(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(54)【発明の名称】安定化されたフルオロオレフィン組成物、並びにその生成、保管、及び使用方法
(51)【国際特許分類】
C09K 5/04 20060101AFI20220629BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
C09K5/04 F
F25B1/00 396Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564780
(86)(22)【出願日】2019-10-29
(85)【翻訳文提出日】2021-11-01
(86)【国際出願番号】 US2019058438
(87)【国際公開番号】W WO2020222865
(87)【国際公開日】2020-11-05
(31)【優先権主張番号】PCT/US2019/029777
(32)【優先日】2019-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515269383
【氏名又は名称】ザ ケマーズ カンパニー エフシー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ション ペン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン サン-ブランクス
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン キップ
(72)【発明者】
【氏名】バーバラ ハビランド マイナー
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つのフルオロオレフィンと、HFC-32と、有効量の少なくとも1つの阻害剤とを含む、組成物に関する。安定化された組成物は、冷蔵、空調、冷却機、及びヒートポンプなどの冷却及び加熱装置において、並びに発泡剤、溶媒、エアゾール噴射剤、消火剤、及び滅菌剤としての用途において有用であり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのフルオロオレフィンと、HFC-32と、有効量の少なくとも1つの阻害剤とを含む組成物であって、前記フルオロオレフィンに由来するオリゴマー、ホモポリマー、又は他のポリマー生成物を実質的に含まない、組成物。
【請求項2】
前記組成物が、約0.03重量%未満のオリゴマー、ホモポリマー、又は他のポリマー生成物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
空気、酸素、クメンヒドロペルオキシド、及びフルオロオレフィンポリペルオキシド、過酸化物、ヒドロペルオキシド、過硫酸塩、過炭酸塩、過ホウ酸塩、及びヒドロペルサルフェートからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記阻害剤が、d-リモメン、α-テルピネン、α-トコフェロール、ブチル化ヒドロキシトルエン、4-メトキシフェノール、及びベンゼン-1,4-ジオールからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも1つの潤滑剤を更に含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
POE、PAG、及びPVEからなる群から選択される潤滑剤を更に含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記フルオロオレフィンが、HFO-1234yf及びHFO-1234zeのうちの少なくとも1つの構成要素を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項8】
HFC-125、HFC-134a、HFC-152a、236fa、HFC-227ea、及び二酸化炭素からなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を更に含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
HFO-1234yfと、HFC-32と、d-リモネン及びα-テルピネンからなる群から選択される少なくとも1つの阻害剤とを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
HFC-134a、HFO-1243zf、HFO-1225ye、HFO-1234ze、3,3,3-トリフルオロプロピン、HCFO-1233xf、HFC-244bb、及びHFC-245cbからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を更に含む、請求項7、8、又は9に記載の組成物。
【請求項11】
HCC-40、HCFC-22、CFC-115、HCFC-124、HCFC-1122、及びCFC-1113からなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を更に含む、請求項7、8、又は9に記載の組成物。
【請求項12】
前記阻害剤が、約30~約3,000ppm(重量)の量で存在する、請求項4に記載の組成物。
【請求項13】
ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、第三級ブチルヒドロキノン、没食子酸塩、2-フェニル-2-プロパノール、1-(2,4,5-トリヒドロキシフェニル)-1-ブタノン、フェノール、ビスフェノールメタン誘導体、及び2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)からなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を更に含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項14】
前記阻害剤が、d-リモネン及びα-テルピネンのうちの少なくとも1つを含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項15】
前記阻害剤が、約-80~180℃の温度における液体を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
少なくとも1つの酸化防止剤を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
HFO-1225yeZ、HFO-1243zf、HFO-1234ze、HFC-236ea、HFC-245fa、及び3,3,3-トリフルオロプロピンからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を更に含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物が、アンモニア及びCF
3Iを実質的に含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物が、HFO-1234yf、HFC-32、及びd-リモネンから本質的になり、アンモニアもCF
3Iも含有しない、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物が、HFO-1234yf、HFC-32、3,3,3-トリフルオロプロピン、及びd-リモネンから本質的になる、請求項16に記載の組成物。
【請求項21】
オリゴマー及びホモポリマーの形成を低減するための方法であって、少なくとも1つのフルオロオレフィン及びHFC-32を含む組成物を、オリゴマー又はホモポリマーの形成を低減するのに有効である、d-リモメン、α-テルピネン、α-トコフェロール、ブチル化ヒドロキシトルエン、4-メトキシフェノール、及びベンゼン-1,4-ジオールからなる群から選択される、有効量の少なくとも1つの構成要素と接触させることを含む、方法。
【請求項22】
前記組成物が、前記接触の前に、空気、酸素、クメンヒドロペルオキシド、及びフルオロオレフィンポリペルオキシド、過酸化物、ヒドロペルオキシド、過硫酸塩、過炭酸塩、過ホウ酸塩、及びヒドロペルサルフェートからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素に曝露されている、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
請求項21に記載の組成物を使用して加熱又は冷却するための方法。
【請求項24】
請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物を含む冷媒を含む容器。
【請求項25】
少なくとも1つの蒸発器と、少なくとも1つの圧縮器と、少なくとも1つの凝縮器と、少なくとも1つの膨張デバイスとを備え、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物を含有する、冷蔵、空調、ヒートポンプ、又は冷却機システム。
【請求項26】
a)HFO-1234yf及びHFC-32からなる冷媒と、
b)d-リモネン及びα-テルピネンからなる群から選択される少なくとも1つの阻害剤と
を含む、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは、少なくとも1つのフルオロオレフィンと、HFC-32と、リモネン、α-テルピネン、α-トコフェロール、ブチル化ヒドロキシトルエン、4-メトキシフェノール、ベンゼン-1,4-ジオールからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を含む少なくとも1つの阻害剤とを含む、安定化された組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
冷媒に対する新たな環境規制によって、冷蔵及び空調産業は、地球温暖化係数(global warming potential、GWP)の低い新規冷媒を探さなければならなくなっている。
【0003】
低GWP、非毒性、不燃性、合理的なコスト、及び優れた冷蔵性能を有する代替冷媒が求められている。
【0004】
フルオロオレフィンは、単独で又は混合物中で冷媒として提案されている。これらの製品は、空調又は冷蔵システムで典型的に使用される材料との化学的安定性及び適合性について広範に試験されており(「1234yf-A Low GWP Refrigerant For MAC,Honeywell/DuPont Joint Collaboration」、JAMA/JARIAへの発表、2007年10月3日を参照)、典型的な動作条件下で安定であることが示されている。しかしながら、特定のフルオロオレフィンは、極端な温度、又は汚染された系内での他の化合物(様々な汚染物質の中でも、例えば、過剰な酸素、酸化化学物質、又はラジカル生成化合物)との接触などの異常な条件下で、劣化を示し得る及び/又は不必要な副生成物を生成し得ることが観察されており、これは、特定の使用及び/又は用途において予想外に起こり得る。このような劣化は、フルオロオレフィンを冷媒又は伝熱流体として利用するときに生じ得る。この劣化は、任意の数の異なる機序によって生じ得る。安定化された組成物の例は、特開2009298918号、米国特許第6,969,701号、同第8,133,407号、米国特許出願第2006/0022166号、同第2006/0043330号、同第2008/0157022号、及び国際公開第2007/126760号、並びに欧州特許第2057245号、米国特許第8101094号、同第8535555号、同第8097181号、及び同第8075796号に開示されており、これらの開示は、参照により本明細書に援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009298918号
【特許文献2】米国特許第6,969,701号
【特許文献3】米国特許第8,133,407号
【特許文献4】米国特許出願第2006/0022166号
【特許文献5】米国特許出願第2006/0043330号
【特許文献6】米国特許出願第2008/0157022号
【特許文献7】国際公開第2007/126760号
【特許文献8】欧州特許第2057245号
【特許文献9】米国特許第8101094号
【特許文献10】米国特許第8535555号
【特許文献11】米国特許第8097181号
【特許文献12】米国特許第8075796号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特定の異常な条件下かつ反応開始剤として機能し得る望ましくない汚染物質の存在下で、フルオロオレフィンは、存在する可能性のある特定の汚染物質の存在下でオリゴマー化又はホモ重合することがある。したがって、この技術分野では、オリゴマー化又はホモ重合する可能性が排除とはいかないまでも低減されている安定化されたフルオロオレフィン含有組成物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
少なくとも1つのフルオロオレフィンと、HFC-32と、有効量の少なくとも1つの阻害剤とを含む組成物が本明細書に開示され、組成物は、フルオロオレフィンに由来するオリゴマー、ホモポリマー、又は他のポリマー生成物を実質的に含まない。
【0008】
オリゴマー及びホモポリマーの形成を低減するための方法も本明細書に開示され、方法は、少なくとも1つのフルオロオレフィン及びHFC-32を含む組成物を、オリゴマー又はホモポリマーの形成を低減するのに有効である、d-リモメン、α-テルピネン、α-トコフェロール、ブチル化ヒドロキシトルエン、4-メトキシフェノール、及びベンゼン-1,4-ジオールからなる群から選択される、有効量の少なくとも1つの構成要素と接触させることを含む。
【0009】
また、少なくとも1つのフルオロオレフィンと、HFC-32と、有効量の少なくとも1つの阻害剤とを含む組成物を使用して冷却するための方法も開示される。
【0010】
また、少なくとも1つのフルオロオレフィンと、HFC-32と、有効量の少なくとも1つの阻害剤とを含む冷媒を含む容器も開示される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、少なくとも1つの阻害剤を、フルオロオレフィン及びHFC-32を含む組成物に添加することによって、ヒドロフルオロオレフィン含有組成物が異常な状態に持ちこたえる能力を改善することができ、また、フルオロオレフィン(例えば、テトラフルオロプロペン)をオリゴマー化又はホモ重合させるという反応開始剤(例えば、汚染物質)に関連する潜在的な問題を解決する。「阻害剤」とは、ヒドロフルオロオレフィンのオリゴマー又はポリマーへの変換を排除とはいかないまでも低減する、本発明による少なくとも1つの化合物を指すことを意味する。オリゴマー化又はホモ重合反応は比較的高い温度により加速され得るが、このような反応はまた、反応開始剤(例えば、汚染物質)の濃度及び種類に応じて周囲条件下で発生し得る。阻害剤は、ラジカル阻害剤として、組成物の冷蔵性能にも冷媒油及び機器(例えば、密封で使用される樹脂)との適合性にも影響を及ぼすことなく機能することができる。安定化された組成物は、冷却/加熱システムにおいて、そして、より高い地球温暖化係数を有する既存の冷媒の代替品として有用であり得る。
【0012】
フルオロオレフィンの起こり得る不安定性を回避するために、特定の阻害剤化合物、すなわち環状モノテルペンのうちの少なくとも1つを含む炭化水素、α-トコフェロールなどのトコフェロールを含む親油性有機化合物、フェノール、ベンゼン-1,4-ジオールを含む少なくとも1つの化学部分C6H4(OH)を有する芳香族有機化合物を、フルオロオレフィン含有組成物に添加することにより、冷蔵又は空調システム用途での包装、保管、使用時の安定性が向上することが見出されている。阻害剤化合物の具体例は、d-リモメン、α-テルピネン、α-トコフェロール、ブチル化ヒドロキシトルエン、4-メトキシフェノール、ベンゼン-1,4-ジオールからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を含む。本発明の一実施形態では、本発明の阻害剤組成物は、約-100~約220℃、約-90~約200℃、場合によっては約-80~約185℃の温度における液体を含む。
【0013】
具体的な一実施形態では、本発明は、O2及びフルオロオレフィンポリペルオキシドと相互作用又は反応し、次に、このような化合物とヒドロフルオロオレフィンとの反応を阻害又は防止することができる、フルオロオレフィンと、HFC-32と、阻害剤とを含む組成物に関する。このような阻害剤の例は、d-リモネン及びα-テルピネンのうちの少なくとも1つを含む。d-リモネン及びα-テルピネンは、以下の構造を有する。
【0014】
【0015】
本発明の一実施形態では、阻害剤は、α-テルピネンを含む。理論又は説明に束縛されるものではないが、その構造中に共役二重結合が存在することにより、α-テルピネンは、酸化時に芳香環を形成することができると考えられる。本発明の別の実施形態では、阻害剤は、d-リモネンを含む。
【0016】
本発明の一実施形態では、任意選択で酸化防止剤を含むd-リモネン又はα-テルピネンは、数ppmレベルであっても独特の芳香を有する。この心地良い匂いは、ヒドロフルオロオレフィン(例えば、1234yf、1234ze、及びこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む)に基づく冷媒及びブレンドによる冷媒漏れの検出に利用することができる。これは、プロフェッショナルな電子的漏れ検出器がいずれの場所でも利用できないことが多いため、家庭用空調装置又は可搬式空調装置における冷媒漏れを早期に検出するのに特に有益である。
【0017】
本発明の一実施形態は、
a.少なくとも1つのフルオロオレフィンと、
b.HFC-32と、
c.有効量の少なくとも1つの阻害剤であって、環状モノテルペンを含む炭化水素、α-トコフェロールを含むトコフェロールを含む親油性有機化合物、フェノール、ベンゼン-1,4-ジオールを含む化学式C6H4(OH)を有する芳香族有機化合物を含む、阻害剤とを含む組成物に関する。
【0018】
本発明の一実施形態は、少なくとも1つの酸化防止剤を更に含む、前述の組成物のいずれかに関する。任意の好適な酸化防止剤を用いることができるが、好適な酸化防止剤の例は、数あるフェノールの中でも、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、第三級ブチルヒドロキノン、没食子酸塩、2-フェニル-2-プロパノール、1-(2,4,5-トリヒドロキシフェニル)-1-ブタノン、ビスフェノールメタン誘導体、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を含む。
【0019】
具体的な一実施形態は、d-リモネン及びα-テルピネンのうちの少なくとも1つを含む阻害剤と共に、前述の酸化防止剤を使用することに関する。
【0020】
本発明の別の実施形態は、少なくとも1つのフルオロオレフィンを含む組成物を安定化させる方法に関し、当該方法は、有効量の少なくとも1つの阻害剤であって、環状モノテルペン、α-トコフェロールを含むトコフェロールを含む親油性有機化合物、フェノール、及びベンゼン-1,4-ジオールを含む化学式C6H4(OH)を有する芳香族有機化合物、並びにこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を含む炭化水素である、阻害剤を、少なくとも1つのフルオロオレフィン及びHFC-32を含む当該組成物に添加することを含む。
【0021】
本発明の別の実施形態は、少なくとも1つのフルオロオレフィンを含む組成物のオリゴマー化又はホモ重合を低減するための方法に関し、オリゴマー化又はホモ重合は、フルオロオレフィン含有組成物を取り扱うために使用される導管、移送ライン(管及び配管を含む)、並びに他のシステム;包装(容器)、並びに冷蔵、空調、ヒートポンプ、又は冷却機システムのうちの少なくとも1つに存在する不注意による又は望ましくない汚染物質の存在によって引き起こされ、当該方法は、環状モノテルペン、α-トコフェロールを含むトコフェロールを含む親油性有機化合物、フェノール、ベンゼン-1,4-ジオールを含む化学式C6H4(OH)を有する芳香族有機化合物、及びこれらの混合物を含む少なくとも1つの炭化水素を含む阻害剤を、少なくとも1つのフルオロオレフィン及びHFC-32を含む当該システム、容器、及び組成物のうちの少なくとも1つに添加することを含む。
【0022】
本発明の更なる実施形態は、フルオロオレフィンが、本発明の阻害剤組成物を含まない組成物と比べて、オリゴマー化又はホモ重合する可能性が低減されている、容器内のフルオロオレフィン及びHFC-32を含有する組成物に関する。
【0023】
本発明の一実施形態は、少なくとも1つのフルオロオレフィンと、HFC-32と、有効量の少なくとも1つの阻害剤とを含む組成物であって、フルオロオレフィンに由来するオリゴマー、ホモポリマー、又は他のポリマー生成物を実質的に含まない、組成物に関する。
【0024】
本発明の別の実施形態は、組成物が、約0.03重量%未満のオリゴマー、ホモポリマー、又は他のポリマー生成物を含む、前述の冷媒組成物のいずれかに関する。
【0025】
本発明の別の実施形態は、空気、酸素、クメンヒドロペルオキシド、及びフルオロオレフィンポリペルオキシド、過酸化物、ヒドロペルオキシド、過硫酸塩、過炭酸塩、過ホウ酸塩、及びヒドロペルサルフェートからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を更に含む、前述の組成物のいずれかに関する。
【0026】
本発明の別の実施形態は、阻害剤が、d-リモメン、α-テルピネン、α-トコフェロール、ブチル化ヒドロキシトルエン、4-メトキシフェノール、ベンゼン-1,4-ジオールからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を含む、前述の組成物のいずれかに関する。
【0027】
本発明の別の実施形態は、少なくとも1つの潤滑剤を更に含む、前述の組成物のいずれかに関する。いくつかの実施形態では、潤滑剤は、ofPOE、PAG、及びPVEからなる群から選択される。
【0028】
本発明の別の実施形態は、フルオロオレフィンが、HFO-1234yf及びHFO-1234zeからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を含む、前述の組成物のいずれかに関する。
【0029】
本発明の別の実施形態は、HFC-125、HFC-134a、HFC-152a、HFC-227ea、及び二酸化炭素からなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を更に含む、前述の組成物のいずれかに関する。
【0030】
本発明の別の実施形態は、HFC-134a、HFO-1243zf、HFO-1225ye、HFO-1234ze、3,3,3-トリフルオロプロピン、HCFO-1233xf、HFC-244bb、及びHFC-245cbからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を更に含む、前述の組成物のいずれかに関する。
【0031】
本発明の別の実施形態は、HCC-40、HCFC-22、CFC-115、HCFC-124、HCFC-1122、及びCFC-1113からなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を更に含む、前述の組成物のいずれかに関する。
【0032】
本発明の別の実施形態は、阻害剤が、約30~約3,000ppm(重量)の量で存在する、前述の組成物のいずれかに関する。
【0033】
本発明の別の実施形態は、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、第三級ブチルヒドロキノン、没食子酸塩、2-フェニル-2-プロパノール、1-(2,4,5-トリヒドロキシフェニル)-1-ブタノン、フェノール、ビスフェノールメタン誘導体、及び2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)からなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を更に含む、前述の組成物のいずれかに関する。
【0034】
本発明の別の実施形態は、阻害剤が、d-リモネン又はα-テルピネンのうちの少なくとも1つを含む、前述の組成物のいずれかに関する。
【0035】
本発明の別の実施形態は、阻害剤が、約-80~180℃の温度における液体を含む、前述の組成物のいずれかに関する。
【0036】
本発明の別の実施形態は、任意選択で少なくとも1つの酸化防止剤を更に含む、前述の組成物のいずれかに関する。
【0037】
本発明の別の実施形態は、HFO-1225yeZ、HFO-1243zf、HFO-1234ze、HFC-236ea、HFC-245fa、及び3,3,3-トリフルオロプロピンからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を更に含む、前述の組成物のいずれかに関する。
【0038】
本発明の別の実施形態は、構成要素が、HFO-1234ze、HFO-1225yeZ、及び3,3,3-トリフルオロプロピンを含む、前述の組成物のいずれかに関する。
【0039】
本発明の別の実施形態は、組成物が、アンモニア及びCF3Iのうちの少なくとも1つを実質的に含まない、前述の組成物のいずれかに関する。
【0040】
本発明の別の実施形態は、組成物が、HFO-1234yf、HFC-32、及びd-リモネンから本質的になり、アンモニアもCF3Iも含有しない、前述の組成物のいずれかに関する。
【0041】
本発明の別の実施形態は、組成物が、HFO-1234yf、HFC-32、3,3,3-トリフルオロプロピン、及びd-リモネンから本質的になる、前述の組成物のいずれかに関する。
【0042】
本発明の一実施形態は、オリゴマー及びホモポリマーの形成を低減するための方法であって、少なくとも1つのフルオロオレフィン及びHFC-32を含む組成物を、オリゴマー又はホモポリマーの形成を低減するのに有効な量である、d-リモネン、α-テルピネン、α-トコフェロール、ブチル化ヒドロキシトルエン、4-メトキシフェノール、及びベンゼン-1,4-ジオールからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素と接触させることを含む、方法に関する。
【0043】
本発明の別の実施形態は、当該組成物が、当該接触の前に、空気、酸素、クメンヒドロペルオキシド、及びフルオロオレフィンポリペルオキシド、過酸化物、ヒドロペルオキシド、過硫酸塩、過炭酸塩、過ホウ酸塩、及びヒドロペルサルフェートからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素に曝露されている、前述の方法のいずれかに関する。
【0044】
本発明の別の実施形態は、加熱又は冷却のために前述の組成物のいずれかを用いる、前述の方法のいずれかに関する。
【0045】
本発明の別の実施形態は、前述の組成物のいずれかを含む冷媒を含む容器に関する。
【0046】
本発明の実施形態は、単独で又は互いに組み合わせて使用することができ、その異なる実施形態を組み合わせ、本発明の一部を形成することができる。
【0047】
本発明は、少なくとも1つのフルオロオレフィンと、HFC-32と、有効量の少なくとも1つの阻害剤とを含む安定化された組成物を提供する。「安定化された」とは、フルオロオレフィンが別の化合物と相互作用し、ダイマー、オリゴマー、ホモポリマー、又はポリマー生成物を形成することを排除とはいかないまでも阻害する、有効量の少なくとも1つの阻害剤化合物を含む組成物を指すことを意味する。このような相互作用を引き起こし得るこのような化合物の例としては、他の反応開始剤の中でも、空気、酸素、クメンヒドロペルオキシド、及びフルオロオレフィンポリペルオキシド、過酸化物、ヒドロペルオキシド、過硫酸塩、過炭酸塩、過ホウ酸塩、ヒドロペルサルフェートなどの酸化剤が挙げられる。反応開始剤化合物は、約10~約15,000重量ppm、約1,000~約10,000重量ppm、場合によっては約1,000~約3,000重量ppm、いくつかの実施形態では、30~2,000重量ppmの量で存在し得る。このような反応開始剤化合物は、フルオロオレフィン含有組成物を取り扱うために使用される導管、移送ライン、管、配管、及び他のシステム;包装(容器)、保管、並びに冷蔵、空調、又はヒートポンプシステムのうちの少なくとも1つにおける汚染物質として存在し得る。理論又は説明に束縛されるものではないが、特定の汚染物質はラジカル反応開始剤として機能し、それによって、フルオロオレフィンをオリゴマー化させる、ホモ重合させる、又は他のポリマー生成物を形成させると考えられる。
【0048】
本発明の一実施形態では、本発明の組成物は、ヒドロフルオロオレフィンに由来するオリゴマー、ホモポリマー、又は他のポリマー生成物を実質的に含まない。「実質的に含まない」とは、組成物が、IR又はNMRによって測定されるとき、約1重量%未満、約0.07重量%未満、約0.03重量%未満、場合によっては約0重量ppmのこのような生成物を含有することを意味する。存在し得るポリマーはまた、視覚的に観察され得る。
【0049】
本発明の別の実施形態では、本発明の組成物は、ファルネソール、ファルネセンからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素などのセスキテルペン化合物;[CH3CO2]-、[HSO4]-、[CH3OSO3]-、[C2H5OSO3]-、[AlCl4]-、[CO3]2-、[HCO3]-、[NO2]-、[NO3]-、[SO4]2-、[PO4]3-、[HPO4]2-、[H2PO4]-、[HSO3]、及び特定のフッ素化アニオンであって、[BF4]-、[PF6]-、[SbF6]-、[CF3SO3]-、[HCF2CF2SO3]-、[CF3HFCCF2SO3]-、[HCClFCF2SO3]-、[(CF3SO2)2N]-、[(CF3CF2SO2)2N]-、[(CF3SO2)3C]-、[CF3CO2]-、[CF3OCFHCF2SO3]-、[CF3CF2OCFHCF2SO3]-、[CF3CFHOCF2CF2SO3]-、[CF2HCF2OCF2CF2SO3]-、[CF2ICF2OCF2CF2SO3]-、[CF3CF2OCF2CF2SO3]-、[(CF2HCF2SO2)2N]-、[(CF3CFHCF2SO2)2N]-、及びそれらの混合物からなる群から選択される、フッ素化アニオンからなる群から選択されるアニオンを含むイオン液体などのイオン性液体を含む特定の従来の阻害剤化合物を実質的に含まない。実質的に含まないとは、本発明の組成物が、約500重量ppm未満、典型的には約250重量ppm未満、場合によっては約100重量ppm、場合によっては約0重量ppmのこのような従来の阻害剤を含有することを意味する。
【0050】
本発明の組成物は、特に、発泡剤、エアゾール噴射剤、滅菌剤、又は伝熱媒体(冷蔵システム、冷蔵庫、空調システム、ヒートポンプ、冷却機などで使用するための伝熱流体及び冷媒など)を含む作動流体を含む様々な有用性を有する。本発明の化合物は、可搬式空調システムにおいて使用するのに、そして、固定式伝熱システムにおいて使用するための冷媒ブレンドを作製するための成分として特に適している。
【0051】
発泡剤は、ポリマーマトリックスを膨張させて気泡構造を形成する揮発性組成物である。
【0052】
エアゾール噴射剤は、容器から材料を排出するために1気圧を超える圧力を及ぼす1つ以上の成分の揮発性組成物である。
【0053】
滅菌剤は、生物学的活性物質などを破壊する揮発性殺菌流体を含有する揮発性殺菌流体又はブレンドである。
【0054】
伝熱媒体(本明細書では伝熱流体、伝熱組成物、又は伝熱流体組成物とも呼ばれる)は、熱源からヒートシンクに熱を運ぶために使用される作動流体である。
【0055】
冷媒は、流体が液体から気体に相変化し、そして、元に戻るサイクルにおいて伝熱流体として機能する化合物又は化合物の混合物である。
【0056】
本明細書で使用される際、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」という用語、又はこれらの他の任意の変化形は、非排他的な包含を網羅することを意図する。例えば、列挙する要素を含む、組成物、プロセス、方法、物品、若しくは機器は、必ずしもそれらの要素のみに限定されるものではなく、明示的に列挙されない他の要素、又はそのような組成物、プロセス、方法、物品、若しくは機器などに伴われる他の要素を包含し得る。
【0057】
移行句「からなる(consisting of)」は、特定されていないあらゆる要素、工程、又は成分を除外する。特許請求の範囲における場合には、このような語句は、材料に通常付随する不純物を除き、列挙された材料以外の材料の包含を特許請求項から締め出すものである。語句「からなる」がプリアンブルの直後ではなく請求項の本文の節内で現れる場合、この語句はその節の中に示される要素のみを限定するものであり、他の要素が特許請求の範囲全体から除外されるわけではない。
【0058】
移行句「から本質的になる」は、これらの追加的に含まれる材料、工程、機構、構成成分、又は要素が、特許請求される発明の基本的及び新規の特徴、特に本発明のプロセスのいずれかの所望の結果を達成するための作用機序に実質的に影響を及ぼさないことを条件に、文字通り開示されているものに加えて、材料、工程、機構、構成成分、又は要素を含む、組成物、方法を定義するために使用される。用語「から本質的になる(consisting essentially of)」は、「含む(comprising)」と「からなる(consisting of)」との間の中間の立場を占める。
【0059】
出願人らが、発明又はその一部を、「含む」などの非限定的な用語で定義していた場合、(特に明記しない限り)その記載は、用語「から本質的になる」又は「からなる」を使用する発明もまた含むと解釈すべきであることが容易に理解されるべきであろう。
【0060】
また、「a」又は「an」の使用は、本明細書に記載された要素及び成分を説明するために用いられる。これは、単に便宜上なされるものであり、本発明の範囲の一般的な意味を与えるためのものである。この記載は、1つ又は少なくとも1つを含むものと解釈されるべきであり、単数形は、別の意味を有することが明白でない限り、複数形も含む。
【0061】
本明細書で使用するとき、フルオロオレフィンという用語は、炭素原子、フッ素原子、及び任意選択で水素原子を含む化合物を説明する。一実施形態では、本発明の組成物で使用されるフルオロオレフィンは、2~12個の炭素原子を有する化合物を含む。別の実施形態では、フルオロオレフィンは、3~10個の炭素原子を有する化合物を含み、更に別の実施形態では、フルオロオレフィンは、3~7個の炭素原子を有する化合物を含む。代表的なフルオロオレフィンとしては、表1、表2、及び表3に列挙される全ての化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
本発明の一実施形態は、式E-又はZ-R1CH=CHR2(式I)(式中、R1及びR2は、独立して、C1~C6ペルフルオロアルキル基である)を有するフルオロオレフィンを提供する。R1基及びR2基の例としては、CF3、C2F5、CF2CF2CF3、CF(CF3)2、CF2CF2CF2CF3、CF(CF3)CF2CF3、CF2CF(CF3)2、C(CF3)3、CF2CF2CF2CF2CF3、CF2CF2CF(CF3)2、C(CF3)2C2F5、CF2CF2CF2CF2CF2CF3、CF(CF3)CF2CF2C2F5、及びC(CF3)2CF2C2F5が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、式Iのフルオロオレフィンは、分子中に少なくとも約4個の炭素原子を有する。別の実施形態では、式Iのフルオロオレフィンは、分子中に少なくとも約5個の炭素原子を有する。例示的な非限定的な式Iの化合物を表1に提示する。
【0063】
【0064】
【0065】
式Iの化合物は、式R1Iのペルフルオロアルキルヨージドを式R2CH=CH2のペルフルオロアルキルトリヒドロオレフィンと接触させて、式R1CH2CHIR2のトリヒドロヨードペルフルオロアルカンを形成することによって調製することができる。次いで、このトリヒドロヨードペルフルオロアルカンを脱ヨウ化水素化(dehydroiodinated)させて、R1CH=CHR2を形成することができる。あるいは、オレフィンR1CH=CHR2は、次に式R2Iのペルフルオロアルキルヨージドを式R1CH=CH2のペルフルオロアルキルトリヒドロオレフィンと反応させることによって形成される式R1CHICH2R2のトリヒドロヨードペルフルオロアルカンを脱ヨウ化水素化させることによって調製することもできる。
【0066】
ペルフルオロアルキルヨージドとペルフルオロアルキルトリヒドロオレフィンとの当該接触は、反応温度で反応物質及び生成物の自己圧力下で操作することができる好適な反応槽において反応物質を合わせることによってバッチモードで行ってよい。好適な反応槽は、(特にオーステナイト系の)ステンレス鋼、並びに周知の高ニッケル合金、例えば、Monel(登録商標)ニッケル-銅合金、Hastelloy(登録商標)ニッケルベース合金、及びInconel(登録商標)ニッケル-クロム合金などから製作されるものが挙げられる。
【0067】
あるいは、反応温度でポンプなどの好適な添加装置によってペルフルオロアルキルトリヒドロオレフィン反応物質をペルフルオロアルキルヨージド反応物に添加するセミバッチモードで、反応を行ってもよい。
【0068】
ペルフルオロアルキルヨージドのペルフルオロアルキルトリヒドロオレフィンに対する比は、約1:1~約4:1、好ましくは約1.5:1~2.5:1でなければならない。1.5:1未満の比では、Jeanneaux,et.al.,Journal of Fluorine Chemistry,Vol.4,261-270頁(1974)に報告されているように、多量の2:1付加物が生じる傾向がある。
【0069】
当該ペルフルオロアルキルヨージドを当該ペルフルオロアルキルトリヒドロオレフィンと接触させるための好ましい温度は、好ましくは約150℃~300℃、好ましくは約170℃~約250℃、最も好ましくは約180℃~約230℃の範囲内である。ペルフルオロアルキルヨージドとペルフルオロアルキルトリヒドロオレフィンとの反応に好適な接触時間は、約0.5時間~18時間、好ましくは約4~約12時間である。
【0070】
ペルフルオロアルキルヨージドとペルフルオロアルキルトリヒドロオレフィンとの反応によって調製されるトリヒドロヨードペルフルオロアルカンは、脱ヨウ化水素化工程において直接使用してもよく、又は好ましくは、脱ヨウ化水素化工程の前に蒸留によって回収及び精製してもよい。
【0071】
脱ヨウ化水素化工程は、トリヒドロヨードペルフルオロアルカンを塩基性物質と接触させることによって行われる。好適な塩基性物質としては、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム)、アルカリ金属酸化物(例えば、酸化ナトリウム)、アルカリ土類金属水酸化物(例えば、水酸化カルシウム)、アルカリ土類金属酸化物(例えば、酸化カルシウム)、アルカリ金属アルコキシド(例えば、ナトリウムメトキシド又はナトリウムエトキシド)、アンモニア水溶液、ナトリウムアミド、又はソーダ石灰などの塩基性物質の混合物が挙げられる。好ましい塩基性物質は、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムである。トリヒドロヨードペルフルオロアルカンと塩基性物質との当該接触は、好ましくは両方の反応物質の少なくとも一部を溶解することができる溶媒の存在下で、液体相中で行ってよい。脱ヨウ化水素化工程に好適な溶媒としては、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、及び第三級ブタノール)、ニトリル(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、ベンゾニトリル、又はアジポニトリル)、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、又はスルホランなどの1つ以上の極性有機溶媒が挙げられる。溶媒の選択は、沸点生成物及び精製中の生成物からの微量の溶媒を分離する容易さに依存し得る。典型的には、エタノール又はイソプロパノールが、この反応についての良溶媒である。
【0072】
典型的には、脱ヨウ化水素化反応は、好適な反応槽内で反応物質(塩基性物質又はトリヒドロヨードペルフルオロアルカンのいずれか)のうちの1つを他の反応物質に添加することによって実施することができる。この反応槽は、ガラス、セラミック、又は金属から製作されてもよく、好ましくはインペラ又は撹拌機構で撹拌される。
【0073】
脱ヨウ化水素化反応に好適な温度は、約10℃~約100℃、好ましくは約20℃~約70℃である。脱ヨウ化水素化反応は、周囲気圧又は減圧若しくは高圧で実施してよい。式Iの化合物が形成される際に反応槽から蒸留される脱ヨウ化水素化反応に注目すべきである。
【0074】
あるいは、脱ヨウ化水素化反応は、相間移動触媒の存在下、アルカン(例えば、ヘキサン、ヘプタン、又はオクタン)、芳香族炭化水素(例えば、トルエン)、ハロゲン化炭化水素(例えば、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、又はペルクロロエチレン)、又はエーテル(例えば、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジグリム、又はテトラグリム)などのより極性の低い1つ以上の有機溶媒中で、当該塩基性物質の水溶液をトリヒドロヨードペルフルオロアルカンの溶液と接触させることによって実施してもよい。好適な相間移動触媒としては、第四級アンモニウムハロゲン化物(例えば、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムヒドロサルフェート、トリエチルベンジルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、及びトリカプリリルアンモニウムクロリド)、第四級ホスホニウムハロゲン化物(例えば、トリフェニルメチルホスホニウムブロミド及びテトラフェニルホスホニウムクロリド)、又はクラウンエーテル(例えば、18-クラウン-6及び15-クラウン-5)として当該技術分野において既知の環状ポリエーテル化合物が挙げられる。
【0075】
あるいは、トリヒドロヨードペルフルオロアルカンを固体又は液体の塩基性物質に添加することによって、溶媒の非存在下で脱ヨウ化水素化反応を実施してもよい。
【0076】
脱ヨウ化水素化反応に好適な反応時間は、反応物質の溶解度に応じて約15分間~約6時間、又はそれ以上である。典型的には、脱ヨウ化水素化反応は急速であり、完了のために約30分間~約3時間必要である。
【0077】
式Iの化合物は、水の添加後相分離によって、蒸留によって、又はこれらの組み合わせによって、脱ヨウ化水素化反応混合物から回収することができる。
【0078】
本発明の別の実施形態では、フルオロオレフィンは、環状フルオロオレフィン(シクロ-[CX=CY(CZW)n-](式II)式中、X、Y、Z、及びWは、独立して、H及びFから選択され、nは、2~5の整数である)を含む。一実施形態では、式IIのフルオロオレフィンは、分子中に少なくとも約3個の炭素原子を有する。別の実施形態では、式IIのフルオロオレフィンは、分子中に少なくとも約4個の炭素原子を有する。更に別の実施形態では、式IIのフルオロオレフィンは、分子中に少なくとも約5個の炭素原子を有する。式IIの代表的な環状フルオロオレフィンを表2に列挙する。
【0079】
【0080】
本発明の組成物は、単一の式I若しくは式IIの化合物、例えば、表1又は表2中の化合物のうちの1つを含んでいてもよく、又は式I若しくは式IIの化合物の組み合わせを含んでいてもよい。
【0081】
別の実施形態では、フルオロオレフィンは、表3に列挙する化合物を含んでいてもよい。
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
表2及び表3に列挙した化合物は、市販されているか、又は当該技術分野において既知のプロセスによって若しくは本明細書に記載のとおり調製することもできる。
【0087】
1,1,1,4,4-ペンタフルオロ-2-ブテンは、室温にて蒸気相中において固体KOHで脱フッ化水素化することによって、1,1,1,2,4,4-ヘキサフルオロブタン(CHF2CH2CHFCF3)から調製することができる。1,1,1,2,4,4-ヘキサフルオロブタンの合成は、参照により本明細書に援用される米国特許第6,066,768号に記載されている。
【0088】
1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンは、約60℃において相間移動触媒を使用してKOHと反応させることによって、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ヨードブタン(CF3CHICH2CF3)から調製することができる。1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ヨードブタンの合成は、約200℃、自己圧力下で約8時間、ペルフルオロメチルヨージド(CF3I)及び3,3,3-トリフルオロプロペン(CF3CH=CH2)を反応させることによって実施することができる。
【0089】
3,4,4,5,5,5-ヘキサフルオロ-2-ペンテンは、固体KOHを使用して又は200~300℃において炭素触媒で、1,1,1,2,2,3,3-ヘプタフルオロペンタン(CF3CF2CF2CH2CH3)を脱フッ化水素化することによって調製することができる。1,1,1,2,2,3,3-ヘプタフルオロペンタンは、3,3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロ-1-ペンテン(CF3CF2CF2CH=CH2)を水素化することによって調製することができる。
【0090】
1,1,1,2,3,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンは、固体KOHを使用して、1,1,1,2,3,3,4-ヘプタフルオロブタン(CH2FCF2CHFCF3)を脱フッ化水素化することによって調製することができる。
【0091】
1,1,1,2,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンは、固体KOHを使用して、1,1,1,2,2,4,4-ヘプタフルオロブタン(CHF2CH2CF2CF3)を脱フッ化水素化することによって調製することができる。
【0092】
1,1,1,3,4,4-ヘキサフルオロ2-ブテンは、固体KOHを使用して、1,1,1,3,3,4,4-ヘプタフルオロブタン(CF3CH2CF2CHF2)を脱フッ化水素化することによって調製することができる。
【0093】
1,1,1,2,4-ペンタフルオロ-2-ブテンは、固体KOHを使用して、1,1,1,2,2,3-ヘキサフルオロブタン(CH2FCH2CF2CF3)を脱フッ化水素化することによって調製することができる。
【0094】
1,1,1,3,4-ペンタフルオロ-2-ブテンは、固体KOHを使用して、1,1,1,3,3,4-ヘキサフルオロブタン(CF3CH2CF2CH2F)を脱フッ化水素化することによって調製することができる。
【0095】
1,1,1,3-テトラフルオロ-2-ブテンは、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(CF3CH2CF2CH3)を120℃でKOH水溶液と反応させることによって調製することができる。
【0096】
1,1,1,4,4,5,5,5-オクタフルオロ-2-ペンテンは、約60℃において相間移動触媒を使用してKOHと反応させることによって(CF3CHICH2CF2CF3)から調製することができる。4-ヨード-1,1,1,2,2,5,5,5-オクタフルオロペンタンの合成は、約200℃、自己圧力下で約8時間、ペルフルオロエチルヨージド(CF3CF2I)及び3,3,3-トリフルオロプロペンを反応させることによって実施することができる。
【0097】
1,1,1,2,2,5,5,6,6,6-デカフルオロ-3-ヘキセンは、約60℃において相間移動触媒を使用してKOHと反応させることによって、1,1,1,2,2,5,5,6,6,6-デカフルオロ-3-ヨードヘキサン(CF3CF2CHICH2CF2CF3)から調製することができる。1,1,1,2,2,5,5,6,6,6-デカフルオロ-3-ヨードヘキサンの合成は、約200℃、自己圧力下で約8時間、ペルフルオロエチルヨージド(CF3CF2I)及び3,3,4,4,4-ペンタフルオロ-1-ブテン(CF3CF2CH=CH2)を反応させることによって実施することができる。
【0098】
1,1,1,4,5,5,5-ヘプタフルオロ-4-(トリフルオロメチル)-2-ペンテンは、イソプロパノール中KOHで1,1,1,2,5,5,5-ヘプタフルオロ-4-ヨード-2-(トリフルオロメチル)-ペンタン(CF3CHICH2CF(CF3)2)を脱フッ化水素化することによって調製することができる。CF3CHICH2CF(CF3)2は、高温、例えば、約200℃で、(CF3)2CFIをCF3CH=CH2と反応させることから作製される。
【0099】
1,1,1,4,4,5,5,6,6,6-デカフルオロ-2-ヘキセンは、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(CF3CH=CHCF3)をテトラフルオロエチレン(CF2=CF2)及び五フッ化アンチモン(SbF5)と反応させることによって調製することができる。
【0100】
2,3,3,4,4-ペンタフルオロ-1-ブテンは、高温においてフッ化アルミナで1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロブタンを脱フッ化水素化することによって調製することができる。
【0101】
2,3,3,4,4,5,5,5-オクタフルオロ-1-ペンテンは、固体KOHで2,2,3,3,4,4,5,5,5-ノナフルオロペンタンを脱フッ化水素化することによって調製することができる。
【0102】
1,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロ-1-ペンテンは、高温においてフッ化アルミナで2,2,3,3,4,4,5,5,5-ノナフルオロペンタンを脱フッ化水素化することによって調製することができる。
【0103】
2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペンは、HCFC-244bb又はHFC-245ebのうちの少なくとも1つをHFO-1234yfに変換することによって調製することができる。
【0104】
1,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペンは、脱フッ化水素化によるHFC-245faのHFO-1234zeへの変換に調製することができる。
【0105】
式I、式II、表1、表2、及び表3の化合物の多くは、異なる立体配置の異性体又は立体異性体として存在する。特定の異性体が指定されていない場合、本発明は、全ての単一の立体配置の異性体、単一の立体異性体、又はこれらの任意の組み合わせを含むことを意図する。例えば、F11Eは、E異性体、Z異性体、又は任意の比率の両異性体の任意の組み合わせ若しくは混合物を表すことを意味する。別の例として、HFO-1225yeは、E異性体、Z異性体、又は任意の比率の両異性体の任意の組み合わせ若しくは混合物を表すことを意味する。
【0106】
具体的な一実施形態では、本発明の組成物のフルオロオレフィン成分は、HFO-1234yf及び/又はHFO-1234zeを含む。別の具体的な実施形態では、フルオロオレフィンは、99重量%超の純度、99.5重量%超の純度、場合によっては99.5~99.98重量パーセント超の純度を有するHFO-1234yf及び/又はHFO-1234zeを含む。別の具体的な実施形態では、フルオロレフィンは、少なくとも99.5重量%のHFO-1234yf又はHFO-1234zeと、0.5重量%未満かつ0.0001重量%超の他のフルオロオレフィン、0.3重量%未満、場合によっては0.2重量%未満の他のフルオロオレフィンとを含む。
【0107】
別の具体的な実施形態では、フルオロオレフィン成分は、米国特許第8,147,709号及び同第8,877,086号に開示される組成物を含み得、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0108】
別の具体的な実施形態では、フルオロオレフィン成分は、約99.5重量%超のHFO-1234yfと、HFO-1225ye、HFO-1243zf、HFO-1234ze、HFC-236ea、HFC-244bb、HFC-245fa、HFC-245eb、HFC-245cb、3,3,3-トリフルオロプロピン、及びこれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の構成要素とを含む。HFO-1225ye(E/Z異性体)の量は、0超~約200重量ppm、約1~約150ppm、場合によっては約5~約50ppmの範囲であり得る。HFO-1243zfの量は、約0.1~約250ppm、約10~約200ppm、場合によっては約15~約150ppmの範囲であり得る。HFO-1234ze(E異性体)の量は、約1~約1,500ppm、約5~約1,000ppm、場合によっては約50~500ppmの範囲であり得る。HFC-236eaの量は、約1~約50ppm、約5~約25ppm、場合によっては約10~約20ppmの範囲であり得る。HFC-245fa、HFC-245eb及び/又はHFC-245cbの量は、約0~約20ppm、約1~約15ppm、場合によっては約5~約10ppmの範囲であり得る。3,3,3-トリフルオロプロピンの量は、約0~約500ppm、約1~約300ppm、場合によっては約5~約100ppmの範囲であり得る。
【0109】
別の実施形態では、フルオロオレフィン成分は、HFO-1234yfと、FO-1114、HFO-1123、HCFO-1131a、HFCO-1131-トランス、HCO-1140、HCFO-1214ya、FO-1216、HCFO-1224yd、HFO-1225ye(E)、HCFO-1233zd(E)、HFO-1234ze(E)、HFO-1252、HFC-143a、HCFC-225、HFC-245eb、HFC-254eb、HFC-263fb、CF3CF2I、HFC-236fa、HCFC-142b、HCFC-244cc、HCFO-1223、HFO-1132a、HFO-2316(ヘキサフルオロブタジエン)、HFO-1327異性体、HFO-1336mzzE、HFO-1336異性体、HFO-1234ze(Z)、及びHCFO-1224異性体からなる群から選択される少なくとも1つの追加の化合物とを含む。具体的な一実施形態では、フルオロオレフィン成分は、HFO-1234yfと、0超かつ約1重量%未満、約0.5重量%未満、場合によっては0.25重量%未満の追加の化合物を含む。
【0110】
更なる実施形態では、本発明の阻害剤は、HCFO-1233zd及びHCFO-1224ydのうちの少なくとも1つ、並びにHCFO-1233zd及びHCFO-1224ydのうちの少なくとも1つを含むブレンドの組成物と共に使用することができる。
【0111】
ジフルオロメタン(HFC-32又はR-32)は、商業的に利用可能であるか、又は例えば、塩化メチレンの脱塩素フッ素化など当該技術分野において既知の方法によって作製し得る。一実施形態では、本発明の組成物のHFC-32は、99重量%超の純度、99.5重量%超の純度、場合によっては99.5~99.98重量パーセント超の純度を有するHFC-32を含む。別の具体的な実施形態では、HFC-32成分は、99.99重量%超の純度を含む。一実施形態では、HFC-32成分は、HFC-32と、HFC-23(トリフルオロメタン)、HCFC-31(クロロフルオロメタン)、HFC-41(フルオロメタン)、HFC-143a(1,1,1-トリフルオロエタン)、HCFC-22(クロロジフルオロメタン)、CFC-12(ジクロロジフルオロメタン)、HCC-40(クロロメタン)、及びHFC-134a(1,1,1,2-テトラフルオロエタン)からなる群から選択される少なくとも1つの追加の化合物とを更に含む。
【0112】
いくつかの実施形態では、本組成物は、具体的な重量比のHFO-1234yf及びHFC-32を含む。注目すべきは、組成物中のHFO-1234yf及びHFC-32の総量に対して、約20~約85重量パーセントのHFO-1234yf及び約80~約15重量パーセントのHFC-32を含む組成物である。特定の実施形態では、組成物は、約20~約40重量パーセントのHFO-1234yf及び約60~約80重量パーセントのHFC-32を含む。他の実施形態では、組成物は、約30~約32重量パーセントのHFO-1234yf及び約68~約70重量パーセントのHFC-32を含有する。他の実施形態では、組成物は、約77~約80重量パーセントのHFO-1234yf及び約20~約23重量パーセントのHFC-32を含む。
【0113】
具体的な実施形態では、組成物は、
約31.1重量%のHFO-1234yf及び約68.9重量%のHFC-32、
約31重量%のHFO-1234yf及び約69重量%のHFC-32、
約65重量%のHFO-1234yf及び約35重量%のHFC-32、又は
約78.5重量%のHFO-1234yf及び約21.5重量%のHFC-32を含有してもよい。
【0114】
任意の好適な有効量の阻害剤を、少なくとも1つのフルオロオレフィンを含む前述の組成物において使用することができる。本明細書に記載のとおり、語句「有効量」は、少なくとも1つのフルオロオレフィンを含む組成物に添加されたときに、フルオロオレフィンが反応開始剤と相互作用しない、及び/又は劣化して、例えば、阻害剤を含まない組成物と比較して、冷却装置で使用したときに、性能を大幅に低下させることのない組成物が得られる、本発明の阻害剤の量を指す。冷却装置の場合、このような有効量の阻害剤は、標準試験ASHRAE 97-2007(RA 2017)の条件下で試験することによって決定することができる。本発明の特定の実施形態では、有効量は、その量の阻害剤が、少なくとも1つのフルオロオレフィン及びHFC-32を含む組成物と組み合わせたときに、過去に類似のシステムでどの冷媒が使用されていた可能性があるかに応じて、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R-134a)又は他の標準的な冷媒(R-12、R-22、R-502、R-507A、R-508、R401A、R401B、R402A、R402B、R408、R-410A、R-404A、R407C、R-413A、R-417A、R-422A、R-422B、R-422C、R-422D、R-423、R-114、R-11、R-113、R-123、R-124、R236fa、若しくはR-245fa)を含む組成物を作動流体として利用したかのように、少なくとも1つのフルオロオレフィン及びHFC-32を含む当該組成物を利用する冷却装置に、同レベルの冷蔵性能及び冷却能力を発揮させることができると言うことができる。
【0115】
本発明は、有効量の前述の阻害剤のうちの少なくとも1つを用いる。任意の好適な有効量を用いることができるが、有効量は、本明細書に記載の少なくとも1つのフルオロオレフィン及びHFC-32を含む組成物の総重量に基づいて、約0.001重量パーセント~約10重量パーセント、約0.01重量パーセント~約5重量パーセント、約0.3重量パーセント~約4重量パーセント、約0.3重量パーセント~約1重量パーセントを構成する。一実施形態では、有効量は、約10~約2,000重量ppm、約10~約1,000ppm、場合によっては約10~約500ppmの少なくとも1つの反応開始剤を含む。
【0116】
本発明の一実施形態は、少なくとも1つの酸化防止剤を更に含む、前述の組成物のいずれかに関する。任意の好適な酸化防止剤を用いることができるが、好適な酸化防止剤の例は、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、第三級ブチルヒドロキノン、没食子酸塩、2-フェニル-2-プロパノール、1-(2,4,5-トリヒドロキシフェニル)-1-ブタノン、フェノール、ビスフェノールメタン誘導体、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を含む。酸化防止剤の量は、約0.01~約5,000重量ppm、約0.03~約2,000ppm、場合によっては約0.05~約1,000ppmの範囲であり得る。具体的な一実施形態の例は、α-テルピネン及びリモネンを含む少なくとも1つの阻害剤と共に、前述の酸化防止剤を使用することに関する。具体的な一実施形態の例は、α-テルピネン及びd-リモネンのうちの少なくとも1つを含む阻害剤と共に、前述の酸化防止剤を使用することに関する。
【0117】
一実施形態では、本発明の前述の組成物は、フルオロオレフィン(本明細書に前述したような)、ヒドロフルオロカーボン、炭化水素、ジメチルエーテル、アンモニア、二酸化炭素(CO2)、及びこれらの混合物、すなわち、この段落に列挙される追加の化合物のいずれかの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの追加の化合物を更に含んでもよい。追加の化合物の量は、約1~約90重量%、約5~約75重量%、場合によっては約10~約50重量%の範囲であり得る。
【0118】
一実施形態では、追加の化合物は、他のヒドロフルオロカーボンを含んでもよい。本発明のヒドロフルオロカーボン(HFC)化合物は、炭素、水素、及びフッ素を含有する飽和化合物を含む。特に有用なのは、1~7個の炭素原子を有し、約-90℃~約80℃の標準沸点を有するヒドロフルオロカーボンである。ヒドロフルオロカーボンは、多くの供給源から入手可能な市販品であるか、又は当該技術分野において既知の方法によって調製することができる。代表的なヒドロフルオロカーボン化合物としては、フルオロメタン(CH3F、HFC-41)、トリフルオロメタン(CHF3、HFC-23)、ペンタフルオロエタン(CF3CHF2、HFC-125)、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(CHF2CHF2、HFC-134)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(CF3CH2F、HFC-134a)、1,1,1-トリフルオロエタン(CF3CH3、HFC-143a)、1,1-ジフルオロエタン(CHF2CH3、HFC-152a)、フルオロエタン(CH3CH2F、HFC-161)、1,1,1,2,2,3,3-ヘプタフルオロプロパン(CF3CF2CHF2、HFC-227ca)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(CF3CHFCF3、HFC-227ea)、1,1,2,2,3,3,-ヘキサフルオロプロパン(CHF2CF2CHF2、HFC-236ca)、1,1,1,2,2,3-ヘキサフルオロプロパン(CF3CF3CH2F、HFC-236cb)、1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン(CF3CHFCHF2、HFC-236ea)、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン(CF3CH2CF3、HFC-236fa)、1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパン(CHF2CF2CH2F、HFC-245ca)、1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン(CF3CF2CH3、HFC-245cb)、1,1,2,3,3-ペンタフルオロプロパン(CHF2CHFCHF2、HFC-245ea)、1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロパン(CF3CHFCH2F、HFC-245eb)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(CF3CH2CHF2、HFC-245fa)、1,2,2,3-テトラフルオロプロパン(CH2FCF2CH2F、HFC-254ca)、1,1,2,2-テトラフルオロプロパン(CHF2CF2CH3、HFC-254cb)、1,1,2,3-テトラフルオロプロパン(CHF2CHFCH2F、HFC-254ea)、1,1,1,2-テトラフルオロプロパン(CF3CHFCH3、HFC-254eb)、1,1,3,3-テトラフルオロプロパン(CHF2CH2CHF2、HFC-254fa)、1,1,1,3-テトラフルオロプロパン(CF3CH2CH2F、HFC-254fb)、1,1,1-トリフルオロプロパン(CF3CH2CH3、HFC-263fb)、2,2-ジフルオロプロパン(CH3CF2CH3、HFC-272ca)、1,2-ジフルオロプロパン(CH2FCHFCH3、HFC-272ea)、1,3-ジフルオロプロパン(CH2FCH2CH2F、HFC-272fa)、1,1-ジフルオロプロパン(CHF2CH2CH3、HFC-272fb)、2-フルオロプロパン(CH3CHFCH3、HFC-281ea)、1-フルオロプロパン(CH2FCH2CH3、HFC-281fa)、1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロブタン(CHF2CF2CF2CHF2、HFC-338pcc)、1,1,1,2,2,4,4,4-オクタフルオロブタン(CF3CH2CF2CF3、HFC-338mf)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(CF3CH2CHF2、HFC-365mfc)、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5-デカフルオロペンタン(CF3CHFCHFCF2CF3、HFC-43-10mee)、及び1,1,1,2,2,3,4,5,5,6,6,7,7,7-テトラデカフルオロヘプタン(CF3CF2CHFCHFCF2CF2CF3、HFC-63-14mee)が挙げられるが、これらに限定されない。 別の実施形態では、追加の化合物は、炭化水素を含む。本発明の炭化水素は、炭素及び水素のみを有する化合物を含む。特に、3~7個の炭素原子を有する化合物が有用である。炭化水素は、多数の化学供給元を介して市販されている。代表的な炭化水素としては、プロパン、n-ブタン、イソブタン、シクロブタン、n-ペンタン、2-メチルブタン、2,2-ジメチルプロパン、シクロペンタン、n-ヘキサン、2-メチルペンタン、2,2-ジメチルブタン、2,3-ジメチルブタン、3-メチルペンタン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、及びシクロヘプタンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0119】
別の実施形態では、追加の化合物は、ジメチルエーテル(DME、CH3OCH3)などのヘテロ原子を含有している炭化水素を含む。DMEは市販されている。
【0120】
別の実施形態では、追加の化合物は、様々な供給源から市販されているか、又は当該技術分野において既知の方法によって調製することができる二酸化炭素(CO2)を含む。
【0121】
いくつかの具体的な実施形態では、追加のヒドロフルオロカーボン化合物を含む組成物は、
約30重量%のHFO-1234yf、約11重量%のHFC-32、及び約59重量%のHFC-125;
約26重量%のHFO-1234yf、約67重量%のHFC-32、及び約7重量%のHFC-125;
約31重量%のHFO-1234yf、約20重量%のHFC-32、約20重量%のHFC-125、及び約20重量%のHFC-134a;
約75.5重量%のHFO-1234yf、約21.5重量%のHFC-32、及び約3重量%のCO2;
約70重量%のHFO-1234yf、約18重量%のHFC-32、及び約12重量%のHFC-152a;又は
約14重量%のHFO-1234yf、約36重量%のHFC-32、約30重量%のHFC-125、約14重量%のHFC-134a、及び約6重量%のCO2から選択される。
【0122】
別の実施形態では、本発明の前述の組成物は、追加の化合物を実質的に含まず、特に、ジメチルエーテル、CF3I、アンモニア、及び二酸化炭素のうちの少なくとも1つを実質的に含まない。この実施形態の好ましい一態様では、前述の組成物は、CF3Iを実質的に含まない。「追加の化合物を実質的に含まない」とは、組成物並びに阻害剤が、約10重量%未満、通常約5重量%未満、場合によっては0重量%の追加の化合物を含むことを意味する。
【0123】
特に注目すべきは、HFO-1234yf及び/又はHFO-1234zeと、HFC-32と、HFO-1225ye;HFO-1225ye及びHFC-134a;HFO-1225ye及びHFC-125を含む追加の化合物とを含む、フルオロオレフィン組成物である。更なるフルオロオレフィン組成物は、HFO-1234yf又はHFO-1234ze、及びHFC-32、並びにi)HFC-134a及びHFC-125、ii)HFC-134a、iii)HFC-227ea、iv)HFC-236fa、及びv)HFC-134のうちの少なくとも1つのブレンドを含む。
【0124】
本発明の他の実施形態では、フルオロオレフィンは、少なくとも約99質量%のHFO-1234yfと、0超であるが1質量%未満の、HFC-134a、HFO-1243zf、HFO-1225ye、HFO-1234ze、3,3,3-トリフルオロプロピン、HCFO-1233xf、HFC-245cb、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素とを含む。
【0125】
本発明の他の実施形態では、フルオロオレフィンは、少なくとも約99質量%のHFO-1234zeと、0超であるが1質量%未満の、HFO-1234yf、HFC-245fa、HFC-236fa、HFO-1234ye、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素とを含む。
【0126】
本発明の他の実施形態では、フルオロオレフィンは、少なくとも1つのヒドロフルオロカーボンとブレンドされた前述のフルオロオレフィンのうちの1つ以上を含む。好適なヒドロフルオロカーボンの例は、HFC-125、HFC-134a、HFC-152a、236fa、及びHFC-227eaからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を含む。ヒドロフルオロカーボンの量は、約25~約75重量%、約30~約60重量%、場合によっては約30~約50重量%の範囲であり得る。具体的な一実施形態では、前述の量のヒドロフルオロカーボンを、HFO-1234yf及びHFO-1234zeのうちの少なくとも1つとブレンドする。
【0127】
必要に応じて、ブレンドされた組成物は、HCC-40、HCFC-22、CFC-115、HCFC-124、HCFC-1122、及びCFC-1113からなる群から選択される少なくとも1つの追加の構成要素を更に含み得る。追加の構成要素の量は、0超~約5重量%、約0~約2重量%、場合によっては約0~約0.5重量%を構成し得る。具体的な一実施形態では、前述の量の追加の構成要素を、HFO-1234yf及びHFO-1234zeのうちの少なくとも1つとブレンドする。別の具体的な実施形態では、前述の量の追加の構成要素を、HFO-1234yf及びHFO-1234zeのうちの少なくとも1つ、HFC-32、並びにHFC-125、HFC-134a、HFC-152a、HFC-236fa及びHFC-227eaからなる群から選択される少なくとも1つのヒドロフルオロカーボンとブレンドし、場合によっては、二酸化炭素と合わせる。
【0128】
別の実施形態では、本組成物は、
a)HFO-1234yf及びHFC-32からなる冷媒と、
b)d-リモネン及びα-テルピネンからなる群から選択される少なくとも1つの阻害剤とを含む。
【0129】
別の実施形態では、本組成物は、
a)HFO-1234yf、HFC-32、及びHFC-125からなる冷媒と、
b)d-リモネン及びα-テルピネンからなる群から選択される少なくとも1つの阻害剤とを含む。
【0130】
一実施形態では、本発明の前述の組成物は、少なくとも1つの潤滑剤を更に含んでいてもよい。本発明の潤滑剤は、冷蔵又は空調装置と共に使用するのに好適なものを含む。これらの潤滑剤の中でも、クロロフルオロカーボン冷媒を利用する圧縮冷蔵装置において従来用いられているものである。このような潤滑剤及びその特性は、参照により本明細書に援用される1990 ASHRAE Handbook,Refrigeration Systems and Applications、第8章、表題「Lubricants in Refrigeration Systems」、8.1~8.21頁で論じられている。本発明の潤滑剤は、圧縮冷蔵潤滑の分野において「鉱油」として一般的に知られているものを含んでもよい。鉱油は、パラフィン(すなわち、直鎖状及び分枝状炭素鎖の飽和炭化水素)、ナフテン(すなわち、環状又は環構造飽和炭化水素、パラフィンであってもよい)、並びに芳香族(すなわち、交互二重結合を特徴とする1つ以上の環を含有する不飽和環状炭化水素)を含む。本発明の潤滑剤は、圧縮冷蔵潤滑の分野において「合成油」として一般的に知られているものを更に含む。合成油は、アルキルアリール(すなわち、直鎖状及び分枝状アルキルアルキルベンゼン)、合成パラフィン及びナフテン、シリコーン、並びにポリ-アルファ-オレフィンを含む。本発明の代表的な従来の潤滑剤は、市販されているBVM 100 N(BVA Oilsによって販売されているパラフィン系鉱油)、Crompton Co.によって商標名Suniso(登録商標)3GS及びSuniso(登録商標)5GSとして市販されているナフテン系鉱油、商標名Sontex(登録商標)372LTとしてPennzoilから市販されているナフテン系鉱油、商標名Calumet(登録商標)RO-30としてCalumet Lubricantsから市販されているナフテン系鉱油、商標名Zerol(登録商標)75、Zerol(登録商標)150、及びZerol(登録商標)500としてShrieve Chemicalsから市販されている直鎖状アルキルベンゼン、並びにHAB22としてNippon Oilによって販売されている分枝状アルキルベンゼンである。
【0131】
別の実施形態では、本発明の潤滑剤は、ヒドロフルオロカーボン冷媒と共に使用するために設計されており、かつ圧縮冷蔵及び空調装置の動作条件下で本発明の冷媒と混和できるものを含む。このような潤滑剤及びその特性は、「Synthetic Lubricants and High-Performance Fluids」、R.L.Shubkin、Marcel Dekker編、1993年で論じられている。このような潤滑剤としては、Castrol(登録商標)100(Castrol、United Kingdom)などのポリオールエステル(POE)、並びに市販のPOE32-3MAF、及びND-11;及びDow(Dow Chemical、Midland,Michigan)製のRL-488Aなどのポリアルキレングリコール(PAG)、及び市販のND-12;及びポリビニルエーテル(PVE)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0132】
一実施形態では、組成物は、ポリオールエステル(POE)、ポリアルキレングリコール(PAG)、及びポリビニルエーテル(PVE)からなる群から選択される潤滑剤を含む。
【0133】
本発明の潤滑剤は、所与の圧縮器の要件、及び潤滑剤が曝されるであろう環境を考慮することによって選択される。潤滑剤の量は、約1~約50重量%、約1~約20重量%、場合によっては約1~約3重量%の範囲であり得る。具体的な一実施形態では、前述の組成物は、内燃機関を有する自動車用空調システムで使用するためのPAG潤滑剤と組み合わされる。別の具体的な実施形態では、前述の組成物は、電気又はハイブリッド電気ドライブトレインを有する自動車用空調システムで使用するためにPOE潤滑剤と組み合わされる。
【0134】
本発明の一実施形態では、本発明の阻害剤に加えて、組成物は、冷媒及び空調システムの寿命並びに圧縮器の耐久性を改善することができる少なくとも1つの添加剤を含み得ることが望ましい。本発明の一態様では、前述の組成物は、酸スカベンジャー、性能向上剤、及び火炎抑制剤からなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を含む。
【0135】
冷媒及びA/Cの寿命並びに圧縮器の耐久性を改善することができる添加剤が望ましい。本発明の一態様では、本発明の冷媒を含有する組成物を使用して、A/Cシステムの中に潤滑剤、並びに他の添加剤、例えば、a)酸スカベンジャー、b)性能向上剤、及びc)火炎抑制剤を導入する。
【0136】
酸スカベンジャーは、シロキサン、活性化芳香族化合物、又は両方の組み合わせを含んでもよい。参照によって本明細書に援用されるSerranoら(米国特許出願公開第2011/0272624(A1)号の段落38)には、シロキサンはシロキシ官能基を有する任意の分子であり得ることが開示されている。シロキサンは、アルキルシロキサン、アリールシロキサン、又はアリール及びアルキル置換基の混合物を含有するシロキサンを含んでもよい。例えば、シロキサンは、ジアルキルシロキサン又はポリジアルキルシロキサンを含むアルキルシロキサンであってよい。好ましいシロキサンとしては、2つのケイ素原子と結合した酸素原子、すなわち構造:SiOSiを有する基が挙げられる。例えば、シロキサンは、式IV:R1[Si(R2R3)4O]nSi(R2R3)R4(式中、nは1以上である)のシロキサンであってもよい。式IVのシロキサンは、好ましくは2以上、より好ましくは3以上(例えば、約4以上)であるnを有する。式IVのシロキサンは、好ましくは約30以下、より好ましくは約12以下、最も好ましくは約7以下であるnを有する。好ましくは、R4基は、アリール基又はアルキル基である。好ましくは、R2基は、アリール基若しくはアルキル基、又はこれらの混合物である。好ましくは、R3基は、アリール基若しくはアルキル基、又はこれらの混合物である。好ましくは、R4基は、アリール基又はアルキル基である。好ましくは、R1、R2、R3、R4、又はこれらの任意の組み合わせは、水素ではない。分子内のR2基は、同じであっても異なっていてもよい。好ましくは、分子内のR2基は、同じである。分子内のR2基は、R3基と同じであっても異なっていてもよい。好ましくは、分子内のR2基及びR3基は、同じである。好ましいシロキサンとしては、R1、R2、R3、R4、R5、又はこれらの任意の組み合わせが、メチル、エチル、プロピル、若しくはブチル基、又はこれらの任意の組み合わせである、式IVのシロキサンが挙げられる。使用されてもよい例示的なシロキサンとしては、ヘキサメチルジシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0137】
先行して参照によって援用されるSerranoらから、本発明の一態様では、シロキサンは、約1~約12個の炭素原子を含有するアルキルシロキサン、例えば、ヘキサメチルジシロキサンであることに留意する。シロキサンはまた、ポリジアルキルシロキサンなどのポリマーであってもよく、ここでアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、又はこれらの任意の組み合わせである。好適なポリジアルキルシロキサンは、約100~約10,000の分子量を有する。非常に好ましいシロキサンとしては、ヘキサメチルジシロキサン、ポリジメチルシロキサン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。シロキサンは、ポリジメチルシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、又はこれらの組み合わせから本質的になっていてよい。
【0138】
活性化芳香族化合物は、フリーデル・クラフツ付加反応に向けて活性化された任意の芳香族分子、又はその混合物であってよい。フリーデル・クラフツ付加反応に向けて活性化された芳香族分子は、鉱酸と付加反応することができる任意の芳香族分子であると定義される。特に、適用環境(ACシステム)において又はASHRAE 97:2007「Sealed Glass Tube Method to Test the Chemical Stability of Materials for Use within Refrigerant Systems」の熱安定化試験中のいずれかに鉱酸と付加反応することができる任意の芳香族分子である。このような分子又は化合物は、典型的には、以下の基:-NH2、-NHR、-NR2、-OH、-O-、-NHCOCH3、-NHCOR、-OCH3、-OR、-CH3、-C2H5、-R、又は-C6H5(式中、Rは、炭化水素(好ましくは、約1~約100個の炭素原子を含有する炭化水素)である)のうちの1つで芳香環の水素原子を置換することによって活性化される。活性化された芳香族分子は、酸素原子(すなわち、アルコール又はエーテル基の酸素原子)が芳香族基に直接結合しているアルコール又はエーテルであってもよい。活性化された芳香族分子は、窒素原子(すなわち、アミン基の窒素原子)が芳香族基に直接結合しているアミンであってもよい。一例としては、活性化芳香族分子は、式ArXRnを有してもよく、式中、Xは、O(すなわち、酸素)又はN(すなわち、窒素)であり、X=Oである場合、nは、1であり、x=Nである場合、nは、2であり、Arは、芳香族基(すなわち、C6H5基)であり、Rは、H又は炭素含有基であってもよく、n=2である場合、R基は、同一であっても異なっていてもよい。例えば、Rは、H(すなわち、水素)、Ar、アルキル基、又はこれらの任意の組み合わせであってもよい。本明細書における教示による冷媒組成物で使用され得る例示的な活性化された芳香族分子としては、ジフェニルオキシド(すなわち、ジフェニルエーテル)、メチルフェニルエーテル(例えば、アニソール)、エチルフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテル、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられる。フリーデル・クラフツ付加反応に向けて活性化された、1つの非常に好ましい芳香族分子は、ジフェニルオキシドである。
【0139】
先行して参照によって援用されるSerranoらから、酸スカベンジャー(例えば、活性化された芳香族化合物、シロキサン、又は両方)は、任意の濃度で存在してよく、その結果、全酸価が比較的低くなる、全ハロゲン化物濃度が比較的低くなる、全有機酸濃度が比較的低くなる、又はこれらの任意の組み合わせになる。好ましくは、酸スカベンジャーは、冷媒組成物の総重量に基づいて、約0.0050重量%超、より好ましくは約0.05重量%超、更により好ましくは約0.1重量%超(例えば、約0.5重量%超)の濃度で存在する。酸スカベンジャーは、冷媒組成物の総重量に基づいて、好ましくは約3重量%未満、より好ましくは約2.5重量%未満、最もより好ましくは約2重量%未満(例えば、約1.8重量%未満)の濃度で存在する。
【0140】
冷媒組成物中に含まれてもよく、かつ好ましくは冷媒組成物から排除される酸スカベンジャーの追加例としては、フェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、アルキレングリコールグリシジルエーテル、シクロヘキセンオキシド、オトレノキシド(otolenoxides)、又はエポキシ化大豆油などのエポキシ化合物のうちの1つ以上などの、Kaneko(参照により本明細書に明示的に援用される、米国特許出願公開第2007/0290164号として公開された、米国特許出願第11/575,256号のパラグラフ42)によって記載されるもの、及びSinghら(参照により本明細書に明示的に援用される、米国特許出願公開第2006/0116310号として公開された、米国特許出願第11/250,219号のパラグラフ34~42)によって記載されるものが挙げられる。
【0141】
好ましい添加剤としては、米国特許第5,152,926号、同第4,755,316号に記載されているものが挙げられ、これらは参照により本明細書に援用される。特に、好ましい極圧添加剤としては、(A)トリルトリアゾール若しくはその置換誘導体と、(B)アミン(例えば、Jeffamine M-600)と、(C)(i)エトキシ化リン酸エステル(例えば、Antara LP-700型)若しくは(ii)リン酸アルコール(例えば、ZELEC 3337型)若しくは(iii)亜鉛ジアルキルジチオリン酸(例えば、Lubrizol 5139、5604、5178、又は5186型)若しくは(iv)メルカプトベンゾチアゾール若しくは(v)2,5-ジメルカプト-1,3,4-トリアジアゾール誘導体(例えば、Curvan 826)又はこれらの混合物である第3の成分との混合物が挙げられる。使用され得る添加剤の追加的な例は、米国特許第5,976,399号(Schnur,5:12-6:51、参照により本明細書に援用される)に記載されている。
【0142】
酸価は、ASTM D664-01に従ってmgKOH/gの単位で測定される。全ハロゲン化物濃度、フッ素イオン濃度、及び全有機酸濃度は、イオンクロマトグラフィによって測定される。冷媒システムの化学安定性は、ASHRAE 97:2007(RA 2017)「Sealed Glass Tube Method to Test the Chemical Stability of Materials for Use within Refrigerant Systems」に従って測定される。潤滑油の粘度は、ASTM D-7042に従って40℃で試験される。
【0143】
Mouliら(国際公開第2008/027595号及び同第2009/042847号)には、フルオロオレフィンを含有する冷媒組成物における安定剤としてのアルキルシランの使用が教示されている。特定の冷媒組成物では、リン酸塩、亜リン酸塩、エポキシド、及びフェノール系添加剤も使用されている。これらは、例えばKaneko(米国特許出願公開第2007/0290164号として公開された、米国特許出願第11/575,256号)、及びSinghら(米国特許出願公開第2006/0116310号として公開された、米国特許出願第11/250,219号)によって説明されている。これら上述の出願は全て、参照によって本明細書に明示的に援用される。
【0144】
好ましい火炎抑制剤としては、同様に参照により援用され、特許出願「Compositions comprising fluoroolefins and uses thereof(国際公開第2009/018117(A1)号)」で説明される、HFC-125及び/又はKrytox(登録商標)潤滑剤などのフッ素化生成物と共に参照により援用される、「Compositions containing fluorine substituted olefins(カナダ国特許第2557873(A1)号)」の特許出願で説明されるものが挙げられる。
【0145】
本発明の組成物は、所望の量の個々の成分を合わせるための任意の簡便な方法によって調製することができる。好ましい方法は、所望の成分量を計量し、その後、適切な槽内で成分を組み合わせることである。所望される場合、撹拌を使用してもよい。
【0146】
本発明は更に、少なくとも1つのフルオロオレフィンと、HFC-32と、d-リモネン及びα-テルピネンのうちの少なくとも1つを含む有効量の阻害剤とを含む組成物を凝縮させ、その後、冷却される本体付近で当該組成物を蒸発させることを含む、冷却を生じさせるためのプロセスに関する。
【0147】
冷却される本体は、冷蔵又は空調を必要とする任意の空間、場所、又は物体であってよい。固定式用途では、本体は、構造、すなわち、住宅若しくは商業構造の内部、又は食品若しくは医薬品などの腐敗しやすいもののための保管場所に存在していてよい。可搬式冷蔵用途では、本体は、道路、鉄道、海上、又は航空用の輸送ユニットに組み込まれていてよい。特定の冷蔵システムは、任意の可動キャリアに対して独立して動作し、これらは「インターモーダル」システムとして知られている。かかる複合一貫輸送システムとしては、「コンテナ」(海上/陸上複合輸送)、並びに「スワップボディ」(道路及び鉄道複合輸送)が挙げられる。
【0148】
本発明は更に、加熱される本体付近で、少なくとも1つのフルオロオレフィンと、HFC-32と、d-リモネン及びα-テルピネンのうちの少なくとも1つを含む有効量の阻害剤とを含む組成物を凝縮させ、その後、当該組成物を蒸発させることを含む、加熱を生じさせるためのプロセスに関する。
【0149】
加熱される物体は、熱を必要とする任意の空間、場所、又は物体であってよい。これらは、冷却される本体と同様の方法で住宅又は商業用のいずれかの構造の内部に存在していてよい。更に、冷却について説明したような可動ユニットは、加熱を必要とするものと同様であってよい。特定の輸送ユニットは、輸送される材料が輸送コンテナ内で固化するのを防止するために加熱を必要とする。
【0150】
本発明の別の実施形態は、前述の組成物を含有することを特徴とする、少なくとも1つの蒸発器と、少なくとも1つの圧縮器と、少なくとも1つの凝縮器と、少なくとも1つの膨張デバイスとを備える、空調、冷蔵、ヒートポンプ、又は冷却機装置に関する。
【0151】
本発明の別の実施形態は、気相及び/又は液相中の酸素及び/又は水濃度が約25Cの温度で約3体積ppm~約3,000体積ppm未満、約5体積ppm~約1,000体積ppm未満、場合によっては約5体積ppm~約500体積ppm未満の範囲である密閉容器内で気相及び/又は液相中に前述の組成物を保管することに関する。
【0152】
前述の組成物を保管するためのコンテナは、気相及び液相を維持しながら組成物を密封することができる任意の好適な材料及び設計で構築することができる。好適なコンテナの例は、タンク、充填シリンダー、及び二次充填シリンダーなどの耐圧コンテナを含む。コンテナは、炭素鋼、マンガン鋼、クロム-モリブデン鋼、特に低合金鋼、ステンレス鋼、場合によってはアルミニウム合金などの任意の好適な材料から構築することができる。コンテナは、可燃性物質を分配するのに好適な穿孔上部又は弁を備えていてよい。
【0153】
フルオロカーボン含有組成物を安定化させるために任意の好適な方法を使用することができるが、このような方法の例としては、他の好適な方法の中でも特に、前述の阻害剤を前述のフルオロオレフィン組成物とブレンドすること、ライン及び容器を、阻害剤(例えば、窒素キャリアを含む阻害剤、又は本発明の安定化された組成物)を含む材料でパージすることが挙げられる。
【0154】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を例示するために提供され、添付の特許請求の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0155】
HFO-1234yf(少なくとも99.5重量%の純度*を有する30g)と反応開始剤との混合物(阻害剤あり及びなし)を、表4に示す温度及び時間で、210mLの振盪管内で加熱した。振盪管を、ポリマー形成について、及びyfポリマーピークを検出することによって、従来の方法に従ってIRを使用して、目視検査した。ポリマーはまた、従来のNMR法を用いることによって検出することもできる。
【0156】
*HFO-1234yfは、99.7重量%のHFO-1234yfと、1,000ppmのHFO-1234zeと、150ppmのHFO-1225yeZと、3ppmのトリフルオロプロピンとを含んでおり、残りは、混合物の冷媒性能に影響を及ぼさない化合物を含んだ。
【0157】
【実施例2】
【0158】
HFO-1234yf(実施例1の組成物を有する30g)と、少なくとも1つの追加の化合物と、反応開始剤との混合物を含む(かつ阻害剤を含まない)冷媒ブレンドを、表5に示す温度及び時間で210mLの振盪管内で加熱した。実施例1~6は、Opteon(商標)XP-10冷媒(R513a)及び市販の潤滑剤を含む阻害剤を評価する。実施例7~12は、Opteon(商標)XP-40冷媒(R449a)及び市販の潤滑剤を含む阻害剤を評価する。実施例13~18は、HFO-1234yf及び市販の潤滑剤を含む阻害剤を評価する。XP10冷媒は、56重量%のHFO-1234yf及び44重量%のHFC-134aを含み、XP40冷媒は、24.3重量%のR32、24.7重量%のR125、25.3重量%の1234yf、及び25.7重量%の134aを含む。XP10及びXP40冷媒は、Chemours Companyから市販されている。振盪管を、ポリマー形成について、及びNMRを使用することによって、目視検査した。以下に報告するデータは、重量基準のppmである。
【0159】
【実施例3】
【0160】
HFO-1234yf及びHFC-32(30g)の混合物と反応開始剤とを含む冷媒ブレンド(阻害剤あり及びなし)を、表6に示す温度及び時間で、210mLの振盪管内で加熱する。対照-A及び実施例1~7は、R-454C(21.5重量%のHFC-32及び78.5重量%のHFO-1234yfを含有する冷媒ブレンド)と、阻害剤と、市販のPOE又はPAG潤滑剤とを含有する。実施例1は、阻害剤を有し、潤滑剤を有しないことに留意されたい。対照-B及び実施例8~14は、R-454-B(69重量%のHFC-32及び31重量%のHFO-1234yfを含有する冷媒ブレンド)と、阻害剤と、市販のPOE又はPAG潤滑剤とを含有する。実施例8は、阻害剤を有し、潤滑剤を有しないことに留意されたい。POE32-3MAF及びND-11は、市販のPOE潤滑剤である。ND-12は、市販のPAG潤滑剤である。加熱後、振盪管を、ポリマー形成について目視検査し、NMRによって分析する。N/Dは、ポリマーが見出されなかったことを示す。
【0161】
【0162】
特定の態様、実施形態、及び原理を上に記載してきたが、本明細書は例示のためだけに作成されたものであり、本発明又は添付の特許請求の範囲の範囲を限定するものではないと理解される。前述の様々な態様、実施形態、及び原理は、単独で、及び互いに組み合わせて使用することができる。
【0163】
選択された実施形態
実施形態A1:少なくとも1つのフルオロオレフィンと、HFC-32と、有効量の少なくとも1つの阻害剤とを含む組成物であって、フルオロオレフィンに由来するオリゴマー、ホモポリマー、又は他のポリマー生成物を実質的に含まない、組成物。
【0164】
実施形態A2:組成物が、約0.03重量%未満のオリゴマー、ホモポリマー、又は他のポリマー生成物を含む、実施形態A1に記載の組成物。
【0165】
実施形態A3:空気、酸素、クメンヒドロペルオキシド、及びフルオロオレフィンポリペルオキシド、過酸化物、ヒドロペルオキシド、過硫酸塩、過炭酸塩、過ホウ酸塩、及びヒドロペルサルフェートからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を更に含む、実施形態A1又はA2のいずれか1つに記載の組成物。
【0166】
実施形態A4:阻害剤が、d-リモメン、α-テルピネン、α-トコフェロール、ブチル化ヒドロキシトルエン、4-メトキシフェノール、及びベンゼン-1,4-ジオールからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を含む、実施形態A1、A2、又はA3のいずれか1つに記載の組成物。
【0167】
実施形態A5:少なくとも1つの潤滑剤を更に含む、実施形態A1、A2、A3、又はA4のいずれか1つに記載の組成物。
【0168】
実施形態A6:POE、PAG、及びPVEからなる群から選択される潤滑剤を更に含む、実施形態A1、A2、A3、A4、又はA5のいずれか1つに記載の組成物。
【0169】
実施形態A7:フルオロオレフィンが、HFO-1234yf及びHFO-1234zeのうちの少なくとも1つの構成要素を含む、実施形態A1、A2、A3、A4、A5、又はA6のいずれか1つに記載の組成物。
【0170】
実施形態A8:HFC-125、HFC-134a、HFC-152a、236fa、HFC-227ea、及び二酸化炭素からなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を更に含む、実施形態A1、A2、A3、A4、A5、A6、又はA7のいずれか1つに記載の組成物。
【0171】
実施形態A9:HFC-134a、HFO-1243zf、HFO-1225ye、HFO-1234ze、3,3,3-トリフルオロプロピン、HCFO-1233xf、HFC-244bb、及びHFC-245cbからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を更に含む、実施形態A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、又はA8のいずれか1つに記載の組成物。
【0172】
実施形態A10:HCC-40、HCFC-22、CFC-115、HCFC-124、HCFC-1122、及びCFC-1113からなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を更に含む、実施形態A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、又はA9のいずれか1つに記載の組成物。
【0173】
実施形態A11:阻害剤が、約30~約3,000ppm(重量)の量で存在する、実施形態A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A9、又はA10のいずれか1つに記載の組成物。
【0174】
実施形態A12:ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、第三級ブチルヒドロキノン、没食子酸塩、2-フェニル-2-プロパノール、1-(2,4,5-トリヒドロキシフェニル)-1-ブタノン、フェノール、ビスフェノールメタン誘導体、及び2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)からなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を更に含む、実施形態A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A9、A10、又はA11のいずれか1つに記載の組成物。
【0175】
実施形態A13:阻害剤が、d-リモネン及びα-テルピネンのうちの少なくとも1つを含む、実施形態A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A9、A10、A11、又はA12のいずれか1つに記載の組成物。
【0176】
実施形態A14:阻害剤が、約-80~180Cの温度における液体を含む、実施形態A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A9、A10、A11、A12、又はA13のいずれか1つに記載の組成物。
【0177】
実施形態A15:少なくとも1つの酸化防止剤を更に含む、実施形態A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A9、A10、A11、A12、A13、又はA14のいずれか1つに記載の組成物。
【0178】
実施形態A16:HFO-1225yeZ、HFO-1243zf、HFO-1234ze、HFC-236ea、HFC-245fa、及び3,3,3-トリフルオロプロピンからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を更に含む、実施形態A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A9、A10、A11、A12、A13、A14、又はA15のいずれか1つに記載の組成物。
【0179】
実施形態A17:構成要素が、HFO-1234ze、HFO-1225yeZ、及び3,3,3-トリフルオロプロピンを含む、実施形態A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A9、A10、A11、A12、A13、A14、A15、又はA16のいずれか1つに記載の組成物。
【0180】
実施形態A18:組成物が、アンモニア及びCF3Iを実質的に含まない、実施形態A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A9、A10、A11、A12、A13、A14、A15、A16、又はA17のいずれか1つに記載の組成物。
【0181】
実施形態A19:組成物が、HFO-1234yf、HFC-32、及びd-リモネンから本質的になり、アンモニアもCF3Iも含有しない、実施形態A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A9、A10、A11、A12、A13、A14、A15、A16、A17、又はA18のいずれか1つに記載の組成物。
【0182】
実施形態A20:組成物が、HFO-1234yf、HFC-32、3,3,3-トリフルオロプロピン、及びd-リモネンから本質的になる、実施形態A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A9、A10、A11、A12、A13、A14、A15、A16、A17、A18、又はA19のいずれか1つに記載の組成物。
【0183】
実施形態A21:HFO-1234yfと、HFC-32と、d-リモネン及びα-テルピネンからなる群から選択される少なくとも1つの阻害剤とを含む、実施形態A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A9、A10、A11、A12、A13、A14、A15、A16、A17、A18、A19、又はA20のいずれか1つに記載の組成物。
【0184】
実施形態A22:組成物中のHFO-1234yf及びHFC-32の総重量に基づいて、
約31.1重量%のHFO-1234yf及び約68.9重量%のHFC-32;約31重量%のHFO-1234yf及び約69重量%のHFC-32;約65重量%のHFO-1234yf及び約35重量%のHFC-32;又は約78.5重量%のHFO-1234yf及び約21.5重量%のHFC-32を含む、実施形態A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A9、A10、A11、A12、A13、A14、A15、A16、A17、A18、A19、A20、又はA21のいずれか1つに記載の組成物。
【0185】
実施形態A23:
a)HFO-1234yf及びHFC-32からなる冷媒と、
b)d-リモネン及びα-テルピネンからなる群から選択される少なくとも1つの阻害剤とを含む、実施形態A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A9、A10、A11、A12、A13、A14、A15、A16、A17、A18、A19、A20、A21、又はA22のいずれか1つに記載の組成物。
【0186】
実施形態A23:
a)HFO-1234yf、HFC-32、及びHFC-125からなる冷媒と、
b)d-リモネン及びα-テルピネンからなる群から選択される少なくとも1つの阻害剤とを含む、実施形態A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A9、A10、A11、A12、A13、A14、A15、A16、A17、A18、A19、A20、A21、又はA22のいずれか1つに記載の組成物。
【0187】
実施形態B1:オリゴマー及びホモポリマーの形成を低減するための方法であって、少なくとも1つのフルオロオレフィン及びHFC-32を含む組成物を、オリゴマー又はホモポリマーの形成を低減するのに有効である、d-リモメン、α-テルピネン、α-トコフェロール、ブチル化ヒドロキシトルエン、4-メトキシフェノール、及びベンゼン-1,4-ジオールからなる群から選択される、有効量の少なくとも1つの構成要素と接触させることを含む、方法。
【0188】
実施形態B2:組成物が、当該接触の前に、空気、酸素、クメンヒドロペルオキシド、及びフルオロオレフィンポリペルオキシド、過酸化物、ヒドロペルオキシド、過硫酸塩、過炭酸塩、過ホウ酸塩、及びヒドロペルサルフェートからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素に曝露されている、実施形態B1に記載の方法。
【0189】
実施形態C1:実施形態A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A9、A10、A11、A12、A13、A14、A15、A16、A17、A18、A19、A20、A21、又はA22、又はA23のいずれか1つに記載の組成物を使用して、加熱又は冷却するための方法。
【0190】
実施形態D1:実施形態A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A9、A10、A11、A12、A13、A14、A15、A16、A17、A18、A19、A20、A21、又はA22、又はA23のいずれか1つに記載の組成物を含む冷媒を含む容器。
【0191】
実施形態E1:実施形態A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、A9、A10、A11、A12、A13、A14、A15、A16、A17、A18、A19、A20、A21、又はA22、又はA23のいずれか1つに記載の組成物を含むことを特徴とする、少なくとも1つの蒸発器と、少なくとも1つの圧縮器と、少なくとも1つの凝縮器と、少なくとも1つの膨張デバイスとを備える、冷蔵、空調、ヒートポンプ、又は冷却機装置。
【手続補正書】
【提出日】2021-11-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのフルオロオレフィンと、HFC-32と、有効量の少なくとも1つの阻害剤とを含む組成物であって、前記フルオロオレフィンに由来するオリゴマー、ホモポリマー、又は他のポリマー生成物を約0.03重量%未満の量で含む、組成物。
【請求項2】
空気、酸素、クメンヒドロペルオキシド、及びフルオロオレフィンポリペルオキシド、過酸化物、ヒドロペルオキシド、過硫酸塩、過炭酸塩、過ホウ酸塩、及びヒドロペルサルフェートからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記阻害剤が、d-リモメン、α-テルピネン、α-トコフェロール、ブチル化ヒドロキシトルエン、4-メトキシフェノール、及びベンゼン-1,4-ジオールからなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記阻害剤が、約30~約3,000ppm(重量)の量で存在する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
オリゴマー及びホモポリマーの形成を低減するための方法であって、少なくとも1つのフルオロオレフィン及びHFC-32を含む組成物を、オリゴマー又はホモポリマーの形成を低減するのに有効である、d-リモメン、α-テルピネン、α-トコフェロール、ブチル化ヒドロキシトルエン、4-メトキシフェノール、及びベンゼン-1,4-ジオールからなる群から選択される、有効量の少なくとも1つの構成要素と接触させることを含む、方法。
【請求項6】
少なくとも1つの蒸発器と、少なくとも1つの圧縮器と、少なくとも1つの凝縮器と、少なくとも1つの膨張デバイスとを備え、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物を含有する、冷蔵、空調、ヒートポンプ、又は冷却機システム。
【請求項7】
a)HFO-1234yf及びHFC-32からなる冷媒と、
b)d-リモネン及びα-テルピネンからなる群から選択される少なくとも1つの阻害剤と
を含む、請求項1に記載の組成物。
【国際調査報告】