothionin)プロモーター、ならびに真核細胞系と原核細胞系の両方におけるtet応答性および/またはストレプトマイシン応答性プロモーター(同文献を参照されたい))を含む。発現ベクターの設計が、形質転換すべき宿主細胞の選択、所望されるタンパク質の発現レベルなどのような因子に依存し得ることは、当業者には理解されるであろう。本発明の発現ベクターを宿主細胞に導入して、それによって、本明細書に記載の核酸によりコードされるタンパク質またはペプチド、例えば融合タンパク質またはペプチドを産生することができる。
【0146】
本発明は、ポリペプチド、例えば、RPPを作製する方法をさらに提供する。様々な他の発現/宿主系を利用することができる。ベクターDNAを従来の形質転換またはトランスフェクション技術によって原核細胞または真核細胞系に導入することができる。これらの系としては、組換えバクテリオファージ、プラスミドもしくはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌(例えば、E.coli)などの微生物;酵母発現ベクターで形質転換された酵母;ウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系;ウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)がトランスフェクトされたもしくは細菌発現ベクター(例えば、TiまたはpBR322プラスミド)で形質転換された植物細胞系;または動物細胞系が挙げられるが、これらに限定されない。組換えタンパク質産生に有用な哺乳動物細胞としては、VERO細胞、HeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞系、もしくはそれらの派生株、例えば、Veggie CHOおよび無血清培地で成長する関連細胞系(Rasmussen et al., 1998, Cytotechnology 28:31を参照されたい)またはDHFRが欠損しているCHO株DX-B11(Urlaub et al., 1980, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-20を参照されたい)、COS細胞、例えばサル腎細胞のCOS-7系(ATCC CRL 1651)(Gluzman et al., 1981, Cell 23:175を参照されたい)、W138、BHK、HepG2、3T3(ATCC CCL 163)、RIN、MDCK、A549、PC12、K562、L細胞、C127細胞、BHK(ATCC CRL 10)細胞系、アフリカミドリザル腎細胞系CV1に由来するCV1/EBNA細胞系(ATCC CCL 70)(McMahan et al., 1991, EMBO J. 10:2821を参照されたい)、ヒト胎児由来腎細胞、例えば、293、293 EBNAもしくはMSR 293、ヒト上皮A431細胞、ヒトColo205細胞、他の形質転換霊長類細胞系、正常二倍体細胞、一次組織、一次外植片のin vitro培養から誘導される細胞株、HL-60、U937、HaKまたはJurkat細胞が挙げられるが、これらに限定されない。哺乳動物発現は、分泌または可溶性ポリペプチドの産生を可能にし、これらのポリペプチドを成長培地から回収することができる。
【0147】
哺乳動物細胞の安定なトランスフェクションのために、使用される発現ベクターおよびトランスフェクション技術次第で、ほんの一部の細胞のみが、外来DNAをそれらのゲノムに取り入れることができることは、公知である。これらの組込み体を同定および選択するために、選択可能なマーカー(例えば、抗生物質に対する耐性について)をコードする遺伝子が、一般に、目的の遺伝子とともに宿主細胞に導入される。所望の発現カセットばかりでなく選択可能なマーカーも含有するベクターでそのような細胞を形質転換すると、これらの細胞を、強化培地において、例えば、強化培地を選択培地に切り替える前に、成長させることができる。選択可能なマーカーは、導入された配列を首尾よく発現する細胞の成長および回収を可能にするように設計される。安定に形質転換された細胞の耐性凝集塊を、利用する細胞系に適している組織培養技術を使用して増殖させることができる。組換えタンパク質の発現についての概要は、Methods of Enzymology, v. 185, Goeddell, D.V., ed., Academic Press (1990)において見つけることができる。好ましい選択可能なマーカーとしては、G418、ハイグロマイシンおよびメトトレキサートなどの、薬物に対する耐性を付与するものが挙げられる。導入された核酸が安定にトランスフェクトされた細胞は、数ある中でも特に、薬物選択(例えば、選択可能なマーカー遺伝子が組み込まれた細胞は生き残るが、他の細胞は死滅することになる)により同定することができる。
【0148】
形質転換細胞を、ポリペプチドの発現を促進する条件下で培養し、ポリペプチドを従来のタンパク質精製手順(上記で定義した通り)により回収することができる。
【0149】
一部の場合、例えば、原核細胞系を使用する発現の場合には、本発明の発現されるポリペプチドを、生物活性になるように、「再び折り畳み」、酸化して適切な三次元構造にし、ジスルフィド結合を生成する必要があり得る。再折り畳みは、当技術分野において周知のいくつかの手順を使用して果たすことができる。そのような方法は、例えば、可溶化されたポリペプチドを、カオトロピック剤の存在下で、通常は7より高いpHに曝露することを含む。カオトロープの選択は、封入体可溶化に使用される選択と同様であるが、カオトロープは、より低い濃度で概して使用される。例示的なカオトロピック剤は、グアニジンおよび尿素である。ほとんどの場合、再折り畳み/酸化溶液は、システイン架橋の形成のためにジスルフィドシャフリングが起こることを可能にする特定のレドックス電位を生じさせるために、還元剤とその酸化形態も特異的比率で含有することになる。一般に使用される一部のレドックス対としては、システイン/シスタミン、グルタチオン/ジチオビスGSH、塩化第二銅、ジチオトレイトールDTT/ジチアンDTT、および2-メルカプトエタノール(bME)/ジチオ-bMEが挙げられる。多くの事例では、再折り畳みの効率を上昇させるために共溶媒が使用され得る。一般に使用される共溶媒としては、グリセロール、様々な分子量のポリエチレングリコール、およびアルギニンが挙げられる。
【0150】
加えて、従来の技術に従って溶液中または固体支持体上でポリペプチドを合成することができる。様々な自動合成装置が市販されており、公知のプロトコールに従ってそれらを使用することができる。例えば、Stewart and Young, Solid Phase Peptide Synthesis, 2d.Ed., Pierce Chemical Co. (1984);Tam et al., J Am Chem Soc, 105:6442, (1983);Merrifield, Science 232:341-347 (1986);Barany and Merrifield, The Peptides, Gross and Meienhofer, eds, Academic Press, New York, 1-284;Barany et al., Int J Pep Protein Res, 30:705-739 (1987)を参照されたい。
【0151】
本発明のポリペプチドおよびタンパク質は、当業者に周知のタンパク質精製技術に従って精製することができる。これらの技術は、あるレベルでの、タンパク質性および非タンパク質性画分の粗分画を含む。ペプチドポリペプチドを他のタンパク質から分離してしまうと、クロマトグラフおよび電気泳動技術を使用して目的のペプチドまたはポリペプチドをさらに精製して、部分的精製または完全精製(または均一に至る精製)を達成することができる。用語「精製されたポリペプチド」は、本明細書で使用される場合、他の成分から単離可能な組成物であって、ポリペプチドがその天然に得ることができる状態と比較して任意の程度に精製されている組成物を指すように意図されている。したがって、精製されたポリペプチドは、それが天然に存在する環境から分離されているポリペプチドも指す。一般に、「精製された」は、分画に供されて様々な他の成分が除去されたポリペプチド組成物であって、その発現された生物活性を実質的に保持する組成物を指すことになる。用語「実質的に精製された」が使用される場合、この表記は、ポリペプチドまたはペプチドが、組成物の主要成分を形成する、例えば、組成物中のタンパク質の約50%、約60%、約70%、約80%、約85%、または約90%またはそれより多くを構成する、ペプチドまたはポリペプチド組成物を指すことになる。
【0152】
精製における使用に好適な様々な技術が当業者には周知であろう。これらの技術は、例えば、硫酸アンモニウム、PEG、抗体(免疫沈降法)およびこれらに類するものでの、または熱変性による沈殿、その後の遠心分離;クロマトグラフィー、例えば、親和性クロマトグラフィー(プロテインAカラム)、イオン交換、ゲル濾過、逆相、ヒドロキシルアパタイト、疎水性相互作用クロマトグラフィー、等電点電気泳動、ゲル電気泳動、ならびにこれらの技術の組合せを含む。当技術分野において一般に公知であるように、様々な精製ステップを行う順序を変えてもよく、またはある特定のステップを省いてもよく、それでもなお、実質的に精製されたポリペプチドの調製に好適な方法を得られると考えられる。例示的な精製ステップは、下記の実施例で提供される。
【0153】
ポリペプチドの精製度を定量するための様々な方法は、本開示に鑑みれば当業者には公知であろう。これらの方法は、例えば、活性画分の比結合活性度を決定すること、またはSDS/PAGE分析により画分中のペプチドまたはポリペプチドの量を評定することを含む。ポリペプチド画分の純度の好ましい評定方法は、画分の結合活性を計算すること、それを最初の抽出物の結合活性と比較すること、およびひいては、本明細書では「精製倍数」により評定される精製度を計算することである。結合活性の量を表すために使用される実際の単位は、精製を追跡するために選択される特定のアッセイ技術、およびポリペプチドまたはペプチドが検出可能な結合活性を示すか否かに、もちろん、依存することになる。
【0154】
一部の態様では、本発明は、哺乳動物ゲノムへの部位特異的組込みのための核酸ベクターをコードする抗体のライブラリーを含む。そのようなベクターは、プラスミド、レトロウイルス、およびレンチウイルスを含む。これらのベクターのライブラリーは、抗体配列のライブラリーをコードし、ゆえに、これらは、RPPの産生のために哺乳動物細胞を操作するために使用される。核酸ベクターのライブラリーは、10、100、1,000、10,000、または100,000個を超える異なる抗体をコードする配列を含み得る。これらの配列は、形質芽細胞および形質細胞に由来する。これらの核酸のライブラリーは、形質芽細胞および形質細胞を単一細胞反応容器中に単離することによって生成され、ここで、これらは溶解され、抗体特異的核酸は、例えば、ビーズなどの固体支持体上で精製または捕捉される。本発明は、並行して、数百万個の単一細胞から転写物の捕捉を実施するための方法を提供する。転写物の捕捉後に、重鎖および軽鎖免疫グロブリンをコードする核酸を増幅し、次に、前記核酸を、重鎖免疫グロブリンと軽鎖免疫グロブリンの両方をコードする融合構築物のライブラリーに関連付ける。そのようなライブラリーでは、インプット形質芽細胞および形質細胞において元々見られるように、重鎖免疫グロブリンと軽鎖免疫グロブリンの自然の対合が維持される。このような方法は、融合した重鎖免疫グロブリンと軽鎖免疫グロブリンの核酸について得られたライブラリーが、数百万個の単一細胞に関して自然に対合した配列を含むように、数百万個の単一細胞において並行して実施される。次いで、これらの対合した融合アンプリコンは、ギブソンアセンブリ、制限エンドヌクレアーゼ、または他の組換えDNA技術を使用して、全長抗体構築物へと操作される。
全長抗体構築物への操作は、ひとまとめに、全ライブラリーに関して実施され、その結果、ライブラリーの抗体配列含量および抗体配列数は、このプロセスを通して本質的に維持される。一部の態様では、発現ベクターのライブラリーは2つのステップで操作され、その結果、scFvアンプリコンが中間ベクターへとサブクローニングされ、次いで、2回目のギブソンアセンブリ、制限酵素消化、または他の組換え技術を使用して、抗体のさらなるドメインをscFvのリンカーへと操作する(USPTO 14/734,953)。重鎖免疫グロブリンおよび軽鎖免疫グロブリンの自然な対合は、全長発現ベクターライブラリーへの操作のプロセスを通して本質的に維持される。ベクターは、様々な方向で設計され、例えば、2つの別々のプロモーターが重鎖免疫グロブリンおよび軽鎖免疫グロブリンの発現を駆動するか、または1つのプロモーターが重鎖免疫グロブリンと軽鎖免疫グロブリンの両方の発現を駆動するか、または翻訳スキップモチーフを使用して、重鎖免疫グロブリンと軽鎖免疫グロブリンを別々のポリペプチドに別々に翻訳する。一部の実施形態では、発現ベクターは、哺乳動物産生細胞への部位特異的組込み、例えば、CRISPR-Cas9、Flp-In、Cre/Lox、またはジンクフィンガー組換え方法のための配列を含む。部位特異的組込みは、各哺乳動物産生細胞が単一の抗体配列をコードし、単一の産生細胞間の発現レベルの変動性を低下させることを保証する。
【0155】
7.7.RPP、例えば、抗体を産生する方法
【0156】
RPPは、ヘパリンHPカラムを使用するか、塩勾配を使用するか、またはプロテインA樹脂を用いて、宿主細胞培養液の濾過された上清の溶出により、抗体をコードする遺伝子がトランスフェクトされた宿主細胞から精製することができる。
【0157】
完全ヒトモノクローナル抗体は、当業者が精通するいくつもの技法によって生成され得る。このような方法としては、以下に限定されないが、ヒト末梢血細胞(例えば、Bリンパ球を含有する)のエプスタインバーウイルス(EBV)形質転換、ヒトB細胞のin vitro免疫化、挿入されたヒト免疫グロブリン遺伝子を保有する免疫化トランスジェニックマウスからの脾臓細胞の融合、ヒト免疫グロブリンV領域ファージライブラリーからの単離、または当技術分野で公知の、本明細書の開示に基づく他の手順が挙げられる。例えば、完全ヒトモノクローナル抗体は、抗原チャレンジに応答して、特異的ヒト抗体を産生するために操作されたトランスジェニックマウスから得られてもよい。トランスジェニックマウスから完全ヒト抗体を得るための方法は、例えば、Green et al., Nature Genet. 7:13, 1994;Lonberg et al., Nature 368:856, 1994;Taylor et al., Int. Immun. 6:579, 1994;米国特許第5,877,397号;Bruggemann et al., 1997 Curr. Opin. Biotechnol. 8:455-58;Jakobovits et al., 1995 Ann. N. Y. Acad. Sci. 764:525-35に記載されている。この技法では、ヒト重鎖および軽鎖遺伝子座のエレメントが、内因性重鎖および軽鎖遺伝子座の標的化された破壊を含有する胚性幹細胞系に由来するマウスの株中に導入される(Bruggemann et al., Curr. Opin. Biotechnol. 8:455-58 (1997)も参照されたい)。例えば、ヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、マウスリンパ組織においてB細胞特異的DNA再編成および高頻度突然変異を受ける酵母人工染色体上のミニ遺伝子構築物、またはトランス遺伝子座であってもよい。完全ヒトモノクローナル抗体は、その後に抗原標的(1つまたは複数)に対して特異的なヒト抗体を産生することができるトランスジェニックマウスを免疫化することによって得ることができる。本明細書に記載の方法に従って、免疫化されたトランスジェニックマウスのリンパ系細胞を使用して、ヒト抗体を分泌するハイブリドーマを生成することができる。
【0158】
本発明のヒト抗体を生成するための別の方法は、EBV形質転換によって、ヒト末梢血細胞を不死化させるステップを含む。例えば、米国特許第4,464,456号を参照されたい。標的(1つまたは複数)と特異的に結合するRPPを産生する、このような不死化されたB細胞系(またはリンパ芽球様細胞系)は、本明細書において提供される免疫検出方法、例えば、ELISAによって特定し、次いで、標準的クローニング技法によって単離することができる。RPPを産生するリンパ芽球様細胞系の安定性は、当技術分野で公知の方法に従って、形質転換された細胞系をマウス骨髄腫細胞と融合させて、マウス-ヒトハイブリッド細胞系を生成することによって改善することができる(例えば、Glasky et al., Hybridoma 8: 377-89(1989)を参照されたい)。ヒトRPPを生成するためのさらに別の方法は、ヒト脾B細胞を抗原標的でプライミングすることを含み、その後、プライミングされたものをヘテロハイブリッド融合パートナーと融合させる、in vitro免疫化である。例えば、Boerner et al., 1991 J. Immunol. 147:86-95を参照されたい。
【0159】
ある特定の実施形態では、RPPを産生しているB細胞が選択され、軽鎖および重鎖可変領域は、当技術分野で公知であり(WO92/02551;米国特許第5,627,052号;Babcook et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:7843-48(1996))、本明細書に記載の分子生物学の技法に従って、B細胞からクローニングされる。免疫化された動物由来のB細胞は、抗原標的と特異的に結合する抗体を産生している細胞を選択することによって、脾臓、リンパ節、または末梢血試料から単離されてもよい。B細胞は、ヒトから、例えば、末梢血試料から単離されてもよい。
【0160】
例えば、プラーク形成、蛍光活性化細胞選別、in vitroでの刺激と、その後の特異的抗体の検出などによる、所望の特異性を有する抗体を産生している単一のB細胞を検出するための方法は、当技術分野で周知である。特異的抗体を産生するB細胞の選択のための方法は、例えば、抗原標的を含有する軟寒天において、B細胞の単一細胞懸濁液を調製するステップを含む。B細胞によって産生される特異的抗体の抗原との結合によって、免疫沈降物として視認することができる複合体の形成がもたらされる。
【0161】
一部の実施形態では、特異的抗体を産生するB細胞は、自然に対合した抗体の特定を可能にする方法を使用することによって選択される。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Adler et al., A natively paired antibody library yields drug leads with higher sensitivity and specificity than a randomly paired antibody library, MAbs(2018)に記載された方法を用いることができる。本方法は、マイクロ流体技術、分子ゲノミクス、酵母単鎖可変断片(scFv)ディスプレイ、蛍光標識細胞分取(FACS)およびディープシークエンシングを組み合わせる。要するに、B細胞は、免疫化された動物から単離され、次いでプールされ得る。B細胞は、オリゴdTビーズおよび溶解溶液を用いて液滴にカプセル化され、mRNAが結合したビーズが液滴から精製され、次いで、重鎖および軽鎖Igが自然に対合したscFvをコードするDNAアンプリコンを生成するOE-RT-PCR増幅ミックスを含む第2のエマルション中に注入される。次いで、自然に対合したアンプリコンのライブラリーを、scFvディスプレイのために酵母中に電気穿孔させる。FACSを使用して、高親和性scFvを特定する。最後に、抗体のディープシークエンシングを使用して、選別前後のscFvライブラリーにおける全てのクローンを特定することができる。
【0162】
所望の抗体を産生するB細胞を選択した後で、当技術分野で公知であり、本明細書に記載の方法に従って、DNAまたはmRNAを単離および増幅することによって、特異的抗体遺伝子がクローニングされてもよい。
【0163】
本発明の抗体を得るための方法は、当技術分野で公知の様々なファージディスプレイ技術も採用することができる。例えば、Winter et al., 1994 Annu. Rev. Immunol. 12:433-55;Burton et al., 1994 Adv. Immunol. 57:191-280を参照されたい。ヒトまたはマウスの免疫グロブリン可変領域遺伝子のコンビナトリアルライブラリーは、RPPまたはそのバリアントもしくは断片と特異的に結合するIg断片(Fab、Fv、sFv、またはその多量体)を選択するためにスクリーニングされ得るファージベクターにおいて作出することができる。例えば、米国特許第5,223,409号;Huse et al., 1989 Science 246:1275-81;Sastry et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:5728-32(1989);Alting-Mees et al., Strategies in Molecular Biology 3:1-9(1990);Kang et al., 1991 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:4363-66;Hoogenboom et al., 1992 J. Molec. Biol. 227:381-388;Schlebusch et al., 1997 Hybridoma 16:47-52およびこれらにおいて引用される参照文献を参照されたい。例えば、Ig可変領域断片をコードする複数のポリヌクレオチド配列を含有するライブラリーは、ファージコートタンパク質をコードする配列と共にインフレームで、M13またはそのバリアントなどの糸状バクテリオファージのゲノム中に挿入されてもよい。融合タンパク質は、コートタンパク質の、軽鎖可変領域ドメインおよび/または重鎖可変領域ドメインとの融合体であってもよい。ある特定の実施形態によれば、免疫グロブリンFab断片は、ファージ粒子上にもディスプレイされ得る(例えば、米国特許第5,698,426号を参照されたい)。
【0164】
一実施形態では、ハイブリドーマにおいて、目的のモノクローナル抗体を発現する遺伝子の可変領域は、ヌクレオチドプライマーを使用して増幅される。これらのプライマーは、当業者によって合成されてもよく、または市販の供給源から購入されてもよい。(例えば、とりわけ、VHa、VHb、VHc、VHd、CH1、VLおよびCL領域に対するプライマーを含むマウスおよびヒトの可変領域に対するプライマーを販売するStratagene(La Jolla、California)を参照されたい)。これらのプライマーを使用して、重鎖または軽鎖可変領域を増幅させ、次いで、それぞれ、ImmunoZAP(商標)HまたはImmunoZAP(商標)L(Stratagene)などのベクター中に挿入されてもよい。次いで、これらのベクターは、発現のために、E.coli、酵母、または哺乳動物ベースの系に、導入されてもよい。VHおよびVLドメインの融合体を含有する多量の単鎖タンパク質は、これらの方法(Bird et al., Science 242:423-426, 1988を参照されたい)を使用して産生されてもよい。
【0165】
本発明による抗体を産生する細胞が、上記免疫化および他の技法のいずれかを使用して得られたら、本明細書に記載される標準手順により、そこからDNAまたはmRNAを単離および増幅することによって、特異的抗体の遺伝子をクローニングしてもよい。そこから産生される抗体をシークエンシングして、CDRを特定し、CDRをコードするDNAを、本発明に従って、以前に記載したように操作して、他の抗体を生成する。
【0166】
本発明のRPPは、好ましくは、本明細書に記載の細胞に基づくアッセイおよび/もしくは本明細書に記載のin vivoアッセイにおいて、活性を有し、ならびに/または本明細書に記載のドメインのうちの1つもしくは複数に結合する。したがって、このような結合剤は、本明細書に記載のアッセイを使用して特定することができる。
【0167】
本発明による他の抗体は、本明細書に記載され、当技術分野で公知の従来の免疫化および細胞融合手順によって得られてもよい。
【0168】
また、抗体結合部位の中心における相補性決定領域(CDR)の分子進化を使用して、親和性の増加した抗体、例えば、Schier et al., 1996, J. Mol. Biol. 263:551に記載されるc-erbB-2に関する親和性の増加を有する抗体を単離している。
【0169】
ヒト抗体、部分的ヒト抗体、またはヒト化抗体は、多くの適用、特に、抗体のヒト対象への投与に関与する適用に対して好適となるが、他の種類の抗原結合タンパク質は、ある特定の適用に対して好適となる。本発明の非ヒト抗体は、例えば、いずれかの抗体産生動物、例えばマウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ロバ、または非ヒト霊長類(例えばサル(例えばカニクイザルまたはアカゲザル)もしくは類人猿(例えばチンパンジー))に由来し得る。本発明の非ヒト抗体は、例えば、in vitroおよび細胞培養に基づく適用、または本発明の抗体に対する免疫応答が生じないか、重要でないか、妨げることができないか、携わっていないか、または望ましい任意の他の適用において使用することができる。一実施形態では、本発明の非ヒト抗体は、非ヒト対象に投与される。別の実施形態では、非ヒト抗体は、非ヒト対象において免疫応答を誘発しない。別の実施形態では、非ヒト抗体は、非ヒト対象と同じ種に由来し、例えば、本発明のマウス抗体は、マウスに投与される。特定種からの抗体は、例えば、その種の動物を所望の免疫原で免疫化するかもしくはその種の抗体を生成するための人工的システム(例えば、特定種の抗体を生成するための細菌またはファージディスプレイに基づくシステム)を使用することによって、または1種に由来する抗体を、例えば、抗体の定常領域を他の種の定常領域に置き換えることにより、もしくは抗体が、他の種由来の抗体の配列により近似するように、抗体の1もしくは複数のアミノ酸残基を置き換えることにより、別の種由来の抗体に変換することによって、作製することができる。一実施形態では、抗体は、2つまたはそれより多い異なる種由来の抗体に由来するアミノ酸配列を含むキメラ抗体である。
【0170】
抗原結合タンパク質は、いくつかの従来の技法のいずれかによって、調製され、所望の特性についてスクリーニングされてもよい。一部の技法は、目的のRPPのポリペプチド鎖(またはその部分)をコードする核酸を単離すること、および組換えDNA技術によって核酸を操作することに関与する。核酸は、目的の別の核酸に融合されてもよく、または、例えば、1つもしくは複数のアミノ酸残基を付加、欠失、もしくは置換して変更されてもよい(例えば、突然変異誘発または他の従来の技法によって)。さらに、抗原結合タンパク質は、それらを自然に発現する細胞から精製するか(例えば、抗体は、それを産生するハイブリドーマから精製することができる)、または当技術分野で公知のいずれかの技法を使用して、組換え発現系で産生されてもよい。例えば、Monoclonal Antibodies, Hybridomas: A New Dimension in Biological Analyses, Kennet et al.(eds.), Plenum Press, New York(1980);およびAntibodies: A Laboratory Manual, Harlow and Land(eds.), Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY,(1988)を参照されたい。
【0171】
当技術分野で公知のいずれかの発現系を使用して、本発明の組換えポリペプチドを作製することができる。発現系は、上記で包括的に詳述されている。一般に、宿主細胞は、所望のポリペプチドをコードするDNAを含む組換え発現ベクターで形質転換される。用いられてもよい宿主細胞の中には、原核生物、酵母またはより高等な真核生物の細胞がある。原核生物としては、グラム陰性またはグラム陽性生物、例えば、E.coliまたはBacilliが挙げられる。より高等な真核細胞としては、昆虫細胞および哺乳類起源の確立された細胞系が挙げられる。好適な哺乳類宿主細胞系の例としては、サル腎臓細胞(ATCC CRL 1651)(Gluzman et al., 1981, Cell 23:175)のCOS-7系、L細胞、293細胞、C127細胞、3T3細胞(ATCC CCL 163)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、BHK(ATCC CRL 10)細胞系、およびMcMahan et al., 1991, EMBO J. 10: 2821に記載されるアフリカミドリザルの腎臓細胞系CVI(ATCC CCL 70)由来のCVI/EBNA細胞系が挙げられる。細菌、真菌、酵母、および哺乳類細胞宿主に関して使用するための適切なクローニングベクターおよび発現ベクターは、Pouwels et al.(Cloning Vectors: A Laboratory Manual, Elsevier, New York, 1985)に記載されている。
【0172】
モノクローナル抗体(mAb)に関する細胞系の産生は、概して、発現構築物を哺乳動物産生細胞のゲノム、例えば、CHOゲノムにランダムに挿入することによって産生される(Rita Costa et al., 2010)。しかし、この標準の方法は、CHOゲノムに挿入されたmAbのコピーを多数有する細胞系を産生する。本発明者らが、本発明者らのポリクローナル抗体構築物ライブラリーをCHOゲノムにランダムに挿入した場合、多くのクローンが多数の抗体を発現することになり、重鎖Igと軽鎖Igの間に非自然的な対合を高頻度でもたらすことになる。さらに、異なるゲノム位置は、異なる転写活性レベルを有し(Kito et al., 2002)、不均一な、一致しないおよび/または不安定な生物生産をもたらし得る。よって、一部の態様では、本発明は、ゲノム中に安定して操作されたFlpリコンビナーゼ認識標的(FRT)ランディングパッドを有するCHO細胞系を提供する。次いで、そのような部位特異的ゲノム組込み細胞系をRPPの安定した発現のために使用する。
【0173】
本発明の抗体は、抗体が結合特異性を保持する限り、少なくとも1つのアミノ酸置換を有してもよいことが認識されるであろう。したがって、抗体構造の改変は、本発明の範囲内に包含される。これらは、RPPを含む抗体の結合能を破壊しない保存的であっても非保存的であってもよい、アミノ酸置換を含んでもよい。保存的アミノ酸置換は、典型的には、生体系における合成によるよりも化学ペプチド合成によって組み込まれる、天然に存在しないアミノ酸残基を包含し得る。これらは、ペプチド模倣体およびアミノ酸部分の他の逆転または反転形態を含む。保存的アミノ酸置換は、その位置におけるアミノ酸残基の極性または荷電にほとんど影響を及ぼさないかまたは全く影響を及ぼさないような、天然アミノ酸残基の規範的残基による置換に関与してもよい。
【0174】
非保存的置換は、1つの分類のアミノ酸またはアミノ酸模倣体のメンバーの、異なる物理特性(例えば、サイズ、極性、疎水性、荷電)を有する別の分類に由来するメンバーへの交換にも関与してもよい。このような置換された残基は、非ヒト抗体と相同であるヒト抗体の領域、または分子の非相同領域へと導入されてもよい。
【0175】
さらに、当業者は、各所望のアミノ酸残基において、単一のアミノ酸置換を含有する試験バリアントを生成することができる。次いで、当業者に公知の活性アッセイを使用して、バリアントをスクリーニングすることができる。このようなバリアントを使用して、好適なバリアントの情報を収集することができるであろう。例えば、特定のアミノ酸残基への変化が、破壊されたか、不必要に低下したか、または好適ではない活性をもたらすことが発見された場合、このような変化を有するバリアントは避けられてもよい。言い換えれば、このような日常的実験から収集された情報に基づき、当業者は、さらなる置換が、単独でまたは他の突然変異と組み合わせて回避されるべきアミノ酸を容易に決定することができる。
【0176】
当業者は、周知の技法を使用して、本明細書に示されるポリペプチドの好適なバリアントを決定することができるであろう。ある特定の実施形態では、当業者は、活性に対して重要であると考えられていない領域を標的とすることによって、活性を破壊することなく変化させることができる分子の好適なエリアを特定することができる。ある特定の実施形態では、類似するポリペプチド間で保存される分子の残基および部分を特定することができる。ある特定の実施形態では、生物活性または構造にとって重要であり得るエリアさえも、生物活性を破壊することなく、またはポリペプチド構造に有害な影響を及ぼすことなく、保存的アミノ酸置換に供されてもよい。
【0177】
さらに、当業者は、活性または構造にとって重要である、類似するポリペプチドにおける残基を特定するための構造-機能研究を精査することができる。このような比較に鑑みて、類似するタンパク質の活性または構造にとって重要であるアミノ酸残基に対応するタンパク質のアミノ酸残基の重要性を予測することができる。当業者は、このような予測される重要なアミノ酸残基に対して化学的に類似するアミノ酸置換を選択してもよい。
【0178】
当業者は、類似するポリペプチドの三次元構造に関連するその構造およびアミノ酸配列を解析することもできる。このような情報に鑑みて、当業者は、その三次元構造に関して、抗体のアミノ酸残基のアラインメントを予測することができる。ある特定の実施形態では、タンパク質の表面上に存在すると予測されるアミノ酸残基は他の分子との重要な相互作用に関与し得るので、当業者は、このような残基に対して急激な変化が起こらないように選択することができる。
【0179】
いくつかの科学論文が、二次構造の予測に貢献している。Moult J., Curr. Op. in Biotech., 7(4):422-427(1996)、Chou et al., Biochem., 13(2):222-245(1974);Chou et al., Biochem., 113(2):211-222(1974);Chou et al., Adv. Enzymol. Relat. Areas Mol. Biol., 47:45-148(1978);Chou et al., Ann. Rev. Biochem., 47:251-276およびChou et al., Biophys. J., 26:367-384(1979)を参照されたい。さらに、二次構造の予測を助長するために、コンピュータープログラムが現在利用可能である。二次構造を予測する1つの方法は、相同性モデリングに基づく。例えば、30%を超える配列同一性、または40%を超える類似性を有する2つのポリペプチドまたはタンパク質は、類似する構造トポロジーを有することが多い。ポリペプチドまたはタンパク質の構造内での可能な数のフォールディングを含む、タンパク質構造データベース(PDB)の最近の発展は、二次構造の増強された予測性をもたらしている。Holm et al., Nucl. Acid. Res., 27(1):244-247(1999)を参照されたい。所与のポリペプチドまたはタンパク質には制限された数のフォールディングが存在し、臨界数の構造が一旦解明されると、構造の予測は、劇的により正確になることが示唆されている(Brenner et al., Curr. Op. Struct. Biol., 7(3):369-376(1997))。
【0180】
二次構造を予測する追加の方法としては、「スレッディング(threading)」(Jones, D., Curr. Opin. Struct. Biol., 7(3):377-87(1997);Sippl et al., Structure, 4(1):15-19(1996))、「プロファイル解析」(Bowie et al., Science, 253:164-170(1991);Gribskov et al., Meth. Enzym., 183:146-159(1990);Gribskov et al., Proc. Nat. Acad. Sci., 84(13):4355-4358(1987))、および「進化的連結」(Holm、上掲(1999)、およびBrenner、上掲(1997)を参照)が挙げられる。
【0181】
ある特定の実施形態では、抗体のバリアントは、グリコシル化部位の数および/または種類が、親ポリペプチドのアミノ酸配列と比較して、変更されているグリコシル化バリアントを含む。ある特定の実施形態では、バリアントは、天然のタンパク質よりも多いかまたは少ない数のN連結グリコシル化部位を含む。N連結グリコシル化部位は、配列:Asn-X-SerまたはAsn-X-Thrによって特徴付けられ、ここで、Xとして示されたアミノ酸残基は、プロリン以外の任意のアミノ酸残基であってもよい。この配列を作出するアミノ酸残基の置換によって、N連結炭水化物鎖の付加のための新たな可能な部位がもたらされる。あるいは、この配列を除外する置換は、既存のN連結炭水化物鎖を除去することになる。1つまたは複数のN連結グリコシル化部位(典型的には、天然に存在するもの)が除外され、1つまたは複数の新たなN連結部位が作出されるN連結炭水化物鎖の再配列ももたらされる。追加の好ましい抗体バリアントは、1つまたは複数のシステイン残基が、親アミノ酸配列と比較して、欠失しているかまたは別のアミノ酸(例えば、セリン)に置換されているシステインバリアントを含む。システインバリアントは、例えば不溶性封入体の単離後に、抗体が生物学的に活性な立体構造へと再度フォールディングされなければならない場合に有用となり得る。システインバリアントは、一般に、天然のタンパク質よりも少ないシステイン残基を有し、典型的には、対合していないシステインから生じる相互作用を最小化するために偶数を有する。
【0182】
ある特定の実施形態によれば、好ましいアミノ酸置換は、(1)タンパク質分解に対する感受性を低下させる、(2)酸化に対する感受性を低下させる、(3)タンパク質複合体を形成するための結合親和性を変更する、(4)結合親和性を変更する、および/または(4)このようなポリペプチドに関する他の生理化学または機能特性を付与もしくは改変するものである。ある特定の実施形態によれば、単一または複数のアミノ酸置換(ある特定の実施形態では、保存的アミノ酸置換)は、天然に存在する配列においてなされてもよい(ある特定の実施形態では、分子間接触を形成するドメインの外側のポリペプチドの部分)。ある特定の実施形態では、保存的アミノ酸置換は、典型的には、親配列の構造的特徴を実質的に変化させなくてもよい(例えば、アミノ酸の置き換えは、親配列に存在するヘリックスを切断するか、または親配列を特徴付ける他のタイプの二次構造を破壊する傾向にあるべきではない)。当技術分野で認識されるポリペプチドの二次および三次構造の例は、それぞれが参照により本明細書に組み込まれる、Proteins, Structures and Molecular Principles(Creighton, Ed., W. H. Freeman and Company, New York(1984));Introduction to Protein Structure(C. Branden and J. Tooze, eds., Garland Publishing, New York, N.Y.(1991));およびThornton et al. Nature 354:105(1991)に記載されている。
【0183】
ある特定の実施形態では、本発明の抗体は、ポリマー、脂質、または他の部分と化学的に結合していてもよい。
【0184】
結合剤は、生体適合性フレームワーク構造中に組み込まれる、本明細書に記載のCDRの少なくとも1つを含んでもよい。一例では、生体適合性フレームワーク構造は、局在化した表面領域において、抗原(例えば、CDR、可変領域など)と結合するアミノ酸のうちの1つまたは複数の配列をディスプレイすることができる、立体構造として安定な構造支持体、またはフレームワーク、または足場を形成するのに十分であるポリペプチドまたはその部分を含む。このような構造は、天然に存在するポリペプチドもしくはポリペプチド「フォールディング」(構造モチーフ)であってもよく、または天然に存在するポリペプチドもしくはフォールディングに対して、アミノ酸の付加、欠失もしくは置換などの1つもしくは複数の改変を有してもよい。これらの足場は、ヒト、他の哺乳動物、他の脊椎動物、無脊椎動物、植物、細菌またはウイルスなどのいずれかの種の(または2種以上の種の)ポリペプチドに由来し得る。
【0185】
典型的には、生体適合性フレームワーク構造は、免疫グロブリンドメイン以外のタンパク質足場または骨格に基づく。例えば、フィブロネクチン、アンキリン、リポカリン、ネオカルジノスタチン(neocarzinostain)、チトクロムb、CP1ジンクフィンガー、PST1、コイルドコイル、LACI-D1、Zドメインおよびテンダミスタットドメインに基づくものを使用することができる(例えば、Nygren and Uhlen, 1997, Curr. Opin. In Struct. Biol., 7, 463-469を参照されたい)。
【0186】
本発明の抗体は、本明細書に記載のヒト化抗体を含むことが認識されるであろう。本明細書に記載のものなどのヒト化抗体は、当業者に公知の技法を使用して産生することができる(Zhang, W., et al., Molecular Immunology. 42(12):1445-1451, 2005;Hwang W. et al., Methods. 36(1):35-42, 2005;Dall'Acqua WF, et al., Methods 36(1):43-60, 2005;およびClark, M., Immunology Today. 21(8):397-402, 2000)。
【0187】
抗体は、上記のCDR1-H、CDR2-H、CDR3-H、CDR1-L、CDR2-LおよびCDR3-Lのうちの1つまたは複数を含み、抗体は、これらの配列をコードするDNAを含有する宿主細胞からの発現によって得られてもよい。各CDR配列をコードするDNAは、CDRのアミノ酸配列に基づいて決定され、オリゴヌクレオチド合成技法、部位特異的突然変異誘発およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技法を適宜使用して、任意の所望の抗体可変領域フレームワークおよび定常領域DNA配列と一緒に合成されてもよい。可変領域フレームワークおよび定常領域をコードするDNAは、GenBank(登録商標)などの遺伝子配列データベースから、当業者に広く利用可能である。
【0188】
一旦合成されると、本発明の抗体をコードするDNAまたはその断片は、核酸の切除、ライゲーション、形質転換、およびいくつもの公知の発現ベクターを使用するトランスフェクションのための種々の周知の手順のいずれかに従って、増幅および発現され得る。よって、ある特定の実施形態では、抗体断片の発現は、原核生物宿主、例えばEscherichia coliにおいて好ましい場合がある(例えば、Pluckthun et al., 1989 Methods Enzymol. 178:497-515を参照されたい)。ある特定の他の実施形態では、抗体またはその断片の発現は、酵母(例えば、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombe、およびPichia pastoris)を含む真核生物宿主細胞、動物細胞(哺乳類細胞を含む)または植物細胞において好ましい場合がある。好適な動物細胞の例としては、以下に限定されないが、骨髄腫細胞(マウスNSO系など)、COS細胞、CHO細胞、またはハイブリドーマ細胞が挙げられる。植物細胞の例としては、タバコ、トウモロコシ、ダイズ、およびコメの細胞が挙げられる。
【0189】
抗体の可変および/または定常領域をコードするDNAを含有する複製可能な発現ベクターが調製され、適切な細胞系、例えば、非産生骨髄腫細胞系、例えば、抗体の産生が生じるマウスNSO系または細菌、例えばE.coliを形質転換するために使用され得る。効率的な転写および翻訳を得るために、各ベクターにおけるDNA配列は、適切な調節配列、特にプロモーターおよび可変ドメイン配列に作動可能に連結されるリーダー配列を含むべきである。このように抗体を産生するための特定の方法は、一般的に周知であり、日常的に使用される。例えば、基礎分子生物学の手順は、Maniatis et al.(Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory, New York, 1989;Maniatis et al, 3rd ed., Cold Spring Harbor Laboratory, New York,(2001)も参照されたい)に記載されている。DNA配列決定は、Sanger et al.(PNAS 74:5463,(1977))およびAmersham International plc sequencing handbookに記載されているように実施することができ、部位特異的突然変異誘発は、当技術分野で公知の方法に従って行うことができる(Kramer et al., Nucleic Acids Res. 12:9441,(1984);Kunkel Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:488-92(1985);Kunkel et al., Methods in Enzymol. 154:367-82(1987);the Anglian Biotechnology Ltd. handbook)。さらに、多数の刊行物には、DNAの操作、発現ベクターの作出、ならびに適切な細胞の形質転換および培養による抗体の調製に好適な技法が記載される(Mountain A and Adair, J R in Biotechnology and Genetic Engineering Reviews(ed. Tombs, M P, 10, Chapter 1, 1992, Intercept, Andover, UK);"Current Protocols in Molecular Biology", 1999, F.M. Ausubel(ed.), Wiley Interscience, New York)。
【0190】
本発明による抗体の親和性を改善することが望ましい場合、上述のCDRのうちの1つまたは複数を含有することは、CDRを維持すること(Yang et al., J. Mol. Biol., 254, 392-403, 1995)、チェーンシャッフリング(Marks et al., Bio/Technology, 10, 779-783, 1992)、E. coli.の突然変異株の使用(Low et al., J. Mol. Biol., 250, 350-368, 1996)、DNAシャッフリング(Patten et al., Curr. Opin. Biotechnol., 8, 724-733, 1997)、ファージディスプレイ(Thompson et al., J. Mol. Biol., 256, 7-88, 1996)およびセクシャルPCR(Crameri, et al., Nature, 391, 288-291, 1998)を含むいくつかの親和性成熟プロトコールによって得ることができる。親和性成熟のこれらの方法の全ては、Vaughan et al.(Nature Biotech., 16, 535-539, 1998)によって議論されている。
【0191】
抗体などの一部のタンパク質は、種々の翻訳後修飾を受ける場合があることは当業者によって理解される。これらの修飾の種類および程度は、タンパク質を発現するために使用される宿主細胞系および培養条件に応じて変わることが多い。このような修飾は、グリコシル化、メチオニン酸化、ジケトピペリジン形成、アスパラギン酸異性化およびアスパラギンの脱アミド化の変化を含み得る。頻度の高い修飾は、カルボキシペプチダーゼの作用によるカルボキシ末端の塩基性残基(例えば、リシンまたはアルギニン)の損失である(Harris, R.J. Journal of Chromatography 705:129-134, 1995に記載されているように)。
7.8.医薬組成物
【0192】
本発明のRPPを含有する医薬組成物も提供される。このような組成物は、薬学的に許容される物質、および生理学的に許容される製剤物質を含む混合物中に、治療または予防有効量のポリペプチドまたはタンパク質を含む。
【0193】
医薬組成物は、例えば、組成物のpH、モル浸透圧濃度、粘度、透明度、色、等張性、匂い、無菌性、安定性、溶解もしくは放出速度、吸着または浸透を修正、維持または保存するための製剤物質を含有してもよい。
【0194】
好適な製剤物質としては、以下に限定されないが、アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリシンなど);抗菌剤;酸化防止剤(アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウムまたは亜硫酸水素ナトリウムなど);緩衝剤(ホウ酸塩、重炭酸塩、Tris-HCl、クエン酸塩、リン酸塩、他の有機酸など);増量剤(マンニトールまたはグリシンなど)、キレート剤(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)など);錯化剤(カフェイン、ポリビニルピロリドン、ベータ-シクロデキストリンまたはヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリンなど);充填剤;単糖類;二糖類および他の炭水化物(グルコース、マンノース、またはデキストリンなど);タンパク質(血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンなど);着色剤;着香剤および希釈剤;乳化剤;親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど);低分子量ポリペプチド;塩形成対イオン(ナトリウムなど);防腐剤(塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸または過酸化水素など);溶媒(グリセリン、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなど);糖アルコール(マンニトールまたはソルビトールなど);懸濁化剤;界面活性剤または湿潤剤(プルロニック(登録商標)、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルベート20、ポリソルベート80などのポリソルベート、トリトン、トロメタミン、レシチン、コレステロール、チロキサパールなど);安定性強化剤(スクロースまたはソルビトールなど);等張性強化剤(アルカリ金属ハロゲン化物、好ましくは塩化ナトリウムまたはカリウム、マンニトール、ソルビトールなど);送達ビヒクル;希釈剤;賦形剤および/または薬学的アジュバントが挙げられる。中性の緩衝食塩水または同種の血清アルブミンと混合した食塩水は、適切な希釈剤の例である。適切な工業標準に従って、ベンジルアルコールなどの防腐剤も添加してもよい。組成物は、希釈剤として適切な賦形剤溶液(例えば、スクロース)を使用して、凍結乾燥物として製剤化されてもよい。好適な構成成分は、用いられる投薬量および濃度で、レシピエントに対して非毒性である。医薬製剤において用いることができる構成成分のさらなる例は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th Ed.(1980)and 20th Ed.(2000), Mack Publishing Company, Easton, PAに示されている。
【0195】
必要に応じて、組成物は、1種または複数の生理学的に活性な薬剤、例えば、抗血管新生物質、化学療法物質(例えば、カペシタビン、5-フルオロウラシル、またはドキソルビシン)、鎮痛物質など(これらの非排他的な例は本明細書に提供されている)をさらに含む。様々な特定の実施形態では、組成物は、RPPに加えて、1、2、3、4、5、または6種の生理学的に活性な薬剤を含む。
【0196】
本発明の別の実施形態では、本明細書に開示される組成物は、中性または塩の形態で製剤化されてもよい。例示的な薬学的に許容される塩としては、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基により形成される)が挙げられ、これは、例えば、塩酸もしくはリン酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などのような有機酸と共に形成される。遊離カルボキシル基と共に形成される塩は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化鉄などの無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどのような有機塩基に由来してもよい。製剤化されると、溶液剤は、投与製剤と適合する方式で、治療上有効な量で投与されることになる。
【0197】
担体は、ありとあらゆる溶剤、分散媒、ビヒクル、コーティング、希釈剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、緩衝剤、担体溶液、懸濁液、コロイドなどをさらに含んでもよい。薬学的に活性な物質に対するこのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野で周知である。いずれかの従来の媒体または薬剤が有効成分と不適合である場合を除いて、治療組成物におけるその使用が企図される。補足的な有効成分が組成物中に導入されてもよい。語句「薬学的に許容される」は、ヒトに投与された場合に、アレルギー反応または同様の有害反応を生じない分子実体および組成物を指す。
【0198】
最適な医薬組成物は、例えば、意図される投与経路、送達形式、および所望の投薬量に応じて、当業者によって決定されることになる。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、上掲を参照されたい。このような組成物は、ポリペプチドの物理的状態、安定性、in vivo放出量、およびin vivoクリアランス量に影響を及ぼし得る。例えば、好適な組成物は、注射用の水、非経口投与用の生理学的食塩水溶液であってもよい。
7.8.1.薬学的有効成分の含量
【0199】
典型的な実施形態では、有効成分(すなわち、本発明のタンパク質およびポリペプチド)は、少なくとも0.01mg/ml、少なくとも0.1mg/ml、少なくとも0.5mg/ml、または少なくとも1mg/mlの濃度で、医薬組成物中に存在する。ある特定の実施形態では、有効成分は、少なくとも1mg/ml、2mg/ml、3mg/ml、4mg/ml、5mg/ml、10mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、または25mg/mlの濃度で、医薬組成物中に存在する。ある特定の実施形態では、有効成分は、少なくとも30mg/ml、35mg/ml、40mg/ml、45mg/mlまたは50mg/mlの濃度で、医薬組成物中に存在する。
7.8.2.一般的な製剤化
【0200】
医薬組成物は、液体、油、エマルション、ゲル、コロイド、エアロゾルまたは固体を含む、ヒトまたは脊椎動物の薬に適切な任意の形態であってもよい。
【0201】
医薬組成物は、経腸および非経口投与経路を含む、ヒトまたは脊椎動物の薬に適切な任意の投与経路による投与のために製剤化され得る。
【0202】
様々な実施形態では、医薬組成物は、吸入による投与のために製剤化される。ある特定のこれらの実施形態では、医薬組成物は、気化器による投与のために製剤化される。ある特定のこれらの実施形態では、医薬組成物は、ネブライザーによる投与のために製剤化される。ある特定のこれらの実施形態では、医薬組成物は、エアロゾライザーによる投与のために製剤化される。
【0203】
様々な実施形態では、医薬組成物は、経口投与、口腔投与、または舌下投与のために製剤化される。
【0204】
一部の実施形態では、医薬組成物は、静脈内、筋肉内、または皮下投与のために製剤化される。
【0205】
一部の実施形態では、医薬組成物は、髄腔内または脳室内投与のために製剤化される。
【0206】
一部の実施形態では、医薬組成物は、局所投与のために製剤化される。
7.8.3.注射に適合される医薬組成物
【0207】
静脈内、皮膚もしくは皮下注射、または病気の部位への注射のために有効成分は、パイロジェンフリーであり、好適なpH、等張性および安定性を有する非経口的に許容される水性溶液の形態であろう。当業者は、例えば、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、乳酸加リンゲル注射液などの等張性ビヒクルを使用して、好適な溶液剤を十分に調製することができる。防腐剤、安定化剤、緩衝剤、酸化防止剤および/または他の添加剤が、必要な場合に含まれ得る。
【0208】
様々な実施形態では、単位剤形は、バイアル、アンプル、ボトル、または予め充填されたシリンジである。一部の実施形態では、単位剤形は、0.01mg、0.1mg、0.5mg、1mg、2.5mg、5mg、10mg、12.5mg、25mg、50mg、75mg、または100mgの医薬組成物を含有する。一部の実施形態では、単位剤形は、125mg、150mg、175mg、または200mgの医薬組成物を含有する。一部の実施形態では、単位剤形は、250mgの医薬組成物を含有する。
【0209】
典型的な実施形態では、単位剤形における医薬組成物は、液体形態である。様々な実施形態では、単位剤形は、0.1mLから50mlの間の医薬組成物を含有する。一部の実施形態では、単位剤形は、1ml、2.5ml、5ml、7.5ml、10ml、25ml、または50mlの医薬組成物を含有する。
【0210】
特定の実施形態では、単位剤形は、0.01mg/ml、0.1mg/ml、0.5mg/ml、または1mg/mlの濃度の医薬組成物1mlを含有するバイアルである。一部の実施形態では、単位剤形は、0.01mg/ml、0.1mg/ml、0.5mg/ml、または1mg/mlの濃度の医薬組成物2mlを含有するバイアルである。
【0211】
一部の実施形態では、単位剤形における医薬組成物は、固体形態、例えば、可溶化に好適な凍結乾燥物である。
【0212】
皮下、皮内、または筋肉内投与に好適な単位剤形の実施形態は、予充填シリンジ、自動注射器、および自動注射ペン(autoinject pen)を含み、それぞれ、所定量の本明細書の上記に記載の医薬組成物を含有する。
【0213】
様々な実施形態では、単位剤形は、シリンジおよび所定量の医薬組成物を含む予充填シリンジである。ある特定の予充填シリンジの実施形態では、シリンジは、皮下投与用に適合させる。ある特定の実施形態では、シリンジは、自己投与に好適である。特定の実施形態では、予充填シリンジは、単回使用シリンジである。
【0214】
様々な実施形態では、予充填シリンジは、約0.1mLから約0.5mLの医薬組成物を含有する。ある特定の実施形態では、シリンジは、約0.5mLの医薬組成物を含有する。具体的な実施形態では、シリンジは、約1.0mLの医薬組成物を含有する。特定の実施形態では、シリンジは、約2.0mLの医薬組成物を含有する。
【0215】
ある特定の実施形態では、単位剤形は、自動注射ペンである。自動注射ペンは、本明細書に記載される医薬組成物を含有する自動注射ペンを含む。一部の実施形態では、自動注射ペンは、所定体積の医薬組成物を送達する。他の実施形態では、自動注射ペンは、使用者によってある体積の医薬組成物を送達するように構成される。
【0216】
様々な実施形態では、自動注射ペンは、約0.1mLから約5.0mLの医薬組成物を含有する。具体的な実施形態では、自動注射ペンは、約0.5mLの医薬組成物を含有する。特定の実施形態では、自動注射ペンは、約1.0mLの医薬組成物を含有する。他の実施形態では、自動注射ペンは、約5.0mLの医薬組成物を含有する。
7.8.4.組換え高度免疫を有する血漿中IVIgの混合物
【0217】
一部の実施形態では、組換え高度免疫は、従来の血漿中IVIgへとスパイクされ、IVIgの抗病原体力価を増加させる。一部の実施形態では、いくつかの抗病原体組換え高度免疫が、従来の血漿中IVIgへとスパイクされ、例えば、Hib、肺炎球菌、A型インフルエンザウイルス、および破傷風を対象とする高度免疫が、血漿中IVIgへと同時にスパイクされ、一次免疫不全を有する患者を処置する。高度免疫におけるスパイクは、一次免疫不全の患者が特に感受性である病原体を対象とする抗体の力価を増加させる。いくつものスパイクインを血漿中IVIgと混合して、いくつもの病原体に対する増加した力価を生じさせることができる。
【0218】
一部の実施形態では、スパイクイン組換え高度免疫は、薬剤師によって血漿中IVIgと混合される。一部の実施形態では、スパイクイン組換え高度免疫は、製造業者によって血漿中IVIgと混合される。
7.9.単位剤形
【0219】
医薬組成物は、便宜的に、単位剤形中に存在してもよい。
【0220】
単位剤形は、典型的には、医薬組成物の1つまたは複数の具体的な投与経路に対して適するであろう。
【0221】
様々な実施形態では、単位剤形は、吸入による投与に適する。ある特定のこれらの実施形態では、単位剤形は、気化器による投与に適する。ある特定のこれらの実施形態では、単位剤形は、ネブライザーによる投与に適する。ある特定のこれらの実施形態では、単位剤形は、エアロゾライザーによる投与に適する。
【0222】
様々な実施形態では、単位剤形は、経口投与、口腔投与、または舌下投与に適する。
【0223】
一部の実施形態では、単位剤形は、静脈内、筋肉内、または皮下投与に適する。
【0224】
一部の実施形態では、単位剤形は、髄腔内または脳室内投与に適する。
【0225】
一部の実施形態では、医薬組成物は、局所投与用に製剤化される。
【0226】
単一の剤形を生成するために担体材料と組み合わせることができる有効成分の量は、一般的に、治療効果をもたらす化合物の量であろう。
8.RPP活性
【0227】
RPP、例えば、本発明による抗体は、5×10-7M未満であるかもしくはそれに等しい、1×10-7M未満であるかもしくはそれに等しい、0.5×10-7M未満であるかもしくはそれに等しい、1×10-8M未満であるかもしくはそれに等しい、1×10-9M未満であるかもしくはそれに等しい、1×10-10M未満であるかもしくはそれに等しい、1×10-11M未満であるかもしくはそれに等しい、または1×10-12M未満であるかもしくはそれに等しい、抗原標的に対する結合親和性を有してもよい。
【0228】
RPPの親和性、および抗体が結合を阻害する程度は、従来の技法、例えば、Scatchard et al.(Ann. N.Y. Acad. Sci. 51:660-672(1949))に記載されるものを使用して、または表面プラズモン共鳴(SPR;BIAcore、Biosensor、Piscataway、NJ)によって、当業者によって決定され得る。表面プラズモン共鳴では、標的分子を固相に固定し、フローセルに沿って流れる移動相中のリガンドに曝露される。リガンドが、固定化された標的と結合する場合、局所的な屈折率が変化し、SPR角度の変化をもたらし、反射光の強度における変化を検出することにより、SPR角度の変化をリアルタイムでモニタリングすることができる。SPRシグナルの変化の速度を分析して、結合反応の会合および解離の相に対する見かけの速度定数を得ることができる。これらの値の比率により、見かけの平衡定数(親和性)を得る(例えば、Wolff et al., Cancer Res. 53:2560-65(1993)を参照されたい)。
9.RPPに応答する疾患を処置する方法
【0229】
別の態様では、RPPに応答する疾患を有する対象を処置するための方法が示される。疾患は、がん、AIDS、アルツハイマー病またはウイルスもしくは細菌感染であってもよい。ある特定の態様では、RPPを使用して、ドナーからホストへの器官、組織、または細胞集団の移植中の寛容を誘導する。
【0230】
用語「処置(treatment)」、「処置する(treating)」などは、一般的に、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを意味するために本明細書で使用される。この効果は、疾患、状態、もしくはその症状を完全にもしくは部分的に防止するという点で予防的であってもよい、ならびに/または疾患もしくは状態および/もしくは疾患もしくは状態に起因する、症状などの有害効果に対する部分的または完全な治癒という点で治療的であってもよい。「処置」は、本明細書で使用される場合、哺乳動物、特にヒトの疾患または状態の任意の処置を網羅し:(a)疾患もしくは状態に罹りやすい可能性があるが、疾患もしくは状態を有すると未だ診断されていない対象において、疾患もしくは状態が起こるのを防止すること;(b)疾患もしくは状態を阻害すること(例えば、その発症を阻止すること);または(c)疾患もしくは状態を緩和すること(例えば、疾患または状態を退縮させること、1つまたは複数の症状の改善をもたらすこと)を含む。いずれかの状態の改善は、標準的方法および当技術分野で公知の技法に従って、容易に評定することができる。その疾患について、その方法によって処置される対象の集団は、望ましくない状態または疾患を患っている対象、および状態または疾患の発症のリスクを有する対象を含む。
【0231】
用語「治療有効用量」または「有効量」によって、それが投与されるものに対して所望の効果をもたらす用量または量を意味する。正確な用量または量は、処置の目的に応じて変わることになり、公知の技法を使用して、当業者によって確認されるであろう(例えば、Lloyd(1999)The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compoundingを参照されたい)。
【0232】
用語「十分な量」は、所望の効果をもたらすのに十分な量を意味する。
【0233】
用語「治療有効量」は、疾患の症状を改善するのに有効である量である。治療有効量は、予防を治療とみなすことができるため、「予防有効量」であってもよい。
【0234】
用語「改善する」は、疾患状態、例えば神経変性疾患状態の処置(その予防、重症度または進行の緩和、寛解、または治癒を含む)におけるいずれかの治療上有益な帰結を指す。
【0235】
in vivoおよび/またはin vitroアッセイは、最適な投薬量の範囲を特定するのを助けるために必要に応じて用いることができる。製剤中で用いられる正確な用量は、投与経路、および状態の重篤性に応じても変わり、開業医の判断および各対象の状況に従って決定されるべきである。有効用量は、in vitroまたは動物モデル試験系に由来する用量応答曲線から推定されてもよい。
【0236】
投与される実際の量、ならびに投与速度および時間経過は、処置されるタンパク質凝集疾患の性質および重症度に応じて決まることになる。処置の処方、例えば、投薬量などの決定は、一般開業医および他の医師の責任の範囲内にあり、典型的には、処置される障害、個々の患者の状態、送達部位、投与方法および開業医に公知の他の要因を考慮する。上述の技法およびプロトコールの例は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Osol, A.(ed), 1980に見出される。
【0237】
一部の実施形態では、医薬組成物は、吸入によって、経口的に、口腔投与によって、舌下投与によって、注射によって、または局所投与によって投与される。
【0238】
一部の実施形態では、医薬組成物は、ニューロンの生存またはドーパミン放出をモジュレートするのに十分な量で投与される。一部の実施形態では、主要なカンナビノイドは、用量当たり1g未満、500mg未満、100mg未満、10mg未満の量で投与される。
【0239】
一部の実施形態では、医薬組成物は、1日に1回、1日に2~4回、1週間に2~4回、1週間に1回、または2週間ごとに1回投与される。
【実施例】
【0240】
10.実施例
以下は、本発明を実行するための特定の実施形態の例である。実施例は、例示目的のみのために提供され、本発明の範囲をいかなるようにも限定することを意図しない。使用される数値(例えば、量、温度など)に関して正確性を確保するための努力がなされているが、幾分かの実験誤差およびばらつきは、当然のことながら許容されるべきである。
【0241】
本発明の実践では、別段に示されていなければ、当技術分野における技術の範囲内で、タンパク質化学、生化学、組換えDNA技法および薬理学についての従来の方法が用いられることになる。このような技法は、参考文献において十分に説明されている。例えば、T.E. Creighton, Proteins: Structures and Molecular Properties(W.H. Freeman and Company, 1993);A.L. Lehninger, Biochemistry(Worth Publishers, Inc., current addition);Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual(2nd Edition, 1989);Methods In Enzymology(S. Colowick and N. Kaplan eds., Academic Press, Inc.);Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Edition(Easton, Pennsylvania: Mack Publishing Company, 1990);Carey and Sundberg Advanced Organic Chemistry 3rd Ed.(Plenum Press)Vols A and B(1992)を参照されたい。
10.1.1.
(実施例1)
ヒトの胸腺細胞またはT細胞に対する活性を有するRPPライブラリーの生成
【0242】
ヒトの胸腺細胞またはT細胞を標的とするRPP、すなわち、組換えヒト抗胸腺細胞グロブリン(rhATG)の4つのライブラリーを産生した。in vitro研究とin vivo研究の両方を使用して、rhATGと市販のウサギATG(Thymoglobulin、Sanofi)の間の機能的類似性を実証した。重鎖および軽鎖CDR3の配列を上記表5のRPP10~13に提供する。
【0243】
市販の抗胸腺細胞グロブリン(ATG、(Thymoglobulin、Sanofi))は、移植の寛容を誘導するのに有用であり、ニュージーランドウサギをヒト胸腺細胞で免疫化することによって製造され;血液は、数千匹の動物から回収され、抗体は血漿から精製される。本明細書に開示されるRPP、すなわちrhATGのライブラリーは、ポリクローナルATGの有効性という利点を、完全ヒト組換えRPPライブラリーの安全性という利点と組み合わせるものである。
【0244】
第一に、挿入されたヒト免疫グロブリン遺伝子を有するトランスジェニックマウスをヒト胸腺細胞またはヒトT細胞で免疫化した。2匹のTrianniマウスに、1週間に2回、3週間足蹠注射を実施し、その後、次の2週間ブーストした。1~2百万個の胸腺細胞を、各時点で、各マウスに注射した。最終ブーストの前に、胸腺細胞の抗体の血清中力価を、1:200から開始して1:145,000で終了する各動物の血清の希釈系列を使用して、フローサイトメトリーによって評定した。本発明者らは、両動物において強力な血清応答を観察し、一方の動物はわずかにより強力な応答を示した。屠殺後に、リンパ節(膝窩、鼠径部、腋窩、および腸間膜)を外科的に除去した。手作業で破壊して、その後70μmのフィルターを通して、各動物に関する単一細胞懸濁液を作製した。次に、EasySep(商標)Mouse Pan-B Cell Isolation Kit(Stemcell Technologies)陰性選択キットを使用して、各試料からB細胞を単離した。C-Chip血球計数器(Incyto)で計数することによって、リンパ節B細胞集団を定量し、トリパンブルーを使用して生存率を評定した。次いで、12%のOptiPrep(商標)Density Gradient Medium(Sigma)を含むリン酸緩衝食塩水(PBS)中で、細胞を1mL当たり5,000~6,000個の細胞まで希釈した。この細胞混合物をマイクロ流体カプセル化に使用した。本発明者らは、およそ100万個のB細胞を、6匹の動物それぞれから、エマルション液滴マイクロフルイディクスのプラットフォームを介してランさせた。
【0245】
エマルション液滴マイクロフルイディクスのプラットフォームまたはボルテックスエマルションを使用して、天然の重鎖-軽鎖Igが無傷で対合した、単一細胞のRNA由来のscFvをコードするDNAライブラリーを生成した。DNAライブラリーを生成する方法を、1)ポリ(A)+mRNA捕捉、2)多重化オーバーラップ伸長逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(OE-RT-PCR)、および3)人工産物を除去して、ディープシークエンシングまたは酵母ディスプレイライブラリーのためにアダプターを付加するためのネステッドPCRに分割した。scFvライブラリーは、陽性力価に達した各動物由来のおよそ100万個のB細胞から作成する。
【0246】
ポリ(A)+mRNA捕捉のために、ガラス(Dolomite)から製作したカスタムデザインの並行流のエマルション液滴マイクロ流体チップを使用した。マイクロ流体チップは、フルオロカーボンオイル(Dolomite)のための2つのインプットチャネル、上記の細胞懸濁液ミックスのための1つのインプットチャネル、および細胞溶解緩衝剤(20mMのTris pH7.5、0.5MのNaCl、1mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、0.5%のTween(登録商標)-20、および20mMのジチオトレイトール)中1.25mg/mlのオリゴ-dTビーズ(NEB)のための1つのインプットチャネルを有する。インプットチャネルは、チップの長さのほとんどに対しては150μmまで、液滴ジャンクションでは55μmまで狭く、50μmまでエッチングし、疎水性Pico-Glide(Dolomite)でコーティングした。3つのMitos P-Pump圧力ポンプ(Dolomite)を使用して、液体をチップを通してポンプで汲みあげた。液滴サイズは圧力に応じて変わるが、典型的には、約45μmの直径の液滴が最も安定していた。エマルションを冷やした2mlのマイクロ遠心管中に回収し、mRNA捕捉のために40℃で15分間インキュベートした。Pico-Break(Dolomite)を使用して、ビーズを液滴から抽出した。一部の実施形態では、ボルテックスを使用して、類似する単一細胞を分割するエマルションを作製する。
【0247】
多重OE-RT-PCRのために、ガラスのTelos液滴エマルションマイクロ流体チップを使用した(Dolomite)。mRNAが結合したビーズをOE-RT-PCRミックス中に再懸濁させ、鉱物油ベースの界面活性剤ミックス(GigaGenから市販されている)と共に、27μmの液滴を生じる圧力でマイクロ流体チップ中に注入した。OE-RT-PCRミックスは、2×ワンステップRT-PCR緩衝剤、2.0mMのMgSO4、SuperScript III逆転写酵素、およびPlatinum Taq(Thermo Fisher Scientific)を、IgK C領域、IgG C領域、および全てのV領域を対象とするプライマーの混合物と共に含有する。オーバーラップ領域は、Gly-Ser rich scFvリンカー配列をコードするDNA配列である。液滴破壊溶液(GigaGenから市販されている)を使用して、DNA断片を液滴から回収し、次いで、QIAquick PCR Purification Kit(Qiagen)を使用して精製した。一部の実施形態では、同様のOE-RT-PCRエマルションをボルテックスを使用して作製した。
【0248】
ネステッドPCRでは、最初に、精製したOE-RT-PCR産物を150Vで80分間1.7%のアガロースゲルにランした。連結した産物に対応する1200~1500塩基対(bp)のバンドを切り取り、NucleoSpin Gel and PCR Clean-up Kit(Macherey Nagel)を使用して精製した。次いで、PCRを実施し、Illuminaシークエンシングまたは酵母ディスプレイのためにアダプターを付加した;シークエンシングでは、7つのヌクレオチドのランダマーを付加して、次の次世代シークエンシングステップのベースコールの精度を増加させる。プライマーを含有するIlluminaアダプターまたは酵母発現ベクター中にクローニングするためのプライマーのいずれかを含む2×NEBNext High-Fidelity増幅ミックス(NEB)を用いてネステッドPCRを実施した。ネステッドPCR産物を150Vで50分間1.2%のアガロースゲルにランした。800~1100bpのバンドを切り出し、NucleoSpin Gel and PCR Clean-up Kit(Macherey Nagel)を使用して精製した。
【0249】
GigaLink(商標)scFvライブラリーを全長CHO発現ライブラリーに変換するために、ネステッドアウターPCRプライマーを使用して、ギブソンアセンブリのためのオーバーハングを有するアダプターをscFvライブラリーの5’末端と3’末端に付加した。次いで、NEBuilder HiFi DNA Assembly Master Mix(NEB、Ipswich、MA、USA)を使用して、scFvライブラリーを、単一のプロモーター、軽鎖Igに関する分泌リーダー配列およびIgG1定常領域の残りの部分を含有するベクターに挿入し、クローニングされたscFvライブラリーを作出した。この中間ライブラリーをE.coliに形質転換し、LB-アンピシリンプレート上に広げ、50万~100万個のコロニーを掻き取ってプールし、ZymoPURE II Plasmid Maxiprep Kits(Zymo Research、Irvine、CA、USA)を使用してプラスミドを精製した。全長抗体ライブラリーを作出するために、GA1の産物をBamHI-HF(NEB、Ipswich、MA、USA)で線状化し、それをベクターとして使用して、軽鎖Ig定常領域の一部、軽鎖Igに対するポリ(A)シグナル、IgG遺伝子に対するプロモーターおよびIgG遺伝子に対する分泌リーダー配列を含有する合成アンプリコンを挿入することによって、第2のギブソンアセンブリを実施した。次いで、全長ライブラリーをE.coliに形質転換し、LB-アンピシリンプレート上に広げた。50万個を超えるコロニーを掻き取って、ZymoPURE II Plasmid Maxiprep Kits(Zymo Research)を用いてプラスミドを精製し、トランスフェクションのための全長組換え高度免疫マキシプレップライブラリーを作製した。
【0250】
接着Flp-In(商標)-CHO細胞系をゲノムに組み込まれたFRT部位(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA、USA)を用いて懸濁培養に適合させた。適合プロセスにおける全ステップでは、「Ham’s F-12」はHam’s F-12(L-グルタミンを含む、Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA、USA)と10%のFBS(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA、USA)を指し、「BalanCD」は4mMのGlutamax(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA、USA)を含むBalanCD CHO Growth A(Irvine Scientific)を指す。この細胞系を懸濁液に適合させるために、Tフラスコ中の50%のHam’s F-12と50%のBalanCDの混合物中に、細胞を最初に継代した。次に、25%のHam’s F-12と75%のBalanCD中に細胞を継代し、振盪エルレンマイヤーフラスコに切り替えた。次いで、10%のHam’s F-12、90%のBalanCD+0.2%の抗凝集剤(Irvine Scientific、Santa Ana、CA、USA)中に細胞を継代し、将来使用するために貯蔵した。
【0251】
Amaxa Nucleofector 4D(SG緩衝剤、pulse DU133;Lonza、Basel、Switzerland)を使用して、1億個の適応させたFlp-In CHO細胞を組換え高度免疫ライブラリーごとにトランスフェクトした。これらの細胞を振盪エルレンマイヤーフラスコ中にプレーティングし、37℃、125rpmで48時間、インキュベーターにおいて回復させた。48時間後に、細胞を計数して生存能を決定し、1mL当たり100万個の細胞を播種し、新鮮な培地中で600μg/mLのハイグロマイシンB(Gemini Bio、West Sacramento、CA、USA)を使用して選択を開始した。細胞を計数し、7日間の選択中、2~3日ごとに培地を交換した。生存能が95%を超えるまで、ライブラリーを、拡大中、600μg/mLのハイグロマイシンB(Gemini Bio、West Sacramento、CA、USA)で保った。細胞が、95%を超えて生存可能であり、24時間ごとに倍加した場合、液体窒素保管のために細胞系を貯蔵した。
【0252】
抗体ライブラリーを安定して発現するCHO細胞を、90%のBalanCD CHO Growth A Medium(Irvine Scientific、Santa Ana、CA)、9%のHam’s F-12(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA、USA)、1%のFBS(ThermoFisher Scientific)、4mMのGlutamax(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA、USA)、0.2%の抗凝集剤(Irvine Scientific、Santa Ana、CA、USA)からなる培地中で成長させた。小規模産生のために、1mL当たり1×106個の細胞を、250mLのエルレンマイヤーフラスコ中の50mLの培地中に播種し、37℃、5%のCO2、125rpmで成長させた。これらの条件下で細胞を継続的に成長させ、産生実行の2、4および7日目に7.5mLのCHO Feed 1(Irvine Scientific、Santa Ana、CA、USA)を補充した。8日目に、遠心分離と、その後の1μmプレフィルター(EMD Millipore、Burlington、MA、USA)を有する0.22μmの250mLフィルターボトル(EMD Millipore、Burlington、MA、USA)を通す濾過によって、上清を回収した。回収した細胞培養液(HCCF)を、プロテインA精製まで、4℃で保管した。形質細胞組換え高度免疫の大規模産生のために、産生条件に一部の修正を加えた以外は同じ培地中で細胞を成長させた。種系列を使用して、培養物を2×107個の細胞から1.2×1010個の細胞まで、37℃でスケールアップさせた。次いで、5Lフラスコ中の2L中1mL当たり1×106個の細胞を播種した(三連で;0日目)。2日目に、温度を37℃から33℃に変更した。培養の2、4、6、8、10、および13日目に、各フラスコに300mLのCHO Feed 1(Irvine Scientific、Santa Ana、CA、USA)を供給した。14日目に上清を回収した。
【0253】
回収後に、以下の緩衝剤を使用して、MabSelect SuReプロテインA樹脂(GE Life Sciences、Marlborough、MA、USA)を用いて、HCCFを精製した。平衡、追跡、洗浄2(25mMのTris、150mMのNaCl、pH7.4)、洗浄1(25mMのTris、1MのNaCl、pH7.4)、溶出(20mMのクエン酸、pH3.0)、中和(小規模では100mMのTris、pH8.0、大規模では1MのTris、pH9.0)。使用の前後に、0.1NのNaOHを用いてカラムを衛生化した。形質細胞組換え高度免疫の大規模産生のために、0.5Mのアルギニン、pH7.4からなる追加の洗浄3を使用し、溶出前に洗浄2でさらに洗浄した。精製ステップの順序は以下の通りであった:平衡、負荷、追跡、洗浄1、洗浄2(大規模:洗浄3、洗浄2)、溶出、中和(手動で、溶出分画の採取のために使用されるチューブ内に添加した)。Vivaspin 20、30kDaの分子量カットオフスピンコンセントレーター(Sartorius、Gottingen、Germany)を使用して、組換え高度免疫(RPP)を濃縮し、PBS(小規模産生)または0.2Mのグリシン、pH4.5(大規模産生)中で製剤化し、その後、0.22μmで濾過した。
【0254】
ELISAを使用して、T細胞および胸腺細胞の表面で発現されることが公知の抗原に対するrhATG、すなわち、抗T細胞および抗胸腺細胞のRPPの結合について試験した。ELISAは、CD4、CD45、およびCD81に対する結合を示した。抗原をELISAプレート上に1ug/mLでコーティングした。1/3の段階希釈を用いて、各抗体100ug/mLで開始して、用量設定曲線を実施し、EC50を決定した。様々な二次検出抗体を使用したため、ウサギATGとrhATGの間で、EC50値を直接比較することができない。しかし、各ライブラリー内で、抗原が、そのそれぞれのバックグラウンドよりも強力な結合を有することが決定された。抗体応答は、rhATGとウサギATGの両方に関して、多くのT細胞抗原に対して広く反応性であり、いずれの結合もCD45およびCD5に対して非常に強力であり、CD4、CD11、およびCD81に対してはより弱い結合であった(データは示さず)。
【0255】
in vivoでの検証研究を実施した。GvHD(移植片対宿主病)のin vivoモデルを使用して、GvHDに対するATG処置に誘導される遅延の機能的有効性を実証した。一名のドナーからの1×107個のヒトPBMCをNSGマウスに生着させた。この研究では、1群当たり6匹のマウスを使用し、試験される薬物:rhATG(RPP)、市販のウサギATG、およびビヒクル対照をIV注入した。生着の7日後の単回の時点で、動物を処置した(6mg/kg)。さらに、陽性対照群(8匹のマウス)は、GvHDを防止するために通常使用される薬物であるアバタセプトを受け、これは、5日目から研究終了まで1日おきに腹腔内(IP)投与された。免疫細胞を、GvHDへの進行を示す拡大について、フローサイトメトリーによって測定し、体重減少および死亡をもたらすGvHDの臨床像について動物をモニターした。
【0256】
PBMC生着の42日後に、依然として生存している全ての動物を撤退させ、処置群のそれぞれについて生存分析を完了させた。rhATGに関しては有意な遅延は存在せず(p=0.2、Mantel-Cox)、ウサギATGではGvHDに対するわずかな遅延のみが観察された(p=0.01、Mantel-Cox)(データは示さず)。フローサイトメトリーを使用して、処置前、処置の2日後、および処置の9日後に、生着したPBMCを測定した。処置の2日後に見られたように、rhATGおよびウサギATG枯渇CD45+細胞は、CD45+細胞の完全な生着における遅延をもたらすが、しかし、9日目までに、いずれの群の間にも有意な差は存在しなかった(データは示さず)。
【0257】
この結果は、rhATG(RPPライブラリー)が、現在市販されているウサギATGと同様の抗原特異的抗体結合プロファイルを有することを実証するが、いくつかの差異は観察された。加えて、rhATGは、様々な投与レジメンを使用するマウスにおいて、GvHDへの進行を遅延させる際に、市販のウサギATGと同様の性能も有する。
10.1.2.
(実施例2)
ヒトドナーからのb型Haemophilus influenzae(Hib)に対する活性を有するRPPライブラリーの生成
【0258】
in vitro研究とin vivo研究の両方を実施し、b型Haemophilus influenzae(Hib)に対する活性を有するポリクローナル抗体プール、(pAb)、すなわちRPPのライブラリーを試験した。Pedvax-HIBコンジュゲートワクチンを接種したドナーから採取した4つの異なるB細胞亜型から作製した抗Hib pAbを試験した。試験した4つの亜型は、CD43+形質芽細胞、CD27+メモリーB細胞、末梢CD138+形質細胞、および汎B細胞(全てのB細胞)であった。4つのpAb全てを最初にin vitroで試験した。CD138+形質細胞から作製したpAbが、in vitroで最も強力であり、よって、この産物をin vivoでの負荷モデルにおいてIVIGと比較して試験した。
【0259】
RPPの重鎖および軽鎖CDR3配列の配列番号を上記表5のRPP3~6に提供する。
【0260】
CRO(BloodCenter Wisconsin、Milwaukee、WI、USA)を使用して、PedvaxHIBワクチン(Merck、Kenilworth、NJ、USA)で2名のドナー(ドナー1、26歳のコーカサス人女性、およびドナー2、21歳のアジア人男性)にワクチン接種した。8または9日後に、白血球除去療法を実施して、PBMCを得た。並行して、白血球除去療法の日であって、ワクチン接種前に、別々の採血から血漿を単離した。血漿試料に関して、Hib対するELISA(Alpha Diagnostics、San Antonio、TX、USA;以下の方法を参照されたい)によって、ワクチン接種前の同じドナー由来の血漿と比較した、ワクチンに対する応答を確認した。試料採取プロトコールは、治験審査委員会(Institutional Review Board)(IRB)プロトコール番号PRO00028063(Medical College of Wisconsin/Froedtert Hospital IRB)によって、GigaGenに対して認可されたものである。全ての参加者からインフォームドコンセントを得て、試料を匿名でGigaGenに輸送した。
【0261】
汎B細胞を単離するために、本発明者らは、Human EasySep Pan-B Cell Enrichment Kit(Stemcell 番号19554、Vancouver、BC、Canada)を使用した。CD43+細胞を単離するために、本発明者らは、汎B細胞およびCD43に対する陽性選択ビーズ(Miltenyi 番号130-091-333、Bergisch Gladbach、Germany)を使用した。CD27+細胞を単離するために、本発明者らは、CD43+選択からの陰性分画に対して、CD27陽性選択ビーズ(Miltenyi 番号130-051-601、Bergisch Gladbach、Germany)を適用した。形質細胞に関して、本発明者らは、PBMCに対してEasySep Human CD138 Positive Selection Kit(Stemcell 番号18357、Vancouver、BC、Canada)を適用した。単離後に、CryoStor(登録商標)CS10(Stemcell Technologies、Vancouver、BC、Canada)を使用して、抗体産生細胞を凍結保存した。対合した重鎖および軽鎖のライブラリーを生成する直前に、細胞を解凍し、冷たいDPBS+0.5%のBSA中で洗浄し、Countess(商標)細胞カウンター(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA、USA)でトリパンブルーを用いて生存能を評定し、次いで、1μl当たり5,000~6,000個の細胞で、12%のOptiPrep(商標)Density Gradient Medium(Sigma、St. Louis、MO、USA)中に再懸濁させた。この細胞混合物を、次のセクションに記載されるように、マイクロ流体カプセル化のために使用した。
【0262】
抗体産生細胞からのscFvライブラリーの生成(Adler et al., Mabs 9, 1282-1996, 2017)は、3つのステップ:(i)ポリ(A)+mRNA捕捉、(ii)多重化オーバーラップ伸長逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(OE-RT-PCR)、および(iii)人工産物を除去して、ディープシークエンシングまたは酵母ディスプレイライブラリーのためにアダプター配列を付加するためのネステッドPCRを含む。
【0263】
GigaLink(商標)scFvライブラリーを全長CHO発現ライブラリーに変換するために、本発明者らは、最初にネステッドアウターPCRプライマーを使用して、ギブソンアセンブリのためのオーバーハングを有するアダプターをscFvライブラリーの5’末端と3’末端に付加した。次いで、NEBuilder HiFi DNA Assembly Master Mix(NEB、Ipswich、MA、USA)を使用して、scFvライブラリーを、単一のプロモーター、軽鎖Igに関する分泌リーダー配列およびIgG1定常領域の残りの部分を含有するベクターに挿入し、クローニングされたscFvライブラリーを作出した。この中間ライブラリーをE.coliに形質転換し、LB-アンピシリンプレート上に広げ、50万~100万個のコロニーを掻き取ってプールし、ZymoPURE II Plasmid Maxiprep Kits(Zymo Research、Irvine、CA、USA)を使用してプラスミドを精製した。全長抗体ライブラリーを生成するために、GA1の産物をBamHI-HF(NEB、Ipswich、MA、USA)で線状化し、それをベクターとして使用して、軽鎖Ig定常領域の一部、軽鎖Igに対するポリ(A)シグナル、IgG遺伝子に対するプロモーターおよびIgG遺伝子に対する分泌リーダー配列を含有する合成アンプリコンを挿入することによって、第2のギブソンアセンブリを実施した。次いで、全長ライブラリーをE.coliに形質転換し、LB-アンピシリンプレート上に広げた。本発明者らは、概して、50万個を超えるコロニーを掻き取って、ZymoPURE II Plasmid Maxiprep Kits(Zymo Research)を用いてプラスミドを精製し、トランスフェクションのための全長組換え高度免疫マキシプレップライブラリーを作製した。
【0264】
本発明者らは、接着Flp-In(商標)-CHO細胞系をゲノムに組み込まれたFRT部位(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA、USA)を用いて懸濁培養に適合させた。適合プロセスにおける全ステップでは、「Ham’s F-12」はHam’s F-12(L-グルタミンを含む、Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA、USA)と10%のFBS(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA、USA)を指し、「BalanCD」は4mMのGlutamax(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA、USA)を含むBalanCD CHO Growth A(Irvine Scientific)を指す。この細胞系を懸濁液に適合させるために、Tフラスコ中の50%のHam’s F-12と50%のBalanCDの混合物中に、細胞を最初に継代した。次に、25%のHam’s F-12と75%のBalanCD中に細胞を継代し、振盪エルレンマイヤーフラスコに切り替えた。次いで、10%のHam’s F-12、90%のBalanCD+0.2%の抗凝集剤(Irvine Scientific、Santa Ana、CA、USA)中に細胞を継代し、将来使用するために貯蔵した。
【0265】
Amaxa Nucleofector 4D(SG緩衝剤、pulse DU133;Lonza、Basel、Switzerland)を使用して、1億個の適応させたFlp-In CHO細胞を組換え高度免疫ライブラリーごとにトランスフェクトした。これらの細胞を振盪エルレンマイヤーフラスコ中にプレーティングし、37℃、125rpmで48時間、インキュベーターにおいて回復させた。48時間後に、細胞を計数して生存能を決定し、1mL当たり100万個の細胞を播種し、新鮮な培地中で600μg/mLのハイグロマイシンB(Gemini Bio、West Sacramento、CA、USA)を使用して選択を開始した。細胞を計数し、7日間の選択中、2~3日ごとに培地を交換した。生存能が95%を超えるまで、ライブラリーを、拡大中、600μg/mLのハイグロマイシンB(Gemini Bio、West Sacramento、CA、USA)で保った。細胞が、95%を超えて生存可能であり、24時間ごとに倍加した場合、液体窒素保管のために細胞系を貯蔵した。
【0266】
抗体ライブラリーを安定して発現するCHO細胞を、90%のBalanCD CHO Growth A Medium(Irvine Scientific、Santa Ana、CA)、9%のHam’s F-12(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA、USA)、1%のFBS(ThermoFisher Scientific)、4mMのGlutamax(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA、USA)、0.2%の抗凝集剤(Irvine Scientific、Santa Ana、CA、USA)からなる培地中で成長させた。小規模産生のために、1mL当たり1×106個の細胞を、250mLのエルレンマイヤーフラスコ中の50mLの培地中に播種し、37℃、5%のCO2、125rpmで成長させた。これらの条件下で細胞を継続的に成長させ、産生実行の2、4および7日目に7.5mLのCHO Feed 1(Irvine Scientific、Santa Ana、CA、USA)を補充した。8日目に、遠心分離と、その後の1μmプレフィルター(EMD Millipore、Burlington、MA、USA)を有する0.22μmの250mLフィルターボトル(EMD Millipore、Burlington、MA、USA)を通す濾過によって、上清を回収した。回収した細胞培養液(HCCF)を、プロテインA精製まで、4℃で保管した。形質細胞組換え高度免疫の大規模産生のために、産生条件に一部の修正を加えた以外は同じ培地中で細胞を成長させた。種系列を使用して、培養物を2×107個の細胞から1.2×1010個の細胞まで、37℃でスケールアップさせた。次いで、5Lフラスコ中の2L中1mL当たり1×106個の細胞を播種した(三連で;0日目)。2日目に、温度を37℃から33℃に変更した。培養の2、4、6、8、10、および13日目に、各フラスコに300mLのCHO Feed 1(Irvine Scientific、Santa Ana、CA、USA)を供給した。14日目に上清を回収した。
【0267】
回収後に、以下の緩衝剤を使用して、MabSelect SuRe プロテインA樹脂(GE Life Sciences、Marlborough、MA、USA)を用いて、HCCFを精製した。平衡、追跡、洗浄2(25mMのTris、150mMのNaCl、pH7.4)、洗浄1(25mMのTris、1MのNaCl、pH7.4)、溶出(20mMのクエン酸、pH3.0)、中和(小規模では100mMのTris、pH8.0、大規模では1MのTris、pH9.0)。使用の前後に、0.1NのNaOHを用いてカラムを衛生化した。形質細胞組換え高度免疫の大規模産生のために、本発明者らは、0.5Mのアルギニン、pH7.4からなる追加の洗浄3を使用し、溶出前に洗浄2でさらに洗浄した。精製ステップの順序は以下の通りであった:平衡、負荷、追跡、洗浄1、洗浄2(大規模:洗浄3、洗浄2)、溶出、中和(手動で、溶出分画の採取のために使用されるチューブ内に添加した)。Vivaspin 20、30kDa分子量カットオフスピンコンセントレーター(Sartorius、Gottingen、Germany)を使用して、組換え高度免疫を濃縮し、PBS(小規模産生)または0.2Mのグリシン、pH4.5(大規模産生)中で製剤化し、その後、0.22μmで濾過した。
【0268】
Maurice画像化cIEF分析器(Protein Simple、San Jose、CA、USA)を使用して、画像化キャピラリー等電点電気泳動(iCIEF)を実施した。LabChip GX II Touch HT(Perkin Elmer、Waltham、MA、USA)を使用して、還元および非還元条件下で、キャピラリー電気泳動ドデシル硫酸ナトリウム(CE-SDS)を実施した。Endosafe nexgen-PTS(Charles River、Wilmington、MA、USA)を使用して、内毒素レベルを測定した。
【0269】
本発明者らは、本発明者らのプロテインAステップにおいて92.2%のHBV RPP収率を観察した。非還元条件下で、本発明者らは、CE-SDSにより166.2kDaの単一ピーク(>99%)を観察した。還元条件下で、RPPは99%を超える純粋なIgGモノマーと1%未満の他のタンパク質を示したが、一方、血漿中IVIgはおよそ3.1%の未知のタンパク質を示し、このことは、組換え高度免疫が、血漿中IVIgよりも高純度のIgGで産生され得ることを示唆する。iCIEFにより精製された組換え高度免疫の分析によって、広域スペクトルの等電点種が明らかになったが、血漿中IVIgは、かなりより広い範囲の等電点種を示した。本発明者らは、血漿中IVIgが、より多種多様な抗体を含み、IgLと同様に様々なIgGアイソタイプも含む(組換え高度免疫はIgG1のみである)ため、血漿中IVIgがより多様な等電点種を有すると推測する。最後に、内毒素レベルは、1mg当たり0.5内毒素単位(EU)未満であり、これは、組換えmAb治療薬に関する典型的基準である。
【0270】
ディープ抗体シークエンシングライブラリーを、定量的PCR Illumina Library Quantification Kit(KAPA、Wilmington、MA、USA)を使用して定量し、17.5pMまで希釈した。製造業者の使用説明書に従って、500サイクルのMiSeq Reagent Kit v2を使用して、ライブラリーをMiSeq(Illumina、San Diego、CA、USA)でシークエンシングした。シークエンシングライブラリーを作製するために、本発明者らは、テールエンドPCRを使用して、目的の構築物の5’および3’末端にIlluminaシークエンシングアダプターを添加した。次いで、本発明者らは、340サイクルのフォワードリードと162サイクルのリバースリードを得た。これにより、CDR3-HとVH遺伝子の一部でオーバーラップするフォワードリードとリバースリードが得られ、ヌクレオチドコールの信頼性が増加した。本発明者らが以前に報告したバイオインフォマティクスパイプラインを使用して配列分析を実施した(Adler et al., Mabs 9, 1282-1996, 2017)。Rバージョン3.4.2.のcor関数を使用して、ピアソンの相関を実施した。
【0271】
4つのHBV RPPのそれぞれは、112~139万個のインプット細胞に由来した。レパートリーを本発明者らのライブラリー生成パイプラインに供した後、組換え高度免疫のクローン多様性は全て、2,000個未満の抗体クローンであり(880~1,659個の範囲)、インプット抗体の多様性のかなりの部分を捕捉した。4つの組換え高度免疫の全ては、93%の生殖系列IgHV同一性の中央値を有し、Hibワクチンを接種した個体についての以前の分析(Truck et al., 2015)と一致して、いずれの細胞型も有意に高い親和性を有する抗体を生じないことを示唆した。クローンの多様性は、混合物のいずれにおいても、最も出現頻度の高い抗体に強くは偏在しなかった。最も一般的な抗体は、3.5%の頻度で存在した(形質細胞高度免疫)。汎B組換え高度免疫は、最も傾斜の少ないクローン多様性を有し(上位20個の抗体は全ての抗体の12.7%であった)、形質細胞組換え高度免疫は、最も傾斜の大きなクローン多様性を有した(上位20個の抗体は、全ての抗体の26.6%であった)。
【0272】
本発明者らは、4つの組換え高度免疫ライブラリーの遺伝的多様性を調査した。オーバーラップ分析によって、11.8%以下のクローンが、任意の所与の2つの組換え高度免疫ライブラリー間で共有されたことが明らかになった。ピアソン相関分析は、いずれの2つのペアワイズ比較間でも有意ではなかった(p<0.01)。4つの組換え高度免疫ライブラリーは全て、種々のIgGV-J遺伝子対合を含有し、これらにはIgHV3-23およびIgHJ4遺伝子に関する高頻度の抗体が含まれ、このことは、他には、抗Hibレパートリーにおいても見られる(Silverman & Lucas, 1991;Adderson et al., 1993;Lucas et al., 2003;Truck et al., 2015)。他の一般的なIgHV遺伝子は、IgHV3-30、IgHV1-69、およびIgHV3-7を含んだ。全てのライブラリーは、抗Hibレパートリーにおいて以前に観察された(Lucas et al., 2003;Truck et al., 2015)、ペプチドGYGFDまたはGYGMDのいずれかを含有する相補性決定領域(CDR)3配列も含んだ。本発明者らは、4つのライブラリーが全て、標準の抗Hib配列、ならびに生殖系列からの相違および遺伝的多様性の類似するレベルを含有すると結論付けた。しかし、4つのライブラリーは、別個の抗体混合物を含み、これらは、異なる機能的特徴を有する場合がある。
【0273】
Human Anti-Hib-PRP IgG ELISAキット(Alpha Diagnostics 番号980-100-PHG、San Antonio、TX、USA)を、抗HibELISA力価について使用した。抗体調製物の連続希釈を、Low NSB(非特異的結合)試料希釈液中で実施した。プレートリーダー(Molecular Devices、Fremont、CA、USA)において、450nmで、定量的測定を実施した。SoftMax Pro(Molecular Devices、Fremont、CA、USA)を使用して、EC50値を計算した。本発明者らは、Hibアクティブワクチンによるワクチン接種前後の両ドナーからの血漿のプール、およびIVIgに関する抗Hib RPP抗体力価も決定した。形質細胞、汎B、および形質芽細胞組換え高度免疫では、IVIgよりもかなり高いHib結合力価が得られ(160×~2,323×の範囲)、形質細胞高度免疫では、最も高い力価が得られた。ワクチン接種後の血漿は、IVIgの抗Hib力価の3.7×に過ぎなかったが、試験した条件下では、メモリーB細胞組換え高度免疫では、抗Hib力価は検出されなかった。まとめると、これらのデータは、本発明者らの製造プロセスによって、ワクチン接種されたドナーから適切な細胞型を単に選択することによって、抗Hib力価がかなり増加され得ることを示す。
【0274】
in vitro中和研究をCRO(ImQuest Frederick、MD、USA)で実施した。b型Haemophilus influenzae Eagan株を、凍結グリセロールストックとしてZeptometrix(番号0801679、Buffalo、NY、USA)から入手して、-80℃で保管した。Haemophilus influenzae株ATCC 10211は、凍結保存ストックとしてAmerican Type Culture Collection(ATCC、Frederick、MD、USA)から入手し、供給業者によって推奨されるように増幅させた。チョコレート寒天プレート上で一晩のインキュベーションからのコロニーを成長培地(Brain Heart Infusion、またはBHIブロス、BD BBL 299070、San Jose、CA、USA、2%のFildes enrichment、Remel 番号R45037、San Diego、CA、USAを含む)中に接種し、およそ0.4の光学密度625nm(OD625)を達成させた。培養物を、およそ5×108個のコロニー形成単位(CFU)/mLに等しい、0.15のOD625に調整した。培養物を希釈緩衝液(Hanks Balanced Salt Solution、Gibco、Waltham、MA、USA 番号14025-092、2%のFildes enrichmentを含む)中で、5×104CFU/mLまでさらに希釈した。このアッセイで使用した細菌培養物の密度を、50μLの5×103および5×102希釈液を二連でチョコレート寒天にプレーティングし、37℃/5%のCO2で24時間のインキュベーション後にコロニーを数えることにより確認した。
【0275】
試験物を、全部で10の希釈液が評価されるように、200μg/mLで開始して、希釈緩衝液中で3倍希釈した。試験物の各希釈液10μLを、二連で96ウェルマイクロタイターブレート中に添加した。次いで、およそ5×104CFU/mLの濃度のEaganまたはATCC 10211細菌を、ウェル中の総細菌濃度が1×104CFU/20μLとなるように、20μLの容積のプレートに添加した。37℃/5%のCO2で15分のインキュベーション後に、25μLの子ウサギ相補体(Pel-Freez 番号31061-1、Rogers、AR、USA)および25μLの希釈緩衝液を各ウェルに添加した。プレートを37℃/5%のCO2で60分間インキュベートした。インキュベーション後に、各反応混合物5μLを45μLの希釈緩衝液中で希釈し、全50μLをチョコレート寒天プレートにプレーティングした。プレートを37℃/5%のCO2でおよそ16時間インキュベートした。インキュベーション後に、細菌のコロニーを数えた。50%を超える細菌が死滅した試験物の濃度がSBIである。
【0276】
ELISAデータから期待されたように、メモリーB細胞組換え高度免疫は、試験された濃度のいずれにおいても、いずれのHib株も中和することができなかった。形質細胞組換え高度免疫では、再度、最も高い力価が得られ、EaganおよびATCC10211株に関して、それぞれ、SBIは81および243であった。汎Bおよび形質芽細胞組換え高度免疫は、形質細胞組換え高度免疫の9分の1の効力であった。試験した濃度のいずれにおいても、IVIgについて中和は検出されなかった。本発明者らは、形質細胞組換え高度免疫が、試験した4つの細胞型の中で最も効力が高いと結論付ける。
【0277】
全ての脊椎動物の実験は、動物福祉法(Animal Welfare Act)および実験動物の管理と使用に関する指針(Guide for the Care and Use of Laboratory Animals)(National Research Council of the National Academies, Eighth Edition)に組み込まれた基準に従うInstitutional Animal Care and Use Committee of Sinclair Research Center、LLC、Missouri(USA)またはEU指令(EU Directive)2010/63/EU(許可番号:2014-15-0201-00171)の基準に従うNational Committee of Animal Ethics、Denmarkのいずれかの監督および認可の下に行った。
【0278】
急性毒性については、Balb/cJマウス(Charles River、Wilmington、MA、USA)を、CRO(Sinclair Research、Auxvasse、MO、USA)によって、1群当たり6匹の動物からなる7つの群に無作為に分けた。これらの群のうちの3つに、30mg/kg、100mg/kg、または300mg/kgで単回用量の組換え高度免疫を投与した。陰性対照群には、単回用量の食塩水ビヒクルを投与した。3つの残りの群には、30mg/kg、100mg/kg、または300mg/kgで単回用量の血漿中IVIg(Gammagard;Grifols、Sant Cugat、Catalonia)を投与した。試験物試料を、0.2Mのグリシン、pH4.5中に希釈した。試験物の投与は、尾静脈を介して静脈内に実施した。各個々の動物の最近の体重に基づいて、投与体積を計算した。次いで、健康全般、試験物投与部位における反応、罹患率および死亡率、体重、ならびに全体の身体検査(皮膚、粘膜、眼、耳、鼻、および呼吸)について、マウスを1日に2回、8日間観察した。3日後に、動物をCO2で安楽死させ、アルブミン、グロブリン、グルコース、総タンパク質、血中尿素窒素、およびいくつかの他のメトリクスを含む末期の血清生化学検査を実施した。
【0279】
本発明者らは、試験群のいずれに対しても試験物に関連する発見を観察しなかった。本発明者らは、形質細胞組換え高度免疫の単回静脈内投与に関する最大無毒性量(NOAEL)が300mg/kgであると結論付ける。IVIgは、概して、Hibおよび他の病原体に対する保護のために、およそ300mg/kgで、免疫不全患者に投与され、Hib高度免疫生成物は、数千倍効力が高いため、本発明者らは、形質細胞組換え高度免疫が、最小限に有効な用量に対して観察可能な毒性を有さないと結論付ける。
【0280】
薬物動態については、CRO(Sinclair Research、Auxvasse、MO、USA)は、20匹の雄Balb/cJマウス(Charles River、Wilmington、MA、USA)に、形質細胞組換え高度免疫を1回100mg/kgの静脈内尾静脈用量で投与した。いずれのマウスも、計画された7回のPK血液サンプリングを2回より多くを受けないように、スパース血液サンプリング手順を行った。次いで、本発明者らは、サンドイッチリガンド結合アッセイ(LBA)およびMeso Scale Discovery(MSD;Rockville、MD、USA)電気化学ルミネセンス(ECL)技術を使用して、血清中ヒトIgGを測定した。捕捉抗体(SouthernBiotech 番号2049-01、Birmingham、AL、USA)を、96ウェルプレート(MSD、Rockville、MD、USA)上にコーティングした。血清試料を、1%のBSA(PBS/T/BSA)を含有するPBS/T中に、1:100の最小希釈倍率(MRD)まで希釈した。次に、希釈した試料を指定したウェルに添加した。別の洗浄ステップ後に、1mg/mLのビオチン化ヤギ抗ヒトIgG(SouthernBiotech 番号2049-08、Birmingham、AL、USA)を含有するPBS/T/BSAを、ウェルに接種した。インキュベーション後に、ストレプトアビジン-SULFO-TAG、その後、2×リード緩衝剤T(MSD、Rockville、MD、USA)を添加した。MSD QuickPlex SQ 120機器を使用して、ECL単位を測定した。さらに、形質細胞に基づく組換え高度免疫を使用する各実行について、標準曲線を作成した。Discovery Workbenchソフトウェア(MSD、Rockville、MD、USA)を使用して、データを、平均ECL単位対名目上のIgG標準値の4つのパラメーターロジスティック(4-PL)曲線フィットを使用してフィットさせた。本発明者らは、1時間の時点で1100ng/mLまたはそれより低い読取り値を有する2匹の動物を、静脈内投与が失敗したという仮定の下に、さらなる分析から除去した。次いで、本発明者らは、R(Denney et al., 2015)のPKNCAパッケージを使用して、ノンコンパートメント分析を濃度-時間データに適用し、最高血漿中濃度(Cmax)、最高血漿中濃度到達時間(Tmax)、および半減期(t1/2)を推定した。
【0281】
最高血漿中濃度は12,360ng/mLであり(Cmax)、投与の1時間後に観察された(Tmax)。組換え高度免疫の半減期(t1/2)は、およそ34.5時間であった。これらのデータをELISA力価データと組み合わせて、本発明者らは、抗Hibトラフレベルの最大値が、単回の100mg/kg静脈内投与に対して、861IU/mLであったことを推定する。
【0282】
Haemophilus influenza株ATCC10211を、チョコレート寒天プレート上で、35℃および5%のCO2で一晩成長させた。一晩のコロニーを、1.5×108CFU/mLまで、滅菌食塩水中に再懸濁させた。この懸濁液を、5%のムチンおよび2%のヘモグロビンを含むBHIブロス中に、およそ1×106CFU/mLまで希釈し、さらに、10倍希釈して10CFU/mLとした。
【0283】
Balb/cJマウス(Taconic、Denmark;1群当たりn=6)に、104、105、または106CFU/mLのHib細菌(株ATCC10211)の単回の0.5mLの腹腔内投与で接種した。接種のおよそ1時間前に、疼痛緩和として、マウスを45μLのNurofen(およそ30mg/kgに相当する1mL当たり20mgのイブプロフェン)で経口的に処置した。接種の24時間前に、300mg/kgの組換えHib高度免疫、300mg/kgの血漿中IVIgまたは食塩水をマウスに投与した。接種の1時間後に、陽性対照処置として、マウスに20mg/kgのシプロフラキシン抗生剤を投与した。2~6時間ごとに感染の臨床兆候に関してマウスをスコア化し、感染に重篤に罹患した場合、終結させた。さらに72時間後に、任意の生きている動物をZoletilミックスで麻酔して、腋窩を静脈切開することによって血液を採取した。頚椎脱臼によりマウスを屠殺して、2mLの滅菌食塩水を腹腔内注射し、腹部を優しくマッサージしてから、その後、開腹して体液をピペットでサンプリングした。各試料を食塩水中で10倍希釈して、20μLのスポットをチョコレート寒天プレート上に塗布した。全ての寒天プレートを、大気中、35℃で、18~22時間インキュベートした。
【0284】
Hib感染は、ビヒクル対照群の全ての接種用量において、1匹のマウスを除いて全てに対して致命的であった。対照的に、組換え高度免疫処置群(106CFU接種群)では、18匹のマウスのうちの1匹のみが重度に感染した。IVIgは、組換え高度免疫よりも保護性がはるかに低く、105CFUおよび106CFU接種群の5/6のマウス、および104CFU接種群の2/6のマウスが、感染によって重度に罹患した。血中の細菌負荷の分析によって、組換え高度免疫が、全ての動物の血流からHibを排除したが、一方、IVIg処置は、接種群の1つのみで、ビヒクル対照よりも有意に低い細菌負荷をもたらしたが、2つの接種群では有意な低下が見られなかったことが実証された(ダネットの多重比較検定、p<0.05)。腹膜潅流では、組換え高度免疫は、ビヒクル対照群と比較して、細菌負荷を再度有意に低下させた(ダネットの多重比較検定、p<0.05)。しかし、Hib細菌が、シプロフラキシンで処置した生存動物の腹膜潅流において検出不能であったのに対し、Hib細菌は、組換え高度免疫で処置した6/17の生存動物の腹膜潅流において検出可能であった(23~77CFU/mLの範囲)。このことは、おそらく、腹膜における薬物または相補体のバイオアベイラビリティによる、腹膜と血液の間の組換え高度免疫の有効性の差異を示唆する。
【0285】
一部の実施形態では、Hib高度免疫は、従来の血漿中IVIgへとスパイクされ、IVIgの抗Hib力価を増加させる。一部の実施形態では、いくつかの抗病原体高度免疫が、従来の血漿中IVIgへとスパイクされ、例えば、Hib、肺炎球菌、A型インフルエンザウイルス、および破傷風を対象とする高度免疫が、血漿中IVIgへとスパイクされ、一次免疫不全を有する患者を処置する。高度免疫におけるスパイクは、一次免疫不全の患者が特に感受性である病原体を対象とする抗体の力価を増加させる。いくつものスパイクインを血漿中IVIgと混合して、いくつもの病原体に対する増加した力価を生じさせることができる。
【0286】
一連のin vitroおよびin vivo実験を使用して、以下の内容を決定した。Hibでは、ワクチン接種後の形質細胞は、最も有効なRPPを産生する。形質細胞Hib RPPは、血漿中IVIGよりも2,300×を超えてより有効であった(ELISAによる)。形質細胞Hib RPPは、in vivo負荷モデルにおいて、Hib感染に対して強力に保護した。形質芽細胞および汎B細胞の使用も、形質細胞よりも効力は低いが、in vitroで有効なRPPをもたらした。この抗原では、メモリーB細胞から作製されたRPPは、in vitroアッセイにおいて、検出不能レベルの有効性しか有さなかった。
10.1.3.
(実施例3)
Streptococcus pneumoniaeの莢膜多糖に対する活性を有するRPPライブラリーの生成
【0287】
Streptococcus pneumoniaeは肺炎球菌肺炎の原因である。Streptococcus pneumoniaeに対する活性を有する組換えポリクローナル抗体(pAb)、すなわち、RPPライブラリー「GG-Pnc」を生成した。GG-Pncをin vitroで試験した。結果は、Streptococcus pneumoniaeの莢膜多糖に対する活性を有するGG-Pncのin vitroでの機能的有効性および効力を実証する。ライブラリーを、バルク肺炎球菌多糖のELISA、血清型特異的ELISA、および血清型特異的オプソニン作用アッセイによって分析した。
【0288】
GG-Pncの重鎖および軽鎖CDR3配列の配列番号を上記表5に提供する(RPP1)。
【0289】
実施例1および2に記載した組換え技法を使用して、GG-Pnc、すなわち、RPPライブラリーを調製した。このライブラリーは、Pneumovax-23ワクチンを接種した3名のドナーから調製した。Pneumovax-23は、23種の肺炎球菌血清型に由来する莢膜多糖からなる。3名のドナーは全員、ELISAで測定した場合、ワクチン接種後に、肺炎球菌莢膜多糖に対する力価の増加を示した。rpAbは、ドナーから単離した全てのB細胞亜型の混合物から作製した。
【0290】
Alpha Diagnostics ELISAによって、Pneumovax-23ワクチンに見られる23種の肺炎球菌の多糖に対するバルク多糖特異的抗体の応答が測定され、これを使用して、RPPライブラリーのEC50を測定した。8ステップの3倍希釈系列を実施し、4点のロジスティック解析を実施して、EC50を計算した。RPPライブラリーであるGG-Pncは、IVIGよりも約100倍有効であった。
【0291】
血清型多重ELISAを実施して、IVIGと比較したGG-Pnc RPPライブラリーの抗体多様性を評定した。20種の肺炎球菌血清型をELISAによって測定した。肺炎球菌特異的応答に関する国際基準を使用して、GG-PncおよびIVIG(Gamunex)における抗体特異的応答を測定した。GG-Pncは、血清型6Aを除く全ての血清型に対して、IVIGに類似するかまたはそれより高い濃度を有した。
【0292】
血清型特異的オプソニン作用アッセイを実施して、抗体に誘導される殺滅機能を評定した。GG-PncおよびIVIG(Gamunex)を使用して、14種の肺炎球菌血清型をオプソニン作用応答によって測定した。多重ELISAと一致して、GG-Pncは、6Aを除く全ての血清型に対して、IVIGに類似するかまたはより有効であった。
【0293】
以前の分析に含まれなかったため、血清型2特異的ELISAを実施して、GG-Pncのこの血清型に結合する能力を決定したが、これは、in vivoマウスモデルに対して利用可能な選択肢である。8ステップの3倍希釈系列を実施し、4点のロジスティック解析を使用して、EC50を計算した;IVIGが血清型2に対して最低限の結合しか有さなかったため、GG-Pncだけが、非常に高濃度であっても値を有した。
【0294】
GG-Pnc RPPライブラリーは、肺炎球菌血清型の多様なセットに強く結合し、in vitroでのオプソニン作用アッセイに基づいて、試験した全ての血清型を中和することができた。GG-Pncは、1種の血清型以外の全てに対して、IVIGに類似するかまたはそれよりも有効であり(結合と殺滅の両方に対して)、血清型特異的濃縮手順を実施せず、ワクチン接種したドナーから単離した全てのB細胞を使用した。GG-Pncは、血清型2にも強力に結合した。
10.1.4.
(実施例4)
A型インフルエンザ抗原に対する活性を有するRPPライブラリーの生成
【0295】
A型インフルエンザ抗原に対する活性を有するRPPライブラリー(RPP1)を、本明細書に記載の組換え方法を使用して生成した。
【0296】
RPP1の重鎖および軽鎖CDR3配列の配列番号を上記表5に提供する(RPP1)。
10.1.5.
(実施例5)
B型肝炎ウイルス抗原(Engerix、GSK)に対する活性を有するRPPライブラリーの生成
【0297】
B型肝炎ウイルス抗原に対する活性を有するRPPの2つのライブラリー(RPP8およびRPP9)を、本明細書に記載の組換え方法を使用して生成した。
【0298】
RPP9およびRPP9の重鎖および軽鎖CDR3配列の配列番号を上記表5に提供する(RPP1)。
11.参照による組み込み
【0299】
本出願において引用される全ての刊行物、特許、特許出願および他の文書は、それぞれ個々の刊行物、特許、特許出願または他の文書が全ての目的で参照により本明細書に組み込まれることを個々に示されているのと同程度に、全ての目的で参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
12.均等物
【0300】
様々な具体的な実施形態が例示および記載されているが、上記明細書は限定的ではない。本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、様々な変更がなされ得ることが認識されるであろう。多くの変更は、本明細書を鑑みて当業者にとって明らかになるであろう。
【手続補正書】
【提出日】2021-11-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】