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特表2022-531285染色体外DNAの特定および使用の方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(54)【発明の名称】染色体外DNAの特定および使用の方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6806 20180101AFI20220629BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20220629BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20220629BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20220629BHJP
【FI】
C12Q1/6806 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/6869 Z
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564693
(86)(22)【出願日】2020-04-29
(85)【翻訳文提出日】2021-12-22
(86)【国際出願番号】 US2020030408
(87)【国際公開番号】W WO2020223309
(87)【国際公開日】2020-11-05
(31)【優先権主張番号】62/840,735
(32)【優先日】2019-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】398066918
【氏名又は名称】ザ ジャクソン ラボラトリー
【氏名又は名称原語表記】THE JACKSON LABORATORY
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100188374
【弁理士】
【氏名又は名称】一宮 維幸
(72)【発明者】
【氏名】ウエイ,チア-リン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,チー・ホーン
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ハリアント
(72)【発明者】
【氏名】バーハーク,ロエル
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QA19
4B063QQ08
4B063QQ42
4B063QR20
4B063QR48
4B063QR50
4B063QS25
4B063QS33
4B063QS34
4B063QX02
(57)【要約】
本発明は、染色体外環状DNA(ecDNA)を特定する方法、ならびにecDNAと腫瘍遺伝子転写との間の相互作用を特定し、評価する方法を、部分的に包含する。
【選択図】図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞において染色体外DNA(ecDNA)を特定する方法であって、
(a)非線形DNA分子と、染色体対の少なくとも1つの線形染色体との間のクロマチン相互作用を検出するステップであって、前記相互作用が、前記非線形DNA分子と、前記染色体対の前記少なくとも1つの線形染色体との間の接触を含み、
(i)前記細胞における、有意に高い頻度の、検出されたクロマチン相互作用、
(ii)前記細胞における、前記非線形DNA分子と、前記染色体対のそれぞれの少なくとも1つの線形染色体との間の接触、および
(iii)複数の細胞における、前記非線形DNA分子の細胞当たりの平均コピー数の経時的な増加
の存在が、前記非線形DNA分子をecDNAとして特定する、ステップ
を含む、方法。
【請求項2】
検出されたクロマチン相互作用の頻度を決定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非線形DNAのサイズを決定するステップをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞における前記非線形DNA分子のコピー数を決定するステップをさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
第1の時点で、複数の細胞において前記非線形DNA分子の細胞当たりの平均コピー数を決定するステップと、決定された平均を、対照の前記非線形DNAの細胞当たりの平均コピー数と比較するステップとをさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記対照の前記非線形DNA分子の細胞当たりの平均コピー数が、異なる時点で前記複数の細胞において決定された前記非線形DNA分子の細胞当たりの平均コピー数である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記非線形DNAの少なくとも一部分の配列を決定するステップをさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
決定された配列において、腫瘍遺伝子配列の存在を特定するステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記細胞が、がん細胞である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞が、前記がん細胞を含む複数の細胞から得られたものである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記細胞が、対象から得られたものである、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記対象が、がんと診断されているか、がんを有することが疑われるか、およびがんを有する危険性があるかのうちの少なくとも1つである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記細胞が、細胞培養物から得られたものである、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記細胞が、脊椎動物細胞である、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記細胞が、哺乳動物細胞であり、任意選択で、ヒト細胞である、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
ecDNAによりモジュレートされる腫瘍遺伝子を特定する方法であって、
(a)ecDNAと、細胞内に位置する1つまたは複数の標的遺伝子との間の相互作用を検出するステップであって、前記ecDNAと、前記1つまたは複数の標的遺伝子の制御エレメントとの間のクロマチン相互作用を直接的に測定することを含む、ステップと、
(b)ステップ(a)において検出された相互作用によって前記標的遺伝子の転写がモジュレートされている、前記相互作用に係る前記標的遺伝子のうちの1つまたは複数を特定するステップと、
(c)ステップ(b)において特定された前記標的遺伝子のうちの1つまたは複数が、腫瘍遺伝子であるかどうかを決定するステップであって、前記標的遺伝子を腫瘍遺伝子として決定することが、前記腫瘍遺伝子を、ecDNAによりモジュレートされる腫瘍遺伝子として特定する、ステップと
を含む、方法。
【請求項17】
ステップ(b)における前記特定が、前記特定された標的遺伝子の転写レベルを測定すること、および測定されたレベルを、対照の前記標的遺伝子の転写レベルと比較することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記転写のモジュレーションが、転写の増加である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
ステップ(a)における検出手段が、ChIA-PET法を含む、請求項16から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
ステップ(a)における検出手段が、Hi-C法を含む、請求項16から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記制御エレメントが、前記標的遺伝子のプロモーターを含む、請求項16から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記標的遺伝子が、線形染色体上に位置する、請求項16から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記標的遺伝子が、第2のecDNA上に位置する、請求項16から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記細胞が、がん細胞である、請求項16から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記細胞が、前記がん細胞を含む複数の細胞から得られたものである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記細胞が、対象から得られたものである、請求項16から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記対象が、がんと診断されているか、がんを有することが疑われるか、およびがんを有する危険性があるかのうちの少なくとも1つである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記細胞が、細胞培養物から得られたものである、請求項16から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記細胞が、脊椎動物細胞である、請求項16から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記細胞が、哺乳動物細胞であり、任意選択で、ヒト細胞である、請求項16から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
がんの腫瘍遺伝子ステータスを決定する方法であって、
(a)がん細胞において、ecDNAによってモジュレートされる腫瘍遺伝子を特定するステップと、(b)前記がんの前記腫瘍遺伝子ステータスの決定として、前記腫瘍遺伝子の前記ecDNAモジュレーションのレベルおよび作用のうちの1つまたは複数を決定するステップと
を含む、方法。
【請求項32】
ステップ(a)における特定手段が、
(i)ecDNAと、がん細胞のDNAに位置する1つまたは複数の標的遺伝子との間の相互作用を検出するステップであって、前記検出が、前記ecDNAと前記1つまたは複数の標的遺伝子の制御エレメントとの間のクロマチン相互作用を直接的に測定することを含む、ステップと、
(ii)ステップ(i)において検出された相互作用によって前記1つまたは複数の標的遺伝子の転写がモジュレートされている、前記検出された相互作用における前記標的遺伝子を特定するステップと、
(iii)ステップ(ii)において特定された前記標的遺伝子のうちの1つまたは複数が、腫瘍遺伝子であるかどうかを決定するステップであって、前記標的遺伝子を腫瘍遺伝子として決定することが、前記腫瘍遺伝子を、がん細胞においてecDNAによりモジュレートされる腫瘍遺伝子として特定する、ステップと
を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
ステップ(ii)における前記特定が、前記特定された標的遺伝子の転写レベルを測定すること、および測定されたレベルを、対照の前記標的遺伝子の転写レベルと比較することを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記転写のモジュレーションが、転写の増加である、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
ステップ(i)における検出手段が、ChIA-PET法を含む、請求項32から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
ステップ(i)における検出手段が、Hi-C法を含む、請求項32から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記制御エレメントが、前記標的遺伝子のプロモーターを含む、請求項32から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記標的遺伝子が、線形染色体上に位置する、請求項32から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記標的遺伝子が、第2のecDNA上に位置する、請求項32から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記細胞が、がん細胞である、請求項31から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記細胞が、前記がん細胞を含む複数の細胞から得られたものである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記細胞が、対象から得られたものである、請求項31から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記対象が、がんと診断されているか、がんを有することが疑われるか、およびがんを有する危険性があるかのうちの少なくとも1つである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記細胞が、細胞培養物から得られたものである、請求項31から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記細胞が、脊椎動物細胞である、請求項31から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記細胞が、哺乳動物細胞であり、任意選択で、ヒト細胞である、請求項31から45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記腫瘍遺伝子の前記ecDNAモジュレーションのレベルおよび作用のうちの1つまたは複数を検出するための手段が、モジュレートするecDNAとモジュレートされる腫瘍遺伝子との間の染色体間クロマチン接触頻度を直接的に測定することを含む、請求項31から46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
腫瘍遺伝子のecDNAモジュレーションのレベルおよび作用のうちの1つまたは複数を検出するための手段が、前記1つまたは複数のecDNAによりモジュレートされる腫瘍遺伝子の転写のレベルを決定することを含み、転写のレベルが前記がんの腫瘍遺伝子ステータスを決定する、請求項31から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
がんを含む第2の複数の細胞から得られたがん細胞において、ステップ(a)および(b)を繰り返すステップと、第1の複数の細胞から得られたがん細胞において検出された1つまたは複数のレベルまたは作用を、それぞれ、前記第2の複数の細胞から得られたがん細胞において検出されたレベルまたは作用と比較するステップとをさらに含み、
レベルおよび作用のうちの一方または両方における差が、前記がんの前記腫瘍遺伝子ステータスにおける変化を示す、請求項41から48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記第1の複数のがん細胞の前記がんにおける前記腫瘍遺伝子ステータスを決定した後、および前記第2の複数のがん細胞の前記腫瘍遺伝子ステータスを決定する前に、候補治療剤を、前記第2の複数のがん細胞と接触させるステップと、
前記第2の複数のがん細胞の前記腫瘍遺伝子ステータスに対する、前記候補治療剤との前記接触の作用を決定するステップと
をさらに含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記第1および第2の複数の細胞が、対象から得られたものである、請求項41から50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記対象が、がんと診断されているか、がんを有することが疑われるか、およびがんを有する危険性があるかのうちの1つまたは複数である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記第1および第2の複数の細胞が、細胞培養物から得られたものである、請求項41から50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記がん細胞が、哺乳動物細胞であり、任意選択で、ヒト細胞である、請求項31から42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記第1および第2の複数の細胞が、がん細胞を含む、請求項41から54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
決定された前記がんの腫瘍遺伝子ステータスに少なくとも部分的に基づいて、前記がんの処置の選択を補助するステップ
をさらに含む、請求項31から55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
がん細胞において、1つまたは複数の追加のecDNAによってモジュレートされる1つまたは複数の追加の腫瘍遺伝子を特定するステップと、前記がんの前記腫瘍遺伝子ステータスの決定として、前記特定された1つまたは複数の追加の腫瘍遺伝子の前記ecDNAモジュレーションのレベルおよび作用のうちの1つまたは複数を決定するステップとをさらに含む、請求項31から56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
細胞において染色体外DNA(ecDNA)を特定する方法であって、クロマチン相互作用分析法を使用して、非線形DNA分子と少なくとも1つの線形染色体との間の物理的相互作用を直接的に検出するステップを含み、クロマチン相互作用分析法が、
a)細胞を固定液と接触させ、前記細胞から単離されたDNAに対してクロマチン近接ライゲーションを行うステップと、
b)クロマチン免疫沈降を行うステップと、
c)ステップ(b)において免疫沈降したDNAからライブラリーを生成するステップと、
d)ステップ(c)において生成されたライブラリーをシーケンシングして、シーケンシングデータを生成するステップと、
e)ステップ(d)において生成されたシーケンシングデータを分析して、ecDNAを検出するステップと
を含む、方法。
【請求項59】
ステップ(a)~(c)が、ChIA-PET法またはHI-C法を使用して行われる、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
ステップ(b)が、前記クロマチン免疫沈降における抗RNAPII抗体の使用を含む、請求項58または59に記載の方法。
【請求項61】
ステップ(c)および(d)が、それぞれ、ペアエンドタグおよび高スループットシーケンシングの使用を含む、請求項58から60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記検出された物理的相互作用の頻度を決定するステップをさらに含む、請求項58から61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記非線形DNA分子のサイズを決定するステップをさらに含む、請求項58から62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記細胞における前記非線形DNA分子のコピー数を決定するステップをさらに含む、請求項58から63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
第1の時点で、複数の細胞において前記非線形DNA分子の細胞当たりの平均コピー数を決定するステップと、決定された平均を、対照の前記非線形DNA分子の細胞当たりの平均コピー数と比較するステップとをさらに含む、請求項58から64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記対照の前記非線形DNA分子の細胞当たりの平均コピー数が、異なる時点で前記複数の細胞において決定された前記非線形DNA分子の細胞当たりの平均コピー数である、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記非線形DNA分子の少なくとも一部分の配列を決定するステップをさらに含む、請求項58から66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
決定された配列において、腫瘍遺伝子配列の存在を特定するステップをさらに含む、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記細胞が、がん細胞である、請求項58から68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記細胞が、がん細胞を含む複数の細胞から得られたものである、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記細胞が、対象から得られたものである、請求項58から70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記対象が、がんと診断されているか、がんを有することが疑われるか、およびがんを有する危険性があるかのうちの少なくとも1つである、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記細胞が、細胞培養物から得られたものである、請求項58から72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記細胞が、脊椎動物細胞である、請求項58から73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記細胞が、哺乳動物細胞であり、任意選択で、ヒト細胞である、請求項58から74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
複数の細胞にステップ(a)~(e)を行うステップをさらに含む、請求項58から75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
対象においてがんを低減させるための処置を選択する方法であって、
対象から得られたがん細胞において1つまたは複数の特定のecDNAによりモジュレートされる腫瘍遺伝子の存在を特定するステップと、前記特定されたecDNAによりモジュレートされる腫瘍遺伝子に基づいて1つまたは複数の処置を選択するステップと
を含む、方法。
【請求項78】
前記特定するステップが、請求項1から15および58から76のいずれか一項に記載の方法を含む、請求項77に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、合衆国法典第35巻第119条(e)のもとに、2019年4月30日に出願された米国仮出願第62/840,735号の利益を主張し、そのすべての内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府の関与
本発明は、National Institutes of Health(NHI)によって授与された付与番号NCI P30CA034196、U54 DK107967、UM1 HG009409、およびR01 CA190121のもとに、政府の支援によりなされた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
発明の分野
本発明は、一部の態様において、染色体外環状DNA(ecDNA)を特定する方法、およびecDNAを使用して標的遺伝子の転写を評価する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
染色体外DNA(ecDNA)は、染色体外の環状クロマチンエレメントである[Cox, D. et al. (1965) Lancet 1, 55-58、Spriggs, A. I. et al. (1962) Br Med J 2, 1431-1435]。最初は顕微鏡イメージングにより細胞の核型において「二重微小クロマチン体」として説明されており[Cox, D. et al. (1965) Lancet 1, 55-58]、ecDNAは、インビトロ薬物耐性と関連する遺伝子増幅の様式であると考えられていた[Spriggs, A. I. et al. (1962) Br Med J 2, 1431-1435、deCarvalho, A. C. et al. (2018) Nat Genet 50, 708-717、Nathanson, D. A. et al. (2014) Science 343, 72-76]。より最近では、ecDNAは、原発性がんに共通していること[Xu, K. et al. (2018) Acta Neuropathol, doi:10.1007/s00401-018-1912-1]、および腫瘍遺伝子の増幅のための真正な機序および適応性リザーバを構成すること[Turner, K. M. et al. (2017) Nature 543, 122-125]が見出されている。ecDNAは、クロモスリプシスゲノム破砕事象を通じて誘導され得、その結果として、数百個のDNAセグメントからなり得る[Ma, K. et al. (2012) Int J Mol Sci 13, 11974-11999]。がん細胞におけるこれらの蓄積は、腫瘍微小環境における選択圧に応答して、および細胞傷害性治療剤に応答して、競合的利点をもたらす[Spriggs, A. I. et al. (1962) Br Med J 2, 1431-1435、Kohl, N. E. et al. (1983) Cell 35, 359-367]。遺伝様式の崩壊の結果として起こるecDNAレベルの急速な変動[Spriggs, A. I. et al. (1962) Br Med J 2, 1431-1435]は、腫瘍発達機序に寄与する可能性が高い。神経膠芽腫(GBM)は、ecDNAが高頻度で観察される侵攻性の脳腫瘍である[Rausch, T. et al. (2012) Cell 148, 59-71、Xue, Y. et al. (2017) Nat Med 23, 929-937]。標準的なゲノムアプローチを使用した固有なGBM由来のニューロスフェア培養物セットのこれまでの分析により、EGFR、MYC、およびCDK4を含む、腫瘍遺伝子を有する複数のecDNAが検出された[Spriggs, A. I. et al. (1962) Br Med J 2, 1431-1435]。ecDNAの存在およびそれらの構造情報は、これらの標準的なアプローチによって特徴付けられ始めているが、ecDNAが展開されてがん進行をモジュレートし、がん薬物耐性に寄与する機序については、依然としてわかっていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様によると、細胞において染色体外DNA(ecDNA)を特定する方法であって、(a)非線形DNA分子と、染色体対の少なくとも1つの線形染色体との間のクロマチン相互作用を検出するステップであって、相互作用が、非線形DNA分子と染色体対の少なくとも1つの線形染色体との間の接触を含み、(i)細胞における、有意に高い頻度の検出されたクロマチン相互作用、(ii)細胞における、非線形DNA分子と染色体対のそれぞれの少なくとも1つの線形染色体との間の接触、ならびに(iii)複数の細胞における非線形DNA分子の細胞当たりの平均コピー数の経時的な増加の存在が、非線形DNA分子をecDNAとして特定する、ステップを含む、方法が、提供される。一部の実施形態において、本方法はまた、検出されたクロマチン相互作用の頻度を決定するステップも含む。ある特定の実施形態において、本方法はまた、非線形DNAのサイズを決定するステップも含む。一部の実施形態において、本方法はまた、細胞における非線形DNA分子のコピー数を決定するステップも含む。一部の実施形態において、本方法はまた、第1の時点で、複数の細胞において非線形DNA分子の細胞当たりの平均コピー数を決定するステップと、決定された平均を、対照の非線形DNAの細胞当たりの平均コピー数と比較するステップとを含む。ある特定の実施形態において、対照の非線形DNA分子の細胞当たりの平均コピー数は、異なる時点で複数の細胞において決定された非線形DNA分子の細胞当たりの平均コピー数である。一部の実施形態において、本方法はまた、非線形DNAの少なくとも一部分の配列を決定するステップも含む。ある特定の実施形態において、本方法は、決定された配列において腫瘍遺伝子配列の存在を特定するステップも含む。一部の実施形態において、細胞は、がん細胞である。一部の実施形態において、細胞は、前がん性細胞である。一部の実施形態において、細胞は、がん細胞を含む複数の細胞から得られたものである。ある特定の実施形態において、細胞は、対象から得られたものである。一部の実施形態において、対象は、がんと診断されているか、がんを有することが疑われるか、およびがんを有する危険性があるかのうちの少なくとも1つである。一部の実施形態において、細胞は、細胞培養物から得られたものである。ある特定の実施形態において、細胞は、脊椎動物細胞である。一部の実施形態において、細胞は、哺乳動物細胞であり、任意選択で、ヒト細胞である。
【0006】
本発明の別の態様によると、ecDNAによりモジュレートされる腫瘍遺伝子を特定する方法であって、(a)ecDNAと、細胞に位置する1つまたは複数の標的遺伝子との間の相互作用を検出するステップであって、検出が、ecDNAと1つまたは複数の標的遺伝子の制御エレメントとの間のクロマチン相互作用を直接的に測定することを含む、ステップと、(b)ステップ(a)において検出された相互作用によって前記標的遺伝子の転写がモジュレートされている、前記相互作用に係る前記標的遺伝子のうちの1つまたは複数を特定するステップと、(c)ステップ(b)において特定された標的遺伝子のうちの1つまたは複数が腫瘍遺伝子であるかどうかを決定するステップであって、標的遺伝子を腫瘍遺伝子として決定することが、腫瘍遺伝子をecDNAによりモジュレートされる腫瘍遺伝子として特定する、ステップとを含む、方法が、提供される。一部の実施形態において、ステップ(b)における特定は、特定された標的遺伝子の転写のレベルを測定すること、および測定されたレベルを、対照の標的遺伝子の転写レベルと比較することを含む。ある特定の実施形態において、転写のモジュレーションは、転写の増加である。一部の実施形態において、ステップ(a)における検出の手段は、ChIA-PET法を含む。一部の実施形態において、ステップ(a)の検出の手段は、Hi-C法を含む。一部の実施形態において、制御エレメントは、標的遺伝子のプロモーターを含む。ある特定の実施形態において、標的遺伝子は、線形染色体上に位置している。一部の実施形態において、標的遺伝子は、ecDNAに位置している。ある特定の実施形態において、標的遺伝子は、第2のecDNAに位置している。一部の実施形態において、細胞は、がん細胞である。一部の実施形態において、細胞は、前がん性細胞である。ある特定の実施形態において、細胞は、がん細胞を含む複数の細胞から得られたものである。一部の実施形態において、細胞は、対象から得られたものである。一部の実施形態において、対象は、がんと診断されているか、がんを有することが疑われるか、およびがんを有する危険性があるかのうちの少なくとも1つである。一部の実施形態において、細胞は、細胞培養物から得られたものである。ある特定の実施形態において、細胞は、脊椎動物細胞である。一部の実施形態において、細胞は、哺乳動物細胞であり、任意選択で、ヒト細胞である。
【0007】
本発明の別の態様によると、がんの腫瘍遺伝子ステータスを決定する方法であって、(a)がん細胞において、ecDNAによってモジュレートされる腫瘍遺伝子を特定するステップと、(b)がんの腫瘍遺伝子ステータスの決定として、腫瘍遺伝子のecDNAモジュレーションのレベルおよび作用のうちの1つまたは複数を決定するステップとを含む、方法が提供される。一部の実施形態において、ステップ(a)における特定の手段は、(i)ecDNAと、がん細胞のDNAに位置する1つまたは複数の標的遺伝子との間の相互作用を検出するステップであって、検出が、ecDNAと1つまたは複数の標的遺伝子の制御エレメントとの間のクロマチン相互作用を直接的に測定することを含む、ステップと、(ii)ステップ(i)において検出された相互作用によって前記1つまたは複数の標的遺伝子の転写がモジュレートされている、前記検出された相互作用における前記標的遺伝子を特定するステップと、(iii)ステップ(ii)において特定された標的遺伝子のうちの1つまたは複数が、腫瘍遺伝子であるかどうかを決定するステップであって、標的遺伝子を腫瘍遺伝子として決定することが、腫瘍遺伝子をがん細胞におけるecDNAによりモジュレートされる腫瘍遺伝子として特定する、ステップとを含む。ある特定の実施形態において、ステップ(ii)における特定は、特定された標的遺伝子の転写のレベルを測定すること、および測定されたレベルを、対照の標的遺伝子の転写レベルと比較することを含む。一部の実施形態において、転写のモジュレーションは、転写の増加である。一部の実施形態において、ステップ(i)における検出の手段は、ChIA-PET法を含む。一部の実施形態において、ステップ(i)の検出の手段は、Hi-C法を含む。ある特定の実施形態において、制御エレメントは、標的遺伝子のプロモーターを含む。一部の実施形態において、プロモーターの活性化は、標的遺伝子の転写を増加させる。一部の実施形態において、標的遺伝子は、線形染色体上に位置している。ある特定の実施形態において、標的遺伝子は、ecDNAに位置している。一部の実施形態において、標的遺伝子は、第2のecDNAに位置している。一部の実施形態において、細胞は、がん細胞である。一部の実施形態において、細胞は、前がん性細胞である。ある特定の実施形態において、細胞は、がん細胞を含む複数の細胞から得られたものである。一部の実施形態において、細胞は、対象から得られたものである。一部の実施形態において、対象は、がんと診断されているか、がんを有することが疑われるか、およびがんを有する危険性があるかのうちの少なくとも1つである。一部の実施形態において、細胞は、細胞培養物から得られたものである。一部の実施形態において、細胞は、脊椎動物細胞である。ある特定の実施形態において、細胞は、哺乳動物細胞であり、任意選択で、ヒト細胞である。一部の実施形態において、腫瘍遺伝子のecDNAモジュレーションのレベルおよび作用のうちの1つまたは複数を検出するための手段は、モジュレートするecDNAとモジュレートされる腫瘍遺伝子との間の染色体間クロマチン接触頻度を直接的に測定することを含む。一部の実施形態において、腫瘍遺伝子のecDNAモジュレーションのレベルおよび作用のうちの1つまたは複数を検出するための手段は、1つまたは複数のecDNAによりモジュレートされる腫瘍遺伝子の転写のレベルを決定することを含み、転写のレベルにより、がんの腫瘍遺伝子ステータスを決定する。ある特定の実施形態において、本方法はまた、がんを含む第2の複数の細胞から得られたがん細胞において、ステップ(a)および(b)を繰り返すステップと、第1の複数の細胞から得られたがん細胞において検出された1つまたは複数のレベルまたは作用を、それぞれ、第2の複数の細胞から得られたがん細胞において検出されたレベルまたは作用と比較するステップとを含み、レベルおよび作用のうちの一方または両方における差が、がんの腫瘍遺伝子ステータスにおける変化を示す。一部の実施形態において、本方法はまた、第1の複数のがん細胞のがんにおける腫瘍遺伝子ステータスを決定した後、および第2の複数のがん細胞の腫瘍遺伝子ステータスを決定する前に、候補治療剤を、第2の複数のがん細胞と接触させるステップ、ならびに第2の複数のがん細胞の腫瘍遺伝子ステータスに対する候補治療剤との接触の作用を決定するステップも含む。一部の実施形態において、第1および第2の複数の細胞は、対象から得られたものである。ある特定の実施形態において、対象は、がんと診断されているか、がんを有することが疑われるか、およびがんを有する危険性があるかのうちの1つまたは複数である。一部の実施形態において、第1および第2の複数の細胞は、細胞培養物から得られたものである。一部の実施形態において、がん細胞は、哺乳動物細胞であり、任意選択で、ヒト細胞である。ある特定の実施形態において、第1および第2の複数の細胞は、がん細胞を含む。一部の実施形態において、本方法はまた、決定されたがんの腫瘍遺伝子ステータスに少なくとも部分的に基づいて、がんの処置の選択を補助するステップを含む。ある特定の実施形態において、本方法はまた、がん細胞において、1つまたは複数の追加のecDNAによってモジュレートされる1つまたは複数の追加の腫瘍遺伝子を特定するステップと、がんの腫瘍遺伝子ステータスの決定として、特定された1つまたは複数の追加の腫瘍遺伝子のecDNAモジュレーションのレベルおよび作用のうちの1つまたは複数を決定するステップとを含む。
【0008】
本発明の別の態様によると、細胞において染色体外DNA(ecDNA)を特定する方法であって、クロマチン相互作用分析法を使用して、非線形DNA分子と少なくとも1つの線形染色体との間の物理的相互作用を直接的に検出するステップを含み、この分析方法が、(a)細胞を固定液と接触させ、細胞から単離されたDNAに対してクロマチン近接ライゲーションを行うステップと、(b)クロマチン免疫沈降を行うステップと、(c)ステップ(b)において免疫沈降されたDNAからライブラリーを生成するステップと、(d)ステップ(c)において生成されたライブラリーをシーケンシングして、シーケンシングデータを生成するステップと、(e)ステップ(d)において生成されたシーケンシングデータを分析して、ecDNAを検出するステップとを含む、方法が提供される。ある特定の実施形態において、ステップ(a)~(c)は、ChIA-PET法またはHI-C法を使用して行われる。一部の実施形態において、ステップ(b)は、クロマチン免疫沈降における抗RNAPII抗体の使用を含む。一部の実施形態において、ステップ(c)および(d)は、それぞれ、ペアエンドタグおよび高スループットシーケンシングの使用を含む。ある特定の実施形態において、本方法はまた、検出された物理的相互作用の頻度を決定するステップも含む。一部の実施形態において、本方法はまた、非線形DNA分子のサイズを決定するステップも含む。一部の実施形態において、本方法はまた、細胞における非線形DNA分子のコピー数を決定するステップも含む。一部の実施形態において、本方法はまた、第1の時点で、複数の細胞において非線形DNA分子の細胞当たりの平均コピー数を決定するステップと、決定された平均を、対照の非線形DNA分子の細胞当たりの平均コピー数と比較するステップとを含む。ある特定の実施形態において、対照の非線形DNA分子の細胞当たりの平均コピー数は、異なる時点で複数の細胞において決定された非線形DNA分子の細胞当たりの平均コピー数である。一部の実施形態において、本方法はまた、非線形DNA分子の少なくとも一部分の配列を決定するステップも含む。一部の実施形態において、本方法はまた、決定された配列において腫瘍遺伝子配列の存在を特定するステップも含む。ある特定の実施形態において、細胞は、がん細胞である。一部の実施形態において、細胞は、前がん性細胞である。一部の実施形態において、細胞は、がん細胞を含む複数の細胞から得られたものである。ある特定の実施形態において、細胞は、対象から得られたものである。一部の実施形態において、対象は、がんと診断されているか、がんを有することが疑われるか、およびがんを有する危険性があるかのうちの少なくとも1つである。ある特定の実施形態において、細胞は、細胞培養物から得られたものである。一部の実施形態において、細胞は、脊椎動物細胞である。一部の実施形態において、細胞は、哺乳動物細胞であり、任意選択で、ヒト細胞である。ある特定の実施形態において、本方法はまた、複数の細胞にステップ(a)~(e)を行うことも含む。
【0009】
本発明のさらに別の態様によると、対象においてがんを低減させるための処置を選択する方法であって、対象から得られたがん細胞において1つまたは複数の特定のecDNAによりモジュレートされる腫瘍遺伝子の存在を特定するステップと、特定されたecDNAによりモジュレートされる腫瘍遺伝子に基づいて1つまたは複数の処置を選択するステップとを含む、方法が、提供される。一部の実施形態において、特定するステップは、細胞において染色体外DNA(ecDNA)を特定する前述の方法の任意の実施形態を含み、この方法は、(a)非線形DNA分子と、染色体対の少なくとも1つの線形染色体との間のクロマチン相互作用を検出するステップであって、相互作用が、非線形DNA分子と、染色体対の少なくとも1つの線形染色体との間の接触を含み、(i)細胞における有意に高い頻度の検出されたクロマチン相互作用、(ii)細胞における非線形DNA分子と染色体対のそれぞれの少なくとも1つの線形染色体との間の接触、および(iii)複数の細胞における非線形DNA分子の細胞当たりの平均コピー数の経時的な増加の存在が、非線形DNA分子をecDNAとして特定する、ステップを含む。一部の実施形態において、特定するステップは、細胞において染色体外DNA(ecDNA)を特定する前述の方法のいずれかの実施形態を含み、この方法は、クロマチン相互作用分析を使用して、非線形DNA分子と、少なくとも1つの線形染色体との間の物理的相互作用を直接的に検出するステップを含み、この分析方法が、(a)細胞を固定液と接触させ、細胞から単離されたDNAに対してクロマチン近接ライゲーションを行うステップと、(b)クロマチン免疫沈降を行うステップと、(c)ステップ(b)において免疫沈降されたDNAからライブラリーを生成するステップと、(d)ステップ(c)において生成されたライブラリーをシーケンシングして、シーケンシングDNAを生成するステップと、(e)ステップ(d)において生成されたシーケンシングデータを分析して、ecDNAを検出するステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A図1A~Bは、ecDNAシグネチャーが、23個の染色体にわたるトランス染色体相互作用頻度(nsTIF)の分布によって区別することができることを示す、図およびトレースである。図1Aは、HF-3016およびHF-3177 ecDNA(+)細胞株における23個すべての染色体にわたるecDNA領域によって媒介されるトランス相互作用のサーコスプロットを提供する。ecMYC、ecEGFR、およびecCDK4領域間の強力な接続が示されている。図1Bは、ecDNA(+)HF-3016およびHF-3177細胞株、ならびにecDNA(-)HF-3035株における50Kbのビンサイズの全ゲノム正規化総和TIF(nsTIF)の分布を示す。nsTIFの上昇が、第7染色体、第8染色体、および第12染色体で観察される。全長第7染色体、第8染色体、および第12染色体に沿ったnsTIFの分布が下に示され、nsTIF値が上昇している領域は、公知のecEGFR、ecMYC、およびecCDK4領域と良好に一致する。
図1B-1】図1A~Bは、ecDNAシグネチャーが、23個の染色体にわたるトランス染色体相互作用頻度(nsTIF)の分布によって区別することができることを示す、図およびトレースである。図1Aは、HF-3016およびHF-3177 ecDNA(+)細胞株における23個すべての染色体にわたるecDNA領域によって媒介されるトランス相互作用のサーコスプロットを提供する。ecMYC、ecEGFR、およびecCDK4領域間の強力な接続が示されている。図1Bは、ecDNA(+)HF-3016およびHF-3177細胞株、ならびにecDNA(-)HF-3035株における50Kbのビンサイズの全ゲノム正規化総和TIF(nsTIF)の分布を示す。nsTIFの上昇が、第7染色体、第8染色体、および第12染色体で観察される。全長第7染色体、第8染色体、および第12染色体に沿ったnsTIFの分布が下に示され、nsTIF値が上昇している領域は、公知のecEGFR、ecMYC、およびecCDK4領域と良好に一致する。
図1B-2】図1A~Bは、ecDNAシグネチャーが、23個の染色体にわたるトランス染色体相互作用頻度(nsTIF)の分布によって区別することができることを示す、図およびトレースである。図1Aは、HF-3016およびHF-3177 ecDNA(+)細胞株における23個すべての染色体にわたるecDNA領域によって媒介されるトランス相互作用のサーコスプロットを提供する。ecMYC、ecEGFR、およびecCDK4領域間の強力な接続が示されている。図1Bは、ecDNA(+)HF-3016およびHF-3177細胞株、ならびにecDNA(-)HF-3035株における50Kbのビンサイズの全ゲノム正規化総和TIF(nsTIF)の分布を示す。nsTIFの上昇が、第7染色体、第8染色体、および第12染色体で観察される。全長第7染色体、第8染色体、および第12染色体に沿ったnsTIFの分布が下に示され、nsTIF値が上昇している領域は、公知のecEGFR、ecMYC、およびecCDK4領域と良好に一致する。
図2A図2A~Dは、ecDNAが広いスパンのH3K27ac改変の強力な増強を示すという根拠を示す、プロファイル、グラフ、および箱ひげ図を示す。図2Aは、HF-2354、HF-2927、HF-3016、およびHF-3177にわたってecDNA(+)細胞株のそれぞれにおいて見出されたec-腫瘍遺伝子のプロモーターと相互作用する染色体の非コーディングアンカーの±3Kb以内のH3K27ac改変濃縮プロファイルを提供する。それぞれの株において見出されたアンカーの数をラベル付けし、それぞれの領域を、それらの対応する細胞株において検出されたシグナル強度で(上から下に、高い強度から低い強度へ)並べた行として示す。図2Bは、HF-2927のecEGFR領域(chr7: 54,929,292-55,441,765)にわたるクロマチン相互作用頻度の分布とH3K27acシグナル密度との間の一致を示す。下のパネル:ecDNA(+)HF-2927におけるecEGFR領域のH3K27acシグナル密度プロファイル(上)。比較のために、ecDNA(-)HF-3035株の同じ領域から得られたH3K27acシグナル密度プロファイルを示す(下)。領域は、シグナル強度およびスパンの差を示すためにハイライトされている。図2C~Dは、4つのecDNA(+)株のそれぞれから得られたecDNAにおけるH3K27acピーク(群A、n=17、16、96、および70)、それらの対応するトランス相互作用染色体アンカー(群B、n=166、634、913、および745)、ならびに残りの全ゲノムピーク(群C、n=38,259、40,413、48,751、および56,041)の濃縮倍数(図2C)およびスパンサイズ分布(図2D)を示す箱ひげ図を示す。ecDNA(-)HF-3035株では、群A(n=182)は、集合的なecDNA相当領域において見出されたH3K27acピークを指し、群C(n=53,529)は、検出された残りの全ゲノムピークを表す。Y軸は、図2CおよびDにおいて、それぞれ、logおよびlog10のスケールである。中央線は中央値、枠は第1および第3の四分位、ひげは1.5×四分位間範囲(IQR)、点は外れ値である。*:P値<0.005(片側ウィルコクソンの順位和検定)。それぞれの対応のある比較のサンプルサイズおよび正確なP値に関して。図2Cおよび図2Dのそれぞれにおいて、X軸の左から右に、1つ目のA、B、およびCは、HF-2354からのデータを示し、2つ目のA、B、およびCは、HF-2927からのデータを示し、3つ目のA、B、およびCは、HF-3016からの結果を示し、4つ目のA、B、およびCは、HF-3177からのデータを示し、最後のAおよびCは、HF-3035からのデータを示す。
図2B図2A~Dは、ecDNAが広いスパンのH3K27ac改変の強力な増強を示すという根拠を示す、プロファイル、グラフ、および箱ひげ図を示す。図2Aは、HF-2354、HF-2927、HF-3016、およびHF-3177にわたってecDNA(+)細胞株のそれぞれにおいて見出されたec-腫瘍遺伝子のプロモーターと相互作用する染色体の非コーディングアンカーの±3Kb以内のH3K27ac改変濃縮プロファイルを提供する。それぞれの株において見出されたアンカーの数をラベル付けし、それぞれの領域を、それらの対応する細胞株において検出されたシグナル強度で(上から下に、高い強度から低い強度へ)並べた行として示す。図2Bは、HF-2927のecEGFR領域(chr7: 54,929,292-55,441,765)にわたるクロマチン相互作用頻度の分布とH3K27acシグナル密度との間の一致を示す。下のパネル:ecDNA(+)HF-2927におけるecEGFR領域のH3K27acシグナル密度プロファイル(上)。比較のために、ecDNA(-)HF-3035株の同じ領域から得られたH3K27acシグナル密度プロファイルを示す(下)。領域は、シグナル強度およびスパンの差を示すためにハイライトされている。図2C~Dは、4つのecDNA(+)株のそれぞれから得られたecDNAにおけるH3K27acピーク(群A、n=17、16、96、および70)、それらの対応するトランス相互作用染色体アンカー(群B、n=166、634、913、および745)、ならびに残りの全ゲノムピーク(群C、n=38,259、40,413、48,751、および56,041)の濃縮倍数(図2C)およびスパンサイズ分布(図2D)を示す箱ひげ図を示す。ecDNA(-)HF-3035株では、群A(n=182)は、集合的なecDNA相当領域において見出されたH3K27acピークを指し、群C(n=53,529)は、検出された残りの全ゲノムピークを表す。Y軸は、図2CおよびDにおいて、それぞれ、logおよびlog10のスケールである。中央線は中央値、枠は第1および第3の四分位、ひげは1.5×四分位間範囲(IQR)、点は外れ値である。*:P値<0.005(片側ウィルコクソンの順位和検定)。それぞれの対応のある比較のサンプルサイズおよび正確なP値に関して。図2Cおよび図2Dのそれぞれにおいて、X軸の左から右に、1つ目のA、B、およびCは、HF-2354からのデータを示し、2つ目のA、B、およびCは、HF-2927からのデータを示し、3つ目のA、B、およびCは、HF-3016からの結果を示し、4つ目のA、B、およびCは、HF-3177からのデータを示し、最後のAおよびCは、HF-3035からのデータを示す。
図2C図2A~Dは、ecDNAが広いスパンのH3K27ac改変の強力な増強を示すという根拠を示す、プロファイル、グラフ、および箱ひげ図を示す。図2Aは、HF-2354、HF-2927、HF-3016、およびHF-3177にわたってecDNA(+)細胞株のそれぞれにおいて見出されたec-腫瘍遺伝子のプロモーターと相互作用する染色体の非コーディングアンカーの±3Kb以内のH3K27ac改変濃縮プロファイルを提供する。それぞれの株において見出されたアンカーの数をラベル付けし、それぞれの領域を、それらの対応する細胞株において検出されたシグナル強度で(上から下に、高い強度から低い強度へ)並べた行として示す。図2Bは、HF-2927のecEGFR領域(chr7: 54,929,292-55,441,765)にわたるクロマチン相互作用頻度の分布とH3K27acシグナル密度との間の一致を示す。下のパネル:ecDNA(+)HF-2927におけるecEGFR領域のH3K27acシグナル密度プロファイル(上)。比較のために、ecDNA(-)HF-3035株の同じ領域から得られたH3K27acシグナル密度プロファイルを示す(下)。領域は、シグナル強度およびスパンの差を示すためにハイライトされている。図2C~Dは、4つのecDNA(+)株のそれぞれから得られたecDNAにおけるH3K27acピーク(群A、n=17、16、96、および70)、それらの対応するトランス相互作用染色体アンカー(群B、n=166、634、913、および745)、ならびに残りの全ゲノムピーク(群C、n=38,259、40,413、48,751、および56,041)の濃縮倍数(図2C)およびスパンサイズ分布(図2D)を示す箱ひげ図を示す。ecDNA(-)HF-3035株では、群A(n=182)は、集合的なecDNA相当領域において見出されたH3K27acピークを指し、群C(n=53,529)は、検出された残りの全ゲノムピークを表す。Y軸は、図2CおよびDにおいて、それぞれ、logおよびlog10のスケールである。中央線は中央値、枠は第1および第3の四分位、ひげは1.5×四分位間範囲(IQR)、点は外れ値である。*:P値<0.005(片側ウィルコクソンの順位和検定)。それぞれの対応のある比較のサンプルサイズおよび正確なP値に関して。図2Cおよび図2Dのそれぞれにおいて、X軸の左から右に、1つ目のA、B、およびCは、HF-2354からのデータを示し、2つ目のA、B、およびCは、HF-2927からのデータを示し、3つ目のA、B、およびCは、HF-3016からの結果を示し、4つ目のA、B、およびCは、HF-3177からのデータを示し、最後のAおよびCは、HF-3035からのデータを示す。
図2D図2A~Dは、ecDNAが広いスパンのH3K27ac改変の強力な増強を示すという根拠を示す、プロファイル、グラフ、および箱ひげ図を示す。図2Aは、HF-2354、HF-2927、HF-3016、およびHF-3177にわたってecDNA(+)細胞株のそれぞれにおいて見出されたec-腫瘍遺伝子のプロモーターと相互作用する染色体の非コーディングアンカーの±3Kb以内のH3K27ac改変濃縮プロファイルを提供する。それぞれの株において見出されたアンカーの数をラベル付けし、それぞれの領域を、それらの対応する細胞株において検出されたシグナル強度で(上から下に、高い強度から低い強度へ)並べた行として示す。図2Bは、HF-2927のecEGFR領域(chr7: 54,929,292-55,441,765)にわたるクロマチン相互作用頻度の分布とH3K27acシグナル密度との間の一致を示す。下のパネル:ecDNA(+)HF-2927におけるecEGFR領域のH3K27acシグナル密度プロファイル(上)。比較のために、ecDNA(-)HF-3035株の同じ領域から得られたH3K27acシグナル密度プロファイルを示す(下)。領域は、シグナル強度およびスパンの差を示すためにハイライトされている。図2C~Dは、4つのecDNA(+)株のそれぞれから得られたecDNAにおけるH3K27acピーク(群A、n=17、16、96、および70)、それらの対応するトランス相互作用染色体アンカーのピーク(群B、n=166、634、913、および745)、ならびに残りの全ゲノムピーク(群C、n=38,259、40,413、48,751、および56,041)の濃縮倍数(図2C)およびスパンサイズ分布(図2D)を示す箱ひげ図を示す。ecDNA(-)HF-3035株では、群A(n=182)は、集合的なecDNA相当領域において見出されたH3K27acピークを指し、群C(n=53,529)は、検出された残りの全ゲノムピークを表す。Y軸は、図2CおよびDにおいて、それぞれ、logおよびlog10のスケールである。中央線は中央値、枠は第1および第3の四分位、ひげは1.5×四分位間範囲(IQR)、点は外れ値である。*:P値<0.005(片側ウィルコクソンの順位和検定)。それぞれの対応のある比較のサンプルサイズおよび正確なP値に関して。図2Cおよび図2Dのそれぞれにおいて、X軸の左から右に、1つ目のA、B、およびCは、HF-2354からのデータを示し、2つ目のA、B、およびCは、HF-2927からのデータを示し、3つ目のA、B、およびCは、HF-3016からの結果を示し、4つ目のA、B、およびCは、HF-3177からのデータを示し、最後のAおよびCは、HF-3035からのデータを示す。
図3A図3A~Cは、ecDNAに媒介されるトランス相互作用遺伝子およびそれらの関連する相互作用ネットワークを示すベン図、概略図、および表を提供する。図3A~Bは、4つのecDNA(+)細胞株のそれぞれにおけるecDNAに接続された遺伝子(図3A)および腫瘍遺伝子(図3B)の数、ならびにそれらのオーバーラップを提示するベン図を示す。図3Cは、相互作用のアンカー、ノード、ハブ、およびコミュニティを定義するプロセスフローを示す(実施例の節の方法を参照されたい)。クロマチンループによって接続されているゲノム領域を、アンカーとして定義した。オーバーラップしないアンカーは、接続性スコア(接続しているノードの数)を有するノードとして統合され、その中で、接続性の高いノード(平均接続性スコアが+3標準偏差以上である)を、ハブとして分類した。広範囲の接続性を有するハブおよびノードは、集合的に、コミュニティとして定義した。ecDNAと関連するコミュニティ、ハブ、および腫瘍遺伝子の数を、ecDNA(+)株のそれぞれについて要約している。
図3B図3A~Cは、ecDNAに媒介されるトランス相互作用遺伝子およびそれらの関連する相互作用ネットワークを示すベン図、概略図、および表を提供する。図3A~Bは、4つのecDNA(+)細胞株のそれぞれにおけるecDNAに接続された遺伝子(図3A)および腫瘍遺伝子(図3B)の数、ならびにそれらのオーバーラップを提示するベン図を示す。図3Cは、相互作用のアンカー、ノード、ハブ、およびコミュニティを定義するプロセスフローを示す(実施例の節の方法を参照されたい)。クロマチンループによって接続されているゲノム領域を、アンカーとして定義した。オーバーラップしないアンカーは、接続性スコア(接続しているノードの数)を有するノードとして統合され、その中で、接続性の高いノード(平均接続性スコアが+3標準偏差以上である)を、ハブとして分類した。広範囲の接続性を有するハブおよびノードは、集合的に、コミュニティとして定義した。ecDNAと関連するコミュニティ、ハブ、および腫瘍遺伝子の数を、ecDNA(+)株のそれぞれについて要約している。
図3C図3A~Cは、ecDNAに媒介されるトランス相互作用遺伝子およびそれらの関連する相互作用ネットワークを示すベン図、概略図、および表を提供する。図3A~Bは、4つのecDNA(+)細胞株のそれぞれにおけるecDNAに接続された遺伝子(図3A)および腫瘍遺伝子(図3B)の数、ならびにそれらのオーバーラップを提示するベン図を示す。図3Cは、相互作用のアンカー、ノード、ハブ、およびコミュニティを定義するプロセスフローを示す(実施例の節の方法を参照されたい)。クロマチンループによって接続されているゲノム領域を、アンカーとして定義した。オーバーラップしないアンカーは、接続性スコア(接続しているノードの数)を有するノードとして統合され、その中で、接続性の高いノード(平均接続性スコアが+3標準偏差以上である)を、ハブとして分類した。広範囲の接続性を有するハブおよびノードは、集合的に、コミュニティとして定義した。ecDNAと関連するコミュニティ、ハブ、および腫瘍遺伝子の数を、ecDNA(+)株のそれぞれについて要約している。
図4A図4A~Bは、5つのGBM由来のニューロスフェア細胞株におけるChIA-PET分析の概要を示す。図4Aは、ecDNA(+)GBM由来の細胞株からのecDNA内で増幅された遺伝子の定常状態での発現レベルを示す。図4Bは、ChIA-PETデータから5つの細胞株のそれぞれにおいて検出されたRNAPII結合部位および長距離のクロマチン相互作用の数を示す。相互作用は、全ゲノムでの有意なシス相互作用(PETカウントが3以上、P値が0.05未満、およびFDRが0.05未満、実施例の節の方法を参照されたい)、ecDNA領域間の相互作用(ecDNA内相互作用)、およびecDNA領域と23個の線形染色体との間の相互作用(ecDNAトランス染色体)の3つのカテゴリーで報告する。両方のアンカーにおいて検出されたRNAPII結合部位との相互作用のみが報告されている。
図4B図4A~Bは、5つのGBM由来のニューロスフェア細胞株におけるChIA-PET分析の概要を示す。図4Aは、ecDNA(+)GBM由来の細胞株からのecDNA内で増幅された遺伝子の定常状態での発現レベルを示す。図4Bは、ChIA-PETデータから5つの細胞株のそれぞれにおいて検出されたRNAPII結合部位および長距離のクロマチン相互作用の数を示す。相互作用は、全ゲノムでの有意なシス相互作用(PETカウントが3以上、P値が0.05未満、およびFDRが0.05未満、実施例の節の方法を参照されたい)、ecDNA領域間の相互作用(ecDNA内相互作用)、およびecDNA領域と23個の線形染色体との間の相互作用(ecDNAトランス染色体)の3つのカテゴリーで報告する。両方のアンカーにおいて検出されたRNAPII結合部位との相互作用のみが報告されている。
図5A図5A~Cは、ChIA-PET分析によるecDNAシグネチャーの発見を示す結果の概略図、分布、および箱ひげ図を示す。図5Aは、ecDNAにおいて増幅されたゲノム領域およびそれらに関連するクロマチン接触を検出するために使用したクロマチン相互作用分析を示す概略図である。RNAPII ChIA-PETアッセイを行って、すべてのRNAPII会合クロマチンを捕捉した。ecDNAは、活動的に発現される腫瘍遺伝子を保持し、クロマチンテリトリーによる制約を受けず、他の染色体領域と広範に接触を行っており、このことから、活性な転写ハブ内でecDNA特異的シグネチャーを発見し、それらの共制御される遺伝子を特徴付けるために使用することができる。図5Bは、HF-2927およびHF-2354において50Kbのビンサイズでの23個の染色体にわたるトランス相互作用頻度の正規化総和(nsTIF)の分布を示す。それらの対応する細胞株において、それぞれ第7染色体および第8染色体の正規化nsTIFの分布(拡大nsTIFプロットに示されている)により、それぞれEGFRおよびMYCを包含することが予測されるecDNAの位置が明らかとなる。図5Bの左側は、染色体7p11および8q24上の領域にはっきりした線の対を示す全ゲノム2Dクロマチン接触ヒートマップを示し、ゲノム全体で強力な接触を示している。図5Bの右側は、ecEGFRおよびecMYC領域により媒介される23個すべての染色体にわたるトランス染色体接触頻度のサーコスプロットを示す。図5Cは、4つのecDNA(+)細胞株において、公知のecDNA領域とコピー数の増加が3以上である染色体DNA領域との間の正規化されたnsTIFの箱ひげ図の提示を提供する。左から右へ、n=31、3,423、11、5、15、82、25、833である。ecDNA領域におけるnsTIFは、コピー数増加を有する領域におけるnsTIFよりも統計学的に高い。P値(片側ウィルコクソンの順位和検定)は、HF-2354、HF-2927、HF-3016、およびHF-3177について、それぞれ、4E-22、4.5E-4、4.4E-10、および7.1E-18である。中央線は中央値、枠は第1および第3の四分位、ひげは1.5×四分位間範囲(IQR)、点は外れ値である。
図5B図5A~Cは、ChIA-PET分析によるecDNAシグネチャーの発見を示す結果の概略図、分布、および箱ひげ図を示す。図5Aは、ecDNAにおいて増幅されたゲノム領域およびそれらに関連するクロマチン接触を検出するために使用したクロマチン相互作用分析を示す概略図である。RNAPII ChIA-PETアッセイを行って、すべてのRNAPII会合クロマチンを捕捉した。ecDNAは、活動的に発現される腫瘍遺伝子を保持し、クロマチンテリトリーによる制約を受けず、他の染色体領域と広範に接触を行っており、このことから、活性な転写ハブ内でecDNA特異的シグネチャーを発見し、それらの共制御される遺伝子を特徴付けるために使用することができる。図5Bは、HF-2927およびHF-2354において50Kbのビンサイズでの23個の染色体にわたるトランス相互作用頻度の正規化総和(nsTIF)の分布を示す。それらの対応する細胞株において、それぞれ第7染色体および第8染色体の正規化nsTIFの分布(拡大nsTIFプロットに示されている)により、それぞれEGFRおよびMYCを包含することが予測されるecDNAの位置が明らかとなる。図5Bの左側は、染色体7p11および8q24上の領域にはっきりした線の対を示す全ゲノム2Dクロマチン接触ヒートマップを示し、ゲノム全体で強力な接触を示している。図5Bの右側は、ecEGFRおよびecMYC領域により媒介される23個すべての染色体にわたるトランス染色体接触頻度のサーコスプロットを示す。図5Cは、4つのecDNA(+)細胞株において、公知のecDNA領域とコピー数の増加が3以上である染色体DNA領域との間の正規化されたnsTIFの箱ひげ図の提示を提供する。左から右へ、n=31、3,423、11、5、15、82、25、833である。ecDNA領域におけるnsTIFは、コピー数増加を有する領域におけるnsTIFよりも統計学的に高い。P値(片側ウィルコクソンの順位和検定)は、HF-2354、HF-2927、HF-3016、およびHF-3177について、それぞれ、4E-22、4.5E-4、4.4E-10、および7.1E-18である。中央線は中央値、枠は第1および第3の四分位、ひげは1.5×四分位間範囲(IQR)、点は外れ値である。
図5C図5A~Cは、ChIA-PET分析によるecDNAシグネチャーの発見を示す結果の概略図、分布、および箱ひげ図を示す。図5Aは、ecDNAにおいて増幅されたゲノム領域およびそれらに関連するクロマチン接触を検出するために使用したクロマチン相互作用分析を示す概略図である。RNAPII ChIA-PETアッセイを行って、すべてのRNAPII会合クロマチンを捕捉した。ecDNAは、活動的に発現される腫瘍遺伝子を保持し、クロマチンテリトリーによる制約を受けず、他の染色体領域と広範に接触を行っており、このことから、活性な転写ハブ内でecDNA特異的シグネチャーを発見し、それらの共制御される遺伝子を特徴付けるために使用することができる。図5Bは、HF-2927およびHF-2354において50Kbのビンサイズでの23個の染色体にわたるトランス相互作用頻度の正規化総和(nsTIF)の分布を示す。それらの対応する細胞株において、それぞれ第7染色体および第8染色体の正規化nsTIFの分布(拡大nsTIFプロットに示されている)により、それぞれEGFRおよびMYCを包含することが予測されるecDNAの位置が明らかとなる。図5Bの左側は、染色体7p11および8q24上の領域にはっきりした線の対を示す全ゲノム2Dクロマチン接触ヒートマップを示し、ゲノム全体で強力な接触を示している。図5Bの右側は、ecEGFRおよびecMYC領域により媒介される23個すべての染色体にわたるトランス染色体接触頻度のサーコスプロットを示す。図5Cは、4つのecDNA(+)細胞株において、公知のecDNA領域とコピー数の増加が3以上である染色体DNA領域との間の正規化されたnsTIFの箱ひげ図の提示を提供する。左から右へ、n=31、3,423、11、5、15、82、25、833である。ecDNA領域におけるnsTIFは、コピー数増加を有する領域におけるnsTIFよりも統計学的に高い。P値(片側ウィルコクソンの順位和検定)は、HF-2354、HF-2927、HF-3016、およびHF-3177について、それぞれ、4E-22、4.5E-4、4.4E-10、および7.1E-18である。中央線は中央値、枠は第1および第3の四分位、ひげは1.5×四分位間範囲(IQR)、点は外れ値である。
図6A図6A~Cは、ゲノム構造バリアントにより反映されるクロマチントポロジー変化のChIA-PETアッセイ検出を示すヒートマップを提供する。図6Aは、2D接触ヒートマップによって視覚化することができる、ChIA-PETデータにおいて一般的なクロマチン接触によって測定される空間的クロマチントポロジーを示す。5つすべてのGBM患者由来のニューロスフェア細胞株から得られた第2染色体のヒートマップが示されている。図6Bは、それぞれ、HF-2927およびHF-3035において、PTEN(上)ならびにCDKN2AおよびCDKN2B(下)が欠失しているゲノム領域の2D接触ヒートマップを提供する。TAD領域は、青色の線によって区切られている。遺伝子座の欠失は、クロマチン接触の喪失によって表される。図6Cは、2Dヒートマップによって異常な接触パターンとして視覚化される、DMD遺伝子における欠失、第3染色体における複雑な再構成、および二重転位t(3;6)という追加の構造バリアントを示す。
図6B図6A~Cは、ゲノム構造バリアントにより反映されるクロマチントポロジー変化のChIA-PETアッセイ検出を示すヒートマップを提供する。図6Aは、2D接触ヒートマップによって視覚化することができる、ChIA-PETデータにおいて一般的なクロマチン接触によって測定される空間的クロマチントポロジーを示す。5つすべてのGBM患者由来のニューロスフェア細胞株から得られた第2染色体のヒートマップが示されている。図6Bは、それぞれ、HF-2927およびHF-3035において、PTEN(上)ならびにCDKN2AおよびCDKN2B(下)が欠失しているゲノム領域の2D接触ヒートマップを提供する。TAD領域は、青色の線によって区切られている。遺伝子座の欠失は、クロマチン接触の喪失によって表される。図6Cは、2Dヒートマップによって異常な接触パターンとして視覚化される、DMD遺伝子における欠失、第3染色体における複雑な再構成、および二重転位t(3;6)という追加の構造バリアントを示す。
図6C図6A~Cは、ゲノム構造バリアントにより反映されるクロマチントポロジー変化のChIA-PETアッセイ検出を示すヒートマップを提供する。図6Aは、2D接触ヒートマップによって視覚化することができる、ChIA-PETデータにおいて一般的なクロマチン接触によって測定される空間的クロマチントポロジーを示す。5つすべてのGBM患者由来のニューロスフェア細胞株から得られた第2染色体のヒートマップが示されている。図6Bは、それぞれ、HF-2927およびHF-3035において、PTEN(上)ならびにCDKN2AおよびCDKN2B(下)が欠失しているゲノム領域の2D接触ヒートマップを提供する。TAD領域は、青色の線によって区切られている。遺伝子座の欠失は、クロマチン接触の喪失によって表される。図6Cは、2Dヒートマップによって異常な接触パターンとして視覚化される、DMD遺伝子における欠失、第3染色体における複雑な再構成、および二重転位t(3;6)という追加の構造バリアントを示す。
図7A図7A~Cは、EcDNAが、RNAPIIによって結合され、広範囲の染色体外内およびトランス染色体相互作用を媒介することを示す、ヒートマップ、サーカスプロット(circus plot)、および概略図を示す。図7Aは、ecDNA(+)HF-2927およびHF-2354とecDNA(-)HF-3035細胞株との間の2D接触ヒートマップ比較を提供する。HF-3035における非ecDNA EGFR遺伝子コーディング領域と比べたHF-2927におけるecEGFR領域(chr7:54,860,254-55,535,856)の、ならびにHF-3035における非ecDNA MYCコーディング遺伝子と比べたHF-2354におけるecMYC領域の2つのセグメント(chr8:128,032,011-128,806,493およびchr8:129,573,241-130,968,628)の、シス相互作用およびRNAPII結合強度のプロファイルを示す。図7Bは、HF-2927(左)およびHF-3177(右)のecDNA(+)細胞株における定義されたecDNA領域のサーコスプロットを提供する。内側の円から外側の円へ:ecDNA内の異なる領域間におけるecDNA内相互作用ループ、青色:ecDNA内相互作用頻度の分布、緑色:ecDNA-染色体トランス相互作用頻度の分布、オレンジ色(外から3番目の輪):H3K27acの濃縮強度倍数、褐色(外から2番目の輪):RNAPII結合濃縮強度。シグナルトラックは、1Kbの分解能である。H3K27acシグナルと相互作用頻度との間の高い一致は、灰色で強調表示されている。図7Cは、ecDNAに由来するトランス相互作用アンカーおよびそれらの染色体標的と関連するゲノム特徴(プロモーター、遺伝子間、および遺伝子内の領域)を示す図である。
図7B図7A~Cは、EcDNAが、RNAPIIによって結合され、広範囲の染色体外内およびトランス染色体相互作用を媒介することを示す、ヒートマップ、サーカスプロット、および概略図を示す。図7Aは、ecDNA(+)HF-2927およびHF-2354とecDNA(-)HF-3035細胞株との間の2D接触ヒートマップ比較を提供する。HF-3035における非ecDNA EGFR遺伝子コーディング領域と比べたHF-2927におけるecEGFR領域(chr7:54,860,254-55,535,856)の、ならびにHF-3035における非ecDNA MYCコーディング遺伝子と比べたHF-2354におけるecMYC領域の2つのセグメント(chr8:128,032,011-128,806,493およびchr8:129,573,241-130,968,628)の、シス相互作用およびRNAPII結合強度のプロファイルを示す。図7Bは、HF-2927(左)およびHF-3177(右)のecDNA(+)細胞株における定義されたecDNA領域のサーコスプロットを提供する。内側の円から外側の円へ:ecDNA内の異なる領域間におけるecDNA内相互作用ループ、青色:ecDNA内相互作用頻度の分布、緑色:ecDNA-染色体トランス相互作用頻度の分布、オレンジ色(外から3番目の輪):H3K27acの濃縮強度倍数、褐色(外から2番目の輪):RNAPII結合濃縮強度。シグナルトラックは、1Kbの分解能である。H3K27acシグナルと相互作用頻度との間の高い一致は、灰色で強調表示されている。図7Cは、ecDNAに由来するトランス相互作用アンカーおよびそれらの染色体標的と関連するゲノム特徴(プロモーター、遺伝子間、および遺伝子内の領域)を示す図である。
図7C図7A~Cは、EcDNAが、RNAPIIによって結合され、広範囲の染色体外内およびトランス染色体相互作用を媒介することを示す、ヒートマップ、サーカスプロット、および概略図を示す。図7Aは、ecDNA(+)HF-2927およびHF-2354とecDNA(-)HF-3035細胞株との間の2D接触ヒートマップ比較を提供する。HF-3035における非ecDNA EGFR遺伝子コーディング領域と比べたHF-2927におけるecEGFR領域(chr7:54,860,254-55,535,856)の、ならびにHF-3035における非ecDNA MYCコーディング遺伝子と比べたHF-2354におけるecMYC領域の2つのセグメント(chr8:128,032,011-128,806,493およびchr8:129,573,241-130,968,628)の、シス相互作用およびRNAPII結合強度のプロファイルを示す。図7Bは、HF-2927(左)およびHF-3177(右)のecDNA(+)細胞株における定義されたecDNA領域のサーコスプロットを提供する。内側の円から外側の円へ:ecDNA内の異なる領域間におけるecDNA内相互作用ループ、青色:ecDNA内相互作用頻度の分布、緑色:ecDNA-染色体トランス相互作用頻度の分布、オレンジ色(外から3番目の輪):H3K27acの濃縮強度倍数、褐色(外から2番目の輪):RNAPII結合濃縮強度。シグナルトラックは、1Kbの分解能である。H3K27acシグナルと相互作用頻度との間の高い一致は、灰色で強調表示されている。図7Cは、ecDNAに由来するトランス相互作用アンカーおよびそれらの染色体標的と関連するゲノム特徴(プロモーター、遺伝子間、および遺伝子内の領域)を示す図である。
図8A図8A~Dは、ecDNA領域が、強いH3K27ac濃縮を伴う強力なシスおよびトランス相互作用を呈することを示す、サーコスプロット、概略図、および顕微鏡写真を提供する。図8Aは、HF-2354(左)およびHF-3016(右)のecDNA(+)細胞株における定義されたecDNA領域のサーコスプロットを示す。内側の円から外側の円へ:ecDNAの異なる領域間におけるecDNA内相互作用ループ、青色:ec内相互作用頻度の分布、緑色:ecDNA-染色体トランス相互作用頻度の分布、オレンジ色の外から3番目の輪:H3K27acの濃縮強度倍数、褐色の外から2番目の輪:RNAPII結合濃縮強度。シグナルトラックは、1Kbの分解能である。高いH3K27ac濃縮と相互作用頻度との間の高い一致は、灰色で強調表示されている。図8Bは、H3K27acピークとオーバーラップした、ecDNAとの接続を有しないアンカー(青色)と対比した、ecDNAにより接続される染色体相互作用アンカー(オレンジ色)のパーセンテージを示す。図8Bの左は、遺伝子内領域(G)における染色体アンカーを示す。図8Bの右は、遺伝子間領域(I)(遺伝子コーディング領域の外側)における染色体アンカーを示す。図8Cは、ecMYCプロモーターと相互作用する細胞特異的染色体のH3K27acピークを示す。これらの広いピークが存在するゲノム位置を、HF-3177においてchr3:42,090,000、chr5:148,938,000、chr1:224,353,000、chr1:33,906,500、chr19:18,408,000、chr1:207,060,000、HF-3016においてchr3:195,902,000、chr10:10,0120,000、HF-2354においてchr7:63,920,000の開始位置で、10Kbのウインドウで示す。図8Dは、HF-2927細胞に由来する中期染色体のH3K27ac免疫染色を示す画像を提供する。はっきりとしたDAPI陽性染色体外スポットが、H3K27ac染色スポットとオーバーラップする。
図8B図8A~Dは、ecDNA領域が、強いH3K27ac濃縮を伴う強力なシスおよびトランス相互作用を呈することを示す、サーコスプロット、概略図、および顕微鏡写真を提供する。図8Aは、HF-2354(左)およびHF-3016(右)のecDNA(+)細胞株における定義されたecDNA領域のサーコスプロットを示す。内側の円から外側の円へ:ecDNAの異なる領域間におけるecDNA内相互作用ループ、青色:ec内相互作用頻度の分布、緑色:ecDNA-染色体トランス相互作用頻度の分布、オレンジ色の外から3番目の輪:H3K27acの濃縮強度倍数、褐色の外から2番目の輪:RNAPII結合濃縮強度。シグナルトラックは、1Kbの分解能である。高いH3K27ac濃縮と相互作用頻度との間の高い一致は、灰色で強調表示されている。図8Bは、H3K27acピークとオーバーラップした、ecDNAとの接続を有しないアンカー(青色)と対比した、ecDNAにより接続される染色体相互作用アンカー(オレンジ色)のパーセンテージを示す。図8Bの左は、遺伝子内領域(G)における染色体アンカーを示す。図8Bの右は、遺伝子間領域(I)(遺伝子コーディング領域の外側)における染色体アンカーを示す。図8Cは、ecMYCプロモーターと相互作用する細胞特異的染色体のH3K27acピークを示す。これらの広いピークが存在するゲノム位置を、HF-3177においてchr3:42,090,000、chr5:148,938,000、chr1:224,353,000、chr1:33,906,500、chr19:18,408,000、chr1:207,060,000、HF-3016においてchr3:195,902,000、chr10:10,0120,000、HF-2354においてchr7:63,920,000の開始位置で、10Kbのウインドウで示す。図8Dは、HF-2927細胞に由来する中期染色体のH3K27ac免疫染色を示す画像を提供する。はっきりとしたDAPI陽性染色体外スポットが、H3K27ac染色スポットとオーバーラップする。
図8C図8A~Dは、ecDNA領域が、強いH3K27ac濃縮を伴う強力なシスおよびトランス相互作用を呈することを示す、サーコスプロット、概略図、および顕微鏡写真を提供する。図8Aは、HF-2354(左)およびHF-3016(右)のecDNA(+)細胞株における定義されたecDNA領域のサーコスプロットを示す。内側の円から外側の円へ:ecDNAの異なる領域間におけるecDNA内相互作用ループ、青色:ec内相互作用頻度の分布、緑色:ecDNA-染色体トランス相互作用頻度の分布、オレンジ色の外から3番目の輪:H3K27acの濃縮強度倍数、褐色の外から2番目の輪:RNAPII結合濃縮強度。シグナルトラックは、1Kbの分解能である。高いH3K27ac濃縮と相互作用頻度との間の高い一致は、灰色で強調表示されている。図8Bは、H3K27acピークとオーバーラップした、ecDNAとの接続を有しないアンカー(青色)と対比した、ecDNAにより接続される染色体相互作用アンカー(オレンジ色)のパーセンテージを示す。図8Bの左は、遺伝子内領域(G)における染色体アンカーを示す。図8Bの右は、遺伝子間領域(I)(遺伝子コーディング領域の外側)における染色体アンカーを示す。図8Cは、ecMYCプロモーターと相互作用する細胞特異的染色体のH3K27acピークを示す。これらの広いピークが存在するゲノム位置を、HF-3177においてchr3:42,090,000、chr5:148,938,000、chr1:224,353,000、chr1:33,906,500、chr19:18,408,000、chr1:207,060,000、HF-3016においてchr3:195,902,000、chr10:10,0120,000、HF-2354においてchr7:63,920,000の開始位置で、10Kbのウインドウで示す。図8Dは、HF-2927細胞に由来する中期染色体のH3K27ac免疫染色を示す画像を提供する。はっきりとしたDAPI陽性染色体外スポットが、H3K27ac染色スポットとオーバーラップする。
図8D図8A~Dは、ecDNA領域が、強いH3K27ac濃縮を伴う強力なシスおよびトランス相互作用を呈することを示す、サーコスプロット、概略図、および顕微鏡写真を提供する。図8Aは、HF-2354(左)およびHF-3016(右)のecDNA(+)細胞株における定義されたecDNA領域のサーコスプロットを示す。内側の円から外側の円へ:ecDNAの異なる領域間におけるecDNA内相互作用ループ、青色:ec内相互作用頻度の分布、緑色:ecDNA-染色体トランス相互作用頻度の分布、オレンジ色の外から3番目の輪:H3K27acの濃縮強度倍数、褐色の外から2番目の輪:RNAPII結合濃縮強度。シグナルトラックは、1Kbの分解能である。高いH3K27ac濃縮と相互作用頻度との間の高い一致は、灰色で強調表示されている。図8Bは、H3K27acピークとオーバーラップした、ecDNAとの接続を有しないアンカー(青色)と対比した、ecDNAにより接続される染色体相互作用アンカー(オレンジ色)のパーセンテージを示す。図8Bの左は、遺伝子内領域(G)における染色体アンカーを示す。図8Bの右は、遺伝子間領域(I)(遺伝子コーディング領域の外側)における染色体アンカーを示す。図8Cは、ecMYCプロモーターと相互作用する細胞特異的染色体のH3K27acピークを示す。これらの広いピークが存在するゲノム位置を、HF-3177においてchr3:42,090,000、chr5:148,938,000、chr1:224,353,000、chr1:33,906,500、chr19:18,408,000、chr1:207,060,000、HF-3016においてchr3:195,902,000、chr10:10,0120,000、HF-2354においてchr7:63,920,000の開始位置で、10Kbのウインドウで示す。図8Dは、HF-2927細胞に由来する中期染色体のH3K27ac免疫染色を示す画像を提供する。はっきりとしたDAPI陽性染色体外スポットが、H3K27ac染色スポットとオーバーラップする。
図9A図9A~Eは、ecDNAに媒介されるクロマチン相互作用が、空間的に凝集された核内ネットワークにおいて、活性な転写について腫瘍遺伝子を標的とすることを示す、箱ひげ図および概略図を提供する。図9Aは、4つのecDNA(+)細胞株のそれぞれから得られた、ecDNAとトランス相互作用する染色体遺伝子(n=1,887、1,270、1,483、および1,157)と、トランス染色体相互作用を有しない遺伝子(n=483、194、653、および597)との間のRNA発現(FPKM)の分布を示す。*は、0.005未満のP値を示す(片側ウィルコクソンの順位和検定)。それぞれの対応のある比較のサンプルサイズおよび正確なP値に関して。図9Aは、X軸の左から右に、最初の+、-は、HF-2354の結果を示し、2番目の+、-は、HF-2927の結果を示し、3番目の+、-は、HF-3016の結果を示し、4番目の+、-は、HF-3177の結果を示す。図9Bは、ecDNA接触頻度の程度の増加(0~9)に応じた染色体遺伝子の遺伝子発現(FPKM)の分布を示す。それぞれのecDNA(+)株について、当てはめた値の95%の信頼区間を、影付きで示す。平滑化したFPKMを、当てはめた実線として表す。図9Bは、それぞれのトランス相互作用頻度(1~10)のそれぞれ4つの箱のセットが、左から右に、HF-2354、HF-2927、HF-3016、およびHF-3177の結果を示す。図9Cは、全トランスクリプトーム(n=21,186、18,988、19,206、および19,180)と対比した、ecDNAに接続された腫瘍遺伝子(n=87、56、78、および54)の発現レベルを示す箱ひげ図である。片側ウィルコクソンの順位和検定による対応のある比較のP値は、1.2E-7、1.4E-5、9.0E-8、および1.1E-5である。図9A~C、中央線は中央値、枠は第1および第3の四分位、ひげは1.5×四分位間範囲(IQR)、点は外れ値である。図9Cは、X軸の左から右に、腫瘍、野生型(WT)が、HF-2354の結果を示し、2番目の腫瘍、WTは、HF-2927の結果を示し、3番目の腫瘍、WTは、HF-3016の結果を示し、4番目の腫瘍、WTは、HF-3177の結果を示す。図9Dは、腫瘍遺伝子が、ecDNAに媒介されるクロマチン相互作用を介して空間的に近接してクラスター化されることを示す図である。HF-3016およびHF-3177においてecDNA接続ハブによって媒介される2つのコミュニティの例が、示されている。ノード間のトランス相互作用は、太さがlog10(iPETカウント)で表される黄褐色の線で表されている。青色の円は、遺伝子(プロモーター)ノードであり、紫色の円は、腫瘍遺伝子として注釈が付けられた遺伝子(プロモーター)ノードであり、灰色の円は、遺伝子間ノードである。円のサイズは、接続性スコア(全ゲノムネットワーク全体におけるエッジの数)に比例するが、手作業により小さいサイズに調整されたecDNA円は除く。選択された遺伝子は、コミュニティ間での変動性を示すようにラベル付けされている。図9Eは、ecDNAが、移動性エンハンサーとして機能し、広範囲のシスおよびトランス染色体相互作用を行って、腫瘍遺伝子を活性な転写ハブに動員し、がん細胞における全体的な転写増幅を促進することを示すモデルの概略図である。
図9B図9A~Eは、ecDNAに媒介されるクロマチン相互作用が、空間的に凝集された核内ネットワークにおいて、活性な転写について腫瘍遺伝子を標的とすることを示す、箱ひげ図および概略図を提供する。図9Aは、4つのecDNA(+)細胞株のそれぞれから得られた、ecDNAとトランス相互作用する染色体遺伝子(n=1,887、1,270、1,483、および1,157)と、トランス染色体相互作用を有しない遺伝子(n=483、194、653、および597)との間のRNA発現(FPKM)の分布を示す。*は、0.005未満のP値を示す(片側ウィルコクソンの順位和検定)。それぞれの対応のある比較のサンプルサイズおよび正確なP値に関して。図9Aは、X軸の左から右に、最初の+、-は、HF-2354の結果を示し、2番目の+、-は、HF-2927の結果を示し、3番目の+、-は、HF-3016の結果を示し、4番目の+、-は、HF-3177の結果を示す。図9Bは、ecDNA接触頻度の程度の増加(0~9)に応じた染色体遺伝子の遺伝子発現(FPKM)の分布を示す。それぞれのecDNA(+)株について、当てはめた値の95%の信頼区間を、影付きで示す。平滑化したFPKMを、当てはめた実線として表す。図9Bは、それぞれのトランス相互作用頻度(1~10)のそれぞれ4つの箱のセットが、左から右に、HF-2354、HF-2927、HF-3016、およびHF-3177の結果を示す。図9Cは、全トランスクリプトーム(n=21,186、18,988、19,206、および19,180)と対比した、ecDNAに接続された腫瘍遺伝子(n=87、56、78、および54)の発現レベルを示す箱ひげ図である。片側ウィルコクソンの順位和検定による対応のある比較のP値は、1.2E-7、1.4E-5、9.0E-8、および1.1E-5である。図9A~C、中央線は中央値、枠は第1および第3の四分位、ひげは1.5×四分位間範囲(IQR)、点は外れ値である。図9Cは、X軸の左から右に、腫瘍、野生型(WT)が、HF-2354の結果を示し、2番目の腫瘍、WTは、HF-2927の結果を示し、3番目の腫瘍、WTは、HF-3016の結果を示し、4番目の腫瘍、WTは、HF-3177の結果を示す。図9Dは、腫瘍遺伝子が、ecDNAに媒介されるクロマチン相互作用を介して空間的に近接してクラスター化されることを示す図である。HF-3016およびHF-3177においてecDNA接続ハブによって媒介される2つのコミュニティの例が、示されている。ノード間のトランス相互作用は、太さがlog10(iPETカウント)で表される黄褐色の線で表されている。青色の円は、遺伝子(プロモーター)ノードであり、紫色の円は、腫瘍遺伝子として注釈が付けられた遺伝子(プロモーター)ノードであり、灰色の円は、遺伝子間ノードである。円のサイズは、接続性スコア(全ゲノムネットワーク全体におけるエッジの数)に比例するが、手作業により小さいサイズに調整されたecDNA円は除く。選択された遺伝子は、コミュニティ間での変動性を示すようにラベル付けされている。図9Eは、ecDNAが、移動性エンハンサーとして機能し、広範囲のシスおよびトランス染色体相互作用を行って、腫瘍遺伝子を活性な転写ハブに動員し、がん細胞における全体的な転写増幅を促進することを示すモデルの概略図である。
図9C図9A~Eは、ecDNAに媒介されるクロマチン相互作用が、空間的に凝集された核内ネットワークにおいて、活性な転写について腫瘍遺伝子を標的とすることを示す、箱ひげ図および概略図を提供する。図9Aは、4つのecDNA(+)細胞株のそれぞれから得られた、ecDNAとトランス相互作用する染色体遺伝子(n=1,887、1,270、1,483、および1,157)と、トランス染色体相互作用を有しない遺伝子(n=483、194、653、および597)との間のRNA発現(FPKM)の分布を示す。*は、0.005未満のP値を示す(片側ウィルコクソンの順位和検定)。それぞれの対応のある比較のサンプルサイズおよび正確なP値に関して。図9Aは、X軸の左から右に、最初の+、-は、HF-2354の結果を示し、2番目の+、-は、HF-2927の結果を示し、3番目の+、-は、HF-3016の結果を示し、4番目の+、-は、HF-3177の結果を示す。図9Bは、ecDNA接触頻度の程度の増加(0~9)に応じた染色体遺伝子の遺伝子発現(FPKM)の分布を示す。それぞれのecDNA(+)株について、当てはめた値の95%の信頼区間を、影付きで示す。平滑化したFPKMを、当てはめた実線として表す。図9Bは、それぞれのトランス相互作用頻度(1~10)のそれぞれ4つの箱のセットが、左から右に、HF-2354、HF-2927、HF-3016、およびHF-3177の結果を示す。図9Cは、全トランスクリプトーム(n=21,186、18,988、19,206、および19,180)と対比した、ecDNAに接続された腫瘍遺伝子(n=87、56、78、および54)の発現レベルを示す箱ひげ図である。片側ウィルコクソンの順位和検定による対応のある比較のP値は、1.2E-7、1.4E-5、9.0E-8、および1.1E-5である。図9A~C、中央線は中央値、枠は第1および第3の四分位、ひげは1.5×四分位間範囲(IQR)、点は外れ値である。図9Cは、X軸の左から右に、腫瘍、野生型(WT)が、HF-2354の結果を示し、2番目の腫瘍、WTは、HF-2927の結果を示し、3番目の腫瘍、WTは、HF-3016の結果を示し、4番目の腫瘍、WTは、HF-3177の結果を示す。図9Dは、腫瘍遺伝子が、ecDNAに媒介されるクロマチン相互作用を介して空間的に近接してクラスター化されることを示す図である。HF-3016およびHF-3177においてecDNA接続ハブによって媒介される2つのコミュニティの例が、示されている。ノード間のトランス相互作用は、太さがlog10(iPETカウント)で表される黄褐色の線で表されている。青色の円は、遺伝子(プロモーター)ノードであり、紫色の円は、腫瘍遺伝子として注釈が付けられた遺伝子(プロモーター)ノードであり、灰色の円は、遺伝子間ノードである。円のサイズは、接続性スコア(全ゲノムネットワーク全体におけるエッジの数)に比例するが、手作業により小さいサイズに調整されたecDNA円は除く。選択された遺伝子は、コミュニティ間での変動性を示すようにラベル付けされている。図9Eは、ecDNAが、移動性エンハンサーとして機能し、広範囲のシスおよびトランス染色体相互作用を行って、腫瘍遺伝子を活性な転写ハブに動員し、がん細胞における全体的な転写増幅を促進することを示すモデルの概略図である。
図9D図9A~Eは、ecDNAに媒介されるクロマチン相互作用が、空間的に凝集された核内ネットワークにおいて、活性な転写について腫瘍遺伝子を標的とすることを示す、箱ひげ図および概略図を提供する。図9Aは、4つのecDNA(+)細胞株のそれぞれから得られた、ecDNAとトランス相互作用する染色体遺伝子(n=1,887、1,270、1,483、および1,157)と、トランス染色体相互作用を有しない遺伝子(n=483、194、653、および597)との間のRNA発現(FPKM)の分布を示す。*は、0.005未満のP値を示す(片側ウィルコクソンの順位和検定)。それぞれの対応のある比較のサンプルサイズおよび正確なP値に関して。図9Aは、X軸の左から右に、最初の+、-は、HF-2354の結果を示し、2番目の+、-は、HF-2927の結果を示し、3番目の+、-は、HF-3016の結果を示し、4番目の+、-は、HF-3177の結果を示す。図9Bは、ecDNA接触頻度の程度の増加(0~9)に応じた染色体遺伝子の遺伝子発現(FPKM)の分布を示す。それぞれのecDNA(+)株について、当てはめた値の95%の信頼区間を、影付きで示す。平滑化したFPKMを、当てはめた実線として表す。図9Bは、それぞれのトランス相互作用頻度(1~10)のそれぞれ4つの箱のセットが、左から右に、HF-2354、HF-2927、HF-3016、およびHF-3177の結果を示す。図9Cは、全トランスクリプトーム(n=21,186、18,988、19,206、および19,180)と対比した、ecDNAに接続された腫瘍遺伝子(n=87、56、78、および54)の発現レベルを示す箱ひげ図である。片側ウィルコクソンの順位和検定による対応のある比較のP値は、1.2E-7、1.4E-5、9.0E-8、および1.1E-5である。図9A~C、中央線は中央値、枠は第1および第3の四分位、ひげは1.5×四分位間範囲(IQR)、点は外れ値である。図9Cは、X軸の左から右に、腫瘍、野生型(WT)が、HF-2354の結果を示し、2番目の腫瘍、WTは、HF-2927の結果を示し、3番目の腫瘍、WTは、HF-3016の結果を示し、4番目の腫瘍、WTは、HF-3177の結果を示す。図9Dは、腫瘍遺伝子が、ecDNAに媒介されるクロマチン相互作用を介して空間的に近接してクラスター化されることを示す図である。HF-3016およびHF-3177においてecDNA接続ハブによって媒介される2つのコミュニティの例が、示されている。ノード間のトランス相互作用は、太さがlog10(iPETカウント)で表される黄褐色の線で表されている。青色の円は、遺伝子(プロモーター)ノードであり、紫色の円は、腫瘍遺伝子として注釈が付けられた遺伝子(プロモーター)ノードであり、灰色の円は、遺伝子間ノードである。円のサイズは、接続性スコア(全ゲノムネットワーク全体におけるエッジの数)に比例するが、手作業により小さいサイズに調整されたecDNA円は除く。選択された遺伝子は、コミュニティ間での変動性を示すようにラベル付けされている。図9Eは、ecDNAが、移動性エンハンサーとして機能し、広範囲のシスおよびトランス染色体相互作用を行って、腫瘍遺伝子を活性な転写ハブに動員し、がん細胞における全体的な転写増幅を促進することを示すモデルの概略図である。
図9E図9A~Eは、ecDNAに媒介されるクロマチン相互作用が、空間的に凝集された核内ネットワークにおいて、活性な転写について腫瘍遺伝子を標的とすることを示す、箱ひげ図および概略図を提供する。図9Aは、4つのecDNA(+)細胞株のそれぞれから得られた、ecDNAとトランス相互作用する染色体遺伝子(n=1,887、1,270、1,483、および1,157)と、トランス染色体相互作用を有しない遺伝子(n=483、194、653、および597)との間のRNA発現(FPKM)の分布を示す。*は、0.005未満のP値を示す(片側ウィルコクソンの順位和検定)。それぞれの対応のある比較のサンプルサイズおよび正確なP値に関して。図9Aは、X軸の左から右に、最初の+、-は、HF-2354の結果を示し、2番目の+、-は、HF-2927の結果を示し、3番目の+、-は、HF-3016の結果を示し、4番目の+、-は、HF-3177の結果を示す。図9Bは、ecDNA接触頻度の程度の増加(0~9)に応じた染色体遺伝子の遺伝子発現(FPKM)の分布を示す。それぞれのecDNA(+)株について、当てはめた値の95%の信頼区間を、影付きで示す。平滑化したFPKMを、当てはめた実線として表す。図9Bは、それぞれのトランス相互作用頻度(1~10)のそれぞれ4つの箱のセットが、左から右に、HF-2354、HF-2927、HF-3016、およびHF-3177の結果を示す。図9Cは、全トランスクリプトーム(n=21,186、18,988、19,206、および19,180)と対比した、ecDNAに接続された腫瘍遺伝子(n=87、56、78、および54)の発現レベルを示す箱ひげ図である。片側ウィルコクソンの順位和検定による対応のある比較のP値は、1.2E-7、1.4E-5、9.0E-8、および1.1E-5である。図9A~C、中央線は中央値、枠は第1および第3の四分位、ひげは1.5×四分位間範囲(IQR)、点は外れ値である。図9Cは、X軸の左から右に、腫瘍、野生型(WT)が、HF-2354の結果を示し、2番目の腫瘍、WTは、HF-2927の結果を示し、3番目の腫瘍、WTは、HF-3016の結果を示し、4番目の腫瘍、WTは、HF-3177の結果を示す。図9Dは、腫瘍遺伝子が、ecDNAに媒介されるクロマチン相互作用を介して空間的に近接してクラスター化されることを示す図である。HF-3016およびHF-3177においてecDNA接続ハブによって媒介される2つのコミュニティの例が、示されている。ノード間のトランス相互作用は、太さがlog10(iPETカウント)で表される黄褐色の線で表されている。青色の円は、遺伝子(プロモーター)ノードであり、紫色の円は、腫瘍遺伝子として注釈が付けられた遺伝子(プロモーター)ノードであり、灰色の円は、遺伝子間ノードである。円のサイズは、接続性スコア(全ゲノムネットワーク全体におけるエッジの数)に比例するが、手作業により小さいサイズに調整されたecDNA円は除く。選択された遺伝子は、コミュニティ間での変動性を示すようにラベル付けされている。図9Eは、ecDNAが、移動性エンハンサーとして機能し、広範囲のシスおよびトランス染色体相互作用を行って、腫瘍遺伝子を活性な転写ハブに動員し、がん細胞における全体的な転写増幅を促進することを示すモデルの概略図である。
図10A図10A~Cは、ecDNAトランス接続性遺伝子が、活動的に転写されることを示す図、概略図、および箱ひげ図を提供する。図10Aは、5つのGBM由来のニューロスフェア細胞株から測定されたすべての発現されるRNA間における高い相関性を示し、RNA-seq分析の一貫性を表す。図10Bは、それらのecDNA接続性ステータスに基づいて、遺伝子が、群I:ecDNAに接続するプロモーターを有する遺伝子、群II:他のプロモーターとトランス接続するが、ecDNA接続は有しないプロモーターを有する遺伝子、および群III:トランス相互作用を有しない遺伝子という3つの異なるカテゴリーに分類されることを示す。図10Cは、HF-2354、HF-2927、HF-3017、およびHF-3177 ecDNA(+)細胞株における群I、II、およびIIIからの遺伝子の定常状態のRNA発現(FPKM)の箱ひげ図を提供する。*は、片側ウィルコクソンの順位和検定に基づく有意なP値を表す。対応のある比較の正確なP値を特定し、遺伝子を、群I、II、およびIIIのそれぞれに分類した。
図10B図10A~Cは、ecDNAトランス接続性遺伝子が、活動的に転写されることを示す図、概略図、および箱ひげ図を提供する。図10Aは、5つのGBM由来のニューロスフェア細胞株から測定されたすべての発現されるRNA間における高い相関性を示し、RNA-seq分析の一貫性を表す。図10Bは、それらのecDNA接続性ステータスに基づいて、遺伝子が、群I:ecDNAに接続するプロモーターを有する遺伝子、群II:他のプロモーターとトランス接続するが、ecDNA接続は有しないプロモーターを有する遺伝子、および群III:トランス相互作用を有しない遺伝子という3つの異なるカテゴリーに分類されることを示す。図10Cは、HF-2354、HF-2927、HF-3017、およびHF-3177 ecDNA(+)細胞株における群I、II、およびIIIからの遺伝子の定常状態のRNA発現(FPKM)の箱ひげ図を提供する。*は、片側ウィルコクソンの順位和検定に基づく有意なP値を表す。対応のある比較の正確なP値を特定し、遺伝子を、群I、II、およびIIIのそれぞれに分類した。
図10C図10A~Cは、ecDNAトランス接続性遺伝子が、活動的に転写されることを示す図、概略図、および箱ひげ図を提供する。図10Aは、5つのGBM由来のニューロスフェア細胞株から測定されたすべての発現されるRNA間における高い相関性を示し、RNA-seq分析の一貫性を表す。図10Bは、それらのecDNA接続性ステータスに基づいて、遺伝子が、群I:ecDNAに接続するプロモーターを有する遺伝子、群II:他のプロモーターとトランス接続するが、ecDNA接続は有しないプロモーターを有する遺伝子、および群III:トランス相互作用を有しない遺伝子という3つの異なるカテゴリーに分類されることを示す。図10Cは、HF-2354、HF-2927、HF-3017、およびHF-3177 ecDNA(+)細胞株における群I、II、およびIIIからの遺伝子の定常状態のRNA発現(FPKM)の箱ひげ図を提供する。*は、片側ウィルコクソンの順位和検定に基づく有意なP値を表す。対応のある比較の正確なP値を特定し、遺伝子を、群I、II、およびIIIのそれぞれに分類した。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、部分的に、染色体外環状DNA(ecDNA)およびがんなどの疾患におけるecDNAの役割を特定する方法に関する。本発明のある特定の方法は、ecDNAおよびがんゲノムにおけるその発がん性変化の特徴付けを含む。現在では、ChIA-PETクロマチン相互作用アッセイなどであるがこれに限定されない、クロマチン相互作用アッセイを利用して、ecDNAの特定を進行させ、がんなどであるがこれに限定されない疾患において転写プログラムに機能的に影響を及ぼすゲノム全体のecDNAにより媒介されるクロマチン接触を特徴付けることができることが、決定されている。神経膠芽腫患者に由来するニューロスフェア培養物において、ecDNAを使用して研究が行われており、そのうちのいくつかは本明細書に記載されている。これらの研究において、ecDNAは、それらの広範囲の染色体間相互作用の存在によって特定された。ecDNA-クロマチン接触の中心点は、主として染色体プロモーターに収束する広範かつ高レベルのシグナルによって示されたが、このことは染色体遺伝子転写のゲノム全体での活性化における重要な制御的役割を示している。本発明の一部の実施形態において、シグナルは、H3K27acシグナルを含んでいた。ecDNAの染色体標的を解読することにより、ecDNA-クロマチン接続性ネットワーク内に空間的に収束される活動的に発現される腫瘍遺伝子との関係が判明した。行った研究の結果により、ecDNAが、腫瘍遺伝子増幅の兆候の他に、がんにおける腫瘍遺伝子発現を活性化する移動性転写増幅エレメントとして機能することが示された。
【0012】
ecDNAの特定
ecDNAのクロマチン構成を特定し、その構成が遺伝子転写の制御にどのように寄与しているかを特定するために、クロマチン相互作用アッセイを利用して、同じ細胞株において、一般的な空間的クロマチン構成およびタンパク質因子に媒介される長距離のクロマチン相互作用の両方を試験し調査した。本発明の一部の実施形態において使用することができるクロマチン相互作用アッセイの非限定的な例は、ChIA-PET法、ChIP法、およびHi-C法である。現在では、公知のecDNAを、それらの強力かつ異常な分子内および分子間での全ゲノムクロマチン接触を通じて特定することができることが、実証されている。また、RNAポリメラーゼII(RNAPII)に媒介されるecDNAコネクトームおよびそれらの染色体パートナーを解読するために行われた研究により、ecDNAと、活動的に発現される常染色体性腫瘍遺伝子との間の関係性が特定された。この発見は、腫瘍進行を促進する移動性転写エンハンサーとして機能するecDNAの機序を示している。
【0013】
がんゲノムにおけるecDNA標的化クロマチンインタラクトームの詳細な特徴付けを提供することに加えて、本明細書に開示されるクロマチン相互作用アッセイの使用により、ecDNA内およびecDNA間、ならびにecDNAと線形DNAとの間の強力なクロマチン接触に基づいて、ecDNA内の増幅されたゲノムドメインを正確にマッピングするのに有効な手段が得られる。ecDNAを特徴付ける目的で使用されていた以前の方法は、全ゲノムシーケンシングおよびDNAコピー数データの画像に基づく分析または計算による分析のいずれかを利用していた。本明細書に開示される本発明の実施形態は、少なくとも、本明細書に提供される方法を使用して、ChIA-PETおよびHi-Cなどであるがこれらに限定されないクロマチン相互作用アッセイを通じて染色体間のクロマチン接触頻度を直接的に測定することができるという点で、コピー数の増加を有する領域の構造分析または顕微鏡イメージングアプローチに頼るこれまでの方法とは異なる。本発明の方法の実施形態は、ecDNAのサイズ、異なるecDNA間でのサイズの比較、ecDNAコピー数、ecDNAの配列情報、およびecDNA配列の内容などであるがこれらに限定されない1つまたは複数のecDNAシグネチャーを特定するために使用することができる、偏りのないアプローチを提供する。加えて、本発明の方法の実施形態は、ecDNA分子および染色体DNA分子の異なる領域間での接触頻度およびパターンなどであるがこれらに限定されない、1つまたは複数の特徴を決定および/または評価するために使用することができる。本発明の方法におけるクロマチン相互作用アッセイの使用は、ecDNA分子の物理的構造および連続性に関する見識を提供する。
【0014】
本発明のある特定の態様は、1つの細胞または複数の細胞において1つまたは複数のecDNAを特定する方法を含む。本方法は、非線形DNA分子と少なくとも1つの線形染色体との間のクロマチン相互作用を検出する手段を含み得る。本発明の一部の実施形態において、本方法は、非線形DNA分子と、染色体対の少なくとも1つの染色体との間のクロマチン相互作用を検出するステップを含む。「クロマチン相互作用を検出する」という用語は、本明細書で使用される場合、クロマチン相互作用の頻度、相互作用に含まれるecDNA、相互作用に含まれる標的遺伝子、およびクロマチン相互作用の他の特徴のうちの1つまたは複数を検出することを意味する。クロマチン相互作用の特徴としては、非線形DNAのサイズ、細胞における非線形DNA分子のコピー数のうちの1つまたは複数を挙げることができるが、これらに限定されない。一部の実施形態において、本発明の方法は、クロマチン相互作用の1つまたは複数の特徴を比較するステップ、例えば、第1の決定時点で複数の細胞において非線形DNA分子の細胞当たりの平均コピー数を決定するステップと、決定された平均を、対照の非線形DNAの細胞当たりの平均コピー数と比較するステップとを含む。本発明の一部の実施形態において、クロマチン相互作用の1つまたは複数の特徴を比較するステップは、第1の決定時点で複数の細胞において非線形DNA分子の細胞当たりの平均コピー数を決定するステップと、決定された平均を、対照の非線形DNAの細胞当たりの平均コピー数と比較するステップとを含み得る。本発明の一部の実施形態において、対照の非線形DNA分子の細胞当たりの平均コピー数は、別の決定時点とは異なる時点で複数の細胞において決定された非線形DNA分子の細胞当たりの平均コピー数である。クロマチン相互作用の特徴を検出する他の非限定的な例としては、非線形DNAの少なくとも一部分の配列を決定するステップ、および決定された配列における腫瘍遺伝子配列の存在を特定するステップが挙げられる。
【0015】
細胞におけるecDNAを特定するために使用することができる特定の特性が、ここで特定されている。特性は、細胞におけるクロマチン相互作用の1つまたは複数の決定された特徴によって特定される。例えば、クロマチン相互作用を、ecDNAと少なくとも1つの線形染色体との間の接触を含むとして特定することは、(i)細胞において検出されたクロマチン相互作用の頻度が有意に高いこと、(ii)非線形DNA分子と、少なくとも1つの線形染色体(例えば、細胞内の染色体対のそれぞれの少なくとも1つの線形染色体であるが、これに限定されない)との間の接触、ならびに(iii)複数の細胞における非線形DNA分子の細胞当たりの平均コピー数の経時的な増加を特定することを含む。本発明の一部の実施形態において、これらの3つの特性(特性i~iii)の存在が、非線形DNA分子をecDNAとして特定する。
【0016】
ecDNAのいくつかの特徴が、ここに特定されており、本発明の方法の一部の実施形態において、細胞内の非線形DNA分子にこれらの特徴が存在することにより、非線形DNA分子のecDNAとしての同一性が確認される。本発明の方法のある特定の実施形態は、検出された非線形DNAのecDNAとしての特定を確認するための手段として、以下の特徴のうちの1つ、2つ、または3つを決定することを含む。ここで特定されているecDNAの1つのそのような特徴は、ecDNAおよびその標的遺伝子を含むクロマチン相互作用が、細胞内の他の種類のクロマチン相互作用よりも有意に高いレベルおよび頻度で生じることである。本明細書で使用される場合、検出されたクロマチン相互作用の「有意に高い頻度」という用語は、検出されたそのようなクロマチン相互作用の数が、クロマチン相互作用がecDNAを含まない場合に検出されたクロマチン相互作用の数よりも統計学的に有意に高いことを意味する。
【0017】
ここで特定されているecDNAの別の特徴は、細胞におけるecDNAと少なくとも1つの線形染色体との間の接触の存在である。本発明の一部の実施形態において、ecDNAの特徴は、細胞におけるecDNAとそれぞれの染色体対の少なくとも1つの線形染色体との間の接触の存在を含む。例えば、制限することを意図するものではないが、細胞内の少なくとも1つの染色体との接触を有すると特定された非線形DNA分子は、ecDNAとして特定される。別の非限定的な例において、細胞内の染色体のそれぞれ(例えば、ヒト二倍体細胞内の23対の染色体のそれぞれ)における少なくとも1つの染色体との接触を有すると特定された非線形DNA分子は、ecDNAとして特定される。後者の例では、ヒト細胞内の23個の染色体対のそれぞれにおいて、少なくとも1つの線形染色体に位置する遺伝子標的とのecDNA相互作用が存在するであろう。
【0018】
ここで特定されているecDNAの第3の特徴は、経時的に、ecDNAの細胞当たりの平均コピー数が増加することである。したがって、非限定的な例として、細胞集団から得られた細胞サンプルにおいて、非線形DNAのコピー数の平均が決定される。その後の時点で、第2の細胞サンプルが細胞集団から得られ、非線形DNAのコピー数の平均が決定され、第1のサンプルで決定された平均数と比較される。後のサンプルにおける非線形DNAの平均数の増加は、非線形DNAがecDNAであるという結論を裏付ける。本発明の一部の実施形態において、平均数の増加は、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、125%、150%、200%、250%、または500%の増加であり得、これには、示された範囲内のすべてのパーセンテージが含まれる。本発明の一部の実施形態において、平均数の増加は、少なくとも500%、1000%、1500%、2000%、または5000%の増加であり得る。
【0019】
本発明の一部の実施形態において、1つの細胞または複数の細胞は、2つまたはそれを上回る異なる時点において、サンプル、培養物、または対象から得られる。2つの細胞サンプルを取得する間の時間の長さは、対象にとっての利便性、医療従事者にとっての利便性、がんのステータスもしくはステージ、がんの発達速度、腫瘍成長速度などを含むがこれらに限定されない因子に基づいて、独立して選択することができる。本発明の一部の実施形態では、2つの細胞サンプルを取得する間の時間間隔は、少なくとも1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、21日間、22日間、23日間、24日間、25日間、26日間、27日間、28日間、29日間、および30日間である。本発明の一部の実施形態では、2つの細胞サンプルを取得する間の時間間隔は、少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間、17週間、18週間、19週間、20週間、21週間、22週間、23週間、24週間、25週間、26週間、27週間、28週間、29週間、30週間、31週間、32週間、33週間、34週間、35週間、36週間、37週間、38週間、39週間、40週間、41週間、42週間、43週間、44週間、45週間、46週間、47週間、48週間、49週間、50週間、51週間、および52週間である。本発明の一部の実施形態では、2つの細胞サンプルを取得する間の時間間隔は、少なくとも1カ月間、2カ月間、3カ月間、4カ月間、5カ月間、6カ月間、7カ月間、8カ月間、9カ月間、10カ月間、11カ月間、12カ月間、13カ月間、14カ月間、15カ月間、16カ月間、17カ月間、18カ月間、19カ月間、20カ月間、21カ月間、22カ月間、23カ月間、24カ月間、25カ月間、26カ月間、27カ月間、28カ月間、29カ月間、30カ月間、31カ月間、32カ月間、33カ月間、34カ月間、35カ月間、36カ月間、37カ月間、38カ月間、39カ月間、40カ月間、41カ月間、42カ月間、43カ月間、44カ月間、45カ月間、46カ月間、47カ月間、48カ月間、またはそれ以上である。本発明の一部の実施形態では、2つの細胞サンプルを取得する間の時間間隔は、少なくとも1年間、2年間、3年間、4年間、5年間、6年間、7年間、8年間、9年間、10年間、またはそれ以上である。2つを上回る細胞サンプルを、本発明の方法のある特定の実施形態において使用するために採取することができること、および任意の2つのサンプルを取得する間の時間間隔は独立して選択され得るが、細胞サンプルを取得する他の時間間隔と必ずしも同一でなくてもよいことが、理解されるであろう。
【0020】
ecDNAおよび標的腫瘍遺伝子
本明細書に記載される研究は、ecDNAと標的遺伝子、非限定的な例では腫瘍遺伝子との間の制御関係を示す。本明細書で使用される場合、「標的腫瘍遺伝子」という用語は、活性がecDNAによってモジュレートされる腫瘍遺伝子を意味する。標的腫瘍遺伝子の転写をモジュレートするecDNAは、遺伝子制御システム(GRS)を介してそれを行い得る。GRSは、ecDNAにおける遺伝子制御因子を含む。ecDNA遺伝子制御因子は、遺伝子活性化因子であってもよく、または一部の事例においては、遺伝子サイレンサーであってもよい。ecDNAとその標的遺伝子との間の相互作用が、ecDNA遺伝子制御因子配列と転写因子との結合を含み得、転写因子は標的腫瘍因子の遺伝子制御エレメントにも結合することが、理解されるであろう。転写因子と、DNAの特定の短い領域を含む遺伝子制御エレメントとの結合は、標的腫瘍遺伝子の転写を刺激する。
【0021】
ecDNA遺伝子制御因子および標的腫瘍遺伝子に結合する転写因子は、ポリペプチドの複合体を含み得、ecDNA遺伝子制御因子と標的腫瘍遺伝子の遺伝子制御エレメントとの間の「接続因子」として作用する。「遺伝子制御エレメント」という用語は、標的腫瘍遺伝子の転写を担うおよび/またはそれに関与するプロモーターまたはエンハンサー配列などであるがこれらに限定されない、DNA配列を意味する。本明細書で使用される場合、ecDNA遺伝子制御因子とその標的腫瘍遺伝子との間の相互作用は、ecDNA遺伝子制御因子の転写因子との接触を含み、これはまた、標的腫瘍遺伝子の遺伝子制御エレメント、例えば、標的腫瘍遺伝子のプロモーター配列とも接触する。ecDNA/腫瘍遺伝子の相互作用は、標的腫瘍遺伝子の転写を増強し、これが、がんの発達をもたらし得るか、またはそれを促進し得る。一部の実施形態において、がんは、ecDNAおよびその標的腫瘍遺伝子を含む細胞に存在し得る。ecDNA/腫瘍遺伝子の相互作用により生じるがん細胞が、対象に存在し得る。様々な標的腫瘍遺伝子は、ecDNA/腫瘍遺伝子の相互作用に起因して、増強された転写を有し得、細胞は、転写がecDNA/腫瘍遺伝子の相互作用によって増加する1つ、2つ、またはそれ以上の異なる腫瘍遺伝子を含み得る。対象における2つまたはそれを上回る細胞は、同じ標的腫瘍遺伝子を含んでもよく、または転写が1つもしくは複数のecDNAによってモジュレートされる異なる標的腫瘍遺伝子を含んでもよい。対象におけるがんは、1つ、2つ、またはそれを上回る異なる腫瘍遺伝子の活性によって生じ得る、および/またはそれによって維持され得、それぞれの転写は、1つまたは複数のecDNAによってモジュレートされる。
【0022】
2つまたはそれを上回る異なる腫瘍遺伝子が、対象のがんにおいて活性化されている事例では、異なる腫瘍遺伝子および/または異なるecDNA/腫瘍遺伝子の相互作用へと指向される2つまたはそれを上回る異なるがん治療薬を使用して、対象におけるがんを効果的に処置することができる。本発明の一部の実施形態において、がん治療薬は、ecDNAと特定の腫瘍遺伝子との間の相互作用の存在または不在、および相互作用によるその腫瘍遺伝子のモジュレーションに少なくとも部分的に基づいて、選択され得る、および/または対象に投与され得る。
【0023】
ecDNAを特定するために使用することができる本発明の方法に加えて、本発明のある特定の方法を使用して、ecDNAとその標的腫瘍遺伝子との間の相互作用の存在または不在を評価することによって、細胞におけるがんのステータスを評価することができる。これらの方法は、3次元ゲノム構成および遺伝子制御におけるその役割の理解の改善に部分的に基づく。本発明のある特定の実施形態は、細胞において、ecDNAと、少なくとも1つの標的腫瘍遺伝子との間の相互作用を特定する方法を含む。加えて、本発明の方法のある特定の実施形態は、ecDNA/腫瘍遺伝子相互作用の頻度および作用を評価するために使用することができる。本発明の一部の実施形態において、ecDNAの、その標的腫瘍遺伝子との相互作用は、標的腫瘍遺伝子の転写を増強させる(本明細書において、「増加させる」とも称される)。
【0024】
クロマチン相互作用アッセイ
本発明のある特定の態様は、クロマチン相互作用アッセイの使用を含む。本発明の方法のある特定の実施形態において、クロマチン相互作用アッセイは、染色体の構造特性を決定し、細胞内のecDNAを特定し、ecDNAと、腫瘍遺伝子などであるがこれに限定されない標的遺伝子との間の相互作用を決定するために使用される。本明細書に開示されるクロマチン相互作用アッセイおよび分析はまた、ecDNAによる標的腫瘍遺伝子の転写制御の決定も可能にする。
【0025】
細胞におけるクロマチン相互作用をアッセイするための手段の非限定的な例は、ChIPをクロマチン構成捕捉(3C)技術と組み合わせたペアエンドタグシーケンシングによるクロマチン相互作用分析(ChIA-PET)である(Fullwood, et al. 2009, Nature, Vol. 426 (7269):58-64を参照されたく、この内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。ChIA-PET法は、目的のタンパク質またはタンパク質複合体を介して互いと相互作用する離れたDNA領域間の相互作用の検出を可能にする。ChIA-PET法の非限定的な例において、細胞由来のクロマチンは、架橋され、消化され、目的のタンパク質に対する抗体を使用して取り出される。リンカー配列が、DNAの末端にライゲーションされ、リンカー配列の存在により、互いとのライゲーションが促進される(Zhang et al., 2012, Methods Vol. 58, No. 3:289-299、この内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。これにより、ゲノムの2つの異なる領域に由来するハイブリッドDNAフラグメントが得られる。結果として得られるライブラリーをシーケンシングし、その結果により、互いにおよび目的のタンパク質と相互作用するDNA領域が特定される。ChIA-PETは、これまでに、転写因子の相互作用をマッピングするために使用されており、本発明の方法の実施形態におけるその使用により、ecDNA、ecDNAの標的遺伝子、およびecDNA/標的遺伝子の相互作用による標的遺伝子の転写のモジュレーションの特定が可能となる。ChIA-PETを使用したクロマチン相互作用分析は、現在では、ゲノム全体でのクロマチン相互作用の発見に使用されている。以前の視覚的方法および計算による方法は、一般に、弱いかまたは動的な相互作用を検出するには好適ではなかったが、この欠点は、ChIA-PET法の使用を通じて改善される。
【0026】
本発明のある特定の実施形態において使用されるクロマチン相互作用を特定および評価する手段の別の非限定的な例は、Hi-C評価方法である。Hi-Cに基づく方法は、任意の2つの所与のゲノム遺伝子座間でのクロマチン相互作用強度を測定することができる偏りのない全ゲノムカバレッジを提供するその能力に部分的に起因して、本発明の実施形態において使用され得る。本発明のある特定の実施形態において、Hi-Cデータを使用して、3次元空間において関連するゲノムの線形連続領域であるトポロジー的関連ドメイン(TAD、topologically associating domain)など、全ゲノムクロマチン構成を評価することができる。Hi-CデータからTADを特定するために、様々な当該技術分野において公知のアルゴリズムが、日常的に使用されている(例えば、Dixon et al, 2012 Nature 485 (7398):376-80を参照されたく、この内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0027】
以下は、Hi-C分析におけるエレメントの全般的な概要である。細胞のゲノムは架橋され、それによって、ゲノム遺伝子座間の相互作用が保持される。Hi-C法において細胞ゲノムを架橋するために使用するのに好適ないくつかの当該技術分野で公知の固定方法が存在する。架橋させた後、架橋したゲノムを、制限酵素を使用して切断し、結果として得られたフラグメントのサイズにより、Hi-C法による相互作用マッピングの分解能を決定する。使用することができる制限酵素の非限定的な例は、EcoR1またはHindIIIなど、4000bpごとに切断を行い、ヒトゲノムに約100万個のフラグメントをもたらすものである。より分解能の高い相互作用マッピングのために、より高い頻度で切断する制限酵素も使用され得る。消化ステップの後に、小片を、架橋していないフラグメント間でのライゲーションではなく、架橋した相互作用するフラグメント間でのライゲーションに適した条件下において、ランダムにライゲーションさせる。相互作用する遺伝子座を、次いで、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などであるがこれに限定されない方法を使用して、ライゲーションされた接合部を増幅させることによって、定量することができ、例えば、Naumova, et al., 2012 Methods. 58 (3):192-203およびGavrilov, et al., 2013 PLOS One. 8 (3):e60403を参照されたく、これらのそれぞれの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。ある特定のHi-C法は、フラグメントのヌクレオチド配列、例えば、ecDNAの配列を見出すための高スループットのシーケンシングを含み得る。
【0028】
本発明の実施形態において使用されるChIA-PETおよび/またはHI-C法に含まれ得る追加のステップおよび手順は、本明細書に記載されている。例えば、計算方法、分析方法、データ評価方法などである。ChIA-PETおよびHI-Cに関連するクロマチン相互作用分析法に加えて、他のクロマチン相互作用アッセイおよび分析方法が、当該技術分野において公知であり使用されており、本発明の方法の実施形態における使用に好適である。さらなるクロマチン相互作用アッセイ/分析方法の非限定的な例としては、4C(Nat Genet. 2006 Nov;38(11):1348-54)、Hi-C(Lieberman-Aiden, E. et al. 326, 289-293 (2009)、捕捉Hi-C(Nat Genet. 2015 Jun;47(6):598-606)、PLAC-seq(Cell research. 2016;26(12):1345-8)、およびHiChIP(Nat Methods. 2016 Nov;13(11):919-922)が挙げられ、これらのそれぞれの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0029】
相互作用分析-一般的な情報および非限定的な実施形態
相互作用分析に関する以下の説明は、制限することを意図するものではなく、本発明の方法の実施形態を使用して得られる結果および情報を例示することを意図するものであることが理解されるであろう。他の特定の細胞型、領域、腫瘍遺伝子などを、本発明の実施形態において使用することができる。ecDNAとそれらの標的腫瘍遺伝子との間の相互作用の分析に関する追加の情報は、本明細書において実施例の節に記載されている。そのような情報としては、ChIA-PETデータ、ChIP-seqライブラリー構築、およびデータ分析などを使用した、公知および公知ではないecDNA領域の発見のための本発明の方法の実施形態の使用の提示が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
本発明の方法のある特定の実施形態は、クロマチン接触の程度の定量を含んでいた。非限定的な例において、定量は、23個すべての染色体にわたって正規化した全ゲノムトランス相互作用頻度(nsTIF)を表す尺度を使用して行われる。ecDNA領域は、ecDNAを有する領域において高度に上昇したnsTIFレベルを有するとして特定された。加えて、ecDNAセグメントと連結した高nsTIF領域は、ゲノム全体にわたってトランス接触を示し、染色体外遺伝子エレメントからの動的なecDNA接続性を示している。この例で観察された全ゲノム接触パターンは、ecDNAの移動性により生じる。この非限定的な例では、特定された高いnsTIFが、ecDNAの染色体外の性質に特異的であったことを検証するために、検証ステップを行った。この例において、ゲノム全体にわたるecDNAの接触頻度の上昇が、DNA投薬作用単独の結果ではなく、その自律的能力によって決定されていたことを、結果により確認した。
【0031】
別の非限定的な例において、高頻度のシス相互作用が、ecDNAのゲノム領域内で検出された。HF-2927 ecDNA(+)細胞において、約530KbのecDNA領域内で観察されたシス相互作用強度は、2,879であり、ecDNA(-) HF-3035細胞の同じ領域におけるわずか12と比較して、240倍の増加であった。この高い接触の増加は、このecEGFRのサイズおよびゲノム構造の両方を直接的に反映していた。同様に、結果は、HF-2354における所与のecMYC領域の2つのセグメント内およびセグメント間での強力なシス相互作用を示した。広範囲のRNAPIIがテザーしたクロマチン接触(アンカーと称される、相互作用によって接続されるDNA領域で検出されたRNAPII結合として定義される)が、ecDNA内の異なる領域間においてシスで(ecDNA内と称される)および線形染色体上の他の遺伝子または制御エレメントとトランスで(トランス-相互作用と称される)の両方で検出された。染色体外内の接続性パターンは、高頻度の相互作用を有するループのペアおよび強い接触の集中点をはっきりと示すことが特定され、これらは、異なるecDNA分子間の接触および個々のecDNA内のフォールディングにまとめて由来することが予測された。ecDNAとそれらの染色体パートナーとの間のトランス相互作用の中で、ecDNA上のアンカーは、主として遺伝子内または遺伝子間の非コーディング領域にあるとして特定され、それらのトランス相互作用染色体アンカーは、主としてプロモーターに局在していた。これらの相互作用のこの並存は、これらの接触の転写機能を補助する。
【0032】
ecDNAと転写制御領域との相互作用を評価する非限定的な例において、H3K27acプロファイリングを行って、活性なエンハンサーおよびプロモーターを示す。ecDNAにおいて増幅された腫瘍遺伝子の制御を、それらのトランス染色体相互作用領域を評価することによって試験する。これらのecDNA接続型非コーディング染色体アンカーは、H3K27acピークとの高いオーバーラップを呈し、これは、ecDNA接触を有しないトランス相互作用非コーディング染色体アンカーによるものよりも有意に高く、ecDNA上の腫瘍遺伝子の転写が、クロマチン接触を通じて線形染色体上のエンハンサーと結合することによってさらに増強されるという結論を支持する。
【0033】
本発明のある特定の実施形態において、ecDNA相互作用を、高頻度の接触集中点とecDNA内のH3K27acピークとの同時発生を観察することによって評価し、結果は、これらの相互作用アンカーが、活性なエンハンサーのように挙動するという結論を支持する。相互作用評価方法のこの非限定的な例において、530KbのecEGFR領域内のH3K27acピークは、HF-2927において高い相互作用頻度の領域と共アライメントし、ecDNA(-)細胞(HF-3035)の染色体EGFR領域におけるH3K27acピークと比較すると、より広いゲノムスパンで近接したクラスターとしてのパターンを呈し、エンハンサーシグナルが、ecDNAのクロマチン接触部位に凝集していたという結論を支持する。この実施例において、中期HF2927細胞に対するH3K27acを標的とする抗体を使用した免疫染色により、H3K27acと、ecDNAを示すDAPIシグナルとの間でオーバーラップするシグナルが示され、これにより、エンハンサー機能とecDNAとの間の関係が確認された。
【0034】
本発明のある特定の実施形態において、方法は、ecDNAにより媒介されるトランスクロマチン相互作用と関連するH3K27acシグナルの増加を定量的に評価することを含み、ecDNAクロマチン相互作用アンカーと関連するH3K27acピークが、ecDNA接触を有しない全ゲノムH3K27acピークのものと比較して、有意に高い濃縮を有することが見出された。評価のこの非限定的な例において、H3K27acシグナルの強い増強は、ecDNAに特異的であると確認された。
【0035】
本発明の方法の使用の別の非限定的な例において、「スーパーエンハンサー」を想起させるecDNAにおいて観察されるエンハンサーシグネチャーを評価するための方法を、使用した。この非限定的な例において、ecDNAおよびそれらのトランス相互作用する染色体アンカーにおいて検出されたH3K27acピークのスパンサイズに関する試験を行った。ecDNAにおけるH3K27acピークは、ecDNA接触を有しない染色体H3K27ピークよりも有意に長いスパンを有したことが見出された。配列分析により、JUN、FOS、およびATFを含む、RNAPIIの全体的な転写および細胞増殖を制御するのに重要な転写因子の結合モチーフの濃縮が示された。まとめると、H3K27acシグナルの強い増強を伴うRNAPIIシグナルのシスおよびトランス両方の収束により、ecDNA分子が、ゲノム全体に広範にRNAポリメラーゼ機構に接続することができるという結論が支持され、全ゲノム転写増幅因子としての機能が裏付けられる。
【0036】
非限定的な例において、本発明の方法を使用して、ecDNAトランス相互作用と関連するエンハンサーシグナルの増加が、活性な転写をもたらすかどうかを決定する。この例において、RNA発現を試験し、結果により、ecDNA相互作用遺伝子が、他のトランス染色体接触を有しない遺伝子、またはecDNAとの接触を有しないが他の遺伝子とのトランス染色体相互作用を有する遺伝子のいずれと比較しても、有意に高いレベルの発現を有したことが示された。さらに、この例の方法において、ecDNA接続遺伝子の発現レベルは、それらのecDNA接触の頻度(独立したトランス相互作用の数によって測定される)と正相関するとして特定され、ecDNA接続性が、転写活性および高度に増強されたH3K27acシグネチャーと高度に関連するという発見を裏付け、ecDNAが、全体的な転写増幅機構として作用し得ることを示唆する。
【0037】
個々の腫瘍遺伝子の動員の他に、ecDNAは、多数の腫瘍遺伝子がecDNAとの相互作用を介して一緒に空間的に近接する集中点として特定された。これらのecDNAに接続される腫瘍遺伝子の多くは、クロマチンネットワークのそれぞれ内に存在し、腫瘍遺伝子の共凝集は、協調的な転写共活性化を達成して腫瘍新生を促進するためにecDNAが採る構造に基づく機序であるという結論を裏付ける。
【0038】
がんステータスの評価
ecDNAが、クロマチン相互作用を通じて染色体外および染色体遺伝子転写を増強させ得ることが、今や示されている。本発明の実施形態は、細胞においてecDNAを特定するための方法を含む。本発明のある特定の実施形態は、標的遺伝子、例えば、転写が1つまたは複数のecDNAによってモジュレートされる腫瘍遺伝子に対するecDNAの作用を決定するための方法を提供する。ecDNAが、クロマチン相互作用を通じて染色体外および染色体遺伝子転写の発現を増強させ得ることが、ここで特定されている。この発見を、ecDNAの存在率および多様性と組み合わせて、がんなどの疾患における治療介入の標的として、ecDNA、ecDNA/標的腫瘍遺伝子相互作用、および標的遺伝子を特定する。本発明の方法は、部分的に、腫瘍進化における遺伝子構造とエピジェネティックな結果との間の相互作用を特定することに基づく。本発明の方法の実施形態は、ecDNAを特定するため、ecDNAと標的遺伝子との相互作用を特定するため、および標的遺伝子とのecDNA相互作用の作用を特定するための手段を提供する。がんにおけるecDNA活性の役割およびこの染色体外構造体の固有なゲノム動態により、例えば、治療適用において使用するために、ecDNAおよびそれらの活性化された染色体標的遺伝子および活性化されたecDNA標的遺伝子を標的とするための新しいアプローチが提供される。
【0039】
細胞のステータスまたは状態を確立し、それに関与する遺伝子発現プログラムとしては、ecDNA遺伝子制御因子および標的腫瘍遺伝子の遺伝子制御エレメントに結合する1つまたは複数の転写因子の活性が挙げられるが、これに限定されない。特定のゲノムエレメントの非限定的な例は、転写因子に結合し、長い距離をループして特定の遺伝子に接触しそれを調節することができる、エンハンサーエレメントである。ecDNA遺伝子制御因子配列と、標的腫瘍遺伝子のプロモーターなどであるがこれに限定されない遺伝子制御エレメントとの間の相互作用を、ecDNAと、線形染色体上の遺伝子制御エレメントとの間の相互作用が、ここで研究されている。本発明のある特定の態様を使用して、線形ゲノムエレメント、例えば、腫瘍遺伝子プロモーターとの相互作用を通じて細胞内遺伝子制御プロセスに関与する染色体外DNA(ecDNA)の同一性に関する情報を得ることができる。加えて、本発明のある特定の方法を使用して、一部の事例においては異常な遺伝子発現プログラム、例えば、がん細胞において存在するものを含む、細胞の遺伝子発現プログラムに関与する2つまたはそれよりも多くのecDNAの間の調節性相互作用を評価することができる。
【0040】
候補治療剤の特定およびがんの処置の選択
本発明の一部の態様において、がん細胞において1つまたは複数の腫瘍遺伝子のステータスを特定するための方法が、提供される。本発明の方法を使用して、1つまたは複数の標的腫瘍遺伝子の転写のレベルを決定することができ、ここで、1つまたは複数の標的腫瘍遺伝子のレベルの上昇により、がんの可能性が特定される。本発明の一部の実施形態において、複数のがん細胞は、比較研究において使用するためおよび候補処置を試験するための細胞を得るための供給源であり得る。例えば、制限することを意図するものではないが、複数のがん細胞は、培養物または対象内のがん細胞であってもよく、同じ環境で維持されていてもよい。本発明の一部の実施形態において、そのような培養物または対象に由来する1つまたは複数のがん細胞が、ecDNA/腫瘍遺伝子相互作用に関する細胞のステータスを評価するために、本発明の方法に含まれる。異なる1つまたは複数のがん細胞を、治療剤または候補治療剤と接触させ、接触した細胞は、ecDNA/腫瘍遺伝子相互作用に関する細胞のステータスを評価するために、本発明の方法に含まれる。接触していないがん細胞および接触させたがん細胞において決定されるecDNA/腫瘍遺伝子相互作用を決定し、互いに、または適切な対照と比較して、ecDNA/腫瘍遺伝子相互作用に対する治療薬または候補治療薬の作用、およびがんのステータスに関する情報を得ることができる。
【0041】
本明細書で使用される場合、「ステータス」という用語は、がん細胞を参照して使用される場合、1つまたは複数の特定のecDNA/腫瘍遺伝子相互作用の存在または不在を意味する。例えば、制限することを意図するものではないが、がんの初期ステータスには、ecDNAと腫瘍遺伝子AおよびBとの間の相互作用が含まれ得、がんが進行するにつれて、そのステータスは、ecDNAと腫瘍遺伝子A、B、およびCとの間の相互作用を含めて決定される場合がある。
【0042】
本発明の一部の実施形態において、ecDNAによってモジュレートされる腫瘍遺伝子を特定することにより、がんを有する対象の処置を選択するのを補助するために使用することができる情報が得られる。一部の実施形態において、対象は、がんの素因についてスクリーニングされ得るか、または対象に存在するかもしくは存在することが疑われるがんのステージを決定するためにスクリーニングされ得る。本発明の方法の実施形態を使用して、対象におけるがんまたはがんのステータスについてスクリーニングすることができ、そのような方法には、細胞においてecDNA/腫瘍遺伝子相互作用を特定すること、および標的腫瘍遺伝子に対するecDNAのモジュレート作用を決定することのうちの1つまたは複数が含まれ得る。そのような方法を使用して、対象におけるがんのステータスを特定することができる。加えて、本発明の方法を使用して、がんにおけるecDNAのその標的腫瘍遺伝子に対するモジュレート作用に対する、候補剤の作用を評価することができ、評価の結果を使用して、がんの処置を選択するのを補助することができる。
【0043】
本発明の方法の実施形態を使用して、細胞、組織、対象、および複数の細胞(または集団)のうちの1つまたは複数におけるがんのステータスを評価することができる。本明細書で使用される場合、「がん」という用語は、悪性新生物を指して使用される。例示的ながんとしては、聴神経腫、腺癌、副腎がん、肛門がん、血管肉腫、虫垂がん、胆道がん(例えば、胆管細胞癌)、膀胱がん、乳がん(例えば、乳房の腺癌、乳房の乳頭状癌腫、乳がん、乳房の髄様癌)、脳がん(例えば、髄膜腫、神経膠芽腫、神経膠腫(例えば、星状細胞腫、乏突起神経膠腫)、髄芽細胞腫)、子宮頸がん(例えば、子宮頸腺癌)、結腸直腸がん(例えば、結腸がん、直腸がん、結腸直腸腺癌)、結合組織がん、上皮癌、上衣腫、内皮肉腫(例えば、カポジ肉腫、多発性特発性出血性肉腫)、子宮内膜がん(例えば、子宮がん、子宮肉腫)、食道がん(例えば、食道の腺癌、バレット腺癌)、ユーイング肉腫、眼のがん(例えば、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫)、一般的な好酸球増加症、胆嚢がん、胃がん(例えば、胃腺癌)、消化管がん、頭頸部がん(例えば、頭頸部扁平上皮細胞癌、口腔がん)、咽頭がん、造血がん(例えば、白血病、例えば、急性リンパ球性白血病(ALL)、リンパ腫、例えば、ホジキンリンパ腫(HL)および非ホジキンリンパ腫(NHL)、多発性骨髄腫(MM)、血管芽細胞腫、腎臓がん(例えば、ウイルムス腫瘍としても知られる腎芽細胞腫、腎細胞癌)、肝臓がん(例えば、肝細胞がん(HCC)、悪性ヘパトーマ)、肺がん(例えば、気管支原性癌、小細胞肺がん(SCLC)、非小細胞肺がん(NSCLC)、肺の腺癌)、平滑筋肉腫(LMS)、脂肪細胞症(例えば、全身性肥満細胞症)、悪性中皮腫、筋肉がん、骨髄増殖性障害(MPD)、神経芽細胞腫、神経線維腫、神経内分泌がん、骨肉腫、卵巣がん、乳頭状腺癌、膵臓がん、陰茎がん、前立腺がん、直腸がん、横紋筋肉腫、唾液腺がん、皮膚がん、黒色腫、小腸がん(small bowel cancer)、軟部組織肉腫、脂腺癌、小腸がん(small intestine cancer)、汗腺癌、滑膜腫、精巣がん、甲状腺がん、尿道がん、膣がん、および外陰部がんが挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
がんは、原発性がんである場合も転移性がんである場合もあり、早期もしくは後期ステージのがんと考えられ得るか、または対象におけるがんのステージは、1つもしくは複数の公知のがんステージ分類および当該技術分野における慣習により特徴付けることができる。本発明の一部の態様では、がんは、対象における最初のがんであり、本発明のある特定の態様では、がんは、以前のがんの再発または再発生であり得る。一部の事例において、本発明の方法の実施形態は、がん治療により処置されていない対象においてがんのステータスを評価するために使用され得る。ある特定の実施形態において、本発明の方法は、1つまたは複数のがん治療により処置されたことがあるかまたは現在処置されている対象においてがんのステータスを評価するために使用される。がん治療の非限定的な例としては、外科手術、放射線療法、化学療法、免疫療法、食事治療、または他の当該技術分野で公知の治療的アプローチが挙げられる。
【0045】
本発明のある特定の実施形態は、対象の1つまたは複数の治療プロトコールを決定および/または選択するのを補助するための方法を含む。例えば、制限することを意図するものではないが、本発明の一部の実施形態は、対象から得られたがん細胞において特定されるecDNA/腫瘍遺伝子相互作用のステータスに少なくとも部分的に基づいて、対象におけるがんの処置を選択するのを補助するために使用することができる。本発明の方法の実施形態を使用して、対象におけるがんのステータスを決定することにより、特定されたecDNA/腫瘍遺伝子相互作用に基づいた1つまたは複数の治療の選択が可能となる。例えば、制限することを意図するものではないが、本発明の方法は、対象から得られたがん細胞における1つまたは複数のecDNA/標的腫瘍遺伝子相互作用の特定を通じて、対象におけるがんのステータスを検出するために使用することができる。本発明の方法はまた、検出されたecDNA/相互作用における1つまたは複数の特定の腫瘍遺伝子および他の構成要素を特定するためにも使用することができ、この情報を、対象におけるがんの処置を選択するのを補助するために使用することができる。例えば、ecDNAと腫瘍遺伝子Aおよび腫瘍遺伝子Bとの間の相互作用が、対象に由来するがん細胞において検出された場合、この情報は、(i)ecDNAと腫瘍遺伝子Aとの相互作用を低減させること、および(ii)ecDNAと腫瘍遺伝子Bとの相互作用を低減させることのうちの1つまたは複数をもたらすがんの処置を選択することに役立ち得る。本発明の方法の実施形態を使用して決定されたecDNA/腫瘍遺伝子相互作用の情報に基づいて、対象におけるがんは、特定の腫瘍遺伝子/ecDNA相互作用によって分類することができ、特定の腫瘍遺伝子/ecDNA相互作用を低減させるのに適切な処置を選択し、対象に投与することができる。
【0046】
本発明のある特定の実施形態において、がん細胞に、またはがんを有するか、がんを有することが疑われるか、もしくはがんを有する危険性が増加している対象に投与される、がん治療の有効性を決定することを可能にする方法が、提供される。非限定的な例において、本発明の方法の実施形態は、対象から得られたがん細胞においてがんの初期ステータスを決定するために使用される。がんのステータスは、1つまたは複数のecDNAと、腫瘍遺伝子A、腫瘍遺伝子B、および腫瘍遺伝子Cとの間で特定された相互作用を含むように決定される。がんの処置は、ecDNAと3つの腫瘍遺伝子との特定された相互作用に少なくとも部分的に基づいて対象に関して選択される。選択された処置を対象に投与した後、本発明の方法は、処置後に対象から得られたがん細胞の後続のステータス決定に使用される。以前に得られたがん細胞において決定されたがんのステータス、処置の投与後に得られたがん細胞において決定されたがんのステータスは、対象におけるがんに対する処置の有効性を示し得る。例えば、処置後の対象から得られたがん細胞において、ecDNAと腫瘍遺伝子Aとの間の相互作用が認められるが、ecDNAと腫瘍遺伝子Bまたは腫瘍遺伝子Cとの間の相互作用が示されないことは、対象におけるがん処置の有効性を支持し、ecDNAと腫瘍遺伝子Bおよび腫瘍遺伝子Cとの間の増強している相互作用を低減させる処置の有効性を確認することができる。
【0047】
ecDNAによって活性化される腫瘍遺伝子の非限定的な例は、上皮成長因子受容体(EGFR)、マウス二重微小型2(MDM2)、サイクリン依存性キナーゼ4(CDK4)、およびcMYCである。特定の腫瘍遺伝子が活性化されているがんを処置するために使用することができる薬剤としては、EGFR阻害剤、MDM2阻害剤、CDK4阻害剤、およびcMYC阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。非限定的な例において、本発明の方法を使用して、ecDNAとEGFR腫瘍遺伝子との相互作用によるEGFR増幅を含むとして特定されたがんは、そのがんを有する対象へのチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)薬の投与によって処置することができる。TKIの非限定的な例は、ゲフィチニブおよびエルロチニブである。別の非限定的な例において、本発明の方法を使用して、ecDNAとCDK4腫瘍遺伝子との相互作用によって生じるCDK4転写の増加を含むとして特定されたがんは、パルボシクリブおよびリボシクリブのうちの一方または両方の投与によって処置することができる。本明細書に提示される教示に基づいて、当業者であれば、腫瘍遺伝子の転写の増加をもたらすecDNAと腫瘍遺伝子との間の1つまたは複数の相互作用の特定に少なくとも部分的に基づいて、他の当該技術分野において公知の治療を選択することができるであろう。
【0048】
がんの処置の非限定的な例は、がんを有すると診断されたか、がんを有する危険性が増加しているか、またはがんを有すると考えられる対象に、ecDNAとecDNAの標的腫瘍遺伝子との間の相互作用を妨害し、それを低減させる有効量の薬剤を投与することを含み得る。細胞内のecDNA遺伝子制御系(GRS)において、ecDNAは、「遺伝子制御因子」配列と称され得る配列を含み、その非限定的な例は、ecDNAにおける遺伝子アクチュエータ配列および遺伝子サイレンサー配列である。ecDNAを含むGRSはまた、「転写因子」も含み、これは、ecDNAとその標的腫瘍遺伝子との間の「接触点」としての機能を果たす複合体である。転写因子は、転写因子が標的腫瘍遺伝子の「遺伝子制御エレメント」に結合することを通じて、ecDNAの遺伝子制御因子とecDNAの標的腫瘍遺伝子とを連結させるポリペプチドの複合体を構成し得る。例えば、制限することを意図するものではないが、標的腫瘍遺伝子の転写を制御するプロモーターがある。一部の実施形態において、本発明の方法は、ecDNAとその標的腫瘍遺伝子との間の相互作用に存在する候補標的を特定することを含み、特定された候補標的の破壊により、ecDNAとその標的腫瘍遺伝子との間の相互作用を破壊し、ecDNAによるその標的腫瘍遺伝子の転写の増強を低減させる。非限定的な例として、転写因子の複合体に含まれるポリペプチドは、GRSを破壊させる治療剤と接触すると、ecDNAによる標的腫瘍遺伝子の転写の増強を低減させる候補標的として特定され得る。
【0049】
本発明の一部の実施形態において、方法は、がん細胞を、GRSにおける候補標的を破壊させ、ecDNAとその標的腫瘍遺伝子との間の相互作用を低減させ、それによって、ecDNAによるその標的腫瘍遺伝子の転写の増強を低減させる治療剤と接触させること、および/またはそのような治療剤を対象に投与することを含む。本発明の一部の実施形態において、候補標的は、ecDNAにおける遺伝子アクチュエータを含む。本明細書で使用される場合、「遺伝子アクチュエータ」および「遺伝子エンハンサー」という用語は、遺伝子制御因子を指して互換可能に使用され得る。本発明の一部の態様において、候補標的は、転写因子の1つまたは複数の構成成分である。本発明の一部の実施形態において、候補標的は、遺伝子制御因子エレメント、例えば、ecDNAの標的腫瘍遺伝子のプロモーターエレメントであるが、これに限定されない。したがって、本発明のある特定の実施形態において、ecDNA作動因子、転写因子、および遺伝子制御エレメントのうちの1つまたは複数が、がんを処置するために1つまたは複数の治療剤を指向させる候補標的として特定され得る。
【0050】
本発明の一部の実施形態において、治療剤は、第2の治療剤と組み合わせて投与してもよい。一部の実施形態において、薬剤は、例えば、がん治療剤の投薬または投与の前、後、またはその間に、がん治療剤と組み合わせて、または放射線療法、化学療法、外科手術のうちの1つもしくは複数などであるがこれらに限定されない別のがん処置と組み合わせて、投与される。一部の実施形態において、本発明の薬剤は、従来的な化学療法および/または放射線療法を受けている対象に投与される。一部の実施形態において、がん治療剤は、化学療法剤である。一部の実施形態において、がん治療剤は、免疫療法剤である。一部の実施形態において、がん治療剤は、放射線療法剤である。
【0051】
細胞
本発明の方法に含まれる細胞は、複数の細胞のうちの1つであり得ることが理解されるであろう。本明細書で使用される場合、「複数の」細胞という用語は、細胞集団を意味し得る。複数の細胞は、すべてが同じ種類のものであってもよく、および/またはすべてが同じ疾患もしくは状態を有してもよい。非限定的な例として、ある細胞を、肝臓細胞集団から得ることができ、この細胞集団から得られる他の細胞もまた、肝臓細胞となる。本発明の一部の実施形態において、複数の細胞は、細胞集団の混合物であってもよく、これは、すべての細胞が、同じ種類というわけではないことを意味する。別の非限定的な例において、細胞は、複数のがん細胞から得られた1つのがん細胞であり得る。本発明の方法の実施形態において使用される細胞は、単一細胞、単離された細胞、複数の細胞のうちの1つである細胞、2つまたはそれを上回る相互接続された細胞のネットワーク内のものである細胞、互いに物理的に接触している2つまたはそれを上回る細胞のうちの1つである細胞などのうちの1つまたは複数であり得る。
【0052】
本発明の一部の態様において、細胞は、生きた動物、例えば、哺乳動物から得られてもよく、または単離された細胞であってもよい。単離された細胞は、初代細胞、例えば、最近動物から単離されたもの(例えば、単離後に集団倍加および/もしくは継代を受けていないかもしくは数回だけ受けた細胞)であってもよく、または培養物における長期増殖(例えば、3カ月を上回る)もしくは培養物における不定増殖(不死化細胞)が可能な細胞株の細胞であってもよい。本発明の一部の実施形態において、細胞は、体細胞である。体細胞は、個体、例えば、ヒトから得ることができ、当業者に公知の標準的な細胞培養プロトコールに従って培養することができる。細胞は、外科手術標本、組織または細胞生検などから得ることができる。細胞は、皮膚、肺、軟骨、脳、乳房、血液、血管(例えば、動脈または静脈)、脂肪、膵臓、肝臓、筋肉、消化管、心臓、膀胱、腎臓、尿道、および前立腺を含むがこれらに限定されない、任意の目的の器官または組織から得ることができる。本発明の一部の実施形態において、細胞は、HF-3035細胞またはHF-2354細胞である。
【0053】
一部の実施形態において、本発明と併せて使用される細胞は、疾患、障害、または異常な状態を有することが知られていない健康な正常細胞であり得る。一部の実施形態において、本発明の方法および組成物と併せて使用される宿主細胞は、異常な細胞、例えば、障害、疾患、または状態を有すると診断された対象から得られた細胞であり、これには、変性細胞、神経疾患保持細胞、疾患または状態の細胞モデル、損傷した細胞などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の一部の実施形態において、細胞は、対照細胞であってもよい。本発明の一部の態様において、宿主細胞は、疾患または状態のモデル細胞であり得る。
【0054】
本発明のある特定の実施形態において使用され得る細胞は、ヒト細胞である。本発明の方法の実施形態において使用することができる細胞の非限定的な例は、真核生物細胞、脊椎動物細胞のうちの1つまたは複数であり、これは、本発明の一部の実施形態において、哺乳動物細胞であり得る。本発明の方法において使用することができる細胞の非限定的な例は、脊椎動物細胞、無脊椎動物細胞、および非ヒト霊長類細胞である。本発明の方法の実施形態において使用することができる細胞のさらなる非限定的な例は、げっ歯動物細胞、イヌ細胞、ネコ細胞、鳥類細胞、魚類細胞、野生動物から得られた細胞、家畜動物から得られた細胞、および目的とされる他の好適な細胞のうちの1つまたは複数である。一部の実施形態において、細胞は、胚性幹細胞または胚性幹細胞様細胞である。一部の実施形態において、細胞は、神経細胞、グリア細胞、または他の種類の中枢神経系(CNS)もしくは末梢神経系(PNS)細胞である。一部の実施形態において、細胞は、星状細胞である。本発明の一部の実施形態において、細胞は、天然の細胞であり、本発明のある特定の実施形態において、細胞は、操作された細胞である。
【0055】
本発明の方法の実施形態において有用な細胞は、それらを単離した後、細胞培養物において維持され得る。細胞は、本発明の様々な実施形態において、遺伝子改変されていてもよく、または遺伝子改変されていなくてもよい。細胞は、正常または罹患した組織から得ることができる。一部の実施形態において、細胞は、ドナーから得られ、それらの状態または種類は、本発明の方法を使用してex vivoで改変される。本発明のある特定の実施形態において、細胞は、培養物中の浮遊細胞、対象から得られた遊離細胞、対象、器官、または固形培養物から得られた固体生検において得られた細胞などであり得る。
【0056】
本発明の任意の実施形態における集団または複数の単離された細胞は、主としてまたは本質的に全体として、特定の細胞型または特定の状態の細胞から構成され得る。一部の実施形態において、単離された細胞集団は、例えば、1つもしくは複数のマーカーの発現または任意の他の好適な方法によって決定した場合に、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の特定の種類または状態の細胞からなる(すなわち、集団が、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%純粋である)。
【0057】
対照
標的腫瘍遺伝子に対するecDNAの作用、ecDNA/腫瘍遺伝子相互作用に関する細胞のステータス、ecDNAとその標的腫瘍遺伝子との間の相互作用に対する候補治療薬の作用などのうちの1つまたは複数を評価するために使用される本発明の方法のある特定の実施形態。細胞、組織、および/または対象におけるecDNA/標的腫瘍遺伝子の特徴のそのような評価は、サンプル細胞、組織、または対象において得られた結果を、それぞれ、対照細胞、組織、または対象において得られた結果と比較することによって行うことができる。非限定的な例として、本発明の一部の実施形態は、サンプルがん細胞および対照がん細胞における1つまたは複数のecDNA標的腫瘍遺伝子のステータスを決定すること、ならびにサンプルがん細胞および対照がん細胞のステータスの差の尺度として、結果を比較することを含む。別の非限定的な例において、ecDNA/標的腫瘍遺伝子相互作用のステータスを、がんを有する対象において特定し、続いて、対象に、特定されたecDNA/標的腫瘍遺伝子相互作用を破壊することが意図される候補治療剤を投与し、候補治療剤の投与の前および後でステータスを比較する。まだ候補治療剤と接触していない対象から得られた結果は、「対照結果」と称され得、非接触対象は、「対照対象」と称され得ることを、理解されたい。
【0058】
本明細書で使用される場合、対照は、上述の通りであり得、様々な形態をとり得る所定の値でもあり得る。これは、中央値または平均など単一のカットオフ値であってもよい。これは、比較群に基づいて構築され得る。比較群の他の例としては、特定のがんまたはecDNA/標的腫瘍遺伝子ステータスを有する細胞または対象、および特定のがんまたはecDNA/標的腫瘍遺伝子ステータスを有しない細胞または対象を挙げることができる。別の比較群は、がんの家族歴を有する群に由来する対象およびそのような家族歴を有しない群に由来する対象であってもよい。例えば、試験する集団が、試験結果に基づいて均等に(または不均等に)群に分割される所定の値を設定することができる。当業者であれば、本発明の比較方法において使用するのに適切な対照群および値を選択することができる。
【0059】
本発明の候補治療剤特定方法は、対象に存在するか、または培養もしくはin vitro宿主細胞に存在する1つの細胞または複数の細胞において実行することができる。対象において実行される本発明の候補治療剤特定方法には、ecDNA/標的腫瘍遺伝子相互作用を破壊することが意図される候補薬剤を対象の細胞に送達すること、ならびに(候補治療剤の送達の前および/もしくは後にecDNA/標的腫瘍遺伝子相互作用および腫瘍遺伝子ステータスを評価することが含まれ得る。宿主細胞、組織、および/または対象を、候補治療剤と接触させた結果を測定し、ecDNA/標的腫瘍遺伝子相互作用を破壊することにおける候補薬物の有効性の決定として、対照値と比較することができる。
【0060】
組成物
本発明の方法において使用される組成物は、医薬組成物であり得るが、必ずしもそうでなくてもよい。「医薬組成物」という用語は、本明細書で使用される場合、一般に安全で、非毒性で、生物学的にもそれ以外にも望ましくないことのない、医薬組成物を調製するのに有用である少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む、組成物を意味する。医薬組成物は、本発明の方法のある特定の実施形態において使用することができ、その非限定的な例は、ecDNA/標的腫瘍遺伝子相互作用を破壊するために細胞または対象に候補治療剤を投与するためである。
【0061】
本発明のある特定の態様において、医薬組成物は、1つまたは複数の治療剤または候補治療剤を、同様に細胞および/または対象に投与される1つまたは複数の他の追加の分子、治療剤、候補剤、候補処置、および治療レジメンとともに含む。本発明の方法の実施形態において使用される医薬組成物は、ecDNA/標的腫瘍遺伝子相互作用を低減させること、がん細胞における標的腫瘍遺伝子転写のステータスを変更することなどのうちの1つまたは複数を行うのに有効な量の候補治療剤を含み得る。本発明の一部の実施形態において、本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される担体を含み得る。
【0062】
薬学的に許容される担体としては、希釈剤、充填剤、塩、緩衝剤、安定化剤、可溶化剤、および当該技術分野において周知である他の材料が挙げられる。例示的な薬学的に許容される担体は、米国特許第5,211,657号に記載されており、他のものは、当業者に公知である。本発明のある特定の実施形態において、そのような調製物は、塩、緩衝化剤、保存剤、適合性担体、水溶液、水などを含有し得る。
【0063】
細胞または対象への治療剤の送達は、本明細書に記載される様々な手段および他の当該技術分野において公知の手段によって達成することができる。そのような投与は、1回、または複数回行われ得る。複数回対象に投与される場合、1つまたは複数の治療剤は、単一経路または異なる経路によって投与されてもよい。例えば、制限することを意図するものではないが、1回目(または最初の数回)の投与は、処置しようとする対象の組織に直接的に行われてもよく、その後の投与は、全身的であってもよい。
【0064】
細胞または対象に送達される治療剤の量は、本発明のある特定の実施形態において、ecDNAとその標的腫瘍遺伝子との相互作用を統計学的に有意に低減させる量であり得る。好適な量は、当該技術分野において公知の方法、例えば、臨床試験と併用して、また過度の実験を必要とすることなく、本明細書に提供されている教示を使用して、実施者によって容易に決定することができる。
【実施例
【0065】
実施例1
核の内部で、染色体は、広範囲に折りたたまれてクロマチンループとなり、これが異なるクロマチンテリトリーを占めている[Zheng, S. et al. (2013) Genes Dev 27, 1462-1472]。そのような高度に組織化された3次元クロマチン構成は、離れた制御エレメントおよびそれらの標的とされる遺伝子を空間的に近接させることによって、転写を含む多数のゲノム機能のトポロジー基盤を提供している[Cremer, T. & Cremer, M. (2010) Cold Spring Harb Perspect Biol 2, a003889]。染色体再配列の結果としてのクロマチン構成の変更は、多数のヒト疾患、特にがんに関係している[Sexton, T. & Cavalli, G. (2015) Cell 160, 1049-1059]。ecDNAのクロマチン構成、およびこれが遺伝子転写制御にどのように寄与しているかを理解するために、クロマチン相互作用評価方法、例えば、ChIA-PET[Taberlay, P. C. et al. (2016) Genome Res 26, 719-731]方法を適用した。一般的な空間的クロマチン構成[Zhang, Y. et al. (2013) Nature 504, 306-310]およびタンパク質因子に媒介される長距離のクロマチン相互作用の両方を、同じニューロスフェア細胞株に組み込む方法を設計した。公知のecDNAを、それらの強力かつ異常な分子内および分子間での全ゲノムクロマチン接触を通じて容易に認識可能であることが、研究により示された。加えて、RNAポリメラーゼII(RNAPII)に媒介されるecDNAコネクトームおよびそれらの染色体パートナーの解読において、ecDNAと活動的に発現される常染色体性腫瘍遺伝子との間の関係性が特定された。この関係は、ecDNAが、腫瘍進行を促進する移動性転写エンハンサーとして機能するという発見を裏付ける。
【0066】
方法
GBM患者の腫瘍に由来するニューロスフェア細胞の培養物
ニューロスフェア細胞株を生成し、記載されるように培養した[deCarvalho, A. C. et al. (2018) Nat Genet 50, 708-717]。脳腫瘍標本を、Henry Ford Hospital Institutional Review Boardによって承認されているプロトコールで、患者からの書面による告知に基づく同意とともに得た。簡単に述べると、腫瘍標本を、切片にし、N-2補充物質(17502-048、Gibco)および成長因子(EGFおよびFGF-basic)を補充したDMEM/F12培地(11330-032、Gibco)において、ニューロスフェアとして培養した。15~26の継代の細胞を、実験のために採取した。
【0067】
ChIA-PET実験およびデータ分析
1000万個の細胞に、1.5mM EGS(21565、Thermo Fisher)を45分間、続いて1%のホルムアルデヒド(F8775、Sigma)を20分間、室温(RT)を二重架橋させ、次いで、0.125Mグリシン(G8898、Sigma)で10分間クエンチした。架橋した細胞を、1×PBSで2回洗浄し、100μLの0.55% SDS中で溶解させ、室温、62℃、および37℃で順に10分間ずつインキュベーションし、続いて37℃で30分間、25μLの25% Triton-X 100を添加して、SDSをクエンチし、37℃で一晩、50μLのAluI (R0137L、NEB)、50μLの10×CutSmart緩衝液、および275μLのHOを添加して、クロマチンをフラグメント化した。ペレット化された消化核を、50μLの10× CutSmart緩衝液、10μL BSA(B9000S、NEB)、10μLの10mM dATP(N0440S、NEB)、10μLのKlenow(3’- 5’エクソ-)(M0202L、NEB)、および420μLのHOを含有する500μLのdA-テーリング溶液中に再懸濁させ、1時間室温でインキュベートし、次いで、200μLの5×ライゲーション緩衝液(B6058S、NEB)、6μLのビオチン化架橋リンカー(200ng/μL)、10μLのT4 DNAリガーゼ(M0202L、NEB)、および284μLのHOを添加し、16℃で一晩インキュベートすることによって、近接ライゲーションに供した。ライゲーションしたクロマチンを、次いで、超音波処理によってせん断し、抗RNAPII抗体(920102、Biolegend)で免疫沈降させた。免疫沈降させたDNAのタグメンテーション、ビオチン選択、ライブラリー調製、およびシーケンシングを、記載されるように行った[Tang, Z. et al. (2015) Cell 163, 1611-1627]。
【0068】
ChIA-PETツールの拡張可能な再実装であるChIA-PETのユーティリティ[Li, G. et al. (2010) Genome Biol 11, R22](コード利用性を参照されたい)を使用して、ChIA-PETデータを処理した。シーケンシングアダプターを除去した後、架橋リンカーを有するペアエンドリードを特定し、リンカーに隣接するタグを抽出した。特定したタグ(16bp以上)を、タグの長さに応じてBWAアライメント[Li, H. & Durbin, R. (2009)Bioinformatics 25, 1754-1760]およびmem[Li, H. (2013) arXiv:1303.3997 [q-bio.GN]]を使用してhg19にマッピングした。固有にマッピングされた冗長ではないペアエンドタグ(PET)を、染色体間(左のタグおよび右のタグが異なる染色体に由来する)、染色体内(左のタグおよび右のタグが、8Kbを上回るゲノムスパンである)、ならびに自己ライゲーションPET(左のタグおよび右のタグが、8Kb以下のゲノムスパンである)として分類した。染色体間および染色体内のPETはいずれも、500bp伸長した。両方の末端でオーバーラップするPETは、次いで、iPET-2、3...としてクラスター化した。chr M、chr Yとオーバーラップする相互作用は、この研究では試験しなかった。ゲノム配列構成およびTn5消化によって作成されるタグメンテーションバイアスによって生じる可能性のあるノイズを除去するために、アンカーがブラックリストとオーバーラップする相互作用(定義の方法については以下を参照されたい)をフィルタリングした。染色体内相互作用については、相互作用の有意性に関する統計学的評価を、ChiaSigの拡張可能な再実装であるChiaSigScaled[Paulsen, J. et al. (2014) Nucleic Acids Res 42, e143]を使用して行った。iPETが3以上、FDRが0.05未満であるとして定義される有意な相互作用およびiPETが2以上としての染色体間相互作用を、すべての下流分析において使用したが、nsTIF分析は除き、これは、すべての報告された染色体間相互作用を使用した(以下のインサイチュChIA-PETデータからの公知のecDNA領域の発見についての節を参照されたい)。RNAPII結合ピークは、MACS2(オプション:--keep-dup all --nomodel --extsize 250)を使用して、すべての固有にマッピングされたリードにより呼び出した[Liu, T. (2014) Methods Mol Biol 1150, 81-95]。ecDNA内相互作用を定義するために、ecDNA領域を使用して、報告された領域内のすべての相互作用を収集した。ecDNAに媒介されるトランス染色体相互作用については、ecDNAが存在する染色体以外の染色体を起源とする相互作用のみを含めた。相互作用の両方のアンカーにおけるRNAPII結合ステータスを、調べ、RNAPIIに媒介される相互作用を、両方のアンカーにRNAPII結合を有する相互作用として定義した。相互作用を、プロモーター(P)領域(TSSの±2.5kbとして定義される)、続いて遺伝子領域(G)を優先して、GENCODE遺伝子モデルとオーバーラップするアンカーに基づいてさらに分類した(19個放出、すべての偽遺伝子、miRNA以外のすべてのRNAを除く)。いずれの遺伝子内領域ともオーバーラップしないアンカーを、遺伝子間(I)として分類した。NCG 6[Repana, D. et al. (2019) Genome Biol 20, 1]およびCOSMIC v87[Forbes, S. A. et al. (2015) Nucleic Acids Res 43, D805-811]のユニオンリストに由来する腫瘍遺伝子を使用して、ecDNA相互作用遺伝子を注釈した。
【0069】
ブラックリスト領域
ゲノム上のある特定の遺伝子座におけるTn5による過剰タグメンテーションなど、ChIA-PET実験手順によって導入された偏りを除去するために、異なる抗体濃縮により作製した8つのヒト細胞ChIA-PETライブラリー(4つは抗CTCF抗体を用い、4つは抗RNAPII抗体を用いた)を使用して、グレイリストを作成し、ダウンサンプリングして、合計すると75,215,727個のタグとなる同数のリードを表すようにした。MACS2.1.0.20151222[Liu, T. (2014) Methods Mol Biol 1150, 81-95]を使用して、0.05未満のFDRで、統合したデータセットからピークを呼び出し、これにより153,735個のピークを得た。常染色体およびX染色体上のこれらのピーク領域が、グレイリストの候補であった。短いピークを有する領域(Tn5タグメンテーションに起因する可能性が高い)を、q値およびパイルアップによって測定されるもっとも高い信頼性を保持しながら、以下の基準によってさらにフィルタリングした:領域の長さ600bp未満、上位1%のパイルアップ、下位10%のq値、および上位10%のピークの濃縮倍数。フィルタリングしたピーク(q値が1E-165未満であり、濃縮倍数が10~50である1,119個の領域)のこれらの3つの量またはベクトル(逆数の長さ、濃縮倍数、およびパイルアップ)を、取得し、ベクトルのそれぞれを(Rのコマンド「scale(center=F,scale=T)」を用いて)スケーリングした。次に、3つのベクトルを個別に正規化し、それぞれのベクトルの平均が1となるようにした。スコア付け関数を、s=濃縮倍数+パイルアップ+1/長さと定義した。グレイリストは、スコアsが平均を上回る321個のピーク領域からなっていた。加えて、目視検査によるアーチファクトと見られた4つの領域が含まれた。採用した最終的なブラックリストは、ChIA-PETグレイリストとKundaje lab(github.com/kundajelab/HiC-pipeline/blob/master/hic_flexibleWindow-pipeline/data/reference_genomes/hg19/wgEncodeHg19ConsensusSignalArtifactRegions.bed.gz)から公的に入手可能なブラックリストを連結したものであった。
【0070】
インサイチュChIA-PETデータからの公知のecDNA領域の発見
それぞれの細胞株からRNAPII ChIA-PETにより得られた処理済みの相互作用データを、全ゲノム相互作用頻度(IF)マトリックスMNxN={Mij|i,j=1,2,..,N}に集約した。hg19ゲノムを、染色体の先頭から50Kbの間隔で、60,739個のオーバーラップしないビンにセグメント化した(それぞれの染色体の最後のビンは、満50Kbを示さない場合がある)。ブラックリスト(以下を参照されたい)とオーバーラップするビンは、IFマトリックスから除去した。公知のecDNA領域は、ecDNA領域内および全23個の染色体全体に広範にの両方で、多数の相互作用を呈し、特に、ecDNAにおいて増幅されている異なる染色体領域間で、非常に高いIF総和をもたらした。使用した方法は、公知のecDNA領域[deCarvalho, A. C. et al. (2018) Nat Genet 50, 708-717]が、ChIA-PET相互作用データから明らかとなり得るかどうかを試験するため、またecDNAにおいて増幅されているさらなるゲノム領域の可能性のある予測のために、これらの特性を利用した。
【0071】
すべてのビンについてトランス染色体IF(TIF)の総和を計算し、異なるライブラリーにまたがって比較できるように正規化した。このデータのベクトルをスケーリングして(その大きさで除し、ベクトルの長さを乗じて)、平均が1に等しくなるようにした。この正規化したベクトルのi番目のビンを、nsTIFとする。もっとも高いnsTIFを有するビンを、ecDNA(+)データ内の公知のecDNA領域と比較した。ecDNA(-)細胞から得られたChIA-PETデータにおけるnsTIFの分布を理解するために、nsTIFの全ゲノム分布を、HF-3035細胞(図1B)ならびに他の多能性細胞株(データは示されない)において試験し、それらがすべて20未満であることが見出された。したがって、ecDNA候補領域を決定するための最初のパスとして閾値を導入した。ecDNAの候補としてビンに優先順位を付けるために、追加のnsTIF閾値も導入した。知識に基づくと、ecDNAによって増幅された遺伝子領域は、ゲノムサイズの0.1%を上回らなかったため、低い閾値(t)を、上位0.1%におけるnsTIFの平均として設定した。経験的には、高い閾値(t)は、tが25未満である場合には25(すなわち、予測したものよりも25倍高い)に設定し、それ以外の場合には、t=max(nsTIF)とした。nsTIFがtを上回るi番目のすべてのビンを、候補のリストに入れた。一方で、すべてのnsTIFがtを下回る場合、いずれの領域もecDNAとは考えなかった。この研究において、ecDNA(-)データから得られたもっとも高いnsTIFは、21未満であり、ecDNA(+)データセットにおけるもの(約38~82)よりも実質的に低かった。
【0072】
候補のリストは、互いに近傍に位置する群が一緒にグループ分けされるように、すなわち、2つの群間の最小距離が1Mbとなるように、それらのゲノム距離に基づいてグループ分けした。グループ分けの目的は、異なる群の候補への決まった接続(IFによって測定される)に応じて、すべての候補をスコア付けすることであった。スコアは、それぞれの候補が接続されている群の数に基づいていた。候補の正規化されたTIFが、閾値tよりも高い場合に、「接続」が定義される。マトリックスMの正規化された染色体間エレメントをTijとすると、ビンiの正規化されたTIFベクトルは、Tであった(nsTIFと同じ正規化、すなわち、
【0073】
【数1】
【0074】
)。次に、それらの相互作用頻度が比較的高い場合、例えば、別の候補群に少なくとも1つのビン、例えば、k番目のビンが、存在し、Tikがtを上回る(式中、tは、100と上位0.1%のTの平均のうちの高い方の値である)場合、接続が存在することになる。接続スコア+1を、次いで、候補iに加えた。
【0075】
次に、もっとも高いnsTIFを有する候補の群を、それらの接続スコアのすべてがゼロであるかどうかを確認するために、まず調べた。この条件が真であった場合、nsTIFがt以上である群が5つを上回らなければ、この単一の群における候補領域のすべてがecDNA領域であることが提示され、そうでなければいずれのecDNA領域も予測されなかった(ノイズの多いデータは、接触性スコアが0でnsTIFが高い閾値を上回る多くの群を呈し得るが、これは、偽陽性である可能性が高い)。この条件が偽であった場合、すなわち、ゼロではない接続スコアを有する複数の群が存在する場合、接続スコアがゼロを上回るこれらの群に由来する領域は、ecDNAであると予測された。ChIA-PETデータからecDNAにおいて増幅されている領域の特異性を割り当てるために、追加の研究を行った。
【0076】
ChIP-seqライブラリーの構築およびデータの分析
200万個の細胞を、ChIA-PETと同じ様式で架橋させ溶解させた。溶解させた後、核ペレットを超音波処理し、抗H3K27ac抗体(39133、Active Motif)で免疫沈降させた。抗体免疫沈降および入力の両方に由来する4ngのDNAを、KAPA Hyper Prep Kit(KK8505、KAPA Biosystems)を用いて末端修復、Aテーリング、およびアダプターライゲーションに供した。アダプターをライゲーションしたDNAフラグメントを、KAPA Library Amplification ReadyMix(KK2612、Kapa Biosystems)でPCR増幅させ、75bpの単一末端シーケンシングでIlluminaプラットフォームにおいてシーケンシングした。未加工の読み取りを、Trim Galoreバージョン0.4.3(オプション:--stringency 3 -q 30 -e .20 --length 15)を使用して品質を整え、BWA 0.7.12(コマンド:aln)を使用してhg19ゲノムにマッピングした[Li, H. & Durbin, R. (2009) Bioinformatics 25, 1754-1760]。固有にマッピングし重複除去したリードを、MACS2.1.0.20151222(オプション:--nomodel --extsize 250 -B --SPMR -g hs)でピークの呼び出しに使用した(0.05未満のFDR)[Liu, T. (2014) Methods Mol Biol 1150, 81-95]。0.05未満のFDRで定義したピークを、すべての分析で使用した。図2C~DのH3K27ac分析については、さらに、0.001未満のPという要件を適用した。
【0077】
免疫染色
固定されていない中期の細胞を、スライドに滴下し、KCM緩衝液(120mM KCl、20mM NaCl、10mM Tris-HCl、pH8.0、0.5mM EDTA、0.1%(体積/体積)Triton X-100)において、室温で10分間事前インキュベートした。スライドを、1%(重量/体積)BSA/KCM緩衝液において、室温で30分間ブロッキングし、続いて、2% BSAにおいて、4℃で一晩、一次H3K27ac抗体(39133、Active Motif)とともにインキュベートし、KCM緩衝液において、室温で10分間、2回インキュベートし、ヤギ抗ウサギAlexa Fluor 488二次抗体(A32731、Invitrogen)とともに室温で30分間インキュベートした。KCM緩衝液で2回洗浄した後、スライドを、4%(体積/体積)ホルムアルデヒド/KCMで15分間架橋させ、50μLのProlong Gold Antifade(Invitrogen)を用いてカバーガラスを載せ、透明なマニキュアで封止した。スライドを、Leica STED 3X/DLS共焦点顕微鏡下でスキャンした。
【0078】
転写因子モチーフ分析
Homer2[Heinz, S. et al. (2010) Mol Cell 38, 576-589]により、71,232個のH3K27acピーク領域の正規化されたバックグラウンドに対して、206個の標的配列において414個の公知のモチーフを調べた。検索結果を、以下の基準に基づいて選択する:q値<0.001、濃縮>1.5、モチーフを有する標的配列に対する%>25%。
【0079】
RNA-seqライブラリーの構築およびデータ分析
全RNAを、AllPrep DNA/RNA Mini Kit(80204、QIAGEN)を使用して生物学的複製物で単離した。鎖特異的RNAライブラリーを、KAPA Stranded mRNA Sequencing Kit(KK8502、KAPA Biosystems)を製造業者の説明書に従って使用して300ngの全RNAから生成した。ライブラリーを、75bpのペアエンドシーケンシングでIlluminaプラットフォームにおいてシーケンシングした。未加工のシーケンシングリードを、Trim Galoreバージョン0.4.3(オプション:--stringency 3 -q 20 -e .20 --length 15 --paired)を使用して整え、hisat 2.1.0(オプション:--dta-cufflinks)を使用してhg19ゲノムにアライメントした。転写産物を、Cufflinks 2.2.1[Trapnell, C. et al. (2010) Nat biotech 28, 511-515]を使用してアセンブルし、最終的な発現レベルを、Cuffdiff(オプション:--library-type fr-firststrand)を使用して定量した[Trapnell, C. et al. (2013) Nat biotech 31, 46-53]。異なるサンプルから得られたシーケンシングデータ間の相関を、R/pheatmapパッケージ(バージョン1.0.2.)を用いて分析した。
【0080】
ecDNAに媒介されるクロマチン相互作用コミュニティの定義
両方のアンカーにおけるRNAPII結合により支持されるすべてのトランス染色体相互作用について、収集を行った。HF-2354、HF-2927、HF-3016、およびHF-3177細胞株に由来するRNAPIIに結合したアンカーをすべてプールし、ブラックリスト領域とオーバーラップするアンカーを除去して、29,721個のオーバーラップしない相互作用ノードに統合した(図3C)。それぞれのノードについて、接続性スコア、すなわち、ノードが接続している相互作用パートナーノードの数を定義した。ハブは、平均を上回る標準偏差の3倍よりも高い接続性スコアを有するノードとして定義した。このパラメーターでは、ハブは、他のノードへの10個を上回る連結を有する。合計で、69、106、82、および99のハブが、それぞれ、HF-2354、HF-2927、HF-3016、およびHF-3177細胞株から定義された。ハブ間のネットワークを使用して、コミュニティを、Rのigraphライブラリーにおいてcluster_edge_betweenness関数を用いて生成した[Csardi, G. & Nepusz, T. (2006) Computer Science]。ecDNAに関連するコミュニティの数は、HF-2354、HF-2927、HF-3016、およびHF-3177細胞株において、それぞれ、8、8、10、および4である。
【0081】
データ入手可能性に関する記述
この研究において記載されているすべてのデータは、NCBIのGene Expression Omnibus GSE124769に、以下のリンクwww.ncbi.nlm.nih.gov/geo/query/acc.cgi?acc=GSE124769を使用して、レビュアーリンカーキー「uxkhaeyctdixts」で、受託されている。
【0082】
コードの入手可能性
ChIA-PETデータからのecDNA検出のコードは、www.dropbox.com/sh/2crbfjt1kr2yyws/AACLiUg6Ch9y6FurbbUzmcbPa?dl=0で入手可能である。
ChIA-PETツール(コードはgithub.com/cheehongsg/CPUで入手可能)
ChiaSigScaled(コードはgithub.com/cheehongsg/ChiaSigScaledで入手可能)
結果および考察
ChIA-PET分析を、ecDNAステータスが、全ゲノムシーケンシングデータからすでに確立されており、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)分析によって確認されている、5つのGBM患者由来のニューロスフェア細胞株に対して行った。5つのニューロスフェア株のうちの4つは、ecDNA(+)(HF-2354、HF-2927、HF-3016、およびHF-3177)であり、1つの株は、ecDNA(-)(HF-3035)であった[deCarvalho, A. C. et al. (2018) Nat Genet 50, 708-717]。ecDNA内で増幅された遺伝子から発現されるRNAのレベルが高いことに基づいて(図4A)、ecDNAが、活性クロマチンドメイン内でRNAPIIと高度に会合していると判断した。RNAPIIクロマチン免疫沈降を使用して、RNAPII会合クロマチンを引き出し、ChIA-PETアッセイを使用して、ecDNA-クロマチンインタラクトームを特徴付けた(図5A)。得られたChIA-PETデータにより、両方のRNAPII結合部位、制御エレメントとの間の長距離クロマチン相互作用[Zhang, Y. et al. (2013) Nature 504, 306-310](図4B)、ならびに空間トポロジー的にクロマチンと関連するドメイン(TAD)内の濃縮されていないクロマチン接触[Dixon, J. R. et al. (2012) Nature 485, 376-380](図6A)が検出された。10q23および9p21染色体におけるPTENならびにCDKN2AおよびCDKN2Bの欠失など、染色体構造バリアントは、クロマチン接触の排除をもたらした(図6B)。他の例としては、HF-2927におけるDMD遺伝子が関与するchrX:31.4-32 Mb共通脆弱部位の600Kbの欠失の検出[Ma, K. et al. (2012) Int J Mol Sci 13, 11974-11999]、chr3:168-183 Mbの15 Mbの広範囲の再配列、ならびにHF-2354ゲノムにおけるchr3とchr6との間の3.5および11.5 Mbの二重転位事象(図6C)が挙げられた。
【0083】
HF-2927は、ecEGFRと称されるchr7p11/EGFRを含むecDNA[deCarvalho, A. C. et al. (2018) Nat Genet 50, 708-717]を有し、一方でHF-2354は、ecMYCと称されるchr8q24/MYC ecDNAを含む。同じ患者の原発性および再発性GBMに由来する2つのニューロスフェア株であるHF-3016およびHF-3177において、3つの遺伝子が、染色体外で増幅されていることが見出され[deCarvalho, A. C. et al. (2018) Nat Genet 50, 708-717]、中でもchr7p11/EGFRおよびch12q14.1/CDK4が、ecDNA上で共増幅していることが示され、同時にchr8q24/MYCもまた、ecDNA上に見出された(それぞれ、ecEGFR、ecCDK4、およびecMYCと称される)。すべてのecDNA遺伝子座は、ゲノム全体で広範囲の接触を呈し(図5B図1A)、これらのecDNA領域の、すべての染色体にわたる領域に対する高いトランス接続性が示唆された。トランスクロマチン接触の程度を定量するために、23個すべての染色体にわたって正規化された全ゲノムトランス相互作用頻度(nsTIF)を忠実に説明する測定法を開発し、この測定法を、5つのニューロスフェア細胞株のそれぞれに適用した(本明細書における方法を参照されたい)。EcDNA領域は、4つすべてのecDNA(+)株において高度に上昇したnsTIFレベル(最大nsTIFは、約38~82であった)を示したが、HF-3035 ecDNA(-)細胞(nsTIFが21未満)においては示さなかった(図5B図1B)。nsTIFスパイク領域は、ecDNA領域と緊密に一致した。さらに、ecDNAセグメントと連結された高nsTIF領域は、ゲノム全体にわたってトランス接触を示し(図5B)、染色体外遺伝子エレメントからの動的なecDNA接続性を示唆している。特徴的な全ゲノム接触パターンは、ecDNAの移動性によって説明され得る。2つのジアンプリコン株HF-3016およびHF-3177において、結果は、ecMYC、ecEGFR、およびecCDK4のnsTIFレベルの上昇(図1B)、ならびに3つの遺伝子座間での交差相互作用を示しており、これらの株における優性ecDNAが、3つすべての腫瘍遺伝子を有すること、またはそれらが緊密な分子間近接性を有することを示唆している。高いnsTIFが、増幅ステータスではなくecDNAの染色体外性に特異的であったことを検証するために、コピー数の増加が3以上である(3~6の範囲)すべてのゲノム領域からのnsTIF値を、ecDNA領域からのnsTIFと比較した。染色体増幅セグメントから得られたnsTIF値は、染色体テリトリー内に限定されていると予測される通り、ecDNA領域からのnsTIFよりも有意に低く(中央値nsTIFが1.5~4対24~43)(片側ウィルコクソンの順位和検定、P値<0.0005)(図5C)、ゲノム全体のecDNAの接触頻度の上昇が、DNA投薬量作用単独によって説明されるのではなく、その自律的能力によって決定されることが確認された。
【0084】
高いトランス相互作用頻度に加えて、極めて高頻度のシス相互作用が、ecDNAのゲノム領域内で検出された。HF-2927 ecDNA(+)細胞において、約530KbのecDNA領域内で観察されたシス相互作用強度は、2,879であり、ecDNA(-)のHF-3035細胞の同じ領域におけるわずか12と比較して、240倍の増加であった(図7A)。この高い接触の増加は、このecEGFRのサイズおよびゲノム構造の両方を直接的に反映していた。同様に、強力なシス相互作用が、HF-2354における定義されたecMYC領域の2つのセグメント内およびそれらの間で観察された(図7A)。広範囲のRNAPIIがテザーしたクロマチン接触(アンカーと称される、相互作用によって接続されるDNA領域で検出されたRNAPII結合として定義される)が、ecDNA内の異なる領域間においてシスで(ecDNA内と称される)(図7B図8A)および線形染色体上の他の遺伝子または制御エレメントとトランスで(トランス相互作用と称される)の両方で検出された(図7C)。染色体外内の接続性パターンは、高頻度の相互作用を有する異なるループのペアおよび強い接触の集中をはっきりと示し(図7B図8A)、これらは、異なるecDNA分子間の接触および個々のecDNA内のフォールディングにまとめて由来し得る。この仮説は、原発性および一致する再発性ニューロスフェア株(HF-3016対HF-3177)によって裏付けられ、いずれの株も、ecMYC、ecEGFR、およびecCDK4を含んでいるが、HF-3016およびHF-3177において検出されたecDNA内ループのうちの92%および95%は、それぞれの細胞にのみ見出される。HF-3016において検出されたecDNA内ループは、主として、ecCDK4遺伝子座(図8Aにおける内側の円)にあるが、HF-3177では、ecMYC領域は、より強力なルーピングを示し(図7Bにおける内側の円)、これは、ecDNAが、類似の腫瘍遺伝子作動因子を含み得るものの、異なった別の構造により生じることを示し得る。ecDNAとそれらの染色体パートナーとの間のトランス相互作用のなかで、ecDNA上のアンカーは、主として(75~93%)遺伝子内または遺伝子間の非コーディング領域にあり、それらのトランス相互作用染色体アンカーは、主として(79~84%)、プロモーター(TSS±2.5Kbとして定義される)に局在化していた(図7C)。これらの相互作用のこのような並存は、これらの接触の転写機能を示唆する。
【0085】
ecDNA相互作用がどのように転写制御領域と関連するかを調べるために、H3K27acプロファイリングを行って、活性なエンハンサーおよびプロモーターを示した。ecDNAにおいて増幅された腫瘍遺伝子の制御を、それらのトランス染色体相互作用領域を評価することによって、まず試験した。これらのecDNA接続性非コーディング染色体アンカーは、H3K27acピークとの高いオーバーラップ(遺伝子間61~80%)を示し、これは、ecDNA接触を有しないトランス相互作用非コーディング染色体アンカーによるものよりも有意に高かった(遺伝子間38~69%、図8B、P値0.019、片側ウィルコクソンの順位和検定)。具体的には、ecDNA上に存在する腫瘍遺伝子のプロモーターと相互作用する染色体非コーディング領域のうちの73%(196個中144個)は、対応する細胞株のH3K27acピークとオーバーラップし(図2A)、ecDNA上の腫瘍遺伝子の転写が、クロマチン接触を通じて線形染色体上のエンハンサーに結合することによってさらに増強されることが示唆された。エンハンサー接触は、変動性であり、異なるecDNA(+)株間で動的であり得る。ecMYCの事例では、MYCプロモーターは、3つのecMYC(+)細胞株において9個の異なるH3K27acエンハンサーと相互作用した(図8C)。
【0086】
高頻度接触集中点とecDNA内のH3K27acピークとの間で共発生が観察され(図7B図8A)、これらの相互作用アンカーが、活性なエンハンサーのように挙動することを示唆した。530KbのecEGFR領域内のH3K27acピークは、HF-2927において高い相互作用頻度の領域と共アライメントし、ecDNA(-)細胞(HF-3035)の染色体EGFR領域におけるH3K27acピークと比較すると、より広いゲノムスパンで近接したクラスターとしてのパターンを呈し(図2B)、エンハンサーシグナルが、ecDNAのクロマチン接触部位に凝集していることを示した。中期HF2927細胞に対するH3K27acを標的とする抗体を使用した免疫染色により、H3K27acと、ecDNAを示すDAPIシグナルとの間でオーバーラップするシグナルが示され、これにより、エンハンサー機能とecDNAとの間の関係性が確認された(図8D)。
【0087】
4つすべてのecDNA(+)細胞株にわたるecDNAに媒介されるトランスクロマチン相互作用と関連するH3K27acシグナルの増加を定量的に示すために、4つのecDNA(+)細胞株のそれぞれにおいて、ecDNA領域(群Aと称される)、それらの対応するトランス相互作用染色体パートナー(群B)、およびecDNAとの接触を有しない全ゲノムH3K27acピーク(群C)の間で、検出されたすべてのH3K27acピーク(FDR<0.05、P<0.001)からの濃縮倍数の比較を行った。ecDNAクロマチン相互作用アンカーと関連するH3K27acピークは、ecDNA接触を有しない全ゲノムH3K27acピークのもの(中央値10-12、P値5E-09~2.3E-164、片側ウィルコクソンの順位和検定)よりも有意に高い濃縮を有した(中央値、群A:58~138および群B:43~91)(図2C)。それらはまた、ecDNA(-)のHF-3035細胞株において見出されるecMYC、ecEGFR、およびecCDK4に相当する領域からの濃縮倍数(中央値:9~11)よりも高く、H3K27acシグナルの強い増強が、ecDNAに特異的であることを確認した。
【0088】
非常に高い強度および大きなドメインのH3K27acシグナルを有するエンハンサーは、「スーパーエンハンサー」と称されており[Whyte, W. A. et al. (2013) Cell 153, 307-319]、がんにおいて腫瘍遺伝子の転写を促進することがわかっている[Hnisz, D. et al. (2013) Cell 155, 934-947]。ecDNAにおいて観察されたエンハンサーシグネチャーが、「スーパーエンハンサー」を連想させるものであるかどうかを評価するために、ecDNAにおいて検出されたH3K27acピークのスパンサイズおよびそれらのトランス相互作用染色体アンカーの試験を行った。ecDNAにおけるH3K27acピークは、ecDNA接触を有しない染色体H3K27ピークよりも有意に長いスパンを有したことが見出された(スパンの中央値は、群Aでは2~3.5Kb、群Bでは1.5~2.1Kb、対して群Cでは700~800bp、P値は9.6E-08~4.4E-153である、片側ウィルコクソンの順位和検定)(図2D)。他のH3K27acピーク領域と比較した、ecDNAにおける群AのH3K27acピークの配列分析は、JUN、FOS、およびATFを含む、RNAPIIの全般的な転写および細胞増殖の制御に重要な転写因子の結合モチーフの濃縮を示した(q値<0.001、濃縮>1.5)。まとめると、H3K27acシグナルの強い増強を伴うRNAPIIシグナルのシスおよびトランス両方での収束により、ecDNA分子が、ゲノム全体に広範にRNAポリメラーゼ機構に接続することができることが示唆され、全ゲノム転写増幅因子としての機能が裏付けられた。
【0089】
次に、同じ4つの株からのRNA発現の分析を通じて、ecDNAトランス相互作用と関連するエンハンサーシグナルの増加が、活性な転写をもたらすかどうかを決定した。総合すると、結果は、それぞれ、HF-2354、HF-2927、HF-3016、およびHF-3177 ecDNA(+)細胞株において、プロモーターがecDNAと接触した1,887個、1,270個、1,483個、および1,157個の染色体遺伝子の検出を示した。EcDNA相互作用遺伝子は、他のトランス染色体接触を有しない遺伝子(FPKM中央値0.7~4、P値4.3E-34~1.8E-55、片側ウィルコクソンの順位和検定)(図9A)またはecDNAとの接触を有しないが他の遺伝子とのトランス染色体相互作用を有する遺伝子(FPKM中央値8~9、P値6.1E-04~1.5E-08、片側ウィルコクソンの順位和検定)のいずれかと比較して、有意に高いレベルの発現(FPKM中央値12~14)を示した(図10)。さらに、ecDNAに接続している遺伝子の発現レベルは、それらのecDNA接触の頻度(独立したトランス相互作用の数によって測定される)と正相関する(図9B)。まとめると、ecDNA接続性は、転写活性、および高度に増強されたH3K27acシグネチャーと高度に関連しており、ecDNAが、全体的な転写増幅機構として機能し得ることが示唆された。
【0090】
4つのecDNA(+)細胞株にわたって、合計で、4,763個の遺伝子が、ecDNAと接触しており、そのうちの877個(18%)は、2つまたはそれよりも多くの細胞株に共通していた(図3A)。これらの877個の遺伝子の機能は、細胞のコミュニケーションおよび増幅に関与する生物学的プロセスである翻訳開始(FDR 2.06E-04)、細胞-細胞接着(FDR 0.003)、および転写(FDR 0.02)において有意に濃縮されていた(DAVIDオンライン分析[Huang da, W. et al. (2009) Nat Protoc 4, 44-57])。4つすべてのecDNA(+)細胞株において共通して見出された20個の遺伝子のうち、半分を上回るものが、ERBB2、DNAJB4、MCL1、DDIT4およびBAD、JUNDおよびその転写共因子FOS、ならびに非コーディングRNA遺伝子MALAT1を含め、腫瘍原性、アポトーシスの制御、細胞成長または増殖と機能的に関連している遺伝子であった。ecDNA接続性ネットワークにおける736個の染色体腫瘍遺伝子のセットの存在に関して、試験を行い[Forbes, S. A. et al. (2015) Nucleic Acids Res 43, D805-811、Repana, D. et al. (2019) Genome Biol 20, 1]、4つのecDNA(+)細胞株にわたって、それぞれ、87個、56個、78個、および54個の注釈された腫瘍遺伝子が、ecDNAに媒介されるクロマチンインタラクトーム内にあったことが見出された(図3B)。これは、ランダムな予測に対する2.1~2.5倍の濃縮を表し(P<0.05、片側ウィルコクソンの順位和検定)、ecDNAが、がん細胞における共活性化のためにクロマチン相互作用を通じてさらなる腫瘍遺伝子を動員するという仮説を裏付ける。転写活性化に対するecDNAの作用と一致して、トランス相互作用する腫瘍遺伝子は、4つのecDNA(+)株のそれぞれにおけるすべての遺伝子にわたる中央値転写レベルと比較して、6~10倍のFPKMの増加を示した(P値1.3E-14~2.1E-24、片側ウィルコクソンの順位和検定)(図9C)。まとめると、736個の注釈された腫瘍遺伝子のうちの216個が、4つのecDNA(+)細胞株のうちの少なくとも1つにおいて、ecDNAとのトランス染色体相互作用を呈したと決定された(図3B)。とりわけ、ERBB2およびMALAT1は、4つすべてのニューロスフェア株においてecDNAとのクロマチン接続を呈した。ERBB2は、乳がんにおけるカノニカル腫瘍遺伝子であり、EGFRと構造的類似性を共有し、これは、神経膠芽腫の55%~60%において変更されている。ERBB2およびEGFRは、ヘテロ二量体を形成して、その下流シグナル伝達経路を活性化し得る[Qian, X., et al. (1994) Proc Natl Acad Sci U S A 91, 1500-1504]。ERBB2は、GBMにおいてゲノムが変更されることは珍しく、GBMのほぼ半数に発現されるが[Zhang, C. et al. (2016) J Natl Cancer Inst 108, doi:10.1093/jnci/djv375、Liu, G. et al. (2004) Cancer Res 64, 4980-4986]、非新生物脳細胞においては発現されない(GEPIAオンラインデータ[Tang, Z. et al. (2017) Nucleic Acids Res 45, W98-W102])。GBMにおけるMALAT1の発現は、WNTシグナル伝達をもたらし得[Vassallo, I. et al. (2016) Oncogene 35, 12-21]、これにより内皮トランス分化および遊走能の増加が作動される[Hu, B. et al. (2016) Cell 167, 1281-1295]。
【0091】
個々の腫瘍遺伝子の動員の他に、ecDNAはまた、多数の腫瘍遺伝子がecDNAとの相互作用を介して一緒に空間的に近接する集中点であるとも考えられる。ハブ間の広範のコミュニケーションによって定義される8個、11個、10個、および4個の全ゲノム相互作用ネットワーク間で、4つのecDNA(+)細胞株のそれぞれにおいて(方法、図3C)、HF-2927における3つを除くすべてが、ecDNAに由来する相互作用ハブを有する。これらのecDNAに接続した腫瘍遺伝子の多くは、クロマチンネットワークのそれぞれ内に存在する。具体的には、HF-3016およびHF-3177における個々のコミュニティは、最大で10~12個の追加の腫瘍遺伝子に接続することができ(図9D)、これは、ランダムな予測よりも有意に高い(P<0.05、片側ウィルコクソンの順位和検定)。腫瘍遺伝子のこのような共凝集は、ecDNAが協調的な転写共活性化を達成して腫瘍新生を促進するために採用する構造に基づく機序であることが示された。注目すべきことに、HF-3016およびHF-3177由来のecDNAが、同じ患者の原発性および再発性GBMに由来するにもかかわらず、ecDNAネットワークのコンビナトリアルコヒーレンスは、多くのオーバーラップ遺伝子を有さず、がんクローンの不均一性が、ecDNA-クロマチンネットワークによってさらに拡大され得ることを示す。
【0092】
まとめると、ecDNA転写インタラクトームおよびがん細胞における制御を特徴付けるために、クロマチン相互作用アッセイ、ChIA-PETアッセイを使用して、研究を行った。全ゲノムecDNA接続性集中点、トランス相互作用する染色体標的遺伝子、H3K27ac結合およびRNA発現のマルチオーミクス統合分析を通じて、ecDNAが、がん細胞における転写の共活性化のために腫瘍遺伝子を優先的に標的とすることができる移動性エンハンサーエレメントとしての機能を果たし得ることが示された(図9E)。これらの発見は、がん細胞に、腫瘍の進行および腫瘍の進化を作動させる競合的利点を提供する新しいecDNA機序を概説する。さらに、ecDNAに標的とされる腫瘍遺伝子の特定により、標的化阻害処置戦略の候補を明らかにすることができ、ecDNAによって転写活性化される腫瘍遺伝子クラスターが、所与の腫瘍型に対する有効性を優先する機序であり得る。
【0093】
がんゲノムにおけるecDNA標的化クロマチンインタラクトームの詳細な特徴付けを提供することに加えて、ChIA-PETアッセイなどであるがこれに限定されない、クロマチン相互作用アッセイの使用により、それらの線形染色体との強力なクロマチン接触に基づいて、ecDNA内の増幅されたゲノムドメインを正確にマッピングするのに有効な手段が得られる。ecDNAを特徴付けるために用いられる既存の方法は、イメージングに基づく分析[Turner, K. M. et al. (2017) Nature 543, 122-125]またはコピー数増加を有する領域の構造分析[Deshpande, V. et al. (2018) bioRxiv doi.org/10.1101/457333]のいずれかを通じたものである。これらの方法と比較すると、ChIA-PETおよびHi-Cが非限定的な例であるクロマチン相互作用アッセイを通じて染色体間クロマチン接触頻度を直接的に測定することは、異なるサイズ、コピー数、または配列内容のecDNAシグネチャーを明らかにするための偏りのないアプローチを提供する。さらに、ecDNA分子の異なる領域間の接触頻度およびパターンは、それらの物理的構造および連続性に関する見識を提供し、これは、ゲノムの構造的変動およびアセンブリの特徴付けを補助する3次元クロマチン構成の能力と同様である[Spielmann, M. et al. (2018) Nat Rev Genet 19, 453-467、Dixon, J. R. et al. (2018) Nat Genet 50, 1388-1398]。
【0094】
まとめると、実験結果により、ecDNAが、クロマチン相互作用を通じて染色体外および染色体遺伝子転写の発現を増強させ得ることが示された。ecDNAの存在率および多様性と合わせて、これらの発見は、がんにおけるecDNA作用の複雑さをさらなるレベルで提供する。重要なことに、これらの結果は、腫瘍進化において、遺伝子構造とエピジェネティックな結果との間の相互作用に関する見識を提供する。がんにおけるecDNAの存在率およびこの染色体外構造の固有なゲノム動態を考慮すると、これは、治療においてecDNAおよびそれらの活性化される染色体遺伝子を標的とすることを支持する。
【0095】
均等物
本発明のいくつかの実施形態が本明細書において説明され例示されているが、当業者であれば、本明細書に記載される機能を行うため、ならびに/またはその結果および/もしくはその利点のうちの1つもしくは複数を得るための様々な他の手段および/または構造を容易に想起し、そのような変動および/または修正のそれぞれは、本発明の範囲内であると考えられる。より一般的には、当業者であれば、本明細書に記載されるすべてのパラメーター、寸法、材料、および構成は例示であることを意味し、実際のパラメーター、寸法、材料、および/または構成が、本発明の教示が使用される具体的な適用に依存するであろうことを容易に理解するであろう。当業者であれば、本明細書において記載される本発明の具体的な実施形態に対する多数の均等物を認識するであろうし、または単に慣例的な実験を使用すれば確かめることができる。したがって、前述の実施形態は、例示の目的で提示されたに過ぎず、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内で、本発明が、具体的に記載および特許請求されるものとは異なって実施されてもよいことを理解されたい。本発明は、本明細書に記載されるそれぞれ個々の特性、システム、物品、材料、および/または方法を対象とする。加えて、2つまたはそれよりも多くのそのような特性、システム、物品、材料、および/または方法の任意の組み合わせは、そのような特性、システム、物品、材料、および/または方法が、相互に矛盾しない限り、本発明の範囲内に含まれる。
【0096】
値の範囲が提供されている場合、それぞれの間にある値が包含されることを理解されたい。言及された範囲が、上下限の一方または両方を含む場合、これらの含まれる上下限のうちのいずれかまたは両方を除外した範囲もまた、本発明に含まれる。
【0097】
本明細書において定義され使用されるすべての定義は、辞書の定義、参照により組み込まれる文書内の定義、および/または定義される用語の通常の意味よりも優先されることを理解されたい。
【0098】
不定冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、本明細書および特許請求の範囲において、本明細書で使用される場合、そうでないことが明確に示されない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されたい。「および/または」という語句は、本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、そのように接続されている要素のうちの「いずれかまたは両方」を意味する、すなわち、要素が一部の事例では接続されて存在し、他の事例では接続されずに存在するものとして理解される。具体的に特定された要素に関連するかしないかに関係なく、「および/または」の節で具体的に特定される要素以外の他の要素は、そうでないことが明確に示されない限り、必要に応じて存在してもよい。
【0099】
本出願において引用されているかまたは言及されているすべての参考文献、特許、および特許出願、ならびに刊行物は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
図1A
図1B-1】
図1B-2】
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図10A
図10B
図10C
【国際調査報告】