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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(54)【発明の名称】回折バックライト製造方法
(51)【国際特許分類】
   F21V 8/00 20060101AFI20220629BHJP
   F21V 9/14 20060101ALI20220629BHJP
   G02B 6/00 20060101ALI20220629BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20220629BHJP
   F21Y 115/15 20160101ALN20220629BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20220629BHJP
【FI】
F21V8/00 100
F21V9/14
F21V8/00 340
G02B6/00 331
F21Y115:10
F21Y115:15
F21Y115:30
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564232
(86)(22)【出願日】2020-04-25
(85)【翻訳文提出日】2021-12-21
(86)【国際出願番号】 US2020029987
(87)【国際公開番号】W WO2020223135
(87)【国際公開日】2020-11-05
(31)【優先権主張番号】62/839,736
(32)【優先日】2019-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514274546
【氏名又は名称】レイア、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】LEIA INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100126354
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 尚
(72)【発明者】
【氏名】フークマン,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ファタル,デイヴィッド エー.
(72)【発明者】
【氏名】マ,ミン
(72)【発明者】
【氏名】ペン,ジェン
【テーマコード(参考)】
2H038
3K244
【Fターム(参考)】
2H038AA55
2H038BA06
3K244AA01
3K244AA02
3K244BA24
3K244BA31
3K244CA01
3K244DA01
3K244DA02
3K244DA03
3K244EA02
3K244EC20
3K244LA02
(57)【要約】
回折バックライトの製造では、回折格子を使用して光ガイドからの光を散乱させ、回折格子と整列する反射アイランドを画成する。回折バックライトを製造する方法は、回折格子を有する光ガイドを供給するステップと、回折格子を使用して光ガイドからの誘導光を回折散乱させてフォトレジストを選択的に露光して、フォトレジストに開口部を設けるステップと、開口部内に反射材料を堆積させて、回折格子と整列する反射アイランドを形成するステップとを含む。回折バックライトの反射回折格子要素は、回折格子と反射アイランドとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回折バックライトを製造する方法であって、
回折格子を有する光ガイドを供給するステップと、
前記回折格子を使用して前記光ガイドからの誘導光を回折散乱させて、前記光ガイドの表面に隣接するフォトレジストを選択的に露光するステップであって、選択的露光により、前記回折格子と整列する前記フォトレジストに開口部を設けるステップと、
反射材料を前記開口部内に堆積させて、前記回折格子と整列する反射アイランドを形成するステップとを含み、
前記回折バックライトの反射回折格子要素が、前記回折格子と前記反射アイランドとの組合せを含む、方法。
【請求項2】
前記回折格子を有する光ガイドを供給するステップが、ナノインプリントモールドを使用して、前記光ガイドの表面をナノインプリントして前記光ガイド表面に前記回折格子を形成するステップを含む、請求項1に記載の回折バックライトを製造する方法。
【請求項3】
前記ナノインプリントモールドを使用して前記光ガイドの表面をナノインプリントするステップが、
前記光ガイドの表面にナノインプリント受容層を塗布するステップと、
前記ナノインプリントモールドを前記ナノインプリント受容層に押し込んで前記回折格子を形成するステップとを含む、請求項2に記載の回折バックライトを製造する方法。
【請求項4】
前記回折格子を使用して前記光ガイドからの誘導光を回折散乱させるステップが、
内部全反射に従って、前記光ガイドの長さに沿って光を誘導光として誘導するステップと、
前記回折格子を使用して、前記光ガイドからの前記誘導光の一部を回折散乱させるステップとを含む、請求項1に記載の回折バックライトを製造する方法。
【請求項5】
前記誘導光が、前記光ガイドの縁部に光学的に接続された光源によって供給される青色光及び紫外線の一方又は両方を含む、請求項4に記載の回折バックライトを製造する方法。
【請求項6】
前記フォトレジストを前記光ガイド表面に塗布し、前記誘導光の回折散乱部分による選択的露光後に前記フォトレジストを現像して前記開口部を設けるステップをさらに含む、請求項1に記載の回折バックライトを製造する方法。
【請求項7】
反射材料を前記開口部内に堆積させて反射アイランドを形成するステップが、
前記フォトレジストの表面上および前記フォトレジストの前記開口部内に前記反射材料の層を堆積させるステップと、
前記フォトレジストをリフトオフして前記開口部内にあった反射材料のみを残すステップとを含む、請求項1に記載の回折バックライトを製造する方法。
【請求項8】
前記光ガイドが、
光ガイド基板と、
前記光ガイド基板の表面上の高屈折率材料の層であって、前記高屈折率材料が、前記光ガイド基板の屈折率より大きい屈折率を有する高屈折率材料の層と、
前記高屈折率材料の屈折率より小さい屈折率を有する低屈折率材料の層であって、前記高屈折率材料が前記低屈折率材料層と前記光ガイド基板との間に挟まれている、低屈折率材料の層とを含み、
光が、前記高屈折率材料層と前記低屈折率材料層との間の界面で、内部全反射によって前記光ガイド内で誘導される、請求項1に記載の回折バックライトを製造する方法。
【請求項9】
前記高屈折率材料が、前記光ガイド基板の前記表面内の前記回折格子の回折特徴部内に延在する、請求項8に記載の回折バックライトを製造する方法。
【請求項10】
前記フォトレジストの前記開口部から前記低屈折率材料層の開口部をエッチングして、前記高屈折率材料層を露出させるステップをさらに含む、請求項8に記載の回折バックライトを製造する方法。
【請求項11】
反射材料を前記開口部内に堆積させて反射アイランドを形成するステップが、
前記フォトレジストの表面上、ならびに前記フォトレジストの前記開口部内および前記低屈折率材料層の前記開口部内に前記反射材料の層を堆積させるステップと
前記フォトレジストをリフトオフして、前記開口部内に及び前記高屈折率材料層の表面上にあった前記反射材料のみを残すステップとを含む、請求項10に記載の回折バックライトを製造する方法。
【請求項12】
前記光ガイドから前記低屈折率材料層を除去するステップをさらに含む、請求項11に記載の回折バックライトを製造する方法。
【請求項13】
前記反射材料が、金属、金属ポリマー、及び高屈折率誘電体のうちの1又はそれ以上を含む、請求項1に記載の回折バックライトを製造する方法。
【請求項14】
回折バックライトの自己整合製造方法であって、
光ガイド内に回折格子を形成するステップと、
前記光ガイドの表面上に低屈折率材料の層を塗布するステップであって、前記低屈折率材料の屈折率が前記光ガイドの屈折率より小さいステップと、
前記低屈折率材料層にフォトレジストを塗布するステップと、
前記回折格子を使用して前記光ガイド内で誘導された光を回折散乱させて、前記フォトレジストに開口部を選択的に設けるステップと、
前記開口部内に反射材料を堆積させて、前記回折格子と整列しかつ前記回折格子に対応する範囲を有する反射アイランドを形成するステップとを含み、
前記回折バックライトの反射回折格子要素が、前記反射アイランドと前記回折格子との組合せを含む、回折バックライトの自己整合製造方法。
【請求項15】
前記低屈折率材料層と前記光ガイドとの間に高屈折率材料の層を塗布するステップをさらに含み、前記高屈折率材料が、前記低屈折率材料の屈折率より大きい屈折率を有する、請求項14に記載の回折バックライトの自己整合製造方法。
【請求項16】
前記回折格子を形成するステップが、ナノインプリントモールドを前記光ガイドの表面に押し込むことによって前記表面に前記回折格子をナノインプリントするステップを含み、前記ナノインプリントモールドが前記回折格子に対応するパターンを有する、請求項14に記載の回折バックライトの自己整合製造方法。
【請求項17】
前記光ガイド内で誘導された光を回折散乱させるステップが、光源を使用して前記光ガイドの縁部に光を導入するステップを含み、前記導入される光が青色光及び紫外線の一方又は両方を含む、請求項14に記載の回折バックライトの自己整合製造方法。
【請求項18】
前記開口部内に反射材料を堆積させるステップが、
前記フォトレジストの表面上および前記フォトレジストの前記開口部内に前記反射材料の層を堆積させるステップと、
前記フォトレジストをリフトオフして前記開口部内にあった前記反射材料のみを残すステップとを含む、請求項14に記載の回折バックライトの自己整合製造方法。
【請求項19】
前記フォトレジストの前記開口部を使用して、前記低屈折率材料層の対応する開口部をエッチングするステップをさらに含み、前記反射材料を前記開口部内に堆積させることにより、前記フォトレジストの前記開口部と前記低屈折率材料層の前記対応する開口部の両方に前記反射アイランドが形成される、請求項18に記載の回折バックライトの自己整合製造方法。
【請求項20】
前記低屈折率材料層を除去するステップをさらに含む、請求項19に記載の回折バックライトの自己整合製造方法。
【請求項21】
前記光ガイドが前記光ガイド表面上に高屈折率材料の層を有し、前記高屈折率材料が前記光ガイドの屈折率より大きい屈折率を有し、前記反射材料を堆積させることにより前記反射材料が前記高屈折率材料層上に堆積される、請求項19に記載の回折バックライトの自己整合製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年4月28日に出願された米国仮特許出願第62/839,736号の優先権を主張し、その全体は参照によって本明細書中に引用するものとする。
【0002】
連邦政府資金による研究開発の記載
適用なし
【背景技術】
【0003】
電子ディスプレイは、ユーザに多種多様なデバイス及び製品の情報を伝達するためのほぼユビキタスな媒体である。最も一般的に見られる電子ディスプレイには、陰極線管(CRT)、プラズマ・ディスプレイ・パネル(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネセンスディスプレイ(EL)、有機発光ダイオード(OLED)及びアクティブマトリクスOLED(AMOLED)ディスプレイ、電気泳動ディスプレイ(EP)、並びに電気機械的又は電気流体的な光変調(例えば、デジタル・マイクロミラー・デバイス、エレクトロウェッティング・ディスプレイなど)を採用する様々なディスプレイが含まれる。一般に、電子ディスプレイは、アクティブディスプレイ(すなわち、光を放射するディスプレイ)又はパッシブディスプレイ(すなわち、他の光源から供給される光を変調するディスプレイ)のいずれかに分類され得る。アクティブディスプレイの最も明らかな例は、CRT、PDP及びOLED/AMOLEDである。放射光を考慮したときに典型的にパッシブとして分類されるディスプレイは、LCD及びEPディスプレイである。パッシブディスプレイは、本来的に低消費電力を含むがこれに限定されない魅力的な性能特性を示すことが多いが、発光能力がないことを考慮すると、多くの実用的な応用において用途が幾分限られることもある。
【0004】
放射された光に関連するパッシブディスプレイの制限を克服するために、多くのパッシブディスプレイは外部光源に結合されている。結合された光源によって、結合されていないとパッシブディスプレイとなるこれらのものは光を放射し、実質的にアクティブディスプレイとして機能することができる。結合されたこうした光源の例はバックライトである。バックライトは、それがないとパッシブディスプレイとなるものの後ろに配置されてパッシブディスプレイを照明する光源(多くの場合、パネル)である。例えば、バックライトは、LCD又はEPディスプレイに結合されてもよい。バックライトは、LCD又はEPディスプレイを透過する光を放射する。放射された光はLCD又はEPディスプレイによって変調され、次いで変調された光はLCD又はEPディスプレイから放射される。
【発明の概要】
【0005】
本明細書に記載の原理による例及び実施形態の様々な特徴は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を参照することによってより容易に理解することができ、これらの図面と詳細な説明において、同様の参照番号は同様の構造要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1A】本明細書に記載の原理と一致する実施形態による、一例におけるマルチビューディスプレイ10の斜視図を示す。
【0007】
図1B】本明細書に記載の原理と一致する実施形態による、一例におけるマルチビューディスプレイの視線方向に対応する特定の主角度方向を有する光ビームの角度成分の図式表示を示す。
【0008】
図2】本明細書に記載の原理と一致する実施形態による、一例における回折格子の断面図を示す。
【0009】
図3】本明細書に記載の原理と一致する実施形態による、一例における回折バックライトの製造方法のフローチャートを示す。
【0010】
図4】本明細書に記載の原理と一致する実施形態による、一例における回折バックライトの自己整合(self-aligned)製造方法のフローチャートを示す。
【0011】
図5A】説明された原理の実施形態による、一例における回折バックライトの製造の断面図を示す。
図5B-D】説明された原理の実施形態による、一例における回折バックライトの
図5E-G】説明された原理の実施形態による、一例における回折バックライトの製造の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
特定の例及び実施形態は、上記参照図面に示された特徴に、加えて、及びその代わりの一方で、他の特徴を有する。これら及び他の特徴は、上記参照図面を参照して以下に詳述される。
【0013】
様々なタイプの電子ディスプレイへの用途を伴う回折バックライトを製造する方法の、本明細書に記載の原理による例及び実施形態。特に、本明細書に記載の原理による回折バックライトの様々な製造方法は、回折格子を使用して光ガイドからの光を散乱させてフォトレジストを露光し、回折格子と整列する反射アイランドを画成する。したがって、回折バックライトの製造方法は、回折格子と反射アイランドとを含む反射回折格子要素の自己整合製造を提供し得る。様々な実施形態によれば、本明細書に記載の回折バックライトの製造方法は、回折バックライトの反射回折格子要素の自己整合による製造に加えて、回折バックライトの範囲にわたる反射回折格子要素間の並進及び伸長を許容し得るとともに、電子ディスプレイ用途のための大面積回折バックライトの製造を容易にし得る。本明細書に記載の方法によって製造された回折バックライトを使用し得る電子ディスプレイには、マルチビューディスプレイ及び他の同様のディスプレイ、例えば、自動立体視又は「眼鏡なし」三次元(3D)ディスプレイが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0014】
本明細書では、「二次元ディスプレイ」又は「2Dディスプレイ」は、画像が視認される方向(すなわち、2Dディスプレイの所定の視野角又は視野範囲内)にかかわらず実質的に同じである画像のビューを供給するように構成されたディスプレイと定義している。多くのスマートフォン及びコンピュータモニタに見られる従来の液晶ディスプレイ(LCD)は、2Dディスプレイの例である。本明細書ではそれとは対照的に、「マルチビューディスプレイ」は、異なる視線方向における、又は異なる視線方向からのマルチビュー画像の異なるビューを供給するように構成された電子ディスプレイ又はディスプレイシステムと定義している。特に、異なるビューはマルチビュー画像のシーン又はオブジェクトの異なる斜視図を表してもよい。本明細書に記載の一方向バックライト及び一方向マルチビューディスプレイの用途には、携帯電話(スマートフォンなど)、時計、タブレットコンピュータ、モバイルコンピュータ(ラップトップコンピュータなど)、パーソナルコンピュータ及びコンピュータモニタ、自動車のディスプレイコンソール、カメラディスプレイ、並びに他の様々なモバイル、さらには実質的に非モバイルのディスプレイアプリケーション及びデバイスが含まれるが、これらに限定されない。
【0015】
図1Aは、本明細書に記載の原理と一致する実施形態による、一例におけるマルチビューディスプレイ10の斜視図を示す。図1Aに示すように、マルチビューディスプレイ10は、視認されるマルチビュー画像を表示するための画面12を備える。画面12は、例えば、電話(携帯電話、スマートフォンなど)、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータのコンピュータモニタ、カメラディスプレイ、又は実質的に任意の他の電子ディスプレイの表示画面であってもよい。
【0016】
マルチビューディスプレイ10は、画面12に対して異なる視線方向16にマルチビュー画像の異なるビュー14を供給する。視線方向16は、画面12から様々な異なる主角度方向に延びる矢印として示されている。異なるビュー14は、矢印(すなわち視線方向16を示す)の終端にある影付きの多角形ボックスとして示されている。限定ではなく例示として、4つのビュー14及び4つの視線方向16のみが示されている。なお、図1Aでは異なるビュー14が画面の上方にあるように示されているが、マルチビュー画像がマルチビューディスプレイ10に表示されるとき、ビュー14は実際には画面12上又はその近傍に現れる。画面12の上方にビュー14を示しているのは、単に説明を簡単にするためであり、特定のビュー14に対応する視線方向16のそれぞれの方向からマルチビューディスプレイ10を見ることを表す意図がある。2Dディスプレイは、マルチビューディスプレイ10によって供給されるマルチビュー画像の異なるビュー14に対して2Dディスプレイが一般に表示画像の単一のビュー(例えば、図14と同様の1つの視野)を供給するように構成されることを除いて、マルチビューディスプレイ10と実質的に同様であり得る。
【0017】
視線方向、又は等価的にマルチビューディスプレイの視線方向に対応する方向を有する光ビームは、一般に、本明細書の定義上角度成分{θ、φ}によって与えられる主角度方向を有する。角度成分θは、本明細書では光ビームの「仰角成分」又は「仰角」と呼んでいる。角度成分φは、光ビームの「方位角成分」又は「方位角」と呼んでいる。定義上、仰角θは垂直面(例えば、マルチビューディスプレイ画面の平面に垂直)における角度であり、方位角φは水平面(例えば、マルチビューディスプレイ画面の平面に平行)における角度である。
【0018】
図1Bは、本明細書に記載の原理と一致する実施形態による、一例におけるマルチビューディスプレイの視線方向(図1Aの視線方向16など)に対応する特定の主角度方向を有する光ビーム20の角度成分{θ、φ}の図式表示を示す。さらに、光ビーム20は、本明細書の定義上特定の点から放射されるか発する。すなわち、定義上、光ビーム20は、マルチビューディスプレイ内の特定の原点に関連付けられた中心光線を有する。図1Bは、光ビーム(又は視線方向)の原点Oも示している。
【0019】
本明細書では、「光ガイド」は、内部全反射を用いて構造内で光を導く構造物と定義している。特に光ガイドは、光ガイドの動作波長で実質的に透明となるコアを含んでもよい。「光ガイド」という用語は、一般に、光ガイドの誘電体材料と光ガイドを取り囲む材料又は媒体との間の界面で光を導くために内部全反射を用いた誘電体光導波路を指す。定義上、内部全反射の条件は、光ガイドの屈折率が光ガイド材料の表面に隣接する周囲媒体の屈折率よりも大きいことである。いくつかの実施形態では、光ガイドは内部全反射をさらに促進するために、前述の屈折率差に加えて又はその代わりにコーティングを含んでもよい。コーティングは、例えば反射コーティングであってもよい。光ガイドは、プレート若しくはスラブガイド及びストリップガイドの一方又は両方を含むがこれらに限定されないいくつかの光ガイドのいずれかであってもよい。
【0020】
様々な実施形態によれば、光ガイド自体は、内部全反射によって光を誘導するように構成された光学的に透明な材料を含んでもよい。様々な種類のガラス(シリカガラス、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス、ホウケイ酸塩ガラスなど)及び実質的に光学的に透明なプラスチック又はポリマー(例えば、ポリ(メチルメタクリレート)又は「アクリルガラス」、ポリカーボネートなど)のうち1又はそれ以上を含むがこれらに限定されない、様々な光学的に透明な材料のいずれかを光ガイドに採用してもよい。
【0021】
さらに本明細書では、「プレート光ガイド」のように光ガイドに適用される場合の「プレート」という用語は、区分的又は微分的に平面の層又はシートと定義し、「スラブ」ガイドと呼ぶことがある。特に、プレート光ガイドは、光ガイドの上面及び下面(すなわち、反対側の表面)によって境界が定められた2つの実質的に直交する方向に光を誘導するように構成された光ガイドとして定義される。さらに、本明細書の定義上、上面及び下面は両方とも互いに分離されており、少なくとも微分的な意味で互いに実質的に平行であってもよい。すなわち、プレート光ガイドの任意の微分的に小さな区間内で上面及び下面は実質的に平行又は同一平面上にある。
【0022】
いくつかの実施形態では、プレート光ガイドは実質的に平坦(すなわち、平面に限定される)であり得るため、プレート光ガイドは平面光ガイドである。他の実施形態では、プレート光ガイドは、1つ又は2つの直交する次元で湾曲してもよい。例えば、プレート光ガイドは、一次元で湾曲して円筒形のプレート光ガイドを形成してもよい。ただし、曲率は、光を誘導するために内部全反射がプレート光ガイド内で維持されることを保証するのに十分な大きさの曲率半径を有する。本明細書の定義上、「光ガイド基板」は、光ガイド、例えば、プレート光ガイドを含む基板である。
【0023】
本明細書では、「回折格子」は、一般に、回折格子に入射する光の回折をもたらすように配置された複数の特徴部(すなわち、回折特徴部)と定義している。いくつかの例では、複数の特徴部は、周期的又は準周期的に配置されてもよい。例えば、回折格子は、一次元(1D)アレイに配置された複数の特徴部(材料表面の複数の溝又はリッジなど)を含んでもよい。他の例では、回折格子は特徴部の二次元(2D)アレイであってもよい。回折格子は、例えば、材料表面のバンプ又は穴の2Dアレイであってもよい。
【0024】
したがって、また本明細書での定義上、「回折格子(diffraction grating)」は、回折格子に入射する光の回折をもたらす構造物である。光が光ガイドから回折格子に入射する場合、もたらされた回折又は回折散乱は、回折格子が光ガイドから光を回折によって結合出力し得るという点で、「回折結合(diffractive coupling)」をもたらし得、したがって、「回折結合」と呼ばれる。回折格子はまた、回折により(すなわち、回折角で)光の角度を方向転換又は変更する。特に回折の結果、回折格子を出る光は、一般に、回折格子に入射する光(すなわち、入射光)の伝搬方向とは異なる伝搬方向を有する。回折による光の伝搬方向の変化は、本明細書では「回折方向転換」と呼ばれる。したがって、回折格子は、回折格子に入射する光を回折的に方向転換する回折特徴部を含む構造物であると理解することができ、その光が光ガイドから入射する場合は、回折格子は光ガイドから光を回折により結合出力することがある。
【0025】
さらに、本明細書の定義上、回折格子の特徴部は「回折特徴部」と呼ばれ、(すなわち2つの材料の境界である)材料表面にあること、材料表面内にあること、及び材料表面上にあることのうちの1又はそれ以上であってもよい。表面は、例えば光ガイドの表面であってもよい。回折特徴部は、表面、表面内又は表面上の溝、リッジ、穴、及びバンプのうちの1又はそれ以上を含むがこれらに限定されない、光を回折する様々な構造のいずれかを含んでもよい。例えば、回折格子は、材料表面内に複数の実質的に平行な溝を含んでもよい。別の例では、回折格子は、材料表面から立ち上がる複数の平行なリッジを含んでもよい。回折特徴部(溝、リッジ、穴、バンプなど)は、正弦波プロファイル、矩形プロファイル(バイナリ回折格子など)、三角形プロファイル及び鋸歯状プロファイル(ブレーズド回折格子)のうちの1又はそれ以上を含むがこれらに限定されない、回折をもたらす様々な断面形状又はプロファイルのいずれかを有してもよい。
【0026】
本明細書に記載の様々な例によれば、回折格子(以下に説明するようなマルチビーム要素の回折格子など)を採用して、光ガイド(平板光ガイドなど)からの光を光ビームとして回折的に散乱又は結合出力してもよい。特に、局所的に周期的な回折格子の回折角θ又は局所的に周期的な回折格子によって得られる回折角θは、以下の式(1)によって与えられ得る。
【数1】
ここで、λは光の波長、mは回折次数、nは光ガイドの屈折率、dは回折格子の特徴部間の距離又は間隔、θは回折格子への光の入射角である。単純化のために、式(1)は、回折格子が光ガイドの表面に隣接し、光ガイドの外側の材料の屈折率が1に等しい(すなわち、nout=1である)と仮定している。一般に、回折次数mは整数によって与えられる。回折格子によって生成される光ビームの回折角θは、回折次数が正(例えばm>0)である式(1)によって与えられ得る。例えば、回折次数mが1に等しい(すなわち、m=1である)場合、一次回折が得られる。
【0027】
図2は、本明細書に記載の原理と一致する実施形態による、一例における回折格子30の断面図を示す。例えば、回折格子30は、光ガイド40の表面上に配置されてもよい。また、図2は、入射角θで回折格子30に入射する光ビーム50を示している。光ビーム50は、光ガイド40内の誘導光ビームである。また、図2には、入射光ビーム50の回折の結果、回折格子30によって回折的に生成されて結合出力された指向性光ビーム60が示されている。指向性光ビーム60は、式(1)によって与えられるような、回折角θ(又は本明細書では「主角度方向」)を有する。回折角θは、例えば、回折格子30の回折次数「m」に対応してもよい。いくつかの実施形態では、回折格子は、回折格子によって回折される光の波長である波長λ未満となる回折特徴部サイズ又は回折特徴部間隔の一方又は両方を有するサブ波長回折格子であってもよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、回折格子は、均一な回折格子であるか、又は回折格子の範囲全体にわたって回折特徴部(すなわち、格子ピッチ)の均一若しくは実質的に均一な間隔を有するものであってもよい。例えば、均一回折格子は、複数の回折特徴部を含み、複数の回折特徴部の各回折特徴部は、隣接する回折特徴部と同様のサイズであり、隣接する回折特徴部から同様の間隔を有する。
【0029】
他の実施形態では、回折格子は、複数のサブ格子を含んでもよい。いくつかの実施形態では、複数のサブ格子の異なるサブ格子は、互いに異なる特性を有してもよい。例えば、サブ格子は、複数のサブ格子の他のサブ格子とは異なる回折特徴部間隔及び異なる回折特徴部方向の一方又は両方を含んでもよい。いくつかの実施形態では、サブ格子の回折特徴部は湾曲していてもよく、例えば、回折特徴部は、湾曲した溝又はリッジの一方又は両方を含んでもよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、複数のサブ格子のサブ格子は、アレイに配置されてもよい。アレイは、様々な実施形態によれば、一次元(1D)アレイ又は二次元(2D)アレイのいずれかであり得る。さらに、いくつかの実施形態では、回折格子は、回折格子の範囲にわたって繰り返される複数のサブ格子アレイを含んでもよい。他の実施形態では、複数のサブ格子の異なるサブ格子は、回折格子の範囲にわたって実質的にランダムに分布されてもよい。
【0031】
他の実施形態では、回折格子は、チャープ回折格子又はチャープ回折格子のアレイをも含んでもよい。定義上、「チャープされた」回折格子は、チャープ回折格子の範囲又は長さにわたって変化する回折特徴部の回折間隔を示すか有する回折格子である。いくつかの実施形態では、チャープ回折格子は、距離と共に線形に変化する回折特徴部間隔のチャープを有するか示してもよい。したがって、チャープ回折格子は、定義上、「線形にチャープされた」回折格子である。他の実施形態では、チャープ回折格子は、回折特徴部間隔の非線形チャープを示してもよい。指数チャープ、対数チャープ、又は別の実質的に不均一若しくはランダムであるが単調な方法で変化するチャープを含むがこれらに限定されない、様々な非線形チャープを使用してもよい。正弦波チャープ又は三角形若しくは鋸歯状チャープなどであるがこれらに限定されない非単調チャープも使用してもよい。いくつかの実施形態では、回折格子のサブ格子はチャープ回折格子を含んでもよい。
【0032】
本明細書では、「コリメータ」は、光をコリメートするように構成された実質的に任意の光学デバイス又は装置と定義している。様々な実施形態によれば、コリメータによって供給されるコリメーションの量は、実施形態ごとに所定の程度又は量で変動してもよい。さらに、コリメータは、2つの直交する方向(例えば、垂直方向及び水平方向)の一方又は両方においてコリメーションをもたらすように構成されてもよい。すなわち、いくつかの実施形態によれば、コリメータは、光コリメーションをもたらす2つの直交方向の一方又は両方の形状を含んでもよい。
【0033】
本明細書では、「コリメーション係数」は、光がコリメートされる程度と定義している。特に、コリメーション係数は、本明細書の定義上、コリメートされた光ビーム内の光線の角度広がりを決定する。例えば、コリメーション係数σは、コリメートされた光のビーム内の光線の大部分が特定の角度広がり(例えば、コリメートされた光ビームの中心角度方向又は主角度方向から+/-σ度)内にあるように指定してもよい。いくつかの例によれば、コリメートされた光ビームの光線は、角度に関してガウス分布を有してもよく、その角度広がりは、コリメートされた光ビームのピーク強度の半分で決定される角度であってもよい。
【0034】
本明細書では、「光源」は、光の供給源(光を生成して放射するように構成された光エミッタなど)と定義している。例えば、光源は、起動又はオンにされると光を放射する発光ダイオード(LED)などの光エミッタを備えてもよい。特に本明細書では、光源は実質的に任意の光の供給源であるか、発光ダイオード(LED)、レーザ、有機発光ダイオード(OLED)、ポリマー発光ダイオード、プラズマベースの光エミッタ、蛍光灯、白熱灯、及び実質的に他の任意の光の供給源のうちの1又はそれ以上を含むがこれらに限定されない実質的に任意の光エミッタを備えてもよい。光源によって生成された光は、色を有してもよく(すなわち、特定の波長の光を含んでもよく)、又は波長の範囲(白色光など)であってもよい。いくつかの実施形態では、光源は、複数の光エミッタを備えてもよい。例えば、光源は、光エミッタのセット又はグループのうち少なくとも1つの光エミッタがそのセット又はグループの少なくとも1つの他の光エミッタによって生成される光の色、又は等価的に波長とは異なる波長を有する光を生成する、セット又はグループを含んでもよい。異なる色は、例えば原色(赤色、緑色、青色など)を含んでもよい。
【0035】
本明細書において、「ナノインプリントリソグラフィ」は、モールド又はパターニングツールを使用し、インプリントプロセスを通じて、又はインプリントプロセスを使用して、基板のインプリント可能な表面にパターンを転写するものであり、モールド又はパターニングツールで表される特徴部はナノスケールサイズ又はナノスケール公差を含むものとして定義される。いくつかの例では、インプリント可能な表面は、モールドよりも比較的柔らかい基板自体の材料を含んでもよい。別の例では、インプリント可能な表面は、基板の表面上に堆積又は塗布された比較的柔らかい材料の層を含んでもよい。いずれの場合も、インプリント可能な表面の比較的柔らかい材料は、モールドが取り外された後及びさらなる処理中に、インプリントされたパターンを受け取り、保持するように構成される。インプリント中にモールドを受け入れるより柔らかい材料の表面は、本明細書では「受容層」又は「受容表面」と呼ぶ。
【0036】
いくつかの実施形態では、比較的柔らかい材料は、インプリントされたパターンの保持を容易にするためにインプリント中に硬化又は固化されてもよい。硬化は本質的に、モールドによって決定される形状又はパターンで受容層を「凍結」又は固定する。例えば、光(例えば、赤外線、可視光線、若しくは紫外線(UV))にさらされると硬化する、光活性化モノマー、オリゴマー、又はポリマー(例えば、フォトレジスト)などであるがそれらに限定されない光硬化性材料の層を受容層として使用してもよい。硬化する前に、光硬化性材料は柔らかく(例えば、液体又は半液体)、モールドのインプリントパターンを容易に受け入れる。光にさらされると、光硬化性材料はモールドの周りで硬化する。したがって、受容層の硬化した光硬化性材料は、モールドのインプリントパターンを保持する。
【0037】
別の例では、基板の表面に層又はフィルムとして塗布された熱可塑性材料を受容層として使用してもよい。インプリントする前に、熱可塑性材料層を材料のガラス転移温度辺りまで加熱し、それによって材料を軟化させる。モールドは軟化した材料に押し込まれ、材料はガラス転移温度未満に冷却され、それにより材料は押し付けられたモールドの周囲で固化又は硬化する。インプリントされたパターンは、硬化した熱可塑性材料によって保持される。受容層として使用される熱可塑性ポリマーの例には、ポリカーボネート、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)及びメタクリル酸メチル(MMA)が含まれるが、これらに限定されない。
【0038】
いくつかの実施形態では、軟質材料層に形成されたインプリントパターンは、例えば、リソグラフィ及びエッチングによって、モールドのポジ画像として基板にさらに「転写」されてもよい。転写されたパターンはさらに処理されて、基板に特徴部を形成する。このような機能は通常、ナノメートルスケールのサイズである。特徴部は、基板材料を選択的に除去して特徴部を形成するために、反応性イオンエッチング(RIE)及びプラズマエッチングなどであるがこれらに限定されないドライエッチング技術、又はウェットケミカルエッチング技術を使用して転写されてもよい。いくつかの実施形態によれば、成形された受容層はまた、ドライエッチング及びウェットエッチング技術の一方又は両方を使用してエッチング、さらには除去されてもよい。
【0039】
さらに、本明細書で使用される場合、冠詞「a」は、特許技術におけるその通常の意味を有すること、すなわち「1つ以上」であることを意図している。例えば、「反射アイランド(reflective island)」は1又はそれ以上の反射アイランドを意味し、したがって、本明細書では「反射アイランド(reflective island)」は「(1つ以上の)反射アイランド(reflective island(s))」を意味する。また、本明細書における「上(top)」、「底(bottom)」、「上(upper)」、「下(lower)」、「上(up)」、「下(down)」、「前(front)」、「後(back)」、「第1(first)」、「第2(second)」、「左(left)」、又は「右(right)」への言及は、いずれも本明細書における限定を意図するものではない。本明細書では、「約(about)」という用語は、値に適用される場合、一般に、値を生成するために使用される機器の許容範囲内を意味するか、特に明記しない限り、プラス若しくはマイナス10%、プラス若しくはマイナス5%、又はプラス若しくはマイナス1%を意味し得る。さらに、本明細書で使用される「実質的に(substantially)」という用語は、大部分、ほぼ全て、全て、又は約51%~約100%の範囲内の量を意味する。さらに、本明細書の例は、例示のみを意図し、限定ではなく説明の目的で提示されたものである。
【0040】
本明細書に記載の原理のいくつかの実施形態によれば、回折バックライトを製造する方法が提供される。図3は、本明細書に記載の原理と一致する実施形態による、一例における回折バックライトの製造方法100のフローチャートを示す。図示のように、回折バックライトを製造する方法100は、回折格子を有する光ガイドを供給するステップ110を含む。いくつかの実施形態によれば、回折格子は光ガイドの表面にあってもよい。例えば、回折格子は、光ガイドの前面(上面)若しくは底面(背面)上又は隣接して配置されてもよい。他の例では、回折格子は、光ガイド内、例えば、光ガイドの一対の表面(例えば、ガイド表面)の間に配置されてもよい。いくつかの実施形態によれば、回折格子は、光ガイドよりも実質的に範囲が小さい。例えば、回折格子のサイズは、光ガイドの範囲若しくは全体のサイズの10パーセント(10%)未満、5パーセント(5%)未満、1パーセント(1%)未満、又は10分の1パーセント(0.1%)未満であってもよい。例えば、いくつかの実施形態では、回折格子は、回折バックライトを使用するディスプレイの光バルブのサイズの約4分の1と2倍の間であってもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、回折格子を有する光ガイドを供給するステップ110は、ナノインプリントモールドを使用して光ガイドの表面をナノインプリントし、光ガイド表面に回折格子を形成することを含んでもよい。これらの実施形態のいくつかでは、ナノインプリントモールドを使用して光ガイドの表面をナノインプリントすることは、ナノインプリント受容層を光ガイドの表面に塗布し、次にナノインプリントモールドをナノインプリント受容層に押し込んで回折格子を形成することを含んでもよい。例えば、ナノインプリント受容層は、光ガイドの表面に塗布される、ポリカーボネート、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)又は「アクリルガラス」及びメチルメタクリレート(MMA)などであるがこれらに限定されない透明なプラスチック又はポリマーを含んでもよい。他の実施形態では、回折格子を有する光ガイドを供給するステップ110は、光ガイド自体の表面にナノインプリントすること、すなわち、ナノインプリントモールドを光ガイド表面に直接押し込むことを含んでもよい。例えば、光ガイドは、ナノインプリントによって成形可能な、PMMA、MMA、又はポリカーボネートなどであるがこれらに限定されない材料を含んでもよい。したがって、ナノインプリント受容層は、光ガイド材料の表面領域又は層を含んでもよい。他の非限定的な実施形態では、回折格子を有する光ガイドを供給するステップ110は、これらに限定されないが、フォトリソグラフィ、集束イオンビームリソグラフィ、及び電子ビームリソグラフィのうちの1又はそれ以上を使用して光ガイド内又は光ガイド表面上に回折格子を画成することを含んでもよく、例えば、ドライエッチング(例えば、反応性イオンエッチング)及びウェットエッチングのうちの1又はそれ以上を含んでもよい。さらに他の実施形態では、光ガイド内又は光ガイド上に回折格子を供給する実質的に任意の方法を、回折格子を有する光ガイドを供給するステップ110に用いてもよい。
【0042】
図3に示される回折バックライトを製造する方法100は、回折格子を使用して光ガイドからの誘導光を回折散乱させて、光ガイドの表面に隣接するフォトレジストを選択的に露光するステップ120をさらに含む。様々な実施形態によれば、選択的露光により、回折格子と整列するフォトレジストに開口部が設けられる。特に、開口部は、サイズ及び範囲が回折格子と実質的に類似していてもよく、回折格子によって光ガイドから散乱された光のみが、フォトレジストを露光するために利用可能となる。フォトレジストの他の全ての領域は、誘導光が内部全反射によって光ガイド内に閉じ込められていることを考えると、露光されないままである。フォトレジストは、例えば、ポジ型フォトレジストであってもよい。
【0043】
いくつかの実施形態では、回折格子を使用して光ガイドからの誘導光を回折散乱させるステップ120は、内部全反射に従って光ガイドの長さに沿って光を誘導することを含む。これらの実施形態によれば、回折格子を使用して光ガイドからの誘導光を回折散乱させるステップ120は、回折格子を使用して光ガイドからの誘導光の一部を回折散乱させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、誘導光は、光ガイドの縁部に光学的に接続された光源によって供給される青色光及び紫外線の一方又は両方を含む。
【0044】
図示のように、回折バックライトを製造する方法100は、図3に示すように、開口部内に反射材料を堆積させ、回折格子と整列する反射アイランドを形成するステップ130をさらに含む。例えば、反射材料は、様々な実施形態によれば、これらに限定されないが、金属、金属ポリマー(例えば、ポリマーアルミニウム)、及び高屈折率誘電体のうちの1又はそれ以上を含んでもよい。反射材料は、例えば、蒸着堆積、スパッタ堆積、又は同等のもののうちの1又はそれ以上によって、あるいはそれらを使用して、開口部内に堆積130されてもよい。様々な実施形態によれば、回折バックライトの反射回折格子要素は、回折格子と反射アイランドとの組合せを含む。
【0045】
他の実施形態では、開口部内に反射材料を堆積させて反射アイランドを形成するステップ130は、フォトレジストの表面上およびフォトレジストの開口部内に反射材料の層を堆積させることを含む。これらの実施形態では、開口部内に反射材料を堆積させるステップ130は、フォトレジストをリフトオフして、開口部内にあった反射材料のみを残すことをさらに含む。フォトレジストをリフトオフすることは、例えば、溶媒を塗布してフォトレジストを溶解し、次いで、溶解したフォトレジストを上層の反射材料と共に洗い流すことを含んでもよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、光ガイドは、光ガイド基板、高屈折率材料層、及び低屈折率材料層を含んでもよい。高屈折率材料層は、光ガイド基板の表面上に配置されてもよく、低屈折率材料と光ガイド基板との間に挟まれている。様々な実施形態によれば、高屈折率材料は、光ガイド基板の屈折率より大きい屈折率を有し、低屈折率材料は、高屈折率材料の屈折率より小さい屈折率を有する。これらの実施形態によれば、誘導光は、高屈折率材料層と低屈折率材料層との間の界面での内部全反射によって誘導される。いくつかの実施形態では、高屈折率材料層の高屈折率材料は、光ガイド基板の表面上又は表面内の回折格子の回折特徴部にまで延在する。
【0047】
いくつかの実施形態(図示せず)では、回折バックライトを製造する方法100は、フォトレジストの開口部から低屈折率材料層の開口部をエッチングして、高屈折率材料層を露出させることをさらに含む。これらの実施形態では、開口部内に反射材料を堆積させて反射アイランドを形成することは、フォトレジストの表面上、ならびにフォトレジストの開口部内および低屈折率材料層の開口部内に反射材料の層を堆積させ、フォトレジストをリフトオフして、開口部内に及び高屈折率材料層の表面上にあった反射材料のみを残すことを含む。回折バックライトを製造する方法100は、いくつかの実施形態では、光ガイドから低屈折率材料層を除去することをさらに含んでもよい。
【0048】
本明細書に記載の原理の他の実施形態によれば、回折バックライトの自己整合製造方法が提供される。図4は、本明細書に記載の原理と一致する実施形態による、一例における回折バックライトの自己整合製造方法200のフローチャートを示す。図示のように、回折バックライトの自己整合製造方法200は、光ガイド内に回折格子を形成するステップ210を含む。いくつかの実施形態では、回折格子を形成するステップ210は、回折格子を有する光ガイドを供給するステップ110に関して上記で説明したものと実質的に同様の技術を採用してもよい。例えば、回折格子を形成するステップ210は、ナノインプリントモールドを表面に押し込むことによって光ガイドの表面に回折格子をナノインプリントすることを含んでもよく、ナノインプリントモールドは回折格子に対応するパターンを有する。
【0049】
図4に示される回折バックライトの自己整合製造方法200は、光ガイドの表面上に低屈折率材料層を塗布するステップ220をさらに含む。様々な実施形態によれば、低屈折率材料の屈折率は、光ガイドの屈折率より小さい。いくつかの実施形態(図4には示されていない)では、回折バックライトの自己整合製造方法200は、低屈折率材料層と光ガイドとの間に高屈折率材料層を塗布することをさらに含む。これらの実施形態によれば、高屈折率材料の屈折率は、低屈折率材料の屈折率より大きい。
【0050】
図4に示されるように、回折バックライトの自己整合製造方法200は、低屈折率材料層にフォトレジストを塗布するステップ220をさらに含む。フォトレジストは、例えば、ポジ型フォトレジストであってもよい。
【0051】
様々な実施形態によれば、図4に示される回折バックライトの自己整合製造方法200は、回折格子を使用して光ガイド内で誘導された光を回折散乱させて、フォトレジストに開口部を選択的に設けるステップ230をさらに含む。いくつかの実施形態では、光ガイド内で誘導された光を回折散乱させるステップ230は、回折バックライトを製造する上記の方法100の、回折格子を使用して光ガイドからの誘導光を回折散乱させるステップ120と実質的に同様であってもよい。特に、光ガイド内で誘導された光を回折散乱させるステップ230は、光源を使用して光ガイドの縁部に光を導入することを含んでもよく、導入される光は、青色光及び紫外線の一方又は両方を含む。光ガイド内で誘導された光を回折散乱させるステップ230は、上記のように、回折格子のすぐ近くでのみではあるが、回折格子を使用して誘導光の一部を回折散乱させることを含んでもよく、すなわち、回折格子は効果的に光ガイドの内部全反射に打ち勝って光が回折格子で光ガイドを出ることができるようにする。
【0052】
図4に示される方法200は、開口部内に反射材料を堆積させて、回折格子と整列しかつ回折格子に対応する範囲を有する反射アイランドを形成するステップ240をさらに含む。様々な実施形態によれば、回折バックライトの反射回折格子要素は、反射アイランドと回折格子との組合せを含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、開口部内に反射材料を堆積させて反射アイランドを形成するステップ240は、回折バックライトを製造する方法100に関して上記で説明した、開口部内に反射材料を堆積させて反射アイランドを形成するステップ130と実質的に同様であってもよい。例えば、反射材料は、様々な実施形態によれば、これらに限定されないが、金属、金属ポリマー(例えば、ポリマーアルミニウム)、及び高屈折率誘電体のうちの1又はそれ以上を含んでもよい。反射材料は、例えば、蒸着堆積、スパッタ堆積、又は同等のもののうちの1又はそれ以上によって、あるいはそれらを使用して、開口部内に堆積240されてもよい。さらに、いくつかの実施形態では、開口部内に反射材料を堆積させるステップ240は、フォトレジストの表面上およびフォトレジストの開口部内に反射材料の層を堆積させ、フォトレジストをリフトオフして、開口部内にあった反射材料のみを残すことを含んでもよい。
【0054】
いくつかの実施形態(図4には示されていない)では、回折バックライトの自己整合製造方法200は、フォトレジスト内の開口部を使用して、低屈折率材料層の対応する開口部をエッチングすることをさらに含んでもよい。これらの実施形態では、反射材料を開口部内に堆積させると、フォトレジストの開口部と、低屈折率材料層の対応する開口部の両方の内部に反射アイランドが形成される。いくつかの実施形態(図4には示されていない)では、回折バックライトの自己整合製造方法200は、低屈折率材料層を除去することをさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、光ガイドは、光ガイド表面上に高屈折率材料層を有してもよく、高屈折率材料は、光ガイドの屈折率より大きい屈折率を有する。さらに、これらの実施形態では、反射材料を堆積させることにより、反射材料が高屈折率材料層上に堆積されてもよい。
【実施例
【0055】
上記の方法100及び200の一方又は両方による、回折バックライトの製造及び自己整合回折バックライトの製造の例を以下に示す。これらの例は、限定ではなく例として、前述の方法を用いた結果を示している。
【0056】
図5A~5Gは、本明細書に記載の原理の実施形態による、一例における回折バックライト300の製造の断面図を示している。特に、図5A~5Gは、光ガイド310を含む回折バックライト300を示している。いくつかの実施形態では、光ガイド310は、回折バックライトを製造する方法100及び自己整合回折バックライトの製造方法200に関して、上記の光ガイド基板又は光ガイドのいずれかと実質的に同様であってもよい。さらに、図示のように、光ガイドは、限定ではなく例として示すように、光ガイド310の表面、例えば、前面又は上面に回折格子312を有する。
【0057】
図5Aは、回折バックライト300の光ガイド310及び回折格子312を示し、さらに、光ガイド表面上にある高屈折率材料314の任意選択的な層を示している。図示のように、高屈折率材料は、光ガイド310の表面にある回折格子312の回折特徴部内に延在する。
【0058】
図5Bは、高屈折率材料314の表面上に低屈折率材料316の層を備えた回折バックライト300を示している。図示のように、高屈折率材料は、低屈折率材料316と光ガイド310との間に挟まれている。図5Bはまた、フォトレジスト320の層を示している。フォトレジスト320は、低屈折率材料316上に示されている。しかしながら、他の実施形態では、フォトレジスト320は、光ガイド又は高屈折率材料の表面のうちの1つの上にあってもよい。上記のように、フォトレジスト320は、様々な実施形態においてポジ型レジストであってもよい。
【0059】
図5Cは、光ガイド310からの誘導光を回折散乱させることによってフォトレジスト320を露光することを示している。誘導光及び回折散乱された光は、図5Cに矢印302として示されている。誘導光は、例えば、青色光及び紫外線(UV)光の一方又は両方を供給する光源(図示せず)によって供給されてもよい。フォトレジスト320の露光部分322は、回折格子312に隣接しかつ回折格子312と整列して示されている。いくつかの実施形態によれば、フォトレジスト320を露光することは、図示のように、回折バックライトを製造する上記の方法100の回折格子を使用して光ガイドからの誘導光を回折散乱させるステップ120、及びこれもまた上述したように、自己整合回折バックライトの製造方法200における、回折格子を使用して光ガイド内で誘導された光を回折散乱させるステップ230と実質的に同様であってもよい。
【0060】
図5Dは、フォトレジスト320の露光部分322を現像及び除去して、フォトレジスト320に開口部324を設けた後の回折バックライト300を示している。露光部分を除去することにより、開口部324内の低屈折率材料316を露出させる。図5Eは、露出された低屈折率材料316をエッチングした後の回折バックライト300を示している。エッチング後、高屈折率材料314は、フォトレジスト320の開口部324で露出する。
【0061】
図5Fは、反射材料330を開口部324内に堆積させて反射アイランド332を形成した後の回折バックライト300を示している。図示のように、反射アイランド332は、開口部324の位置のお陰で回折格子312と整列している。いくつかの実施形態によれば、開口部324内への反射材料330の堆積は、方法100、200に関して上記で説明したように、反射材料を堆積するステップ130、240と実質的に同様であってもよい。
【0062】
図5Gは、フォトレジスト320及び低屈折率材料316を光ガイド310及び光ガイド表面上の高屈折率材料314の層から除去した後の回折バックライト300を示している。図示のように、回折バックライト300は、回折格子312と、反射材料330から形成され、回折格子312と整列する反射アイランド332とを有する光ガイド310を備える。さらに、図5Gは、反射材料330をリフトオフして、反射アイランド332に対応する反射材料330の一部のみを残した結果を示している。図5Gに示されるように、反射アイランド332及び回折格子312の組合せは、回折バックライト300の反射回折格子要素304となる。
【0063】
以上のように、回折格子を使用して回折格子と整列する反射アイランドを画成し、反射アイランド及び格子要素が回折バックライトの反射回折格子要素を含む回折バックライトを製造する方法の実施例及び実施形態を説明した。上述の例は、本明細書に記載の原理を表す多くの具体例のうちのいくつかの単なる例示であることを理解されたい。明らかに、当業者は、以下の特許請求の範囲によって規定される範囲から逸脱することなく、多数の他の構成を容易に考案することができる。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5A
図5B-D】
図5E-G】
【国際調査報告】