(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(54)【発明の名称】カメラビューを回転させるためのジャイロセンサを備える内視鏡用脈管採取装置
(51)【国際特許分類】
A61B 17/3201 20060101AFI20220629BHJP
A61B 1/018 20060101ALI20220629BHJP
A61B 1/045 20060101ALI20220629BHJP
A61B 1/06 20060101ALI20220629BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20220629BHJP
A61B 18/14 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
A61B17/3201
A61B1/018 515
A61B1/045 610
A61B1/06 531
A61B1/00 732
A61B18/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564489
(86)(22)【出願日】2020-04-23
(85)【翻訳文提出日】2021-12-24
(86)【国際出願番号】 US2020029498
(87)【国際公開番号】W WO2020223100
(87)【国際公開日】2020-11-05
(32)【優先日】2019-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】500204326
【氏名又は名称】テルモ カーディオバスキュラー システムズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100137039
【氏名又は名称】田上 靖子
(72)【発明者】
【氏名】藤井 達徳
(72)【発明者】
【氏名】カディコフスキ,ランダル
【テーマコード(参考)】
4C160
4C161
【Fターム(参考)】
4C160FF19
4C160KK03
4C160KK07
4C161AA21
4C161CC04
4C161CC06
4C161DD01
4C161FF02
4C161GG15
4C161HH57
4C161LL02
4C161QQ06
4C161SS21
(57)【要約】
内視鏡用脈管採取ツールが、使用者にビデオ画像を提示するために光学システムを使用する。ツールが周囲組織および側枝を解剖および切断するために脈管のすべての側の周りで操作されるとき、捕捉される画像の向きが回転する。ツール内のモーショントラッカー(例えば、ジャイロセンサ)がこの回転を検出する。採取手技中に採取装置ハンドルの回転角運動速度を検出することにより、カメラビューの向きが使用者に対して表示される前に補償される。ハンドルが回転させられると、カメラビューに反対方向(相殺方向)の回転を提供するために、検出される回転が使用され、その結果、ディスプレイに決まった向きが提示される。したがって、垂直上向き方向(または、任意の他の所望の基準方向)が表示されるビデオ画像内で実質的に固定された状態を維持する。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡用採取システムであって:
ハンドルを有する、患者の中に挿入されるための採取デバイスと;
前記ハンドルの反対側の前記採取デバイスの遠位端のところの視野を示す画像を提供する光学システムと;
前記光学システムと共に回転するように、および前記採取デバイスの長手方向軸を中心とした角回転に反応して回転信号を提供するように、設置される角度モーションセンサと;
前記光学システムから前記画像を受信し、前記回転信号を受信する、画像プロセッサであって、前記画像プロセッサが、前記回転信号に反応して前記画像に反対方向の回転を適用することにより補償されるビデオ出力信号を発生させる、画像プロセッサと;
を備える内視鏡用採取システム。
【請求項2】
前記モーションセンサがジャイロセンサから構成される、請求項1に記載の内視鏡用採取システム。
【請求項3】
前記モーションセンサが加速度計から構成される、請求項1に記載の内視鏡用採取システム。
【請求項4】
前記モーションセンサが多軸モーショントラッカーから構成される、請求項1に記載の内視鏡用採取システム。
【請求項5】
前記画像プロセッサが、前記回転信号に従って現在の向きを計算するように、前記現在の向きと基準の向きとの差を決定するように、および前記差に従って前記ビデオ信号のビデオフレームを反対方向に回転させるように、構成される、請求項1に記載の内視鏡用採取システム。
【請求項6】
前記画像プロセッサが、初期設定の回転位置に対して較正を行うように構成される、請求項5に記載の内視鏡用採取システム。
【請求項7】
前記画像プロセッサが、前記ビデオフレームの視覚ディスプレイ内で前記初期設定の回転位置を維持するために前記ビデオフレームを反対方向に回転させるように構成される、請求項6に記載の内視鏡用採取システム。
【請求項8】
使用者によるオフセットを実現するためのユーザ入力装置をさらに備え、前記画像プロセッサが、前記ビデオフレームの視覚ディスプレイ内でオフセットされた回転位置を維持するために前記ビデオフレームを反対方向に回転させるように構成される、請求項6に記載の内視鏡用採取システム。
【請求項9】
前記光学システムが、前記採取デバイスに挿入可能であるカメラユニットの遠位端のところに設置される画像センサをから構成される、請求項1に記載の内視鏡用採取システム。
【請求項10】
前記光学システムが前記カメラユニットの遠位端のところにある光源をさらに備える、請求項9に記載の内視鏡用採取システム。
【請求項11】
前記光学システムが前記採取デバイスに挿入可能であるカメラユニットであり、前記システムが:
前記カメラユニット内で長手方向に延在し、前記カメラユニットの近位端から外側へ延在する吸入チューブと;
前記角度モーションセンサ、前記画像センサ、および前記光源に接続されて、前記カメラユニットの近位端から外側へ延在するケーブルと
をさらに備え、
前記ケーブルおよび前記吸入チューブが束ねられる
請求項10に記載の内視鏡用採取システム。
【請求項12】
前記光学システムが前記採取デバイスに挿入可能であるカメラユニットであり、前記カメラユニットが;
カメラユニットを通って長手方向に延在する光ファイバと;
前記光ファイバの遠位端に設置されるレンズと;
前記光ファイバの近位端に配置される画像センサと
を備える
請求項1に記載の内視鏡用採取システム。
【請求項13】
前記採取デバイスが解剖器具ユニットを備える、請求項1に記載の内視鏡用採取システム。
【請求項14】
前記採取デバイスが切断ユニットを備える、請求項1に記載の内視鏡用採取システム。
【請求項15】
前記採取デバイスが解剖器具・切断ユニットの組み合わせを備える、請求項1に記載の内視鏡用採取システム。
【請求項16】
前記採取デバイスが、前記患者の中に挿入されたときに中心回転軸を有し;
前記光学システムが、前記画像の前記視野の中に中心軸を有し;
前記採取デバイスの前記中心回転軸が前記光学システムの前記中心軸からオフセットされる
請求項1に記載の内視鏡用採取システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照により本明細書に組み込まれている、2019年4月30日に出願した米国仮特許出願第62/840480号の利益を主張するものである。
本発明は、概して、血管または他の組織の内視鏡用採取(endoscopic harvesting)に関し、より詳細には、内視鏡内の光学システムを介するビデオ画像の採取デバイスの使用者への提示に関する。
【背景技術】
【0002】
冠動脈バイパス術(CABG:coronary artery bypass grafting)では、動脈または静脈などの、血管セクションまたは脈管セクションが、移植片として使用されるために、患者の身体内のその元のロケーションから「採取」される(すなわち、除去される)。除去後、血管のこのセクションが動脈血源と迂回すべき冠動脈との間に接合される。バイパス移植片として使用されるべき脈管のための好適な供給源として、特には、脚部の中の伏在静脈および腕の中の橈骨動脈がある。
【0003】
最小侵襲的なテクニックは、所望の脈管を見つけるのにおよび1つまたは複数の内視鏡用採取デバイスを導入するのに小切開部を採用する。作業スペースを作ることを目的としておよび周囲組織から脈管を部分的に分離することを目的として切開部を通して解剖器具を導入するときに最初の解剖が行われる。次いで、採取すべきセクションを囲む結合組織および血管の任意の側枝から血管を切り離すために切断器具が作業スペースに導入される。枝が切られ得、かつ/または焼灼され得る。
【0004】
1つの典型的な手技では、内視鏡の進入部位が採取される脈管の中間点の近くに位置し、ここでは、枝の解剖および切断が進入部位から脈管に沿って両方向に前進する。血管の所望のセクションを除去するために、第2の小切開部または刺創がこの所望のセクションの一方の端部のところに作られ、この血管セクションが結紮される。このように結紮された血管セクションのもう一方の端部のところに第3の小切開部が作られ、それにより、第1の切開部を通してこの所望の血管セクションを完全に除去することが可能となる。別法として、進入ポイントから血管に沿って一方向のみに作業を行いながら所望の長さの血管を得るのに内視鏡デバイスの長さが十分である場合、最初の2つの切開部のみが必要となる可能性がある。
【0005】
上述の内視鏡用脈管採取を実施するための市販の製品の1つの例として、ミシガン州、アナーバーのTerumo Cardiovascular Systems CorporationからのVirtuoSaph(商標)の内視鏡用静脈採取システム(Endoscopic Vein Harvesting System)がある。内視鏡用脈管採取システムが、Maedaらの米国特許第8,465,488号およびKadykowskiの米国特許第7,547,314号に説明されており、これらは、両方、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。VirtuoSaph(商標)システムでは、枝を切り離して焼灼するための切断ツールがVカッターを形成し、ここでは、V形の先端部が、切断すべき枝を長手方向スリットの中まで誘導するためにユニットの遠位端から延伸可能である。スリットに隣接する電極が枝を焼灼して凝固により切り離すために高周波電圧で電気的に励起される。さらに、Vキーパが、脈管を捕捉して脈管に沿ってツールを誘導するために、遠位端から延伸する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カメラおよびビデオディスプレイを有する光学システムを介して内部の内視鏡のビューが使用者に提供される。カメラが採取デバイスの遠位側先端部の中に設置され得る。別法として、採取デバイスの中に装着されるレンズおよび光ファイバが、採取デバイスの外部の光ファイバの遠隔端部のところに位置するかまたはデバイスのハンドル内に位置するカメラに画像を伝送することができる。いずれの場合も、画像が遠位側先端部内の固定される光学機器を使用して得られ、それにより、採取デバイスが使用者によって操作されてその長手方向軸を中心として回転させられるときにディスプレイ上に提示される画像が回転することになる。例えば、VカッターおよびVキーパが、脈管に沿っておよび脈管の周りで動かされるときにツールのいかなる回転運動にも関係なくビデオ画像の右側および左側で方向付けられた状態を維持することができる。結果として、脈管、枝、および結合組織などの画像内の相対的に静止する要素がツールの回転とは反対方向に回転しているように見える。画像の回転が直観で分かるものではない可能性があり、画像を適切に解釈するためには、使用者にとっての追加のスキルを必要とする。
【0007】
VirtuoSaph(商標)システムでは、画像の回転を防止することを目的としてハンドルと共にカメラヘッドが回転するのを防止するために、採取装置(haevester)デバイスのハンドルのところに位置するカメラヘッドを保持することが可能である。しかし、このプロセスは時間を要するものであり、所望の画像の向きを維持するためにカメラヘッドを別途操作することの必要性から使用者を解放することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、採取手技中に採取装置ハンドルの回転角運動速度を検出することによりカメラビューの向きを補正する。ハンドルが回転させられるとき、検出される回転がカメラビューの反対方向(相殺方向)の回転を実現するのに使用され、その結果、ディスプレイには決まった向きが提示される。したがって、垂直上向き方向(または、任意の他の所望の基準方向)が表示されるビデオ画像内で実質的に固定された状態を維持する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】従来の採取装置ユニットを示す側面図である。
【
図2】
図1のVキーパおよびVカッターをより詳細に示す斜視図である。
【
図3】従来の解剖器具ユニットおよび内視鏡ユニットを示す側面図である。
【
図4】標的の脈管の周りの作業用トンネル内に配備される採取装置ユニットのVキーパおよびVカッターを描くカメラビューを示す図である。
【
図5】本発明の画像補償なしの、採取装置ユニットの反時計回り方向の回転の前のおよびその後のカメラビューを示す図である。
【
図6】本発明の画像補償なしの、採取装置ユニットの反時計回り方向の回転の前のおよびその後のカメラビューを示す図である。
【
図7】
図6のカメラビューに対して画像補償を適用した後のカメラビューを示す図である。
【
図8】本発明の、モーション追跡センサを有する採取装置ユニットを示す側面図である。
【
図9】本発明の第1の実施形態を示すブロック図である。
【
図10】本発明の第2の実施形態を示すブロック図である。
【
図11】本発明の一実施形態による画像補償を示すブロック図である。
【
図12】別の実施形態による脈管採取システムの構成要素を示す側面図である。
【
図13】
図12のカメラユニットをより詳細に示す斜視図である。
【
図14】
図12のカメラユニット内のモーション追跡センサを示す断面斜視図である。
【
図15】本発明の別の実施形態による採取ユニットを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1が、解剖されている標的の脈管を握持するのに、および脈管に接続される任意の枝または結合組織を切り離すのに、使用される採取棒10を示す。採取棒10が、解剖器具ロッドを使用して作られる、標的の脈管に沿う作業用トンネルの中に挿入される(例えば、
図4を参照されたい)。採取棒10が、細長いスリーブ部材または挿入部材12に接続されさらに内視鏡レシーバ13に接続されるハンドル11を有する。挿入部材12の遠位端のところに、解剖されている脈管を保持するための捕捉フレームである脈管キーバ(Vキーパ)14、ならびに側枝および結合組織を切り離すためのVカッター15が存在する。Vキーパ14がハンドル11上にあるVキーパボタン16によって操作される。ハンドル11上のVカッター延伸ボタン17を操作することにより、Vカッター15が延伸または後退させられる。吸入器チューブ20が、吸入ガスを挿入部材12の遠位端に送達するために、CO
2などのガスの供給源に接続され得る。バイポーラコード21が高周波電圧の供給源に接続されるためのコネクタ22を一方の端部のところに有し、Vカッター15上の電極に電圧を供給するための導体を有する。
【0011】
Vキーパ14およびVカッター15が
図2により詳細に示される。Vキーパ14が、支持棒26および可動棒27に設置される誘導フレーム25を有する。誘導フレーム25および棒27が、一体に、内部開口部28を備える捕捉フレームを形成する。採取されるべき静脈または他の脈管が開口部28の中にうまく移動させられされ、次いで、ハンドル上のVキーパボタンが操作されて捕捉フレームの一方側に沿って棒27を延伸させ、開口部28を閉じてそれにより脈管を保持する。Vカッター15が、側枝をスリットの中に配置するためにハンドル上のVカッターボタンによって操作される延伸可能ガイドに設置される中央スリットを備えるV形の先端部を有する。
【0012】
Vキーパ14が矢印30によって示されるように長手方向に延伸可能であり、対して棒27が矢印29によって示されるように独立して長手方向に延伸可能である。
図2では、棒27が開口部28内で採取されている脈管を維持するのに利用される延伸位置にある(すなわち、捕捉フレームの側部が閉じられる)。
【0013】
Vカッター15が矢印31によって示される方向に長手方向に延伸可能である。細長い挿入部材12が、挿入部材12の端部よりさらに延伸させられる前にVカッター15を露出する終端部を備えるノッチを有する。内視鏡の端部のところにあるレンズ部分32が部材12の遠位端の近くに配置されて示される。レンズ部分32が、カメラ(すなわち、画像センサ)に一体化されるか、またはそのもう一方の端部のところでカメラに接続される光ファイバの端部のところに配置される、レンズであってよい。
【0014】
部材12をその中に挿入する作業用トンネルが
図3に示される鋭利ではない解剖器具デバイス35を使用して作られ得、作業用トンネルが同様に剛体の内視鏡43も受ける(または、別法として、透明の先端部36の中に添着されるカメラを有することができる)。内視鏡43が遠位端まで延在してその近位端のところで内視鏡ヘッド45に接続される剛体の内視鏡棒44を有する。ヘッド45がアイピース46およびライトコネクタ47を有する。ディスプレイ上にビデオ画像を提示するために、アイピース46が直接に観察され得るかまたはカメラに結合され得る。解剖器具35が、内部孔38を備える外側シース37を有する解剖器具棒を有する。シース37が遠位端のところで鋭利ではない解剖器具先端部36に接続される。解剖器具35の近位端のところのあるハンドル40が軸方向において内視鏡43を受け(矢印48によって示される方向において)、その結果、内視鏡棒44が中空先端部36に入れられるまで孔38の中に挿入され、それにより透明の先端部36を通して解剖されているエリアの内視鏡による可視化が可能となる。内視鏡棒44によって占有されない孔38内の空間および/またはシース37内の追加の通路が、解剖部位の周りで皮下腔を膨張させるために吸入ガスを導入することを目的として、ハンドル40のところのガス入口チューブ41を、シース37内のまたは先端部42内の遠位端のところにあるガス出口孔42に結合する。
【0015】
図4が脈管採取中に見られる内視鏡のビューであり、ここでは、標的の脈管(例えば、伏在静脈)50が、鈍的解剖中に事前に作られる脈管50の周りの空洞内においてVキーパ14の開口部28の中で保持される。Vカッター15が、除去するために脈管50の1セクションの準備を整えることを目的として、側枝51を焼灼して切り離すために枝51の方に延伸するのに適した位置にある。側枝51などの側枝が脈管50から外側へ多様な径方向に延在することを理由として、採取装置は異なるすべての側枝に直接に接近するために脈管50の周りで回転させられなければならない。使用者による操作中にレンズ部分43が部材12の長手方向軸の周りで回転することが可能である場合、内視鏡から得られるビデオ画像が反対方向に回転する。患者を基準としてVキーパ14およびVカッター15がどの程度回転させられたかに関わらず、Vキーパ14およびVカッター15の向きがビデオディスプレイ上で固定されたままとなる。手技中、標的の脈管およびトンネルに沿う観察方向が概して水平に延びる。しかし、採取装置が回転するとき、ビデオ画像内の脈管50から横に延びる上方向(例えば、患者を基準として、および使用者が立っているところの部屋を基準とする)が画像周りで変更される。実際の上方向(または、任意の他の選択される基準)をビデオ画像の頂部側に留めるために(すなわち、患者の解剖学的構造を基準として画像を回転させないようにするために)、患者の解剖学的構造の安定した画像を提供することが望ましい。
【0016】
図5が手技中の初期のビデオ画像52を示しており、ここでは、結果として、採取装置ユニットおよびカメラ画像が第1の回転位置に位置合わせされている。Vカッター15およびVキーパ14が画像52の左側または右側にそれぞれ方向付けられ、脈管50が3時の方向に延在する。採取装置ユニットおよびカメラ画像を反時計回り方向にわずかに回転させることにより、カメラによって捕捉される画像が時計回り方向に回転し、その結果、脈管50が
図6に示されるように4時の方向に延在する。
図7に示されるように採取装置ユニットの回転運動を反映するビデオ画像を使用者が提示することが有益であり、ここでは、Vカッター15およびVキーパ14が反時計回りに回転させられており、脈管50が継続して3時の方向に延在する。
【0017】
本発明では、光学システムが、電子的に処理されてビデオディスプレイ上で使用者に対して示されるべきビデオ画像を得るためにカメラを利用する。カメラが、剛体の内視鏡棒の端部のところにあるかまたは患者の中に挿入される採取装置デバイスの遠位側先端部もしくは遠位端のところにある、アイピースのところに配置され得る。光学システムのカメラまたは他の部分が採取装置デバイスと共に回転することが可能であり、それによりカメラ画像がそれに応じて回転する。しかし、デバイスの回転が測定され、ディスプレイに送信される画像の反対方向の回転を適用するのに使用され、その結果、使用者によって見られるビデオ画像が患者を基準とした固定される向きを維持する。デバイスの回転は、カメラユニットに設置されるか、採取装置ユニットに設置されるか、解剖器具ユニットに設置されるか、またはカメラと共に回転する他に構造に設置される、モーショントラッカー、ジャイロスコープ、加速度計、または他のデバイスを使用して測定され得る。
【0018】
図8を参照すると、第1の実施例が示されており、ここでは、モーショントラッカーデバイス55が採取装置ユニット10のハンドル11の中に設置されている。例えば、モーショントラッカー55が、中国、広東省、深センのShenzhen HiLetgo Technology Co.,Ltd.から市販されるHiLetgo MPU9250/6500 9-Axis 9-DOF 16-BitのGyroscope Acceleration Magnetic Sensorなどの、集積回路組立体から構成されてよい。ケーブル56およびコネクタ57が、ビデオ信号の取り扱いのためにおよびディスプレイモニタの駆動のために、プロセッサまたはモジュールからの入力電力を伝送し、センサ出力信号(例えば、角運動速度信号)をプロセッサまたはモジュールまで伝送する。
【0019】
より具体的には、
図9が実施形態を示しており、ここでは、採取装置システムの構造部分60(例えば、採取装置ユニットまたは解剖器具ユニットのカメラユニット、ハンドル、または棒部分)が、構造部分60の軸回転62に従う角速度(すなわち、角運動速度)信号を発生させるジャイロセンサ61を担持する。一実施例では、圧電ジャイロセンサが使用され得る。別法として、他の種類のモーションセンサ、加速度計、または振動センサが使用されてもよい。カメラ63が内視鏡のビューを捕捉し、内視鏡のビューが電気信号に符号化されて画像プロセッサ64に提供される。画像プロセッサ64が角速度信号を受信し、画像プロセッサ64が、ディスプレイパネル65に提示される内視鏡のビューに対して対応する反対方向の回転を適用するためにこの角速度信号を使用する。
【0020】
図10が別の実施形態を示しており、ここでは、カメラユニット70(採取装置または解剖器具ユニットの中に挿入されるためのもの)がモーショントラッカー71を組み込む。モーショントラッカー71が、好適にはカメラユニット70の近位端の近くで、カメラユニット70の中に容易に嵌め込まれるのに十分な小ささであるマルチチップモジュールを有することができる。カメラユニット70が、カメラセンサ73およびLED照明源74を担持する遠位端を有する延伸本体72を有する。モーショントラッカー71、カメラ73、およびLED74が、例えば、LED74に電力を提供するために、およびカメラ73からビデオフレームを受信するために、プロセッサ75に電気的に結合される。プロセッサ75が、マイクロコンピュータ(例えば、PC)またはカスタム電子機器モジュールから構成されてよい。プロセッサ75が、プロセッサ75に提供される角運動速度信号を発生させることを目的とし、モーショントラッカー71のジャイロスコープ、加速度計、または他の感知構成要素を動作せるためにモーショントラッカー74に電力を提供する。角運動速度信号を使用して、プロセッサ75がカメラユニット70の回転を検出し、モニタ76上に表示するためにビデオフレームを転送する前に、カメラ73から受信するビデオフレームに反対方向の回転を適用する。当技術分野で知られているように、モーショントラッカー71が、センサユニットのモーションを追跡する種々のモーション信号を送信する3軸加速度計および3軸ジャイロスコープを有することができる。デバイスの位置を検出するために、モーション信号が既知の方法を使用してオイラー角または四元数を計算するのに使用され得る(例えば、手持ち式のゲームコントローラで一般に使用されるような)。得られるデバイスの位置、および角運動速度信号に基づく単位時間当たりの位置の変化を用いて、プロセッサ75がカメラビューの現在の(換言すれば、最新の)向き(例えば、初期設定の位置からの現在の位置の回転角)を決定し、所望の向きを維持することを目的としてビデオ画像の向きを変えるときの適切な観察角度を決定する。
【0021】
プロセッサ75およびモニタ76を組み込むパーソナルコンピュータ(PC)または他の計算デバイスが使用され得る。別法として、プロセッサ75からHDMIビデオ信号またはRCAビデオ信号を受信する別個のモニタが使用されてもよい。使用者に種々の追加の機能を提示するために、計算デバイスまたはカスタムモジュールによりグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)が提供され得る。例えば、GUIが、ツールの計算した方向角度、およびピクセル解像度、フレームレート、および倍率(調整可能となり得る)などの他のカメラ情報を表示することができる。GUIが、オフセット角を設定するためのボックス、および画像(静止画像またはビデオ)の捕捉を開始するためのボタンを有することができる。
【0022】
図11が、所望の画像の回転を達成するためのプロセッサの機能の一実施例を描いているブロック図を示す。角運動速度信号が方向計算機ブロック80および較正・初期設定ブロック81に提供される。ブロック81が所望の基準の向きを方向計算機80に提供する。所望の基準の向きと実際の瞬間的な向きとの間の差に基づいて、反対方向の回転角がブロック80から回転マトリックスブロック82に提供される。回転マトリックスブロック82に供給されるビデオフレームが反対方向の回転角に従って回転させられ、補正されたビデオフレームが回転マトリックス82からビデオモニタへ出力される。
【0023】
較正・初期設定ブロック81が、垂直上向き方向(すなわち、重力の下向きの力(pull of gravity)に反対の方位角の方向(azimuth direction)を指す)などの、表示される画像の頂部側のための好適な空間的方向の設定を保存することができる。好適な向き設定は、ブロック81によって実施される較正手技の結果として達成され得、ここでは、カメラユニットを含む採取装置ユニットまたは解剖器具ユニットが水平位置(または、他の任意の向き)で動かないように配置され、垂直軸を示すモーショントラッカー信号(次の位置と初期設定の向きとの間の差を決定するために後でセンサ信号と比較され得る)が得られる。初期設定の向きが加算器83の1つの入力装置に提供され得、加算器83がその出力を方向計算機80の入力装置に提供する。加算器83の第2の入力装置が、使用者によるオフセットのブロック84から使用者によるオフセットの値を受信することができ、使用者によるオフセットのブロック84が使用者が異なる好適なカメラビューを指定するのを可能にする(その結果、所望される場合に、異なる方向がビデオモニタの頂部側に見られ得るようになる)。使用者によるオフセットの値がゼロである場合、初期設置の向きが修正されずに使用される。使用者によるオフセットのブロック64が、例えば、所望のオフセットを手動で入力するための入力デバイスまたはキーパッドを有することができる。
【0024】
図12が、カメラユニット86、解剖器具ユニット87、および採取装置(切断)ユニット88を有する解剖器具システム85を示す。解剖器具ユニット87および採取装置ユニット88が、カメラユニット86を受けるように適合される中央通路を有する。
図13および14に示されるように、カメラユニット86が遠位端90および近位端91を有する。レンズおよび/またはカメラならびに光源(例えば、LED、またはそのもう一方の端部のところで遠隔光源による供給を受ける光導体の出口端部)が遠位端90に設置され、解剖器具ユニット87または採取装置ユニット88の中にカメラユニット86を装着するときに内視鏡のビューを提供する。近位端91と遠位端90との間の縦方向の導管89が、カメラ/LEDのための電気ケーブル95、さらには遠位端90に吸入ガスの流れを提供するための吸入用の管類96を運び、ここでは、開口部が吸入ガスを作業用トンネルの中まで移動させる。
【0025】
カメラユニット86の近位端91で、モーション追跡センサデバイス92が凹部94の中に設置される。ワイヤ束93が、センサデバイス92のための電気ケーブル94、および、束93の端部のところの電気コネクタを介してカメラユニット86からプロセッサ(図示せず)まで延在する、カメラ/LEDのためのケーブル95を担持する。管類96の端部のところのコネクタがCO2吸入ガスの供給源に接続される。吸入ガス送達装置をカメラユニット86に一体化することにより(解剖器具ユニットおよび採取装置ユニットによって担持される吸入用の管類を有することの代わりに)、解剖器具と採取装置との間で使用を切り換えるステップが単純化される。その理由は、CO2の管類をオフにする必要がないからである。従来技術では、採取デバイス(例えば、血管または他の内部組織のための)、電気エネルギーをつなぐためのプローブ、および他の機能を実行するための他のアクセサリ(切断用のはさみ(cutting jaw)などが回転させられ(例えば、内視鏡を中心とする)、これには、デバイスの長手方向に対して垂直に接続される光ケーブルが含まれる。結果として、プローブまたはアクセサリが回転させられるときに傾向として光ケーブルに当たるようになる。有用性を向上させるために、本発明はカメラケーブルを他のケーブルに一体化するのを可能にする。
【0026】
図12に示される実施形態の1つの重要な利点は、身体内部でデバイスが操作されるときの回転軸に関連する。採取装置ユニット88が、ハンドル150およびはさみまで延在する長手方向本体151を備える挿入可能なはさみ(jaw)/カッター要素を有し、ここでは、長手方向本体151が、主外側シース152の中心長手方向軸からわずかにオフセットされる中心長手方向軸を有する。多くの従来のデバイスでは、(内視鏡の重量のために、及び、使用者が、カメラおよび観察方向を回転させないようにするためにカメラヘッドを片手が握持するという理由で)回転中心が内視鏡ユニット/カメラヘッドの軸に一致する。このような事例では、カッター(例えば、Vカッターまたははさみ)およびスペーサ(例えば、Cリング)、Vキーパ、または遠位端のところにある他のツールのビューが内視鏡の軸を中心として旋回し、それによりツールを誘導および使用することが使用者にとってより困難となる。切断を行うのに適する位置にデバイスを配置するためには、例えば、使用者が、1)デバイスを前後にうまく移動させなければならず、2)内視鏡軸に従ってデバイスを回転させなければならず、3)はさみおよびスペーサの両方を同時に旋回させなければならない。本体151の長手方向軸をオフセットすることにより、カメラユニット86からの観察方向がはさみ/カッターを中心として回転するように構成される。
図12の場合のデバイスを、切断を行うのにまたははさみを握持するのに適する位置に配置する場合、使用者がデバイスを前後にうまく移動させて必要に応じて回転させることのみが必要となる(すなわち、はさみを旋回させる必要がない)。
【0027】
図15が別の改善された採取装置デバイス100を示しており、ここでは、固定される光学機器がデバイスの中に含まれ、ジャイロセンサが画像の回転を排除するためにディスプレイビデオ信号を補償するのに使用される。光学機器が採取装置デバイスに内蔵されることの結果として、一体のケーブルが容易に管理され、エネルギープローブとの干渉が回避される。長手方向棒101が、近位側のヘッドユニット102および遠位側のはさみユニット104を有する切断ユニットを保持するように構成される。電力ケーブル103がヘッドユニット102を通してはさみユニット104内の切断用の双極電極(図示せず)に電力を供給する。ヘッドユニット102が、はさみユニット104、および脈管を誘導するスペーサ(例えば、Cリング)ツール105を操作するための制御機構を有することができる。
【0028】
固定されるカメラユニット110が、付随の電気ケーブル111を共有する、カメラ、光源、およびジャイロセンサを有する。吸入チューブ115が棒101の遠位端から近位端を通って外側へ延在する。束(例えば、ジャケットまたは被覆物)120が、ケーブル103、ケーブル115、および管類115を一体に束ね、それにより容易に使用される整頓された採取ツールを提供する。
【0029】
図15の一体のケーブル/管類に加えて、この実施形態はさらに、遠位側のはさみユニット104に一致する(すなわち、カメラの軸からオフセットされる)長手方向軸を有する一束のヘッドユニット102および/または主デバイスハンドルを提供するように容易に構成され得る。
【0030】
図15に示されるデバイスは、組織を切断/焼灼するための採取装置デバイスとして、または標的の脈管の周りのトンネルを鈍的に解剖するための解剖器具デバイスとして、構成され得る。加えて、デバイスが、解剖器具および採取装置デバイスの両方の機能を組み込むように構成され得る(すなわち、脈管を採取するための手技が、別個の解剖器具を必要とすることなく、完了され得る)。この組み合わせの構成を使用する手技はより迅速にかつより容易に完了され得る。その理由は、別個のデバイスを切り換えることが回避されるからである。
【国際調査報告】