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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(54)【発明の名称】外科手術訓練シミュレータ
(51)【国際特許分類】
   G09B 23/30 20060101AFI20220629BHJP
   G09B 19/00 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
G09B23/30
G09B19/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564476
(86)(22)【出願日】2020-04-30
(85)【翻訳文提出日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 EP2020062168
(87)【国際公開番号】W WO2020225141
(87)【国際公開日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】1904693
(32)【優先日】2019-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521131719
【氏名又は名称】ボーヌ 3デ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プレボ、ジュリエット
(72)【発明者】
【氏名】ゲラール、ステファン
(72)【発明者】
【氏名】アダム、ジェレミー
【テーマコード(参考)】
2C032
【Fターム(参考)】
2C032CA03
2C032CA06
(57)【要約】
本発明は、ヒト又は動物の身体の少なくとも1つの部分を解剖学的に再現する組立体3;53を有する外科手術訓練シミュレータ1;51に関し、このシミュレータは、組立体3;53が、一体形であり、且つ、少なくとも、 - 第1の硬度を有する第1の高分子化合物で構成された第1の硬質解剖学的構成要素5;55、 - 第2の高分子化合物で構成された第2の軟質解剖学的構成要素7、9、11、13;53、59を備え、第2の高分子化合物が、第1の高分子化合物の硬度よりも低い硬度を有し、第1の硬質解剖学的構成要素5;55及び第2の軟質解剖学的構成要素7、9、11、13;53、59が、互いに堅固に接続されることを、特徴とする。本発明はまた、上述のシミュレータ1;51を製造するための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト又は動物の身体の少なくとも1つの部分を解剖学的に再現する組立体(3;53)を有する外科手術訓練シミュレータ(1;51)であって、前記組立体(3;53)が、一体形であり、且つ、少なくとも、
第1の硬度を有する第1の高分子化合物で構成された第1の硬質解剖学的構成要素(5;55)、
第2の高分子化合物で構成された第2の軟質解剖学的構成要素(7、9、11、13;53、59)
を備え、前記第2の高分子化合物が、前記第1の高分子化合物の硬度よりも低い硬度を有し、前記第1の硬質解剖学的構成要素(5;55)及び前記第2の軟質解剖学的構成要素(7、9、11;53、59)が、互いに堅固に接続されることを特徴とする、外科手術訓練シミュレータ(1;51)。
【請求項2】
前記組立体が、前記第1の高分子化合物及び前記第2の高分子化合物とは異なる第3の高分子化合物で構成された少なくとも1つの第3の解剖学的構成要素(17、19、21)を備え、前記第3の好ましくは脆弱な構成要素(17、19、21)が、好ましくは腫瘍である病状を表す身体的兆候を再現する、請求項1に記載のシミュレータ(1;51)。
【請求項3】
前記高分子化合物が、光重合性化合物であり、前記第2の光重合性化合物が、少なくとも1種類のエラストマ材料を含む、請求項1又は2に記載のシミュレータ(1;51)。
【請求項4】
前記第1の高分子化合物が、70から95の間、好ましくは83から86の間のショアD硬度を有する、請求項1から3までのいずれか一項に記載のシミュレータ(1;51)。
【請求項5】
前記第2の高分子化合物が、20から95の間、好ましくは27から60の間、より好ましくは30から35の間のショアA硬度を有する、請求項1から4までのいずれか一項に記載のシミュレータ(1;51)。
【請求項6】
前記第1の硬質解剖学的構成要素(5;55)が、骨要素、軟骨要素、角質要素、石灰質要素、爪要素、歯、甲皮、鶏眼、嚢胞、腫瘍などの病状を表す身体的兆候から成る群から選択される少なくとも1つの要素を少なくとも部分的に再現し、
前記第2の軟質解剖学的構成要素(7、9、11;53、59)が、軟組織、脂肪組織、静脈、動脈、神経、皮膚、筋肉、粘膜、靱帯、腱、膜、臓器、腫瘍などの病状を表す身体的兆候から成る群から選択される少なくとも1つの要素を少なくとも部分的に再現する、
請求項1から5までのいずれか一項に記載のシミュレータ(1;51)。
【請求項7】
前記解剖学的構成要素(11)のうちの少なくとも1つが、生体液体を再現する液体を収容する、請求項1から6までのいずれか一項に記載のシミュレータ(1;51)。
【請求項8】
前記組立体(53)が取り付けられる支持体(54)を備え、
前記支持体(54)が、ヒト又は動物の身体の少なくとも1つの部分を解剖学的に再現し、
前記支持体(54)が、前記組立体(53)に相補的な形状を有し、
前記組立体(53)が、好ましくは爪を含む指端部を再現し、前記支持体(54)が、前記指に相補的な部分を再現する、請求項1から7までのいずれか一項に記載のシミュレータ(51)。
【請求項9】
前記組立体(53)及び前記支持体(54)が、一緒に摺動連結部を形成し、前記摺動連結部の摺動自由度が、阻止手段によって阻まれる、請求項8に記載のシミュレータ(51)。
【請求項10】
前記組立体(3)が、前記第2の軟質解剖学的構成要素(7、9、11、13)を吊り下げ状態に維持するためのユニット(15)をさらに備え、前記ユニット(15)が、高分子化合物、好ましくは光重合性化合物で構成され、前記第1の硬質解剖学的構成要素(5)及び前記第2の軟質解剖学的構成要素(7、9、11、13)が、前記ユニット(15)を介して一緒に堅固に接続される、請求項1から9までのいずれか一項に記載のシミュレータ(1)。
【請求項11】
前記ユニット(15)が、1つの側面が開口した多面体形状のものであり、前記開口した側面に隣接する前記ユニット(15)の少なくとも1つの他の側面(23、24、25、26)が、少なくとも1つのオリフィス(29、31、33)を備える、請求項10に記載のシミュレータ(1)。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか一項に記載のシミュレータ(1;51)を製造するための方法であって、
a)修正すべきヒト又は動物の身体の一部分の3次元像を表示するステップであって、前記3次元像が初期モデルと呼ばれる、ステップと、
b)前記3次元像を修正して、組立体モデルと呼ばれる、第1の修正済み下位部分を含むヒト又は動物の身体の第1の下位部分の第1のデジタル・モデルを画定するステップであって、前記組立体モデルが、第1の硬質解剖学的構成要素の少なくとも1つの第1の下位モデル、及び第2の軟質解剖学的構成要素の少なくとも1つの第2の下位モデルを含む、ステップと、
c)前記組立体モデルを使用して行われる、前記組立体(3;53)の付加的合成のステップであって、その間に前記組立体(3;53)を形成する全ての要素(5、7、9、11、13、15、17、19、21;55、57、59、65、71)が同時に製造される、ステップと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外科手術訓練シミュレータの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
仮想外科手術訓練シミュレータは、従来技術で既に知られている。それらの仮想外科手術訓練シミュレータは、外科手術の要素及び状態を画面上に再現し、画面は、訓練インターフェースと組み合わせられている。
【0003】
しかし、それらのシミュレータの費用は高額であり、容易に移動させることができず、また、かなりのスペースを占めるので、大人数の同時使用者による使用には不向きである。さらに、そのようなシミュレータは、触覚フィードバックを備えるが、外科手術中、例えば軟質の、硬質の、さらには脆弱な解剖学的構成要素の接触、掻爬、又は穿孔中に体験される感覚を正確には再現しない。加えて、それらのシミュレータは、材料に関連する制約、解剖学的構成要素間の接続、及びそのような外科手術の解剖学的な空間制約を模倣しないので、外科手術に関連する制約を再現しない。
【0004】
したがって、外科手術訓練シミュレータにおいては、外科手術中に施術者が体験する感覚を写実的に再現することが必要とされている。
【0005】
外科手術中に体験される感覚をより忠実に再現する、シリコーン・ベースの外科手術訓練シミュレータも知られている。これらのシミュレータは、訓練の目的のために行われる外科手術中に施術者が体験する感覚を再現するために、例えば組織及び骨要素といった様々な硬度の幾つかの解剖学的構成要素を備え得る。これらのシミュレータでは、各構成要素は、個別に製造され、次いで、シミュレータを形成するために、他の要素と位置決めされるか又は組み立てられる。そして、シミュレータの使用者は、シミュレータ上で訓練外科手術を実行する。
【0006】
しかし、これらのシミュレータは、組立てが手作業で行われることが多いので、組立てに手間がかかり、したがって、高価である。加えて、これらのシミュレータは、例えば臓器内に完全に収容された腫瘍の存在などの、外科手術訓練に必要とされる少なくとも幾つかの解剖学的状態又は解剖学的事例を、写実的にシミュレートしない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、具体的には、外科手術の解剖学的条件及びこの手術中に体験される感覚を写実的に再現し、それに加えて製造が容易且つ安価である、外科手術訓練シミュレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明は、ヒト又は動物の身体の少なくとも1つの部分を解剖学的に再現する組立体を有する外科手術訓練シミュレータに関し、このシミュレータは、組立体が、単一のものから成り、且つ、少なくとも、
- 第1の硬度を有する第1の高分子化合物で構成された第1の硬質解剖学的、
- 第2の高分子化合物で構成された第2の軟質解剖学的構成要素
を備え、第2の高分子化合物が、第1の高分子化合物の硬度よりも低い硬度を有し、第1の硬質解剖学的構成要素及び第2の軟質解剖学的構成要素が互いに堅固に接続されることを、特徴とする。
【0009】
したがって、具体的には、組立体が一体形であるので、そのようなシミュレータの製造は、特に容易且つ安価であり、また、外科手術の解剖学的状態は、たとえ独特なものであっても、より忠実に再現され得る。実際に、例えば特異的な事例に関する外科手術の解剖学的条件が簡単に且つ迅速に再現され得るように、解剖学的構成要素を組み立てるステップを行う必要がない。加えて、硬質解剖学的構成要素の存在、及び硬質解剖学的構成要素の硬度よりも低い硬度を有する軟質解剖学的構成要素の存在により、シミュレータの使用者が体験する感覚の再現が向上され、したがって、この感覚は、柔軟な臓器と硬い臓器とが互いに入れ子になっているときの外科手術中に施術者が体験する感覚に類似する。
【0010】
この説明では、「一体形(one-piece)」とは、好ましくは、ある要素が単一の部品で、好ましくは単一の製造技法を使用して、製造されることを意味する。したがって、有利には、一体形組立体では、組立体を形成する種々の要素が一緒に組み立てられる必要はない。
【0011】
この説明では、「堅固に接続される(rigidly connected)」とは、好ましくは、1つの要素が接触により又は中間要素を介して別の要素に接続されることを意味する。1つの要素は、形状及び/又は材料の相補性により、別の要素に堅固に接続され得る。
【0012】
本発明の対象である外科手術訓練シミュレータの他の任意の特徴によれば、以下のことが単独で又は組合せで含まれる:
【0013】
- 組立体は、第1の高分子化合物及び第2の高分子化合物とは異なる第3の高分子化合物で構成された少なくとも1つの第3の解剖学的構成要素を備え、第3の好ましくは脆弱な構成要素は、好ましくは腫瘍である病状を表す身体的兆候を再現する。したがって、シミュレータの使用者が体験する感覚は、さらに写実的に作られ得る。加えて、特に有利には、第3の高分子化合物を形成する材料は、シミュレータの製造中に使用される支持材料と同じであってよく、その場合、この材料は脆弱であるので、支持材料は、例えば水ジェット又は他の機械的な若しくは手作業の作用の下で除去される。
【0014】
- 第3の高分子化合物は、少なくとも部分的に水溶性である。したがって、例えば、第3の高分子化合物を形成する材料は、シミュレータの製造中に使用される支持材料と同じであってよく、その場合、支持材料は、例えば水ジェットの作用の下で除去される。
【0015】
- 組立体は、複数の第2の軟質解剖学的構成要素を備え、各第2の軟質解剖学的構成要素は、それぞれ第2の高分子化合物で構成され、各第2の高分子化合物は、第1の高分子化合物の又は各第1の高分子化合物の硬度よりも低い硬度を有する。
【0016】
- 組立体は、複数の第1の硬質解剖学的構成要素を備え、各第1の硬質解剖学的構成要素は、第1の硬度を有する第1の高分子化合物でそれぞれ構成される。したがって、第2の高分子化合物又は各第2の高分子化合物は、第1の高分子化合物の又は各第1の高分子化合物の硬度よりも低い硬度を有する。
【0017】
- 少なくとも1種類の第1の高分子化合物-好ましくは1から15種類の間、より好ましくは1から5種類の間、さらに好ましくは2種類-は、他の第1の高分子化合物の硬度とは異なる第1の硬度を有する。したがって、シミュレータは、より写実的である。
【0018】
- 少なくとも1種類の第2の高分子化合物-好ましくは1から15種類の間、より好ましくは1から6種類の間-は、他の第2の高分子化合物の硬度とは異なる第2の硬度を有する。したがって、シミュレータは、より写実的である。
【0019】
- 組立体は、1個から50個の間、好ましくは1個から15個の間の第1の硬質解剖学的構成要素を備える。したがって、シミュレータは、より写実的である。
【0020】
- 組立体は、1個から50個の間、好ましくは1個から15個の間の軟質解剖学的構成要素を備える。したがって、シミュレータは、より写実的である。
【0021】
- 組立体を形成する全ての要素は、付加的合成(additive synthesis)の単一ステップ中に得られるように構成される。したがって、組立体を形成する全ての要素が同時に製造されるので、製造は単純化され、それらの要素を一緒に組み立てる必要がない。これは、組立体を形成する種々の要素を組み立てるステップを回避する。
【0022】
- 第1の高分子化合物は、光重合性化合物(photopolymeric compound)である。したがって、製造は、特に付加的合成法を使用して、より容易である。
【0023】
- 第2の高分子化合物は、光重合性化合物である。したがって、製造は、特に付加的合成法を使用して、より容易である。
【0024】
- 第3の高分子化合物は、光重合性化合物である。したがって、製造は、特に付加的合成法を使用して、より容易である。
【0025】
- 高分子化合物は、光重合性化合物である。したがって、製造は、特に付加的合成法を使用して、より容易である。
【0026】
- 第2の光重合性化合物は、少なくとも1種類のエラストマ材料を含む。したがって、第2の軟質解剖学的構成要素は、弾性的に且つ可逆的に変形して、シミュレータの使用者が体験する感覚をより写実的にすることができる。
【0027】
- 第1の高分子化合物は、70から95の間、好ましくは83から86の間のショアD硬度を有する。したがって、それが再現する解剖学的要素に類似した硬度の硬質解剖学的構成要素が得られ得る。
【0028】
- 第2の高分子化合物は、20から95の間、好ましくは27から60の間、より好ましくは30から35の間のショアA硬度を有する。したがって、それが再現する解剖学的要素に類似した硬度の軟質解剖学的構成要素が得られ得る。
【0029】
- 第1の硬質解剖学的構成要素は、骨要素、軟骨要素、角質要素、石灰質要素、爪要素(ungular element)、歯、甲皮、鶏眼、嚢胞、腫瘍などの病状を表す身体的兆候から成る群から選択される少なくとも1つの要素を少なくとも部分的に再現する。したがって、そのような第1の硬質解剖学的構成要素を選択することにより、シミュレータは、多数の異なる外科手術に応用され得る。
【0030】
- 第2の軟質解剖学的構成要素は、軟組織、脂肪組織、静脈、動脈、神経、皮膚、筋肉、粘膜、靱帯、腱、膜、臓器、腫瘍などの病状を表す身体的兆候から成る群から選択される少なくとも1つの要素を少なくとも部分的に再現する。したがって、そのような第2の軟質解剖学的構成要素を選択することにより、シミュレータは、多数の異なる外科手術に応用され得る。
【0031】
- 解剖学的構成要素のうちの少なくとも1つは、生体液体を再現する液体を収容する。したがって、外科手術の解剖学的状態、及びこの手術中に体験される感覚は、特に写実的な態様で再現される。例えば、第2の軟質解剖学的構成要素は、静脈又は動脈であり、且つ、例えば赤色の液体といった血液を再現する液体を収容する。
【0032】
- シミュレータは、組立体が好ましくは取外し可能に取り付けられる支持体を備える。したがって、組立体に加えられる力は、支持体に伝達される。さらに、支持体は、いったん製造されるだけでよく、組立体は、訓練外科手術が終了し次第変更される可能性を有して取り換え可能であるので、製造は、より費用がかからない。
【0033】
- 支持体を形成する全ての要素は、付加的合成の単一ステップ中に得られるように構成される。したがって、支持体を形成する全ての要素が同時に製造されるので、製造は単純化され、それらの要素を一緒に組み立てる必要がない。これは、支持体を形成する種々の要素を組み立てるステップを回避する。
【0034】
- シミュレータは、基部を備え、基部及び支持体は、それらの間にボール連結部を形成する。したがって、支持体は、例えば支持体によって担持されるボールと基部によって担持されるボール・ハウジングとを含むボール・システムにより、ボール連結部を使用してあらゆる向きに配向され得る。したがって、使用者は、支持体の様々な位置、したがって組立体の様々な位置で訓練され得る。使用者はまた、外科手術訓練を行う位置を選択することができ、したがって、訓練がより写実的になる。
【0035】
- 支持体は、ヒト又は動物の身体の少なくとも1つの部分を解剖学的に再現し、支持体は、組立体に相補的な形状を備え、組立体は、好ましくは爪を含む指端部を再現し、支持体は、前述の指に相補的な部分を再現する。したがって、シミュレータは、例えば使用者によるシミュレータの取扱いに関して、より写実的である。したがって、例えば、使用者は、組立体上で訓練外科手術を行うために、支持体を保持することができる。
【0036】
この説明では、「指(finger)」は、好ましくは、例えば足の親指などの、指又はつま先を意味する。
【0037】
- 組立体及び支持体は、一緒に完全連結部を形成し、この完全連結部は、好ましくは、可逆的であるか又は支持体に損傷を与えることなしに破壊可能である。
【0038】
- 組立体及び支持体は、一緒に摺動連結部を形成し、摺動連結部の摺動自由度(sliding degree of freedom)は、阻止手段によって阻まれる。したがって、支持体上で組立体を位置決めすることが、特に容易である。
【0039】
- 組立体は、溝を備え、支持体は、ほぞを備え、ほぞ及び溝は、一緒に蟻継ぎ摺動連結部(dovetail sliding connection)を形成する。したがって、摺動連結部は、特に単純且つ頑強な態様で作成される。
【0040】
- 組立体上に配置された阻止手段は、破壊状態において組立体及び支持体が分離され得るように、少なくとも部分的に破壊され得る。したがって、組立体は、再使用され得ない。
【0041】
- 阻止手段は、クリップ手段を含む。したがって、阻止手段は、作製が容易である。
【0042】
- 阻止手段は、支持体によって担持される少なくとも1つの出張りと、出張りを受け入れるための、組立体によって担持される少なくとも1つのハウジングとを備える。したがって、阻止手段は、作製が極めて容易である。
【0043】
- 組立体は、第2の軟質解剖学的構成要素を吊り下げ状態に維持するためのユニットをさらに備え、このユニットは、高分子化合物、好ましくは光重合性化合物で構成され、第1の硬質解剖学的構成要素及び第2の軟質解剖学的構成要素は、ユニットを介して堅固に一緒に接続される。したがって、例えば、互いに分離されているが訓練外科手術をより写実的にするための解剖学的再現に不可欠である複雑な部分を解剖学的に再現することが可能である。対象の部分のみを解剖学的に再現することも可能であり、したがって、シミュレータの製造は、必要な材料が少なくて済み、そのため、より費用がかからない。
【0044】
- ユニットは、第2の軟質解剖学的構成要素が接続される少なくとも1つの周壁を備え、第2の軟質解剖学的構成要素は、ユニットによって区切られた内部空間内に少なくとも部分的に配置される。したがって、第2の軟質解剖学的構成要素は、ユニットによって区切られた内部空間内で吊り下げられ、且つ、ユニットを使用して空間的に正確に位置決めされることが可能であり、それにより、シミュレータをより写実的にする。
【0045】
- ユニットは、第1の高分子化合物で構成される。したがって、シミュレータは、製造が特に容易である。
【0046】
- ユニットは、実質的に多面体形状のものであり、好ましくは実質的に立方体である。
【0047】
- ユニットは、1つの側面が開口した実質的に多面体形状-好ましくは実質的に立方体-のものであり、開口した側面に隣接するユニットの少なくとも1つの他の側面は、少なくとも1つのオリフィスを備える。したがって、シミュレータは、製造にかかる費用がより少なく、また場合により、製造がより高速である。例えば、シミュレータの製造は、脆弱な及び/又は少なくとも部分的に水溶性の支持材料を必要とする場合があり、この支持材料は、完成状態のシミュレータを得るために、例えば前述の少なくとも1つのオリフィスに向けられた少なくとも1つの水ジェットの作用の下で除去され得る。
【0048】
- ユニットは、例えば少なくとも1つのリブ、及び/又は少なくとも1つの折り目、及び/又は少なくとも1つのフィレット、好ましくは周辺折り目といった、補剛手段を備える。したがって、それにより、特に訓練外科手術又は製造中のユニットの変形が防止され、したがって、第2の軟質解剖学的構成要素の位置決めが改善される。
【0049】
本発明はまた、前述のタイプのシミュレータを製造する方法に関し、この方法中、組立体を形成する、当てはまる場合にはそれぞれ支持体を形成する、全ての要素は、好ましくは3次元印刷又は3D印刷による付加的合成のステップ中、より好ましくはPolyjet又はMultijetなどの材料噴射タイプの付加的合成のステップ中に、同時に製造される。したがって、シミュレータは、製造が特に容易且つ安価である。
【0050】
本発明の対象である外科手術訓練シミュレータを製造するための方法の他の任意の特徴によれば、以下のことが単独で又は組合せで含まれる:
【0051】
- 製造方法は、
a)修正すべきヒト又は動物の身体の一部分の3次元像を表示するステップであって、3次元像が初期モデルと呼ばれる、ステップと、
b)この3次元像を修正して、組立体モデルと呼ばれる、第1の修正済み下位部分を含むヒト又は動物の身体の第1の下位部分の第1のデジタル・モデルを画定するステップであって、組立体モデルが、第1の硬質解剖学的構成要素の少なくとも1つの第1の下位モデル、及び第2の軟質解剖学的構成要素の少なくとも1つの第2の下位モデルを含む、ステップと、
c)組立体モデルを使用して行われる、組立体の付加的合成のステップと、
を含む。
したがって、シミュレータは、作製が特に容易且つ安価である。加えて、シミュレータは、使用される3次元像を単純に修正することにより、変更又はカスタマイズが非常に容易である。
【0052】
- 製造方法は、
a)修正すべきヒト又は動物の身体の一部分の3次元像を表示するステップであって、3次元像は初期モデルと呼ばれる、ステップと、
b)この3次元像を修正して、
※ 組立体モデルと呼ばれる、第1の修正済み下位部分を含むヒト又は動物の身体の第1の下位部分の第1のデジタル・モデルであって、組立体モデルが、第1の硬質解剖学的構成要素の少なくとも1つの第1の下位モデル、及び第2の軟質解剖学的構成要素の少なくとも1つの第2の下位モデルを含む、第1のデジタル・モデルと、
※ 支持体モデルと呼ばれる、第2の修正済みの下位部分を含むヒト又は動物の身体の第1の下位部分に相補的なヒト又は動物の身体の第2の下位部分の第2のデジタル・モデルと
を画定するステップと、
c)組立体モデルを使用して行われる、好ましくは唯一の組立体の付加的合成のステップと、
d)支持体モデルを使用して行われる、好ましくは唯一の支持体の付加的合成のステップと
を含む。
ステップc)及びd)は、同時に又は連続的に行われてよく、ステップd)の前にステップc)を行うことが可能であり、その逆も可能である。
したがって、シミュレータは、より写実的である。組立体の、それぞれ支持体の、付加的合成の唯一のステップを使用することにより、製造は単純化され、組立体、それぞれ支持体を形成する種々の要素を組み立てるステップは、必要ない。
【0053】
- 製造方法は、ステップa)の前に、ヒト又は動物の身体の一部分の3次元像を複数の3次元要素にセグメント化することにより3次元像を処理するステップを含み、複数の3次元要素の中で少なくとも2つの3次元要素が、少なくとも1つの解剖学的構成要素を表すデジタル下位モデルをそれぞれ形成する。
【0054】
- 製造方法は、ステップb)中に、好ましくは腫瘍若しくは奇形である病状を表す身体的兆候の少なくとも1つの下位モデルを組立体モデルに組み入れ且つ/又は修正するために組立体モデルを修正することを含む。
したがって、所定の組立体モデルを得ることができ、この所定の組立体モデルは、病状を表す身体的兆候の下位モデルのみを組み入れ且つ/又は修正することにより、外科手術訓練の要求に従って修正される。例えば、この下位モデルは、腫瘍を再現することができ、そのサイズ及び位置は、このステップ中に修正され得る。したがって、組立体モデルを設計するのに、より時間がかからない。さらに、組立体モデルは、特定の外科手術訓練事例に応用され得る。したがって、組立体モデルは、例えば利用可能な3次元像のいずれにも現れない、非常にまれにしか発生しない身体的兆候の特例を再現することができる。病状を表す身体的兆候を含むヒト又は動物の身体の一部分の特定の3次元像は、必要とされない。
【0055】
- 製造方法は、ステップb)中に、病状を表す身体的兆候の少なくとも1つの下位モデルを組立体モデルに組み入れるために組立体モデルを修正することを含み、この下位モデルは、第3の解剖学的構成要素の第3の下位モデルを形成する。
これは、シミュレータをより写実的にする。
【0056】
- 方法は、ステップb)中に、第2の軟質解剖学的構成要素を吊り下げ状態に維持するためのユニットの下位モデルを組立体モデルに組み入れるために組立体モデルを修正することを含む。
したがって、シミュレータは、製造がより容易である。
【0057】
本発明は、単に実例として与えられた以下の説明を添付の図面を参照しながら読むことにより、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】下垂体腺腫又は頭蓋咽頭腫の内視鏡下経鼻外科手術の訓練のためのシミュレータである本発明の第1の実施例によるシミュレータの斜視図である。
図2図1に示されたシミュレータの正面図である。
図3図1に示されたシミュレータの上面図である。
図4】下垂体微小腺腫の内視鏡下経鼻外科手術の訓練のためのシミュレータである第1の実施例の第1の特定の実例によるシミュレータの断面図である。
図5】下垂体巨大腺腫の内視鏡下経鼻外科手術の訓練ためのシミュレータである第1の実施例の第2の特定の実例によるシミュレータの断面図である。
図6】頭蓋咽頭腫の内視鏡下経鼻外科手術の訓練ためのシミュレータである第1の実施例の第3の特定の実例によるシミュレータの断面図である。
図7】シミュレータの一部分を形成する組立体をシミュレータの一部分を形成する支持体に組み付ける前の、この事例では足の親指であるつま先の陥入爪の外科手術の訓練のためのシミュレータである本発明の第2の実施例によるシミュレータの斜視図である。
図8図7に示されたシミュレータの一部分を形成する組立体の背面図である。
図9】組立状態における、図7に示されたシミュレータの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
図1から6は、全体的な参照番号1によって表される、本発明の第1の実施例による外科手術訓練シミュレータを示す。
【0060】
この実例では、シミュレータ1は、人体の一部分、より正確には頭部の一部分を解剖学的に再現する組立体3を備える。
【0061】
図1から6に示されるように、組立体3は、一体形であり、且つ、第1の硬質解剖学的構成要素5を備え、この構成要素は、この実例では骨部分を解剖学的に再現し、この場合、頭蓋骨の一部分を解剖学的に再現する。組立体3はまた、少なくとも1つの第2の軟質解剖学的構成要素7、9、11、13を備える。組立体3は、第2の軟質解剖学的構成要素7、11を吊り下げ状態に維持するためのユニット15をさらに備える。最後に、図4から6に示された実例では、組立体3は、第3の解剖学的構成要素17、19、21を備える。
【0062】
この実例では、第1の硬質解剖学的構成要素5は、骨部分-この場合、頭蓋骨の一部分-と、ヒト頭部の軟骨部分とを解剖学的に再現する。第1の硬質解剖学的構成要素5は、第1の硬度を有する第1の高分子化合物で構成される。この実例では、第1の高分子化合物は、光重合性化合物である。
【0063】
以下の表は、例えば高分子化合物Vero PureWhite(登録商標)RGD837などの、Stratasys社によりVero(登録商標)ファミリーの高分子化合物下で商品化されている、第1の硬質解剖学的構成要素を形成する第1の高分子化合物の物理的特性の実例を示す。
【0064】
【表1】
【0065】
したがって、第1の高分子化合物は、70から95の間、好ましくは表1に上記されているように83から86の間のショアD硬度を有し得る。
【0066】
各第2の軟質解剖学的構成要素7、9、11、13は、図1に示されるように、視神経7、下垂体9、頸動脈11、及び鼻粘膜13から選択される少なくとも1つの要素を少なくとも部分的に解剖学的に再現する。
【0067】
第2の軟質解剖学的構成要素7、9、11、13は、第2の硬度を有する第2の高分子化合物で構成される。この実例では、第2の高分子化合物は、光重合性化合物であり、且つ、少なくとも1種類のエラストマ材料を含み得る。
【0068】
以下の表は、例えば高分子化合物Agilus30(登録商標)FLX2040などの、Stratasys社によって商品化されている第2の軟質解剖学的構成要素を形成する第2の高分子化合物の物理的特性の実例を示す。
【0069】
【表2】
【0070】
したがって、第2の高分子化合物は、20から95の間、好ましくは27から60の間、例えば表1に上記されているように30から35の間のショアA硬度を有し得る。
【0071】
そのような高分子化合物Agilus30(登録商標)はまた、第2の高分子化合物の硬度を修正するために、少なくとも1種類の他の高分子化合物と組み合わせられ得る。例えば、そのような高分子化合物Agilus30(登録商標)は、第2の軟質解剖学的構成要素7、9、11、13によって再現される解剖学的要素の硬度に応じて、特に第2の高分子化合物の硬度を高めるために、前述のVero(登録商標)高分子化合物のファミリーの高分子化合物と組み合わせられ得る。したがって、各第2の軟質解剖学的構成要素7、9、11、13は、考慮される第2の軟質解剖学的構成要素によって再現される解剖学的要素の硬度に類似した硬度を得るために、第2の異なる高分子化合物で構成され、且つ、異なる硬度を有し得る。
【0072】
したがって、この実例では、第2の高分子化合物又は各第2の高分子化合物は、第1の高分子化合物の又は各第1の高分子化合物の硬度よりも低い硬度を有する。
【0073】
示された実例では、場合により、例えば頸動脈11などの少なくとも1つの軟質解剖学的構成要素は、充填されてよく、したがって、生体液体を再現する液体、例えば血液を再現する赤色の液体を収容することができる。
【0074】
第3の解剖学的構成要素17、19、21は、第3の高分子化合物で構成され、この化合物は、この実例では、第1の高分子化合物及び第2の高分子化合物とは異なる。第3の高分子化合物は、脆弱な材料である。図4から6に示された実例では、第3の解剖学的構成要素17、19、21は、下垂体を再現する第2の解剖学的構成要素9によって取り囲まれる。図4に示された実例では、第3の解剖学的構成要素17は、腫瘍、より正確には下垂体微小腺腫を再現する。図5に示された実例では、第3の解剖学的構成要素19は、腫瘍、より正確には下垂体巨大腺腫を再現する。図6に示された実例では、第3の解剖学的構成要素21は、腫瘍、より正確には頭蓋咽頭腫を再現する。
【0075】
第3の高分子化合物は、例えば光重合性化合物であり、好ましくは、シミュレータを製造するのに使用される支持材料、例えばStratasys社によって商品化されている材料SUP705で構成され、その組成は以下に挙げられる。
【0076】
【表3】
【0077】
したがって、第3の高分子化合物は、第3の解剖学的構成要素を脆弱にすることができる。したがって、例えば、第3の解剖学的構成要素は、機械的作用により、例えば洗浄又はかき取りにより、除去され得る。例えば、そのような化合物はまた、少なくとも部分的に水溶性であり、水ジェットの作用の下で除去され得る。
【0078】
前述のように、組立体3は、第2の軟質解剖学的構成要素7、11を吊り下げ状態に維持するためのユニット15を備える。したがって、図1から6に示された実例では、第1の硬質解剖学的構成要素5及び第2の軟質解剖学的構成要素7、11は、ユニット15を介して一緒に堅固に接続される。さらに、ユニット15は、第1の硬質解剖学的構成要素5と同じ第1の高分子化合物で構成される。
【0079】
図1から6では、ユニット15は、立方体、又は実質的に立方体の形状を有する。ユニット15は、1つの側面が開口しており、また、周壁を形成する、開口した側面に隣接するユニットの4つの側面23、24、25、26は、それぞれ、少なくとも1つのオリフィス29、31、33を有する。図1に示された実例では、ユニット15は、2つのフィレット35、37によって形成された補剛手段を備える。したがって、側面23は、フィレット35を介して側面24に接続され、側面24は、フィレット37を介して側面25に接続される。ユニット15は、さらに、又はその代わりに、少なくとも1つのリブ及び/又は少なくとも1つの折り目を補剛手段として備え得る。例えば、折り目は、開口した側面において周壁の縁部上に形成されてよく、且つ、ユニット15の内部空間に向かって形成されてよい。
【0080】
図1から6では、第2の軟質解剖学的構成要素7、11は、材料の相補性により、ユニット15の周壁に接続される。すると、第2の軟質解剖学的構成要素7、11は、ユニット15によって区切られた内部空間内に少なくとも部分的に配置され、且つ、ユニット15内で吊り下げられる。
【0081】
図7及び9は、全体的な参照番号51によって表された、本発明の第2の実施例による外科手術訓練シミュレータを示す。
【0082】
この実例では、シミュレータ51は、人体の一部分、より正確には足の親指の端部を解剖学的に再現する組立体53を備える。シミュレータはまた、組立体53が取外し可能に取り付けられる支持体54を備える。
【0083】
組立体53は、第1の実施例の組立体3と同様に、一体形であり、且つ、第1の硬質解剖学的構成要素55を備え、この第1の硬質解剖学的構成要素55は、この実例では爪部分を解剖学的に再現し、この場合、爪を解剖学的に再現する。したがって、第1の解剖学的構成要素55は、第1の高分子化合物で構成される。組立体53はまた、第1の実施例の組立体3と同様に、軟組織を再現する少なくとも1つの第2の軟質解剖学的構成要素57、59を備える。各第2の軟質解剖学的構成要素57、59は、第1の高分子化合物の硬度よりも低い硬度を有する第2の高分子化合物で構成される。したがって、第1の実施例に関する説明は、硬質の、それぞれ軟質の、解剖学的構成要素の材料及び特性に関しては特に、この第2の実施例に当てはまる。
【0084】
示された実例では、支持体54は、人体の一部分、より正確にはこの実例では組立体53に相補的な足の親指の形状を有する部分を解剖学的に再現する。
【0085】
支持体54は、指骨を形成する骨を少なくとも部分的に再現する第1の硬質解剖学的構成要素61と、軟組織を再現する少なくとも1つの第2の軟質解剖学的構成要素63とを備える。
【0086】
図7から9に示された実例では、組立体53及び支持体54は、一緒に摺動連結部を形成し、この摺動連結部の摺動自由度は、阻止手段によって阻まれる。摺動連結部は、組立体53によって担持される溝65と支持体54によって担持されるほぞ67とによって形成される、蟻継ぎ摺動連結部である。組立体53上の溝65の存在により、組立体53を作るのに必要とされる材料はより少なくなり、それにより、その費用が削減される。
【0087】
図7から9に示された実例では、阻止手段は、クリップ手段を含む。これらのクリップ手段は、図7に示されるように、支持体54上に配置された2つの出張り69を含む。この実例では、半円筒形状の出張り69が、ほぞ67の各側に配置され、且つ、摺動連結部の摺動方向に対して実質的に直角に位置する。阻止手段は、図8に示されるように、出張り69を受け入れるための-組立体53上に配置された-2つのハウジング71をさらに含む。この実例では、中空半円筒形状のハウジング71は、溝65の各側に配置され、且つ、摺動連結部の摺動方向に対して実質的に対して直角に位置する。
【0088】
この実例では、ほぞ67は、第1の高分子化合物で構成され、したがって、硬質である。この実例では、溝は、第2の高分子化合物で構成され、したがって、軟質であり、溝の硬度は、ほぞの硬度よりも低い。したがって、支持体54のほぞ67は、組立体53と支持体54とを組み立てるとき、及び、ほぞ67と溝65との相対的な摺動中に、損傷しない。これは、組立体は取り換え可能であり、且つ、必ずしもシミュレーションが終了し次第再利用可能であるものではない一方で、支持体は幾多の外科手術訓練セッションにわたって維持され得るという事実に、特に適応している。
【0089】
同様に、出張り69は、第1の高分子化合物で構成され、ハウジング71は、第2の高分子化合物で構成される。したがって、支持体54の出張り69は、組立体53と支持体54とを組み立てるとき、及び、出張り69をハウジング71内にクリップするときに、損傷しない。加えて、支持体54の出張りはまた、摺動連結部の摺動軸に平行な方向における分離力Fの作用の下で組立体53と支持体54とを分離する際に出張りがハウジング71から出てくるときに、損傷しない。
【0090】
場合により、組立体53上に配置された阻止手段は、破壊状態において組立体53と支持体54とが分離され得るように、少なくとも部分的に破壊され得る。例えば、組立体53は、タブを備えることができ、このタブは、組立体53と支持体54とを組み立てるときに変形するが、摺動連結部の摺動軸に平行な方向における分離力Fの作用の下で組立体53と支持体54とを分離する際に組立体53から引きちぎれるか又は剥離する。したがって、組立体53は、再使用され得ない。
【0091】
次に、第1の実施例によるシミュレータ1を製造するための方法の実例について説明する。
【0092】
最初に、人体の一部分の3次元像が作成され、この場合では頭部の一部分である。この像は、初期モデルとも呼ばれる。このステップは、例えば、3次元スキャナを使用して行われ得る。代案として、そのような3次元像は、事前に作成されてコンピュータに記憶されてもよい。
【0093】
方法は、修正すべき人体の部分の3次元像を表示するステップa)であって、3次元像が初期モデルと呼ばれる、ステップa)を含む。
【0094】
次いで、この3次元像を修正するステップb)が行われて、
- 第1の硬質解剖学的構成要素5の少なくとも1つの第1の下位モデル及び第2の軟質解剖学的構成要素7、9、11、13の少なくとも1つの第2の下位モデルを含む組立体モデル3と呼ばれる、第1の修正済み下位部分を含む頭部の第1の下位部分の第1のデジタル・モデル
が画定される。
この実例では、方法は、このステップ中に、この実例では腫瘍である病状を表す身体的兆候の少なくとも1つの下位モデルを組立体モデル3に組み入れ且つ/又は修正するために組立体モデル3を修正することを含む。したがって、組立体モデルはまた、第3の解剖学的構成要素17、19、21の少なくとも1つの第3の下位モデルを含む。
この実例では、方法は、このステップ中に、ユニット15の下位モデルを組立体モデル3に組み入れるために組立体モデル3を修正することを含む。
【0095】
最後に、組立体3の付加的合成のステップc)が、組立体モデルを使用して行われ、このステップc)中、組立体3を形成する全ての要素5、7、9、11、13、15、17、19、21が、同時に製造される。したがって、この付加的合成のステップc)は、唯一のものである。
【0096】
そのようなステップは、例えば、例えばStratasys社によって商品化されているJ750型の3Dプリンタなどの3次元印刷機上での支持材料を含むシミュレータ1の付加的合成の下位ステップを含む。この下位ステップに続いて、完成状態のシミュレータ1を得るために付加的合成中に使用された支持材料を例えば少なくとも1つの水ジェットを使用して除去する下位ステップがあってもよい。この点において、ユニット15におけるオリフィス29、31、33の存在は、この支持材料を除去するステップを簡単にする。加えて、第3の解剖学的構成要素17、19、21は、支持材料で構成されるが、下垂体を再現する第2の解剖学的構成要素9によって完全に取り囲まれるので、水ジェットの作用の下で破壊されない。その結果、水は、第3の解剖学的構成要素17、19、21の支持材料に到達し得ない。
【0097】
次に、第2の実施例によるシミュレータ51を製造するための方法の実例について説明する。
【0098】
最初に、人体の一部分の3次元像が作成され、この場合では足の親指の一部分である。この像は、初期モデルとも呼ばれる。このステップは、例えば、3次元スキャナを使用して行われ得る。代案として、そのような3次元像は、事前に作成されてコンピュータに記憶されてもよい。
【0099】
方法は、修正すべき人体の部分の3次元像を表示するステップa)であって、3次元像が初期モデルと呼ばれる、ステップa)を含む。
【0100】
次いで、この3次元像を修正するステップb)が行われて、
- 第1の硬質解剖学的構成要素55の少なくとも1つの第1の下位モデル及び第2の軟質解剖学的構成要素57、59の少なくとも1つの第2の下位モデルを含む組立体モデル53と呼ばれる、第1の修正済み下位部分を含む足の親指の第1の下位部分の第1のデジタル・モデル、
- 支持体モデル54と呼ばれる、第2の修正済み下位部分を含む足の親指の第1の下位部分に相補的な足の親指の第2の下位部分の第2のデジタル・モデル
を画定する。
この実例では、組立体モデル53はまた、このステップ中に、溝65及び2つのハウジング71の下位モデルを組立体モデル53に組み入れるために修正される。
この実例では、支持体モデル54はまた、このステップ中に、ほぞ67及び2つの出張り69の下位モデルを支持体モデル54に組み入れるために修正される。
【0101】
最後に、組立体53の付加的合成のステップc)が、組立体モデルを使用して行われ、支持体54の付加的合成のステップd)が、支持体モデル54を使用して行われる。
【0102】
ステップc)及びd)は、同時に又は連続的に行われてよく、ステップd)の前にステップc)を行うことが可能であり、その逆も可能である。
【0103】
組立体53は取り換え可能であるので、訓練が終了し次第、組立体53を新しくして再度動作可能なシミュレータ51を得るために、ステップc)だけを行うことが可能である。
【0104】
ステップc)はまた、支持体54のための幾つかの組立体53の在庫を作製するために、同時に及び/又は連続的に数回行われてもよい。
【0105】
この第2の実施例のための付加的合成のステップc)及びd)は、第1の実施例に対して説明されたステップc)に似ている。したがって、組立体53の付加的合成のステップc)は、組立体モデルを使用して行われ、このステップc)中に、組立体53を形成する全ての要素55、57、59、65、71は、同時に製造される。したがって、この付加的合成のステップc)は、唯一のものである。
【0106】
同様に、支持体54の付加的合成のステップd)は、支持体モデルを使用して行われ、このステップd)中に、支持体54を形成する全ての要素61、63、67は、同時に製造される。したがって、この付加的合成のステップd)は、唯一のものである。
【0107】
本発明は、説明された実施例に限定されるのもではなく、他の実施例が当業者にははっきりと明らかになるであろう。具体的には、実施例は、例えばヒト又は動物の身体の少なくとも1つの部分を解剖学的に再現するための、少なくとも1つの第2の軟質解剖学的構成要素を吊り下げるためのユニットを含む組立体と組立体に相補的な形状を有する支持体とを備えるシミュレータを得るために、組み合わせられ得る。
【0108】
本発明は、多数の外科手術シミュレーションに応用され得る。したがって、例えば、本発明によるシミュレータは、ヒトの顎の少なくとも1つの部分を解剖学的に再現する組立体を備えることができ、この組立体は、一体形であり、且つ、少なくとも、
- 第1の硬度を有する第1の高分子化合物で構成された、下顎の少なくとも1つの皮質骨部分-顎骨基底部とも呼ばれる-を再現する第1の硬質解剖学的構成要素、
- 第2の高分子化合物で構成された、少なくとも1つの歯肉部分を再現する第2の軟質解剖学的構成要素
を備え、第2の高分子化合物は、第1の高分子化合物の硬度よりも低い硬度を有し、第1の硬質解剖学的構成要素及び第2の軟質解剖学的構成要素は、互いに堅固に接続される。
【0109】
そのようなシミュレータはまた、別の第1の硬度を有する別の第1の高分子化合物で構成された、下顎の少なくとも1つの海綿質部分-歯槽突起とも呼ばれる-を再現する別の第1の硬質解剖学的構成要素を備え得る。
【0110】
そのようなシミュレータはまた、組立体が取り付けられる支持体を備えることができ、
- 支持体は、ヒト又は動物の身体の少なくとも1つの部分を解剖学的に再現し、
- 支持体は、組立体に相補的な形状を有し、
組立体は、好ましくは、少なくとも1本の歯がなくなっている顎の一部分を再現し、支持体は、歯を含む、前述の顎に相補的な部分を再現する。
【0111】
組立体は、少なくとも1本の歯を再現する別の第1の硬質解剖学的構成要素をさらに備えることができる。支持体は、少なくとも1本の歯を再現する別の第1の硬質解剖学的構成要素をさらに備えることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】