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特表2022-531178アルコキシシリル含有チオカルボン酸エステルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(54)【発明の名称】アルコキシシリル含有チオカルボン酸エステルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/18 20060101AFI20220629BHJP
【FI】
C07F7/18 Q
C07F7/18 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564247
(86)(22)【出願日】2020-04-22
(85)【翻訳文提出日】2021-12-14
(86)【国際出願番号】 US2020029195
(87)【国際公開番号】W WO2020223068
(87)【国際公開日】2020-11-05
(31)【優先権主張番号】62/840,752
(32)【優先日】2019-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508229301
【氏名又は名称】モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Momentive Performance Materials Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】ヂュー,ヤンジュン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェセレ,リンダ
【テーマコード(参考)】
4H049
【Fターム(参考)】
4H049VN01
4H049VP01
4H049VP02
4H049VQ51
4H049VR21
4H049VR43
4H049VS48
4H049VU20
4H049VU36
4H049VV02
4H049VW02
4H049VW05
(57)【要約】
チオエステルをメルカプト官能性アルコキシシランおよび/またはアルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、三置換アンモニウム塩と反応させることを含むアルコキシシリル含有チオカルボン酸エステルの製造方法が提供され、該方法は経済的で容易に入手可能な試薬を使用し、ホスゲンまたはチオニルクロリド試薬の使用を回避し、そして再利用可能な副生成物を生成する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)のアルコキシシリル含有チオカルボン酸エステルの製造のための方法であって、
-[C(=O)-S-R-SiR (OR3-a (I)
ここでRは、1から18個の炭素原子を含む直鎖アルキル基、3から18個の炭素原子を含む分岐鎖アルキル基、5から18個の炭素原子を含むシクロアルキル基、2から18個の炭素原子を含むアルケニル基、6から18個の炭素原子を含むアリール基、7から18個の炭素原子を含むアラルキル基、または水素から選択される一価の基であり、または1から10個の炭素原子を含むアルキル基、5から10個の炭素原子を含むシクロアルキル基、またはフェニル基から選択される二価の基であり;
各Rは、独立して、1から10個の炭素原子を含む直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を含む分岐鎖アルキル基、5から10個の炭素原子を含むシクロアルキル基、2から10個の炭素原子を含むアルケニル基、6から10個の炭素原子を含むアリール基、または7から10個の炭素原子を含むアラルキル基から選択される二価の基であり;
各Rは、独立して、1から6個の炭素原子を含む直鎖アルキル基、3から6個の炭素原子を含む分岐鎖アルキル基、5個または6個の炭素原子を含むシクロアルキル基、2から6個の炭素原子を含むアルケニル基、6個の炭素原子を含むアリール基、または7から10個の炭素原子を含むアラルキル基から選択される一価の基であり;
は、独立して、1から6個の炭素原子を含む直鎖アルキル基、3から6個の炭素原子を含む分岐鎖アルキル基、5個または6個の炭素原子を含むシクロアルキル基、2から6個の炭素原子を含むアルケニル基、6個の炭素原子を含むアリール基、7から10個の炭素原子を含むアラルキル基、2から6個の炭素原子およびヒドロキシル基を含む直鎖アルキル基、構造-R-(OCHCH(OCHCH(CH))ORを有する少なくとも1つの酸素原子を含むアルキル基から選択される一価の基であり、または共有結合により結合された2つのR基から形成された二価の基であり、但し(i)2つのR基が共に結合している場合、aは0または1であり、そして(ii)m+nの合計は1から20であるという条件であり;
a、m、n、およびzは整数であり、ここでaは0、1、または2であり、mは0から10であり、nは0から10であり、そしてzは1または2であり、
ここで
一般式(II)のチオエステルを、
[C(=O)SR (II)
ここで
各Rは、独立して、1から18個の炭素原子を含む直鎖アルキル基、3から18個の炭素原子を含む分岐鎖アルキル基、5から18個の炭素原子を含むシクロアルキル基、2から18個の炭素原子を含むアルケニル基、6から18個の炭素原子を含むアリール基、7から18の炭素原子を含むアラルキル基から選択される一価の基であり、そしてここでRおよびzは、前記で定義されたとおりである、
式(V)のメルカプト官能性アルコキシシラン、
HS-R-SiR (OR3-a (V)
ここでR、R、Rおよびaは前記で定義されたとおりであり、および/または
一般式(III)のアルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、三置換アンモニウム塩、
S-R-SiR (OR3-a (III)
ここでMはアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、三置換アンモニウムイオンであり、そしてR、R、Rおよびaは前記で定義されたとおりである、
と反応させることを含む、方法。
【請求項2】
(a)チオエステルを、メルカプト官能性アルコキシシランおよび/またはアルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、三置換アンモニウム塩と接触させること;
(b)チオエステルをステップ(a)のメルカプト官能性アルコキシシランおよび/またはアルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、または三置換アンモニウム塩と反応させて、アルコキシシリル含有チオカルボン酸エステルおよび副生成物である式(VI)のチオール、
HSR (VI)
ここでRは前記で定義されたとおりであり、
および/または
副生成物である式(IV)のチオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または三置換アンモニウム塩、
+-SR (IV)
ここでMおよびRは前記で定義されたとおりである、
を含む混合物を生成すること;
(c)ステップ(b)で形成された混合物から副生成物であるチオールおよび/または副生成物であるチオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または三置換アンモニウム塩を取り出して、アルコキシシリル含有チオカルボン酸エステルを含む生成物混合物を生成すること;
(b)任意選択で、ステップ(c)で形成された生成物混合物をさらに処理すること;および
(e)任意選択で、ステップ(c)で取り出した副生成物であるチオールおよび/またはチオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、または三置換アンモニウム塩をカルボン酸と反応させて、式(II)のチオエステルを形成し、そしてステップ(a)にチオエステルを加えて、一般式(I)のアルコキシシリル含有チオカルボン酸エステルを調製すること、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
は、5から11個の炭素原子を含む一価の直鎖アルキル基、5から11個の炭素原子を含む一価の分岐鎖アルキル基、または1から8個の炭素原子の二価の直鎖アルキル基であり、Rは、二価の1から6個の炭素原子を含むアルキル基、または3から6個の炭素原子を含む分岐鎖アルキル基であり、Rはメチルであり、Rは、一価のエチル、2-ヒドロキシルエチル、2-ヒドロキシルプロピル、3-ヒドロキシ-2-メチルプロピル、2-ヒドロキシルブチル、3-ヒドロキシルブチル、または3-ヒドロキシル-1,3-ジメチルブチルであり、またはここで2つのRが結合して、構造-CHCHCH-、-CHCH(CH)CH-、または-CHCHCH(CH)-を有する二価の基-R-R-を形成し、Rは、4から8個の炭素原子の一価の直鎖アルキル基、4から8個の炭素原子の一価の分岐鎖アルキル基、または5から8個の炭素原子の一価のシクロアルキル基であり、Mはナトリウムイオンであり、aは0または1であり、そしてzは1または2である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
アルコキシシリル含有チオカルボン酸エステルは、2-トリエトキシシリル-1-エチルチオアセテート;2-トリメトキシシリル-1-エチルチオアセテート;2-(メチルジメトキシシリル)-1-エチルチオアセテート;3-トリメトキシシリル-1-プロピルチオアセテート;トリエトキシシリルメチルチオアセテート;トリメトキシシリルメチルチオアセテート;トリイソプロポキシシリルメチルチオアセテート;メチルジエトキシシリルメチルチオアセテート;メチルジメトキシシリルメチルチオアセテート;メチルジイソプロポキシシリルメチルチオアセテート;ジメチルエトキシシリルメチルチオアセテート;ジメチルメトキシシリルメチルチオアセテート;ジメチルイソプロポキシシリルメチルチオアセテート;2-トリイソプロポキシシリル-1-エチルチオアセテート;2-(メチルジエトキシシリル)-1-エチルチオアセテート;2-(メチルジイソプロポキシシリル)-1-エチルチオアセテート;2-(ジメチルエトキシシリル)-1-エチルチオアセテート;2-(ジメチルメトキシシリル)-1-エチルチオアセテート;2-(ジメチルイソプロポキシシリル)-1-エチルチオアセテート;3-トリエトキシシリル-1-プロピルチオアセテート;3-トリイソプロポキシシリル-1-プロピルチオアセテート;3-メチルジエトキシシリル-1-プロピルチオアセテート;3-メチルジメトキシシリル-1-プロピルチオアセテート;3-メチルジイソプロポキシシリル-1-プロピルチオアセテート;1-(2-トリエトキシシリル-1-エチル)-4-チオアセチルシクロヘキサン;1-(2-トリエトキシシリル-1-エチル)-3-チオアセチルシクロヘキサン;2-トリエトキシシリル-5-チオアセチルノルボルネン;2-トリエトキシシリル-4-チオアセチルノルボルネン;2-(2-トリエトキシシリル-1-エチル)-5-チオアセチルノルボルネン;2-(2-トリエトキシシリル-1-エチル)-4-チオアセチルノルボルネン;6-トリエトキシシリル-1-ヘキシルチオアセテート;1-トリエトキシシリル-5-ヘキシルチオアセテート;8-トリエトキシシリル-1-オクチルチオアセテート;1-トリエトキシシリル-7-オクチルチオアセテート;6-トリエトキシシリル-1-ヘキシルチオアセテート;1-トリエトキシシリル-5-オクチルチオアセテート;8-トリメトキシシリル-1-オクチルチオアセテート;1-トリメトキシシリル-7-オクチルチオアセテート;10-トリエトキシシリル-1-デシルチオアセテート;1-トリエトキシシリル-9-デシルチオアセテート;1-トリエトキシシリル-2-ブチルチオアセテート;1-トリエトキシシリル-3-ブチルチオアセテート;1-トリエトキシシリル-3-メチル-2-ブチルチオアセテート;1-トリエトキシシリル-3-メチル-3-ブチルチオアセテート;3-トリメトキシシリル-1-プロピルチオオクタノエート;3-トリエトキシシリル-1-プロピルチオパルミテート;3-トリエトキシシリル-1-プロピルチオオクタノエート;3-トリエトキシシリル-1-プロピルチオベンゾエート;3-トリエトキシシリル-1-プロピルチオ-2-エチルヘキサノエート;3-メチルジアセトキシシリル-1-プロピルチオアセテート;3-トリアセトキシシリル-1-プロピルチオアセテート;2-メチルジアセトキシシリル-1-エチルチオアセテート;2-トリアセトキシシリル-1-エチルチオアセテート;1-メチルジアセトキシシリル-1-エチルチオアセテート;1-トリアセトキシシリル-1-エチルチオアセテート;ビス-(3-トリエトキシシリル-1-プロピル)ジチオフタレート;ビス-(3-トリエトキシシリル-1-プロピル)ジチオ-イソ-フタレート;ビス-(3-トリエトキシシリル-1-プロピル)ジチオテレ-フタレート;ビス-(3-トリエトキシシリル-1-プロピル)ジチオスクシネート、ビス-(3-トリエトキシシリル-1-プロピル)ジチオオキサレート;ビス-(3-トリエトキシシリル-1-プロピル)ジチオセバケート、ビス-(3-トリエトキシシリル-1-プロピル)ジチオアジペート;チオ酢酸S-(2-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルメチル)エステル;チオ酢酸S-(2-エトキシ-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルメチル)エステル;チオ酢酸S-(2,5-ジメチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルメチル)エステル;チオ酢酸S-(2-エトキシ-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルメチル)エステル、チオ酢酸S-[2-(3-ヒドロキシプロポキシ)-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルメチル]エステル;チオ酢酸S-[2-(3-ヒドロキシ-2-メチルプロポキシ)-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルメチル]エステル;チオ酢酸S-[2-(3-ヒドロキシ-2-メチルプロポキシ)-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルメチル]エステル;チオ酢酸S-[2-(3-ヒドロキシ-3-メチルプロポキシ)-4-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルメチル]エステル;チオ酢酸S-(2-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピル)エステル;チオ酢酸S-(2-エトキシ-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピル)エステル;チオ酢酸S-(2,5-ジメチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピル)エステル;チオ酢酸S-(2-エトキシ-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピル)エステル、チオ酢酸S-[2-(3-ヒドロキシプロポキシ)-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピル]エステル;チオ酢酸S-[2-(3-ヒドロキシ-2-メチルプロポキシ)-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピル]エステル;チオ酢酸S-[2-(3-ヒドロキシ-2-メチルプロポキシ)-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピル]エステル;チオ酢酸S-[2-(3-ヒドロキシ-3-メチルプロポキシ)-4-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピル]エステル;チオプロピオン酸S-[2-(3-ヒドロキシ-2-メチルプロポキシ)-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピル]エステル;チオペンタン酸S-[2-(3-ヒドロキシ-2-メチルプロポキシ)-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピル]エステル;チオヘキサン酸S-[2-(3-ヒドロキシ-2-メチルプロポキシ)-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピル]エステル;2-エチル-チオヘキサン酸S-[2-(3-ヒドロキシ-2-メチルプロポキシ)-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピル]エステル;チオオクタン酸S-(2-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピル)エステル;チオオクタン酸S-(2-エトキシ-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピル)エステル;チオオクタン酸S-(2,5-ジメチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピル)エステル;チオオクタン酸S-(2-エトキシ-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピル)エステル、チオオクタン酸S-[2-(3-ヒドロキシプロポキシ)-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピル]エステル;チオオクタン酸S-[2-(3-ヒドロキシ-2-メチルプロポキシ)-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピル]エステル;チオオクタン酸S-[2-(3-ヒドロキシ-2-メチルプロポキシ)-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピル]エステル;チオオクタン酸S-[2-(3-ヒドロキシ-3-メチルプロポキシ)-4-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピル]エステル;チオ酢酸S-(2,4-ジメチル-[1,3,2]ジオキサシロラン-2-イルメチル)エステル;チオ酢酸S-(2,4-ジメチル-[1,3,2]ジオキサシロラン-2-イルプロピル)エステル;チオオクタン酸S-(2,4-ジメチル-[1,3,2]ジオキサシロラン-2-イルプロピル)エステルおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
一般式(II)のチオエステルは、メチルチオアセテート、エチルチオアセテート、アリルチオアセテート、プロピルチオアセテート、ブチルチオアセテート、ペンタチオアセテート、ヘキシルチオアセテート、シクロヘキシルチオアセテート、フェニルチオアセテート、ベンジルチオアセテート、メチルチオオクタノエート、エチルチオオクタノエート、アリルチオオクタノエート、プロピルチオオクタノエート、ブチルチオオクタノエート、ペンタチオオクタノエート、ヘキシルチオオクタノエート、シクロヘキシルチオオクタノエート、フェニルチオオクタノエート、ベンジルチオオクタノエート、ヘキシルチオアジペート、シクロヘキシルチオアジペート、フェニルチオアジペート、ベンジルチオアジペート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるものから選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
式(III)のアルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、三置換アンモニウム塩は、ナトリウム3-トリメトキシシリルプロパンチオレート、ナトリウム3-トリエトキシシリルプロパンチオレート、ナトリウム3-ジエトキシメチルシリルプロパンチオレート、ナトリウムトリメトキシシリルメタンチオレート、ナトリウム3-[2-(3-ヒドロキシ-3-メチルプロポキシ)-4-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イル]プロパンチオレート、ナトリウム3-[2-(3-ヒドロキシ-2-メチルプロポキシ)-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イル]プロパンチオレート、ナトリウム3-[2-エトキシ-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イル]プロパンチオレート、ナトリウム3-(2,4-ジメチル-[1,3,2]ジオキサシロラン-2-イル)プロパンチオレート、カリウム3-トリメトキシシリルプロパンチオレート、カリウム3-トリエトキシシリルプロパンチオレート、カリウム3-ジエトキシメチルシリルプロパンチオレート、カリウムトリメトキシシリルメタンチオレート、カリウム3-[2-(3-ヒドロキシ-3-メチルプロポキシ)-4-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イル]プロパンチオレート、カリウム3-[2-(3-ヒドロキシ-2-メチルプロポキシ)-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イル]プロパンチオレート、カリウム3-[2-エトキシ-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イル]プロパンチオレート、ナトリウム3-(2,4-ジメチル-[1,3,2]ジオキサシロラン-2-イル)プロパンチオレート、トリメチルアンモニウム3-トリメトキシシリルプロパンチオレート、トリエチルアンモニウム3-トリエトキシシリルプロパンチオレート、トリイソプロピルアンモニウム3-ジエトキシメチルシリルプロパンチオレート、トリメチルアンモニウムトリメトキシシリルメタンチオレート、トリエチルアンモニウム3-[2-(3-ヒドロキシ-3-メチルプロポキシ)-4-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イル]プロパンチオレート、トリイソプロピルアンモニウム3-[2-(3-ヒドロキシ-2-メチルプロポキシ)-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イル]プロパンチオレート、トリイソプロピルアンモニウム3-[2-エトキシ-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イル]プロパンチオレート、トリメチルアンモニウム3-(2,4-ジメチル-[1,3,2]ジオキサシロラン-2-イル)プロパンチオレートおよびそれらの組み合わせからなる群から選択することができる、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
メルカプト官能性アルコキシシランからなる群から選択される式(V)のメルカプト官能性アルコキシシランは、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン、(3-メルカプトプロピル)ジメトキシメチルシラン、(3-メルカプトプロピル)ジエトキシメチルシラン、(3-メルカプトプロピル)ジメチル(メトキシ)シラン、(3-メルカプトプロピル)ジメチル(エトキシ)シラン、(2-メルカプトエチル)トリメトキシシラン、(2-メルカプトエチル)トリエトキシシラン、(2-メルカプトエチル)ジメトキシメチルシラン、(2-メルカプトエチル)ジエトキシメチルシラン、(2-メルカプトエチル)ジメチル(メトキシ)シラン、(2-メルカプトエチル)ジメチル(エトキシ)シラン、2-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルメチルメルカプタン、2-エトキシ-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルメチルメルカプタン、2,5-ジメチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルメチルメルカプタン、2-エトキシ-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルメチルメルカプタン、2-(3-ヒドロキシプロポキシ)-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルメチルメルカプタン、2-(3-ヒドロキシ-2-メチルプロポキシ)-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルメチルメルカプタン、2-(3-ヒドロキシ-2-メチルプロポキシ)-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルメチルメルカプタン、2-(3-ヒドロキシ-3-メチルプロポキシ)-4-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルメチルメルカプタン、2-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピルメルカプタン、2-エトキシ-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピルメルカプタン、2,5-ジメチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピルメルカプタン、2-エトキシ-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピルメルカプタン、2-(3-ヒドロキシプロポキシ)-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピルメルカプタン、2-(3-ヒドロキシ-2-メチルプロポキシ)-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピルメルカプタン、2-(3-ヒドロキシ-2-メチルプロポキシ)-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピルメルカプタン、2-(3-ヒドロキシ-3-メチルプロポキシ)-4-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピルメルカプタン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択することができる、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
副生成物のチオールは、メルカプト官能性アルコキシシランおよび/またはチオエステルの沸点よりも約1.013バールの大気圧で約5℃より低い沸点を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
有機溶媒をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
チオエステルとメルカプト官能性アルコキシシランとの反応および反応の副生成物が副生成物のチオールである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
ブレンステッド-ローリー酸またはルイス酸から選択される触媒の存在下で反応を実施することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
副生成物のチオールが蒸留またはストリッピングによって取り出される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
メルカプト官能性アルコキシシランが、チオエステルに基づいて約0.5から約1.5当量の量である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
チオエステルと副生成物のアルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、または三置換アンモニウム塩との反応がチオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、または三置換アンモニウム塩である、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
チオエステルとアルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、または三置換アンモニウム塩との反応が、約15℃から約200℃の温度および約0.001バールから約2バールの圧力で行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
アルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、または三置換アンモニウム塩が、チオエステルに基づいて約0.5から約1.5当量の量である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
ステップ(b)は、
(b1)チオエステルを、ステップ(a)のアルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、または三置換アンモニウム塩と反応させて、アルコキシシリル含有チオカルボン酸エステルおよびチオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、または三置換アンモニウム塩の混合物を生成すること;および
(b2)ステップ(b1)のチオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、または三置換アンモニウム塩をメルカプト官能性アルコキシシランと反応させて、アルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、または三置換アンモニウム塩および副生成物のチオールを形成すること、
をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項18】
アルコキシシリル官能性チオレートが、チオエステルに基づいて約0.001から約0.9当量の量で使用され、そしてアルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または三置換アンモニウム塩は、メルカプト官能性アルコキシシランに対して約0.00065から約1.5のモル比で使用される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
チオエステルが、約15℃から約200℃の温度および約0.001バールから約2バールの圧力で、アルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、または三置換アンモニウム塩と反応する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記方法が、バッチプロセス、半連続プロセス、または連続プロセスで実施される、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記連続プロセスは、
(a)チオエステル、メルカプト官能性アルコキシシラン、およびアルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、または三置換アンモニウム塩を第1の反応容器に連続的に加えることにより、チオエステルをメルカプト官能性アルコキシシランおよびアルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、または三置換アンモニウム塩と連続的に接触させること;
(b)第1の反応容器において、チオエステルを、ステップ(a)のアルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、または三置換アンモニウム塩と連続的に反応させて、アルコキシシリル含有チオカルボン酸エステルおよび副生成物のチオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、または三置換アンモニウム塩を生成すること;
(b1)ステップ(b)で形成されたチオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、または三置換アンモニウム塩をメルカプト官能性アルコキシシランと連続的に反応させて、第1の反応容器において、アルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、または三置換アンモニウムおよび副生成物のチオールを形成すること、ここでステップ(b)および(b1)の反応は、アルコキシシリル含有チオカルボン酸エステル、チオエステル、アルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、または三置換アンモニウム塩、およびメルカプト官能性アルコキシシラン、およびチオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、および/または三置換アンモニウム塩およびチオールを含む反応混合物を形成し;
(c)第1の反応容器からステップ(b1)の反応混合物を連続的に取り出し、そして反応混合物を蒸留装置に移すこと;
(c1)反応混合物を蒸留装置に通すことにより、ステップ(b1)の反応混合物中の他の成分からチオールを連続的に分離し、分離されたチオールおよび他の成分の混合物を形成すること;
(c2)ステップ(c1)の他の成分の一部を継続的に取り出すこと、
(c3)ステップ(c1)の他の成分の残りの部分を第1の反応容器に継続的に再利用すること;
(d)ステップ(c2)の他の成分の混合物を、さらなる処理のために第2の反応器に連続的に移して、アルコキシシリル含有チオカルボン酸エステルを形成すること;
(d1)ステップ(d)のアルコキシシリル含有チオカルボン酸エステルを貯蔵容器に連続的に移すこと;
(e)任意選択で、ステップ(c1)の分離された副生成物のチオールをカルボン酸とともに使用して一般式(II)のチオエステルを調製し、そしてチオエステルをステップ(a)へとステップ(a)の第1の反応容器に移して一般式(I)のアルコキシシリル含有チオカルボン酸エステルを調製すること、
を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
チオエステルは、酸触媒、脱水剤および水分スカベンジャーからなる群から選択される少なくとも1つの化合物の存在下で、一般式(VII)のカルボン酸
(COOH) (VII)
ここでRおよびzは、前記で定義されたとおりである、
の反応によって調製される、請求項2に記載の方法。
【請求項23】
(i)一般式(I)のアルコキシシリル含有チオカルボン酸エステル、
-[C(=O)-S-R-SiR (OR3-a (I)
ここでRは、1から18個の炭素原子を含む直鎖アルキル基、3から18個の炭素原子を含む分岐鎖アルキル基、5から18個の炭素原子を含むシクロアルキル、2から18個の炭素原子を含むアルケニル、6から18個の炭素原子を含むアリール、7から18個の炭素原子を含むアラルキル、または水素から選択される一価の基であり、または1から10個の炭素原子を含むアルキル、5から10個の炭素原子を含むシクロアルキル、またはフェニルから選択される二価の基であり;
各Rは、独立して、1から10個の炭素原子を含む直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を含む分岐鎖アルキル基、5から10個の炭素原子を含むシクロアルキル基、2から10個の炭素原子を含むアルケニル基、6から10個の炭素原子を含むアリール基、または7から10個の炭素原子を含むアラルキル基であり;
各Rは、独立して、1から6個の炭素原子を含む直鎖アルキル基、3から6個の炭素原子を含む分岐鎖アルキル基、5または6個の炭素原子を含むシクロアルキル基、2から6個の炭素原子を含むアルケニル基、6個の炭素原子を含むアリール基、または7から10個の炭素原子を含むアラルキル基であり;
は、独立して、1から6個の炭素原子を含む直鎖アルキル基、3から6個の炭素原子を含む分岐鎖アルキル基、5または6個の炭素原子を含むシクロアルキル基、2から6個の炭素原子を含むアルケニル基、6個の炭素原子を含むアリール基、7から10個の炭素原子を含むアラルキル基、2から6個の炭素原子およびヒドロキシル基を含む直鎖アルキル基、構造-R-(OCHCH(OCHCH(CH))ORを有する少なくとも1つの酸素原子を含むアルキル基から選択される一価の基、または共有結合により結合された2つのR基から形成された二価の基であり、但し(i)2つのR基が結合している場合、aは0または1であり、そして(ii)m+nの合計は1から20であるという条件であり;
a、m、n、およびzは整数であり、ここでaは0、1、または2であり、mは0から10であり、nは0から10であり、そしてzは1または2であり、および
一般式(II)のチオエステル、
[C(=O)SR (II)
ここで
は、1から18個の炭素原子を含む直鎖アルキル基、3から18個の炭素原子を含む分岐鎖アルキル基、5から18個の炭素原子を含むシクロアルキル、2から18個の炭素原子を含むアルケニル、6から18個の炭素原子を含むアリール、7から18個の炭素原子を含むアラルキル、または水素から選択される一価の基であり、または1から10個の炭素原子を含むアルキル、5から10個の炭素原子を含むシクロアルキル、またはフェニルから選択される二価の基であり;
各Rは、独立して、1から18個の炭素原子を含む直鎖アルキル基、3から18個の炭素原子を含む分岐鎖アルキル基、5から18個の炭素原子を含むシクロアルキル基、2から18個の炭素原子を含むアルケニル基、6から18個の炭素原子を含むアリール基、7から18個の炭素原子を含むアラルキル基から選択される一価の基であり、そしてここでRおよびzは整数であり、ここでzは1または2である、
を含む、アルコキシシリル含有チオカルボン酸エステル組成物。
【請求項24】
組成物は、アルコキシシリル含有チオカルボン酸(i)およびチオエステル(ii)の総重量に基づいて、約70から約99.9重量パーセントのアルコキシシリル含有チオカルボン酸エステル(i)および0.1から約30重量パーセントのチオエステル(ii)を含む、請求項23に記載のアルコキシシリル含有チオカルボン酸エステル組成物。
【請求項25】
メルカプト官能性アルコキシシランをさらに含む、請求項23に記載のアルコキシシリル含有チオカルボン酸エステル組成物。
【請求項26】
メルカプト官能性アルコキシシランは、アルコキシシリル含有チオカルボン酸(i)およびチオエステル(ii)の総重量に基づいて、0.1から50重量パーセントである、請求項25に記載のアルコキシシリル含有チオカルボン酸エステル組成物。
【請求項27】
請求項23に記載のアルコキシシリル含有チオカルボン酸エステル組成物を含むゴム組成物。
【請求項28】
メルカプト官能性アルコキシシランをさらに含む、請求項27に記載のゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2019年4月30日に出願された米国出願シリアル番号62/840,752の優先権を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ホスゲンまたは塩化チオニル試薬の使用を回避し、再利用不可能で環境に有害な副生成物を最小化するアルコキシシリル含有チオカルボン酸エステルを製造する方法およびアルコキシシリル含有チオカルボン酸エステルおよびチオエステルを含むアルコキシシリル含有チオカルボン酸エステル組成物を提供する。
【背景技術】
【0003】
アルコキシシリル含有チオカルボン酸エステルは、メルカプト水素原子がアシル基(以下、「ブロッキング基」と称する)で置き換えられたメルカプト官能性アルコキシシランの誘導体である。アルコキシシリル含有チオカルボン酸エステルは、しばしばブロックされたメルカプトシランと称される。これらのアルコキシシリル含有チオカルボン酸エステルは、ポリマー、特にゴム中の無機充填剤の分散を改善するための分散剤として、そして反応性メルカプト官能基を形成するため配合中に非ブロック剤を使用して非ブロック化された後、ポリマーと無機充填剤との間のカップリング剤として使用することができる。これらのシランカップリングされた鉱物充填ポリマーは、さまざまな製品、特にポリマーがゴムの場合のタイヤの製造に使用できる。
【0004】
アルコキシシリル含有チオカルボン酸エステルは、様々な従来の方法によって製造されてきた。しかし、これらの方法は一般に、カルボン酸ハロゲン化物中間体としても知られている塩化アシル中間体に依存しており、これは、カルボン酸からの調製に有毒なホスゲンまたは塩化チオニルを使用する必要があり、そしてアルカリ金属塩化物塩などの塩化物化合物を生成する。これらのアルカリ金属塩は、適切な廃棄を要する有機化合物で汚染された廃棄物である。
【0005】
例えば、アルコキシシリル含有チオカルボン酸エステルは、カルボン酸ハロゲン化物を水性アルカリ金属硫化物と反応させて、チオカルボン酸のアルカリ金属塩の水溶液を生成することによって調製されてきており、これは続いてハロ官能性アルコキシシランと反応する。この方法では、水に溶解した2当量のハロゲン化アルカリ金属が生成され、これは廃棄物として適切に廃棄する必要があり、そして第2の非水相には生成物が含まれている。生成物を含む非水相は、アルカリ金属塩を含む水相から分離する必要があり、そして二相反応を促進するために相間移動触媒を含むことがあり得る。別の方法は、カルボン酸ハロゲン化物を、アルコキシシリル官能性メルカプチドのアルカリ金属塩と反応させることを含む。得られた副生成物であるアルカリ金属ハロゲン化物が反応混合物から沈殿する。アルカリ金属ハロゲン化物をアルコキシシリル含有チオカルボン酸エステル生成物から分離するには、濾過、遠心分離、またはデカンテーションが必要であり、これは生成物の損失およびアルカリ金属ハロゲン化物塩の適切な廃棄の必要につながる。
【0006】
アルコキシシリル含有チオカルボン酸エステルを製造するための従来の方法に関連する問題の結果として、容易に利用できる試薬を使用して、費用効果の高いアルコキシシリル含有チオカルボン酸エステル生成物を提供しながらも、有毒なホスゲンまたはハロゲン化チオニルを使用してハロゲン化アシル中間体を生成することを回避し、再利用不可能なハロゲン化アルカリ廃棄物の形成を最小限に抑える方法が必要である。
【発明の概要】
【0007】
驚くべきことに、本発明者らは、前述の問題を回避する、アルコキシシリル含有チオカルボン酸エステルの製造方法を発見した。具体的には、ここでのアルコキシシリル含有チオカルボン酸エステルは、アルコキシシリル基を含まないチオエステルを、アルコキシシリル官能性メルカプチドまたはアルコキシシリル官能性メルカプタンのアルカリ金属塩、アルカリ性金属塩、または三置換アンモニウム塩と反応させることを含む方法によって作製される。三置換アンモニウム塩は、アミドを形成するチオエステルとの反応を防止するために、好ましくはトリアルキルアミンに基づく。本明細書に記載の方法は、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ性金属ハロゲン化物または三置換ハロゲン化アンモニウムの形成を回避する。本明細書の方法では、アルコキシシリル官能基を含まないメルカプチドのアルカリ金属塩、アルカリ性金属塩または三置換アンモニウム塩が生成されるが、それを再利用してチオエステル試薬を再生することができる。
【0008】
チオエステル試薬は、反応性アルコキシシリル基を含まない。これらのチオエステル試薬は、アルコキシシリル基を含まないメルカプチドのアルカリ金属塩、アルカリ性金属塩、または三置換アンモニウム塩を再利用することによって調製することができる。これらの塩は、ブレンステッド-ローリー酸、好ましくはメルカプト官能性アルコキシシランを使用してプロトン化することができる。メルカプト官能性シランは、メルカプチドのアルカリ金属塩、アルカリ性金属塩または三置換アンモニウム塩と反応して(脱プロトン化され)、アルコキシシリル官能性メルカプチドのアルカリ金属塩、アルカリ金属塩または三置換アンモニウム、およびアルコキシシリル基を含まないメルカプタンを形成する。アルコキシシリル基を含まないメルカプタンは、蒸留法、膜分離法または抽出法、より具体的には蒸留を用いて、アルコキシシリル官能性メルカプチドのアルカリ金属塩、アルカリ性金属塩または三置換アンモニウム塩から取り出すことができる。チオエステル試薬は、アルコキシシリル基を含まないメルカプタンとカルボン酸との反応により調製される。この反応により、無毒で環境に優しい副生成物である水が生成される。さらに本発明は、本明細書に記載のカルボン酸を使用することができ、これは、ホスゲンまたはハロゲン化チオニルの取り扱いを必要とする以前の方法のカルボン酸クロリドまたはチオ酸よりもはるかに安価である。
【0009】
より具体的には、本明細書では、一般式(I)のアルコキシシリル含有チオカルボン酸エステルを製造するための方法が提供され、
-[C(=O)-S-R-SiR (OR3-a (I)
ここでRは、1から18個の炭素原子を含む直鎖アルキル、3から18個の炭素原子を含む分岐鎖アルキル、5から18個の炭素原子を含むシクロアルキル、2から18個の炭素原子を含むアルケニル、6から18個の炭素原子を含むアリール基、7から18個の炭素原子を含むアラルキルまたは水素から選択される一価の基であり、または1から10個の炭素原子を含むアルキル、5から10個の炭素原子を含むシクロアルキルまたはフェニルから選択される二価の基であり;
各Rは、独立して、1から10個の炭素原子を含む直鎖アルキル、3から10個の炭素原子を含む分岐鎖アルキル、5から10個の炭素原子を含むシクロアルキル、2から10個の炭素原子を含むアルケニル、6から10個の炭素原子を含むアリール基、または7から10個の炭素原子を含むアラルキルから選択される二価の基であり;
各Rは、独立して、1から6個の炭素原子を含む直鎖アルキル、3から6個の炭素原子を含む分岐鎖アルキル、5または6個の炭素原子を含むシクロアルキル、2から6個の炭素原子を含むアルケニル、6個の炭素原子を含むアリール基、または7から10個の炭素原子を含むアラルキルから選択される一価の基であり;
は、独立して、1から6個の炭素原子を含む直鎖アルキル、3から6個の炭素原子を含む分岐鎖アルキル、5または6個の炭素原子を含むシクロアルキル、2から6個の炭素原子を含むアルケニル、6個の炭素原子を含むアリール基、7から10個の炭素原子を含むアラルキル、2から6個の炭素原子およびヒドロキシル基を含む直鎖アルキル、または3から6個の炭素原子およびヒドロキシル基を含む分岐鎖アルキル、構造-R-(OCHCH(OCHCH(CH))ORを有する少なくとも1つの酸素原子を含むアルキル基から選択される一価の基であり、または共有結合により結合された2つのR基から形成された二価の基であり、但し(i)2つのR基が共に結合している場合、aは0または1であり、そして(ii)m+nの合計は1から20であるという条件であり、
a、m、n、およびzは整数であり、ここでaは0、1、または2であり、mは0から10であり、nは0から10であり、そしてzは1または2であり、そしてここで方法は、
一般式(II)のチオエステルを、
[C(=O)SR (II)
ここで
各Rは、独立して、1から18個の炭素原子を含む直鎖アルキル、3から18個の炭素原子を含む分岐鎖アルキル、5から18個の炭素原子を含むシクロアルキル、2から18個の炭素原子を含むアルケニル、6から18個の炭素原子を含むアリール基、7から18個の炭素原子を含むアラルキルから選択される一価の基であり、そして
ここでRおよびzは、上記で定義された通りであり、
式(V)のメルカプト官能性アルコキシシラン、
HS-R-SiR (OR3-a (V)、および/または
一般式(III)のアルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、三置換アンモニウム塩、
S-R-SiR (OR3-a (III)
ここでMは、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、三置換アンモニウムイオンであり、そしてR、R、R、およびaは上記で定義された通りである、
と反応させることを含む。
【発明の詳細な説明】
【0010】
ここでの明細書および特許請求の範囲において、以下の用語および表現は、示されているように理解されるべきである。
【0011】
単数形「a」、「an」、および「the」には複数形が含まれ、特定の数値への参照には、文脈で明確に別段の指示がない限り、少なくともその特定の値が含まれる。
【0012】
本明細書に記載されているすべての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行することができる。本明細書で提供されるありとあらゆる例、または例示的な言語(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をよりよく照らすことを意図しており、別段の請求がない限り、本発明の範囲を制限するものではない。
【0013】
明細書のいかなる文言も、本発明の実施に不可欠であるとしてクレームされていない要素を示すと解釈されるべきではない。
【0014】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含む(containing)」、「によって特徴付けられる(characterized by)」という用語およびそれらの文法上の均等は、追加の、記載されていない要素または方法のステップを除外しない包括的または開放的な用語であるが、より限定的な用語「からなる(consisting of)」および「本質的にからなる(consistingessentially of)」を含むことも理解される。
【0015】
本明細書に記載の任意の数値範囲は、その範囲内のすべての下位範囲、およびそのような範囲または下位範囲の様々な端点の任意の組み合わせを含むことが理解されよう。
【0016】
構造的、組成的および/または機能的に関連する化合物、材料または物質の群に属するものとして明示的または黙示的に明細書に開示され、および/または特許請求の範囲に記載されている化合物、材料または物質は、群の個々の代表物およびそのすべての組み合わせを含むことがさらに理解される。
【0017】
「アルキル」という用語は、任意の一価または二価の飽和直鎖または分岐炭化水素基を意味し;「シクロアルキル」という用語は、任意の一価または二価の環状飽和炭化水素基を意味し;そして「アルケニル」という用語は、1つまたは複数の炭素-炭素二重結合を含む任意の一価または二価の直鎖または分岐炭化水素基を意味し、ここで基の結合部位は、炭素-炭素二重結合またはその他の箇所のいずれかにあり得る。
【0018】
アルキルの例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチルおよびイソブチルが含まれる。アルケニルの例には、ビニル、プロペニル、アリル、およびメタリルが含まれる。シクロアルケニルの例には、エチリデニルノルボルナン、エチリデンノルボルニル、エチリデニルノルボルネンおよびエチリデンノルボルネニルが含まれる。
【0019】
「シクロアルキル」および「シクロアルケニル」という表現は、二環式、三環式およびより高次の環状構造、ならびにアルキルおよび/またはアルケニル基でさらに置換された前述の環状構造を含む。代表的な例には、ノルボルニル、ノルボルネニル、エチルノルボルニル、エチルノルボルネニル、シクロヘキシル、エチルシクロヘキシル、エチルシクロヘキセニル、シクロヘキシルシクロヘキシルおよびシクロドデカトリエニルが含まれる。
【0020】
「アリール」という用語は、任意の一価または二価の芳香族炭化水素基を意味し;そして「アラルキル」という用語は、本明細書で定義される任意の一価または二価のアルキル基を意味し、ここで1つまたは複数の水素原子が同数の類似および/または異なるアリール(本明細書で定義される)基で置換されている。アリールの例には、フェニルおよびナフタレニルが含まれる。アラルキルの例には、ベンジルおよびフェネチルが含まれる。
【0021】
本明細書での様々な基の鎖長の記載では、「最大」という表現は、本明細書に記載の任意の鎖長に対して可能な限り低い値を含み得ることが理解され、鎖長のそのような下限が存在し得る場合、例えば、これらの下限範囲の端点は1炭素原子アルキル、すなわちメチル、2炭素原子アルケニル、6炭素アリール、7炭素アラルキルなどを含み得る。
【0022】
本明細書に記載のアルコキシシリル含有チオカルボン酸エステルの製造方法において、アルコキシシリル含有チオカルボン酸エステルを製造するための反応スキームAは、平衡化学式で表すことができ、
【化1】

ここでR、R、R、R、R、M、aおよびzは、本明細書に記載されている通りである。本明細書の大文字の「Z」の値は、相対モル量であると理解され、本明細書の下付き文字zと同じ値を有するように定義され、すなわち、下付き文字zが1の場合、Z=1であり、そして下付き文字zが2の場合、Z=2である。
【0023】
本明細書に記載のアルコキシシリル含有チオカルボン酸エステルを製造する方法において、アルコキシシリル含有チオカルボン酸エステルを製造するための反応スキームBは、平衡化学式によって表すことができ、
【化2】

ここでR、R、R、R、R、aおよびzは、本明細書に記載されている通りである。本明細書の大文字の「Z」の値は、相対モル量であると理解され、本明細書の下付き文字zと同じ値を有するように定義され、すなわち、下付き文字zが1の場合、Z=1であり、下付き文字zが2の場合、Z=2である。
【0024】
本明細書に記載の一般式(I)のアルコキシシリル含有チオカルボン酸エステルの製造方法において、Rは、より具体的には5から15個の炭素原子を含む、さらにより具体的には5から9個の炭素原子、またさらにより具体的には7個の炭素原子を含む直鎖アルキル、5から15個の炭素原子を含む分岐鎖アルキル、5から15個の炭素原子を含む直鎖アルケニル、5から15個の炭素原子を含む分岐鎖アルケニルから選択される一価の基、または2から10個の炭素原子、好ましくは2から8個の炭素原子のアルキルから選択される二価の基であり得る。Rの代表的で非限定的な例は、一価のペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、2-エチルヘキシルまたは二価のエチル、ブチルまたはヘキシルである。
【0025】
本明細書に記載のRは、より具体的には、1から8個の炭素原子を含む、さらにより具体的には1から3個の炭素原子、またさらにより具体的には3個の炭素原子を含む二価の直鎖アルキル、または3から6個の炭素原子、さらに具体的には4個の炭素原子を含む分岐鎖アルキルであり得る。Rの代表的で非限定的な例は、二価のメチル、エチル、プロピルまたは2-メチルプロピルである。
【0026】
本明細書に記載のRは、より具体的には、1から6個の炭素原子を含む直鎖アルキル基、3から6個の炭素原子またはフェニルを含む分枝鎖アルキル基、またはさらにより具体的には一価メチルであり得る。Rの代表的で非限定的な例は、一価のメチル、エチルおよびフェニルである。
【0027】
本明細書に記載のRは、より具体的には、1から6個の炭素原子を含む直鎖アルキル基、3から6個の炭素原子を含む分岐鎖アルキル基、1から6個の炭素原子および少なくとも1つのヒドロキシル基を含む直鎖アルキル基、または3から6個の炭素原子および少なくとも1つのヒドロキシル基を含む分岐鎖アルキル基であり得る。Rの代表的で非限定的な例は、一価のメチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、2-ヒドロキシルエチル、2-ヒドロキシルプロピル、3-ヒドロキシ-2-メチルプロピル、2-ヒドロキシルブチル、3-ヒドロキシルブチルまたは3-ヒドロキシル-1,3-ジメチルブチル、さらに具体的にはエチル、3-ヒドロキシ-2-メチルプロピルまたは3-ヒドロキシブチルである。2つのR基が共に結合されるとき、より具体的には、2から12個の炭素原子を有する二価の基が形成される。2つのR基を共に組み合わせることから形成される二価の基の代表的な例は、二価-CHCH-、-CHCHCH-、-CHCH(CH)CH-、または-CHCHCH(CH)-であり得る。
【0028】
本明細書に記載のRは、より具体的には、1から10個の炭素原子を含む一価直鎖アルキル基、3から10個の炭素原子を含む一価分岐鎖アルキル基、5から10個の炭素原子を含む一価シクロアルキル基、さらにより具体的には、3から8個の炭素原子を含む一価の直鎖アルキル基または3から8個の炭素原子を含む分岐鎖アルキル基であり得る。
【0029】
は、より好ましくは、ナトリウムまたはカリウム、好ましくはナトリウムの非限定的な例などのアルカリ金属カチオンイオン、またはトリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリイソプロピルアンモニウム、ピペリジニウム、ピリジニウム、またはプロトン化4,7,13,16,21,24-ヘキサオキサ-1,10-ジアザビシクロ[8.8.8]ヘキサコサンなどの三置換アンモニウムイオンであり得る。
【0030】
本明細書で使用される下付き文字aおよびzは整数であり得、ここでaはより具体的には0または1であり、好ましくは0であり、そしてzは1または2であり、より好ましくは1である。
【0031】
一実施形態では、Rは、5から11個の炭素原子を含む一価の直鎖アルキル基、5から11個の炭素原子を含む一価の分岐鎖アルキル基、または1から8個の炭素原子の二価の直鎖アルキル基であり、Rは、1から6個の炭素原子を含む二価のアルキル基、または3から6個の炭素原子を含む分岐鎖アルキル基であり;Rはメチルであり、Rは、一価のエチル、2-ヒドロキシルエチル、2-ヒドロキシルプロピル、3-ヒドロキシ-2-メチルプロピル、2-ヒドロキシルブチル、3-ヒドロキシルブチル、または3-ヒドロキシル-1,3-ジメチルブチルであり、または2つのRが共に結合して、構造-CHCHCH-、-CHCH(CH)CH-、または-CHCHCH(CH)-を有する二価の基-R-R-を形成し、Rは、4から8個の炭素原子の一価の直鎖アルキル基、4から8個の炭素原子の一価の分岐鎖アルキル基、または5から8個の炭素原子の一価のシクロアルキル基であり、Mはナトリウムイオンであり、aは0または1であり、好ましくは0であり、zは1または2であり、好ましくは1である。
【0032】
本明細書に記載の一般式(I)のアルコキシシリル含有チオカルボン酸エステルは、2-トリエトキシシリル-1-エチルチオアセテート;2-トリメトキシシリル-1-エチルチオアセテート;2-(メチルジメトキシシリル)-1-エチルチオアセテート;3-トリメトキシシリル-1-プロピルチオアセテート;トリエトキシシリルメチルチオアセテート;トリメトキシシリルメチルチオアセテート;トリイソプロポキシシリルメチルチオアセテート;メチルジエトキシシリルメチルチオアセテート;メチルジメトキシシリルメチルチオアセテート;メチルジイソプロポキシシリルメチルチオアセテート;ジメチルエトキシシリルメチルチオアセテート;ジメチルメトキシシリルメチルチオアセテート;ジメチルイソプロポキシシリルメチルチオアセテート;2-トリイソプロポキシシリル-1-エチルチオアセテート;2-(メチルジエトキシシリル)-1-エチルチオアセテート;2-(メチルジイソプロポキシシリル)-1-エチルチオアセテート;2-(ジメチルエトキシシリル)-1-エチルチオアセテート;2-(ジメチルメトキシシリル)-1-エチルチオアセテート;2-(ジメチルイソプロポキシシリル)-1-エチルチオアセテート;3-トリエトキシシリル-1-プロピルチオアセテート;3-トリイソプロポキシシリル-1-プロピルチオアセテート;3-メチルジエトキシシリル-1-プロピルチオアセテート;3-メチルジメトキシシリル-1-プロピルチオアセテート;3-メチルジイソプロポキシシリル-1-プロピルチオアセテート;1-(2-トリエトキシシリル-1-エチル)-4-チオアセチルシクロヘキサン;1-(2-トリエトキシシリル-1-エチル)-3-チオアセチルシクロヘキサン;2-トリエトキシシリル-5-チオアセチルノルボルネン;2-トリエトキシシリル-4-チオアセチルノルボルネン;2-(2-トリエトキシシリル-1-エチル)-5-チオアセチルノルボルネン;2-(2-トリエトキシシリル-1-エチル)-4-チオアセチルノルボルネン;6-トリエトキシシリル-1-ヘキシルチオアセテート;1-トリエトキシシリル-5-ヘキシルチオアセテート;8-トリエトキシシリル-1-オクチルチオアセテート;1-トリエトキシシリル-7-オクチルチオアセテート;6-トリエトキシシリル-1-ヘキシルチオアセテート;1-トリエトキシシリル-5-オクチルチオアセテート;8-トリメトキシシリル-1-オクチルチオアセテート;1-トリメトキシシリル-7-オクチルチオアセテート;10-トリエトキシシリル-1-デシルチオアセテート;1-トリエトキシシリル-9-デシルチオアセテート;1-トリエトキシシリル-2-ブチルチオアセテート;1-トリエトキシシリル-3-ブチルチオアセテート;1-トリエトキシシリル-3-メチル-2-ブチルチオアセテート;1-トリエトキシシリル-3-メチル-3-ブチルチオアセテート;3-トリメトキシシリル-1-プロピルチオオクタノエート;3-トリエトキシシリル-1-プロピルチオパルミテート;3-トリエトキシシリル-1-プロピルチオオクタノエート;3-トリエトキシシリル-1-プロピルチオベンゾエート;3-トリエトキシシリル-1-プロピルチオ-2-エチルヘキサノエート;3-メチルジアセトキシシリル-1-プロピルチオアセテート;3-トリアセトキシシリル-1-プロピルチオアセテート;2-メチルジアセトキシシリル-1-エチルチオアセテート;2-トリアセトキシシリル-1-エチルチオアセテート;1-メチルジアセトキシシリル-1-エチルチオアセテート;1-トリアセトキシシリル-1-エチルチオアセテート;ビス-(3-トリエトキシシリル-1-プロピル)ジチオフタレート;ビス-(3-トリエトキシシリル-1-プロピル)ジチオ-イソ-フタレート;ビス-(3-トリエトキシシリル-1-プロピル)ジチオテレ-フタレート;ビス-(3-トリエトキシシリル-1-プロピル)ジチオスクシネート、ビス-(3-トリエトキシシリル-1-プロピル)ジチオオキサレート;ビス-(3-トリエトキシシリル-1-プロピル)ジチオセバケート、ビス-(3-トリエトキシシリル-1-プロピル)ジチオアジペート;チオ酢酸S-(2-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルメチル)エステル;チオ酢酸S-(2-エトキシ-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルメチル)エステル;チオ酢酸S-(2,5-ジメチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルメチル)エステル;チオ酢酸S-(2-エトキシ-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルメチル)エステル、チオ酢酸S-[2-(3-ヒドロキシプロポキシ)-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルメチル]エステル;チオ酢酸S-[2-(3-ヒドロキシ-2-メチルプロポキシ)-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルメチル]エステル;チオ酢酸S-[2-(3-ヒドロキシ-2-メチルプロポキシ)-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルメチル]エステル;チオ酢酸S-[2-(3-ヒドロキシ-3-メチルプロポキシ)-4-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルメチル]エステル;チオ酢酸S-(2-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピル)エステル;チオ酢酸S-(2-エトキシ-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピル)エステル;チオ酢酸S-(2,5-ジメチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピル)エステル;チオ酢酸S-(2-エトキシ-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピル)エステル、チオ酢酸S-[2-(3-ヒドロキシプロポキシ)-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピル]エステル;チオ酢酸S-[2-(3-ヒドロキシ-2-メチルプロポキシ)-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピル]エステル;チオ酢酸S-[2-(3-ヒドロキシ-2-メチルプロポキシ)-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピル]エステル;チオ酢酸S-[2-(3-ヒドロキシ-3-メチルプロポキシ)-4-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピル]エステル;チオプロピオン酸S-[2-(3-ヒドロキシ-2-メチルプロポキシ)-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピル]エステル;チオペンタン酸S-[2-(3-ヒドロキシ-2-メチルプロポキシ)-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピル]エステル;チオヘキサン酸S-[2-(3-ヒドロキシ-2-メチルプロポキシ)-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピル]エステル;2-エチル-チオヘキサン酸S-[2-(3-ヒドロキシ-2-メチルプロポキシ)-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピル]エステル;チオオクタン酸S-(2-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピル)エステル;チオオクタン酸S-(2-エトキシ-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピル)エステル;チオオクタン酸S-(2,5-ジメチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピル)エステル;チオオクタン酸S-(2-エトキシ-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピル)エステル、チオオクタン酸S-[2-(3-ヒドロキシプロポキシ)-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピル]エステル;チオオクタン酸S-[2-(3-ヒドロキシ-2-メチルプロポキシ)-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピル]エステル;チオオクタン酸S-[2-(3-ヒドロキシ-2-メチルプロポキシ)-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピル]エステル;チオオクタン酸S-[2-(3-ヒドロキシ-3-メチルプロポキシ)-4-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピル]エステル;チオ酢酸S-(2,4-ジメチル-[1,3,2]ジオキサシロラン-2-イルメチル)エステル;チオ酢酸S-(2,4-ジメチル-[1,3,2]ジオキサシロラン-2-イルプロピル)エステル;チオオクタン酸S-(2,4-ジメチル-[1,3,2]ジオキサシロラン-2-イルプロピル)エステルおよびそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0033】
本明細書に記載の一般式(II)のチオエステルは、メチルチオアセテート、エチルチオアセテート、アリルチオアセテート、プロピルチオアセテート、ブチルチオアセテート、ペンタチオアセテート、ヘキシルチオアセテート、シクロヘキシルチオアセテート、フェニルチオアセテート、ベンジルチオアセテート、メチルチオオクタノエート、エチルチオオクタノエート、アリルチオオクタノエート、プロピルチオオクタノエート、ブチルチオオクタノエート、ペンタチオオクタノエート、ヘキシルチオオクタノエート、シクロヘキシルチオオクタノエート、フェニルチオオクタノエート、ベンジルチオオクタノエート、ヘキシルチオアジペート、シクロヘキシルチオアジペート、フェニルチオアジペート、ベンジルチオアジペート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0034】
メルカプト官能性アルコキシシランは、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン、(3-メルカプトプロピル)ジメトキシメチルシラン、(3-メルカプトプロピル)ジエトキシメチルシラン、(3-メルカプトプロピル)ジメチル(メトキシ)シラン、(3-メルカプトプロピル)ジメチル(エトキシ)シラン、(2-メルカプトエチル)トリメトキシシラン、(2-メルカプトエチル)トリエトキシシラン、(2-メルカプトエチル)ジメトキシメチルシラン、(2-メルカプトエチル)ジエトキシメチルシラン、(2-メルカプトエチル)ジメチル(メトキシ)シラン、(2-メルカプトエチル)ジメチル(エトキシ)シラン、2-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルメチルメルカプタン、2-エトキシ-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルメチルメルカプタン、2,5-ジメチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルメチルメルカプタン、2-エトキシ-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルメチルメルカプタン、2-(3-ヒドロキシプロポキシ)-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルメチルメルカプタン、2-(3-ヒドロキシ-2-メチルプロポキシ)-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルメチルメルカプタン、2-(3-ヒドロキシ-2-メチルプロポキシ)-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルメチルメルカプタン、2-(3-ヒドロキシ-3-メチルプロポキシ)-4-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルメチルメルカプタン、2-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピルメルカプタン、2-エトキシ-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピルメルカプタン、2,5-ジメチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピルメルカプタン、2-エトキシ-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピルメルカプタン、2-(3-ヒドロキシプロポキシ)-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピルメルカプタン、2-(3-ヒドロキシ-2-メチルプロポキシ)-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピルメルカプタン、2-(3-ヒドロキシ-2-メチルプロポキシ)-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピルメルカプタン、2-(3-ヒドロキシ-3-メチルプロポキシ)-4-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イルプロピルメルカプタンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0035】
式(III)のアルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、および三置換アンモニウム塩は、3-トリメトキシシリルプロパンチオレートナトリウム、3-トリエトキシシリルプロパンチオレートナトリウム、3-ジエトキシメチルシリルプロパンチオレートナトリウム、トリメトキシシリルメタンチオレートナトリウム、3-[2-(3-ヒドロキシ-3-メチルプロポキシ)-4-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イル]プロパンチオレートナトリウム、3-[2-(3-ヒドロキシ-2-メチルプロポキシ)-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イル]プロパンチオレートナトリウム、3-[2-エトキシ-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イル]プロパンチオレートナトリウム、3-(2,4-ジメチル-[1,3,2]ジオキサシロラン-2-イル)プロパンチオレートナトリウム、3-トリメトキシシリルプロパンチオレートカリウム、3-トリエトキシシリルプロパンチオレートカリウム、3-ジエトキシメチルシリルプロパンチオレートカリウム、トリメトキシシリルメタンチオレートカリウム、3-[2-(3-ヒドロキシ-3-メチルプロポキシ)-4-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イル]プロパンチオレートカリウム、3-[2-(3-ヒドロキシ-2-メチルプロポキシ)-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イル]プロパンチオレートカリウム、3-[2-エトキシ-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イル]プロパンチオレートカリウム、3-(2,4-ジメチル-[1,3,2]ジオキサシロラン-2-イル)プロパンチオレートナトリウム、トリメチルアンモニウム3-トリメトキシシリルプロパンチオレート、トリエチルアンモニウム3-トリエトキシシリルプロパンチオレート、トリイソプロピルアンモニウム3-ジエトキシメチルシリルプロパンチオレート、トリメチルアンモニウムトリメトキシシリルメタンチオレート、トリエチルアンモニウム3-[2-(3-ヒドロキシ-3-メチルプロポキシ)-4-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イル]プロパンチオレート、トリイソプロピルアンモニウム3-[2-(3-ヒドロキシ-2-メチルプロポキシ)-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イル]プロパンチオレート、トリイソプロピルアンモニウム3-[2-エトキシ-5-メチル-[1,3,2]ジオキサシリナン-2-イル]プロパンチオレート、トリメチルアンモニウム3-(2,4-ジメチル-[1,3,2]ジオキサシロラン-2-イル)プロパンチオレートおよびそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0036】
がアルカリ金属塩イオン、アルカリ土類金属イオン、三置換アンモニウムイオンである一般式(III)のアルコキシ官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、三置換アンモニウム塩は、メルカプトシランの脱プロトン化、またはその全内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,777,569号に記載されているものなどの当業者に知られている他の方法によって得ることができる。
【0037】
本明細書に記載の式(V)のメルカプト官能性アルコキシシランまたは式(III)のアルコキシシリル官能性チオレートはまた、式(V)の1つまたは複数のメルカプト官能性アルコキシシラン、式(III)の1つまたは複数のメルカプト官能性チオレートまたは式(V)の1つまたは複数のメルカプト官能性アルコキシシランおよび式(III)の1つまたは複数のアルコキシシリル官能性チオレートを含み得ることがここで理解される。
【0038】
本明細書の一実施形態では、一般式(I)のアルコキシシリル含有チオカルボン酸エステルを調製するための方法であって、
-[C(=O)-S-R-SiR (OR3-a (I)
ここでRは、1から18個の炭素原子を含む直鎖アルキル、3から18個の炭素原子を含む分岐鎖アルキル、5から18個の炭素原子を含むシクロアルキル、2から18個の炭素原子を含むアルケニル、6から18個の炭素原子を含むアリール基、7から18個の炭素原子を含むアラルキル、または水素から選択される一価の基であり、または1から10個の炭素原子を含むアルキル、5から10個の炭素原子を含むシクロアルキル、またはフェニルから選択される二価の基であり;
各Rは、独立して、1から10個の炭素原子を含む直鎖アルキル、3から10個の炭素原子を含む分岐鎖アルキル、5から10個の炭素原子を含むシクロアルキル、2から10個の炭素原子を含むアルケニル、6から10個の炭素原子を含むアリール基、または7から10個の炭素原子を含むアラルキルから選択される二価の基であり;
各Rは、独立して、1から6個の炭素原子を含む直鎖アルキル、3から6個の炭素原子を含む分枝鎖アルキル、5または6個の炭素原子を含むシクロアルキル、2から6個の炭素原子を含むアルケニル、6個の炭素原子を含むアリール基または7から10個の炭素原子を含むアラルキルから選択される一価の基であり;
は、独立して、1から6個の炭素原子を含む直鎖アルキル、3から6個の炭素原子を含む分岐鎖アルキル、5または6個の炭素原子を含むシクロアルキル、2から6個の炭素原子を含むアルケニル、6個の炭素原子を含むアリール基、7から10個の炭素原子を含むアラルキル、2から6個の炭素原子およびヒドロキシル基を含む直鎖アルキル、または3から6個の炭素原子およびヒドロキシル基を含む分岐鎖アルキル、および構造-R-(OCHCH(OCHCH(CH))ORを有する少なくとも1つの酸素原子を含むアルキル基から選択される一価の基であり、または共有結合を介して結合された2つのR基から形成された二価の基であり、但し(i)2つのR基が結合している場合、aは0または1であり、そして(ii)m+nの合計は1から20であるという条件であり;
a、m、n、およびzは整数であり、ここでaは0、1、または2であり、mは0から10であり、nは0から10であり、そしてzは1または2である、
(a)一般式(II)のチオエステルを、
[C(=O)SR (II)
ここで
各Rは、独立して、1から18個の炭素原子を含む直鎖アルキル、3から18個の炭素原子を含む分岐鎖アルキル、5から18個の炭素原子を含むシクロアルキル、2から18個の炭素原子を含むアルケニル、6から18個の炭素原子を含むアリール基、7から18個の炭素原子を含むアラルキルから選択される一価の基であり;そして
ここでRおよびzは、上記で定義されたとおりである、
式(V)のメルカプト官能性アルコキシシラン
HS-R-SiR (OR3-a (V)、および/または
一般式(III)のアルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、三置換アンモニウム塩
S-R-SiR (OR3-a (III)
ここでMはアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、三置換アンモニウムイオンであり、そしてR、R、Rおよびaは上記の定義どおりである;
と接触させること、
(b)チオエステルをステップ(a)のメルカプト官能性アルコキシシランおよび/またはアルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、または三置換アンモニウム塩と反応させて、式(I)を有するアルコキシシリル含有チオカルボン酸エステルおよび式(VI)の副生成物HSRおよび/または式(IV)のM+-SRの混合物を生成すること;
(c)ステップ(b)の混合物から副生成物HSRおよび/またはM+-SRを取り出すこと;
(d)任意選択で、アルコキシシリル含有チオカルボン酸エステルを含むステップ(c)の混合物をさらに処理して、アルコキシシリル含有チオカルボン酸エステルを提供すること;および
(a)任意選択で、ステップ(c)の副生成物HSRおよび/またはM+-SRを使用して、ステップ(a)で使用される一般式(II)のチオエステルR[C(=O)SRを調製すること
を含む方法。
【0039】
本明細書の一実施形態では、ステップ(a)は、反応混合物中にメルカプト官能性アルコキシシランを含まない。式(II)のチオエステルと、式(III)のアルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または三置換アンモニウム塩との反応は、化学反応式(A)で説明されているように、一般式(I)のアルコキシシリル含有チオカルボン酸エステル、および副生成物である式(IV)を有するチオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または三置換アンモニウム塩を提供する。
【0040】
式(III)のアルコキシシリル官能性チオレートは、メルカプト官能性アルコキシシランと、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属水素化物、アルカリ土類金属水素化物、または金属水酸化物、金属アルコキシド、金属アミド、金属チオレート、およびアミンからなる群から選択される塩基との反応によって形成され得、これらの例は、当業者に知られている。メルカプト官能性アルコキシシランの脱プロトン化に有用なアルカリ金属は、ナトリウムおよびカリウムである。アルカリ金属水酸化物またはアルカリ金属アルコキシドのいくつかの特定の例は、例えば、参照によりすべてのそれらの内容が全体として本明細書に取り込まれる米国特許番号3,829,505、3,941,849、4,242,490、4,335,188、4,687,851、4,985,491、5,096,993、5,100,997、5,106,874、5,116,931、5,136,010、5,185,420および5,266,681に見出すことができる。
【0041】
アルカリ金属、アルカリ金属水素化物およびアルカリ金属アルコキシドまたは水酸化物のいくつかの非限定的な例には、ナトリウム、カリウム、ナトリウム水素化物、カリウム水素化物、セシウムヒドロキシド、ルビジウムヒドロキシド、カリウムヒドロキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムtert-ブトキシド、ナトリウム水酸化物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドおよびナトリウムtert-ブトキシドが含まれる。
【0042】
一実施形態では、式(III)のアルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または三置換アンモニウム塩は反応混合物に可溶であり、一方、式(IV)を有するチオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または三置換アンモニウム塩は、反応混合物に不溶性である。不溶性のチオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または三置換アンモニウム塩は反応混合物から沈殿し、それによって化学式(A)の平衡反応を完了させる。不溶性のチオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または三置換アンモニウム塩の沈殿物は、デカンテーション、濾過、遠心分離または洗浄方法を使用して反応混合物から除去することができる。
【0043】
アルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または三置換アンモニウム塩に結合したアルコキシシリル基は、反応混合物への溶解度を高める。アルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、または三置換アンモニウム塩の溶解度は、具体的には、Rが1個の炭素原子よりも大きい場合、より具体的には、Rが2から6個の炭素原子を含む直鎖アルキル、または3から6個の炭素原子含む分枝鎖アルキル、さらにより具体的にはエチルである場合、Rの影響を受ける。
【0044】
副生成物であるチオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、または三置換アンモニウム塩のR基とMは、反応混合物への溶解度に影響を与え得る。具体的には、副生成物であるチオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、または三置換アンモニウム塩のRは、1から10個の炭素原子、より具体的には1から6個の炭素原子の直鎖アルキル基である。Mがアルカリ金属イオン、具体的にはナトリウムまたはカリウム、より具体的にはナトリウムである場合、反応混合物への溶解度が低下され得る。好ましくは、Rは1から6個の炭素原子の直鎖アルキル基であり、そしてMはナトリウムまたはカリウムである。
【0045】
有機溶媒を使用して、反応混合物中の副生成物であるチオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、または三置換アンモニウム塩の溶解度を低下させることができる。非プロトン性溶媒を使用して、反応混合物中の副生成物であるチオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、または三置換アンモニウム塩の溶解度を下げることができる。具体的には、溶媒は、炭化水素、エステル、ケトンまたはエーテル、より具体的には炭化水素であり得る。代表的かつ非限定的な溶媒には、アルカン、シクロアルカン、および芳香族化合物、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、2-メチルペンタン、2-メチルノナン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびそれらの混合物などが含まれる。
【0046】
反応混合物中の溶媒の量は、アルカリシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、または三置換アンモニウム塩およびチオ酸エステル試薬の初期重量の重量に基づいて、1から50重量パーセント、より具体的には2から20重量パーセント、さらにより具体的には5から15重量パーセントであり得る。
【0047】
副生成物であるチオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または三置換アンモニウム塩は、ブレンステッド-ローリー酸を添加してチオレートアニオンをプロトン化し、次に蒸留またはストリッピングによってチオールを除去することによって反応混合物から除去することもできる。代表的なブレンステッド-ローリー酸には、塩化水素、硫酸、パラトルエンスルホン酸、トリフルオロメチルスルホン酸、カルボン酸、およびメルカプト官能性アルコキシシランなどの強酸が含まれる。ブレンステッド-ローリー酸は、チオレート副生成物を含む反応混合物または反応混合物から分離した後のチオレート副生成物に添加することができる。チオレート副生成物の中和から形成されたチオールは、ブレンステッド-ローリー酸の塩から分離され、そしてチオカルボン酸エステル試薬を製造するために使用され得る。
【0048】
特に有用なブレンステッド-ローリー酸は、式(V)のメルカプト官能性アルコキシシランである。中和されたメルカプト官能性アルコキシシランは、式(III)のアルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または三置換アンモニウム塩であり、これは式(I)のアルコキシシリル官能性チオカルボン酸エステルの調製に使用することができる。中和反応から形成されるチオールは、ストリッピングまたは蒸留によって、式(III)のアルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または三置換アンモニウム塩から分離することができる。チオールの沸点がメルカプト官能性アルコキシシランおよび/またはチオエステルの沸点よりも低い場合、具体的には、沸点が、メルカプト官能性アルコキシシランの沸点よりも大気圧1.013バールで5℃より低い、より具体的には、1.013バールで50℃より低い、さらにより具体的には、1.013バールで100℃より低い場合、蒸留が容易になる。
【0049】
副生成物であるチオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または三置換アンモニウム塩はまた、反応混合物を水溶液で洗浄することによって反応混合物から除去することができる。水溶液は、水相への反応生成物の溶解度を低下させるために緩衝化されまたは塩を含み得、それにより二相混合物を形成する。二相混合物は、遠心分離またはデカンテーション法によって互いに分離することができる。代表的な非限定的な水溶液には、炭酸ナトリウム溶液およびブライン溶液が含まれる。
【0050】
反応生成物から分離されると、副生成物であるチオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、または三置換アンモニウム塩を含む水相を酸で中和してチオール化合物を形成することができ、これは二相混合物を形成し得る。チオールは、ストリッピング、蒸留、遠心分離法のためのデカンテーションによって水相から除去することができる。
【0051】
反応に使用されるアルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または三置換アンモニウム塩の量は、式(II)のチオエステルに対して化学量論量より少ないか、等しいか、または多いことがあり得る。具体的には、式(III)のアルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または三置換アンモニウム塩の量は、式(II)のチオエステルに基づいて約0.5から約1.5当量であり、より具体的には、チオエステルに基づいて約0.9から約1.2当量、さらにより具体的には、チオエステルに基づいて約0.95から1.05当量である。
【0052】
チオエステルと、アルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または三置換アンモニウム塩との反応は、約15℃から約200℃、より具体的には約25℃から約150℃、さらにより具体的には約40℃から約100℃の温度および約0.001バールから約2バール、より具体的には約0.1バールから約1.2バール、さらにより具体的には約0.75バールから約1.1バールの圧力で実施することができる。
【0053】
別の実施形態では、ステップ(a)は、反応混合物中に、アルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、または三置換アンモニウム塩を含まない。式(II)のチオエステルと式(V)のメルカプト官能性アルコキシシランとの反応は、化学反応式(B)の平衡反応に記載したように、式(I)のアルコキシシリル含有チオカルボン酸エステルおよび副生成物である式(VI)のチオールを提供する。反応は、好ましくは、触媒の存在下で行われる。
【0054】
使用できる触媒は酸であり得る。酸はブレンステッド-ローリー酸またはルイス酸であり得る。この反応はエステル交換反応として説明できるため、ブレンステッド-ローリー酸またはルイス酸がエステル交換触媒として機能する。適切なブレンステッド-ローリー酸触媒はプロトン酸であり、好ましくは、水溶液中でpKaが5.0未満であるブレンステッド-ローリー酸触媒である。ブレンステッド-ローリー酸触媒のpKa値は、the CRC Handbook of Chemistry andPhysics, 72nd edition, D. R. Lide (ed), CRC Press, Boston (1991),8-39 to 8-41で報告されている。酸のpKaが報告されていない場合は、電位差滴定法、Albert, A. &Sergeant, E.P., Ionization Constants of Acids and Bases, Wiley, Inc.,New York, 1962を使用して値を決定できる。
【0055】
ブレンステッド-ローリー酸触媒の代表的で非限定的な例には、硫酸、リン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、酢酸および塩酸が含まれる。
【0056】
金属塩または金属錯体などのルイス酸を触媒として使用することができる。金属塩または金属錯体は、スズ、チタン、ジルコニウム、ビスマス、鉄、ニッケル、コバルト、およびアルミニウムから誘導することができる。ルイス酸触媒の代表的で非限定的な例には、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズオキシド、テトラエチルチタネート、テトラエチルジルコネート、ジルコニウムテトラフルオリド、ジルコニウムテトラクロリド、ジルコニウムアセトアセトネート、ジルコニウムアセテート、塩化アルミニウムおよびビスマスアセテートが含まれ得る。
【0057】
一実施形態では、ブレンステッド-ローリー酸触媒またはルイス酸触媒の量は、メルカプト官能性アルコキシシランの初期重量に基づいて、約0.001から約10重量パーセント、より具体的には、約0.1から約2重量パーセントである。
【0058】
化学反応式(B)の反応に使用される触媒は、式(I)のアルコキシシリル官能性チオカルボン酸エステル生成物の加水分解安定性を改善するために除去され得る。酸触媒は、塩基で中和する、または単に洗い流すことができる。水、ブライン、炭酸ナトリウム水溶液およびリン酸ナトリウム一塩基性水溶液が洗浄媒体として使用され、ここで好ましい洗浄媒体はリン酸ナトリウム一塩基性水溶液である。
【0059】
さらに別の実施形態では、副生成物である式(VI)のチオールが反応混合物から取り出され、それにより化学反応(B)の平衡反応を完了させる。チオールは、ストリッピングまたは蒸留によって反応混合物から取り出すことができる。チオールの沸点がメルカプト官能性アルコキシシランの沸点よりも低い場合、蒸留が容易になる。具体的には、チオールの沸点は、メルカプト官能性アルコキシシランの沸点よりも、大気圧約1.013バールで約5℃より低く、より具体的には、約1.013バールで約50℃より低く、さらに具体的には、約1.013バールで約100℃より低い。
【0060】
反応に使用される式(V)のメルカプト官能性アルコキシシランの量は、式(II)のチオールエステルに関する化学量論量より少ないか、等しいか、または多いことがあり得る。具体的には、式(V)のメルカプト官能性アルコキシシランの量は、式(II)のチオエステルに基づいて約0.5から約1.5当量、より具体的にはチオエステルに基づいて約0.9から約1.2当量、さらにより具体的にはチオエステルに基づいて約0.95当量から約1.05当量である。
【0061】
チオエステルとメルカプト官能性アルコキシシランとの反応は、約15℃から約200℃、より具体的には約25℃から約150℃、さらにより具体的には約40℃から約100℃の温度で、そして約0.001バールから約2バール、より具体的には約0.1バールから約1.2バール、さらにより具体的には約0.75バールから約1.1バールの圧力で実施することができる。
【0062】
チオエステルとメルカプト官能性アルコキシシランとの反応は、有機溶媒の存在下で実施することができる。溶媒は、チオールと低沸点共沸混合物を形成し、それによって蒸留またはストリッピングによる反応混合物からの除去を容易にする場合に特に有用である。
【0063】
さらに別の実施形態では、ステップ(a)は、式(V)のメルカプト官能性アルコキシシランと、式(III)のアルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または三置換アンモニウム塩の両方を反応混合物に含む。式(II)のチオエステルと、式(III)のアルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または三置換アンモニウム塩との反応は、チオエステルとメルカプト官能性アルコキシシランとの反応よりも速いことがあり得る。一般式(I)のアルコキシシリル含有チオカルボン酸エステルおよび副生成物である式(IV)を有するチオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または三置換アンモニウム塩は、主に化学反応式(A)によって記載される反応によって形成される。
【0064】
本明細書の一実施形態では、一般式(I)のアルコキシシリル含有チオカルボン酸エステルを調製するための方法は、
(a)一般式(II)のチオエステルを、
[C(=O)SR (II)
ここで
各Rは、独立して、1から18個の炭素原子を含む直鎖アルキル、3から18個の炭素原子を含む分岐鎖アルキル、5から18個の炭素原子を含むシクロアルキル、2から18個の炭素原子を含むアルケニル、6から18個の炭素原子を含むアリール基、7から18個の炭素原子を含むアラルキルから選択される一価の基であり、そして
ここでRおよびzは、上記で定義されたとおりである、
式(V)のメルカプト官能性アルコキシシラン、
HS-R-SiR (OR3-a (V)、および
一般式(III)のアルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、三置換アンモニウム塩、
+ -S-R-SiR (OR3-a (III)
ここでMは、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、三置換アンモニウムイオンであり、そしてR、R、R、およびaは上記で定義されたとおりである、
と接触させること;
(b)チオエステルを、ステップ(a)のアルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または三置換アンモニウム塩と反応させて、式(I)を有するアルコキシシリル含有チオカルボン酸エステルおよび式(IV)の副産物であるM+-SRの混合物を生成すること;
(b1)ステップ(b)の副生成物であるM+-SRを式(V)のメルカプト官能性アルコキシシランと反応させて、一般式(III)アルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、三置換アンモニウム塩M+-S-R-SiR (OR3-aおよび式(VI)の副生成物HSRを形成すること;
(c)ステップ(b1)の混合物から副生成物HSRを取り出すこと;
(d)任意選択で、アルコキシシリル含有チオカルボン酸エステルを含むステップ(c)の混合物をさらに処理して、アルコキシシリル含有チオカルボン酸エステルを提供すること;および
(e)任意選択で、ステップ(c)の副生成物HSRを使用して、ステップ(a)で使用される一般式(II)のチオエステルR[C(=O)SRを調製すること;
を含む。
【0065】
一実施形態では、一般式(I)のアルコキシシリル含有チオカルボン酸エステルを調製するための方法は、バッチプロセス、セミバッチプロセス、または連続プロセスであり得る。
【0066】
反応に使用されるアルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または三置換アンモニウム塩の量は、式(II)のチオエステルに対して化学量論量より少なくすることができ、なぜなら、アルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または三置換アンモニウム塩は、メルカプト官能性アルコキシシランと副生成物である、チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または三置換アンモニウム塩との反応から絶えず生成されているからである。具体的には、式(III)のアルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または三置換アンモニウム塩の量は、式(II)のチオエステルに基づいて約0.001から約0.9当量、より具体的には、チオエステルに基づいて0.01から約0.5当量、さらにより具体的には、チオエステルに基づいて約0.01から約0.3当量である。
【0067】
別の実施形態において、反応に使用される、式(III)のアルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または三置換アンモニウム塩と、式(V)のメルカプト官能性アルコキシシランとのモル比は、約0.00065から約1.5、より具体的には約0.0065から約0.5、さらにより具体的には約0.0065から約0.25である。
【0068】
メルカプト官能性アルコキシシラン(V)の存在下で行われる場合の、アルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または三置換アンモニウム塩とのチオエステルの反応は、約15℃から約200℃、より具体的には約25℃から約150℃、さらにより具体的には約40℃から約100℃の温度、および約0.001バールから約2バール、より具体的には、約0.1バールから約1.2バール、さらにより具体的には、約0.75バールから約1.1バールの圧力で実施することができる。
【0069】
さらに別の実施形態において、式(VI)の副生成物チオールは、反応混合物から除去され、それにより化学反応(A)の平衡反応を完了させる。チオールは、ストリッピングまたは蒸留によって反応混合物から除去することができる。チオールの沸点がメルカプト官能性アルコキシシランおよびチオールエステルの沸点よりも低い場合、蒸留が容易になる。具体的には、チオールの沸点は、メルカプト官能性アルコキシシランおよびチオールエステルの沸点よりも、約1.013バールの大気圧で約5℃より低く、より具体的には、約1.013バールで約50℃より低く、さらにより具体的には、約1.013バールで約100℃より低い。
【0070】
チオエステルとメルカプト官能性アルコキシシランとの反応は、約15℃から約200℃、より具体的には約25℃から約150℃、さらにより具体的には約40℃から約100℃の温度で、そして約0.001バールから約2バール、より具体的には約0.1バールから約1.2バール、さらにより具体的には約0.75バールから約1.1バールの圧力で実施することができる。
【0071】
チオエステルとメルカプト官能性アルコキシシランとの反応は、有機溶媒の存在下で実施することができる。溶媒は、チオールと低沸点共沸混合物を形成し、それによって蒸留またはストリッピングによる反応混合物からの除去を容易にする場合に特に有用である。
【0072】
別の実施形態において、アルコキシシリル含有チオカルボン酸エステルを調製するための方法は、連続的な方法である。一般式(I)のアルコキシシリル含有チオカルボン酸エステルを調製するための連続法は、
(a)一般式(II)のチオエステル、式(V)のメルカプト官能性アルコキシシラン、および一般式(III)のアルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、三置換アンモニウム塩を第1の反応容器に連続的に添加することにより、一般式(II)のチオエステルを、式(V)のメルカプト官能性アルコキシシランおよび一般式(III)のアルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、三置換アンモニウム塩と連続的に接触させること;
(b)第1の反応容器において、チオエステルを、ステップ(a)のアルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または三置換アンモニウム塩と連続的に反応させて、式(I)のアルコキシシリル含有チオカルボン酸エステルおよび副生成物である式(IV)のチオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または三置換アンモニウム塩を生成すること;
(b1)ステップ(b)で形成された式(IV)のチオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または三置換アンモニウム塩を、式(V)のメルカプト官能性アルコキシシランと連続的に反応させて、第1の反応容器中で、式(III)のアルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、三置換アンモニウム塩および副生成物である式(VI)のチオールを形成すること、ここでステップ(b)および(b1)の反応は、生成物である式(I)を有するアルコキシシリル含有チオカルボン酸エステル、反応物である一般式(II)のチオエステル、一般式(III)のアルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、三置換アンモニウム塩、および式(V)のメルカプト官能性アルコキシシラン、および副生成物である式(IV)のチオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、三置換アンモニウム塩および式(VI)のチオールを含む反応混合物を形成し;
(c)第1の反応容器からステップ(b1)の反応混合物を連続的に取り出し、そして反応混合物を蒸留装置に移すこと;
(c1)反応混合物を蒸留装置に通すことにより、式(VI)のチオールをステップ(b1)の反応混合物中の他の成分から連続的に分離し、分離されたチオールおよび他の成分の混合物を形成すること;
(c2)ステップ(c1)の他の成分の混合物の一部を連続的に取り出すこと;
(c3)ステップ(c1)の他の成分の混合物の一部を第1の反応容器に連続的に移すこと;
(d)ステップ(c1)の他の成分の混合物をさらなる処理のために第2の反応器に連続的に移して、生成物である式(I)を有するアルコキシシリル含有チオカルボン酸エステルを形成すること;
(d1)ステップ(d)の反応生成物を貯蔵容器に連続的に移すこと;
(e)任意選択で、ステップ(c1)の分離したHSRをカルボン酸と反応させて一般式(II)のチオエステルを調製し、そしてチオエステルをステップ(a)の第1の反応容器に移すこと、
を含み得る。
【0073】
反応に使用されるアルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または三置換アンモニウム塩の量は、式(II)のチオエステルに関する化学量論量より少なくすることができ、なぜならアルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または三置換アンモニウム塩は、メルカプト官能性アルコキシシランと副生成物であるチオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または三置換アンモニウム塩との反応から絶えず生成されているからである。具体的には、式(III)のアルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または三置換アンモニウム塩の量は、式(II)のチオエステルに基づいて約0.001から約0.9当量であり、より具体的には、チオエステルに基づいて0.01から約0.5当量であり、さらにより具体的には、チオエステルに基づいて約0.01から約0.3当量である。
【0074】
別の実施形態では、反応に使用される式(V)のメルカプト官能性アルコキシシランに対する式(III)のアルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または三置換アンモニウム塩のモル比は、約0.00065から約1.5であり、より具体的には、約0.0065から約0.5であり、さらにより具体的には、約0.0065から約0.25である。
【0075】
メルカプト官能性アルコキシシラン(V)の存在下で行われる場合の、アルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または三置換アンモニウム塩とのチオエステルの反応は、約15℃から約200℃、より具体的には約25℃から約150℃、さらに具体的には約40℃から約100℃の温度、および約0.001バールから約2バール、より具体的には約0.1バールから約1.2バール、およびさらにより具体的には約0.75バールから約1.1バールの圧力で実施することができる。
【0076】
さらに別の実施形態において、副生成物である式(VI)のチオールは、反応混合物から取り出され、それにより化学反応(A)の平衡反応を完了させる。チオールは、ストリッピングまたは蒸留によって反応混合物から取り出すことができる。チオールの沸点がメルカプト官能性アルコキシシランおよびチオールエステルの沸点よりも低い場合、蒸留が容易になる。具体的には、チオールの沸点は、メルカプト官能性アルコキシシランおよびチオールエステルの沸点よりも、約1.013バールの大気圧で約5℃よりも低く、より具体的には、約1.013バールで約50℃よりも低く、さらにより具体的には、約1.013バールで約100℃よりも低い。
【0077】
チオエステルとメルカプト官能性アルコキシシランとの反応は、約15℃から約200℃、より具体的には約25℃から約150℃、さらにより具体的には約40℃から約100℃の温度で、そして約0.001バールから約2バール、より具体的には約0.1バールから約1.2バール、さらにより具体的には約0.75バールから約1.1バールの圧力で実施することができる。
【0078】
チオエステルとメルカプト官能性アルコキシシランとの反応は、有機溶媒の存在下で実施することができる。溶媒は、チオールと低沸点共沸混合物を形成し、それによって蒸留またはストリッピングによる反応混合物からの除去を容易にする場合に特に有用である。
【0079】
さらに別の実施形態では、Rは、5から11個の炭素原子を有する一価の直鎖アルキル基または分岐鎖アルキル基であり、Rは、1から3個の炭素原子の二価の直鎖アルキル基であり、Rはメチルであり、Rは2から4個の炭素原子の一価の直鎖アルキル基または分岐鎖アルキル基であり、または2つのR基は結合して、二価の-R-R-基を形成し、aは0または1の整数であり、そしてzは1である。
【0080】
第1の反応容器は、連続撹拌反応器、静的混合を備えた管反応器、動的撹拌を備えた管反応器、より具体的には連続撹拌反応器であり得る。第2の反応容器は、連続撹拌反応器、静的混合を備えた管反応器、動的撹拌を備えた管反応器、デカンターまたは遠心分離機、より具体的には、デカンター、フィルターまたはストリッパーを備えた連続撹拌反応器であり得る。
【0081】
蒸留装置は、分留塔を備えたケトル、ワイプフィルムエバポレーターまたは薄膜エバポレーターであり得る。
【0082】
ステップ(c2)のさらなる処理は、一般式(III)のアルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、三置換アンモニウム塩、および式(IV)のチオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、三置換アンモニウム塩のブレンステッド-ローリー酸を用いた中和であり得、任意選択で、濾過ステップおよびストリッピングステップ、または水、ブライン溶液または緩衝水溶液による洗浄ステップが続き、一般式(III)のアルコキシシリル官能性チオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、三置換アンモニウム塩および式(IV)のチオレートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、三置換アンモニウム塩を混合物から抽出する。
【0083】
一実施形態では、一般式(VI)のチオールは、一般式(VII)のカルボン酸と反応させることができ、
(COOH) (VII)
ここでRおよびzは、ここで定義されているとおりであり、そしてここでそのような反応は、本明細書に記載の方法で定義されるように一般式(II)のチオエステルを再生することができる。式(VI)のチオールは、本明細書のカルボン酸成分(VII)と直接反応させることができる一方で、式(IV)のチオレートのアルカリ金属塩、およびアルカリ土類金属塩または三置換アンモニウム塩は、最初に、例えば、HCl硫酸などの強酸または他の既知の強酸との反応によって、酸性化されて、式(VI)のチオールを形成し、次に、チオールは、上記のように、また次の一般的な化学式(C)に記載されているように、カルボン酸と反応させることができることが理解されよう。
【化3】

ここでR、R、M、およびzは、本明細書で定義されているとおりである。
【0084】
一般式(VII)の適切なカルボン酸のいくつかの非限定的な例は、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、ネオペンタン酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、2-エチルヘキサン酸、Versatic(商標)酸、特にネオノナン酸およびネオデカン酸(例えば、Versatic酸のVeoVa(商標)ビニルエステル)、カプリン酸、ネオウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、コハク酸、アラキジン酸およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるものである。
【0085】
反応は、酸触媒、脱水剤または水分スカベンジャーの存在下で実施することができる。
【0086】
使用できる触媒は酸であり得る。酸はブレンステッド-ローリー酸またはルイス酸であり得る。この反応はエステル交換反応として説明できるため、ブレンステッド-ローリー酸またはルイス酸がエステル交換触媒として機能する。適切なブレンステッド-ローリー酸触媒はプロトン酸であり、好ましくは、水溶液中でpKaが5.0未満であるブレンステッド-ローリー酸触媒である。ブレンステッド-ローリー酸触媒のpKa値は、the CRC Handbook of Chemistry andPhysics, 72nd edition, D. R. Lide (ed), CRC Press, Boston (1991),8-39 to 8-41で報告されている。酸のpKaが報告されていない場合、値は電位差滴定法、Albert, A. &Sergeant, E.P., Ionization Constants of Acids and Bases, Wiley, Inc.,New York, 1962を使用して決定できる。
【0087】
ブレンステッド-ローリー酸触媒の代表的で非限定的な例には、硫酸、リン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、酢酸および塩酸が含まれる。
【0088】
金属塩または金属錯体などのルイス酸を触媒として使用することができる。金属塩または金属錯体は、スズ、チタン、ジルコニウム、ビスマス、鉄、ニッケル、コバルト、およびアルミニウムから誘導することができる。ルイス酸触媒の代表的で非限定的な例には、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズオキシド、テトラエチルチタネート、テトラエチルジルコネート、ジルコニウムテトラフルオリド、ジルコニウムテトラクロリド、ジルコニウムアセトアセトネート、ジルコニウムアセテート、塩化アルミニウムおよびビスマスアセテートが含まれ得る。
【0089】
一実施形態では、ブレンステッド-ローリー酸触媒またはルイス酸触媒の量は、メルカプト官能性アルコキシシランの初期重量に基づいて、約0.001から約10重量パーセント、より具体的には、約0.1から約2重量パーセントである。
【0090】
強力な脱水剤には、五酸化リンなどのリン酸の無水物、および四塩化ケイ素、メチルトリクロロシランなどのクロロシランが含まれる。強力な脱水剤は、式(VII)のカルボン酸に関する化学量論量より少ない、等しい、または多い、より具体的には、約0.5から約1.5当量の脱水剤で使用される。
【0091】
反応は、約15℃から約200℃、より具体的には約25℃から約100℃の温度で、および準大気圧、大気圧または超大気圧、具体的には約1.03ミリバールから約2バール、より具体的には約15ミリバールから約1.3バール、さらに具体的には、約100ミリバールから約1.1バールで実施することができる。
【0092】
スキームCに示される反応はまた、例えば脂肪族溶媒または芳香族溶媒などの溶媒の存在下で実施することができる。
【0093】
形成された水を除去することにより、反応を完了させることもできる。脱水剤、蒸留またはストリッピングを使用して水を除去することができる。トルエンなどの水と共沸混合物を形成する有機溶媒は、反応を完了させるのに役立ち得る。
【0094】
一実施形態では、
(i)一般式(I)のアルコキシシリル含有チオカルボン酸エステル
-[C(=O)-S-R-SiR (OR3-a (I)
ここでRは、1から18個の炭素原子を含む直鎖アルキル、3から18個の炭素原子を含む分岐鎖アルキル、5から18個の炭素原子を含むシクロアルキル、2から18個の炭素原子を含むアルケニル、6から18個の炭素原子を含むアリール基、7から18個の炭素原子を含むアラルキル、または水素から選択される一価の基であり、または1から10個の炭素原子を含むアルキル、5から10個の炭素原子を含むシクロアルキル、またはフェニルから選択される二価の基であり;
各Rは、独立して、1から10個の炭素原子を含む直鎖アルキル、3から10個の炭素原子を含む分岐鎖アルキル、5から10個の炭素原子を含むシクロアルキル、2から10個の炭素原子を含むアルケニル、6から10個の炭素原子を含むアリール基、または7から10個の炭素原子を含むアラルキルから選択される二価の基であり;
各Rは、独立して、1から6個の炭素原子を含む直鎖アルキル、3から6個の炭素原子を含む分岐鎖アルキル、5または6個の炭素原子を含むシクロアルキル、2から6個の炭素原子を含むアルケニル、6個の炭素原子を含むアリール基、または7から10個の炭素原子を含むアラルキルから選択される一価の基であり;
は、独立して、1から6個の炭素原子を含む直鎖アルキル、3から6個の炭素原子を含む分岐鎖アルキル、5または6個の炭素原子を含むシクロアルキル、2から6個の炭素原子を含むアルケニル、6個の炭素原子を含むアリール基、7から10個の炭素原子を含むアラルキル、2から6個の炭素原子およびヒドロキシル基を含む直鎖アルキル、または3から6個の炭素原子およびヒドロキシル基を含む分枝鎖アルキル、構造-R-(OCHCH(OCHCH(CH))ORを有する少なくとも1つの酸素原子を含むアルキル基から選択される一価の基であり、または、共有結合により結合された2つのR基から形成された二価の基であり、但し(i)2つのR基が結合している場合、aは0または1であり、そして(ii)m+nの合計は1から20であるという条件であり;
a、m、n、およびzは整数であり、ここでaは0、1、または2であり、mは0から10であり、nは0から10であり、そしてzは1または2である;および
(ii)一般式(II)のチオエステル
[C(=O)SR (II)
ここで
は、1から18個の炭素原子を含む直鎖アルキル、3から18個の炭素原子を含む分岐鎖アルキル、5から18個の炭素原子を含むシクロアルキル、2から18個の炭素原子を含むアルケニル、6から18個の炭素原子を含むアリール基、7から18個の炭素原子を含むアラルキルまたは水素から選択される一価の基であり、または1から10個の炭素原子を含むアルキル、5から10個の炭素原子を含むシクロアルキル、またはフェニルから選択される二価の基であり;
各Rは、独立して、1から18個の炭素原子を含む直鎖アルキル、3から18個の炭素原子を含む分岐鎖アルキル、5から18個の炭素原子を含むシクロアルキル、2から18個の炭素原子を含むアルケニル、6から18個の炭素原子を含むアリール基、7から18個の炭素原子を含むアラルキルから選択される一価の基であり、そして
zは整数であり、ここでzは1または2である、
を含むアルコキシシリル含有チオカルボン酸エステル組成物が提供される。
【0095】
別の実施形態では、アルコキシシリル含有チオカルボン酸エステル組成物は、約70から約99.9重量パーセントのアルコキシシリル含有チオカルボン酸エステル(i)および約0.1から約30重量パーセントのチオエステル(ii)を含み、より具体的には、約85から約95.5重量パーセントのアルコキシシリル含有チオカルボン酸エステル(i)および約0.5から約15パーセントのチオエステルを含み、ここで前記重量パーセントは、アルコキシシリル含有チオカルボン酸エステル(i)およびチオエステル(ii)の総重量に基づく。
【0096】
別の実施形態では、アルコキシシリル含有チオカルボン酸エステル組成物はメルカプト官能性アルコキシシランをさらに含む。メルカプト官能性アルコキシシランの量は、アルコキシシリル含有チオカルボン酸(i)およびチオエステル(ii)の総重量に基づいて、約0.1から約50重量パーセントである。
【0097】
さらに別の実施形態では、ゴム組成物は、アルコキシシリル含有チオカルボン酸エステル(i)およびチオエステル(ii)を含む。ゴム組成物中のアルコキシシリル含有チオカルボン酸エステルの量は、約1から約14重量パーセントであり、そしてチオエステルの重量は、約0.001から約6重量パーセントであり、前記重量パーセントは、ゴム成分の重量に基づいている。
【0098】
ゴム組成物は、メルカプト官能性アルコキシシランをさらに含み得る。ゴム組成物中のアルコキシシリル含有チオカルボン酸エステル(i)の量は、約1から約14重量パーセントであり、チオエステル(ii)の量は、約0.001から約6重量パーセントであり、そしてメルカプト官能性アルコキシシランの量は約0.001から約10重量パーセントであり、前記重量パーセントは、ゴム成分の重量に基づいている。
【実施例
【0099】
以下の例は、本発明の方法の例示である。
【0100】
すべての操作は窒素雰囲気下で行った。オクタン酸(>98%)、シクロヘキサンチオール(97%)、アジピン酸(99%)、トリフルオロメタンスルホン酸(99%)、五酸化リン(99%)、一塩基性リン酸ナトリウム(99%)、炭酸ナトリウム十水和物(99%)、カリウムtert-ブトキシド(98%)、ナトリウム(キューブ、鉱油を含む、99.9%)はすべてSigma-Aldrichから入手し、さらに精製することなく使用した。トルエンおよびシクロヘキサンはFisher Chemicalから入手した。3-メルカプトプロピルトリエトキシシランは、Momentive Performance Materials,Inc.から入手した。ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(>90%)はGelestから入手した。
【0101】
例1
ナトリウム3-トリエトキシシリルプロピルチオールおよび3-メルカプトプロピルトリエトキシシランの混合物からの3-(オクタノイルチオ)-1-プロピルトリエトキシシランの合成
【0102】
3つ口の2L丸底フラスコで、オクタン酸(352.40グラム、2.44モル)、シクロヘキサンチオール(284.01グラム、2.44モル)、およびトリフルオロメタンスルホン酸(5.50グラム、0.04モル)を112.5グラムのトルエン溶媒と混合した。反応混合物を撹拌し、そして共沸還流装置を使用して1バールの圧力で12時間水を除去した。水はトルエンと低沸点共沸混合物を形成した。反応物を室温に冷却した。ガスクロマトグラフィーでオクタン酸が検出されなくなるまで、未反応のオクタン酸を10%炭酸ナトリウム水溶液で中和した。分液漏斗を使用して、水層と有機層を分離した。有機層中の未反応のシクロヘキサンチオールを、真空下、温度100℃、圧力5mmHgで1.5時間除去した。生成されたシクロヘキサンチオオクタノエートの量は426.0グラム、または72.0%の収率であった。
【0103】
蒸留ヘッドが取り付けられた3つ口の250mL丸底フラスコで、シクロヘキサンチオオクタノエート(94.60グラム、0.39モル)および3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン(95.02グラム、0.40モル)の混合物を2.24グラム(0.009モル)のカリウムtert-ブトキシドで処理した。反応混合物を、窒素パージとともに、14から20mmHgの減圧下で磁気撹拌した。反応混合物を80℃で1時間加熱し、次に100℃に上げ、さらに1時間加熱し、最後に120℃に上げてさらに4時間加熱した。シクロヘキサンチオール副生成物を蒸留し、そして反応の実行中に収集した。反応が完了したら、混合物を室温に冷却した。反応混合物を14.0グラムの10%一塩基性リン酸ナトリウム水溶液で洗浄し、有機層を水層から分離した。有機層からの揮発性物質を、90℃の温度および15mmHgの圧力で90分間真空下で除去し、126グラムの3-(オクタノイルチオ)-1-プロピルトリエトキシシラン、88.7%の収率を得た。生成物の構造は、GC/MS分光法を使用して確認された。
【0104】
例2
ナトリウム3-トリメトキシシリルプロピルチオレートからの3-(オクタノイルチオ)-1-プロピルトリエトキシシランの合成
【0105】
周囲温度で4.78グラム(0.208モル)のナトリウムをトルエンに加え、大気圧で約110℃に温めた。溶融したナトリウム-トルエン懸濁液に、45.51グラム(0.096モル)のビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドを35分間にわたって加えた。反応混合物を105℃で約1時間撹拌し、そして約40℃に冷却した。シクロヘキサンチオオクタノエート(45.10グラム、0.186モル)を20分間にわたって反応混合物に加えて、粘稠な塩懸濁液を得た。反応物をさらに2時間撹拌した。反応混合物を72グラムの12.5%ブライン溶液で処理すると、塩が溶解して、透明な黄橙色のトルエン層および水層が得られた。有機層のGCは、混合物中の3-(オクタノイルチオ)-1-プロピルトリエトキシシランの77%GC面積パーセントおよびシクロヘキサンチオオクタノエートの8%GC面積パーセントを示し、ここで面積パーセントはトルエンのピークを除外した。
【0106】
例3
ナトリウムトリエトキシシリルプロピルチオレートおよび3-メルカプトプロピルトリエトキシシランの混合物を使用したビス-(3-トリエトキシシリル-1-プロピル)ジチオアジペートの合成
【0107】
3つ口1L丸底フラスコで、アジピン酸(94.53グラム、0.65モル)、シクロヘキサンチオール(151.50グラム、1.30モル)、および五酸化リン(22.75グラム、0.16モル)を165グラムのシクロヘキサン溶媒と混合した。反応混合物を撹拌し、そして80℃の温度および大気圧で16時間加熱した。反応の過程で、4時間ごとにさらに五酸化リンを加えた(毎回22.75グラム、0.16モル、総量91.00グラム、0.64モル)。反応中に、無色の上部有機層と黒色の厚い下部層との2つの層が形成された。反応物を約65℃に冷却し、そして上層を別のフラスコにデカントした。温度が室温に下がると、白色の結晶性固体が沈殿した。固体を10%炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し、そしてトルエン/シクロヘキサンを使用して再度再結晶化して、177.01グラムのビス-シクロヘキサンチオアジペート、80.1%の収率を得た。
【0108】
蒸留ヘッドを備えた3つ口250mL丸底フラスコに、ビス-シクロヘキサンチオアジペート(107.38グラム、0.31モル)および3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン(142.15グラム、0.60モル)の混合物を入れ、続いて、2.02グラムのカリウムtert-ブトキシド(0.018モル)を加えた。反応混合物を、マグネチックスターラーを使用して、窒素雰囲気下で14から20mmHgの減圧下で撹拌した。反応混合物を80℃の温度で1時間加熱し、次に100℃でさらに1時間加熱し、そして最後に120℃でさらに6時間加熱した。シクロヘキサンチオール副生成物は、反応混合物の加熱中に蒸留され、そして収集される。反応が完了したら、混合物を室温に冷却し、22.70グラムの10%一塩基性リン酸ナトリウム水溶液で洗浄して2つの層を形成し、そして有機層を水層から分離した。有機層からの揮発性物質を、90℃の温度および15mmHgの圧力で90分間真空下で除去して、150.0グラムのビス-(3-トリエトキシシリル-1-プロピル)ジチオアジペートを81.5%の収率で生成する。
【0109】
例4
ナトリウム3-トリエトキシシリルプロピルチオールと3-メルカプトプロピルトリエトキシシランの混合物からの3-(オクタノイルチオ)-1-プロピルトリエトキシシランの合成
【0110】
4つ口の2000mL丸底フラスコに、オクタン酸(372.2グラム、2.58モル)およびヘキサンチオール(534グラム、4.51モル)、および197グラムのシクロヘキサン溶媒を入れた。反応混合物を磁気的に撹拌し、大気圧で126から132℃のポット温度に加熱した。トリフルオロメタンスルホン酸(2.9グラム、0.02モル)を還流温度で加えた。反応混合物を共沸蒸留条件下で約10時間還流し、そして室温に冷却した。7時間後、GC分析は、未反応のオクタン酸の8.2面積%を示し、そして10時間後、GC分析は、反応混合物中の未反応のオクタン酸の2.6面積%を示した。水(42.6グラム)と64.7グラムのシクロヘキサンがディーンスタークコレクターに集められた。赤みがかった色の混合物を273.7グラムの10%炭酸ナトリウム水溶液で処理してオクタン酸を除去し、そして2つの相を分離した。有機層を50℃の温度および5mmHgの圧力で2時間、次に85℃および5mmHgの圧力で約6時間ストリッピングした。合計338グラムの液体がコールドトラップに集められた。透明でわずかに黄色の液体(609.9グラム)であるヘキシルチオオクタン酸エステル中間体を収集し、オクタン酸に基づいて96.8%の収率を得た。
【0111】
窒素バブラー、真空および短蒸留ヘッドを備えた500mLの丸底反応フラスコに、メルカプトプロピルトリエトキシシラン(163.72グラム、0.687モル)およびエタノール中のナトリウムエトキシドの2.0モルパーセント溶液(4.5グラム)を入れた。混合物を室温の値の下に置き、すべてのエタノールを除去した。ヘキシルチオオクタン酸エステル(163.28グラム、0.669モル)を反応に加え、そしてフラスコを140mmHgの真空下に置き、そして80℃の温度に加熱した。反応装置を蒸留用に設定して、ヘキサンチオールの蒸留物を収集した。次に、反応混合物を、80℃の温度および140mmHgの圧力で20分間、120mmHgの圧力で20分間、および30mmHgの圧力で20分間加熱した。反応温度を、120mmHgの圧力で20分間、50mmHgの圧力で20分間、および30mmHgの圧力で20分間、100℃に上げた。反応混合物をさらに120℃の温度で、50mmHgの圧力で20分間、40mmHgの圧力で20分間および30mmHgの圧力で20分間加熱した。ヘキサンチオール(68.8グラム)を収集し、反応は約80%完了した。反応混合物を、120℃の温度および30mmHgの圧力でさらに5時間加熱し、さらに13.1グラムの蒸留物を収集した。次に、反応混合物を室温に冷却し、窒素雰囲気下に置いた。10%一塩基性リン酸ナトリウム(12.6グラム)の水溶液を加えて、塩基触媒を中和した。次に、中和した混合物をストリッピングして、55℃の温度および30mmHgの圧力で1時間および100℃の温度および30mmHgの圧力で3時間で微量水および残留ヘキサンチオールを除去した。ストリッピングされた混合物を1ミクロンの媒体を使用して濾過して、228.5グラム、93.8%の収率の3-トリエトキシシリルプロピルチオオクタノエートを透明な液体として提供した。液体のGC分析は、生成物の純度が91%であることを示した。
【0112】
例5
テトラクロロシラン水分スカベンジャーを用いたヘキシルチオオクタン酸エステルの合成
【0113】
オクタン酸(213.7グラム、1.48モル)、ヘキサンチオール(175.2グラム、1.48モル)、テトラクロロシラン(150.8グラム、0.89モル)およびトリフリン酸(0.44グラム)を窒素ブランク下で反応フラスコに入れた。反応混合物を撹拌し、90から105℃の間で約4時間加熱した。混合物を室温に冷却した。未反応のオクタン酸およびトリフリン酸触媒を中和するために、10%炭酸ナトリウム水溶液を加えた。約30分間静置した後、反応フラスコの底に固形物が沈殿した。有機相と水相の液体を分液漏斗にデカントし、分離した。生成物を含む有機相層を真空ストリッピングして、未反応のヘキサンチオールおよび少量の水をすべて除去した。ヘキシルチオオクタン酸エステル(305.5グラム)を収集し、収率は84.6%であった。
【0114】
例6
管反応器を用いた3-トリエトキシシリルプロピルチオオクタノエートの合成
【0115】
反応器はガラスビーズを詰めた垂直カラムであった。カラムの上部には、添加漏斗と、蒸留ヘッドと上部受入フラスコを備えたショートパスカラムを含むジョイントがあった。カラムの底には底部受入フラスコがあった。3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、ナトリウム3-トリエトキシシリルプロピルチオレートおよびヘキシルチオオクタン酸エステルの混合物を添加漏斗に加えた。混合物は、エタノール中で3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン(118.2グラム、0.496モル)およびナトリウムエトキシド(3.0グラム、0.009モル)を混合することによって調製された。エタノールを真空下で除去した。ヘキシルチオオクタン酸エステル(118.1グラム、0.484モル)を加えた。
【0116】
充填カラムを加熱し、約70mmHgの圧力下で110℃から125℃の温度範囲に維持した。添加漏斗中の混合物を加熱された充填カラムにゆっくりと添加し、加熱された充填カラムを通過させ、そして液体を底部受入フラスコに集めた。低沸点成分はすべてショートカラムを通過し、上部受入フラスコに集められた。添加漏斗内のすべての混合物を充填カラムに添加した後、底部受入フラスコ内の反応混合物を添加漏斗に移し、添加プロセスを繰り返した。2回の通過が完了した後、40.0グラムの低沸点液体を上部受入フラスコに集めた。低沸点液体をガスクロマトグラフィーで分析した。分析は、低沸点液体が95%ヘキサンチオールであることを示した。底部フラスコ内の液体のガスクロマトグラフィー分析により、液体が64.5%の3-トリエトキシシリルプロピルチオオクタノエート、12%の3-メルカプトプロピルトリエトキシシランおよび14%のヘキシルチオオクタン酸エステルの混合物であることがわかった。底部受入フラスコの内容物を添加漏斗に移し、そして加熱された充填カラムをさらに3回通過させた。加熱された充填カラムを5回通過した後、底部受入フラスコ内の液体を分析した。液体は、75.1%の3-トリエトキシシリルプロピルチオオクタノエート、6.8%の3-メルカプトプロピルトリエトキシシランおよび8.9%のヘキシルチオオクタン酸エステルの混合物であった。
【0117】
例6のプロセスは、新たな試薬を添加漏斗に連続的に添加し、反応混合物の一部を底部受入フラスコから取り出すことにより、連続プロセスに変換することができる。
【0118】
本開示は好ましい実施形態を参照して説明されてきたが、当業者は、本開示の範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができ、その要素を同等のものに置き換えることができることを理解することになる。さらに、その本質的な範囲から逸脱することなく、本開示の教示に特定の状況または材料に適合させるために、多くの修正を行うことができる。したがって、本開示は、本開示を実施するために企図される最良の様式として開示される特定の実施形態に限定されないが、本開示は、添付の特許請求の範囲に含まれるすべての実施形態を含むことが意図される。
【国際調査報告】