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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(54)【発明の名称】脳虚血再灌流傷害の治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20220629BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P9/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021564795
(86)(22)【出願日】2020-04-30
(85)【翻訳文提出日】2021-10-29
(86)【国際出願番号】 US2020030643
(87)【国際公開番号】W WO2020226993
(87)【国際公開日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】62/843,182
(32)【優先日】2019-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507324681
【氏名又は名称】ユニバーシティ・オブ・チューリッヒ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF ZURICH
(71)【出願人】
【識別番号】521475738
【氏名又は名称】エックスバイオテク ユーエスエイ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】XBIOTECH USA,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】カミチ,ジョバンニ,グイド
(72)【発明者】
【氏名】リベラル,ルカ
(72)【発明者】
【氏名】リビー,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】シマード,ジョン
【テーマコード(参考)】
4C085
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085BB17
4C085CC23
4C085EE01
(57)【要約】
脳虚血再灌流傷害の続発症は、薬学的に許容される担体およびIL-1αに選択的に結合する治療有効量の剤を含む医薬組成物を対象に投与することにより低減される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳虚血再灌流傷害を治療する方法であって、インターロイキン-1α(IL-1α)に特異的に結合する抗体を対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項2】
IL-1αに特異的に結合する前記抗体が、前記対象が脳虚血を発症した後に前記対象に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
対象において閉塞性発作の結果としてもたらされた脳梗塞の体積を低減させる方法であって、IL-1αに特異的に結合する抗体を前記対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項4】
IL-1αに特異的に結合する前記抗体が、前記対象が脳虚血を発症した後に前記対象に投与される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記対象における前記閉塞性発作の結果としてもたらされた前記脳梗塞の前記体積が、前記対象がIL-1αに特異的に結合する前記抗体を投与されなかった場合に前記閉塞性発作の結果としてもたらされたであろう脳梗塞の体積よりも少なくとも20%小さい、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
対象において閉塞性発作の結果としてもたらされた神経学的欠損を低減させる方法であって、IL-1αに特異的に結合する抗体を前記対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項7】
IL-1αに特異的に結合する前記抗体が、前記対象が脳虚血を発症した後に前記対象に投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
対象において閉塞性発作の結果としてもたらされた脳損傷の虚血性ペナンブラ中の活性化マクロファージの数を低減させる方法であって、IL-1αに特異的に結合する抗体を前記対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項9】
IL-1αに特異的に結合する前記抗体が、前記対象が脳虚血を発症した後に前記対象に投与される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
脳虚血再灌流傷害を治療するための、IL-1αに特異的に結合する抗体の使用。
【請求項11】
対象において閉塞性発作の結果としてもたらされた脳梗塞の体積を低減させるための、IL-1αに特異的に結合する抗体の使用。
【請求項12】
前記対象において前記閉塞性発作の結果としてもたらされた前記脳梗塞の前記体積が、前記対象がIL-1αに特異的に結合する前記抗体を投与されていない場合に前記閉塞性発作の結果としてもたらされたであろう脳梗塞の体積よりも少なくとも20%小さい、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
対象において閉塞性発作の結果としてもたらされた神経学的欠損を低減させるための、IL-1αに特異的に結合する抗体の使用。
【請求項14】
対象において閉塞性発作の結果としてもたらされた脳損傷の虚血性ペナンブラ中の活性化マクロファージの数を低減させるための、IL-1αに特異的に結合する抗体の使用。
【請求項15】
IL-1αに特異的に結合する前記抗体が、前記対象が脳虚血を発症した後に前記対象に投与される、請求項11、12、13、または14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年5月3日に出願された「Treatment of Brain Ischemia-Reperfusion Injury」というタイトルの米国仮特許出願第62/843,182号の優先権を主張する。
【0002】
連邦政府により支援された研究に関する声明
該当せず
【0003】
発明の分野
本発明は、概しては医学、神経学、および免疫学の分野に関する。より特には、本発明は、中枢神経系(例えば、脳)に対する虚血再灌流傷害の様々な続発症を低減させるためのインターロイキン-1α(IL-1α)に特異的に結合する抗体(Ab)の使用に関する。
【背景技術】
【0004】
虚血発作は死および能力障害の大きな原因である。それは、罹患した組織への血流が回復されるように組織プラスミノーゲン活性化剤または機械的な血栓切除術を使用して閉塞した血管からクロットを除去することにより治療される。血流の回復は、しかしながら、興奮毒性神経伝達物質の放出、細胞内Ca2+の蓄積、フリーラジカル損傷、ニューロンのアポトーシス、神経炎症、および虚血再灌流傷害に繋がる脂肪分解を誘導する。
【発明の概要】
【0005】
IL-1αに特異的に結合するモノクローナル抗体(mAb)は、脳虚血再灌流傷害後に起こる病理学的続発症を寛解させるために有用であることが発見された。
【0006】
よって、対象において脳虚血再灌流傷害後に起こり得る病理学的事象の1つまたは複数を低減させる方法が本明細書に記載される。これらの方法は、薬学的に許容される担体、ならびに対象において浮腫、出血性変化、頭蓋内圧、血液脳関門の破壊、結果としてもたらされた梗塞の体積、および結果としてもたらされた神経学的欠損を低減させるために有効な量のIL-1αに選択的に結合する剤を含む医薬組成物を対象に投与するステップを含むことができる。剤は、抗IL-1α抗体、例えば(例えば、IgG1アイソタイプの)モノクローナル抗体であることができる。医薬組成物は、対象に注射により、皮下に、静脈内に、筋肉内に、または髄腔内に投与することができる。方法において、用量は少なくとも50mg(例えば、少なくとも50、75、100、150、200、300、400、500、600、700、または800mg)であることができる。好ましくは、最初の用量は、虚血発作の最初の症状の観察後1、2、3、4、5、もしくは6時間以内、または対象が医療専門家による治療を求めた後10、20、30、もしくは60分以内に投与される。その後、追加の用量(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10)が、例えば、先行する投与後約20分、30分、45分、1時間、2時間、3時間、6時間、12時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、2週間、3週間、または4週間に、対象に投与されてもよい。
【0007】
インターロイキン-1α(IL-1α)に特異的に結合する抗体を対象に投与することにより対象において脳虚血再灌流傷害を治療する方法;IL-1αに特異的に結合する抗体を対象に投与することにより対象において閉塞性発作の結果としてもたらされた脳梗塞の体積を低減させる方法;IL-1αに特異的に結合する抗体を対象に投与することにより対象において閉塞性発作の結果としてもたらされた神経学的欠損を低減させる方法;およびIL-1αに特異的に結合する抗体を対象に投与することにより対象において閉塞性発作の結果としてもたらされた脳損傷の虚血性ペナンブラ中の活性化マクロファージの数を低減させる方法が本明細書にさらに記載される。上記および本明細書中の方法において、IL-1αに特異的に結合する抗体は、対象が脳虚血を発症した後に対象に投与することができる。対象において閉塞性発作の結果としてもたらされた脳梗塞の体積を低減させる方法において、対象において閉塞性発作の結果としてもたらされた脳梗塞の体積は、対象がIL-1αに特異的に結合する抗体を投与されなかった場合に閉塞性発作の結果としてもたらされたであろう脳梗塞の体積よりも少なくとも20%(例えば、少なくとも20、30、40、または50%)小さいものであることができる。
【0008】
他に定義されなければ、本明細書において使用される全ての技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。生物学的用語の一般的に理解される定義は、Riegerら、Glossary of Genetics:Classical and Molecular、5th edition、Springer-Verlag:New York、1991年;およびLewin、Genes V、Oxford University Press:New York、1994年において見出すことができる。医学用語の一般的に理解される定義は、Stedman’s Medical Dictionary、27th Edition、Lippincott,Williams & Wilkins、2000年において見出すことができる。
【0009】
本明細書において使用される場合、「抗体」または「Ab」は、免疫グロブリン(Ig)、同一もしくは不均質なIgの溶液、またはIgの混合物である。「Ab」はまた、Igの断片および操作されたバージョン、例えばFab、Fab’、およびF(ab’)断片;ならびにscFv、ヘテロコンジュゲートAb、および抗原特異性を付与するためにIg由来CDRを用いる類似した人工分子を指すことができる。「モノクローナル抗体」または「mAb」は、1つのクローン性B細胞系により発現されるAbまたは特定の抗原の特定のエピトープと免疫反応を起こすことができる1種のみの抗原結合性部位を含有するAb分子の集団である。「ポリクローナルAb」は不均質なAbの混合物である。典型的には、ポリクローナルAbは、特定の抗原に結合する無数の異なるAb分子を含み、異なるAbの少なくとも一部は、抗原の異なるエピトープと免疫反応を起こす。本明細書において使用される場合、ポリクローナルAbは、2つまたはそれより多くのmAbの混合物であることができる。
【0010】
Abの「抗原結合性部分」は、AbのFab部分の可変領域内に含有され、Abに抗原特異性を付与するAbの部分(すなわち、典型的にはAbの重鎖および軽鎖のCDRにより形成される三次元ポケット)である。「Fab部分」または「Fab領域」は、そのIgの抗原結合性部分を含有するパパイン消化されたIgのタンパク質分解断片である。「非Fab部分」は、Fab部分内にないAbの部分、例えば、「Fc部分」または「Fc領域」である。Abの「定常領域」は、可変領域の外側のAbの部分である。免疫応答を促す他の免疫系成分への結合の原因となるAbの部分であるAbの「エフェクター部分」は定常領域に一般に包含される。そのため、例えば、(その抗原結合性部分を介さずに)補体成分またはFc受容体に結合するAb上の部位はそのAbのエフェクター部分である。
【0011】
タンパク質分子、例えばAbを指す場合、「精製された」は、そのような分子に天然に随伴する成分から分離されていることを意味する。典型的には、Abまたはタンパク質は、それが天然に付随する非Abタンパク質または他の天然に存在する有機分子を重量で少なくとも約10%(例えば、9%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.9%、および100%)含まない場合に、精製されている。純度は、任意の適切な方法、例えば、カラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、またはHPLC分析により測定することができる。化学的に合成されたタンパク質またはそれが天然に存在する細胞種以外の細胞種中で産生された他の組換えタンパク質は「精製され」ている。
【0012】
「~に結合する」(bind)、「~に結合する」(binds)、または「~と反応する」は、1つの分子が試料中の特定の第2の分子を認識して付着するが、試料中の他の分子を認識することもそれに付着することも実質的にないことが意味される。一般に、別の分子に「特異的に結合する」Abは、該他の分子に対して約10、10、10、10、10、1010、1011、または1012リットル/モルより高いKを有する。第1の分子に「選択的に結合する」Abは、第1のエピトープにおいて第1の分子に特異的に結合するが、第1のエピトープを有しない他の分子に特異的に結合しない。例えば、IL-1アルファに選択的に結合するAbは、IL-1アルファ上のエピトープに特異的に結合するが、IL-1ベータ(該エピトープを有しない)に特異的に結合しない。
【0013】
「治療有効量」は、治療される動物またはヒトにおいて医学的に望ましい効果(例えば、疾患または疾患の症状の寛解または予防)を生じさせることができる量である。
【0014】
本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、好適な方法および材料が以下に記載される。本明細書において言及される全ての出願および刊行物は参照により全体が組み込まれる。矛盾がある場合、定義を含めて本明細書が優先される。追加的に、以下において議論される特定の実施形態は実例的なものに過ぎず、限定的であることは意図されない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、一過性中大脳動脈閉塞(tMCAO)を行った後にアイソタイプ対照抗体を投与されたマウスにおける脳の同側半球と対比した対側半球中の組織IL-1αレベルを示すグラフである。
図2図2は、アイソタイプ対照抗体を用いて治療された対象と比較して抗IL-1α抗体を用いて治療された対象における梗塞体積の低減を示すグラフである。
図3図3は、アイソタイプ対照抗体を用いて治療された対象と比較して抗IL-1α抗体を用いて治療された対象におけるベダーソン(Bederson)指数スコアにおける改善を示すグラフである。
図4図4は、アイソタイプ対照抗体を用いて治療された対象と比較して抗IL-1α抗体を用いて治療された対象におけるロータロッド試験における落下潜時の低減を示すグラフである。
図5図5は、抗IL-1α抗体またはアイソタイプ対照抗体を投与されたtMCAO処置マウスの血液脳関門におけるP-セレクチンおよびVE-カドヘリンの発現を示す一連の顕微鏡写真(上)、ならびにアイソタイプ対照抗体を用いて治療された対象と比較して抗IL-1α抗体を用いて治療された対象におけるより低いP-セレクチン発現を示すグラフ(下)である。
図6図6は、抗IL-1α抗体またはアイソタイプ対照抗体を投与されたtMCAO処置マウスの脳内皮におけるICAM-1発現の発現を示す一連の顕微鏡写真(上)、およびアイソタイプ対照抗体を用いて治療された対象と比較して抗IL-1α抗体を用いて治療された対象におけるより低いICAM-1発現を示すグラフ(下)である。
図7図7は、抗IL-1α抗体またはアイソタイプ対照抗体を投与されたtMCAO処置マウスの脳内皮におけるVCAM-1発現の発現を示す一連の顕微鏡写真(上)、およびアイソタイプ対照抗体を用いて治療された対象と比較して抗IL-1α抗体を用いて治療された対象におけるより低いVCAM-1発現を示すグラフ(下)である。
図8図8は、アイソタイプ対照を投与されたtMCAO処置マウスと比較して抗IL-1α抗体を投与されたtMCAO処置マウスの発作区画中の活性化マクロファージの数の減少を示す一連の顕微鏡写真(上)、およびそれを示すグラフ(下)である。
図9図9は、アイソタイプ対照を投与されたtMCAO処置マウスと比較して抗IL-1α抗体を投与されたtMCAO処置マウスのペナンブラ区画中のより低いMMP9発現を示す一連の顕微鏡写真(上)、およびそれを示すグラフ(下)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
対象において脳虚血再灌流傷害の1つまたは複数の続発症を低減させるための組成物および方法が本明細書に記載される。以下に記載される好ましい実施形態は、これらの組成物および方法を適合させたものを説明する。それにもかかわらず、これらの実施形態の記載から、以下に提供される記載に基づいて本発明の他の態様を製造および/または実施することができる。
【0017】
一般的方法論
従来の免疫学的および分子生物学的技術を伴う方法が本明細書に記載される。免疫学的方法(例えば、抗原-Ab複合体の検出および局在性についてのアッセイ、免疫沈降、ならびにイムノブロッティングなど)は、当該技術分野において一般に公知であり、方法論の専門書、例えばCurrent Protocols in Immunology、Coliganら編、John Wiley & Sons、New Yorkにおいて記載されている。分子生物学の技術は、専門書、例えばMolecular Cloning:A Laboratory Manual、2nd ed.、vol.1~3、Sambrookら編、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、2001年;およびCurrent Protocols in Molecular Biology、Ausubelら編、Greene Publishing and Wiley-Interscience、New Yorkにおいて詳細に記載されている。Abの方法は、Handbook of Therapeutic Abs、Dubel,S.編、Wiley-VCH、2007年において記載されている。医学的治療の一般的方法は、McPheeおよびPapadakis、Current Medical Diagnosis and Treatment 2010、49th Edition、McGraw-Hill Medical、2010年;ならびにFauciら、Harrison’s Principles of Internal Medicine、17th Edition、McGraw-Hill Professional、2008年において記載されている。神経学における方法は、Daroff R.、Bradley’s Neurology in Clinical Practice、2-Volume Set 7th Edition、Elsevier、2015年において記載されている。
【0018】
治療
本明細書に記載の組成物は、対象における状態の少なくとも1つの特徴(例えば、対象における浮腫、出血性変化、頭蓋内圧、血液脳関門の破壊、梗塞体積、および結果としてもたらされた神経学的欠損)を改善するために有効な量の抗IL-1α Abを含む医薬組成物を哺乳動物対象に投与することにより該対象において脳虚血再灌流傷害を治療するために有用である。脳虚血再灌流傷害の治療の成功は、確立された方法にしたがって評価することができる。これらとしては、神経学的検査、コンピュータ断層撮影、磁気共鳴イメージング、および脳血管造影が挙げられる。改善は、対象が有効量の抗IL-1α Abを投与されなかった場合と比較して(例えば、遺伝学的にマッチした対象または類似した傷害を有する対象の歴史的なデータから推定されるものと比較して)傷害の開始後の所与の時点(例えば、傷害の開始後1、2、3、4、5、7、10、もしくは30日;または1、2、3、4、5、6、12もしくは24か月)における脳虚血再灌流傷害の続発症を評価するために使用された試験における少なくとも10%(例えば、少なくとも10、20、30、40、50、60、または70%)より良好なスコアとして評価することができる。
【0019】
脳虚血再灌流傷害後の脳梗塞体積は、例えばLovbladら、Ann Neurol.42:164~170頁、1997年において記載されるような磁気共鳴イメージング(MRI)により生きた対象において決定することができる。好ましくはこれは、最終梗塞体積に達したとき(例えば、傷害後少なくとも30日)に行われる。対象における脳虚血再灌流傷害の結果としてもたらされた神経学的欠損の量および/または質は、公知の方法、例えばNational Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS)により決定することができ、NIHSSは、15項目スケール(表1)またはCanadian Neurological Scaleを使用して神経学的障害を測定する。脳虚血再灌流傷害の結果としてもたらされた脳損傷の虚血性ペナンブラ中の活性化マクロファージ/小膠細胞の数は、超小型超常磁性酸化鉄(USPIO)がマクロファージ/小膠細胞特異的造影剤として使用されるMRIまたは他の公知の方法により生きた対象において評価することができる。
【0020】
対象は、脳虚血(例えば、虚血発作、一過性虚血発作、またはくも膜下出血)を患った、患っている、またはそれを発症するリスクがある、ヒトを含めて、哺乳動物、例えばヒト、齧歯動物、ネコ、イヌ、ウマ、ヒツジ、またはブタであることができる。ヒト対象は、男性、女性、成人、子供、高齢者(65歳およびより高齢)、ならびに他の疾患または脳虚血のリスク因子(例えば、高血圧、糖尿病、心臓疾患、人種/民族性、脳虚血の個人もしくは家族歴、脳動脈瘤、および/または脳動静脈奇形)を有する者であってもよい。非限定的な例として、対象は、脳血管閉塞を有すると診断されたヒトまたは一過性虚血発作を有するヒトであることができる。対象はまた、(例えば、急性脳血管閉塞を有すると診断された後に)組織プラスミノーゲン活性化剤を投与されたヒトであることができる。IL-1αに結合する剤の初期用量は、虚血発作の症状の開始の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、24、36、または48時間以内に投与することができる。虚血発作を発症するリスクが高い対象(例えば、一過性虚血発作を経験しているまたは血栓症を有する対象)のために、IL-1αに結合する剤は、リスクが減少する(例えば、一過性虚血発作が止まるまたは血栓症が解消される)まで1日1回、または2、3、4、5、6、7、もしくは14日毎に1回の頻度で、予防的に投与することができる。真にヒトのAb(例えば、ヒト対象において天然に発現されるもの)である抗IL-1α Abを伴う治療抗体の以前の投与に起因してヒト抗ヒト抗体応答を発生した対象を治療することは好ましい。
【0021】
IL-1αを標的化する抗体および他の剤
対象において脳虚血再灌流傷害の1つまたは複数の続発症を特異的に低減させる任意の好適な種類のAbが本明細書に記載の方法において使用されてもよい。例えば、使用される抗IL-1α Abは、mAb、ポリクローナルAb、mAbの混合物、またはAb断片もしくは操作されたAb様分子、例えばscFvであってもよい。AbのKaは、好ましくは、少なくとも1×10-1またはより高い(例えば、9×1010-1、8×1010-1、7×1010-1、6×1010-1、5×1010-1、4×1010-1、3×1010-1、2×1010-1、または1×1010-1より高い)ものである。好ましい実施形態において、Abは、(i)ヒトIL-1αに対して非常に高い結合親和性(例えば、少なくともナノまたはピコモル濃度)を呈する抗原結合性可変領域および(ii)定常領域を含む完全ヒトmAbである。ヒトAbは好ましくはIgG1であるが、異なるアイソタイプ、例えばIgM、IgA、もしくはIgE、またはサブクラス、例えばIgG2、IgG3、もしくはIgG4であってもよい。有用なmAbとしては、IL-1αを中和するもの(例えば、IL-1αがIL-1α受容体に結合するのを予防するもの)が挙げられる。
【0022】
ヒトIL-1αに特異的なIgを発現するBリンパ球はヒト中に天然に存在するので、mAbを産生させるための現在好ましい方法は、最初にそのようなBリンパ球を対象から単離し、次にそれを不死化させて、培養で連続的に複製可能にすることである。ヒトIL-1αに特異的なIgを発現する多数の天然に存在するBリンパ球を欠いた対象を1つまたは複数のヒトIL-1α抗原を用いて免疫化して、そのようなBリンパ球の数を増加させてもよい。ヒトmAbは、ヒトAb分泌細胞(例えば、ヒト血漿細胞)を不死化させることにより調製される。例えば、米国特許第4,634,664号明細書を参照。
【0023】
例示的な方法において、1または複数(例えば、5、10、25、50、100、1000、またはより多く)のヒト対象が、血液中のそのようなヒトIL-1α特異的Abの存在についてスクリーニングされる。所望のAbを発現する対象を次にBリンパ球ドナーとして使用することができる。1つの可能な方法において、ヒトIL-1α特異的Abを発現するBリンパ球を持つヒトドナーから末梢血が得られる。そのようなBリンパ球が次に、例えば、ヒトIL-1α特異的Igを発現するBリンパ球を選択するための細胞選別(例えば、蛍光活性化細胞選別、「FACS」;または磁気ビーズ細胞選別)により、血液試料から単離される。これらの細胞は次に、(例えば、EBVを使用する)ウイルス形質転換によりまたは公知の技術にしたがって別の不死化細胞、例えばヒト骨髄腫への融合により不死化させることができる。ヒトIL-1αに特異的なIgを発現するこの集団内のBリンパ球は次に、限界希釈法により単離することができる(例えば、ヒトIL-1αに特異的なIgについて陽性のマイクロタイタープレートのウェル中の細胞が選択され、継代培養され、所望のクローン系を単離できるまで該処理が繰り返される)。例えば、Goding、MAbs:Principles and Practice、59~103頁、Academic Press、1986年を参照。ヒトIL-1αに対して少なくともナノモル濃度またはピコモル濃度の結合親和性を有するIgを発現するクローン細胞系が好ましい。これらのクローン細胞系により分泌されるMAbは、従来のIg精製手順、例えば塩析(salt cuts)、サイズ排除、イオン交換分離、およびアフィニティークロマトグラフィーにより培養培地または体液(例えば、腹水)から精製することができる。
【0024】
不死化されたBリンパ球は、mAbを直接的に製造するためにin vitro培養物中で使用されてもよいが、ある特定の場合において、mAbを製造するために異種発現系を使用することが望ましいことがある。例えば、米国特許出願第11/754,899号明細書に記載の方法を参照。例えば、ヒトIL-1αに特異的なmAbをコードする遺伝子がクローニングされ、異種宿主細胞(例えば、CHO細胞、COS細胞、骨髄腫細胞、およびE. coli細胞)中での発現のために発現ベクター(例えば、プラスミドベースの発現ベクター)に導入されてもよい。IgはH構成で重(H)鎖および軽(L)鎖を含むので、それぞれをコードする遺伝子は別々に単離され、異なるベクター中で発現されてもよい。
【0025】
対象が抗Ab応答を発生するより高い可能性に起因して一般により低い好ましさであるが、異なる動物種に由来する異なる部分を有する抗原結合性分子であるキメラmAb(例えば、「ヒト化」mAb)(例えば、ヒトIgの定常領域に融合したマウスIgの可変領域)が使用されてもよい。そのようなキメラAbは、当該技術分野において公知の方法により調製することができる。例えば、Morrisonら、Proc. Nat’l.Acad.Sci.USA、81:6851、1984年;Neubergerら、Nature、312:604、1984年;Takedaら、Nature、314:452、1984年を参照。同様に、Abは、当該技術分野において公知の方法によりヒト化させることができる。例えば、所望の結合特異性を有するmAbは、様々なベンダーによりまたは米国特許第5,693,762号明細書、同第5,530,101号明細書、もしくは同第5,585,089号明細書に記載されるようにヒト化させることができる。
【0026】
本明細書に記載のmAbは、公知の方法、例えばVHおよびVLドメインシャッフリング(Marksら、Bio/Technology 10:779~783頁、1992年)、超可変領域(HVR)および/またはフレームワーク残基のランダム突然変異誘発(Barbasら、Proc Nat.Acad.Sci.USA 91:3809~3813頁、1994年;Schierら、Gene 169:147~155頁、1995年;Yeltonら、J.Immunol.155:1994~2004頁、1995年;Jacksonら、J.Immunol.154(7):3310~9頁、1995年;およびHawkinsら、J.Mol.Biol.226:889~896頁、1992年)によりそれらの結合特異性を増強または他に変更するために親和性成熟させてもよい。Abのアミノ酸配列バリアントは、Abをコードするヌクレオチド配列に適切な変化を導入することにより調製されてもよい。追加的に、mAbをコードする核酸配列に対する改変は、ある特定の発現系におけるmAbの製造を増強するために(例えば、mAbのアミノ酸配列を変化させることなく)変更されてもよい(例えば、イントロンの排除および/または所与の発現系のためのコドン最適化)。本明細書に記載のmAbはまた、別のタンパク質(例えば、別のmAb)または非タンパク質分子への共役により改変することができる。例えば、mAbは、水溶性ポリマー、例えばポリエチレングリコールまたはカーボンナノチューブに共役させてもよい(例えば、Kamら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102:11600~11605頁、2005年を参照)。米国特許出願第11/754,899号明細書を参照。
【0027】
好ましくは、高い力価のヒトIL-1α特異的mAbを最小の有害効果と共に対象に投与できることを確実にするために、mAb組成物は、少なくとも0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、95、96、97、98、99、99.9またはそれより高い重量パーセントで純粋(任意の賦形剤を除く)であるべきである。mAb組成物は、単一の種類のみのmAb(すなわち、単一クローンBリンパ球系から産生されたもの)を含んでもよく、または2つもしくはそれより多く(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10もしくはそれより多く)の異なる種類のmAbの混合物を含んでもよい。
【0028】
上記のIL-1α特異的Abは使用のために好ましいが、一部の場合において、IL-1αを特異的に標的化する他の剤は、それらの投与が、本明細書に記載の方法において使用された場合に対象における脳虚血再灌流傷害の1つまたは複数の続発症における低減に繋がる限り、使用されてもよい。一部のIL-1α特異的Abは、IL-1受容体(IL-1R1)とのIL-1αの相互作用を予防することによりIL-1αの作用を遮断することが示されているので、様々な病理学的状態の治療におけるこの作用機序に基づいて、IL-1αがIL-1R1と相互作用することを同様に遮断する他のAbまたは非Ab剤もまた使用することができる(例えば、IL-1αがIL-1R1と相互作用することを遮断する他の抗IL-1a Abまたは抗IL-1R1 Ab)。これらのAbは、上記の方法にしたがって作ることができる。非Ab剤としては、IL-1αがIL-1R1と相互作用することを遮断する抗IL-1α Abの産生を引き起こすワクチン、IL-1αに結合してIL-1αがIL-1R1と相互作用することを遮断するタンパク質またはペプチド、およびIL-1αを特異的に標的化してIL-1αがIL-1R1と相互作用することを遮断する小有機分子を挙げることができる。IL-1βに特異的に結合しないものが好ましい。特定の剤が対象において脳虚血再灌流傷害の1つまたは複数の続発症を低減させることができるのかどうかは、以下の実施例セクションに記載の方法により決定することができる。
【0029】
医薬組成物および方法
抗IL-1α Ab組成物(およびIL-1αを特異的に標的化する他の剤)は、薬学的に許容される担体(例えば、無菌食塩水)中で動物またはヒトに投与されてもよく、該担体は、投与のモードおよび経路ならびに標準的な薬学的プラクティスに基づいて選択される。薬学的に許容される担体の他に薬学的製剤のリストは、この分野における標準的なテキストであるRemington’s Pharmaceutical Sciences、およびUSP/NFにおいて見出すことができる。組成物を安定化させかつ/もしくは保存するため、および/または対象へのそれらの投与を促すために他の物質を組成物に加えることおよび他のステップを行うことができる。
【0030】
例えば、Ab組成物は、凍結乾燥させてもよく(Draberら、J.Immunol.Methods.181:37、1995年;およびPCT/US90/01383を参照);ナトリウムおよび塩化物イオンを含む溶液中に溶解させてもよく;1つもしくは複数の安定化剤、例えばアルブミン、グルコース、マルトース、スクロース、ソルビトール、ポリエチレングリコール、およびグリシンを含む溶液中に溶解させてもよく;(例えば、0.45および/もしくは0.2ミクロンフィルターを使用して)濾過されてもよく;ベータ-プロピオラクトンと接触させてもよく;かつ/または殺菌剤(例えば、界面活性剤、有機溶媒、ならびに界面活性剤および有機溶媒の混合物)を含む溶液中に溶解させてもよい。
【0031】
Ab組成物は、任意の好適な技術により動物またはヒトに投与されてもよい。典型的には、そのような投与は非経口的(例えば、静脈内、皮下、筋肉内、髄腔内、または腹腔内導入)である。組成物はまた、例えば、X線ガイダンスを使用してカテーテルを使用する適用により、標的部位(例えば、脳または病変部位)に直接的に投与されてもよい。送達の他の方法、例えば、リポソーム送達または組成物を含浸させたデバイスからの拡散は、当該技術分野において公知である。組成物は、単一のボーラス中、複数の注射中、または(例えば、静脈内へのもしくは腹膜透析による)連続注入により投与されてもよい。
【0032】
治療有効量は、治療された動物またはヒトにおいて医学的に望ましい結果を生じさせることができる量である。抗IL-1α Ab組成物の有効量は、脳虚血再灌流傷害の1つまたは複数の続発症の低減による測定で患者において臨床的有効性を示す量である。医学分野において周知のように、任意の1の動物またはヒトのための投薬量は多くの要因に依存し、該要因としては、対象のサイズ、身体表面積、年齢、投与される特定の組成物、性別、投与の時間および経路、全般的健康状態、ならびに並行して投与されている他の薬物が挙げられる。好ましい用量は、約3~100(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90、または100)mg/kg体重の範囲内である。一部の場合において、単回用量が有効なことがある。他の場合において、用量は、例えば、先行する投与後20分、30分、45分、1時間、2時間、3時間、6時間、12時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、2週間、3週間、または4週間に繰り返し与えられてもよい。
【実施例
【0033】
実施例1:
12週齢の雄C57BL/6野生型(WT)マウスに一過性中大脳動脈閉塞(tMCAO)を45分間行った。虚血/再灌流(I/R)脳傷害を誘導するために、図1に示されるように一過性中大脳動脈閉塞(tMCAO)を行った。簡潔に述べれば、誘導および維持のためにそれぞれ3%および1.5%のイソフルランを使用してマウスを麻酔した。鎮痛のために、ブプレノルフィンHClを切開側面に浸潤させた(0.1mg/Kg)。総、内および外頸動脈の解剖後の左MCAの起点まで総頚動脈に6-0シリコーンコートフィラメントを挿入することにより虚血を誘導した。次に、異なる投薬量(10または65μg/g)でマウス抗マウスIL-1α抗体(すなわち、Flo1-2a)またはアイソタイプ対照のいずれかをマウスに無作為に与えた。患者が救急治療室に現れ、血栓溶解療法に適格である場合にそうであるように再灌流での虚血事象後にIL-1α阻害を行った。より特には、動物を無作為化して、フィラメント引き取りの時点(すなわち、再灌流期間の開始)に尾静脈注射を介して抗IL-1α抗体または適切なアイソタイプ対照抗体のいずれかを与えた。
【0034】
tMCAOの48時間後に、発作(梗塞)体積を2,3,5-トリフェニルテトラゾリウムクロリド(TTC)染色により決定し、神経学的欠損を4ポイントスケール神経学的スコア(ベダーソン指数;Bedersonら、Stroke.1986年;17:472~476頁)の他にロータロッド試験により決定した。tMCAOに曝露された対照(アイソタイプマッチ)抗体治療マウスにおいて、組織IL-1αレベルが同側半球中で上昇し、発作についてのこのサイトカインの病態生理学的関連性を強調した(図1)。再灌流の48時間後に、より低い用量の抗IL-1α抗体を用いて治療されたマウスは、TTC染色による評価で梗塞体積の微小な低減を示したが、発作後の神経学的欠損は改善されなかった(図示せず)。より高い用量の抗IL-1α抗体を用いた治療は、アイソタイプ対照と比較して発作サイズを36%低減させ、ベダーソンおよびロータロッド試験による決定で神経学的成績を改善させた(図2~4)。
【0035】
虚血後血液脳関門(BBB)損傷は発作のアウトカムに重要な影響を及ぼす。IgG血管外漏出の免疫組織化学分析は、抗IL-1α治療動物においてBBB透過性の増加へのわずかな(統計的に有意でない)傾向を実証した。同様に、巨視的に評価された出血性変化の速度は群間で異ならなかった。同様に、傍細胞BBB透過性の調節因子であるオクルディン、クローディン5およびVE-カドヘリンの内皮発現は治療群および対照群の間で異ならなかった。
【0036】
発作後に、損傷関連分子パターンおよび他の炎症性メディエーターの局所的な上昇は循環性白血球を損傷部位に動員し、それらのエフェクター機能を促す。白血球遊走は、セレクチン、免疫グロブリンスーパーファミリーの接着分子およびインテグリンを含めて、脳微小血管内皮細胞および白血球の両方により発現される接着分子の複雑なパターンに依存する。ペナンブラ区画の共焦点顕微鏡法は、対照同腹仔と比較してIL-1α阻害抗体を用いて治療された動物においてP-セレクチン、ICAM-1およびVCAM-1の内皮発現の減少を実証した(図5~7)。虚血後に、脳の内在性免疫細胞(すなわち、小膠細胞)の活性化の他に、循環性プールからの単球の浸潤は、脳組織損傷に対して重要な寄与を与える。虚血後のIL-1αの中和は、Iba-1免疫染色による評価で対照マウスと比較して発作区画中の活性化マクロファージの数を有意に減少させた(図8)。活性化されると、マクロファージはいくつかの炎症促進性メディエーター、例えばTNF-α、ILおよびMMPを分泌し、それにより脳実質損傷を悪化させる。これらの中で、MMP9は直接的な神経毒性効果を発揮することができる。Iba-1のデータと合致して、ペナンブラ区画のさらなる免疫組織化学分析は、対照と比較してIL-1α中和抗体を与えた動物においてMMP9組織レベルの低減を明らかにした(図9)。
【0037】
他の実施形態
本発明をその詳細な説明と組み合わせて記載したが、以上の記載は実例を示すことが意図され、本発明の範囲を限定することは意図されず、該範囲は添付の請求項の範囲により定義されることが理解されるべきである。他の態様、利点、および改変は以下の請求項の範囲内である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】