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特表2022-531222改変されたTGFBR2遺伝子座から組換え受容体を発現する細胞、関連ポリヌクレオチド、および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(54)【発明の名称】改変されたTGFBR2遺伝子座から組換え受容体を発現する細胞、関連ポリヌクレオチド、および方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20220629BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220629BHJP
   C12N 15/90 20060101ALI20220629BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20220629BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20220629BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20220629BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20220629BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20220629BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20220629BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20220629BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20220629BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20220629BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20220629BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20220629BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20220629BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220629BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220629BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20220629BHJP
【FI】
C12N15/12
C12N5/10 ZNA
C12N15/90 100Z
C12N15/13
C12N15/62 Z
C07K14/725
C07K16/28
C07K19/00
C07K16/18
C12N15/11 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/867 Z
C12N15/09 100
C12N15/09 110
C07K14/705
C12N5/0783
A61P35/00
A61P35/02
A61K35/17 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564439
(86)(22)【出願日】2020-04-30
(85)【翻訳文提出日】2021-12-24
(86)【国際出願番号】 US2020030815
(87)【国際公開番号】W WO2020223535
(87)【国際公開日】2020-11-05
(31)【優先権主張番号】62/841,575
(32)【優先日】2019-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516316897
【氏名又は名称】ジュノー セラピューティクス インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】516135900
【氏名又は名称】エディタス・メディシン,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】バーレイ スティーブン マイケル
(72)【発明者】
【氏名】クレイラット セドリック
(72)【発明者】
【氏名】チン メリッサ
(72)【発明者】
【氏名】ハービンスキ フレッド
(72)【発明者】
【氏名】ナイ クリストファー ヒース
(72)【発明者】
【氏名】サザー ブライス ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ヴォング クイニー
(72)【発明者】
【氏名】ウェルステッド ジー. グラント
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン クリストファー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA95Y
4B065AA97Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA01
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB63
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZB27
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA75
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
組換え受容体またはその一部分をコードする改変されたトランスフォーミング増殖因子β受容体2型(TGFBR2)遺伝子座を含有する、組換え受容体を発現する操作された免疫細胞、例えばT細胞が、本明細書において提供される。いくつかの局面において、細胞は、TGFBR2ゲノム遺伝子座で、組換え受容体またはその一部分をコードする導入遺伝子配列の標的組み込みによって操作される。また、操作された免疫細胞を含有する細胞組成物、細胞を操作するための核酸、ならびに、例えば、TGFBR2ゲノム遺伝子座の領域中への組み込みのために組換え受容体またはその一部分をコードする導入遺伝子配列をターゲティングすることによる、操作された細胞を作製するための方法、キット、および製造物品も提供される。いくつかの態様において、操作された細胞、例えばT細胞は、細胞療法に関連して、例えば、操作された細胞の養子移入を含むがん免疫療法に関連して、使用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
改変されたトランスフォーミング増殖因子β受容体2型(TGFBR2)遺伝子座を含む、遺伝子操作されたT細胞であって、該改変されたTGFBR2遺伝子座が、組換え受容体またはその一部分をコードする導入遺伝子配列を含む、前記遺伝子操作されたT細胞。
【請求項2】
前記導入遺伝子配列が、任意で相同性指向修復(HDR)を介して、T細胞の内在性TGFBR2遺伝子座に組み込まれている、請求項1に記載の遺伝子操作されたT細胞。
【請求項3】
前記改変されたTGFBR2遺伝子座が、
機能的なTGFBRIIポリペプチドをコードしない;
TGFBRIIポリペプチドをコードしないか、またはTGFBRIIポリペプチドの発現が排除されている;
完全長TGFBRIIポリペプチドをコードしない;および/あるいは
ドミナントネガティブTGFBRIIポリペプチドをコードし、任意で、該ドミナントネガティブTGFBRIIポリペプチドが、SEQ ID NO:59の残基22~191もしくはSEQ ID NO:60の残基22~216に対応するアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:59の残基22~191もしくはSEQ ID NO:60の残基22~216に対応するアミノ酸配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれよりも高い配列同一性を示す配列、またはその断片を含む、
請求項1または2に記載の遺伝子操作されたT細胞。
【請求項4】
前記導入遺伝子配列が、内在性TGFBR2のオープンリーディングフレームの1つもしくは複数のエクソンまたはその部分配列とインフレームである、請求項1~3のいずれか一項に記載の遺伝子操作されたT細胞。
【請求項5】
前記導入遺伝子配列が、内在性TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームのエクソン1の下流かつエクソン6の上流にある、請求項1~4のいずれか一項に記載の遺伝子操作されたT細胞。
【請求項6】
前記導入遺伝子配列が、内在性TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームのエクソン4の下流かつエクソン6の上流にある、請求項1~5のいずれか一項に記載の遺伝子操作されたT細胞。
【請求項7】
前記組換え受容体が、組換えT細胞受容体(TCR)であるかまたはそれを含み、前記導入遺伝子配列が、TCRアルファ(TCRα)鎖、TCRベータ(TCRβ)鎖、または両方をコードする、請求項1~6のいずれか一項に記載の遺伝子操作されたT細胞。
【請求項8】
前記組換え受容体が、キメラ抗原受容体(CAR)であり、該CARが、結合ドメインを含む細胞外領域と、膜貫通ドメインと、細胞内領域とを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の遺伝子操作されたT細胞。
【請求項9】
前記結合ドメインが、抗体もしくはその抗原結合断片であるか、またはそれを含む、請求項8に記載の遺伝子操作されたT細胞。
【請求項10】
前記結合ドメインが、ある疾患、障害、もしくは状態の細胞もしくは組織に関連している、それに特異的である、またはその上に発現している標的抗原に結合することができ、任意で、該標的抗原が腫瘍抗原である、請求項8または9に記載の遺伝子操作されたT細胞。
【請求項11】
前記標的抗原が、αvβ6インテグリン(avb6インテグリン)、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3、B7-H6、炭酸脱水酵素9(CA9;CAIXまたはG250としても知られている)、がん精巣抗原、がん/精巣抗原1B(CTAG;NY-ESO-1およびLAGE-2としても知られている)、癌胎児性抗原(CEA)、サイクリン、サイクリンA2、C-Cモチーフケモカインリガンド1(CCL-1)、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD123、CD133、CD138、CD171、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4)、上皮成長因子タンパク質(EGFR)、III型上皮成長因子受容体変異(EGFR vIII)、上皮糖タンパク質2(EPG-2)、上皮糖タンパク質40(EPG-40)、エフリンB2、エフリン受容体A2(EPHa2)、エストロゲン受容体、Fc受容体様5(FCRL5;Fc受容体ホモログ5またはFCRH5としても知られている)、胎児アセチルコリン受容体(胎児AchR)、葉酸結合タンパク質(FBP)、葉酸受容体アルファ、ガングリオシドGD2、O-アセチル化GD2(OGD2)、ガングリオシドGD3、糖タンパク質100(gp100)、グリピカン-3(GPC3)、Gタンパク質共役受容体クラスCグループ5メンバーD(GPRC5D)、Her2/neu(受容体チロシンキナーゼerb-B2)、Her3(erb-B3)、Her4(erb-B4)、erbB二量体、ヒト高分子量-黒色腫関連抗原(HMW-MAA)、B型肝炎表面抗原、ヒト白血球抗原A1(HLA-A1)、ヒト白血球抗原A2(HLA-A2)、IL-22受容体アルファ(IL-22Rα)、IL-13受容体アルファ2(IL-13Rα2)、キナーゼインサートドメイン受容体(kdr)、κ軽鎖、L1細胞接着分子(L1-CAM)、L1-CAMのCE7エピトープ、ロイシンリッチリピート含有8ファミリーメンバーA(LRRC8A)、ルイスY、黒色腫関連抗原(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A6、MAGE-A10、メソテリン(MSLN)、c-Met、マウスサイトメガロウイルス(CMV)、ムチン1(MUC1)、MUC16、ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D)リガンド、メランA(MART-1)、神経細胞接着分子(NCAM)、腫瘍胎児抗原、黒色腫優先発現抗原(PRAME)、プロゲステロン受容体、前立腺特異的抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、サバイビン、栄養膜糖タンパク質(TPBG;5T4としても知られている)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、チロシナーゼ関連タンパク質1(TRP1;TYRP1またはgp75としても知られている)、チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP2;ドパクロムトートメラーゼ、ドパクロムデルタ-イソメラーゼ、またはDCTとしても知られている)、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)、血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR2)、ウィルムス腫瘍1(WT-1)、病原体特異的抗原もしくは病原体発現抗原、またはユニバーサルタグに関連する抗原、および/またはビオチン化分子、および/またはHIV、HCV、HBV、もしくは他の病原体によって発現される分子の中から選択される、請求項10に記載の遺伝子操作されたT細胞。
【請求項12】
前記細胞外領域が、スペーサーを含み、任意で、該スペーサーが、結合ドメインと膜貫通ドメインとの間に機能的に連結されている、請求項8~11のいずれか一項に記載の遺伝子操作されたT細胞。
【請求項13】
前記スペーサーが、免疫グロブリンヒンジ領域、ならびに/またはCH2領域およびCH3領域を含む、請求項12に記載の遺伝子操作されたT細胞。
【請求項14】
前記細胞内領域が、細胞内シグナル伝達ドメインを含む、請求項8~13のいずれか一項に記載の遺伝子操作されたT細胞。
【請求項15】
前記細胞内シグナル伝達ドメインが、CD3鎖、任意でCD3-ゼータ(CD3ζ)鎖の細胞内シグナル伝達ドメイン、もしくはそのシグナル伝達部分であるか、またはそれを含む、請求項14に記載の遺伝子操作されたT細胞。
【請求項16】
前記細胞内領域が、1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメインを含む、請求項8~15のいずれか一項に記載の遺伝子操作されたT細胞。
【請求項17】
前記1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメインが、CD28、4-1BB、もしくはICOSの細胞内シグナル伝達ドメイン、またはそのシグナル伝達部分を含む、請求項16に記載の遺伝子操作されたT細胞。
【請求項18】
前記導入遺伝子配列が、順番に、結合ドメイン、任意で単鎖Fv断片(scFv);ヒト免疫グロブリンヒンジ由来の、任意でIgG1、IgG2、もしくはIgG4、またはその改変バージョン由来の配列を任意で含み、CH2領域および/またはCH3領域を任意でさらに含む、スペーサー;ならびに、任意でヒトCD28由来の、膜貫通ドメイン;任意でヒト4-1BB由来の、共刺激シグナル伝達ドメイン;ならびに、細胞内シグナル伝達領域、任意でCD3ζ鎖またはその一部分、をコードするヌクレオチドの配列を含み;かつ/あるいは
前記改変されたTGFBR2遺伝子座が、順番に、結合ドメイン、任意でscFv;ヒト免疫グロブリンヒンジ由来の、任意でIgG1、IgG2、もしくはIgG4、またはその改変バージョン由来の配列を任意で含み、CH2領域および/またはCH3領域を任意でさらに含む、スペーサー;ならびに、任意でヒトCD28由来の、膜貫通ドメイン;任意でヒト4-1BB由来の、共刺激シグナル伝達ドメイン;ならびに、細胞内シグナル伝達領域、任意でCD3ζ鎖またはその一部分、をコードするヌクレオチドの配列を含む、
請求項1~17のいずれか一項に記載の遺伝子操作されたT細胞。
【請求項19】
前記導入遺伝子配列が、少なくとも1つのさらなるタンパク質をコードするヌクレオチドの配列を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の遺伝子操作されたT細胞。
【請求項20】
前記少なくとも1つのさらなるタンパク質が、代用マーカーであり、任意で、該代用マーカーが、トランケートされた受容体であり、任意で、該トランケートされた受容体が、細胞内シグナル伝達ドメインを欠き、かつ/またはそのリガンドが結合した場合に細胞内シグナル伝達を媒介することができない、請求項19に記載の遺伝子操作されたT細胞。
【請求項21】
前記導入遺伝子配列が、1つまたは複数のマルチシストロン性エレメントを含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の遺伝子操作されたT細胞。
【請求項22】
前記導入遺伝子配列が、組換え受容体またはその一部分をコードするヌクレオチドの配列を含み、前記1つまたは複数のマルチシストロン性エレメントが、組換え受容体もしくはその一部分をコードするヌクレオチドの配列の上流に位置づけられており;かつ/または、組換え受容体もしくはその一部分をコードするヌクレオチドの配列と、少なくとも1つのさらなるタンパク質をコードするヌクレオチドの配列との間に位置づけられている;および/あるいは
前記組換え受容体が、TCRであり、前記1つまたは複数のマルチシストロン性エレメントが、TCRαをコードするヌクレオチドの配列と、TCRβをコードするヌクレオチドの配列との間に位置づけられている;および/あるいは
前記組換え受容体が、多鎖CARのCARであり、前記1つまたは複数のマルチシストロン性エレメントが、多鎖CARの1つの鎖をコードするヌクレオチドの配列と、多鎖CARの別の鎖をコードするヌクレオチドの配列との間に位置づけられている、
請求項21に記載の遺伝子操作されたT細胞。
【請求項23】
前記1つまたは複数のマルチシストロン性エレメントが、リボソームスキップ配列であるかまたはそれを含み、任意で、該リボソームスキップ配列が、T2A、P2A、E2A、またはF2Aエレメントである、請求項21または22に記載の遺伝子操作されたT細胞。
【請求項24】
前記改変されたTGFBR2遺伝子座が、組換え受容体またはその一部分をコードする導入遺伝子配列の発現を調節するために機能的に連結された内在性TGFBR2遺伝子座のプロモーターおよび/または制御もしくは調節エレメントを含むか;あるいは、前記改変されたTGFBR2遺伝子座が、組換え受容体またはその一部分の発現を調節するために機能的に連結された1つまたは複数の異種の制御または調節エレメントを含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の遺伝子操作されたT細胞。
【請求項25】
前記T細胞が、対象に由来する初代T細胞であり、任意で、該対象がヒトである、請求項1~24のいずれか一項に記載の遺伝子操作されたT細胞。
【請求項26】
前記T細胞が、CD8+ T細胞もしくはそのサブタイプ、またはCD4+ T細胞もしくはそのサブタイプである、請求項1~25のいずれか一項に記載の遺伝子操作されたT細胞。
【請求項27】
(a)組換え受容体またはその一部分をコードする核酸配列;および
(b)該核酸配列に連結された1つまたは複数の相同性アームであって、トランスフォーミング増殖因子β受容体2型(TGFBR2)遺伝子座のオープンリーディングフレームの1つまたは複数の領域に相同な配列を含む、1つまたは複数の相同性アーム
を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項28】
(a)の核酸配列が、T細胞、任意でヒトT細胞の内在性TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームにとって外来性または異種である配列である、請求項27に記載のポリヌクレオチド。
【請求項29】
前記1つまたは複数の相同性アームが、T細胞、任意でヒトT細胞のTGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームの少なくとも1つのイントロンまたは少なくとも1つのエクソンを含む、請求項27または28に記載のポリヌクレオチド。
【請求項30】
(a)の核酸配列が、1つまたは複数の相同性アームに含まれるTGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームの1つまたは複数のエクソンとインフレームである、請求項27~29のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項31】
前記オープンリーディングフレームの1つまたは複数の領域が、TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームのエクソン1の下流にある配列であるか、またはそれを含む、請求項27~30のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項32】
前記オープンリーディングフレームの1つまたは複数の領域が、TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームのエクソン4の少なくとも一部分もしくはエクソン4の下流を含む配列であるか、またはそれを含む、請求項27~31のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項33】
前記1つまたは複数の相同性アームが、5'相同性アームおよび3'相同性アームを含み、前記ポリヌクレオチドが、構造[5'相同性アーム]-[(a)の核酸配列]-[3'相同性アーム]を含む、請求項27~32のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項34】
前記5'相同性アームおよび前記3'相同性アームが、独立して、200、300、400、500、600、700、もしくは800ヌクレオチドの長さまたは約200、300、400、500、600、700、もしくは800ヌクレオチドの長さ、または前述のいずれかの間の任意の値であるか、あるいは、300ヌクレオチド超または約300ヌクレオチド超の長さ、任意で、400、500、もしくは600ヌクレオチドの長さまたは約400、500、もしくは600ヌクレオチドの長さ、または前述のいずれかの間の任意の値である、請求項33に記載のポリヌクレオチド。
【請求項35】
前記5'相同性アームが、SEQ ID NO:69~71に示される配列、またはSEQ ID NO:69~71に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれよりも高い配列同一性を示す配列、またはその部分配列を含み、かつ/あるいは前記3'相同性アームが、SEQ ID NO:72に示される配列、またはSEQ ID NO:72に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれよりも高い配列同一性を示す配列、またはその部分配列を含む、請求項33または34に記載のポリヌクレオチド。
【請求項36】
コードされる組換え受容体が、組換えT細胞受容体(TCR)であるかまたはそれを含み、(a)の核酸配列が、TCRアルファ(TCRα)鎖、TCRベータ(TCRβ)鎖、または両方をコードする、請求項27~35のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項37】
コードされる組換え受容体が、キメラ抗原受容体(CAR)であり、該CARが、結合ドメインを含む細胞外領域と、膜貫通ドメインと、細胞内領域とを含む、請求項27~35のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項38】
前記結合ドメインが、抗体もしくはその抗原結合断片であるか、またはそれを含む、請求項37に記載のポリヌクレオチド。
【請求項39】
前記結合ドメインが、ある疾患、障害、もしくは状態の細胞もしくは組織に関連している、それに特異的である、またはその上に発現している標的抗原に結合することができ、任意で、該標的抗原が腫瘍抗原である、請求項37または38に記載のポリヌクレオチド。
【請求項40】
前記標的抗原が、αvβ6インテグリン(avb6インテグリン)、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3、B7-H6、炭酸脱水酵素9(CA9;CAIXまたはG250としても知られている)、がん精巣抗原、がん/精巣抗原1B(CTAG;NY-ESO-1およびLAGE-2としても知られている)、癌胎児性抗原(CEA)、サイクリン、サイクリンA2、C-Cモチーフケモカインリガンド1(CCL-1)、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD123、CD133、CD138、CD171、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4)、上皮成長因子タンパク質(EGFR)、III型上皮成長因子受容体変異(EGFR vIII)、上皮糖タンパク質2(EPG-2)、上皮糖タンパク質40(EPG-40)、エフリンB2、エフリン受容体A2(EPHa2)、エストロゲン受容体、Fc受容体様5(FCRL5;Fc受容体ホモログ5またはFCRH5としても知られている)、胎児アセチルコリン受容体(胎児AchR)、葉酸結合タンパク質(FBP)、葉酸受容体アルファ、ガングリオシドGD2、O-アセチル化GD2(OGD2)、ガングリオシドGD3、糖タンパク質100(gp100)、グリピカン-3(GPC3)、Gタンパク質共役受容体クラスCグループ5メンバーD(GPRC5D)、Her2/neu(受容体チロシンキナーゼerb-B2)、Her3(erb-B3)、Her4(erb-B4)、erbB二量体、ヒト高分子量-黒色腫関連抗原(HMW-MAA)、B型肝炎表面抗原、ヒト白血球抗原A1(HLA-A1)、ヒト白血球抗原A2(HLA-A2)、IL-22受容体アルファ(IL-22Rα)、IL-13受容体アルファ2(IL-13Rα2)、キナーゼインサートドメイン受容体(kdr)、κ軽鎖、L1細胞接着分子(L1-CAM)、L1-CAMのCE7エピトープ、ロイシンリッチリピート含有8ファミリーメンバーA(LRRC8A)、ルイスY、黒色腫関連抗原(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A6、MAGE-A10、メソテリン(MSLN)、c-Met、マウスサイトメガロウイルス(CMV)、ムチン1(MUC1)、MUC16、ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D)リガンド、メランA(MART-1)、神経細胞接着分子(NCAM)、腫瘍胎児抗原、黒色腫優先発現抗原(PRAME)、プロゲステロン受容体、前立腺特異的抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、サバイビン、栄養膜糖タンパク質(TPBG;5T4としても知られている)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、チロシナーゼ関連タンパク質1(TRP1;TYRP1またはgp75としても知られている)、チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP2;ドパクロムトートメラーゼ、ドパクロムデルタ-イソメラーゼ、またはDCTとしても知られている)、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)、血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR2)、ウィルムス腫瘍1(WT-1)、病原体特異的抗原もしくは病原体発現抗原、またはユニバーサルタグに関連する抗原、および/またはビオチン化分子、および/またはHIV、HCV、HBV、もしくは他の病原体によって発現される分子の中から選択される、請求項39に記載のポリヌクレオチド。
【請求項41】
前記細胞外領域が、スペーサーを含み、任意で、該スペーサーが、結合ドメインと膜貫通ドメインとの間に機能的に連結されている、請求項37~40のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項42】
前記スペーサーが、免疫グロブリンヒンジ領域、ならびに/またはCH2領域およびCH3領域を含む、請求項41に記載のポリヌクレオチド。
【請求項43】
前記細胞内領域が、細胞内シグナル伝達ドメインを含む、請求項37~42のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項44】
前記細胞内シグナル伝達ドメインが、CD3鎖、任意でCD3-ゼータ(CD3ζ)鎖の細胞内シグナル伝達ドメイン、もしくはそのシグナル伝達部分であるか、またはそれを含む、請求項43に記載のポリヌクレオチド。
【請求項45】
前記細胞内領域が、1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメインを含む、請求項37~44のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項46】
前記1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメインが、CD28、4-1BB、もしくはICOSの細胞内シグナル伝達ドメイン、またはそのシグナル伝達部分を含む、請求項45に記載のポリヌクレオチド。
【請求項47】
(a)の核酸配列が、順番に、結合ドメイン、任意で単鎖Fv断片(scFv);ヒト免疫グロブリンヒンジ由来の、任意でIgG1、IgG2、もしくはIgG4、またはその改変バージョン由来の配列を任意で含み、CH2領域および/またはCH3領域を任意でさらに含む、スペーサー;ならびに、任意でヒトCD28由来の、膜貫通ドメイン;任意でヒト4-1BB由来の、共刺激シグナル伝達ドメイン;ならびに、細胞内シグナル伝達領域、任意でCD3ζ鎖またはその一部分、をコードするヌクレオチドの配列を含む、請求項27~46のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項48】
(a)の核酸配列が、少なくとも1つのさらなるタンパク質をコードするヌクレオチドの配列を含む、請求項27~47のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項49】
前記少なくとも1つのさらなるタンパク質が、代用マーカーであり、任意で、該代用マーカーが、トランケートされた受容体であり、任意で、該トランケートされた受容体が、細胞内シグナル伝達ドメインを欠き、かつ/またはそのリガンドが結合した場合に細胞内シグナル伝達を媒介することができない、請求項48に記載のポリヌクレオチド。
【請求項50】
(a)の核酸配列が、1つまたは複数のマルチシストロン性エレメントを含む、請求項27~49のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項51】
(a)の核酸配列が、組換え受容体またはその一部分をコードするヌクレオチドの配列を含み、前記1つまたは複数のマルチシストロン性エレメントが、組換え受容体もしくはその一部分をコードするヌクレオチドの配列の上流に位置づけられており;かつ/または、組換え受容体もしくはその一部分をコードするヌクレオチドの配列と、少なくとも1つのさらなるタンパク質をコードするヌクレオチドの配列との間に位置づけられている;および/あるいは
前記組換え受容体がTCRであり、前記1つまたは複数のマルチシストロン性エレメントが、TCRαをコードするヌクレオチドの配列と、TCRβをコードするヌクレオチドの配列との間に位置づけられている;および/あるいは
前記組換え受容体が、多鎖CARのCARであり、前記1つまたは複数のマルチシストロン性エレメントが、多鎖CARの1つの鎖をコードするヌクレオチドの配列と、多鎖CARの別の鎖をコードするヌクレオチドの配列との間に位置づけられている、
請求項50に記載のポリヌクレオチド。
【請求項52】
前記1つまたは複数のマルチシストロン性エレメントが、リボソームスキップ配列であるかまたはそれを含み、任意で、該リボソームスキップ配列が、T2A、P2A、E2A、またはF2Aエレメントである、請求項50または51に記載のポリヌクレオチド。
【請求項53】
(a)の核酸配列が、組換え受容体またはその一部分の発現を調節するために機能的に連結された1つまたは複数の異種の制御または調節エレメントを含む、請求項27~52のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項54】
ウイルスベクター中に含まれる、請求項27~53のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項55】
前記ウイルスベクターがAAVベクターであり、任意で、該AAVベクターが、AAV2またはAAV6ベクターである、請求項54に記載のポリヌクレオチド。
【請求項56】
前記ウイルスベクターが、レトロウイルスベクター、任意でレンチウイルスベクターである、請求項54に記載のポリヌクレオチド。
【請求項57】
直鎖ポリヌクレオチド、任意で二本鎖ポリヌクレオチドまたは一本鎖ポリヌクレオチドである、請求項27~53のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項58】
2500もしくは約2500から、5000もしくは約5000ヌクレオチド、3500もしくは約3500から、4500もしくは約4500ヌクレオチド、または3750もしくは約3750ヌクレオチドから、4250もしくは約4250ヌクレオチドの長さである、請求項27~57のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項59】
請求項27~58のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを、TGFBR2遺伝子座に遺伝子破壊を含むT細胞中に導入する工程を含む、遺伝子操作されたT細胞を作製する方法。
【請求項60】
(a)T細胞の内在性TGFBR2遺伝子座内の標的部位で遺伝子破壊を誘導することができる1つまたは複数の作用物質を、T細胞中に導入する工程、および
(b)請求項27~58のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを、TGFBR2遺伝子座に遺伝子破壊を含むT細胞中に導入する工程
を含む、遺伝子操作されたT細胞を作製する方法。
【請求項61】
組換え受容体またはその一部分をコードする核酸配列が、相同性指向修復(HDR)を介して内在性TGFBR2遺伝子座内に組み込まれる、請求項59または60に記載の方法。
【請求項62】
組換え受容体またはその一部分をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを、T細胞中に導入する工程を含む、遺伝子操作されたT細胞を作製する方法であって、該T細胞が、T細胞のTGFBR2遺伝子座内に遺伝子破壊を有し、該組換え受容体またはその一部分をコードする核酸配列が、相同性指向修復(HDR)を介して内在性TGFBR2遺伝子座内に組み込まれる、前記方法。
【請求項63】
前記遺伝子破壊が、T細胞の内在性TGFBR2遺伝子座内の標的部位で遺伝子破壊を誘導することができる1つまたは複数の作用物質を、T細胞中に導入することによって実施される、請求項59、61、および62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記方法が、T細胞において、改変されたTGFBR2遺伝子座を作製し、該改変されたTGFBR2遺伝子座が、組換え受容体またはその一部分をコードする核酸配列を含む、請求項59~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記ポリヌクレオチドが、前記核酸配列に連結された1つまたは複数の相同性アームをさらに含み、該1つまたは複数の相同性アームが、トランスフォーミング増殖因子β受容体2型(TGFBR2)遺伝子座のオープンリーディングフレームの1つまたは複数の領域に相同な配列を含む、請求項62~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記方法によって生成された細胞において、改変されたTGFBR2遺伝子座が、
機能的なTGFBRIIポリペプチドを、前記方法によって生成された細胞においてコードしない;
TGFBRIIポリペプチドをコードしないか、もしくはTGFBRIIポリペプチドの発現が排除されている;および/または
完全長TGFBRIIポリペプチドをコードしないか、もしくはドミナントネガティブTGFBRIIポリペプチドをコードする、
請求項59~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記1つまたは複数の相同性アームが、5'相同性アームおよび3'相同性アームを含み、前記ポリヌクレオチドが、構造[5'相同性アーム]-[組換え受容体またはその一部分をコードする核酸配列]-[3'相同性アーム]を含む、請求項65または66に記載の方法。
【請求項68】
コードされる組換え受容体が、組換えT細胞受容体(TCR)であるか、またはそれを含む、請求項59~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
コードされる組換え受容体が、キメラ抗原受容体(CAR)である、請求項59~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
遺伝子破壊を誘導することができる1つまたは複数の作用物質が、
標的部位に特異的に結合するかもしくはハイブリダイズするDNA結合タンパク質もしくはDNA結合核酸、DNAターゲティングタンパク質とヌクレアーゼとを含む融合タンパク質、またはRNA誘導型ヌクレアーゼ
を含み、任意で、該1つまたは複数の作用物質が、
標的部位に特異的に結合するか、それを認識するか、またはそれにハイブリダイズする、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、または、およびCRISPR-Cas9の組み合わせ
を含む、請求項60および63~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記1つまたは複数の作用物質が、少なくとも1つの標的部位に相補的であるターゲティングドメインを有するガイドRNA(gRNA)を含む、請求項60および63~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記1つまたは複数の作用物質が、gRNAとCas9タンパク質とを含むリボ核タンパク質(RNP)複合体として導入され、任意で、該RNPが、電気穿孔、パーティクルガン、リン酸カルシウムトランスフェクション、細胞の圧縮または圧搾を介して、任意で電気穿孔を介して導入される、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記RNPの濃度が、1μMまたは約1μMから、5μMまたは約5μMであり、任意で、該RNPの濃度が、2μMまたは約2μMである、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記gRNAが、
のターゲティングドメイン配列を有する、請求項71~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記T細胞が、対象に由来する初代T細胞であり、任意で、該対象がヒトである、請求項59~74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記T細胞が、CD8+ T細胞もしくはそのサブタイプ、またはCD4+ T細胞もしくはそのサブタイプである、請求項59~75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
前記ポリヌクレオチドが、ウイルスベクター中に含まれる、請求項59~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
前記ウイルスベクターがAAVベクターであり、任意で、該AAVベクターが、AAV2またはAAV6ベクターである、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記ポリヌクレオチドが、直鎖ポリヌクレオチド、任意で二本鎖ポリヌクレオチドまたは一本鎖ポリヌクレオチドである、請求項59~78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記ポリヌクレオチドが、前記1つまたは複数の作用物質の導入の後に導入される、請求項60および63~79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記ポリヌクレオチドが、前記作用物質の導入の直後に、またはその後約30秒、1分、2分、3分、4分、5分、6分、6分、8分、9分、10分、15分、20分、30分、40分、50分、60分、90分、2時間、3時間、もしくは4時間以内に導入される、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記1つまたは複数の作用物質の導入の前に、前記方法が、1つまたは複数の免疫細胞を刺激するかまたは活性化するための条件下で、細胞を、1つまたは複数の刺激物質とインビトロでインキュベートする工程を含み、任意で、該1つまたは複数の刺激物質が、抗CD3抗体および/または抗CD28抗体、任意で抗CD3/抗CD28ビーズを含み、任意で、ビーズ対細胞の比が、1:1であるかまたは約1:1である、請求項60および64~81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
前記方法が、前記1つもしくは複数の作用物質の導入および/または前記ポリヌクレオチドの導入の前に、その最中に、またはその後に、細胞を、1つまたは複数の組換えサイトカインとインキュベートする工程をさらに含み、任意で、該1つまたは複数の組換えサイトカインが、IL-2、IL-7、およびIL-15からなる群より選択され、任意で、該1つまたは複数の組換えサイトカインが、10 U/mLもしくは約10 U/mLから、200 U/mLもしくは約200 U/mL、任意で50 IU/mLもしくは約50 IU/mLから、100 U/mLもしくは約100 U/mLのIL-2の濃度;0.5 ng/mL~50 ng/mL、任意で5 ng/mLもしくは約5 ng/mLから、10 ng/mLもしくは約10 ng/mLのIL-7の濃度;および/または0.1 ng/mL~20 ng/mL、任意で0.5 ng/mLもしくは約0.5 ng/mLから、5 ng/mLもしくは約5 ng/mLのIL-15の濃度から選択される濃度で添加される、請求項60および64~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
インキュベーションが、前記1つまたは複数の作用物質の導入および前記ポリヌクレオチドの導入の後に、最大で24時間、36時間、48時間、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、もしくは21日間、またはおよそ24時間、36時間、48時間、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、もしくは21日間、任意で最大で7日間または約7日間実施される、請求項82または83に記載の方法。
【請求項85】
前記方法によって生成された複数の操作された細胞中の少なくとも35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、もしくは90%の、または該細胞中の35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、もしくは90%超の細胞が、TGFBR2遺伝子座内の少なくとも1つの標的部位の遺伝子破壊を含み;かつ/あるいは、前記方法によって生成された複数の操作された細胞中の少なくとも35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、もしくは90%の、または該細胞中の35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、もしくは90%超の細胞が、組換え受容体を発現する、請求項59~84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
請求項59~85のいずれか一項に記載の方法を用いて生成された、遺伝子操作されたT細胞または複数の遺伝子操作されたT細胞。
【請求項87】
請求項1~26および86のいずれか一項に記載の遺伝子操作されたT細胞または請求項1~26および86のいずれか一項に記載の複数の遺伝子操作されたT細胞を含む、組成物。
【請求項88】
CD4+ T細胞および/またはCD8+ T細胞を含む、請求項87に記載の組成物。
【請求項89】
CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞を含み、CD4+ T細胞対CD8+ T細胞の比が、1:3~3:1または約1:3~3:1、任意で1:1である、請求項88に記載の組成物。
【請求項90】
組換え受容体を発現する細胞が、組成物中の全細胞のうちの、または組成物中の全CD4+ T細胞もしくはCD8+ T細胞のうちの、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれよりも多くを占める、請求項87~89のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項91】
請求項1~26および86~90のいずれか一項に記載の遺伝子操作されたT細胞、複数の遺伝子操作されたT細胞、または組成物を、ある疾患または障害を有する対象に投与する工程を含む、処置の方法。
【請求項92】
ある疾患または障害の処置のための、請求項1~26および86~90のいずれか一項に記載の遺伝子操作されたT細胞、複数の遺伝子操作されたT細胞、または組成物の、使用。
【請求項93】
ある疾患または障害を処置するための薬剤の製造における、請求項1~26および86~90のいずれか一項に記載の遺伝子操作されたT細胞、複数の遺伝子操作されたT細胞、または組成物の、使用。
【請求項94】
ある疾患または障害の処置における使用のための、請求項1~26および86~90のいずれか一項に記載の遺伝子操作されたT細胞、複数の遺伝子操作されたT細胞、または組成物。
【請求項95】
前記疾患または障害が、がんまたは腫瘍である、請求項91~94のいずれか一項に記載の方法、使用、または使用のための遺伝子操作されたT細胞、複数の遺伝子操作されたT細胞、もしくは組成物。
【請求項96】
前記がんまたは腫瘍が、血液悪性腫瘍、任意でリンパ腫、白血病、または形質細胞悪性腫瘍である、請求項95に記載の方法、使用、または使用のための遺伝子操作されたT細胞、複数の遺伝子操作されたT細胞、もしくは組成物。
【請求項97】
前記がんまたは腫瘍が、固形腫瘍であり、任意で、該固形腫瘍が、非小細胞肺がん(NSCLC)または頭頚部扁平上皮癌(HNSCC)である、請求項95に記載の方法、使用、または使用のための遺伝子操作されたT細胞、複数の遺伝子操作されたT細胞、もしくは組成物。
【請求項98】
TGFBR2遺伝子座内の標的部位で遺伝子破壊を誘導することができる1つまたは複数の作用物質;および
請求項27~58のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド
を含む、キット。
【請求項99】
TGFBR2遺伝子座内の標的部位で遺伝子破壊を誘導することができる1つまたは複数の作用物質;および
組換え受容体またはその一部分をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドであって、該組換え受容体またはその一部分をコードする核酸配列が、相同性指向修復(HDR)を介した標的部位でのまたはその近くでの組み込みのためにターゲティングされる、ポリヌクレオチド;および
請求項59~85のいずれか一項に記載の方法を実施するための説明書
を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、「CELLS EXPRESSING A RECOMBINANT RECEPTOR FROM A MODIFIED TGFBR2 LOCUS, RELATED POLYNUCLEOTIDES AND METHODS」と題する2019年5月1日に出願された米国特許仮出願第62/841,575号の優先権を主張し、その内容は全体が参照により組み入れられる。
【0002】
配列表の参照による組み入れ
本出願は、電子形式の配列表と共に提出されている。配列表は、サイズが200キロバイトである、2020年4月28日に作成された735042012840SeqList.txtと題するファイルとして提供される。配列表の電子形式の情報は、その全体が参照により組み入れられる。
【0003】
分野
本開示は、組換え受容体またはその一部分をコードする改変されたトランスフォーミング増殖因子β受容体2型(TGFBR2)遺伝子座を含有する、組換え受容体を発現する操作された免疫細胞、例えばT細胞に関する。いくつかの局面において、細胞は、TGFBR2ゲノム遺伝子座で、組換え受容体またはその一部分をコードする導入遺伝子配列の標的組み込みによって操作される。また、操作された免疫細胞を含有する細胞組成物、細胞を操作するための核酸、ならびに、例えば、TGFBR2ゲノム遺伝子座の領域中への組み込みのために組換え受容体またはその一部分をコードする導入遺伝子配列をターゲティングすることによる、操作された細胞を作製するための方法、キット、および製造物品も開示される。いくつかの態様において、操作された細胞、例えばT細胞は、細胞療法に関連して、例えば、操作された細胞の養子移入を含むがん免疫療法に関連して、使用され得る。
【背景技術】
【0004】
背景
疾患に関連する抗原を認識する、キメラ抗原受容体(CAR)などの組換え受容体を利用する養子細胞療法は、がんおよび他の疾患の処置のための魅力的な治療様式に相当する。養子免疫療法における、例えば、がん、感染性疾患、および自己免疫疾患の処置における使用のためなどに、組換え受容体を発現するようにT細胞を操作するための改善された戦略が必要とされる。そのような必要を満たす方法における使用のための方法、細胞、組成物、およびキットが提供される。
【発明の概要】
【0005】
概要
遺伝子操作されたT細胞、ならびに遺伝子操作されたT細胞に関連した組成物、方法、使用、キット、および製造物品が、本明細書において提供される。提供される態様のいずれかのいくつかにおいて、遺伝子操作されたT細胞は、改変されたトランスフォーミング増殖因子β受容体2型(TGFBR2)遺伝子座を含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、改変されたTGFBR2遺伝子座は、組換え受容体またはその一部分をコードする導入遺伝子配列を含む。
【0006】
改変されたトランスフォーミング増殖因子β受容体2型(TGFBR2)遺伝子座を含有する、遺伝子操作されたT細胞であって、該改変されたTGFBR2遺伝子座が、組換え受容体またはその一部分をコードする導入遺伝子配列を含む遺伝子操作されたT細胞が、本明細書において提供される。いずれかの態様のいくつかにおいて、導入遺伝子配列は、内在性TGFBR2遺伝子座に組み込まれている。いずれかの態様のいくつかにおいて、組み込みは、相同性指向修復(HDR)を介している。
【0007】
いずれかの態様のいくつかにおいて、改変されたTGFBR2遺伝子座は、機能的なTGFBRIIポリペプチドをコードしない。いずれかの態様のいくつかにおいて、改変されたTGFBR2遺伝子座は、TGFBRIIポリペプチドをコードしないか、またはTGFBRIIポリペプチドの発現が排除されている。いずれかの態様のいくつかにおいて、改変されたTGFBR2遺伝子座は、完全長TGFBRIIポリペプチドをコードしないか、または部分的なTGFBRIIポリペプチドをコードする。いずれかの態様のいくつかにおいて、改変されたTGFBR2遺伝子座は、ドミナントネガティブTGFBRIIポリペプチドをコードする。いずれかの態様のいくつかにおいて、コードされるTGFBRIIポリペプチドは、SEQ ID NO:59の残基22~191またはSEQ ID NO:60の残基22~216に対応するアミノ酸配列を含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、コードされるTGFBRIIポリペプチドは、SEQ ID NO:59の残基22~191もしくはSEQ ID NO:60の残基22~216に対応するアミノ酸配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれよりも高い配列同一性を示す配列、またはその断片を含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、導入遺伝子配列は、内在性TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームの1つもしくは複数のエクソンまたはその部分配列とインフレームである。
【0008】
いずれかの態様のいくつかにおいて、導入遺伝子配列は、内在性TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームのエクソン1の下流かつエクソン6の上流にある。いずれかの態様のいくつかにおいて、導入遺伝子配列は、内在性TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームのエクソン4の下流かつエクソン6の上流にある。
【0009】
いずれかの態様のいくつかにおいて、組換え受容体は、組換えT細胞受容体(TCR)であるか、またはそれを含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、組換え受容体は、組換えTCRであり、導入遺伝子配列は、TCRアルファ(TCRα)鎖、TCRベータ(TCRβ)鎖、または両方をコードする。いずれかの態様のいくつかにおいて、組換え受容体は、機能的な非T細胞受容体(非TCR)抗原受容体である。いずれかの態様のいくつかにおいて、組換え受容体は、機能的な非T細胞受容体(非TCR)抗原受容体を含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、組換え受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)である。いずれかの態様のいくつかにおいて、CARは、細胞外領域、膜貫通ドメイン、および細胞内領域を含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、細胞外領域は、結合ドメインを含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、結合ドメインは、抗体またはその抗原結合断片である。いずれかの態様のいくつかにおいて、結合ドメインは、抗体またはその抗原結合断片を含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、結合ドメインは、ある疾患、障害、もしくは状態の細胞もしくは組織に関連している、それに特異的である、またはその上に発現している標的抗原に結合することができる。
【0010】
いずれかの態様のいくつかにおいて、標的抗原は腫瘍抗原である。いずれかの態様のいくつかにおいて、標的抗原は、αvβ6インテグリン(avb6インテグリン)、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3、B7-H6、炭酸脱水酵素9(CA9;CAIXまたはG250としても知られている)、がん精巣抗原、がん/精巣抗原1B(CTAG;NY-ESO-1およびLAGE-2としても知られている)、癌胎児性抗原(CEA)、サイクリン、サイクリンA2、C-Cモチーフケモカインリガンド1(CCL-1)、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD123、CD133、CD138、CD171、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4)、上皮成長因子タンパク質(EGFR)、III型上皮成長因子受容体変異(EGFR vIII)、上皮糖タンパク質2(EPG-2)、上皮糖タンパク質40(EPG-40)、エフリンB2、エフリン受容体A2(EPHa2)、エストロゲン受容体、Fc受容体様5(FCRL5;Fc受容体ホモログ5またはFCRH5としても知られている)、胎児アセチルコリン受容体(胎児AchR)、葉酸結合タンパク質(FBP)、葉酸受容体アルファ、ガングリオシドGD2、O-アセチル化GD2(OGD2)、ガングリオシドGD3、糖タンパク質100(gp100)、グリピカン-3(GPC3)、Gタンパク質共役受容体クラスCグループ5メンバーD(GPRC5D)、Her2/neu(受容体チロシンキナーゼerb-B2)、Her3(erb-B3)、Her4(erb-B4)、erbB二量体、ヒト高分子量-黒色腫関連抗原(HMW-MAA)、B型肝炎表面抗原、ヒト白血球抗原A1(HLA-A1)、ヒト白血球抗原A2(HLA-A2)、IL-22受容体アルファ(IL-22Rα)、IL-13受容体アルファ2(IL-13Rα2)、キナーゼインサートドメイン受容体(kdr)、κ軽鎖、L1細胞接着分子(L1-CAM)、L1-CAMのCE7エピトープ、ロイシンリッチリピート含有8ファミリーメンバーA(LRRC8A)、ルイスY、黒色腫関連抗原(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A6、MAGE-A10、メソテリン(MSLN)、c-Met、マウスサイトメガロウイルス(CMV)、ムチン1(MUC1)、MUC16、ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D)リガンド、メランA(MART-1)、神経細胞接着分子(NCAM)、腫瘍胎児抗原、黒色腫優先発現抗原(PRAME)、プロゲステロン受容体、前立腺特異的抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、サバイビン、栄養膜糖タンパク質(TPBG;5T4としても知られている)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、チロシナーゼ関連タンパク質1(TRP1;TYRP1またはgp75としても知られている)、チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP2;ドパクロムトートメラーゼ、ドパクロムデルタ-イソメラーゼ、またはDCTとしても知られている)、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)、血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR2)、ウィルムス腫瘍1(WT-1)、病原体特異的抗原もしくは病原体発現抗原、またはユニバーサルタグに関連する抗原、および/またはビオチン化分子、および/またはHIV、HCV、HBV、もしくは他の病原体によって発現される分子の中から選択される。
【0011】
いずれかの態様のいくつかにおいて、細胞外領域は、スペーサーを含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、スペーサーは、結合ドメインと膜貫通ドメインとの間に機能的に連結されている。いずれかの態様のいくつかにおいて、スペーサーは、免疫グロブリンヒンジ領域を含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、スペーサーは、CH2領域およびCH3領域を含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、細胞内領域は、細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3鎖、例えばCD3-ゼータ(CD3ζ)鎖の細胞内シグナル伝達ドメイン、またはそのシグナル伝達部分である。いずれかの態様のいくつかにおいて、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3鎖、例えばCD3-ゼータ(CD3ζ)鎖の細胞内シグナル伝達ドメイン、またはそのシグナル伝達部分を含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、細胞内領域は、1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメインは、CD28、4-1BB、もしくはICOSの細胞内シグナル伝達ドメイン、またはそのシグナル伝達部分を含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、共刺激シグナル伝達領域は、4-1BBの細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
【0012】
いずれかの態様のいくつかにおいて、改変されたTGFBR2遺伝子座は、そのN末端からC末端へと順番に、細胞外結合ドメイン、スペーサー、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達領域を含む、組換え受容体をコードする。
【0013】
いずれかの態様のいくつかにおいて、導入遺伝子配列は、順番に、細胞外結合ドメイン;スペーサー;および膜貫通ドメイン;共刺激シグナル伝達ドメイン;および細胞内シグナル伝達領域をコードするヌクレオチドの配列を含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、改変されたTGFBR2遺伝子座は、順番に、細胞外結合ドメイン;スペーサー;および膜貫通ドメイン;共刺激シグナル伝達ドメイン;および細胞内シグナル伝達領域をコードするヌクレオチドの配列を含む。
【0014】
いずれかの態様のいくつかにおいて、導入遺伝子配列は、順番に、scFvである、細胞外結合ドメイン;IgG1、IgG2、もしくはIgG4、またはその改変バージョンである、ヒト免疫グロブリンヒンジ由来の配列を含み、CH2領域および/またはCH3領域をさらに含む、スペーサー;ならびに、ヒトCD28由来である、膜貫通ドメイン;ヒト4-1BB由来である、共刺激シグナル伝達ドメイン;ならびに、CD3ζ鎖またはその一部分である、細胞内シグナル伝達領域、をコードするヌクレオチドの配列を含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、改変されたTGFBR2遺伝子座は、順番に、scFvである、細胞外結合ドメイン;IgG1、IgG2、もしくはIgG4、またはその改変バージョン由来である、ヒト免疫グロブリンヒンジ由来の配列を含み、CH2領域および/またはCH3領域をさらに含む、スペーサー;ならびに、ヒトCD28由来である、膜貫通ドメイン;ヒト4-1BB由来である、共刺激シグナル伝達ドメイン;ならびに、CD3ζ鎖またはその一部分である、細胞内シグナル伝達領域、をコードするヌクレオチドの配列を含む。
【0015】
いずれかの態様のいくつかにおいて、CARは、多鎖CARである。いずれかの態様のいくつかにおいて、導入遺伝子配列は、少なくとも1つのさらなるタンパク質をコードするヌクレオチドの配列を含む。
【0016】
いずれかの態様のいくつかにおいて、導入遺伝子配列は、1つまたは複数のマルチシストロン性エレメントを含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、1つまたは複数のマルチシストロン性エレメントは、CARをコードするヌクレオチドの配列と、少なくとも1つのさらなるタンパク質をコードするヌクレオチドの配列との間に位置づけられる。いずれかの態様のいくつかにおいて、少なくとも1つのさらなるタンパク質は、代用マーカーである。いずれかの態様のいくつかにおいて、代用マーカーは、トランケートされた受容体である。いずれかの態様のいくつかにおいて、トランケートされた受容体は、細胞内シグナル伝達ドメインを欠き、かつそのリガンドが結合した場合に細胞内シグナル伝達を媒介することができない。いずれかの態様のいくつかにおいて、トランケートされた受容体は、細胞内シグナル伝達ドメインを欠くか、またはそのリガンドが結合した場合に細胞内シグナル伝達を媒介することができない。
【0017】
いずれかの態様のいくつかにおいて、組換え受容体は、組換えTCRであり、マルチシストロン性エレメントは、TCRαをコードするヌクレオチドの配列と、TCRβをコードするヌクレオチドの配列との間に位置づけられる。
【0018】
いずれかの態様のいくつかにおいて、組換え受容体は、多鎖CARであり、マルチシストロン性エレメントは、多鎖CARの1つの鎖をコードするヌクレオチドの配列と、多鎖CARの別の鎖をコードするヌクレオチドの配列との間に位置づけられる。
【0019】
いずれかの態様のいくつかにおいて、1つまたは複数のマルチシストロン性エレメントは、組換え受容体をコードするヌクレオチドの配列の上流にある。
【0020】
いずれかの態様のいくつかにおいて、1つまたは複数のマルチシストロン性エレメントは、リボソームスキップ配列であるか、またはそれを含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、リボソームスキップ配列は、T2A、P2A、E2A、またはF2Aエレメントである。
【0021】
いずれかの態様のいくつかにおいて、改変されたTGFBR2遺伝子座は、組換え受容体をコードする核酸配列の発現を調節するために機能的に連結された内在性TGFBR2遺伝子座のプロモーターおよび制御もしくは調節エレメントを含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、改変されたTGFBR2遺伝子座は、組換え受容体をコードする核酸配列の発現を調節するために機能的に連結された内在性TGFBR2遺伝子座のプロモーターまたは制御もしくは調節エレメントを含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、改変された遺伝子座は、組換え受容体をコードする核酸配列の発現を調節するために機能的に連結された1つまたは複数の異種の制御または調節エレメントを含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、1つまたは複数の異種の制御または調節エレメントは、異種プロモーター、エンハンサー、イントロン、ポリアデニル化シグナル、Kozakコンセンサス配列、スプライスアクセプター配列、またはスプライスドナー配列を含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、異種プロモーターは、ヒト伸長因子1アルファ(EF1α)プロモーターもしくはMNDプロモーターもしくはそれらのバリアントであるか、またはそれを含む。
【0022】
いずれかの態様のいくつかにおいて、T細胞は、対象に由来する初代T細胞である。いずれかの態様のいくつかにおいて、対象はヒトである。いずれかの態様のいくつかにおいて、T細胞は、CD8+ T細胞またはそのサブタイプである。いずれかの態様のいくつかにおいて、T細胞は、CD4+ T細胞またはそのサブタイプである。いずれかの態様のいくつかにおいて、T細胞は、多分化能細胞または多能性細胞に由来している。いずれかの態様のいくつかにおいて、T細胞は、iPSCである多分化能細胞または多能性細胞に由来している。
【0023】
組換え受容体またはその一部分をコードする核酸配列;および該核酸配列に連結された1つまたは複数の相同性アームを含むポリヌクレオチドが、本明細書において提供される。いずれかの態様のいくつかにおいて、1つまたは複数の相同性アームは、トランスフォーミング増殖因子β受容体2型(TGFBR2)遺伝子座のオープンリーディングフレームの1つまたは複数の領域に相同な配列を含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、ポリヌクレオチドが導入された細胞から組換え受容体が発現される場合に、組換え受容体またはその一部分は、組換え受容体またはその一部分をコードする核酸配列を含む改変されたTGFBR2遺伝子座によってコードされる。いずれかの態様のいくつかにおいて、核酸配列は、T細胞の内在性ゲノムTGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームにとって外来性または異種である配列である。いずれかの態様のいくつかにおいて、核酸配列は、ヒトT細胞であるT細胞の内在性ゲノムTGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームにとって外来性または異種である配列である。
【0024】
いずれかの態様のいくつかにおいて、1つまたは複数の相同性アームは、TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームの少なくとも1つのイントロンまたは少なくとも1つのエクソンを含む。いずれかの態様のいくつかでは、ポリヌクレオチドが導入された細胞において、改変されたTGFBR2遺伝子座は、機能的なTGFBRIIポリペプチドをコードしない。いずれかの態様のいくつかでは、ポリヌクレオチドが導入された細胞において、改変されたTGFBR2遺伝子座は、TGFBRIIポリペプチドをコードしないか、またはTGFBRIIポリペプチドの発現が排除されている。
【0025】
いずれかの態様のいくつかでは、ポリヌクレオチドが導入された細胞において、改変されたTGFBR2遺伝子座は、完全長TGFBRIIポリペプチドをコードしないか、または部分的なTGFBRIIポリペプチドをコードする。いずれかの態様のいくつかでは、ポリヌクレオチドが導入された細胞において、改変されたTGFBR2遺伝子座は、ドミナントネガティブTGFBRIIポリペプチドをコードする。いずれかの態様のいくつかにおいて、ポリヌクレオチドが導入された細胞におけるコードされるTGFBRIIポリペプチドは、SEQ ID NO:59の残基22~191もしくはSEQ ID NO:60の残基22~216に対応するアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:59の残基22~191もしくはSEQ ID NO:60の残基22~216に対応するアミノ酸配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれよりも高い配列同一性を示す配列、またはその断片を含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、核酸配列は、1つまたは複数の相同性アームに含まれるTGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームの1つまたは複数のエクソンとインフレームである。
【0026】
いずれかの態様のいくつかにおいて、オープンリーディングフレームの1つまたは複数の領域は、内在性TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームのエクソン1の下流にある配列であるか、またはそれを含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、オープンリーディングフレームの1つまたは複数の領域は、TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームのエクソン4の少なくとも一部分もしくはエクソン4の下流を含む配列であるか、またはそれを含む。
【0027】
いずれかの態様のいくつかにおいて、1つまたは複数の相同性アームは、5'相同性アームおよび3'相同性アームを含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、ポリヌクレオチドは、構造[5'相同性アーム]-[(a)の核酸配列]-[3'相同性アーム]を含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、5'相同性アームおよび3'相同性アームは、独立して、50もしくは約50から、2000もしくは約2000ヌクレオチド、100もしくは約100から、1000もしくは約1000ヌクレオチド、100もしくは約100から、750もしくは約750ヌクレオチド、100もしくは約100から、600もしくは約600ヌクレオチド、100もしくは約100から、400もしくは約400ヌクレオチド、100もしくは約100から、300もしくは約300ヌクレオチド、100もしくは約100から、200もしくは約200ヌクレオチド、200もしくは約200から、1000もしくは約1000ヌクレオチド、200もしくは約200から、750もしくは約750ヌクレオチド、200もしくは約200から、600もしくは約600ヌクレオチド、200もしくは約200から、400もしくは約400ヌクレオチド、200もしくは約200から、300もしくは約300ヌクレオチド、300もしくは約300から、1000もしくは約1000ヌクレオチド、300もしくは約300から、750もしくは約750ヌクレオチド、300もしくは約300から、600もしくは約600ヌクレオチド、300もしくは約300から、400もしくは約400ヌクレオチド、400もしくは約400から、1000もしくは約1000ヌクレオチド、400もしくは約400から、750もしくは約750ヌクレオチド、400もしくは約400から、600もしくは約600ヌクレオチド、600もしくは約600から、1000もしくは約1000ヌクレオチド、600もしくは約600から、750もしくは約750ヌクレオチド、または750もしくは約750から、1000もしくは約1000ヌクレオチドの長さである。いずれかの態様のいくつかにおいて、5'相同性アームおよび3'相同性アームは、独立して、200、300、400、500、600、700、もしくは800ヌクレオチドの長さまたは約200、300、400、500、600、700、もしくは800ヌクレオチドの長さ、または前述のいずれかの間の任意の値である。いずれかの態様のいくつかにおいて、5'相同性アームおよび3'相同性アームは、独立して、300ヌクレオチド超または約300ヌクレオチド超の長さである。いずれかの態様のいくつかにおいて、5'相同性アームおよび3'相同性アームは、独立して、400、500、もしくは600ヌクレオチドの長さまたは約400、500、もしくは600ヌクレオチドの長さ、または前述のいずれかの間の任意の値である。
【0028】
いずれかの態様のいくつかにおいて、5'相同性アームは、SEQ ID NO:69~71に示される配列、またはSEQ ID NO:69~71に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれよりも高い配列同一性を示す配列、またはその部分配列を含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、3'相同性アームは、SEQ ID NO:72に示される配列、またはSEQ ID NO:72に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれよりも高い配列同一性を示す配列、またはその部分配列を含む。
【0029】
いずれかの態様のいくつかにおいて、コードされる組換え受容体は、組換えT細胞受容体(TCR)であるか、またはそれを含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、コードされる組換え受容体は、組換えTCRであり、(a)における核酸配列は、TCRアルファ(TCRα)鎖、TCRベータ(TCRβ)鎖、または両方をコードする。
【0030】
いずれかの態様のいくつかにおいて、コードされる組換え受容体は、機能的な非T細胞受容体(非TCR)抗原受容体である。いずれかの態様のいくつかにおいて、コードされる組換え受容体は、機能的な非T細胞受容体(非TCR)抗原受容体を含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、コードされる組換え受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)である。
【0031】
いずれかの態様のいくつかにおいて、CARは、細胞外領域、膜貫通ドメイン、および細胞内領域を含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、細胞外領域は、結合ドメインを含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、結合ドメインは、抗体またはその抗原結合断片である。いずれかの態様のいくつかにおいて、結合ドメインは、抗体またはその抗原結合断片を含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、結合ドメインは、ある疾患、障害、もしくは状態の細胞もしくは組織に関連している、それに特異的である、またはその上に発現している標的抗原に結合することができる。
【0032】
いずれかの態様のいくつかにおいて、標的抗原は腫瘍抗原である。いずれかの態様のいくつかにおいて、標的抗原は、αvβ6インテグリン(avb6インテグリン)、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3、B7-H6、炭酸脱水酵素9(CA9;CAIXまたはG250としても知られている)、がん精巣抗原、がん/精巣抗原1B(CTAG;NY-ESO-1およびLAGE-2としても知られている)、癌胎児性抗原(CEA)、サイクリン、サイクリンA2、C-Cモチーフケモカインリガンド1(CCL-1)、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD123、CD133、CD138、CD171、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4)、上皮成長因子タンパク質(EGFR)、III型上皮成長因子受容体変異(EGFR vIII)、上皮糖タンパク質2(EPG-2)、上皮糖タンパク質40(EPG-40)、エフリンB2、エフリン受容体A2(EPHa2)、エストロゲン受容体、Fc受容体様5(FCRL5;Fc受容体ホモログ5またはFCRH5としても知られている)、胎児アセチルコリン受容体(胎児AchR)、葉酸結合タンパク質(FBP)、葉酸受容体アルファ、ガングリオシドGD2、O-アセチル化GD2(OGD2)、ガングリオシドGD3、糖タンパク質100(gp100)、グリピカン-3(GPC3)、Gタンパク質共役受容体クラスCグループ5メンバーD(GPRC5D)、Her2/neu(受容体チロシンキナーゼerb-B2)、Her3(erb-B3)、Her4(erb-B4)、erbB二量体、ヒト高分子量-黒色腫関連抗原(HMW-MAA)、B型肝炎表面抗原、ヒト白血球抗原A1(HLA-A1)、ヒト白血球抗原A2(HLA-A2)、IL-22受容体アルファ(IL-22Rα)、IL-13受容体アルファ2(IL-13Rα2)、キナーゼインサートドメイン受容体(kdr)、κ軽鎖、L1細胞接着分子(L1-CAM)、L1-CAMのCE7エピトープ、ロイシンリッチリピート含有8ファミリーメンバーA(LRRC8A)、ルイスY、黒色腫関連抗原(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A6、MAGE-A10、メソテリン(MSLN)、c-Met、マウスサイトメガロウイルス(CMV)、ムチン1(MUC1)、MUC16、ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D)リガンド、メランA(MART-1)、神経細胞接着分子(NCAM)、腫瘍胎児抗原、黒色腫優先発現抗原(PRAME)、プロゲステロン受容体、前立腺特異的抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、サバイビン、栄養膜糖タンパク質(TPBG;5T4としても知られている)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、チロシナーゼ関連タンパク質1(TRP1;TYRP1またはgp75としても知られている)、チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP2;ドパクロムトートメラーゼ、ドパクロムデルタ-イソメラーゼ、またはDCTとしても知られている)、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)、血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR2)、ウィルムス腫瘍1(WT-1)、病原体特異的抗原もしくは病原体発現抗原、またはユニバーサルタグに関連する抗原、および/またはビオチン化分子、および/またはHIV、HCV、HBV、もしくは他の病原体によって発現される分子の中から選択される。
【0033】
いずれかの態様のいくつかにおいて、細胞外領域は、スペーサーを含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、細胞外領域は、結合ドメインと膜貫通ドメインとの間に機能的に連結されているスペーサーを含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、スペーサーは、免疫グロブリンヒンジ領域を含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、スペーサーは、CH2領域およびCH3領域を含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、細胞内領域は、細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3鎖の細胞内シグナル伝達ドメインである。いずれかの態様のいくつかにおいて、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3-ゼータ(CD3ζ)鎖であるCD3鎖の細胞内シグナル伝達ドメイン、またはそのシグナル伝達部分である。いずれかの態様のいくつかにおいて、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3鎖の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3-ゼータ(CD3ζ)鎖であるCD3鎖の細胞内シグナル伝達ドメイン、またはそのシグナル伝達部分を含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、細胞内領域は、1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメインは、CD28、4-1BB、もしくはICOSの細胞内シグナル伝達ドメイン、またはそのシグナル伝達部分を含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、共刺激シグナル伝達領域は、4-1BBの細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
【0034】
いずれかの態様のいくつかにおいて、改変されたTGFBR2遺伝子座は、そのN末端からC末端へと順番に、細胞外結合ドメイン、スペーサー、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達領域を含む、組換え受容体をコードする。いずれかの態様のいくつかにおいて、導入遺伝子配列は、順番に、細胞外結合ドメイン;スペーサー;および膜貫通ドメイン;および細胞内シグナル伝達領域をコードするヌクレオチドの配列を含む。
【0035】
いずれかの態様のいくつかにおいて、導入遺伝子配列は、順番に、scFvである、細胞外結合ドメイン;IgG1、IgG2、もしくはIgG4、またはその改変バージョンである、ヒト免疫グロブリンヒンジ由来の配列を含み、CH2領域および/またはCH3領域をさらに含む、スペーサー;ならびに、ヒトCD28由来である、膜貫通ドメイン;ヒト4-1BB由来である、共刺激シグナル伝達ドメイン;ならびに、CD3ζ鎖またはその一部分である、細胞内シグナル伝達領域、をコードするヌクレオチドの配列を含む。
【0036】
いずれかの態様のいくつかにおいて、CARは、多鎖CARである。いずれかの態様のいくつかにおいて、核酸配列は、少なくとも1つのさらなるタンパク質をコードするヌクレオチドの配列を含む。
【0037】
いずれかの態様のいくつかにおいて、核酸配列は、1つまたは複数のマルチシストロン性エレメントを含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、1つまたは複数のマルチシストロン性エレメントは、CARをコードするヌクレオチドの配列と、少なくとも1つのさらなるタンパク質をコードするヌクレオチドの配列との間に位置づけられる。
【0038】
いずれかの態様のいくつかにおいて、少なくとも1つのさらなるタンパク質は、代用マーカーである。いずれかの態様のいくつかにおいて、少なくとも1つのさらなるタンパク質は、トランケートされた受容体である代用マーカーである。いずれかの態様のいくつかにおいて、少なくとも1つのさらなるタンパク質は、細胞内シグナル伝達ドメインを欠き、かつそのリガンドが結合した場合に細胞内シグナル伝達を媒介することができないトランケートされた受容体である、代用マーカーである。いずれかの態様のいくつかにおいて、少なくとも1つのさらなるタンパク質は、細胞内シグナル伝達ドメインを欠くか、またはそのリガンドが結合した場合に細胞内シグナル伝達を媒介することができないトランケートされた受容体である、代用マーカーである。
【0039】
いずれかの態様のいくつかにおいて、組換え受容体は、組換えTCRであり、マルチシストロン性エレメントは、TCRαをコードするヌクレオチドの配列と、TCRβをコードするヌクレオチドの配列との間に位置づけられる。
【0040】
いずれかの態様のいくつかにおいて、組換え受容体は、多鎖CARであり、マルチシストロン性エレメントは、多鎖CARの1つの鎖をコードするヌクレオチドの配列と、多鎖CARの別の鎖をコードするヌクレオチドの配列との間に位置づけられる。
【0041】
いずれかの態様のいくつかにおいて、1つまたは複数のマルチシストロン性エレメントは、組換え受容体をコードするヌクレオチドの配列の上流にある。いずれかの態様のいくつかにおいて、1つまたは複数のマルチシストロン性エレメントは、リボソームスキップ配列であるか、またはそれを含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、1つまたは複数のマルチシストロン性エレメントは、T2A、P2A、E2A、もしくはF2Aエレメントであるリボソームスキップ配列であるか、またはそれを含む。
【0042】
いずれかの態様のいくつかにおいて、核酸配列は、ポリヌクレオチドが導入された細胞からの発現時に組換え受容体の発現を調節するために機能的に連結された1つまたは複数の異種または制御性の調節エレメントを含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、1つまたは複数の異種の制御または調節エレメントは、異種プロモーター、エンハンサー、イントロン、ポリアデニル化シグナル、Kozakコンセンサス配列、スプライスアクセプター配列、および/またはスプライスドナー配列を含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、異種プロモーターは、ヒト伸長因子1アルファ(EF1α)プロモーターもしくはMNDプロモーターもしくはそれらのバリアントであるか、またはそれを含む。
【0043】
いずれかの態様のいくつかにおいて、ポリヌクレオチドは、ウイルスベクター中に含まれる。いずれかの態様のいくつかにおいて、ウイルスベクターはAAVベクターである。いずれかの態様のいくつかにおいて、AAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、またはAAV8ベクターの中から選択される。いずれかの態様のいくつかにおいて、AAVベクターは、AAV2またはAAV6ベクターである。いずれかの態様のいくつかにおいて、ウイルスベクターはレトロウイルスベクターである。いずれかの態様のいくつかにおいて、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターであるレトロウイルスベクターである。
【0044】
いずれかの態様のいくつかにおいて、ポリヌクレオチドは直鎖ポリヌクレオチドである。いずれかの態様のいくつかにおいて、ポリヌクレオチドは、二本鎖ポリヌクレオチドまたは一本鎖ポリヌクレオチドである、直鎖ポリヌクレオチドである。いずれかの態様のいくつかにおいて、ポリヌクレオチドは、少なくとも2500、2750、3000、3250、3500、3750、4000、4250、4500、4760、5000、5250、5500、5750、6000、7000、7500、8000、9000、もしくは10000ヌクレオチドの長さまたは少なくとも約2500、2750、3000、3250、3500、3750、4000、4250、4500、4760、5000、5250、5500、5750、6000、7000、7500、8000、9000、もしくは10000ヌクレオチドの長さ、または前述のいずれかの間の任意の値である。いずれかの態様のいくつかにおいて、ポリヌクレオチドは、2500もしくは約2500から、5000もしくは約5000ヌクレオチド、3500もしくは約3500から、4500もしくは約4500ヌクレオチド、または3750もしくは約3750ヌクレオチドから、4250もしくは約4250ヌクレオチドの長さである。
【0045】
提供されるポリヌクレオチドのいずれかを、TGFBR2遺伝子座に遺伝子破壊を含むT細胞中に導入する工程を含む、遺伝子操作されたT細胞を作製する方法が、本明細書において提供される。
【0046】
T細胞の内在性TGFBR2遺伝子座内の標的部位で遺伝子破壊を誘導することができる1つまたは複数の作用物質を、T細胞中に導入する工程、および、TGFBR2遺伝子座に遺伝子破壊を含むT細胞中に、ポリヌクレオチドを導入する工程を含む、遺伝子操作されたT細胞を作製する方法であって、該方法は、改変されたTGFBR2遺伝子座を作製し、該改変されたTGFBR2遺伝子座は、組換え受容体またはその一部分をコードする核酸配列を含む、方法が、本明細書において提供される。いずれかの態様のいくつかにおいて、組換え受容体またはその一部分をコードする核酸配列は、相同性指向修復(HDR)を介して内在性TGFBR2遺伝子座内に組み込まれる。
【0047】
組換え受容体またはその一部分をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを、T細胞中に導入する工程を含む、遺伝子操作されたT細胞を作製する方法であって、該T細胞が、T細胞のTGFBR2遺伝子座内に遺伝子破壊を有し、該組換え受容体またはその一部分をコードする核酸配列が、相同性指向修復(HDR)を介して内在性TGFBR2遺伝子座内に組み込まれる、方法が、本明細書において提供される。いずれかの態様のいくつかにおいて、遺伝子破壊は、T細胞の内在性TGFBR2遺伝子座内の標的部位で遺伝子破壊を誘導することができる1つまたは複数の作用物質を、T細胞中に導入することによって実施される。いずれかの態様のいくつかにおいて、方法は、改変されたTGFBR2遺伝子座を作製し、改変されたTGFBR2遺伝子座は、組換え受容体またはその一部分をコードする核酸配列を含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、 ポリヌクレオチドは、核酸配列に連結された1つまたは複数の相同性アームをさらに含み、該1つまたは複数の相同性アームは、トランスフォーミング増殖因子β受容体2型(TGFBR2)遺伝子座のオープンリーディングフレームの1つまたは複数の領域に相同な配列を含む。
【0048】
いずれかの態様のいくつかでは、方法によって生成された細胞において、改変されたTGFBR2遺伝子座は、機能的なTGFBRIIポリペプチドをコードしない。いずれかの態様のいくつかでは、方法によって生成された細胞において、改変されたTGFBR2遺伝子座は、TGFBRIIポリペプチドをコードしないか、またはTGFBRIIポリペプチドの発現が排除されている。いずれかの態様のいくつかでは、方法によって生成された細胞において、改変されたTGFBR2遺伝子座は、完全長TGFBRIIポリペプチドをコードしないか、または部分的なTGFBRIIポリペプチドをコードする。いずれかの態様のいくつかでは、方法によって生成された細胞において、改変されたTGFBR2遺伝子座は、ドミナントネガティブTGFBRIIポリペプチドをコードする。
【0049】
いずれかの態様のいくつかにおいて、1つまたは複数の相同性アームは、5'相同性アームおよび3'相同性アームを含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、ポリヌクレオチドは、構造[5'相同性アーム]-[組換え受容体またはその一部分をコードする核酸配列]-[3'相同性アーム]を含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、5'相同性アームおよび3'相同性アームは、独立して、50もしくは約50から、2000もしくは約2000ヌクレオチド、100もしくは約100から、1000もしくは約1000ヌクレオチド、100もしくは約100から、750もしくは約750ヌクレオチド、100もしくは約100から、600もしくは約600ヌクレオチド、100もしくは約100から、400もしくは約400ヌクレオチド、100もしくは約100から、300もしくは約300ヌクレオチド、100もしくは約100から、200もしくは約200ヌクレオチド、200もしくは約200から、1000もしくは約1000ヌクレオチド、200もしくは約200から、750もしくは約750ヌクレオチド、200もしくは約200から、600もしくは約600ヌクレオチド、200もしくは約200から、400もしくは約400ヌクレオチド、200もしくは約200から、300もしくは約300ヌクレオチド、300もしくは約300から、1000もしくは約1000ヌクレオチド、300もしくは約300から、750もしくは約750ヌクレオチド、300もしくは約300から、600もしくは約600ヌクレオチド、300もしくは約300から、400もしくは約400ヌクレオチド、400もしくは約400から、1000もしくは約1000ヌクレオチド、400もしくは約400から、750もしくは約750ヌクレオチド、400もしくは約400から、600もしくは約600ヌクレオチド、600もしくは約600から、1000もしくは約1000ヌクレオチド、600もしくは約600から、750もしくは約750ヌクレオチド、または750もしくは約750から、1000もしくは約1000ヌクレオチドの長さである。いずれかの態様のいくつかにおいて、5'相同性アームおよび3'相同性アームは、独立して、200、300、400、500、600、700、もしくは800ヌクレオチドの長さまたは約200、300、400、500、600、700、もしくは800ヌクレオチドの長さ、または前述のいずれかの間の任意の値である。いずれかの態様のいくつかにおいて、5'相同性アームおよび3'相同性アームは、独立して、300ヌクレオチド超または約300ヌクレオチド超の長さである。いずれかの態様のいくつかにおいて、5'相同性アームおよび3'相同性アームは、独立して、400、500、もしくは600ヌクレオチドの長さまたは約400、500、もしくは600ヌクレオチドの長さ、または前述のいずれかの間の任意の値である。
【0050】
いずれかの態様のいくつかにおいて、5'相同性アームは、SEQ ID NO:69~71に示される配列、またはSEQ ID NO:69~71に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれよりも高い配列同一性を示す配列、またはその部分配列を含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、3'相同性アームは、SEQ ID NO:72に示される配列、またはSEQ ID NO:72に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれよりも高い配列同一性を示す配列、またはその部分配列を含む。
【0051】
いずれかの態様のいくつかにおいて、コードされる組換え受容体は、組換えT細胞受容体(TCR)である。いずれかの態様のいくつかにおいて、コードされる組換え受容体は、組換えT細胞受容体(TCR)を含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、コードされる組換え受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)である。
【0052】
いずれかの態様のいくつかにおいて、遺伝子破壊を誘導することができる1つまたは複数の作用物質は、標的部位に特異的に結合するかもしくはハイブリダイズするDNA結合タンパク質もしくはDNA結合核酸、DNAターゲティングタンパク質とヌクレアーゼとを含む融合タンパク質、またはRNA誘導型ヌクレアーゼを含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、1つまたは複数の作用物質は、標的部位に特異的に結合するか、それを認識するか、またはそれにハイブリダイズする、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、または、およびCRISPR-Cas9の組み合わせを含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、1つまたは複数の作用物質の各々は、少なくとも1つの標的部位に相補的であるターゲティングドメインを有するガイドRNA(gRNA)を含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、1つまたは複数の作用物質は、gRNAとCas9タンパク質とを含むリボ核タンパク質(RNP)複合体として導入される。いずれかの態様のいくつかにおいて、RNPは、電気穿孔、パーティクルガン、リン酸カルシウムトランスフェクション、細胞の圧縮または圧搾を介して、例えば電気穿孔を介して導入される。いずれかの態様のいくつかにおいて、RNPの濃度は、1μMまたは約1μMから、5μMまたは約5μMである。いずれかの態様のいくつかにおいて、RNPの濃度は、2μMまたは約2μMである。いずれかの態様のいくつかにおいて、gRNAは、
のターゲティングドメイン配列を有する。
【0053】
いずれかの態様のいくつかにおいて、T細胞は、対象に由来する初代T細胞である。いずれかの態様のいくつかにおいて、対象はヒトである。いずれかの態様のいくつかにおいて、T細胞は、CD8+ T細胞またはそのサブタイプである。いずれかの態様のいくつかにおいて、T細胞は、CD4+ T細胞またはそのサブタイプである。いずれかの態様のいくつかにおいて、T細胞は、多分化能細胞または多能性細胞に由来している。いずれかの態様のいくつかにおいて、T細胞は、iPSCである多分化能細胞または多能性細胞に由来している。
【0054】
いずれかの態様のいくつかにおいて、ポリヌクレオチドは、ウイルスベクター中に含まれる。いずれかの態様のいくつかにおいて、ウイルスベクターはAAVベクターである。いずれかの態様のいくつかにおいて、AAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、またはAAV8ベクターの中から選択される。いずれかの態様のいくつかにおいて、AAVベクターは、AAV2またはAAV6ベクターである。いずれかの態様のいくつかにおいて、ウイルスベクターはレトロウイルスベクターである。いずれかの態様のいくつかにおいて、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターであるレトロウイルスベクターである。
【0055】
いずれかの態様のいくつかにおいて、ポリヌクレオチドは直鎖ポリヌクレオチドである。いずれかの態様のいくつかにおいて、ポリヌクレオチドは、二本鎖ポリヌクレオチドまたは一本鎖ポリヌクレオチドである、直鎖ポリヌクレオチドである。いずれかの態様のいくつかにおいて、1つまたは複数の作用物質およびポリヌクレオチドは、同時にまたは逐次的に、任意の順序で導入される。いずれかの態様のいくつかにおいて、ポリヌクレオチドは、1つまたは複数の作用物質の導入後に導入される。いずれかの態様のいくつかにおいて、ポリヌクレオチドは、作用物質の導入の直後に、またはその後約30秒、1分、2分、3分、4分、5分、6分、6分、8分、9分、10分、15分、20分、30分、40分、50分、60分、90分、2時間、3時間、もしくは4時間以内に導入される。
【0056】
いずれかの態様のいくつかにおいて、1つまたは複数の作用物質の導入の前に、方法は、1つまたは複数の免疫細胞を刺激するかまたは活性化するための条件下で、細胞を、刺激物質とインビトロでインキュベートする工程を含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、刺激物質は、抗CD3抗体および抗CD28抗体を含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、刺激物質は、抗CD3抗体または抗CD28抗体を含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、刺激物質は、抗CD3/抗CD28ビーズである、抗CD3抗体および抗CD28抗体を含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、刺激物質は、抗CD3/抗CD28ビーズである、抗CD3抗体または抗CD28抗体を含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、刺激物質は、抗CD3/抗CD28ビーズである、抗CD3抗体および抗CD28抗体を含み、ビーズ対細胞の比は、1:1であるかまたは約1:1である。いずれかの態様のいくつかにおいて、刺激物質は、抗CD3/抗CD28ビーズである、抗CD3抗体または抗CD28抗体を含み、ビーズ対細胞の比は、1:1であるかまたは約1:1である。
【0057】
いずれかの態様のいくつかにおいて、方法は、1つまたは複数の作用物質の導入の前に、1つまたは複数の免疫細胞から刺激物質を除去する工程を含む。
【0058】
いずれかの態様のいくつかにおいて、方法は、1つもしくは複数の作用物質の導入および/または鋳型ポリヌクレオチドの導入の前に、その最中に、またはその後に、細胞を、1つまたは複数の組換えサイトカインとインキュベートする工程をさらに含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、方法は、1つもしくは複数の作用物質の導入および/または鋳型ポリヌクレオチドの導入の前に、その最中に、またはその後に、細胞を、1つまたは複数の組換えサイトカインとインキュベートする工程をさらに含み、該1つまたは複数の組換えサイトカインは、IL-2、IL-7、およびIL-15からなる群より選択される。いずれかの態様のいくつかにおいて、1つまたは複数の組換えサイトカインは、10 U/mLまたは約10 U/mLから、200 U/mLまたは約200 U/mLのIL-2の濃度から選択される濃度で添加される。いずれかの態様のいくつかにおいて、1つまたは複数の組換えサイトカインは、50 IU/mLまたは約50 IU/mLから、100 U/mLまたは約100 U/mLである、10 U/mLまたは約10 U/mLから、200 U/mLまたは約200 U/mLのIL-2の濃度;0.5 ng/mL~50 ng/mLのIL-7の濃度から選択される濃度で添加される。いずれかの態様のいくつかにおいて、1つまたは複数の組換えサイトカインは、50 IU/mLもしくは約50 IU/mLから、100 U/mLもしくは約100 U/mLである、10 U/mLもしくは約10 U/mLから、200 U/mLもしくは約200 U/mLのIL-2の濃度;5 ng/mLもしくは約5 ng/mLから、10 ng/mLもしくは約10 ng/mLである、0.5 ng/mL~50 ng/mLのIL-7の濃度;および/または0.1 ng/mL~20 ng/mL、例えば0.5 ng/mLもしくは約0.5 ng/mLから、5 ng/mLもしくは約5 ng/mLのIL-15の濃度から選択される濃度で添加される。いずれかの態様のいくつかにおいて、インキュベーションは、1つまたは複数の作用物質の導入および鋳型ポリヌクレオチドの導入の後に、最大で24時間、36時間、48時間、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、もしくは21日間、またはおよそ24時間、36時間、48時間、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、もしくは21日間実施される。いずれかの態様のいくつかにおいて、インキュベーションは、1つまたは複数の作用物質の導入および鋳型ポリヌクレオチドの導入の後に、最大で7日間または約7日間であることができる、最大で24時間、36時間、48時間、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、もしくは21日間、またはおよそ24時間、36時間、48時間、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、もしくは21日間実施される。
【0059】
いずれかの態様のいくつかにおいて、方法によって生成された複数の操作された細胞中の少なくとも35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、もしくは90%の、または該細胞中の35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、もしくは90%超の細胞は、TGFBR2遺伝子座内の少なくとも1つの標的部位の遺伝子破壊を含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、方法によって生成された複数の操作された細胞中の少なくとも35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、もしくは90%の、または該細胞中の35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、もしくは90%超の細胞は、組換え受容体またはその抗原結合断片を発現する。
【0060】
本明細書に記載される方法のいずれかを用いて生成された、操作されたT細胞または複数の操作されたT細胞が、本明細書において提供される。
【0061】
本明細書に記載される態様のいずれか由来の操作されたT細胞を含む組成物が、本明細書において提供される。
【0062】
本明細書に記載される態様のいずれか由来の複数の操作されたT細胞を含む組成物が、本明細書において提供される。いずれかの態様のいくつかにおいて、組成物は、CD4+ T細胞および/またはCD8+ T細胞を含む。いずれかの態様のいくつかにおいて、組成物は、CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞を含み、CD4+ T細胞対CD8+ T細胞の比は、1:3~3:1または約1:3~3:1である。いずれかの態様のいくつかにおいて、組成物は、CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞を含み、CD4+ T細胞対CD8+ T細胞の比は、1:3~3:1または約1:3~3:1であり、これは、1:1であることができる。いずれかの態様のいくつかにおいて、組換え受容体を発現する細胞は、組成物中の全細胞のうちの、または組成物中の全CD4+細胞もしくはCD8+細胞のうちの、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれよりも多くを占める。
【0063】
本明細書に記載される態様のいずれかの操作された細胞、複数の操作された細胞、または組成物を、ある疾患または障害を有する対象に投与する工程を含む処置の方法が、本明細書において提供される。
【0064】
ある疾患または障害の処置のための、本明細書に記載される態様のいずれかの操作された細胞、複数の操作された細胞、または組成物の使用が、本明細書において提供される。
【0065】
ある疾患または障害を処置するための薬剤の製造における、本明細書に記載される態様のいずれかの操作された細胞、複数の操作された細胞、または組成物の使用が、本明細書において提供される。
【0066】
ある疾患または障害の処置における使用のための、本明細書に記載される態様のいずれかの操作された細胞、複数の操作された細胞、または組成物の使用が、本明細書において提供される。
【0067】
本明細書に記載される態様のいずれかの、方法、使用、または使用のための操作された細胞、複数の操作された細胞、もしくは組成物のいずれかの態様のいくつかにおいて、疾患または障害は、がんまたは腫瘍である。
【0068】
いずれかの態様のいくつかにおいて、がんまたは腫瘍は、血液悪性腫瘍、例えばリンパ腫、白血病、または形質細胞悪性腫瘍である。いずれかの態様のいくつかにおいて、がんは、リンパ腫であり、リンパ腫は、バーキットリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、ホジキンリンパ腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、濾胞性リンパ腫、小型非切れ込み核細胞性リンパ腫、粘膜関連リンパ組織リンパ腫(MALT)、辺縁帯リンパ腫、脾リンパ腫、結節性単球様B細胞リンパ腫、免疫芽球性リンパ腫、大細胞リンパ腫、びまん性混合細胞型リンパ腫、肺B細胞血管中心性リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、原発性縦隔B細胞リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)、またはマントル細胞リンパ腫(MCL)である。いずれかの態様のいくつかにおいて、がんは、白血病であり、白血病は、慢性リンパ性白血病(CLL)、形質細胞白血病、または急性リンパ性白血病(ALL)である。いずれかの態様のいくつかにおいて、がんは、形質細胞悪性腫瘍であり、形質細胞悪性腫瘍は、多発性骨髄腫(MM)である。
【0069】
いずれかの態様のいくつかにおいて、腫瘍は固形腫瘍である。いずれかの態様のいくつかにおいて、固形腫瘍は、非小細胞肺がん(NSCLC)または頭頚部扁平上皮癌(HNSCC)である。
【0070】
TGFBR2遺伝子座内の標的部位で遺伝子破壊を誘導することができる1つまたは複数の作用物質;および、本明細書で提供される態様のいずれかのポリヌクレオチド、を含むキットが、本明細書において提供される。
【0071】
TGFBR2遺伝子座内の標的部位で遺伝子破壊を誘導することができる1つまたは複数の作用物質;ならびに、組換え受容体またはその一部分をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドであって、該組換え受容体または断片、例えば、その抗原結合断片、ドメイン、および/または鎖をコードする導入遺伝子が、相同性指向修復(HDR)を介した標的部位でのまたはその近くでの組み込みのためにターゲティングされる、ポリヌクレオチド;ならびに、本明細書で提供される態様のいずれかの方法を実施するための説明書、を含むキットが、本明細書において提供される。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1-1】図1A~1Dは、腫瘍を有するマウス異種移植モデルであるH1975非小細胞肺がん細胞を皮下注射したNOD.Cg.PrkdcscidIL2rgtm1Wjl/SzJ(NSG)において腫瘍体積の変化によって決定されるような、養子移入された抗ROR1 CAR+ T細胞の抗腫瘍活性を示す。図1Aおよび1C(群の平均;それぞれ、ドナー1および2)ならびに図1Bおよび1D(個々のマウス;それぞれ、ドナー1および2)は、2人の独立したドナー(ドナー1、ドナー2)のうちの1人から生成された、以下のように操作された初代ヒトT細胞組成物を投与されたマウスについて、腫瘍体積の変化を示す:1×106個の細胞(低用量;上のパネル)または3×106個の細胞(高用量;下のパネル)の用量で投与された、(1)レンチウイルス送達により抗ROR1 CAR R12を発現する操作されたT細胞(LVのみ)、(2)レンチウイルス送達およびTGFBR2ノックアウトにより抗ROR1 CAR R12を発現する操作されたT細胞(LV+KO)、または(3)レンチウイルス送達により抗ROR1 CAR R12およびDN-TGFBRIIを発現する操作されたT細胞(LV+DN);ならびに対照としての3×106個のモック処理細胞(モックKO)または無処置(腫瘍のみ)。
図1-2】図1-1の説明を参照のこと。
図2図2Aおよび2B(それぞれ、ドナー1および2)は、実施例1.Bに記載されるように操作された細胞の養子移入を受けている、H1975腫瘍を有するNSGマウスの無腫瘍生存曲線を示す。
図3図3A(群)および3B(個体)は、腫瘍、脾臓、および血液試料の収集の前の、H1975腫瘍を有するNSGマウスに対する以下のような1×106個の操作されたT細胞の投与後の最初の14日間にわたる腫瘍体積の変化を示す:1×106個の細胞の用量の、(1)レンチウイルス送達により抗ROR1 CAR R12を発現する操作されたT細胞(LV)、(2)レンチウイルス送達およびTGFBR2ノックアウトにより抗ROR1 CAR R12を発現する操作されたT細胞(LV+KO)、または(3)レンチウイルス送達により抗ROR1 CAR R12およびDN-TGFBRIIを発現する操作されたT細胞(LV+DN)(すべての群における操作された細胞を電気穿孔に供した)。
図4図4A~4Bは、実施例2.Bに記載されるような様々な送達法によって操作された細胞を投与されたマウスの、血液(図4A)または脾臓(図4B)におけるCARを発現するCD4+ T細胞(上のパネル)およびCD8+ T細胞(下のパネル)の頻度を示す。図4C~4Dは、腫瘍におけるCARを発現するCD4+ T細胞(上のパネル)およびCD8+ T細胞(下のパネル)の頻度(図4C)、ならびに腫瘍におけるCD103+のCARを発現するCD4+ T細胞(上のパネル)およびCD8+ T細胞(下のパネル)の頻度(図4D)を示す。
図5図5A~5Bは、様々な送達法を用いて操作された、操作されたT細胞を投与されたマウス由来の腫瘍試料または脾臓から単離された腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を、血清含有培地において低レベルのTGFβの存在下で1:5のエフェクター対標的比でH1975腫瘍スフェロイドとインキュベートしたスフェロイド死滅アッセイに基づく、カスパーゼ3/7活性(図5A;全緑色オブジェクト積分強度)およびH1975腫瘍スフェロイドサイズ(図5B;全赤色オブジェクト積分強度)の変化を示す。対照として、H1975腫瘍スフェロイド細胞を、操作された細胞を伴わずにインキュベートした(腫瘍のみ)。
図6図6A~6Bは、TGFBR2のノックアウトを伴う(完全ヒトKO)かまたは伴わない(完全ヒトWT)、抗ROR1 CAR R12または完全ヒト抗ROR1 scFv抗原結合ドメインを含有するCARを発現する操作された細胞と、H1975腫瘍スフェロイドとの1:5のエフェクター対標的比でのインキュベーション後の、スフェロイド死滅アッセイに基づく、カスパーゼ3/7活性(図6A)およびH1975腫瘍スフェロイドサイズ(図6B)の変化を示す。対照として、H1975腫瘍スフェロイド細胞を、操作された細胞を伴わずにインキュベートした(腫瘍のみ)。上記の実施例1.Aに記載される、TGFBR2のノックアウトを伴う(R12 KO)かまたは伴わない(R12 WT)、R12に由来するscFv抗原結合ドメインを有する抗ROR1 CARを発現する細胞、ならびにモック形質導入およびRNPを伴わない電気穿孔(モック)、またはTGFBR2ノックアウトに対するRNPのモック形質導入(モックKO)により処理された細胞もまた、対照として評価した。
図7】内在性TGFBR2遺伝子座での組み込みのために例示的なCARをコードする導入遺伝子配列をターゲティングすることによって生成されたCAR発現細胞において、フローサイトメトリーにより評価されるような、例示的なキメラ抗原受容体(CAR)の表面発現および側方散乱(SSC)を図示する。導入遺伝子配列はまた、a)異種プロモーターの調節下でCARコード配列の発現を駆動する、ヒト伸長因子1アルファ(EF1α)プロモーター(EF1α-CAR);またはb)TGFBR2オープンリーディングフレーム中へのインフレームの標的組み込み時に(KO/KI)内在性TGFBR2プロモーターからのCARの発現を駆動する、例示的なCARをコードする核酸配列の上流にP2Aリボソームスキップエレメントをコードする配列(P2A-CAR)も含んでいた。対照として、ランダム組み込みによりT細胞中に導入された配列からのCARの発現のために、CARをコードする核酸配列をHIV-1由来のレンチウイルスベクター中に組み込んだ(レンチ)。ドミナントネガティブ(DN)型のトランスフォーミング増殖因子β受容体II(DN-TGFBRII)の発現のために、レンチウイルス形質導入構築物は、DN-TGFBRIIをコードする核酸配列をさらに含有していた。CAR発現細胞(CAR+)のパーセンテージを示す。
図8図8A~8Cは、抗ROR1 CAR R12発現(フローサイトメトリーによる幾何平均蛍光;図8A)、以下のような様々な送達法を用いて操作された抗ROR1 CAR R12を発現する操作された細胞とのインキュベーション後のスフェロイド死滅アッセイに基づく、カスパーゼ3/7活性(図8B)およびH1975腫瘍スフェロイドサイズ(図8C)の変化を示す:(1)レンチウイルス送達のみ(LV)、(2)TGFBR2ノックアウトを伴うレンチウイルス送達(LV+KO)、(3)レンチウイルス送達およびドミナントネガティブTGFBRIIの発現(LV+DN);または(4)HDRによるTGFBR2遺伝子座での標的ノックイン(KO/KI)。
図9A図9A~9Cは、長期刺激アッセイの前(前)またはその後(後)の抗ROR1 CAR R12発現の変化(%CAR+細胞;図9A)、1:5(上のパネル)または1:10(下のパネル)のエフェクター:標的(E:T)比でインキュベートした、様々な送達法を用いて操作され、組換えROR1-Fc融合タンパク質でコーティングされたビーズによる7日の長期刺激に供された抗ROR1 CAR R12を発現する操作された細胞とのインキュベーション後のスフェロイド死滅アッセイに基づく、カスパーゼ3/7活性(図9B)およびH1975腫瘍スフェロイドサイズ(図9C)の変化を示す。
図9B図9Aの説明を参照のこと。
図9C図9Aの説明を参照のこと。
図10図10A~10Bは、以下のような様々な送達法を用いて操作された、例示的な操作された抗ヒトパピローマウイルス16(HPV16)T細胞受容体(TCR)を発現する操作された細胞とのインキュベーション後のスフェロイド死滅アッセイに基づく、カスパーゼ3/7活性(図10A)およびH1975腫瘍スフェロイドサイズ(図10B)の変化を示す:培地中に10 ng/mLのTGFβを伴う(下のパネル)かまたは伴わない(上のパネル)、(1)レンチウイルス送達のみ(TCR)、(2)TGFBR2ノックアウトを伴うレンチウイルス送達(TCR+KO)、または(3)レンチウイルス送達およびRNPを伴わないモック電気穿孔(TCR EP)。対照として、モック形質導入(モック)、モック形質導入およびRNPを伴わない電気穿孔(モックEP)、またはTGFBR2ノックアウトに対するモック形質導入およびRNPを伴う電気穿孔(モックKO)により処理された細胞もまた評価した。
図11A図11A~11Bは、a)ヒト伸長因子1アルファ(EF1α)プロモーター(EF1α KO/KI)またはb)MNDプロモーター(MND KO/KI)のいずれかの調節下で、内在性TGFBR2遺伝子座での組み込みのために例示的なTCRをコードする導入遺伝子配列をターゲティングすることによって生成されたTCR発現細胞において、フローサイトメトリーにより評価されるような、抗Vβ2抗体を用いて染色された例示的な操作された抗ヒトパピローマウイルス16(HPV16)T細胞受容体(TCR)の表面発現、および側方散乱(SSC)を図示する。TGFBR2ノックアウトを伴う(TCR LV TGFBR2 KO)かまたはTGFBR2ノックアウトを伴わない(TCR LV)、レンチウイルス送達により組換えTCRを発現する細胞もまた評価した。追加の対照は、モック処理に供された細胞(モック)、および組換えTCRを発現するように操作されなかったTGFBR2ノックアウトを伴う細胞(TGFBR2 KO)を含んでいた。
図11B図11Aの説明を参照のこと。
図12A図12A~12Bは、1:1(上のパネル)または1:5(下のパネル)のエフェクター:標的(E:T)比でインキュベートした、実施例6.Bに記載される様々な送達法を用いて操作された抗HPV16 TCRを発現する操作された細胞とのインキュベーション後のスフェロイド死滅アッセイに基づく、カスパーゼ3/7活性(図12A)およびH1975腫瘍スフェロイドサイズ(図12B)の変化を示す。
図12B図12Aの説明を参照のこと。
【発明を実施するための形態】
【0073】
詳細な説明
組換え受容体またはその一部分をコードする1つまたは複数の導入遺伝子配列(以下、互換的に「ドナー」配列とも呼ばれる;例えば、T細胞にとって外来性または異種である配列)を含む、改変されたトランスフォーミング増殖因子β受容体2型(TGFBR2)遺伝子座を有する、T細胞などの遺伝子操作された細胞が、本明細書において提供される。いくつかの局面において、キメラ抗原受容体(CAR)またはその一部分などの組換え受容体またはその一部分は、ゲノム中の改変されたTGFBR2遺伝子座を結果としてもたらす、細胞のゲノム中のTGFBR2遺伝子座に組み込まれる導入遺伝子配列によってコードされる。いくつかの態様において、TGFBRIIタンパク質またはその一部分もまた、改変されたTGFBR2遺伝子座によってコードされる。いくつかの態様において、TGFBRIIの一部分が、改変されたTGFBR2によってコードされ、例えば、トランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)リガンドに対する結合について野生型のまたは改変されていないTGFBRIIと競合することによって、TGFBRIIのドミナントネガティブ型として作用することができる。いくつかの態様において、内在性TGFBR2遺伝子の発現は、操作された細胞中の改変されたTGFBR2遺伝子座から、ノックアウトされるか、低減されるか、または排除される。
【0074】
また、組換え受容体またはその一部分を発現する改変されたTGFBR2遺伝子座を含有する遺伝子操作された細胞を作製するための方法も提供される。提供される態様は、具体的には、組換え受容体またはその一部分をコードする導入遺伝子配列を、内在性TGFBR2遺伝子座にターゲティングすることを含む。いくつかの状況において、提供される態様は、例えば、内在性TGFBR2遺伝子座での組換え受容体をコードする導入遺伝子配列の標的ノックインのために遺伝子編集法および相同性指向修復(HDR)を用いて、標的遺伝子破壊、例えば、DNA切断の生成を誘導すること、それによって、内在性TGFBR2遺伝子の発現および/または機能を低減させるかまたは排除することを含む。また、本明細書で提供される操作された細胞の生成および/または本明細書で提供される方法における使用のための、関連した細胞組成物、核酸、およびキットも提供される。
【0075】
T細胞ベースの治療法、例えば、養子T細胞療法(関心対象の疾患または障害に特異的な組換え受容体、操作された受容体、またはキメラ受容体、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)、組換えT細胞受容体(TCR)、または他の組換え受容体、操作された受容体、もしくはキメラ受容体を発現する操作された細胞の投与を含むものを含む)は、がん、ならびに他の疾患および障害の処置において有効であり得る。ある特定の状況において、養子細胞療法用の操作された細胞を生成するための他のアプローチは、常に完全に満足のいくものではない可能性がある。いくつかの局面において、操作された細胞の効力または有効性は、T細胞消耗、免疫抑制性腫瘍微小環境(TME)、標的、例えば腫瘍中への不十分な細胞浸潤、および内在性抗腫瘍免疫応答の欠如を含む、様々な要因に依存し得る。いくつかの状況において、最適な活性または転帰は、投与される細胞の、標的、例えば標的抗原を認識して結合する能力、移動し、対象内の適切な部位、腫瘍、およびその環境に局在化して成功裡に侵入する能力に依存し得る。いくつかの状況において、最適な活性または転帰は、投与される細胞の、活性化され、増大する能力、細胞傷害性死滅およびサイトカインなどの様々な因子の分泌を含む、様々なエフェクター機能を発揮する能力、長期を含んで持続する能力、ある特定の表現型状態(長命のメモリー状態、あまり分化していない状態、およびエフェクター状態など)に分化するか、移行するか、またはそれへのリプログラミングに関わる能力、疾患の局所微小環境における免疫抑制状態を回避するかまたは低減させる能力、クリアランスおよび標的リガンドまたは抗原に対する再曝露後に、有効なかつ堅牢な想起応答を提供する能力、ならびに消耗、アネルギー、末梢性寛容、最終分化、および/また抑制状態への分化を回避するかまたは低減させる能力に依存し得る。
【0076】
いくつかの局面において、提供される態様は、内在性TGFBR2遺伝子座でのHDRにより、標的遺伝子破壊および組換え受容体またはその一部分をコードする導入遺伝子配列の組み込みを誘導すること、それによって、内在性TGFBR2遺伝子からのTGFBRIIの発現を変更すること、低減させること、または排除することを含む。いくつかの局面において、提供される態様は、例えば、遺伝子破壊(例えば、ノックアウト)、および/または組換え受容体をコードする配列などの導入遺伝子配列の標的組み込み(例えば、ノックイン)による、TGFBRIIの発現の低減および/または排除が、操作された細胞の抗腫瘍活性、サイトカイン産生、増大、および/または持続などの活性および/または機能の改善を結果としてもたらすという観察に基づく。いくつかの局面において、操作された細胞は、TGFBRIIの発現がノックアウトされるか、低減されるか、もしくは排除される、または改変型のTGFBRIIポリペプチドが発現される、改変されたTGFBR2遺伝子座を含有することができる。いくつかの局面において、導入遺伝子配列の標的組み込みは、同じ細胞において発現される野生型のまたは改変されていないTGFBRIIの機能または活性と競合するかまたはそれを阻害することができる、改変型のTGFBRIIポリペプチドの発現を結果としてもたらし得る。いくつかの態様において、HDRによる標的遺伝子破壊および導入遺伝子配列の組み込みは、ドミナントネガティブ(DN)型のTGFBRIIポリペプチド、例えば、細胞外ドメインおよび膜貫通ドメインを含むが、細胞質ドメインのすべてまたは一部分を欠くDN型の発現を結果としてもたらし得る。いくつかの局面において、DN型のTGFBRIIなどの改変されたTGFBRIIポリペプチドは、トランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)リガンドに対する結合について野生型のまたは改変されていないTGFBRIIと競合し得る。
【0077】
いくつかの状況において、T細胞などの免疫細胞の表面上に通常発現している受容体である内在性TGFBRIIに対する、リガンドであるトランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)の結合は、受容体複合体の形成を開始して、細胞シグナル伝達を開始する。CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞などの免疫細胞におけるTGFβ媒介性細胞シグナル伝達は、CD8+ T細胞の抑制およびCD4+細胞における制御性T細胞(Treg)表現型の誘導を結果としてもたらし得る。いくつかの局面において、TMEにおけるTGFβは、T細胞増殖に影響を及ぼし、Tヘルパー細胞の成熟を阻害し、かつ/またはT細胞エフェクター機能を低減させることができる。いくつかの局面において、TGFβは、パーフォリン、グランザイムA、グランザイムB、IFNγ、およびFasリガンドなどの、T細胞における細胞傷害活性に関与する遺伝子の発現を抑えることができる。いくつかの局面において、TGFβは、免疫抑制を結果としてもたらし得るTreg細胞の発生を誘導することができる。いくつかの局面において、例えば、TGFBRIIなどのTGFβに対する受容体の発現のノックアウト、またはドミナントネガティブ型のTGFBRIIの発現による、TGFβ媒介性細胞シグナル伝達の低減または下方制御は、細胞におけるTGFβシグナル伝達の抑制効果の克服を結果としてもたらし得る(例えば、Yang et al., Trends Immunol. (2010) 31(6): 220-227;Oh et al., J Immunol. (2013) 191(8): 3973-3979;Principe et al., Cancer Res. (2016) 76(9): 2525-2539を参照されたい)。
【0078】
いくつかの局面において、提供される態様は、養子療法のために投与された操作された細胞が、腫瘍微小環境(TME)においてTGFβの免疫抑制効果を緩和するかまたは克服することを可能にする利点をもたらす。場合によっては、TMEは、T細胞療法のために投与されたT細胞の活性、機能、増殖、生存、および/または持続を抑制するように免疫抑制シグナルを媒介することができる、TGFβなどの因子または状態を含有するかまたは産生する。いくつかの態様において、操作された細胞におけるTGFBR2の発現の低減または排除は、操作された細胞が、TGFβ媒介性シグナル伝達の免疫抑制効果などの免疫抑制効果を緩和するかまたは克服し、かつT細胞の機能、活性、増殖、生存、および/または持続を促進することを可能にする。
【0079】
特定の態様において、提供される細胞、組成物、核酸、キット、および方法は、特に腫瘍微小環境中の抗原を標的とするかまたはそれに特異的である細胞療法について、改善された細胞療法を結果としてもたらし得る。場合によっては、提供される細胞、組成物、および方法は、TGFβ受容体の発現の低減を結果としてもたらし、かつ/またはTGFβの阻害効果に抵抗し得るドミナントネガティブTGFβR(DN TGFβR)の産生をもたらすことができ、これは、より長い生存および/または改善された機能を有するT細胞を結果としてもたらす。
【0080】
いくつかの状況において、提供される方法は、TGFβ免疫抑制活性が、T細胞療法の機能、生存、または活性を別の方法で損なうかまたは低減させ得る、固形腫瘍標的または他の疾患微小環境に関連して用いることができる。さらに、提供される細胞、組成物、核酸、キット、および方法はまた、細胞療法の細胞上の組換え受容体、例えばCARの発現の調節および制御においても利点をもたらす。
【0081】
いくつかの状況において、本明細書で提供される操作された細胞において改変されたTGFBR2遺伝子座からコードされる組換え受容体は、ゲノムTGFBR2遺伝子座の内在性制御エレメントまたは外来性制御エレメントの調節下でコードされ得る。いくつかの局面において、提供される態様は、組換え受容体が、内在性TGFBR2遺伝子座のプロモーター、または5'および/もしくは3'非翻訳領域(UTR)などの、内在性TGFBR2制御エレメントまたは調節エレメント、例えばシス制御エレメントの調節下で発現されることを可能にする。いくつかの局面において、そのような態様は、組換え受容体、例えばCAR、もしくはその一部分が発現されることを可能にし、かつ/または発現は、内在性TGFBRIIと同様のレベルで、例えば、核酸レベルでおよび/もしくはタンパク質レベルで制御される。
【0082】
いくつかの局面において、提供される態様は、組換え受容体が、いくつかの局面ではより調節可能なレベルの発現を提供する、外来性または異種の制御または調節エレメントの制御下で発現されることを可能にする。いくつかの局面において、提供される態様は、内在性TGFBR2遺伝子座での内在性プロモーターが活性でない可能性がある細胞を含む様々な細胞タイプにおける組換え受容体の、ターゲティングされ、かつ調節された発現を可能にする。
【0083】
いくつかの状況において、操作された細胞の最適な効力は、投与された細胞が、免疫細胞および/または治療用細胞組成物中の細胞の集団などの細胞の間の受容体の均一な、同質の、かつ/または一貫した発現を含み、組換え受容体を発現する能力、ならびに組換え受容体が、対象、腫瘍、およびその環境内で、標的、例えば標的抗原を認識して結合する能力に依存し得る。場合によっては、CARなどの組換え受容体を細胞中に導入するために利用可能な方法は、組換え受容体をコードする配列のランダム組み込みによる。ある特定の観点において、そのような方法は、完全に満足のいくものではない。いくつかの局面において、ランダム組み込みは、細胞の機能および活性に重要であり得るものを含み、可能な挿入性変異誘発および/または細胞中のもう1つのランダムな遺伝子座の遺伝子破壊を結果としてもたらし得る。場合によっては、細胞のゲノム中への受容体をコードする導入遺伝子のセミランダムなまたはランダムな組み込みは、場合によって、ゲノムにおける望ましくない場所中への、例えば、不可欠な遺伝子または細胞の活性の制御において重要な遺伝子中への核酸配列の組み込みによる、有害なかつ/または不要な効果を結果としてもたらす可能性がある。
【0084】
場合によっては、ランダム組み込みは、組換え受容体またはキメラ受容体をコードする配列の変動する組み込みを結果としてもたらす可能性があり、これは、治療用細胞組成物などの細胞組成物の細胞内の、一貫していない発現、変動する核酸のコピー数、および/または受容体発現の変動性を結果としてもたらし得る。場合によっては、受容体をコードする核酸配列のランダム組み込みは、組み込みの部位および/または核酸配列のコピー数に依存して、異型の、異質の、不均一な、かつ/または最適に満たない発現または抗原結合、発がん性形質転換、および核酸配列の転写サイレンシングを結果としてもたらし得る。いくつかの局面において、細胞集団における異質のかつ不均一な発現は、発現および/もしくは組換え受容体もしくはキメラ受容体による抗原結合の不一致もしくは不安定性、操作された細胞の機能の予測不能性もしくは機能の低減、ならびに/または不均一な薬物製品をもたらし、それによって、操作された細胞の効力を低減させ得る。いくつかの局面において、ある特定のレンチウイルスベクターなどの特定のランダム組み込みベクターの使用は、操作された細胞が複製可能ウイルスを含有しないという確認を必要とする。核酸のランダム組み込みおよび/または集団における異質の発現を最小限に抑えながら、組換え受容体またはキメラ受容体の一貫した発現レベルおよび機能を達成するために、改善された戦略が必要である。
【0085】
いくつかの状況において、提供される態様は、相同性指向修復(HDR)によって、細胞、例えばT細胞の内在性TGFBR2遺伝子座中に組み込まれる組換え受容体をコードする核酸を有するように、細胞を操作することに関する。いくつかの局面において、HDRは、内在性TGFBR2遺伝子座などの遺伝子破壊のための標的部位でまたはその近くで、導入遺伝子配列(例えば、組換え受容体もしくはキメラ受容体またはその一部分、鎖、もしくは断片をコードする導入遺伝子配列)の部位特異的組み込みを媒介することができる。いくつかの態様において、(例えば、内在性TGFBR2遺伝子座の標的部位での)遺伝子破壊および(例えば、遺伝子破壊の周囲の配列に相同である核酸配列を含有する)1つまたは複数の相同性アームを含有する鋳型ポリヌクレオチドの存在は、HDRを誘導するかまたは導くことができ、相同配列が、DNA修復のための鋳型として作用する。遺伝子破壊の周囲の内在性遺伝子配列と、鋳型ポリヌクレオチドに含まれる相同性アームとの間の相同性に基づいて、細胞のDNA修復機構は、鋳型ポリヌクレオチドを用いて、遺伝子破壊の部位でDNA切断を修復し、かつ遺伝情報を再合成し、それによって、遺伝子破壊の標的部位でまたはその近くで、相同性アーム間の配列(例えば、組換え受容体またはその一部分をコードする導入遺伝子配列)を効果的に挿入するか、または組み込むことができる。提供される態様は、組換え受容体またはその一部分をコードする導入遺伝子配列が、HDRによって内在性TGRBR2遺伝子座中に組み込まれている、組換え受容体またはその一部分をコードする改変されたTGFBR2遺伝子座を含有する細胞を生成することができる。
【0086】
いくつかの局面において、提供される態様は、組換え受容体をコードする核酸の細胞中への改善された、かつ/またはより効率的なターゲティングを伴う、操作された細胞の作製における利点をもたらし、これは、同時にまた、TGFBR2の発現の低減および/または排除も結果としてもたらし、かつ、操作された細胞の改善された活性および/もしくは機能、または場合によっては、ドミナントネガティブ型のTGFBRIIの発現を結果としてもたらし得る。場合によっては、提供される態様は、可能なセミランダムもしくはランダムな組み込みおよび/または異質のもしくは異型の発現を最小限に抑え、かつ、組換え受容体の改善された、均一の、同質の、一貫した、もしくは安定した発現、または挿入性変異誘発の可能性が低減している、低い、もしくはないことを結果としてもたらす。いくつかの局面において、組換え受容体またはキメラ受容体、例えば、TCRまたはCARを発現する遺伝子操作された免疫細胞を作製する他の方法と比較して、提供される態様は、組換え受容体またはキメラ受容体のより安定な、より生理学的な、より調節可能な、またはより均一な、一貫した、もしくは同質の発現を可能にする。場合によっては、方法は、より一貫し、かつより予測可能な薬物製品、例えば、操作された細胞を含有する細胞組成物の生成を結果としてもたらし、これは、処置される患者のためのより安全な治療法を結果としてもたらし得る。いくつかの局面において、提供される態様はまた、関心対象の単一の遺伝子座または複数の遺伝子座での、予測可能なかつ一貫した組み込みも可能にする。いくつかの態様において、提供される態様はまた、集団の細胞において組み込まれる核酸のコピー数が一貫した(典型的には、1または2)細胞集団を生成することも結果としてもたらすことができ、これは、いくつかの局面において、細胞集団内での組換え受容体発現および内在性受容体遺伝子の発現における一貫性を提供する。場合によっては、提供される態様は、組み込みのためのウイルスベクターの使用を含まず、したがって、操作された細胞が複製可能ウイルスを含有しないことの確認の必要を低減させ、それによって、細胞組成物の安全性を改善することができる。
【0087】
また、操作された細胞を操作する、調製する、および作製するための方法、ならびに操作された細胞を生成するかまたは作製するためのキットおよびデバイスも提供される。また、方法によって生成された細胞および細胞組成物も提供される。組換え受容体またはその一部分をコードする核酸配列を含有するポリヌクレオチド、例えば、ウイルスベクター、および、そのようなポリヌクレオチドを、例えば、形質導入によってまたは物理的送達、例えば電気穿孔によって、細胞中に導入するための方法が提供される。また、操作された細胞を含有する組成物、ならびに、例えば養子細胞療法のために、細胞および組成物を対象に投与するための方法、キット、およびデバイスも提供される。いくつかの局面において、細胞は、ある対象から単離され、操作されて、同じ対象に投与される。他の局面において、細胞は、1つの対象から単離され、操作されて、別の対象に投与される。いくつかの態様において、提供されるポリヌクレオチド、ヌクレオチド配列、核酸配列、導入遺伝子、および/またはベクターは、免疫細胞中に送達された時に、T細胞活性を調節することができ、場合によってはT細胞の分化または恒常性を調節することができる、組換え受容体またはキメラ受容体、例えば、TCRまたはCARの発現を結果としてもたらす。結果として生じる遺伝子操作された細胞または細胞組成物は、養子細胞療法の方法において用いることができる。
【0088】
本出願において言及される特許文書、科学論文、およびデータベースを含むすべての刊行物は、あたかも各個々の刊行物が参照により個別に組み入れられるのと同じ程度に、すべての目的でその全体が参照により組み入れられる。本明細書において示される定義が、参照により本明細書に組み入れられる特許、出願、公開出願、および他の刊行物において示される定義と相反するか、または別のように一貫しない場合は、本明細書において示される定義が、参照により本明細書に組み入れられる定義よりも優先される。
【0089】
本明細書において用いられるセクションの見出しは、組織化の目的だけのものであり、記載される主題を限定すると解釈されるべきではない。
【0090】
I. 相同性指向修復によって組換え受容体を発現する細胞を生成するための方法
改変されたTGFBR2遺伝子座が、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)などの組換え受容体またはキメラ受容体をコードする核酸配列を含む、改変されたTGFBR2遺伝子座を含む遺伝子操作された細胞を生成するかまたは作製する方法が、本明細書において提供される。いくつかの局面において、遺伝子操作された細胞における改変されたTGFBR2遺伝子座は、内在性TGFBR2遺伝子座中に(例えば、遺伝子座が改変されるように)組み込まれた、組換え受容体またはその一部分をコードする導入遺伝子配列を含む。いくつかの態様において、方法は、組換え受容体またはその一部分をコードする導入遺伝子を含有するポリヌクレオチド(例えば、「鋳型ポリヌクレオチド」とも呼ばれる)を用いた、標的遺伝子破壊および相同性依存的修復(homology-dependent repair)(HDR)、それによる、TGFBR2遺伝子座での導入遺伝子のターゲティング組み込みを誘導することを含む。また、方法によって生成された細胞および細胞組成物、ならびに、方法における使用のためのポリヌクレオチド、例えば、鋳型ポリヌクレオチド、およびキットも提供される。
【0091】
いくつかの局面において、提供される態様は、TGFBR2遺伝子座中への導入遺伝子配列の標的組み込みのためにHDRを使用する。場合によっては、方法は、HDRによる組換え受容体またはその一部分をコードする導入遺伝子配列の標的組み込みと組み合わせて、遺伝子編集技法により内在性TGFBR2遺伝子座に1つまたは複数の標的遺伝子破壊、例えば、DNA切断を導入することを含む。いくつかの局面において、1つまたは複数の標的遺伝子破壊は、遺伝子破壊を導入することができる1つまたは複数の作用物質の導入によって実施される。いくつかの態様において、HDR工程は、ゲノムの標的場所でのDNAにおける破壊または切断、例えば、二本鎖切断を必要とする。いくつかの態様において、DNA切断は、遺伝子編集法、例えば、標的ヌクレアーゼを使用することによって誘導される。いくつかの態様において、方法は、TGFBR2の発現がノックアウトされている操作された細胞を生成する。
【0092】
いくつかの局面において、提供される方法は、TGFBR2遺伝子座内の標的部位で遺伝子破壊を誘導することができる1つまたは複数の作用物質を、T細胞中に導入する工程;および該T細胞中に、導入遺伝子および1つまたは複数の相同性アームを含むポリヌクレオチド、例えば、鋳型ポリヌクレオチドを導入する工程を含む。いくつかの局面において、導入遺伝子は、組換え受容体またはその一部分をコードするヌクレオチドの配列を含有する。いくつかの態様において、導入遺伝子などの核酸配列は、相同性指向修復(HDR)を介したTGFBR2遺伝子座内の組み込みのためにターゲティングされる。いくつかの局面において、提供される方法は、TGFBR2遺伝子座内に遺伝子破壊を有するT細胞中に、組換え受容体またはその一部分をコードする導入遺伝子配列を含むポリヌクレオチドを導入する工程を含み、該遺伝子破壊は、TGFBR2遺伝子座内の1つまたは複数の標的部位の遺伝子破壊を誘導することができる1つまたは複数の作用物質によって導入されており、かつ、導入遺伝子などの核酸配列は、HDRを介したTGFBR2遺伝子座内の組み込みのためにターゲティングされる。いくつかの態様において、また、提供される方法のいずれかによって作製される遺伝子操作された免疫細胞を含んで、細胞集団が、より改善された、均一な、同質の、および/または安定な発現および/または組換え受容体による抗原結合を示すように、組換え受容体、例えば、TCRまたはCARを発現するように操作されている細胞の集団を含有する組成物も提供される。
【0093】
いくつかの局面において、態様は、遺伝子編集法および/または標的ヌクレアーゼを用いて、標的DNA切断などの標的ゲノム破壊を生成すること、およびそれに続く、DNA切断でまたはその近くで導入遺伝子配列を特異的にターゲティングし、かつ組み込むための、1つまたは複数の鋳型ポリヌクレオチド、例えば、組換え受容体またはその一部分をコードする導入遺伝子配列および任意で他の分子をコードする核酸配列に連結された、内在性TGFBR2遺伝子座の配列に相同である相同配列を含有する鋳型ポリヌクレオチドに基づくHDRを含む。したがって、いくつかの局面において、方法は、(例えば、遺伝子編集を介して)標的遺伝子破壊を誘導する工程、およびポリヌクレオチド、例えば、導入遺伝子配列を含む鋳型ポリヌクレオチドを(例えば、HDRを介して)細胞中に導入する工程を含む。
【0094】
いくつかの態様において、標的遺伝子破壊およびHDRによる導入遺伝子配列の標的組み込みは、内在性TGFBR2遺伝子座の1つまたは複数の標的部位で起こる。いくつかの局面において、標的組み込みは、内在性TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレーム配列内で起こる。いくつかの局面において、導入遺伝子配列の標的組み込みは、例えば、内在性TGFBR2遺伝子の発現が排除されるように、内在性TGFBR2遺伝子のノックアウトを結果としてもたらす。いくつかの局面において、導入遺伝子の標的組み込みは、ドミナントネガティブ(DN)型のTGFBRIIポリペプチドの発現を結果としてもたらす。いくつかの局面において、ドミナントネガティブ(DN)型(反形質変異とも呼ばれる)は、同じ細胞において発現される野生型遺伝子産物に対して拮抗的に作用する変更された遺伝子産物である。いくつかの局面において、DN型は、任意で遺伝子産物の正常な機能を阻害する、それを相殺する、それと競合する、かつ/またはそれを不活性化する、変更された分子機能を結果としてもたらし、優性のまたは半優性の表現型を特徴とする。例えば、いくつかの態様において、DN型は、野生型遺伝子産物と同じ因子または分子と依然として相互作用することができるが、同じ細胞において発現された時に野生型遺伝子産物の機能のいくつかの局面を遮断し得る。いくつかの局面において、導入遺伝子配列は、組換え受容体またはその一部分をコードする配列が、エクソンの配列とインフレームであるように、例えば、内在性TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームのエクソンまたはその部分配列内の相同性指向修復(HDR)によって、TGFBR2遺伝子座中に組み込まれている。いくつかの局面において、組み込まれた導入遺伝子配列の上流の一部分などの、内在性TGFBR2遺伝子座の一部分、および組換え受容体またはその一部分は、任意でマルチシストロン性エレメントによって分離されて、改変されたTGFBR2遺伝子座において発現される。いくつかの局面において、内在性TGFBR2遺伝子座の発現される一部分は、DN型のTGFBRIIをコードする。
【0095】
いくつかの態様において、ポリヌクレオチド、例えば、鋳型ポリヌクレオチドは、1つまたは複数の標的遺伝子破壊を誘導することができる1つまたは複数の作用物質の導入の前に、それと同時に、またはその後に、操作された細胞中に導入される。1つまたは複数の標的遺伝子破壊、例えば、DNA切断の存在下で、鋳型ポリヌクレオチドは、遺伝子破壊の周囲の内在性遺伝子配列と、鋳型ポリヌクレオチドに含まれる5'および/または3'相同性アームなどの1つまたは複数の相同性アームとの間の相同性に基づくHDRによって、標的遺伝子破壊の部位でまたはその近くで、導入遺伝子を効果的に複製し、かつ/または組み込むために、DNA修復鋳型として用いられ得る。
【0096】
いくつかの局面において、2つの工程は、逐次的に行われ得る。いくつかの態様において、遺伝子編集およびHDR工程は、同時におよび/または1つの実験反応で行われる。いくつかの態様において、遺伝子編集およびHDR工程は、1つのまたは連続した実験反応で、連続的にまたは逐次的に行われる。いくつかの態様において、遺伝子編集およびHDR工程は、別々の実験反応で、同時にまたは異なる時間に行われる。
【0097】
免疫細胞は、T細胞を含有する細胞の集団を含むことができる。そのような細胞は、対象から得られた、例えば、末梢血単核細胞(PBMC)試料、未分画T細胞試料、リンパ球試料、白血球細胞試料、アフェレーシス生成物、または白血球アフェレーシス生成物から得られた細胞であることができる。いくつかの態様において、T細胞などの免疫細胞は、初代T細胞などの初代細胞である。いくつかの態様において、T細胞は、正または負の選択および濃縮方法を用いて、集団中のT細胞を濃縮するために分離するかまたは選択することができる。いくつかの態様において、集団は、CD4+、CD8+、またはCD4+およびCD8+ T細胞を含有する。いくつかの態様において、ポリヌクレオチド(例えば、鋳型ポリヌクレオチド)を導入する工程および作用物質(例えば、Cas9/gRNA RNP)を導入する工程は、同時にまたは逐次的に、任意の順序で行われ得る。いくつかの態様において、ポリヌクレオチドは、遺伝子破壊を誘導することができる1つまたは複数の作用物質(例えば、Cas9/gRNA RNP)の導入と同時に導入される。特定の態様において、ポリヌクレオチド鋳型は、作用物質(例えば、Cas9/gRNA RNP)を導入する工程によって遺伝子破壊を誘導した後に、免疫細胞中に導入される。いくつかの態様において、ポリヌクレオチド鋳型および1つまたは複数の作用物質(例えば、Cas9/gRNA RNP)の導入の前に、その最中に、および/またはその後に、細胞の増大および/または増殖を刺激する条件下で、細胞を培養するかまたはインキュベートする。
【0098】
提供される方法の特定の態様において、鋳型ポリヌクレオチドの導入は、遺伝子破壊を誘導することができる1つまたは複数の作用物質の導入後に行われる。遺伝子破壊を誘導するために用いられる特定の作用物質に応じて、1つまたは複数の作用物質を導入するための任意の方法を、記載されるように使用することができる。いくつかの局面において、破壊は、例えば、破壊されるTGFBR2遺伝子座に特異的な、クラスター化して規則的な配置の短い回文核酸(clustered regularly interspersed short palindromic nucleic acid)(CRISPR)-CasシステムなどのRNA誘導型ヌクレアーゼ、例えばCRISPR-Cas9システムを用いて、遺伝子編集によって実施される。いくつかの局面において、破壊は、TGFBR2遺伝子座に特異的なCRISPR-Cas9システムを用いて実施される。いくつかの態様において、TGFBR2遺伝子座のある領域を標的にする、Cas9とターゲティングドメインを含有するガイドRNA(gRNA)とを含有する作用物質が、細胞中に導入される。いくつかの態様において、作用物質は、Cas9とTGFBR2を標的とするターゲティングドメインを含有するgRNAとのリボ核タンパク質(RNP)複合体(Cas9/gRNA RNP)であるか、またはそれを含む。いくつかの態様において、導入は、インビトロで、作用物質またはその一部を細胞と接触させることを含み、これは、最大で24、36、もしくは48時間、または3、4、5、6、7、もしくは8日間、細胞および作用物質を培養またはインキュベートすることを含むことができる。いくつかの態様において、導入は、細胞中への作用物質の送達を行うことをさらに含むことができる。様々な態様において、本開示による方法、組成物、および細胞は、例えば電気穿孔による、Cas9およびgRNAのリボ核タンパク質(RNP)複合体の細胞への直接送達を利用する。いくつかの態様において、RNP複合体は、3'ポリAテールおよび5' Anti-Reverse Cap Analog(ARCA)キャップを含むように改変されているgRNAを含む。場合によっては、改変される細胞の電気穿孔は、細胞の電気穿孔後かつプレーティングの前に、例えば32℃で、細胞に低温ショックを与えることを含む。
【0099】
提供される方法のそのような局面では、ポリヌクレオチド、例えば鋳型ポリヌクレオチドは、例えば、電気穿孔を介して導入された1つまたは複数の作用物質、例えばCas9/gRNA RNPの導入後に、細胞中に導入される。いくつかの態様では、ポリヌクレオチド、例えば鋳型ポリヌクレオチドは、遺伝子破壊を誘導することができる1つまたは複数の作用物質の導入の直後に導入される。いくつかの態様では、ポリヌクレオチド、例えば鋳型ポリヌクレオチドは、遺伝子破壊を誘導することができる1つまたは複数の作用物質の導入の後、30秒もしくは約30秒以内に、1分もしくは約1分以内に、2分もしくは約2分以内に、3分もしくは約3分以内に、4分もしくは約4分以内に、5分もしくは約5分以内に、6分もしくは約6分以内に、6分もしくは約6分以内に、8分もしくは約8分以内に、9分もしくは約9分以内に、10分もしくは約10分以内に、15分もしくは約15分以内に、20分もしくは約20分以内に、30分もしくは約30分以内に、40分もしくは約40分以内に、50分もしくは約50分以内に、60分もしくは約60分以内に、90分もしくは約90分以内に、2時間もしくは約2時間以内に、3時間もしくは約3時間以内に、または4時間もしくは約4時間以内に細胞中に導入される。いくつかの態様では、ポリヌクレオチド、例えば鋳型ポリヌクレオチドは、1つまたは複数の作用物質を導入した、後15分または約15分から4時間または約4時間の間、例えば、15分もしくは約15分から3時間もしくは約3時間の間、15分もしくは約15分から2時間もしくは約2時間の間、15分もしくは約15分から1時間もしくは約1時間の間、15分もしくは約15分から30分もしくは約30分の間、30分もしくは約30分から4時間もしくは約4時間の間、30分もしくは約30分から3時間もしくは約3時間の間、30分もしくは約30分から2時間もしくは約2時間の間、30分もしくは約30分から1時間もしくは約1時間の間、1時間もしくは約1時間から4時間もしくは約4時間の間、1時間もしくは約1時間から3時間もしくは約3時間の間、1時間もしくは約1時間から2時間もしくは約2時間の間、2時間もしくは約2時間から4時間もしくは約4時間の間、2時間もしくは約2時間から3時間もしくは約3時間の間、または3時間もしくは約3時間から4時間もしくは約4時間の間の時間で細胞中に導入される。いくつかの態様では、ポリヌクレオチド、例えば鋳型ポリヌクレオチドは、例えば電気穿孔を介して導入された1つまたは複数の作用物質、例えばCas9/gRNA RNPの導入の後2時間または約2時間で細胞中に導入される。
【0100】
細胞への、ポリヌクレオチド、例えば鋳型ポリヌクレオチドの送達に使用される特定の方法に応じて、ポリヌクレオチド、例えば鋳型ポリヌクレオチドを導入するための任意の方法を記載されるように用いることができる。例示的方法としては、ウイルス、例えば、レトロウイルスまたはレンチウイルス、形質導入、トランスポゾン、および電気穿孔を介するものを含めた、受容体をコードする核酸の移入のためのものが挙げられる。特定の態様では、ウイルス形質導入法が用いられる。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、例えば、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)に由来するベクターなどの組換え感染性ウイルス粒子を使用して、細胞中に移入させる、または導入することができる。いくつかの態様では、組換え核酸は、組換えレンチウイルスベクターまたはレトロウイルスベクター、例えば、ガンマ-レトロウイルスベクターを使用して、T細胞中に移入される(例えば、Koste et al. (2014) Gene Therapy 2014 Apr 3. doi: 10.1038/gt.2014.25;Carlens et al. (2000) Exp Hematol 28(10): 1137-46;Alonso-Camino et al. (2013) Mol Ther Nucl Acids 2, e93;Park et al., Trends Biotechnol. 2011 November 29(11): 550-557を参照されたい)。特定の態様では、ウイルスベクターはAAV2またはAAV6などのAAVである。
【0101】
いくつかの態様では、作用物質を細胞接触させるより前に、該接触の間、もしくは該接触に続いて、および/または送達(例えば、電気穿孔)を行うより前に、該送達の間、もしくは該送達に続いて、提供される方法は、サイトカイン、刺激作用物質、および/または免疫細胞(例えばT細胞)の増殖、刺激、または活性化を誘導することができる作用物質の存在下で、細胞をインキュベートすることを含む。いくつかの態様では、インキュベーションの少なくとも一部は、CD3に対して特異的な抗体、CD28に対して特異的な抗体、および/またはサイトカイン、例えば抗CD3/抗CD28ビーズであるか、またはこれらを含む刺激作用物質の存在下である。いくつかの態様では、インキュベーションの少なくとも一部は、サイトカイン、例えば、組換えIL-2、組換えIL-7、および/または組換えIL-15の1つまたは複数の存在下である。いくつかの態様では、インキュベーションは、例えば、電気穿孔を介した1つまたは複数の作用物質、例えばCas9/gRNA RNPの、および鋳型ポリヌクレオチドの導入の前または後、最大で8日間、例えば、最大で24時間、36時間、もしくは48時間、または3、4、5、6、7、もしくは8日間にわたる。
【0102】
いくつかの態様では、方法は、作用物質、例えばCas9/gRNA RNP、およびポリヌクレオチド鋳型を導入するより前に、細胞を刺激作用物質(例えば、抗CD3/抗CD28抗体)で活性化または刺激することを含む。いくつかの態様では、刺激作用物質(例えば、抗CD3/抗CD28)の存在下でのインキュベーションは、例えば、電気穿孔を介した、1つまたは複数の作用物質、例えばCas9/gRNA RNPの導入より前の6時間~96時間、例えば、24~48時間または24~36時間にわたる。いくつかの態様では、刺激作用物質とのインキュベーションは、サイトカイン、例えば、組換えIL-2、組換えIL-7、および/または組換えIL-15の1つまたは複数の存在をさらに含むことができる。いくつかの態様では、インキュベーションは、組換えサイトカイン、例えばIL-2(例えば1U/mL~500U/mL、例えば10U/mL~200U/mL、例えば少なくとももしくは約50U/mLもしくは100U/mL)、IL-7(例えば0.5ng/mL~50ng/mL、例えば1ng/mL~20ng/mL、例えば少なくとももしくは約5ng/mLもしくは10ng/mL)、またはIL-15(例えば0.1ng/mL~50ng/mL、例えば0.5ng/mL~25ng/mL、例えば少なくとももしくは約1ng/mLもしくは5ng/mL)の存在下で行われる。いくつかの態様では、刺激作用物質(例えば、抗CD3/抗CD28抗体)は、遺伝子破壊を誘導することができる作用物質Cas9/gRNA RNPおよび/またはポリヌクレオチド鋳型を細胞中に導入または送達するより前に、細胞から洗浄または除去される。いくつかの態様では、作用物質を導入するより前に、例えば、任意の刺激または活性化作用物質の除去によって、細胞を休ませる。いくつかの態様では、作用物質を導入するより前に、刺激または活性化作用物質および/またはサイトカインは除去されない。
【0103】
いくつかの態様では、作用物質、例えばCas9/gRNA、および/またはポリヌクレオチド鋳型の導入に続いて、組換えサイトカイン、例えば、組換えIL-2、組換えIL-7、および/または組換えIL-15の1つまたは複数の存在下で、細胞をインキュベート、培養(cultivate)または培養(culture)する。いくつかの態様では、インキュベーションは、組換えサイトカイン、例えばIL-2(例えば1U/mL~500U/mL、例えば10U/mL~200U/mL、例えば少なくとももしくは約50U/mLもしくは100U/mL)、IL-7(例えば0.5ng/mL~50ng/mL、例えば1ng/mL~20ng/mL、例えば少なくとももしくは約5ng/mLもしくは10ng/mL)、またはIL-15(例えば0.1ng/mL~50ng/mL、例えば0.5ng/mL~25ng/mL、例えば少なくとももしくは約1ng/mLもしくは5ng/mL)の存在下で行われる。細胞は、細胞の増殖または増大を誘導するための条件下でインキュベートまたは培養することができる。いくつかの態様では、細胞は、回収のための閾値細胞数、例えば治療有効量が達成されるまで、インキュベートまたは培養することができる。
【0104】
いくつかの態様では、プロセスの任意の部分またはプロセスの全体の間のインキュベーションは、30℃±2℃~39℃±2℃、例えば少なくともまたは約少なくとも30℃±2℃、32℃±2℃、34℃±2℃、または37℃±2℃の温度であり得る。いくつかの態様では、インキュベーションの少なくとも一部は30℃±2℃であり、インキュベーションの少なくとも一部は37℃±2℃である。
【0105】
いくつかの局面において、提供される態様は、組換え受容体が、異種または外来性の制御または調節エレメント、例えば、構成的プロモーターまたは制御可能なプロモーターなどの異種プロモーターの制御下で発現されることを可能にする。いくつかの局面において、提供される態様は、組換え受容体が、内在性TGFBR2制御エレメントの調節下で発現されることを可能にする。いくつかの局面において、提供される態様は、組換え受容体をコードする核酸が、内在性制御または調節エレメント、例えば、内在性TGFBR2遺伝子座のプロモーター、または5'および/もしくは3'非翻訳領域(UTR)などのシス制御エレメントに機能的に連結されることを可能にする。したがって、いくつかの局面において、提供される態様は、組換え受容体、例えばCARが発現されることを可能にし、かつ/または発現は、内在性TGFBR2と同様のレベルで制御される。
【0106】
内在性TGFBR2遺伝子座で遺伝子破壊を実施するための、および/または組換え受容体もしくはキメラ受容体の一部分などの導入遺伝子配列のTGFBR2遺伝子座中への標的組み込みのためにHDRを実施するための例示的な方法を、以下のサブセクションに記載する。
【0107】
A. 遺伝子破壊
いくつかの態様において、1つまたは複数の標的遺伝子破壊が、内在性TGRBR2遺伝子で誘導される。いくつかの態様において、1つまたは複数の標的遺伝子破壊は、内在性TGFBR2遺伝子座のまたはその近くの1つまたは複数の標的部位で誘導される。いくつかの態様において、標的遺伝子破壊は、内在性TGFBR2遺伝子座のエクソンにおいて誘導される。いくつかの態様において、標的遺伝子破壊は、内在性TGFBR2遺伝子座のイントロンにおいて誘導される。いくつかの局面において、1つまたは複数の標的遺伝子破壊およびポリヌクレオチド、例えば、組換え受容体またはその一部分をコードする導入遺伝子配列を含有する鋳型ポリヌクレオチドの存在は、内在性TGFBR2遺伝子座の1つまたは複数の遺伝子破壊(例えば、標的部位)でのまたはその近くでの導入遺伝子配列の標的組み込みを結果としてもたらし得る。
【0108】
いくつかの態様において、遺伝子破壊は、ゲノム中の1つまたは複数の標的部位で、二本鎖切断(DSB)もしくは開裂などのDNA切断、または一本鎖切断(SSB)などのニックを結果としてもたらす。いくつかの態様において、遺伝子破壊、例えば、DNA切断またはニックの部位で、細胞のDNA修復機構の作用は、ノックアウト、挿入、ミスセンス変異もしくはフレームシフト変異、例えば両アレルフレームシフト変異、遺伝子のすべてもしくは一部の欠失をもたらし得るか、または、修復鋳型、例えば、鋳型ポリヌクレオチドの存在下で、鋳型に含有される組換え受容体のすべてもしくは一部分をコードする導入遺伝子などの、核酸配列の組み込みもしくは挿入など、修復鋳型に基づいてDNA配列を変更することができる。いくつかの態様において、遺伝子破壊は、遺伝子の1つもしくは複数のエクソンまたはその一部分にターゲティングされ得る。いくつかの態様において、遺伝子破壊は、外来性配列、例えば、組換え受容体をコードする配列の標的組み込みの望ましい部位の近くにターゲティングされ得る。
【0109】
いくつかの態様において、少なくとも1つの標的部位のうちの1つに近い領域の配列に特異的に結合するかまたはハイブリダイズするDNA結合タンパク質またはDNA結合核酸が、標的破壊に用いられる。いくつかの態様において、鋳型ポリヌクレオチド、例えば、組換え受容体またはその一部分をコードする導入遺伝子などの核酸配列および相同配列を含む鋳型ポリヌクレオチドを、例えば本明細書に、例えばセクションI.Bに記載される、遺伝子破壊の部位でのまたはその近くでの組換え受容体をコードする配列のHDRによる標的組み込みのために、導入することができる。
【0110】
いくつかの態様において、遺伝子破壊は、遺伝子破壊を誘導することができる1つまたは複数の作用物質を導入することによって行われる。いくつかの態様において、そのような作用物質は、遺伝子に特異的に結合するかまたはハイブリダイズするDNA結合タンパク質またはDNA結合核酸を含む。いくつかの態様において、作用物質は、DNAターゲティングタンパク質とヌクレアーゼとを含む融合タンパク質またはRNA誘導型ヌクレアーゼなどの、様々な成分を含む。いくつかの態様において、作用物質は、1つまたは複数の標的部位または標的場所を標的とすることができる。いくつかの局面において、標的部位の各側上に1対の一本鎖切断(例えば、ニック)が生成され得る。
【0111】
提供される態様において、「導入する」という用語は、インビトロまたはインビボのいずれかで、細胞中に核酸および/またはタンパク質、例えばDNAを導入する様々な方法を包含し、そのような方法には、形質転換、形質導入、トランスフェクション(例えば、電気穿孔)、および感染が含まれる。ベクターは、分子をコードするDNAを細胞中に導入するのに有用である。可能なベクターには、プラスミドベクターおよびウイルスベクターが含まれる。ウイルスベクターには、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、または他のベクター、例えば、アデノウイルスベクターもしくはアデノ随伴ベクターが含まれる。電気穿孔などの方法もまた、タンパク質、または、例えばターゲティングgRNAとの複合体中にCas9タンパク質を含有するリボ核タンパク質(RNP)を、関心対象の細胞に導入するかまたは送達するために用いることができる。
【0112】
いくつかの態様において、遺伝子破壊は、標的部位(「標的位置」、「標的DNA配列」、または「標的場所」としても知られている)で、例えば、内在性TGFBR2遺伝子座で起こる。いくつかの態様において、標的部位は、遺伝子破壊を誘導することができる1つまたは複数の作用物質、例えば、標的部位を特定するgRNAと複合体化されたCas9分子によって改変される、標的DNA(例えば、ゲノムDNA)上の部位を含む。例えば、標的部位は、開裂またはDNA切断が生じる、内在性TGFBR2遺伝子座のDNA中の場所を含むことができる。いくつかの局面において、HDRによる、組換え受容体またはその一部分をコードする導入遺伝子などの核酸配列の組み込みは、標的部位または標的配列でまたはその近くで起こり得る。いくつかの態様において、標的部位は、1つまたは複数のヌクレオチドが付加されるDNA上の2つのヌクレオチド、例えば、隣接するヌクレオチドの間の部位であることができる。標的部位は、鋳型ポリヌクレオチドによって変更される1つまたは複数のヌクレオチドを含んでもよい。いくつかの態様において、標的部位は、標的配列(例えば、gRNAが結合する配列)内にある。いくつかの態様において、標的部位は、標的配列の上流または下流にある。
【0113】
1. 内在性TGFBR2遺伝子座の標的部位
いくつかの態様において、遺伝子破壊および/または相同性指向修復(HDR)を介した組換え受容体もしくはその一部分をコードする導入遺伝子の組み込みは、トランスフォーミング増殖因子β受容体II型(TGFBRII、TGFBR2、TGFR-2、TGFβ-RII、TGFベータ-RII、TBR-ii、TBRII、AAT3、FAA3、LDS1B、LDS2、LDS2B、MFS2、RIIC、またはTAAD2としても知られている)をコードする内在性またはゲノム遺伝子座にターゲティングされる。
【0114】
ヒトにおいて、TGFBRIIは、トランスフォーミング増殖因子β受容体2型(TGFBR2)遺伝子によってコードされる。いくつかの態様において、遺伝子破壊、および組換え受容体をコードする導入遺伝子の組み込みは、相同性指向修復(HDR)を介して、ヒトTGFBR2遺伝子座にターゲティングされる。いくつかの局面において、導入遺伝子配列の標的組み込みまたは挿入が、TGFBR2遺伝子座の遺伝子破壊の部位でまたはその近くで起こるように、遺伝子破壊は、TGFBRIIをコードするオープンリーディングフレームを含有するTGFBR2遺伝子座内の標的部位にターゲティングされる。いくつかの局面において、遺伝子破壊は、TGFBRIIをコードするオープンリーディングフレームのエクソンにまたはその近くにターゲティングされる。いくつかの局面において、遺伝子破壊は、TGFBRIIをコードするオープンリーディングフレームのイントロンにまたはその近くにターゲティングされる。
【0115】
TGFBRIIは、セリン/スレオニンタンパク質キナーゼファミリーおよびTGFB受容体サブファミリーのメンバーである、膜貫通タンパク質である。TGFBRIIは、トランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)サイトカインであるTGFβ1、TGFβ2、およびTGFβ3に対する無差別ではない受容体であるTGF-βI型セリン/スレオニンキナーゼ受容体(TGFBRI)とヘテロ二量体複合体を形成して、サイトカインからのシグナルを伝達し、上皮細胞および造血細胞における細胞周期停止、間葉細胞の増殖および分化の調節、創傷治癒、細胞外マトリックス産生、免疫抑制、および発癌を含む、様々な生理学的および病理学的プロセスを制御する(例えば、Yang et al., Trends Immunol. (2010) 31(6): 220-227;Oh et al., J Immunol. (2013) 191(8): 3973-3979;Principe et al., Cancer Res. (2016) 76(9): 2525-2539を参照されたい)。
【0116】
いくつかの局面において、TGFβは、潜在形態で合成され、TGFβ受容体であるTGFBRIおよびTGFBRIIと四量体受容体複合体の形成を可能にするように活性化される。いくつかの局面において、サイトカイン二量体に対称的に結合した、2つのTGFBRI分子および2つのTGFBRII分子から構成される受容体複合体の形成は、構成的に活性を有するTGFBRIIによるTGFBRIのリン酸化および活性化を結果としてもたらす。古典的なSMAD依存性TGFβシグナル伝達経路などのいくつかの場合には、活性化されたTGFBRIが、mothers against decapentaplegic homolog 2(SMAD2)をリン酸化し、これが、受容体から解離してSMAD4と相互作用する。SMAD2-SMAD4複合体は、その後核に転位し、そこで、TGFβにより制御される遺伝子の転写を調節する。いくつかの局面において、TGFBRIIはまた、非古典的なSMAD非依存性TGFβシグナル伝達経路にも関与し得る。
【0117】
腫瘍またはがんの状況において、TGFβは、例えば、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤の調節不全、細胞骨格構造の変更、プロテアーゼおよび細胞外マトリックス形成の増加、免疫監視の減少、および血管新生の増加によって、腫瘍を促進し得る。
【0118】
いくつかの局面において、TGFβは、複数の免疫細胞系列の増殖、分化、および生存に対するその影響を通して、免疫応答を調節することができ、かつ免疫恒常性を維持する。いくつかの局面において、TGFβ1は、免疫系において発現される主要なアイソフォームであり、複数のタイプの免疫細胞に影響を及ぼす広範囲の制御活性を有する。いくつかの状況において、例えばT細胞において、TGFBRIIに対するTGFβの結合は、T細胞の活性化、増殖、および分化を下方制御するか、阻害するか、または妨害することができる。TGFβはまた、T細胞に対するその作用によって免疫寛容を調節することもできる。腫瘍微小環境(TME)中に存在し得る免疫細胞について、TGFβは、抗腫瘍免疫に対して有害作用を有する可能性があり、腫瘍免疫監視を有意に阻害する。例えば、T細胞特異的プロモーター下でドミナントネガティブTGFBRIIを発現するトランスジェニックマウスは、自発性のT細胞分化および自己免疫疾患を有することが観察された(例えば、Gorelik et al., Nat. Rev. Immunol. (2002) 2(1):46-53を参照されたい)。いくつかの局面において、TGFβは、細胞傷害性Tリンパ球の細胞傷害活性を直接抑制することができ、場合によっては、パーフォリン、グランザイム、および細胞毒などの複数の鍵となる分子をコードする遺伝子の転写抑制を介する。いくつかの局面において、TGFβは、CD8+ T細胞のクローン増大および細胞傷害活性を制御し、これは次いで、腫瘍進行または腫瘍促進を結果としてもたらし得る。いくつかの局面において、TGFβはまた、CD4+ T細胞の分化および機能にも有意な影響を有し、制御性T細胞(Treg)およびTh17細胞の生成を促進する(例えば、Principe et al., Cancer Res. (2016) 76(9): 2525-2539を参照されたい)。いくつかの局面において、腫瘍の状況におけるTGFβは、腫瘍進行を促進し、かつ免疫抑制活性を有し得るため、TGFβシグナル伝達成分、例えば、TGFβ受容体の低減、阻害、または欠失は、T細胞の分化、機能、および持続を増強することができる。
【0119】
いくつかの局面において、TGFβは、発癌の様々な局面に関与している。いくつかの状況において、損なわれたTGFβシグナル伝達は、頭頚部扁平上皮癌(HNSCC)におけるがん進行に頻繁に関連している。いくつかの状況において、TGFBRIIの低減または完全な喪失が、ヒトHNSCCのおよそ30%~87%において観察される。いくつかの局面において、Smad4発現の喪失(22%~51%)およびSmad2発現の喪失(14%~38%)が、ヒトHNSCCにおいて報告されている。いくつかの局面において、TGFβシグナル伝達はまた、例えば、上皮の間葉への移行の促進を結果としてもたらす、上皮細胞接着の喪失、細胞外マトリックスのリモデリング、および血管新生の増強によって、腫瘍進行にも関与し得る。場合によっては、TGFβのレベルは、HNSCC試料において、正常組織と比較して例えば1.5~7.5倍の増加分、上昇しており;かつTGFβレベルは、HNSCCが隣接する組織試料の44%において、1.5~5.3倍増加していると観察されている。
【0120】
例示的なヒトTGFBRII前駆体ポリペプチド配列は、SEQ ID NO:59(アイソフォーム1;成熟ポリペプチドはSEQ ID NO:59の残基23~567を含む;Uniprot Accession No. P37173-1; NCBI Reference Sequence: NP_003233.4; SEQ ID NO:61に示されるmRNA配列、NCBI Reference Sequence: NM_003242.5を参照されたい)またはSEQ ID NO:60(アイソフォーム2;成熟ポリペプチドはSEQ ID NO:60の残基23~592を含む;Uniprot Accession No. P37173-2; NCBI Reference Sequence: NP_001020018.1; SEQ ID NO:62に示されるmRNA配列、NCBI Reference Sequence:. NM_001024847.2を参照されたい)に示されている。2つのアイソフォームは、オルタナティブスプライシングによって産生される。
【0121】
例示的な成熟TGFBRIIは、細胞外領域(SEQ ID NO:59に示されるヒトTGFBRII前駆体配列(アイソフォーム1)のアミノ酸残基22~166、またはSEQ ID NO:60に示されるヒトTGFBRII前駆体配列(アイソフォーム2)のアミノ酸残基22~191を含む)、膜貫通領域(SEQ ID NO:59に示されるヒトTGFBRII前駆体配列(アイソフォーム1)のアミノ酸残基167~187、またはSEQ ID NO:60に示されるヒトTGFBRII前駆体配列(アイソフォーム2)のアミノ酸残基192~212を含む)、および細胞内領域(SEQ ID NO:59に示されるヒトTGFBRII前駆体配列(アイソフォーム1)のアミノ酸残基188~567、またはSEQ ID NO:60に示されるヒトTGFBRII前駆体配列(アイソフォーム2)のアミノ酸残基213~592を含む)を含有する。TGFBRIIは、SEQ ID NO:59に示されるヒトTGFBRII前駆体配列(アイソフォーム1)のアミノ酸残基244~544に、またはSEQ ID NO:60に示されるヒトTGFBRII前駆体配列(アイソフォーム2)のアミノ酸残基269~569に、セリン-スレオニン/チロシン-タンパク質キナーゼ触媒ドメインを含有する。ヒトにおいて、TGFBRIIをコードする例示的なゲノム遺伝子座であるTGFBR2は、アイソフォーム1をコードする転写物バリアントについては7つのエクソンおよび6つのイントロン、またはアイソフォーム2をコードする転写物バリアントについては8つのエクソンおよび7つのイントロンを含有するオープンリーディングフレームを含む。
【0122】
アイソフォーム1をコードするTGFBR2の例示的なmRNA転写物は、ヒトゲノムバージョンGRCh38(UCSC Genome Browser on Human Dec. 2013 (GRCh38/hg38) Assembly)を参照して、フォワード鎖上の3番染色体:30,606,502-30,694,134に対応する配列にわたることができる。表1は、例示的なヒトTGFBR2遺伝子座のアイソフォーム1をコードする転写物のオープンリーディングフレームのエクソンおよびイントロンならびに非翻訳領域の座標を示す。
【0123】
(表1)例示的なヒトTGFBR2遺伝子座、アイソフォーム1のエクソンおよびイントロンの座標(GRCh38、3番染色体、フォワード鎖)
【0124】
アイソフォーム2をコードするTGFBR2の例示的なmRNA転写物は、ヒトゲノムバージョンGRCh38(UCSC Genome Browser on Human Dec. 2013 (GRCh38/hg38) Assembly)を参照して、フォワード鎖上の3番染色体:30,606,601-30,694,142に対応する配列にわたることができる。表2は、例示的なヒトTGFBR2遺伝子座のアイソフォーム2をコードする転写物のオープンリーディングフレームのエクソンおよびイントロンならびに非翻訳領域の座標を示す。
【0125】
(表2)例示的なヒトTGFBR2遺伝子座、アイソフォーム2のエクソンおよびイントロンの座標(GRCh38、3番染色体、フォワード鎖)
【0126】
いくつかの局面において、鋳型ポリヌクレオチド内の導入遺伝子(例えば、外来性核酸配列)を、標的部位および/または相同性アームの場所をガイドするために用いることができる。いくつかの局面において、遺伝子破壊の標的部位を、HDRに用いられる鋳型ポリヌクレオチドおよび/または相同性アームを設計するためのガイドとして用いることができる。いくつかの態様において、遺伝子破壊は、(例えば、組換え受容体またはその一部分をコードする)導入遺伝子配列の標的組み込みの望ましい部位の近くにターゲティングされ得る。いくつかの局面において、遺伝子破壊は、組換え受容体をコードする導入遺伝子の組み込み時に、内在性TGFBR2遺伝子の発現が低減されるかまたは排除されるように、ターゲティングされる。いくつかの局面において、遺伝子破壊は、組換え受容体をコードする導入遺伝子の組み込み時に、発現される内在性TGFBR2遺伝子の一部分が、ドミナントネガティブ型のTGFBRIIおよび/または非機能型のTGFBRIIをコードするように、ターゲティングされる。
【0127】
ある特定の態様において、遺伝子破壊は、TGFBR2遺伝子座に、その近くに、またはそれ内にターゲティングされる。特定の態様において、遺伝子破壊は、(例えば、本明細書における表1および2に記載される)TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームに、その近くに、またはそれ内にターゲティングされる。ある特定の態様において、遺伝子破壊は、TCRα定常ドメインをコードするオープンリーディングフレームに、その近くに、またはそれ内にターゲティングされる。いくつかの態様において、遺伝子破壊は、(例えば、本明細書における表1および2に記載される)TGFBR2遺伝子座、または、(例えば、本明細書における表1および2に記載される)TGFBR2遺伝子座のすべてまたは一部分、例えば、500、1,000、1,500、2,000、2,500、3,000、3,500、もしくは4,000個、または少なくとも500、1,000、1,500、2,000、2,500、3,000、3,500、もしくは4,000個の連続したヌクレオチドに対して70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%、または少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の配列同一性を有する配列に、その近くに、またはそれ内にターゲティングされる。
【0128】
いくつかの局面において、標的部位は、内在性TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームのエクソン内にある。いくつかの局面において、標的部位は、TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームのイントロン内にある。いくつかの局面において、標的部位は、TGFBR2遺伝子座の制御または調節エレメント、例えば、プロモーター、5'非翻訳領域(UTR)または3' UTR内にある。いくつかの態様において、標的部位は、本明細書における表1および2に記載されるTGFBR2ゲノム領域配列内、またはそれに含有されるTGFBR2ゲノム領域配列の任意のエクソンまたはイントロン内にある。
【0129】
いくつかの態様において、遺伝子破壊のための標的部位は、導入遺伝子配列の組み込み後に、細胞が、内在性TGFBR2遺伝子座からの発現がノックアウトされる、低減される、かつ/または排除されるように選択される。
【0130】
いくつかの態様において、遺伝子破壊、例えばDNA切断は、TGFBR2遺伝子座またはそのオープンリーディングフレームのエクソン内にターゲティングされる。ある特定の態様において、遺伝子破壊は、TGFBR2遺伝子座またはオープンリーディングフレームの第1エクソン、第2エクソン、第3エクソン、または第4エクソン内にある。特定の態様において、遺伝子破壊は、TGFBR2遺伝子座またはそのオープンリーディングフレームの第1エクソン内にある。いくつかの態様において、遺伝子破壊は、TGFBR2遺伝子座またはそのオープンリーディングフレームにおける第1エクソンの5'末端から500塩基対(bp)以内下流にある。特定の態様において、遺伝子破壊は、エクソン1の5'ヌクレオチドと、エクソン1の3'ヌクレオチドの上流との間にある。ある特定の態様において、遺伝子破壊は、TGFBR2遺伝子座またはそのオープンリーディングフレームにおける第1エクソンの5'末端から400 bp、350 bp、300 bp、250 bp、200 bp、150 bp、100 bp、または50 bp以内下流にある。特定の態様において、遺伝子破壊は、TGFBR2遺伝子座またはそのオープンリーディングフレームにおける第1エクソンの5'末端から、それぞれ両端の値を含む、1 bp~400 bp、50~300 bp、100 bp~200 bp、または100 bp~150 bp下流にある。ある特定の態様において、遺伝子破壊は、TGFBR2遺伝子座またはそのオープンリーディングフレームにおける第1エクソンの5'末端から、両端の値を含む、100 bp~150 bp下流にある。
【0131】
特定の態様において、遺伝子破壊は、TGFBR2遺伝子座または(例えば、本明細書における表1および2に記載される)例示的なヒトTGFBR2遺伝子座のアイソフォーム1をコードする転写物のオープンリーディングフレームの第4エクソン内にある。いくつかの態様において、遺伝子破壊は、TGFBR2遺伝子座またはそのオープンリーディングフレームにおける第4エクソンの5'末端から500塩基対(bp)以内下流にある。特定の態様において、遺伝子破壊は、エクソン4の5'ヌクレオチドと、エクソン4の3'ヌクレオチドの上流との間にある。ある特定の態様において、遺伝子破壊は、TGFBR2遺伝子座またはそのオープンリーディングフレームにおける第4エクソンの5'末端から400 bp、350 bp、300 bp、250 bp、200 bp、150 bp、100 bp、または50 bp以内下流にある。特定の態様において、遺伝子破壊は、TGFBR2遺伝子座またはそのオープンリーディングフレームにおける第4エクソンの5'末端から、それぞれ両端の値を含む、1 bp~400 bp、50~300 bp、100 bp~200 bp、または100 bp~150 bp下流にある。ある特定の態様において、遺伝子破壊は、TGFBR2遺伝子座またはそのオープンリーディングフレームにおける第4エクソンの5'末端から、両端の値を含む、100 bp~150 bp下流にある。
【0132】
特定の態様において、遺伝子破壊は、TGFBR2遺伝子座または(本明細書における表2に記載される)例示的なヒトTGFBR2遺伝子座のアイソフォーム2をコードする転写物のオープンリーディングフレームの第5エクソン内にターゲティングされる。いくつかの態様において、遺伝子破壊は、TGFBR2遺伝子座またはそのオープンリーディングフレームにおける第5エクソンの5'末端から500塩基対(bp)以内下流にある。特定の態様において、遺伝子破壊は、エクソン5の5'ヌクレオチドと、エクソン5の3'ヌクレオチドの上流との間にある。ある特定の態様において、遺伝子破壊は、TGFBR2遺伝子座またはそのオープンリーディングフレームにおける第5エクソンの5'末端から400 bp、350 bp、300 bp、250 bp、200 bp、150 bp、100 bp、または50 bp以内下流にある。特定の態様において、遺伝子破壊は、TGFBR2遺伝子座またはそのオープンリーディングフレームにおける第5エクソンの5'末端から、それぞれ両端の値を含む、1 bp~400 bp、50~300 bp、100 bp~200 bp、または100 bp~150 bp下流にある。ある特定の態様において、遺伝子破壊は、TGFBR2遺伝子座またはそのオープンリーディングフレームにおける第5エクソンの5'末端から、両端の値を含む、100 bp~150 bp下流にある。
【0133】
いくつかの局面において、標的部位は、初期コード領域に対応するエクソンなどの、エクソン内にある。いくつかの態様において、標的部位は、初期コード領域に対応するエクソン、例えば、(例えば、本明細書における表1および2に記載される)内在性TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームのエクソン1、2、3、4、もしくは5内にあるかまたはそれに極めて近接しているか、あるいは転写開始部位の直後の、エクソン1、2、3、4、もしくは5内の、またはエクソン1、2、3、4、もしくは5の500、450、400、350、300、250、200、150、100、もしくは50 bp未満以内の配列を含む。いくつかの局面において、標的部位は、内在性TGFBR2遺伝子座のエクソン1にまたはその近くに、例えば、エクソン1の500、450、400、350、300、250、200、150、100、または50 bp未満以内にある。いくつかの態様において、標的部位は、内在性TGFBR2遺伝子座のエクソン2にまたはその近くに、例えば、エクソン2の500、450、400、350、300、250、200、150、100、または50 bp未満以内にある。いくつかの局面において、標的部位は、内在性TGFBR2遺伝子座のエクソン3にまたはその近くに、例えば、エクソン3の500、450、400、350、300、250、200、150、100、または50 bp未満以内にある。いくつかの局面において、標的部位は、内在性TGFBR2遺伝子座のエクソン4にまたはその近くに、例えば、エクソン4の500、450、400、350、300、250、200、150、100、または50 bp未満以内にある。いくつかの局面において、標的部位は、内在性TGFBR2遺伝子座のエクソン5にまたはその近くに、例えば、エクソン5の500、450、400、350、300、250、200、150、100、または50 bp未満以内にある。いくつかの局面において、標的部位は、TGFBR2遺伝子座の制御または調節エレメント、例えば、プロモーター内にある。
【0134】
いくつかの局面において、標的部位は、導入遺伝子の標的組み込みが、ドミナントネガティブ(DN)型のTGFBR2をコードする内在性TGFBR2遺伝子座を生成するように選択される。いくつかの局面において、ドミナントネガティブ型のTGFBRIIには、細胞で発現した時に、TGFβ受容体複合体によるシグナルトランスダクションを阻害するか、低減させるか、または干渉することができるTGFBRIIのバリアントが含まれる。いくつかの局面において、例示的なドミナントネガティブ型のTGFBRIIには、細胞質ドメインのすべてまたは一部分を欠くTGFBRIIなどの、トランケートされたTGFBRIIが含まれる。いくつかの態様において、ドミナントネガティブTGFBRIIには、例えば、Wieser et al., (1993) Mol. Cell Biol. 13(12): 7239-7247;Brand et al., (1995) JBC 270: 8274-8284;Bottinger et al., (1997) EMBO J 16(10): 2621-2633;Shah et al., (2002) Cancer Res 62:7135-7138;Bollard et al. (2002) Gene Therapy 99(9): 3179-87;およびZhang et al., (2013) Gene Therapy 20: 575-580; and Pang et al. (2013) Cancer Discov. 3(8): 936-951に記載されているものが含まれる。
【0135】
いくつかの局面において、例示的なドミナントネガティブ型のTGFBRIIには、例えば、SEQ ID NO:59に示されるヒトTGFBRII前駆体配列(アイソフォーム1)のアミノ酸残基188~567、またはSEQ ID NO:60に示されるヒトTGFBRII前駆体配列(アイソフォーム2)のアミノ酸残基213~592を含む、TGFBRIIの細胞内領域における、1つまたは複数のアミノ酸残基、任意で1つまたは複数の連続したアミノ酸残基の欠失を含有するTGFBRIIが含まれる。いくつかの局面において、例示的なドミナントネガティブ型のTGFBRIIは、SEQ ID NO:59に示されるアミノ酸配列の残基22~191に対応するアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:60に示されるアミノ酸配列の残基22~216に対応するアミノ酸配列、またはそれらに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を示す配列、またはその断片を含む。
【0136】
いくつかの局面において、標的部位は、TGFBRIIの細胞内領域、例えば、SEQ ID NO:59に示されるヒトTGFBRII前駆体配列(アイソフォーム1)のアミノ酸残基188~567、またはSEQ ID NO:60に示されるヒトTGFBRII前駆体配列(アイソフォーム2)のアミノ酸残基213~592をコードする内在性オープンリーディングフレーム配列の始まりにまたはその近くに配置される。いくつかの態様において、標的部位は、(本明細書における表1に記載される)例示的なヒトTGFBR2遺伝子座のアイソフォーム1をコードする転写物のオープンリーディングフレームのエクソン4にもしくはその近くに、または(本明細書における表1に記載される)例示的なヒトTGFBR2遺伝子座のアイソフォーム1をコードする転写物のオープンリーディングフレームのエクソン4の後に、その下流に、もしくはその3'に、または(本明細書における表2に記載される)例示的なヒトTGFBR2遺伝子座のアイソフォーム2をコードする転写物のオープンリーディングフレームのエクソン5にもしくはその近くに、または(本明細書における表2に記載される)例示的なヒトTGFBR2遺伝子座のアイソフォーム2をコードする転写物のオープンリーディングフレームのエクソン5の後に、その下流に、もしくはその3'に位置する。いくつかの態様において、標的部位での遺伝子破壊の導入および導入遺伝子配列、例えば、組換え受容体またはその一部分をコードする導入遺伝子配列の標的組み込み時に、コードされるポリペプチドは、ドミナントネガティブ型のTGFBRIIであるTGFBRIIポリペプチドの一部分および組換え受容体を含むことになる。いくつかの態様において、標的部位での遺伝子破壊の導入および導入遺伝子配列、例えば、組換え受容体またはその一部分をコードし、かつ2Aエレメントなどのリボソームスキップエレメントを含有する導入遺伝子配列の標的組み込み時に、コードされるポリペプチドは、ドミナントネガティブ型のTGFBRIIであるTGFBRIIポリペプチドの一部分、リボソームスキップ配列、および組換え受容体を含むことになる。したがって、リボソームスキッピングおよび/または自己開裂時に、コードされるポリペプチドは、ドミナントネガティブ型のTGFBRIIおよび組換え受容体を生成することになる。
【0137】
ある特定の態様において、遺伝子破壊は、TGFBR2遺伝子座に、その近くに、またはそれ内にターゲティングされる。特定の態様において、遺伝子破壊は、(例えば、本明細書における表1または2に記載される)TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームに、その近くに、またはそれ内にターゲティングされる。ある特定の態様において、遺伝子破壊は、TGFBR2をコードするオープンリーディングフレームに、その近くに、またはそれ内にターゲティングされる。いくつかの態様において、遺伝子破壊は、(例えば、本明細書における表1または2に記載される)TGFBR2遺伝子座、または、(例えば、本明細書における表1または2に記載される)TGFBR2遺伝子座のすべてまたは一部分、例えば、500、1,000、1,500、2,000、2,500、3,000、3,500、もしくは4,000個、または少なくとも500、1,000、1,500、2,000、2,500、3,000、3,500、もしくは4,000個の連続したヌクレオチドに対して70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の、または少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、もしくは99.9%の配列同一性を有する配列に、その近くに、またはそれ内にターゲティングされる。
【0138】
2. 遺伝子破壊の方法
いくつかの局面において、遺伝子操作された細胞を生成するための方法は、1つまたは複数の標的部位、例えば、TGFBR2遺伝子座の1つまたは複数の標的部位に遺伝子破壊を導入する工程を含む。本明細書に記載されるものを含めて、遺伝子破壊を生成するための方法は、遺伝子破壊を誘導することができる1つまたは複数の作用物質、例えば、内在性またはゲノムDNA中の標的部位または標的場所で遺伝子破壊、開裂および/もしくは二本鎖切断(DSB)またはニック(例えば、一本鎖切断(SSB))を誘導し、その結果、非相同末端結合(NHEJ)などのエラーが生じるプロセスによる切断の修復、または修復鋳型を用いるHDRによる修復が、標的部位または位置でのまたはその近くでの関心対象の配列(例えば、組換え受容体またはその一部分をコードする外来性核酸配列または導入遺伝子)の挿入を結果としてもたらし得る、操作されたシステムの使用を含むことができる。また、本明細書で提供される方法における使用のために、遺伝子破壊を誘導することができる1つまたは複数の作用物質も提供される。いくつかの局面において、1つまたは複数の作用物質は、導入遺伝子配列の相同性指向修復(HDR)媒介性標的組み込みのために、本明細書で提供される鋳型ヌクレオチドと組み合わせて使用することができる。
【0139】
いくつかの態様では、遺伝子破壊を誘導することができる1つまたは複数の作用物質は、ゲノム中の特定の部位または位置、例えば標的部位または標的場所に特異的に結合またはハイブリダイズするDNA結合タンパク質またはDNA結合核酸を含む。いくつかの局面では、内在性TGFBR2遺伝子座での標的遺伝子破壊、例えばDNA切断または開裂は、タンパク質または核酸を使用して達成され、タンパク質または核酸は、例えばキメラまたは融合タンパク質において遺伝子編集ヌクレアーゼと結合または複合体化している。いくつかの態様では、遺伝子破壊を誘導することができる1つまたは複数の作用物質は、RNA誘導型ヌクレアーゼ、またはDNAターゲティングタンパク質とヌクレアーゼとを含む融合タンパク質を含む。
【0140】
いくつかの態様では、作用物質は、様々な成分、例えば、RNA誘導型ヌクレアーゼ、またはDNAターゲティングタンパク質とヌクレアーゼとを含む融合タンパク質を含む。いくつかの態様では、標的遺伝子破壊は、ヌクレアーゼ、例えばエンドヌクレアーゼに融合したDNA結合タンパク質、例えば、1つまたは複数のジンクフィンガータンパク質(ZFP)または転写活性化因子様エフェクター(TALE)を含むDNAターゲティング分子を使用して行われる。いくつかの態様では、標的遺伝子破壊は、RNA誘導型ヌクレアーゼ、例えば、clustered regularly interspaced short palindromic nucleic acid(CRISPR)関連ヌクレアーゼ(Cas)システム(Casおよび/またはCfp1を含む)を使用して行われる。いくつかの態様では、標的遺伝子破壊は、遺伝子破壊を誘導することができる作用物質、例えば、配列特異的または標的ヌクレアーゼを使用して行われ、これには、DNA結合標的ヌクレアーゼおよび遺伝子編集ヌクレアーゼ、例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)および転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ならびにRNA誘導型ヌクレアーゼ、例えば、CRISPR関連ヌクレアーゼ(Cas)システムが含まれ、これらは、少なくとも1つの標的部位、遺伝子の配列、またはこれらの一部分にターゲティングされるように特に設計されている。例示的なZFN、TALE、およびTALENは、例えば、Lloyd et al., Frontiers in Immunology, 4(221): 1-7 (2013)に記載されている。
【0141】
ジンクフィンガータンパク質(ZFP)、転写活性化因子様エフェクター(TALE)、およびCRISPRシステムの結合ドメインは、例えば、天然に存在するZFPまたはTALEタンパク質の認識ヘリックス領域の操作(1つまたは複数のアミノ酸の変更)を介して、所定のヌクレオチド配列に結合するように「操作され」得る。操作されたDNA結合タンパク質(ZFPまたはTALE)は、天然に存在しないタンパク質である。設計のための合理的な判断基準は、置換ルール、ならびに既存のZFPおよび/またはTALEの設計および結合データの情報を格納するデータベース中の情報を処理するためのコンピュータ化アルゴリズムの適用を含む。例えば、米国特許第6,140,081号;第6,453,242号;および第6,534,261号を参照されたい。WO98/53058;WO98/53059;WO98/53060;WO02/016536、およびWO03/016496ならびに米国特許出願公開第20110301073号も参照されたい。
【0142】
いくつかの態様では、1つまたは複数の作用物質は、TGFBR2遺伝子座でまたはその近くで、少なくとも1つの標的部位を特異的に標的にする。いくつかの態様では、作用物質は、標的部位に特異的に結合する、標的部位を認識する、または標的部位にハイブリダイズする、ZFN、TALEN、またはCRISPR/Cas9の組み合わせを含む。いくつかの態様では、CRISPR/Cas9システムは、特異的な開裂をガイドするために、操作されたcrRNA/tracr RNA(「シングルガイドRNA」)を含む。いくつかの態様では、作用物質は、アルゴノートシステムに基づくヌクレアーゼ(例えば、T.サーモフィラス(T. thermophilus)に由来し、「TtAgo」として公知である(Swarts et al. (2014) Nature 507(7491): 258-261)を含む。本明細書において記載されるヌクレアーゼシステムのいずれかを使用する標的開裂を活用して、HDRまたはNHEJ媒介性プロセスのいずれかを使用して、核酸配列、例えば組換え受容体またはその一部分をコードする導入遺伝子の配列を、内在性TGFBR2遺伝子座の特定の標的場所に挿入することができる。
【0143】
いくつかの態様では、「ジンクフィンガーDNA結合タンパク質」(または結合ドメイン)は、亜鉛イオンの配位を介してその構造が安定化する結合ドメイン内のアミノ酸配列の領域である1つまたは複数のジンクフィンガーを介して配列特異的にDNAに結合する、タンパク質であるか、またはより大きなタンパク質内のドメインである。ジンクフィンガーDNA結合タンパク質という用語は、ジンクフィンガータンパク質またはZFPと略されることが多い。ZFPの中には、個々のフィンガーのアセンブリーによって生成される、典型的には9~18ヌクレオチド長の特定のDNA配列をターゲティングする人工ZFPドメインがある。ZFPは、単一フィンガードメインがおよそ30アミノ酸の長さであり、亜鉛を介して単一ベータターンの2つのシステインと配位した2つの不変のヒスチジン残基を含むアルファヘリックスを含み、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのフィンガーを有するものを含む。一般に、ZFPの配列特異性は、ジンクフィンガー認識ヘリックス上の4つのヘリックス位置(-1、2、3、および6)でアミノ酸置換を行うことによって変更することができる。したがって、例えば、ZFPまたはZFP含有分子は天然に存在せず、例えば、選択標的部位に結合するように操作されている。
【0144】
場合によっては、DNAターゲティング分子は、DNA開裂ドメインに融合してジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を形成したジンクフィンガーDNA結合ドメインであるか、または該ジンクフィンガーDNA結合ドメインを含む。例えば、融合タンパク質は、少なくとも1つのIIS型制限酵素由来の開裂ドメイン(または開裂ハーフドメイン)、および操作されていてもよいし、操作されていなくてもよい、1つまたは複数のジンクフィンガー結合ドメインを含む。場合によっては、開裂ドメインはIIS型制限エンドヌクレアーゼFokIに由来し、これは、一方の鎖のその認識部位から9ヌクレオチドおよび他方の鎖のその認識部位から13ヌクレオチドにおいて、DNAの二本鎖開裂を一般に触媒する。例えば、米国特許第5,356,802号;第5,436,150号および第5,487,994号;Li et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:4275-4279;Li et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:2764-2768;Kim et al. (1994a) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:883-887;Kim et al. (1994b) J. Biol. Chem. 269: 978-982を参照されたい。いくつかの遺伝子特異的な操作されたジンクフィンガーが市販されている。例えば、何千もの標的に対して特異的にターゲティングされたジンクフィンガーを提供する、ジンクフィンガー構築のためのCompoZrと呼ばれるプラットフォームが利用可能である。例えば、Gaj et al., Trends in Biotechnology, 2013, 31(7), 397-405を参照されたい。場合によっては、市販のジンクフィンガーが使用されるか、または特別設計される。
【0145】
いくつかの態様では、例えば、TGFBR2遺伝子座内の1つまたは複数の標的部位が、操作されたZFNによる遺伝子破壊のための標的にされ得る。内在性TGFBR2遺伝子座を標的にする例示的ZFNとしては、例えば、NCBIアクセッション番号NM_029575.3またはNM_031132に記載されるプラスミドによってコードされるものが挙げられる。
【0146】
転写活性化因子様エフェクター(TALE)は、細菌種ザントモナス(Xanthomonas)由来のタンパク質であり、複数の反復配列を含み、各反復は、核酸標的配列の各ヌクレオチド塩基に特異的である2残基(RVD)を位置12および13に含む。類似したモジュラー塩基対塩基核酸結合特性(modular base-per-base nucleic acid binding properties)(MBBBD)を有する結合ドメインも、異なる細菌種に由来し得る。新しいモジュラータンパク質は、TAL反復よりも配列多様性を示すという利点を有する。いくつかの態様では、異なるヌクレオチドの認識と関係があるRVDは、Cを認識するためのHD、Tを認識するためのNG、Aを認識するためのNI、GまたはAを認識するためのNN、A、C、G、またはTを認識するためのNS、Tを認識するためのHG、Tを認識するためのIG、Gを認識するためのNK、Cを認識するためのHA、Cを認識するためのND、Cを認識するためのHI、Gを認識するためのHN、Gを認識するためのNA、GまたはAを認識するためのSN、およびTを認識するためのYG、Aを認識するためのTL、AまたはGを認識するためのVT、およびAを認識するためのSWである。いくつかの態様では、重要なアミノ酸12および13は、ヌクレオチドA、T、C、およびGに対するそれらの特異性をモジュレートするために、特に、この特異性を増強するために、他のアミノ酸残基に変異させることができる。
【0147】
いくつかの態様では、「TALE DNA結合ドメイン」または「TALE」は、1つまたは複数のTALE反復ドメイン/単位を含むポリペプチドである。反復可変2残基(RVD)をそれぞれ含む反復ドメインは、TALEとその同種標的DNA配列の結合に関与する。単一「反復単位」(「反復」とも称される)は、典型的には33~35アミノ酸の長さであり、天然に存在するTALEタンパク質内の他のTALE反復配列と少なくともある程度の配列相同性を示す。TALEタンパク質は、反復単位内の標準または非標準のRVDを使用して、標的部位に結合するように設計することができる。例えば、米国特許第8,586,526および第9,458,205号を参照されたい。
【0148】
いくつかの態様では、「TALEヌクレアーゼ」(TALEN)は、典型的には転写活性化因子様エフェクター(TALE)に由来する核酸結合ドメインと核酸標的配列を開裂させるヌクレアーゼ触媒ドメインを含む融合タンパク質である。触媒ドメインは、ヌクレアーゼドメイン、またはエンドヌクレアーゼ活性を有するドメイン、例えばI-TevI、ColE7、NucA、およびFok-Iなどを含む。特定の態様では、TALEドメインは、メガヌクレアーゼ、例えばI-CreIおよびI-OnuIまたはそれらの機能的バリアントなどに融合させることができる。いくつかの態様では、TALENは単量体のTALENである。単量体のTALENは、特異的な認識および開裂のための二量体化、例えば、操作されたTAL反復とWO2012138927に記載されているI-TevIの触媒ドメインとの融合を必要としないTALENである。TALENは遺伝子ターゲティングおよび遺伝子改変について記載されており、使用されている(例えば、Boch et al. (2009) Science 326(5959): 1509-12;Moscou and Bogdanove (2009) Science 326(5959): 1501;Christian et al. (2010) Genetics 186(2): 757-61;Li et al. (2011) Nucleic Acids Res 39(1): 359-72を参照されたい)。いくつかの態様では、TGFBR2遺伝子座における1つまたは複数の部位は、操作されたTALENによる遺伝子破壊のための標的にされ得る。
【0149】
いくつかの態様では、「TtAgo」は遺伝子サイレンシングに関与すると考えられている原核性アルゴノートタンパク質である。TtAgoは細菌サーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)に由来する。例えば、Swarts et al (2014) Nature 507(7491): 258-261; G. Sheng et al., (2013) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 111, 652を参照されたい。「TtAgoシステム」は、TtAgo酵素による開裂のためのガイドDNAを含めた、必要とされる全ての成分のことである。
【0150】
いくつかの態様では、操作されたジンクフィンガータンパク質、TALEタンパク質、またはCRISPR/Casシステムは天然に見られず、それらの製造は、主として、ファージディスプレイ、相互作用トラップ、またはハイブリッド選抜などの実験的なプロセスから生じる。例えば、米国特許第5,789,538号;米国特許第5,925,523号;米国特許第6,007,988号;米国特許第6,013,453号;米国特許第6,200,759号;WO95/19431;WO96/06166;WO98/53057;WO98/54311;WO00/27878;WO01/60970;WO01/88197およびWO02/099084を参照されたい。
【0151】
ジンクフィンガーおよびTALE DNA結合ドメインは、例えば、天然に存在するジンクフィンガータンパク質の認識ヘリックス領域の操作(1つもしくは複数のアミノ酸の変更)を介して、またはDNA結合に関与するアミノ酸(反復可変2残基もしくはRVD領域)を操作することによって、所定のヌクレオチド配列に結合するように操作され得る。したがって、操作されたジンクフィンガータンパク質またはTALEタンパク質は、天然に存在しないタンパク質である。ジンクフィンガータンパク質およびTALEを操作するための方法の非限定例は、設計および選択である。設計されたタンパク質は、その設計/組成物が合理的な判断基準からもたらされる、天然に存在しないタンパク質である。設計のための合理的な判断基準は、置換ルール、ならびに既存のZFPまたはTALEの設計(標準および非標準のRVD)ならびに結合データの情報を格納するデータベース中の情報を処理するためのコンピュータ化アルゴリズムの適用を含む。例えば、米国特許第9,458,205号;第8,586,526号;第6,140,081号;第6,453,242号;および第6,534,261号を参照されたい。WO98/53058;WO98/53059;WO98/53060;WO02/016536、およびWO03/016496も参照されたい。
【0152】
ゲノムDNAの標的開裂のための様々な方法および組成物は記載されている。そのような標的開裂イベントを使用して、例えば、標的変異誘発を誘導すること、細胞のDNA配列の標的欠失を誘導すること、および所定の染色体座での標的組換えを推進することができる。例えば、その開示が、参照によりその全体が組み入れられる、米国特許第9,255,250号;第9,200,266号;第9,045,763号;第9,005,973号;第9,150,847号;第8,956,828号;第8,945,868号;第8,703,489号;第8,586,526号;第6,534,261号;第6,599,692号;第6,503,717号;第6,689,558号;第7,067,317号;第7,262,054号;第7,888,121号;第7,972,854号;第7,914,796号;第7,951,925号;第8,110,379号;第8,409,861;米国特許公報第20030232410号;第20050208489号;第20050026157号;第20050064474号;第20060063231号;第20080159996号;第201000218264号;第20120017290号;第20110265198号;第20130137104号;第20130122591号;第20130177983号;第20130196373号;第20140120622号;第20150056705号;第20150335708号;第20160030477号、および第20160024474号を参照されたい。
【0153】
a. CRISPR/Cas9
いくつかの態様において、ヒトにおける内在性遺伝子TGFBR2の標的遺伝子破壊、例えばDNA切断は、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(clustered regularly interspaced short palindromic repeats)(CRISPR)およびCRISPR関連(Cas)タンパク質を用いて実施される。Sander and Joung (2014) Nature Biotechnology, 32(4): 347-355を参照されたい。
【0154】
一般に、「CRISPRシステム」は、CRISPR関連(「Cas」)遺伝子の発現またはその活性を方向づけることに関与する転写物および他のエレメントを、Cas遺伝子をコードする配列、tracr(トランス活性化CRISPR)配列(例えば、tracr RNAまたは活性を有する部分的tracr RNA)、tracrメイト配列(内在性CRISPRシステムの状況において「直列反復配列」およびtracr RNAのプロセシングを受けた部分的直列反復配列を包含する)、ガイド配列(内在性CRISPRシステムの状況において「スペーサー」とも称される)、および/またはCRISPR遺伝子座由来の他の配列および転写物を含めて、ひとまとめにして指す。
【0155】
いくつかの局面において、CRISPR/CasヌクレアーゼまたはCRISPR/Casヌクレアーゼシステムは、配列特異的にDNAに結合する非コードガイドRNA(gRNA)と、ヌクレアーゼの機能性を有するCasタンパク質(例えば、Cas9)とを含む。
【0156】
また、遺伝子破壊を導入することができる1つまたは複数の作用物質も提供される。また、遺伝子破壊を誘導することができる1つまたは複数の作用物質の1つまたは複数の成分をコードするポリヌクレオチド(例えば、核酸分子)も提供される。
【0157】
(i) ガイドRNA(gRNA)
いくつかの態様において、遺伝子破壊を誘導することができる1つまたは複数の作用物質は、TGFBR2遺伝子座の標的部位と相補的であるターゲティングドメインを有するガイドRNA(gRNA)またはgRNAをコードする少なくとも1つの核酸のうちの少なくとも1つを含む。
【0158】
いくつかの局面において、「gRNA分子」とは、細胞のゲノムDNA上の遺伝子座などの標的核酸に対する、gRNA分子/Cas9分子複合体の特異的なターゲティングまたはホーミング(homing)を促進する核酸である。gRNA分子は、時には本明細書において「キメラ」gRNAと称される、(単一RNA分子を有する)単分子、または(1つよりも多い、典型的には2つの別々のRNA分子を含む)モジュラーであることができる。一般に、ガイド配列、例えば、ガイドRNAは、標的部位で標的配列とハイブリダイズし、標的配列に対するCRISPR複合体の配列特異的結合を導くのに十分な相補性を、例えばヒトにおけるTGFBR2遺伝子座の、標的ポリヌクレオチド配列と有する少なくとも配列部分を含む、任意のポリヌクレオチド配列である。いくつかの態様では、CRISPR複合体の形成の状況において、「標的配列」は、ガイド配列が相補性を有するように設計され、標的配列とガイドRNAのドメイン、例えばターゲティングドメインとの間のハイブリダイゼーションがCRISPR複合体の形成を促進する、配列である。ハイブリダイゼーションを引き起こし、CRISPR複合体の形成を促進するのに十分な相補性があるという条件で、完全な相補性は必ずしも必要とされない。一般に、ガイド配列は、ガイド配列内の二次構造の程度を低減させるように選択される。二次構造は、任意の適しているポリヌクレオチドフォールディングアルゴリズムによって決定され得る。
【0159】
いくつかの態様では、関心対象の標的遺伝子座(例えば、ヒトにおけるTGFBR2遺伝子座)に特異的なガイドRNA(gRNA)が、標的部位または標的位置でDNA切断を誘導するために、RNA誘導型ヌクレアーゼ、例えばCasに対して用いられる。gRNAおよび例示的なターゲティングドメインを設計するための方法には、例えば、国際PCT公開公報番号WO2015/161276、WO2017/193107、およびWO2017/093969に記載されているものが含まれる。
【0160】
ドメインがその上に示されるいくつかの例示的なgRNA構造が、WO2015/161276に、例えばその中の図1A~1Gに記載されている。理論に拘束されることは望まないが、gRNAの活性型の三次元形態、または鎖内もしくは鎖間相互作用に関して、高い相補性の領域は、WO2015/161276において、例えばその中の図1A~1G、および本明細書で提供される他の描写において、時には二重鎖として示される。
【0161】
場合によっては、gRNAは、5'から3'へ、(SEQ ID NO:74に示される配列をコードする)TGFBR2遺伝子由来の配列などの、標的核酸に相補的であるターゲティングドメイン;第1の相補性ドメイン;連結ドメイン;第2の相補性ドメイン(第1の相補性ドメインに相補的である);近位ドメイン;および任意で、尾部ドメイン、を含む、単分子またはキメラのgRNAである。
【0162】
他の場合では、gRNAは、第1および第2の鎖を含むモジュラーgRNAである。これらの場合に、第1の鎖は、好ましくは、5'から3'へ、ターゲティングドメイン(SEQ ID NO:74または76に示される配列をコードする、TGFBR2遺伝子由来の配列などの、標的核酸に相補的である)および第1の相補性ドメインを含む。第2の鎖は、一般に、5'から3'へ、任意で、5'延長ドメイン;第2の相補性ドメイン;近位ドメイン;および任意で、尾部ドメイン、を含む。
【0163】
(a) ターゲティングドメイン
ターゲティングドメインは、標的核酸上の標的配列に相補的である、例えば、少なくとも80、85、90、95、98、または99%相補的である、例えば、完全に相補的である、ヌクレオチド配列を含む。標的配列を含む標的核酸の鎖は、本明細書において標的核酸の「相補鎖」と称される。ターゲティングドメインの選択についてのガイダンスは、例えば、Fu Y et al., Nat Biotechnol 2014 (doi: 10.1038/nbt.2808)およびSternberg SH et al., Nature 2014 (doi: 10.1038/nature13011)に見出すことができる。ターゲティングドメインの配置の例には、WO2015/161276に、例えばその中の図1A~1Gに記載されているものが含まれる。
【0164】
ターゲティングドメインは、RNA分子の一部であり、したがって、塩基ウラシル(U)を含むが、gRNA分子をコードする任意のDNAは塩基チミン(T)を含む。理論に拘束されることは望まないが、いくつかの態様では、ターゲティングドメインと標的配列との相補性が、gRNA分子/Cas9分子複合体と標的核酸との相互作用の特異性に寄与すると考えられる。ターゲティングドメインと標的配列との対において、ターゲティングドメイン中のウラシル塩基は、標的配列中のアデニン塩基と対形成することが理解される。いくつかの態様では、標的ドメインそれ自体が、5'から3'への方向で、任意の二次ドメインおよびコアドメインを含む。いくつかの態様において、コアドメインは、標的配列と完全に相補的である。いくつかの態様において、ターゲティングドメインは、5~50ヌクレオチドの長さである。ターゲティングドメインが相補的である標的核酸の鎖は、本明細書において相補鎖と称される。ドメインのヌクレオチドのいくつかまたはすべては、例えば、分解を受けにくくする、生体適合性を改善するなどの、修飾を有し得る。非限定的な例として、標的ドメインの骨格は、ホスホロチオエートまたは他の修飾で修飾することができる。場合によっては、ターゲティングドメインのヌクレオチドは、2'修飾、例えば、2-アセチル化、例えば、2'メチル化、または他の修飾を含むことができる。
【0165】
様々な態様において、ターゲティングドメインは、16~26ヌクレオチドの長さである(すなわち、これは、16ヌクレオチドの長さ、または17ヌクレオチドの長さ、または18、19、20、21、22、23、24、25、もしくは26ヌクレオチドの長さである)。
【0166】
(b) 例示的なターゲティングドメイン
いくつかの態様において、TGFBR2遺伝子座などの特定の遺伝子中の標的部位を標的とするターゲティングドメイン配列であるかまたはそれを含むgRNA配列が、設計されるか、または特定される。CRISPRゲノム編集のためのゲノムワイドのgRNAデータベースが、公的に利用可能であり、これは、ヒトゲノムまたはマウスゲノム中の遺伝子の構成的エクソンを標的とする例示的なシングルガイドRNA(sgRNA)配列を含有する(例えば、genescript.com/gRNA-database.htmlを参照されたい;Sanjana et al. (2014) Nat. Methods, 11:783-4もまた参照されたい)。いくつかの局面において、gRNA配列は、非標的部位または位置に対して最小のオフターゲット結合を有する配列であるか、またはそれを含む。
【0167】
いくつかの態様において、標的配列(標的ドメイン)は、SEQ ID NO:74または76に示されるTGFBR2コード配列の任意の一部などの、TGFBR2遺伝子座にまたはその近くにある。いくつかの態様において、ターゲティングドメインに相補的な標的核酸は、TGFBR2などの関心対象の遺伝子の初期コード領域に位置する。初期コード領域のターゲティングは、関心対象の遺伝子の遺伝子破壊(すなわち、その発現の排除)に用いることができる。いくつかの態様において、関心対象の遺伝子の初期コード領域は、開始コドン(例えば、ATG)の直後、または開始コドンの500 bp以内(例えば、500、450、400、350、300、250、200、150、100、50bp、40bp、30bp、20bp、もしくは10bp未満)の配列を含む。特定の例では、標的核酸は、開始コドンの200bp、150bp、100bp、50bp、40bp、30bp、20bp、または10bp以内である。いくつかの例では、gRNAのターゲティングドメインは、TGFBR2遺伝子座中の標的核酸などの、標的核酸上の標的配列に相補的である、例えば、少なくとも80、85、90、95、98、または99%相補的である、例えば、完全に相補的である。
【0168】
いくつかの態様において、gRNAは、例えば、組換え受容体をコードする、導入遺伝子配列の標的組み込みの望ましい部位の近くの、TGFBR2遺伝子座の部位を標的とすることができる。いくつかの局面において、gRNAは、組換え受容体を発現する細胞における発現のために望ましい、TGFBR2をコードする配列の量に基づく部位を標的とすることができる。いくつかの局面において、gRNAは、例えば、組換え受容体をコードする、導入遺伝子配列の組み込み時に、結果として生じたTGFBR2遺伝子座が、ドミナントネガティブ型のTGFBRIIをコードするように、部位を標的とすることができる。いくつかの局面において、gRNAは、内在性TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームのエクソン内の部位を標的とすることができる。いくつかの局面において、gRNAは、TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームのイントロン内の部位を標的とすることができる。いくつかの局面において、gRNAは、TGFBR2遺伝子座の制御または調節エレメント、例えば、プロモーター内の部位を標的とすることができる。いくつかの局面において、gRNAによって標的とされるTGFBR2遺伝子座の標的部位は、本明細書に、例えばセクションI.A.1に記載されるいずれかの標的部位であることができる。いくつかの態様において、gRNAは、初期コード領域に対応するエクソン、例えば、内在性TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームのエクソン1、2、3、4、もしくは5内の、またはそれに極めて近接した部位、あるいは転写開始部位の直後の、エクソン1、2、3、4、もしくは5内の、またはエクソン1、2、3、4、もしくは5の500、450、400、350、300、250、200、150、100、もしくは50 bp未満以内の配列を含む部位を標的とすることができる。いくつかの態様において、gRNAは、内在性TGFBR2遺伝子座のエクソン2もしくはその近くの部位、またはエクソン2の500、450、400、350、300、250、200、150、100、もしくは50 bp未満以内の部位を標的とすることができる。
【0169】
Cas9を用いたヒトのTGFBR2遺伝子座の破壊のための例示的な標的部位配列は、SEQ ID NO:63~68および73に示されるいずれかを含むことができる。例示的なgRNAは、SEQ ID NO:74~76、80、81、87~96、および127~182のいずれかに示される標的部位配列に結合することができるか、またはそれを標的とするか、またはそれに相補的であるか、またはその相補鎖配列に結合することができる、リボ核酸の配列を含むことができる。公知の方法の任意を、内在性TGFBR2遺伝子座を標的とし、その遺伝子破壊を生成するために用いることができ、本明細書で提供される態様において用いることができる。
【0170】
いくつかの態様において、ターゲティングドメインは、化膿性連鎖球菌(S. pyogenes)Cas9を用いてまたは髄膜炎菌(N. meningitidis)Cas9を用いて、TGFBR2遺伝子に遺伝子破壊を導入するためのものを含む。いくつかの態様において、ターゲティングドメインは、化膿性連鎖球菌Cas9を用いて、TGFBR2遺伝子に遺伝子破壊を導入するためのものを含む。ターゲティングドメインの任意を、二本鎖切断(Cas9ヌクレアーゼ)または一本鎖切断(Cas9ニッカーゼ)を生成する化膿性連鎖球菌Cas9分子と共に用いることができる。
【0171】
いくつかの態様では、二重ターゲティングを使用して、逆DNA鎖に相補的である2つのターゲティングドメインを有する化膿性連鎖球菌のCas9ニッカーゼを使用することによって逆DNA鎖に2つのニックを作出し、例えば、任意のマイナス鎖ターゲティングドメインを含むgRNAは、プラス鎖ターゲティングドメインを含む任意のgRNAと対形成することができる。いくつかの態様では、2つのgRNAは、PAMが外側に向き、gRNAの5'末端間の距離が0~50bpであるように、DNA上に配向される。いくつかの態様では、2つのgRNAは、例えば、標的ドメインの逆鎖上の2つの一本鎖切断で標的ドメインを開裂させるように、2つの異なるgRNA分子によってガイドされる1対のCas9分子/gRNA分子複合体を使用して、2つのCas9ヌクレアーゼまたは2つのCas9ニッカーゼをターゲティングするために、使用される。いくつかの態様では、2つのCas9ニッカーゼはHNH活性を有する分子、例えば、RuvC活性が失活したCas9分子、例えば、D10での変異、例えばD10A変異を有するCas9分子、RuvC活性を有する分子、例えば、HNH活性が失活したCas9分子、例えば、H840での変異、例えばH840Aを有するCas9分子、またはRuvC活性を有する分子、例えば、HNH活性が失活したCas9分子、例えば、N863での変異、例えばN863Aを有するCas9分子を含むことができる。いくつかの態様では、2つのgRNAのそれぞれは、D10A Cas9ニッカーゼと複合体化される。
【0172】
(c) 第1の相補性ドメイン
第1の相補性ドメインは、本明細書において記載される第2の相補性ドメインと相補的であり、一般に、少なくともいくつかの生理的条件下で二本鎖領域を形成するのに十分な相補性を第2の相補性ドメインに対して有する。第1の相補性ドメインは、典型的には5~30ヌクレオチドの長さであり、5~25ヌクレオチドの長さ、7~25ヌクレオチドの長さ、7~22ヌクレオチドの長さ、7~18ヌクレオチドの長さ、または7~15ヌクレオチドの長さでもよい。様々な態様では、第1の相補性ドメインは、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25ヌクレオチドの長さである。第1の相補性ドメインの例としては、WO2015/161276に、例えばその中の図1A~1Gに記載されているものが挙げられる。
【0173】
典型的には、第1の相補性ドメインは、第2の相補性ドメイン標的と正確な相補性を有さない。いくつかの態様では、第1の相補性ドメインは、第2の相補性ドメインの対応するヌクレオチドと相補的でない、1、2、3、4、または5ヌクレオチドを有し得る。いくつかの態様では、第1の相補性ドメインの1、2、3、4、5、または6(例えば、3)ヌクレオチドのセグメントは、二本鎖において対形成しなくてもよく、非二本鎖のまたはループアウトした領域を形成することができる。ある場合には、非対形成またはループアウト領域、例えば、3ヌクレオチドのループアウトが第2の相補性ドメインに存在する。この非対形成領域は、任意で、第2の相補性ドメインの5'末端から1、2、3、4、5、または6、例えば、4ヌクレオチドで始まる。
【0174】
第1の相補性ドメインは、3つのサブドメインを含むことができ、これらは、5'から3'の方向で、5'サブドメイン、中央サブドメイン、および3'サブドメインである。いくつかの態様では、5'サブドメインは、4~9、例えば、4、5、6、7、8、または9ヌクレオチドの長さである。いくつかの態様では、中央サブドメインは、1、2、または3、例えば、1ヌクレオチドの長さである。いくつかの態様では、3'サブドメインは、3~25、例えば、4~22、4~18、もしくは4~10、または3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、もしくは25ヌクレオチドの長さである。
【0175】
いくつかの態様では、第1および第2の相補性ドメインは、二本鎖の場合、例えばgRNA配列(1つの対形成鎖は下線が引かれ、1つは太字である):
中に11個の対形成ヌクレオチドを含む。
【0176】
いくつかの態様では、第1および第2の相補性ドメインは、二本鎖の場合、例えばgRNA配列(1つの対形成鎖は下線が引かれ、1つは太字である):
中に15個の対形成ヌクレオチドを含む。
【0177】
いくつかの態様では、第1および第2の相補性ドメインは、二本鎖の場合、例えばgRNA配列(1つの対形成鎖は下線が引かれ、1つは太字である):
中に16個の対形成ヌクレオチドを含む。
【0178】
いくつかの態様では、第1および第2の相補性ドメインは、二本鎖の場合、例えばgRNA配列(1つの対形成鎖は下線が引かれ、1つは太字である):
中に21個の対形成ヌクレオチドを含む。
【0179】
いくつかの態様では、例えばgRNA配列(交換されるヌクレオチドは下線が引かれる):
中のポリUトラクトを除去するために、ヌクレオチドが交換される。
【0180】
第1の相補性ドメインは、天然に存在する第1の相補性ドメインと相同性を有してもよく、または天然に存在する第1の相補性ドメインに由来してもよい。いくつかの態様では、これは、本明細書において開示される第1の相補性ドメイン、例えば、化膿性連鎖球菌、黄色ブドウ球菌(S. aureus)、髄膜炎菌、またはS.サーモフィラス(S. thermophilus)の第1の相補性ドメインと少なくとも50%の相同性を有する。
【0181】
第1の相補性ドメインのヌクレオチドの1つもしくは複数、またはさらに全てが、ターゲティングドメインについて本明細書おいて記載される線に沿って修飾を有し得ることに留意されたい。
【0182】
(d) 連結ドメイン
単分子またはキメラのgRNAでは、連結ドメインは、第1の相補性ドメインを単分子gRNAの第2の相補性ドメインと連結する働きをする。連結ドメインは、第1と第2の相補性ドメインを共有結合的または非共有結合的に連結することができる。いくつかの態様では、連結は共有結合である。いくつかの態様では、連結ドメインは、第1と第2の相補性ドメインを共有結合的に結合する。例えば、WO2015/161276、例えばその中の図1B~1Eを参照されたい。いくつかの態様では、連結ドメインは、第1の相補性ドメインと第2の相補性ドメインの間に挿入された共有結合であるか、または該共有結合を含む。典型的には、連結ドメインは、1つまたは複数の、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10ヌクレオチドを含むが、様々な態様では、リンカーは、20、30、40、50、またはさらに100ヌクレオチドの長さでもよい。連結ドメインの例としては、WO2015/161276に、例えばその中の図1A~1Gに記載されているものが挙げられる。
【0183】
モジュラーgRNA分子では、2つの分子は相補性ドメインのハイブリダイゼーションによって結合しており、連結ドメインは存在しなくてもよい。例えば、WO2015/161276、例えばその中の図1Aを参照されたい。
【0184】
多種多様の連結ドメインが単分子gRNA分子での使用に適する。連結ドメインは、共有結合からなってもよく、または1つもしくは少数のヌクレオチド、例えば、1、2、3、4、もしくは5ヌクレオチドの長さほどの短さでもよい。いくつかの態様では、連結ドメインは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、または25またはそれ以上のヌクレオチドの長さである。いくつかの態様では、連結ドメインは、2~50、2~40、2~30、2~20、2~10、または2~5ヌクレオチドの長さである。いくつかの態様では、連結ドメインは、天然に存在する配列、例えば、第2の相補性ドメインに対して5'であるtracrRNAの配列と相同性を有するか、または該配列に由来する。いくつかの態様では、連結ドメインは、本明細書において開示される連結ドメインと少なくとも50%の相同性を有する。
【0185】
第1の相補性ドメインに関して本明細書において記載するように、連結ドメインのヌクレオチドのいくつか、または全部は、修飾を含むことができる。
【0186】
(e) 5'延長ドメイン
場合によっては、モジュラーgRNAは、第2の相補性ドメインに対して5'に、5'延長ドメインと本明細書において称されるさらなる配列を含むことができる。いくつかの態様では、5'延長ドメインは、2~10、2~9、2~8、2~7、2~6、2~5、または2~4ヌクレオチドの長さである。いくつかの態様では、5'延長ドメインは、2、3、4、5、6、7、8、9、または10またはそれ以上のヌクレオチドの長さである。いくつかの態様では、5'延長ドメインの例としては、WO2015/161276に、例えばその中の図1Aに記載されているものが挙げられる。
【0187】
(f) 第2の相補性ドメイン
第2の相補性ドメインは、第1の相補性ドメインと相補的であり、一般に、少なくともいくつかの生理的条件下で二本鎖領域を形成するのに十分な相補性を第2の相補性ドメインに対して有する。場合によっては、例えば、WO2015/161276に、例えばその中の図1A~1Bに示すように、第2の相補性ドメインは、第1の相補性ドメインと相補性を欠く配列、例えば、二本鎖領域からループアウトする配列を含むことができる。第2の相補性ドメインの例としては、WO2015/161276に、例えばその中の図1A~1Gに記載されているものが挙げられる。
【0188】
第2の相補性ドメインは、5~27ヌクレオチドの長さでもよく、場合によっては、第1の相補性領域よりも長くてもよい。いくつかの態様では、第2の相補性ドメインは、7~27ヌクレオチドの長さ、7~25ヌクレオチドの長さ、7~20ヌクレオチドの長さ、または7~17ヌクレオチドの長さでもよい。より一般的には、相補性ドメインは、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、または26ヌクレオチドの長さでもよい。
【0189】
いくつかの態様では、第2の相補性ドメインは3つのサブドメインを含み、これらは、5'から3'の方向で、5'サブドメイン、中央サブドメイン、および3'サブドメインである。いくつかの態様では、5'サブドメインは、3~25、例えば、4~22、4~18、もしくは4~10、または3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、もしくは25ヌクレオチドの長さである。いくつかの態様では、中央サブドメインは、1、2、3、4、または5、例えば、3ヌクレオチドの長さである。いくつかの態様では、3'サブドメインは、4~9、例えば、4、5、6、7、8、または9ヌクレオチドの長さである。
【0190】
いくつかの態様では、第1の相補性ドメインの5'サブドメインおよび3'サブドメインは、それぞれ、第2の相補性ドメインの3'サブドメインおよび5'サブドメインと相補的であり、例えば完全に相補的である。
【0191】
第2の相補性ドメインは、天然に存在する第2の相補性ドメインと相同性を有してもよく、または天然に存在する第2の相補性ドメインに由来してもよい。いくつかの態様では、これは、本明細書において開示される第2の相補性ドメイン、例えば、化膿性連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、髄膜炎菌、またはS.サーモフィラスの第1の相補性ドメインと少なくとも50%の相同性を有する。
【0192】
第2の相補性ドメインのヌクレオチドのいくつか、または全部は、修飾、例えば、本明細書において記載される修飾を有し得る。
【0193】
(g) 近位ドメイン
近位ドメインの例としては、WO2015/161276に、例えばその中の図1A~1Gに記載されているものが挙げられる。いくつかの態様では、近位ドメインは、5~20ヌクレオチドの長さである。いくつかの態様では、近位ドメインは、天然に存在する近位ドメインと相同性を有してもよく、または天然に存在する近位ドメインに由来してもよい。いくつかの態様では、これは、本明細書において開示される近位ドメイン、例えば、化膿性連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、髄膜炎菌、またはS.サーモフィラスの近位ドメインと少なくとも50%の相同性を有する。
【0194】
近位ドメインのヌクレオチドのいくつか、または全部は、本明細書おいて記載される線に沿って修飾を有し得る。
【0195】
(h) 尾部ドメイン
WO2015/161276における、例えばその中の図1Aおよび図1B~1Fにおける、尾部ドメインの検査から分かるように、幅広い尾部ドメインがgRNA分子での使用に適する。様々な態様では、尾部ドメインは、0(存在しない)、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10ヌクレオチドの長さである。ある特定の態様では、尾部ドメインのヌクレオチドは、天然に存在する尾部ドメインの5'末端の配列に由来するか、または該配列と相同性を有する。例えば、WO2015/161276、例えばその中の図1Dまたは1Eを参照されたい。尾部ドメインはまた、互いに相補的であり、少なくともいくつかの生理的条件下で二本鎖領域を形成する配列を任意で含む。尾部ドメインの例としては、WO2015/161276に、例えばその中の図1A~1Gに記載されているものが挙げられる。
【0196】
尾部ドメインは、天然に存在する近位尾部ドメインと相同性を有してもよく、または天然に存在する近位尾部ドメインに由来してもよい。非限定例として、本開示の様々な態様による所与の尾部ドメインは、本明細書において開示される天然に存在する尾部ドメイン、例えば、化膿性連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、髄膜炎菌、またはS.サーモフィラスの尾部ドメインと少なくとも50%の相同性を有し得る。
【0197】
特定の場合には、尾部ドメインは、インビトロまたはインビボ転写の方法に関係するヌクレオチドを3'末端に含む。gRNAのインビトロ転写のためにT7プロモーターが使用される場合は、これらのヌクレオチドは、DNA鋳型の3'末端の前に存在するいかなるヌクレオチドでもよい。インビボ転写のためにU6プロモーターが使用される場合は、これらのヌクレオチドは配列UUUUUUでもよい。代替のpol-IIIプロモーターが使用される場合は、これらのヌクレオチドは、様々な数であっても、もしくはウラシル塩基でもよく、または代替の塩基を含んでもよい。
【0198】
非限定例として、様々な態様では、近位および尾部ドメインは、まとめると、以下の配列を含む:
【0199】
いくつかの態様では、尾部ドメインは、例えば、転写のためにU6プロモーターが使用される場合、3'配列UUUUUUを含む。いくつかの態様では、尾部ドメインは、例えば、転写のためにH1プロモーターが使用される場合、3'配列UUUUを含む。いくつかの態様では、尾部ドメインは、例えば、使用されるpol-IIIプロモーターの終結シグナルに応じて、可変数の3'Uを含む。いくつかの態様では、尾部ドメインは、T7プロモーターが使用される場合、DNA鋳型に由来する可変性3'配列を含む。いくつかの態様では、尾部ドメインは、例えば、RNA分子を生成するためにインビトロ転写が使用される場合、DNA鋳型に由来する可変性3'配列を含む。いくつかの態様では、尾部ドメインは、例えば、転写を駆動するためにpol-IIプロモーターが使用される場合、DNA鋳型に由来する可変性3'配列を含む。
【0200】
いくつかの態様では、gRNAは以下の構造:5'[ターゲティングドメイン]-[第1の相補性ドメイン]-[連結ドメイン]-[第2の相補性ドメイン]-[近位ドメイン]-[尾部ドメイン]-3'を有し、ターゲティングドメインは、コアドメインおよび任意で二次ドメインを含み、10~50ヌクレオチドの長さであり;第1の相補性ドメインは、5~25ヌクレオチドの長さであり、いくつかの態様では、本明細書において開示される参照第1相補性ドメインと少なくとも50、60、70、80、85、90、95、98、または99%の相同性を有し;連結ドメインは、1~5ヌクレオチドの長さであり;近位ドメインは、5~20ヌクレオチドの長さであり、いくつかの態様では、本明細書において開示される参照近位ドメインと少なくとも50、60、70、80、85、90、95、98、または99%の相同性を有し;尾部ドメインは存在しないか、またはヌクレオチド配列が1~50ヌクレオチドの長さであり、いくつかの態様では、本明細書において開示される参照尾部ドメインと少なくとも50、60、70、80、85、90、95、98、または99%の相同性を有する。
【0201】
(i) 例示的キメラgRNA
いくつかの態様では、単分子またはキメラのgRNAは、好ましくは5'から3'に、例えば、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、または26ヌクレオチドを含むターゲティングドメイン(これは標的核酸に相補的である);第1の相補性ドメイン;連結ドメイン;第2の相補性ドメイン(これは第1の相補性ドメインに相補的である);近位ドメイン;および尾部ドメイン含み、(a)近位および尾部ドメインは、まとめると、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、もしくは53ヌクレオチドを含み;(b)第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドに対して3'に、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、もしくは53ヌクレオチドが存在し;または(c)その対応する第1の相補性ドメインのヌクレオチドに相補的である第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドに対して3'に、少なくとも16、19、21、26、31、32、36、41、46、50、51、もしくは54ヌクレオチドが存在する。
【0202】
いくつかの態様では、(a)、(b)、または(c)からの配列は、天然に存在するgRNAの対応する配列と、または本明細書において記載されるgRNAと、少なくとも60、75、80、85、90、95、または99%の相同性を有する。いくつかの態様では、近位および尾部ドメインは、まとめると、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、または53ヌクレオチドを含む。いくつかの態様では、第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドに対して3'に、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、または53ヌクレオチドが存在する。いくつかの態様では、その対応する第1の相補性ドメインのヌクレオチドに相補的である第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドに対して3'に、少なくとも16、19、21、26、31、32、36、41、46、50、51、または54ヌクレオチドが存在する。いくつかの態様では、ターゲティングドメインは、標的ドメインと相補性を有する16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、または26ヌクレオチド(例えば、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、または26個の連続したヌクレオチド)を含むか、該ヌクレオチドを有するか、または該ヌクレオチドからなり、例えば、ターゲティングドメインは、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、または26ヌクレオチドの長さである。
【0203】
いくつかの態様では、(ターゲティングドメイン、第1の相補性ドメイン、連結ドメイン、第2の相補性ドメイン、近位ドメイン、および任意で、尾部ドメインを含む)単分子またはキメラのgRNA分子は、ターゲティングドメインが、20個のNとして示されるが、任意の配列および16~26ヌクレオチドの長さの範囲でもよく、かつgRNA配列の後に6個のUが続き、これは、U6プロモーターの終結シグナルとして働くが、存在しないか、または数がより少なくてもよい、以下の配列:
を含む。いくつかの態様では、単分子またはキメラのgRNA分子は化膿性連鎖球菌のgRNA分子である。
【0204】
いくつかの態様では、(ターゲティングドメイン、第1の相補性ドメイン、連結ドメイン、第2の相補性ドメイン、近位ドメイン、および任意で、尾部ドメインを含む)単分子またはキメラのgRNA分子は、ターゲティングドメインが、20個のNとして示されるが、任意の配列および16~26ヌクレオチドの長さの範囲でもよく、かつgRNA配列の後に6個のUが続き、これは、U6プロモーターの終結シグナルとして働くが、存在しないか、または数がより少なくてもよい、以下の配列:
を含む。いくつかの態様では、単分子またはキメラのgRNA分子は黄色ブドウ球菌のgRNA分子である。例示的キメラgRNAの配列および構造はまた、WO2015/161276に、例えばその中の図10A~10Bに示される。
【0205】
本明細書に記載されるgRNA分子のいずれかを、二本鎖切断または一本鎖切断を生成して、標的核酸、例えば、標的位置または標的遺伝子シグネチャーの配列を変更する、任意のCas9分子と共に用いることができる。いくつかの例では、標的核酸は、記載されるいずれかなどの、TGFBR2遺伝子座にまたはその近くにある。いくつかの態様では、gRNA分子などのリボ核酸分子、およびCas9タンパク質またはそのバリアントなどのタンパク質が、本明細書で提供される操作された細胞のいずれかに導入される。これらの方法において有用なgRNA分子を、以下に記載する。
【0206】
いくつかの態様において、gRNA、例えばキメラgRNAは、以下の特性の1つまたは複数を含むように構成される;
a)例えば、二本鎖切断を作るCas9分子をターゲティングする時、それが、二本鎖切断を(i)標的位置の50、100、150、200、250、300、350、400、450、もしくは500ヌクレオチド以内、または(ii)標的位置が末端切除の領域内であるように十分近く、に位置づけることができる;
b)それが、少なくとも16ヌクレオチドのターゲティングドメイン、例えば、(i)16、(ii)17、(iii)18、(iv)19、(v)20、(vi)21、(vii)22、(viii)23、(ix)24、(x)25、または(xi)26ヌクレオチドのターゲティングドメインを有する;ならびに
c)(i)近位および尾部ドメインが、まとめると、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、もしくは53ヌクレオチド、例えば、天然に存在する化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、黄色ブドウ球菌、もしくは髄膜炎菌の尾部および近位ドメイン由来の少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、もしくは53ヌクレオチド、またはそれらとは1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10ヌクレオチド以下が異なる配列を含む;
(ii)第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドに対して3'に、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、もしくは53ヌクレオチド、例えば、天然に存在する化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、黄色ブドウ球菌、もしくは髄膜炎菌のgRNAの対応する配列由来の少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、もしくは53ヌクレオチド、またはそれらとは1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10ヌクレオチド以下が異なる配列が存在する;
(iii)第1の相補性ドメインのその対応するヌクレオチドに相補的である第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドに対して3'に、少なくとも16、19、21、26、31、32、36、41、46、50、51、もしくは54ヌクレオチド、例えば、天然に存在する化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、黄色ブドウ球菌、もしくは髄膜炎菌のgRNAの対応する配列由来の少なくとも16、19、21、26、31、32、36、41、46、50、51、もしくは54ヌクレオチド、またはそれらとは1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10ヌクレオチド以下が異なる配列が存在する;
(iv)尾部ドメインが、少なくとも10、15、20、25、30、35、または40ヌクレオチドの長さであり、例えば、天然に存在する化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、黄色ブドウ球菌、もしくは髄膜炎菌の尾部ドメイン由来の少なくとも10、15、20、25、30、35、もしくは40ヌクレオチド、またはそれらとは1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10ヌクレオチド以下が異なる配列を含む;あるいは
(v)尾部ドメインが、天然に存在する尾部ドメイン、例えば、天然に存在する化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、黄色ブドウ球菌、または髄膜炎菌の尾部ドメインの対応する一部分の15、20、25、30、35、40ヌクレオチド、またはすべてを含む。
【0207】
いくつかの態様において、gRNAは、aおよびb(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、aおよびb(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、aおよびb(iii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、aおよびb(iv)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、aおよびb(v)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、aおよびb(vi)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、aおよびb(vii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、aおよびb(viii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、aおよびb(ix)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、aおよびb(x)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、aおよびb(xi)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、aおよびcの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a、b、およびcの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(i)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(i)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(ii)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(ii)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(iii)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(iii)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(iv)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(iv)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(v)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(v)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(vi)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(vi)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(vii)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(vii)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(viii)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(viii)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(ix)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(ix)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(x)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(x)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(xi)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(xi)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。
【0208】
いくつかの態様において、gRNA、例えばキメラgRNAは、以下の特性の1つまたは複数を含むように構成される;
a)例えば、一本鎖切断を作るCas9分子をターゲティングする時、gRNAの一方または両方が、一本鎖切断を(i)標的位置の50、100、150、200、250、300、350、400、450、もしくは500ヌクレオチド、または(ii)標的位置が末端切除の領域内であるように十分近く、以内に位置づけることができる;
b)一方または両方が、少なくとも16ヌクレオチドのターゲティングドメイン、例えば、(i)16、(ii)17、(iii)18、(iv)19、(v)20、(vi)21、(vii)22、(viii)23、(ix)24、(x)25、または(xi)26ヌクレオチドのターゲティングドメインを有する;ならびに
c)(i)近位および尾部ドメインが、まとめると、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、もしくは53ヌクレオチド、例えば、天然に存在する化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、黄色ブドウ球菌、もしくは髄膜炎菌の尾部および近位ドメイン由来の少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、もしくは53ヌクレオチド、またはそれらとは1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10ヌクレオチド以下が異なる配列を含む;
(ii)第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドに対して3'に、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、もしくは53ヌクレオチド、例えば、天然に存在する化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、黄色ブドウ球菌、もしくは髄膜炎菌のgRNAの対応する配列由来の少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、もしくは53ヌクレオチド、またはそれらとは1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10ヌクレオチド以下が異なる配列が存在する;
(iii)第1の相補性ドメインのその対応するヌクレオチドに相補的である第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドに対して3'に、少なくとも16、19、21、26、31、32、36、41、46、50、51、もしくは54ヌクレオチド、例えば、天然に存在する化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、黄色ブドウ球菌、もしくは髄膜炎菌のgRNAの対応する配列由来の少なくとも16、19、21、26、31、32、36、41、46、50、51、もしくは54ヌクレオチド、またはそれらとは1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10ヌクレオチド以下が異なる配列が存在する;
(iv)尾部ドメインが、少なくとも10、15、20、25、30、35、または40ヌクレオチドの長さであり、例えば、天然に存在する化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、黄色ブドウ球菌、もしくは髄膜炎菌の尾部ドメイン由来の少なくとも10、15、20、25、30、35、もしくは40ヌクレオチド、またはそれらとは1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10ヌクレオチド以下が異なる配列を含む;あるいは
(v)尾部ドメインが、天然に存在する尾部ドメイン、例えば、天然に存在する化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、黄色ブドウ球菌、または髄膜炎菌の尾部ドメインの対応する一部分の15、20、25、30、35、40ヌクレオチド、またはすべてを含む。
【0209】
いくつかの態様において、gRNAは、aおよびb(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、aおよびb(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、aおよびb(iii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、aおよびb(iv)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、aおよびb(v)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、aおよびb(vi)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、aおよびb(vii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、aおよびb(viii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、aおよびb(ix)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、aおよびb(x)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、aおよびb(xi)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、aおよびcの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a、b、およびcの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(i)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(i)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(ii)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(ii)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(iii)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(iii)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(iv)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(iv)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(v)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(v)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(vi)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(vi)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様でにおいて、gRNAは、a(i)、b(vii)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(vii)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(viii)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(viii)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(ix)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(ix)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(x)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(x)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(xi)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(xi)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。
【0210】
いくつかの態様において、gRNAは、HNH活性を有するCas9ニッカーゼ分子、例えば、不活性化されたRuvC活性を有するCas9分子、例えば、D10での変異、例えばD10A変異を有するCas9分子と共に用いられる。
【0211】
いくつかの態様において、gRNAは、RuvC活性を有するCas9ニッカーゼ分子、例えば、不活性化されたHNH活性を有するCas9分子、例えば、H840での変異、例えばH840Aを有するCas9分子と共に用いられる。
【0212】
いくつかの態様において、第1および第2のgRNAを含むgRNAのペア、例えばキメラgRNAのペアは、以下の特性の1つまたは複数を含むように構成される;
a)例えば、一本鎖切断を作るCas9分子をターゲティングする時、gRNAの一方または複数が、一本鎖切断を(i)標的位置の50、100、150、200、250、300、350、400、450、もしくは500ヌクレオチド、または(ii)標的位置が末端切除の領域内であるように十分近く、以内に位置づけることができる;
b)一方または両方が、少なくとも16ヌクレオチドのターゲティングドメイン、例えば、(i)16、(ii)17、(iii)18、(iv)19、(v)20、(vi)21、(vii)22、(viii)23、(ix)24、(x)25、または(xi)26ヌクレオチドのターゲティングドメインを有する;
c)一方または両方について:
(i)近位および尾部ドメインが、まとめると、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、もしくは53ヌクレオチド、例えば、天然に存在する化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、黄色ブドウ球菌、もしくは髄膜炎菌の尾部および近位ドメイン由来の少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、もしくは53ヌクレオチド、またはそれらとは1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10ヌクレオチド以下が異なる配列を含む;
(ii)第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドに対して3'に、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、もしくは53ヌクレオチド、例えば、天然に存在する化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、黄色ブドウ球菌、もしくは髄膜炎菌のgRNAの対応する配列由来の少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、もしくは53ヌクレオチド、またはそれらとは1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10ヌクレオチド以下が異なる配列が存在する;
(iii)第1の相補性ドメインのその対応するヌクレオチドに相補的である第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドに対して3'に、少なくとも16、19、21、26、31、32、36、41、46、50、51、もしくは54ヌクレオチド、例えば、天然に存在する化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、黄色ブドウ球菌、もしくは髄膜炎菌のgRNAの対応する配列由来の少なくとも16、19、21、26、31、32、36、41、46、50、51、もしくは54ヌクレオチド、またはそれらとは1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10ヌクレオチド以下が異なる配列が存在する;
(iv)尾部ドメインが、少なくとも10、15、20、25、30、35、または40ヌクレオチドの長さであり、例えば、天然に存在する化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、黄色ブドウ球菌、もしくは髄膜炎菌の尾部ドメイン由来の少なくとも10、15、20、25、30、35、もしくは40ヌクレオチド、またはそれらとは1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10ヌクレオチド以下が異なる配列を含む;あるいは
(v)尾部ドメインが、天然に存在する尾部ドメイン、例えば、天然に存在する化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、黄色ブドウ球菌、または髄膜炎菌の尾部ドメインの対応する一部分の15、20、25、30、35、40ヌクレオチド、またはすべてを含む;
d)gRNAが、標的核酸にハイブリダイズした時に、0~50、0~100、0~200、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、または少なくとも50ヌクレオチドによって分離されるように構成される;
e)第1のgRNAおよび第2のgRNAによって作られる切断が、異なる鎖上にある;ならびに
f)PAMが外側を向いている。
【0213】
いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、aおよびb(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、aおよびb(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、aおよびb(iii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、aおよびb(iv)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、aおよびb(v)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、aおよびb(vi)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、aおよびb(vii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、aおよびb(viii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、aおよびb(ix)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、aおよびb(x)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、aおよびb(xi)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、aおよびcの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a、b、およびcの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(i)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(i)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(i)、c、およびdの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(i)、c、およびeの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(i)、c、d、およびeの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(ii)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(ii)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(ii)、c、およびdの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(ii)、c、およびeの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(ii)、c、d、およびeの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(iii)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(iii)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(iii)、c、およびdの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(iii)、c、およびeの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(iii)、c、d、およびeの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(iv)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(iv)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(iv)、c、およびdの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(iv)、c、およびeの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(iv)、c、d、およびeの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(v)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(v)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(v)、c、およびdの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(v)、c、およびeの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(v)、c、d、およびeの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(vi)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(vi)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(vi)、c、およびdの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(vi)、c、およびeの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(vi)、c、d、およびeの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(vii)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(vii)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(vii)、c、およびdの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(vii)、c、およびeの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(vii)、c、d、およびeの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(viii)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(viii)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(viii)、c、およびdの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(viii)、c、およびeの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(viii)、c、d、およびeの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(ix)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(ix)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(ix)、c、およびdの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(ix)、c、およびeの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(ix)、c、d、およびeの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(x)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(x)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(x)、c、およびdの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(x)、c、およびeの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(x)、c、d、およびeの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(xi)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(xi)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(xi)、c、およびdの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(xi)、c、およびeの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(xi)、c、d、およびeの特性を含むように構成される。
【0214】
いくつかの態様において、gRNAは、HNH活性を有するCas9ニッカーゼ分子、例えば、不活性化されたRuvC活性を有するCas9分子、例えば、D10での変異、例えばD10A変異を有するCas9分子と共に用いられる。
【0215】
いくつかの態様において、gRNAは、RuvC活性を有するCas9ニッカーゼ分子、例えば、不活性化されたHNH活性を有するCas9分子、例えば、H840での変異、例えばH840Aを有するCas9分子と共に用いられる。いくつかの態様において、gRNAは、RuvC活性を有するCas9ニッカーゼ分子、例えば、不活性化されたHNH活性を有するCas9分子、例えば、N863での変異、例えばN863Aを有するCas9分子と共に用いられる。
【0216】
(j) 例示的モジュラーgRNA
いくつかの態様では、モジュラーgRNAは第1および第2の鎖を含む。第1の鎖は、好ましくは5'から3'に、例えば、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、または26ヌクレオチドを含むターゲティングドメイン;第1の相補性ドメインを含む。第2の鎖は、好ましくは5'から3'に、任意で5'延長ドメイン;第2の相補性ドメイン;近位ドメイン;および尾部ドメイン含み、(a)近位および尾部ドメインは、まとめると、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、もしくは53ヌクレオチドを含み;(b)第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドに対して3'に、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、もしくは53ヌクレオチドが存在し;または(c)その対応する第1の相補性ドメインのヌクレオチドに相補的である第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドに対して3'に、少なくとも16、19、21、26、31、32、36、41、46、50、51、もしくは54ヌクレオチドが存在する。
【0217】
いくつかの態様では、(a)、(b)、または(c)からの配列は、天然に存在するgRNAの対応する配列と、または本明細書において記載されるgRNAと、少なくとも60、75、80、85、90、95、または99%の相同性を有する。いくつかの態様では、近位および尾部ドメインは、まとめると、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、または53ヌクレオチドを含む。いくつかの態様では、第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドに対して3'に、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、または53ヌクレオチドが存在する。
【0218】
いくつかの態様では、その対応する第1の相補性ドメインのヌクレオチドに相補的である第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドに対して3'に、少なくとも16、19、21、26、31、32、36、41、46、50、51、または54ヌクレオチドが存在する。
【0219】
いくつかの態様では、ターゲティングドメインは、標的ドメインと相補性を有する16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、または26ヌクレオチド(例えば、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、または26個の連続したヌクレオチド)を有するか、または該ヌクレオチドからなり、例えば、ターゲティングドメインは、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、または26ヌクレオチドの長さである。
【0220】
(k) gRNAを設計するための方法
ターゲティングドメインを選択する、設計する、および検証するための方法を含めて、gRNAを設計するための方法が本明細書において記載される。例示的ターゲティングドメインも本明細書において提供される。本明細書において論じられるターゲティングドメインは、本明細書において記載されるgRNA中に組み込むことができる。
【0221】
標的配列の選択および検証ならびにオフターゲット解析のための方法は、例えば、Mali et al., 2013 Science 339(6121): 823-826;Hsu et al. Nat Biotechnol, 31(9): 827-32;Fu et al., 2014 Nat Biotechnol, doi: 10.1038/nbt.2808. PubMed PMID: 24463574;Heigwer et al., 2014 Nat Methods 11(2):122-3. doi: 10.1038/nmeth.2812. PubMed PMID: 24481216;Bae et al., 2014 Bioinformatics PubMed PMID: 24463181;Xiao A et al., 2014 Bioinformatics PubMed PMID: 24389662に記載されている。
【0222】
いくつかの態様では、使用者の標的配列内のgRNAの選択を最適化するために、例えば、ゲノム全体にわたる全オフターゲット活性を最小化するために、ソフトウェアツールを使用することができる。オフターゲット活性は開裂以外でもよい。例えば、化膿性連鎖球菌のCas9を使用する、考えられる各gRNA選択のために、ソフトウェアツールによって、ある特定の数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10)までのミスマッチ塩基対を含む全ての潜在的なオフターゲット配列(NAGまたはNGG PAMのいずれかに先行する)をゲノム全体にわたって特定することができる。各オフターゲット配列における開裂効率は、例えば実験的に得られた重み付け(weighting)スキームを使用して、予測することができる。次いで、その全予測オフターゲット開裂に従って、考えられる各gRNAをランク付けすることができ;トップにランク付けされたgRNAは、最大のオンターゲットおよび最小のオフターゲット開裂を有する可能性があるものに相当する。他の機能、例えば、gRNAベクター構築のための自動化された試薬設計、オンターゲットSurveyorアッセイのためのプライマー設計、および次世代シーケンシングを介したオフターゲット開裂のハイスループットな検出および定量化のためのプライマー設計もツールに含まれ得る。候補gRNA分子は、技術分野で公知の方法によって、または本明細書において記載されるように、評価することができる。
【0223】
いくつかの態様では、化膿性連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、および髄膜炎菌のCas9とともに使用するためのgRNAは、DNA配列検索アルゴリズムを使用して、例えば、公的なツールcas-offinder(Bae et al. Bioinformatics. 2014;30(10): 1473-1475)に基づくカスタムgRNA設計ソフトウェアを使用して、特定される。カスタムgRNA設計ソフトウェアは、ガイドのゲノムワイドなオフターゲット傾向を計算した後に、ガイドをスコア化する。典型的には、完全なマッチから7ミスマッチに及ぶマッチが、17~24の長さにわたるガイドについて考慮される。いくつかの局面では、一旦オフターゲット部位が計算的に決定されると、総スコアが各ガイドについて計算され、webインタフェースを使用して表形式出力にまとめられる。PAM配列に隣接する潜在的なgRNA部位の特定に加えて、ソフトウェアは、選択されたgRNA部位と1つ、2つ、3つ、またはそれ以上のヌクレオチドが異なる、全てのPAM隣接配列を特定することもできる。いくつかの態様では、各遺伝子に対するゲノムDNA配列がUCSC Genome browserから得られ、公的に利用可能なRepeatMaskerプログラムを使用して、反復エレメントについて配列をスクリーニングすることができる。RepeatMaskerは、反復エレメントおよび低複雑度領域について入力DNA配列を検索する。出力は、所与のクエリ配列中に存在する反復の詳細なアノテーションである。
【0224】
特定した後、標的部位へのそれらの距離、それらの直交性、および5'Gの存在の1つまたは複数に基づいて、gRNAを階層にランク付けすることができる(関連するPAM、例えば、化膿性連鎖球菌の場合はNGG PAM、黄色ブドウ球菌の場合はNNGRR(例えば、NNGRRTまたはNNGRRV)PAM、および髄膜炎菌の場合はNNNNGATTまたはNNNNGCTT PAMを含むヒトゲノムにおける厳密なマッチの特定に基づく)。直交性は、標的配列に対して最小数のミスマッチを含む、ヒトゲノム中の配列の数を指す。「高レベルの直交性」または「良好な直交性」は、例えば、意図された標的を除いて、ヒトゲノム中に同一の配列を有さず、標的配列中に1つまたは2つのミスマッチを含むいかなる配列も有さない、20-merのターゲティングドメインを指すことができる。良好な直交性を有するターゲティングドメインは、オフターゲットDNA開裂を最小化するために選択される。これは非限定例であること、ならびに化膿性連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、および髄膜炎菌または他のCas9酵素とともに使用するためのgRNAを特定するために、様々なストラテジーを利用することができることを理解されたい。
【0225】
いくつかの態様では、化膿性連鎖球菌のCas9とともに使用するためのgRNAは、公的に利用可能なwebベースのZiFiTサーバー(Fu et al., Improving CRISPR-Cas nuclease specificity using truncated guide RNAs. Nat Biotechnol. 2014 Jan 26. doi: 10.1038/nbt.2808. PubMed PMID: 24463574。元の参考文献については、Sander et al., 2007, NAR 35:W599-605;Sander et al., 2010, NAR 38: W462-8を参照されたい)を使用して特定することができる。PAM配列に隣接する潜在的なgRNA部位の特定に加えて、該ソフトウェアは、選択されたgRNA部位と1つ、2つ、3つ、またはそれ以上のヌクレオチドが異なる全てのPAM隣接配列も特定する。いくつかの局面では、各遺伝子に対するゲノムDNA配列は、UCSC Genome browserから得ることができ、公的に利用可能なRepeat-Maskerプログラムを使用して、反復エレメントについて配列をスクリーニングすることができる。RepeatMaskerは、反復エレメントおよび低複雑度の領域について入力DNA配列を検索する。出力は、所与のクエリ配列中に存在する反復の詳細なアノテーションである。
【0226】
特定した後、化膿性連鎖球菌のCas9とともに使用するためのgRNAを階層、例えば5階層にランク付けすることができる。いくつかの態様では、第1の階層のgRNA分子のためのターゲティングドメインは、標的部位へのそれらの距離、それらの直交性、および5'Gの存在に基づいて選択される(NGG PAMを含むヒトゲノムにおける厳密なマッチのZiFiT特定に基づく)。いくつかの態様では、標的に対して、17-merと20-merの両方のgRNAが設計される。いくつかの局面では、gRNAは、単一gRNAヌクレアーゼ切断と二重gRNAニッカーゼストラテジーの両方についても選択される。gRNAを選択するための判断基準およびどのgRNAをどのストラテジーに使用することができるかについての決定は、いくつかの考慮すべき事柄に基づき得る。いくつかの態様では、単一gRNAヌクレアーゼ開裂と二重gRNA対形成「ニッカーゼ」ストラテジーの両方のためのgRNAが特定される。二重gRNA対形成「ニッカーゼ」ストラテジーにどのgRNAを使用することができるかについての決定を含めて、gRNAを選択するためのいくつかの態様では、gRNA対は、PAMが外側を向き、D10A Cas9ニッカーゼによる切断が5'突出をもたらすと考えられるように、DNA上に配向されるべきである。いくつかの局面では、二重ニッカーゼ対による開裂は、合理的な頻度で介在配列の全体の欠失をもたらすであろうことが想定され得る。しかし、二重ニッカーゼ対による開裂はまた、gRNAの1つのみの部位にしばしばインデル変異をもたらし得る。単に1つのgRNAの部位でインデル変異を引き起こすことと比較して、どれだけ効率的に全配列を除去するかについて、候補対メンバーを試験することができる。
【0227】
いくつかの態様では、第1の階層のgRNA分子のためのターゲティングドメインは、(1)標的場所への合理的な距離、例えば、開始コドンの下流のコード配列の最初の500bp以内、(2)高レベルの直交性、および(3)5'Gの存在に基づいて選択することができる。いくつかの態様では、第2の階層のgRNAの選択について、5'Gの要件を除去することができるが、距離制限が必要とされ、高レベルの直交性が必要とされた。いくつかの態様では、第3の階層の選択は、同じ距離制限および5'Gの要件を使用するが、良好な直交性の要件を除去する。いくつかの態様では、第4階層の選択は、同じ距離制限を使用するが、良好な直交性と5'Gからの開始の要件を除去する。いくつかの態様では、第5の階層の選択は、良好な直交性と5'Gの要件を除去し、より長い配列(例えば、残りのコード配列、例えば、転写標的部位に対してさらに500bp上流または下流)がスキャンされる。特定の場合では、gRNAは特定の階層の判断基準に基づいて特定されない。
【0228】
いくつかの態様では、gRNAは、単一gRNAヌクレアーゼ開裂のために、および二重gRNA対形成「ニッカーゼ」ストラテジーのために特定される。
【0229】
いくつかの局面では、髄膜炎菌および黄色ブドウ球菌のCas9とともに使用するためのgRNAは、PAM配列の存在についてゲノムDNA配列をスキャンすることによって、手動で特定することができる。これらのgRNAは2つの階層に分離され得る。いくつかの態様では、第1の階層のgRNAについて、ターゲティングドメインは、開始コドンの下流のコード配列の最初の500bp以内で選択される。いくつかの態様では、第2の階層のgRNAについて、ターゲティングドメインは、残りのコード配列(最初の500bpの下流)内で選択される。特定の場合では、gRNAは特定の階層の判断基準に基づいて特定されない。
【0230】
いくつかの態様では、化膿性連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、および髄膜炎菌のCas9とともに使用するためのガイドRNA(gRNA)を特定するための別のストラテジーは、DNA配列検索アルゴリズムを使用することができる。いくつかの局面では、ガイドRNAの設計は、公的なツールcas-offinder(Bae et al. Bioinformatics. 2014;30(10): 1473-1475)に基づくカスタムガイドRNA設計ソフトウェアを使用して行われる。該カスタムガイドRNA設計ソフトウェアは、ガイドのゲノムワイドなオフターゲット傾向を計算した後に、ガイドをスコア化する。典型的には、完全なマッチから7ミスマッチに及ぶマッチが、17~24の長さにわたるガイドについて考慮される。一旦オフターゲット部位が計算的に決定されると、総スコアが各ガイドについて計算され、webインタフェースを使用して表形式出力にまとめられる。PAM配列に隣接する潜在的なgRNA部位の特定に加えて、ソフトウェアは、選択されたgRNA部位と1つ、2つ、3つ、またはそれ以上のヌクレオチドが異なる全てのPAM隣接配列も特定する。いくつかの態様では、各遺伝子に対するゲノムDNA配列がUCSC Genome browserから得られ、公的に利用可能なRepeatMaskerプログラムを使用して、反復エレメントについて配列がスクリーニングされる。RepeatMaskerは、反復エレメントおよび低複雑度の領域について入力DNA配列を検索する。出力は、所与のクエリ配列中に存在する反復の詳細なアノテーションである。
【0231】
いくつかの態様では、特定した後、gRNAは、標的部位へのそれらの距離またはそれらの直交性に基づいて、階層にランク付けされる(関連するPAM、例えば、化膿性連鎖球菌の場合はNGG PAM、黄色ブドウ球菌の場合はNNGRR(例えば、NNGRRTまたはNNGRRV)PAM、および髄膜炎菌の場合はNNNNGATTまたはNNNNGCTT PAMを含むヒトゲノムにおける厳密なマッチの特定に基づく)。いくつかの局面では、良好な直交性を有するターゲティングドメインは、オフターゲットDNA開裂を最小化するために選択される。
【0232】
一例として、化膿性連鎖球菌および髄膜炎菌の標的について、17-merまたは20-merのgRNAを設計することができる。別の例として、黄色ブドウ球菌の標的について、18-mer、19-mer、20-mer、21-mer、22-mer、23-mer、および24-merのgRNAを設計することができる。
【0233】
いくつかの態様では、単一gRNAヌクレアーゼ開裂と二重gRNA対形成「ニッカーゼ」ストラテジーの両方のためのgRNAが特定される。二重gRNA対形成「ニッカーゼ」ストラテジーにどのgRNAを使用することができるかについての決定を含めて、gRNAを選択するためにいくつかの態様では、gRNA対は、PAMが外側を向き、D10A Cas9ニッカーゼによる切断が5'突出をもたらすと考えられるように、DNA上に配向されるべきである。いくつかの局面では、二重ニッカーゼ対による開裂が、合理的な頻度で介在配列の全体の欠失をもたらすであろうことが想定され得る。しかし、二重ニッカーゼ対による開裂はまた、gRNAの1つのみの部位にしばしばインデル変異をもたらし得る。単に1つのgRNAの部位でインデル変異を引き起こすことと比較して、どれだけ効率的に全配列を除去するかについて、候補対メンバーを試験することができる。
【0234】
遺伝子破壊のためのストラテジーを設計するために、いくつかの態様では、化膿性連鎖球菌に対する階層1のgRNA分子についてのターゲティングドメインは、標的部位へのそれらの距離およびそれらの直交性に基づいて選択される(PAMはNGGである)。場合によっては、階層1のgRNA分子についてのターゲティングドメインは、(1)標的場所への合理的な距離、例えば、開始コドンの下流のコード配列の最初の500bp以内、および(2)高レベルの直交性に基づいて選択される。いくつかの局面では、階層2のgRNAの選択について、高レベルの直交性は必要とされない。場合によっては、階層3のgRNAは、良好な直交性の要件を除去し、より長い配列(例えば、残りのコード配列)がスキャンされ得る。特定の場合では、gRNAは特定の階層の判断基準に基づいて特定されない。
【0235】
遺伝子破壊のためのストラテジーを設計するために、いくつかの態様では、髄膜炎菌に対する階層1のgRNA分子についてのターゲティングドメインは、コード配列の最初の500bp以内で選択され、高レベルの直交性を有していた。髄膜炎菌に対する階層2のgRNA分子についてのターゲティングドメインは、コード配列の最初の500bp以内で選択され、高い直交性を必要としなかった。髄膜炎菌に対する階層3のgRNA分子についてのターゲティングドメインは、該500bpの下流のコード配列の残りの部分内で選択された。階層が非包括的である(各gRNAは、一度だけ列挙される)ことに留意されたい。特定の場合では、gRNAは特定の階層の判断基準に基づいて特定されなかった。
【0236】
遺伝子破壊のためのストラテジーを設計するために、いくつかの態様では、黄色ブドウ球菌に対する階層1のgRNA分子についてのターゲティングドメインは、コード配列の最初の500bp以内で選択され、高レベルの直交性を有し、NNGRRT PAMを含む。いくつかの態様では、黄色ブドウ球菌に対する階層2のgRNA分子についてのターゲティングドメインは、コード配列の最初の500bp以内で選択され、直交性のレベルは必要とされず、NNGRRT PAMを含む。いくつかの態様では、黄色ブドウ球菌に対する階層3のgRNA分子についてのターゲティングドメインは、下流のコード配列の残りの部分内で選択され、NNGRRT PAMを含む。いくつかの態様では、黄色ブドウ球菌に対する階層4のgRNA分子についてのターゲティングドメインは、コード配列の最初の500bp以内で選択され、NNGRRV PAMを含む。いくつかの態様では、黄色ブドウ球菌に対する階層5のgRNA分子についてのターゲティングドメインは、下流のコード配列の残りの部分内で選択され、NNGRRV PAMを含む。特定の場合では、gRNAは特定の階層の判断基準に基づいて特定されない。
【0237】
(ii) Cas9
本明細書において記載される方法および組成物において、様々な種のCas9分子を使用することができる。化膿性連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、髄膜炎菌、およびS.サーモフィラスのCas9分子が本明細書の開示の多くの対象であるが、本明細書において列挙される他の種のCas9タンパク質のCas9分子、該Cas9タンパク質に由来するCas9分子、該Cas9タンパク質に基づいたCas9分子も同様に使用することができる。換言すれば、本明細書における説明の多くは、化膿性連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、髄膜炎菌、およびS.サーモフィラスのCas9分子を使用するが、他の種由来のCas9分子は、それらに取って代わることができる。そのような種としては、以下が挙げられる:アシドボラクス・アベナエ(Acidovorax avenae)、アクチノバチルス・プルロニューモニア(Actinobacillus pleuropneumoniae)、アクチノバチルス・サクシノゲネス(Actinobacillus succinogenes)、アクチノバチルス・スイス(Actinobacillus suis)、アクチノミセス属種(Actinomyces sp.)、シクリフィルスデニトリフィカンス(Cycliphilusdenitrificans)、アミノモナス・パウシボランス(Aminomonas paucivorans)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、バチルス・スミシイ(Bacillus smithii)、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)、バクテロイデス属種(Bacteroides sp.)、ブラストピレルラ・マリナ(Blastopirellula marina)、ブラディリゾビウム属種(Bradyrhizobium sp.)、ブレビバチルス・ラテロスポラス(Brevibacillus laterosporus)、カンピロバクター・コリ(Campylobacter coli)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、カンピロバクター・ラリ(Campylobacter lari)、カンジダツス・プニセイスピリルム(Candidatus puniceispirillum)、クロストリジウム・セルロリティカム(Clostridium cellulolyticum)、クロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringens)、コリネバクテリウム・アクコレンス(Corynebacterium accolens)、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheria)、コリネバクテリウム・マツルショッティ(Corynebacterium matruchotii)、ディノロセオバクター・シバエ(Dinoroseobacter shibae)、ユーバクテリウム・ドリクム(Eubacterium dolichum)、ガンマプロテオ細菌(Gammaproteobacterium)、グルコンアセトバクター・ジアゾトロフィクス(Gluconacetobacter diazotrophicus)、ヘモフィルス・パラインフルエンザ(Haemophilus parainfluenzae)、ヘモフィルス・スプトルム(Haemophilus sputorum)、ヘリコバクター・カナデンシス(Helicobacter canadensis)、ヘリコバクター・シネディ(Helicobacter cinaedi)、ヘリコバクター・ムステラエ(Helicobacter mustelae)、イリオバクター・ポリトロパス(Ilyobacter polytropus)、キンゲラ・キンゲ(Kingella kingae)、ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)、リステリア・イバノビイ(Listeria ivanovii)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、リステリア科細菌(Listeriaceae bacterium)、メチロシスティス属種(Methylocystis sp.)、メチロサイナス・トリコスポリウム(Methylosinus trichosporium)、モビルンカス・ムリエリス(Mobiluncus mulieris)、ナイセリア・バシリフォルミス(Neisseria bacilliformis)、ナイセリア・シネレア(Neisseria cinerea)、ナイセリア・フラベッセンス(Neisseria flavescens)、ナイセリア・ラクタミカ(Neisseria lactamica)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、ナイセリア属種(Neisseria sp.)、ナイセリア・ワズワーシイ(Neisseria wadsworthii)、ニトロソモナス属種(Nitrosomonas sp.)、パルビバクラム・ラバメンチボランス(Parvibaculum lavamentivorans)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、ファスコラルクトバクテリウム・スクシナツテンス(Phascolarctobacterium succinatutens)、ラルストニア・シジジイ(Ralstonia syzygii)、ロドシュードモナス・パルストリス(Rhodopseudomonas palustris)、ロドブラム属種(Rhodovulum sp.)、シモンシエラ・ムエレリ(Simonsiella muelleri)、スフィンゴモナス属種(Sphingomonas sp.)、スポロラクトバチルス・ビネエ(Sporolactobacillus vineae)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・ルグドゥネンシス(Staphylococcus lugdunensis)、ストレプトコッカス属種(Streptococcus sp.)、サブドリグラヌルム属種(Subdoligranulum sp.)、ティストレラ・モビリス(Tistrella mobilis)、トレポネーマ属種(Treponema sp.)、またはベルミネフォロバクター・エイセニエ(Verminephrobacter eiseniae)。Cas9分子の例としては、例えば、WO2015/161276、WO2017/193107、WO2017/093969、US2016/272999、およびUS2015/056705に記載されているものを挙げることができる。
【0238】
Cas9分子またはCas9ポリペプチドは、この用語が本明細書において使用される場合、gRNA分子と相互作用することができ、gRNA分子と協調して、標的ドメインおよびPAM配列を含む部位に向かうかまたは局在化する、分子またはポリペプチドを指す。Cas9分子およびCas9ポリペプチドは、これらの用語が本明細書において使用される場合、天然に存在するCas9分子、および参照配列、例えば、最も類似した天然に存在するCas9分子と少なくとも1つのアミノ酸残基が異なる、操作された、変更された、または改変されたCas9分子またはCas9ポリペプチドを指す。
【0239】
2つの異なる天然に存在する細菌性Cas9分子(Jinek et al., Science, 343(6176):1247997, 2014)について、およびガイドRNA(例えば、crRNAとtracrRNAの合成的融合体)を有する化膿性連鎖球菌Cas9(Nishimasu et al., Cell, 156:935-949, 2014;およびAnders et al., Nature, 2014, doi: 10.1038/nature13579)について、結晶構造が決定されている。
【0240】
天然に存在するCas9分子は、2つのローブ:認識(REC)ローブおよびヌクレアーゼ(NUC)ローブを含み;これらのそれぞれは、本明細書において記載されるドメインをさらに含む。一次構造における重要なCas9ドメインの構成の例示的概略図は、WO2015/161276に、例えばその中の図8A~8Bに記載されている。本開示全体にわたって使用される、ドメインの命名法および各ドメインに含まれるアミノ酸残基の番号付けは、Nishimasuらに記載されている通りである。アミノ酸残基の番号付けは、化膿性連鎖球菌のCas9に関してである。
【0241】
RECローブはアルギニンに富むブリッジヘリックス(BH)、REC1ドメイン、およびREC2ドメインを含む。RECローブは、他の公知のタンパク質と構造的類似性を有さず、これは、RECローブがCas9特異的機能ドメインであることを示す。BHドメインは、長いα-ヘリックスであり、アルギニンに富む領域であり、化膿性連鎖球菌のCas9の配列のアミノ酸60~93を含む。REC1ドメインは、例えばgRNAまたはtracrRNAの反復:抗反復二本鎖の認識に重要であり、したがって、標的配列を認識することによるCas9活性に重要である。REC1ドメインは、化膿性連鎖球菌のCas9の配列のアミノ酸94~179および308~717に2つのREC1モチーフを含む。これら2つのREC1ドメインは、直線一次構造においてREC2ドメインによって分離されているが、三次構造においてアセンブルして、REC1ドメインを形成する。REC2ドメイン、またはその一部も、反復:抗反復二本鎖の認識において役割を果たし得る。REC2ドメインは、化膿性連鎖球菌のCas9の配列のアミノ酸180~307を含む。
【0242】
NUCローブは、RuvCドメイン(本明細書において、RuvC様ドメインとも称される)、HNHドメイン(本明細書において、HNH様ドメインとも称される)、およびPAM相互作用(PI)ドメインを含む。RuvCドメインは、レトロウイルスのインテグラーゼスーパーファミリーのメンバーと構造的類似性を有し、一本鎖、例えば、標的核酸分子の非相補鎖を開裂させる。RuvCドメインは、化膿性連鎖球菌のCas9の配列のそれぞれアミノ酸1~59、718~769、および909~1098にある3つの分割されたRuvCモチーフ(RuvC I、RuvC II、およびRuvC III。これらは、一般に、RuvC Iドメイン、またはN末端RuvCドメイン、RuvC IIドメイン、およびRuvC IIIドメインと称されることが多い)からアセンブルされる。REC1ドメインと同様に、3つのRuvCモチーフは、一次構造において他のドメインによって直線的に分離されるが、三次構造では、3つのRuvCモチーフがアセンブルし、RuvCドメインを形成する。HNHドメインは、HNHエンドヌクレアーゼと構造的類似性を有し、一本鎖、例えば、標的核酸分子の相補鎖を開裂させる。HNHドメインは、RuvC IIモチーフとRuvC IIIモチーフの間にあり、化膿性連鎖球菌のCas9の配列のアミノ酸775~908を含む。PIドメインは、標的核酸分子のPAMと相互作用し、化膿性連鎖球菌のCas9の配列のアミノ酸1099~1368を含む。
【0243】
(a) RuvC様ドメインおよびHNH様ドメイン
いくつかの態様では、Cas9分子またはCas9ポリペプチドは、HNH様ドメインおよびRuvC様ドメインを含む。いくつかの態様では、開裂活性はRuvC様ドメインおよびHNH様ドメインに依存している。Cas9分子またはCas9ポリペプチド、例えば、eaCas9分子またはeaCas9ポリペプチドは、以下のドメインの1つまたは複数を含むことができる:RuvC様ドメインおよびHNH様ドメイン。いくつかの態様では、Cas9分子またはCas9ポリペプチドは、eaCas9分子またはeaCas9ポリペプチドであり、eaCas9分子またはeaCas9ポリペプチドは、RuvC様ドメイン、例えば、本明細書において記載されるRuvC様ドメイン、および/またはHNH様ドメイン、例えば、本明細書において記載されるHNH様ドメインを含む。
【0244】
(b) RuvC様ドメイン
いくつかの態様では、RuvC様ドメインは、一本鎖、例えば、標的核酸分子の非相補鎖を開裂させる。Cas9分子またはCas9ポリペプチドは、1つより多いRuvC様ドメイン(例えば、1つ、2つ、3つ、またはそれ以上のRuvC様ドメイン)を含むことができる。いくつかの態様では、RuvC様ドメインは、少なくとも5、6、7、8アミノ酸の長さであるが、20、19、18、17、16、または15アミノ酸以下の長さである。いくつかの態様では、Cas9分子またはCas9ポリペプチドは、約10~20アミノ酸、例えば、約15アミノ酸の長さのN末端RuvC様ドメインを含む。
【0245】
(c) N末端RuvC様ドメイン
いくつかの天然に存在するCas9分子は1つより多いRuvC様ドメインを含み、開裂はN末端RuvC様ドメインに依存している。したがって、Cas9分子またはCas9ポリペプチドは、N末端RuvC様ドメインを含むことができる。
【0246】
態様では、N末端RuvC様ドメインは開裂能力がある。
【0247】
態様では、N末端RuvC様ドメインは開裂能力がない。
【0248】
いくつかの態様では、N末端RuvC様ドメインは、本明細書に、例えば、WO2015/161276に、例えばその中の図3A~3Bまたは図7A~7Bに開示されるN末端RuvC様ドメインの配列と1つ程度であるが、2つ、3つ、4つ、または5つ以下の残基が異なる。いくつかの態様では、WO2015/161276、例えばその中の図3A~3Bまたは図7A~7Bで特定される高度に保存された残基の1つ、2つ、または3つ全てが存在する。
【0249】
いくつかの態様では、N末端RuvC様ドメインは、本明細書に、例えば、WO2015/161276に、例えばその中の図4A~4Bまたは図7A~7Bに開示されるN末端RuvC様ドメインの配列と1つ程度であるが、2つ、3つ、4つ、または5つ以下の残基が異なる。いくつかの態様ではWO2015/161276で、例えばその中の図4A~4Bまたは図7A~7Bで特定される高度に保存された残基の、1つ、2つ、3つ、または4つ全てが存在する。
【0250】
(d) さらなるRuvC様ドメイン
N末端RuvC様ドメインに加えて、Cas9分子またはCas9ポリペプチド、例えば、eaCas9分子またはeaCas9ポリペプチドは、1つまたは複数のさらなるRuvC様ドメインを含むことができる。いくつかの態様では、Cas9分子またはCas9ポリペプチドは、2つのさらなるRuvC様ドメインを含むことができる。好ましくは、さらなるRuvC様ドメインは、少なくとも5アミノ酸の長さかつ例えば15アミノ酸未満の長さ、例えば5~10アミノ酸の長さ、例えば8アミノ酸の長さである。
【0251】
(e) HNH様ドメイン
いくつかの態様では、HNH様ドメインは、一本鎖の相補性ドメイン、例えば、二本鎖核酸分子の相補鎖を開裂させる。いくつかの態様では、HNH様ドメインは、少なくとも15、20、25アミノ酸の長さであるが、40、35、または30アミノ酸以下の長さ、例えば20~35アミノ酸の長さ、例えば25~30アミノ酸の長さである。例示的HNH様ドメインは本明細書において記載される。
【0252】
いくつかの態様では、HNH様ドメインは開裂能力がある。
【0253】
いくつかの態様では、HNH様ドメインは開裂能力がない。
【0254】
いくつかの態様では、HNH様ドメインは、本明細書に、例えば、WO2015/161276に、例えばその中の図5A~5Cまたは図7A~7Bに開示されるHNH様ドメインの配列と、1つ程度であるが、2つ、3つ、4つ、または5つ以下の残基が異なる。いくつかの態様では、WO2015/161276で、例えばその中の図5A~5Cまたは図7A~7Bで特定される高度に保存された残基の1つまたは両方が存在する。
【0255】
いくつかの態様では、HNH様ドメインは、本明細書に、例えば、WO2015/161276に、例えばその中の図6A~6Bまたは図7A~7Bに開示されるHNH様ドメインの配列と1つ程度であるが、2つ、3つ、4つ、または5つ以下の残基が異なる。いくつかの態様では、WO2015/161276で、例えばその中の図6A~6Bまたは図7A~7Bで特定される高度に保存された残基の1つ、2つ、3つ全てが存在する。
【0256】
(f) ヌクレアーゼおよびヘリカーゼ活性
いくつかの態様では、Cas9分子またはCas9ポリペプチドは、標的核酸分子を開裂させることができる。典型的には、野生型Cas9分子は、標的核酸分子の両鎖を開裂させる。ヌクレアーゼ開裂(または他の特性)を変更するように、例えば、ニッカーゼである、または標的核酸を開裂させる能力を欠く、Cas9分子またはCas9ポリペプチドをもたらすように、Cas9分子およびCas9ポリペプチドを操作することができる。標的核酸分子を開裂させることができるCas9分子またはCas9ポリペプチドは、eaCas9分子またはeaCas9ポリペプチドと本明細書において称される。
【0257】
いくつかの態様では、eaCas9分子またはeaCas9ポリペプチドは以下の活性の1つまたは複数を含む:ニッカーゼ活性、すなわち、核酸分子の一本鎖、例えば、非相補鎖または相補鎖を開裂させる能力;二本鎖ヌクレアーゼ活性、すなわち、二本鎖核酸の両鎖を開裂させ、二本鎖切断を作出する能力。これは、いくつかの態様では、2つのニッカーゼ活性が存在することである;エンドヌクレアーゼ活性;エキソヌクレアーゼ活性;およびヘリカーゼ活性、すなわち、二本鎖核酸のヘリックス構造をほどく能力。
【0258】
いくつかの態様では、酵素的に活性なまたはeaCas9分子またはeaCas9ポリペプチドは、両鎖を開裂させ、二本鎖切断をもたらす。いくつかの態様では、eaCas9分子は、片方の鎖、例えば、gRNAがハイブリダイズする鎖、またはgRNAがハイブリダイズする鎖に相補的な鎖のみを開裂させる。いくつかの態様では、eaCas9分子またはeaCas9ポリペプチドは、HNH様ドメインと関連する開裂活性を含む。いくつかの態様では、eaCas9分子またはeaCas9ポリペプチドは、N末端RuvC様ドメインと関連する開裂活性を含む。いくつかの態様では、eaCas9分子またはeaCas9ポリペプチドは、HNH様ドメインと関連する開裂活性およびN末端RuvC様ドメインと関連する開裂活性を含む。いくつかの態様では、eaCas9分子またはeaCas9ポリペプチドは、活性な、または開裂能力があるHNH様ドメイン、および不活性な、または開裂能力がないN末端RuvC様ドメインを含む。いくつかの態様では、eaCas9分子またはeaCas9ポリペプチドは、不活性な、または開裂能力がないHNH様ドメインおよび活性な、または開裂能力があるN末端RuvC様ドメインを含む。
【0259】
いくつかのCas9分子またはCas9ポリペプチドは、gRNA分子と相互作用し、gRNA分子とともにコア標的ドメインに局在化する能力を有するが、標的核酸を開裂させることができないか、または効率的な速度で開裂ことができない。開裂活性がない、または実質的な開裂活性がないCas9分子は、eiCas9分子またはeiCas9ポリペプチドと本明細書において称される。例えば、eiCas9分子またはeiCas9ポリペプチドは、本明細書において記載されるアッセイによって測定した場合に、開裂活性を欠く可能性があり、または実質的により少ない、例えば、参照Cas9分子もしくはeiCas9ポリペプチドの20、10、5、1、もしくは0.1%未満の開裂活性を有する可能性がある。
【0260】
(g) ターゲティングおよびPAM
Cas9分子またはCas9ポリペプチドは、ガイドRNA(gRNA)分子と相互作用することができ、gRNA分子と協調して、標的ドメインおよびPAM配列を含む部位に局在化するポリペプチドである。
【0261】
いくつかの態様では、eaCas9分子またはeaCas9ポリペプチドが標的核酸と相互作用し、標的核酸を開裂させる能力は、PAM配列依存的である。PAM配列は標的核酸中の配列である。いくつかの態様では、標的核酸の開裂は、PAM配列から上流で生じる。異なる細菌種由来のEaCas9分子が、異なる配列モチーフ(例えば、PAM配列)を認識することができる。いくつかの態様では、化膿性連鎖球菌のeaCas9分子は、配列モチーフNGG、NAG、NGAを認識し、その配列から1~10、例えば3~5塩基対上流で標的核酸配列の開裂を導く。例えば、Mali et al., Science 2013;339(6121): 823-826を参照されたい。いくつかの態様では、S.サーモフィラスのeaCas9分子は、配列モチーフNGGNGおよび/またはNNAGAAW(W=AもしくはT)を認識し、これらの配列から1~10、例えば3~5塩基対上流で標的核酸配列の開裂を導く。例えば、Horvath et al., Science 2010;327(5962):167-170、およびDeveau et al., J Bacteriol 2008;190(4): 1390-1400を参照されたい。いくつかの態様では、S.ミュータンス(S. mutans)のeaCas9分子は、配列モチーフNGGおよび/またはNAAR(R=AまたはG))を認識すし、この配列から上流のコア標的核酸配列の1~10、例えば3~5塩基対の開裂を導く。例えば、Deveau et al., J Bacteriol 2008;190(4): 1390-1400を参照されたい。いくつかの態様では、黄色ブドウ球菌のeaCas9分子は、配列モチーフNNGRR(R=AまたはG)を認識し、その配列から1~10、例えば3~5塩基対上流で標的核酸配列の開裂を導く。いくつかの態様では、黄色ブドウ球菌のeaCas9分子は、配列モチーフNNGRRT(R=AまたはG)を認識し、その配列から1~10、例えば3~5塩基対上流で標的核酸配列の開裂を導く。いくつかの態様では、黄色ブドウ球菌のeaCas9分子は、配列モチーフNNGRRV(R=AまたはG)を認識し、その配列から1~10、例えば3~5塩基対上流で標的核酸配列の開裂を導く。いくつかの態様では、髄膜炎菌のeaCas9分子は、配列モチーフNNNNGATTまたはNNNGCTT(R=AまたはG、V=A、G、またはC)を認識し、その配列から1~10、例えば3~5塩基対上流で標的核酸配列の開裂を導く。例えば、Hou et al., PNAS Early Edition 2013, 1-6を参照されたい。Cas9分子がPAM配列を認識する能力は、例えば、Jinek et al., Science 2012 337:816に記載されている形質転換アッセイを使用して、決定することができる。前述の態様では、Nは任意のヌクレオチド残基、例えば、A、G、C、またはTのいずれかでもよい。
【0262】
本明細書において論じられるように、Cas9分子のPAM特異性を変更するために、Cas9分子を操作することができる。
【0263】
天然に存在する例示的Cas9分子は、Chylinski et al., RNA Biology 2013 10:5, 727-737に記載されている。そのようなCas9分子としては、クラスター1~78の細菌ファミリーのCas9分子が挙げられる。
【0264】
天然に存在する例示的Cas9分子としては、クラスター1細菌ファミリーのCas9分子が挙げられる。例としては、以下のもののCas9分子が挙がられる:化膿性連鎖球菌(例えば、株SF370、MGAS10270、MGAS10750、MGAS2096、MGAS315、MGAS5005、MGAS6180、MGAS9429、NZ131およびSSI-1)、S.サーモフィラス(例えば、株LMD-9)、S.シュードポルシヌス(S. pseudoporcinus)(例えば、株SPIN 20026)、S.ミュータンス(例えば、株UA159、NN2025)、S.マカカエ(S. macacae)(例えば、株NCTC11558)、S.ガロリチカス(S. gallolyticus)(例えば、株UCN34、ATCC BAA-2069)、S.エクイヌス(S. equines)(例えば、株ATCC 9812、MGCS 124)、S.ディスガラクチアエ(S. dysdalactiae)(例えば、株GGS 124)、S.ボビス(S. bovis)(例えば、株ATCC 700338)、S.アンギノーサス(S. anginosus)(例えば、株F0211)、S.アガラクチア(S. agalactiae)(例えば、株NEM316, A909)、リステリア・モノサイトゲネス(例えば、株F6854)、リステリア・イノキュア(Listeria innocua)(L.イノキュア(L. innocua)、例えば、株Clip11262)、エンテロコッカス・イタリクス(Enterococcus italicus)(例えば、株DSM 15952)、またはエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)(例えば、株1,231,408)。別の例示的Cas9分子は、髄膜炎菌のCas9分子である(Hou et al., PNAS Early Edition 2013, 1-6)。
【0265】
いくつかの態様では、Cas9分子またはCas9ポリペプチド、例えば、eaCas9分子またはeaCas9ポリペプチドは、本明細書において記載される任意のCas9分子配列、もしくは天然に存在するCas9分子配列、例えば、本明細書において列挙される(例えば、SEQ ID NO:112~115)、もしくはChylinski et al., RNA Biology 2013 10:5, 727-737;Hou et al., PNAS Early Edition 2013, 1-6に記載されている種由来のCas9分子と、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の相同性を有する;該Cas9分子配列と比較した場合に、2、5、10、15、20、30、もしくは40%以下のアミノ酸残基が異なる;少なくとも1、2、5、10、もしくは20アミノ酸であるが、100、80、70、60、50、40、もしくは30以下のアミノ酸が該Cas9分子配列と異なる;または該Cas9分子配列と同一である、アミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、Cas9分子またはCas9ポリペプチドは以下の活性の1つまたは複数を含む:ニッカーゼ活性;二本鎖開裂活性(例えば、エンドヌクレアーゼおよび/もしくはエキソヌクレアーゼ活性);ヘリカーゼ活性;またはgRNA分子とともに標的核酸に向かう能力。
【0266】
いくつかの態様では、Cas9分子またはCas9ポリペプチドは、WO2015/161276の、例えばその中の図2A~2Gにおけるコンセンサス配列のアミノ酸配列を含み、「*」は、化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、S.ミュータンス、およびL.イノキュアのCas9分子のアミノ酸配列中の対応する位置に見られる任意のアミノ酸を示し、「-」は、任意のアミノ酸を示す。いくつかの態様では、Cas9分子またはCas9ポリペプチドは、SEQ ID NO:112~117のコンセンサス配列、またはWO2015/161276に、例えばその中の図2A~2Gに開示されるコンセンサス配列の配列と、少なくとも1個であるが、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個以下のアミノ酸残基が異なる。いくつかの態様では、Cas9分子またはCas9ポリペプチドは、SEQ ID NO:117の、またはWO2015/161276に、例えばその中の図7A~7Bに記載されているアミノ酸配列を含み、「*」は化膿性連鎖球菌または髄膜炎菌のCas9分子のアミノ酸配列中の対応する位置に見られる任意のアミノ酸を示し、「-」は任意のアミノ酸を示し、「-」は任意のアミノ酸または存在しないことを示す。いくつかの態様では、Cas9分子またはCas9ポリペプチドは、SEQ ID NO:116または117の、またはWO2015/161276に、例えばその中の図7A~7Bに記載されている配列と、少なくとも1個であるが、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個以下のアミノ酸残基が異なる。
【0267】
いくつかのCas9分子の配列の比較によって、ある特定の領域が保存されていることが示される。これらは、領域1(残基1~180、または領域1'の場合は残基120~180);領域2(残基360~480);領域3(残基660~720);領域4(残基817~900);および領域5(残基900~960)として特定される。
【0268】
いくつかの態様では、Cas9分子またはCas9ポリペプチドは、生物学的に活性な分子、例えば、本明細書において記載される少なくとも1つの活性を有するCas9分子を提供するのに十分なさらなるCas9分子配列とともに、領域1~5を含む。いくつかの態様では、領域1~6のそれぞれは、独立に、本明細書において記載される、例えば、SEQ ID NO:112~117に記載されるCas9分子もしくはCas9ポリペプチドの対応する残基、またはWO2015/161276、例えば、その中の図2A~2Gまたは図7A~7Bに開示される配列と50%、60%、70%、または80%の相同性を有する。
【0269】
いくつかの態様において、Cas9分子またはCas9ポリペプチド、例えば、eaCas9分子またはeaCas9ポリペプチドは、化膿性連鎖球菌のCas9のアミノ酸配列のアミノ酸1~180(ナンバリングは、WO 2015/161276の図2A~2Gにおけるモチーフ配列に従う;WO 2015/161276の図2A~2Gにおける4つのCas9配列中の残基の52%が保存されている)と、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の相同性を有する、領域1と称されるアミノ酸配列を含む;化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、S.ミュータンス、もしくはL.イノキュアのCas9のアミノ酸配列のアミノ酸1~180とは少なくとも1、2、5、10、もしくは20アミノ酸が異なるが、90、80、70、60、50、40、もしくは30アミノ酸以下が異なる;または、化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、S.ミュータンス、もしくはL.イノキュアのCas9のアミノ酸配列の1~180と同一である。
【0270】
いくつかの態様において、Cas9分子またはCas9ポリペプチド、例えば、eaCas9分子またはeaCas9ポリペプチドは、化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、S.ミュータンス、もしくはL.イノキュアのCas9のアミノ酸配列のアミノ酸120~180(WO 2015/161276の図2A~2Gにおける4つのCas9配列中の残基の55%が保存されている)と、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の相同性を有する、領域1'と称されるアミノ酸配列を含む;化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、S.ミュータンス、もしくはL.イノキュアのCas9のアミノ酸配列のアミノ酸120~180とは少なくとも1、2、もしくは5アミノ酸が異なるが、35、30、25、20、もしくは10アミノ酸以下が異なる;または、化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、S.ミュータンス、もしくはL.イノキュアのCas9のアミノ酸配列の120~180と同一である。
【0271】
いくつかの態様において、Cas9分子またはCas9ポリペプチド、例えば、eaCas9分子またはeaCas9ポリペプチドは、化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、S.ミュータンス、もしくはL.イノキュアのCas9のアミノ酸配列のアミノ酸360~480(WO 2015/161276の図2A~2Gにおける4つのCas9配列中の残基の52%が保存されている)と、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の相同性を有する、領域2と称されるアミノ酸配列を含む;化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、S.ミュータンス、もしくはL.イノキュアのCas9のアミノ酸配列のアミノ酸360~480とは少なくとも1、2、もしくは5アミノ酸が異なるが、35、30、25、20、もしくは10アミノ酸以下が異なる;または、化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、S.ミュータンス、もしくはL.イノキュアのCas9のアミノ酸配列の360~480と同一である。
【0272】
いくつかの態様において、Cas9分子またはCas9ポリペプチド、例えば、eaCas9分子またはeaCas9ポリペプチドは、化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、S.ミュータンス、もしくはL.イノキュアのCas9のアミノ酸配列のアミノ酸660~720(WO 2015/161276の図2A~2Gにおける4つのCas9配列中の残基の56%が保存されている)と、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の相同性を有する、領域3と称されるアミノ酸配列を含む;化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、S.ミュータンス、もしくはL.イノキュアのCas9のアミノ酸配列のアミノ酸660~720とは少なくとも1、2、もしくは5アミノ酸が異なるが、35、30、25、20、もしくは10アミノ酸以下が異なる;または、化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、S.ミュータンス、もしくはL.イノキュアのCas9のアミノ酸配列の660~720と同一である。
【0273】
いくつかの態様において、Cas9分子またはCas9ポリペプチド、例えば、eaCas9分子またはeaCas9ポリペプチドは、化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、S.ミュータンス、もしくはL.イノキュアのCas9のアミノ酸配列のアミノ酸817~900(WO 2015/161276の図2A~2Gにおける4つのCas9配列中の残基の55%が保存されている)と、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の相同性を有する、領域4と称されるアミノ酸配列を含む;化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、S.ミュータンス、もしくはL.イノキュアのCas9のアミノ酸配列のアミノ酸817~900とは少なくとも1、2、もしくは5アミノ酸が異なるが、35、30、25、20、もしくは10アミノ酸以下が異なる;または、化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、S.ミュータンス、もしくはL.イノキュアのCas9のアミノ酸配列の817~900と同一である。
【0274】
いくつかの態様において、Cas9分子またはCas9ポリペプチド、例えば、eaCas9分子またはeaCas9ポリペプチドは、化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、S.ミュータンス、もしくはL.イノキュアのCas9のアミノ酸配列のアミノ酸900~960(WO 2015/161276の図2A~2Gにおける4つのCas9配列中の残基の60%が保存されている)と、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の相同性を有する、領域5と称されるアミノ酸配列を含む;化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、S.ミュータンス、もしくはL.イノキュアのCas9のアミノ酸配列のアミノ酸900~960とは少なくとも1、2、もしくは5アミノ酸が異なるが、35、30、25、20、もしくは10アミノ酸以下が異なる;または、化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、S.ミュータンス、もしくはL.イノキュアのCas9のアミノ酸配列の900~960と同一である。
【0275】
(h) 操作されたまたは変更されたCas9分子およびCas9ポリペプチド
本明細書において記載されるCas9分子およびCas9ポリペプチド、例えば、天然に存在するCas9分子は、ニッカーゼ活性、ヌクレアーゼ活性(例えば、エンドヌクレアーゼおよび/またはエキソヌクレアーゼ活性);ヘリカーゼ活性;gRNA分子と機能的に結合する能力;ならびに核酸上の部位を標的にする(または該部位に局在化する)能力(例えば、PAM認識および特異性)を含めたいくつかの特性のうちのいずれかを持つことができる。いくつかの態様では、Cas9分子またはCas9ポリペプチドは、これらの特性の全てまたはサブセットを含むことができる。典型的な態様では、Cas9分子またはCas9ポリペプチドは、gRNA分子と相互作用し、gRNA分子と協調して、核酸中のある部位に局在化する能力を有する。他の活性、例えば、PAM特異性、開裂活性、またはヘリカーゼ活性は、Cas9分子およびCas9ポリペプチドにおいて、より広く変動し得る。
【0276】
Cas9分子は、操作されたCas9分子および操作されたCas9ポリペプチドを含む(この状況で使用される「操作された」は、Cas9分子またはCas9ポリペプチドが参照配列と異なることを単に意味し、プロセスまたは起源に制限がないことを意味する)。操作されたCas9分子またはCas9ポリペプチドは、変更された酵素特性、例えば、変更されたヌクレアーゼ活性(天然に存在するCas9分子、もしくは他の参照Cas9分子と比較した場合)または変更されたヘリカーゼ活性を含むことができる。本明細書において記載するように、操作されたCas9分子またはCas9ポリペプチドは、(二本鎖ヌクレアーゼ活性とは対照的に)ニッカーゼ活性を有し得る。いくつかの態様では、操作されたCas9分子またはCas9ポリペプチドは、そのサイズを変更する変更、例えば1つもしくは複数の、または任意のCas9活性に対して有意な影響がなく、そのサイズを低減させるアミノ酸配列の欠失などを有し得る。いくつかの態様では、操作されたCas9分子またはCas9ポリペプチドは、PAM認識に影響を及ぼす変更を含むことができる。例えば、操作されたCas9分子は、内在性野生型PIドメインによって認識されるもの以外のPAM配列を認識するように変更することができる。いくつかの態様では、Cas9分子またはCas9ポリペプチドは、天然に存在するCas9分子と配列が異なり得るが、1つまたは複数のCas9活性に有意な変更を有さない。
【0277】
望ましい特性を有するCas9分子またはCas9ポリペプチドは、いくつかの方法で、例えば、望ましい特性を有する変更されたCas9分子またはCas9ポリペプチドをもたらすように、親、例えば天然に存在するCas9分子またはCas9ポリペプチドを変更することによって、作製することができる。例えば、親Cas9分子、例えば、天然に存在するか、または操作されたCas9分子に対して1つまたは複数の変異または差異を導入することができる。そのような変異および差異は、置換(例えば、保存的置換もしくは非必須アミノ酸の置換);挿入;または欠失を含む。いくつかの態様では、Cas9分子またはCas9ポリペプチドは、参照、例えば親Cas9分子に対して、1つまたは複数の変異または差異、例えば、少なくとも1、2、3、4、5、10、15、20、30、40、または50個の変異であるが、200、100、または80個未満の変異を含むことができる。
【0278】
いくつかの態様では、1つの変異または複数の変異は、Cas9活性、例えば、本明細書において記載されるCas9活性に対して実質的な影響を有さない。いくつかの態様では、1つの変異または複数の変異は、Cas9活性、例えば、本明細書において記載されるCas9活性に対して実質的な影響を有する。
【0279】
(i) 非開裂型および改変型開裂Cas9分子およびCas9ポリペプチド
いくつかの態様では、Cas9分子またはCas9ポリペプチドは、天然に存在するCas9分子と異なる、例えば、最も近い相同性を有する天然に存在するCas9分子と異なる開裂特性を含む。例えば、Cas9分子またはCas9ポリペプチドは、天然に存在するCas9分子、例えば、化膿性連鎖球菌のCas9分子と以下のように異なり得る:例えば、天然に存在するCas9分子(例えば、化膿性連鎖球菌のCas9分子)と比較して、二本鎖核酸の開裂をモジュレートする、例えば、増加させるか、もしくは減少させるその能力(エンドヌクレアーゼおよび/もしくはエキソヌクレアーゼ活性);例えば、天然に存在するCas9分子(例えば、化膿性連鎖球菌のCas9分子)と比較して、核酸の一本鎖、例えば、核酸分子の非相補鎖もしくは核酸分子の相補鎖の開裂をモジュレートする、例えば、増加させるか、もしくは減少させるその能力(ニッカーゼ活性);または核酸分子、例えば、二本鎖もしくは一本鎖核酸分子を開裂させる能力が、排除され得る。
【0280】
(j) 改変型開裂eaCas9分子およびeaCas9ポリペプチド
いくつかの態様では、eaCas9分子またはeaCas9ポリペプチドは以下の活性の1つまたは複数を含む:N末端RuvC様ドメインと関連する開裂活性;HNH様ドメインと関連する開裂活性;HNH様ドメインと関連する開裂活性およびN末端RuvC様ドメインと関連する開裂活性。
【0281】
いくつかの態様では、eaCas9分子またはeaCas9ポリペプチドは、活性な、または開裂能力があるHNH様ドメイン、および不活性な、または開裂能力がないN末端RuvC様ドメインを含む。例示的な不活性な、または開裂能力がないN末端RuvC様ドメインは、N末端RuvC様ドメイン中にアスパラギン酸の変異を有する可能性があり、例えば、SEQ ID NO:112~117のコンセンサス配列もしくはWO2015/161276に、例えばその中の図2A~2Gに開示されるコンセンサス配列の位置9のアスパラギン酸、またはSEQ ID NO:117の位置10のアスパラギン酸は、例えば、アラニンで置換されている可能性がある。いくつかの態様では、eaCas9分子またはeaCas9ポリペプチドは、N末端RuvC様ドメインが野生型と異なり、例えば、本明細書において記載されるアッセイによって測定した場合に、標的核酸を開裂させないか、または有意に低い効率、例えば、参照Cas9分子の開裂活性の20、10、5、1、もしくは.1%未満で開裂させる。参照Cas9分子は、天然に存在する非改変型Cas9分子、例えば、化膿性連鎖球菌またはS.サーモフィラスのCas9分子などの天然に存在するCas9分子でもよい。いくつかの態様では、参照Cas9分子は、最も近い配列同一性または相同性を有する天然に存在するCas9分子である。
【0282】
いくつかの態様では、eaCas9分子またはeaCas9ポリペプチドは、不活性な、または開裂能力がないHNHドメイン、および活性な、または開裂能力があるN末端RuvC様ドメインを含む。例示的な不活性な、または開裂能力がないHNH様ドメインは、以下の1つまたは複数の変異を有し得る:HNH様ドメイン中のヒスチジン、例えば、SEQ ID NO:112~117のコンセンサス配列、またはWO2015/161276に、例えばその中の図2A~2Gに開示されるコンセンサス配列の位置856に示されるヒスチジンは、例えば、アラニンで置換されている可能性があり;HNH様ドメイン中の1つまたは複数のアスパラギン、例えば、SEQ ID NO:112~117のコンセンサス配列もしくはWO2015/161276に、例えばその中の図2A~2Gに開示されるコンセンサス配列の位置870、および/またはSEQ ID NO:112~117のコンセンサス配列もしくはWO2015/161276に、例えばその中の図2A~2Gに開示されるコンセンサス配列の位置879に示されるアスパラギンは、例えば、アラニンで置換されている可能性がある。いくつかの態様では、eaCas9は、HNH様ドメインが野生型と異なり、例えば、本明細書において記載されるアッセイによって測定した場合に、標的核酸を開裂させないか、または有意に低い効率、例えば、参照Cas9分子の20、10、5、1、もしくは0.1%未満の開裂活性で開裂させる。参照Cas9分子は、天然に存在する非改変型Cas9分子、例えば、化膿性連鎖球菌またはS.サーモフィラスのCas9分子などの天然に存在するCas9分でもよい。いくつかの態様では、参照Cas9分子は、最も近い配列同一性または相同性を有する天然に存在するCas9分子である。
【0283】
いくつかの態様では、eaCas9分子またはeaCas9ポリペプチドは、不活性な、または開裂能力がないHNHドメイン、および活性な、または開裂能力があるN末端RuvC様ドメインを含む。例示的な不活性な、または開裂能力がないHNH様ドメインは、以下の1つまたは複数の変異を有し得る:HNH様ドメイン中のヒスチジン、例えば、SEQ ID NO:112~117のコンセンサス配列、またはWO2015/161276に、例えばその中の図2A~2Gに開示されるコンセンサス配列の位置856に示されるヒスチジンは、例えば、アラニンで置換されている可能性があり;HNH様ドメイン中の1つまたは複数のアスパラギン、例えば、SEQ ID NO:112~117のコンセンサス配列もしくはWO2015/161276に、例えばその中の図2A~2Gに開示されるコンセンサス配列の位置870、および/またはSEQ ID NO:112~117のコンセンサス配列もしくはWO2015/161276に、例えばその中の図2A~2Gに開示されるコンセンサス配列の位置879に示されるアスパラギンは、例えば、アラニンで置換されている可能性がある。いくつかの態様では、eaCas9は、HNH様ドメインが野生型と異なり、例えば、本明細書において記載されるアッセイによって測定した場合に、標的核酸を開裂させないか、または有意に低い効率、例えば、参照Cas9分子の20、10、5、1、もしくは0.1%未満の開裂活性で開裂させる。参照Cas9分子は、天然に存在する非改変型Cas9分子、例えば、化膿性連鎖球菌またはS.サーモフィラスのCas9分子などの天然に存在するCas9分子でもよい。いくつかの態様では、参照Cas9分子は、最も近い配列同一性または相同性を有する天然に存在するCas9分子である。
【0284】
(k) 標的核酸の片鎖または両鎖を開裂させる能力の変更
いくつかの態様では、例示的Cas9活性は、PAM特異性、開裂活性、およびヘリカーゼ活性の1つまたは複数を含む。変異は、例えば以下の中に存在し得る:1つまたは複数のRuvC様ドメイン、例えば、N末端RuvC様ドメイン;HNH様ドメイン;RuvC様ドメインとHNH様ドメインの外側の領域。いくつかの態様では、突然変はRuvC様ドメイン、例えば、N末端RuvC様の中に存在する。いくつかの態様では、変異はHNH様ドメインの中に存在する。いくつかの態様では、変異は、RuvC様ドメイン、例えば、N末端RuvC様ドメインとHNH様ドメインの両方の中に存在する。
【0285】
化膿性連鎖球菌の配列に関して、RuvCドメインまたはHNHドメインの中に作製することができる例示的変異としては、D10A、E762A、H840A、N854A、N863A、および/またはD986Aが挙げられる。
【0286】
いくつかの態様では、Cas9分子またはCas9ポリペプチドは、参照Cas9分子と比較して、RuvCドメインおよび/またはHNHドメインにおいて1つまたは複数の差異を含むeiCas9分子またはeiCas9ポリペプチドであり、eiCas9分子またはeiCas9ポリペプチドは、核酸を開裂させないか、または野生型が行うよりも有意に低い効率で開裂させ、例として、例えば本明細書において記載されるような開裂アッセイにおいて野生型と比較した場合に、本明細書において記載されるアッセイによって測定した際に、参照Cas9分子の50、25、10、または1%未満で切断する。
【0287】
特定の配列、例えば置換が、1つまたは複数の活性、例えば、ターゲティング活性、開裂活性などに影響を及ぼす可能性があるかどうかは、例えば、変異が保存的であるかどうかを評価することによって、評価または予測することができる。いくつかの態様では、「非必須」アミノ酸残基は、Cas9分子と関連して使用される場合、Cas9活性(例えば、開裂活性)を消失させることなく、またはより好ましくは、実質的に変更することなく、Cas9分子、例えば天然に存在するCas9分子、例えばeaCas9分子の野生型配列から変更することができる残基であるが、「必須」アミノ酸残基の変化は、活性(例えば、開裂活性)の実質的な喪失をもたらす。
【0288】
いくつかの態様では、Cas9分子またはCas9ポリペプチドは、天然に存在するCas9分子と異なる、例えば、最も近い相同性を有する天然に存在するCas9分子と異なる開裂特性を含む。例えば、Cas9分子またはCas9ポリペプチドは、天然に存在するCas9分子、例えば、黄色ブドウ球菌、化膿性連鎖球菌、またはC.ジェジュニのCas9分子と以下のように異なり得る:例えば、天然に存在するCas9分子(例えば、黄色ブドウ球菌、化膿性連鎖球菌、もしくはC.ジェジュニのCas9分子)と比較して、二本鎖切断の開裂をモジュレートする、例えば、増加させるか、もしくは減少させるその能力(エンドヌクレアーゼおよび/もしくはエキソヌクレアーゼ活性);例えば、天然に存在するCas9分子(例えば、黄色ブドウ球菌、化膿性連鎖球菌、もしくはC.ジェジュニのCas9分子)と比較して、核酸の一本鎖、例えば、核酸分子の非相補鎖もしくは核酸分子の相補鎖の開裂をモジュレートする、例えば、増加させるか、もしくは減少させるその能力(ニッカーゼ活性);または核酸分子、例えば、二本鎖もしくは一本鎖核酸分子を開裂させる能力が、排除され得る。
【0289】
いくつかの態様では、変更されたCas9分子またはCas9ポリペプチドは、以下の活性の1つまたは複数を含むeaCas9分子またはeaCas9ポリペプチドである:RuvCドメインと関連する開裂活性;HNHドメインと関連する開裂活性;HNHドメインと関連する開裂活性およびRuvCドメインと関連する開裂活性。
【0290】
いくつかの態様では、変更されたCas9分子またはCas9ポリペプチドは、例えば、本明細書において記載されるアッセイによって測定した場合に、核酸分子(二本鎖核酸分子もしくは一本鎖核酸分子のいずれか)を開裂させないか、または有意に低い効率、例えば、参照Cas9分子の20、10、5、1、または0.1%未満の開裂活性で核酸分子を開裂させる、eiCas9分子またはeaCas9ポリペプチドである。参照Cas9分子は、天然に存在する非改変型Cas9分子、例えば、化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、黄色ブドウ球菌、C.ジェジュニまたは髄膜炎菌のCas9分子などの天然に存在するCas9分子でもよい。いくつかの態様では、参照Cas9分子は、最も近い配列同一性または相同性を有する天然に存在するCas9分子である。いくつかの態様では、eiCas9分子またはeiCas9ポリペプチドは、RuvCドメインと関連する実質的な開裂活性およびHNHドメインと関連する開裂活性を欠く。
【0291】
いくつかの態様では、変更されたCas9分子またはCas9ポリペプチドは、WO2015/161276に、例えばその中の図2A~2Gに開示されるコンセンサス配列中に示される化膿性連鎖球菌の固定されたアミノ酸残基を含む、eaCas9分子またはeaCas9ポリペプチドであり、SEQ ID NO:117の1つまたは複数の残基(例えば、2、3、5、10、15、20、30、50、70、80、90、100、200アミノ酸残基)またはWO2015/161276に、例えばその中の図2A~2Gに開示されるコンセンサス配列中に「-」によって表される残基において化膿性連鎖球菌のアミノ酸配列とは異なる(例えば、置換を有する)、1つまたは複数のアミノ酸を有する。
【0292】
いくつかの態様において、変更されたCas9分子またはCas9ポリペプチドは、その中で、WO2015/161276の図2A~2Gに開示されるコンセンサス配列の固定された配列に対応する配列が、WO2015/161276の図2A~2Gに開示されるコンセンサス配列中の固定された残基の1、2、3、4、5、10、15、または20%以下で異なる、WO2015/161276の図2A~2Gに開示されるコンセンサス配列中の「*」によって特定される残基に対応する配列が、天然に存在するCas9分子、例えば、化膿性連鎖球菌Cas9分子の対応する配列とは「*」残基の1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、または40%以下が異なる;および、WO2015/161276の図2A~2Gに開示されるコンセンサス配列中の「-」によって特定される残基に対応する配列が、天然に存在するCas9分子、例えば、化膿性連鎖球菌Cas9分子の対応する配列とは「-」残基の5、10、15、20、25、30、35、40、45、55、または60%以下が異なる、配列を含む。
【0293】
いくつかの態様において、変更されたCas9分子またはCas9ポリペプチドは、WO2015/161276の図2A~2Gに開示されるコンセンサス配列中に示されるS.サーモフィラスの固定されたアミノ酸残基を含む、eaCas9分子またはeaCas9ポリペプチドであり、WO2015/161276の図2A~2Gに開示されるコンセンサス配列中の「-」によって表される1つまたは複数の残基(例えば、2、3、5、10、15、20、30、50、70、80、90、100、200アミノ酸残基)で、S.サーモフィラスのアミノ酸配列とは異なる1つまたは複数のアミノ酸を有する(例えば、置換を有する)。
【0294】
いくつかの態様において、変更されたCas9分子またはCas9ポリペプチドは、その中で、WO2015/161276の図2A~2Gに開示されるコンセンサス配列の固定された配列に対応する配列が、WO2015/161276の図2A~2Gに開示されるコンセンサス配列中の固定された残基の1、2、3、4、5、10、15、または20%以下で異なる、WO2015/161276の図2A~2Gに開示されるコンセンサス配列中の「*」によって特定される残基に対応する配列が、天然に存在するCas9分子、例えば、S.サーモフィラスCas9分子の対応する配列とは「*」残基の1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、または40%以下が異なる;および、WO2015/161276の図2A~2Gに開示されるコンセンサス配列中の「-」によって特定される残基に対応する配列が、天然に存在するCas9分子、例えば、S.サーモフィラスCas9分子の対応する配列とは「-」残基の5、10、15、20、25、30、35、40、45、55、または60%以下が異なる、配列を含む。
【0295】
いくつかの態様において、変更されたCas9分子またはCas9ポリペプチドは、WO2015/161276の図2A~2Gに開示されるコンセンサス配列中に示されるS.ミュータンスの固定されたアミノ酸残基を含む、eaCas9分子またはeaCas9ポリペプチドであり、WO2015/161276の図2A~2Gに開示されるコンセンサス配列中の「-」によって表される1つまたは複数の残基(例えば、2、3、5、10、15、20、30、50、70、80、90、100、200アミノ酸残基)で、S.ミュータンスのアミノ酸配列とは異なる1つまたは複数のアミノ酸を有する(例えば、置換を有する)。
【0296】
いくつかの態様において、変更されたCas9分子またはCas9ポリペプチドは、その中で、WO2015/161276の図2A~2Gに開示されるコンセンサス配列の固定された配列に対応する配列が、WO2015/161276の図2A~2Gに開示されるコンセンサス配列中の固定された残基の1、2、3、4、5、10、15、または20%以下で異なる、WO2015/161276の図2A~2Gに開示されるコンセンサス配列中の「*」によって特定される残基に対応する配列が、天然に存在するCas9分子、例えば、S.ミュータンスCas9分子の対応する配列とは「*」残基の1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、または40%以下が異なる;および、WO2015/161276の図2A~2Gに開示されるコンセンサス配列中の「-」によって特定される残基に対応する配列が、天然に存在するCas9分子、例えば、S.ミュータンスCas9分子の対応する配列とは「-」残基の5、10、15、20、25、30、35、40、45、55、または60%以下が異なる、配列を含む。
【0297】
いくつかの態様において、変更されたCas9分子またはCas9ポリペプチドは、WO2015/161276の図2A~2Gに開示されるコンセンサス配列中に示されるL.イノキュラ(L. innocula)の固定されたアミノ酸残基を含む、eaCas9分子またはeaCas9ポリペプチドであり、WO2015/161276の図2A~2Gに開示されるコンセンサス配列中の「-」によって表される1つまたは複数の残基(例えば、2、3、5、10、15、20、30、50、70、80、90、100、200アミノ酸残基)で、L.イノキュラのアミノ酸配列とは異なる1つまたは複数のアミノ酸を有する(例えば、置換を有する)。いくつかの態様において、変更されたCas9分子またはCas9ポリペプチドは、その中で、WO2015/161276の図2A~2Gに開示されるコンセンサス配列の固定された配列に対応する配列が、WO2015/161276の図2A~2Gに開示されるコンセンサス配列中の固定された残基の1、2、3、4、5、10、15、または20%以下で異なる、WO2015/161276の図2A~2Gに開示されるコンセンサス配列中の「*」によって特定される残基に対応する配列が、天然に存在するCas9分子、例えば、L.イノキュラCas9分子の対応する配列とは「*」残基の1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、または40%以下が異なる;および、WO2015/161276の図2A~2Gに開示されるコンセンサス配列中の「-」によって特定される残基に対応する配列が、天然に存在するCas9分子、例えば、L.イノキュラCas9分子の対応する配列とは「-」残基の5、10、15、20、25、30、35、40、45、55、または60%以下が異なる、配列を含む。
【0298】
いくつかの態様では、変更されたCas9分子またはCas9ポリペプチド、例えば、eaCas9分子は、例えば、2つ以上の異なるCas9分子またはCas9ポリペプチドの、例えば、異なる種の天然に存在する2つ以上のCas9分子の融合体でもよい。例えば、ある種の天然に存在するCas9分子の断片を第2の種のCas9分子の断片と融合させることができる。一例として、N末端RuvC様ドメインを含む、化膿性連鎖球菌のCas9分子の断片を、HNH様ドメインを含む、化膿性連鎖球菌以外の種(例えば、S.サーモフィラス)のCas9分子の断片と融合させることができる。
【0299】
(l) PAM認識が変更されたまたはPAM認識がないCas9分子
天然に存在するCas9分子は、特定のPAM配列、例えば、化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、S.ミュータンス、黄色ブドウ球菌、および髄膜炎菌などについて本明細書において記載されるPAM認識配列を認識することができる。
【0300】
いくつかの態様では、Cas9分子またはCas9ポリペプチドは、天然に存在するCas9分子と同じPAM特異性を有する。他の態様では、Cas9分子またはCas9ポリペプチドは、天然に存在するCas9分子と関係がないPAM特異性、またはそれが最も近い配列相同性を有する天然に存在するCas9分子と関係がないPAM特異性を有する。例えば、オフターゲット部位を減少させるおよび/もしくは特異性を向上させる;またはPAM認識の要件を排除するために、例えば、PAM認識を変更するように、例えば、Cas9分子またはCas9ポリペプチドが認識するPAM配列を変更するように、天然に存在するCas9分子を変更することができる。いくつかの態様では、例えば、オフターゲット部位を減少させるおよび特異性を増加させるために、例えば、PAM認識配列の長さの延ばすように、および/またはCas9特異性を高レベルの同一性に改善するように、Cas9分子を変更することができる。いくつかの態様では、PAM認識配列の長さは、少なくとも4、5、6、7、8、9、10、または15アミノ酸の長さである。
【0301】
異なるPAM配列を認識するおよび/またはオフターゲット活性が低減したCas9分子またはCas9ポリペプチドは、定向進化を使用して生成することができる。Cas9分子の定向進化に使用することができる例示的方法およびシステムは、例えば、Esvelt et al. Nature 2011, 472(7344): 499-503に記載されている。候補Cas9分子は、例えば本明細書において記載される方法によって、評価することができる。
【0302】
PAM認識を媒介するPIドメインの変更は、本明細書において論じられる。
【0303】
(m) PIドメインが変更された合成のCas9分子およびCas9ポリペプチド
現在のゲノム編集方法は、利用されるCas9分子によって認識されるPAM配列によってターゲティングされ得る標的配列の多様性が制限される。合成Cas9分子(もしくはSyn-Cas9分子)または合成Cas9ポリペプチド(もしくはSyn-Cas9ポリペプチド)は、この用語が本明細書において使用される場合、1つの細菌種由来のCas9コアドメイン、および機能的な変更されたPIドメイン、すなわち、例えば異なる細菌種由来の、Cas9コアドメインと天然に結合しているもの以外のPIドメインを含むCas9分子またはCas9ポリペプチドを指す。
【0304】
いくつかの態様では、変更されたPIドメインは、Cas9コアドメインが由来する天然に存在するCas9によって認識されるPAM配列と異なるPAM配列を認識する。いくつかの態様では、変更されたPIドメインは、Cas9コアドメインが由来する天然に存在するCas9によって認識される同じPAM配列を認識するが、異なる親和性または特異性を有する。Syn-Cas9分子またはSyn-Cas9ポリペプチドは、それぞれ、Syn-eaCas9分子もしくはSyn-eaCas9ポリペプチド、またはSyn-eiCas9分子、Syn-eiCas9ポリペプチドでもよい。
【0305】
例示的Syn-Cas9分子またはSyn-Cas9ポリペプチドは、a)Cas9コアドメイン、例えば、Cas9コアドメイン、例えば、黄色ブドウ球菌、化膿性連鎖球菌、またはC.ジェジュニのCas9コアドメイン;およびb)種XのCas9配列由来の変更されたPIドメインを含む。
【0306】
いくつかの態様では、変更されたPIドメインのRKRモチーフ(PAM結合モチーフ)は、Cas9コアドメインと結合しているネイティブまたは内在性PIドメインのRKRモチーフの配列と比較した場合に、1、2、または3アミノ酸残基における差異;第1、第2または第3の位置におけるアミノ酸配列の差異;第1および第2の位置、第1および第3の位置、または第2および第3の位置におけるアミノ酸配列の差異を含む。
【0307】
いくつかの態様では、Syn-Cas9分子またはSyn-Cas9ポリペプチドはまた、サイズ最適化されてもよく、例えば、Syn-Cas9分子またはSyn-Cas9ポリペプチドは、1つまたは複数の欠失、および任意で欠失に隣接するアミノ酸残基の間に配置される1つまたは複数のリンカーを含む。いくつかの態様では、Syn-Cas9分子またはSyn-Cas9ポリペプチドはRECの欠失を含む。
【0308】
(n) サイズ最適化されたCas9分子およびCas9ポリペプチド
本明細書において記載される操作されたCas9分子および操作されたCas9ポリペプチドは、分子のサイズを低減させるが、望ましいCas9特性、例えば、本質的にネイティブなコンフォメーション、Cas9ヌクレアーゼ活性、および/または標的核酸分子の認識を依然として保持する欠失を含むCas9分子またはCas9ポリペプチドを含む。提供される態様の状況で用いられるCas9分子またはCas9ポリペプチドは、1つまたは複数の欠失および任意で1つまたは複数のリンカーを含み得、リンカーは、欠失に隣接するアミノ酸残基の間に配置される。
【0309】
欠失を有するCas9分子、例えば、黄色ブドウ球菌、化膿性連鎖球菌、またはC.ジェジュニの欠失を有するCas9分子は、対応する天然に存在するCas9分子よりも小さく、例えば、アミノ酸の数が減少している。より小さなサイズのCas9分子は、送達方法の柔軟性を高め、それによって、ゲノム編集の有用性を高める。Cas9分子またはCas9ポリペプチドは、本明細書において記載される生じたCas9分子またはCas9ポリペプチドの活性に実質的に影響を及ぼさないか、または該活性を低下させない、1つまたは複数の欠失を含むことができる。本明細書において記載される欠失を含むCas9分子またはCas9ポリペプチドに保持される活性としては、以下の1つまたは複数が挙げられる:ニッカーゼ活性、すなわち、核酸分子の一本鎖、例えば、非相補鎖または相補鎖を開裂させる能力;二本鎖ヌクレアーゼ活性、すなわち、二本鎖核酸の両鎖を開裂させ、二本鎖切断を作出する能力。これは、いくつかの態様では、2つのニッカーゼ活性が存在することである;エンドヌクレアーゼ活性;エキソヌクレアーゼ活性;ヘリカーゼ活性、すなわち、二本鎖核酸のヘリックス構造をほどく能力;および核酸分子、例えば、標的核酸またはgRNAの認識活性。
【0310】
本明細書において記載されるCas9分子またはCas9ポリペプチドの活性は、本明細書において記載される活性アッセイを使用して評価することができるか、または公知である。
【0311】
(o) 欠失に適した領域の特定
欠失に適したCas9分子の領域は、様々な方法によって特定することができる。様々な細菌種由来の天然に存在するオルソロガスなCas9分子を化膿性連鎖球菌のCas9の結晶構造(Nishimasu et al., Cell, 156:935-949, 2014)上にモデル化して、タンパク質の三次元コンフォメーションに関して、選択されたCas9オルソログにわたって保存のレベルを調べることができる。Cas9活性に関与する領域から離れて空間的に位置する、あまり保存されていない、または保存されていない領域、例えば、標的核酸分子および/またはgRNAとの境界面は、領域またはドメインが、実質的にCas9活性に影響を及ぼさないか、またはCas9活性を低下させない欠失の候補であることを示す。
【0312】
(p) REC最適化されたCas9分子およびCas9ポリペプチド
REC最適化Cas9分子またはREC最適化Cas9ポリペプチドは、この用語が本明細書において使用される場合、REC2ドメインとRE1CTドメインの一方または両方の欠失(まとめて、RECの欠失)を含むCas9分子またはCas9ポリペプチドを指し、欠失は、同種ドメインのアミノ酸残基の少なくとも10%を含む。REC最適化Cas9分子またはCas9ポリペプチドは、eaCas9分子もしくはeaCas9ポリペプチド、またはeiCas9分子もしくはeiCas9ポリペプチドでもよい。例示的REC最適化Cas9分子またはREC最適化Cas9ポリペプチドは、(a)(i)REC2の欠失;(ii)REC1CTの欠失;または(iii)REC1SUBの欠失より選択される欠失を含む。
【0313】
任意で、リンカーは、欠失に隣接するアミノ酸残基の間に配置される。いくつかの態様では、Cas9分子またはCas9ポリペプチドは、欠失を1つのみ、または欠失を2つのみ含む。Cas9分子またはCas9ポリペプチドは、REC2の欠失およびREC1CTの欠失を含むことができる。Cas9分子またはCas9ポリペプチドは、REC2の欠失およびREC1SUBの欠失を含むことができる。
【0314】
一般に、欠失は、同種ドメインのアミノ酸の少なくとも10%を含むと考えられ、例えば、REC2の欠失は、REC2ドメインのアミノ酸の少なくとも10%を含むと考えられる。欠失は、その同種ドメインの少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、または90%のアミノ酸残基;その同種ドメインの全てのアミノ酸残基;その同種ドメインの外側のアミノ酸残基;その同種ドメインの外側の複数のアミノ酸残基;その同種ドメインに対して直ぐN末端にあるアミノ酸残基;その同種ドメインに対して直ぐC末端にあるアミノ酸残基;その同種対して直ぐN末端にあるアミノ酸残基およびその同種ドメイン直ぐC末端にあるアミノ酸残基;その同種ドメインに対してN末端にある、複数の、例えば5、10、15、または20個までのアミノ酸残基;その同種ドメインに対してC末端にある、複数の、例えば5、10、15、または20個までのアミノ酸残基;その同種ドメインに対してN末端にある、複数の例えば、5、10、15、または20個までのアミノ酸残基、およびその同種ドメインに対してC末端にある、複数の例えば、5、10、15、または20個までのアミノ酸残基を含むことができる。
【0315】
いくつかの態様では、欠失は、その同種ドメイン;その同種ドメインのN末端アミノ酸残基;その同種ドメインのC末端アミノ酸残基を越えて延びない。
【0316】
REC最適化Cas9分子またはREC最適化Cas9ポリペプチドは、欠失に隣接するアミノ酸残基の間に配置されたリンカーを含むことができる。REC最適化Cas9分子中のRECの欠失に隣接するアミノ酸残基の間で使用するのに適したリンカーは、本明細書において記載される。
【0317】
いくつかの態様では、REC最適化Cas9分子またはREC最適化Cas9ポリペプチドは、任意のREC欠失および関連したリンカーを除いて、天然に存在するCas9、例えば、黄色ブドウ球菌のCas9分子、化膿性連鎖球菌のCas9分子、またはC.ジェジュニのCas9分子のアミノ酸配列と少なくとも50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、99、または100%の相同性を有するアミノ酸配列を含む。
【0318】
いくつかの態様では、REC最適化Cas9分子またはREC最適化Cas9ポリペプチドは、任意のRECの欠失および関連したリンカーを除いて、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、または25個以下のアミノ酸残基が天然に存在するCas9、例えば、黄色ブドウ球菌のCas9分子、化膿性連鎖球菌のCas9分子、またはC.ジェジュニのCas9分子のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を含む。
【0319】
いくつかの態様では、REC最適化Cas9分子またはREC最適化Cas9ポリペプチドは、任意のRECの欠失および関連したリンカーを除いて、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、または25%以下のアミノ酸残基が天然に存在するCas9、例えば、黄色ブドウ球菌のCas9分子、化膿性連鎖球菌のCas9分子、またはC.ジェジュニのCas9分子のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を含む。
【0320】
配列比較については、典型的には、1つの配列が、試験配列が比較される参照配列として働く。配列比較アルゴリズムを使用する場合は、試験配列および参照配列をコンピュータに入力し、必要であればサブシーケンス座標を指定し、配列アルゴリズムのプログラムパラメーターを指定する。デフォルトのプログラムパラメーターを使用することができ、または代替のパラメーターを指定することができる。次いで、配列比較アルゴリズムによって、プログラムパラメーターに基づいて、参照配列に対する試験配列の配列同一性パーセントを計算する。比較のための配列のアライメント方法は周知である。比較のための配列の最適なアライメントは、例えば、Smith and Waterman, (1970) Adv. Appl. Math. 2:482cの局地的相同性アルゴリズムによって、Needleman and Wunsch, (1970) J. Mol. Biol. 48:443の相同性アライメントアルゴリズムによって、Pearson and Lipman, (1988) Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85:2444の類似性検索法によって、これらのアルゴリズムのコンピュータによる実装(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WIのGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)によって、または手動アライメントおよび目視検査によって行うことができる(例えば、Brent et al., (2003) Current Protocols in Molecular Biologyを参照されたい)。
【0321】
配列同一性パーセントおよび配列類似性パーセントを決定するのに適したアルゴリズムの2つの例は、BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムであり、これらは、Altschul et al., (1977) Nuc. Acids Res. 25:3389-3402;およびAltschul et al., (1990) J. Mol. Biol. 215:403-410にそれぞれ記載されている。BLAST解析を行ためのソフトウェアは、国立バイオテクノロジー情報センターを通して公的に利用可能である。
【0322】
2つのアミノ酸配列の間の同一性パーセントは、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているE. Meyers and W. Miller, (1988) Comput. Appl. Biosci. 4:11-17)のアルゴリズムを使用して、PAM120重み付け残基表(PAM120 weight residue table)、12のギャップ長ペナルティ、および4のギャップペナルティを使用して、決定することもできる。さらに、2つのアミノ酸配列の間の同一性パーセントは、GCGソフトウェアパッケージ(www.gcg.comで利用可能)のGAPプログラムに組み込まれているNeedleman and Wunsch (1970) J. Mol. Biol. 48:444-453)のアルゴリズムを使用して、Blossom 62行列またはPAM250行列のいずれか、ならびに16、14、12、10、8、6、または4のギャップの重み(gap weight)、および1、2、3、4、5、または6の長さの重み(length weight)を使用して、決定することができる。
【0323】
例示的なREC欠失についての配列情報は、例えば、国際PCT特許出願公開第WO2015/161276号、第WO2017/193107号、および第WO2017/093969号に記載されている83個の天然に存在するCas9オルソログについて提供されている。
【0324】
(q) Cas9分子をコードする核酸
本明細書において提供される態様のいずれかに関して、Cas9分子またはCas9ポリペプチド、例えば、eaCas9分子またはeaCas9ポリペプチドをコードする核酸を使用することができる。
【0325】
Cas9分子またはCas9ポリペプチドをコードする例示的核酸は、Cong et al., Science 2013, 399(6121):819-823;Wang et al., Cell 2013, 153(4):910-918;Mali et al., Science 2013, 399(6121):823-826;Jinek et al., Science 2012, 337(6096):816-821、およびWO2015/161276、例えばその中の図8に記載されている。
【0326】
いくつかの態様では、Cas9分子またはCas9ポリペプチドをコードする核酸は、合成核酸配列でもよい。例えば、合成核酸分子は化学的に修飾されていてもよい。いくつかの態様では、Cas9 mRNAは、以下の特性の1つまたは複数(例えば、全て)を有する:Cas9 mRNAは、キャップされている、ポリアデニル化されている、5-メチルシチジンおよび/またはプソイドウリジンで置換されている。
【0327】
さらに、または代わりに、合成核酸配列をコドン最適化することができ、例えば、少なくとも1つの非共通コドンまたはあまり共通していないコドンが共通コドンに置き換えられている。例えば、合成核酸は、例として、例えば本明細書において記載される哺乳類発現システムにおける発現について最適化された、最適化されたメッセンジャーmRNAの合成を導くことができる。
【0328】
さらに、または代わりに、Cas9分子またはCas9ポリペプチドをコードする核酸は、核局在化配列(NLS)を含むことができる。核局在化配列は公知である。
【0329】
いくつかの態様において、Cas9分子は、SEQ ID NO:121、123、もしくは125のいずれかであるかもしくはそれを含む配列、またはSEQ ID NO:121、123、もしくは125のいずれかに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれよりも高い配列同一性を示す配列によってコードされる。いくつかの態様において、Cas9分子は、SEQ ID NO:122、124、もしくは125のいずれか、またはSEQ ID NO:122、123、もしくは125のいずれかに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれよりも高い配列同一性を示す配列であるか、またはそれを含む。SEQ ID NO:121は、化膿性連鎖球菌のCas9分子をコードする例示的なコドン最適化核酸配列である。SEQ ID NO:122は、対応する化膿性連鎖球菌Cas9分子のアミノ酸配列である。SEQ ID NO:123は、髄膜炎菌のCas9分子をコードする例示的なコドン最適化核酸配列である。SEQ ID NO:124は、対応する髄膜炎菌Cas9分子のアミノ酸配列である。SEQ ID NO:125は、黄色ブドウ球菌Cas9のCas9分子をコードする例示的なコドン最適化核酸配列である。SEQ ID NO:126は、黄色ブドウ球菌Cas9分子のアミノ酸配列である。
【0330】
前述のCas9配列いずれかがペプチドまたはポリペプチドとC末端で融合される場合、終止コドンが除去されるであろうことが理解されよう。
【0331】
(r) 他のCas分子およびCasポリペプチド
本明細書において開示される本発明を実施するために、様々なタイプのCas分子またはCasポリペプチドを使用することができる。いくつかの態様では、タイプII CasシステムのCas分子が使用される。他の態様では、他のCasシステムのCas分子が使用される。例えば、タイプIまたはタイプIII Cas分子が使用され得る。例示的Cas分子(およびCasシステム)は、例えば、Haft et al., PLoS Computational Biology 2005, 1(6): e60およびMakarova et al., Nature Review Microbiology 2011, 9:467-477に記載されており、両方の参考文献の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。例示的Cas分子(およびCasシステム)は、表3にも示される。
【0332】
(表3)Casシステム
【0333】
(iii) Cpf1
いくつかの態様では、ガイドRNAまたはgRNAは、細胞のゲノム配列またはエピソーム配列などの標的配列への、Cas9またはCpf1などのRNA誘導型ヌクレアーゼの特異的結合ターゲティングを促進する。一般に、gRNAは、単分子(単一RNA分子を含み、あるいはキメラと称される)またはモジュラー(1つより多い、典型的には2つの別々のRNA分子、例えば、crRNAおよびtracrRNAを含み、これらは、通常、いくつかの態様では二本鎖化によって互いに結合している)であり得る。gRNAおよびその構成要素は、いくつかの態様では、Briner et al.(Molecular Cell 56(2), 333-339, October 23, 2014 (Briner)。これは参照により組み入れられる)およびCotta-Ramusinoにおいて、文献全体にわたって記載されている。
【0334】
ガイドRNAは、単分子であろうとモジュラーであろうと、一般に、完全にまたは部分的に標的に相補的であるターゲティングドメインを含み、典型的には、10~30ヌクレオチドの長さであり、ある特定の態様では、16~24ヌクレオチドの長さ(いくつかの態様では、16、17、18、19、20、21、22、23、または24ヌクレオチドの長さ)である。いくつかの局面では、ターゲティングドメインは、Cas9 gRNAの場合はgRNAの5'末端またはその近くにあり、Cpf1 gRNAの場合は3'末端またはその近くにある。前述の説明はCas9とともに使用するためのgRNAに着目してきたが、ここまでに説明したものといくつかの点で異なるgRNAを利用する他のRNA誘導型ヌクレアーゼが発見もしくは発明されている(または将来的に発見もしくは発明され得る)ことを理解されたい。いくつかの態様では、Cpf1(「CRISPR from Prevotella and Franciscella 1」)は、機能するためにtracrRNAを必要としない、最近発見されたRNA誘導型ヌクレアーゼである。(Zetsche et al., 2015, Cell 163, 759-771 October 22, 2015 (Zetsche I)。参照により本明細書に組み入れられる)。Cpf1ゲノム編集システムで使用するためのgRNAは、一般に、ターゲティングドメインおよび相補性ドメイン(あるいは、「ハンドル」と称される)を含む。Cpf1とともに使用するためのgRNAでは、ターゲティングドメインは、Cas9 gRNAに関して上で述べた5'末端ではなく、通常3'末端またはその近くに存在する(ハンドルは、Cpf1 gRNAの5'末端またはその近くにある)ことも留意されたい。
【0335】
異なる原核生物種由来のgRNAの間で、またはCpf1とCas9 gRNAの間で、構造的差異が存在する可能性があるが、gRNAが作動する原理は一般に一定である。作動のこの一貫性のために、gRNAをそのターゲティングドメイン配列によって大まかに定義することができ、当業者は、単分子もしくはキメラのgRNA、または1つもしくは複数の化学修飾および/もしくは配列修飾(置換、付加ヌクレオチド、トランケーションなど)を含むgRNAを含めた任意の適切なgRNAに、所与のターゲティングドメイン配列を組み込むことができることを認識するであろう。したがって、本開示のいくつかの局面では、gRNAは、単にそのターゲティングドメイン配列の点から記載され得る。
【0336】
より一般的には、本開示のいくつかの局面は、複数のRNA誘導型ヌクレアーゼを使用して実行することができる、システム、方法、および組成物に関する。別段の指定がない限り、gRNAという用語は、Cas9またはCpf1の特定の種に適合するgRNAだけでなく、任意のRNA誘導型ヌクレアーゼとともに使用することができる任意の適切なgRNAを包含すると理解されるべきである。例示として、gRNAという用語は、ある特定の態様では、クラス2のCRISPRシステム、例えば、タイプIIもしくはタイプV、またはCRISPRシステムに存在する任意のRNA誘導型ヌクレアーゼ、またはそれらに由来する、もしくはそれらから適合されたRNA誘導型ヌクレアーゼとともに使用するためのgRNAを含むことができる。
【0337】
本セクションで記載されるある特定の例示的修飾は、非限定的に5'末端もしくはその近く(例えば、5'末端の1~10、1~5、もしくは1~2ヌクレオチド以内)および/または3'末端もしくはその近く(例えば、3'末端の1~10、1~5、もしくは1~2ヌクレオチド以内)を含めた、gRNA配列内の任意の位置に含まれ得る。場合によっては、修飾は、機能的モチーフ、例えば、Cas9 gRNAの反復-抗反復二本鎖、Cas9またはCpf1 gRNAのステムループ構造、および/またはgRNAのターゲティングドメインの中に配置される。
【0338】
RNA誘導型ヌクレアーゼとしては、限定されないが、天然に存在するクラス2 CRISPRヌクレアーゼ、例えばCas9およびCpf1、ならびにそれらに由来するか、またはそれらから得られる他のヌクレアーゼが挙げられる。機能面では、RNA誘導型ヌクレアーゼは、(a)gRNAと相互作用する(例えば、複合体化する);および(b)gRNAとともに、(i)gRNAのターゲティングドメインに相補的である配列、および任意で、(ii)以下により詳細に記載される、「プロトスペーサー隣接モチーフ」または「PAM」と称されるさらなる配列を含むDNAの標的領域と結合し、任意で該標的領域を開裂させるかまたは改変する、ヌクレアーゼと定義される。以下の例が例示するように、RNA誘導型ヌクレアーゼは、同じPAM特異性または開裂活性を有する個々のRNA誘導型ヌクレアーゼ間で変動がある可能性があるとしても、そのPAM特異性および開裂活性によって、大まかに定義することができる。当業者は、本開示のいくつかの局面は、ある特定のPAM特異性および/または開裂活性を有する任意の適切なRNA誘導型ヌクレアーゼを使用して実行することができる、システム、方法、および組成物に関することを認識するであろう。このような理由で、別段の指定がない限り、RNA誘導型ヌクレアーゼという用語は、総称的な用語として理解されるべきであり、RNA誘導型ヌクレアーゼの任意の特定のタイプ(例えば、Cas9対Cpf1)、種(例えば、化膿性連鎖球菌対黄色ブドウ球菌)またはバリエーション(例えば、完全長対トランケート型または分割型;天然に存在するPAMの特異性対操作されたPAMの特異性など)に限定されるべきではない。
【0339】
PAMおよびプロトスペーサーの特定の配列配向の認識に加えて、いくつかの態様におけるRNA誘導型ヌクレアーゼは、特定のPAM配列を認識することもできる。いくつかの態様では、黄色ブドウ球菌のCas9は、一般にNNGRRTまたはNNGRRVのPAM配列を認識し、N残基は、gRNAターゲティングドメインによって認識される領域の直ぐ3'にある。化膿性連鎖球菌のCas9は、一般にNGG PAM配列を認識する。およびF.ノビシダ(F. novicida)のCpf1は、一般にTTN PAM配列を認識する。
【0340】
crRNAとTTTN PAM配列を含む二本鎖(ds)DNA標的との複合体におけるアシダミノコッカス(Acidaminococcus)種のCpf1の結晶構造が、Yamano et al. (Cell. 2016 May 5;165(4): 949-962 (Yamano)。参照により本明細書に組み入れられる)によって解明された。Cpf1は、Cas9のように、2つのローブ:REC(認識)ローブおよびNUC(ヌクレアーゼ)ローブを有する。RECローブはREC1およびREC2ドメインを含み、これらは、いかなる公知のタンパク質構造に対しても類似性がない。一方、NUCローブは3つのRuvCドメイン(RuvC-I、-IIおよび-III)ならびに1つのBHドメインを含む。しかし、Cas9と対照的に、Cpf1 RECローブはHNHドメインを欠き、公知のタンパク質構造と同様に類似性がない他のドメイン:構造的にユニークな1つのPIドメイン、3つのウェッジ(WED)ドメイン(WED-I、-II、および-III)、ならびに1つのヌクレアーゼ(Nuc)ドメインを含む。
【0341】
Cas9とCpf1は構造および機能に類似性を有するが、ある特定のCpf1活性は、いかなるCas9ドメインとも類似していない構造ドメインによって媒介されることを理解されたい。いくつかの態様では、標的DNAの相補鎖の開裂は、Cas9のHNHドメインと配列的および空間的に異なるNucドメインによって媒介されるように思われる。さらに、Cpf1 gRNAの非ターゲティング部分(ハンドル)は、Cas9 gRNAの反復:抗反復二本鎖によって形成されるステムループ構造ではなく、シュードノット構造をとる。
【0342】
RNA誘導型ヌクレアーゼ、例えば、Cas9、Cpf1、またはそれらの機能的断片をコードする核酸は、本明細書において提供される。RNA誘導型ヌクレアーゼをコードする例示的核酸は以前に記載されている(例えば、Cong 2013;Wang 2013;Mali 2013;Jinek 2012を参照されたい)。
【0343】
b. ゲノム編集アプローチ
一般に、本明細書に記載される方法による任意の遺伝子の変更は、任意の機構によって媒介され得ること、およびいずれの方法も、特定の機構に限定されないことが、理解されるべきである。遺伝子の変更に関連し得る例示的な機構には、非相同末端結合(例えば、古典的または代替的)、マイクロホモロジー媒介末端結合(MMEJ)、相同性指向修復(例えば、内在性ドナー鋳型媒介性)、合成依存的鎖アニーリング(SDSA)、一本鎖アニーリング、一本鎖侵入、一本鎖切断修復(SSBR)、ミスマッチ修復(MMR)、塩基除去修復(BER)、鎖間架橋(ICL)、損傷乗り越え合成(TLS)、または誤りのない複製後修復(PRR)が含まれるが、それらに限定されない。TGFBR2遺伝子座の一方または両方のアレルの標的ノックアウトのための例示的な方法が、本明細書に記載される。
【0344】
1)遺伝子ターゲティングのためのNHEJアプローチ
本明細書に記載されるように、ヌクレアーゼ誘導性の非相同末端結合(NHEJ)を、標的遺伝子特異的ノックアウトに用いることができる。ヌクレアーゼ誘導性のNHEJをまた、関心対象の遺伝子において配列挿入を取り去る(例えば、欠失させる)ために用いることもできる。
【0345】
理論に拘束されることは望まないが、いくつかの態様において、本明細書に記載される方法に関連するゲノムの変更は、ヌクレアーゼ誘導性のNHEJおよびNHEJ修復経路の誤りがちな性質に依拠すると考えられる。NHEJは、2つの末端を互いに連結することによって、DNA中の二本鎖切断を修復する;しかし、一般に、元の配列は、2つの適合性の末端が、正確にそれらが二本鎖切断によって形成されたように完全にライゲーションされた場合にのみ、回復される。二本鎖切断のDNA末端は、頻繁に、酵素プロセシングの対象であり、末端の再連結の前に、一方または両方の鎖で、ヌクレオチドの付加または除去を結果としてもたらす。これは、NHEJ修復の部位でのDNA配列における挿入および/または欠失(インデル)変異の存在を結果としてもたらす。これらの変異の三分の二は、典型的には、リーディングフレームを変更し、したがって、非機能的なタンパク質を生じる。追加的に、リーディングフレームを維持するが、有意な量の配列を挿入するかまたは欠失させる変異は、タンパク質の機能性を破壊し得る。重大な機能ドメインにおける変異は、タンパク質の重大ではない領域における変異よりも耐容性が低い可能性があるため、これは遺伝子座依存的である。NHEJによって生成されるインデル変異は、天然では予測不可能である;しかし、恐らくマイクロホモロジーの小さな領域のために、所与の切断部位では、ある特定のインデル配列が好まれ、集団において大きな比率を占める。欠失の長さは、広く変動することができ;最も一般的には、1~50 bpの範囲であるが、100~200 bpよりも長くに容易に達し得る。挿入は、より短い傾向があり、多くの場合、切断部位のすぐ周囲の配列の短い重複を含む。しかし、大きな挿入を得ることが可能であり、これらの場合に、挿入された配列は、多くの場合、ゲノムの他の領域または細胞中に存在するプラスミドDNAが出所である。
【0346】
NHEJは、変異誘発プロセスであるため、特定の最終配列の生成が必要とされない限り、小さな配列モチーフを欠失させるために用いることもできる。二本鎖切断が短い標的配列の近くにターゲティングされる場合に、NHEJ修復によって引き起こされる欠失変異は、しばしば望ましくないヌクレオチドにわたり、したがってそれを取り去る。より大きなDNAセグメントの欠失のために、配列の各々の側に1つの、2つの二本鎖切断を導入することは、介在配列全体の除去を伴う末端の間のNHEJを結果としてもたらし得る。いくつかの態様では、gRNAのペアを、2つの二本鎖切断を導入するために用いることができ、これは、2つの切断の間の介在配列の欠失を結果としてもたらす。
【0347】
これらのアプローチの両方を、特異的なDNA配列を欠失させるために用いることができる;しかし、NHEJの誤りがちな性質は、依然として修復の部位でインデル変異を生じる可能性がある。
【0348】
二本鎖を開裂するeaCas9分子および一本鎖、またはニッカーゼ、eaCas9分子の両方を、NHEJ媒介性インデルを生成するために、本明細書に記載される方法および組成物において用いることができる。関心対象の遺伝子、例えば、コード領域、例えば、遺伝子の初期コード領域にターゲティングされるNHEJ媒介性インデルを、関心対象の遺伝子をノックアウトする(すなわち、その発現を排除する)ために用いることができる。例えば、関心対象の遺伝子の初期コード領域には、転写開始部位の直後、コード配列の第1エクソン内、または転写開始部位の500 bp以内(例えば、500、450、400、350、300、250、200、150、100、もしくは50 bp未満)の配列が含まれる。
【0349】
いくつかの態様において、NHEJ媒介性インデルは、TGFBR2遺伝子座中に導入される。遺伝子をターゲティングする個々のgRNAまたはgRNAペアは、Cas9二本鎖ヌクレアーゼまたは一本鎖ニッカーゼと共に提供される。
【0350】
(1) 標的位置に対する二本鎖切断または一本鎖切断の配置
NHEJ媒介性インデルを誘導する目的で、gRNAおよびCas9ヌクレアーゼが二本鎖切断を生成するいくつかの態様において、gRNA、例えば、単分子(もしくはキメラ)またはモジュラーgRNAは、標的位置のヌクレオチドに極めて近接して1つの二本鎖切断を位置づけるように構成される。いくつかの態様において、開裂部位は、標的位置から0~30 bp離れている(例えば、標的位置から30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1 bp未満にある)。
【0351】
NHEJ媒介性インデルを誘導する目的で、Cas9ニッカーゼと複合体化している2つのgRNAが2つの一本鎖切断を誘導するいくつかの態様において、2つのgRNA、例えば、独立して、単分子(もしくはキメラ)またはモジュラーgRNAは、標的位置のヌクレオチドにNHEJ修復を提供するために2つの一本鎖切断を位置づけるように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、本質的に二本鎖切断を模倣して、異なる鎖上の、同じ位置にまたは互いの数ヌクレオチド以内に、切れ目を位置づけるように構成される。いくつかの態様において、より近いニックは、標的位置から0~30 bp離れており(例えば、標的位置から30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1 bp未満にあり)、2つのニックは、互いの25~55 bp以内(例えば、25~50、25~45、25~40、25~35、25~30、50~55、45~55、40~55、35~55、30~55、30~50、35~50、40~50、45~50、35~45、または40~45 bp)であり、かつ互いから100 bp以下(例えば、90、80、70、60、50、40、30、20、または10 bp以下)離れている。いくつかの態様において、gRNAは、標的位置のヌクレオチドのいずれかの側に一本鎖切断を配置するように構成される。
【0352】
二本鎖を開裂するeaCas9分子および一本鎖、またはニッカーゼ、eaCas9分子の両方を、標的位置の両側に切断を生成するために、本明細書に記載される方法および組成物において用いることができる。二本鎖切断またはペアの一本鎖切断が、2つの切れ目の間の核酸配列を取り去るために、標的位置の両側に生成されてもよい(例えば、2つの切断の間の領域が欠失する)。いくつかの態様では、2つのgRNA、例えば、独立して、単分子(もしくはキメラ)またはモジュラーgRNAが、標的位置の両側に二本鎖切断を位置づけるように構成される。代替の態様では、3つのgRNA、例えば、独立して、単分子(もしくはキメラ)またはモジュラーgRNAが、標的位置のいずれかの側に、二本鎖切断(すなわち、1つのgRNAと cas9ヌクレアーゼとの複合体)および2つの一本鎖切断またはペアの一本鎖切断(すなわち、2つのgRNAとCas9ニッカーゼとの複合体)を位置づけるように構成される。別の態様では、4つのgRNA、例えば、独立して、単分子(もしくはキメラ)またはモジュラーgRNAが、標的位置のいずれかの側に、2つのペアの一本鎖切断(すなわち、2つのペアの、2つのgRNAとCas9ニッカーゼとの複合体)を生成するように構成される。二本鎖切断またはペア中の2つの一本鎖ニックのうちの近い方は、理想的には、標的位置の0~500 bp以内(例えば、標的位置から450、400、350、300、250、200、150、100、50、または25 bp以下)であろう。ニッカーゼが用いられる場合、ペア中の2つのニックは、互いの25~55 bp以内(例えば、25~50、25~45、25~40、25~35、25~30、50~55、45~55、40~55、35~55、30~55、30~50、35~50、40~50、45~50、35~45、または40~45 bp)であり、かつ互いから100 bp以下(例えば、90、80、70、60、50、40、30、20、または10 bp以下)離れている。
【0353】
2)標的ノックダウン
DNAレベルで遺伝子を変異させることによって発現を永久的に排除するかまたは低減させる、CRISPR/Cas媒介性遺伝子ノックアウトとは異なり、CRISPR/Casノックダウンは、人工転写因子の使用による遺伝子発現の一時的な低減を可能にする。Cas9タンパク質の両方のDNA開裂ドメインにおける鍵となる変異残基(例えば、D10AおよびH840A変異)は、触媒作用が不活性のCas9(dead Cas9またはdCas9としても知られているeiCas9)の生成を結果としてもたらす。触媒作用が不活性のCas9は、gRNAと複合体化し、そのgRNAのターゲティングドメインによって指定されるDNA配列に局在化するが、標的DNAを開裂させない。エフェクタードメイン、例えば転写抑制ドメインに対するdCas9の融合は、gRNAによって指定される任意のDNA部位へのエフェクターの動員を可能にする。コード配列中の初期領域に動員された時にeiCas9自体が転写を遮断できることが示されているが、転写抑制ドメイン(例えば、KRAB、SID、またはERD)をCas9に融合させること、およびそれを遺伝子のプロモーター領域に動員することによって、より堅牢な抑制を達成することができる。プロモーターのDNアーゼI高感受性領域をターゲティングすることは、これらの領域が、Cas9タンパク質に接触できる可能性がより高く、かつ内在性転写因子に対する部位を有する可能性もより高いため、より効率的な遺伝子の抑制または活性化を生じ得る。特に遺伝子抑制のためには、内在性転写因子の結合部位の遮断が、遺伝子発現の下方制御を助長するであろうことが、本明細書において企図される。別の態様では、eiCas9を、クロマチン修飾タンパク質に融合させることができる。クロマチン状態を変えることは、標的遺伝子の発現の減少を結果としてもたらし得る。
【0354】
いくつかの態様において、gRNA分子は、公知の転写応答エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサーなど)、公知の上流活性化配列(UAS)、および/または標的DNAの発現を調節できる疑いがある未知のもしくは公知の機能の配列を標的とすることができる。
【0355】
いくつかの態様では、CRISPR/Cas媒介性遺伝子ノックダウンを、1つまたは複数のT細胞で発現される遺伝子の発現を低減させるために用いることができる。本明細書に記載されるeiCas9またはeiCas9融合タンパク質がTGFBR2遺伝子座をノックダウンするために用いられるいくつかの態様では、両方のまたはすべての遺伝子を標的とする個々のgRNAまたはgRNAペアが、eiCas9またはeiCas9融合タンパク質と共に提供される。
【0356】
3)一本鎖アニーリング
一本鎖アニーリング(SSA)は、標的核酸中に存在する2つの反復配列の間の二本鎖切断を修復する、別のDNA修復プロセスである。SSA経路によって利用される反復配列は、一般に、30ヌクレオチド超の長さである。標的核酸の両鎖上の反復配列を明らかにするように、切断末端での切除が起こる。切除後に、反復配列を含有する一本鎖突出が、RPAタンパク質でコーティングされて、反復配列の、例えばそれら自身に対する不適切なアニーリングを阻止する。RAD52は、突出上の反復配列の各々に結合し、配列を整列させて、相補的反復配列のアニーリングを可能にする。アニーリング後に、突出の一本鎖フラップが切れる。新たなDNA合成が任意のギャップを埋め、ライゲーションがDNA二重鎖を回復させる。プロセシングの結果として、2つの反復の間のDNA配列が欠失する。欠失の長さは、利用される2つの反復の場所、および切除の経路または処理能力を含む、多くの要因に依存し得る。
【0357】
SSAは、HDR経路とは対照的に、標的核酸配列を変更するかまたは修正するために鋳型核酸を必要としない。その代わりに、相補的反復配列が利用される。
【0358】
4)他のDNA修復経路
A)SSBR(一本鎖切断修復)
ゲノム中の一本鎖切断(SSB)は、上記で議論されたDSB修復機構とは別個の機構である、SSBR経路によって修復される。SSBR経路は、4つの主な段階:SSB検出、DNA末端プロセシング、DNAギャップ充填、およびDNAライゲーションを有する。より詳細な説明は、Caldecott, Nature Reviews Genetics 9, 619-631 (August 2008)に示されており、要約を本明細書に示す。
【0359】
第1段階において、SSBが形成する時に、PARP1および/またはPARP2は、切断を認識し、修復の仕組みを動員する。DNA切断部でのPARP1の結合および活性は一過性であり、損傷でのSSBrタンパク質複合体の限局性の蓄積また安定性を促進することによって、SSBrを加速するように見える。恐らく、これらのSSBrタンパク質のうちで最も重要なのは、DNAの3'および5'末端のクリーニングを担うタンパク質を含む、SSBrプロセスの複数の酵素成分と相互作用する、それを安定化する、かつそれを刺激する分子スキャフォールドとして機能する、XRCC1である。いくつかの態様において、XRCC1は、末端プロセシングを促進する数種類のタンパク質(DNA ポリメラーゼβ、PNK、ならびに3つのヌクレアーゼAPE1、APTX、およびAPLF)と相互作用する。APE1は、エンドヌクレアーゼ活性を有する。APLFは、エンドヌクレアーゼ活性および3'から5'へのエキソヌクレアーゼ活性を示す。APTXは、エンドヌクレアーゼ活性および3'から5'へのエキソヌクレアーゼ活性を有する。
【0360】
すべてではないが、大部分のSSBの3'末端および/または5'末端が「傷害を受けている」ため、この末端プロセシングは、SSBRの重要な段階である。末端プロセシングは、一般に、末端がライゲーション可能になるように、傷害を受けた3'末端をヒドロキシル化状態に、かつ、かつ/または傷害を受けた5'末端をリン酸部分に回復させることを含む。損傷を受けた3'末端をプロセシングすることができる酵素には、PNKP、APE1、およびTDP1が含まれる。傷害を受けた5'末端をプロセシングすることができる酵素には、PNKP、DNAポリメラーゼβ、およびAPTXが含まれる。LIG3(DNAリガーゼIII)もまた、末端プロセシングに参加することができる。ひとたび末端がクリーニングされると、ギャップ充填が起こり得る。
【0361】
DNAギャップ充填段階で、典型的に存在するタンパク質は、PARP1、DNAポリメラーゼβ、XRCC1, FEN1(フラップエンドヌクレアーゼ1)、DNAポリメラーゼδ/ε、PCNA、およびLIG1である。短いパッチ修復および長いパッチ修復の、2つの方法のギャップ充填がある。短いパッチ修復は、失われている単一ヌクレオチドの挿入を含む。いくつかのSSBでは、「ギャップ充填」は、2つ以上のヌクレオチドを置き換え続ける可能性がある(最大で12塩基の置き換えが報告されている)。FEN1は、置き換えられた5'残基を取り去るエンドヌクレアーゼである。Polβを含む複数のDNAポリメラーゼが、SSBの修復に関与し、DNAポリメラーゼの選択は、SSBの供給源およびタイプによって影響を受ける。
【0362】
第4の段階において、LIG1(リガーゼI)またはLIG3(リガーゼIII)などのDNAリガーゼは、末端の連結を触媒する。短いパッチ修復はリガーゼIIIを用い、長いパッチ修復はリガーゼIを用いる。
【0363】
時には、SSBRは、複製と共役している。この経路は、CtIP、MRN、ERCC1、およびFEN1の1つまたは複数を含むことができる。SSBRを促進し得る追加の因子には、以下が含まれる:aPARP、PARP1、PARP2、PARG、XRCC1、DNAポリメラーゼb、DNAポリメラーゼd、DNAポリメラーゼe、PCNA、LIG1、PNK、PNKP、APE1、APTX、APLF、TDP1、LIG3、FEN1、CtIP、MRN、およびERCC1。
【0364】
B)MMR(ミスマッチ修復)
細胞は、3つの除去修復経路:MMR、BER、およびNERを含有する。除去修復経路は、それらが典型的には、DNAの一方の鎖上の損傷を認識し、次いで、エキソ/エンドヌクレアーゼが損傷を取り去って1~30ヌクレオチドのギャップを残し、それが、その後DNAポリメラーゼによって埋められて、最終的にリガーゼでシールされる点で、共通の特徴を有する。より完全な像は、Li, Cell Research (2008) 18:85-98に示されており、要約を本明細書に提供する。
【0365】
ミスマッチ修復(MMR)は、ミスペアのDNA塩基に対して作用する。MSH2/6複合体またはMSH2/3複合体は両方とも、ミスマッチ認識および修復の開始において重要な役割を果たす、ATPアーゼ活性を有する。MSH2/6は、塩基-塩基ミスマッチを優先的に認識し、1または2ヌクレオチドのミスペアを特定するが、MSH2/3は、より大きなIDミスペアを優先的に認識する。
【0366】
hMLH1は、hPMS2とヘテロ二量体化してhMutLαを形成し、これは、ATPアーゼ活性を保有しており、MMRの複数の工程に重要である。それは、EXO1を含む3'ニック指向性MMRにおいて重要な役割を果たす、PCNA/複製因子C(RFC)依存性エンドヌクレアーゼ活性を保有する。(EXO1は、HRおよびMMRの両方に参加する)。それは、ミスマッチ誘発性切除の終結を制御する。リガーゼIは、この経路に関連があるリガーゼである。MMRを促進し得る追加の因子には、以下が含まれる:EXO1、MSH2、MSH3、MSH6、MLH1、PMS2、MLH3、DNA Pol d、RPA、HMGB1、RFC、およびDNAリガーゼI。
【0367】
C)塩基除去修復(BER)
塩基除去修復(BER)経路は、細胞周期を通して活性を有し;ゲノムから小さな非ヘリックスのゆがんだ塩基損傷を取り去ることを主として担う。対照的に、関連したヌクレオチド除去修復経路(次のセクションで議論される)は、かさ高いヘリックスのゆがんだ損傷を修復する。より詳細な説明は、Caldecott, Nature Reviews Genetics 9, 619-631 (August 2008)に示されており、要約を本明細書に示す。
【0368】
DNA塩基傷害時に、塩基除去修復(BER)が開始され、プロセスは、以下の5つの主な工程に単純化することができる:(a)傷害を受けたDNA塩基の除去;(b)その後の塩基部位の切開;(c)DNA末端のクリーンアップ;(d)修復ギャップ中への正しいヌクレオチドの挿入;および(e)DNA骨格中の残ったニックのライゲーション。これらの最後の工程は、SSBRに類似している。
【0369】
第1の工程において、傷害特異的DNAグリコシラーゼは、塩基を糖リン酸骨格に連結するN-グリコシド結合の開裂によって傷害を受けた塩基を除去する。次いで、APエンドヌクレアーゼ-1(APE1)または関連したリアーゼ活性を有する二機能性DNAグリコシラーゼが、ホスホジエステル骨格を切開して、DNA一本鎖切断(SSB)を作り出す。BERの第3の工程は、DNA末端のクリーンアップを含む。BERにおける第4の工程は、新たな相補的ヌクレオチドを修復ギャップ中に付加するPolβによって行われ、最終工程において、XRCC1/リガーゼIIIが、DNA骨格中の残ったニックをシールする。これは、傷害を受けたDNA塩基の大多数(約80%)が修復される短いパッチBER経路を完了する。しかし、工程3における5'末端が末端プロセシング活性に対して耐性である場合には、Polβによる1つのヌクレオチドの挿入後に、次いで複製DNAポリメラーゼであるPolδ/εへのポリメラーゼスイッチがあり、これは次いで、DNA修復ギャップ中に約2~8個のさらなるヌクレオチドを付加する。これは、5'-フラップ構造を作り出し、これは、処理能力因子である増殖細胞核抗原(PCNA)に関連するフラップエンドヌクレアーゼ-1(FEN-1)によって認識され、除去される。次いで、DNAリガーゼIが、DNA骨格中の残ったニックをシールし、長いパッチBERを完了する。BER経路を促進し得る追加の因子には、以下が含まれる:DNAグリコシラーゼ、APE1、Polb、Pold、Pole、XRCC1、リガーゼIII、FEN-1、PCNA、RECQL4、WRN、MYH、PNKP、およびAPTX。
【0370】
D)ヌクレオチド除去修復(NER)
ヌクレオチド除去修復(NER)は、かさ高いヘリックスのゆがんだ損傷をDNAから取り去る重要な除去機構である。NERについての追加の詳細は、Marteijn et al., Nature Reviews Molecular Cell Biology 15, 465-481 (2014)に示されており、要約を本明細書に示す。NERは、2つのより小さい経路:ゲノム全体のNER(GG-NER)および転写と共役した修復NER(TC-NER)を包含する広範な経路である。GG-NERとTC-NERとは、DNA傷害を認識するために異なる因子を用いる。しかし、損傷切開、修復、およびライゲーションのためには同じ仕組みを利用する。
【0371】
ひとたび傷害が認識されると、細胞は、損傷を含有する短い一本鎖DNAセグメントを取り去る。エンドヌクレアーゼであるXPF/ERCC1およびXPG(ERCC5によってコードされる)は、損傷のいずれかの側で傷害を受けた鎖を切ることによって、損傷を取り去り、22~30ヌクレオチドの一本鎖ギャップを結果としてもたらす。次に、細胞は、DNAギャップ充填合成およびライゲーションを行う。このプロセスには、以下が含まれる:PCNA、RFC、DNA Polδ、DNA PolεまたはDNA Polκ、およびDNAリガーゼIまたはXRCC1/リガーゼIII。ライゲーション工程を行うために、複製細胞は、DNA polεおよびDNAリガーゼIを用いる傾向があるが、非複製細胞は、DNA Polδ、DNA Polκ、およびXRCC1/リガーゼIII複合体を用いる傾向がある。
【0372】
NERは、以下の因子を含むことができる:XPA-G、POLH、XPF、ERCC1、XPA-G、およびLIG1。転写と共役したNER(TC-NER)は、以下の因子を含むことができる:CSA、CSB、XPB、XPD、XPG、ERCC1、およびTTDA。NER修復経路を促進し得る追加の因子には、以下が含まれる:XPA-G、POLH、XPF、ERCC1、XPA-G、LIG1、CSA、CSB、XPA、XPB、XPC、XPD、XPF、XPG、TTDA、UVSSA、USP7、CETN2、RAD23B、UV-DDB、CAKサブ複合体、RPA、およびPCNA。
【0373】
E)鎖間架橋(ICL)
ICL修復経路と呼ばれる専用の経路は、鎖間架橋を修復する。鎖間架橋、すなわち異なるDNA鎖中の塩基の間の共有結合性架橋は、複製または転写の最中に起こり得る。ICL修復は、複数の修復プロセス、特に、核酸分解活性、損傷乗り越え合成(TLS)、およびHDRの協調を含む。架橋された塩基のいずれかの側でICLを切除するためにヌクレアーゼが動員されるが、TLSおよびHDRは、切れた鎖を修復するために連係して働く。ICL修復は、以下の因子を含むことができる:エンドヌクレアーゼ、例えば、XPFおよびRAD51C、RAD51などのエンドヌクレアーゼ、損傷乗り換えポリメラーゼ、例えば、DNAポリメラーゼζおよびRev1、ならびにファンコニ貧血(FA)タンパク質、例えば、FacnJ。
【0374】
F)他の経路
数種類の他のDNA修復経路が、哺乳動物に存在する。損傷乗り越え合成(TLS)は、欠陥がある複製事象後に残された一本鎖切断を修復するための経路であり、損傷乗り越えポリメラーゼ、例えば、DNA polζおよびRev1を含む。誤りのない複製後修復(PRR)は、欠陥がある複製事象後に残った一本鎖切断を修復するための別の経路である。
【0375】
5)ゲノム編集法におけるgRNAの例
本明細書に記載されるgRNA分子のいずれかを、二本鎖切断または一本鎖切断を生成して、標的核酸、例えば、標的位置または標的遺伝子シグネチャーの配列を変更する、任意のCas9分子と共に用いることができる。いくつかの例では、標的核酸は、記載されるいずれかなどの、TGFBR2遺伝子座にまたはその近くにある。いくつかの態様では、gRNA分子などのリボ核酸分子、およびCas9タンパク質またはそのバリアントなどのタンパク質が、本明細書で提供される操作された細胞のいずれかに導入される。これらの方法において有用なgRNA分子を、以下に記載する。
【0376】
いくつかの態様において、gRNA、例えばキメラgRNAは、以下の特性の1つまたは複数を含むように構成される;
a)例えば、二本鎖切断を作るCas9分子をターゲティングする時、それが、二本鎖切断を(i)標的位置の50、100、150、200、250、300、350、400、450、もしくは500ヌクレオチド以内、または(ii)標的位置が末端切除の領域内であるように十分近く、に位置づけることができる;
b)それが、少なくとも16ヌクレオチドのターゲティングドメイン、例えば、(i)16、(ii)17、(iii)18、(iv)19、(v)20、(vi)21、(vii)22、(viii)23、(ix)24、(x)25、または(xi)26ヌクレオチドのターゲティングドメインを有する;ならびに
c)(i)近位および尾部ドメインが、まとめると、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、もしくは53ヌクレオチド、例えば、天然に存在する化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、黄色ブドウ球菌、もしくは髄膜炎菌の尾部および近位ドメイン由来の少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、もしくは53ヌクレオチド、またはそれらとは1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10ヌクレオチド以下が異なる配列を含む;
(ii)第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドに対して3'に、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、もしくは53ヌクレオチド、例えば、天然に存在する化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、黄色ブドウ球菌、もしくは髄膜炎菌のgRNAの対応する配列由来の少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、もしくは53ヌクレオチド、またはそれらとは1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10ヌクレオチド以下が異なる配列が存在する;
(iii)第1の相補性ドメインのその対応するヌクレオチドに相補的である第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドに対して3'に、少なくとも16、19、21、26、31、32、36、41、46、50、51、もしくは54ヌクレオチド、例えば、天然に存在する化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、黄色ブドウ球菌、もしくは髄膜炎菌のgRNAの対応する配列由来の少なくとも16、19、21、26、31、32、36、41、46、50、51、もしくは54ヌクレオチド、またはそれらとは1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10ヌクレオチド以下が異なる配列が存在する;
(iv)尾部ドメインが、少なくとも10、15、20、25、30、35、または40ヌクレオチドの長さであり、例えば、天然に存在する化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、黄色ブドウ球菌、もしくは髄膜炎菌の尾部ドメイン由来の少なくとも10、15、20、25、30、35、もしくは40ヌクレオチド、またはそれらとは1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10ヌクレオチド以下が異なる配列を含む;あるいは
(v)尾部ドメインが、天然に存在する尾部ドメイン、例えば、天然に存在する化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、黄色ブドウ球菌、または髄膜炎菌の尾部ドメインの対応する一部分の15、20、25、30、35、40ヌクレオチド、またはすべてを含む。
【0377】
いくつかの態様において、gRNAは、aおよびb(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、aおよびb(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、aおよびb(iii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、aおよびb(iv)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、aおよびb(v)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、aおよびb(vi)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、aおよびb(vii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、aおよびb(viii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、aおよびb(ix)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、aおよびb(x)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、aおよびb(xi)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、aおよびcの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a、b、およびcの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(i)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(i)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(ii)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(ii)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(iii)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(iii)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(iv)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(iv)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(v)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(v)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(vi)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(vi)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(vii)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(vii)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(viii)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(viii)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(ix)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(ix)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(x)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(x)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(xi)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(xi)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。
【0378】
いくつかの態様において、gRNA、例えばキメラgRNAは、以下の特性の1つまたは複数を含むように構成される;
a)例えば、一本鎖切断を作るCas9分子をターゲティングする時、gRNAの一方または両方が、一本鎖切断を(i)標的位置の50、100、150、200、250、300、350、400、450、もしくは500ヌクレオチド、または(ii)標的位置が末端切除の領域内であるように十分近く、以内に位置づけることができる;
b)一方または両方が、少なくとも16ヌクレオチドのターゲティングドメイン、例えば、(i)16、(ii)17、(iii)18、(iv)19、(v)20、(vi)21、(vii)22、(viii)23、(ix)24、(x)25、または(xi)26ヌクレオチドのターゲティングドメインを有する;ならびに
c)(i)近位および尾部ドメインが、まとめると、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、もしくは53ヌクレオチド、例えば、天然に存在する化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、黄色ブドウ球菌、もしくは髄膜炎菌の尾部および近位ドメイン由来の少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、もしくは53ヌクレオチド、またはそれらとは1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10ヌクレオチド以下が異なる配列を含む;
(ii)第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドに対して3'に、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、もしくは53ヌクレオチド、例えば、天然に存在する化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、黄色ブドウ球菌、もしくは髄膜炎菌のgRNAの対応する配列由来の少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、もしくは53ヌクレオチド、またはそれらとは1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10ヌクレオチド以下が異なる配列が存在する;
(iii)第1の相補性ドメインのその対応するヌクレオチドに相補的である第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドに対して3'に、少なくとも16、19、21、26、31、32、36、41、46、50、51、もしくは54ヌクレオチド、例えば、天然に存在する化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、黄色ブドウ球菌、もしくは髄膜炎菌のgRNAの対応する配列由来の少なくとも16、19、21、26、31、32、36、41、46、50、51、もしくは54ヌクレオチド、またはそれらとは1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10ヌクレオチド以下が異なる配列が存在する;
(iv)尾部ドメインが、少なくとも10、15、20、25、30、35、または40ヌクレオチドの長さであり、例えば、天然に存在する化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、黄色ブドウ球菌、もしくは髄膜炎菌の尾部ドメイン由来の少なくとも10、15、20、25、30、35、もしくは40ヌクレオチド、またはそれらとは1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10ヌクレオチド以下が異なる配列を含む;あるいは
(v)尾部ドメインが、天然に存在する尾部ドメイン、例えば、天然に存在する化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、黄色ブドウ球菌、または髄膜炎菌の尾部ドメインの対応する一部分の15、20、25、30、35、40ヌクレオチド、またはすべてを含む。
【0379】
いくつかの態様において、gRNAは、aおよびb(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、aおよびb(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、aおよびb(iii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、aおよびb(iv)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、aおよびb(v)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、aおよびb(vi)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、aおよびb(vii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、aおよびb(viii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、aおよびb(ix)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、aおよびb(x)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、aおよびb(xi)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、aおよびcの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a、b、およびcの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(i)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(i)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(ii)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(ii)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(iii)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(iii)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(iv)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(iv)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(v)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(v)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(vi)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(vi)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(vii)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(vii)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(viii)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(viii)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(ix)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(ix)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(x)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(x)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(xi)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAは、a(i)、b(xi)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。
【0380】
いくつかの態様において、gRNAは、HNH活性を有するCas9ニッカーゼ分子、例えば、不活性化されたRuvC活性を有するCas9分子、例えば、D10での変異、例えばD10A変異を有するCas9分子と共に用いられる。
【0381】
いくつかの態様において、gRNAは、RuvC活性を有するCas9ニッカーゼ分子、例えば、不活性化されたHNH活性を有するCas9分子、例えば、H840での変異、例えばH840Aを有するCas9分子と共に用いられる。
【0382】
いくつかの態様において、第1および第2のgRNAを含むgRNAのペア、例えばキメラgRNAのペアは、以下の特性の1つまたは複数を含むように構成される;
a)例えば、一本鎖切断を作るCas9分子をターゲティングする時、gRNAの一方または複数が、一本鎖切断を(i)標的位置の50、100、150、200、250、300、350、400、450、もしくは500ヌクレオチド、または(ii)標的位置が末端切除の領域内であるように十分近く、以内に位置づけることができる;
b)一方または両方が、少なくとも16ヌクレオチドのターゲティングドメイン、例えば、(i)16、(ii)17、(iii)18、(iv)19、(v)20、(vi)21、(vii)22、(viii)23、(ix)24、(x)25、または(xi)26ヌクレオチドのターゲティングドメインを有する;
c)一方または両方について:
(i)近位および尾部ドメインが、まとめると、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、もしくは53ヌクレオチド、例えば、天然に存在する化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、黄色ブドウ球菌、もしくは髄膜炎菌の尾部および近位ドメイン由来の少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、もしくは53ヌクレオチド、またはそれらとは1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10ヌクレオチド以下が異なる配列を含む;
(ii)第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドに対して3'に、少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、もしくは53ヌクレオチド、例えば、天然に存在する化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、黄色ブドウ球菌、もしくは髄膜炎菌のgRNAの対応する配列由来の少なくとも15、18、20、25、30、31、35、40、45、49、50、もしくは53ヌクレオチド、またはそれらとは1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10ヌクレオチド以下が異なる配列が存在する;
(iii)第1の相補性ドメインのその対応するヌクレオチドに相補的である第2の相補性ドメインの最後のヌクレオチドに対して3'に、少なくとも16、19、21、26、31、32、36、41、46、50、51、もしくは54ヌクレオチド、例えば、天然に存在する化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、黄色ブドウ球菌、もしくは髄膜炎菌のgRNAの対応する配列由来の少なくとも16、19、21、26、31、32、36、41、46、50、51、もしくは54ヌクレオチド、またはそれらとは1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10ヌクレオチド以下が異なる配列が存在する;
(iv)尾部ドメインが、少なくとも10、15、20、25、30、35、または40ヌクレオチドの長さであり、例えば、天然に存在する化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、黄色ブドウ球菌、もしくは髄膜炎菌の尾部ドメイン由来の少なくとも10、15、20、25、30、35、もしくは40ヌクレオチド、またはそれらとは1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10ヌクレオチド以下が異なる配列を含む;あるいは
(v)尾部ドメインが、天然に存在する尾部ドメイン、例えば、天然に存在する化膿性連鎖球菌、S.サーモフィラス、黄色ブドウ球菌、または髄膜炎菌の尾部ドメインの対応する一部分の15、20、25、30、35、40ヌクレオチド、またはすべてを含む;
d)gRNAが、標的核酸にハイブリダイズした時に、0~50、0~100、0~200、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、または少なくとも50ヌクレオチドによって分離されるように構成される;
e)第1のgRNAおよび第2のgRNAによって作られる切断が、異なる鎖上にある;ならびに
f)PAMが外側を向いている。
【0383】
いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、aおよびb(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、aおよびb(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、aおよびb(iii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、aおよびb(iv)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、aおよびb(v)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、aおよびb(vi)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、aおよびb(vii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、aおよびb(viii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、aおよびb(ix)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、aおよびb(x)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、aおよびb(xi)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、aおよびcの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a、b、およびcの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(i)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(i)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(i)、c、およびdの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(i)、c、およびeの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(i)、c、d、およびeの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(ii)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(ii)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(ii)、c、およびdの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(ii)、c、およびeの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(ii)、c、d、およびeの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(iii)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(iii)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(iii)、c、およびdの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(iii)、c、およびeの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(iii)、c、d、およびeの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(iv)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(iv)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(iv)、c、およびdの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(iv)、c、およびeの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(iv)、c、d、およびeの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(v)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(v)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(v)、c、およびdの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(v)、c、およびeの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(v)、c、d、およびeの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(vi)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(vi)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(vi)、c、およびdの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(vi)、c、およびeの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(vi)、c、d、およびeの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(vii)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(vii)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(vii)、c、およびdの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(vii)、c、およびeの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(vii)、c、d、およびeの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(viii)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(viii)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(viii)、c、およびdの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(viii)、c、およびeの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(viii)、c、d、およびeの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(ix)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(ix)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(ix)、c、およびdの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(ix)、c、およびeの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(ix)、c、d、およびeの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(x)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(x)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(x)、c、およびdの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(x)、c、およびeの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(x)、c、d、およびeの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(xi)、およびc(i)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(xi)、およびc(ii)の特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(xi)、c、およびdの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(xi)、c、およびeの特性を含むように構成される。いくつかの態様において、gRNAの一方または両方は、a(i)、b(xi)、c、d、およびeの特性を含むように構成される。
【0384】
いくつかの態様において、gRNAは、HNH活性を有するCas9ニッカーゼ分子、例えば、不活性化されたRuvC活性を有するCas9分子、例えば、D10での変異、例えばD10A変異を有するCas9分子と共に用いられる。
【0385】
いくつかの態様において、gRNAは、RuvC活性を有するCas9ニッカーゼ分子、例えば、不活性化されたHNH活性を有するCas9分子、例えば、H840での変異、例えばH840Aを有するCas9分子と共に用いられる。いくつかの態様において、gRNAは、RuvC活性を有するCas9ニッカーゼ分子、例えば、不活性化されたHNH活性を有するCas9分子、例えば、N863での変異、例えばN863Aを有するCas9分子と共に用いられる。
【0386】
6)遺伝子編集のための作用物質の機能解析
Cas分子、gRNA分子、Cas9分子/gRNA分子複合体のいずれかを、当技術分野で公知の方法によってまたは本明細書に記載されるように、評価することができる。例えば、Cas9分子のエンドヌクレアーゼ活性を評価するための例示的な方法は、例えば、Jinek et al., SCIENCE 2012, 337(6096):816-821に記載されている。
【0387】
G)結合および開裂アッセイ:Cas9分子のエンドヌクレアーゼ活性の試験
Cas9分子/gRNA分子複合体の、標的核酸に結合して開裂させる能力を、プラスミド開裂アッセイにおいて評価することができる。このアッセイにおいては、合成のまたはインビトロで転写されたgRNA分子を、95℃まで加熱し、室温までゆっくり冷却することによって、反応の前にプレアニーリングさせる。天然のまたは制限消化により直線化されたプラスミドDNA(300 ng(約8 nM))を、精製されたCas9タンパク質分子(50~500 nM)およびgRNA(50~500 nM、1:1)と、10 mM MgCl2を含むかまたは含まないCas9プラスミド開裂緩衝液(20 mM HEPES pH 7.5、150 mM KCl、0.5 mM DTT、0.1 mM EDTA)中で、37℃で60分間インキュベートする。反応を、5×DNAローディングバッファー(30%グリセロール、1.2% SDS、250 mM EDTA)で停止し、0.8または1%のアガロースゲル電気泳動により分離して、臭化エチジウム染色により可視化する。結果として生じる開裂産物は、Cas9分子が、両方のDNA鎖を開裂させるか、または2本の鎖のうちの1本のみを開裂させるかを示す。例えば、直鎖DNA産物は、両方のDNA鎖の開裂を示す。ニックが入った開環産物は、2本の鎖のうち1本のみが開裂していることを示す。
【0388】
あるいは、Cas9分子/gRNA分子複合体の、標的核酸に結合して開裂させる能力を、オリゴヌクレオチドDNA開裂アッセイにおいて評価することができる。このアッセイにおいては、DNAオリゴヌクレオチド(10 pmol)を、50μLの反応において、1×T4ポリヌクレオチドキナーゼ反応緩衝液中で5単位のT4ポリヌクレオチドキナーゼおよび約3~6 pmol(約20~40 mCi)の[γ-32P]-ATPと、37℃で30分間インキュベートすることによって放射標識する。熱不活化(65℃で20分間)後に、組み込まれていない標識を取り去るために、カラムを通して反応物を精製する。標識されたオリゴヌクレオチドを等モル量の標識されていない相補的オリゴヌクレオチドと95℃で3分間アニーリングさせること、続いて室温までゆっくり冷却することによって、二重鎖基質(100 nM)を生成させる。開裂アッセイのためには、gRNA分子を、95℃まで30秒間加熱すること、続いて室温までゆっくり冷却することによってアニーリングさせる。Cas9(500 nMの最終濃度)を、9μlの総体積において、開裂アッセイ緩衝液(20 mM HEPES pH 7.5、100 mM KCl、5 mM MgCl2、1 mM DTT、5%グリセロール)中でアニーリングしたgRNA分子(500 nM)とプレインキュベートする。1μlの標的DNA(10 nM)の添加によって反応を開始し、37℃で1時間インキュベートする。20μlのローディング色素(ホルムアミド中、5 mM EDTA、0.025% SDS、5%グリセロール)の添加によって、反応を終わらせ、95℃まで5分間加熱する。開裂産物を、7 Mの尿素を含有する12%変性ポリアクリルアミドゲル上で分離して、ホスホイメージング(phosphorimaging)により可視化する。結果として生じる開裂産物は、相補鎖、非相補鎖、または両方が開裂しているかどうかを示す。
【0389】
これらのアッセイの一方または両方を用いて、提供されるgRNA分子またはCas9分子のいずれかの適合性を評価することができる。
【0390】
H)結合アッセイ:標的DNAに対するCas9分子の結合の試験
標的DNAに対するCas9分子の結合を評価するための例示的な方法は、例えば、Jinek et al., SCIENCE 2012; 337(6096):816-821に記載されている。
【0391】
例えば、電気泳動移動度シフトアッセイにおいて、各鎖(10 nmol)を脱イオン水中で混合すること、95℃まで3分間加熱すること、および室温までゆっくり冷却することによって、標的DNA二重鎖を形成させる。すべてのDNAを、1×TBEを含有する8%未変性ゲル上で精製する。DNAのバンドを、UVシャドーイングによって可視化し、切り出して、DEPC処理されたH2Oにゲル片を浸すことによって溶出させる。溶出されたDNAを、エタノール沈殿して、DEPC処理されたH2Oに溶解する。DNA試料を、T4ポリヌクレオチドキナーゼを用いて[γ-32P]-ATPで、37℃で30分間、5'末端標識する。ポリヌクレオチドキナーゼを、65℃で20分間、熱変性させ、取り込まれなかった放射標識を、カラムを用いて取り去る。結合アッセイを、10μlの総体積において、20 mM HEPES pH 7.5、100 mM KCl、5 mM MgCl2、1 mM DTT、および10%グリセロールを含有する緩衝液中で行う。Cas9タンパク質分子は、等モル量のプレアニーリングしたgRNA分子でプログラムされ、100 pMから1μMまで滴定される。放射標識されたDNAを、20 pMの最終濃度になるように添加する。試料を、37℃で1時間インキュベートし、1×TBEおよび5 mM MgCl2を含有する8%未変性ポリアクリルアミドゲル上で、4℃で分離する。ゲルを乾燥させ、ホスホイメージングによりDNAを可視化する。
【0392】
I)Cas9/gRNA複合体の熱安定性を測定するための技法
Cas9-gRNAリボ核タンパク質(RNP)複合体の熱安定性は、示差走査蛍光定量法(DSF)および他の技法によって検出することができる。タンパク質の熱安定性は、結合RNA分子、例えばgRNAの添加などの、好都合な条件下で増加し得る。したがって、Cas9/gRNA複合体の熱安定性に関する情報は、複合体が安定であるかどうかを判定するために有用である。
【0393】
J)示差走査蛍光定量法(DSF)
Cas9-gRNAリボ核タンパク質(RNP)複合体の熱安定性は、DSFを介して測定することができる。下記のようなRNP複合体は、RNAまたはgRNAなどのリボヌクレオチドの配列、およびCas9タンパク質またはそのバリアントなどのタンパク質を含む。この技法は、タンパク質の熱安定性を測定し、これは、結合RNA分子、例えばgRNAの添加などの、好都合な条件下で増加し得る。
【0394】
アッセイは、多くの方法で適用され得る。例示的なプロトコールには、RNP形成に望ましい溶液条件を決定するプロトコール(アッセイ1、下記を参照されたい)、gRNA:Cas9タンパク質の望ましい化学量論比を試験するプロトコール(アッセイ2、下記を参照されたい)、Cas9分子、例えば、野生型または変異体Cas9分子に対して有効なgRNA分子をスクリーニングするプロトコール(アッセイ3、下記を参照されたい)、および標的DNAの存在下でRNP形成を調べるプロトコール(アッセイ4)が含まれるが、それらに限定されない。いくつかの態様において、アッセイは、gRNA:Cas9タンパク質の最良の化学量論比を試験する1つのもの、およびRNP形成のための最良の溶液条件を決定する別のものの、2つの異なるプロトコールを用いて行われる。
【0395】
RNP複合体を形成する最良の溶液を決定するために、水+10×SYPRO Orange(登録商標)(Life Technologies、カタログ番号S-6650)中のCas9の2μM溶液を、384ウェルプレート中に分注する。様々なpHおよび塩を有する溶液において希釈された等モル量のgRNAを、次いで添加する。室温で10分間のインキュベーションおよび任意の泡を取り去るための短時間の遠心分離の後に、Bio-Rad CFX Managerソフトウェアを伴うBio-Rad CFX384(商標)Real-Time System C1000 Touch(商標) Thermal Cyclerを用いて、10秒毎に温度1°の増加で20℃から90℃への勾配を行う。
【0396】
第2のアッセイは、384ウェルプレートにおいて、様々な濃度のgRNAと2μMのCas9とを上記のアッセイ1由来の最適な緩衝液中で混合すること、およびRTで10分間インキュベートすることからなる。等体積の最適な緩衝液+10×SYPRO Orange(登録商標)(Life Technologies、カタログ番号S-6650)を添加して、プレートをMicroseal(登録商標) B adhesive(MSB-1001)でシールする。任意の泡を取り去るための短時間の遠心分離の後に、Bio-Rad CFX Managerソフトウェアを伴うBio-Rad CFX384(商標)Real-Time System C1000 Touch(商標) Thermal Cyclerを用いて、10秒毎に温度1°の増加で20℃から90℃への勾配を行う。
【0397】
第3のアッセイにおいては、関心対象のCas9分子(例えば、Cas9タンパク質、例えば、Cas9バリアントタンパク質)を精製する。バリアントgRNA分子のライブラリーを合成して、20μMの濃度になるように再懸濁する。Cas9分子を、各々1μMの最終濃度でgRNA分子と、5×SYPRO Orange(登録商標)(Life Technologies、カタログ番号S-6650)の存在下であらかじめ決定された緩衝液中でインキュベートする。室温で10分間のインキュベーションおよび任意の泡を取り去るための2000 rpmで2分間の遠心分離の後に、Bio-Rad CFX Managerソフトウェアを伴うBio-Rad CFX384(商標)Real-Time System C1000 Touch(商標) Thermal Cyclerを用いて、10秒毎に温度1℃の増加で20℃から90℃への勾配を行う。
【0398】
第4のアッセイにおいては、DSF実験を以下の試料で行う:Cas9タンパク質のみ、gRNAを伴うCas9タンパク質、gRNAおよび標的DNAを伴うCas9タンパク質、ならびに標的DNAを伴うCas9タンパク質。成分を混合する順序は、反応溶液、Cas9タンパク質、gRNA、DNA、およびSYPRO Orangeである。反応溶液は、MgCl2の非存在下または存在下で、10 mM HEPES pH 7.5、100 mM NaClを含有する。任意の泡を取り去るための2000 rpmで2分間の遠心分離の後に、Bio-Rad CFX Managerソフトウェアを伴うBio-Rad CFX384(商標)Real-Time System C1000 Touch(商標) Thermal Cyclerを用いて、10秒毎に温度1°の増加で20℃から90℃への勾配を行う。
【0399】
3. 遺伝子破壊のための作用物質の送達
いくつかの態様では、ヒトの内在性TGFBR2遺伝子座(TGFBRIIをコードする)の標的遺伝子破壊、例えばDNA切断は、細胞に導入するか、または移入させるためのいくつかの公知の送達方法またはビヒクルのいずれかを使用して、例えば、ウイルス、例えば、レンチウイルス送達ベクター、またはCas9分子およびgRNAを送達するための公知の方法もしくはビヒクルのいずれかを使用して、遺伝子破壊を誘導することができる1つまたは複数の作用物質、例えば、Cas9および/またはgRNA成分を細胞に送達または導入することによって、行われる。例示的方法は、例えば、Wang et al. (2012) J. Immunother. 35(9): 689-701;Cooper et al. (2003) Blood. 101:1637-1644;Verhoeyen et al. (2009) Methods Mol Biol. 506: 97-114;およびCavalieri et al. (2003) Blood. 102(2): 497-505に記載されている。いくつかの態様では、遺伝子破壊、例えばDNA切断を誘導することができる1つまたは複数の作用物質の1つまたは複数の成分をコードする核酸配列が、例えば、本明細書において記載されるかまたは公知である、細胞中に核酸を導入するための任意の方法によって、細胞中に導入される。いくつかの態様では、遺伝子破壊を誘導することができる1つまたは複数の作用物質の成分、例えば、CRISPRガイドRNAおよび/またはCas9酵素をコードするベクターを細胞中に送達することができる。
【0400】
いくつかの態様では、遺伝子破壊を誘導することができる1つまたは複数の作用物質、例えば、Cas9/gRNAである1つまたは複数の作用物質が、リボ核タンパク質(RNP)複合体として細胞中に導入される。RNP複合体は、リボヌクレオチドの配列、例えばRNAまたはgRNA分子、およびタンパク質、例えばCas9タンパク質またはそのバリアントを含む。例えば、Cas9タンパク質は、例えば、電気穿孔または他の物理的送達方法を使用して、Cas9タンパク質および標的配列をターゲティングするgRNA分子を含むRNP複合体として送達される。いくつかの態様では、RNPは、電気穿孔または他の物理的手段、例えば、パーティクルガン、リン酸カルシウムトランスフェクション、細胞圧縮または細胞圧搾を介して、細胞中に送達される。いくつかの態様では、RNPは、さらなる送達作用物質(例えば、小分子作用物質、脂質など)の必要なく、細胞の原形質膜を通過することができる。いくつかの態様では、遺伝子破壊を誘導することができる1つまたは複数の作用物質、例えばCRISPR/Cas9のRNPとしての送達は、細胞後代へ作用物質が伝わることなしに、例えばRNPが導入される細胞において、標的破壊が一過的に生じるという利点を与える。例えば、RNPによる送達は、作用物質がその後代へ受け継がれることを最小化し、それによって、後代におけるオフターゲット遺伝子破壊の機会を低減させる。そのような場合では、遺伝子破壊および導入遺伝子の組み込みは、後代細胞によって受け継がれ得るが、オフターゲット遺伝子破壊をさらに導入する可能性がある作用物質それ自体がなくても、後代細胞に伝えられる。
【0401】
遺伝子破壊を誘導することができる作用物質および成分、例えばCas9分子およびgRNA分子は、表4および5に記載されている様々な送達方法および製剤、または、例えば、WO2015/161276;US2015/0056705、US2016/0272999、US2017/0211075;もしくはUS2017/0016027に記載される方法を使用して、様々な形で標的細胞中に導入することができる。本明細書にさらに記載されるように、送達方法および製剤は、本明細書に記載される方法の前または後の工程において、鋳型ポリヌクレオチドおよび/または他の作用物質(例えば、細胞を操作するために必要とされるもの)を細胞に送達するために用いることができる。Cas9またはgRNA成分が、送達のためにDNAとしてコードされる場合、DNAは、必ずではないが典型的には、発現をもたらすための、例えばプロモーターを含む調節領域を含んでもよい。Cas9分子配列に有用なプロモーターには、例えば、CMV、EF-1α、EFS、MSCV、PGK、またはCAGプロモーターが含まれる。gRNAに有用なプロモーターには、例えば、H1、EF-1α、tRNA、またはU6プロモーターが含まれる。成分の発現を調整するために、類似したかまたは類似していない強度を有するプロモーターを選択することができる。Cas9分子をコードする配列は、核局在化シグナル(NLS)、例えば、SV40 NLSを含んでもよい。いくつかの態様において、Cas9分子またはgRNA分子のためのプロモーターは、独立して、誘導性、組織特異的、または細胞特異的であってもよい。いくつかの態様では、遺伝子破壊を誘導することができる作用物質が、RNP複合体に導入される。
【0402】
(表4)例示的送達方法
【0403】
(表5)例示的送達方法の比較
【0404】
いくつかの態様では、Cas9分子および/もしくはgRNA分子をコードするDNA、またはCas9分子および/もしくはgRNA分子を含むRNP複合体は、公知の方法によって、または本明細書において記載されるように、細胞中に送達することができる。例えば、Cas9をコードするおよび/またはgRNAをコードするDNAは、例えば、ベクター(例えば、ウイルスもしくは非ウイルスベクター)、ベクターに基づかない方法(例えば、ネイキッドDNAもしくはDNA複合体を使用する)、またはこれらの組み合わせによって、送達することができる。いくつかの態様では、作用物質および/またはそれらの成分を含むポリヌクレオチドは、ベクター(例えば、ウイルスベクター/ウイルスまたはプラスミド)によって送達される。ベクターは本明細書において記載される任意のものであってもよい。
【0405】
いくつかの局面では、ガイド配列と組み合わせた(および任意でガイド配列と複合体化された)CRISPR酵素(例えば、Cas9ヌクレアーゼ)が細胞に送達される。例えば、CRISPRシステムの1つまたは複数の要素は、タイプI、タイプII、またはタイプIII CRISPRシステムに由来する。例えば、CRISPRシステムの1つまたは複数の要素は、内在性CRISPRシステムを含む特定の生物、例えば、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、黄色ブドウ球菌、または髄膜炎菌に由来する。
【0406】
いくつかの態様では、Cas9ヌクレアーゼ(例えば、黄色ブドウ球菌もしくは化膿性連鎖球菌由来のmRNAにコードされるもの。例えば、pCW-Cas9、Addgene #50661、Wang et al. (2014) Science, 3:343-80-4;またはカタログ番号K002、K003、K005、もしくはK006としてApplied Biological Materials(ABM;Canada)から入手可能なヌクレアーゼもしくはニッカーゼレンチウイルスベクター)ならびに標的遺伝子座(例えば、ヒトのTGFBR2遺伝子座)に特異的なガイドRNAが細胞中に導入される。
【0407】
いくつかの態様では、作用物質および/もしくはそれらの成分を含むポリヌクレオチド、またはRNP複合体は、ベクターに基づかない方法(例えば、ネイキッドDNAまたはDNA複合体を使用する)によって送達される。例えば、DNAまたはRNAまたはタンパク質またはこれらの組み合わせ、例えば、リボ核タンパク質(RNP)複合体は、例えば、有機的に修飾したシリカまたはシリケート(Ormosil)、電気穿孔、(例えば、Lee, et al. (2012) Nano Lett 12: 6322-27, Kollmannsperger et al (2016) Nat Comm 7, 10372に記載される)一過的な細胞圧縮または細胞圧搾、遺伝子銃、ソノポレーション、マグネトフェクション、脂質媒介性トランスフェクション、デンドリマー、無機ナノ粒子、リン酸カルシウム、またはこれらの組み合わせによって、送達することができる。
【0408】
いくつかの態様では、電気穿孔を介する送達は、カートリッジ、チャンバ、またはキュベット中で、Cas9および/もしくはgRNAをコードするDNAまたはRNP複合体と細胞を混合し、定められた持続時間および振幅の1回または複数回の電気的インパルスを加えることを含む。いくつかの態様では、電気穿孔を介する送達は、Cas9および/またはgRNAをコードするDNAと細胞が、装置(例えば、ポンプ)と接続している容器中で混合され、この装置が、混合物をカートリッジ、チャンバ、またはキュベットに送り込み、ここで、定められた持続時間および振幅の1回または複数回の電気的インパルスが加えられ、その後、細胞が第2の容器に送達されるシステムを使用して行われる。
【0409】
いくつかの態様では、送達ビヒクルは非ウイルスベクターである。いくつかの態様では、非ウイルスベクターは無機ナノ粒子である。例示的無機ナノ粒子としては、例えば、磁性ナノ粒子(例えばFe3MnO2)およびシリカが挙げられる。ナノ粒子の外表面は、正に荷電したポリマー(例えば、ポリエチレンイミン、ポリリジン、ポリセリン)とコンジュゲートすることができ、これにより、ペイロードの付着(例えば、コンジュゲーションまたは捕捉)が可能になる。いくつかの態様では、非ウイルスベクターは有機ナノ粒子である。例示的有機ナノ粒子としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)でコーティングされた中性ヘルパー脂質とともにカチオン性脂質を含むSNALPリポソーム、および脂質でコーティングされたプロタミン-核酸複合体が挙げられる。遺伝子移入のための例示的な脂質を、下記の表6に示す。
【0410】
(表6)遺伝子移入に用いられる脂質
【0411】
遺伝子移入のための例示的なポリマーを、下記の表7に示す。
【0412】
(表7)遺伝子移入に用いられるポリマー
【0413】
いくつかの態様では、ビヒクルは、ナノ粒子およびリポソーム、例えば、細胞特異的抗原、モノクローナル抗体、単鎖抗体、アプタマー、ポリマー、糖、および細胞透過性ペプチドの標的細胞アップデートを増加させるために、ターゲティング改変を有する。いくつかの態様では、ビヒクルは、融合性およびエンドソーム不安定化ペプチド/ポリマーを使用する。いくつかの態様では、ビヒクルは、(例えば、カーゴのエンドソーム脱出を加速するために)酸誘発性のコンフォメーション変化を受ける。いくつかの態様では、例えば細胞内コンパートメントにおける放出のために、刺激開裂可能なポリマーが使用される。例えば、還元細胞環境で開裂させられるジスルフィドベースのカチオン性ポリマーが使用され得る。
【0414】
いくつかの態様では、送達ビヒクルは生物学的な非ウイルス性送達ビヒクルである。いくつかの態様では、ビヒクルは、弱毒化細菌(例えば、侵入性であるが、弱毒化されて発病を防止し、導入遺伝子を発現するように、天然または人工的に操作されている(例えば、リステリア・モノサイトゲネス、ある特定のサルモネラ(Salmonella)株、ビフィドバクテリウム・ロングム(Bifidobacterium longum)、および改変大腸菌)、特定の細胞を標的にするために栄養的および組織特異的指向性を有する細菌、標的細胞特異性を変更するために改変表面タンパク質を有する細菌)である。いくつかの態様では、ビヒクルは、遺伝子改変バクテリオファージ(例えば、大きなパッケージング能力、低免疫原性を有し、哺乳類のプラスミド維持配列を含み、ターゲティングリガンドが組み込まれた、操作されたファージ)である。いくつかの態様では、ビヒクルは哺乳類のウイルス様粒子である。例えば、(例えば、「空」粒子の精製、それに続く、望ましいカーゴとのウイルスのエクスビボアセンブリーによって)改変ウイルス粒子を生成することができる。ビヒクルは、ターゲティングリガンドを組み込んで、標的組織特異性を変更するように操作することもできる。いくつかの態様では、ビヒクルは生物学的リポソームである。例えば、生物学的リポソームは、ヒト細胞に由来するリン脂質ベースの粒子、例えば、対象に由来する球状構造に壊された赤血球である、赤血球ゴースト(例えば、組織ターゲティングが、様々な組織もしくは細胞特異的リガンドの付着によって達成され得る)、または分泌性エキソソーム-エンドサイトーシス起源の対象由来膜結合ナノベシクル(30~100nm)(例えば、様々な細胞型から生成することができ、したがって、ターゲティングリガンドの必要なく細胞に取り込まれ得る)である。
【0415】
いくつかの態様では、Cas9分子および/またはgRNA分子をコードするRNAは、公知の方法によって、または本明細書において記載されるように、細胞、例えば、本明細書において記載される標的細胞中に送達することができる。例えば、Cas9をコードするおよび/またはgRNAをコードするRNAは、例えば、マイクロインジェクション、電気穿孔、(例えば、Lee, et al. (2012) Nano Lett 12: 6322-27に記載される)一過的な細胞圧縮または細胞圧搾、脂質媒介性トランスフェクション、ペプチド媒介性送達、例えば細胞透過性ペプチド、またはこれらの組み合わせによって、送達することができる。
【0416】
いくつかの態様では、電気穿孔を介する送達は、カートリッジ、チャンバ、またはキュベット中でCas9分子および/またはgRNA分子をコードするRNAと細胞を混合し、定められた持続時間および振幅の1回または複数回の電気的インパルスを加えることを含む。いくつかの態様では、電気穿孔を介する送達は、Cas9分子および/またはgRNA分子をコードするRNAと細胞が装置(例えば、ポンプ)と接続している容器中で混合され、この装置が、混合物をカートリッジ、チャンバ、またはキュベットに送り込み、ここで、定められた持続時間および振幅の1回または複数回の電気的インパルスが加えられ、その後、細胞が第2の容器に送達されるシステムを使用して行われる。
【0417】
いくつかの態様では、Cas9分子は、公知の方法によって、または本明細書において記載されるように、細胞中に送達することができる。例えば、Cas9タンパク質分子は、例えば、マイクロインジェクション、電気穿孔、(例えば、Lee, et al. (2012) Nano Lett 12: 6322-27に記載される)一過的な細胞圧縮または細胞圧搾、脂質媒介性トランスフェクション、ペプチド媒介性送達、またはこれらの組み合わせによって、送達することができる。送達は、gRNAをコードするDNAまたはgRNAをともない得る。
【0418】
いくつかの態様では、開裂を導入することができる1つまたは複数の作用物質、例えば、Cas9/gRNAシステムが、リボ核タンパク質(RNP)複合体として細胞中に導入される。RNP複合体は、リボヌクレオチド、例えば、RNAまたはgRNA分子、およびタンパク質、例えば、Cas9タンパク質またはそのバリアントの配列を含む。例えば、Cas9タンパク質は、例えば、電気穿孔または他の物理的送達方法を使用して、Cas9タンパク質および標的配列をターゲティングするgRNA分子を含むRNP複合体として送達される。いくつかの態様では、RNPは、電気穿孔または他の物理的手段、例えば、パーティクルガン、リン酸カルシウムトランスフェクション、細胞の圧縮または圧搾を介して、細胞中に送達される。
【0419】
いくつかの態様では、電気穿孔を介する送達は、カートリッジ、チャンバ、またはキュベット中で、gRNA分子とともにまたはそのままCas9分子と細胞を混合し、定められた持続時間および振幅の1回または複数回の電気的インパルスを加えることを含む。いくつかの態様では、電気穿孔を介する送達は、gRNA分子とともにまたはそのままCas9分子と細胞が、装置(例えば、ポンプ)に接続している容器中で混合され、この装置が、カートリッジ、チャンバ、またはキュベットに混合物を送り込み、ここで、定められた持続時間および振幅の1回または複数回の電気的インパルスが加えられ、その後、細胞が第2の容器に送達されるシステムを使用して行われる。
【0420】
いくつかの態様では、電気穿孔を介する送達は、カートリッジ、チャンバ、またはキュベット中で、gRNA分子とともにまたはそのままCas9分子(例えば、eaCas9分子、eiCas9分子、またはeiCas9融合タンパク質)と細胞を混合し、定められた持続時間および振幅の1回または複数回の電気的インパルスを加えることを含む。いくつかの態様では、電気穿孔を介する送達は、Cas9分子(例えば、eaCas9分子、eiCas9分子、またはeiCas9融合タンパク質)と細胞が混合されるシステムを使用して行われる。
【0421】
いくつかの態様では、作用物質および/またはそれらの成分を含むポリヌクレオチドは、ベクターと非ベクターベースの方法との組み合わせによって送達される。例えば、ビロソームは、失活したウイルス(例えば、HIVまたはインフルエンザウイルス)と組み合わされたリポソームを含み、これは、ウイルス方法単独またはリポソーム方法単独のいずれかよりも効率的な遺伝子移入をもたらすことができる。
【0422】
いくつかの態様では、1つより多い作用物質またはそれらの成分が細胞に送達される。例えば、いくつかの態様では、ゲノム中の2か所以上の場所の、例えば、TGFBR2遺伝子座(TGFBRIIをコードする)内の2か所以上の部位の遺伝子破壊を誘導することができる作用物質が細胞に送達される。いくつかの態様では、作用物質およびそれらの成分は、1つの方法を使用して送達される。例えば、いくつかの態様では、TGFBR2遺伝子座の遺伝子破壊を誘導するための作用物質は、遺伝子破壊のための成分をコードするポリヌクレオチドとして送達される。いくつかの態様では、1つのポリヌクレオチドが、TGFBR2遺伝子座を標的とする作用物質をコードすることができる。いくつかの態様では、2つ以上の異なるポリヌクレオチドが、TGFBR2遺伝子座を標的とする作用物質をコードすることができる。いくつかの態様では、遺伝子破壊を誘導することができる作用物質をリボ核タンパク質(RNP)複合体として送達することができ、2つ以上の異なるRNP複合体を混合物として一緒に、または別々に送達することができる。
【0423】
いくつかの態様では、遺伝子破壊を誘導することができる1つまたは複数の作用物質および/またはそれらの成分、例えば、Cas9分子成分および/またはgRNA分子成分以外の1つまたは複数の核酸分子、例えば、HDR誘導性組み込みのための鋳型ポリヌクレオチド(例えば、本明細書において、例えばセクションI.Bに記載される任意の鋳型ポリヌクレオチド)が送達される。いくつかの態様では、核酸分子、例えば鋳型ポリヌクレオチドは、Casシステムの成分の1つまたは複数と同時に送達される。いくつかの態様では、核酸分子は、Casシステムの成分の1つまたは複数が送達される前または後(例えば、約1分、5分、10分、15分、30分、1時間、2時間、3時間、6時間、9時間、12時間、1日、2日、3日、1週、2週、または4週未満)に送達される。いくつかの態様では、核酸分子、例えば鋳型ポリヌクレオチドは、Casシステムの成分の1つまたは複数、例えば、Cas9分子成分および/またはgRNA分子成分と異なる手段によって送達される。核酸分子、例えば鋳型ポリヌクレオチドは、本明細書において記載される送達方法のいずれかによって送達することができる。例えば、核酸分子、例えば鋳型ポリヌクレオチドは、ウイルスベクター、例えば、レトロウイルスまたはレンチウイルスによって送達することができ、Cas9分子成分および/またはgRNA分子成分は電気穿孔によって送達することができる。いくつかの態様では、核酸分子、例えば鋳型ポリヌクレオチドは、1つまたは複数の外来性配列、例えば、組換え受容体もしくはその一部分および/または他の外来性遺伝子核酸配列をコードする配列を含む。
【0424】
B. 相同性指向修復(HDR)を介する標的組み込み
いくつかの局面では、提供される態様は、TGFBRIIをコードする内在性TGFBR2遺伝子座のゲノム中の特定の場所(例えば、標的部位または標的場所)における、ポリヌクレオチドの特定の部分、例えば、組換え受容体またはその一部分をコードする導入遺伝子配列を含む鋳型ポリヌクレオチドの部分の標的組み込みを含む。いくつかの局面では、相同性指向修復(HDR)は、標的部位における導入遺伝子配列の部位特異的組み込みを媒介することができる。いくつかの態様では、遺伝子破壊(例えばセクションI.Aに記載されるDNA切断)および1つまたは複数の相同性アーム(例えば、遺伝子破壊の周辺の核酸配列相同配列を含む)を含む鋳型ポリヌクレオチドの存在は、DNA修復のための鋳型として働く相同配列を用いて、HDRを誘導するか、または導くことができる。遺伝子破壊の周辺の内在性遺伝子配列と鋳型ポリヌクレオチド中に含まれる5'および/または3'相同性アームの間の相同性に基づいて、細胞のDNA修復機構は、鋳型ポリヌクレオチドを使用して、遺伝子破壊の部位においてDNA切断を修復し、遺伝情報を再合成し(例えば、コピーする)、それによって、遺伝子破壊の部位またはその近くに、鋳型ポリヌクレオチド中の導入遺伝子配列を効果的に挿入するかまたは組み込むことができる。いくつかの態様では、内在性TGFBR2遺伝子座における遺伝子破壊は、本明細書において、例えばセクションI.Aに記載される標的遺伝子破壊を作出するための方法のいずれかによって、作出することができる。
【0425】
ポリヌクレオチド、例えば、本明細書において記載される鋳型ポリヌクレオチド、およびそのようなポリヌクレオチドを含むキットも提供される。いくつかの態様では、提供されるポリヌクレオチドおよび/またはキットは、内在性TGFBR2遺伝子座に組換え受容体またはその一部分をコードする導入遺伝子配列をターゲティングするために、例えばHDRを含む、本明細書において記載される方法で用いることができる。
【0426】
いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、組換え受容体またはその一部分(例えば、組換え受容体の1つまたは複数の領域またはドメイン)をコードする導入遺伝子、例えば、外来性または異種の核酸配列、および内在性TGFBR2遺伝子座の内在性ゲノム部位の、またはその近くの配列と相同な相同配列(例えば相同性アーム)を含むポリヌクレオチドであるか、または該ポリヌクレオチドを含む。いくつかの局面では、鋳型ポリヌクレオチド中の導入遺伝子配列は、組換え受容体またはその一部分をコードするヌクレオチドの配列を含む。いくつかの局面では、導入遺伝子配列の標的組み込みの際に、操作された細胞のTGFBR2遺伝子座が改変され、その結果、改変TGFBR2遺伝子座は、組換え受容体、例えばキメラ抗原受容体(CAR)をコードする導入遺伝子配列を含む。いくつかの局面では、改変TGFBR2遺伝子座は、ドミナントネガティブ型のTGFBRIIポリペプチドおよび組換え受容体、例えばCARをコードする。
【0427】
いくつかの局面では、鋳型ポリヌクレオチドは、直鎖状DNA断片として導入されるか、またはベクターに含まれる。いくつかの局面では、遺伝子破壊を誘導する工程および(例えば、鋳型ポリヌクレオチドの導入による)標的組み込みのための工程は、同時にまたは順次行われる。
【0428】
1. 相同性指向修復(HDR)
いくつかの態様では、相同性指向修復(HDR)は、TGFBR2遺伝子座のゲノム中の1つまたは複数の標的部位における、1つまたは複数の核酸配列、例えば、組換え受容体またはその一部分をコードする導入遺伝子配列の標的組み込みまたは挿入に利用可能である。いくつかの態様では、標的配列を変更する、特定の標的場所で導入遺伝子配列を組み込む、および/または特定の標的遺伝子中の変異を編集もしくは修復するために、ヌクレアーゼ誘導性HDRを使用することができる。
【0429】
標的部位での核酸配列の変更は、外来的に提供されたポリヌクレオチド、例えば鋳型ポリヌクレオチド(「ドナーポリヌクレオチド」または「鋳型配列」とも称される)を用いたHDRによって生じ得る。例えば、鋳型ポリヌクレオチドは、標的配列の変更、例えば、鋳型ポリヌクレオチド内に含まれる導入遺伝子配列の挿入をもたらす。いくつかの態様では、相同組換えのための鋳型としてプラスミドまたはベクターを使用することができる。いくつかの態様では、直鎖状DNA断片を相同組換えのための鋳型として使用することができる。いくつかの態様では、一本鎖鋳型ポリヌクレオチドを、標的配列と鋳型ポリヌクレオチドの間の相同性指向修復の代替方法(例えば、一本鎖アニーリング)による標的配列の変更のための鋳型として使用することができる。鋳型ポリヌクレオチドによってもたらされる標的配列の変更は、ヌクレアーゼ、例えば、CRISPR/Cas9などの標的ヌクレアーゼによる開裂に依存する。ヌクレアーゼによる開裂は、二本鎖切断または2つの一本鎖切断を含むことができる。
【0430】
いくつかの態様では、「組換え」は、2つのポリヌクレオチド間の遺伝情報の交換のプロセスを含む。いくつかの態様では、「相同組換え(HR)」は、例えば、相同性指向修復メカニズムを介した細胞中の二本鎖切断の修復の間に起こる、そのような交換の特殊化した形態を含む。このプロセスは、ヌクレオチド配列の相同性を必要とし、標的DNA(すなわち、二本鎖切断を受けたもの、例えば、内在性遺伝子中の標的部位)の鋳型修復に鋳型ポリヌクレオチドを使用し、鋳型ポリヌクレオチドから標的への遺伝情報の伝達につながるので「非乗換え遺伝子変換」または「ショートトラクト遺伝子変換」として様々に公知である。いくつかの態様では、そのような伝達は、壊れた標的と鋳型ポリヌクレオチドの間に生じるヘテロ二本鎖DNAのミスマッチ修正、および/または標的の一部となると考えられる遺伝情報を再合成するために鋳型ポリヌクレオチドが使用される「合成依存的鎖アニーリング」、および/または関連したプロセスをともない得る。そのような特殊化したHRは、鋳型ポリヌクレオチドの配列の一部または全部が標的ポリヌクレオチド中に組み込まれるような、標的分子の配列の変更をもたらすことが多い。
【0431】
いくつかの態様では、ポリヌクレオチド、例えば鋳型ポリヌクレオチド、例えば、導入遺伝子を含むポリヌクレオチド、の一部分は、相同性非依存的メカニズムを介して細胞のゲノム中に組み込まれる。本方法は、細胞のゲノム中に二本鎖切断(DSB)を作出し、ヌクレアーゼを使用して鋳型ポリヌクレオチド分子を開裂させ、その結果、鋳型ポリヌクレオチドがDSBの部位に組み込まれることを含む。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、非相同性依存的方法(例えば、NHEJ)を介して組み込まれる。インビボ開裂の際に、鋳型ポリヌクレオチドは、DSBの場所で細胞のゲノム中にターゲティングされた様式で組み込まれ得る。鋳型ポリヌクレオチドは、DSBを作出するために使用されるヌクレアーゼの1つまたは複数のために、1つまたは複数の同じ標的部位を含むことができる。したがって、鋳型ポリヌクレオチドは、組み込みが望まれる内在性遺伝子を開裂させるために使用される同じヌクレアーゼの1つまたは複数によって開裂され得る。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、DSBを誘導するために使用されるヌクレアーゼと異なるヌクレアーゼ標的部位を含む。本明細書において記載されるように、標的部位または標的場所の遺伝子破壊は、公知の任意の方法または本明細書に記載の任意の方法、例えば、ZFN、TALEN、CRISPR/Cas9システム、またはTtAgoヌクレアーゼによって作出され得る。
【0432】
いくつかの態様では、DNA修復メカニズムは、(1)単一二本鎖切断、(2)2つの一本鎖切断、(3)切断が標的部位の両側で生じる、2つの二本鎖切断、(4)二本鎖切断および2つの一本鎖切断が標的部位の両側で生じる、1つの二本鎖切断および2つの一本鎖切断、(5)1対の一本鎖切断が標的部位の両側で生じる、4つの一本鎖切断、または(6)1つの一本鎖切断の後に、ヌクレアーゼによって誘導され得る。いくつかの態様では、一本鎖鋳型ポリヌクレオチドが使用され、標的部位は、代替HDRによって変更され得る。
【0433】
鋳型ポリヌクレオチドによってもたらされる標的部位の変更は、ヌクレアーゼ分子による開裂に依存する。ヌクレアーゼによる開裂は、ニック、二本鎖切断、または2つの一本鎖切断、例えば標的部位のDNAの各鎖に1つを含むことができる。標的部位に切断を導入した後、切断末端で切除が生じ、一本鎖の突出DNA領域がもたらされる。
【0434】
標準HDRでは、標的部位に直接組み込まれるか、または導入遺伝子を挿入するかもしくは標的部位の配列を修正するための鋳型として使用されるかのいずれかであろう、標的部位に対する相同配列を含む、二本鎖の鋳型ポリヌクレオチドが導入される。切断点で切除した後、修復は、様々な経路によって、例えば、ダブルホリデイジャンクションモデル(double Holliday junction model)(もしくは二本鎖切断修復、DSBR経路)または合成依存的鎖アニーリング(SDSA)経路によって、進行し得る。
【0435】
ダブルホリデイジャンクションモデルでは、鋳型ポリヌクレオチド中の相同配列への標的部位の2つの一本鎖突出による鎖の侵入が生じ、その結果、2つのホリデイジャンクションを有する中間体が形成される。侵入鎖の末端から新しいDNAが合成されて、切除に起因するギャップが埋められるので、ジャンクションが移動する。新しく合成されたDNAの末端は、切除末端にライゲーションされ、ジャンクションが分解され、その結果、標的部位での挿入、例えば、鋳型ポリヌクレオチド中の導入遺伝子の挿入がもたらされる。鋳型ポリヌクレオチドとの乗換えが、ジャンクションの分解の際に生じ得る。
【0436】
SDSA経路では、1つの一本鎖突出のみが鋳型ポリヌクレオチドに侵入し、侵入鎖の末端から新しいDNAが合成されて、切除に起因するギャップが埋められる。新しく合成されたDNAは、次いで、残りの一本鎖突出にアニールし、ギャップを埋めるために新しいDNAが合成され、鎖がライゲーションされて、改変されたDNA二本鎖がもたらされる。
【0437】
代替HDRでは、一本鎖鋳型ポリヌクレオチド、例えば、鋳型ポリヌクレオチドが導入される。望ましい標的部位を変更するための、標的部位におけるニック、一本鎖切断、または二本鎖切断が、ヌクレアーゼ分子によって媒介され、切断点での切除が生じて、一本鎖突出が現れる。DNAの標的部位を修正するか、または変更するための鋳型ポリヌクレオチドの配列の組み込みは、本明細書において記載されるように、典型的にはSDSA経路によって生じる。
【0438】
「代替HDR」または代替相同性指向修復は、いくつかの態様では、相同な核酸(例えば、内在性相同配列、例えば、姉妹染色分体、または外来性核酸、例えば、鋳型ポリヌクレオチド)を使用してDNA損傷を修復するプロセスを指す。代替HDRは、該プロセスが標準HDRと異なる経路を利用し、標準HDRの媒介物、RAD51およびBRCA2によって阻害され得るという点において標準HDRと異なる。さらに、代替HDRは、切断の修復のために、一本鎖のまたはニックが入った相同な核酸を使用する。「標準HDR」または標準相同性指向修復は、いくつかの態様では、相同な核酸(例えば、内在性相同配列、例えば、姉妹染色分体、または外来性核酸、例えば、鋳型核酸)を使用してDNA損傷を修復するプロセスを指す。標準HDRは、典型的には、二本鎖切断において有意な切除があった場合に作用し、DNAの少なくとも1つの一本鎖部分を形成する。正常細胞では、HDRは、典型的には、切断の認識、切断の安定化、切除、一本鎖DNAの安定化、DNA乗換え中間体の形成、乗換え中間体の分解、およびライゲーションなどの一連の工程をともなう。該プロセスはRAD51およびBRCA2を必要とし、相同な核酸は典型的には二本鎖である。別段指示がない限り、いくつかの態様における用語「HDR」は、標準HDRおよび代替HDRを包含する。
【0439】
いくつかの態様では、二本鎖開裂は、ヌクレアーゼ、例えば、HNH様ドメインと関連する開裂活性およびRuvC様ドメイン、例えばN末端RuvC様ドメインと関連する開裂活性を有するCas9分子、例えば、野生型Cas9によってもたらされる。そのような態様は、単一gRNAしか必要としない。
【0440】
いくつかの態様では、1つの一本鎖切断またはニックは、ニッカーゼ活性を有するヌクレアーゼ分子、例えば、Cas9ニッカーゼによってもたらされる。標的部位にニックが入ったDNAは代替HDRの基質となり得る。
【0441】
いくつかの態様では、2つの一本鎖切断またはニックは、ヌクレアーゼ、例えば、ニッカーゼ活性、例えば、HNH様ドメインと関連する開裂活性またはN末端RuvC様ドメインと関連する開裂活性を有するCas9分子によってもたらされる。そのような態様は、通常2つのgRNAを必要とし、1つは各一本鎖切断の配置のためである。いくつかの態様では、ニッカーゼ活性を有するCas9分子はgRNAがハイブリダイズする鎖を開裂させるが、gRNAがハイブリダイズする鎖と相補的である鎖は開裂させない。いくつかの態様では、ニッカーゼ活性を有するCas9分子は、gRNAがハイブリダイズする鎖を開裂させるのではなく、gRNAがハイブリダイズする鎖に相補的である鎖を開裂させる。いくつかの態様では、ニッカーゼはHNH活性を有し、例えば、RuvC活性が失活しているCas9分子、例えば、D10での変異、例えばD10A変異を有するCas9分子である。D10AはRuvCを失活させ;したがって、Cas9ニッカーゼはHNH活性(のみ)を有し、gRNAがハイブリダイズする鎖(例えば、NGG PAMを有さない相補鎖)で切断すると考えられる。いくつかの態様では、H840、例えば、H840A変異を有するCas9分子をニッカーゼとして使用することができる。H840AはHNHを失活させ;したがって、Cas9ニッカーゼはRuvC活性(のみ)を有し、非相補鎖(例えば、NGG PAMを有し、その配列がgRNAと同一である鎖)で切断する。いくつかの態様では、Cas9分子はN末端RuvC様ドメインニッカーゼであり、例えば、Cas9分子はN863の変異、例えばN863Aを含む。
【0442】
2つの一本鎖ニックを配置するためにニッカーゼおよび2つのgRNAが使用されるいくつかの態様では、1つのニックは標的DNAの+鎖上にあり、1つのニックは-鎖上にある。PAMは外側を向いている。gRNAは、gRNAが約0~50、0~100、または0~200ヌクレオチドによって分離されるように、選択することができる。いくつかの態様では、2つのgRNAのターゲティングドメインに相補的である標的配列の間に重複はない。いくつかの態様では、gRNAは重複せず、50、100、または200ヌクレオチド程度によって分離される。いくつかの態様では、2つのgRNAの使用は、例えば、オフターゲット結合を減少させることによって、特異性を増加させることができる(Ran et al., Cell 2013)。
【0443】
いくつかの態様では、HDR、例えば、代替HDRを誘導するために単一ニックを使用することができる。所与の開裂部位、例えば標的部位でHR対NHEJの比を増加させるために、単一ニックを使用することができることが、本明細書において意図される。いくつかの態様では、一本鎖切断は、該gRNAのターゲティングドメインが相補的である標的部位のDNAの鎖に形成される。いくつかの態様では、一本鎖切断は、該gRNAのターゲティングドメインが相補的である鎖以外の標的部位のDNAの鎖に形成される。
【0444】
いくつかの態様では、ヌクレアーゼによって作出された二本鎖または一本鎖切断を修復するために、他のDNA修復経路、例えば、一本鎖アニーリング(SSA)、一本鎖切断修復(SSBR)、ミスマッチ修復(MMR)、塩基除去修復(BER)、ヌクレオチド除去修復(NER)、鎖間架橋(ICL)、損傷乗越え合成(TLS)、誤りのない複製後修復(PRR)が細胞によって用いられ得る。
【0445】
標的組み込みによって、導入遺伝子、例えば相同性アーム間の配列が、ゲノム中のTGFBR2遺伝子座に組み込まれる。導入遺伝子は、ゲノム中の少なくとも1つの標的部位または部位のうちの1つ、またはその近くのどこにでも組み込まれ得る。いくつかの態様では、導入遺伝子は、少なくとも1つの標的部位のうちの1つ、またはその近くに、例えば、開裂部位の上流または下流の300、250、200、150、100、50、10、5、4、3、2、1、またはそれ以下の塩基対以内、例えば、標的部位のいずれかの側の100、50、10、5、4、3、2、1塩基対以内、例えば、標的部位のいずれかの側の50、10、5、4、3、2、1塩基対以内に組み込まれる。いくつかの態様では、導入遺伝子を含む組み込まれる配列は、いかなるベクター配列(例えば、ウイルスベクター配列)も含まない。いくつかの態様では、組み込まれる配列は、ベクター配列(例えば、ウイルスベクター配列)の一部分を含む。
【0446】
片方の鎖における二本鎖切断または一本鎖切断(例えば、標的部位)は、望ましい領域で変更がもたらされるように、例えば、導入遺伝子の挿入または変異の修正が生じるように、標的組み込み部位、例えば標的組み込みのための部位に十分に近くなければならない。いくつかの態様では、距離は、10、25、50、100、200、300、350、400、または500ヌクレオチド以下である。いくつかの態様では、切断は、末端切除の間にエキソヌクレアーゼ媒介性除去の対象になる領域内に切断があるように、標的組み込み部位に十分に近くなければならないと考えられる。いくつかの態様では、ターゲティングドメインは、開裂イベント、例えば、二本鎖または一本鎖切断が、変更が望まれる領域、例えば標的挿入のための部位の1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200、300、350、400、または500ヌクレオチド以内に配置されるように構成される。切断、例えば、二本鎖または一本鎖切断は、変更が望まれる領域、例えば標的挿入のための部位の上流または下流に配置され得る。いくつかの態様では、切断は、変更が望まれる領域内、例えば、少なくとも2つの変異ヌクレオチドによって定められた領域内に配置される。いくつかの態様では、切断は、変更が望まれる領域の直ぐ近くに、例えば、標的組み込み部位の直ぐ上流または下流に配置される。
【0447】
いくつかの態様では、一本鎖切断は、第2のgRNA分子によって配置される、さらなる一本鎖切断をともなう。例えば、ターゲティングドメインは、開裂イベント、例えば、2つの一本鎖切断が、標的組み込み部位の1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200、300、350、400、または500ヌクレオチド以内に配置されるように構成される。いくつかの態様では、第1および第2のgRNA分子は、Cas9ニッカーゼをガイドする場合に、一本鎖切断が、第2のgRNAによって配置され、互いに十分接近したさらなる一本鎖切断をともなって、望ましい領域の変更をもたらすように構成される。いくつかの態様では、第1および第2のgRNA分子は、例えば、Cas9がニッカーゼである場合、第2のgRNAによって配置される一本鎖切断が、第1のgRNA分子によって配置される切断の10、20、30、40、または50ヌクレオチド以内であるように構成される。いくつかの態様では、2つのgRNA分子は、異なる鎖において、同じ位置に、または互いの数ヌクレオチド以内に切断を配置し、例えば、二本鎖切断を本質的に模倣するように構成される。
【0448】
HDR媒介性の導入遺伝子の挿入または修正を誘導する目的で、gRNA(単分子(もしくはキメラ)またはモジュラーgRNA)およびCas9ヌクレアーゼが二本鎖切断を誘導する、いくつかの態様では、開裂部位、例えば標的部位は、標的組み込み部位から離れて、0~200bp(例えば、0~175、0~150、0~125、0~100、0~75、0~50、0~25、25~200、25~175、25~150、25~125、25~100、25~75、25~50、50~200、50~175、50~150、50~125、50~100、50~75、75~200、75~175、75~150、75~125、75~100bp)の間にある。いくつかの態様では、開裂部位、例えば標的部位は、標的組み込みのための部位から離れて、0~100bp(例えば、0~75、0~50、0~25、25~100、25~75、25~50、50~100、50~75、または75~100bp)の間にある。
【0449】
いくつかの態様では、ニッカーゼを使用して突出を有する切断を引き起こすことによって、HDRを促進することができる。いくつかの態様では、突出の一本鎖の性質は、例えばNHEJとは対照的に、HDRによって切断を修復するという細胞の可能性を増強することができる。
【0450】
特に、いくつかの態様では、HDRは、第1の標的部位に第1のニッカーゼをターゲティングする第1のgRNA、および第1の標的部位と逆のDNA鎖にあり、第1のニックからずれている第2の標的部位へ第2のニッカーゼをターゲティングする第2のgRNAを選択することによって促進される。いくつかの態様では、gRNA分子のターゲティングドメインは、あらかじめ選択されたヌクレオチド、例えばコード領域のヌクレオチドから十分に離れて開裂イベントを配置し、その結果、該ヌクレオチドが変わらないように構成される。いくつかの態様では、gRNA分子のターゲティングドメインは、エクソンの配列の変更または望まれないスプライシングイベントを回避するために、イントロン/エクソン境界、または天然に存在するスプライスシグナルから十分に離れてイントロンの開裂イベントを配置するように構成される。いくつかの態様では、gRNA分子のターゲティングドメインは、少なくとも1つの標的部位のうちの1つ、もしくはその近くにインフレームの導入遺伝子配列の組み込みを可能にするために、初期エクソン中に配置するように構成される。
【0451】
いくつかの態様では、二本鎖切断は、第2のgRNA分子によって配置される、さらなる二本鎖切断をともない得る。いくつかの態様では、二本鎖切断は、第2のgRNA分子および第3のgRNA分子によって配置される、2つのさらなる一本鎖切断をともない得る。いくつかの態様では、2つのgRNA、例えば、独立に、単分子(もしくはキメラ)またはモジュラーgRNAは、標的組み込み部位、例えば、標的組み込みのための部位の両側に二本鎖切断を配置するように構成される。
【0452】
2. 鋳型ポリヌクレオチド
いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチド、例えば、組換え受容体、キメラ受容体、またはそれらの一部分の1つまたは複数の鎖をコードするヌクレオチドの配列を含む導入遺伝子、例えば、外来性または異種の核酸配列、および標的組み込みのための内在性ゲノム部位の、またはその近くの配列と相同な相同配列(例えば相同性アーム)を含むポリヌクレオチドは、修復鋳型として、細胞DNA修復プロセス、例えば相同組換えに関与する、用いられる分子および機構であり得る。いくつかの局面では、内在性DNA中の1つまたは複数の標的部位の、またはその近くの配列と相同性を有する鋳型ポリヌクレオチドは、トランスジェニック、異種、または外来性の配列、例えば、組換え受容体またはその一部分の1つまたは複数の鎖をコードする外来性核酸配列の標的挿入のために、標的DNAの構造、例えば内在性TGFBR2遺伝子座の標的部位を変更するために使用することができる。例えば、導入遺伝子配列の相同性指向修復(HDR)媒介性標的組み込みのための鋳型として、本明細書において提供される方法で使用するためのポリヌクレオチド、例えば鋳型ポリヌクレオチドも提供される。いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは核酸配列、例えば、組換え受容体またはその一部分の1つまたは複数の鎖をコードする導入遺伝子;および該核酸配列に連結される1つまたは複数の相同性アームを含み、1つまたは複数の相同性アームは、TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームの1つまたは複数の領域と相同な配列を含む。
【0453】
いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、組換え受容体またはその一部分の1つまたは複数の鎖をコードするヌクレオチドの配列を含む導入遺伝子(外来性または異種の核酸配列)に連結しているおよび/または隣接している、1つまたは複数の相同配列(例えば相同性アーム)を含む。いくつかの態様では、相同配列は、外来性配列を内在性TGFBR2遺伝子座にターゲティングするために使用される。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、細胞のゲノム中への挿入または組み込みのために、核酸配列、例えば導入遺伝子配列を相同性アームの間に含む。鋳型ポリヌクレオチド中の導入遺伝子は、プロモーターまたは他の制御エレメントとともにまたはそのまま、機能的ポリペプチド(例えばcDNA)をコードする1つまたは複数の配列を含むことができる。
【0454】
いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、標的部位の構造を変更するために遺伝子破壊を導入することができる1つまたは複数の作用物質とともに使用することができる、核酸配列である。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、相同性指向修復イベントによって、標的部位の構造、例えば、導入遺伝子の挿入を変更する。
【0455】
いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、標的部位の配列を変更し、例えば、細胞のゲノム中への相同性アームの間の導入遺伝子配列の挿入または組み込みをもたらす。いくつかの局面では、標的組み込みは、導入遺伝子配列のコード部分と内在性TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームの1つまたは複数のエクソンとのインフレームの組み込みを、例えば、組み込み部位で隣接するエクソンとインフレームでもたらす。例えば、場合によっては、インフレームの組み込みは、内在性オープンリーディングフレームの一部分および発現される組換え受容体またはその一部分をもたらし、これらは、任意でマルチシストロン性エレメント、例えば2Aエレメントによって分離される。したがって、改変TGFBR2遺伝子座は、TGFBRIIの一部分および組換え受容体またはその一部分を含むポリペプチドを発現することができ、これは、マルチシストロン性エレメントによって2つの異なるポリペプチドに分離され得る。
【0456】
いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、例えば、遺伝子破壊を導入することができる1つまたは複数の作用物質によって開裂させられる標的配列上の部位に対応するかまたは相同である配列を含む。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、遺伝子破壊を導入することができる第1の作用物質で開裂させられる標的配列上の第1の部位と遺伝子破壊を導入することができる第2の作用物質で開裂させられる標的配列上の第2の部位の両方に対応するかまたは相同である配列を含む。
【0457】
いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは以下の成分を含む:[5'相同性アーム]-[導入遺伝子配列(例えば、組換え受容体またはその一部分の1つまたは複数の鎖をコードする、外来性または異種の核酸配列)]-[3'相同性アーム]。相同性アームは染色体中への組換えをもたらし、したがって、例えば、組換え受容体またはその一部分をコードする導入遺伝子を開裂部位、例えば標的部位の、またはその近くのゲノムDNA中に効果的に挿入するかまたは組み込む。いくつかの態様では、相同性アームは、遺伝子破壊の標的部位の配列に隣接する。
【0458】
いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは二本鎖である。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは一本鎖である。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは一本鎖部分および二本鎖部分を含む。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドはベクターに含まれる。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドはDNAである。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドはRNAである。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは二本鎖DNAである。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは一本鎖DNAである。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは二本鎖RNAである。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは一本鎖RNAである。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは一本鎖部分および二本鎖部分を含む。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドはベクターに含まれる。
【0459】
ある特定の態様では、ポリヌクレオチド、例えば鋳型ポリヌクレオチドは、組換え受容体、例えば、CARまたはその一部分の1つまたは複数の鎖をコードする導入遺伝子を含む(contains)および/または含む(includes)。特定の態様では、導入遺伝子は、TGFBRIIをコードする内在性の遺伝子、遺伝子座、またはオープンリーディングフレーム内にある標的部位にターゲティングされる。いくつかの態様では、導入遺伝子は、例えば、ドミナントネガティブ型のTGFBRIIポリペプチドをコードするコード配列をもたらすように、内在性TGFBR2オープンリーディングフレーム内の組み込みのためにターゲティングされる。
【0460】
挿入のためのポリヌクレオチドは、「導入遺伝子」または「外来性配列」または「ドナー」ポリヌクレオチドもしくは分子と称することもできる。鋳型ポリヌクレオチドは、一本鎖および/または二本鎖のDNAでもよく、直鎖状または環状の形態で細胞中に導入することができる。鋳型ポリヌクレオチドは、一本鎖および/または二本鎖のDNAでもよく、直鎖状または環状の形態で細胞中に導入することができる。鋳型ポリヌクレオチドは一本鎖および/または二本鎖のRNAでもよく、RNA分子(例えば、RNAウイルスの一部)として導入することができる。米国特許出願公開第20100047805号および第20110207221号も参照されたい。鋳型ポリヌクレオチドはDNA形態でも導入することができ、これは、環状または直鎖状の形態で細胞中に導入することができる。直鎖状形態で導入される場合、鋳型ポリヌクレオチドの末端は、公知の方法によって、(例えば、エキソヌクレアーゼによる分解から)保護され得る。例えば、1つまたは複数のジデオキシヌクレオチド残基が直鎖状分子の3'末端に加えられ、および/または自己相補的なオリゴヌクレオチドが一端または両端にライゲーションされる。例えば、Chang et al. (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:4959-4963;Nehls et al. (1996) Science 272:886-889を参照されたい。外来性ポリヌクレオチドを分解から保護するためのさらなる方法としては、限定されないが、末端アミノ基の付加、ならびに例えば、ホスホロチオエート、ホスホロアミデート、およびO-メチルリボースまたはデオキシリボース残基などの修飾ヌクレオチド間連結の使用が挙げられる。二本鎖形態で導入される場合は、鋳型ポリヌクレオチドは、1つまたは複数のヌクレアーゼ標的部位、例えば、細胞のゲノム中に組み込まれる導入遺伝子に隣接するヌクレアーゼ標的部位を含むことができる。例えば、米国特許出願公開第20130326645号を参照されたい。
【0461】
いくつかの態様では、二本鎖鋳型ポリヌクレオチドは、1kbを超える長さ、例えば、2~200kb、2~10kb(または、これらの間の任意の値)の配列(導入遺伝子とも称される)を含む。二本鎖鋳型ポリヌクレオチドは、例えば、少なくとも1つのヌクレアーゼ標的部位も含む。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、例えば1対のZFNまたはTALENのために、少なくとも2つの標的部位を含む。典型的には、ヌクレアーゼ標的部位は、導入遺伝子の開裂のために、導入遺伝子配列の外側、例えば、導入遺伝子配列に対して5'および/または3'にある。ヌクレアーゼ開裂部位、例えば標的部位は、任意のヌクレアーゼに対するものであってもよい。いくつかの態様では、二本鎖鋳型ポリヌクレオチド中に含まれるヌクレアーゼ標的部位は、開裂した鋳型ポリヌクレオチドが相同性非依存的方法を介して組み込まれる内在性標的を開裂させるために使用されるのと同じヌクレアーゼに対するものである。
【0462】
いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは一本鎖核酸である。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは二本鎖核酸である。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、付加されるか、または標的DNAの変化の鋳型になるであろう、例えば1つまたは複数のヌクレオチドのヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、標的部位を改変するために使用することができるヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、例えば標的部位の標的DNAの野生型配列に対応する、例えば1つまたは複数のヌクレオチドのヌクレオチド配列を含む。
【0463】
いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは直鎖状二本鎖DNAである。長さは、例えば、約200~約5000塩基対、例えば、約200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1200、1400、1600、1800、2000、2500、3000、4000、または5000塩基対でもよい。長さは、例えば、少なくとも200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1200、1400、1600、1800、2000、2500、3000、4000、または5000塩基対でもよい。いくつかの態様では、長さは、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1200、1400、1600、1800、2000、2500、3000、4000、または5000塩基対以下である。いくつかの態様では、二本鎖鋳型ポリヌクレオチドは、約160塩基対、例えば、約200~4000、300~3500、400~3000、500~2500、600~2000、700~1900、800~1800、900~1700、1000~1600、1100~1500、または1200~1400塩基対の長さを有する。
【0464】
本明細書において記載される鋳型ポリヌクレオチドに含まれる導入遺伝子は、PCRなどの公知の標準的な技法を使用して、プラスミド、細胞、または他の供給源から単離することができる。使用のための鋳型ポリヌクレオチドは、環状スーパーコイル型、環状弛緩型、直鎖状などを含めて、様々なタイプのトポロジーを含むことができる。あるいは、これは、標準的なオリゴヌクレオチド合成技法を使用して化学合成することができる。さらに、鋳型ポリヌクレオチドはメチル化されていてもよく、またはメチル化を欠いていてもよい。鋳型ポリヌクレオチドは、細菌または酵母の人工染色体(BACまたはYAC)の形態でもよい。
【0465】
鋳型ポリヌクレオチドは直鎖状一本鎖DNAでもよい。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、(i)標的DNAのニックが入った鎖にアニールすることができる直鎖状一本鎖DNA、(ii)標的DNAのインタクトな鎖にアニールすることができる直鎖状一本鎖DNA、(iii)標的DNAの転写される鎖にアニールすることができる直鎖状一本鎖DNA、(iv)標的DNAの転写されない鎖にアニールすることができる直鎖状一本鎖DNA、または上記の1つより多くである。
【0466】
長さは、例えば、約200~5000ヌクレオチド、例えば、約200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1200、1400、1600、1800、2000、2500、3000、4000、または5000ヌクレオチドでもよい。長さは、例えば、少なくとも200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1200、1400、1600、1800、2000、2500、3000、4000、または5000ヌクレオチドでもよい。いくつかの態様では、長さは、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1200、1400、1600、1800、2000、2500、3000、4000、または5000ヌクレオチド以下である。いくつかの態様では、一本鎖鋳型ポリヌクレオチドは約160ヌクレオチド、例えば、約200~4000、300~3500、400~3000、500~2500、600~2000、700~1900、800~1800、900~1700、1000~1600、1100~1500、または1200~1400ヌクレオチドの長さを有する。
【0467】
いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは環状二本鎖DNA、例えばプラスミドである。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、導入遺伝子および/または標的部位の両側に約500~1000塩基対の相同性を含む。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、標的部位もしくは導入遺伝子の5'、標的部位もしくは導入遺伝子の3'、または標的部位もしくは導入遺伝子の5'と3'の両方に、約10、20、30、40、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、または2000塩基対の相同性を含む。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、標的部位もしくは導入遺伝子の5'、標的部位もしくは導入遺伝子の3'、または標的部位もしくは導入遺伝子の5'と3'の両方に、少なくとも10、20、30、40、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、または2000塩基対の相同性を含む。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、標的部位もしくは導入遺伝子の5'、標的部位もしくは導入遺伝子の3'、または標的部位もしくは導入遺伝子の5'と3'の両方に、10、20、30、40、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、または2000塩基対以下の相同性を含む。
【0468】
a. 導入遺伝子配列
いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、組換え受容体、キメラ受容体、もしくはそれらの一部分、本明細書おいて、例えばセクションIII.Bに記載される任意の組換え受容体の1つもしくは複数の鎖、またはそのような組換え受容体の1つもしくは複数の領域、ドメイン、もしくは鎖をコードする導入遺伝子配列を含む。
【0469】
いくつかの局面では、導入遺伝子配列は、細胞外結合領域、膜貫通ドメイン、および/または細胞内領域を含む組換え受容体をコードする。いくつかの局面では、導入遺伝子配列は、組換え受容体の全部または一部分をコードすることができる。いくつかの態様では、導入遺伝子配列は、本明細書おいて、例えばセクションIII.Bに記載される任意の組換え受容体、またはそれらの1つもしくは複数の領域、ドメイン、もしくは鎖をコードする。いくつかの局面では、内在性TGFBR2遺伝子座中への導入遺伝子配列の組み込みの際に、生じた改変TGFBR2遺伝子座は、組換え受容体、例えば、本明細書おいて、例えばセクションIII.Bに記載される任意の組換え受容体、またはそれらの1つもしくは複数の領域、ドメイン、もしくは鎖をコードする。例えば、導入遺伝子配列は、細胞外領域、膜貫通ドメイン、ならびに共刺激シグナル伝達ドメインおよび他のドメインまたはそれらの一部分を含むことができる細胞内領域の1つまたは複数をコードするヌクレオチドの配列を含むことができる。
【0470】
いくつかの局面では、ゲノム中の標的場所に挿入されるかまたは組み込まれる、コードおよび/または非コード配列および/またはそれらの部分的コード配列を含めた、組換え受容体またはその一部分の1つまたは複数の鎖をコードする関心対象の核酸配列である導入遺伝子配列は、「導入遺伝子」、「導入遺伝子配列」、「外来性核酸配列」、「異種配列」、または「ドナー配列」と称することもできる。いくつかの局面では、導入遺伝子は、T細胞、例えばヒトT細胞のゲノム中の特定の標的遺伝子座または標的場所の内在性ゲノム配列などの内在性ゲノム配列に対して外来性または異種である核酸配列である。いくつかの局面では、導入遺伝子は、T細胞、例えばヒトT細胞の標的遺伝子座または標的場所の内在性ゲノム配列と比較して、改変されているか、または異なる配列である。いくつかの局面では、導入遺伝子は、異なる遺伝子、種および/もしくは起源に由来する核酸配列から生じるか、または該核酸配列と比較して改変されている核酸配列である。いくつかの局面では、導入遺伝子は、同じ種の異なる遺伝子座、例えば、異なるゲノム領域または異なる遺伝子からの配列に由来する配列である。いくつかの局面では、例示的な組換え受容体としては、本明細書おいて、例えばセクションIII.Bに記載される任意のものが挙げられる。
【0471】
いくつかの態様では、ヌクレアーゼ誘導性HDRは、標的挿入のための導入遺伝子の発現のために、導入遺伝子(「外来性配列」または「導入遺伝子配列」とも呼ばれる)の挿入をもたらす。鋳型ポリヌクレオチド配列は、典型的には、それが配置されるゲノム配列と同一ではない。鋳型ポリヌクレオチド配列は、関心対象の場所で効率的なHDRを可能にするために、2つの相同性領域が隣接する非相同配列を含むことができる。さらに、鋳型ポリヌクレオチド配列は、細胞のクロマチン中の関心対象の領域と相同でない配列を含むベクター分子を含むことができる。鋳型ポリヌクレオチド配列は、細胞のクロマチンに対して相同のいくつかの非連続的な領域を含むことができる。例えば、関心対象の領域中に通常は存在しない配列の標的挿入のために、該配列は導入遺伝子中に存在していてもよく、関心対象の領域中の配列に対して相同の領域が隣接していてもよい。
【0472】
いくつかの局面では、導入遺伝子配列は、T細胞、任意でヒトT細胞の内在性のゲノムTGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームに対して外来性または異種である配列である。いくつかの局面では、内在性TGFBR2遺伝子座における標的部位近くの配列に相同な1つまたは複数の相同性アームに連結した導入遺伝子配列を含む鋳型ポリヌクレオチドの存在下のHDRは、組換え受容体またはその一部分をコードする改変TGFBR2遺伝子座をもたらす。
【0473】
いくつかの態様では、導入遺伝子配列は、組換え受容体の様々な領域、ドメイン、または鎖の全部または一部分、例えば、本明細書のセクションIII.Bに記載される組換え受容体または様々な領域、ドメイン、もしくは鎖をコードする。
【0474】
いくつかの局面では、導入遺伝子は、異なる遺伝子、種および/または起源からの異なる核酸配列を結合させることによって作出される配列を含むキメラ配列である。いくつかの局面では、導入遺伝子は、結合または連結された、異なる遺伝子、コード配列またはエクソンまたはそれらの一部分からの、異なる領域またはドメインまたはそれらの一部分をコードするヌクレオチドの配列を含む。いくつかの局面では、標的組み込みのための導入遺伝子配列は、ポリペプチドまたはその断片をコードする。
【0475】
いくつかの態様では、導入遺伝子配列は、キメラ受容体、例えばキメラ抗原受容体(CAR)またはその一部分、例えば、そのドメインまたは領域である組換え受容体をコードすることができる。いくつかの態様では、導入遺伝子配列は、組換え受容体、例えばキメラ抗原受容体(CAR)の様々な領域またはドメインをコードする。いくつかの態様では、導入遺伝子は、細胞内領域、例えばCARの細胞内領域をコードするヌクレオチドの配列を含む。いくつかの態様では、導入遺伝子は、膜貫通領域または膜結合領域、例えば、CARの膜貫通領域をコードするヌクレオチドの配列も含む。いくつかの態様では、導入遺伝子は、細胞外領域、例えば、CARの細胞外領域をコードするヌクレオチドの配列も含む。例示的なキメラ受容体としては、以下のセクションB.1およびB.3に記載されるものが挙げられる。
【0476】
いくつかの態様では、導入遺伝子配列は、組換え受容体、例えば、組換えT細胞受容体(TCR)、またはそれらの一部分、例えば、そのドメイン、領域、または鎖をコードすることができる。いくつかの態様では、組換え受容体は組換えTCRである。いくつかの態様では、組換え受容体、例えば組換えTCRは、2つ以上の別個のポリペプチド鎖、例えば、TCRアルファ(TCRα)およびTCRベータ(TCRβ)鎖を含む。いくつかの局面では、導入遺伝子配列は、組換えTCRの1つまたは複数の鎖、例えば、TCRαまたはTCRβまたは両方をコードすることができる。いくつかの局面では、導入遺伝子配列は、組換えTCRの1つまたは複数の領域またはドメイン、例えば、TCRαまたはTCRβまたは両方の細胞内領域、膜貫通領域、および/または細胞外領域をコードすることができる。いくつかの局面では、TCRαおよびTCRβをコードする配列は、任意でマルチシストロン性エレメント、例えば2Aエレメントによって分離されている。例示的組換えTCRとしては、以下のセクションIII.B.4に記載されるものが挙げられる。
【0477】
いくつかの局面では、導入遺伝子は、非コード、制御、または調節配列、例えば、コードされるポリペプチドもしくはその断片の発現をモジュレートするおよび/もしくは制御することを可能にするのに必要とされる配列、またはポリペプチドを修飾するのに必要とされる配列も含む。いくつかの態様では、導入遺伝子は、イントロンを含まないか、または導入遺伝子がゲノム配列に由来する場合は、ゲノム中の対応する核酸と比較して1つもしくは複数のイントロンを欠く。いくつかの態様では、導入遺伝子配列はイントロンを含まない。態様のいくつかでは、導入遺伝子は組換え受容体またはその一部分をコードする配列を含み、例えばヒト細胞での発現のために、導入遺伝子配列の全部または一部分がコドン最適化されている。
【0478】
いくつかの態様では、コードおよび非コード領域を含む導入遺伝子配列の長さは、100~約10,000塩基対または約100~約10,000塩基対、例えば、約100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、6000、7000、8000、9000、または10000塩基対である。いくつかの態様では、導入遺伝子配列の長さは、調製、合成、もしくはアセンブルすることができる、および/または細胞中に導入することができるポリヌクレオチドの最大の長さ、あるいはウイルスベクターの収容能力によって制限される。いくつかの局面では、導入遺伝子配列の長さは、鋳型ポリヌクレオチドの最大の長さおよび/または必要とされる1つまたは複数の相同性アームの長さによって変動し得る。
【0479】
いくつかの態様では、遺伝子破壊誘導性HDRは、ゲノム中の標的場所で導入遺伝子配列の挿入または組み込みをもたらす。鋳型ポリヌクレオチド配列は、典型的には、それがターゲティングされるゲノム配列と同一ではない。鋳型ポリヌクレオチド配列は、関心対象の場所で効率的なHDRを可能にするために、2つの相同性領域が隣接する導入遺伝子配列を含むことができる。鋳型ポリヌクレオチド配列は、ゲノムDNAに対して相同のいくつかの非連続的な領域を含むことができる。例えば、関心対象の領域中に通常は存在しない配列の標的挿入のために、前記配列は導入遺伝子中に存在していてもよく、関心対象の領域中の配列に対して相同の領域が隣接していてもよい。いくつかの態様では、導入遺伝子配列は、組換え受容体またはその一部分、例えば、細胞外結合領域、膜貫通ドメインおよび/または細胞内領域の一部分の1つまたは複数をコードする。
【0480】
いくつかの局面では、HDRによる導入遺伝子の標的組み込みの際に、細胞のゲノムは、組換え受容体またはその一部分をコードする核酸配列を含む改変TGFBR2遺伝子座を含む。いくつかの局面では、完全な組換え受容体が導入遺伝子配列にコードされる。いくつかの局面では、導入遺伝子配列は、他の分子および/または制御もしくは調節エレメント、例えば、外来性プロモーターおよび/もしくはマルチシストロン性エレメントをコードするヌクレオチドの配列も含む。
【0481】
いくつかの態様では、導入遺伝子配列は、シグナルペプチド、制御または調節エレメント、例えばプロモーター、および/または1つもしくは複数のマルチシストロン性エレメント、例えば、リボソームスキップエレメントもしくは配列内リボソーム進入部位(IRES)をコードするシグナル配列も含む。いくつかの態様では、シグナル配列は、組換え受容体をコードするヌクレオチドの配列の5'に配置され得る。
【0482】
導入遺伝子配列にコードされる例示的な領域、ドメイン、または鎖は以下に記載され、また、本明細書のセクションIII.Bに記載される任意の領域またはドメインでもよい。
【0483】
(i) シグナル配列
いくつかの態様では、導入遺伝子はシグナル配列を含み、シグナルペプチドをコードする。いくつかの局面では、シグナル配列は、異種または非天然のシグナルペプチド、例えば、異なる遺伝子もしくは種からのシグナルペプチド、または内在性TGFBR2遺伝子座のシグナルペプチドと異なるシグナルペプチドをコードすることができる。いくつかの局面では、例示的なシグナル配列としては、SEQ ID NO:24に記載され、SEQ ID NO:25に記載されるシグナルペプチドをコードするGMCSFRアルファ鎖のシグナル配列、またはSEQ ID NO:26に記載されるCD8アルファシグナルペプチドが挙げられる。発現される組換え受容体の成熟型では、シグナル配列はポリペプチドの残りの部分から切断される。いくつかの局面では、シグナル配列は、制御または調節エレメント、例えばプロモーター、例えば異種プロモーター、例えば、TGFBR2遺伝子座に由来しないプロモーターの3'に配置される。いくつかの局面では、シグナル配列は、1つまたは複数のマルチシストロン性エレメント、例えば、リボソームスキップ配列および/または配列内リボソーム進入部位(IRES)をコードするヌクレオチドの配列の3'に配置される。いくつかの局面では、シグナル配列は、導入遺伝子中の細胞外領域の1つまたは複数の成分をコードするヌクレオチドの配列の5'に配置され得る。いくつかの態様では、シグナル配列は導入遺伝子中に存在する最も5'の領域であり、相同性アームの1つに連結される。いくつかの局面では、導入遺伝子配列にコードされるシグナル配列としては、本明細書において、例えばセクションIII.Bに記載される任意のシグナル配列が挙げられる。
【0484】
(ii) 例示的なキメラ受容体コード配列
いくつかの局面では、標的組み込みのための導入遺伝子配列は、キメラ受容体、例えばキメラ抗原受容体(CAR)またはキメラ自己抗体受容体(CAAR)である組換え受容体をコードする配列を含む。いくつかの局面では、導入遺伝子は、結合または連結された、異なる遺伝子、コード配列またはエクソンまたはそれらの一部分に由来し得る、組換え受容体の異なる領域またはドメインまたは一部分をコードするヌクレオチドの配列を含む。
【0485】
いくつかの態様では、コードされる組換え受容体、例えばCARは、1つまたは複数の領域またはドメイン、例えば、(例えば、1つまたは複数の細胞外結合ドメインおよび/またはスペーサーを含む)細胞外領域、膜貫通ドメイン、ならびに/あるいは(例えば、一次シグナル伝達領域もしくはドメインおよび/または1つもしくは複数の共刺激シグナル伝達ドメインを含む)細胞内領域の1つまたは複数を含む。いくつかの局面では、コードされるCARは、他のドメイン、そのような多量体化ドメインまたはリンカーをさらに含む。
【0486】
いくつかの局面では、導入遺伝子中で、細胞外領域をコードするヌクレオチドの配列は、シグナル配列とスペーサーをコードするヌクレオチドとの間に配置される。いくつかの局面では、導入遺伝子中で、細胞外多量体化ドメインをコードするヌクレオチドの配列は、結合ドメインをコードするヌクレオチドの配列とスペーサーをコードするヌクレオチドの配列の間に配置される。いくつかの局面では、スペーサーをコードするヌクレオチドの配列は、結合ドメインをコードするヌクレオチドの配列と膜貫通ドメインをコードするヌクレオチドの配列の間に配置される。いくつかの態様では、導入遺伝子は、5'から3'の順番で、細胞外領域をコードするヌクレオチドの配列、ヌクレオチドの配列、膜貫通ドメイン(または膜結合ドメイン)、およびヌクレオチドの配列、細胞内領域を含む。
【0487】
いくつかの態様では、コードされる組換え受容体はCARであり、細胞外領域をコードする導入遺伝子は、5'から3'の順番で、細胞外結合ドメインをコードするヌクレオチドの配列およびスペーサーをコードするヌクレオチドの配列を含むことができる。いくつかの態様では、導入遺伝子は、1つまたは複数の細胞外多量体化ドメインをコードするヌクレオチドの配列も含み、これは、結合ドメインおよび/もしくはスペーサーをコードするヌクレオチドの配列のいずれかの5'もしくは3'に、ならびに/または膜貫通ドメインをコードするヌクレオチドの配列の5'に配置され得る。いくつかの局面では、導入遺伝子配列は、典型的には細胞外領域をコードするヌクレオチドの配列の5'に配置されるシグナル配列も含む。
【0488】
いくつかの局面では、導入遺伝子中で、結合ドメインをコードするヌクレオチドの配列は、シグナル配列とスペーサーをコードするヌクレオチドとの間に配置される。いくつかの局面では、導入遺伝子中で、細胞外多量体化ドメインをコードするヌクレオチドの配列は、結合ドメインをコードするヌクレオチドの配列とスペーサーをコードするヌクレオチドの配列の間に配置される。いくつかの局面では、スペーサーをコードするヌクレオチドの配列は、結合ドメインをコードするヌクレオチドの配列と膜貫通ドメインをコードするヌクレオチドの配列の間に配置される。
【0489】
いくつかの態様では、導入遺伝子は、細胞内領域をコードするヌクレオチドの配列を含み、これは、1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメインおよび/または一次シグナル伝達ドメインもしくは領域をコードするヌクレオチドの配列を含むことができる。
【0490】
いくつかの態様では、導入遺伝子は、1つまたは複数のマルチシストロン性エレメント、例えば、リボソームスキップ配列および/または配列内リボソーム進入部位(IRES)も含む。いくつかの局面では、導入遺伝子は、典型的には導入遺伝子配列の最も5'部分、例えば、シグナル配列の5'に、制御または調節エレメント、例えばプロモーターも含む。いくつかの局面では、1つまたは複数のさらなる分子またはさらなるドメインもしくは領域をコードするヌクレオチドの配列は、ポリヌクレオチドの導入遺伝子部分に含まれ得る。いくつかの局面では、1つまたは複数のさらなる分子またはさらなるドメインもしくは領域をコードするヌクレオチドの配列は、CARの1つまたは複数の領域またはドメイン、または鎖をコードするヌクレオチドの配列の5'に配置され得る。いくつかの局面では、1つまたは複数のさらなる分子またはさらなるドメイン、領域、もしくは鎖をコードするヌクレオチドの配列は、CARの1つまたは複数の領域をコードするヌクレオチドの配列の上流にある。
【0491】
導入遺伝子配列にコードされるキメラ受容体の例示的なドメインまたは領域は以下に記載され、また、以下のセクションIII.B.1およびIII.B.3に記載される例示的なキメラ受容体の任意の領域またはドメインを挙げることができる。
【0492】
(a) 結合ドメイン
いくつかの態様では、導入遺伝子は、組換え受容体、例えば、特定の抗原(またはリガンド)、例えば、特定の細胞型の表面で発現している抗原に特異性を有するCARの一部分をコードする。いくつかの態様では、抗原は、例えば、健常な細胞または組織中の正常なまたは非標的の細胞または組織と比較して、疾患または状態の細胞、例えば、腫瘍または病原性細胞上で選択的に発現しているか、または過剰発現している。
【0493】
いくつかの局面では、導入遺伝子は組換え受容体の細胞外領域をコードする。いくつかの態様では、導入遺伝子配列は、細胞外結合ドメイン、例えば、抗原またはリガンドに特異的に結合する結合ドメインをコードする。
【0494】
いくつかの態様では、結合ドメインは、ポリペプチド、リガンド、受容体、リガンド結合ドメイン、受容体結合ドメイン、抗原、エピトープ、抗体、抗原結合ドメイン、エピトープ結合ドメイン、抗体結合ドメイン、タグ結合ドメイン、もしくは前述のもののいずれかの断片であるか、またはこれらを含む。他の態様では、抗原は正常細胞上で発現している、および/または操作された細胞上で発現している。いくつかの局面では、抗原は結合ドメイン、例えば、リガンド結合ドメインまたは抗原結合ドメインによって認識される。いくつかの局面では、導入遺伝子は、1つまたは複数の結合ドメインを含む細胞外領域をコードする。いくつかの態様では、導入遺伝子にコードされる例示的な結合ドメインとしては、scFvまたはsdAbを含めて、抗体およびその抗原結合断片が挙げられる。いくつかの態様では、抗原結合断片は、可動性リンカーによって結合した抗体可変領域を含む。
【0495】
いくつかの態様では、結合ドメインは、単鎖可変断片(scFv)であるか、またはこれを含む。いくつかの態様では、結合ドメインは、単一ドメイン抗体(sdAb)であるか、またはこれを含む。いくつかの態様では、結合ドメインは、ある疾患、障害、もしくは状態の細胞もしくは組織に関連している、それに特異的である、および/またはその上に発現している標的抗原に結合することができる。いくつかの態様では、疾患、障害、または状態は、感染疾患もしくは障害、自己免疫疾患、炎症性疾患、または腫瘍もしくはがんである。いくつかの態様では、標的抗原は腫瘍抗原である。
【0496】
導入遺伝子配列にコードされる例示的な抗原および抗原またはリガンド結合ドメインとしては、本明細書のセクションIII.B.1に記載されるものが挙げられる。いくつかの局面では、コードされる組換え受容体は、主要組織適合抗原複合体(MHC)-ペプチド複合体として細胞表面に提示される腫瘍関連抗原などの細胞内抗原を特異的に認識するscFvのようなTCR様抗体もしくはその断片であるかまたはこれらを含む、結合ドメインを含む。いくつかの局面では、導入遺伝子配列は、TCR様抗体またはその断片である結合ドメインをコードすることができる。したがって、コードされる組換え受容体は、TCR様CAR、例えば、本明細書においてセクションIII.Bに記載される任意のものである。いくつかの態様では、結合ドメインは、二重特異性などの多重特異性結合ドメインである。いくつかの態様では、コードされる組換え受容体は、自己抗体に結合する抗原である結合ドメインを含む。いくつかの態様では、組換え受容体はキメラ自己抗体受容体(CAAR)、例えば、本明細書においてセクションIII.B.3に記載される任意のものである。
【0497】
いくつかの局面では、1つまたは複数の結合ドメインをコードするヌクレオチドの配列は、導入遺伝子中で、存在する場合は、シグナル配列の3'に配置され得る。いくつかの局面では、1つまたは複数の結合ドメインをコードするヌクレオチドの配列は、導入遺伝子中で、1つまたは複数の制御または調節エレメントをコードするヌクレオチドの配列の3'に配置され得る。いくつかの局面では、1つまたは複数の結合ドメインをコードするヌクレオチドの配列は、導入遺伝子中で、存在する場合は、スペーサーをコードするヌクレオチドの配列の5'に配置され得る。いくつかの局面では、1つまたは複数の結合ドメインをコードするヌクレオチドの配列は、導入遺伝子中で、膜貫通ドメインをコードするヌクレオチドの配列の5'に配置され得る。
【0498】
(b) スペーサーおよび膜貫通ドメイン
いくつかの態様では、コードされる組換え受容体はCARであり、導入遺伝子は、スペーサーをコードする配列および/または膜貫通ドメインもしくはその一部分をコードする配列を含む。いくつかの態様では、コードされる組換え受容体の細胞外領域はスペーサーを含み、任意で、スペーサーは結合ドメインと膜貫通ドメインの間に機能的に連結される。いくつかの局面では、スペーサーおよび/または膜貫通ドメインは、リガンド(例えば抗原)結合ドメインを含む細胞外部分と組換え受容体の他の領域またはドメイン、例えば、(例えば、1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメイン、細胞内多量体化ドメイン、および/または一次シグナル伝達ドメインもしくは領域を含む)細胞内領域とを連結することができる。
【0499】
いくつかの態様では、導入遺伝子は、抗原結合ドメインと膜貫通ドメインを分離するスペーサーおよび/またはヒンジ領域をコードするヌクレオチドの配列をさらに含む。いくつかの局面では、スペーサーは、免疫グロブリン定常領域、またはそのバリアントもしくは改変バージョンの少なくとも一部分、例えばヒンジ領域、例えばIgG4ヒンジ領域、ならびに/またはCH1/CLおよび/もしくはFc領域であり得るか、またはこれらを含むことができる。いくつかの態様では、定常領域または部分は、ヒトIgG、例えば、IgG4またはIgG1のものである。いくつかの局面では、定常領域の部分は、結合ドメイン、例えばscFvと膜貫通ドメインの間のスペーサー領域として働く。導入遺伝子にコードされ得る例示的なスペーサーとしては、IgG4ヒンジ単独、CH2およびCH3ドメインに連結したIgG4ヒンジ、またはCH3ドメインに連結したIgG4ヒンジ、およびHudecek et al. (2013) Clin. Cancer Res., 19:3153, Hudecek et al. (2015) Cancer Immunol Res. 3(2): 125-135もしくは国際特許出願公開第WO2014031687号に記載されるもの、または本明細書のセクションIII.B.1に記載される任意のものが挙げられる。
【0500】
いくつかの局面では、スペーサーをコードするヌクレオチドの配列は、導入遺伝子中で、1つまたは複数の結合ドメインをコードするヌクレオチドの配列の3'に配置され得る。いくつかの局面では、スペーサーをコードするヌクレオチドの配列は、導入遺伝子中で、膜貫通ドメインをコードするヌクレオチドの配列の5'に配置され得る。いくつかの態様では、スペーサーをコードするヌクレオチドの配列は、1つまたは複数の結合ドメインをコードするヌクレオチドの配列と膜貫通ドメインをコードするヌクレオチドの配列の間に配置される。
【0501】
いくつかの態様では、導入遺伝子は膜貫通ドメインをコードし、これは、例えば、1つまたは複数の結合ドメインおよび/またはスペーサーを含む細胞外領域を例えば、1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメイン、細胞内多量体化ドメイン、および/または一次シグナル伝達ドメインもしくは領域を含む細胞内領域と連結することができる。いくつかの態様では、導入遺伝子は膜貫通ドメインをコードするヌクレオチドの配列を含み、任意で、膜貫通ドメインはヒトであり、またはヒトタンパク質からの配列を含む。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、CD4、CD28、またはCD8に由来する、任意でヒトCD4、ヒトCD28、またはヒトCD8に由来する膜貫通ドメインであるか、または該膜貫通ドメインを含む。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、CD28に由来する、任意でヒトCD28に由来する膜貫通ドメインであるか、または該膜貫通ドメインを含む。
【0502】
いくつかの態様では、膜貫通ドメインをコードするヌクレオチドの配列は細胞外領域をコードするヌクレオチドの配列に融合している。いくつかの態様では、膜貫通ドメインをコードするヌクレオチドの配列は、細胞内領域をコードするヌクレオチドの配列に融合している。いくつかの局面では、膜貫通ドメインをコードするヌクレオチドの配列は、導入遺伝子中で、1つまたは複数の結合ドメインおよび/またはスペーサーをコードするヌクレオチドの配列の3'に配置され得る。いくつかの局面では、膜貫通ドメインをコードするヌクレオチドの配列は、導入遺伝子中で、例えば、1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメイン、細胞内多量体化ドメイン、および/または一次シグナル伝達ドメインもしくは領域を含む細胞内領域をコードするヌクレオチドの配列の5'に配置され得る。いくつかの局面では、導入遺伝子配列にコードされる膜貫通ドメインとしては、本明細書において、例えばセクションIII.B.1に記載される任意の膜貫通ドメインが挙げられる。
【0503】
いくつかの態様では、コードされる組換え受容体が、一次シグナル伝達ドメインまたは領域を含む細胞内領域を含むが、膜貫通ドメインおよび/または細胞外領域を含まない場合には、導入遺伝子は、膜結合ドメイン、例えば、本明細書おいて、例えばセクションIII.Bに記載される任意のものをコードするヌクレオチドの配列を含むことができる。
【0504】
(c) 細胞内領域
いくつかの態様では、導入遺伝子は、細胞内領域をコードするヌクレオチドの配列を含む。いくつかの態様では、導入遺伝子はCARをコードし、いくつかの局面では、細胞内領域は、1つまたは複数の二次的または共刺激性シグナル伝達領域を含む。いくつかの局面では、膜貫通ドメインをコードするヌクレオチドの配列は、導入遺伝子中で、導入遺伝子中の1つまたは複数の結合ドメインおよび/またはスペーサーをコードするヌクレオチドの配列の3'に配置され得る。いくつかの局面では、1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメインをコードするヌクレオチドの配列は、一次シグナル伝達ドメインまたは領域をコードするヌクレオチドの配列の5'に配置され得る。いくつかの局面では、1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメインをコードするヌクレオチドの配列は、一次シグナル伝達ドメインまたは領域をコードするヌクレオチドの配列の3'に配置され得る。いくつかの局面では、細胞内領域をコードするヌクレオチドの配列は、導入遺伝子中で最も3'領域にあり、これは、次いで、相同性アーム配列の1つ、例えば、3'相同性アーム配列に連結される。いくつかの局面では、1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメインをコードするヌクレオチドの配列は、導入遺伝子中で、膜貫通ドメインをコードするヌクレオチドの配列の3'に配置され得る。いくつかの局面では、導入遺伝子配列にコードされる共刺激シグナル伝達領域または一次シグナル伝達ドメインもしくは領域としては、本明細書において、例えばセクションIII.B.1に記載される任意の共刺激シグナル伝達領域または任意の一次シグナル伝達ドメインもしくは領域が挙げられる。
【0505】
(1) 共刺激シグナル伝達ドメイン
いくつかの態様では、導入遺伝子は、細胞内領域の一部分をコードするヌクレオチドの配列を含み、これは、1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメインを含むことができる。いくつかの態様では、1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメインは、T細胞共刺激分子の細胞内シグナル伝達ドメインまたはそのシグナル伝達部分を含み、任意で、T細胞共刺激分子またはそのシグナル伝達部分はヒトである。
【0506】
いくつかの態様では、1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメインは、T細胞共刺激分子の細胞内シグナル伝達ドメインまたはそのシグナル伝達部分を含む。いくつかの態様では、T細胞共刺激分子またはそのシグナル伝達部分はヒトである。いくつかの態様では、導入遺伝子にコードされる例示的な共刺激シグナル伝達ドメインとしては、1つまたは複数の共刺激受容体、例えば、CD28、CD137(4-1BB)、OX40(CD134)、CD27、DAP10、DAP12、NKG2D、ICOS、および/または他の共刺激受容体からのシグナル伝達領域またはドメイン、例えば、本明細書において、本明細書のセクションIII.Bに記載される任意のものが挙げられる。いくつかの態様では、1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメインは、CD28、4-1BB、もしくはICOS、またはこれらのシグナル伝達部分の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様では、1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメインは、ヒトCD28、ヒト4-1BB、ヒトICOS、またはこれらのシグナル伝達部分のシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様では、1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメインは、ヒト4-1BBの細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
【0507】
(2) 一次シグナル伝達領域またはドメイン
いくつかの態様では、組換え受容体、例えばCARをコードする導入遺伝子配列は、一次シグナル伝達領域またはドメイン、例えば、CD3ゼータ(CD3ζ)の細胞質内ドメインをコードするヌクレオチドの配列を含む。いくつかの態様では、一次シグナル伝達領域は、T細胞において一次活性化シグナルを刺激および/または誘導することができるシグナル伝達ドメイン、T細胞受容体(TCR)成分のシグナル伝達ドメイン(例えば、CD3ゼータ(CD3ζ)鎖の細胞内シグナル伝達ドメインもしくは領域またはそれらの機能的バリアントもしくはシグナル伝達部分)、ならびに/または免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)を含むシグナル伝達ドメインであるか、あるいはこれらを含む。いくつかの態様では、コードされる組換え受容体は、本明細書において、例えばセクションIII.Bに記載される任意のものである。
【0508】
いくつかの局面では、導入遺伝子は、TCR複合体の一次刺激および/または活性化を制御する一次細胞質内シグナル伝達領域をコードするヌクレオチドの配列を含む。刺激性様式で作用する一次細胞質内シグナル伝達領域は、免疫受容活性化チロシンモチーフまたはITAMとして公知であるシグナル伝達モチーフを含むことができる。一次細胞質内シグナル伝達領域を含むITAMの例としては、TCRまたはCD3ゼータ(CD3ζ)、Fc受容体(FcR)ガンマまたはFcRベータに由来するものが挙げられる。いくつかの態様では、CAR中の細胞質内シグナル伝達領域またはドメインは、CD3ゼータに由来する細胞質内シグナル伝達ドメイン、その一部分、または配列を含む。いくつかの態様では、細胞内(または細胞質内)シグナル伝達領域は、ヒトCD3鎖、任意でCD3ゼータ刺激性シグナル伝達ドメインもしくはその機能的バリアント、例えば、ヒトCD3ζのアイソフォーム3(受託番号:P20963.2)の112AA細胞質内ドメイン、または米国特許第7,446,190号もしくは米国特許第8,911,993号に記載されるCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様では、細胞内シグナル伝達領域は、SEQ ID NO:13、14、または15に記載されるアミノ酸の配列、あるいはSEQ ID NO:13、14、または15に対して、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上、または少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸の配列を含む。
【0509】
いくつかの局面では、導入遺伝子配列にコードされる一次シグナル伝達ドメインまたは領域としては、本明細書において、例えばセクションIII.B.1に記載される任意の一次シグナル伝達ドメインまたは領域が挙げられる。
【0510】
(d) さらなるドメイン、例えば多量体化ドメイン
いくつかの態様では、導入遺伝子は、1つまたは複数の多量体化ドメイン、例えば、二量体化ドメインをコードするヌクレオチドの配列も含む。いくつかの局面では、コードされる多量体化ドメインは細胞外、または細胞内にあり得る。いくつかの態様では、コードされる多量体化ドメインは細胞外にある。いくつかの態様では、コードされる多量体化ドメインは細胞内にある。いくつかの態様では、導入遺伝子配列にコードされる細胞内領域の部分は、多量体化ドメイン、任意で二量体化ドメインを含む。いくつかの態様では、導入遺伝子は、細胞外領域をコードするヌクレオチドの配列を含む。いくつかの態様では、細胞外領域は、多量体化ドメイン、任意で二量体化ドメインを含む。いくつかの態様では、多量体化ドメインは、誘導物質への結合の際に、二量体化することができる。
【0511】
いくつかの局面では、組換え受容体は多鎖組換え受容体、例えば多鎖CARである。いくつかの態様では、多鎖組換え受容体またはその一部分の1つまたは複数の鎖は導入遺伝子配列にコードされる。いくつかの態様では、多鎖組換え受容体の1つまたは複数の鎖は、組換え受容体のそれぞれの鎖に含まれる多量体化ドメインの多量体化によって、機能的または活性的な組換え受容体を一緒に形成することができる。
【0512】
いくつかの局面では、多量体化ドメインをコードするヌクレオチドの配列は他のドメインの5'または3'にある。例えば、いくつかの態様では、コードされる多量体化ドメインは細胞外にあり、多量体化ドメインをコードする配列は、スペーサーをコードする配列の5'にある。いくつかの態様では、コードされる多量体化ドメインは細胞内にあり、多量体化ドメインをコードする配列は、一次シグナル伝達領域またはドメインをコードする配列の5'にある。いくつかの態様では、多量体化ドメインは細胞内にあり、多量体化ドメインをコードする配列は、1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメインをコードする配列の5'または3'にある。いくつかの態様では、コードされる多量体化ドメインは、誘導物質の結合の際に、多量体化する(例えば二量体化する)ことができる。例示的なコードされる多量体化ドメインとしては、本明細書おいて、例えば、本明細書のセクションIII.Bに記載される任意の多量体化ドメインが挙げられる。
【0513】
(iii) 例示的なT細胞受容体(TCR)コード配列
いくつかの態様では、導入遺伝子配列にコードされる組換え受容体は組換えT細胞受容体(TCR)である。いくつかの局面では、導入遺伝子配列は、組換えTCRの全部または一部分をコードすることができる。いくつかの態様では、導入遺伝子配列は、組換えTCRの1つまたは複数の鎖、領域、またはドメインをコードするヌクレオチドの配列を含む。導入遺伝子配列にコードされる例示的組換えTCRは以下に記載され、また、以下のセクションB.4に記載される例示的組換えTCRの任意の鎖、領域、またはドメインを含むことができる。
【0514】
いくつかの態様では、TCRは、2つ以上の別個のポリペプチド鎖、例えば、TCRアルファ(TCRα)およびTCRベータ(TCRβ)鎖を含む。いくつかの局面では、導入遺伝子配列は、組換えTCRの1つまたは複数の鎖、例えば、TCRαまたはTCRβまたは両方をコードすることができる。いくつかの局面では、導入遺伝子配列は、TCRαおよびTCRβ鎖を両方ともコードすることができる。いくつかの局面では、TCRαおよびTCRβをコードする配列は、任意でマルチシストロン性エレメント、例えば2Aエレメントによって分離されている。
【0515】
ある特定の態様では、導入遺伝子は、組換え受容体をコードする核酸配列を含み、組換えTCRまたはその抗原結合断片である。いくつかの局面では、導入遺伝子配列は、組換えTCRである場合、可変ドメインおよび定常ドメインを含む鎖をコードすることができる。いくつかの局面では、導入遺伝子配列は、1つまたは複数の可変ドメインおよび1つまたは複数の定常ドメインを含む組換えTCRの鎖をコードする。態様のいくつかでは、導入遺伝子はTCRαおよびTCRβ鎖をコードする配列を含む。
【0516】
いくつかの態様では、コードされるTCRα鎖およびTCRβ鎖は、リンカー領域によって分離される。いくつかの態様では、TCRαとTCRβ鎖を連結して単一ポリペプチド鎖を形成するリンカー配列が含まれる。いくつかの態様では、リンカーは、α鎖のC末端からβ鎖のN末端の、またはその逆の距離にわたるのに十分な長さのものであり、一方で、リンカーの長さが、標的のペプチド-MHC複合体への結合を阻止するかまたは低減させるほど長くないことも確実にする。いくつかの態様では、リンカーは、単一ポリペプチド鎖を形成することができ、同時にTCR結合特異性を保持する任意のリンカーでもよい。いくつかの態様では、リンカーは、10または約10~45アミノ酸、例えば、10~30アミノ酸、または26~41アミノ酸残基、例えば、29、30、31、または32アミノ酸を含むことができる。いくつかの態様では、リンカーは式-PGGG-(SGGGG)n-P-を有し、式中nは5または6であり、Pはプロリンであり、Gはグリシンであり、Sはセリンである(SEQ ID NO:22)。いくつかの態様では、リンカーは配列GSADDAKKDAAKKDGKS(SEQ ID NO:23)を有する。いくつかの態様では、プロテアーゼによって認識される、および/またはプロテアーゼによって開裂され得る、TCRα鎖またはその一部分とTCRβ鎖またはその一部分の間のリンカー。ある特定の態様では、TCRα鎖またはその一部分をコードする核酸配列とTCRβ鎖またはその一部分をコードする核酸配列の間のリンカーは、マルチシストロン性エレメントを含む。
【0517】
いくつかの態様では、導入遺伝子は、構造[TCRβ鎖]-[リンカーまたはマルチシストロン性エレメント]-[TCRα鎖]であるか、もしくは該構造を含むヌクレオチドの配列であるか、または該配列を含む。特定の態様では、導入遺伝子は、構造[TCRα鎖]-[リンカーまたはマルチシストロン性エレメント]-[TCRβ鎖]であるか、もしくは該構造を含むヌクレオチドの配列であるか、または該配列を含む。いくつかの局面では、マルチシストロン性エレメントは、リボソームスキッピングエレメント/自己開裂エレメント(例えば、2Aエレメントまたは配列内リボソーム進入部位(IRES)、例えば、本明細書において記載される任意のものを含む。
【0518】
(iv) さらなる分子、例えばマーカー
いくつかの態様では、導入遺伝子は、1つまたは複数のさらなる分子、例えば、抗体、抗原、多鎖組換え受容体のさらなるキメラ鎖またはポリペプチド鎖(例えば、多鎖CAR、キメラ共刺激性受容体、阻害性受容体、制御可能なキメラ抗原受容体、または本明細書において、例えばセクションIII.B.2に記載される多鎖組換え受容体システムの他の成分、またはセクションIII.B.3に記載される組換えT細胞受容体(TCR))、形質導入マーカーまたは代用マーカー(例えばトランケートされた細胞表面マーカー)、酵素、因子、転写因子、阻害性ペプチド、増殖因子、核内受容体、ホルモン、リンホカイン、サイトカイン、ケモカイン、可溶性受容体、可溶性サイトカイン受容体、可溶性ケモカイン受容体、レポーター、前述のもののいずれかの機能的断片または機能的バリアント、および前述のものの組み合わせをコードするヌクレオチドの配列も含む。いくつかの局面では、1つまたは複数のさらなる分子をコードするヌクレオチドのそのような配列は、組換え受容体の領域またはドメインをコードするヌクレオチドの配列の5'に配置され得る。いくつかの局面では、1つまたは複数の他の分子をコードする配列および組換え受容体の領域またはドメインをコードするヌクレオチドの配列は、制御配列、例えば、2Aリボソームスキッピングエレメントおよび/またはプロモーター配列によって分離される。
【0519】
いくつかの態様では、導入遺伝子は、1つまたは複数のさらなる分子をコードするヌクレオチドの配列も含む。いくつかの局面では、1つまたは複数のさらなる分子としては1つまたは複数のマーカーが挙げられる。いくつかの態様では、1つまたは複数のマーカーとしては、形質導入マーカー、代用マーカー、および/または選択マーカーが挙げられる。いくつかの態様では、導入遺伝子は、移入された細胞の生存率および/または機能を促進することによって療法の有効性を向上させることができる核酸配列;例えば、インビボでの生存または局在を評価するために、細胞の選択および/または評価のための遺伝子マーカーを提供するための核酸配列;例えば、Lupton S. D. et al., Mol. and Cell Biol., 11:6 (1991);およびRiddell et al., Human Gene Therapy 3:319-338 (1992)によって記載されているようにインビボで細胞をネガティブ選択に感受性にすることによって安全性を向上させるための核酸配列も含み;ドミナントポジティブ選択マーカーとネガティブ選択マーカーを融合することから得られる二機能性の選択可能融合遺伝子の使用を記載するWO1992008796およびWO1994028143、ならびに米国特許第6,040,177号も参照されたい。いくつかの局面では、マーカーとしては、本明細書において、例えば、本セクションもしくはセクションIIもしくはIII.Bに記載される任意のマーカー、または本明細書において、例えばセクションIII.B.2に記載される任意のさらなる分子および/もしくは受容体ポリペプチドが挙げられる。いくつかの態様では、さらなる分子は、代用マーカー、任意でトランケートされた受容体であり、任意で、トランケートされた受容体は細胞内シグナル伝達ドメインを欠き、かつ/またはそのリガンドが結合した場合に細胞内シグナル伝達を媒介することができない。
【0520】
いくつかの態様では、マーカーは形質導入マーカーまたは代用マーカーである。形質導入マーカーまたは代用マーカーは、ポリヌクレオチド、例えば、組換え受容体をコードするポリヌクレオチドが導入された細胞を検出するために使用することができる。いくつかの態様では、形質導入マーカーは、細胞の改変を示すか、または確認することができる。いくつかの態様では、代用マーカーは、組換え受容体、例えば、TCRまたはCARと細胞表面で共発現するように作製されたタンパク質である。特定の態様では、そのような代用マーカーは、活性をほとんどまたは全く有さないように改変された表面タンパク質である。ある特定の態様では、代用マーカーは、組換え受容体をコードする同じポリヌクレオチド上にコードされる。いくつかの態様では、組換え受容体をコードする核酸配列は、任意で、配列内リボソーム進入部位(IRES)、あるいは自己切断ペプチドまたはリボソームスキッピングを引き起こすペプチド、例えば2A配列、例えば、T2A、P2A、E2A、もしくはF2Aをコードする核酸によって分離されて、マーカーをコードする核酸配列に機能的に連結される。細胞の検出または選択を可能にするために、場合によっては、細胞排除および/または細胞自殺を促進するためにも、外因性マーカー遺伝子を、場合によっては、操作された細胞に関連して利用することができる。
【0521】
例示的な代用マーカーとしては、細胞表面ポリペプチドのトランケートされた形態、例えば、非機能的であり、シグナルもしくは普通は完全長形態の細胞表面ポリペプチドによって伝達されるシグナルを伝達しないか、もしくは伝達することができない、および/または内部移行しないか、もしくは内部移行することができないトランケートされた形態を挙げることができる。例示的なトランケートされた細胞表面ポリペプチドとしては、増殖因子または他の受容体のトランケートされた形態、例えば、トランケートされたヒト上皮成長因子受容体2(tHER2)、トランケートされた上皮成長因子受容体(tEGFR。例示的なtEGFR配列はSEQ ID NO:7もしくは16に記載される)、または前立腺特異的膜抗原(PSMA)、あるいはこれらの改変形態が挙げられる。tEGFRは、抗体セツキシマブ(アービタックス(登録商標))または他の治療的抗EGFR抗体もしくは結合分子によって認識されるエピトープを含むことができ、これは、tEGFRコンストラクトおよびコードされる外来性タンパク質で操作された細胞を特定もしくは選択するために、ならびに/またはコードされる外来性タンパク質を発現する細胞を排除もしくは分離するために使用することができる。米国特許第8,802,374号およびLiu et al., Nature Biotech. 2016 April; 34(4): 430-434)を参照されたい。いくつかの局面では、マーカー、例えば代用マーカーとしては、CD34、NGFR、CD19もしくはトランケートされたCD19、例えば、トランケートされた非ヒトCD19、または上皮成長因子受容体(例えば、tEGFR)の全部または一部(例えばトランケートされた形態)が挙げられる。
【0522】
いくつかの態様では、マーカーは、検出可能なタンパク質、例えば、蛍光タンパク質、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)、例えばスーパーフォールドGFP(sfGFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、例えば、tdトマト、mCherry、mStrawberry、AsRed2、DsRedもしくはDsRed2、シアン蛍光タンパク質(CFP)、青緑色蛍光タンパク質(BFP)、高感度青色蛍光タンパク質(EBFP)、および黄色蛍光タンパク質(YFP)、ならびにそれらのバリアント、例えば、蛍光タンパク質の種バリアント、単量体バリアント、コドン最適化、安定化および/もしくは高感度バリアントであるか、またはこれらを含む。いくつかの態様では、マーカーは、酵素、例えば、ルシフェラーゼ、大腸菌(E. coli)のlacZ遺伝子、アルカリホスファターゼ、分泌型胚性アルカリホスファターゼ(SEAP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)であるか、またはこれらを含む。例示的な発光レポーター遺伝子としては、ルシフェラーゼ(luc)、βガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β-グルクロニダーゼ(GUS)、またはそれらのバリアントが挙げられる。いくつかの局面では、酵素の発現は、酵素の発現および機能的活性の際に検出され得る基質を添加することにより検出することができる。
【0523】
いくつかの態様では、マーカーは選択マーカーである。いくつかの態様では、選択マーカーは、外来性の作用物質または薬物に対する抵抗性を与えるポリペプチドであるか、または該ポリペプチド含む。いくつかの態様では、選択マーカーは抗生物質抵抗性遺伝子である。いくつかの態様では、選択マーカーは、哺乳動物細胞に抗生物質抵抗性を与える抗生物質抵抗性遺伝子である。いくつかの態様では、選択マーカーは、ピューロマイシン抵抗性遺伝子、ハイグロマイシン抵抗性遺伝子、ブラストサイジン抵抗性遺伝子、ネオマイシン抵抗性遺伝子、ジェネテシン抵抗性遺伝子、もしくはゼオシン抵抗性遺伝子、またはこれらの改変形態であるか、またはこれらを含む。
【0524】
いくつかの態様では、分子は非自己分子、例えば、非自己タンパク質、すなわち、細胞が養子移植されるであろう宿主の免疫系によって「自己」として認識されないものである。
【0525】
いくつかの態様では、マーカーは、治療的機能を果たさず、および/または遺伝子操作のための、例えば、首尾よく操作された細胞を選択するためのマーカーとして使用される以外の効果をもたらさない。他の態様では、マーカーは、治療的分子、または別の方法である種の望ましい効果を発揮する分子、例えば、インビボで遭遇する細胞に対するリガンド、例えば、養子移植およびリガンドとの遭遇の際に細胞の応答を増強するおよび/または弱めるための共刺激または免疫チェックポイント分子でもよい。
【0526】
いくつかの態様では、導入遺伝子は、免疫調節作用物質である1つまたは複数のさらなる分子をコードする配列を含む。いくつかの態様では、免疫調節分子は、免疫チェックポイントモジュレーター、免疫チェックポイント阻害剤、サイトカイン、またはケモカインより選択される。いくつかの態様では、免疫調節作用物質は、免疫チェックポイント分子の機能または免疫チェックポイント分子を含むシグナル伝達経路を阻害または阻止することができる免疫チェックポイント阻害剤である。いくつかの態様では、免疫チェックポイント分子は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、LAG-3、TIM3、VISTA、アデノシン受容体もしくは細胞外アデノシン、任意で、アデノシン2A受容体(A2AR)もしくはアデノシン2B受容体(A2BR)、またはアデノシン、または前述のもののいずれかを含む経路の中より選択される。他の例示的なさらなる分子としては、エピトープタグ、検出可能な分子、例えば蛍光もしくは発光タンパク質、または細胞増殖および/もしくは遺伝子増幅の増強を媒介する分子(例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素)が挙げられる。エピトープタグとしては、例えば、1つまたは複数コピーのFLAG、His、myc、Tap、HA、または任意の検出可能なアミノ酸配列が挙げられる。いくつかの態様では、さらなる分子としては、非コード配列、阻害性核酸配列、例えば、アンチセンスRNA、RNAi、shRNA、およびマイクロRNA(miRNA)、またはヌクレアーゼ認識配列を挙げることができる。
【0527】
いくつかの局面では、さらなる分子としては、本明細書において記載される任意のさらなる受容体ポリペプチド、例えば、例えばセクションIII.B.2に記載される多鎖組換え受容体の任意のさらなるポリペプチド鎖を挙げることができる。
【0528】
(v) マルチシストロン性エレメントおよび制御または調節エレメント
いくつかの態様では、導入遺伝子(例えば、外来性核酸配列)は、1つまたは複数の異種または外来性の制御または調節エレメント、例えばシス制御エレメントも含み、これは、内在性TGFBR2遺伝子座の制御もしくは調節エレメントではないか、または該エレメントと異なる。いくつかの局面では、異種の制御または調節エレメントとしては、例えば、プロモーター、エンハンサー、イントロン、インスレーター、ポリアデニル化シグナル、転写終結配列、コザックコンセンサス配列、マルチシストロン性エレメント(例えば、配列内リボソーム進入部位(IRES)、2A配列)、伝令RNA(mRNA)の非翻訳領域(UTR)に対応する配列、およびスプライス受容またはドナー配列、例えば、TGFBR2遺伝子座の制御もしくは調節エレメントではないか、または該エレメントと異なるものが挙げられる。いくつかの態様では、異種の制御または調節エレメントとしては、プロモーター、エンハンサー、イントロン、ポリアデニル化シグナル、コザックコンセンサス配列、スプライス受容配列、および/またはスプライス供与配列が挙げられる。いくつかの態様では、導入遺伝子は、異種である、および/または標的部位もしくはその近くに典型的には存在しないプロモーターを含む。いくつかの局面では、制御または調節エレメントとしては、TGFBR2遺伝子座に組み込まれた場合に、組換え受容体の発現を制御または調節するのに必要とされるエレメントが挙げられる。いくつかの態様では、導入遺伝子配列は、異種遺伝子または遺伝子座の5'および/または3'非翻訳領域(UTR)に対応する配列を含む。いくつかの局面では、導入遺伝子配列は、本セクションおよびセクションIIに記載されるものを含めて、本明細書において記載される任意の制御または調節エレメントを含むことができる。
【0529】
組換え受容体またはその一部分の1つまたは複数の鎖をコードする導入遺伝子を含めて、導入遺伝子は、その発現が、組み込み部位にある内在性プロモーター、すなわち、内在性TGFBR2遺伝子の発現を駆動するプロモーターによって駆動されるように、挿入することができる。ポリペプチドをコードする配列がプロモーターを有さないいくつかの態様では、組み込まれた導入遺伝子の発現は、次いで、関心対象の領域の内在性プロモーターまたは他の調節エレメントによって駆動される転写によって保証される。例えば、組換え受容体の一部分をコードする導入遺伝子は、プロモーターなしであるが、内在性TGFBR2遺伝子座のコード配列とインフレームで挿入することができ、その結果、組み込まれた導入遺伝子の発現は、組み込み部位にある内在性プロモーターおよび/または他の制御エレメントの転写によって調節される。いくつかの態様では、リボソームスキッピングエレメント/自己開裂エレメント(例えば、2Aエレメントまたは配列内リボソーム進入部位(IRES))などのマルチシストロン性エレメントは、組換え受容体の一部分をコードする導入遺伝子の上流に配置され、その結果、マルチシストロン性エレメントはTGFBR2遺伝子座の内在性オープンリーディングフレームの1つまたは複数のエクソンとインフレームで配置され、その結果、組換え受容体をコードする導入遺伝子の発現は、内在性TGFBR2プロモーターに機能的に連結される。いくつかの態様では、導入遺伝子配列は3'UTRをコードする配列を含まない。いくつかの態様では、内在性TGFBR2遺伝子座への導入遺伝子の組み込みの際に、導入遺伝子は、内在性TGFBR2遺伝子座の3'UTRの上流に組み込まれ、その結果、組換え受容体をコードするメッセージは、例えば内在性TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームまたはその部分配列からの、内在性TGFBR2遺伝子座の3'UTRを含む。いくつかの態様では、組換え受容体の残りの部分をコードするオープンリーディングフレームまたはその部分配列は、内在性TGFBR2遺伝子座の3'UTRを含む。
【0530】
いくつかの態様では、「タンデム」カセットが選択された部位に組み込まれる。いくつかの態様では、「タンデム」カセットの1つまたは複数は、1つまたは複数のポリペプチドまたは因子をコードし、これらは、それぞれ独立に制御エレメントによって調節されるか、または全てがマルチシストロン性発現システムとして調節される。いくつかの態様、例えば、ポリヌクレオチドが第1および第2の核酸配列を含む態様では、異なるポリペプチド鎖のそれぞれをコードするコード配列は、同じでもよいし、または異なっていてもよいプロモーターに機能的に連結され得る。いくつかの態様では、核酸分子は、2つ以上の異なるポリペプチド鎖の発現を駆動するプロモーターを含むことができる。いくつかの態様では、そのような核酸分子はマルチシストロン性(バイシストロン性またはトリシストロン性。例えば、米国特許第6,060,273号を参照されたい)でもよい。いくつかの態様では、転写単位は、単一プロモーターからのメッセージによる遺伝子産物の共発現を可能にするIRES(配列内リボソーム進入部位)を含むバイシストロン性単位として操作され得る。あるいは、場合によっては、単一プロモーターは、単一オープンリーディングフレーム(ORF)において、本明細書において記載されるように、自己開裂ペプチド(例えば2A配列)またはプロテアーゼ認識部位(例えばフューリン)をコードする配列によって互いに分離した2つまたは3つのポリペプチドを含むRNAの発現を指示することができる。したがって、ORFは単一ポリペプチドをコードし、これは、翻訳の間(2Aの場合)または後のいずれかで、個々のタンパク質へプロセッシングされる。いくつかの態様では、「タンデムカセット」はプロモーターを有さない配列、続いて転写終結配列を含むカセットの第1の成分、および自律発現カセットまたはマルチシストロン性発現配列をコードする第2の配列を含む。いくつかの態様では、タンデムカセットは、2つ以上の異なるポリペプチドまたは因子、例えば、組換え受容体の2つ以上の鎖またはドメインをコードする。いくつかの態様では、組換え受容体の2つ以上の鎖またはドメインをコードする核酸配列は、タンデム発現カセットまたはバイもしくはマルチシストロン性カセットとして1つの標的DNA組み込み部位に導入される。
【0531】
場合によっては、マルチシストロン性エレメント、例えばT2Aは、リボソームに2AエレメントのC末端におけるペプチド結合の合成をスキップ(リボソームスキッピング)させ、2A配列の末端と下流の次のペプチドの間で分離をもたらすことができる(例えば、de Felipe, Genetic Vaccines and Ther. 2:13 (2004)およびde Felipe et al. Traffic 5:616-626 (2004)を参照されたい;自己開裂エレメントとも称される)。これにより、挿入された導入遺伝子が組み込み部位にある内在性プロモーター、例えばTGFBR2プロモーターの転写によって調節されることが可能になる。例示的なマルチシストロン性エレメントとしては、米国特許出願公開第20070116690号に記載されている、口蹄疫ウイルス(F2A、例えば、SEQ ID NO:21)、ウマ鼻炎Aウイルス(E2A、例えば、SEQ ID NO:20)、ゾセア・アシグナ(Thosea asigna)ウイルス(T2A、例えば、SEQ ID NO:6または17)、およびブタテッショウウイルス-1(P2A、例えば、SEQ ID NO:18または19)由来の2A配列が挙げられる。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、P2Aリボソームスキッピングエレメント(SEQ ID NO:18または19に記載される配列)を導入遺伝子、例えば、組換え受容体またはその一部分をコードする核酸の上流に含む。
【0532】
いくつかの態様では、組換え受容体もしくはその一部分の1つもしくは複数の鎖をコードする導入遺伝子および/またはさらなる分子をコードする配列は、1つまたは複数のマルチシストロン性エレメントを独立に含む。いくつかの態様では、1つまたは複数のマルチシストロン性エレメントは、その組換え受容体部分をコードする核酸配列および/またはさらなる分子をコードする配列の上流にある。いくつかの態様では、マルチシストロン性エレメントは、その組換え受容体部分をコードする核酸配列および/またはさらなる分子をコードする配列の間に配置される。いくつかの態様では、マルチシストロン性エレメントは、組換え受容体の部分または鎖をコードする核酸配列の間に配置される。
【0533】
いくつかの態様では、異種の制御または調節エレメントは異種プロモーターを含む。いくつかの態様では、異種プロモーターは、構成的プロモーター、誘導性プロモーター、抑制性プロモーター、および/または組織特異的プロモーターの中より選択される。いくつかの態様では、制御または調節エレメントはプロモーターおよび/またはエンハンサー、例えば、構成的プロモーターまたは誘導性もしくは組織特異的プロモーターである。いくつかの態様では、プロモーターは、RNA pol I、pol II、またはpol IIIプロモーターの中より選択される。いくつかの態様では、プロモーターはRNAポリメラーゼIIによって認識される(例えば、CMV、SV40初期領域、またはアデノウイルス主要後期プロモーター)。いくつかの態様では、プロモーターはRNAポリメラーゼIIIによって認識される(例えば、U6またはH1プロモーター)。いくつかの態様では、プロモーターは構成的プロモーターであるか、または該プロモーターを含む。例示的な構成的プロモーターとしては、例えば、シミアンウイルス40初期プロモーター(SV40)、サイトメガロウイルス最初期プロモーター(CMV)、ヒトユビキチンCプロモーター(UBC)、ヒト伸長因子1αプロモーター(EF1α)、マウスホスホグリセリン酸キナーゼ1プロモーター(PGK)、およびCMV初期エンハンサーと結合したニワトリβ-アクチンプロモーター(CAGG)が挙げられる。いくつかの態様では、異種プロモーターは、ヒト伸長因子1アルファ(EF1α)プロモーターもしくはMNDプロモーターもしくはそれらのバリアントであるか、またはこれらを含む。
【0534】
いくつかの態様では、プロモーターは、制御型プロモーター(例えば、誘導性プロモーター)である。いくつかの態様では、プロモーターは、誘導性プロモーターまたは抑制性プロモーターである。いくつかの態様では、プロモーターは、Lacオペレーター配列、テトラサイクリンオペレーター配列、ガラクトースオペレーター配列、ドキシサイクリンオペレーター配列、またはトランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)応答性エレメントを含むか、あるいはこれらの類似体であるか、あるいはLacリプレッサーもしくはテトラサイクリンリプレッサーもしくはTGFβ応答性転写因子、もしくはこれらの類似体が結合することができるか、またはこれらによって認識され得る。例示的なTGFβ応答性エレメントとしては、例えば、Mostert et al., (2001) Eur. J. Biochem 268:6176-6181;Denissova et al., (2000) Proc Natl Acad Sci U S A. 2000 Jun 6;97(12):6397-402;Riccio et al., (1992) Mol. Cel. Boil. 12(4):1846-1855;およびBoon et al., (2007) Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology 27:532-539に記載されるものが挙げられる。いくつかの態様では、プロモーターは組織特異的プロモーターである。ある場合には、プロモーターは、特定の細胞型でのみ発現される(例えば、T細胞またはB細胞またはNK細胞特異的プロモーター)。
【0535】
いくつかの態様では、プロモーターは構成的プロモーターであるか、または該プロモーターを含む。例示的な構成的プロモーターとしては、例えば、シミアンウイルス40初期プロモーター(SV40)、サイトメガロウイルス最初期プロモーター(CMV)、ヒトユビキチンCプロモーター(UBC)、ヒト伸長因子1αプロモーター(EF1α)、マウスホスホグリセリン酸キナーゼ1プロモーター(PGK)、およびCMV初期エンハンサーと結合したニワトリβ-アクチンプロモーター(CAGG)が挙げられる。いくつかの態様では、構成的プロモーターは、合成または改変プロモーターである。いくつかの態様では、プロモーターは、MNDプロモーター、すなわち、骨髄増殖性肉腫ウイルスエンハンサーを有する改変MoMuLV LTRのU3領域を含む合成プロモーター(Challita et al. (1995) J. Virol. 69(2):748-755を参照されたい)であるか、または該プロモーターを含む。いくつかの態様では、プロモーターは組織特異的プロモーターである。ある場合には、プロモーターは特定の細胞型でのみ発現を駆動する(例えば、T細胞またはB細胞またはNK細胞特異的プロモーター)。
【0536】
いくつかの態様では、プロモーターはウイルス性プロモーターである。いくつかの態様では、プロモーターは非ウイルス性プロモーターである。場合によっては、プロモーターは、ヒト伸長因子1アルファ(EF1α)プロモーター(例えば、SEQ ID NO:77もしくは118に記載のもの)またはこれらの改変形態(HTLV1エンハンサーを有するEF1αプロモーター;例えば、SEQ ID NO:119に記載のもの)またはMNDプロモーター(例えば、SEQ ID NO:186に記載のもの)の中より選択される。いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、異種または外来性の制御エレメント、例えば、プロモーターを含まない。いくつかの態様では、プロモーターは、双方向性プロモーター(例えば、WO2016/022994を参照されたい)。
【0537】
いくつかの態様では、導入遺伝子配列はスプライス受容配列を含むこともできる。例示的な公知のスプライス受容部位配列としては、例えば、
(ヒトHBB遺伝子由来)およびTTTCTCTCCACAG(SEQ ID NO:79)(ヒトIgG遺伝子由来)が挙げられる。
【0538】
いくつかの態様では、導入遺伝子配列は、転写終結および/またはポリアデニル化シグナルに必要とされる配列を含むこともできる。いくつかの局面では、例示的なポリアデニル化シグナルは、SV40、hGH、BGH、およびrbGlob転写終結配列、ならびに/またはポリアデニル化シグナルより選択される。いくつかの態様では、導入遺伝子はSV40ポリアデニル化シグナルを含む。いくつかの態様では、導入遺伝子内に存在する場合、転写終結配列および/またはポリアデニル化シグナルは、典型的には導入遺伝子内の最も3'の配列であり、相同性アームの1つに連結される。いくつかの局面では、導入遺伝子配列は、3'UTRをコードする配列も転写ターミネータをコードする配列も含まない。いくつかの態様では、内在性TGFBR2遺伝子座への導入遺伝子の組み込みの際に、導入遺伝子は、内在性TGFBR2遺伝子座の3'UTRおよび/または転写ターミネータの上流に組み込まれ、その結果、組換え受容体をコードするメッセージは、例えば内在性TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームまたはその部分配列からの、内在性TGFBR2遺伝子座の3'UTRを含む。したがって、いくつかの態様では、組換え受容体の一部分をコードする導入遺伝子配列の組み込みの際に、組換え受容体をコードする核酸配列は、内在性TGFBR2遺伝子座の3'UTR、転写ターミネータおよび/または他の制御エレメントの調節下にあるように機能的に連結される。
【0539】
(vi) 例示的な導入遺伝子配列
いくつかの態様では、例示的な導入遺伝子は、5'から3'の順番で、以下の各コード化をコードするヌクレオチドの配列を含む:膜貫通ドメイン(または膜結合ドメイン)および細胞内領域。いくつかの態様では、例示的な導入遺伝子は、5'から3'の順番で、以下の各コード化をコードするヌクレオチドの配列を含む:細胞外領域、膜貫通ドメイン、および細胞内領域。
【0540】
いくつかの態様では、コードされる組換え受容体はCARであり、例示的な導入遺伝子配列は、5'から3'の方向で、それぞれ以下のものをコードするヌクレオチドの配列を含む:シグナルペプチド、細胞外結合ドメイン、スペーサー、膜貫通ドメイン、ならびに一次シグナル伝達ドメインまたは領域および/または共刺激性シグナル伝達ドメインを含む細胞内領域。いくつかの態様では、例示的な導入遺伝子配列は、5'から3'の方向で、それぞれ以下のものをコードするヌクレオチドの配列を含む:シグナルペプチド、細胞外結合ドメイン、スペーサー、膜貫通ドメイン、および1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメイン。いくつかの態様では、例示的な導入遺伝子配列は、5'から3'の方向で、それぞれ以下のものをコードするヌクレオチドの配列を含む:シグナルペプチド、細胞外結合ドメイン、スペーサー、膜貫通ドメイン、ならびに1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメインおよび一次シグナル伝達ドメインまたは領域。
【0541】
いくつかの態様では、例示的な導入遺伝子配列は、5'から3'の方向で、それぞれ以下のものをコードするヌクレオチドの配列を含む:膜貫通ドメイン(または膜結合ドメイン)、細胞内多量体化ドメイン、任意で1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメイン、および一次シグナル伝達ドメインまたは領域。いくつかの態様では、例示的な導入遺伝子配列は、5'から3'の方向で、それぞれ以下のものをコードするヌクレオチドの配列を含む:細胞外多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、任意で1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメイン、および一次シグナル伝達ドメインまたは領域。
【0542】
いくつかの態様では、導入遺伝子配列は、順番に、細胞外結合ドメイン、任意でscFv;ヒト免疫グロブリンヒンジ由来の、任意でIgG1、IgG2、もしくはIgG4、またはこれらの改変バージョン由来の配列を任意で含み、CH2領域および/またはCH3領域を任意でさらに含む、スペーサー;ならびに任意でヒトCD28由来の、膜貫通ドメイン;任意でヒト4-1BB由来の、共刺激シグナル伝達ドメイン;ならびに細胞内シグナル伝達領域、任意でCD3ζ鎖またはその一部分、をコードするヌクレオチドの配列を含む。いくつかの態様では、組換え受容体のコードされる細胞内領域は、そのN末端からC末端の順番で、以下のものを含む:1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメイン、および例えばCD3ゼータ鎖またはその断片を含む一次シグナル伝達ドメインまたは領域。
【0543】
いくつかの態様では、例示的な導入遺伝子は、5'から3'の順番で、以下の各コード化をコードするヌクレオチドの配列を含む:膜貫通ドメイン(または膜結合ドメイン)および細胞内領域。いくつかの態様では、例示的な導入遺伝子は、5'から3'の順番で、以下の各コード化をコードするヌクレオチドの配列を含む:細胞外領域、膜貫通ドメイン、および細胞内領域。
【0544】
いくつかの態様では、例示的な導入遺伝子配列はTCRα鎖の全部または一部分をコードする。いくつかの態様では、例示的な導入遺伝子配列は、TCRβ鎖の全部または一部分をコードする。いくつかの態様では、例示的な導入遺伝子配列は、TCRα鎖とTCRβ鎖の両方の全部または一部分をコードする。いくつかの態様では、コードされる組換え受容体は組換えT細胞受容体(TCR)であり、例示的な導入遺伝子は、5'から3'の順番で、[TCRβ鎖]-[リンカーまたはマルチシストロン性エレメント]-[TCRα鎖]を含む。いくつかの態様では、コードされる組換え受容体は組換えTCRであり、例示的な導入遺伝子は、5'から3'の順番で、[TCRα鎖]-[リンカーまたはマルチシストロン性エレメント]-[TCRβ鎖]を含む。
【0545】
いくつかの態様では、例示的な導入遺伝子配列はマルチシストロン性エレメント、例えば、2Aエレメントもしくは配列内リボソーム進入部位(IRES)、ならびに/またはシグナルペプチドおよび/もしくは細胞外領域をコードする配列の5'に配置される制御もしくは調節エレメント、例えば、プロモーターを含むこともできる。いくつかの態様では、例示的な導入遺伝子配列は、さらなる配列、例えば、1つまたは複数のさらなる分子、例えば、マーカー、さらなる組換え受容体、抗体もしくはその抗原結合断片、免疫調節分子、リガンド、サイトカイン、またはケモカインをコードするヌクレオチドの配列を含むこともできる。いくつかの局面では、1つまたは複数の他の分子をコードする配列および組換え受容体の領域またはドメインをコードするヌクレオチドの配列は、制御配列、例えば、2Aリボソームスキッピングエレメントおよび/またはプロモーター配列によって分離される。いくつかの局面では、例示的な導入遺伝子中で、1つまたは複数のさらなる分子をコードするヌクレオチドの配列は、シグナルペプチドおよび/または細胞外領域をコードする配列の5'に配置される。いくつかの態様では、1つまたは複数のさらなる分子をコードするヌクレオチドの配列は、マルチシストロン性エレメントおよび/または制御もしくは調節エレメントと組換え受容体の領域またはドメインをコードするヌクレオチドの配列との間に配置される。いくつかの態様では、1つまたは複数のさらなる分子をコードするヌクレオチドの配列は、2つのエレメントおよび/または制御もしくは調節エレメントの間に配置される。いくつかの態様では、例示的な導入遺伝子配列は、5'から3'の方向で、以下のものを含む:マルチシストロン性エレメントおよび/または制御エレメント、さらなる分子をコードするヌクレオチドの配列、マルチシストロン性エレメントおよび/または制御エレメント、シグナルペプチド、組換え受容体の領域またはドメイン(例えば、細胞外領域、膜貫通ドメイン、細胞内領域)をコードする核酸配列。
【0546】
b. 相同性アーム
いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、組換え受容体またはその一部分の1つまたは複数の鎖をコードする導入遺伝子配列に連結された、または該導入遺伝子配列を取り囲む、1つまたは複数の相同配列(「相同性アーム」とも呼ばれる)を5'および/または3'末端に含む。いくつかの態様では、1つまたは複数の相同性アームは5'および/または3'相同性アームを含む。相同性アームは、DNA修復機構、例えば、相同組換え機構が相同性を認識し、修復のための鋳型として鋳型ポリヌクレオチドを使用することを可能にし、相同性アームの間の核酸配列は、修復されるDNAにコピーされ、相同性の場所の間のゲノム中の組み込みの標的部位に導入遺伝子配列を効果的に挿入するかまたは組み込む。
【0547】
いくつかの局面では、導入遺伝子配列の組み込みの際に、完全な組換え受容体が導入遺伝子配列にコードされ、内在性TGFBR2遺伝子座のコード配列の完全なコード配列または一部分が欠失する。いくつかの態様では、導入遺伝子配列は、1つまたは複数の相同性アームに含まれるTGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームの1つまたは複数のエクソンとインフレームであるヌクレオチドの配列を含む。いくつかの局面では、完全な組換え受容体が導入遺伝子配列にコードされ、TGFBR2遺伝子座の一部分のみが欠失し、内在性TGFBR2遺伝子座の残りの部分は発現する。いくつかの局面では、TGFBR2遺伝子座の残りの発現する部分は、場合によっては、ドミナントネガティブ型のTGFBRIIをコードする。
【0548】
いくつかの態様では、相同性アーム配列は、遺伝子破壊の周辺のゲノム配列、例えば、TGFBR2遺伝子座内の標的部位に相同な配列を含む。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは以下の成分を含む:[5'相同性アーム]-[導入遺伝子配列(例えば、組換え受容体またはその一部分の1つまたは複数の鎖をコードする、外来性または異種の核酸配列)]-[3'相同性アーム]。いくつかの態様では、5'相同性アーム配列は、5'側の遺伝子破壊の近くに位置する配列に相同な連続した配列を含む。いくつかの態様では、3'相同性アーム配列は、3'側の遺伝子破壊の近くに位置する配列に相同な連続した配列を含む。いくつかの局面では、標的部位は、遺伝子破壊を導入することができる1つまたは複数の作用物質、例えばTGFBR2遺伝子座内の特定の部位を標的とするCas9およびgRNAのターゲティングによって、決定される。
【0549】
いくつかの局面では、鋳型ポリヌクレオチド内の導入遺伝子配列は、標的部位および/または相同性アームの場所をガイドするために使用することができる。いくつかの局面では、遺伝子破壊の標的部位は、HDRに使用される鋳型ポリヌクレオチドおよび/または相同性アームを設計するためのガイドとして使用することができる。いくつかの態様では、遺伝子破壊は、導入遺伝子配列の標的組み込みの望ましい部位の近くにターゲティングされ得る。いくつかの局面では、相同性アームは、内在性TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームのエクソン内の組み込みをターゲティングするように設計され、相同性アーム配列は、遺伝子破壊の周辺のエクソンおよびイントロン配列を含めて、遺伝子破壊の周辺の組み込みの望ましい場所に基づいて決定される。いくつかの態様では、標的部位の場所、1つまたは複数の相同性アームの相対的な場所、および挿入のための導入遺伝子(外来性核酸配列)は、効率的なターゲティングの要件および使用することができる鋳型ポリヌクレオチドまたはベクターの長さに応じて設計され得る。いくつかの局面では、相同性アームは、TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームのイントロン内の組み込みをターゲティングするように設計される。いくつかの局面では、相同性アームは、TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームのエクソン内の組み込みをターゲティングするように設計される。
【0550】
いくつかの局面では、TGFBR2遺伝子座内の標的組み込み部位(標的組み込みのための部位)は、内在性TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレーム内に位置する。いくつかの態様では、標的組み込み部位は、本明細書おいて、例えばセクションI.Aに記載される標的部位のいずれかであるか、またはその近くである。いくつかの局面では、組み込みのための標的場所は、遺伝子破壊のための標的部位であるか、その周囲であり、例えば、遺伝子破壊のための標的部位の500、450、400、350、300、250、200、150、100、または50bp未満内である。
【0551】
いくつかの局面では、標的組み込み部位は内在性TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームのエクソン内である。いくつかの局面では、標的組み込み部位はTGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームのイントロン内である。いくつかの局面では、標的組み込み部位はTGFBR2遺伝子座の制御または調節エレメント、例えば、プロモーター内である。いくつかの態様では、標的組み込み部位は、初期コード領域に対応するエクソン、例えば、内在性TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームのエクソン1、2、3、4、もしくは5内であるか、または該エクソンに極めて近接しているか、あるいは転写開始点の直後の、エクソン1、2、3、4、もしくは5(例えば、本明細書において表1もしくは2に記載されるもの)内の、またはエクソン1、2、3、4、もしくは5の500、450、400、350、300、250、200、150、100、もしくは50bp未満内の配列を含む。いくつかの態様では、組み込みは、内在性TGFBR2遺伝子座のエクソン2で、もしくはその近くで、またはエクソン2の500、450、400、350、300、250、200、150、100、もしくは50bp未満内でターゲティングされる。いくつかの局面では、標的組み込み部位は、内在性TGFBR2遺伝子座のエクソン1またはその近く、例えば、エクソン1の500、450、400、350、300、250、200、150、100、もしくは50bp未満内である。いくつかの態様では、標的組み込み部位は、内在性TGFBR2遺伝子座のエクソン2またはその近く、あるいはエクソン2の500、450、400、350、300、250、200、150、100、もしくは50bp未満内である。いくつかの局面では、標的組み込み部位は、内在性TGFBR2遺伝子座のエクソン3またはその近、例えば、エクソン3の500、450、400、350、300、250、200、150、100、もしくは50bp未満内である。いくつかの局面では、標的組み込み部位は、内在性TGFBR2遺伝子座のエクソン4またはその近く、例えば、エクソン4の500、450、400、350、300、250、200、150、100、もしくは50bp未満内である。いくつかの局面では、標的組み込み部位は、内在性TGFBR2遺伝子座のエクソン5またはその近く、例えば、エクソン5の500、450、400、350、300、250、200、150、100、もしくは50bp未満内である。いくつかの局面では、標的組み込み部位はTGFBR2遺伝子座の制御または調節エレメント、例えば、プロモーター内である。
【0552】
いくつかの態様では、5'相同性アーム配列は、内在性TGFBR2遺伝子座の標的部位の近くから始めて、遺伝子破壊のための標的部位の5'のおよそ10、20、30、40、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、3000、4000、または5000塩基対の連続した配列を含む。いくつかの態様では、3'相同性アーム配列は、内在性TGFBR2遺伝子座の標的部位の近くから始めて、遺伝子破壊のための標的部位の3'のおよそ10、20、30、40、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、3000、4000、または5000塩基対の連続した配列を含む。したがって、HDRを介した組み込みの際に、導入遺伝子配列は、遺伝子破壊のための標的部位、例えば、内在性TGFBR2遺伝子座のエクソンまたはイントロン内の標的部位またはその近くにおける組み込みのためにターゲティングされる。
【0553】
いくつかの局面では、相同性アームは、内在性TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレーム配列の一部分に相同な配列を含む。いくつかの局面では、相同性アーム配列は、内在性TGFBR2遺伝子座におけるエクソンおよびイントロンを含むオープンリーディングフレーム配列の連続した部分に相同な配列を含む。いくつかの局面では、相同性アームは、内在性TGFBR2遺伝子座におけるエクソンおよびイントロンを含むオープンリーディングフレーム配列の連続した部分と同一の配列を含む。
【0554】
いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、内在性TGFBR2遺伝子座(本明細書において表1または2に記載される例示的なゲノム遺伝子座配列;SEQ ID NO:61、NCBI参照配列:NM_003242.5またはSEQ ID NO:62、NCBI参照配列:NM_001024847.2に記載される例示的なヒトTGFBRII mRNA配列)における導入遺伝子配列のターゲティング組み込みのための相同性アームを含む。いくつかの態様では、遺伝子破壊は、遺伝子破壊のための作用物質のいずれか、例えば、本明細書において記載される標的ヌクレアーゼおよび/またはgRNAを使用して導入される。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、標的ヌクレアーゼおよび/またはgRNAによって導入される遺伝子破壊の両側に約500~1000、例えば、500~900、または600~700塩基対の相同性を含む。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、TGFBR2遺伝子座における遺伝子破壊の5'の500、600、700、800、900、または1000塩基対の配列に相同な約500、600、700、800、900、または1000塩基対の5'相同性アーム配列、導入遺伝子、および、TGFBR2遺伝子座における遺伝子破壊の3'の500、600、700、800、900、または1000塩基対の配列に相同な約500、600、700、800、900、または1000塩基対の3'相同性アーム配列を含む。
【0555】
いくつかの局面では、導入遺伝子と1つまたは複数の相同性アーム配列の間の境界は、HDRおよび導入遺伝子配列の標的組み込みの際に、1つまたは複数のポリペプチド、例えば、組換え受容体の鎖、ドメイン、または領域をコードする導入遺伝子内の配列が、内在性TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレーム配列の1つもしくは複数のエクソンとインフレームで組み込まれる、および/またはポリペプチドをコードする導入遺伝子と内在性TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレーム配列の1つもしくは複数のエクソンとのインフレームの融合をもたらすように設計される。いくつかの態様では、ドミナントネガティブ(DN)型のTGFBRIIポリペプチドが、内在性オープンリーディングフレームの核酸配列にコードされ、組換え受容体またはその一部分のポリペプチドが、任意でマルチシストロン性エレメント、例えば2Aエレメントによって分離された組み込まれた導入遺伝子配列にコードされる。
【0556】
いくつかの態様では、1つまたは複数の相同性アーム配列は、内在性TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレーム配列内にある標的部位を取り囲むか、または該標的部位に隣接する配列と相同である、実質的に同一である、または同一である配列を含む。いくつかの局面では、1つまたは複数の相同性アーム配列は、内在性TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームの部分配列のイントロンおよびエクソンを含む。いくつかの局面では、5'相同性アーム配列と導入遺伝子の境界は、異種プロモーターを含まない導入遺伝子の場合、導入遺伝子配列のコード部分が、内在性TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームの標的組み込みの場所に応じて、上流のエクソンまたはその一部分、例えば、エクソン1、2、3、4、または5とインフレームで融合されるようなものである。
【0557】
いくつかの局面では、5'相同性アーム配列と導入遺伝子の境界は、内在性TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームの上流のエクソンまたはその一部分、例えば、エクソン1、2、3、4、または5が導入遺伝子配列のコード部分とインフレームで融合されるようなものである。したがって、標的組み込み、転写、および翻訳の際に、連続したポリペプチドであるコードされる組換え受容体が、内在性TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレーム配列と導入遺伝子の融合DNA配列から生成される。いくつかの局面では、上流のエクソンまたはその一部分は、ドミナントネガティブ型のTGFBRIIポリペプチドをコードする。いくつかの局面では、標的組み込みの際に、マルチシストロン性エレメント、例えば2Aエレメントまたは配列内リボソーム進入部位(IRES)は、内在性TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレーム配列と組換え受容体をコードする導入遺伝子配列とを分離する。いくつかの局面では、改変TGFBR2遺伝子座から発現され、翻訳される場合に、ポリペプチドは切断されて、ドミナントネガティブ型のTGFBRIIポリペプチドおよび組換え受容体を作出する。
【0558】
いくつかの態様では、内在性TGFBR2遺伝子座におけるターゲティング組み込みのための例示的な5'相同性アームは、SEQ ID NO:69~71に記載される配列、またはSEQ ID NO:69~71もしくはそれらの部分配列に対して、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の配列同一性を示す配列を含む。いくつかの局面では、内在性TGFBR2遺伝子座における導入遺伝子のターゲティング組み込みおよびドミナントネガティブTGFBRIIをコードする改変TGFBR2遺伝子座の作出のための例示的な5'相同性アームは、SEQ ID NO:70に記載される配列、またはSEQ ID NO:70もしくはその部分配列に対して、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の配列同一性を示す配列を含む。
【0559】
いくつかの態様では、内在性TGFBR2遺伝子座におけるターゲティング組み込みのための例示的な3'相同性アームは、SEQ ID NO:72に記載される配列、またはSEQ ID NO:72もしくはその部分配列に対して、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の配列同一性を示す配列を含む。
【0560】
いくつかの局面では、標的部位は、相同性アームの相対的な場所および配列を決定することができる。相同性アームは、例えば、切除された一本鎖突出が鋳型ポリヌクレオチド内の相補性領域を見つけることを可能にするために、典型的には、遺伝子破壊、例えばDSBが導入された後にDNA修復機構による末端切除が生じる得る領域まで少なくとも延びることができる。全体の長さは、プラスミドサイズ、ウイルスのパッケージング制限、またはコンストラクトサイズの制限などのパラメーターによって制限され得る。
【0561】
いくつかの態様では、相同性アームは、内在性遺伝子の標的部位の両側に約500~1000、例えば、600~900、または700~800塩基対の相同性を含む。いくつかの態様では、相同性アームは、TGFBR2遺伝子座において、標的部位の5'、標的部位の3'、または標的部位の5'と3'の両方に、約少なくとも200、300、400、500、600、700、800、900、もしくは1000塩基対の、または200、300、400、500、600、700、800、900、もしくは1000塩基対未満の、または約200、300、400、500、600、700、800、900、もしくは1000塩基対の相同性を含む。
【0562】
いくつかの態様では、相同性アームは、TGFBR2遺伝子座の標的部位の3'に、10、20、30、40、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、3000、4000、もしくは5000塩基対の、または約10、20、30、40、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、3000、4000、または5000塩基対の相同性を含む。いくつかの態様では、相同性アームは、導入遺伝子および/またはTGFBR2遺伝子座の標的部位の3'に、100~500、200~400、もしくは250~350塩基対の、または約100~500、200~400、もしくは250~350塩基対の相同性を含む。いくつかの態様では、相同性アームは、TGFBR2遺伝子座の標的部位の5'に、約100、90、80、70、60、50、40、30、20、15、または10塩基対未満の相同性を含む。
【0563】
いくつかの態様では、相同性アームは、TGFBR2遺伝子座の標的部位の5'に、10、20、30、40、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、3000、4000、もしくは5000塩基対の、または約10、20、30、40、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、3000、4000、もしくは5000塩基対の相同性を含む。いくつかの態様では、相同性アームは、導入遺伝子および/またはTGFBR2遺伝子座の標的部位の5'に、100~500、200~400、もしくは250~350塩基対の、または約100~500、200~400、もしくは250~350塩基対の相同性を含む。いくつかの態様では、相同性アームは、TGFBR2遺伝子座の標的部位の3'に、約100、90、80、70、60、50、40、30、20、15、または10塩基対未満の相同性を含む。
【0564】
いくつかの態様では、5'相同性アームの3'末端は導入遺伝子の5'末端の隣の位置である。いくつかの態様では、5'相同性アームは、導入遺伝子の5'末端から5'に、少なくとも10、20、30、40、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、3000、4000、もしくは5000ヌクレオチド、または少なくとも約10、20、30、40、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、3000、4000、もしくは5000ヌクレオチド延びることができる。
【0565】
いくつかの態様では、3'相同性アームの5'末端は導入遺伝子の3'末端の隣の位置である。いくつかの態様では、3'相同性アームは、導入遺伝子の3'末端から3'に、少なくとも10、20、30、40、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、3000、4000、もしくは5000ヌクレオチド、または少なくとも約10、20、30、40、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、3000、4000、もしくは5000ヌクレオチド延びることができる。
【0566】
いくつかの態様では、標的挿入のために、相同性アーム、例えば5'および3'相同性アームは、最も遠位の標的部位に隣接する約1000塩基対(bp)の配列(例えば、変異の両側の1000bpの配列)をそれぞれ含むことができる。
【0567】
相同性アームの例示的な長さとしては、少なくとも50、100、200、250、300、400、500、600、700、750、800、900、1000、2000、3000、4000、もしくは5000ヌクレオチド、または少なくとも約50、100、200、250、300、400、500、600、700、750、800、900、1000、2000、3000、4000、または5000ヌクレオチドが挙げられる。いくつかの態様では、相同性アームの長さは、50~100、100~250、250~500、500~750、750~1000、1000~2000、2000~3000、3000~4000、もしくは4000~5000ヌクレオチドであるか、または約50~100、100~250、250~500、500~750、750~1000、1000~2000、2000~3000、3000~4000、もしくは4000~5000ヌクレオチドである。相同性アームの例示的な長さとしては、50、100、200、250、300、400、500、600、700、750、800、900、1000、2000、3000、4000、もしくは5000ヌクレオチド未満、または約50、100、200、250、300、400、500、600、700、750、800、900、1000、2000、3000、4000、もしくは5000ヌクレオチド未満、または50、100、200、250、300、400、500、600、700、750、800、900、1000、2000、3000、4000、もしくは5000ヌクレオチド、または約50、100、200、250、300、400、500、600、700、750、800、900、1000、2000、3000、4000、もしくは5000ヌクレオチドが挙げられる。いくつかの態様では、相同性アームの長さは、50~100、100~250、250~500、500~750、750~1000、1000~2000、2000~3000、3000~4000、もしくは4000~5000ヌクレオチドであるか、または約50~100、100~250、250~500、500~750、750~1000、1000~2000、2000~3000、3000~4000、もしくは4000~5000ヌクレオチドである。相同性アームの例示的な長さとしては、100もしくは約100から、1000もしくは約1000ヌクレオチド、100もしくは約100から、750もしくは約750ヌクレオチド、100もしくは約100から、600もしくは約600ヌクレオチド、100もしくは約100から、400もしくは約400ヌクレオチド、100もしくは約100から、300もしくは約300ヌクレオチド、100もしくは約100から、200もしくは約200ヌクレオチド、200もしくは約200から、1000もしくは約1000ヌクレオチド、200もしくは約200から、750もしくは約750ヌクレオチド、200もしくは約200から、600もしくは約600ヌクレオチド、200もしくは約200から、400もしくは約400ヌクレオチド、200もしくは約200から、300もしくは約300ヌクレオチド、300もしくは約300から、1000もしくは約1000ヌクレオチド、300もしくは約300から、750もしくは約750ヌクレオチド、300もしくは約300から、600もしくは約600ヌクレオチド、300もしくは約300から、400もしくは約400ヌクレオチド、400もしくは約400から、1000もしくは約1000ヌクレオチド、400もしくは約400から、750もしくは約750ヌクレオチド、400もしくは約400から、600もしくは約600ヌクレオチド、600もしくは約600から、1000もしくは約1000ヌクレオチド、600もしくは約600から、750もしくは約750ヌクレオチド、または750~1000もしくは約1000ヌクレオチドが挙げられる。
【0568】
任意のそのような態様のいくつかでは、導入遺伝子は、複数のT細胞のそれぞれに導入された鋳型ポリヌクレオチドによって組み込まれる。特定の態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、構造[5'相同性アーム]-[導入遺伝子]-[3'相同性アーム]を含む。ある特定の態様では、5'相同性アームおよび3'相同性アームは、少なくとも1つまたは少なくとも約1つの標的部位を取り囲む核酸配列に相同な核酸配列を含む。いくつかの態様では、5'相同性アームは、標的部位の5'の核酸配列に相同な核酸配列を含む。特定の態様では、3'相同性アームは、標的部位の3'の核酸配列に相同な核酸配列を含む。ある特定の態様では、5'相同性アームおよび3'相同性アームは、独立に、少なくとも10、20、30、40、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、もしくは2000ヌクレオチド、または少なくとも約10、20、30、40、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、もしくは2000ヌクレオチド、または少なくとも10、20、30、40、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、もしくは2000ヌクレオチド、または少なくとも約10、20、30、40、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、もしくは2000ヌクレオチド、あるいは10、20、30、40、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、もしくは2000ヌクレオチド未満、または約10、20、30、40、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、もしくは2000ヌクレオチド未満である。いくつかの態様では、5'相同性アームおよび3'相同性アームは、独立に50または約50から、100または約100、100から、250または約250、250から、500または約500、500から、750または約750、750から、1000または約1000、1000から、2000または約2000ヌクレオチドである。任意のそのような態様のいくつかでは、5'相同性アームおよび3'相同性アームは、独立に、50もしくは約50から、100もしくは約100ヌクレオチドの長さ、100もしくは約100から、250もしくは約250ヌクレオチドの長さ、250もしくは約250から、500もしくは約500ヌクレオチドの長さ、500もしくは約500から、750もしくは約750ヌクレオチドの長さ、750もしくは約750から、1000もしくは約1000ヌクレオチドの長さ、または1000もしくは約1000から、2000もしくは約2000ヌクレオチドの長さである。
【0569】
特定の態様では、5'相同性アームおよび3'相同性アームは、独立に、100もしくは約100から、1000もしくは約1000ヌクレオチド、100もしくは約100から、750もしくは約750ヌクレオチド、100もしくは約100から、600もしくは約600ヌクレオチド、100もしくは約100から、400もしくは約400ヌクレオチド、100もしくは約100から、300もしくは約300ヌクレオチド、100もしくは約100から、200もしくは約200ヌクレオチド、200もしくは約200から、1000もしくは約1000ヌクレオチド、200もしくは約200から、750もしくは約750ヌクレオチド、200もしくは約200から、600もしくは約600ヌクレオチド、200もしくは約200から、400もしくは約400ヌクレオチド、200もしくは約200から、300もしくは約300ヌクレオチド、300もしくは約300から、1000もしくは約1000ヌクレオチド、300もしくは約300から、750もしくは約750ヌクレオチド、300もしくは約300から、600もしくは約600ヌクレオチド、300もしくは約300から、400もしくは約400ヌクレオチド、400もしくは約400から、1000もしくは約1000ヌクレオチド、400もしくは約400から、750もしくは約750ヌクレオチド、400もしくは約400から、600もしくは約600ヌクレオチド、600もしくは約600から、1000もしくは約1000ヌクレオチド、600もしくは約600から、750もしくは約750ヌクレオチド、または750もしくは約750から、1000もしくは約1000ヌクレオチドである。特定の態様では、5'相同性アームおよび3'相同性アームは、独立に、100または約100から、1000または約1000または1000または約1000ヌクレオチド、100または約100から、750または約750ヌクレオチド、100または約100から、600または約600ヌクレオチド、100または約100から、400または約400ヌクレオチド、100または約100から、300または約300ヌクレオチド、100または約100から、200または約200ヌクレオチド、200または約200から、1000または約1000ヌクレオチド、200または約200から、750または約750ヌクレオチド、200または約200から、600または約600ヌクレオチド、200または約200から、400または約400ヌクレオチド、200または約200から、300または約300ヌクレオチド、300または約300から、1000または約1000ヌクレオチド、300または約300から、750または約750ヌクレオチド、300または約300から、600または約600ヌクレオチド、300または約300から、400または約400ヌクレオチド、400または約400から、1000または約1000ヌクレオチド、400または約400から、750または約750ヌクレオチド、400または約400から、600または約600ヌクレオチド、600または約600から、1000または約1000ヌクレオチド、600または約600から、750または約750ヌクレオチドまたは750または約750から、1000または約1000ヌクレオチドの長さである。いくつかの態様では、5'相同性アームおよび3'相同性アームは、独立に、200、300、400、500、600、700、もしくは800ヌクレオチド、または約200、300、400、500、600、700、または800ヌクレオチドの長さ、あるいは前述のもののいずれかの間の任意の値である。いくつかの態様では、5'相同性アームおよび3'相同性アームは、独立に、300ヌクレオチド超または約300ヌクレオチド超の長さであり、任意で、5'相同性アームおよび3'相同性アームは、独立に、400、500、もしくは600ヌクレオチド、または約400、500、もしくは600ヌクレオチドの長さ、あるいは前述のもののいずれかの間の任意の値である。いくつかの態様では、5'相同性アームおよび3'相同性アームは、独立に、300ヌクレオチド超または約300ヌクレオチド超の長さである。
【0570】
いくつかの態様では、相同性アームの1つまたは複数は、TGFBRIIまたはその断片をコードする配列に相同なヌクレオチドの配列を含む。いくつかの態様では、1つまたは複数の相同性アームは、組換え受容体またはその一部分をコードする導入遺伝子配列とインフレームで接続または連結される。
【0571】
いくつかの態様では、代替HDRが用いられる。いくつかの態様では、代替HDRは、鋳型ポリヌクレオチドが、標的部位に対して5'(すなわち、標的部位の鎖の5'方向)に相同性が延びている場合に、より効率的に進行する。したがって、いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドはより長い相同性アームおよびより短い相同性アームを有し、より長い相同性アームは標的部位の5'にアニールすることができる。いくつかの態様では、標的部位に対して5'にアニールすることができるアームは、標的部位または導入遺伝子の5'もしくは3'末端から少なくとも25、50、75、100、125、150、175、または200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、3000、4000、または5000ヌクレオチドである。いくつかの態様では、標的部位に対して5'にアニールすることができるアームは、標的部位に対して3'にアニールすることができるアームよりも少なくとも10%、20%、30%、40%、または50%長い。いくつかの態様では、標的部位に対して5'にアニールすることができるアームは、標的部位に対して3'にアニールすることができるアームよりも少なくとも2×、3×、4×、または5×長い。ssDNA鋳型がインタクトな鎖または標的鎖にアニールすることができるかどうかに応じて、標的部位に対して5'にアニールする相同性アームは、それぞれ、ssDNA鋳型の5'末端またはssDNA鋳型の3'末端にあり得る。
【0572】
同様に、いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは5'相同性アーム、導入遺伝子、および3'相同性アームを有し、その結果、鋳型ポリヌクレオチドは、標的部位の5'に対して延長した相同性を含む。例えば、5'相同性アームおよび3'相同性アームは実質的に同じ長さでもよいが、導入遺伝子は、標的部位の3'よりも標的部位の5'にさらに延びてもよい。いくつかの態様では、相同性アームは、標的部位の3'末端よりも標的部位の5'末端にさらに少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、2×、3×、4×、または5×延びる。
【0573】
いくつかの態様では、代替HDRは、鋳型ポリヌクレオチドが標的部位の中心に置かれる場合に、より効率的に進行する。したがって、いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、本質的に同じサイズの2つの相同性アームを有する。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドの第1の相同性アーム(例えば、5'相同性アーム)は、鋳型ポリヌクレオチドの第2の相同性アーム(例えば、3'相同性アーム)の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%以内の長さを有し得る。
【0574】
同様に、いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは5'相同性アーム、導入遺伝子、および3'相同性アームを有し、その結果、鋳型ポリヌクレオチドは、標的部位の両側で実質的に同じ距離が延びる。例えば、相同性アームは異なる長さを有し得るが、導入遺伝子は、これを補償するように選択され得る。例えば、導入遺伝子は、標的部位の3'に延びるよりも、標的部位から5'にさらに延び得るが、標的部位の5'の相同性アームは、補償するために、標的部位の3'の相同性アームよりも短い。逆も可能であり、例えば、導入遺伝子は、標的部位の5'に延びるよりも、標的部位から3'にさらに延び得るが、標的部位の3'の相同性アームは、補償するために、標的部位の5'の相同性アームよりも短い。
【0575】
いくつかの態様では、導入遺伝子配列および1つまたは複数の相同性アームを含む鋳型ポリヌクレオチドの長さは、1000~約20,000塩基対または約1000~約20,000塩基対、例えば、約1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、6000、7000、8000、9000、10000、11000、12000、13000、14000、15000、16000、17000、18000、19000、または20000塩基対である。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドの長さは、調製、合成、もしくはアセンブルすることができる、および/または細胞中に導入することができるポリヌクレオチドの最大の長さ、あるいはウイルスベクターの収容能力、およびポリヌクレオチドまたはベクターのタイプによって制限される。いくつかの局面では、鋳型ポリヌクレオチドの制限された収容能力によって、導入遺伝子配列および/または1つまたは複数の相同性アームの長さが決定され得る。いくつかの局面では、導入遺伝子配列と1つまたは複数の相同性アームの組み合わされた全長は、ポリヌクレオチドまたはベクターの最大の長さまたは収容能力内であるべきである。例えば、いくつかの局面では、鋳型ポリヌクレオチドの導入遺伝子部分は、約1000、1500、2000、2500、3000、3500、または4000塩基対であり、鋳型ポリヌクレオチドの最大の長さが約5000塩基対である場合、配列の残りの部分は、3'または5'相同性アームがおよそ500、750、1000、1250、1500、1750、または2000塩基対であり得るように、1つまたは複数の相同性アームの間で分割することができる。
【0576】
3. 鋳型ポリヌクレオチドの送達
いくつかの態様では、ポリヌクレオチド、例えば、組換え受容体の1つまたは複数の鎖をコードする導入遺伝子配列を含む鋳型ポリヌクレオチド(例えば、本明細書のセクションI.B.2に記載されるもの)などのポリヌクレオチドは、ヌクレオチド形態で、例えば、ポリヌクレオチドまたはベクターとして、細胞中に導入される。特定の態様では、ポリヌクレオチドは、組換え受容体またはその一部分の1つまたは複数の鎖をコードする導入遺伝子および1つまたは複数の相同性アームを含み、導入遺伝子配列の相同性指向修復(HDR)媒介性組み込みのために、細胞中に導入され得る。
【0577】
いくつかの局面では、提供される態様は、(HDRおよび導入遺伝子配列の標的組み込みを誘導するための、遺伝子破壊を誘導することができる1つもしくは複数の作用物質またはそれらの成分および鋳型ポリヌクレオチドの導入による細胞の遺伝子操作である。いくつかの局面では、1つまたは複数の作用物質および鋳型ポリヌクレオチドは同時に送達される。いくつかの局面では、1つまたは複数の作用物質および鋳型ポリヌクレオチドは順次送達される。いくつかの態様では、1つまたは複数の作用物質はポリヌクレオチドの送達より前に送達される。
【0578】
いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、標的遺伝子破壊を誘導することができる作用物質、例えば、ヌクレアーゼおよび/またはgRNAに加えて、操作のために細胞中に導入される。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、標的遺伝子破壊を誘導することができる作用物質の1つまたは複数の成分が細胞中に導入されるより前に、該成分が細胞中に導入されるのと同時に、または該成分が細胞に導入された後に、送達することができる。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは作用物質と同時に送達される。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、作用物質より前に、例えば、鋳型ポリヌクレオチドの数秒~数時間~数日前、例えば、限定されないが、作用物質の1~60分(または、その間の任意の時間)前、作用物質の1~24時間(または、その間の任意の時間)前、または作用物質の24時間より前に送達される。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、作用物質の後、作用物質の送達の直後を含めて、鋳型ポリヌクレオチドから数秒~数時間~数日後、例えば、作用物質の送達から30秒~4時間、例えば、約30秒、1分、2分、3分、4分、5分、6分、6分、8分、9分、10分、15分、20分、30分、40分、50分、60分、90分、2時間、3時間、もしくは4時間後に、および/または好ましくは作用物質の送達の4時間以内に送達される。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは作用物質の送達の4時間より後に送達される。
【0579】
いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、標的遺伝子破壊を誘導することができる作用物質、例えば、ヌクレアーゼおよび/またはgRNAと同じ送達システムを使用して送達することができる。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、標的遺伝子破壊を誘導することができる作用物質、例えば、異なる、ヌクレアーゼおよび/またはgRNAと同じ送達システムを使用して送達することができる。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは作用物質と同時に送達される。他の態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、作用物質の送達の前または後の異なる時間に送達される。標的遺伝子破壊を誘導することができる作用物質、例えば、ヌクレアーゼおよび/またはgRNAにおける核酸の送達のための、本明細書においてセクションI.A.3(例えば、表4および5)に記載される送達方法のいずれかを、鋳型ポリヌクレオチドを送達するために使用することができる。
【0580】
いくつかの態様では、1つまたは複数の作用物質および鋳型ポリヌクレオチドは同じ型式または方法で送達される。例えば、いくつかの態様では、1つまたは複数の作用物質および鋳型ポリヌクレオチドは両方とも、ベクター、例えば、ウイルスベクターに含まれる。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、Cas9およびgRNAと同じベクター骨格、例えば、AAVゲノム、プラスミドDNAにコードされる。いくつかの局面では、1つまたは複数の作用物質および鋳型ポリヌクレオチドは、異なる型式、例えば、Cas9-gRNA作用物質についてはリボ核酸-タンパク質複合体(RNP)、および鋳型ポリヌクレオチドについては直鎖状DNAであるが、これらは同じ方法を使用して送達される。
【0581】
いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは直鎖状または環状の核酸分子、例えば、直鎖状もしくは環状のDNAまたは直鎖状RNAであり、核酸分子を細胞中に送達するために、本明細書のセクションI.A.3(例えば、本明細書の表4および5)に記載される方法のいずれかを使用して送達することができる。
【0582】
特定の態様では、ポリヌクレオチド、例えば鋳型ポリヌクレオチドは、ヌクレオチド形態で、例えば、非ウイルスベクターとして、または非ウイルスベクター内で細胞中に導入される。いくつかの態様では、非ウイルスベクターは、遺伝子送達のための任意の適切なおよび/または公知の非ウイルス性方法、例えば、限定されないが、マイクロインジェクション、電気穿孔、(例えば、Lee, et al. (2012) Nano Lett 12: 6322-27に記載される)一過的な細胞の圧縮もしくは圧搾、脂質媒介性トランスフェクション、ペプチド媒介性送達、例えば、細胞透過性ペプチド、またはこれらの組み合わせによる形質導入および/またはトランスフェクションに適したポリヌクレオチド、例えば、DNAまたはRNAポリヌクレオチドであるか、あるいは該ポリヌクレオチドを含む。いくつかの態様では、非ウイルス性ポリヌクレオチドは、本明細書において記載される非ウイルス性方法、例えば、本明細書の表5に列挙される非ウイルス性方法によって、細胞中に送達される。
【0583】
いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチド配列は、ゲノムDNA中の関心対象の領域と相同でない配列を含むベクター分子に含まれ得る。いくつかの態様では、ウイルスはDNAウイルス(例えば、dsDNAまたはssDNAウイルス)である。いくつかの態様では、ウイルスはRNAウイルス(例えば、ssRNAウイルス)である。例示的なウイルスベクター/ウイルスとしては、例えば、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、および単純ヘルペスウイルス、または本明細書の他の個所に記載されるウイルスのいずれかが挙げられる。ポリヌクレオチドは、例えば、複製開始点、プロモーター、および抗生物質抵抗性をコードする遺伝子などのさらなる配列を有するベクター分子の一部として、細胞中に導入することができる。さらに、鋳型ポリヌクレオチドは、ネイキッド核酸として、材料、例えば、リポソーム、ナノ粒子、またはポロキサマーと複合体化された核酸として導入することができ、またはウイルス(例えば、アデノウイルス、AAV、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、およびインテグラーゼ欠陥レンチウイルス(IDLV))によって送達することができる。
【0584】
いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、例えば、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)に由来するベクターなどの組換え感染性ウイルス粒子を使用して、細胞中に移入され得る。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、組換えレンチウイルスベクターまたはレトロウイルスベクター、例えばガンマ-レトロウイルスベクター(例えば、Koste et al. (2014) Gene Therapy 2014 Apr 3. doi: 10.1038/gt.2014.25;Carlens et al. (2000) Exp Hematol 28(10): 1137-46;Alonso-Camino et al. (2013) Mol Ther Nucl Acids 2, e93;Park et al., Trends Biotechnol. 2011 November 29(11): 550-557を参照されたい、またはHIV-1由来レンチウイルスベクターを使用して、T細胞中に移入される。
【0585】
他の局面では、鋳型ポリヌクレオチドは、ウイルス性および/または非ウイルス性遺伝子移入方法によって送達される。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、アデノ随伴ウイルス(AAV)を介して細胞に送達される。限定されないが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、およびそれらの組み合わせを含めて、任意のAAVベクターを使用することができる。ある場合には、AAVは、カプシド血清型と比較して異種血清型であるLTR(例えば、AAV5、AAV6、またはAAV8カプシドを有するAAV2 ITR)を含む。鋳型ポリヌクレオチドは、ヌクレアーゼを送達するために使用されるものと同じ遺伝子移入システム(同じベクター上を含める)を使用して送達することができ、またはヌクレアーゼに使用される異なる送達システムを使用して送達することができる。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドはウイルスベクター(例えば、AAV)を使用して送達され、ヌクレアーゼはmRNA形態で送達される。細胞は、(例えば、ヌクレアーゼおよび/または鋳型ポリヌクレオチドを保有する)ウイルスベクターの送達より前に、該送達と同時に、および/または該送達の後に、本明細書において記載される細胞表面レセプターへのウイルスベクターの結合を阻害する1つまたは複数の分子で処理することもできる。
【0586】
いくつかの態様では、レトロウイルスベクター、例えば、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)、骨髄増殖性肉腫ウイルス(MPSV)、マウス胚性幹細胞ウイルス(MESV)、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)、または脾フォーカス形成ウイルス(SFFV)に由来する組換えレトロウイルスベクターは、ロングターミナルリピート配列(LTR)を有する。大抵のレトロウイルスベクターはマウスレトロウイルスに由来する。いくつかの態様では、レトロウイルスとしては、任意の鳥類または哺乳動物細胞供給源に由来するものが挙げられる。レトロウイルスは典型的には広宿主性であり、これは、レトロウイルスが、ヒトを含めたいくつかの種の宿主細胞に感染することができることを意味する。一態様では、発現させられる遺伝子は、レトロウイルスのgag、pol、および/またはenv配列に取って代わる。いくつかの実例となるレトロウイルスシステムが記載されている(例えば、米国特許第5,219,740号;第6,207,453;第5,219,740;Miller and Rosman (1989) BioTechniques 7:980-990;Miller, A. D. (1990) Human Gene Therapy 1:5-14;Scarpa et al. (1991) Virology 180:849-852;Burns et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:8033-8037;およびBoris-Lawrie and Temin (1993) Cur. Opin. Genet. Develop. 3:102-109)。
【0587】
いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドはAAVベクターを使用して送達され、標的遺伝子破壊を誘導することができる作用物質、例えば、ヌクレアーゼおよび/またはgRNAは、異なる形態、例えば、ヌクレアーゼおよび/またはgRNAをコードするmRNAとして送達される。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドおよびヌクレアーゼは、同じタイプの方法、例えば、ウイルスベクターを使用して送達されるが、別々のベクター上にある。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、遺伝子破壊を誘導することができる作用物質、例えば、ヌクレアーゼおよび/またはgRNAと異なる送達システムで送達される。送達のためのタイプまたは核酸およびベクターとしては、本明細書のセクションIIIに記載されるもののいずれかが挙げられる。
【0588】
いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドおよびヌクレアーゼは、同じベクター、例えばAAVベクター(例えばAAV6)上にあってもよい。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、AAVベクターを使用して送達され、標的遺伝子破壊を誘導することができる作用物質、例えば、ヌクレアーゼおよび/またはgRNAは、異なる形態、例えば、ヌクレアーゼおよび/またはgRNAをコードするmRNAとして送達される。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドおよびヌクレアーゼは、同じタイプの方法、例えば、ウイルスベクターを使用して送達されるが、別々のベクター上にある。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、遺伝子破壊を誘導することができる作用物質、例えば、ヌクレアーゼおよび/またはgRNAと異なる送達システムで送達される。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、インビボでベクター骨格から切除され、例えば、これはgRNA認識配列に隣接している。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドはCas9およびgRNAと別々のポリヌクレオチド分子上にある。いくつかの態様では、Cas9およびgRNAはリボ核タンパク質(RNP)複合体の形態で導入され、鋳型ポリヌクレオチドは、例えばベクター中のポリヌクレオチド分子、または直鎖状核酸分子、例えば直鎖状DNAとして導入される。送達のためのタイプまたは核酸およびベクターとしては、本明細書のセクションIIに記載されるもののいずれかが挙げられる。
【0589】
いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、アデノウイルスベクター、例えばAAVベクター、例えば、AAVカプシド中にパッケージングされることが可能になる長さおよび配列のssDNA分子である。ベクターは、例えば5kb未満でもよく、カプシド中へのパッケージングを促進するITR配列を含んでもよい。ベクターは組み込み欠損性であってもよい。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、導入遺伝子および/または標的部位の両側に、約150~1000ヌクレオチドの相同性を含む。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、標的部位もしくは導入遺伝子の5'、標的部位もしくは導入遺伝子の3'、または標的部位もしくは導入遺伝子の5'と3'の両方に、約100、150、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、または2000ヌクレオチドを含む。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、標的部位もしくは導入遺伝子の5'、標的部位もしくは導入遺伝子の3'、または標的部位もしくは導入遺伝子の5'と3'の両方に、少なくとも100、150、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、または2000ヌクレオチドを含む。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、標的部位もしくは導入遺伝子の5'、標的部位もしくは導入遺伝子の3'、または標的部位もしくは導入遺伝子の5'と3'の両方に、最大で100、150、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、または2000ヌクレオチドを含む。
【0590】
いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、レンチウイルスベクター、例えばIDLV(組み込み欠損レンチウイルス)である。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、導入遺伝子および/または標的部位の両側に、約500~1000塩基対の相同性を含む。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、標的部位もしくは導入遺伝子の5'、標的部位もしくは導入遺伝子の3'、または標的部位もしくは導入遺伝子の5'と3'の両方に、約300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、または2000塩基対の相同性を含む。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、標的部位もしくは導入遺伝子の5'、標的部位もしくは導入遺伝子の3'、または標的部位もしくは導入遺伝子の5'と3'の両方に、少なくとも300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、または2000塩基対の相同性を含む。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、標的部位もしくは導入遺伝子の5'、標的部位もしくは導入遺伝子の3'、または標的部位もしくは導入遺伝子の5'と3'の両方に、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、または2000塩基対以下の相同性を含む。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、1つまたは複数の変異、例えば、Cas9が鋳型ポリヌクレオチドを認識し、これを開裂させることを防止するサイレント変異を含む。鋳型ポリヌクレオチドは、例えば、変化させられる細胞のゲノム中の対応する配列に対して、少なくとも1、2、3、4、5、10、20、または30個のサイレント変異を含むことができる。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、変化させられる細胞のゲノム中の対応する配列に対して、最大で2、3、4、5、10、20、30、または50個のサイレント変異を含む。いくつかの態様では、cDNAは、1つまたは複数の変異、例えば、Cas9が鋳型ポリヌクレオチドを認識し、これを開裂させることを防止するサイレント変異を含む。鋳型ポリヌクレオチドは、例えば、変化させられる細胞のゲノム中の対応する配列に対して、少なくとも1、2、3、4、5、10、20、または30個のサイレント変異を含むことができる。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、変化させられる細胞のゲノム中の対応する配列に対して、最大で2、3、4、5、10、20、30、または50個のサイレント変異を含む。
【0591】
本明細書において記載される二本鎖鋳型ポリヌクレオチドは、1つまたは複数の非天然塩基および/または骨格を含むことができる。特に、関心対象の領域において転写静止状態を達成するために、メチル化シトシンを有する鋳型ポリヌクレオチドの挿入を本明細書において記載される方法を使用して行うことができる。
【0592】
II. 核酸、ベクター、および送達
いくつかの態様では、ポリヌクレオチド、例えば、組換え受容体またはその一部分の1つまたは複数の鎖をコードする鋳型ポリヌクレオチドなどのポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドまたはベクターなどのヌクレオチド形態で細胞中に導入される。特定の態様では、ポリヌクレオチドは、組換え受容体またはその一部分をコードする導入遺伝子を含む。ある特定の態様では、遺伝子破壊のための1つもしくは複数の作用物質またはそれらの成分は、ポリヌクレオチドおよび/またはベクターなどの核酸形態で細胞中に導入される。いくつかの態様では、操作のための成分は、本明細書のセクションI.A.3および表4および5に記載される、作用物質の送達のために使用される任意の適切な方法を含めた、様々な送達方法を使用して、様々な形態で送達することができる。遺伝子破壊(例えば、本明細書のセクションI.Aに記載される任意のもの)を誘導することができる1つまたは複数の作用物質の1つまたは複数の成分をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチド(例えば核酸分子)も提供される。導入遺伝子を含む1つまたは複数の鋳型ポリヌクレオチド(例えば、本明細書のセクションI.B.2に記載される任意のもの)、および導入遺伝子、例えば、鋳型ポリヌクレオチドまたは遺伝子破壊を誘導することができる1つもしくは複数の作用物質の1つもしくは複数の成分をコードするポリヌクレオチドの標的組み込みのために細胞を遺伝子操作するためのベクターも提供される。
【0593】
いくつかの態様では、特定のゲノム標的場所、例えば、TGFBR2遺伝子座に導入遺伝子をターゲティングするための鋳型ポリヌクレオチドなどのポリヌクレオチドが提供される。いくつかの態様では、本明細書のセクションI.Bに記載される任意の鋳型ポリヌクレオチドが提供される。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、組換え受容体もしくはその一部分または他のポリペプチドおよび/もしくは因子をコードする核酸配列を含む導入遺伝子、ならびに標的組み込みのための相同性アームを含む。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドはベクター中に含まれ得る。
【0594】
いくつかの態様では、遺伝子破壊を誘導することができる作用物質は、1つまたは複数のポリヌクレオチド中にコードされ得る。いくつかの態様では、Cas9分子および/またはgRNA分子などの作用物質の成分は、1つまたは複数のポリヌクレオチド中にコードされ得、細胞中に導入され得る。いくつかの態様では、作用物質の1つまたは複数の成分をコードするポリヌクレオチドはベクター中に含まれ得る。
【0595】
いくつかの態様では、ベクターはCas9分子および/またはgRNA分子および/または鋳型ポリヌクレオチドをコードする配列を含むことができる。ベクターは、Cas9分子配列などに融合した(例えば、核局在化、核小体局在化、ミトコンドリア局在化のための)シグナルペプチドをコードする配列を含むこともできる。例えば、ベクターは、Cas9分子をコードする配列に融合した(例えば、SV40由来の)核局在化配列を含むことができる。いくつかの態様では、ポリヌクレオチド、例えば、セクションI.B.2に記載される鋳型ポリヌクレオチドに含まれる導入遺伝子配列の標的組み込みのために細胞を遺伝子操作するためのベクターが提供される。
【0596】
特定の態様では、1つまたは複数の制御/調節エレメント、例えば、プロモーター、エンハンサー、イントロン、ポリアデニル化シグナル、コザックコンセンサス配列、配列内リボソーム進入部位(IRES)、2A配列、およびスプライス受容またはドナーが、ベクター中に含まれ得る。いくつかの態様では、プロモーターは、RNA pol I、pol II、またはpol IIIプロモーターの中より選択される。いくつかの態様では、プロモーターは、RNAポリメラーゼIIによって認識される(例えば、CMV、SV40初期領域、またはアデノウイルス主要後期プロモーター)。別の態様では、プロモーターは、RNAポリメラーゼIIIによって認識される(例えば、U6またはH1プロモーター)。
【0597】
ある特定の態様では、プロモーターは、制御型プロモーター(例えば、誘導性プロモーター)である。いくつかの態様では、プロモーターは、誘導性プロモーターまたは抑制性プロモーターである。いくつかの態様では、プロモーターは、Lacオペレーター配列、テトラサイクリンオペレーター配列、ガラクトースオペレーター配列、またはドキシサイクリンオペレーター配列を含むか、あるいはこれらの類似体であるか、あるいはLacリプレッサーもしくはテトラサイクリンリプレッサー、もしくはこれらの類似体が結合することができるか、またはこれらによって認識され得る。
【0598】
いくつかの態様では、プロモーターは構成的プロモーターであるか、または該プロモーターを含む。例示的な構成的プロモーターとしては、例えば、シミアンウイルス40初期プロモーター(SV40)、サイトメガロウイルス最初期プロモーター(CMV)、ヒトユビキチンCプロモーター(UBC)、ヒト伸長因子1αプロモーター(EF1α)、マウスホスホグリセリン酸キナーゼ1プロモーター(PGK)、およびCMV初期エンハンサーと結合したニワトリβ-アクチンプロモーター(CAGG)が挙げられる。いくつかの態様では、構成的プロモーターは、合成または改変型プロモーターである。いくつかの態様では、プロモーターは、MNDプロモーター、すなわち、骨髄増殖性肉腫ウイルスエンハンサーを有する改変型MoMuLV LTRのU3領域を含む合成プロモーター(SEQ ID NO:186に記載される配列;Challita et al. (1995) J. Virol. 69(2):748-755を参照されたい)であるか、または該プロモーターを含む。いくつかの態様では、プロモーターは組織特異的プロモーターである。別の態様では、プロモーターはウイルス性プロモーターである。別の態様では、プロモーターは非ウイルス性プロモーターである。いくつかの態様では、例示的なプロモーターとしては、限定されないが、ヒト伸長因子1アルファ(EF1α)プロモーター(例えば、SEQ ID NO:77もしくは118に記載のもの)またはこれらの改変形態(HTLV1エンハンサーを有するEF1αプロモーター;例えば、SEQ ID NO:119に記載のもの)またはMNDプロモーター(例えば、SEQ ID NO:186に記載のもの)を挙げることができる。いくつかの態様では、ポリヌクレオチドおよび/またはベクターは制御エレメント、例えば、プロモーターを含まない。
【0599】
特定の態様では、ポリヌクレオチド、例えば、組換え受容体またはその一部分をコードするポリヌクレオチドは、ヌクレオチド形態で、例えば、非ウイルスベクターとして、または非ウイルスベクター内で細胞中に導入される。いくつかの態様では、ポリヌクレオチドはDNAまたはRNAポリヌクレオチドである。いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは二本鎖または一本鎖ポリヌクレオチドである。いくつかの態様では、非ウイルスベクターは、遺伝子送達のための任意の適切なおよび/または公知の非ウイルス性方法、例えば、限定されないが、マイクロインジェクション、電気穿孔、(例えば、Lee, et al. (2012) Nano Lett 12: 6322-27に記載される)一過的な細胞の圧縮もしくは圧搾、脂質媒介性トランスフェクション、ペプチド媒介性送達、またはこれらの組み合わせによる形質導入および/またはトランスフェクションに適したポリヌクレオチド、例えば、DNAまたはRNAポリヌクレオチドであるか、あるいは該ポリヌクレオチドを含む。いくつかの態様では、非ウイルス性ポリヌクレオチドは、本明細書において記載される非ウイルス性方法、例えば、表5に列挙される非ウイルス性方法によって、細胞中に送達される。
【0600】
いくつかの態様において、ベクターまたは送達媒体は、(例えば、組換えウイルスの生成のための)ウイルスベクターである。いくつかの態様において、ウイルスは、DNAウイルス(例えば、dsDNAウイルスまたはssDNAウイルス)である。いくつかの態様において、ウイルスは、RNAウイルス(例えば、ssRNAウイルス)である。例示的なウイルスベクター/ウイルスには、例えば、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、および単純ヘルペスウイルス、または本明細書中の他の箇所に記載されたウイルスのうちの任意のものが含まれる。
【0601】
いくつかの態様において、ウイルスは、分裂細胞に感染させる。別の態様において、ウイルスは、非分裂細胞に感染させる。別の態様において、ウイルスは、分裂細胞および非分裂細胞の両方に感染させる。別の態様において、ウイルスは、宿主ゲノムに組み込まれ得る。別の態様において、ウイルスは、例えば、ヒトにおいて、低下した免疫を有するよう操作されている。別の態様において、ウイルスは、複製可能である。別の態様において、ウイルスは、複製欠陥型であり、例えば、付加的なビリオン複製および/またはパッケージングのために必要な遺伝子の1つまたは複数のコード領域が、他の遺伝子に交換されているか、または欠失している。別の態様において、ウイルスは、遺伝子破壊の一過性の誘導のため、Cas9分子および/またはgRNA分子の一過性発現を引き起こす。別の態様において、ウイルスは、Cas9分子および/またはgRNA分子の長期持続的な、例えば、少なくとも1週間、2週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、1年、2年、または永久の発現を引き起こす。ウイルスのパッケージング能力は、例えば、少なくとも約4kbから、少なくとも約30kb、例えば、少なくとも約5kb、10kb、15kb、20kb、25kb、30kb、35kb、40kb、45kb、または50kbまで、変動し得る。
【0602】
いくつかの態様において、作用物質を含有するポリヌクレオチドおよび/または鋳型ポリヌクレオチドは、組換えレトロウイルスによって送達される。別の態様において、レトロウイルス(例えば、モロニーマウス白血病ウイルス)は、例えば、宿主ゲノムへの組み込みを可能にする逆転写酵素を含む。いくつかの態様において、レトロウイルスは、複製可能である。別の態様において、レトロウイルスは、複製欠陥型であり、例えば、付加的なビリオン複製およびパッケージングのために必要な遺伝子の1つまたは複数のコード領域が、他の遺伝子に交換されているか、または欠失している。
【0603】
いくつかの態様において、作用物質を含有するポリヌクレオチドおよび/または鋳型ポリヌクレオチドは、組換えレンチウイルスによって送達される。例えば、レンチウイルスは、複製欠陥型であり、例えば、ウイルス複製のために必要とされる1つまたは複数の遺伝子を含まない。
【0604】
いくつかの態様において、作用物質を含有するポリヌクレオチドおよび/または鋳型ポリヌクレオチドは、組換えアデノウイルスによって送達される。別の態様において、アデノウイルスは、ヒトにおいて低下した免疫を有するよう操作されている。
【0605】
いくつかの態様において、作用物質を含有するポリヌクレオチドおよび/または鋳型ポリヌクレオチドは、組換えAAVによって送達される。いくつかの態様において、AAVは、宿主細胞、例えば、本明細書中に記載される標的細胞のゲノムへそのゲノムを組み入れることができる。別の態様において、AAVは、自己相補的アデノ随伴ウイルス(scAAV)、例えば、二本鎖DNAを形成するために共にアニールする両方の鎖をパッケージングするscAAVである。開示された方法において使用され得るAAV血清型には、AAV1、AAV2、改変型AAV2(例えば、Y444F、Y500F、Y730F、および/またはS662Vの改変)、AAV3、改変型AAV3(例えば、Y705F、Y731F、および/またはT492Vの改変)、AAV4、AAV5、AAV6、改変型AAV6(例えば、S663Vおよび/またはT492Vの改変)、AAV7、AAV8、AAV8.2、AAV9、AAV.rh10、改変型AAV.rh10、AAV.rh32/33、改変型AAV.rh32/33、AAV.rh43、改変型AAV.rh43、AAV.rh64R1、改変型AAV.rh64R1が含まれ、AAV2/8、AAV2/5、およびAAV2/6のようなシュードタイピングされた(pseudotyped)AAVも、開示された方法において使用され得る。
【0606】
いくつかの態様において、作用物質を含有するポリヌクレオチドおよび/または鋳型ポリヌクレオチドは、ハイブリッドウイルス、例えば、本明細書中に記載されたウイルスのうちの1つまたは複数のハイブリッドによって送達される。
【0607】
パッケージング細胞は、標的細胞に感染させることができるウイルス粒子を形成させるために使用される。そのような細胞には、アデノウイルスをパッケージングすることができる293細胞、およびレトロウイルスをパッケージングすることができるψ2細胞またはPA317細胞が含まれる。遺伝子治療において使用されるウイルスベクターは、一般的には、核酸ベクターをウイルス粒子にパッケージングする産生細胞株によって生成される。ベクターは、典型的には、宿主細胞または標的細胞(適用可能な場合)へのパッケージングおよびその後の組み込みのために必要とされる最小のウイルス配列を含有し、その他のウイルス配列は、発現させたいタンパク質、例えば、Cas9をコードする発現カセットに交換されている。例えば、遺伝子治療において使用されるAAVベクターは、典型的には、宿主細胞または標的細胞におけるパッケージングおよび遺伝子発現のために必要とされるAAVゲノム由来の末端逆位配列(ITR)のみを保有する。欠けているウイルス機能は、パッケージング細胞株によってトランスに供給される。その後、ウイルスDNAは、その他のAAV遺伝子、即ち、repおよびcapをコードするが、ITR配列を欠いているヘルパープラスミドを含有する細胞株においてパッケージングされる。細胞株には、ヘルパーとしてのアデノウイルスも感染させる。ヘルパーウイルスは、AAVベクターの複製およびヘルパープラスミドからのAAV遺伝子の発現を促進する。ヘルパープラスミドは、ITR配列の欠如のため、有意な量、パッケージングされない。アデノウイルスの混入は、例えば、アデノウイルスがAAVより感受性である熱処理によって低下させることができる。
【0608】
いくつかの態様において、ウイルスベクターは、細胞型認識の能力を有する。例えば、ウイルスベクターは、異なる/別のウイルスエンベロープ糖タンパク質によってシュードタイピングされてもよく;細胞型特異的な受容体によって操作されてもよく(例えば、ペプチドリガンド、単鎖抗体、増殖因子のようなターゲティングリガンドを組み入れるためのウイルスエンベロープ糖タンパク質の遺伝子改変);かつ/または一方の末端がウイルス糖タンパク質を認識し、他方の末端が標的細胞表面の一部分を認識する二重の特異性(例えば、リガンド-受容体、モノクローナル抗体、アビジン-ビオチン、および化学的コンジュゲーション)を有する分子ブリッジを有するよう操作されてもよい。
【0609】
いくつかの態様において、ウイルスベクターは、細胞型特異的発現を達成する。例えば、遺伝子破壊を導入することができる作用物質(例えば、Cas9およびgRNA)の発現を特定の標的細胞のみに制限するために、組織特異的プロモーターが構築されてよい。ベクターの特異性は、発現のマイクロRNA依存性の調節によっても媒介され得る。いくつかの態様において、ウイルスベクターは、ウイルスベクターと標的細胞膜との融合の増加した効率を有する。例えば、融合可能な赤血球凝集素(HA)のような融合タンパク質を、細胞へのウイルス取り込みを増加させるために組み入れることができる。いくつかの態様において、ウイルスベクターは、核局在の能力を有する。例えば、(細胞分裂中の)核膜の分解を必要とし、従って、非分裂細胞に感染しないウイルスを、ウイルスのマトリックスタンパク質に核局在ペプチドを組み入れるために改変し、それによって、非増殖細胞の形質導入を可能にすることができる。
【0610】
III. 組換え受容体を発現する操作された細胞および細胞組成物
核酸配列、例えば、組換え受容体、例えばキメラ抗原受容体(CAR)またはその一部分の1つまたは複数の鎖をコードする導入遺伝子を含む改変TGFBR2遺伝子座を含む遺伝子操作された細胞が、本明細書において提供される。いくつかの局面では、遺伝子操作された細胞中の改変TGFBR2遺伝子座は、内在性TGFBR2遺伝子座に組み込まれた、組換え受容体またはその一部分の1つまたは複数の鎖をコードする外来性核酸配列(例えば、導入遺伝子配列)を含む。いくつかの局面では、提供される操作された細胞は本明細書において記載される方法を使用して生成され、この方法は、例えば、遺伝子破壊を誘導するための作用物質(例えば、セクションI.Aに記載されている)、および修復のための導入遺伝子配列を含む鋳型ポリヌクレオチド(例えば、セクションI.Bに記載されている)を用いることよる相同性依存的修復(HDR)を含む。いくつかの局面では、核酸配列、例えば、組換え受容体またはその一部分をコードする導入遺伝子を含む改変TGFBR2遺伝子座を含む細胞を作出するために、ある部分、例えば、提供されるポリヌクレオチド、例えば、セクションI.Bに記載される任意の鋳型ポリヌクレオチドの隣接したセグメントが、内在性TGFBR2遺伝子座における組み込みのためにターゲティングされ得る。いくつかの態様では、HDRによって内在性TGFBR2遺伝子座に組み込まれる、鋳型ポリヌクレオチドの部分は、鋳型ポリヌクレオチドの導入遺伝子配列部分、例えば、本明細書において、例えばセクションI.Bに記載される任意のものを含む。
【0611】
いくつかの局面では、細胞は、組換え受容体、例えばCARまたは組換えT細胞受容体(TCR)を発現するように操作される。いくつかの局面では、組換え受容体は、操作された細胞の改変TGFBR2遺伝子座に存在する核酸配列にコードされる。いくつかの局面では、細胞は、HDRを介して、組換え受容体の全部または一部分をコードする導入遺伝子配列を組み込むことによって作出される。いくつかの態様では、組換え受容体は、リガンドまたは抗原、例えば、疾患または障害と関連する抗原に結合するか、またはこれらを認識する結合ドメインを含む。
【0612】
いくつかの局面では、操作された細胞は免疫細胞、例えばT細胞である。いくつかの局面では、免疫細胞は、組換え受容体、例えばキメラ抗原受容体または改変組換え受容体、例えば、本明細書において記載される任意のものを発現するように操作される。
【0613】
いくつかの態様では、本明細書において提供される方法、組成物、製造品、および/またはキットは、改変TGFBR2遺伝子座を有するかまたは含む、遺伝子操作された細胞、例えば、遺伝子操作された免疫細胞および/またはT細胞を作出する、製造する、または生成するのに有用である。特定の態様では、本明細書において提供される方法は、改変TGFBR2遺伝子座を有するかまたは含む、遺伝子操作された細胞をもたらす。いくつかの態様では、改変遺伝子座は、内在性TGFBR2遺伝子のオープンリーディングフレームに組み込まれた導入遺伝子配列、例えば、セクションI.Bに記載される導入遺伝子配列であるか、または該導入遺伝子配列を含む。ある特定の態様では、導入遺伝子は、内在性TGFBR2遺伝子のオープンリーディングフレームにインフレームで挿入され、これにより、部分的TGFBRIIポリペプチドおよび組換え受容体またはその一部分をコードする改変TGFBR2遺伝子座がもたらされる。いくつかの態様では、改変遺伝子座にコードされる部分的TGFBRIIポリペプチドはドミナントネガティブ型のTGFBRIIポリペプチドである。いくつかの態様では、組換え受容体はキメラ抗原受容体(CAR)である。いくつかの局面では、組換え受容体は組換えT細胞受容体(TCR)である。
【0614】
場合によっては、細胞は、1つまたは複数のさらなる分子、例えば、さらなる因子および/またはアクセサリー分子、例えば、本明細書において記載される治療的分子を含めて、任意のさらなる分子を発現するように操作される。いくつかの態様では、さらなる分子としては、マーカー、さらなる組換え受容体ポリペプチド鎖、抗体もしくはその抗原結合断片、免疫調節分子、リガンド、サイトカイン、またはケモカインを挙げることができる。いくつかの態様では、さらなる因子は可溶性分子である。いくつかの態様では、さらなる因子は膜結合分子である。いくつかの局面では、さらなる因子は、免疫抑制環境、例えば腫瘍微小環境(TME)の影響に打ち勝つかまたは対抗するために使用することができる。いくつかの局面では、例示的なさらなる分子としては、サイトカイン、サイトカイン受容体、キメラ共刺激性受容体、共刺激性リガンド、およびT細胞の機能または活性の他のモジュレーターが挙げられる。いくつかの態様では、操作された細胞が発現するさらなる分子としては、IL-7、IL-12、IL-15、CD40リガンド(CD40L)、および4-1BBリガンド(4-1BBL)が挙げられる。いくつかの局面では、さらなる分子は、さらなる受容体、例えば、異なる分子に結合する膜結受容体である。例えば、いくつかの態様では、さらなる分子はサイトカイン受容体またはケモカイン受容体、例えば、IL-4受容体またはCCL2受容体である。場合によっては、操作された細胞は、「強化(armored)CAR」または普遍的サイトカイン死滅に必要とされるT細胞(T cells redirected for universal cytokine killing)(TRUCK)と呼ばれる。
【0615】
複数の操作された細胞を含む組成物も提供される。いくつかの局面では、操作された細胞を含む組成物は、他の操作方法、例えば、組換え受容体が細胞のゲノム中にランダムに導入される方法を使用して作出された細胞または細胞組成物と比較して、向上した、均一な、均質な、および/または安定した発現および/または組換え受容体による抗原結合を示す。いくつかの態様では、操作された細胞または操作された細胞を含む組成物は、療法、例えば、養子細胞療法で使用することができる。いくつかの態様では、提供される細胞または細胞組成物は、本明細書において記載される治療の方法のいずれかで、または本明細書において記載される治療的使用のために使用することができる。
【0616】
A. 改変TGFBR2遺伝子座
いくつかの局面では、改変TGFBR2遺伝子座を含む遺伝子操作された細胞が提供される。いくつかの態様では、改変TGFBR2遺伝子座は、組換え受容体またはその一部分をコードする核酸配列を含む。いくつかの態様では、核酸配列は、組換え受容体またはその一部分の1つまたは複数の鎖をコードする導入遺伝子配列を含み、導入遺伝子配列は、任意で相同性指向修復(HDR)を介して、内在性TGFBR2遺伝子座に組み込まれている。いくつかの局面では、改変TGFBR2遺伝子座は、本明細書おいて、例えばセクションIII.Bに記載されている組換え受容体、もしくはその一部分、例えば、そのドメインもしくは領域、または本明細書において記載される多鎖組換え受容体の1つもしくは複数の鎖のいずれか1つまたは複数をコードすることができる。
【0617】
いくつかの局面では、改変TGFBR2遺伝子座は、遺伝子破壊、および例えばHDR方法を介した組換え受容体またはその一部分をコードするヌクレオチドの配列を含む導入遺伝子配列(例えば、外来性または異種の核酸配列)の組み込みの結果として作出される。いくつかの局面では、改変TGFBR2遺伝子座に存在する核酸配列は、完全長TGFBRIIをコードするオープンリーディングフレームを通常は含むであろう内在性TGFBR2遺伝子座の領域に組み込まれた導入遺伝子配列、例えば外来性配列を含む。いくつかの局面では、HDRによる導入遺伝子の標的組み込みの際に、細胞のゲノムは、組換え受容体またはその一部分をコードする核酸配列を含み、かつ完全長TGFBRIIをコードする内在性ゲノムの全部または少なくとも一部分を欠く、改変TGFBR2遺伝子座を含む。いくつかの態様では、標的組み込みの際に、改変TGFBR2遺伝子座は、内在性TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレーム内の部位に組み込まれた導入遺伝子を含み、その結果、組換え受容体が操作された細胞から発現し、場合によっては、TGFBRIIの一部分、例えば、部分的またはトランケートされたTGFBRIIも発現する。
【0618】
いくつかの態様では、導入遺伝子配列の組み込みの際に、TGFBR2遺伝子座の内在性配列は、遺伝子破壊、例えば、1つもしくは複数のアミノ酸をコードする核酸配列の欠失および/または終止コドンを導入する変異を含む。いくつかの態様では、導入遺伝子配列の組み込みの際に、TGFBR2遺伝子座の内在性配列は機能的TGFBRIIポリペプチドをコードしない。いくつかの態様では、導入遺伝子配列の組み込みの際に、TGFBR2遺伝子座の内在性配列は部分的TGFBRIIポリペプチドまたはトランケートされたTGFBRIIポリペプチドをコードする。いくつかの態様では、TGFBR2遺伝子座の内在性配列にコードされる部分的またはトランケートされたTGFBRIIポリペプチドは、ドミナントネガティブ(DN)型のTGFBRIIポリペプチドである。いくつかの局面では、ドミナントネガティブ型のTGFBR2は、細胞で発現する場合に、TGFβ受容体複合体によるシグナルトランスダクションを阻害する、低減させる、または妨げることができる、TGFBR2のバリアントを含む。いくつかの局面では、例示的なドミナントネガティブ型のTGFBRIIとしては、トランケートされたTGFBRII、例えば、細胞質内ドメインの全部または一部分を欠くTGFBRIIが挙げられる。いくつかの態様では、ドミナントネガティブTGFBRIIとしては、例えば、Wieser et al., (1993) Mol. Cell Biol. 13(12): 7239-7247;Brand et al., (1995) JBC 270: 8274-8284;Bottinger et al., (1997) EMBO J 16(10): 2621-2633;Shah et al., (2002) Cancer Res 62:7135-7138;Bollard et al. (2002) Gene Therapy 99(9): 3179-87;およびZhang et al., (2013) Gene Therapy 20: 575-580;およびPang et al. (2013) Cancer Discov. 3(8): 936-951に記載されるものが挙げられる。
【0619】
いくつかの態様では、改変遺伝子座から転写されるmRNAは、内在性TGFBR2遺伝子座にコードされる、および/または内在性TGFBR2遺伝子座から転写されるmRNAの3'UTRと同一である3'UTRを含む。いくつかの態様では、導入遺伝子は、CARの一部分をコードする核酸の配列の上流、例えば、直ぐ上流にリボソームスキッピングエレメントを含む。いくつかの態様では、CARをコードするmRNAは、内在性TGFBR2遺伝子座にコードされる、および/または内在性TGFBR2遺伝子座から転写されるmRNAの5'UTRと同一である5'UTRを含む。
【0620】
いくつかの局面では、例示的なドミナントネガティブ型のTGFBRIIとしては、例えば、SEQ ID NO:59に記載される、ヒトTGFBRII前駆体配列のアミノ酸残基188~567(アイソフォーム1)、またはSEQ ID NO:60に記載される、ヒトTGFBRII前駆体配列のアミノ酸残基213~592(アイソフォーム2)を含めて、TGFBR2の細胞内領域における1つまたは複数のアミノ酸残基、任意で1つまたは複数の連続したアミノ酸残基の欠失を含むTGFBRIIが挙げられる。いくつかの局面では、例示的なドミナントネガティブ型のTGFBRIIとしては、SEQ ID NO:59に記載されるアミノ酸配列の残基22~191に対応するアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:60に記載されるアミノ酸配列の残基22~216に対応するアミノ酸配列、またはこれらもしくはこれらの断片に対して、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を示す配列が挙げられる。
【0621】
ある特定の態様では、導入遺伝子は組換え受容体をコードし、内在性TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレーム内にインフレームで挿入される。特定の態様では、改変遺伝子座の転写は、組換え受容体、例えばCARをコードするmRNAをもたらす。いくつかの局面では、内在性TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレーム中に存在する核酸配列は、部分的またはトランケートされたTGFBRIIポリペプチド、例えば、ドミナントネガティブ型のTGFBRIIをコードすることができる。いくつかの態様では、導入遺伝子は、内在性TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームの1つまたは複数のエクソン直ぐ下流に、該エクソンとインフレームで標的部位に組み込まれる。いくつかの態様では、導入遺伝子配列は、(例えば、本明細書において表1および2に記載される)内在性TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームのエクソン1、2、3または4の下流かつエクソン6、7または8の上流に組み込まれるか、または挿入される。いくつかの態様では、導入遺伝子配列は、(例えば、本明細書において表1および2に記載される)内在性TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームのエクソン1、2、3または4の下流かつエクソン6の上流に組み込まれるか、または挿入される。いくつかの態様では、導入遺伝子配列は、内在性TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームのエクソン1の下流かつエクソン6の上流にある。いくつかの態様では、導入遺伝子配列は、内在性TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームのエクソン3の下流かつエクソン5上流にある。いくつかの態様では、導入遺伝子配列は、内在性TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームのエクソン4の下流かつエクソン6の上流にある。
【0622】
いくつかの態様では、改変TGFBR2遺伝子座からコードされる組換え受容体はCARである。いくつかの態様では、改変TGFBR2遺伝子座にコードされるCARは、標的抗原に結合する、および/または標的抗原に結合することができる。いくつかの態様では、標的抗原は、ある疾患、障害、もしくは状態と関連する細胞もしくは組織に関連している、それに特異的である、および/またはその上に発現している。いくつかの態様では、CARは、例えば、CD3ゼータ(CD3ζ)鎖の細胞内シグナル伝達ドメインもしくは領域またはそれらの機能的バリアントもしくはシグナル伝達部分を介して、T細胞、T細胞受容体(TCR)成分のシグナル伝達ドメイン、および/または免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)を含むシグナル伝達ドメインにおいて、一次活性化シグナルを刺激および/または誘導することができる。
【0623】
いくつかの態様では、改変TGFBR2遺伝子座からコードされる組換え受容体は組換えTCRである。いくつかの局面では、組換えTCRは、2つのポリペプチド鎖、例えば、TCRアルファ(TCRα)およびTCRベータ(TCRβ)鎖;またはTCRガンマ(TCRγ)およびTCRデルタ(TCRδ)鎖を含む。いくつかの局面では、改変TGFBR2遺伝子座は組換えTCRの1つまたは複数の鎖をコードする。いくつかの態様では、改変TGFBR2遺伝子座はTCRαをコードする。いくつかの態様では、改変TGFBR2遺伝子座はTCRβをコードする。いくつかの態様では、改変TGFBR2遺伝子座は、任意で2Aエレメントなどのマルチシストロン性エレメントによって分離された、TCRαおよびTCRβをコードする。
【0624】
B. コードされる組換え受容体
いくつかの態様では、例えば本明細書において記載される改変TGFBR2遺伝子座で操作された細胞、または本明細書において提供される方法に従って作出された操作された細胞にコードされる組換え受容体としては、キメラ抗原受容体(CAR)もしくはその一部分、または組換えT細胞受容体(TCR)もしくはその一部分が挙げられる。組換え受容体の中には、キメラ受容体、抗原受容体、およびキメラ受容体または抗原受容体の1つまたは複数の成分を含む受容体がある。組換え受容体としては、リガンド結合ドメインまたはその結合断片および細胞内シグナル伝達ドメインまたは領域を含むものを挙げることができる。いくつかの態様では、操作された細胞にコードされる組換え受容体としては、機能的な非TCR抗原受容体、キメラ抗原受容体(CAR)、キメラ自己抗体受容体(CAAR)、組換えT細胞受容体(TCR)、および前述のもののいずれかの領域、鎖、ドメインまたは成分が挙げられる。いくつかの局面では、組換え受容体またはその一部分は、本明細書において提供されるポリヌクレオチド、例えば、上記のセクションI.B.2に記載される任意の鋳型ポリヌクレオチド中に存在する導入遺伝子配列にコードされる。いくつかの局面では、ポリヌクレオチド中に含まれる組換え受容体またはその一部分をコードする導入遺伝子配列は、操作された細胞の内在性TGFBR2遺伝子座に組み込まれて、組換え受容体またはその一部分、例えば、多鎖組換え受容体の1つまたは複数のポリペプチド鎖を含めて、本明細書において記載される任意の組換え受容体をコードする改変TGFBR2遺伝子座をもたらす。
【0625】
いくつかの態様では、操作された細胞が発現する例示的な組換え受容体としては、場合によっては、異なる成分、ドメインまたは領域を含む、2つ以上の受容体ポリペプチドを含む多鎖受容体が挙げられる。いくつかの局面では、組換え受容体は、機能的組換え受容体を一緒に構成する2つ以上のポリペプチドを含む。いくつかの局面では、多鎖受容体は、機能的組換え受容体を一緒に構成する2つのポリペプチドを含む二鎖受容体である。いくつかの態様では、組換え受容体は、2つの異なる受容体ポリペプチド、例えば、TCRアルファ(TCRα)およびTCRベータ(TCRβ)鎖;またはTCRガンマ(TCRγ)およびTCRデルタ(TCRδ)鎖を含むTCRである。いくつかの態様では、組換え受容体は、ポリペプチドの1つまたは複数が別の受容体ポリペプチドの発現、活性、または機能を制御する、改変する、または調節する多鎖受容体である。いくつかの局面では、多鎖受容体は、受容体の特異性、活性、抗原(またはリガンド)結合、機能および/または発現の空間的または時間的制御または調節を可能にする。
【0626】
いくつかの態様では、本明細書において提供される遺伝子操作された細胞中にコードされる組換え受容体は、膜貫通ドメインまたは膜結合ドメインを含む。いくつかの局面では、組換え受容体は細胞外領域も含む。いくつかの局面では、組換え受容体は細胞内領域も含む。いくつかの態様では、本明細書において提供される遺伝子操作された細胞中にコードされる組換え受容体は、様々な領域またはドメイン、例えば、(例えば、1つまたは複数の細胞外結合ドメインおよび/またはスペーサーを含む)細胞外領域、膜貫通ドメイン、ならびに(例えば、細胞内シグナル伝達領域および/または1つもしくは複数の共刺激シグナル伝達ドメインを含む)細胞内領域の1つまたは複数を含む。いくつかの局面では、コードされる組換え受容体は、他のドメイン、例えば、多量体化ドメイン、リンカーおよび/または制御エレメントをさらに含む。
【0627】
いくつかの態様では、例示的なコードされる組換え受容体は、そのN末端からC末端の順番で、以下のものを含む:膜貫通ドメイン(または膜結合ドメイン)および細胞内領域。いくつかの態様では、例示的なコードされる組換え受容体は、そのN末端からC末端の順番で、以下のものを含む:細胞外領域、膜貫通ドメイン、および細胞内領域。いくつかの態様では、細胞外領域は、細胞外結合ドメインであるか、または該ドメインを含み、いくつかの局面では、コードされる組換え受容体は、そのN末端からC末端の順番で、以下のものを含む:細胞外結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内領域。場合によっては、細胞外領域、例えば細胞外結合ドメインと膜貫通ドメインの間を分離するか、または細胞外領域、例えば細胞外結合ドメインと膜貫通ドメインの間に配置されるスペーサー。いくつかの態様では、コードされる組換え受容体は、そのN末端からC末端の順番で、以下のものを含む:細胞外結合ドメイン、スペーサー、膜貫通ドメイン、および細胞内領域。いくつかの態様では、組換え受容体中に存在する細胞内シグナル伝達領域は、免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)および/または1つもしくは複数の共刺激シグナル伝達ドメイン、例えば、1つ、2つ、もしくは3つの共刺激シグナル伝達ドメインを含む。
【0628】
いくつかの態様では、組換え受容体は多量体化ドメインを含み、いくつかの局面では、このドメインは、それらの多鎖ポリペプチドの形成を生じさせることができる。いくつかの態様では、例示的なコードされる組換え受容体は、そのN末端からC末端の順番で、以下のものを含む:膜貫通ドメイン(または膜結合ドメイン)、細胞内多量体化ドメイン、任意で1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメイン、および細胞内シグナル伝達領域。いくつかの態様では、例示的な組換え受容体ポリペプチドは、そのN末端からC末端の順番で、以下のものを含む:細胞外多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、任意で1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメイン、および細胞内シグナル伝達領域。
【0629】
いくつかの態様では、コードされる組換え受容体はキメラ受容体、例えばCARである。例示的なコードされるCAR配列は以下のものを含む:細胞外結合ドメイン、スペーサー、膜貫通ドメイン、ならびに一次シグナル伝達ドメインまたは領域および1つまたは複数の共刺激性シグナル伝達ドメインを含む細胞内領域。いくつかの態様では、例示的なコードされるCAR配列は以下のものを含む:細胞外結合ドメイン、スペーサー、膜貫通ドメイン、ならびに1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメインおよび一次シグナル伝達ドメインまたは領域。
【0630】
いくつかの態様では、例示的なコードされるポリペプチド、例えば多鎖CARのポリペプチド鎖の配列は以下のものを含む:膜貫通ドメイン(または膜結合ドメイン)、細胞内多量体化ドメイン、任意で1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメイン、および一次シグナル伝達ドメインまたは領域。いくつかの態様では、例示的なコードされるポリペプチド、例えば多鎖CARのポリペプチド鎖の配列は以下のものを含む:細胞外多量体化ドメイン、膜貫通ドメイン、任意で1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメイン、および一次シグナル伝達ドメインまたは領域。
【0631】
いくつかの態様では、例示的なコードされるCAR配列は、順番に、細胞外結合ドメイン、任意でscFv;ヒト免疫グロブリンヒンジ由来の、任意で、IgG1、IgG2、もしくはIgG4、またはこれらの改変バージョン由来の配列を任意で含み、CH2領域および/またはCH3領域を任意でさらに含む、スペーサー;ならびに任意でヒトCD28由来の、膜貫通ドメイン;任意でヒト4-1BB由来の、共刺激シグナル伝達ドメイン;ならびに細胞内シグナル伝達領域、任意でCD3ζ鎖またはその一部分、をコードするヌクレオチドの配列を含む。いくつかの態様では、組換え受容体のコードされる細胞内領域は、そのN末端からC末端の順番で、以下のものを含む:1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメイン、および例えばCD3ゼータ鎖またはその断片を含む一次シグナル伝達ドメインまたは領域。
【0632】
いくつかの態様では、コードされる組換え受容体は組換えTCRであり、例示的なコードされるTCRは、TCRα鎖またはTCRβ鎖または両方を含む。いくつかの態様では、例示的なコードされるポリペプチド、例えば、組換え受容体のポリペプチドは、TCRα鎖の全部または一部分を含む。いくつかの態様では、例示的なコードされるポリペプチド、例えば、組換え受容体のポリペプチドは、TCRβ鎖の全部または一部分を含む。いくつかの局面では、例示的なコードされる組換え受容体は、TCRα鎖およびTCRβ鎖を含む組換えTCRである。
【0633】
1. キメラ抗原受容体(CAR)
いくつかの態様では、改変TGFBR2遺伝子座にコードされる組換え受容体はキメラ抗原受容体(CAR)である。いくつかの態様では、操作された細胞、例えばT細胞は、特定の抗原(または、マーカーもしくはリガンド)、例えば、特定の細胞型の表面で発現している抗原に特異性を有する組換え受容体、例えばCARを発現する。いくつかの局面では、多鎖または制御可能なCARを含めて、本明細書において記載されるCARのいずれかの少なくとも一部分は、導入遺伝子配列中にコードされる。いくつかの局面では、本明細書において記載されるCARまたはその一部分をコードする導入遺伝子配列は、セクションI.B.2に記載される任意のものであり得る。いくつかの局面では、HDRを介した導入遺伝子配列の組み込みの際に、生じた改変TGFBR2遺伝子座は、多鎖または制御可能なCARを含めて、CAR、例えば、本明細書において記載される任意のCARをコードする核酸配列を含む。
【0634】
いくつかの態様では、改変TGFBR2遺伝子座にコードされる組換え受容体、例えばCARは、(例えば、1つもしくは複数の細胞外結合ドメインおよび/もしくはスペーサーを含む)細胞外領域、膜貫通ドメイン、ならびに/あるいは(例えば、一次シグナル伝達領域もしくはドメインおよび/または1つもしくは複数の共刺激シグナル伝達ドメインを含む)細胞内領域の1つまたは複数を含む。いくつかの局面では、コードされる組換え受容体は、他のドメイン、例えば、多量体化ドメインをさらに含む。いくつかの局面では、改変TGFBR2遺伝子座は、リンカーおよび/または制御エレメントをコードする配列を含む。いくつかの態様では、コードされる組換え受容体は、そのN末端からC末端の順番で、以下のものを含む:細胞外結合ドメイン、膜貫通ドメイン、ならびに例えば、一次シグナル伝達領域もしくはドメインまたはそれらの一部分および/あるいは共刺激シグナル伝達ドメインを含む細胞内領域。いくつかの態様では、コードされる組換え受容体は、そのN末端からC末端の順番で、以下のものを含む:細胞外結合ドメイン、スペーサー、膜貫通ドメイン、ならびに例えば、一次シグナル伝達領域もしくはドメインまたはそれらの一部分および/あるいは共刺激シグナル伝達ドメインを含む細胞内領域。
【0635】
a. 結合ドメイン
いくつかの態様では、コードされる組換え受容体の細胞外領域は結合ドメインを含む。いくつかの態様では、結合ドメインは細胞外結合ドメインである。いくつかの態様では、結合ドメインは、ポリペプチド、リガンド、受容体、リガンド結合ドメイン、受容体結合ドメイン、抗原、エピトープ、抗体、抗原結合ドメイン、エピトープ結合ドメイン、抗体結合ドメイン、タグ結合ドメイン、もしくは前述のもののいずれかの断片であるか、またはこれらを含む。いくつかの態様では、結合ドメインはリガンド結合または抗原結合ドメインである。
【0636】
いくつかの局面では、細胞外結合ドメイン、例えば、リガンド(例えば抗原)結合領域またはドメインと細胞内領域またはドメインは、1つまたは複数のリンカーおよび/または膜貫通ドメインを介して連結または接続される。いくつかの態様では、キメラ抗原受容体は、細胞外領域と細胞内領域の間に配置された膜貫通ドメインを含む。
【0637】
いくつかの態様では、抗原、例えば、組換え受容体の結合ドメインに結合する抗原はポリペプチドである。いくつかの態様では、抗原は炭水化物または他の分子である。いくつかの態様では、抗原は、例えば、健常な細胞または組織中の正常なまたは非標的の細胞または組織と比較して、疾患、障害、または状態の細胞、例えば、腫瘍または病原性細胞上で選択的に発現しているか、または過剰発現している。いくつかの態様では、疾患、障害、または状態は、感染疾患もしくは障害、自己免疫疾患、炎症性疾患、または腫瘍もしくはがんである。いくつかの態様では、抗原は正常細胞上で発現している、および/または操作された細胞上で発現している。いくつかの局面では、組換え受容体、例えばCARは、細胞外リガンド(例えば抗原)結合または領域またはドメイン、例えば、本明細書において記載される抗体または断片のいずれか、および細胞内領域より選択される、1つまたは複数の領域またはドメインを含む。いくつかの態様では、リガンド(例えば抗原)結合領域またはドメインは、scFvもしくは単一ドメインVH抗体であるか、またはこれらを含み、細胞内領域は、免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)を含む細胞内シグナル伝達領域またはドメインを含む。
【0638】
CARを含めた例示的なコードされる組換え受容体としては、例えば、国際特許出願公開第WO2000/14257号、第WO2013/126726号、第WO2012/129514号、第WO2014/031687号、第WO2013/166321号、第WO2013/071154号、第WO2013/123061号、米国特許出願公開第US2002131960号、第US2013287748号、第US20130149337号、米国特許第6,451,995号、第7,446,190号、第8,252,592号、第8,339,645号、第8,398,282号、第7,446,179号、第6,410,319号、第7,070,995号、第7,265,209号、第7,354,762号、第7,446,191号、第8,324,353、および第8,479,118号、ならびに欧州特許出願第EP2537416号に記載されるもの、ならびに/またはSadelain et al., Cancer Discov. 2013 April; 3(4): 388-398;Davila et al. (2013) PLoS ONE 8(4): e61338;Turtle et al., Curr. Opin. Immunol., 2012 October; 24(5): 633-39;およびWu et al., Cancer, 2012 March 18(2): 160-75によって記載されるものが挙げられる。いくつかの局面では、抗原受容体としては、米国特許第7,446,190号に記載されるCAR、および国際特許出願公開第WO2014/055668号に記載されるものが挙げられる。CARの例としては、前述の参考文献、例えば、WO2014/031687、US8,339,645、US7,446,179、US2013/0149337、US7,446,190、US8,389,282、Kochenderfer et al., 2013, Nature Reviews Clinical Oncology, 10, 267-276 (2013);Wang et al. (2012) J. Immunother. 35(9): 689-701;およびBrentjens et al., Sci Transl Med. 2013 5(177)のいずれかで開示されるCARが挙げられる。
【0639】
いくつかの態様では、コードされる組換え受容体、例えば抗原受容体は、細胞外結合ドメイン、例えば、抗原、リガンド、および/またはマーカーに結合する、例えば特異的に結合する、抗原またはリガンド結合ドメインを含む。抗原受容体の中には、機能的な非TCR抗原受容体、例えばキメラ抗原受容体(CAR)がある。いくつかの態様では、抗原受容体は、抗原に特異的に結合する細胞外抗原認識ドメインを含むCARである。いくつかの態様では、CARは、特定の抗原、マーカーまたはリガンド、例えば、養子療法によって標的とされる特定の細胞型で発現している抗原、例えばがんマーカー、および/または応答を弱めることを誘導することを目的としている抗原、例えば、正常もしくは非病的細胞型で発現している抗原に特異性を持って構築される。したがって、CARは、典型的には、その細胞外部分に、1つまたは複数のリガンド(例えば抗原)結合分子、例えば、1つもしくは複数の抗原結合断片、ドメインもしくは部分、または1つもしくは複数の抗体可変ドメイン、および/または抗体分子を含む。いくつかの態様では、CARは、抗体分子の1つまたは複数の抗原結合部分、例えば、モノクローナル抗体(mAb)の可変重(VH)鎖および可変軽(VL)鎖に由来する単鎖抗体断片(scFv)、または単一ドメイン抗体(sdAb)、例えば、sdFv、ナノボディ、VHH、およびVNARを含む。いくつかの態様では、抗原結合断片は、可動性リンカーによって結合した抗体可変領域を含む。
【0640】
いくつかの態様では、コードされるCARは、細胞の表面上で発現している抗原またはリガンド、例えば、インタクトな抗原を特異的に認識する抗体または抗原結合断片(例えば、scFv)を含む。いくつかの態様では、抗原またはリガンドは、細胞の表面上で発現しているタンパク質である。いくつかの態様では、抗原またはリガンドはポリペプチドである。いくつかの態様では、これは炭水化物または他の分子である。いくつかの態様では、抗原またはリガンドは、正常なまたは非標的の細胞または組織と比較して、疾患または状態の細胞、例えば、腫瘍または病原性細胞上で選択的に発現しているか、または過剰発現している。他の態様では、抗原は正常細胞上で発現している、および/または操作された細胞上で発現している。
【0641】
いくつかの態様では、組換え受容体によって標的とされる抗原の中には、養子細胞療法によって標的とされる疾患、状態、または細胞型において発現しているものがある。疾患および状態の中には、増殖性、新生物性、および悪性の疾患および障害、例えば、がんおよび腫瘍、例えば、血液悪性腫瘍、免疫系のがん、例えば、リンパ腫、白血病、および/または骨髄腫、例えば、B、T、および骨髄性白血病、リンパ腫、ならびに多発性骨髄腫がある。
【0642】
いくつかの態様では、抗原またはリガンドは腫瘍抗原またはがんマーカーである。いくつかの態様では、疾患または障害と関連する抗原は、αvβ6インテグリン(avb6インテグリン)、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3、B7-H6、炭酸脱水酵素9(CA9;CAIXまたはG250としても知られている)、がん精巣抗原、がん/精巣抗原1B(CTAG;NY-ESO-1およびLAGE-2としても知られている)、癌胎児性抗原(CEA)、サイクリン、サイクリンA2、C-Cモチーフケモカインリガンド1(CCL-1)、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD123、CD133、CD138、CD171、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4)、上皮成長因子タンパク質(EGFR)、III型上皮成長因子受容体変異(EGFR vIII)、上皮糖タンパク質2(EPG-2)、上皮糖タンパク質40(EPG-40)、エフリンB2、エフリン受容体A2(EPHa2)、エストロゲン受容体、Fc受容体様5(FCRL5;Fc受容体ホモログ5またはFCRH5としても知られている)、胎児型アセチルコリン受容体(胎児型AchR)、葉酸結合タンパク質(FBP)、葉酸受容体アルファ、ガングリオシドGD2、O-アセチル化GD2(OGD2)、ガングリオシドGD3、糖タンパク質100(gp100)、グリピカン-3(GPC3)、Gタンパク質共役受容体クラスCグループ5メンバーD(GPRC5D)、Her2/neu(受容体チロシンキナーゼerb-B2)、Her3(erb-B3)、Her4(erb-B4)、erbB二量体、ヒト高分子量-黒色腫関連抗原(HMW-MAA)、B型肝炎表面抗原、ヒト白血球抗原A1(HLA-A1)、ヒト白血球抗原A2(HLA-A2)、IL-22受容体アルファ(IL-22Rα)、IL-13受容体アルファ2(IL-13Rα2)、キナーゼインサートドメイン受容体(kdr)、カッパ軽鎖、L1細胞接着分子(L1-CAM)、L1-CAMのCE7エピトープ、ロイシンリッチリピート含有8ファミリーメンバーA(LRRC8A)、Lewis Y、黒色腫関連抗原(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A6、MAGE-A10、メソテリン(MSLN)、c-Met、マウスサイトメガロウイルス(CMV)、ムチン1(MUC1)、MUC16、ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D)リガンド、メランA(MART-1)、神経細胞接着分子(NCAM)、腫瘍胎児抗原、黒色腫優先発現抗原(PRAME)、プロゲステロン受容体、前立腺特異的抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、サバイビン、栄養膜糖タンパク質(TPBG;5T4としても知られている)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、チロシナーゼ関連タンパク質1(TRP1;TYRP1またはgp75としても知られている)、チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP2;ドパクロムトートメラーゼ、ドパクロムデルタイソメラーゼ、またはDCTとしても知られている)、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)、血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR2)、ウィルムス腫瘍1(WT-1)、病原体特異的もしくは病原体発現抗原、またはユニバーサルタグと関連する抗原、および/またはビオチン化分子、および/またはHIV、HCV、HBVもしくは他の病原体によって発現される分子であるか、あるいはこれらを含む。いくつかの態様において受容体によって標的とされる抗原としては、B細胞悪性病変と関連する抗原、多数の公知のB細胞マーカーのいずれかが挙げられる。いくつかの態様では、抗原は、CD20、CD19、CD22、ROR1、CD45、CD21、CD5、CD33、Igカッパ、Igラムダ、CD79a、CD79b、もしくはCD30であるか、またはこれらを含む。
【0643】
いくつかの態様では、抗原は、病原体特異的もしくは病原体発現抗原であるか、またはこれらを含む。いくつかの態様では、抗原はウイルス抗原(例えば、HIV、HCV、HBVなどからのウイルス抗原)、細菌性抗原、および/または寄生虫抗原である。
【0644】
いくつかの態様では、抗体または抗原結合断片(例えば、scFvまたはVHドメイン)は、抗原、例えばCD19を特異的に認識する。いくつかの態様では、抗体または抗原結合断片はCD19に特異的に結合する抗体もしくは抗原結合断片に由来するか、または該抗体もしくは抗原結合断片のバリアントである。
【0645】
いくつかの態様では、scFvはFMC63に由来する。FMC63は、一般に、ヒト起源のCD19を発現するNalm-1およびNalm-16細胞に対して産生させられたマウスモノクローナルIgG1抗体を指す(Ling, N. R., et al. (1987). Leucocyte typing III. 302)。いくつかの態様では、FMC63抗体は、それぞれSEQ ID NO:38および39に記載されるCDR-H1およびCDR-H2、およびSEQ ID NO:40または54に記載されるCDR-H3;ならびにSEQ ID NO:35に記載されるCDR-L1およびSEQ ID NO:36または55に記載されるCDR-L2およびSEQ ID NO:37または56に記載されるCDR-L3を含む。いくつかの態様では、FMC63抗体は、SEQ ID NO:41のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)およびSEQ ID NO:42のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0646】
いくつかの態様では、scFvは、SEQ ID NO:35のCDR-L1配列、SEQ ID NO:36のCDR-L2配列、およびSEQ ID NO:37のCDR-L3配列を含む可変軽鎖、ならびに/またはSEQ ID NO:38のCDR-H1配列、SEQ ID NO:39のCDR-H2配列、およびSEQ ID NO:40のCDR-H3配列を含む可変重鎖を含む。いくつかの態様では、scFvは、SEQ ID NO:41に記載される可変重鎖領域およびSEQ ID NO:42に記載される可変軽鎖領域を含む。いくつかの態様では、可変重鎖と可変軽鎖はリンカーによって接続されている。いくつかの態様では、リンカーはSEQ ID NO:58に記載される。いくつかの態様では、scFvは、順番に、VH、リンカー、およびVLを含む。いくつかの態様では、scFvは、順番に、VL、リンカー、およびVHを含む。いくつかの態様では、scFvは、SEQ ID NO:57に記載されるヌクレオチドの配列に、またはSEQ ID NO:57に対して、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を示す配列にコードされる。いくつかの態様では、scFvは、SEQ ID NO:43に記載されるアミノ酸の配列、またはSEQ ID NO:43に対して、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を示す配列を含む。
【0647】
いくつかの態様では、scFvはSJ25C1に由来する。SJ25C1は、ヒト起源のCD19を発現するNalm-1およびNalm-16細胞に対して産生させられたマウスモノクローナルIgG1抗体である(Ling, N. R., et al. (1987). Leucocyte typing III. 302)。いくつかの態様では、SJ25C1抗体は、それぞれSEQ ID NO:47~49に記載されるCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3配列、ならびにそれぞれSEQ ID NO:44~46に記載されるCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3配列を含む。いくつかの態様では、SJ25C1抗体は、SEQ ID NO:50のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)およびSEQ ID NO:51のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0648】
いくつかの態様では、scFvは、SEQ ID NO:44のCDR-L1配列、SEQ ID NO:45のCDR-L2配列、およびSEQ ID NO:46のCDR-L3配列を含む可変軽鎖、ならびに/またはSEQ ID NO:47のCDR-H1配列、SEQ ID NO:48のCDR-H2配列、およびSEQ ID NO:49のCDR-H3配列を含む可変重鎖を含む。いくつかの態様では、scFvは、SEQ ID NO:50に記載される可変重鎖領域およびSEQ ID NO:51に記載される可変軽鎖領域を含む。いくつかの態様では、可変重鎖と可変軽鎖はリンカーによって接続されている。いくつかの態様では、リンカーはSEQ ID NO:52に記載される。いくつかの態様では、scFvは、順番に、VH、リンカー、およびVLを含む。いくつかの態様では、scFvは、順番に、VL、リンカー、およびVHを含む。いくつかの態様では、scFvは、SEQ ID NO:53に記載されるアミノ酸の配列、またはSEQ ID NO:53に対して、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を示す配列を含む。
【0649】
いくつかの態様では、抗原はCD20である。いくつかの態様では、scFvは、CD20に特異的な抗体または抗体断片に由来するVHおよびVLを含む。いくつかの態様では、CD20に結合する抗体または抗体断片は、リツキシマブであるか、またはリツキシマブに由来する抗体、例えばリツキシマブscFvである。
【0650】
いくつかの態様では、抗原はCD22である。いくつかの態様では、scFvは、CD22に特異的な抗体または抗体断片に由来するVHおよびVLを含む。いくつかの態様では、CD22に結合する抗体または抗体断片は、m971であるか、またはm971に由来する抗体、例えばm971 scFvである。
【0651】
いくつかの態様では、抗原はBCMAである。いくつかの態様では、scFvは、BCMAに特異的な抗体または抗体断片に由来するVHおよびVLを含む。いくつかの態様では、BCMAに結合する抗体または抗体断片は、国際特許出願公開第WO2016/090327号および第WO2016/090320号に記載される抗体または抗体断片に由来するVHおよびVLであるか、または該VHおよびVLを含む。
【0652】
いくつかの態様では、抗原はGPRC5Dである。いくつかの態様では、scFvは、GPRC5Dに特異的な抗体または抗体断片に由来するVHおよびVLを含む。いくつかの態様では、GPRC5Dに結合する抗体または抗体断片は、国際特許出願公開第WO2016/090329号および第WO2016/090312号に記載される抗体または抗体断片に由来するVHおよびVLであるか、または該VHおよびVLを含む。
【0653】
いくつかの局面では、コードされるCARは、ユニバーサルタグまたはユニバーサルエピトープに結合するかまたはこれらを認識する、例えば、これらに特異的に結合するリガンド(例えば抗原)結合ドメインを含む。いくつかの局面では、結合ドメインは、疾患または障害と関連する抗原を認識する異なる結合分子(例えば、抗体または抗原結合断片)に連結され得る分子、タグ、ポリペプチド、および/またはエピトープに結合することができる。例示的なタグまたはエピトープとしては、色素(例えば、フルオレセインイソチオシアネート)またはビオチンが挙げられる。いくつかの局面では、タグに対して特異的なCARを発現する操作された細胞で、疾患または障害と関連する抗原、例えば腫瘍抗原を認識して、操作された細胞の細胞傷害性または他のエフェクター機能をもたらす、タグに連結された結合分子(例えば、抗体または抗原結合断片)。いくつかの局面では、疾患または障害と関連する抗原に対するCARの特異性はタグ化結合分子(例えば抗体)によって提供され、異なるタグ化結合分子は、異なる抗原を標的とするために使用することができる。ユニバーサルタグまたはユニバーサルエピトープに対して特異的な例示的なCARとしては、例えば、U.S.9,233,125、WO2016/030414、Urbanska et al., (2012) Cancer Res 72: 1844-1852、およびTamada et al., (2012) Clin Cancer Res 18:6436-6445に記載されるものが挙げられる。
【0654】
いくつかの態様では、コードされるCARは、主要組織適合抗原複合体(MHC)-ペプチド複合体として細胞表面に提示される腫瘍関連抗原などの細胞内抗原を特異的に認識する抗体または抗原結合断片(例えば、scFv)のようなTCR様抗体を含む。いくつかの態様では、MHC-ペプチド複合体を認識する抗体またはその抗原結合部分は、組換え受容体、例えば抗原受容体の一部として細胞上で発現され得る。抗原受容体の中には、機能的な非T細胞受容体(TCR)抗原受容体、例えばキメラ抗原受容体(CAR)がある。いくつかの態様では、ペプチド-MHC複合体に対してTCR様の特異性を示す抗体または抗原結合断片を含むCARは、TCR様CARと称することもできる。いくつかの態様では、CARはTCR様CARであり、抗原はプロセッシングを受けたペプチド抗原、例えば細胞内タンパク質のペプチド抗原であり、これは、MHC分子の状況で、TCRのように、細胞表面上で認識される。いくつかの態様では、TCR様CARのMHC-ペプチド複合体に対して特異的な細胞外抗原結合ドメインは、いくつかの局面では、リンカーおよび/または膜貫通ドメインを介して、1つまたは複数の細胞内シグナル伝達成分に連結される。いくつかの態様では、そのような分子は、典型的には、天然の抗原受容体、例えばTCRを通したシグナル、および任意で、共刺激受容体と組み合わさったそのような受容体を通したシグナルを模倣するか、またはこうしたシグナルに近似することができる。
【0655】
いくつかの態様では、主要組織適合抗原複合体(MHC)は、場合によっては、細胞機構によってプロセッシングを受けたペプチド抗原を含めて、ポリペプチドのペプチド抗原と複合体化することができる多形性ペプチド結合部位または結合溝を含むタンパク質、一般に糖タンパク質を含む。場合によっては、MHC分子は、T細胞上の抗原受容体、例えば、TCRまたはTCR様抗体によって認識可能なコンフォメーションでの抗原の提示のために、例えばペプチドとの複合体、すなわちMHC-ペプチド複合体として、細胞表面上で提示または発現され得る。一般に、MHCクラスI分子は、場合によっては3つのαドメインを有する膜貫通α鎖、および非共有結合的に結合したβ2ミクログロブリンを有するヘテロ二量体である。一般に、MHCクラスII分子は2つの膜貫通糖タンパク質、αおよびβから構成され、これらの両方とも典型的には膜を貫通する。MHC分子は、ペプチドと結合するための1つまたは複数の抗原結合部位および適切な抗原受容体による認識に必要な配列を含む、MHCの有効部分を含むことができる。いくつかの態様では、MHCクラスI分子は、サイトゾルで生じたペプチドを細胞表面に送達し、ここで、MHC-ペプチド複合体はT細胞、例えば、通常CD8+T細胞であるが、場合によってはCD4+T細胞によって認識される。いくつかの態様では、MHCクラスII分子は小胞系で生じたペプチドを細胞表面に送達し、ここで、これは、典型的にはCD4+T細胞によって認識される。一般に、MHC分子は、マウスでH-2およびヒトでヒト白血球抗原(HLA)と総称される一群の連結した遺伝子座にコードされる。したがって、典型的には、ヒトMHCはヒト白血球抗原(HLA)と称することもできる。
【0656】
用語「MHC-ペプチド複合体」または「ペプチド-MHC複合体」またはこれらの変形は、例えば、一般に、MHC分子の結合溝またはクレフトにおけるペプチドの非共有結合相互作用による、ペプチド抗原とMHC分子の複合体または結合物を指す。いくつかの態様では、MHC-ペプチド複合体は、細胞の表面上に存在するか、または提示される。いくつかの態様では、MHC-ペプチド複合体は、抗原受容体、例えば、TCR、TCR様CAR、またはそれらの抗原結合部分によって特異的に認識され得る。
【0657】
いくつかの態様では、ポリペプチドのペプチド、例えば、ペプチド抗原またはエピトープは、例えば抗原受容体による認識のために、MHC分子と結合することができる。一般に、ペプチドは、より長い生物学的分子、例えば、ポリペプチドまたはタンパク質の断片に由来するか、または基づく。いくつかの態様では、ペプチドは、典型的には約8~約24アミノ酸の長さである。いくつかの態様では、ペプチドは、MHCクラスII複合体における認識のために、9または約9~22アミノ酸の長さを有する。いくつかの態様では、ペプチドは、MHCクラスI複合体における認識のために、8または約8~13アミノ酸の長さを有する。いくつかの態様では、MHC-ペプチド複合体などのMHC分子に関連したペプチドの認識の際に、抗原受容体、例えば、TCRまたはTCR様CARは、T細胞応答、例えば、T細胞増殖、サイトカイン産生、細胞傷害性T細胞応答、または他の応答を誘導するT細胞に対する活性化シグナルを生成するか、または誘発する。
【0658】
いくつかの態様では、TCR様抗体または抗原結合部分は公知であるか、または公知の方法によって生成することができる(例えば、米国特許出願公開第US2002/0150914号;第US2003/0223994号;第US2004/0191260号;第US2006/0034850号;第US2007/00992530号;第US20090226474号;第US20090304679号;および国際出願公開第WO03/068201号を参照されたい)。
【0659】
いくつかの態様では、MHC-ペプチド複合体に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分は、特定のMHC-ペプチド複合体を含む有効量の免疫原で宿主を免疫することによって生成することができる。場合によっては、MHC-ペプチド複合体のペプチドは、MHC、例えば腫瘍抗原、例えばユニバーサル腫瘍抗原、骨髄腫抗原、または本明細書において記載される他の抗原に結合することができる抗原のエピトープである。いくつかの態様では、有効量の免疫原は、次いで、免疫応答を惹起するために宿主に投与され、免疫原は、MHC分子の結合溝におけるペプチドの3次元的提示に対して免疫応答を惹起するのに十分である期間にわたって、その3次元形態を保持する。次いで、宿主から収集された血清をアッセイして、MHC分子の結合溝におけるペプチドの3次元的提示を認識する望ましい抗体が生成されているかどうかを決定する。いくつかの態様では、生成された抗体を評価して、抗体がMHC-ペプチド複合体をMHC分子単独、関心対象のペプチド単独、およびMHCと不適切なペプチドの複合体と区別することができることを確認することができる。次いで、望ましい抗体を単離することができる。
【0660】
いくつかの態様では、MHC-ペプチド複合体に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分は、抗体ライブラリーディスプレイ方法、例えばファージ抗体ライブラリーを用いて生成することができる。いくつかの態様では、変異型Fab、scFv、または他の抗体形態のファージディスプレイライブラリーを作出することができ、例えば、これは、ライブラリーのメンバーが1つまたは複数のCDRの1つまたは複数の残基において変異を受けている。例えば、米国特許出願公開第US20020150914号、第US20140294841号;およびCohen CJ. et al. (2003) J Mol. Recogn. 16:324-332を参照されたい。
【0661】
本明細書における用語「抗体」は最も広い意味において使用され、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体、例えば、インタクト抗体および機能的(抗原結合)抗体断片、例えば、断片抗原結合(fragment antigen binding)(Fab)断片、F(ab')2断片、Fab'断片、Fv断片、組換えIgG(rIgG)断片、特異的抗原に結合することができる可変重鎖(VH)領域、単鎖抗体断片、例えば単鎖可変断片(scFv)、および単一ドメイン抗体(例えば、sdAb、sdFv、ナノボディ、VHHまたはVNAR)または断片を含む。本用語は、免疫グロブリンの遺伝子操作されたおよび/または別の方法で改変された形態、例えば、イントラボディ、ペプチボディ、キメラ抗体、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、およびヘテロコンジュゲート抗体、多特異性、例えば二重特異性抗体、ダイアボディ、トリアボディ、およびテトラボディ、タンデムジ-scFv、タンデムトリ-scFvを包含する。別段の記載がない限り、用語「抗体」は、その機能的抗体断片を包含すると理解されるべきである。本用語は、インタクトなまたは完全長の抗体、例えば、IgGおよびそのサブクラス、IgM、IgE、IgA、およびIgDを含めて、任意のクラスまたはサブクラスの抗体も包含する。いくつかの局面では、CARは、例えば特異性が異なる2つの抗原結合ドメインを含む、二重特異性CARである。
【0662】
いくつかの態様では、抗原結合タンパク質、抗体、およびそれらの抗原結合断片は、完全長抗体の抗原を特異的に認識する。いくつかの態様では、抗体の重鎖および軽鎖は完全長でもよく、または抗原結合部分(Fab、F(ab')2、Fv、もしくは単鎖Fv断片(scFv))でもよい。他の態様では、抗体の重鎖定常領域は、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgD、およびIgEから選ばれ、特に、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4から選ばれ、より詳細には、IgG1(例えばヒトIgG1)である。いくつかの態様では、抗体の軽鎖定常領域は、例えば、カッパまたはラムダから選ばれ、特にカッパである。
【0663】
コードされる組換え受容体の結合ドメインの中には、抗体断片がある。「抗体断片」は、インタクト抗体以外の分子であって、インタクト抗体のうちの、インタクト抗体が結合する抗原に結合する部分を含む分子を指す。抗体断片の例としては、限定されないが、Fv、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2;ダイアボディ;直鎖抗体;可変重鎖(VH)領域、単鎖抗体分子、例えば、scFvおよび単一ドメインVH単一抗体;ならびに抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられる。特定の態様では、抗体は、可変重鎖領域および/または可変軽鎖領域を含む単鎖抗体断片、例えばscFvである。
【0664】
用語「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗原への抗体の結合に関与する、抗体の重鎖または軽鎖のドメインを指す。ネイティブ抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメイン(それぞれ、VHおよびVL)は、一般に類似した構造を有し、各ドメインは、4つの保存されたフレームワーク領域(FR)および3つのCDRを含む(例えば、Kindt et al. Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., page 91 (2007)を参照されたい。単一のVHまたはVLドメインは、抗原結合特異性を与えるのに十分であり得る。さらに、特定の抗原に結合する抗体は、該抗原に結合する抗体由来のVHまたはVLドメインを使用して、それぞれ相補的なVLまたはVHドメインのライブラリーをスクリーニングすることで、単離することができる。例えば、Portolano et al., J. Immunol. 150:880-887 (1993);Clarkson et al., Nature 352:624-628 (1991)を参照されたい。
【0665】
単一ドメイン抗体(sdAb)は、抗体の重鎖可変ドメインの全部もしくは一部分または軽鎖可変ドメインの全部または一部分を含む抗体断片である。ある特定の態様では、単一ドメイン抗体はヒト単一ドメイン抗体である。いくつかの態様では、CARは、抗原、例えば、標的とされる細胞または疾患、例えば、腫瘍細胞またはがん細胞のがんマーカーまたは細胞表面抗原、例えば、本明細書において記載されるかまたは公知の標的抗原のいずれかに特異的に結合する抗体重鎖ドメインを含む。例示的な単一ドメイン抗体としては、sdFv、ナノボディ、VHHまたはVNARが挙げられる。
【0666】
抗体断片は、限定されないが、インタクト抗体のタンパク質消化および組換え宿主細胞による生成を含めて、様々な技法によって作製することができる。いくつかの態様では、抗体は、組換えで生成された断片、例えば、天然に存在しない配置を含む断片、例えば、合成リンカー、例えばペプチドリンカーによって結合した2つ以上の抗体領域もしくは鎖を有するもの、および/または天然に存在するインタクト抗体の酵素消化によって生成することができないものである。いくつかの態様では、抗体断片はscFvである。
【0667】
「ヒト化」抗体は、全部または実質的に全部のCDRアミノ酸残基が非ヒトCDRに由来し、全部または実質的に全部のFRアミノ酸残基がヒトFRに由来する抗体である。ヒト化抗体は、任意で、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部分を含むことができる。非ヒト抗体の「ヒト化形態」は、典型的にはヒトに対する免疫原性を低減させるようにヒト化されているが、親の非ヒト抗体の特異性および親和性を保持する、非ヒト抗体のバリアントを指す。いくつかの態様では、ヒト化抗体のいくつかのFR残基は、例えば、抗体の特異性または親和性を回復または向上させるために、非ヒト抗体(例えば、CDR残基が由来する抗体)の対応する残基で置換される。
【0668】
したがって、いくつかの態様では、TCR様CARを含めて、コードされるキメラ抗原受容体は、抗体または抗体断片を含む細胞外部分を含む。いくつかの態様では、抗体または断片はscFvを含む。いくつかの局面では、抗体または抗原結合断片は、ライブラリーなどの複数の抗原結合断片または分子をスクリーニングすることによって、例えば、特定の抗原またはリガンドへの結合についてscFvライブラリーをスクリーニングすることによって、得ることができる。
【0669】
いくつかの態様では、コードされるCARは多重特異性CARであり、例えば、複数の異なる抗原に結合することができる、および/または該抗原を認識することができる、例えば、該抗原に特異的に結合する、複数のリガンド(例えば抗原)結合ドメインを含む。いくつかの局面では、コードされるCARは、例えば特異性が異なる2つの抗原結合ドメインを含むことなどによって、2つの抗原を標的とする、二重特異性CARである。いくつかの態様では、CARは、例えば、本明細書において記載される列挙される抗原のいずれかより選択される標的細胞上の異なる表面抗原、例えば、CD19およびCD22またはCD19およびCD20に結合する少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む二重特異性結合ドメイン、例えば、二重特異性抗体またはその断片を含む。いくつかの態様では、二重特異性結合ドメインの、そのエピトープまたは抗原のそれぞれへの結合は、T細胞の機能、活性および/または応答、例えば、細胞傷害活性および引き続く標的細胞の溶解を刺激することができる。そのような例示的な二重特異性結合ドメインの中には、場合によっては、例えば可動性リンカーを介して互いに融合したタンデムscFv分子;タンデムダイアボディを含めた、ダイアボディおよびその誘導体(Holliger et al, Prot Eng 9, 299-305 (1996);Kipriyanov et al, J Mol Biol 293, 41-66 (1999));C末端ジスルフィド架橋でダイアボディ型式を含むことができる二重親和性再ターゲティング(dual affinity retargeting)(DART)分子;可動性リンカーによって融合したタンデムscFv分子を含む二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)分子(例えば、Nagorsen and Bauerle, Exp Cell Res 317, 1255-1260 (2011)を参照されたい;または全ハイブリッドマウス/ラットIgG分子を含むトリオマブ(Seimetz et al, Cancer Treat Rev 36, 458-467 (2010)が含まれ得る。そのような結合ドメインのいずれかが本明細書において記載されるCARのいずれかに含まれ得る。
【0670】
b. スペーサーおよび膜貫通ドメイン
いくつかの局面では、コードされる組換え受容体、例えばキメラ抗原受容体(CAR)は、1つまたは複数のリガンド(例えば抗原)結合ドメイン、例えば、抗体またはその断片を含む細胞外部分、および1つまたは複数の細胞内シグナル伝達領域またはドメイン(互換的に、細胞質内シグナル伝達ドメインまたは領域とも呼ばれる)を含む。いくつかの局面では、組換え受容体、例えばCARは、スペーサーおよび/または膜貫通ドメインもしくは部分をさらに含む。いくつかの局面では、スペーサーおよび/または膜貫通ドメインは、リガンド(例えば抗原)結合ドメインを含む細胞外部分と細胞内シグナル伝達領域またはドメインとを連結することができる。
【0671】
いくつかの態様では、CARなどのコードされる組換え受容体はさらにスペーサーを含み、これは、免疫グロブリン定常領域、またはそのバリアントもしくは改変バージョンの少なくとも一部分、例えばヒンジ領域、例えばIgG4ヒンジ領域、ならびに/またはCH1/CLおよび/もしくはFc領域であり得るか、これらを含むことができる。いくつかの態様では、組換え受容体は、スペーサーおよび/またはヒンジ領域をさらに含む。いくつかの態様では、定常領域または部分は、ヒトIgG、例えば、IgG4、IgG2、またはIgG1のものである。いくつかの局面では、定常領域の部分は、抗原認識成分、例えばscFvと膜貫通ドメインの間のスペーサー領域として働く。スペーサーは、スペーサーがない場合と比較して、抗原結合後に細胞の応答性の増加を提供する長さのものであり得る。いくつかの例では、スペーサーは12もしくは約12アミノ酸の長さであるか、または12アミノ酸以下の長さである。例示的なスペーサーとしては、少なくとも約10~229アミノ酸、約10~200アミノ酸、約10~175アミノ酸、約10~150アミノ酸、約10~125アミノ酸、約10~100アミノ酸、約10~75アミノ酸、約10~50アミノ酸、約10~40アミノ酸、約10~30アミノ酸、約10~20アミノ酸、または約10~15アミノ酸(列挙される範囲のいずれかの端点の間の任意の整数を含む)を有するものが挙げられる。いくつかの態様では、スペーサー領域は、約12アミノ酸もしくはそれ未満、約119アミノ酸もしくはそれ未満、または約229アミノ酸もしくはそれ未満を有する。いくつかの態様では、スペーサーは、250アミノ酸未満の長さ、200アミノ酸未満の長さ、150アミノ酸未満の長さ、100アミノ酸未満の長さ、75アミノ酸未満の長さ、50アミノ酸未満の長さ、25アミノ酸未満の長さ、20アミノ酸未満の長さ、15アミノ酸未満の長さ、12アミノ酸未満の長さ、または10アミノ酸未満の長さである。いくつかの態様では、スペーサーは、10または約10から、250アミノ酸の長さ、10~150アミノ酸の長さ、10~100アミノ酸の長さ、10~50アミノ酸の長さ、10~25アミノ酸の長さ、10~15アミノ酸の長さ、15~250アミノ酸の長さ、15~150アミノ酸の長さ、15~100アミノ酸の長さ、15~50アミノ酸の長さ、15~25アミノ酸の長さ、25~250アミノ酸の長さ、25~100アミノ酸の長さ、25~50アミノ酸の長さ、50~250アミノ酸の長さ、50~150アミノ酸の長さ、50~100アミノ酸の長さ、100~250アミノ酸の長さ、100~150アミノ酸の長さ、または150~250アミノ酸の長さである。例示的なスペーサーとしては、IgG4ヒンジ単独、CH2およびCH3ドメインに連結したIgG4ヒンジ、またはCH3ドメインに連結したIgG4ヒンジが挙げられる。例示的なスペーサーとしては、限定されないが、Hudecek et al. (2013) Clin. Cancer Res., 19:3153, Hudecek et al. (2015) Cancer Immunol Res. 3(2): 125-135または国際特許出願公開第WO2014031687号に記載されるものが挙げられる。
【0672】
いくつかの態様では、スペーサーは、全部または部分的に、IgG4および/またはIgG2に由来してもよい。いくつかの態様では、スペーサーは、IgG4、IgG2、ならびに/またはIgG2およびIgG4に由来するヒンジ、CH2、および/またはCH3配列の1つまたは複数を含むキメラポリペプチドであり得る。いくつかの態様では、スペーサーは変異、例えば、1つまたは複数のドメインにおける1つまたは複数の単一アミノ酸変異を含んでもよい。いくつかの例では、アミノ酸修飾はIgG4のヒンジ領域中のセリン(S)からプロリン(P)への置換である。いくつかの態様では、アミノ酸修飾は、グリコシル化の異種性を低減させるためのアスパラギン(N)からグルタミン(Q)への置換、例えば、SEQ ID NO:184に記載されるIgG4重鎖定常領域配列のCH2領域の位置177(Uniprot受託番号 P01861;EU番号付けによる位置297およびSEQ ID NO:4に記載されるヒンジ-CH2-CH3スペーサー配列の位置79に対応する位置)に対応する位置におけるNからQへの置換、またはSEQ ID NO:183に記載されるIgG2重鎖定常領域配列のCH2領域の位置176(Uniprot受託番号P01859;EU番号付けによる位置297に対応する位置)に対応する位置におけるNからQへの置換である。
【0673】
いくつかの局面では、スペーサーは、SEQ ID NO:1に記載され、SEQ ID NO:2に記載される配列にコードされるヒンジのみのスペーサーのように、IgGのヒンジ領域のみ、例えば、IgG4、IgG2、またはIgG1のヒンジのみを含む。他の態様では、スペーサーは、CH2および/またはCH3ドメインに連結されたIgヒンジ、例えばIgG4ヒンジである。いくつかの態様では、スペーサーは、SEQ ID NO:3に記載されるような、CH2およびCH3ドメインに連結されたIgヒンジ、例えばIgG4ヒンジである。いくつかの態様では、スペーサーは、SEQ ID NO:4に記載されるように、CH3ドメインのみに連結されたIgヒンジ、例えばIgG4ヒンジである。いくつかの態様では、スペーサーは、グリシン-セリンリッチ配列または他の可動性リンカー、例えば公知の可動性リンカーであるか、またはこれらを含む。いくつかの態様では、定常領域または部分はIgDのものである。いくつかの態様では、スペーサーはSEQ ID NO:5に記載される配列を有する。いくつかの態様では、スペーサーは、SEQ ID NO:1、3、4、および5のいずれかに対して、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上、または少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸の配列を有する。
【0674】
いくつかの局面では、スペーサーは、以下より選択される1つまたは複数などのポリペプチドスペーサーである:(a)免疫グロブリンヒンジもしくはその改変バージョンの全部もしくは一部分を含むか、またはこれらからなるか、あるいは約15アミノ酸またはそれ未満を含み、CD28細胞外領域もCD8細胞外領域も含まない、(b)免疫グロブリンヒンジ、任意でIgG4ヒンジ、もしくはこれらの改変バージョンの全部もしくは一部分を含むか、またはこれらからなる、および/あるいは約15アミノ酸またはそれ未満を含み、CD28細胞外領域もCD8細胞外領域も含まない、あるいは(c)12または約12アミノ酸の長さである、および/あるいは免疫グロブリンヒンジ、任意でIgG4、もしくはこれらの改変バージョンの全部もしくは一部分を含むか、またはこれらからなる;あるいは(d)SEQ ID NO:1、3~5、もしくは27~34に記載されるアミノ酸の配列、またはこれらに対して、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を有する前述のもののいずれかのバリアントからなるか、あるいはこれらを含む、あるいは(e)X1がグリシン、システイン、またはアルギニンであり、X2がシステインもしくはスレオニンである式X1PPX2Pを含むか、または該式からなる。
【0675】
例示的なスペーサーとしては、Igヒンジ、例えばIgGヒンジドメインを含むものなど、免疫グロブリン定常領域の一部分を含むものが挙げられる。いくつかの局面では、スペーサーは、IgGヒンジ単独、CH2およびCH3ドメインの1つまたは複数に連結されたIgGヒンジ、またはCH3ドメインに連結されたIgGヒンジを含む。いくつかの態様では、IgGヒンジ、CH2、および/またはCH3は、全部または部分的に、IgG4またはIgG2に由来してもよい。いくつかの態様では、スペーサーは、IgG4、IgG2、ならびに/またはIgG2およびIgG4に由来するヒンジ、CH2、および/またはCH3配列の1つまたは複数を含むキメラポリペプチドであり得る。いくつかの態様では、ヒンジ領域は、IgG4ヒンジ領域のおよび/もしくはIgG2ヒンジ領域の全部もしくは一部分を含み、IgG4ヒンジ領域は任意でヒトIgG4ヒンジ領域であり、IgG2ヒンジ領域は任意でヒトIgG2ヒンジ領域であり;CH2領域は、IgG4 CH2領域のおよび/もしくはIgG2 CH2領域の全部もしくは一部分を含み、IgG4 CH2領域は任意でヒトIgG4 CH2領域であり、IgG2 CH2領域は任意でヒトIgG2 CH2領域であり;ならびに/またはCH3領域は、IgG4 CH3領域のおよび/もしくはIgG2 CH3領域の全部もしくは一部分を含み、IgG4 CH3領域は任意でヒトIgG4 CH3領域であり、IgG2 CH3領域は任意でヒトIgG2 CH3領域である。いくつかの態様では、ヒンジ、CH2、およびCH3は、IgG4由来のヒンジ領域、CH2、およびCH3のそれぞれの全部または一部分を含む。いくつかの態様では、ヒンジ領域はキメラであり、ヒトIgG4およびヒトIgG2由来のヒンジ領域を含み;CH2領域はキメラであり、ヒトIgG4およびヒトIgG2由来のCH2領域を含み;ならびに/またはCH3領域はキメラであり、ヒトIgG4およびヒトIgG2由来のCH3領域を含む。いくつかの態様では、スペーサーは、IgG4/2キメラヒンジ、またはヒトIgG4ヒンジ領域と比較して少なくとも1つのアミノ酸置換を含む改変IgG4ヒンジ;ヒトIgG2/4キメラCH2領域;およびヒトIgG4 CH3領域を含む。
【0676】
いくつかの態様では、スペーサーは、全部または部分的に、IgG4および/またはIgG2に由来してもよく、変異、例えば、1つまたは複数のドメインにおける1つまたは複数の単一アミノ酸変異を含んでもよい。いくつかの例では、アミノ酸修飾はIgG4のヒンジ領域中のセリン(S)からプロリン(P)への置換である。いくつかの態様では、アミノ酸修飾は、グリコシル化の異種性を低減させるためのアスパラギン(N)からグルタミン(Q)への置換であり、例えば、SEQ ID NO:184に記載される完全長IgG4 Fc配列のCH2領域の位置177のN177Q 変異、またはSEQ ID NO:183に記載される完全長IgG2 Fc配列のCH2領域の位置176のN176Qである。いくつかの態様では、スペーサーは、IgG4/2キメラヒンジもしくは改変IgG4ヒンジ;IgG2/4キメラCH2領域;およびIgG4 CH3領域であるか、またはこれらを含み、任意で約228アミノ酸の長さであり;あるいはSEQ ID NO:187に記載されるスペーサーである。いくつかの態様では、CARのリガンド(例えば抗原)結合または認識ドメインは、例えば、抗原受容体複合体、例えばTCR複合体を通した活性化、および/または別の細胞表面レセプターを介するシグナルを模倣する、1つまたは複数の細胞内シグナル伝達成分、例えば、細胞内シグナル伝達領域もしくはドメインおよび/またはシグナル伝達成分を含む細胞内領域に連結される。したがって、いくつかの態様では、例えば、抗原結合成分(例えば抗体)などの結合ドメインを含む細胞外領域は、1つまたは複数の膜貫通および細胞内領域またはドメインに連結される。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは細胞外領域と融合している。いくつかの態様では、受容体、例えばCAR中のドメインのうちの1つと天然に結合している膜貫通ドメインが使用される。ある場合には、膜貫通ドメインは、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小限にするために、同じまたは異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインへのそのようなドメインの結合を回避するように選択されるか、またはアミノ酸置換によって改変される。
【0677】
いくつかの態様の膜貫通ドメインは、天然供給源または合成供給源のいずれかに由来する。供給源が天然である場合は、いくつかの局面のドメインは、任意の膜結合または膜貫通タンパク質に由来する。膜貫通領域は、T細胞受容体のアルファ、ベータ、またはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137(4-1BB)、またはCD154に由来するものを含む(すなわち、これらの少なくとも膜貫通領域を含む)。あるいは、いくつかの態様の膜貫通ドメインは合成的である。いくつかの局面では、合成膜貫通ドメインは、ロイシンおよびバリンなどの疎水性残基を主に含む。いくつかの局面では、フェニルアラニン、トリプトファン、およびバリンの三つ組が合成膜貫通ドメインの各末端に見出されるであろう。いくつかの態様では、連結はリンカー、スペーサー、および/または膜貫通ドメインによる。いくつかの局面では、膜貫通ドメインは、CD28の膜貫通部分またはそのバリアントを含む。細胞外領域および膜貫通部は直接的または間接的に連結され得る。いくつかの態様では、細胞外領域および膜貫通部はスペーサー、例えば本明細書において記載される任意のものによって連結される。
【0678】
いくつかの態様では、受容体、例えばCARの膜貫通ドメインはヒトCD28の膜貫通ドメインまたはそのバリアント、例えば、ヒトCD28(受託番号:P10747.1)の27アミノ酸膜貫通ドメインであるか、あるいはSEQ ID NO:8に記載されるアミノ酸の配列、またはSEQ ID NO:8に対して、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上、または少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸の配列を含む膜貫通ドメインであり;いくつかの態様では、組換え受容体の膜貫通ドメイン含有部分は、SEQ ID NO:9に記載されるアミノ酸の配列、またはそれに対して、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上、または少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を有するアミノ酸の配列を含む。
【0679】
c. 細胞内領域
いくつかの局面では、改変TGFBR2遺伝子座中にコードされる組換え受容体、例えばCARは、シグナル伝達領域またはドメインを含む細胞内領域(細胞質内領域とも呼ばれる)を含む。いくつかの態様では、細胞内領域は細胞内シグナル伝達領域またはドメインを含む。いくつかの態様では、細胞内シグナル伝達領域またはドメインは、一次シグナル伝達領域、T細胞において一次活性化シグナルを刺激および/または誘導することができるシグナル伝達ドメイン、T細胞受容体(TCR)成分のシグナル伝達ドメイン(例えば、CD3ゼータ(CD3ζ)鎖の細胞内シグナル伝達ドメインもしくは領域またはそれらの機能的バリアントもしくはシグナル伝達部分)、ならびに/あるいは免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)を含むシグナル伝達ドメインであるか、あるいはこれらを含む。
【0680】
いくつかの態様では、組換え受容体、例えばCARは、少なくとも1つの細胞内シグナル伝達成分、例えば、細胞内シグナル伝達領域またはドメインを含む。細胞内シグナル伝達領域の中には、天然の抗原受容体を通したシグナル、共刺激受容体と組み合わさったそのような受容体を通したシグナル、および/もしくは共刺激受容体単独を通したシグナルを模倣するか、またはこうしたシグナルに近似するものがある。いくつかの態様では、短いオリゴまたはポリペプチドリンカー、例えば、2~10アミノ酸の長さのリンカー、例えば、グリシンおよびセリン、例えば、グリシン-セリンダブレット含むものが、CARの膜貫通ドメインと細胞質内シグナル伝達ドメインの間に存在し、これらの間に連結を形成する。
【0681】
いくつかの態様では、CARのライゲーションの際に、CARの細胞質内(または細胞内)ドメインまたは領域、例えば細胞内シグナル伝達領域は、免疫細胞、例えば、CARを発現するように操作されたT細胞の正常なエフェクター機能または応答の少なくとも1つを刺激および/または活性化する。例えば、いくつかの状況では、CARは、細胞溶解活性またはT-ヘルパー活性、例えばサイトカインもしくは他の因子の分泌などのT細胞の機能を誘導する。いくつかの態様では、抗原受容体成分または共刺激分子の細胞内シグナル伝達領域またはドメインのトランケートされた部分は、例えば、それがエフェクター機能シグナルを伝達する場合、インタクトな免疫賦活性鎖の代わりに使用される。いくつかの態様では、例えば1つまたは複数の細胞内ドメインを含む細胞内シグナル伝達領域は、T細胞受容体(TCR)の細胞質内配列を含み、いくつかの局面では、天然の状況下でそのような受容体と協調して作用して、抗原受容体の結合後にシグナルトランスダクションを開始する共受容体の細胞質内配列、および/またはそのような分子の任意の誘導体もしくはバリアント、および/または同じ機能的能力を有する任意の合成配列も含む。いくつかの態様では、例えば1つまたは複数の細胞内ドメインを含む細胞内シグナル伝達領域は、共刺激シグナルの提供に関与する領域またはドメインの細胞質内配列を含む。
【0682】
(i) 共刺激シグナル伝達ドメイン
いくつかの態様では、完全な刺激および/または活性化を促進するために、二次的または共刺激シグナルを発生させるための1つまたは複数の成分はコードされるCARに含まれる。他の態様では、コードされるCARは共刺激シグナルを発生させるための成分を含まない。いくつかの局面では、さらなる受容体ポリペプチドまたはその一部分は同じ細胞で発現し、二次的または共刺激シグナルを発生させるための成分を提供する。
【0683】
いくつかの態様では、コードされるCARは、共刺激受容体、例えば、CD28、4-1BB、OX40(CD134)、CD27、DAP10、DAP12、ICOS、および/または他の共刺激受容体のシグナル伝達領域および/または膜貫通部分を含む。いくつかの局面では、同じCARが、一次細胞質内シグナル伝達領域と共刺激シグナル伝達成分の両方を含む。
【0684】
いくつかの態様では、1つまたは複数の異なる組換え受容体は、1つまたは複数の異なる細胞内シグナル伝達領域またはドメインを含むことができる。いくつかの態様では、一次細胞質内シグナル伝達領域は1つのコードされるCAR内に含まれるが、共刺激成分は別の受容体、例えば、別の抗原を認識する別のCARによって提供される。いくつかの態様では、コードされるCARは、活性化または刺激性CARと共刺激CARとを含み、これらは両方とも同じ細胞で発現する(WO2014/055668を参照されたい)。
【0685】
ある特定の態様では、細胞内シグナル伝達領域は、CD3(例えばCD3ζ)の細胞内領域またはドメインに連結されたCD28の膜貫通およびシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様では、細胞内領域は、CD3ζの細胞内領域またはドメインに連結されたキメラのCD28およびCD137(4-1BB、TNFRSF9)共刺激性ドメインを含む。
【0686】
いくつかの態様では、コードされるCARは、細胞質内部分に1つまたは複数の、例えば、2つ以上の共刺激ドメインおよび一次細胞質内シグナル伝達領域を包含する。例示的なCARはCD3ゼータ、CD28、CD137(4-1BB)、OX40(CD134)、CD27、DAP10、DAP12、NKG2D、および/またはICOSの細胞内成分、例えば細胞内シグナル伝達領域またはドメインを含む。いくつかの態様では、キメラ抗原受容体は、例えば、CD28、CD137(4-1BB)、OX40(CD134)、CD27、DAP10、DAP12、NKG2D、および/またはICOS由来の、T細胞共刺激分子の細胞内シグナル伝達領域またはドメインを、場合によっては、膜貫通ドメインと細胞内シグナル伝達領域またはドメインとの間に含む。いくつかの局面では、T細胞共刺激分子は、CD28、CD137(4-1BB)、OX40(CD134)、CD27、DAP10、DAP12、NKG2D、および/またはICOSの1つまたは複数である。いくつかの態様では、共刺激分子はヒト共刺激分子である。
【0687】
いくつかの態様では、細胞内シグナル伝達領域またはドメインは、ヒトCD28の細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン、またはその機能的バリアントもしくは一部分、例えば、その41アミノ酸ドメインおよび/またはネイティブCD28タンパク質の位置186~187におけるLLからGGへの置換を有するそのようなドメインを含む。いくつかの態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、SEQ ID NO:10または11に記載されるアミノ酸の配列、あるいはSEQ ID NO:10または11に対して、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上、または少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸の配列を含むことができる。いくつかの態様では、細胞内領域は、CD137(4-1BB)の細胞内共刺激シグナル伝達ドメインもしくは領域、またはそれらの機能的バリアントもしくは一部分、例えば、ヒト4-1BB(受託番号Q07011.1)の42アミノ酸細胞質内ドメイン、またはその機能的バリアントもしくは一部分、例えば、SEQ ID NO:12に記載されるアミノ酸の配列、あるいはSEQ ID NO:12に対して、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上、または少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸の配列を含む。
【0688】
場合によっては、コードされるCARは第1、第2、第3、または第4世代CARと称される。いくつかの局面では、第1世代CARは、例えば、抗原結合の際にCD3鎖誘導性シグナルを介して、一次刺激または活性化シグナルを単に提供するものであり;いくつかの局面では、第2世代CARは、そのようなシグナルおよび共刺激シグナルを提供するもの、例えば、1つまたは複数の共刺激受容体、例えば、CD28、CD137(4-1BB)、OX40(CD134)、CD27、DAP10、DAP12、NKG2D、ICOS、および/または他の共刺激受容体由来の細胞内シグナル伝達領域またはドメインを含むものであり;いくつかの局面では、第3世代CARは、例えば、CD28、CD137(4-1BB)、OX40(CD134)、CD27、DAP10、DAP12、NKG2D、ICOS、および/または他の共刺激受容体より選択される異なる共刺激受容体の複数の共刺激ドメインを含むものであり;いくつかの局面では、第4世代CARは、例えば、CD28、CD137(4-1BB)、OX40(CD134)、CD27、DAP10、DAP12、NKG2D、ICOS、および/または他の共刺激受容体より選択される異なる共刺激受容体の3つ以上の共刺激ドメインを含むものである。
【0689】
(ii) 一次シグナル伝達領域、例えばCD3ζ鎖
いくつかの態様では、コードされる組換え受容体、例えばCARは、TCR複合体の細胞内成分、例えば、T細胞活性化および細胞傷害性を媒介するTCR CD3鎖、例えば、CD3ゼータ鎖を含む。したがって、いくつかの局面では、抗原結合または抗原認識ドメインは、1つまたは複数の細胞シグナル伝達モジュールに連結される。いくつかの態様では、細胞シグナル伝達モジュールは、CD3膜貫通ドメイン、CD3細胞内シグナル伝達ドメイン、および/または他のCD膜貫通ドメインを含む。いくつかの態様では、コードされる組換え受容体、例えばCARは、1つまたは複数のさらなる分子、例えば、Fc受容体ガンマ(FcRγ)、CD8アルファ、CD8ベータ、CD4、CD25、またはCD16をさらに含む。例えば、いくつかの局面では、CARは、CD3ゼータ(CD3ζ)とCD8アルファ、CD8ベータ、CD4、CD25、またはCD16の1つまたは複数との間のキメラ分子を含む。
【0690】
天然のTCRにおいて、完全な刺激は、一般に、TCRを通したシグナル伝達だけでなく、共刺激シグナルも必要とする。T細胞刺激は、いくつかの局面では、2つのクラスの細胞質内シグナル伝達配列:TCRを通して抗原依存的一次活性化を開始するもの(一次細胞質内シグナル伝達領域またはドメイン)、および抗原非依存的様式で作用して二次的または共刺激性シグナルを提供するもの(二次細胞質内シグナル伝達領域またはドメイン)によって媒介され得る。いくつかの局面では、CARはそのようなシグナル伝達成分の一方または両方を含む。
【0691】
いくつかの局面では、コードされるCARは、TCR複合体の一次刺激および/または活性化を制御する一次細胞質内シグナル伝達領域を含む細胞内領域を含む。刺激性様式で作用する一次細胞質内シグナル伝達領域は、例えばCD3ゼータ(CD3ζ)に由来する、免疫受容活性化チロシンモチーフまたはITAMとして公知であるシグナル伝達モチーフを含むことができる。いくつかの態様では、CARは、CD3ζに由来する細胞質内シグナル伝達ドメイン、その断片もしくは一部分、または配列を含む。いくつかの態様では、細胞内(または細胞質内)シグナル伝達領域は、CD3ζの細胞内もしくは細胞質内刺激性シグナル伝達ドメインまたはその機能的バリアント、例えば、ヒトCD3ζのアイソフォーム3(受託番号:P20963.2)の112AA細胞質内ドメイン、または米国特許第7,446,190号:もしくは米国特許第8,911,993号に記載されるCD3ζシグナル伝達ドメインを含めて、ヒトCD3ゼータ鎖またはその断片もしくは一部分を含む。いくつかの態様では、コードされる組換え受容体の細胞内領域は、SEQ ID NO:13、14、または15に記載されるアミノ酸の配列、あるいはSEQ ID NO:13、14、もしくは15またはそれらの部分配列に対して、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上、または少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸の配列を含む。いくつかの態様では、改変TGFBR2遺伝子座にコードされる例示的なCD3ζ鎖またはその断片は、CD3ζ鎖のITAMドメイン、例えば、SEQ ID NO:188に記載されるヒトCD3ζ鎖前駆体配列のアミノ酸残基61~89、100~128、または131~159、あるいはCD3ζ鎖由来の1つまたは複数のITAMドメインを含み、SEQ ID NO:188に対して、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上、または少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を示アミノ酸の配列を含む。
【0692】
いくつかの態様では、細胞は、1つまたは複数のさらなる分子(例えば、ポリペプチド、例えば、さらなる組換え受容体ポリペプチドまたはその一部分)を発現するように操作され、コードされるCARの機能および/または活性を制御する、調節する、またはモジュレートするために使用される。例示的な多鎖組換え受容体、例えば多鎖CARは、本明細書において、例えばセクションIII.B.2に記載される。
【0693】
いくつかの態様では、コードされるCARは、抗体、例えば抗体断片、CD28の膜貫通部分もしくはその機能的バリアントであるか、またはこれらを含む膜貫通ドメイン、ならびにCD28のシグナル伝達部分またはその機能的バリアントおよびCD3ゼータのシグナル伝達部分またはその機能的バリアントを含む細胞内シグナル伝達領域を含む。いくつかの態様では、CARは、抗体、例えば抗体断片、CD28の膜貫通部分もしくはその機能的バリアントであるか、またはこれらを含む膜貫通ドメイン、ならびに4-1BBのシグナル伝達部分またはその機能的バリアントおよびCD3ゼータのシグナル伝達部分またはその機能的バリアントを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかのそのような態様では、受容体は、Ig分子、例えばヒトIg分子の一部分、例えばIgヒンジ、例えばIgG4ヒンジを含むスペーサー、例えばヒンジのみのスペーサーをさらに含む。いくつかの態様では、組換え受容体は、受容体のC末端にCD3ゼータ(CD3ζ)を含む。
【0694】
2. 多鎖CAR
いくつかの態様では、改変TGFBR2遺伝子座の核酸配列にコードされる組換え受容体は多鎖CARであり得る。いくつかの態様では、2つ以上のポリペプチド鎖を含む多鎖CARが細胞で発現する場合、ポリペプチド鎖の少なくとも1つは改変TGFBR2遺伝子座にコードされる。いくつかの局面では、多鎖CARの1つまたは複数の鎖をコードする核酸配列を導入するために使用されるポリヌクレオチドは、本明細書においてセクションI.Bに記載される任意のものを含むことができる。いくつかの局面では、ポリヌクレオチド、例えば鋳型ポリヌクレオチドは、多鎖CARの少なくとも1つの鎖またはその一部分、例えば、多鎖CARの少なくとも1つのポリペプチドの少なくとも一部分をコードする導入遺伝子配列を含む。いくつかの局面では、導入遺伝子配列は、異なるもしくはさらなるポリペプチド、例えば、多鎖CARの他のもしくはさらなる鎖、またはさらなる分子、例えば、本明細書においてセクションI.B.2.(iv)に記載されるものをコードする配列も含む。いくつかの局面では、さらなるポリヌクレオチド、例えば、さらなる鋳型ポリヌクレオチドを導入することができ、このポリヌクレオチドは多鎖CARのさらなる成分をコードする。いくつかの局面では、さらなるポリヌクレオチドは、本明細書において、例えばセクションI.B.2に記載される任意のポリヌクレオチド、またはこれらの改変形態、例えば、別のゲノム遺伝子座における組み込みのために核酸をターゲティングするための異なる相同性アームを含むものでもよい。
【0695】
いくつかの態様では、提供される操作された細胞としては、多鎖受容体、例えば多鎖CARを発現する細胞が挙げられる。いくつかの態様では、例示的な多鎖CARは、2つ以上の遺伝子操作された受容体を細胞上に含むことができ、これらは一緒に機能的組換え受容体を構成することができる。いくつかの局面では、組み合わせた様々なポリペプチド鎖は、CARの機能もしくは活性を果たす、ならびに/またはCARの機能および/もしくは活性を制御する、調節する、もしくはモジュレートする。いくつかの局面では、多鎖CARは2つ以上のポリペプチド鎖を含むことができ、それぞれが異なる抗原の同じものを認識し、典型的には、それぞれが異なる領域またはドメイン、例えば、異なる細胞内シグナル伝達成分を含む。いくつかの局面では、改変TGFBR2遺伝子座は、多鎖受容体、例えば多鎖CARの少なくとも1つの鎖をコードする核酸配列を含むことができる。
【0696】
いくつかの態様では、組換え受容体は、2つ以上のポリペプチド鎖を含む、多鎖CARまたは二鎖CARである。いくつかの態様では、多鎖受容体は、制御可能なCAR、条件的に活性なCAR、または誘導性CARである。いくつかの局面では、組換え受容体、例えば二鎖CARの2つ以上のポリペプチドは、組換え受容体の特異性、活性、抗原(またはリガンド)結合、機能および/または発現の空間的または時間的な制御または調節を可能にする。そのような態様のいくつかでは、改変TGFBR2遺伝子座の核酸配列にコードされる組換え受容体は、二鎖または多鎖受容体の1つまたは複数の鎖を含むことができる。いくつかの局面では、二鎖CARの1つのみが改変TGFBR2遺伝子座にコードされる場合には、他の鎖は、異なるゲノム場所に組み込まれているか、またはエピソームである別の核酸分子にコードされ得る。
【0697】
いくつかの態様では、多鎖CARは活性化CARと共刺激CARの組み合わせを含むことができる。例えば、いくつかの態様では、多鎖CARは、非標的細胞、例えば正常細胞上に個々に存在するが、治療される疾患または状態の細胞上にのみ一緒に存在する2つの異なる抗原を標的とするCARをコードする2つのポリペプチドを含むことができる。いくつかの態様では、多鎖CARは、活性化CARおよび阻害性CAR、例えば、活性化CARが、正常または非病的細胞と治療される疾患または状態の細胞の両方で発現している1つの抗原に結合し、阻害性CARが、正常細胞または治療することが望まれない細胞のみで発現している別の抗原に結合するものを含むことができる。いくつかの局面では、多鎖CARは、制御、モジュレート、または調節され得るCARをコードする1つまたは複数のポリペプチドを含むことができる。
【0698】
いくつかの態様では、多鎖CARは、CARの1つまたは複数のドメインまたは領域をコードする1つまたは複数のポリペプチド鎖を含む。いくつかの局面では、組み合わせた様々なポリペプチド鎖はCARを構成することができる。いくつかの態様では、1つまたは複数のさらなるドメインまたは領域はCAR中に存在する。いくつかの態様では、多鎖CARの1つまたは複数のポリペプチド鎖中に存在する様々なドメインまたは領域は、CARの機能および/または活性を制御する、調節する、またはモジュレートするために使用される。いくつかの態様では、操作された細胞は、異なる成分、ドメインまたは領域を含む2つ以上のポリペプチド鎖を発現する。いくつかの局面では、2つ以上のポリペプチド鎖は、組換え受容体の特異性、活性、抗原(またはリガンド)結合、機能および/または発現の空間的または時間的な制御または調節を可能にする。1つより多いポリペプチド、例えば2つ以上のポリペプチドを含む多鎖CARのいくつかの態様では、少なくとも1つのポリペプチドをコードする核酸配列は、内在性TGFBR2遺伝子座における組み込みのためにターゲティングされる。いくつかの態様では、さらなる分子またはポリペプチド、例えば多鎖CARのさらなるポリペプチド鎖またはさらなる分子をコードする核酸配列は、例えば、ターゲティングに使用される同じポリヌクレオチド上の配置によって、同じ遺伝子座にターゲティングされ得る。さらなる分子またはポリペプチドをコードするある種の核酸配列では、異なる遺伝子座にターゲティングされるか、または異なる方法によって送達される。
【0699】
いくつかの局面では、CARのドメインまたは領域をコードする1つまたは複数のポリペプチド鎖は、1つまたは複数の抗原または分子を標的とすることができる。例示的な多鎖CARまたは他のマルチターゲティングストラテジーとしては、例えば、国際特許出願公開第WO2014055668号、またはFedorov et al., Sci. Transl. Medicine, Sci Transl Med. (2013) 5(215):215ra172;Sadelain, Curr Opin Immunol. (2016) 41: 68-76;Wang et al. (2017) Front. Immunol. 8:1934;Mirzaei et al. (2017) Front. Immunol. 8:1850;Marin-Acevedo et al. (2018) Journal of Hematology & Oncology 11:8;Fesnak et al. (2016) Nat Rev Cancer. 16(9): 566-581;およびAbate-Daga and Davila, (2016) Molecular Therapy - Oncolytics 3, 16014に記載されるものが挙げられる。
【0700】
いくつかの態様では、操作された細胞は、組換え受容体、例えばCARの第1のポリペプチド鎖を発現することができ、これは、一般に、第1のポリペプチド鎖によって認識される抗原、例えば第1の抗原への特異的結合の際に、細胞への活性化または刺激シグナルを誘導することができる。いくつかの態様では、細胞は、組換え受容体、例えば、場合によってはキメラ共刺激受容体と呼ばれるCARの第2のポリペプチド鎖をさらに発現することができ、これは、一般に、第2のポリペプチド鎖によって認識される第2の抗原への特異的結合の際に、免疫細胞に対する共刺激シグナルを誘導することができる。いくつかの態様では、第1の抗原および第2の抗原は同じである。いくつかの態様では、第1の抗原および第2の抗原は異なる。
【0701】
いくつかの態様では、第1および/または第2のポリペプチド鎖は、細胞への活性化または刺激シグナルを誘導することができる。いくつかの態様では、受容体はITAMまたはITAM様モチーフを含む細胞内シグナル伝達成分を含む。いくつかの態様では、第1のポリペプチド鎖によって誘導される活性化は、細胞中のシグナルトランスダクションまたはタンパク質発現の変化を含み、免疫応答の開始、例えば、ITAMのリン酸化および/またはITAM媒介性シグナルトランスダクションカスケードの開始、結合受容体の近くでの免疫シナプスの形成および/または分子(例えば、CD4またはCD8など)のクラスタリング、1つまたは複数の転写因子、例えば、NF-κBおよび/またはAP-1の活性化、および/またはサイトカインなどの因子の遺伝子発現の誘導、増殖、および/または生存をもたらす。いくつかの態様では、活性化ドメインは多鎖CARの少なくとも1つ、例えば、改変TGFBR2遺伝子座にコードされるポリペプチド鎖内に含まれるが、共刺激成分は、別の抗原を認識する別のポリペプチドによって提供される。いくつかの態様では、操作された細胞は、両方とも同じ細胞で発現する、活性化または刺激性CAR、共刺激CARを含む、多鎖CARを含むことができる(WO2014/055668を参照されたい)。いくつかの局面では、細胞は、1つもしくは複数の刺激性もしくは活性化CAR(例えば、本明細書において、例えばセクションIII.Aに記載される改変TGFBR2遺伝子座にコードされるもの)および/または共刺激CARを発現する。
【0702】
いくつかの態様では、第1および/または第2のポリペプチド鎖は、共刺激受容体、例えば、CD28、CD137(4-1BB)、OX40(CD134)、CD27、DAP10、DAP12、NKG2D、ICOS、および/または他の共刺激受容体の細胞内シグナル伝達領域またはドメインを含む。いくつかの態様では、第1および第2のポリペプチド鎖は、異なる共刺激受容体の細胞内シグナル伝達ドメインを含むことができる。一態様では、第1のポリペプチド鎖はCD28共刺激シグナル伝達ドメインを含み、第2のポリペプチド鎖は4-1BB共刺激性シグナル伝達領域を含み、またはその逆も同じである。
【0703】
いくつかの態様では、第1および/または第2のポリペプチド鎖は、ITAMまたはITAM様モチーフ、例えば、CD3ゼータ(CD3ζ)鎖またはその断片もしくは一部分、例えば、CD3ζ細胞内シグナル伝達ドメイン由来のものを含む細胞内シグナル伝達ドメインと共刺激受容体の細胞内シグナル伝達ドメインの両方を含む。いくつかの態様では、第1のポリペプチド鎖は、ITAMまたはITAM様モチーフを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含み、第2のポリペプチド鎖は、共刺激受容体の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。同じ細胞で誘導される活性化または刺激シグナルと組み合わさった共刺激シグナルは、免疫応答、例えば、頑強かつ持続的な免疫応答、例えば、遺伝子発現の増加、サイトカインおよび他の因子の分泌、ならびに細胞死滅などのT細胞媒介性エフェクター機能をもたらすものである。
【0704】
いくつかの態様では、第1のポリペプチド鎖単独のライゲーションも第2のポリペプチド鎖単独のライゲーションも頑強な免疫応答を誘導しない。いくつかの局面では、1つの受容体のみがライゲーションされる場合、細胞は、抗原に対して寛容化されるか、または非応答性になるか、あるいは因子を増殖させるかもしくは分泌する、またはエフェクター機能を実行することが、阻害される、および/または誘導されない。いくつかのそのような態様では、しかし、第1および第2の抗原を発現する細胞の遭遇時など、複数のポリペプチド鎖がライゲーションされる場合に、例えば、1つまたは複数のサイトカインの分泌、増殖、持続、および/または標的細胞の細胞傷害性死滅などの免疫エフェクター機能の実行によって示されるような、完全な免疫活性化または刺激などの望ましい応答が達成される。
【0705】
いくつかの態様では、多鎖CARの1つまたは複数の鎖は、阻害性CAR(iCAR。Fedorov et al., Sci. Transl. Medicine, 5(215) (2013)を参照されたい、例えば、疾患もしくは状態と関連するおよび/または疾患もしくは状態に対して特異的なもの以外の抗原を認識するCARを含むことができ、それにより、疾患ターゲティングCARを通して送達される活性化シグナルが、阻害性CARのそのリガンドへの結合によって低減されるか、または阻害されて、例えば、オフターゲット効果を低減させる。いくつかの態様では、阻害性CARは、刺激または活性化CAR(例えば、CD3ゼータ(CD3ζ)鎖またはその断片もしくは一部分を含む)と同じポリヌクレオチドによって、あるいは異なるポリヌクレオチドによってコードされ得る。
【0706】
いくつかの態様では、多鎖CARの2つのポリペプチド鎖は、細胞への活性化シグナルおよび阻害性シグナルをそれぞれ誘導して、その結果、1つのポリペプチド鎖のその抗原へのライゲーションは細胞を活性化するか、または応答を誘導するが、第2のポリペプチド鎖、例えば阻害性受容体のその抗原へのライゲーションはその応答を抑制するか、または弱めるシグナルを誘導する。例は、活性化CARと阻害性CAR(iCAR)の組み合わせである。そのようなストラテジーを使用して、例えば、活性化CARが、疾患または状態で発現しているが正常細胞でも発現している抗原に結合し、阻害性受容体が、正常細胞で発現しているが疾患または状態の細胞では発現していない別の抗原に結合するという状況で、オフターゲット効果の可能性を低減させることができる。
【0707】
いくつかの局面では、細胞中で発現するさらなる受容体ポリペプチドは阻害性CAR(例えばiCAR)をさらに含み、免疫応答、例えば、細胞中のITAMおよび/または共刺激促進性応答を弱めるか、または抑制する細胞内成分を含む。そのような細胞内シグナル伝達成分の例示的なものは、免疫チェックポイント分子、例えば、PD-1、CTLA4、LAG3、BTLA、OX2R、TIM-3、TIGIT、LAIR-1、PGE2受容体、EP2/4アデノシン受容体、例えばA2ARで見出されるものである。いくつかの局面では、操作された細胞は、そのような阻害性分子の、またはそのような阻害性分子に由来するシグナル伝達ドメインを含む阻害性CARを含み、その結果、これは、例えば、活性化および/または共刺激CARによって誘導される細胞の応答を弱めるように働く。
【0708】
いくつかの態様では、特定の疾患または状態と関連する抗原が、一過的(例えば、遺伝子操作に関連した刺激時)または永続的かのいずれかで、非病的細胞で発現している、および/または操作された細胞それ自体で発現している場合に、多鎖CARを用いることができる。そのような場合では、2つの別々の、個々に特異的なポリペプチドのライゲーションを必要とすることにより、特異性、選択性、および/または有効性を向上させることができる。
【0709】
いくつかの態様では、複数の抗原、例えば、第1および第2の抗原は、標的とされる細胞、組織、または疾患もしくは状態で、例えばがん細胞で発現している。いくつかの局面では、細胞、組織、疾患、または状態は、多発性骨髄腫または多発性骨髄腫細胞である。いくつかの態様では、複数の抗原の1つまたは複数は、一般に、細胞療法で標的とするのに望ましくない細胞、例えば、正常もしくは非病的細胞もしくは組織、および/または操作された細胞自体でも発現している。そのような態様では、細胞の応答を達成するために複数の受容体のライゲーションを必要とすることによって、特異性および/または有効性が達成される。
【0710】
いくつかの態様では、第1および/または第2のポリペプチド鎖のうちの1つは、他のポリペプチド鎖の発現、抗原結合、および/または活性を制御することができる。
【0711】
いくつかの局面では、2つのポリペプチド鎖のシステムを使用して、該ポリペプチド鎖の少なくとも1つの発現を制御することができる。いくつかの態様では、第1のポリペプチド鎖は、制御可能な開裂エレメントを介して連結された制御分子、例えば転写因子に連結された、第1のリガンド(例えば抗原)結合ドメインを含む。いくつかの局面では、制御可能な開裂エレメントは改変ノッチ受容体(例えばsynNotch)に由来し、これは、第1のリガンド(例えば抗原)結合ドメインの結合の際に細胞内ドメインを開裂させ、放出することができる。いくつかの局面では、第2のポリペプチド鎖は、細胞への活性化または刺激シグナルを誘導することができる細胞内シグナル伝達成分、例えばITAM含有細胞内シグナル伝達ドメインに連結された、第2のリガンド(例えば抗原)結合ドメインを含む。いくつかの局面では、第2のポリペプチド鎖をコードする核酸配列は、特定の転写因子、例えば、第1のポリペプチド鎖にコードされる転写因子によって制御され得る転写制御エレメント、例えばプロモーターに機能的に連結される。いくつかの局面では、第1のリガンド(例えば抗原)結合ドメインへのリガンドまたは抗原の結合は、転写因子のタンパク分解性放出につながり、これが次に、第2のポリペプチド鎖の発現を誘導することができる(Roybal et al. (2016) Cell164:770-779;Morsut et al. (2016) Cell 164:780-791を参照されたい)。いくつかの態様では、第1の抗原および第2の抗原は異なる。
【0712】
ある場合には、組換え受容体、例えばCARは、制御、調節、誘導、または阻害され得、組換え受容体を用いる療法の安全性および有効性を最適化することが望ましい場合がある。いくつかの態様では、多鎖CARは制御可能なCARである。いくつかの局面では、制御され得るCARを含む操作された細胞が本明細書において提供される。本明細書において「制御可能な組換え受容体」または「制御可能なCAR」とも称される、制御され得る組換え受容体は、少なくとも2つのポリペプチドの鎖セットなどの複数のポリペプチドであって、操作された細胞(例えば、操作されたT細胞)で発現する場合に、誘導物質の調節下で細胞内シグナルを発生させる能力を有する操作された細胞を提供する複数のポリペプチドを指す。
【0713】
いくつかの態様では、制御可能なCARのポリペプチドは、別の多量体化ドメインと多量体化することができる多量体化ドメインを含む。いくつかの態様では、多量体化ドメインは、誘導物質への結合の際に多量体化することができる。例えば、多量体化ドメインは、誘導物質、例えば化学誘導物質と結合することができ、それにより、多量体化ドメインの多量体化によって制御可能なCARのポリペプチドの多量体化がもたらされ、それによって、制御可能なCARが生成される。
【0714】
いくつかの態様では、制御可能なCARの1つのポリペプチドはリガンド(例えば抗原)結合ドメインを含み、制御可能なCARの別のポリペプチドは細胞内シグナル伝達領域を含み、多量体化ドメインの多量体化による2つのポリペプチドの多量体化は、リガンド結合ドメインおよび細胞内シグナル伝達領域を含む制御可能なCARを生成する。いくつかの態様では、多量体化は、制御可能なCARを含む操作された細胞において、シグナルを誘導する、モジュレートする、活性化する、媒介する、および/または促進することができる。いくつかの態様では、誘導物質は、制御可能なCARの少なくとも1つのポリペプチドの多量体化ドメインに結合し、制御可能なCARのコンフォメーション変化を誘導し、コンフォメーション変化がシグナル伝達を活性化する。いくつかの態様では、そのようなキメラ受容体へのリガンドの結合は、場合によっては、ポリペプチド鎖のオリゴマー化を含めて、ポリペプチド鎖のコンフォメーション変化を誘導し、これは、受容体を細胞内シグナル伝達に適したものにする。
【0715】
いくつかの態様では、誘導物質は、制御可能なCARと標的抗原の相互作用の間などに、制御可能なCARが望ましい細胞内シグナルを生成するために、操作された細胞で発現する制御可能なCARの少なくとも2つのポリペプチド鎖のセットを結合するかまたは多量体化する(例えば二量体化する)ように機能する。誘導物質による制御可能なCARの少なくとも2つのポリペプチドの結合または多量体化は、多量体化ドメインへの誘導物質の結合の際に達成される。例えば、いくつかの態様では、操作された細胞中の第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドは、それぞれ、誘導物質に結合することができる多量体化ドメインを含むことができる。誘導物質による多量体化ドメインの結合の際に、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドが一緒に結合して、望ましい細胞内シグナルを生成する。いくつかの態様では、多量体化ドメインはポリペプチドの細胞内部分に位置する。いくつかの態様では、多量体化ドメインはポリペプチドの細胞外部分に位置する。
【0716】
いくつかの態様では、制御可能なCARの少なくとも2つのポリペプチドのセットは、2つ、3つ、4つ、または5つまたはそれ以上のポリペプチドを含む。いくつかの態様では、少なくとも2つのポリペプチドのセットは、同じポリペプチド、例えば、細胞内シグナル伝達領域および多量体化ドメインを含む、2つ、3つまたはそれ以上の同じポリペプチドである。いくつかの態様では、少なくとも2つのポリペプチドのセットは、異なるポリペプチド、例えば、リガンド(例えば抗原)結合ドメインおよび多量体化ドメインを含む第1のポリペプチド、ならびに細胞内シグナル伝達領域および多量体化ドメインを含む第2のポリペプチドである。いくつかの態様では、細胞間シグナルは誘導物質の存在下で発生する。いくつかの態様では、細胞内シグナルは誘導物質の非存在下で発生し、例えば、誘導物質は、制御可能なCARの少なくとも2つのポリペプチドの多量体化を妨げ、それによって、制御可能なCARによる細胞内シグナル伝達を防止する。
【0717】
いくつかの態様では、多鎖CAR、すなわち、ポリペプチド鎖の少なくとも1つをコードする核酸配列は、例えばHDRによって、内在性TGFBR2遺伝子座に組み込まれる。いくつかの態様では、2つ以上の別個のポリペプチド鎖の他のものをコードする核酸配列は、同じ遺伝子座内に(例えば、同じ導入遺伝子配列内かつ他のポリペプチド鎖をコードする核酸配列5'もしくは3'に配置され得る)、または異なる遺伝子座にターゲティングされ得る。いくつかの局面では、2つ以上の別個のポリペプチド鎖の他のものをコードする核酸配列の導入は、例えば、一過的送達方法によって、またはエピソーム核酸分子として、異なる送達方法を介してもよい。
【0718】
いくつかの態様では、多鎖CARのポリペプチド鎖の1つまたは複数は多量体化ドメインを含むことができる。いくつかの態様では、多量体化ドメインは、誘導物質の結合の際に多量体化する(例えば、二量体化する)ことができる。本明細書において意図される誘導物質としては、限定はされないが、化学誘導物質またはタンパク質(例えばカスパーゼ)が挙げられる。いくつかの態様では、誘導物質は、エストロゲン、グルココルチコイド、ビタミンD、ステロイド、テトラサイクリン、シクロスポリン、ラパマイシン、クーママイシン、ジベレリン、FK1012、FK506、FKCsA、リミドゥシド、もしくはHaXS、またはそれらの類似体もしくは誘導体より選択される。いくつかの態様では、誘導物質はAP20187またはAP20187類似体、例えばAP1510である。
【0719】
いくつかの態様では、多量体化ドメインは、本明細書において提供される誘導物質などの誘導物質の結合の際に多量体化する(例えば二量体化する)ことができる。いくつかの態様では、多量体化ドメインは、FKBP、シクロフィリン受容体、ステロイド受容体、テトラサイクリン受容体、エストロゲン受容体、グルココルチコイド受容体、ビタミンD受容体、カルシニューリンA、CyP-Fas、mTORのFRBドメイン、GyrB、GAI、GID1、Snap-tag、および/もしくはHaloTag、またはそれらの一部分もしくは誘導体由来であり得る。いくつかの態様では、多量体化ドメインは、FK506結合タンパク質(FKBP)もしくはその誘導体、またはそれらの断片および/もしくは多量体、例えばFKBP12v36である。いくつかの態様では、FKBPは、アミノ酸配列
を含む。いくつかの態様では、FKBP12v36は、アミノ酸配列
を含む。
【0720】
例示的な誘導物質および対応する多量体化ドメインは、例えば、米国特許出願公開第2016/0046700号、Clackson et al. (1998) Proc Natl Acad Sci U S A. 95(18):10437-42;Spencer et al. (1993) Science 262(5136):1019-24;Farrar et al. (1996) Nature 383 (6596):178-81;Miyamoto et al. (2012) Nature Chemical Biology 8(5): 465-70;Erhart et al. (2013) Chemistry and Biology 20(4): 549-57)に記載されているように、公知である。いくつかの態様では、誘導物質はリミドゥシド(AP1903としても知られている;CAS索引名:2-ピペリジンカルボン酸、1-[(2S)-1-オキソ-2-(3,4,5-トリメトキシフェニル)ブチル]-,1,2-エタンジイルビス[イミノ(2-オキソ-2,1-エタンジイル)オキシ-3,1-フェニレン[(1R)-3-(3,4-ジメトキシフェニル)プロピリデン]]エステル、[2S-[1(R*),2R*[S*[S*[1(R*),2R]]]]]-(9Cl);CAS登録番号:195514-63-7;分子式:C78H98N4O20;分子量:1411.65)であり、多量体化ドメインはFK506結合タンパク質(FKBP)である。
【0721】
いくつかの態様では、操作された細胞の細胞膜は誘導物質に対して不透過性である。いくつかの態様では、操作された細胞の細胞膜は誘導物質に対して透過性である。
【0722】
いくつかの態様では、制御可能なCARは、誘導物質の非存在下で多量体の一部でも、二量体の一部でもない。誘導物質の結合の際に、多量体化ドメインは多量体化、例えば二量体化することがきる。いくつかの局面では、多量体化ドメインの多量体化は、制御可能なCARのポリペプチドと制御可能なCARの別のポリペプチドとの多量体化、例えば、制御可能なCARの少なくとも2つのポリペプチドとの多量複合体をもたらす。いくつかの態様では、多量体化ドメインの多量体化は、シグナル伝達成分の物理的近接または多量体もしくは二量体の形成を誘導することによって、シグナルトランスダクションを誘導する、モジュレートする、活性化する、媒介する、および/または促進することができる。いくつかの態様では、誘導物質の結合の際に、多量体化ドメインの多量体化は、多量体化ドメインに直接的または間接的に連結されたシグナル伝達ドメインの多量体化も誘導する。いくつかの態様では、多量体化は、シグナル伝達ドメインまたは領域を通して、シグナル伝達を誘導する、モジュレートする、活性化する、媒介する、および/または促進する。いくつかの態様では、多量体化ドメインに連結されたシグナル伝達ドメインまたは領域は細胞内シグナル伝達領域である。
【0723】
いくつかの態様では、多量体化ドメインは操作された細胞(例えば、操作されたT細胞)の細胞内にあるか、または細胞内側または細胞質内側の細胞膜と結合している。いくつかの局面では、細胞内多量体化ドメインは、膜結合ドメイン(例えば脂質連結ドメイン)、例えば、ミリストイル化ドメイン、パルミトイル化ドメイン、プレニル化ドメイン、または膜貫通ドメインに直接的または間接的に連結される。いくつかの態様では、多量体化ドメインは細胞内にあり、膜貫通ドメインを介して細胞外リガンド(例えば抗原)結合ドメインに連結される。いくつかの態様では、細胞内多量体化ドメインは細胞内シグナル伝達領域に直接的または間接的に連結される。いくつかの局面では、多量体化ドメインの誘導性多量体化はまた、細胞内シグナル伝達領域を互いに近接させて、多量体化、例えば二量体化を可能にし、細胞内シグナル伝達を刺激する。いくつかの態様では、制御可能なCARのポリペプチドは、膜貫通ドメイン、1つまたは複数の細胞内シグナル伝達領域、および1つまたは複数の多量体化ドメインを含み、これらのそれぞれは直接的または間接的に連結される。
【0724】
いくつかの態様では、多量体化ドメインは細胞外にあるか、または操作された細胞(例えば、操作されたT細胞)の細胞外側の細胞膜と結合している。いくつかの局面では、細胞外多量体化ドメインは、膜結合ドメイン(例えば脂質連結ドメイン)、例えば、ミリストイル化ドメイン、パルミトイル化ドメイン、プレニル化ドメイン、または膜貫通ドメインに直接的または間接的に連結される。いくつかの態様では、細胞外多量体化ドメインは、リガンド結合ドメイン、例えば疾患と関連する抗原への結合ための抗原結合ドメインに直接的または間接的に連結される。いくつかの態様では、多量体化ドメインは細胞外にあり、膜貫通ドメインを介して細胞内シグナル伝達領域に連結される。
【0725】
いくつかの局面では、膜結合ドメインは既存の膜貫通タンパク質の膜貫通ドメインである。いくつかの例では、膜結合ドメインは、本明細書において記載される膜貫通ドメインのいずれかである。いくつかの局面では、膜結合ドメインは、タンパク質-タンパク質相互作用モチーフまたは膜貫通配列を含む。
【0726】
いくつかの局面では、膜結合ドメインは、アシル化ドメイン、例えば、ミリストイル化ドメイン、パルミトイル化ドメイン、プレニル化ドメイン(すなわち、ファルネシル化、ゲラニル-ゲラニル化、CAAXボックス)である。例えば、膜結合ドメインは、タンパク質のN末端またはC末端に存在するアシル化配列モチーフであり得る。そのようなドメインは、該ドメインを含むポリペプチドにアシル部分を移すアシルトランスフェラーゼによって認識され得る特定の配列モチーフを含む。例えば、アシル化モチーフは、単一アシル部分(場合によっては、アニオン性脂質頭部基との結合を向上させるために、その後にいくつかの正に荷電した残基、例えば、ヒトc-Src:
が続く)で修飾され得る。他の局面では、アセチル化モチーフは複数のアシル部分で修飾され得る。例えば、二重アシル化領域が、ある特定のプロテインキナーゼ、例えば、Srcファミリーメンバーのサブセット(例えば、Yes、Fyn、Lck)およびG-プロテインアルファサブユニットのN末端領域内に位置する。例示的な二重アシル化領域は、配列モチーフMet-Gly-Cys-Xaa-Cys(SEQ ID NO:85)を含み、Metは切断され、GlyはN-アシル化され、Cys残基の1つはS-アシル化される。Glyはミリストイル化されることが多く、Cysはパルミトイル化され得る。
【0727】
他の例示的なアシル化領域としては、C15またはO10イソプレニル部分で修飾することができ、公知である配列モチーフCys-Ala-Ala-Xaa(いわゆる「CAAXボックス」;SEQ ID NO:86)(Gauthier-Campbell et al. (2004) Molecular Biology of the Cell 15:2205-2217;Glabati et al. (1994) Biochem. J. 303: 697-700および Zlakine et al. (1997) J. Cell Science 110:673-679;ten Klooster et al. (2007) Biology of the Cell 99:1-12;Vincent et al. (2003) Nature Biotechnology 21:936-40を参照されたい)が挙げられる。いくつかの態様では、アシル部分はC1~C20アルキル、C2~C20アルケニル、C2~C20アルキニル、C3~C6シクロアルキル、C1~C4ハロアルキル、C4~C12シクロアルキルアルキル、アリール、置換アリール、またはアリール(C1~C4)アルキルである。いくつかの態様では、アシル含有部分は脂肪酸であり、脂肪酸部分の例は、プロピル(C3)、ブチル(C4)、ペンチル(C5)、ヘキシル(C6)、ヘプチル(C7)、オクチル(C8)、ノニル(C9)、デシル(C10)、ウンデシル(C11)、ラウリル(C12)、ミリスチル(C14)、パルミチル(C16)、ステアリル(C18)、アラキジル(C20)、ベヘニル(C22)、およびリグノセリル部分(C24)であり、各部分は、0、1、2、3、4、5、6、7、または8個の不飽和結合(すなわち、二重結合)を含むことができる。いくつかの例では、アシル部分は、脂質分子、例えば、ホスファチジル脂質(例えば、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン)、スフィンゴ脂質(例えば、スフィンゴミエリン(shingomyelin)、スフィンゴシン、セラミド、ガングリオシド、セレブロシド)、またはこれらの改変バージョンである。ある特定の態様では、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つまたはそれ以上のアシル部分が膜結合ドメインに連結される。
【0728】
いくつかの局面では、膜結合ドメインは、糖脂質(グリコシルホスファチジルイノシトールまたはGPIとしても知られている)の付加を促進するドメインである。いくつかの局面では、GPI分子がアミド基転移反応によってタンパク質標的に翻訳後に付着され、それにより、カルボキシ末端GPIシグナル配列の開裂(例えば、White et al. (2000) J. Cell Sci. 113:72を参照されたい)、および新しく形成されるカルボキシ末端アミノ酸への既に合成されているGPIアンカー分子の同時移行(例えば、https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK20711/から入手可能な、Varki A, et al., editors. Essentials of Glycobiology. Cold Spring Harbor (NY): Cold Spring Harbor Laboratory Press; 1999. Chapter 10, Glycophospholipid Anchors.を参照されたい)がもたらされる。ある特定の態様では、膜結合ドメインはGPIシグナル配列である。
【0729】
いくつかの態様では、本明細書において提供される多量体化ドメインは、細胞内シグナル伝達領域、例えば、一次シグナル伝達領域および/または共刺激シグナル伝達ドメインに連結される。いくつかの態様では、多量体化ドメインは細胞外にあり、膜貫通ドメインを介して細胞内シグナル伝達領域に連結される。いくつかの態様では、多量体化ドメインは細胞内にあり、膜貫通ドメインを介してリガンド(例えば抗原)結合ドメインに連結される。リガンド結合ドメインおよび膜貫通ドメインは、直接的または間接的に連結され得る。いくつかの態様では、リガンド結合ドメインおよび膜貫通部はスペーサー、例えば本明細書において記載される任意のものによって連結される。いくつかの態様では、多量体化ドメインは、FK506結合タンパク質(FKBP)またはその誘導体もしくは断片、例えばFKBP12v36である。いくつかの例では、誘導物質、例えばリミドゥシドの導入の際に、制御可能なCARのポリペプチドは多量体化、例えば二量体化し、それによって、多量体化ドメインと結合したシグナル伝達ドメインを刺激し、多量複合体を形成する。多量複合体の形成は、細胞内シグナル伝達領域を通してシグナルを誘導する、モジュレートする、刺激する、活性化する、媒介する、および/または促進する。
【0730】
いくつかの態様では、制御可能なCARを通したシグナル伝達は、条件的な多量体化を通して、条件的な様式でモジュレートされ得る。例えば、制御可能なCARのポリペプチドの多量体化ドメインは、誘導物質に結合して多量体化することができ、誘導物質は外因的に提供することができる。いくつかの局面では、誘導物質の結合の際に、多量体化ドメインは多量体化し、シグナル伝達ドメインを通してシグナル伝達を誘導する、モジュレートする、活性化する、媒介する、および/または促進する。例えば、誘導物質は外因的に投与することができ、それによって、制御可能なCARを含む操作された細胞に与えられるシグナルの場所および持続時間を調節する。いくつかの態様では、制御可能なCARのポリペプチドの多量体化ドメインは、誘導物質に結合して多量体化することができ、誘導物質は内因的に提供することができる。例えば、誘導物質は、操作された細胞(例えば、操作されたT細胞)によって、誘導性または条件的プロモーターの調節下で、組換え発現ベクターから、または操作された細胞のゲノムから、内因的に生成することができ、それによって、制御可能なCARを含む操作された細胞に与えられるシグナルの場所および持続時間を調節する。
【0731】
いくつかの態様では、制御可能なCARは自殺スイッチを使用して調節される。例示的なキメラ受容体は誘導性カスパーゼ-9(iCasp9)システムを利用し、これは、ヒトカスパーゼ-9と改変FKBP二量体化ドメインの融合体を含み、誘導物質、例えばAP1903と結合する際に、条件的な二量体化を可能にする。誘導物質の結合による二量体化の際に、カスパーゼ-9は活性化され、キメラ受容体を発現する細胞のアポトーシスおよび細胞死をもたらす(例えば、Di Stasi et al. (2011) N. Engl. J. Med. 365:1673-1683を参照されたい)。
【0732】
いくつかの態様では、例示的な制御可能なCARは、以下のものを含む:(1)以下のものを含む、制御可能なCARの第1のポリペプチド:(i)細胞内シグナル伝達領域;および(ii)誘導物質に結合することができる少なくとも1つの多量体化ドメイン;および(2)以下のものを含む、制御可能なCARの第2のポリペプチド:(i)リガンド(例えば抗原)結合ドメイン;(ii)膜貫通ドメイン;および(iii)誘導物質に結合することができる少なくとも1つの多量体化ドメイン。いくつかの態様では、例示的な制御可能なCARは、以下のものを含む:(1)以下のものを含む、制御可能なCARの第1のポリペプチド:(i)膜貫通ドメインまたはアシル化ドメイン;(ii)細胞内シグナル伝達領域;および(iii)誘導物質に結合することができる少なくとも1つの多量体化ドメイン;ならびに(2)以下のものを含む、制御可能なCARの第2のポリペプチド:(i)リガンド(例えば抗原)結合ドメイン;(ii)膜貫通ドメイン;および(iii)誘導物質に結合することができる少なくとも1つの多量体化ドメイン。いくつかの態様では、細胞内シグナル伝達領域は共刺激シグナル伝達ドメインをさらに含む。いくつかの態様では、第2のポリペプチドは共刺激シグナル伝達ドメインをさらに含む。いくつかの態様では、両方のポリペプチドの少なくとも1つの多量体化ドメインは細胞内にある。いくつかの態様では、両方のポリペプチドの少なくとも1つの多量体化ドメインは細胞外にある。
【0733】
いくつかの態様では、例示的な制御可能なCARは、以下のものを含む:(1)以下のものを含む、制御可能なCARの第1のポリペプチド:(i)誘導物質に結合することができる少なくとも1つの細胞外多量体化ドメイン;(ii)膜貫通ドメイン;および(iii)細胞内シグナル伝達領域;ならびに(2)以下のものを含む、制御可能なCARの第2のポリペプチド:(i)リガンド(例えば抗原)結合ドメイン;(ii)誘導物質に結合することができる少なくとも1つの細胞外多量体化ドメイン、および(iii)膜貫通ドメイン、アシル化ドメイン、またはGPIシグナル配列。いくつかの態様では、細胞内シグナル伝達領域は共刺激シグナル伝達ドメインをさらに含む。いくつかの態様では、第2のポリペプチドは共刺激シグナル伝達ドメインをさらに含む。
【0734】
いくつかの態様では、例示的な制御可能なCARは、以下のものを含む:(1)以下のものを含む、制御可能なCARの第1のポリペプチド:(i)膜貫通ドメインまたはアシル化ドメイン;(ii)少なくとも1つの共刺激ドメイン;(iii)誘導物質に結合することができる多量体化ドメイン、および(iv)細胞内シグナル伝達領域;および(iii)少なくとも1つの共刺激ドメイン;ならびに(2)以下のものを含む、制御可能なCARの第2のポリペプチド:(i)リガンド(例えば抗原)結合ドメイン;(ii)膜貫通ドメイン;(iii)少なくとも1つの共刺激ドメイン;および(iv)誘導物質に結合することができる少なくとも1つの細胞外多量体化ドメイン。
【0735】
いくつかの局面では、例示的な制御可能なCARに記載される領域および/またはドメインのいずれかを様々な異なる順番で配列することができる。いくつかの局面では、制御可能なCARの様々なポリペプチドは、細胞膜の同じ側に多量体化ドメインを含み、例えば、2つ以上のポリペプチドの多量体化ドメインは全て細胞内にあるか、または全て細胞外にある。
【0736】
制御可能なCARの変形は公知であり、例えば、米国特許出願公開第2014/0286987号、米国特許出願公開第2015/0266973号、国際特許出願公開第WO2014/127261号、および国際特許出願公開第WO2015/142675号に記載されている。
【0737】
3. キメラ自己抗体受容体(CAAR)
いくつかの態様では、改変TGFBR2遺伝子座にコードされる組換え受容体はキメラ自己抗体受容体(CAAR)である。いくつかの態様では、CAARは、自己抗体に結合する、例えば特異的に結合する、または自己抗体を認識する。いくつかの態様では、CAARを発現する細胞、例えば、CAARを発現するように操作されたT細胞は、正常な抗体発現細胞ではなく、自己抗体発現細胞に結合し、これを死滅させるために使用することができる。いくつかの態様では、CAAR発現細胞は、自己抗原の発現と関連する自己免疫疾患、例えば自己免疫疾患を治療するために使用することができる。いくつかの態様では、CAAR発現細胞は、最終的に自己抗体を生成し、その細胞表面上に自己抗体を提示するB細胞を標的とすることができ、これらのB細胞を治療介入のための疾患特異的標的としてマークをつけることができる。いくつかの態様では、CAAR発現細胞は、抗原特異的キメラ自己抗体受容体を使用して疾患を引き起こすB細胞を標的とすることによって、自己免疫疾患において病原性B細胞を効率的に標的とし死滅させるために使用することができる。いくつかの態様では、組換え受容体はCAAR、例えば、米国特許出願公開第US2017/0051035号に記載される任意のものである。
【0738】
いくつかの態様では、CAARは、自己抗体結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および1つまたは複数の細胞内シグナル伝達領域またはドメイン(互換的に、細胞質内シグナル伝達ドメインまたは領域とも呼ばれる)を含む。いくつかの態様では、細胞内シグナル伝達領域は細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、一次シグナル伝達領域、T細胞において一次活性化シグナルを刺激および/または誘導することができるシグナル伝達ドメイン、T細胞受容体(TCR)成分のシグナル伝達ドメイン(例えばCD3ゼータ(CD3ζ)鎖の細胞内シグナル伝達ドメインもしくは領域またはそれらの機能的バリアントもしくはシグナル伝達部分)、ならびに/あるいは免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)を含むシグナル伝達ドメインであるか、あるいはこれらを含む。
【0739】
いくつかの態様では、自己抗体結合ドメインは自己抗原またはその断片を含む。自己抗原の選択は、標的とされる自己抗体のタイプに依存し得る。例えば、自己抗原は、特定の病態、例えば自己免疫疾患、例えば自己抗体媒介性自己免疫疾患と関連する標的細胞、例えばB細胞上の自己抗体を認識という理由で、選択され得る。いくつかの態様では、自己免疫疾患としては尋常性天疱瘡(PV)が挙げられる。例示的な自己抗原としては、デスモグレイン1(Dsg1)およびDsg3が挙げられる。
【0740】
4. T細胞受容体(TCR)
いくつかの態様では、改変TGFBR2遺伝子座にコードされる組換え受容体は、標的ポリペプチド、例えば、腫瘍の抗原、ウイルス性または自己免疫性タンパク質の細胞内および/もしくはペプチドエピトープまたはT細胞エピトープを認識する、T細胞受容体(TCR)またはその一部分、例えば、組換えTCRまたはその抗原結合部分である。いくつかの局面では、コードされる受容体は、組換えTCRであるか、または該TCRを含む。いくつかの局面では、組換えTCRは単鎖TCRまたは多鎖TCR、例えば二鎖TCRである。
【0741】
いくつかの態様では、「T細胞受容体」または「TCR」は、可変αおよびβ鎖(それぞれ、TCRαおよびTCRβとしても知られている)もしくは可変γおよびδ鎖(それぞれ、TCRγおよびTCRδとしても知られている)またはそれらの抗原結合部分を含み、MHC分子に結合したペプチドに特異的に結合することができる分子である。いくつかの態様では、TCRはαβ形態である。いくつかの態様では、αβおよびγδ形態で存在するTCRは、一般に構造的に類似しているが、それらを発現するT細胞は、異なる解剖学的場所または機能を有し得る。TCRは、細胞の表面上に、または可溶性形態で見出すことができる。いくつかの態様では、TCRは、TCRαおよびTCRβ;またはTCRγおよびTCRδ鎖を含む二鎖TCRである。いくつかの局面では、TCRは、これが、主要組織適合抗原複合体(MHC)分子に結合した抗原の認識に一般に関与するT細胞(またはTリンパ球)の表面上に見出される。
【0742】
いくつかの態様では、TCRは、完全長TCRまたはその抗原結合部分もしくは抗原結合断片を包含する。いくつかの態様では、TCRは、αβ形態またはγδ形態のTCRを含めて、インタクトなまたは完全長のTCRである。いくつかの態様では、TCRは、完全長TCRより小さいが、MHC分子中に結合した特定のペプチドに結合する、例えばMHC-ペプチド複合体に結合する、抗原結合部分である。場合によっては、TCRの抗原結合部分または断片は、完全長のまたはインタクトなTCRの構造ドメインの一部分のみを含むことができるが、それにもかかわらず、完全なTCRが結合するペプチドエピトープ、例えばMHC-ペプチド複合体に結合することができる。場合によっては、抗原結合部分は、TCRの可変ドメイン、例えば、TCRの可変α(Vα)鎖および可変β(Vβ)鎖、または特定のMHC-ペプチド複合体への結合のための結合部位を形成するのに十分であるそれらの抗原結合断片を含む。
【0743】
いくつかの態様では、コードされるTCRの可変ドメインは高頻度可変ループまたは相補性決定領域(CDR)を含み、これらは、一般に、抗原認識ならびに結合能力および特異性に対して主に寄与するものである。いくつかの態様では、TCRのCDRまたはそれらの組み合わせは、所与のTCR分子の抗原結合部位の全部または実質的に全部を形成する。TCR鎖の可変領域内の様々なCDRは、一般に、CDRと比較して、TCR分子の中で一般に可変性をあまり示さないフレームワーク領域(FR)によって分離される(例えば、Jores et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. U.S.A. 87:9138, 1990;Chothia et al., EMBO J. 7:3745, 1988を参照されたい;Lefranc et al., Dev. Comp. Immunol. 27:55, 2003も参照されたい)。いくつかの態様では、CDR3は抗原結合または特異性に関与する主なCDRであり、または抗原認識にとって、および/もしくはペプチド-MHC複合体のプロセッシングを受けたペプチド部分との相互作用にとって、所与のTCR可変領域の3つのCDRの中で最も重要である。いくつかの状況では、アルファ鎖のCDR1は、ある特定の抗原ペプチドのN末端部分と相互作用することができる。いくつかの状況では、β鎖のCDR1はペプチドのC末端部分と相互作用することができる。いくつかの状況では、CDR2は、MHC-ペプチド複合体のMHC部分との相互作用もしくは該MHC部分の認識に最も強く寄与するか、またはMHC-ペプチド複合体のMHC部分との相互作用もしくは該MHC部分の認識に関与する主要なCDRである。いくつかの態様では、β鎖の可変領域はさらなる超可変領域(CDR4またはHVR4)を含むことができ、超可変領域は、一般に超抗原結合に関与し、抗原認識には関与しない(Kotb (1995) Clinical Microbiology Reviews, 8:411-426)。
【0744】
いくつかの態様では、コードされるTCRは、定常ドメイン、膜貫通ドメイン、および/または短い細胞質尾部も含むことができる(例えば、Janeway et al., Immunobiology: The Immune System in Health and Disease, 3rd Ed., Current Biology Publications, p. 4:33, 1997を参照されたい)。いくつかの局面では、TCRのそれぞれの鎖は、1つのN末端免疫グロブリン可変ドメイン、1つの免疫グロブリン定常ドメイン、膜貫通領域、およびC末端の短い細胞質尾部を有し得る。いくつかの態様では、TCRは、シグナルトランスダクションの媒介に関与するCD3複合体の不変タンパク質と結合している。
【0745】
いくつかの態様では、コードされるTCR鎖は1つまたは複数の定常ドメインを含む。例えば、所与のTCR鎖(例えば、α鎖またはβ鎖)の細胞外部分は、2つの免疫グロブリン様ドメイン、例えば、1つの可変ドメイン(例えば、VαまたはVβ;典型的には、Kabatの番号付け、Kabat et al., “Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Dept. Health and Human Services, Public Health Service National Institutes of Health, 1991, 5th ed.に基づいて、アミノ酸1~116)および細胞膜に隣接した1つの定常ドメイン(例えば、α鎖定常ドメインもしくはCα、典型的には、Kabatの番号付けに基づいて該鎖の位置117~259、またはβ鎖定常ドメインもしくはCβ、典型的には、Kabatに基づいて該鎖の位置117~295)を含むことができる。例えば、場合によっては、2つの鎖によって形成されるTCRの細胞外部分は、2つの膜近位定常ドメインおよび2つの膜遠位可変ドメインを含み、これらの可変ドメインはそれぞれCDRを含む。TCRの定常ドメインは、システイン残基がジスルフィド結合を形成し、それによってTCRの2つの鎖を連結する短い接続配列を含むことができる。いくつかの態様では、TCRは、αおよびβ鎖のそれぞれにさらなるシステイン残基を有することができ、その結果、TCRは定常ドメイン中に2つのジスルフィド結合を含む。
【0746】
いくつかの態様では、コードされるTCR鎖は膜貫通ドメインを含む。いくつかの態様では、膜貫通ドメインは正に荷電している。場合によっては、TCR鎖は細胞質尾部を含む。場合によっては、構造は、TCRがCD3およびそのサブユニットのような他の分子と結合することを可能にする。例えば、膜貫通領域を有する定常ドメインを含むTCRは、細胞膜中にタンパク質を係留することができ、かつCD3シグナル伝達装置または複合体の不変サブユニットと結合することができる。CD3シグナル伝達サブユニット(例えば、CD3γ、CD3δ、CD3ε、およびCD3ζ鎖)の細胞内尾部は、TCR複合体のシグナル伝達能力に関与する1つまたは複数の免疫受容活性化チロシンモチーフまたはITAMを含む。
【0747】
いくつかの態様では、コードされるTCRは様々なドメインまたは領域を含む。場合によっては、正確なドメインまたは領域は、特定の構造的もしくはホモロジーモデリングまたは特定のドメインを説明するのに使用される他の特色によって変動し得る。組換え受容体、例えばTCRのドメイン構成を説明するのに使用されるSEQ ID NOとして記載される特定の配列への言及を含めて、アミノ酸への言及は例示目的のためであり、提供される態様の範囲を制限することを意図しないことが理解されよう。場合によっては、特定のドメイン(例えば、可変または定常)は、数アミノ酸(例えば、1つ、2つ、3つ、または4つ)長くてもよいし、短くてもよい。いくつかの局面では、TCRの残基は公知であるか、または国際免疫遺伝学情報システム(International Immunogenetics Information System)(IMGT)番号付けシステム(例えば、www.imgt.orgを参照されたい;Lefranc et al. (2003) Developmental and Comparative Immunology, 27;55-77;およびThe T Cell Factsbook 2nd Edition, Lefranc and LeFranc Academic Press 2001も参照されたい)に従って特定することができる。このシステムを使用して、TCR Vα鎖および/またはVβ鎖内のCDR1配列は残基番号27~38(両端の値を含む)の間に存在するアミノ酸に対応し、TCR Vα鎖および/またはVβ鎖内のCDR2配列は残基番号56~65(両端の値を含む)の間に存在するアミノ酸に対応し、TCR Vα鎖および/またはVβ鎖内のCDR3配列は残基番号105~117(両端の値を含む)の間に存在するアミノ酸に対応する。
【0748】
いくつかの態様では、TCRのα鎖およびβ鎖はそれぞれ定常ドメインをさらに含む。いくつかの態様では、α鎖定常ドメイン(Cα)およびβ鎖定常ドメイン(Cβ)は個々に哺乳類であり、例えば、ヒトまたはマウスの定常ドメインである。いくつかの態様では、定常ドメインは細胞膜に隣接している。例えば、場合によっては、2つの鎖によって形成されるコードされるTCRの細胞外部分は、2つの膜近位定常ドメインおよび2つの膜遠位可変ドメインを含み、これらの可変ドメインはそれぞれCDRを含む。
【0749】
いくつかの態様では、CαおよびCβドメインのそれぞれはヒトである。いくつかの態様では、CαはTRAC遺伝子(IMGT命名法)にコードされるか、またはそのバリアントである。いくつかの態様では、CβはTRBC1もしくはTRBC2遺伝子(IMGT命名法)にコードされるか、またはそれらのバリアントである。いくつかの態様では、提供されるTCRまたはその抗原結合断片のいずれかはヒト/マウスキメラTCRであり得る。場合によっては、コードされるTCRまたはその抗原結合断片は、マウス定常領域を含むα鎖および/またはβ鎖を有する。いくつかの局面では、Cαおよび/またはCβ領域はマウス定常領域である。任意のそのような態様のいくつかでは、コードされるTCRまたはその抗原結合断片は、コドン最適化されたヌクレオチド配列にコードされる。
【0750】
任意のそのような態様のいくつかでは、結合分子またはTCRまたはその抗原結合断片は、単離もしくは精製されるか、または組換え型である。任意のそのような態様のいくつかでは、結合分子またはTCRまたはその抗原結合断片はヒトである。
【0751】
いくつかの態様では、コードされるTCRは、例えば1つまたは複数のジスルフィド結合によって連結されている2つの鎖αおよびβのヘテロ二量体でもよい。いくつかの態様では、コードされるTCRの定常ドメインは、システイン残基がジスルフィド結合を形成し、それによって、コードされるTCRの2つの鎖を連結する短い接続配列を含むことができる。いくつかの態様では、TCRは、αおよびβ鎖のそれぞれにさらなるシステイン残基を有することができ、その結果、コードされるTCRは定常ドメイン中に2つのジスルフィド結合を含む。いくつかの態様では、定常ドメインおよび可変ドメインのそれぞれは、システイン残基によって形成されるジスルフィド結合を含む。
【0752】
いくつかの態様では、コードされるTCRは、2つの鎖αおよびβもしくはγおよびδのヘテロ二量体、例えば二鎖TCRでもよく、またはこれは単鎖TCRコンストラクトでもよい。いくつかの態様では、TCRは、例えば1つまたは複数のジスルフィド結合によって連結されている2つの分離した鎖を含むヘテロ二量体(二鎖TCR、αおよびβ鎖またはγおよびδ鎖)である。
【0753】
いくつかの態様では、コードされるTCRは、実質的に完全長のコード配列が容易に入手可能な公知のTCR配列、例えば、Vα、β鎖の配列から作出することができる。V鎖配列を含む完全長TCR配列を細胞供給源から得るための方法は周知である。いくつかの態様では、TCRをコードする核酸は、様々な供給源から、例えば、所与の1つまたは複数の細胞内のTCRをコードする核酸または該細胞から単離された該核酸のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、あるいは公的に入手可能なTCR DNA配列の合成によって、得ることができる。
【0754】
いくつかの態様では、コードされる組換え受容体は、組換えTCRおよび/または天然に存在するT細胞からクローニングされたTCRを含む。いくつかの態様では、標的抗原(例えばがん抗原)に対する高親和性T細胞クローンが特定され、患者から単離され、細胞中に導入される。いくつかの態様では、標的抗原に対するTCRクローンは、ヒト免疫系遺伝子(例えば、ヒト白血球抗原システム、またはHLA)で操作されたトランスジェニックマウスで作出された。例えば、腫瘍抗原を参照されたい(例えば、Parkhurst et al. (2009) Clin Cancer Res. 15:169-180およびCohen et al. (2005) J Immunol. 175:5799-5808を参照されたい。いくつかの態様では、標的抗原に対するTCRを単離するためにファージディスプレイが使用される(例えば、Varela-Rohena et al. (2008) Nat Med. 14:1390-1395およびLi (2005) Nat Biotechnol. 23:349-354を参照されたい。
【0755】
いくつかの態様では、コードされるTCRは、生物学的供給源から、例えば細胞から、例えばT細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)、T細胞ハイブリドーマ、または他の公的に入手可能な供給源から得られる。いくつかの態様では、T細胞はインビボで単離された細胞から得ることができる。いくつかの態様では、TCRは胸腺的に選択されたTCRである。いくつかの態様では、TCRはネオエピトープ拘束性TCRである。いくつかの態様では、T細胞は培養されたT細胞ハイブリドーマまたはクローンであり得る。いくつかの態様では、TCRまたはその抗原結合部分またはその抗原結合断片は、TCRの配列の知識から合成的に作出することができる。
【0756】
いくつかの態様では、コードされるTCRは、標的ポリペプチド抗原またはその標的T細胞エピトープに対して候補TCRのライブラリーをスクリーニングすることから特定または選択されたTCRから作出される。TCRライブラリーは、PBMC、脾臓、または他のリンパ器官中に存在する細胞を含めて、対象から単離されたT細胞からのVαおよびVβのレパートリーの増幅によって作出することができる。場合によっては、T細胞は腫瘍浸潤リンパ球(TIL)から増幅することができる。いくつかの態様では、TCRライブラリーはCD4+またはCD8+細胞から作出することができる。いくつかの態様では、TCRは、健康な対象の正常型のT細胞供給源、すなわち正常なTCRライブラリーから増幅することができる。いくつかの態様では、TCRは、病的対象のT細胞供給源、すなわち、病的TCRライブラリーから増幅することができる。いくつかの態様では、縮重プライマーを使用して、例えば、ヒトから得られたT細胞などの試料におけるRT-PCRによって、VαおよびVβの遺伝子レパートリーを増幅することができる。いくつかの態様では、単鎖TCR(scTv)ライブラリーなどのライブラリーは、増幅産物がリンカーによって分離されるようにクローニングされるか、またはアセンブルされるナイーブVαおよびVβライブラリーからアセンブルすることができる。対象および細胞の供給源に応じて、ライブラリーはHLAアレル特異的であり得る。あるいは、いくつかの態様では、TCRライブラリーは親またはスキャフォールドTCR分子の変異誘発または多様化によって作出することができる。
【0757】
いくつかの局面では、コードされるTCRは、例えばαまたはβ鎖の変異誘発などによって、指向性進化に供される。いくつかの局面では、TCRのCDR内の特定の残基が変更される。いくつかの態様では、選択されたTCRを親和性成熟によって改変することができる。いくつかの態様では、抗原特異的T細胞は、例えばペプチドに対するCTL活性を評価するためのスクリーニングによって、選択することができる。いくつかの局面では、例えば抗原特異的T細胞上に存在する、コードされるTCRは、例えば、結合活性、例えば、抗原に対する特定の親和性または結合力によって、選択することができる。
【0758】
いくつかの態様では、コードされるTCRまたはその抗原結合部分は、改変または操作されたものである。いくつかの態様では、指向性進化方法は、特性が変わった、例えば、特定のMHC-ペプチド複合体に対する親和性がより高いTCRを作出するために使用される。いくつかの態様では、指向性進化は、限定されないが、酵母ディスプレイ(Holler et al. (2003) Nat Immunol, 4, 55-62;Holler et al. (2000) Proc Natl Acad Sci U S A, 97, 5387-92)、ファージディスプレイ(Li et al. (2005) Nat Biotechnol, 23, 349-54)、またはT細胞ディスプレイ(Chervin et al. (2008) J Immunol Methods, 339, 175-84)を含めたディスプレイ方法によって達成される。いくつかの態様では、ディスプレイアプローチは、公知、親、または参照TCRを操作または改変することを含む。例えば、場合によっては、野生型TCRを、CDRの1つまたは複数の残基において変異を受けた、変異誘発されたTCRを生成するための鋳型として使用することができ、望ましい変化した特性、例えば、望ましい標的抗原に対するより高い親和性を有する変異体が選択される。
【0759】
いくつかの態様では、抗原は、神経膠腫関連抗原、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、アルファフェトプロテイン(AFP)、B細胞成熟抗原(BCMA、BCM)、B細胞活性化因子受容体(BAFFR、BR3)、ならびに/または膜貫通活性化物質およびCAML相互作用物質(transmembrane activator and CAML interactor)(TACI)、Fc受容体様5(FCRL5、FcRH5)、レクチン反応性AFP、サイログロブリン、RAGE-1、MN-CA IX、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2(AS)、腸カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、M-CSF、メラニン-A/MART-1、WT-1、S-100、MBP、CD63、MUC1(例えば、MUC1-8)、p53、Ras、サイクリンB1、HER-2/neu、癌胎児性抗原(CEA)、gp100、MAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A5、MAGE-A6、MAGE-A7、MAGE-A8、MAGE-A9、MAGE-A10、MAGE-A11、MAGE-A11、MAGE-B1、MAGE-B2、MAGE-B3、MAGE-B4、MAGE-C1、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、pl5、チロシナーゼ、チロシナーゼ関連タンパク質1(TRP-1)、チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP-2)、β-カテニン、NY-ESO-1、LAGE-1a、PP1、MDM2、MDM4、EGVFvIII、Tax、SSX2、テロメラーゼ、TARP、pp65、CDK4、ビメンチン、S100、eIF-4A1、IFN誘導性p78、およびメラノトランスフェリン(p97)、ウロプラキンII、前立腺特異的抗原(PSA)、ヒトカリクレイン(huK2)、前立腺特異的膜抗原(PSM)、および前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、好中球エラスターゼ、エフリンB2、BA-46、ベータ-カテニン、Bcr-abl、E2A-PRL、H4-RET、IGH-IGK、MYL-RAR、カスパーゼ8、またはB-Raf抗原であり得る、腫瘍抗原である。他の腫瘍抗原としては、FRa、CD24、CD44、CD133、CD166、epCAM、CA-125、HE4、Oval、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、uPA、PAI-1、CD19、CD20、CD22、ROR1、メソテリン、CD33/IL3Ra、c-Met、PSMA、糖脂質F77、GD-2、インスリン増殖因子(IGF)-I、IGF-IIおよびIGF-I受容体に由来する任意のものを挙げることができる。特定の腫瘍関連抗原またはT細胞エピトープが公知である(例えば、www.cancerimmunity.org/peptide/から入手可能である、van der Bruggen et al. (2013) Cancer Immun;Cheever et al. (2009) Clin Cancer Res, 15, 5323-37を参照されたい)。
【0760】
いくつかの態様では、抗原はウイルス抗原である。HIV、HTLV、および他のウイルスのウイルスゲノムに由来するペプチドを含めて、多くのウイルス抗原標的が特定されており、公知である(例えば、Addo et al. (2007) PLoS ONE, 2, e321;Tsomides et al. (1994) J Exp Med, 180, 1283-93;Utz et al. (1996) J Virol, 70, 843-51を参照されたい)。例示的なウイルス抗原としては、限定されないが、A型肝炎、B型肝炎(例えば、HBVコアおよび表面抗原(HBVc、HBVs))、C型肝炎(HCV)、エプスタインバーウイルス(例えば、EBVA)、ヒトパピローマウイルス(HPV;例えば、E6およびE7)、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV1)、カポジ肉腫ヘルペスウイルス(KSHV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、インフルエンザウイルス、ラッサウイルス、HTLN-1、HIN-1、HIN-II、CMN、EBN、またはHPN由来の抗原が挙げられる。いくつかの態様では、標的タンパク質は、細菌性抗原または他の病原体抗原、例えば、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)(MT)抗原、トリパノソーマ(trypanosome)、例えばトリパノソーマ・クルージ(Tiypansoma cruzi)(T.クルージ)の表面抗原(TSA)などの抗原、またはマラリア抗原である。特定のウイルス抗原もしくはエピトープまたは他の病原体抗原もしくはT細胞エピトープは公知である(例えば、Addo et al. (2007) PLoS ONE, 2:e321;Anikeeva et al. (2009) Clin Immunol, 130:98-109を参照されたい)。
【0761】
いくつかの態様では、抗原は、がんと関連するウイルス、例えば発がん性ウイルスに由来する抗原である。例えば、発がん性ウイルスは、ある特定のウイルスからの感染が、様々なタイプのがんの発生につながることが公知であるもの、例えば、A型肝炎、B型肝炎(例えば、HBVコアおよび表面抗原(HBVc、HBVs))、C型肝炎(HCV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、肝炎ウイルス感染、エプスタインバーウイルス(EBV)、ヒトヘルペスウイルス8(HHV-8)、ヒトT細胞白血病ウイルス-1(HTLV-1)、ヒトT細胞白血病ウイルス-2(HTLV-2)、またはサイトメガロウイルス(CMV)抗原である。
【0762】
いくつかの態様では、ウイルス抗原はHPV抗原であり、これは、場合によっては、子宮頚がんの発生のより大きな危険性につながり得る。いくつかの態様では、抗原は、HPV-16抗原、およびHPV-18抗原、およびHPV-31抗原、HPV-33抗原、またはHPV-35抗原であり得る。いくつかの態様では、ウイルス抗原は、HPV-16抗原(例えば、HPV-16のE1、E2、E6および/もしくはE7タンパク質の血清反応性領域。例えば、米国特許第6,531,127号を参照されたい)またはHPV-18抗原(例えば、米国特許第5,840,306号に記載される、HPV-18のL1および/もしくはL2タンパク質の血清反応性領域)である。いくつかの態様では、ウイルス抗原は、HPV-16のE6および/またはE7タンパク質由来のHPV-16抗原である。いくつかの態様では、TCRはHPV-16 E6またはHPV-16 E7に対するTCRである。いくつかの態様では、TCRは、例えば、WO2015/184228、WO2015/009604、およびWO2015/009606に記載されているTCRである。
【0763】
いくつかの態様では、ウイルス抗原はHBVまたはHCV抗原であり、これらは、場合によっては、HBVまたはHCV陰性対象と比べて、肝臓がんの発生の大きな危険性につながり得る。例えば、いくつかの態様では、異種抗原はHBV抗原、例えば、B型肝炎コア抗原またはB型肝炎エンベロープ抗原である(US2012/0308580)。
【0764】
いくつかの態様では、ウイルス抗原はEBV抗原であり、これは、場合によっては、EBV陰性対象と比べて、バーキットリンパ腫、上咽頭癌、およびホジキン病の発生についての大きな危険性につながり得る。例えば、EBVはヒトヘルペスウイルスであり、これは、場合によっては、多様な組織起源の多数のヒト腫瘍と関連して見出される。無症候性感染として主に見出されるが、EBV陽性腫瘍は、EBNA-1、LMP-1、およびLMP-2Aなどのウイルス遺伝子産物の活発な発現を特徴とし得る。いくつかの態様では、異種抗原は、エプスタインバー核抗原(EBNA)-1、EBNA-2、EBNA-3A、EBNA-3B、EBNA-3C、EBNA-リーダータンパク質(EBNA-LP)、潜在性膜タンパク質LMP-1、LMP-2A、およびLMP-2B、EBV-EA、EBV-MA、またはEBV-VCAを含むことができるEBV抗原である。
【0765】
いくつかの態様では、ウイルス抗原はHTLV-1またはHTLV-2抗原であり、これらは、場合によってはHTLV-1またはHTLV-2陰性対象と比べて、T細胞白血病の発生についての大きな危険性につながり得る。例えば、いくつかの態様では、異種抗原はHTLV-抗原、例えばTAXである。
【0766】
いくつかの態様では、ウイルス抗原はHHV-8抗原であり、これは、場合によっては、HHV-8陰性対象と比べて、カポジ肉腫の発生についての大きな危険性につながり得る。いくつかの態様では、異種抗原はCMV抗原、例えばpp65またはpp64である(米国特許第8,361,473号を参照されたい)。
【0767】
いくつかの態様では、抗原は自己抗原、例えば、自己免疫疾患または障害と関連するポリペプチドの抗原である。いくつかの態様では、自己免疫疾患または障害は、多発性硬化症(MS)、関節リウマチ(RA)、シェーグレン症候群、強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、全身性エリテマトーデス、若年性関節リウマチ、強直性脊椎炎、重症筋無力症(MG)、水疱性類天疱瘡(真皮-上皮接合部の基底膜に対する抗体)、天疱瘡(ムコ多糖タンパク質複合体または細胞内セメント物質に対する抗体)、糸球体腎炎(糸球体基底膜に対する抗体)、グッドパスチャー症候群、自己免疫性溶血性貧血(赤血球に対する抗体)、橋本病(甲状腺に対する抗体)、悪性貧血(内因子に対する抗体)、特発性血小板減少性紫斑病(血小板に対する抗体)、グレーブス病、またはアジソン病(サイログロブリンに対する抗体)であり得る。いくつかの態様では、自己抗原、例えば、前述の自己免疫疾患のうちの1つと関連する自己抗原は、コラーゲン、例えばII型コラーゲン、マイコバクテリア熱ショックタンパク質、サイログロブリン、アセチルコリン受容体(AcHR)、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、またはプロテオリピドタンパク質(PLP)であり得る。特定の自己免疫関連エピトープまたは抗原は公知である(例えば、Bulek et al. (2012) Nat Immunol, 13:283-9;Harkiolaki et al. (2009) Immunity, 30:348-57;Skowera et al. (2008) J Clin Invest, 1(18): 3390-402を参照されたい)。
【0768】
いくつかの態様では、関心対象のTCRを生成または作出するのに使用するための標的ポリペプチドのペプチドは公知であるか、または容易に特定することができる。いくつかの態様では、TCRまたは抗原結合部分の作出における使用に適するペプチドは、以下に記載の標的ポリペプチドなどの関心対象の標的ポリペプチド中のHLA拘束性モチーフの存在に基づいて決定することができる。いくつかの態様では、ペプチドは、利用可能なコンピュータ予測モデルを使用して特定される。いくつかの例では、コンピュータ予測モデルを使用したHLA-A0201結合モチーフならびにプロテアソームおよび免疫プロテアソームについての開裂部位が公知である。いくつかの態様では、MHCクラスI結合部位の予測に関して、そのようなモデルとしては、限定されないが、ProPred1(Singh and Raghava (2001) Bioinformatics 17(12):1236-1237、およびSYFPEITHI(Schuler et al. (2007) Immunoinformatics Methods in Molecular Biology, 409(1): 75-93 2007を参照されたい)が挙げられる。いくつかの態様では、MHC拘束性エピトープはHLA-A0201であり、これは、全コーカサス人のおよそ39~46%で発現しており、したがって、TCRまたは他のMHCペプチド結合分子を調製する使用のためのMHC抗原の適切な選択に相当する。
【0769】
いくつかの態様では、TCRまたはその抗原結合部分は、組換えで生成された天然タンパク質、または1つもしくは複数の特性、例えば結合性が変更されたそれらの変異形態であり得る。いくつかの態様では、TCRは、ヒト、マウス、ラット、または他の哺乳動物などの様々な動物種のうちの1つに由来し得る。TCRは、細胞結合性または可溶性形態であり得る。いくつかの態様では、提供される方法のために、TCRは細胞の表面上で発現している細胞結合性形態である。
【0770】
いくつかの態様では、コードされる組換えTCRは完全長TCRである。いくつかの態様では、組換えTCRは抗原結合部分である。いくつかの態様では、TCRは二量体TCR(dTCR)である。いくつかの態様では、TCRは単鎖TCR(scTCR)である。いくつかの態様では、dTCRまたはscTCRは、例えば、国際特許出願公開第WO03/020763号、第WO04/033685号、および第WO2011/044186号に記載される構造を有する。
【0771】
いくつかの態様では、コードされる組換えTCRは膜貫通配列に対応する配列を含む。いくつかの態様では、TCRは細胞質内配列に対応する配列を含まない。いくつかの態様では、TCRは、CD3とともにTCR複合体を形成することができる。いくつかの態様では、dTCRまたはscTCRを含めた組換えTCRのいずれかは、T細胞の表面上に活発なTCRをもたらすシグナル伝達ドメインに連結され得る。いくつかの態様では、組換えTCRは細胞の表面上で発現している。導入または操作されたジスルフィド結合を含むdTCRまたはscTCRのいくつかの態様では、ネイティブジスルフィド結合は存在しない。
【0772】
ある特定の態様では、コードされるTCRは、TCRα鎖とTCRβ鎖の間に1つまたは複数の非天然ジスルフィド架橋を形成することができる1つまたは複数のシステイン残基を導入するための1つまたは複数の修飾を含む。いくつかの態様では、コードされるTCRは、TCRβ鎖と非天然ジスルフィド結合を形成することができる1つまたは複数のシステイン残基を含むTCRα定常ドメインを含むTCRα鎖またはその一部分を含む。いくつかの態様では、導入遺伝子は、TCRα鎖と非天然ジスルフィド結合を形成することができる1つまたは複数のシステイン残基を含むTCRβ定常ドメインを含むTCRβ鎖またはその一部分をコードする。いくつかの態様では、コードされるTCRは、1つまたは複数のジスルフィド結合を導入するための1つまたは複数の修飾を含む、TCRαおよび/もしくはTCRβ鎖ならびに/またはTCRαおよび/もしくはTCRβ鎖定常ドメインを含む。いくつかの態様では、導入遺伝子は、例えば、導入遺伝子にコードされるTCRαと内在性TCRβ鎖の間の、または導入遺伝子にコードされるTCRβと内在性TCRα鎖の間のネイティブジスルフィド結合を除去または防止するための1つまたは複数の修飾を有する、TCRαおよび/もしくはTCRβ鎖ならびに/またはTCRαおよび/もしくはTCRβをコードする。いくつかの態様では、ネイティブ鎖間ジスルフィド結合を形成するおよび/または形成することができる1つまたは複数のネイティブシステインが、別の残基、例えば、セリンまたはアラニンに置換される。いくつかの態様では、TCRα定常ドメインの番号付けを参照して、残基Thr48、Thr45、Tyr10、Thr45、およびSer15の1つまたは複数にシステインが導入される。ある特定の態様では、TCRβ鎖定常ドメインのGlu15の残基Ser57、Ser77、Ser17、Asp59にシステインを導入することができる。TCRの例示的な非天然ジスルフィド結合は、公開された国際PCT第WO2006/000830号、第WO2006/037960号、およびKuball et al. (2007) Blood, 109:2331-2338に記載されている。いくつかの態様では、システインは、Cα鎖のThr48およびCβ鎖のSer57に対応する残基、Cα鎖の残基Thr45およびCβ鎖のSer77、Cα鎖の残基Tyr10およびCβ鎖のSer17、Cα鎖の残基Thr45およびCβ鎖のAsp59、ならびに/またはCα鎖の残基Ser15およびCβ鎖のGlu15において、導入または置換することができる。いくつかの態様では、システイン変異のいずれかは、別の配列中の、例えば、上記のヒトまたはマウスのCαおよびCβ配列中の対応する位置で行うことができる。アミノ酸位置は例示的なCαおよびCβ中のアミノ酸位置「に対応する」という記述などの、タンパク質の位置に関連した用語「対応する」は、構造配列アラインメントに基づいて、またはGAPアルゴリズムなどの標準的アライメントアルゴリズムを使用して、開示される配列とアライメントを行った際に、特定されるアミノ酸位置を指す。
【0773】
いくつかの態様では、ネイティブ鎖間ジスルフィド結合を形成するネイティブシステインの1つまたは複数は、別の残基に、例えばセリンまたはアラニンに置換される。いくつかの態様では、導入または操作されたジスルフィド結合は、第1および第2のセグメントの非システイン残基をシステインに変異させることよって形成することができる。TCRの例示的な非天然ジスルフィド結合は公開された国際PCT第WO2006/000830号に記載されている。
【0774】
いくつかの態様では、コードされる組換えTCRは二量体TCR(dTCR)である。いくつかの態様では、dTCRは、TCRα鎖可変領域配列に対応する配列がTCRα鎖定常領域細胞外配列に対応する配列のN末端に融合している第1のポリペプチド、およびTCRβ鎖可変領域配列に対応する配列がTCRβ鎖定常領域細胞外配列に対応する配列のN末端に融合している第2のポリペプチドを含み、第1および第2のポリペプチドはジスルフィド結合によって連結している。いくつかの態様では、結合は、ネイティブな二量体αβTCR中に存在するネイティブな鎖間ジスルフィド結合に対応し得る。いくつかの態様では、鎖間ジスルフィド結合はネイティブTCR中に存在しない。例えば、いくつかの態様では、1つまたは複数のシステインをdTCRポリペプチド対の定常領域細胞外配列中に組み込むことができる。場合によっては、ネイティブジスルフィド結合と非天然ジスルフィド結合の両方とも望ましい可能性がある。いくつかの態様では、TCRは、膜に係留するための膜貫通配列を含む。
【0775】
いくつかの態様では、dTCRは、可変αドメイン、定常αドメイン、および定常αドメインのC末端に付着した第1の二量体化モチーフを含むTCRα鎖、ならびに可変βドメイン、定常βドメイン、および定常βドメインのC末端に付着した第1の二量体化モチーフを含むTCRβ鎖を含み、第1および第2の二量体化モチーフが相互作用して、第1の二量体化モチーフ中のアミノ酸と第2の二量体化モチーフ中のアミノ酸の間に共有結合を形成し、TCRα鎖とTCRβ鎖を一緒に連結する。
【0776】
いくつかの態様では、コードされる組換えTCRは単鎖TCR(scTCRまたはscTv)である。典型的には、scTCRは公知の方法を使用して作出することができ、例えば、Soo Hoo, W. F. et al. PNAS (USA) 89, 4759 (1992);Wulfing, C. and Pluckthun, A., J. Mol. Biol. 242, 655 (1994);Kurucz, I. et al. PNAS (USA) 90 3830 (1993);国際特許出願公開第WO96/13593号、第WO96/18105号、第WO99/60120号、第WO99/18129号、第WO03/020763号、第WO2011/044186;およびSchlueter, C. J. et al. J. Mol. Biol. 256, 859 (1996)を参照されたい。いくつかの態様では、scTCRは、TCR鎖の結合を容易にするために、導入された非天然ジスルフィド鎖間結合を含む(例えば、国際特許出願公開第WO03/020763号を参照されたい)。いくつかの態様では、scTCRは非ジスルフィド結合のトランケートされたTCRであり、そのC末端に融合した異種ロイシンジッパーが鎖結合を容易にする(例えば、国際特許出願公開第WO99/60120号を参照されたい)。いくつかの態様では、scTCRは、ペプチドリンカーを介してTCRβ可変ドメインに共有結合したTCRα可変ドメインを含む(例えば、国際特許出願公開第WO99/18129号を参照されたい)。
【0777】
いくつかの態様では、scTCRは、TCRα鎖可変領域に対応するアミノ酸配列によって構成された第1のセグメント、TCRβ鎖定常ドメイン細胞外配列に対応するアミノ酸配列のN末端に融合したTCRβ鎖可変領域配列に対応するアミノ酸配列によって構成された第2のセグメント、および第1のセグメントのC末端を第2のセグメントのN末端に連結するリンカー配列を含む。いくつかの態様では、scTCRは、α鎖細胞外定常ドメイン配列のN末端に融合したα鎖可変領域配列によって構成された第1のセグメント、ならびに配列β鎖の細胞外定常および膜貫通配列のN末端に融合したβ鎖可変領域配列によって構成された第2のセグメント、ならびに任意で、第1のセグメントのC末端を第2のセグメントのN末端に連結するリンカー配列を含む。いくつかの態様では、scTCRは、β鎖細胞外定常ドメイン配列のN末端に融合したTCRβ鎖可変領域配列によって構成された第1のセグメント、ならびに配列α鎖の細胞外定常および膜貫通配列のN末端に融合したα鎖可変領域配列によって構成された第2のセグメント、ならびに任意で、第1のセグメントのC末端を第2のセグメントのN末端に連結するリンカー配列を含む。
【0778】
いくつかの態様では、第1と第2のTCRセグメントを連結するscTCRのリンカーは、単一ポリペプチド鎖を形成することができ、同時にTCR結合特異性を保持する任意のリンカーであり得る。いくつかの態様では、リンカー配列は、例えば、式-P-AA-P-を有することができ、式中、Pはプロリンであり、AAはアミノ酸配列を表し、アミノ酸はグリシンおよびセリンである。いくつかの態様では、第1および第2のセグメントは、それらの可変領域配列がそのような結合のために配向されるように対になる。したがって、場合によっては、リンカーは、第1のセグメントのC末端から第2のセグメントのN末端の、またはその逆の距離にわたるのに十分な長さを有するが、標的リガンドへのscTCRの結合を阻止するかまたは低減させるほど長すぎることはない。いくつかの態様では、リンカーは、10または約10~45アミノ酸、例えば、10~30アミノ酸、または26~41アミノ酸残基、例えば、29、30、31、または32アミノ酸を含むことができる。いくつかの態様では、リンカーは式-PGGG-(SGGGG)5-P-を有し、式中、Pはプロリンであり、Gはグリシンであり、Sはセリンである(SEQ ID NO:22)。いくつかの態様では、リンカーは配列
を有する。
【0779】
いくつかの態様では、scTCRは、α鎖の定常ドメインの免疫グロブリン領域の残基をβ鎖の定常ドメインの免疫グロブリン領域の残基に連結する共有ジスルフィド結合を含む。いくつかの態様では、ネイティブTCR中の鎖間ジスルフィド結合は存在しない。例えば、いくつかの態様では、1つまたは複数のシステインをscTCRポリペプチドの第1および第2のセグメントの定常領域細胞外配列中に組み込むことができる。場合によっては、ネイティブジスルフィド結合と非天然ジスルフィド結合の両方とも望ましい可能性がある。
【0780】
いくつかの態様では、コードされるTCRまたはその抗原結合断片は、10-5~10-12Mまたは約10-5~10-12Mならびにその中の全ての個々の値および範囲の標的抗原に対する平衡解離定数(KD)で、親和性を示す。いくつかの態様では、標的抗原はMHC-ペプチド複合体またはリガンドである。
【0781】
C. 遺伝子操作のための細胞および細胞の調製
いくつかの態様では、組換え受容体またはその一部分をコードする導入遺伝子配列を含む改変TGFBR2遺伝子座を含む遺伝子操作された細胞を含めて、操作された細胞、例えば、遺伝子操作されたまたは改変された細胞、および細胞の操作方法が提供される。いくつかの態様では、組換え受容体もしくはその一部分および/またはさらなる分子をコードする核酸配列を含む、ポリヌクレオチド、例えば鋳型ポリヌクレオチド、例えば、本明細書において、例えばセクションI.B.2に記載される鋳型ポリヌクレオチドのいずれかが、例えば、本明細書において記載される操作方法に従って、操作のためのある細胞に導入される。いくつかの局面では、操作された細胞の改変TGFBR2遺伝子座としては、本明細書においてセクションIII.Aに記載されるものが挙げられる。
【0782】
いくつかの局面では、ポリヌクレオチドおよび/またはその一部分の中の導入遺伝子配列(外来性または異種の核酸配列)は異種であり、すなわち、細胞または細胞から得られた試料中に通常は存在せず、例えば、操作される細胞および/またはそのような細胞が由来する生物で普通は見出されない、別の生物または細胞から得られたものでなどである。いくつかの態様では、核酸配列は、複数の異なる細胞型由来の様々なドメインをコードする核酸のキメラの組み合わせを含むものを含めて、天然に見出されない核酸配列のように天然に存在しないか、または、天然に見出される核酸配列から改変される。
【0783】
いくつかの局面では、遺伝子操作されたT細胞を生成する方法が提供され、該方法は、例えば本明細書においてセクションI.B.2に記載される、提供されるポリヌクレオチドのいずれかを、TGFBR2遺伝子座に遺伝子破壊を含むT細胞中に導入することを含む。いくつかの局面では、遺伝子破壊は、本明細書において、例えばセクションI.Aに記載される任意のものを含めて、標的遺伝子破壊を導入するための任意の作用物質または方法によって導入される。いくつかの局面では、方法は改変TGFBR2遺伝子座を生成し、該改変TGFBR2遺伝子座は組換え受容体をコードする核酸配列を含む。いくつかの局面では、T細胞の内在性TGFBR2遺伝子座内の標的部位で遺伝子破壊を誘導することができる1つまたは複数の作用物質を、T細胞中に導入すること;および例えば本明細書においてセクションI.B.2に記載される提供されるポリヌクレオチドのいずれかを、TGFBR2遺伝子座に遺伝子破壊を含むT細胞中に導入することを含む、遺伝子操作されたT細胞を生成する方法が提供され、該方法は改変TGFBR2遺伝子座を生成し、該改変TGFBR2遺伝子座は、組換え受容体、例えばCARまたはTCRをコードする核酸配列を含む。いくつかの態様では、核酸配列は、組換え受容体またはその一部分をコードする導入遺伝子配列を含み、導入遺伝子配列は、相同性指向修復(HDR)を介した内在性TGFBR2遺伝子座内の組み込みのためにターゲティングされる。
【0784】
いくつかの態様では、組換え受容体またはその一部分をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを、T細胞中に導入することを含む、遺伝子操作されたT細胞を生成する方法が提供され、該T細胞はT細胞のTGFBR2遺伝子座内に遺伝子破壊を有し、組換え受容体をコードする核酸配列またはその一部分は、相同性指向修復(HDR)を介した内在性TGFBR2遺伝子座内の組み込みのためにターゲティングされる。いくつかの態様では、方法は改変TGFBR2遺伝子座を生成し、該改変TGFBR2遺伝子座は、組換え受容体をコードする核酸配列を含む。いくつかの態様では、核酸配列は、本明細書において、例えばセクションI.B.2に記載される任意のものなど、組換え受容体またはその一部分をコードする導入遺伝子配列を含む。いくつかの態様では、方法の実施の際に、内在性TGFBRIIの発現が低減もしくは排除されるか、またはTGFBRIIの非機能的および/または部分配列が発現する。いくつかの態様では、方法の実施の際に、ドミナントネガティブ(DN)型のTGFBRIIが発現する。
【0785】
細胞は、一般に真核細胞、例えば哺乳動物細胞であり、典型的にはヒト細胞である。いくつかの態様では、細胞は、血液、骨髄、リンパ、またはリンパ器官に由来し、免疫系の細胞、例えば、自然または適応免疫の細胞、例えばリンパ球を含めた、骨髄性またはリンパ球系細胞、典型的には、T細胞および/またはNK細胞である。他の例示的な細胞としては、幹細胞、例えば、人工多能性幹細胞(iPSC)を含めた、多分化能および多能性幹細胞が挙げられる。細胞は、典型的には、初代細胞、例えば、対象から直接単離されたものおよび/または対象から単離され、凍結されたものである。いくつかの態様では、細胞としては、T細胞または他の細胞型の1つまたは複数のサブセット、例えば、全T細胞集団、CD4+細胞、CD8+細胞、およびそれらの亜集団、例えば、機能、活性化状態、成熟度、分化能、拡大、再循環、局在、および/または持続能力、抗原特異性、抗原受容体のタイプ、特定の器官またはコンパートメントにおける存在、マーカーまたはサイトカイン分泌プロファイル、および/または分化の程度によって定義されたものが挙げられる。治療される対象に関連して、細胞は同種異系および/または自己でもよい。方法の中には、既製の方法が含まれる。例えば既製の技術についてのいくつかの局面では、細胞は多能性および/または多分化能であり、例えば幹細胞、例えばiPSCである。いくつかの態様では、方法は、対象から細胞を単離すること、それを調製すること、処理すること、培養すること、および/または操作すること、ならびに凍結保存の前または後に同じ対象にそれを再導入することを含む。
【0786】
T細胞ならびに/またはCD4+ T細胞および/もしくはCD8+ T細胞のサブタイプおよび亜集団の中には、ナイーブT(TN)細胞、エフェクターT細胞(TEFF)、メモリーT細胞およびそのサブタイプ、例えば、幹細胞メモリーT(TSCM)、セントラルメモリーT(TCM)、エフェクターメモリーT(TEM)、または最終分化エフェクターメモリーT細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、未熟T細胞、成熟T細胞、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞、天然に存在するかつ適応性の制御性T(Treg)細胞、ヘルパーT細胞、例えば、TH1細胞、TH2細胞、TH3細胞、TH17細胞、TH9細胞、TH22細胞、濾胞性ヘルパーT細胞、α/βT細胞、およびδ/γT細胞がある。
【0787】
いくつかの態様において、細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞である。いくつかの態様において、細胞は、単球または顆粒球、例えば、骨髄系細胞、マクロファージ、好中球、樹状細胞、マスト細胞、好酸球、および/または好塩基球である。いくつかの態様において、細胞は、遺伝子操作を介して導入された1つまたは複数の核酸を含み、それによって、そのような核酸の組換え産物または遺伝子操作された産物を発現する。いくつかの態様において、核酸は、異種であり、すなわち、細胞または細胞から得られる試料中に正常では存在せず、例えば、操作されている細胞、および/またはそのような細胞が由来する生物において通常は見出されない、別の生物または細胞から得られるものである。いくつかの態様において、核酸は、天然には存在せず、例えば、複数の異なる細胞型由来の様々なドメインをコードする核酸のキメラ組み合わせを含むものを含む、天然において見出されない核酸である。
【0788】
いくつかの態様において、操作された細胞の調製は、1つまたは複数の培養工程および/または調製工程を含む。CARなどのトランスジェニック受容体をコードする核酸の導入のための細胞は、生物学的試料などの試料、例えば、対象から得られるかまたはそれに由来するものから単離され得る。いくつかの態様において、細胞が単離される対象は、疾患もしくは状態を有するか、または細胞療法の必要があるか、または細胞療法が施与される対象である。いくつかの態様における対象は、特定の治療的介入、例えば、そのために細胞が単離され、処理され、かつ/または操作されている養子細胞療法の必要があるヒトである。
【0789】
したがって、いくつかの態様における細胞は、初代細胞、例えば、初代ヒト細胞である。試料には、組織、体液、および対象から直接採取された他の試料、ならびに分離、遠心分離、遺伝子操作(例えば、ウイルスベクターでの形質導入)、洗浄、および/またはインキュベーションなどの1つまたは複数の処理工程から結果として生じた試料が含まれる。生物学的試料は、生物学的供給源から直接得られた試料、または処理される試料であることができる。生物学的試料には、血液、血漿、血清、脳脊髄液、滑液、尿、および汗などの体液、組織および器官の試料が、それに由来する処理された試料を含めて含まれるが、それらに限定されない。
【0790】
いくつかの局面において、細胞が由来するかまたは単離される試料は、血液もしくは血液由来の試料であるか、またはアフェレーシスもしくは白血球アフェレーシスの産物であるかもしくはそれに由来する。例示的な試料には、全血、末梢血単核細胞(PBMC)、白血球、骨髄、胸腺、組織生検材料、腫瘍、白血病、リンパ腫、リンパ節、腸管関連リンパ組織、粘膜関連リンパ組織、脾臓、他のリンパ組織、肝臓、肺、胃、腸、結腸、腎臓、膵臓、乳房、骨、前立腺、子宮頸、精巣、卵巣、扁桃腺、もしくは他の器官、および/またはそれに由来する細胞が含まれる。試料には、細胞療法、例えば、養子細胞療法に関連して、自己由来および同種異系の供給源由来の試料が含まれる。
【0791】
いくつかの態様において、細胞は、細胞株、例えばT細胞株に由来する。いくつかの態様における細胞は、異種供給源から、例えば、マウス、ラット、非ヒト霊長類、またはブタから得られる。
【0792】
いくつかの態様において、細胞の単離は、1つまたは複数の調製工程および/または親和性に基づかない細胞分離工程を含む。いくつかの例において、例えば、不要な構成要素を除去する、所望の構成要素を濃縮する、特定の試薬に感受性の細胞を溶解するかまたは除去するために、細胞を、洗浄し、遠心分離し、かつ/または1つもしくは複数の試薬の存在下でインキュベートする。いくつかの例において、細胞は、密度、接着特性、サイズ、特定の構成要素に対する感受性および/または耐性などの1つまたは複数の特性に基づいて分離される。
【0793】
いくつかの例において、対象の循環血液由来の細胞は、例えば、アフェレーシスまたは白血球アフェレーシスによって得られる。試料は、いくつかの局面において、T細胞を含むリンパ球、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球、赤血球、および/または血小板を含有し、いくつかの局面において、赤血球および血小板以外の細胞を含有する。
【0794】
いくつかの態様において、対象から収集された血球を、例えば、血漿画分を除去するため、および細胞をその後の処理工程に適切な緩衝液または培地に置くために洗浄する。いくつかの態様において、細胞を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄する。いくつかの態様において、洗浄溶液は、カルシウムおよび/もしくはマグネシウム、ならびに/または多くのもしくはすべての二価カチオンを含まない。いくつかの局面において、洗浄工程は、半自動「フロースルー」遠心分離機(例えば、Cobe 2991細胞プロセッサ、Baxter)において、製造業者の説明書に従って達成される。いくつかの局面において、洗浄工程は、接線流濾過(TFF)によって、製造業者の説明書に従って達成される。いくつかの態様において、細胞を、洗浄後に、例えば、Ca++/Mg++を含まないPBSなどの様々な生体適合性緩衝液に再懸濁する。ある特定の態様において、血球試料の構成要素を除去し、細胞を、培養培地に直接再懸濁する。
【0795】
いくつかの態様において、方法は、密度に基づく細胞分離法、例えば、赤血球を溶解することによる末梢血からの白血球の調製、およびPercollまたはFicoll勾配を通した遠心分離を含む。
【0796】
いくつかの態様において、単離法は、表面マーカー、例えば、表面タンパク質、細胞内マーカー、または核酸などの1つまたは複数の特異的な分子の細胞における発現または存在に基づく、異なる細胞型の分離を含む。いくつかの態様において、そのようなマーカーに基づく分離のための任意の公知の方法が、用いられてもよい。いくつかの態様において、分離は、親和性または免疫親和性に基づく分離である。例えば、いくつかの局面における単離は、1つまたは複数のマーカー、典型的には細胞表面マーカーの細胞での発現または発現レベルに基づく、例えば、そのようなマーカーに特異的に結合する抗体または結合パートナーとのインキュベーション、ならびにその後概して続く、洗浄工程、および抗体または結合パートナーに結合していない細胞からの抗体または結合パートナーに結合した細胞の分離による、細胞および細胞集団の分離を含む。
【0797】
そのような分離工程は、試薬に結合した細胞がさらなる使用のために保持される陽性選択、および/または抗体もしくは結合パートナーに結合していない細胞が保持される陰性選択に基づくことができる。いくつかの例において、両方の画分が、さらなる使用のために保持される。いくつかの局面において、陰性選択は、分離が、所望の集団以外の細胞によって発現されるマーカーに基づいて最も良好に実施されるように、不均一な集団において細胞型を特異的に同定する抗体が利用可能ではない場合に、特に有用であり得る。
【0798】
分離は、特定の細胞集団または特定のマーカーを発現する細胞の100%の濃縮または除去を結果としてもたらす必要はない。例えば、マーカーを発現する細胞などの特定の型の細胞の陽性選択または濃縮は、そのような細胞の数またはパーセンテージを増加させることを指すが、マーカーを発現しない細胞の完全な非存在を結果としてもたらす必要はない。同様に、マーカーを発現する細胞などの特定の型の細胞の陰性選択、除去、または枯渇は、そのような細胞の数またはパーセンテージを減少させることを指すが、そのような細胞すべての完全な除去を結果としてもたらす必要はない。
【0799】
いくつかの例において、1つの工程由来の陽性選択または陰性選択された画分が、その後の陽性選択または陰性選択などの別の分離工程に供される、複数回の分離工程が実施される。いくつかの例において、例えば、細胞を、陰性選択のために標的とされるマーカーに各々特異的な多数の抗体または結合パートナーとインキュベートすることによって、単一の分離工程が、複数のマーカーを発現する細胞を同時に枯渇させることができる。同様に、細胞を、様々な細胞型上に発現される多数の抗体または結合パートナーとインキュベートすることによって、複数の細胞型を同時に陽性選択することができる。
【0800】
例えば、いくつかの局面において、T細胞の特異的な亜集団、例えば、1つまたは複数の表面マーカーについて陽性であるかまたは高レベルを発現する細胞、例えば、CD28+、CD62L+、CCR7+、CD27+、CD127+、CD4+、CD8+、CD45RA+、および/またはCD45RO+ T細胞が、陽性選択または陰性選択の技法によって単離される。
【0801】
例えば、CD3+、CD28+ T細胞は、抗CD3/抗CD28コンジュゲート磁性ビーズ(例えば、DYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28 T Cell Expander)を用いて陽性選択することができる。
【0802】
いくつかの態様において、単離は、陽性選択による特定の細胞集団の濃縮、または陰性選択による特定の細胞集団の枯渇によって実施される。いくつかの態様において、陽性選択または陰性選択は、細胞を、それぞれ陽性選択または陰性選択される細胞上に発現される(マーカー+)かまたは比較的高いレベルで発現される(マーカー)1つまたは複数の表面マーカーに特異的に結合する1つまたは複数の抗体または他の結合物質とインキュベートすることによって達成される。
【0803】
いくつかの態様において、T細胞は、B細胞、単球、または他の白血球などの非T細胞上に発現されるマーカー、例えばCD14の陰性選択によって、PBMC試料から分離される。いくつかの局面において、CD4+またはCD8+選択工程が、CD4+ヘルパーT細胞およびCD8+細胞傷害性T細胞を分離するために用いられる。そのようなCD4+およびCD8+集団は、1つまたは複数のナイーブ、メモリー、および/またはエフェクターT細胞亜集団上に発現されるかまたは比較的高い程度に発現されるマーカーについての陽性選択または陰性選択によって、さらに亜集団に選別することができる。
【0804】
いくつかの態様において、CD8+細胞は、例えば、それぞれの亜集団に関連する表面抗原に基づく陽性選択または陰性選択によって、ナイーブ、セントラルメモリー、エフェクターメモリー、および/またはセントラルメモリー幹細胞がさらに濃縮されるかまたは枯渇する。いくつかの態様において、セントラルメモリーT(TCM)細胞の濃縮は、有効性を増加させるために、例えば、いくつかの局面ではそのような亜集団において特に堅牢である、投与後の長期生存、増大、および/または生着を改善するために実施される。Terakura et al. (2012) Blood.1:72-82;Wang et al. (2012) J Immunother. 35(9):689-701を参照されたい。いくつかの態様において、TCM濃縮CD8+ T細胞とCD4+ T細胞とを組み合わせることは、有効性をさらに増強する。
【0805】
態様において、メモリーT細胞は、CD8+末梢血リンパ球のCD62L+およびCD62L-サブセットの両方に存在する。PBMCは、例えば抗CD8抗体および抗CD62L抗体を用いて、CD62L-CD8+および/またはCD62LCD8+画分を濃縮するかまたは枯渇させることができる。
【0806】
いくつかの態様において、セントラルメモリーT(TCM)細胞の濃縮は、CD45RO、CD62L、CCR7、CD28、CD3、および/またはCD127の陽性または高い表面発現に基づき;いくつかの局面において、それは、CD45RAおよび/またはグランザイムBを発現するかまたは高発現する細胞についての陰性選択に基づく。いくつかの局面において、TCM細胞が濃縮されたCD8+集団の単離は、CD4、CD14、CD45RAを発現する細胞の枯渇、およびCD62Lを発現する細胞の陽性選択または濃縮によって実施される。1つの局面において、セントラルメモリーT(TCM)細胞の濃縮は、CD4発現に基づいて選択された細胞の陰性画分から出発して実施され、これが、CD14およびCD45RAの発現に基づく陰性選択、ならびにCD62Lに基づく陽性選択に供される。そのような選択は、いくつかの局面において同時に実施され、他の局面においては、連続的に任意の順序で実施される。いくつかの局面において、CD8+細胞集団または亜集団の調製において用いられるのと同じCD4発現に基づく選択工程がまた、CD4に基づく分離からの陽性画分および陰性画分が両方とも保持され、任意で1つまたは複数のさらなる陽性選択または陰性選択の工程後の、方法のその後の工程において用いられるように、CD4+細胞集団または亜集団を生成するためにも用いられる。
【0807】
特定の例において、PBMCの試料または他の白血球試料を、CD4+細胞の選択に供し、ここで、陰性画分および陽性画分は両方とも保持される。次いで、陰性画分を、CD14およびCD45RAまたはCD19の発現に基づく陰性選択、ならびにCD62LまたはCCR7などのセントラルメモリーT細胞に特徴的なマーカーに基づく陽性選択に供し、ここで、陽性選択および陰性選択はいずれかの順序で実施される。
【0808】
CD4+ Tヘルパー細胞は、細胞表面抗原を有する細胞集団を同定することによって、ナイーブ、セントラルメモリー、およびエフェクター細胞に選別される。CD4+リンパ球は、標準的な方法によって得ることができる。いくつかの態様において、ナイーブCD4+ Tリンパ球は、CD45RO-、CD45RA+、CD62L-、CD4+ T細胞である。いくつかの態様において、セントラルメモリーCD4+細胞は、CD62L+およびCD45RO+である。いくつかの態様において、エフェクターCD4+細胞は、CD62L-およびCD45RO-である。
【0809】
1つの例において、陰性選択によってCD4+細胞を濃縮するために、モノクローナル抗体カクテルは、典型的には、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DR、およびCD8に対する抗体を含む。いくつかの態様において、抗体または結合パートナーは、陽性選択および/または陰性選択のための細胞の分離を可能にするように、磁性ビーズまたは常磁性ビーズなどの固体支持体またはマトリックスに結合している。例えば、いくつかの態様において、細胞および細胞集団は、免疫磁気(または親和性磁気)分離技法(Methods in Molecular Medicine, vol. 58: Metastasis Research Protocols, Vol. 2: Cell Behavior In vitro and In vivo, p 17-25 Edited by: S. A. Brooks and U. Schumacher(著作権) Humana Press Inc., Totowa, NJにおいて概説されている)を用いて分離されるかまたは単離される。
【0810】
いくつかの局面において、分離されるべき細胞の試料または組成物を、小さな磁化可能または磁気応答性材料、例えば磁気応答性粒子または微小粒子、例えば常磁性ビーズ(例えば、DynalbeadsまたはMACSビーズなど)とインキュベートする。磁気応答性材料、例えば粒子は、概して、分離することが望ましい、例えば、陰性選択または陽性選択することが望ましい細胞、複数の細胞、または細胞の集団上に存在する分子、例えば表面マーカーに特異的に結合する結合パートナー、例えば抗体に、直接または間接的に付着している。
【0811】
いくつかの態様において、磁性粒子またはビーズは、抗体または他の結合パートナーなどの特異的結合メンバーに結合した磁気応答性材料を含む。磁気分離法で用いられる多くの周知の磁気応答性材料がある。適している磁性粒子には、参照により本明細書に組み入れられる、Moldayの米国特許第4,452,773号、および欧州特許明細書EP 452342 Bに記載されているものが含まれる。コロイドサイズの粒子、例えば、Owenの米国特許第4,795,698号およびLibertiらの米国特許第5,200,084号に記載されているものが、他の例である。
【0812】
インキュベーションは、概して、磁性粒子もしくはビーズに付着している抗体もしくは結合パートナー、または、そのような抗体もしくは結合パートナーに特異的に結合する二次抗体もしくは他の試薬などの分子が、試料内の細胞上に存在する場合は細胞表面分子に特異的に結合する条件下で実施される。
【0813】
いくつかの局面において、試料を磁場に置き、磁気応答性または磁化可能粒子が付着している細胞を、磁石に引きつけて、非標識細胞から分離する。陽性選択のためには、磁石に引きつけられる細胞が保持され;陰性選択のためには、引きつけられない細胞(非標識細胞)が保持される。いくつかの局面において、陽性選択と陰性選択との組み合わせが同じ選択工程中に行われ、ここで、陽性画分および陰性画分が保持され、さらに処理されるかまたはさらなる分離工程に供される。
【0814】
ある特定の態様において、磁気応答性粒子は、一次抗体または他の結合パートナー、二次抗体、レクチン、酵素、またはストレプトアビジンでコーティングされている。ある特定の態様において、磁性粒子は、1つまたは複数のマーカーに特異的な一次抗体のコーティングを介して細胞に付着している。ある特定の態様において、ビーズではなく細胞を、一次抗体または結合パートナーで標識し、次いで、細胞型特異的二次抗体または他の結合パートナー(例えば、ストレプトアビジン)でコーティングされた磁性粒子を添加する。ある特定の態様において、ストレプトアビジンコーティング磁性粒子を、ビオチン化一次抗体または二次抗体と組み合わせて用いる。
【0815】
いくつかの態様において、磁気応答性粒子は、その後インキュベート、培養、および/または操作されることになる細胞に付着したままであり;いくつかの局面において、粒子は、患者への投与のための細胞に付着したままである。いくつかの態様において、磁化可能または磁気応答性粒子は、細胞から除去される。磁化可能粒子を細胞から除去するための方法は公知であり、例えば、競合する非標識抗体、および切断可能リンカーにコンジュゲートした磁化可能粒子または抗体の使用を含む。いくつかの態様において、磁化可能粒子は生分解性である。
【0816】
いくつかの態様において、親和性に基づく選択は、磁気活性化細胞選別(MACS)(Miltenyi Biotec, Auburn, CA)を介する。磁気活性化細胞選別(MACS)システムは、磁化粒子が付着している細胞の高純度の選択ができる。ある特定の態様において、MACSは、外部磁場の印加後に非標的種および標的種が連続的に溶出されるモードで動作する。すなわち、磁化粒子に付着した細胞は、付着していない種が溶出される間、適所に保持される。次いで、この最初の溶出工程が完了した後に、磁場に捕捉されて溶出が阻止されていた種は、それらが溶出されて回収され得るように、何らかの方法で遊離される。ある特定の態様において、非標的細胞を、標識して、不均一な細胞の集団から枯渇させる。
【0817】
ある特定の態様において、単離または分離は、本発明の方法の単離、細胞調製、分離、処理、インキュベーション、培養、および/または製剤化工程のうちの1つまたは複数を実施するシステム、デバイス、または装置を用いて実施される。いくつかの局面において、システムは、例えば、エラー、使用者の取り扱い、および/または汚染を最小化するように、これらの工程の各々を閉鎖環境または無菌環境で実施するために用いられる。1つの例において、システムは、特許出願公開番号WO2009/072003、またはUS 20110003380に記載されているようなシステムである。
【0818】
いくつかの態様において、システムまたは装置は、統合もしくは自己完結型システムで、および/または自動化もしくはプログラム可能方式で、単離、処理、操作、および製剤化工程のうちの1つまたは複数、例えばすべてを実施する。いくつかの局面において、システムまたは装置は、システムまたは装置に接続されたコンピュータおよび/またはコンピュータプログラムを含み、これにより、使用者が処理、単離、操作、および製剤化工程をプログラムする、制御する、そのアウトカムを評価する、かつ/またはその様々な局面を調整することが可能になる。
【0819】
いくつかの局面において、分離工程および/または他の工程は、例えば、閉鎖系および無菌系における臨床規模レベルでの細胞の自動分離のために、CliniMACSシステム(Miltenyi Biotec)を用いて実施される。構成要素には、統合マイクロコンピュータ、磁気分離ユニット、蠕動ポンプ、および様々なピンチバルブが含まれ得る。いくつかの局面における統合コンピュータは、機器のすべての構成要素を制御し、標準化された順序で反復手順を行うようにシステムに指令する。いくつかの局面における磁気分離ユニットは、可動永久磁石および選択カラム用のホルダを含む。蠕動ポンプは、チューブセット全体の流速を制御し、ピンチバルブと共に、システムを通る緩衝液の制御された流れおよび細胞の継続的な懸濁を確実にする。
【0820】
いくつかの局面におけるCliniMACSシステムは、無菌非発熱性溶液において供給される抗体カップリング磁化可能粒子を用いる。いくつかの態様において、細胞の磁性粒子での標識化後に、細胞を、洗浄して過剰の粒子を除去する。次いで、細胞調製バッグをチューブセットに接続し、これを次に、緩衝液を含有するバッグおよび細胞収集バッグに接続する。チューブセットは、プレカラムおよび分離カラムを含むあらかじめ組み立てられた無菌チューブからなり、使い捨て専用である。分離プログラムの開始後、システムは、自動的に細胞試料を分離カラム上にアプライする。非標識細胞が一連の洗浄工程によって除去される間、標識細胞は、カラム内に保持される。いくつかの態様において、本明細書に記載される方法での使用のための細胞集団は、標識されておらず、カラムに保持されない。いくつかの態様において、本明細書に記載される方法での使用のための細胞集団は、標識されており、カラムに保持される。いくつかの態様において、本明細書に記載される方法での使用のための細胞集団は、磁場の除去後にカラムから溶出され、細胞収集バッグ内に収集される。
【0821】
ある特定の態様において、分離工程および/または他の工程は、CliniMACS Prodigyシステム(Miltenyi Biotec)を用いて実施される。いくつかの局面におけるCliniMACS Prodigyシステムは、遠心分離による細胞の自動洗浄および分画を可能にする細胞処理ユニットを備える。CliniMACS Prodigyシステムはまた、供給源細胞産物の巨視的層を識別することによって最適な細胞分画エンドポイントを決定する、搭載カメラおよび画像認識ソフトウェアも含むことができる。例えば、末梢血は、赤血球、白血球、および血漿層に自動的に分離される。CliniMACS Prodigyシステムはまた、例えば、細胞分化および増大、抗原負荷、ならびに長期細胞培養などの細胞培養プロトコールを達成する、統合細胞培養チャンバも含むことができる。入力ポートは、培地の無菌除去および補充を可能にすることができ、細胞を、統合顕微鏡を用いてモニターすることができる。例えば、Klebanoff et al. (2012) J Immunother. 35(9): 651-660、Terakura et al. (2012) Blood.1:72-82、およびWang et al. (2012) J Immunother. 35(9):689-701を参照されたい。
【0822】
いくつかの態様において、本明細書に記載される細胞集団を、複数の細胞表面マーカーについて染色された細胞が流体の流れにおいて運ばれるフローサイトメトリーを介して、収集し、かつ濃縮する(または枯渇させる)。いくつかの態様において、本明細書に記載される細胞集団を、調製規模(FACS)選別を介して、収集し、かつ濃縮する(または枯渇させる)。ある特定の態様において、本明細書に記載される細胞集団を、FACSに基づく検出システムと組み合わせた微小電気機械システム(MEMS)チップの使用によって、収集し、かつ濃縮する(または枯渇させる)(例えば、WO 2010/033140、Cho et al. (2010) Lab Chip 10:1567-1573;およびGodin et al. (2008) J Biophoton. 1(5):355-376を参照されたい)。どちらの場合も、細胞を、明確に定義されたT細胞サブセットの高純度での単離を可能にする、複数のマーカーで標識することができる。
【0823】
いくつかの態様において、抗体または結合パートナーは、陽性選択および/または陰性選択のための分離を容易にするために、1つまたは複数の検出可能なマーカーで標識される。例えば、分離は、蛍光標識抗体への結合に基づいてもよい。いくつかの例において、1つまたは複数の細胞表面マーカーに特異的な抗体または他の結合パートナーの結合に基づく細胞の分離は、例えば、調製規模(FACS)を含む蛍光活性化細胞選別(FACS)、および/または、例えばフローサイトメトリー検出システムと組み合わせた微小電気機械システム(MEMS)チップによって、流体の流れにおいて行われる。そのような方法は、同時に複数のマーカーに基づく陽性選択および陰性選択を可能にする。
【0824】
いくつかの態様において、調製法は、単離、インキュベーション、および/または操作の前または後のいずれかに、細胞を凍結する、例えば凍結保存するための工程を含む。いくつかの態様において、凍結およびその後の解凍工程は、細胞集団中の顆粒球を、およびある程度まで、単球を除去する。いくつかの態様において、細胞は、例えば、血漿および血小板を除去するための洗浄工程の後に、凍結溶液中に懸濁される。様々な公知の凍結溶液およびパラメーターのいずれかが、いくつかの局面において用いられてもよい。1つの例は、20% DMSOおよび8%ヒト血清アルブミン(HSA)を含有するPBS、または他の適している細胞凍結培地を用いることを含む。次いで、これを培地で1:1希釈して、DMSOおよびHSAの最終濃度が、それぞれ10%および4%になるようにする。次いで、細胞を、通常、1分あたり1°の速度で-80℃に凍結し、液体窒素貯蔵タンクの気相中で保管する。
【0825】
いくつかの態様において、遺伝子操作の前に、またはそれに関連して、細胞をインキュベートおよび/または培養する。インキュベーション工程は、培養(culture)、培養(cultivation)、刺激、活性化、および/または増殖を含むことができる。インキュベーションおよび/または操作は、培養器、例えば、ユニット、チャンバ、ウェル、カラム、チューブ、チュービングセット、バルブ、バイアル、培養皿、バッグ、または細胞の培養(culture)もしくは培養(cultivate)のためのその他の容器において実施され得る。いくつかの態様において、組成物または細胞を、刺激条件または刺激物質の存在下でインキュベートする。そのような条件には、集団中の細胞の増殖、増大、活性化、および/もしくは生存を誘導するように、抗原曝露を模倣するように、ならびに/または、組換え抗原受容体の導入のためなどの遺伝子操作のために細胞をプライミングするように、設計されたものが含まれる。
【0826】
条件は、特定の培地、温度、酸素含量、二酸化炭素含量、時間、作用物質、例えば、栄養素、アミノ酸、抗生物質、イオン、および/または刺激因子、例えばサイトカイン、ケモカイン、抗原、結合パートナー、融合タンパク質、組換え可溶性受容体、および細胞を活性化するように設計された任意の他の作用物質のうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0827】
いくつかの態様において、刺激条件または刺激作用物質は、TCR複合体の細胞内シグナル伝達ドメインを刺激または活性化することができる1つまたは複数の作用物質、例えばリガンドを含む。いくつかの局面において、作用物質は、T細胞におけるTCR/CD3細胞内シグナル伝達カスケードを作動するかまたは開始する。そのような作用物質は、TCRに特異的な抗体などの抗体、例えば抗CD3を含むことができる。いくつかの態様において、刺激条件は、共刺激受容体を刺激することができる1つまたは複数の作用物質、例えばリガンド、例えば抗CD28を含む。いくつかの態様において、そのような作用物質および/またはリガンドは、ビーズなどの固体支持体、および/または1つもしくは複数のサイトカインに結合していてもよい。任意で、増大法は、抗CD3抗体および/または抗CD28抗体を培養培地に(例えば、少なくとも約0.5 ng/mlの濃度で)添加する工程をさらに含んでもよい。いくつかの態様において、刺激作用物質は、IL-2、IL-15、および/またはIL-7を含む。いくつかの局面では、IL-2濃度は少なくとも約10ユニット/mLである。
【0828】
いくつかの局面において、インキュベーションは、米国特許第6,040,177号、Klebanoff et al. (2012) J Immunother. 35(9): 651-660、Terakura et al. (2012) Blood.1:72-82、および/またはWang et al. (2012) J Immunother. 35(9):689-701に記載されている技法などの技法に従って実施される。
【0829】
いくつかの態様において、T細胞は、培養開始組成物への非分裂末梢血単核細胞(PBMC)などのフィーダ細胞の添加(例えば、結果として生じる細胞の集団が、増大させるべき初期集団中の各Tリンパ球に対して少なくとも約5、10、20、もしくは40個、またはそれよりも多いPBMCフィーダ細胞を含有するように);および培養物をインキュベートすること(例えば、T細胞の数を増大させるのに十分な時間)により増大される。いくつかの局面において、非分裂フィーダ細胞は、γ線照射PBMCフィーダ細胞を含むことができる。いくつかの態様において、PBMCは、細胞分裂を阻止するために、約3000~3600ラドの範囲のγ線を照射される。いくつかの局面において、フィーダ細胞は、T細胞の集団の添加の前に、培養培地に添加される。
【0830】
いくつかの態様において、刺激条件は、ヒトTリンパ球の増殖に適している温度、例えば、少なくとも約25℃、概して少なくとも約30℃、および概して37℃または約37℃を含む。任意で、インキュベーションは、非分裂EBV形質転換リンパ芽球様細胞(LCL)をフィーダ細胞として添加することをさらに含んでもよい。LCLは、約6000~10,000ラドの範囲のγ線を照射することができる。いくつかの局面におけるLCLフィーダ細胞は、少なくとも約10:1のLCLフィーダ細胞対初期Tリンパ球の比などの、任意の適している量で提供される。
【0831】
態様において、抗原特異的T細胞、例えば、抗原特異的CD4+および/またはCD8+ T細胞は、ナイーブまたは抗原特異的Tリンパ球を抗原で刺激することによって得られる。例えば、抗原特異的T細胞株またはクローンを、サイトメガロウイルス抗原に対して、感染した対象からT細胞を単離すること、および細胞をインビトロで同じ抗原で刺激することによって生成することができる。
【0832】
遺伝子操作された成分、例えば、遺伝子破壊を誘導するための作用物質および/または組換え受容体、例えば、CARもしくはTCRをコードする核酸の導入のための様々な方法が、公知であり、提供された方法および組成物と共に使用され得る。例示的な方法には、ポリペプチドまたは受容体をコードする核酸の移入のための方法、例えば、ウイルスベクター、例えば、レトロウイルスベクターもしくはレンチウイルスベクター、非ウイルスベクター、またはトランスポゾン、例えば、Sleeping Beautyトランスポゾン系を介した方法が含まれる。遺伝子移入の方法には、形質導入、電気穿孔、もしくは細胞への遺伝子移入をもたらすその他の方法、または本明細書におけるセクションI.Aに記載された任意の送達方法が含まれ得る。組換え産物をコードする核酸の移入のためのその他のアプローチおよびベクターは、例えば、WO2014055668および米国特許第7,446,190号に記載されたものである。
【0833】
いくつかの態様において、組換え核酸は、電気穿孔を介してT細胞に移入される(例えば、Chicaybam et al, (2013)PLoS ONE 8(3): e60298およびVan Tedeloo et al. (2000)Gene Therapy 7(16): 1431-1437を参照すること)。いくつかの態様において、組換え核酸は、転位を介してT細胞に移入される(例えば、Manuri et al. (2010)Hum Gene Ther 21(4): 427-437;Sharma et al. (2013) Molec Ther Nucl Acids 2, e74;およびHuang et al. (2009) Methods Mol Biol 506: 115-126を参照すること)。免疫細胞に遺伝材料を導入し発現させるその他の方法には、(例えば、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York. N.Y.に記載される)リン酸カルシウムトランスフェクション、プロトプラスト融合、カチオン性リポソーム媒介トランスフェクション;タングステン粒子によって容易にされる微粒子銃(Johnston, Nature, 346: 776-777 (1990));およびリン酸ストロンチウムDNA共沈殿(Brash et al., Mol. Cell Biol., 7: 2031-2034 (1987))が含まれる。
【0834】
いくつかの態様において、遺伝子移入は、例えば、サイトカインまたは活性化マーカーの発現によって測定される、増殖、生存、および/または活性化のような応答を誘導する刺激と組み合わせること等によって、最初に細胞を刺激し、その後、活性化された細胞を形質導入し、臨床的な適用のために十分な数へ培養物中で増大させることによって達成される。
【0835】
いくつかの状況において、刺激因子(例えば、リンホカインまたはサイトカイン)の過剰発現が、対象における不要な転帰またはより低い効力、例えば、対象における毒性に関連した因子をもたらす可能性に対して、保護手段を有することが望まれ得る。従って、いくつかの状況において、操作された細胞は、細胞が、例えば、養子免疫治療において投与された時、インビボでネガティブ選択を受け易くなるようにする遺伝子セグメントを含む。例えば、いくつかの局面において、細胞は、それが投与された患者のインビボ条件の変化の結果として排除され得るよう、操作される。ネガティブ選択可能な表現型は、投与された作用物質、例えば、化合物に対する感受性を付与する遺伝子の挿入に起因し得る。ネガティブ選択可能な遺伝子には、ガンシクロビル感受性を付与する単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-I TK)遺伝子(Wigler et al.,Cell 11:223,1977);細胞ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)遺伝子、細胞アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(APRT)遺伝子、細菌シトシンデアミナーゼ(Mullen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.89:33(1992))が含まれる。
【0836】
いくつかの態様において、細胞、例えば、T細胞は、増大中または増大後に操作され得る。所望のポリペプチドまたは受容体の遺伝子の導入のためのこの操作は、例えば、任意の適当なレトロウイルスベクターによって実施され得る。次いで、遺伝子改変された細胞集団を、一次刺激(例えば、CD3/CD28刺激)から解放し、その後、(例えば、新たに導入された受容体を介して)第2の型の刺激によって刺激することができる。この第2の型の刺激には、ペプチド/MHC分子の形態での抗原刺激、遺伝学的に導入された受容体の同族(架橋)リガンド(例えば、CARの天然リガンド)、または(例えば、受容体内の定常領域を認識することによって)新しい受容体のフレームワーク内に直接結合する(抗体のような)任意のリガンドが含まれ得る。例えば、Cheadle et al,"Chimeric antigen receptors for T-cell based therapy" Methods Mol Biol.2012;907:645-66またはBarrett et al.,Chimeric Antigen Receptor Therapy for Cancer Annual Review of Medicine Vol.65:333-347(2014)を参照すること。
【0837】
導入のための付加的な核酸、例えば、遺伝子には、例えば、移入された細胞の生存率および/または機能を促進することによって、治療の効力を改善するためのもの;細胞の選択および/または評価のため、例えば、インビボの生存または局在を評価するため、遺伝子マーカーを提供するための遺伝子;Lupton S.D.et al., Mol. and Cell Biol., 11: 6 (1991);およびRiddell et al., Human Gene Therapy 3: 319-338 (1992)によって記載されたような、例えば、細胞がインビボでネガティブ選択を受け易くなるようにすることによって、安全性を改善するための遺伝子が含まれる。ドミナントポジティブ選択可能マーカーをネガティブ選択可能マーカーと融合させることによって得られた二機能性選択可能融合遺伝子の使用を記載している、LuptonらによるPCT/US91/08442およびPCT/US94/05601の公開も参照すること。例えば、Riddellらの米国特許第6,040,177号、カラム14~17を参照すること。
【0838】
本明細書中に記載されるように、いくつかの態様において、細胞は、遺伝子操作前に、または遺伝子操作に関連して、インキュベートされかつ/または培養される。インキュベーション工程には、培養(culture)、培養(cultivation)、刺激、活性化、繁殖、および/または保存、例えば、凍結保存のための凍結が含まれ得る。
【0839】
D. 組換え受容体を発現する細胞の組成物
また、複数のまたは集団の改変された細胞、そのような細胞を含有する、かつ/またはそのような細胞が濃縮された組成物も提供される。いくつかの局面において、提供される操作された細胞および/または操作された細胞の組成物は、例えば、組換え受容体もしくはその一部分をコードする導入遺伝子配列を含む改変されたTGFBR2遺伝子座を含む、本明細書に記載されるいずれかを含み、かつ/または、本明細書に記載される方法によって作製される。いくつかの局面において、複数のまたは集団の操作された細胞は、本明細書に、例えば本明細書におけるセクションIIIに記載される、操作された細胞のいずれかを含有する。いくつかの局面において、提供される細胞および細胞組成物は、本明細書に記載される方法のいずれかを用いて、例えば、例えば本明細書におけるセクションI.Aに記載されるような、遺伝子破壊を導入するための作用物質もしくは方法を用いて、かつ/または、相同性指向修復(HDR)を介して、本明細書に、例えばセクションI.B.2に記載される鋳型ポリヌクレオチドなどのポリヌクレオチドを用いて、操作することができる。いくつかの局面において、本明細書で提供されるそのような細胞集団および/または組成物は、例えば、本明細書におけるセクションVに記載されるような、薬学的組成物または治療的な使用もしくは方法のための組成物に含まれる。
【0840】
いくつかの態様において、操作された細胞を含有する提供される細胞集団および/または組成物は、他の方法を用いて生成された細胞集団および/または組成物の発現および/または抗原結合と比較して、より改善された、均一の、同質の、かつ/または安定した発現および/または組換え受容体による抗原結合を示し、例えば、低下した変動係数を示す、細胞集団を含む。いくつかの態様において、細胞集団および/または組成物は、他の方法、例えば、組換え受容体をコードする配列のランダム組み込みを用いて生成されたそれぞれの集団と比較して、少なくとも100%、95%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、または10%低い、組換え受容体の発現および/または組換え受容体による抗原結合の変動係数を示す。変動係数とは、細胞、例えば、CD4+ T細胞および/またはCD8+ T細胞の集団内の、関心対象の核酸(例えば、組換え受容体またはその一部分をコードする導入遺伝子配列)の発現の標準偏差を、それぞれの細胞の集団におけるそれぞれの関心対象の核酸の発現の平均値で割ったものとして定義される。いくつかの態様において、細胞集団および/または組成物は、本明細書で提供される方法を用いて操作されているCD4+ T細胞集団および/またはCD8+ T細胞集団の間で測定された時、0.70、0.65、0.60、0.55、0.50、0.45、0.40、0.35、もしくは0.30、またはそれよりも低い変動係数を示す。
【0841】
いくつかの態様において、操作された細胞を含有する提供される細胞集団および/または組成物は、組換え受容体またはその一部分をコードする導入遺伝子の最小のまたは低減したランダム組み込みを示す、細胞集団を含む。いくつかの局面において、細胞のゲノム中への導入遺伝子のランダム組み込みは、ゲノム中の望ましくない場所への、例えば、不可欠な遺伝子または細胞の活性の制御に重大な遺伝子中への導入遺伝子の組み込みのために、有害効果もしくは細胞死、および/または受容体の制御されないもしくは調節されない発現を結果としてもたらし得る。いくつかの局面において、導入遺伝子のランダム組み込みは、他の方法を用いて生成された細胞集団と比較して、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上、または50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上よりも多く、低減される。
【0842】
いくつかの態様において、組換え受容体を発現する複数の操作された免疫細胞を含む細胞集団および/または組成物であって、該組換え受容体をコードする核酸配列が、例えば、相同性指向修復(HDR)を介したTGFBR2遺伝子座での組換え受容体またはその一部分をコードする導入遺伝子の組み込みによって、TGFBR2遺伝子座に存在する、細胞集団および/または組成物が提供される。いくつかの態様において、組成物中の細胞、および/またはTGFBR2遺伝子座に遺伝子破壊を含有する組成物中の細胞の少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、もしくは90%は、または該細胞の30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、もしくは90%超は、TGFBR2遺伝子座に組換え受容体またはその一部分をコードする導入遺伝子の組み込みを含む。
【0843】
いくつかの態様において、提供される組成物は、組換え受容体を発現する細胞が、組成物中の全細胞のうちの、またはT細胞もしくはCD8+細胞もしくはCD4+細胞などのある特定のタイプの細胞のうちの、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれよりも多くを占めるような、細胞を含有する。いくつかの態様において、提供される組成物は、組換え受容体を発現する細胞が、TGFBR2遺伝子座に遺伝子破壊を含有する組成物中の全細胞のうちの、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれよりも多くを占めるような、細胞を含有する。
【0844】
IV. 処置の方法
本明細書に記載される操作された細胞または操作された細胞を含有する組成物のいずれか、例えば、組換え受容体またはその一部分をコードする導入遺伝子を含む改変されたTGFBR2遺伝子座を含む操作された細胞を投与する工程を例えば含む、処置の方法が、本明細書において提供される。いくつかの局面において、また、本明細書に記載される操作された細胞または操作された細胞を含有する組成物のいずれかを、ある疾患または障害を有する対象などの対象に投与する方法も提供される。本明細書に記載される、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)などの組換え受容体を発現する操作された細胞、またはそれを含む組成物は、様々な治療、診断、および予防の適応症において有用である。例えば、操作された細胞または操作された細胞を含む組成物は、対象における様々な疾患および障害の処置において有用である。そのような方法および使用は、例えば、操作された細胞、またはそれを含有する組成物の、腫瘍またはがんなどの、ある疾患、状態、または障害を有する対象への投与を含む、治療的な方法および使用を含む。いくつかの態様において、操作された細胞またはそれを含む組成物は、疾患または障害の処置をもたらすために有効量で投与される。使用には、そのような方法および処置における、ならびにそのような治療法を実施するための薬剤の調製における、操作された細胞または組成物の使用が含まれる。いくつかの態様において、方法は、操作された細胞またはそれを含む組成物を、疾患または状態を有するかまたはそれを有する疑いがある対象に投与することによって実施される。いくつかの態様において、方法は、それによって、対象における疾患または状態または障害を処置する。また、細胞および組成物を、対象、例えば患者に投与するための治療法も提供される。
【0845】
養子細胞療法用の細胞の投与のための方法は、公知であり、提供される方法および組成物に関連して用いられ得る。例えば、養子T細胞療法の方法は、例えば、Gruenbergらの米国特許出願公開番号2003/0170238;Rosenbergの米国特許第4,690,915号;Rosenberg (2011) Nat Rev Clin Oncol. 8(10):577-85に記載されている。例えば、Themeli et al. (2013) Nat Biotechnol. 31(10): 928-933;Tsukahara et al. (2013) Biochem Biophys Res Commun 438(1): 84-9;Davila et al. (2013) PLoS ONE 8(4): e61338を参照されたい。
【0846】
処置される疾患または状態は、抗原の発現が、疾患、状態または障害に関連している、かつ/またはその病因に関与している、例えば、そのような疾患、状態、または障害を引き起こす、悪化させる、または別のように関与している、いずれかのものであり得る。例示的な疾患および状態には、悪性腫瘍もしくは細胞の形質転換(例えば、がん)、自己免疫性もしくは炎症性の疾患、または、例えば、細菌、ウイルス、もしくは他の病原体によって引き起こされる感染性疾患に関連する疾患または状態が含まれ得る。例示的な抗原は、処置することができる様々な疾患および状態に関連する抗原を含み、本明細書に記載されている。特定の態様において、キメラ抗原受容体またはトランスジェニックTCRは、疾患または状態に関連する抗原に特異的に結合する。
【0847】
疾患、状態、および障害の中には、固形腫瘍、血液悪性腫瘍、および黒色腫を含む、ならびに限局性および転移性腫瘍を含む腫瘍、感染性疾患、例えばウイルスまたは他の病原体、例えば、HIV、HCV、HBV、CMV、HPVの感染、および寄生虫病、ならびに自己免疫性および炎症性の疾患がある。いくつかの態様において、疾患、障害、または状態は、腫瘍、がん、悪性腫瘍、新生物、または他の増殖性疾患もしくは障害である。そのような疾患には、白血病、リンパ腫、例えば、急性骨髄性(myeloid)(または骨髄性(myelogenous))白血病(AML)、慢性骨髄性(myeloid)(または骨髄性(myelogenous))白血病(CML)、急性リンパ性(またはリンパ芽球性)白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、ヘアリー細胞白血病(HCL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯リンパ腫、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫(HL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、未分化大細胞型リンパ腫(ALCL)、濾胞性リンパ腫、治療抵抗性濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、および多発性骨髄腫(MM)が含まれるが、それらに限定されない。いくつかの態様において、疾患または状態は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、成人ALL、慢性リンパ芽球性白血病(CLL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の中から選択されるB細胞悪性腫瘍である。いくつかの態様において、疾患または状態は、NHLであり、NHLは、アグレッシブNHL、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、NOS(デノボ(de novo)および低悪性度から形質転換されたもの)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL)、T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫(TCHRBCL)、バーキットリンパ腫、マントル細胞リンパ腫(MCL)、および/または濾胞性リンパ腫(FL)、任意で濾胞性リンパ腫グレード3B(FL3B)からなる群より選択される。
【0848】
いくつかの態様において、疾患または障害は、多発性骨髄腫(MM)である。いくつかの態様において、提供される細胞、例えば、改変されたTGFBR2遺伝子座を有する操作された細胞の投与は、対象におけるMMなどの、疾患または状態の処置および/またはその寛解を結果としてもたらし得る。いくつかの態様において、対象は、B細胞腫瘍抗原(BCMA)などの、腫瘍関連抗原の発現に関連しているMMを有するか、またはそれを有する疑いがある。
【0849】
いくつかの態様において、疾患または障害は、慢性リンパ性白血病(CLL)である。いくつかの態様において、提供される細胞、例えば、改変されたTGFBR2遺伝子座を有する操作された細胞の投与は、対象におけるCLLなどの、疾患または状態の処置および/またはその寛解を結果としてもたらし得る。いくつかの態様において、対象は、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)などの、腫瘍関連抗原の発現に関連しているCLLを有するか、またはそれを有する疑いがある。
【0850】
いくつかの態様において、疾患または障害は、固形腫瘍、または非血液腫瘍に関連するがんである。いくつかの態様において、疾患または障害は、固形腫瘍、または固形腫瘍に関連するがんである。いくつかの態様において、疾患または障害は、膵臓がん、膀胱がん、大腸がん、乳がん、前立腺がん、腎がん、肝細胞がん、肺がん、卵巣がん、子宮頚がん、膵臓がん、直腸がん、甲状腺がん、子宮がん、胃がん、食道がん、頭頚部がん、黒色腫、神経内分泌がん、CNSがん、脳腫瘍、骨がん、または軟部組織肉腫である。いくつかの態様において、疾患または障害は、膀胱、肺、脳、黒色腫(例えば、小細胞肺、黒色腫)、乳房、子宮頚部、卵巣、大腸、膵臓、子宮内膜、食道、腎臓、肝臓、前立腺、皮膚、甲状腺、または子宮のがんである。いくつかの態様において、疾患または障害は、膵臓がん、膀胱がん、大腸がん、乳がん、前立腺がん、腎がん、肝細胞がん、肺がん、卵巣がん、子宮頚がん、膵臓がん、直腸がん、甲状腺がん、子宮がん、胃がん、食道がん、頭頚部がん、黒色腫、神経内分泌がん、CNSがん、脳腫瘍、骨がん、または軟部組織肉腫である。
【0851】
いくつかの態様において、疾患または障害は、非小細胞肺がん(NSCLC)である。いくつかの態様において、提供される細胞、例えば、改変されたTGFBR2遺伝子座を有する操作された細胞の投与は、対象におけるNSCLCなどの、疾患または状態の処置および/またはその寛解を結果としてもたらし得る。いくつかの態様において、対象は、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)などの、腫瘍関連抗原の発現に関連しているNSCLCを有するか、またはそれを有する疑いがある。
【0852】
いくつかの態様において、疾患または障害は、頭頚部扁平上皮癌(HNSCC)である。いくつかの態様において、提供される細胞、例えば、改変されたTGFBR2遺伝子座を有する操作された細胞の投与は、対象におけるHNSCCなどの、疾患または状態の処置および/またはその寛解を結果としてもたらし得る。いくつかの態様において、対象は、ヒトパピローマウイルス(HPV)16 E6またはE7などの、腫瘍関連抗原の発現に関連しているHNSCCを有するか、またはそれを有する疑いがある。いくつかの態様において、疾患または状態は、ウイルス、レトロウイルス、細菌、および原虫の感染、免疫不全、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタインバーウイルス(EBV)、アデノウイルス、BKポリオーマウイルスなどであるがそれらに限定されない、感染性疾患または状態である。いくつかの態様において、疾患または状態は、関節炎、例えば関節リウマチ(RA)、I型糖尿病、全身性エリテマトーデス(SLE)、炎症性腸疾患、乾癬、強皮症、自己免疫性甲状腺疾患、グレーブス病、クローン病、多発性硬化症、喘息、および/または移植に関連する疾患もしくは状態などの、自己免疫性または炎症性の疾患または状態である。
【0853】
いくつかの態様において、疾患または障害に関連する抗原は、αvβ6インテグリン(avb6インテグリン)、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3、B7-H6、炭酸脱水酵素9(CA9;CAIXまたはG250としても知られている)、がん精巣抗原、がん/精巣抗原1B(CTAG;NY-ESO-1およびLAGE-2としても知られている)、癌胎児性抗原(CEA)、サイクリン、サイクリンA2、C-Cモチーフケモカインリガンド1(CCL-1)、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD123、CD133、CD138、CD171、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4)、上皮成長因子タンパク質(EGFR)、III型上皮成長因子受容体変異(EGFR vIII)、上皮糖タンパク質2(EPG-2)、上皮糖タンパク質40(EPG-40)、エフリンB2、エフリン受容体A2(EPHa2)、エストロゲン受容体、Fc受容体様5(FCRL5;Fc受容体ホモログ5またはFCRH5としても知られている)、胎児アセチルコリン受容体(胎児AchR)、葉酸結合タンパク質(FBP)、葉酸受容体アルファ、ガングリオシドGD2、O-アセチル化GD2(OGD2)、ガングリオシドGD3、糖タンパク質100(gp100)、グリピカン-3(GPC3)、Gタンパク質共役受容体クラスCグループ5メンバーD(GPRC5D)、Her2/neu(受容体チロシンキナーゼerb-B2)、Her3(erb-B3)、Her4(erb-B4)、erbB二量体、ヒト高分子量-黒色腫関連抗原(HMW-MAA)、B型肝炎表面抗原、ヒト白血球抗原A1(HLA-A1)、ヒト白血球抗原A2(HLA-A2)、IL-22受容体アルファ(IL-22Rα)、IL-13受容体アルファ2(IL-13Rα2)、キナーゼインサートドメイン受容体(kdr)、κ軽鎖、L1細胞接着分子(L1-CAM)、L1-CAMのCE7エピトープ、ロイシンリッチリピート含有8ファミリーメンバーA(LRRC8A)、ルイスY、黒色腫関連抗原(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A6、MAGE-A10、メソテリン(MSLN)、c-Met、マウスサイトメガロウイルス(CMV)、ムチン1(MUC1)、MUC16、ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D)リガンド、メランA(MART-1)、神経細胞接着分子(NCAM)、腫瘍胎児抗原、黒色腫優先発現抗原(PRAME)、プロゲステロン受容体、前立腺特異的抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、サバイビン、栄養膜糖タンパク質(TPBG;5T4としても知られている)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、チロシナーゼ関連タンパク質1(TRP1;TYRP1またはgp75としても知られている)、チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP2;ドパクロムトートメラーゼ、ドパクロムデルタ-イソメラーゼ、またはDCTとしても知られている)、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)、血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR2)、ウィルムス腫瘍1(WT-1)、病原体特異的抗原もしくは病原体発現抗原、またはユニバーサルタグに関連する抗原、および/またはビオチン化分子、および/またはHIV、HCV、HBV、もしくは他の病原体によって発現される分子であるか、またはそれを含む。受容体によって標的とされる抗原には、いくつかの態様において、多くの公知のB細胞マーカーのいずれかなどの、B細胞悪性腫瘍に関連する抗原が含まれる。いくつかの態様において、抗原は、CD20、CD19、CD22、ROR1、CD45、CD21、CD5、CD33、Igκ、Igλ、CD79a、CD79b、もしくはCD30であるか、またはそれを含む。
【0854】
いくつかの態様において、抗原は、病原体特異的抗原もしくは病原体発現抗原であるか、またはそれを含む。いくつかの態様において、抗原は、ウイルス抗原(例えば、HIV、HCV、HBVなど由来のウイルス抗原)、細菌抗原、および/または寄生虫抗原である。
【0855】
いくつかの局面において、CARなどの組換え受容体は、疾患もしくは状態に関連しているか、またはB細胞悪性腫瘍に関連する病巣の環境の細胞において発現している抗原に特異的に結合する。受容体によって標的とされる抗原には、いくつかの態様において、多くの公知のB細胞マーカーのいずれかなどの、B細胞悪性腫瘍に関連する抗原が含まれる。いくつかの態様において、受容体によって標的とされる抗原は、CD20、CD19、CD22、ROR1、CD45、CD21、CD5、CD33、Igκ、Igλ、CD79a、CD79b、もしくはCD30、またはそれらの組み合わせである。
【0856】
いくつかの態様において、疾患または状態は、多発性骨髄腫などの骨髄腫である。いくつかの局面において、CARなどの組換え受容体は、疾患もしくは状態に関連しているか、または多発性骨髄腫に関連する病巣の環境の細胞において発現している抗原に特異的に結合する。受容体によって標的とされる抗原には、いくつかの態様において、多発性骨髄腫に関連する抗原が含まれる。いくつかの局面において、抗原、例えば、疾患特異的抗原および/または関連した抗原などの、第2のまたは追加の抗原が、多発性骨髄腫上に発現しており、例えば、B細胞成熟抗原(BCMA)、Gタンパク質共役受容体クラスCグループ5メンバーD(GPRC5D)、CD38(サイクリックADPリボースヒドロラーゼ)、CD138(シンデカン-1、シンデカン、SYN-1)、CS-1(CS1、CD2サブセット1、CRACC、SLAMF7、CD319、および19A24)、BAFF-R、TACI、ならびに/またはFcRH5である。他の例示的な多発性骨髄腫抗原には、CD56、TIM-3、CD33、CD123、CD44、CD20、CD40、CD74、CD200、EGFR、β2-ミクログロブリン、HM1.24、IGF-1R、IL-6R、TRAIL-R1、およびアクチビン受容体IIA型(ActRIIA)が含まれる。Benson and Byrd, J. Clin. Oncol. (2012) 30(16): 2013-15;Tao and Anderson, Bone Marrow Research (2011):924058;Chu et al., Leukemia (2013) 28(4):917-27;Garfall et al., Discov Med. (2014) 17(91):37-46を参照されたい。いくつかの態様において、抗原には、リンパ腫瘍、骨髄腫、AIDS関連リンパ腫、および/または移植後のリンパ球増殖に存在するもの、例えばCD38が含まれる。そのような抗原に対する抗体または抗原結合断片は、公知であり、例えば、米国特許第8,153,765号;第8,603477号、第8,008,450号;米国特許出願公開番号US20120189622もしくはUS20100260748;および/または国際PCT公開番号WO2006099875、WO2009080829、もしくはWO2012092612、もしくはWO2014210064に記載されているものを含む。いくつかの態様において、そのような抗体またはその抗原結合断片(例えば、scFv)は、多重特異性抗体、多重特異性キメラ受容体、例えば多重特異性CAR、および/または多重特異性細胞に含有される。
【0857】
いくつかの態様において、疾患または障害は、Gタンパク質共役受容体クラスCグループ5メンバーD(GPRC5D)の発現および/またはB細胞成熟抗原(BCMA)の発現に関連している。
【0858】
いくつかの態様において、疾患または障害は、B細胞関連障害である。提供される方法の提供される態様のいずれかのいくつかにおいて、BCMAに関連する疾患または障害は、自己免疫性の疾患または障害である。提供される方法の提供される態様のいずれかのいくつかにおいて、自己免疫性の疾患または障害は、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、炎症性腸疾患、関節リウマチ、ANCA関連血管炎、突発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫性血小板減少症、シャガス病、グレーブス病、ウェゲナー肉芽腫症、結節性多発動脈炎、シェーグレン症候群、尋常性天疱瘡、強皮症、多発性硬化症、乾癬、IgA腎症、IgM多発ニューロパチー、血管炎、真性糖尿病、レイノー症候群、抗リン脂質症候群、グッドパスチャー病、川崎病、自己免疫性溶血性貧血、重症筋無力症、または進行性糸球体腎炎である。
【0859】
いくつかの態様において、疾患または障害はがんである。いくつかの態様において、がんはGPRC5D発現がんである。いくつかの態様において、がんは、形質細胞悪性腫瘍であり、形質細胞悪性腫瘍は、多発性骨髄腫(MM)または形質細胞腫である。いくつかの態様において、がんは多発性骨髄腫(MM)である。いくつかの態様において、がんは、再発性/治療抵抗性多発性骨髄腫である。
【0860】
いくつかの態様において、抗原は、ヒトパピローマウイルス(HPV)などのウイルスに関連しており、疾患または障害は、HNSCCなどのがんである。いくつかの態様において、抗原はROR1であり、疾患または障害はCLLである。いくつかの態様において、抗原はROR1であり、疾患または障害はNSCLCである。
【0861】
いくつかの態様において、抗体または抗原結合断片(例えば、scFvまたはVHドメイン)は、CD19、BCMA、GPRC5D、またはROR1などの抗原を特異的に認識する。いくつかの態様において、抗体または抗原結合断片は、CD19、BCMA、GPRC5D、またはROR1に特異的に結合する抗体または抗原結合断片に由来するか、またはそのバリアントである。
【0862】
いくつかの態様において、細胞療法、例えば、養子T細胞療法は、細胞が、細胞療法を受ける予定である対象からまたはそのような対象に由来する試料から、単離されかつ/または別の方法で調製される、自己移入によって実施される。したがって、いくつかの局面において、細胞は、処置を必要とする対象、例えば、患者に由来し、細胞は、単離および加工の後、同じ対象に投与される。
【0863】
いくつかの態様において、細胞療法、例えば、養子T細胞療法は、細胞が、細胞療法を受ける予定であるかまたは最終的に受ける対象以外の対象、例えば、第1の対象から、単離されかつ/または別の方法で調製される、同種移入によって実施される。そのような態様において、細胞は、次いで、同じ種の異なる対象、例えば、第2の対象に投与される。いくつかの態様において、第1および第2の対象は、遺伝学的に同一である。いくつかの態様において、第1および第2の対象は、遺伝学的に類似している。いくつかの態様において、第2の対象は、第1の対象と同じHLAクラスまたはスーパータイプを発現する。
【0864】
細胞は、任意の適している手段によって、例えば、ボーラス注入によって、注射、例えば、静脈内注射もしくは皮下注射、眼内注射、眼周囲注射、網膜下注射、硝子体内注射、経中隔注射、強膜下注射、脈絡膜内注射、前房内注射、結膜下(subconjectval)注射、結膜下(subconjuntival)注射、テノン嚢下注射、眼球後注射、眼球周囲注射、または後強膜近傍(posterior juxtascleral)送達によって投与され得る。いくつかの態様において、それらは、非経口投与、肺内投与、および鼻腔内投与によって、ならびに局所処置のために望まれる場合は、病巣内投与によって投与される。非経口注入には、筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、または皮下投与が含まれる。いくつかの態様において、所与の用量は、細胞の単回ボーラス投与によって投与される。いくつかの態様において、それは、例えば、3日以内の期間にわたる細胞の複数回ボーラス投与によって、または細胞の連続注入投与によって投与される。いくつかの態様において、細胞用量の投与または任意の追加の治療法、例えば、リンパ球枯渇療法、介入治療、および/または併用療法は、外来患者送達を介して実施される。
【0865】
疾患の予防または処置のために、適切な投薬量は、処置されるべき疾患のタイプ、細胞または組換え受容体のタイプ、疾患の重症度および経過、細胞が予防目的で投与されるかまたは治療目的で投与されるか、以前の治療、対象の病歴および細胞に対する応答、ならびに主治医の裁量に依存し得る。組成物および細胞は、いくつかの態様において、一度にまたは一連の処置にわたって、対象に適切に投与される。
【0866】
いくつかの態様において、細胞は、併用処置の一部として、例えば、別の治療的介入、例えば、抗体または改変された細胞または受容体または作用物質、例えば、細胞傷害剤または治療剤と同時にまたは逐次的に、任意の順序で投与される。細胞は、いくつかの態様において、同時にまたは任意の順序で逐次的にのいずれかで、1つもしくは複数の追加の治療剤と共に、または別の治療的介入に関連して、同時投与される。いくつかの状況において、細胞は、細胞集団が1つまたは複数の追加の治療剤の効果を増強するか、またはその逆であるように、時間的に十分に近く、別の治療と同時投与される。いくつかの態様において、細胞は、1つまたは複数の追加の治療剤の前に投与される。いくつかの態様において、細胞は、1つまたは複数の追加の治療剤の後に投与される。いくつかの態様において、1つまたは複数の追加の作用物質には、例えば、持続を増強するための、IL-2などのサイトカインが含まれる。いくつかの態様において、方法は、化学療法剤の投与を含む。
【0867】
いくつかの態様において、方法は、例えば、投与の前に腫瘍負荷を低減させるための、化学療法剤、例えば、コンディショニング化学療法剤の投与を含む。
【0868】
対象を免疫枯渇(例えば、リンパ球枯渇)療法でプレコンディショニングすることは、いくつかの対象において、養子細胞療法(ACT)の効果を改善することができる。
【0869】
したがって、いくつかの態様において、方法は、細胞療法の開始前に対象に、プレコンディショニング剤、例えば、リンパ球枯渇剤または化学療法剤、例えば、シクロホスファミド、フルダラビン、またはそれらの組み合わせを投与する工程を含む。例えば、対象は、細胞療法の開始の少なくとも2日前に、例えば、少なくとも3、4、5、6、または7日前に、プレコンディショニング剤を投与されてもよい。いくつかの態様において、対象は、細胞療法の開始の7日以内前に、例えば、6、5、4、3、または2日以内前に、プレコンディショニング剤を投与される。
【0870】
いくつかの態様において、対象は、20 mg/kg~100 mg/kgまたは約20 mg/kg~100 mg/kg、例えば40 mg/kg~80 mg/kgまたは約40 mg/kg~80 mg/kgの用量のシクロホスファミドでプレコンディショニングされる。いくつかの局面において、対象は、60 mg/kgまたは約60 mg/kgのシクロホスファミドでプレコンディショニングされる。いくつかの態様において、シクロホスファミドは、単一用量で投与することができ、または、毎日、1日おき、もしくは2日おきに与えられる、複数の用量で投与することができる。いくつかの態様において、シクロホスファミドは、毎日1回、1または2日間投与される。いくつかの態様において、リンパ球枯渇剤がシクロホスファミドを含む場合、対象は、100 mg/m2~500 mg/m2または約100 mg/m2~500 mg/m2、例えば200 mg/m2~400 mg/m2もしくは約200 mg/m2~400 mg/m2、または250 mg/m2~350 mg/m2もしくは約250 mg/m2~350 mg/m2(両端の値を含む)の用量のシクロホスファミドを投与される。いくつかの例において、対象は、約300 mg/m2のシクロホスファミドを投与される。いくつかの態様において、シクロホスファミドは、単一用量で投与することができ、または、毎日、1日おき、もしくは2日おきに与えられる、複数の用量で投与することができる。いくつかの態様において、シクロホスファミドは、毎日、例えば1~5日間、例えば、3~5日間投与される。いくつかの例において、対象は、細胞療法の開始の前に、3日間毎日、約300 mg/m2のシクロホスファミドを投与される。
【0871】
いくつかの態様において、リンパ球枯渇剤がフルダラビンを含む場合、対象は、1 mg/m2~100 mg/m2または約1 mg/m2~100 mg/m2、例えば10 mg/m2~75 mg/m2もしくは約10 mg/m2~75 mg/m2、15 mg/m2~50 mg/m2もしくは約15 mg/m2~50 mg/m2、20 mg/m2~40 mg/m2もしくは約20 mg/m2~40 mg/m2、または24 mg/m2~35 mg/m2もしくは約24 mg/m2~35 mg/m2(両端の値を含む)の用量のフルダラビンを投与される。いくつかの例において、対象は、約30 mg/m2のフルダラビンを投与される。いくつかの態様において、フルダラビンは、単一用量で投与することができ、または、毎日、1日おき、もしくは2日おきに与えられる、複数の用量で投与することができる。いくつかの態様において、フルダラビンは、毎日、例えば1~5日間、例えば、3~5日間投与される。いくつかの例において、対象は、細胞療法の開始の前に、3日間毎日、約30 mg/m2のフルダラビンを投与される。
【0872】
いくつかの態様において、リンパ球枯渇剤は、シクロホスファミドとフルダラビンとの組み合わせなどの、作用物質の組み合わせを含む。したがって、作用物質の組み合わせは、本明細書に記載されるものなどの、任意の用量または投与スケジュールのシクロホスファミドと、本明細書に記載されるものなどの、任意の用量または投与スケジュールのフルダラビンとを含んでもよい。例えば、いくつかの局面において、対象は、最初のまたはその後の用量の前に、60 mg/kg(約2 g/m2)のシクロホスファミドと、3~5用量の25 mg/m2のフルダラビンとを投与される。
【0873】
細胞の投与後に、操作された細胞集団の生物学的活性が、いくつかの態様において、例えば、多くの公知の方法のいずれかによって測定される。評価するパラメーターには、例えばイメージングによる、インビボでの、またはELISAもしくはフローサイトメトリーによる、エクスビボでの、操作されたかまたは天然のT細胞または他の免疫細胞の抗原に対する特異的結合が含まれる。ある特定の態様において、操作された細胞の標的細胞を破壊する能力は、例えば、Kochenderfer et al., J. Immunotherapy, 32(7): 689-702 (2009)およびHerman et al. J. Immunological Methods, 285(1): 25-40 (2004)に記載されている細胞傷害アッセイなどの、任意の適している公知の方法を用いて測定することができる。ある特定の態様において、細胞の生物学的活性は、CD107a、IFNγ、IL-2、およびTNFなどの1つまたは複数のサイトカインの発現および/または分泌をアッセイすることによって測定される。いくつかの局面において、生物学的活性は、腫瘍負荷または荷重の低減などの、臨床転帰を評価することによって測定される。
【0874】
ある特定の態様において、操作された細胞は、それらの治療効力または予防効力を増加させるように、任意の数の方法においてさらに改変される。例えば、集団により発現される操作されたCARは、ターゲティング部分に、直接的にまたはリンカーを通して間接的にのいずれかで、コンジュゲートさせることができる。化合物、例えばCARをターゲティング部分にコンジュゲートする実践は、公知である。例えば、Wadwa et al., J. Drug Targeting 3: 1 1 1 (1995)および米国特許第5,087,616号を参照されたい。
【0875】
いくつかの態様において、細胞は、併用処置の一部として、例えば、別の治療的介入、例えば、抗体または改変された細胞または受容体または作用物質、例えば、細胞傷害剤または治療剤と同時にまたは逐次的に、任意の順序で投与される。細胞は、いくつかの態様において、同時にまたは任意の順序で逐次的にのいずれかで、1つもしくは複数の追加の治療剤と共に、または別の治療的介入に関連して、同時投与される。いくつかの状況において、細胞は、細胞集団が1つまたは複数の追加の治療剤の効果を増強するか、またはその逆であるように、時間的に十分に近く、別の治療と同時投与される。いくつかの態様において、細胞は、1つまたは複数の追加の治療剤の前に投与される。いくつかの態様において、細胞は、1つまたは複数の追加の治療剤の後に投与される。いくつかの態様において、1つまたは複数の追加の作用物質には、例えば、持続を増強するための、IL-2などのサイトカインが含まれる。
【0876】
いくつかの態様において、細胞の用量は、提供される方法に従って、および/または提供される製造物品もしくは組成物に従って、対象に投与される。いくつかの態様において、用量のサイズまたはタイミングは、対象における特定の疾患または状態の相関関係として決定される。場合によっては、特定の疾患のための用量のサイズまたはタイミングは、提供される説明を考慮して、経験的に決定されてもよい。
【0877】
いくつかの態様において、細胞の用量は、2×105個または約2×105個の細胞/kgから、2×106個または約2×106個の細胞/kg、例えば、4×105個もしくは約4×105個の細胞/kgから、1×106個もしくは約1×106個の細胞/kg、または6×105個もしくは約6×105個の細胞/kgから、8×105個もしくは約8×105個の細胞/kgを含む。いくつかの態様において、細胞の用量は、対象のキログラム体重当たり2×105個以下の細胞(例えば、CAR発現細胞などの抗原発現細胞)(細胞/kg)、例えば、3×105もしくは約3×105細胞/kg以下、4×105もしくは約4×105細胞/kg以下、5×105もしくは約5×105細胞/kg以下、6×105もしくは約6×105細胞/kg以下、7×105もしくは約7×105細胞/kg以下、8×105もしくは約8×105細胞/kg以下、9×105もしくは約9×105細胞/kg以下、1×106もしくは約1×106細胞/kg以下、または2×106もしくは約2×106細胞/kg以下を含む。いくつかの態様において、細胞の用量は、対象のキログラム体重当たり少なくとも2×105個または少なくとも約2×105個または2×105個または約2×105個の細胞(例えば、CAR発現細胞などの抗原発現細胞)(細胞/kg)、例えば、少なくとも3×105もしくは少なくとも約3×105もしくは3×105もしくは約3×105細胞/kg、少なくとも4×105もしくは少なくとも約4×105もしくは4×105もしくは約4×105細胞/kg、少なくとも5×105もしくは少なくとも約5×105もしくは5×105もしくは約5×105細胞/kg、少なくとも6×105もしくは少なくとも約6×105もしくは6×105もしくは約6×105細胞/kg、少なくとも7×105もしくは少なくとも約7×105もしくは7×105もしくは約7×105細胞/kg、少なくとも8×105もしくは少なくとも約8×105もしくは8×105もしくは約8×105細胞/kg、少なくとも9×105もしくは少なくとも約9×105もしくは9×105もしくは約9×105細胞/kg、少なくとも1×106もしくは少なくとも約1×106もしくは1×106もしくは約1×106細胞/kg、または少なくとも2×106もしくは少なくとも約2×106もしくは2×106もしくは約2×106細胞/kgを含む。
【0878】
ある特定の態様において、細胞、または細胞のサブタイプの個々の集団は、10万または約10万から、1000億または約1000億個の細胞の範囲で、および/または対象の体重のキログラム当たりその量の細胞で、例えば、10万または約10万から、500億または約500億個の細胞(例えば、500万もしくは約500万個の細胞、2500万もしくは約2500万個の細胞、5億もしくは約5億個の細胞、10億もしくは約10億個の細胞、50億もしくは約50億個の細胞、200億もしくは約200億個の細胞、300億もしくは約300億個の細胞、400億もしくは約400億個の細胞、または前述の値のうちの任意の2つによって規定される範囲)、100万または約100万から、500億または約500億個の細胞(例えば、500万もしくは約500万個の細胞、2500万もしくは約2500万個の細胞、5億もしくは約5億個の細胞、10億もしくは約10億個の細胞、50億もしくは約50億個の細胞、200億もしくは約200億個の細胞、300億もしくは約300億個の細胞、400億もしくは約400億個の細胞、または前述の値のうちの任意の2つによって規定される範囲)、例えば1000万または約1000万から、1000億または約1000億個の細胞(例えば、2000万もしくは約2000万個の細胞、3000万もしくは約3000万個の細胞、4000万もしくは約4000万個の細胞、6000万もしくは約6000万個の細胞、7000万もしくは約7000万個の細胞、8000万もしくは約8000万個の細胞、9000万もしくは約9000万個の細胞、100億もしくは約100億個の細胞、250億もしくは約250億個の細胞、500億もしくは約500億個の細胞、750億もしくは約750億個の細胞、900億もしくは約900億個の細胞、または前述の値のうちの任意の2つによって規定される範囲)など、場合によっては、1億または約1億から、500億または約500億個の細胞(例えば、1億2000万もしくは約1億2000万個の細胞、2億5000万もしくは約2億5000万個の細胞、3億5000万もしくは約3億5000万個の細胞、6億5000万もしくは約6億5000万個の細胞、8億もしくは約8億個の細胞、9億もしくは約9億個の細胞、30億もしくは約30億個の細胞、300億もしくは約300億個の細胞、450億もしくは約450億個の細胞)、またはこれらの範囲の間にある任意の値、および/または対象の体重のキログラム当たりで、対象に投与される。投薬量は、疾患もしくは障害および/または患者および/または他の処置に特有の属性に応じて変動し得る。いくつかの態様において、そのような値は、組換え受容体発現細胞の数を指し;他の態様において、それらは、投与されるT細胞またはPBMCまたは全細胞の数を指す。
【0879】
いくつかの態様において、例えば、対象がヒトである場合、用量は、約5×108個よりも少ない全組換え受容体(例えば、CAR)発現細胞、T細胞、または末梢血単核細胞(PBMC)、例えば、1×106または約1×106個から、5×108または約5×108個の範囲のそのような細胞、例えば、2×106、5×106、1×107、5×107、1×108、1.5×108、もしくは5×108個、または約2×106、5×106、1×107、5×107、1×108、1.5×108、もしくは5×108個の合計のそのような細胞、または前述の値のうちの任意の2つの間の範囲を含む。いくつかの態様において、例えば、対象がヒトである場合、用量は、1×106または約1×106個よりも多い全組換え受容体(例えば、CAR)発現細胞、T細胞、または末梢血単核細胞(PBMC)、かつ2×109または約2×109個よりも少ない全組換え受容体(例えば、CAR)発現細胞、T細胞、または末梢血単核細胞(PBMC)、例えば、2.5×107または約2.5×107個から、1.2×109または約1.2×109個の範囲のそのような細胞、例えば、2.5×107、5×107、1×108、1.5×108、8×108、もしくは1.2×109個、または約2.5×107、5×107、1×108、1.5×108、8×108、もしくは1.2×109個の合計のそのような細胞、または前述の値のうちの任意の2つの間の範囲を含む。
【0880】
いくつかの態様において、遺伝子操作された細胞の用量は、1×105もしくは約1×105個から、5×108もしくは約5×108個の全CAR発現(CAR+)T細胞、1×105もしくは約1×105個から、2.5×108もしくは約2.5×108個の全CAR+ T細胞、1×105もしくは約1×105個から、1×108もしくは約1×108個の全CAR+ T細胞、1×105もしくは約1×105個から、5×107もしくは約5×107個の全CAR+ T細胞、1×105もしくは約1×105個から、2.5×107もしくは約2.5×107個の全CAR+ T細胞、1×105もしくは約1×105個から、1×107もしくは約1×107個の全CAR+ T細胞、1×105もしくは約1×105個から、5×106もしくは約5×106個の全CAR+ T細胞、1×105もしくは約1×105個から、2.5×106もしくは約2.5×106個の全CAR+ T細胞、1×105もしくは約1×105個から、1×106もしくは約1×106個の全CAR+ T細胞、1×106もしくは約1×106個から、5×108もしくは約5×108個の全CAR+ T細胞、1×106もしくは約1×106個から、2.5×108もしくは約2.5×108個の全CAR+ T細胞、1×106もしくは約1×106個から、1×108もしくは約1×108個の全CAR+ T細胞、1×106もしくは約1×106個から、5×107もしくは約5×107個の全CAR+ T細胞、1×106もしくは約1×106個から、2.5×107もしくは約2.5×107個の全CAR+ T細胞、1×106もしくは約1×106個から、1×107もしくは約1×107個の全CAR+ T細胞、1×106もしくは約1×106個から、5×106もしくは約5×106個の全CAR+ T細胞、1×106もしくは約1×106個から、2.5×106もしくは約2.5×106個の全CAR+ T細胞、2.5×106もしくは約2.5×106個から、5×108もしくは約5×108個の全CAR+ T細胞、2.5×106もしくは約2.5×106個から、2.5×108もしくは約2.5×108個の全CAR+ T細胞、2.5×106もしくは約2.5×106個から、1×108もしくは約1×108個の全CAR+ T細胞、2.5×106もしくは約2.5×106個から、5×107もしくは約5×107個の全CAR+ T細胞、2.5×106もしくは約2.5×106個から、2.5×107もしくは約2.5×107個の全CAR+ T細胞、2.5×106もしくは約2.5×106個から、1×107もしくは約1×107個の全CAR+ T細胞、2.5×106もしくは約2.5×106個から、5×106もしくは約5×106個の全CAR+ T細胞、5×106もしくは約5×106個から、5×108もしくは約5×108個の全CAR+ T細胞、5×106もしくは約5×106個から、2.5×108もしくは約2.5×108個の全CAR+ T細胞、5×106もしくは約5×106個から、1×108もしくは約1×108個の全CAR+ T細胞、5×106もしくは約5×106個から、5×107もしくは約5×107個の全CAR+ T細胞、5×106もしくは約5×106個から、2.5×107もしくは約2.5×107個の全CAR+ T細胞、5×106もしくは約5×106個から、1×107もしくは約1×107個の全CAR+ T細胞、1×107もしくは約1×107個から、5×108もしくは約5×108個の全CAR+ T細胞、1×107もしくは約1×107個から、2.5×108もしくは約2.5×108個の全CAR+ T細胞、1×107もしくは約1×107個から、1×108もしくは約1×108個の全CAR+ T細胞、1×107もしくは約1×107個から、5×107もしくは約5×107個の全CAR+ T細胞、1×107もしくは約1×107個から、2.5×107もしくは約2.5×107個の全CAR+ T細胞、2.5×107もしくは約2.5×107個から、5×108もしくは約5×108個の全CAR+ T細胞、2.5×107もしくは約2.5×107個から、2.5×108もしくは約2.5×108個の全CAR+ T細胞、2.5×107もしくは約2.5×107個から、1×108もしくは約1×108個の全CAR+ T細胞、2.5×107もしくは約2.5×107個から、5×107もしくは約5×107個の全CAR+ T細胞、5×107もしくは約5×107個から、5×108もしくは約5×108個の全CAR+ T細胞、5×107もしくは約5×107個から、2.5×108もしくは約2.5×108個の全CAR+ T細胞、5×107もしくは約5×107個から、1×108もしくは約1×108個の全CAR+ T細胞、1×108もしくは約1×108個から、5×108もしくは約5×108個の全CAR+ T細胞、1×108もしくは約1×108個から、2.5×108もしくは約2.5×108個の全CAR+ T細胞、または2.5×108もしくは約2.5×108個から、5×108もしくは約5×108個の全CAR+ T細胞を含む。いくつかの態様において、遺伝子操作された細胞の用量は、2.5×107または約2.5×107個から、1.5×108または約1.5×108個の全CAR+ T細胞、例えば、5×107または約5×107個から、1×108または約1×108個の全CAR+ T細胞を含む。
【0881】
いくつかの態様において、遺伝子操作された細胞の用量は、少なくとも1×105もしくは少なくとも約1×105個のCAR+細胞、少なくとも2.5×105もしくは少なくとも約2.5×105個のCAR+細胞、少なくとも5×105もしくは少なくとも約5×105個のCAR+細胞、少なくとも1×106もしくは少なくとも約1×106個のCAR+細胞、少なくとも2.5×106もしくは少なくとも約2.5×106個のCAR+細胞、少なくとも5×106もしくは少なくとも約5×106個のCAR+細胞、少なくとも1×107もしくは少なくとも約1×107個のCAR+細胞、少なくとも2.5×107もしくは少なくとも約2.5×107個のCAR+細胞、少なくとも5×107もしくは少なくとも約5×107個のCAR+細胞、少なくとも1×108もしくは少なくとも約1×108個のCAR+細胞、少なくとも1.5×108もしくは少なくとも約1.5×108個のCAR+細胞、少なくとも2.5×108もしくは少なくとも約2.5×108個のCAR+細胞、または少なくとも5×108もしくは少なくとも約5×108個のCAR+細胞を含む。
【0882】
いくつかの態様において、細胞療法は、1×105もしくは約1×105個から、5×108もしくは約5×108個の全組換え受容体発現細胞、全T細胞、もしくは全末梢血単核細胞(PBMC)、5×105もしくは約5×105個から、1×107もしくは約1×107個の全組換え受容体発現細胞、全T細胞、もしくは全末梢血単核細胞(PBMC)、または1×106もしくは約1×106個から、1×107もしくは約1×107個の全組換え受容体発現細胞、全T細胞、もしくは全末梢血単核細胞(PBMC)(それぞれ両端の値を含む)の細胞数を含む用量の投与を含む。いくつかの態様において、細胞療法は、少なくとも1×105または少なくとも約1×105個の全組換え受容体発現細胞、全T細胞、または全末梢血単核細胞(PBMC)、例えば、少なくとも1×106または少なくとも1×106個、少なくとも1×107または少なくとも約1×107個、少なくとも1×108または少なくとも約1×108個のそのような細胞、の細胞数を含む細胞の用量の投与を含む。いくつかの態様において、数は、CD3+またはCD8+、場合によってはまた組換え受容体発現(例えば、CAR+)細胞の総数に関する。いくつかの態様において、細胞療法は、1×105もしくは約1×105個から、5×108もしくは約5×108個のCD3+もしくはCD8+全T細胞またはCD3+もしくはCD8+組換え受容体発現細胞、5×105もしくは約5×105個から、1×107もしくは約1×107個のCD3+もしくはCD8+全T細胞またはCD3+もしくはCD8+組換え受容体発現細胞、または1×106もしくは約1×106個から、1×107もしくは約1×107個のCD3+もしくはCD8+全T細胞またはCD3+もしくはCD8+組換え受容体発現細胞(それぞれ両端の値を含む)の細胞数を含む用量の投与を含む。いくつかの態様において、細胞療法は、1×105もしくは約1×105個から、5×108もしくは約5×108個の全CD3+/CAR+もしくはCD8+/CAR+細胞、5×105もしくは約5×105個から、1×107もしくは約1×107個の全CD3+/CAR+もしくはCD8+/CAR+細胞、または1×106もしくは約1×106個から、1×107もしくは約1×107個の全CD3+/CAR+もしくはCD8+/CAR+細胞(それぞれ両端の値を含む)の細胞数を含む用量の投与を含む。
【0883】
いくつかの態様において、用量のT細胞には、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、またはCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞が含まれる。
【0884】
いくつかの態様において、例えば、対象がヒトである場合、CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞を含む用量において含む、用量のCD8+ T細胞は、1×106または約1×106個から、5×108または約5×108個の全組換え受容体(例えば、CAR)発現CD8+細胞、例えば、5×106または約5×106個から、1×108または約1×108個の範囲のそのような細胞、例えば、1×107、2.5×107、5×107、7.5×107、1×108、1.5×108、もしくは5×108個の合計のそのような細胞、または前述の値のうちの任意の2つの間の範囲を含む。いくつかの態様において、患者は、複数の用量を投与され、用量の各々または全用量は、前述の値のうちの任意内であることができる。いくつかの態様において、細胞の用量は、1×107もしくは約1×107個から、0.75×108もしくは約0.75×108個の全組換え受容体発現CD8+ T細胞、1×107もしくは約1×107個から、5×107もしくは約5×107個の全組換え受容体発現CD8+ T細胞、1×107もしくは約1×107個から、0.25×108もしくは約0.25×108個の全組換え受容体発現CD8+ T細胞(それぞれ両端の値を含む)の投与を含む。いくつかの態様において、細胞の用量は、1×107、2.5×107、5×107、7.5×107、1×108、1.5×108、2.5×108、もしくは5×108個、または約1×107、2.5×107、5×107、7.5×107、1×108、1.5×108、2.5×108、もしくは5×108個の全組換え受容体発現CD8+ T細胞の投与を含む。
【0885】
いくつかの態様において、細胞、例えば、組換え受容体発現T細胞の用量は、単一用量として対象に投与されるか、または2週間、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年、もしくはそれよりも長い期間内に一度のみ投与される。
【0886】
養子細胞療法の状況において、所与の「用量」の投与は、単一組成物および/または単一の不断の投与として、例えば、単回注射または連続注入としての所与の量または数の細胞の投与を包含し、かつまた、複数の個々の組成物または注入物において、指定された期間にわたって、例えば3日以内にわたって提供される、分割用量としてのまたは複数の組成物としての、所与の量または数の細胞の投与も包含する。したがって、いくつかの状況において、用量は、単一の時点で与えられるかまたは開始される、指定された数の細胞の単回投与または連続投与である。しかし、いくつかの状況において、用量は、3日以内の期間にわたる、例えば3日間もしくは2日間の1日に1回の複数の注射もしくは注入において、または一日の期間にわたる複数の注入によって、投与される。
【0887】
したがって、いくつかの局面において、用量の細胞は、単一の薬学的組成物において投与される。いくつかの態様において、用量の細胞は、用量の細胞をひとまとめにして含有する、複数の組成物において投与される。
【0888】
いくつかの態様において、「分割用量」という用語は、1日よりも多くにわたって投与されるように分割される用量を指す。このタイプの投薬は、本発明によって包含され、単一用量とみなされる。
【0889】
したがって、細胞の用量は、分割用量、例えば、経時的に投与される分割用量として投与されてもよい。例えば、いくつかの態様において、用量は、対象に、2日にわたってまたは3日にわたって投与されてもよい。分割投薬のための例示的な方法は、用量の25%を1日目に投与すること、および用量の残りの75%を2日目に投与することを含む。他の態様において、用量の33%が1日目に投与され、残りの67%が2日目に投与されてもよい。いくつかの局面において、用量の10%が1日目に投与され、用量の30%が2日目に投与され、用量の60%が3日目に投与される。いくつかの態様において、分割用量は、3日よりも多くにわたっては広がらない。
【0890】
いくつかの態様において、細胞の用量は、各々が用量のいくつかの細胞を含有する、複数の組成物または溶液、例えば第1および第2、任意でそれよりも多くの投与によって、投与されてもよい。いくつかの局面において、各々が異なる細胞の集団および/またはサブタイプを含有する、複数の組成物が、別々にまたは独立して、任意である特定の期間内に投与される。例えば、細胞の集団またはサブタイプは、それぞれ、CD8+ T細胞およびCD4+ T細胞、ならびに/またはそれぞれ、CD8+およびCD4+が濃縮された集団、例えば、各々が組換え受容体を発現するように遺伝子操作された細胞を個々に含むCD4+ T細胞および/もしくはCD8+ T細胞を含むことができる。いくつかの態様において、用量の投与は、ある用量のCD8+ T細胞またはある用量のCD4+ T細胞を含む第1の組成物の投与、および用量の残りのCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞を含む第2の組成物の投与を含む。
【0891】
いくつかの態様において、組成物または用量の投与、例えば、複数の細胞組成物の投与は、細胞組成物の別々の投与を含む。いくつかの局面において、別々の投与は、同時にまたは逐次的に、任意の順序で実施される。いくつかの態様において、用量は、第1の組成物および第2の組成物を含み、第1の組成物および第2の組成物は、0もしくは約0から、12もしくは約12時間離れて、0もしくは約0から、6もしくは約6時間離れて、または0もしくは約0から、2もしくは約2時間離れて投与される。いくつかの態様において、第1の組成物の投与の開始および第2の組成物の投与の開始は、2時間もしくは約2時間以下、1時間もしくは約1時間以下、または30分もしくは約30分以下離れて、15分もしくは約15分以下、10分もしくは約10分以下、または5分もしくは約5分以下離れて実施される。いくつかの態様において、第1の組成物の投与の開始および/または完了、ならびに第2の組成物の投与の完了および/または開始は、2時間もしくは約2時間以下、1時間もしくは約1時間以下、または30分もしくは約30分以下離れて、15分もしくは約15分以下、10分もしくは約10分以下、または5分もしくは約5分以下離れて実施される。
【0892】
いくつかの組成物において、第1の組成物、例えば、用量の第1の組成物は、CD4+ T細胞を含む。いくつかの組成物において、第1の組成物、例えば、用量の第1の組成物は、CD8+ T細胞を含む。いくつかの態様において、第1の組成物は、第2の組成物の前に投与される。
【0893】
いくつかの態様において、細胞の用量または組成物は、組換え受容体を発現するCD4+細胞対組換え受容体を発現するCD8+細胞の、および/またはCD4+細胞対CD8+細胞の、規定された比または標的比を含み、該比は任意で、およそ1:1であるか、またはおよそ1:3~およそ3:1、例えばおよそ1:1である。いくつかの局面において、異なる細胞集団の標的比または所望の比(例えば、CD4+:CD8+比またはCAR+CD4+:CAR+CD8+比、例えば1:1)を有する組成物または用量の投与は、集団の一方を含有する細胞組成物の投与、および次いで、集団の他方を含む別々の細胞組成物の投与を含み、該投与は、標的比もしくは所望の比、またはおよそ標的比もしくは所望の比である。いくつかの局面において、規定された比での細胞の用量または組成物の投与は、T細胞療法の改善された増大、持続、および/または抗腫瘍活性をもたらす。
【0894】
いくつかの態様において、対象は、細胞の複数の用量、例えば、2つ以上の用量または複数の連続した用量を受ける。いくつかの態様において、2つの用量が、対象に投与される。いくつかの態様において、対象は、連続した用量を受け、例えば、第2の用量は、第1の用量のおよそ4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または21日後に投与される。いくつかの態様において、複数の連続した用量は、1つまたは複数の追加の用量が、連続した用量の投与後に投与されるように、第1の用量後に投与される。いくつかの局面において、追加の用量で対象に投与される細胞数は、第1の用量および/または連続した用量と同じであるか、または類似している。いくつかの態様において、1つまたは複数の追加の用量は、以前の用量よりも大きい。
【0895】
いくつかの局面において、第1のおよび/または連続した用量のサイズは、1つまたは複数の判断基準、例えば、以前の処置、例えば化学療法に対する対象の応答、対象における疾患負荷、例えば、腫瘍荷重、かさ、サイズ、もしくは程度、転移の範囲もしくはタイプ、病期、ならびに/または、対象が毒性転帰、例えば、CRS、マクロファージ活性化症候群、腫瘍崩壊症候群、神経毒性、および/もしくは、投与される細胞および/もしくは組換え受容体に対する宿主免疫応答を発症する可能性もしくは発生率に基づいて決定される。
【0896】
いくつかの局面において、第1の用量の投与と連続した用量の投与との間の時間は、約9~約35日、約14~約28日、または15~17日である。いくつかの態様において、連続した用量の投与は、第1の用量の投与後約14日よりも長く、かつその後約28日よりも短い時点である。いくつかの局面において、第1の用量と連続した用量との間の時間は、約21日である。いくつかの態様において、1つまたは複数の追加の用量、例えば、連続した用量は、連続した用量の投与後に投与される。いくつかの局面において、1つまたは複数の追加の連続した用量は、以前の用量の投与の、少なくとも14日かつ約28日未満後に投与される。いくつかの態様において、追加の用量は、以前の用量の約14日未満後に、例えば、以前の用量の4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13日後に投与される。いくつかの態様において、いかなる用量も、以前の用量の約14日よりも短い後には投与されず、かつ/またはいかなる用量も、以前の用量の約28日よりも長い後には投与されない。
【0897】
いくつかの態様において、細胞、例えば、組換え受容体発現細胞の用量は、T細胞の第1の用量およびT細胞の連続した用量を含む、2つの用量(例えば、二重用量)を含み、第1の用量および第2の用量の一方または両方は、T細胞の分割用量の投与を含む。
【0898】
いくつかの態様において、細胞の用量は、一般に、疾患負荷を低減させるのに有効であるように十分大きい。
【0899】
いくつかの態様において、細胞は、いくつかの局面では細胞もしくは細胞タイプの所望の用量もしくは数、および/または細胞タイプの所望の比を含む、所望の投薬量で投与される。したがって、細胞の投薬量は、いくつかの態様において、細胞の総数(またはkg体重当たりの数)、および個々の集団またはサブタイプの所望の比、例えばCD4+対CD8+の比に基づく。いくつかの態様において、細胞の投薬量は、個々の集団における細胞のまたは個々の細胞タイプの、所望の総数(または体重のkg当たりの数)に基づく。いくつかの態様において、投薬量は、そのような特徴の組み合わせ、例えば、全細胞の所望の数、所望の比、および個々の集団における細胞の所望の総数に基づく。
【0900】
いくつかの態様において、CD8+ T細胞およびCD4+ T細胞などの、細胞の集団またはサブタイプは、T細胞の所望の用量などの全細胞の所望の用量で、またはその許容される差異の範囲内で投与される。いくつかの局面において、所望の用量は、所望の細胞数、または細胞が投与される対象の体重の単位当たりの所望の細胞数、例えば、細胞/kgである。いくつかの局面において、所望の用量は、最小の細胞数、または体重の単位当たりの最小の細胞数であるか、またはそれを上回る。いくつかの局面において、所望の用量で投与される全細胞の中で、個々の集団またはサブタイプは、所望のアウトプット比(例えば、CD4+対CD8+の比)でまたはその近くで、例えば、そのような比のある特定の許容される差異または誤差の範囲内で存在する。
【0901】
いくつかの態様において、細胞は、細胞の個々の集団またはサブタイプの1つまたは複数の所望の用量、例えば、CD4+細胞の所望の用量および/またはCD8+細胞の所望の用量で、またはその許容される差異の範囲内で投与される。いくつかの局面において、所望の用量は、サブタイプもしくは集団の細胞の所望の数、または細胞が投与される対象の体重の単位当たりのそのような細胞の所望の数、例えば、細胞/kgである。いくつかの局面において、所望の用量は、集団もしくはサブタイプの細胞の最小の数、または体重の単位当たりの集団もしくはサブタイプの細胞の最小の数であるか、またはそれを上回る。
【0902】
したがって、いくつかの態様において、投薬量は、全細胞の所望の固定された用量および所望の比に基づき、かつ/または個々のサブタイプもしくは亜集団の1つもしくは複数、例えば、各々の所望の固定された用量に基づく。したがって、いくつかの態様において、投薬量は、T細胞の所望の固定されたもしくは最小の用量、およびCD4+細胞対CD8+細胞の所望の比に基づき、かつ/またはCD4+細胞および/もしくはCD8+細胞の所望の固定されたもしくは最小の用量に基づく。
【0903】
いくつかの態様において、細胞は、CD4+細胞およびCD8+細胞またはサブタイプなどの、複数の細胞集団またはサブタイプの所望のアウトプット比で、またはその許容される範囲内で投与される。いくつかの局面において、所望の比は、特定の比であることができ、または比の範囲であることができ、例えば、いくつかの態様において、所望の比(例えば、CD4+細胞対CD8+細胞の比)は、5:1もしくは約5:1から、5:1もしくは約5:1(もしくは約1:5よりも大きく、かつ約5:1よりも小さい)、または1:3もしくは約1:3から、3:1もしくは約3:1(もしくは約1:3よりも大きく、かつ約3:1よりも小さい)、例えば、2:1または約2:1から、1:5または約1:5(または約1:5よりも大きく、かつ約2:1よりも小さい)、例えば、5:1、4.5:1、4:1、3.5:1、3:1、2.5:1、2:1、1.9:1、1.8:1、1.7:1、1.6:1、1.5:1、1.4:1、1.3:1、1.2:1、1.1:1、1:1、1:1.1、1:1.2、1:1.3、1:1.4、1:1.5、1:1.6、1:1.7、1:1.8、1:1.9、1:2、1:2.5、1:3、1:3.5、1:4、1:4.5、もしくは1:5、または約5:1、4.5:1、4:1、3.5:1、3:1、2.5:1、2:1、1.9:1、1.8:1、1.7:1、1.6:1、1.5:1、1.4:1、1.3:1、1.2:1、1.1:1、1:1、1:1.1、1:1.2、1:1.3、1:1.4、1:1.5、1:1.6、1:1.7、1:1.8、1:1.9、1:2、1:2.5、1:3、1:3.5、1:4、1:4.5、もしくは1:5である。いくつかの局面において、許容される差異は、所望の比の約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%以内であり、これらの範囲の間の任意の値を含む。
【0904】
特定の態様において、細胞の数および/または濃度は、組換え受容体(例えば、CAR)発現細胞の数を指す。他の態様において、細胞の数および/または濃度は、投与されるすべての細胞、T細胞、または末梢血単核細胞(PBMC)の数または濃度を指す。
【0905】
いくつかの局面において、用量のサイズは、1つまたは複数の判断基準、例えば、以前の処置、例えば化学療法に対する対象の応答、対象における疾患負荷、例えば、腫瘍荷重、かさ、サイズ、もしくは程度、転移の範囲もしくはタイプ、病期、ならびに/または、対象が毒性転帰、例えば、CRS、マクロファージ活性化症候群、腫瘍崩壊症候群、神経毒性、および/もしくは、投与される細胞および/もしくは組換え受容体に対する宿主免疫応答を発症する可能性もしくは発生率に基づいて決定される。
【0906】
いくつかの態様において、方法はまた、キメラ抗原受容体(CAR)を発現する細胞の1つもしくは複数の追加の用量および/またはリンパ球枯渇療法を投与する工程も含み、かつ/または、方法の1つまたは複数の工程は反復される。いくつかの態様において、1つまたは複数の追加の用量は、初期用量と同じである。いくつかの態様において、1つまたは複数の追加の用量は、初期用量とは異なり、例えば、初期用量よりも高く、例えば2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、もしくは10倍、またはそれ以上高いか、あるいは、初期用量よりも低く、例えばより高いなど、例えば2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、もしくは10倍、またはそれ以上低い。いくつかの態様において、1つまたは複数の追加の用量の投与は、初期処置または任意の以前の処置に対する対象の応答、対象における疾患負荷、例えば、腫瘍荷重、かさ、サイズ、もしくは程度、転移の範囲もしくはタイプ、病期、ならびに/または、対象が毒性転帰、例えば、CRS、マクロファージ活性化症候群、腫瘍崩壊症候群、神経毒性、および/もしくは、投与される細胞に対する宿主免疫応答を発症する可能性もしくは発生率に基づいて決定される。
【0907】
V. 薬学的組成物および製剤
また、例えば養子細胞療法用の、投与のための薬学的組成物および製剤などの組成物も提供される。いくつかの局面において、薬学的組成物は、例えば、組換え受容体またはキメラ受容体をコードする導入遺伝子配列を含む改変されたTGFBR2遺伝子座を含む、本明細書に記載される操作された細胞または操作された細胞を含有する組成物のいずれかを含有する。いくつかの態様において、例えば、組換え受容体またはその一部分、例えばCARをコードする導入遺伝子配列を含む改変されたTGFBR2遺伝子座を含む、提供される操作された細胞を含む細胞の用量が、薬学的組成物または製剤などの、組成物または製剤として提供される。そのような組成物は、提供される方法に従って、および/または提供される製造物品もしくは組成物と共に、例えば、疾患、状態、および障害の予防もしくは処置において、または検出法、診断法、および予後判定法において使用することができる。
【0908】
「薬学的製剤」という用語は、その中に含有される活性成分の生物学的活性を有効にするような形態であり、かつ製剤が投与される対象に対して許容できないほど毒性である、いかなる追加の構成要素も含有しない、調製物を指す。
【0909】
「薬学的に許容される担体」とは、対象に対して非毒性である、活性成分以外の薬学的製剤中の成分を指す。薬学的に許容される担体には、緩衝剤、賦形剤、安定剤、または保存剤が含まれるが、それらに限定されない。
【0910】
いくつかの局面において、担体の選択は、一部には、特定の細胞もしくは作用物質によって、および/または投与の方法によって決定される。したがって、様々な適している製剤がある。例えば、薬学的組成物は、保存剤を含有することができる。適している保存剤には、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、および塩化ベンザルコニウムが含まれ得る。いくつかの局面において、2種類以上の保存剤の混合物が用いられる。保存剤またはその混合物は、典型的には、総組成物の重量で約0.0001%~約2%の量で存在する。担体は、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)によって記載されている。薬学的に許容される担体は、一般に、使用される投薬量および濃度でレシピエントに対して非毒性であり、以下を含むが、それらに限定されない:リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;保存剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルもしくはベンジルアルコール;メチルもしくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む単糖類、二糖類、および他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトールなどの糖類;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);ならびに/またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤。
【0911】
緩衝剤は、いくつかの局面において、組成物中に含まれる。適している緩衝剤には、例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸、リン酸カリウム、ならびに様々な他の酸および塩が含まれる。いくつかの局面において、2種類以上の緩衝剤の混合物が用いられる。緩衝剤またはその混合物は、典型的には、総組成物の重量で約0.001%~約4%の量で存在する。投与可能な薬学的組成物を調製するための方法は、公知である。例示的な方法は、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Lippincott Williams & Wilkins; 21st ed.(May 1, 2005)に、より詳細に記載されている。
【0912】
製剤または組成物はまた、細胞または作用物質で予防されるかまたは処置される特定の適応症、疾患、または状態に有用な1種類よりも多い活性成分を含有してもよく、それぞれの活性は、互いに有害な影響を及ぼさない。そのような活性成分は、意図される目的で有効である量での組み合わせで、適切に存在する。したがって、いくつかの態様において、薬学的組成物は、他の薬学的に活性を有する作用物質または薬物、例えば化学療法剤、例えば、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、メトトレキサート、パクリタクセル、リツキシマブ、ビンブラスチン、ビンクリスチンなどをさらに含む。いくつかの態様において、作用物質または細胞は、塩、例えば、薬学的に許容される塩の形態で投与される。適している薬学的に許容される酸付加塩には、塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸、および硫酸などの無機酸、ならびに酒石酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸、およびアリールスルホン酸、例えば、p-トルエンスルホン酸などの有機酸に由来するものが含まれる。
【0913】
薬学的組成物は、いくつかの態様において、疾患または状態を処置するかまたは予防するのに有効な量、例えば、治療的に有効な量または予防的に有効な量で、作用物質または細胞を含有する。治療効力または予防効力は、いくつかの態様において、処置される対象の定期的な評価によってモニタリングされる。状態に応じた、数日またはそれよりも長くにわたる反復投与については、疾患症状の所望の抑制が起こるまで、処置が反復される。しかし、他の投薬レジメンが有用である可能性があり、決定され得る。所望の投薬量は、組成物の単回ボーラス投与によって、組成物の複数回ボーラス投与によって、または組成物の連続注入投与によって送達することができる。
【0914】
作用物質または細胞は、任意の適している手段によって、例えば、ボーラス注入によって、注射、例えば、静脈内注射もしくは皮下注射、眼内注射、眼周囲注射、網膜下注射、硝子体内注射、経中隔注射、強膜下注射、脈絡膜内注射、前房内注射、結膜下(subconjectval)注射、結膜下(subconjuntival)注射、テノン嚢下注射、眼球後注射、眼球周囲注射、または後強膜近傍送達によって投与され得る。いくつかの態様において、それらは、非経口投与、肺内投与、および鼻腔内投与によって、ならびに局所処置のために望まれる場合は、病巣内投与によって投与される。非経口注入には、筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、または皮下投与が含まれる。いくつかの態様において、所与の用量は、細胞または作用物質の単回ボーラス投与によって投与される。いくつかの態様において、それは、例えば、3日以内の期間にわたる、細胞もしくは作用物質の複数回ボーラス投与によって、または細胞もしくは作用物質の連続注入投与によって投与される。
【0915】
疾患の予防または処置のために、適切な投薬量は、処置されるべき疾患のタイプ、1つまたは複数の作用物質のタイプ、細胞または組換え受容体のタイプ、疾患の重症度および経過、作用物質または細胞が予防目的で投与されるかまたは治療目的で投与されるか、以前の治療、対象の病歴および作用物質または細胞に対する応答、ならびに主治医の裁量に依存し得る。組成物は、いくつかの態様において、一度にまたは一連の処置にわたって、対象に適切に投与される。
【0916】
細胞または作用物質は、標準的な投与技法、製剤、および/またはデバイスを用いて投与されてもよい。組成物の保管および投与のために、シリンジおよびバイアルなどの、製剤およびデバイスが提供される。細胞に関して、投与は、自己または異種であることができる。いくつかの局面において、細胞は、ある対象から単離され、操作されて、同じ対象に投与される。他の局面において、細胞は、1つの対象から単離され、操作されて、別の対象に投与される。例えば、免疫応答性細胞または前駆体を、1つの対象から取得して、同じ対象または適合性を有する異なる対象に投与することができる。末梢血由来の免疫応答性細胞またはそれらの子孫(例えば、インビボ、エクスビボ、またはインビトロ由来)を、カテーテル投与を含む局所注射、全身注射、局所注射、静脈内注射、または非経口投与を介して投与することができる。治療用組成物(例えば、遺伝子改変された免疫応答性細胞または神経毒性の症状を処置するかもしくは寛解させる作用物質を含有する薬学的組成物)を投与する場合、治療用組成物は一般に、注射可能な単位剤形(溶液、懸濁液、エマルション)で製剤化される。
【0917】
製剤には、経口投与、静脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、肺投与、経皮投与、筋肉内投与、鼻腔内投与、口腔投与、舌下投与、または坐剤投与のためのものが含まれる。いくつかの態様において、作用物質または細胞集団は、非経口投与される。本明細書において用いられる「非経口」という用語は、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、直腸投与、膣投与、および腹腔内投与を含む。いくつかの態様において、作用物質または細胞集団は、静脈内注射、腹腔内注射、または皮下注射による末梢全身送達を用いて、対象に投与される。
【0918】
組成物は、いくつかの態様において、滅菌液体調製物、例えば、等張水溶液、懸濁液、エマルション、分散液、または粘性組成物として提供され、これは、いくつかの局面では、選択されたpHになるように緩衝されてもよい。液体調製物は通常、ゲル、他の粘性組成物、および固体組成物よりも調製が容易である。追加的に、液体組成物は、特に注射によって投与するのに、いくらかより便利である。他方で、粘性組成物は、特定の組織とのより長い接触期間を提供する適切な粘度範囲内で、製剤化することができる。液体組成物または粘性組成物は、担体を含むことができ、担体は、例えば、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)およびそれらの適している混合物を含有する溶媒または分散媒であることができる。
【0919】
無菌の注射可能な溶液は、作用物質または細胞を溶媒中に組み込むことによって、例えば、適している担体、希釈剤、または賦形剤、例えば滅菌水、生理食塩水、グルコース、デキストロースなどとの混合物において、調製することができる。
【0920】
インビボ投与のために用いられる製剤は、一般に無菌である。無菌性は、例えば、滅菌濾過膜を通した濾過によって、容易に達成され得る。
【0921】
VI. キットおよび製造物品
また、提供される態様を行うのに有用な製造物品、システム、装置、およびキットも提供される。いくつかの態様において、提供される製造物品またはキットは、遺伝子破壊を誘導することができる1つもしくは複数の作用物質の1つもしくは複数の成分、および/または鋳型ポリヌクレオチド、例えば、組換え受容体もしくはその一部分をコードする導入遺伝子配列を含有する鋳型ポリヌクレオチドを含有する。いくつかの態様において、製造物品またはキットは、例えば、組換え受容体またはその一部分をコードする導入遺伝子を含む改変されたTGFBR2遺伝子座を含む操作された細胞を生成するために、本明細書に記載されるような組換え受容体および/または他の分子を発現するようにT細胞を改変するための方法において、使用することができる。
【0922】
いくつかの態様において、製造物品またはキットは、提供される方法を行うのに有用なポリペプチド、核酸、ベクター、および/またはポリヌクレオチドを含む。いくつかの態様において、製造物品またはキットは、例えば、TGFBR2遺伝子座で、遺伝子破壊を誘導することができる1つまたは複数の作用物質(例えば、本明細書におけるセクションI.Aに記載されるもの)を含む。いくつかの態様において、製造物品またはキットは、遺伝子破壊を誘導することができる1つもしくは複数の作用物質の1つもしくは複数の成分をコードする、かつ/または、例えば、HDRを介した細胞中への導入遺伝子配列のターゲティングにおける使用のための、鋳型ポリヌクレオチド、例えば、本明細書におけるセクションI.B.2に記載されるものを含む、1つまたは複数の核酸分子、例えば、プラスミドまたはDNA断片を含む。いくつかの態様において、本明細書で提供される製造物品またはキットは、対照ベクターを含有する。
【0923】
いくつかの態様において、本明細書で提供される製造物品またはキットは、1つまたは複数の作用物質(該1つまたは複数の作用物質の各々は、独立して、TGFBR2遺伝子座内の標的部位の遺伝子破壊を誘導することができる);および組換え受容体またはその一部分をコードする導入遺伝子を含む鋳型ポリヌクレオチド(該導入遺伝子は、相同性指向修復(HDR)を介した標的部位でのまたはその近くでの組み込みのためにターゲティングされる)を含有する。いくつかの局面において、遺伝子破壊を誘導することができる1つまたは複数の作用物質は、本明細書に記載されるいずれかである。いくつかの局面において、1つまたは複数の作用物質は、Cas9/gRNA複合体を含むリボ核タンパク質(RNP)複合体である。いくつかの局面において、RNPに含まれるgRNAは、本明細書に記載されるいずれかの標的部位などの、TGFBR2遺伝子座中の標的部位を標的とする。いくつかの局面において、鋳型ポリヌクレオチドは、本明細書に記載される鋳型ポリヌクレオチドのいずれかである。
【0924】
いくつかの態様において、製造物品またはキットは、1つまたは複数の容器、典型的には複数の容器と、パッケージング材料と、使用説明書、例えば、操作のために細胞中に成分を導入するための説明書を一般に含む、1つもしくは複数の容器および/またはパッケージング上のまたはそれに付随するラベルまたは添付文書とを含む。
【0925】
本明細書で提供される製造物品は、パッケージング材料を含有する。提供される材料のパッケージングにおける使用のためのパッケージング材料は、周知である。例えば、その各々の全体が本明細書に組み入れられる、米国特許第5,323,907号、第5,052,558号、および第5,033,252号を参照されたい。パッケージング材料の例には、ブリスターパック、ボトル、チューブ、吸入器、ポンプ、バッグ、バイアル、容器、シリンジ、使い捨ての実験備品、例えば、ピペットチップおよび/もしくはプラスチックプレート、またはボトルが含まれるが、それらに限定されない。製造物品またはキットは、材料の分配を容易にするための、またはハイスループットもしくは大規模の様式での使用を容易にするための、例えば、ロボット機器における使用を容易にするためのデバイスを含むことができる。典型的には、パッケージングは、その中に含有される組成物と非反応性である。
【0926】
いくつかの態様において、遺伝子破壊を誘導することができる1つもしくは複数の作用物質および/または鋳型ポリヌクレオチドは、別々にパッケージングされる。いくつかの態様において、各容器は、単一のコンパートメントを有することができる。いくつかの態様において、製造物品またはキットの他の成分は、別々にパッケージングされるか、または単一のコンパートメントにおいて一緒にパッケージングされる。
【0927】
また、例えば、治療または処置における使用のための、提供される細胞および/または細胞組成物を投与するのに有用な製造物品、システム、装置、およびキットも提供される。いくつかの態様において、本明細書で提供される製造物品またはキットは、T細胞および/またはT細胞組成物、例えば、本明細書に記載される任意のT細胞および/またはT細胞組成物を含有する。いくつかの局面において、本明細書で提供される製造物品またはキットは、T細胞またはT細胞組成物の投与のために用いることができ、使用説明書を含むことができる。
【0928】
いくつかの態様において、本明細書で提供される製造物品またはキットは、T細胞および/またはT細胞組成物、例えば、本明細書に記載される任意のT細胞および/またはT細胞組成物を含有する。いくつかの態様において、T細胞および/またはT細胞組成物、改変されたT細胞の任意は、本明細書に記載されるスクリーニング法を用いた。いくつかの態様において、本明細書で提供される製造物品またはキットは、対照のまたは改変されていないT細胞および/またはT細胞組成物を含有する。いくつかの態様において、製造物品またはキットは、治療のための操作された細胞および/または細胞組成物の投与についての、1つまたは複数の説明書を含む。
【0929】
治療のための細胞または細胞組成物を含有する製造物品および/またはキットは、容器と、容器上のまたはそれに付随するラベルまたは添付文書とを含んでもよい。適している容器には、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、IV溶液バッグなどが含まれる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成されてもよい。容器は、いくつかの態様において、単独であるか、または状態を処置する、予防する、かつ/または診断するのに有効な別の組成物と組み合わされている、組成物を保持する。いくつかの態様において、容器は、無菌アクセスポートを有する。例示的な容器には、静脈内溶液バッグ、注射用の針によって突き刺すことができる栓を有するものを含むバイアル、または経口投与される作用物質のためのボトルもしくはバイアルが含まれる。ラベルまたは添付文書は、組成物が、疾患または状態を処置するために用いられることを示し得る。製造物品は、(a)組換え受容体を発現する操作された細胞を含む組成物がその中に含有されている、第1の容器;および(b)第2の作用物質を含む組成物がその中に含有されている、第2の容器を含んでもよい。いくつかの態様において、製造物品は、(a)組換え受容体を発現する操作された細胞のあるサブタイプを含む第1の組成物がその中に含有されている、第1の容器;および(b)組換え受容体を発現する操作された細胞の異なるサブタイプを含む組成物がその中に含有されている、第2の容器を含んでもよい。製造物品は、組成物が特定の状態を処置するために使用され得ることを示す、添付文書をさらに含んでもよい。代替的にまたは追加的に、製造物品は、薬学的に許容される緩衝剤を含む別の容器または同じ容器をさらに含んでもよい。それは、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、および/またはシリンジなどの他の材料をさらに含んでもよい。
【0930】
VII. 定義
別途定義されない限り、本明細書において用いられる専門用語、記号、ならびに他の技術用語および科学用語または用語法はすべて、特許請求の範囲に記載される主題が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有するように意図される。場合によっては、一般的に理解される意味を有する用語が、明確さおよび/または容易な参照のために本明細書において定義され、本明細書にそのような定義が含まれることは、当技術分野において一般に理解されるものとの実質的な差異を表すと必ずしも解釈されるべきではない。
【0931】
本明細書において用いられる場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が明確に別のように示さない限り、複数の指示対象を含む。例えば、「1つの(a)」または「1つの(an)」は、「少なくとも1つの」または「1つまたは複数の」を意味する。本明細書に記載される局面および変化形は、局面および変化形「からなる」ことおよび/または「から本質的になる」ことを含むと理解される。
【0932】
本開示の全体を通して、特許請求の範囲に記載される主題の様々な局面は、範囲形式で示される。範囲形式での記載は単に便宜および簡潔性のためであり、特許請求の範囲に記載される主題の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではないことが理解されるべきである。したがって、範囲の記載は、可能性のある部分範囲ならびにその範囲内にある個々の数値をすべて具体的に開示しているとみなされるべきである。例えば、値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限との間にある各々の介在する値(intervening value)、およびその表記された範囲における任意の他の表記された値または介在する値が、特許請求の範囲に記載される主題の範囲内に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、独立して、より小さい範囲に含まれてもよく、表記された範囲における任意の具体的に除外された限界に従うことを条件として、特許請求の範囲に記載される主題の範囲内にも包含される。表記された範囲が限界の一方または両方を含む場合、それらの含まれた限界のどちらかまたは両方を除外する範囲もまた、特許請求の範囲に記載される主題に含まれる。このことは、範囲の広さにかかわらず当てはまる。
【0933】
本明細書において用いられる「約」という用語は、容易に知られるそれぞれの値についての通常の誤差範囲を指す。本明細書における「約」値またはパラメーターへの言及は、その値またはパラメーター自体に関する態様を含む(かつ記載する)。例えば、「約X」に言及する記載は、「X」の記載を含む。いくつかの態様において、「約」は、±25%、±20%、±15%、±10%、±5%、または±1%を指し得る。
【0934】
本明細書において用いられる場合、ヌクレオチドまたはアミノ酸位置が、例えば配列表に示される、開示された配列におけるヌクレオチドまたはアミノ酸位置に「対応する」という記述は、GAPアルゴリズムなどの標準的なアライメントアルゴリズムを用いて同一性を最大化するように、開示された配列とのアライメント時に特定されたヌクレオチドまたはアミノ酸位置を指す。配列を整列させることによって、例えば、保存されたアミノ酸残基および同一のアミノ酸残基をガイドとして用いて、対応する残基を特定することができる。一般に、対応する位置を特定するために、最高オーダーマッチが得られるようにアミノ酸の配列を整列させる(例えば、Computational Molecular Biology, Lesk, A.M., ed., Oxford University Press, New York, 1988;Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D.W., ed., Academic Press, New York, 1993;Computer Analysis of Sequence Data, Part I, Griffin, A.M., and Griffin, H.G., eds., Humana Press, New Jersey, 1994;Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987;およびSequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M Stockton Press, New York, 1991;Carrillo et al. (1988) SIAM J Applied Math 48: 1073を参照されたい)。
【0935】
本明細書において用いられる「ベクター」という用語は、それが連結される別の核酸を増やすことができる核酸分子を指す。この用語には、自己複製性核酸構造物としてのベクター、および導入されている宿主細胞のゲノム中に組み込まれるベクターが含まれる。ある特定のベクターは、それが機能的に連結される核酸の発現を導くことができる。そのようなベクターは、本明細書において「発現ベクター」と称される。ベクターの中には、ウイルスベクター、例えばレトロウイルスベクター、例えば、ガンマレトロウイルスベクターおよびレンチウイルスベクターがある。
【0936】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」、および「宿主細胞培養物」という用語は、互換的に用いられ、外来性核酸が導入されている細胞を、そのような細胞の子孫を含めて指す。宿主細胞には、「形質転換体」および「形質転換細胞」が含まれ、それらには、初代形質転換細胞および継代数にかかわらずそれに由来する子孫が含まれる。子孫は、親細胞と核酸内容が完全に同一でなくてもよく、変異を含有してもよい。当初形質転換された細胞においてスクリーニングされたかまたは選択されたのと同じ機能または生物学的活性を有する変異体子孫が、本明細書に含まれる。
【0937】
本明細書において用いられる場合、細胞または細胞の集団が特定のマーカーについて「陽性」であるという記述は、特定のマーカー、典型的には表面マーカーの細胞上でのまたは細胞中での検出可能な存在を指す。表面マーカーを指す場合、この用語は、フローサイトメトリーによって、例えば、マーカーに特異的に結合する抗体で染色し、該抗体を検出することによって検出されるような表面発現の存在を指し、ここで、染色は、アイソタイプが一致する対照を用いてそれ以外は同一の条件下で同じ手順を実施して検出される染色を実質的に上回るレベルで、および/またはマーカーについて陽性であることが公知の細胞のものと実質的に同様のレベルで、および/またはマーカーについて陰性であることが公知の細胞のものよりも実質的に高いレベルで、フローサイトメトリーによって検出可能である。
【0938】
本明細書において用いられる場合、細胞または細胞の集団が特定のマーカーについて「陰性」であるという記述は、特定のマーカー、典型的には表面マーカーの細胞上でのまたは細胞中での実質的に検出可能な存在がないことを指す。表面マーカーを指す場合、この用語は、フローサイトメトリーによって、例えば、マーカーに特異的に結合する抗体で染色し、該抗体を検出することによって検出されるような表面発現の非存在を指し、ここで、染色は、アイソタイプが一致する対照を用いてそれ以外は同一の条件下で同じ手順を実施して検出される染色を実質的に上回るレベルでフローサイトメトリーによって検出されず、および/またはマーカーについて陽性であることが公知の細胞のものよりも実質的に低いレベル、および/またはマーカーについて陰性であることが公知の細胞のものと比較して実質的に同様のレベルである。
【0939】
本明細書において用いられる場合、「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」および「同一性パーセント」は、アミノ酸配列(参照ポリペプチド配列)に対して用いられる時、最大の配列同一性パーセントを達成するように、配列を整列させて、必要である場合にギャップを導入し、いかなる保存的置換も配列同一性の一部とみなさない後に、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列(例えば、対象の抗体または断片)中のアミノ酸残基の百分率として定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的のアライメントは、様々な公知の方法で、いくつかの態様では、BLAST、BLAST-2、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に利用可能なコンピュータソフトウェアを用いて達成することができる。配列を整列させるための適切なパラメーターは、比較される配列の全長にわたって最大のアライメントを達成するために必要とされる任意のアルゴリズムを含めて、決定することができる。
【0940】
いくつかの態様において、「機能的に連結された」とは、適切な分子(例えば、転写活性化タンパク質)が制御配列に結合した時に遺伝子発現を可能にするような、DNA配列、例えば、異種核酸および制御配列などの成分の会合を含み得る。したがって、それは、記載される成分が、その意図された様式で機能することを可能にする関係にあることを意味する。
【0941】
アミノ酸置換は、ポリペプチド中の1つのアミノ酸の別のアミノ酸での置き換えを含み得る。置換は、保存的アミノ酸置換であってもよく、または非保存的アミノ酸置換であってもよい。アミノ酸置換を、関心対象の結合分子、例えば、抗体に導入してもよく、産物を、所望の活性、例えば、保持された/改善された抗原結合、減少した免疫原性、または改善されたADCCもしくはCDCについてスクリーニングしてもよい。
【0942】
アミノ酸は、一般に、以下の共通の側鎖特性に従って分類することができる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0943】
いくつかの態様において、保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーの、同一クラスの別のメンバーとの交換を含むことができる。いくつかの態様において、非保存的アミノ酸置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーの、別のクラスとの交換を含むことができる。
【0944】
本明細書において用いられる場合、組成物とは、細胞を含む、2種類以上の産物、物質、または化合物の任意の混合物を指す。組成物は、溶液、懸濁液、液体、粉末、ペースト、水性、非水性、またはそれらの任意の組み合わせであってもよい。
【0945】
本明細書において用いられる場合、「対象」は、ヒトまたは他の動物などの哺乳動物であり、典型的には、ヒトである。
【0946】
VIII. 例示的な態様
提供される態様には以下がある。
1. 改変されたトランスフォーミング増殖因子β受容体2型(TGFBR2)遺伝子座を含む、遺伝子操作されたT細胞であって、該改変されたTGFBR2遺伝子座が、組換え受容体またはその一部分をコードする導入遺伝子配列を含む、前記遺伝子操作されたT細胞。
2. 前記導入遺伝子配列が、任意で相同性指向修復(HDR)を介して、内在性TGFBR2遺伝子座に組み込まれている、態様1の遺伝子操作されたT細胞。
3. 前記改変されたTGFBR2遺伝子座が、機能的なTGFBRIIポリペプチドをコードしない、態様1または態様2の遺伝子操作されたT細胞。
4. 前記改変されたTGFBR2遺伝子座が、TGFBRIIポリペプチドをコードしないか、またはTGFBRIIポリペプチドの発現が排除されている、態様1~3のいずれかの遺伝子操作されたT細胞。
5. 前記改変されたTGFBR2遺伝子座が、完全長TGFBRIIポリペプチドをコードしないか、または部分的なTGFBRIIポリペプチドをコードする、態様1~3のいずれかの遺伝子操作されたT細胞。
6. 前記改変されたTGFBR2遺伝子座が、ドミナントネガティブTGFBRIIポリペプチドをコードする、態様1~3および5のいずれかの遺伝子操作されたT細胞。
7. コードされるTGFBRIIポリペプチドが、SEQ ID NO:59の残基22~191もしくはSEQ ID NO:60の残基22~216に対応するアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:59の残基22~191もしくはSEQ ID NO:60の残基22~216に対応するアミノ酸配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれよりも高い配列同一性を示す配列、またはその断片を含む、態様1~3、5、および6のいずれかの遺伝子操作されたT細胞。
8. 前記導入遺伝子配列が、内在性TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームの1つもしくは複数のエクソンまたはその部分配列とインフレームである、態様1~3および5~7のいずれかの遺伝子操作されたT細胞。
9. 前記導入遺伝子配列が、内在性TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームのエクソン1の下流かつエクソン6の上流にある、態様1~8のいずれかの遺伝子操作されたT細胞。
10. 前記導入遺伝子配列が、内在性TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームのエクソン4の下流かつエクソン6の上流にある、態様1~9のいずれかの遺伝子操作されたT細胞。
11. 前記組換え受容体が、組換えT細胞受容体(TCR)であるか、またはそれを含む、態様1~10のいずれかの遺伝子操作されたT細胞。
12. 前記組換え受容体が、組換えTCRであり、前記導入遺伝子配列が、TCRアルファ(TCRα)鎖、TCRベータ(TCRβ)鎖、または両方をコードする、態様1~11のいずれかの遺伝子操作されたT細胞。
13. 前記組換え受容体が、機能的な非T細胞受容体(非TCR)抗原受容体であるか、またはそれを含む、態様1~10のいずれかの遺伝子操作されたT細胞。
14. 前記組換え受容体が、キメラ抗原受容体(CAR)である、態様1~10および13のいずれかの遺伝子操作されたT細胞。
15. 前記CARが、細胞外領域、膜貫通ドメイン、および細胞内領域を含む、態様14の遺伝子操作されたT細胞。
16. 前記細胞外領域が、結合ドメインを含む、態様15の遺伝子操作されたT細胞。
17. 前記結合ドメインが、抗体もしくはその抗原結合断片であるか、またはそれを含む、態様16の遺伝子操作されたT細胞。
18. 前記結合ドメインが、ある疾患、障害、もしくは状態の細胞もしくは組織に関連している、それに特異的である、またはその上に発現している標的抗原に結合することができる、態様16および態様17の遺伝子操作されたT細胞。
19. 前記標的抗原が腫瘍抗原である、態様18の遺伝子操作されたT細胞。
20. 前記標的抗原が、αvβ6インテグリン(avb6インテグリン)、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3、B7-H6、炭酸脱水酵素9(CA9;CAIXまたはG250としても知られている)、がん精巣抗原、がん/精巣抗原1B(CTAG;NY-ESO-1およびLAGE-2としても知られている)、癌胎児性抗原(CEA)、サイクリン、サイクリンA2、C-Cモチーフケモカインリガンド1(CCL-1)、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD123、CD133、CD138、CD171、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4)、上皮成長因子タンパク質(EGFR)、III型上皮成長因子受容体変異(EGFR vIII)、上皮糖タンパク質2(EPG-2)、上皮糖タンパク質40(EPG-40)、エフリンB2、エフリン受容体A2(EPHa2)、エストロゲン受容体、Fc受容体様5(FCRL5;Fc受容体ホモログ5またはFCRH5としても知られている)、胎児アセチルコリン受容体(胎児AchR)、葉酸結合タンパク質(FBP)、葉酸受容体アルファ、ガングリオシドGD2、O-アセチル化GD2(OGD2)、ガングリオシドGD3、糖タンパク質100(gp100)、グリピカン-3(GPC3)、Gタンパク質共役受容体クラスCグループ5メンバーD(GPRC5D)、Her2/neu(受容体チロシンキナーゼerb-B2)、Her3(erb-B3)、Her4(erb-B4)、erbB二量体、ヒト高分子量-黒色腫関連抗原(HMW-MAA)、B型肝炎表面抗原、ヒト白血球抗原A1(HLA-A1)、ヒト白血球抗原A2(HLA-A2)、IL-22受容体アルファ(IL-22Rα)、IL-13受容体アルファ2(IL-13Rα2)、キナーゼインサートドメイン受容体(kdr)、κ軽鎖、L1細胞接着分子(L1-CAM)、L1-CAMのCE7エピトープ、ロイシンリッチリピート含有8ファミリーメンバーA(LRRC8A)、ルイスY、黒色腫関連抗原(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A6、MAGE-A10、メソテリン(MSLN)、c-Met、マウスサイトメガロウイルス(CMV)、ムチン1(MUC1)、MUC16、ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D)リガンド、メランA(MART-1)、神経細胞接着分子(NCAM)、腫瘍胎児抗原、黒色腫優先発現抗原(PRAME)、プロゲステロン受容体、前立腺特異的抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、サバイビン、栄養膜糖タンパク質(TPBG;5T4としても知られている)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、チロシナーゼ関連タンパク質1(TRP1;TYRP1またはgp75としても知られている)、チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP2;ドパクロムトートメラーゼ、ドパクロムデルタ-イソメラーゼ、またはDCTとしても知られている)、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)、血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR2)、ウィルムス腫瘍1(WT-1)、病原体特異的抗原もしくは病原体発現抗原、またはユニバーサルタグに関連する抗原、および/またはビオチン化分子、および/またはHIV、HCV、HBV、もしくは他の病原体によって発現される分子の中から選択される、態様18または態様19の遺伝子操作されたT細胞。
21. 前記細胞外領域が、スペーサーを含み、任意で、該スペーサーが、結合ドメインと膜貫通ドメインとの間に機能的に連結されている、態様15~20のいずれかの遺伝子操作されたT細胞。
22. 前記スペーサーが、免疫グロブリンヒンジ領域を含む、態様21の遺伝子操作されたT細胞。
23. 前記スペーサーが、CH2領域およびCH3領域を含む、態様21または態様22の遺伝子操作されたT細胞。
24. 前記細胞内領域が、細胞内シグナル伝達ドメインを含む、態様15~23のいずれかの遺伝子操作されたT細胞。
25. 前記細胞内シグナル伝達ドメインが、CD3鎖、任意でCD3-ゼータ(CD3ζ)鎖の細胞内シグナル伝達ドメイン、もしくはそのシグナル伝達部分であるか、またはそれを含む、態様24の遺伝子操作されたT細胞。
26. 前記細胞内領域が、1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメインを含む、態様24または態様25の遺伝子操作されたT細胞。
27. 前記1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメインが、CD28、4-1BB、もしくはICOSの細胞内シグナル伝達ドメイン、またはそのシグナル伝達部分を含む、態様26の遺伝子操作されたT細胞。
28. 共刺激シグナル伝達領域が、4-1BBの細胞内シグナル伝達ドメインを含む、態様26または態様27のキメラ抗原受容体。
29. 前記改変されたTGFBR2遺伝子座が、そのN末端からC末端へと順番に、細胞外結合ドメイン、スペーサー、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達領域を含む、組換え受容体をコードする、態様16~28のいずれかの遺伝子操作されたT細胞。
30. 前記導入遺伝子配列が、順番に、細胞外結合ドメイン、任意でscFv;ヒト免疫グロブリンヒンジ由来の、任意でIgG1、IgG2、もしくはIgG4、またはその改変バージョン由来の配列を任意で含み、CH2領域および/またはCH3領域を任意でさらに含む、スペーサー;ならびに、任意でヒトCD28由来の、膜貫通ドメイン;任意でヒト4-1BB由来の、共刺激シグナル伝達ドメイン;ならびに、細胞内シグナル伝達領域、任意でCD3ζ鎖またはその一部分、をコードするヌクレオチドの配列を含み;かつ/あるいは
前記改変されたTGFBR2遺伝子座が、順番に、細胞外結合ドメイン、任意でscFv;ヒト免疫グロブリンヒンジ由来の、任意でIgG1、IgG2、もしくはIgG4、またはその改変バージョン由来の配列を任意で含み、CH2領域および/またはCH3領域を任意でさらに含む、スペーサー;ならびに、任意でヒトCD28由来の、膜貫通ドメイン;任意でヒト4-1BB由来の、共刺激シグナル伝達ドメイン;ならびに、細胞内シグナル伝達領域、任意でCD3ζ鎖またはその一部分、をコードするヌクレオチドの配列を含む、
態様1~10および13~29のいずれかの遺伝子操作されたT細胞。
31. 前記CARが多鎖CARである、態様14~30のいずれかの遺伝子操作されたT細胞。
32. 前記導入遺伝子配列が、少なくとも1つのさらなるタンパク質をコードするヌクレオチドの配列を含む、態様1~30のいずれかの遺伝子操作されたT細胞。
33. 前記導入遺伝子配列が、1つまたは複数のマルチシストロン性エレメントを含む、態様1~32のいずれかの遺伝子操作されたT細胞。
34. 前記1つまたは複数のマルチシストロン性エレメントが、CARをコードするヌクレオチドの配列と、少なくとも1つのさらなるタンパク質をコードする配列との間に位置づけられている、態様33の遺伝子操作されたT細胞。
35. 前記少なくとも1つのさらなるタンパク質が、代用マーカーであり、任意で、該代用マーカーが、トランケートされた受容体であり、任意で、該トランケートされた受容体が、細胞内シグナル伝達ドメインを欠き、かつ/またはそのリガンドが結合した場合に細胞内シグナル伝達を媒介することができない、態様32~34のいずれかの遺伝子操作されたT細胞。
36. 前記組換え受容体が、組換えTCRであり、マルチシストロン性エレメントが、TCRαをコードするヌクレオチドの配列と、TCRβをコードするヌクレオチドの配列との間に位置づけられている、態様33の遺伝子操作されたT細胞。
37. 前記組換え受容体が、多鎖CARであり、マルチシストロン性エレメントが、多鎖CARの1つの鎖をコードするヌクレオチドの配列と、多鎖CARの別の鎖をコードするヌクレオチドの配列との間に位置づけられている、態様33の遺伝子操作されたT細胞。
38. 前記1つまたは複数のマルチシストロン性エレメントが、組換え受容体をコードするヌクレオチドの配列の上流にある、態様33~37のいずれかの遺伝子操作されたT細胞。
39. 前記1つまたは複数のマルチシストロン性エレメントが、リボソームスキップ配列であるかまたはそれを含み、任意で、該リボソームスキップ配列が、T2A、P2A、E2A、またはF2Aエレメントである、態様33~38のいずれかの遺伝子操作されたT細胞。
40. 前記改変されたTGFBR2遺伝子座が、組換え受容体をコードする核酸配列の発現を調節するために機能的に連結された内在性TGFBR2遺伝子座のプロモーターおよび/または制御もしくは調節エレメントを含む、態様1~39のいずれかの遺伝子操作されたT細胞。
41. 前記改変された遺伝子座が、組換え受容体をコードする核酸配列の発現を調節するために機能的に連結された1つまたは複数の異種の制御または調節エレメントを含む、態様1~39のいずれかの遺伝子操作されたT細胞。
42. 前記1つまたは複数の異種の制御または調節エレメントが、異種プロモーター、エンハンサー、イントロン、ポリアデニル化シグナル、Kozakコンセンサス配列、スプライスアクセプター配列、またはスプライスドナー配列を含む、態様41の遺伝子操作されたT細胞。
43. 前記異種プロモーターが、ヒト伸長因子1アルファ(EF1α)プロモーターもしくはMNDプロモーターもしくはそれらのバリアントであるか、またはそれを含む、態様42の遺伝子操作されたT細胞。
44. 前記T細胞が、対象に由来する初代T細胞であり、任意で、該対象がヒトである、態様1~44のいずれかの遺伝子操作されたT細胞。
45. 前記T細胞が、CD8+ T細胞またはそのサブタイプである、態様1~44のいずれかの遺伝子操作されたT細胞。
46. 前記T細胞が、CD4+ T細胞またはそのサブタイプである、態様1~44のいずれかの遺伝子操作されたT細胞。
47. 前記T細胞が、任意でiPSCである多分化能細胞または多能性細胞に由来している、態様1~46のいずれかの遺伝子操作されたT細胞。
48. (a)組換え受容体またはその一部分をコードする核酸配列;および
(b)該核酸配列に連結された1つまたは複数の相同性アームであって、トランスフォーミング増殖因子β受容体2型(TGFBR2)遺伝子座のオープンリーディングフレームの1つまたは複数の領域に相同な配列を含む、1つまたは複数の相同性アーム
を含む、ポリヌクレオチド。
49. ポリヌクレオチドが導入された細胞から組換え受容体が発現される場合に、前記組換え受容体またはその一部分が、組換え受容体またはその一部分をコードする核酸配列を含む改変されたTGFBR2遺伝子座によってコードされる、態様48のポリヌクレオチド。
50. (a)における核酸配列が、T細胞、任意でヒトT細胞の内在性ゲノムTGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームにとって外来性または異種である配列である、態様48または態様49のポリヌクレオチド。
51. 前記1つまたは複数の相同性アームが、TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームの少なくとも1つのイントロンまたは少なくとも1つのエクソンを含む、態様48~50のいずれかのポリヌクレオチド。
52. ポリヌクレオチドが導入された細胞において、前記改変されたTGFBR2遺伝子座が、機能的なTGFBRIIポリペプチドをコードしない、態様48~51のいずれかのポリヌクレオチド。
53. ポリヌクレオチドが導入された細胞において、前記改変されたTGFBR2遺伝子座が、TGFBRIIポリペプチドをコードしないか、またはTGFBRIIポリペプチドの発現が排除されている、態様48~52のいずれかのポリヌクレオチド。
54. ポリヌクレオチドが導入された細胞において、前記改変されたTGFBR2遺伝子座が、完全長TGFBRIIポリペプチドをコードしないか、または部分的なTGFBRIIポリペプチドをコードする、態様48~52のいずれかのポリヌクレオチド。
55. ポリヌクレオチドが導入された細胞において、前記改変されたTGFBR2遺伝子座が、ドミナントネガティブTGFBRIIポリペプチドをコードする、態様48~52および54のいずれかのポリヌクレオチド。
56. ポリヌクレオチドが導入された細胞におけるコードされるTGFBRIIポリペプチドが、SEQ ID NO:59の残基22~191もしくはSEQ ID NO:60の残基22~216に対応するアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:59の残基22~191もしくはSEQ ID NO:60の残基22~216に対応するアミノ酸配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれよりも高い配列同一性を示す配列、またはその断片を含む、態様48~52、54、および55のいずれかのポリヌクレオチド。
57. (a)における核酸配列が、1つまたは複数の相同性アームに含まれるTGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームの1つまたは複数のエクソンとインフレームである、態様48~52および54~56のいずれかのポリヌクレオチド。
58. 前記オープンリーディングフレームの1つまたは複数の領域が、内在性TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームのエクソン1の下流にある配列であるか、またはそれを含む、態様48~57のいずれかのポリヌクレオチド。
59. 前記オープンリーディングフレームの1つまたは複数の領域が、TGFBR2遺伝子座のオープンリーディングフレームのエクソン4の少なくとも一部分もしくはエクソン4の下流を含む配列であるか、またはそれを含む、態様48~58のいずれかのポリヌクレオチド。
60. 前記1つまたは複数の相同性アームが、5'相同性アームおよび3'相同性アームを含む、態様48~59のいずれかのポリヌクレオチド。
61. 前記ポリヌクレオチドが、構造[5'相同性アーム]-[(a)の核酸配列]-[3'相同性アーム]を含む、態様60のポリヌクレオチド。
62. 前記5'相同性アームおよび前記3'相同性アームが、独立して、50もしくは約50から、2000もしくは約2000ヌクレオチド、100もしくは約100から、1000もしくは約1000ヌクレオチド、100もしくは約100から、750もしくは約750ヌクレオチド、100もしくは約100から、600もしくは約600ヌクレオチド、100もしくは約100から、400もしくは約400ヌクレオチド、100もしくは約100から、300もしくは約300ヌクレオチド、100もしくは約100から、200もしくは約200ヌクレオチド、200もしくは約200から、1000もしくは約1000ヌクレオチド、200もしくは約200から、750もしくは約750ヌクレオチド、200もしくは約200から、600もしくは約600ヌクレオチド、200もしくは約200から、400もしくは約400ヌクレオチド、200もしくは約200から、300もしくは約300ヌクレオチド、300もしくは約300から、1000もしくは約1000ヌクレオチド、300もしくは約300から、750もしくは約750ヌクレオチド、300もしくは約300から、600もしくは約600ヌクレオチド、300もしくは約300から、400もしくは約400ヌクレオチド、400もしくは約400から、1000もしくは約1000ヌクレオチド、400もしくは約400から、750もしくは約750ヌクレオチド、400もしくは約400から、600もしくは約600ヌクレオチド、600もしくは約600から、1000もしくは約1000ヌクレオチド、600もしくは約600から、750もしくは約750ヌクレオチド、または750もしくは約750から、1000もしくは約1000ヌクレオチドの長さである、態様60または態様61のポリヌクレオチド。
63. 前記5'相同性アームおよび前記3'相同性アームが、独立して、200、300、400、500、600、700、もしくは800ヌクレオチドの長さまたは約200、300、400、500、600、700、もしくは800ヌクレオチドの長さ、または前述のいずれかの間の任意の値である、態様60~62のいずれかのポリヌクレオチド。
64. 前記5'相同性アームおよび前記3'相同性アームが、独立して、300ヌクレオチド超または約300ヌクレオチド超の長さであり、任意で、前記5'相同性アームおよび前記3'相同性アームが、独立して、400、500、もしくは600ヌクレオチドの長さまたは約400、500、もしくは600ヌクレオチドの長さ、または前述のいずれかの間の任意の値である、態様60~63のいずれかのポリヌクレオチド。
65. 前記5'相同性アームが、SEQ ID NO:69~71に示される配列、またはSEQ ID NO:69~71に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれよりも高い配列同一性を示す配列、またはその部分配列を含む、態様60~64のいずれかのポリヌクレオチド。
66. 前記3'相同性アームが、SEQ ID NO:72に示される配列、またはSEQ ID NO:72に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれよりも高い配列同一性を示す配列、またはその部分配列を含む、態様60~65のいずれかのポリヌクレオチド。
67. コードされる組換え受容体が、組換えT細胞受容体(TCR)であるか、またはそれを含む、態様48~66のいずれかのポリヌクレオチド。
68. コードされる組換え受容体が、組換えTCRであり、(a)における核酸配列が、TCRアルファ(TCRα)鎖、TCRベータ(TCRβ)鎖、または両方をコードする、態様48~67のいずれかのポリヌクレオチド。
69. コードされる組換え受容体が、機能的な非T細胞受容体(非TCR)抗原受容体であるか、またはそれを含む、態様48~66のいずれかのポリヌクレオチド。
70. コードされる組換え受容体が、キメラ抗原受容体(CAR)である、態様48~66および69のいずれかのポリヌクレオチド。
71. 前記CARが、細胞外領域、膜貫通ドメイン、および細胞内領域を含む、態様70のポリヌクレオチド。
72. 前記細胞外領域が、結合ドメインを含む、態様71のいずれかのポリヌクレオチド。
73. 前記結合ドメインが、抗体もしくはその抗原結合断片であるか、またはそれを含む、態様72のポリヌクレオチド。
74. 前記結合ドメインが、ある疾患、障害、もしくは状態の細胞もしくは組織に関連している、それに特異的である、またはその上に発現している標的抗原に結合することができる、態様72および態様73のポリヌクレオチド。
75. 前記標的抗原が腫瘍抗原である、態様74のポリヌクレオチド。
76. 前記標的抗原が、αvβ6インテグリン(avb6インテグリン)、B細胞成熟抗原(BCMA)、B7-H3、B7-H6、炭酸脱水酵素9(CA9;CAIXまたはG250としても知られている)、がん精巣抗原、がん/精巣抗原1B(CTAG;NY-ESO-1およびLAGE-2としても知られている)、癌胎児性抗原(CEA)、サイクリン、サイクリンA2、C-Cモチーフケモカインリガンド1(CCL-1)、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD123、CD133、CD138、CD171、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4)、上皮成長因子タンパク質(EGFR)、III型上皮成長因子受容体変異(EGFR vIII)、上皮糖タンパク質2(EPG-2)、上皮糖タンパク質40(EPG-40)、エフリンB2、エフリン受容体A2(EPHa2)、エストロゲン受容体、Fc受容体様5(FCRL5;Fc受容体ホモログ5またはFCRH5としても知られている)、胎児アセチルコリン受容体(胎児AchR)、葉酸結合タンパク質(FBP)、葉酸受容体アルファ、ガングリオシドGD2、O-アセチル化GD2(OGD2)、ガングリオシドGD3、糖タンパク質100(gp100)、グリピカン-3(GPC3)、Gタンパク質共役受容体クラスCグループ5メンバーD(GPRC5D)、Her2/neu(受容体チロシンキナーゼerb-B2)、Her3(erb-B3)、Her4(erb-B4)、erbB二量体、ヒト高分子量-黒色腫関連抗原(HMW-MAA)、B型肝炎表面抗原、ヒト白血球抗原A1(HLA-A1)、ヒト白血球抗原A2(HLA-A2)、IL-22受容体アルファ(IL-22Rα)、IL-13受容体アルファ2(IL-13Rα2)、キナーゼインサートドメイン受容体(kdr)、κ軽鎖、L1細胞接着分子(L1-CAM)、L1-CAMのCE7エピトープ、ロイシンリッチリピート含有8ファミリーメンバーA(LRRC8A)、ルイスY、黒色腫関連抗原(MAGE)-A1、MAGE-A3、MAGE-A6、MAGE-A10、メソテリン(MSLN)、c-Met、マウスサイトメガロウイルス(CMV)、ムチン1(MUC1)、MUC16、ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D)リガンド、メランA(MART-1)、神経細胞接着分子(NCAM)、腫瘍胎児抗原、黒色腫優先発現抗原(PRAME)、プロゲステロン受容体、前立腺特異的抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、サバイビン、栄養膜糖タンパク質(TPBG;5T4としても知られている)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、チロシナーゼ関連タンパク質1(TRP1;TYRP1またはgp75としても知られている)、チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP2;ドパクロムトートメラーゼ、ドパクロムデルタ-イソメラーゼ、またはDCTとしても知られている)、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)、血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR2)、ウィルムス腫瘍1(WT-1)、病原体特異的抗原もしくは病原体発現抗原、またはユニバーサルタグに関連する抗原、および/またはビオチン化分子、および/またはHIV、HCV、HBV、もしくは他の病原体によって発現される分子の中から選択される、態様74または態様75のポリヌクレオチド。
77. 前記細胞外領域が、スペーサーを含み、任意で、該スペーサーが、結合ドメインと膜貫通ドメインとの間に機能的に連結されている、態様71~76のいずれかのポリヌクレオチド。
78. 前記スペーサーが、免疫グロブリンヒンジ領域を含む、態様77のポリヌクレオチド。
79. 前記スペーサーが、CH2領域およびCH3領域を含む、態様77または態様78のポリヌクレオチド。
80. 前記細胞内領域が、細胞内シグナル伝達ドメインを含む、態様71~79のいずれかのポリヌクレオチド。
81. 前記細胞内シグナル伝達ドメインが、CD3鎖、任意でCD3-ゼータ(CD3ζ)鎖の細胞内シグナル伝達ドメイン、もしくはそのシグナル伝達部分であるか、またはそれを含む、態様71~80のいずれかのポリヌクレオチド。
82. 前記細胞内領域が、1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメインを含む、態様71~81のいずれかのポリヌクレオチド。
83. 前記1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメインが、CD28、4-1BB、もしくはICOSの細胞内シグナル伝達ドメイン、またはそのシグナル伝達部分を含む、態様82のポリヌクレオチド。
84. 共刺激シグナル伝達領域が、4-1BBの細胞内シグナル伝達ドメインを含む、態様82または態様83のポリヌクレオチド。
85. 前記改変されたTGFBR2遺伝子座が、そのN末端からC末端へと順番に、細胞外結合ドメイン、スペーサー、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達領域を含む、組換え受容体をコードする、態様72~84のいずれかのポリヌクレオチド。
86. 前記導入遺伝子配列が、順番に、細胞外結合ドメイン、任意でscFv;ヒト免疫グロブリンヒンジ由来の、任意でIgG1、IgG2、もしくはIgG4、またはその改変バージョン由来の配列を任意で含み、CH2領域および/またはCH3領域を任意でさらに含む、スペーサー;ならびに、任意でヒトCD28由来の、膜貫通ドメイン;任意でヒト4-1BB由来の、共刺激シグナル伝達ドメイン;ならびに、細胞内シグナル伝達領域、任意でCD3ζ鎖またはその一部分、をコードするヌクレオチドの配列を含む、
態様48~66および68~85のいずれかのポリヌクレオチド。
87. 前記CARが多鎖CARである、態様70~86のいずれかのポリヌクレオチド。
88. (a)における核酸配列が、少なくとも1つのさらなるタンパク質をコードするヌクレオチドの配列を含む、態様48~87のいずれかのポリヌクレオチド。
89. (a)における核酸配列が、1つまたは複数のマルチシストロン性エレメントを含む、態様48~88のいずれかのポリヌクレオチド。
90. 前記1つまたは複数のマルチシストロン性エレメントが、CARをコードするヌクレオチドの配列と、少なくとも1つのさらなるタンパク質をコードするヌクレオチドの配列との間に位置づけられている、態様89のポリヌクレオチド。
91. 前記少なくとも1つのさらなるタンパク質が、代用マーカーであり、任意で、該代用マーカーが、トランケートされた受容体であり、任意で、該トランケートされた受容体が、細胞内シグナル伝達ドメインを欠き、かつ/またはそのリガンドが結合した場合に細胞内シグナル伝達を媒介することができない、態様88~90のいずれかのポリヌクレオチド。
92. 前記組換え受容体が、組換えTCRであり、マルチシストロン性エレメントが、TCRαをコードするヌクレオチドの配列と、TCRβをコードするヌクレオチドの配列との間に位置づけられている、態様89のポリヌクレオチド。
93. 前記組換え受容体が、多鎖CARであり、マルチシストロン性エレメントが、多鎖CARの1つの鎖をコードするヌクレオチドの配列と、多鎖CARの別の鎖をコードするヌクレオチドの配列との間に位置づけられている、態様89のポリヌクレオチド。
94. 前記1つまたは複数のマルチシストロン性エレメントが、組換え受容体をコードするヌクレオチドの配列の上流にある、態様89~93のいずれかのポリヌクレオチド。
95. 前記1つまたは複数のマルチシストロン性エレメントが、リボソームスキップ配列であるかまたはそれを含み、任意で、該リボソームスキップ配列が、T2A、P2A、E2A、またはF2Aエレメントである、態様89~94のいずれかのポリヌクレオチド。
96. (a)の核酸配列が、ポリヌクレオチドが導入された細胞からの発現時に組換え受容体の発現を調節するために機能的に連結された1つまたは複数の異種または制御性の調節エレメントを含む、態様48~95のいずれかのポリヌクレオチド。
97. 1つまたは複数の異種の制御または調節エレメントが、異種プロモーター、エンハンサー、イントロン、ポリアデニル化シグナル、Kozakコンセンサス配列、スプライスアクセプター配列、および/またはスプライスドナー配列を含む、態様96のポリヌクレオチド。
98. 前記異種プロモーターが、ヒト伸長因子1アルファ(EF1α)プロモーターもしくはMNDプロモーターもしくはそれらのバリアントであるか、またはそれを含む、態様97のポリヌクレオチド。
99. ウイルスベクター中に含まれる、態様48~98のいずれかのポリヌクレオチド。
100. 前記ウイルスベクターがAAVベクターである、態様99のポリヌクレオチド。
101. 前記AAVベクターが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、またはAAV8ベクターの中から選択される、態様100のポリヌクレオチド。
102. 前記AAVベクターが、AAV2またはAAV6ベクターである、態様100または態様101のポリヌクレオチド。
103. 前記ウイルスベクターが、レトロウイルスベクター、任意でレンチウイルスベクターである、態様99のポリヌクレオチド。
104. 直鎖ポリヌクレオチド、任意で二本鎖ポリヌクレオチドまたは一本鎖ポリヌクレオチドである、態様48~98のいずれかのポリヌクレオチド。
105. 少なくとも2500、2750、3000、3250、3500、3750、4000、4250、4500、4760、5000、5250、5500、5750、6000、7000、7500、8000、9000、もしくは10000ヌクレオチドの長さまたは少なくとも約2500、2750、3000、3250、3500、3750、4000、4250、4500、4760、5000、5250、5500、5750、6000、7000、7500、8000、9000、もしくは10000ヌクレオチドの長さ、または前述のいずれかの間の任意の値である、態様48~104のいずれかのポリヌクレオチド。
106. 2500もしくは約2500から、5000もしくは約5000ヌクレオチド、3500もしくは約3500から、4500もしくは約4500ヌクレオチド、または3750もしくは約3750ヌクレオチドから、4250もしくは約4250ヌクレオチドの長さである、態様48~105のいずれかのポリヌクレオチド。
107. 態様48~106のいずれかのポリヌクレオチドを、TGFBR2遺伝子座に遺伝子破壊を含むT細胞中に導入する工程を含む、遺伝子操作されたT細胞を作製する方法。
108. (a)T細胞の内在性TGFBR2遺伝子座内の標的部位で遺伝子破壊を誘導することができる1つまたは複数の作用物質を、T細胞中に導入する工程、および
(b)態様48~106のいずれかのポリヌクレオチドを、TGFBR2遺伝子座に遺伝子破壊を含むT細胞中に導入する工程
を含む、遺伝子操作されたT細胞を作製する方法であって、該方法は、改変されたTGFBR2遺伝子座を作製し、該改変されたTGFBR2遺伝子座は、組換え受容体またはその一部分をコードする核酸配列を含む、前記方法。
109. 組換え受容体またはその一部分をコードする核酸配列が、相同性指向修復(HDR)を介して内在性TGFBR2遺伝子座内に組み込まれる、態様108の方法。
110. 組換え受容体またはその一部分をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを、T細胞中に導入する工程を含む、遺伝子操作されたT細胞を作製する方法であって、該T細胞が、T細胞のTGFBR2遺伝子座内に遺伝子破壊を有し、該組換え受容体またはその一部分をコードする核酸配列が、相同性指向修復(HDR)を介して内在性TGFBR2遺伝子座内に組み込まれる、前記方法。
111. 前記遺伝子破壊が、T細胞の内在性TGFBR2遺伝子座内の標的部位で遺伝子破壊を誘導することができる1つまたは複数の作用物質を、T細胞中に導入することによって実施される、態様107または態様110の方法。
112. 前記方法が、改変されたTGFBR2遺伝子座を作製し、該改変されたTGFBR2遺伝子座が、組換え受容体またはその一部分をコードする核酸配列を含む、態様107~111のいずれかの方法。
113. 前記ポリヌクレオチドが、核酸配列に連結された1つまたは複数の相同性アームをさらに含み、該1つまたは複数の相同性アームが、トランスフォーミング増殖因子β受容体2型(TGFBR2)遺伝子座のオープンリーディングフレームの1つまたは複数の領域に相同な配列を含む、態様110~112のいずれかの方法。
114. 前記方法によって生成された細胞において、改変されたTGFBR2遺伝子座が、機能的なTGFBRIIポリペプチドをコードしない、態様110~113のいずれかの方法。
115. 前記方法によって生成された細胞において、改変されたTGFBR2遺伝子座が、TGFBRIIポリペプチドをコードしないか、またはTGFBRIIポリペプチドの発現が排除されている、態様110~114のいずれかの方法。
116. 前記方法によって生成された細胞において、改変されたTGFBR2遺伝子座が、完全長TGFBRIIポリペプチドをコードしないか、または部分的なTGFBRIIポリペプチドをコードする、態様110~114のいずれかの方法。
117. 前記方法によって生成された細胞において、改変されたTGFBR2遺伝子座が、ドミナントネガティブTGFBRIIポリペプチドをコードする、態様110~114および116のいずれかの方法。
118. 前記1つまたは複数の相同性アームが、5'相同性アームおよび3'相同性アームを含む、態様113~117のいずれかの方法。
119. 前記ポリヌクレオチドが、構造[5'相同性アーム]-[組換え受容体またはその一部分をコードする核酸配列]-[3'相同性アーム]を含む、態様118の方法。
120. 前記5'相同性アームおよび前記3'相同性アームが、独立して、50もしくは約50から、2000もしくは約2000ヌクレオチド、100もしくは約100から、1000もしくは約1000ヌクレオチド、100もしくは約100から、750もしくは約750ヌクレオチド、100もしくは約100から、600もしくは約600ヌクレオチド、100もしくは約100から、400もしくは約400ヌクレオチド、100もしくは約100から、300もしくは約300ヌクレオチド、100もしくは約100から、200もしくは約200ヌクレオチド、200もしくは約200から、1000もしくは約1000ヌクレオチド、200もしくは約200から、750もしくは約750ヌクレオチド、200もしくは約200から、600もしくは約600ヌクレオチド、200もしくは約200から、400もしくは約400ヌクレオチド、200もしくは約200から、300もしくは約300ヌクレオチド、300もしくは約300から、1000もしくは約1000ヌクレオチド、300もしくは約300から、750もしくは約750ヌクレオチド、300もしくは約300から、600もしくは約600ヌクレオチド、300もしくは約300から、400もしくは約400ヌクレオチド、400もしくは約400から、1000もしくは約1000ヌクレオチド、400もしくは約400から、750もしくは約750ヌクレオチド、400もしくは約400から、600もしくは約600ヌクレオチド、600もしくは約600から、1000もしくは約1000ヌクレオチド、600もしくは約600から、750もしくは約750ヌクレオチド、または750もしくは約750から、1000もしくは約1000ヌクレオチドの長さである、態様118または態様119の方法。
121. 前記5'相同性アームおよび前記3'相同性アームが、独立して、200、300、400、500、600、700、もしくは800ヌクレオチドの長さまたは約200、300、400、500、600、700、もしくは800ヌクレオチドの長さ、または前述のいずれかの間の任意の値である、態様118~120のいずれかの方法。
122. 前記5'相同性アームおよび前記3'相同性アームが、独立して、300ヌクレオチド超または約300ヌクレオチド超の長さであり、任意で、前記5'相同性アームおよび前記3'相同性アームが、独立して、400、500、もしくは600ヌクレオチドの長さまたは約400、500、もしくは600ヌクレオチドの長さ、または前述のいずれかの間の任意の値である、態様118~121のいずれかの方法。
123. 前記5'相同性アームが、SEQ ID NO:69~71に示される配列、またはSEQ ID NO:69~71に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれよりも高い配列同一性を示す配列、またはその部分配列を含む、態様118~122のいずれかの方法。
124. 前記3'相同性アームが、SEQ ID NO:72に示される配列、またはSEQ ID NO:72に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれよりも高い配列同一性を示す配列、またはその部分配列を含む、態様118~123のいずれかの方法。
125. コードされる組換え受容体が、組換えT細胞受容体(TCR)であるか、またはそれを含む、態様110~124のいずれかの方法。
126. コードされる組換え受容体が、キメラ抗原受容体(CAR)である、態様110~124のいずれかの方法。
127. 遺伝子破壊を誘導することができる1つまたは複数の作用物質が、
標的部位に特異的に結合するかもしくはハイブリダイズするDNA結合タンパク質もしくはDNA結合核酸、DNAターゲティングタンパク質とヌクレアーゼとを含む融合タンパク質、またはRNA誘導型ヌクレアーゼ
を含み、任意で、該1つまたは複数の作用物質が、
標的部位に特異的に結合するか、それを認識するか、またはそれにハイブリダイズする、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、または、およびCRISPR-Cas9の組み合わせ
を含む、態様108および111~126のいずれかの方法。
128. 前記1つまたは複数の作用物質の各々が、少なくとも1つの標的部位に相補的であるターゲティングドメインを有するガイドRNA(gRNA)を含む、態様108および111~127のいずれかの方法。
129. 前記1つまたは複数の作用物質が、gRNAとCas9タンパク質とを含むリボ核タンパク質(RNP)複合体として導入される、態様128の方法。
130. 前記RNPが、電気穿孔、パーティクルガン、リン酸カルシウムトランスフェクション、細胞の圧縮または圧搾を介して、任意で電気穿孔を介して導入される、態様129の方法。
131. 前記RNPの濃度が、1μMまたは約1μMから、5μMまたは約5μMであり、任意で、該RNPの濃度が、2μMまたは約2μMである、態様129または態様130の方法。
132. 前記gRNAが、
のターゲティングドメイン配列を有する、態様128~131のいずれかの方法。
133. 前記T細胞が、対象に由来する初代T細胞であり、任意で、該対象がヒトである、態様107~132のいずれかの方法。
134. 前記T細胞が、CD8+ T細胞またはそのサブタイプである、態様107~133のいずれかの方法。
135. 前記T細胞が、CD4+ T細胞またはそのサブタイプである、態様107~133のいずれかの方法。
136. 前記T細胞が、任意でiPSCである多分化能細胞または多能性細胞に由来している、態様107~135のいずれかの方法。
137. 前記ポリヌクレオチドが、ウイルスベクター中に含まれる、態様110~136のいずれかの方法。
138. 前記ウイルスベクターがAAVベクターである、態様137の方法。
139. 前記AAVベクターが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、またはAAV8ベクターの中から選択される、態様138の方法。
140. 前記AAVベクターが、AAV2またはAAV6ベクターである、態様138または態様139の方法。
141. 前記ウイルスベクターが、レトロウイルスベクター、任意でレンチウイルスベクターである、態様137の方法。
142. 前記ポリヌクレオチドが、直鎖ポリヌクレオチド、任意で二本鎖ポリヌクレオチドまたは一本鎖ポリヌクレオチドである、態様110~136のいずれかの方法。
143. 前記1つまたは複数の作用物質および前記ポリヌクレオチドが、同時にまたは逐次的に、任意の順序で導入される、態様108および111~142のいずれかの方法。
144. 前記ポリヌクレオチドが、前記1つまたは複数の作用物質の導入の後に導入される、態様108および111~143のいずれかの方法。
145. 前記ポリヌクレオチドが、前記作用物質の導入の直後に、またはその後約30秒、1分、2分、3分、4分、5分、6分、6分、8分、9分、10分、15分、20分、30分、40分、50分、60分、90分、2時間、3時間、もしくは4時間以内に導入される、態様144の方法。
146. 前記1つまたは複数の作用物質の導入の前に、1つまたは複数の免疫細胞を刺激するかまたは活性化するための条件下で、細胞を、刺激物質とインビトロでインキュベートする工程を含む、態様108および111~141のいずれかの方法。
147. 前記刺激物質が、抗CD3抗体および/または抗CD28抗体、任意で抗CD3/抗CD28ビーズを含み、任意で、ビーズ対細胞の比が、1:1であるかまたは約1:1である、態様146の方法。
148. 前記1つまたは複数の作用物質の導入の前に、1つまたは複数の免疫細胞から刺激物質を除去する工程を含む、態様146または態様147の方法。
149. 前記方法が、1つもしくは複数の作用物質の導入および/または鋳型ポリヌクレオチドの導入の前に、その最中に、またはその後に、細胞を、1つまたは複数の組換えサイトカインとインキュベートする工程をさらに含み、任意で、該1つまたは複数の組換えサイトカインが、IL-2、IL-7、およびIL-15からなる群より選択される、態様108および111~148のいずれかの方法。
150. 前記1つまたは複数の組換えサイトカインが、10 U/mLもしくは約10 U/mLから、200 U/mLもしくは約200 U/mL、任意で50 IU/mLもしくは約50 IU/mLから、100 U/mLもしくは約100 U/mLのIL-2の濃度;0.5 ng/mL~50 ng/mL、任意で5 ng/mLもしくは約5 ng/mLから、10 ng/mLもしくは約10 ng/mLのIL-7の濃度;および/または0.1 ng/mL~20 ng/mL、任意で0.5 ng/mLもしくは約0.5 ng/mLから、5 ng/mLもしくは約5 ng/mLのIL-15の濃度から選択される濃度で添加される、態様149の方法。
151. インキュベーションが、1つまたは複数の作用物質の導入および鋳型ポリヌクレオチドの導入の後に、最大で24時間、36時間、48時間、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、もしくは21日間、またはおよそ24時間、36時間、48時間、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、もしくは21日間、任意で最大で7日間または約7日間実施される、態様149または態様150の方法。
152. 前記方法によって生成された複数の操作された細胞中の少なくとも35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、もしくは90%の、または該細胞中の35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、もしくは90%超の細胞が、TGFBR2遺伝子座内の少なくとも1つの標的部位の遺伝子破壊を含む、態様107~151のいずれかの方法。
153. 前記方法によって生成された複数の操作された細胞中の少なくとも35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、もしくは90%の、または該細胞中の35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、もしくは90%超の細胞が、組換え受容体またはその抗原結合断片を発現する、態様107~152のいずれかの方法。
154. 態様107~153のいずれかの方法を用いて生成された、操作されたT細胞または複数の操作されたT細胞。
155. 態様1~47および154のいずれかの操作されたT細胞を含む、組成物。
156. 態様1~47および154のいずれかの複数の操作されたT細胞を含む、組成物。
157. CD4+ T細胞および/またはCD8+ T細胞を含む、態様155または態様156の組成物。
158. CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞を含み、CD4+ T細胞対CD8+ T細胞の比が、1:3~3:1または約1:3~3:1、任意で1:1である、態様155~157のいずれかの組成物。
159. 組換え受容体を発現する細胞が、組成物中の全細胞のうちの、または組成物中の全CD4+ 細胞もしくはCD8+ 細胞のうちの、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれよりも多くを占める、態様155~158のいずれかの組成物。
160. 態様1~47および154~159のいずれかの操作された細胞、複数の操作された細胞、または組成物を、ある疾患または障害を有する対象に投与する工程を含む、処置の方法。
161. ある疾患または障害の処置のための、態様1~47および154~159のいずれかの操作された細胞、複数の操作された細胞、または組成物の、使用。
162. ある疾患または障害を処置するための薬剤の製造における、態様1~47および154~159のいずれかの操作された細胞、複数の操作された細胞、または組成物の、使用。
163. ある疾患または障害の処置における使用のための、態様1~47および154~159のいずれかの操作された細胞、複数の操作された細胞、または組成物。
164. 前記疾患または障害が、がんまたは腫瘍である、態様160~163のいずれかの方法、使用、または使用のための操作された細胞、複数の操作された細胞、もしくは組成物。
165. 前記がんまたは腫瘍が、血液悪性腫瘍、任意でリンパ腫、白血病、または形質細胞悪性腫瘍である、態様164の方法、使用、または使用のための操作された細胞、複数の操作された細胞、もしくは組成物。
166. 前記がんが、リンパ腫であり、該リンパ腫が、バーキットリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、ホジキンリンパ腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、濾胞性リンパ腫、小型非切れ込み核細胞性リンパ腫、粘膜関連リンパ組織リンパ腫(MALT)、辺縁帯リンパ腫、脾リンパ腫、結節性単球様B細胞リンパ腫、免疫芽球性リンパ腫、大細胞リンパ腫、びまん性混合細胞型リンパ腫、肺B細胞血管中心性リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、原発性縦隔B細胞リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)、またはマントル細胞リンパ腫(MCL)である、態様164または態様165の方法、使用、または使用のための操作された細胞、複数の操作された細胞、もしくは組成物。
167. 前記がんが、白血病であり、該白血病が、慢性リンパ性白血病(CLL)、形質細胞白血病、または急性リンパ性白血病(ALL)である、態様164または態様165の方法、使用、または使用のための操作された細胞、複数の操作された細胞、もしくは組成物。
168. 前記がんが、形質細胞悪性腫瘍であり、該形質細胞悪性腫瘍が、多発性骨髄腫(MM)である、態様164または態様165の方法、使用、または使用のための操作された細胞、複数の操作された細胞、もしくは組成物。
169. 前記腫瘍が固形腫瘍である、態様164の方法、使用、または使用のための操作された細胞、複数の操作された細胞、もしくは組成物。
170. 前記固形腫瘍が、非小細胞肺がん(NSCLC)または頭頚部扁平上皮癌(HNSCC)である、態様169の方法、使用、または使用のための操作された細胞、複数の操作された細胞、もしくは組成物。
171. TGFBR2遺伝子座内の標的部位で遺伝子破壊を誘導することができる1つまたは複数の作用物質;および
態様48~106のいずれかのポリヌクレオチド
を含む、キット。
172. TGFBR2遺伝子座内の標的部位で遺伝子破壊を誘導することができる1つまたは複数の作用物質;および
組換え受容体またはその一部分をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドであって、組換え受容体またはその抗原結合断片もしくは鎖をコードする導入遺伝子が、相同性指向修復(HDR)を介した標的部位でのまたはその近くでの組み込みのためにターゲティングされる、ポリヌクレオチド;および
態様107~153のいずれかの方法を実施するための説明書
を含む、キット。
【実施例
【0947】
IX. 実施例
以下の実施例は、例示のみを目的として含まれるものであり、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0948】
実施例1 ノックアウト(KO)またはドミナントネガティブ(DN)トランスフォーミング増殖因子β受容体2(TGFBR2)を伴う、キメラ抗原受容体(CAR)を発現する操作されたT細胞の生成およびインビボ評価
ヒトT細胞を、腫瘍に関連する抗原に特異的に結合する例示的なキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように操作し、かつまた、トランスフォーミング増殖因子β受容体2(TGFBR2)遺伝子座をノックアウト(KO)する遺伝子破壊によって、またはドミナントネガティブトランスフォーミング増殖因子β受容体II(DN-TGFBRII)を発現させることによって改変した。受容体のタンパク質キナーゼドメインを欠くDN-TGFBRIIを、TGFベータ(TGFβ)シグナル伝達を干渉するための代替法として用い、それは、DN-TGFBRIIの発現が、TGFβ結合について野生型TGFBRIIと競合し、かつ非機能的な受容体複合体を形成するからである。操作されたT細胞を、抗原を発現する腫瘍細胞を有するマウス腫瘍モデルに投与し、抗腫瘍活性をモニタリングした。
【0949】
A. 例示的なCARを発現するTGFBR2 KOおよびDN T細胞の生成
初代ヒトCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞を、健常ドナーから得られたヒト末梢血単核細胞(PBMC)からの免疫親和性ベースの選択によって単離した。結果として生じたCD4+細胞およびCD8+細胞(1:1の比)を、抗CD3/抗CD28試薬と培養することによって刺激した。
【0950】
刺激された細胞の形質導入のために、レンチウイルス調製物を調製した。キメラ抗原受容体(CAR)の形質導入のための例示的なレンチウイルスベクターは、R12と称されるキメラウサギ/ヒトIgG1抗体の可変重鎖および軽鎖に由来するscFv抗原結合ドメインを含有する例示的な抗ROR1 CARをコードする核酸配列を含有していた(例えば、Yang et al. (2011) PloS ONE, 6:e21018;米国特許出願番号US 2013/0251642を参照されたい)。コードされるCARはまた、免疫グロブリン由来のスペーサー、膜貫通ドメイン、共刺激領域、およびCD3ζシグナル伝達ドメインも含んでいた。CARを伴うDN-TGFBRIIの形質導入のために、レンチウイルス構築物は、T2Aリボソームスキップエレメントをコードする配列によって抗ROR1 CARをコードする配列から分離された、SEQ ID NO:59に示されるTGFBR2配列の残基22~191に対応するドミナントネガティブTGFBRII配列の成熟型をコードする核酸配列を含有していた。CAR(LV)、またはCARおよびDN-TGFBRII(LV+DN)をコードする核酸配列を、例示的なHIV-1由来のレンチウイルスベクター中に組み込んだ。結果として生じたベクター、ヘルパープラスミド(gagpolプラスミドおよびrevプラスミドを含有する)、ならびにシュードタイピングプラスミドをHEK-293T細胞に一過性にトランスフェクトすることによる標準的な手順によって、シュードタイプのレンチウイルスベクター粒子を作製し、細胞に形質導入するために用いた。
【0951】
24時間で、細胞に、レンチウイルス調製物を形質導入したか、または対照としてモック形質導入した(モック)。抗ROR1(R12)CARをコードするレンチウイルス調製物(DN-TGFBRIIを含有しない)を形質導入した細胞について、細胞をまた、内在性TGFBR2遺伝子座をノックアウトするように操作した(LV+KO)。刺激の72時間後に抗CD3/抗CD28試薬を除去し、刺激された細胞に、内在性TGFBR2遺伝子のノックアウト(LV+KOまたはモックKO対照)のために、TGFBR2ターゲティングgRNA(内在性TGFBR2配列のエクソン4(本明細書における表1に示されるようなアイソフォーム1に基づくエクソンナンバリング)内の遺伝子破壊を標的とする、配列
を含有する)と、化膿性連鎖球菌Cas9とを含有する2.2μMのリボ核タンパク質(RNP)複合体を電気穿孔したか、またはいかなるRNP複合体も伴わずに電気穿孔した(LVのみまたはLV+DN)。電気穿孔した細胞を、凍結保存の前におよそ7日間培養した。RNPを伴わずに電気穿孔した、R12 CARをコードするレンチウイルスを形質導入した細胞(LV)、およびRNPを電気穿孔したモック処理した細胞(モックKO)を、対照として評価した。
【0952】
B. インビボ抗腫瘍活性の評価
TGFBR2のノックアウトを伴うかまたはDN-TGFBRIIを発現する、例示的な操作されたCAR発現初代ヒトT細胞の抗腫瘍効果を、腫瘍を有するマウス異種移植モデル中への細胞の養子移入後に腫瘍をモニタリングすることによって評価した。NOD.Cg.PrkdcscidIL2rgtm1Wjl/SzJ(NSG)マウスに、およそ5×106個のH1975非小細胞肺がん細胞を各々皮下注射した。腫瘍移植後24日目に、腫瘍体積を測定した。CAR発現T細胞の投与前に、平均腫瘍体積は、およそ190 mm3であり、83~302 mm3の範囲であった。
【0953】
各群における8匹のマウスが、2人の独立したヒトドナー(ドナー1、ドナー2)のうちの1人から生成された、以下のように操作された初代T細胞組成物の1つの単回静脈内(i.v.)注射を受けた:(1)レンチウイルス送達により抗ROR1 CAR R12を発現する操作されたT細胞(LVのみ)、(2)レンチウイルス送達およびTGFBR2ノックアウトにより抗ROR1 CAR R12を発現する操作されたT細胞(LV+KO)、または(3)レンチウイルス送達により抗ROR1 CAR R12およびDN-TGFBRIIを発現する操作されたT細胞(LV+DN)。異なる群の操作されたT細胞を、1×106個の細胞(低用量)または3×106個の細胞(高用量)の用量で各々投与した。対照として、マウスに、3×106個のモック処理した細胞を投与した(モックKO)か、または処置しなかった(腫瘍のみ)。無腫瘍生存および腫瘍体積を、およそ120日にわたって評価した。
【0954】
養子移入された抗ROR1 CAR+ T細胞の抗腫瘍活性を、投与後3~6日毎に腫瘍体積を決定することによってモニタリングした。図1Aおよび1C(群;それぞれ、ドナー1および2)ならびに図1Bおよび1D(個々のマウス;それぞれ、ドナー1および2)に示されるように、TGFBR2遺伝子のノックアウトを伴う(KO)抗ROR1 CAR発現細胞の投与は、ノックアウトを伴わない(LV)か、またはドミナントネガティブ型のTGFBRIIの発現を伴う(DN)、同じ抗ROR1 CARを発現する操作されたT細胞の投与と比較して、より大きな腫瘍体積の低減を結果としてもたらした。TGFβによって誘導されるE-カドヘリン結合インテグリンであるCD103の発現のレベルを評価すると、抗ROR1 CARおよび内在性レベルのTGFBRIIを発現する操作された細胞において、抗ROR1 CARを発現するように操作され、かつTGFBR2についてKOまたはDN-TGFBRIIを発現する細胞と比較して、より高いことが観察された。
【0955】
図2Aおよび2B(それぞれ、ドナー1および2)に示されるように、TGFBR2についてKOであるかまたはDN-TGFBRIIを発現する抗ROR1 CAR発現細胞の投与は、抗ROR1 CARのみを発現するように操作されたT細胞を投与されたマウスと比較して、改善された無腫瘍生存を結果としてもたらしたが、ドナー間の変動性は観察されなかった。TGFBR2についてKOである抗ROR1 CAR発現細胞を発現する操作されたT細胞の、試験された低用量および高用量の両方での投与は、これらの研究において最大の無腫瘍生存を結果としてもたらした。抗ROR1 CARおよびDN-TGFBRIIを発現する操作されたT細胞の投与は、抗ROR1 CARのみを発現する操作されたT細胞の投与と比較して、改善された腫瘍体積の低減および無腫瘍生存を結果としてもたらした。
【0956】
結果は、例示的なキメラ抗原受容体(CAR)を発現する操作されたT細胞における、TGFBR2遺伝子のノックアウトまたはドミナントネガティブ(DN)TGFBRIIの発現のいずれかによるTGFβ媒介性の免疫抑制の阻害が、そのような細胞を投与されたマウスの改善された抗腫瘍活性および改善された生存を結果としてもたらすという観察と一致していた。
【0957】
実施例2 KOまたはDN TGFBR2を伴うCAR発現T細胞の増大、腫瘍浸潤、および抗腫瘍活性の評価
TGFBR2遺伝子のノックアウトまたはドミナントネガティブ(DN)TGFBRIIの発現のいずれかによってTGFβシグナル伝達が阻害されている、例示的なCAR発現細胞の増大、腫瘍浸潤、および抗腫瘍活性(スフェロイドアッセイに基づく)を評価した。
【0958】
上記の実施例1.Bに記載されるように、NSGマウスにH1975細胞を移植した。腫瘍移植後24日目に、各群における5匹のマウスは、以下のように発現する1×106個の細胞の操作された初代ヒトT細胞の単回静脈内(i.v.)注射を受けた:1×106個の細胞の用量の、(1)レンチウイルス送達により抗ROR1 CAR R12を発現する操作されたT細胞(LV)、(2)レンチウイルス送達およびTGFBR2ノックアウトにより抗ROR1 CAR R12を発現する操作されたT細胞(KO)、または(3)レンチウイルス送達により抗ROR1 CAR R12およびDN-TGFBRIIを発現する操作されたT細胞(DN)(すべての群における操作された細胞を電気穿孔に供した)。
【0959】
操作された細胞の投与の14日後まで、腫瘍体積をモニタリングした。操作された細胞の投与後14日目に、腫瘍、脾臓、および血液試料を採取し、フローサイトメトリーによって評価した。腫瘍試料から単離された腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を、スフェロイド死滅アッセイに供して、抗腫瘍活性を決定した。
【0960】
A. 腫瘍体積
図3A(群)および3B(個体)は、腫瘍、脾臓、および血液試料の収集の前の、操作されたT細胞の投与後の最初の14日間にわたる腫瘍体積の変化を示す。示されるように、TGFBR2遺伝子のノックアウトを伴う(KO)抗ROR1 CAR発現細胞の投与は、ノックアウトを伴わない(LV)か、またはドミナントネガティブ型のTGFBRIIの発現を伴う(DN)、同じ抗ROR1 CARを発現する操作されたT細胞の投与と比較して、より大きな腫瘍体積の低減を結果としてもたらし、これは、実施例1に記載される結果と一致していた。
【0961】
B. CAR発現T細胞のインビボ増大および腫瘍浸潤
図4A(血液)および4B(脾臓)に示されるように、血液または脾臓におけるCARを発現するCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞の頻度は、TGFBR2 KOを伴う抗ROR1 CAR R12を発現する操作されたT細胞を投与されているマウス(KO)において、他の群と比較して最も高かった。図4C(下のパネル)に示されるように、腫瘍に浸潤しているCD8+ CAR発現細胞の頻度は、TGFBR2 KOを伴う抗ROR1 CAR R12を発現する操作されたT細胞を投与されたマウス(KO)において、他の群と比較して高かった。腫瘍に浸潤しているCD4+ CAR発現細胞の平均頻度は、TGFBR2 KOを伴う抗ROR1 CAR R12を発現する細胞を投与されたマウス(KO)と、ドミナントネガティブ型のTGFBRIIの発現を伴う同じROR1 CARを発現する細胞を投与されたマウス(DN)との間で類似しており、抗ROR1 CAR R12のみを投与されたマウス(LV)における平均頻度よりも高かった(図4C、上のパネル)。腫瘍に浸潤している操作された細胞の間で、CD103+ CD8+ CAR発現T細胞の平均パーセンテージは、TGFBR2 KOを伴う操作された細胞において、他の群と比較して低かった(図4D、下のパネル)が、CD103+ CD4+細胞の平均パーセンテージは、TGFBR2 KOを伴う抗ROR1 CAR R12を投与されたマウス(KO)およびドミナントネガティブ型のTGFBRIIの発現を伴う同じ抗ROR1 CARを投与されたマウス(DN)において類似していた(図4D、上のパネル)。
【0962】
C. スフェロイドアッセイによる抗腫瘍活性
上記のように操作されたT細胞を投与されたマウス由来の腫瘍試料から単離された腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を、血清含有培地において低レベルのTGFβの存在下で1:5のエフェクター対標的比でH1975腫瘍スフェロイドとインキュベートしたスフェロイド死滅アッセイにおいて、抗腫瘍活性を評価した。H1975腫瘍スフェロイド細胞を、腫瘍細胞溶解のモニタリングを可能にするように(IncuCyte(登録商標) Live Cell Analysis System, Essen Bioscienceを用いて)赤色蛍光色素で標識し、(IncuCyte(登録商標)カスパーゼ3/7試薬システムを用いて)緑色蛍光カスパーゼ3/7試薬の存在下でインキュベーションを実施して、アポトーシスをモニタリングした。蛍光をおよそ9日間、経時的に顕微鏡観察によってモニタリングした。操作されたT細胞を投与されたマウス由来の脾臓から回収されたT細胞もまた、評価した。対照として、H1975腫瘍スフェロイド細胞を、操作された細胞を伴わずにインキュベートした(腫瘍のみ)。
【0963】
図5Aに示されるように、カスパーゼ活性は、TGFBR2 KOを伴う抗CAR発現T細胞を投与されたマウスから回収された腫瘍細胞において、他の処置されたマウスから回収された細胞においてと比較して最も高かった。同様に、図5Bに示されるように、(低減した赤色蛍光によってモニタリングされるような)スフェロイドサイズの低減は、TGFBR2 KOを伴う抗CAR発現T細胞を投与されたマウス(LV KO)から回収された腫瘍細胞において、他の処置されたマウスから回収された細胞においてと比較して最も大きかった。脾臓から回収されたCAR発現TGFBR2 KO細胞もまた、評価された後期の時点で、いくらかのカスパーゼ活性および抗腫瘍活性を示した。抗ROR1 CARおよびDN-TGFBRIIを発現する操作されたT細胞(LV DN)は、TGFBR2の改変を伴わない抗ROR1 CARを発現する細胞と比較して、カスパーゼ活性および腫瘍スフェロイド溶解においていくらかの改善を示した。結果は、TGFBR2ノックアウトを伴うCAR発現T細胞(LV KO)が、ドミナントネガティブTGFBRIIを伴うCAR発現細胞(LV DN)またはTGFBR2のノックアウトを伴わないCAR発現細胞と比較して、スフェロイド死滅アッセイおよびカスパーゼ活性によって示されるような、スフェロイドに対する改善された抗腫瘍活性を実証したという観察と一致していた。結果は、さらに、操作された細胞の改善された活性および機能を達成するために、例えば、操作されたT細胞におけるTGFBR2のKOにより、TGFβ媒介性の免疫抑制を阻害することを支持する。
【0964】
実施例3 TGFBR2ノックアウトを伴う完全ヒトCAR発現T細胞の抗腫瘍活性の評価
例示的な完全ヒトキメラ抗原受容体(CAR)を発現する操作された細胞の抗腫瘍活性を、スフェロイドアッセイを用いて評価した。
【0965】
CARが、キメラウサギ/ヒト抗ROR1に由来するscFvの代わりに完全ヒト抗ROR1 scFv抗原結合ドメインを含有した以外は、概して上記の実施例1.Aに記載されるように、初代ヒトCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞を単離し、刺激して、TGFBR2のノックアウトを伴う(完全ヒトKO)かまたは伴わずに(完全ヒトWT)、例示的な完全ヒト抗ROR1 CARを発現するように操作した。次いで、操作された細胞を凍結保存した。上記の実施例1.Aに記載される、TGFBR2のノックアウトを伴う(R12 KO)かまたは伴わない(R12 WT)、R12に由来するscFv抗原結合ドメインを有する抗ROR1 CARを発現する細胞、ならびにモック形質導入およびRNPを伴わない電気穿孔(モック)、またはTGFBR2ノックアウトに対するRNPのモック形質導入(モックKO)により処理された細胞もまた、対照として評価した。
【0966】
スフェロイド死滅アッセイのために、凍結保存された操作された細胞を、解凍して、1:5のエフェクター対標的比でH1975腫瘍スフェロイドとインキュベートした。概して上記の実施例2.Aに記載されるように、カスパーゼ活性(緑色色素)およびスフェロイドサイズ(赤色色素)を、およそ7日間、経時的に顕微鏡観察によってモニタリングした。分泌型サイトカインであるインターフェロン-ガンマ(IFN-γ)の量もまた、測定した。
【0967】
図6A(カスパーゼ)および6B(スフェロイドサイズ)に示されるように、TGFBR2のノックアウトを伴う完全ヒト抗ROR1 CARおよび抗ROR1 CAR R12は両方とも、TGFBR2のノックアウトを伴わない同じ受容体を発現する細胞と比較して、改善されたカスパーゼ活性およびスフェロイド死滅活性を示した。結果はまた、IFN-γの産生が、TGFBR2 KO細胞において、TGFBR2 KOを伴わない細胞と比較して概して高かったことも示した。
【0968】
実施例4 T細胞における内在性トランスフォーミング増殖因子β受容体2(TGFBR2)遺伝子座でのキメラ抗原受容体(CAR)をコードする導入遺伝子配列の標的ノックイン(KI)
ヒトT細胞を、相同性依存的修復(HDR)を介した、内在性トランスフォーミング増殖因子β受容体2(TGFBR2)遺伝子座でのCARをコードする核酸の標的組み込みによって、例示的なキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように操作した。戦略は、内在性TGFBR2遺伝子座でのCARコード配列のノックインおよび内在性TGFBR2遺伝子座のノックアウト(KO/KI)を結果としてもたらした。
【0969】
A. 標的KIまたはランダム組み込みのためのgRNAおよび導入遺伝子構築物
CRISPR/Cas9媒介性遺伝子編集によって内在性TGFBR2遺伝子座に遺伝子破壊を導入するために、リボ核タンパク質(RNP)複合体を生成した。概して上記の実施例1.Aに記載されるように、RNP複合体は、化膿性連鎖球菌Cas9と、ターゲティングドメイン配列
を有するガイドRNA(gRNA)とを含有していた。
【0970】
例示的なキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸配列を含有する導入遺伝子配列の標的組み込み(ノックイン)のために、例示的な鋳型ポリヌクレオチドを生成した。導入遺伝子配列は、B細胞成熟抗原(BCMA)に特異的な例示的CARをコードする核酸配列、およびa)異種プロモーターの調節下でCARコード配列の発現を駆動する、エンハンサーを有するヒト伸長因子1アルファ(EF1α)プロモーター(SEQ ID NO:119)(EF1α-CAR);またはb)TGFBR2オープンリーディングフレーム中へのインフレームのHDR媒介性標的組み込み時に内在性TGFBR2プロモーターからのCARの発現を駆動する、例示的なCARをコードする核酸配列の上流にP2Aリボソームスキップエレメント(SEQ ID NO:120)をコードする配列(P2A-CAR)のいずれかを含んでいた。コードされるCARは、例示的な標的抗原BCMAに結合するscFv、免疫グロブリン由来のスペーサー、CD28に由来する膜貫通ドメイン、4-1BBに由来する共刺激領域、およびCD3ζシグナル伝達ドメインを含んでいた。
【0971】
例示的な鋳型ポリヌクレオチドの一般構造は、以下のようであった:[5'相同性アーム]-[導入遺伝子配列]-[3'相同性アーム]。例示的な5'相同性アームは、内在性ヒトTGFBR2遺伝子座の第3イントロンおよび第4エクソンの一部分に相同である、およそ600 bpの配列(SEQ ID NO:69に示される5'相同性アーム配列;本明細書における表1に示されるようなアイソフォーム1に基づくエクソンおよびイントロンのナンバリング)、または第4エクソンの一部分に相同である、およそ600 bpの配列(SEQ ID NO:71に示される5'相同性アーム配列)を含有していた。例示的な3'相同性アームは、第4イントロンの一部分に相同である、およそ600 bpの配列(SEQ ID NO:72に示される3'相同性アーム配列)を含有していた。HDRによる導入遺伝子配列の組み込みは、CARをコードする導入遺伝子配列および制御性またはマルチシストロン性エレメントによって置き換えられた、第4エクソンの一部分の欠失を結果としてもたらした。
【0972】
対照として、ランダム組み込みによりT細胞中に導入された配列からのCARの発現のために、CARをコードする核酸配列を、例示的なHIV-1由来のレンチウイルスベクター中に組み込んだ。ドミナントネガティブ(DN)型のトランスフォーミング増殖因子β受容体II(DN-TGFBRII)の発現のために、概して上記の実施例1.Aに記載されるように、レンチウイルス形質導入構築物は、DN-TGFBRIIをコードする核酸配列をさらに含有していた。
【0973】
B. 相同性依存的修復(HDR)による例示的なCARを発現する操作されたT細胞の生成
HDRによる標的組み込みのために、上記のポリヌクレオチドを含有するベクター構築物を含有するアデノ随伴ウイルス(AAV)ストックを、細胞の形質導入用に生成した。ランダム組み込みのために、レンチウイルスベクター粒子を、概して上記の実施例1.Aに記載されるように作製した。
【0974】
初代ヒトCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞を、健常ドナーから得られたヒト末梢血単核細胞(PBMC)からの免疫親和性ベースの選択によって単離した。結果として生じたCD4+細胞およびCD8+細胞(1:1の比)を、抗CD3/抗CD28試薬と培養することによって72時間刺激した。抗CD3/抗CD28試薬を除去し、刺激された細胞に、上記のようにTGFBR2ターゲティングgRNA(SEQ ID NO:73に示されるTGFBR2ターゲティングドメイン配列を含有する)と化膿性連鎖球菌Cas9とを含有する2.2μMのRNP複合体を電気穿孔した。電気穿孔後0~3時間以内に、細胞を、鋳型ポリヌクレオチドの各々を含有するAAVストックと5%体積でインキュベートした。TGFBR2ターゲティングRNPを電気穿孔したがAAV調製物と接触させていない細胞(RNPのみ)、モック電気穿孔して形質導入した細胞(モック)、ならびにCARをコードする導入遺伝子配列およびドミナントネガティブ型のTGFBRIIのランダム組み込みのためにレンチウイルスベクターを形質導入した細胞(レンチDN-TGFBRII)を、対照として評価した。細胞を、3日間培養して、抗CD4抗体、抗CD8抗体、およびCARの発現を検出するためのCARに特異的に結合する検出物質での染色後に、フローサイトメトリーによって評価した。
【0975】
結果を、図7に示す。TGFBR2遺伝子座でのHDRによる標的組み込みのための鋳型ポリヌクレオチドの導入は、試験された細胞のおよそ42~58%において、細胞の表面上のCARの発現を結果としてもたらした(図7)。例えば、CARおよびDN-TGFBRIIを発現するように操作された細胞において観察されるような、レンチウイルス形質導入によるCARの発現は、HDR条件よりも高かった。抗CD4染色および抗CD8染色の結果は、CARをコードする配列の標的組み込みのためのプロセスが、組成物におけるCD4+細胞またはCD8+細胞のパーセンテージを実質的に変化させなかったことを示した。
【0976】
結果は、CARをコードする核酸配列を、内在性TGFBR2プロモーターまたは異種プロモーター、例えばEF1αの調節下でのCARの発現のための、TGFBR2遺伝子座での組み込みのためにターゲティングして、CARを発現する操作されたT細胞を生成することができるという知見と一致している。
【0977】
実施例5 内在性TGFBR2遺伝子座での相同性依存的修復(HDR)によるCARをコードする導入遺伝子配列の標的組み込みを有する、操作されたT細胞の抗腫瘍活性
TGFBR2遺伝子座での標的組み込み(KO/KI)によって、または内在性TGFBR2遺伝子座のノックアウト(KO)もしくはドミナントネガティブTGFBRIIの発現(DN)を伴うランダム組み込みによって操作された、例示的なキメラ抗原受容体(CAR)発現細胞の活性を、スフェロイドアッセイにおいて評価した。
【0978】
A. HDRおよびCARの発現による操作されたT細胞の生成
3人のヒトドナー由来の初代ヒトCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞を、単離し、刺激して、以下のいずれかによって例示的な抗ROR1 CAR R12を発現するように操作した(実施例1.Aを参照されたい):各々が概して上記の実施例1.Aに記載されるような、(1)レンチウイルス送達のみ(LV)、(2)TGFBR2ノックアウトを伴うレンチウイルス送達(LV+KO)、または(3)レンチウイルス送達およびドミナントネガティブTGFBRIIの発現(LV+DN);または(4)抗ROR1 CAR R12をコードする核酸を用い、かつ異なる異種プロモーター(MND)の調節下である以外は、実質的に上記の実施例4に記載されるような、HDRによるTGFBR2遺伝子座での標的ノックイン(KO/KI)。
【0979】
標的ノックインのために、細胞に、上記の実施例4.Aに記載されるようなTGFBR2ターゲティングgRNA(SEQ ID NO:73に示されるTGFBR2ターゲティングドメイン配列を含有する)と化膿性連鎖球菌Cas9とを含有するRNP複合体を電気穿孔した。電気穿孔後0~3時間以内に、細胞を、構造[5'相同性アーム]-[導入遺伝子配列]-[3'相同性アーム]を有し、5'相同性アーム配列がSEQ ID NO:69に示され、3'相同性アーム配列がSEQ ID NO:72に示され、導入遺伝子配列が、骨髄増殖性肉腫ウイルスエンハンサーを有する改変MoMuLV LTRのU3領域を含有する合成プロモーターであるMNDプロモーター(SEQ ID NO:186に示される配列;Challita et al. (1995) J. Virol. 69(2):748-755を参照されたい)の操作可能な調節下であり、SV40ポリアデニル化シグナル(SEQ ID NO:185に示される配列)に連結された、抗ROR1 CAR R12をコードする核酸配列を含む、鋳型ポリヌクレオチドを含有するAAV調製物とインキュベートした(KO/KI)。操作された細胞を、電気穿孔後およそ7日間培養し、凍結保存した。対照として、モック形質導入およびRNPを伴わない電気穿孔(モック)、またはTGFBR2ノックアウトに対するRNPを伴うモック形質導入(モックKO)により処理された細胞もまた評価した。抗ROR1 CARの発現のレベルを、各群において評価した。
【0980】
B. スフェロイドアッセイによる抗腫瘍活性
スフェロイド死滅アッセイのために、抗ROR1 CAR R12を発現する操作された細胞を、解凍して、1:5のエフェクター対標的比でH1975腫瘍スフェロイドとインキュベートした。概して上記の実施例2.Cに記載されるように、カスパーゼ活性(緑色色素)およびスフェロイドサイズ(赤色色素)を、およそ14日間、経時的に顕微鏡観察によってモニタリングした。
【0981】
図8Aに示されるように、本実験において、抗ROR1 CAR R12発現(フローサイトメトリーによる幾何平均蛍光)は、レンチウイルス送達により例示的なCARのみで(LV)またはDN-TGFBRIIを伴って(LV+DN)操作された細胞において、TGFBRIIのノックアウトを伴うレンチウイルス送達により(LV+KO)、またはTGFBR2遺伝子座でのCARのHDR媒介性標的組み込みにより(KO/KI)CARを送達された細胞においてと比較して最も高かった。抗腫瘍活性は、増加したカスパーゼ活性(図8B)および低減したスフェロイドサイズ(図8C)によって示されるように、TGFBR2遺伝子座中へのHDR組み込みによって操作されたCAR発現細胞(KO/KI)とインキュベートしたスフェロイド培養物において最も高かった。例示的なCARのみを発現するように操作された細胞(LV)と比較して改善された抗腫瘍活性がまた、レンチウイルス送達により、かつTGFBR2遺伝子座のKOを伴って(LV+KO)またはDN-TGFBRIIを伴って(LV+DN)操作されたCAR発現細胞においても観察された。
【0982】
抗腫瘍活性についての類似した結果が、同様に操作されたが、完全ヒト抗ROR1 CARで操作されたT細胞を用いた研究において観察された。
【0983】
C. 長期刺激後のスフェロイドアッセイ
抗ROR1 CAR R12を発現する操作された細胞の抗腫瘍活性を、長期刺激後にスフェロイド死滅アッセイによって評価した。実施例5.Aに記載されるように生成された、凍結保存された操作された細胞を、解凍して、細胞の慢性刺激および活性の低減を結果としてもたらし得る、組換えROR1-Fc融合タンパク質でコーティングされたビーズとのインキュベーションによって、7日の長期刺激に供した。CAR陽性T細胞を、1対1の比でROR1-Fcビーズと混合した。7日目に、ROR1-Fcを含有するビーズを除去し、細胞を、1:5または1:10のエフェクター対標的比でH1975腫瘍スフェロイドとインキュベートした。CARを発現する細胞のパーセンテージを、長期刺激の前後で評価した。概して上記の実施例2.Cに記載されるように、カスパーゼ活性(緑色色素)およびスフェロイドサイズ(赤色色素)を、およそ14日間、経時的に顕微鏡観察によってモニタリングした。分泌型サイトカインであるインターフェロン-ガンマ(IFN-γ)の量もまた、長期刺激の1日目およびスフェロイド死滅アッセイの1日目に測定した。
【0984】
図9Aに示されるように、TGFBRII遺伝子座でのCARのHDR媒介性標的組み込みによりCARで操作された細胞(KO/KI)において、長期刺激の前の解凍時(前)または長期刺激の後(後)に、抗ROR1 CAR R12を発現するCAR+細胞のパーセンテージの濃縮があった。長期刺激の前または後でのCAR発現細胞のパーセンテージは、概して、3人のドナーの各々における他の群の操作された細胞に類似していた(1人のドナーは、レンチウイルス送達によりCARのみを発現するように操作されたLV細胞において、CARの発現の頻度の減少を示した)。図9B(カスパーゼ)および9C(スフェロイドサイズ)に示されるように、TGFBRII遺伝子座でのCARのHDR媒介性標的組み込みにより(KO/KI)、またはTGFBRII遺伝子座のKOを伴うレンチウイルス送達により(LV+KO)CARで操作された細胞は、本研究において試験されたE:T比の各々で、最高のカスパーゼ活性およびスフェロイドサイズの最大の低減を示した。改善された抗腫瘍活性はまた、DN-TGFBRIIを伴ってレンチウイルス送達により操作されたCAR発現細胞(LV+DN)においても、例示的なCARのみを発現するように操作された細胞(LV)と比較して観察された。
【0985】
D. 結論
結果は、内在性TGFBR2遺伝子中への例示的なCARをコードする核酸配列の標的ノックイン(内在性TGFBR2遺伝子の発現も排除する)が、スフェロイド死滅アッセイによって示されるように、改善された抗腫瘍活性を結果としてもたらすという観察と一致している。改善は、様々な例示的な抗ROR1 CARで観察されて、レンチウイルス送達により送達されたCARをコードする核酸配列で操作され、かつTGFBR2のノックアウトを含有する細胞によって達成されたものと類似していたか、またはそれよりも大きかった。結果は、TGFβ媒介性の免疫抑制に対して感受性が低いか、または耐性である、かつ改善された抗腫瘍活性および機能を示す操作された細胞を作製するための、例えば、相同性依存的修復(HDR)による、内在性TGFBR2遺伝子中への組換え受容体発現配列の標的ノックインの使用を支持する。
【0986】
実施例6 TGFBR2でのノックイン(KI)またはそのノックアウト(KO)を伴う、組換えT細胞受容体(TCR)を発現する操作されたT細胞の生成およびその抗腫瘍活性の評価
ヒトT細胞を、例示的な組換えT細胞受容体(TCR)、およびトランスフォーミング増殖因子β受容体2(TGFBR2)遺伝子座の遺伝子破壊(ノックアウト)を発現するように、または内在性TGFBR2遺伝子座での組換えTCRをコードする核酸配列の標的組み込み(ノックイン)によって操作した。
【0987】
A. 例示的なTCRを発現するTGFBR2 KO T細胞
初代ヒトCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞を、単離し、刺激して、TGFBR2のノックアウトを伴うかまたは伴わずに、主要組織適合性複合体(MHC)クラスI分子上に提示されたヒトパピローマウイルス16(HPV16)E7(11-19)ペプチドに特異的な例示的組換えTCRを発現するように操作した。細胞を操作するための方法は、概して上記の実施例1.Aに記載されるようであり、以下のいずれかによる、組換えTCRをコードする核酸配列を含有するレンチウイルスベクターを用いる例外を伴った:(1)レンチウイルス送達のみ(TCR)、(2)TGFBR2ノックアウトを伴うレンチウイルス送達(TCR+KO)、または(3)レンチウイルス送達およびRNPを伴わないモック電気穿孔(TCR EP)。対照として、モック形質導入(モック)、モック形質導入およびRNPを伴わない電気穿孔(モックEP)、またはTGFBR2ノックアウトに対するモック形質導入およびRNPを伴う電気穿孔(モックKO)により処理された細胞もまた評価した。
【0988】
例示的なTCRを発現する操作された細胞の抗腫瘍活性を、以下の例外を伴って、概して上記の実施例2.Cに記載されるように、スフェロイド死滅アッセイによって評価した:抗HPV16 E7 TCR発現細胞を、培地中に10 ng/mLのTGFβを伴うかまたは伴わずに、1:10のE:T比でUPCI:SCC152(ATCC(登録商標) CRL-3240(商標))扁平上皮癌細胞を含む腫瘍ステロイドとインキュベートした。分泌型サイトカインであるインターフェロン-ガンマ(IFN-γ)、インターロイキン-2(IL-2)、および腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)の量もまた、スフェロイド死滅アッセイの1日目に測定した。
【0989】
図10A(カスパーゼ)および10B(スフェロイドサイズ)に示されるように、TGFβの添加を伴うおよび伴わない両方の研究において、それぞれ、増加したカスパーゼ活性および低減したスフェロイドサイズによって示される抗腫瘍活性は、TGFBR2 KOを伴う抗HPV TCR発現細胞について、同じ抗HPV TCRを発現するがTGFBR2 KOを伴わない対照細胞と比較して、実質的により高かった。結果により、1:10の最適に満たないE:T比でさえも、TGFBR2 KOを伴う抗HPV TCR発現細胞による完全な腫瘍スフェロイドクリアランスが示された。
【0990】
B. 相同性依存的修復(HDR)により例示的なCARを発現する操作されたT細胞
3人のドナー(ドナー1、2、および3)由来の初代ヒトCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞を、単離し、刺激して、HDRを介した標的組み込みによってヒトパピローマウイルス16(HPV16)に特異的な例示的組換えTCRを発現するように操作した。細胞を操作するための方法は、概して上記の実施例4に記載されるようであり、以下の例外を伴った:導入遺伝子配列は、a)ヒト伸長因子1アルファ(EF1α)プロモーター(EF1α KO/KI)またはb)MNDプロモーター(MND KO/KI)のいずれかの調節下で、例示的な抗HPV16 TCRをコードする核酸配列を含んでいた。TGFBR2ノックアウトを伴う(TCR LV TGFBR2 KO)かまたはTGFBR2ノックアウトを伴わずに(TCR LV)、レンチウイルス送達により組換えTCRを発現する細胞もまた評価した。追加の対照は、モック処理に供された細胞(モック)、および組換えTCRを発現するように操作されなかったTGFBR2ノックアウトを伴う細胞(TGFBR2 KO)を含んでいた。細胞を、8日間培養し、凍結保存した。
【0991】
抗HPV TCRの発現のレベルを、組換えTCRを認識する抗Vβ2抗体での染色によって、各群において評価した。操作された細胞の各々における組換えTCRの発現を、図11Aおよび11Bに示す。示されるように、組換えTCRを発現する細胞のパーセンテージは、概して、レンチウイルス送達を用いて操作された細胞について(TCR LV、図11Aを参照されたい;またはTCR LV TGFBR2 KO、図11Bを参照されたい)、HDRによって操作された細胞(MND KO/KIまたはEF1α KO/KI、図11Bを参照されたい)と比較して、より高かった。モック群において示されるように、内在性T細胞のおよそ6~9%は、抗Vβ2抗体での非特異的なバックグラウンド染色を示した。HDRによって操作された群の中で、組換えTCRの発現は、組換えTCRがMNDプロモーターの調節下であった細胞において、EF1αプロモーターの調節下と比較して、より高かった。
【0992】
例示的なTCRを発現する操作された細胞の抗腫瘍活性を、1:1または1:5のE:T比および外来性TGFβの添加なし以外は、概して上記の実施例6.Aに記載されるように、スフェロイド死滅アッセイによって評価した。図12A(カスパーゼ)および12B(スフェロイドサイズ)に示されるように、TGFBRII遺伝子座でのTCRのHDR媒介性標的組み込みによって組換えTCRで操作された細胞(MND KO/KI)は、本研究において試験されたE:T比の各々で、最高のカスパーゼ活性およびスフェロイドサイズの最大の低減を示した。TGFBRII遺伝子座のKOを伴うレンチウイルス送達により組換えTCRで操作された細胞(TCR LV TGFBR2 KO)もまた、同様に高いカスパーゼ活性を示した。
【0993】
C. 結論
結果は、内在性TGFBR2遺伝子のノックアウトまたは内在性TGFBR2遺伝子中への例示的なTCRをコードする核酸配列の標的ノックイン(内在性TGFBR2遺伝子のノックアウトも結果としてもたらす)が、スフェロイド死滅アッセイによって示されるように、改善された抗腫瘍活性を結果としてもたらすという観察と一致していた。結果はさらに、TGFβ媒介性の免疫抑制に対して感受性が低いか、または耐性である、かつ改善された抗腫瘍活性および機能を示す操作された細胞を作製するための、例えば、相同性依存的修復(HDR)による、組換えTCRなどの組換え受容体をコードする核酸配列の標的ノックインの使用を支持する。
【0994】
実施例7 内在性遺伝子座でのドミナントネガティブTGFBR2の生成およびCARをコードする導入遺伝子配列の標的組み込みのための鋳型ポリヌクレオチド
内在性トランスフォーミング増殖因子β受容体2(TGFBR2)遺伝子座での例示的なCARをコードする導入遺伝子配列の標的組み込みのためであるが、内在性TGFBR2遺伝子座からドミナントネガティブTGFBRII(DN-TGFBRII)もまた生成するために、例示的な鋳型ポリヌクレオチドを生成する。
【0995】
上記の実施例1.Aに記載されるように、DN-TGFBRIIは、受容体のタンパク質キナーゼドメインを欠いており、非機能的な受容体複合体を形成することによってTGFベータ(TGFβ)シグナル伝達を干渉することができる。一般構造[5'相同性アーム]-[導入遺伝子配列]-[3'相同性アーム]を有する、例示的な鋳型ポリヌクレオチドを生成する。導入遺伝子配列は、i)BCMAに結合するscFv、免疫グロブリン由来のスペーサー、CD28に由来する膜貫通ドメイン、および4-1BBに由来する共刺激領域を含んだ、CARをコードする配列、ならびにii)CARをコードする核酸配列の上流のP2Aリボソームスキップエレメントをコードする配列を含む。5'相同性アームは、TGFBR2の膜貫通ドメインをコードする配列の一部分を含む、内在性ヒトTGFBR2遺伝子座の第3イントロンおよび第4イントロンの一部分に相同である、およそ600 bpの配列(SEQ ID NO:70に示される5'相同性アーム配列)を含有する。3'相同性アームは、第4イントロンの一部分に相同である、およそ600 bpの配列(SEQ ID NO:72に示される3'相同性アーム配列)を含有する。
【0996】
HDRによる導入遺伝子配列の組み込みは、内在性TGFBR2プロモーターの調節下にDN-TGFBRII-P2A-CARをコードするmRNA転写物の発現を結果としてもたらし、これは、翻訳およびリボソームスキッピング時に、(P2A配列の切断されたN末端部分と融合した)DN-TGFBRIIポリペプチドおよび(P2A配列の切断されたC末端プロリンと融合した)CARを結果としてもたらす。
【0997】
本発明は、例えば、本発明の様々な局面を例示するために提供される、特定の開示された態様に範囲が限定されるようには意図されない。記載された組成物および方法に対する様々な改変が、本明細書における説明および教示から明白になるであろう。そのような変動は、本開示の真の範囲および精神から逸脱することなく実施されてもよく、本開示の範囲内に入るように意図される。
【0998】
配列
図1-1】
図1-2】
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
【配列表】
2022531222000001.app
【国際調査報告】