(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(54)【発明の名称】抗RSV抗体の投与レジメン及び抗RSV抗体を含む組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20220629BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20220629BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20220629BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220629BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220629BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220629BHJP
A61P 11/04 20060101ALI20220629BHJP
C07K 16/10 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P31/14 ZNA
A61K47/18
A61K47/26
A61K47/10
A61K9/08
A61P11/04
C07K16/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564373
(86)(22)【出願日】2020-04-30
(85)【翻訳文提出日】2021-10-28
(86)【国際出願番号】 US2020030619
(87)【国際公開番号】W WO2020223435
(87)【国際公開日】2020-11-05
(32)【優先日】2019-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】508098350
【氏名又は名称】メドイミューン・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MedImmune Limited
【住所又は居所原語表記】Milstein Building,Granta Park,Cambridge CB21 6GH,England
(71)【出願人】
【識別番号】503263001
【氏名又は名称】サノフィ パストゥール インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】カーン,アニス アーメド
(72)【発明者】
【氏名】ピエール,バドリン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB11
4C076BB15
4C076CC35
4C076DD09F
4C076DD51
4C076DD51Z
4C076DD67
4C076FF04
4C076FF14
4C076FF16
4C076FF39
4C076FF43
4C076FF57
4C076FF61
4C085AA13
4C085AA14
4C085BA57
4C085BB11
4C085BB41
4C085BB43
4C085CC23
4C085EE01
4C085GG01
4C085GG03
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
(57)【要約】
一態様においては、本開示はRSV感染症の治療又は予防を、それを必要とする患者に行う方法を記載する。固定用量の抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を含む組成物を投与するための投与レジメンを含む方法。別の態様では、本開示はRSV感染症の治療又は予防のための医薬組成物を記載する。さらに別の態様では、本開示はニルセビマブを含む医薬単位用量を記載する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RSV感染症の治療又は予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、
前記患者の年齢を決定すること;
生後2年目の前記患者に対応して、200ミリグラム(mg)の固定用量の抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を含む組成物を投与すること;
生後1年目の前記患者に対応して、前記患者の体重を決定すること;及び
少なくとも5キログラム(kg)の体重を有する前記患者に対応して、100mgの固定用量の抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を含む組成物を投与すること
を含み、
前記抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、RSV Aの中和アッセイにおいてIC50が5.0ng/ml以下であるか、若しくはRSV B9320の中和アッセイにおいてIC50が3.0ng/ml以下であるか、又はその両方である方法。
【請求項2】
RSV感染症の治療又は予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、少なくとも5キログラム(kg)の体重を有する患者に、200ミリグラム(mg)の固定用量の抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を投与することを含み、前記抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、RSV Aの中和アッセイにおいてIC50が5.0ng/ml以下であるか、若しくはRSV B9320の中和アッセイにおいてIC50が3.0ng/ml以下であるか、又はその両方である方法。
【請求項3】
RSV感染症の治療又は予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、
患者の体重を決定すること、
少なくとも5キログラム(kg)の体重を有する患者に、200ミリグラム(mg)の固定用量の抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を投与することであって、ここで、前記抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、RSV Aの中和アッセイにおいてIC50が5.0ng/ml以下であるか、若しくはRSV B9320の中和アッセイにおいてIC50が3.0ng/ml以下であるか、又はその両方であること:
5kgまでの体重を有する患者に、100mgの固定用量の抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を投与することであって、ここで、前記抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、RSV Aの中和アッセイにおいてIC50が5.0ng/ml以下であるか、若しくはRSV B9320の中和アッセイにおいてIC50が3.0ng/ml以下であるか、又はその両方であること
を含む方法。
【請求項4】
RSV感染症の治療又は予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、
前記患者の年齢を決定すること;及び
月齢3か月以上の患者に、200ミリグラム(mg)の固定用量の抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を投与することであって、ここで、前記抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、RSV Aの中和アッセイにおいてIC50が5.0ng/ml以下であるか、若しくはRSV B9320の中和アッセイにおいてIC50が3.0ng/ml以下であるか、又はその両方であること
を含む方法。
【請求項5】
RSV感染症の治療又は予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、
患者の年齢を決定すること;
月齢3か月以上の患者に200ミリグラム(mg)の固定用量の抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を投与すること;
月齢3か月までの患者に100mgの固定用量の抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を投与すること
を含み、
前記抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、RSV Aの中和アッセイにおいてIC50が5.0ng/ml以下であるか、若しくはRSV B9320の中和アッセイにおいてIC50が3.0ng/ml以下であるか、又はその両方である方法。
【請求項6】
RSV感染症の治療又は予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、
患者の年齢を決定すること;
月齢6か月以上の患者に200ミリグラム(mg)の固定用量の抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を投与すること;
月齢6か月までの患者に100mgの固定用量の抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を投与すること
を含み、
前記抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、RSV Aの中和アッセイにおいてIC50が5.0ng/ml以下であるか、若しくはRSV B9320の中和アッセイにおいてIC50が3.0ng/ml以下であるか、又はその両方である方法。
【請求項7】
RSV感染症の治療又は予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、
前記患者が初回のRSV流行期を経験しているか2回目のRSV流行期を経験しているかを決定すること;
前記2回目のRSVシーズンを経験している患者に対応して、200ミリグラム(mg)の固定用量の抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を含む組成物を投与すること;
前記初回のRSV流行期を経験している患者に対応して、前記患者の体重を決定すること;及び
少なくとも5キログラム(kg)の体重を有する前記患者に対応して、100mgの固定用量の抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を含む組成物を投与すること
を含み、
前記抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、RSV Aの中和アッセイにおいてIC50が5.0ng/ml以下であるか、若しくはRSV B9320の中和アッセイにおいてIC50が3.0ng/ml以下であるか、又はその両方である方法。
【請求項8】
RSV感染症の治療又は予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、
前記患者が初回のRSV流行期を経験しているか2回目のRSV流行期を経験しているかを決定すること;
2回目のRSV流行期を経験している患者に、200ミリグラム(mg)の固定用量の抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を投与することであって、ここで、前記抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、RSV Aの中和アッセイにおいてIC50が5.0ng/ml以下であるか、若しくはRSV B9320の中和アッセイにおいてIC50が3.0ng/ml以下であるか、又はその両方であること
を含む方法。
【請求項9】
RSV感染症の治療又は予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、
前記患者が初回のRSV流行期を経験しているか2回目のRSV流行期を経験しているかを決定すること;
患者に200ミリグラム(mg)の固定用量の抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を投与することであって、ここで、前記患者は2回目のRSV流行期を経験していること;
患者に100mgの固定用量の抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を投与することであって、ここで、前記患者は初回のRSV流行期を経験していること
を含み、
前記抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、RSV Aの中和アッセイにおいてIC50が5.0ng/ml以下であるか、若しくはRSV B9320の中和アッセイにおいてIC50が3.0ng/ml以下であるか、又はその両方である方法。
【請求項10】
前記抗RSVモノクローナル抗体はニルセビマブを含む、又は前記抗RSVモノクローナル抗体の前記抗原結合断片はニルセビマブの抗原結合断片を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
イオン性賦形剤、バッファ、糖、及び界面活性剤を含む組成物で、前記抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を投与することを含み、
前記イオン性賦形剤はL-アルギニン塩酸塩を80mMの濃度で含み、
前記バッファは30mMのL-ヒスチジン/L-ヒスチジン塩酸塩を含み、
前記糖は120mMのスクロースを含み、
前記界面活性剤はポリソルベート80を0.01%(w/v)~0.05%(w/v)の範囲で含み、且つ
前記組成物は5.5~6.5の範囲のpHを有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
RSV感染症を治療又は予防するための医薬組成物であって、100mgのニルセビマブを含み、生後1年目の患者又は初回のRSV流行期を経験している患者に投与され、前記患者は少なくとも5kgの体重を有する医薬組成物。
【請求項13】
RSV感染症を治療又は予防するための医薬組成物であって、200mgのニルセビマブを含み、生後2年目の患者又は2回目のRSV流行期を経験している患者に投与される医薬組成物。
【請求項14】
前記患者は、13.4日・mg/mL超のAUC
0-∞を示す、請求項12又は13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
イオン性賦形剤、バッファ、糖、及び界面活性剤をさらに含み、
前記イオン性賦形剤はL-アルギニン塩酸塩を80mMの濃度で含み、
前記バッファは30mMのL-ヒスチジン/L-ヒスチジン塩酸塩を含み、
前記糖は120mMのスクロースを含み、
前記界面活性剤はポリソルベート80を0.01%(w/v)~0.05%(w/v)の範囲で含み、且つ
前記組成物は5.5~6.5の範囲のpHを有する、請求項12~14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
100mgのニルセビマブを含む医薬単位用量であって、筋肉内投与に好適である医薬単位用量。
【請求項17】
200mgのニルセビマブを含む医薬単位用量であって、筋肉内投与に好適である医薬単位用量。
【請求項18】
前記ニルセビマブを含む前記医薬単位用量は組成物中に含まれ、前記組成物はイオン性賦形剤、緩衝液、糖、及び界面活性剤をさらに含み、
前記イオン性賦形剤はL-アルギニン塩酸塩を80mMの濃度で含み、
前記バッファは30mMのL-ヒスチジン/L-ヒスチジン塩酸塩を含み、
前記糖は120mMのスクロースを含み、
前記界面活性剤はポリソルベート80を0.01%(w/v)~0.05%(w/v)の範囲で含み、且つ
前記組成物は5.5~6.5の範囲のpHを有する、請求項16又は17に記載の医薬単位用量。
【請求項19】
前記組成物中の前記ニルセビマブは、高性能サイズ排除クロマトグラフィー(HPSEC)による測定で、2℃~8℃で少なくとも3か月間安定である、請求項16~18のいずれか一項に記載の医薬単位用量。
【請求項20】
前記ニルセビマブは100mg/mLの濃度で含まれる、請求項16~19のいずれか一項に記載の医薬単位用量。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年4月30日に出願された米国仮特許出願第62/840,701号の利益を主張するものであり、それは参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、2020年4月29日に作成された24キロバイトのサイズの「0490-000006WO01_ST25.txt」という名称のASCIIテキストファイルとして、EFS-Webを介して米国特許商標庁に電子的に提出された配列表を含む。電子的に提出された配列表は、配列表が電子的にファイリングされたことにより、米国特許法施行規則§1.821(c)により要求される紙コピー及び同§1.821(e)により要求されるCRFの両方として役立つ。配列表に含まれる情報は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
呼吸器合胞体ウイルス(RSV)は、世界中の乳児及び小児における下気道感染症の最も一般的な原因である。ほぼ全ての小児が生後2年間にRSVに感染する。2005年、RSVは5歳以下の小児の間で3000万件以上の新たな下気道感染症発症の原因となり、世界で66,000~199,000人の死亡が推定された。
【0004】
全ての小児が最初の感染期間に重症の下気道感染のリスクに晒されている一方で、生後3か月以下の健康な正期産児は他のどの群よりもRSV関連の入院が多い。乳児期の重症疾患は、小児期を通して反復性喘鳴の発現を含む急性及び長期の肺続発症を引き起こす可能性がある。
【0005】
現在、RSV疾患に対し承認されている唯一の予防法はパリビズマブ(SYNAGIS;MedImmune,Gaithersburg,MD)である。パリビズマブはRSV融合(F)特異的免疫グロブリンGモノクローナル抗体であり、在胎35週以下で出生した早産児を含む高リスク小児のRSVによる重篤な下気道疾患の予防を適応としている。一部にはパリビズマブの予防的投与にかかる費用が高いことから、米国小児科学会(the American Academy of Pediatrics)の最新のガイダンスでは在胎29週以降に生まれた健康な早産児には推奨していない。さらに、安全且つ有効な活性ワクチンは依然として見出されていない。したがって、RSV予防のための、特に健康な正期産児に使用するための、さらなる手段があれば有利であろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、患者のRSV感染を治療又は予防するための、抗RSV抗体又はその断片の投与レジメン、医薬組成物、及び医薬単位用量を含む方法を記載する。
【0007】
一態様においては、本開示は、RSV感染症の治療又は予防を、それを必要とする患者に行う方法を記載する。
【0008】
いくつかの実施形態では、RSV感染症の治療又は予防を、それを必要とする患者に行う方法は、患者の年齢を決定することを含む。生後2年目の患者に対応して、この方法は、200ミリグラム(mg)の固定用量の抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を含む組成物を投与することを含む。生後1年目の患者に対応して、この方法は、患者の体重を決定することを含み、少なくとも5キログラム(kg)の体重を有する患者に対応して、この方法は、100mgの固定用量の抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を含む組成物を投与することを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、RSV感染症の治療又は予防を、それを必要とする患者に行う方法は、少なくとも5kgの体重を有する患者に、200mgの固定用量の抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を投与することを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、RSV感染症の治療又は予防を、それを必要とする患者に行う方法は、患者の体重を決定すること、及び少なくとも5kgの体重を有する患者に、200mgの固定用量の抗RSVモノクローナル抗体若しくはその抗原結合断片を投与すること、又は5kgまでの体重を有する患者に、100mgの固定用量の抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を投与することを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、少なくとも5kgの体重を有する患者は、10kgまで、15kgまで、又は20kgまでの体重を有する。
【0012】
いくつかの実施形態では、RSV感染症の治療又は予防を、それを必要とする患者に行う方法は、患者の年齢を決定すること、及び月齢3か月以上の患者に、200mgの固定用量の抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を投与することを含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、RSV感染症の治療又は予防を、それを必要とする患者に行う方法は、患者の年齢を決定すること、及び月齢6か月以上の患者に、200mgの固定用量の抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を投与することを含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、RSV感染症の治療又は予防を、それを必要とする患者に行う方法は、患者の年齢を決定すること、及び月齢3か月以上の患者に、200mgの固定用量の抗RSVモノクローナル抗体若しくはその抗原結合断片を投与すること、又は月齢3か月までの患者に、100mgの固定用量の抗RSVモノクローナル抗体若しくはその抗原結合断片を投与することを含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、RSV感染症の治療又は予防を、それを必要とする患者に行う方法は、患者の年齢を決定すること、及び月齢6か月以上の患者に、200mgの固定用量の抗RSVモノクローナル抗体若しくはその抗原結合断片を投与すること、又は月齢6か月までの患者に、100mgの固定用量の抗RSVモノクローナル抗体若しくはその抗原結合断片を投与することを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、RSV感染症の治療又は予防を、それを必要とする患者に行う方法は、患者が初回のRSV流行期を経験しているか、2回目のRSV流行期を経験しているかを決定することを含む。2回目のRSV流行期を経験している患者に対応して、この方法は、200ミリグラム(mg)の固定用量の抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を含む組成物を投与することを含む。初回のRSV流行期を経験している患者に対応して、この方法は、患者の体重を決定すること;及び少なくとも5キログラム(kg)の体重を有する患者に対応して、100mgの固定用量の抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を含む組成物を投与することを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、RSV感染症の治療又は予防を、それを必要とする患者に行う方法は、患者が初回のRSV流行期を経験しているか、2回目のRSV流行期を経験しているかを決定すること;及び2回目のRSV流行期を経験している患者に、200ミリグラム(mg)の固定用量の抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を含む組成物を投与することを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、RSV感染症の治療又は予防を、それを必要とする患者に行う方法は、患者が初回のRSV流行期を経験しているか、2回目のRSV流行期を経験しているかを決定することを含む。患者が2回目のRSV流行期を経験している場合、この方法は患者に200ミリグラム(mg)の固定用量の抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を含む組成物を投与することを含む。患者が初回のRSV流行期を経験している場合、この方法は患者に100mgの固定用量の抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を投与することを含む(ここで、患者は、初回のRSV流行期を経験している)。
【0019】
いくつかの実施形態では、抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、RSV Aの中和アッセイにおいてIC50が5.0ng/ml以下であるか、若しくはRSV B9320の中和アッセイにおいてIC50が3.0ng/ml以下であるか、又はその両方である。
【0020】
いくつかの実施形態では、抗RSVモノクローナル抗体はニルセビマブを含む。いくつかの実施形態では、抗RSVモノクローナル抗体の抗原結合断片は、ニルセビマブの抗原結合断片を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、方法は、抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を組成物として投与することを含み得る。いくつかの実施形態では、組成物は、イオン性賦形剤、バッファ、糖、及び/又は界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、イオン性賦形剤は、L-アルギニン塩酸塩を80mMの濃度で含む。いくつかの実施形態では、バッファは、30mMのL-ヒスチジン/L-ヒスチジン塩酸塩を含む。いくつかの実施形態では、糖は、120mMのスクロースを含む。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート80を0.01%(w/v)~0.05%(w/v)の範囲で含む。いくつかの実施形態では、組成物は、5.5~6.5の範囲のpHを有し得る。いくつかの実施形態では、抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、組成物中に100mg/mLの濃度で存在し得る。
【0022】
別の態様では、本開示はRSV感染症の治療又は予防のための医薬組成物を記載する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、100mgのニルセビマブを含み得、組成物は、生後1年目の患者に投与することができ、その患者は少なくとも5kgの体重を有する。いくつかの実施形態では、医薬組成物が200mgのニルセビマブを含み得、その組成物は生後2年目の患者に投与され得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、医薬組成物の投与後、患者は13.4日・mg/mLより大きいAUC0-∞を示す。
【0024】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、イオン性賦形剤、バッファ、糖、及び/又は界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、イオン性賦形剤は、L-アルギニン塩酸塩を80mMの濃度で含む。いくつかの実施形態では、バッファは、30mMのL-ヒスチジン/L-ヒスチジン塩酸塩を含む。いくつかの実施形態では、糖は、120mMのスクロースを含む。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート80を0.01%(w/v)~0.05%(w/v)の範囲で含む。いくつかの実施形態では、組成物は、5.5~6.5の範囲のpHを有し得る。いくつかの実施形態では、そのニルセビマブは、約100mg/mlの濃度で組成物中に存在し得る。
【0025】
さらに別の態様では、本開示はニルセビマブを含む医薬単位用量を記載する。いくつかの実施形態では、医薬単位用量は、100mgのニルセビマブを含む。いくつかの実施形態では、医薬単位用量は、200mgのニルセビマブを含む。いくつかの実施形態では、単位用量は、筋肉内投与に好適である。
【0026】
いくつかの実施形態では、医薬単位用量は、ニルセビマブを含む組成物を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、イオン性賦形剤、バッファ、糖、及び/又は界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、イオン性賦形剤は、L-アルギニン塩酸塩を80mMの濃度で含む。いくつかの実施形態では、バッファは、30mMのL-ヒスチジン/L-ヒスチジン塩酸塩を含む。いくつかの実施形態では、糖は、120mMのスクロースを含む。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート80を0.01%(w/v)~0.05%(w/v)の範囲で含む。いくつかの実施形態では、組成物は、5.5~6.5の範囲のpHを有し得る。いくつかの実施形態では、そのニルセビマブは、約100mg/mlの濃度で組成物中に存在し得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、組成物中のニルセビマブは、高性能サイズ排除クロマトグラフィー(HPSEC)による測定で、2℃~8℃で少なくとも3か月間安定である。
【0028】
本明細書で使用される場合、「抗体」又は「免疫グロブリン」という用語は、それぞれ可変領域及び定常領域を含む、2本の重鎖及び2本の軽鎖からなる四量体糖タンパク質を指す。抗原結合部分は、組換えDNA技術により、又はインタクトな抗体の酵素的又は化学的切断により、生成することができる。「抗体」という用語には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、及びヒト化抗体が含まれる。
【0029】
本明細書で使用される場合、「抗体」又は「その抗原結合断片」という用語には、従来のハイブリドーマ技術によって、ファージディスプレイによって、且つ/又は組換え技術によって生成される、モノクローナル抗体(mAb)及び/又はその抗原結合断片などの人工抗体が含まれる。これらの用語には、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、単一特異性抗体、二重特異性抗体、多特異性抗体を含むインタクトな免疫グロブリン分子、並びに例えば、軽鎖を欠く免疫グロブリン、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFv、抗体断片、ダイアボディ、Fd、CDR領域、又は抗原若しくはエピトープに結合できる抗体の任意の部分若しくはペプチド配列などの(以下に限定されないが、酵素的切断、ペプチド合成、又は組換え技術などの、任意の知られた技術によって提供される)部分、断片、領域、ペプチド、及びその誘導体の双方が含まれる。抗体又はその抗原結合断片は、ヒト抗体、ヒト化抗体、動物抗体(例えば、ラクダ抗体)、又はキメラ抗体であってよい。一実施形態では、「その抗原結合断片」は、一本鎖抗体、一本鎖可変断片(scFv)、Fab断片、又はF(ab’)2断片である。
【0030】
本明細書で使用される場合、用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体集団から得られる抗体を指す。すなわち、その集団を構成する個々の抗体は、少量存在する可能性のある天然に発生する変異を除いて、同一である。
【0031】
用語「含む(comprises)」及びその変形は、これらの用語が説明及び特許請求の範囲に現れる場合、限定的な意味を有さない。
【0032】
別段の指定がない限り、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」、及び「少なくとも1つ」は、互換的に使用され、1つ又は複数を意味する。
【0033】
また本明細書において、端点による数値範囲の記載は、その範囲内に含まれる全ての数値を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0034】
別個の工程を含む本明細書に開示される方法では、工程は、実行可能であればいかなる順序で行われてもよい。また、必要に応じて、2つ以上の工程の任意の組み合わせが同時に実行されてもよい。
【0035】
本発明の上記概要は、開示される各々の実施形態又は本発明のあらゆる実施態様を記載することを意図するものではない。以下の記載は、例示的な実施形態をより詳細に例示する。本願全体を通していくつかの箇所で、例のリストによって指針が提供され、それらの例は様々な組み合わせで用いることができる。それぞれの場合に、記載されるリストは代表的な群として供されるに過ぎず、排他的リストと解釈されるべきものではない。
【0036】
全ての見出しは、読者の便宜のためであり、そのように指定されていない限り、見出しに続く本文の意味を限定するために使用すべきではない。
【0037】
本明細書全体を通して、「一実施形態(one embodiment)」、「一実施形態(an embodiment)」、「特定の実施形態」、又は「いくつかの実施形態」などへの言及は、実施形態に関連して説明された特定の特徴、構成、組成、又は特性が本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な箇所におけるこのような語句の出現は、必ずしも本開示の同じ実施形態に言及しているわけではない。さらに、特定の特徴、構成、組成、又は特性は、1つ又は複数の実施形態において任意の好適な方法で組み合わせることができる。
【0038】
別段の指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用されている成分量、分子量などのあらゆる数値は、いかなる場合も、用語「約」によって修飾されていると理解すべきである。したがって、そうではないとの別段の指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲に記載されている数値パラメータは、本発明によって得られることが求められる所望の特性に応じて変動し得る概数である。少なくとも、均等論を特許請求の範囲に限定する試みとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効桁数に照らして、また、通常の丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。
【0039】
広範な本発明を記述する数値範囲及びパラメータは概数であるが、具体的な例において記述される数値は、可能な限り正確に報告する。しかし、全ての数値は、本質的に、そのそれぞれの試験測定に見られる標準偏差に必然的に起因する範囲を含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1A-1B】
図1A~
図1Bは、ニルセビマブの軽鎖ヌクレオチド配列(配列番号11)及び翻訳(配列番号1)を示す。CDRには下線が引かれ、可変領域と定常領域との間の境界は「|」によって示されている。
【
図2A-2C】
図2A~
図2Cは、ニルセビマブの重鎖ヌクレオチド配列(配列番号12)及び翻訳(配列番号2)を示す。CDRには下線が引かれ、可変領域と定常領域との間の境界は「|」によって示されている。ニルセビマブの血清半減期を延ばすために導入された、FcドメインのCH2領域における3つのアミノ酸置換(M252Y/S254T/T256E;「YTE」)の位置が丸で囲まれている。
【
図3】
図3は、実施例1にさらに記載されるように、第2b相試験デザインの概略図を示す。ADA=抗薬物抗体、IM=筋肉内、LRTI=下気道感染、PK=薬物動態。スクリーニング期間、91日目、151日目、361日目、及びLRTIによる入院時に、PK及びADA試料を採取した。安全性評価をスクリーニングから361日目まで行った。*スクリーニング及び1日目の来院が同じ日に行われる。
【
図4】
図4は、実施例1にさらに記載されるように、投与後150日間に受診を要した下気道感染の全発生率を示す。LRTI=下気道感染、RSV=呼吸器合胞体ウイルス。
【
図5】
図5は、実施例1にさらに記載されるように、投与後150日間における、最初の受診を要したRSV確認LRTIまでの時間のカプラン・マイヤープロットを示す。LRTI=下気道感染、No=数、RSV=呼吸器合胞体ウイルス。2つの層別因子(無作為化時の年齢及び半球)を層とした層別ログランク検定及びウィルコクソン検定からP値を得た。
【
図6A-6B】
図6A~
図6Bは、実施例1にさらに記載されるように、投与後150日間における、受診を要したRSV確認LRTI(観察された)の発生率についてのサブグループ解析のためのフォレストプロットを示す。CI=信頼区間、LRTI=下気道感染、RRR=相対リスク減少率、RSV=呼吸器合胞体ウイルス。
【
図7】
図7は、実施例2にさらに記載されるように、例示的母集団薬物動態(popPK)解析ワークフロー図を示す。
【
図8】
図8は、例示的母集団薬物動態(popPK)構造モデルの概略図を示す。
【
図9A】
図9Aは、第1b/2a相及び第2b相においてニルセビマブに曝露された乳児の月経後年齢を示す。
【
図9B】
図9Bは、第1b/2a相及び第2b相においてニルセビマブに曝露された乳児のベースライン体重分布を示す。
【
図10】試験により入手可能なPKデータの分布を示す。試験1-健康成人志願者を対象とした第1相試験(Griffin et al.2017,Antimicrob Agents Chemother.61(3),pii:e01714-16);試験2-在胎期間(GA)32週~35週未満の健康な早産児を対象とした第1b/2a相試験(Domachowske et al.Pediatr Infect Dis J.2018;37(9):886-892);及び試験3-GAが29週~35週未満の健康な早産児を対象とした第2b相試験(実施例1)。
【
図11】
図11は、ニルセビマブの全身クリアランスに対するサイズ及び成熟の影響を示す。
【
図12】
図12は、次の適合度プロットを示す:ニルセビマブ濃度の実測値対個人予測値(左パネル)、及びニルセビマブ濃度の実測値対母集団予測値(右パネル)。
【
図14】
図14は、予定された来院による乳児PKデータの視覚的予測チェックを示す。
【
図15】
図15は、AUC四分位数で層別化した、第2b相試験における、受診を要した呼吸器合胞体ウイルス確認下気道感染(MALRTI)のアウトカムのカプラン・マイヤープロットを示す。AUC
0-∞=0時間から無限大時間までの濃度時間曲線下面積、MALRTI=受診を要した呼吸器合胞体ウイルス確認下気道感染、Q=四分位数。図は、少なくとも1つの検出可能な投与後ニルセビマブ血清濃度を有した、As-treated集団の被験者のみのデータを示す。
【
図16】
図16は、地理的領域(左パネルは北、右パネルは南)によるMALRTIの視覚的予測チェック(VPC)を示す。示された線は、プラセボ群、血清AUC第1四分位数、及び血清AUC第2四分位数以上の乳児で観察された推定値を反映している。各線を囲んだ部分は、各層の中央値付近のモデル予測95%信頼区間を示す。
【
図17】
図17は、最終ハザードモデルにおける共変量効果のフォレストプロットを示す。
【
図18】全年齢及び全体重にわたる曝露量の四分位数の分布を示す。AUC
0-∞=0時間から無限大時間までの濃度時間曲線下面積、Q=四分位数。図は、少なくとも1つの検出可能な投与後ニルセビマブ血清濃度を有した、As-treated集団の被験者のみのデータを示す。5kgでの横の実線、及び3か月及び6か月での縦の破線は、種々の年齢及び体重の範囲の間のQ1分布の差異を強調する。
【
図19】
図19は、曝露及び有効性に対する体重及び年齢の影響を示す。最低AUC四分位数の被験者におけるニルセビマブの有効性はプラセボと差がなく、Q2~Q4のAUC範囲がインビボでの臨床的有効性の目標であった。
【
図20】
図20は、初回のRSV流行期において5kgまでで観察された曝露量とマッチさせるために、第2b相の5kgを超える集団におけるニルセビマブの提案用量の予測AUC分布を示す。AUC=濃度時間曲線下面積。x軸の上方の数は、各カテゴリーの被験者数を指す。予測AUC値は、母集団PKモデル推定値から導かれるように、全乳児に対する投与量と全身クリアランスの比として推定される。ピンク色の予測AUC分布は、ニルセビマブ100mg(提案)に対して50mg(試験用量)を投与したときの体重が5kg以上の第2b相母集団の乳児360人の予測曝露量を強調している。黄色のボックスプロットは、体重が5kg未満の第2b相母集団の乳児のAUC分布を示している。図は、少なくとも1つの検出可能な投与後ニルセビマブ血清濃度を有した、As-treated集団の被験者のみのデータを示す。
【
図21】
図21は、初回のRSV流行期の第3相及び第2/3相の母集団における仮想乳児の年齢及び体重の分布を示す。全仮想乳児は、投与時、体重が1.5kgであるか又は在胎期間(GA)が34週超であった。用量は、固定用量50mgのIM単回投与又は100mgのIM単回投与である。ボックスは四分位間範囲(25パーセンタイル~75パーセンタイル)を表し、上部及び下部エラーバーは、それぞれ75パーセンタイル又は25パーセンタイルの1.5倍以内の最大値を示す。
【
図22】
図22は、初回のRSV流行期の第3相及び第2/3相の母集団における仮想乳児の予測AUCを示す。全仮想乳児は、投与時、体重が1.5kgであるか又は在胎期間(GA)が34週超であった。用量は、固定用量50mgのIM単回投与又は100mgのIM単回投与である。点線は、目標とするAUC閾値の13.4日・mg/mLを示す。ボックスは四分位間範囲(25パーセンタイル~75パーセンタイル)を表し、上部及び下部エラーバーは、それぞれ75パーセンタイル又は25パーセンタイルの1.5倍以内の最大値を示す。
【
図23】
図23は、2回目のRSV流行期の第2/3相の母集団における仮想乳児の年齢及び体重の分布を示す。用量は、固定用量200mgのIM単回投与である。ボックスは四分位間範囲(25パーセンタイル~75パーセンタイル)を表し、上部及び下部エラーバーは、それぞれ75パーセンタイル又は25パーセンタイルの1.5倍以内の最大値を示す。
【
図24】
図24は、2回目のRSV流行期の第2/3相母集団における仮想乳児の予測AUCを示す。用量は、固定用量200mgのIM単回投与である。点線は、目標とするAUC閾値の13.4日・mg/mLを示す。ボックスは四分位間範囲(25パーセンタイル~75パーセンタイル)を表し、上部及び下部エラーバーは、それぞれ75パーセンタイル又は25パーセンタイルの1.5倍以内の最大値を示す。
【
図25】
図25は、ニルセビマブ(1G7)、1F5、2D10及びD25を含む種々の抗体によるRSV A2(左パネル)及びRSV B9320(右パネル)のインビトロでの中和を示し、それぞれがマイクロ中和アッセイによる測定でRSV A2及びRSV B9320を抑制した。
【
図26】
図26は、マイクロ中和アッセイ(c+v=細胞+ウイルス)で測定した、D25、ニルセビマブ(1G7)、及びニルセビマブの多様体(1G7-GLM、B12-1、E3-5、及びE9-2)を含む種々の抗体によるRSV A2(左パネル)及びRSV B9320(右パネル)のインビトロでの中和を示す。
【
図27A-27B】
図27A~
図27Bは、アメリカ合衆国におけるRSV流行期間中の例示的患者の年齢に対する誕生月の影響を示す。
図27Aは、4月(塗りつぶしなし矢印で示す)に生まれた患者が、生まれた年の10月に(生後約7か月の間に、塗りつぶし矢印で示す)、2回目のRSV流行期を経験し得ることを示している。
図27Bは、6月(塗りつぶしなし矢印で示す)に生まれた患者が、生後約7か月に(塗りつぶし矢印で示す)、初回のRSV流行期を経験し得ることを示している。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本開示は、患者のRSV感染を治療又は予防するための、抗RSV抗体又はその断片の投与レジメン、医薬組成物、及び医薬単位用量を含む方法を記載する。いくつかの実施形態では、抗RSV抗体又はその断片は、ニルセビマブ(MEDI8897としても知られる)又はその断片を含む。
【0042】
一態様では、本開示は、抗RSV抗体又はその抗原結合断片のための投与レジメンを記載する。特に、投与レジメンは、年齢若しくは体重又はその両方に基づいて、患者に対して固定された用量を提供する。
【0043】
いくつかの実施形態では、抗RSV抗体又はその抗原結合断片は、モノクローナル抗体、又はモノクローナル抗体の抗原結合断片を含む。
いくつかの実施形態では、抗RSV抗体又はその抗原結合断片は、インビトロ中和アッセイにおいて、最大10ng/mlまでのIC50値を有する。例示的なインビトロ中和アッセイにおいては、HEp-2細胞を、RSV、及びその抗体又は抗原結合断片に感染させる。いくつかの実施形態では、IC50は、例えばRSV A2を含むRSV A亜型に対して、少なくとも1ng/ml、少なくとも2ng/ml、少なくとも3ng/ml、少なくとも4ng/ml、少なくとも5ng/ml、少なくとも6ng/ml、少なくとも7ng/ml、又は少なくとも8ng/mlである。いくつかの実施形態では、IC50は、例えばRSV A2を含むRSV亜型に対して、最大9ng/mlまで、最大8ng/mlまで、最大7ng/mlまで、最大6ng/mlまで、最大5ng/mlまで、最大4ng/mlまで、最大3ng/mlまで、又は最大2ng/mlまでである。いくつかの実施形態では、IC50は、例えばRSV B9320を含むRSV B亜型に対して、少なくとも1ng/ml、少なくとも2ng/ml、少なくとも3ng/ml、少なくとも4ng/ml、少なくとも5ng/ml、少なくとも6ng/ml、少なくとも7ng/ml、又は少なくとも8ng/mlである。いくつかの実施形態では、IC50は、例えばRSV B9320を含むRSV亜型Bに対して、最大9ng/mlまで、最大8ng/mlまで、最大7ng/mlまで、最大6ng/mlまで、最大5ng/mlまで、最大4ng/mlまで、最大3ng/mlまで、又は最大2ng/mlまでである。一実施形態では、IC50を、例えばRSV A2及び/又はRSV B9320の場合を含む実施例3及び/又は4に記載のように、インビトロでの中和アッセイで測定する。
【0044】
いくつかの実施形態では、抗RSV抗体又はその抗原結合断片としては、ヒト抗体又はその抗原結合断片が挙げられる。ヒトの治療のためのヒト抗体の使用は、非ヒト配列に対するヒト個人の免疫学的反応に起因する副作用のリスクを減らすことができる。別の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片はヒト化され得る。別の実施形態では、抗RSV抗体又はその抗原結合断片は、キメラ抗体又はその抗原結合断片であり得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、抗RSV抗体又はその抗原結合断片は、IgG、IgA、IgM、又はIgEアイソタイプを有し得る。一実施形態では、抗RSV抗体又はその抗原結合断片はIgGアイソトープを有する。
【0046】
いくつかの実施形態では、抗RSV抗体又はその抗原結合断片は、低い又は中性の等電点(pI)、すなわち、タンパク質が正味荷電を有さないpHを有する。いくつかの実施形態では、抗RSV抗体又はその抗原結合断片のpIは、pH5.5、少なくともpH6、少なくともpH6.3、少なくともpH6.4にある。
【0047】
いくつかの実施形態では、抗RSV抗体又はその抗原結合断片のpIは、最大でpH6.7まで、最大でpH7まで、最大でpH7.5までである。例示的な実施形態では、抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、例えば約5.5~約7.5のpH範囲にpIを有し得る。例示的な実施形態では、抗RSV抗体又はその抗原結合断片は、pH6.4~pH6.7の範囲のpIを有し得る。一実施形態では、抗RSV抗体又はその抗原結合断片は、pH6.4のpIを有する。
いくつかの実施形態では、抗RSV抗体又はその抗原結合断片は、ニルセビマブ(MEDI8897としても知られる)又はニルセビマブの抗原結合断片を含む。ニルセビマブは、D25由来の組換えヒト免疫グロブリン(Ig)G1カッパ(κモノクローナル抗体である。ニルセビマブは、RSV Fタンパク質の融合前構造上の高度に保存された中和エピトープに結合することによって、RSVを中和する。この結合は、RSV Fタンパク質がウイルス侵入に必須の工程であるウイルス膜と細胞膜との間の融合を媒介するのを妨げる。
【0048】
ニルセビマブは、
図1に示すような完全長の軽鎖アミノ酸配列(配列番号1)、及び
図2に示すような完全長の重鎖アミノ酸配列(配列番号2)を有する。
【0049】
ニルセビマブは次のCDR配列を有する:QASQDIVNYLNの軽鎖CDR-L1(配列番号3)、VASNLETの軽鎖CDR-L2(配列番号4)、QQYDNLPLTの軽鎖CDR-L3(配列番号5)、DYIINの重鎖CDR-H1(配列番号6)、GIIPVLGTVHYGPKFQGの重鎖CDR-H2(配列番号7)、及びETALVVSETYLPHYFDNの重鎖CDR-H3(配列番号8)。
図1及び
図2において、6個のCDRには下線が引かれている。
【0050】
ニルセビマブは、
図1のアミノ酸残基1~107の軽鎖可変配列(配列番号9)及び
図2のアミノ酸残基1~126の重鎖可変配列(配列番号10)を有する。
【0051】
ニルセビマブの完全長軽鎖のアミノ酸をコードするヌクレオチドもまた
図1(配列番号11)に示す。
【0052】
ニルセビマブの完全長重鎖のアミノ酸をコードするヌクレオチドもまた
図2(配列番号12)に示す。
【0053】
ニルセビマブは、2018年9月21日に、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)(ATCC(登録商標))、10801 University Boulevard,Manassas,Va.20110-2209,USAに、ATCC特許受託番号PTA-125141の下に寄託されたRSV mAb 1G7 pOE YTEベクターによってコードされる。この寄託は、特許手続上の微生物の寄託の国際承認に関するブダペスト条約に従っている。
【0054】
ニルセビマブ含有ベクターRSV mAb 1G7 pOEは、2018年9月21日に、American Type Culture Collection(ATCC(登録商標))、10801 University Boulevard,Manassas,Va.20110-2209,USAに、ATCC特許受託番号PTA-125140の下に寄託された。この寄託は、特許手続上の微生物の寄託の国際承認に関するブダペスト条約に従っている。
【0055】
ニルセビマブはRSV F上の高度に保存されたエピトープに結合し、パリビズマブの50倍超の活性をもってRSV A株及びB株の多様なパネルを中和する。同等の血清濃度では、RSV A又はRSV B亜型に感染したコットンラットにおいて、ニルセビマブの予防的投与はパリビズマブの9倍の強さがあり、肺のウイルス量を3log超減少させる(Zhu et al.Sci Transl Med.2017;9(388).pii:eaaj1928)。ニルセビマブ抗体は、高度に保存された断片の結晶化可能領域において、3つのアミノ酸変化(M257Y/S259T/T261E[YTE])により改変される。このYTE改変により、抗体の血清半減期(t1/2)は延長され、一般的な21~28日を超える。健康成人を対象とした第1相プラセボ対照試験では、ニルセビマブの安全性プロファイルは良好で、平均t1/2は85~117日と延長し、血清中に検出されるRSV中和抗体のレベルは150日を超えて上昇した(Griffin et al.Antimicrob Agents Chemother.2016;61:e01714-e01716)。
【0056】
第1b/2a相用量漸増試験では、在胎期間が32~35週の健康な早産児を対象に、ニルセビマブ(10mg、25mg、又は50mg)又はプラセボの単回筋肉内注射に無作為に割り付け、ニルセビマブは健康な早産児において良好な安全性プロファイルを示すことが観察され、50mgの単回筋肉内(IM)投与後の典型的な5か月の流行期の期間、RSVからの保護を支援することが認められた(Domachowske et al.Pediatr Infect Dis J.2018;37(9):886-892)。
【0057】
ニルセビマブの第1b/2a相試験における薬物動態データは、大多数の乳児において、50mgの単回投与により、RSV疾患からの保護を予測する抗体濃度が少なくとも5か月間維持されることを示した(Domachowske et al.Pediatr Infect Dis J.2018;37(9):886-892)。
【0058】
いくつかの実施形態では、抗RSVモノクローナル抗体又は抗RSVモノクローナル抗体の抗原結合断片は、配列番号1(ニルセビマブの軽鎖配列)と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列、及び/又は配列番号2(ニルセビマブの重鎖鎖配列)と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列を含み得る。いくつかの実施形態では、抗RSVモノクローナル抗体は、配列番号1及び/又は配列番号2を含む配列を含み得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、抗RSVモノクローナル抗体又は抗RSVモノクローナル抗体の抗原結合断片は、配列QASQDIVNYLN(配列番号3)と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列;配列VASNLET(配列番号4)と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列;配列QQYDNLPLT(配列番号5)と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列、配列DYIIN(配列番号6)と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列;配列GIIPVLGTVHYGPKFQG(配列番号7)と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列;及び/又は配列ETALVVSETYLPHYFDN(配列番号8)と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列を含み得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、抗RSVモノクローナル抗体又は抗RSVモノクローナル抗体の抗原結合断片は、QASQDIVNYLN(配列番号3)、VASNLET(配列番号4)、QQYDNLPLT(配列番号5)、DYIIN(配列番号6)、GIIPVLGTVHYGPKFQG(配列番号7)、及び/又はETALVVSETYLPHYFDN(配列番号8)を含み得る。
【0061】
いくつかの実施形態では、抗RSVモノクローナル抗体又は抗RSVモノクローナル抗体の抗原結合断片は、ニルセビマブの対応するCDR配列と1つのアミノ酸だけ異なる軽鎖可変領域CDR配列又は重鎖可変領域CDR配列を含み得る。いくつかの実施形態では、抗RSVモノクローナル抗体又は抗RSVモノクローナル抗体の抗原結合断片は、ニルセビマブの対応するCDR配列と2つのアミノ酸だけ異なる軽鎖可変領域CDR配列又は重鎖可変領域CDR配列を含み得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、抗RSVモノクローナル抗体又は抗RSVモノクローナル抗体の抗原結合断片は、配列番号9の配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列、及び/又は配列番号10の配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列を含み得る。
【0063】
予期しなかったことに、また本開示の実施例においてさらに記載されるように、健康な成人及び乳児における全ての蓄積された薬物動態データの母集団薬物動態及び曝露-反応解析(Griffin et al.2017,Antimicrob Agents Chemother.61(3),pii:e01714-16;Domachowske et al.Pediatr Infect Dis J.2018;37(9):886-892;及び実施例1を参照)、並びに早産度が様々な乳児を対象とした第2b相試験(実施例1を参照)の有効性データから、ニルセビマブ50mgのIM投与ではRSV流行期を通して保護効果が期待できるレベルのニルセビマブ血清濃度が維持されたが、体重の重い乳児では有効性の低下が認められた。
【0064】
第2b相試験では、目標濃度の信頼性の高い予測モデルであることが証明され、パリビズマブの用量選択にも使用されているモデルのコットンラットを対象としたRSVチャレンジ試験に基づき、目標血清濃度6.8μg/mLを選択した。第2b相試験では、5か月間のRSV流行期を通してニルセビマブの血清濃度を6.8μg/mL超に維持する用量を特定するために用いた母集団-PKモデルに基づいて、50mgのIM投与量を選択した。そして、実際、Domachowskeらは、ニルセビマブの第1b/2a相試験における薬物動態データから、50mgの単回投与により、大多数の乳児で6.8μg/mLを超える抗体血清濃度が少なくとも5か月間維持されることが実証されたことを報告している(Pediatr Infect Dis J.2018;37(9):886-892)。
【0065】
しかし、50mgの固定用量を用いた第2b相試験で得られたデータを用いてデータ解析及びモデリングを完了した結果、臨床的に有効なAUC0-∞曝露目標値13.4日・mg/mLが新たに定義された。体重5kg未満の乳児の97%で、50mgの投与により有効なAUC0-∞曝露目標値である13.4日mg/mLが達成されたが、体重5kg以上の乳児では、その59%超で50mg投与は最適ではなかった。
【0066】
さらなるモデリング(実施例2を参照)は、異なる固定用量(例えば、体重基準の投与を含む)が、RSV流行期を通して第2b相試験において臨床的に有効であることが実証された目標AUCを超えるニルセビマブ血清濃度を維持するための適切な用量を確実にすることを示す。これらの用量は以下のとおりである:初回のRSV流行期に入った5kgまでの乳児には、固定用量50mgのIM単回投与;初回のRSV流行期に入った5kg以上の体重の乳児には、固定用量100mgのIM単回投与;2回目のRSV流行期に入った乳児には、固定用量200mgのIM単回投与。投与時に生後2年目である乳児の大多数の体重は、10kg~15kgの範囲であると予想される。
【0067】
投与方法
一態様においては、本開示は、RSV感染症の治療又は予防を、それを必要とする患者に行う方法を提供する。
【0068】
いくつかの実施形態では、方法は、患者の年齢を決定することを含む。例えば、患者が生後1年目であるか、生後2年目であるかを決定することができる。いくつかの実施形態では、患者の年齢は、少なくとも1か月、少なくとも3か月、少なくとも6か月、少なくとも12か月(すなわち、1年)であり得る。いくつかの実施形態では、患者の年齢は、1年まで又は2年までであり得る。
【0069】
いくつかの実施形態では、患者の年齢を決定することには、患者の在胎期間を決定することが含まれる。例えば、いくつかの実施形態では、患者は、在胎期間が、少なくとも20週、少なくとも21週、少なくとも22週、少なくとも23週、少なくとも24週、少なくとも25週、少なくとも26週、少なくとも27週、少なくとも28週、少なくとも29週、少なくとも30週、少なくとも31週、少なくとも32週、少なくとも33週、少なくとも34週、少なくとも35週、少なくとも36週、少なくとも37週、少なくとも38週、又は少なくとも39週であり得る。例示的な実施形態では、患者は在胎期間が少なくとも29週であり得る。
【0070】
いくつかの実施形態では、方法は、患者が、患者の初回のRSV流行期を経験しているか、2回目のRSV流行期を経験しているかを決定することを含む。例えば、RSV流行期の開始が9月中旬~11月中旬までの範囲であり、流行期の終わりが4月中旬~5月中旬までの範囲である米国では、4月に生まれた患者は生まれた年の10月(月齢約7か月)に2回目のRSV流行期を経験している可能性があり(
図27Aを参照)、一方、6月に生まれた患者は同年の12月(同様に月齢約7か月)に初回のRSVを経験している可能性がある(
図27Bを参照)。
【0071】
いくつかの実施形態では、初回のRSV流行期を経験している患者は、年齢が少なくとも1か月、少なくとも3か月、又は少なくとも6か月であり得る。いくつかの実施形態では、2回目のRSV流行期を経験している患者は、年齢が少なくとも6か月、最大で2年までである。
【0072】
いくつかの実施形態では、方法は、患者の体重を決定することを含む。例えば、いくつかの実施形態では、患者の体重は、少なくとも4キログラム(kg)、少なくとも5kg、少なくとも6kg、少なくとも7kg、少なくとも8kg、少なくとも9kg、又は少なくとも10kgであり得る。いくつかの実施形態では、患者の体重は、5kgまで、6kgまで、7kgまで、8kgまで、9kgまで、10kgまで、11kgまで、12kgまで、13kgまで、14kgまで、15kgまで、16kgまで、17kgまで、18kgまで、19kgまで、又は20kgまでであり得る。例示的な実施形態では、患者の体重は、少なくとも5kg、最大20kgまでであり得る
【0073】
いくつかの実施形態では、患者は慢性肺疾患(CLD)を有し得る。早産児は出生時の肺の未熟さと、人工呼吸器及び/又は高濃度酸素の使用などの治療に起因する肺の損傷により、CLDのリスクが高い。CLDの乳児は、RSV感染により罹患する特別のリスクがある(Carpenter et al.2004 Pediatr Infect Dis J.23(1 Suppl):S33-40)。
【0074】
いくつかの実施態様では、患者は先天性心疾患を有し得る。いくつかの実施形態では、CHDには、肺血流に悪影響を及ぼし得る血行動態的に有意なCHDが含まれ得る。血行動態的に有意なCHDの小児は、RSV関連入院率が高く(Boyce et al.2000 J Pediatr.137(6):865-870)、RSVで入院したCHDの小児は、集中治療及び人工呼吸を必要とするリスクが高い(Altman et al.2000 Pediatr Cardiol.21(5):433-438)。
【0075】
いくつかの実施形態では、患者は、ダウン症候群の可能性がある。ダウン症候群の小児はダウン症候群ではない小児よりも重度のRSV感染リスクが有意に高いことが報告されている(Beckhaus et al.,Pediatrics2018;142(3):e20180225)。
【0076】
いくつかの実施形態では、患者は免疫不全を示す可能性がある。免疫不全は、原発性免疫不全又は後天性免疫不全であり得る。先天性又は後天性免疫不全の乳児(例えば、HIV感染症の乳児、又は造血幹細胞及び固形臓器の移植レシピエントを含む)では健康な乳児よりもRSV感染の頻度が高いか、より重症である可能性があることがいくつかの研究で報告されている(例えば、Lanari et al.,J Immunol Res.2014;2014:850831を参照)。
【0077】
いくつかの実施形態では、本方法は、抗RSV抗体又はその抗原結合断片、例えばニルセビマブ又はその抗原結合断片の固定用量を含む組成物を投与することを含む。いくつかの実施形態では、抗RSV抗体又はその抗原結合断片の固定用量は、用量50mg、用量100mg、用量150mg、用量200mg、用量250mg、又は用量300mgを含み得る。
【0078】
いくつかの実施形態では、方法は、患者の年齢及び/又は体重に応じて組成物を投与することを含む。
【0079】
例えば、例示的な実施形態では、方法は、患者が生後2年目であることに対応して、200mgのニルセビマブの固定用量を含む組成物を投与することを含み得る。
【0080】
別の例示的な実施形態では、方法は、患者の体重が少なくとも5kgであることに対応して、200mgのニルセビマブの固定用量を含む組成物を投与することを含み得る。
【0081】
例示的な実施形態では、方法は、患者が生後1年目であることに対応して、50mg又は100mgの固定用量の抗RSV抗体又はその抗原結合断片を含む組成物を患者の体重に応じて投与することを含み得る。例えば、体重が5kgまでの患者に対応して、50mgのニルセビマブの固定用量を含む組成物が投与され得る。それに加えて、又はその代わりに、体重が少なくとも5kgの患者に対応して、100mgのニルセビマブの固定用量を含む組成物が投与され得る。
【0082】
別の例示的な実施形態では、方法は、月齢3か月以上の患者に対応して、200mgの固定用量の抗RSV抗体又はその抗原結合断片を含む組成物を投与することを含み得る。
【0083】
さらなる例示的な実施形態では、方法は、患者の年齢を決定すること、及び月齢3か月以上の患者に対応して、200mgの固定用量の抗RSV抗体又はその抗原結合断片を含む組成物を投与すること、月齢3か月までの患者に対応して、100mgの固定用量の抗RSV抗体又はその抗原結合断片を含む組成物を投与することを含み得る。
【0084】
さらなる例示的な実施形態では、方法は、患者の体重を決定すること、及び体重が少なくとも5kgの患者に対応して、200mgの固定用量の抗RSV抗体又はその抗原結合断片を含む組成物を投与すること、体重が5kgまでの患者に対応して、100mgの固定用量の抗RSV抗体又はその抗原結合断片を含む組成物を投与することを含み得る。
【0085】
いくつかの実施形態では、方法は、患者が経験しているRSV流行期(すなわち、初回のRSV流行期又は2回目のRSV流行期)及び/又は患者の体重に応じて組成物を投与することを含む。
【0086】
例えば、例示的な実施形態では、方法は、初回のRSV流行期を経験している患者に対応して、100mgのニルセビマブの固定用量を含む組成物を投与することを含み得る。
【0087】
別の例示的な実施形態では、方法は、2回目のRSV流行期を経験している患者に対応して、200mgのニルセビマブの固定用量を含む組成物を投与することを含み得る。
【0088】
さらなる例示的な実施形態では、方法は、患者のRSV流行期及び患者の体重を決定することを含み得る。方法はさらに、初回のRSV流行期を経験し且つ少なくとも5kgの体重を有する患者に対応して、100mgの固定用量の抗RSV抗体又はその抗原結合断片を含む組成物を投与すること、及び2回目のRSV流行期を経験している患者に対応して、200mgの固定用量の抗RSV抗体又はその抗原結合断片を含む組成物を投与することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、初回のRSV流行期を経験し且つ5kgまでの体重を有する患者に対応して、50mgの固定用量の抗RSV抗体又はその抗原結合断片を含む組成物を投与することをさらに含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、用量は、RSV流行期の始めに投与され得る。例えば、米国では、RSV流行期の開始は9月中旬~11月中旬までの範囲であり、流行期ピークは12月下旬~2月中旬までの範囲であり、流行期の終わりは4月中旬~5月中旬までの範囲である(Rose et al.2018 MMWR Morb Mortal Wkly Rep.67:71-76)。低い緯度、例えばフロリダは、国内のほとんどの地域よりも早くRSV流行期が始まり、期間はより長い。(同上)。対照的に、南半球の大半は、一般に5月~9月の間にRSVが起こるが、熱帯又は亜熱帯の気候では、RSVの流行は多くの場合雨季と関連している(Sricharoenchai et al.2016 J Hum Virol Retrovirol 3(1):00076)。
【0090】
いくつかの実施形態では、用量は、非経口で投与され得る。いくつかの実施形態では、用量は、筋肉内投与され得る。
【0091】
いくつかの実施形態では、患者は、10日・mg/mL超、11日・mg/mL超、12日・mg/mL超、13日・mg/mL超、又は14日・mg/mL超のAUC0-∞を示す。好ましい実施形態では、患者は、13.4日・mg/mL超のAUC0-∞を示す。実施例2にさらに記載されるように、典型的な5か月のRSV流行期を通して13.4日・mg/mLを超える血清AUCをもたらすニルセビマブの投与量は、生後1年間の乳児及び生後2年間の高リスク小児におけるRSVに対する最適な保護を提供すると期待される。
【0092】
いくつかの実施形態では、方法は、RSV感染症の発症を予防又は遅延するために、抗RSV抗体又はその抗原結合断片を含む組成物を予防的に投与することを含む。患者にRSVの感染の症状が発現する前に、予防的な治療を開始し得る。RSV感染の診断又は症状発現の前、中、後に投与を行うことができる。症状発現後に治療を開始することにより、RSVの症状の重篤度を低下させたり、RSVの症状を完全に取り除いたりし得る。
【0093】
抗RSV抗体又はその抗原結合断片を含む組成物の投与は、他の治療の前、中、後に行うことができる。このような併用療法は、別の抗ウイルス化合物の使用中及び/又は使用後の抗RSV抗体又はその抗原結合断片の投与を含み得る。抗RSV抗体又はその抗原結合断片の投与は、他の薬剤の投与から時間、日、又はさらには週を隔てて行うことができる。
【0094】
組成物
別の態様では、本開示は、抗RSV抗体又はその抗原結合断片を含む組成物を記載する。いくつかの実施形態では、組成物は、ニルセビマブ又はその抗原結合断片を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、治療有効量の抗RSV抗体又はその抗原結合断片を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、国際公開第2018/160722A1号パンフレットに記載されているような製剤を含み得る。いくつかの実施形態では、組成物は、医薬組成物を含む。医薬組成物は、薬学的に許容される希釈剤、担体、可溶化剤、乳化剤、防腐剤、及び/又はアジュバントをさらに含み得る。さらに、本開示は、そのような医薬組成物を投与することによって患者を治療する方法を提供する。
【0095】
特定の実施形態では、組成物に含まれる許容される材料は、使用される用量及び濃度でレシピエントに対して非毒性である。特定の実施形態では、医薬組成物は、例えば、組成物のpH、浸透圧、粘度、透明度、色、等張性、臭気、無菌性、安定性、溶解速度若しくは放出速度、吸着性、又は浸透性を改変、維持又は保存するための製剤材料を含有し得る。このような実施形態において、好適な製剤材料としては、アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、又はリシンなど);抗微生物剤;抗酸化剤(アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム、又は亜硫酸水素ナトリウムなど);バッファ(ホウ酸塩、重炭酸塩、トリス-HCl、クエン酸塩、リン酸塩、又は他の有機酸など);増量剤(マンニトール、又はグリシンなど);キレート剤(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)など);錯化剤(カフェイン、ポリビニルピロリドン、ベータ-シクロデキストリン、又はヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリンなど);充填剤;単糖類、二糖類、及び他の炭水化物(グルコース、スクロース、マンノース、又はデキストリンなど);タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリンなど);着色剤、香味剤、及び希釈剤;乳化剤;親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど);低分子量ポリペプチド;塩形成対イオン(ナトリウムなど);防腐剤(塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸、又は過酸化水素など);溶媒(グリセリン、プロピレングリコール、又はポリエチレングリコールなど);糖アルコール(マンニトール、又はソルビトールなど);懸濁剤;界面活性剤、又は湿潤剤(例えば、pluronic、PEG、ソルビタンエステル(ポリソルベート20、ポリソルベート80など)、triton、トロメタミン、レシチン、コレステロール、チロキサポール);安定性増強剤(スクロース、又はソルビトールなど);張度増強剤(例えば、アルカリ金属ハロゲン化物、塩化ナトリウム又は塩化カリウム、マンニトール、ソルビトールなど);送達ビヒクル;希釈剤;賦形剤;並びに/或いは医薬アジュバントが挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
好適なビヒクル又は担体は、注射用水、生理食塩水、又は人工脳脊髄液であり得る。いくつかの実施形態では、ビヒクル又は担体は、非経口投与用組成物において一般的な他の材料が追加され得る。血清アルブミンと混合された中性緩衝生理食塩水又は生理食塩水も、さらなるビヒクルの例である。
【0097】
いくつかの実施形態では、組成物は、バッファを含む。例示的なバッファとしては、pH7.0~8.5のトリスバッファ、pH4.0~5.5の酢酸バッファ、又はpH5.5~7.4のヒスチジンバッファが挙げられる。いくつかの実施形態では、組成物は、ヒスチジン若しくはヒスチジン塩酸塩、又はこれらの混合物を含む。バッファがアミノ酸(例えば、ヒスチジン)を含む場合、アミノ酸又はアミノ酸塩は、アミノ酸の生理活性体(例えば、L型)を含み得る。いくつかの実施形態では、バッファは、少なくとも20mM、少なくとも30mM、少なくとも40mM、少なくとも50mM、少なくとも60mM、少なくとも70mM、少なくとも80mM、少なくとも90mM、少なくとも100mM、少なくとも110mM、少なくとも120mM、少なくとも130mM、少なくとも140mM、又は少なくとも150mMの濃度で含まれ得る。いくつかの実施形態では、バッファは、最大で50mMまで、最大で60mMまで、最大で70mMまで、最大で80mMまで、最大で90mMまで、最大で100mMまで、最大で110mMまで、最大で120mMまで、最大で130mMまで、最大で140mMまで、最大で150mMまで、又は最大で160mMまでの濃度で含まれ得る。例示的な実施形態では、バッファは、30mMのL-ヒスチジン/L-ヒスチジン塩酸塩を含む。
【0098】
いくつかの実施形態では、組成物は、例えば、ソルビトール、又は好適なその代替物を含む保湿剤を含み得る。
【0099】
製剤成分は、投与部位に許容される濃度で含まれ得る。特定の実施形態では、バッファを使用して、組成物を生理学的pH又は生理学的pHよりわずかに低いpHに維持することができる。いくつかの実施形態では、組成物のpHは、少なくとも5、少なくとも5.1、少なくとも5.2、少なくとも5.3、少なくとも5.4、少なくとも5.5、少なくとも5.6、少なくとも5.7、少なくとも5.8、少なくとも5.9、少なくとも6.0、少なくとも6.1、少なくとも6.2、少なくとも6.3、少なくとも6.4、少なくとも6.5、少なくとも6.6、少なくとも6.7、少なくとも6.8、少なくとも6.9、少なくとも7.0、少なくとも7.1、少なくとも7.2、少なくとも7.3、少なくとも7.4、少なくとも7.5、少なくとも7.6、少なくとも7.7、少なくとも7.8、又は少なくとも7.9であり得る。一実施形態では、組成物のpHは、最大で5.1まで、最大で5.2まで、最大で5.3まで、最大で5.4まで、最大で5.5まで、最大で5.6まで、最大で5.7まで、最大で5.8まで、最大で5.9まで、最大で6.0まで、最大で6.1まで、最大で6.2まで、最大で6.3まで、最大で6.4まで、最大で6.5まで、最大で6.6まで、最大で6.7まで、最大で6.8まで、最大で6.9まで、最大で7.0まで、最大で7.1まで、最大で7.2まで、最大で7.3まで、最大で7.4まで、最大で7.5まで、最大で7.6まで、最大で7.7まで、最大で7.8まで、最大で7.9まで、又は最大で8.0までであり得る。例示的な実施形態では、組成物のpHは5~8の範囲であり得る。例示的な実施形態では、組成物のpHは5.5~6.5の範囲であり得る。例示的な実施形態では、組成物のpHは、6.0であり得る。
【0100】
いくつかの実施形態では、組成物は、イオン性賦形剤を含み得る。製剤中の抗体の電荷状態を変化させるため、製剤中の抗体の分布を変化させるため、及び/又は製剤中の抗体をコロイド状に安定化させるために、イオン性賦形剤を抗体製剤中に含有させることができる。いくつかの実施形態では、イオン性賦形剤は、例えばリシン及び/又はアルギニンなどの荷電アミノ酸を含み得る。いくつかの実施形態では、イオン性賦形剤は、例えばアルギニン塩酸塩(アルギニン-HCl)、リシン塩酸塩(リシン-HCl)、又は塩化ナトリウム(NaCl)を含む塩を含み得る。いくつかの実施形態では、アミノ酸又はアミノ酸塩は、アミノ酸の生理活性体(例えば、L型)を含み得る。いくつかの実施形態では、イオン性賦形剤は、少なくとも20mM、少なくとも30mM、少なくとも40mM、少なくとも50mM、少なくとも60mM、少なくとも70mM、少なくとも80mM、少なくとも90mM、少なくとも100mM、少なくとも110mM、少なくとも120mM、少なくとも130mM、少なくとも140mM、又は少なくとも150mMの濃度で含まれ得る。いくつかの実施形態では、イオン性賦形剤は、最大で50mMまで、最大で60mMまで、最大で70mMまで、最大で80mMまで、最大で90mMまで、最大で100mMまで、最大で110mMまで、最大で120mMまで、最大で130mMまで、最大で140mMまで、最大で150mMまで、又は最大で160mMまでの濃度で含まれ得る。一実施形態では、イオン性賦形剤は50mM~150mMの範囲の濃度で含まれ得る。一実施形態では、イオン性賦形剤は75mM~100mMの範囲の濃度で含まれ得る。一実施形態では、イオン性賦形剤は、75mM又は80mMの濃度で存在するL-アルギニン塩酸塩を含み得る。
【0101】
いくつかの実施形態では、抗RSV抗体又はその抗原結合断片を含む組成物は、例えばスクロースを含む糖をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、組成物は、最大で0.5%(w/v)までのスクロース、最大で1%(w/v)までのスクロース、最大で5%(w/v)までのスクロース、最大で10%(w/v)までのスクロース、又は最大で15%(w/v)までのスクロースを含み得る。いくつかの実施形態では、糖は、少なくとも50mM、少なくとも60mM、少なくとも70mM、少なくとも80mM、少なくとも90mM、少なくとも100mM、少なくとも110mM、少なくとも120mM、少なくとも130mM、少なくとも140mM、又は少なくとも150mMの濃度で含まれ得る。いくつかの実施形態では、糖は、最大で60mMまで、最大で70mMまで、最大で80mMまで、最大で90mMまで、最大で100mMまで、最大で110mMまで、最大で120mMまで、最大で130mMまで、最大で140mMまで、最大で150mMまで、又は最大で160mMまでの濃度で含まれ得る。例示的な実施形態では、糖は、スクロースを100mM~140mMの範囲の濃度で含む。例えば、組成物は、スクロースを120mMの濃度で含み得る。
【0102】
いくつかの実施形態では、抗RSV抗体又はその抗原結合断片を含む組成物は、例えばポリソルベートを含む界面活性剤をさらに含み得る。ポリソルベートは、例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、及びポリソルベート80を含み得る。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、0.0001%(w/v)、少なくとも0.001%(w/v)、少なくとも0.002%(w/v)、少なくとも0.01%(w/v)、少なくとも0.02%(w/v)、少なくとも0.03%(w/v)、少なくとも0.04%(w/v)、少なくとも0.05%(w/v)、少なくとも0.06%(w/v)、少なくとも0.07%(w/v)、少なくとも0.08%(w/v)、少なくとも0.09%(w/v)、又は少なくとも0.1%(w/v)の濃度で含まれ得る。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、最大で0.0001%(w/v)まで、最大で0.0005%(w/v)まで、最大で0.001%(w/v)まで、最大で0.002%(w/v)まで、最大で0.01%(w/v)まで、最大で0.02%(w/v)まで、最大で0.03%(w/v)まで、最大で0.04%(w/v)まで、最大で0.05%(w/v)まで、最大で0.06%(w/v)まで、最大で0.07%(w/v)まで、最大で0.08%(w/v)まで、最大で0.09%(w/v)、又は最大で0.1%(w/v)までの濃度で含まれ得る。例えば、例示的な実施形態では、界面活性剤は、0.001%(w/v)~0.5%(w/v)の範囲、0.002%(w/v)~0.1%(w/v)の範囲、又は0.01%(w/v)~0.05%(w/v)の範囲の濃度で含まれ得る。例示的な実施形態では、ポリソルベート80は、0.01%(w/v)~0.05%(w/v)の範囲で含まれる。さらなる例示的な実施形態では、0.02%(w/v)のポリソルベート80が組成物に含まれる。別の例示的な実施形態では、0.04%(w/v)のポリソルベート80が組成物に含まれる。
【0103】
いくつかの実施形態では、抗RSV抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも50mg/mL、少なくとも60mg/mL、少なくとも70mg/mL、少なくとも80mg/mL、少なくとも90mg/mL、少なくとも100mg/mL、少なくとも110mg/mL、少なくとも120mg/mL、少なくとも130mg/mL、少なくとも140mg/mL、又は少なくとも150mg/mLの濃度であり得る。いくつかの実施形態では、抗RSV抗体又はその抗原結合断片は、最大で60mg/mLまで、最大で70mg/mLまで、最大で80mg/mLまで、最大で90mg/mLまで、最大で100mg/mLまで、最大で110mg/mLまで、最大で120mg/mLまで、最大で130mg/mLまで、最大で140mg/mLまで、最大で150mg/mLまで、又は最大で160mg/mLまでの濃度であり得る。例示的な実施形態では、抗RSV抗体又はその抗原結合断片は、約100mg/ml~約165mg/mlの濃度で含まれ得る。例示的な実施形態では、ニルセビマブは、100mg/mLの濃度であり得る。
【0104】
いくつかの実施形態では、組成物は、-20℃~-70℃保管され得る。
【0105】
いくつかの実施形態では、組成物は、2℃~8℃で保管され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の製剤は、室温で、又は2℃~8℃の範囲の温度(例えば、5℃を含む)での長期間の保管に対して安定である。本明細書で使用される場合、室温は一般に22℃~25℃の範囲の温度である。好適には、医薬製剤は、2℃~8℃(例えば、5℃を含む)の範囲の温度で少なくとも1か月間、少なくとも3か月間、又は少なくとも6か月間の貯蔵した後も安定である。本明細書で使用される場合、保存期間の間「安定な」(又は「安定性」)という用語は、製剤が凝集、分解、半抗体の形成、及び/又は断片化に抵抗することを示すために使用される。モノクローナル抗体の安定性は、基準と比較して、高性能サイズ排除クロマトグラフィー(HPSEC)、静的光散乱(SLS)、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)、円偏光二色性(CD)、尿素変性技術(urea unfolding technique)、内在性トリプトファン蛍光、示差走査熱量測定、及び/又はANS結合技術によって測定される凝集度、分解、半抗体の形成、又は断片化によって評価することができる。
【0106】
非経口投与が意図される場合、使用のための治療組成物は、薬学的に受容可能なビヒクル中の抗RSV抗体又はその抗原結合断片を含む、発熱物質を含まない非経口的に受容可能な水溶液の形態で提供され得る。いくつかの実施形態では、非経口注射に特に好適なビヒクルは、抗体が滅菌等張溶液として製剤化され、適切に保存される滅菌蒸留水である。追加的又は代替的に、非経口投与に適した製剤には、抗RSV抗体又はその抗原結合断片の無菌水性調製物、又は抗RSV抗体又はその抗原結合断片の無菌粉末の分散液が含まれ得、これらはレシピエントの血液と等張であり得る。液体調製物に含まれ得る等張剤には、糖、バッファ、及び塩化ナトリウムが含まれる。抗RSV抗体又はその抗原結合断片の溶液は、水で調製することができ、任意選択により非毒性の界面活性剤を混合することができる。抗RSV抗体又はその抗原結合断片担体の分散液は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、植物油、グリセロールエステル、及びこれらの混合物で調製することができる。いくつかの実施形態では、最終的な剤形は、製造及び保管条件下で、無菌で、流動性があり、且つ安定であり得る。必要な流動性は、例えば、リポソームの使用により、分散体の場合には適切な粒度の利用により、又は界面活性剤の使用により得ることができる。液体調製物の滅菌は、抗RSV抗体又はその抗原結合断片の生物活性の保存に適した方法によって、例えば濾過滅菌によって成し得る。粉末の調製方法としては、滅菌注射溶液の真空乾燥及び凍結乾燥が挙げられる。その後の微生物汚染は、種々の抗微生物剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどの抗菌剤、抗ウイルス剤、及び抗真菌剤によって防止することができる。長期間にわたる抗RSV抗体又はその抗原結合断片の吸収は遅延剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを含有させることによって達成することができる。
【0107】
特定の実施形態では、組成物は、抗RSV抗体又はその抗原結合断片と、注射可能なミクロスフェア、生体内分解性粒子、ポリマー化合物(ポリ乳酸又はポリグリコール酸など)、ビーズ又はリポソームなどの薬剤との製剤を含むことができ、これはデポー注射により送達することができる製品の制御放出又は持続放出を提供することができる。特定の実施形態では、循環血液中の持続期間を促進する効果を有するヒアルロン酸も使用することができる。特定の実施形態では、抗体の導入に植え込み型薬物送達デバイスが使用され得る。
【0108】
いくつかの実施形態では、組成物は都合よく単位剤形で提供され得る。例えば、例示的な医薬単位用量としては、ニルセビマブ50mg、ニルセビマブ100mg、又はニルセビマブ200mgの用量が挙げられる。このような単位用量は、薬学の技術分野においてよく知られた方法によって調製することができる。いくつかの実施形態では、単位用量は、例えば筋肉内投与を含む非経口投与に好適である。
【0109】
例示的方法の実施形態-患者の年齢及び体重
1.RSV感染症の治療又は予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、
患者の年齢を決定すること;
生後2年目の患者に対応して、200ミリグラム(mg)の固定用量の抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を含む組成物を投与すること;
生後1年目の患者に対応して、患者の体重を決定すること;及び
少なくとも5キログラム(kg)の体重を有する患者に対応して、100mgの固定用量の抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を含む組成物を投与すること
を含み、
抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、RSV Aの中和アッセイにおいてIC50が5.0ng/ml以下であるか、若しくはRSV B9320の中和アッセイにおいてIC50が3.0ng/ml以下であるか、又はその両方である方法。
【0110】
2.抗RSVモノクローナル抗体又は抗RSVモノクローナル抗体の抗原結合断片は、配列番号1と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列、及び/又は配列番号2と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列を含む、実施形態1に記載の方法。
【0111】
3.抗RSVモノクローナル抗体又は抗RSVモノクローナル抗体の抗原結合断片は、配列番号1及び/又は配列番号2を含む配列を含む、実施形態1又は2に記載の方法。
【0112】
4.抗RSVモノクローナル抗体又は抗RSVモノクローナル抗体の抗原結合断片は、
配列QASQDIVNYLN(配列番号3)と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列;
配列VASNLET(配列番号4)と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列;
配列QQYDNLPLT(配列番号5)と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列;
配列DYIIN(配列番号6)と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列;
配列GIIPVLGTVHYGPKFQG(配列番号7)と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列;及び/又は
配列ETALVVSETYLPHYFDN(配列番号8)と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列
を含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0113】
5.抗RSVモノクローナル抗体又は抗RSVモノクローナル抗体の抗原結合断片は、QASQDIVNYLN(配列番号3)、VASNLET(配列番号4)、QQYDNLPLT(配列番号5)、DYIIN(配列番号6)、GIIPVLGTVHYGPKFQG(配列番号7)、及び/又はETALVVSETYLPHYFDN(配列番号8)を含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0114】
6.抗RSVモノクローナル抗体又は抗RSVモノクローナル抗体の抗原結合断片は、QASQDIVNYLN(配列番号3)、VASNLET(配列番号4)、QQYDNLPLT(配列番号5)、DYIIN(配列番号6)、GIIPVLGTVHYGPKFQG(配列番号7)、及びETALVVSETYLPHYFDN(配列番号8)を含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0115】
7.抗RSVモノクローナル抗体は、配列番号9の配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列、及び/又は配列番号10の配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列を含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0116】
8.抗RSVモノクローナル抗体はニルセビマブを含む、又は抗RSVモノクローナル抗体の抗原結合断片はニルセビマブの抗原結合断片を含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0117】
9.少なくとも5kgの体重を有する患者は、10kgまで、15kgまで、又は20kgまでの体重を有する、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0118】
10.生後1年目である患者は、年齢が少なくとも1か月、少なくとも3か月、又は少なくとも6か月である、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0119】
11.生後2年目である患者は、年齢が少なくとも1年、最大で2年までである、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0120】
12.患者は在胎期間が少なくとも29週である、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0121】
13.患者は、13.4日・mg/mL超のAUC0-∞を示す、実施形態1~12のいずれか1つに記載の方法。
【0122】
14.RSV流行期の始めに用量を投与することを含む、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法。
【0123】
15.筋肉内に用量を投与することを含む、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0124】
16.患者は、ダウン症候群、免疫不全、先天性肺疾患、若しくは先天性心疾患、又はこれらの組み合わせを示す、実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法。
【0125】
17.患者は、先天性肺疾患、若しくは先天性心疾患、又はその両方を示す、実施形態1~16のいずれか1つに記載の方法。
【0126】
18.イオン性賦形剤、バッファ、糖、及び界面活性剤の少なくとも1つを含む組成物で、抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を投与することを含む、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
【0127】
19.イオン性賦形剤は、L-アルギニン塩酸塩を80mMの濃度で含む、実施形態28に記載の方法。
【0128】
20.バッファは30mMのL-ヒスチジン/L-ヒスチジン塩酸塩を含み、糖は120mMのスクロースを含み、界面活性剤はポリソルベート80を0.01%(w/v)~0.05%(w/v)の範囲で含む、実施形態18又は19に記載の医薬単位用量。
【0129】
21.組成物中の抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、高性能サイズ排除クロマトグラフィー(HPSEC)による測定で、2℃~8℃で少なくとも3か月間安定である、実施形態18~20のいずれか1つに記載の方法。
【0130】
22.組成物は5.5~6.5の範囲のpHを有する、実施形態18~21のいずれか1つに記載の方法。
【0131】
23.抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、組成物中に100mg/mLの濃度で含まれる、実施形態18~22のいずれか1つに記載の方法。
【0132】
例示的方法の実施形態-患者の年齢又は体重
1.RSV感染症の治療又は予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、少なくとも5キログラム(kg)の体重を有する患者に、200ミリグラム(mg)の固定用量の抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を投与することを含み、抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、RSV Aの中和アッセイにおいてIC50が5.0ng/ml以下であるか、若しくはRSV B9320の中和アッセイにおいてIC50が3.0ng/ml以下であるか、又はその両方である方法。
【0133】
2.RSV感染症の治療又は予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、
患者の体重を決定すること;
少なくとも5キログラム(kg)の体重を有する患者に、200ミリグラム(mg)の固定用量の抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を投与することであって、ここで、抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、RSV Aの中和アッセイにおいてIC50が5.0ng/ml以下であるか、若しくはRSV B9320の中和アッセイにおいてIC50が3.0ng/ml以下であるか、又はその両方であること:
5kgまでの体重を有する患者に、100mgの固定用量の抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を投与することであって、ここで、抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、RSV Aの中和アッセイにおいてIC50が5.0ng/ml以下であるか、若しくはRSV B9320の中和アッセイにおいてIC50が3.0ng/ml以下であるか、又はその両方であること
を含む方法。
【0134】
3.少なくとも5kgの体重を有する患者は、10kgまで、15kgまで、又は20kgまでの体重を有する、実施形態1又は2に記載の方法。
【0135】
4.RSV感染症の治療又は予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、
患者の年齢を決定すること;及び
月齢3か月以上の患者に、200ミリグラム(mg)の固定用量の抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を投与することであって、ここで、抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、RSV Aの中和アッセイにおいてIC50が5.0ng/ml以下であるか、若しくはRSV B9320の中和アッセイにおいてIC50が3.0ng/ml以下であるか、又はその両方であること
を含む方法。
【0136】
5.患者は、月齢6か月以上である、実施形態4に記載の方法。
【0137】
6.患者は、2歳までである、実施形態4又は5に記載の方法。
【0138】
7.RSV感染症の治療又は予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、
患者の年齢を決定すること;
月齢3か月以上の患者に200ミリグラム(mg)の固定用量の抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を投与すること;
月齢3か月までの患者に100mgの固定用量の抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を投与すること
を含み、
抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、RSV Aの中和アッセイにおいてIC50が5.0ng/ml以下であるか、若しくはRSV B9320の中和アッセイにおいてIC50が3.0ng/ml以下であるか、又はその両方である方法。
【0139】
8.月齢3か月以上の患者は、2歳までである、実施形態7に記載の方法。
【0140】
9.RSV感染症の治療又は予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、
患者の年齢を決定すること;
月齢6か月以上の患者に200ミリグラム(mg)の固定用量の抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を投与すること;
月齢6か月までの患者に100mgの固定用量の抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を投与すること
を含み、
抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、RSV Aの中和アッセイにおいてIC50が5.0ng/ml以下であるか、若しくはRSV B9320の中和アッセイにおいてIC50が3.0ng/ml以下であるか、又はその両方である方法。
【0141】
10.月齢6か月以上の患者は、2歳までである、実施形態9に記載の方法。
【0142】
11.患者は在胎期間が少なくとも29週である、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0143】
12.患者は、13.4日・mg/mL超のAUC0-∞を示す、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0144】
13.RSV流行期の始めに用量を投与することを含む、実施形態1~12のいずれか1つに記載の方法。
【0145】
14.筋肉内に用量を投与することを含む、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法。
【0146】
15.患者は、ダウン症候群、免疫不全、先天性肺疾患、若しくは先天性心疾患、又はこれらの組み合わせを示す、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0147】
16.患者は、先天性肺疾患、若しくは先天性心疾患、又はその両方を示す、実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法。
【0148】
17.イオン性賦形剤、バッファ、糖、及び界面活性剤の少なくとも1つを含む組成物で、抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を投与することを含む、実施形態1~16のいずれか1つに記載の方法。
【0149】
18.イオン性賦形剤は、L-アルギニン塩酸塩を80mMの濃度で含む、実施形態17に記載の方法。
【0150】
19.バッファは30mMのL-ヒスチジン/L-ヒスチジン塩酸塩を含み、糖は120mMのスクロースを含み、且つ/又は界面活性剤はポリソルベート80を0.01%(w/v)~0.05%(w/v)の範囲で含む、実施形態17又は実施形態18に記載の方法。
【0151】
20.組成物中の抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、高性能サイズ排除クロマトグラフィー(HPSEC)による測定で、2℃~8℃で少なくとも3か月間安定である、実施形態18~19のいずれか1つに記載の方法。
【0152】
21.組成物は5.5~6.5の範囲のpHを有する、実施形態18~20のいずれか1つに記載の方法。
【0153】
22.抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、組成物中に100mg/mLの濃度で含まれる、実施形態18~21のいずれか1つに記載の方法。
【0154】
23.抗RSVモノクローナル抗体又は抗RSVモノクローナル抗体の抗原結合断片は、配列番号1と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列、及び/又は配列番号2と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列を含む、実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法。
【0155】
24.抗RSVモノクローナル抗体又は抗RSVモノクローナル抗体の抗原結合断片は、配列番号1及び/又は配列番号2を含む配列を含む、実施形態1~23のいずれか1つに記載の方法。
【0156】
25.抗RSVモノクローナル抗体又は抗RSVモノクローナル抗体の抗原結合断片は、
配列QASQDIVNYLN(配列番号3)と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列;
配列VASNLET(配列番号4)と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列;
配列QQYDNLPLT(配列番号5)と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列;
配列DYIIN(配列番号6)と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列;
配列GIIPVLGTVHYGPKFQG(配列番号7)と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列;及び/又は
配列ETALVVSETYLPHYFDN(配列番号8)と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列
を含む、実施形態1~24のいずれか1つに記載の方法。
【0157】
26.抗RSVモノクローナル抗体又は抗RSVモノクローナル抗体の抗原結合断片は、QASQDIVNYLN(配列番号3)、VASNLET(配列番号4)、QQYDNLPLT(配列番号5)、DYIIN(配列番号6)、GIIPVLGTVHYGPKFQG(配列番号7)、及び/又はETALVVSETYLPHYFDN(配列番号8)を含む、実施形態1~25のいずれか1つに記載の方法。
【0158】
27.抗RSVモノクローナル抗体又は抗RSVモノクローナル抗体の抗原結合断片は、QASQDIVNYLN(配列番号3)、VASNLET(配列番号4)、QQYDNLPLT(配列番号5)、DYIIN(配列番号6)、GIIPVLGTVHYGPKFQG(配列番号7)、及びETALVVSETYLPHYFDN(配列番号8)を含む、実施形態1~26のいずれか1つに記載の方法。
【0159】
28.抗RSVモノクローナル抗体は、配列番号9の配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列、及び/又は配列番号10の配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列を含む、実施形態1~27のいずれか1つに記載の方法。
【0160】
29.抗RSVモノクローナル抗体はニルセビマブを含む、又は抗RSVモノクローナル抗体の抗原結合断片はニルセビマブの抗原結合断片を含む、実施形態1~28のいずれか1つに記載の方法。
【0161】
例示的方法の実施形態-患者のRSV流行期及び体重
1.RSV感染症の治療又は予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、
患者が初回のRSV流行期を経験しているか、2回目のRSV流行期を経験しているかを決定すること;
2回目のRSV流行期を経験している患者に対応して、200ミリグラム(mg)の固定用量の抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を含む組成物を投与すること;
初回のRSV流行期を経験している患者に対応して、患者の体重を決定すること;及び
少なくとも5キログラム(kg)の体重を有する患者に対応して、100mgの固定用量の抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を含む組成物を投与すること
を含み、
抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、RSV Aの中和アッセイにおいてIC50が5.0ng/ml以下であるか、若しくはRSV B9320の中和アッセイにおいてIC50が3.0ng/ml以下であるか、又はその両方である方法。
【0162】
2.抗RSVモノクローナル抗体又は抗RSVモノクローナル抗体の抗原結合断片は、配列番号1と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列、及び/又は配列番号2と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列を含む、実施形態1に記載の方法。
【0163】
3.抗RSVモノクローナル抗体又は抗RSVモノクローナル抗体の抗原結合断片は、配列番号1及び/又は配列番号2を含む配列を含む、実施形態1又は2に記載の方法。
【0164】
4.抗RSVモノクローナル抗体又は抗RSVモノクローナル抗体の抗原結合断片は、
配列QASQDIVNYLN(配列番号3)と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列;
配列VASNLET(配列番号4)と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列;
配列QQYDNLPLT(配列番号5)と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列;
配列DYIIN(配列番号6)と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列;
配列GIIPVLGTVHYGPKFQG(配列番号7)と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列;及び/又は
配列ETALVVSETYLPHYFDN(配列番号8)と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列
を含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0165】
5.抗RSVモノクローナル抗体又は抗RSVモノクローナル抗体の抗原結合断片は、QASQDIVNYLN(配列番号3)、VASNLET(配列番号4)、QQYDNLPLT(配列番号5)、DYIIN(配列番号6)、GIIPVLGTVHYGPKFQG(配列番号7)、及び/又はETALVVSETYLPHYFDN(配列番号8)を含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0166】
6.抗RSVモノクローナル抗体又は抗RSVモノクローナル抗体の抗原結合断片は、QASQDIVNYLN(配列番号3)、VASNLET(配列番号4)、QQYDNLPLT(配列番号5)、DYIIN(配列番号6)、GIIPVLGTVHYGPKFQG(配列番号7)、及びETALVVSETYLPHYFDN(配列番号8)を含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0167】
7.抗RSVモノクローナル抗体は、配列番号9の配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列、及び/又は配列番号10の配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列を含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0168】
8.抗RSVモノクローナル抗体はニルセビマブを含む、又は抗RSVモノクローナル抗体の抗原結合断片はニルセビマブの抗原結合断片を含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0169】
9.少なくとも5kgの体重を有する患者は、10kgまで、15kgまで、又は20kgまでの体重を有する、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0170】
10.初回のRSV流行期を経験している患者は、年齢が少なくとも1か月、少なくとも3か月、又は少なくとも6か月である、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0171】
11.2回目のRSV流行期を経験している患者は、年齢が少なくとも6か月、最大で2年までである、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0172】
12.患者は在胎期間が少なくとも29週である、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0173】
13.患者は、13.4日・mg/mL超のAUC0-∞を示す、実施形態1~12のいずれか1つに記載の方法。
【0174】
14.RSV流行期の始めに用量を投与することを含む、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法。
【0175】
15.筋肉内に用量を投与することを含む、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0176】
16.患者は、ダウン症候群、免疫不全、先天性肺疾患、若しくは先天性心疾患、又はこれらの組み合わせを示す、実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法。
【0177】
17.患者は、先天性肺疾患、若しくは先天性心疾患、又はその両方を示す、実施形態1~16のいずれか1つに記載の方法。
【0178】
18.イオン性賦形剤、バッファ、糖、及び界面活性剤の少なくとも1つを含む組成物で、抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を投与することを含む、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
【0179】
19.イオン性賦形剤は、L-アルギニン塩酸塩を80mMの濃度で含む、実施形態28に記載の方法。
【0180】
20.バッファは30mMのL-ヒスチジン/L-ヒスチジン塩酸塩を含み、糖は120mMのスクロースを含み、界面活性剤はポリソルベート80を0.01%(w/v)~0.05%(w/v)の範囲で含む、実施形態18又は19に記載の医薬単位用量。
【0181】
21.組成物中の抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、高性能サイズ排除クロマトグラフィー(HPSEC)による測定で、2℃~8℃で少なくとも3か月間安定である、実施形態18~20のいずれか1つに記載の方法。
【0182】
22.組成物は5.5~6.5の範囲のpHを有する、実施形態18~21のいずれか1つに記載の方法。
【0183】
23.抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、組成物中に100mg/mLの濃度で含まれる、実施形態18~22のいずれか1つに記載の方法。
【0184】
例示的な方法の実施形態-患者のRSV流行期
1.RSV感染症の治療又は予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、
患者が初回のRSV流行期を経験しているか、2回目のRSV流行期を経験しているかを決定すること;
2回目のRSV流行期を経験している患者に、200ミリグラム(mg)の固定用量の抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を投与することであって、ここで、抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、RSV Aの中和アッセイにおいてIC50が5.0ng/ml以下であるか、若しくはRSV B9320の中和アッセイにおいてIC50が3.0ng/ml以下であるか、又はその両方であること
を含む方法。
【0185】
2.患者は、月齢3か月以上である、実施形態1に記載の方法。
【0186】
3.患者は、月齢6か月以上である、実施形態1に記載の方法。
【0187】
4.患者は、2歳までである、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0188】
5.RSV感染症の治療又は予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、
患者が初回のRSV流行期を経験しているか、2回目のRSV流行期を経験しているかを決定すること;
患者に200ミリグラム(mg)の固定用量の抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を投与することであって、ここで、患者は2回目のRSV流行期を経験していること;
患者に100mgの固定用量の抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を投与することであって、ここで、患者は初回のRSV流行期を経験していること
を含み、
抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、RSV Aの中和アッセイにおいてIC50が5.0ng/ml以下であるか、若しくはRSV B9320の中和アッセイにおいてIC50が3.0ng/ml以下であるか、又はその両方である方法。
【0189】
8.患者は、2歳までである、実施形態7に記載の方法。
【0190】
9.患者は少なくとも5kgの体重を有する、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0191】
10.患者は在胎期間が少なくとも29週である、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0192】
11.患者は、13.4日・mg/mL超のAUC0-∞を示す、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0193】
12.RSV流行期の始めに用量を投与することを含む、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0194】
13.筋肉内に用量を投与することを含む、実施形態1~12のいずれか1つに記載の方法。
【0195】
14.患者は、ダウン症候群、免疫不全、先天性肺疾患、若しくは先天性心疾患、又はこれらの組み合わせを示す、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法。
【0196】
15.患者は、先天性肺疾患、若しくは先天性心疾患、又はその両方を示す、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0197】
16.イオン性賦形剤、バッファ、糖、及び界面活性剤の少なくとも1つを含む組成物で、抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を投与することを含む、実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法。
【0198】
17.イオン性賦形剤は、L-アルギニン塩酸塩を80mMの濃度で含む、実施形態16に記載の方法。
【0199】
18.バッファは30mMのL-ヒスチジン/L-ヒスチジン塩酸塩を含み、糖は120mMのスクロースを含み、且つ/又は界面活性剤はポリソルベート80を0.01%(w/v)~0.05%(w/v)の範囲で含む、実施形態16又は実施形態17に記載の方法。
【0200】
19.組成物中の抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、高性能サイズ排除クロマトグラフィー(HPSEC)による測定で、2℃~8℃で少なくとも3か月間安定である、実施形態17~19のいずれか1つに記載の方法。
【0201】
20.組成物は5.5~6.5の範囲のpHを有する、実施形態17~21のいずれか1つに記載の方法。
【0202】
21.抗RSVモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、組成物中に100mg/mLの濃度で含まれる、実施形態17~21のいずれか1つに記載の方法。
【0203】
22.抗RSVモノクローナル抗体又は抗RSVモノクローナル抗体の抗原結合断片は、配列番号1と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列、及び/又は配列番号2と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列を含む、実施形態1~21のいずれか1つに記載の方法。
【0204】
23.抗RSVモノクローナル抗体又は抗RSVモノクローナル抗体の抗原結合断片は、配列番号1及び/又は配列番号2を含む配列を含む、実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法。
【0205】
24.抗RSVモノクローナル抗体又は抗RSVモノクローナル抗体の抗原結合断片は、
配列QASQDIVNYLN(配列番号3)と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列;
配列VASNLET(配列番号4)と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列;
配列QQYDNLPLT(配列番号5)と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列;
配列DYIIN(配列番号6)と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列;
配列GIIPVLGTVHYGPKFQG(配列番号7)と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列;及び/又は
配列ETALVVSETYLPHYFDN(配列番号8)と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列
を含む、実施形態1~23のいずれか1つに記載の方法。
【0206】
25.抗RSVモノクローナル抗体又は抗RSVモノクローナル抗体の抗原結合断片は、QASQDIVNYLN(配列番号3)、VASNLET(配列番号4)、QQYDNLPLT(配列番号5)、DYIIN(配列番号6)、GIIPVLGTVHYGPKFQG(配列番号7)、及び/又はETALVVSETYLPHYFDN(配列番号8)を含む、実施形態1~24のいずれか1つに記載の方法。
【0207】
26.抗RSVモノクローナル抗体又は抗RSVモノクローナル抗体の抗原結合断片は、QASQDIVNYLN(配列番号3)、VASNLET(配列番号4)、QQYDNLPLT(配列番号5)、DYIIN(配列番号6)、GIIPVLGTVHYGPKFQG(配列番号7)、及びETALVVSETYLPHYFDN(配列番号8)を含む、実施形態1~25のいずれか1つに記載の方法。
【0208】
27.抗RSVモノクローナル抗体は、配列番号9の配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列、及び/又は配列番号10の配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一である配列を含む、実施形態1~26のいずれか1つに記載の方法。
【0209】
28.抗RSVモノクローナル抗体はニルセビマブを含む、又は抗RSVモノクローナル抗体の抗原結合断片はニルセビマブの抗原結合断片を含む、実施形態1~27のいずれか1つに記載の方法。
【0210】
例示的な医薬単位用量実施形態
1.100mgのニルセビマブを含む医薬単位用量であって、筋肉内投与に好適である医薬単位用量。
【0211】
2.200mgのニルセビマブを含む医薬単位用量であって、筋肉内投与に好適である医薬単位用量。
【0212】
3.ニルセビマブを含む組成物を含み、組成物はイオン性賦形剤、バッファ、糖、及び界面活性剤の少なくとも1つをさらに含む、実施形態1又は2に記載の医薬単位用量。
【0213】
4.イオン性賦形剤は、L-アルギニン塩酸塩を80mMの濃度で含む、実施形態3に記載の医薬単位用量。
【0214】
5.バッファは30mMのL-ヒスチジン/L-ヒスチジン塩酸塩を含み、糖は120mMのスクロースを含み、界面活性剤はポリソルベート80を0.01%(w/v)~0.05%(w/v)の範囲で含む、実施形態3又は実施形態4に記載の医薬単位用量。
【0215】
6.組成物中のニルセビマブは、高性能サイズ排除クロマトグラフィー(HPSEC)による測定で、2℃~8℃で少なくとも3か月間安定である、実施形態1~5のいずれか1つに記載の医薬単位用量。
【0216】
7.組成物は5.5~6.5の範囲のpHを有する、実施形態3~6のいずれか1つに記載の医薬単位用量。
【0217】
8.ニルセビマブは、100mg/mLの濃度で含まれる、実施形態1~7のいずれか1つに記載の医薬単位用量。
【0218】
例示的医薬組成物実施形態
1.RSV感染症の治療又は予防のための医薬組成物であって、100mgのニルセビマブを含み、生後1年目の患者に投与され、患者は少なくとも5kgの体重を有する医薬組成物。
【0219】
2.患者が初回のRSV流行期に入ったときに投与される、実施形態1に記載の医薬組成物。
【0220】
3.RSV感染症の治療又は予防のための医薬組成物であって、100mgのニルセビマブを含み、初回のRSV流行期に入っている患者に投与される医薬組成物。
【0221】
4.RSV感染症の治療又は予防のための医薬組成物であって、200mgのニルセビマブを含み、生後2年目の患者に投与される医薬組成物。
【0222】
5.患者は2回目のRSV流行期に入っている、実施形態3に記載の医薬組成物。
【0223】
6.RSV感染症の治療又は予防のための医薬組成物であって、200mgのニルセビマブを含み、2回目のRSV流行期に入っている患者に投与される医薬組成物。
【0224】
7.患者は、先天性肺疾患、若しくは先天性心疾患、又はその両方を示す、実施形態1~6のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0225】
8.患者は、13.4日・mg/mL超のAUC0-∞を示す、実施形態1~7のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0226】
9.5.5~6.5の範囲のpHを有する、実施形態1~8のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0227】
10.イオン性賦形剤、バッファ、糖、及び界面活性剤の少なくとも1つをさらに含む、実施形態1~9のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0228】
11.L-アルギニン塩酸塩を80mMの濃度で含む、実施形態10に記載の医薬組成物。
【0229】
12.バッファは30mMのL-ヒスチジン/L-ヒスチジン塩酸塩を含み、糖は120mMのスクロースを含み、界面活性剤はポリソルベート80を0.01%(w/v)~0.05%(w/v)の範囲で含む、実施形態10又は11に記載の医薬組成物。
【0230】
13.医薬組成物中のニルセビマブは、高性能サイズ排除クロマトグラフィー(HPSEC)による測定で、2℃~8℃で少なくとも3か月間安定である、実施形態1~12のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0231】
14.ニルセビマブは、100mg/mLの濃度で含まれる、実施形態1~13のいずれか1つに記載の医薬単位用量。
【0232】
本発明を以下の実施例によって説明する。特定の実施例、物質、量、及び手順は、本明細書に記載される本発明の範囲及び精神に従って広義に解釈されるべきものと理解すべきである。
【実施例】
【0233】
実施例1:第2b相試験
この実施例では、ニルセビマブの第2b相試験について記載する。本試験の主要な目的は、投与後最初の150日間(すなわち、151日目;典型的な5か月間のRSV流行期の期間)における受診を要したRSV確認下気道感染(LRTI)の減少に対するニルセビマブの有効性をプラセボと比較することであった。有効性副次目的には、151日目までの間に確認されたRSVによる入院の減少に対するニルセビマブとプラセボの比較が含まれた。その他の目的としては、ニルセビマブとプラセボの安全性及び忍容性の比較、並びにニルセビマブに対する薬物動態(PK)及び抗薬物抗体(ADA)反応の評価が含まれた。
【0234】
第2b相試験での目標血清濃度6.8μg/mLは、目標濃度の信頼性の高い予測モデルであることが証明され、パリビズマブの用量選択にも使用されているモデルのコットンラットを対象としたRSVチャレンジ試験に基づいた(Synagis Summary of Product Characteristics,2018)。第2b相試験でのIM投与量50mgの選択は、RSV流行期を通してニルセビマブの血清濃度を6.8μg/mL超に維持する用量を特定するために用いた母集団-PKモデルに基づいた。ニルセビマブは、プラセボとの比較で、受診を要したRSV確認LRTIの統計学的に有意な相対リスク減少(RRR)を達成し、さらに安全性を実証することにより、本試験におけるこの曝露目標(95%を超える被験者で達成)及び主要エンドポイントを満たした。
【0235】
第2b相試験は無作為化二重盲検プラセボ対照試験であり、在胎期間29週0日~34週6日の間に生まれ、初回のRSV流行期に入った健康な早産児を対象に、ニルセビマブの安全性、有効性、PK、及び免疫原性を評価した(
図3を参照)。被験者は、予防接種に関する合同委員会(Joint Committee on Vaccination and Immunisation)、米国小児科学会(American Academy of Pediatrics)、又はその他の地方若しくは国のガイドラインに基づくパリビズマブによるRSV予防には適格ではなく、プラセボ対照薬群は可能であった。被験者を、50mgのニルセビマブ、又はプラセボの単回IM投与を受けるように2:1の比に無作為に割り付けた。無作為化は、半球(北、南)及び無作為化時の被験者の年齢(3か月以下、3か月超6か月以下、6か月超)により層別化した。投与後、被験者を360日間追跡した。
【0236】
LRTIに対する試験期間を通して被験者をモニターした。呼吸器疾患のために受診した全被験者(入院又は外来診療)について、LRTIの発症を評価した。呼吸器疾患による一次入院、入院中の呼吸器官の悪化、又は呼吸器疾患による救急外来受診を含む外来受診をした被験者について、呼吸分泌物の診断検査及びLRTIの有無に関する臨床評価によりRSVを評価した。RSVの検査は、米国FDAが承認し且つヨーロッパ適合(Conformite Europeenne)マークが付されたインビトロ診断リアルタイムRT-PCRアッセイ(Lyra RSV+hMPVアッセイ、Quidel Corporation,San Diego,CA;www.quidel.com)を用いて一元的に実施した。RSV LRTIの診断には、RT-PCR中央アッセイによりRSV陽性の呼吸器検体が必要であった。
【0237】
被験者母集団
内訳.主要解析のデータカットオフ(DCO)日の時点で、全被験者を登録し、無作為化された全被験者の完全なデータセットを151日目までの間、入手可能とした。全体で1,453例(969例、ニルセビマブ;484例、プラセボ)が無作為化され、1,447例にニルセビマブ(968例)又はプラセボ(479例;表1)が単回投与された。プラセボ群に無作為に割り付けられた2例にニルセビマブが誤って投与され;両被験者はニルセビマブ群のAs-treated集団に組み入れられた。
【0238】
大半の被験者が151日目までの有効性追跡調査を完了した(948例[97.8%]、ニルセビマブ;474例[97.9%]、プラセボ)。DCO日時点で、676例(46.5%)が試験を完了し、710例(48.9%)が継続中であった。試験の日数の中央値は、252(範囲、229~289日)であった。
【0239】
人口統計学.人口統計学的特性及びベースライン特性は、ニルセビマブ群とプラセボ群で同等であった(表2)。全体で、被験者の52%は男性、72%は白人、35%は本試験に登録された兄弟姉妹を有した。
【0240】
有効性
主要エンドポイント-受診を要したRSV確認LRTIの発現率
Intent-to-treat(ITT)集団における主要解析に基づくと、プラセボとの比較で、ニルセビマブ50mgの単回IM投与により、70.2%(95%CI:52.4%、81.3%)の151日目までの受診を要したRSV確認LRTI発現における相対リスク減少率(RRR)が得られた(p<0.0001;表3)。同様の結果が、Per-protocol集団における同じ主要解析モデル、及びITT集団における確証コクラン・マンテル・ヘンツェル検定に基づいて認められた(表3)。
【0241】
151日目までの受診を要した全LRTI(プロトコルで規定、及びプロトコルで規定されていない)の発現率は、ニルセビマブ群で19.7%、プラセボ群で25.8%であった。表3に示すように、プロトコルで規定されたRSV確認LRTIは、ニルセビマブ群の被験者の2.6%で、またプラセボ群の被験者の9.5%で見られた。非RSV LRTI(プロトコルで規定、又はプロトコルで規定されていない)の発現率は群間で概ね同程度であったことから(
図4)、他のウイルスによる感染はニルセビマブ群で増加しなかったことが示唆される。
【0242】
151日目までの間のニルセビマブの有効性は、カプラン・マイヤー分析で確認した(p<0.0001;
図5)。
【0243】
サブグループ解析.サブグループ解析では、半球、無作為化時の年齢、出生時体重、1日目の体重、在胎期間(GA)、及び本試験に登録された兄弟姉妹について一貫した結果が示され、各サブグループと治療及び151日目までの相対リスク減少率との間に統計学的に有意な相互作用は認められず、全サブグループにわたってプラセボよりニルセビマブが有利であった(
図6)。5kg超の乳児では有効性が示されたが、体重のより軽い乳児で見られるよりも低かった。追加のPK曝露-有効性解析では、100mgの用量では5kg以上の乳児に対して同程度の曝露量が得られ、予測される有効性の改善が認められることが示された。
【0244】
【0245】
【0246】
【0247】
副次的エンドポイント-RSV LRTIによる入院の発現率
Intent-to-treat(ITT)集団における主要解析モデルに基づくと、プラセボとの比較で、ニルセビマブ50mgの単回IM投与により、78.8%(95%CI:52.3%、90.6%)の151日までのRSV LRTIによる入院発現における相対リスク減少率(RRR)が得られた(p=0.0002;表4)。同様の結果が、Per-protocol集団における同じ主要解析モデル、及びITT集団における確証コクラン・マンテル・ヘンツェル検定に基づいて認められた(表4)。
【0248】
RSV亜型別の有効性
ニルセビマブはRSV A及びRSV Bの亜型に対して活性を示した(表5)。151日目までの間のRSV LRTI全体及び入院の原因となった割合は、RSV A亜型とRSV B亜型で同程度であった。発現はいずれの亜型によるものも、ニルセビマブ群の方がプラセボ群よりも著しく低かった。
【0249】
【0250】
【0251】
安全性
有害事象の概要
As-treated集団では、ニルセビマブ群の試験治療下での有害事象(TEAE)の発現率は、TEAEカテゴリー全体にわたって概ねプラセボ群と同等又はそれ以下であった(表6)。全体として、ニルセビマブ群の被験者の83.7%とプラセボ群の被験者の83.9%とが少なくとも1つのTEAEを有した。投与後1日以内のTEAEは、両群の被験者の2.5%で発現した。プラセボ群と比較して、ニルセビマブ群では、投与後7日以内に発現したTEAE(それぞれ15.2%対12.5%)、重症度がグレード3以上のTEAE(それぞれ12.3%対7.4%)、又はTESAE(それぞれ16.7%対10.4%)の発現率が低かった。
【0252】
361日目までの試験期間中、主要解析のためのDCO時点で、ニルセビマブ群2例(0.2%)及びプラセボ群3例(0.6%)を含む5例の死亡が報告された。367日目に、プラセボ群でさらに1例が死亡した。これらの死亡例はどれも治験責任医師による試験治療に関連するものではなかった。
【0253】
全体として、治療関連のAE(ニルセビマブ2.3%、プラセボ2.1%);過敏症、免疫複合体疾患、及び血小板減少症を含む特に注目すべき有害事象(AESI)(ニルセビマブ0.5%、プラセボ0.6%);並びにNOCD(ニルセビマブ0.3%、プラセボ0.8%)の発現率は低く、プラセボ群とニルセビマブ群で概ね同等であった。皮膚及び皮下組織に関連するTEAE(おむつかぶれを含む)を皮膚反応として収集したが、膿痂疹、水痘、疥癬などの明確に診断可能な皮膚反応はいくつか除いた。皮膚反応が報告された被験者の割合は両投与群で同程度であった(ニルセビマブ28.2%、プラセボ26.5%)。
【0254】
有害事象
TEAEプロファイルは、ニルセビマブ群とプラセボ群との間で概ね類似していた(表7)。上気道感染(URTI)は両群で最も一般的なTEAEであった(ニルセビマブ38.5%、プラセボ32.6%)。同様に、各年齢群(3か月以下、3か月超6か月以下、又は6か月超)で、TEAEが全体として、又は投与後1日以内若しくは7日以内に認められた被験者の割合は、ニルセビマブ群とプラセボ群との間で同等であった(表6、表8)。
【0255】
治験責任医師による治療と関連したTEAEを発現した被験者の割合は、全体としても3つの年齢群でも、ニルセビマブ群とプラセボ群との間で概ね同程度であった(表6、表8)。3以上を計数する被験者はどの治療関連事象においても報告されなかった。
【0256】
重篤な有害事象
一般的に、試験治療下で発現した重篤な有害事象(TESAE)の発現率は、ニルセビマブ群の方がプラセボ群より低い傾向が認められた(全体として:ニルセビマブ10.4%、プラセボ16.7%;(表9)。ニルセビマブ群に基づく最も一般的なTESAEは、細気管支炎(ニルセビマブ2.1%、プラセボ4.2%)、下気道感染(ニルセビマブ1.4%、プラセボ2.7%)、肺炎(ニルセビマブ1.4%、プラセボ2.1%)、及び気管支炎(ニルセビマブ1.2%、プラセボ2.3%)であった。治験責任医師により試験治療に関連すると考えられるTESAEはなかった(表6)。
【0257】
特に注目すべき有害事象
AESIは、ニルセビマブ群で5例(0.5%)、プラセボ群で3例(0.6%)が報告された(表10)。全ての事象は、グレード1の重症度であった。AESIとして報告された点状出血のTEAEは1日間であり、親の記述に基づき実施医療機関の治験責任医師により報告された。点状出血の臨床検査評価はなかった。
【0258】
【0259】
【0260】
【0261】
【0262】
【0263】
薬物動態
ニルセビマブを50mgの固定用量で単回IM投与した後、151日目までの間の測定可能なニルセビマブの血清濃度の95%超が、非臨床EC90の目標値である6.8μg/mLを上回った(表11)。
【0264】
予定されていたPKサンプリング計画はわずかであったが、予定外の来院から十分な追加PK試料が得られた乳児26例を対象としたノンコンパートメント解析により、AUC0-∞及び見かけのt1/2を推定することができた。全体として、AUC0-∞及び推定された見かけのt1/2の中央値は、それぞれ5.3日・mg/mL(範囲3.2~10.2日・mg/mL)及び56.5日(範囲46.8~81.1日)であった。
【0265】
【0266】
抗薬物抗体
全体として、抗薬物抗体(ADA)の割合及び力価は低く、ADA陽性被験者においてPKへの影響も又は安全性に対する影響も認められなかった。血清試料が検査に利用可能であった被験者のうち、ベースライン後にADAが検出されたのは、以下の通り、ニルセビマブ群の被験者の4.3%(40/921例)、プラセボ群の被験者の2.8%(13/466例)であった:91日目(ニルセビマブ1.2%、プラセボ0.9%)、151日目(ニルセビマブ2.0%、プラセボ1.4%)、及び361日目(ニルセビマブ3.5%、プラセボ1.5%)。ADA力価は、ニルセビマブ群で1:50~1:3,200、プラセボ群で1:50~1:200の範囲であった。
【0267】
ベースライン後にADA陽性となったニルセビマブ被験者のうち、YTEドメインを標的としたADAは、151日目で4/17例(23.5%)、361日目で10/15例(66.7%)に認められた。ニルセビマブ被験者の2例は361日目にNAbを有した。ベースライン後にADA陽性となったプラセボ被験者のうち、YTEドメインを標的としたADAは361日目で3/3例に認められ;1例は361日目にNAbを有した。
【0268】
ニルセビマブ耐性
103のRSV陽性血清試料(40例のニルセビマブ投与被験者及び63例のプラセボ投与被験者から;Lyra RSV+hMPVリアルタイムRT-PCR法により測定)の全てについてF遺伝子のサンガーシーケンシングを行って完全長F遺伝子配列を得、53のRSV A配列及び50のRSV B配列を用いた分析を行った。これらの試料のうち、84の試料(ニルセビマブ投与被験者29例及びプラセボ投与被験者55例から)は、初回流行期(151日目まで)に発現するLRTI特有の所見(プロトコルに規定、及びプロトコルに規定されていない)を示した。残りの19の配列は、URTIの被験者(4例のニルセビマブ投与、3例のプラセボ投与)から、150日の時間域外のLRTIの被験者(6例のニルセビマブ投与、2例のプラセボ投与)から、又は同一の配列をもたらす単一の臨床的発現の間に同一の被験者から採取した複数の試料(1例のニルセビマブ投与、3例のプラセボ投与)から誤って採取された試料から単離された。全てのF遺伝子配列をアラインメントし、ニルセビマブ結合部位内の潜在的アミノ酸変異を同定するためにコンセンサス配列と比較した(表12)。ニルセビマブ結合部位におけるRSV A中のK209R、RSV B中のI206M+Q209Rのアミノ酸変異は、治験薬を投与されていない被験者の先行試験で見られており、ニルセビマブに対する感受性を変化させない(Zhu et al,2018 J Infect Dis.218(4):572-580)。コンセンサスと比較してニルセビマブ結合部位の変異を確認した他の2つのウイルスのうち、1つはF配列のN208S変化をコードし、もう1つの分離株はI64I/T+K68K/E+I206M+Q209Rでの変化をコードした。N208Sの変化は以前に前臨床試験において確認されており、RSV B9320におけるこのような変異は、ニルセビマブに対する感受性の実質的な変化をもたらす。I64T+K68E+I206M+Q209Rの組み合わせはこれまで自然には観察されておらず、結合部位にこれら4つの変異を有するように操作された組換えRSV B9320ウイルスはニルセビマブに対する感受性の変化を示した。耐性関連変異を含むこれらの2つのウイルスは、LRTIで入院したニルセビマブ投与被験者の鼻からの検体で同定された。
【0269】
【0270】
実施例2
第2b相試験の結果(実施例1を参照)から、在胎期間が29週~35週未満の範囲の早産児にニルセビマブ50mgを単回IM投与したときの臨床的有効性が示された。さらなる分析により、実施例1で評価された固定用量50mgが、ニルセビマブを投与された968人の乳児の間で、平均13.2mg/kg(四分位範囲[IQR]、8.33、17.2mg/kg)及び83の固有の用量レベルの、体重正規化用量の広範な分布をもたらすことがわかった。このように用量レベルが広範囲に分布することで、この集団における複数の固定用量、又は潜在的に間違いを起こしやすい体重に基づく個別の用量を検討せずに、曝露-応答を解析することが容易になった。
【0271】
以下の目的で、母集団PK解析及び曝露-応答解析を実施した:1)成人及び早産児におけるニルセビマブPKの被験者間変動の関連するもとを明らかにすること、2)ニルセビマブの血清曝露量と受診を要したRSV確認LRTIの主要有効性アウトカムとの関係を調べること、3)今後の試験のための臨床用量を特定するための用量最適化解析を実施すること。
【0272】
試験データ
母集団薬物動態(popPK)データセットには、健康成人志願者を対象とした第1相試験の臨床血清薬物動態(PK)データ(Griffin et al.2017,Antimicrob Agents Chemother.61(3),pii:e01714-16)、在胎期間(GA)32週~35週未満の健康な早産児を対象とした第1b/2a相試験(Domachowske et al.Pediatr Infect Dis J.2018;37(9):886-892)、及び29週~35週未満GAの健康な早産児における第2b相試験(実施例1)が含まれた。曝露-応答解析データセットは、第2b相からの有効性データからなり、popPK解析からの経験的ベイズ推定(それぞれ定量限界未満の43及び134の濃度を含む、成人102人からの1530の濃度及び乳児988人からの合計2348の濃度に基づく)を含む。
【0273】
試料及びデータの収集
この試験のデザイン、用量、及び母集団の詳細を表13に概説する。
【0274】
【0275】
生物学的分析法
ヒト血清試料中のニルセビマブ濃度は、有効な蛍光ELISA法(0.5μg/mLの定量下限(LLOQ)値を有する)を用いて測定した。ヒト血清中の抗薬物抗体(ADA)の検出、確認、及び滴定には、電気化学発光(ECL)、液相、ブリッジングイムノアッセイを用いた。
【0276】
データセットの調製と処理
PK及び臨床有効性データを、SAS(SAS Institute Inc.,Cary,NC,USA)及びR(R Foundation for Statistical Computing,Vienna,Austria)ソフトウェアを用いてアセンブルした。データ定義テーブル及び仕様を使用してSASプログラムを実装し、その後、全ての元の変数又は派生変数についてデータの一貫性、信頼性、及び正確性を保証するために、検証及び品質管理を実施した。popPKデータには、例えば、ベースライン及び時間的に変動する年齢、体重、性別、民族性、人種、在胎期間、並びに地理的位置などの人口統計学関連パラメータが含まれた。派生パラメータは、在胎期間と実年齢の合計として推定した月経後年齢を含んだ。ベースライン又はベースライン後の体重を欠くためのインピュテーション方法は以前に記載されている(参考文献の項のRobbie et al.は「Robbie et al.2013 Antimicrob Agents Chemother.57:6147-53である)。
【0277】
曝露-応答データセットは、ベースラインクリアランス、予測AUCinf、AUC0-inf、AUC0-150などのNONMEMプログラム(Icon plc,Dublin,Ireland)から出力された推定個別PKパラメータを含むデータフレームを、Rソフトウェアを用いて、第2b相試験のための人口統計学的データセットと併合することによってアセンブルした。
【0278】
データ処理
第1相試験及び第1b/2a相試験でニルセビマブを投与した全被験者の血清PKデータをpopPK解析の対象とした。第2b相では、投与後のPKを定量化できなかった乳児51例を除外した。その結果、ニルセビマブを投与した残りの917例とプラセボ群の乳児479例のみが曝露応答解析の対象となった。
【0279】
母集団薬物動態及び曝露-応答モデリング戦略
母集団薬物動態:構造及び統計モデル
一次吸収、分布クリアランス、及び線形中心排除を有する2-コンパートメントモデルを、2つの試験からのPKデータを適切に特徴付けた。
図7及び
図8は、それぞれ、popPK解析ワークフロー及び構造モデルの概略図を示す。
【0280】
被験者間分散(BSV)項は、全身クリアランス、中心分布容積、及び吸収速度について推定した。2つの試験の共変量モデルでは、クリアランス及び容積に対する体重のアロメトリックスケーリングに従い、体重及び成熟がクリアランスに及ぼす影響のみを含めた。注目すべきことに、クリアランス及び吸収のETA分布は、これらのパラメータについての正規性仮定から有意に逸脱した。したがって、この問題に対処するためにボックス・コックス変換を用いた。これにより密にサンプリングされた成人データと乳児におけるわずかなPKデータの同時フィッティングが容易になった。現在の研究に向けての戦略は、解析のための初期構造モデルとして、以前のpopPKモデルからの基本推定値を使用することを含む。クリアランスに対するアロメトリックスケール体重及び成熟の影響を評価した。クリアランスに対する抗薬物抗体、分布容積に対する民族性などの追加の共変量も共変量解析に含めた。最終共変量選択には、フルモデルアプローチに続いて単変量削減法を用いた。パラメータ推定中の効率を最大化するために、PKパラメータをmu参照し、NONMEM内で重点サンプリング期待値最大化推定アルゴリズムを使用した。モデリング手法及びワークフローに関する詳細を
図7に概説する。
【0281】
モデル評価
popPKモデルの妥当性を評価するため、標準的な診断及び適合度(GOF)プロットを使用した。PKパラメータ推定値の妥当性及び精度もまた、モデル選択の基準として使用した。Perl speaks NONMEM(PsN)(Lindbom et al.,2004 Comput Methods Programs Biomed.75(2):85-94)を用い、モデルのロバスト性を評価し、パラメータ推定値の信頼区間を算出するために、母集団(例えば、成人対乳児)によって層別化された500の復元抽出されたデータセットのノンパラメトリックブートストラップを実施した。モデルの妥当性をさらに評価するために、最終共変量モデルパラメータを使用して、シミュレーションに基づく視覚的予測チェックを行った。曝露応答モデルの適格性確認及び評価にも同様の方法を採用した。
【0282】
曝露評価基準及び曝露-応答解析
最終共変量popPKモデルを用いて、曝露-応答(ER)解析を実施するためのPKパラメータの経験的ベイズ推定値を算出した。Rソフトウェアを用いて、ERデータセットにコックス比例ハザードモデルを当てはめて、第2b相(PCRで確認されたRSV陽性の受診を要した下気道感染(MALRTI))の主要有効性アウトカムについてセミパラメトリックな探索的四分位解析を実施した。
【0283】
具体的には、最初のMALRTIイベントの発生率を、イベントが発生するまでの時間(time-to-event)法を用いて特徴付けた。生存関数は、試験における個体が0より大きい時間にイベントを経験する確率と定義される。MALRTIが発現しない確率は、以下の式1に示される関係に従って推定された:
【数1】
任意の時点tでの生存率=指数(-瞬時ハザードdtの積分)。
【0284】
この場合に任意の時点tでのMALRTIの確率でもある確率密度関数は、式2に示されるように、瞬時のハザードと時点tにおける生存率の積として推定された。
【数2】
【0285】
確率密度関数は時点=tでMALRTIが発現した乳児について決定され、一方、生存関数は有効性データが右側打ち切りの乳児、例えば、目的の時間(投与後150日間)にわたってMALRTI発現が知られなかったか、又は試験を中止したか、又は打ち切り時間前に同意を撤回した乳児に使用された。特に、シェーンフィールド残差プロットを評価して、150日の観察期間にわたる探索モデルの一定のハザード性仮定を評価した。
【0286】
NONMEMを用いて多変量ER解析を実施し、第2b相試験の乳児におけるMALRTIのリスクに影響を及ぼす共変量を特定した(表14)。ワイブル、ゴンペルツなどの種々のパラメトリック分布をベースモデル開発中に評価した。ラプラシアン法をNONMEMで用いて、目的関数及び対数尤度関数を決定した。最終モデルをブートストラップし、視覚的予測チェックを作成し、関連する共変量によって層別化した。
【0287】
【0288】
シミュレーション方法
最終popPKモデルを用いて、後期早産児から正期産児(GA>35、第3相試験)、並びに早産児及び先天性の心疾患、肺疾患の小児(GA<29、CHD/CLD、第2/3相)におけるニルセビマブ血清PKを予測した。仮想乳児のベースライン特性は、早産児については、Fentonの成長チャート(Fenton and Kim,2013 BMC Pediatrics.13:59-72)又はOlsen et al.(2015 Pediatrics 135:e572-81)から、正期産児から後期早産児については、CDC/WHOチャート(ワールドワイドウェブのwww.cdc.gov/growthcharts/who/girls_length_weight.htmで入手可能)からの復元無作為抽出により作成した。注目すべきことに、仮想乳児は早産児の臨床経過を模倣するために、ベースライン時の月経後年齢が最低36週に限定された。すなわち、乳児は、NICUにおいて、月経後年齢が34週以上で臨床的に安定するまで投与されないであろう。成熟の効果を捕捉するために、体重について前に記載したインピュテーションアルゴリズムを使用して、経時的に変化する体重を決定した。第3相集団については1回のRSV流行期、第2/3集団については2回連続の流行期の仮想乳児についてPKプロファイルと曝露評価基準を要約し表にした。
【0289】
薬物動態の結果
患者の特性
popPK解析データセットには、1090人からの3881の血清PK観察値が含まれた。ベースラインの特性を表15に概説する。ベースラインの出生後及び月経後の年齢の中央値(範囲)は、それぞれ、3か月(0.1~11.9か月)及び13.9か月(7.4~19.7か月)の範囲であった(
図9A)。ベースライン体重は1.6kg~11.1kgの範囲であり、中央値は6.8kgであった(
図9B)。この出生後及び月経後の年齢並びに体重の幅広い分布は、PKパラメータに対するサイズ及び成熟の効果の特徴付けを容易にした。全ての試験で観察された血清濃度を
図10及び表16に示す。
【0290】
popPK共変量モデル
PKパラメータに対する早産児であることの影響を、式3~4に示すように、一次指数関数を用いてモデル化した:
【数3】
【0291】
ベータCL(βCL)は、正期産児に対する早産児のクリアランスの変化率を表し、T50CLは、成人に対するパラメータの対応する成熟半減期を表す。PAGEiは、各乳児の在胎期間と出生後月齢の合計を表す。成人の在胎期間は40週とした。
【0292】
最終的な母集団PK共変量モデルパラメータをブートストラップ推定値とともに表17に示す。クリアランスに対するサイズ及び成熟の影響を
図11に示す。
【0293】
分布の中心容積に成熟を含めることがモデルフィッティングを改善しなかったので、このパラメータにはアロメトリックスケーリングのみが残った。モデル解析によれば、被験者間分散(BSV)は、クリアランス及び分布容積がともに30%未満であった。月経後年齢とともに、ベースライン及び時間的に変化する体重がクリアランスに最も影響する予測因子であった。
【0294】
モデル評価
適合度(
図12、
図13)及び視覚的予測チェック(
図14)プロットの調査では、モデルにおけるいかなる関係する偏りも又は仕様ミスも明らかにならなかった。ブートストラップの結果は、全てのブートストラップされたデータセットが正常に収束したときの最終的な共変量モデルの安定性を示している。ブートストラップ法の95%信頼区間(CI)には、全てのパラメータのもとのモデルのメジアン推定値が含まれた。
【0295】
【0296】
【0297】
【0298】
曝露-応答の結果
コックス比例ハザードモデルの結果から、ニルセビマブ曝露と受診を要した下気道感染リスクとの間に正の関係があることが明らかになった(
図15)。モデルで評価した共変量のいずれも、一定のハザード性仮定に反しなかった。最終モデル及びブートストラップのパラメータ推定値を表18に示す。
【0299】
これらの結果をさらに調査するために、NONMEMにおいてパラメータのイベントが発生するまでの時間(time-to-event)解析を行った。指数ハザードモデルは、視覚的予測チェック(VPC)(
図16)によって示されるように、データを適切に記載した。MALRTIのリスクに及ぼす地理的領域及びAUC四分位数の影響を特徴付け、最終共変量モデルに残した(
図17)。
【0300】
クリアランスに及ぼすベースライン体重の顕著な影響、及び結果として予測されるAUC
infを考慮して、ランクベース解析を、RソフトウェアのMaxstatパッケージを使用して行い、体重及び体重正規化用量の連続分布に沿った最適なカットポイントを決定し、準最適の曝露を有する乳児に対する用量最適化を容易にした(Hothorn and Lausen,2003 Computational Statistics & Data Analysis.43(2):525-55)。解析から、4.6kgのベースライン体重が最適な体重カットポイントであると決定された。さらに、探索的解析により、Q1血清AUCを有する乳児は、より重い体重に向かう関連する傾向が明らかになった(
図18、
図19、及び表19)。
【0301】
血清AUC≧Q2が認められたのは、体重5kg以上の乳児では40%に過ぎなかったのに対し、体重5kgまでの乳児では97%であった。AUC≧Q2の乳児は、プラセボを投与されたか、又は血清AUCが13.4日・mg/mL未満であった乳児と比較して、MALRTIのリスクが低く、ハザード比(HR)及び95%信頼区間(CI)が0.17(0.09,0.32)である。これらの結果は、血清AUC≧Q2を有する乳児において観察される曝露及び結果としての利益と一致させるために、Q1未満の血清AUCを有する乳児において100mg IMより高い用量を支持する(
図20)。
【0302】
【0303】
【0304】
シミュレーション
仮想乳児のベースライン特性を、CDC/WHO成長チャート及びOlsen et.al.(Pediatrics.2015;135:e572-81)の正期産児及び早産児のデータを用いてシミュレーションした。これらのデータは、RソフトウェアのchildSDSパッケージv0.6.4に含まれた。まず、仮想乳児のデータを、用量投与時の最低ベースライン体重1.5kgで、在胎期間が24~40週の範囲の3~97パーセンタイル体重から復元抽出した。その後、シミュレーションデータを、生後8か月までに投与された第3相試験(GAが35超)及び第2/3相試験(GAが29未満、又はCHD/CLDの正期産児)の予想集団を模倣するためにアセンブルした。シミュレーション結果(表20)は、初回のRSV流行期に5kgを超える乳児に対する100mgの提案用量をさらに支持する。乳児の95%超が目標閾値を超える血清AUCに達すると予想される。全年齢群の平均Cmaxは、いずれも安全域内であるか、又は以前に忍容性を示したニルセビマブの曝露量の範囲内である。さらに、シミュレーションしたプロファイルのノンコンパートメント解析から得られたPKパラメータは、全年齢群及び用量にわたって類似しており、これは、提案された投与戦略に対する曝露マッチングアプローチの適切性をさらに裏付けるものである。
【0305】
表20に示した提案用量と、初回RSV流行期(
図21)及び2回目RSV流行期(
図23)に予想される体重分布とにより、AUCは類似し、概ね、乳児の大部分において目標AUCと重なるかそれを上回ることが予測される(
図22、
図24)。
【0306】
結論
曝露-応答解析に基づくと、典型的な5か月RSV流行期を通して13.4日・mg/mLを超える血清AUCをもたらすニルセビマブ用量は、生後1年目の乳児及び生後2年目の高リスク小児においてRSVに対する最適な保護を提供すると予想される。最終的なpopPKモデルを用いたシミュレーションでは、50mgの単回固定用量(5kg未満の乳児において)又は100mgの単回固定用量(5kg以上の乳児において)により、集団の少なくとも80%が、生後1年目の初回のRSV流行期において13.4日・mg/mLを超える予測AUC0-∞を有することが予測される。さらに、生後2年目の小児では、固定用量200mgのニルセビマブの単回投与が、集団の少なくとも80%に13.4日・mg/mLを超える予測AUC0-∞をもたらし、安全で且つ効果的であることが予測される。
【0307】
【0308】
実施例3
マイクロ中和アッセイを下記のように実施した:簡潔に記載すると、MAbの2倍段階希釈液を、15μL/ウェルの体積でHEp-2細胞培養培地により384ウェルマイクロタイタープレート中に導入した。その後、15μLのRSV A2ウイルス又はRSV B9320ウイルスをHEp-2細胞培養培地で80~150pfu/ウェルの範囲の濃度に希釈し、HEp-2細胞培養培地のみを含む対照ウェルを含む各ウェルに添加し、プレートを37℃、5%CO2で1.5時間にわたりインキュベートした。HEp-2細胞を30μL中に2.5×105個の細胞/mLで各ウェルに添加し、プレートを37℃、5%CO2でインキュベートした。RSV A2の場合は3日後に、又はRSV B9320の場合は4日後に培地を除去し、30μLの氷冷80%アセトン/20%PBSを添加して細胞を固定した。
【0309】
ウイルス複製を、RSV FのC部位(1331H)を標的とするセイヨウワサビペルオキシダーゼ共役抗RSV F MAbを使用する酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により測定した(Beeler and van Wyke Coelingh,J Virol.63(7):2941-2950(1989)。1331H MAbをPBSで1:6,000に希釈し、30μlを各ウェルに加えた。37℃で2時間インキュベートした後、プレートをPBS-Tで3回洗浄した。TMBペルオキシダーゼ30μLを各ウェルに添加し、プレートを15分にわたり暗所で室温にてインキュベートした。15μLの2N H2SO4を各ウェルに添加して反応を停止させた。マイクロプレートリーダーを使用して450nmでの吸光度をモニタリングすることにより、基質ターンオーバーを測定した。可変傾斜カーブフィット(variable slope curve fit)による対数(抑制剤)対反応を使用するGraphpad Prismでの非線形フィットアルゴリズムを使用してIC50値を算出し、このIC50値は、450nmで測定した吸光度の50%減少に必要なMAbの濃度を表す。
【0310】
結果を
図25に示し、この
図25は、マイクロ中和において、ニルセビマブ、1F5、2D10、及びD25のそれぞれがRSV A2及びRSV B9320の複製を抑制したことを示す。これらの抗体のそれぞれの可変領域の配列を表20A及び表20Bに示す。ニルセビマブが最も効果的であり、続いて1F5、2D10であり、次いでD25であった。
【0311】
【0312】
【0313】
実施例4
国際公開第2015/011391号パンフレットに記載されるようなコットンラットモデルを使用した。ニルセビマブの多様体(1G7-GLM、B12-1、E3-5、及びE9-2)を、抗体の重鎖の生殖細胞系残基を組み込むことにより等電点(pI)を変更するように作製した。これらの多様体の重鎖可変領域の配列を表21に示す;「~」で示される残基は、ニルセビマブに対してなされた改変を示す。
【0314】
肺摘出日のコットンラット血清試料中におけるヒトIgGの濃度を、ELISA法を使用して測定した。ヒト抗体を、マイクロタイタープレートに結合したヤギ抗ヒト抗体で捕捉した。ヤギ抗ヒトIgG(H+L)抗体(1×PBS中に0.5μg/mL)を、30μL体積で4℃にて一晩、Nunc Maxisorp 384ウェルマイクロタイタープレート上に塗布しておいた。プレートを洗浄し、次いで室温で1時間にわたり60μLのPBS+3%加熱不活性化ヤギ血清の溶液でブロックした。ブロッキングバッファを除去し、試料を以下のように適合させた:500ng/ml~0.488ng/mlの濃度範囲の標準曲線用に、アッセイバッファで希釈した標準ヒト抗体の2倍段階希釈液を使用した。4パラメータカーブフィット(4 parameter curve fit)を使用して標準曲線をフィットさせた。
【0315】
結果を
図26に示す。この結果は、本明細書に記載した多様体がRSV A2及びRSV B9320の両方の中和においてD25よりも低いIC50を有することを示す。これはまた、A2ウイルス又はB9320ウイルスに対する活性が喪失せず、E9-2及びB12-1では活性の増加が見られ、1G7 GLM及びE3-5でのみB9320ウイルスに対する活性がわずかに喪失したことを示す。
【0316】
【0317】
本明細書で引用される全ての特許、特許出願、及び刊行物、並びに電子的に入手可能な資料(例えばGenBank及びRefSeqなどのヌクレオチド配列登録、並びに例えばSwissProt、PIR、PRF、PDBなどのアミノ酸配列登録、並びにGenBank及びRefSeq中の注釈付きコード領域からの翻訳物を含む)の完全な開示は、参照により援用される。本願の開示と参照により本明細書に援用される任意の文献の開示との間に何らかの不一致が存在する場合、本願の開示が優先するものとする。前述の詳細な説明及び実施例は、理解を明確にするためにのみ示された。不要な限定はそれから解釈されるべきではない。本発明は、示されて説明される正確な詳細に限定されず、当業者に明白である変形は、特許請求の範囲によって定義される本発明に含まれる。
【配列表】
【国際調査報告】