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特表2022-531253標的化核酸配列に多様性を生じさせるための組成物及び方法
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  • 特表-標的化核酸配列に多様性を生じさせるための組成物及び方法 図1
  • 特表-標的化核酸配列に多様性を生じさせるための組成物及び方法 図2
  • 特表-標的化核酸配列に多様性を生じさせるための組成物及び方法 図3
  • 特表-標的化核酸配列に多様性を生じさせるための組成物及び方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(54)【発明の名称】標的化核酸配列に多様性を生じさせるための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20220629BHJP
   A01H 1/06 20060101ALI20220629BHJP
   A01H 1/00 20060101ALI20220629BHJP
   A01H 5/00 20180101ALI20220629BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220629BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
C12N15/10 200Z
A01H1/06 ZNA
A01H1/00 A
A01H5/00 A
C12N1/21
C12N5/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564580
(86)(22)【出願日】2020-05-01
(85)【翻訳文提出日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 US2020031053
(87)【国際公開番号】W WO2020223642
(87)【国際公開日】2020-11-05
(31)【優先権主張番号】62/842,184
(32)【優先日】2019-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501231613
【氏名又は名称】モンサント テクノロジー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】グレーム・エス・ガーベイ
(72)【発明者】
【氏名】ファルハード・モシリ
【テーマコード(参考)】
2B030
4B065
【Fターム(参考)】
2B030AA02
2B030AB03
2B030CA08
2B030CA15
4B065AA26X
4B065AA89X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA01
4B065BA16
4B065CA44
4B065CA46
4B065CA53
(57)【要約】
本開示は、変異原と組み合わせて触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼを使用して、標的核酸において標的化改変を生成するために有用な方法及びキットを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的核酸分子に標的化改変を誘発する方法であって、前記標的核酸分子を
(a)触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼ、及び
(b)少なくとも1つの変異原
と接触させることを含み、
少なくとも1つの改変が、前記標的核酸分子に誘発される、前記方法。
【請求項2】
標的核酸分子に標的化改変を誘発する方法であって、前記標的核酸分子を
(a)触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼ、
(b)少なくとも1つのガイド核酸であって、前記少なくとも1つのガイド核酸が前記触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼと共に複合体を形成し、前記少なくとも1つのガイド核酸が前記標的核酸分子とハイブリダイズする、前記少なくとも1つのガイド核酸、及び
(c)少なくとも1つの変異原
と接触させることを含み、
前記標的核酸分子が、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)部位を含み、少なくとも1つの改変が、前記PAM部位から100のヌクレオチド内の前記標的核酸分子において誘発される、前記方法。
【請求項3】
核酸分子の標的化領域における変異率を増加させる方法であって、前記核酸分子を
(a)触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼ、
(b)少なくとも1つのガイド核酸であって、前記少なくとも1つのガイド核酸が前記触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼと共に複合体を形成し、前記少なくとも1つのガイド核酸が前記標的核酸分子とハイブリダイズする、前記少なくとも1つのガイド核酸、及び
(c)少なくとも1つの変異原
と接触させることを含み、
前記標的核酸分子が、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)部位を含み、前記核酸分子の前記標的化領域における前記変異率が、非標的化核酸分子と比較して増加する、前記方法。
【請求項4】
植物のゲノム内の核酸分子の標的化領域における対立遺伝子多様性を増加させる方法であって、前記植物に
(a)触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼまたは前記触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸、
(b)少なくとも1つのガイド核酸または前記少なくとも1つのガイド核酸をコードする核酸であって、前記少なくとも1つのガイド核酸が、前記触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼと共に複合体を形成し、前記少なくとも1つのガイド核酸が前記核酸分子とハイブリダイズする、前記少なくとも1つのガイド核酸または前記少なくとも1つのガイド核酸をコードする核酸、及び
(c)少なくとも1つの変異原
を提供することを含み、
前記核酸が前記標的化領域に隣接するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)部位を含み、前記核酸分子の前記標的化領域の対立遺伝子多様性が増加する、前記方法。
【請求項5】
改善された作物栽培特性を植物に提供する方法であって、
(a)最初の植物に
(i)触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼまたは前記触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸、
(ii)少なくとも1つのガイド核酸または前記ガイド核酸をコードする核酸であって、前記少なくとも1つのガイド核酸が、前記触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼと複合体を形成し、前記少なくとも1つのガイド核酸が前記植物のゲノム中の標的核酸分子とハイブリダイズし、前記標的核酸分子がプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)部位を含む、前記少なくとも1つのガイド核酸または前記ガイド核酸をコードする核酸、及び
(iii)少なくとも1つの変異原
を提供すること、を含み、
少なくとも1つの改変が、前記標的核酸分子に誘発され、さらに方法が、
(b)前記第1の植物から少なくとも1つの子孫植物を生成すること、ならびに
(c)前記少なくとも1つの改変及び前記改善された作物栽培特性を含む少なくとも1つの子孫植物を選抜すること、
を含む、前記方法。
【請求項6】
標的核酸において標的化改変を誘発するためのキットであり、
(a)触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼ、または前記触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸、及び
(b)少なくとも1つの化学的変異原
を含む、前記キット。
【請求項7】
前記方法またはキットが、さらに、(c)少なくとも1つのガイド核酸または前記少なくとも1つのガイド核酸をコードする核酸を含み、前記少なくとも1つのガイド核酸が、前記触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼと複合体を形成し、前記少なくとも1つのガイド核酸が、前記標的核酸分子とハイブリダイズする、請求項1に記載の方法、または請求項6に記載のキット。
【請求項8】
前記触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼが、DNA結合ドメインを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法、または請求項6に記載のキット。
【請求項9】
前記標的核酸分子が、細胞内に位置する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞が、Escherichia coli細胞である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記細胞が、植物細胞または動物細胞である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記植物細胞が、トウモロコシ細胞、ワタ細胞、キャノーラ細胞、ダイズ細胞、イネ細胞、トマト細胞、コムギ細胞、ムラサキウマゴヤシ細胞、モロコシ細胞、Arabidopsis細胞、キュウリ細胞、ジャガイモ細胞、及び藻類細胞からなる群より選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
(i)前記触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼ、もしくは前記触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸;または(ii)前記少なくとも1つのガイド核酸、もしくは前記少なくとも1つのガイド核酸をコードする核酸;または(iii)(i)及び(ii)の両方が、Agrobacterium媒介形質転換、ポリエチレングリコール媒介形質転換、バイオリスティック形質転換、リポソーム媒介トランスフェクション、ウイルス形質導入、1つ以上の送達粒子の使用、マイクロインジェクション、及びエレクトロポレーションからなる群より選択される方法により、前記細胞に提供される、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼ及び前記少なくとも1つのガイドRNAが、リボヌクレオタンパク質として提供される、請求項2~5もしくは7のいずれか1項に記載の方法、または請求項7に記載のキット。
【請求項15】
前記リボヌクレオタンパク質が、Agrobacterium媒介形質転換、ポリエチレングリコール媒介形質転換、バイオリスティック形質転換、リポソーム媒介トランスフェクション、ウイルス形質導入、1つ以上の送達粒子の使用、マイクロインジェクション、及びエレクトロポレーションからなる群より選択される方法により細胞に提供される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記1つ以上の送達粒子が、エクソソーム、リポソーム、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ナノ粒子、ポリカチオン、及びカチオン性オリゴペプチドからなる群より選択される、請求項13または15に記載の方法。
【請求項17】
(i)前記触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼ、もしくは前記触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸、または(ii)前記少なくとも1つのガイド核酸、もしくは前記少なくとも1つのガイド核酸をコードする核酸が、前記細胞に、in vivo、in vitro、またはex vivoで提供される、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記リボヌクレオタンパク質が、in vivo、in vitro、またはex vivoで前記細胞に提供される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つの変異原が、エチルメタンスルホナート、メチルメタンスルホナート、ジエチルスルホナート、ジメチルスルファート、ジメチルスルホキシド、ジエチルニトロソアミン、N-ニトロソ-N-メチル尿素、N-メチル-N-ニトロソ尿素、N-ニトロソ-N-ジエチル尿素、ヒ素、コルヒチン、エチレンイミン、ニトロソメチル尿素、ニトロソグアニジン、亜硝酸、ヒドロキシルアミン、エチレンオキシド、ジエポキシブタン、アジ化ナトリウム、マレイン酸ヒドラジド、シクロホスファミド、ジアゾアセチルブタン、ダチュラ抽出物、ブロモデオキシウリジン、及び酸化ベリリウムからなる群より選択される化学的変異原である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法、または請求項6に記載のキット。
【請求項20】
前記触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼが、触媒的に不活性なCRISPRヌクレアーゼである、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法、または請求項6に記載のキット。
【請求項21】
前記触媒的に不活性なCRISPRヌクレアーゼが、触媒的に不活性なCas9、触媒的に不活性なCpf1、触媒的に不活性なCasX、触媒的に不活性なCasY、触媒的に不活性なC2c2、触媒的に不活性なCas1、触媒的に不活性なCas1B、触媒的に不活性なCas2、触媒的に不活性なCas3、触媒的に不活性なCas4、触媒的に不活性なCas5、触媒的に不活性なCas6、触媒的に不活性なCas7、触媒的に不活性なCas8、触媒的に不活性なCas10、触媒的に不活性なCsy1、触媒的に不活性なCsy2、触媒的に不活性なCsy3、触媒的に不活性なCse1、触媒的に不活性なCse2、触媒的に不活性なCsc1、触媒的に不活性なCsc2、触媒的に不活性なCsa5、触媒的に不活性なCsn2、触媒的に不活性なCsm1、触媒的に不活性なCsm2、触媒的に不活性なCsm3、触媒的に不活性なCsm4、触媒的に不活性なCsm5、触媒的に不活性なCsm6、触媒的に不活性なCmr1、触媒的に不活性なCmr3、触媒的に不活性なCmr4、触媒的に不活性なCmr5、触媒的に不活性なCmr6、触媒的に不活性なCsb1、触媒的に不活性なCsb2、触媒的に不活性なCsb3、触媒的に不活性なCsx17、触媒的に不活性なCsx14、触媒的に不活性なCsx10、触媒的に不活性なCsx16、触媒的に不活性なCsaX、触媒的に不活性なCsx3、触媒的に不活性なCsx1、触媒的に不活性なCsx15、触媒的に不活性なCsf1、触媒的に不活性なCsf2、触媒的に不活性なCsf3、及び触媒的に不活性なCsf4からなる群より選択される、請求項20に記載の方法またはキット。
【請求項22】
前記少なくとも1つのガイド核酸が、1分子ガイドを含む、請求項2~5もしくは7のいずれか1項に記載の方法、または請求項7に記載のキット。
【請求項23】
前記少なくとも1つのガイド核酸が、前記標的核酸分子の標的領域と少なくとも80%の相補性を含む、請求項2~5もしくは7のいずれか1項に記載の方法、または請求項7に記載のキット。
【請求項24】
前記標的化改変が、置換、挿入、及び欠失からなる群より選択される、請求項1もしくは2に記載の方法、または請求項6に記載のキット。
【請求項25】
前記標的核酸分子が、遺伝子をコードする、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法、または請求項6に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年5月2日に出願された米国仮出願第62/842,184号(全体が参照により本明細書に組み込まれる)の利益を主張する。
【0002】
本開示は、標的化核酸に改変を生成するために、変異原と組み合わせて、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼを使用することに関連する組成物及び方法に関する。
【0003】
配列表の組み込み
104,213バイト(MS-Windows(登録商標)で測定)であるP34716WO00_SEQ.txtという名称のファイルに含有され、2020年5月1日に作成され、43の配列を含む配列表は、これと共に電子的に出願され、全体が参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
メタンスルホン酸エチル(EMS)などの化学的変異原、及び電離放射線は、遺伝的変化を誘発するための植物育種のツールとして長い間使用されている。より大きな種子サイズ、耐病性、及びより良い繊維品質などの望ましい形質を有する植物品種が、変異導入により開発されている。変異原により導入された遺伝的変化は、ゲノム内でランダムに発生し、これは、育種家に変異数、ゲノム中での位置、または変異原により標的とされる細胞(例えば、体細胞対生殖細胞)の精密な制御を提供しない。育種家は、導入される変異数を制限または最大化するために、変異原の投薬量を調整してもよい。高用量の変異原は、高い変異率を誘発し、所望の標的で発生する変異の可能性を増加させるために使用されてもよいが、高変異率は、高死亡率ももたらす。低用量の変異原は、より高い生存率及びゲノム内のより低い変異をもたらし、それにより、変異が所望の標的で生じる可能性が減少し、有益な変異を同定するために、多数の植物のスクリーニングが必要とされる。ゲノムの選択領域に変異原活性を標的とすることができないことは、所望の位置にランダムに生じている変異を同定及び回収するために、多数の植物を変異原に曝露させる際に、及び多数の変異導入植物をスクリーニングする際に、育種家がリソースを消費することを必要とする。それ故、変異原の変異原活性をゲノム内の標的化領域に集中させることが望ましいであろう。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】標的化dCas9の非存在下で、化学的変異原であるEMSにより誘発されたrpoB遺伝子内のRif変異及び出現頻度を示す。0.1%または1%のEMSで処置された、dCas9及びZm7.1(E.coliゲノムには見られない配列)を標的とするgRNAを発現する細胞から、Rifコロニーを生成した。rpoB遺伝子(配列番号1)のフラグメントである配列番号3内に変異を有していた位置のみが示される。『位置』=配列番号1のヌクレオチド位置。
図2】標的化及び非標的化の触媒的に不活性なRNAガイドヌクレアーゼと組み合わせて、化学的変異原であるEMAにより誘発されたrpoB変異及び出現頻度の概要を示す。rpoB遺伝子(配列番号1)のフラグメントである配列番号3内に変異を有していた位置のみが示される。0.1%のEMSで処置された、dCpf1またはdCas9及び同族のgRNAを発現する細胞から、Rifコロニーを生成した。『Cas9-TS』=Sp-rpoB-1526 Cas9 gRNA標的部位内に存在するヌクレオチド。『Cpf1-TS』=Sp-rpoB-1578 Cpf1 gRNA標的部位内に存在するヌクレオチド。『WT seq』=配列番号1。『位置』=配列番号1に対するヌクレオチドの位置。EMS誘発性トランジションの潜在的な標的として機能するWT seq内のG及びC残基は、灰色で網掛けされている。『-』=インフレーム/3nの欠失。1590位の『CAT』=インフレーム挿入。1530位のA=サイレント変異。
図3】dCas9+g-rpoB-1526;dCas9+g-Zm7.1;またはdCpf1+g-rpoB-1578を発現する、EMSで処置されたE.coli細胞のコロニーにおいて、PCRにより検出された二重変異の頻度を示す。数=コロニー数。
図4】サイクル照明(明)及び暗の両方の条件で、試験された各プラスミドの組み合わせの、総CFUに対する5-FU耐性CFUの割合のプロットを示す。
【発明の概要】
【0006】
一態様では、本開示は、標的核酸分子に改変を導入する方法を提供し、方法は、標的核酸分子を、(a)触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼ、及び(b)少なくとも1つの変異原(少なくとも1つの改変が、標的核酸分子に導入される)、と接触させること、を含む。いくつかの実施形態では、標的核酸分子は、さらに、少なくとも1つのガイド核酸と接触させ、少なくとも1つのガイド核酸は、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼと複合体を形成し、少なくとも1つのガイド核酸は、標的核酸分子とハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼは、直接DNA結合ドメインを介して標的核酸分子と相互作用する。いくつかの実施形態では、標的核酸分子は、in vitroで接触させる。いくつかの実施形態では、標的核酸分子は、in vivoで接触させる。いくつかの実施形態では、標的核酸分子は、原核細胞のゲノム中にある。いくつかの実施形態では、原核細胞は、Escherichia coli細胞、Bacillus subtilis細胞、Bacillus thuringiensis細胞、Bacillus coagulans細胞、Thermus aquaticus細胞、及びPseudomonas chlororaphis細胞から選択される。いくつかの実施形態では、標的核酸分子は、真核細胞のゲノム中にある。いくつかの実施形態では、真核細胞は、植物細胞、非ヒト動物細胞、ヒト細胞、藻類細胞、及び酵母細胞から選択される。いくつかの実施形態では、植物細胞は、トウモロコシ細胞、ワタ細胞、キャノーラ細胞、ダイズ細胞、オオムギ細胞、ライムギ細胞、イネ細胞、トマト細胞、コショウ細胞、コムギ細胞、ムラサキウマゴヤシ細胞、モロコシ細胞、Arabidopsis細胞、キュウリ細胞、ジャガイモ細胞、サツマイモ細胞、ニンジン細胞、リンゴ細胞、バナナ細胞、パイナップル細胞、ブルーベリー細胞、ブラックベリー細胞、ラズベリー細胞、イチゴ細胞、ウリ科植物細胞、アブラナ細胞、柑橘類細胞、及びタマネギ細胞からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、変異原は、化学的変異原である。いくつかの実施形態では、化学的変異原は、エチルメタンスルホナート、メチルメタンスルホナート、ジエチルスルホナート、ジメチルスルファート、ジメチルスルホキシド、ジエチルニトロソアミン、N-ニトロソ-N-メチル尿素、N-メチル-N-ニトロソ尿素、N-ニトロソ-N-ジエチル尿素、ヒ素、コルヒチン、エチレンイミン、ニトロソメチル尿素、ニトロソグアニジン、亜硝酸、ヒドロキシルアミン、エチレンオキシド、ジエポキシブタン、アジ化ナトリウム、マレイン酸ヒドラジド、シクロホスファミド、ジアゾアセチルブタン、ダチュラ抽出物、ブロモデオキシウリジン、及び酸化ベリリウムからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、変異原は、物理的変異原である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、電離放射線である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、X線である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、可視光である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、熱である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、紫外光である。いくつかの実施形態では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼは、触媒的に不活性なCRISPRヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、触媒的に不活性なCRISPRヌクレアーゼは、触媒的に不活性なCas9、触媒的に不活性なCpf1、触媒的に不活性なCasX、触媒的に不活性なCasY、触媒的に不活性なC2c2、触媒的に不活性なCas1、触媒的に不活性なCas1B、触媒的に不活性なCas2、触媒的に不活性なCas3、触媒的に不活性なCas4、触媒的に不活性なCas5、触媒的に不活性なCas6、触媒的に不活性なCas7、触媒的に不活性なCas8、触媒的に不活性なCas10、触媒的に不活性なCsy1、触媒的に不活性なCsy2、触媒的に不活性なCsy3、触媒的に不活性なCse1、触媒的に不活性なCse2、触媒的に不活性なCsc1、触媒的に不活性なCsc2、触媒的に不活性なCsa5、触媒的に不活性なCsn2、触媒的に不活性なCsm1、触媒的に不活性なCsm2、触媒的に不活性なCsm3、触媒的に不活性なCsm4、触媒的に不活性なCsm5、触媒的に不活性なCsm6、触媒的に不活性なCmr1、触媒的に不活性なCmr3、触媒的に不活性なCmr4、触媒的に不活性なCmr5、触媒的に不活性なCmr6、触媒的に不活性なCsb1、触媒的に不活性なCsb2、触媒的に不活性なCsb3、触媒的に不活性なCsx17、触媒的に不活性なCsx14、触媒的に不活性なCsx10、触媒的に不活性なCsx16、触媒的に不活性なCsaX、触媒的に不活性なCsx3、触媒的に不活性なCsx1、触媒的に不活性なCsx15、触媒的に不活性なCsf1、触媒的に不活性なCsf2、触媒的に不活性なCsf3、及び触媒的に不活性なCsf4からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、標的核酸分子は、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を含む。いくつかの実施形態では、標的核酸分子は、NGG、NGA、TTTN、YG、YTN、TTCN、NGAN、NGNG、NGAG、NGCG、TYCV、NGRRT、NGRRN、NNNNGATT、NNNNRYAC、NNAGAAW、及びNAAAACからなる群より選択される、5’から3’へのヌクレオチド配列を含む。
【0007】
一態様では、本開示は、標的核酸分子に標的化改変を誘発する方法を提供し、方法は、標的核酸分子を、(a)触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼ、(b)少なくとも1つのガイド核酸(少なくとも1つのガイド核酸が、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼと複合体を形成し、少なくとも1つのガイド核酸が、標的核酸分子とハイブリダイズする)、及び(c)少なくとも1つの変異原、と接触させること、を含み、標的核酸分子は、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)部位を含み、少なくとも1つの改変は、PAM部位から100ヌクレオチド内の標的核酸分子に誘発される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの改変は、PAM部位から90ヌクレオチド内の標的核酸分子において誘発される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの改変は、PAM部位から80ヌクレオチド内の標的核酸分子において誘発される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの改変は、PAM部位から70ヌクレオチド内の標的核酸分子において誘発される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの改変は、PAM部位から60ヌクレオチド内の標的核酸分子において誘発される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの改変は、PAM部位から50ヌクレオチド内の標的核酸分子において誘発される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの改変は、PAM部位から40ヌクレオチド内の標的核酸分子において誘発される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの改変は、PAM部位から30ヌクレオチド内の標的核酸分子において誘発される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの改変は、PAM部位から20ヌクレオチド内の標的核酸分子において誘発される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの改変は、PAM部位から10ヌクレオチド内の標的核酸分子において誘発される。いくつかの実施形態では、PAM部位は、NGG、NGA、TTTN、YG、YTN、TTCN、NGAN、NGNG、NGAG、NGCG、TYCV、NGRRT、NGRRN、NNNNGATT、NNNNRYAC、NNAGAAW、及びNAAAACからなる群より選択される、5’から3’へのヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼは、触媒的に不活性なCRISPRヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、触媒的に不活性なCRISPRヌクレアーゼは、触媒的に不活性なCas9、触媒的に不活性なCpf1、触媒的に不活性なCasX、触媒的に不活性なCasY、触媒的に不活性なC2c2、触媒的に不活性なCas1、触媒的に不活性なCas1B、触媒的に不活性なCas2、触媒的に不活性なCas3、触媒的に不活性なCas4、触媒的に不活性なCas5、触媒的に不活性なCas6、触媒的に不活性なCas7、触媒的に不活性なCas8、触媒的に不活性なCas10、触媒的に不活性なCsy1、触媒的に不活性なCsy2、触媒的に不活性なCsy3、触媒的に不活性なCse1、触媒的に不活性なCse2、触媒的に不活性なCsc1、触媒的に不活性なCsc2、触媒的に不活性なCsa5、触媒的に不活性なCsn2、触媒的に不活性なCsm1、触媒的に不活性なCsm2、触媒的に不活性なCsm3、触媒的に不活性なCsm4、触媒的に不活性なCsm5、触媒的に不活性なCsm6、触媒的に不活性なCmr1、触媒的に不活性なCmr3、触媒的に不活性なCmr4、触媒的に不活性なCmr5、触媒的に不活性なCmr6、触媒的に不活性なCsb1、触媒的に不活性なCsb2、触媒的に不活性なCsb3、触媒的に不活性なCsx17、触媒的に不活性なCsx14、触媒的に不活性なCsx10、触媒的に不活性なCsx16、触媒的に不活性なCsaX、触媒的に不活性なCsx3、触媒的に不活性なCsx1、触媒的に不活性なCsx15、触媒的に不活性なCsf1、触媒的に不活性なCsf2、触媒的に不活性なCsf3、及び触媒的に不活性なCsf4からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのガイド核酸は、crRNAを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのガイド核酸は、tracrRNAを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのガイド核酸は、1分子ガイドを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのガイド核酸は、標的核酸分子の標的領域と少なくとも80%の相補性を含む。いくつかの実施形態では、標的核酸分子は、in vitroで接触させる。いくつかの実施形態では、標的核酸分子は、in vivoで接触させる。いくつかの実施形態では、標的核酸分子は、原核細胞のゲノム中にある。いくつかの実施形態では、原核細胞は、Escherichia coli細胞、Bacillus subtilis細胞、Bacillus thuringiensis細胞、Bacillus coagulans細胞、Thermus aquaticus細胞、及びPseudomonas chlororaphis細胞から選択される。いくつかの実施形態では、標的核酸分子は、真核細胞のゲノム中にある。いくつかの実施形態では、真核細胞は、植物細胞、非ヒト動物細胞、ヒト細胞、藻類細胞、及び酵母細胞から選択される。いくつかの実施形態では、植物細胞は、トウモロコシ細胞、ワタ細胞、キャノーラ細胞、ダイズ細胞、イネ細胞、トマト細胞、コムギ細胞、ムラサキウマゴヤシ細胞、モロコシ細胞、Arabidopsis細胞、キュウリ細胞、ジャガイモ細胞、ニンジン細胞、リンゴ細胞、バナナ細胞、パイナップル細胞、ブルーベリー細胞、ブラックベリー細胞、ラズベリー細胞、ウリ科植物細胞、柑橘類細胞、及びタマネギ細胞からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、変異原は、化学的変異原である。いくつかの実施形態では、化学的変異原は、エチルメタンスルホナート、メチルメタンスルホナート、ジエチルスルホナート、ジメチルスルファート、ジメチルスルホキシド、ジエチルニトロソアミン、N-ニトロソ-N-メチル尿素、N-メチル-N-ニトロソ尿素、N-ニトロソ-N-ジエチル尿素、ヒ素、コルヒチン、エチレンイミン、ニトロソメチル尿素、ニトロソグアニジン、亜硝酸、ヒドロキシルアミン、エチレンオキシド、ジエポキシブタン、アジ化ナトリウム、マレイン酸ヒドラジド、シクロホスファミド、ジアゾアセチルブタン、ダチュラ抽出物、ブロモデオキシウリジン、及び酸化ベリリウムからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、変異原は、物理的変異原である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、電離放射線である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、X線である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、可視光である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、熱である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、紫外光である。
【0008】
一態様では、本開示は、核酸分子の標的化領域の変異率を増加させる方法を提供し、方法は、標的核酸分子を、(a)触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼ、(b)少なくとも1つのガイド核酸(少なくとも1つのガイド核酸が、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼと複合体を形成し、少なくとも1つのガイド核酸が、標的化領域に隣接する核酸分子とハイブリダイズする)、及び(c)少なくとも1つの変異原、と接触させること、を含み、核酸分子は、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)部位を含み、核酸分子の標的化領域における変異率は、非標的化核酸分子と比較して増加する。いくつかの実施形態では、PAM部位は、NGG、NGA、TTTN、YG、YTN、TTCN、NGAN、NGNG、NGAG、NGCG、TYCV、NGRRT、NGRRN、NNNNGATT、NNNNRYAC、NNAGAAW、及びNAAAACからなる群より選択される、5’から3’へのヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼは、触媒的に不活性なCRISPRヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、触媒的に不活性なCRISPRヌクレアーゼは、触媒的に不活性なCas9、触媒的に不活性なCpf1、触媒的に不活性なCasX、触媒的に不活性なCasY、触媒的に不活性なC2c2、触媒的に不活性なCas1、触媒的に不活性なCas1B、触媒的に不活性なCas2、触媒的に不活性なCas3、触媒的に不活性なCas4、触媒的に不活性なCas5、触媒的に不活性なCas6、触媒的に不活性なCas7、触媒的に不活性なCas8、触媒的に不活性なCas10、触媒的に不活性なCsy1、触媒的に不活性なCsy2、触媒的に不活性なCsy3、触媒的に不活性なCse1、触媒的に不活性なCse2、触媒的に不活性なCsc1、触媒的に不活性なCsc2、触媒的に不活性なCsa5、触媒的に不活性なCsn2、触媒的に不活性なCsm1、触媒的に不活性なCsm2、触媒的に不活性なCsm3、触媒的に不活性なCsm4、触媒的に不活性なCsm5、触媒的に不活性なCsm6、触媒的に不活性なCmr1、触媒的に不活性なCmr3、触媒的に不活性なCmr4、触媒的に不活性なCmr5、触媒的に不活性なCmr6、触媒的に不活性なCsb1、触媒的に不活性なCsb2、触媒的に不活性なCsb3、触媒的に不活性なCsx17、触媒的に不活性なCsx14、触媒的に不活性なCsx10、触媒的に不活性なCsx16、触媒的に不活性なCsaX、触媒的に不活性なCsx3、触媒的に不活性なCsx1、触媒的に不活性なCsx15、触媒的に不活性なCsf1、触媒的に不活性なCsf2、触媒的に不活性なCsf3、及び触媒的に不活性なCsf4からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのガイド核酸は、crRNAを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのガイド核酸は、tracrRNAを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのガイド核酸は、1分子ガイドを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのガイド核酸は、標的核酸分子の標的領域と少なくとも80%の相補性を含む。いくつかの実施形態では、標的核酸分子は、in vitroで接触させる。いくつかの実施形態では、標的核酸分子は、in vivoで接触させる。いくつかの実施形態では、標的核酸分子は、原核細胞のゲノム中にある。いくつかの実施形態では、原核細胞は、Escherichia coli細胞、Bacillus subtilis細胞、Bacillus thuringiensis細胞、Bacillus coagulans細胞、Thermus aquaticus細胞、及びPseudomonas chlororaphis細胞から選択される。いくつかの実施形態では、標的核酸分子は、真核細胞のゲノム中にある。いくつかの実施形態では、真核細胞は、植物細胞、非ヒト動物細胞、ヒト細胞、藻類細胞、及び酵母細胞から選択される。いくつかの実施形態では、植物細胞は、トウモロコシ細胞、ワタ細胞、キャノーラ細胞、ダイズ細胞、イネ細胞、トマト細胞、コムギ細胞、ムラサキウマゴヤシ細胞、モロコシ細胞、Arabidopsis細胞、キュウリ細胞、ジャガイモ細胞、ニンジン細胞、リンゴ細胞、バナナ細胞、パイナップル細胞、ブルーベリー細胞、ブラックベリー細胞、ラズベリー細胞、ウリ科植物細胞、柑橘類細胞、及びタマネギ細胞からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、変異原は、化学的変異原である。いくつかの実施形態では、化学的変異原は、エチルメタンスルホナート、メチルメタンスルホナート、ジエチルスルホナート、ジメチルスルファート、ジメチルスルホキシド、ジエチルニトロソアミン、N-ニトロソ-N-メチル尿素、N-メチル-N-ニトロソ尿素、N-ニトロソ-N-ジエチル尿素、ヒ素、コルヒチン、エチレンイミン、ニトロソメチル尿素、ニトロソグアニジン、亜硝酸、ヒドロキシルアミン、エチレンオキシド、ジエポキシブタン、アジ化ナトリウム、マレイン酸ヒドラジド、シクロホスファミド、ジアゾアセチルブタン、ダチュラ抽出物、ブロモデオキシウリジン、及び酸化ベリリウムからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、変異原は、物理的変異原である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、電離放射線である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、X線である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、可視光である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、熱である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、紫外光である。
【0009】
一態様では、本開示は、植物のゲノム内の核酸分子の標的化領域において対立遺伝子多様性を増加させる方法を提供し、方法は、植物に、(a)触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼまたは触媒的に誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸、(b)少なくとも1つのガイド核酸または少なくとも1つのガイド核酸をコードする核酸(少なくとも1つのガイド核酸が、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼと複合体を形成し、少なくとも1つのガイド核酸が、核酸分子の標的化領域に隣接してハイブリダイズする)、及び(c)少なくとも1つの変異原、を提供すること、を含み、核酸は、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を含み、核酸の標的化領域の対立遺伝子多様性が増加する。いくつかの実施形態では、PAMは、核酸の標的化領域の5’側の、1~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、60~70、70~80、80~90、90~100ヌクレオチド以内にある。いくつかの実施形態では、PAMは、核酸の標的化領域の5’側の、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、またはそれ以上のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、PAMは、核酸の標的化領域の3’側の、1~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、60~70、70~80、80~90、90~100ヌクレオチド以内にある。いくつかの実施形態では、PAMは、核酸の標的化領域の3’側の、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、またはそれ以上のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、PAM部位は、NGG、NGA、TTTN、YG、YTN、TTCN、NGAN、NGNG、NGAG、NGCG、TYCV、NGRRT、NGRRN、NNNNGATT、NNNNRYAC、NNAGAAW、及びNAAAACからなる群より選択される、5’から3’へのヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼは、触媒的に不活性なCRISPRヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、触媒的に不活性なCRISPRヌクレアーゼは、触媒的に不活性なCas9、触媒的に不活性なCpf1、触媒的に不活性なCasX、触媒的に不活性なCasY、触媒的に不活性なC2c2、触媒的に不活性なCas1、触媒的に不活性なCas1B、触媒的に不活性なCas2、触媒的に不活性なCas3、触媒的に不活性なCas4、触媒的に不活性なCas5、触媒的に不活性なCas6、触媒的に不活性なCas7、触媒的に不活性なCas8、触媒的に不活性なCas10、触媒的に不活性なCsy1、触媒的に不活性なCsy2、触媒的に不活性なCsy3、触媒的に不活性なCse1、触媒的に不活性なCse2、触媒的に不活性なCsc1、触媒的に不活性なCsc2、触媒的に不活性なCsa5、触媒的に不活性なCsn2、触媒的に不活性なCsm1、触媒的に不活性なCsm2、触媒的に不活性なCsm3、触媒的に不活性なCsm4、触媒的に不活性なCsm5、触媒的に不活性なCsm6、触媒的に不活性なCmr1、触媒的に不活性なCmr3、触媒的に不活性なCmr4、触媒的に不活性なCmr5、触媒的に不活性なCmr6、触媒的に不活性なCsb1、触媒的に不活性なCsb2、触媒的に不活性なCsb3、触媒的に不活性なCsx17、触媒的に不活性なCsx14、触媒的に不活性なCsx10、触媒的に不活性なCsx16、触媒的に不活性なCsaX、触媒的に不活性なCsx3、触媒的に不活性なCsx1、触媒的に不活性なCsx15、触媒的に不活性なCsf1、触媒的に不活性なCsf2、触媒的に不活性なCsf3、及び触媒的に不活性なCsf4からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのガイド核酸は、crRNAを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのガイド核酸は、tracrRNAを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのガイド核酸は、1分子ガイドを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのガイド核酸は、標的核酸分子の標的領域と少なくとも80%の相補性を含む。いくつかの実施形態では、変異原は、化学的変異原である。いくつかの実施形態では、化学的変異原は、エチルメタンスルホナート、メチルメタンスルホナート、ジエチルスルホナート、ジメチルスルファート、ジメチルスルホキシド、ジエチルニトロソアミン、N-ニトロソ-N-メチル尿素、N-メチル-N-ニトロソ尿素、N-ニトロソ-N-ジエチル尿素、ヒ素、コルヒチン、エチレンイミン、ニトロソメチル尿素、ニトロソグアニジン、亜硝酸、ヒドロキシルアミン、エチレンオキシド、ジエポキシブタン、アジ化ナトリウム、マレイン酸ヒドラジド、シクロホスファミド、ジアゾアセチルブタン、ダチュラ抽出物、ブロモデオキシウリジン、及び酸化ベリリウムからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、変異原は、物理的変異原である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、電離放射線である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、X線である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、可視光である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、熱である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、紫外光である。いくつかの実施形態では、植物は、トウモロコシ、ワタ、ダイズ、キャノーラ、コムギ、オオムギ、イネ、トマト、タマネギ、コショウ、ブルーベリー、ラズベリー、ブラックベリー、イチゴ、スイカ、ウリ科植物、アブラナ、ホウレンソウ、ナス、ジャガイモ、サツマイモ、サトウキビ、オート麦、キビ、ライムギ、アマ、ムラサキウマゴヤシ、及びテンサイから選択される。いくつかの実施形態では、植物は、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸及び少なくとも1つのガイド核酸をコードする核酸のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸及び少なくとも1つのガイド核酸をコードする核酸のうちの1つ以上は、アグロバクテリウム媒介形質転換、ポリエチレングリコール媒介形質転換、バイオリスティック形質転換、リポソーム媒介トランスフェクション、ウイルス形質導入、1つ以上の送達粒子の使用、マイクロインジェクション、及びエレクトロポレーションからなる群より選択される方法により植物に提供される。いくつかの実施形態では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼ及び少なくとも1つのガイドRNAは、リボヌクレオタンパク質として植物に提供される。いくつかの実施形態では、リボヌクレオタンパク質は、アグロバクテリウム媒介形質転換、ポリエチレングリコール媒介形質転換、バイオリスティック形質転換、リポソーム媒介トランスフェクション、ウイルス形質導入、1つ以上の送達粒子の使用、マイクロインジェクション、及びエレクトロポレーションからなる群より選択される方法により植物に提供される。いくつかの実施形態では、Brachytic1、Brachytic2、Brachytic3、開花遺伝子座T、Rgh1、Rsp1、Rsp2、Rsp3、5-エノールピルビルシキマート-3-ホスファートシンターゼ(EPSPS)、アセトヒドロキシ酸シンターゼ、ジヒドロプテロイン酸シンターゼ、フィトエンデサチュラーゼ(PDS)、プロトポルフィリンIXオキシゲナーゼ(PPO)、パラ-アミノ安息香酸シンターゼ、1-デオキシ-D-キシルロース5-リン酸(DOXP)シンターゼ、ジヒドロプテロイン酸(DHP)シンターゼ、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、光化学系IIのD1タンパク質、モノオキシゲナーゼ、シトクロームP450、セルロースシンターゼ、ベータ-チューブリン、RUBISCO、翻訳開始因子、フィトエンデサチュラーゼ2本鎖DNAアデノシントリポリホスファターゼ(ddATP)、脂肪酸デサチュラーゼ2(FAD2)、ジベレリン20オキシダーゼ(GA20ox)、アセチル-CoAカルボキシラーゼ(ACC)、グルタミンシンテターゼ(GS)、p-ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ(HPPD)、ヒドロキシメチルジヒドロプテリンピロホスホキナーゼ(DHPS)、オーキシン/インドール-3-酢酸(AUX/IAA)、Waxy(Wx)、アセト乳酸シンターゼ(ALS)、OsERF922、OsSWEET13、OsSWEET14、TaMLO、GL2、ベタインアルデヒドデヒドロゲナーゼ(BADH2)、Matrilineal(MTL)、Frigida、Grain Weight 2(GW2)、Gn1a、DEP1、GS3、SlMLO1、SlJAZ2、CsLOB1、EDR1、Self-Pruning 5G(SP5G)、Slagamous-Like 6(SlAGL6)、温度感受性遺伝子雄性不稔5遺伝子(TMS5)、OsMATL、ARGOS8、真核生物の翻訳開始因子4E(eIF4E)、顆粒結合デンプンシンターゼ(GBSS)、または液胞インベルターゼ(VInv)をコードする核酸分子において、対立遺伝子多様性が増加する。
【0010】
一態様では、本開示は、原核生物のゲノム内の核酸分子の標的化領域において対立遺伝子多様性を増加させる方法を提供し、方法は、原核生物に、(a)触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼまたは触媒的に誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸、(b)少なくとも1つのガイド核酸または少なくとも1つのガイド核酸をコードする核酸(少なくとも1つのガイド核酸が、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼと複合体を形成し、少なくとも1つのガイド核酸が、核酸分子の標的化領域に隣接してハイブリダイズする)、及び(c)少なくとも1つの変異原、を提供すること、を含み、核酸は、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を含み、核酸の標的化領域の対立遺伝子多様性が増加する。いくつかの実施形態では、PAMは、核酸の標的化領域の5’側の、1~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、60~70、70~80、80~90、90~100ヌクレオチド以内にある。いくつかの実施形態では、PAMは、核酸の標的化領域の5’側の、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、またはそれ以上のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、PAMは、核酸の標的化領域の3’側の、1~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、60~70、70~80、80~90、90~100ヌクレオチド以内にある。いくつかの実施形態では、PAMは、核酸の標的化領域の3’側の、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、またはそれ以上のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、PAM部位は、NGG、NGA、TTTN、YG、YTN、TTCN、NGAN、NGNG、NGAG、NGCG、TYCV、NGRRT、NGRRN、NNNNGATT、NNNNRYAC、NNAGAAW、及びNAAAACからなる群より選択される、5’から3’へのヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼは、触媒的に不活性なCRISPRヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、触媒的に不活性なCRISPRヌクレアーゼは、触媒的に不活性なCas9、触媒的に不活性なCpf1、触媒的に不活性なCasX、触媒的に不活性なCasY、触媒的に不活性なC2c2、触媒的に不活性なCas1、触媒的に不活性なCas1B、触媒的に不活性なCas2、触媒的に不活性なCas3、触媒的に不活性なCas4、触媒的に不活性なCas5、触媒的に不活性なCas6、触媒的に不活性なCas7、触媒的に不活性なCas8、触媒的に不活性なCas10、触媒的に不活性なCsy1、触媒的に不活性なCsy2、触媒的に不活性なCsy3、触媒的に不活性なCse1、触媒的に不活性なCse2、触媒的に不活性なCsc1、触媒的に不活性なCsc2、触媒的に不活性なCsa5、触媒的に不活性なCsn2、触媒的に不活性なCsm1、触媒的に不活性なCsm2、触媒的に不活性なCsm3、触媒的に不活性なCsm4、触媒的に不活性なCsm5、触媒的に不活性なCsm6、触媒的に不活性なCmr1、触媒的に不活性なCmr3、触媒的に不活性なCmr4、触媒的に不活性なCmr5、触媒的に不活性なCmr6、触媒的に不活性なCsb1、触媒的に不活性なCsb2、触媒的に不活性なCsb3、触媒的に不活性なCsx17、触媒的に不活性なCsx14、触媒的に不活性なCsx10、触媒的に不活性なCsx16、触媒的に不活性なCsaX、触媒的に不活性なCsx3、触媒的に不活性なCsx1、触媒的に不活性なCsx15、触媒的に不活性なCsf1、触媒的に不活性なCsf2、触媒的に不活性なCsf3、及び触媒的に不活性なCsf4からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのガイド核酸は、crRNAを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのガイド核酸は、tracrRNAを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのガイド核酸は、1分子ガイドを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのガイド核酸は、標的核酸分子の標的領域と少なくとも80%の相補性を含む。いくつかの実施形態では、変異原は、化学的変異原である。いくつかの実施形態では、化学的変異原は、エチルメタンスルホナート、メチルメタンスルホナート、ジエチルスルホナート、ジメチルスルファート、ジメチルスルホキシド、ジエチルニトロソアミン、N-ニトロソ-N-メチル尿素、N-メチル-N-ニトロソ尿素、N-ニトロソ-N-ジエチル尿素、ヒ素、コルヒチン、エチレンイミン、ニトロソメチル尿素、ニトロソグアニジン、亜硝酸、ヒドロキシルアミン、エチレンオキシド、ジエポキシブタン、アジ化ナトリウム、マレイン酸ヒドラジド、シクロホスファミド、ジアゾアセチルブタン、ダチュラ抽出物、ブロモデオキシウリジン、及び酸化ベリリウムからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、変異原は、物理的変異原である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、電離放射線である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、X線である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、可視光である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、熱である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、紫外光である。いくつかの実施形態では、原核生物は、Escherichia coli、Bacillus subtilis、Bacillus thuringiensis、Bacillus coagulans、Thermus aquaticus、及びPseudomonas chlororaphisから選択される。いくつかの実施形態では、対立遺伝子多様性は、殺虫性毒素をコードする核酸において増加する。
【0011】
一態様では、本開示は、植物に作物栽培特性の改善を提供する方法を提供し、方法は、(a)第1の植物に、(i)触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼまたは触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸、(ii)少なくとも1つのガイド核酸またはガイド核酸をコードする核酸(少なくとも1つのガイド核酸は、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼと複合体を形成し、少なくとも1つのガイド核酸は、植物のゲノム中の核酸分子の標的化領域とハイブリダイズし、核酸は、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)部位を含む)、及び(iii)少なくとも1つの変異原(少なくとも1つの改変は、核酸分子の標的化領域に誘発される)、を提供すること、(b)第1の植物から少なくとも1つの子孫植物を生成すること、ならびに(c)少なくとも1つの改変及び改善された作物栽培特性を含む少なくとも1つの子孫植物を選抜すること、を含む。いくつかの実施形態では、PAMは、核酸の標的化領域の5’側の、1~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、60~70、70~80、80~90、90~100ヌクレオチド以内にある。いくつかの実施形態では、PAMは、核酸の標的化領域の5’側の、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、またはそれ以上のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、PAMは、核酸の標的化領域の3’側の、1~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、60~70、70~80、80~90、90~100ヌクレオチド以内にある。いくつかの実施形態では、PAMは、核酸の標的化領域の3’側の、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、またはそれ以上のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、PAM部位は、NGG、NGA、TTTN、YG、YTN、TTCN、NGAN、NGNG、NGAG、NGCG、TYCV、NGRRT、NGRRN、NNNNGATT、NNNNRYAC、NNAGAAW、及びNAAAACからなる群より選択される、5’から3’へのヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼは、触媒的に不活性なCRISPRヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、触媒的に不活性なCRISPRヌクレアーゼは、触媒的に不活性なCas9、触媒的に不活性なCpf1、触媒的に不活性なCasX、触媒的に不活性なCasY、触媒的に不活性なC2c2、触媒的に不活性なCas1、触媒的に不活性なCas1B、触媒的に不活性なCas2、触媒的に不活性なCas3、触媒的に不活性なCas4、触媒的に不活性なCas5、触媒的に不活性なCas6、触媒的に不活性なCas7、触媒的に不活性なCas8、触媒的に不活性なCas10、触媒的に不活性なCsy1、触媒的に不活性なCsy2、触媒的に不活性なCsy3、触媒的に不活性なCse1、触媒的に不活性なCse2、触媒的に不活性なCsc1、触媒的に不活性なCsc2、触媒的に不活性なCsa5、触媒的に不活性なCsn2、触媒的に不活性なCsm1、触媒的に不活性なCsm2、触媒的に不活性なCsm3、触媒的に不活性なCsm4、触媒的に不活性なCsm5、触媒的に不活性なCsm6、触媒的に不活性なCmr1、触媒的に不活性なCmr3、触媒的に不活性なCmr4、触媒的に不活性なCmr5、触媒的に不活性なCmr6、触媒的に不活性なCsb1、触媒的に不活性なCsb2、触媒的に不活性なCsb3、触媒的に不活性なCsx17、触媒的に不活性なCsx14、触媒的に不活性なCsx10、触媒的に不活性なCsx16、触媒的に不活性なCsaX、触媒的に不活性なCsx3、触媒的に不活性なCsx1、触媒的に不活性なCsx15、触媒的に不活性なCsf1、触媒的に不活性なCsf2、触媒的に不活性なCsf3、及び触媒的に不活性なCsf4からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのガイド核酸は、crRNAを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのガイド核酸は、tracrRNAを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのガイド核酸は、1分子ガイドを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのガイド核酸は、標的核酸分子の標的領域と少なくとも80%の相補性を含む。いくつかの実施形態では、変異原は、化学的変異原である。いくつかの実施形態では、化学的変異原は、エチルメタンスルホナート、メチルメタンスルホナート、ジエチルスルホナート、ジメチルスルファート、ジメチルスルホキシド、ジエチルニトロソアミン、N-ニトロソ-N-メチル尿素、N-メチル-N-ニトロソ尿素、N-ニトロソ-N-ジエチル尿素、ヒ素、コルヒチン、エチレンイミン、ニトロソメチル尿素、ニトロソグアニジン、亜硝酸、ヒドロキシルアミン、エチレンオキシド、ジエポキシブタン、アジ化ナトリウム、マレイン酸ヒドラジド、シクロホスファミド、ジアゾアセチルブタン、ダチュラ抽出物、ブロモデオキシウリジン、及び酸化ベリリウムからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、変異原は、物理的変異原である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、電離放射線である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、X線である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、可視光である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、熱である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、紫外光である。いくつかの実施形態では、植物は、トウモロコシ、ワタ、ダイズ、キャノーラ、コムギ、オオムギ、イネ、トマト、タマネギ、コショウ、ブルーベリー、ラズベリー、ブラックベリー、イチゴ、スイカ、ウリ科植物、アブラナ、ホウレンソウ、ナス、ジャガイモ、サツマイモ、サトウキビ、オート麦、キビ、ライムギ、アマ、ムラサキウマゴヤシ、及びテンサイから選択される。いくつかの実施形態では、植物は、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸及び少なくとも1つのガイド核酸をコードする核酸のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、改善された作物栽培特性は、耐病性、非生物的ストレス耐性、耐虫性、油含有量、高さ、耐乾性、成熟度、耐倒伏性、粒重、及び収量からなる群より選択される。
【0012】
一態様では、本開示は、標的核酸分子に標的化改変を誘発するためのキットを提供し、キットは、(a)触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼ、または触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸、及び、(b)少なくとも1つの化学的変異原、を含む。いくつかの実施形態では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼは、CRISPR関連タンパク質である。いくつかの実施形態では、CRISPRタンパク質は、触媒的に不活性なCas9、触媒的に不活性なCpf1、触媒的に不活性なCasX、触媒的に不活性なCasY、触媒的に不活性なC2c2、触媒的に不活性なCas1、触媒的に不活性なCas1B、触媒的に不活性なCas2、触媒的に不活性なCas3、触媒的に不活性なCas4、触媒的に不活性なCas5、触媒的に不活性なCas6、触媒的に不活性なCas7、触媒的に不活性なCas8、触媒的に不活性なCas10、触媒的に不活性なCsy1、触媒的に不活性なCsy2、触媒的に不活性なCsy3、触媒的に不活性なCse1、触媒的に不活性なCse2、触媒的に不活性なCsc1、触媒的に不活性なCsc2、触媒的に不活性なCsa5、触媒的に不活性なCsn2、触媒的に不活性なCsm1、触媒的に不活性なCsm2、触媒的に不活性なCsm3、触媒的に不活性なCsm4、触媒的に不活性なCsm5、触媒的に不活性なCsm6、触媒的に不活性なCmr1、触媒的に不活性なCmr3、触媒的に不活性なCmr4、触媒的に不活性なCmr5、触媒的に不活性なCmr6、触媒的に不活性なCsb1、触媒的に不活性なCsb2、触媒的に不活性なCsb3、触媒的に不活性なCsx17、触媒的に不活性なCsx14、触媒的に不活性なCsx10、触媒的に不活性なCsx16、触媒的に不活性なCsaX、触媒的に不活性なCsx3、触媒的に不活性なCsx1、触媒的に不活性なCsx15、触媒的に不活性なCsf1、触媒的に不活性なCsf2、触媒的に不活性なCsf3、及び触媒的に不活性なCsf4からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、キットは、さらに、少なくとも1つのガイド核酸またはガイド核酸をコードする核酸を含み、少なくとも1つのガイド核酸は、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼと複合体を形成する。いくつかの実施形態では、化学的変異原は、エチルメタンスルホナート、メチルメタンスルホナート、ジエチルスルホナート、ジメチルスルファート、ジメチルスルホキシド、ジエチルニトロソアミン、N-ニトロソ-N-メチル尿素、N-メチル-N-ニトロソ尿素、N-ニトロソ-N-ジエチル尿素、ヒ素、コルヒチン、エチレンイミン、ニトロソメチル尿素、ニトロソグアニジン、亜硝酸、ヒドロキシルアミン、エチレンオキシド、ジエポキシブタン、アジ化ナトリウム、マレイン酸ヒドラジド、シクロホスファミド、ジアゾアセチルブタン、ダチュラ抽出物、ブロモデオキシウリジン、及び酸化ベリリウムからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、キットは、さらに、DNA標的化核酸、再構成及び/または希釈のための試薬のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、キットは、さらに、細胞に触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼを導入するための緩衝液、洗浄緩衝液、対照試薬、対照発現ベクターまたはRNAポリヌクレオチド、DNAから触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをin vitro産生するための試薬、DNAからDNA標的化核酸をin vitro産生するための試薬、アグロバクテリウム、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される試薬を含む。
【0013】
一態様では、本開示は、核酸分子の標的化領域に標的化改変を誘発する方法を提供し、方法は、標的核酸分子を、(a)標的化DNA結合タンパク質、及び(b)少なくとも1つの変異原(少なくとも1つの改変が核酸分子の標的化領域に誘発される)、と接触させること、を含む。いくつかの実施形態では、標的化DNA結合タンパク質は、リコンビナーゼ、ヘリカーゼ、ジンクフィンガータンパク質、転写活性化因子様エフェクター(TALE)、及びトポイソメラーゼの群より選択される。いくつかの実施形態では、標的化DNA結合タンパク質は、固有の核酸切断活性を有さない。
【0014】
一態様では、本開示は、核酸分子の標的化領域に標的化改変を誘発する方法を提供し、方法は、核酸分子を、(a)標的化DNA結合タンパク質(標的化DNA結合タンパク質が核酸分子に結合する)、及び(b)少なくとも1つの変異原(少なくとも1つの改変が核酸分子の標的化領域に誘発される)、と接触させること、を含む。いくつかの実施形態では、標的核酸分子は、in vitroで接触させる。いくつかの実施形態では、標的核酸分子は、in vivoで接触させる。いくつかの実施形態では、標的核酸分子は、原核細胞のゲノム中にある。いくつかの実施形態では、原核細胞は、Escherichia coli細胞、Bacillus subtilis細胞、Bacillus thuringiensis細胞、Bacillus coagulans細胞、Thermus aquaticus細胞、及びPseudomonas chlororaphis細胞から選択される。いくつかの実施形態では、標的核酸分子は、真核細胞のゲノム中にある。いくつかの実施形態では、真核細胞は、植物細胞、非ヒト動物細胞、ヒト細胞、藻類細胞、及び酵母細胞から選択される。いくつかの実施形態では、植物細胞は、トウモロコシ細胞、ワタ細胞、キャノーラ細胞、ダイズ細胞、オオムギ細胞、ライムギ細胞、イネ細胞、トマト細胞、コムギ細胞、ムラサキウマゴヤシ細胞、モロコシ細胞、Arabidopsis細胞、キュウリ細胞、ジャガイモ細胞、サツマイモ細胞、コショウ細胞、ニンジン細胞、リンゴ細胞、バナナ細胞、パイナップル細胞、ブルーベリー細胞、ブラックベリー細胞、ラズベリー細胞、イチゴ細胞、ウリ科植物細胞、アブラナ細胞、柑橘類細胞、及びタマネギ細胞からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、変異原は、化学的変異原である。いくつかの実施形態では、化学的変異原は、エチルメタンスルホナート、メチルメタンスルホナート、ジエチルスルホナート、ジメチルスルファート、ジメチルスルホキシド、ジエチルニトロソアミン、N-ニトロソ-N-メチル尿素、N-メチル-N-ニトロソ尿素、N-ニトロソ-N-ジエチル尿素、ヒ素、コルヒチン、エチレンイミン、ニトロソメチル尿素、ニトロソグアニジン、亜硝酸、ヒドロキシルアミン、エチレンオキシド、ジエポキシブタン、アジ化ナトリウム、マレイン酸ヒドラジド、シクロホスファミド、ジアゾアセチルブタン、ダチュラ抽出物、ブロモデオキシウリジン、及び酸化ベリリウムからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、変異原は、物理的変異原である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、電離放射線である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、X線である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、可視光である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、熱である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、紫外光である。いくつかの実施形態では、標的化DNA結合タンパク質は、リコンビナーゼ、ヘリカーゼ、ジンクフィンガータンパク質、転写活性化因子様エフェクター(TALE)、及びトポイソメラーゼの群より選択される。いくつかの実施形態では、標的化DNA結合タンパク質は、固有の核酸切断活性を有さない。
【0015】
一態様では、本開示は、核酸分子の標的化領域の変異率を増加させる方法を提供し、方法は、核酸分子を、(a)標的化DNA結合タンパク質(標的化DNA結合タンパク質が標的核酸分子に結合する)、及び(b)少なくとも1つの変異原、と接触させること、を含み、核酸分子の標的化領域における変異率は、核酸分子の非標的化領域と比較して増加する。いくつかの実施形態では、標的核酸分子は、in vitroで接触させる。いくつかの実施形態では、標的核酸分子は、in vivoで接触させる。いくつかの実施形態では、標的核酸分子は、原核細胞のゲノム中にある。いくつかの実施形態では、原核細胞は、Escherichia coli細胞、Bacillus subtilis細胞、Bacillus thuringiensis細胞、Bacillus coagulans細胞、Thermus aquaticus細胞、及びPseudomonas chlororaphis細胞から選択される。いくつかの実施形態では、標的核酸分子は、真核細胞のゲノム中にある。いくつかの実施形態では、真核細胞は、植物細胞、非ヒト動物細胞、ヒト細胞、藻類細胞、及び酵母細胞から選択される。いくつかの実施形態では、植物細胞は、トウモロコシ細胞、ワタ細胞、キャノーラ細胞、ダイズ細胞、イネ細胞、トマト細胞、コショウ細胞、コムギ細胞、ムラサキウマゴヤシ細胞、モロコシ細胞、Arabidopsis細胞、キュウリ細胞、ジャガイモ細胞、ニンジン細胞、リンゴ細胞、バナナ細胞、パイナップル細胞、ブルーベリー細胞、ブラックベリー細胞、ラズベリー細胞、イチゴ細胞、ウリ科植物細胞、アブラナ細胞、柑橘類細胞、及びタマネギ細胞からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、変異原は、化学的変異原である。いくつかの実施形態では、化学的変異原は、エチルメタンスルホナート、メチルメタンスルホナート、ジエチルスルホナート、ジメチルスルファート、ジメチルスルホキシド、ジエチルニトロソアミン、N-ニトロソ-N-メチル尿素、N-メチル-N-ニトロソ尿素、N-ニトロソ-N-ジエチル尿素、ヒ素、コルヒチン、エチレンイミン、ニトロソメチル尿素、ニトロソグアニジン、亜硝酸、ヒドロキシルアミン、エチレンオキシド、ジエポキシブタン、アジ化ナトリウム、マレイン酸ヒドラジド、シクロホスファミド、ジアゾアセチルブタン、ダチュラ抽出物、ブロモデオキシウリジン、及び酸化ベリリウムからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、変異原は、物理的変異原である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、電離放射線である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、X線である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、可視光である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、熱である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、紫外光である。いくつかの実施形態では、標的化DNA結合タンパク質は、リコンビナーゼ、ヘリカーゼ、ジンクフィンガータンパク質、転写活性化因子様エフェクター(TALE)、及びトポイソメラーゼの群より選択される。いくつかの実施形態では、標的化DNA結合タンパク質は、固有の核酸切断活性を有さない。
【0016】
一態様では、本開示は、植物のゲノム内の核酸分子の標的化領域において対立遺伝子多様性を増加させる方法を提供し、方法は、(a)標的化DNA結合タンパク質または標的化DNA結合タンパク質をコードする核酸(標的化DNA結合タンパク質が、標的核酸分子に結合する)、及び(c)少なくとも1つの変異原、を植物に提供すること、を含み、核酸の標的化領域の対立遺伝子多様性が増加する。いくつかの実施形態では、変異原は、化学的変異原である。いくつかの実施形態では、化学的変異原は、エチルメタンスルホナート、メチルメタンスルホナート、ジエチルスルホナート、ジメチルスルファート、ジメチルスルホキシド、ジエチルニトロソアミン、N-ニトロソ-N-メチル尿素、N-メチル-N-ニトロソ尿素、N-ニトロソ-N-ジエチル尿素、ヒ素、コルヒチン、エチレンイミン、ニトロソメチル尿素、ニトロソグアニジン、亜硝酸、ヒドロキシルアミン、エチレンオキシド、ジエポキシブタン、アジ化ナトリウム、マレイン酸ヒドラジド、シクロホスファミド、ジアゾアセチルブタン、ダチュラ抽出物、ブロモデオキシウリジン、及び酸化ベリリウムからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、変異原は、物理的変異原である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、電離放射線である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、X線である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、可視光である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、熱である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、紫外光である。いくつかの実施形態では、植物は、トウモロコシ、ワタ、ダイズ、キャノーラ、コムギ、オオムギ、イネ、トマト、タマネギ、コショウ、ブルーベリー、ラズベリー、ブラックベリー、イチゴ、スイカ、ウリ科植物、アブラナ、ホウレンソウ、ナス、ジャガイモ、サツマイモ、サトウキビ、オート麦、キビ、ライムギ、アマ、ムラサキウマゴヤシ、及びテンサイから選択される。いくつかの実施形態では、植物は、標的化DNA結合タンパク質をコードする核酸のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、標的化DNA結合タンパク質をコードする核酸は、アグロバクテリウム媒介形質転換、ポリエチレングリコール媒介形質転換、バイオリスティック形質転換、リポソーム媒介トランスフェクション、ウイルス形質導入、1つ以上の送達粒子の使用、マイクロインジェクション、及びエレクトロポレーションからなる群より選択される方法により植物に提供される。いくつかの実施形態では、標的化DNA結合タンパク質は、アグロバクテリウム媒介形質転換、ポリエチレングリコール媒介形質転換、バイオリスティック形質転換、リポソーム媒介トランスフェクション、ウイルス形質導入、1つ以上の送達粒子の使用、マイクロインジェクション、及びエレクトロポレーションからなる群より選択される方法により植物に提供される。いくつかの実施形態では、Brachytic1、Brachytic2、Brachytic3、開花遺伝子座T、Rgh1、Rsp1、Rsp2、Rsp3、5-エノールピルビルシキマート-3-ホスファートシンターゼ(EPSPS)、アセトヒドロキシ酸シンターゼ、ジヒドロプテロイン酸シンターゼ、フィトエンデサチュラーゼ(PDS)、プロトポルフィリンIXオキシゲナーゼ(PPO)、パラ-アミノ安息香酸シンターゼ、1-デオキシ-D-キシルロース5-リン酸(DOXP)シンターゼ、ジヒドロプテロイン酸(DHP)シンターゼ、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、光化学系IIのD1タンパク質、モノオキシゲナーゼ、シトクロームP450、セルロースシンターゼ、ベータ-チューブリン、RUBISCO、翻訳開始因子、フィトエンデサチュラーゼ2本鎖DNAアデノシントリポリホスファターゼ(ddATP)、脂肪酸デサチュラーゼ2(FAD2)、ジベレリン20オキシダーゼ(GA20ox)、アセチル-CoAカルボキシラーゼ(ACC)、グルタミンシンテターゼ(GS)、p-ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ(HPPD)、ヒドロキシメチルジヒドロプテリンピロホスホキナーゼ(DHPS)、オーキシン/インドール-3-酢酸(AUX/IAA)、Waxy(Wx)、アセト乳酸シンターゼ(ALS)、OsERF922、OsSWEET13、OsSWEET14、TaMLO、GL2、ベタインアルデヒドデヒドロゲナーゼ(BADH2)、Matrilineal(MTL)、Frigida、Grain Weight 2(GW2)、Gn1a、DEP1、GS3、SlMLO1、SlJAZ2、CsLOB1、EDR1、Self-Pruning 5G(SP5G)、Slagamous-Like 6(SlAGL6)、温度感受性遺伝子雄性不稔5遺伝子(TMS5)、OsMATL、ARGOS8、真核生物の翻訳開始因子4E(eIF4E)、顆粒結合デンプンシンターゼ(GBSS)、または液胞インベルターゼ(VInv)をコードする核酸分子において、対立遺伝子多様性が増加する。いくつかの実施形態では、標的化DNA結合タンパク質は、リコンビナーゼ、ヘリカーゼ、ジンクフィンガータンパク質、転写活性化因子様エフェクター(TALE)、及びトポイソメラーゼの群より選択される。いくつかの実施形態では、標的化DNA結合タンパク質は、固有の核酸切断活性を有さない。
【0017】
一態様では、本開示は、原核生物のゲノム内の核酸分子の標的化領域において対立遺伝子多様性を増加させる方法を提供し、方法は、原核生物に、(a)標的化DNA結合タンパク質または標的化DNA結合タンパク質をコードする核酸を提供すること(標的化DNA結合タンパク質が核酸分子の標的化領域に結合する)、及び(b)少なくとも1つの変異原、を提供すること、を含み、核酸の標的化領域の対立遺伝子多様性が増加する。いくつかの実施形態では、変異原は、化学的変異原である。いくつかの実施形態では、化学的変異原は、エチルメタンスルホナート、メチルメタンスルホナート、ジエチルスルホナート、ジメチルスルファート、ジメチルスルホキシド、ジエチルニトロソアミン、N-ニトロソ-N-メチル尿素、N-メチル-N-ニトロソ尿素、N-ニトロソ-N-ジエチル尿素、ヒ素、コルヒチン、エチレンイミン、ニトロソメチル尿素、ニトロソグアニジン、亜硝酸、ヒドロキシルアミン、エチレンオキシド、ジエポキシブタン、アジ化ナトリウム、マレイン酸ヒドラジド、シクロホスファミド、ジアゾアセチルブタン、ダチュラ抽出物、ブロモデオキシウリジン、及び酸化ベリリウムからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、変異原は、物理的変異原である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、電離放射線である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、X線である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、可視光である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、熱である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、紫外光である。いくつかの実施形態では、原核生物は、Escherichia coli、Bacillus subtilis、Bacillus thuringiensis、Bacillus coagulans、Thermus aquaticus、及びPseudomonas chlororaphisから選択される。いくつかの実施形態では、対立遺伝子多様性は、殺虫性毒素をコードする核酸において増加する。いくつかの実施形態では、標的化DNA結合タンパク質は、リコンビナーゼ、ヘリカーゼ、ジンクフィンガータンパク質、転写活性化因子様エフェクター(TALE)、及びトポイソメラーゼの群より選択される。いくつかの実施形態では、標的化DNA結合タンパク質は、固有の核酸切断活性を有さない。
【0018】
一態様では、本開示は、植物に改善された作物栽培特性を提供する方法を提供し、方法は、(a)第1の植物に、(i)標的化DNA結合タンパク質または標的化DNA結合タンパク質をコードする核酸(標的化DNA結合タンパク質は、植物のゲノム中の核酸分子の標的化領域に結合する)、及び(ii)少なくとも1つの変異原(少なくとも1つの改変は、核酸分子の標的化領域に誘発される)、を提供すること、(b)第1の植物から少なくとも1つの子孫植物を生成すること、ならびに、(c)少なくとも1つの改変及び改善された作物栽培特性を含む少なくとも1つの子孫植物を選抜すること、を含む。いくつかの実施形態では、変異原は、化学的変異原である。いくつかの実施形態では、化学的変異原は、エチルメタンスルホナート、メチルメタンスルホナート、ジエチルスルホナート、ジメチルスルファート、ジメチルスルホキシド、ジエチルニトロソアミン、N-ニトロソ-N-メチル尿素、N-メチル-N-ニトロソ尿素、N-ニトロソ-N-ジエチル尿素、ヒ素、コルヒチン、エチレンイミン、ニトロソメチル尿素、ニトロソグアニジン、亜硝酸、ヒドロキシルアミン、エチレンオキシド、ジエポキシブタン、アジ化ナトリウム、マレイン酸ヒドラジド、シクロホスファミド、ジアゾアセチルブタン、ダチュラ抽出物、ブロモデオキシウリジン、及び酸化ベリリウムからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、変異原は、物理的変異原である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、電離放射線である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、X線である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、可視光である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、熱である。いくつかの実施形態では、物理的変異原は、紫外光である。いくつかの実施形態では、植物は、トウモロコシ、ワタ、ダイズ、キャノーラ、コムギ、オオムギ、イネ、トマト、タマネギ、コショウ、ブルーベリー、ラズベリー、ブラックベリー、イチゴ、スイカ、ウリ科植物、アブラナ、ホウレンソウ、ナス、ジャガイモ、サツマイモ、サトウキビ、オート麦、キビ、ライムギ、アマ、ムラサキウマゴヤシ、及びテンサイから選択される。いくつかの実施形態では、改善された作物栽培特性は、耐病性、非生物的ストレス耐性、耐虫性、油含有量、高さ、耐乾性、成熟度、耐倒伏性、粒重、及び収量からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、標的化DNA結合タンパク質は、リコンビナーゼ、ヘリカーゼ、ジンクフィンガータンパク質、転写活性化因子様エフェクター(TALE)、及びトポイソメラーゼの群より選択される。いくつかの実施形態では、標的化DNA結合タンパク質は、固有の核酸切断活性を有さない。
【0019】
一態様では、本開示は、標的核酸分子に標的化改変を誘発するためのキットを提供し、キットは、(a)標的化DNA結合タンパク質、または標的化DNA結合タンパク質をコードする核酸、及び(b)少なくとも1つの化学的変異原、を含む。いくつかの実施形態では、化学的変異原は、エチルメタンスルホナート、メチルメタンスルホナート、ジエチルスルホナート、ジメチルスルファート、ジメチルスルホキシド、ジエチルニトロソアミン、N-ニトロソ-N-メチル尿素、N-メチル-N-ニトロソ尿素、N-ニトロソ-N-ジエチル尿素、ヒ素、コルヒチン、エチレンイミン、ニトロソメチル尿素、ニトロソグアニジン、亜硝酸、ヒドロキシルアミン、エチレンオキシド、ジエポキシブタン、アジ化ナトリウム、マレイン酸ヒドラジド、シクロホスファミド、ジアゾアセチルブタン、ダチュラ抽出物、ブロモデオキシウリジン、及び酸化ベリリウムからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、キットは、さらに、DNA標的化核酸、再構成及び/または希釈のための試薬のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、キットは、さらに、標的化DNA結合タンパク質を細胞に導入するための緩衝液、洗浄緩衝液、対照試薬、対照発現ベクターまたはRNAポリヌクレオチド、DNAから標的化DNA結合タンパク質をin vitroで産生するための試薬、DNAから標的化DNA結合タンパク質をin vitroで産生するための試薬、アグロバクテリウム、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される試薬を含む。いくつかの実施形態では、標的化DNA結合タンパク質は、リコンビナーゼ、ヘリカーゼ、ジンクフィンガータンパク質、転写活性化因子様エフェクター(TALE)、及びトポイソメラーゼの群より選択される。いくつかの実施形態では、標的化DNA結合タンパク質は、固有の核酸切断活性を有さない。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示は、標的化配列内で変異を増加させるために変異原と組み合わせた、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼ(例えば、限定されないが、核酸配列を標的とするガイド核酸と対合した、不活性型Cas9または不活性型Cpf1などの触媒的に不活性なCRISPR関連タンパク質)を利用する組成物及び方法に関する。
【0021】
別途記載のない限り、使用される全ての専門及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者により一般に理解されるのと同じ意味を有する。用語が単数形で提供される場合、発明者らは、また、その用語の複数形により記載される開示の態様を企図する。参照により組み込まれる参考文献で使用される用語及び定義に矛盾がある場合、本出願で使用される用語は、本明細書で与えられる定義を有するものとする。使用される他の専門用語は、様々な技術分野固有の辞書、例えば、「The American Heritage(登録商標)Science Dictionary」(American Heritage Dictionariesの編集者、2011、Houghton Mifflin Harcourt、Boston及びNew York)、「McGraw-Hill Dictionary of Scientific and Technical Terms」(第6版、2002、McGraw-Hill、New York)、または「Oxford Dictionary of Biology」(第6版、2008、Oxford University Press、Oxford及びNew York)により例示されるように、それらが使用される技術分野における通常の意味を有する。本発明者らは、作用機序または作用様式に限定されることを意図しない。それへの参照は、例示のみを目的として提供される。
【0022】
本開示に記載の実施形態の実施は、別途指示のない限り、当該技術分野の技術の範囲内である、生化学、化学、分子生物学、微生物学、細胞生物学、植物生物学、ゲノミクス、バイオテクノロジー、及び遺伝学の従来の手法を利用することを含む。例えば、Green and Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,4th edition(2012);Current Protocols In Molecular Biology(F.M.Ausubel,et al.eds.,(1987));Plant Breeding Methodology(N.F.Jensen,Wiley-Interscience(1988));the series Methods In Enzymology(Academic Press,Inc.):PCR 2:A Practical Approach(M.J.MacPherson,B.D.Hames and G.R.Taylor eds.(1995));Harlow and Lane,eds.(1988)Antibodies,A Laboratory Manual;Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.(1987));Recombinant Protein Purification:Principles And Methods,18-1142-75,GE Healthcare Life Sciences;C.N.Stewart,A.Touraev,V.Citovsky,T.Tzfira eds.(2011)Plant Transformation Technologies(Wiley-Blackwell);及びR.H.Smith(2013)Plant Tissue Culture:Techniques and Experiments(Academic Press,Inc.)を参照のこと。
【0023】
例えば、全ての特許、公開された特許出願、及び非特許公開を含む、本明細書で引用された任意の参照は、全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0024】
代替物の群が提示される場合、代替物の群を構成するメンバーのありとあらゆる組み合わせが具体的に想定される。例えば、部材が、A、B、C、及びDからなる群より選択される場合、本発明者らは、各選択肢を個別に(例えば、Aのみ、Bのみなど)、ならびにA、B、及びD;A及びC;B及びCなどの組み合わせで具体的に想定する。
【0025】
本明細書で使用される場合、単数形及び単数形「a」、「an」、及び「the」の用語は、例えば、文脈に別途明示のない限り、複数の指示対象を含む。
【0026】
本明細書で提供される任意の組成物、核酸分子、ポリペプチド、細胞、植物などは、特に、本明細書で提供される任意の方法と共に使用するために想定される。
【0027】
一態様では、本開示は、標的核酸に標的化改変を誘発する方法を提供し、方法は、標的核酸を(a)触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼ、及び(b)少なくとも1つの変異原(少なくとも1つの改変が標的核酸に誘発される)、と接触させること、を含む。さらなる態様では、本明細書で提供される方法は、さらに、(c)少なくとも1つのガイド核酸を含み、少なくとも1つのガイド核酸は、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼと複合体を形成し、少なくとも1つのガイド核酸は、標的核酸分子とハイブリダイズする。
【0028】
一態様では、本開示は、標的核酸に標的化改変を誘発する方法を提供し、方法は、標的核酸を(a)標的化DNA結合タンパク質、及び(b)少なくとも1つの変異原(少なくとも1つの改変が標的核酸に誘発される)、と接触させること、を含む。さらなる態様では、本明細書で提供される方法は、さらに、(c)少なくとも1つのガイド核酸を含み、少なくとも1つのガイド核酸は、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼと複合体を形成し、少なくとも1つのガイド核酸は、標的核酸分子とハイブリダイズする。
【0029】
一態様では、本開示は、標的核酸に標的化改変を誘発する方法を提供し、方法は、標的核酸を(a)触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼ、(b)少なくとも1つのガイド核酸(少なくとも1つのガイド核酸が、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼと複合体を形成し、少なくとも1つのガイド核酸が、標的核酸とハイブリダイズする)、及び(c)少なくとも1つの変異原、と接触させること、を含み、標的核酸は、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)部位を含み、少なくとも1つの改変は、PAM部位から100ヌクレオチド内の標的核酸に誘発される。
【0030】
一態様では、本開示は、ゲノム中の標的化位置での変異原の活性を増加させる方法を提供し、方法は、ゲノムを、(a)触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼ、及び(b)少なくとも1つの変異原(変異率が、ゲノム中の非標的化位置と比較して、標的化位置で増加する)、と接触させること、を含む。さらなる態様では、本明細書で提供される方法は、さらに、(c)少なくとも1つのガイド核酸を含み、少なくとも1つのガイド核酸は、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼと複合体を形成し、少なくとも1つのガイド核酸は、標的化位置内またはそれと隣接してハイブリダイズする。
【0031】
一態様では、本開示は、ゲノム中の標的化位置での変異原の活性を増加させる方法を提供し、方法は、ゲノムを、(a)標的化DNA結合タンパク質(標的化DNA結合タンパク質が標的化位置内のまたはそれに隣接するDNAに結合する)、及び(b)少なくとも1つの変異原(変異率が、ゲノム中の非標的化位置と比較して、標的化位置で増加する)、と接触させること、を含む。
【0032】
一態様では、本開示は、標的核酸に標的化改変を誘発するためのキットを提供し、キットは、(a)触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼ、または触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸、及び、(b)少なくとも1つの化学的変異原、を含む。さらなる態様では、本明細書で提供されるキットは、さらに、(c)少なくとも1つのガイド核酸または少なくとも1つのガイド核酸をコードする核酸、を含み、少なくとも1つのガイド核酸は、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼと複合体を形成し、少なくとも1つのガイド核酸は、標的核酸分子とハイブリダイズする。
【0033】
一態様では、本開示は、標的核酸に標的化改変を誘発するためのキットを提供し、キットは、(a)標的化DNA結合タンパク質、または標的化DNA結合タンパク質をコードする核酸、及び(b)少なくとも1つの化学的変異原、を含む。
【0034】
一態様では、本開示は、植物のゲノムの標的領域において対立遺伝子多様性を増加させる方法を提供し、方法は、(a)触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼまたは触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸、(b)少なくとも1つのガイド核酸またはガイド核酸をコードする核酸(少なくとも1つのガイド核酸が、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼと複合体を形成し、少なくとも1つのガイド核酸が、標的核酸分子とハイブリダイズする)、及び(c)少なくとも1つの変異原、を植物に提供すること、を含み、標的領域は、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)部位に隣接し、植物ゲノムの標的領域の対立遺伝子多様性が増加する。いくつかの実施形態では、PAMは、核酸の標的化領域の3’側の、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、またはそれ以上のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、PAMは、核酸の標的化領域の5’側の、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、またはそれ以上のヌクレオチドである。
【0035】
本明細書で使用される場合、「ヌクレアーゼ」は、2つのヌクレオチド間の少なくとも1つのホスホジエステル結合を切断することが可能である酵素を指す。本明細書で使用される場合、「ヌクレアーゼ活性」は、核酸分子の切断を指す。ヌクレアーゼ活性の測定は、当該技術分野における任意の好適な方法標準を使用して達成することができる。一態様では、ヌクレアーゼは、エンドヌクレアーゼである。別の態様では、ヌクレアーゼは、エキソヌクレアーゼである。別の態様では、ヌクレアーゼは、デオキシリボヌクレアーゼである。別の態様では、ヌクレアーゼは、リボヌクレアーゼである。一態様では、ヌクレアーゼは、1本鎖デオキシリボ核酸(DNA)を切断する。別の態様では、ヌクレアーゼは、2本鎖DNAを切断する。一態様では、ヌクレアーゼは、1本鎖リボ核酸(RNA)を切断する。さらなる態様では、ヌクレアーゼは、2本鎖RNAを切断する。一態様では、ヌクレアーゼは、2本鎖DNAの1本鎖を切断する。一態様では、ヌクレアーゼは、2本鎖RNAの1本鎖を切断する。一態様では、ヌクレアーゼは、2本鎖DNAの両方の鎖を切断する。一態様では、ヌクレアーゼは、2本鎖RNAの両方の鎖を切断する。一態様では、ヌクレアーゼは、ガイド核酸と複合体を形成する。
【0036】
標的核酸配列に特異的に結合するか、または標的核酸配列に誘導することができる、当該技術分野で既知の任意のヌクレアーゼが具体的に想定される。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼの触媒活性は、低下または排除されてもよい。一態様では、ヌクレアーゼは、EC3.1及びそのサブグループに基づいて、Nomenclature Committee of the International Union of Biochemistry and Molecular Biologyにより列挙される(www.enzyme-database.orgの酵素データベース、及びMcDonald et al.,Nucleic Acids Res.,37:D593-D597(2009)を参照)。
【0037】
いずれの科学理論にも束縛されないが、2本鎖DNA(dsDNA)に直接または間接に結合するヌクレアーゼは、ヌクレアーゼ結合部位の付近にDNAのコンフォメーションを部分的に巻き戻すか、または広げる。ヌクレアーゼがdsDNAに結合され、dsDNAが部分的に巻き戻されている場合、dsDNAは、変異原がよりアクセス可能である。
【0038】
本明細書で使用される場合、「触媒的に不活性なヌクレアーゼ」は、標的核酸に結合する能力を保持するが、対照ヌクレアーゼと比較して、核酸分子を切断する能力の低下または排除があるドメインを含むヌクレアーゼを指す。一態様では、触媒的に不活性なヌクレアーゼは、「対照」または「野生型」ヌクレアーゼに由来する。本明細書で使用される場合、「対照」ヌクレアーゼは、触媒的に不活性なヌクレアーゼとの比較点として使用することができる天然に存在するヌクレアーゼを指す。いくつかの実施形態では、触媒的に不活性なヌクレアーゼは、触媒的に不活性なCas9である。いくつかの実施形態では、触媒的に不活性なCas9は、標的化鎖にニックを生成する。いくつかの実施形態では、触媒的に不活性なCas9は、RuvCドメイン(D10A)における重要な残基のアラニン置換を含む。いくつかの実施形態では、触媒的に不活性なCas9は、非標的化鎖にニックを生成する。いくつかの実施形態では、触媒的に不活性なCas9は、HNHドメインのH840A変異を含む。いくつかの実施形態では、不活性型Cas9(dCas9)として既知の触媒的に不活性なCas9は、全てのヌクレアーゼ活性を欠いている。いくつかの実施形態では、触媒的に不活性なCas9は、D10A/H840A変異の両方を含む。いくつかの実施形態では、触媒的に不活性なヌクレアーゼは、触媒的に不活性なCpf1(Cas12aとしても既知)である。いくつかの実施形態では、触媒的に不活性なCpf1は、標的化鎖にニックを生成する。いくつかの実施形態では、触媒的に不活性なCpf1は、非標的化鎖にニックを生成する。いくつかの実施形態では、不活性型Cpf1(dCpf1)として既知の触媒的に不活性なCpf1は、全てのDNase活性を欠いている。いくつかの実施形態では、触媒的に不活性なCpf1は、NucドメインにおけるR1226A変異を含む。いくつかの実施形態では、触媒的に不活性なCpf1は、RuvCドメインにおけるE993A変異を含み、標的DNAの両方の鎖に対するDNase活性が排除される。いくつかの実施形態では、触媒的に不活性なCpf1は、Acidaminococcus種BV3L6由来の不活性型Cpf1エンドヌクレアーゼである(dAsCpf1)。
【0039】
いくつかの実施形態では、触媒的に不活性なヌクレアーゼは、触媒的に不活性なCas1、触媒的に不活性なCas1B、触媒的に不活性なCas2、触媒的に不活性なCas3、触媒的に不活性なCas4、触媒的に不活性なCas5、触媒的に不活性なCas6、触媒的に不活性なCas7、触媒的に不活性なCas8、触媒的に不活性なCas10、触媒的に不活性なCsy1、触媒的に不活性なCsy2、触媒的に不活性なCsy3、触媒的に不活性なCse1、触媒的に不活性なCse2、触媒的に不活性なCsc1、触媒的に不活性なCsc2、触媒的に不活性なCsa5、触媒的に不活性なCsn2、触媒的に不活性なCsm1、触媒的に不活性なCsm2、触媒的に不活性なCsm3、触媒的に不活性なCsm4、触媒的に不活性なCsm5、触媒的に不活性なCsm6、触媒的に不活性なCmr1、触媒的に不活性なCmr3、触媒的に不活性なCmr4、触媒的に不活性なCmr5、触媒的に不活性なCmr6、触媒的に不活性なCsb1、触媒的に不活性なCsb2、触媒的に不活性なCsb3、触媒的に不活性なCsx17、触媒的に不活性なCsx14、触媒的に不活性なCsx10、触媒的に不活性なCsx16、触媒的に不活性なCsaX、触媒的に不活性なCsx3、触媒的に不活性なCsx1、触媒的に不活性なCsx15、触媒的に不活性なCsf1、触媒的に不活性なCsf2、触媒的に不活性なCsf3、または触媒的に不活性なCsf4である。
【0040】
ヌクレアーゼに加えて、DNAを巻き戻して露出させ且つDNA塩基が改変に利用可能になる「標的化DNA結合タンパク質」は、提供される方法及びキットで使用することができる。「標的化DNA結合タンパク質」の非限定例としては、リコンビナーゼ、ヘリカーゼ、ジンクフィンガー、転写活性化因子様エフェクター(TALE)、及びトポイソメラーゼが挙げられる。いくつかの実施形態では、標的化DNA結合タンパク質は、固有の核酸切断活性を有さないことがある。
【0041】
一態様では、「標的化DNA結合タンパク質」は、本明細書で提供される方法及びキットにおいて、「触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼ」の代わりに使用することができる。
【0042】
本明細書で使用される場合、核酸分子を切断する能力の「低下」は、対照ヌクレアーゼと比較して、少なくとも50%のヌクレアーゼ活性の低減を指す。本明細書で使用される場合、核酸分子を切断する能力の「排除」は、当該技術分野で方法標準を使用して、検出不可能なヌクレアーゼ活性を指す。
【0043】
一態様では、触媒的に不活性なヌクレアーゼは、対照ヌクレアーゼのヌクレアーゼ活性の50%未満を有する。別の態様では、触媒的に不活性なヌクレアーゼは、対照ヌクレアーゼのヌクレアーゼ活性の25%未満を有する。別の態様では、触媒的に不活性なヌクレアーゼは、対照ヌクレアーゼのヌクレアーゼ活性の20%未満を有する。別の態様では、触媒的に不活性なヌクレアーゼは、対照ヌクレアーゼのヌクレアーゼ活性の15%未満を有する。別の態様では、触媒的に不活性なヌクレアーゼは、対照ヌクレアーゼのヌクレアーゼ活性の10%未満を有する。別の態様では、触媒的に不活性なヌクレアーゼは、対照ヌクレアーゼのヌクレアーゼ活性の7.5%未満を有する。別の態様では、触媒的に不活性なヌクレアーゼは、対照ヌクレアーゼのヌクレアーゼ活性の5%未満を有する。別の態様では、触媒的に不活性なヌクレアーゼは、対照ヌクレアーゼのヌクレアーゼ活性の4%未満を有する。別の態様では、触媒的に不活性なヌクレアーゼは、対照ヌクレアーゼのヌクレアーゼ活性の3%未満を有する。別の態様では、触媒的に不活性なヌクレアーゼは、対照ヌクレアーゼのヌクレアーゼ活性の2%未満を有する。別の態様では、触媒的に不活性なヌクレアーゼは、対照ヌクレアーゼのヌクレアーゼ活性の1%未満を有する。別の態様では、触媒的に不活性なヌクレアーゼは、対照ヌクレアーゼのヌクレアーゼ活性の0.5%未満を有する。別の態様では、触媒的に不活性なヌクレアーゼは、対照ヌクレアーゼのヌクレアーゼ活性の0.1%未満を有する。別の態様では、触媒的に不活性なヌクレアーゼは、検出可能なヌクレアーゼ活性を有さない。
【0044】
非限定例として、不活性型Cpf1ヌクレアーゼは、対照Cpf1ヌクレアーゼと比較して、1つ以上のアミノ酸変異を含み得る。一態様では、本明細書で提供されるヌクレアーゼは、不活性型ヌクレアーゼである。
【0045】
一態様では、触媒的に不活性なヌクレアーゼは、対照ヌクレアーゼのアミノ酸配列と少なくとも99.9%同一または類似のアミノ酸配列を含む。一態様では、触媒的に不活性なヌクレアーゼは、対照ヌクレアーゼのアミノ酸配列と少なくとも99.5%同一または類似のアミノ酸配列を含む。一態様では、触媒的に不活性なヌクレアーゼは、対照ヌクレアーゼのアミノ酸配列と少なくとも99%同一または類似のアミノ酸配列を含む。一態様では、触媒的に不活性なヌクレアーゼは、対照ヌクレアーゼのアミノ酸配列と少なくとも98%同一または類似のアミノ酸配列を含む。一態様では、触媒的に不活性なヌクレアーゼは、対照ヌクレアーゼのアミノ酸配列と少なくとも97%同一または類似のアミノ酸配列を含む。一態様では、触媒的に不活性なヌクレアーゼは、対照ヌクレアーゼのアミノ酸配列と少なくとも96%同一または類似のアミノ酸配列を含む。一態様では、触媒的に不活性なヌクレアーゼは、対照ヌクレアーゼのアミノ酸配列と少なくとも95%同一または類似のアミノ酸配列を含む。一態様では、触媒的に不活性なヌクレアーゼは、対照ヌクレアーゼのアミノ酸配列と少なくとも94%同一または類似のアミノ酸配列を含む。一態様では、触媒的に不活性なヌクレアーゼは、対照ヌクレアーゼのアミノ酸配列と少なくとも93%同一または類似のアミノ酸配列を含む。一態様では、触媒的に不活性なヌクレアーゼは、対照ヌクレアーゼのアミノ酸配列と少なくとも92%同一または類似のアミノ酸配列を含む。一態様では、触媒的に不活性なヌクレアーゼは、対照ヌクレアーゼのアミノ酸配列と少なくとも91%同一または類似のアミノ酸配列を含む。一態様では、触媒的に不活性なヌクレアーゼは、対照ヌクレアーゼのアミノ酸配列と少なくとも90%同一または類似のアミノ酸配列を含む。
【0046】
一態様では、触媒的に不活性なヌクレアーゼのアミノ酸配列は、対照ヌクレアーゼのアミノ酸配列と比較して、少なくとも1つのアミノ酸変異を含む。一態様では、触媒的に不活性なヌクレアーゼのアミノ酸配列は、対照ヌクレアーゼのアミノ酸配列と比較して、少なくとも2つのアミノ酸変異を含む。一態様では、触媒的に不活性なヌクレアーゼのアミノ酸配列は、対照ヌクレアーゼのアミノ酸配列と比較して、少なくとも3つのアミノ酸変異を含む。一態様では、触媒的に不活性なヌクレアーゼのアミノ酸配列は、対照ヌクレアーゼのアミノ酸配列と比較して、少なくとも4つのアミノ酸変異を含む。一態様では、触媒的に不活性なヌクレアーゼのアミノ酸配列は、対照ヌクレアーゼのアミノ酸配列と比較して、少なくとも5つのアミノ酸変異を含む。
【0047】
一態様では、触媒的に不活性なヌクレアーゼは、1本鎖核酸または2本鎖核酸を切断することができない。別の態様では、触媒的に不活性なヌクレアーゼは、DNAを切断することができない。さらなる態様では、触媒的に不活性なヌクレアーゼは、RNAを切断することができない。一態様では、触媒的に不活性なヌクレアーゼは、DNAと相互作用する。一態様では、触媒的に不活性なヌクレアーゼは、RNAと相互作用する。一態様では、触媒的に不活性なヌクレアーゼは、DNAと結合またはハイブリダイズする。別の態様では、触媒的に不活性なヌクレアーゼは、RNAと結合またはハイブリダイズする。一態様では、触媒的に不活性なヌクレアーゼは、標的核酸分子に結合する。一態様では、触媒的に不活性なヌクレアーゼは、RNAに結合する。一態様では、触媒的に不活性なヌクレアーゼは、DNAに結合する。一態様では、触媒的に不活性なヌクレアーゼは、ガイド核酸と複合体を形成する。一態様では、触媒的に不活性なヌクレアーゼは、ガイドRNAと複合体を形成する。触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼに関する詳細については、以下の実施例2を参照のこと。
【0048】
本明細書で使用される場合、「誘導型ヌクレアーゼ」は、触媒ドメインが結合及び切断のために特定の標的核酸配列に誘導されるヌクレアーゼを指す。一態様では、本明細書で使用される誘導型ヌクレアーゼは、依然として標的核酸に結合し得るが、標的核酸分子を切断する活性を低下または排除している、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼである。一態様では、本明細書で使用される誘導型ヌクレアーゼは、依然として標的核酸に結合し得るが、2本鎖DNA分子の1本鎖のみを切断する、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼである。一態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼは、1本鎖核酸に結合する。別の態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼは、2本鎖核酸に結合する。さらなる態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼは、RNA分子に結合する。別の態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼは、DNA分子に結合する。一態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼは、1本鎖RNA分子に結合する。一態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼは、1本鎖DNA分子に結合する。一態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼは、2本鎖RNA分子に結合する。一態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼは、2本鎖DNA分子に結合する。
【0049】
一態様では、誘導型ヌクレアーゼは、さらに、標的核酸配列を特異的に認識して結合する核酸結合ドメインを含む。一態様では、核酸結合ドメインは、DNA結合ドメインである。別の態様では、核酸結合ドメインは、RNA結合ドメインである。
【0050】
一態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼは、さらに、DNA結合ドメインを含む。別の態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼは、さらに、RNA結合ドメインを含む。さらなる態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼは、ガイド核酸と複合体を形成する。別の態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼは、ガイドDNAと複合体を形成する。一態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼは、ガイドRNAと複合体を形成する。
【0051】
一態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼは、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼと標的核酸分子の間の直接的な相互作用を介して標的核酸分子に誘導される。触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼと標的核酸分子の間の直接的な相互作用は、標的核酸分子と、共有または非共有的な相互作用を形成する触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼのアミノ酸を指す。いかなる理論にも束縛されることなく、このタイプの直接的な相互作用では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼのDNA結合ドメインまたはモチーフが、標的核酸分子内の特定の核酸配列を認識して結合、ハイブリダイズ、または相互作用し得る。
【0052】
別の態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼは、ガイド核酸を介して標的核酸分子の特定の配列に誘導される。いかなる理論にも束縛されることなく、このタイプの直接的な相互作用では、ガイド核酸は、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼと複合体を形成し得、ガイド核酸は、配列固有の手段で、標的核酸分子に結合、ハイブリダイズ、または相互作用し得る。
【0053】
一態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼは、触媒的に不活性なCRISPR(クラスター化され、規則的に間隔があいた短い回文構造の繰り返し)関連タンパク質である。本明細書で使用される場合、「CRISPR関連タンパク質(CRISPR-Cas)」は、細菌及び古細菌種に見られるヌクレアーゼのCRISPRファミリーに由来する任意のヌクレアーゼを指す。いくつかの実施形態では、CRISPR-Casは、クラス1のCRISPR-Casである。いくつかの実施形態では、CRISPR-Casは、I型、IA型、IB型、IC型、ID型、IE型、IF型、IU型、III型、IIIA型、IIIB型、IIIC型、IIID型、IV型、IVA型、IVB型からなる群より選択されるクラス1のCRISPR-Casである。いくつかの実施形態では、CRISPR-Casは、クラス2のCRISPR-Casである。いくつかの実施形態では、CRISPR-Casは、II型、IIA型、IIB型、IIC型、V型、VI型からなる群より選択されるクラス2のCRISPR-Casである。一態様では、触媒的に不活性なCRISPR関連タンパク質は、触媒的に不活性なCas9、触媒的に不活性なCpf1(Cas12aとしても既知)、触媒的に不活性なCasX、触媒的に不活性なCasY、触媒的に不活性なC2c2からなる群より選択される。一態様では、触媒的に不活性なCRISPR関連タンパク質は、触媒的に不活性なCas9である。一態様では、触媒的に不活性なCRISPR関連タンパク質は、不活性型Cpf1である。一態様では、触媒的に不活性なCRISPR関連タンパク質は、触媒的に不活性なCasXである。一態様では、触媒的に不活性なCRISPR関連タンパク質は、触媒的に不活性なCasYである。一態様では、触媒的に不活性なCRISPR関連タンパク質は、触媒的に不活性なC2c2である。一態様では、触媒的に不活性なCRISPR関連タンパク質は、触媒的に不活性なStreptococcus pyogenes Cas9(SpCas9)である。別の態様では、触媒的に不活性なCRISPR関連タンパク質は、触媒的に不活性なLachnospiraceae bacterium Cpf1(LbCpf1)である。別の態様では、触媒的に不活性なCRISPR関連タンパク質は、配列番号22のアミノ酸配列であるdSpCas9 PTNを含む。別の態様では、触媒的に不活性なCRISPR関連タンパク質は、配列番号24のアミノ酸配列であるdLbCpf1 PTNを含む。
【0054】
一態様では、触媒的に不活性なCRISPR関連タンパク質は、触媒的に不活性なCas1、触媒的に不活性なCas1B、触媒的に不活性なCas2、触媒的に不活性なCas3、触媒的に不活性なCas4、触媒的に不活性なCas5、触媒的に不活性なCas6、触媒的に不活性なCas7、触媒的に不活性なCas8、触媒的に不活性なCas10、触媒的に不活性なCsy1、触媒的に不活性なCsy2、触媒的に不活性なCsy3、触媒的に不活性なCse1、触媒的に不活性なCse2、触媒的に不活性なCsc1、触媒的に不活性なCsc2、触媒的に不活性なCsa5、触媒的に不活性なCsn2、触媒的に不活性なCsm1、触媒的に不活性なCsm2、触媒的に不活性なCsm3、触媒的に不活性なCsm4、触媒的に不活性なCsm5、触媒的に不活性なCsm6、触媒的に不活性なCmr1、触媒的に不活性なCmr3、触媒的に不活性なCmr4、触媒的に不活性なCmr5、触媒的に不活性なCmr6、触媒的に不活性なCsb1、触媒的に不活性なCsb2、触媒的に不活性なCsb3、触媒的に不活性なCsx17、触媒的に不活性なCsx14、触媒的に不活性なCsx10、触媒的に不活性なCsx16、触媒的に不活性なCsaX、触媒的に不活性なCsx3、触媒的に不活性なCsx1、触媒的に不活性なCsx15、触媒的に不活性なCsf1、触媒的に不活性なCsf2、触媒的に不活性なCsf3、及び触媒的に不活性なCsf4からなる群より選択される。
【0055】
一態様では、触媒的に不活性なCRISPR関連タンパク質は、ガイド核酸に結合する。別の態様では、触媒的に不活性なCRISPR関連タンパク質は、ガイドRNAに結合する。一態様では、触媒的に不活性なCRISPR関連タンパク質は、ガイド核酸と複合体を形成する。別の態様では、触媒的に不活性なCRISPR関連タンパク質は、ガイドRNAと複合体を形成する。いくつかの実施形態では、ガイド核酸は、触媒的に不活性なCRISPR関連タンパク質と一緒に、核酸配列の配列特異的な標的化を提供する標的化配列を含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、ガイド核酸は、標的核酸の配列に相補的であるヌクレオチド配列を含む第1のセグメント、及び触媒的に不活性なCRISPR関連タンパク質と相互作用する第2のセグメントを含む。いくつかの実施形態では、標的核酸中の配列に相補的であるヌクレオチド配列を含むガイドの第1のセグメントは、CRISPR RNA(crRNAまたはcrRNA反復)に対応する。いくつかの実施形態では、触媒的に不活性なCRISPR関連タンパク質と相互作用する核酸配列を含むガイドの第2のセグメントは、トランス作用型CRISPR RNA(tracrRNA)に対応する。いくつかの実施形態では、ガイド核酸は、互いにハイブリダイズする2つの別々の核酸分子(標的核酸中の配列に相補的であるポリヌクレオチド及び触媒的に不活性なCRISPR関連タンパク質と相互作用するポリヌクレオチド)を含み、本明細書では、「二重ガイド」または「2分子ガイド」と呼ばれる。いくつかの実施形態では、二重ガイドは、DNA、RNA、またはDNA及びRNAの組み合わせを含んでもよい。他の実施形態では、ガイド核酸は、単一ポリヌクレオチドであり、本明細書では「1分子ガイド」または「単一ガイド」と呼ばれる。いくつかの実施形態では、単一ガイドは、DNA、RNA、またはDNA及びRNAの組み合わせを含んでもよい。「ガイド核酸」という用語は、包括的であり、2分子ガイド及び1分子ガイドの両方を指す。
【0057】
一態様では、本明細書で提供されるガイド核酸は、in vivoで組み換えベクターから発現させることができる。一態様では、本明細書で提供されるガイド核酸は、in vitroで組み換えベクターから発現させることができる。一態様では、本明細書で提供されるガイド核酸は、ex vivoで組み換えベクターから発現させることができる。一態様では、本明細書で提供されるガイド核酸は、in vivoで核酸分子から発現させることができる。一態様では、本明細書で提供されるガイド核酸は、in vitroで核酸分子から発現させることができる。一態様では、本明細書で提供されるガイド核酸は、ex vivoで核酸分子から発現させることができる。別の態様では、本明細書で提供されるガイド核酸は、合成的に合成することができる。
【0058】
一態様では、触媒的に不活性なCRISPR関連タンパク質は、Streptococcus、Haloferax、Anabaena、Mycobacterium、Aeropyvrum、Pyrobaculum、Sulfolobus、Archaeoglobus、Halocarcula、Methanobacterium、Methanococcus、Methanosarcina、Methanopyrus、Pyrococcus、Picrophilus、Thermoplasma、Corynebacteriunm、Streptomyces、Aquifex、Porphvromonas、Chlorobium、Thermus、Bacillus、Listeria、Staphylococcus、Clostridium、Thermoanaerobacter、Mycoplasma、Fusobacterium、Azarcus、Chromobacterium、Neisseria、Nitrosomonas、Desulfovibrio、Geobacter、Myxococcus、Campylobacter、Wolinella、Acinetobacter、Erwinia、Escherichia、Legionella、Methylococcus、Pasteurella、Photobacterium、Salmonella、Xanthomonas、Yersinia、Treponema、及びThermotogaからなる群より選択される細菌属に由来する触媒的に不活性なCas9を含む。
【0059】
別の態様では、触媒的に不活性なCRISPR関連タンパク質は、Streptococcus、Campylobacter、Nitratifractor、Staphylococcus、Parvibaculum、Roseburia、Neisseria、Gluconacetobacter、Azospirillum、Sphaerochaeta、Lactobacillus、Eubacterium、Corynebacter、Carnobacterium、Rhodobacter、Listeria、Paludibacter、Clostridium、Lachnospiraceae、Clostridiaridium、Leptotrichia、Francisella、Legionella、Alicyclobacillus、Methanomethyophilus、Porphyromonas、Prevotella、Bacteroidetes、Helcococcus、Letospira、Desulfovibrio、Desulfonatronum、Opitutaceae、Tuberibacillus、Bacillus、Brevibacilus、Methylobacterium、Acidaminococcus、Peregrinibacteria、Butyrivibrio、Parcubacteria、Smithella、Candidatus、Moraxella、及びLeptospiraからなる群より選択される細菌属に由来する触媒的に不活性なCpf1を含む。
【0060】
別の態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼは、触媒的に不活性なメガヌクレアーゼ、触媒的に不活性なジンクフィンガーヌクレアーゼ、及び触媒的に不活性な転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)からなる群より選択される。一態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼは、触媒的に不活性なメガヌクレアーゼである。一態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼは、触媒的に不活性なジンクフィンガーヌクレアーゼである。別の態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼは、触媒的に不活性なTALENである。
【0061】
一態様では、触媒的に不活性なメガヌクレアーゼは、標的核酸分子に結合する。一態様では、触媒的に不活性なジンクフィンガーヌクレアーゼは、標的核酸分子に結合する。一態様では、触媒的に不活性なTALENは、標的核酸分子に結合する。一態様では、ジンクフィンガータンパク質は、標的核酸分子に結合する。一態様では、TALEタンパク質は、標的核酸分子に結合する。
【0062】
一態様では、本明細書で提供される触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼは、in vivoで組み換えベクターから発現させることができる。一態様では、本明細書で提供される触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼは、in vitroで組み換えベクターから発現させることができる。一態様では、本明細書で提供される触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼは、ex vivoで組み換えベクターから発現させることができる。一態様では、本明細書で提供される触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼは、in vivoで核酸分子から発現させることができる。一態様では、本明細書で提供される触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼは、in vitroで核酸分子から発現させることができる。一態様では、本明細書で提供される触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼは、ex vivoで核酸分子から発現させることができる。別の態様では、本明細書で提供される触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼは、合成的に合成することができる。
【0063】
本明細書で使用される場合、「コドン最適化」は、元のアミノ酸配列を維持しながら(例えば、サイレント変異を導入しながら)、配列の少なくとも1つのコドン(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、10、15、20、25、50、またはそれ以上のコドン)を、宿主細胞の遺伝子で、より頻繁にまたは最も頻繁に使用されるコドンで置き換えることにより、目的の宿主細胞における発現を強化するために核酸配列を改変するプロセスを指す。様々な種が、特定のアミノ酸の特定のコドンに対して特定のバイアスを示す。コドンバイアス(生物間のコドン使用頻度の差)は、多くの場合、メッセンジャーRNA(mRNA)の翻訳の効率と相関し、これは、同様に、とりわけ、翻訳されるコドンの特性及び特定の転写RNA(tRNA)分子の入手可能性に依存すると考えられる。細胞内で選択されたtRNAが優勢であることは、一般に、ペプチド合成で最も頻繁に使用されるコドンを反映している。したがって、遺伝子は、コドン最適化に基づいて、所与の生物における最適な遺伝子発現のために調整することができる。コドン使用頻度の表は、例えば、www.kazusa.or.jp/codonで入手可能な「Codon Usage Database」で容易に入手可能であり、これらの表は、多数の手段で適合させることができる。Nakamura et al.,2000,Nucl.Acids Res.28:292を参照のこと。特定の宿主細胞における発現のための特定の配列を最適化するコドンためのコンピュータアルゴリズムもまた利用可能であり、例えば、Gene Forge(Aptagen;Jacobus,PA)もまた利用可能である。藻類を含む植物におけるコドン使用頻度に関して、Campbell and Gowri,1990,Plant Physiol.,92:1-11;及びMurray et al.,1989,Nucleic Acids Res.,17:477-98について言及される。
【0064】
一態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸は、原核細胞に対してコドン最適化される。別の態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸は、Escherichia coli細胞に対してコドン最適化される。別の態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸は、真核細胞に対してコドン最適化される。別の態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸は、動物細胞に対してコドン最適化される。別の態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸は、ヒト細胞に対してコドン最適化される。別の態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸は、マウス細胞に対してコドン最適化される。別の態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸は、Caenorhabditis elegans細胞に対してコドン最適化される。別の態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸は、Drosophila melanogaster細胞に対してコドン最適化される。別の態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸は、ブタ細胞に対してコドン最適化される。別の態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸は、哺乳動物細胞に対してコドン最適化される。別の態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸は、昆虫細胞に対してコドン最適化される。別の態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸は、頭足類細胞に対してコドン最適化される。別の態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸は、節足動物細胞に対してコドン最適化される。別の態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸は、植物細胞に対してコドン最適化される。別の態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸は、トウモロコシ細胞に対してコドン最適化される。別の態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸は、イネ細胞に対してコドン最適化される。別の態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸は、コムギ細胞に対してコドン最適化される。別の態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸は、ダイズ細胞に対してコドン最適化される。別の態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸は、ワタ細胞に対してコドン最適化される。別の態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸は、ムラサキウマゴヤシ細胞に対してコドン最適化される。別の態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸は、オオムギ細胞に対してコドン最適化される。別の態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸は、モロコシ細胞に対してコドン最適化される。別の態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸は、サトウキビ細胞に対してコドン最適化される。別の態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸は、キャノーラ細胞に対してコドン最適化される。別の態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸は、トマト細胞に対してコドン最適化される。別の態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸は、Arabidopsis細胞に対してコドン最適化される。別の態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸は、キュウリ細胞に対してコドン最適化される。別の態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸は、ジャガイモ細胞に対してコドン最適化される。別の態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸は、藻類細胞に対してコドン最適化される。別の態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸は、シバ細胞に対してコドン最適化される。別の態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸は、単子葉植物細胞に対してコドン最適化される。別の態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸は、双子葉植物細胞に対してコドン最適化される。別の態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸は、裸子植物細胞に対してコドン最適化される。
【0065】
いくつかの実施形態では、触媒的に不活性な不活性型誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸は、バイオリスティック法による送達のために最適化され得る。本明細書で使用される場合、「cysフリーLbCpf1」は、天然のLbCpf1配列(WO2016205711-1150)に存在する9つのシステインが全て変異するLbCpf1タンパク質多様体を指す。一態様では、cysフリーLbCpf1は、wt LbCpf1タンパク質配列と比較した場合、以下の9つのアミノ酸置換を含む:C10L、C175L、C565S、C632L、C805A、C912V、C965S、C1090P、C1116L。タンパク質のシステイン残基は、システイン間に強力な可逆的結合を提供するジスルフィド架橋を形成することが可能である。標的法でCpf1の結合を制御及び指示するには、天然システインは、これらのブリッジの形成を制御するために、除去しなければならない。タンパク質骨格からのシステインの除去により、ジスルフィド結合による、これらの可逆的結合の配置を制御する新しいシステイン残基の挿入の標的化が可能になるであろう。これは、タンパク質ドメイン間のものであるか、またはバイオリスティック送達のための金粒子などの粒子に対するものであり得る。システインのいくつかの残基を含むタグが、均一な手段で、金属ビーズ(特に、金)に特異的に結合することが可能になるcysフリーLbCpf1に、添加され得る。
【0066】
触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼを細胞の核に導くことが望ましい可能性がある。そのような場合、1つ以上の核局在化シグナルは、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼの局在化を導くために使用することができる。本明細書で使用される場合、「核局在化シグナル」は、細胞の核に移入するために、タンパク質(例えば、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼ)を「タグ付け」するアミノ酸配列を指す。一態様では、本明細書で提供される核酸分子は、核局在化シグナルをコードする。別の態様では、本明細書で提供される核酸分子は、2つ以上の核局在化シグナルをコードする。一態様では、本明細書で提供される触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼは、核局在化シグナルを含む。一態様では、核局在化シグナルは、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼのN末端に位置する。さらなる態様では、核局在化シグナルは、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼのC末端に位置する。さらに別の態様では、核局在化シグナルは、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼのN末端及びC末端の両方に位置する。
【0067】
特定の科学理論に束縛されるものではないが、CRISPR関連タンパク質は、ガイド核酸と複合体を形成し、これは、標的核酸分子における相補的な配列とハイブリダイズし、それにより、CRISPR関連タンパク質を標的核酸分子に誘導する。クラス2のCRISPR-Casシステムでは、スペーサーを含むCRISPRアレイは、認識された侵襲性DNAとの遭遇時に転写され、低分子干渉CRISPR RNA(crRNA)にプロセシングされる。crRNAは、侵入する病原体の特定のプロトスペーサー配列に相補的な反復配列及びスペーサー配列を含む。スペーサー配列は、真核生物ゲノムの標的配列に相補的であるように設計することができる。CRISPR関連タンパク質は、それぞれのcrRNAと活性形態で結合する。
【0068】
CRISPR関連タンパク質及びガイドRNAが複合体を形成する場合、システム全体が「リボヌクレオタンパク質」と呼ばれる。ガイドRNAは、リボヌクレオタンパク質を相補的な標的配列に誘導し、CRISPR関連タンパク質は、1本鎖または2本鎖のいずれかのDNAを切断する。タンパク質に応じて、切断は、PAM部位から特定数のヌクレオチド(例えば、Cpf1の場合は、18~23ヌクレオチド)内で生じ得る。PAM部位は、I型及びII型CRISPR関連タンパク質にのみ必要とされ;III型CRISPR関連タンパク質は、適切な標的化または切断のためにPAM部位を必要としない。
【0069】
一態様では、(a)触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼ、及び(b)ガイド核酸、を必要とする、本明細書で提供される任意の方法またはキットは、リボヌクレオタンパク質として、具体的には、(a)及び(b)を提供することが想定される。
【0070】
一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、リボヌクレオタンパク質を含む。一態様では、リボヌクレオタンパク質は、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼ及びガイド核酸を含む。別の態様では、リボヌクレオタンパク質は、触媒的に不活性なCRISPR関連タンパク質及びガイド核酸を含む。別の態様では、リボヌクレオタンパク質は、触媒的に不活性なCas9タンパク質及びガイド核酸を含む。別の態様では、リボヌクレオタンパク質は、触媒的に不活性なCpf1タンパク質及びガイド核酸を含む。別の態様では、リボヌクレオタンパク質は、触媒的に不活性なCasXタンパク質及びガイド核酸を含む。
【0071】
一態様では、リボヌクレオタンパク質は、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼ及びガイドRNAを含む。別の態様では、リボヌクレオタンパク質は、触媒的に不活性なCRISPR関連タンパク質及びガイドRNAを含む。別の態様では、リボヌクレオタンパク質は、触媒的に不活性なCas9タンパク質及びガイドRNAを含む。別の態様では、リボヌクレオタンパク質は、触媒的に不活性なCpf1タンパク質及びガイドRNAを含む。別の態様では、リボヌクレオタンパク質は、触媒的に不活性なCasXタンパク質及びガイドRNAを含む。
【0072】
一態様では、リボヌクレオタンパク質は、in vivoで生成される。別の態様では、リボヌクレオタンパク質は、in vitroで生成される。さらなる態様では、リボヌクレオタンパク質は、ex vivoで生成される。
【0073】
一態様では、リボヌクレオタンパク質は、細胞に送達される。別の態様では、リボヌクレオタンパク質は、細胞に導入される。別の態様では、リボヌクレオタンパク質は、衝撃により植物細胞に導入される。
【0074】
改変
本明細書で使用される場合、「改変」は、参照アミノ酸配列または参照ヌクレオチド配列と比較した、1つ以上のアミノ酸またはヌクレオチドの挿入、欠失、置換、複製、または反転を指す。「標的化改変」は、核酸分子の標的化領域内で生じる改変を指す。
【0075】
一態様では、改変は、置換を含む。別の態様では、改変は、挿入を含む。別の態様では、改変は、欠失を含む。別の態様では、改変は、置換、挿入、及び欠失からなる群より選択される。一態様では、改変は、in vivoで生じる。別の態様では、改変は、in vitroで生じる。さらなる態様では、改変は、ex vivoで生じる。一態様では、改変は、ゲノムDNAにおいて生じる。一態様では、改変は、染色体DNAにおいて生じる。
【0076】
本明細書で使用される場合、「INDEL」という用語は、ゲノムDNAにおける1つ以上のヌクレオチドの挿入及び/または欠失を指す。INDELは、単一ヌクレオチドの挿入及び/または欠失、多くとも、長さ1kb未満の挿入及び/または欠失を含む。INDELが、3で割り切れない場合、INDELは、リーディングフレームを変更し得、コドンによる遺伝子発現のトリプレットの性質により、元の配列とは完全に異なる翻訳がもたらされる。
【0077】
一態様では、改変は、少なくとも1つのヌクレオチドの挿入を含む。別の態様では、改変は、少なくとも2つのヌクレオチドの挿入を含む。別の態様では、改変は、少なくとも5つのヌクレオチドの挿入を含む。別の態様では、改変は、少なくとも10のヌクレオチドの挿入を含む。別の態様では、改変は、少なくとも25のヌクレオチドの挿入を含む。別の態様では、改変は、少なくとも50のヌクレオチドの挿入を含む。別の態様では、改変は、少なくとも75のヌクレオチドの挿入を含む。別の態様では、改変は、少なくとも100のヌクレオチドの挿入を含む。別の態様では、改変は、少なくとも250のヌクレオチドの挿入を含む。別の態様では、改変は、少なくとも500のヌクレオチドの挿入を含む。別の態様では、改変は、少なくとも1000のヌクレオチドの挿入を含む。
【0078】
一態様では、改変は、少なくとも1つのヌクレオチドの欠失を含む。別の態様では、改変は、少なくとも2つのヌクレオチドの欠失を含む。別の態様では、改変は、少なくとも5つのヌクレオチドの欠失を含む。別の態様では、改変は、少なくとも10のヌクレオチドの欠失を含む。別の態様では、改変は、少なくとも25のヌクレオチドの欠失を含む。別の態様では、改変は、少なくとも50のヌクレオチドの欠失を含む。別の態様では、改変は、少なくとも75のヌクレオチドの欠失を含む。別の態様では、改変は、少なくとも100のヌクレオチドの欠失を含む。別の態様では、改変は、少なくとも250のヌクレオチドの欠失を含む。別の態様では、改変は、少なくとも500のヌクレオチドの欠失を含む。別の態様では、改変は、少なくとも1000のヌクレオチドの欠失を含む。
【0079】
一態様では、改変は、少なくとも1つのヌクレオチドの置換を含む。別の態様では、改変は、少なくとも2つのヌクレオチドの置換を含む。別の態様では、改変は、少なくとも5つのヌクレオチドの置換を含む。別の態様では、改変は、少なくとも10のヌクレオチドの置換を含む。別の態様では、改変は、少なくとも25のヌクレオチドの置換を含む。別の態様では、改変は、少なくとも50のヌクレオチドの置換を含む。別の態様では、改変は、少なくとも75のヌクレオチドの置換を含む。別の態様では、改変は、少なくとも100のヌクレオチドの置換を含む。別の態様では、改変は、少なくとも250のヌクレオチドの置換を含む。別の態様では、改変は、少なくとも500のヌクレオチドの置換を含む。別の態様では、改変は、少なくとも1000のヌクレオチドの置換を含む。
【0080】
一態様では、改変は、少なくとも2つのヌクレオチドの反転を含む。別の態様では、改変は、少なくとも5つのヌクレオチドの反転を含む。別の態様では、改変は、少なくとも10のヌクレオチドの反転を含む。別の態様では、改変は、少なくとも25のヌクレオチドの反転を含む。別の態様では、改変は、少なくとも50のヌクレオチドの反転を含む。別の態様では、改変は、少なくとも75のヌクレオチドの反転を含む。別の態様では、改変は、少なくとも100のヌクレオチドの反転を含む。別の態様では、改変は、少なくとも250のヌクレオチドの反転を含む。別の態様では、改変は、少なくとも500のヌクレオチドの反転を含む。別の態様では、改変は、少なくとも1000のヌクレオチドの反転を含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、標的核酸は、PAM配列を含む。本明細書で使用される場合、「PAM部位」または「PAM配列」は、CRISPR関連タンパク質/ガイド核酸システム、例えば、CRISPR-Cas9またはCRISPR-Cpf1、による切断の標的となるDNA領域に隣接する短いDNA配列(通常は、2~6塩基対長)を指す。いくつかのCRISPR関連タンパク質(例えば、I型及びII型)は、標的核酸と結合するためのPAM部位が必要である。
【0082】
一態様では、核酸分子の標的化領域における改変は、PAMから1000ヌクレオチド内に誘発される。別の態様では、核酸分子の標的化領域における改変は、PAMから750ヌクレオチド内に誘発される。別の態様では、核酸分子の標的化領域における改変は、PAMから500ヌクレオチド内に誘発される。別の態様では、核酸分子の標的化領域における改変は、PAMから250ヌクレオチド内に誘発される。別の態様では、核酸分子の標的化領域における改変は、PAMから200ヌクレオチド内に誘発される。別の態様では、核酸分子の標的化領域における改変は、PAMから100ヌクレオチド内に誘発される。別の態様では、核酸分子の標的化領域における改変は、PAMから75ヌクレオチド内に誘発される。別の態様では、核酸分子の標的化領域における改変は、PAMから50ヌクレオチド内に誘発される。別の態様では、核酸分子の標的化領域における改変は、PAMから40ヌクレオチド内に誘発される。別の態様では、核酸分子の標的化領域における改変は、PAMから35ヌクレオチド内に誘発される。別の態様では、核酸分子の標的化領域における改変は、PAMから30ヌクレオチド内に誘発される。別の態様では、核酸分子の標的化領域における改変は、PAMから25ヌクレオチド内に誘発される。別の態様では、核酸分子の標的化領域における改変は、PAMから20ヌクレオチド内に誘発される。別の態様では、核酸分子の標的化領域における改変は、PAMから19ヌクレオチド内に誘発される。別の態様では、核酸分子の標的化領域における改変は、PAMから18ヌクレオチド内に誘発される。別の態様では、核酸分子の標的化領域における改変は、PAMから17ヌクレオチド内に誘発される。別の態様では、核酸分子の標的化領域における改変は、PAMから16ヌクレオチド内に誘発される。別の態様では、核酸分子の標的化領域における改変は、PAMから15ヌクレオチド内に誘発される。別の態様では、核酸分子の標的化領域における改変は、PAMから14ヌクレオチド内に誘発される。別の態様では、核酸分子の標的化領域における改変は、PAMから13ヌクレオチド内に誘発される。別の態様では、核酸分子の標的化領域における改変は、PAMから12ヌクレオチド内に誘発される。別の態様では、核酸分子の標的化領域における改変は、PAMから11ヌクレオチド内に誘発される。別の態様では、核酸分子の標的化領域における改変は、PAMから10ヌクレオチド内に誘発される。別の態様では、核酸分子の標的化領域における改変は、PAMから9ヌクレオチド内に誘発される。別の態様では、核酸分子の標的化領域における改変は、PAMから8ヌクレオチド内に誘発される。別の態様では、核酸分子の標的化領域における改変は、PAMから7ヌクレオチド内に誘発される。別の態様では、核酸分子の標的化領域における改変は、PAMから6ヌクレオチド内に誘発される。別の態様では、核酸分子の標的化領域における改変は、PAMから5ヌクレオチド内に誘発される。別の態様では、核酸分子の標的化領域における改変は、PAMから4ヌクレオチド内に誘発される。別の態様では、核酸分子の標的化領域における改変は、PAMから3ヌクレオチド内に誘発される。別の態様では、核酸分子の標的化領域における改変は、PAMから2ヌクレオチド内に誘発される。別の態様では、核酸分子の標的化領域における改変は、PAMから1ヌクレオチド内に誘発される。別の態様では、核酸分子の標的化領域における改変は、PAMから1ヌクレオチド~750ヌクレオチドに誘発される。別の態様では、核酸分子の標的化領域における改変は、PAMから1ヌクレオチド~250ヌクレオチドに誘発される。別の態様では、核酸分子の標的化領域における改変は、PAMから1ヌクレオチド~100ヌクレオチドに誘発される。別の態様では、核酸分子の標的化領域における改変は、PAMから1ヌクレオチド~50ヌクレオチドに誘発される。別の態様では、核酸分子の標的化領域における改変は、PAMから1ヌクレオチド~25ヌクレオチドに誘発される。別の態様では、核酸分子の標的化領域における改変は、PAMから10ヌクレオチド~50ヌクレオチドに誘発される。
【0083】
一態様では、標的核酸分子は、少なくとも1つのPAMを含む。別の態様では、標的核酸分子は、少なくとも2つのPAMを含む。別の態様では、標的核酸分子は、少なくとも5つのPAMを含む。さらなる態様では、標的核酸分子は、1つのPAM~50のPAMを含む。理論に束縛されることなく、CRISPR関連タンパク質などのいくつかの誘導型ヌクレアーゼは、ガイド核酸及びCRISPR関連タンパク質を含む複合体が核酸分子の標的化領域に結合するために、標的核酸分子中に特定のPAMが存在することを必要とする。一態様では、PAMは、5’-NGG-3’のヌクレオチド配列を含む。別の態様では、PAMは、5’-NGA-3’のヌクレオチド配列を含む。別の態様では、PAMは、5’-TTTN-3’のヌクレオチド配列を含む。別の態様では、PAMは、5’-TTTV-3’のヌクレオチド配列を含む。別の態様では、PAMは、5’-YG-3’のヌクレオチド配列を含む。別の態様では、PAMは、5’-YTN-3’のヌクレオチド配列を含む。別の態様では、PAMは、5’-TTCN-3’のヌクレオチド配列を含む。別の態様では、PAMは、5’-NGAN-3’のヌクレオチド配列を含む。別の態様では、PAMは、5’-NGNG-3’のヌクレオチド配列を含む。別の態様では、PAMは、5’-NGAG-3’のヌクレオチド配列を含む。別の態様では、PAMは、5’-NGCG-3’のヌクレオチド配列を含む。別の態様では、PAMは、5’-TYCV-3’のヌクレオチド配列を含む。別の態様では、PAMは、5’-NGRRT-3’のヌクレオチド配列を含む。別の態様では、PAMは、5’-NGRRN-3’のヌクレオチド配列を含む。別の態様では、PAMは、5’-NNNNGATT-3’のヌクレオチド配列を含む。別の態様では、PAMは、5’-NNNNRYAC-3’のヌクレオチド配列を含む。別の態様では、PAMは、5’-NNAGAAW-3’のヌクレオチド配列を含む。別の態様では、PAMは、5’-NAAAAC-3’のヌクレオチド配列を含む。当該技術分野で既知の通り、ヌクレオチドに関して、「A」は、アデニンを指し;「T」は、チミンを指し;「C」は、シトシンを指し;「G」は、グアニンを指し;「N」は、任意のヌクレオチドを指し;「R」は、アデニンまたはグアニンを指し;「Y」は、シトシンまたはチミンを指し;「V」は、アデニン、グアニン、またはシトシンを指し;「W」は、アデニンまたはチミンを指す。
【0084】
改変核酸分子、または改変核酸分子を含む細胞のスクリーニング及び選択は、当業者らに既知の任意の方法を介することができる。スクリーニング及び選択方法の例としては、サザン分析、ポリヌクレオチドの検出のためのPCR増幅、ノーザンブロット、RNase保護、プライマー伸長、RNA転写物を検出するためのRT-PCR増幅、サンガーシーケンシング、ポリペプチド及びポリヌクレオチドの酵素またはリボザイム活性を検出するための次世代シーケンシング技術(例えば、Illumina、PacBio、Ion Torrent、454)の酵素アッセイ、ならびにポリペプチドを検出するタンパク質ゲル電気泳動、ウェスタンブロット、免疫沈降、及び酵素結合免疫アッセイが含まれるが、これらに限定されない。in situハイブリダイゼーション、酵素染色、及び免疫染色などの他の手法もまた、ポリペプチド及び/またはポリヌクレオチドの存在または発現を検出するために使用することができる。参照手法の全てを実施するための方法は既知である。
【0085】
変異原
一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、少なくとも1つの変異原を含む。本明細書で使用される場合、「変異原」は、核酸配列への改変または変異を生成することが可能である任意の手段を指す。一態様では、変異原は、自然のバックグラウンドレベルを超える変異の頻度を増加させる。一態様では、変異原は、化学的変異原である。一態様では、変異原は、物理的変異原である。物理的変異原は、DNAバックボーンの切断を引き起こすことにより変異原効果を発揮する。別の態様では、変異原は、電離放射線である。別の態様では、変異原は、紫外線放射である。別の態様では、変異原は、アルファ粒子放射線である。別の態様では、変異原は、ベータ粒子放射線である。別の態様では、変異原は、ガンマ線放射線である。別の態様では、変異原は、電磁放射線である。別の態様では、変異原は、中性子放射線である。別の態様では、変異原は、活性酸素種である。別の態様では、変異原は、脱アミノ化剤である。別の態様では、変異原は、アルキル化剤である。別の態様では、変異原は、芳香族アミンである。別の態様では、変異原は、臭化エチジウムまたはプロフラビンなどの挿入剤である。別の態様では、変異原は、X線である。別の態様では、変異原は、長波長紫外線である。別の態様では、変異原は、中波長紫外線である。別の態様では、変異原は、可視光線である。別の態様では、変異原は、化学的変異原及び電離放射線からなる群より選択される。
【0086】
一態様では、化学的変異原は、エチルメタンスルホナート(EMS)、メチルメタンスルホナート、ジエチルスルホナート、ジメチルスルファート、ジメチルスルホキシド、ジエチルニトロソアミン、N-ニトロソ-N-メチル尿素、N-メチル-N-ニトロソ尿素、N-ニトロソ-N-ジエチル尿素、N-エチル-N-ニトロソ尿素、ヒ素、コルヒチン、エチレンイミン、ニトロソメチル尿素、ニトロソグアニジン、亜硝酸、ヒドロキシルアミン、エチレンオキシド、ジエポキシブタン、アジ化ナトリウム、マレイン酸ヒドラジド、シクロホスファミド、ジアゾアセチルブタン、ソラレン、ベンゼン、ダチュラ抽出物、ブロモデオキシウリジン、及び酸化ベリリウムからなる群より選択される。
【0087】
別の態様では、化学的変異原は、少なくとも0.000001%の濃度で提供される。別の態様では、化学的変異原は、少なくとも0.000005%の濃度で提供される。別の態様では、化学的変異原は、少なくとも0.00001%の濃度で提供される。別の態様では、化学的変異原は、少なくとも0.00005%の濃度で提供される。別の態様では、化学的変異原は、少なくとも0.0001%の濃度で提供される。別の態様では、化学的変異原は、少なくとも0.0005%の濃度で提供される。別の態様では、化学的変異原は、少なくとも0.001%の濃度で提供される。別の態様では、化学的変異原は、少なくとも0.005%の濃度で提供される。別の態様では、化学的変異原は、少なくとも0.01%の濃度で提供される。別の態様では、化学的変異原は、少なくとも0.05%の濃度で提供される。別の態様では、化学的変異原は、少なくとも0.1%の濃度で提供される。別の態様では、化学的変異原は、少なくとも0.5%の濃度で提供される。別の態様では、化学的変異原は、少なくとも1%の濃度で提供される。別の態様では、化学的変異原は、少なくとも5%の濃度で提供される。別の態様では、化学的変異原は、少なくとも10%の濃度で提供される。別の態様では、化学的変異原は、0.0001%~1%の濃度で提供される。別の態様では、化学的変異原は、0.001%~1%の濃度で提供される。別の態様では、化学的変異原は、0.01%~1%の濃度で提供される。別の態様では、化学的変異原は、0.1%~1%の濃度で提供される。別の態様では、化学的変異原は、0.01%~5%の濃度で提供される。別の態様では、化学的変異原は、0.01%~10%の濃度で提供される。別の態様では、化学的変異原は、1%~5%の濃度で提供される。別の態様では、化学的変異原は、1%~10%の濃度で提供される。
【0088】
一態様では、化学的変異原は、気体形態で提供される。別の態様では、化学的変異原は、液体形態で提供される。別の態様では、化学的変異原は、固体形態で提供される。別の態様では、化学的変異原は、結晶化形態で提供される。別の態様では、化学的変異原は、粉末形態で提供される。
【0089】
いくつかの化学的変異原は、核酸配列の個々のヌクレオチドの改変を引き起こすことが可能であることが知られている。特定のタイプの置換は、トランスバージョン(例えば、プリンがピリミジンに変化するか、もしくはピリミジンがプリンに変化する、核酸配列における点変異)またはトランジション(例えば、プリンが異なるプリンに変更されるか、またはピリミジンが異なるピリミジンに変更される、核酸配列における点変異)と呼ばれる。プリンの非限定例としては、アデニン及びグアニンが挙げられる。ピリミジンの非限定例としては、シトシン、チミン、及びウラシルが挙げられる。
【0090】
一態様では、置換は、アデニンのグアニンへの置換を含む。別の態様では、置換は、シトシンのグアニンへの置換を含む。別の態様では、置換は、チミンのグアニンへの置換を含む。別の態様では、置換は、グアニンのアデニンへの置換を含む。別の態様では、置換は、シトシンのアデニンへの置換を含む。別の態様では、置換は、チミンのアデニンへの置換を含む。別の態様では、置換は、グアニンのシトシンへの置換を含む。別の態様では、置換は、アデニンのシトシンへの置換を含む。別の態様では、置換は、チミンのシトシンへの置換を含む。別の態様では、置換は、グアニンのチミンへの置換を含む。別の態様では、置換は、アデニンのチミンへの置換を含む。別の態様では、置換は、シトシンのチミンへの置換を含む。
【0091】
一態様では、電離放射線は、X線放射線、ガンマ線放射線、アルファ粒子放射線、及び紫外線(UV)放射線からなる群より選択される。
【0092】
一態様では、化学的変異原は、リボヌクレオタンパク質と同時に細胞に提供される。別の態様では、化学的変異原は、リボヌクレオタンパク質が細胞に提供される前に、細胞に提供される。さらなる態様では、化学的変異原は、リボヌクレオタンパク質が細胞に提供された後に、細胞に提供される。
【0093】
一態様では、化学的変異原は、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼと同時に細胞に、提供される。別の態様では、化学的変異原は、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼが細胞に提供される前に、細胞に提供される。さらなる態様では、化学的変異原は、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼが細胞に提供された後に、細胞に提供される。
【0094】
一態様では、化学的変異原は、ガイド核酸と同時に、細胞に提供される。別の態様では、化学的変異原は、ガイド核酸が細胞に提供される前に、細胞に提供される。さらなる態様では、化学的変異原は、ガイド核酸が細胞に提供された後に、細胞に提供される。
【0095】
一態様では、化学的変異原は、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼを発現する細胞に提供される。別の態様では、化学的変異原は、ガイド核酸を発現する細胞に提供される。
【0096】
一態様では、物理的変異原は、リボヌクレオタンパク質と同時に細胞に提供される。別の態様では、物理的変異原は、リボヌクレオタンパク質が細胞に提供される前に、細胞に提供される。さらなる態様では、物理的変異原は、リボヌクレオタンパク質が細胞に提供された後に、細胞に提供される。
【0097】
一態様では、物理的変異原は、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼと同時に、細胞に提供される。別の態様では、物理的変異原は、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼが細胞に提供される前に、細胞に提供される。さらなる態様では、物理的変異原は、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼが細胞に提供された後に、細胞に提供される。
【0098】
一態様では、物理的変異原は、ガイド核酸と同時に、細胞に提供される。別の態様では、物理的変異原は、ガイド核酸が細胞に提供される前に、細胞に提供される。さらなる態様では、物理的変異原は、ガイド核酸が細胞に提供された後に、細胞に提供される。
【0099】
対立遺伝子多様性
本開示で提供される方法及びキットは、ゲノム内の標的化遺伝子座の対立遺伝子多様性を増加させるために使用することができる。本明細書で使用される場合、「対立遺伝子多様性」は、ゲノム中の所与の遺伝子座の対立遺伝子の数を指す。対立遺伝子多様性の増加は、標的遺伝子座での改変により対立遺伝子を生成することからもたらされる。
【0100】
一態様では、本開示は、植物のゲノム内の核酸分子の標的化領域において対立遺伝子多様性を増加させる方法を提供し、方法は、植物に、(a)触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼまたは触媒的に誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸、(b)少なくとも1つのガイド核酸または少なくとも1つのガイド核酸をコードする核酸(少なくとも1つのガイド核酸が、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼと複合体を形成し、少なくとも1つのガイド核酸が、核酸分子とハイブリダイズする)、及び(c)少なくとも1つの変異原、を提供すること、を含み、核酸は、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を含み、標的核酸の対立遺伝子多様性が増加する。
【0101】
一態様では、対立遺伝子多様性の増加は、未改変野生型標的核酸と比較して、標的核酸の少なくとも1つの改変対立遺伝子の生成を含む。一態様では、対立遺伝子多様性の増加は、未改変野生型標的核酸と比較して、標的核酸の少なくとも2つの改変対立遺伝子の生成を含む。一態様では、対立遺伝子多様性の増加は、未改変野生型標的核酸と比較して、標的核酸の少なくとも3つの改変対立遺伝子の生成を含む。一態様では、対立遺伝子多様性の増加は、未改変野生型標的核酸と比較して、標的核酸の少なくとも4つの改変対立遺伝子の生成を含む。一態様では、対立遺伝子多様性の増加は、未改変野生型標的核酸と比較して、標的核酸の少なくとも5つの改変対立遺伝子の生成を含む。一態様では、対立遺伝子多様性の増加は、未改変野生型標的核酸と比較して、標的核酸の少なくとも10の改変対立遺伝子の生成を含む。一態様では、対立遺伝子多様性の増加は、未改変野生型標的核酸と比較して、標的核酸の少なくとも15の改変対立遺伝子の生成を含む。一態様では、対立遺伝子多様性の増加は、未改変野生型標的核酸と比較して、標的核酸の少なくとも20の改変対立遺伝子の生成を含む。一態様では、対立遺伝子多様性の増加は、未改変野生型標的核酸と比較して、標的核酸の少なくとも30の改変対立遺伝子の生成を含む。一態様では、対立遺伝子多様性の増加は、未改変野生型標的核酸と比較して、標的核酸の少なくとも50の改変対立遺伝子の生成を含む。
【0102】
対立遺伝子シリーズは、最適な植物形質を生ずる改変を同定するのに有用であり得る。本明細書で使用される場合、「対立遺伝子シリーズ」は、標的化遺伝子座内の2つ以上の異なる改変を指し、2つ以上の異なる改変は、2つ以上の異なる表現型を引き起こす。
【0103】
一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、R世代の対立遺伝子シリーズを生成する。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、R世代の対立遺伝子シリーズを生成する。一態様では、対立遺伝子シリーズは、少なくとも1つの劣性改変を含む。別の態様では、対立遺伝子シリーズは、少なくとも1つの優性改変を含む。本明細書で使用される場合、「劣性改変」は、ホモ接合状態でゲノム中に存在する場合にのみ表現型を生成する改変を指す。対照的に、「優性改変」は、ヘテロ接合状態でゲノム中に存在する場合に表現型を生成する改変を指す。
【0104】
一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、産生されたR植物100当たり、標的核酸において平均で少なくとも0.001の改変を生成することを含む。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、産生されたR植物100当たり、標的核酸において平均で少なくとも0.0025の改変を生成することを含む。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、産生されたR植物100当たり、標的核酸において平均で少なくとも0.005の改変を生成することを含む。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、産生されたR植物100当たり、標的核酸において平均で少なくとも0.0075の改変を生成することを含む。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、産生されたR植物100当たり、標的核酸において平均で少なくとも0.01の改変を生成することを含む。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、産生されたR植物100当たり、標的核酸において平均で少なくとも0.025の改変を生成することを含む。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、産生されたR植物100当たり、標的核酸において平均で少なくとも0.05の改変を生成することを含む。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、産生されたR植物100当たり、標的核酸において平均で少なくとも0.075の改変を生成することを含む。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、産生されたR植物100当たり、標的核酸において平均で少なくとも0.1の改変を生成することを含む。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、産生されたR植物100当たり、標的核酸において平均で少なくとも0.25の改変を生成することを含む。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、産生されたR植物100当たり、標的核酸において平均で少なくとも0.5の改変を生成することを含む。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、産生されたR植物100当たり、標的核酸において平均で少なくとも0.75の改変を生成することを含む。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、産生されたR植物100当たり、標的核酸において平均で少なくとも1の改変を生成することを含む。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、産生されたR植物100当たり、標的核酸において平均で少なくとも2.5の改変を生成することを含む。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、産生されたR植物100当たり、標的核酸において平均で少なくとも5の改変を生成することを含む。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、産生されたR植物100当たり、標的核酸において平均で少なくとも7.5の改変を生成することを含む。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、産生されたR植物100当たり、標的核酸において平均で少なくとも10の改変を生成することを含む。
【0105】
変異率
一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、標的化領域でのバックグラウンド変異率と比較して、増加した変異率を提供する。本明細書で使用される場合、「変異率」は、野生型配列が対照細胞において改変される頻度を指す。通常、変異率は、細胞分裂1つ当たりの変異数として表される。変異率の計算は、当該技術分野で周知であり、ゲノムの異なる部分について変化し得る。
【0106】
ヒトでは、例えば、バックグラウンド変異率は、1細胞世代当たり1部位当たり約1.1x10-8であると推定されている。トウモロコシの平均バックグラウンド変異率は、1世代当たり1部位当たり約7.7x10-5であると推定されている。例えば、Drake et al.,“Rates of Spontaneous Mutation,”Genetics,148:1667-1686(1998)を参照のこと。
【0107】
一態様では、本開示は、核酸分子の標的化領域の変異率を増加させる方法を提供し、方法は、核酸分子を、(a)触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼ、(b)少なくとも1つのガイド核酸(少なくとも1つのガイド核酸が、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼと複合体を形成し、少なくとも1つのガイド核酸が、核酸分子とハイブリダイズする)、及び(c)少なくとも1つの変異原、と接触させること、を含み、核酸は、核酸分子の標的化領域に隣接するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)部位を含み、核酸分子の標的化領域における変異率は、核酸分子の非標的化領域と比較して増加する。
【0108】
一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、標的核酸の変異率を、バックグラウンド変異率と比較して、1細胞世代当たり、1部位当たり、少なくとも1x10-9増加させる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、標的核酸の変異率を、バックグラウンド変異率と比較して、1細胞世代当たり、1部位当たり、少なくとも5x10-9増加させる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、標的核酸の変異率を、バックグラウンド変異率と比較して、1細胞世代当たり、1部位当たり、少なくとも25x10-9増加させる。
【0109】
一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、標的核酸の変異率を、バックグラウンド変異率と比較して、1細胞世代当たり、1部位当たり、少なくとも1x10-8増加させる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、標的核酸の変異率を、バックグラウンド変異率と比較して、1細胞世代当たり、1部位当たり、少なくとも5x10-8増加させる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、標的核酸の変異率を、バックグラウンド変異率と比較して、1細胞世代当たり、1部位当たり、少なくとも25x10-8増加させる。
【0110】
一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、標的核酸の変異率を、バックグラウンド変異率と比較して、1細胞世代当たり、1部位当たり、少なくとも1x10-7増加させる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、標的核酸の変異率を、バックグラウンド変異率と比較して、1細胞世代当たり、1部位当たり、少なくとも5x10-7増加させる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、標的核酸の変異率を、バックグラウンド変異率と比較して、1細胞世代当たり、1部位当たり、少なくとも25x10-7増加させる。
【0111】
一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、標的核酸の変異率を、バックグラウンド変異率と比較して、1細胞世代当たり、1部位当たり、少なくとも1x10-6増加させる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、標的核酸の変異率を、バックグラウンド変異率と比較して、1細胞世代当たり、1部位当たり、少なくとも5x10-6増加させる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、標的核酸の変異率を、バックグラウンド変異率と比較して、1細胞世代当たり、1部位当たり、少なくとも25x10-6増加させる。
【0112】
一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、標的核酸の変異率を、バックグラウンド変異率と比較して、1細胞世代当たり、1部位当たり、少なくとも1x10-5増加させる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、標的核酸の変異率を、バックグラウンド変異率と比較して、1細胞世代当たり、1部位当たり、少なくとも5x10-5増加させる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、標的核酸の変異率を、バックグラウンド変異率と比較して、1細胞世代当たり、1部位当たり、少なくとも25x10-5増加させる。
【0113】
一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、標的核酸の変異率を、バックグラウンド変異率と比較して、1細胞世代当たり、1部位当たり、少なくとも1x10-4増加させる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、標的核酸の変異率を、バックグラウンド変異率と比較して、1細胞世代当たり、1部位当たり、少なくとも5x10-4増加させる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、標的核酸の変異率を、バックグラウンド変異率と比較して、1細胞世代当たり、1部位当たり、少なくとも25x10-4増加させる。
【0114】
一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、標的核酸の変異率を、バックグラウンド変異率と比較して、1細胞世代当たり、1部位当たり、少なくとも1x10-3増加させる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、標的核酸の変異率を、バックグラウンド変異率と比較して、1細胞世代当たり、1部位当たり、少なくとも5x10-3増加させる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、標的核酸の変異率を、バックグラウンド変異率と比較して、1細胞世代当たり、1部位当たり、少なくとも25x10-3増加させる。
【0115】
一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、標的核酸の変異率を、非標的化核酸と比較して、1細胞世代当たり、1部位当たり、少なくとも1x10-9増加させる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、標的核酸の変異率を、非標的化核酸と比較して、1細胞世代当たり、1部位当たり、少なくとも5x10-9増加させる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、標的核酸の変異率を、非標的化核酸と比較して、1細胞世代当たり、1部位当たり、少なくとも25x10-9増加させる。
【0116】
一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、標的核酸の変異率を、非標的化核酸と比較して、1細胞世代当たり、1部位当たり、少なくとも1x10-8増加させる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、標的核酸の変異率を、非標的化核酸と比較して、1細胞世代当たり、1部位当たり、少なくとも5x10-8増加させる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、標的核酸の変異率を、非標的化核酸と比較して、1細胞世代当たり、1部位当たり、少なくとも25x10-8増加させる。
【0117】
一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、標的核酸の変異率を、非標的化核酸と比較して、1細胞世代当たり、1部位当たり、少なくとも1x10-7増加させる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、標的核酸の変異率を、非標的化核酸と比較して、1細胞世代当たり、1部位当たり、少なくとも5x10-7増加させる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、標的核酸の変異率を、非標的化核酸と比較して、1細胞世代当たり、1部位当たり、少なくとも25x10-7増加させる。
【0118】
一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、標的核酸の変異率を、非標的化核酸と比較して、1細胞世代当たり、1部位当たり、少なくとも1x10-6増加させる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、標的核酸の変異率を、非標的化核酸と比較して、1細胞世代当たり、1部位当たり、少なくとも5x10-6増加させる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、標的核酸の変異率を、非標的化核酸と比較して、1細胞世代当たり、1部位当たり、少なくとも25x10-6増加させる。
【0119】
一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、標的核酸の変異率を、非標的化核酸と比較して、1細胞世代当たり、1部位当たり、少なくとも1x10-5増加させる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、標的核酸の変異率を、非標的化核酸と比較して、1細胞世代当たり、1部位当たり、少なくとも5x10-5増加させる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、標的核酸の変異率を、非標的化核酸と比較して、1細胞世代当たり、1部位当たり、少なくとも25x10-5増加させる。
【0120】
一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、標的核酸の変異率を、非標的化核酸と比較して、1細胞世代当たり、1部位当たり、少なくとも1x10-4増加させる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、標的核酸の変異率を、非標的化核酸と比較して、1細胞世代当たり、1部位当たり、少なくとも5x10-4増加させる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、標的核酸の変異率を、非標的化核酸と比較して、1細胞世代当たり、1部位当たり、少なくとも25x10-4増加させる。
【0121】
一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、標的核酸の変異率を、非標的化核酸と比較して、1細胞世代当たり、1部位当たり、少なくとも1x10-3増加させる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、標的核酸の変異率を、非標的化核酸と比較して、1細胞世代当たり、1部位当たり、少なくとも5x10-3増加させる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、標的核酸の変異率を、非標的化核酸と比較して、1細胞世代当たり、1部位当たり、少なくとも25x10-3増加させる。
【0122】
標的化領域の変異率を増加させることにより、少ない植物しか、標的化領域の改変を同定するためにスクリーニングされる必要がないことが想定される。
【0123】
一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼの非存在下で化学的変異原のみを使用する場合と比較して、標的化領域における改変を同定するために、より少ない植物しかスクリーニングされることを要しない。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼの非存在下でEMSのみを使用する場合と比較して、標的化領域における改変を同定するために、より少ない植物しかスクリーニングされることを要しない。
【0124】
一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、R世代で産生される1つの植物毎に、標的化領域において平均で少なくとも1つの改変を生じる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、R世代で産生される2つの植物毎に、標的化領域において平均で少なくとも1つの改変を生じる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、R世代で産生される3つの植物毎に、標的化領域において平均で少なくとも1つの改変を生じる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、R世代で産生される4つの植物毎に、標的化領域において平均で少なくとも1つの改変を生じる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、R世代で産生される5つの植物毎に、標的化領域において平均で少なくとも1つの改変を生じる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、R世代で産生される6つの植物毎に、標的化領域において平均で少なくとも1つの改変を生じる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、R世代で産生される7つの植物毎に、標的化領域において平均で少なくとも1つの改変を生じる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、R世代で産生される8つの植物毎に、標的化領域において平均で少なくとも1つの改変を生じる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、R世代で産生される9つの植物毎に、標的化領域において平均で少なくとも1つの改変を生じる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、R世代で産生される10の植物毎に、標的化領域において平均で少なくとも1つの改変を生じる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、R世代で産生される15の植物毎に、標的化領域において平均で少なくとも1つの改変を生じる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、R世代で産生される20の植物毎に、標的化領域において平均で少なくとも1つの改変を生じる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、R世代で産生される25の植物毎に、標的化領域において平均で少なくとも1つの改変を生じる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、R世代で産生される30の植物毎に、標的化領域において平均で少なくとも1つの改変を生じる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、R世代で産生される35の植物毎に、標的化領域において平均で少なくとも1つの改変を生じる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、R世代で産生される40の植物毎に、標的化領域において平均で少なくとも1つの改変を生じる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、R世代で産生される50の植物毎に、標的化領域において平均で少なくとも1つの改変を生じる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、R世代で産生される75の植物毎に、標的化領域において平均で少なくとも1つの改変を生じる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、R世代で産生される100の植物毎に、標的化領域において平均で少なくとも1つの改変を生じる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、R世代で産生される150の植物毎に、標的化領域において平均で少なくとも1つの改変を生じる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、R世代で産生される200の植物毎に、標的化領域において平均で少なくとも1つの改変を生じる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、R世代で産生される250の植物毎に、標的化領域において平均で少なくとも1つの改変を生じる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、R世代で産生される300の植物毎に、標的化領域において平均で少なくとも1つの改変を生じる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、R世代で産生される400の植物毎に、標的化領域において平均で少なくとも1つの改変を生じる。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、R世代で産生される500の植物毎に、標的化領域において平均で少なくとも1つの改変を生じる。
【0125】
本明細書で使用される場合、「R世代」は、本明細書で提供される方法及びキットにより作成された初期世代を指す。R世代から生じる後続世代は、R、R、Rなどと呼ばれるであろう。
【0126】
ガイド核酸
一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、少なくとも1つのガイド核酸または少なくとも1つのガイド核酸をコードする核酸を含み、少なくとも1つのガイド核酸は、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼと複合体を形成し、少なくとも1つのガイド核酸は、標的核酸分子とハイブリダイズする。本明細書で使用される場合、「ガイド核酸」は、ヌクレアーゼと複合体を形成し、次に、標的核酸分子内の特定の配列と複合体を誘導する核酸を指し、ガイド核酸及び標的核酸分子が、相補的な配列を共有する。
【0127】
一態様では、ガイド核酸は、DNAを含む。別の態様では、ガイド核酸は、RNAを含む。ガイド核酸は、RNAを含む場合、「ガイドRNA」と呼ぶことができる。別の態様では、ガイド核酸は、DNA及びRNAを含む。別の態様では、ガイド核酸は、1本鎖である。別の態様では、ガイド核酸は、2本鎖である。さらなる態様では、ガイド核酸は、部分的に2本鎖である。
【0128】
別の態様では、ガイド核酸は、少なくとも10ヌクレオチドを含む。別の態様では、ガイド核酸は、少なくとも11ヌクレオチドを含む。別の態様では、ガイド核酸は、少なくとも12ヌクレオチドを含む。別の態様では、ガイド核酸は、少なくとも13ヌクレオチドを含む。別の態様では、ガイド核酸は、少なくとも14ヌクレオチドを含む。別の態様では、ガイド核酸は、少なくとも15ヌクレオチドを含む。別の態様では、ガイド核酸は、少なくとも16ヌクレオチドを含む。別の態様では、ガイド核酸は、少なくとも17ヌクレオチドを含む。別の態様では、ガイド核酸は、少なくとも18ヌクレオチドを含む。別の態様では、ガイド核酸は、少なくとも19ヌクレオチドを含む。別の態様では、ガイド核酸は、少なくとも20ヌクレオチドを含む。別の態様では、ガイド核酸は、少なくとも21ヌクレオチドを含む。別の態様では、ガイド核酸は、少なくとも22ヌクレオチドを含む。別の態様では、ガイド核酸は、少なくとも23ヌクレオチドを含む。別の態様では、ガイド核酸は、少なくとも24ヌクレオチドを含む。別の態様では、ガイド核酸は、少なくとも25ヌクレオチドを含む。別の態様では、ガイド核酸は、少なくとも26ヌクレオチドを含む。別の態様では、ガイド核酸は、少なくとも27ヌクレオチドを含む。別の態様では、ガイド核酸は、少なくとも28ヌクレオチドを含む。別の態様では、ガイド核酸は、少なくとも30ヌクレオチドを含む。別の態様では、ガイド核酸は、少なくとも35ヌクレオチドを含む。別の態様では、ガイド核酸は、少なくとも40ヌクレオチドを含む。別の態様では、ガイド核酸は、少なくとも45ヌクレオチドを含む。別の態様では、ガイド核酸は、少なくとも50ヌクレオチドを含む。別の態様では、ガイド核酸は、10ヌクレオチド~50ヌクレオチドを含む。別の態様では、ガイド核酸は、10ヌクレオチド~40ヌクレオチドを含む。別の態様では、ガイド核酸は、10ヌクレオチド~30ヌクレオチドを含む。別の態様では、ガイド核酸は、10ヌクレオチド~20ヌクレオチドを含む。別の態様では、ガイド核酸は、16ヌクレオチド~28ヌクレオチドを含む。別の態様では、ガイド核酸は、16ヌクレオチド~25ヌクレオチドを含む。別の態様では、ガイド核酸は、16ヌクレオチド~20ヌクレオチドを含む。
【0129】
一態様では、ガイド核酸は、標的核酸配列に対して少なくとも70%の配列相補性を含む。一態様では、ガイド核酸は、標的核酸配列に対して少なくとも75%の配列相補性を含む。一態様では、ガイド核酸は、標的核酸配列に対して少なくとも80%の配列相補性を含む。一態様では、ガイド核酸は、標的核酸配列に対して少なくとも85%の配列相補性を含む。一態様では、ガイド核酸は、標的核酸配列に対して少なくとも90%の配列相補性を含む。一態様では、ガイド核酸は、標的核酸配列に対して少なくとも91%の配列相補性を含む。一態様では、ガイド核酸は、標的核酸配列に対して少なくとも92%の配列相補性を含む。一態様では、ガイド核酸は、標的核酸配列に対して少なくとも93%の配列相補性を含む。一態様では、ガイド核酸は、標的核酸配列に対して少なくとも94%の配列相補性を含む。一態様では、ガイド核酸は、標的核酸配列に対して少なくとも95%の配列相補性を含む。一態様では、ガイド核酸は、標的核酸配列に対して少なくとも96%の配列相補性を含む。一態様では、ガイド核酸は、標的核酸配列に対して少なくとも97%の配列相補性を含む。一態様では、ガイド核酸は、標的核酸配列に対して少なくとも98%の配列相補性を含む。一態様では、ガイド核酸は、標的核酸配列に対して少なくとも99%の配列相補性を含む。一態様では、ガイド核酸は、標的核酸配列に対して100%の配列相補性を含む。別の態様では、ガイド核酸は、標的核酸配列に対して70%~100%の配列相補性を含む。別の態様では、ガイド核酸は、標的核酸配列に対して80%~100%の配列相補性を含む。別の態様では、ガイド核酸は、標的核酸配列に対して90%~100%の配列相補性を含む。
【0130】
CasX及びCas9などのいくつかのCRISPR関連タンパク質は、機能的活性を有するために、トランス活性化crRNA(tracrRNA)と呼ばれる別の非コードRNA構成要素を必要とする。本明細書で提供されるガイド核酸分子は、本明細書で「単一ガイドRNA」(sgRNA)と呼ばれるものにおいて、crRNA及びtracrRNAを組み合わせて1つの核酸分子にすることができる。gRNAは、活性なCasX複合体を標的部位に誘導し、CasXは、標的部位を切断し得る。
【0131】
一態様では、ガイド核酸は、crRNAを含む。別の態様では、ガイド核酸は、tracrRNAを含む。さらなる態様では、ガイド核酸は、sgRNAを含む。
【0132】
一態様では、本明細書で提供されるガイド核酸は、in vivoで組み換えベクターから発現させることができる。一態様では、本明細書で提供されるガイド核酸は、in vitroで組み換えベクターから発現させることができる。一態様では、本明細書で提供されるガイド核酸は、ex vivoで組み換えベクターから発現させることができる。一態様では、本明細書で提供されるガイド核酸は、in vivoで核酸分子から発現させることができる。一態様では、本明細書で提供されるガイド核酸は、in vitroで核酸分子から発現させることができる。一態様では、本明細書で提供されるガイド核酸は、ex vivoで核酸分子から発現させることができる。別の態様では、本明細書で提供されるガイド核酸は、合成的に合成することができる。
【0133】
核酸及びポリペプチド
「ポリヌクレオチド」または「核酸分子」という用語の使用は、デオキシリボ核酸(DNA)を含むポリヌクレオチドに、本開示を限定することが意図されるものではない。例えば、リボ核酸(RNA)分子も想定される。当業者らは、ポリヌクレオチド及び核酸分子が、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、またはリボヌクレオチドとデオキシリボヌクレオチドの組み合わせを含み得ることを認識するであろう。そのようなデオキシリボヌクレオチド及びリボヌクレオチドは、天然に存在する分子及び合成アナログの両方を含む。本開示のポリヌクレオチドは、限定されないが、1本鎖形態、2本鎖形態、ヘアピン、ステム・ループ構造などを含む全形態の配列も包含する。一態様では、本明細書で提供される核酸分子は、DNA分子である。別の態様では、本明細書で提供される核酸分子は、RNA分子である。一態様では、本明細書で提供される核酸分子は、1本鎖である。別の態様では、本明細書で提供される核酸分子は、2本鎖である。
【0134】
一態様では、本明細書で提供される方法及び組成物は、ベクターを含む。本明細書で使用される場合、「ベクター」または「プラスミド」という用語は、互換的に使用され、染色体DNAから物理的に分離した円形の2本鎖DNA分子を指す。一態様では、本明細書で使用されるプラスミドまたはベクターは、in vivoで複製することが可能である。別の態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸がベクター中で提供される。さらなる態様では、ガイド核酸をコードする核酸は、ベクター中で提供される。さらに別の態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸及びガイド核酸をコードする核酸が、単一ベクター中で提供される。
【0135】
本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」という用語は、少なくとも2つの共有結合したアミノ酸の鎖を指す。ポリペプチドは、本明細書で提供されるポリヌクレオチドによりコードすることができる。ポリペプチドの例は、タンパク質である。本明細書で提供されるタンパク質は、本明細書で提供される核酸分子によりコードすることができる。
【0136】
核酸は、当該技術分野で日常的な手法を使用して単離することができる。例えば、核酸は、組み換え核酸技術、及び/またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を含むが、限定されない任意の方法を使用して単離することができる。一般的なPCR手法は、例えば、PCR Primer:A Laboratory Manual,Dieffenbach & Dveksler,Eds.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1995に記載される。組み換え核酸手法は、例えば、核酸を単離するために使用することができる制限酵素消化及びライゲーションを含む。単離核酸は、単一核酸分子として、または一連のオリゴヌクレオチドとして、化学的に合成することもできる。ポリペプチドは、DEAEイオン交換、ゲル濾過、及びヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーなどの既知の方法により天然源(例えば、生物学的試料)から精製することができる。ポリペプチドは、例えば、発現ベクターにおいて核酸を発現させることにより精製することもできる。さらに、精製ポリペプチドは、化学合成により得ることができる。ポリペプチドの純度の程度は、任意の適切な方法、例えば、カラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、またはHPLC分析を使用して測定することができる。
【0137】
限定することなく、核酸は、ハイブリダイゼーションを使用して検出することができる。核酸間のハイブリダイゼーションは、Sambrook et al.(1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY)で詳細に考察されている。
【0138】
ポリペプチドは、抗体を使用して検出することができる。抗体を使用してポリペプチドを検出するための手法は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ウェスタンブロット、免疫沈降、及び免疫蛍光を含む。本明細書で提供される抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であり得る。本明細書で提供されるポリペプチドに対して特異的な結合親和性を有する抗体は、当該技術分野で周知の方法を使用して生成することができる。本明細書で提供される抗体は、当該技術分野で既知の方法を使用して、マイクロタイタープレートなどの固体支持体に付着させることができる。
【0139】
2つ以上のヌクレオチドまたはタンパク質配列に関して本明細書で使用される「パーセント同一性」または「パーセント同一」という用語は、(i)比較のウィンドウにわたって2つの最適にアラインされた配列(ヌクレオチドまたはタンパク質)を比較すること、(ii)同一の核酸塩基(ヌクレオチド配列の場合)またはアミノ酸残基(タンパク質の場合)が両方の配列で生じる位置の数を決定して、一致する位置の数を得ること、(iii)比較ウィンドウで、一致した位置の数を位置の総数で除すること、及び、その後の(iv)この商に100%を乗して、パーセント同一性を得ること、により算出される。特定の比較ウィンドウが指定されていない参照配列に関連して「パーセント同一性」が算出されている場合、パーセント同一性は、アラインメント領域にわたって一致した位置の数を、参照配列の全長で除することにより決定される。したがって、本出願の目的のために、2つの配列(クエリ及びサブジェクト)が(それらのアラインメントにおけるギャップを考慮して)最適にアラインされる場合、クエリ配列の「パーセント同一性」は、2つ配列間の同一位置の数を、長さ(または比較ウィンドウ)にわたるクエリ配列中の位置の総数で除し、100%を乗したものに等しい。タンパク質に関して配列同一性のパーセンテージが使用される場合、同一ではない残基位置は、多くの場合、保存的アミノ酸置換が異なることが認識され、アミノ酸残基は、類似の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を有する他のアミノ酸残基と置換され、それ故、分子の機能的特性を変化させない。配列が保存的置換で異なる場合、パーセント配列同一性は、置換の保存的性質を補正するために、上方に調整することができる。そのような保存的置換が異なる配列は、「配列類似性」または「類似性」を有すると言われる。
【0140】
2つのヌクレオチド配列に関して本明細書で使用される「パーセント配列相補性」または「パーセント相補性」という用語は、パーセント同一性の概念に類似しているが、クエリ配列及びサブジェクト配列が線状に配置され、ループ、ステム、またはヘアピンなどの2次折り畳み構造なしで最適に塩基対合される場合の、ヌクレオチドにサブジェクト配列を最適に塩基対合またはハイブリダイズするクエリ配列のヌクレオチドのパーセンテージを指す。そのようなパーセント相補性は、2つのDNA鎖間、2つのRNA鎖間、またはDNA鎖とRNA鎖の間に存在し得る。「パーセント相補性」は、(i)比較ウィンドウ上で、線形で完全に拡張された配置の(すなわち、折り畳みまたは2次構造なしの)2つのヌクレオチド配列を最適に塩基対合またはハイブリダイズすること、(ii)比較ウィンドウ上で2つの配列間で塩基対合する位置の数を決定して、相補的位置の数を得ること、(iii)比較ウィンドウにおける位置の総数で相補的位置の数を除すこと、及び(iv)この商に100%を乗して、2つの配列のパーセント相補性を得ること、により算出することができる。2つの配列の最適な塩基対合は、水素結合を介して、既知の対合、例えば、G-C、A-T、及びA-Uなどのヌクレオチド塩基に基づいて決定することができる。「パーセント相補性」は、特定の比較ウィンドウを指定せずに参照配列に関連して計算されている場合、パーセント同一性は、2つの線形配列間の相補的位置の数を参照配列の全長で除することにより決定される。したがって、本出願の目的のために、2つの配列(クエリ及びサブジェクト)が(ミスマッチまたは塩基対合していないヌクレオチドを考慮に入れて)最適に塩基対合する場合、クエリ配列に対する「パーセント相補性」は、2つの配列間の塩基対合の位置の数を、長さにわたるクエリ配列中の位置の総数で除し、100%を乗したものに等しい。
【0141】
パーセント同一性を計算するための配列の最適なアラインメントのための、様々なペアワイズまたは複数の配列アラインメントアルゴリズム及びプログラム、例えば、ClustalWまたはBasic Local Alignment Search Tool(BLAST(登録商標))などは、当該技術分野で既知であり、これらは、2つ以上のヌクレオチド間またはタンパク質配列間の配列同一性または類似性を比較するために使用することができる。他のアラインメント及び比較方法が当該技術分野で既知であり、2つの配列間のアラインメント及びパーセント同一性(上記のパーセント同一性の範囲を含む)は、ClustalWアルゴリズムで決定されるようなものであり得、例えば、Chenna R.et al.,“Multiple sequence alignment with the Clustal series of programs,”Nucleic Acids Research 31:3497-3500(2003);Thompson JD et al.,“Clustal W:Improving the sensitivity of progressive multiple sequence alignment through sequence weighting,position-specific gap penalties and weight matrix choice,”Nucleic Acids Research 22:4673-4680(1994);Larkin MA et al.,“Clustal W and Clustal X version 2.0,”Bioinformatics 23:2947-48(2007);及びAltschul,S.F.,Gish,W.,Miller,W.,Myers,E.W.& Lipman,D.J.(1990)”Basic local alignment search tool.”J.Mol.Biol.215:403-410(1990)(これらの全内容及び開示は、参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0142】
本明細書で使用される場合、第1の核酸分子は、温度及び溶液イオン強度の適切なin vitro及び/またはin vivo条件下、配列特異的逆平行法(すなわち、核酸が、相補的核酸を特異的に結合する)において、非共有相互作用(例えば、ワトソン-クリック塩基対合)を介して、第2の核酸分子を「ハイブリダイズ」をし得る。当該技術分野で既知の通り、標準的なワトソン-クリック塩基対合は、チミンとのアデニン対合、ウラシルとのアデニン対合、及びシトシン(C)とのグアニン(G)対合を含む[DNA、RNA]。さらに、2つのRNA分子(例えば、dsRNA)間のハイブリダイゼーションのために、グアニンがウラシルと塩基対合することも当該技術分野で既知である。例えば、G/U塩基対合は、mRNAのコドンとのtRNAアンチコドン塩基対合の文脈における遺伝コードの縮退(すなわち、冗長)に部分的に関与している。本開示の文脈において、本DNA標的化RNA分子のタンパク質結合セグメント(dsRNA二重鎖)のグアニンは、ウラシルに対して相補的とみなされ、逆もまた同様である。そのようなものであるから、G/U塩基対が、所与のヌクレオチド位置で、本DNA標的化RNA分子のタンパク質結合セグメント(dsRNA二重鎖)を作成することができる場合、位置は、非相補的であるとみなされないが、その代わりに、相補的であるとみなされる。
【0143】
ハイブリダイゼーション及び洗浄条件は、周知であり、Sambrook,J.,Fritsch,E.F.and Maniatis,T.Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor(1989)、特にその中のChapter 11とTable 11.1;及びSambrook,J.and Russell,W.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Third Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor(2001)で例示される。温度及びイオン強度の条件は、ハイブリダイゼーションの「ストリンジェンシー」を決定する。
【0144】
ハイブリダイゼーションは、2つの核酸が相補配列を含有するが、塩基間のミスマッチが起こり得ることを必要とする。2つの核酸間のハイブリダイゼーションに適切な条件は、当該技術分野で周知の変数である、核酸の長さ及び相補性の程度に依存する。2つのヌクレオチド配列間の相補性の程度が大きいほど、それらの配列を有する核酸のハイブリッドの融解温度(Tm)の値が大きくなる。短いストレッチの相補性(例えば、35以下のヌクレオチドにわたる相補性)を有する核酸間のハイブリダイゼーションの場合、ミスマッチの位置が重要となる(Sambrook et al.を参照)。通常は、ハイブリダイズ可能な核酸の長さは、少なくとも約10ヌクレオチドである。ハイブリダイズ可能な核酸の例示的な最小の長さは、少なくとも約15ヌクレオチド;少なくとも約20ヌクレオチド;少なくとも約22ヌクレオチド;少なくとも約25ヌクレオチド;及び少なくとも約30ヌクレオチドである。さらに、相補性の領域の長さ及び相補性の程度などの要因に従って、必要に応じて温度及び洗浄液の塩濃度が調整され得ることを、当業者は認識するであろう。
【0145】
ポリヌクレオチドの配列は、特異的にハイブリダイズ可能またはハイブリダイズ可能であるように、標的核酸の配列に対して100%相補的である必要はないことが、当該技術分野で理解されている。さらに、ポリヌクレオチドは、介在または隣接セグメントがハイブリダイゼーションイベント(例えば、ループ構造またはヘアピン構造)に関与しないように、1つ以上のセグメントにわたってハイブリダイズしてもよい。例えば、アンチセンス化合物の20ヌクレオチドのうちの18が標的領域に相補的であり、したがって、特異的にハイブリダイズすることになるアンチセンス核酸は、90パーセントの相補性を表すであろう。この例では、残りの非相補的ヌクレオチドは、クラスター化されるか、または相補的ヌクレオチドにはさまっている可能性があり、互いにまたは相補的ヌクレオチドに隣接している必要はない。核酸内の核酸配列の特定のストレッチ間のパーセント相補性は、日常的に、当該技術分野で既知のBLAST(登録商標)プログラム(ベーシックローカルアラインメント検索ツール)及びPowerBLASTプログラム(Altschul et al.,J.Mol.Biol.,1990,215,403-410;Zhang and Madden,Genome Res.,1997,7,649-656を参照)を使用して、または、Smith and Waterman(Adv.Appl.Math.,1981,2,482-489)のアルゴリズムを使用して、デフォルト設定を使用するGapプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package、Unix用バージョン8、Genetics Computer Group,University Research Park,Madison Wis.)を使用することにより、決定することができる。
【0146】
標的核酸
本明細書で使用される場合、「標的核酸」または「標的核酸分子」または「標的核酸配列」は、本明細書に記載の変異原による改変が望ましい、選択された核酸分子または核酸分子の選択された配列もしくは領域を指す。
【0147】
本明細書で使用される場合、「標的領域」または「標的化領域」は、変異原により改変される標的核酸の部分を指す。一態様では、標的領域は、ガイド核酸に対して100%相補的である。別の態様では、標的領域は、ガイド核酸に対して99%相補的である。別の態様では、標的領域は、ガイド核酸に対して98%相補的である。別の態様では、標的領域は、ガイド核酸に対して97%相補的である。別の態様では、標的領域は、ガイド核酸に対して96%相補的である。別の態様では、標的領域は、ガイド核酸に対して95%相補的である。別の態様では、標的領域は、ガイド核酸に対して94%相補的である。別の態様では、標的領域は、ガイド核酸に対して93%相補的である。別の態様では、標的領域は、ガイド核酸に対して92%相補的である。別の態様では、標的領域は、ガイド核酸に対して91%相補的である。別の態様では、標的領域は、ガイド核酸に対して90%相補的である。別の態様では、標的領域は、ガイド核酸に対して85%相補的である。別の態様では、標的領域は、ガイド核酸に対して80%相補的である。一態様では、標的領域は、ガイド核酸に100%相補的である核酸配列に隣接する。別の態様では、標的領域は、ガイド核酸に99%相補的である核酸配列に隣接する。別の態様では、標的領域は、ガイド核酸に98%相補的である核酸配列に隣接する。別の態様では、標的領域は、ガイド核酸に97%相補的である核酸配列に隣接する。別の態様では、標的領域は、ガイド核酸に96%相補的である核酸配列に隣接する。別の態様では、標的領域は、ガイド核酸に95%相補的である核酸配列に隣接する。別の態様では、標的領域は、ガイド核酸に94%相補的である核酸配列に隣接する。別の態様では、標的領域は、ガイド核酸に93%相補的である核酸配列に隣接する。別の態様では、標的領域は、ガイド核酸に92%相補的である核酸配列に隣接する。別の態様では、標的領域は、ガイド核酸に91%相補的である核酸配列に隣接する。別の態様では、標的領域は、ガイド核酸に90%相補的である核酸配列に隣接する。別の態様では、標的領域は、ガイド核酸に85%相補的である核酸配列に隣接する。別の態様では、標的領域は、ガイド核酸に80%相補的である核酸配列に隣接する。
【0148】
一態様では、標的領域は、少なくとも1つのPAM部位を含む。一態様では、標的領域は、少なくとも1つのPAM部位を含む核酸配列に隣接する。別の態様では、標的領域は、少なくとも1つのPAM部位から5ヌクレオチド以内にある。さらなる態様では、標的領域は、少なくとも1つのPAM部位から10ヌクレオチド以内にある。別の態様では、標的領域は、少なくとも1つのPAM部位から15ヌクレオチド以内にある。別の態様では、標的領域は、少なくとも1つのPAM部位から20ヌクレオチド以内にある。別の態様では、標的領域は、少なくとも1つのPAM部位から25ヌクレオチド以内にある。別の態様では、標的領域は、少なくとも1つのPAM部位から30ヌクレオチド以内にある。
【0149】
一態様では、標的核酸は、RNAを含む。別の態様では、標的核酸は、DNAを含む。一態様では、標的核酸は、1本鎖である。別の態様では、標的核酸は、2本鎖である。一態様では、標的核酸は、1本鎖RNAを含む。一態様では、標的核酸は、1本鎖DNAを含む。一態様では、標的核酸は、2本鎖RNAを含む。一態様では、標的核酸は、2本鎖DNAを含む。一態様では、標的核酸は、ゲノムDNAを含む。一態様では、標的核酸は、核ゲノム内に位置する。一態様では、標的核酸は、染色体DNAを含む。一態様では、標的核酸は、プラスミドDNAを含む。一態様では、標的核酸は、プラスミド内に位置する。一態様では、標的核酸は、ミトコンドリアDNAを含む。一態様では、標的核酸は、ミトコンドリアゲノム内に位置する。一態様では、標的核酸は、色素体DNAを含む。一態様では、標的核酸は、色素体ゲノム内に位置する。一態様では、標的核酸は、葉緑体DNAを含む。一態様では、標的核酸は、葉緑体ゲノム内に位置する。一態様では、標的核酸は、核ゲノム、ミトコンドリアゲノム、及び色素体ゲノムからなる群より選択されるゲノム内に位置する。
【0150】
一態様では、標的核酸は、遺伝子をコードする。本明細書で使用される場合、「遺伝子」は、機能単位を生じ得るポリヌクレオチド(例えば、限定されないが、例えば、タンパク質、または非コードRNA分子)を指す。遺伝子は、プロモーター、エンハンサー配列、リーダー配列、転写開始部位、転写停止部位、ポリアデニル化部位、1つ以上のエクソン、1つ以上のイントロン、5’-UTR、3’-UTR、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。「遺伝子配列」は、プロモーター、エンハンサー配列、リーダー配列、転写開始部位、転写停止部位、ポリアデニル化部位、1つ以上のエクソン、1つ以上のイントロン、5’-UTR、3’-UTR、またはそれらの任意の組み合わせをコードするポリヌクレオチド配列を含み得る。一態様では、遺伝子は、非タンパク質コードRNA分子またはその前駆体をコードする。別の態様では、遺伝子は、タンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、標的核酸は、プロモーター、エンハンサー配列、リーダー配列、転写開始部位、転写停止部位、ポリアデニル化部位、エクソン、イントロン、スプライス部位、5’-UTR、3’-UTR、タンパク質コード配列、非タンパク質コード配列、miRNA、pre-miRNA、及びmiRNA結合部位からなる群より選択される。
【0151】
非タンパク質コードRNA分子の非限定例としては、マイクロRNA(miRNA)、miRNA前駆体(pre-miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子RNA(長さ18~26nt)及びそれをコードする前駆体、異質染色質siRNA(hc-siRNA)、Piwi相互作用RNA(piRNA)、ヘアピン2本鎖RNA(ヘアピンdsRNA)、トランス作用型siRNA(ta-siRNA)、天然に存在するアンチセンスsiRNA(nat-siRNA)、CRISPR RNA(crRNA)、トレーサーRNA(tracrRNA)、ガイドRNA(gRNA)、及び単一ガイドRNA(sgRNA)が挙げられる。
【0152】
植物における標的核酸の非限定例としては、Brachytic1、Brachytic2、Brachytic3、開花遺伝子座T、Rgh1、Rsp1、Rsp2、Rsp3、5-エノールピルビルシキマート-3-ホスファートシンターゼ(EPSPS)、アセトヒドロキシ酸シンターゼ、ジヒドロプテロイン酸シンターゼ、フィトエンデサチュラーゼ(PDS)、プロトポルフィリンIXオキシゲナーゼ(PPO)、パラ-アミノ安息香酸シンターゼ、1-デオキシ-D-キシルロース5-リン酸(DOXP)シンターゼ、ジヒドロプテロイン酸(DHP)シンターゼ、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、光化学系IIのD1タンパク質、モノオキシゲナーゼ、シトクロームP450、セルロースシンターゼ、ベータ-チューブリン、RUBISCO、翻訳開始因子、フィトエンデサチュラーゼ2本鎖DNAアデノシントリポリホスファターゼ(ddATP)、脂肪酸デサチュラーゼ2(FAD2)、ジベレリン20オキシダーゼ(GA20ox)、アセチル-CoAカルボキシラーゼ(ACC)、グルタミンシンテターゼ(GS)、p-ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ(HPPD)、ヒドロキシメチルジヒドロプテリンピロホスホキナーゼ(DHPS)、オーキシン/インドール-3-酢酸(AUX/IAA)、Waxy(Wx)、アセト乳酸シンターゼ(ALS)、OsERF922、OsSWEET13、OsSWEET14、TaMLO、GL2、ベタインアルデヒドデヒドロゲナーゼ(BADH2)、Matrilineal(MTL)、Frigida、Grain Weight 2(GW2)、Gn1a、DEP1、GS3、SlMLO1、SlJAZ2、CsLOB1、EDR1、Self-Pruning 5G(SP5G)、Slagamous-Like 6(SlAGL6)、温度感受性遺伝子雄性不稔5遺伝子(TMS5)、OsMATL、ARGOS8、真核生物の翻訳開始因子4E(eIF4E)、顆粒結合デンプンシンターゼ(GBSS)、または液胞インベルターゼ(VInv)をコードする遺伝子が挙げられる。
【0153】
細胞
一態様では、標的核酸は、細胞内にある。別の態様では、標的核酸は、原核細胞内にある。一態様では、原核細胞は、Acidobacteria、Actinobacteria、Aquificae、Armatimonadetes、Bacteroidetes、Caldiserica、Chlamydie、Chlorobi、Chloroflexi、Chrysiogenetes、Coprothermobacterota、Cyanobacteria、Deferribacteres、Deinococcus-Thermus、Dictyoglomi、Elusimicrobia、Fibrobacteres、Firmicutes、Fusobacteria、Gemmatimonadetes、Lentisphaerae、Nitrospirae、Planctomycetes、Proteobacteria、Spirochaetes、Synergistetes、Tenericutes、Thermodesulfobacteria、Thermotogae、及びVerrucomicrobiaからなる群より選択される門の細胞である。別の態様では、原核細胞は、Escherichia coli細胞である。別の態様では、原核細胞は、Escherichia、Agrobacterium、Rhizobium、Sinorhizobium、及びStaphylococcusからなる群より選択される属から選択される。別の態様では、原核細胞は、Lactobacillus、Bifidobacterium、Streptococcus、Enterococcus、Escherichia、及びBacillusからなる群より選択される属から選択される。
【0154】
別の態様では、標的核酸は、真核細胞内にある。さらなる態様では、真核細胞は、ex vivo細胞である。別の態様では、真核細胞は、酵母細胞である。別の態様では、真核細胞は、植物細胞である。別の態様では、真核細胞は、培養中の植物細胞である。別の態様では、真核細胞は、被子植物の植物細胞である。別の態様では、真核細胞は、裸子植物の植物細胞である。別の態様では、真核細胞は、単子葉植物の植物細胞である。別の態様では、真核細胞は、双子葉植物の植物細胞である。別の態様では、真核細胞は、トウモロコシ細胞である。別の態様では、真核細胞は、イネ細胞である。別の態様では、真核細胞は、モロコシ細胞である。別の態様では、真核細胞は、コムギ細胞である。別の態様では、真核細胞は、ナタネ細胞である。別の態様では、真核細胞は、ムラサキウマゴヤシ細胞である。別の態様では、真核細胞は、ダイズ細胞である。別の態様では、真核細胞は、ワタ細胞である。別の態様では、真核細胞は、トマト細胞である。別の態様では、真核細胞は、ジャガイモ細胞である。さらなる態様では、真核細胞は、キュウリ細胞である。別の態様では、真核細胞は、キビ細胞である。別の態様では、真核細胞は、オオムギ細胞である。別の態様では、真核細胞は、アマ細胞である。別の態様では、真核細胞は、スイカ細胞である。別の態様では、真核細胞は、ブラックベリー細胞である。別の態様では、真核細胞は、イチゴ細胞である。別の態様では、真核細胞は、ウリ科植物細胞である。別の態様では、真核細胞は、Brassica細胞である。別の態様では、真核細胞は、シバ細胞である。別の態様では、真核細胞は、Setaria細胞である。別の態様では、真核細胞は、Arabidopsis細胞である。さらなる態様では、真核細胞は、藻類細胞である。
【0155】
一態様では、植物細胞は、表皮細胞である。別の態様では、植物細胞は、気孔細胞である。別の態様では、植物細胞は、トリコーム細胞である。別の態様では、植物細胞は、根細胞である。別の態様では、植物細胞は、葉細胞である。別の態様では、植物細胞は、カルス細胞である。別の態様では、植物細胞は、プロトプラスト細胞である。別の態様では、植物細胞は、花粉細胞である。別の態様では、植物細胞は、卵巣細胞である。別の態様では、植物細胞は、花細胞である。別の態様では、植物細胞は、分裂組織細胞である。別の態様では、植物細胞は、内胚乳細胞である。別の態様では、植物細胞は、生殖材料を含まず、植物の自然な生殖を媒介しない。別の態様では、植物細胞は、体細胞植物細胞である。
【0156】
追加で提供される植物細胞、組織、及び器官は、種子、果実、葉、子葉、胚軸、分裂組織、胚、内胚乳、根、芽、茎、鞘、花、花序、柄、小花梗、花柱、柱頭、花托、花弁、萼片、花粉、葯、花糸、子房、胚珠、果皮、篩部、及び維管束組織に由来し得る。
【0157】
さらなる態様では、真核細胞は、動物細胞である。別の態様では、真核細胞は、培養中の動物細胞である。さらなる態様では、真核細胞は、ヒト細胞である。さらなる態様では、真核細胞は、培養中のヒト細胞である。さらなる態様では、真核細胞は、体細胞ヒト細胞である。さらなる態様では、真核細胞は、がん細胞である。さらなる態様では、真核細胞は、哺乳動物細胞である。さらなる態様では、真核細胞は、マウス細胞である。さらなる態様では、真核細胞は、ブタ細胞である。さらなる態様では、真核細胞は、ウシ科細胞である。さらなる態様では、真核細胞は、鳥類細胞である。さらなる態様では、真核細胞は、爬虫類細胞である。さらなる態様では、真核細胞は、両生類細胞である。さらなる態様では、真核細胞は、昆虫細胞である。さらなる態様では、真核細胞は、節足動物細胞である。さらなる態様では、真核細胞は、頭足類細胞である。さらなる態様では、真核細胞は、クモ形類細胞である。さらなる態様では、真核細胞は、軟体動物細胞である。さらなる態様では、真核細胞は、線虫細胞である。さらなる態様では、真核細胞は、魚類細胞である。
【0158】
キット
一態様では、本開示は、標的核酸に標的化改変を誘発するためのキットを提供し、キットは、(a)触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼ、または触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸、及び、(b)少なくとも1つの化学的変異原、を含む。
【0159】
一態様では、キットは、さらに、ガイド核酸を含む。別の態様では、キットは、さらに、ガイドRNAを含む。別の態様では、キットは、さらに、ガイドDNAを含む。別の態様では、キットは、さらに、DNA及びRNAを含むガイド核酸を含む。別の態様では、キットは、ガイド核酸をコードする核酸を含む。さらなる態様では、キットは、ガイドRNAをコードする核酸を含む。一態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸は、さらに、ガイド核酸をコードする核酸配列を含む。
【0160】
一態様では、キットは、リボヌクレオタンパク質を含む。一態様では、キットは、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼ及びガイド核酸を含むリボヌクレオタンパク質を含む。
【0161】
別の態様では、キットは、少なくとも1つの細菌細胞を含む。一態様では、キットは、少なくとも1つのAgrobacterium細胞を含む。一態様では、キットは、少なくとも1つのバクテリオファージを含む。別の態様では、キットは、細菌成長培地を含む。別の態様では、キットは、Agrobacterium成長培地を含む。
【0162】
一態様では、キットは、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼを再構成するための少なくとも1つの希釈剤を含む。別の態様では、キットは、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼを希釈するための少なくとも1つの希釈剤を含む。別の態様では、キットは、化学的変異原を再構成するための少なくとも1つの希釈剤を含む。別の態様では、キットは、化学的変異原を希釈するための少なくとも1つの希釈剤を含む。
【0163】
一態様では、キットは、少なくとも1つの緩衝液を含む。別の態様では、キットは、少なくとも1つの洗浄緩衝液を含む。
【0164】
一態様では、キットで提供される試薬は、in vivoで触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼの生成を可能にする。一態様では、キットで提供される試薬は、in vitroで触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼの生成を可能にする。一態様では、キットで提供される試薬は、ex vivoで触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼの生成を可能にする。
【0165】
一態様では、キットで提供される試薬は、リボヌクレオタンパク質の細胞への導入を可能にする。別の態様では、キットで提供される試薬は、細胞への触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼ、または触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸の導入を可能にする。一態様では、キットで提供される試薬は、ガイド核酸の細胞への導入を可能にする。
【0166】
試薬、希釈剤、緩衝液、及び洗浄緩衝液は、水、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、マグネシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、ウシ血清アルブミン(BSA)、ナトリウム、塩化ナトリウム、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセロール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス)、トリス-HCl、酢酸、酢酸塩、ホウ酸、グリシン、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、グリシン、ジチオスレイトール(DTT)、Triton(登録商標)X-100、カリウム、リン酸、リン酸カリウム、酢酸カリウム、アンモニア、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸塩、塩酸、リンゴ酸、マレイン酸、エタノール、及びメタノールを含み得るが、これらに限定されない。
【0167】
また、限定されないが、本明細書で提供される試薬は、送達粒子、送達小胞、ウイルスベクター、ナノ粒子、カチオン性脂質、ポリカチオン、Agrobacterium、及びタンパク質を含み得る。試薬のさらなる非限定例としては、Transfectam(商標)及びLipofectin(商標)が挙げられる。試薬に含まれるタンパク質は、逆転写酵素、RNAポリメラーゼI、RNAポリメラーゼII、RNAポリメラーゼIII、RNase A、及びRNase Hを含み得るが、これらに限定されない。
【0168】
一態様では、試薬、希釈剤、緩衝液、または洗浄緩衝液は、3~12のpHを含む。別の態様では、試薬、希釈剤、緩衝液、または洗浄緩衝液は、6~8のpHを含む。別の態様では、試薬、希釈剤、緩衝液、または洗浄緩衝液は、少なくとも3のpHを含む。別の態様では、試薬、希釈剤、緩衝液、または洗浄緩衝液は、少なくとも4のpHを含む。別の態様では、試薬、希釈剤、緩衝液、または洗浄緩衝液は、少なくとも5のpHを含む。別の態様では、試薬、希釈剤、緩衝液、または洗浄緩衝液は、少なくとも6のpHを含む。別の態様では、試薬、希釈剤、緩衝液、または洗浄緩衝液は、少なくとも7のpHを含む。別の態様では、試薬、希釈剤、緩衝液、または洗浄緩衝液は、少なくとも8のpHを含む。別の態様では、試薬、希釈剤、緩衝液、または洗浄緩衝液は、少なくとも9のpHを含む。別の態様では、試薬、希釈剤、緩衝液、または洗浄緩衝液は、少なくとも10のpHを含む。別の態様では、試薬、希釈剤、緩衝液、または洗浄緩衝液は、少なくとも11のpHを含む。
【0169】
一態様では、キットで提供される試薬は、in vivoで触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸の発現を可能にする。一態様では、キットで提供される試薬は、in vitroで触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸の発現を可能にする。一態様では、キットで提供される試薬は、ex vivoで触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸の発現を可能にする。
【0170】
一態様では、キットは、少なくとも1つの対照発現ベクターを含む。
【0171】
プロモーター
一態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸は、プロモーターをコードする核酸配列に作動可能に連結されている。別の態様では、ガイド核酸をコードする核酸配列は、プロモーターをコードする核酸配列に作動可能に連結されている。一態様では、プロモーターは、作動可能に連結されている配列に対して異種である。
【0172】
「作動可能に連結されている」という用語は、プロモーターなどが、少なくとも特定の組織(複数可)、発生段階(複数可)、及び/または状態(複数可)において、関連する転写可能なDNA配列またはコード配列の転写及び発現を開始し、支援し、影響を与え、引き起こし、及び/または促進するように動作するように、プロモーターまたは他の調節エレメントと、関連する転写可能なDNA配列または遺伝子のコード配列(もしくは導入遺伝子)の間の機能的な連結を指す。プロモーターに加えて、調節エレメントは、細胞内の遺伝子または転写可能なDNA配列の発現を調節または可能にするのに適する、必要な、または好ましい、エンハンサー、リーダー、転写開始部位(TSS)、リンカー、5’及び3’非翻訳領域(UTR)、イントロン、ポリアデニル化シグナル、ならびに終結領域または配列などを含むが、これらに限定されない。そのような追加の調節エレメント(複数可)は、任意であり、遺伝子または転写可能なDNA配列の発現を強化または最適化するために使用することができる。
【0173】
当該技術分野で一般に理解されるように、「プロモーター」という用語は、RNAポリメラーゼ結合部位、転写開始部位、及び/またはTATAボックスを含有し且つ関連する転写可能なポリヌクレオチド配列及び/または遺伝子(もしくは導入遺伝子)の転写及び発現を支援または促進するDNA配列を指す。プロモーターは、既知のまたは天然に存在するプロモーター配列または他のプロモーター配列から合成的に生成、変更、または誘導することができる。プロモーターは、2つ以上の異種配列の組み合わせを含むキメラプロモーターも含み得る。したがって、本出願のプロモーターは、組成が類似しているが、既知のまたは本明細書で提供される他のプロモーター配列(複数可)と同一ではないプロモーター配列の多様体を含み得る。プロモーターに作動可能に連結されている関連するコードまたは転写可能配列もしくは遺伝子(導入遺伝子を含む)の発現のパターンに関する様々な基準、例えば、構成的、発生的、組織特異的、誘導性など、に従って、プロモーターを分類することができる。生物の全てまたはほとんどの組織で発現を引き起こすプロモーターは、「構成的」プロモーターと呼ばれる。発達の特定の期間または段階の間に発現を引き起こすプロモーターは、「発生」プロモーターと呼ばれる。生物の他の組織と比較して、生物の特定の組織において強化された発現を引き起こすプロモーターは、「組織優先」プロモーターと呼ばれる。したがって、「組織優先」プロモーターは、生物の特定の組織(複数可)において比較的高いまたは優先的な発現を引き起こすが、生物の他の組織(複数可)における発現のレベルがより低い。生物の特定の組織(複数可)内で発現し、他の組織で発現がほとんどないかまたは全くないプロモーターは、「組織特異的」プロモーターと呼ばれる。「誘導性」プロモーターは、環境刺激、例えば、熱、寒さ、干ばつ、光、または他の刺激、例えば、創傷または化学用途に応答して、転写を開始させるプロモーターである。プロモーターは、異種、相同、キメラ、合成などの起源の観点から分類することもできる。
【0174】
本明細書で使用される場合、プロモーターに関する「異種」という用語は、関連する転写可能なDNA配列、コード配列または遺伝子(もしくは導入遺伝子)に対して異なる起源を有し、及び/あるいは形質転換されるべき植物種において天然に存在しない、プロモーター配列である。「異種」という用語は、より広くは、そのような組み合わせが人工であり且つ自然界では通常見られない場合、プロモーター及び関連する転写可能なDNA配列、コード配列または遺伝子などの2つ以上のDNA分子または配列の組み合わせを指し得る。
【0175】
一態様では、本明細書で提供されるプロモーターは、構成的プロモーターである。別の態様では、本明細書で提供されるプロモーターは、組織特異的プロモーターである。さらなる態様では、本明細書で提供されるプロモーターは、組織優先プロモーターである。さらに別の態様では、本明細書で提供されるプロモーターは、誘導性プロモーターである。一態様では、本明細書で提供されるプロモーターは、構成的プロモーター、組織特異的プロモーター、組織優先プロモーター、及び誘導性プロモーターからなる群より選択される。
【0176】
RNAポリメラーゼIII(Pol III)プロモーターは、ガイド核酸を含む非タンパク質コーディングRNA分子の発現を促進するために使用することができる。一態様では、本明細書で提供されるプロモーターは、Pol IIIプロモーターである。別の態様では、本明細書で提供されるPol IIIプロモーターは、非タンパク質コーディングRNAをコードする核酸分子に作動可能に連結されている。さらに別の態様では、本明細書で提供されるPol IIIプロモーターは、ガイドRNAをコードする核酸分子に作動可能に連結されている。さらに別の態様では、本明細書で提供されるPol IIIプロモーターは、単一ガイドRNAをコードする核酸分子に作動可能に連結されている。さらなる態様では、本明細書で提供されるPol IIIプロモーターは、CRISPR RNA(crRNA)をコードする核酸分子に作動可能に連結されている。別の態様では、本明細書で提供されるPol IIIプロモーターは、トレーサーRNA(tracrRNA)をコードする核酸分子に作動可能に連結されている。
【0177】
Pol IIIプロモーターの非限定例としては、U6プロモーター、H1プロモーター、5Sプロモーター、アデノウイルス2(Ad2)VAIプロモーター、tRNAプロモーター、及び7SKプロモーターが挙げられる。例えば、Schramm and Hernandez,2002,Genes & Development,16:2593-2620(全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。一態様では、本明細書で提供されるPol IIIプロモーターは、U6プロモーター、H1プロモーター、5Sプロモーター、アデノウイルス2(Ad2)VAIプロモーター、tRNAプロモーター、及び7SKプロモーターからなる群より選択される。別の態様では、本明細書で提供されるガイドRNAは、U6プロモーター、H1プロモーター、5Sプロモーター、アデノウイルス2(Ad2)VAIプロモーター、tRNAプロモーター、及び7SKプロモーターからなる群より選択されるプロモーターに作動可能に連結されている。別の態様では、本明細書で提供される単一ガイドRNAは、U6プロモーター、H1プロモーター、5Sプロモーター、アデノウイルス2(Ad2)VAIプロモーター、tRNAプロモーター、及び7SKプロモーターからなる群より選択されるプロモーターに作動可能に連結されている。別の態様では、本明細書で提供されるCRISPR RNAは、U6プロモーター、H1プロモーター、5Sプロモーター、アデノウイルス2(Ad2)VAIプロモーター、tRNAプロモーター、及び7SKプロモーターからなる群より選択されるプロモーターに作動可能に連結されている。別の態様では、本明細書で提供されるトレーサーRNAは、U6プロモーター、H1プロモーター、5Sプロモーター、アデノウイルス2(Ad2)VAIプロモーター、tRNAプロモーター、及び7SKプロモーターからなる群より選択されるプロモーターに作動可能に連結されている。
【0178】
一態様では、本明細書で提供されるプロモーターは、ダリアモザイクウイルス(DaMV)プロモーターである。別の態様では、本明細書で提供されるプロモーターは、U6プロモーターである。別の態様では、本明細書で提供されるプロモーターは、アクチンプロモーターである。
【0179】
本明細書で使用することができるプロモーターについて記載する例としては、米国特許第6,437,217号(トウモロコシRS81プロモーター)、米国特許第5,641,876号(コメアクチンプロモーター)、米国特許第6,426,446号(トウモロコシRS324プロモーター)、米国特許第6,429,362号(トウモロコシPR-1プロモーター)、米国特許第6,232,526号(トウモロコシA3プロモーター)、米国特許第6,177,611号(構成的トウモロコシプロモーター)、米国特許第5,322,938号、同第5,352,605号、同第5,359,142号、及び同第5,530,196号(35Sプロモーター)、米国特許第6,433,252号(トウモロコシL3オレオシンプロモーター)、米国特許第6,429,357号(コメアクチン2プロモーター及びコメアクチン2イントロン)、米国特許第5,837,848号(根特異的プロモーター)、米国特許第6,294,714号(光誘導性プロモーター)、米国特許第6,140,078号(塩誘導性プロモーター)、米国特許第6,252,138号(病原体誘導性プロモーター)、米国特許第6,175,060号(リン欠乏症誘導性プロモーター)、米国特許第6,635,806号(ガンマコイキシンプロモーター)、ならびに米国特許出願第09/757,089号(トウモロコシ葉緑体アルドラーゼプロモーター)が挙げられるが、これらに限定されない。用途を見つけることができる追加のプロモーターは、ノパリンシンターゼ(NOS)プロモーター(Ebert et al.、1987)、オクトピンシンターゼ(OCS)プロモーター(Agrobacterium tumefaciensの腫瘍誘発プラスミドで実施される)、カウリモウイルスプロモーター、例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)19Sプロモーター(Lawton et al.,Plant Molecular Biology(1987)9:315-324)、CaMV 35Sプロモーター(Odell et al.,Nature(1985)313:810-812)、ゴマノハグサモザイクウイルス35Sプロモーター(米国特許第6,051,753号;同第5,378,619号)、スクロースシンターゼプロモーター(Yang and Russell,Proceedings of the National Academy of Sciences,USA(1990)87:4144-4148)、R遺伝子複合体プロモーター(Chandler et al.,Plant Cell(1989)1:1175-1183)、及びクロロフィルa/b結合タンパク質遺伝子プロモーター、PC1SV(米国特許第5,850,019号)、ならびにAGRtu.nos(GenBankアクセッションV00087;Depicker et al.,Journal of Molecular and Applied Genetics(1982)1:561-573;Bevan et al.,1983)プロモーターである。
【0180】
プロモーターハイブリッドは、転写活性を強化するために(米国特許第5,106,739号を参照)、または望ましい転写活性、誘導性及び組織特異性、もしくは発育特異性を組み合わせるために、使用及び構成することもできる。植物で機能するプロモーターは、誘導性、ウイルス性、合成性、構成的、時間的調節、空間的調節、及び時空間的調節であるプロモーターを含むが、これらに限定されない。組織強化、組織特異的、または発生的に調節される他のプロモーターもまた、当該分野で既知であり、本開示の実施において有用性を有することが想定される。
【0181】
形質転換/トランスフェクション
本明細書で提供される任意の方法は、目的の細胞(例えば、真核細胞、原核細胞)の一過性トランスフェクションまたは安定した形質転換を含み得る。一態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸分子は、安定して形質転換される。別の態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸分子は、一過性にトランスフェクトされる。一態様では、ガイド核酸をコードする核酸分子は、安定して形質転換される。別の態様では、ガイド核酸をコードする核酸分子は、一過性にトランスフェクトされる。
【0182】
組み換え核酸分子または構築物で細胞を形質転換するための多数の方法が、当該技術分野で既知であり、これは、本出願の方法に従って使用することができる。当該技術分野で既知の細胞の形質転換のための任意の好適な方法または手法を、本方法に従って使用することができる。植物の形質転換のための効果的な方法は、Agrobacterium媒介またはRhizobium媒介形質転換などの細菌媒介形質転換、及び微小発射体衝撃媒介形質転換を含む。細菌媒介形質転換または微小発射体衝撃により形質転換ベクターで外植片を形質転換し、次に、それらの外植片を培養して、トランスジェニック植物を再生または発育させるための様々な方法が当該技術分野で既知である。
【0183】
一態様では、方法は、Agrobacterium媒介形質転換により、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼ、または触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸を、細胞に提供することを含む。一態様では、方法は、ポリエチレングリコール媒介形質転換により、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼ、または触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸を、細胞に提供することを含む。一態様では、方法は、バイオリスティック媒介形質転換により、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼ、または触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸を、細胞に提供することを含む。一態様では、方法は、リポソーム媒介トランスフェクションにより、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼ、または触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸を、細胞に提供することを含む。一態様では、方法は、ウイルス形質導入により、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼ、または触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸を、細胞に提供することを含む。一態様では、方法は、1つ以上の送達粒子の使用を介して、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼ、または触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸を細胞に提供することを含む。一態様では、方法は、マイクロインジェクションにより、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼ、または触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸を、細胞に提供することを含む。一態様では、方法は、エレクトロポレーションにより、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼ、または触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸を、細胞に提供することを含む。
【0184】
一態様では、方法は、Agrobacterium媒介形質転換により、ガイド核酸、またはガイド核酸をコードする核酸を、細胞に提供することを含む。一態様では、方法は、ポリエチレングリコール媒介形質転換により、ガイド核酸、またはガイド核酸をコードする核酸を、細胞に提供することを含む。一態様では、方法は、バイオリスティック形質転換により、ガイド核酸、またはガイド核酸をコードする核酸を、細胞に提供することを含む。一態様では、方法は、リポソーム媒介トランスフェクションにより、ガイド核酸、またはガイド核酸をコードする核酸を、細胞に提供することを含む。一態様では、方法は、ウイルス形質導入により、ガイド核酸、またはガイド核酸をコードする核酸を、細胞に提供することを含む。一態様では、方法は、1つ以上の送達粒子の使用を介して、ガイド核酸、またはガイド核酸をコードする核酸を細胞に提供することを含む。一態様では、方法は、マイクロインジェクションにより、ガイド核酸、またはガイド核酸をコードする核酸を、細胞に提供することを含む。一態様では、方法は、エレクトロポレーションにより、ガイド核酸、またはガイド核酸をコードする核酸を、細胞に提供することを含む。
【0185】
一態様では、リボヌクレオタンパク質は、Agrobacterium媒介形質転換、ポリエチレングリコール媒介形質転換、バイオリスティック形質転換、リポソーム媒介トランスフェクション、ウイルス形質導入、1つ以上の送達粒子の使用、マイクロインジェクション、及びエレクトロポレーションからなる群より選択される方法により細胞に提供される。
【0186】
形質転換のための他の方法、例えば、減圧浸潤、圧力、超音波処理、及び炭化ケイ素繊維撹拌は、また、当該技術分野で既知であり、本明細書で提供される任意の方法で使用するために想定される。
【0187】
細胞を形質転換する方法は、当業者らに周知である。例えば、組み換えDNAでコーティングされた粒子を用いる微小発射体衝撃(例えば、バイオリスティック形質転換)により、植物細胞を形質転換するための特定の使用説明書は、米国特許第5,550,318号;同第5,538,880号;同第6,160,208号;同第6,399,861号;及び同第6,153,812号に見出だされ、Agrobacterium媒介形質転換は、米国特許第5,159,135号;同第5,824,877号;同第5,591,616号;同第6,384,301号;同第5,750,871号;同第5,463,174号;及び同第5,188,958号(これらの全ては、参照により本明細書に組み込まれる)に記載される。植物を形質転換するための追加の方法は、例えば、Compendium of Transgenic Crop Plants(2009)Blackwell Publishingに見出すことができる。当業者らに既知の任意の適切な方法は、本明細書で提供される核酸分子のいずれかで植物細胞を形質転換するために使用することができる。
【0188】
リポフェクションは、例えば、米国特許第5,049,386号、同第4,946,787号、及び同第4,897,355号に記載され、リポフェクション試薬は、市販されている(例えば、Transfectam(商標)及びLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションに適するカチオン性及び中性脂質は、Felgner、WO91/17424;WO91/16024のものを含む。送達は、細胞(例えば、in vitroもしくはex vivo投与)または標的組織(例えば、in vivo投与)への送達であり得る。
【0189】
核酸分子またはタンパク質のうちの1つ以上の要素を発現させるための送達ビヒクル、ベクター、粒子、ナノ粒子、製剤、及びそれらの構成成分は、WO2014/093622(PCT/US2013/074667)で使用される通りである。一態様では、核酸分子またはタンパク質を細胞に提供する方法は、送達粒子を介した送達を含む。一態様では、核酸分子またはタンパク質を細胞に提供する方法は、送達小胞を介した送達を含む。一態様では、送達小胞は、エクソソーム及びリポソームからなる群より選択される。一態様では、核酸分子またはタンパク質を細胞に提供する方法は、ウイルスベクターを介した送達を含む。一態様では、ウイルスベクターは、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、及びアデノ随伴ウイルスベクターからなる群より選択される。別の態様では、核酸分子またはタンパク質を細胞に提供する方法は、ナノ粒子を介した送達を含む。一態様では、核酸分子またはタンパク質を細胞に提供する方法は、マイクロインジェクションを含む。一態様では、核酸分子またはタンパク質を細胞に提供する方法は、ポリカチオンを含む。一態様では、核酸分子またはタンパク質を細胞に提供する方法は、カチオン性オリゴペプチドを含む。
【0190】
一態様では、送達粒子は、エクソソーム、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ナノ粒子、ポリカチオン、及びカチオン性オリゴペプチドからなる群より選択される。一態様では、本明細書で提供される方法は、1つ以上の送達粒子の使用を含む。別の態様では、本明細書で提供される方法は、2つ以上の送達粒子の使用を含む。別の態様では、本明細書で提供される方法は、3つ以上の送達粒子の使用を含む。
【0191】
植物細胞内へのタンパク質、核酸、変異原、及びリボヌクレオタンパク質の移動を容易にする好適な薬剤は、植物の外側の透過性を増加させるか、またはオリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、タンパク質、もしくはリボヌクレオタンパク質への植物細胞の透過性を増加させる薬剤を含む。組成物の植物細胞への移動を容易にするそのような薬剤は、化学的薬剤、もしくは物理的薬剤、またはそれらの組み合わせを含む。調整用の化学薬品は、(a)界面活性剤、(b)有機溶媒または有機溶媒の水溶液もしくは水性混合物、(c)酸化剤、(e)酸、(f)塩基、(g)油、(h)酵素、あるいはそれらの組み合わせを含む。
【0192】
ポリヌクレオチドにより浸透するように植物を調整するのに有用な有機溶媒は、DMSO、DMF、ピリジン、N-ピロリジン、ヘキサメチルホスホルアミド、アセトニトリル、ジオキサン、ポリプロピレングリコール、水と混和性があるかまたは非水系でホスホヌクレオチドを溶解することになる(例えば、合成反応で使用される)他の溶媒を含む。界面活性剤または乳化剤を含むまたは含まない天然由来の油または合成油を使用することができ、例えば、植物由来の油、作物油(例えば、www.herbicide.adjuvants.comで、オンラインで公開されている9th Compendium of Herbicide Adjuvantsに列挙のもの)、例えば、パラフィン系オイル、脂肪酸エステル、またはポリエチレンイミンもしくはN-ピロリジンなどのアミドもしくはポリアミンで修飾された短鎖分子を有する油、を使用することができる。
【0193】
有用な界面活性剤の例としては、脂肪酸のナトリウム塩またはリチウム塩(例えば、獣脂または獣脂アミンまたはリン脂質)及び有機シリコーン界面活性剤が挙げられる。他の有用な界面活性剤は、非イオン性有機シリコーン界面活性剤、例えば、トリシロキサンエトキシラート界面活性剤、またはシリコーンポリエーテルコポリマー、例えば、ポリアルキレンオキシド修飾ヘプタメチルトリシロキサンとアリルオキシポリプロピレングリコールメチルエーテルのコポリマー(Silwet(登録商標)L-77として市販)を含む有機シリコーン界面活性剤を含む。
【0194】
有用な物理的作用物質は、(a)カーボランダム、コランダム、砂、方解石、軽石、ガーネットなどの研磨剤、(b)カーボンナノチューブなどのナノ粒子、または(c)物理的力、を含み得る。カーボンナノチューブは、Kam et al.(2004)Am.Chem.Soc,126(22):6850-6851、Liu et al.(2009)Nano Lett,9(3):1007-1010、及びKhodakovskaya et al.(2009)ACS Nano,3(10):3221-3227により開示される。物理的作用物質は、加熱、冷却、正圧の適用、または超音波処理を含み得る。方法の実施形態は、任意に、インキュベーションステップ、中和ステップ(例えば、酸、塩基、もしくは酸化剤を中和するか、または酵素を不活化する)、すすぎステップ、またはこれらの組み合わせを含み得る。本発明の方法は、さらに、特定の遺伝子のサイレンシングのために効果を強化している他の薬剤の適用を含み得る。例えば、ポリヌクレオチドは、除草剤耐性を提供する遺伝子を調節するように設計される場合、その後の除草剤の適用は、除草剤の有効性に劇的な影響を及ぼし得る。
【0195】
ポリヌクレオチドによる浸透に対する植物細胞の実験用調整のための手段は、例えば、化学薬品の適用、酵素処理、加熱もしくは冷却、正圧もしくは負圧による処理、または超音波処理を含む。圃場の植物を調整するための薬剤は、界面活性剤及び塩などの化学薬品を含む。
【0196】
一態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼ、または触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸が、in vivoで細胞に提供される。一態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼ、または触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸が、in vitroで細胞に提供される。一態様では、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼ、または触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸が、ex vivoで細胞に提供される。
【0197】
一態様では、ガイド核酸、またはガイド核酸をコードする核酸は、in vivoで細胞に提供される。一態様では、ガイド核酸、またはガイド核酸をコードする核酸は、in vitroで細胞に提供される。一態様では、ガイド核酸、またはガイド核酸をコードする核酸は、ex vivoで細胞に提供される。
【0198】
一態様では、標的核酸は、in vivoで触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼと接触させる。一態様では、標的核酸は、ex vivoで触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼと接触させる。一態様では、標的核酸は、in vitroで触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼと接触させる。一態様では、標的核酸は、in vivoでガイド核酸分子と接触させる。一態様では、標的核酸は、ex vivoでガイド核酸分子と接触させる。一態様では、標的核酸は、in vitroでガイド核酸分子と接触させる。
【0199】
一態様では、標的核酸は、in vivoでリボヌクレオタンパク質及び変異原と接触させる。一態様では、標的核酸は、ex vivoでリボヌクレオタンパク質及び変異原と接触させる。一態様では、標的核酸は、in vitroでリボヌクレオタンパク質及び変異原と接触させる。
【0200】
形質転換のためのレシピエント植物細胞または外植片標的は、種子細胞、果実細胞、葉細胞、子葉細胞、胚軸細胞、分裂組織細胞、胚細胞、内胚乳細胞、根細胞、芽細胞、茎部細胞、鞘細胞、花細胞、花序細胞、柄細胞、小花梗細胞、花柱細胞、柱頭細胞、花托細胞、花弁細胞、萼片細胞、花粉細胞、葯細胞、フィラメント細胞、子房細胞、胚珠細胞、果皮細胞、篩部細胞、蕾細胞、または維管束組織細胞を含むが、これらに限定されない。別の態様では、本開示は、植物葉緑体を提供する。さらなる態様では、本開示は、表皮細胞、気孔細胞、トリコーム細胞、根毛細胞、貯蔵根細胞、または塊茎細胞を提供する。別の態様では、本開示は、プロトプラストを提供する。別の態様では、本開示は、植物カルス細胞を提供する。稔性植物を再生することができる任意の細胞は、本開示の実施のための有用なレシピエント細胞として企図される。カルスは、限定されないが、未成熟胚または胚の一部、実生の頂端分裂組織、小胞子などを含む、様々な組織源から開始することができる。カルスとして増殖することが可能な細胞は、形質転換のためのレシピエント細胞として役立ち得る。本開示のトランスジェニック植物を作製するための実用的な形質転換方法及び材料(例えば、様々な培地及びレシピエント標的細胞、未熟胚の形質転換、ならびにその後の稔性トランスジェニック植物の再生)は、例えば、米国特許第6,194,636号及び同第6,232,526号ならびに米国特許出願公開第2004/0216189号(これらの全ては、参照により本明細書に組み込まれる)に開示される。形質転換された外植片、細胞または組織は、当該技術分野で知られている通り、カルス誘導、選択、再生などの追加の培養ステップにかけることができる。組み換えDNA挿入を含有する形質転換された細胞、組織、または外植片は、当該技術分野で既知の方法に従って、培養物、プラグ、または土壌中でトランスジェニック植物に成長、発育、または再生させることができる。一態様では、本開示は、生殖材料ではなく、植物の自然な生殖を媒介しない植物細胞を提供する。別の態様では、本開示は、生殖材料であり且つ植物の自然な生殖を媒介する植物細胞も提供する。別の態様では、本開示は、光合成によりそれ自体を維持することができない植物細胞を提供する。別の態様では、本開示は、体細胞植物細胞を提供する。体細胞は、生殖系列細胞とは異なり、植物の生殖を媒介しない。一態様では、本開示は、非生殖性植物細胞を提供する。
【0201】
一態様では、方法は、さらに、標的化改変を含む細胞から植物を再生することを含む。
【0202】
植物育種
本明細書で提供される方法またはキットから誘導される植物は、当該技術分野の1つ以上の既知の方法、例えば、系統育種、循環選抜、集団選抜、及び変異育種、を使用する追加の育種にかけることもできる。本明細書で提供される方法により生じる改変は、異なる遺伝的背景に遺伝子移入し、遺伝子型または表現型スクリーニングにより選択することができる。
【0203】
系統育種は、改変を含む最初の植物及び改変を欠いている別の植物などの2つの遺伝子型の交配から始まる。2つの元の親が、全ての望ましい特徴を提供しない場合、他の供給元は、育種個体群に含まれ得る。系統方法では、優れた植物は、自家受粉し、次に続く雑種世代で選抜される。後続の雑種世代では、ヘテロ接合状態は、自家受精及び選抜の結果として均質な品種に取って代わられる。さらに、例えば、オフターゲット改変のために選択されていない改変が失われる。通常は、系統育種法では、5つ以上の連続する雑種世代の自家受粉及び選抜が実施される:F→F;F→F;F→F;F→Fなど。十分な量の同系交配の後、次の雑種世代は、開発された品種の種子を増加させるのに役立つであろう。開発された品種は、遺伝子座の約95%以上にホモ接合性対立遺伝子を含んでもよい。
【0204】
戻し交配変換を作成するために使用されることに加えて、戻し交配は、系統育種と組み合わせて使用することもできる。戻し交配は、1つの品種(ドナー親)由来の1つ以上の特に望ましい形質を、反復親と呼ばれる開発された品種に移すために使用することができ、これは、全体的に良好な作物栽培特性を有するが、望ましい形質(複数可)を欠いている。しかし、同じ手順は、子孫を反復親の遺伝子型に近づけるために使用することができるが、同時に、初期に戻し交配を停止させ且つ自家受粉及び選抜を進めることにより、非反復親の多くの構成要素を保持する。例えば、第1の植物品種は、第1世代の子孫植物を生成するために、第2の植物品種と交配されてもよい。次に、第1世代の子孫植物は、BCまたはBCを生成するために、その親品種のうちの1つに戻し交配されてもよい。子孫は、新たに開発された品種が、反復親の多くの属性、さらに、非反復親の所望の属性のいくつかを有するように、自家受粉及び選抜される。このアプローチは、新しい植物品種で使用される反復親の価値及び強みを活用する。
【0205】
循環選抜は、植物の個体群を改善するために、植物育種プログラムで使用される方法である。方法は、子孫を形成するために、個々の植物が互いに他家受粉することを伴う。子孫は成長し、所望の改変を含む子孫は、任意数の選抜方法により選抜され、これは、個々の植物、半同胞子孫、全同胞子孫、及び自家受粉子孫を含む。選抜された子孫は、別の個体群の子孫を形成するために、互いに他家受粉される。この個体群が植えられ、再度、所望の改変を含む植物が互いに他家受粉するように選抜される。循環選抜は、循環プロセスであり、それ故、必要に応じて、何度でも繰り返すことができる。循環選抜の目的は、個体群の形質を改善することである。次に、改善された個体群は、合成系統の産生を含む、商業用途または育種用途の新しい品種を得るために、育種材料の供給源として使用することができる。合成系統は、いくつかの選抜された品種の交配により形成された得られた子孫である。
【0206】
集団選抜は、分子マーカーで強化された選抜と組み合わせて使用される場合のもう1つの有用な手法である。集団選抜では、個体からの種子は、表現型または遺伝子型に基づいて選抜される。次に、これらの選抜された種子は、バルク化され、次世代を成長させるために使用される。バルク選抜は、次世代を植えるために、バルクプロットで植物の個体群を成長させること、植物が自家受粉することが可能になること、種子を大量に収穫すること、それに続いて、大量に収穫された種子の試料を使用すること、を必要とする。また、自家受粉の代わりに、直接受粉を育種プログラムの一部として使用することができる。
【0207】
本明細書で提供される方法及びキットは、植物の作物栽培特性を改善し得る。本明細書で使用される場合、「作物栽培特性」という用語は、測定することができる任意の作物栽培上重要な表現型を指す。作物栽培特性の非限定例としては、花の分裂組織サイズ、花の分裂組織数、穂の分裂組織サイズ、芽の分裂組織サイズ、根の分裂組織サイズ、雄穂のサイズ、穂のサイズ、青さ、収量、成長速度、生物量、成熟時の新鮮重、成熟時の乾物重、成熟種子の数、果実収量、種子収量、総植物窒素含有量、窒素利用効率、耐倒伏性、草高、根の深さ、根量、種子の油含有量、種子のタンパク質含有量、種子の遊離アミノ酸含有量、種子の炭水化物含有量、種子のビタミン含有量、種子の発芽率、種子の発芽速度、成熟までの日数、乾燥耐性、耐塩性、耐熱性、耐寒性、紫外線耐性、二酸化炭素耐性、冠水耐性、窒素吸収、穂高、穂幅、穂径、穂長、節間数、炭素同化率、日陰回避、日陰耐性、生成された花粉重量、鞘の数、除草剤耐性、耐虫性、及び耐病性が挙げられる。
【0208】
一態様では、本開示は、植物に作物栽培特性の改善を提供する方法を提供し、方法は、(a)第1の植物に、(i)触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼまたは触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼをコードする核酸、(ii)少なくとも1つのガイド核酸またはガイド核酸をコードする核酸(少なくとも1つのガイド核酸が、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼと複合体を形成し、少なくとも1つのガイド核酸が、植物のゲノム中の標的核酸分子とハイブリダイズし、標的核酸が、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)部位を含む)、及び(iii)少なくとも1つの変異原(少なくとも1つの改変が、標的核酸分子に誘発される)を提供すること;(b)第1の植物から少なくとも1つの子孫植物を生成すること、ならびに(c)少なくとも1つの改変及び改善された作物栽培特性を含む少なくとも1つの子孫植物を選抜すること、を含む。
【0209】
化学療法
多くの化学療法処置は、望ましくない細胞に変異を誘発する変異原に依存し、これにより、DNA損傷を修復する能力が低減するので、望ましくない細胞の死がもたらされ得る。非限定例として、望ましくない細胞は、前がん性細胞、がん細胞、及び腫瘍細胞を含む。
【0210】
本明細書で提供される方法及びキットは、望ましくない細胞に死を誘発するために必要な変異原の量または濃度を低減するために、使用することができる。
【0211】
一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、望ましくない細胞の必須遺伝子を標的とすることにより、望ましくない細胞を死滅させるのに必要とされる変異原の量を低減させる。本明細書で使用される場合、「必須遺伝子」は、望ましくない細胞の生存に重要または必要である任意の遺伝子を指す。一態様では、必須遺伝子の改変は、望ましくない細胞を死に至らしめる。
【0212】
一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼなしの変異原の使用と比較して、少なくとも1%低い濃度の変異原を使用することにより望ましくない細胞の死を誘発する。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼなしの変異原の使用と比較して、少なくとも5%低い濃度の変異原を使用することにより望ましくない細胞の死を誘発する。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼなしの変異原の使用と比較して、少なくとも10%低い濃度の変異原を使用することにより望ましくない細胞の死を誘発する。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼなしの変異原の使用と比較して、少なくとも25%低い濃度の変異原を使用することにより望ましくない細胞の死を誘発する。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼなしの変異原の使用と比較して、少なくとも50%低い濃度の変異原を使用することにより望ましくない細胞の死を誘発する。一態様では、本明細書で提供される方法またはキットは、触媒的に不活性な誘導型ヌクレアーゼなしの変異原の使用と比較して、少なくとも75%低い濃度の変異原を使用することにより望ましくない細胞の死を誘発する。
【実施例
【0213】
実施例1.Escherichia coli rpoB/Rifアッセイシステム
この例は、化学的変異原により誘発される変異率及び変異タイプを特徴付けるシステムとして、Escherichia coli rpoB遺伝子及びrpoBにマッピングされるリファンピシン耐性(Rif)変異について記載する。
【0214】
E.coli K12(MG1655株)rpoB遺伝子(配列番号1)は、RNAポリメラーゼ複合体(配列番号2)のサブユニットをコードし、細菌の転写阻害剤である抗生物質リファンピシンの標的である。rpoB遺伝子のユニークな特徴は、24のアミノ酸コドンにある少なくとも69のヌクレオチド置換が、E.coliにRif表現型を付与し得ることである。これにより、rpoBが、ヌクレオチド変化のタイプ及び頻度をスクリーニング及び分析するための有用な標的になる(例えば、変異原による誘発される追加、欠失、及び置換(Garibyan et al.,2003,DNA Repair,2:593-608で概説))。さらに、リファンピシン耐性を付与する変異の大部分(90%超)は、rpoB遺伝子の、比較的小さな268ヌクレオチド長の領域にマッピングされる。これにより、オリゴヌクレオチドプライマーの単一ペアを用いるPCR増幅、それに続く、シーケンシングが可能になり、これは、多数の潜在的な変異の迅速な分析を可能にする。E.coli K12 rpoB遺伝子の上述の268bpフラグメントは、配列番号3として記載される。必須遺伝子として、E.coliは、rpoB遺伝子座におけるフレームシフトまたはナンセンス変異を許容しないという点に留意すべきである。しかし、短いインフレームの欠失(最大5アミノ酸)を含む変異体が見出されているが、はるかに低い頻度である(例えば、Jin and Gross,J Mol Biol.202:45-58(1988)を参照)。
【0215】
rpoBでのEMS誘発型変異:化学的変異原EMS(エチルメタンスルホナート)は、グアニン塩基を選択的にアルキル化し、DNAポリメラーゼが、DNA複製中に0~6つのエチルグアニンの向かいに、シトシン残基よりもチミン残基を配置することを促進し、これにより、G→Aトランジション変異がもたらされる。EMSで変異した個体群で観察された改変の大部分(70%~99%)は、G:C→A:T塩基対トランジションである。多数の研究が、rpoB遺伝子に対するEMS処置の効果を分析しており、この中で最も包括的なものは、Garibyan et.al.により実施された研究である(DNA Repair 2:593-608(2003))。このレポートでは、rpoB遺伝子の268bpのストレッチ(配列番号3)内の8つの部位で合計40の変異を同定し;40の変異は全て、G:C→A:Tトランジションであった。Garibyan et al.による40のEMS変異体に見られないが、他の処置による他のRif変異体または「自然Rif」に見られる、さらなる5つのG:C部位もまた報告されている(例えば、Garibyan et.al.を参照)。Rif表現型をもたらすrpoB遺伝子座内の利用可能なG:CのEMS標的部位の総数は13である。これらの部位は、以下の表1に記載される。配列番号1の1546位及び1592位での変異は、それぞれ、D516N及びS531F置換をもたらし、Garibyan et.alにより見出されるシーケンシングされた変異の半分超(22/40)を占めている。最後に、Garibyan et.al.は、Rif表現型ももたらすトランスバージョン(例えば、A:T→G:C、A:T→T:A、A:T→C:G、G:C→T:A、G:C→C:G)である268-bpのフラグメント(配列番号3)内の追加の49の変異について記載する。
【表1】
【0216】
実施例2.rpoBを標的とするCas9及びCpf1ガイドRNAの検証
RNA誘導型ヌクレアーゼCas9及びCpf1のrpoB標的部位:Streptococcus pyogenes Cas9(SpCas9)及びLachnospiraceae bacterium Cpf1(LbCpf1)は、関連ガイドRNA(gRNA)と標的部位の間のハイブリダイゼーションによりプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)付近の標的遺伝子座に導くことができる、エンドヌクレアーゼである。ハイブリダイズすると、エンドヌクレアーゼは、標的部位でdsDNA切断を行う。rpoB遺伝子(配列番号3)内の268bpのフラグメントを、SpCas9及びLbCpf1 PAM部位の存在について調査した。LbCpf1の2つの標的部位を同定し、これらを、rpoB-1540(配列番号4)及びrpoB-1578(配列番号5)と称した。表2を参照のこと。rpoB-1526(配列番号6)、rpoB-1599(配列番号7)、及びrpoB-1605(配列番号8)と呼ばれる3つの標的部位をSpCas9について同定した。表3を参照のこと。各標的部位に対して、適切なガイドRNAをコードする発現ベクターを生成した。対照として、トウモロコシZm7.1遺伝子座(E.coliゲノムに存在しない配列)を標的とするガイドRNAをコードする発現ベクターも生成した。Zm7.1内のCpf1標的部位は、配列番号9として記載され、Zm7.1内のCas9標的部位は、配列番号10として記載される。
【表2】
【表3】
【0217】
pGUIDEベクター:3つのLbCpf1 pGUIDEベクターを作成した:pGUIDE-Lb-rpoB-1540、pGUIDE-Lb-rpoB1578、及び対照ベクターpGUIDE-Lb-Zm7.1。ベクターは、crRNA配列(配列番号12)をコードする19ヌクレオチドDNA配列に作動可能に連結されている合成プロモーターP-J23119(配列番号11);rpoB-1540(配列番号4)またはrpoB-1578部位(配列番号5)またはZm7.1(配列番号9)のいずれかを標的とする23~25ヌクレオチドのスペーサーDNA配列;それに続く、19ヌクレオチドのcrRNA配列(配列番号12)をコードするDNA配列、及びT7終結配列(US20180092364-0005を参照)を含むガイドRNA発現カセットを含む。
【0218】
4つのSpCas9 pGUIDEベクターを生成した:pGUIDE-Sp-rpoB-1526、pGUIDE-Sp-rpoB1599、pGUIDE-Sp-rpoB1605、及び対照pGUIDE-Sp-Zm7.1。各ベクターは、4つの標的部位rpoB-1526(配列番号6)、rpoB-1599(配列番号7)、rpoB-1605(配列番号8)、またはZm7.1(配列番号11)のうちの1つを標的とするスペーサー配列とそれに続くCas9ガイドRNA配列(配列番号13)をコードする103ヌクレオチドのDNA配列及びT7終結配列(US20180092364-0005を参照)に作動可能に連結されている合成プロモーターP-J23119(配列番号11)を有するガイドRNA発現カセットを含む。
【0219】
各Cas9及びCpf1 pGUIDEベクターは、抗生物質スペクチノマイシン(Spec)及びpCDF複製起点に対する耐性を付与する選択マーカーの発現カセットも含んでいた。
【0220】
pNUCLEASE(pNUC)ベクター:4つのpNUCベクター:pNUC-cysフリーLbCpf1、pNUC-dLbCpf1、pNUC-Cas9、pNUC-dCas9を標準的なクローニング手法により生成した。これは、以下に記載される。
(1)pNUC cysフリーLbCpf1ベクターは、cysフリーLbCpf1ヌクレアーゼの発現カセットを含む。cysフリーLbCpf1のタンパク質配列が、配列番号25として記載される。cysフリーLbCpf1ヌクレオチド配列をE.coliにおける発現のために最適化し(配列番号14)、5’末端で核局在化シグナル(NLS1)をコードするDNA配列(配列番号15)に融合させ、3’末端でNLS2をコードする配列(配列番号16)に融合させた。ヒスチジンタグ(配列番号17)をコードするヌクレオチド配列を、NLS1-cysフリーLbCpf1-NLS2の5’末端に導入した。融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、E.coli P-tacプロモーターを含む調節配列、バクテリオファージT7遺伝子10リーダー配列、及びリボソーム結合部位(配列番号18)に作動可能に連結されていた(Olins and Rangwala,J Biol Chem,264:16973-16976(1989)を参照)。
(2)pNUC cysフリーLbCpf1内のcysフリーLbCpf1のORFをコードする配列を、不活性型LbCpf1(dLbCpf1)をコードするDNA配列(配列番号19)と置き換えることにより、pNUC-dLbCpf1を生成した。LbCpf1タンパク質と比較して、dLbCpf1タンパク質は、832位にアスパラギン酸からアラニンアミノ酸への置換、及び925位にグルタミン酸からアラニンアミノ酸への置換を含む。dLbCpf1タンパク質の配列は、配列番号24と記載される。これらの置換は、LbCpf1のDNA切断活性の完全な消失をもたらすことが示される(Zetsche et al.,Cell,163:759-771(2015);及びYamano et al.,Mol Cell,67:633-645(2017)を参照)。
(3)cysフリーpNUC LbCpf1内のcysフリーLbCpf1のORFをコードする配列を、SpCas9遺伝子配列(配列番号20)で置き換えることにより、pNUC-SpCas9ベクターを生成した。
(4)pNUC cysフリーLbCpf1内のcysフリーLbCpf1のORFをコードする配列を、不活性型SpCas9(dSpCas9)をコードするDNA配列(配列番号21)に置き換えることにより、pNUC-dSpCas9ベクターを生成した。SpCas9タンパク質(配列番号23)と比較して、dSpCas9タンパク質(配列番号22)は、10位にアスパラギン酸からアラニンへのアミノ酸置換、及び840位にヒスチジンからアラニンへのアミノ酸置換があり、これにより、SpCas9のDNA切断活性の完全な消失がもたらされる(Jinek et.al.,Science,337:816-821(2012)を参照)。
【0221】
各pNUCベクターは、抗生物質クロラムフェニコール(Cm)及びCo1E1複製起点に対する耐性を付与する選択マーカーの発現カセットも含まれていた。
【0222】
E.coliでのgRNA活性の検証。Cui and Bikardは、以前に、E.coliにおいて同族のガイドRNAとのCas9の発現の結果を調査していた(Cui and Bikard,Nucleic Acids Research,44:4243-4251(2016)を参照)。それらの分析は、E.coli染色体を標的とし得る同族のガイドRNAとの活性Cas9タンパク質の同時形質転換は、この組み合わせがdsDNA切断を生じ得るので、形質転換効率の大幅な低減につながることを示した。これは、多くの場合、E.coliでは致命的である。標的配列が必須遺伝子にある場合、効果がさらに顕著である。E.coliゲノムに存在しない配列を標的とするガイドとの活性Cas9タンパク質の同時形質転換/共発現は十分に許容される。同様に、全ガイドRNAの組み合わせとの触媒的に不活性な/不活性型Cas9タンパク質の共発現は非致死性である。それにより、いくつかの組み合わせが、おそらくCRISPR干渉効果のために発育遅延表現型を示し得、結合している不活性なCas9-gRNA複合体が必須遺伝子の適切な転写のブロックとして作用し得ることも観察された。
【0223】
異なるpGUIDEの活性及び不活性ヌクレアーゼとの組み合わせが上記の予想される効果を示すかどうかを試験するために、エレクトロポレーションにより、pNUC及びpGUIDEベクターを、KL16細胞(E.coli Genetic Stock Center,Yale)、野生型recA+株に同時形質転換した。pNUC及びpGUIDEの組み合わせが、以下の表4に詳述される。
【表4】
【0224】
エレクトロコンピテント細胞を、標準プロトコールに従ってE.coli KL16から調製し、液体窒素中、250μLのアリコートで凍結させた。表2に記載の約0.7μLのpNUC及びpGUIDEプラスミドDNAの組み合わせ(概算DNA濃度50~150ng/μLを含む)を、KL16細胞の30μLアリコートに添加した。E.coliの標準設定(1.8kV、25μFの静電容量、200オームの抵抗)を使用するBio-Rad GenePulser IIを使用して、1mmギャップキュベットで、細胞及びDNAをエレクトロポレーションした。時定数は、約4.85~5.05ミリ秒であった。約1mLのS.O.C.培地を添加し、混合し、培養チューブに移し、37℃のインキュベーター中、280RPMで約90分間振盪した。次に、約20μLの混合物を、380μLのS.O.C.培地(1:20希釈に相当)で希釈し、100μLを適切な選択抗生物質(+25μg/mLのクロラムフェニコール(Cm)、+50μg/mLのスペクチノマイシン(Spect))を含有するLBアガープレートにプレーティングし、37℃で一晩インキュベートした。
【0225】
表4に示されるように、pNUC-dLbCpf1で同時形質転換された3つのpGUIDEは、二重選択プレート上に約200~500の均一なコロニーを生じた(表4、形質転換4~6を参照)。pGUIDE-Lb-Zm7.1を、pNUC-LbCpf1と同時形質転換した場合、選択プレート上で約300のコロニーが観察された(表4、形質転換3を参照)。しかし、pNUC-cysフリーLbCpf1と共形質転換された場合、rpoBを標的とするLbCpf1ガイドを発現する両方のpGUIDEは、0~2つのコロニーを生じた(表4、形質転換1~2を参照)。これらの観察結果は、cysフリーLbCpf1が機能的なヌクレアーゼであることを示す。これらの観察は、Cui及びBikardにより行われた観察と一致し、rpoBなどの必須の遺伝子を切断し得る複合体に対して予想される。
【0226】
同様に、4つのSpCas9 pGUIDEを触媒的に不活性なpNUC-dSpCas9と同時形質転換した場合、4つのプレート全てが二重選択プレート上で約200~300の均一なコロニーを示した(表4、形質転換11~14を参照)。アクティブなpNUC-SpCas9を用いるpGUIDE-Sp-Zm7.1の形質転換でも、二重選択プレート上に約200~300の均一なコロニーを生じた(表4、形質転換10を参照)。しかし、pGUIDE-Sp-rpoB-1526、pGUIDE-Sp-rpoB-1599、またはpGUIDE-Sp-rpoB-1605をpNUC-SpCas9と同時形質転換し、0~2つのコロニーを回収した(表4、形質転換7~9を参照)。総合すると、これらのデータは、同族の活性ヌクレアーゼと対合した場合、全てのrpoB標的化pGUIDEがrpoB遺伝子座内の切断を可能にしたことを示す。
【0227】
実施例3:rpoB/Rifアッセイを利用して、E.coliにおけるEMS誘発型変異を調査する。
rpoBにEMSにより誘発された変異の率及びスペクトルを試験するために、E.coli KL16細胞をpNUC-dSpCas9及びpGUIDE-Sp-Zm7.1と同時形質転換し、0.1%または1%のEMSで処置した実験を実施した。得られたRif変異を選択し、スコア化した。各コロニーからrpoB遺伝子フラグメント(配列番号3)をシーケンシングし、優勢な変異を同定した。上記の実施例2で述べられたように、pGUIDE-Sp-Zm7.1は、E.coli染色体を標的とすることが予想されず、したがって、陰性対照として機能する。
【0228】
E.coliの形質転換:約0.7μLのpNUC-dSpCas9及びpGUIDE-Sp-Zm7.1プラスミドDNA(概算濃度50~150ng/μL)を、エレクトロコンピテントなE.coli KL16細胞の30μLのアリコートに添加した。上記の実施例2に記載の設定でBio-Rad GenePulser IIを使用して、細胞及びDNAを1mmギャップキュベットでエレクトロポレーションした。約1mLのS.O.C.培地をキュベットに添加し、混合し、培養チューブに移し、37℃のインキュベーターシェーカー中、280RPMで約90分間振盪した。約20μLの混合物を380μLのS.O.C.培地で希釈し(1:20希釈)、100μLを+25μg/mLのCm、+50μg/mLのSpect抗生物質を含有するLBプレートにプレーティングし、続いて、37℃で一晩インキュベートした。一晩成長させた後、プレートは、約100~400の均一な単一コロニーを含有していた。プレートから4~5つの単一コロニーを採取し、+25μg/mLのCm、+50μg/mLのSpectを含有する2.5mLの液体LB培地で混合した。培養物を、280RPMで振盪しながら、37℃で一晩成長させた。翌日、飽和した一晩培養物を、3mLの新鮮なLB+25μg/mLのCm、+50μg/mLのSpectに1:20の比で希釈した。37℃で約3時間振盪(280RPM)しながら成長させた後、培養物は、指数関数的に成長し、A600の吸光度測定値は、約1であった。培養物をエッペンドルフチューブ中で3つの1mLのアリコートに分割し、次に、最高速度で1分間回転させた。LB上清を除去し、小さなペレットを、1mLのPBSに穏やかにピペッティングすることにより再懸濁し、培養チューブに移した。
【0229】
EMS変異導入処置:約1μLのEMS(Sigma M0880)を第1のチューブに添加し(0.1%のEMS、最終濃度)、約10μLのEMSを第2のチューブに添加した(1%のEMS、最終濃度)。第3のチューブは、EMSが加えられなかった(0%のEMS)。混合後、チューブを、37℃、1時間振盪しながら、インキュベートした。1mLの培養物をエッペンドルフチューブに戻し、1分間最高速度で回転させた。ペレットを、PBSで1回洗浄して、EMSを除去し、1mLのLB+25μg/mLのCm、+50μg/mLのSpectに再懸濁した。これらの懸濁液を、2mLのLB+25μg/mLのCm、+50μg/mLのSpectに1:20で希釈し、振盪し(280RPM)、37℃で一晩インキュベートし、回収し、増殖させた。
【0230】
Rif変異体数の決定:各一晩培養物の約100μLを、LB(+25μg/mLのCm、+50μg/mLのリファンピシン)またはLB(+50μg/mLのリファンピシン)に2回ずつプレーティングした。0.1%及び1%のEMSで処置された細胞の場合、5μLの培養物もプレーティングした。プレートを37℃で一晩成長させた後、30℃でもう一晩のインキュベーションを行った。Rifコロニー形成単位の数を各処置について計数し、平均CFUスコアは、以下の表5に提供される。
【表5】
【0231】
総生菌数を決定するために、0.1%のEMS処置の一晩培養物を、PBSで1:10に希釈し、100μLをLB+Cm+Spectプレートにプレーティングした。プレートを37℃で一晩、続いて、30℃でもう一晩成長させた。0.1%のEMS処置プレート由来の生存可能なCFUを、2.5×10/mLであると算出した。飽和した一晩培養物由来の生存可能なCFUが、3つの処置全てでほぼ同じ(約2.5×10)であると仮定すると、以下の式を使用して、各処置の変異率を計算した:
変異率=1mL当たりのRif CFU/1mL当たりの生存可能なCFU。したがって、自然変異率(0%のEMS)は、約80/2.5×10=3.2×10-8であった。自然変異率を1とした場合、0.1%のEMSは、変異率を約40倍増加させ、1.0%のEMSは、自然変異率に対して約2600倍変異率を増加させた。
【0232】
ディープシーケンシングによる変異の位置及び頻度の特性決定:0.1%及び1%のEMS処置アッセイの96のRifコロニーを採取し、コロニーPCRを実施して、263ヌクレオチドのrpoBフラグメントを増幅した。Illuminaバーコード付きアダプターを含むフォワード及びリバースプライマーを使用して、約20μLのPCR反応を、96ウェルプレートで実施し、Rif表現型を付与する変異と関連する263ヌクレオチドのrpoBフラグメントを増幅するように設計した。96ウェル全体から採取された8~12個の試料約5μLを実行すること及び電子ゲル上で実行することにより、反応の達成をチェックした。次に、製造元が推奨する手順を使用して、Illumina 2X300 MiSeqplatformを使用して、単一Rifコロニーか生じた各アンプリコンを、Illuminaベースのディープシーケンスに対して処理した。7000~14000のアンプリコンを各コロニーから生成した。未処理のリードを取得した後、アダプター配列をプログラムCutadaptで除去し(Martin,EMBnet.journal,2011,[Sl],v17,n1,p.pp.10-12,ISSN 2226-6089)、低品質のリードをTrimmomatic(Version 0.36)で濾過した(Bolger et al.,Bioinformatics,30:2114(2014))。プログラム『glsearch』(Pearson,Methods Mol Biol.,132:185-219(2000))を使用して、リードを参照rpoB配列にマッピングし、置換及び小さなINDELを検出した。pythonスクリプトを開発して、マッピング結果を解析した。
【0233】
各Rifのコロニーから増幅された配列の90%超は、単一点変異を有する1つの優勢な配列を有していた。各コロニーで同定された優勢な変異及びシーケンシングされたコロニー間での出現頻度が図1に記載される。図1に示されるように、Rif表現型を誘発するものとして当該技術分野で以前に記載された13の変異のうちの10を、このEMSスクリーンで同定した。EMS変異の大部分は、ヌクレオチド位置1585~1600に集中していることがわかった。変異のほとんどは、EMS変異導入の予想される効果と一致して、G:C→A:Tトランジション変異である。3つの非G:C→A:T変異、T1532C、A1538C、及びA1687Cも同定した。低頻度ではあるが、全ゲノム変異導入研究は、以前に、出現を報告している、EMS処置された個体群における、GC→TA、AT→TA、AT→CG、GC→CG、及びAT→GC型のトランジション及びトランスバージョンの出現を報告している(例えば、Minoia et al.,BMC Research Notes,3:69(2010);及びShrasawa et al.,Plant Biotechnology,14:51(2015)を参照のこと)。4つのコロニーは、インフレームで15ヌクレオチドの欠失があり、5つのアミノ酸の欠失がもたらされ、これは、以前に報告していない。いくつかのRif変異体は、268ヌクレオチドのアンプリコンにおいて変異を欠き、これは、当該技術分野の研究に一致する。重要なことに、INDELは、観察されたフレームシフト変異を引き起こさず、これは、rpoB遺伝子が必須遺伝子であるので予想された。
【0234】
実施例4:触媒的に不活性なRNA誘導型エンドヌクレアーゼ及びrpoBガイドRNAの存在下で、rpoB遺伝子の標的化EMS変異導入。
この例は、dLbCpf1またはdSpCas9及びrpoB遺伝子の領域を標的とする同族のgRNAsで形質転換された細胞においてEMS変異導入を実施することにより、EMS誘発変異導入が標的化領域において増強することができるかどうかを調査するために実施された実験について記載する。
【0235】
E.coli KL16細胞を、上記の実施例3に記載のプロトコールを使用して、以下の表6で記載のpNUC及びpGUIDEベクターの組み合わせで形質転換した。
【表6】
【0236】
各処置から3~5つの均一な二重形質転換コロニーをプールし、LB+25μg/mLのCm、+50μg/mLのSPECTで一晩成長させた。一晩の培養物を新鮮な抗生物質培地に1:20で希釈し、3つに分割し(形質転換2及び3の場合)、または2つに分割し(形質転換1の場合)、再成長し、その後、0.1%のEMSで約50分間処置し、次に、実施例3で記載されるように洗浄及び回収した。回復のために一晩成長させた後、各複製からの100μLをLB+25μg/mLのCm、+50μg/mLのリファンピシン(Rif)プレートにプレーティングした。2日後(37℃で1日目、30℃で2日目)、各処置のRif CFUを点数化し、表6に報告する。形質転換1の場合、Rifコロニーを単一プレートから計数した。
【0237】
変異の位置及び頻度の特性決定:個々のコロニー及びプレートスクレープ(プールされたコロニー)をシーケンシングした。92の単一Rifコロニーを3つの処置のそれぞれから採取した。次に、プレートを、PBSで満たし、スクレープし、遠沈させた。ペレット化された細胞の少量のアリコートを、各処置の『プレートスクレープ試料」の鋳型として使用した。基本的には上記の実施例3の通り、アンプリコンの生成、ディープシーケンシング、及びrpoB変異の検出を実施した。高品質のリードを、処置1の71コロニー、処置2の92コロニー、及び処置3の89コロニーから得た。また、高品質のリードを、プレートスクレープ試料から得た。
【0238】
識別された全ての変異及びその発生頻度が図2で提供される。対照処置では、pNUC-dCas9+pGUIDE-SpZm7.1、EMS変異の81%(71/92)が、rpoB遺伝子(配列番号1)のヌクレオチド位置1585~1600に集中していたことがわかった。これらは全て、標準的なG:C→A:Tタイプの変異であった。これは、Garibyan et al.及び実施例3に記載された非標的化dCas9を用いる0.1%のEMSの結果と一致する。dCas9試験処置(pNUC-dCas9+pGUIDE-Sp-rpoB-1526)では、同定された変異の97%(129/134)は、rpoB遺伝子内のヌクレオチド位置1530~1554に及ぶrpoB-1526ガイドRNA標的領域内に観察された(配列番号1)。対照的に、対照処置で同定された変異の8%(7/92)のみが、この領域に入った。dCas9試験処置から同定され且つgRNA標的領域内に存在する129の変異のうち、94は、通常EMSに誘発されたG:C→A:Tトランジションであった。
【0239】
pNUC-dCas9+pGUIDe-Sp-rpoB-1526試験処置で、より高い頻度の二重変異体が観察された(図3)。76のRifコロニーのうちの58のアンプリコンは、第2の単一ヌクレオチド置換またはインフレームINDELと同様に、サイレントG1530A変異を有していた。58のコロニーから12種類の2次変異が同定された。これらは表7で提供される。同定された12種類の第2の変異のうち8つは、ガイドRNA標的化領域内に位置した。12種類の同定された第2の変異のうちの9つは、以前に、Rif表現型をもたらすことが報告されている。1つの新規変異(配列番号1の1537位におけるシトシンからグアニンへの)は、rpoBタンパク質の513位におけるグルタミンからグルタミン酸への置換(Q513E)(配列番号2)をもたらした。これは、当該技術分野では報告されていないが、Q513からアルギニン、ロイシン、プロリン、及びリジンへの置換は、Rif表現型をもたらすことが知られている(Garibyan et al.を参照)。rpoB(配列番号1)の1530位における1つのグアニンからアデノシンへの置換は、Rif変異体が、6ヌクレオチド(2アミノ酸)のインフレーム欠失を有していた。これは、以前に報告されていないが、実施例3に記載の処置から得られたアンプリコンで観察された。最後に、配列番号1の1590~1591位に新規の3ヌクレオチドのインフレーム挿入は、また、Rif表現型をもたらした。
【表7】
【0240】
pNUC-dCpf1+pGUIDE-Lb-rpoB1578処置の場合、同定された変異の20%(18/89)は、配列番号1のヌクレオチド位置1554~1577にまたがるガイドRNA標的領域内にあった。比較すると、対照処置では、変異の3%(3/92)のみが、この領域にマッピングされた。ガイドRNA標的領域内のdCpf1試験処置から同定された18の変異のうち、12は、通常EMSにより誘発されたG:C→A:Tトランジションであった。
【0241】
プレートスクレープPCR試料から観察された各変異のリードの多様性及びパーセンテージは、各処置のコロニーPCRから見られたものと同様の分布及び割合を示した(図2)。
【0242】
これらの結果は、細菌ゲノムの選択領域(例えば、E.coliのrpoB遺伝子)を標的とするガイドRNAと対合しているSpCas9及びLbCpf1などの既知のCRISPR関連タンパク質の触媒的に不活性な/不活性型多様体を使用すること、ならびにDNA変異原(例えば、EMS)を用いる変異導入を実施することにより、CRISPR関連タンパク質/ガイド複合体により標的とされた部位内で変異の大幅な増加がもたらされ得る。さらに、新規変異を回復することができ、これは、選択スクリーンの一部ではなかった。
【0243】
実施例5:機能選択のための標的化変異導入。
この例は、触媒的に不活性なプログラム可能なDNA切断酵素を、DNA塩基改変化学的変異原と組み合わせて、酵素5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸シンターゼ(EPSPS)の標的化領域における変異導入を増加させることについて記載する。
【0244】
EPSPSは、ホスホエノールピルビン酸及び3-ホスホシキミ酸のリン酸及びEPSPSへの変換を触媒する酵素である。この酵素は、除草剤として農業で広く使用されている競合阻害剤グリホサートにより阻害される。EPSPSの構造は、決定されており、グリホサート阻害を克服する活性部位内の単一点変異体が同定されている。グリホサートの存在下で改善されたEPSPS多様体の選択を可能にするE.coliを用いる細菌スクリーニングが開発されている(Jin et al.,Curr.Microbiol.,55:350(2007)を参照)。エラープローンPCRなどの非標的化方法、または標的化アプローチを含む複数の方法で、多様体EPSPS酵素を生成しており、これらは、費用がかかり、飽和変異導入ライブラリーの設計及び分子生物学技能を開発するために熟練研究者のインプットを必要とする。
【0245】
触媒的に不活性なCRISPR関連タンパク質/ガイドRNA複合体と組み合わせたDNA塩基改変化学的変異原は、酵素EPSPSの選択された領域への変異導入を増加させるために、細菌EPSPS機能選択アッセイなどの活性選択と共に併用することができる。
【0246】
活性部位の内側を覆う残基などの、EPSPS酵素の特定の領域を標的とするCpf1またはCas9gRNAが設計される。いくつかの実施形態では、所望の位置(複数可)にPAM部位を含有する合成EPSPS遺伝子が使用される。EPSPS遺伝子を発現するE.coliは、dLbCpf1またはdSpCas9及び同族のgRNAで形質転換される。形質転換された細胞は、その後、EMSで処置され、変異導入細胞は、グリホサートによる選択下に置かれる。変異は、EPSPSの標的化領域でより高い割合で蓄積し、グリホサートによる選択下に置かれる場合、標的化残基に由来する耐性を与える変異の回復が増加する。
【0247】
実施例6:In plantaで標的化された遺伝子改変
植物における遺伝的多様性を強化するランダム化学変異導入アプローチは、変異率、処置後の生存率及び生殖不能、個体群のサイズ、ならびに配列評価のウィンドウを含む、候補遺伝子の変異を見出すための複数の要因のバランスをとる必要がある。
【0248】
変異率が減少すると、所望な変異を見出すためにスクリーニングされる個体数は、指数関数的に増加する。DNA塩基改変化学的変異原により誘発される局所変異率は、配列標的化酵素(例えば、dCpf1及びdCas9などの触媒的に不活性なRNA誘導型エンドヌクレアーゼ酵素)を利用することにより増加させることができる。局所変異率が増加すると、所望の変異を見出すためにスクリーニングされる個体数が低減する。
【0249】
このアプローチを可能にするために、触媒的に不活性化されたRNA誘導型エンドヌクレアーゼ及びガイドRNAが、化学的変異原で処置された植物細胞の核に提供される。触媒的に不活性化されたRNA誘導型エンドヌクレアーゼ、gRNA、及びEMSは、規定の死亡率(通常、50%の死亡率)につながる用量及び曝露時間のための初期のキル曲線分析を確立するために、当該技術分野の標準的な手順に従って滴定される。
【0250】
標的化改変は、例えば、植物細胞内の触媒的に不活性化されたRNA誘導型エンドヌクレアーゼ(例えば、dCpf1、dCas9)を発現することにより、触媒的に不活性化されたRNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードするDNAもしくはmRNAを同時送達することにより、または触媒的に不活性なRNA誘導型エンドヌクレアーゼ酵素及び/もしくはgRNAをコードする導入遺伝子を用いる植物細胞の安定な形質転換により、複数の手段で達成することができる。触媒的に不活性化されたRNA誘導型エンドヌクレアーゼ及びgRNAの発現後に、EMSは、標的部位の改変を誘発する標準的な方法を使用して適用される。
【0251】
触媒的に不活性化されたRNA誘導型エンドヌクレアーゼ及びgRNA複合体を送達するための別のアプローチは、リボヌクレオタンパク質として一過性で複合体を送達することであり、葉、花粉、プロトプラスト、胚、カルス、及びその他を含む幅広い組織型においてこれは、実施することができる。送達後または送達と同時に、EMSは、標的部位の標的化改変を誘発するために、標準的な方法を使用して適用される。
【0252】
種子または再生植物の数が増加し、当該分野で既知の標準的な方法を使用して、標的化領域の変異についてスクリーニングされる。
【0253】
実施例7:治療的処置のためのDNA損傷化学物質の接近可能性の増加。
正常なDNA複製を妨げるDNAの直接的な化学改変は、がん治療に効果的であることが示されている。がん細胞は、DNA損傷の検知/修復の能力を緩和させており、これは、高い複製速度を達成するのに役立ち、また、DNA損傷の影響をより受けやすくする。
【0254】
損傷したDNAの複製は、細胞死の可能性を増加させ、抗がん化合物の開発に焦点を当てている。DNAアルキル化様白金化合物シス-ジアンミンジクロロ白金(II)(シスプラチン)は、グアニン残基、程度は低いが、アデニン残基とDNA付加物を形成する。2つの白金付加物は、同じDNA鎖の隣接塩基に形成される場合、鎖内架橋を形成する。これらの鎖内架橋がDNA複製を遮断し、修復されない場合、細胞死を引き起こす(Cheung-Ong et.al.,Chem.Biol.,20:648-59(2013)を参照)。これらの治療は、副作用がないわけではなく、シスプラチンアナログの発見の取り組みは、非標的化組織の毒性を低減させることを目的とする(Bruijnincx and Sadler,Curr.Opin.Chem.Biol.,12:197-206(2008)を参照)。
【0255】
本明細書に記載の組成物及び方法は、非標的化化学的DNA改変治療薬の効果を増加させるために、使用されてもよい。特定の理論に拘束されることを望まないが、必須遺伝子のDNA塩基は、触媒的に不活性化されたRNA誘導型エンドヌクレアーゼ/ガイド複合体の巻き戻し作用による化学改変に、より利用可能にすることができる。がん細胞を標的とする触媒的に不活性化されたRNA誘導型エンドヌクレアーゼ/ガイド複合体の送達は、開発の活発な領域であり、腫瘍細胞を選択的に標的とするための経路は、腫瘍溶解性ウイルス及びマイクロインジェクションを含み得る。これらの経路は、触媒的に不活性化されたRNA誘導型エンドヌクレアーゼの選択的送達のために使用することができる(Liu et al.,J Control Release,266:17-26(2017)を参照)。がん細胞の化学改変のために(より保護されたdsDNAヘリックス内から標的化塩基を露出させることにより)標的化DNAを選択的に巻き戻し、利用可能にする複合効果は、がん細胞死を誘発するために必要なDNA改変化学療法剤の総投薬量を低下させることがある。必要な化学治療薬の総投薬量を低下させることにより、非標的組織への有害毒性が低減すると予想されるであろう。
【0256】
実施例8:cysフリーLbCpf1のin vitroでのDNA切断活性
タンパク質のシステイン残基は、システイン間に強力な可逆的結合を提供するジスルフィド架橋を形成することが可能である。標的化された方法で、Cpf1の結合を制御及び指示するために、天然のシステインが除去される。タンパク質骨格からのシステインの除去により、ジスルフィド結合による、これらの可逆的結合の配置を制御する新しいシステイン残基の挿入の標的化が可能になる。これは、タンパク質ドメイン間のものであるか、またはバイオリスティック送達のための金粒子などの粒子に対するものであり得る。LbCpf1タンパク質(WO2016205711-1150)に存在する9つのシステイン残基が、DNA切断活性に関与するかどうかは不明である。したがって、全くシステインを含有しない変異型LbCpf1タンパク質を生成し、活性について試験した。以下の9つのアミノ酸置換を含有するcysフリーLbCpf1タンパク質を生成した:C10L、C175L、C565S、C632L、C805A、C912V、C965S、C1090P、及びC1116L。
【0257】
LbCpf1及びcysフリーLbCpf1の標的化2本鎖(ds)DNA切断活性を調査するために、in vitroでのDNase活性アッセイを開発した。アッセイで使用されたdsDNA鋳型は、配列番号26のヌクレオチド269~291の領域に及ぶ、LbCpf1標的部位であるLb-Zm7.1を含有する492bpのPCR産物(配列番号26)であった(表8を参照)。LbCpf1及びその同族のCpf1-Zm7.1 gRNAにより切断活性により、197bp及び295bpのDNAの消化フラグメントがもたらされるであろう。
【0258】
ヌクレアーゼを、標準的な方法でEscherichia coliから発現及び精製した。この目的のために、実施例2に記載のpNUC cysフリーLbCpf1ベクター内のcysフリーLbCpf1のORFをコードする配列を、E.coliコドン最適化LbCpf1をコードするDNA配列と置き換えることにより、E.coli発現ベクターpNUC-LbCpf1を作成した(配列番号27)。LbCpf1 crRNA配列及びLb-Zm7.1を標的とする23ヌクレオチドスペーサー配列を含むLbCpf1ガイドRNA(配列番号28)を、標準的な方法で合成した。
【表8】
【0259】
代表的な反応を、50mMのTris-HCl(ph7.6)、100mMのNaCl、10mMのMgCl2、5mMのDTTからなる切断緩衝液中で実施した。精製ヌクレアーゼは、1Xの切断緩衝液中で20μMに予め希釈し、さらに、連続希釈(通常は、1:4)を同じ緩衝液中で行った。精製ガイドRNAをddH20で20μMに前希釈し、さらに、ddH20で段階希釈(通常1:4)を行った。リボヌクレオタンパク質(RNP)成分(基質DNAなし)を混合した後、反応物を室温で10~15分間インキュベートした。表9に記載のRNP:DNA比を達成する濃度の鋳型DNAを添加して反応を開始した。反応を37℃で45分間実施し、プロテイナーゼK処置を用いて、65℃で15分間クエンチした。次に、試料を分離、2%のTBEアガロースゲル上で分析した。さらに、各アッセイのヌクレアーゼタンパク質濃度を定量化するために、試料のアリコートを分離し、SDS-PAGEで分析した。A280nmでの吸光度を計算することにより、タンパク質の濃度も測定した。
【0260】
アガロースゲルの目視検査は、20:1のRNP:DNA比のアッセイにおいて、LbCpf1及びcysフリーLbCpf1の両方を用いて、45分で、90%を超える切断が達成されたことを示した。両方の酵素は、5:1のRNP:DNA比のアッセイにおいて、45分で部分的な切断活性を示した(表9を参照)。SDS-PAGE分析により、アッセイ1及び2、3及び4で同等のタンパク質濃度が確認された。総合すると、データは、cysフリーのLbCpf1が標的化dsDNA切断活性を保持することを示唆する。
【表9】
【0261】
実施例9.Bacillus subtilis upp/5-FUアッセイシステム
この例は、ランダム変異導入により誘発される変異率及び変異タイプを特性決定するシステムとして、5-フルオロウラシル(5-FU)に対する耐性をもたらすBacillus subtilis upp遺伝子及びノックアウト変異について記載する。
【0262】
B.subtilis(亜系168)upp遺伝子(配列番号29)は、ピリミジンサルベージ酵素であるウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼをコードする。この酵素は、また、5-フルオロウラシルを、5-フルオロウリジンモノリン酸塩に直接変換し、これは、チミジル酸シンテターゼの強力な阻害剤である(Neuhard,J.Metabolism of nucleotides,nucleosides and nucleobases in microorganisms/edited by A.Munch-Petersen(1983)を参照)。5-FUが補われたプレート上でB.subtilisを培養すると、機能upp遺伝子を発現する全細胞で毒性が引き起こされ、機能的なコピーを欠いている細胞が選択される(Fabret et al.,Molecular Microbiology,46:25-36(2002)を参照)。これにより、uppが、選択可能な機能喪失をもたらす様々な潜在的な変異(例えば、付加、欠失、置換)を伴う低レベルの変異導入を検出するための有用な標的になる。この遺伝子の小さなサイズ(630bp、210aa)は、PCRアンプリコンシーケンシング及び多数の潜在的な変異の迅速な分析を可能にする。十分なウラシルが供給される場合、upp遺伝子が必須ではないという点に留意すべきである。
【0263】
uppでの光誘発型変異:可視光のみから生じた変異導入が、以前に観察されている(McGinty and Fowler,Mutation Research/Fundamental and Molecular Mechanisms of Mutagenesis 95,171-181(1982)を参照)。最も頻繁に観察された変異は、G:C→T:A塩基対のトランスバージョンである。upp遺伝子の最初の441ntにおける任意のアウトオブフレーム挿入/欠失変異は、upp機能喪失をもたらすC末端の活性部位の前に、未成熟終止をもたらすであろう。C末端の活性部位の前に未成熟終止をもたらす21の潜在的なG:C→T:A塩基対のトランスバージョンがある(表10で提供)。
【表10】
【0264】
実施例10.B.subtilis株168のCpf1発現株の生成
RNA誘導型DNA結合タンパク質dLbCpf1の同定されたupp標的部位:5つのLbCpf1標的部位(配列番号31~35)を、B.subtilisのupp遺伝子(配列番号29)内で同定した。B.subtilisのamyE遺伝子内の5つの標的配列(配列番号36~40)をオフターゲット対照として選択した。両方のセットの場合、DeepCpf1を使用して、予測スコアについて標的配列を選択した(Kim、2018)。また、非鋳型鎖を標的とすることにより、CRISPR誘発型阻害(CRISPRi)の影響を排除するように、標的を設計した(Kim et al.,ACS Synthetic Biology,2017 6(7),1273-1282,DOI:10.1021/acssynbio.6b00368)。
【表11】
【0265】
ガイド発現構築物:upp遺伝子及びamy遺伝子を標的とする発現カセットを含むガイドRNA発現ベクターを作成した。各カセットは、一連の直接反復を引き起こす合成の広域スペクトル構成プロモーター及びT7ターミネーターで終了する5つの23bpの標的化配列を含んでいた。5Xupa gRNA発現カセットは、配列番号41と記載され、5XamyE発現カセットは、配列番号42と記載される。ガイド発現カセットを、BamHI及びEcoRI制限部位間に、pMiniMADの改変誘導体であるpBV070(Patrick and Kearns,Molecular Microbiology 70,1166-1179(2008))に挿入した。これらのプラスミドは、抗生物質アンピシリン(E.coliクローニング用)及びエリスロマイシン(B.subtilis維持用)、pBR322の複製起点(E.coliクローニング用)及び温度感受性pE194(B.subtilis維持用)、ならびに細菌コンジュゲーションを可能にする可動フラグメント(mob)に対する耐性を付与する選択可能なマーカーを含んでいた。
【0266】
Cas-タンパク質発現構築物:dLbCpf1発現プラスミドを構築した。このプラスミドは、合成広域スペクトル構成的プロモーターにより引き起こされ且つT7ターミネーターで終端されたdLbCpf1コード配列のいずれかの末端に核局在配列を含むdLbCpf1発現カセット(配列番号43)を含んでいた。dLbCpf1発現プラスミドに、抗生物質カナマイシン、及びpBR322由来の複製起点(E.coliクローニング用)、及び温度感受性pE194(B.subtilis維持用)に対する耐性を付与する選択マーカーを含んでいた。
【0267】
B.subtilisの形質転換:要求にかなうB.subtilis株168を標準的な方法で調製した。
【0268】
実施例11:触媒的に不活性なRNA誘導型エンドヌクレアーゼ及びuppガイドRNAの存在下でのupp遺伝子の標的化光誘発型変異導入。
光誘発型変異導入により誘発された変異の率及びスペクトルを試験するために、実験を実施し、B.subtilis株168細胞をガイド発現とdLbCpf1発現プラスミドの組合せと同時形質転換した(表12)。
【表12】
【0269】
光誘発型変異導入処置:各プラスミドの組み合わせの単一コロニーを、リンコマイシン(25mg/L)、カナマイシン(5mg/L)、及びエリスロマイシン(1mg/L)が補充されたLB培地に接種し、30℃で一晩培養した。一晩の培養物を新しい選択培地に25倍希釈し、撹拌しながら且つ24時間にわたって照明サイクルを用いてまたは用いずに(15分オン、1時間オフ)、30℃でのインキュベーション用に24ウェルブロックに配置した。
【0270】
5-FU耐性数の決定:培養物をLBで10倍に希釈し、100μlを6.5mg/Lの5-FUを含有するLBアガープレートに3回ずつプレーティングして、耐性CFUを定量した。37℃で24時間インキュベーションした後、耐性CFUを計数した。
【0271】
総生菌数を決定するために、処置された培養物をさらにLB中105に希釈し、LBアガープレートにプレーティングして総CFUを定量した。30℃で一晩インキュベートした後、総CFUを計数した。この実験の結果は、図4に提供される耐性CFUの率により要約される。この実験では、upp遺伝子の標的化は、amyE遺伝子の標的化と比較して、耐性CFUの割合が3倍増加した。光サイクリングは、暗処理と比較して、耐性CFUの割合が5倍増加した。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
2022531253000001.app
【国際調査報告】