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特表2022-531129PDE4D阻害剤としての3-ヒドロキシ-2-フェニル-6-(ピラゾール-4-イルメチル)ピリジン誘導体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(54)【発明の名称】PDE4D阻害剤としての3-ヒドロキシ-2-フェニル-6-(ピラゾール-4-イルメチル)ピリジン誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/06 20060101AFI20220629BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220629BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20220629BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220629BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20220629BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20220629BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220629BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALI20220629BHJP
   A61K 51/00 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
C07D401/06 CSP
A61P43/00 111
A61P25/18
A61P25/28
A61P25/16
A61P25/24
A61P25/00
A61K31/4439
A61K51/00 200
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021562996
(86)(22)【出願日】2020-04-23
(85)【翻訳文提出日】2021-10-22
(86)【国際出願番号】 US2020029427
(87)【国際公開番号】W WO2020219615
(87)【国際公開日】2020-10-29
(31)【優先権主張番号】62/837,297
(32)【優先日】2019-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521455176
【氏名又は名称】テトラ ディスカバリー パートナーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100154988
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 真知
(72)【発明者】
【氏名】ガーニー マーク イー
(72)【発明者】
【氏名】モ シェシェン
(72)【発明者】
【氏名】ヌージェント リチャード アレン
(72)【発明者】
【氏名】ロメロ ドナ リー
【テーマコード(参考)】
4C063
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB03
4C063CC22
4C063DD12
4C063EE01
4C085HH03
4C085KA29
4C085KB56
4C085LL13
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC36
4C086GA07
4C086GA08
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA16
4C086MA17
4C086MA21
4C086MA23
4C086MA28
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA43
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA02
4C086ZA12
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZA18
4C086ZC20
(57)【要約】
本明細書において、式(I)のホスホジエステラーゼ4D(PDE4D)の阻害剤が提供され、これを使用する方法を含む。また、異常なPDE活性に関連する状態、特に脆弱X症候群、アルツハイマー病、記憶喪失、認知機能障害、自閉症スペクトラム障害、パーキンソン病、大うつ病、双極性障害、統合失調症、多発性硬化症、外傷性脳損傷、または慢性外傷性脳症に罹患している対象を治療する方法も提供する。式(I)、R1は、H、C1-6アルキル、またはC1-6ハロアルキルであり、R2は、H、C1-3アルキル、またはC1-3ハロアルキルであり、R3およびR4は、各々HまたはDであり、R3およびR4のうちの少なくとも一方は、Dであり、各R5は、独立して、ハロ、CN、OH、NO2、C1-6アルコキシ、C1-6ハロアルコキシ、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、O-C3-6シクロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、またはSO21-3アルキルであり、XおよびYは、各々独立して、CR6またはNであり、各R6は、独立して、H、C1-3アルキル、またはC1-3ハロアルキルであり、nは、0、1、2、3、または4である。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の構造を有する化合物であって、
【化1】
式中、
1が、H、C1-6アルキル、もしくはC1-6ハロアルキルであり、
2が、H、C1-3アルキル、もしくはC1-3ハロアルキルであり、
3およびR4が、各々HもしくはDであり、R3およびR4の少なくとも一方は、Dであり、
各R5が、独立して、ハロ、CN、OH、NO2、C1-6アルコキシ、C1-6ハロアルコキシ、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、O-C3-6シクロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、もしくはSO2-C1-3アルキルであり、
XおよびYが、各々独立して、CR6もしくはNであり、
各R6が、独立して、H、C1-3アルキル、もしくはC1-3ハロアルキルであり、
nが、1、2、3、もしくは4であり、
またはその医薬的に許容される塩である。
【請求項2】
1が、C1-6アルキルであり、前記C1-6アルキルの少なくとも1つの炭素が、11Cである、請求項1の化合物。
【請求項3】
1が、11CH3である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
1が、Hである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
1が、CH3である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
1が、CH2Fである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
1が、CH2 18Fである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
1が、CHF2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
1が、CHF18FまたはCH(18F)2である、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
2が、C1-3アルキルであり、前記C1-3アルキルの少なくとも1つの炭素が11Cである、請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
2が、11CH3である、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
2が、Hである、請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
2が、CH3である、請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
2が、CH2Fである、請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
2が、CH2 18Fである、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
2が、CHF2である、請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
2が、CHF18FまたはCH(18F)2である、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
3およびR4の各々が、Dである、請求項1~17のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項19】
少なくとも1つのR5が、NO2である、請求項1~18のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項20】
少なくとも1つのR5が、ハロである、請求項1~19のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項21】
ハロが、Clである、請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
ハロが、Fである、請求項20に記載の化合物。
【請求項23】
Fが、18Fである、請求項22に記載の化合物。
【請求項24】
少なくとも1つのR5が、CNである、請求項1~23のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項25】
少なくとも1つのR5が、OHである、請求項1~24のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項26】
少なくとも1つのR5が、C1-6アルコキシである、請求項1~25のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項27】
少なくとも1つのR5が、C1-6ハロアルコキシである、請求項1~26のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項28】
少なくとも1つのR5が、C1-6アルキルである、請求項1~27のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項29】
少なくとも1つのR5が、C1-6ハロアルコキシである、請求項1~28のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項30】
少なくとも1つのR5が、O-C3-6シクロアルキルである、請求項1~29のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項31】
少なくとも1つのR5が、C1-6ヒドロキシアルキルである、請求項1~30のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項32】
少なくとも1つのR5が、SO2-C1-3アルキルである、請求項1~31のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項33】
nが、1である、請求項1~32のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項34】
nが、2である、請求項1~32のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項35】
一方のR5が、ハロであり、他方が、NO2である、請求項34に記載の化合物。
【請求項36】
ハロが、Fである、請求項35に記載の化合物。
【請求項37】
Fが、18Fである、請求項36に記載の化合物、
【請求項38】
Xが、CR6である、請求項1~37のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項39】
6が、Hである、請求項38に記載の化合物。
【請求項40】
6が、C1-3アルキルである、請求項38に記載の化合物。
【請求項41】
6が、C1-3ハロアルキルである、請求項38に記載の化合物。
【請求項42】
Xが、Nである、請求項1~41のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項43】
Yが、CR6である、請求項1~42のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項44】
6が、Hである、請求項43に記載の化合物。
【請求項45】
6が、C1-3アルキルである、請求項43に記載の化合物。
【請求項46】
6が、C1-3ハロアルキルである、請求項43に記載の化合物。
【請求項47】
Yが、Nである、請求項1~42のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項48】
以下からなる群から選択される構造を有する、請求項1に記載の化合物。
【化2-1】
【化2-2】
【化2-3】
【化2-4】
【請求項49】
以下からなる群から選択される構造を有する、請求項48に記載の化合物。
【化3-1】
【化3-2】
【請求項50】
以下なる群から選択される構造を有する、請求項48に記載の化合物。
【化4-1】
【化4-2】
【請求項51】
以下の構造を有する、請求項50に記載の化合物。
【化5】
【請求項52】
塩の形態である、請求項1~51のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項53】
請求項1~52のいずれか一項に記載の化合物と、医薬的に許容される賦形剤と、を含む、組成物。
【請求項54】
方法であって、
請求項49に記載の化合物を対象に投与することと、
前記対象を画像診断法に供することと、を含む、方法。
【請求項55】
前記画像診断法が、陽電子放出断層撮影法(PET)、陽電子放出断層撮影法/コンピュータ断層撮影法(PET/CT)、陽電子放出断層撮影法/磁気共鳴画像法(PET/MRI)、および単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)からなる群から選択される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記画像診断法が、陽電子放出断層撮影法(PET)である、請求項54または55に記載の方法。
【請求項57】
前記対象が、前記化合物の投与後、約5分~約2時間の範囲の時点で前記画像診断法に供される、請求項54~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記化合物が、ホスホジエステラーゼ(PDE)アイソザイムを阻害する、請求項54~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記PDEアイソザイムが、PDE4Dである、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記対象が、異常なPDE活性に関連する状態に罹患している、請求項54~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記異常なPDE活性に関連する状態が、脆弱X症候群、アルツハイマー病、記憶喪失、認知機能障害、自閉症スペクトラム障害、パーキンソン病、大うつ病、双極性障害、統合失調症、多発性硬化症、外傷性脳損傷、または慢性外傷性脳症を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
異常なPDE活性に関連する状態に罹患している対象を治療する方法であって、
前記対象に請求項1に記載の化合物の治療有効量を投与することを含み、前記化合物が、11Cまたは18Fを含まないことを条件とする、方法。
【請求項63】
前記化合物が、請求項50または51に記載の化合物である、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記異常なPDE活性に関連する状態が、脆弱X症候群、アルツハイマー病、記憶喪失、認知機能障害、自閉症スペクトラム障害、パーキンソン病、大うつ病、双極性障害、統合失調症、多発性硬化症、外傷性脳傷害、または慢性外傷性脳症を含む、請求項62または63に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の利益に関する陳述
本発明は、米国国立衛生研究所によって授与されたMH107077の下で政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明におけるある特定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
cAMP特異的ホスホジエステラーゼ-4(PDE4)は、セカンドメッセンジャーのcAMP調節に関連し、学習および記憶機能に深く関連する酵素であることが知られている(Science 1993,260:1661-4)。PDE4阻害剤は、in vitroで神経可塑性を促進し、in vivoで様々なモデルの学習と記憶を改善または促進することが示されている(PNAS 1998、95:15020-5;Current Pharmaceutical Design 2005、11:3329-34)。さらに、PDE4酵素レベルは、大うつ病で減少し、病的状態でのcAMPシグナル伝達の減少が想定され得る(Biological Psychiatry 2012,72548-54)。PDE4Dは、PDE4の1つのアイソフォームであり、様々な疾患のホストの病因に関与している。
【0003】
PDE4D阻害剤が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
以下の式(I)の構造を有する化合物、またはその医薬的に許容される塩が本明細書で提供され、
【化1】
式中、R1は、H、C1-6アルキル、またはC1-6ハロアルキルであり、R2は、H、C1-3アルキル、またはC1-3ハロアルキルであり、R3およびR4は、各々HまたはDであり、R3およびR4の少なくとも一方はDであり、各R5は、独立して、ハロ、CN、OH、NO2、C1-6アルコキシ、C1-6ハロアルコキシ、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、O-C3-6シクロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、またはSO21-3アルキルであり、XおよびYは、各々独立して、CR6またはNであり、各R6は、独立してH、C1-3アルキル、またはC1-3ハロアルキルであり、nは、0、1、2、3、または4である。式(I)の構造を有する化合物と、医薬的に許容される賦形剤と、を含む、組成物も本明細書で提供される。
【0005】
本開示は、さらに、式(I)の構造を有する化合物を対象に投与することと、対象を画像診断法に供することと、を含む、方法を提供する。
【0006】
さらに、対象に式(I)の構造を有する化合物の治療有効量を投与することを含み、化合物が、11Cまたは18Fを含まないことを条件とする、異常なPDE活性に関連する状態に罹患している対象を治療する方法が提供される。
【0007】
さらなる態様および利点は、以下の詳細な説明の考察から当業者に明らかであろう。以下の説明は、特定の実施形態を含むが、それらは、本開示が例示であり、本明細書に記載の特定の実施形態に本発明を限定することを意図するものではないことを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において、式(I)の化合物、およびそれを使用して、例えば、PDE4Dを阻害する方法が開示される。本明細書に記載の化合物は、式(I)の構造を有し、
【化2】
式中、置換基は、以下に詳細に記載される。
【0009】
化学的定義
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、n-ヘキシル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、および2-エチルブチルを含むがこれらに限定されない直鎖および分岐飽和炭化水素基を指す。Cnという用語は、アルキル基が「n」個の炭素原子を有することを意味する。例えば、C4アルキルは、4個の炭素原子を有するアルキル基を指す。Cm-nという用語は、アルキル基が「m」から「n」の炭素原子を有することを意味する。例えば、C1-6アルキルとは、全範囲(すなわち、1~6個の炭素原子)、ならびにすべてのサブグループ(例えば、1~5、1~4、2~6、2~5、3~6、3~5、1、2、3、4、5、および6個の炭素原子)を包含する炭素原子数を有するアルキル基を指す。別途指示されない限り、アルキル基は、非置換アルキル基または置換アルキル基であり得る。例えば、アルキル(例えば、メチル)基は、独立して選択されたハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、ニトロ、シアノ、アルキルアミノ、またはアミノ基の1つ以上、典型的には1から3つで置換することができる。
【0010】
アルキル基の特定の置換は、アルキル用語に含めることによって示すことができ、例えば、「ハロアルキル」または「ヒドロキシアルキル」は、それぞれ、少なくとも1つのハロまたは1つのヒドロキシルで置換されたアルキル基を意味する。ハロアルキル基は、過ハロゲン化することができる。アルキル基は、複数の種類の置換で置換することができる。
【0011】
「アルコキシ」という用語は、-ORとして定義され、式中、Rはアルキルである。
【0012】
「シクロアルキル」という用語は、脂肪族環式炭化水素基を指す。Cnという用語は、シクロアルキル基が「n」個の炭素原子を有することを意味する。例えば、C5シクロアルキルとは、環に5個の炭素原子を有するシクロアルキル基を指す。C3-6シクロアルキルとは、全範囲(すなわち、3~6個の炭素原子)、ならびにすべてのサブグループ(例えば、3~5、3~4、4~6、4~5、3、4、5、もしくは6個の炭素原子)を包含する炭素原子数を有するシクロアルキル基を指す。シクロアルキル基の非限定的な例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルが挙げられる。別途指示されない限り、シクロアルキル基は、非置換シクロアルキル基または置換シクロアルキル基であり得る。
【0013】
本明細書に開示される化合物は、本明細書に開示される化合物の1つ以上の原子が、同じ原子番号を有するが、自然界に通常見られる原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する原子によって置き換えられる同位体標識化合物を含み、そのような例としては、2Hおよび3Hなどの水素の同位体、11Cと13Cなどの炭素の同位体、および18Fなどのフッ素の同位体が挙げられる。いくつかの場合では、本明細書に開示される化合物の1つ以上の水素原子は、具体的には2H(「D」または重水素)である。いくつかの場合では、本明細書に開示される化合物の1つ以上の炭素原子は、具体的には11Cである。いくつかの場合では、本明細書に開示される化合物の1つ以上のフッ素原子は、具体的には18Fである。いくつかの場合では、同位体標識化合物は、診断またはイメージングの目的で使用できる。いくつかの場合では、同位体標識化合物は、治療薬として使用することができ、そのような場合、11Cまたは18Fを含まなくてもよい。本明細書に開示される同位体標識化合物は、当業者に周知の技術によって、または以前に使用された非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を使用する添付の実施例およびスキームに記載されるものと類似のプロセスによって調製することができる。
【0014】
本明細書に開示されるある特定の化合物は、光学異性体および立体配座異性体(または配座異性体)を含む立体異性体(すなわち、原子の空間的配置のみが異なる異性体)として存在し得る。本明細書に開示される化合物は、すべての立体異性体を含み、該立体異性体には、純粋な個々の立体異性体調製物および各々の濃縮調製物としての両方と、そのような立体異性体のラセミ混合物ならびに当業者に周知の方法に従って分離し得る個々のジアステレオ異性体および鏡像異性体の両方とが含まれる。さらに、本明細書に開示される化合物は、化合物のすべての互変異性型を含む。
【0015】
本開示の化合物
式(I)の構造を有する化合物が本明細書で提供され、
【化3】
式中、R1は、H、C1-6アルキル、またはC1-6ハロアルキルであり、R2は、H、C1-3アルキル、またはC1-3ハロアルキルであり、R3およびR4は、各々HまたはDであり、R3およびR4の少なくとも一方はDであり、各R5は、独立して、ハロ、CN、OH、NO2、C1-6アルコキシ、C1-6ハロアルコキシ、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、O-C3-6シクロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、またはSO21-3アルキルであり、XおよびYは、各々独立して、CR6またはNであり、各R6は、独立してH、C1-3アルキル、またはC1-3ハロアルキルであり、nは0、1、2、3、または4である。
【0016】
本明細書に開示されるように、R1は、H、C1-6アルキル、またはC1-6ハロアルキルである。したがって、いくつかの実施形態では、R1は、Hである。いくつかの実施形態では、R1は、C1-6アルキルである。例えば、いくつかの場合では、R1は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、n-ヘキシル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、または2-エチルブチルであり得る。いくつかの実施形態では、R1は、メチルである。いくつかの実施形態では、R1は、C1-6アルキルであり、C1-6アルキルの少なくとも一つの炭素が11Cである。例えば、R1は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、n-ヘキシル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、または2-エチルブチルであり得、炭素原子のうちのいずれか1つ以上は、11Cである。いくつかの場合では、R1は、11CH3である。いくつかの実施形態では、R1は、C1-6ハロアルキルである。例えば、いくつかの場合では、R1は、CH2Fである。いくつかの場合では、R1は、CHF2である。いくつかの実施形態では、ハロアルキルは、自然界に通常見られる原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する少なくとも1つの同位体、例えば18Fを含む。例えば、R1は、CH2 18Fである。いくつかの場合では、R1は、CHF18FまたはCH(18F)2である。
【0017】
本明細書に開示されるように、R2は、H、C1-3アルキル、またはC1-3ハロアルキルである。したがって、いくつかの実施形態では、R2は、Hである。いくつかの実施形態では、R2は、C1-3アルキルである。例えば、いくつかの場合では、R2は、メチル、エチル、n-プロピル、またはi-プロピルであり得る。いくつかの場合では、R2は、CH3である。いくつかの実施形態では、R2は、C1-3アルキルであり、C1-3アルキルの少なくとも一つの炭素が11Cである。例えば、R2は、メチル、エチル、n-プロピル、またはi-プロピルであり得、炭素原子のうちのいずれか1つ以上は、11Cである。いくつかの場合では、R2は、11CH3である。いくつかの実施形態では、R2は、C1-3ハロアルキルである。例えば、R2は、CH2Fである。いくつかの場合では、R2は、CHF2である。いくつかの実施形態では、ハロアルキルは、自然界に通常見られる原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する少なくとも1つの同位体、例えば18Fを含む。例えば、R2は、CH2 18Fである。いくつかの場合では、R2は、CH18FまたはCH(18F)2である。
【0018】
本明細書に開示されるように、R3およびR4は、各々HまたはDであり、少なくともR3およびR4のうちの一方は、Dである。いくつかの実施形態では、R3およびR4の各々は、Dである。いくつかの実施形態では、R3およびR4のうちの一方は、Dであり、他方はHであり、例えば、いくつかの場合では、R3が、Hであり、R4が、Dであるか、またはR3が、Dであり、R4が、Hである。驚くべきことに、かつ有利には、R3またはR4の位置で少なくとも1つの重水素原子を含む化合物が、陽電子放出断層撮影(PET)で使用される場合、この位置に水素原子のみが存在する場合よりも、得られる画像が、大幅に改善された信号対雑音比を有することが見出された。理論に拘束されることを意図せずに、メチレンリンカー上に重水素原子(複数可)を配置することにより、化合物は、この位置で代謝できず、水素化されたメチレンリンカーを有する化合物と比較して、改善された信号対雑音比をもたらすと考えられる。
【0019】
本明細書に開示されるように、各R5は、独立して、ハロ、CN、OH、NO2、C1-6アルコキシ、C1-6ハロアルコキシ、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、O-C3-6シクロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、またはSO21-3アルキルである。本明細書に開示される化合物は、0~4の範囲の任意の数のR5基を含むことができる。例えば、化合物は、0、1、2、3、または4つのR5基を含み得る。いくつかの実施形態では、nは、1である。いくつかの実施形態では、nは、2である。いくつかの実施形態では、nは、3である。いくつかの実施形態では、nは、4である。いくつかの場合では、少なくとも1つのR5は、NO2である。いくつかの場合では、少なくとも1つのR5は、ハロである。例えば、いくつかの場合では、少なくとも1つのR5は、F、Cl、I、またはBrである。例えば、いくつかの態様では、少なくとも1つのR5は、Clである。いくつかの態様では、少なくとも1つのR5は、Fである。少なくとも1つのR5が、Fであるいくつかの場合では、Fは、18Fである。いくつかの場合では、少なくとも1つのR5CNである。いくつかの場合では、少なくとも1つのR5は、OHである。いくつかの場合では、少なくとも1つのR5は、C1-6アルコキシである。いくつかの場合では、少なくとも1つのR5は、C1-6ハロアルコキシである。いくつかの場合では、少なくとも1つのR5は、C1-6アルキルである。いくつかの場合では、少なくとも1つのR5は、C1-6ハロルキルである。いくつかの場合では、少なくとも1つのR5は、O-C1-6シクロアルキルである。いくつかの場合では、少なくとも1つのR5は、C1-6ヒドロキシアルキルである。いくつかの場合では、少なくとも1つのR5は、SO21-3アルキルである。nが2であるいくつかの場合では、1つのR5は、ハロであり、他方はNO2である。例えば、1つのR5は、Fであり得、他方は、NO2であり得る。1つのR5が、Fであり、他方が、NO2である場合、Fは、18Fであり得る。
【0020】
本明細書に開示されるように、XおよびYは、各々独立してCR6またはNである。各々のR6は、独立してH、C1-3アルキル、またはC1-3ハロアルキルである。いくつかの実施形態では、Xは、CHである。いくつかの実施形態では、Xは、Nである。いくつかの実施形態では、Xは、CR6であり、R6は、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、またはi-プロピルなどのC1-3アルキルである。いくつかの実施形態では、Xは、CR6であり、R6は、例えば、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フルオロメチル、またはパーフルオロエチルなどのC1-3ハロアルキルである。いくつかの実施形態では、YはCHである。いくつかの実施形態では、YはNである。いくつかの実施形態では、YはCR6であり、R6は、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、またはi-プロピルなどのC1-3アルキルである。いくつかの実施形態では、YはCR6であり、R6は、例えば、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フルオロメチル、またはパーフルオロエチルなどのC1-3ハロアルキルである。いくつかの実施形態では、XおよびYの両方がCR6である。いくつかの場合では、XおよびYの両方が、CHである。いくつかの実施形態では、XおよびYの両方が、Nである。いくつかの実施形態では、XはNであり、Yは、CR6である。いくつかの実施形態では、Xは、CR6であり、Yは、Nである。
【0021】
本開示のいくつかの実施形態では、化合物は、以下の式の構造を有する。
【化4-1】
【化4-2】
【化4-3】
【化4-4】
【0022】
いくつかの実施形態では、化合物は、以下の式の構造を有する。
【化5-1】
【化5-2】
【0023】
11Cまたは18Fなどの同位体を含む本開示に係る化合物は、イメージングのために有用であり得ることが当業者によって理解されるであろう。例えば11Cまたは18Fなどの同位体を含む化合物は、画像診断法に有用であり得、陽電子放出断層撮影(PET)、陽電子放出断層撮影/コンピュータ断層撮影(PET/CT)、陽電子放出断層撮影/磁気共鳴イメージング(PET/MRI)、および単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)を含むが、これらに限定されない。
【0024】
実施形態では、化合物は、以下の構造を有する。
【化6-1】
【化6-2】
【0025】
いくつかの実施形態では、化合物は、以下の式の構造を有する。
【化7】
【0026】
11Cまたは18Fのような同位体標識を含まない、本開示による化合物は、以下により詳細に説明するように、PDE異常障害の治療における使用に好適であり得る。
【0027】
実施形態では、本開示による化合物は、塩の形態であり得る。
【0028】
PDE4D阻害剤の組成、投与経路、および投与
本明細書に開示される化合物を、希釈剤または担体などの医薬的に許容される賦形剤と共に含む組成物も本明細書で提供される。本開示による使用に好適な化合物および医薬組成物には、その意図された目的を達成するために化合物を有効量で投与することができるものが含まれる。以下により詳細に記載される化合物の投与。
【0029】
好適な医薬製剤は、投与経路および所望の投与量に応じて、当業者によって判定され得る。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,1435-712(18th ed.,Mack Publishing Co、Easton,Pennsylvania,1990)を参照されたい。製剤は、投与された薬剤の物理的状態、安定性、インビボ放出の速度およびインビボクリアランスの速度に影響を与え得る。投与経路に応じて、体重、体表面積または臓器の大きさに応じて好適な用量が計算され得る。適切な治療用量を判定するために必要な計算のさらなる改良は、特に本明細書に開示された投与量情報およびアッセイ、ならびに動物またはヒトでの臨床試験で取得可能な薬物動態データに照らして、過度の実験なしに当業者によって日常的に行われる。
【0030】
投与される化合物の量は、治療される対象、対象の年齢、健康、性別、および体重、同時治療の種類(もしあれば)、苦痛の重症度、望まれる効果の性質、治療の方法と頻度、および処方する医師の判断に依存し得る。投与の頻度は、動脈血酸素圧に対する薬力学的効果にも依存し得る。しかし、最も好ましい投与量は、過度の実験なしに、当技術分野の当業者によって理解されおよび判定可能であるように、個々の対象に合わせて調整することができる。これは通常、標準用量の調整を伴う(例えば、患者の体重が少ない場合の用量の減少)。
【0031】
治療薬の投与量は、mg/kgで測定される投与量として投与され得る。開示された治療薬の企図されるmg/kg用量は、約0.001mg/kg~約1000mg/kgを含む。mg/kgでの用量の具体的な範囲には、約0.1mg/kg~約500mg/kg、約0.5mg/kg~約200mg/kg、約1mg/kg~約100mg/kg、約2mg/kg~約50mg/kg、および約5mg/kg~約30mg/kgが含まれる。治療薬は、1日1回、1日2回、1日3回、1日おき、週2回、週1回、2週間に1回、または月に1回投与され得る。個々の必要性は異なるが、化合物の有効量の最適範囲の判定は、当業者の範囲内である。本明細書で特定される状態および障害の治癒的または予防的治療におけるヒトへの投与について、例えば、本開示の化合物の典型的な投与量は、約0.05mg/kg/日~約50mg/kg/日、例えば、少なくとも0.05mg/kg、少なくとも0.08mg/kg、少なくとも0.1mg/kg、少なくとも0.2mg/kg、少なくとも0.3mg/kg、少なくとも0.4mg/kg、または少なくとも0.5mg/kg、好ましくは、50mg/kg以下、40mg/kg以下、30mg/kg以下、20mg/kg以下、または10mg/kg以下であり得、これは、例えば、約2.5mg/日(0.5mg/kg×5kg)~約5000mg/日(50mg/kgx100kg)であり得る。例えば、化合物の投与量は、約0.1mg/kg/日~約50mg/kg/日、約0.05mg/kg/日~約10mg/kg/日、約0.05mg/kg/日~約5mg/kg/日、約0.05mg/kg/日~約3mg/kg/日、約0.07mg/kg/日~約3mg/kg/日、約0.09mg/kg/日~約3mg/kg/日、約0.05mg/kg/日~約0.1mg/kg/日、約0.1mg/kg/日~約1mg/kg/日、約1mg/kg/日~約10mg/kg/日、約1mg/kg/日~約5mg/kg/日、約1mg/kg/日~約3mg/kg/日、約3mg/日~約500mg/日、約5mg/日~約250mg/日、約10mg/日~約100mg/日、約3mg/日~約10mg/日、または約100mg/日~約250mg/日であり得る。そのような用量は、単回投与されてもよく、または複数回投与に分割されてもよい。
【0032】
「医薬的に許容される」または「薬理学的に許容される」という語句は、動物またはヒトに投与されたときに、副作用、アレルギー反応、または他の有害反応を引き起こさない分子実体および組成物を指す。本明細書で使用される「医薬的に許容される担体」には、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌薬および抗真菌薬、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。医薬的に活性な物質のためのそのような賦形剤の使用は、当該技術分野で周知である。任意の従来の媒体または薬剤が、治療組成物と適合しない場合を除いて、治療用組成物におけるその使用が企画される。補助的な活性成分も組成物に組み込むことができる。例示的な実施形態では、製剤は、コーンシロップ固形物、高オレイン酸サフラワー油、ココナッツ油、大豆油、L-ロイシン、リン酸三塩基性カルシウム、L-チロシン、L-プロリン、L-リジンアセテート、DATEM(乳化剤)、L-グルタミン、L-バリン、リン酸二塩基性カリウム、L-イソロイシン、L-アルギニン、L-アラニン、グリシン、L-アスパラギン一水和物、L-セリン、クエン酸カリウム、L-スレオニン、クエン酸ナトリウム、塩化マグネシウム、L-ヒスチジン、L-メチオニン、アスコルビン酸、炭酸カルシウム、L-グルタミン酸、L-シスチン二塩酸塩、L-トリプトファン、L-アスパラギン酸、塩化コリン、タウリン、m-イノシトール、硫酸第一鉄、パルミチン酸アスコルビル、硫酸亜鉛、L-カルニチン、α-トコフェリルアセテート、塩化ナトリウム、ナイアシンアミド、混合トコフェロール、パントテン酸カルシウム、硫酸第二銅、チアミン塩化物塩酸塩、パルミチン酸ビタミンA、硫酸マンガン、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、葉酸、ベータカロチン、ヨウ化カリウム、フィロキノン、ビオチン、セレン酸ナトリウム、塩化クロム、モリブデン酸ナトリウム、ビタミンD3およびシアノコバラミンを含み得る。
【0033】
本明細書で使用される場合、「医薬的に許容される塩」には、例えば、塩基付加塩および酸付加塩が含まれる。
【0034】
医薬的に許容される塩基付加塩は、アルカリおよびアルカリ土類金属または有機アミンなどの金属またはアミンで形成され得る。化合物の医薬的に許容される塩はまた、医薬的に許容されるカチオンを用いて調製され得る。好適な医薬的に許容されるカチオンは、当業者に周知であり、アルカリ、アルカリ土類、アンモニウムおよび四級アンモニウムカチオンが含まれる。炭酸塩または炭酸水素塩も可能である。陽イオンとして使用される金属の例は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、アンモニウム、カルシウム、または第二鉄などである。好適なアミンの例には、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、N、N’-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、N-メチルグルカミン、およびプロカインが含まれる。
【0035】
医薬的に許容される酸付加塩には、無機塩または有機酸塩が含まれる。好適な酸性塩の例には、塩酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、サリチル酸塩、硝酸塩、リン酸塩が含まれる。他の好適な医薬的に許容される塩は、当業者に周知であり、例えば、ギ酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、酒石酸、もしくはマンデル酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸またはリン酸;有機カルボン酸と、スルホン酸、スルホ酸またはホスホ酸、またはN-置換スルファミン酸、例えば酢酸、トリフルオロ酢酸(TFA)、プロピオン酸、グリコール酸、コハク酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、メチルマレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、シュウ酸、グルコン酸、グルカル酸、グルクロン酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、2-フェノキシ安息香酸、2-アセトキシ安息香酸、エンボン酸、ニコチン酸またはイソニコチン酸;および自然界のタンパク質の合成に関与する20のアルファアミノ酸などのアミノ酸と、例えばグルタミン酸またはアスパラギン酸、ならびにフェニル酢酸と、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、エタン1,2-ジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-メチルベンゼンスルホン酸、ナフタレン2-スルホン酸、ナフタレン1,5-ジスルホン酸、2-もしくは3-ホスホグリセリン酸、グルコース6-リン酸、N-シクロヘキシルスルファミン酸(シクラメートの形成を伴う)、またはアスコルビン酸などの他の酸性有機化合物との塩が挙げられる。
【0036】
本明細書に開示される化合物を含有する医薬組成物は、例えば、混合プロセス、溶解プロセス、造粒プロセス、糖衣錠製造プロセス、微粒子化プロセス、乳化プロセス、カプセル化プロセス、封入プロセス、または凍結乾燥プロセスによって、任意の好適な方法で製造され得る。適切な製剤は、選択される投与経路に依存する。
【0037】
経口投与の場合、本明細書に開示される化合物を、当技術分野で周知の担体などの医薬的に許容される賦形剤と組み合わせることにより、好適な組成物を容易に製剤化することができる。治療される患者による経口摂取のために、そのような賦形剤および担体により、本化合物を錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤などとして製剤化することが可能となる。経口使用のための医薬品は、本明細書に開示される化合物に固体賦形剤を添加し、任意選択的に、得られた混合物を粉砕し、所望する場合には錠剤または糖衣錠コアを得るために、好適な補助剤を添加した後に顆粒混合物を加工する、ことによって得ることができる。好適な賦形剤には、例えば、充填剤およびセルロース調製物が含まれる。所望される場合、崩壊剤を添加することができる。医薬的に許容される成分は、様々な種類の製剤でよく知られており、様々な製剤種類用の例えば、結合剤(例えば、天然または合成ポリマー)、潤滑剤、界面活性剤、甘味料および香味料、コーティング材、保存剤、染料、増粘剤、アジュバント、抗菌剤、抗酸化剤および担体であり得る。
【0038】
本明細書に開示される治療有効量の化合物が、経口投与される場合、組成物は、典型的には、固形製剤(例えば、錠剤、カプセル剤、ピル剤、粉末剤、もしくはトローチ剤)または液体製剤(例えば、水性懸濁製剤、溶液製剤、エリキシル剤、もしくはシロップ剤)の形態である。
【0039】
錠剤形態で投与する場合、組成物は、さらにゼラチンまたはアジュバントなどの機能性固体および/または固体担体を含有することができる。錠剤、カプセル剤、および粉末剤は、約1~約95%の化合物、好ましくは約15~約90%の化合物を含有することができる。
【0040】
液体形態または懸濁形態で投与する場合、水、石油、または動物油もしくは植物油などの機能性液体および/または液体担体を添加することができる。組成物の液体形態は、生理食塩水、糖アルコール液、デキストロースもしくは他の糖類溶液、またはグリコールをさらに含有することができる。液体または懸濁液の形態で投与する場合、組成物は、約0.5~約90重量%の本明細書に開示される化合物、好ましくは約1~約50%の本明細書に開示される化合物を含有することができる。企図される一実施形態では、液体担体は、非水性または実質的に非水性である。液体形態での投与の場合、組成物は、投与直前に溶解または懸濁するための迅速溶解性固形製剤として供給され得る。
【0041】
治療有効量の本明細書に開示の化合物が、静脈内、皮膚または皮下注入により投与される場合、組成物は、発熱物質を含まない非経口的に許容される水溶液の形態である。pH、等張性、安定性などを考慮して、そのような非経口的に許容される溶液を調製することは、当該技術分野の技術範囲内である。静脈内、皮膚、または皮下注射のための好ましい組成物は、典型的には、本開示の化合物に加えて、等張性ビヒクルを含有する。そのような組成物は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と好適に混合された水中の遊離塩基または薬理学的に許容される塩の溶液として投与用に調製することができる。分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物中で、ならびに油中で調製できる。通常の保存状態および使用下においては、これらの製剤は、微生物の増殖を防止するために任意選択的に保存剤を含有し得る。
【0042】
注射可能な組成物は、無菌の注射可能な溶液、懸濁液、または分散液の即時調製のための無菌の水溶液、懸濁液、または分散液および無菌の粉末を含むことができる。すべての場合において、この形態は、滅菌でなければならず、容易なシリンジ注射可能性(syringability)が存在する程度に流動性でなければならない。製造および保管の条件下で安定していなければならず、任意選択的に保存剤を含めることによって、細菌および真菌などの微生物の汚染作用を阻止する必要がある。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、それらの好適な混合物、および植物油を含有する、溶媒または分散媒体であり得る。企図される一実施形態では、担体は非水性または実質的に非水性である。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用によって、分散剤の場合には必要な化合物の粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含むことが望ましい。注射用組成物の長時間の吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの組成物における使用によってもたらされることができる。
【0043】
滅菌注射液は、必要量の本明細書に記載の化合物を、必要に応じて上記に列挙した他の成分のいくつかと共に適切な溶媒に組み込み、続いて濾過滅菌することによって調製される。一般的に、分散液は、様々な滅菌した活性成分を、基礎的な分散媒および上に列挙したものから必要とされる他の成分を含有する滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。滅菌注射液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、活性成分プラス予め濾過滅菌されたその溶液からの任意のさらなる所望の成分との粉末を生成する真空乾燥および凍結乾燥技術である。
【0044】
消化管内の体液と接触している活性化合物の制御放出を達成し、血漿中の活性化合物の実質的に一定かつ有効なレベルを提供するために、持続放出または徐放性製剤も調製することができる。例えば、放出は、溶解、拡散、およびイオン交換のうちの1つ以上によって制御することができる。さらに、持続放出アプローチは、消化管内の飽和性経路または制限経路を介して吸収を増強し得る。例えば、化合物は、この目的のために、生物学的分解性ポリマー、水溶性ポリマー、または両方の混合物、および任意選択的に好適な界面活性剤のポリマーマトリックスに埋め込まれ得る。埋め込みとは、この文脈では、ポリマーのマトリックスに微粒子を組み込むことを意味する。徐放性製剤は、既知の分散またはエマルジョンコーティング技術を介した分散微粒子または乳化微小液滴のカプセル化によっても得られる。
【0045】
吸入による投与の場合、本開示の化合物は、好適な噴射剤を使用して、加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー提示の形態で好都合に送達される。加圧エアロゾルの場合、投与量の単位は、計量された量を供給するためのバルブを提供することによって判定することができる。吸入器または注入器で使用するための、例えばゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、化合物とラクトースまたはデンプンなどの好適な粉末ベースとの粉末混合物を含有するように製剤化することができる。
【0046】
本明細書に開示される化合物は、注射によって、(例えば、ボーラス注射または持続注入による)非経口投与用に製剤化することができる。注射用の製剤は、(例えば、アンプルまたは複数回用量用容器中において)防腐剤が添加された単位剤形で提供することができる。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁剤、液剤(solutions)、またはエマルジョン剤などの形態を採ることができ、懸濁化剤、安定剤、および/または分散剤などの製剤化剤(formulatory agent)を含有することができる。
【0047】
非経口投与用の製剤には、水溶性形態の化合物の水溶液が含まれる。さらに、化合物の懸濁剤は、適切な油性注入用懸濁液剤として調製することができる。好適な親油性溶媒またはビヒクルには、脂肪油または合成脂肪酸エステルが含まれる。水性注入用懸濁剤は、懸濁剤の粘度を高める物質を含有することができる。任意選択的に、懸濁剤はまた、好適な安定剤、または化合物の溶解度を高めて高濃度溶液の調製を可能にする薬剤を含有することができる。代替的に、本発明の組成物は、使用前に、好適なビヒクル、(例えば、発熱物質を含まない滅菌水)で構成するための粉末形態であり得る。
【0048】
本明細書に開示される化合物は、(例えば、従来の坐剤基剤を含有する)坐剤または貯留浣腸などの直腸用組成物に製剤化することもできる。上記の製剤に加えて、化合物は、またデポー製剤として製剤化することができる。そのような長時間作用型製剤は、移植(例えば、皮下もしくは筋肉内)によってまたは筋肉内注入により投与することができる。したがって、例えば、化合物は、好適なポリマー材料もしくは疎水性材料(例えば、許容される油中のエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂を用いて、または難溶性の誘導体として、例えば、難溶性の塩として製剤化することができる。
【0049】
特に、本明細書に開示される化合物は、デンプン、ラクトースなどの賦形剤を含有する錠剤の形態で、またはカプセル剤もしくは胚珠剤で、単独でもしくは賦形剤と混合して、あるいは香料もしくは着色剤を含有するエリキシル剤もしくは懸濁剤の形態で、経口で、頬側に、または舌下に投与することができる。そのような液体製剤は、懸濁化剤などの医薬的に許容される添加剤を用いて調製することができる。化合物は、非経口的に、例えば静脈内、筋肉内、皮下、または冠動脈内に注射することもできる。非経口投与の場合、化合物は、溶液を血液と等張性にするために、他の物質、例えば、塩、またはマンニトールもしくはグルコースなどの糖アルコールを含有することができる滅菌水溶液の形態で最良に使用される。
【0050】
獣医学的使用の場合、本明細書に開示される化合物は、通常の獣医学的慣行に従って、好適に許容される製剤として投与される。獣医師は、特定の動物に最も適切な投与レジメンおよび投与経路を容易に判定することができる。
【0051】
いくつかの場合では、本明細書に開示される化合物を単独で、またはそのような疾患の治療に伝統的に使用される別の薬剤または介入と組み合わせて使用して、PDE4D関連障害の治療に必要なすべての構成要素をキットにパッケージ化することができる。具体的には、本開示は、本明細書に開示される化合物、ならびに該薬剤の送達可能な形態を調製するための緩衝液および他の成分、ならびに/またはそのような薬剤、および/もしくは本明細書に開示される化合物との併用療法で使用される任意の薬剤、ならび/または薬剤と一緒にパッケージ化された疾患の治療のための説明書を含む、パッケージセットの薬剤を含む、疾患の治療の介入に使用されるキットを提供する。説明書は、印刷された紙、またはコンピュータで読み取り可能な磁気または光学媒体などの任意の有形媒体、またはインターネット経由でアクセス可能なワールドワイドウェブページなどのリモートコンピュータデータソースを参照するための説明書に固定することができる。
【0052】
PDE4D阻害剤の使用方法
本開示は、本明細書に記載の化合物を使用する方法をさらに提供する。特に、本開示は、本明細書に記載の化合物を対象に投与することと、対象を画像診断法に供することと、を含む方法を提供する。一般に、開示される方法は、対象を画像化するのに有効な量で、PDE4Dを本明細書に開示される化合物または組成物と接触させることを含む。いくつかの実施形態では、接触は、インビトロで行う。他の態様では、接触は、インビボである。様々な実施形態では、接触は、化合物または組成物を、必要とする対象に投与することを含む。実施形態では、対象は、哺乳動物である。実施形態では、哺乳動物対象は、ヒトである。
【0053】
実施形態では、投与される化合物は、11Cまたは18Fなどの同位体標識を含有する。例えば、実施形態では、投与される化合物は、以下の構造を有し得る。
【化8-1】
【化8-2】
【0054】
化合物の投与の方法は、特に限定されない。例えば、化合物は、上記のような組成物において調製され得、静脈内または経口的に投与され得る。投与の方法およびその用量は、これらの化合物を投与するように訓練された医師、看護師、または放射線科医の権限の範囲内である。
【0055】
実施形態では、画像診断法は、陽電子放出断層撮影(PET)、陽電子放出断層撮影/コンピュータ断層撮影(PET/CT)、陽電子放出断層撮影/磁気共鳴画像(PET/MRI)、平面ガンマカメライメージング、および/または単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)から選択され得る。いくつかの場合では、画像診断法は、PETである。
【0056】
実施形態では、対象は、化合物の後、約5分~2時間の範囲の時点で画像診断法に供される。対象が画像診断法に供される時点は、化合物で使用されるハロゲンの同位体に依存する。例えば、18Fの短い半減期(t1/2=約110分)のために、化合物が放射性フッ素化されると、対象は、化合物の投与後、約5分~約2時間、約15分~約1.75時間、約30分~約1.5時間、約45分~約1.25時間、または約50分~約1時間の範囲の時点で、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55分または1、1.10、1.25、1.40、1.50、1.60、1.75、1.80、1.90、または2の時点で画像診断法に供され得る。11Cの短い半減期(T1/2=約20分)のために、化合物が11Cを含む場合、対象は、化合物の投与後、約1分~約30分間、約2分~約25分、約5分~約20分、または約10分~約15分の範囲の時点で、例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30分画像診断法に供され得る。
【0057】
実施形態では、化合物は、ホスホジエステラーゼ(PDE)アイソザイムを阻害する。実施形態では、PDEアイソザイムは、PDE4Dである。本明細書に記載の方法は、様々な状態に罹患している対象の画像化に使用することができる。例えば、実施形態では、対象は、異常なPDE活性に関連する状態に罹患している。例示的な状態としては、脆弱X症候群、アルツハイマー病、記憶喪失、認知機能障害、自閉症スペクトラム障害、パーキンソン病、大うつ病、双極性障害、統合失調症、多発性硬化症、外傷性脳損傷、または慢性外傷性脳症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
本開示はさらに、異常なPDE活性に関連する状態に罹患している対象を治療する方法を提供する。実施形態では、本明細書に記載されるように、対象への化合物の治療有効量を投与することを含む治療する方法であり、化合物が、11Cまたは18Fを含まないことを条件とする。
【0059】
一般に、開示される方法は、PDE4Dを、PDE4Dを阻害するのに有効な量で本明細書に開示される化合物または組成物と接触させることを含む方法によってPDE4Dを阻害することを含む。いくつかの実施形態では、接触は、インビトロで行う。他の態様では、接触は、インビボである。様々な実施形態では、接触は、化合物または組成物を、必要とする対象に投与することを含む。実施形態では、対象は、哺乳動物である。実施形態では、哺乳動物対象はヒトである。
【0060】
実施形態では、化合物は、ホスホジエステラーゼ(PDE)アイソザイムを阻害する。実施形態では、PDEアイソザイムは、PDE4Dである。本明細書に記載の方法は、PDE関連状態に罹患している対象を治療する際に使用することができる。例えば、実施形態では、対象は、異常なPDE活性に関連する状態に罹患している。例示的な状態としては、脆弱X症候群、アルツハイマー病、記憶喪失、認知機能障害、自閉症スペクトラム障害、パーキンソン病、大うつ病、双極性障害、統合失調症、多発性硬化症、外傷性脳損傷、または慢性外傷性脳症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
特定の例において、本明細書に記載の化合物の少なくとも1つを別の治療薬と組み合わせて投与することが適切であり得る。ほんの一例として、本明細書の化合物の1つを投与されたときに患者が経験する副作用の1つが、高血圧である場合、最初の治療薬と組み合わせて降圧薬を投与することが適切であり得る。または、ほんの一例として、本明細書に記載の化合物の1つの治療効果は、アジュバントの投与によって増強され得る(すなわち、アジュバントは、それ自体では最小限の治療効果しか持たないが、別の治療薬と組み合わせて、全体として患者への治療効果が高まる)。または、ほんの一例として、患者が経験する利益は、本明細書に記載の化合物の1つを、治療効果も有する別の治療薬(治療レジメンも含む)と共に投与することによって増加させることができる。ほんの一例として、本明細書に記載の化合物の1つを投与することを含む糖尿病の治療において、糖尿病の別の治療薬も患者に提供することによって、治療効果の増加がもたらされ得る。いずれにせよ、治療される疾患、障害または状態に関係なく、患者が経験する全体的な利益は、単純に2つの治療薬の相加的なものであり得るか、または患者は相乗的利益を経験し得る。
【0062】
可能な併用療法の特定の非限定的な例には、当業者に明らかである他の療法の中で、抗うつ剤、ヌートロピック、抗アセチルコリンエステラーゼ、N-メチルD-アスパラギン酸(NMDA)受容体アンタゴニスト、アミロイドベータ治療、およびタウ治療、神経栄養成長因子、神経変性疾患の治療のための細胞ベースの療法および他の再生医学療法と、本開示の化合物の使用が含まれる。
【0063】
抗うつ薬には、例えば、シタロプラム、ダポキセチン、エスシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、およびセルトラリンなどの選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI);ベンラファキシン、デスベンラファキシン、ミナルシプラン、レボミナルシプラン、デュロキセチン、シブトラミン、ビシファジンなどのセロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI);ミアンセリン、ミルタザピン、エスミルタザピン、セチプチリンなどのノルアドレナリン作動性および特定のセロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA);アトモキセチン、マジンドール、レボキセチン、エスレボキセチン、ビロキサジンなどのノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NRI)、およびノルエピネフリンの再取り込みを防止または軽減する他の特異的および非特異的薬剤(SNRI、NDRIなど);ブプロピオンなどのノルエピネフリン-ドーパミン再取り込み阻害薬(NDRI);チアネプチンおよびアミンプチンなどの選択的セロトニン再取り込み促進剤;アゴメラチンなどのノルエピネフリン-ドーパミン阻害剤(NDDI);アミトリプチリン、クロミプラミン、ドキセピン、イミプラミン、トリミプラミン、デシプラミン、ノルトリプチリン、およびプロトリプチリンなどの第三級および第二級アミンの種類を含む三環系抗うつ薬;イソカルボキサジド、モクロベミド、フェネルジン、セレギリン、トラニルシルポミンなどのモノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI)が挙げられる。
【0064】
認知増強剤としても知られている向知性薬には、覚醒剤、ドーパミン作動薬、コリン作動薬、セロトニン作動薬、および上記の多くの抗うつ薬、ならびに特定の天然物(例えば、カフェイン、トリプトファン、5-HTP、ニコチン)が含まれ得る。向知性薬には、ピラセタム、プラミラセタム、オキシラセタム、アニラセタムなどのラセタム;アンフェタミン(Adderall,Dexedrine)、リスデキサンフェタミン、メタンフェタミンなどのアンフェタミン類似体;モダフィニルなどの覚醒促進剤;メチルフェニデート、いくつかの場合ではモダフィニルなどのドーパミン再取り込み阻害薬;タクリン、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミンなどのアルツハイマー病の治療に使用されるアセチルコリンエステラーゼ阻害剤;メマンチンなどのNMDA受容体アンタゴニストLuAE58054などの選択的5-HT6受容体アンタゴニスト;およびEVP-6124などのニコチン性α-7受容体アゴニストも含まれ得る。
【0065】
実施形態では、本開示の化合物は、Aprepitant(Emend(登録商標))、Dolasetron(Anzemet(登録商標))、Granisetron(Kytril(登録商標))、Ondansetron(Zofran(登録商標))、Palonosetron(Aloxi(登録商標))、またはProclorperazine(Compazine(登録商標))などの悪心を軽減する薬物と同時投与することができる。
【0066】
アミロイドベータ(a-ベータまたはαβ)療法およびタウ療法は、それぞれアルツハイマー病および進行性核上麻痺などの神経変性疾患に関連するa-ベータおよびタウタンパク質の病的集積を標的とする。A-ベータβ治療には、βセクレターゼ阻害剤、γセクレターゼ阻害剤Aβ42-低下剤(例えば、タレンフルビル)、抗凝集剤(例えば、アポモルフィン)、抗体および他の免疫療法が含まれる。タウ療法には、タウリン酸化阻害剤、タウ線維化阻害剤、およびタウ分解促進剤が含まれる。
【0067】
いずれの場合でも、複数の治療薬(その少なくとも1つは本明細書に開示される化合物である)は、任意の順序で、または同時にさえ投与され得る。同時に、複数の治療薬は、単一の統一形態で、または複数の形態で(ほんの一例として、単一の錠剤または2つの別個の錠剤のとしてのいずれかで)提供され得る。治療薬の1つは、複数回投与で与えられてもよく、または両方が複数回投与として与えられてもよい。同時でない場合、複数回の投与間のタイミングは、数分~4週間の範囲の任意の期間であり得る。
【0068】
したがって、実施形態では、本開示は、治療を必要とするヒトまたは動物対象におけるPDE4媒介性障害を治療するための方法を提供し、該方法は、該対象に、対象における該障害を低減または予防するのに有効な量の本開示の化合物を当技術分野で知られている該障害の治療のための少なくとも1つのさらなる薬剤と組み合わせて投与することを含む。本開示はまた、PDE4媒介性障害の治療のための1つ以上のさらなる薬剤と組み合わせた本開示の少なくとも1つの化合物を含む治療用組成物を提供する。
【0069】
本開示の化合物はまた、神経系の特定の疾患および障害の治療に有用であり得る。PDE4阻害が有用であり得る中枢神経系障害には、アルツハイマー病を含む皮質性認知症、AIDS関連認知症(HIV認知症)、および軽度認知障害(MCI)が含まれる。PDE4阻害が有用であり得る神経変性障害には、低酸素症、低血糖症、てんかんなどの障害における神経変性または神経壊死、ならびに中枢神経系(CNS)外傷(脊髄および頭部損傷など)の場合、高圧酸素痙攣および毒性、認知症、例えば初老期認知症、およびHIV関連神経変性障害(HAND)、悪液質、シデナム舞踏病、ハンチントン病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、コルサコフ症候群、および脳血管障害に関連する障害が含まれる。PDE4阻害が有用であることが証明され得るさらなる障害には、例えば、IgA神経障害、膜性神経障害、特発性神経障害、薬物誘発性末梢神経障害、糖尿病性神経障害、HIV関連神経障害、および慢性炎症性脱髄性多発神経炎、横断性脊髄炎、Gullain-Barre病、脳炎、神経系のがんを含む、中枢および末梢神経系の神経障害が含まれる。本明細書に開示される化合物はまた、不安、鬱病、大うつ病性障害(MDD)、双極性障害、および心的外傷後ストレス障害を含む精神障害の治療に使用され得る。本明細書に開示される化合物はまた、脳卒中、脳虚血を含む虚血(例えば、心停止および虚血性心疾患に続発する局所虚血、脳血栓症と全虚血の両方)および虚血/再灌流、音響外傷、爆風ノイズ(例えば、軍人が経験する)を含む、内耳への急性傷害、がん治療のための耳毒性化学療法剤(シスプラチンなど)への曝露およびアミノグリコシド系抗生物質による治療を含む耳毒性および聴力損失、ならびに他の神経系外傷に起因する神経系損傷の治療に使用され得る。
【0070】
本明細書に開示される化合物はまた、外傷性脳損傷(TBI)、脊髄損傷(SCI)、またはそれらの症状の治療に使用され得る。特定の実施形態では、本明細書に開示される選択的PDE4D阻害剤は、1つ以上の症状の検出可能な改善、またはSCIの1つ以上の症状の進行の減少を引き起こすのに十分な量で、SCIを治療するために使用される。さらに、選択的PDE4D阻害剤は、細胞の脊髄への移植と組み合わせて投与され得る。企図される細胞には、幹細胞およびグリア(例えば、シュワン)細胞が含まれる。
【0071】
さらに、本開示の化合物は、長期にわたり、アヘン鎮痛薬を必要とする患者のアヘン耐性、およびベンゾジアゼピンを服用している患者のベンゾジアゼピン耐性、ならびに他の中毒性の行動、例えば、ニコチン中毒、アルコール依存症、および摂食障害の治療または予防に使用することができる。さらに、本開示の化合物および方法は、薬物離脱症状の治療または予防、例えば、アヘン剤、アルコール、またはタバコ依存症からの離脱症状の治療または予防に有用であり得る。
【0072】
本明細書に開示される化合物はまた、急性および慢性の疼痛ならびに炎症の治療に使用することができる。本開示の化合物は、神経障害、神経障害性疼痛、または反射性交感神経性ジストロフィー/カウザルギー(神経損傷)、末梢神経障害(糖尿病性神経障害を含む)、難治性がん性疼痛、複合性局所疼痛症候群、および絞扼性神経障害(手根管症候群)などの炎症性疼痛を有する患者を治療するのに有用であり得る。これらの化合物は、急性帯状疱疹(帯状疱疹)、帯状疱疹後神経痛(PHN)、および眼痛などの関連する疼痛症候群に関連する疼痛の治療にも有用であり得る。これらの化合物は、外科的鎮痛などの痛みの治療における鎮痛剤として、または発熱の治療のための解熱剤としてさらに有用であり得る。疼痛の徴候としては、心臓手術後を含む様々な外科的処置の術後の痛み、歯の痛み/歯の摘出、がんに起因する痛み、筋肉の痛み、乳房痛、皮膚の損傷に起因する痛み、腰痛、片頭痛などを含む様々な病因の頭痛が挙げられるが、これらに限定されない。これらの化合物は、触覚異痛症および痛覚過敏などの疼痛関連障害の治療にも有用であり得る。疼痛は、体細胞性(侵害受容性または神経障害性のいずれか)、急性および/または慢性であり得る。本開示のPDE4阻害剤はまた、NSAID、モルヒネもしくはフェンタニルオピエートおよび/または他のオピオイド鎮痛薬が伝統的に投与される状態において有用であり得る。
【0073】
さらに、本明細書に開示される化合物は、インスリン抵抗性、および典型的には誇張された炎症性シグナル伝達に関連するアテローム性動脈硬化症などの他の代謝障害の治療に使用することができる。
【0074】
本明細書に開示される化合物はまた、呼吸器疾患または状態の治療に使用することができ、呼吸器疾患または状態を予防および治療するための医学で使用される治療方法が含まれ、呼吸器疾患または状態には、アレルゲン誘発性喘息、運動誘発性喘息、汚染誘発性喘息、寒冷誘発喘息、およびウイルス誘発喘息を含む喘息状態;気道過敏性および小気道疾患などの喘息関連疾患;正常な気流を伴う慢性気管支炎、気道閉塞を伴う慢性気管支炎(慢性閉塞性気管支炎)、肺気腫、喘息性気管支炎、および水疱性疾患を含む慢性閉塞性肺疾患;細気管支炎、気管支拡張症、嚢胞性線維症、ハト愛好家病、農夫肺、急性呼吸窮迫症候群、肺炎、線維性肺炎、吸引または吸入傷害、肺の脂肪塞栓症、肺のアシドーシス炎症、急性肺水腫、急性山岳病、急性肺高血圧症、新生児の持続性肺高血圧症、周産期吸引症候群、肺硝子膜症、急性肺血栓塞栓症、ヘパリン-プロタミン反応、敗血症、喘息重積状態、低酸素症、呼吸困難、高炭酸血症、過膨張、低酸素血症、および咳を含む炎症を伴う他の肺疾患が挙げられる。さらに、本明細書に開示される化合物は、遅延型過敏反応、アレルギー性接触皮膚炎、アレルギー性鼻炎、および慢性副鼻腔炎などのアレルギー性障害の治療における使用を見出すであろう。
【0075】
本明細書に開示される化合物はまた、炎症および関連する障害の治療に使用され得る。本明細書に開示される化合物は、有害な副作用が著しく少ないという追加の利益を有する抗炎症剤として有用であり得る。これらの化合物は、関節リウマチ、脊椎関節症、痛風性関節炎、骨関節炎、若年性関節炎、急性関節リウマチ、腸障害性関節炎、神経障害性関節炎、乾癬性関節炎、反応性関節炎(ライター症候群)および化膿性関節炎を含むがこれらに限定されない関節炎、ならびに全身性エリテマトー、溶血性症候群、自己免疫性肝炎、自己免疫性神経障害、硝子体炎(自己免疫性甲状腺炎)、橋本甲状腺炎、貧血、多発性筋炎を含む筋炎、大脱毛症、グッドパスチャー症候群、下垂体炎、および肺線維症を含む自己免疫性疾患の治療に有用であり得る。
【0076】
本明細書に開示される化合物はまた、骨粗鬆症および他の関連する骨障害の治療に使用され得る。
【0077】
本明細書に開示される化合物はまた、逆流性食道炎、下痢、炎症性腸疾患、クローン病、胃炎、過敏性腸症候群、グレーブス病(甲状腺機能亢進症)、壊死性腸炎、および潰瘍性大腸炎などの胃腸状態の治療に使用され得る。これらの化合物は、ウイルス感染症および嚢胞性線維症に関連するものなどの肺の炎症の治療にも使用することができる。
【0078】
さらに、本開示の化合物はまた、単独で、または従来の免疫調節剤と組み合わせて、臓器移植患者において有用であり得る。前述の患者で治療される状態の例としては、移植片対宿主反応(すなわち、移植片対宿主病)、同種移植片拒絶(例えば、急性同種移植片拒絶、および慢性同種移植片拒絶)、移植再灌流傷害、および早期移植拒絶(例えば、急性同種移植片拒絶反応)が挙げられる。
【0079】
さらに、本開示の化合物は、そう痒症および白斑の治療に有用である可能性がある。
【0080】
本明細書に開示される化合物はまた、血管疾患、片頭痛、結節性動脈炎、甲状腺炎、再生不良性貧血、ホジキン病、強皮症、リウマチ熱、I型糖尿病、重力筋無力症を含む神経筋接合部疾患、多発性硬化症を含む白質疾患、サルコイドーシス、腎炎、腎症症候群、ランゲルハンス細胞組織球症、糸球体腎炎、再灌流傷害、膵炎、間質性膀胱炎、ベーチェット症候群、多発性筋炎、歯肉炎、歯周炎、過敏症、損傷後に発症する腫脹、心筋虚血、心血管虚血および心停止に続発する虚血を含む虚血、肝硬変、敗血症性ショック、内毒素性ショック、グラム陰性敗血症、毒素性ショック症候群、脳卒中、虚血再灌流傷害、多臓器機能不全、冠状動脈バイパス手術後の再狭窄を含む再狭窄などの疾患における組織損傷の治療に使用され得る。本明細書に開示される化合物は、多発性硬化症の再発寛解型、進行性多発性硬化症、および多発性硬化症における再ミエリン化などの様々な段階および/または種類の多発性硬化症の治療に使用することができる。
【0081】
さらに、本明細書に開示される化合物はまた、多種多様な薬剤によって誘発される敗血症性および/または毒性出血性ショックに関連する全身性低血圧を含む全身性障害の改善のためのPDE4活性を阻害するのに、TNF、IL-1、IL-2などのサイトカインによる治療法として、および移植治療における短期間の免疫抑制のアジュバントとして、有用であり得る。
【0082】
本明細書に開示される化合物はまた、結腸直腸がんなどのがん、ならびに乳がん、肺がん、前立腺がん、膀胱がん、子宮頸がんおよび皮膚がんの治療に使用することができる。本開示の化合物は、脳がん、骨がん、白血病、リンパ腫、基底細胞がんなどの上皮細胞由来新生物(上皮がん)、腺がん、口唇がん、口腔がん、食道がん、小腸がん、胃がん、結腸がん、肝臓がん、膀胱がん、膵臓がんなどの消化器がん、卵巣がん、子宮頸がん、肺がん、乳がん、ならびに扁平上皮細胞および基底細胞などの皮膚がん、前立腺がん、腎細胞がん、ならびに全身の上皮細胞に影響を与える他の既知のがんを含むが、これらに限定されない、新生物の治療および予防に使用することができる。新生物は、消化器がん、肝臓がん、膀胱がん、膵臓がん、卵巣がん、前立腺がん、子宮頸がん、肺がん、乳がん、ならびに扁平上皮がんおよび基底細胞がんなどの皮膚がんから選択され得る。本発明の化合物および方法はまた、放射線療法で生じる線維症を治療するために使用され得る。本発明の化合物および方法は、家族性大腸腺腫症(FAP)を有する対象を含む、大腸腺腫症を有する対象を治療するために使用され得る。さらに、本発明の化合物および方法は、FAPのリスクのある患者においてポリープが形成されるのを防ぐために使用され得る。
【0083】
本明細書に開示される化合物はまた、耳管のかゆみを含む、耳の疾患および耳のアレルギー性障害の治療に使用することができる。
【0084】
本明細書に開示される化合物はまた、アレルギー性結膜炎を含む眼アレルギー性障害、春季結膜炎、春季角結膜炎、および巨大乳頭性結膜炎、乾性眼、緑内障、角膜血管新生、視神経炎、シェーグレン症候群、網膜神経節変性、眼虚血、網膜炎、網膜症、ブドウ膜炎、眼の羞明、および眼組織への急性損傷に関連する炎症および疼痛などの眼疾患の治療に使用され得る。具体的には、化合物は、緑内障性網膜症および/または糖尿病性網膜症を治療するために使用され得る。これらの化合物は、白内障手術および屈折矯正手術などの眼科手術による術後の炎症または痛みの治療にも使用できる。特定の実施形態では、本開示の化合物は、アレルギー性結膜炎、春季結膜炎、春季角結膜炎、巨大乳頭性結膜炎から選択されるアレルギー性眼疾患を治療するために使用される。
【0085】
さらに、本開示の化合物は、月経痙攣、月経困難症、早産、子宮内膜症、腱炎、滑液包炎、乾癬、湿疹、火傷、日焼け、皮膚炎、膵炎、肝炎、扁平苔癬、強膜炎、強皮症、皮膚筋炎などの治療で使用されてもよい。本開示の化合物を使用できる他の状態には、糖尿病(I型またはII型)、アテローム性動脈硬化症、うっ血性心不全、心筋炎、アテローム性動脈硬化症、脳虚血、血管新生、肺高血圧症、および大動脈瘤が含まれ得る。
【0086】
本明細書に開示される化合物はまた、ステロイド、NSAID、COX-2選択的阻害剤、5-リポキシゲナーゼ阻害剤、LTB4アンタゴニスト、およびLTA4加水分解酵素阻害剤などと共に、他の従来の抗炎症療法の代わりに、連携療法で、部分的にまたは完全に使用され得る。本明細書に開示される化合物と生物学的製剤を含むさらなる共同療法には、エタネルセプト(Enbrel)、インフリキシマブ(Remicade)、アダリムマブ(Humira)、セルトリズマブペゴル(Cimzia)、およびゴリムマブ(Simponi)などの腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)遮断薬;アナキンラ(Kineret)などのインターロイキン1(IL-1)遮断薬;リツキシマブ(Rituxan)などのB細胞に対するモノクローナル抗体;アバタセプト(Orencia)などのT細胞共刺激遮断薬;およびトシリズマブ(RoActemraまたはActemra、抗IL-6受容体抗体)などのインターロイキン6(IL-6)遮断薬を含む。
【0087】
本明細書に開示される化合物はまた、抗菌剤または抗ウイルス剤と治療上組み合わせた場合に組織損傷を防止するために使用され得る。特定の実施形態では、本明細書に開示される化合物は、インフルエンザなどのウイルス性疾患の治療のためにノイラミニダーゼ阻害剤と組み合わせることができる。
【0088】
本明細書に開示される特定の化合物および製剤は、ヒトの治療に有用であることに加えて、コンパニオンアニマル、エキゾチックアニマル、および哺乳動物、齧歯類などを含む家畜の獣医治療にも有用であり得る。より好ましい動物には、ウマ、イヌ、およびネコが含まれる。
【0089】
異常なPDE活性に関連する状態に罹患している対象の治療に使用するのに好適である化合物は、11Cまたは18Fを含まない。好適な化合物の例には、以下が含まれるが、これらに限定されない。
【化9-1】
【化9-2】
【0090】
いくつかの場合では、化合物は次のとおりである:
【化10】
【0091】
PDE4D阻害剤の合成
本明細書に開示される化合物は、様々な合成手段を介して調製することができる。以下の一般的な考察、および実施例の項で提供される特定の手順を考慮して、合成有機化学者にガイダンスが提供される。
【0092】
本明細書で提供される化合物は、当業者に知られる従来の技法で容易に入手可能な出発材料を使用して合成することができる。一般に、本明細書で提供される化合物は、標準的な有機化学合成方法を介して便利に得られる。
【0093】
1つまたはいくつかのソースに限定されることはないが、定評のある著作、例えば、Smith,M.B.,March,J.,March’s Advanced Organic Chemistry:Reactions,Mechanisms,and Structure,5th edition,John Wiley&Sons:New York,2001、およびGreene,T.W.,Wuts,P.G.M.,Protective Groups in Organic Synthesis,3rd edition,John Wiley&Sons:New York,1999は、有用で認知された有機合成の参考教科書であり、当業者に既知である。合成方法の以下の説明は、本開示の化合物の調製のための一般的な手順を示すことを意図するもので、限定するためのものではない。
【0094】
本明細書に開示される合成プロセスは、多種多様な官能基を許容することができ、したがって、様々な代替出発物質を使用することができる。プロセスは、一般に、プロセス全体の最後またはその近くで所望の最終化合物を提供するが、いくつかの場合では、化合物をその医薬的に許容される塩にさらに変換することが望ましいことがある。
【0095】
一般に、式(I)の化合物は、以下に示す例に沿って合成することができる。例えば、化合物は、必要に応じて保護基を用いて適切なピリジンカルボン酸をアルキル化することによって調製することができる。次いで、アルキル化ピリジンカルボン酸を重水素化し、適切なピラゾールにカップリングさせて、式(I)の所望の化合物を得ることができる。例えば、アルキル、ヒドロキシル、ニトロ、および/またはハロ基などの追加の置換基を導入するために、さらなる修飾を行うことができる。
【0096】
本開示はその詳細な説明と併せて読まれるが、前述の説明は、添付の特許請求の範囲によって定義される、本開示の範囲を例示し、これを限定しないことを意図すると理解されたい。他の態様、利点、および修正は、以下の特許請求の範囲内である。
【実施例
【0097】
実施例1:化合物の合成
化合物1の調製:3-メトキシ-2-(3-ニトロフェニル)-6-[(1H-ピラゾール-4-イル)(22)メチル]ピリジン
ステップ1:2-ブロモ-3-メトキシ-6-ピリジンカルボン酸(500mg、2.16mmol)をMeOH(10mL)に溶解し、TMS-Cl(550uL、4.3mmol)で処理し、室温で22時間撹拌した。反応物を濃縮乾固してメチル2-ブロモ-3-メトキシ-6-ピリジンカルボン酸を得た。1H NMR(CDCl3)δ3.99(s、3H)、4.01(s、3H)、7.22(d、J=8.4Hz、1H)、8.12(d、J=8.3Hz、1H)。
【0098】
ステップ2:メチル2-ブロモ-3-メトキシ-6-ピリジンカルボン酸(1.4g、5.69mmol)をTHF(80mL)に溶解し、次いでNaBD4(1.43g、34.1mmol)で処理し、加熱して還流させた。CH3OD(10mL)を加え、反応物を2.5時間加熱した。室温まで冷却した後、反応物をNH4Clでクエンチし、EtOAc(2x80mL)で抽出した。有機相をNa2SO4で乾燥させ、濃縮した。これをシリカゲル上でクロマトグラフィー(0-5%アセトン/DCM)に付して、2-ブロモ-3-メトキシ-6-(ジデューテリオヒドロキシメチル)ピリジンを得た。1H NMR(CDCl3)δppm7.24(s、2H)、3.93(s、3H)、2.81(brd s、1H)。
【0099】
ステップ3:2-ブロモ-3-メトキシ-6-(ジデューテリオヒドロキシメチル)ピリジン(1.30g、5.9mmol)をジオキサン(35mL)に溶解し、次いで3-ニトロフェニルボロン酸(1.20g、7.1mmol)、シリカ担体Pd(Silicycle SiliCat DPP-Pd、1.0g、0.3mmol)、およびK3PO4(2.0g、9.4mmol)で処理した。反応物をArで5分間パージし、次いでAr下で90℃に加熱した。16時間後、反応物を室温まで冷却し、EtOAc(35mL)で希釈した。反応物をセライトで濾過し、パッドをEtOAcで十分に洗浄した。有機物を組み合わせて、濾過し、濃縮して、2-(3-ニトロ-フェニル)-3-メトキシ-6-(ジデューテリオヒドロキシメチル)ピリジン(1.76g)を得て、これをさらに精製することなく使用した。
【0100】
ステップ4:粗2-(3-ニトロ-フェニル)-3-メトキシ-6-(ジデューテリオヒドロキシメチル)ピリジン(1.76g)をDCM(60mL)に溶解して、0℃に冷却し、PBr3(1.2mL、12.6mmol)で処理した。反応物を室温までゆっくりと加温し、一晩撹拌させておいた。16時間後、反応物を0℃で飽和NaHCO3に注いだ。相を分離し、水相を2xDCM(70mL)で抽出した。有機相を組み合わせてNa2SO4で乾燥させ、濃縮して2-(3-ニトロ-フェニル)-3-メトキシ-6-(ジデューテリオメチルブロミド)ピリジン(1.83グラム)を得て、これをさらに精製することなく使用した。
【0101】
ステップ5:粗2-(3-ニトロ-フェニル)-3-メトキシ-6-(ジデューテリオメチルブロミド)ピリジン(1.00g、3.22mmol)をジオキサン/水(4:1、15mL)に溶解し、1-(1-エトキシエチル)-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1H-ピラゾール(1.3g、4.83mmol)、Pd(dppf)2Cl2*DCM(200mg、0.25mmol)、およびK3PO4(1.4g、6.6mmol)で処理した。反応物をArで5分間パージし、次いでAr下で20時間90℃に加熱した。反応物を水(50mL)で希釈し、セライトを通して濾過して不溶性物質を除去した。粗生成物をEtOAcで抽出し、次いで溶媒を蒸発させた。残留物をMeOH(10mL)および2NのHCl(6mL)に取り、一晩撹拌した。反応物をNaHCO3で中和し、次いで3×EtOAcで抽出した。有機物を組み合わせて、1xブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濃縮した。溶離液として3~5%のEtOAc/DCMを用いて分取TLCにより試料を精製して、3-メトキシ-2-(3-ニトロフェニル)-6-[(1H-ピラゾール-4-イル)(22)メチル]ピリジン(化合物1)を得た。1H NMR(CDCl3)δ7.17(d、J=8.6Hz、1H)、7.29(d、J=8.6Hz、1H)、7.56(s、2H)、7.62(t、J=8.01Hz、1H)、8.25(ddd、J=8.2、2.3、1.0Hz、1H)、8.37(dt、J=7.8、1.3Hz、1H)、8.91(t、J=2Hz、1H)
【0102】
化合物2の調製:2-(3-ニトロフェニル)-6-[(1H-ピラゾール-4-イル)(22)メチル]ピリジン-3-オール
化合物1(70mg、0.22mmol)、48%HBr(1.2mL)、およびHOAc(0.12mL)を130℃に17時間加熱した。冷却後、反応物を飽和NaHCO3でクエンチし、3×EtOAcで抽出した。有機相を組み合わせて、ブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させて、濃縮した。次いでに、固体を高温のアセトニトリル(6mL)で粉砕し、次いでクロマトグラフィー(10%アセトン/DCM)で化合物2を得た。1H NMR(DMSO-d6)δppm7.14(d、J=8.3Hz、1H)、7.33(d、J=8.3Hz、1H)、7.41(brd s、1H)、7.57(brd s、1H)、7.75(t、J=8.1Hz、1H)、8.22(ddd、J=8.2、2.4、1.0Hz、1H)、8.57(dt、J=7.9、1.3Hz、1H)、8.96(t、J=2.0Hz、1H)、10.37(s、1H)、12.59(brd s、1H)。
【0103】
化合物3の調製:2-(3-クロロフェニル)-3-(ジフルオロメトキシ)-6-[(1H-ピラゾール-4-イル)(22)メチル]ピリジン
ステップ1:メチル2-ブロモ-3-ヒドロキシ-6-ピリジンカルボン酸(200mg、0.865mmol)およびクロロジフルオロ酢酸ナトリウム(400mg、2.62mmol)をDMF(7mL)に溶解し、次いでNa2CO3(880mg、2.70mmol)で処理し、60℃で5時間加熱した。室温に冷却した後、反応物を水で希釈し、3×EtOAcで抽出した。有機物を組み合わせて、Na2SO4で乾燥させ、濃縮した。メチル2-ブロモ-3-ジフルオロメトキシ-6-ピリジンカルボン酸をクロマトグラフィー(DCM/ヘキサン1.5:1)で精製した。
【0104】
ステップ2:メチル2-ブロモ-3-ジフルオロメトキシ-6-ピリジンカルボン酸(280mg、1.0mmol)をメタノール-d4(2ml)に溶解し、NaBD4(200mg、4.76mmol)で処理した。45℃で2.5時間撹拌した後、反応物をNH4Clでクエンチし、DCMで抽出した。有機物をNa2SO4で乾燥させ、濃縮した。粗生成物をクロマトグラフィー(1%MeOH/DCM)により精製し、[6-ブロモ-5-(ジフルオロメトキシ)ピリジン-2-イル](22)メタノールを得た。1H NMR(DMSO-d6)δppm7.79(d、J=8.3Hz、1H)、7.55(d、J=8.3Hz、1H)、7.23(t、73Hz、1H)、5.56(s、1H)。
【0105】
ステップ3:[6-ブロモ-5-(ジフルオロメトキシ)ピリジン-2-イル](22)メタノール(75mg、0.29mmol)、3-クロロフェニル-ボロン酸(90mg、0.58mmol)、K3PO4(130mg、0.61mmol)、およびPd(dppf)Cl2(25mg、0.03mmol)をジオキサン/H2O(4:1、2mL)に懸濁し、Arで10分間パージし、次いで、90℃に20時間加熱した。室温に冷却した後、反応物をEtOAcおよびH2Oで希釈し、次いでセライトのプラグを通して濾過した。濾液をEtOAcで抽出し、有機物をNa2SO4で乾燥させて、濃縮した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(DCM)によって精製して、[6-(3-クロロフェニル)-5-(ジフルオロメトキシ)ピリジン-2-イル](22)メタノールを得た。1H NMR(DMSO-d6)δppm7.80(m、4H)、7.54(m、4H)、7.26(t、J=73HZ、1H)、5.49(s、1H)。
【0106】
ステップ4:DCM(2mL)中の[6-(3-クロロフェニル)-5-(ジフルオロメトキシ)ピリジン-2-イル](22)メタノール(76mg、0.26mmol)をPBr3(50μL、0.53mmol)で、0℃で処理し、次いで一晩室温で撹拌した。粗反応物を氷/NaHCO3に注ぎ、3×DCMで抽出した。有機物を組み合わせて、H2Oおよびブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濃縮して、6-[ブロモ(22)メチル]-2-(3-クロロフェニル)-3-(ジフルオロメトキシ)ピリジンを得た。
【0107】
ステップ5:粗6-[ブロモ(22)メチル]-2-(3-クロロフェニル)-3-(ジフルオロメトキシ)ピリジン(80mg、0.23mmol)をジオキサン/水(4:1、1.5mL)に溶解し、1-(1-エトキシエチル)-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1H-ピラゾール(110mg、0.34mmol)、Pd(dppf)2Cl2*DCM(20mg、0.025mmol)、およびK3PO4(100mg、0.47mmol)で処理した。反応物をArで5分間パージし、次いでAr下で85℃に20時間加熱した。反応物を水(50mL)で希釈し、セライトを通して濾過して不溶性物質を除去した。粗生成物をEtOAcで抽出し、次いで溶媒を蒸発させた。残留物をMeOHおよび2NのHClに取り、一晩撹拌した。反応物をNaHCO3で中和し、次いで3×EtOAcで抽出した。有機物を組み合わせて、ブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させて、濃縮した。クロマトグラフィー(3~5%EtOAc/DCM、次いで4:1ヘキサン/アセトン)で試料を精製して、化合物3を得た。1H NMR(CDCl3)δppm7.88(t、J=1.7Hz、1H)、7.77(m、1H)、7.60(m、3H)、7.43(m、2H)、6.99(d、J=8.4Hz、1H)、6.42(t、J=73Hz、1H)、6.38(t、J=2.1Hz、1H)。
【0108】
放射性リガンド化合物の手順-化合物Aの調製
【化11】
(化合物A)
Havar HPターゲット(アルミニウム、容量=9.5mL)を使用して、ターゲットガスとしてN2(UHP500、Airgas)中の1%O2を用いて、SiemensRDS-111サイクロトロンで14N[ρ、α]11C核反応を介して[11C]-CO2を調製した。ターゲットを280psiにロードし、次いで60μAで20分間照射した。次いで、ターゲットをソーダライムトラップまで空にした。生成のために、ターゲットを60μAで約40分間照射した。ターゲット収量は、約1400mCiであった。
【0109】
11C]-ヨウ化メチルを標準条件下で生成した。まず、350℃の水素雰囲気下でNi-Shimalite触媒を使用して[11C]-CO2を還元し、-75℃でcarboxenトラップにラップされた11C-メタンを生成し、加温して放出し、750℃でのヨウ素化オーブン石英上に5分間再循環によって[11C]ヨウ化メチルに変換した。ポラパックQカラムにトラップした後、[11C]-ヨウ化メチルを190℃で20mL/分のヘリウム流量で放出し、25℃に保持された無水DMF中の溶液
【化12】
と組み合わせた1μLの3M水酸化ナトリウムを予め充填した反応容器にバブリングした。この移行が完了すると、反応容器を90℃に5分間加熱し、次いでセミプレップHPLC溶離液(55:45の50mMギ酸アンモニウムpH8.0:アセトニトリル)を加え、得られた溶液を、精製用のAgilent Eclipse XDB C18、9.4x250mm、10μmカラムを装備したHPLCに注入した。化合物Aが得られた。
【0110】
実施例2:生物学的試験
PETスキャン
本明細書に記載の11C標識化合物の局所分布および薬物動態を、PETイメージングを介して非ヒト霊長類で評価した。
【0111】
本試験では、2匹のオスの非ナイーブカニクイザル非ヒト霊長類(Macaca fascicularis)(「対象1」および「対象2」)を使用した(7.0および5.5kg)。対象に、これまで腸骨動脈から採血するための動脈アクセスポートを配置するための手術を施した。各対象は、Philips 1.5T Interaスキャナーで3D T1 FFEシーケンスを使用して脳MRを受け、その後PETに登録し、局所的な時間放射能曲線を判定するためにカニクイザル脳関心領域アトラスを適用した。PETスキャンは、各対象においてベースライン条件下(すなわち、化合物Aのみ)で、および3mg/kgでの化合物Bの10分間の注入(すなわち、ブロッキング条件)の15分後に行った。化合物Bは、既知のPDE4Dリガンドであり、代替的に、BPN14770とも称される。
【化13】
(化合物A)
【化14】
(化合物B)
【0112】
PETスキャンは、Siemens Focus 220microPETスキャナーで行った。対象に、化合物A注射の約45分前にケタミン10mg/kgをIM麻酔した。硫酸アトロピン0.05mg/kgを、化合物A注射の約35分前にIM投与した。対象を挿管し、イソフルラン(2~2.5%)と酸素(2L/分)で維持した。留置カテーテルを、薬物注入、トレーサ注射、および溶液(LRS 10mL/kg/時間 静脈内)のために伏在静脈に配置した。対象をPETイメージングベッドに運んで、配置し、体温、心拍数、呼気CO2、呼吸数、および脈拍O2についてモニタリングした。
【0113】
動的な90分(対象1)または120分(対象2)のPETスキャン取得を化合物A注射の開始時に開始し、5mCiの注射活動をターゲットとする注入ポンプを介して3分間にわたって投与した。化合物A注射の時間と比較して、動脈血試料をK2EDTAに-10、0.75、1.5、2.25、3、4、5、10、15、30、45、60、90および120分で収集した。各試料について、アリコート(200uL)を放射能濃度判定のためにガンマカウントし、次いで血漿に処理した。-10、5、15、30、60、90、120分の血漿試料については、化合物Aの親画分を判定するためにラジオHPLCを行い、化合物Aを添加した-10分の試料を安定性分析および血漿遊離画分の判定に使用した。-10、5、15、30、60、90、120分に収集された血漿試料のアリコート(100uL)は、その後の薬物濃度レベルの判定のために凍結させた。表1に対象に対する放射能投与条件を示す。
【表1】
【0114】
PETスキャン取得の終わりに、各対象の8スライスNeuroLogica CereTom OTOscanによるX線CTスキャンを、120kVp、4mAs、スライス厚0.625mmで頭部から収集し、フィルター逆投影を使用して処理した。CTスキャンを、再構成されたPETスキャンの減衰および散乱補正のためのPETへの同時登録に使用した。リストモードPETデータを、6x0.5分、3x1分、2x2分、および22x5分のフレームにビニングした。ビニングしたサイノグラムデータを、フィルター逆投影によって再構築した。
【0115】
PET画像分析
再構成したPET画像を、PMODソフトウェアを使用して分析した。PETスキャンを、厳密なPETからMR、およびアフィン+非線形MRからテンプレートへの登録を介してMRテンプレート空間に変換した。時間放射能曲線を、前帯状皮質、小脳、背外側前頭前皮質、嗅内皮質、後頭皮質、線条体、および視床を含むMRテンプレートで定義された関心領域(ROI)から生成した。脳への取り込みのピークは、注射量の約3.2%~5.6%であった。
【0116】
化合物Aの分布容積(VT)(mL/cm3)は、2組織コンパートメント(2TC)モデルおよびLoganグラフィカル分析(LGA、t*=30)を使用して、ベースラインスキャンおよびブロッキングスキャンについて90分のデータを使用して推定した。ベースラインのVTおよびROIのブロッキングを使用して、占有率(Lassen)プロットによって化合物Bの占有率を計算した。2TCおよびLGAモデルから推定されるVTの時安定性を、ベースラインおよびブロッキングスキャンについての90分または120分のデータから両対象動物を評価した。表2は、二つのモデルでの脳の種々の試験領域の化合物AのVTを示す。表3は、2つのモデルでの化合物Bの占有率を示す。
【表2】
【0117】
【表3】
【0118】
PET画像分析は、化合物Aが容易に脳に入り、局所的な取り込みが化合物Bの既知の分布と一致していることを示した。さらに、高用量の化合物BによるPDE4Dの遮断により、高い取り込み領域における化合物Aの実質的減少となった。
【国際調査報告】