(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(54)【発明の名称】脈管インプラント及びその製作方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/07 20130101AFI20220629BHJP
【FI】
A61F2/07
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021562799
(86)(22)【出願日】2020-05-05
(85)【翻訳文提出日】2021-12-15
(86)【国際出願番号】 EP2020062432
(87)【国際公開番号】W WO2020225254
(87)【国際公開日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】102019206493.0
(32)【優先日】2019-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517014125
【氏名又は名称】レイニッシュ-ヴェストフェリッシェ テヒニッシェ ホッホシューレ(エルヴェーテーハー)アーヘン
【氏名又は名称原語表記】Rheinisch-Westfalische Technische Hochschlule(RWTH)Aachen
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ゲッシェ,バレンタイン
(72)【発明者】
【氏名】レーヴェン,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】カーテンバック,カトリン
(72)【発明者】
【氏名】グリース,トマス
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA15
4C097BB01
4C097BB09
4C097CC01
4C097CC12
4C097MM02
(57)【要約】
【課題】脈管インプラントを製作するための方法を提供する。
【解決手段】方法は、脈管パラメータを取得することと、取得された脈管パラメータに基づいて、各々が少なくとも1つの管状ライナ本体を含む1つ以上のモジュールを含む脈管インプラントのコンピュータ支援モデルを作成することと、少なくとも1つの管状ライナ本体に沿った1つ以上の直径変更、1つ以上の分岐、1つ以上の分枝、1つ以上の凹部、1つ以上の局所補強部、及び、1つ以上の腸骨脈管移植片、からなる群から各々のモジュールの1つ以上の構造要素を選択することと、を含む。方法は、1つ以上の選択された構造要素に関連するパラメータを決定することと、決定されたパラメータに従って構造要素をコンピュータ支援モデルに統合することと、作成されたコンピュータ支援モデルに基づいて脈管インプラントを製作することと、を更に含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脈管インプラント(1)を製作するための方法(100)であって、
脈管パラメータを取得する(110)ステップと、
取得された前記脈管パラメータに基づいて、それぞれが少なくとも1つの管状ライナ本体(2)を含む1つ以上のモジュールを含む脈管インプラント(1)のコンピュータ支援モデルを作成する(120)ステップと、
少なくとも1つの管状ライナ本体(2)に沿った1つ以上の直径変更(10)、1つ以上の分岐(20)、1つ以上の分枝(30)、1つ以上の凹部(40、50)、1つ以上の局所補強部(60)、及び1つ以上の腸骨脈管移植片からなる群からそれぞれのモジュールの1つ以上の構造要素を選択する(130)ステップと、
1つ以上の選択された前記構造要素に関連するパラメータを決定する(140)ステップと、
決定された前記パラメータに従って、前記構造要素を前記コンピュータ支援モデルに統合する(150)ステップと、
作成された前記コンピュータ支援モデルに基づいて前記脈管インプラント(1)を製作する(160)ステップと、を含み、
前記脈管インプラント(1)は、繊維及び/又は繊維ベース、特に、織布及び/又は経編布であり、
前記脈管インプラント(1)は、ジャカード技術を使用して製作される、方法。
【請求項2】
前記脈管インプラント(1)を製作する(160)ステップは、作成された前記コンピュータ支援モデルに基づいて前記脈管インプラント(1)を経編みすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脈管インプラント(1)を製作するステップは、それぞれが、少なくとも1つの管状ライナ本体と、それぞれの1つ以上の構造要素と、を含む少なくとも1つのモジュールを含む前記脈管インプラントを一体的に経編みすることを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記脈管インプラント(1)は、1つ以上の分岐(20)及び/又は1つ以上の分枝(30)を含み、前記方法は、
好ましくは、前記メインライナ本体(2)から少なくとも1つの分岐(20)及び/又は少なくとも1つの分枝(30)への移行部での形状及び編目構成を決定するステップと、
分離糸の位置を決定するステップと、
前記脈管インプラント(1)の製作中に分離糸を導入するステップと、
製作された前記脈管インプラント(1)の前記分離糸を分離するステップと、
を更に含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記脈管インプラント(1)は、1つ以上の凹部(40、50)を含み、前記方法は、
少なくとも1つの凹部(40、50)の縁部における少なくとも1つの局所補強部(60)の位置を決定するステップと、
少なくとも1つの凹部(40、50)が開窓(40)である場合、前記脈管インプラント(1)の製作中に少なくとも1つの局所補強部(60)を組み込むステップと、
少なくとも1つの凹部(40、50)がスカラップ(50)である場合、分離糸の位置を決定し、前記脈管インプラント(1)の製作中に少なくとも1つの局所補強部(60)を組み込み、かつ分離糸を組み込み、製作された前記脈管インプラント(1)の前記分離糸を分離するステップと、
を更に含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記脈管インプラント(1)は、少なくとも1つの管状ライナ本体(2)に沿った1つ以上の直径変更(10)を含み、前記方法は、
糸張力、糸数、コース密度、及び/又は編目サイズに関連するパラメータを決定するステップを更に含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記脈管インプラント(1)は、少なくとも1つの管状ライナ本体(2)に沿った1つ以上の直径変更(10)を含み、前記方法は、
分離糸の位置を決定し、前記脈管インプラント(1)の製作中に分離糸を組み込み、製作された前記脈管インプラント(1)の前記分離糸を分離するステップを更に含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
脈管の術前医用画像データを取得するステップと、
取得された前記画像データを視覚化するステップと、
脈管インプラント(1)が製作される脈管セクションを識別するステップと、
脈管パラメータを測定するステップと、
を更に含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記コンピュータ支援モデルは、3Dモデル及び/又は機械可読ファイルを含み、
前記脈管インプラント(1)を製作するステップは、好ましくは前記機械可読ファイルに基づいて実行される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
製作された前記脈管インプラント(1)へのステント構造の適用及び/又は製作された前記脈管インプラント(1)への弁の適用を更に含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ステント構造が、前記脈管インプラント(1)上に印刷される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
1つ以上の直径変更(10)を生成するために、前記脈管インプラント(1)を熱成形及び/又は熱硬化するステップを更に含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
1つ以上の凹部(40、50)を拡張するために、前記脈管インプラント(1)を熱成形及び/又は熱硬化するステップを更に含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記脈管インプラント(1)の主な延長方向(2)に対して、1つ以上の分岐(20)及び/又は分枝(30)の角度を修正及び/又は固定するために、前記脈管インプラント(1)を熱成形及び/又は熱硬化するステップを更に含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記脈管インプラント(1)は、脈管内インプラント(1)である、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の方法(100)によって製作された、特に脈管内インプラント(1)である、脈管インプラント(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脈管インプラント、特に管腔内及び/又は脈管内インプラントを製作するための方法に関し、脈管インプラントは、それぞれが少なくとも1つの管状ライナ本体を有する1つ以上のモジュールを含み、特に、脈管インプラントのコンピュータ支援モデルは、取得された脈管パラメータに基づいて作成され、それぞれのモジュールの1つ以上の照会及び/又は入力された構造要素がコンピュータ支援モデルに統合される。
【背景技術】
【0002】
脈管は、その設計に応じ、流体を輸送及び/又は一時的に貯蔵できるため、人体の機能にとって非常に重要である。老化、栄養、ストレス、又は病気などの多くの要因は、時間の経過とともに脈管、特に血管の変化をもたらし得る。脈管の直径に影響を与えることが多い脈管壁の弾性及び安定性に関する変化、並びに、例えば、弁として作用するフラップの機能に関する変化は、特にリスクを伴う。
【0003】
特に、脈管壁の局所的な変化は珍しいことではなく、影響を受ける脈管と局在によっては、患者にとって大変危険になり得る。動脈瘤は、脈管壁の局所的な変化の例であり、「動脈瘤」という用語の様々な定義が使用されている。例えば、影響を受けた脈管の直径の増加をもたらす脈管壁の変化、一般に、それぞれの区域における無傷の脈管の直径と比較して少なくとも50%の増加は、動脈瘤と呼ばれることがある。脈管壁の変化区域における脈管の絶対直径も動脈瘤の指標として使用することができ、例えば、腹部大動脈の場合、男性では5cmから5.5cm、又は、女性では4.5cmから5cmである。また、胸部又は胸腹部大動脈などの他の脈管の場合、対応する値は、おそらくわずかな偏差を伴って、動脈瘤の指標として使用することができる。場合によっては、特に変化が比較的急速に進行する場合、脈管径の増加も小さくなり得る。例えば、6か月以内に少なくとも5mmの脈管径の増加は、動脈瘤が発生している可能性があり、影響を受けた脈管が破裂するリスクが高まる。
【0004】
脈管インプラントは、例えば、脈管のそれぞれのセクションを架橋又は取り替えることによって、脈管の変化に関連付けられるリスクを減少するために頻繁に使用されるオプションである。例えば、拡張した脈管(前述の定義の1つによる動脈瘤を有する脈管など)は、ステント移植片で架橋又は取り替えることができる。したがって、ステント移植片などの脈管内インプラントは、臨床的に安全な程度までそれぞれの脈管内の血流を確保し、例えば、動脈瘤の場合、破裂を防ぐことができる。
【0005】
前述のステント移植片は、脈管内インプラントの一例である。ステント移植片は、少なくとも1つの管状ライナ本体、移植片、及び安定化のためのステント構造を有する、縦方向に延びる中空シリンダである。ステント移植片は、モジュール構造を有することができる。例えば、移植片は、少なくとも1つのメインライナ本体、及び少なくとも1つのさらなるライナ本体を含むことができ、さらなるライナ本体は、同じ又は同等の、或いは異なる直径を有することができ、ステント構造は、1つ以上のステント構造要素を含むことができる。ステント構造及び移植片は、通常、別々の製作工程で製作され、続いて、例えば縫合によって組み立てられる。そのような脈管インプラントの例は、例えば、英国特許出願公開第2347861A号、米国特許出願公開第2004/193258A1号、又は米国特許第5911753A号より知られており、利用可能な製品はすでに日常的に使用されている。
【0006】
市販の織布移植片は、(Zhaoら(2011、Adv.Mat.Res.、332-334巻、1498-1504)と比較して)異なる織りパターンを示す。例えば、米国ブルーミントンにあるCook Medical社の移植片は、マルチフィラメント糸から作られ、平織りとも呼ばれる1/1平面織りパターンを示す。対照的に、英国スコットランドのインチナンにあるVascutek Limited(Terumo社)の移植片は、モノフィラメント糸から作られ、4/4綾織りのパターンを示す。
【0007】
各患者の個々の脈管形状に関しては、臨床的に確実な標準製品に加えて、必ずしも必要ではないが、患者ごとに個別化されたソリューションが望ましい。ただし、そのような患者に個別化されたソリューションは、依然として比較的高い販売価格と多くの時間のかかる製作ステップに関連付けられている。CT手順からのデータなどの患者固有の医用画像データはすでに、市販のコンピュータプログラム、例えば、米国カリフォルニア州フォスターシティにあるTeraRecon社のAquarius iNtuition EVAR(Vessel Analysis)Planningなどのプログラムや、オランダのマーストリヒトにあるPie Medical Imaging BV社のプログラムである3mensio Vascularを使用して、3次元で表示及び処理することができる。ただし、そのようなコンピュータプログラムは、脈管インプラント、特に移植片などの繊維及び/又は繊維ベースの脈管インプラントを製作するための機械によって使用できる形式への画像データを提供しないか、又は効率的な変換を提供しない。更に、データ転送にそれぞれ必要なインターフェースが不足している。
【0008】
デジタル3Dモデルに基づいて個別化されたステント移植片を作成する方法は、例えば、ドイツ特許出願公開第102015207596A1号より知られている。ただし、この方法では、複数のプラスチック又は合成樹脂層が、付加工程によって互いに塗布される。ただし、このような脈管内サポートの多様な臨床要件を、このようにして満たすことができるかについては、疑問が残る。
【0009】
個別化された脈管インプラントを製作するためのさらなる方法は、米国特許出願公開第2019/0050507A号より知られている。この方法では、脈管のモデルが生成され、これに基づいて標準的な脈管インプラントが修正される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この背景に対して、本発明は、個別化された脈管インプラント、特に個別化された脈管内インプラントの製作を単純化する、自動化可能で、時間及びコスト効率の高い方法を提供することを意図している。更に、本発明は、製作された脈管インプラントが高い生体適合性を有し、臨床診療における要件を満たすことを意図している。これには、特に、インプラントによって支持及び/又は架橋されるそれぞれの脈管のそれぞれのセクションにおける患者固有の解剖学的特徴の考慮が含まれる。
【0011】
本発明によれば、これは、独立請求項による方法及び脈管インプラント、特に脈管内インプラントによって達成され、本発明の便宜的なさらなる修正を伴う有利な実施形態は、それぞれの従属請求項に示されている。本発明の一態様の有利な実施形態は、本発明のそれぞれの他の態様の相互に有利な実施形態と見なされるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様は、脈管インプラント、特に脈管内インプラントを製作するための方法であって、脈管パラメータを取得するステップと、取得された脈管パラメータに基づいて、それぞれが少なくとも1つの管状ライナ本体を含む1つ以上のモジュールを含む脈管インプラントのコンピュータ支援モデルを作成するステップと、少なくとも1つの管状ライナ本体に沿った1つ以上の直径変更、1つ以上の分岐、1つ以上の分枝、1つ以上の凹部、1つ以上の局所補強部からなる群からそれぞれのモジュールの1つ以上の構造要素を選択するステップと、1つ以上の選択された構造要素に関連するパラメータを決定するステップと、決定されたパラメータに従って、構造要素をコンピュータ支援モデルに統合するステップと、作成されたコンピュータ支援モデルに基づいて脈管インプラントを製作するステップとを含む。脈管インプラントは、繊維及び/又は繊維ベース、好ましくは、織布及び/又は編布である。特に、脈管インプラントは、ジャカード技術を使用して製作することができる。構造要素を「選択する」とは、手動、半自動、又は完全に自動で選択することを意味する。手動又は半自動選択は、ユーザによる所望の構造要素の入力のためのクエリを含むことができる。作成されたコンピュータ支援モデルに基づいて脈管インプラントを製作することは、特に、モデルに基づいて脈管インプラントを経編みすること、特にジャカード技術を使用して経編みすることを含む。
【0013】
本発明による、脈管インプラント、特に脈管内インプラントを製作するための方法は、それぞれが少なくとも1つの管状ライナ本体を有する1つ以上のモジュールを含み、それによって、特にそれぞれ取得された患者固有の脈管パラメータに基づく脈管インプラントのコンピュータ支援モデルを作成することを含み、ここで、1つ以上の構造要素は、それぞれのクエリに基づいてコンピュータ支援モデルに統合され、次いで、モデルは、繊維及び/又は繊維ベースの脈管インプラントを製作するために使用される。
【0014】
本発明の文脈において、「脈管インプラント」という用語は、それぞれの脈管セクションを架橋又は取り替えるために、脈管、特に血管に挿入することができるインプラント又はプロテーゼを指す。脈管インプラントはまた、(病気の、又はそうでなければ健康な)脈管、特に(病気の、又は健康な)血管への吻合に使用することができる。これに関連して、本発明による脈管インプラントは、それぞれが少なくとも1つの管状ライナ本体を有する1つ以上のモジュールを含む。本発明による脈管インプラント、例えば本発明による脈管内インプラントは更に、個々の脈管に挿入されるように、又は複数の脈管内に延びるように構成することができる。後者は、例えば、取り替え又は架橋されるセクションが、脈管の分枝又はその近くにある場合に有利である。以下で使用される「脈管インプラント」という用語は、特に明記しない限り、同義語として理解されるべきである。
【0015】
本発明の文脈において、「脈管」という用語は、例えば、気体及び/又は液体などの少なくとも1つの流体を輸送及び/又は貯蔵することができる、特に人体の、任意のタイプの中空管状体を指す。この用語は、排他的ではないが、特に、血管などの中空管を指す。脈管は、体の様々な領域、例えば四肢又は脳、特に腹部及び/又は胸部に位置することができる。
【0016】
以下において、「架橋される脈管セクション」、「取り替えられる脈管セクション」、又は「脈管内インプラントなどの脈管インプラントが製作される脈管セクション」は特に、遺伝的に引き起こされた、及び/又は後天的な脈管壁の変化を伴う、ライニング、架橋、及び/又は取り替えられる脈管セクションを指す。これらの表現は同義的に理解されるべきであり、脈管壁の変化を伴うそれぞれの脈管の局所的に限定されたセクション、並びにそれに直接隣接するセクションを指す。明確になるように、後者は更に、例えば、「取り替えられる脈管セクション及びそれに直接隣接する脈管セクション」として、又は同等の表現の形で示すこともできる。更に、脈管インプラントは、例えば、健康な脈管壁区域で吻合が生じる場合など、脈管壁の変化又は衰弱がない脈管又は脈管区域に挿入することもできる。
【0017】
本発明の文脈において、「脈管パラメータ」という用語は、架橋及び/又は取り替えられるそれぞれのセクションにおける、(i)脈管が示す、(ii)脈管壁の変化がなかった場合に、年齢、性別、及び/又は体重などの様々な要因を考慮して脈管が示し得る、及び/又は(iii)それぞれの脈管壁の変化が起こる前に脈管が示した、条件、形状及び/又は特性を指す。この用語は、脈管壁の変化を示す脈管のセクションを指すことができ、及び/又は直接隣接する脈管セクションの状態、形状、及び/又は特性を含むこともできる。脈管パラメータは、幾何学的パラメータと、選択的に形態学的パラメータも含むことができる。幾何学的パラメータは、例えば、取り替えられる脈管セクションなどのそれぞれの脈管セクションの脈管走行、直径、断面の形状、及び/又は変化、長さ、角度、及び/又は位置に関連するパラメータであり得る。形態学的パラメータは、例えば、取り替えられるそれぞれの脈管セクション及び/又はそれに直接隣接する脈管セクションにおける、石灰化及び/又は血栓の存在に関する、及び/又は石灰化の程度、血栓の量、及び/又はそれぞれの石灰化の程度及び/又は血栓の量によって影響を受ける区域の広がりを示すパラメータであり得る。
【0018】
本発明の方法によれば、第一に、架橋されるそれぞれの脈管セクションに関する脈管パラメータが取得される。それらは、特に、架橋及び/又は取り替えられるセクションにおける脈管によって示される条件、形状、及び/又は特性に関連している。取得された脈管パラメータは、好ましくは、取り替えられる脈管セクションの直径、直径変更、及び/又は長さに関する患者固有の情報を含む。代替的又は追加的に、脈管パラメータは、特に分岐及び/又は分枝に関して、取り替えられる脈管セクションにおける分枝に関する情報を含むことができる。本出願の文脈において、「分岐」は、脈管を同様の直径を有する2つの脈管に分割することを意味する(例えば、大動脈の2つの腸骨動脈への分岐)。本出願の文脈において、「分枝」は、大動脈から分枝する腎動脈、大動脈弓の領域又は冠状脈管の出口など、主脈管から分枝する1つ以上の、より小さい直径の側副脈管を意味する。患者固有の脈管パラメータを取得することにより、取り替えられる脈管セクション用に製作される脈管インプラントの最適なフィットを確保することができ、不十分な、例えば、それぞれの脈管セクションの不完全な架橋及び/又は取り替えのリスクを最小化することができる。取得された脈管パラメータの更なる詳細は、脈管の画像データを取得及び視覚化するステップ、脈管インプラント(例えば、脈管内インプラント)が製造される脈管セクションを識別するステップ、及びそれぞれの脈管パラメータを測定するステップに関連する以下の説明から推測することができる。脈管セクションは、特に動脈瘤を伴うセクションであり得る。
【0019】
脈管パラメータは、少なくとも取り替えられる脈管セクション、並びにそれに直接隣接する脈管セクションのデータセットに基づいて取得することができ、データセットは、撮像方法によって取得される。そのようなデータセットを準備し、例えば測定によってそれぞれの脈管パラメータを取得することは、例えば3mensio Vascular又は同等のコンピュータプログラムで実施されるような当業者に既知のステップを含む。撮像方法によって取得された脈管パラメータ、又は対応するデータは、記憶媒体から(例えば、ハードディスクから)読み取るか、又は方法の一部として電子的に送信することができる。好ましくは、取得された脈管パラメータは、それぞれのコンピュータプログラムによって読み取り可能な形式で取得され、脈管インプラントのコンピュータ支援モデルを作成するために使用される。好ましくは、脈管パラメータが、それぞれのコンピュータプログラムによって読み取り可能な形式で取得されない場合、及び/又は、例えば送信エラーが原因で不完全である場合、ユーザにエラーメッセージを提供する。
【0020】
本発明の方法によれば、管状ライナ本体を含む脈管インプラントのコンピュータ支援モデルは、取得された脈管パラメータに基づいて、好ましくはコンピュータプログラムによって作成される。コンピュータ支援モデルは、例えば、デジタル3Dモデルであり得る。コンピュータ支援モデルは、他のモデルに変換された、及び/又は他のモデルからデジタル3Dモデルに変換された、一時的なデジタル3Dモデルでもあり得る。例えば、脈管インプラント(例えば、脈管内インプラント)のデジタル3Dモデルを使用して、2D技術図面を作成することができる。これは、3Dモデルの作成に使用されたのと同じコンピュータプログラムによって行われることが好ましいが、さらなるコンピュータプログラムによって行うこともできる。2D技術図面は、それぞれの製作機械の製作情報、好ましくは機械可読ファイル、特にKMOファイルに変換することができる、脈管インプラント(例えば、脈管内インプラント)の幾何学的モデルを表す。或いは、KMOファイルをコンピュータ支援3Dモデルから直接作成することもできる。KMOファイルの利点は、それぞれの繊維機械で直接読み取ることができ、ファイルに含まれる情報を、特に経編機を使用して変換できることである。
【0021】
KMOファイル、又は同等のファイルは、例えば、作成された3Dモデルから(例えば、直接)派生させることができ、又は、それぞれの編目形成工程における各針の位置を含むピクセルファイル、特に、JCファイルから作成することができる。同様に、JCファイルは、作成された3Dモデルから直接派生させることができ、又は、色分けされた2Dピクセルファイルなどの設計ファイルから作成することができる。例えば、3Dモデル又は技術図面の形で提供されるデータ及び/又はパラメータに基づいて、色分けされた2Dピクセルファイルを作成することができ、ピクセルの色は、脈管インプラントの製造に必要なそれぞれの針の位置を符号化する。例えば、ラッピング(経編工程でのバーの移動)及びそれぞれのガイドバーの結果的な編目構成を含むラッピングファイルの形で取得されるラッピングに関する情報と組み合わせた、それぞれの色分けされた2Dピクセルファイルに基づいて、それぞれの主に使用される編目構成、並びにそれに対する修正、例えば、凹部、局所補強部、及び/又は分離糸を組み込むためのそれぞれの編目構成を決定することができる。色分けされた2Dピクセルファイルは、JCファイルに変換することができ、色分けされた2Dピクセルファイル内の各色は、例えば、8つの、好ましくはバイナリの機械命令のシーケンスを表す。この文脈において、JCファイルは、好ましくは、バイナリで符号化されたことが好ましいピクセル内の様々な針位置(例えば、「高」及び「低」)を符号化する2Dピクセルファイルである。したがって、JCファイルは、例えば、赤及び白のピクセルを含むことができる。次に、JCファイルは、経編機によって読み取り可能であり、それぞれの脈管インプラントの製作に関する、特に針の位置及びラッピングに関する情報を含むファイルに、好ましくはKMOファイルに変換することができる。それぞれのデジタル3Dモデル、それぞれの技術図面、及び/又はそれぞれのファイル、例えば、設計ファイル、JCファイル及び/又はKMOファイルは、好ましくは、例えば記憶媒体上に記憶されるか、又は少なくともバッファリングされる。色分けされた2Dピクセルファイルの作成、JCファイルへのそれぞれの情報の転送、及びそれぞれのJCファイルからのKMOファイルの作成は、例えば、ドイツのクレーフェルトにあるEAT GmbH社のDesignScope Jacquard Raschelなどのコンピュータプログラムによって実行することができる。
【0022】
したがって、本発明の文脈において、「コンピュータ支援モデル」という用語は、1つ以上のデジタル2Dモデル、1つ以上のデジタル3Dモデル、1つ以上の技術図面、1つ以上の設計ファイル、1つ以上のJCファイル及び1つ以上のKMOファイルを含む。好ましくは、コンピュータ支援モデルは、3Dモデル及び/又は機械可読ファイル、特にKMOファイルを含み、脈管インプラントを製作するステップは、好ましくは機械可読ファイルに基づいて実行される。これは、脈管インプラントの製作に必要なパラメータが、特に繊維及び/又は繊維ベースの脈管インプラントを製作するための機械によって直接読み取られ、処理され得る形式で利用可能であるという利点を有する。
【0023】
本発明による方法は、脈管インプラントのコンピュータ支援モデルを視覚化するステップを更に含むことができる。モデルの視覚化は、目視検査を可能にし、それにより、製作工程中の方法の検査を容易にし、及び/又は加速することができる。したがって、例えば、欠落及び/又は不完全なデータセットを早期に識別することができ、不完全及び/又は欠陥のある脈管インプラントの製作を防ぐことができる。例えば、取得された脈管パラメータが、取り替え又は架橋される脈管セクションの一部、及び/又は直接隣接する脈管セクションの一部のみをカバーする場合、本発明による方法は、ユーザにそれぞれの指示の出力を提供することができる。好ましくは、それぞれの視覚化の後に、ユーザが目視検査の後に本発明による方法を続行することに同意するか否かに関してクエリが行われる。更に、モデルの視覚化により、インプラント及び/又は脈管セクションへの移植のシミュレーションが可能になる。それによって、代替的又は追加的に、例えば移植中及び/又は移植後の、機械的ストレス下での脈管インプラントの挙動のシミュレーションを提供することができる。更に、脈管インプラントの目視検査、及び/又はシミュレーションに基づいて、コンピュータ支援モデルの1つ以上のパラメータ、例えば、1つ以上のセクションの直径及び/又は長さ、及び/又はセクション間の角度などの1つ以上の幾何学的パラメータに変更を加えることができる。
【0024】
本発明による方法は、それぞれのモジュールの1つ以上の構造要素を選択するステップと、1つ以上の選択された構造要素に関連するパラメータを決定するステップと、決定されたパラメータに従って、構造要素をコンピュータ支援モデルに統合するステップとを更に含む。これは、脈管インプラントを取り替えられるそれぞれの脈管に最適に適合させることができ、それぞれの患者固有及び位置固有の応力に従って設計できるという利点を有する。これは、脈管インプラントの耐久性と機能性に好影響を与える。方法の構成に応じて、クエリは手動又は自動で実行することができる。パラメータは、ユーザが決定するか、及び/又は取得した脈管パラメータから自動的に生成することができる。
【0025】
少なくとも1つの構造要素は、少なくとも1つの管状ライナ本体に沿った1つ以上の直径変更、1つ以上の分岐、1つ以上の分枝、1つ以上の凹部、1つ以上の局所補強部、及び1つ以上の腸骨脈管移植片からなる群から選択される。好ましくは、少なくとも1つの構造要素は、患者固有に設計され、脈管インプラントのそれぞれのコンピュータ支援モデルに統合される。このようにして、取り替え又は架橋される脈管セクション、及び選択的に、それに直接隣接する脈管セクションに関して、脈管インプラントの最適なフィットを確保することができる。これは、架橋されるそれぞれの脈管セクションに挿入された後の脈管インプラントの機能性と耐久性、特に疲労強度に好影響を与える。脈管の形状に起因する要件に応じて、脈管インプラントは、少なくとも1つの分岐及び1つ以上の分枝、少なくとも1つの分岐及び1つ以上の凹部(選択的に、これらの凹部に1つ以上の局所補強部を含む)、少なくとも1つの直径変更及び1つ以上の分枝、少なくとも1つの直径変更及び1つ以上の凹部(選択的に、これらの凹部に1つ以上の局所補強部を含む)などのように、前述の構造要素のうちの少なくとも2つを含むことができる。
【0026】
それぞれのモジュールの少なくとも1つの管状ライナ本体に沿った直径変更は、最適な位置決め及び最大の機能性に関して、特に比較的大きな脈管インプラントにおいて有利であり得る。例えば、いわゆる大型化は、特に、脈管壁の変化を示すそれぞれの脈管の局所的に限定されたセクションに直接隣接し、脈管インプラントと脈管壁との間の接触区域を表す区域において有利であり得る。大型化の場合、脈管インプラントは、例えば、脈管インプラントと脈管壁との間のそれぞれの接触区域において、脈管の直径よりも10%から20%大きい直径を有することができる。大型化により、脈管インプラントと脈管壁との間のそれぞれの接触区域における脈管壁上の脈管インプラントから、一定の半径方向力が作用することができ、それにより、架橋される脈管セクションにおける、位置的に安定した方式での脈管インプラントの密封及び位置決めを確保することができる。
【0027】
更に、それぞれの管状ライナ本体に沿った少なくとも1つの直径変更は、取り替えられるそれぞれの脈管セクションが、流体の流れ方向における少なくとも1つの直径変更を含む場合に有利であり得る。脈管インプラントの直径が、取り替えられる脈管セクションの最小直径に適合された場合、取り替えられる脈管セクションの区域に直接隣接し、より大きい直径を有するそれぞれの区域における、位置的に安定した方式での脈管インプラントの密封及び位置決めが損なわれる可能性がある。更に、輸送又は貯蔵される流体のいずれかが、間質腔、又は脈管壁と脈管インプラントとの間に形成される空間において蓄積及び/又は渦巻く可能性があり、これにより、脈管壁への局所的な圧力の増加を引き起こす。一方で、脈管インプラントの直径が、取り替えられる脈管セクションの最大直径に適合され、これが大型化の状況で行われなかった場合、これは、脈管壁への局所的な圧力の増加を引き起こす可能性があり、それぞれの脈管が挿入される脈管インプラントよりも小さい直径を有する区域において、悪影響を与える。脈管インプラントの直径が、取り替えられる脈管セクションの最大直径に適合された場合、代替的又は追加的に、インプラントを最適に位置決めできず、例えば、ひだを生じさせる可能性があり、それにより、直径の減少のために、例えば、血流のうっ血、及び/又はひだによって引き起こされる血栓形成のために、気密性が損なわれ、及び/又は圧力が上昇する可能性がある。このような血栓形成は、特に、ひだのいわゆるデッドゾーン領域で発生する可能性があり、特に血栓が分離した場合に、無視できないリスクを示す可能性がある。このような問題は、例えば、特に胸腹部動脈瘤の場合など、比較的長い脈管インプラントで発生する可能性がある。脈管インプラントは、例えばそのような動脈瘤の治療のために、それぞれの主な延長方向(特に、脈管に沿った縦方向)において、3cmを超える、好ましくは少なくとも5cm、特に好ましくは少なくとも7cmの長さを有することができる。
【0028】
少なくとも1つの直径変更の提供はまた、1つ以上の腸骨脈管移植片の領域において有意義であり得る。例えば、分岐の端部(例えば、流れ方向の分岐の端部)でのメインライナ本体の直径は、それぞれの腸骨脈管の直径よりも大きいか、又は小さくなり得る。メインライナ本体の直径(例えば、分岐の端部におけるメインライナ本体の直径)は、腸骨脈管移植片が先細になる(すなわち、脈管インプラントが大動脈に挿入されると、血流方向に先細になる)という点で、腸骨脈管の直径に適合させることができる。
【0029】
脈管インプラントの1つ以上のモジュールに沿った直径変更も、モジュール構造を容易にするための製作目的に好都合であり得る。例えば、第1の端部では、それぞれのモジュールを脈管の直径に適合させることができ、第2の端部では、先行又は後続のモジュールの直径に適合させることができる。更に、第1の端部では、それぞれのモジュールを、先行するモジュールの直径に適合させることができ、第2の端部では、後続のモジュールの直径に適合させることができる。
【0030】
方法の過程において、例えば、取得された脈管パラメータに基づいて、例えば、少なくとも1つの管状ライナ本体の端部で、及び/又は少なくとも1つの管状ライナ本体内の異なる位置で、製作される脈管インプラントの直径を比較することによって、直径変更が望ましいか否かを決定することができる。これにより、少なくとも5mm、好ましくは少なくとも3mm、特に好ましくは少なくとも2mmの偏差が生じる場合、これは、直径変更が望ましいという基準として使用することができ、そのような直径変更は、例えば、脈管インプラントのコンピュータ支援モデルに統合することができる。特に、これは、脈管インプラントのそれぞれの領域における均一な直径変更によって、又は段階的又は急激な直径変更によっても達成することができる。これらの2つの可能性の組み合わせは、脈管インプラントの特に良好なフィットのためにも考慮され得る。直径変更は、例えば、使用される糸数の減少又は増加によって、すなわち、ウェール数の減少又は増加によって、及び/又は編目密度の増加又は減少によって達成することができる。代替的又は追加的に、直径変更は、脈管インプラントを製作した後、特にマンドレル上に脈管インプラントを熱成形及び/又は熱硬化させるステップによって達成することができる。
【0031】
更に、脈管インプラントの少なくとも1つの管状ライナ本体に沿って1つ以上の分岐及び/又は分枝を提供することが有利であり得る。これは、取り替えられる脈管セクションがそれ自体に分枝を有する場合、及び/又は直接近接して分枝を有する場合、及び/又は吻合の目的で人工的な開口部が作られる場合に特に有利である。脈管インプラントはまた、脈管インプラントがそれぞれの分枝を有するという点で、最適かつ位置的に安定した方式で位置決めすることができる。更に、取り替えられるそれぞれの脈管セクションのように、分枝も有する脈管インプラントによって、取り替えられる脈管セクション、並びにそれに直接隣接する領域のそれぞれの機能、特に血液の輸送は、脈管インプラントの移植後に回復及び/又は確保され得る。
【0032】
本発明の文脈において、脈管インプラントの「分岐」は、脈管インプラントの一端での分枝、特に脈管インプラントの、好ましくは、特に分割点で、及び/又はそれに直接近接して、同等又は類似の直径を有する2つの管状ライナ本体への分割を意味する。したがって、分岐から生じる2つの分岐ライナ本体は、少なくとも分割点で、及び/又はそれに直接近接して、それぞれの直径を有し、これらは、それぞれのより大きな直径に対して、例えば、最大で15%、好ましくは最大で10%、特に好ましくは最大で5%だけ互いに異なる。2つの管状ライナ本体は、好ましくは、脈管インプラントと一体的に製作される。
【0033】
一方で、脈管インプラントの「分枝」は、脈管インプラントの少なくとも1つの管状ライナ本体に沿った分枝であり、脈管インプラントの主な延長方向に提供されるか、又はその方向にある管状ライナ本体は、以下、明確にする目的でメインライナ本体と呼ばれることもあり、そこから分枝する管状ライナ本体は、サイドライナ本体と呼ばれることもある。サイドライナ本体は、分割点で、及び/又はそれに直接近接してメインライナ本体よりも相当に小さい直径を有し、例えば、直径が少なくとも25%減少し、好ましくは直径が少なくとも50%減少し、特に好ましくは、直径が少なくとも75%減少する。
【0034】
本発明によれば、脈管インプラントの少なくとも1つの管状ライナ本体に沿って凹部も提供されている。このような凹部は、特に開窓及び/又はスカラップであり得る。凹部は、取り替えられる脈管セクションが、それ自体に分枝を含むか、及び/又は直接近接する分枝を含む場合に特に有利である。この場合、分岐及び/又は分枝などの脈管インプラントの分枝の代わりに、対応するそれぞれの凹部を提供することができ、より速く、より安価な製作を可能にする。
【0035】
本発明の文脈において、「開窓」という用語は、脈管インプラントが正しく位置決めされると、取り替えられるそれぞれの脈管セクションの位置と直径に関して、それぞれの分枝脈管とほぼ、好ましくは完全に一致するように構成される、脈管インプラントの窓、開口域、又は穴を指す。
【0036】
一方、本発明の文脈において、「スカラップ」という用語は、少なくとも1つの管状ライナ本体の一端にある凹部を指す。好ましくは、スカラップという用語は、脈管インプラントの端部、好ましくは流れ方向の上流に位置する端部にある三角形、四角形、半円形、楕円形、又はU字形の凹部を指す。この故に、スカラップは、脈管インプラントのそれぞれの端部に向かって、特にそれぞれのモジュールのそれぞれの管状ライナ本体の主な延長方向に開いている。
【0037】
更に、構造要素は、1つ以上の局所補強部も含む。本発明の文脈において、「局所補強部」という用語は、局所的に導入された、又は繊維構造に導入される補強構造を指す。それらは、脈管インプラントの負荷に適した設計を可能にするという点で、特に有利である。局所補強部は、脈管インプラントの繊維構造に局所的に導入されたヤーン及び/又はワイヤなどの材料、及び/又は、それぞれが例えば1つ以上のヤーン及び/又はワイヤからなるか、或いはそれらを含む補強構造を含むことができる。選択的又は代替的に、局所補強部は、例えばシリコーン製の少なくとも1つの高分子構造など、繊維構造に局所的に適用される材料を含むことができる。局所補強部は、特に繊維構造の負荷に適した設計を可能にするために、局所的な編目構成の変更として特に好ましく形成される。このようにして、負荷に適した方式で構成された繊維及び/又は繊維ベースの脈管インプラントはまた、一体的に経編みすることができ、それにより、特に耐性があるように設計することができる。局所補強部はまた、脈管インプラントの繊維構造に局所的に導入された材料、繊維構造に局所的に適用された材料、及び/又は編目構成の変更を組み合わせて構成することができる。局所補強部は、脈管インプラントの繊維面に、及び/又は脈管インプラントの繊維面から、それぞれのモジュールの少なくとも1つの管状ライナ本体に沿った直径変更、分岐、分枝、及び凹部からなる群から選択されるそれぞれの構造要素への移行部に提供及び/又は配置することができる。したがって、局所補強部は、単独で、及び/又は1つ以上の前述の構造要素と結合して、脈管インプラントに統合することができる。
【0038】
最後に、構造要素はまた、1つ以上の腸骨脈管移植片を含む。本発明の文脈において、「腸骨脈管移植片」は、通常、体内に導入される際には分離しており、(患者の体内への)移植中に、脈管インプラントに提供された分岐に接続できる移植片を指す。腸骨脈管移植片はまた、管状ライナ本体を有し、好ましくは、この管状ライナ本体を取り囲むステント構造も有する。このような腸骨脈管移植片は、本来の分岐を介して腸骨脈管内に突出することができ、特に腸骨脈管のセクションも架橋される場合に使用することができる。本発明による腸骨脈管移植片は、好ましくは、少なくとも3cm、少なくとも5cm、少なくとも7cm、又は少なくとも10cmの長さを有する。腸骨脈管移植片はまた、直径変更、凹部、分岐、分枝、及び局所補強部などの、さらなる構造要素を含むことができる。
【0039】
特に、局所補強部と別の構造要素との組み合わせが特に有利であり得る。例えば、モジュールは、少なくとも1つの局所補強部を含む分岐及び/又は分枝を含むことができる。局所補強部は、脈管インプラントの気密性、及び移行部での繊維構造の必要な強度を確保するために、特に管状ライナ本体から2つの管状ライナ本体への移行時、又はメインライナ本体からサイドライナ本体への移行時に有利であり得る。開窓の場合、負荷を少なくとも2つの糸に分散し、それによって移植中の耐性及び/又は開窓の疲労強度を確保するために、特に、流れ方向の上流及び/又は下流に位置する開窓の領域における少なくとも1つの局所補強部は有利である。これは、編目構成の変更によって、例えば、流れ方向の上流及び/又は下流に位置する開窓の領域、特に好ましくは両方の領域で、2本針のオーバーラップを使用することによって達成することができる。代替的又は追加的に、2本針のオーバーラップは、複数のコースにわたって、及び/又はライナ本体の経編布の開窓の縁部を綴じ込む時に使用することができる。
【0040】
手動入力の場合、ユーザは1つ以上の構造要素を選択することができ、選択的に、3Dモデル、技術図面、2Dピクセルファイル(例えば、設計ファイル及び/又はJCファイル)又はKMOファイルにおいてそれぞれの構造要素に関連する所望の位置、形状、及び/又はさらなるパラメータを特定することができ、及び/又は、それぞれのコンピュータプログラムによってそれぞれのパラメータを決定することができる。この目的のために、それぞれのコンピュータプログラムは、好ましくは、入力オプションの形のクエリを含む。入力オプションによって、ユーザは、例えば、ドロップダウンリストの形で、例えば、1つ以上の構造要素を選択することができ、選択的に、それぞれのコンピュータプログラムによって、選択された構造要素ごとにそれぞれのパラメータを決定し、及び/又は手動で、好ましくはそれぞれの標準化された入力マスクを使用して入力することもできる。代替的に、1つ以上の構造要素のタイプと位置の選択は、視覚化された3Dモデルのドラッグアンドドロップ機能を使用して実行することができる。これにより、標準化された形式でそれぞれのパラメータの効率的なクエリを可能にする。更に、入力オプションは、好ましくは、構造要素を入力又は選択をしない可能性も提供する。次に、脈管インプラントは、例えば、ユーザによる最終確認の後に製作することができる。
【0041】
選択的に、それぞれのコンピュータプログラムは、1つ以上の構造要素の必要性を自動的に検出し、それぞれの構造要素を選択し、それぞれのパラメータを最適に決定してモデルに統合することができる機能を有する。このような自動化により、起こり得るエラーの原因が減少し、患者固有の脈管インプラントの時間及びコスト効率の高い製作を可能にする。検出は、例えば、データベースに記憶された閾値及び/又はデータ、例えば、それぞれの脈管に関連するパラメータを照会し、それらを、取得された対応するそれぞれの脈管パラメータと照合することによって実行することができる。例えば、それぞれのコンピュータプログラムは、取り替えられる脈管セクションと分枝脈管との間の距離が一定の最小距離を下回る場合、及び/又は架橋又は取り替えられる脈管セクションが分枝を含む場合に、構造要素の必要性を検出することができる。1つ以上の構造要素のクエリ及びそれぞれのパラメータの決定が自動的に実行される場合、それぞれのコンピュータプログラムは、好ましくは、提案された構造要素及び/又はそのために決定されたパラメータのユーザの承認、及び選択的にユーザによる訂正の可能性に関するクエリを含む。これは、例えば、少なくとも1つの構造要素の必要性が検出された後、及び/又はそれぞれのパラメータが決定された後に行うことができる。1つ以上の構造要素の必要性が検出されない場合、脈管インプラントは、可能な訂正の直後、特にユーザによる最終確認の後に、作成されたモデルに基づいて製作することができる。
【0042】
1つ以上の構造要素のクエリの後、それぞれの特定のパラメータは、3Dモデル、技術図面及び/又は2Dピクセルファイル、特に色分けされた2Dピクセルファイルに、好ましくはそれぞれのコンピュータプログラムによって自動的に統合され、結果のモデルは選択的に視覚化される。好ましくは、ユーザは次に、必要に応じて訂正を行うことができ、及び/又は目視検査時にそれぞれのパラメータで統合された構造要素を確認することができる。更に、それぞれのモデルは、続いて、脈管インプラントを製作するためのそれぞれの機械、特に経編機によって読み取り可能な形式で、特にKMOファイルの形で記憶される。
【0043】
本発明による方法の前述のステップによって、自動化可能性、特に起こり得るエラー源の減少、製作される脈管インプラントの品質一貫性の改善、並びにそれぞれのユーザによる完全な制御を維持すると同時に、時間及びコスト効率を改善することができる。
【0044】
本発明によれば、脈管インプラント(例えば、脈管内インプラント)は、繊維及び/又は繊維ベースである。当業者に知られている技術及び材料を使用して繊維を作成することができ、脈管インプラントは、好ましくは、生体適合性及び/又は血液適合性の材料で作られている。その例は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリウレタン(PU)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)及び/又は液晶ポリマー(LCP)である。
【0045】
本発明による脈管インプラントは、織布及び/又は編布であり、好ましくは編布である。この文脈において、「織布」という用語は、好ましくは、少なくとも2つの糸系を直角に織り交ぜることによって製作された織布を意味すると理解される。一方、「編布」という用語は、1つ以上の絡み合った糸を含む経編み及び横編みの布を指す。
【0046】
例えば、モノフィラメント及び/又はマルチフィラメントのヤーンは、脈管インプラントの製作のための糸として使用することができる。フィラメント数は、少なくとも22f、好ましくは少なくとも36f、特に好ましくは少なくとも100fである。フィラメントの総力価に関して、フィラメントは、例えば、EN ISO規格2060:1995、好ましくは項目4に記載されている種類1に準拠して、又はモノフィラメントの場合、例えばEN規格13392:2001に準拠して、1dtexから80dtex以下、好ましくは60dtex以下、特に好ましくは50dtex以下の太さを有することができる。製作された後、脈管インプラントは、好ましくは製品において光学的に測定され、及び/又は好ましくは厚さ測定ゲージによって測定された際、例えば、0.01mmから2mm、好ましくは0.1mmから0.5mmの材料層の厚さを有することができる。
【0047】
本発明による脈管インプラントは、好ましくは、ジャカード技術によって、特に好ましくは、ジャカード両面ラッセル技術によって製作される。ジャカード両面ラッセル技術は、脈管インプラントをそれぞれの患者の解剖学的構造に特に柔軟に適合させることを可能にする。
【0048】
本発明による方法は、更に好ましくは、縁綴じ込みの位置の決定を含む。本発明によれば、経編布は好ましくは2つの表面で製作されるので、縁綴じ込みは、それぞれの2つの表面が互いに、特に経編布製作の製作方向に平行に接続される区域を指示する。したがって、縁綴じ込みの糸は、それぞれの表面のそれぞれに編目を形成し、管状構造を形成することができる。したがって、脈管インプラントの少なくとも1つのモジュールのそれぞれの少なくとも1つの管状メインライナ本体は、少なくとも2つの縁綴じ込みを有することができ、それによって、それぞれのモジュールの管状構造を形成することができる。
【0049】
脈管インプラントの製作には、ピエゾジャカード技術の両面ラッセル機械が好ましく使用される。この機械で読み取り可能な形式はKMOファイルである。したがって、脈管インプラントの作成されたコンピュータ支援モデルの情報は、好ましくは、例えば、USBインターフェースによって、特に好ましくは、該当する場合にはモデルに統合された少なくとも1つの構造要素のパラメータを含むKMOファイルとして、それぞれの機械に電子的に転送される。KMOファイル又は機械で読み取り可能な別の形式の形で患者固有の脈管インプラントを製作するために必要な情報を受信すると、脈管インプラント、例えば、脈管内インプラントが製作される。
【0050】
本発明による脈管インプラントは、好ましくは、製作方向に配置された編目の密度を有し、又は最終製品で測定された、単位長さ1cmあたり20編目を超える、好ましくは単位長さ1cmあたり25編目を超える、特に好ましくは単位長さ1cmあたり30編目を超えるコース密度を有する。編目は、繊維に糸の隙間を形成し、したがって脈管インプラントの細孔を形成する。したがって、細孔のサイズ及び開口面積は、例えば、1μmから1000μm、より好ましくは10μmから300μmの細孔サイズ、及び/又は1から1,000,000μm2、好ましくは100から90,000μm2の細孔の開口面積と、十分に調整可能である。脈管インプラントの細孔は、同じサイズ及び/又は異なるサイズであることができ、例えば、脈管インプラントの少なくとも1つの管状ライナ本体に沿ったそれらのサイズに関して変化することもできる。したがって、例えば、脈管内の脈管インプラントの位置的に安定した位置決めは、天然組織の細孔への内方成長によって支持することができる。
【0051】
脈管インプラントは、流体を透過するように構成することができる。この場合、脈管インプラントは、好ましくは、自己密封システムを形成し、脈管内に輸送及び/又は貯蔵された流体は、例えば、脈管インプラント内及び/又は脈管インプラント上の液体に含まれる成分の凝固によって、その移植後に脈管インプラントを密封する。この目的のために、細孔サイズは、例えば、脈管インプラントの血管への移植時に、例えば、脈管インプラントでの血液凝固の一部としての線維素の沈着によって脈管インプラントで密封できるように選択することができる。代替的に、脈管インプラントは、例えば、生体適合性シリコーン、ポリウレタン、コラーゲン、及び/又はゼラチンでの、例えばコーティングによって、流体に対して不浸透性であるように構成することができる。
【0052】
本発明による方法の更に有利な実施形態において、脈管インプラント(例えば、脈管内インプラント)は、一体的に経編みされている。言い換えれば、脈管インプラント(例えば、脈管内インプラント)を製作するための本発明による方法は、好ましくは、それぞれが少なくとも1つの管状ライナ本体及びそれぞれの1つ以上の構造要素を含む少なくとも1つのモジュールを含む脈管インプラントを一体的に経編みすることを含むことを更に特徴とする。好ましくは、例えば、分岐で脈管インプラントが分枝する2つの管状ライナ本体は、先行する管状セクションと一体的に形成される。分岐の2つの管状ライナ本体は、(分離糸を使用せずに)連続経編布によって、それぞれのモジュールの残りの管状ライナ本体に接続できるが、必要に応じて分離糸を使用することもできる。分枝の場合、メイン本体とサイド本体は一体に形成されることが好ましい。メイン本体とサイド本体は、連続経編布(分離糸を使用せず)によって互いに接続できるが、必要に応じて分離糸を使用することもできる。同様に、1つ以上の補強部は、特に2本針のオーバーラップとして形成された場合、ライナ本体と一体にすることができ、特に一体的に経編みすることができる。
【0053】
それぞれが少なくとも1つの管状ライナ本体及びそれぞれの1つ以上の構造要素を含む少なくとも1つのモジュールを含む脈管インプラントを一体的に経編みすることは、特にジャカード技術によって実行することができ、いくつかの利点を提供する。1つの利点は、例えば、材料の縁部を縫う時の場合のように、脈管インプラントが製作による弱点を有しないことである。別の利点は、例えば、従来の方法における、例えば、切断工具及び/又はレーザによる、パンチング及び/又は切断による開窓及び/又はスカラップの組み込みなどの、脈管インプラントの製作においてさらなる作業ステップを必要としないことである。
【0054】
本発明による方法の更に有利な実施形態では、少なくとも1つの構造要素のクエリが肯定的である場合、この方法は、製作される脈管インプラントに統合される少なくとも1つの選択された構造要素に応じて、さらなるステップを含み、これについては、以下で詳細に説明される。
【0055】
好ましくは、製作される脈管インプラントが1つ以上の分岐及び/又は1つ以上の分枝を含む場合、本発明による方法は、好ましくは、メインライナ本体から少なくとも1つの分岐及び/又は少なくとも1つの分枝への移行部での形状及び編目構成を決定するステップと、分離糸の位置を決定するステップと、脈管インプラント(例えば、脈管内インプラント)の製作中に分離糸を導入するステップと、製作された脈管インプラントの分離糸を分離するステップとを更に含む。
【0056】
本発明の文脈において、「分離糸」は、アンダーラップによって他のウェールに接続されていない個々のウェールを指し、アンダーラップは、同じ糸から形成された2つの隣接する編目の接続を指す。経編みの方向に上下に配置された編目は、ウェールと呼ばれる。分離糸の使用により、繊維構造のラインが分離され、それぞれの仕様に従って繊維を明確に切断できるようになる。分離糸を使用する場合の経編構造の設計により、繊維構造のほどけ又はほつれのリスクを減少でき、編目構成を選択することで伝線する編目の形成を排除することができる。更に、例えば、凹部、局所補強部、分岐、直径変更、及び/又は分枝を脈管インプラントに組み込むために、編目構成の変更と組み合わせて分離糸を使用することは、直径変更、分岐、分枝、スカラップからなる群から選択される少なくとも1つの構造要素を含む脈管インプラント(例えば、脈管内インプラント)の一体的な製作を可能にするので、特に有利である。脈管インプラントが少なくとも1つの分離糸で経編みされている場合、少なくとも1つの分離糸に隣接する経編布の領域は、好ましくは、例えば、編目構成のそれぞれの変更によって、少なくとも1つの局所補強部で構成することができる。これは、分離糸と局所補強部の組み合わせが、分離糸を分離した後に経編布の構造がほつれるリスクを最小限に抑えるという点で有利である。局所的な編目構成の変更により、前部繊維面を後部繊維面に接続して管を形成することができる。局所的な編目構成の変更は、前述の縁綴じ込みとは異なる場合がある。
【0057】
製作される脈管インプラントが少なくとも1つの分岐及び/又は分枝及び/又は少なくとも1つの直径変更を含む場合、本発明による方法は、脈管インプラントに組み込まれる分離糸の位置を決定することを含む。これは、好ましくは、それぞれのコンピュータプログラムによって自動的に行われ、特に好ましくは、分岐及び/又は分枝のそれぞれのパラメータを決定する状況において行われる。
【0058】
少なくとも1つの分岐が構造要素として選択され、決定され、及び/又は入力された場合、対応する脈管インプラントは、編目構成を変更することによって、及び/又は分離糸を使用することによって一体的に経編みすることができる。この目的のために、分岐の位置及び延長は、取得された脈管パラメータに基づいて患者固有の方式で決定され、分離糸が使用される場合、分岐の位置及び延長は、脈管インプラントの管状ライナ本体が、経編方向に分割されて、例えば、経編布を2次元で見た時に同等の幅を有する、又は例えば、3次元で見た時に同等の直径を有して、定義されたように2つの管状ライナ本体となるように決定される。本発明の文脈において、経編布の主な延長方向に直交する延長は、経編布の幅と呼ばれる。例えば、分岐を形成するために、使用される糸数は、分岐から生じるそれぞれの分岐ライナ本体間で、均一に又は不均一に分割することができる。選択的又は代替的に、糸を除去又は追加して分岐を形成することができる。分岐ライナ本体が一体的に形成される場合、編目構成は、好ましくは局所的に変更される。脈管インプラントの管状メインライナ本体は、2つの縁綴じ込みを含むことができ、それによって、脈管インプラントの管状構造を形成することができ、分岐から生じる分岐ライナ本体は、それぞれ2つの縁綴じ込みを含むことができ、それによって、それぞれの分岐ライナ本体の管状構造を形成することができる。メインライナ本体の2つの縁綴じ込みのうちの少なくとも1つは、特に中断することなく、分岐ライナ本体のうちの1つの縁綴じ込みと融合することができる。特に、メインライナ本体の2つの縁綴じ込みは、特に中断することなく、2つの分岐ライナ本体のうちの1つのそれぞれの外縁綴じ込みと融合することができる。
【0059】
少なくとも1つの分枝が構造要素として選択され、決定され、及び/又は入力された場合、対応する脈管インプラントは、好ましくは、分岐の場合のように一体的に経編みされる。この目的のために、脈管インプラントの一元の管状ライナ本体は、分枝の領域において、さらなる管状ライナ本体(手順に応じて、経編方向の分枝の上流又は下流)及び管状サイドライナ本体に細分することができる。この目的のために、編目構成の変更は、好ましくは、分枝の領域において提供される。これに関連して、一元の管状ライナ本体、さらなる管状ライナ本体、及びサイドライナ本体は、好ましくは、同じ方向に経編みされる。言い換えれば、経編み操作中、さらなるライナ本体及びサイドライナ本体は、好ましくは、分割部分の上流又は下流に経編みされた一元のライナ本体に平行に延びる。さらなる管状ライナ本体は、経編布を2次元で見た場合に、管状ライナ本体よりも小さな幅、又は経編布を3次元で見た場合に、管状ライナ本体よりも小さい直径を有することができる。
【0060】
代替的又は追加的に、サイドライナ本体は、追加された糸によって一体的に製作することができる。これは、特に、少なくともそれぞれの分枝のすぐ上流及び/又はすぐ下流の領域において、管状メインライナ本体を経編みするために使用されない糸を指す。好ましくは、管状メインライナ本体が経編みされる場合、複数の分離糸が(分枝の領域の上流及び/又は下流の経編方向に)提供される(分離糸は、例えば、メインライナ本体の主な延長方向に平行に経編みすることができる)。好ましくは、分離糸として形成される糸は、それぞれのメインライナ本体と同じ編目構成でメインライナ本体に平行に経編みされ、それぞれの分枝に直接隣接する分離糸として形成される。これにより、特に高品質な布の外観と堅牢な手順が可能になる。次に、これらの分離糸を使用して、サイドライナ本体を所望の位置で経編し、これを経編み中にメインライナ本体に接続する。したがって、メインライナ本体の縦方向の所望の位置でメインライナ本体から始まるサイドライナ本体は、(好ましくは複数の)分離糸から経編みすることができる。サイドライナ本体は、メインライナ本体に対して所望の角度(例えば、0°から75°、5°から75°又は10°から75°、好ましくは0°から45°、5°から45°又は10°から45°)で、経編み中にすでに一体的に製作することができる。メインライナ本体の直径は、分枝の領域全体で実質的に一定に保つことができる。好ましくは、サイドライナ本体は、メインライナ本体に使用される糸数を減少及び/又は分割することなく製作される。選択的に、例えば、複数の分枝を形成するため、又は分枝及び分岐を形成するためなど、異なる構造要素を形成するために、同じ1つ又は複数の分離糸を、それぞれのモジュール及び/又はインプラントに沿った異なる位置で使用することができる。
【0061】
製作方法に関係なく、サイドライナ本体は、さらなる管状ライナ本体よりも小さい幅又は直径を有することができる。
【0062】
以前に決定された分離糸の位置は、コンピュータ支援モデル、好ましくは特に色分けされた2Dピクセルファイルに統合される。モデルに統合された情報、特に管状ライナ本体上での配置及び延長に関する情報に従って、分離糸は、脈管インプラントの製作中に脈管インプラント(例えば、脈管内インプラント)に導入される。したがって、脈管インプラントは、コンピュータ支援モデルに従って分離糸で経編みされる。
【0063】
脈管インプラントが製作された後、脈管インプラントに含まれる分離糸は、好ましくは分離される。製作された脈管インプラントの分離糸の分離は、当業者に知られている様々な方法、例えば切断によって実行することができる。好ましくは、分離糸の分離は自動的に実行されるが、手動で実行することもできる。
【0064】
本発明による方法では、1つ以上の分枝及び/又は分岐は、それぞれのモジュール及び/又はインプラントの主な延長方向に平行に経編みすることができる。分枝又は分岐は、その後の熱成形及び/又は熱硬化によって、主な延長方向に対してある角度で配置することができる。代替的又は追加的に、1つ以上の分枝及び/又は分岐は、特に分離糸を使用することによって、それぞれのモジュール及び/又はインプラントの主な延長方向に対してある角度で経編みすることができる。
【0065】
製作される脈管インプラントが1つ以上の凹部を含むことを意図する場合、本発明による方法は、好ましくは、少なくとも1つの凹部の縁部における少なくとも1つの局所補強部の位置を決定するステップ、及び/又は分離糸を組み込むステップを更に含む。少なくとも1つの凹部が開窓であることを意図する場合、方法は、好ましくは、脈管インプラントの製作中に少なくとも1つの局所補強部を組み込むことを含む。少なくとも1つの凹部がスカラップであることを意図する場合、方法は、好ましくは、分離糸の位置の決定、脈管インプラントの製作中の局所補強部の組み込み及び分離糸の組み込み、並びに製作された脈管インプラントの分離糸の分離を含む。
【0066】
本発明による脈管インプラントの凹部は、特に好ましくは、少なくとも1つの凹部の縁部に少なくとも1つの局所補強部を含む。したがって、開窓は、好ましくは、流れ方向の上流及び/又は下流に位置する開窓の領域、特に好ましくは両方の領域に局所補強部を含む。スカラップは、好ましくは、流れ方向の下流に位置するスカラップの領域に局所補強部を含む。対応するパラメータ、特に少なくとも1つの局所補強部のそれぞれの位置は、好ましくは自動的に決定され、脈管インプラントのコンピュータ支援モデルに統合される。特に好ましくは、局所補強部は、編目構成の変更によって、特に(特に上端及び/又は下端での)2本針のオーバーラップによって構成される。したがって、モデルに統合されたパラメータに基づいて、脈管インプラントは、モデルに従って局所補強部と一体的に経編みされる。
【0067】
少なくとも1つの凹部がスカラップである場合、脈管インプラントは、分離糸を使用して一体的に経編みすることができる。この目的のために、分離糸の位置及び延長は、少なくとも1つのスカラップを直接取り囲む編目がそれぞれの分離糸の編目として構成されるように、取得された脈管パラメータに基づいて患者固有の方式で決定される。このようにして、スカラップの位置で経編みされた管状ライナ本体の領域は、脈管インプラントの製作後に除去することができる。脈管インプラントの製作中の局所補強部の組み込み及び分離糸の組み込み、並びにその後の分離糸の分離は、すでに説明したように実施することができる。
【0068】
製作される脈管インプラントが1つ以上の直径変更を含むことを意図する場合、本発明による方法は、好ましくは、糸張力、糸数、コース密度、及び/又は編目サイズに関連するパラメータを決定するステップを更に含む。代替的又は追加的に、方法は、好ましくは、分離糸の位置を決定し、脈管インプラント(例えば、脈管内インプラント)の製作中に分離糸を組み込み、製作された脈管インプラントの分離糸を分離するステップを含む。
【0069】
すでに説明したような分離糸を使用するオプションに追加的又は代替的に、直径変更は、糸張力、糸数、コース密度、及び/又は編目サイズに関連するパラメータを変更することによって構成することができる。例えば、脈管インプラントの直径の減少は、糸張力を増加させること、分離糸を使用するなどして糸数を減少させること、コース密度を増加させること、又は編目サイズを減少させることによって、又は前述の1つ以上のオプションの組み合わせから達成することができる。ただし、直径の増加が必要な場合、これは、糸張力を減少させること、糸数を増加させること、コース密度を減少させること、及び/又は編目サイズを増加させることによって達成することができる。
【0070】
本発明による脈管インプラントは、一体的に経編みされ、分離糸を介して接続された複数のモジュールを含むことができる。これらのモジュールは、分離糸を分離することにより、経編み後に互いに分離することができる。例えば、管状メインライナ本体(選択的に、1つ以上の分枝、1つ以上の開窓、1つ以上のスカラップ及び/又は1つ以上の直径変更を含む)は、第1のモジュールを形成することができ、分岐は、分離糸を介して第1のモジュールに接続された第2のモジュールとして構成することができる。右腸骨脈管に挿入される移植片のための管状ライナ本体は、さらなるモジュールであり得、及び/又は左腸骨脈管に挿入される移植片のための管状ライナ本体は、さらなるモジュールであり得る。1つ又は複数の腸骨脈管移植片のための1つ又は複数の管状ライナ本体は、分離糸を介して、第1のモジュール、特に分岐の端部に接続することができる。
【0071】
代替的に、メイン管状ライナ本体(選択的に、1つ以上の分枝、1つ以上の開窓、1つ以上のスカラップ及び/又は1つ以上の直径変更を含む)は、分岐を直接含む(すなわち、経編み操作後にメイン管状ライナ本体と分岐が分離されていない)第1のモジュールを形成することができ、さらなるモジュールは、右腸骨脈管に挿入される移植片のための管状ライナ本体によって形成することができ、及び/又はさらなるモジュールは、左腸骨脈管に挿入される移植片のための管状ライナ本体によって形成することができる。
【0072】
1つ又は複数の腸骨脈管移植片のための1つ又は複数の管状ライナ本体は、分離糸を介して、第1のモジュール、特に分岐の端部に接続することができる。さらなる代替案によれば、管状メインライナ本体(選択的に、1つ以上の分枝、1つ以上の開窓、1つ以上のスカラップ及び/又は1つ以上の直径変更を含む)は、第1のモジュールを形成することができ、及び腸骨脈管の1つに挿入される移植片は、経編み中に分離糸を介して第1のモジュールに接続される第2のモジュールを形成することができる。異なるモジュールは、好ましくは、体内で重なる方式で拡張され、それによってそれらは接続される。
【0073】
本発明による脈管インプラントが少なくとも1つの腸骨脈管移植片を含むことを意図する場合、腸骨脈管移植片は、好ましくは、残りの脈管インプラントと一体に経編みされ、続いて、体内に別々に挿入可能にするために、残りの脈管インプラントから分離される。これにより、患者固有の腸骨脈管移植片のコスト効果の高い製作が可能になる。特に、移植片の長さ及び/又は直径は、患者固有のパラメータとして決定することができる。患者の個々の解剖学的要件に応じて、腸骨脈管移植片は、一定の直径又は1つ以上の直径変更で形成することができる。更に、腸骨脈管移植片は、少なくとも1つの凹部及び/又は少なくとも1つの分枝を有することができる。
【0074】
残りの脈管インプラントから腸骨脈管移植片を容易に分離することを達成するために、一体的に経編みされた腸骨脈管移植片は、好ましくは、分離糸を介して残りの移植片に接続される。例えば、特に一体的に経編みされた腸骨脈管移植片の一端は、分離糸を介して、残りの脈管インプラントと一体的に経編みされた分岐ライナ本体の一端に接続することができる。次に、患者の体内に別々に挿入可能な腸骨脈管移植片を提供するために、経編み操作の後に分離糸が分離される。
【0075】
本発明による方法の更に有利な実施形態では、方法は、脈管の術前医用画像データを取得するステップと、取得された画像データを視覚化するステップと、脈管インプラント(例えば、脈管内インプラント)が製作される脈管セクションを識別するステップと、脈管パラメータを測定するステップとを更に含む。本発明に係る方法によって、標準化された脈管インプラント(特に、標準化された脈管内インプラント)を製作することができるが、方法は、好ましくは個別化された脈管インプラントを製作するために使用される。このようにして、患部における患者固有の解剖学的構造を特によく考慮することができる。これは、分枝の構成及び位置が大きく変化する可能性があるため、取り替えられる脈管セクションの分枝の場合に特に有利である。したがって、脈管インプラントは、好ましくは、少なくとも脈管インプラント(例えば、脈管内インプラント)が製作される脈管セクションの画像データに基づいて製作される。特に、脈管インプラントの構造及び/又は形状、例えば、1つ以上の構造要素の位置、形状、及び/又はサイズなどは、そのような画像データに基づいて患者固有の方式で設計及び/又は製作することができる。
【0076】
したがって、少なくとも取り替えられる脈管セクションの術前医用画像データは、好ましくは、本発明による方法の過程で、好ましくは、直接隣接する脈管セクションを含む少なくとも取り替えられる脈管セクションについて取得される。画像データは、好ましくは、コンピュータ断層撮影法又は磁気共鳴断層撮影法によって取得されるが、選択的に、特にそれらが3D画像データセットを記録及び/又は作成するのに適している場合、X線又は超音波装置によっても取得される。個別化された脈管インプラントの製作の基礎として、画像データは、好ましくは、最大3mm、好ましくは最大2mm、特に好ましくは最大1mmのスライス厚を含む。データは、好ましくは、体の縦方向、すなわち頭蓋(頭側)から尾側(尾骨側)へ、又は逆方向に0.05mmから10mmの距離で、好ましくは0.5mmから3mmの距離で獲得される。2つの連続するスライスは、最大50%、好ましくは最大25%の重複を有することができ、スライス間の距離は、最大でも対応するスライス厚と同じである。脈管壁の正確な構成に関して高品質の情報を確保するために、獲得及び/又は取得された画像は、個別化された脈管インプラントの製作に使用される前に、全ての空間方向で可能な限り高い空間分解能を提供するために、好ましくは、当業者に知られている方式で、例えば多断面再構成によって後処理される。
【0077】
収集及び/又は提供された画像データは、1つ以上の時点で作成することができ、本発明による好ましい方法では、個別化された脈管インプラントを構成するために、脈管インプラントのコンピュータ支援モデルを製作するために使用される。
【0078】
好ましくは、取得された術前医用画像データは、更に視覚化される。データの視覚的表現により、取得したデータの品質、並びに取得したデータの完全性の制御が容易になる。したがって、コンピュータ支援モデルを作成するのに不十分なデータ品質の場合、又は不完全なデータの場合、ユーザに、例えば、代替的又は追加的に、それぞれの通知の出力によって警告することができる。このようにして、取り替えられる脈管セクション、並びにそれに直接隣接する脈管セクションの術前医用画像データの新たな取得を迅速に開始することができ、患者固有の脈管インプラントの提供を、特に時間効率の高い方式で行うことができる。
【0079】
本発明による方法は、脈管インプラント(例えば、脈管内インプラント)が作成される脈管セクションを、好ましくは自動的に識別することを更に含むことができる。取り替えられる脈管セクションは、取得された画像データに基づいて、好ましくはコンピュータ支援プログラムで実施される方法によって識別される。ただし、これは、ユーザによる適切なマーキング及び/又は入力によって手動で行うこともできる。ただし、好ましくは、識別は、例えば、治療される脈管の自動セグメンテーション及び/又は濃淡値のマッチングによって自動的に実行される。更に、例えば、それぞれの脈管パラメータの閾値を含むデータベースのエントリとのマッチングを実行することができる。更に、利用可能な場合、脈管壁の変化が発生する前に取り替えられる脈管セグメントが示した患者固有の脈管パラメータを、比較に使用することができる。これにより、製作される脈管インプラントの患者固有の適合を最大限にすることができる。
【0080】
好ましくは、取り替えられる脈管セクションはまた、画像データの視覚化において視覚的に出力される。このようにして、ユーザは、自動的に識別された脈管セクションをチェックし、必要に応じて、例えば、長くしたり、短くしたり、広げたり、制限したりして、それを訂正することができる。ユーザが本発明による方法を続行することに同意するか否かに関するクエリを提供し、それに応じて、それぞれのコンピュータプログラムに実装することができる。
【0081】
取り替えられる脈管セクションが識別され、好ましくはユーザによっても確認されると、取り替えられる脈管セクションのそれぞれの脈管パラメータの測定を実行することが好ましい。この目的のために、例えば、治療される脈管の中心線を最初に決定することができ、中心線は、選択的に、その主な延長方向に従って製作される脈管インプラントの少なくとも1つの管状ライナ本体の回転軸と見なすこともできる。ただし、中心線はまた、例えば、脈管インプラントの移植に使用される装置の機械的特性及び/又は脈管インプラント自体の機械的特性を考慮に入れるために、治療される脈管の正中線から逸脱して決定することもできる。更に、脈管の長さ及び直径、並びに脈管の分枝の位置、角度及び直径などの脈管パラメータは、取得された医用画像データによって、そして選択的に、取り替えられる脈管の決定された正中線を用いて測定することができる。続いて、そのようなパラメータを使用して、1つ以上のライナ本体の長さ及び直径、及び/又は凹部の位置及び直径などの脈管インプラントのパラメータを計算することができる。すでに説明したそのような幾何学的パラメータに加えて、血栓の存在及び/又は石灰化、並びにそれぞれの位置、形状及び延長などの形態学的パラメータを選択的に撮像することができる。
【0082】
すでに説明したように、測定された脈管パラメータは、好ましくは、脈管インプラントのコンピュータ支援モデルの作成のために記憶及び提供される。測定された脈管パラメータは、特に、局所補強部などの構造要素の決定において分析することもでき、それに応じて、脈管インプラント(例えば、脈管内インプラント)のモデルに統合することができる。
【0083】
製作される脈管インプラントが、ステント移植片、及び/又は例えば心臓弁などの弁インプラントである場合、更に有利な実施形態における本発明による方法は、好ましくは、製作された繊維及び/又は繊維ベースの脈管インプラントにステント構造を適用すること、及び/又は製作された脈管インプラントに弁を適用することを更に含む。この文脈において、「ステント構造」又は「ステント」という用語は、好ましくは複数のストラットを含み、管状及び/又は管状の様式で構成される構造を指す。この文脈において、ステント構造は、弁と同様に、好ましくは生体適合性材料、特に生体適合性ポリマーベースの材料で作られているが、代替的に、例えば、金属で作られ、及び/又は金属を含むこともできる。特にステント構造の場合、このステント構造は、好ましくは、測定された脈管パラメータ、特に幾何学的及び選択的に形態学的な脈管パラメータも考慮に入れ、患者固有であるように設計される。例えば、特に経編みされる脈管インプラントの、したがって移植片の、作成された3Dモデルの視覚化はまた、例えば、ステント構造の適切な位置決めなど、繊維製造後のさらなる製品設計にとって有利であり得る。視覚化されたモデルでは、ステント構造の位置決めを容易に実行することができ、例えば、ステントの設計及びレイアウト、並びにその後の移植片及びステントの組み立てのための技術図面を、視覚化されたモデルから生成することができる。更に、移植、及び/又は移植中又は移植後などの機械的ストレス下での脈管インプラントの挙動のシミュレーションは、ステント移植片のステント構造の最適な設計に有利であり得る。本発明によって製作された移植片へのステント構造の適用及び/又は弁の取り付けは、当業者に知られている様々な方法、例えば、縫合、接着、溶接又は融合によって実施することができる。
【0084】
本発明による方法の更に有利な実施形態では、ステント構造は、製作された脈管インプラント上に印刷される。この場合、ステント構造は、好ましくは、ポリマーベースの、特に生体適合性の材料で作られており、脈管インプラント、この場合、いわゆる移植片へのステント構造の適用は、付加工程によって、特に溶融堆積モデリングによって行われる。本発明の文脈において、「付加工程」という用語は、付加製造工程、又は、当業者に知られており、材料を互いの上に取り付け及び/又は接合することによって要素が自動に製作される、付加及び/又は生成製造の工程を含む。付加工程は、例えば、3D印刷工程、並びに、溶融堆積モデリングなど、溶融材料を層ごとに堆積させる工程を含む。溶融堆積モデリングでは、ステント構造の材料は、例えば、加熱されたノズルによって液化され、1つ以上の層のフィラメントの形で移植片上に適用され、好ましくは直ちに及び/又は直接移植片上に適用される。材料はフィラメントとしてノズルに供給することができる。
【0085】
好ましくは、ステント構造は、移植片を、好ましくはその縦方向軸の周りに保持及び/又は回転させることができる回転可能なホルダーを使用することによって、移植片に適用される。そのようなホルダーは、例えば、その外面上に提供された移植片が置かれる、回転する管状マンドレル及び/又は回転する管状足場であり得る。この場合、少なくとも1つのステント構造は、好ましくは、移植片の外部に適用される。適用されたステント構造が移植片の内側に配置されることを条件として、本発明による方法は、ステント移植片を反転させるさらなる選択的なステップを含むことができる。したがって、本発明によるステント移植片の移植片は、ステント構造を内側又は外側から包むように提供することができる。
【0086】
更に有利な実施形態では、本発明による方法は、製作された脈管インプラント(例えば、製作された脈管内インプラント)を熱処理及び/又は加熱することによって、脈管インプラント(例えば、脈管内インプラント)を成形及び/又は固定するステップを更に含む。言い換えれば、本発明による方法は、好ましくは、特に管状ライナ本体に沿った1つ以上の直径変更の場合に、脈管インプラント、例えば、脈管内インプラントを熱成形及び/又は熱硬化するステップを含む。本発明の文脈において、熱硬化は、それぞれの繊維製造の後に起こる。更に、本発明の文脈において、熱成形という用語は、ホルダーのそれぞれのマンドレル形状と熱の影響、特に、少なくとも120℃又は少なくとも150℃の熱の影響との組み合わせによって繊維を成形することを指す。熱成形及び/又は熱硬化ステップは、製作後にインプラントの形状を維持及び/又は固定するのに特に有利である。このステップでは、特に、織られた又は経編みされたインプラントの形状を、治療される脈管の形状に更に適合させることができる。例えば、1つ以上の凹部の形状を適合させることができ、特に拡張することができる。代替的又は追加的に、インプラントの主な延長方向に対する分岐及び/又は分枝の角度を適合させ、固定することができる。代替的又は追加的に、特に、1つ以上のライナ本体のそれぞれの直径を適合させることができ、特に拡張することができる。更に、メインライナ本体から1つ以上の分岐ライナ本体及び/又はサイドライナ本体への移行部での脈管インプラントの形状は、熱成形及び/又は熱硬化によって所望の形状(例えば、丸い及び/又は段差のない形状)に固定することができる。したがって、脈管インプラントの最適な患者固有の設計は、脈管インプラント、例えば脈管内インプラントを成形及び/又は固定するステップ単独で、及び/又は上記のような編目構成及び少なくとも1つの構造要素の組み込みなどの経編布の製作に関する調整オプションとの組み合わせによって達成することができる。
【0087】
成形及び/又は固定のために、製作された脈管インプラントは、好ましくはその縦方向軸の周りで回転可能及び/又は旋回可能であるホルダーによって保持されることが好ましい。ホルダーは、好ましくは、取り替えられる脈管セクションの直径に対応する少なくとも1つの直径を有する。熱成形及び/又は熱硬化によって直径変更を引き起こすために、ホルダーはまた、異なる直径(例えば、直径ジャンプ)を有する領域を含むことができる。
【0088】
特に好ましくは、製作された脈管インプラントの作成されたコンピュータ支援モデルに従って、それぞれのマンドレル形状を有する少なくとも1つのマンドレルを含むホルダーが使用される。したがって、ホルダーは、(例えば、異なる直径を有する異なるホルダーセクションを接続することによって、及び/又は製作された移植片のメインライナ本体を固定するためのメインセクションを、分岐及び/又は分枝を固定するための分岐セクション及び/又は分枝セクションと接続することによって)モジュール構造を有することができる。それぞれのホルダーは、例えば、製作された脈管インプラントの作成されたコンピュータ支援モデルを使用して、付加製造によって、又は機械加工工程に基づいて作成することができる。これには、マンドレル形状のホルダーを迅速かつコストを節約して作成及び使用できるという利点があり、これにより、脈管インプラントの機能を確保するために、それぞれの患者の解剖学的構造に関して製作された脈管インプラントを最適に成形し、及び/又はその形状を固定することを可能にする。そのようなホルダーは、例えば、その外面上に脈管インプラントが置かれる、回転する管状マンドレル及び/又は回転する管状足場であり得る。ホルダーは、中実体として構成することができる。ただし、好ましくは、ホルダーは中空のマンドレルであり、好ましくは薄壁を有する。ホルダーが中実体として形成されているか中空マンドレルで形成されているかに関係なく、ホルダーは、選択的に、移植片に組み込まれた分枝に従って分枝を有する。薄壁の中空マンドレルは、均質な熱伝導を確保し、したがって、適用された脈管インプラントの均一な熱成形及び/又は熱硬化を確保することができるので、特に有利である。好ましくは、ホルダーはステンレス鋼で作られ、及び/又はステンレス鋼を含む。ホルダーは、異なる材料で構成され、及び/又は異なる材料を含むこともでき、ホルダーは、例えば、PTFEフィルムで囲むことができるアルミニウム合金を含むことができる。したがって、表面の凹凸を減らし、ホルダーの滑らかな表面を確保することができる。
【0089】
したがって、脈管インプラントは、ホルダー上に設置され、及び/又はその上に一定のプレストレッチでクランプされ得、ここで、一定のプレストレッチは、例えば、20%、好ましくは30%であり得る。特に好ましくは、一定のプレストレッチは、それぞれの繊維パラメータを考慮に入れて、及び/又はホルダーのそれぞれのマンドレル形状によって、局所的に適合される。次に、ホルダーは、材料固有の予め定義されたパラメータ、及び/又はホルダー固有の予め定義されたパラメータに従って、例えば、中空又は中実のマンドレルなどとしての少なくとも1つのマンドレルの、それぞれの材料、それぞれの形状、及び/又はそれぞれの設計、特に温度及び期間に従って、好ましくは炉内、特に好ましくは乾燥風炉内で、その上に配置された脈管インプラントと共に加熱される。続いて、ホルダーは、その上に配置された脈管インプラントと共に、例えば炉から取り出され、好ましくは室温で冷却され、脈管インプラントは、例えば、それぞれのホルダーから引き抜くことによって取り外される。熱成形及び/又は熱硬化ステップの過程での脈管インプラントの制御された熱処理によって、繊維及び/又は繊維ベースの脈管インプラントの主な延長方向又は経編方向への脈管インプラントの制御された収縮が起こり得、及び/又は固定され得る。そのような収縮は、特に凹部がそれぞれの意図された形状にもたらされることを必然的に伴い、例えば開窓の場合、経編みのスリットからそれぞれの楕円形又は円形の開口部へ形成される。特に有利なことに、一定又は実質的に一定の幅(2次元で見た場合)及び/又は一定又は実質的に一定の直径(3次元で見た場合)を有するメインライナ本体で経編みされた脈管インプラントは、経編み後の熱成形及び/又は熱硬化によって、特にメインライナ本体に沿って、異なる直径及び/又は直径ジャンプを備えることができる。
【0090】
成形及び/又は固定ステップの後、脈管インプラントのパラメータを、治療される脈管セクションの測定されたパラメータ、及び/又はモデルの特定のパラメータと再び比較することができる。このようにして、取り替えられる脈管セクションに対する患者固有の脈管インプラントの最適なフィットを確認することができる。
【0091】
本発明による方法の更に有利な実施形態では、方法は、例えば生体適合性ゼラチン及び/又はコラーゲンの層の、例えば「コーティング」又は塗布によって、脈管インプラント(例えば、脈管内インプラント)を精製するためのステップを更に含む。これは、脈管インプラントが流体に対して不浸透性である場合に特に有利であり得る。
【0092】
更に、有利な実施形態では、本発明による方法は、好ましくは、製作された脈管インプラント(例えば、製作された脈管内インプラント)を滅菌するステップを含む。
【0093】
本発明による方法の有利な実施形態では、記載された方法ステップは、好ましくは、少なくとも1つのコンピュータプログラムによって実行される。複数のコンピュータプログラムを使用する必要がある場合、本発明による方法は、コンピュータプログラムの変更ごとに、選択的に、例えば、脈管インプラントのモデルなどの情報を、以下のそれぞれのコンピュータプログラムによって読み取り可能な形式に変換するステップと、選択的に、それぞれの形式で情報を記憶するステップと、以下のそれぞれのコンピュータプログラムが読み取り可能な形式で、情報をそれぞれのコンピュータプログラムに転送するステップと、取得された情報をそれぞれのコンピュータプログラムによって読み取るステップとを追加的に含む。選択的に、更に、ユーザへの1つ以上の出力、特に、情報の記憶、及び/又は以下のそれぞれのコンピュータプログラムへの情報の転送に関連するエラーメッセージ及び/又はクエリなどの出力は、前述のステップの1つ以上の前及び/又は後に提供することができる。特に、少なくとも脈管パラメータの測定及び決定に関連して説明された方法ステップ、並びにコンピュータ支援モデルのために単一のコンピュータプログラムを使用することは、方法の効率を最大化できるので有利である。
【0094】
ユーザが本発明による方法を続行することに同意するか否かに関するクエリは、方法の説明された各ステップの後に行うことができる。同様に、それぞれのデータの記憶は、説明された各ステップの間及び/又は後に行うことができる。
【0095】
本発明の第2の態様は、脈管インプラントに関するものであり、特に脈管内インプラントであり得る。脈管インプラントは、好ましくは、本発明の第1の態様による本発明の方法を使用して製作される。ただし、本発明による脈管インプラントは、この方法の使用に限定されない。この点で、本発明はまた、それらがどのように製作されるかに関係なく、上記の構造要素のいずれか1つを含む脈管インプラントに関する。本発明の第1の態様による方法から生じる特徴及び利点は、本発明の第1の態様の説明から得られ、本発明の第1の態様の有利な実施形態は、本発明の第2の態様の有利な実施形態と見なされるべきであり、逆もまた同様である。
【0096】
以下では、本発明による脈管インプラント(例えば、脈管内インプラント)のいくつかの特に好ましい実施形態を、本発明の保護の範囲を限定することなく、例示として説明する。以下に記載される個々の実施形態の構造要素の詳細は、明示的に言及されていない場合でも、他の実施形態のそれぞれの構造要素の詳細として理解されるべきである。当業者は、それぞれの構造要素が患者の解剖学的構造に応じて提供されるべきであり、したがってこれらの構造要素の任意の組み合わせが包含されることを理解するであろう。
【0097】
本発明による脈管インプラントの有利な実施形態では、脈管インプラントは、それぞれのモジュールの少なくとも1つの管状ライナ本体に沿った少なくとも1つの直径変更を含む。それにより、直径変更は、管状メインライナ本体の特定の端部から開始して、管状メインライナ本体のそれぞれの主な延長方向におけるテーパ又は広がりとして構成することができる。例えば、脈管インプラントは、1つ以上の段階的な直径変更を含むことができる。或いは、脈管インプラントは、脈管インプラントの主な延長方向における長さの少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、更には少なくとも50%に及ぶ1つ以上の連続的な直径変更を含むことができる。脈管インプラントはまた、それぞれのモジュールの少なくとも1つの管状ライナ本体に沿って、2、3、4、又は5個などの複数の直径変更を含むことができる。例えば、脈管インプラントは、2つの直径変更を含むことができ、(i)脈管インプラントは、末端セクションのそれぞれの直径と比較して、中央セクションでより大きな直径を有し、(ii)脈管インプラントは、末端セクションのそれぞれの直径と比較して、中央セクションでより小さい直径を有し、又は(iii)脈管インプラントは、末端セクションの直径のそれぞれの値の間の範囲の値を有する直径を示す中央セクションを有する。
【0098】
本発明による脈管インプラントの更に有利な実施形態では、脈管インプラントは、少なくとも1つの分岐を含む。脈管インプラントは、例えば、分岐を含むことができ、分岐は、脈管インプラントの中央セクション又は末端セクションに位置することができる。例えば、脈管インプラントは、脈管インプラントの主な延長方向に対して、分岐のないそれぞれのモジュールの管状ライナ本体のセクションが、例えば、脈管インプラントの長さの最大50%、最大60%、最大70%、最大80%、最大90%、又は最大95%に対応するように構成された分岐を含むことができる。更に、メインライナ本体が分岐で分割する2つの分岐ライナ本体は、それぞれの主な延長方向で測定して、少なくとも0.5cm、少なくとも1cm、少なくとも2.5cm又は少なくとも5cmの長さをそれぞれ有することができる。1つのライナ本体から生じる少なくとも2つのライナ本体は、それらの主な延長方向で測定して、同じ長さ、同等の長さ、又は異なる長さを有することができる。この場合、異なる長さは、2つのうちの長い方、又はメインライナ本体から生じる分岐ライナ本体の最も長い方で測定して、少なくとも10%、少なくとも20%、又は少なくとも30%異なる長さを意味する。
【0099】
本発明による脈管インプラントの更に有利な実施形態では、脈管インプラントは、脈管インプラントのモジュールのそれぞれの管状ライナ本体に沿った少なくとも1つの分枝を含む。例えば、脈管インプラントは、1つの分枝を含むことができ、分枝は、メインライナ本体の中央セクション又はその末端セクションで、メインライナ本体から分枝することができる。例えば、脈管インプラントは、脈管インプラントの主な延長方向に対して、メインライナ本体の末端から、脈管インプラントの長さの少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、又は少なくとも30%の距離で、メインライナ本体から分枝する分枝を含むことができる。例えば、脈管インプラントはまた、2つ以上の分枝を含むことができ、分枝は、その主な延長方向で測定されたメインライナ本体の末端までの等しい、又は異なる距離を有することができる。脈管インプラントが2つ以上の分枝を含む場合、分枝は、その主な延長方向に対してメインライナ本体から同じ又は異なる角度で延長することができる。更に、少なくとも2つの分枝は、それぞれの分枝位置が、メインライナ本体に対して、その主な延長方向においてメインライナ本体の中心軸に平行な直線上に配置されるように、及び/又はメインライナ本体の円周方向に互いに対してオフセットされるように、メインライナ本体から分枝することができる。更に、少なくとも1つの分枝は、その主な延長方向で測定して、少なくとも0.3cm、少なくとも0.5cm、少なくとも1cm、少なくとも2.5cm、又は少なくとも5cmのサイド筐体の長さを有することができる。
【0100】
本発明による脈管インプラントの更に有利な実施形態では、脈管インプラントは、少なくとも1つの凹部を含み、少なくとも1つの凹部は、少なくとも1つのスカラップ、及び/又は少なくとも1つの開窓として構成することができる。少なくとも1つのスカラップは、流れ方向で測定して、3mmから20mm、好ましくは5mmから15mmの凹部の高さを有することが好ましい。少なくとも1つのスカラップは、好ましくは流れ方向に対して横方向、又は円周方向で測定して、2mmから15mm、好ましくは5mmから12mm、より好ましくは7mmから12mmの凹部幅を有することが好ましい。少なくとも1つの開窓は、好ましくは楕円形又は円形であり、特に好ましくは、高さ対幅の比が0.5から2.5の間、好ましくは0.8から2の間、特に好ましくは1から1.35の間である。少なくとも1つの開窓は、好ましくは、例えば、脈管インプラントの長さの少なくとも5%、少なくとも10%、又は少なくとも30%に対応する脈管インプラントの端部からの距離で、脈管インプラントの中央領域に形成される。代替的又は選択的に、少なくとも1つの開窓は、好ましくは、脈管インプラントの最も近い端部から少なくとも2mm、少なくとも5mm、又は少なくとも7mmの距離にあるように構成される。脈管インプラントはまた、2つ以上の凹部、例えば、1つの開窓及び1つのスカラップ、2つの開窓、2つのスカラップ、2つの開窓及び1つのスカラップ、1つの開窓及び2つのスカラップ、3つの開窓、3つのスカラップ、3つの開窓及び1つのスカラップ、又は2つの開窓と2つのスカラップを含むことができる。脈管インプラントが2つ以上の凹部を含む場合、管状ライナ本体に対するそれらのそれぞれの位置は、ライナ本体の中心軸に平行にその主な延長方向に延びる直線状に配置され、及び/又はライナ本体の円周方向に互いに対してオフセットされ、及び/又はライナ本体の円周の周りに、しかしライナ本体の縦方向軸に沿って同じ位置に分布されることができる。
【0101】
更に有利な実施形態では、本発明による脈管インプラントは、少なくとも1つの局所補強部を含む。好ましくは、脈管インプラントは、ライナ本体が、2つの分岐ライナ本体、又はメインライナ本体とサイドライナ本体に分割される領域、及び/又は凹部を区切る経編布の領域、特に経編方向の末端であるスカラップ及び/又は開窓の領域に、局所補強部を含む。開窓の場合、好ましくは、経編方向における末端である両方の領域は、局所補強部を含む。スカラップの場合、好ましくは、少なくとも脈管インプラントの端部から最大の距離に位置する領域は、局所補強部を含む。補強部は、特に空間的に限定された編目構成の変更、特に空間的に限定された2本針のオーバーラップによって提供することができる。
【0102】
本発明による脈管インプラントの更に有利な実施形態では、脈管インプラントは、少なくとも1つの直径変更及び少なくとも1つの局所補強部を含み、少なくとも1つの局所補強部は、直径変更のセクションに位置することも可能であり、位置しないことも可能である。
【0103】
本発明による脈管インプラントの更に有利な実施形態では、脈管インプラントは、少なくとも1つの分岐及び/又は分枝、及び少なくとも1つの局所補強部を含み、少なくとも1つの局所補強部は、少なくとも1つの分岐及び/又は分枝、ライナ本体から少なくとも1つの分岐及び/又は分枝への移行領域、又はライナ本体の他の領域に位置することができる。
【0104】
本発明による脈管インプラントの更に有利な実施形態では、脈管インプラントは、少なくとも1つの凹部及び少なくとも1つの局所補強部を含み、少なくとも1つの凹部は、少なくとも1つの局所補強部で構成される。開窓及びスカラップの場合の局所補強部の特に好ましい領域は、すでに上に示したように理解されるべきである。例えば、脈管インプラントは、上記のように、局所補強部がない少なくとも1つの凹部、並びに少なくとも1つの局所補強部がある少なくとも1つの凹部を含むことができる。好ましくは、少なくとも1つの凹部の全ての凹部は、それぞれの局所補強部を含む。選択的に、脈管インプラントは、さらなる領域に局所補強部を含むことができる。
【0105】
本発明による脈管インプラントの更に有利な実施形態では、脈管インプラントは、少なくとも1つの直径変更及び少なくとも1つの分岐を含み、少なくとも1つの分岐は、直径変更のセクションに位置することも可能であり、位置しないことも可能である。例えば、脈管インプラントは、少なくとも1つの直径変更及び1つの分岐を含むことができ、少なくとも1つの直径変更は、ライナ本体、及び/又は分岐から生じる2つのライナ本体の少なくとも1つに位置することができる。選択的に、脈管インプラントは、上記のような領域、及び/又は脈管インプラントのさらなる領域に局所補強部を含むことができる。
【0106】
本発明による脈管インプラントの更に有利な実施形態では、脈管インプラントは、少なくとも1つの直径変更及び少なくとも1つの分枝を含み、少なくとも1つの分枝は、直径変更のセクションに位置することも可能であり、位置しないことも可能である。例えば、脈管インプラントは、少なくとも1つの直径変更及び1つの分枝を含むことができ、少なくとも1つの直径変更は、少なくとも1つのメインライナ本体、及び/又は少なくとも1つのサイドライナ本体に位置することができる。選択的に、脈管インプラントは、上記のような領域、及び/又は脈管インプラントのさらなる領域に局所補強部を含むことができる。
【0107】
本発明による脈管インプラントの更に有利な実施形態では、脈管インプラントは、少なくとも1つの直径変更及び少なくとも1つの凹部を含み、少なくとも1つの凹部は、直径変更のセクションに位置することも可能であり、位置しないことも可能である。少なくとも1つの直径変更及び/又は少なくとも1つの凹部は、少なくとも1つの局所補強部、特に少なくとも1つの凹部を含むことができる。例えば、脈管インプラントは、上記のように、局所補強部がない少なくとも1つの凹部、並びに少なくとも1つの局所補強部がある少なくとも1つの凹部を含むことができる。
【0108】
本発明による脈管インプラントの更に有利な実施形態では、脈管インプラントは、少なくとも1つの分岐及び少なくとも1つの分枝を含む。少なくとも1つの分岐及び/又は少なくとも1つの分枝は、少なくとも1つの局所補強部を含むことができる。
【0109】
本発明による脈管インプラントの更に有利な実施形態では、脈管インプラントは、少なくとも1つの分岐及び/又は分枝、及び少なくとも1つの凹部を含み、少なくとも1つの凹部は、好ましくは、少なくとも1つの局所補強部で構成される。好ましくは、脈管インプラントのメインライナ本体は、少なくとも1つの凹部を含むが、選択的に、分岐から生じる分岐ライナ本体及び/又はサイドライナ本体のうちの1つはまた、好ましくはそれぞれ少なくとも1つの局所補強部を備えた、少なくとも1つの凹部を含むことができる。例えば、脈管インプラントは、上記のように、局所補強部がない少なくとも1つの凹部、並びに少なくとも1つの局所補強部がある少なくとも1つの凹部を含むことができる。
【0110】
本発明による脈管インプラントの更に有利な実施形態では、脈管インプラントは、少なくとも1つの直径変更、少なくとも1つの分岐、及び少なくとも1つの分枝を含み、少なくとも1つの分岐及び/又は少なくとも1つの分枝は、直径変更のセクションに位置することも可能であり、位置しないことも可能である。例えば、脈管インプラントは、少なくとも1つの直径変更、1つの分岐及び1つの分枝を含むことができ、少なくとも1つの直径変更は、ライナ本体、分岐から生じる少なくとも1つの分岐ライナ本体、及び/又は少なくとも1つのサイドライナ本体に位置することができる。選択的に、脈管インプラントは、上記のような領域、及び/又は脈管インプラントのさらなる領域に局所補強部を含むことができる。
【0111】
本発明による脈管インプラントの更に有利な実施形態では、脈管インプラントは、少なくとも1つの直径変更、少なくとも1つの分岐及び/又は分枝、及び少なくとも1つの凹部を含み、特に少なくとも1つの凹部は、好ましくは、少なくとも1つの局所補強部で構成される。好ましくは、脈管インプラントの管状ライナ本体は、少なくとも1つの凹部を含むが、選択的に、分岐から生じるライナ本体及び/又はサイドライナ本体のうちの1つはまた、好ましくはそれぞれ少なくとも1つの局所補強部を備えた、少なくとも1つの凹部を含むことができる。例えば、脈管インプラントは、上記のように、局所補強部がない少なくとも1つの凹部、並びに少なくとも1つの局所補強部がある少なくとも1つの凹部を含むことができる。
【0112】
本発明による脈管インプラント、例えば、脈管内インプラントは、例えば、ステント移植片として構成することができる。本明細書で使用される「ステント移植片」という用語は、好ましくは、それに取り付けられた移植片を含むステント構造を指し、したがって、複数のストラットを含む少なくとも1つの好ましくは管状構造、及びシース構成要素として少なくとも1つの好ましくはポリマーベース材料層を少なくとも一時的に含む任意のタイプの脈管インプラント、特に脈管内インプラントを含む。ステント移植片は、動脈瘤の治療のために構成することができる。特に、本発明によるステント移植片は、例えば、胸部、胸腹部又は腹部大動脈の動脈瘤を治療するためのような、大動脈瘤の治療のためのステント移植片であり得る。生成された繊維及び/又は繊維ベースの構造は、それによって移植片を形成することができる。ステントは、任意の方法に従ってこの移植片に取り付けることができるが、好ましくは、説明された付加及び/又は生成方法によって移植片が製作された後に取り付けられる。
【0113】
ステント構造は、好ましくは、互いに接続された複数のストラットを含み、ストラットは、それぞれのストラットがステント移植片の半径方向に延びる方向に垂直な断面において、少なくとも0.01mm、好ましくは少なくとも0.05mm又は少なくとも0.1mmの高さを有する。例えば、ストラットは、0.01mmから3mm、好ましくは0.05mmから1mmの高さを有することができる。代替的又は追加的に、ストラットは、この断面の高さに垂直な幅が少なくとも0.01mm、好ましくは少なくとも0.05mm、又は0.1mmであり得る。例えば、ストラットは、0.01mmから3mm、好ましくは0.05mmから1mmの幅を有することができる。特に、ステント構造がワイヤーベースのストラット及び/又はワイヤ構造である場合、ストラット及び/又はワイヤ構造は、それぞれの延長方向に垂直な断面において、少なくとも0.1mm、好ましくは少なくとも0.3mm、又は0.5mmの直径を有することができる。
【0114】
ストラットは、当業者に知られている構成で、例えば、ジグザグ状及び/又は蛇行状のリング(クラウン)、螺旋状及び/又はジグザグ状の螺旋に配置することができる。螺旋及び/又はリングは、コネクタを介して相互に接続できる。ストラットは、拡張状態で、移植片の外皮表面の最大50%、最大40%、最大30%、最大20%、最大12%、最大10%、最大8%、最大6%、最大5%、又は最大3%を覆うように提供することができる。更に、ストラットは、拡張状態で、移植片の外皮表面の少なくとも12%、少なくとも10%、少なくとも8%、少なくとも5%、少なくとも3%、又は少なくとも1%を覆うように提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
本発明の好ましい実施形態は、図面を参照して例示として以下に説明されている。図面は単なる概略図であり、特定の態様を明確にするために、必要に応じて他の(オプションの)構造を描写しておらず、又は1つの図において、様々なオプションの、相互関連する態様を考慮に入れていない。同一の符号は、図示の実施形態における同等の、類似の、比較可能な、又は同一の要素を示す。
【0116】
図示の実施形態は、請求項の保護の範囲内で多くの手方で修正することができる。図の開示は、本発明の保護の範囲を限定することを意図するものではない。なお、上記の実施形態の特徴は、単一の実施形態で組み合わせることができる。したがって、それぞれの構成に応じて、本発明の実施形態は、前述の特徴の全て又は一部のみを含むことができる。
【0117】
【
図2】様々な構造要素を含む脈管インプラントの概略図を示す。
【
図3】脈管インプラントの主延長軸に対して斜めの分枝の一体型経編みの概略図を示す。
【
図4】脈管インプラントの主延長軸に実質的に平行な分枝の一体型経編みの概略図を示す。
【
図5】腸骨脈管移植片の領域における直径変更の概略図を示す。
【
図6】負荷に適した編目構成の変更を伴う開窓の概略図を示す。
【
図7】分離糸を有するスカラップの経編みの概略図を示す。
【
図8】アンダーラップを有する場合と有しない場合の経編布の概略図を示す。
【
図9】脈管インプラントの主延長軸を横切る分枝の一体型経編みの概略図を示す。
【
図10】
図9の分枝を経編みする際の例示的な編目構成シーケンスを示す(正面視)。
【
図13】脈管インプラントの主延長軸に対して斜めの分枝の一体型経編みのさらなる概略図を示す。
【
図14】脈管インプラントの直径変更の一体型経編みの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0118】
図1は、例えば脈管内インプラント1であり得る脈管インプラントを製作するための本発明による方法100のステップを、概略フロー図として示している。
【0119】
方法の好ましい実施形態では、最初に、脈管パラメータを取得する(ステップ110)。これらの脈管パラメータは、好ましくは、例えば、コンピュータ断層撮影法及び/又は磁気共鳴断層撮影法の過程で収集された、脈管の術前医用画像データに基づいて取得されている。患者固有の画像データは、好ましくは可能な限り高い3次元解像度を取得するために、当業者に知られている様々な手法で処理することができる。脈管パラメータを取得するために、画像データが好ましくは視覚化され、脈管内脈管インプラント1(
図2を参照)が製作される脈管セクションが識別され、それぞれの脈管パラメータ、例えば、架橋及び/又は取り替えられる脈管セクションの位置、直径、及び延長などが測定され、並びに、脈管の分枝及び分岐などの解剖学的特徴の位置及び形状が撮像される。
【0120】
方法100の好ましい実施形態によれば、取得された脈管パラメータ(ステップ110)を使用して、脈管内インプラント1のコンピュータ支援モデルを作成する(ステップ120)。脈管インプラント1のコンピュータ支援モデルは、例えば、使いやすさ及び目視検査のために視覚化することができる。
【0121】
それぞれの脈管に挿入された後の脈管インプラント1の最適なフィットを確保するために、次に、1つ以上の構造要素がこの目的に関連するか否かについてのクエリが行われる(ステップ130)。そのような構造要素は、例えば、脈管インプラント1の管状メインライナ本体2に沿った1つ以上の直径変更10、1つ以上の分岐20、脈管インプラント1の管状ライナ本体2に沿った1つ以上の分枝30、ライナ本体2に沿った1つ以上の凹部40、50、及び/又は1つ以上の局所補強部60(
図2及び
図5を参照)であり得る。クエリは、例えば入力マスクを使用して手動で、又は、例えば対応するデータベースに記憶されているそれぞれの脈管パラメータと比較することによって自動で行うことができる。構造要素の少なくとも1つについて肯定的なクエリが行われると、それぞれのパラメータが決定される(ステップ140)。これは、手動入力によっても実施することができるが、好ましくは、決定は、それぞれのコンピュータプログラムによって自動的に又は部分的に自動的に実行される。次に、それぞれの構造要素は、それぞれの決定されたパラメータに基づいて、コンピュータ支援モデルに統合される(ステップ150)。コンピュータ支援モデルは、少なくとも技術図面、設計ファイル、JCファイル、及び/又はKMOファイルであり得、好ましくは、デジタル3Dモデルが作成され、直接的又は間接的に機械可読KMOファイルに変換される。モデルデータから機械データへの自動変換も可能である。
【0122】
作成されたコンピュータ支援モデルに基づいて、本発明による繊維及び/又は繊維ベースの、好ましくは個別化された脈管インプラント1の製作(ステップ160)は、最終的に、それぞれの経編機で読み取ることができるように作成されたファイル、好ましくはKMOファイルに基づいて、ジャカード技術によって実行される。続いて、脈管インプラント1の熱成形及び/又は熱硬化(ステップ170)、及び/又はステント構造の適用(ステップ180)を選択的に実行することができる。
【0123】
図2は、本発明による様々な構造要素を含む脈管インプラント1の概略図を示している。この図に例示的に示されている脈管インプラント1は、移植片として形成され、移植片のライナ本体と一体的に形成された構造要素を含む。図示するように、構造要素は、脈管インプラント1の管状ライナ本体2に沿った直径変更10、分岐20、脈管インプラント1の管状ライナ本体2に沿った分枝30、及び2つの凹部40、50であり、1つの凹部は開窓40として形成され、1つの凹部はスカラップ50として形成される。スカラップ50は開口端51を有する。
【0124】
更に図示するように、脈管インプラント1は、その主な延長方向12に沿った長さ(すなわち、全長)11を有することができる。分岐20は、それぞれの分岐の長さ21、22を有することができる。分枝30のサイドライナ本体は、メインライナ本体2に位置する始点から測定した長さ31を有することができる。
図2は更に、分岐ライナ本体が、好ましくは、それぞれが、メインライナ本体に対して角度23(ライナ本体22についてのみ図示)で配置されていることを示している。サイドライナ本体は、好ましくは角度32で配置される。角度23は、例えば0から75度、好ましくは0から45度である。個々の患者の解剖学的構造に応じて、角度23もまた、範囲内で異なる可能性がある。角度32は、好ましくは0から180度、特に2から170度である。スカラップ50は、3から20mm、好ましくは5から15mmの凹部高さ51、及び/又は2から15mm、好ましくは7から12mmの凹部幅53を有する。
【0125】
分岐20の領域では、1つ又は2つの腸骨脈管移植片90が、脈管インプラント1の経編み中に形成され得る。腸骨脈管移植片90は、通常、管状ライナ本体2とは別に体内に挿入されるので、腸骨脈管移植片90が、経編操作が完了した後に残りの管状ライナ本体2及び分岐20から分離されるように、腸骨脈管移植片90は、好ましくは、経編み中に分離糸91を介して分岐20のそれぞれの端部に接続される。これに関連して、1つ又は複数の腸骨脈管移植片90は、好ましくは、特定の患者の解剖学的要件に応じて、例えば、所望の一定の直径、又は1つ以上の直径ジャンプ又は直径変更の進行などの所望の直径の進行で形成される。適切な直径変更は、上記のように熱成形することによって、代替的又は追加的に、より少ない又は追加の糸を使用する、及び/又はパラメータを選択することによって達成することができる。腸骨脈管移植片は、患者固有の解剖学的要件に応じて、少なくとも1つの分枝及び/又は少なくとも1つの凹部を含むことができる。
【0126】
描写された構造要素は、純粋に例示的なものとして理解されるべきである。したがって、脈管インプラント1の設計に応じて、1つ以上の構造要素を形成し、1つ以上の各タイプの構造要素を、上記のように脈管インプラント1のライナ本体に対して異なる位置に形成することもできる。好ましくは、少なくとも1つの構造要素は、それぞれの場合に患者固有の方式で構成される。
【0127】
図3は、
図2の詳細を示し、特に、脈管インプラント1の主延長軸12に対して斜めの分枝30におけるサイドライナ本体の一体構成を概略的に示している。
図3に示されるように、経編工程30における分枝の斜め構成のために、好ましくは分離糸72が使用され、好ましくは、経編工程の完了後に(例えば、機械的切断又はレーザ切断によって)分離される、アンダーラップのないウェールが使用される。分枝30がメインライナ本体2から突出する角度32は、必要に応じて、経編工程の完了時に、選択的な熱成形及び/又は熱硬化ステップ170(
図1を参照)で更に調整することができる。
【0128】
図4は、メイン本体2を備えての、分枝30におけるサイドライナ本体のさらなる一体の実施形態を概略的に示している。この場合、サイドライナ本体は、脈管インプラント1の主延長軸12に実質的に平行、又は平行に経編みされる。経編工程が完了すると、サイドライナ本体の角度位置は、選択的に、熱成形及び/又は熱硬化ステップ170(
図1を参照)によって治療される脈管に適合され得る。主延長軸12に対してサイドライナ本体が実質的に平行、又は平行に経編みされる場合、分離糸は省略できる。ただし、この文脈において、選択的に分離糸を使用することもできる。
【0129】
図3及び4は、それぞれ分枝30の製作を示しているが、対応する方法を等しく使用して、
図2の分岐20を製作することができる。
【0130】
図5は、分岐20を含む脈管インプラント1を示しており、腸骨脈管移植片90が分岐20の端部に提供されている。概略的に示されるように、分岐20は、メインライナ本体2の残りの部分とは反対側に面する端部、すなわち、腸骨脈管移植片に面する端部に直径24を有することができる。この直径24は、製作上の理由から、及び/又は患者への移植を容易にするために、腸骨脈管の直径よりも大きく、及び/又は腸骨脈管移植片90の下流端の所望の直径25よりも大きくなるように選択できるので、腸骨脈管移植片90に沿って少なくとも1つの直径変更92を提供することが有利であり得る。このようにして、腸骨脈管移植片90の直径は、腸骨脈管に対して所望の直径25に縮小することができる。
図5では、腸骨脈管移植片90の直径は、血流方向において減少している。ただし、腸骨脈管移植片90の直径はまた、血流方向において増加することもできる。したがって、メインライナ本体2の直径24はまた、必要に応じて、メインライナ本体2とは反対側を向いている腸骨脈管移植片90の端部の直径25よりも小さくすることができる。対応する構成が、他の本体の位置でも使用できることも当業者には明らかであろう。したがって、1つ又は複数の移植片90は、他の脈管の移植片でもあり得る。
【0131】
図6は、2本針のオーバーラップ60の使用による、負荷に適した編目構成の変更による局所補強部60のない(A)又はある(B)開窓40を概略的に示している。2本針のオーバーラップ60のない(A)又はある(B)糸のコースは、黒色で示されている。(A)と(B)の比較から明らかなように、
図6に例示的に示されている2本針のオーバーラップ60により、引張荷重を1本の糸(A)から円周方向に走る2本の糸(B)へ分割することが可能になる。
【0132】
図7は、
図2のスカラップ50の可能な構成を概略的に示している。この構成では、分離糸72、すなわち、好ましくはアンダーラップのないウェールが、アンダーラップのあるセクション80と残りのメインライナ本体2(アンダーラップのある経編み)との間に提供される。続いて、分離糸72が分離されて、アンダーラップのあるセクションがスカラップ50から除去され、スカラップ50がメインライナ本体2に開口部を形成する。代替的に、アンダーラップのあるセクション80は、より長い分離糸72によって取り替えることができる。この構成では、アンダーラップのあるセクション80は、基本編目構成70と呼ばれることもある。
【0133】
図8は、アンダーラップのあるセクション80と、そのメインライナ本体2(アンダーラップのある経編み)への接続の概略詳細図を示している。図示するように、本発明の文脈において、分離糸72は、特に、アンダーラップのないウェールとして形成することができる。
【0134】
図9は、脈管インプラント1の様々な構造要素を一体的に経編みする場合の更に可能な編目構成シーケンスを例示的に示しており、この図では、メインライナ本体2の主な延長方向12に実質的に垂直に配置された分枝30を例示的に示す(これは単に説明を改善するためのものであり、対応する編目構成シーケンスは、分枝30又は他の構造要素の他の配置に関連して使用することもでき、
図13及び14も参照されたい)。
【0135】
これに関連して、メインライナ本体2は、両方とも基本編目構成70を有する、前部繊維面83及び後部繊維面84(
図9には図示せず)で経編みされている。前部繊維面及び後部繊維面の基本編目構成70は、選択的に一致させることができる。
【0136】
前部繊維面83及び後部繊維面84の編目構成70は、縁綴じ込み71によって少なくとも1つの縁部領域に沿って(
図9では2つの縁部領域に沿って)互いに接続され、管状メインライナ本体2をもたらす。縁綴じ込みは、特に、前部繊維面83及び後部繊維面84が製作方向Wに平行に接続されている場合に使用することができる。分枝30を製作するための糸は、
図3にすでに示したように、メインライナ本体2の製作中に沿って走行するが、
図9の変形では、それらは基本編目構成70としてセクションに形成される(
図9、13及び14に、斜めの線影で概略的に示す)。このようにして、経編工程のより良い工程安定性を達成することができる。これにより、製作方向Wにおいて分枝30の上流にある第1のセクション81と、製作方向Wにおいて分枝30の下流にある第2のセクション82とが生じ、基本編目構成70がこれらのセクションのそれぞれに存在することができる。
【0137】
第1のセクション81及び第2のセクション82は、脈管インプラント1が経編みされた後に除去される。セクション81、82の基本編目構成70は、分枝30に隣接及び/又は連続する区域において分離糸72に移行する。これは、経編み構造がほつれることを防ぐのに役立つ。更に、それによってセクション81、82は、より容易に分離することができる。
【0138】
分枝30自体は、例えば、ベース編目構成70を含むさらなるセクションによって提供され、ここでもまた、前部繊維面及び後部繊維面がこのセクションに提供される。前部繊維面及び後部繊維面はそれぞれ、メインライナ本体2の領域に提供された前部繊維面83及び/又は後部繊維面84の続きとして形成することができる。したがって、分枝30に沿った基本編目構成70は、メインライナ本体2の前部繊維面83のそれ、及び/又は後部繊維面84のそれに対応することができる。それぞれのアンダーラップは、メインライナ本体2から分枝30に延びることができる。
【0139】
図9に更に概略的に示すように、局所的な編目構成の変更73は、分離糸72に隣接及び/又は連続するそれぞれの場合に、分枝30に沿って提供することができる。前部繊維面83及び後部繊維面84は、局所的な編目構成の変更73によって接続されている。このようにして、管状構造が、分枝30の領域において簡単な方式で形成される。
【0140】
図10から12は、
図9のAの詳細を概略的に示しており、したがって、前部繊維面83及び後部繊維面84に沿った、説明された編目構成シーケンスを有する経編布を示している。製作方向Wで見ると、基本編目構成70(分枝30に沿った)を有する第1の区域の後に、局所的な編目構成の変更73が続き、それによって、前部繊維面83と後部繊維面84が接続されて管を製作する。この編目構成の変更73の後に分離糸72が続き、これは、経編布構造がほつれることを防ぎ、経編工程の完了時に分枝30からの(したがって脈管インプラント1からの)余分な材料の分離を容易にする。続いて、前部繊維面83及び後部繊維面84は、経編工程の完了時に分離されるセクション82に沿った基本編目構成70で再び(少なくともセクションで)構成することができる。
【0141】
図10から12の編目構成配置は、
図9のAの詳細区域を示し、したがって、製作方向Wの分枝30の端部(すなわち、製作方向Wの第2の縁部区域)を示している。ただし、当業者には、対応する編目構成の配置、特に逆の順序での織り方の変更が、製作方向Wの分枝30の始点(すなわち、製作方向Wの第1の縁部区域)に提供され得ることが明らかであろう。
【0142】
分離糸72と併せて局所的な編目構成の変更73を使用することは、前部繊維面83及び後部繊維面84が製作方向Wに平行以外の角度で接続される場合に特に有利である。
【0143】
図9から12は、一体的に経編みされた分枝30の編目構成配置を例示的に示しており、分枝30及び/又はそのサイドライナ本体は、約90°の角度でメインライナ本体2から始まっている。この配置では、図に示すように、局所的な編目構成の変更73及び分離糸72への移行は、製作方向Wに対して実質的に垂直であり得る(すなわち、
図9から12の場合及び/又は従来の経編機の場合において水平方向であり得る)。
【0144】
ただし、示される編目構成の変更及び/又は編目構成シーケンスは、それに限定されない。例えば、対応する編目構成の変更及び/又は編目構成シーケンスは、分枝がメインライナ本体2から異なる角度で始まる場合、及び/又は1つ以上の直径変更又は1つ以上の分岐などの他の構造要素の場合にも(ここでも、これらの構造要素がメイン本体に対して斜めに伸びる角度に関係なく)使用することができる。
【0145】
製作方向Wに本質的に垂直な(水平)及び/又は主な延長方向12に本質的に垂直な、局所的な編目構成の変更73の過程、及び/又は分離糸72への移行の過程の代わりに、局所的な編目構成の変更73及び/又は分離糸72への移行は、この場合、好ましくは、製作方向W及び/又は主な延長方向12に対して対応する角度で(すなわち、斜めに)延びる。基本編目構成-(表面を接続するための)局所的な編目構成の変更-分離糸-基本編目構成の一般的なシーケンスは維持できるが、製作方向Wに垂直な軸に沿って見た場合、製作方向Wで連続的にオフセットされる(すなわち、早く又は遅くに製作方向Wで連続的に形成される)。
【0146】
編目構成の変更のそのような斜めの構成は、分枝30について
図13に概略的に示されている。分枝30の下縁領域について例示的に示されるように、製作方向Wにおける編目構成の変更(基本編目構成70-表面を接続するための局所的な編目構成の変更73-分離糸72-基本編目構成70)は、編目構成の変更が斜めに形成されるように、それぞれの場合にわずかな時間的及び/又は空間的遅延を伴って発生する。当業者が認識するように、対応する編目構成シーケンスは、上縁領域で(逆の順序で)行うことができる。必要に応じて、構造要素の上縁及び/又は下縁領域に、この方法で丸みを帯びたコースを提供することもできる。
【0147】
図14は、直径変更10を形成するための、そのような編目構成シーケンスの使用を概略的に示している(図を簡略化するために、脈管インプラント1を半分のみ示す)。当業者には明らかであるように、直径変更10は、主延長軸2に対して軸対称に形成することができるが、必ずしも形成する必要はない。
【0148】
直径変更10を斜めのコースにするために、この場合、主な延長方向12に対して斜めに連続的に変化する編目構成シーケンスも選択されている。
【0149】
図14に、製作方向Wの直径の減少が示されており、これは、製作方向Wの編目構成の変更が、最初に主な延長方向12に対して半径方向外側の位置から開始して、次に連続して内側に延びる理由である。ただし、当業者が認識するように、直径の増加もそれに応じて生成することができ、その場合、製作方向Wにおける編目構成の変更は、最初に主な延長方向12に対して半径方向内側の位置から開始して、連続して外側に延びる。
【符号の説明】
【0150】
1 脈管内インプラント
2 管状メインライナ本体
10 直径変更
11 脈管インプラントの長さ
12 主な延長方向
20 分岐
21 分岐長さ
22 分岐長さ
23 分岐角度
30 分枝
31 分枝長さ
32 分枝角度
40 開窓
50 スカラップ
51 開口端
52 凹部高さ
53 凹部幅
60 2本針のオーバーラップ
70 基本編目構成
71 縁綴じ込み
72 分離糸
73 局所的な編目構成の変更
80 アンダーラップのあるセクション
81 第1のセクション
82 第2のセクション
83 前部繊維面
84 後部繊維面
90 腸骨脈管移植片
91 腸骨脈管移植片用の分離糸
100 脈管内インプラントの製作方法
110 脈管パラメータの取得
120 コンピュータ支援モデルの作成
130 1つ以上の構造要素の選択
140 パラメータの決定
150 構造要素のコンピュータ支援モデルへの統合
160 脈管インプラントの製作
170 熱成形及び/又は熱硬化
180 ステント構造の適用
W 製作方向
【手続補正書】
【提出日】2021-12-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0046
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0046】
例えば、モノフィラメント及び/又はマルチフィラメントのヤーンは、脈管インプラントの製作のための糸として使用することができる。マルチフィラメントのヤーンが使用されるとき、フィラメント数は、少なくとも22f、好ましくは少なくとも36f、特に好ましくは少なくとも100fである。フィラメントの総力価に関して、フィラメントは、例えば、EN ISO規格2060:1995、好ましくは項目4に記載されている種類1に準拠して、又はモノフィラメントの場合、例えばEN規格13392:2001に準拠して、1dtexから80dtex以下、好ましくは60dtex以下、特に好ましくは50dtex以下の太さを有することができる。製作された後、脈管インプラントは、好ましくは製品において光学的に測定され、及び/又は好ましくは厚さ測定ゲージによって測定された際、例えば、0.01mmから2mm、好ましくは0.1mmから0.5mmの材料層の厚さを有することができる。
【国際調査報告】