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特表2022-531208光硬化型接着剤組成物、光硬化型接着剤、偏光板及び光学設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(54)【発明の名称】光硬化型接着剤組成物、光硬化型接着剤、偏光板及び光学設備
(51)【国際特許分類】
   C09J 163/00 20060101AFI20220629BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220629BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20220629BHJP
   C08G 65/04 20060101ALI20220629BHJP
   C08G 59/68 20060101ALI20220629BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
C09J163/00
C09J11/06
C09J133/14
C08G65/04
C08G59/68
G02B5/30
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564394
(86)(22)【出願日】2020-04-26
(85)【翻訳文提出日】2021-10-28
(86)【国際出願番号】 CN2020087073
(87)【国際公開番号】W WO2020221178
(87)【国際公開日】2020-11-05
(31)【優先権主張番号】201910357369.0
(32)【優先日】2019-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517427152
【氏名又は名称】常州強力電子新材料股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHANGZHOU TRONLY NEW ELECTRONIC MATERIALS Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】Qianjia Industrial Park, Yaoguan Town, Wujin District Changzhou city, Jiangsu 213011, China
(71)【出願人】
【識別番号】515324604
【氏名又は名称】常州強力先端電子材料有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHANGZHOU TRONLY ADVANCED ELECTRONIC MATERIALS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Wucheng Industrial Park, Zhenglu Town, Tianning,Changzhou, Jiangsu 213159,China
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】チェン、シャオチュン
【テーマコード(参考)】
2H149
4J005
4J036
4J040
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AB16
2H149BA02
2H149CA02
2H149EA12
2H149EA22
2H149FA02X
2H149FA03W
2H149FA05X
2H149FA66
2H149FA68
4J005AA04
4J005AA07
4J005AA09
4J005BA00
4J005BB02
4J036AA01
4J036AB01
4J036AB07
4J036AB09
4J036AB10
4J036AB17
4J036AC01
4J036AC05
4J036AK11
4J036FA10
4J036GA03
4J036GA15
4J036GA22
4J036GA24
4J036HA02
4J036JA06
4J040DF032
4J040DF062
4J040EC022
4J040EC202
4J040EC261
4J040GA11
4J040HD18
4J040HD26
4J040HD43
4J040JB08
4J040KA13
4J040LA01
4J040MA10
4J040NA17
(57)【要約】
本発明は、光硬化型接着剤組成物、光硬化型接着剤、偏光板及び光学設備を提供する。該光硬化型接着剤組成物は、成分(A)、成分(B)と成分(C)を含み、前記成分(A)は、式(aa)で示される構造を含有するオキセタン化合物であり、前記成分(B)は、エポキシ基を有する化合物であり、前記成分(C)は、光カチオン重合開始剤である。特定のオキキタン化合物を選択して、エポキシ基を有する化合物及び光カチオン重合開始剤と配合して使用することにより、形成された光硬化型接着剤の付着力、硬化性、及び偏光子と保護フィルムに対する接着性が改善される。

[式(aa)中、Rがフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基を表す。0≦n≦4である。]
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A)、成分(B)、および成分(C)を含むことを特徴とする光硬化型接着剤組成物であって、
前記成分(A)が、式(aa)で示される構造を含有するオキセタン化合物であり、
【化1】

[式(aa)中、Rがフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基を表す。0≦n≦4である。]
前記成分(B)が、エポキシ基を有する化合物であり、かつ
前記成分(C)が、光カチオン重合開始剤である、光硬化型接着剤組成物。
【請求項2】
前記成分(A)が、
【化2】

であることを特徴とする、請求項1に記載の光硬化型接着剤組成物。
【請求項3】
前記成分(B)が、
炭素数が2~10であるポリオールのポリグリシジルエーテルである成分(B1)、および
エポキシ基を有するポリマーである成分(B2)
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の光硬化型接着剤組成物。
【請求項4】
前記成分(B1)が、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ジメチロールシクロヘキサンジグリシジルエーテル、1,9-ノナンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリ又はテトラグリシジルエーテル、及びイソシアヌル酸のエチレンオキシド付加物のジ又はトリグリシジルエーテルからなる群より選ばれる一種以上であることを特徴とする、請求項3に記載の光硬化型接着剤組成物。
【請求項5】
前記成分(B2)が、Tgが20℃以上であり、Mwが1000~30000、好ましくは3000~20000、さらに好ましくは5000~15000であり、
前記Mwが、GPCで測定された分子量をポリスチレン換算して得られた重量平均分子量であることを特徴とする、請求項3に記載の光硬化型接着剤組成物。
【請求項6】
前記成分(B2)が、モノマー(b1)、モノマー(b2)、および任意に使用するモノマー(b3)から重合により得られることを特徴とする、請求項3に記載の光硬化型接着剤組成物であって、
前記モノマー(b1)が、エポキシ基及びエチレン性不飽和基を有する化合物であり、前記エチレン性不飽和基が、ビニル基又はアクリロイル基であり、
好ましくは、前記モノマー(b1)が、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルアクリレート、又は3,4-エポキシシクロヘキシルメタクリレートであり、
前記モノマー(b2)が、炭素数1~10個の炭化水素基を有する単官能性メタクリレートであり、
好ましくは、前記モノマー(b2)が、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、sec-ブチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2-エチルへキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、ノニルメタクリレート、イソノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、及びベンジルメタクリレートからなる群より選ばれる一種以上であり、
前記モノマー(b3)が、前記モノマー(b1)とは異なるアルケニル化合物であり、
好ましくは、前記モノマー(b3)が、芳香族基含有ビニル化合物、単官能性アクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、及びメタクリルアミドからなる群より選ばれるいずれか一種であり、
前記芳香族基含有ビニル化合物が、スチレン又はα-メチルスチレンであり、かつ
前記単官能性アクリレートがメチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、sec-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ノニルアクリレート、イソノニルアクリレート、デシルアクリレート、イソデシルアクリレート、ベンジルアクリレートからなる群より選ばれる一種以上である、光硬化型接着剤組成物。
【請求項7】
前記成分(B2)が、重量%で、前記モノマー(b1)を10~60重量%、前記モノマー(b2)を10~70重量%、および前記モノマー(b3)を0~60重量%含むことを特徴とする、請求項6に記載の光硬化型接着剤組成物。
【請求項8】
前記成分(C)が、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、アリールフェロセン塩からなる群より選ばれる一種以上の組み合わせであることを特徴とする、請求項1に記載の光硬化型接着剤組成物。
【請求項9】
前記光硬化型接着剤組成物を基準とする時、
前記成分(A)の含有量が25~55重量%、好ましくは25~45重量%であり、
前記成分(B1)の含有量が10~45重量%であり、
前記成分(B2)の含有量が20~80重量%であり、かつ
前記成分(C)の含有量が3~5重量%である、ことを特徴とする、請求項2~8のいずれか一項に記載の光硬化型接着剤組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の光硬化型接着剤組成物から重合により得られることを特徴とする光硬化型接着剤。
【請求項11】
偏光子、および接着剤を介して前記偏光子に接着された保護フィルムを含む偏光板であって、
前記接着剤が請求項10に記載の光硬化型接着剤であることを特徴とする偏光板。
【請求項12】
偏光板を含む光学設備であって、
前記偏光板が請求項11に記載の偏光板であることを特徴とする光学設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学材料分野に関し、具体的に、光硬化型接着剤組成物、光硬化型接着剤、偏光板及び光学設備に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置は、低消費電力、低電圧動作、軽量(light weight edness)と小型化等の特徴により、様々な表示装置に広く応用されている。液晶表示装置は、例えば液晶セル、偏光板、位相差フィルム、プリズムシート、光拡散フィルム、導光板、光反射シート等の多くの部品を含み得る。そのため、使用するフィルムの数を減少し、又はフィルムやシートを薄くすることにより、生産性と輝度を向上させ、液晶表示装置をより軽量化させるなど、積極的に改善を進めている。
【0003】
偏光板は、二色性染料又はヨウ素が染色されたポリビニルアルコール(PVA)樹脂から製造される偏光子と、該偏光子の片側又は両側の表面に積層される保護フィルムとを含み、偏光子と保護フィルムとの間に接着剤を設置する。トリアセチルセルロース(TAC)フィルムは保護フィルムとして広く使用されている。しかし、TACフィルムは、高温と高湿の環境で変形してしまう欠点がある。そのため、TACフィルムの代わりに、各種の材料から製造される保護フィルムが開発され、また、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、シクロオレフィンポリマー(COP)フィルム、アクリル系フィルムを単独に使用する、又はこれらのフィルムの組み合わせの構想が次々と提案されている。
【0004】
アクリル系接着剤、ポリウレタン樹脂溶液とポリイソシアネート樹脂溶液との混合により得られる乾式積層接着剤、スチレン・ブタジエン・ゴム接着剤、エポキシ接着剤、ポリビニルアルコール接着剤、ポリウレタン接着剤、ポリエステルイオノマー型ポリウレタン樹脂とグリシジル基を有する化合物を含む接着剤、熱硬化型接着剤等の接着剤が絶えず開発されている。しかし、これらの接着剤が異なるフィルムに対する接着力は問題として重点的に考慮すべき要因であり、また組成物の粘度、製造できる厚さ、耐酸性、耐アルカリ性、耐熱性も考慮すべき要因である。
【0005】
そのため、各種のオキセタン類モノマーが開発され、これらのオキセタン類化合物は、一般的に低粘度、弱毒性、重合速度が速く、熱安定性、及び優れた機械特性などの特性を備え、カチオン硬化システムに応用されると、重合速度を向上させ、硬化後の生成物の性能を向上させることができる。しかしながら、該種類のモノマーは、実際の応用中に、市販の化合物の種類が少なく、硬化速度や硬度等の総合的な特性のバランスが取りにくい方面で依然として明らかな欠点があり、特に偏光板に応用される場合、オキセタン類化合物の導入後にシステム全体の接着性が問題となり、さらに最適化する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、光硬化型接着剤組成物、光硬化型接着剤、偏光板及び光学設備を提供し、従来技術における光硬化型接着剤の接着性が不十分な問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の一つの局面によれば、成分(A)、成分(B)と成分(C)を含む光硬化型接着剤組成物が提供され、前記成分(A)は、式(aa)で示される構造を含有するオキセタン化合物であり、
【化1】

[式(aa)中、Rがフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基を表す。0≦n≦4である。]
前記成分(B)は、エポキシ基を有する化合物であり、
前記成分(C)は、光カチオン重合開始剤である。
【0008】
さらに、前記成分(A)は、
【化2】

である。
【0009】
さらに、前記成分(B)は、炭素数が2~10であるポリオールのポリグリシジルエーテルである成分(B1)と、エポキシ基を有するポリマーである成分(B2)とを含む。
【0010】
さらに、前記成分(B1)は、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ジメチロールシクロヘキサンジグリシジルエーテル、1,9-ノナンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリ又はテトラグリシジルエーテル、及びイソシアヌル酸のエチレンオキシド付加物のジ又はトリグリシジルエーテルからなる群より選ばれるいずれか一種又は多種である。
【0011】
さらに、前記成分(B2)は、Tgが20℃以上であり、Mwが1000~30000、好ましくは3000~20000、さらに好ましくは5000~15000であり、前記Mwは、GPCで測定された分子量をポリスチレン換算して得られた重量平均分子量である。
【0012】
前記成分(B2)は、モノマー(b1)と、モノマー(b2)と、任意に使用するモノマー(b3)とから重合により得られる。前記モノマー(b1)は、エポキシ基及びエチレン性不飽和基を有する化合物であり、前記エチレン性不飽和基は、ビニル基又はアクリロイル基であり、好ましくは、前記モノマー(b1)は、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルアクリレート、又は3,4-エポキシシクロヘキシルメタクリレートである。前記モノマー(b2)は、炭素数1~10個の炭化水素基を有する単官能性メタクリレートであり、好ましくは、前記モノマー(b2)は、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、sec-ブチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2-エチルへキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、ノニルメタクリレート、イソノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、及びベンジルメタクリレートからなる群より選ばれるいずれか一種又は多種である。前記モノマー(b3)は、モノマー(b1)とは異なるアルケニル化合物であり、好ましくは、前記モノマー(b3)は、芳香族基含有ビニル化合物、単官能性アクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、及びメタクリルアミドからなる群より選ばれるいずれか一種であり、前記芳香族基含有ビニル化合物はスチレン又はα-メチルスチレンであり、前記単官能性アクリレートはメチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、sec-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ノニルアクリレート、イソノニルアクリレート、デシルアクリレート、イソデシルアクリレート、ベンジルアクリレートからなる群より選ばれるいずれか一種又は多種である。
【0013】
さらに、前記成分(B2)は、重量%で、前記モノマー(b1)を10~60重量%、前記モノマー(b2)を10~70重量%、及び前記モノマー(b3)を0~60重量%含む。
【0014】
さらに、前記成分(C)は、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、アリールフェロセン塩からなる群より選ばれる一種又は多種の組み合わせである。
【0015】
さらに、前記光硬化型接着剤組成物を基準とする時、前記成分(A)の含有量は25~55重量%、好ましくは25~45重量%であり、前記成分(B1)の含有量は10~45重量%であり、前記成分(B2)の含有量は20~80重量%であり、前記成分(C)の含有量は3~5重量%である。
【0016】
本発明の他の局面によれば、光硬化型接着剤組成物から重合により得られる光硬化型接着剤を提供する。該光硬化型接着剤組成物は、前記光硬化型接着剤組成物のいずれか一種である。
【0017】
本発明の他の局面によれば、偏光子と、接着剤を介して前記偏光子に接着された保護フィルムとを含む偏光板を提供する。該接着剤は、前記光硬化型接着剤である。
【0018】
本発明の他の局面によれば、偏光板を含む光学設備を提供する。該偏光板は前記偏光板である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の技術案によれば、特定のオキキタン化合物を選択して、エポキシ基を有する化合物及び光カチオン重合開始剤と配合して使用することにより、得られた光硬化型接着剤の付着力、硬化性、及び偏光子と保護フィルムに対する接着性が改善される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
なお、矛盾がなければ、本発明における実施例及び実施例における特徴は、互いに組み合わせることができる。以下、実施例により、本発明を詳しく説明する。
【0021】
本発明の背景技術に分析されるように、従来技術におけるオキセタン類化合物は、一般的に低粘度、弱毒性、重合速度が速く、熱安定性、及び優れた機械特性などの特性を備えているが、実際の応用中に、硬化性における硬化速度と硬度とのバランスが取りにくい方面では依然として問題がある。特に偏光板に応用される場合、オキセタン類化合物の導入後に接着剤の全体的な接着効果が理想的ではない。この問題を解決するために、本発明は、光硬化型接着剤組成物、光硬化型接着剤、偏光板及び光学設備を提供する。
【0022】
本発明の一つの典型的な実施形態では、成分(A)、成分(B)と成分(C)を含む光硬化型接着剤組成物が提供され、成分(A)は、式(aa)で示される構造を含有するオキセタン化合物であり、
【化3】

[式(aa)中、Rがフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基を表す。0≦n≦4である。]
成分(B)は、エポキシ基を有する化合物であり、成分(C)は、光カチオン重合開始剤である。
【0023】
本発明は、特定のオキキタン化合物を選択して、エポキシ基を有する化合物及び光カチオン重合開始剤と配合して使用することにより、得られた光硬化型接着剤の付着力、硬化性、及び偏光子と保護フィルムに対する接着性が改善される。
【0024】
試験により検証した結果、前記成分(A)は、
【化4】

である場合、効果がより明らかである。
【0025】
本発明の一つの実施形態では、前記成分(B)は、成分(B1)と成分(B2)を含む。成分(B1)は、炭素数が2~10であるポリオールのポリグリシジルエーテルであり、成分(B2)は、エポキシ基を有するポリマーである。前記二種のエポキシ基含有化合物を配合し、更にオキセタン化合物と配合することにより、光硬化型接着剤の接着性をさらに向上させる。
【0026】
好ましくは、前記成分(B1)は、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ジメチロールシクロヘキサンジグリシジルエーテル、1,9-ノナンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリ又はテトラグリシジルエーテル、及びイソシアヌル酸のエチレンオキシド付加物のジ又はトリグリシジルエーテルからなる群より選ばれるいずれか一種又は多種である。
【0027】
光硬化型接着剤の塗布の施工性を向上させ、また接着性を確保するためには、前記成分(B2)は、Tgが20℃以上(従来技術の一般的な測定方法と同様、すなわち、示差走査熱量計(DSC)を使用して、10℃/分の加熱速度で測定された値)であることが好ましく、Mwが1000~30000、好ましくは3000~20000、さらに好ましくは5000~15000である。ここで、Mwとは、GPCで測定された分子量をポリスチレン換算して得られる重量平均分子量である。前記成分(B2)のMwが1000未満である場合、偏光子と保護フィルムとの接着力を向上させる効果は明らかではなく、Mwが30000を超えると、塗布性が低下し、施工の困難性が増す。
【0028】
本発明の一つの実施形態では、前記成分(B2)は、モノマー(b1)と、モノマー(b2)と、任意に使用するモノマー(b3)とから重合により得られる。成分(B2)は、低Mwのポリマーである。通常の重合法によりこのようなポリマーを製造することが望まれる場合、通常、連鎖移動剤及び/又は重合開始剤を増す必要がある。大量の連鎖移動剤を使用してポリマーを形成する場合、組成物のカチオン硬化性及び/又は接着力が低下しやすくなり、また、組成物の保存安定性も低下しやすくなる。そのため、好ましくは、モノマー(b1)は、エポキシ基及びエチレン性不飽和基を有する化合物であり、エチレン性不飽和基は、ビニル基又はアクリロイル基である。好ましくは、モノマー(b1)は、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルアクリレート、又は3,4-エポキシシクロヘキシルメタクリレートである。モノマー(b2)は、炭素数1~10個の炭化水素基を有する単官能性メタクリレートであり、好ましくは、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、sec-ブチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2-エチルへキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、ノニルメタクリレート、イソノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、及びベンジルメタクリレートからなる群より選ばれるいずれか一種又は多種である。モノマー(b3)は、モノマー(b1)とは異なるアルケニル化合物であり、好ましくは、芳香族基含有ビニル化合物、単官能性アクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、及びメタクリルアミドからなる群より選ばれるいずれか一種である。芳香族基含有ビニル化合物は、スチレン又はα-メチルスチレンである。単官能性アクリレートは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、sec-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ノニルアクリレート、イソノニルアクリレート、デシルアクリレート、イソデシルアクリレート、ベンジルアクリレートからなる群より選ばれるいずれか一種又は多種である。これにより、大量の連鎖移動剤及び/又は重合開始剤を採用する高温重合による問題を回避することができる。
【0029】
前記モノマー(b1)とモノマー(b2)は必須のモノマー単位として、カチオン硬化性化合物である成分(B1)及び成分(A)と共重合する。また前記モノマー(b1)は、特に好ましくは、グリシジルメタクリレートであり、前記モノマー(b2)は、特に好ましくは、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート及びベンジルメタクリレートからなる群より選ばれる一種又は多種である。反応性とシステム粘度等の調整の観点から、モノマー(b3)をさらに添加することができる。
【0030】
好ましくは、重量%で、成分(B2)は、モノマー(b1)を10~60重量%、モノマー(b2)を10~70重量%とモノマー(b3)を0~60重量%含む。モノマー(b3)がスチレンを含む場合、成分(B2)中、スチレンの含有量は5~45重量%、好ましくは10~40重量%である。モノマー(b3)が単官能性アクリレートを含む場合、成分(B2)中、単官能性アクリレートの含有量は1~30重量%、好ましくは5~25重量%である。好ましくは、成分(B2)は、モノマー(b2)として、含有量が10~70重量%であるメチルメタクリレートを含み、且つモノマー(b3)として、含有量が1~50重量%であるスチレンを含む。好ましくは、成分(B2)は、モノマー(b1)として、含有量が10~60重量%であるグリシジルメタクリレート、モノマー(b2)として、含有量が10~70重量%であるメチルメタクリレート、及びモノマー(b3)として、含有量が1~30重量%である炭素数1~10個の炭化水素基を有する単官能性アクリレートを含む。前記スチレンや単官能性アクリレートの使用量の調整で、組成物を含む反応系の活性、粘度、体積収縮率、及び形成された接着剤の安定性をさらに調整する。
【0031】
本発明の一つの実施形態では、前記成分(C)は、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、アリールフェロセン塩からなる群より選ばれる一種又は多種の組み合わせである。好ましくは、前記成分(C)は、以下の式(I)及び/又は(II)に示される構造を有する化合物である。
【化5】

[ここで、
とRは、それぞれ独立的に水素、C-C20の直鎖又は分岐アルキル基、C-C20のシクロアルキルアルキル基又はアルキルシクロアルキル基を表し、また、これらの基における非環式-CH-は、-O-、-S-又は1,4-フェニレン基で置換されてもよい。
とRは、それぞれ独立的に水素、C-C20の直鎖又は分岐アルキル基、C-C20のシクロアルキルアルキル基又はアルキルシクロアルキル基、C-C20の置換又は非置換アリール基を表し、また、これらの基における非環式-CH-は、-O-、-S-又は1,4-フェニレン基で置換されてもよい。
は、C-C20の置換又は非置換アリール基、C-C20の置換又は非置換アルキルアリール基、C-C20の直鎖又は分岐アルキル基、C-C20のシクロアルキルアルキル基又はアルキルシクロアルキル基、置換又は非置換のフェニルチオフェニル基を表し、また、これらの基における非環式-CH-は、カルボニル基、-O-、-S-又は1,4-フェニレン基で置換されてもよい。
とRは、それぞれ独立的にアルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリールチオカルボニル基、アシルオキシ基、アリールチオ基、アリール基、複素環式炭化水素基、アリールオキシ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、置換してもよいアミノ基、シアノ基、ニトロ基又はハロゲン原子を表す。
m1、m2は、それぞれ独立的に、RとRの個数を表し、0、1、2、3、又は4から選ばれる。
は、それぞれ独立的に、M、ClO 、CN、HSO 、NO 、CFCOO、(BM) 、(SbM) 、(AsM) 、(PM) 、Al[OC(CF)] 、スルホン酸イオン、B(C) 、又は[(Rf)PF6-b] を表す。その中、Mはハロゲンであり、Rfはそれぞれ独立的に水素原子の80%以上がフッ素原子に置換されたアルキル基を表し、bは1~5の整数を表す。]
【0032】
前記物質を光カチオン重合開始剤として採用することにより、光硬化型接着剤組成物の硬化速率を高めることができる。
【0033】
好ましい構造として、式(I)と(II)に示される化合物において、RとRは、それぞれ独立的に水素、C-C12の直鎖又は分岐アルキル基、C-C10のシクロアルキルアルキル基又はアルキルシクロアルキル基を表し、また、これらの基における非環式-CH-は-O-で置換されてもよく;RとRは、それぞれ独立的に水素、C-C10の直鎖又は分岐アルキル基、C-C10のシクロアルキルアルキル基又はアルキルシクロアルキル基、C-C12の置換又は非置換アリール基を表し、また、これらの基における非環式-CH-は-O-、-S-又は1,4-フェニレン基で置換されてもよく;RはC-C10の置換又は非置換アリール基、C-C10の置換又は非置換アルキルアリール基、置換又は非置換のフェニルチオフェニル基を表し、また、これらの基における非環式-CH-はカルボニル基、-O-、-S-又は1,4-フェニレン基で置換されてもよく;RとRは、C-C10の直鎖又は分岐アルキル基、C-C10の直鎖又は分岐アルコキシ基、C-C10のアルキルカルボニル基、及びハロゲンを表す。
【0034】
同類の構造を有する市販の光カチオン開始剤も、本発明の成分(C)として用いられる。例えば(但し、これらに限らない)PAG20001、PAG20001s、PAG20002、PAG20002s、PAG30201、PAG30101(上記は、いずれも会社Trnoloy製)、Irgacure250(BASF製)等が挙げられる。
【0035】
本発明の光硬化型接着剤組成物において、各成分の使用量として、従来技術中の相応的な成分の使用量を参考することできる。好ましくは、光硬化型接着剤組成物を基準とする時、成分(A)の含有量は25~60重量%、好ましくは25~55重量%、さらに好ましくは25~45重量%であり;成分(B1)の含有量は10~45重量%、好ましくは10~35重量%であり;成分(B2)の含有量は15~80重量%、好ましくは20~80重量%、さらに好ましくは15~35重量%であり;成分(C)の含有量は3~5重量%、好ましくは5重量%である。
【0036】
製品の応用のニーズに応じて、本発明の光硬化型接着剤には、本分野で一般的に使用される有機及び/又は無機助剤、例えばレベリング剤、分散剤、硬化剤、界面活性剤、溶媒等を添加してもよいが、助剤がこれらに限定されない。これは当業者にとっては自明なことである。さらに、組成物の応用効果に悪影響を及ぼさないという前提で、他の増感剤及び/又は光開始剤も接着剤に添加して併用することができる。
【0037】
応用のニーズに応じて、光硬化型接着剤には、応用性能を高めるように一種又は多種の大分子又は高分子化合物を選択的に添加することができ、また、反応性官能基を含まないポリマーを選択的に添加することができる。この大分子又は高分子化合物はポリオール又はポリエステルポリオールであってもよい。これらのポリマーは、通常、フェノール性水酸基、カルボキシル基などの酸性官能基を含む樹脂である。
【0038】
本発明の一つの典型的な実施形態では、光硬化型接着剤組成物から重合により得られた光硬化型接着剤を提供する。該光硬化型接着剤組成物は、前記光硬化型接着剤組成物のいずれか一種である。
【0039】
本発明の光硬化型接着剤組成物は、特定のオキセタン化合物を選択して、エポキシ基を有する化合物及び光カチオン重合開始剤と配合して使用するため、得られた光硬化型接着剤の付着力、硬化性、及び偏光子と保護フィルムに対する接着性が改善される。
【0040】
本発明の別の典型的な実施形態では、偏光子と、接着剤を介して該偏光子に接着された保護フィルムとを含む偏光板を提供する。該接着剤は前記の光硬化型接着剤である。本発明の光硬化型接着剤は、接着性が良好であり、耐酸性、耐アルカリ性、及び優れた熱安定性を有するため、それを接着剤とする偏光板の耐用年数が長く、光学性能が良好である。
【0041】
本発明の光硬化型接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子に保護フィルムを接着するために用いられることができ、例えば、一軸延伸され二色性色素が吸着・配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子に保護フィルムを接着するために用いられることができる。これにより、保護フィルムを偏光子に貼り付けることで偏光板を作製する。保護フィルムは、偏光子の片面に貼り付けられることもでき、偏光子の両面に貼り付けられることもできる。保護フィルムが偏光子の両面に貼り付けられる場合、各保護フィルムは、同じ種類の樹脂により得られる保護フィルムであってもよく、異なる種類の樹脂により得られる保護フィルムであってもよい。
【0042】
本発明の前記応用に基づいて、本分野中の従来のプロセスにより偏光板を製造することができる。典型的には、製造方法は、光硬化型接着剤を介して偏光子の片側又は両側に保護フィルムを貼り付けること、光照射により光硬化型接着剤を硬化させることを含む。
【0043】
具体的なプロセスは、以下の工程を含む。
(1) 塗布工程:光硬化型接着剤を未硬化状態で保護フィルムに塗布し、接着剤塗布面が形成される。
(2) 貼り付け工程:保護フィルムの接着剤塗布面に偏光子を貼り付ける。
(3) 硬化工程:光照射により光硬化型接着剤を硬化させ、接着剤層を形成する。
【0044】
偏光板の製造過程中、保護フィルムを片面に貼り付けることも、保護フィルムを両面に貼り付けることもできる。好ましくは、両面の保護フィルムの少なくとも一者は、他の光学的機能も兼ね備える。
【0045】
偏光子として、本分野における一般的な種類、例えば、一軸延伸され、ヨウ素又は二色性染料が吸着・配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを使用することできる。
【0046】
本発明の別の典型的な実施形態では、偏光板を含む光学設備を提供する。該偏光板は前記の偏光板である。
【0047】
実際の使用中、偏光板は、その片側に偏光機能以外の光学機能を示す光学層を積層して得られる光学部材として製造されてもよい。光学部材については、使用目的に応じて、偏光板と、前記反射層乃至半透過反射層、光散乱層、位相差板、集光板、輝度向上フィルム等から選択される一層又は二層以上の光学層とを組み合わせて、二層又は三層以上の積層体を作製することができる。光学部材を形成する各種光学層は、接着剤で偏光板と一体化される。以上の光学部材を液晶セルの片面又は両面に配置することにより、液晶表示装置を製造することができる。
【実施例
【0048】
以下の実施例により、本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例に限定されるものではない。
【0049】
1.光硬化型接着剤の調製
表に示される処方を参照して、原料を均一に混合し、光硬化型接着剤組成物を得た(特記しない限り、記載されている「部」は全て「質量部」である)。
【0050】
2.性能評価
実施例と比較例で調製された光硬化型接着剤を消泡処理し、コーティングフィルムの厚さが10μmとなるように、バーコーターで厚さ80μmのトリアセチルセルロース(TAC)保護フィルム(商品名:Fujitech、富士フイルム会社)に塗布し、続いて、ポリビニルアルコール-ヨウ素偏光子の片側と貼り付けた。次に、コーティングフィルムの厚さが10μmとなるように、該偏光子の他の片側に同じ接着剤を塗布し、ノルボルネン系樹脂フィルム(商品名ZEONOR、OPTES会社)と貼り付けた。次に、水銀ランプ(露光機の品番RW-UV20101、累積で放射エネルギー2000mJ/cmを受けた)により硬化を実施した。
【0051】
付着力、硬化性能と接着性能を評価し、具体的な評価方法と標準は以下の通りである。
【0052】
(1)付着力
付着力はARCOTESTのダインペンで測定され、具体的に、線を均等に分布させ、3秒以内にインクが液滴状にならない最大番号のダインペンの番号は測定値とされた。表面ダイン値が小さいほど、付着する下層の表面張力が大きく、付着に有利である。
【0053】
(2)接着性
両面にあった不同の保護フィルム(すなわち、TACフィルムとノルボルネンフィルム)の接着性をそれぞれ評価し、次のように評価した。
A:界面で偏光子から保護フィルムを剥がすことができず、無理に剥がすとフィルムに損傷を与える。即ち、接着性が優れる。
B:界面で偏光子から保護フィルムを剥がすことができ、フィルムに損傷を与えない。即ち、接着性が良好である。
C:硬化した直後、浮いている、又は全く接着していない状態である。即ち、接着性が不良である。
【0054】
(3)硬化性
偏光子からTACフィルムとノルボルネンフィルムを剥がし、そして、GB1728-79の表面乾燥時間測定法-フィンガータッチ法を参照し、硬化フィルムの表面状況を観察し、以下のように評価した。
A:べたつきの状況がない。即ち、硬化性が良好である。
B:べたつきの状況がある。即ち、硬化性が不良である。
【0055】
3.具体的な処方及び評価結果
実施例1
成分(A)におけるRがフェニル基である時の異なる組成物の調製
【化6】

成分(A)(具体的に表1を参照) 25質量部
成分(B1):3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカーボネート 35質量部
成分(B2):グリシジルメタクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸ヒドロキシエチルから加熱重合により得られたもの(質量比30:40:30、Mwは12000) 35質量部
成分(C):
【化7】
【0056】
【表1】
【0057】
表1の結果から、n=1である場合、硬化効果が良く、付着性が良く、TACフィルムやノルボルネンフィルムとの接着性が優れることがわかる。
【0058】
実施例2
成分(A)におけるRがビフェニル基である時の異なる組成物の調製
【化8】

成分(A)(具体的に表2を参照) 35質量部
成分(B1):3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカーボネート 25質量部
成分(B2):グリシジルメタクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸ヒドロキシエチルから加熱重合により得られたもの(質量比30:40:30、Mwは12000) 35質量部
成分(C):
【化9】
【0059】
【表2】
【0060】
表2の結果から、n=1である場合、硬化効果が良く、付着性が良く、TACフィルムやノルボルネンフィルムとの接着性が優れていることがわかる。
【0061】
実施例3
成分(A)におけるRがナフチル基である時の異なる組成物の調製
【化10】

成分(A)(具体的に表3を参照) 40質量部
成分(B1):ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル 30質量部
成分(B2):グリシジルメタクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸ヒドロキシエチルから加熱重合により得られたもの(質量比30:40:30、Mwは12000) 25質量部
成分(C):
【化11】
【0062】
【表3】
【0063】
表3の結果から、n=1である場合、硬化効果が良く、付着性が良く、TACフィルムやノルボルネンフィルムとの接着性が優れていることがわかる。
【0064】
他のn=1である化合物を選択し、接着剤組成物中の重量比を変更して、応用性能を評価した。その結果を表4に示した。
【0065】
【表4】
【0066】
【表5】
【0067】
表1~3、表5の性能評価結果から、本発明の接着剤組成物は、硬化効果が良く、付着力が良く、TACフィルムやノルボルネンフィルムとの接着性が優れることが分かる。その理由として、本発明の組成物を含有する処方において、オキセタン化合物が単官能性酸素複素環を含み、適切な粘度を有し、且つ基におけるベンジル基が硬化速度を速めるため、優れた総合応用性能を有すると推測する。
【0068】
以上の記載は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を制限するものではない。本分野の当業者にとって、本発明を様々に変更や変化することが可能である。本発明の趣旨や原則の範囲内でのすべての変更、均等変換、改進等が本発明の保護範囲内に含まれることが意図される。
【国際調査報告】