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特表2022-531142グラフェンを注入したポリエチレンテレフタレート(PET)の製造方法
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  • 特表-グラフェンを注入したポリエチレンテレフタレート(PET)の製造方法 図1
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  • 特表-グラフェンを注入したポリエチレンテレフタレート(PET)の製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(54)【発明の名称】グラフェンを注入したポリエチレンテレフタレート(PET)の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20220629BHJP
【FI】
C08J5/18 CFD
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021563187
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(85)【翻訳文提出日】2021-11-08
(86)【国際出願番号】 MY2020050026
(87)【国際公開番号】W WO2020218916
(87)【国際公開日】2020-10-29
(31)【優先権主張番号】UI2019002345
(32)【優先日】2019-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】MY
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521462668
【氏名又は名称】ユニベルシティ ケバングサン マレーシア
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITI KEBANGSAAN MALAYSIA
【住所又は居所原語表記】Pusat Inovasi Kolaboratif, Universiti Kebangsaan Malaysia, 43600 UKM Bangi Selangor, Malaysia
(71)【出願人】
【識別番号】521462679
【氏名又は名称】ミレスコ インテグレーテッド エスディーエヌ ビーエイチディー
【氏名又は名称原語表記】MIRESCO INTEGRATED SDN BHD
【住所又は居所原語表記】No 4, Jalan Ruang U8/103, Jelutong Prime, Bukit Jelutong, 40150 Shah Alam Selangor, Malaysia
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】モハメド, モヘド アムブリ
(72)【発明者】
【氏名】イエオプ マジュリス, ブルハヌディン
(72)【発明者】
【氏名】ハムザ, アズール アズラン
(72)【発明者】
【氏名】チェ モハド ノア, モハド イーサン
【テーマコード(参考)】
4F071
【Fターム(参考)】
4F071AA46
4F071AB03
4F071AD05
4F071AE22
4F071AF08Y
4F071BA02
4F071BB02
4F071BC01
4F071BC12
(57)【要約】
本発明は、グラフェンナノプレートレット(GNP)と所定量のPET材料とを混合する工程(101)と、工程(101)で得られた混合物を所定の温度のオーブンで乾燥させる工程(102)と、極性溶媒を、工程(102)で得られた混合物の質量に対して1:1の比率で前記混合物に加えて溶液を得る工程(103)と、溶液を250rpmの速度で撹拌する工程(104)と、工程(104)から得られた均質な混合物を鋳型に注入する工程(105)と、鋳型に配置された均質な混合物内の溶媒を蒸発させて、GNP/PETナノコンポジットフィルムを生成する工程(106)と、を含む、グラフェンナノプレートレット/ポリエチレンテレフタレート(PET)ナノコンポジットを製造するための方法(100)を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒キャスト法を用いて、食品および飲料製品を含む物品の包装に使用するための純粋なポリエチレンテレフタレート(PET)よりも改善されたガスバリア特性を示すグラフェンナノプレートレット(GNP)/ポリエチレンテレフタレート(PET)ナノコンポジットの製造方法(100)であって、
前記GNP/PETナノコンポジットのポリマー基材として利用するために選択されたPETポリマー材料の重量に対してグラフェンナノプレートレット(GNP)の重量パーセントが測定され、2.0wt%の前記GNPと前記PETポリマー材料とを混合して混合物を得る工程(101)と、
前記工程(101)で得られた前記混合物を70℃のオーブンで乾燥させる工程(102)と、
フェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン溶媒を、前記混合物の質量に対して1:1の比率で前記混合物に加えて溶液を得る工程(103)と、
前記フェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン溶媒、前記PETポリマー材料および2.0wt%の前記GNPを含む、前記工程(103)の前記溶液を250rpmの速度で撹拌して均質な混合物を得る工程(104)と、
前記工程から得られた前記均質な混合物を鋳型に注入する工程(105)と、
前記工程(105)で鋳型に配置された前記均質な混合物内の溶媒を蒸発させて、GNP/PETナノコンポジットフィルムを生成する最終工程(106)と、を含むことを特徴とする製造方法(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広く包装材料の分野に関する。より具体的には、本発明は、所望の包装特性を備えたナノコンポジット包装材料を得るためにナノ材料が注入されるポリマー系包装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
過去数十年にわたって、熱硬化性、熱可塑性およびエラストマー性ポリマーに多数の鉱物および金属を添加することにより、工業規模の複合材料が製造されてきた。塊状ポリマーと比較して、これらの複合材料は、ヤング率、引張強度、耐摩耗性、貯蔵弾性率等の特性において中程度の機械的性能の改善を示している。しかしながら、ナノスケールの粒子合成における最近の進歩は、複合材料産業の成長を劇的に加速させた。原子レベルの粒子を合成および特性評価する能力により、新世代の高性能フィラーが生み出された。これらのサブミクロンフィラーをポリマーに組み込むと、ナノコンポジットが形成され、従来の複合材料と比較して比類のない性能向上がもたらされた複合材料が得られる。ナノコンポジット材料の商業的需要は爆発的に増加している。このような材料の可能な用途は、食品包装、ガスケット、自動車用途、携帯型電子機器等を含む幅広い産業に広がっている。
【0003】
近年、複合材料に関する研究は、ナノ粒子がポリマー鎖の寸法に匹敵する寸法を有し、100を超える高いアスペクト比を有し、ポリマーマトリックスに均一に分散しているナノ粒子充填ポリマー複合材料(NC)の分野に焦点が集まっている。ポリマー材料の機械的特性、電気伝導性および熱伝導性の改善のために広く研究されてきたいくつかのフィラー材料がある。これらの広く研究されてきたナノ粒子としては、シリカやカーボンブラック等のフラクタル凝集ナノ粒子、カーボンナノチューブ(CNT)、無機粘土、アルミナシリケートナノプレートが挙げられる。
【0004】
ナノコンポジットポリマーを形成するためのフィラーとしてのナノ粒子の使用は、製造コストが高い、また、良好な分散を達成するためには、商業的に魅力的ではなく、大規模製造には非現実的である化学的または機械的操作の必要性があるといったいくつかの欠点に悩まされる。
【0005】
グラフェンは、展開された単層カーボンナノチューブと同様の炭素原子の単層を含む比較的新しいナノ材料である。グラフェンはポリマー相互作用のための2つの表面があるのに対し、CNTはポリマー相互作用のための1つの外面しか有さないため、単層グラフェンは、一般的に、ポリマーの強化においてCNTの2倍の効果がある。さらに、グラフェンは、その優れた電気的および機械的特性により、ナノコンポジットの製造用の他のタイプのナノ粒子フィラーに取って代わるナノ粒子フィラーとして、ますます求められている。酸化グラフェン、膨張黒鉛、およびグラフェンナノプレートレット等の新しいグラフェンベースのナノ材料の導入と併せたグラフェン合成法の最近の開発により、グラフェンが商業的に実行可能になったことが理解されよう。
【0006】
ポリエチレンテレフタレート(PET)は、1940年代初頭に合成された芳香族半結晶性の熱可塑性ポリエステルである。PETは、その強度と靭性、高いガラス転移および融点、耐薬品性、および光学特性でよく知られている。現在では、PETの使用は、比較的低コストであるため、市販の食品や飲料製品のパッケージングを含む無数の用途で広く使用されている。PETは、2軸方向の伸縮が強い膜を形成することだけでなく、長手方向の伸縮が高分子鎖配向を備えた強い繊維を形成する微細構造に特徴を有している。線状PETは天然で半結晶性である。それぞれ冷却速度や延伸速度等の熱的および機械的履歴により、PETがアモルファスまたはより結晶性になり、その機械的特性に影響を与える可能性がある。PETはパッケージングで広く利用されているが、ガスバリア性能等の特定の物理的特性に固有の制限があるため、その使用は制限されている。
【0007】
包装材料としてのPETの特性を改善する研究は、規模の経済に起因する固有の低い生産コストおよびその固有の制限にもかかわらず、選択される包装材料としての現在の広範な使用によって協調される商業市場における適用の可能性のため、現在多くの研究機関によって行われている進行中のプロセスである。包装材料の改善されたガスバリア特性は、特定の包装されたF&B製品の貯蔵寿命を延ばすのに大いに役立つため、ナノコンポジットPET材料の開発における継続的な研究は、特にガスバリア特性を考慮して、PET本来の固有材料特性を改善し、食品および飲料業界での包装材料としての適用の実現可能性および魅力を向上させるために必要である。
【0008】
これまでの研究により、PETナノコンポジットを形成するためのフィラーとして使用できる多くのナノ材料が得られており、グラフェンナノプレートレットはそのようなナノ材料の優れた選択肢となっている。したがって、改善されたガスバリア特性を示すグラフェンナノプレートレット注入PETナノコンポジットを製造するための費用効果の高い方法が考えられるならば、それは有利であろう。
【発明の概要】
【0009】
以下、本発明のいくつかの態様の基本的な理解を提供するために、本発明の簡略化された概要を提示する。この概要は、本発明の広範な概要ではない。本発明の重要な要素を特定することを意図するものではない。その唯一の目的は、後に提示されるより詳細な説明の前置きとして、本発明のいくつかの概念を簡略化された形で提示することである。
【0010】
特に、良好な機械的強度を示すポリマーナノコンポジットを提供することは、本発明の利点である。
本発明の別の利点は、改善されたガスバリア性能を示すポリマーナノコンポジットを提供することであり、それにより、ポリマーナノコンポジットを食品および飲料製品の包装材料としての使用に理想的なものとする。
【0011】
本発明のさらに別の利点は、改善されたガスバリア性能を備えたポリマーナノコンポジットの製造のための費用効果の高い方法を提供することである。
より具体的には、一態様では、本発明は、純粋なポリエチレンテレフタレート(PET)ポリマー自体よりも優れたガスバリア性能を示すグラフェンナノプレートレット注入ポリエチレンテレフタレート(PET)ナノコンポジットを提供し、ナノコンポジットを食品および飲料製品の包装材料としての使用に適したものにする。
【0012】
別の態様では、本発明は、グラフェンナノプレートレット/ポリエチレンテレフタレート(PET)ナノコンポジットを製造するための方法を提供する。この方法は、明らかに、
2.0wt%のグラフェンナノプレートレット(GNP)と所定量のPET材料とを混合する工程と、
混合する工程で得られた混合物を70℃の温度のオーブンで乾燥させる工程と、
フェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタンを、混合物に対して1:1の比率で混合物に添加する工程と、
溶媒、ポリマーおよび2.0wt%のグラフェンナノプレートレットを含む混合物を250rpmの速度で撹拌する工程と、
撹拌する工程で得られた均質な混合物を鋳型に注入する工程と、
注入する工程で鋳型に配置された混合物内の溶媒を蒸発させて、GNP/PETナノコンポジットフィルムを生成する最終工程と、を有する溶媒キャスト法である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の上記および他の目的、特徴、および他の利点は、添付の図面と組み合わせられる詳細な説明からより明確に理解される。
【0014】
図1図1は、ポリエチレンテレフタレート(PET)ポリマーマトリックス内に注入されたグラフェンナノプレートレット(GNP)が配置されたポリマー基材のガス透過率と重量パーセントのグラフである。
【0015】
図2図2は、図2(a)~図2(e)で構成され、それぞれが1000倍の倍率での引張破壊のSEM顕微鏡写真画像(左側に配置された画像)と750倍の倍率での表面形態を示すSEM顕微鏡写真画像を含み、図2(a)は、純粋なPETポリマーの画像、図2(b)~図2(e)は、本発明の一態様で提供される方法の実施形態によって製造して得られたGNP/PETポリマーナノコンポジットの画像である。
【0016】
図3図3は、純粋なPETポリマーおよび0.5wt%、1.0wt%、1.5wt%のグラフェンナノプレートレット(GNP)のPETポリマー基材への注入により形成されたPET/GNPナノコンポジットの引張強度と注入されたグラフェンナノプレートレット(GNP)の含有量の棒グラフである。
【0017】
図4図4は、純粋なPETポリマーおよび0.5wt%、1.0wt%、1.5wt%のグラフェンナノプレートレット(GNP)のPETポリマー基材への注入により形成されたPET/GNPナノコンポジットの引張弾性率と注入されたグラフェンナノプレートレット(GNP)の含有量の棒グラフである。
【発明の詳細な説明】
【0018】
添付の図面に関連して以下に記載される詳細な説明は、例示的な実施形態の説明として意図されており、実施形態が構築および/または利用され得る唯一の形態を表すことを意図されていない。詳細な説明は、例示的な実施形態を構築するための機能および順序を説明する。しかしながら、同じまたは同等の機能および配列は、本開示の範囲内に包含されることも意図されている異なる実施形態によって達成され得ることが理解されるべきである。
【0019】
前述したように、本発明は、ナノコンポジット材料に関するものであり、特に、改善されたガスバリア特性を有するナノコンポジット材料を提供する。より具体的には、一態様では、本発明は、グラフェンナノプレートレット(GNP)が注入されたポリエチレンテレフタレート(PET)ポリマーナノコンポジット材料を提供する。別の態様では、本発明は、前述のグラフェンナノプレートレット(GNP)を注入したポリエチレンテレフタレート(PET)ポリマーナノコンポジットを製造するための費用効果の高い方法100を提供する。
【0020】
説明を進める前に、前置きとして、すでに広く使用されている純粋なポリマー材料の特性を改善することが期待されているため、ポリマーナノコンポジットが産業界で求められている。とりわけ、前述のナノ材料の高コストの製造を含むナノコンポジットを製造するため、ポリマーのフィラーとして使用される場合に、カーボンナノチューブ等の従来のナノ材料の固有の欠点により、グラフェンシートは、その優れた特性とその前駆体であるグラファイトの天然存在比のために、最適なナノ材料になってきている。
【0021】
グラフェンは、平面のハニカム格子を備えた2次元の1原子厚のカーボンシートである。欠陥のないグラフェンは、高い固有移動度および弾道輸送、高い熱伝導率およびヤング率、ほぼ98%の光透過率、大きな比表面積等の優れた物理的特性を示す。今日まで、グラフェンシートを製造するための最も費用効果の高い方法は、グラファイトおよび/またはその誘導体、すなわち酸化グラファイトの剥離によるものであり、それは高収率の製造を可能にし、したがって費用効果が高く、拡張性のあるプロセスである。
【0022】
酸化グラファイトを剥離して酸化グラフェンを得た後、得られた酸化グラフェンを熱処理してグラフェンを得るための還元プロセスを行うことは、本明細書に開示される本発明の態様および実施形態に従って提供されるグラフェンナノプレートレット/ポリエチレンテレフタレート(PET)ナノコンポジットを製造する方法100で利用されるグラフェンナノプレートレットを得るために好ましい選択である。前述の剥離とそれに続く熱処理から得られたグラフェンナノ材料は、極性溶媒に容易に分散する。したがって、本発明の実施形態によるグラフェンナノプレートレット/ポリエチレンテレフタレート(PET)ナノコンポジットを製造するための本明細書に開示される方法100は、前述の剥離とそれに続く熱処理によって得られたグラフェンナノ材料(すなわち、ナノプレートレット)が溶媒、特に極性溶媒に容易に分散するという事実を利用する、溶液キャスト法または溶媒混合法である。
【0023】
より具体的には、本発明の一態様によれば、ナノコンポジットのポリマー基材として利用するために選択されたPETポリマー材料の総量の重量に対してグラフェンナノプレートレットの重量パーセントが測定され、グラフェンナノプレートレット(GNP)を所定量のPETポリマー材料と混合して混合物を得る工程101と、前の工程101で得られた混合物を所定の温度のオーブンで乾燥させる工程102と、混合物の質量に対して1:1の比率で混合物に溶媒を加えて溶液を得る工程103と、前の工程103の溶液を攪拌して均質な混合物を得る工程104と、前の工程104から得られた均質な混合物を鋳型に注入する工程105と、前の工程105で鋳型に配置された混合物内の溶媒を蒸発させて、GNP/PETナノコンポジットフィルムを生成する最終工程106と、を含む溶媒キャスティング法を利用して、グラフェンナノプレートレット/ポリエチレンテレフタレート(PET)ナノコンポジットを製造するための方法100が提供される。
【0024】
本発明の前述の態様で提供される方法100の実施形態によれば、混合物を得るためにグラフェンナノプレートレット(GNP)を所定量のPETポリマー材料と混合する工程101は、PETポリマー材料の総量の重量に対して0.5重量%のグラフェンナノプレートレットを混合するステップを有する。別の実施形態によれば、前述の工程101は、PETポリマー材料の総量の重量に対して1.0重量%のグラフェンナノプレートレットを混合するステップを有する。さらに別の実施形態によれば、前述の工程101は、PETポリマー材料の総量の重量に対して1.5重量%のグラフェンナノプレートレットを混合するステップを有する。さらに別の実施形態によれば、前述の工程101は、PETポリマー材料の総量の重量に対して2.0重量%のグラフェンナノプレートレットを混合するステップを有する。
【0025】
前述の工程102を考慮して、本明細書に開示される本発明の一態様で提供される方法100の実施形態に従って工程101で得られた混合物である、グラフェンナノプレートレットとポリエチレンテレフタレート(PET)との混合物は、70℃のオーブンで約4時間乾燥されて、吸収された水分(含水率)を全て除去し、鋳造中のボイドの形成が防止される。
【0026】
本発明の一態様で提供される方法100の工程103を示唆すると、一実施形態による前述の工程103は、工程102で乾燥されたグラフェンナノプレートレットとポリエチレンテレフタレート(PET)ポリマー材料との混合物に極性溶媒を添加することを含む。より具体的には、前述の実施形態では、工程103は、工程102で乾燥に供された混合物の重量に対して1:1の比率でグラフェンナノプレートレットをポリエチレンテレフタレートポリマー材料(すなわちポリマーマトリックス)に分散させるための溶媒として機能するフェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタンを添加することを含む。したがって、前述のフェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン、グラフェンナノプレートレットおよびポリエチレンテレフタレートポリマー材料を含む溶液を提供する。
【0027】
続いて、工程104において、一実施形態によれば、工程103で得られた溶液は、250回転/分(rpm)の速度で機械的攪拌機によって攪拌または混合される。代替の実施形態では、工程104は、超音波混合を含み得る。工程104から得られる混合物は、前述のグラフェンナノプレートレットの明らかな凝集がない混合物、すなわち均質な混合物となる。
【0028】
本発明の一態様で提供される方法100の最終工程において、工程104で得られた均質な混合物は、続いて、工程105で鋳型に注入され、工程106で乾燥されることによって、フェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン溶媒の蒸発と、グラフェンナノプレートレットが注入されたポリエチレンテレフタレート(PET)ナノコンポジット材料のフィルムの形成を可能にする。
【0029】
本発明の一態様で提供される方法100の実施形態によれば、前述の工程106の乾燥は、ヒューム食器棚内で室温で24時間行われ、その後、グラフェンナノプレートレットが注入されたポリエチレンテレフタレート(PET)ナノコンポジット材料のフィルムが得られる。
【実施例
【0030】
本明細書とともに添付された図1を参照すると、本発明の一態様および実施形態で提供される方法100の実行によって得られるようなポリエチレンテレフタレート(PET)ポリマーマトリックス内に配置される、ポリマー基材に注入されたグラフェンナノ粒子の重量パーセントに対する酸素(O)および窒素(N)のそれぞれのガス透過率のグラフが示されている。
【0031】
前述の図1から、グラフェンナノ粒子、つまりこの場合はポリエチレンテレフタレート(PET)ポリマー材料によって形成されたポリマーマトリックス内に注入されるグラフェンナノプレートレット(GNP)の重量パーセントが0.5wt%~2.0wt%に0.5wt%ずつ増加するにしたがって、形成されたナノコンポジット(すなわち、GNP/PETナノコンポジット)の固有のガスバリア能力が向上することが分かる。具体的には、本発明の一態様で提供される方法100の実施形態に従って生成されたGNP/PETナノコンポジットを考慮して、注入されたグラフェンナノプレートレットの重量%が増加するにしたがい、形成されたナノコンポジットのガス透過能力が低下することが分かる。したがって、前述の図1を参照すると、2.0重量%のグラフェンナノプレートレットの注入によって形成されたGNP/PETナノコンポジットは、透過性が最も低く、酸素と窒素の透過率が最も低いため、最も望ましい。
【0032】
図2は、図2(a)~図2(e)で構成され、それぞれが1000倍の倍率での引張破壊のSEM顕微鏡写真画像(左側に配置された画像)と750倍の倍率での表面形態を示すSEM顕微鏡写真画像(右側に配置された画像)を含み、図2(a)は、純粋なPETポリマーの画像、図2(b)~図2(e)は、本発明の一態様で提供される方法の実施形態によって製造して得られたGNP/PETポリマーナノコンポジットの画像である。具体的には、図2(a)が純粋なPETポリマーを示しており、図2(b)~図2(e)が、それぞれ0.5wt%、1.0wt%、1.5wt%、2.0wt%のグラフェンナノプレートレットが注入されたGNP/PETポリマーナノコンポジットを示している。
【0033】
前述の図2(a)~2(e)は、ポリマーおよびそこで参照される様々な複合材料の機械的特性を提供することを目的としている。前述の純粋なPETポリマー材料、および前述の0.5wt%、1.0wt%、1.5wt%、2.0wt%のGNP/PETポリマーナノコンポジットの150mm×10mmのサンプルが5kNの引張荷重を受けるISO 572-3に準拠した機械的強度試験(引張強度試験)の結果物を示す左側の図から明らかなように、グラフェンナノプレートレットの重量パーセントが0から2.0%に増加すると、サンプルの機械的強度も増加する。これは、SEM画像の破壊によって示されるパターンから推測される。
【0034】
言い換えると、図2(a)~図2(e)の左側に配置された前述のSEM画像は、純粋なPETおよび注入されたGNPの含有量が0.5wt%~2wt%の範囲であるPET/GNPナノコンポジットの引張破壊試験片を示しており、一方、図2(a)~図2(e)の右側に配置された前述のSEM画像は、各試験片の表面形態を示している。PETポリマーマトリックスへのGNPの添加は、得られたGNP/PETナノコンポジットの引張強度の比例した増加を示している。これは、ベースのPETポリマー材料によって形成されたPETマトリックスとGNPナノ材料との間の強力な界面結合に起因する。図2(a)~図2(e)の左側に配置された画像から、純粋なPETは延性破壊を受けるのに対し(図2(a))、GNPの含有量が増加すると、GNP/PETナノコンポジットの延性は減少する(図2(b)~図2(e))。さらに、図2図3および図4を参照すると、PET基材へのGNPの添加(すなわち注入)により、引張強度および引張弾性率の点で、純粋なPET材料よりも得られるGNP/PETナノコンポジットの強度が向上する可能性があると結論付けることができる。
【0035】
代替の実施形態は、その範囲から逸脱することなく、本発明が関係する当業者に明らかになるであろう。したがって、本発明の範囲は、前述の説明ではなく、添付の特許請求の範囲によって定義される。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】