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特表2022-531162複合集電体、電極シート及び電気化学装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(54)【発明の名称】複合集電体、電極シート及び電気化学装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/66 20060101AFI20220629BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20220629BHJP
【FI】
H01M4/66 A
H01M4/13
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564148
(86)(22)【出願日】2019-06-06
(85)【翻訳文提出日】2021-10-27
(86)【国際出願番号】 CN2019090412
(87)【国際公開番号】W WO2020237714
(87)【国際公開日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】201910472007.6
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 欣
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲シ▼▲ウェン▼
(72)【発明者】
【氏名】黄 起森
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲チェン▼
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲銘▼▲領▼
(72)【発明者】
【氏名】彭 佳
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 向▲輝▼
【テーマコード(参考)】
5H017
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017AA04
5H017AS02
5H017CC01
5H017DD05
5H017DD06
5H017EE01
5H017EE04
5H017EE05
5H017EE07
5H017HH00
5H017HH03
5H050AA08
5H050AA12
5H050AA14
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB12
5H050DA04
5H050EA02
5H050EA23
5H050FA18
5H050HA04
(57)【要約】
本願は、複合集電体、電極シート及び電気化学装置を開示する。複合集電体は、有機支持層と、有機支持層の少なくとも一つの表面に設けられた金属導電層と、を含み、複合集電体の脆性パラメータCは、0.01≦C≦0.5である。本願に係る複合集電体は、良好な力学的性能及び機械的性能を有すると同時に、良好な導電及び集電の性能を両立させるため、複合集電体、電極シート及び電気化学装置の製造の良品率及び使用中の信頼性とを向上させることができ、電気化学装置が良好な電気化学的特性及び高い重量エネルギー密度を有するのに有利である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合集電体であって、
有機支持層と、前記有機支持層の少なくとも一つの表面に設けられた金属導電層と、を含み、
前記複合集電体の脆性パラメータCは、0.01≦C≦0.5である、複合集電体。
【請求項2】
前記複合集電体の脆性パラメータCは、0.1≦C≦0.3である、請求項1に記載の複合集電体。
【請求項3】
前記金属導電層の引張強度Tは、150MPa≦T≦500MPaであり、好ましくは200MPa≦T≦350MPaであり、及び/又は、
前記有機支持層の引張強度Tは、100MPa≦T≦400MPaであり、好ましくは150MPa≦T≦300MPaである、請求項1又は2に記載の複合集電体。
【請求項4】
前記有機支持層のヤング率Eは、E≧2GPaであり、好ましくは2GPa≦E≦20GPaである、請求項1又は2に記載の複合集電体。
【請求項5】
前記金属導電層の厚さDは、30nm≦D≦3μmであり、好ましくは300nm≦D≦2μmであり、好ましくは500nm≦D≦1.5μmであり、より好ましくは800nm≦D≦1.2μmであり、及び/又は、
前記有機支持層の厚さDは、1μm≦D≦30μmであり、好ましくは1μm≦D≦20μmであり、好ましくは1μm≦D≦15μmであり、好ましくは2μm≦D≦10μmであり、好ましくは2μm≦D≦8μmであり、より好ましくは2μm≦D≦6μmである、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の複合集電体。
【請求項6】
前記金属導電層は、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、銅、銅合金、チタン及銀のうちの一種類又は複数種類を含み、及び/又は、前記金属導電層は、気相蒸着層又は電気メッキ層である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の複合集電体。
【請求項7】
前記有機支持層は、高分子材料及び高分子系複合材料のうちの一種類又は複数種類を含み、
前記高分子材料は、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレンゴム、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリアセチレン、シリコーンゴム、ポリオキシメチレン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレングリコール、ポリ窒化硫黄類、ポリフェニル、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピリジン、セルロース、デンプン、タンパク質、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、これらの誘導体、それらの架橋物及びそれらの共重合体のうちの一種類又は複数種類であり、
前記高分子系複合材料は、前記高分子材料と、金属材料及び無機非金属材料のうちの一種類又は複数種類を含む添加剤と、を含む、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の複合集電体。
【請求項8】
前記金属導電層の自身の厚さ方向において対向する2つの面の少なくとも一つに設けられた保護層をさらに備え、
前記保護層は、金属、金属酸化物及び導電性炭素のうちの一種類又は複数種類を含み、好ましくは、ニッケル、クロム、ニッケル系合金、銅系合金、酸化アルミニウム、酸化コバルト、酸化クロム、酸化ニッケル、黒鉛、超電導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーの一種類又は複数種類を含み、
好ましくは、前記保護層の厚さDは、1nm≦D≦200nmであり、前記保護層の厚さDと前記金属導電層の厚さDとは、D≦0.1Dを満たす、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の複合集電体。
【請求項9】
電極シートであって、集電体と、前記集電体に設けられた活物質層と、を備え、
前記集電体は、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の複合集電体である、電極シート。
【請求項10】
電気化学装置であって、
正極シート、負極シート及び電解質を含み、前記負極シート及び/又は前記正極シートは、請求項9に記載の電極シートである、電気化学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2019年05月31日に提出された「複合集電体、電極シート及び電気化学装置」の発明名称の中国特許出願201910472007.6の優先権を主張し、その全ての内容は、引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本願は、電気化学装置の技術分野に属し、特に、複合集電体、電極シート及び電気化学装置に関する。
【背景技術】
【0003】
電気化学装置、例えばリチウムイオン二次電池は、良好な充放電性能を備え、且つ環境に優しく、電気自動車及び消費類電子製品に広く利用されている。集電体は、電気化学装置の重要な構成要素であり、活物質層を支持すると共に、活物質層で生成された電流を集めて外部へ出力する。従って、集電体は、電極シート及び電気化学装置の性能に重要な影響を及ぼす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これを鑑みて、本願は、性能に優れた複合集電体を提案し、さらに、当該複合集電体が用いられた電極シート及び電気化学装置を提案する。
【0005】
本願の実施例は、複合集電体、電極シート及び電気化学装置を提供し、複合集電体の力学的性能及び機械的性能を向上させ、良好な導電及び集電の性能を両立させると同時に、電気化学装置の重量エネルギー密度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様において、本願の実施例は、複合集電体を提供し、複合集電体は、有機支持層と、有機支持層の少なくとも一つの表面に設けられた金属導電層と、を含み、複合集電体の脆性パラメータCは、0.01≦C≦0.5である。
【0007】
第2の態様において、本願の実施例は、電極シートを提供し、電極シートは、集電体と、集電体に設けられた活物質層と、を含み、集電体は、本願の実施例の第1の態様に係る複合集電体である。
【0008】
第3の態様において、本願の実施例は、電気化学装置を提供し、電気化学装置は、正極シート、負極シート及び電解質を含み、負極シート及び/又は正極シートは、本願の実施例の第2の態様に係る電極シートである。
【0009】
本願の実施例に係る複合集電体、電極シート及び電気化学装置は、複合集電体が有機支持層と有機支持層に設けられた金属導電層とを含み、複合集電体の脆性パラメータCが0.01≦C≦0.5であることにより、複合集電体が適切な靭性有し、複合集電体が良好な力学的性能及び機械的性能を有するよう確保し、電気化学装置の生産加工及び動作過程で破断して破壊されることなく一定の変形に耐えることができ、これは、複合集電体の加工可能な性能及び使用過程での安定性の向上に有利であり、その製造及び使用過程での破損又は亀裂の生成を効果的に防止するため、複合集電体とそれを用いた電極シート及び電気化学装置との製造過程での良品率及び使用中の信頼性を顕著に向上させる。複合集電体の脆性パラメータCを上記範囲内にすることで、さらに複合集電体の良好な導電及び集電の性能を確保したため、電気化学装置が良好な電気化学的特性を有するのに有利である。また、本願の実施例の複合集電体を使用すると、さらに、電気化学装置の重量エネルギー密度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本願の実施例の技術案をより明確に説明するために、本願の実施例に用いられている図面を簡単に説明するが、当業者にとっては、創造的な労力を必要とせず、これらの図面に基づいて他の図面を得ることも可能である。
【0011】
図1】本願の一実施例に係る複合集電体の概略構成図である。
図2】本願の他の実施例に係る複合集電体の概略構成図である。
図3】本願の他の実施例に係る複合集電体の概略構成図である。
図4】本願の他の実施例に係る複合集電体の概略構成図である。
図5】本願の他の実施例に係る複合集電体の概略構成図である。
図6】本願の一実施例に係る電極シートの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本願の発明の目的、技術案及び有益な技術的効果をより明確にするために、実施例を参照して本願をさらに詳細に説明する。なお、本明細書に記載された実施例は、単に本出願を解釈するためのものであり、本出願を限定するためのものではないことと理解すべきである。
【0013】
簡単のために、本明細書はいくつかの数値範囲のみを具体的に開示した。しかしながら、任意の下限は任意の上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができ、任意の下限は他の下限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができ、同様に、任意の上限は任意の他の上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができる。また、各単独で開示された点又は単一の数値自身は下限又は上限として任意の他の点又は単一の数値と組み合わせるか又は他の下限又は上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができる。
【0014】
本明細書の説明において、説明すべきことは、特に説明しない限り、「以上」、「以下」は対象となる数字を含み、「一種類又は複数種類」における「複数種類」の意味は二種類及び二種類以上である。
【0015】
本願の上記発明の概要は、本願における各開示された実施形態や各種類の実現形態を記述することを意図するものではない。以下、本実施形態をより具体的に例示する。本願全文の複数の箇所で、一連の実施例によりガイダンスを提供したが、これらの実施例は様々な組み合わせ形式で使用することができる。各実施例において、列挙は、代表的なグループのみを挙げており、網羅するものと解釈すべきではない。
【0016】
〔複合集電体〕
本願の実施例の第1の態様は、複合集電体10を提供する。図1は、本願の実施例に係る複合集電体10の概略構成図である。図1を参照すると、複合集電体10は、積層設置された有機支持層101及び金属導電層102を含む。
【0017】
有機支持層101の厚さ方向において対向する第1面101a及び第2面101bを有し、金属導電層102は、有機支持層101の第1面101a及び第2面101bに設けられている。
【0018】
なお、金属導電層102は、有機支持層101の第1面101a及び第2面101bのいずれか一つに設けられていてもよく、例えば、金属導電層102は、有機支持層101の第1面101aに設けられてもよく、勿論、金属導電層102は、有機支持層101の第2面101bに設けられてもよい。
【0019】
また、複合集電体10の脆性パラメータCは、0.01≦C≦0.5である。
【0020】
本明細書において、複合集電体10の脆性パラメータCは、式1によって算出することができる。
C=(T×D)/(T×D)……式1
式1において、Tは、金属導電層102の引張強度であり、Dは、金属導電層102の厚さであり、Tは、有機支持層101の引張強度であり、Dは、有機支持層101の厚さである。
【0021】
上記式1は、有機支持層101の少なくとも一つの表面に金属導電層102が設けられた複合集電体10に適応することができ、特に、有機支持層101における対向する二つの表面にそれぞれ金属導電層102が設けられた複合集電体10に適応し、さらに特に、有機支持層101における二つの表面にそれぞれ金属導電層102が設けられ、且つ両側の金属導電層102の厚さが同一であるか又は実質的に同一である複合集電体10に適応している。前述の実質的に同一とは、両側の金属導電層102の厚さの差が10%を超えず、例えば、10%、9%、8%、7%、6%、5%、3%、2%、1%を超えないことを示す。
【0022】
いくつかの実施例において、上記「金属導電層102の厚さD」とは、有機支持層101の片側の金属導電層102の厚さを指す。
【0023】
他のいくつかの実施例において、上記「金属導電層102の厚さD」とは、有機支持層101の両側の金属導電層102の平均厚さを指し、即ち、有機支持層101の両側の金属導電層102の厚さの合計の半分である。
【0024】
例えば、有機支持層101の片面に金属導電層102が設けられた複合集電体10について、上記「金属導電層102の厚さD」とは、有機支持層101の片面の金属導電層102の厚さを指す。有機支持層101における対向する二つの表面にそれぞれ金属導電層102が設けられ、且つ両側の金属導電層102の厚さが同一又は実質的に同一である複合集電体10について、上記「金属導電層102の厚さD」とは、有機支持層101の片面の金属導電層102の厚さ又は有機支持層101の両側の金属導電層102の平均厚さを指す。有機支持層101における対向する二つの表面にそれぞれ金属導電層102が設けられ、且つ両側の金属導電層102の厚さの差が10%を超える複合集電体10について、上記「金属導電層102の厚さD」とは、有機支持層101の両側の金属導電層102の平均厚さを指す。このようにすると、式1により良く適応される。
【0025】
本分野の周知の機器及び方法によって、金属導電層102の引張強度T及び有機支持層101の引張強度Tを測定することができ、例えば、アメリカINSTRON3365型ユニバーサル実験用テンショナを使用して測定を行うことができる。金属導電層102の引張強度T及び有機支持層101の引張強度Tは、同じ方法で測定することができるため、有機支持層101の引張強度Tの測定を例として説明する。有機支持層101をストリップ状のサンプルに切断し、例えば幅が15mm且つ長さが150mmであるサンプルに切断した後、サンプルをユニバーサル実験用テンショナの対向する二つの治具の間に取り付け、初期長さを50mmとし、サンプルが破断されて引張が停止するまで、5mm/minの引張速度で引張試験を行い、サンプルが破断される際の最大引張力Fを記録し、T=F/Sに従って算出して有機支持層101の引張強度Tを取得する。ここで、Sは、サンプルの初期横断面積であって、サンプルの幅とサンプルの厚さとの積で算出され、前述のサンプルの厚さが有機支持層101の厚さDである。
【0026】
金属導電層102の厚さD及有機支持層101の厚さDは、本分野の周知の機器及び方法で測定することができ、例えば、マイクロメーターを使用することができる。
【0027】
本願の実施例の複合集電体10が、有機支持層101と、有機支持層101に設けられた金属導電層102とを含み、複合集電体10の脆性パラメータCが0.01≦C≦0.5であることにより、複合集電体10は適切な靭性を有し、複合集電体10が良好な力学的性能及び機械的性能を有することを確保し、電気化学装置の生産加工及び動作過程で破断して破壊されることなく一定の変形に耐えることができ、これは、複合集電体10の加工可能な性能及び使用過程での安定性の向上に有利であり、その製造及び使用過程での破損又は亀裂の生成を効果的に防止するため、複合集電体10とそれを用いた電極シート30(図6に示す)及び電気化学装置との製造過程での良品率及び使用中の信頼性を顕著に向上させる。
【0028】
複合集電体10が電気化学装置の生産加工及び動作過程で破断又は亀裂が発生しくいことは、一方で、複合集電体10の導電及び集電の性能の効果的な発揮を確保し、他方で、活物質層20(図6に示す)の破断又は亀裂を防止し、その内部の導電ネットワークの連続性を維持することができ、これは、活物質層20の性能の効果的な発揮を確保している。そのため、本願の実施例を用いた複合集電体10は、電気化学装置の使用寿命の向上に有利である。
【0029】
同時に、複合集電体10の脆性パラメータCを上記範囲内にすることは、さらに、複合集電体10が良好な導電及び集電の性能を有することを確保し、電極シート30及び電気化学装置が低い抵抗を有するのに有利であり、電極の分極を減少して、電気化学装置が高い電気化学的特性を有するようにし、ここで、電気化学装置は、高い倍率性能及びサイクル性能を有する。
【0030】
また、有機支持層101の密度が金属の密度より小さく、電気化学装置の重量の減少に有利であるため、電気化学装置のエネルギー密度はさらに改善される。
【0031】
いくつかの選択可能な実施例において、複合集電体10の脆性パラメータC的上限値は、0.5、0.48、0.45、0.42、0.4、0.38、0.36、0.35、0.32、0.3、0.28、0.25から選択することができ、下限値は、0.01、0.05、0.08、0.1、0.12、0.15、0.17、0.19、0.2、0.22から選択することができる。複合集電体10の脆性パラメータCの範囲は、前述の任意の上限値と任意の下限値との組み合わせにより形成されてもよいし、任意の上限値と任意の他の上限値との組み合わせにより形成されてもよいし、任意の下限値と任意の他の下限値との組み合わせにより形成されてもよい。
【0032】
好ましくは、複合集電体10の脆性パラメータCは、0.1~0.3である。当該複合集電体10は、上記効果をより良好に発揮することができる。実際の適応において、脆性パラメータCが低いと、通常の状況で、有機支持層101の厚さが厚くなるか、金属導電層102の厚さが薄くなるが、前者は、電気化学装置のエネルギー密度の改善に不利であり、後者は、複合集電体10及び電極シート30の過電流能力に影響を与えてしまう。複合集電体10の脆性パラメータCは、好ましくは0.1~0.3であり、これは、電気化学装置のエネルギー密度をより良好に改善し、複合集電体10及び電極シート30が高い過電流能力を有するよう確保することができ、このような複合集電体10を用いた電気化学装置は、総合性能がより良好である。
【0033】
本願の実施例の複合集電体10において、金属導電層102の引張強度Tは、好ましくは150MPa≦T≦500MPaであり、より好ましくは200MPa≦T≦350MPaである。金属導電層102の引張強度を上記範囲内にすると、複合集電体10が高い力学的性能を有するのにさらに有利であり、破断又は亀裂が発生しにくく、電気化学装置の使用寿命を向上させることができる。また、複合集電体10が良好な力学的性能、機械的性能及び導電集電性能を有するようさらに確保するため、電気化学装置の倍率性能及びサイクル性能を向上させることができる。
【0034】
本願の実施例の複合集電体10において、金属導電層102の厚さDは、30nm≦D≦3μmであることが好ましい。
【0035】
本願の実施例の複合集電体10は、薄い厚さの金属導電層102を有機支持層101の表面に設置するため、従来の金属集電体(如アルミニウム箔、銅箔等)に比べて、複合集電体10の重量を顕著に減少させることができ、これにより、電気化学装置の重量の減少に有利であり、電気化学装置のエネルギー密度を顕著に向上させることができる。
【0036】
また、金属導電層102の厚さDは、30nm≦D≦3μmであることが好ましく、これにより、金属導電層102が良好な導電性能を有し、複合集電体10の良好な導電及び集電の性能を確保するのに有利であるため、電気化学装置の性能を向上させる。そして、金属導電層102を加工中及び使用中に破断しにくくし、複合集電体10に高い破断靭性を持たせ、複合集電体10が良好な機械的安定性及び動作安定性を有することを確保している。なお、金属導電層102の厚さDが上記範囲内にあると、電気化学装置に釘刺し等の異常が発生した場合に、金属導電層102に発生するバリが小さくなるので、発生した金属バリが対電極に接触するリスクを低減し、さらに、電気化学装置の安全性能を改善することができる。
【0037】
いくつかの選択可能的な実施例において、金属導電層102の厚さDの上限は、3μm、2.5μm、2μm、1.8μm、1.5μm、1.2μm、1μm、900nm、750nm、450nm、250nm、100nmから選択することができ、下限は、1.6μm、1μm、800nm、600nm、400nm、300nm、150nm、100nm、80nm、30nmから選択することができ、金属導電層102の厚さDの範囲は、前述の任意の上限値と任意の下限値との組み合わせにより形成されてもよいし、任意の上限値と任意の他の上限値との組み合わせにより形成されてもよく、任意の下限値と任意の他の下限値との組み合わせにより形成されてもよい。
【0038】
より好ましくは、金属導電層102の厚さDは、300nm≦D≦2μmである。より好ましくは、金属導電層102の厚さDは、500nm≦D≦1.5μmである。より好ましくは、金属導電層102の厚さDは、800nm≦D≦1.2μmである。
【0039】
本願の実施例の複合集電体10において、金属導電層102は、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、銅、銅合金、チタン及銀のうちの一種類又は複数種類を含んでもよい。
【0040】
いくつかの実施例において、金属導電層102は、アルミニウム又はアルミニウム合金を含み、前述のアルミニウム合金は、アルミニウム元素の重量百分含有量が80wt%以上であることが好ましく、90wt%以上であることがより好ましい。
【0041】
さらに、例えば、金属導電層102は、銅又は銅合金を含み、前述の銅合金における銅元素の重量百分含有量は、80wt%以上であることが好ましく、90wt%以上であることがより好ましい。
【0042】
本願の実施例の複合集電体10は、有機支持層101の引張強度Tが100MPa≦T≦400MPaであることが好ましく、150MPa≦T≦300MPaであることがより好ましい。有機支持層101の引張強度が上記範囲内にあると、複合集電体10が良好な力学的性能を有するのに有利であり、破断又は亀裂が発生しにくい。また、有機支持層101の過度な延伸又は変形を防止することができるため、金属導電層102の破損又は亀裂を効果的に防止すると同時に、有機支持層101と金属導電層102とが高い結合強度を有するようにし、金属導電層102を剥離しにくくする。そのため、このような複合集電体10は、電気化学装置の使用寿命及びサイクル性能の向上に有利である。
【0043】
有機支持層101の引張強度を上記範囲内にすることで、有機支持層101は金属導電層102に対して良好な支持作用を果たすことができる。
【0044】
本願の実施例の複合集電体10は、有機支持層101のヤング率EがE≧2GPaであることが好ましく、これにより、有機支持層101は剛性を有し、金属導電層102に対する有機支持層101の高い支持作用を満たして、複合集電体10の全体的強度を確保するだけでなく、有機支持層101が複合集電体10の加工過程で過度に延伸又は変形しないようにし、さらに、有機支持層101及び金属導電層102の破損をより効果的に防止すると同時に、有機支持層101と金属導電層102との間の結合強度がより高くなって、金属導電層102が剥離しにくくなり、複合集電体10の機械的安定性及び動作安定性を向上させるため、電気化学装置の性能が向上させる。
【0045】
さらに、有機支持層101のヤング率Eは、2GPa≦E?≦20Gpaであることが好ましく、例えば、2GPa、3GPa、4GPa、5GPa、6GPa、7GPa、8GPa、9GPa、10GPa、11GPa、12GPa、13GPa、14GPa、15GPa、16GPa、17GPa、18GPa、19GPa、20GPaである。このような有機支持層101は、適切な剛性及び適切な靭性を両立させ、有機支持層101及びそれを用いた複合集電体10の加工過程での巻回時の柔軟性を確保する。
【0046】
有機支持層101のヤング率Eは、当技術分野で既知の方法によって測定することができる。一例として、有機支持層101を15mm×200mmのサンプルに切断し、マイクロメーターを利用してサンプルの厚さh(μm)を測定し、常温常圧(25℃、0.1MPa)下で、高速レールテンショナを用いて引張試験を行う。初期位置を設定して治具間のサンプルの長さを50mmに設定し、引張速度が5mm/minであり、破断になるまで引張った際の負荷L(N)、装置の変位y(mm)を記録すると、応力ε(GPa)=L/(15×h)、ひずみη=y/50であり、応力-ひずみ曲線を描き、初期線形領域の曲線を取ると、当該曲線の勾配がヤングEである。
【0047】
本願の実施例の複合集電体10において、有機支持層101の厚さDは、1μm≦D≦30μmである。有機支持層101の厚さDが1μm以上であると、有機支持層101は、比較的に高い機械的強度を有し、加工中や使用中に破断しにくく、金属導電層102に対して良好な支持及び保護の作用を果たし、複合集電体10の機械的安定性及び動作安定性を向上させる。有機支持層101の厚さDが30μm以下であると、電気化学装置が比較的に小さい体積及び比較的に低い重量を有するのに有利であるため、電気化学装置の体積エネルギー密度及び重量エネルギー密度を向上させる。
【0048】
いくつかの選択可能的な実施例において、有機支持層101の厚さDの上限値は、30μm、25μm、20μm、18μm、15μm、12μm、10μm、8μmから選択することができ、下限値は、1μm、1.5μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、9μm、16μmから選択することができる。有機支持層101の厚さDの範囲は、前記の任意の上限値と任意の下限値との組み合わせにより形成されてもよいし、任意の上限値と任意の他の上限値との組み合わせにより形成されてもよいし、任意の下限値と任意の他の下限値との組み合わせにより形成されてもよい。
【0049】
より好ましくは、有機支持層101の厚さDは、1nm≦D≦20μmである。さらに好ましくは、有機支持層101の厚さDは、1μm≦D≦15μmである。さらに好ましくは、有機支持層101の厚さDは、2μm≦D≦10μmである。さらに好ましくは、有機支持層101の厚さDは、2μm≦D≦8μmであり、より好ましくは、2μm≦D≦6μmである。
【0050】
本願の実施例の複合集電体10において、有機支持層101が高分子材料及び高分子系複合材料のうちの一種類又は複数種類を用いている。
【0051】
上記高分子材料としては、例えば、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリイン系、シロキサンポリマー、ポリエーテル系、ポリアルコール系、ポリスルホン系、多糖類ポリマー、アミノ酸系ポリマー、ポリ窒化硫黄系、芳香環ポリマー、芳香族複素環ポリマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、それらの誘導体、それらの架橋物、及びそれらの共重合体のうちの一種類又は複数種類である。
【0052】
さらに、前記高分子材料は、例えば、ポリカプロラクタム(ナイロン6とも呼ばれる)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66とも呼ばれる)、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)、ポリメタフェニレンイソフタルアミド(PMIA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレンゴム(PPE)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTEE)、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(PSS)、ポリアセチレン(Polyacetylene、PAと略称)、シリコーンゴム(Silicone rubber)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリフェニレンエーテル(PPO)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリエチレングリコール(PEG)、セルロース、デンプン、タンパク質、ポリフェニル、ポリピロール(PPy)、ポリアニリン(PAN)、ポリチオフェン(PT)、ポリピリジン(PPY)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、それらの誘導体、それらの架橋体、及びそれらの共重合体のうちの一種類又は複数種類である。
【0053】
上記高分子系複合材料としては、上記高分子材料と添加剤とを含むものであってもよく、添加剤は、金属材料及び無機非金属材料のうちの一種類又は複数種類であってもよい。
【0054】
上記金属材料添加剤は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、鉄、鉄合金、銀及び銀合金のうちの一種類又は複数種類であってもよい。
【0055】
上記無機非金属材料添加剤は、例えば、炭素系材料、酸化アルミニウム、シリカ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ホウ素、ケイ酸塩及び酸化チタンのうちの一種類又は複数種類であり、さらに、例えば、ガラス材料、セラミック材料及びセラミック複合材料のうちの一種類又は複種である。炭素系材料添加剤は、例えば、黒鉛、超電導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノファイバー等のうちの一種類又は複数種類である。
【0056】
上記添加剤としては、金属材料で被覆される炭素系材料であってもよく、例えばニッケルで被覆される黒鉛粉及びニッケルで被覆される炭素繊維のうちの一種類又は複数種類であってもよい。
【0057】
好ましくは、有機支持層101としては、絶縁性高分子材料及び絶縁性高分子系複合材料のうちの一種類又は複数種類を使用している。このような有機支持層101は、体積抵抗率が高いため、電気化学装置の安全性能の向上に有利である。
【0058】
さらに、有機支持層101は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(PSS)及びポリイミド(PI)のうちの一種類又は複数種類を含む。
【0059】
本願の実施例の複合集電体10は、有機支持層101が単層構造であってもよいし、2層、3層、4層等の2層以上の複合層構造であってもよい。
【0060】
図2は、本願の実施例に係る他の複合集電体10の概略構成図である。図2を参照すると、有機支持層101は、第1のサブレイヤ1011、第2のサブレイヤ1012及び第3のサブレイヤ1013が積層設置された複合層構造である。複合層構造の有機支持層101は、対向する第1面101aと第2面101bとを有し、金属導電層102は、有機支持層101の第1面101aと第2面101bとに積層設置されている。勿論、金属導電層102は、有機支持層101の第1面101aのみに設けられていてもよいし、有機支持層101の第2面101bのみに設けられていてもよい。
【0061】
有機支持層101が2層以上の複合層構造である場合、各のサブレイヤの材料は同一であってもよく、異なってもよい。
【0062】
本発明者らは、鋭意研究により、特に有機支持層101の厚さDが10μmを超えず、より特に8μmを超えない場合、複合集電体10の脆性パラメータが複合集電体10の力学的性能及び機械的性能にとってより重要なパラメータであり、複合集電体10の加工性、製造の良品率、使用の信頼性等に大きく影響することを見出した。
【0063】
本願の実施例の複合集電体10は、選択的に、保護層103をさらに含んでもよい。図3乃至図5を参照すると、金属導電層102は、自身の厚さ方向において対向する2つの表面を有し、保護層103は、金属導電層102の2つの表面のいずれか一つ又は両方に積層設置されて、金属導電層102を保護し、金属導電層102の化学的腐食や機械的破壊等の損害を防止し、複合集電体10の動作安定性及び耐用年数を確保できるため、電気化学装置が高い安全性能及び電気化学的性能を有するのに有利である。また、保護層103は、複合集電体10の強度を高めることもできる。
【0064】
なお、図3図5には、有機支持層101の片面に金属導電層102が形成されており、金属導電層102の自身の厚さ方向において対向する2つの面の一つ又は両方に保護層103を有している実施例が図示されているが、他の実施例では、有機支持層101の対向する両面にそれぞれ金属導電層102を有していてもよく、任意の一つの金属導電層102の自身の厚さ方向において対向する2つの表面の一つ又は両方に保護層103を有していてもよく、2つの金属導電層102の自身の厚み方向において対向する2つの表面の一つ又は両方に保護層103を有していてもよい。
【0065】
保護層103は、金属、金属酸化物及び導電性カーボンのうちの一種類又は複数種類を含む。
【0066】
上記金属は、例えば、ニッケル、クロム、ニッケル系合金及び銅系合金のうちの一種類又は複数種類である。上記ニッケル系合金は、純ニッケルを基質として一種類又は複数種類の他の元素を添加してなる合金であり、好ましくはニッケルクロム合金である。ニッケルクロム合金は、金属ニッケルと金属クロムからなる合金であり、選択可能に、ニッケルクロム合金におけるニッケルとクロムとの重量比は、1:99~99:1、例えば9:1である。上記銅系合金は、純銅を基質として一種類又は複数種類の他の元素を添加してなる合金であり、好ましくはニッケル銅合金である。選択可能に、ニッケル銅合金におけるニッケルと銅との重量比は、1:99~99:1、例えば9:1である。
【0067】
上記金属酸化物は、例えば、酸化アルミニウム、酸化コバルト、酸化クロム及び酸化ニッケルのうちの一種類又は複数種類である。
【0068】
上記導電性カーボンは、例えば、黒鉛、超電導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの一種類又は複数種類であり、さらに、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、アセチレンブラック及びグラフェンのうちの一種類又は複数種類である。
【0069】
いくつかの例として、図3を参照すると、複合集電体10は、積層設置された有機支持層101、金属導電層102及び保護層103を含む。有機支持層101の厚さ方向において、対向する第1面101a及び第2面101bを有し、金属導電層102は、有機支持層101の第1面101a及び第2面101bの少なくとも一つに積層設置され、保護層103は、金属導電層102における有機支持層101に背向する表面に積層設置されている。
【0070】
金属導電層102における有機支持層101に背向する表面には、保護層103(以下、上部保護層と略称)が設けられて、金属導電層102に対して化学的腐食や機械的破壊を防止する保護作用を発揮し、複合集電体10と活物質層20との間の界面を改善し、複合集電体10と活物質層20との結合力を向上させることもできる。上部保護層が金属保護層又は金属酸化物保護層である場合、上記効果をより良く発揮することができる。
【0071】
さらに、複合集電体10の上部保護層は、金属酸化物保護層であることが好ましく、例えば、酸化アルミニウム、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化クロム等であり、金属酸化物保護層の硬度及び机械的強度が高く、比表面積がより大きく、耐食性がより良好であるため、金属導電層102をより良好に保護することができる。
【0072】
複合集電体10が負極集電体として使用される場合、上部保護層は金属保護層であってもよく、金属保護層は、複合集電体10の導電性能を向上させ、電池の分極を低減させることができ、負極のリチウム析出のリスクを低減させ、リチウムイオン二次電池のサイクル性能及び安全性能を向上させることができる。2層保護層であることがより好ましく、即ち、一層の金属保護層と一層の金属酸化物保護層とで複合層を形成し、ここで、好ましくは、金属保護層は、導電層102における有機支持層101に背向する表面に設置され、金属酸化物保護層は、金属保護層における有機支持層101に背向する表面に設置され、これにより、負極集電体の導電性能、耐食性、及び金属導電層102と負極活物質層との間の界面等を同時に改善し、より良好な総合性能の負極集電体を取得することができる。
【0073】
複合集電体10が正極集電体として使用される場合、上部保護層は金属酸化物保護層であることが好ましく、上記技術効果を有する以外にも、金属酸化物保護層は、正極集電体の釘刺し安全性能をより良好に改善することができる。
【0074】
他の例として、図4を参照すると、複合集電体10は、積層設置された有機支持層101、金属導電層102及び保護層103を含む。有機支持層101の厚さ方向において、対向する第1面101a及び第2面101bを有し、金属導電層102は、有機支持層101の第1面101a及び第2面101bの少なくとも一つに積層設置され、保護層103は、金属導電層102における有機支持層101に面する表面に積層設置されている。
【0075】
金属導電層102における有機支持層101に面する表面には、保護層103(以下、下部保護層と略称)が設けられており、下部保護層は、金属導電層102に対して化学的腐食や機械的損傷を防止する作用を発揮するとともに、金属導電層102と有機支持層101との結合力を高め、金属導電層102と有機支持層101との分離を防止し、金属導電層102に対する支持保護作用を高めることができる。
【0076】
選択可能に、下部保護層は金属酸化物又は金属保護層であり、金属酸化物保護層の耐食性が高く、その比表面積が大きいため、金属導電層102と有機支持層101との界面結合力をさらに高めることができることにより、下部保護層が金属導電層102に対して保護作用を発揮するようにし、リチウムイオン二次電池の性能を向上させ、また、金属酸化物保護層の硬度がより高く、机械的強度がより良好であるため、複合集電体10の強度の向上にさらに有利である。金属保護層が導電層102に対して化学的腐食や機械的破壊の防止の保護作用を果たすと同時に、複合集電体10の導電性能を向上させ、電池の分極を減少させ、負極のリチウム析出のリスクを低減させ、リチウムイオン二次電池のサイクル性能及び安全性能を向上させることができる。複合集電体10が正極集電体として使用される場合、下部保護層は、金属酸化物保護層であることが好ましい。複合集電体10が負極集電体として使用される場合、下部保護層は、金属保護層であることが好ましい。
【0077】
さらに別の例として、図5を参照すると、複合集電体10は、積層設置された有機支持層101、金属導電層102及び保護層103を含む。有機支持層101の厚さ方向において、対向する第1面101a及び第2面101bを有し、金属導電層102は、有機支持層101の第1面101a及び第2面101bの少なくとも一つに積層設置され、保護層103は、金属導電層102における有機支持層101に背向する表面及び有機支持層101に面する表面に積層設置されている。
【0078】
金属導電層102の二つの表面にはいずれにも保護層103が設けられていることにより、金属導電層102をより十分に保護して、複合集電体10に高い総合性能を持たせている。
【0079】
なお、金属導電層102の二つの表面における保護層103は、その材料が同一であってもよいし、異なってもよく、その厚さが同一であってもよいし、異なってもよい。
【0080】
好ましくは、保護層103の厚さDは、1nm≦D≦200nmであり、且つ、D≦0.1Dである。保護層103が薄すぎると、金属導電層102を保護することができず、厚すぎると、電気化学装置のエネルギー密度が低下してしまう。
【0081】
いくつかの実施例において、保護層103の厚さDの上限値は、200nm、180nm、150nm、120nm、100nm、80nm、60nm、55nm、50nm、45nm、40nm、30nm、20nmであってもよく、下限値は、1nm、2nm、5nm、8nm、10nm、12nm、15nm、18nmであってもよい。保護層103の厚さDの範囲は、上記任意の上限値と任意の下限値との組み合わせにより形成されてもよいし、任意の上限値と任意の他の上限値との組み合わせにより形成されてもよいし、任意の下限値と任意の他の下限値との組み合わせにより形成されてもよい。
【0082】
より好ましくは、保護層103の厚さDは、5nm≦D≦200nmであり、より好ましくは、10nm≦D≦200nmである。
【0083】
上記「保護層103の厚さD」とは、導電層102の片側に位置する保護層103の厚さである。即ち、上部保護層の厚さDは、1nm≦D≦200nm、且つ、D≦0.1Dであり、好ましくは5nm≦D≦200nmであり、より好ましくは10nm≦D≦200nmである。下部保護層の厚さDは、1nm≦D≦200nm、且つ、D≦0.1Dであり、好ましくは5nm≦D≦200nmであることが、より好ましくは10nm≦D≦200nmである。
【0084】
導電層102の二つの表面のいずれにも保護層103が設けられている場合、即ち、複合集電体10が上部保護層及び下部保護層を含む場合、好ましくは、D>Dであり、上部保護層と下部保護層とが協働して金属導電層102に対して化学的腐食や機械的損傷を防止する保護作用を果たすとともに、電気化学装置のエネルギー密度を向上させるのに有利である。より好ましくは、0.5D≦D≦0.8Dであり、上部保護層及び下部保護層の相乗保護作用をより良好に発揮することができる。
【0085】
なお、複合集電体10の脆性パラメータに対する保護層103の設定の影響は無視することができる。
【0086】
本願の実施例の複合集電体10において、金属導電層102は、例えば、機械的な圧延、接着、気相蒸着法(vapor deposition)、化学メッキ(Electroless plating)、電気メッキ(Electroplating)のうちの少なくとも1つの手段により有機支持層101に形成されていてもよく、好ましくは気相蒸着法及び電気メッキ法であり、即ち、金属導電層102は、好ましくは気相蒸着層又は電気メッキ層である。気相蒸着法又は電気メッキ法によって金属導電層102を有機支持層101上に形成すると、金属導電層102が良好な引張強度Tを有するのに有利であり、金属導電層102と有機支持層101との間に高い結合力を有することができ、複合集電体10の性能を向上させる。
【0087】
上記気相蒸着法は、物理気相蒸着法であることが好ましい。物理気相蒸着法は、蒸着法及びスパッタ法のうちの少なくとも一つが好ましく、蒸着法は、真空蒸着法、熱蒸着法及び電子ビーム蒸着法のうちの少なくとも1つが好ましく、スパッタ法は、マグネトロンスパッタ法が好ましい。
【0088】
一例として、真空蒸着法により金属導電層102を形成することは、真空めっきチャンバ内に表面洗浄処理が施された有機支持層101を配置し、1300℃~2000℃の高温で金属蒸着チャンバ内の金属ワイヤを溶融且つ蒸発し、蒸発後の金属が真空めっきチャンバ内の冷却システムを通過し、最終的に有機支持層101上に蒸着されて、金属導電層102を形成することを含む。
【0089】
保護層103を有する場合、保護層103は、気相蒸着法、インサイチュ形成法、塗布法のうちの少なくとも一つの手段により、金属導電層102に形成されることができる。気相蒸着法は、前述の気相蒸着法であってもよい。インサイチュ形成法では、インサイチュ不動態化法、即ち、金属表面に金属酸化物不動態化層をインサイチュ形成する方法が好ましい。塗布法は、ロールコーティング、押出コートコーティング、ナイフコーティング及びグラビアコーティングのうちの少なくとも一つが好ましい。
【0090】
好ましくは、保護層103は、気相蒸着法及びインサイチュ形成法のうちの少なくとも一つの手段により金属導電層102に形成され、金属導電層102と保護層103との結合力を向上させるのに有利であるため、複合集電体10に対する保護層102の保護作用がより良好に発揮され、複合集電体10の動作性能が確保される。
【0091】
金属導電層102と有機支持層101との間に保護層103(下部保護層)が設けられている場合、まず、有機支持層101に下部保護層を形成してから、下部保護層に金属導電層102を形成してもよい。下部保護層は、気相蒸着法及び塗布法のうちの少なくとも一つの手段により、有機支持層101に形成されてもよく、ここで、気相蒸着法が好ましい。金属導電層102は、機械的な圧延、接着、気相蒸着法、無電解メッキの少なくとも1つの手段により、下部保護層に形成されてもよいが、気相蒸着法が好ましい。
【0092】
前述の任意の一実施例の複合集電体10は、正極集電体及び負極集電体のうちの任意の一つ又は二つと使用されることができる。
【0093】
複合集電体10が正極集電体として使用される場合、金属導電層102は、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン及び銀のうちの一種類又は複数種類を含んでもよく、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金を含み、前述のアルミニウム合金におけるアルミニウム元素の重量百分含有量は、好ましくは80wt%以上であり、より好ましくは90wt%以上である。
【0094】
複合集電体10が負極集電体として使用される場合、金属導電層102は、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン及び銀のうちの一種類又は複数種類を含んでもよく、例えば、銅又は銅合金を含み、前述の銅合金における銅元素の重量百分含有量は、好ましくは80wt%以上であり、より好ましくは90wt%以上である。
【0095】
〔電極シート〕
本願の実施例の第2の態様は、電極シート30を提供し、図6は、本願の実施例に係る電極シート30の概略構成図であり、図6を参照すると、電極シート30は、積層設置された複合集電体10及び活物質層20を含み、複合集電体10は、本願の実施例の第1の態様の複合集電体10である。
【0096】
本願の実施例の第1の態様の複合集電体10を用いることにより、本願の実施例の電極シート30は、高い力学的性能と、高い製造の良品率と、高い使用安全性及び信頼性とを有するとともに、低い重量及び高い電気化学的性能を両立させる。
【0097】
一例として、図6を参照すると、電極シート30は、積層設置された複合集電体10及び活物質層20を含み、複合集電体10は、自身の厚さ方向において、対向する二つの表面を含み、活物質層20は、複合集電体10の二つの表面に積層設置されている。
【0098】
なお、活物質層20は、複合集電体10の二つの表面の任意の一つに積層設置されていてもよい。
【0099】
本願の実施例の電極シート30は、正極シート及び負極シートのうちの任意の一つ又は二つとして使用されることができる。
【0100】
本願の実施例の電極シート30が正極シートとして使用される場合、活物質層20は正極活物質層であり、本分野で既知の、イオンの可逆挿入・脱離が可能な正極活性材料を使用することができ、本願では限定されない。
【0101】
例えばリチウムイオン二次電池に用いられる正極活性材料は、リチウム遷移金属複合酸化物、リチウム遷移金属複合酸化物に他の遷移金属又は非遷移金属又は非金属を添加して得られた複合酸化物のうちの一種類又は複数種類であってもよい。ここで、遷移金属は、Mn、Fe、Ni、Co、Cr、Ti、Zn、V、Al、Zr、Ce及びMgのうちの一種類又は複数種類であってもよい。
【0102】
例として、正極活性材料は、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩のうちの一種類又は複数種類から選択されてもよい。例えば、リチウム遷移金属複合酸化物は、LiMn、LiNiO、LiCoO、LiNi1-yCo(0<y<1)、LiNiCobAl1-a-b(0<a<1、0<b<1、0<a+b<1)、LiMn1-m-nNiCo(0<m<1、0<n<1、0<m+n<1)、LiMPO(Mは、Fe、Mn、Coのうちの一種類又は複数種類であってもよい)及びLi(POのうちの一種類又は複数種類である。
【0103】
選択可能に、正極活物質層は、接着剤を含んでもよく、本願は、接着剤の種類を限定しない。例として、接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水性アクリル樹脂(water-based acrylic resin)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)及びポリビニルブチラール(PVB)のうちの一種類又は複数種類である。
【0104】
選択可能に、正極活物質層は、導電剤を含んでもよく、本願は、導電剤の種類を限定しない。例として、導電剤は、黒鉛、超電導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの一種類又は複数種類である。
【0105】
本願の実施例の電極シート30が負極シートとして使用される場合、活物質層20は負極活物質層であり、本分野で既知の、イオンの可逆挿入・脱離が可能な負極活性材料を使用することができ、本願では限定されない。
【0106】
例えばリチウムイオン二次電池に用いられる負極活性材料は、金属リチウム、天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ(MCMBと略記)、ハードカーボン、ソフトカーボン、シリコン、シリコン-炭素複合体、SiO、Li-Sn合金、Li-Sn-O合金、Sn、SnO、SnO、スピネル構造のチタン酸リチウム及びLi-Al合金のうちの一種類又は複数種類であってよい。
【0107】
選択可能に、活物質層20は、導電剤を含んでもよく、本願は、導電剤の種類を限定しない。例として、導電剤は、黒鉛、超電導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの一種類又は複数種類である。
【0108】
選択可能に、活物質層20は、接着剤を含んでもよく、本願は、接着剤の種類を限定しない。例として、接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水性アクリル樹脂(water-based acrylic resin)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)及びポリビニルブチラール(PVB)のうちの一種類又は複数種類である。
【0109】
電極シート30は、本分野の従来の方法により製造することができ、例えば塗布法を使用することができる。例として、活性材料と選択可能な導電剤及び接着剤とを溶媒で分散させて、均一な電極スラリーを形成し、溶媒は、NMP又は脱イオン水であってもよく、電極スラリーを複合集電体10に塗布して、乾燥等の工程を経た後、電極シート30を取得する。
【0110】
〔電気化学装置〕
本願の実施例の第3の態様は、電気化学装置を提供し、電気化学装置は、正極シート、負極シート及び電解質を含み、ここで、正極シート及び/又は負極シートは、本願の実施例の第2の態様の電極シートである。
【0111】
上記電気化学装置は、リチウムイオン二次電池、リチウム一次電池、ナトリウムイオン電池、マグネシウムイオン電池等であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0112】
電気化学装置が本願の実施例の第2の態様に係る電極シートを用いているため、本願の実施例の電気化学装置は、高いエネルギー密度、倍率性能、サイクル性能及び安全性能を含む総合的な電気化学的性能を有する。
【0113】
本願の実施例の電気化学装置において、電解質としては、固体電解質を用いてもよいし、電解質塩を有機溶媒に分散させた電解液等の非水電解液を用いてもよい。
【0114】
上記電解液において、有機溶媒は、電気化学反応においてイオンを輸送する媒体として、本分野の任意の有機溶媒を用いることができる。電解質塩は、イオンの供給源として、本分野の任意の電解質塩であってよい。
【0115】
例えばリチウムイオン二次電池に用いられる有機溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルカーボネート(EPC)、ブチレンカーボネート(BC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ギ酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル(PA)、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、酪酸メチル(MB)、酪酸エチル(EB)、1,4-ブチロラクトン(GBL)、スルホラン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)、メチルエチルケトン(EMS)及びジエチルスルホン(ESE)のうちの一種類又は複数種類である。
【0116】
例えばリチウムイオン二次電池に用いられる電解質塩は、LiPF(ヘキサフルオロリン酸リチウム)、LiBF(テトラフルオロホウ酸リチウム)、LiClO(過塩素酸リチウム)、LiAsF(ヘキサフルオロヒ酸リチウム)、LiFSI(ジフルオロスルホニルイミドリチウム)、LiTFSI(ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム)、LiTFS(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム)、LiDFOB(ジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウム)、LiBOB(ジシュウ酸ホウ酸リチウム)、LiPO(ジフルオロリン酸リチウム)、LiDFOP(ジフルオロジシュウ酸リン酸リチウム)及びLiTFOP(テトラフルオロシュウ酸リン酸リチウム)のうちの一種類又は複数種類である。
【0117】
電解液は、選択的に、添加剤をさらに含むことができ、添加剤の種類は特に限定されず、実際の需要に応じて選択することができる。例えば、添加剤は、負極成膜添加剤を含んでもよく、正極成膜添加剤を含んでもよく、さらに、電池のいくつかの性能を改善できる添加剤、例えば電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温性能を改善する添加剤、電池の低温性能を改善する添加剤等であってもよい。
【0118】
例としては、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、スクシノニトリル(SN)、アジポニトリル(ADN)、1,3-プロペンスルトン(PST)、トリス(トリメチルシラン)リン酸エステル(TMSP)及びトリス(トリメチルシラン)ホウ酸エステル(TMSB)のうちの一種類又は複数種類である。
【0119】
電気化学装置が電解液を用いる場合、正極シートと負極シートとの間にセパレータを設けて隔離する役割を果たす必要がある。セパレータの種類は特に限定されず、周知の良好な化学的安定性及び機械的安定性を有する多孔質構造のセパレータを任意に選択することができ、例えば、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデンのうちの一種類又は複数種類を使用することができる。セパレータは、単層フィルムであってもよいし、多層複合フィルムであってもよい。セパレータが多層複合フィルムである場合、各層の材料は同一であってもよいし、異なってもよい。
【0120】
上記正極シート、セパレータ、負極シートを順次に積層し、セパレータが正極シートと負極シートの間に位置して隔離の役割を果たすようにして、電気コアを取得してもよく、或いは、巻回することにより電気コアを取得してもよい。電気コアをハウジングに入れ、電解液を注液し、封止して、電気化学装置を製造する。
【実施例
【0121】
下記実施例は、本願が開示した内容をより具体的に説明しており、これらの実施例は説明のためのものに過ぎず、本願が開示した内容の範囲内で様々な修正及び変更を行うことは、当業者にとって明らかである。特別な説明がない限り、以下の実施例に報告された全ての部、百分率、及び比はいずれも重量に基づいて計算され、且つ実施例に使用された全ての試薬はいずれも市販のもであるか又は従来の方法に従って合成して取得されるものであり、且つ、さらに処理する必要がなく直接使用できるものであり、また、実施例に使用された機器はいずれも市販のものである。
【0122】
〔製造方法〕
所定の厚さの有機支持層を選択して表面洗浄処理を行い、表面洗浄処理を行った有機支持層を真空メッキ室内に配置し、1300℃~2000℃の高温で金属蒸発室内の高純度銅線を溶融蒸発させ、蒸発後の金属は真空メッキ室内の冷却システムを経て、最後に有機支持層の二つの表面に蒸着して、銅系導電層を形成する。
【0123】
(従来の負極集電体の製造)
厚さ8μmの銅箔を使用する。
【0124】
(負極シートの製造)
負極活性材料としての黒鉛、導電性カーボンブラック、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、接着剤としてのスチレンブタジエンゴムエマルジョン(SBR)を96.5:1.0:1.0:1.5の重量比で、適量の脱イオン水で十分に攪拌混合させて、均一な負極スラリーを形成し、負極スラリーを負極集電体に塗布して、乾燥等の工程を経た後、負極シートを取得する。
【0125】
(複合正極集電体の製造)
所定の厚さの有機支持層を選択して表面洗浄処理を行い、表面洗浄処理を行った有機支持層を真空メッキ室内に配置し、1300℃~2000℃の高温で金属蒸発室内の高純度アルミニウム線を溶融蒸発させ、蒸発後の金属は真空メッキ室内の冷却システムを経て、最後に有機支持層の二つの表面に蒸着して、銅系導電層を形成する。
【0126】
(従来の正極集電体の製造)
厚さ12μmのアルミニウム箔を使用する。
【0127】
(正極シートの製造)
正極活性材料としてのLiNi1/3Co1/3Mn1/3(NCM333)、導電性カーボンブラック、接着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)を93:2:5の重量比で、適量のN-メチルピロリドン(NMP)溶媒で十分に攪拌混合させて、均一な正極スラリーを形成し、正極スラリーを正極集電体に塗布して、乾燥等の工程を経た後、正極シートを取得する。
【0128】
(電解液の調製)
3:7の体積比のエチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(EMC)とを均一に混合して有機溶媒を取得した後、1mol/LのLiPFを前記有機溶媒で均一に溶解させる。
【0129】
(リチウムイオン二次電池の製造)
正極シート、セパレータ、負極シートを順次に積層設置し、ここで、セパレータは、PP/PE/PP複合フィルムを使用し、その後、電池コアとして巻回し、包装ハウジングに入れ、上記電解液を電池コアに注液し、封止して、リチウムイオン二次電池を取得する。
【0130】
〔試験部分〕
1.集電体試験
1)集電体の脆性パラメータの測定
有機支持層を幅が15mm、且つ長さが150mmであるサンプルにパンチングした後、サンプルをアメリカINSTRON3365型ユニバーサル実験用テンショナの上下二つの治具の間に取り付け、初期長さを50mmとし、サンプルが破断されて引張が停止するまで、5mm/minの引張速度で引張試験を行い、サンプルが破断される際の最大引張力Fを記録し、T=F/Sに従って算出して有機支持層の引張強度Tを取得する。ここで、Sは、サンプルの初期横断面積であって、サンプルの幅とサンプルの厚さ(即ち、有機支持層の厚さD)との積で算出される。
同じ方法で、金属導電層の引張強度Tを測定する。
マイクロメーターを使用して、金属導電層の厚さD及び有機支持層の厚さDを測定する。
複合集電体の脆性パラメータC=(金属導電層の引張強度T×金属導電層の厚さD)/(有機支持層の引張強度T×有機支持層の厚さD)。
【0131】
2)複合集電体の破断伸長率の測定
複合集電体を15mm×200mmのサンプルに切断し、常温常圧(25℃、0.1MPa)下で、高速レールテンショナを用いて引張試験を行う。初期位置を設定して治具間のサンプルの長さを50mmに設定し、引張速度が5mm/minであり、破断になるまで引張った際の装置の変位y(mm)を記録し、最後に、破断伸長率が(y/50)×100%で算出される。
【0132】
2.電池性能試験
(1)サイクル性能試験
45℃下で、リチウムイオン二次電池を1Cの倍率で4.2Vになるまで定電流充電し、さらに電流が0.05C以下になるまで定電圧充電し、さらに1Cの倍率で2.8Vになるまで定電流放電し、これを一つの充放電サイクルとし、今回の放電容量が1回目サイクルの放電容量である。上記の方法を利用してリチウムイオン二次電池に対して1000回充放電サイクルを行い、1000回目サイクルの放電容量を記録し、リチウムイオン二次電池の1C/1Cで1000回サイクル後の容量保持率を算出する。
上記方法によって、リチウムイオン二次電池在45℃下的サイクル性能を測定する。
リチウムイオン二次電池の1C/1Cで1000回サイクル後の容量保持率(%)=1000回目サイクルの放電容量/1回目サイクルの放電容量×100%
【0133】
(2)倍率性能試験
25℃下で、リチウムイオン二次電池を1Cの倍率で4.2Vになるまで定電流充電し、さらに電流が0.05C以下になるまで定電圧充電し、さらに1Cの倍率で3.0Vになるまで定電流放電し、測定によって、リチウムイオン二次電池の1C倍率の放電容量を得る。
25℃下で、リチウムイオン二次電池を1Cの倍率で4.2Vになるまで定電流充電し、さらに電流が0.05C以下になるまで定電圧充電し、さらに4Cの倍率で3.0Vになるまで定電流放電し、測定によって、リチウムイオン二次電池の4C倍率の放電容量を得る。
リチウムイオン二次電池の4C倍率の容量保持率(%)=4C倍率の放電容量/1C倍率の放電容量×100%
【0134】
〔試験結果〕
1.電気化学装置の重量エネルギー密度の改善に対する複合集電体の作用
1)正極集電体が複合集電体である場合、電気化学装置の重量エネルギー密度の改善に対する作用
【0135】
【表1-1】
【0136】
表1-1において、正極集電体の重量百分数とは、正極集電体の単位面積あたりの重量を従来の正極集電体の単位面積あたりの重量で割って得られた百分率を指す。
【0137】
複合集電体を用いた正極集電体は、従来のアルミニウム箔正極集電体に比べて、重量が様な程度で減少されているため、電池の重量エネルギー密度を向上させることができる。
【0138】
2)負極集電体が複合集電体である場合、電気化学装置の重量エネルギー密度の改善対する作用
【0139】
【表1-2】
【0140】
表1-2において、負極集電体の重量百分数は、負極集電体の単位面積あたりの重量を従来の負極集電体の単位面積あたりの重量で割って得られた百分率である。
【0141】
複合集電体を用いた負極集電体は、従来の銅箔負極集電体に比べて、重量が様な程度で減少されているため、電池の重量エネルギー密度を向上させることができる。
【0142】
2.複合集電体及び電気化学装置の電気化学的性能に対する保護層の作用
【0143】
【表2-1】
【0144】
表2-1において、「*」は、表1-1の正極集電体7を基に保護層を設置することを示し、「**」は、表1-1の正極集電体3を基に保護層を設置することを示す。
【0145】
【表2-2】
【0146】
表2-2から分かるように、正極集電体が複合集電体である電池は、サイクル寿命が良好であり、従来の正極集電体を用いた電池のサイクル性能に相当する。これは、本願の実施例の複合集電体を使用する正極集電体が正極シート及び電池の電気化学的性能に顕著な悪影響がないことを説明する。特に、保護層が設けられた複合集電体により製造された電池は、1C/1Cで1000回サイクル後の容量保持率がさらに向上され、電池の信頼性がより良好であることを示している。
【0147】
【表2-3】
【0148】
表2-3における負極集電体は、表1-2における負極集電体7を基に保護層を設置することを示す。
表2-3におけるニッケル系合金は、90wt%のニッケル及び10wt%のクロムを含有する。
表2-3における2層保護層は、導電層における有機支持層に背向する表面に設けられ、且つ厚さが25nmであるニッケル保護層と、ニッケル保護層における有機支持層に背向する表面に設けられ、且つ厚さが25nmである酸化ニッケル保護層と、を含む。
【0149】
【表2-4】
【0150】
表2-4における電池は、いずれも従来の正極シートを使用する。
【0151】
表2-4から分かるように、負極集電体が複合集電体である電池は、サイクル寿命及び倍率性能が良好であり、従来の正極集電体、従来の負極集電体を用いた電池のサイクル性能及び倍率性能に相当する。これは、本願の実施例を用いた複合集電体が電池の電気化学的特性に著しい悪影響を及ぼさないことを示す。特に、保護層が設けられた複合集電体により製造された電池は、45℃、1C/1Cで1000次回サイクル後の容量保持率及び4C倍率の容量保持率がさらに向上され、電池の信頼性がより良好であることを示している。
【0152】
3.複合集電体の脆性パラメータ及びそれが複合集電体の力学的性能に対する影響
【0153】
【表3-1】
【0154】
【表3-2】
【0155】
表3-1及び表3-2の結果から分かるように、複合集電体の脆性パラメータを0.01~0.5とすることにより、複合集電体の破断伸長率を改善し、複合集電体の破断伸長率が2%以上であり、さらに3%以上であり、複合集電体が高い力学的性能及び機械的性能を有するよう確保し、電気化学装置の生産加工及び動作過程で破断して破壊されることなく一定の変形に耐えることができ、これは、複合集電体の加工可能な性能及び使用過程での安定性の向上に有利であり、その製造及び使用過程での破損又は亀裂の生成を効果的に防止するため、複合集電体とそれを用いた電極シート及び電気化学装置との製造過程での良品率及び使用中の信頼性を顕著に向上させる。
【0156】
前述の説明は、本願の具体的な実施形態に過ぎず、本願の保護範囲はこれに限定されるものではなく、当業者は本願に開示の技術的範囲内で、様々な均等な修正又は置換を容易に想到でき、これらの修正又は置換はいずれも本願の保護範囲内に含まれるべきである。したがって、本願の保護範囲は、請求の範囲の保護範囲を基準とすべきである。
【符号の説明】
【0157】
10 負極集電体
101 有機支持層
101a 第1面
101b 第2面
1011 第1のサブレイヤ
1012 第2のサブレイヤ
1013 第3のサブレイヤ
102 金属導電層
103 保護層
20 活物質層
30 電極シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】