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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(54)【発明の名称】基板搬送装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20220629BHJP
   B25J 15/08 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
H01L21/68 A
B25J15/08 U
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564786
(86)(22)【出願日】2020-02-28
(85)【翻訳文提出日】2021-11-01
(86)【国際出願番号】 US2020020367
(87)【国際公開番号】W WO2020263357
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】16/456,375
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】517340611
【氏名又は名称】カワサキロボティクス(ユーエスエー),インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雅也
(72)【発明者】
【氏名】田中 佑治
(72)【発明者】
【氏名】中原 一
【テーマコード(参考)】
3C707
5F131
【Fターム(参考)】
3C707AS24
3C707BS15
3C707DS01
3C707ES17
3C707KV12
3C707KX07
3C707NS13
5F131BA01
5F131BA11
5F131BA33
5F131BA37
5F131CA70
5F131DB03
5F131DB15
5F131DB52
5F131DB76
5F131DB82
5F131GA03
5F131GA33
5F131KA12
5F131KA52
5F131KB05
5F131KB32
5F131KB53
(57)【要約】
本発明の基板搬送装置は、ベースと、アームと、アームの先端に設けられ、二股に分岐した第1先端部及び第2先端部を有するエンドエフェクタと、発光部と、受光部と、アームの動作を制御する制御装置と、を備える。制御装置は、エンドエフェクタの先端を直進する光が、FOUPに収容された複数枚の基板の縁を走査するようにアームの動作を制御するとともに、アームの動作中において光と基板との相対的な位置関係に従って、受光部において連続的に変化する出力値の測定波形の形状パターンと比較用の基準波形の形状パターンとを比較し、比較結果に基づいて、基板の状態、FOUPの状態及びエンドエフェクタの状態のうち少なくとも一の状態を診断する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
前記ベースに取り付けられたロボットアームと、
前記ロボットアームの先端に設けられ、二股に分岐した第1先端部及び第2先端部を有するエンドエフェクタと、
前記第1先端部から前記第2先端部に向けて光を発するように構成された発光部と、
前記第1先端部及び第2先端部の間の空間を進行し前記第2先端部に入射した光の受光量に応じて検出光を連続的に変化する出力値に変換するように構成された受光部と、
前記ロボットアームの動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記エンドエフェクタの先端を進行する光が、FOUPに収容された複数枚の基板の縁を走査するように前記ロボットアームの動作を制御するとともに、
当該ロボットアームの動作中において前記光と前記基板との相対的な位置関係に従って、前記受光部において連続的に変化する出力値の測定波形の形状パターンと比較用の基準波形の形状パターンとを比較し、比較結果に基づいて、前記基板の状態、前記FOUPの状態及び前記エンドエフェクタの状態のうち少なくとも一の状態を診断する、基板搬送装置。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記測定波形のうち、一の区間における形状パターンと、他の区間における形状パターンとを比較し、当該一の区間における形状パターンが他の区間における形状パターンと一致しない場合には、当該一の区間における基板の表面が傾いていると判定する、請求項1に記載の基板搬送装置。
【請求項3】
前記制御装置は、
今回測定された測定波形の形状パターンと、前回測定された比較用の測定波形の形状パターンとを比較し、
今回測定された測定波形のうち一の区間における形状パターンが、前回測定された比較用の測定波形のうち一の区間における形状パターンと一致しない場合には、当該一の区間における基板の表面が傾いていると判定する、請求項1に記載の基板搬送装置。
【請求項4】
前記制御装置は、
今回測定された測定波形の形状パターンと、前回測定された比較用の測定波形の形状パターンとを比較し、
前記測定波形のうち全ての区間における形状パターンが、前記比較用の測定波形のうち全ての区間における形状パターンと一致しない場合には、前記FOUPが傾いていると判定する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の基板搬送装置。
【請求項5】
前記FOUPは、異なる位置に複数配置され、
前記制御装置は、
一のFOUPにおいて測定された測定波形の形状パターンと、他のFOUPにおいて測定された比較用の測定波形の形状パターンとを比較し、
一のFOUPにおいて測定された測定波形のうち全ての区間における形状パターンが、他のFOUPにおいて測定された比較用の測定波形のうち全ての区間における形状パターンと一致しない場合は、一のFOUPが傾いていると判定する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の基板搬送装置。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記FOUPの傾きが修正された状態において、今回測定された測定波形の形状パターンと、前回測定された比較用の測定波形の形状パターンとを比較し、
今回測定された前記測定波形のうち全ての区間における形状パターンが、前回測定された前記比較用の測定波形のうち全ての区間における形状パターンと一致しない場合には、前記エンドエフェクタが傾いていると判定する、請求項4又は5に記載の基板搬送装置。
【請求項7】
前記制御装置は、
今回測定された測定波形の形状パターンと、前回測定された比較用の測定波形の形状パターンとを比較し、
今回測定された前記測定波形のうち全ての区間における出力値が、前回測定された前記比較用の測定波形のうち全ての区間における出力値よりも低下した場合には、前記発光部の光の強度及び前記受光部の受光感度の少なくとも一方が低下していると判定する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の基板搬送装置。
【請求項8】
診断結果を表示する表示装置を更に備える、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の基板搬送装置。
【請求項9】
ベースと、
前記ベースに取り付けられたロボットアームと、
前記ロボットアームの先端に設けられ、二股に分岐した第1先端部及び第2先端部を有するエンドエフェクタと、
前記第1先端部から前記第2先端部に向けて光を発するように構成された発光部と、
前記第1先端部及び第2先端部の間の空間を進行し前記第2先端部に入射した光の受光量に応じて検出光を連続的に変化する出力値に変換するように構成された受光部と、
前記ロボットアームの動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記エンドエフェクタの先端を進行する光が、ターゲットに対して水平方向に当該ターゲットを走査するように前記ロボットアームの動作を制御するとともに、当該ロボットアームの動作中において前記光と前記ターゲットとの相対的な位置関係に従って、前記受光部において連続的に変化する出力値の測定波形に基づいて、水平方向における前記ターゲットの位置を計測する、基板搬送装置。
【請求項10】
前記ターゲットの位置は、水平方向における前記ターゲットの中心の位置又は縁の位置である、請求項9に記載の基板搬送装置。
【請求項11】
前記ターゲットは、FOUPに収容された円盤状の基板である、請求項9又は10に記載の基板搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本件出願は、2019年6月28日に出願された米国特許出願第16/456,375号の優先権を主張するものであり、その全体を参照することにより本件出願の一部となすものとして引用する。
【0002】
本発明は、基板搬送装置に関する。
【背景技術】
【0003】
一般に、半導体製造設備や液晶パネル製造設備では半導体ウェハやガラス基板を所望の位置に搬送するために基板搬送装置が使用される。基板搬送装置は、ロボットアームと、基板を保持するためのエンドエフェクタとを備える。例えば特許第6088243号公報、特表2004-535681号公報及び特開2018-111200号公報に開示されたエンドエフェクタでは、二股に分岐した一対の先端部の間を進行する検出光が基板で遮光されるか否かによってFOUP(Front-Opening Unified Pod)に収容された基板の存否が検出される。
【0004】
しかし、上記従来技術のエンドエフェクタを備えた基板搬送装置は、受光部において受光量に応じて連続的に変化する出力値(例えば出力電圧)を二値信号に変換することにより基板の存否を検知する。このため、基板の状態(例えば基板の表面が傾いている等)を精度よく診断することはできなかった。
【発明の概要】
【0005】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、基板搬送装置においてFOUPに収容された基板の状態を精度良く診断することを目的としている。
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のある形態に係る基板搬送装置は、ベースと、前記ベースに取り付けられたロボットアームと、前記ロボットアームの先端に設けられ、二股に分岐した第1先端部及び第2先端部を有するエンドエフェクタと、前記第1先端部から前記第2先端部に向けて光を発するように構成された発光部と、前記第1先端部及び第2先端部の間の空間を進行し前記第2先端部に入射した光の受光量に応じて連続的に変化する出力値に変換するように構成された受光部と、前記ロボットアームの動作を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記エンドエフェクタの先端を進行する光が、FOUPに収容された複数枚の基板の縁を走査するように前記ロボットアームの動作を制御するとともに、当該ロボットアームの動作中において前記光と前記基板との相対的な位置関係に従って、前記受光部において連続的に変化する出力値の測定波形の形状パターンと比較用の基準波形の形状パターンとを比較し、比較結果に基づいて、前記基板の状態、前記FOUPの状態及び前記エンドエフェクタの状態のうち少なくとも一の状態を診断するものである。
【0007】
前記制御装置は、前記測定波形のうち、一の区間における形状パターンと、他の区間における形状パターンとを比較し、当該一の区間における形状パターンが他の区間における形状パターンと一致しない場合には、当該一の区間における基板の表面が傾いていると判定してもよい。
【0008】
また、前記制御装置は、今回測定された測定波形の形状パターンと、前回測定された比較用の測定波形の形状パターンとを比較し、今回測定された測定波形のうち一の区間における形状パターンが、前回測定された比較用の測定波形のうち一の区間における形状パターンと一致しない場合には、当該一の区間における基板の表面が傾いていると判定してもよい。
【0009】
さらに、前記制御装置は、今回測定された測定波形の形状パターンと、前回測定された比較用の測定波形の形状パターンとを比較し、前記測定波形のうち全ての区間における形状パターンが、前記比較用の測定波形のうち全ての区間における形状パターンと一致しない場合には、前記FOUPが傾いていると判定してもよい。
【0010】
また、前記FOUPは、異なる位置に複数配置され、前記制御装置は、一のFOUPにおいて測定された測定波形の形状パターンと、他のFOUPにおいて測定された比較用の測定波形の形状パターンとを比較し、一のFOUPにおいて測定された測定波形のうち全ての区間における形状パターンが、他のFOUPにおいて測定された比較用の測定波形のうち全ての区間における形状パターンと一致しない場合は、一のFOUPが傾いていると判定してもよい。
【0011】
さらに、前記制御装置は、前記FOUPの傾きが修正された状態において、今回測定された測定波形の形状パターンと、前回測定された比較用の測定波形の形状パターンとを比較し、今回測定された前記測定波形のうち全ての区間における形状パターンが、前回測定された前記比較用の測定波形のうち全ての区間における形状パターンと一致しない場合には、前記エンドエフェクタが傾いていると判定してもよい。
【0012】
なお、前記制御装置は、今回測定された測定波形の形状パターンと、前回測定された比較用の測定波形の形状パターンとを比較し、今回測定された前記測定波形のうち全ての区間における出力値が、前回測定された前記比較用の測定波形のうち全ての区間における出力値よりも低下した場合には、前記発光部の光の強度及び前記受光部の受光感度の少なくとも一方が低下していると判定してもよい。
【0013】
また、上記基板搬送装置は、前記診断結果を表示する表示装置を更に備えてもよい。
【0014】
本発明の他の形態に係る基板搬送装置は、ベースと、前記ベースに取り付けられたロボットアームと、前記ロボットアームの先端に設けられ、二股に分岐した第1先端部及び第2先端部を有するエンドエフェクタと、前記第1先端部から前記第2先端部に向けて光を発するように構成された発光部と、前記第1先端部及び第2先端部の間の空間を進行し前記第2先端部に入射した光の受光量に応じて検出光を連続的に変化する出力値に変換するように構成された受光部と、前記ロボットアームの動作を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記エンドエフェクタの先端を進行する光が、ターゲットに対して水平方向に当該ターゲットを走査するように前記ロボットアームの動作を制御するとともに、当該ロボットアームの動作中において前記光と前記ターゲットとの相対的な位置関係に従って、前記受光部において連続的に変化する出力値の測定波形に基づいて、水平方向における前記ターゲットの位置を計測するものである。
【0015】
前記ターゲットの位置は、水平方向における前記ターゲットの中心の位置又は縁の位置であってもよい。前記ターゲットは、FOUPに収容された円盤状の基板であってもよい。
【0016】
本発明は、以上に説明した構成を有し、基板搬送装置においてFOUPに収容された基板の状態を精度良く診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る基板搬送装置を示す側面図である。
【0018】
図2図2は、図1のエンドエフェクタの構成を示した平面図である。
【0019】
図3図3は、図1の基板搬送装置の構成の概略を示したブロック図である。
【0020】
図4図4は、エンドエフェクタの動作を説明するための模式図である。
【0021】
図5図5は、エンドエフェクタ動作時の受光量の変化を説明するための模式図である。
【0022】
図6図6は、エンドエフェクタ動作時の出力波形の一例を示したグラフである。
【0023】
図7図7は、エンドエフェクタ動作時の出力波形の一例を示したグラフである。
【0024】
図8図8は、エンドエフェクタ動作時の出力波形の一例を示したグラフである。
【0025】
図9図9は、本発明の第2実施形態に係る基板搬送装置を示す平面図である。
【0026】
図10図10は、エンドエフェクタ動作時の出力波形の一例を示したグラフである。
【0027】
図11図11は、測定波形の比較方法を説明するための図である。
【0028】
図12図12は、本発明の第3実施形態に係る基板搬送装置におけるエンドエフェクタ動作時の出力波形の一例を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、好ましい実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一または相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。また、図面は理解しやすくするために、それぞれの構成要素を模式的に示したものである。
(第1実施形態)
【0030】
図1は、本発明の第1実施形態に係る基板搬送装置1を示す側面図である。図1に示すように、基板搬送装置1は、半導体ウェハを処理するための設備である半導体処理設備において使用される。半導体ウェハとして、シリコンウェハ、サファイヤ(単結晶アルミナ)ウェハ、その他の各種のウェハが例示される。また、ガラスウェハとしては、例えば、FPD(Flat Panel Display)用ガラス基板、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)用ガラス基板が例示される。
【0031】
処理前および処理後の半導体ウェハ(以下、単に基板ともいう)WはFront Opening Unified Pod(FOUP)6と呼ばれる容器に収容される。FOUP6は、局所クリーン化技術に関し、クリーン環境におけるミニエンバイロメント用基板容器である。FOUP6には複数の基板Wが収容される。各基板WはFOUP6の各スロット(図示せず)に収容される。各基板Wは水平な状態で上下方向Zに等間隔を空けて配置される。FOUP6は、ベース7の上に略箱状に形成され、一方に開放される。半導体処理設備は、基板Wを処理する基板処理装置(図示せず)を含んでいる。基板Wに対する処理としては、熱処理、不純物導入処理、薄膜形成処理、リソグラフィ処理、洗浄処理および平坦化処理などのプロセス処理が例示される。基板Wは、FOUP6と基板処理装置(図示せず)との間を基板搬送装置1により搬送される。
【0032】
本実施の形態では、基板搬送装置1は、いわゆる水平多関節型の4軸ロボットである。基板搬送装置1は、X軸、Y軸、Z軸の3軸方向に自由度を有するロボットアーム(以下、単に「アーム」ともいう)2の先端部に、水平方向の自由度を有する手首が設けられ、この手首に基板Wを保持するエンドエフェクタ10が設けられる。
【0033】
基板搬送装置1は、半導体処理設備の適所(例えば床)に固定されるベース4を有し、ベース4には昇降軸3が設けられている。ベース4においては、昇降軸3の軸線が例えば鉛直に向けられる。ベース4には、例えばエアシリンダからなるアクチュエータ(図示せず)が内蔵されている。このアクチュエータの動作により昇降軸3はベース4の上面側にて上下方向に昇降する。
【0034】
アーム2は、第1アーム2a及び第2アーム2bを含む。第1アーム2aは昇降軸3の上端部に設けられる。第1アーム2aは昇降軸3の上端部から水平に延びている。第1アーム2aの一端部は昇降軸3に対して鉛直軸線L1周りに揺動可能に連結され、昇降軸3には、例えば電気モータからなる図示しないアクチュエータが内蔵されている。このアクチュエータの動作により第1アーム2aは昇降軸3に対して水平面内を揺動する。
【0035】
第2アーム2bは第1アーム2aの他端部の上面側に設けられる。第2アーム2bは、第1アーム2aの他端部から水平に延びている。第2アーム2bの一端部は、第1アーム2aに対して鉛直軸線L2周りに揺動可能に連結されている。第1アーム2aの他端部には、例えば電気モータからなる図示しないアクチュエータが内蔵されている。このアクチュエータの動作により、第2アーム2bは第1アーム2aの他端部に対して水平面内を揺動する。
【0036】
第2アーム2bの他端部の上面側には、基板Wを保持するエンドエフェクタ10が設けられている。エンドエフェクタ10は、第2アーム2bの他端部に対して鉛直軸線L3周りに揺動可能に連結されている。第2アーム2bの他端部には、例えば電気モータからなる図示しないアクチュエータが内蔵されている。このアクチュエータの動作により、エンドエフェクタ10は第2アーム2bの他端部に対して水平面内を揺動する。
【0037】
制御装置5は、例えば操作装置(図示せず)からの入力によりあるいは自動的に、昇降軸3、第1アーム2a、第2アーム2b及びエンドエフェクタ10を駆動する各アクチュエータの動作を制御し、エンドエフェクタ10は、上下及び水平に移動する。そして、アクチュエータの動作速度を適宜制御することにより、エンドエフェクタ10は、水平面内で任意の経路に沿って、移動可能となる。
【0038】
図2は、エンドエフェクタ10を上から見た平面図である。図2に示すように、エンドエフェクタ10は、平面視でU状に形成された板材から成る。本実施の形態では、板材は中心線Cに対して左右対称である。エンドエフェクタ10は、単一の基端部10aと、該基端部10aから二股に分岐した第1先端部10b及び第2先端部10cとを有する。第1先端部10b及び第2先端部10cの間には空間が形成されている。エンドエフェクタ10の基端部10aは、取付板20の一端に固定され、エンドエフェクタ10は、取付板20から水平に延びている。取付板20の他端は、第2アーム2bの他端部に対して鉛直軸線L3周りに揺動可能に連結されている。
【0039】
エンドエフェクタ10は、円盤状の基板Wを保持可能に構成される。本実施形態では、エンドエフェクタ10は、基端部10aの上面に設けられた押圧面11aと、第1先端部10b及び第2先端部10cの上面に設けられた2つのエッジグリップ11b及び11cとを備える。2つのエッジグリップ11b及び11cにより、エンドエフェクタ10上に載置された基板Wの一端側のエッジが係止され、且つ、押圧面11aにより基板Wの他端側のエッジが押圧されることにより、基板Wがエンドエフェクタ10上に固定される。
【0040】
エンドエフェクタ10の取付板20には発光部13が内蔵される。発光部13は、制御装置5からの電気的入力を変換して検出光を発生する。発光部13には光ファイバ15aの一端が接続され、光ファイバ15aはエンドエフェクタ10の基端部10aの裏側から第1先端部10bの裏側まで敷設されている。光ファイバ15aは発光部13から出射された検出光をエンドエフェクタ10の第1先端部10bの裏側まで導く。エンドエフェクタ10の取付板20には受光部14が内蔵される。受光部14は検出光を受光して当該検出光を制御装置5への電気的出力に変換する。エンドエフェクタ10の第2先端部10cの裏側には光ファイバ15bの一端が接続され、光ファイバ15bはエンドエフェクタ10の取付板20に内蔵された受光部14まで敷設されている。光ファイバ15bはエンドエフェクタ10の第2先端部10cの裏側に入射した検出光を受光部14まで導く。なお、光ファイバ15aおよび15bのそれぞれの両端に、図示されない光収束素子(例えば凸レンズ)及び光発散素子(例えば凹レンズ)を必要に応じて、適宜、配置してもよい。
【0041】
図3は、基板搬送装置1の構成の概略を示したブロック図である。図3に示すように、制御装置5は、エンドエフェクタ10の発光部13及び受光部14及び基板保持部11、基板搬送装置1の駆動装置30と制御線を介して接続され、例えばマイクロコントローラ等のコンピュータを備えたロボットコントローラである。制御装置5は単一の装置とは限らず、複数の装置で構成されてもよい。
【0042】
発光部13は、発光素子16と、ドライブ回路17とを備える。発光素子16は、検出光を生成して出射する。発光素子16として、例えば発光ダイオード又はレーザーダイオードが用いられる。ドライブ回路17は、発光素子16に電圧を印加して該発光素子を駆動する。ドライブ回路17は、制御装置5からの制御信号(電気的入力)に応じて電圧を生成して、発光素子16を駆動する。
【0043】
受光部14は、受光素子18と、出力回路19とを備える。受光素子18は、検出光を受光し、受光量に応じて連続的に変化する出力値に変換する。本実施形態では、受光素子18は検出光を受光し、受光量に応じて連続的に変化する出力電圧に変換する。受光素子18として、例えばフォトダイオードが使用される。出力回路19は出力電圧Voutを増幅してこれを制御装置5に出力する。
【0044】
発光素子16と光ファイバ15aは図示されないコネクタにより接続されている。同様に、受光素子18と光ファイバ15bも、図示されないコネクタにより接続されている。このように、本実施の形態では、発光部13及び受光部14は、発光素子16及び受光素子18を含み、発光素子16及び受光素子18が透過型の光センサを構成している。
【0045】
基板保持部11は、図2で示した押圧面11aと2つのエッジグリップ11b及び11cにより構成される。基板保持部11では、制御装置5の制御指令に従って、基板Wと接触する押圧面11aの圧力が制御される。2つのエッジグリップ11b及び11cにより、エンドエフェクタ10上に載置された基板Wの一端側のエッジが係止され、且つ、押圧面11aにより基板Wの他端側のエッジが押圧されることにより、エンドエフェクタ10により基板Wが保持される。
【0046】
駆動装置30は、図1で示した昇降軸3、第1アーム2a、第2アーム2bを駆動するアクチュエータにより構成される。駆動装置30は、制御装置5の制御指令に従って、昇降軸3、第1アーム2a及び第2アーム2bを駆動するアクチュエータを動作させて、エンドエフェクタ10を上下及び水平に移動する。
【0047】
制御装置5は、演算部、記憶部及びサーボ制御部を備える(図示せず)。記憶部は、制御装置5の基本プログラム、ロボットの動作プログラム等の情報、及び、測定波形や基準波形のデータを記憶する。演算部は、ロボット制御のための演算処理を行い、ロボットの制御指令を生成する。サーボ制御部は、演算部により生成された制御指令に基づいて、駆動装置30や基板保持部11の動作を制御するように構成されている。本実施形態では制御装置5は、演算部において、受光部14の出力電圧Voutの測定波形や基準波形等のデータに基づいて、基板Wの状態やFOUP6の状態等を診断するための演算処理を行い、演算結果を表示装置40に出力する。表示装置40は、診断結果を表示するためのモニタである。
【0048】
次に、エンドエフェクタ10の動作について説明する。図4は、エンドエフェクタの動作を説明するための模式図である。ここでは、簡単のため、エンドエフェクタ10及び基板Wのみ示し、FOUP6のスロットには4枚の基板Wが収容されている。図4に示すように、制御装置5は、アーム2の動作を制御して、エンドエフェクタ10の先端を、FOUP6の最下段のスロットから最上段のスロットまで順次各基板Wに対向するようにして走査させる。図5は、FOUP6の最下段のスロットにおいて、エンドエフェクタ10を動作させたときの基板Wと光Bとの相対的な位置関係に従って変化する光Bを模式的に示している。光Bの光子(図示せず)は空気中を散乱しながら進むため、図5では光Bの形状は第1先端部10bから第2先端部10cに向かって拡大している。
【0049】
まず、図5(a)に示すように、エンドエフェクタ10の第1先端部10bから出射した光Bは基板Wの厚み方向(図5のY軸の正方向)に対して進行する。光Bは第1先端部10b及び第2先端部10cの間の空間を進行し、エンドエフェクタ10の第2先端部10cで受光される。この区間では、第2先端部10cに入射した光の受光量は一定である。
【0050】
次の瞬間では、図5(b)に示すように、光Bの上側部分の光子が基板Wの下側の表面で反射し、反射光は直進光とともに、エンドエフェクタ10の第2先端部10cで受光される。図5(b)では、光Bのうち、基板Wの下側の表面で反射して先端部10cで受光される光を斜線で示している。このように、第1先端部10bからの光と基板Wからの反射光が第2先端部10cに入射するため、この区間では、先端部10cに入射する光の受光量は増加する。
【0051】
次の瞬間では、図5(c)に示すように、基板Wの下側の表面で反射する光Bの反射光(図5(c)の斜線で示した部分)の割合が増加する。その結果、この区間では、先端部10cに入射する光の受光量が更に増加する。
【0052】
次の瞬間では、図5(d)に示すように、エンドエフェクタ10の第1先端部10bから出射した光Bは、基板Wの厚み方向に対して入射し、入射した光Bが基板Wによって遮られる。基板Wの厚み方向に対して入射した光Bのほぼ全てが基板Wの厚み方向に平行な面で反射又は吸収され、光Bはエンドエフェクタ10の第2先端部10cでは受光されない。この区間では、先端部10cに入射する光の受光量は低下する。
【0053】
次の瞬間では、図5(e)に示すように、エンドエフェクタ10の第1先端部10bから出射した光Bの一部は第1先端部10b及び第2先端部10cの間の空間を進行し、エンドエフェクタ10の先端部10cで受光される。光Bの下側部分の光子が基板Wの上側の表面で反射し、反射光は直進光とともに、エンドエフェクタ10の先端部10cで受光される。図5(e)では、光Bのうち、基板Wの上側の表面で反射して先端部10cで受光される光を斜線で示している。このように、第1先端部10bからの光と基板Wからの反射光が第2先端部10cに入射するため、この区間では、先端部10cに入射した光の受光量は増加する。
【0054】
次の瞬間では、図5(f)に示すように、基板Wの上側の表面で反射する光Bの反射光(図5(f)の斜線で示した部分)の割合が減少する。その結果、この区間では、先端部10cに入射する光の受光量が更に減少する。
【0055】
そして、図5(g)に示すように、エンドエフェクタ10の第1先端部10bから出射した光Bは第1先端部10b及び第2先端部10cの間の空間を直進し、出射した光Bの全てがエンドエフェクタ10の先端部10cで受光される。この区間では、先端部10cに入射した光の受光量は一定である。
【0056】
図6は、エンドエフェクタ10の動作時の出力波形の一例を示したグラフである。横軸はZのマイナス方向を示し、縦軸は受光部14の出力電圧Voutを示している。ここで出力電圧Voutは受光量(光の強度)に応じた値である。図6の上側の波形は、FOUP6に収容された4枚の基板Wに対応して4つの形状パターンを有する。一の形状パターンは図5で示したエンドエフェクタ10の動作に対応している。区間aでは受光部14の出力電圧Voutは一定値である(図5(a)に相当する)。区間bでは受光部14の出力電圧Voutは上昇する(図5(b)及び図5(c)に相当する)。区間cでは受光部14の出力電圧Voutは低下する(図5(d)に相当する)。区間dでは受光部14の出力電圧Voutは上昇する(図5(e)及び図5(f)に相当する)。区間eでは受光部14の出力電圧Voutは一定値である(図5(g)に相当する)。このように、エンドエフェクタ10の先端を直進する光BによってFOUP6に収納された基板Wの縁を走査すると、受光部14の出力電圧Voutは、光Bと基板Wとの相対的な位置関係に従って連続的に変化する。
【0057】
従来は、図6の下側の波形に示すように、閾値Vthを設定して受光部14の出力電圧Voutを二値信号V'outに変換し、エンドエフェクタ10の光Bが基板Wで遮光されるか否かによって基板Wの存否を検出していた。基板Wがスロットに収納されていない場合、光Bは第1先端部10b及び第2先端部10cの間の空間を進行する。これにより、光Bはエンドエフェクタ10の第2先端部10cの裏側の光ファイバ15bの端部で受光される。受光量に応じた出力電圧Voutは閾値Vthよりも高くなるので、受光部14は、制御装置5にハイレベルの信号V'outを出力する。一方、基板Wがスロットに収納されている場合、基板Wの縁によってエンドエフェクタ10の第1先端部10bと第2先端部10cの間の空間を進行する光Bが遮られる。この場合には、検出光Bはエンドエフェクタ10の先端部10cの裏側の光ファイバ15bの端部で受光されないため、受光量に応じた出力電圧Voutは閾値Vthよりも低くなるので、受光部14は制御装置5にローレベルの信号V'outを出力する。このようにして制御装置5はFOUP6内の各スロットに基板が収納されているか否かを順次判定する。しかし、このような従来の方法では、例えば基板Wの表面が傾いている等の状態を診断することはできなかった。
【0058】
そこで、本実施形態では、制御装置5は、光Bと基板Wとの相対的な位置関係に従って、受光量に応じて連続的に変化する出力値(Vout)の測定波形の形状パターンと比較用の基準波形の形状パターンとを比較することにより、比較結果に基づいて、基板Wの状態及びFOUP6の状態を診断する。
<基板の状態の診断>
【0059】
基板Wの状態の診断は、例えば基板Wの搬送動作時に実施される。図7は、基板Wの状態を診断する際の出力波形の一例を示したグラフである。図7の下側のグラフは今回測定された測定波形(Vout)を示している。測定波形(Vout)は、FOUP6に収容された4枚の基板Wに対応して4つの形状パターン(P1,P2,P3,P4)を有する。図7の上側のグラフは前回測定された比較用の基準波形(Vref)を示している。比較用の基準波形(Vref)も、FOUP6に収容された4枚の基板Wに対応して4つの形状パターン(P1',P2',P3',P4')を有する。尚、測定波形及び基準波形は制御装置5の記憶部に記憶され、診断時に読み出される。
【0060】
まず、制御装置5は、今回測定された測定波形の形状パターン(P1,P2,P3,P4)と、前回測定された比較用の基準波形の形状パターン(P1',P2',P3',P4')とを比較する。
【0061】
次に、制御装置5は、今回測定された測定波形(Vout)のうち一の区間における形状パターンが、比較用の基準波形(Vref)のうち一の区間における形状パターンと一致するか否かを判定する。ここでは今回測定された測定波形(Vout)のうち、FOUP6の下から3番目のスロットにおける形状パターンP3が、前回測定された比較用の基準波形(Vref)のうちFOUP6の下から3番目のスロットにおける形状パターンP3'と一致しない。測定波形(Vout)の形状パターンP3と、基準波形(Vref)の形状パターンP3'とを比較すると、形状パターンP3の出力値が低下した区間が形状パターンP3'のそれよりも長い(図7のf)。制御装置5は、下から3番目のスロットに収容された基板Wが傾いた状態でFOUP6に収容されていると判定することができる。基板Wの表面の傾きの診断結果は表示装置40(図3参照)のモニタに表示される。
【0062】
尚、制御装置5は、今回測定された測定波形(Vout)のみで基板Wの傾きを判定してもよい。その場合、制御装置5は、測定波形(Vout)のうち、一の区間における形状パターンと、他の区間における形状パターンとを比較する。制御装置5は、当該一の区間における形状パターンが他の区間における形状パターンと一致するか否かを判定する。ここでは4つの形状パターン(P1,P2,P3,P4)のうち、FOUP6の下から3番目の区間における形状パターンP3が、FOUP6の他の区間(例えば下から4番目の区間)における形状パターンP4と一致しない。制御装置5は、下から3番目のスロットに収容された基板Wが傾いた状態でFOUP6に収容されていると判定することができる。
<FOUPの状態の診断>
【0063】
FOUP6の状態の診断は、例えば基板Wの搬送動作に先立って、実施される。図8は、FOUP6の状態を診断する際の出力波形の一例を示したグラフである。図8の下側のグラフは今回測定された測定波形(Vout)を示している。測定波形(Vout)は、FOUP6に収容された4枚の基板Wに対応して4つの形状パターン(P1,P2,P3,P4)を有する。図8の上側のグラフは前回測定された比較用の基準波形(Vref)を示している。比較用の基準波形(Vref)も、FOUP6に収容された4枚の基板Wに対応して4つの形状パターン(P1',P2',P3',P4')を有する。尚、測定波形及び基準波形は制御装置5の記憶部に記憶され、診断時に読み出される。
【0064】
まず、制御装置5は、今回測定された測定波形の形状パターン(P1,P2,P3,P4)と、比較用の基準波形の形状パターン(P1',P2',P3',P4')とを比較する。制御装置5は、今回測定された測定波形(Vout)のうち全ての区間における形状パターンが、前回測定された比較用の基準波形(Vref)のうち全ての区間における形状パターンと一致するか否かを判定する。ここでは今回測定された測定波形(Vout)のうち、全ての区間における形状パターン(P1,P2,P3,P4)が、前回測定された比較用の基準波形(Vref)のうち全ての区間における形状パターン(P1',P2',P3',P4')と一致しない。測定波形(Vout)の全区間における形状パターン(P1,P2,P3,P4)と、比較用の基準波形(Vref)の全区間における形状パターン(P1',P2',P3',P4')とを比較すると、測定波形(Vout)の形状パターン(P1,P2,P3,P4)の出力値が上昇する全て区間が比較用の基準波形(Vref)の形状パターン(P1',P2',P3',P4')のそれよりも長い(図8のg)。制御装置5は、FOUP6が傾いていると判定することができる。FOUP6の傾きの診断結果は表示装置40(図3参照)のモニタに表示される。
【0065】
尚、本実施形態では、前回測定された測定波形を比較用の基準波形(Vref)として用いたが、基板W等の傾きがない理想的な状態で測定された波形を基準波形としてもよい。また、理想状態で測定された波形に限らず、任意の波形を基準波形として使用者が選択してもよい。また、一の装置で計測された波形を他の装置において基準波形として用いてもよい。
(第2実施形態)
【0066】
本発明の第2実施形態に係る基板搬送装置1について説明する。基板搬送装置1の構成は第1実施形態と同様であるが、本実施形態では、複数のFOUP6において測定された測定波形の形状パターンを使用して、一のFOUP6の状態を診断する点が第1実施形態と異なる。図9は、本発明の第2実施形態に係る基板搬送装置1を示す平面図である。図9に示すように、本実施形態では基板搬送装置1の前方に3台のFOUP6が配置されている。ここでは各ベース7が図9のY方向に沿って配置されている。
【0067】
本実施形態では、制御装置5は、3台のFOUP6において測定された測定波形の形状パターンを使用して、一のFOUP6の状態を診断する。図10は、一のFOUP6の状態を診断する際の出力波形の一例を示したグラフである。図10の下側のグラフは、中央のFOUP6において今回測定された測定波形(Vout)を示している。測定波形(Vout)は、FOUP6に収容された4枚の基板Wに対応して4つの形状パターン(P1,P2,P3,P4)を有する。図10の上側のグラフは、両側のFOUP6において今回測定された比較用の基準波形(Vref)を示している。比較用の基準波形(Vref)も、FOUP6に収容された4枚の基板Wに対応して4つの形状パターン(P1',P2',P3',P4')を有する。尚、両側のFOUP6において今回測定された波形は同じであるものとし、ここでは一の測定波形のみ基準波形(Vref)として示している。尚、測定波形及び基準波形は制御装置5の記憶部に記憶され、診断時に読み出される。
【0068】
制御装置5は、一のFOUP6において測定された測定波形の形状パターンと、他のFOUP6において測定された比較用の基準波形の形状パターンとを比較する。制御装置5は、中央のFOUP6において測定された測定波形(Vout)のうち全ての区間における形状パターン(P1,P2,P3,P4)が、他のFOUPにおいて測定された比較用の基準波形(Vref)のうち全ての区間における形状パターン(P1',P2',P3',P4')と一致するか否かを判定する。ここでは中央のFOUP6において今回測定された測定波形(Vout)のうち、全ての区間における形状パターン(P1,P2,P3,P4)が、他のFOUPにおいて測定された比較用の基準波形(Vref)のうち全ての区間における形状パターン(P1',P2',P3',P4')と一致しない。測定波形(Vout)の全区間における形状パターン(P1,P2,P3,P4)と、比較用の基準波形(Vref)の全区間における形状パターン(P1',P2',P3',P4')とを比較すると、測定波形(Vout)の形状パターン(P1,P2,P3,P4)の出力値が低下する全ての区間が比較用の基準波形(Vref)の形状パターン(P1',P2',P3',P4')のそれよりも長い(図10のh)。制御装置5は、中央のFOUP6が傾いていると判定することができる。FOUP6の傾きの診断結果は表示装置40(図3参照)のモニタに表示される。本実施の形態では、制御装置5は、複数のFOUP6において測定された測定波形の形状パターンを使用して、一のFOUP6の状態を診断することができる。
【0069】
尚、本実施形態では、装置内の一のFOUP6での測定波形と他のFOUP6で測定された基準波形を比較したが、理想状態で測定された基準波形と比較してもよい。
(その他の実施形態)
【0070】
尚、第1実施形態では、比較方法として、基準波形と測定波形(山の数)が一致するか否かを判定する場合について説明したが、例えば基準波形は一の形状パターン(例えば図7のP1'のみ)としておき、それを測定波形の全ての形状パターン(例えば図7のP1~P4)と繰り返し比較してもよい。
【0071】
その他、基板Wが存在するZ位置として予め記憶部に記憶された値を基準として準備した基準波形と測定波形とを比較してもよい。
【0072】
尚、測定波形の形状パターンと比較用の基準波形の形状パターンとの比較方法については種々の方法を使用することができる。
【0073】
(a)例えば両波形がどれだけずれているかで判定してもよい。両波形がどれだけずれているかの算出方法として、1または複数のZ位置でのずれに基づいて算出する方法、及び、Z位置における1または複数の区間の両波形の積分値のずれに基づいて算出する方法が挙げられる。
【0074】
(b)両波形のピーク値を比較してもよい。例えば波形1回分(例えば図7のP1'とP1)のVrefの最大値や最小値同士を比較してもよい。また、Vrefの谷(図10のhの部分)を挟む左右のピーク値をそれぞれ比較してもよい。
【0075】
(c)両波形の閾値と一致したときの横軸の値(図11の波形のABDE)を用いて比較してもよい。図11のAとBの間隔を比較してもよい。図11のDとEの間隔を比較してもよい。図11のVrefの谷(下図のCに相当)とA,B,DまたはEの間隔を比較してもよい。
【0076】
尚、上記各実施形態では、制御装置5は、基板Wの傾き及びFOUP6の傾きを診断したが、エンドエフェクタ10の状態を診断してもよい。エンドエフェクタ10の状態の診断は、例えばオペレータがロボットの操作を誤って周辺の環境に衝突する等して半導体処理設備において処理が一時中断された後、ロボット(基板搬送装置1)の動作の再開に先立って、実施される。このエンドエフェクタ10の状態の診断は、FOUP6の傾きが修正された状態において、実施される。制御装置5は、FOUP6の傾きが修正された状態において、今回測定された測定波形の形状パターンと、前回測定された比較用の基準波形の形状パターンとを比較する。今回測定された測定波形のうち全ての区間における形状パターンが、前回測定された比較用の基準波形のうち全ての区間における形状パターンと一致しない場合には、エンドエフェクタ10が傾いていると判定することができる。
【0077】
その他、制御装置5は、光部品の寿命を診断してもよい。制御装置5は、今回測定された測定波形の形状パターンと、前回測定された比較用の基準波形の形状パターンとを比較し、今回測定された測定波形のうち全ての区間における出力値が、前回測定された比較用の基準波形のうち全ての区間における出力値よりも低下した場合には、発光部13の発光素子16(図3参照)の光強度及び受光素子18(図3参照)の受光感度の少なくとも一方が低下していると判定することができる。
【0078】
尚、本実施形態では、受光素子18は、受光量に応じて連続的に変化する電圧値を出力したが、受光量に応じて連続的に変化する電流値を出力してもよい。
(第3実施形態)
【0079】
本発明の第3実施形態に係る基板搬送装置について説明する。本実施形態の基板搬送装置の基本的な構成は上記実施形態(図1図3)と同様であるため説明を省略する。図12の上段は、本実施形態に係る基板搬送装置におけるエンドエフェクタ10の平面図を示している。ターゲットは、円盤状の基板Wである。ここでは、簡単のため、エンドエフェクタ10及び基板Wのみ示している。基板Wは、例えばFOUP6(図4(a)参照)のスロットに収容されている。エンドエフェクタ10と基板Wは同じレベル(図12のZ軸方向の基準位置)に調整されている。本実施形態では、制御装置5は、アーム2の動作を制御して、エンドエフェクタ10の先端を進行する光Bを、平面視で円形の基板Wに対して水平方向(図のX軸の正方向)に当該基板Wを走査させる点、および、アーム2の動作中における光Bと基板Wとの相対的な位置関係に従って、受光部14において連続的に変化する出力値の測定波形に基づいて、水平方向における基板Wの位置を計測する点が上記実施形態と異なる。
【0080】
図12のグラフは、エンドエフェクタ10の動作時の出力波形を示している。横軸はX軸のプラス方向を示し、縦軸はエンドエフェクタ10の受光部14において受光量(光の強度)に応じて出力された測定波形を示している。図12の下のグラフは、アーム2の動作中において光Bと基板Wとの相対的な位置関係に従って、受光部14において連続的に変化する出力電圧Voutの測定波形(アナログ信号)を示している。図12の上のグラフは、下のグラフで示したアナログ信号(出力電圧Vout)に対し、閾値を設定することにより、二値信号V'outに変換された測定波形(デジタル信号)を示している。
【0081】
現状のマッピングセンサでは、エンドエフェクタ10の光Bが基板Wで遮光されるか否かによって、二値信号V'out図12の上のグラフ)の値が変化する。これによって、基板Wの存否が検出される。ここでは、比較例として、現状のマッピングセンサのデジタル信号(V'out)を使用して水平方向における基板Wの位置を計測する方法について説明する。具体的に、エンドエフェクタ10の光Bを基板Wに対して水平方向(図12のX軸の正方向)に移動させると、エンドエフェクタ10の光Bは基板Wの側面(図12のZ軸に平行な面)によって遮光される。エンドエフェクタ10の光Bが基板Wの縁(図12の左側の縁)に到達すると、その直後から、受光部14における受光量(光の強度)は減少を開始する。その結果、受光量(光の強度)が設定された閾値よりも減少したとき、デジタル信号(V'out)がハイレベルからローレベルに転じる。デジタル信号(V'out)がハイレベルからローレベルに変化した位置(X軸のプラス方向の値)を算出することにより、基板Wの縁(図12の左側の縁)の位置を計測することができる。しかし、図12の点線で示したように、比較例により計測された基板Wの縁の位置は実際の基板Wの縁の位置からずれてしまう。
【0082】
その後、さらに、エンドエフェクタ10の光Bが、水平方向(図12のX軸の正方向)に移動すると、受光部14における受光量(光の強度)は更に減少する。さらにエンドエフェクタ10の光Bが、水平方向に移動し、エンドエフェクタ10の光Bが基板Wの中心位置Cの付近を通過した後は、受光部14における受光量(光の強度)は徐々に増加する。この間、デジタル信号(V'out)はローレベルのままである。その後、受光部14における受光量(光の強度)が設定された閾値よりも増加すると、デジタル信号(V'out)がローレベルからハイレベルに転じる。デジタル信号(V'out)がローレベルからハイレベルに転じた位置(X軸のプラス方向の値)を算出することにより、基板Wの縁(図12の右側の縁)の位置を計測することができる。しかし、図12の点線で示すように、比較例により計測された基板Wの縁の位置は実際の基板Wの縁の位置からずれてしまう。
【0083】
また、デジタル信号(V'out)がハイレベルからローレベルに転じた位置(X軸のプラス方向の値)と、ローレベルからハイレベルに転じた位置(X軸のプラス方向の値)までの距離を算出することにより、基板Wの中心位置を計測することができる。しかし、図12の点線で示すように、比較例によって計測された基板Wの中心位置は実際の基板Wの中心位置Cからずれてしまう。
【0084】
このように、比較例では、現状のマッピングセンサのデジタル信号(V'out)によって水平方向における基板Wの位置を計測する場合、光センサの閾値の設定やヒステリシスにより、デジタル信号(V'out)のハイレベルとローレベルが実際の基板Wの位置からずれてしまい、水平方向における基板Wの位置を精度良く計測することができない。
【0085】
これに対し、本実施形態では、受光部14において連続的に変化するアナログ信号Voutによって、水平方向における基板Wの位置を計測する。具体的に、エンドエフェクタ10の光Bを、基板Wに対して水平方向(図12のX軸の正方向)に移動させると、エンドエフェクタ10の光Bは基板Wの側面(図12のZ軸に平行な面)によって遮光される。エンドエフェクタ10の光Bが基板Wの縁(図12の左側)に到達すると、その直後から、受光部14における受光量(光の強度)は減少を開始する。その結果、アナログ信号(Vout)は最大値から低下し始める。アナログ信号(Vout)が最大値から低下し始める位置(X軸のプラス方向の値)を算出することにより、基板Wの縁(図12の左側の縁)の位置を計測することができる。計測された基板Wの縁の位置は、図12の破線で示すように、比較例と比べて、実際の基板Wの縁の位置に近い値になっている。
【0086】
その後、さらに、エンドエフェクタ10の光Bが水平方向(図12のX軸の正方向)に移動すると、受光部14における受光量(光の強度)は徐々に減少する。その結果、アナログ信号(Vout)は最大値から徐々に低下する。さらにエンドエフェクタ10の光Bが、水平方向に移動し、エンドエフェクタ10の光Bが基板Wの中心位置Cの付近を通過するとき、アナログ信号(Vout)は最小値になる。アナログ信号(Vout)が最小値に到達した位置(X軸のプラス方向の値)を算出することにより、基板Wの中心位置を計測することができる。計測された基板Wの中心位置は、比較例と比べて、実際の基板Wの中心位置Cに近い値になっている(図12の破線で示したライン)。
【0087】
その後、さらに、エンドエフェクタ10の光Bが水平方向(図12のX軸の正方向)に移動すると、受光部14における受光量(光の強度)は徐々に増加する。その結果、アナログ信号(Vout)は徐々に上昇する。エンドエフェクタ10の光Bが、基板Wの縁(図12の右側の縁)を通過すると、エンドエフェクタ10の光Bは基板Wに遮光されることがなくなるので、アナログ信号(Vout)は再び最大値に到達する。アナログ信号(Vout)が最大値に到達した位置(X軸のプラス方向の値)を算出することにより、基板Wの縁(図12の右側の縁)の位置を計測することができる。計測された基板Wの縁の位置は、図12の破線で示すように、比較例と比べて、実際の基板Wの縁の位置に近い値になっている。
【0088】
本実施形態によれば、受光部14において受光量に応じて連続的に変化するアナログ信号Voutの測定波形に基づいて、水平方向における基板Wの位置を、従来の方法(比較例)よりも精度良く計測することができる。
【0089】
尚、本実施形態では、ターゲットとして、FOUPに収容された円盤状の基板Wを使用し、水平方向における基板Wの位置を計測したがこれに限られない。例えばターゲットは棒状の物(object)でもよい。
【0090】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造および/または機能の詳細を実質的に変更できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】