(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(54)【発明の名称】ウイルス導入ベクターに対する既存の免疫を伴う対象の処置のための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/76 20150101AFI20220629BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220629BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20220629BHJP
A61K 35/761 20150101ALI20220629BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220629BHJP
A61K 31/436 20060101ALI20220629BHJP
A61K 47/51 20170101ALI20220629BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20220629BHJP
A61K 47/30 20060101ALI20220629BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220629BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20220629BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20220629BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20220629BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20220629BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220629BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220629BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20220629BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
A61K35/76
A61K45/00
A61P37/06
A61K35/761
A61P43/00 111
A61K31/436
A61K47/51
A61K47/44
A61K47/30
A61K47/02
A61K47/04
A61K47/42
A61K47/34
A61K47/36
A61K47/10
A61K48/00
A61K9/107
A61K9/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564364
(86)(22)【出願日】2020-04-28
(85)【翻訳文提出日】2021-12-24
(86)【国際出願番号】 US2020030217
(87)【国際公開番号】W WO2020223205
(87)【国際公開日】2020-11-05
(32)【優先日】2020-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】511254321
【氏名又は名称】セレクタ バイオサイエンシーズ インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】SELECTA BIOSCIENCES,INC.
【住所又は居所原語表記】65 Grove Street,Watertown,MA 02472,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】キシモト,タカシ ケイ
(72)【発明者】
【氏名】イリンスキー,ピョートル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4C076AA17
4C076AA29
4C076AA95
4C076CC07
4C076CC41
4C076DD01
4C076DD21
4C076EE01
4C076EE20
4C076EE23
4C076EE24
4C076EE25
4C076EE26
4C076EE30
4C076EE41
4C076EE51
4C076FF02
4C076FF43
4C084AA13
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA05
4C084MA22
4C084MA43
4C084NA05
4C084NA13
4C084ZB08
4C084ZC41
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB22
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA22
4C086MA43
4C086NA05
4C086NA13
4C086ZB08
4C086ZC41
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087MA05
4C087MA22
4C087MA43
4C087NA05
4C087NA13
4C087ZB08
4C087ZC41
(57)【要約】
対象に、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアを伴うウイルスベクターを投与するための方法、および関連する組成物が、本明細書に提供される。かかる対象は、ウイルスベクターのウイルス抗原に対する既存の免疫を伴う対象でもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
対象に、ウイルスベクターと混合した免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアを投与すること、ここで、前記対象は、ウイルスベクターのウイルス抗原に対して、既存の免疫を有する、を含む方法。
【請求項2】
対象が、既存の免疫に起因して、さもなければウイルスベクターによる処置から除外されるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
対象が、母性移入抗体を伴う新生児である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ウイルスベクターが、対象に、あらかじめ投与されていない、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ウイルスベクターが、対象に、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアと随伴して、あらかじめ投与されていない、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアが、対象に、あらかじめ投与されていない、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
免疫抑制剤を含む合成ナノキャリア、およびウイルスベクターの、少なくとも1つのその後の随伴投与をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
免疫抑制剤を含む合成ナノキャリア、およびウイルスベクターのその後の随伴投与が、繰り返される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
その後の随伴投与の免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアが、ウイルスベクターと混合される、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
1以上のその後の随伴投与が、対象への先行投与の後2ヵ月以内に出現する、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
1以上のその後の随伴投与が、対象への先行投与の後1ヵ月以内に出現する、請求項7~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
1以上のその後の随伴投与が、対象への先行投与の後1週間以内に出現する、請求項7~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
1以上のその後の随伴投与が、対象への先行投与の少なくとも1ヵ月後に出現する、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
1以上のその後の随伴投与が、対象への先行投与の少なくとも1週間後に出現する、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
対象への、ウイルスベクターを伴う免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアの、いずれかの投与に先行して、対象における、ウイルスベクターに対する既存の免疫のレベルを決定することをさらに含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
決定が、対象への投与に先行して、対象における抗ウイルスベクター抗体のレベルを測定することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
決定が、対象への投与に先行して、対象における、ウイルスベクターのウイルス抗原に対する、T細胞応答のレベルを測定することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
ウイルスベクターの量が、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアと随伴して投与されるが、混合して投与されない場合に、別の対象における、ウイルスベクターの導入遺伝子発現を増加させるウイルスベクターの量より少なく、任意に、ここで、前記別の対象が、ウイルスベクターのウイルス抗原に対する既存の免疫を有する、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアの量が、ウイルスベクターのウイルス抗原に対する既存の免疫を伴わない対象にウイルスベクターと共に投与された場合に、ウイルスベクターの導入遺伝子発現を増加させ、および/または、抗体などの、ウイルスベクターのウイルス抗原に対する、免疫反応の減少に結果としてなる、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアの量より多い、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
量が、少なくとも2倍多い、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
量が、少なくとも3倍多い、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
ウイルスベクターを伴う免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアの投与、および/または1以上のその後の随伴投与が、静脈内投与によるものである、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
ウイルスベクターが、1つ以上の発現制御配列を含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
1つ以上の発現制御配列が、肝臓特異的プロモーターを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
1つ以上の発現制御配列が、構成的プロモーターを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ウイルスベクターが、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクターまたはアデノ随伴ウイルスベクターである、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルスベクターである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
アデノ随伴ウイルスベクターが、AAV1、AAV2、AAV5、AAV6、AAV6.2、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10またはAAV11アデノ随伴ウイルスベクターである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
合成ナノキャリアの免疫抑制剤が、NF-kbの経路の阻害剤である免疫抑制剤を含む、請求項1~28に記載のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
免疫抑制剤が、mTOR阻害剤である、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
mTOR阻害剤が、ラパマイシンまたはラパログである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
免疫抑制剤が、合成ナノキャリアにカップリングされている、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
免疫抑制剤が、合成ナノキャリア中にカプセル化されている、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
合成ナノキャリアが、脂質ナノ粒子、ポリマーナノ粒子、金属ナノ粒子、界面活性剤ベースのエマルション、デンドリマー、バッキーボール、ナノワイヤー、ウイルス様粒子またはペプチドもしくはタンパク質粒子を含む、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
合成ナノキャリアが、ポリマーナノ粒子を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
ポリマーナノ粒子が、ポリエステル、ポリエーテルに結合したポリエステル、ポリアミノ酸、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリケタール、多糖、ポリエチルオキサゾリンまたはポリエチレンイミンを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
ポリマーナノ粒子が、ポリエステルまたはポリエーテルに結合したポリエステルを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
ポリエステルが、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸-コーグリコール酸)またはポリカプロラクトンを含む、請求項36または37に記載の方法。
【請求項39】
ポリマーナノ粒子が、ポリエステルおよびポリエーテルに結合したポリエステルを含む、請求項36~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
ポリエーテルが、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールを含む、請求項36~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
合成ナノキャリアの集団の動的光散乱を用いて得られる粒子サイズ分布の平均が、110nmより大きな直径である、請求項1~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
直径が、150nmより大きい、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
直径が、200nmより大きい、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
直径が、250nmより大きい、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
直径が、5μmより小さい、請求項41~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
直径が、4μmより小さい、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
直径が、3μmより小さい、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
直径が、2μmより小さい、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
直径が、1μmより小さい、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
直径が、750nmより小さい、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
直径が、500nmより小さい、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
直径が、450nmより小さい、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
直径が、400nmより小さい、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
直径が、350nmより小さい、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
直径が、300nmより小さい、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
合成ナノキャリア中に含まれる免疫抑制剤の負荷量が、合成ナノキャリア全体の平均で、0.1%~50%(重量/重量)である、請求項1~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
負荷量が、0.1%~25%である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
負荷量が、少なくとも4%であるが、40%より少ない、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
負荷量が、2%~25%である、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
合成ナノキャリアの集団のアスペクト比が、1:1、1:1.2、1:1.5、1:2、1:3、1:5、1:7、または1:10より大きいかまたは等しい、請求項1~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
請求項1~60のいずれか一項に記載のウイルスベクターと混合した免疫抑制剤を含む、組成物。
【請求項62】
1つ以上の時点において対象におけるウイルスベクターに対するIgGまたはIgMまたは中和抗体応答を評価することをさらに含む、請求項1~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
IgGまたはIgMまたは中和抗体応答を評価する時点の少なくとも1つが、ウイルスベクターを伴う免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアの投与の後である、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
1つ以上の時点において、対象の導入遺伝子発現のレベルを測定することをさらに含む、請求項1~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
導入遺伝子発現のレベルを測定する時点の少なくともの1つが、ウイルスベクターを伴う免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアの投与の後である、請求項64に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年4月28日に出願の米国仮出願第62/839,771号、2019年10月21日に出願の米国仮出願第62/924,103号;および、2020年2月26日に出願の米国仮出願第62/981,555号の米国特許法§119(e)の下での優先権の利益を主張し;それぞれの全内容は、本明細書に参照によって組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
発明の分野
本発明は、少なくとも部分的には、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアと混合されたウイルスベクターを投与するための方法、および関連する組成物に関する。いくつかの態様において、本明細書に提供される方法および組成物は、ウイルスベクターに対する既存の免疫を伴う対象においてなどの、ウイルスベクターに対する下方制御された免疫応答などの、増加した導入遺伝子発現、および/または減少した免疫応答を、達成する。
【発明の概要】
【0003】
一側面において、対象に、ウイルスベクターと混合される免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアを投与することを含む方法が、提供される。一態様において、対象は、ウイルスベクターのウイルス抗原に対して、既存の免疫を有する。
【0004】
本明細書に提供される方法のいずれか1つの一態様において、対象は、対象中のウイルスベクターに対する既存の免疫のレベルに起因して、さもなければウイルスベクターによる処置から除外されたであろうものである。本明細書に提供される方法のいずれか1つの一態様において、対象は、AAVベクター(例として、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアと混合されない)などの、ウイルスベクターによる処置のための適格性のための閾値レベルを超える、抗ウイルスベクター抗体などの、既存の免疫の力価またはレベルを伴うものである。閾値は、本明細書に提供される既存の免疫のレベルのいずれか1つであってもよく、さもなければ、臨床医などの、当業者によって理解されるであろうものであってもよい。
【0005】
本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、対象は、小児であるか青少年の対象である。本明細書に提供される方法のいずれか1つの一態様において、対象は、ウイルスベクターの1以上の抗原に対する母性移入抗体を伴う小児であるか青少年の対象である。本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、対象は、新生児である。本明細書に提供される方法のいずれか1つの一態様において、対象は、ウイルスベクターの1以上の抗原に対する母性移入抗体を伴う新生児である。
【0006】
本明細書に提供される方法のいずれか1つの一態様において、既存の免疫は、中和抗体などの、ウイルスベクターに対する既存の抗体を含む。本明細書に提供される方法のいずれか1つの一態様において、既存の免疫は、中和抗体および総抗AAVカプシド抗体の組み合わせなどの、ウイルスベクターに対する既存の抗体を含む。本明細書に提供される方法のいずれか1つの一態様において、既存の免疫は、中和抗体および抗AAVカプシドIgG抗体の組み合わせなどの、ウイルスベクターに対する既存の抗体を含む。本明細書に提供される方法のいずれか1つの一態様において、ウイルスベクターに対する既存の免疫は、中和抗体、抗AAV IgG、および抗AAVカプシドIgM抗体の組み合わせなどの、既存の抗体を含む。本明細書に提供される方法のいずれか1つの一態様において、既存の免疫は、ウイルスベクターのウイルスカプシドに対する既存の抗体を含む。
【0007】
本明細書に提供される方法のいずれか1つの一態様において、方法は、ウイルスベクターの投与の前などに、対象中の既存の免疫レベルを決定することを、さらに含む。本明細書に提供される方法のいずれか1つの中で一態様において、対象は、ウイルスベクターのウイルス抗原に対する、既存の免疫の中程度のレベルを、有する。本明細書に提供される方法のいずれか1つの一態様において、方法は、ウイルスベクターの対象への投与より前に、対象において、既存の抗ウイルスベクター抗体のレベルを測定することを、さらに含む。一態様において、対象は、AAVベクター(例として、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアと混合せずに)などの、ウイルスベクターによる処置のための適格性のための閾値レベルを超える、抗ウイルスベクター抗体の力価またはレベルを伴うものである。閾値は、本明細書に提供される既存の免疫のレベルのいずれか1つであってもよく、さもなければ、臨床医などの当業者に公知であるものであってもよい。本明細書に提供される方法のいずれか1つの一態様において、方法は、閾値レベルにより決定される対象中の既存の免疫のレベルを比較することを、さらに含む。
【0008】
一側面において、対象に、ウイルスベクターと混合された免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアを投与することを含む方法が提供され、ここで、ウイルスベクターの量は、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアとともに投与されない場合に、ウイルスベクターの導入遺伝子発現を増加させるウイルスベクターの量より少ない。一側面において、対象に、ウイルスベクターと混合された免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアを投与することを含む方法が提供され、ここで、ウイルスベクターの量は、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアとともに随伴して投与されない場合に、ウイルスベクターの導入遺伝子発現を増加させるウイルスベクターの量より少ない。一側面において、対象に、ウイルスベクターと混合された免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアを投与することを含む方法が提供され、ここで、ウイルスベクターの量は、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアとともに混合して投与されない場合に、ウイルスベクターの導入遺伝子発現を増加させるウイルスベクターの量より少ない。本明細書に提供される方法のいずれか1つの一態様において、投与のための対象である対象は、第1の対象であり、そして、もう1つの量との比較は、第2の対象へのもう1つの量の投与に基づく。
【0009】
本明細書に提供される方法のいずれか1つの一態様において、第1の対象は、ウイルスベクターのウイルス抗原に対して既存の免疫を有し、そして、第2の対象も、ウイルスベクターのウイルス抗原に対して既存の免疫を有する。
【0010】
一側面において、対象に、ウイルスベクターと混合された免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアを投与することを含む方法、ここで、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアの量は、ウイルスベクターのウイルス抗原に対する、既存の免疫を伴わない対象にウイルスベクターと共に投与された場合に、ウイルスベクターの導入遺伝子発現を増加させ、および/または免疫反応の減少に結果としてなる免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアの量より、多い。本明細書に提供される方法のいずれか1つの一態様において、投与のための対象である対象は、第1の対象であり、そして、もう1つの量との比較は、第2の対象へのもう1つの量の投与に基づく。本明細書に提供される方法のいずれか1つの一態様において、第1の対象は、ウイルスベクターのウイルス抗原に対して既存の免疫を有し、そして、第2の対象は、ウイルスベクターのウイルス抗原に対して既存の免疫を有さない。
【0011】
本明細書に提供される方法のいずれか1つの一態様において、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアは、第1のおよび/または第2の対象にあらかじめ投与されず、または、免疫抑制剤およびウイルスのベクターを含む合成ナノキャリアは、第1のおよび/または第2の対象にあらかじめ随伴して投与されず、または、免疫抑制剤およびウイルスベクターを含む合成ナノキャリアは、第1のおよび/または第2の対象に混合されて、あらかじめ投与されない。
【0012】
提供される方法のいずれか1つの一態様において、ウイルスベクターの用量は、さもなければ、同じか同様のレベルの導入遺伝子発現などの、同じかまたは同様のレベルの有効性の結果になるのに必要であると予想されるものより、低い用量である。提供される方法のいずれか1つの一態様において、ウイルスベクターの用量は、少なくとも1倍、2倍、3倍、4倍、5倍またはそれより多い。本明細書に提供される方法のいずれか1つの一態様において、前述の用量は、ウイルスベクターの投与の全部の、少なくとも1以上のための用量である。
【0013】
提供される方法のいずれか1つの一態様において、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアの用量は、さもなければ、ウイルスのベクターに対する既存の免疫を伴わない対象に送達された場合と、同じかまたは同様のレベルの有効性の結果になるのに必要であると予想されるものより、多い用量である。提供される方法のいずれか1つの一態様において、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアの用量は、少なくとも2倍または3倍以上、より多い。本明細書に提供される方法のいずれか1つの一態様において、前述の用量は、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアの投与の全部の、少なくとも1以上のための用量である。
【0014】
本明細書に提供される方法のいずれか1つの一態様において、免疫抑制剤を含むウイルスベクターおよび合成ナノキャリアの少なくとも第1の投与が、または第1の投与のみが、ウイルスベクターおよび免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアの混合された組成物である。本明細書に提供される方法のいずれか1つの一態様において、ウイルスベクターおよび免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアのあらゆる投与は、ウイルスベクターおよび免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアの混合された組成物である。
提供される方法のいずれか1つの一態様において、ウイルスベクターと免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアとが、各々の随伴投与のために混合される。
【0015】
本明細書に提供される方法のいずれか1つの一態様において、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアは、ウイルスベクターと混合され、そして、混合物は、対象に、少なくとも第1の同時投与として、投与される。
【0016】
本明細書に提供される方法のいずれか1つの一態様において、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアは、ウイルスベクターと混合され、そして、混合物は、対象に、少なくとも第1および第2の同時投与として、投与される。
【0017】
本明細書に提供される方法のいずれか1つの一態様において、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアは、ウイルスベクターと混合され、そして、混合物は、対象に、少なくとも第1、第2および第3の同時投与として、投与される。
【0018】
提供される方法のいずれか1つの一態様において、ウイルスベクターと混合された免疫抑制剤を含む合成ナノキャリア、および/または、少なくとも1つの反復用量の投与は、静脈内投与によるものである。
【0019】
提供される方法のいずれか1つの中で一態様において、ウイルスベクターは、1以上の発現制御配列を含む。提供される方法のいずれか1つの中で一態様において、1以上の発現制御配列は、肝臓特異的プロモーターを、含む。提供される方法のいずれか1つの中で一態様において、1以上の発現制御配列は、構成的プロモーターを、含む。
提供される方法のいずれか1つの一態様において、方法は、肝臓における導入遺伝子発現のためである。
【0020】
提供される方法のいずれか1つの一態様において、方法は、1以上の時点での、対象におけるウイルスベクターに対する導入遺伝子発現、IgMおよび/またはIgG応答、および/または中和抗体応答を評価することを、さらに含む。提供される方法のいずれか1つの一態様において、IgMおよび/またはIgG応答および/または中和抗体を評価する時点の少なくとも1つは、同時投与の後である。
【0021】
提供される方法のいずれか1つの一態様において、ウイルスベクターは、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、またはアデノ随伴ウイルスベクターである。
【0022】
提供される方法のいずれか1つの中で一態様において、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルスベクターである。提供される方法のいずれか1つの一態様において、アデノ随伴ウイルスベクターは、AAV1、AAV2、AAV5、AAV6、AAV6.2、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、またはAAV11アデノ随伴ウイルスベクターである。提供される方法または組成物のいずれか1つの一態様において、AAVベクターなどのウイルスベクターは、組み換えであるか、合成であるか、改変されたか、またはキメラのベクターである。
【0023】
提供される方法のいずれか1つの一態様において、ウイルスのベクターと混合された免疫抑制剤を含む合成ナノキャリア、および/または、1以上のこれに続く随伴投与(単数または複数)、または1以上の反復用量(単数または複数)の免疫抑制剤は、NF-kb経路の阻害剤である。提供される方法のいずれか1つの中で一態様において、同時投与および/または反復用量の免疫抑制剤は、mTOR阻害剤である。提供される方法のいずれか1つの一態様において、mTOR阻害剤は、ラパマイシンまたはラパマイシン類似体である。
提供される方法のいずれか1つの中で一態様において、免疫抑制剤は、合成ナノキャリアに連結される。
【0024】
提供される方法のいずれか1つの中で一態様において、免疫抑制剤は、合成ナノキャリア中に封入される。提供される方法のいずれか1つの一態様において、ウイルスベクターと混合された免疫抑制剤を含む合成ナノキャリア、および/または1以上のこれに続く随伴投与(単数または複数)、または、1以上の反復用量(単数または複数)の合成ナノキャリアは、脂質ナノ粒子、ポリマーナノ粒子、金属ナノ粒子、界面活性剤ベースのエマルション、デンドリマー、バッキーボール、ナノワイヤー、ウイルス様粒子、またはペプチドまたはタンパク質粒子を、含む。
【0025】
提供される方法のいずれか1つの一態様において、合成ナノキャリアは、ポリマーナノ粒子を含む。提供される方法のいずれか1つの一態様において、ポリマーナノ粒子は、ポリエステル、ポリエーテルに接着したポリエステル、ポリアミノ酸、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリケタール、多糖、ポリエチルオキサゾリンまたはポリエチレンイミンを含む。提供される方法のいずれか1つの一態様において、ポリマーナノ粒子は、ポリエステル、またはポリエーテルに接着したポリエステルを含む。提供される方法のいずれか1つの一態様において、ポリエステルは、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)またはポリカプロラクトンを含む。提供される方法のいずれか1つの一態様において、ポリマーナノ粒子は、ポリエステル、およびポリエーテルに接着したポリエステルを含む。提供される方法のいずれか1つの一態様において、ポリエーテルは、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールを含む。
【0026】
本明細書において提供される方法のいずれか1つの一態様において、合成ナノキャリアの集団の動的光散乱を使用して得られた粒子サイズ分布の平均は、110nmより大きい直径である。提供される方法のいずれか1つの一態様において、直径は、150nmより大きい。提供される方法のいずれか1つの一態様において、直径は、200nmより大きい。提供される方法のいずれか1つの一態様において、直径は、250nmより大きい。提供される方法のいずれか1つの一態様において、直径は、5μmより小さい。提供される方法のいずれか1つの一態様において、直径は、4μmより小さい。提供される方法のいずれか1つの一態様において、直径は、3μmより小さい。提供される方法のいずれか1つの一態様において、直径は、2μmより小さい。提供される方法のいずれか1つの一態様において、直径は、1μmより小さい。提供される方法のいずれか1つの一態様において、直径は、750nmより小さい。提供される方法のいずれか1つの一態様において、直径は、500nmより小さい。提供される方法のいずれか1つの一態様において、直径は、450nmより小さい。提供される方法のいずれか1つの一態様において、直径は、400nmより小さい。提供される方法のいずれか1つの一態様において、直径は、350nmより小さい。提供される方法のいずれか1つの一態様において、直径は、300nmより小さい。
【0027】
提供される方法のいずれか1つの一態様において、合成ナノキャリア中に含まれる免疫抑制剤の負荷量(load)は、合成ナノキャリア全体の平均で、0.1%と50%(重量/重量)との間である。提供される方法のいずれか1つの一態様において、負荷量は、0.1%と40%との間である。提供される方法のいずれか1つの一態様において、負荷量は4%より大きいが、40%より小さい。提供される方法のいずれか1つの一態様において、負荷量は、2%と25%との間である。
【0028】
提供される方法のいずれか1つの一態様において、合成ナノキャリアの集団のアスペクト比は、1:1、1:1.2、1:1.5、1:2、1:3、1:5、1:7または1:10に等しいか、それよりも大きい。
【0029】
提供される方法のいずれか1つの一態様において、酵素などのタンパク質のいずれか1つをコードするウイルスベクターの導入遺伝子は、本明細書に提供される。
提供される方法のいずれか1つの一態様において、対象は、ウイルスベクターの導入遺伝子によってコードされるタンパク質の発現を必要とするものである。
提供される方法のいずれか1つの一態様において、対象は、メチルマロン酸血症またはOTC欠損を伴うものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、ヒトドナー8、31、35、44、および45からの血清中の中和活性およびIgGAAV抗体のレベルを、示す。中和活性は、ルシフェラーゼ発現(正規化RLU)として、棒でプロットされ、ルシフェラーゼ発現の高いレベルは、低い中和抗体活性に対応し、ルシフェラーゼ発現の低いレベルは、高い中和抗体活性に対応する。抗AAV IgG中和抗体は、線でプロットされる。
【
図2】
図2は、中和抗体を含有するヒト血清を伴う未治療のマウスの処置を示し、AAV-SEAPベクターまたはAAV-SEAPベクターとラパマイシンを含む合成ナノキャリアによる注入が続く(図のいくつかにおいてImmTOR)。血清SEAP活性が、注入の後測定された。棒より上の数字は、ラパマイシンを含む合成ナノキャリアを投与されていないマウスと、ラパマイシンを含む合成ナノキャリアを投与されたマウス間の、血清SEAP活性における変化を、指し示す。点線は、血清SEAP活性レベルを正規化するために、使用された。
【
図3】
図3は、AAV-SEAPベクターまたはAAV-SEAPベクターと抗AAV中和抗体を含有する血清の1:100の希釈物と混合されたラパマイシンを含む合成ナノキャリアによる、未治療のマウスの注入を示す。棒より上の数字は、血清によって注入されていないマウスと比較した、血清SEAP活性レベルを、指し示す。点線は、血清SEAP活性レベルを正規化するために、使用された。
【
図4】
図4は、Anc80-Mutで処置されたMck-MUTマウスの子孫の、母性移入抗Anc80 IgGを、示す。
【
図5】
図5は、既存の母性移入抗Anc80 IgG:MMAを伴うMck-MUTマウスにおける、高用量Anc80-MUTおよびImmTORを、示す。
【
図6】
図6は、既存の母性移入抗Anc80 IgG:MMAを伴うMck-MUTマウスにおける、高用量Anc80-MUTおよびImmTORを、示す。
【
図7】
図7は、既存の母性移入抗Anc80 IgG:MMAを伴うMck-MUTマウスにおける、高用量Anc80-MUTおよびImmTORを、示す。
【
図8】
図8(
図8A-8B)は、Anc80-MUT±ImmTORで反復して処置された既存の母性移入抗Anc80 IgGを伴うMck-MUTマウスの生存を、示す。
【0031】
発明の詳細な説明
本発明を詳細に記載する前に、本発明は特に例示された材料またはプロセスに限定されず、パラメーターのようなものは無論変化し得ることが理解されるべきである。また、本明細書において用いられる用語は、本発明の特定の態様のみを記載することを目的とし、本発明を記載する代替的用語の使用を限定することを意図しないことが理解されるべきである。
【0032】
上記または下記のいずれであっても、本明細書において引用される全ての刊行物、特許および特許出願は、その全体において全ての目的のために本明細書により参考として援用される。かかる参考としての援用は、本明細書において引用される援用された刊行物、特許および特許出願のいずれかが先行技術を構成するという承認であることを意図しない。
【0033】
本明細書および添付の請求の範囲において用いられる場合、単数形「a」、「an」および「the」は、内容が明らかに他を支持しない限り、複数の参照対象を含む。例えば、「ポリマー(a polymer)」についての言及は、2以上のかかる分子の混和物または異なる分子量の単一のポリマー種の混和物を含み、「合成ナノキャリア(a synthetic nanocarrier)」についての参照は、2以上のかかる合成ナノキャリアの混和物または複数のかかる合成ナノキャリアを含み、「DNA分子(a DNA molecule)」についての参照は、2以上のかかるDNA分子の混合物または複数のかかるDNA分子を含み、「免疫抑制剤(an immunosuppresant)」についての言及は、2以上のかかる免疫抑制剤分子の混和物または複数のかかる免疫抑制剤分子などを含む。
【0034】
本明細書において用いられる場合、用語「含む(comprise)」または「含む(comprises)」もしくは「含むこと(comprising)」などのそのバリエーションは、任意の列記される完全体(integer)(例えば、特色、要素、特徴、特性、方法/プロセスステップもしくは限定)または完全体の群(例えば特色、要素、特徴、特性、方法/プロセスステップもしくは限定)の包含を示すが、任意の他の完全体または完全体の群の除外を示すものではないと読まれるべきである。したがって、本明細書において用いられる場合、用語「含むこと(comprising)」は、包括的であり、さらなる列記されていない完全体または方法/プロセスステップを除外しない。
【0035】
本明細書において提供される組成物および方法のいずれかの態様において、「含むこと(comprising)」は、「から本質的になる(consisting essentially of)」または「からなる(consisting of)」で置き換えることができる。
【0036】
句「から本質的になる」は、本明細書において、特定された完全体(単数または複数)またはステップ、ならびに請求される発明の特徴または機能に実質的には影響を及ぼさないものを要求するために用いられる。本明細書において用いられる場合、用語「からなる」は、列記される完全体(例えば特色、要素、特徴、特性、方法/プロセスステップもしくは限定)または完全体の群(例えば特色、要素、特徴、特性、方法/プロセスステップもしくは限定)単独での存在を示すために用いられる。
【0037】
A.序論
アデノ随伴ウイルス(AAV)に基づくものなどのウイルスベクターは、遺伝子治療などの治療の適用において大きな可能性を示した。しかしながら、遺伝子治療およびその他の応用におけるウイルスベクターの使用は、ウイルス抗原曝露の結果としての既存の免疫などにより、限定された。AAVに対する既存の抗体は、天然に存在する野生型AAV感染に応答して、またはAAV感作母体から彼女の新生児への、抗体の母性移送を介して、形成することができる。実際に、ウイルスベクターに対する既存の免疫は、例として、減少された導入遺伝子発現によって示されるとおり、ウイルスベクターのウイルスベクターに対する免疫応答、および減少された有効性に、結果としてなることができる。ウイルスベクターに対する細胞性および液性免疫応答の両方は、有効性を減弱させ、および/またはかかる治療法を使用する能力を減少させることができる。これらの免疫応答は、抗体、B細胞、およびT細胞応答を含み、そして、ウイルスカプシドまたはコートタンパク質またはそれらのペプチドなどの、ウイルスベクターのウイルス抗原に特異的であることができる。本発明者らは、驚くべきことに、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアが、ウイルスベクターのウイルス抗原(単数または複数)に対する既存の免疫を伴うものにおいてさえ、ウイルスベクターと組み合わされて使用されることができるということを、発見した。本明細書に提供されるとおりの免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアは、ウイルスベクターを伴うかかる対象の処置可能にし得る。
【0038】
本発明者らは、驚くべきことに、ウイルスベクターと混合された免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアが、対象において、例として、ウイルスベクターに対する既存の免疫を伴う対象において、改善された導入遺伝子発現を達成することができるということも、発見した。投与が、ウイルスベクターの第1の投与である場合に、免疫応答減少および/または導入遺伝子発現のかかる改善は、著しい。
【0039】
加えて、驚くべきことに、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアおよびウイルスベクターのかかる混合された投与が、ウイルスベクターの第1の投与上の改善された導入遺伝子発現を達成する一方で、混合が、免疫抑制剤およびウイルスベクターを含む合成ナノキャリアの続く投与の有効性のために、必ずしも要求されるというわけではないことが、さらに分かった。
【0040】
加えて、驚くべきことに、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアおよびウイルスベクターのかかる混合された投与が、導入遺伝子発現を減少させることなく、ウイルスベクターの減少された用量を達成するために、使用されることができるということが、発見された。ウイルスベクターの減少された用量を投与することは、ウイルスベクターの投与と関連する好ましくない効果を、緩和することができる。
【0041】
さらに、驚くべきことに、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアのより高用量が、ウイルスベクターに対する既存の免疫を伴う対象におけるウイルスベクターの有効な投与を達成することにおいて、助けになることができることも、分かった。
【0042】
それゆえ、本発明者らは、驚くべきことに、かつ予想外のことに、上記の問題および制限は、本明細書において開示される発明を実施することにより克服することができることを、発見した。処置のためのウイルスベクターの効果的な使用に対する前述の障害に対する解決方法を提供する方法および組成物が提供される。合成ナノキャリアと混合されたなどの、本明細書に提供されるウイルスベクター構築物のいずれか1つを含むウイルスベクターで、対象を処置するための方法および組成物は、本明細書において提供される。提供される方法および関連された組成物は、ウイルスベクターのより幅広いおよび改善された使用を可能とし得、望ましくない免疫応答の減少に結果としてなり、および/または増加した導入遺伝子発現によってなどの、改善された有効性に結果としてなることができる。
本発明をここで、以下により詳細に記載する。
【0043】
B.定義
「投与すること」または「投与」または「投与する」とは、材料を、薬理学的に有用である様式において、対象に与えるかまたは分配することを意味する。当該用語は、「投与させること(causing to be administered)」を含むことを意図される。「投与させること」とは、別の当事者が材料を投与することを、直接的または間接的に、引き起こすこと、駆り立てること、奨励すること、補助すること、誘導することまたは指示することを含む。投与の間の時間が言及される場合、該時間は、他に記載された場合を除いて、投与の開始の間の時間である。
【0044】
本明細書に使用されるとき「混合する」は、2以上の構成要素が、一緒に組成物中に存在し、そして、組成物の投与が、対象に2以上の構成要素を提供するような、2以上の構成要素の混和を、指す。本明細書に提供される方法のいずれか1つの同時投与のいずれか1つは、混合物として投与されることができる。いくつかの態様において、2つの構成要素を混和することは、例として、ウイルス導入ベクターおよび免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアなどの、2つの構成要素を溶解すること、分散させること、懸濁すること、組み合わせること、結合すること、またはブレンドすることを含む。混合の方法は、当業者に公知で、液体-液体混和、粉末-粉末混和、液体-粉末混和などの、標準医薬混和方法を含むが、これに限定されるものではない。いくつかの態様において、結果として生じる混和物は、均一な混和物であり;すなわち、ウイルスベクターは、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアと一様に混合されてもよい。他の態様において、結果として生じる混和物は、不均一な混和物であり;すなわち、ウイルスベクターは、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアと一様に混合されない。
【0045】
提供される方法のいずれか1つのいくつかの態様において、ウイルスベクターと混合された免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアに、ウイルスベクターに随伴した免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアの1以上の投与、および/または、ウイルスベクターと混合された免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアの1以上のその後の投与が続く(それぞれ、その後の1以上の随伴投与(単数または複数)、または1以上の反復用量(単数または複数))。提供される方法のいずれか1つのいくつかの態様において、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアおよびウイルスベクターの、その後の随伴投与または反復用量は、ウイルスベクターと混合された免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアの投与の1週、2週、3週、1ヵ月、2ヵ月、またはそれ以上後に投与される。
【0046】
本明細書に提供の、対象への投与のための組成物の文脈における「有効量」は、対象における1以上の所望された結果、例えば、ウイルスベクターに対する、IgMおよび/またはIgG免疫応答などの、免疫応答の減少または除去、および/または有効であるか増加した導入遺伝子発現を生成する組成物の量を、指す。有効量は、in vitroまたはin vivoでの目的のためのものであってよい。in vivoでの目的のために、量は、医師が、ウイルスベクターの投与の結果として望ましくない免疫応答を経験するであろう対象について臨床的利益を有するであろうと考えるものであることができる。本明細書において提供される方法のいずれか1つにおいて、投与される組成物(単数または複数)は、本明細書において提供されるような有効量のうちのいずれか1つにおけるものであってよい。
【0047】
有効量は、望ましくない免疫応答のレベルを低下させることを含み得るが、いくつかの態様において、それは、望ましくない免疫応答を完全に予防することを含む。有効量はまた、望ましくない免疫応答の発生を遅延させることを含んでもよい。有効量は、所望される治療的エンドポイントまたは所望される治療効果をもたらす量であってもよい。提供される組成物および方法のいずれか1つのいくつかの態様において、有効量は、IgMおよび/またはIgG応答などの、ウイルスベクターに対する免疫応答の減少または除去、および/または有効であるか増大した導入遺伝子発現の発生などの、所望された免疫応答であるものである。前述のもののいずれかの達成は、慣用的な方法によりモニタリングすることができる。
【0048】
有効量は、無論、処置された特定の対象;状態、疾患または障害の重篤度;年齢、身体条件、サイズおよび体重を含む個々の患者のパラメーター;処置の期間;併用治療の性質(あれば);投与の特定の経路、ならびに保健実施者の知識および経験の範囲内の類似の要因に依存するであろう。これらの要因は、当業者に周知であり、慣用的な実験のみを用いて取り組むことができる。
【0049】
提供される方法または組成物のいずれか1つのいくつかの態様において、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアなしで投与されるウイルスベクターの有効量は、ウイルスベクターのウイルス抗原に対する既存の免疫を伴わない対象において、ウイルスベクターのウイルス抗原に対する既存の免疫を有する対象においてよりも少ない。提供される方法または組成物のいずれか1つのいくつかの態様において、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアと混合されて投与された場合のウイルスベクターの有効量は、ウイルスベクターのウイルス抗原に対する既存の免疫を有する対象などの、対象において、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアと随伴して投与されるが、混合されないなどの、混合されない、または免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアなしの場合のウイルスベクターの有効量より、少ない。いくつかの態様において、対象は、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアおよび/またはウイルスベクターを、あらかじめ投与されていなかった。
【0050】
「免疫応答を評価すること」は、in vitroまたはin vivoでの免疫応答のレベル、存在または不在、減少、増加などの任意の測定または決定を指す。かかる測定または決定は、対象から得られた1以上の試料に対して行うことができる。かかる評価は、ELISAベースのアッセイを含む、本明細書において提供されるかまたは当該分野において公知の他の方法のいずれか1つにより行うことができる。評価は、対象からの試料においてなどの、ウイルスベクターに特異的なものなどの、IgMおよび/またはIgG抗体などの、抗体の数またはパーセンテージを評価していてもよい。評価はまた、免疫応答に関連する任意の効果を評価すること、例えばサイトカインの存在または不在、細胞表現型などを測定することであってもよい。本明細書において提供される方法のいずれか1つは、ウイルスベクターまたはその抗原に対する免疫応答を評価するステップを含んでもよく、またはこれをさらに含んでもよい。評価は、直接的に行われても間接的に行われてもよい。当該用語は、別の当事者が免疫応答を評価することを、引き起こすか、駆り立てるか、奨励するか、補助するか、誘導するかまたは指示する行為を含むことを意図する。
「平均」とは、本明細書において用いられる場合、他に記述されないかぎり、算術平均を指す。
【0051】
「随伴して(concomintantly)」とは、対象に、時間的に相関する、好ましくは、免疫応答の調節を提供するために時間的に十分に相関する様式において、2以上の材料/剤を投与すること、およびさらにより好ましくは2以上の材料/剤が組み合わせて投与されることを意味する。態様において、随伴投与は、2以上の材料/剤の、特定された期間内、好ましくは1か月間以内、より好ましくは1週間以内、なおより好ましくは1日以内、さらにより好ましくは1時間以内の投与を包含してもよい。態様において、材料/剤は、繰り返し随伴投与してもよい;それは、例において提供されるような、1回より多くの機会における随伴投与である。
【0052】
「カップリングする」または「カップリングされた」(など)は、1つの実体(例えば部分)を別のものに化学的に会合させることを意味する。提供される方法または組成物のいずれか1つのいくつかの態様において、カップリングは、共有結合的であり、付着が、2つの実体の間の共有結合の存在の文脈において出現することを意味する。非共有的態様において、非共有的カップリングは、限定されないが以下を含む非共有的相互作用により媒介される:電荷相互作用、アフィニティー相互作用、金属配位、物理的吸着、主客相互作用、疎水性相互作用、TTスタッキング相互作用、水素結合相互作用、ファンデルワース相互作用、磁性相互作用、静電相互作用、双極子-双極子相互作用、および/またはそれらの組み合わせを含む。提供される方法または組成物のいずれか1つの態様において、カプセル化は、カップリングの一形態である。
【0053】
「用量」とは、所与の時間にわたる対象への投与のための特定の量の薬理学的および/または免疫学的に活性な材料を指す。一般に、キットを含む、本発明の方法および組成物における、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアおよび/またはウイルスベクターの用量は、合成ナノキャリア中に含まれる免疫抑制剤の量、および/または、別に定めがある場合を除いたウイルスベクターの量を、指す。あるいは、用量は、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアの用量を指す場合の例において、免疫抑制剤の所望の量を提供する合成ナノキャリアの数に基づいて、投与されることができる。用量が、反復投薬に関して用いられる場合、用量とは、反復用量の各々の量を指し、これらは同じであっても異なっていてもよい。
【0054】
「封入する」とは、合成ナノキャリア内の物質の少なくとも一部を囲い込むことを意味する。提供される方法または組成物のいずれか1つのいくつかの態様において、物質は、完全に合成ナノキャリアの中に封じ込まれる。提供される方法または組成物のいずれか1つの他の態様において、封入される物質のほとんどまたは全てが、合成ナノキャリアの外部の局所環境に、暴露されるというわけではない。提供される方法または組成物のいずれか1つの他の態様において、わずか50%、40%、30%、20%、10%、または5%(重量/重量)が、局所環境に暴露される。封入は、吸収とは別のものであり、吸収は、物質の殆どまたは全てを合成ナノキャリアの表面上に配置し、物質を合成ナノキャリアの外部の局所環境に暴露させる。
【0055】
「発現制御配列」は、発現に影響を及ぼすことができ、かつプロモーター、エンハンサー、およびオペレーターを含むことができる、いずれかの配列である。ベクターの中の発現制御配列または制御要素は、適切な核酸転写、翻訳、ウイルスパッケージング等々を、促進することができる。一般に、制御要素は、シスにおいて作用するが、しかし、それらは、トランスにおいて働いてもよい。提供される方法または組成物のいずれか1つの一態様において、発現制御配列は、構成的プロモーターまたは組織特異的プロモーターなどの、プロモーターである。「構成的プロモーター」は、また、遍在するか無差別のプロモーターと呼ばれるが、一般に活性であり、そして特定の細胞に、独占的または優先的でないものである。「組織特異的プロモーター」は、特別な細胞タイプまたは組織において活性であるものであり、かかる活性は、特別な細胞タイプまたは組織に独占的でもよい。本明細書に提供される核酸またはウイルスベクターのいずれか1つにおいて、プロモーターは、本明細書に提供のプロモーターのいずれか1つでもよい。本明細書に提供される核酸またはウイルスベクターのいずれか1つにおいて、プロモーターは、肝臓特異的プロモーターでもよい。
【0056】
「ウイルスベクターに対する免疫応答」等は、抗体(例として、IgMまたはIgG)または細胞性応答などの、ウイルスベクターに対するいかなる望ましくない免疫応答も、指す。いくつかの態様において、望ましくない免疫応答は、ウイルスベクターまたはその抗原に対する抗原特異的免疫応答である。いくつかの態様において、免疫応答は、ウイルスベクターのウイルス抗原に対して特異的である。他の態様において、免疫応答は、ウイルスベクターの導入遺伝子によりコードされるタンパク質またはペプチドに対して特異的である。
【0057】
いくつかの態様において、免疫応答は、ウイルスベクターのウイルス抗原に対して特異的であり、ウイルスベクターの導入遺伝子によりコードされるタンパク質またはペプチドに対しては特異的でない。
【0058】
いくつかの態様において、対象における減少された抗ウイルスベクター応答は、本明細書に提供の投与がないウイルスベクターのこの他の対象への投与に沿った、試験対象などの別の対象から得られた生体試料を使用して測定された抗ウイルス性ベクター免疫応答と比較した、本明細書に提供の投与に沿った、対象から得られた生体試料を使用して測定された抗ウイルス性ベクター免疫応答を、含む。いくつかの態様において、抗ウイルスベクター免疫応答は、本明細書に提供の投与がないウイルスベクターの他の対象への投与に沿った、試験対象などの別の対象から得られた生体試料の上に遂行されたウイルスベクターのin vitroでの抗原投与において検出された抗ウイルスベクター免疫応答と比較した、対象の生体試料の上に遂行された続くウイルスベクターのin vitroでの抗原投与における、本明細書に提供の投与に沿った、対象から得られた生体試料における、減少した抗ウイルスベクター免疫応答である。他の態様において、免疫応答は、試験対象からの試料中などの、別の対象において評価されることができ、ここで、他の対象に関する結果は、スケーリングすることの有無にかかわらず、何が、問題の対象において出現しているかまたは出現したかが、暗示されることが予想されるだろう。いくつかの態様において、対象における減少された抗ウイルスベクター応答は、例えば、本明細書に提供の投与に先立つ、本明細書に提供の投与を伴わない時においてなどの、種々の点での、対象から得られた生体試料を使用して測定された抗ウイルスベクター免疫応答と比較した、本明細書に提供の投与後の対象から得られた生体試料を使用して測定された、減少された抗ウイルスベクター免疫応答を含む。
【0059】
「免疫抑制剤」は、好ましくはAPCに対する効果を通して、免疫寛容原性効果を引き起こすことができる化合物を意味する。免疫寛容原性効果は、一般に、APCまたは他の免疫細胞による、全身性および/または局所的な調節であって、耐久的な様式において抗原に対する望ましくない免疫応答を阻害または予防するものを指す。提供される方法または組成物のいずれか1つの一態様において、免疫抑制剤は、1以上の免疫エフェクター細胞における調節性表現型を推進するために、APCを引き起こすものである。例えば、調節性の表現型は、抗原特異的CD4+T細胞またはB細胞の産生、誘導、刺激または動員の阻害、抗原特異的抗体の産生の阻害、Treg細胞(例えば、CD4+CD25highFoxP3+Treg細胞)の産生、誘導、刺激または動員などにより特徴づけられ得る。このことは、CD4+T細胞またはB細胞の調節性の表現型への変換の結果であってもよい。このことはまた、CD8+T細胞、マクロファージおよびiNKT細胞などの他の免疫細胞におけるFoxP3の誘導の結果であってもよい。提供される方法または組成物のいずれか1つの一態様において、免疫抑制剤は、抗原を処理したあと、APCの応答に影響を及ぼすものである。提供される方法または組成物のいずれか1つの別の態様において、免疫抑制剤は、抗原を処理することを妨げるものではない。提供される方法または組成物のいずれか1つのさらなる態様において、免疫抑制剤は、アポトーシスシグナル伝達分子ではない。提供される方法または組成物のいずれか1つの別の態様において、免疫抑制剤は、ホスホリピドではない。
【0060】
免疫抑制剤として、これらに限定されないが、以下が挙げられる:スタチン;ラパマイシンまたはラパマイシンアナログ(すなわち、ラパログ(rapalog))などのmTOR阻害剤;TGF-βシグナル伝達剤;TGF-β受容体アゴニスト;トリコスタチンAなどのヒストンデアセチラーゼ阻害剤;副腎皮質ステロイド;ロテノンなどのミトコンドリアの機能の阻害剤;P38阻害剤;6Bio、デキサメタゾン、TCPA-1、IKK VIIなどのNF-κβ阻害剤;アデノシン受容体アゴニスト;ミソプロストールなどのプロスタグランジンE2アゴニスト(PGE2);ホスホジエステラーゼ阻害剤、ロリプラムなどのホスホジエステラーゼ4阻害剤(PDE4);プロテアソーム阻害剤;キナーゼ阻害剤;Gタンパク質共役受容体アゴニスト;Gタンパク質共役受容体アンタゴニスト;糖質コルチコイド;レチノイド;サイトカイン阻害剤;サイトカイン受容体阻害剤;サイトカイン受容体アクチベーター;ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アンタゴニスト;ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アゴニスト;ヒストンデアセチラーゼ阻害剤;カルシニューリン阻害剤;ホスファターゼ阻害剤;TGX-221などのPI3KB阻害剤;3-メチルアデニンなどのオートファジー阻害剤;アリール炭化水素受容体阻害剤;プロテアソーム阻害剤I(PSI);ならびにP2X受容体遮断薬などの酸化ATP。免疫抑制剤はまた、IDO、ビタミンD3、レチノイン酸、シクロスポリンAなどのシクロスポリン、アリール炭化水素受容体阻害剤、レスベラトロール、アザチオプリン(Aza)、6-メルカプトプリン(6-MP)、6-チオグアニン(6-TG)、FK506、サングリフェリンA、サルメテロール、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、アスピリンおよび他のCOX阻害剤、ニフルミン酸、エストリオールならびにトリプトライドを含む。他の例示的な免疫抑制剤として、限定されないが、低分子薬、天然生成物、抗体(例えば、CD20、CD3、CD4に対する抗体)、生物製剤ベースの薬物、炭水化物ベースの薬物、RNAi、アンチセンス核酸、アプタマー、メトトレキサート、NSAID;フィンゴリモド;ナタリズマブ;アレムツズマブ;抗CD3;タクロリムス(FK506)、アバタセプト、ベラタセプトなどが挙げられる。「ラパログ」は、本明細書に使用されているように、構造的にラパマイシン(シロリムス)の(類似体)に関する分子を、指す。ラパログの例として、限定することなく、テムシロリムス(CCI-779)、エベロリムス(RAD001)、リダフォロリムス(AP-23573)、およびゾタロリムス(ABT-578)が挙げられる。ラパログのさらなる例は、例えばWO公開WO1998/002441および米国特許第8,455,510号において見出すことができ、それらのラパログは、本明細書においてその全体において参考として援用される。さらなる免疫抑制剤は、当業者に公知であり、本発明は、この点において限定されない。提供される方法または組成物のいずれか1つの態様において、免疫抑制剤は、前述のいずれか1つなどの、本明細書に提供の剤のいずれか1つを含んでもよい。
【0061】
「導入遺伝子発現を増加させること」とは、対象におけるウイルスベクターの導入遺伝子発現のレベルを増加させることを指し、導入遺伝子は、ウイルスベクターにより送達される。いくつかの態様において、導入遺伝子発現のレベルは、対象における目的の多様な組織または系における導入遺伝子タンパク質濃度を測定することにより決定することができる。あるいは、導入遺伝子発現産物が核酸である場合、導入遺伝子発現のレベルは、導入遺伝子核酸産物により測定することができる。導入遺伝子発現を増加させることは、例えば、対象から得られた試料中の導入遺伝子発現の量を測定すること、およびそれを前の試料と比較することにより決定することができる。試料は、組織試料であってよい。いくつかの態様において、導入遺伝子発現は、フローサイトメトリーを用いて決定することができる。他の態様において、増加した導入遺伝子発現は、試験対象からの試料中などの、別の対象において評価されることができ、ここで、他の対象に関する結果は、スケーリングすることの有無にかかわらず、何が、問題の対象において出現しているかまたは出現したかが、暗示されることが予想されるだろう。本明細書に提供される方法のいずれか1つは、増加した導入遺伝子発現に結果としてなってもよい。
【0062】
それらに連結される場合などの、免疫抑制剤が、合成ナノキャリアに含まれる場合に、「負荷量」は、全体の合成ナノキャリアにおける材料の全乾燥処方重量に基づく、合成ナノキャリアにおける免疫抑制剤の量である(重量/重量)。一般に、かかる負荷量は、合成ナノキャリアの集団全体の平均として計算される。提供される方法または組成物のいずれか1つの一態様において、合成ナノキャリア全体の平均上の負荷量は、0.1%と99%の間にある。提供される方法または組成物のいずれか1つの別の態様において、負荷量は、0.1%と50%の間にある。提供される方法または組成物のいずれか1つの別の態様において、負荷量は、0.1%と20%の間にある。提供される方法または組成物のいずれか1つのさらなる態様において、負荷量は、0.1%と10%の間にある。依然として提供される方法または組成物のいずれか1つのさらなる態様において、負荷量は、1%と10%の間にある。依然として提供される方法または組成物のいずれか1つのさらなる態様において、負荷量は、7%と20%の間にある。提供される方法または組成物のいずれか1つのさらに別の態様において、負荷量は、合成ナノキャリアの集団全体の平均で少なくとも0.1%、少なくとも0.2%、少なくとも0.3%、少なくとも0.4%、少なくとも0.5%、少なくとも0.6%、少なくとも0.7%、少なくとも0.8%、少なくとも0.9%、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも11%、少なくとも12%、少なくとも13%、少なくとも14%、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である。提供される方法または組成物のいずれか1つそのうえさらなる態様において、負荷量は、合成ナノキャリアの集団全体の平均で、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、または20%である。いくつかの上の態様のいずれか1つのいくつかの態様において、負荷量は、合成ナノキャリアの集団全体の平均で、25%以下である。提供される方法または組成物のいずれか1つの態様において、負荷量は、当該技術分野で周知のとおりに算出される。
【0063】
「合成ナノキャリアの最大寸法」とは、合成ナノキャリアの任意の軸に沿って測定されるナノキャリアの最大寸法を意味する。「合成ナノキャリアの最小寸法」とは、合成ナノキャリアの任意の軸に沿って測定される合成ナノキャリアの最小寸法を意味する。例えば、球体の合成ナノキャリアについて、合成ナノキャリアの最大および最小寸法は、実質的に同一であり、その直径のサイズである。同様に、立方状合成ナノキャリアについて、合成ナノキャリアの最小寸法は、その高さ、幅または長さのうちの最小のものであり、一方、合成ナノキャリアの最大寸法は、その高さ、幅または長さのうちの最大のものである。
【0064】
一態様において、試料中の合成ナノキャリアの合計数に基づいた、試料中の合成ナノキャリアの少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最小寸法は、100nmと等しいか、またはこれより大きい。一態様において、試料中の合成ナノキャリアの合計数に基づいた、試料中の合成ナノキャリアの少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最大寸法は、5μmと等しいか、またはこれより小さい。好ましくは、試料中の合成ナノキャリアの合計数に基づいた、試料中の合成ナノキャリアの少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最小寸法は、110nmより大きく、より好ましくは120nmより大きく、より好ましくは130nmより大きく、より好ましくはなお、150nmより大きい。合成ナノキャリアの最大および最小寸法のアスペクト比は、態様に依存して変化し得る。例えば、合成ナノキャリアの最小寸法に対する最大寸法のアスペクト比は、1:1~1,000,000:1、好ましくは1:1~100,000:1、より好ましくは1:1~10,000:1、より好ましくは1:1~1000:1、なおより好ましくは1:1~100:1、およびさらにより好ましくは1:1~10:1の間で変化し得る。好ましくは、試料中の合成ナノキャリアの合計数に基づいた、試料中の合成ナノキャリアの少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最大寸法は、3μmと等しいか、またはこれより小さく、より好ましくは2μmと等しいか、またはこれより小さく、より好ましくは1μmと等しいか、またはこれより小さく、より好ましくは800nmと等しいか、またはこれより小さく、より好ましくは600nmと等しいか、またはこれより小さく、およびより好ましくはなお、500nmと等しいか、またはこれより小さい。好ましい態様において、試料中の合成ナノキャリアの合計数に基づいた、試料中の合成ナノキャリアの少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最小寸法は、100nmと等しいか、またはこれより大きく、より好ましくは120nmと等しいか、またはこれより大きく、より好ましくは130nmと等しいか、またはこれより大きく、より好ましくは140nmと等しいか、またはこれより大きく、およびより好ましくはなお、150nmと等しいか、またはこれより大きい。合成ナノキャリアの寸法(例えば有効直径)の測定は、いくつかの態様において、合成ナノキャリアを液体(通常は水性)媒体中に懸濁して、動的光散乱(DLS)を用いること(例えばBrookhaven ZetaPALS装置を用いること)により、得ることができる。例えば、合成ナノキャリアの懸濁液を、約0.01~0.1mg/mLの最終合成ナノキャリア懸濁液濃度を達成するために、水性バッファーから精製水中で希釈することができる。希釈された懸濁液は、DLS分析のために好適なキュベット中で直接調製しても、またはこれに移してもよい。キュベットを、次いで、DLS内に置き、制御された温度まで平衡化させて、次いで、媒体の粘度および試料の屈折率のための適切なインプットに基づいて、安定で再現性のある分布を得るために十分な時間にわたりスキャンすることができる。有効直径、または分布の平均を、次いで報告させる。高アスペクト比または非球形の合成ナノキャリアの有効サイズを決定することは、より正確な測定値を得るために、電子顕微鏡法などの増強技術を必要とする場合がある。合成ナノキャリアの「次元」または「寸法」または「直径」は、例えば動的光散乱を用いて得られる粒子サイズ分布の平均を意味する。
【0065】
「あらかじめ投与されない」は、対象にこれまでまったく投与されなかったか、処置のためにウイルスベクターを投与するための投与療法が、開始される場合の時間での薬力学的効果に結果としてなる時間枠の範囲内で投与されなかった組成物を、指す。
【0066】
「薬学的に許容し得る賦形剤」または「薬学的に許容し得るキャリア」とは、組成物を処方するために薬理学的に活性な材料と一緒に用いられる薬理学的に不活性な材料を意味する。薬学的に許容し得る賦形剤は、当該分野において公知の多様な材料を含み、これは、限定されないが、糖(例えばグルコース、ラクトースなど)、抗菌剤などの保存剤、再構成補助剤、色素、食塩水(例えばリン酸緩衝化食塩水)およびバッファーを含む。
【0067】
「反復用量」または「反復投与」等は、同じ材料のより初期の用量または投与に続いて、対象に投与される材料(単数または複数)または一組の材料の少なくとも1つの追加の用量または投与を、意味する。材料は同じであってよいが、一方で、反復用量または投与中の材料の量は、異なっていてもよい。
【0068】
「ウイルスベクターに対する既存の免疫」とは、その細胞が、ウイルスベクターの抗原に対する、または交差反応性抗原(他のウイルスを含むがこれに限定されない)に対する以前の暴露により、以前にプライミングされている対象における、抗体、T細胞および/またはB細胞の存在を指す。本明細書に提供される方法のいずれか1つの一態様において、既存の免疫は、ウイルスベクターのウイルスカプシドに対する。用語は、ウイルスベクターのウイルス抗原に対する母性移入抗体を伴う対象を含むことを意味し、および、このように、本明細書に提供の対象は、ウイルスのベクターに対する母性移入抗体を伴う新生児を、含む。本明細書に提供される方法のいずれか1つの一態様において、既存の免疫は、中和抗体などの、ウイルスベクターに対する既存の抗体を含む。本明細書に提供される方法のいずれか1つの一態様において、既存の免疫は、中和抗体および総抗AAVカプシド抗体の組み合わせなどの、ウイルスベクターに対する既存の抗体を含む。本明細書に提供される方法のいずれか1つの一態様において、既存の免疫は、中和抗体および抗AAVカプシドIgG抗体の組み合わせなどの、ウイルスベクターに対する既存の抗体を含む。本明細書に提供される方法のいずれか1つの一態様において、ウイルスベクターに対する既存の免疫は、中和抗体、抗AAV IgG、および抗AAVカプシド免疫グロブリンM抗体の組み合わせなどの、既存の抗体を含む。本明細書に提供される方法のいずれか1つの一態様において、ウイルスベクターに対する母性移入抗体は、ウイルスベクターに対する中和抗体を含む。いくつかの態様において、この既存の免疫は、ウイルスベクターの有効性を損なう抗ウイルスベクター免疫応答(単数または複数)に結果としてなることが予測されるレベルである。いくつかの態様において、この既存の免疫は、さもなければ対象を、ウイルスベクターによる処置から除外するレベルである。
【0069】
本明細書に提供される方法のいずれか1つの態様において、ウイルスベクターのウイルス抗原に対する既存の免疫のレベルは、1:5の力価でのAAVなどのウイルスベクター形質導入の25%、30%、40%、50%、60%、70%を中和するのに十分である。本明細書に提供される方法のいずれか1つの態様において、ウイルスベクターのウイルス抗原に対する既存の免疫のレベルは、1:10の力価でのAAVなどのウイルスベクター形質導入の25%、30%、40%、50%、60%、70%を中和するのに十分である。本明細書に提供される方法のいずれか1つの態様において、ウイルスベクターのウイルス抗原に対する既存の免疫のレベルは、1:20の力価でのAAVなどのウイルスベクター形質導入の25%、30%、40%、50%、60%、70%を中和するのに十分である。本明細書に提供される方法のいずれか1つの態様において、ウイルスベクターのウイルス抗原に対する既存の免疫のレベルは、1:100の力価でのAAVなどのウイルスベクター形質導入の25%、30%、40%、50%、60%、70%を中和するのに十分である。本明細書に提供される方法のいずれか1つの態様において、ウイルスベクターのウイルス抗原に対する既存の免疫のレベルは、1:5、1:10、1:20、1:50、1:100の力価で、50%を中和するのに十分である。本明細書に提供される方法のいずれか1つの態様において、対象は、前述の既存の免疫のレベルのいずれか1つを、有する。本明細書に提供される方法のいずれか1つの態様において、前述のいずれか1つは、閾値レベルである。
【0070】
いくつかの態様において、この既存の免疫は、ウイルス導入ベクターに対するその後の暴露により、抗ウイルスベクター免疫応答(単数または複数)に結果としてなることが、予測されるレベルである。既存の免疫は、対象からの血液試料などの試料中に存在するウイルスベクターに対する中和抗体などの抗体のレベルを決定することにより、評価することができる。中和抗体などの抗体のレベルを評価するためのアッセイは、本明細書において少なくとも例において記載され、また、当業者には公知である。かかるアッセイは、細胞ベースのアッセイであることができる。IgMまたはIgMまたは中和抗体などの、抗体のレベルを評価するためのアッセイ。かかるアッセイは、ELISAアッセイであることができる。既存の免疫はまた、in vivoまたはin vitroで、APCにより提示されたウイルスベクター抗原またはMHCクラスIもしくはMHCクラスII分子上に提示されたウイルス抗原エピトープで刺激された、BまたはT細胞などの免疫細胞の抗原リコール応答を決定することにより、評価されることができる。抗原特異的リコール応答のためのアッセイとして、これらに限定されないが、ELISpot、細胞内サイトカイン染色、細胞増殖、およびサイトカイン産生アッセイが挙げられる。一般に、これらのおよび他のアッセイは、当業者に公知である。いくつかの態様において、ウイルスベクターのウイルス抗原に対する既存の免疫を示さない対象は、中和抗体、またはメモリーBもしくはT細胞などの抗ウイルスベクター抗体のレベルが陰性であると考えられるものである。他の態様において、ウイルスベクターのウイルス抗原に対する既存の免疫を示さない対象は、抗ウイルスベクター応答のレベルが、陰性対照の平均値+3×標準偏差以下であるものである。
【0071】
「対象」とは、ヒトおよび霊長類などの温血哺乳動物;鳥類;ネコ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマおよびブタなどの家庭内または家畜動物;マウス、ラットおよびモルモットなどの実験動物;魚類;爬虫類;動物園および野生の動物などを含む動物を意味する。本明細書において用いられる場合、対象は、本明細書において提供される方法または組成物のいずれか1つを必要としてもよい。本明細書に使用されるとき、対象は、母性移入抗体を伴う新生児、または、既存の免疫のレベルが、対象をウイルスベクターによる処置からさもなければ除外するものである。本明細書に提供される「第2の対象」または「別の対象」は、投与が提供されている対象とは異なる、別の対象を指す。この対象は、試験対象などの他のいかなる対象であることもでき、その対象は、同じであるか異なる種類でもよい。いくつかの態様において、この第2の対象は、ウイルスベクターに対する既存の免疫を伴うものである。いくつかの態様において、この第2の対象は、ウイルスベクターに対する既存の免疫を伴わないものである。他の態様において、この第2の対象は、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアを伴わない、または、同様にして投与された免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアを伴わないウイルスベクターが(随伴したが、混合されなかったなどの異なる方法で)、投与されたものである。提供される方法または組成物のいずれか1つのいくつかの態様において、第2または他の対象が、異なる種類であるときに、その量は、投与を受けるために、その対象の種類のために適切な様に、スケーリングされることができ、そのスケーリングされた量は、本明細書に提供される総量として、使用されることができる。たとえば、相対成長率または他のスケーリング方法が、使用されることができる。第2の対象または他の対象における免疫応答ならび導入遺伝子発現が、当業者に公知の、さもなければ本明細書に提供の、ルーチンな方法を使用して、評価されることができる。本明細書に提供される方法のいずれか1つは、本明細書に記載の第2のまたは他の対象における、これらの総計の1以上を決定することを含んでもよいかまたはさらに含んでも、よい。
【0072】
「合成ナノキャリア(単数または複数)」とは、天然では見出されない個別の物体であって、サイズが5マイクロメートルより小さいか、またはこれと等しい、少なくとも1つの寸法を有するものを意味する。アルブミンナノ粒子は、一般に合成ナノキャリアとして含まれるが、しかし、ある態様においては、合成ナノキャリアは、アルブミンナノ粒子を含まない。態様において、合成ナノキャリアは、キトサンを含まない。他の態様において、合成ナノキャリアは、脂質ベースのナノ粒子ではない。さらなる態様において、合成ナノキャリアは、リン脂質を含まない。
【0073】
合成ナノキャリアは、これらに限定されないが、1つまたは複数の脂質ベースのナノ粒子(また本明細書において液体ナノ粒子、すなわち、それらの構造を構成する材料の大部分が脂質であるナノ粒子としても言及される)、ポリマーナノ粒子、金属ナノ粒子、界面活性剤ベースのエマルション、デンドリマー、バッキーボール、ナノワイヤー、ウイルス様粒子(すなわち、主にウイルスの構造タンパク質からなるが、感染性ではないか、低い感染性を有する粒子)、ペプチドまたはタンパク質ベースの粒子(また本明細書において、タンパク質粒子、すなわち、それらの構造を構成する材料の大部分がペプチドもしくはタンパク質である粒子としても言及される)(アルブミンナノ粒子など)および/または脂質-ポリマーナノ粒子などのナノ材料の組み合わせを用いて開発されるナノ粒子であってもよい。合成ナノキャリアは、多様な異なる形状であってよく、これは、限定されないが、球体、立方状、錐体、長方形、円柱状、ドーナツ型などを含む。本発明による合成ナノキャリアは、1以上の表面を含む。本発明の実施における使用のために適応させることができる例示的な合成ナノキャリアは、以下を含む:(1)Grefらに対する米国特許5,543,158において開示される生分解性ナノ粒子、(2)Saltzmanらに対する米国特許出願公開20060002852のポリマーナノ粒子、(3)DeSimoneらに対する米国特許出願公開20090028910のリソグラフィーにより構築されるナノ粒子、(4)von Andrianらに対するWO2009/051837の開示、(5)Penadesらに対する米国特許出願公開2008/0145441において開示されるナノ粒子、(6)de los Riosらに対する米国特許出願公開20090226525において開示されるタンパク質ナノ粒子、(7)Sebbelらに対する米国特許出願公開20060222652において開示されるウイルス様粒子、(8)Bachmannらに対する米国特許出願公開20060251677において開示される核酸結合ウイルス様粒子、(9)WO2010047839A1またはWO2009106999A2において開示されるウイルス様粒子、(10)P. Paolicelli et al., 「Surface-modified PLGA-based Nanoparticles that can Efficiently Associate and Deliver Virus-like Particles」Nanomedicine. 5(6): 843-853 (2010)において開示されるナノ沈殿させたナノ粒子、(11)米国公開2002/0086049において開示されるアポトーシス細胞、アポトーシス小体または合成もしくは半合成模倣物、あるいは(12)Look et al., Nanogel-based delivery of mycophenolic acid ameliorates systemic lupus erythematosus in mice」J. Clinical Investigation 123(4): 1741-1749 (2013)のもの。
【0074】
いくつかの態様において、約100nmと等しいかこれより小さい、好ましくは100nmと等しいかこれより小さい最小寸法を有する、本発明に従う合成ナノキャリアは、補体を活性化するヒドロキシル基を伴う表面を含まないか、あるいは、補体を活性化するヒドロキシル基ではない部分から本質的になる表面を含む。好ましい態様において、約100nmと等しいかこれより小さい、好ましくは100nmと等しいかこれより小さい最小寸法を有する、本発明による合成ナノキャリアは、補体を実質的に活性化する表面を含まないか、あるいは、補体を実質的に活性化しない部分から本質的になる表面を含む。より好ましい態様において、約100nmと等しいかこれより小さい、好ましくは100nmと等しいかこれより小さい最小寸法を有する、本発明による合成ナノキャリアは、補体を活性化する表面を含まないか、あるいは、補体を活性化しない部分から本質的になる表面を含む。態様において、合成ナノキャリアは、ウイルス様粒子を除外する。態様において、合成ナノキャリアは、1:1、1:1.2、1:1.5、1:2、1:3、1:5、1:7より高いか等しい、または1:10より高いアスペクト比を有してもよい。
【0075】
「ウイルスベクターの導入遺伝子」または「導入遺伝子」等とは、細胞中に輸送するためにウイルスベクターが用いられる核酸材料であって、好ましくはいくつかの態様において、一旦細胞中に入ると、発現して、それぞれ、本明細書において記載の治療的適用のためなどの、タンパク質または核酸分子を産生するものを指す。「発現される」または「発現」または類似のものは、導入遺伝子が細胞中に形質導入されて、形質導入された細胞によりプロセッシングされた後の、機能的(すなわち、所望される目的のために生理学的に活性な)遺伝子産物の合成を指す。かかる遺伝子産物はまた、本明細書において「導入遺伝子発現産物」としても言及される。発現された産物は、したがって、導入遺伝子によりコードされた結果としてのタンパク質または核酸、例えばアンチセンスオリゴヌクレオチドまたは治療用RNAである。
【0076】
「ウイルスベクター」は、細胞に、核酸(単数または複数)などのペイロードを送達することができるかまたは送達するウイルスベースのデリバリーシステムを、意味する。一般に、用語は、カプシドおよび/またはコートタンパク質などの、ウイルスの構成要素を伴うウイルスベクター構築物を指し、それは、ペイロードを含むこともできるかまたはペイロードもまた含む(そして、そのように適合されている)。いくつかの態様において、ペイロードは、導入遺伝子をコード化する。いくつかの態様において、導入遺伝子は、治療用タンパク質、DNA結合タンパク質またはエンドヌクレアーゼなどの本明細書において提供されるタンパク質を、コードするものである。他の態様において、導入遺伝子は、ガイドRNA、アンチセンス核酸、snRNA、RNAi分子(例として、dsRNAもしくはssRNA)、miRNA、または三重鎖形成オリゴヌクレオチド(TFO)等々をコードする。
【0077】
他の態様において、ペイロードは、それ自体治療用の核酸(単数または複数)であり、そして、送達された核酸(単数または複数)の発現は、要求されない。たとえば、核酸(単数または複数)は、合成siRNAなどのsiRNAでもよい。いくつかの態様において、ペイロードは、逆方向末端反復(ITR)、マーカー等々などの他の構成要素をコード化してもよい。ペイロードは、発現制御配列を含んでもよい。発現制御DNA配列は、プロモーター、エンハンサーおよびオペレーターを含み、一般に、発現コンストラクトが利用されるべき発現系に基づいて選択される。いくつかの態様において、プロモーターおよびエンハンサー配列は、遺伝子発現を増大する能力のために選択され、一方、オペレーター配列は、遺伝子発現を調節する能力のために選択され得る。いくつかの態様において、ペイロードはまた、宿主細胞中での相同組み換えを容易にする、および好ましくは促進する、配列を含んでもよい。
【0078】
例示的な発現制御配列は、プロモーター配列、例えば、サイトメガロウイルスプロモーター;ラウス肉腫ウイルスプロモーター;およびサルウイルス40プロモーター;ならびに本明細書において他の場所で開示されるか当該分野において他に公知の任意の他の型のプロモーターを含む。一般に、プロモーターは、所望される発現産物をコードする配列の上流(すなわち5’)で、作動的に連結される。ペイロードはまた、コード配列の下流(すなわち3’)で作動可能に連結された好適なポリアデニル化配列(例として、SV40またはヒト成長ホルモン遺伝子ポリアデニル化配列)を含んでもよい。
【0079】
一般に、ウイルスベクターは、1以上の所望される核酸を細胞中に形質導入することができるように操作される。加えて、本明細書に提供の治療の適用のために、ウイルスベクターが、複製欠陥があることが好ましいことが、理解されるだろう。ウイルスベクターは、限定することなく、レトロウイルス(例えば、マウスレトロウイルス、トリレトロウイルス、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)、ハーヴェイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳房腫瘍ウイルス(MuMTV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)およびラウス肉腫ウイルス(RSV))、レンチウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、アルファウイルスなどに基づくものであってよい。他の例は、本明細書において他の場所において提供されるか、当該分野において公知である。ウイルスベクターは、ウイルスの天然のバリアント、株、または血清型、例えば本明細書において提供されるもののいずれか1つに基づくものであってよい。ウイルスベクターは、分子進化をとおして選択されるウイルスに、基づいてもよい(例として、J.T. Koerber et al, Mol. Ther. 17(12):2088-2095 and U.S. Pat. No. 6,09,548参照)。
【0080】
ウイルスベクターは、限定されるものではなく、AAV8またはAAV2などのアデノ随伴ウイルス(AAV)に基づくことができる。ウイルスベクターは、Anc80に基づくこともできる。よって、本明細書に提供されるAAVベクターまたはAnc80ベクターは、それぞれAAVまたはAnc80に基づくウイルスベクターであり、そして、カプシドおよび/またはコートタンパク質などの、ウイルス構成要素を有し、それらから、送達のために、核酸材料をパッケージすることができる。AAVベクターの他の例は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、Rh10、Rh74、またはAAV-2i8、またはそれらのバリアントに基づいたものを含むが、これらに限定されるものではない。ウイルスベクターはまた、操作されたベクター、組み換えベクター、変異体ベクター、またはハイブリッドベクターであってよい。かかるベクターを発生させる方法は、当業者に明らかである。いくつかの態様において、ウイルスベクターは、「キメラウイルスベクター」である。かかる態様において、このことは、ウイルスベクターが、1種より多くのウイルスまたはウイルスベクターに由来するウイルス成分からなることを意味する。例として、PCT公開WO01/091802およびWO14/168953、および米国特許第6,468,771号を参照。かかるウイルスベクターは、たとえば、AAV8/Anc80またはAAV2/Anc80ウイルスベクターでもよい。
【0081】
追加のウイルスベクター要素は、シスまたはトランスにおいて、機能してもよい。いくつかの態様において、ウイルスベクターは、標的(ドナー)配列のその5’または3’末端に隣接する1以上の逆方向末端反復(ITR)配列も含むベクターゲノム、転写を推進する発現制御要素(例として、プロモーターまたはエンハンサー)、イントロン配列、スタッファー/フィラーポリヌクレオチド配列(一般に、不活性配列)、および/または標的(ドナー)の3’末端に位置するポリ(A)配列を、含む。
【0082】
C.本発明の方法における使用のための組成物
重要なことに、本明細書に提供される方法および組成物は、ウイルスベクターのウイルス抗原に対する既存の免疫を伴う対象への、ウイルスベクターの投与のために、および/または、ウイルスベクターの投与による改善された効果を、提供する。よって、本明細書に提供される方法および組成物は、母性移入抗体を伴う新生児、および、既存の免疫のレベルに起因して、さもなければウイルスベクターを有する処置から除外される対象を含む、ウイルスベクターによる対象の処置のために、有用である。かかるウイルスベクターは、遺伝子治療のため等々を含む、様々な目的のための核酸を送達するために、使用されることができる。上記のとおり、ウイルスベクターに対する既存の免疫は、その有効性に逆の影響を与えることができ、その再投与を妨げることもできる。重要なことに、本明細書に提供される方法および組成物が、導入遺伝子の改善された発現を達成し、および/またはウイルスベクターに対する免疫応答を減少させることによって、前述の障壁に打ち勝つことが、わかってきた。本発明者らは、驚くべきことに、ウイルスベクターと混合された免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアが、ウイルスベクターが、対象にあらかじめ投与されなかった場合などの、対象において、例として、ウイルスベクターに対する既存の免疫を伴う対象において、改善された導入遺伝子発現を達成することができるということを、発見した。加えて、驚くべきことに、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアおよびウイルスベクターのかかる混合された投与が、ウイルスベクターの第1の投与上の改善された導入遺伝子発現を達成する一方で、混合が、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアおよびウイルスベクターの続く投与の有効性のために、必ずしも要求されるというわけではないことが、分かった。さらに、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアの高用量が、既存の免疫を伴う対象の処置も、可能にし得ることが、分かった。
【0083】
また上記の通り、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアおよびウイルスベクターの混合された投与が、導入遺伝子発現を減少させることなく、ウイルスベクターの減少された用量を達成するために、使用されることができるということが、発見された。
【0084】
導入遺伝子
ウイルスベクターのペイロードは、導入遺伝子でもよい。たとえば、導入遺伝子は、ポリペプチド、タンパク質、タンパク質混和物、DNA、相補DNA、機能性RNA分子(例として、RNAi、miRNA)、メッセンジャーRNA、RNAレプリコン、または他の関連する生成物などの所望の発現生成物を、コードしてもよい。
【0085】
たとえば、導入遺伝子の発現生成物は、疾患または障害を伴うものなどの対象に有益な、タンパク質またはそれらの部分でもよい。タンパク質は、細胞外、細胞内、または膜結合タンパク質であってよい。導入遺伝子は、たとえば、インターロイキンおよびインターフェロン、血液凝固剤、成長因子、神経伝達物質、腫瘍サプレッサー、アポリポタンパク質、抗原、および抗体などの、酵素、血液誘導体、ホルモン、リンフォカインを、コードしてもよい。対象は、疾患または障害を有するかまたはそれを疑われてもよく、それにより、タンパク質の患者の内在バージョンが、不完全であるか、または限定量において生成されるか、または全くない。提供される方法または組成物のいずれか1つの他の態様において、導入遺伝子の発現生成物は、対象に有益である、遺伝子またはそれらの部分でもよい。
【0086】
治療用タンパク質の例として、これらに限定されないが、注入可能なまたは注射可能な治療用タンパク質、酵素、酵素補因子、ホルモン、血液または血液凝固因子、サイトカインおよびインターフェロン、増殖因子、アディポカインなどが挙げられる。
【0087】
注入可能なまたは注射可能な治療用タンパク質の例として、例えば、トシリズマブ(Roche/Actemra(登録商標))、アルファ-1アンチトリプシン(Kamada/AAT)、Hematide(登録商標)(AffymaxおよびTakeda、合成ペプチド)、アルブインターフェロンアルファ-2b(Novartis/Zalbin(商標))、Rhucin(登録商標)(Pharming Group、C1阻害剤補充療法)、テサモレリン(Theratechnologies/Egrifta、合成成長ホルモン放出因子)、オクレリズマブ(Genentech、RocheおよびBiogen)、ベリムマブ(GlaxoSmithKline/Benlysta(登録商標))、ペグロチカーゼ(Savient Pharmaceuticals/Krystexxa(商標))、タリグルセラーゼアルファ(Protalix/Uplyso)、アガルシダーゼアルファ(Shire/Replagal(登録商標))、ならびにベラグルセラーゼアルファ(Shire)が挙げられる。
【0088】
酵素の例として、リゾチーム、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ、アスパラギナーゼ、ウリカーゼ、グリコシダーゼ、プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、コラゲナーゼ、ヒアルロニダーゼ、ヘパリナーゼ、ヘパラナーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、溶解素およびリガーゼが挙げられる。
【0089】
酵素の他の例は、酵素補充療法のために用いられるものを含み、これは、限定されないが、イミグルセラーゼ(例えば、CEREZYME(商標))、a-ガラクトシダーゼA(a-gal A)(例えば、アガルシダーゼベータ、FABRYZYME(商標))、酸a-グルコシダーゼ(GAA)(例えば、アルグルコシダーゼアルファ、LUMIZYME(商標)、MYOZYME(商標))、およびアリールスルファターゼB(例えば、ラロニダーゼ、ALDURAZYME(商標)、イデュルスルファーゼ、ELAPRASE(商標)、アリールスルファターゼB、NAGLAZYME(商標))を含む。ホルモン類の例は、メラトニン(Nアセチル-5-メトキシトリプタミン)、セロトニン、チロキシン(またはテトラヨードサイロニン)(甲状腺ホルモン)、トリヨードサイロニン(甲状腺ホルモン)、エピネフリン(またはアドレナリン)、ノルエピネフリン(またはノルアドレナリン)、ドーパミン(またはプロラクチン抑制ホルモン)、アンチミューラリアンホルモン(またはミュラー抑制因子またはホルモン)、アディポネクチン、副腎皮質刺激ホルモン(または副腎皮質刺激ホルモン)、アンギオテンシノーゲンおよびアンギオテンシン、抗利尿ホルモン(またはバゾプレシン、アルギニンバソプレシン)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(またはアトリオペプチン)、カルシトニン、コレシストキニン、副腎皮質刺激ホルモン放出因子、エリスロポイエチン、卵胞刺激ホルモン、ガストリン、グレリン、グルカゴン、グルカゴン様のペプチド(GLP-1)、GIP、生殖腺刺激ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、ヒト柔毛膜性ゴナドトロピン、ヒト胎盤性ラクトゲン、成長ホルモン、インヒビン、インシュリン、インスリン様増殖因子(またはソマトメジン)、レプチン、黄体形成ホルモン、MSH、オレキシン、オキシトシン、副甲状腺ルモン、プロラクチン、リラキシン、セクレチン、ソマトスタチン、トロンボポイエチン、甲状腺刺激ホルモン(またはチロトロピン)、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン、コルチゾール、アルドステロン、テストステロン、デヒドロエピアンドロステロン、アンドロステンジオン、ジヒドロテストステロン、エストラジオール、エストロン、エストリオール、プロゲステロン、カルシトリオール(1、25-ジヒドロキシビタミンD3)、Calcidiol(25-ヒドロキシビタミンD3)、プロスタグランジン、ロイコトリエン、プロスタサイクリン、トロンボキサン、プロラクチンを放出しているホルモン、リポトロピン、脳性ナトリウム利尿ペプチド、ニューロペプチドY、ヒスタミン、エンドセリン、膵臓ポリペプチド、レニン、およびエンケファリンを含む。
【0090】
血液または血液凝固因子の例として、第I因子(フィブリノーゲン)、第II因子(プロトロンビン)、組織因子、第V因子(プロアクセレリン、不安定因子)、第VII因子(安定因子、プロコンバーチン)、第VIII因子(抗血友病性グロブリン)、第IX因子(クリスマス因子または血漿トロンボプラスチン成分)、第X因子(スチュアート・プロワー因子)、第Xa因子、第XI因子、第XII因子(ハーゲマン因子)、第XIII因子(フィブリン安定化因子)、フォン・ヴィルブランド因子、フォン・ヘルデブラント因子、プレカリクレイン(フレッチャー因子)、高分子キニノーゲン(HMWK)(フィッツジェラルド因子)、フィブロネクチン、フィブリン、トロンビン、アンチトロンビンIIIなどのアンチトロンビン、ヘパリンコファクターII、プロテインC、プロテインS、プロテインZ、プロテインZ関連プロテアーゼ阻害剤(ZPI)、プラスミノーゲン、アルファ2-アンチプラスミン、組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)、ウロキナーゼ、プラスミノーゲンアクチベーター阻害剤-1(PAI1)、プラスミノーゲンアクチベーター阻害剤-2(PAI2)、癌凝血原(cancer procoagulant)、およびエポエチンアルファ(Epogen、Procrit)が挙げられる。
【0091】
サイトカインの例として、リンフォカイン、インターロイキン、ならびにケモカイン、IFN-γ、TGF-βなどの1型サイトカイン、ならびにIL-4、IL-10およびIL-13などの2型サイトカインが挙げられる。
【0092】
増殖因子の例として、アドレノメデュリン(AM)、アンギオポエチン(Ang)、自己分泌型細胞運動刺激因子、骨形成タンパク質(BMP)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、上皮増殖因子(EGF)、エリスロポエチン(EPO)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、グリア細胞由来神経栄養因子受容体(GDNF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、増殖分化因子-9(GDF9)、肝細胞増殖因子(HGF)、肝細胞腫由来増殖因子(HDGF)、インスリン様増殖因子(IGF)、遊走刺激因子、ミオスタチン(GDF-8)、神経増殖因子(NGF)および他のニューロトロフィン、血小板由来増殖因子(PDGF)、トロンボポエチン(TPO)、トランスフォーミング増殖因子アルファ(TGF-α)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)、腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)、血管内皮増殖因子(VEGF)、Wntシグナル伝達経路、胎盤増殖因子(PlGF)、[(ウシ胎仔ソマトトロフィン)](FBS)、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6およびIL-7が挙げられる。
アディポカインの例として、レプチンおよびアディポネクチンが挙げられる。
【0093】
治療用タンパク質のさらなる例として、これらに限定されないが、受容体、シグナル伝達タンパク質、細胞骨格タンパク質、足場タンパク質、転写因子、構造タンパク質、膜タンパク質、細胞質タンパク質、結合タンパク質、核タンパク質、分泌型タンパク質、ゴルジ体タンパク質、小胞体タンパク質、ミトコンドリアタンパク質、および小胞タンパク質などが挙げられる。
【0094】
導入遺伝子は、代謝性肝臓疾患、例として、非アルコール性脂肪肝(NAFLD)および非アルコール性脂肪肝炎(NASH);または遺伝代謝異常、例として、アラジル症候群、アルファ-1抗トリプシン欠乏症、クリグラー-ナジャー症候群、ガラクトース血症、Gaucher病、ギルバート症候群、ヘモクロマトーシス、リゾリーマル酸リパーゼ欠損症(LAL-D)、有機酸血症、ライ症候群、I型グリコーゲン蓄積症、尿素周期障害、およびウィルソン病を処置するために、酵素をコードするものでもよい。
【0095】
本明細書に提供される方法のいずれか1つの一態様において、対象は、前述のいずれか1つを有するものである。たとえば、対象は、メチルマロン酸血症(MMA)などの有機酸血症、またはオルニチンカルバミラーゼ欠損症などの尿素周期障害を、伴うものでもよい。
【0096】
よって、いくつかの態様の導入遺伝子は、メチルマロノイル-コエンザイムAムターゼ(MUT)またはオルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)を、コードする。
【0097】
提供される方法または組成物のいずれか1つの一態様において、発現生成物は、標的遺伝子、または標的遺伝子の部分を、破壊、修正/修復、または置き換えるために、用いられてもよい。たとえば、Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat/Cas(CRISPR/Cas)システムは、精密なゲノム編集のために、使用されることができる。該システムにおいて、単一CRISPR関連ヌクレアーゼ(Caヌクレアーゼ)は、特異的DNA標的を認識するように、ガイドRNA(短いRNA)によってプログラムされてもよく、それは、塩基配列の短い反復を含有するDNA遺伝子座を、含む。各CRISPR座は、スペーサーDNAの短いセグメントによって隣接され、それは、ウイルスのゲノム材料に、由来する。タイプII CRISPRシステム、最も一般的なシステム、において、スペーサーDNAは、トランス活性化型RNA(tracRNA)とハイブリダイズし、ここで、それは、CRISPR-RNA(crRNA)に処理されて、そしてその後、Casヌクレアーゼと会合し、RNAアーゼIII処理を開始する複合体を形成して、外来性DNAの分解に、結果としてなる。標的配列は、認識されるために、その3′末端上のプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列を好ましくは含有する。該システムは、多数の方法で修飾されることができ、たとえば、合成ガイドRNAは、CRISPRベクターに融合してもよく、そして、様々な種々のガイドRNA構造および要素が、可能である(ヘアピンおよび足場配列を含む)。
【0098】
提供される方法または組成物のいずれか1つのいくつかの態様において、導入遺伝子配列は、レポーター配列などの、CRISPR/Caシステムのいかなる1以上の構成要素も、コードしてもよく、それは、発現されるときに、検出可能なシグナルを生成する。
【0099】
かかるレポーター配列の例は、β-ラクタマーゼ、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、アルカリホスファターゼ、チミジンキナーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、膜結合タンパク質、たとえば、CD2、CD4、CD8、およびインフルエンザ血球凝集素タンパク質を含むが、これに限定されるものではない。他のレポーターは、当業者に公知である。
【0100】
提供される方法または組成物のいずれか1つの別の例において、導入遺伝子は、tRNA、dsRNA、リボソームRNA、触媒RNA、siRNA、RNAi、miRNA、小ヘアピンRNA(shRNA)、トランススプライシング、RNAおよびアンチセンスRNAなどの、RNA生成物を、コードしてもよい。たとえば、特異的RNA配列は、対象における標的核酸配列の発現を阻害するかまたは消すために、発生されることができる。
好適な標的配列は、たとえば、腫瘍標的およびウイルス疾患を含む。
【0101】
提供される方法または組成物のいずれか1つのいくつかの態様において、導入遺伝子配列は、レポーター配列をコード化してもよく、それは、発現されるときに検出可能なシグナルを生成し、または、導入遺伝子配列は、疾患の動物モデルを作成するために使用されることができるタンパク質または機能性RNAを、コードしてもよい。提供される方法または組成物のいずれか1つの別の例において、導入遺伝子は、研究目的、例として、導入遺伝子を収容する体性トランスジェニック動物モデルを作成するために、例として、導入遺伝子生成物の機能を研究するために、使用されることが意図されるタンパク質または機能性RNAを、コードする提供される方法または組成物のいずれか1つの他の態様において、かかる発現産物の意図は、処置のためにある。導入遺伝子の他の使用は、当業者に明白である。
【0102】
導入遺伝子の配列はまた、発現制御配列を含んでもよい。発現制御配列は、プロモーター、エンハンサーおよびオペレーターを含み、一般に、発現コンストラクトが利用されるべき発現系に基づいて選択される。提供される方法または組成物のいずれか1つのいくつかの態様において、プロモーターおよびエンハンサー配列は、遺伝子発現を増加させる能力のために選択され、その一方で、オペレーター配列は、遺伝子発現を規制する能力のために選択されてもよい。典型的には、プロモーター配列は、所望された発現生成物をコードする核酸配列の上流(すなわち、5’)に位置され、そして、隣接する配列に作動可能に連結され、それによって、プロモーターなしで発現される量と比較して、発現される所望された生成物の量を、増加させる。エンハンサー配列、一般にプロモーター配列の上流に位置される、は、所望された生成物の発現を、さらに増加させることができる。提供される方法または組成物のいずれか1つのいくつかの態様において、エンハンサー配列(単数または複数)は、プロモーターの下流に、および/または導入遺伝子の範囲内に、位置されてもよい。導入遺伝子はまた、宿主細胞および/またはパッケージング中での相同組み換えを容易にする、および好ましくは促進する、配列を含んでもよい。導入遺伝子はまた、宿主細胞中での複製のために必要である配列を含んでもよい。
【0103】
例示の発現制御配列は、本明細書に提供されてもよいいずれか1つなどの、肝臓特異的プロモーター配列および構成的プロモーター配列を含む。他の組織特異的プロモーターは、数ある中で、眼球、網膜、中枢神経系、脊髄を、含む、。遍在するか雑多なプロモーターおよびエンハンサーの例は、サイトメガロウィルス(CMV)最初期プロモーター/エンハンサー配列、ニワトリ肉腫ウイルス(RSV)プロモーター/エンハンサー配列、および様々な哺乳類の細胞タイプまたは合成要素において活性な他のウイルスのプロモーター/エンハンサー、または天然に存在しない合成要素(例として、Boshart et al, Cell, 41 :521-530 (1985)参照)、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)プロモーター、細胞質β-アクチンプロモーター、および燐酸グリセロールキナーゼ(PGK)プロモーターを含むが、これに限定されるものではない。
【0104】
オペレーターまたは調節可能な要素は、シグナルまたは刺激に応答し、それは、作動可能に連結された核酸の発現を、増減することができる。誘導可能な要素は、シグナルまたは刺激、例えば、ホルモン誘導性プロモーターに応答して、作動可能に連結された核酸の発現を増加させるものである。抑制可能な要素は、シグナルまたは刺激に応答して、作動可能に連結された核酸の発現を減少させるものである。典型的には、抑制可能および誘導可能な要素は、シグナルまたは刺激の量に比例して応答する。提供される方法または組成物のいずれか1つにおいて、導入遺伝子は、かかる配列を含んでもよい。
導入遺伝子は、コード配列の下流(すなわち、3’)に作動可能に連結された、好適なポリアデニル化配列を、含んでもよい。
【0105】
例えば、遺伝子治療のための、導入遺伝子を送達する方法は、当該技術分野において公知である(例として、Smith. Int. J. Med. Sci. 1(2): 76-91 (2004); Phillips. Methods in Enzymology: Gene Therapy Methods. Vol. 346. Academic Press (2002)参照)。本明細書に記載の導入遺伝子のいずれも、当該技術分野において公知である方法を使用して、本明細書に記載のウイルスベクターのいずれかの中に、組み込まれ、たとえば、米国特許第7,629,153号を参照。
【0106】
ウイルスベクター
ウイルスは、それらが感染する細胞内部で、それらのゲノムを運搬するために斬新で特殊な機構を有する;かかるウイルスに基づくウイルスベクターは、特殊な適用に細胞を変換するように手直しされることができる。本明細書において提供されるとおり用いることができるウイルスベクターの例は、当該分野において公知であるか、本明細書において記載される。好適なウイルスベクターとして、例えば、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、単純ヘルペスウイルス(HSV)に基づくベクター、アデノウイルスに基づくベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)に基づくベクター、およびAAV-アデノウイルスキメラベクターが挙げられる。
【0107】
本明細書において提供されるウイルスベクターは、レトロウイルスに基づくものであってもよい。レトロウイルスは、一本鎖陽方向鎖RNAウイルスである。レトロウイルスベクターは、ウイルス複製能力を失うように操作することができる。したがって、レトロウイルスベクターは、in vivoでの安定な遺伝子導入のために特に有用であると考えられる。レトロウイルスベクターの例は、例えば、米国公開番号20120009161、20090118212および20090017543において見出すことができ、そのウイルスベクターおよびそれらの作製の方法は、本明細書においてその全体において参考として援用される。
【0108】
レンチウイルスベクターは、本明細書において提供されるウイルスベクターの作製のために用いることができるレトロウイルスベクターの例である。レンチウイルスの例として、HIV(ヒト)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)およびビスナウイルス(ヒツジレンチウイルス)が挙げられる。レンチウイルスベクターの例は、例えば、米国公開番号20150224209、20150203870、20140335607、20140248306、20090148936および20080254008において見出すことができ、そのウイルスベクターおよびそれらの作製の方法は、本明細書においてその全体において参考として援用される。
【0109】
単純ヘルペスウイルス(HSV)に基づくウイルスベクターもまた、本明細書において提供される使用のために好適である。多くの複製欠損HSVベクターは、複製を防止するために、1以上の最初期(intermediate-early)遺伝子を取り除く欠失を含む。HSVに基づくベクターの記載については、例えば、米国特許第5,837,532号、同第5,846,782号、同第5,849,572号および同第5,804,413号、ならびに国際特許出願WO91/02788、WO96/04394、WO98/15637およびWO99/06583を参照;そのウイルスベクターおよびそれらの作製の方法の記載は、その全体において参考として援用される。
【0110】
ウイルスベクターは、アデノウイルスに基づいていてもよい。ウイルスベクターの基礎となるアデノウイルスは、任意の起源、任意のサブグループ、任意のサブタイプ、サブタイプの混合物、または任意の血清型からのものであってよい。例えば、アデノウイルスは、サブグループA(例えば、血清型12、18および31)、サブグループB(例えば、血清型3、7、11、14、16、21、34、35および50)、サブグループC(例えば、血清型1、2、5および6)、サブグループD(例えば、血清型8、9、10、13、15、17、19、20、22~30、32、33、36~39および42~48)、サブグループE(例えば、血清型4)、サブグループF(例えば、血清型40および41)、未分類の血清群(例えば、血清型49および51)、または任意の他のアデノウイルス血清型のものであってよい。アデノウイルス血清型1~51は、American Type Culture Collection(ATCC、Manassas, Va.)から入手可能である。非C群アデノウイルス、および非ヒトアデノウイルスですら、複製欠損アデノウイルスベクターを調製するために用いることができる。非C群アデノウイルスベクター、非C群アデノウイルスベクターを作製する方法、および非C群アデノウイルスベクターを用いる方法は、例えば、米国特許第5,801,030号、同第5,837,511号および同第5,849,561号、ならびに国際特許出願WO97/12986およびWO98/53087において開示される。任意のアデノウイルス、キメラアデノウイルスですら、アデノウイルスベクターのためのウイルスゲノムのソースとして用いることができる。例えば、ヒトアデノウイルスを、複製欠損アデノウイルスベクターのためのウイルスゲノムのソースとして用いることができる。アデノウイルスベクターのさらなる例は、米国公開番号20150093831、20140248305、20120283318、20100008889、20090175897および20090088398において見出すことができ、そのウイルスベクターおよびそれらの作製の方法の記載は、その全体において参考として援用される。
【0111】
本明細書において提供されるウイルスベクターはまた、アデノ随伴ウイルス(AAV)に基づいていてもよい。AAVベクターは、本明細書において記載されるもののような治療的適用における使用のために、特に関心を集めて来た。AAVベースのベクターの記載のために、たとえば、米国特許番号8,679,837、8,637,255、8,409,842、7,803,622、および7,790,449、および米国公開No.20150065562、20140155469、20140037585、20130096182、20120100606、および20070036757を参照。AAVベクターは、組み換えAAVベクターであってよい。AAVベクターはまた、自己相補的(sc)AAVベクターであってよく、これは、例えば、米国特許公開2007/01110724および2004/0029106、ならびに米国特許第7,465,583号および同第7,186,699号において記載され、そのウイルスベクターおよび方法またはその作製は、その全体において本明細書に参照により組み込まれる。
【0112】
ウイルスベクターの基礎となるアデノ随伴ウイルスは、任意の血清型または血清型の混合物のものであってよい。AAV血清型は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10およびAAV11を含む。例えば、ウイルスベクターが血清型の混合物に基づく場合、ウイルスベクターは、AAV血清型の1つ(例えばAAV血清型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10および11のいずれか1つから選択される)から取得されるカプシドシグナル配列、ならびに異なる血清型(例えばAAV血清型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10および11のいずれか1つから選択される)からのパッケージング配列を含んでもよい。したがって、本明細書において提供される方法または組成物のいずれか1つのいくつかの態様において、AAVベクターは、AAV2/8ベースのベクターである。本明細書において提供される方法または組成物のいずれか1つの他の態様において、AAVベクターは、AAV2/5ベースのベクターである。
提供される方法または組成物のいずれか1つのいくつかの態様において、ウイルスベクターの基礎となるウイルスは、Anc80などの合成でもよい。
【0113】
提供される方法または組成物のいずれか1つのいくつかの態様において、ウイルスベクターは、AAV8/Anc80ベクターまたはAAV2/Anc80ベクターなどの、AAV/Anc80ベクターである。
【0114】
ベクターの基礎となることができる他のウイルスは、AAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV9、AAV10、AAV11、rhl0、rh74、またはAAV-2i8、およびそれらのバリアントを、含む。
【0115】
本明細書において提供されるウイルスベクターはまた、アルファウイルスに基づいていてもよい。アルファウイルスとして、シンドビス(およびVEEV)ウイルス、アウラ(Aura)ウイルス、ババンキ(Babanki)ウイルス、バーマフォレストウイルス、ベバル(Bebaru)ウイルス、カバソウ(Cabassou)ウイルス、チクングニアウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、エバーグレード(Everglades)ウイルス、フォートモーガン(Fort Morgan)ウイルス、ゲタウイルス、ハイランドJ(Highlands J)ウイルス、キジラガチ(Kyzylagach)ウイルス、マヤロウイルス、メトリ(Me Tri)ウイルス、ミデルバーグ(Middelburg)ウイルス、モッソダスペドラス(Mosso das Pedras)ウイルス、ムカンボウイルス、ヌドゥムウイルス、オニョンニョンウイルス、ピクスナウイルス、リオネグロウイルス、ロスリバーウイルス、サケ膵臓病ウイルス、セムリキ森林ウイルス、南部ゾウアザラシ(Southern elephant seal)ウイルス、トナテ(Tonate)ウイルス、トロカラ(Trocara)ウイルス、ウナウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス、およびワタロアウイルスが挙げられる。アルファウイルスベクターの例は、米国公開No.20150050243、20090305344、および20060177819において見いだされることができ;そのベクターおよびその作成方法は、その全体においてに、本明細書に参照によって組み込まれる。
本明細書に提供されるウイルスベクターのいずれか1つは、本明細書に提供される方法のいずれか1つにおける使用のためであってもよい。
【0116】
免疫抑制剤
免疫抑制剤は、スタチンを含むが、これに限定されるものではない;ラパマイシンまたはラパマイシンアナログなどのmTOR阻害剤;TGF-βシグナル伝達剤;TGF-β受容体アゴニスト;ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤;副腎皮質ステロイド;ロテノンなどのミトコンドリアの機能の阻害剤;P38阻害剤;NF-κβ阻害剤;アデノシン受容体アゴニスト;プロスタグランジンE2アゴニスト;ホスホジエステラーゼ4阻害剤などのホスホジエステラーゼ阻害剤;プロテアソーム阻害剤;キナーゼ阻害剤;Gタンパク質共役受容体アゴニスト;Gタンパク質共役受容体アンタゴニスト;糖質コルチコイド;レチノイド;サイトカイン阻害剤;サイトカイン受容体阻害剤;サイトカイン受容体アクチベーター;ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アンタゴニスト;ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アゴニスト;ヒストンデアセチラーゼ阻害剤;カルシニューリン阻害剤;ホスファターゼ阻害剤ならびに酸化ATP。免疫抑制剤はまた、IDO、ビタミンD3、シクロスポリンA、アリール炭化水素受容体阻害剤、レスベラトロール、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、アスピリン、ニフルミン酸、エストリオール、トリポリド(tripolide)、インターロイキン(例えば、IL-1、IL-10)、シクロスポリンA、サイトカインまたはサイトカイン受容体などを標的とするsiRNAを含む。
【0117】
スタチンの例として、アトロバスチン(LIPITOR(登録商標)、TORVAST(登録商標))、セリバスタチン、フルバスタチン(LESCOL(登録商標)、LESCOL(登録商標)XL)、ロバスタチン(MEVACOR(登録商標)、ALTOCOR(登録商標)、ALTOPREV(登録商標))、メバスタチン(COMPACTIN(登録商標))、ピタバスタチン(LIVALO(登録商標)、PIAVA(登録商標))、ロスバスタチン(PRAVACHOL(登録商標)、SELEKTINE(登録商標)、LIPOSTAT(登録商標))、ロスバスタチン(CRESTOR(登録商標))、およびシンバスタチン(ZOCOR(登録商標)、LIPEX(登録商標))が挙げられる。
【0118】
mTOR阻害剤の例として、ラパマイシンおよびそのアナログ(例えば、CCL-779、RAD001、AP23573、C20-メタリルラパマイシン(C20-Marap)、C16-(S)-ブチルスルホンアミドラパマイシン(C16-BSrap)、C16-(S)-3-メチルインドールラパマイシン(C16-iRap)(Bayle et al. Chemistry & Biology 2006、13:99-107)、AZD8055、BEZ235(NVP-BEZ235)、クリソファン酸(クリソファノール)、デフォロリムス(MK-8669)、エベロリムス(RAD0001)、KU-0063794、PI-103、PP242、テムシロリムス、およびWYE-354(Selleck、Houston、TX、USAから入手可能)が挙げられる。
【0119】
TGF-βシグナル伝達剤の例として、TGF-βリガンド(例えば、アクチビンA、GDF1、GDF11、骨形態形成タンパク質、nodal、TGF-β)およびそれらの受容体(例えば、ACVR1B、ACVR1C、ACVR2A、ACVR2B、BMPR2、BMPR1A、BMPR1B、TGFβRI、TGFβRII)、R-SMADS/co-SMADS(例えば、SMAD1、SMAD2、SMAD3、SMAD4、SMAD5、SMAD8)、ならびにリガンド阻害剤(例えば、フォリスタチン、ノギン、コーディン、DAN、レフティー、LTBP1、THBS1、デコリン)が挙げられる。
【0120】
ミトコンドリアの機能の阻害剤の例として、アトラクチロシド(二カリウム塩)、ボンクレキン酸(三アンモニウム塩)、カルボニルシアニドm-クロロフェニルヒドラゾン、カルボキシアトラクチロシド(例えばAtractylis gummifera由来のもの)、CGP-37157、(-)-デグエリン(例えばMundulea sericea由来のもの)、F16、ヘキソキナーゼII VDAC結合ドメインペプチド、オリゴマイシン、ロテノン、Ru360、SFK1、およびバリノマイシン(例えばStreptomyces fulvissimus由来のもの)(EMD4Biosciences、USA)が挙げられる。
【0121】
P38阻害剤の例として、SB-203580(4-(4-フルオロフェニル)-2-(4-メチルスルフィニルフェニル)-5-(4-ピリジル)1H-イミダゾール)、SB-239063(トランス-1-(4ヒドロキシシクロヘキシル)-4-(フルオロフェニル)-5-(2-メトキシ-ピリミジン-4-イル)イミダゾール)、SB-220025(5-(2アミノ-4-ピリミジニル)-4-(4-フルオロフェニル)-1-(4-ピペリジニル)イミダゾール))、およびARRY-797が挙げられる。
【0122】
NF(例えば、NK-κβ)阻害剤の例として、IFRD1、2-(1,8-ナフチリジン-2-イル)-フェノール、5-アミノサリチル酸、BAY11-7082、BAY11-7085、CAPE(コーヒー酸フェニルエステル)、マレイン酸ジエチル、IKK-2阻害剤IV、IMD0354、ラクタシスチン、MG-132[Z-Leu-Leu-Leu-CHO]、NFκB活性化阻害剤III、NF-κB活性化阻害剤II、JSH-23、パルテノライド、フェニルアルシンオキシド(PAO)、PPM-18、ピロリジンジチオカルバミン酸アンモニウム塩、QNZ、RO106-9920、ロカグラミド、ロカグラミドAL、ロカグラミドC、ロカグラミドI、ロカグラミドJ、ロカグラオール、(R)-MG-132、サリチル酸ナトリウム、トリプトライド(PG490)、およびウェデロラクトンが挙げられる。
アデノシン受容体アゴニストの例として、CGS-21680およびATL-146eが挙げられる。
プロスタグランジンE2アゴニストの例として、E-プロスタノイド2およびE-プロスタノイド4が挙げられる。
【0123】
ホスホジエステラーゼ阻害剤(非選択的および選択的阻害剤)の例として、カフェイン、アミノフィリン、IBMX(3-イソブチル-1-メチルキサンチン)、パラキサンチン、ペントキシフィリン、テオブロミン、テオフィリン、メチル化キサンチン、ビンポセチン、EHNA(エリスロ-9-(2-ヒドロキシ-3-ノニル)アデニン)、アナグレリド、エノキシモン(PERFAN(商標))、ミルリノン、レボシメンダン、メセンブリン、イブジラスト、ピクラミラスト、ルテオリン、ドロタベリン、ロフルミラスト(DAXAS(商標)、DALIRESP(商標))、シルデナフィル(REVATION(登録商標)、VIAGRA(登録商標))、タダラフィル(ADCIRCA(登録商標)、CIALIS(登録商標))、バルデナフィル(LEVITRA(登録商標)、STAXYN(登録商標))、ウデナフィル、アバナフィル、イカリイン、4-メチルピペラジンおよびピラゾロピリミジン-7-1が挙げられる。
プロテアソーム阻害剤の例として、ボルテゾミブ、ジスルフィラム、エピガロカテキン-3-ガラートおよびサリノスポラミドAが挙げられる。
【0124】
キナーゼ阻害剤の例として、ベバシズマブ、BIBW2992、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標))、イマチニブ(GLEEVEC(登録商標))、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標))、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標))、ラニビズマブ(LUCENTIS(登録商標))、ペガプタニブ、ソラフェニブ、ダサチニブ、スニチニブ、エルロチニブ、ニロチニブ、ラパチニブ、パニツムマブ、バンデタニブ、E7080、パゾパニブおよびムブリチニブが挙げられる。
【0125】
糖質コルチコイドの例として、ヒドロコルチゾン(コルチゾール)、酢酸コルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、酢酸フルドロコルチゾン、酢酸デオキシコルチコステロン(DOCA)およびアルドステロンが挙げられる。
【0126】
レチノイドの例として、レチノール、レチナール、トレチノイン(レチノイン酸、RETIN-A(登録商標))、イソトレチノイン(ACCUTANE(登録商標)、AMNESTEEM(登録商標)、CLARAVIS(登録商標)、SOTRET(登録商標))、アリトレチノイン(PANRETIN(登録商標))、エトレチナート(TEGISON(商標))およびその代謝物であるアシトレチン(SORIATANE(登録商標))、タザロテン(TAZORAC(登録商標)、AVAGE(登録商標)、ZORAC(登録商標))、ベキサロテン(TARGRETIN(登録商標))およびアダパレン(DIFFERIN(登録商標))が挙げられる。
【0127】
サイトカイン阻害剤の例として、IL1ra、IL1受容体アンタゴニスト、IGFBP、TNF-BF、ウロモジュリン、アルファ-2-マクログロブリン、シクロスポリンA、ペンタミジンおよびペントキシフィリン(PENTOPAK(登録商標)、PENTOXIL(登録商標)、TRENTAL(登録商標))が挙げられる。
【0128】
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アンタゴニストの例として、GW9662、PPARγアンタゴニストIII、G335およびT0070907(EMD4Biosciences、USA)が挙げられる。
【0129】
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アゴニストの例として、ピオグリタゾン、シグリタゾン、クロフィブラート、GW1929、GW7647、L-165,041、LY171883、PPARγアクチベーター、Fmoc-Leu、トログリタゾンおよびWY-14643(EMD4 Biosciences、USA)が挙げられる。
【0130】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤の例として、トリコスタチンA、環状テトラペプチド(トラポキシンBなど)およびデプシペプチドなどのヒドロキサム酸(またはヒドロキサマート)、ベンズアミド、求電子性ケトン、酪酸フェニルおよびバルプロ酸などの脂肪族酸性化合物、ボリノスタット(SAHA)、ベリノスタット(PXD101)、LAQ824およびパノビノスタット(LBH589)などのヒドロキサム酸、エンチノスタット(MS-275)、CI994およびモセチノスタット(MGCD0103)などのベンズアミド、ニコチンアミド、NADの誘導体、ジヒドロクマリン、ナフトピラノン、ならびに2-ヒドロキシナフアルデヒドが挙げられる。
カルシニューリン阻害剤の例として、シクロスポリン、ピメクロリムス、ボクロスポリンおよびタクロリムスが挙げられる。
【0131】
ホスファターゼ阻害剤の例として、BN82002塩酸塩、CP-91149、カリクリンA、カンタリジン酸、カンタリジン、シペルメトリン、エチル-3,4-デホスタチン、フォストリエシンナトリウム塩、MAZ51、メチル-3,4-デホスタチン、NSC 95397、ノルカンタリジン(norcantharidin)、Prorocentrum concavum由来のオカダ酸アンモニウム塩、オカダ酸、オカダ酸カリウム塩、オカダ酸ナトリウム塩、フェニルアルシンオキシド、多様なホスファターゼ阻害剤カクテル、タンパク質ホスファターゼ1C、タンパク質ホスファターゼ2A阻害剤タンパク質、タンパク質ホスファターゼ2A1、タンパク質ホスファターゼ2A2、およびオルトバナジン酸ナトリウムが挙げられる。
【0132】
合成ナノキャリア
本明細書に提供される方法は、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアの投与を、含む。一般に、免疫抑制剤は、合成ナノキャリアの構造を構成する材料に加える要素である。たとえば、提供される方法または組成物のいずれか1つの一態様において、合成ナノキャリアが、1以上のポリマーのから構成される所で、免疫抑制剤は、1以上のポリマーに付属した、追加の、提供される方法または組成物のいずれか1つのいくつかの態様における化合物である。合成ナノキャリアの材料も免疫寛容原性効果に結果としてなる実施態様において、免疫抑制剤は、免疫寛容原性効果に結果としてなる合成ナノキャリアの材料に加えて存在する要素である。
【0133】
多種多様な合成ナノキャリアは、本発明に従って使用されることができる。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、球体または球状体である。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、扁平または平板状である。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、立方体または立方である。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、卵円または楕円である。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、円柱、円錐または錐体である。
【0134】
いくつかの態様において、各々の合成ナノキャリアが類似の特性を有するように、サイズまたは形状に関して比較的均一である合成ナノキャリアの集団の使用が望ましい。例えば、提供される組成物または方法のいずれか1つの合成ナノキャリアの、合成ナノキャリアの合計数に基づいて、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%は、合成ナノキャリアの平均直径または平均寸法の5%、10%、または20%以内に該当する最小寸法または最大寸法を有していてもよい。
【0135】
合成ナノキャリアは、中実であっても中空であってもよく、1以上の層を含んでもよい。いくつかの態様において、各層は、他の層(単数または複数)と比較してユニークな組成およびユニークな特性を有する。一例のみを挙げると、合成ナノキャリアは、コア/シェル構造を有していてもよく、ここで、コアは1つの層であり(例えばポリマーのコア)、シェルは第2の層である(例えば脂質二重層または単層)。合成ナノキャリアは、複数の異なる層を含んでもよい。
【0136】
いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、1以上の脂質を任意に含んでもよい。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、リポソームを含んでもよい。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、脂質二重層を含んでもよい。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、脂質単層を含んでもよい。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、ミセルを含んでもよい。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、脂質層(例えば、脂質二重層、脂質単層など)に囲まれたポリマーマトリックスを含むコアを含んでもよい。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、脂質層(例えば、脂質二重層、脂質単層など)に囲まれた非ポリマー性のコア(例えば、金属粒子、量子ドット、セラミック粒子、骨粒子、ウイルス粒子、タンパク質、核酸、炭水化物など)を含んでもよい。
【0137】
他の態様において、合成ナノキャリアは、金属粒子、量子ドット、セラミック粒子などを含んでもよい。いくつかの態様において、非ポリマー性合成ナノキャリアは、金属原子(例えばとして金原子)の凝集物などの、非ポリマー性成分の凝集物である。
【0138】
いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、1以上の両親媒体を任意に含んでもよい。いくつかの態様において、両親媒体は、増大した安定性、改善した均一性または増大した粘性により、合成ナノキャリアの製造を促進することができる。いくつかの態様において、両親媒体は、脂質膜(例えば、脂質二重層、脂質単層など)の内部表面に関連していてもよい。当該分野において公知の多くの両親媒体が、本発明による合成ナノキャリアを作製するために好適である。かかる両親媒性の実体は、ホスホグリセリドを含むが、これに限定されない;ホスファチジルコリン;ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC);ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE);ジオレイルオキシプロピルトリエチルアンモニウム(DOTMA);ジオレオイルホスファチジルコリン;コレステロール;コレステロールエステル;ジアシルグリセロール;コハク酸ジアシルグリセロール;ジホスファチジルグリセロール(DPPG);ヘキサンデカノール;ポリエチレングリコール(PEG)などの脂肪アルコール;ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル;パルミチン酸またはオレイン酸などの界面活性脂肪酸;脂肪酸;脂肪酸モノグリセリド;脂肪酸ジグリセリド;脂肪酸アミド;ソルビタントリオレアート(Span(登録商標)85)グリココーレート;ソルビタンモノラウレート(Span(登録商標)20);ポリソルベート20(Tween(登録商標)20);ポリソルベート60(Tween(登録商標)60);ポリソルベート65(Tween(登録商標)65);ポリソルベート80(Tween(登録商標)80);ポリソルベート85(Tween(登録商標)85);ポリオキシエチレンモノステアレート;サーファクチン;
【0139】
ポロキサマー;ソルビタントリオレアートなどのソルビタン脂肪酸エステル;レシチン;リゾレシチン;ホスファチジルセリン;ホスファチジルイノシトール;スフィンゴミエリン;ホスファチジルエタノールアミン(セファリン);カルジオリピン;ホスファチジン酸;セレブロシド;リン酸ジセチル;ジパルミトイルホスファチジルグリセロール;ステアリルアミン;ドデシルアミン;ヘキサデシルアミン;パルミチン酸アセチル;グリセロールリシノレート;ヘキサデシルステアレート;ミリスチン酸イソプロピル;チロキサポール;ポリ(エチレングリコール)5000-ホスファチジルエタノールアミン;ポリ(エチレングリコール)400-モノステアレート;リン脂質;高い界面活性剤特性を有する合成および/または天然の洗剤;デオキシコラート;シクロデキストリン;カオトロピックな塩;イオン対化剤(ion pairing agent);およびこれらの組み合わせ。両親媒体成分は、異なる両親媒体の混合物であってもよい。当業者は、これは例示的な界面活性剤効果を有する物質のリストであって、包括的なものではないことを理解するであろう。本発明により用いられるべき合成ナノキャリアの製造において、任意の両親媒体を用いることができる。
【0140】
いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、1以上の炭水化物を任意に含んでもよい。炭水化物は、天然であっても合成であってもよい。炭水化物は、誘導体化された天然の炭水化物であってもよい。ある態様において、炭水化物は、単糖または二糖を含み、これは、限定されないが、グルコース、フルクトース、ガラクトース、リボース、ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース、セロビオース、マンノース、キシロース、アラビノース、グルクロン酸、ガラクツロン酸、マンヌロン酸、グルコサミン、ガラクトサミンおよびノイラミン酸を含む。ある態様において、炭水化物は多糖であり、これは、限定されないが、プルラン、セルロース、微晶質セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシセルロース(HC)、メチルセルロース(MC)、デキストラン、シクロデキストラン、グリコーゲン、ヒドロキシエチルデンプン、カラギーナン、グリコン(glycon)、アミロース、キトサン、N,O-カルボキシルメチルキトサン、アルギン酸およびアルギニン酸、デンプン、キチン、イヌリン、コンニャク、グルコマンナン、プスツラン(pustulan)、ヘパリン、ヒアルロン酸、カードランおよびキサンタンを含む。
【0141】
態様において、合成ナノキャリアは、多糖などの炭水化物を含まない(または特に除外する)。ある態様において、炭水化物は、糖アルコールなどの炭水化物誘導体を含んでもよく、これは、限定されないが、マンニトール、ソルビトールキシリトール、エリスリトール、マルチトールおよびラクチトールを含む。
【0142】
いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、1以上のポリマーを含んでもよい。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、非メトキシ末端のプルロニックポリマーである1以上のポリマーを含む。いくつかの態様において、合成ナノキャリアを構成するポリマーの、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%または99%(重量/重量)は、非メトキシ末端のプルロニックポリマーである。いくつかの態様において、合成ナノキャリアを構成するポリマーの全てが、非メトキシ末端のプルロニックポリマーである。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、非メトキシ末端のポリマーである1以上のポリマーを含む。いくつかの態様において、合成ナノキャリアを構成するポリマーの、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%または99%(重量/重量)は、非メトキシ末端のポリマーである。いくつかの態様において、合成ナノキャリアを構成するポリマーの全ては、非メトキシ末端のポリマーである。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、プルロニックポリマーを含まない1以上のポリマーを含む。いくつかの態様において、合成ナノキャリアを構成するポリマーの、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%または99%(重量/重量)は、は、プルロニックポリマーを含まない。いくつかの態様において、合成ナノキャリアを構成するポリマーの全ては、プルロニックポリマーを含まない。いくつかの態様において、かかるポリマーは、コーティング層(例えば、リポソーム、脂質単層、ミセルなど)により囲まれていてもよい。いくつかの態様において、合成ナノキャリアの要素は、ポリマーに接着していてもよい。
【0143】
免疫抑制剤は、多数の方法のうちのいずれかにより合成ナノキャリアにカップリングすることができる。一般に、接着は、免疫抑制剤と合成ナノキャリアとの間の接着の結果である。この結合により、免疫抑制剤の合成ナノキャリアの表面への接着、および/または合成ナノキャリア中での包含(封入)をもたらすことができる。いくつかの態様において、しかし、免疫抑制剤は、合成ナノキャリアへの結合よりもむしろ合成ナノキャリアの構造の結果として、合成ナノキャリアにより封入される。好ましい態様において、合成ナノキャリアは、本明細書において提供されるポリマーを含み、免疫抑制剤はポリマーに接着している。
【0144】
接着が、免疫抑制剤と合成ナノキャリアとの間の結合の結果として生じる場合、接着は、カップリング部分を介して生じてもよい。カップリング部分は、それを通して免疫抑制剤が合成ナノキャリアに結合する任意の部分であってよい。かかる部分は、アミド結合またはエステル結合などの共有結合、ならびに免疫抑制剤を合成ナノキャリアに(共有的または非共有的に)結合する別の分子を含む。かかる分子は、リンカーまたはポリマーまたはその単位を含む。例えば、カップリング部分は、免疫抑制剤が静電気的に結合する荷電したポリマーを含んでもよい。別の例として、カップリング部分は、それが共有結合しているポリマーまたはその単位を含んでもよい。
【0145】
好ましい態様において、合成ナノキャリアは、本明細書において提供されるポリマーを含む。これらの合成ナノキャリアは、完全にポリマー性のものであっても、ポリマーと他の材料との混合物であってもよい。
【0146】
いくつかの態様において、合成ナノキャリアのポリマーは、会合してポリマーマトリックスを形成する。これらの態様のいくつかにおいて、免疫抑制剤などの成分は、ポリマーマトリックスの1以上のポリマーと共有的に会合することができる。いくつかの態様において、共有的会合は、リンカーにより媒介される。いくつかの態様において、成分は、ポリマーマトリックスの1以上のポリマーに、非共有的に会合していてもよい。例えば、いくつかの態様において、成分は、ポリマーマトリックス中に封入されていても、ポリマーマトリックスにより囲まれていても、および/またはポリマーマトリックス全体に分散していてもよい。あるいはまたは加えて、成分は、疎水性相互作用、電荷相互作用、ファン・デル・ワールス力などにより、ポリマーマトリックスの1以上のポリマーに会合することができる。それらからポリマーマトリックスを形成するための広範なポリマーおよび方法が、慣習的に知られている。
【0147】
ポリマーは、天然または非天然の(合成の)ポリマーであってよい。ポリマーは、ホモポリマーであっても、2以上のモノマーを含むコポリマーであってよい。配列に関して、コポリマーは、ランダムであっても、ブロックであっても、またはランダムおよびブロック配列の組み合わせを含んでもよい。典型的には、本発明によるポリマーは、有機ポリマーである。
【0148】
いくつかの態様において、ポリマーは、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミドまたはポリエーテル、またはこれらの単位を含む。他の態様において、ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)コポリマー、またはポリカプロラクトン、またはこれらの単位を含む。いくつかの態様において、ポリマーは、生分解性であることが好ましい。したがって、これらの態様において、ポリマーが、ポリ(エチレングリコール)またはポリプロピレングリコールまたはこれらの単位などのポリエーテルを含む場合、ポリマーが生分解性となるように、ポリマーが、ポリエーテルのブロックコポリマーおよび生分解性ポリマーを含むことが好ましい。他の態様において、ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)またはポリプロピレングリコールまたはその単位などのポリエーテルまたはその単位を単独では含まない。
【0149】
本発明における使用のために好適なポリマーの他の例として、限定されないが、ポリエチレン、ポリカーボネート(例えばポリ(1,3-ジオキサン-2オン))、ポリ酸無水物(例えばポリ(セバシン酸無水物))、フマル酸ポリプロピル、ポリアミド(例えばポリカプロラクタム)、ポリアセタール、ポリエーテル、ポリエステル(例えば、ポリ乳酸、ポリグリコリド、ポリラクチド-グリコリドコポリマー、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ酸(polyhydroxyacid)(例えばポリ(β-ヒドロキシアルカノアート)))、ポリ(オルトエステル)、ポリシアノアクリラート、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリホスファゼン、ポリアクリラート、ポリメタクリラート、ポリウレア、ポリスチレンおよびポリアミン、ポリリジン、ポリリジン-PEGコポリマー、およびポリ(エチレンイミン)、ポリ(エチレンイミン)-PEGコポリマーが挙げられる。
【0150】
いくつかの態様において、本発明に従うポリマーは、米国食品医薬品局(FDA)により21C.F.R.§177.2600下においてヒトにおける使用について承認されているポリマーを含み、これは、限定されないが、ポリエステル(例えば、ポリ乳酸、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)コポリマー、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(1,3-ジオキサン-2オン));ポリ酸無水物(例えばポリ(セバシン酸無水物));ポリエーテル(例えば、ポリエチレングリコール);ポリウレタン;ポリメタクリラート;ポリアクリラート;およびポリシアノアクリラートを含む。
【0151】
いくつかの態様において、ポリマーは、親水性であってよい。例えば、ポリマーは、アニオン基(例えば、リン酸基、硫酸基、カルボン酸基);カチオン基(例えば、四級アミン基);または極性基(例えば、ヒドロキシル基、チオール基、アミン基)を含んでもよい。いくつかの態様において、親水性ポリマーマトリックスを含む合成ナノキャリアは、合成ナノキャリア中に親水性環境を生じる。いくつかの態様において、ポリマーは、疎水性であってもよい。いくつかの態様において、疎水性ポリマーマトリックスを含む合成ナノキャリアは、合成ナノキャリア中に疎水性環境を生じる。ポリマーの親水性または疎水性の選択は、合成ナノキャリア中に組み込まれる材料の性質に対して影響を有し得る。
【0152】
いくつかの態様において、ポリマーは、1以上の部分および/または官能基により修飾されていてもよい。いくつかの態様において、ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)により、炭水化物により、および/または多糖から誘導される非環式ポリアセタールにより修飾することができる(Papisov, 2001, ACS Symposium Series, 786:301)。ある態様は、Grefらに対する米国特許第5543158号またはVon AndrianらによるWO公開WO2009/051837の一般的教示を用いて行ってもよい。
【0153】
いくつかの態様において、脂肪酸群は、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、またはリグノセリン酸の1以上であってもよい。いくつかの態様において、脂肪酸基は、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、アルファ-リノール酸、ガンマ-リノール酸、アラキドン酸、ガドレイン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸またはエルカ酸の1以上であってよい。
【0154】
いくつかの態様において、ポリマーは、ポリエステルであってよく、これは、乳酸およびグリコール酸の単位を含むコポリマー、例えばポリ(乳酸-コ-グリコール酸)およびポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(本明細書において集合的に「PLGA」として言及される);ならびにグリコール酸単位を含むホモポリマー(本明細書において「PGA」として言及される)、ならびにポリ-L-乳酸、ポリ-D-乳酸、ポリ-D,L-乳酸、ポリ-L-ラクチド、ポリ-D-ラクチド、およびポリ-D,L-ラクチド乳酸単位を含むホモポリマー(本明細書において集合的に「PLA」として言及される)を含む。いくつかの態様において、例示的なポリエステルとして、例えば、ポリヒドロキシ酸;PEGコポリマーおよびラクチドとグリコリドとのコポリマー(例えば、PLA-PEGコポリマー、PGA-PEGコポリマー、PLGA-PEGコポリマー)およびそれらの誘導体が挙げられる。いくつかの態様において、ポリエステルとして、例えば、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(カプロラクトン)-PEGコポリマー、ポリ(L-ラクチド-L-リジン)コポリマー、ポリ(セリンエステル)、ポリ(4-ヒドロキシ-L-プロリンエステル)、ポリ[α-(4-アミノブチル)-L-グリコール酸]およびそれらの誘導体が挙げられる。
【0155】
いくつかの態様において、ポリマーは、PLGAであってよい。PLGAは、乳酸とグリコール酸との生体適合性かつ生分解性のコポリマーであり、PLGAの多様な形態は、乳酸:グリコール酸の比により特徴づけられる。乳酸は、L-乳酸、D-乳酸またはD,L-乳酸であってよい。PLGAの分解速度は、乳酸:グリコール酸比を変更することにより調節することができる。いくつかの態様において、本発明により用いられるべきPLGAは、約85:15、約75:25、約60:40、約50:50、約40:60、約25:75または約15:85の乳酸:グリコール酸の比により特徴づけられる。
【0156】
いくつかの態様において、ポリマーは、1以上のアクリル酸ポリマーであってよい。態様において、アクリル酸ポリマーとして、例えば、アクリル酸とメタクリル酸とのコポリマー、メチルメタクリラートコポリマー、エトキシエチルメタクリラート、シアノエチルメタクリラート、アミノアルキルメタクリラートコポリマー、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミドコポリマー、ポリ(メチルメタクリラート)、ポリ(メタクリル酸無水物)、メチルメタクリラート、ポリメタクリラート、ポリ(メチルメタクリラート)コポリマー、ポリアクリルアミド、アミノアルキルメタクリラートコポリマー、グリシジルメタクリラートコポリマー、ポリシアノアクリラート、および前述のポリマーの1以上を含む組み合わせが挙げられる。アクリル酸ポリマーは、低い含有量の四級アンモニウム基と共に、アクリル酸とメタクリル酸エステルとの完全に重合したコポリマーを含んでもよい。
【0157】
いくつかの態様において、ポリマーは、カチオン性ポリマーであってよい。一般的に、カチオン性ポリマーは、核酸の負に荷電した鎖を縮合および/または保護することができる。
【0158】
ポリ(リジン)などのアミン含有ポリマー(Zauner et al., 1998, Adv. Drug Del. Rev., 30:97;およびKabanov et al., 1995, Bioconjugate Chem., 6:7)、ポリ(エチレンイミン)(PEI; Boussif et al., 1995, Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 1995, 92:7297)、およびポリ(アミドアミン)デンドリマー(Kukowska-Latallo et al., 1996, Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 93:4897;Tang et al., 1996, Bioconjugate Chem., 7:703;およびHaensler et al., 1993, Bioconjugate Chem., 4:372)は、生理学的pHにおいて正に荷電しており、核酸とイオン対を形成する。態様において、合成ナノキャリアは、カチオン性ポリマーを含まなくともよい(またはこれを除外してもよい)。
【0159】
いくつかの態様において、ポリマーは、カチオン性側鎖を有する分解性ポリエステルであってもよい(Putnam et al., 1999, Macromolecules, 32:3658;Barrera et al., 1993, J. Am. Chem. Soc., 115:11010;Kwon et al., 1989, Macromolecules, 22:3250;Lim et al., 1999, J. Am. Chem. Soc., 121:5633;およびZhou et al., 1990, Macromolecules, 23:3399)。これらのポリエステルの例として、ポリ(L-ラクチド-L-リジン)コポリマー(Barrera et al., 1993, J. Am. Chem. Soc., 115:11010)、ポリ(セリンエステル)(Zhou et al., 1990, Macromolecules, 23:3399)、ポリ(4-ヒドロキシ-L-プロリンエステル)(Putnam et al., 1999, Macromolecules, 32:3658;およびLim et al., 1999, J. Am. Chem. Soc., 121:5633)、ならびにポリ(4-ヒドロキシ-L-プロリンエステル)(Putnam et al., 1999, Macromolecules, 32:3658; and Lim et al., 1999, J. Am. Chem. Soc., 121:5633)が挙げられる。
【0160】
これらおよび他のポリマーの特性およびそれらを調製する方法は、当該技術分野において周知である(たとえば、米国特許第6,123,727号;5,804,178号;5,770,417号;5,736,372号;5,716,404号;6,095,148号;5,837,752号;5,902,599号;5,696,175号;5,514,378号;5,512,600号;5,399,665号;5,019,379号;5,010,167号;4,806,621号;4,638,045号;および4,946,929号;Wang et al., 2001, J. Am. Chem. Soc., 123:9480; Lim et al., 2001, J. Am. Chem. Soc., 123:2460; Langer, 2000, Acc. Chem. Res., 33:94; Langer, 1999, J. Control. Release, 62:7; および Uhrich et al., 1999, Chem. Rev., 99:3181参照)。より一般的には、特定の好適なポリマーを合成するための多様な方法は、Concise Encyclopedia of Polymer Science and Polymeric Amines and Ammonium Salts、Goethals編、Pergamon Press, 1980; OdianによるPrinciples of Polymerization、John Wiley & Sons、第4版、2004;AllcockらによるContemporary Polymer Chemistry、Prentice-Hall、1981;Deming et al., 1997, Nature, 390:386において;および米国特許第6,506,577号、同第6,632,922号、同第6,686,446号および同第6,818,732号において記載される。
【0161】
いくつかの態様において、ポリマーは、直鎖状または分枝状ポリマーであってよい。いくつかの態様において、ポリマーは、デンドリマーであってよい。いくつかの態様において、ポリマーは、互いに実質的に架橋されていてもよい。いくつかの態様において、ポリマーは、実質的に架橋を含まなくてもよい。いくつかの態様において、ポリマーは、架橋するステップを経ることなく用いることができる。さらに、合成ナノキャリアは、前述のおよび他のポリマーのいずれかのブロックコポリマー、グラフトコポリマー、ブレンド、混合物および/または付加物を含んでもよいことが、理解されるべきである。当業者は、本明細書において列記されるポリマーは、本発明による使用のものである例示的なポリマーのリストを代表するが、包括的なものではないことを認識するであろう。
【0162】
いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、ポリマー成分を含まない。いくつかの態様において、合成ナノキャリアは、金属粒子、量子ドット、セラミック粒子などを含んでもよい。いくつかの態様において、非ポリマー性合成ナノキャリアは、金属原子(例えばとして金原子)の凝集物などの、非ポリマー性成分の凝集物である。
【0163】
本発明による組成物は、保存剤、バッファー、食塩水またはリン酸緩衝化食塩水などの薬学的に許容し得る賦形剤を含んでもよい。組成物は、有用な投与形態を達成するために、慣用的な医薬の製造および配合技術を用いて製造することができる。一態様において、組成物は、注射のために、無菌の食塩水溶液中で保存剤と一緒に懸濁される。
【0164】
D.組成物を使用および作製する方法
ウイルスベクターは、当業者に公知の、またはさもなければ、本明細書において記載される方法により作製することができる。例えば、ウイルスベクターは、例えば、米国特許第4,797,368号およびLaughlin et al., Gene, 23, 65-73(1983)において記載される方法を用いて構築および/または精製することができる。
【0165】
例として、複製欠損アデノウイルスベクターは、複製欠損アデノウイルスベクターにおいては存在しないが、ウイルスの伝播のために必要とされる遺伝子の機能を提供する補完細胞株において、高力価のウイルスベクターストックをもたらすために適切なレベルにおいて、作製することができる。補完細胞株は、全てのアデノウイルス機能を含む、early領域、late領域、ウイルスパッケージング領域、ウイルス関連RNA領域、またはそれらの組み合わせによりコードされる、少なくとも1つの複製必須遺伝子の機能の欠損を補完することができる(例えば、アデノウイルスアンプリコンの伝播を可能にするために)。補完細胞株の構築は、Sambrook et al., Molecular Cloning, a Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1989年)、およびAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing Associates and John Wiley & Sons、New York、N.Y.(1994年)により記載されるような標準的な分子生物学および細胞培養技術を伴う。
【0166】
アデノウイルスベクターを作製するための補完細胞株は、これらに限定されないが、HEK293細胞(例としてGraham et al., J. Gen. Virol., 36, 59-72 (1977)において記載される)、PER.C6細胞(例として国際特許出願WO97/00326、ならびに米国特許第5,994,128号および同第6,033,908号において記載される)、ならびに293-ORF6細胞(例として国際特許出願WO95/34671およびBrough et al., J. Virol., 71, 9206-9213 (1997)において記載される)を含む。いくつかの例において、補完細胞は、全ての必要とされるアデノウイルス遺伝子機能を補完しない。ヘルパーウイルスは、アデノウイルスベクターの複製を可能にするために、細胞またはアデノウイルスのゲノムによりコードされていない遺伝子機能を、トランスに提供するために使用することができる。アデノウイルスベクターは、例えば、米国特許第5,965,358号、同第5,994,128号、同第6,033,908号、同第6,168,941号、同第6,329,200号、同第6,383,795号、同第6,440,728号、同第6,447,995号および同第6,475,757号、米国特許出願公開番号2002/0034735A1、ならびに国際特許出願WO98/53087、WO98/56937、WO99/15686、WO99/54441、WO00/12765、WO01/77304およびWO02/29388、ならびに本明細書において同定される他の参考文献において記載される材料および方法を用いて、構築するか、伝播させるか、および/または精製することができる。アデノウイルス血清型35ベクターを含む非C群アデノウイルスベクターは、例えば、米国特許第5,837,511号および同第5,849,561号、ならびに国際特許出願WO97/12986およびWO98/53087において記載される方法を用いて作製することができる。AAVベクターなどのウイルスベクターは、組み換え方法を使用して、生成されてもよい。たとえば、方法は、AAVカプシドタンパク質またはそのフラグメントをコードする核酸配列;機能的rep遺伝子;AAV末端逆位反復配列(ITR)および導入遺伝子からなる組み換えAAVベクター;ならびに組み換えAAVベクターのAAVカプシドタンパク質中へのパッケージングを可能にするために十分なヘルパー機能を含む宿主細胞を培養することを含む。いくつかの態様において、ウイルスベクターは、以下からなる群から選択されるAAV血清型の反転末端反復(ITR)を含んでもよい:AAV1、AAV2、AAV5、AAV6、AAV6.2、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、およびそれらのバリアント。
【0167】
ウイルスベクターをカプシド中にパッケージングするために宿主細胞において培養されるべき成分を、宿主細胞にトランスに提供してもよい。あるいは、必要とされる成分のいずれか1つまたは2つ以上(例えば、組み換えAAVベクター、rep配列、cap配列および/またはヘルパー機能)を、当業者に公知の方法を用いて、必要とされる成分のいずれか1つまたは2つ以上を含むように操作された安定な宿主細胞により、提供してもよい。最も好適には、かかる安定な宿主細胞は、誘導性プロモーターの制御下において、必要とされる成分を含むことができる。しかし、必要とされる成分は、構成的プロモーターの制御下にあってもよい。本ウイルスのベクターを作製するために必要とされる組み換えウイルスベクター、rep配列、cap配列、およびヘルパー機能は、任意の適切な遺伝子エレメントを用いてパッケージング宿主細胞に送達することができる。選択される遺伝子エレメントは、本明細書において記載されるものを含む任意の好適な方法により送達することができる。他の方法は、核酸操作における当業者に公知であり、遺伝子工学、組み換え工学、および合成技法を含む。例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor、N.Y.を参照。同様に、rAAVウイルス粒子を作製する方法は、周知であり、好適な方法の選択は、本発明に対する限定ではない。例えば、K. Fisher et al, J. Virol., 70:520-532(1993)および米国特許第5,478,745号を参照。
【0168】
いくつかの態様において、組み換えAAV導入ベクターは、三重トランスフェクション方法を使用して生成されてもよい(例として、米国特許第6,001,650号、米国特許第6,593,123号、ならびにs X. Xiao et al, J. Virol. 72:2224-2232 (1998)、およびT. Matsushita et al, Gene Ther. 5(7): 938-945 (1998)において詳細に記載され、三重トランスフェクション方法に関するその内容が、参照により本明細書に組み込まれる)。たとえば、組み換えAAVは、宿主細胞を、AAV粒子中にパッケージングされるべき組み換えAAVベクター(導入遺伝子を含む)、AAVヘルパー機能ベクター、および補助機能ベクターでトランスフェクションすることにより作製されることができる。一般に、AAVヘルパー機能ベクターは、増殖性AAVの複製およびカプシド形成のためにトランスで機能する、AAVヘルパー機能配列(repおよびcap)をコードする。好ましくは、AAVヘルパー機能ベクターは、任意の検出可能な野生型AAVウイルス粒子(すなわち、機能的なrepおよびcap遺伝子を含むAAVウイルス粒子)を作製することなく、効率的なAAVベクター作製を支持する。補助機能ベクターは、AAVが複製のために依存する、非AAV由来のウイルスおよび/または細胞の機能のためのヌクレオチド配列をコードしていてもよい。補助機能は、AAV複製のために必要とされる機能を含み、これは、限定することなく、AAV遺伝子転写、ステージ特異的なAAVのmRNAのスプライシング、AAVのDNAの複製、cap発現産物の合成、およびAAVカプシドアセンブリーの活性化に関与する部分を含む。ウイルスに基づく補助機能は、アデノウイルス、ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルス1型以外のもの)、およびワクシニアウイルスなどの既知のヘルパーウイルスのいずれかに由来してよい。
ウイルスベクターを生成するための他の方法は、当該技術分野において公知である。さらに、ウイルスベクターは市販されている。
免疫抑制剤に連結される合成ナノキャリアに関して、構成要素を合成ナノキャリアに付着させるための方法は、有用でもよい。
【0169】
態様において、たとえば、構成要素を合成ナノキャリアに付着させるための方法は、有用でもよい。ある態様において、接着は、共有的リンカーであってよい。態様において、本発明による免疫抑制剤は、外側表面に、アルキン基を含む免疫抑制剤とのアジド基の1,3-双極性環化付加反応により、またはアジド基を含む免疫抑制剤とのアルキンの1,3-双極性環化付加反応により形成された、1,2,3-トリアゾールリンカーを介して、共有的に接着していてもよい。かかる環化付加反応は、好ましくは、好適なCu(I)-リガンドおよびCu(II)化合物を触媒活性Cu(I)化合物に還元するための還元剤と共に、Cu(I)触媒の存在下において行う。このCu(I)により触媒されたアジド-アルキン環化付加(CuAAC)はまた、クリック反応としても言及される。
【0170】
加えて、共有的カップリングは、共有的リンカーを含んでもよく、これは、アミドリンカー、ジスルフィドリンカー、チオエーテルリンカー、ヒドラゾンリンカー、ヒドラジドリンカー、イミンまたはオキシムリンカー、ウレアまたはチオウレアリンカー、アミジンリンカー、アミンリンカー、およびスルホンアミドリンカーを含む。
【0171】
アミドリンカーは、免疫抑制剤などの1つの成分上のアミンと、ナノキャリアなどの第2の成分のカルボン酸基との間のアミド結合を介して形成される。リンカー中のアミド結合は、N-ヒドロキシサクシニミドにより活性化されたエステルなどの好適に保護されたアミノ酸との慣用的なアミド結合形成反応のいずれかを用いて生成することができる。
【0172】
ジスルフィドリンカーは、例えばR1-S-S-R2の形態の2つの硫黄原子の間のジスルフィド(S-S)結合の形成を介して、生成することができる。ジスルフィド結合は、チオール/メルカプタン基(-SH)を含む成分の、別の活性化されたチオール基との、またはチオール/メルカプタン基を含む成分の、活性化されたチオール基を含む成分とのチオール交換により、形成させることができる。
【0173】
トリアゾールリンカー、特にR1およびR2が、任意の化学成分である、形態
【化1】
の、1,2,3-トリアゾールは、第1の成分に接着したアジドの、免疫抑制剤などの第2の成分に接着した末端アルキンによる1,3-双極性環化付加反応により生成することができる。1,3-双極性環化付加反応は、触媒を用いてまたはこれを用いずに、好ましくは1,2,3-トリアゾール官能基を通して2つの成分を連結するCu(I)触媒を用いて行う。この化学は、Sharpless et al., Angew. Chem. Int. Ed. 41(14), 2596, (2002)およびMeldal, et al, Chem. Rev., 2008, 108(8), 2952-3015において詳細に記載され、しばしば、「クリック」反応またはCuAACとして言及される。
【0174】
チオエーテルリンカーは、例えばR1-S-R2の形態における硫黄-炭素(チオエーテル)結合の形成により生成される。チオエーテルは、1つの成分上でのチオール/メルカプタン(-SH)基の、第2の成分上のハライドまたはエポキシドなどのアルキル化基によるアルキル化により、生成することができる。チオエーテルリンカーはまた、1つの成分上のチオール/メルカプタン基の、マイケルアクセプターとしてマレイミド基またはビニルスルホン基を含む第2の成分上の電子欠乏アルケン基に対するマイケル付加により、形成させることができる。別の方法において、1つの成分上のチオール/メルカプタン基の、第2の成分上のアルケン基によるラジカルチオール-エン反応により、チオエーテルリンカーを調製することができる。
ヒドラゾンリンカーは、1つの成分上のヒドラジド基の、第2の成分上のアルデヒド/ケトン基との反応により生成することができる。
【0175】
ヒドラジドリンカーは、1つの成分上のヒドラジン基の、第2の成分上のカルボン酸基との反応により生成することができる。かかる反応は、一般に、カルボン酸が活性化試薬により活性化される、アミド結合の形成に類似する化学を用いて行う。
【0176】
イミンまたはオキシムリンカーは、1つの成分上のアミンまたはN-アルコキシアミン(またはアミノオキシ)基の、第2の成分上のアルデヒドまたはケトン基との反応により形成される。
ウレアまたはチオウレアリンカーは、1つの成分上のアミン基の、第2の成分上のイソシアナートまたはチオイソシアナート基との反応により調製される。
アミジンリンカーは、1つの成分上のアミン基の、第2の成分上のイミドエステル基との反応により調製される。
【0177】
アミンリンカーは、1つの成分上のアミン基の、第2の成分上のハライド、エポキシドまたはスルホナートエステル基などのアルキル化基によるアルキル化反応により生成される。あるいは、アミンリンカーはまた、シアノ水素化ホウ素ナトリウムまたはトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムなどの好適な還元試薬による、1つの成分上のアミン基の、第2の成分上のアルデヒドまたはケトン基による還元性アミノ化により生成することができる。
スルホンアミドリンカーは、1つの成分上のアミン基の、第2の成分上のスルホニルハライド(スルホニルクロリドなどの)基との反応により生成される。
スルホンリンカーは、ビニルスルホンへの求核試薬のマイケル付加により生成される。ビニルスルホンまたは求核試薬のいずれかは、ナノキャリアの表面上にあるか、成分に接着していてもよい。
【0178】
成分はまた、非共有的共役方法を介して共役させることができる。例えば、静電吸着を通して、負に荷電した免疫抑制剤を、正に荷電した成分に共役させることができる。金属配位子を含む成分はまた、金属-配位子錯体を介して金属錯体に共役させることができる。
【0179】
態様において、成分は、合成ナノキャリアのアセンブリーの前に、ポリマー、例えばポリ乳酸-ブロック-ポリエチレングリコールに接着していてもよく、合成ナノキャリアは、反応性または活性化可能な基により形成させることができる。後者の場合において、成分は、合成ナノキャリアの表面により提示される接着化学に適合性である基を用いて調製することができる。他の態様において、ペプチド成分は、好適なリンカーを用いてVLPまたはリポソームに接着させることができる。リンカーは、2つの分子を一緒にカップリングすることができる化合物または試薬である。一態様において、リンカーは、Hermanson 2008において記載されるようなホモ二官能性またはヘテロ二官能性の試薬であってよい。例えば、表面上にカルボン酸基を含むVLPまたはリポソーム合成ナノキャリアを、EDCの存在下において、ホモ二官能性リンカーであるアジピン酸ジヒドラジド(ADH)で処置して、ADHリンカーを有する対応する合成ナノキャリアを形成させることができる。結果として生じるADHと連結された合成ナノキャリアを、次いで、ナノキャリア上のADHリンカーの他方の末端を介して、酸基を含むペプチド成分と共役させて、対応するVLPまたはリポソームペプチドコンジュゲートを生成する。
【0180】
態様において、ポリマー鎖の末端側にまたはアルキン基を含むポリマーが、調製される。このポリマーを、次いで、複数のアルキンまたはアジド基がナノキャリアの表面上に位置するような様式において合成ナノキャリアを調製するために用いられる。あるいは、合成ナノキャリアを、別の経路により調製して、その後、アルキンまたはアジド基で官能化してもよい。成分は、アルキン(ポリマーがアジドを含む場合)またはアジド(ポリマーがアルキンを含む場合)基のいずれかの存在と共に調製される。成分を、次いで、1,3-双極性環化付加反応を介して、1,4-二置換1,2,3-トリアゾールリンカーを通して成分を粒子に共有的に接着させる触媒を用いてまたはこれを用いずに、ナノキャリアと反応させる。
【0181】
成分が低分子である場合、合成ナノキャリアのアセンブリーの前に成分をポリマーに接着させることは、有利であり得る。態様において、成分を合成ナノキャリアに接着させるために用いられる表面基を用いて、成分をポリマーに接着させるというよりはむしろこれらの表面基の使用を通して、合成ナノキャリアを調製し、次いで、このポリマーコンジュゲートを合成ナノキャリアの構築において用いることもまた、有利であり得る。
【0182】
利用可能な共役方法の詳細な記載については、Hermanson GT「Bioconjugate Techniques」、第2版、Academic Press, Inc.刊行、2008年を参照。共有的接着に加えて、成分は、予め形成された合成ナノキャリアに吸着させることにより接着させても、または合成ナノキャリアの形成の間の封入により接着させてもよい。
【0183】
合成ナノキャリアは、当該分野において公知の広範な方法を用いて調製することができる。例えば、合成ナノキャリアは、ナノ沈殿、流体チャネルを用いるフローフォーカシング(flow focusing)、スプレー乾燥、シングルおよびダブルエマルション溶媒蒸発、溶媒抽出、相分離、製粉、マイクロエマルション法、微細加工(microfabrication)、ナノ加工(nanofabrication)、犠牲層、単純および複合コアセルベーションなどの方法、ならびに当業者に周知の他の方法により形成することができる。あるいはまたは加えて、単分散半導体のための水性および有機性の溶媒合成、伝導性、磁性、有機および他のナノ材料が記載されている(Pellegrino et al., 2005, Small, 1:48; Murray et al., 2000, Ann. Rev. Mat. Sci., 30:545; and Trindade et al., 2001, Chem. Mat., 13:3843)。さらなる方法は、文献において記載されている(例えば、Doubrow編、「Microcapsules and Nanoparticles in Medicine and Pharmacy」、CRC Press, Boca Raton, 1992;Mathiowitz et al., 1987, J. Control. Release, 5:13; Mathiowitz et al., 1987, Reactive Polymers, 6:275; ならびにMathiowitz et al., 1988, J. Appl. Polymer Sci., 35:755;米国特許第5578325号および同第6007845号;P. Paolicelli et al., 「Surface-modified PLGA-based Nanoparticles that can Efficiently Associate and Deliver Virus-like Particles」Nanomedicine. 5(6):843-853 (2010)を参照)。
【0184】
材料を、望ましい場合には、限定されないが以下を含む多様な方法を用いて、合成ナノキャリア中に封入してもよい:C. Astete et al., 「Synthesis and characterization of PLGA nanoparticles」J. Biomater. Sci. Polymer Edn、第17巻、第3号、pp. 247-289(2006);K. Avgoustakis「Pegylated Poly(Lactide) and Poly(Lactide-Co-Glycolide) Nanoparticles: Preparation, Properties and Possible Applications in Drug Delivery」Current Drug Delivery 1:321-333(2004);C. Reis et al., 「Nanoencapsulation I. Methods for preparation of drug-loaded polymeric nanoparticles」Nanomedicine 2:8- 21(2006);P. Paolicelli et al., 「Surface-modified PLGA-based Nanoparticles that can Efficiently Associate and Deliver Virus-like Particles」Nanomedicine. 5(6): 843-853(2010)。材料を合成ナノキャリア中に封入するために好適な他の方法を用いてもよく、これらは、限定することなく、2003年10月14日に発行されたUngerに対する米国特許第6,632,671号において開示される方法を含む。
【0185】
ある態様において、合成ナノキャリアは、ナノ沈殿法またはスプレー乾燥により調製される。合成ナノキャリアを調製することにおいて用いられる条件は、所望されるサイズおよび特性(例えば、疎水性、親水性、外側の形態、「粘着性」、形状など)の粒子を得るために改変することができる。合成ナノキャリアを調製する方法および用いられる条件(例えば、溶媒、温度、濃度、気体の流速など)は、合成ナノキャリアに結合させるべき材料および/またはポリマーマトリックスの組成に依存し得る。
【0186】
上記の方法のいずれかにより調製される合成ナノキャリアが所望される範囲の外のサイズ範囲を有する場合、合成ナノキャリアを、例えば篩を用いて、サイズ分類することができる。
【0187】
合成ナノキャリアの要素は、例えば1以上の共有結合により合成ナノキャリア全体に接着させても、1以上のリンカーにより接着させてもよい。合成ナノキャリアを官能化するさらなる方法は、Saltzmanらに対する米国特許出願公開2006/0002852、DeSimoneらに対する米国特許出願公開2009/0028910、またはMurthyらに対する国際特許出願公開WO/2008/127532A1から適応させることができる。
【0188】
代替的にまたは加えて、合成ナノキャリアは、直接的または間接的に、非共有的相互作用を介して、成分に接着させることができる。非共有的態様において、非共有的接着は、限定されないが以下を含む非共有的相互作用により媒介される:電荷相互作用、アフィニティー相互作用、金属配位、物理的吸着、主客相互作用、疎水性相互作用、TTスタッキング相互作用、水素結合相互作用、ファン・デル・ワールス相互作用、磁性相互作用、静電相互作用、双極子-双極子相互作用、および/またはこれらの組み合わせを含む。
【0189】
かかる接着は、合成ナノキャリアの外部表面または内部表面上にあるように配置することができる。態様において、封入および/または吸収は、接着の形態である。
【0190】
本明細書において提供される組成物は、無機または有機の緩衝化剤(例えば、リン酸、炭酸、酢酸またはクエン酸のナトリウムまたはカリウム塩)およびpH調整剤(例えば、塩酸、水酸化ナトリウムまたはカリウム、クエン酸または酢酸の塩、アミノ酸およびそれらの塩)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、アルファ-トコフェロール)、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン9-10ノニルフェノール、デオキシコール酸ナトリウム)、溶液および/または低温(cryo)/凍結安定化剤(例えば、スクロース、ラクトース、マンニトール、トレハロース)、浸透圧調節剤(例えば、塩または糖)、抗菌剤(例えば、安息香酸、フェノール、ゲンタマイシン)、消泡剤(例えば、ポリジメチルシロキサン、保存剤(例えば、チメロサール、2-フェノキシエタノール、EDTA)、ポリマー性安定化剤および粘度調節剤(例えば、ポリビニルピロリドン、ポロキサマー488、カルボキシメチルセルロース)および共溶媒(例えば、グリセロール、ポリエチレングリコール、エタノール)を含んでもよい。
【0191】
本発明による組成物は、薬学的に許容し得る賦形剤を含んでもよい。組成物は、有用な投与形態を達成するために、慣用的な医薬の製造および配合技術を用いて製造することができる。本発明の実施における使用のために好適な技術は、Handbook of Industrial Mixing: Science and Practice、Edward L. Paul, Victor A. Atiemo-ObengおよびSuzanne M. Kresta編、2004年、John Wiley & Sons, Inc.; ならびにPharmaceutics: The Science of Dosage Form Design、第2版M. E. Auten編、2001年、Churchill Livingstoneにおいて見出すことができる。一態様において、組成物を、注射のために、保存剤と共に、無菌の食塩水溶液中に懸濁する。
【0192】
本発明の組成物は任意の好適な様式において製造することができることが、理解されるべきであり、本発明は、本明細書において記載される方法を用いて製造することができる組成物に決して限定されない。適切な製造の方法の選択は、関連する特定の部分の特性に対する注意を必要とする場合がある。
【0193】
いくつかの態様において、組成物は、無菌条件下において製造されるか、最終的に無菌化される。このことにより、結果として生じる組成物が無菌であり、非感染性であることを確実にすることができ、それにより、非無菌の組成物と比較して安全性を改善する。このことは、特に組成物を投与されている対象が免疫欠損を有するか、感染症を罹患しているか、および/または感染に対して感受性である場合に、有益な安全性の指標を提供する。
【0194】
本発明による投与は、多様な経路によるものであってよく、これは、限定されないが、皮下、静脈内、筋肉内および腹腔内経路を含む。本明細書において言及される組成物は、混合物としてのいくつかの態様において、従来の方法を用いて、投与のために製造および調製されることができる。
【0195】
本発明の組成物は、有効量、例えば本明細書において他の場所で記載される有効量で投与することができる。投与形態は、多様な頻度において投与することができる。提供される方法または組成物のいずれか1つのいくつかの態様において、ウイルスベクターを伴う、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアの反復投与が、行われる。
【0196】
例
例1:免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアの合成(理論上)
ラパマイシンなどの免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアは、当業者に公知のいずれかの方法を使用して、産生することができる。好ましくは、本明細書に提供される方法または組成物のいずれか1つのいくつかの態様において、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアは、米国公開番号US2016/0128986A1および米国公開番号US2016/0128987A1の方法のいずれか1つによって産生され、かかる産生および結果として生じる合成ナノキャリアの記載された方法は、本明細書においてその全体において参考として援用される。
【0197】
本明細書に提供される方法、または組成物のいずれか1つにおいて、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアは、かかる援用された合成ナノキャリアである。ImmTOR、ラパマイシンを封入している生物分解可能なPLA+PLA-PEGナノ粒子は、かかる合成ナノキャリアの例を指す(Kishimoto TK, Maldonado RA. Nanoparticles for the induction of antigen-specific immunological tolerance. Front Immunol. 2018; 9: 230. Sands E, Kivitz AJ, DeHaan W, et al. Update of SEL-212 phase 2 clinical data in symptomatic gout patients: SVP-rapamycin combined with pegadricase mitigates immunogenicity and enables sustained reduction of serum uric acid levels, low rate of gout flares and monthly dosing. Poster presentation at: 2018 American College of Rheumatology/Association of Reproductive Health Professionals (ACR/ARHP) Annual Meeting; October 19-24, 2018; Chicago, IL. Poster #2254)。
【0198】
例2:AAVベクターの免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアへの混合は、抗AAV抗体を伴うマウスにおける導入遺伝子発現を救済する
抗AAV抗体を伴うマウスにおける導入遺伝子発現を救済するためのラパマイシンを含む混合されたAAVベクターおよび合成ナノキャリア(例として、ImmTORナノ粒子)の能力が、調査された。最初に、正常なヒトドナーからの血清を、in vitroアッセイにおいて、AAVに対する既存の中和およびIgG抗体の存在に関して、スクリーニングした。
【0199】
簡潔には、Huh7肝臓由来細胞を、正常なヒトドナーからの血清の存在下で、AAV8-ルシフェラーゼとインキュベートした。ルシフェラーゼ発現を、Huh7細胞の形質導入に続いて評価した。ヒトドナー8からの血清とインキュベートした細胞は、ハイレベルのルシフェラーゼ活性を示し、著しいレベルの中和抗体の非存在を、指し示した。対照的に、ヒトドナー45からの血清とインキュベートした細胞は、殆どまたは全くルシフェラーゼ発現を示さず、ハイレベルの中和抗体の存在を、指し示した。同じく、ヒトドナー44からの血清とインキュベートした細胞は、殆どルシフェラーゼ発現を示さず、中からハイレベルの中和抗体の存在を、指し示した。ヒトドナー31および35からの血清とインキュベートした細胞は、ルシフェラーゼ発現の中間のレベルを示し、中レベルの中和抗体の存在を、指し示した。上で記載された機能的な中和抗体アッセイに基づく中和抗体の予測されたレベルが、抗AAV IgG抗体の観察されたレベルと相関するとわかった(
図1)。
【0200】
ヒトドナー8、31、35、44、および45からの血清の80マイクロリットル(80μL)を、個々のマウスに静脈内注入によって移した。およそ24時間後に、マウスに、ラパマイシンを含む合成ナノキャリア(例として、ImmTORナノ粒子)の100μgと混合した、AAV8-SEAPベクターの5.0E11vg/kg、または、AAV8-SEAPベクターの5.0E11vg/kgを、注入した。12日後に、血清を、マウスから収集し、そして、血清SEAP活性レベルを、測定した。
【0201】
結果を
図2に示す。AAV8-SEAPベクターの後に、ヒトドナー8からの血清を受けたマウスは、AAV8-SEAPだけを受けた対照マウスと同様のレベルのSEAP活性を示し、ヒトドナー8からの血清が、抗AAV8抗体の有意なレベルを有していないことを確認した(対照の「血清なし」の白抜き棒グラフに対する、ドナー8の棒グラフを比較する)。AAV8-SEAPベクターが続くヒトドナー31および35からの血清を受けているマウスは、血清がない対照マウスと比較して、およそ46~47%のSEAP活性を示し、ヒトドナー31および35からの血清における中程度に中和する抗体の存在を確認した(白抜き対照「血清なし」棒グラフに対する、白抜きドナー31および35棒グラフを比較する)。しかしながら、ラパマイシンを含む合成ナノキャリア(例として、ImmTORナノ粒子)とヒトドナー31および35からの血清を受けているマウスのAAV8-SEAPベクターとの混合は、AAV8-SEAPベクターのみを受けている血清なし対照マウスと比較して、だけを受けている血清制御マウスと同等でない、SEAP導入遺伝子発現および活性レベルを増強するとわかった(白抜き対照「血清なし」棒グラフに対する、濃いドナー31および35棒グラフを比較する)。これらの結果は、ラパマイシンを含む合成ナノキャリア(例えば、ImmTORナノ粒子)とAAV8-SEAPベクターの第1の用量との混合が、中和抗体の中程度のレベルを伴うマウスにおける導入遺伝子発現および活性を救済することができることを、指し示す。
【0202】
例3:AAVベクターと免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアとの混合は、抗AAV抗体を伴う未治療のマウスにおける導入遺伝子発現を救済する
AAV8-SEAPベクターを、室温で20分間、ラパマイシンを含む合成ナノキャリア(例として、ImmTORナノ粒子)または生理食塩水50μgと当量で混合し、その後、室温で1時間、未治療正常マウス血清、または抗AAV抗体を含有するマウス血清の1:100の希釈物と混合した。結果として生じる混合物を、未治療のマウスに注入し、そして、33日後に、SEAP導入遺伝子の血清発現を、測定した。SEAP導入遺伝子の血清発現を、血清と混合せずにAAV8-SEAPベクターを注入した対照マウスと、比較した。
【0203】
その結果を、
図3に示す。抗AAV抗体を含有していない正常な血清に混合したAAV8-SEAPベクターを注入したマウスは、対照マウスに匹敵する血清SEAP活性を示し、そして、抗AAV抗体を含有している血清に混合したAAV8-SEAPベクターを注入したマウスは、対照マウスと比較して、減少したSEAP血清活性を、示した。対照的に、ラパマイシンを含む50μg合成ナノキャリア(例として、ImmTORナノ粒子)の、抗AAV抗体を含有している血清への混合の前の、AAV8-SEAPベクターへの混合は、血清なしの対照に匹敵するレベルに、SEAP発現を救済することが、わかった。
【0204】
例4:免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアは、母性移入抗体を改善する
母性移入抗AAVを収容しているマウスの導入遺伝子発現を救うラパマイシン(例として、ImmTORナノ粒子)を含む合成ナノキャリアの能力を、調査した。
【0205】
メチルマロノイル-CoAムターゼ(MUT)の発現において欠損する、および筋特異的プロモーターの下でのMUTに関する導入遺伝子を発現する低形質マウス(Mck-MUTマウス)を、使用した(Manoli et al., 2018)。これらのマウスは、メチルマロン酸血症の重篤な形態を、呈する。雌雄同種接合Mck-MUTマウスは、肝臓のMUT遺伝子発現欠損を修正するために、AAV Anc80-hAAT-MUTベクターによる遺伝子治療を受けた。マウスを次いで飼育し、そして、それらの子孫からのすべての新生児の子は、既存の抗Anc80抗体を担持し、それは、おそらく子宮内で母体から移入された(
図4)。
【0206】
およそ26日齢で、Mck-MUTマウスは、母体に移入された抗Anc80抗体の有意なレベルを、依然として示した。マウスを無作為化し、5.0e12vg/kgのAnc80-MUT単独で処置するか、または100μgまたは300μgのラパマイシンを含む合成ナノキャリア(例として、ImmTORナノ粒子)と混合した。Anc80-MUT単独で処置した4匹のマウスのうちの2匹は、遺伝子導入から数日以内に死んだ。ラパマイシンを含む合成ナノキャリア(例として、ImmTORナノ粒子)100μgに混合したAnc80-MUTで処置した5匹のマウスのうちの3匹は、が遺伝子導入の直後に死んだ。その上、ラパマイシンを含む合成ナノキャリア(例えば、ImmTORナノ粒子)300μgに混合したAnc80-MUTで処置した全7匹の動物は、生き残った。
【0207】
これらのデータは、ラパマイシンを含む合成ナノキャリア(例えば、ImmTORナノ粒子)の、AAV Anc80-hAAT-MUTベクターの第1の用量への混合が、用量依存的なやり方におけるマウスの生存を、増強したことを、指し示す。
【0208】
例5:AAV-MUTベクターで処置した母性移入抗体を伴うメチルマロン酸血症のマウスモデルにおける、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアの効果
Anc80に対する既存のIgGを伴う23Mck-MMUTマウスを、まとめて発生させた。これらのうち、6匹のマウスを、AAV Anc80-MMUTの5×1012vg/kgで処置し、7匹のマウスを、ImmTORナノ粒子の100μgと混合したAAV Anc80-MMUTの同じ用量で処置し、そして、10匹のマウスを、ImmTORの300μgと混合したAAV Anc80-MMUTの同じ用量で処置した。
【0209】
pMMAレベルによって測定したとおり、どの群も、最初の処置の後の利益を示さなかった。その上、Anc80-MMUT単独で処置した6匹のマウスのうち4匹、およびImmTORナノ粒子の100μgに混合したAnc80-MUTで処置した7匹のマウスのうち4匹は、遺伝子導入の直後に、死んだ。同時に、ImmTORナノ粒子の300μgに混合したAnc80-MUTで処置した群における全10匹のマウスは、21日間生存し、その時点で、2回目の処置を、すべての生存しているマウスに投与した。今回、ImmTORの300μgに混合したAnc80-MUTで処置したマウスのおよそ半分は、第2の遺伝子移入の後9日で、pMMAレベルの実質的減少を示し、その一方で、ImmTORの100μgに混合したAnc80-MUTで処置した群における3匹の残存するマウスのうち1匹も、pMMA減少を、示した。数日以内に疾患に屈したこれらのマウスの1匹とともに、Anc80-MMUT単独で処置した残存する2匹のマウスにおいて利益は、なかった。
【0210】
ImmTORの300μgに混合したAnc80-MUTで処置した10匹のマウスのうち9匹は、pMMAの高い変数レベルを呈するところで、3ヵ月以上生存し、最初の処置の101日後に、3回目を処置した。この介入は、この群のすべてのマウスにおけるpMMAレベルの劇的な減少につながり(対前処置18%へ)、およびImmTORの100μgに混合したAnc80-MUTで処置したすべての生存しているマウスにおいても、同様だった。Anc80-MMUT単独で処置した1匹の生存マウスにおいては、利益が見られず、そして、それは、疾患にすぐに屈した。
【0211】
まとめると、ImmTORの300μgに混合したAnc80-MUTで処置した群と、Anc80-MUT単独で処置した群(p<0.0001)またはImmTORの100μgに混合した(p<0.05)群の間に、生存において統計的に有意な差が、あった。
【0212】
その上、ImmTORの300μgに混合したAnc80-MUTで処置したほとんど全てのマウス(9/10)は、試験の115日目まで(すなわち、3回の処置の後)、de novoのAnc80 IgG形成の非存在を、示した。これらのデータは、ラパマイシンを含む合成ナノキャリア(例として、ImmTORナノ粒子)の、AAV Anc80-hAAT-MMUTベクターの第1の用量への混合が、用量依存的なやり方におけるマウスの生存を、増強し、反復投与後のpMMAのレベルを改善したことを、指し示す。データを、
図5~8において示す。
【0213】
よって、合成ナノキャリアに混合したAnc80-MUTの第1の用量については、再処置の後、血清MMAにおける1部分の減少を、観察した(Anc80-MUT+300μg ImmTORで処置したマウスにおいて)。さらに、Anc80-MUT+300μg ImmTORで処置したマウスにおける第2の再処置に続いて、結果は、血清MMAの一様な減少を示した。混合した免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアを伴うAnc80-MUTで、反復して処置した既存の母性移入抗Anc80 IgGを伴うMck-MUTマウスは、より高い初期の生存率を有した。母性移入抗Anc80 IgGを伴うマウスの既存の液性免疫は、ラパマイシンなどの、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアの投与に起因するウイルスベクターでの処置を、排除しない。
【0214】
該データは、免疫抑制剤を含む合成ナノキャリアのより高用量が、初期の生存を可能にすることができ、次いで反復投与で治療の有効性を提供することができ、その一方で、de novoのIgGの形成を遅延させることも、示す。
【国際調査報告】